IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラング セラピューティクス,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-539242慢性腎疾患の治療のための改変カベオリン-1ペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】慢性腎疾患の治療のための改変カベオリン-1ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20241018BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 14/46 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K38/10
A61K38/08
A61P13/12
A61P11/00
C07K14/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524006
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022078482
(87)【国際公開番号】W WO2023070069
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,852
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521097699
【氏名又は名称】ラング セラピューティクス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー,ブリアン
(72)【発明者】
【氏名】ホガボーム,コリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィンザー,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084DC50
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB111
4C084ZB112
4H045AA10
4H045AA30
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、対象における腎臓の疾患または障害を治療または予防するために、改変カベオリン-1(Cav-1)ペプチドを使用する方法である。特に、提供されるのは、例えば、アルポート症候群などの線維症を特徴とする慢性腎疾患の治療のために、改変Cav-1ペプチドを使用する方法である。
【選択図】図11B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法であって、
(d)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、
(e)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または
(f)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を有する配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記改変Cav-1ペプチドが、L-アミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改変Cav-1ペプチドが、D-アミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改変Cav-1ペプチドが、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記改変Cav-1ペプチドが重水素化残基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記改変Cav-1ペプチドが、少なくとも一つの非標準アミノ酸を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非標準アミノ酸がオルニチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記改変Cav-1ペプチドが、N末端修飾を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記改変Cav-1ペプチドが、C末端修飾を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記改変Cav-1ペプチドが、N末端修飾およびC末端修飾を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記N末端修飾がアシル化である、請求項8または10に記載の方法。
【請求項12】
前記C末端修飾がアミド化である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記改変Cav-1ペプチドが、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記改変Cav-1ペプチドが、KASFTTFTVTKGS(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記改変Cav-1ペプチドが、KASFTTFTVTKGS-NH2(配列番号5)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記改変Cav-1ペプチドが、aaEGKASFTTFTVTKGSaa(配列番号6)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記改変Cav-1ペプチドが、aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記改変Cav-1ペプチドが、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記改変Cav-1ペプチドが、OASFTTFTVTOS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記改変Cav-1ペプチドが、OASFTTFTVTOS-NH2のアミノ酸配列(配列番号10)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記改変Cav-1ペプチドが、内部移行配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記内部移行配列が、前記ペプチドのC末端に位置する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記内部移行配列が、前記ペプチドのN末端に位置する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記改変Cav-1ペプチドが、前記N末端および/またはC末端にキャップをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記改変Cav-1ペプチドが、前記N末端およびC末端に前記キャップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記改変Cav-1ペプチドが環化される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記改変Cav-1ペプチドが、天然Cav-1(配列番号1)の生物学的活性を維持する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記改変Cav-1ペプチドが、請求項1~25のいずれか一項に記載の少なくとも二つのペプチドを含む多量体である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドが、前記少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと本質的に同一である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドが、前記少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと同一ではない、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記改変Cav-1ペプチドが、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口で投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記改変Cav-1ペプチドが皮下投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記改変Cav-1ペプチドが静脈内投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記腎臓の疾患または障害が、慢性腎疾患、末期腎疾患、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、腎線維症、多嚢胞性腎疾患、IgA腎症、ループス腎炎、ネフローゼ症候群、アルポート症候群、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、または急性腎損傷からなる群から選択される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記腎臓の疾患または障害が、アルポート症候群である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記腎臓の疾患または障害が、線維症を特徴とする、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも一つの追加の治療剤が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤および/またはアンジオテンシンII受容体(ARB)阻害剤である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が、透析を用いて前記対象を治療することをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記改変Cav-1ペプチドが、前記改変Cav-1ペプチドと、少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含む組成物として投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
高齢の対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法であって、
(d)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、
(e)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または
(f)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を有する配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記改変Cav-1ペプチドが、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記改変Cav-1ペプチドが、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記線維性の疾患または障害が、間質性肺疾患である、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記間質性肺疾患が、特発性肺線維症である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記改変Cav-1ペプチドが肺に投与される、請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記改変Cav-1ペプチドが、吸入を介して肺に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記改変Cav-1ペプチドが、吸入用に製剤化される、請求項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記改変Cav-1ペプチドが、加圧式定量吸入用に製剤化される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記改変Cav-1ペプチドが、乾燥粉末として製剤化される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記改変Cav-1ペプチドを含む前記乾燥粉末が、本質的に賦形剤を含まない、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記乾燥粉末が、噴霧乾燥プロセス、空気ジェット粉砕、ボール粉砕、または湿式粉砕によって生産される、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記改変Cav-1ペプチドが、噴霧用に製剤化される、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記改変Cav-1ペプチドが、ネブライザーを使用して前記対象に投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記改変Cav-1ペプチドが、吸入器を使用して前記対象に投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、治療有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、請求項41~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも一つの追加の治療剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、ファビピラビル、ロピナビル、またはリトナビルである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記対象が、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳、または少なくとも90歳である、請求項41~57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、分子生物学および医学の分野に関する。特に、本開示は、慢性腎疾患の治療のための改変カベオリン-1ペプチドを含む組成物を提供する。本開示はまた、高齢対象における線維性疾患の治療のための改変カベオリン-1ペプチドを含む組成物を提供する。
【0002】
関連出願との相互参照
本願は、2021年10月22日に出願された米国仮特許出願第63/270,852号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
電子配列表への参照
電子配列表(LUTX_024_01WO_SeqList_ST26.xml、サイズ:162,055バイト、および作成日:2022年10月11日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
慢性腎疾患は、2,000万人を超えるアメリカ人および世界人口の約10%に影響を及ぼす世界的な健康問題を代表する。慢性腎疾患では、進行性の腎機能喪失は、腎臓またはネフロンの機能ユニット間への線維組織の沈着、ならびに濾過表面での継続的な線維組織への置き換えの結果として発生する。腎線維症は、慢性腎疾患の病理学的特徴であり、個人が生存のために日常的な透析または腎臓移植を要する末期腎疾患への進行の主要な寄与因子である。
【0005】
慢性腎疾患の臨床管理は、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害剤を使用して血圧を制御することに主に焦点を当て、疾患進行を遅らせるが、この治療は治癒的ではない。したがって、当技術分野では、慢性腎疾患の進行を遅延または停止させ得る、腎臓の線維性プロセスを標的とする代替療法に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、対象における腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、本方法は、(a)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、(b)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または(c)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、化学修飾を含む配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む。
【0007】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、L-アミノ酸を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、D-アミノ酸を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、重水素化残基を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、少なくとも一つの非標準アミノ酸を含む。一部の実施形態では、非標準アミノ酸は、オルニチンである。
【0008】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、C末端修飾を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾およびC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。
【0009】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、KASFTTFTVTKGS(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、KKASFTTFTVTKGS-NH2(配列番号5)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、aaEGKASFTTFTVTKGSaa(配列番号6)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号7)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、OASFTTFTVTOS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、OASFTTFTVTOS-NH2のアミノ酸配列(配列番号10)を含む。
【0010】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、内部移行配列を含む。一部の実施形態では、内部移行配列は、ペプチドのC末端に位置する。一部の実施形態では、内部移行配列は、ペプチドのN末端に位置する。
【0011】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端および/またはC末端にキャップをさらに含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端およびC末端にキャップを含む。
【0012】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは環化される。
【0013】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、天然Cav-1(配列番号1)の生物学的活性を維持する。
【0014】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、本明細書に記載の少なくとも二つのペプチドを含む多量体である。一部の実施形態では、少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドは、少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと本質的に同一である。一部の実施形態では、少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドは、少なくとも二つのうちのペプチドの第二のペプチドと同一ではない。
【0015】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口で投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、皮下投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、静脈内投与される。
【0016】
一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、慢性腎疾患、末期腎疾患、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、腎線維症、多嚢胞性腎疾患、IgA腎症、ループス腎炎、ネフローゼ症候群、アルポート症候群、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、または急性腎損傷からなる群から選択される。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、アルポート症候群である。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、線維症を特徴とする。
【0017】
一部の実施形態では、本方法は、有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの追加の治療剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤および/またはアンジオテンシンII受容体(ARB)阻害剤である。一部の実施形態では、本方法は、透析を用いて対象を治療することをさらに含む。
【0018】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、改変Cav-1ペプチドと、少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含む組成物として投与される。
【0019】
高齢の対象における線維性の疾患または障害を治療または予防する方法であって、(a)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、(b)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または(c)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、化学修飾を含む配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む方法。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、線維性の疾患または障害は、間質性肺疾患である。一部の実施形態では、間質性肺疾患は、特発性肺線維症である。
【0020】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、肺に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、吸入を介して肺に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、ネブライザーを使用して対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、吸入器を使用して対象に投与される。
【0021】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、吸入のために製剤化される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、加圧式定量吸入用に製剤化される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末は、本質的に賦形剤を含まない。一部の実施形態では、乾燥粉末は、噴霧乾燥プロセス、空気ジェット粉砕、ボール粉砕、または湿式粉砕によって生産される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、噴霧用に製剤化される。
【0022】
一部の実施形態では、本方法は、治療有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの追加の治療剤は、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、ファビピラビル、ロピナビル、またはリトナビルである。
【0023】
一部の実施形態では、対象は、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳、または少なくとも90歳である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1Aは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドで処置する前の、コホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。較正基準としてクレアチニンレベルを用いて、尿をゲル上に装填した。コホート1は、6週齢で処置を開始し、コホート2は、5週齢で処置を開始した。マウスID番号1046および1117は、処置中に理由不明で死亡した。星印はマウスアルブミンを標示する。
【0025】
図1B図1Bは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を2週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、コホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。コホート1は、6週齢で処置を開始し、コホート2は、5週齢で処置を開始した。星印はマウスアルブミンを標示する。
【0026】
図1C図1Cは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる2週間の処置の前後のコホート1(左パネル)およびコホート2(右パネル)のCol4a3-/-マウスの尿中のアルブミン対クレアチニン比(g/mg)を示す。コホート1は、6週齢で処置を開始し、コホート2は、5週齢で処置を開始した。
【0027】
図2図2は、生理食塩水またはAPi2355ペプチドにより処置した後のコホート1(左パネル)およびコホート2(右パネル)のCol4a3-/-マウスの血中尿素窒素(BUN)レベルを示す。コホート1は、6週齢で処置を開始し、コホート2は、5週齢で処置を開始した。
【0028】
図3A図3Aは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。マウスは6週齢で処置を開始した。
【0029】
図3B図3Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。マウスは6週齢で処置を開始した。
【0030】
図4A図4Aは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびα平滑筋アクチン(αSMA)の免疫蛍光染色を示す。マウスは6週齢で処置を開始した。
【0031】
図4B図4Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびα平滑筋アクチン(αSMA)の免疫蛍光染色を示す。マウスは6週齢で処置を開始した。
【0032】
図5A図5Aは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。マウスは5週齢で処置を開始した。
【0033】
図5B図5Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。マウスは5週齢で処置を開始した。
【0034】
図6A図6Aは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびα平滑筋アクチン(αSMA)の免疫蛍光染色を示す。マウスは5週齢で処置を開始した。
【0035】
図6B図6Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による2週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびα平滑筋アクチン(αSMA)の免疫蛍光染色を示す。マウスは5週齢で処置を開始した。
【0036】
図7A図7Aは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドで処置する前の、4週齢のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。較正基準としてクレアチニンレベルを用いて、尿をゲル上に装填した。星印はマウスアルブミンを標示する。
【0037】
図7B図7Bは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を2週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、6週齢のメス(F)およびオス(M)のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。星印はマウスアルブミンを標示する。
【0038】
図7C図7Cは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を3週間または4週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、7週齢および8週齢のメス(F)およびオス(M)のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。星印はマウスアルブミンを標示する。
【0039】
図7D図7Dは、4週齢での処置前、ならびに6週齢、7週齢、および8週齢での生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる処置中のCol4a3-/-マウスの尿中のアルブミン対クレアチニン比(g/mg)を示す。
【0040】
図8図8は、4週齢での処置前、ならびに6週齢および8週齢での生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる処置中のCol4a3-/-マウスの血中尿素窒素(BUN)レベルを示す。
【0041】
図9A図9Aは、未処置のオスのCol4a3+/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0042】
図9B図9Bは、APi2355ペプチドにより4週間にわたって毎日処置されたメスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0043】
図9C図9Cは、生理食塩水により4週間にわたって毎日処置されたメスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0044】
図9D図9Dは、APi2355ペプチドにより4週間にわたって毎日処置されたメスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0045】
図9E図9Eは、APi2355ペプチドにより4週間にわたって毎日処置されたメスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0046】
図9F図9Fは、生理食塩水により4週間にわたって毎日処置されたメスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0047】
図9G図9Gは、APi2355ペプチドにより4週間にわたって毎日処置されたオスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0048】
図9H図9Hは、APi2355ペプチドにより4週間にわたって毎日処置されたオスのCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0049】
図10A図10Aは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腸組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の免疫蛍光染色を示す。
【0050】
図10B図10Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腸組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の免疫蛍光染色を示す。
【0051】
図10C図10Cは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の免疫蛍光染色を示す。
【0052】
図10D図10Dは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の免疫蛍光染色を示す。
【0053】
図10E図10Eは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の免疫蛍光染色を示す。
【0054】
図10F図10Fは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1およびラミニン-111(LM111)の 免疫蛍光染色を示す。
【0055】
図11A図11Aは、未処置のCol4a3+/-マウスおよびCol4a3-/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1、コラーゲンI、ラミニン-111、およびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0056】
図11B図11Bは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後の、8週齢のメスのCol4a3-/-マウスにおける糸球体線維症の定量を示す。
【0057】
図12図12は、乾燥粉末吸入(DPI)を介して対照ペプチド(CP)またはCSP-7を投与した、生理食塩水(SAL)処置またはブレオマイシン(BLM)処置した高齢マウスの総肺ホモジネート中のコラーゲンを示す。
【0058】
図13図13は、乾燥粉末吸入(DPI)を介して対照ペプチド(CP)またはCSP-7を投与した、生理食塩水(SAL)処置またはブレオマイシン(BLM)処置した高齢マウスの総肺ホモジネート中のコラーゲンを示す。****P<0.0001。
【0059】
図14A図14Aは、未処置であるか、または乾燥粉末吸入により対照ペプチド(CP)もしくはCSP-7を投与したか、または腹腔内注射(IP)によりCSP-7を投与した、ブレオマイシン(BLM)処置済み高齢マウスの総肺ホモジネートにおける、総SMAD(tSMAD、上部パネル)およびリン酸化SMAD(pSMAD、下部パネル)を示す。
【0060】
図14B図14Bは、未処置であるか、または乾燥粉末吸入により対照ペプチド(CP)もしくはCSP-7を投与したか、または腹腔内注射(IP)によりCSP-7を投与した、ブレオマイシン(BLM)処置済み高齢マウスの総肺ホモジネートにおける、ガレクチン7を示す。
【0061】
図15A図15Aは、5×および63×の拡大での、正常ドナーAおよび正常ドナーBから得た腎組織におけるカベオリン-1(Cav-1)の免疫組織化学染色を示す。矢印は、正常な腎組織の糸球体における陽性Cav-1染色を示す。
【0062】
図15B図15Bは、5×および63×の拡大での、患者C、患者D、および患者Eから得た線維性腎組織におけるカベオリン-1(Cav-1)の免疫組織化学染色を示す。矢印は線維性腎組織内の糸球体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本開示は、対象における慢性腎疾患の治療または予防のための改変カベオリン-1(Cav-1)ペプチドおよびその使用を提供する。また、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を投与することによって、高齢の対象における線維性の疾患または障害を治療する方法も本明細書に提供される。
【0064】
I.定義
本明細書で使用される際に、冠詞「a」または「an」とは、冠詞の文法的な対象のうちの一つまたは複数を指す。本明細書において特許請求の範囲で使用される際に、「含む」という用語と共に使用される場合、冠詞「a」または「an」とは、冠詞の文法的な対象のうちの一つまたは複数を指す。
【0065】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替のみを指すことが明示的に示されない限り、または代替が相互に排他的ではない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、尤も、本開示は、代替および「および/または」のみを指すという定義を支持する。本明細書で使用される際に、「別の」は、少なくとも第二の、またはそれ以上を意味し得る。
【0066】
本願全体を通して、「約」という用語は、ある値が、その値、または測定されている試料間に存在する変動を決定するために使用される装置または方法について、固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。文脈から別段の記載がないかまたは明らかでない限り、「約」という用語は、報告された数値を10%上回る、または下回る範囲内を意味する(そのような数値が、可能な値の100%を超えるかまたは0%未満になる場合を除く)。範囲または一連の値と併せて使用される際に、「約」という用語は、別段の示唆がない限り、その範囲の終点、または一連の列挙された各数値に適用される。本出願で使用される際に、「約」および「およそ」という用語は、等価物として使用される。
【0067】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語は、その最も広い意味で使用されて、二つ以上のアミノ酸、アミノ酸類似体、またはペプチド模倣体の分子を指す。一部の実施形態では、アミノ酸は、ペプチド結合によって連結される。一部の実施形態では、アミノ酸は、他のタイプの結合、例えば、エステル、エーテルなどによって連結される。本明細書で使用される際に、「アミノ酸」という用語は、天然および/または非天然または合成いずれかのアミノ酸を指し、それらには、グリシンおよびDまたはL両方の光学異性体と、アミノ酸類似体およびペプチド模倣体とが含まれる。
【0068】
「ペプチド模倣体」または「ペプチドの模倣体」という用語は、例えば尿素結合、カルバメート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または任意の他の共有結合などの少なくとも一つの非ペプチド結合を含むように修飾されたペプチドを指す。
【0069】
一部の実施形態では、ポリペプチドまたはポリペプチドは、別の配列に対し、ある特定のパーセント(例えば、80%、85%、90%、または95%)の「配列同一性」または「相同性」を有し、このことは、整列されたときに、そのアミノ酸のパーセントが、二つの配列の比較において同じであることを意味する。一部の実施形態では、「同一性」または「相同性」という用語は、対応する配列の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントを指し、候補配列は、対応する配列に対し、配列全体で最大のパーセントの同一性を達成するように、配列を整列され、必要に応じてギャップを導入された後に比較される。アラインメントおよび相同性または配列同一性のパーセントは、当技術分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols In Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.7.18,Table 7.7.1に記載されるものを使用して決定することができる。
【0070】
「実質的に純粋な」という用語は、天然でそれに伴う構成成分から少なくともある程度単離および精製されているペプチドまたはポリペプチドを指す。典型的には、ペプチドまたはポリペプチドは、その自然に付随するタンパク質および天然の有機分子を少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約99重量%含まないときに、実質的に純粋である。例えば、実質的に純粋なペプチドまたはポリペプチドは、天然の供給源から抽出することによって、通常はそのタンパク質を発現しない細胞で組換え核酸を発現させることによって、または化学合成によって取得され得る。
【0071】
本明細書で使用される際に、「単離された」という用語は、体液、例えば血液などの任意の自然環境から分離されており、ペプチドに天然に付随する成分から分離されている、ペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0072】
本明細書で使用される際に、指定の構成要素に関して「本質的に含まない」とは、指定の構成要素のいずれも意図的に組成物に製剤化されていない、および/または混入物質もしくは痕跡量としてのみ存在することを意味する。したがって、組成物の任意の意図しない汚染から結果として生じる指定された成分の総量は、0.01%をはるかに下回る。標準的な分析方法を使用して検出可能な、指定された構成成分の量のない組成物が最も好ましい。
【0073】
本明細書で使用される際の「バリアント」という用語は、一つまたは複数のアミノ酸または核酸の欠失、付加、置換、または側鎖修飾によって参照ポリペプチドまたは核酸とは異なるが、天然分子の一つまたは複数の特定の機能または生物学的活性を保持する、ポリペプチドまたは核酸を指す。また、バリアントという用語内に包含されているのは、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとそれぞれ比較して(例えば、野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと比較して)、一次構造、二次構造、または三次構造において変化し得るポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。
【0074】
用語「挿入」とは、ペプチドまたはポリペプチド配列内の一つまたは複数のアミノ酸の付加を指し、「欠失」という用語は、ペプチドまたはポリペプチド配列内の一つまたは複数のアミノ酸の除去を指す。「挿入」および「欠失」は、典型的には約1~5アミノ酸の範囲にある。変異は、組換えDNA技術を使用して配列中のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を系統的に作り出しながらペプチドを合成により生産することによって、実験的に決定することができる。
【0075】
ペプチドまたはポリペプチドを指す際の「置換」という用語は、異なる実体、例えば、別のアミノ酸またはアミノ酸部分に対するアミノ酸の変化を指す。アミノ酸置換は、あるアミノ酸が異なる天然のアミノ酸残基または非従来型のアミノ酸残基で置換される、変更を含む。そのような置換は、「保存的」として分類されてもよく、その場合に、ポリペプチド中に含有されるアミノ酸残基は、極性、側鎖の機能性、またはサイズのいずれかに関して、類似の特徴を持つ別の天然アミノ酸により置換される。このような保存的置換は、当技術分野で周知である。本発明に包含される置換はまた、「非保存的」であってもよく、その場合に、ペプチド中に存在するアミノ酸残基は、異なる群由来の天然アミノ酸(例えば、荷電アミノ酸または疎水性アミノ酸をアラニンで置換する)などの異なる特性を有するアミノ酸により置換されるか、あるいは、天然アミノ酸が非従来型アミノ酸により置換される。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。一部の実施形態では、アミノ酸置換は非保存的である。
【0076】
「類似体」とは、分子全体またはその断片のいずれかと機能において類似している、ペプチドなどの分子を指す。用語「類似体」はまた、対立遺伝子種および誘導バリアントを含むことも意図されている。類似体は、典型的には、多くの場合に保存的アミノ酸置換によって、一つまたは複数のアミノ酸残基において天然ペプチドとは異なる。類似体は、典型的には、天然ペプチドと少なくとも約80%または少なくとも約90%の配列同一性を示す。一部の類似体はまた、非天然アミノ酸またはN末端もしくはC末端アミノ酸の修飾を含む。非天然アミノ酸の例としては、二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸塩、ε-Ν,Ν,Ν-トリメチルリジン、ε-Ν-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、およびσ-Ν-メチルアルギニンが挙げられるが、これらに限定されない。断片および類似体は、当業者に周知のインビトロおよびインビボの方法を使用して、予防的または治療的な有効性についてスクリーニングすることができる。
【0077】
「共有結合」という用語は、共有結合による化学結合によって直接的または間接的に(例えば、リンカーを介して)結合されるペプチドまたはポリペプチドを指す。一部の実施形態では、本開示の融合ペプチドは、共有結合している。
【0078】
本明細書で使用される際に、用語「融合タンパク質」とは、二つ以上のタンパク質の組換えタンパク質を指す。融合タンパク質は、例えば、宿主細胞においてすべての意図されたタンパク質を保有する単一のポリペプチドに翻訳され得る単一のオープンリーディングフレームを構成するように、あるタンパク質をコードする核酸配列を別のタンパク質をコードする核酸に結合することによって、産生することができる。タンパク質の配置の順序は変化し得る。融合タンパク質は、エピトープタグまたは半減期延長剤を含み得る。エピトープタグとしては、ビオチン、FLAGタグ、c-myc、ヘマグルチニン、His6、ジゴキシゲニン、FITC、Cy3、Cy5、緑色蛍光タンパク質、V5エピトープタグ、GST、β-ガラクトシダーゼ、AU1、AU5、およびアビジンが挙げられる。半減期延長剤としては、Fcドメインおよび血清アルブミンが挙げられる。
【0079】
用語「気道」とは、本明細書で使用される際に、上気道、気道、および肺を含む呼吸器管の任意の部分を指す。上呼吸気道は、鼻および鼻腔、口、ならびに喉を含む。呼吸気道は、喉頭、気管、気管支、および細気管支を含む。肺には、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、および肺胞が含まれる。
【0080】
本明細書で使用される用語「霧化」、「霧化される」、およびその他の文法的な変形は、ネブライザーを使用して液体を小さなエアロゾル液滴に変換するプロセスを指す。
【0081】
用語「エアジェットミル」とは、圧縮ガスの噴射を使用して粒子を互いに衝突させ、それによって粒子を砕くことによって、粒子サイズを低減するためのデバイスまたは方法を指す。一部の実施形態では、エアジェットミルを使用して、ペプチド粒子のサイズを低減する。同じ機能を行う他の機械粉砕装置も、エアジェットミルと互換的に使用することができる。空気ジェット粉砕は、温度、圧力、相対/絶対湿度、酸素含有量などの様々な環境パラメータ下で発生し得る。
【0082】
用語「ボールミル」とは、対象の粒子と磨砕媒体とをシリンダーの内部に加えてシリンダーを回転させることによって粒子サイズを低減するためのデバイスまたは方法を指す。磨砕媒体が回転しながらシリンダーの外部に沿って上昇および下降するにつれて、対象粒子は破壊される。一部の実施形態では、ボールミルを使用して、ペプチド粒子のサイズを低減させる。同じ機能を行う他の機械粉砕装置も、エアジェットミルと互換的に使用することができる。
【0083】
用語「湿潤ミル」または「媒体ミル」とは、液体および磨砕媒体を含む媒体を含有する撹拌器を用いた、対象粒子をデバイスに添加することによって粒子サイズを低減するためのデバイスまたは方法を指す。対象の粒子の添加により、撹拌器が回転するにつれて、撹拌器の分散するエネルギーにより、磨砕媒体と対象粒子とが接触し、対象粒子が破壊される。同じ機能を行う他の機械粉砕装置も、エアジェットミルと互換的に使用することができる。
【0084】
用語「高圧均質化」とは、圧力と機械力との両方を組み合わせて対象粒子を分解するデバイスに対象粒子を加えることによって、粒子サイズを低減する方法を指す。高圧均質化で使用される機械力は、特に衝撃、せん断、およびキャビテーションを含み得る。同じ機能を行う他の機械粉砕装置も、エアジェットミルと互換的に使用することができる。
【0085】
用語「発熱性粉砕機」とは、最初にドライアイス、液体窒素、または他の極低温液体で対象粒子を冷却した後、対象粒子を粉砕してサイズを減少させることによって、粒子サイズを低減するためのデバイスまたは方法を指す。同じ機能を行う他の機械粉砕装置も、エアジェットミルと互換的に使用することができる。
【0086】
用語「有効量」または「治療有効量」とは、本明細書に開示される疾患または障害を治療および/または予防するのに有効な量である。一部の実施形態では、有効量は、標的の状態を予防もしくは治療するか、またはその状態に関連する症状を有益に軽減するなど、対象において少なくとも一つの所望の治療効果をもたらす組成物(例えば、医薬組成物、化合物、または薬剤)の量または用量である。最も望ましい有効量は、それを必要とする所与の対象に対して当業者によって選択される特定の治療の望ましい有効性をもたらす量である。この量は、当業者によって理解される様々な要因に応じて変化するものとなり、そのような要因としては、以下に限定されないが、組成物の特徴(活性、薬物動態、薬力学および生物学的利用能を含む)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患タイプ、疾患ステージ、全身の健康状態、所与の用量に対する応答性、および医薬品の種類を含む)、製剤中の医薬的に許容可能な一つまたは複数の担体の性質、および投与経路が挙げられる。
【0087】
用語「医薬組成物」または「医薬的に許容可能な組成物」とは、対象に投与されたときに有害反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を生じない組成物を指す。CSP-7などの改変Cav-1ペプチド、または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、当業者に公知となろう。さらに、動物(例えば、ヒト)の投与については、調製物は、FDAまたは他の認識される規制当局によって要求されるバイオバーデン、無菌性、発熱性、一般的安全性、および/または純度の基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0088】
本明細書で使用される際に、用語「医薬的に許容可能な担体」には、当業者に公知となるように、賦形剤、加工助剤、水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、生理食塩水、非経口ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなど)、分散媒体、コーティング、界面活性剤、抗酸化物質、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化物質、キレート剤、および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬剤、薬物安定剤、ゲル、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、風味調整剤(例えば、甘味剤、着香剤)、同様の材料およびその組合せのいずれかおよび全てが含まれる。医薬組成物中の様々な成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。一部の実施形態では、担体は、治療剤を封入してもよいが、それ自体が対象に消費または投与されなくてもよい(例えば、乾燥粉末吸入器での使用のためなどの、乾燥粉末組成物を包むシェルカプセル)。例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990を参照されたい。
【0089】
本明細書で使用される際に、「賦形剤」とは、対象への活性医薬成分(API)(例えば、改変Cav-1ペプチド)の投与もしくは送達を容易にするために使用されるか、または対象における作用部位への送達のために医薬的に使用され得る薬物製剤へのAPIの処理を容易にするために使用される、比較的不活性な物質である医薬的に許容可能な担体を指す。賦形剤または医薬的に許容可能な担体には、活性成分を除いて、剤形の不活性成分のすべてが含まれる。賦形剤の非限定的な例としては、担体剤、増量剤、安定化剤、界面活性剤、表面改質剤、溶解性促進剤、緩衝剤、カプセル化剤、抗酸化剤、防腐剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、粘度増加剤、および吸収促進剤が挙げられる。「賦形剤を含まない」という用語は、いかなる賦形剤も含まない製剤中に改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物があることを指す。
【0090】
「生物学的に活性な」カベオリン-1(Cav-1)ペプチドとは、p53タンパク質レベルを増加させ、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)およびuPA受容体(uPAR)を低減し、ならびに/または線維性線維芽細胞などの細胞におけるプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)発現を増加させるペプチドを指す。一部の実施形態では、生物学的に活性なペプチドは、配列番号1の天然Cav-1ポリペプチドの生物学的活性または生化学的活性の少なくとも20%(例えば、インビトロアッセイまたはインビボアッセイによって測定される際の)を有する。一部の実施形態では、生物学的に活性なペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドと比較して増加した生物学的活性または生化学的活性を有する。
【0091】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、例えば、本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた予防的治療を含む治療が提供される、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)などの動物を指す。本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、ヒトおよび非ヒト動物を指す。用語「非ヒト動物」とは、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシなどの哺乳類、およびニワトリ、両生類、爬虫類などの非哺乳類を含む。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、実験動物、または疾患モデルとして代替された動物である。非ヒト哺乳動物としては、非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、およびウシなどの哺乳類が挙げられる。一部の実施形態では、非ヒト動物は、イヌまたはネコなどのコンパニオンアニマルである。
【0092】
本明細書で使用される際に、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語、およびその文法的な変形は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一部の実施形態では、これらの用語は、有益または所望の臨床結果を得るためのアプローチを指し得る。上記用語は、状態、障害、もしくは疾患の発症もしくは発症速度を遅らせること、それに関連する症状を低減または軽減すること、その状態の完全なもしくは部分的な退縮を生じること、または上記のいずれかの何らかの組合せを指し得る。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるかまたは検出不能であるかにかかわらず、症状の低減または軽減、疾患の程度の低減、疾患状態の安定化(例えば、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるかまたは全体的であるかを問わず)が含まれるが、これらに限定されない。「治療する」、「治療すること」、または「治療」はまた、治療を受けていない場合、予想生存期間と比較して生存を延長させることを意味し得る。したがって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題となっている疾患または障害に既に罹患している対象であり得る。「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、治療のない場合に対する病態または症状の重症度の増加の阻害または低減を含み、必ずしも関連する疾患または状態の完全な停止を含意することを意味するものではない。
【0093】
本明細書で使用される際に、「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語、およびそれらの文法的な変形は、状態または疾患の発症を予防するかまたは病態を変更するためのアプローチを指す。したがって、「防止」は、予防的な措置を指し得る。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるかまたは検出不能であるかにかかわらず、疾患の症状、進行、または発症の予防または減速が含まれるが、これらに限定されない。したがって、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題となっている疾患または障害にまだ罹患していない対象であり得る。用語「予防」は、治療のない場合と比較して疾患の発症を遅らせることを含み、必ずしも関連する疾患、障害、または状態の永久的な予防を含意することを意味するものではない。したがって、ある特定の状況では、状態の「予防すること」または「予防」とは、状態を発症するリスクを低減すること、または状態に関連する症状の発症を予防もしくは遅延させることを指し得る。
【0094】
II.カベオリン-1ペプチド
本開示の実施形態は、天然のカベオリン-1(Cav-1)タンパク質の改変型を提供し、そのようなものとしては、以下に限定されないが、天然Cav-1タンパク質の断片、誘導体、およびバリアントが挙げられる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、表2および/または表3に示される例示的なペプチドなど、天然Cav-1ポリペプチドの切断体である。
【0095】
天然のヒトCav-1は、178アミノ酸長であり(以下の表1の配列番号1を参照)、22kDaの分子量を有する。カベオリン-1は、エンドサイトーシス、細胞外マトリックス構成、コレステロール分布、細胞遊走、およびシグナル伝達に関連する内在性膜タンパク質である。Boscher and Nabi、Adv Exp Med Biol、2012;729-29-50を参照されたい。
【表1】
【0096】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、Cav-1足場ドメイン(CSD)である。CSDは、カベオリン-1のアミノ酸82~101から構成される(上記の表1の配列番号2を参照されたい)。カベオリン-1のCSDは、カベオリン-1二量体形成ならびに多様なシグナル伝達中間体の調節において重要な役割を果たしている(Shetty et al.,Am J Respir Cell Mol Biol 2012;47:474-83;Fridolfsson et al.,FASEB J 2014;28:3823-31;Degryse et al.,Am J Physiol Cell Mol Physiol 2010;299:L442-L452;and Egger et al.,PLos One,2013;8:e63432)。カベオリン-1のCSDドメインは、Wntシグナル伝達の阻害、β-カテニン媒介性の転写、SRC、EGFR、 MEK1、およびERK-2ならびに様々な他の因子の活性化を示している(Shetty et al.,Am J Respir Cell Mol Biol 2012;47:474-83;Bhandary et al.,Am J Physiol Cell Mol Physiol 2012;302:L463-L473;Bhandary et al.,Am J Pathol 2013;183:131-143;Fridolfsson et al.,FASEB J 2014;28:3823-31;Degryse et al.,Am J Physiol Cell Mol Physiol 2010;299:L442-L452;and Fiddler et al.,Ann Am Thorac Soc,2016;13:1430-2を参照)。例えば、Cav-1のCSDは、SRCキナーゼとのCav-1相互作用に干渉し、uPAおよび抗β1-インテグリン抗体の複合効果を模倣する。内因性CSDドメインは、他のCav-1タンパク質とホモ二量体を形成し、カベオリン結合ドメイン配列(CBD)モチーフを有するタンパク質と相互作用することができる。すべての内因性タンパク質の最大30%がCBDモチーフを有するものと推定され、カベオリン-1 CSDドメインは、これらのタンパク質に安定性をもたらすものと仮定される(Marudamuthu et al.,Am J Pathol 2015;185:55-68を参照)。
【0097】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドはCSP-7である。CSP-7は、カベオリン-1のヒトCSDの7アミノ酸断片である(以下の表3の配列番号3を参照されたい)。
【0098】
改変Cav-1ペプチドの例示的なアミノ酸配列を、以下の表2および3に示す。大文字はL-アミノ酸を示し、小文字はD-アミノ酸を示す(例えば、小文字「a」はD-アラニンを表す)。「Ac」という用語はアセチル基を指し、「NH2」という用語はアミド基を指す。「O」はオルニチンを示す
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【0099】
一部の実施形態では、Cav-1ペプチドまたは改変Cav-1ペプチドは、
(a)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、
(b)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つのコア配列を含むか、または
(c)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つのコア配列を含み、コア配列が、一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を含む。
【0100】
一部の実施形態では、Cav-1ペプチドまたは改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つのコア配列を含む。一部の実施形態では、Cav-1ペプチドまたは改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つのコア配列を含み、コア配列は、一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を含む。一部の実施形態では、コア配列は配列番号3である。一部の実施形態では、コア配列は配列番号6である。
【0101】
一部の実施形態では、Cav-1ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、Cav-1ポリペプチドは、配列番号1と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、Cav-1ポリペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を有する配列番号1のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、Cav-1ポリペプチドは、配列番号1に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、Cav-1ポリペプチドは、1~5個、5~10個、11~5個、15~20個、10~25個、25~30個、または30個超の変異を有する配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0102】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のうちのいずれか一つと少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のうちのいずれか一つに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、もしくは11~15個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2~111のいずれか一つのN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5アミノ酸を含む。
【0103】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4~20のいずれか一つのアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4~20のうちのいずれか一つと少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号4~20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4~20のうちのいずれか一つに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、もしくは11~15個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号4~20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4~20のいずれか一つのN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5個のアミノ酸を含む。
【0104】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号2のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、もしくは11~15個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号2のN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5アミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号2の改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。
【0105】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号3と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号3のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号3に対して1、2、3、4、または5個の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号3のN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号3の改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。
【0106】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、または少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号4のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号4のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号4のN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号4の改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0107】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号6と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号6のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号6に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、もしくは11~15個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号6のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号6のN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号6の改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0108】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号9と少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、または少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、それに対して一つまたは複数の変異を伴う配列番号9のアミノ酸配列を含む。例えば、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号9に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、1~5個、5~10個、またはそれ以上の変異を伴う配列番号9のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号9のN末端もしくはC末端のどちらかまたは両方の末端に、追加の1~5個のアミノ酸を含む。一部の実施形態では、配列番号9の改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾および/またはC末端修飾を含む。一部の実施形態では、N末端修飾はアシル化である。一部の実施形態では、C末端修飾はアミド化である。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0109】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19残基のポリペプチドを誘導するように、配列番号1の配列に対して1、2、3、4個、またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む。
【0110】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列、ならびにN末端および/またはC末端上に1~5個の追加のアミノ酸を有する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列、ならびに任意選択的にN末端および/またはC末端上に1~5個の追加のアミノ酸を有する。
【0111】
一部の実施形態では、本開示に提供される改変Cav-1ペプチドは、インビトロアッセイまたはインビボアッセイにおいて、天然Cav-1ポリペプチドと類似または同一の生物学的活性を示す。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドが、天然のCav-1ポリペプチドの活性の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、およびその中の導出可能な任意の範囲、例えば、約70%から約80%、より好ましくは約81%から約90%、またはさらに好ましくは約91%から約99%などを示す。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、天然のCav-1ポリペプチドよりも100%またはさらに高い活性を有する。生物学的活性、例えば、抗線維活性、uPA、uPAR、およびPAI-1のmRNAの発現に影響を与える能力、または線維芽細胞の増殖を阻害する能力を試験するためのアッセイは、当技術分野で周知である。
【0112】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、天然のCav-1ポリペプチドの断片、誘導体、またはバリアントである。ペプチドは、当技術分野で周知の方法を使用して単離または生成される合成の、組換えの、または化学修飾されたペプチドであり得る。修飾は、N末端、C末端、または内部のアミノ酸に対して行うことができる。ペプチドは、以下に記載されるように、保存的または非保存的アミノ酸変化を含み得る。ポリヌクレオチドの変化は、参照配列によってコードされるCav-1ポリペプチドにおいてアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および切断をもたらし得る。ペプチドはまた、改変バリアントの基礎となっているペプチド配列には通常は発生しないアミノ酸(および他の分子)の挿入および置換アミノ酸の挿入、欠失、または置換を含むことがあり、そのようなものとしては例えば、以下に限定されないが、L-アミノ酸の挿入、またはヒトタンパク質では通常は発生しないオルニチンなどの非標準アミノ酸の挿入がある。
【0113】
A.置換
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、一つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含む。保存的アミノ酸置換は、一つのアミノ酸を類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸により置換すること、例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンによる置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による置換、またはスレオニンのセリンによる置換などの結果として生じる。したがって、ある特定のアミノ酸配列の保存的置換とは、ポリペプチド活性に重要ではないアミノ酸の置換、または重要なアミノ酸の置換であってもペプチドの活性を低下させないような同様の特性(例えば、酸性、塩基性、正電荷または負電荷、極性または非極性など)を有する他のアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。例えば、以下の六つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。一部の実施形態では、単アミノ酸または少ない割合のアミノ酸を改変、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加も、この変化がペプチドの活性を低減させない場合に保存的置換であるものと考えられ得る。挿入または欠失は、典型的には約1~6アミノ酸の範囲である。
【0114】
一部の実施形態では、ある既存のアミノ酸をその既存のアミノ酸の位置に基づき置換するものとなるアミノ酸を選択することができ、その場合、例えば、その既存のアミノ酸は、溶媒に曝露されているか、または溶媒に曝露されていない内部に局在するアミノ酸と比較してペプチドまたはポリペプチドの外面上に存在する。このような保存的アミノ酸置換の選択は、例えば、Dordo et al,J.Mol Biol,1999,217,721-739 and Taylor et al,J.Theor.Biol.119(1986);205-218およびS.French and B.Robson,J.Mol.Evol.19(1983)171に記載されるように、当技術分野で周知である。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの外面に適した以下の保存的アミノ酸置換を使用することができる:YのFによる置換、TのSまたはKによる置換、PのAによる置換、EのDまたはQによる置換、NのDまたはGによる置換、RのKによる置換、GのNまたはAによる置換、TのSまたはKによる置換、DのNまたはEによる置換、IのLまたはVによる置換、FのYによる置換、SのTまたはAによる置換、GのNまたはAによる置換、KのRによる置換、AのS、KまたはPによる置換。
【0115】
一部の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチドの内部に適した保存的アミノ酸置換を選択することができ、その場合、例えば、アミノ酸は溶媒に曝露されていない。例えば、ペプチドまたはポリペプチドの内部に対し以下の保存的アミノ酸置換を使用することができる:YはFにより置換され、TはAまたはSにより置換され、IはLまたはVにより置換され、WはYにより置換され、MはLにより置換され、NはDにより置換され、GはAにより置換され、TはAまたはSにより置換され、DはNにより置換され、IはLまたはVにより置換され、FはYまたはLにより置換され、SはAまたはTにより置換され、AはS、G、TまたはVにより置換される。一部の実施形態では、非保存的アミノ酸置換も、バリアントの用語内に包含される。
【0116】
一部の実施形態では、アミノ酸置換が類似の親水性を有するアミノ酸に対するものとなる一つまたは複数の位置で、その置換をポリペプチド内に作り出すことができる。タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般的に理解されている。アミノ酸の相対的な疎水性特性は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、ひいてはタンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定するということが定説である。したがって、そのような保存的置換は、ポリペプチド内で行うことができ、それらの活性にわずかな効果しかもたらさない可能性が高い。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、アミノ酸残基に以下の親水性値:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(0.5)、ヒスチジン-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)、トリプトファン(-3.4)が割り当てられており、これらの値はガイドとして使用することができる。したがって、本明細書に記載の改変Cav-1ペプチドのいずれも、類似の親水性値を有した異なるが相同なアミノ酸により、アミノ酸を置換することによって改変され得る。+/-1.0点以内または+/-0.5点以内の親水性を有したアミノ酸は、相同であるものと考えられる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、親水性値が±1以内であるアミノ酸の置換を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、親水性値が±0.5以内であるアミノ酸の置換を含む。
【0117】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、非天然アミノ酸を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、天然アミノ酸と非天然アミノ酸との組合せを含むか、または非天然アミノ酸のみを含む。非天然アミノ酸は、特定の状況で望ましいように、合成非天然アミノ酸、置換アミノ酸、または一つもしくは複数のD-アミノ酸(またはプロテアーゼ認識配列を除く、組成物の他の成分)を含み得る。D-アミノ酸含有ペプチドは、L-アミノ酸含有形態と比較して、インビトロまたはインビボでの安定性の増加を示す。したがって、D-アミノ酸を組み込んだペプチドの構築は、より大きなインビボまたは細胞内の安定性が望ましいかまたは必要とされる場合に、特に有用であり得る。より具体的には、D-ペプチドは、内因性ペプチダーゼおよびプロテアーゼに対して耐性があり、それによって、連結された薬剤およびコンジュゲートのより良好な経口、経上皮、および経皮の送達、膜常在複合体の生物学的利用能の改善、ならびにそのような特性が望ましい場合の血管内および間質の寿命の延長をもたらす。さらに、D-ペプチドは、Tヘルパー細胞への主要組織適合性複合体クラスIIにより制限された提示に対し効率的にプロセシングできないため、全生物で液性免疫応答を誘発しにくい。
【0118】
20個の「標準」L-アミノ酸に加えて、当技術分野で明確に定義されるD-アミノ酸、または非標準アミノ酸、修飾アミノ酸、もしくは異常アミノ酸も、本開示での使用が想定される。リン酸化アミノ酸(Ser、Thr、Tyr)、グリコシル化アミノ酸(Ser、Thr、Asn)、β-アミノ酸、GABA、ω-アミノ酸が、本開示での使用のためにさらに想定される。これらには、例えばβ-アラニン(β-Ala)および他のω-アミノ酸、例えば3-アミノプロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸など;α-アミノイソ酪酸(Aib);ε-アミノヘキサン酸(Aha);δ-アミノ吉草酸(Ava);N-メチルグリシンまたはサルコシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t-ブチルアラニン(t-BuA);t-ブチルグリシン(t-BuG);N-メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);ノルロイシン(Nle);4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl));2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F));3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F));4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);ホモアルギニン(hArg);N-アセチルリジン(AcLys);2,4-ジアミノ酪酸(Dbu、Dab);p-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH));N-メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys);ホモフェニルアラニン(hPhe);およびホモセリン(hSer);ヒドロキシプロリン(Hyp);ホモプロリン(hPro);N-メチル化アミノ酸;およびペプトイド(N-置換グリシン)が挙げられる。
B.誘導体
【0119】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの誘導体である。本明細書で使用される際の「誘導体」という用語は、アセチル化、ユビキチン化、標識化、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、脂質化、グリコシル化、アミド化、環化、または他の分子の付加を含むがこれらに限定されない技術を使用することによって化学的に改変されたCav-1ペプチドを指す。一部の実施形態では、ペプチドは、環状形態、例えば、環状ペプチドとして、またはラクタムとして提供される。あるいは、またはさらに、一部の実施形態では、ペプチドは分岐ペプチドとして提供される。分子はまた、通常はその分子の一部ではない追加の化学的部分を含有する場合、別の分子の「誘導体」である。このような部分は、pHを変化させるか、または分子の溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することができる。あるいは、この部分は分子の毒性を減少させ、分子の任意の望ましくない副作用などを除去するかまたは減弱させることができる。そのような効果を媒介できる部分は、全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro,Ed.,MackPubl.,Easton,PA(1990)に開示されている。
【0120】
「誘導体」または「バリアント」と併せて使用される場合の用語「機能性」とは、その機能的誘導体または機能的バリアント(例えば、天然Cav-1ポリペプチド)である実体または分子の生物学的活性と実質的に類似した生物学的活性(機能的または構造的のいずれか)を有する改変Cav-1ペプチドを指す。機能的誘導体という用語は、分子の断片、類似体、または化学誘導体を含むことが意図される。
【0121】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、タンパク質分解切断(例えば、フーリンまたはメタロプロテアーゼによる切断)などの共翻訳および翻訳後(例えば、C末端ペプチド切断)修飾を、かかる修飾が改変Cav-1ペプチドの機能に影響を及ぼさない程度に含む。
【0122】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、「レトロインベルソペプチド」である。「レトロインベルソペプチド」とは、少なくとも一つの位置でのペプチド結合の方向の逆方向、すなわちアミノ酸の側鎖に対するアミノ末端およびカルボキシ末端の逆方向を有するペプチドを指す。したがって、レトロインベルソ類似体は、天然ペプチド配列のように側鎖のトポロジーをほぼ維持しながら、ペプチド結合の末端が逆転し方向が逆転している。レトロインベルソペプチドは、L-アミノ酸もしくはD-アミノ酸、またはL-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物を含有していてもよく、最大で全てのアミノ酸がD異性体である。部分的なレトロインベルソペプチド類似体は、配列の一部のみが逆転し、エナンチオマーアミノ酸残基により置換されているポリペプチドである。そのような類似体のレトロ逆転部分は、逆転したアミノ末端およびカルボキシル末端を有するため、レトロ逆転部分に隣接するアミノ酸残基は、それぞれ側鎖類似体a置換ジェミナル-ジアミノメタンおよびマロネートによって置換される。細胞膜透過性ペプチドのレトロインベルソ型は、天然型と同じ程度の効率性で膜を横切って転位する際に作用することが見出されている。レトロインベルソペプチド類似体の合成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBonelli,F.et al.,Int J Pept Protein Res.24(6):553-6(1984);Verdini,A and Viscomi,G.C,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1:697-701(1985)および米国特許第6,261,569号に記載されている。
【0123】
C.末端の修飾
一部の実施形態では、本開示のCav-1ペプチドは、そのアミノ末端またはカルボキシ末端で修飾される(直鎖状である場合)。アミノ末端修飾の例としては、例えば、N-糖化、N-アルキル化、N-アセチル化、またはN-アシル化アミノ酸が挙げられる。末端修飾は、ペグ化を含み得る。カルボキシ末端修飾の一例は、C末端アミド化アミノ酸である。一部の実施形態では、ペプチドは、架橋されているか、または架橋部位を有する(例えば、改変Cav-1ペプチドは、システイニル残基を有し、それゆえにインビトロまたはインビボで架橋二量体を形成する)。一部の実施形態では、一つまたは複数のペプチジル結合は、非ペプチジル結合により置換され、N末端またはC末端は置換され、個々のアミノ酸部分は、選択された側鎖または末端残基などと反応することができる薬剤を用いた処理により修飾される。アミノ酸配列のC末端もしくはN末端のどちらか、またはその両方は、それぞれカルボン酸官能基またはアミン官能基に連結され得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端修飾を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、C末端修飾を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端およびC末端修飾を含む。
【0124】
N末端保護基の非限定的な例示的な例としては、アシル基(-CO-R1)およびアルコキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル基(-CO-O-R1)が挙げられ、式中、R1は、脂肪族、置換脂肪族、ベンジル、置換ベンジル、芳香族、または置換芳香族基である。アシル基の具体例としては、以下に限定されないが、アセチル、(エチル)-CO-、n-プロピル-CO-、イソ-プロピル-CO-、n-ブチル-CO-、sec-ブチル-CO-、t-ブチル-CO-、ヘキシル、ラウロイル、パルミトイル、ミリストイル、ステアリル、オレオイル、フェニル-CO-、置換フェニル-CO-、ベンジル-CO-、および(置換ベンジル)-CO-が挙げられる。アルコキシカルボニル基およびアリールオキシカルボニル基の例としては、以下に限定されないが、CH-O-CO-、(エチル)-O-CO-、n-プロピル-O-CO-、イソプロピル-O-CO-、n-ブチル-O-CO-、sec-ブチル-O-CO-、t-ブチル-O-CO-、フェニル-O-CO-、(置換フェニル)-O-CO-、ベンジル-O-CO-、および(置換ベンジル)-O-CO-が挙げられる。N-アシル化を促進するために、1~4個のグリシン残基が分子のN末端に存在し得る。
【0125】
カルボキシ末端修飾には、カルボン酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)、コハク酸、および安息香酸によるアシル化;カルボニル化(ベンジルオキシカルボニル化(Cbz)など);アセチル化;ならびにビオチン化が含まれる。アミノ末端修飾としては、以下に限定されないが、(i)カルボン酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、脂肪酸(ミリスチン、パルミチン酸、ステアリン酸など)、コハク酸、安息香酸によるアシル化、(ii)カルボニル化(ベンジルオキシカルボニル化(Cbz)など)、(iii)ビオチン化、(iv)アミド化、(v)フルオレセイン(FITC、FAMなど)、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン-3-酢酸、7-ヒドロキシクマリン-3-酢酸、7-メトキシクマリン-3-酢酸、および他のクマリン;ローダミン(5-カルボキシローダミン110または6G、5(6)-TAMRA、ROX);N-[4-(4-ジメチルアミノ)フェニルアゾ〕安息香酸(Dabcyl)、2,4-ジニトロベンゼン(Dnp)、5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホン酸(Dansyl)、および他の染料などの染料の付加、ならびに(vi)PEG化が挙げられる。
【0126】
ペプチドのC末端のカルボキシル基は、例えば、アミド(すなわち、C末端のヒドロキシル基が、-NH、-NHR2、および-NR2R3により置換される)またはエステル(すなわち、C末端のヒドロキシル基が、-OR2により置換される)を含むがこれらに限定されない基によって保護され得る。R2およびR3は、任意選択的に、独立して、脂肪族、置換脂肪族、ベンジル、置換ベンジル、アリール、または置換アリール基である。さらに、窒素原子と共に、R2およびR3は、任意選択的に、約0~2個の窒素、酸素、または硫黄などの追加のヘテロ原子を有するC4~C8複素環を形成することができる。複素環の非限定的な例としては、以下に限定されないが、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、またはピペラジニルが挙げられる。C末端保護基の例としては、以下に限定されないが、-NH、-NHCH、-N(CH、-NH(エチル)、-N(エチル)、-N(メチル)(エチル)、-NH(ベンジル)、-N(C-Cアルキル)(ベンジル)、-NH(フェニル)、-N(C-Cアルキル)(フェニル)、-OCH、-O-(エチル)、-O-(n-プロピル)、-O-(n-ブチル)、-O-(イソプロピル)、-O-(sec-ブチル)、-O-(t-ブチル)、-O-ベンジル、および-O-フェニルが挙げられる。
【0127】
D.側鎖の修飾
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、修飾アミノ酸側鎖を含む。修飾の非限定的な例としては、カルボキシメチル化、アシル化、リン酸化、グリコシル化、または脂肪アシル化が挙げられる。エーテル結合は、任意選択的に、セリンまたはスレオニンヒドロキシルを糖のヒドロキシルに結合させるために使用され得る。アミド結合を任意選択的に使用して、グルタミン酸またはアスパラギン酸のカルボキシル基を糖上のアミノ基に結合させることができる(Gang and Jeanloz,Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry,Vol.43,Academic Press(1985);Kunz,Ang.Chem.Int.Ed.English 26:294-308(1987))。アセチル結合およびケタール結合も、アミノ酸と炭水化物との間に任意選択的に形成され得る。脂肪酸アシル誘導体は、例えば、遊離アミノ基(例えば、リジン)のアシル化によって任意選択的に作製することができる(Toth et al.,Peptides:Chemistry,Structure and Biology,Rivier and Marshal,eds.,ESCOM Publ.,Leiden,1078-1079(1990))。
【0128】
本明細書で使用される際に、「化学修飾」という用語は、本開示の改変Cav-1ペプチドを指す場合、そのアミノ酸残基のうちの少なくとも一つが、プロセッシングもしくは他の翻訳後修飾などの天然のプロセスによって、または当技術分野で周知の化学修飾技術によって修飾される、ペプチドを指す。多数の公知の修飾の例としては、典型的には、以下に限定されないが、アセチル化、アシル化、アミド化、ADP-リボシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、または任意の類似のプロセスが挙げられる。
【0129】
他のタイプの修飾は、任意選択的に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願WO2006/050262に記載されるような、タンパク質などの生体分子へのシクロアルカン部分の付加を含む。これらの部分は、生体分子と共に使用するために設計され、タンパク質に様々な特性を付与するために任意選択的に使用され得る。
【0130】
さらに、任意選択的に、タンパク質上の任意の点が修飾され得る。例えば、タンパク質上のグリコシル化部分のペグ化が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT出願WO2006/050247に記載されるように、任意選択的に実施され得る。一つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)基が、任意選択的にO結合型および/またはN結合型グリコシル化に添加され得る。PEG基は、任意選択的に分岐または直鎖であり得る。任意選択的に、任意のタイプの水溶性ポリマーが、グリコシルリンカーを介してタンパク質上のグリコシル化部位に付加され得る。
【0131】
本開示の改変Cav-1ペプチドの共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。ペプチドの他のタイプの共有結合性修飾は、標的アミノ酸残基を、選択された側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって、分子内に導入される。
【0132】
最も一般的には、システイニル残基を、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロ酢酸塩(および対応するアミン)と反応させて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、2-ピリジルジスルフィドメチル、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
【0133】
ヒスチジル残基は、pH5.5~7.0でピロ炭酸ジエチルとの反応によって誘導体化される。なぜなら、その剤はヒスチジル側鎖に比較的特異的であるためであるる。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用であり、反応は、pH6.0で0.1Mカコジル酸ナトリウム中で実施されることが好ましい。
【0134】
リシニル残基およびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの薬剤を用いた誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α-アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、ピコリンイミド酸メチル、リン酸ピリドキサール、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシル酸を用いたトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0135】
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンのうちの一つまたはいくつかの従来の試薬との反応によって修飾される。
【0136】
アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いため、反応をアルカリ条件下で実施する必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンならびにアルギニンイプシロン-アミノ基の群と反応し得る。
【0137】
チロシル残基の特異的な修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によりスペクトル標識をチロシル残基に導入することに特に関心をもって行われ得る。最も一般的には、N-アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを用いて、それぞれO-アセチルチロシル種および3-ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基を、125Iまたは131Iを用いてヨウ化し、放射免疫アッセイで使用するための標識ペプチドを調製する。
【0138】
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R’)との反応によって選択的に修飾され、式中、RおよびR’は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換される。
【0139】
二官能性剤を用いた誘導体化は、抗CHF抗体を精製する方法で使用するための水不溶性支持マトリックスまたは表面への架橋に有用であり、その逆も同様である。一般的に使用される架橋剤としては、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4-アジドサリチル酸を有するエステル、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオン酸)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、およびビス-N-マレイミド-1,8-オクタンなどの二官能性マレイミドが挙げられる。メチル-3-[(p-アジドフェニル)ジチオ〕プロピオイミデートなどの誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体を生じる。あるいは、臭化シアン活性化炭水化物などの反応性水不溶性基質、および米国特許第3,969,287号、第3,691,016号、第4,195,128号、第4,247,642号、第4,229,537号、および第4,330,440号に記載の反応基質が、タンパク質固定化に採用される。
【0140】
グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基にそれぞれ高頻度で脱アミド化される。これらの残基は、中性または塩基性の条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化形態は、本発明の範囲内である。
【0141】
他の修飾としては、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79-86[1983])、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0142】
E.キャッピング
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのN末端および/またはC末端でキャッピングされる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのN末端および/またはC末端で、それぞれアシル(略称「Ac」)基および/またはアミド(略称「Am」)基により、例えばN末端でアセチル(CHCO‐)基およびC末端でアミド(‐NH)基によりキャッピングされる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのN末端でアシル基により、例えば、N末端でアセチル(CHCO-)によりキャッピングされる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのC末端でアミド基により、例えばC末端でアミド(-NH)によりキャッピングされる。
【0143】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのN末端でキャッピングされる。好ましくは末端アミノ基に連結された、広範なN末端キャッピング官能基、例えば、以下のものが想定される:
ホルミル、
1~10個の炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリルなど、
1~10個の炭素原子を有するアルケノイル、例えばヘキサ-3-エノイルなど、
1~10個の炭素原子を有するアルキノイル、例えばヘキサ-5-イノイルなど、
アロイル、例えばベンゾイルまたは1-ナフトイルなど、
ヘテロアロイル、例えば3-ピロイルまたは4-キノロイルなど、
アルキルスルホニル、例えばメタンスルホニルなど、
アリールスルホニル、例えばベンゼンスルホニルまたはスルファニリルなど、
ヘテロアリールスルホニル、例えばピリジン-4-スルホニルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルカノイル、例えば4-アミノブチリルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルケノイル、例えば6-ヒドロキシ-ヘキサ-3-エノイルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルキノイル、例えば3-ヒドロキシ-ヘキサ-5-イノイルなど、
置換アロイル、例えば4-クロロベンゾイルまたは8-ヒドロキシ-ナフト-2-オイルなど、
置換ヘテロアロイル、例えば2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-キナゾリン-6-オイルなど、
置換アルキルスルホニル、例えば2-アミノエタンスルホニルなど、
置換アリールスルホニル、例えば5-ジメチルアミノ-1-ナフタレンスルホニルなど、
置換ヘテロアリールスルホニル、例えば1-メトキシ-6-イソキノリンスルホニルなど、
カルバモイルまたはチオカルバモイル、
置換カルバモイル(R’‐NH‐CO)または置換チオカルバモイル(R’‐NH‐CS)であって、式中、R’は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである、
置換カルバモイル(R’‐NH‐CO)および置換チオカルバモイル(R’‐NH‐CS)であって、式中、R’は、アルカノイル、アルケノイル、アルキノイル、アロイル、ヘテロアロイル、置換アルカノイル、置換アルケノイル、置換アルキノイル、置換アロイル、または置換ヘテロアロイルであり、全て上記に定義されるとおりである。
【0144】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、そのC末端でキャッピングされる。C末端キャッピング官能基は、末端カルボキシルとのアミド結合またはエステル結合のどちらかであり得る。アミド結合を提供するキャッピング官能基は、NRと示され、式中、RおよびRは、以下の群から独立して選ばれ得る:水素、
好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピルなど、
好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルケニル、例えばプロパ-2-エニルなど、
好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキニル、例えばプロパ-2-イニルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルキル、例えばヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、ハロゲノアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルカノイルアルキル、カルボキシアルキル、カルバモイルアルキルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルケニル、例えばヒドロキシアルケニル、アルコキシアルケニル、メルカプトアルケニル、アルキルチオアルケニル、ハロゲノアルケニル、シアノアルケニル、アミノアルケニル、アルキルアミノアルケニル、ジアルキルアミノアルケニル、アルカノイルアルケニル、カルボキシアルケニル、カルバモイルアルケニルなど、
1~10個の炭素原子を有する置換アルキニル、例えばヒドロキシアルキニル、アルコキシアルキニル、メルカプトアルキニル、アルキルチオアルキニル、ハロゲノアルキニル、シアノアルキニル、アミノアルキニル、アルキルアミノアルキニル、ジアルキルアミノアルキニル、アルカノイルアルキニル、カルボキシアルキニル、カルバモイルアルキニルなど、
最大10個の炭素原子を有するアロイルアルキル、例えばフェナシルまたは2-ベンゾイルエチルなど、
アリール、例えばフェニルまたは1-ナフチルなど、
ヘテロアリール、例えば4-キノリルなど、
1~10個の炭素原子を有するアルカノイル、例えばアセチルまたはブチリルなど、
アロイル、例えばベンゾイルなど、
ヘテロアロイル、例えば3-キノロイルなど、
OR’またはNR’R’’であって、式中、R’およびR’’は独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、アロイル、スルホニル、スルフィニル、またはSO‐R’’’もしくはSO‐R’’’であり、式中、R’’は、置換もしくは非置換のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、またはアルキニルである。
【0145】
エステル結合を提供するキャッピング官能基はORと示され、式中、Rは、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、置換アルコキシ、置換アリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、置換アラルキルオキシ、または置換ヘテロアラルキルオキシであり得る。
【0146】
一部の実施形態では、N末端もしくはC末端のキャッピング官能基、またはその両方は、そのキャッピング分子が活性薬剤を放出するために体内で自発的または酵素的な転換を受け、親薬剤分子よりも送達特性が改善されたプロドラッグ(親薬剤分子の薬理学的に不活性な誘導体)として機能するような構造を有する(Bundgaard H,Ed:Design of Prodrugs,Elsevier,Amsterdam,1985)。
【0147】
キャッピング基を慎重に選択することにより、ペプチドに他の活性を追加することが可能になる。例えば、N末端キャップまたはC末端キャップに連結されたスルフヒドリル基の存在により、誘導体化ペプチドを他の分子へコンジュゲートすることが可能になる。
【0148】
F.多量体形成
本開示の実施形態はまた、改変Cav-1ペプチドの反復単位から構築される、さらに長いポリペプチドを含む。一部の実施形態では、ポリペプチド多量体は、ポリペプチドの異なる組合せを含む。一部の実施形態では、多量体ポリペプチドは、化学合成によって、または本明細書で考察される組換えDNA技術によって作製される。化学合成によって生産される場合、オリゴマーは、一部の実施形態では、好ましくは、コアポリペプチド配列の2~5回の反復を有し、多量体中のアミノ酸の総数は、約160残基を超えるべきではなく、好ましくは100残基以下(またはリンカーもしくはスペーサーを含む場合はそれらの均等物)である。
【0149】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、本開示の少なくとも二つのペプチドを含む多量体である。一部の実施形態では、少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドは、少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと本質的に同一である。一部の実施形態では、少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドは、少なくとも二つのうちのペプチドの第二のペプチドと同一ではない。
【0150】
G.ペプチド模倣体
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、天然Cav-1ポリペプチドの生物学的効果を模倣するペプチド模倣化合物である。一部の実施形態では、ペプチド模倣体は、天然Cav-1ポリペプチドの結合活性および生物学的活性を有するように、天然Cav-1ポリペプチドの結合エレメントの立体空間特性を再現する非天然ペプチドまたは非ペプチド剤である。天然Cav-1ポリペプチドまたはポリペプチド多量体と同様に、ペプチド模倣体は、天然Cav-1ポリペプチドが結合する任意のリガンドと相互作用する結合面と、非結合面とを有する。
【0151】
一部の実施形態では、本開示はまた、部分的なペプチド特性を保持する改変Cav-1ペプチドを含む。例えば、改変Cav-1ペプチド内の任意のタンパク質分解的に不安定な結合は、アイソステア(N-メチル化、D-アミノ酸)または還元ペプチド結合などの非ペプチド要素によって選択的に置換され得る一方で、分子の残りの部分はそのペプチドの性質を保持する。
【0152】
アゴニスト、基質、または阻害剤のいずれかであるペプチド模倣化合物は、オピオイドペプチド、VIP、トロンビン、HIVプロテアーゼなどの複数の生物活性ペプチド/ポリペプチドについて記載されている。ペプチド模倣化合物を設計および調製する方法は、当技術分野で公知である(Hruby,VJ,Biopolymers 33:1073-1082(1993);Wiley,RA et al.,Med.Res.Rev.13:327-384(1993);Moore et al.,Adv.in Pharmacol 33:91-141(1995);Giannis et al.,Adv.in Drug Res.29:1-78(1997))。二次構造を模倣するある特定の模倣体は、Johnson et al.,In:Biotechnology and Pharmacy,Pezzuto et al.,Chapman and Hall(Eds.),NY,1993に記載されている。これらの方法は、天然Cav-1ポリペプチドの少なくとも結合能力および特異性を有し、好ましくは生物学的活性も有するペプチド模倣体を作製するために使用される。当業者に利用可能なペプチド化学および一般的な有機化学の知識は、本開示を考慮すると、かかる化合物を設計および合成するのに十分である。
【0153】
例えば、このようなペプチド模倣体は、遊離しているか、またはリガンド(例えば、可溶性uPARもしくはその断片)との複合体で結合している、本発明のポリペプチドの三次元構造の精査によって特定され得る。あるいは、そのリガンドに結合している本発明のポリペプチドの構造は、核磁気共鳴分光法の技術によって得ることができる。ペプチドとそのリガンドまたは受容体との相互作用の立体化学のさらに深い知識によって、そのようなペプチド模倣剤を合理的に設計することが可能になる。リガンドの非存在下での本発明のペプチドまたはポリペプチドの構造はまた、模倣分子の設計のための足場を提供することができる。
【0154】
H.PEG化
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、ポリエチレングリコールなどの異種ポリペプチドセグメントまたはポリマーとコンジュゲートされる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、酵素の流体力学的半径を増加させ、したがって血清持続性を増加させるように、PEGに連結される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、外部受容体に特異的かつ安定的に結合する能力を有するリガンドなど、任意の標的化剤とコンジュゲートされる(例えば、米国特許出願公開第2009/0304666号を参照されたい)。
【0155】
一部の実施形態では、本開示は、Cav-1ペプチドのPEG化に関連する方法および組成物を提供する。PEG化は、ポリ(エチレングリコール)ポリマー鎖を別の分子、通常は薬物または治療用タンパク質に共有結合させるプロセスである。PEG化は、PEGの反応性誘導体を標的高分子とインキュベーションすることによってルーチンに達成される。薬剤または治療用タンパク質へのPEGの共有結合は、宿主の免疫系から薬剤を「マスク」する(免疫原性および抗原性の低減)か、または薬剤の流体力学的サイズ(溶液のサイズ)を増加させることができ、それにより、腎クリアランスを低減することによってその循環時間を延長する。PEG化はまた、疎水性薬剤およびタンパク質に水溶性を提供することができる。
【0156】
PEG化の第一の工程は、一方または両方の末端におけるPEGポリマーの適切な官能化である。同じ反応性部分を有する各末端で活性化されるPEGは、「ホモ二官能性」として知られているのに対し、存在する官能基が異なる場合、PEG誘導体は、「ヘテロ二官能性」または「ヘテロ官能性」と呼ばれる。PEGポリマーの化学的に活性のまたは活性化された誘導体は、PEGを所望の分子に付加させるように調製される。
【0157】
PEG誘導体に適した官能基の選択は、PEGに結合される改変Cav-1ペプチド上の利用可能な反応性基のタイプに基づく。タンパク質については、典型的な反応性アミノ酸としては、リジン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、およびチロシンが挙げられる。N末端アミノ基およびC末端カルボン酸基も使用することができる。
【0158】
第一世代PEG誘導体を形成するために使用される技術は、一般に、PEGポリマーをヒドロキシル基、典型的には無水物、酸塩化物、クロロホルメート、およびカーボネートと反応する基に反応させる。第二世代PEG化化学では、アルデヒド、エステル、アミドなどのより効率的な官能基がコンジュゲーションに利用可能となる。
【0159】
PEG化の用途がますます進歩し、高度なものとなるにつれて、コンジュゲーションに用いるヘテロ二官能性PEGに対する必要性が高まっている。これらのヘテロ二官能性PEGは、親水性、可撓性、および生体適合性のスペーサーが必要とされる二つの実体の連結に非常に有用である。ヘテロ二官能性PEGの好適な末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルである。
【0160】
最も一般的な修飾剤、またはリンカーは、メトキシPEG(mPEG)分子に基づく。それらの活性は、タンパク質修飾基をアルコール末端に添加することに依存する。一部の実施形態では、ポリエチレングリコール(PEGジオール)が前駆体分子として使用される。次に、ジオールは、ヘテロ二量体またはホモ二量体のPEG結合分子を作製するために両端で修飾される。
【0161】
タンパク質は概して、非プロトン化チオール(システイニル残基)またはアミノ基などの求核部位でPEG化される。システイニル特異的修飾試薬の例としては、PEGマレイミド、PEGヨード酢酸、PEGチオール、およびPEGビニルスルホンが挙げられる。四つすべてが、穏やかな条件下でシステイニル特異的であり、中性からわずかにアルカリ性のpHを有するが、各々がいくつかの欠点を有する。マレイミドにより形成されたチオエーテルは、アルカリ条件下ではいくらか不安定である可能性があるため、このリンカーを用いた製剤の選択肢にはいくらかの制限がある場合がある。ヨードPEGにより形成されるカルバモチオエート結合は、より安定しているが、遊離ヨウ素は、一部の条件下でチロシン残基を修飾し得る。PEGチオールは、タンパク質チオールとのジスルフィド結合を形成するが、この結合はまた、アルカリ条件下で不安定である可能性がある。PEG-ビニルスルホンの反応性は、マレイミドおよびヨードPEGと比較して比較的遅いが、形成されるチオエーテル結合は、非常に安定している。そのより遅い反応速度はまた、PEG-ビニルスルホン反応の制御を容易にすることができる。
【0162】
天然システイニル残基での部位特異的PEG化は、これらの残基が通常はジスルフィド結合の形態であるか、または生物学的活性に必要とされるため、ほとんど行われない。一方で、チオール特異的リンカーに用いるシステイニルPEG化部位を組み込むために、部位特異的変異誘発を使用することができる。システイン変異は、PEG化試薬にアクセス可能であり、PEG化後も生物学的に活性であるように設計される必要がある。
【0163】
アミン特異的修飾剤としては、PEG NHSエステル、PEGトレシル酸塩、PEGアルデヒド、PEGイソチオシアネート、およびその他いくつかが挙げられる。全てが穏やかな条件下で反応し、アミノ基に非常に特異的である。PEG NHSエステルはおそらく、より反応性のある薬剤のうちの一つであるが、その高い反応性は、PEG化反応を大規模に制御することを困難にする可能性がある。PEGアルデヒドは、アミノ基によりイミンを形成し、次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウムにより第二級アミンに還元される。水素化ホウ素ナトリウムとは異なり、シアノ水素化ホウ素ナトリウムはジスルフィド結合を低減させることはない。しかしながら、この化学物質は毒性が高く、特に揮発性になってゆく低pHでは、慎重に取り扱う必要がある。
【0164】
ほとんどのタンパク質上には複数のリジン残基があることに起因して、部位特異的PEG化は難題となり得る。これらの試薬は、プロトン化されていないアミノ基と反応するため、より低いpHで反応を行うことによって、PEG化をより低いpKのアミノ基に向けて行うことが可能である。一般に、アルファ-アミノ基のpKは、リジン残基のイプシロン-アミノ基よりも1~2pH単位低い。pH7以下で分子をPEG化することによって、N末端に対する高い選択性を高頻度で達成することができる。しかしながら、これは、タンパク質のN末端部分が生物学的活性に必要とされない場合にのみ実行可能である。さらに、PEG化からの薬物動態的な恩恵は、高頻度でインビトロ生物活性の有意な喪失を上回り、その結果、生成物は、PEG化化学とは無関係にはるかに大きなインビボ生物活性を有する。
【0165】
PEG化手順の開発時に考慮すべきパラメータがいくつかある。幸いなことに、通常、四つまたは五つ以下の重要なパラメータがある。PEG化条件の最適化への「実験の設計」のアプローチは、非常に有用であり得る。チオール特異的PEG化反応について、考慮すべきパラメータとしては、タンパク質濃度、PEG対タンパク質比(モルベース)、温度、pH、反応時間、および場合によっては酸素の排除が挙げられる。(酸素は、タンパク質による分子間ジスルフィド形成に寄与し得、それによりPEG化生成物の収率を低下させるものとなる。)pHがさらに重要となり得ることを除いて、同じ要因をアミン特異的修飾について、特にN末端アミノ基を標的とする場合に考慮するべきである(酸素を除く)。
【0166】
アミン特異的修飾およびチオール特異的修飾の両方について、反応条件は、タンパク質の安定性に影響を及ぼし得る。これにより、温度、タンパク質濃度、およびpHが制限され得る。さらに、PEGリンカーの反応性は、PEG化反応を開始する前に既知であるべきである。例えば、PEG化剤が70%の活性しかない場合、PEGの使用量は、確実に活性PEG分子のみがタンパク質-PEG反応の化学量論において考慮されるようにするべきである。
【0167】
I.融合タンパク質
一部の実施形態では、本開示は、改変Cav-1ペプチドの融合タンパク質を提供する。例えば、融合は、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を可能にするために、他の種由来のリーダー配列を採用してもよい。融合タンパク質は、半減期延長剤を含むものとすることができる。別の有用な融合としては、融合タンパク質の精製を促進するための、血清アルブミン親和性タグもしくは六個のヒスチジン残基などのタンパク質親和性タグ、または抗体エピトープなどの免疫活性ドメイン、好ましくは切断可能なエピトープの添加が挙げられる。非限定的な親和性タグとしては、ポリヒスチジン、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)が挙げられる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、N末端および/またはC末端で連結された異種ペプチドまたはタンパク質を含む。一部の実施形態では、異種ペプチドまたはタンパク質は、リーダー配列、半減期延長剤、タンパク質親和性タグ、または免疫活性ドメインである。
【0168】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、XTEN(登録商標)ポリペプチド(Schellenberger et al.,2009)、IgG Fcドメイン、アルブミン、またはアルブミン結合ペプチドなど、インビボ半減期を増加させるペプチドに連結される。
【0169】
融合タンパク質を生成する方法は、当業者に周知である。そのようなタンパク質は、例えば、完全融合タンパク質のデノボ合成によって、または異種ドメインをコードするDNA配列の付加と、それに続くインタクトな融合タンパク質の発現とによって生産され得る。
【0170】
親タンパク質の機能活性を回復させる融合タンパク質の生産は、遺伝子を、直列接続されているポリペプチド間でスプライシングされるペプチドリンカーをコードする架橋DNAセグメントと接続することによって促進され得る。リンカーは、結果として生じる融合タンパク質を適正にフォールディングさせるのに十分な長さである。
【0171】
1.リンカー
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、二官能性架橋試薬を用いて化学的にコンジュゲートされるか、またはタンパク質レベルでペプチドリンカーと融合される。
【0172】
二官能性架橋試薬は、親和性マトリクスの調製、多様な構造の修飾および安定化、リガンドと受容体との結合部位の特定、ならびに構造研究を含む、様々な目的のために広く使用されてきた。一部の実施形態では、Gly-Serリンカーなどのペプチドリンカーを用いて、本開示の改変Cav-1ペプチドを連結する。
【0173】
二つの同一の官能基を担持するホモ二官能性試薬は、同一および異なる高分子または高分子のサブユニット間の架橋、ならびにポリペプチドリガンドのそれらの特異的結合部位への連結において、非常に効率的であることが証明された。ヘテロ二官能性試薬は、二つの異なる官能基を含有する。二つの異なる官能基の差次的な反応性を利用することによって、選択的および連続的に架橋を制御することができる。二官能性架橋試薬は、それらの官能基、例えば、アミノ基、スルフヒドリル基、グアニジン基、インドール基、カルボキシル特異的基の特異性に従って分割することができる。これらのうち、遊離アミノ基に向けられた試薬は、それらを商業的に入手可能であること、容易に合成できること、および軽度の反応条件でそれらを適用できることから、特に人気が高まりつつある。
【0174】
ヘテロ二官能性架橋試薬の大部分は、一級アミン反応性基およびチオール反応性基を含有する。別の実施例では、ヘテロ二官能性架橋試薬と架橋試薬を使用する方法とが記載される(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,889,155号)。架橋試薬は、求核性ヒドラジド残基を求電子性マレイミド残基と組み合わせ、一例では、アルデヒドを遊離チオールへ結合させることを可能にする。架橋試薬は、様々な官能基を架橋するように修飾することができる。
【0175】
さらに、当業者に公知の任意の他の連結/カップリング剤および/または機構を用いて、本開示の改変Cav-1ペプチドを組み合わせてもよく、そのようなものとしては、例えば、抗体-抗原相互作用、アビジン-ビオチン結合、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ホスホエステル結合、ホスホラミド結合、無水物結合、ジスルフィド結合、イオン相互作用および疎水性相互作用、二重特異性抗体および抗体断片、またはそれらの組合せがある。
【0176】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、血液中で合理的な安定性を有する架橋剤を含む。標的化剤および治療/予防剤をコンジュゲートするために首尾よく採用できる数多くのタイプのジスルフィド結合含有リンカーが知られている。立体障害性のジスルフィド結合を含有するリンカーは、インビボでさらに大きな安定性をもたらすことが証明され得る。したがって、一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、立体障害架橋剤を含む。
【0177】
障害性の架橋剤に加えて、非障害性リンカーも、本明細書に従って採用することができる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、非立体障害性架橋剤を含む。保護されたジスルフィドを含有または生成するものと考えられない他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDP、および2-イミノチオランが挙げられる(Wawrzynczak and Thorpe,1987)。このような架橋剤の使用は、当技術分野でよく理解される。
【0178】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、可撓性リンカーを含む。
【0179】
化学的にコンジュゲートされると、改変Cav-1ペプチドは概して、コンジュゲートを非コンジュゲート化剤から、および他の混入物質から分離するように精製されるものとなる。臨床的な有用性を付与するのに十分な純度のコンジュゲートを提供する際に使用するために、多数の精製技法が利用可能である。
【0180】
ゲル濾過、ゲル浸透、または高速液体クロマトグラフィーなどのサイズ分離に基づく精製方法が、一般に最も使用されるものとなる。ブルーセファロース分離などの他のクロマトグラフィー技法も使用され得る。例えばN-ラウロイルサルコシンナトリウム(SLS)などの弱い界面活性剤を使用するなど、封入体から融合タンパク質を精製するための従来の方法が有用であり得る。
【0181】
2.細胞膜透過性ペプチドおよび膜移行ペプチド
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、細胞結合ドメインまたは細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含む。本明細書で使用される際に、「細胞膜透過性ペプチド」、「膜移行ドメイン」、および「タンパク質導入ドメイン」という用語は、互換的に使用され、ポリペプチドが細胞膜(例えば、真核細胞の場合は形質膜)を通過することを可能にするポリペプチド配列のセグメントを指す。CPPの例としては、以下に限定されないが、HIV結合ペプチドに由来するセグメント、HIV-1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来または類似体ペプチド、HSV VP22(単純ヘルペス)、プロテグリンI、MAP、KALAまたはタンパク質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンリッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リジンリッチペプチド、MPG-ペプチド、Pep-1、L-オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(具体的にはドロソフィラ・アンテナペディア由来)、pAntp、T1(TKIESLKEHG、配列番号115)、T2(TQIENLKEKG、配列番号116)、26(AALEALAEALEALAEALEALAEAAAA、配列番号117)、INF7(GLFEAIEGFIENGWEGMIEGWYGCG、配列番号118)pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブフォリン-2、Bac715-24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、またはヒストンが挙げられる。
【0182】
CPPは、典型的には、高い相対存在量のリジンまたはアルギニンなどの正に荷電したアミノ酸を含有するか、または極性/荷電したアミノ酸と非極性疎水性アミノ酸との交互パターンを含有する配列を有するかのどちらかである、アミノ酸組成物を有する。これらの二つのタイプの構造は、それぞれポリカチオン性または両親媒性と呼ばれる。典型的には、CPPは、細胞膜を通過しかつほとんどの細胞型に入る能力を有する、8~50残基のペプチドである。FrankelおよびPaboは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-TAT)由来のトランス活性化転写活性化因子が細胞内に透過する能力を記載した(Frankel,A.D.and C.O.Pabo,Cellular uptake of the tat protein from human immunodeficiency virus.Cell,1988.55(6):p.1189-93)。1991年に、ドロソフィラ・メラノガスター由来のアンテナペディアホメオドメイン(DNA結合ドメイン)の神経細胞への導入も記載された(Joliot,A.,et al.,Antennapedia homeobox peptide regulates neural morphogenesis.Proc Natl Acad Sci U S A,1991.88(5):p.1864-8)。1994年に、ショウジョウバエのアンテナペディアホメオボックス遺伝子産物のホメオドメインの第三ヘリックスに由来するペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK、配列番号113)と呼ばれる最初の16merペプチドCPPが特徴を明示され(Derossi,D.,et al.,The third helix of the Antennapedia homeodomain translocates through biological membranes.J Biol Chem,1994.269(14):p.10444-50)、続いて、1998年に、タンパク質導入に必要なTATの最小ドメイン(例えば、GRKKRRQRRRPPQ、配列番号112)が特徴を明示された(Vives,E.,P.Brodin,and B.Lebleu,A truncated HIV-1 Tat protein basic domain rapidly translocates through the plasma membrane and accumulates in the cell nucleus.J Biol Chem,1997.272(25):p.16010-7)。過去二十年間にわたり、異なる起源に由来する数十種類のペプチドが記載されたが、そのようなものとしては、ウイルスタンパク質、例えばヘルペスウイルスVP22(Elliott,G.and P.O’Hare,Intercellular trafficking and protein delivery by a herpesvirus structural protein.Cell,1997.88(2):p.223-33)、または毒、例えばメリチン(GIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ、配列番号114)(Dempsey,C.E.,The actions of melittin on membranes.Biochim Biophys Acta,1990.1031(2):p.143-61)、マストポラン(Konno,K.,et ah,Structure and biological activities of eumenine mastoparan-AF(EMP-AF),a new mast cell degranulating peptide in the venom of the solitary wasp(Anterhynchium flavomarginatum micado).Toxicon,2000.38(11):1505-15)、マウロカルシン(Esteve,E.,et al.,Transduction of the scorpion toxin maurocalcine into cells.Evidence that the toxin crosses the plasma membrane.J Biol Chem,2005.280(13):p.12833-9)、クロタミン(Nascimento,F.D.,et al.,Crotamine mediates gene delivery into cells through the binding to heparan sulfate proteoglycans.J Biol Chem,2007.282(29):p.21 349-60)またはブフォリン(Kobayashi,S.,et al.,Membrane translocation mechanism of the antimicrobial peptide buforin 2.Biochemistry,2004.43(49):p.15610-6)がある。ポリアルギニン(R8、R9、R10、およびR12)(Futaki,S.,et al.,Arginine-rich peptides.An abundant source of membrane-permeable peptides having potential as carriers for intracellular protein delivery.J Biol Chem,2001.276(8):p.5836-40)またはトランスポータン(Pooga,M.,et al.,Cell penetration by transportan.FASEB J,1998.12(1):p.67-77)を含めて、合成CPPも設計された。上記のCPPのいずれも、本開示の改変Cav-1ペプチドで使用され得る。Milletti F.(Drug Discov Today 17(15-16):850-60,2012)に記載される複数の他のCPPも、本開示の改変Cav-1ペプチドにおいて使用することができる。
【0183】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、内部移行配列を含む。一部の実施形態では、内部移行配列は、改変Cav-1ペプチドのC末端またはN末端のどちらかに位置する。一部の実施形態では、内部移行配列は、GRKKRRQRRRPPQ(配列番号112)、RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号113)、およびGIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号114)を含む群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0184】
III.医薬組成物
臨床用途が想定される場合、意図される用途に適した形態で改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を調製することが必要であり得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体中に溶解または分散された有効量の一つまたは複数の本開示の改変Cav-1ペプチドを含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体中に溶解または分散された有効量の一つまたは複数の本開示の改変Cav-1ペプチドと少なくとも一つの追加の治療剤とを含む。本開示の少なくとも一つの改変Cav-1ペプチドおよび/または少なくとも一つの追加の治療剤を含有する医薬組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990によって例示されるように、本開示を考慮して当業者に知られるものとなる。さらに、動物(例えば、ヒト)の投与については、製剤が、FDAの生物学的基準課の必要とする無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0185】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、組成物が固体、液体、またはエアロゾル形態のうちどれによって投与されるか、および注射などの投与経路に対して滅菌される必要があるか否かに応じて、異なるタイプの担体を含む。
【0186】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、遊離塩基、中性、または塩の形態で組成物に製剤化される。医薬的に許容可能な塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基により形成されるもの、または無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸などにより形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基により形成される塩も、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄、または有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインなどに由来し得る。製剤化すると、溶液は、投与製剤に適合する様式で、かつ治療有効となるような量で投与される。製剤は、注射溶液もしくは肺に送達するためのエアロゾルなどの非経口投与用に製剤化されたもの、または薬剤放出カプセルなどの消化管投与用に製剤化されたものなど、様々な剤形で容易に投与される。
【0187】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、不活性希釈剤を含むかまたは含まない医薬的に許容可能な担体中に提供される。担体は同化可能とするべきであり、液体、半固体、すなわちペースト、または固体担体が含まれる。任意の従来の媒体、作用剤、希釈剤、または担体が、レシピエントまたはその中に含有される組成物の治療有効性に有害である場合を除いて、本方法の実践に使用するための投与可能な組成物におけるその使用は適正である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、充填剤など、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0188】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、任意の便利かつ実用的な様式で、すなわち、溶液、懸濁液、乳化、混和、封入、吸収などによって、担体と組み合わされる。このような手順は、当業者にとってルーチンである。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、半固体または固体の担体と完全に組み合わされるか、または混合される。混合は、磨砕などの任意の簡便な様式で実施することができる。
【0189】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、組成物中の一つまたは複数の成分の酸化を遅らせるための一つまたは複数の抗酸化剤を含む。さらに、微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤などの保存剤によってもたらすことができ、そのようなものとしては、以下に限定されないが、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0190】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、一つまたは複数の安定化剤を含む。安定化剤はまた、例えば胃における変性などの治療活性の喪失から組成物を保護するために、混合プロセスに追加することができる。安定剤の例としては、以下に限定されないが、緩衝液、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、炭水化物、またはデキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの凍結乾燥保護剤などが挙げられる。
【0191】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、一つまたは複数の界面活性剤を含む。本開示の方法に従って使用される界面活性剤としては、イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。代表的な非イオン性界面活性剤としては、TWEEN(登録商標)-20およびTWEEN-80(登録商標)界面活性剤(ニュージャージー州ブリッジウォーター、ICIアメリカズ社);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);TRITON(登録商標)界面活性剤(ミズーリ州セントルイスのシグマ社)などのアニオン性および非イオン性の界面活性剤;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルニドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム、またはオレイルメチルタウリン二ナトリウム;MONAQUAT(商標)界面活性剤(ニュージャージー州パターソンのモナ・インダストリー社)などのカチオン性または四級リン脂質界面活性剤;ポリエチルグリコール;ポリプロピルグリコール;エチレンのブロックコポリマーおよびプロピレングリコール、例えばPLURONIC(登録商標)界面活性剤(ニュージャージー州マウントオリーブのBASF社)など;オリゴ(エチレンオキシド)アルキルエーテル;アルキル(チオ)グルコシド;アルキルマルトシド;およびリン脂質が挙げられる。一部の実施形態では、一つまたは複数の界面活性剤は、約0.01%から約0.5%(製剤の他の固体成分の総重量に対する界面活性剤の重量、「w/w」)、約0.03%から約0.5%(w/w)、約0.05%から約0.5%(w/w)、または約0.1%から約0.5%(w/w)の量で、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物中に存在する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、非イオン性界面活性剤を本質的に含まないか、または全ての界面活性剤を本質的に含まない。
【0192】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、乾燥粉末組成物として製剤化される。粉末を肺内に効果的に吸入して堆積させるために、粒子サイズは概して、約5μm未満の空気動力学的中央粒径を有するものとするべきである。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末製剤は、10μm未満の平均粒子サイズを含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末製剤は、5μm未満の平均粒子サイズを含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末製剤は、1μm未満の平均粒子サイズを含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、約0.01μm~約10μm、約0.1μm~約8μm、約0.5μm~約7μm、または約1μm~約5μmの平均粒子サイズを含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末製剤は、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、またはその間の任意の範囲もしくは値の平均粒子サイズを含む。一部の実施形態では、乾燥粉末の90%は、約10μm未満の粒子サイズ(約10μmのDv90)を有する。一部の実施形態では、乾燥粉末のDv90は、約5μmである。改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の粒子サイズは、任意の適切な方法によって低減することができ、そのような方法としては、以下に限定されないが、粉砕、磨砕、薄膜凍結、噴霧乾燥、または破砕が挙げられる。粉砕は、エアジェットミル、ボールミル、ウェットミル、媒体ミル、高圧均質化、または極低温ミルなど、当技術分野で公知の任意の方法によって行われ得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2020/055824を参照されたい。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドの乾燥粉末は、実質的に賦形剤を含まない。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドの乾燥粉末は、賦形剤を含まない。一部の実施形態では、乾燥粉末は、Cav-1ペプチドからなる。
【0193】
粒径を低減した後のペプチドの安定性は、当技術分野で公知の技術を使用して評価することができ、そのようなものとしては、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動技法、HPLC、質量分析、UV分光法および円二色性分光法などの分光技法、ならびに活性(インビトロまたはインビボで測定)が挙げられる。タンパク質安定性のインビトロアッセイを実施するために、エアロゾル組成物を収集し、次いで蒸留するかまたはフィルター上に吸収させることができる。インビボアッセイを実施するために、または対象への組成物の肺投与のために、乾燥粉末の分散のためのデバイスは、対象による吸入のために適合される。例えば、タンパク質安定性は、タンパク質凝集のレベルを決定することによって評価することができる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドの乾燥粉末組成物は、タンパク質凝集体を実質的に含まない。可溶性凝集体の存在は、動的光散乱(DLS)(DynaPro-801TC、バージニア州シャーロッツヴィルのプロテインソリューションズ社)を使用して、および/またはUV分光光度法によって、定性的に決定することができる。
【0194】
一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドを用いた対象の治療は、調節された薬物放出を含む。一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドは、徐放用または遅延放出用に製剤化される。一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドは、高速放出用に製剤化される。さらなる実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドは、徐放および速放の両方(すなわち、二重放出プロファイル)に用いるために製剤化される。
【0195】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される吸入可能な改変Cav-1ペプチドの投与方法を提供する。吸入を介した投与には、吸入器またはネブライザーの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
一部の実施形態では、吸入器は、Plastiape RS01単回投与DPIなどの受動的乾燥粉末吸入器(DPI)である。乾燥粉末吸入器では、乾燥粉末はリザーバ内に貯蔵され、噴射剤を使用することなく吸入によって肺に送達される。一部の実施形態では、吸入器は、DoseOne(商標)、Spinhaler(登録商標)、Rotohaler(登録商標)、Aerolizer(登録商標)、または Handihaler(登録商標)などの単回投与DPIである。一部の実施形態では、吸入器は、Plastiape RS02、Turbuhaler(登録商標)、Twisthaler(商標)、Diskhaler(登録商標)、Diskus(登録商標)、またはEllipta(商標)などの複数回投与DPIである。一部の実施形態では、吸入器は、Plastiape RS04多量体投与DPIなど、複数の薬剤の単回投与の同時送達のための多単回投与DPIである。典型的には、乾燥粉末吸入器は、内部リザーバに貯蔵された薬剤を有し、薬剤は、噴射剤の使用の有無にかかわらず、吸入によって送達される。他のタイプの乾燥粉末吸入器は、カプセル(例えば、セルロースまたはゼラチン基材)または箔パウチに貯蔵された予め分割された用量の医薬品を有し、そのそれぞれがデバイスによって穿孔されて用量を患者に放出する。乾燥粉末吸入器は、効果的な送達のために、約30L/分を超える、例えば約30L/分と約120L/分との間などの吸入流量を必要とし得る。一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドの効率的なエアロゾル化は、吸入力とは無関係である。一部の実施形態では、乾燥粉末吸入器は、約0.01kPa0.5分/Lと約0.05kPa0.5分/Lとの間、例えば約0.02kPa0.分/Lと約0.04kPa0.分/Lとの間などの流れ抵抗を有する。乾燥粉末吸入器(例えば、高抵抗、低抵抗、受動的、能動的)は、患者集団およびその吸入能力に基づいて選択される。
【0197】
一部の実施形態では、吸入器は、定量吸入器であってもよい。定量吸入器は、噴射剤の使用によって補助されるエアロゾル化医薬の短いバーストで、規定量の医薬を肺に送達する。定量吸入器は、キャニスター、計量弁、およびアクチュエーターの三つの主要部を備え、スペーサーデバイスを利用して、放出された粒子を減速させ、患者が容易にエアロゾル化雲の吸入を行えるようにし得る。医薬製剤は、噴射剤および任意の必要な賦形剤を含めてキャニスターに貯蔵される。計量弁は、規定量の医薬製剤の分注を可能にする。定量吸入器またはマウスピースのアクチュエーターは、嵌合放出ノズルを備え、典型的には、汚染を防止するためのダストキャップを備える。一部の実施形態では、定量吸入器の使用に必要な吸気流量は、約90L/分未満、例えば約15L/分と約90L/分との間など、好ましくは約30L/分である。一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドの効率的なエアロゾル化は、吸入力とは無関係である。
【0198】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、ネブライザーの使用を介して、吸入によって対象に送達される。ネブライザーは、肺に吸入されるエアロゾル化されたミストの形態で医薬品を送達するために使用される。医薬製剤は、圧縮ガスによって、または超音波によってエアロゾル化される。ジェットネブライザーは、コンプレッサに接続される。コンプレッサは、高速で液体医薬製剤を通して圧縮ガスを放出し、それにより医薬製剤をエアロゾル化する。次いで、エアロゾル化薬剤は患者によって吸入される。超音波ネブライザーは、高周波超音波を生成し、医薬製剤の液体リザーバと接触する内部要素の振動を引き起こし、それにより医薬製剤をエアロゾル化する。次いで、エアロゾル化薬剤は患者によって吸入される。ネブライザーは、約3L/分と約12L/分との間、例えば約6L/分などの流量を利用し得る。一部の例では、粉砕された改変Cav-1ペプチドは、医薬的に許容可能な液体担体ビヒクル中に懸濁され、噴霧(例えば、エアジェット噴霧)によって投与され得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、電子タバコデバイスなどの気化方法(例えば、急速な気化)によって投与される。
【0199】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、エアロゾル液滴に噴霧化される。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約1μm~約20μmの中央径を有する。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約2.5μm~約20μmの中央径を有する。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約2μm~約10μmの中央径を有する。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約2μm~約4μmの中央径を有する。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約1μm~約5μmの中央径を有する。一部の実施形態では、エアロゾル液滴は、約0.5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、約20μm、またはその間の任意のサイズの中央径を有する。
【0200】
IV.使用方法
本開示は、本明細書に記載の改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の使用を提供する。具体的には、これらの方法は、本明細書に記載の改変Cav-1ペプチドのいずれか一つまたはその医薬組成物を対象に投与することに関する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害(例えば、慢性腎疾患)の治療または予防に使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における肺の疾患または障害(例えば、特発性肺線維症)の治療または予防に使用される。一部の実施形態では、対象は高齢である。
【0201】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害(例えば、慢性腎疾患)の治療または予防に使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、例えば、慢性腎疾患、末期腎疾患、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、腎線維症、多嚢胞性腎疾患、IgA腎症、ループス腎炎、ネフローゼ症候群、アルポート症候群、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、または急性腎損傷などの腎臓の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、腎疾患は、線維症を特徴とする。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は急性である。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は慢性である。一部の実施形態では、対象は高齢である。一部の実施形態では、対象における腎臓の疾患または障害は、例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫の感染などの感染によって引き起こされる。一部の実施形態では、対象における腎臓の疾患または障害は、高血圧(血圧上昇)によって引き起こされる。一部の実施形態では、対象における腎臓の疾患または障害は、糖尿病によって引き起こされる。一部の実施形態では、対象における腎臓の疾患または障害は、OTC鎮痛剤やヘロインなどの薬物の過剰使用によって引き起こされる。一部の実施形態では、対象は高血圧または糖尿病を有する。
【0202】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害の進行の遅延に使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、無増悪生存期間の改善に使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象の生存を延長するために使用される。
【0203】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における慢性腎疾患を治療または予防するために使用される。慢性腎疾患は、腎臓が廃棄物を排出し、尿を濃縮し、電解質を保存する能力の漸次のおよび漸進的な喪失である。腎機能の進行性喪失は、腎臓またはネフロンの機能ユニット間での繊維組織の沈着(間質性線維症)、ならびに繊維組織による濾過表面の継続的な置換(糸球体硬化症)の結果として発生する。腎線維症は、慢性腎疾患の病理学的特徴であり、末期腎疾患への進行の主要な寄与因子である。一実施形態では、慢性腎疾患は、慢性腎線維症である。
【0204】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における末期腎疾患を治療または予防するために使用される。末期腎疾患は、腎臓が機能を停止し、個体が生存するために長期透析または腎臓移植を必要とする、慢性腎疾患の最終段階である。
【0205】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における巣状分節性糸球体硬化症を治療または予防するために使用される。巣状分節性糸球体硬化症は、尿中へのタンパク質の喪失を引き起こす糸球体の瘢痕化を特徴とする腎疾患である。
【0206】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における糸球体腎炎を治療または予防するために使用される。糸球体腎炎は、糸球体疾患とも呼ばれ、糸球体が損傷し、排泄物および体液を体内から適切に除去することができない腎疾患の一種である。一部の実施形態では、糸球体腎炎は急性糸球体腎炎である。一部の実施形態では、糸球体腎炎は慢性糸球体腎炎である。
【0207】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における多嚢胞性腎疾患を治療または予防するために使用される。多嚢胞性腎疾患は、嚢胞のクラスターが主に腎臓内で発生し、腎臓が経時的に拡大して機能を失う、遺伝性障害である。
【0208】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるIgA腎症を治療または予防するために使用される。IgA腎症は、ベルジェ病とも呼ばれ、免疫グロブリンIgAが腎臓に蓄積した結果、腎臓が血液から老廃物を濾過する能力を防止し得る局所的な炎症をもたらすときに発生する、腎疾患である。
【0209】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるループス腎炎を治療または予防するために使用される。ループス腎炎は、全身性エリテマトーデスの最も重症の臓器症状の一つを構成し、免疫系が腎臓を攻撃したときに発生する。糸球体腎炎の一種である。
【0210】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるネフローゼ症候群を治療または予防するために使用される。ネフローゼ症候群は、身体にタンパク質を尿中へ排泄させ過ぎてしまう腎臓障害である。ネフローゼ症候群は、多くの場合、老廃物および過剰な水を血液から濾過する腎臓の小さな血管への損傷によって引き起こされる。
【0211】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるアルポート症候群を治療または予防するために使用される。アルポート症候群は、進行性腎疾患ならびに内耳および眼の異常を特徴とする遺伝的状態である。次の三つの遺伝子タイプ:X連鎖アルポート症候群(XLAS)、常染色体劣性アルポート症候群(ARAS)、および常染色体優性アルポート症候群(ADAS)がある。XLASはCOL4A5遺伝子における変異によって引き起こされ、ARASはCOL4A3遺伝子またはCOL4A4遺伝子のどちらかの両コピーの変異によって引き起こされ、ADASはCOL4A3遺伝子またはCOL4A4遺伝子の一方のコピーの変異によって引き起こされる。アルポート症候群を有する個体は、慢性腎疾患の特徴である慢性糸球体機能不全、腎炎症、および線維症を呈し、末期腎疾患に進行する。アルポート症候群に罹患した人はまた、様々な重症度の進行性難聴と通常は視覚障害をもたらさない眼の異常とを発症し得る。
【0212】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるアミロイドーシスを治療または予防するために使用される。アミロイドーシスは、アミロイドが組織および器官に蓄積し、正常機能を妨げるときに発生する。アミロイド沈積物は腎臓を損傷し、腎臓が廃棄物を濾過してタンパク質を分解する能力に影響を及ぼす。一部の実施形態では、アミロイドーシスは、原発性アミロイドーシスである。一部の実施形態では、アミロイドーシスは、透析関連アミロイドーシスである。
【0213】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるグッドパスチャー症候群を治療または予防するために使用される。グッドパスチャー症候群は、抗糸球体基底膜疾患とも呼ばれ、抗体が肺および腎臓の基底膜を攻撃して肺出血、糸球体腎炎、および腎不全をもたらす自己免疫疾患である。
【0214】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における多発血管炎性肉芽腫症を治療または予防するために使用される。ウェゲナー肉芽腫症とも呼ばれる多発血管炎性肉芽腫症は、最も高頻度で肺および腎臓を標的とする肉芽腫性炎症、壊死、および血管炎を伴う自己免疫疾患である。
【0215】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における急性腎損傷を治療または予防するために使用される。急性腎不全とも呼ばれる急性腎損傷は、腎排泄機能の突然の喪失である。急性腎損傷は、一週間未満の血清クレアチンおよび尿排出のレベルによって定義される。
【0216】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎感染症を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎盂腎炎を治療または予防するために使用される。腎盂腎炎は、一方または両方の腎臓が感染してゆく尿路感染症の一種である。一部の実施形態では、腎盂腎炎は、例えば、大腸菌、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、エンテロコッカス属、またはスタフィロコッカス・サプロフィティカスなどの細菌またはウイルスによって引き起こされる。
【0217】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象における微生物感染から結果として生じる腎臓の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、微生物感染は、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫の感染である。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、ストレプトコッカス・ピオゲネス、スタフィロコッカス属(アウレウス、エピデルミディス)、サルモネラ属(ティフィ、パラティフィ)、大腸菌、 レプトスピラ属、マイコバクテリウム・ツベルクロシス、マイコバクテリウム・レプラエ、レジオネラ属菌、エルシニア・エンテロコリチカ、ブルセラ種、カンピロバクター・ジェジュニ、コリネバクテリウム・ジフテリアエ、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、エンテロコッカス属、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、デング熱ウイルス、ハンタウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバールウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および/またはC型肝炎ウイルスによって引き起こされる。
【0218】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2の感染の結果として生じる腎臓の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、急性腎損傷を引き起こす。一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、慢性腎損傷を引き起こす。一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、慢性腎疾患を引き起こす。一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、腎線維症を引き起こす。一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、腎不全を引き起こす。
【0219】
一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、対象に、有効量の改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号4~20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号3のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号8のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、アミノ酸配列FTTFTVT(配列番号3)に対し少なくとも一つのアミノ酸の置換、挿入の欠失を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含み、この改変Cav-1ペプチドは、Cav-1の生物学的活性を維持する。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、慢性腎疾患である。一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害は、アルポート症候群である。
【0220】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における腎機能を改善するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、腎機能を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%改善する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、腎機能の改善は、線維性の糸球体の減少、血中尿素窒素の減少、血中クレアチニンの減少、血中アルブミンの増加、尿アルブミンとクレアチニンとの比の減少、および/または糸球体濾過速度の増加を意味する。
【0221】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における線維性の糸球体の数を減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、線維性の糸球体の数を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0222】
一部の実施形態では、腎臓の疾患または障害を有する対象は、腎臓の疾患または障害を有しない対象(例えば、正常で健康な対象)と比較して、腎臓におけるカベオリン-1の発現が低減している。一部の実施形態では、カベオリン-1の発現は、腎臓の疾患または障害を有する対象の糸球体では、腎臓の疾患または障害を有しない対象と比較して低減している。一部の実施形態では、カベオリン-1の発現は、腎臓の疾患または障害を有する対象の腎臓の内皮細胞では、腎臓の疾患または障害を有しない対象と比較して低減している。一部の実施形態では、カベオリン-1の発現は、腎臓の疾患または障害を有する対象の腎臓の上皮細胞では、腎臓の疾患または障害を有しない対象と比較して低減している。一部の実施形態では、カベオリン-1の発現は、腎臓の疾患または障害を有する対象の腎臓のポドサイトでは、腎臓の疾患または障害を有しない対象と比較して低減している。一部の実施形態では、腎臓におけるカベオリン-1の発現は、腎臓の疾患または障害を有する対象において、腎臓の疾患または障害を有しない対象と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低減している。一部の実施形態では、上皮細胞は、ボーマン嚢を裏打ちする壁側上皮細胞である。
【0223】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における内皮細胞死を減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における上皮細胞死を減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象におけるポドサイト細胞死を減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、細胞死を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0224】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における内皮細胞の生存性を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における上皮細胞の生存性を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象におけるポドサイトの生存性を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、細胞の生存性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0225】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において腎臓再生を促進する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象の腎臓における腎血管、糸球体、および/または尿細管の再生を促進する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象の腎臓における上皮細胞、内皮細胞、管状細胞、および/またはポドサイトの再生を促進する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0226】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において内皮細胞の増殖を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において上皮細胞の増殖を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象においてポドサイトの増殖を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、細胞増殖を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0227】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において血中尿素窒素を減少させる。一部の実施形態では、高い血中尿素窒素値は、対象における腎臓の損傷または疾患を示す。概して、6mg/dlから24mg/dlの範囲の血中尿素窒素レベルは、ヒトでは正常であるものと考えられる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、血中尿素窒素を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における血中尿素窒素を、約50mg/dl未満、約45mg/dl未満、約40mg/dl未満、約35mg/dl未満、約30mg/dl未満、約25mg/dl未満、または約20mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、血中尿素窒素を約20mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0228】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において血中クレアチニンを減少させる。一部の実施形態では、高い血中クレアチニン値は、対象における腎臓の損傷または疾患を示す。一般に、女性では1.2mg/dl超、男性では1.4mg/dl超の血中クレアチニン値は、腎臓が適切に機能していないことを示す。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、血中クレアチニンを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における血中クレアチニンを、約4mg/dl未満、約3.5mg/dl未満、約3.25mg/dl未満、約3mg/dl未満、約2.75mg/dl未満、約2.5mg/dl未満、約2.25mg/dl未満、約2mg/dl未満、約1.75mg/dl未満、約1.5mg/dl未満、または約1.25mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、血中尿素窒素を約1.5mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0229】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において血中アルブミンを増加させる。一部の実施形態では、低い血中アルブミン値は、対象における腎臓の損傷または疾患を示し得る。血中のアルブミンの正常レベルは、3.5g/dL~5g/dLである。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、血中アルブミンを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%を増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における血中アルブミンを、約1.5g/dl超、約1.75g/dl超、約2g/dl超、約2.25g/dl超、約2.5g/dl超、約2.75g/dl超、約3g/dl超、または約3.5g/dl超に増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、血中アルブミンを約3.5g/dl超に増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0230】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象において、尿アルブミンとクレアチニンとの比を減少させる。尿アルブミンとクレアチニンとの比は、対象における腎臓の損傷または疾患を特定するのに役立つ。30mg/g未満のアルブミンとクレアチニンとの比は正常であるものと考えられ、30~300mg/gの比は微量アルブミン尿を示し、300mg/g超の値はヒトにおける微量アルブミン尿を示す。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、尿アルブミンとクレアチニンとの比を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における尿アルブミンとクレアチニンとの比を、約300mg/g未満、約250mg/g未満、約200mg/g未満、約150mg/g未満、約100mg/g未満、約75mg/g未満、約50mg/g未満、約40mg/g未満、約30mg/g未満、または約25mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、尿アルブミンとクレアチニンとの比を約30mg/dl未満に減少させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0231】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における糸球体濾過速度を増加させる。糸球体濾過速度は、腎臓がどの程度の血液を濾過して、廃棄物および余分な水を除去して尿を作製するかを示す。90mL/分/1.73mを超える糸球体濾過速度は正常であると考えられるのに対し、60mL/分/1.73m未満の糸球体濾過速度は、腎の損傷または疾患を標示し得る。15mL/分/1.73m未満の糸球体濾過速度は、腎不全を標示し得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療前の対象と比較して、糸球体濾過速度を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における糸球体濾過速度を、約30mL/分/1.73m超、約40mL/分/1.73m超、約50mL/分/1.73m超、約60mL/分/1.73m超、約70mL/分/1.73m超、約80mL/分/1.73m超、または約90mL/分/1.73m超に増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における糸球体濾過速度を約60mL/分/1.73m超に増加させる。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0232】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、腎臓の疾患または障害を有する対象における腎機能を保持するために使用される。本明細書で使用される場合、「保持する」という用語は、腎臓の疾患または障害を有する対象における腎機能の維持、または腎機能の一層の低下の防止を指す。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、血中尿窒素、血中クレアチニン、血中アルブミン、尿アルブミンとクレアチニンとの比、および/または糸球体濾過速度によって測定される腎機能を保持し、これらの測定値は、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を用いた治療時に安定なままである。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号2~111のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0233】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、高齢対象における疾患または障害の治療または予防に使用される。本明細書で使用される際に、「高齢の」または「高年齢」という用語は、55歳以上の対象を指す。一部の実施形態では、高齢対象は、約55歳、約60歳、約65歳、約70歳、約75歳、約80歳、約90歳、約95歳、または約100歳である。一部の実施形態では、高齢対象は、若年対象と比較して、本明細書に記載の疾患または障害に罹りやすい。一部の実施形態では、高齢対象は、線維性の疾患または障害、例えば特発性肺線維症を有する。
【0234】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、高齢対象の線維性の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、線維性の疾患または障害、例えば、間質性肺疾患、肝線維症、腎線維症、皮膚線維症、糸球体腎炎、全身性硬化症、心臓線維症、心筋線維症、腎線維症、肝硬変、腎硬化症、動脈硬化症、黄斑変性症、眼瘢痕、白内障、網膜性および硝子体性の網膜症、グレーブス眼症、神経線維腫症、強皮症、神経膠芽腫、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、腹膜線維性疾患、慢性閉塞性肺疾患、術後類線維腫、糖尿病性腎症、婦人科がん、骨髄増殖症候群、骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、炎症性腸疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、線維肉腫、関節リウマチ、非アルコール性脂肪性肝炎、アルポート症候群、または慢性COVID症候群などを治療または予防するために使用される。
【0235】
一部の実施形態では、高齢対象は、若年対象(例えば、若年成人または中年の対象)と比較して、カベオリン-1の発現が低減している。一部の実施形態では、カベオリン-1の発現は、高齢対象において、若年対象と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低減される。
【0236】
一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、有効量の改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号2~111のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号4~20のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号3のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号8のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、アミノ酸配列FTTFTVT(配列番号3)に対し少なくとも一つのアミノ酸の置換、挿入の欠失を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含み、この改変Cav-1ペプチドは、Cav-1の生物学的活性を維持する。
【0237】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における肺の疾患または障害の治療または予防に使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、例えば、急性肺傷害(ALI)、慢性肺傷害、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、間質性肺疾患、肺線維症、肺炎、過敏性間質性肺炎、細気管支炎、サルコイドーシス、強皮症、または肺感染症などの肺の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、高齢の対象における肺の疾患または障害を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、高齢対象は、間質性肺疾患、例えば、特発性肺線維症を有する。
【0238】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における肺感染症、例えば、細菌感染症、ウイルス感染症、または真菌感染症を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、肺感染症は、対象において一つまたは複数の肺の疾患または障害を引き起こし、そのようなものとしては、以下に限定されないが、ALI、ARDS、COPD、喘息、間質性肺疾患、肺線維症、肺炎、過敏性間質性肺炎、細気管支炎、サルコイドーシス、および強皮症が挙げられる。
【0239】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における細菌感染を治療または予防するために使用される。肺感染症を引き起こす細菌の例としては、以下に限定されないが、シュードモナス・エルギノーザ、バチルス・アンスラシス、リステリア・モノサイトゲネス、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、エンテロバクタ-科、ノカルディア属、アクチノマイセス属、モラクセラ・カタラーリス、クレブシエラ・ニューモニエ、クラミジア・トラコマチス、クラミドフィラ・ニューモニアエ、クラミドフィラ・シッタシ、コクシエラ・バーネッティイ、サルモネラ、エルシニア・ペスティス、マイコバクテリウム・レプラエ、マイコバクテリウム・アフリカナム、マイコバクテリウム・アジアティカム、マイコバクテリウム・アビウム-細胞内、マイコバクテリウム・ケロネー、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・ファラックス、マイコバクテリウム・フォーチュイタム、マイコバクテリウム・カンサシ、マイコバクテリウム・レプラエ、マイコバクテリウム・マルモエンス、マイコバクテリウム・シモイデイ、マイコバクテリウム・シミアエ、マイコバクテリウム・スズルガイ、マイコバクテリウム・ゼノピ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、ブルセラ・メリテンシス、ブルセラ・スイス、ブルセラ・アボータス、ブルセラ・カニス、レジオネラ・ニューモフィラ、フランシセラ・ツラレンシス、ニューモシスチス・カリニ、マイコプラズマ・ニューモニア、またはバークホルデリア・セパシアが挙げられる。一部の実施形態では、細菌感染は、対象において肺炎を引き起こす。
【0240】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるウイルス感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルス、一本鎖DNA(ssDNA)ウイルス、一本鎖RNA(ssRNA)ウイルス、または二本鎖RNA(dsRNA)ウイルスによって引き起こされる対象における感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、ssRNAウイルスは、ポジティブセンスssRNAウイルス(+ssRNA)である。一部の実施形態では、ssRNAウイルスは、ネガティブセンスssRNAウイルス(-ssRNA)である。肺感染症を引き起こすウイルスの例としては、以下に限定されないが、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、またはMERS-CoV)、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス、ボカウイルス、パラインフルエンザ、ライノウイルス、エンテロウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ハンタウイルス、パレコウイルス、エプスタインバーウイルス、単純ヘルペスウイルス、ミミウイルス、サイトメガロウイルス、トルクテノウイルス、および中東呼吸器症候群コロナウイルスが挙げられる。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において肺炎を引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において肺線維症を引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において細気管支炎を引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象においてALIまたはARDSを引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において間質性肺疾患を引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において喘息を引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象においてサルコイドーシスを引き起こす。一部の実施形態では、ウイルス感染は、対象において強皮症を引き起こす。
【0241】
一部の実施形態では、SARS-CoV-1は、対象において重度の急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こす。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象におけるSARSを治療または予防するために使用される。SARSは、最初に筋肉の痛み、頭痛、および発熱という全身症状があり、その後2~14日に、主に咳、呼吸困難、および肺炎といった呼吸器症状が発生することを特徴とする。
【0242】
一部の実施形態では、MERS-CoVは、対象において中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こす。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象におけるMERSを治療または予防するために使用される。MERSの臨床的特徴は、無症候性または軽度の疾患から急性呼吸促迫症候群および多臓器不全までに及び、後者は結果として特に基礎疾患を有する個体では死に至る。MERSには特定の薬物治療は存在せず、感染予防および制御対策は、医療保健施設における拡大を防止するために重要である。Zumla et al.Lancet 2015;386(9997):995-1007を参照されたい。
【0243】
一部の実施形態では、SARS-CoV-2は、対象においてコロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こす。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2によって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、SARS-CoV-2のバリアントは、対象においてCOVID-19を引き起こす。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2のバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2アルファバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2ベータバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2ガンマバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2デルタバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2イプシロンバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2ゼータバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2イータバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2シータバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2イオタバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2カッパバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2ラムダバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2ミューバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、SARS-CoV-2オミクロンバリアントによって引き起こされる感染を治療または予防するために使用される。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントは、B.1.1.7(501Y.V1またはVOC-202012/01とも呼ばれる)、B.1.1.317、B.1.1.318、B.1.1.529、B.1.351(501Y.V2とも呼ばれる)、B.1.429、B1.427、B1.1.207、A.23.1、COH.20G/501Y、B.1.525、B.1.526、B.1.617、B.1.618、B.1.621、C.37、P.1、P.2、もしくはP.3、またはそのサブバリアント、またはそれらの組合せ形態である。Konings et al.,Variants of Interest and Concern naming scheme conducive for global discourse.Nature Microbiology(2021)を参照されたい。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.1.529のサブバリアントは、BA.1(B1.1.529.1)、BA1.1(B1.1.529.1.1)、BA.2(B1.1.529.2)、BA.3(B1.1.529.3)、BA.4(B1.1.529.4)、またはBA.5(B1.1.529.5)である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.1.7のサブバリアントは、Q.1、Q.2、Q.3、Q.4、Q.5、Q.6、Q.7、またはQ.8である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.351のサブバリアントは、B.1.351.1、B.1.351.2、B.1.351.3、B.1.351.4、またはB.1.351.5である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントP.1のサブバリアントは、P.1.1、P.1.2、P.1.3、P.1.4、P.1.5、P.1.6、P.1.7、P.1.7.1、P.1.8、P.1.9、P.1.10、P.1.10.1、P.1.10.2、P.1.11、P.1.12、P.1.12.1、P.1.13、P.1.14、P.1.15、P.1.16、P.1.17、またはP.1.17.1である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.617のサブバリアントは、B.1.617.1、B.1.617.2、またはB.1.617.3である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.526のサブバリアントは、B.1.526.1である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントB.1.621のサブバリアントは、B.1.621.1、B.1.621.2、BB.1、またはBB.2である。一部の実施形態では、SARS-CoV-2バリアントC.37のサブバリアントは、C.37.1である。
【0244】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における真菌感染を治療または予防するために使用される。肺感染症を引き起こす真菌の例としては、以下に限定されないが、カンジダ属(例えば、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・クルセイ)、アスペルギルス属、ニューモシスチス属、コクシジオイデス属(例えば、コクシジオイデス・イミチス、コクシジオイデス・ポサダシ)、ブルストミセス属(例えば、ブラストミセス・デルマティティジス)、ヒストプラズマ属(例えば、ヒストプラズマ・カプスラーツム)、クリプトコッカス属(例えば、クリプトコッカス・ネオホルマンス、クリプトコッカス・ガッティ)、スポロトリクス属(例えば、スポロトリクス・シェンキィ)、ムコール属、およびパラコクシジオイデス属が挙げられる。一部の実施形態では、真菌感染は、対象において肺炎を引き起こす。一部の実施形態では、真菌感染は、対象において侵襲性の肺アスペルギルス症を引き起こす。一部の実施形態では、真菌感染は、対象においてアレルギー性喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、または過敏性間質性肺炎を引き起こす。一部の実施形態では、真菌感染は、ARDSを引き起こす。一部の実施形態では、真菌感染は、対象において肺線維症を引き起こす。一部の実施形態では、真菌感染は、対象において肺浮腫を引き起こす。
【0245】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における間質性肺疾患を治療または予防するために使用される。間質性肺疾患は、間質の線維症および炎症を引き起こす障害の一群である。一部の実施形態では、間質性肺疾患は、特発性肺線維症、リンパ管平滑筋腫症、非特異的な間質性肺炎、特発性間質性肺炎、原因不明性組織化肺炎、急性間質性肺炎、呼吸器細気管支炎関連性間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎、肺サルコイドーシス、びまん性肺胞損傷、全身性硬化症、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、薬剤誘発性間質性肺疾患、または職業性間質性肺疾患である。一部の実施形態では、間質性肺疾患は、特発性肺線維症である。
【0246】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象における急性肺傷害(ALI)を治療または予防するために使用される。ALIは、肺の内皮および上皮のバリアの破壊を引き起こす急性炎症の障害である。ALIは、吸入損傷の結果、または敗血症もしくは重度の循環血液量減少性ショックなどの全身疾患の結果であり得る。一部の実施形態では、ALIは、化学誘導性ALIである。一部の実施形態では、ALIは、吸入煙誘発性急性肺傷害(ISALI)である。一部の実施形態では、ALIはARDSである。
【0247】
一部の実施形態では、本開示の改変Cav-1ペプチドは、対象におけるARDSを治療または予防するために使用される。ARDSは、ALIの最も重症の形態であり、酸素欠乏の重症度によって区別される。ARDSは、体液が肺の弾力のある小さな気嚢(肺胞)に蓄積するときに発生する、生命を脅かすタイプの肺傷害である。肺胞内の体液は、肺が酸素で満ちることを妨げ、その結果、血流に到達する酸素が少なくなり、呼吸が困難になる。
【0248】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象における嚢胞性線維症(CF)を治療または予防するために使用される。CFは、主に消化器系および呼吸器系に影響を及ぼす外分泌腺および外分泌汗腺の遺伝性疾患である。この疾患は通常、慢性呼吸器感染症、膵不全、異常な粘稠性の粘液分泌、および早逝を特徴とする。CFは、進行性の気流閉塞を特徴とする。CFを有する個体のサブセットはまた、吸入したコリン作動薬に対し気道に過剰応答を生じ(Weinberger,2002およびMitchell et al.,1978)、気管支拡張剤に応答して気流制限の可逆性を生じる(van Haren et al.,1991およびvan Haren et al.,1992)。気管支の過剰反応および気道閉塞の存在は、CFと、喘息やCOPDなどの気道狭窄の他の疾患との間で疾患の病因を共有する可能性があることを示唆し、気道平滑筋機能不全は、これらの疾患プロセスに寄与すると考えられる。
【0249】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象のCOPDを治療または予防するために使用される。COPDは、二つの主要な気流閉塞障害、すなわち慢性気管支炎および肺気腫を分類するために使用される用語である。慢性気管支炎は、気管支気道の炎症である。気管支気道は気管を肺と接続する。炎症を起こすと、気管支管は粘液を分泌し、慢性の咳を引き起こす。肺気腫では、肺のエラスチン骨格への損傷の結果、肺胞嚢が過膨張する。気腫性肺の炎症細胞はエラスターゼ酵素を放出し、この酵素は肺基質内のエラスターゼ繊維を分解または損傷する。肺気腫には、喫煙、環境汚染物質への曝露、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、および老化を含めて多くの原因がある。
【0250】
一部の実施形態では、本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドは、対象における細気管支炎を治療または予防するために使用される。細気管支炎は、最も一般的にはウイルス性下気道感染症によって引き起こされ、主に急性炎症、浮腫、小さな気道を裏打ちする上皮細胞の壊死、および粘液産生の増加を特徴とする(Ralston et al.,2014)。徴候および症状は、典型的には、鼻炎および咳から始まり、これらは、頻呼吸、喘鳴、ラ音、副筋の使用、および/または鼻翼呼吸に進行し得る。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドは、対象における閉塞性細気管支炎を治療または予防するために使用される。閉塞性細気管支炎は、肺の小さな気道の異常なリモデリングの結果としての進行性の気流減少である(Meyer et al.,2014)。閉塞性細気管支炎は肺移植の主要な合併症であり、他の既知の原因によって引き起こされない努力呼気量と力の持続的な低下をもたらす、遅延性の同種移植片機能不全を説明するために使用されることが多い(Meyer et al.,2014)。
【0252】
一部の実施形態では、本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドは、対象における喘息を治療または予防するために使用される。「喘息」という用語は、急性喘息、慢性喘息、間欠性喘息、軽度の持続性喘息、中程度の持続性喘息、重度の持続性喘息、慢性の持続性喘息、軽度から中程度の喘息、軽度から中程度の持続性喘息、軽度から中程度の慢性の持続性喘息、アレルギー性(外因性)喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、夜間喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、季節性喘息、無音喘息、胃食道喘息、特発性喘息、および咳喘息を指し得る。喘息の間、気道は持続的に炎症を起こし、時には攣縮を起こし得る。
【0253】
一部の実施形態では、本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドは、対象における過敏性間質性肺炎を治療または予防するために使用される。過敏性間質性肺炎は、感受性個体および感作性個体における様々な抗原の吸入によって引き起こされる複雑な症候群である。これらの抗原は環境中に見出され、大抵は鳥タンパク質および真菌に由来する。過敏性間質性肺炎は、小気道および肺実質に影響を及ぼす過大化した液性および細胞性の免疫応答を特徴とする。過敏性間質性肺炎は、急性、慢性非線維性、および慢性線維性の形態に分類することができる。急性過敏性間質性肺炎は、誘発抗原への断続的な高レベルの曝露の結果として通常は曝露から数時間以内に生じるのに対し、慢性過敏性間質性肺炎は、大抵は長期の低レベルの曝露(通常は鳥類または家のカビ)に由来し、時間で定義することは容易ではなく、曝露から数週間、数か月、または数年以内でさえも発生し得る。線維性過敏性間質性肺炎の一部の患者は、完全に曝露を避けていてさえ、進行性の表現型に発展し得る。Costabel et al.,Nature Reviews Disease Primers 2020;6(65)を参照されたい。
【0254】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象における全身性の硬化症または強皮症を治療または予防するために使用される。全身性硬化症は、小血管の脈管障害をもたらす内皮機能障害と、過剰なコラーゲン産生および線維症をもたらす線維芽細胞機能不全と、免疫異常とを特徴とする全身性自己免疫性疾患である。全身性硬化症の分類は、皮膚侵襲の程度に基づいて、びまん性皮膚硬化症、限局性皮膚硬化症、または皮膚硬化のない全身性強皮症に細分化される。事実上、任意の器官系が疾患プロセスに関与し得るが、間質性肺疾患および肺高血圧症を含めた全身性硬化症の線維性および血管性の肺症状は、死の主要な原因である。ある特定の肺症状は、全身性硬化症のサブセットでより一般的に発生し得る(すなわち、ILDはびまん性皮膚硬化症でより一般的であるが、肺高血圧は、限局性皮膚硬化症でより一般的である)が、報告された既知の肺症状は全て、各疾患サブセットで記載されている。肺疾患は、皮膚侵襲を伴わない全身性硬化症(強皮症のない強皮症として知られるもの)でも発生する可能性がある。Solomon et al.,Eur Respir Rev 2013;22(127):6-19を参照されたい。
【0255】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、対象におけるサルコイドーシスを治療または予防するために使用される。サルコイドーシスは、ほぼすべての器官に影響を及ぼし得る非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を特徴とする多系統障害である。胸部侵襲が一般的であり、疾患に関連する罹患率および死亡率のほとんどを占める。胸部異常は、サルコイドーシス患者の約90%に観察され、推定で20%が肺線維症につながる慢性肺疾患を発症する。肺サルコイドーシスは、様々なパターンで現れ得る。両側肺門リンパ節拡大が最も一般的な所見であり、間質性肺疾患が続く。肺侵襲の最も典型的な所見は、外リンパ分布を伴う微小結節、線維化、および両側肺門周囲の陰影である。腫瘤様または肺胞の陰影、蜂巣様嚢胞、粟粒性の陰影、モザイク状の濃淡、気管気管支の侵襲、および胸膜疾患、ならびにアスペルギローマなどの合併症などの非定型症状も見られることがある。Criado et al.,Chest Imaging 2010;30(6)を参照されたい。
【0256】
一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、高齢対象に、有効量の改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号2~111のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号4~20のうちいずれか一つのアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号3のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、配列番号8のアミノ酸配列を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本開示は、高齢対象において肺の疾患または障害を治療または予防する方法を提供し、この方法は、アミノ酸配列FTTFTVT(配列番号3)に対し少なくとも一つのアミノ酸の置換、挿入の欠失を含む有効量の改変Cav-1ペプチドを高齢対象に投与することを含み、この改変Cav-1ペプチドは、Cav-1の生物学的活性を維持する。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドを投与する方法は、改変Cav-1ペプチドを含む溶液を噴霧することをさらに含む。
【0257】
本発明は、対象の疾患または障害を治療または予防するのに適切なすべての投与様式、用量、または用量投与頻度を想定する。有効用量はまた、インビトロまたは動物モデルの試験のバイオアッセイまたはシステムに由来する用量応答曲線から推定され得る。
【0258】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、静脈内に、くも膜下腔内に、皮内に、経皮的に、くも膜下腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、膣内に、小胞内に、関節内に、病巣内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、粘膜に、経口で、局所的に、吸入(例えば、噴霧製剤または乾燥粉末製剤の吸入)によって、注射によって、注入によって、連続注入によって、標的細胞を直接的に浸す局所灌流によって、カテーテルを介して、洗浄を介して、脂質組成物(例えばリポソーム)内で、または当業者に公知であろう他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって(例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,1990を参照)投与される。注射体積および針サイズの選択は、注射される溶液または懸濁液の粘度、ならびに薬剤濃度、pH、および浸透圧を考慮することを含む、注射部位、通針性、および注入性に基づいて、当業者によって選択され得る。一部の例では、活性剤の粒子サイズは、投与時に(例えば、皮下注射によって)所望の溶解速度を提供するために選択することができる。
【0259】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、全身投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、静脈内、くも膜下腔内、皮下、および/または腹腔内に投与される。
【0260】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、ネブライザーを使用する噴霧製剤または乾燥粉末吸入器を使用する乾燥粉末製剤の投与など、対象の気道に局所的に送達される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、ネブライザーを使用して高齢対象の肺に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、乾燥粉末吸入器を使用して高齢対象の肺に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、高齢対象に鼻腔内に、気管支内に、胸膜内に、気管内に、または吸入を介して投与される。
【0261】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、単回用量または複数回用量で対象に投与される。複数回用量が投与されるとき、用量は、例えば、一時間、三時間、六時間、八時間、12時間、一日、二日、三日、四日、五日、六日、一週間、二週間、三週間、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月、四ヶ月、五ヶ月、六ヶ月、一年、またはその間の任意の値もしくは範囲によって互いに分離され得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、例えば、2週間に一回、3週間に一回、4週間に一回、5週間に一回、6週間に一回、7週間に一回、8週間に一回、10週間に一回、15週間に一回、20週間に一回、またはそれ以上の間隔で投与される。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性と、組成物の投与を行うかまたは監督する人物の専門的判断とに従って、時間をかけて調整されるべきであることが理解されよう。例えば、低用量が十分な治療活性をもたらさない場合、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の投与量を増加させることができる。
【0262】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001mg/kg~約1,000mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001mg/kg~約0.01mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.01mg/kg~約1mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1mg/kg~約100mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1mg/kg~約50mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1mg/kg~約25mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約10mg/kg~約25mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約25mg/kg~約50mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約50mg/kg~約75mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約75mg/kg~約100mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001mg/kg、約0.01mg/kg、約0.01mg/kg、約0.1mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約25mg/kg、約50mg/kg、約100mg/kg、約500mg/kg、または約1,000mg/kgの用量で対象に投与される。
【0263】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001g/kg~約1,000g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001g/kg~約0.01g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.01g/kg~約1g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1g/kg~約100g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1g/kg~約50g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1g/kg~約25g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約1g/kg~約10g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約10mg/kg~約25mg/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約25g/kg~約50g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約50g/kg~約75g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約75g/kg~約100g/kgの用量で対象に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、約0.0001g/kg、約0.01g/kg、約0.01g/kg、約0.1g/kg、約1g/kg、約5g/kg、約10g/kg、約25g/kg、約50g/kg、約100g/kg、約500g/kg、または約1,000g/kgの用量で提供される。
【0264】
一部の実施形態では、対象に投与される改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の総用量または完全用量は、約1mgと約100mgとの間、例えば、約20mgと約100mgとの間、約50mgと約100mgとの間、約10mgと約20mgとの間、約20mgと約40mgとの間、約50mgと約70mgとの間、または約80mgと約90mgとの間である。
【0265】
一部の実施形態では、特定の対象に対する改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の投与量は、従来の考慮事項を使用して(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコールによって)、当業者によって決定される。医師は、例えば、最初に比較的低い用量を処方し、その後、適切な応答が得られるまで用量を増加させてもよい。対象に投与される用量は、時間をかけて対象に有益な治療応答を提供するのに十分であるか、または、例えば、用途に応じて症状もしくは他の適切な活性を減少させるのに十分である。用量は、特定の製剤の有効性、ならびに本明細書に開示される改変Cav-1ペプチドの活性、安定性、および/または血清半減期、ならびに対象の状態、ならびに治療される対象の体重または表面積によって決定される。
【0266】
一部の実施形態では、対象は、本明細書に記載される疾患または状態のうちいずれか一つの治療または予防のために、一日一回、ある用量の改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物を投与される。一部の実施形態では、対象は高齢である。一部の実施形態では、単回用量は、約0.2mg/kgと約250mg/kgとの間、例えば、約1mg/kgと約10mg/kgとの間、約10mg/kgと約25mg/kgとの間、約25mg/kgと約50mg/kgとの間、約50mg/kgと約75mg/kgとの間、約75mg/kgと約100mg/kgとの間であり、例えば、肺滴下(例えば、吸入)を介して行う。そのような用量は、約3日から一週間以上の範囲で毎日、または本明細書に開示される任意の頻度で、投与することができる。当技術分野でよく理解されているように用量を下方に調整する必要があり得るものの、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物の長期投与も可能である。しかし、前述の範囲は、個々の治療レジメンにおける変数の数が多く、これらの好適な値からの相当な逸脱が予想されるため、示唆的である。
【0267】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象に連続的に投与される。連続投与については、例えば浸透圧ポンプなどのポンプシステムによれば、約1~2週間の期間にわたる総投与量は、好ましくは1mg/kg~1g/kg、好ましくは20~300mg/kg、より好ましくは50~200mg/kgの範囲内である。このような連続投与レジメンの後、活性化合物の総濃度は、好ましくは約0.5μM~約50μM、好ましくは約1μM~約10μMの範囲内である。
【0268】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、日常的なスケジュールで投与される。本明細書で使用される際に、ルーチンスケジュールとは、所定の指定された期間を指す。ルーチンスケジュールは、スケジュールが所定である限り、同一であるかまたは長さの異なる期間を包含しうる。例えば、ルーチンスケジュールは、一日一回、一日二回、二日に一回、三日に一回、四日に一回、五日に一回、六日に一回、週一回、二週間に一回、三週間に一回、一カ月に一回、二カ月に一回、三カ月に一回、六カ月に一回、またはその間の任意の設定した日数、週数、もしくは月数の投与を含み得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、第一週は一日二回ベースで投与され、その後、数ヶ月間は一日一回ベースで投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、一日一回投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、一日当たり一回未満、例えば、一日置きに、三日毎に、または週一回などで投与される。
【0269】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約1年、またはその間の任意の設定した週数もしくは月数にわたって投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に少なくとも約2週間投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に少なくとも約4週間投与される。
【0270】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約1年、またはその間の任意の設定した週数もしくは月数にわたって、一日一回投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に、少なくとも約2週間にわたって一日一回投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、腎臓の疾患または障害を有する対象に、少なくとも約4週間にわたって一日一回投与される。
【0271】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、カプセル、ブリスター、またはカートリッジなどの単位剤形(例えば、予め分割された用量)で提供される。一部の実施形態では、単位用量は、用量当たり、少なくとも1mgの改変Cav-1ペプチド、例えば、少なくとも約5mg、少なくとも約10mg、少なくとも約15mg、または少なくとも約20mgの改変Cav-1ペプチドを含む。一部の実施形態では、単位用量は、約1mg~約10mg(例えば、約5mg)の改変Cav-1ペプチドである。一部の実施形態では、単位剤形は、賦形剤の投与または添加を含まず、吸入のために粉末を保持するために使用されるに過ぎない(すなわち、カプセル、ブリスター、またはカートリッジは投与されない)。一部の実施形態では、単位剤形のうちの二つ以上が対象に投与される。例えば、乾燥粉末吸入器の場合、改変Cav-1ペプチドは、単位用量カプセル内に提供され、二つ以上の単位用量カプセル(例えば、3~4個)が、吸入によって対象に投与され得る。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドは、少なくとも約10mg、好ましくは少なくとも約15mg、さらにより好ましくは少なくとも約20mgなどの高放出用量で投与される。一部の実施形態では、粉砕された改変Cav-1ペプチドの投与は、約5mg超など、深部肺内に高い微粒子用量をもたらす。深部肺内への微粒子用量は、少なくとも約10mgであることが好ましく、少なくとも約15mgであることがさらにより好ましい。一部の実施形態では、粒子用量は、実施形態のペプチドの用量を含む1個、2個、3個、4個、または5個以上のカプセルから生じる。一部の実施形態では、微粒子用量は、放出用量の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%である。
【0272】
一部の実施形態では、吸入圧力の変化は、放出用量の変化をもたらす。一部の実施形態では、約3kPa、例えば約4kPaから約1kPaなどの吸入圧力の変化は、約25%未満、例えば約24%、約23%、約22%、約21%、約20%、約19%、約18%、約17%、約16%、約15%、約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%以下の放出用量の低減をもたらす。一部の実施形態では、吸入圧力の変化は、微粒子用量の変化をもたらす。一部の実施形態では、約3kPa、例えば約4kPa~約1kPaなどの吸入圧力の変化は、約15%未満、例えば約14%、約13%、約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%以下の微粒子用量の低減をもたらす。
【0273】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害の治療または予防のために、少なくとも一つの追加の治療剤と組み合わせて、同時または順次に投与される。一部の実施形態では、疾患は慢性腎疾患である。追加の治療剤としては、以下に限定されないが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えば、Capoten(登録商標)(カプトプリル)、Vasotec(登録商標)(エナラプリル)、Monopril(登録商標)(ファシノプリル)、Prinivil(登録商標)またはZestril(登録商標)(リシノプリル)、またはAltace(登録商標)(ラミプリル)など;アンジオテンシンII受容体(ARB)阻害剤、例えば、Edarbi(登録商標)(アジルサルタン)、Teveten(登録商標)(エプロサルタン)、Avapro(登録商標)(イルベサルタン)、Cozaar(登録商標)(ロサルタン)、Benicar(登録商標)(オルメサルタン)、またはDiovan(登録商標)(バルサルタン)など;Farxiga(登録商標)(ダパグリフロジン);Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ);および/またはProcrit(登録商標)もしくはEpogen(登録商標)(エリスロポエチン)が挙げられる。
【0274】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害の治療のために、透析と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、慢性腎疾患の治療のために透析と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、透析は血液透析である。一部の実施形態では、透析は腹膜透析である。
【0275】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象において単独で、または少なくとも一つの追加の治療剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害の治療または予防のために、少なくとも一つの追加の治療剤と組み合わせて、同時または順次に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、高齢対象における線維性の疾患または障害の治療または予防のために、少なくとも一つの追加の治療剤と組み合わせて、同時または順次に投与される。追加の治療剤としては、以下に限定されないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、免疫抑制剤、生物学的応答調節剤、気管支拡張剤、またはピルフェンドンなどの抗線維化剤、その抗線維作用機構が完全には理解されていないがTGF-ベータ遮断に関与し得る薬剤、ニンテダニブ、広範なチロシンキナーゼ遮断剤、または任意の他の抗線維化剤が挙げられる。適切なNSAIDSは、非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤アセチルサリチル酸、メサラジン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、ゾメピラック、ナブメトン、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、ブロムフェナク、イブフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナック、エトドラク、オクスピナック、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、トルフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサル、ピロキシカム、テノキシカム、ロノキシカム、およびニメズリド、ならびにその医薬的に許容可能な塩、選択的COX2阻害剤メロキシカム、セレコキシブ、およびロフェコキシブ、ならびにその医薬的に許容可能な塩から選択される。適切なステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデノシド、フルオコルトロン、およびトリアムシノロンである。適切なDMARDは、スルファサラジン、オルサラジン、クロロキン、金誘導体(オーラノフィン)、D-ペニシラミン、ならびにメトトレキサートおよびシクロホスファミドなどの細胞分裂抑制剤である。適切な免疫抑制剤は、シクロスポリンAおよびその誘導体、ミコフェノール酸モフェチル、FK 506(タクロリムスおよびフジマイシンとしても知られる)、ムロモナブ-CD3(オルソクローンOKT-3(登録商標))、抗チモサイトグロブリン(ATG)、15-デスオキシスペルグアリン、ミゾリビン、ミソプロストール、ラパマイシン、レフルノミド、およびアザチオプリンである。適切な生物学的応答修飾剤は、インターフェロンβ、抗TNF-α抗体(エタネルセプト)、IL-10、抗CD3抗体、または抗CD25抗体である。適切な気管支拡張剤は、イプラトロピウムブロミド、オキシトロピウムブロミド、チオトロピウムブロミド、エピネフリン塩酸塩、サルブタモル、テルブタリン硫酸塩、フェノテロール臭化水素酸塩、サルメトレオール、およびホルモテロールである。このような組み合わせでは、各活性成分は、その通常の用量範囲、またはその通常の用量範囲を下回る用量のいずれかに従って投与することができる。組み合わされたNSAID、ステロイド、DMARD、免疫抑制剤、および生物学的応答調節剤の投与量は、適切には通常推奨される最低用量の1/50、最大で通常推奨される投与量の1/1、好ましくは1/20~1/2、より好ましくは1/10~1/5である。組み合わされた薬剤の通常推奨用量は、例えば、Rote Liste(登録商標)2002,Editio Cantor Verlag Aulendorf,Germany、またはPhysician’s Desk Referenceに開示される用量であると理解されるべきである。
【0276】
一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、対象における腎臓の疾患または障害の治療または予防のために、少なくとも一つの追加の治療剤と組み合わせて、同時または順次に投与される。一部の実施形態では、改変Cav-1ペプチドまたはその医薬組成物は、高齢対象において病原体または病原体誘導性肺損傷を治療するために、少なくとも一つの追加の治療剤との併用で、同時または順次に投与される。追加の治療剤としては、以下に限定されないが、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、I型インターフェロン、抗ウイルス剤、抗生物質、レムデシビル、ファビピラビル、ロピナビル、およびリトナビルが挙げられる。
【0277】
ヒドロキシクロロキンは、エチル基の代わりにヒドロキシエチル基を特徴とするクロロキンの化学誘導体である。ヒドロキシクロロキンは、有効な抗マラリア薬として分類されており、全身性エリテマトーデスならびに関節リウマチおよびシェーグレン症候群の治療において有効性を示している。ヒドロキシクロロキンは、抗原提示細胞におけるリソソームpHを増加させることがしばらく知られていたが、炎症状態におけるその作用機構は、最近になって初めて解明されてきており、形質細胞様樹状細胞上のToll様受容体の活性化の遮断を伴う。ヒドロキシクロロキンは、C型肝炎を含むRNAウイルスの治療において有効性を示している。ヒドロキシクロロキンは、一日当たり600mgの用量で投与され得る。
【0278】
ヒトI型インターフェロン(IFN)は、免疫系の活性の調節を助けるインターフェロンタンパク質の大きなサブグループである。哺乳類タイプは、IFN-α(アルファ)、IFN-β(ベータ)、IFN-κ(カッパ)、IFN-δ(デルタ)、IFN-ε(イプシロン)、IFN-τ(タウ)、IFN-ω(オメガ)、およびIFN-ζ(ゼータ、リミチンとしても知られる)と称される。I型インターフェロンは、ジカウイルス、チクングニアウイルス、フラビウイルス、およびC型肝炎ウイルスを含む、様々なウイルスの複製に対する有効性を示している。「インターフェロン化合物」には、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-アルファ類似体、インターフェロン-アルファ誘導体、インターフェロン-アルファコンジュゲート、インターフェロンベータ、インターフェロン-ベータ類似体、インターフェロン-ベータ誘導体、インターフェロン-ベータコンジュゲート、およびそれらの混合物が含まれる。タンパク質全体またはその断片は、免疫グロブリンおよび他のサイトカインなどの他のペプチドおよびタンパク質と融合することができる。インターフェロン-アルファコンジュゲートおよびインターフェロン-ベータコンジュゲートは、例えば、ポリアルキレングリコール部分を含む非天然ポリマーに結合されたインターフェロン-ベータを含む組成物を表し得る。好適なインターフェロン化合物としては、Roferon(登録商標)(インターフェロンアルファ-2a)、Intron(登録商標)(インターフェロンアルファ-2b)、Alferon(登録商標)(インターフェロンアルファ-n3)、Infergen(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、Omniferon(登録商標)(インターフェロンアルファ)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-アルファ類似体、ペグ化インターフェロン-アルファ、重合インターフェロン-アルファ、二量体化インターフェロン-アルファ、担体にコンジュゲートされたインターフェロン-アルファ、経口吸入剤としてのインターフェロン-アルファ、注射用組成物としてのインターフェロン-アルファ、局所用組成物としてのインターフェロン-アルファ、Roferon(登録商標)(インターフェロンアルファ-2a)類似体、Intron(登録商標)(インターフェロンアルファ-2b)類似体、Alferon(登録商標)(インターフェロンアルファ-n3)類似体、およびInfergen(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)類似体、Omniferon(登録商標)(インターフェロンアルファ)類似体、インターフェロンアルファコン-1類似体、インターフェロンベータ、Avonex(商標)(インターフェロンベータ-1a)、Betaseron(商標)(インターフェロンベータ-1b)、Betaferon(商標)(インターフェロンベータ-1b)、Rebif(商標)(インターフェロンベータ-1a)、インターフェロン-ベータ類似体、ペグ化インターフェロン-ベータ、重合インターフェロン-ベータ、二量体化インターフェロン-ベータ、担体にコンジュゲートされたインターフェロン-ベータ、経口吸入剤としてのインターフェロン-ベータ、注射用組成物としてのインターフェロン-ベータ、局所用組成物としてのインターフェロン-ベータ、Avonex(商標)(インターフェロンベータ-1a)類似体、Betaseron(商標)(インターフェロンベータ-1b)類似体、Betaferon(商標)(インターフェロンベータ-1b)類似体、およびRebif(商標)(インターフェロンベータ-1a)類似体が挙げられる。あるいは、インターフェロン-アルファもしくはインターフェロン-ベータの産生を誘導するか、またはインターフェロン-アルファもしくはインターフェロン-ベータの作用を模倣する薬剤も採用され得る。インターフェロン誘導剤としては、チロロン、ポリ(I)-ポリ(C)、イミキモド、クリダニモド、ブロピリミンが挙げられる。
【実施例
【0279】
実施例1:慢性腎疾患における改変Cav-1ペプチドの有効性
本試験の目的は、アルポート症候群のCol4a3-/-マウスモデルを用いて、腎線維症および腎疾患の改善における改変Cav-1ペプチドAPi2355の有効性を評価することであった。アルポート症候群マウス(ノックアウト)は、糸球体細管においてCav-1の発現が低減しており、糸球体線維症を発症している。
【0280】
試験1:アルポート症候群のCol4a3-/-マウスモデルにおける生理食塩水またはAPi2355による二週間の治療
【0281】
129S1/SvlmJ系統バックグラウンドのCol4a3-/-マウスは、11~13週齢までに末期腎疾患の急速な進行を示すため、本試験では慢性腎疾患におけるAPi2355の有効性を評価した。129S1/SvlmJのCol4a3-/-は、C57BL/6バックグラウンドのCol4a3-/-マウスと比べて、より速い速度で末期腎疾患を発症する。129S1/SvlmJバックグラウンドの5週齢(コホート2)および6週齢(コホート1)のCol4a3-/-マウスに、APi2355(配列番号8、0.0022mg/g体重)または生理食塩水を2週間にわたって毎日腹腔内注射した。処置前および屠殺日に尿を採取しアルブミンとクレアチニン(A/C)との比を測定することによって、糸球体選択透過性をモニタリングした。屠殺日に血液を採取して、血中尿素窒素(BUN)アッセイによる糸球体濾過速度をモニタリングし、屠殺後に腎組織を採取して、腎損傷および腎線維症を評価した。マウス識別番号を使用して治療群を区別した(例えば、図1Aに示すようにコホート1についてマウス識別番号1009、1044、1066、および1069)。
【0282】
図1Aは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドで処置する前の、コホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示し、図1Bは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を2週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、コホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。図1Cは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる2週間の処置の前後のコホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスの尿中のアルブミン対クレアチニン比(g/mg)を示す。
【0283】
図2は、生理食塩水またはAPi2355ペプチドにより処置した後のコホート1およびコホート2のCol4a3-/-マウスの血中の尿素窒素レベルを示す。
【0284】
図3Aおよび図3Bは、未処置のCol4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる2週間の処置後のコホート1のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。Col4a3+/-マウスは、間質およびボーマン嚢にコラーゲンI染色を示し、生理食塩水およびAPi2355を処置したCol4a3-/-マウスは、硬化性の糸球体にさらに染色を示した。
【0285】
図4Aおよび図4Bは、未処置のCol4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる2週間の処置後のコホート1のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびαSMAの免疫蛍光染色を示す。Col4a3+/-マウスは、間質血管にαSMA染色を示し、生理食塩水およびAPi2355を処置したCol4a3-/-マウスは、硬化性の糸球体にさらに染色を示した。
【0286】
図5Aおよび図5Bは、未処置のCol4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる2週間の処置後のコホート2のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。Col4a3+/-マウスは、間質およびボーマン嚢にコラーゲンI染色を示し、生理食塩水およびAPi2355を処置したCol4a3-/-マウスは、硬化性の糸球体にさらに染色を示した。
【0287】
図6Aおよび図6Bは、未処置のCol4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる2週間の処置後のコホート2のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびαSMAの免疫蛍光染色を示す。Col4a3+/-マウスは、間質血管にαSMA染色を示し、生理食塩水およびAPi2355を処置したCol4a3-/-マウスは、硬化性の糸球体にさらに染色を示した。
【0288】
全体として、コホート1およびコホート2において生理食塩水およびAPi2355を処置したCol4a3-/-マウスはどちらも、間質および多くの硬化性の糸球体に重度の硬化を示した。
【0289】
試験2:アルポート症候群のCol4a3-/-マウスモデルにおける生理食塩水またはAPi2355による四週間の治療
【0290】
アルポート症候群のCol4a3-/-マウスモデルを用いて、腎線維症および腎疾患の改善における改変Cav-1ペプチドの有効性を評価するために、追加の試験を実施した。
【0291】
129S1/SvlmJバックグラウンドの4週齢のCol4a3-/-マウスに、APi2355(配列番号8、0.0022mg/g体重)または生理食塩水を4週間にわたって毎日腹腔内注射した。尿を、4週齢、ならびに6週齢、7週齢、および8週齢での治療前に採集し、アルブミン対クレアチニン(A/C)比を測定することによって糸球体の選択透過性をモニタリングした。処置前4週齢ならびに処置後6週齢および8週齢で血液を採集して、BUNアッセイを用いて糸球体濾過速度をモニタリングし、屠殺後に腎臓組織を採取して、腎損傷および腎線維症を評価した。マウス識別番号を使用して治療群を区別した(例えば、図7Aに示すようにマウス識別番号1248、1267、および1277~1282)。
【0292】
図7Aは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドで処置する前の、4週齢のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。図7Bは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を2週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、6週齢のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示し、図7Cは、APi2355ペプチドまたは生理食塩水を3週間または4週間にわたって毎日腹腔内注射した後の、7週齢および8週齢のCol4a3-/-マウスから得た尿タンパク質のゲルを示す。図7Dは、4週齢での処置前、ならびに6週齢、7週齢、および8週齢での生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる処置中のCol4a3-/-マウスの尿中のアルブミン対クレアチニン比(g/mg)を示す。
【0293】
図8は、4週齢での処置前、ならびに6週齢および8週齢で生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる処置中のCol4a3-/-マウスの血中の尿素窒素レベルを示す。
【0294】
図9Aから図9Hは、未処置のCol4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のコラーゲンIおよびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。
【0295】
表Aは、8週齢の未処置Col4a3+/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後のCol4a3-/-マウスにおける糸球体線維症の定量を示す。
【表4】
【0296】
図10Aおよび図10Bは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腸組織上のカベオリン-1およびラミニン-111の免疫蛍光染色を示す。図10Cから図10Fは、未処置のCol4a3+/-マウス(左パネル)、または生理食塩水(中央パネル)もしくはAPi2355ペプチド(右パネル)による4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1およびラミニン-111の免疫蛍光染色を示す。
【0297】
図11Aは、未処置のCol4a3+/-マウスおよびCol4a3-/-マウス、または生理食塩水もしくはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後のCol4a3-/-マウスから得た腎組織上のカベオリン-1、コラーゲンI、ラミニン-111、およびニドゲンの免疫蛍光染色を示す。図11Bは、生理食塩水またはAPi2355ペプチドによる4週間の処置後の、8週齢のメスのCol4a3-/-マウスにおける糸球体線維症の定量を示す。
【0298】
全体として、4週齢で開始するAPi2355ペプチドによるCol4a+/-マウスの処置は、アルブミン尿およびBUNの進行を遅延させなかったが、コラーゲンI沈着によってアッセイされたように、メスにおける硬化性糸球体の割合を減少させた。これらのデータは、APi2355が、アルポート症候群のマウスモデルにおいて糸球体線維症を低減したことを示す。
【0299】
実施例2:肺線維症の高齢マウスモデルにおける改変Cav-1ペプチドの有効性
本試験の目的は、特発性肺線維症及び急性呼吸促迫症候群(ARDS)のブレオマイシンモデルにおける改変Cav-1ペプチドCSP-7を評価することであった。高齢のオスマウスを、ARDSに対して最も脆弱なヒトの集団と厳密に一致するように選択した。
【0300】
試験1
【0301】
老化細胞の負荷が高く、ゆえに再生能力が低い高齢オスマウスを用いて、CSP-7(配列番号3)の有効性を試験した。マウスは、気管内ブレオマイシン導入時に74週齢と76週齢との間であった(4U/kg体重、n=5~8マウス/群)。Total Collagen Assay(QuickZyme Biosciences社)を使用して、肺組織内の総コラーゲンを評価した。最初に肺ホモジネート中のタンパク質を加水分解し、次いでヒドロキシプロリンを酸化し、染色した。
【0302】
図12は、乾燥粉末吸入を介して対照ペプチド(CP-DPI)またはCSP-7(CSP7-DPI)を投与した、生理食塩水またはブレオマイシンを処置した高齢マウスの肺ホモジネート中の総コラーゲンを示す。CSP-7を投与されたブレオマイシン処置マウスは、対照ペプチドを投与したマウスと比較して、肺の総コラーゲンの低減を示した。
【0303】
試験2
【0304】
ブレオマイシン(BLM、8U/kg)を73~74週齢のマウス(n=52)に気管内投与し、これにより、BLM誘発性肺損傷に起因してマウスの約50%が喪われることが予想された。滴注後14日目に、以下の表Bに示すように、CSP-7および対照ペプチド(CP)を、乾燥粉末吸入(DPI)または腹腔内注射(IP)を介してマウスに投与した。滴注後21日目に、マウスを屠殺し、分析用に血液および組織を採取した。統計はダネットの多重比較検定を用いて実施した。
【表5】
【0305】
図13は、乾燥粉末吸入を介して対照ペプチド(CP-DPI)またはCSP-7(CSP7-DPI)を投与した、生理食塩水またはBLMを処置した高齢マウスの総肺ホモジネート中のコラーゲンを示す。CSP-7を投与したBLM処置マウスは、対照ペプチドを投与したマウスと比較して、肺の総コラーゲンの減少を示した。
【0306】
図14Aは、乾燥粉末吸入により対照ペプチド(CP-DPI)もしくはCSP-7(CSP7-DPI)を投与したか、または腹腔内注射(IP)によりCSP-7を投与した、BLM処置済み高齢マウスの総肺ホモジネートにおける、総SMAD(tSMAD、上部パネル)およびリン酸化SMAD(pSMAD、下部パネル)を示す。
【0307】
図14Bは、乾燥粉末吸入により対照ペプチド(CP-DPI)もしくはCSP-7(CSP7-DPI)を投与したか、または腹腔内注射(IP)によりCSP-7を投与した、BLM処置済み高齢マウスの総肺ホモジネートにおける、ガレクチン7を示す。
【0308】
実施例3:正常および線維性腎組織におけるヒトカベオリン-1の発現
本試験の目的は、正常な対象および線維性腎疾患を有する対象に由来する腎組織におけるヒトカベオリン-1の発現を評価することであった。
【0309】
正常な対象および線維性腎疾患を有する対象から腎組織を採取した。次いで、腎組織を処理し、ヒトカベオリン-1について免疫染色した。
【0310】
図15Aに示されるように、ヒトカベオリン-1染色は、正常な対象から得た腎組織の糸球体で検出された。具体的には、ヒトカベオリン-1は、ボーマン嚢を裏打ちする壁側上皮細胞、ならびに内部嚢の内皮細胞で検出された。図15Bに示されるように、カベオリン-1の発現は、正常対照と比較して、慢性腎疾患を有する対象では線維性の糸球体で減少した。また、組織学では、線維性の糸球体に加えて、著しい内皮の破壊が示された。
【0311】
本発明の番号付けされた実施形態
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の番号付けされた実施形態を記載する。
実施形態1.
対象において腎臓の疾患または障害を治療または予防する方法であって、
(a)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、
(b)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または
(c)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を有する配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む、方法。
実施形態2.
改変Cav-1ペプチドが、L-アミノ酸を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.
改変Cav-1ペプチドが、D-アミノ酸を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態4.
改変Cav-1ペプチドが、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態5.
改変Cav-1ペプチドが重水素化残基を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
実施形態6.
改変Cav-1ペプチドが、少なくとも一つの非標準アミノ酸を含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
実施形態7.
非標準アミノ酸がオルニチンである、実施形態6に記載の方法。
実施形態8.
改変Cav-1ペプチドが、N末端修飾を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
実施形態9.
改変Cav-1ペプチドが、C末端修飾を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
実施形態10.
改変Cav-1ペプチドが、N末端修飾およびC末端修飾を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
実施形態11.
N末端修飾がアシル化である、実施形態8または10に記載の方法。
実施形態12.
C末端修飾がアミド化である、実施形態9または10に記載の方法。
実施形態13.
改変Cav-1ペプチドが、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態14.
改変Cav-1ペプチドが、KASFTTFTVTKGS(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態15.
改変Cav-1ペプチドが、KASFTTFTVTKGS-NH2(配列番号5)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態16.
改変Cav-1ペプチドが、aaEGKASFTTFTVTKGSaa(配列番号6)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態17.
改変Cav-1ペプチドが、aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態18.
改変Cav-1ペプチドが、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態19.
改変Cav-1ペプチドが、OASFTTFTVTOS(配列番号9)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態20.
改変Cav-1ペプチドが、OASFTTFTVTOS-NH2のアミノ酸配列(配列番号10)を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態21.
改変Cav-1ペプチドが、内部移行配列を含む、実施形態1~20のいずれか一つに記載の方法。
実施形態22.
内部移行配列が、ペプチドのC末端に位置する、実施形態21に記載の方法。
実施形態23.
内部移行配列が、ペプチドのN末端に位置する、実施形態21に記載の方法。
実施形態24.
改変Cav-1ペプチドが、N末端および/またはC末端にキャップをさらに含む、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
実施形態25.
改変Cav-1ペプチドが、N末端およびC末端にキャップを含む、実施形態24に記載の方法。
実施形態26.
改変Cav-1ペプチドが環化される、実施形態1~25のいずれか一つに記載の方法。
実施形態27.
改変Cav-1ペプチドが、天然Cav-1(配列番号1)の生物学的活性を維持する、実施形態1~26のいずれか一つに記載の方法。
実施形態28.
改変Cav-1ペプチドが、実施形態1~25のいずれか一つに記載の少なくとも二つのペプチドを含む多量体である、実施形態1に記載の方法。
実施形態29.
少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドが、少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと本質的に同一である、実施形態28に記載の方法。
実施形態30.
少なくとも二つのペプチドのうちの第一のペプチドが、少なくとも二つのペプチドのうちの第二のペプチドと同一ではない、実施形態28に記載の方法。
実施形態31.
改変Cav-1ペプチドが、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口で投与される、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法。
実施形態32.
改変Cav-1ペプチドが皮下投与される、実施形態31に記載の方法。
実施形態33.
改変Cav-1ペプチドが静脈内投与される、実施形態31に記載の方法。
実施形態34.
腎臓の疾患または障害が、慢性腎疾患、末期腎疾患、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、腎線維症、多嚢胞性腎疾患、IgA腎症、ループス腎炎、ネフローゼ症候群、アルポート症候群、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、または急性腎損傷からなる群から選択される、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
実施形態35.
腎臓の疾患または障害が、アルポート症候群である、実施形態34に記載の方法。
実施形態36.
腎臓の疾患または障害が、線維症を特徴とする、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
実施形態37.
方法が、有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を投与することをさらに含む、実施形態1~36のいずれか一つに記載の方法。
実施形態38.
少なくとも一つの追加の治療剤が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤および/またはアンジオテンシンII受容体(ARB)阻害剤である、実施形態37に記載の方法。
実施形態39.
方法が、透析を用いて対象を治療することをさらに含む、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
実施形態40.
改変Cav-1ペプチドが、改変Cav-1ペプチドと、少なくとも一つの医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含む組成物として投与される、実施形態1~39のいずれか一つに記載の方法。
実施形態41.
高齢の対象において線維性の疾患または障害を治療または予防する方法であって、
(a)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つからなるか、
(b)配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含むか、または
(c)一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入、欠失、または化学修飾を有する配列番号2~111のアミノ酸配列のいずれか一つを含む、有効量の改変Cav-1ペプチドを対象に投与することを含む、方法。
実施形態42.
改変Cav-1ペプチドが、FTTFTVT(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、実施形態41に記載の方法。
実施形態43.
改変Cav-1ペプチドが、Ac-aaEGKASFTTFTVTKGSaa-NH2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、実施形態41に記載の方法。
実施形態44.
線維性の疾患または障害が、間質性肺疾患である、実施形態41~43のいずれか一つに記載の方法。
実施形態45.
間質性肺疾患が、特発性肺線維症である、実施形態44に記載の方法。
実施形態46.
改変Cav-1ペプチドが肺に投与される、実施形態41~45のいずれか一つに記載の方法。
実施形態47.
改変Cav-1ペプチドが、吸入を介して肺に投与される、実施形態46に記載の方法。
実施形態48.
改変Cav-1ペプチドが、吸入用に製剤化される、実施形態41~47のいずれか一つに記載の方法。
実施形態49.
改変Cav-1ペプチドが、加圧式定量吸入用に製剤化される、実施形態48に記載の方法。
実施形態50.
改変Cav-1ペプチドが、乾燥粉末として製剤化される、実施形態48に記載の方法。
実施形態51.
改変Cav-1ペプチドを含む乾燥粉末が、本質的に賦形剤を含まない、実施形態50に記載の方法。
実施形態52.
乾燥粉末が、噴霧乾燥プロセス、空気ジェット粉砕、ボール粉砕、または湿式粉砕によって生産される、実施形態50または51に記載の方法。
実施形態53.
改変Cav-1ペプチドが、噴霧用に製剤化される、実施形態48に記載の方法。
実施形態54.
改変Cav-1ペプチドが、ネブライザーを使用して対象に投与される、実施形態47に記載の方法。
実施形態55.
改変Cav-1ペプチドが、吸入器を使用して対象に投与される、実施形態47に記載の方法。
実施形態56.
方法が、治療有効量の少なくとも一つの追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む、実施形態41~55のいずれか一つに記載の方法。
実施形態57.
少なくとも一つの追加の治療剤が、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レムデシビル、ファビピラビル、ロピナビル、またはリトナビルである、実施形態56に記載の方法。
実施形態58.
対象が、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳、または少なくとも90歳である、実施形態41~57のいずれか一つに記載の方法。
【0312】
参照による援用
本明細書に引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。しかし、本明細書に引用されるいかなる参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願の言及も、それらが妥当な従来技術を構成するかまたは世界中のどの国においても共通の一般知識の一部を形成するという認識または任意の形態の提案として受け取られるものではないしそうされるべきものでもない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【配列表】
2024539242000001.xml
【国際調査報告】