(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】古細菌の発酵によるPHAの生産方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/625 20220101AFI20241018BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C12P7/625
C12N1/00 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524003
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 IL2022051061
(87)【国際公開番号】W WO2023073684
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501177609
【氏名又は名称】ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴルバーグ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,スプラティム
(72)【発明者】
【氏名】ゴジン,ミハエル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD83
4B064CA02
4B064CD09
4B064CD19
4B064CD24
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BB18
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4B065BC02
4B065BD01
4B065BD10
4B065BD14
4B065BD29
4B065CA12
4B065CA54
4B065CA55
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)などの古細菌の発酵によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の大スケールでの生産方法であって、空気が、発酵槽中に、その底部から常にバブリングされて、培養培地の常時の通気及び混合、さらには二酸化炭素の除去が可能とされる、生産方法に関し、さらに、PHAと少なくとも2つの追加のポリマーとのブレンド、及び前記ブレンドを含む又は前記ブレンドから製造された物品も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の、前記PHAを生産することができる古細菌の発酵による生産方法であって、前記方法は、
(i)少なくとも約5リットルの培養体積を有する発酵槽を提供する工程であって、前記発酵槽は、前記培養体積を占める培養培地を含み、前記培養培地は、炭素源及び窒素源が添加された塩水(例:海水)を含み、前記古細菌の培養に適するものである、工程、
(ii)前記培養培地に前記古細菌の種培養物を播種する工程、
(iii)前記発酵槽の内部でその底部から、前記培養培地の通気及び混合の両方が常に行われるように空気などの酸素含有気体混合物を少なくとも約0.2vvmの通気速度で常にバブリングしながら、前記培養培地中の前記古細菌の予め定められた濃度が得られるまで、前記古細菌を培養する工程、
(iv)前記培養培地から前記古細菌のバイオマスを採取する工程、及び
(v)前記採取したバイオマスから前記PHAを濃縮、分離、及び/又は抽出する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記古細菌が、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロフェラックス・メディテラネイが、ハロフェラックス・メディテラネイ ATCC 33500である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養培地が、炭素及び窒素を、各々独立して、乾燥質量基準で、約1重量%~約80重量%の量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養培地中の炭素の量が、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、20重量%
、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%であり、前記培養培地中の窒素の量が、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素源が、単糖類若しくは多糖類などの糖類、グリセロール及び脂肪酸、ビナス、蒸留廃液、糖蜜廃水、及びオリーブ工場廃水などの廃棄物、ポリオール、海藻加水分解物、オリーブ葉加水分解物、製紙廃棄物、農業廃棄物加水分解物、及びチーズホエイ加水分解物などの加水分解物、若しくはこれらの混合物を含み、並びに/又は、前記窒素源が、タンパク質、グリコシル化タンパク質、DNA断片、RNA断片、及び窒素含有オリゴ糖類を含むバイオポリマー、ペプチド、アミノ酸、及び窒素塩、海藻加水分解物、オリーブ葉加水分解物、農業廃棄物加水分解物、及びチーズホエイ加水分解物などの加水分解物、若しくはこれらの混合物などの有機又は無機窒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素源が、前記炭素源の少なくとも約1重量%、好ましくは約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、若しくはそれ以上を構成する海藻加水分解物を含み、及び/又は、前記窒素源が、前記窒素源の少なくとも約1重量%、好ましくは約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、若しくはそれ以上を構成する海藻加水分解物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記培養培地が、臭化物アニオンを含む塩などの塩、バッファー、リン、又はこれらの
混合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記培養培地が、前記炭素源、前記窒素源、及び所望に応じて前記リン、ハロゲン、又はそれらの混合物が添加された塩水、例えば海水を含み、
前記培養培地中の炭素及び窒素の量が、各々独立して、乾燥質量基準で、約1重量%~約80重量%であり、前記炭素源が、前記炭素源の少なくとも約1重量%を構成する海藻加水分解物を含み、前記窒素源が、前記窒素源の少なくとも約1重量%を構成する海藻加水分解物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記培養培地中の炭素の量が、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%であり、前記培養培地中の窒素の量が、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%であり、前記炭素源が、前記炭素源の少なくとも約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又はそれ以上を構成する海藻加水分解物を含み、前記窒素源が、前記窒素源の少なくとも約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又はそれ以上を構成する海藻加水分解物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記海藻加水分解物が、ウルバ属種(Ulva sp.)加水分解物などの緑色大型藻類加水分解物である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記播種工程(ii)の前の前記培養培地のpHが、最大8.5である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記播種工程(ii)の前の前記培養培地のpHが、約2~約8.5、好ましくは約6.8~約7.4の範囲内、例えば7.2である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養工程(iii)が、少なくとも48時間、60時間、又は72時間にわたって行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記通気速度が、約0.8~約1.2vvm、好ましくは約1vvmである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(v)が、水(加水分解)、高圧、パルス電場、及び遠心分離と濾過などの物理的手段;細胞溶解バッファー、深共晶溶媒、有機溶媒、二相溶媒系、及びイオン液体などの化学的手段;又はこれらの組み合わせによって前記PHAを抽出することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
得られた前記PHAの分子量が、前記通気速度及び前記古細菌の培養期間に応じて変動する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(v)で得られた前記PHAを精製することによって精製PHAを得る工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記精製工程が、得られた前記PHAを水、イオン液体、又はこれらの組み合わせで繰り返し洗浄することによって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
例えばドラム乾燥機、噴霧乾燥機、空気若しくは空気/窒素流乾燥、又は凍結乾燥機によって、前記精製PHAを乾燥させる工程をさらに含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記精製PHAを、少なくとも1つのポリマーとブレンドする工程をさらに含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ケラチン、セルロース、キチン、リグニン、アミロース、アミロペクチン、及びムチンなどの生分解性ポリマー、又はポリエチレンテレフタレート(PET、ポリエステルとも称される)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)(ABS)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリシロキサン、グラフトポリマー、及びポリアミドアミン(PAMAM)などのデンドリマーなどの非生分解性ポリマー若しくはコポリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記発酵槽が、オープン発酵槽であり、及び前記古細菌の前記培養が、非滅菌条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記発酵槽が、ガラス、セラミック、プラスチック、セメントから作られている、又は前記発酵槽が、土製発酵槽(土手による池)である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
連続的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及び少なくとも2つの追加のポリマーを含むブレンド。
【請求項27】
前記少なくとも2つの追加のポリマーが、各々独立して、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ケラチン、セルロース、キチン、リグニン、アミロース、アミロペクチン、ムチン、若しくは前記PHAとは異なるPHAなどの生分解性ポリマー、又はポリエチレンテレフタレート(PET、ポリエステルとも称される)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸若しくはそのエステル、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)(ABS)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリシロキサン、グラフトポリマー、及びPAMAMなどのデンドリマーなどの非生分解性ポリマーである、請求項26に記載のブレンド。
【請求項28】
前記少なくとも2つの追加のポリマーが、PLA及びケラチンを含む又はPLA及びケラチンから成る、請求項27に記載のブレンド。
【請求項29】
PHA:PLAの比が、それぞれ、重量基準で約1:99~約99:1である、請求項28に記載のブレンド。
【請求項30】
前記PHA:PLAの比が、それぞれ、重量基準で約20:80~約40:60、例えば約25:75、約30:70、又は約35:65である、請求項29に記載のブレンド
。
【請求項31】
前記少なくとも2つのポリマーのうちの1つが、ケラチンであり、前記ケラチンが、前記ブレンドの約1重量%~約99重量%、好ましくは約10重量%~約50重量%を構成する、請求項27に記載のブレンド。
【請求項32】
請求項26~31のいずれか一項に記載のブレンドを含む、又は前記ブレンドから製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロフェラックス・メディテラネイ(Haloferax mediterranei)などの古細菌の屋外発酵を含む発酵によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の大スケールでの生産方法であって、空気が発酵槽中に、その底部から常にバブリングされて、培養培地の常時の通気及び混合、さらには二酸化炭素の除去が可能とさる、生産方法に関し、さらに、PHAと追加のポリマーとのブレンド、及びそれから製造された物品が提供される。
【背景技術】
【0002】
2016年における世界の石油化学プラスチック生産量は、年間3億3500万トンであり、このことによって、使用済み廃棄物処理及びプラスチックによる環境汚染に関する切迫した懸念が高まっている。世界中で用いられるポリマーの22~43%が埋立地に廃棄され、毎年1000万~2000万トンのプラスチックが海洋へと流れ込む結果となり、このことは、生態系に対するダメージ、及びそれに伴う年間130億米ドルのコスト負担を引き起こしている。政府は現在、バイオプラスチックの使用を強制し、埋め立て処理禁止を導入することで、バイオベースの循環型経済を促進する戦略を支援している。バイオポリマーの中でも、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、その調整可能なコポリマー配合及び機械的特性、並びに海洋環境及び周囲土壌環境の両方における独特の分解性に起因して、卓越した持続可能材料として認識されている。加えて、他のバイオポリマーとは異なり、PHAポリマーは、疎水性、水不溶性、空気中で無期限に安定、無毒性、熱可塑性、及び/又は弾性であり、細胞内での非常に高い純度を有する。PHAポリマーファミリーは、バイオポリマーの広範な用途に対して高い可能性及び適応性を有している。したがって、PHA蓄積の効率が高い微生物の探索は、今現在必要とされることである。野生型の菌株の中で、極端な好塩菌であるハロフェラックス・メディテラネイ(Hfx.メディテラネイ)は、最も重要な菌株である。この古細菌は、様々な基質を利用して、細胞内に多量のPHAを蓄積することができる。さらに、高い耐塩性を特徴とするその好極限性により、この生物の非滅菌培養が可能となり、そのため、プロセスに必要なコスト及びエネルギーが削減される。
【0003】
数十年にわたる研究にもかかわらず、PHAプロセスの商業化は遅れている。これは、製品が市場に浸透する初期段階において高価値の用途が存在しないことで説明できる可能性があり、この場合、石油系プラスチックのコスト障壁が課題である。しかし、海藻からPHAを生産するための塩生植物バイオリファイナリープロセスの開発は、依然として難しく、現行のプロセスと比較して明確な優位性を与えることになるこれらのプロセスのスケールアップの可能性には、ギャップが存在する。例えば、現在細菌によるPHA生産に用いられている密閉制御発酵槽は、高価であり、培養培地の混合のために多くの淡水及びエネルギーを必要とする(Mahler et al., 2018)。加えて、細菌バイオマスの採取は、
通常遠心分離機で行われるが、これは、ほとんどスケールアップの可能性がなく、極端な好塩菌の増殖に必要な腐食性の高塩濃度培地において安定ではない。さらに、極端な好塩古細菌に関する研究のほとんどは、シェイクフラスコ培養又は作業体積1~10Lのバイオリアクターで行われてきた(Alsafadi and Al-Mashaqbeh, 2017;Hezayen et al., 2000)。したがって、様々な炭素基質を用いた好塩古細菌からのPHA生産のスケールアッ
プに焦点を当てる必要のある研究が必要とされている。培養培地の塩分濃度が高いことはまた、リアクターの構造材料に関する課題ももたらす。塩分濃度が高いほど腐食性条件がより強くなるため、耐腐食性のリアクターが必要となる(Hezayen et al., 2000)。酸素は、微生物の増殖及び他の代謝活動に必要不可欠である。これは、培地中の酸素の溶解度がさらに低下する高塩分条件では、より重要となる。PHA生産の増強のために酸素制限
条件が研究されてきた一方で、酸素豊富条件は、バイオマス濃度を高めるのに役立ち、そのため高密度培養に繋がる(Maheshwari et al., 2018)。したがって、極端な好塩古細
菌の増殖、さらにはPHA生産に対する酸素濃度の役割を評価することが重要になってくる。
【0004】
細胞内産物であるPHAは、高い細胞密度の培養を必要とするものであり、なぜなら、利用可能な細胞質内空間が限られていると、細胞内に蓄積可能なPHAの最大量が制限されるからである。PHAの回収は、発酵培地から細胞を分離及び濃縮した後に開始する。好塩菌からのPHA回収は、水道水を用いた細胞溶解で簡単に行うことができるため、発酵培地からの細胞の分離が、PHAの回収全体での課題となる。一般に、細胞の分離は、実験室スケールでは遠心力を用いて行われる。発酵培地からの細胞の工業的分離には、高い効率の連続遠心分離機が必要である。これらの方法は、細胞外産物が必要とされる場合には適切であるが、大量の洗浄細菌が必要である場合には、連続フロー遠心分離機のローターの擦り落とし又は洗い流しが必要となるため、滅菌採取を実現することが難しくなる。同様に、フィルターが閉塞すること及び無菌的にフィルターから生物を洗い流すことが困難であることより、単純な濾過は、時間がかかり信頼性に欠ける。超音波定在波で細胞を採取することは、問題の多い従来の分離技術に対する別の選択肢の可能性を提供する。超音波を用いた非常に高い分離効率での微生物の分離について考察した様々な研究が成されてきた。最近では、培養培地からの微細藻類細胞の分離に超音波分離が利用されている。超音波処理は、Hfx.メディテラネイからPHAを回収するために、高度に局所的なキャビテーション及び細胞破壊を生じさせるものであり、超音波定在波に細胞を捕捉し、濃縮することとは根本的に異なる現象である。超音波定在波による細菌細胞の採取が、従来の脱水技術に対する別の選択肢として実行可能かどうかを判断するためには、その有効性及び必要なエネルギーについて調べる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に記載の研究は、PHA生産における好塩菌の課題(酸素の必要性、屋外発酵)に対処することを目的としたものであり、空気攪拌式バイオリアクター中、屋外発酵で増殖させたHfx.メディテラネイを用い、大型藻類の加水分解物を用いた。発酵は、1LのPETボトル及び40Lのプラスチックスリーブ中、非滅菌条件下で行い、これらをバブルカラムリアクター反応器として操作した。加水分解物から効率的にPHAを生産するために、プロセス条件(通気速度、発酵時間)を最適化した。得られたPHAの構造特性を、最終ポリマーの分子量と共に特定した。
【0006】
本研究は、大型藻類の加水分解物などの安価な基質からのPHA生産をスケールアップするための実現可能な方法を提供するものである。様々な培養パラメータの影響を調べ、PHAの生産性を向上させるのに好ましい条件を確立した。分子量分析から、得られたPHAは、通気速度が低いほどより均質であることが示唆された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の、前記PHAを生産することができる古細菌の発酵による生産方法に関し、前記方法は、
(i)少なくとも約5又は10リットルの培養体積、すなわち作業体積を有する発酵槽を提供する工程であって、前記発酵槽は、前記培養体積を占める培養培地を含み、前記培養培地は、炭素源及び窒素源が添加された、海水などの塩水を含み、前記古細菌の培養、すなわち増殖及び生存の促進並びに支持に適するものである、工程、
(ii)前記培養培地に前記古細菌の種培養物を播種する工程、
(iii)発酵槽の内部でその底部から、前記培養培地の通気及び混合の両方が常に行われるように空気などの酸素含有気体混合物を少なくとも約0.2vvmの通気速度で常
にバブリングしながら、前記培養培地中の前記古細菌の予め定められた濃度が得られるまで、前記古細菌を培養する工程、
(iv)前記培養培地から前記古細菌のバイオマスを採取する工程、及び
(v)採取したバイオマスから前記PHAを濃縮、分離及び/又は抽出する工程、
を含む。
【0008】
本明細書で開示される方法は、さらに、例えば水、イオン液体、又はこれらの組み合わせを用いた繰り返し洗浄によって、工程(v)で得られたPHAを精製して、精製PHAを得る工程、及び所望に応じて、このようにして得られた精製PHAを、例えばドラム乾燥機、噴霧乾燥機、又は凍結乾燥機によって、乾燥する工程、を含み得る。続いて、精製PHAは、乾燥の有無にかかわらず、生分解性ポリマー又は非生分解性ポリマーを例とする少なくとも1つのポリマーとブレンド、すなわち混合され得る。
【0009】
本発明の発酵プロセスは、バッチ式及び連続式のいずれで実施されてもよい。
【0010】
別の態様において、本発明は、PHA及び少なくとも2つの追加のポリマーを含むブレンドを提供し、前記少なくとも2つの追加のポリマーの各々は、独立して、生分解性又は非生分解性ポリマーであってよい。ある特定の実施形態では、前記少なくとも2つの追加のポリマーは、ポリ乳酸(PLA)及びケラチンを含み、又はこれらから成り、前記ブレンド中のPHA:PLA比は、それぞれ重量基準で、約1:99~約99:1、約20:80~約80:20、約30:70~約70:30、又は約40:60~約60:40の範囲内であってよいが、好ましくは、それぞれ重量基準で、約20:80~約40:60、例えば約25:75、約30:70、又は約35:65である(前記ブレンド内に含まれる他のポリマー、例えばケラチンの全体量にかかわらず)。他の実施形態では、前記少なくとも2つの追加のポリマーのうちの1つは、ケラチンであり、これは、前記ブレンドの約1重量%~約99重量%、例えば約5重量%~約90重量%、約10重量%~約80重量%、約15重量%~約70重量%、又は約20重量%~約60重量%を構成するが、好ましくは約10重量%~約50重量%を構成する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、本明細書で開示されるブレンドを含む、又はそのブレンドから製造された物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1A~1Dは、Hfx.メディテラネイの屋外培養(1LのPETボトル)における通気速度の最適化のための実験セットアップ(1A);Hfx.メディテラネイの40Lスリーブでの培養のための実験セットアップ(1B);1LのPETボトルでの培養システムの模式図[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1C);及びHfx.メディテラネイの培養のための単一フォトバイオリアクターの模式図(40L)[実験条件:流量:1.0L分
-1;発酵体積:10L;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1D)を示す。
【
図1B】
図1A~1Dは、Hfx.メディテラネイの屋外培養(1LのPETボトル)における通気速度の最適化のための実験セットアップ(1A);Hfx.メディテラネイの40Lスリーブでの培養のための実験セットアップ(1B);1LのPETボトルでの培養システムの模式図[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1C);及びHfx.メディテラネイの培養のための単一フォトバイオリアクターの模式図(40L)[実験条件:流量:1.0L分
-1;発酵体積:10L;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1D)を示す。
【
図1C】
図1A~1Dは、Hfx.メディテラネイの屋外培養(1LのPETボトル)における通気速度の最適化のための実験セットアップ(1A);Hfx.メディテラネイの40Lスリーブでの培養のための実験セットアップ(1B);1LのPETボトルでの培養システムの模式図[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1C);及びHfx.メディテラネイの培養のための単一フォトバイオリアクターの模式図(40L)[実験条件:流量:1.0L分
-1;発酵体積:10L;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1D)を示す。
【
図1D】
図1A~1Dは、Hfx.メディテラネイの屋外培養(1LのPETボトル)における通気速度の最適化のための実験セットアップ(1A);Hfx.メディテラネイの40Lスリーブでの培養のための実験セットアップ(1B);1LのPETボトルでの培養システムの模式図[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1C);及びHfx.メディテラネイの培養のための単一フォトバイオリアクターの模式図(40L)[実験条件:流量:1.0L分
-1;発酵体積:10L;温度:42±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](1D)を示す。
【
図2A】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図2B】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図2C】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図2D】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図2E】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図2F】
図2A~2Fは、Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における、異なる通気速度での増殖及びPHA生産曲線[実験条件:流量:0.25~2.0L×分
-1;発酵体積:800mL;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2A及び2B);Hfx.メディテラネイを用いたPHA生産における屋外培養条件下での増殖及びPHA生産率[実験条件:流量:1.0L×分
-1;発酵体積:10L;水温:42±2.5℃;空気温度:37±2.5℃;播種菌液濃度:50g×L
-1;初期pH:7.2](それぞれ2C及び2D);並びにスリーブ1及びスリーブ2における時間に対するバイオマス中のPHA%の変化(それぞれ2E及び2F)を示す。
【
図3】
図3は、ポリスチレン(PS)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)の2つの標準物質を用いた、Hfx.メディテラネイによって生産されたPHAの分子量(Mn、Mw、及びMz)及び多分散性指数(PDI)分布を示す。
【
図4A】
図4A~4Cは、(4A)タイプVのASTM試験片寸法、(4B)成形型設計、及び(4C)成形型、を示す。
【
図4B】
図4A~4Cは、(4A)タイプVのASTM試験片寸法、(4B)成形型設計、及び(4C)成形型、を示す。
【
図4C】
図4A~4Cは、(4A)タイプVのASTM試験片寸法、(4B)成形型設計、及び(4C)成形型、を示す。
【
図5A】
図5A~5Cは、(5A)タイプIVのASTM試験片寸法、(5B)成形型設計、及び(5C)成形型を示す。
【
図5B】
図5A~5Cは、(5A)タイプIVのASTM試験片寸法、(5B)成形型設計、及び(5C)成形型を示す。
【
図5C】
図5A~5Cは、(5A)タイプIVのASTM試験片寸法、(5B)成形型設計、及び(5C)成形型を示す。
【
図6A】
図6A~6Bは、純材料としてのPLA、PHA、及びケラチンの熱特性を示すグラフである。
【
図6B】
図6A~6Bは、純材料としてのPLA、PHA、及びケラチンの熱特性を示すグラフである。
【
図7A】
図7A~7Bは、PHAとケラチンとのブレンドのDSC(7A)及びTGA(7B)の曲線を示すグラフである。
【
図7B】
図7A~7Bは、PHAとケラチンとのブレンドのDSC(7A)及びTGA(7B)の曲線を示すグラフである。
【
図8A】
図8A~8Bは、分解温度対ケラチン重量分率(8A)、及びPHAとケラチンとのブレンドの質量変化対ケラチン重量分率(8B)を示すグラフである。
【
図8B】
図8A~8Bは、分解温度対ケラチン重量分率(8A)、及びPHAとケラチンとのブレンドの質量変化対ケラチン重量分率(8B)を示すグラフである。
【
図9A】
図9A~9Bは、PLAとPHAとケラチンとのブレンドのDSC(9A)及びTGA(9B)の曲線を示すグラフである。
【
図9B】
図9A~9Bは、PLAとPHAとケラチンとのブレンドのDSC(9A)及びTGA(9B)の曲線を示すグラフである。
【
図10A】
図10A~10Bは、PLAとPHAとケラチンとのブレンドの分解温度対ケラチン重量分率(10A)及び質量変化対ケラチン重量分率(10B)を示すグラフである。
【
図10B】
図10A~10Bは、PLAとPHAとケラチンとのブレンドの分解温度対ケラチン重量分率(10A)及び質量変化対ケラチン重量分率(10B)を示すグラフである。
【
図11A】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11B】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11C】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11D】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11E】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11F】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図11G】
図11A~11Gは、PLA試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(11A)は試験した全PLA試験片、(11B)はPLA試験片003-1、(11C)はそのヤング率、(11D)はそのポアソン比、(11E)はPLA試験片003-2、(11F)はそのヤング率、(11G)はそのポアソン比である。
【
図12A】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12B】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12C】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12D】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12E】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12F】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図12G】
図12A~12Gは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(12A)はPLA/PHA(70:30)試験片、(12B)はPLA/PHA(70:30)試験片102-1の応力-ひずみ曲線、(12C)はそのヤング率、(12D)はそのポアソン比、(12E)はPLA/PHA(70:30)試験片102-2の応力-ひずみ曲線、(12F)はそのヤング率、及び(12G)はそのポアソン比である。
【
図13A】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13B】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13C】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13D】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13E】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13F】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13G】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13H】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13I】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図13J】
図13A~13Jは、試験した様々なPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片の応力-ひずみ曲線を示すグラフであり、(13A)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片、(13B)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-1の応力-ひずみ曲線、(13C)はそのヤング率、(13D)はそのポアソン比、(13E)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片402-2の応力-ひずみ曲線、(13F)はそのヤング率、(13G)はそのポアソン比、(13H)はPLA/PHA(70:30)-70/ケラチン-30試験片403-1の応力-ひずみ曲線、(13I)はそのヤング率、及び(13J)はそのポアソン比である。
【
図14】
図14は、すべての試験片の応力-ひずみ曲線をまとめて示すグラフである。PLA:003-1及び003-2、PLA/PHA:102-1及び102-2、PLA/PHA/ケラチン:402-1、402-2、及び403-1。
【
図15】
図15は、コンポスト化条件下での異なる複合材料の分解を示す光学顕微鏡写真である。
【
図16】
図16は、コンポスト化条件下での、コントロールPLAドッグボーン、PLA/PHAドッグボーン、及びPLA/PHA/ケラチンドッグボーンの崩壊度を時間の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1つの態様において、本発明は、PHAの、前記PHAを生産することができる古細菌の発酵による生産方法に関し、その方法は、
(i)少なくとも約5又は10リットルの培養体積を有する発酵槽を提供する工程であって、前記発酵槽は、前記培養体積を占める培養培地を含み、前記培養培地は、炭素源及び窒素源が添加された海水などの塩水を含み、前記古細菌の培養に適するものである、工程、
(ii)前記培養培地に前記古細菌の種培養物を播種する工程、
(iii)発酵槽の内部でその底部から、前記培養培地の通気及び混合の両方が常に行われるように空気などの酸素含有気体混合物を少なくとも約0.2vvmの通気速度で常にバブリングしながら、前記培養培地中の前記古細菌の予め定められた濃度が得られるまで、前記古細菌を培養する工程、
(iv)前記培養培地から前記古細菌のバイオマスを採取する工程、及び
(v)採取したバイオマスから前記PHAを濃縮、分離及び/又は抽出する工程、
を含む。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「ポリヒドロキシアルカノエート」(PHA)の用語は、糖又は脂質の細菌/古細菌発酵によるものを含む、微生物によって自然界で生産されるポリエステルを意味する。このファミリー内では、150種類を超える異なるモノマーが組み合わされて、異なる特性を有する材料を得ることができる。PHAは、40℃~180℃の範囲内の融点を有する生分解性の熱可塑性又はエラストマー材料である。微生物源、遺伝子組換え細菌、及び他の生物から得られる特定のPHAは、各々が式[-O-C(R)H-(CH2)n-C(O)-]であるモノマーから成り、式中、Rは、H、又はアルキル、すなわち、例えば1~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状のヒドロカルビルであり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチ
ル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソアミル、2,2-ジメチル-プロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシルなどである。このようなPHAの例としては、限定されるものではないが、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエート)、及びポリ(3-ヒドロキシドデカノエート)が挙げられ、この場合、nは1であり、Rは、それぞれ、H、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、又はノニルであり、さらには、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)及びポリ(5-ヒドロキシバレレート)が挙げられ、この場合、それぞれ、nは2又は3であり、RはHである。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「古細菌」の用語は、細菌及び真核生物からそれを区別する明確な分子特性を有する単細胞原核生物のいずれかの群を意味する。古細菌の限定されない例としては、ピクロフィルス属(Picrophilus)の種、メタン菌、好塩菌、及びピュロロブス・フマリイ(Pyrolobus fumarii)が挙げられる。本明細書で言及される特定の古細菌は、好塩古細菌である。ある特定の実施形態において、古細菌は、Hfx.メディテラネイ、例えばHfx.メディテラネイ ATCC 33500である。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「塩水」の用語は、主としてナトリウムイオン及び塩化物イオンから成る、少なくとも約2%から約30、35、又は40%までの塩分濃度を有する水を意味する。ある特定の実施形態において、前記塩水は、海水、すなわち海又は海洋由来の水であり、平均約3.5%の塩分濃度を有する。他の実施形態では、前記塩水は、約4%若しくは5%~約10%の範囲内の塩分濃度、又は10%を超える塩分濃度、例えば約15%、20%、25%、若しくは30%までの塩分濃度を有する。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「酸素含有気体混合物」の用語は、体積基準(体積/体積)で少なくとも約15%、例えば約16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、又は25%であるが、好ましくは約19%、20%、21%、22%、又は23%の酸素と、窒素、二酸化炭素、並びにヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンなどの不活性ガスから選択され得る追加の気体とを含む気体混合物を意味する。特定のそのような気体混合物は、合わせて前記気体混合物の少なくとも98体積%を構成する酸素、窒素、二酸化炭素、及びアルゴンを含む、空気様気体混合物である。より特定の実施形態では、開示される発酵プロセス中に発酵槽にバブリングされる酸素含有気体混合物は、空気であり、すなわち、約78%の窒素、約21%の酸素、約0.9%のアルゴン、約0.1%の二酸化炭素、及び少量の他の気体を含む気体混合物である。
【0018】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される発酵プロセスで用いられる培養培地は、炭素及び窒素を、各々独立して、乾燥質量、すなわち脱水質量基準で、約1重量%~約80重量%の量で含む。「乾燥質量基準」の用語は、培養培地の乾燥重量、すなわち、前記培養培地を構成する固体成分全体の重量を意味する。特定の実施形態では、前記培養培地中の炭素の量は、乾燥(脱水)質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、又は70重量%であり、及び/又は前記培養培地中の窒素の量は、乾燥(脱水)質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%である。
【0019】
ある特定の実施形態では、開示される発酵プロセスで用いられる培養培地に含まれる炭
素源は、糖類、より詳細には、グルコース、ガラクトース、フルクトース、及びキシロースなどであるがこれらに限定されない単糖類、若しくはデンプンなどの多糖類;グリセロール(バイオディーゼル製造プロセスにおける主要な副産物)、酢酸、酪酸、及びプロパン酸などの脂肪酸(酸生成発酵中の有機化合物の嫌気性分解時に生成され、例えばバイオディーゼル製造のための、淡水及び海洋の油脂生産微生物に対するフィードストックとして利用)、ビナス(vinnase)(糖又はエタノール産業の副産物)、蒸留廃液(stillage
)(エタノール蒸留後に残る廃液で、還元糖(フルクトース及びグルコース)と、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む脂肪酸とを含む)、糖蜜廃水、及びオリーブ工場廃水(オリーブ油製造の側流)などであるがこれらに限定されない廃棄物;ポリオール、すなわち、複数のヒドロキシル基を含む有機化合物、海藻加水分解物、オリーブ葉加水分解物、農業廃棄物加水分解物、及びチーズホエイ加水分解物などであるがこれらに限定されない加水分解物;若しくはこれらの混合物を含み;並びに/又は、前記培養培地に含まれる窒素源は、タンパク質、グリコシル化タンパク質、DNA断片、RNA断片、及び窒素含有オリゴ糖類を含むバイオポリマー、ペプチド、アミノ酸、及び窒素塩、海藻加水分解物、オリーブ葉加水分解物、製紙廃棄物、農業廃棄物加水分解物、及びチーズホエイ加水分解物などの加水分解物、若しくはこれらの混合物などの有機又は無機窒素を含む。特定の実施形態では、炭素源及び窒素源の両方が、海藻加水分解物を例とする加水分解物のみから成り、これが、古細菌の培養プロセスに必要とされるすべての炭素及び窒素を供給する。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「バイオポリマー」の用語は、生物の細胞によって生産される天然ポリマー(共有結合したモノマー単位から成る)を意味する。このようなポリマーの主たる例は、用いられるモノマー及び形成されるバイオポリマーの構造に従って分類すると、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及びタンパク質、並びに多糖類である。RNA及びDNAなどのポリヌクレオチドは、13個以上のヌクレオチドモノマーから構成されるポリマーである。ポリペプチド及びタンパク質は、アミノ酸のポリマーであり、コラーゲン、アクチン、及びフィブリンを含む。多糖類は、直鎖状又は分岐鎖状のポリマー炭水化物であり、デンプン、セルロース、及びアルギナートを含む。バイオポリマーのさらなる例としては、天然ゴム(イソプレンのポリマー)、スベリン及びリグニン(複雑なポリフェノール系ポリマー)、クチン及びクタン(長鎖脂肪酸の複雑なポリマー)、並びにメラニンが挙げられる。本明細書で上述したポリマーは、グリコシル化、すなわち糖部分の結合によって修飾されていてもよい。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」の用語は、アミン官能基及びカルボン酸官能基の両方を含む有機化合物を意味し、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸のいずれであってもよく、L異性体及びD異性体の両方で存在する。タンパク質中に天然に存在する22種類のアミノ酸は、アスパラギン酸(Asp)、チロシン(Tyr)、ロイシン(Leu)、トリプトファン(Trp)、アルギニン(Arg)、バリン(Val)、グルタミン酸(Glu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、セリン(Ser)、アラニン(Ala)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、スレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、セレノシステイン(Sec)、及びピロリジン(Pyl)である。他のアミノ酸の限定されない例としては、シトルリン(Cit)、ジアミノプロピオン酸(Dap)、ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン(Orn)、アミノアジピン酸、β-アラニン、1-ナフチルアラニン、3-(1-ナフチル)アラニン、3-(2-ナフチル)アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、3-(アミノメチル)安息香酸、p-エチニル-フェニルアラニン、m-エチニル-フェニルアラニン、p-クロロフェニルアラニン(4ClPhe)、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、p-アセチルフェニルアラニン、p-アジドフェニルアラニン、p-プロパルグリ-オキシ-フェニルアラニン(p-propargly-oxy-phenylalanine)、インダニルグリシン(Igl)、(ベンジル)システ
イン、ノルロイシン(Nle)、アジドノルロイシン、6-エチニル-トリプトファン、5-エチニル-トリプトファン、3-(6-クロロインドリル)アラニン、3-(6-ブロモインドリル)アラニン、3-(5-ブロモインドリル)アラニン、アジドホモアラニン、α-アミノカプリル酸、O-メチル-L-チロシン、N-アセチルガラクトサミン-α-スレオニン、及びN-アセチルガラクトサミン-α-セリンが挙げられる。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸残基」の用語は、アミノ酸のアミノ基、例えばそのα-アミノ基又は存在する場合には側鎖アミノ基から水素原子を除去し、及びアミノ酸のカルボキシル基、例えばそのα-カルボキシル基又は存在する場合には側鎖カルボキシル基から-OH基を除去した後のアミノ酸の残基を意味する。
【0023】
「ペプチド」の用語は、ペプチド(アミド)結合によって、すなわち、1つのアミノ酸のカルボキシル基が別のアミノ酸のアミノ基と反応する場合に形成される共有結合によって連結された、アミノ酸モノマー(残基)の短い鎖、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、又はそれ以上のアミノ酸残基から成る鎖、を意味する。本明細書で用いられる場合、「ペプチド部分」の用語は、そのカルボキシル基から、すなわちその末端又は側鎖カルボキシル基のいずれかから水素原子を除去し、及び/又はそのアミノ基から、すなわちその末端又は側鎖アミノ基から水素原子を除去した後の、本明細書で定義されるペプチドの部分を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「ペプチド結合」又は「アミド結合」の用語は、2つの分子、例えば2つのアミノ酸の間に、その分子の一方のカルボキシル基が他方の分子のアミノ基と反応した場合に形成される共有結合-C(O)NH-を意味し、水分子の放出を引き起こす。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「加水分解物」の用語は、化学的又は酵素的に様々なサイズのペプチドに分解されたタンパク質を含む、加水分解の水性生成物を意味する。培養培地の炭素源及び/又は窒素源として用いられ得る加水分解物の例としては、海藻加水分解物、オリーブ葉加水分解物、農業廃棄物加水分解物、及びチーズホエイ加水分解物が挙げられる。特定の実施形態では、言及される加水分解物は、海藻加水分解物であり、これは炭素源及び窒素源のいずれか一方又は両方として用いられてよいが、好ましくは両方である。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「海藻」の用語は、大型で多細胞の海洋藻類のいずれの種をも意味し、大型藻類の紅藻植物(Rhodophyta)(紅藻類)、褐藻植物(Phaeophyta)(褐藻類)、及び緑藻植物(Chlorophyta)(緑藻類)の種類を含む。特定の実施形態では、言及される海藻は、ウルバ属種(Ulva species)などの緑色大型藻類である。
【0027】
ある特定の実施形態では、開示される発酵プロセスで用いられる培養培地に含まれる炭素源は、海藻加水分解物を含み、前記加水分解物は、前記炭素源の少なくとも約1重量%、好ましくは約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、若しくはそれ以上を構成し、及び/又は、前記培養培地に含まれる窒素源は、海藻加水分解物を含み、前記加水分解物は、前記窒素源の少なくとも約1重量%、好ましくは約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、若しくはそれ以上を構成する。特定の実施形態では、本明細書に例示されるように、炭素源及び窒素源の両方が、海藻加水分解物のみから成り、これが、前記古細菌の発酵プロセスに必要とされるすべての炭素及び窒素を供給する。
【0028】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される発酵プロセスで用いられる培養培地は、臭化物アニオンを含む塩などの塩、バッファー、リン、又はこれらの混合物をさらに含む。前記培養培地の調製に用いられ得るリン源としては、限定するものではないが、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二ナトリウムなどの溶解された無機リン酸塩、さらにはリン含有生体分子が挙げられ、用いられ得るハロゲン源としては、限定するものではないが、臭素が挙げられる。
【0029】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、本明細書で開示される発酵プロセスで用いられる培養培地は、前記炭素源、前記窒素源、及び所望に応じて前記リン、ハロゲン、又はこれらの混合物が添加された海水を例とする塩水を含み、前記培養培地中の炭素及び窒素の量は、各々独立して、乾燥質量基準で、約1重量%~約80重量%であり、前記炭素源は、前記炭素源の少なくとも約1重量%を構成する海藻加水分解物を含み、及び前記窒素源は、前記窒素源の少なくとも約1重量%を構成する海藻加水分解物を含む。
【0030】
特定のそのような実施形態では、前記培養培地中の炭素の量は、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、又は70重量%であり、前記培養培地中の窒素の量は、乾燥質量基準で、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%であり、前記炭素源は、前記炭素源の少なくとも約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又はそれ以上を構成する海藻加水分解物を含み、前記窒素源は、前記窒素源の少なくとも約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、又はそれ以上を構成する海藻加水分解物を含む。より特定のそのような実施形態では、前記炭素源及び前記窒素源の両方は、海藻加水分解物のみから成り、それが前記古細菌の発酵プロセスに必要とされるすべての炭素及び窒素を供給する。
【0031】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、開示される発酵プロセスで用いられる培養培地に含まれる海藻加水分解物は、ウルバ属種加水分解物などの緑色大型藻類加水分解物である。
【0032】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、播種工程(ii)の前の培養培地のpHは、最大8.5である。特定の実施形態では、播種工程(ii)の前の前記培養培地のpHは、約2~約8.5、好ましくは約6.8~約7.4、例えば7.2である。
【0033】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、培養工程(iii)は、最大14日間又は21日間、例えば少なくとも48時間、54時間、60時間、66時間、又は72時間の期間にわたって行われる。
【0034】
本発明によると、培養培地の通気及び混合の両方が常に行われ、その結果として、古細菌によって生産される二酸化炭素も常に除去されるように、培養工程(iii)の過程で、発酵槽中にその底部から、空気などの酸素含有気体混合物が、少なくとも約0.2vvmの通気速度で常にバブリングされる。
【0035】
「通気速度」の用語は、体積/体積/分(vvm)で測定され、酸素含有気体混合物の
体積流量/発酵槽作業体積、を表し、すなわち、1分あたりに発酵槽中にバブリングされ
る酸素含有気体混合物の体積と前記発酵槽の作業体積との間の比を意味する。ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、通気速度は、約0.6、0.7、又は0.8~約1.2vvm、好ましくは約0.9~約1.1vvm、より好ましくは約1vvmである。
【0036】
上述したように、培養工程(iii)の過程で発酵槽中に常にバブリングされる酸素含有気体混合物は、培養培地の通気及び混合の両方を行い、その結果として、前記培地から二酸化炭素を除去する。したがって、前記酸素含有気体混合物の通気速度は、発酵プロセスの過程で培養培地中に得られ得る最大古細菌濃度又は前記濃度を実現するのに必要な時間を例とする培養工程の有効性に大きく影響を及ぼし得る。
【0037】
本明細書で示されるように、前記酸素含有気体混合物の通気速度は、得られるPHAの分子量にも、直線的ではないが影響を及ぼし、それは、通気速度及び古細菌の培養期間に応じて変動し、通気速度が高いほど高分子量のPHAが明らかに観察された。
【0038】
本発明によると、培養工程(iii)の完了後、生産された古細菌のバイオマスが培養培地から採取され、次に、採取されたバイオマスから、PHAが濃縮、分離、及び/又は抽出される。ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、採取されたバイオマスからのPHAの抽出は、水(加水分解)、高圧、パルス電場(PEF)、及び遠心分離と濾過などの物理的手段;細胞溶解バッファー、深共晶溶媒、有機溶媒、二相溶媒系、及びイオン液体などの化学的手段;又はこれらのいずれかの組み合わせによって行われる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「深共晶溶媒」の用語は、共晶混合物を形成するルイス酸又はブレンステッド酸と塩基との溶液、すなわち、いずれの構成成分の融点よりも低い単一の温度で溶融又は固化する物質の均質混合物を意味する。深共晶溶媒は、親成分の構造又は相対比を変化させることにより高度に調整可能であり、したがって分離を含む広く様々な潜在的用途を有する。
【0040】
採取されたバイオマスから様々な温度でPHAを抽出することに関して本明細書で用いられる場合、「有機溶媒」の用語は、その分子構造中に炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子を含み得る無毒性で環境に優しい水溶性溶媒を意味する。このような有機溶媒の例としては、限定されるものではないが、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートを含むカーボネートエステル;乳酸エチルを含む乳酸エステル;レブリン酸メチル及びレブリン酸エチルを含むレブリン酸エステル;γ-バレロラクトン;(1R)-7,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2-オン(cyrene);エタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールを含むアルコール、ジオール、及びポリオール;並びにメチルエチルケトンを含むケトンが挙げられる。
【0041】
採取されたバイオマスから様々な温度でPHAを抽出することに関して本明細書で用いられる場合、「二相溶媒系」の用語は、界面層によって分離された2つの溶媒を含む溶媒系を意味し、前記2つの溶媒のうちの一方は、水性溶媒であり、前記2つの溶媒のうちの他方は、その分子構造中に炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子を含み得る無毒性で環境に優しく、部分的(又は貧)水溶性の溶媒であり、酢酸エチル及び酢酸ブチルを含む酢酸エステル、及び2-メチルテトラヒドロフランを含むエーテルなどであるがこれらに限定されない。
【0042】
採取されたバイオマスから様々な温度でPHAを抽出することに関して本明細書で用いられる場合、「イオン液体」の用語は、その分子構造中に炭素原子、水素原子、酸素原子
、硫黄原子、窒素原子、及びハロゲン原子を含み得る、無毒性で環境に優しい有機塩を意味する。イオン液体の限定されない例としては、ジアルキル-イミダゾリウム、N-アルキル-ピリダジニウム、第四級アンモニウム、ジアルキル-ピロリジニウム、アルキル-グアニジニウム、及びアルキル-ピリジニウムのカチオンと、酢酸イオン、ギ酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、及び塩化物イオンなどの様々な環境に優しいアニオンと、を含む塩が挙げられる。
【0043】
本明細書で開示される方法は、前記の実施形態のいずれか1つによる、さらに、例えば水、溶媒、イオン液体、又はこれらの組み合わせを用いた繰り返し洗浄によって、工程(v)で得られたPHAを精製して、精製PHAを得る工程、及び所望に応じて、このようにして得られた精製PHAを、例えばドラム乾燥機、噴霧乾燥機、空気若しくは空気/窒素流乾燥、又は凍結乾燥機によって、乾燥する工程、を含み得る。
【0044】
続いて、精製PHAは、乾燥の有無にかかわらず、少なくとも1つのポリマーとブレンド、すなわち混合され得る。PHAとのブレンドに適するポリマーの例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ケラチン、セルロース、キチン、リグニン、アミロース、アミロペクチン、及びムチンなどの生分解性ポリマー、並びにポリエチレンテレフタレート(PET、ポリエステルとも称される)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)(ABS)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリシロキサン、グラフトポリマー、及びポリアミドアミン(PAMAM、アミド官能性及びアミン官能性の繰り返し分岐鎖状サブユニットから成る)などのデンドリマーなどの非生分解性ポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0045】
本明細書に開示されるブレンドの調製は、例えばGarcia-Garcia et al., 2022;Charon
et al., 2022;及びLonge et al., 2022に開示されているように、PHA又は調製され
たPHAブレンドの特性を調節するために、様々な可塑剤及び/又は添加剤の添加を含み得る。ある特定の実施形態では、1又は複数の可塑剤及び/又は添加剤は、他のポリマーと混合する前にPHAに添加されて、他のポリマーとブレンドする前に前記PHAの特性が調節される。他の実施形態では、1又は複数の可塑剤及び/又は添加剤は、PHAブレンドに、その調製後に添加されて、前記ブレンドの特性が調節される。
【0046】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、本発明の方法で用いられる発酵槽は、前記古細菌の培養が非滅菌条件下で行われるように、オープン発酵槽である。
【0047】
ある特定の実施形態では、前記の実施形態のいずれか1つによる、本発明の方法で用いられる発酵槽は、ガラス、金属又は金属合金、セラミック、プラスチック、又はセメントから作られている。他の実施形態では、前記発酵槽は、土手による池(earthen-bank pond)又は土手構造(earthen-bank construction)とも称される土製発酵槽である。
【0048】
ある特定の実施形態では、本発明の発酵プロセスは、前記の実施形態のいずれか1つによる工程(i)~(v)に従ってバッチで行われる。他の実施形態では、前記発酵プロセスは、連続的に行われ、この場合、古細菌のバイオマスは、連続して又は間隔を空けて、培養培地から採取され(次いで、PHAの濃縮、分離、及び/又は抽出に供され)、新しい培養培地(採取のために除去された量に等しい量)が発酵槽に導入される。
【0049】
PLAとPHA又はケラチンのいずれかとの組み合わせを検討するための多くの研究が行われてきた。本研究は、これらの生分解性材料からバイオプラスチックを作り出す目的で、3つの材料すべてを一緒にした組み合わせを検討するために行った。本明細書の実験セクションに記載されるように、PLA、PHA、及びケラチンのブレンドを、3つの材料の粉末を用いて、それらを均質な粉末を形成するように組み合わせることによって調製した。続いて、このブレンド粉末を、オーブン中で溶融した。SEM及びデジタル顕微鏡、DSC、TGA、FTIR、並びに引張実験により、ブレンドの形態、並びに熱的及び機械的特性を調べた。熱分析から、ケラチンの添加が、ブレンドの熱安定性に影響を与えることが示された。ケラチンの重量分率が増加するに従って、分解温度の有意な上昇及び試験片の重量損失の減少が見られた。非晶質材料と結晶性のより高い材料との違いは、FTIRで見られ得る。PLAは主として非晶質であるのに対し、PHA及びケラチンは結晶性がより高い。結晶構造は、一般に非常に規則正しく、それが構造に強度及び剛性を付与している。このような構造では、分子鎖が所定の位置に固定されるため、荷重が掛かった場合、曲がるのではなく破断する。非晶性ポリマーはその反対である。剛性である代わりに、分子がランダムに混ざり合っていることにより、ポリマーが引っ張られた場合、鎖は互いに横切って移動することができる。このことによって、非晶質ポリマーに柔軟性及び弾力性が付与されている。これらの特性は、引張試験の結果にも反映され、PHA及びケラチンを含むPLAの試験片は、全く変形することなく弾性領域で破断した。加えて、形態試験では、典型的な脆性破壊が見られ、可塑性の徴候はなかった。PLAにPHAを添加すると試験片の延性が上昇し脆性が低下することを見出した他の研究とは対照的に、これらの実験では、PLAにPHAを添加することで、その逆のことが引き起こされたことには注目されたい。これは、用いたPHAの種類によって説明できる可能性が最も高く、PHAのモノマーが異なれば、異なる特性を持つ材料を得ることができる。この結果に対する別の説明は、製造プロセスの過程で恐らく形成されたものである細孔の存在であり得る。ブレンドの両相間の良好な接着性は非常に重要である。細孔は、ポリマー相間の接着性の低下を引き起こし、したがって材料の特性を変化させる。試験片に細孔が作り出されることを避けるためには、吸湿を抑える目的で、材料の粉末を使用するまでデシケータ中に保管するのが良い。ブレンドの特性評価に加えて、生分解試験も行った。合成されたバイオポリマーは、コンポスト化環境中の好気性条件下で、完全に生分解性であった。PLA/PHA/ケラチンブレンドが最も早く分解された。このことは、ケラチンが、材料の熱安定性を補助するだけでなく、材料をより高い生分解性としていることも示している。これらの試験によると、これらの材料は、環境に優しいと特徴付けることができる。これらの知見を補強するためには、さらに引張試験を繰り返し行うべきである。
【0050】
別の態様において、本発明は、したがって、PHAと少なくとも2つの追加のポリマーとを含むブレンドを提供する。
【0051】
本発明によると、PHAとブレンドされるポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(ブチレンスクシネートアジペート)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)及びポリ(メチレンアジペート/テレフタレート)、ケラチン、セルロース、キチン、リグニン、アミロース、アミロペクチン、ムチン、及び前記PHAとは異なるPHAなどの生分解性ポリマー、並びにポリエチレンテレフタレート(PET、ポリエステルとも称される)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸又はそのエステル若しくはアミド、ポリ(アクリロニトリル-co-ブタジエン-co-スチレン)(ABS)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリシロキサン、グラフトポリマー、及びPAMAMなどのデンドリマーなどの非生分解性ポリマーから選択され得る。
【0052】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されるブレンドは、前記PHAと少なくとも2つの追加のポリマーとを含み、前記少なくとも2つの追加のポリマーは、PLA及びケラチンを含む又はこれらから成る。ある特定のそのようなブレンドにおいて、PHA:PLAの比は、それぞれ重量基準で、約1:99~約99:1、約20:80~約80:20、約30:70~約70:30、又は約40:60~約60:40の範囲であるが、好ましくは、それぞれ重量基準で、約20:80~約40:60、例えば約25:75、約30:70、又は約35:65である(前記ブレンド内に含まれる他のポリマー、例えばケラチンの全体量にかかわらず)。
【0053】
他の実施形態では、前記PHAとブレンドされる少なくとも2つの追加のポリマーのうちの1つは、ケラチンであり、これは、重量基準で、前記ブレンドの約1%~約99%、例えば約5%~約90%、約10%~約80%、約15%~約70%、又は約20%~約60%を構成するが、好ましくは約10%~約50%を構成する。
【0054】
ブレンド成分、これらの成分の供給源、並びに物理的及び化学的特性(限定されるものではないが、分子量、結晶化度、鎖コンフォメーション、疎水性及び親水性、加水分解に対する安定性、熱的特性、輸送特性、光学特性、靭性、弾性、粘弾性、熱、電磁放射伝導性、並びに電気伝導性)の変動は、得られるブレンドの前述した物理的及び化学的特性、ブレンドの均質性、並びに成分の接着性に影響を与え得る。例えば、ブレンドにPHAを組み込むと、曲げ弾性率の低下、及び同時に引張弾性率の上昇がもたらされる。ケラチンの存在は、ブレンドの熱安定性及び靭性に影響を与え得る。ケラチンの重量分率が増加するにつれて、分解温度が著しく上昇し、試験片の重量損失が減少した。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、前記の実施形態のいずれか1つに開示されるブレンドを含む、又はそれから製造された物品を提供する。そのような物品は、例えば本明細書の実験セクションに示されるように、本技術分野で公知の適切ないかなる技術によって製造されてもよい。
【0056】
特に断りのない限り、例えば本明細書で用いられる通気速度、培養培地中の炭素及び/又は窒素の量、前記培養培地のpH、並びにブレンド中のポリマー間の比に言及するすべての数値は、すべての場合において「約」の用語によって修飾されているものとして理解されたい。したがって、反する内容が示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとされる所望の特性に応じて、プラス又はマイナス10%まで変動し得る近似値である。
【0057】
次に、本発明を以下の限定されない実施例によって例示する。
【実施例】
【0058】
材料及び方法
大型藻類バイオマス生産.ウルバ属種を、2016年9月15日から11月3日まで、[特別注文の]大型藻類フォトバイオリアクター(MPBR)(Polytiv,Israel、長さ100cm、厚さ200mm、幅40cm)中、制御された条件及び自然光線下で培養した。この海藻の成長に用いた条件は、これまでに最適であることが見出された条件であった。ウルバ属種のバイオマスの元素分析を、CHNS分析装置(Flash
2000、Thermo Scientific,USA)を用いて行った。灰分及び水分含量は、マッフル炉(M.G.Furnaces,Faridabad,India)中、バイオマスを550℃で燃焼することによって特定し、デンプン含有量は、総デンプンアッセイを用いて分析した。
【0059】
大型藻類バイオマスの亜臨界加水分解.海藻バイオマスの加水分解を、電気加熱システムを備えたバッチリアクター(0.25Lの作業体積)(CJF-0.25,Keda Machinery,China)中で行った。リアクター内部の温度及び圧力は、それぞれデジタル温度計(MRC Ltd.,Israel)及び圧力計(MRC Ltd.,Israel)を用いてモニタリングした。リアクター内部の高温スラリーを混合するために、チラー(Guangzhou Teyu Electromechanical
Co. Ltd.,China)からの冷水を用いて冷却した攪拌機を設置した。リアクターから残留空気を除去するため、真空ポンプ(MRC Ltd.,Israel)を使用した。加水分解の条件は、以下の通りとした:温度170℃、合計滞留時間20分、塩分濃度38g×L-1、及び固体投入量5%。これらの条件は、糖収率の最適化のために選択した。加水分解物は、10,000rpmで3分間の遠心分離(Yingtai Instruments TGL-18,China)によって液相と固相とに分離した。
【0060】
Hfx.メディテラネイによるPHA生産.Hfx.メディテラネイ ATCC 33500(NCIMB 2177)の補助によるウルバ属種の加水分解物を用いたPHA生産を調べた。Hfx.メディテラネイ株は、冨栄養培地(Hv-YPC)で、通常の手順で増殖させた。培養物は、振とうインキュベーター(MRC Labs,Israel)中、回転速度180rpmの42℃で増殖させ、培地のpHは7.2に調整した。実験では、海藻の加水分解物(水相)を、これまでの研究(Ghosh et al., 2021)で見られた通りの25体積/体積%の作業濃度で塩水(144g NaCl×L
-1)に添加した。実験は、1LのPET(ポリエチレンテラフタレート)ボトル(長さ0.285m、幅0.08m)から作製した特別注文によるリアクターで行った。15本のPETボトルのセットを用いて、異なる通気速度(0.25~2.0L×分
-1)でのHfx.メディテラネイの培養を3連で行った。個々のリアクターに流量計を接続して、リアクター内部の空気流を操作した。空気は、リアクター内部の流れを均一とするために、リアクターの底部からスパージした。リアクター上部には、気体用の出口を設けた。円筒形のスリーブ状MPBR(Polytiv,Israel、長さ1.55m、厚さ0.02m、幅0.4m)を用いて培養を10Lまでさらにスケールアップし、それをウルバ属種の培養に用いた。Hfx.メディテラネイの培養に用いたリアクター構成とその模式図を
図1に示す。
【0061】
超音波分離試験のために、細胞を600mLの冨栄養Hv-YPC培地(pH7.2)中、1Lのバッフル付き三角フラスコで増殖させた。フラスコを、170rpmの振とうインキュベーター中、42℃でおよそ48時間、指数増殖後期/定常期初期まで維持し、振とう器から取り出した。ベンチトップ分光光度計(ThermoFisher AquaMATE VIS、光路長1cm)で測定した場合、培養物の光学濃度は520nmで7.9であり、これは、無灰乾燥重量濃度(ash-free dry weight concentration)3.
9g×L-1にほぼ相当する。Hfx.メディテラネイ培養物を密閉容器に移し、培養物の粒径及び超音波応答を改善する可能性のある自己凝集の試験としてベンチトップで2週間保存した。静置培養では自動凝集は観察されなかったため、Ca2+を添加することによってHfx.メディテラネイ細胞の凝集促進を試みた。細胞を1,000×gで15分間の遠心分離によってペレット化し、続いてTrisバッファー(20mM Tris-HCl及び4M NaCl、pH7.0)で2回洗浄した。その後、細胞を塩溶液(27mM KCl、0.24mM NaHCO3、0.49mM NaBr、3.7mM NH4Cl、4.3M NaCl、18.5μM FeCl3・6H2O、pH7.0)中に、より高い濃度で懸濁した。第2の細胞懸濁液を、同じ手順に従って洗浄及びリンスしたが、最終塩溶液は、10mMのCaCl2を含むように改変した。洗浄後の懸濁液の光学濃度は、520nmで11.8であり、これは、無灰乾燥重量濃度5.8g×L-1に相当する。
【0062】
細胞内PHA含有量の特定.細胞のPHA含有量は、ナイルレッド染色法を用いて測定した。簡潔に述べると、細胞を洗浄し、10%の生理食塩水に懸濁した。さらに、この細胞懸濁液を、最終濃度3.1μg×ml-1のナイルレッド(Sigma Aldrich,USA)で染色した。細胞を30分間インキュベートし、さらに10%生理食塩水を用いて洗浄及び再懸濁を行った。懸濁液の蛍光を、96ウェルプレートリーダー(Tecan,Switzerland)により、励起波長及び発光波長それぞれ535nm及び605nmで測定した。市販のPHA(Sigma,USA)を用いて、様々な濃度の標準物質を調製した(0.2~2.0g×L-1)。これらの標準物質を、標準曲線の作成に用いた。標準曲線をプロットし、細胞中のPHAの最終濃度を特定した。PHAの未知量は、1ポイントあたり2回の繰り返し測定により、標準曲線から特定した。このプロトコルについて、細胞内PHA含有量を特定するためのクロトン酸アッセイを用いた検証も行った。ポリマー(PHA)を含む乾燥細胞ペレットに、2ミリリットルの硫酸を添加した。この混合物を100℃の水浴中で20分間加熱することによって加水分解し、クロトン酸を得た。濃硫酸をブランクとして用い、235nmでのUV吸光度をマルチプレートリーダー(Tecan,Switzerland)で記録することによって、蓄積されたポリマーの量を定量した。
【0063】
バイオマス及びPHAの生産率の計算.体積バイオマス生産率(X
Biomass、g×L
-1×時間
-1)及び体積PHA生産率(X
PHA、g×L
-1×時間
-1)を特定するために、以下の式を用い:
【数1】
式中、B
1及びB
2は、それぞれ時間t
1(時間)及びt
2(時間)でのバイオマス濃度(g×L
-1)を表し、C
1及びC
2は、それぞれ時間t
1(時間)及びt
2(時間)でのPHA含有量(g×L
-1)を表す。PHAの生産率を特定するため、濃度はPHA抽出によって特定した。
【0064】
細胞からのPHAの抽出.発酵後、ブロスを10,000rpmで10分間にわたって遠心分離した(Yingtai Instruments TGL-18,China)。こうして形成された細胞ペレットを、対流式オーブン(MRC Laboratories,Israel)中、60℃の温度で12時間にわたって乾燥させた。細胞からPHAを抽出するために、細胞ペレットを、蒸留水中の0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)で処理し、32℃で24時間にわたってインキュベートした。これによって細胞の溶解を誘導して、細胞内PHAを水中に放出させた。懸濁液を、さらに9000rpmで15分間にわたって遠心分離して、PHAをペレットとして得た。このペレットを、蒸留水で、白色となるまで繰り返し洗浄し、続いてさらなる分析のために乾燥させた。個々の発酵から得られたPHAを別々に分析した。
【0065】
PHAの特性評価
FTIR-ATR分析.乾燥後に得られたPHA粉末を、減衰全反射(ATR)アタッチメントを備えたフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分光計(Bruker Platinum ATR,USA)で分析した。スペクトルを、400~4000cm-1の範囲で記録した。
【0066】
熱重量分析/示差走査熱量測定(TGA/DSC)分析.5mgの乾燥PHA粉末を、密閉アルミパン中で秤量した。続いて、オートローダーを備えた示差走査熱量計(Jupiter STA 449 F5,NETZSCH,Germany)中で、パンを直線的な温度勾配(30℃から600℃まで)に掛けた。昇温速度は、10℃×分-1で維持した。
【0067】
1H NMR分析.生産されたPHAを、1H NMR分析に掛けた。粉末にしたPHAを、CDCl3に溶解し(10mg×ml-1)、続いて400MHz分光計(Bruker,USA)で分析した。
【0068】
GC-MS分析.PHAのブチルエステルを、オートサンプラー(6890/5977A,G4513A;Agilent,USA)及びHP-5MS UIカラム(Agilent,USA)を備えたGC-MSシステムを用いて分析した。カラムは、5%フェニル/メチルポリシロキサンの固定相から構成し、長さ30m、内径0.25mmであった。ヘリウム(99.999%)をキャリアーガスとして用い、流量は1.0mL×分-1とした。試料を、280℃の温度に加熱したインジェクターに、スプリット比1:19で注入した。サンプル注入量は0.2μLとした。分析物の分離条件は以下の通りであり、初期オーブン温度70℃を5分間保持し、その後280℃まで、15℃×分-1の速度で直線的に昇温した。続いて、30℃×分-1の速度で320℃まで直線的に昇温し、この最終温度の保持時間を5分間とした。質量スペクトル分析は、電子エネルギー70eVを用いたEI陽イオンモードで行った。トランスファーライン温度及びイオン源温度は、それぞれ280℃及び250℃に維持した。得られた質量スペクトルデータは、フルスキャンモード(m/z 50~400)で収集し、Agilent ChemStationソフトウェアを用いて分析した。
【0069】
分子量分析.屈折率(RI)検出器(Agilent 1260,Agilent,USA)及び2つのPhenomenexカラム(Phenomenex Inc.,USA)を取り付け、40℃のカラム温度で操作した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行って、PHAバイオポリマー試料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、z平均分子量(Mz)、及び多分散性指数(PDI)を特定した。用いた移動相は、テトラヒドロフラン(THF)であり、流量は1mL×分-1とした。試料は10μLの量で注入した。GPCシステムの較正は、内部標準物質として直鎖状ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)を用いて行った。
【0070】
例1.バイオマス及びPHAの生産率に対する様々な通気速度の影響
Hfx.メディテラネイの屋外培養での混合に必要とされる通気速度を、1LのPETボトル実験で最適化した。このPETボトルを、100mLの培養体積から1Lのリアクター体積までの段階的スケールアップ、さらには屋外培養条件下でのPHA生産試験のためのバブルカラムリアクターとして用いた。経時でのバイオマス及びPHA濃度のプロファイルを、それぞれ
図2A~
図2Bに示す。72時間の培養時間後、体積生産率を計算した。これは、PHA生産の最大時間でもあった。通気速度1.0L×分
-1(又は1.0vvm)での最大体積バイオマス生産率及びPHA生産率は、それぞれ、64.03±0.11mg×L
-1×時間
-1及び34.07±0.03mg×L
-1×時間
-1であると推計された。これまでに観察された体積生産率と比較して、バイオマス生産率は10~15%の増加、PHA生産率は6~8%の増加が観察された。
【0071】
これまでの研究は、100mLのボトルで行われ、これは25体積/体積%の海藻加水分解物を添加した培地で古細菌を増殖させるために用いられていた。古細菌は、振とうインキュベーター中、温度42℃での120rpmの均一混合下で好気条件で培養された。
より低い通気速度(1.0L×分-1まで)は、バイオマス及びPHAの生産に適していたが、より高い通気速度(1.0L×分-1超)は、PHA蓄積よりもバイオマス生産に適していた。これらの研究から、1.0L×分-1が、PHA蓄積にとってより適切な通気条件であることが示された。本発明者らの研究でも、生物の増殖と共にPHA生産を得ることができることが実証され、このことは、それが増殖に関連した産物形成であることを示唆している。グルコース及びグリセロールを基質として用いたポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産に関する研究から、様々な通気速度の効果に関する知見が得られ、より低い通気速度において、より高いPHB濃度が得られることが観察された。より高い通気速度は、様々な基質を用いて、より高いバイオマス生産をもたらしたが、より低い通気速度では、より高いPHB蓄積量が得られた(De Almeida et al., 2010)。カプリアビダス・
ネカトール(Cupriavidus necator)を用いた最大のバイオマス及びPHA生産のために
は、1vvmの通気速度が最適であることが観察された。酸素は水性培養ブロスにおいて部分的にしか可溶性でないことから、短時間の通気の中断でも、利用可能な酸素がすぐに枯渇する結果となり、培養物に対して不可逆的な損傷を引き起こす。Hfx.メディテラネイの細胞中でPHAが蓄積するのは、通気速度が低い場合に培養培地中の溶存酸素が制限されることが原因である可能性がある。培地中の炭素が過剰である状態で酸素が制限された条件下では、NADPHオキシダーゼ活性が低下し、それはさらに、全体としてのNADPH濃度の上昇をもたらす。そして次に、これが、クエン酸シンターゼ及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼを阻害し、それによって、培地中のアセチル-CoA濃度が上昇することになる。過剰なアセチルCoAは、したがって、脂質又はPHAなどの細胞内の貯蔵産物の蓄積に向けられることになる。酸素制限に起因する高いNADPH/NAD比は、別の選択肢の電子受容体としての役割を果たすPHBの合成を促進する。
【0072】
例2.バイオマス及びPHAの生産率に対する様々な培養時間の影響
様々な培養時間の影響を、1LのPETボトル中、1vvmの通気速度で試験した。実験は、最大196時間にわたって行った。生産率は、時間の増加と共に上昇し、72時間の培養時間で、それぞれ68.01±0.11mg×L
-1×時間
-1及び28.02±0.03mg×L
-1×時間
-1の最大バイオマス生産率及びPHA生産率が観察された(
図2C~
図2D)。PHAの生産率は、72時間後に著しく低下した。これは、飢餓期にPHAが生物によって消費されたことに起因する可能性がある。Hfx.メディテラネイは、貯蔵エネルギー産物としてPHAを生産し、細胞内PHA解重合酵素を有しており、そのことによって、PHAをストレス条件下での生存に利用することができる。培養時間は、廃グリセロールを基質として用いたPHA生産を促進するための重要なパラメータであると推定された。増殖期を制限することで、細胞に窒素ストレスが与えられ、その結果、細胞のPHA含量が高まることが観察された。PHAの蓄積は対数期から始まり、バイオマスと共に増加し、定常期の初めにピークに達する。PHAの合成は、バイオマスの成長に対して遅れ、指数期の終わりに最大合成率に達する。これは、過去の研究においても観察されている(Lillo and Rodriguez-Valera, 1990)。これらの知見から、本研究でのPHA生産は、増殖に関連していることが示唆される。これは、バッチ式培養を連続システムに転換し、それによってPHA生産を増加させるための重要な特性である可能性がある。
【0073】
本研究では、PHA生産のための別の選択肢としての戦略を提示する。通常、混合微生物コンソーシアム(MMC)から安価にPHAを生産するためには、好気性動的供給(aerobic dynamic feeding:ADF)戦略が利用される。ADFプロセスは、過剰-欠乏(feast-famine:F-F)プロセスと称されることが多く、ここでは、細胞は、外部基質が
過剰に供給される初期段階を受け、続いて、その基質が存在しない後期段階を受ける(Cui et al., 2016)。本研究では、生物が増殖期に外部基質を利用することができることにより、PHA生産のための追加工程を必要としない単一工程プロセスを用いる。これは、Hfx.メディテラネイがハロバクテリウム(Halobacteriaceae)科の他の既知のメンバ
ーよりも培養が早い、及び極端な耐塩性も有するという統計値に基づくものであり得る。さらなる驚くべき詳細事項としては、その代謝適応性が高いことであり、すなわち、それは、複雑な培地及び単純な限定培地のいずれでも培養され、好塩性古細菌の中でも非常に多様な単一の炭素源を用いるものであり、タンパク質、多糖類、及び脂質を加水分解する細胞外酵素を分泌する。さらに、非常に高い塩分濃度(>25%)によって、このプロセスにおける汚染物質のレベルが低下し、そのため、濃縮工程が不要となる。ADFプロセスに関して報告されているPHA含有量は、乾燥細胞重量(DCW)で25~70%の範囲内であり、これは本研究で観察された収率と同程度である。したがって、本発明の戦略は、廃棄物資源からの効率的で費用対効果の高いPHA生産に適している。
【0074】
例3.40Lスリーブ中でのHfx.メディテラネイによるPHA生産のスケールアップ
本発明者らは、さらに、40Lのプラスチックスリーブ中での培養によって、PHA生産プロセスをスケールアップした。最初に試みた培養体積は10Lであり、それを段階的に40Lまでスケールアップした。実験条件は、最適化後に決定し、初期培養密度50g×L-1(Ghosh et al., 2021)、通気速度1vvm、及び培養時間72時間とした。バイオマス中に実現したPHAの最大質量分率は、56重量/重量%と計算された。観察された最大バイオマス生産率は、50.1±0.11mg×L-1×時間-1であり、PHA生産率は、27.03±0.01mg×L-1×時間-1であった。変換収率は、0.107g PHA×g ウルバDW
-1と計算された。本研究からの炭素収支も計算した。ウルバ属種バイオマスの投入炭素含有量(CHNS分析によって計算した場合、33.4%のC)のうち、32.03%がHfx.メディテラネイによるPHA生産に利用され、残りの含有量は、発酵中の揮発性脂肪酸(VFA)生産に利用されたか、又は培地中で利用されずに残る残留炭素であった。このことは、使用済み培地のさらなる分析によって確認した。1LのPETボトル培養と比較して、全体的な生産率(バイオマス及びPHA)の僅かな低下が観察されたが、これは、リアクター内での非効率な空気循環に起因する可能性がある(40Lのバイオリアクター中で10Lのバッチ発酵)。非効率な空気循環は、リアクター内の培地成分が利用不可となることに繋がり、このことは、細胞バイオマスの蓄積の減少をもたらして、体積バイオマス及びPHA生産率を実質的に低下させる可能性がある。この影響は、本発明者らの研究でも観察され、プロセスの段階的スケールアップの各段階での生産率の僅かな低下を説明するものである可能性がある。40L培養への段階的スケールアップは、リアクター中でのバイオマス及びPHAの生産率をさらに向上させる可能性がある。バイオマス及びPHAの生産率は、72時間の培養時間で最大の生産率となるベル型の曲線を示した。PHA生産が、バイオマス生産率との類似性も示したことから、生産が、培養時間と共に減少する増殖依存性のプロセスであったことが示唆された。PHA含有量の経時的減少は、PHAが古細菌細胞内でエネルギー貯蔵産物として生産されることから説明され得る。培養時間の増加と共に、細胞内の栄養ストレスが増加し、PHA顆粒がエネルギー生成に用いられるようになる。様々な廃棄物がPHAの生産に用いられてきた。バッチ培養実験では、27mg×L-1×時間-1のPHA生産率が得られ、この場合の発酵実験では、マグロ凝縮水(tuna condensate)を基質として用
いた。
【0075】
技術的には、PHAは、撹拌槽モード(STR)で運転されるバイオリアクター又は発酵槽中、制御された条件下で生産される。リアクターは、バッチ、繰り返しバッチ、フェッドバッチモードで不連続的に、又は連続撹拌槽リアクター(CSTR)として運転されてよく(Albuquerque et al., 2018)、所望に応じてカスケードであってもよい。リアクターは、一般的にステンレス鋼製であり、このことによって、より高い塩分濃度での(すなわち、塩分濃度22%超)Hfx.メディテラネイの培養において課題が生じる。これは、非腐食性であるポリマー及び/又はセラミック(ガラスを含む)製のリアクターを用いることによって克服可能である(Hezayen et al., 2000)。さらに、空気混合式リアク
ター(pneumatically mixed reactor)も、その構造及び設計が単純であることから、極
端な好塩菌によるPHA生産に利用され得る。混合は、リアクター内の空気バブリングによって行われ、そのことは、浮遊細胞に対して生ずるせん断応力を低下させ、物質移動に用いられるエネルギーを減少させる。最近では、エアリフトリアクター(ALR)が、バッチシステムにおけるデンプン加水分解物からのH.ボリビエンシス(H.boliviensis)
によるPHB生産に用いられている。H.ボリビエンシスによる窒素欠乏培地中での様々な炭素源からのPHB生産において、ALRの使用の成功が実証されている(Ortiz-Veizan et al., 2020)。アゾヒドロモナス・アウストラリカ(Azohydromonas australica)
及びC.ネカトールは、約72重量%のPHB、並びにそれぞれバイマス濃度10及び32g×L-1に達したが(Gahlawat et al., 2012)、一方バークホルデリア・サッカリ
(Burkholderia sacchari)のALR中での培養は、41重量%のPHB及び最大バイオ
マス濃度150g・L-1をもたらした(Pradella et al., 2010)。エアリフトリアク
ターと同様に、バブルカラムリアクターも、空気撹拌式バイオリアクターに関連する様々な利点から、極端な好塩菌によるPHA生産に利用され得る。これらの利点としては、撹拌槽リアクターと比較して、シンプルな設計及び構造、操作の容易さ、並びにより低いせん断応力が挙げられる。Hfx.メディテラネイを用いた海藻加水分解物からのPHA生産のために空気撹拌式バイオリアクターを用いることに関する報告はない。
【0076】
本発明者らは、PETボトル(1L)、さらにはスリーブ状大型藻類フォトバイオリアクター(40L)を用いたが、これらは、腐食を受けることがなく、メンテナンスコストを大幅に削減することができる。培地の塩分濃度が高いことで、汚染物質の増殖が抑制され、それによって、極端な好塩古細菌を用いた屋外培養の可能性が高まる。このようなプロセスは、実現可能であり、海藻養殖業者に対してより高い収益をもたらす可能性がある。現行のバイオプラスチック生産用フィードストックに対して温室効果ガス排出量を分析したところ、本発明者らの排出量が同等であることが分かった。培養システム(洋上及び陸上の両方)の効率的な設計が、このプロセスの実現可能性を決定する因子であり得る。プロセスの持続可能性を高めることができる別の方法は、バイオリファイナリーのコンセプトでPHA及びバイオ炭を同時に生産することによるものである。バイオ炭の生産と組み合わせると、経済的な実現可能性と持続可能性とが大幅に改善される(Ghosh et al., 2021)。本発明者らは、経済的に実現可能な方法で続いてPHA生産に用いられ得る、空気撹拌式リアクター中での海藻の陸上培養に対する持続可能なソリューションを提供したいと考えた。プロセスのさらなるスケールアップに関連する課題が存在する。培地の高い塩分濃度が、バイオプロセス全体の障害となり得る。塩水を濃縮するためのさらなるユニットが用いられる可能性があり、この場合、システムからの排出物が、培養システムに再循環され得る。加えて、及び上述したように、このプロセスは、バイオリファイナリーコンセプトで運転することができ、この場合、単一のバイオマス基質から様々な生成物を得ることができ、それによって、プロセスの費用対効果を高めることができる。
【0077】
例4.PHA構造分析(FTIR、TGA/DSC、1H NMR、GC-MS)
FTIR分光法.PHAのFTIR試験では、いくつかの吸収ピークが見られた。3290cm-1付近にピークが検出され、これはヒドロキシル基の伸縮に帰属され得る。PHAに特徴的な結合振動(1720~1740cm-1)が観察され、これはカルボニル結合の振動に帰属され得る。メチル基及びメチレン基の伸縮は、それぞれ2914及び2879cm-1に検出された。他のピークは、1450~1000cm-1の範囲内に観察された。これらのピークは、CH3基の変角、CH2基の縦ゆれ、並びにC-O、C-C、及びC-O-Cの伸縮など、様々な結合振動に帰属され得る。これらの観察結果から、分析されたポリマーが、ポリヒドロキシ-(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)(P(3HB-co-3HV))であることが示された。バレレートを例とする3HV-構造関連前駆体化合物の添加なしにP(3HB-co-3HV)コポリエステルが生産されることは、希少な特徴であり、典型的には、Hfx.メディテラ
ネイなどのいくつかの好塩性古細菌に見られる。
【0078】
TGA/DSC熱分析.Hfx.メディテラネイ由来のP(3HB-co-3HV)の分解温度の極小値(Td)は、248℃であることが分かった。分解プロセス中、ポリマーの重量は70.3%減少した。溶融温度は、177.1℃であると観察された。
【0079】
GC-MS及び1H NMR分析.加水分解されたバイオポリマーのGC-MS分析では、クロマトグラムに2つのピークが示され、その保持時間は、9.46分及び10.654分であった。質量スペクトル分析の後、これらのピークは、3-ヒドロキシブチレート(3HB)及び3-ヒドロキシバレレート(3HV)のブチルエステルであることが示唆された。GC-MS分析から、Hfx.メディテラネイによって生産されたポリマーは、3HB及び3HVのモノマーから構成されていることが示された。バイオポリマーの1H NMRスペクトルによると、0.83ppm及び1.26ppmのピークは、2つの異なるCH3基の存在を示唆しており、これらはそれぞれ、ポリマー中の3HB基及び3HV基の存在と関連し得る。2.58ppm及び2.48ppmのピークは、それぞれ3HV及び3HBのCH2基に帰属された。5.25ppmのピークは、CH基に帰属された。1H NMRスペクトルに従って、PHAのモノマー組成を計算した。これらの計算から、3HBが90.4%、3HVが10.6%の組成が示された。
【0080】
生産されたPHAの分子量.異なる通気速度で生産されたPHAの分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて特定した。表1は、様々な通気速度(0.25~2.0L×分
-1)におけるHfx.メディテラネイから抽出したPHAの平均分子量(M
w)、数平均分子量(M
n)、Z平均分子量(M
z)、及びPDIを示す。PHAの最大平均M
w(ポリスチレン標準を用いると811kDa、PMMA標準を用いると770kDa)は、通気速度0.25L・分
-1で得られ、PDIは1.608(ポリスチレン)/1.544(PMMA)であった。得られた値は、Hfx.メディテラネイからの高品質PHBV生産の過去の研究からの分子量に類似しており、この場合は、分子量が1057kDa及びPDIが1.5のポリマーが得られていた(Koller et al., 2007)。本
発明者らの研究では、ポリスチレンを標準物質として用いた場合、平均M
wは679~811kDaの範囲内であり、PDIは1.6~2.18の範囲内であった。PMMAを標準物質として用いると、平均M
wは656~770kDaの範囲内であり、PDIは1.544~1.959の範囲内であった。対応する通気速度を上げた場合に、PDIの増加が観察され(
図3)、このことは、より低い混合速度において、ポリマーがより均質であることを示唆している。屋外研究では、平均分子量が716kDa及びPDIが1.592のPHAが得られた。
【0081】
【0082】
様々なパラメータがPHAの分子量に与える影響を特定するために、並びにPHAシンターゼ活性のPHAの分子量分布及びPDIへの依存性を調べるために、様々な研究が行われてきた。別の研究では、分子量は、用いられる基質の種類に依存すると主張した(Quagliano et al., 2001)。Kshirsagar et al., 2013によって、混合速度の違いによるP
HAの分子量依存性が観察された。本発明者らの研究は、撹拌及び通気速度を制御することによって、生産されるPHAの分子量及びPDIが制御され得ることを実証するものである。PHAの分子量を制御できることは、ポリマーの製造及び加工において有利である。
【0083】
例5.ブレンドの調製
PLA、PHA、及びケラチンの溶解性試験
これら3つの材料を含むブレンドを調製するために、まず溶解度試験を行った。
【0084】
ケラチンの溶解性.約100mgのケラチンを、酢酸又は蒸留水のいずれかに混合し(Ruzgar et al., 2020)、混合物を12時間にわたって撹拌した。見出されたように、ケ
ラチンは、周囲条件下において、これらの溶媒のいずれにもまったく溶解しなかった。酢酸中のケラチンのコロイド分散体は、加熱することで得ることができた(表2)。
【0085】
PHAの溶解性.約100mgのPHAを、クロロホルム、アセトン、蒸留水、又は酢酸と、別々に混合した。クロロホルム及びアセトンでは、部分的な溶解が観察された。対照的に、蒸留水及び酢酸を溶媒として用いた場合は、分散体しか観察されなかった(表2)。
【0086】
PLAの溶解性.35mlのクロロホルムと15mlのアセトンとの混合物を、PLAの溶解性について評価した。この溶媒混合物中では、周囲条件で12時間撹拌した後に、PLAの僅かな溶解のみが観察された。14mlのクロロホルム及び6mlのアセトンを含む混合物中では、加熱することでPLAの部分的な溶解が観察された。アセトンを溶媒として用いた場合は、55℃に1時間加熱することでPLAを溶解することができた(表2)。
【0087】
【0088】
まとめると、ケラチンコロイド分散体を調製するためには、酢酸を溶媒として用いるべきであり、及び混合物を加熱するべきである。PHAは、クロロホルム又はアセトンに部分的に溶解可能である。PLAは、継続的に混合しながら55℃に加熱するとアセトンに溶解する。
【0089】
材料のブレンド
PLAとPHAとの溶液の調製:70重量%のPLA及び30重量%のPHAから構成される二成分ブレンドの100mgを作製し、このブレンドのアセトンへの溶解性を2つの異なるバイアルで試験して、溶媒への材料添加の順序が均質混合物の形成に影響し得るかどうかを判断した。第1のバイアルでは、PLA及びPHAの両方の固体を同時に10mlのアセトンに添加し、第2のバイアルでは、PLAを10mlのアセトンに添加し、溶解後にPHAを添加した。観察されたように、PLAの溶解速度は、両方のバイアルにおいて、すなわちPHAあり又はなしにおいて、同じであった。しかし、第1のバイアルでは、均質な溶液が得られたのに対し、第2のバイアルでは、PHA添加後に暗色の沈殿物が形成された。結論として、これらの材料は、加熱前に同時にアセトンに添加されるべきである。
【0090】
アセトンが過剰に存在する場合の溶解速度を調べるため、別の試験を行った。100mgのPLA/PHA(70:30)混合物を50mlのアセトンに溶解したところ、見出されたように、溶解速度が速くなった。
【0091】
この混合物を固体として用いることが可能であるかどうかを調べるために、材料をドッグボーン成形型に直接添加し、数分間ごとに混合した。この方法は、高温のオーブン中での材料の混合が難しく、それによって不均質な試験片となることから、都合良くなかった。
【0092】
結論として、PLA/PHA混合物を、過剰のアセトンに溶解するべきであり(PLA/PHA混合物1gに対してアセトン25mlの割合)、得られた混合物を、均質となるまで撹拌し、55℃に加熱するべきである。
【0093】
例6.「ペーパー」の調製
アセトン中でPLA/PHA溶液を調製した後に、溶媒を除去することができた。この溶液をドッグボーン成形型に入れると、アセトンの蒸発速度は非常に遅かった。したがって、アセトンの蒸発は、混合物をドッグボーン成形型に入れる前に行うべきである。アセトン中のPLA/PHA溶液をトレイに移し、蒸発させるためにドラフトに入れた。アセトンが蒸発すると、PLA及びPHAを含む均質な「ペーパー」(フィルム)が得られた。
【0094】
【0095】
続いて、PLA/PHAとケラチンとのブレンドを調製した。これらのブレンドでは、これまでの実験と同様に、70%のPLA及び30%のPHAの比を維持し、様々なブレンド間の唯一の違いは、それらのケラチン含有量であった(表3)。
【0096】
例7.引張試験片の作製
ドッグボーン成形型Vタイプの試験片
試験片作製用の第1の成形型は、プラスチックの引張試験に関するASTM D638規格に従って作製した。選択したサイズは、出発材料の量を節約して最小のサンプルを作製することができるように、最も小さいサイズのタイプVであった。
【0097】
成形型は長方形であり、ASTMに記載されているように、ドッグボーンの形状の同一のソケット部を4つ有していた(
図4)。この成形型の作製には、AlSl304ステンレス鋼を選択した。このステンレス鋼は、高い耐食性を有し、その機械的特性のために広く用いられている。
【0098】
タイプVの試験片を作製するために、まず、2グラムのPLA/PHAの「ペーパー」細片(はさみで切ったもの)を成形型に加えることができ、成形型を220℃に加熱したオーブンに入れた。細片の第1の部分が溶融したところで、さらに「ペーパー」細片を成形型に加えて、成形型の全容量を満たした。
【0099】
例8.ドッグボーン試験片タイプIVのための用いた成形型の再設計
作製したドッグボーン試験片の引張試験を、2kNの荷重容量を用いた万能機械試験機で行った。また、ASTM D638のタイプIVに従う、これまでの試験片の2倍のサイズの新しい試験片も作製することにした(
図5)。新しく設計した成形型では、すべての材料を1度に加えることができ、及び成形型内の材料を押圧することができる上部分を有するため、より均一な試験片を作製することができた。これらの試験片には、4グラム
の材料が必要であった。70%のPLAと30%のPHAとを含むブレンドを用いたが、ケラチンの含有量を表4に指定するように変化させた。
【0100】
【0101】
アセトン中の70%PLAと30%PHAとの溶液にケラチンを加える前に、ケラチンを微粉末に粉砕した。得られたPLA/PHA/ケラチン混合物を、均質化のために15分間撹拌し、続いて蒸発及び「ペーパー」形成のためにトレイに移した。形成されたPLA/PHA/ケラチンの「ペーパー」を粉砕機で細断して微粉末とし、その粉末をタイプIVの成形型に添加した。粉末を入れた成形型を、オーブン中175℃で60分間加熱し、その後2時間にわたって冷却して室温とした。
【0102】
続いて、得られたPLA/PHA/ケラチンのタイプIV試験片を成形型から取り出し、引張試験の前に、より良好な画像処理のために50%の白色塗料と50%の黒色塗料と
を用いてスプレー塗装を行った。
【0103】
例9.粉末の特性評価
熱分析
純材料及び各種ブレンドの溶融温度、並びにPHA及びPLA/PHAブレンドの分解温度及び質量変化に対するケラチン導入の影響を特定するために、様々な配合物のDSC及びTGA試験を行った(表5及び
図6)。
【0104】
【0105】
PLAの溶融温度が最も低く、次いでPHA及びケラチンの順である。分解温度が最も高いのはPLAである。試験片の作製に選択した温度は、PHAの溶融温度よりも低くPLAの溶融温度より高い175℃であったが、これは、これらの材料の分解を避けるためであった。本発明者らの試験片では、比較的低い温度でより長い時間加熱して、PLAを溶融させる方が好ましかった。実験の最初に、PLAを含まないブレンドを調製する可能性について調べた。したがって、DSC及びTGA試験を、PHA/ケラチンブレンドに対して行った。試験した試料には、純PHA、10重量%のケラチン、及び25、50、
75、90、100重量%(純ケラチン)と増加する含有量のケラチンを含めた(表6及び
図7)。
【0106】
ブレンド中のケラチンの重量分率が増加するに従って、分解温度が上昇し、及び重量損失が減少した(
図8)。見出されたように、ブレンドは、PHAとケラチンとだけに基づくものにすることはできなかった。発見されたように、PLAとPHAとのブレンドは、70:30の比率とするべきであり、ケラチンの導入は、10~50重量%とするべきである(表7及び
図9)。
【0107】
【0108】
【0109】
ケラチンの重量分率が増加すると、PHAの分解温度は著しく上昇したが、PLAの分解温度は大きく変化しなかった。加えて、ケラチンの重量分率を増加させると、重量損失の割合が減少した(
図10)。
【0110】
ケラチンを添加すると、分解温度が著しく上昇し、重量損失が減少したが、これは、ケラチンの添加が、ブレンドの熱安定性を向上させることを示している。
【0111】
PLA単独では、1段階のプロセスで分解し、最大分解ピークは365℃であった。PLAにPHA及びケラチンを添加すると、2段階の分解挙動が観察された。第1のピーク(約280℃)は、PHAの熱分解によるものであり、一方第2のピーク(約320℃)は、PLAの熱分解によるものであった。さらに、PLAにPHAを添加すると、PLAのみ(365℃)と比較して、主要分解ピークが低下した(344℃)。ブレンドにケラ
チンを添加すると、第1の分解ピークの温度が上昇した。これは、ケラチンが系の熱安定性を変化させることを証明している。
【0112】
ケラチンを20重量%及び30重量%添加しても、PLA/PHAの熱安定性に大きな変化が得られなかったことには留意されたい。PLAの分解温度は、いずれの場合も323℃であり、PHAの分解温度は、283℃(ケラチン20重量%)及び282℃(ケラチン30重量%)であった。これらの結果に基づき、試験のために選択したブレンドは、30重量%のケラチンを含むブレンドとした。
【0113】
FTIR
FTIRを用いて試験した粉末は、PLA、PHA、及びケラチンの純粉末、さらにはPLA/PHA(70:30)、及びPLA/PHA(70:30)70重量%とケラチン30重量%、の2種類のブレンド粉末であった。
【0114】
FTIRスペクトルは、PLAの典型的な吸収バンド、並びにPHA及びケラチンに特異的な複数の吸収バンドを示した。PLAは主として非晶質であるのに対し、PHAは結晶性がより高い。ポリマーの初期結晶化度の違いは、(C=O)のバンド幅及び透過率の違いを引き起こす。(C=O)のFTIRバンド特性は、PLAとPHAとの間で大きく異なっていた。FTIRスペクトルは、1750cm-1に強いピークを示したが、これは、PLAの非晶質カルボニル伸縮振動によるものである。このピークは、すべてのPLA/PHAブレンドで一定に維持されている。加えて、PHAブレンドのスペクトルにおいて、1720cm-1にシャープなピークが観察された。このピークは、結晶性カルボニル基の伸縮振動によるものである。PLA/PHAブレンドのFTIRスペクトルは、PLA及びPHAの存在に起因する2つの主要なカルボニル伸縮バンドを示した。これら2つのバンドの強度比が組成比によって変化したことには注目すべきである。ケラチン含有ブレンドのFTIRスペクトルでは、主要なカルボニルピークに変化は見られなかった。FTIRスペクトルを分析すると、他の官能基のピークがさらに見られる。すべてのスペクトルにおいて、2933~2996cm-1の範囲に(C-H)の低いピークが見られた。加えて、PLA及びPHAでは、1379cm-1にメチル基のピークが観察された。ケラチンのペプチド結合に由来するアミドI、II、及びIIIの振動が、それぞれ1633、1538、及び1233cm-1にピークをもたらした。これらのピークは、抽出されたケラチンが羽毛と同様のβシート二次構造を有することを示している。3272cm-1のピークは、ペプチド結合(-CO-NH-)のN-H伸縮振動によるものである。
【0115】
例10.試験片の特性評価
機械的特性試験-引張試験
引張試験から特定することができる機械的特性は、弾性率、応力、降伏ひずみ、及び破断ひずみである。各試験片組成物の分析は、少なくとも2回繰り返して行った。実験の過程で試験片のひずみを測定するために、試験片のゲージ長セグメントを、黒及び白のスプレー塗料で50:50の割合で塗装した。これは、ピクセル画像処理の精度を向上させるために行った。
【0116】
実験中の試験片を撮影した。その後、画像処理を行って、試験片のひずみを計算した。
【0117】
【0118】
PLA:003-1及び003-2の2つの試験片を試験した。
図11に示すように、どちらも同様の結果を示した。
【0119】
PLA/PHA:102-1と102-2の2つの試験片を試験した。ポアソン比を除いて、どちらも同様の結果を示した。加えて、どちらの試験片も、塑性領域に達する前に破断した。これらの試験片は、塑性変形を伴わない弾性変形を呈するモノと思われる。これらの結果を
図12に示す。
【0120】
【0121】
PLA/PHA/ケラチン:まず、402-1及び402-2の2つの試験片のみを試験した。結果が非常に異なっていたことから、追加の試験片403-1も試験した。各試験片は、異なる挙動を示した。例えば、塑性領域への進入を示す曲線がグラフ中に示される402-2及び403-1の試験片とは異なり、試験片402-1は、それが弾性領域のままであることを示すかなり直線的なグラフを示している。これは
図13に見ることができる。
【0122】
PLA、PLA/PHA、及びPLA/PHA/ケラチンの試験片に対する機械分析の
結果を、表9及び
図14にまとめて示す。
【0123】
各種ブレンド(PLA、PLA/PHA、PLA/PHA/ケラチン)について、異なる試験片の結果を平均した。3つの試験片が非常にばらつきのある結果を呈したことから、平均の結果は算出しなかった。試験片402-2の結果が最良の結果を示したことから、これをPLA/PHA/ケラチンブレンドを代表する結果として選択した(表10)。
【0124】
【0125】
まとめると、PHAの添加は、破断応力の低下から明らかなように、PLAの強度を大幅に低下させた。最大の弾性率は、PLA/PHAブレンドで得られた。ケラチンを添加すると、弾性率の低下が観察され、ケラチンの添加が弾性変形に対する抵抗力の低下を引き起こすことが確認された。PHA及びケラチンをPLAに添加すると、試験片の破断時伸びが大きく低下し、ブレンドの延性の低下を呈した。PLAにPHAを添加すると試験片がより延性になるという予想とは対照的に、試験片はより剛性となった。試験片は、全く変形することなく弾性領域で破断した。これは、用いたPHAの種類、PHB ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、に起因して発生した可能性が考えられる。純PHBは、そのかなり結晶性の構造に起因して剛性であるが、P3HB-co-P4HBなどの他のPHA組成物は、よりゴム状で可撓性である。PHAにP4HB(ポリ(4-ヒドロキシブチレート))を添加すると、結晶化度の割合が減少し、一方伸び及び破断のパーセントが増加する。本発明者らの実験に用いたPHAの溶融温度(DSC)は176℃であり、このことは、それが典型的な溶融温度178℃を有するPHBであったことを示している(表11)。
【0126】
機械的特性が低下するもうひとつの理由は、製造プロセスの過程で試験片に生じる細孔であり得る。そのような空隙は、材料間の接着力低下を引き起こし得る。
【0127】
ポアソン比の結果については、各種ブレンド間で大きな差はない。PLAが最も高いポアソン比を有し、続いてそれぞれPLA/PHA/ケラチン、及びPLA/PHAであると思われる。高いポアソン比は、変形に対する強い抵抗性を示す。
【0128】
【0129】
例11.破断面の形態、微細構造、及び透明性
引張試験の実験後、各種ブレンド(PLA、PLA/PHA、PLA/PHA/ケラチン)から1つずつの3つの試験片を、SEM及びデジタル顕微鏡を用いて、破断面の形態、微細構造、及び透明性について試験した(データは示さず)。これらの試験から得られた画像は、ブレンドの機械的特性の変化の原因を示す証拠を提供する。これらの画像に見出されるように、すべての試験片において可塑性の証拠はなかった。これは純PLAでは非常に典型的であるが、PLA/PHAではそうではなく、その場合、試験片は、破断する前に、実質的な延性的塑性変形及び伸びを起こすと予想された。異なるブレンドの試験片の200ミクロン解像度のSEM画像を見ると、多くの細孔に容易に気づくことができるが、これらは、用いたPLA、PHA、及びケラチンの原料粉末中の水分に由来する試験片内に閉じ込められた空気によって、製造プロセス中に形成された可能性が最も高い。PLAの試験片は半透明であったが、PHA及びケラチンを含む試験片は非常により不透明であった。この不透明性は、半結晶性ポリマーに特徴的である。半透明のPLAは、結晶性のPHAがそのマトリックスに挿入されると、不透明になる。組み合わされたPLA/PHAのブレンドが不透明である理由は、ポリマーの境界での光の散乱である。PLAなどの非晶質材料は境界をほとんど含まないが、結晶性材料ではこのような境界の密度が高くなり、透明性の低下を引き起こす。したがって、試験片の透明性、又は透明性の欠如は、ポリマーの結晶化を示し得る。PLA試験片の破断面のSEM画像は、非晶質ポリマーに典型的である滑らかで均一な面を示した。PLA/PHA試験片のSEM像は、PLAポリマーマトリックス中に直径が比較的小さく、典型的な海島状の形態を有するPHA粒子を示した。ケラチンの添加によって、ブレンドは細孔の量の減少を呈した。すべてのSEM画像は、PLAマトリックス中にPHA及びケラチンが均質に分布していることを示している。
【0130】
例12.生分解試験
図15は、異なるサンプリング間隔で回収したドッグボーンの目視外観を示す。図から、PLAの分解が、PHA/ケラチンとだけでなく、PHAとブレンドした場合にも促進されることが示される。最も早く分解したのはPLA/PHA/ケラチン複合材で、42日で崩壊した。次いでPLA/PHA複合体(49日)、最後がPLA(56日)であった。
【0131】
目視上の崩壊は、
図16に示すように、コンポスト化条件下での重量損失を計算することでも裏付けられた。試料崩壊性の目標は、生分解性材料に対する現行の法令に示される通り(Iso, 2015)、90%と見なした(Arrieta et al., 2014)。PLA複合材の分解
は、コンポスト化実験の第14日に開始したが、PLAの目立った崩壊は、第21日まで見られなかった。PLA/PHBブレンドに関するこれまでの研究も、同様の分解傾向を示した。Arrieta, Lopez, Rayon and Jimenez (2014) は、可塑剤あり及びなしでのPL
A/PHBブレンドの分解について研究した。そこでは、PLAと可塑剤とのブレンドと共に、PLAの同様の分解プロファイルが示された(Arrieta et al., 2014)。PHBの分解、さらにはPLA/ケラチンの分解に関する研究においても、同様の観察結果が得られた(Poorna et al., 2019;Ahn et al., 2011)。
【0132】
例13.生分解試験
生分解試験を、好熱菌の媒介によるコンポスト化環境中の好気性条件下で実施した(Iso, 2015)。異なる複合材のドッグボーンを用い、それらを、コンポスト化試験後に容易
に取り出すことができように、しかし水分及び微生物のアクセスも可能となるように、テキスタイルメッシュ中に入れた。これらを、コンポスト10%、生野菜30%、デンプン10%、砂糖5%、トウモロコシ油4%、尿素1%、おがくず40%、及び水含有量約50%(重量/重量)の固形合成湿潤廃棄物を入れた500mLの密閉ガラスビーカー中、4~6cmの深さに埋め、分解のために58℃の好気性条件でインキュベートした。好気性条件は、固形合成湿潤廃棄物を定期的に混合することで確保した。完全な分解に到達するまで、7日間の間隔で複合材の試料を採取した。各サンプリング時点で、ドッグボーンを蒸留水で洗浄し、オーブンで24時間乾燥させた後、再度秤量した。すべての試料について、コンポスト化培地から取り出すごとに、写真を撮影した。
【0133】
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【国際調査報告】