(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】化学的留め付け用の多成分系における充填剤としてのレンガ粉末
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20241018BHJP
C04B 26/06 20060101ALI20241018BHJP
C04B 18/165 20230101ALI20241018BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08F290/06
C04B26/06
C04B18/165
C04B20/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524360
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022079875
(87)【国際公開番号】W WO2023083612
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ベアテ グナース
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ ニッカール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ビュルゲル
(72)【発明者】
【氏名】メメット-エミン クムル
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD171
4J127BD181
4J127BD411
4J127BG051
4J127BG101
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4J127CC023
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4J127DA07
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4J127EA05
4J127FA48
4J127FA49
(57)【要約】
本発明は、多成分系用の反応性樹脂成分(A)及び充填剤としてレンガ粉末を含有する、建設要素を化学的に留め付けるための多成分系に関する。反応性樹脂成分(A)における充填剤としてレンガ粉末を使用することによって、本発明による多成分系から調製されたモルタルマスと留め付け手段とを含む留め付け装置の性能が、水が充填された掘削孔中にモルタルマスを適用する場合に向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性樹脂として少なくとも1種のラジカル硬化性化合物を有する反応性樹脂成分(A)であって、前記反応性樹脂成分(A)はレンガ粉末を含有することを特徴とする、反応性樹脂成分。
【請求項2】
前記反応性樹脂成分(A)は前記反応性樹脂成分(A)の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のレンガ粉末を含有することを特徴とする、請求項1に記載の反応性樹脂成分。
【請求項3】
前記反応性樹脂成分(A)は前記反応性樹脂成分(A)の総重量に基づいて、20重量%~60重量%のレンガ粉末を含有することを特徴とする、請求項2に記載の反応性樹脂成分。
【請求項4】
前記レンガ粉末が、≦0.90mmのd
90値を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分。
【請求項5】
前記レンガ粉末が、0.9mm~0.2mmの範囲のd
90値を有することを特徴とする、請求項4に記載の反応性樹脂成分。
【請求項6】
前記レンガ粉末が、1重量%未満の含水量を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分。
【請求項7】
前記ラジカル硬化性化合物が、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく化合物、エポキシ(メタ)アクリレートに基づく化合物、アルコキシル化ビスフェノールのメタクリレート、更なるエチレン性不飽和化合物に基づく化合物及びそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分。
【請求項8】
少なくとも1種の反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分。
【請求項9】
抑制剤、促進剤及び/又は更なる添加剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分(A)と、前記反応性樹脂用の硬化剤を含む硬化剤成分(B)とを含む、多成分系。
【請求項11】
前記硬化剤が、過酸化物を含むことを特徴とする、請求項10に記載の多成分系。
【請求項12】
二成分系であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の多成分系。
【請求項13】
掘削孔におけるアンカー手段の化学的留め付け又は構造的結合のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応性樹脂成分(A)又は請求項10若しくは11に記載の多成分系の、使用。
【請求項14】
反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)を有する多成分系におけるレンガ粉末の、前記多成分系から調製されたモルタルマス及び留め付け手段を含む留め付け装置の性能を向上させるための使用であって、前記多成分系から調製された前記モルタルマスを、水が充填された掘削孔に適用する、使用。
【請求項15】
前記反応性樹脂成分(A)が、反応性樹脂としてラジカル硬化性化合物を含むことを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分系用のラジカル硬化性化合物に基づく反応性樹脂成分(A)、及び充填剤としてレンガ粉末を含有する、建設要素の化学的留め付け(接着系アンカー)用の多成分系に関する。反応性樹脂成分(A)における充填剤としてレンガ粉末を使用することによって、本発明による多成分系から調製されたモルタルマスと留め付け手段とを含む留め付け装置の性能が、水が充填された掘削孔中にモルタルマスを適用する場合に向上する。
【背景技術】
【0002】
化学的留め付け(chemischen Duebeln)を調製するためのラジカル重合性化合物に基づく反応樹脂成分の使用は、建設を含む幅広い分野で古くから知られている。
【0003】
化学的留め付けは、屋内及び屋外領域の両方で頻繁に使用される。したがって、アンカーポイントの設置は、多種多様な条件及び影響の下で行われる。化学的留め付けが掘削孔に導入される条件及び影響は、硬化した化学的留め付けの荷重レベルに対して可能な限り負の効果を及ぼすべきではない。
【0004】
建設現場で頻繁に起こる状況は、降雨の場合のアンカーロッドの設置である。これらの場合、モルタルマスが充填されるべき掘削孔には、水が充填されている。市販されている化学的留め付けを調製するための通常の二成分系において、水が充填された掘削孔では、設置プロセス中に化学的留め付けの荷重レベルが低減することが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、設置プロセス中に水が充填された掘削孔によって荷重レベルが悪影響を受けない化学的留め付けを調製するための多成分系を提供する必要がある。達成されるべき荷重値は、ラジカル硬化性化合物に基づく従来の多成分系から調製される化学的留め付けの荷重値と少なくとも同等であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、ラジカル硬化性化合物に基づく多成分系の反応性樹脂成分(A)における充填剤としてレンガ粉末を使用した場合、レンガ粉末を加えない同等のモルタルマスと比較して、硬化したモルタルマスの結合強度を改善することが可能であることが見出された。
【0007】
本発明の第1の要旨は、充填剤としてレンガ粉末を含有する、多成分系用のラジカル硬化性化合物に基づく反応性樹脂成分(A)である。
【0008】
本発明の第2の要旨は、請求項10に記載の本発明による反応性樹脂成分(A)を含有する多成分系である。
【0009】
本発明の第3の要旨は、留め付け装置の性能を向上させるための、請求項14に記載の多成分系におけるレンガ粉末の使用であって、多成分系から調製されたモルタルマスを、水が充填された掘削孔に適用する、使用である。
【0010】
本発明において、
-「レンガ粉末」は、レンガを粉砕することによって得られる粉末を意味する。本発明の意味の範囲内で、「レンガ」という用語は、DIN EN 771-1の意味の範囲内のすべてのメーソンリーレンガ(Mauerziegel)を意味すると理解される。したがって、メーソンリーレンガは、セラミック化合物に到達するために十分に高い温度で、砂又は他の添加剤を含むか若しくは含まない粘土又は他の粘土含有物質から焼成される組積造石である。「組積造石」という用語は、組積造を製造するためのプリフォーム要素を意味すると理解される。あるいは、又はメーソンリーレンガと組み合わせて、屋根瓦を使用してレンガ粉末を製造することも可能である。
-「反応性樹脂混合物」は、ラジカル硬化性化合物、1種以上の抑制剤、1種以上の反応性希釈剤、及び任意選択で更なる添加剤の混合物を意味する;反応性樹脂混合物は、典型的には液体又は粘性であり、更に処理されて反応性樹脂成分を形成することができる。
-「抑制剤」は、樹脂又は樹脂含有組成物の合成又は貯蔵中に不要なラジカル重合を抑える物質(これらの物質は、当技術分野では「安定剤」とも呼ばれる)、又は通常は促進剤と組み合わせて、開始剤を加えた後の樹脂のラジカル重合を遅らせる物質(これらの物質は、当技術分野では「抑制剤」とも呼ばれる;この用語の具体的な意味は文脈から明らかになる)を意味する。
-「開始剤」は、(通常は促進剤と組み合わせて)反応開始ラジカルを形成する物質を意味する。
-「促進剤」は、開始剤と反応して低温でも開始剤によって大量のラジカルが調製される試薬、又は開始剤の分解反応を触媒する試薬を意味する。
-「反応性希釈剤」は、他の骨格樹脂又は反応性樹脂マスターバッチを希釈し、それによってその適用に必要な粘度を付与する、液体又は低粘度のモノマー及び骨格樹脂を意味し、骨格樹脂と反応することができる官能基を含有し、ほとんどの部分は、重合(硬化)中に硬化したマスの(例えば、モルタルの)構成成分になり、反応性希釈剤はまた、共重合性モノマーとも呼ばれる。
-「反応性樹脂成分」は、反応性樹脂、充填剤、反応性希釈剤、及び任意選択で更なる成分、例えば充填剤、添加剤の液体又は粘稠混合物を意味し、典型的には、反応性樹脂成分は、化学的留め付けのための二成分反応性樹脂系の2種の成分のうちの一方である。
-「硬化剤成分」は、ラジカル硬化性化合物の重合のための開始剤を含有する組成物を意味し、硬化剤成分は固体又は液体であってもよく、開始剤に加えて、溶媒及び充填剤及び/又は添加剤を含んでいてもよく、典型的には、硬化剤成分は、反応性樹脂成分に加えて、化学的留め付けのための二成分反応性樹脂系の2種の成分のうちの他方である。
-「二成分系」又は「二成分反応性樹脂系」は、別々に貯蔵された2種の成分、すなわち、反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)を含み、したがって、反応性樹脂成分に含まれる骨格樹脂は、2つの成分が混合された後にのみ硬化する、反応性樹脂系を意味する。
-「多成分系」又は「多成分反応性樹脂系」は、反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)を含む複数の別々に貯蔵された成分を含み、したがって、反応性樹脂成分に含まれる骨格樹脂は、成分すべてが混合された後にのみ硬化する、反応性樹脂系を意味する。
-「(メタ)アクリル…/…(メタ)アクリル…」は、「メタクリル…/…メタクリル…」及び「アクリル…/…アクリル…」化合物の両方を意味し;本発明では、「メタクリル…/…メタクリル…」化合物が好ましい。
-「エポキシ(メタ)アクリレート」は、アクリレート基又はメタクリレート基を有し、実質的にエポキシ基を含まないエポキシ樹脂を意味する。
-「アルキル」は、分岐状又は非分岐状であり得る飽和炭化水素官能基を意味し;好ましくは、C1~C7アルキル、特に好ましくはC1~C4アルキル、すなわちメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルからなる群から選択されるアルキルであり、メチル、エチル、及びtert-ブチルが特に好ましく、メチルが極めて特に好ましい。
-「ヒドロキシアルキル」は、置換基として少なくとも1つのヒドロキシル基を保有するアルキルを意味する。
-「アルケニル」は、分岐状又は非分岐状であり得る、少なくとも1つの二重結合を有する不飽和炭化水素官能基を意味し、C2~C20アルケニルが好ましく、C2~C6アルケニル、すなわち、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルからなる群から選択されるアルケニルが特に好ましく、エテニル、プロペニル、及びブテニルが特に好ましく、エテニルが極めて特に好ましい。
-「アルキニル」は、分岐状又は非分岐状であり得る、少なくとも1つの三重結合を有する不飽和炭化水素官能基を意味し、C2~C20アルキニルが好ましく、C2~C6アルキニル、すなわち、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、及びヘキシニルからなる群から選択されるアルキニルが特に好ましく、エチニル、プロピニル、及びブチニルが特に好ましく、エチニルが極めて特に好ましい。
-「低温硬化」は、反応性樹脂系が室温で完全に硬化できることを意味する。
-例えば「エポキシメタクリレート」という単語の前など、あるクラスの化合物の前の冠詞としての「a」又は「an」は、このクラスの化学化合物に含まれる1種以上の化学化合物を意味し、例えば種々のエポキシメタクリレートを意図することができる。好ましい態様では、この冠詞は、単一の化合物のみを意味し、
-「少なくとも1つ」は、数値的に「1つ以上」を意味する;好ましい態様では、この用語は数値的に「1つ」を意味する;
-「含有する(enthalten)」、「含む(umfassen)」、及び「含む(beinhalten)」は、言及されたものに加えて、更なる構成要素が存在する場合があることを意味する。これらの用語は包括的であることを意図しており、したがって、「からなる(bestehen aus)」もまた包含する。「からなる」は排他的であることを意図しており、更なる構成要素が存在し得ないことを意味する。好ましい態様では、「含有する(enthalten)」、「含む(umfassen)」、及び「含む(beinhalten)」という用語は、「からなる」という用語を意味する;
-数値の前の「およそ(etwa)」又は「およそ(circa/ca.)」は、この値の±5%、好ましくはこの値の±2%、より好ましくはこの値の±1%、特に好ましくはこの値の±0%(すなわち正確にこの値)の範囲を意味する。
【0011】
このテキストに引用されるすべての標準(例えば、DIN標準)は、本出願の提出日の時点で最新であるバージョンで使用された。
【0012】
充填剤としてのレンガ粉末
本発明によれば、本発明による反応性樹脂成分(A)は、充填剤としてレンガ粉末を含む。
【0013】
本発明の意味の範囲内の「レンガ粉末」という用語は、メーソンリーレンガの粉体化又は粉砕によって得られる粉末又は顆粒を表す。ハンマーブレーカーは、通常、メーソンリーレンガを粉体化及び/又は粉砕するために使用される。
【0014】
粉砕プロセスに続いて、レンガ粉末を、通常、篩分けプロセスにかける。篩分けプロセスにおいて規定のメッシュ幅を有する篩を選択することによって、使用されるレンガ粉末の粒径を、規定の粒径範囲に設定する。例えば、メッシュサイズ0.5mmの篩を使用した場合、レンガ粉末の粒径は≦0.5mm(粒径範囲>0mm~0.5mm)である。しかし、篩分けプロセス中のレンガ粉末の粒子の配向の違いにより、粒子のほんの一部が篩のメッシュ幅よりも大きくなる可能性もある。これは、特に非対称形状の粒子(例えば棒状)の場合に生じる。この状況を考慮するために、本発明においては、いわゆるd90値を、粒径の規格として使用する。d90値は、試料体積の90%が規格値よりも小さい粒径を有することを示すパラメータである。試料体積の残りの10%の粒径が任意に大きくないことが、本発明には重要であり、その理由は、このことがモルタルマスの加工性に問題をもたらすからである。好ましくは、使用されるレンガ粉末の粒子は、2mm、好ましくは1.5mm、更により好ましくは1.0mmの最大粒径を有する。本発明においては、d90値は、静的光散乱(デバイス:Beckman Coulter LS13 320/Dry Powder System)によって測定される。
【0015】
本発明において充填材として使用されるレンガ粉末は、好ましくは≦0.90mm、より好ましくは≦0.85mm、更に好ましくは≦0.80mmのd90値を有する。特に好ましい態様では、レンガ粉末は、0.9mm~0.2mmの範囲、好ましくは0.85mm~0.25mmの範囲、より好ましくは0.80mm~0.25mmの範囲のd90値を有する。
【0016】
使用されるレンガ粉末の最小粒子は、好ましくは≧0.1μm、より好ましくは≧0.3μmの粒径を有する。
【0017】
本発明において使用されるレンガ粉末を製造するために、0.20mm~0.90mm、好ましくは0.20mm~0.85mm、より好ましくは0.25mm~0.80mmの範囲のメッシュ幅を有する篩が、好ましくは篩分けプロセスにおいて使用される。
【0018】
本発明において使用されるレンガ粉末は、例えば、Pilosith GmbH、Peter Stadler GmbH又はKalkladen GmbHから市販されている。
【0019】
好ましくは、レンガ粉末は、1.0重量%未満、好ましくは0.2重量%未満の含水量を有する。含水量を減少させるために、レンガ粉末を、典型的には120℃のオーブン内で48時間乾燥させる。
【0020】
好ましくは、反応性樹脂成分(A)は、反応性樹脂成分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のレンガ粉末を含む。レンガ粉末は、好ましくは、本発明による反応性樹脂成分(A)中に、反応性樹脂成分の総重量に基づいて、10重量%~70重量%の重量パーセンテージ割合で、特に、20重量%~60重量%、更により好ましくは20重量%~50重量%の割合で含まれる。
【0021】
本発明の更なる態様では、レンガ粉末を硬化剤成分(B)に更に含有させることもできるが、硬化剤成分(B)はレンガ粉末を含まないことが好ましい。
【0022】
反応性樹脂
反応性樹脂成分(A)は、反応性樹脂として少なくとも1種のラジカル硬化性化合物を含む。当業者に公知であるように、エチレン性不飽和化合物、炭素-炭素三重結合を有する化合物、及びチオール-イン/エン樹脂は、ラジカル硬化性化合物として好適である。
【0023】
これらの化合物のうち、エチレン性不飽和化合物の群が好ましく、この群は、スチレン及びその誘導体、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、イタコネート、ジシクロペンタジエン化合物及び不飽和脂肪を含み、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂が特に適しており、例えば、出願欧州特許出願公開第1 935 860号、独国特許出願公開第195 31 649号及び国際公開第10/108939号に記載されている。この場合、耐加水分解性及びその優れた機械的特性のために、ビニルエステル樹脂が最も好ましい。
【0024】
好適な不飽和ポリエステルの例は、以下のカテゴリーに分類される:
(1)オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸、又はフマル酸、及び1,2-プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、又は水素化ビスフェノールAなどのグリコールに基づく;
(2)イソ樹脂:これらは、イソフタル酸、無水マレイン酸又はフマル酸及びグリコールから調製される。これらの樹脂は、オルト樹脂よりも高い割合の反応性希釈剤を含有し得る;
(3)ビスフェノールAフマル酸塩:これらは、エトキシル化ビスフェノールA及びフマル酸に基づいている;
(4)HET酸樹脂(ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸樹脂):これらは、不飽和ポリエステル樹脂の調製中に塩素/臭素含有無水物又はフェノールから得られる樹脂である。
【0025】
これらの樹脂クラスに加えて、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)と呼ばれるものは、不飽和ポリエステル樹脂としても区別できる。DCPD樹脂のクラスは、シクロペンタジエンとのディールスアルダー反応によって、上記の樹脂のタイプの1つを修飾することによって得られるか、あるいはこの樹脂は、代替的に、二酸、例えばマレイン酸とジシクロペンタジエンとの第1の反応によって、次いで、不飽和ポリエステル樹脂の通常の調製の第2の反応によって得られ、後者は、DCPDマレイン酸エステル樹脂と呼ばれる。
【0026】
不飽和ポリエステル樹脂は、好ましくは500~10,000ダルトンの範囲、より好ましくは500~5000の範囲、及び更により好ましくは750~4000の範囲の分子量Mnを有する(ISO13885-1に従って)。不飽和ポリエステル樹脂の酸価は、0mgKOH/g~80mgKOH/g樹脂の範囲、好ましくは5mgKOH/g~70mgKOH/g樹脂の範囲である(ISO 2114-2000に準拠)。不飽和ポリエステル樹脂としてDCPD樹脂を使用する場合、酸価は0mgKOH/g~50mgKOH/g樹脂が好ましい。
【0027】
本発明の意味の範囲内で、ビニルエステル樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレートも含む(メタ)アクリレート官能化樹脂と呼ばれる、少なくとも1つの(メタ)アクリレート末端基を有するオリゴマー、又はポリマーである。
【0028】
末端位置にのみ不飽和基を有するビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシオリゴマー又はエポキシポリマー(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ、又はテトラブロモビスフェノールAに基づくエポキシオリゴマー)を、例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリルアミドと反応させることによって得られる。好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリレート官能化樹脂及びエポキシオリゴマー又はポリマーをメタクリル酸又はメタクリルアミド、好ましくはメタクリル酸と反応させることによって得られる樹脂である。この種の化合物の例は、米国特許出願公開第3297745A号、米国特許出願公開第3772404A号、米国特許出願公開第4618658A号、英国特許出願公開第2217722号、独国特許出願公開第3744390号及び独国特許出願公開第4131457号から公知である。これに関しては、出願米国特許出願第2011/071234号が参照される。
【0029】
ビニルエステル樹脂は、好ましくは、500ダルトン~3,000ダルトン、より好ましくは、500ダルトン~1,500ダルトンの範囲の分子量Mnを有する(ISO 13885-1に従って)。ビニルエステル樹脂は、0mgKOH/g~50mgKOH/g樹脂の範囲、好ましくは0mgKOH/g~30mgKOH/g樹脂の範囲の酸価を有する(ISO 2114-2000に準拠)。
【0030】
エトキシル化度が2~10、好ましくは2~4のエトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート二官能性、三官能性又は高官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、又はこれらの硬化性成分の混合物は、ビニルエステル樹脂として特に適している。
【0031】
この種のエポキシ(メタ)アクリレートの例は、式(I)のものであり、
【化1】
式中、nは1以上の数を表す(異なるnの値を有する異なる分子の混合物が存在し、式(I)によって表される場合、平均として非整数も可能である)。
【0032】
プロポキシル化又は特にエトキシル化芳香族ジオール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF又はノボラック(特にジ-)(メタ)アクリレートの更なる例は、式(II)のものであり、
【化2】
式中、a及びbはそれぞれ独立して0以上の数を表すが、ただし、好ましくはこれらの値のうち少なくとも1つが0より大きく、好ましくは両方とも1以上である(異なる(a及びb)値を有する異なる分子の混合物が存在し、式(II)によって表される場合、整数でない数も平均値として可能である)。
【0033】
例えば、独国特許出願公開第2 312 559号に記載されている、ジー又はポリイソシアネート及びヒドロキシアルキルメチルアクリレートの既知の反応生成物は、米国特許3 629 187号に準拠した(ジ)イソシアネート及び2,2-プロパンビス[3-(4-フェノキシ)-1,2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリレート]の付加物、及び欧州特許出願公開第44352号に記載されているように、イソシアネート及びメタクリロイルアルキルエーテル、アルコキシベンゼン又はアルコキシシクロアルカンの付加物が非常に特に適している。これに関しては、独国特許出願公開第2312559号、独国特許出願公開第19902685号、欧州特許出願公開第0684906号、独国特許出願公開第4111828号及び独国特許出願公開第19961342号が参照される。もちろん、好適なモノマーの混合物も使用することができる。
【0034】
本発明により好ましくは使用することができるこれらの樹脂のすべては、例えば、より低い酸価、水酸基価又は無水物価を達成するために当業者に公知である方法により修飾することができ、又は可撓性ユニットを骨格などに導入することによってより柔軟にすることができる。
【0035】
更に、反応性樹脂は、過酸化物などのラジカル開始剤で重合できる他の反応性基、例えば、国際公開第2010/108939号に記載されているように、イタコン酸、シトラコン酸及びアリル基などに由来する反応性基を含み得る(イタコン酸エステル)。
【0036】
反応性樹脂成分中の反応性樹脂の割合は、反応性樹脂成分に基づいて、好ましくはおよそ10重量%~およそ70重量%、より好ましくはおよそ20重量%~およそ60重量%、更により好ましくはおよそ25重量%~およそ50重量%である。
【0037】
反応性希釈剤
反応性樹脂成分(A)は、出願欧州特許出願公開第1 935 860号及び独国特許出願公開第195 31 649号に記載されているように、好適な反応性希釈剤を含有することができる。好ましくは、反応性樹脂成分(A)は、反応性希釈剤として(メタ)アクリル酸エステルを含有し、特に好ましくは脂肪族又は芳香族C5~C15-(メタ)アクリレートが選択される。好適な例には、2-、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HP(M)A)、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及び/又はトリシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリレート、ノボラックエポキシジ(メタ)アクリレート、ジ-[(メタ)アクリロイル-マレオイル]-トリシクロ-5.2.1.0.2.6-デカン、ジシクロペンテニルオキシエチルクロトネート、3-(メタ)アクリロイル-オキシメチル-トリシクロ(oxymethyl-tricylo)-5.2.1.0.2.6-デカン、3-(メタ)シクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、及びデカリル-2-(メタ)アクリレート;ソルケタール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、が含まれる。メタクリレートは、アクリレートよりも好ましい。特に好ましいのは、2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、1,2-エタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ビスフェノールAメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、PEG200ジメタクリレート及びノルボルニルメタクリレートである。1,4-ブタンジオールジメタクリレートと2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物、又はこれら3つのメタクリレートの混合物が特に好ましい。2-及び3-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物が最も好ましい。原則として、他の従来のラジカル重合性化合物は、単独で、又は(メタ)アクリル酸エステルとの混合物で、反応性希釈剤、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アルキル化スチレン、例としてtert-ブチルスチレンなど、ジビニルベンゼン並びにビニル及びアリル化合物としてもまた使用でき、これらの代表物は標識の義務の対象ではないことが好ましい。この種のビニル又はアリル化合物の例は、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びポリアルキレングリコールビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-及びポリアルキレングリコールアリルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、及びトリメチロールプロパントリアリルエーテルである。
【0038】
反応性希釈剤は、好ましくは、反応性樹脂成分(A)に基づいて、およそ80重量%、特に好ましくはおよそ10重量%~およそ60重量%、更により好ましくはおよそ30重量%~およそ60重量%の量で反応性樹脂中に存在する。
【0039】
抑制剤
反応性樹脂又は反応性樹脂を含有する反応性樹脂成分(A)を安定化するため、及び樹脂反応性を調整するために、本発明の反応性樹脂成分(A)中に1種以上の抑制剤が存在することができる。
【0040】
当業者に公知であるように、ラジカル重合性化合物に通常使用されている抑制剤は、この目的に好適である。これらの抑制剤は、好ましくは、フェノール抑制剤及び非フェノール抑制剤、特にフェノチアジンから選択される。
【0041】
2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-メチレン-ジ-p-クレゾールなどのフェノール、ピロカテコールなどのカテコール、並びに4-tert-ブチルピロカテコール及び4,6-ジ-tert-ブチルピロカテコールなどのカテコール誘導体、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、などのヒドロキノン類、又はそれらの2つ以上の混合物は、フェノール抑制剤として適切である。これらの抑制剤は、多くの場合、市販のラジカル硬化反応性樹脂成分の構成成分である。
【0042】
フェノチアジン及び/若しくはそれらの誘導体若しくは組合せなどのフェノチアジン、又はガルビノキシル及びN-オキシルラジカルなどの安定な有機ラジカル、特にピペリジニル-N-オキシル若しくはテトラヒドロピロール-N-オキシルタイプは、好ましくは、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトキシム、サリチルオキシム、ベンゾオキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、アセトン-O-(ベンジルオキシカルボニル)オキシム、TEMPOL、TEMPOなどのオキシムなどの非フェノール抑制剤とみなされる。
【0043】
更に、独国特許第10 2011 077 248号に記載のように、ヒドロキシル基に対してパラ位で置換したピリミジノール又はピリジノール化合物が、抑制剤として使用され得る。
【0044】
使用できる安定なN-オキシラジカルの例は、独国特許出願公開第199 56 509号及び独国特許出願公開第195 31 649号に記載されているものである。この種の安定なニトロキシルラジカルは、ピペリジニル-N-オキシル若しくはテトラヒドロピロール-N-オキシル型であるか、又はそれらの混合物である。
【0045】
好ましい安定なニトロキシルラジカルは、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOLとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPONとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシル-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPOとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(3-カルボキシ-PROXYLとも呼ばれる)及びこれらの化合物のうちの2つ以上の混合物からなる群から選択され、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOL)が特に好ましい。
【0046】
1つ以上の抑制剤は、好ましくは、N-オキシルラジカル、カテコール、カテコール誘導体及びフェノチアジン、並びにそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。Tempol、カテコール、及びフェノチアジンからなる群から選択される1つ以上の抑制剤が特に好ましい。実施例で使用される抑制剤は、非常に特に好ましく、好ましくはほぼ実施例に記載された量である。
【0047】
抑制剤は、反応性樹脂の所望の特性に応じて、単独で、又はそれらの2つ以上の組合せとして使用することができる。フェノール抑制剤及び非フェノール抑制剤の組合せが好ましい。
【0048】
抑制剤又は抑制剤混合物は、当技術分野で公知である従来の量で、好ましくはおよそ0.0005重量%~およそ2重量%(最終的にそれとともに調製される反応性樹脂に基づく)、より好ましくはおよそ0.01重量%~およそ1重量%(反応性樹脂に基づく)、更により好ましくはおよそ0.05重量%~およそ1重量%(反応性樹脂に基づく)の量で加えられる。
【0049】
硬化剤成分(B)
硬化剤は、ラジカル硬化性化合物を硬化させるために使用する。
【0050】
好ましくは、硬化剤及び促進剤を含む硬化剤系を使用する。
【0051】
ここで、反応性樹脂成分(A)の促進剤を加えることができる。
【0052】
反応性樹脂の硬化は、開始剤として過酸化物を使用して開始することができる。したがって、一態様では、硬化剤系は、
-過酸化物による硬化のために通常使用される少なくとも1種の促進剤、及び
-開始剤としての過酸化物、を含有する。
【0053】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を硬化させるために使用される、当業者に公知である過酸化物のいずれかを使用することができる。このような過酸化物は、液体又は固体のいずれかの有機及び無機過酸化物を含み、また、過酸化水素を使用することも可能である。好適な過酸化物の例は、ペルオキシカーボネート(式-OC(O)OO-の)、ペルオキシエステル(式-C(O)OO-の)、ジアシル過酸化物(式-C(O)OOC(O)-の)、ジアルキル過酸化物(式-OO-の)、ヒドロペルオキシド(式-OOHの)などである。これらはオリゴマー又はポリマーとして存在し得る。好適な過酸化物の例の包括的なセットは、例えば、出願米国特許出願公開第2002/0091214A1号の段落[0018]に記載されている。
【0054】
過酸化物は、好ましくは、有機過酸化物の群から選択される。好適な有機過酸化物は、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどの第三級アルキルヒドロペルオキシド、並びにクメンヒドロペルオキシドなどの他のヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルエステル(例えば、tert-ブチルペルオキシベンゾエート)などのペルオキシエステル又は過酸、過酸化ベンゾイル、ペルアセテート及びペルベンゾエート、(ジ)ペルオキシエステルを含むラウロイルペルオキシド、ペルオキシジエチルエーテルなどのペルエーテル、メチルエチルケトンペルオキシドなどのペルケトンである。硬化剤として使用される有機過酸化物は、多くの場合、第三級ペルエステル又は第三級ヒドロペルオキシド、すなわち、-O-O-アシル又は-OOH基に直接結合している第三級炭素原子を有する過酸化物化合物である。しかし、これらの過酸化物と他の過酸化物との混合物もまた、本発明により使用することができる。過酸化物はまた、混合過酸化物、すなわち、1つの分子内に2つの異なる過酸化物保有単位を有する過酸化物であり得る。好ましい態様では、過酸化ベンゾイル(BPO)又はペルオキシ安息香酸tert-ブチルが硬化のために使用される。
【0055】
過酸化物は、純粋な形態で、又は混合物の構成成分として使用することができる。それは、典型的には、混合物の構成成分として、更に以下により詳細に説明するように、特に反応性樹脂系の硬化剤成分(B)の構成成分として使用される。実施例で使用される硬化剤成分、又は同じ構成成分を有する硬化剤成分が特に好ましい。
【0056】
有機的に置換された過硫酸アンモニウム(例えば、N’N’N’N’-テトラブチルアンモニウム又はN’N’N’-トリカプリル-N’-メチルアンモニウム過硫酸塩の使用も可能である。
【0057】
過酸化物に加えて、硬化剤系は、過酸化物を安定化するために鈍感剤を含有することもできる。対応する鈍感剤は、独国特許出願公開第3226602号、欧州特許出願公開第0432087号、及び欧州特許出願第1 371 671号から公知である。
【0058】
そのような硬化剤は、好ましくは、鈍感剤として水を含有する。水に加えて、硬化剤系はまた更なる鈍感剤を含有することができ、軟化効果を有する任意の化合物を導入しないために、水が唯一の鈍感剤として好ましい。
【0059】
過酸化物は、好ましくは、水とともに懸濁液として存在する。対応する懸濁液は、United Initiators(例えば、BP40SAQ)、Perkadox 40L-W(Nouryon)、Luperox(登録商標)EZ-FLO(Arkema)、Peroxan BP40W(Pergan)からの過酸化ベンゾイル水性懸濁液など、異なる濃度で市販されている。
【0060】
硬化剤成分は、硬化剤成分に基づいて、0.25重量%~35重量%、好ましくは、1重量%~30重量%、特に好ましくは、5重量%~25重量%の量で、過酸化物を含有することができる。
【0061】
記載された硬化剤系では、過酸化物に加えて促進剤を使用する。これは、硬化反応を促進する。この促進剤は、反応性樹脂成分を過酸化物から空間的に分離して貯蔵し、早期の分解を防ぐために、反応性樹脂成分に加える。
【0062】
好適な促進剤は、当業者に公知である。これらは、便宜上、アミンである。
【0063】
好適なアミンは、出願米国特許出願公開第2011/071234A1号に記載される以下の化合物、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジ-イソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソ-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-イソブチルアミン、トリイソブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノヘキサノール、エトキシアミノエタン、ジメチル(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルステアリルアミン、ジアルキルアミン、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ペルメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノプロパン、ジ-プロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、4-アミノ-1-ジエチルアミノペンタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、2-(2-ジエチルアミノエトキシ)エタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、トリス[2(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]アミン、3-アミノ-1-プロパノール、メチル(3-アミノプロピル)エーテル、エチル-(3-アミノプロピル)エーテル、1,4-ブタンジオール-ビス(3-アミノプロピルエーテル)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、ジ-イソ-プロパノールアミン、メチル-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、4-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパンジオール、5-ジエチルアミノ-2-ペンタノン、3-メチルアミノプロピオニトリル、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、6-アミノヘキサン酸エチルエステル、11-アミノヘキサン酸-イソプロピルエステル、シクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、ヘキサヒドロトルイジン、ヘキサヒドロベンジルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-プロピルアニリン、イソブチルアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ヒドロキシエチルアニリン、ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、クロロアニリン、アミノフェノール、アミノ安息香酸及びそれらのエステル、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、α-フェニルエチルアミン、キシリジン、ジ-イソ-プロピルアニリン、ドデシルアニリン、アミノナフタレン、N-メチルアミノナフタレン、N,N-ジメチルアミノナフタレン、N,N-ジベンジルナフタレン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、ジアミノ-ジメチル-ジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノビフェニル、ナフタレンジアミン、ベンジジン、2,2-ビス(アミノフェニル)プロパン、アミノアニソール、アミノチオフェノール、アミノジフェニルエーテル、アミノクレゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、ヒドロキシエチルモルホリン、N-メチルピロリジン、ピロリジン、ピペリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、ピロール、ピリジン、キノリン、インドール、インドレニン、カルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、ピリミジン、キノキサリン、アミノモルホリン、ジモルホリンエタン、[2,2,2]-ジアザビシクロオクタン、及びN,N-ジメチル-p-トルイジンから選択される。
【0064】
好ましいアミンは、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(ヒドロキシアルキル)アリールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)トルイジン、N,N-ビス(3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N,N-ジブトキシヒドロキシプロピル-p-トルイジン、N-メチル-N-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、N-エチル-N-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、及び類似体のo-若しくはm-トルイジン、及び4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルメタンなどの対称又は非対称に置換されたアニリン誘導体及びトルイジン誘導体、並びにN,N-ビス(ヒドロキシ)アルキルアリールアミン、かつ/又は染料クリスタルバイオレット又はマラカイトグリーンのロイコ形態である。
【0065】
高分子アミン、例えば、N,N-ビス(ヒドロキシアルキル)アニリンとジカルボン酸との重縮合によって、又はエチレンオキシドとこれらのアミンとの重付加によって得られるものなどもまた、促進剤として好適である。
【0066】
好ましい促進剤は、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トルイジン、及びパラ-トルイジンエトキシレート(Bisomer(登録商標)PTE)である。
【0067】
この好ましい態様では、反応性樹脂成分は、樹脂成分に基づいて、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、特に好ましくは0.1重量%~3重量%の量の促進剤を含有することができる。
【0068】
あるいは、過酸化物を含まない硬化剤系を硬化のために使用することができ、この系は以下の構成成分:
-促進剤としての少なくとも1種のマンガン化合物と
-開始剤としての1,3-ジオキソ化合物、とを含む。
【0069】
この目的のために、独国特許出願公開第10 2011 078 785号が参照される。
【0070】
好適な1,3-ジオキソ化合物は、一般式(III)の化合物であり、
【化3】
式中、
R
1及びR
3は、それぞれの場合において、それぞれ独立して、非分岐状若しくは分岐状の、任意選択で置換されたC
1~C
4アルキル基又はC
1~C
4アルコキシ基であり、
R
2は、非分岐状若しくは分岐状の、任意選択で置換されたC
1~C
4アルキル基又はC
1~C
4アルコキシ基であるか、あるいはR
1又はR
3と一緒になって、任意選択で置換された5員若しくは6員の脂肪族環を形成し、この脂肪族環は、その環内若しくは環上にヘテロ原子を任意に含む。
この硬化剤系では、式(III)の化合物において、2個のカルボニル基を互いに結合する炭素原子が、この炭素原子に結合した水素原子をちょうど1個有することが必須である。
【0071】
一般式(III)の化合物は、好ましくは式(IV)の化合物であり、
【化4】
式中、独立して、X=C、O、n=1、2であり、R
3は、非分岐状若しくは分岐状の、任意選択で置換されたC
1~C
4アルキル基又はC
1~C
4アルコキシ基である。Xは、より好ましくはOである。nは、より好ましくは1である。R
3は、より好ましくはC
1~C
4アルキル基である。
【0072】
特に好ましくは、式(III)の化合物は、2-メチル-2,4-ペンタンジオン、α-アセチルブチロラクトン、シクロペンタノン-2-カルボン酸エチルエステル又はシクロペンタノン-2-カルボン酸メチルエステルであり、α-アセチルブチロラクトンが最も好ましい。
【0073】
マンガン化合物、特にマンガン塩又はマンガン錯体を、促進剤として使用する。マンガン塩及び/又はマンガン錯体の混合物を使用することも可能である。
【0074】
マンガン塩又はマンガン錯体、特に1,3-ジオキソ化合物、例としてアセチルアセトネート(ペンタン-2,4-ジオン)、及びカルボン酸、例としてナフテネート、オクトエート、エチルヘキサノエート若しくは飽和脂肪酸に基づく、マンガン塩又はマンガン錯体が特に好適であることが判明している。マンガン化合物に関して制限はない。マンガン化合物は、好都合には非極性溶媒に可溶性である。Mn(II)オクトエートが、特に好適である。
【0075】
同様に代替的に、以下の構成成分:
-促進剤としての少なくとも1種の金属塩と
-開始剤としてのチオール及び/又はチオールエステル基を含有する少なくとも1種の化合物と、を含む硬化剤系を、硬化のために使用することができる。
【0076】
2つの構成成分の組合せ又は混合の結果として、これまで慣用であったラジカル形成剤の代わりに、非芳香族二重結合、例えばオレフィン二重結合、例えばアクリレート又はメタクリレートの重合を引き起こすことができるラジカルを形成することができる。
【0077】
チオールの例は、チオグリセロール、メチル-、エチルメルカプタン及び高級同族体、例えばドデシルメルカプタン、ジメルカプタン(dimercaptane)、例えばジメルカプトプロパンスルホン酸、ジメルカプトコハク酸、ジチオスレイトール、ポリ(エチレングリコール)ジチオール、一般式HS-[CH2-CH2-O]n-CH2-CH2-SH、(式中、nは0~10の数を表す);チオール末端基を有する液体ポリスルフィドポリマー、例えば、Akzo Nobel製のThioplast Gタイプ;ポリメルカプタン硬化剤及びポリメルカプタン架橋剤、例えば、S.I.Q.-Kunstharze GmbH製のSIQ-Amin999;チオール末端基を有するモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタオール及び/又は他のポリオールからのエトキシル化及び/又はプロポキシル化アルコール、例えば、Cognis製のCapcure 3-800、又は特に好適なチオールとして以下に言及される化合物、である。特に好適なチオールエステルとして、ここではオクタンチオール酸-S-[3(トリエトキシシリル)プロピル]エステルを挙げることができる。好適なチオールの例は、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)、異なるエトキシル化度を有するエトキシル化トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(例えば、Bruno Bock製のETTMP700及びETTMP1300)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0078】
更なる代替として、以下の構成成分:
-促進剤としての少なくとも1種の金属塩と
-開始剤としての式(V)の少なくとも1種のCH-酸性化合物、とを含む硬化剤系を硬化のために使用することができる。
【化5】
(式中、
(i)
-Aは、-C(R
1)(R
2)-を表し、
-X-は結合を表し、-NR
3-若しくは-(CR
4R
5)
p-、又は-O-を表し、
Yは、NR
6若しくは(CR
7R
8)
q若しくはOを表し、
ここで、XがOを表す場合、YもOを表し;
ここで、好ましくは、Xは(CR
4R
5)
pを表し、YはCR
7R
8を表し、
又はXはNR
3を表し、YはNR
6を表し;
Z
1は、O、S、S=O若しくはS(=O)
2を表し、
Z
2は、O、S、S=O若しくはS(=O)
2を表し、
Z
3は、O、S、S=O若しくはS(=O)
2若しくはR
9及びR
10を表し、
pは、1、2若しくは3、好ましくは1若しくは2を表し、
qは、1、2若しくは3、好ましくは1を表し;
官能基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルを表し、それぞれ非置換又は置換及び/又はヘテロ原子(C原子の代わりに)であり;
好ましくは、O、N、例としてNH又はN-アルキル、及びSから選択され、ただし、官能基R
1及びR
2の少なくとも1つは水素を表し、
あるいは
(ii)
架橋を形成する結合である-C(=Z
3)-が不存在である、開鎖化合物、
-A-は、-C(R
1)(R
2)-を表し、X及びYは、それぞれ独立して、それぞれの場合において、非分岐状若しくは分岐状、非置換若しくは置換C
1~C
4アルキル基若しくはC
1~C
4アルコキシ基を表し、これは、任意選択でヘテロ原子(C原子の代わりに;特に、O、N、例として、NH又はN-アルキル、及びSから選択される)を有するか、又は好ましくは、それぞれの場合において、非置換若しくは置換C
1~C
4アルコキシカルボニルメチル基若しくはC
1~C
4アルキルカルボニルメチル基を表し、これは、任意選択でヘテロ原子(C原子の代わりに;特に、O、N、例としてNH若しくはN-アルキル、及びSから選択される)を有し、
R
1及びR
2は両方とも水素であり
Z
1及びZ
2は、上記の意味を有し;
又は、Xは、各場合において、非分岐状若しくは分岐状、非置換若しくは置換C
1~C
4アルキル基若しくはC
1~C
4アルコキシ基若しくはC
1~C
4アルコキシカルボニルメチル基若しくはC
1~C
4アルキルカルボニルメチル基を表し、これは、任意選択でヘテロ原子(C原子の代わりに;特に、O、N、例としてNH若しくはN-アルキル、及びSから選択される)を有し、
Y及びZ
2は、結合炭素原子と一緒になって、-CNであり、
Z
1は上記の意味を有し、
R
1及びR
2は、各場合において上で定義した通りであるが、ただし、官能基の少なくとも1つは水素である)、
及び/又はその塩。
【0079】
このような化合物の好ましい例は、2,4,6-ピリミジントリオン誘導体であり、バルビツール酸(2,4,6-ピリミジントリオン)自体、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸(1-(フェニルメチル)-5-フェニル-2,4,6-ピリミジントリオン)、5-ブチルバルビツール酸(5-ブチル-2,4,6-ピリミジントリオン)、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸(1-シクロヘキシル-5-エチル-2,4,6-ピリミジントリオン)又は2-チオバルビツール酸(4,6-ジヒドロキシ-2-メルカプトピリミジン)、1,3-シクロヘキサンジオン、2-メチル-1,3-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロペンタンジオン、2-メチル-1,3-シクロペンタンジオン、4,4-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン(ジメドン)、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン又は2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン、3-オキソグルタル酸ジメチルエステル、及び/又はジエチル-1,3-アセトンジカルボキシレート、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸メチル若しくはシアノ酢酸2-エチルヘキシル、あるいは独国特許出願公開第10 2011 078 785号に記載されている1,3-ジオキソ化合物である。
【0080】
どちらの場合も、金属錯体及び金属酸化物も含む、金属塩の形態で促進剤として使用される成分は、好ましくは1種以上の金属塩、又は特に有機酸及び/又は無機酸と、例えばコバルト、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、スズ、ビスマス、又は好ましくはバナジウム、マンガン、銅若しくは鉄、あるいはそれらの2種以上の混合物から選択される金属との塩であり、ここで、有機酸は好ましくは飽和しており、ここで、任意選択で、上記金属の群からの金属含有量を有する1種又は2種の共促進剤の存在下で、特に、無機酸及び/又はカルボキシレート官能基、例としてCH3、C2~C20アルキル、C6~C24アリール官能基又はC7~C30アラルキル官能基を有するカルボキシレート、例えばオクタノエート、例えば2-エチルヘキサノエート(イソオクタノエート)、更なるネオデカノエート又はアセチルアセトネートを有する塩及び錯体の形態で、バナジウム及び鉄、又は特にマンガン及び銅が好ましい。特に好ましいのは、炭酸マンガン又はカルボン酸マンガン、例として酢酸Mn又はオクタン酸Mn、カルボン酸銅、例えばオクタン酸銅又はナフテン酸銅、キノリン酸銅、カルボン酸鉄、例としてオクタン酸鉄及び/又はカルボン酸バナジウム及び/又は無機酸を有する金属塩の群、例えば塩化鉄、硫酸鉄及び塩化銅を含む群である。
【0081】
更なる代替では、以下の構成成分:
-促進剤としての少なくとも1種の金属塩と
-開始剤としての少なくとも1種のアルデヒド及び/若しくはケトン並びに少なくとも1種の第一級アミン、並びに/又は
-b2)式(VI)の1種以上のイミン構造増分を含む少なくとも1種のイミン、
【化6】
(式中、それぞれ独立して
Qは、使用されるアミンの有機官能基(各場合において)を表すか、又は水素を表し;
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素及び/又は非置換若しくは置換の、単分岐状若しくは多分岐状若しくは直鎖の有機官能基であって、任意選択で二重結合及び/又はヘテロ原子を有しており、少なくとも1つの脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式若しくは複素環式分子構造、又は上述の分子構造の2つ以上の組合せを含む有機官能基である)
及び/又はその塩、を含む硬化系を硬化のために使用することができる。
【0082】
式(VI)のイミン構造増分を含有するイミンの分子量は、好ましくは2000ダルトン(g/mol)以下、例えば1000ダルトン以下である。アルデヒド及び/又はケトンはそれぞれ、好ましくはこれらの範囲の分子量を有する。
【0083】
この硬化剤系は、完成した硬化剤組成物(例えば、マイクロカプセル化された構成成分a)及びb)を有する)として存在し得るか、又は好ましくは、合成樹脂組成物の更なる構成成分との混合の間にのみ(組成物(混合物)として効果的に)、例えば、使用の間に形成することができる。
【0084】
含有又は使用されるアルデヒド、ケトン、アミン、アルジミン又はケチミンは、公知であるか、又はそれ自体公知のプロセスによって調製/得ることができるか、又は好ましくはその後に得られる。イミンは、適用前に(例えば、アンカー要素を留め付けするために)、又は「in situ」でのみ合成又は入手することができる。したがって、本発明による可能なプロセスは、(t)別個の事前調製、及び/又は(tt)アルデヒド/ケトン及び第一級アミンを留め付け系の異なる成分に分割して、例えば適用部位で混合する「in situ」調製、及び/又は(ttt)アルデヒド/ケトン及び第一級アミンを関連する成分を調製するときに一緒に混合する留め付け系の成分における「in situ」調製である。特に、(t)によるイミンは、1種以上のアルデヒド又はケトンによる1種以上のアミンからの水の脱離を伴う縮合によって得られる。別個の事前変換(t)のための対応する反応条件は、当業者に公知である。
【0085】
好適なアミン及びアルデヒド又はケトンの例は、特に独国特許出願公開第10 2004 035 542号、欧州特許出願公開第1 329 469号、欧州特許出願公開第1 975 190号及び欧州特許出願公開第2 017 260号に見られる。
【0086】
そのまま加えられる、又はイミンの合成のために加えられる第一級アミンは、例えば、モノー、ジー若しくはポリアミン、又はそれらの2種以上の混合物を含む。使用可能なモノ-、ジ-及び/又はポリアミンは、直鎖状及び分岐状の両方であってもよい。モノ-及び/又はジ-及び/又はポリアミンの分子構造は、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、脂肪族-芳香族及びシラン/シロキサン分子構造又はそれらから独立して選択される2つ以上を含有してもよい。第一級及び/又は第二級及び第三級アミノ基が分子中に存在することができるが、アルジミン又はケチミンを形成するためには少なくとも1つの第一級アミノ基(-NH2)が存在しなければならない。
【0087】
モノ-、ジ-、又はポリアミンは、好ましくは、アルキル-又はアルキレン(モノ又はジ)アミン(例として、2-メチルペンタンジアミン、又は2,2,4-若しくは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン)の群から、ヘテロアルキル-又はヘテロアルキレン(モノ又はジ)アミン(例として、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、Huntsman Corpから市販されているアミン官能化ポリオキシアルキレン[Jeffamine]、又は例えば:トリエチレンテトラミン及び/又は高級同族体)の群から、シクロアルキル-又はシクロアルキレン(モノ又はジ)アミン(例として、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、TCD-ジアミン)の群から、ヘテロアルキルアルキル-又はヘテロシクロアルキレン(モノ又はジ)アミン(例として、アミノエチルピペラジン)の群から、アミノール又はアミノアルコール(例として、1,3-ジアミノプロパン-2-オール)の群から、及び脂肪族-芳香族(モノ又はジ)アミン(例として、1,3-若しくは1,4-ベンゼンジメタンアミンなど)の群から、及び/又はアミノシラン化充填剤の群から選択される。
【0088】
更に好ましくは、アミノアミド、ポリアミノアミド、マンニッヒ塩基及びアミン付加物の群からのモノ-、ジ-又はポリアミンである(例えば、欧州特許出願公開第0 387 418号に記載されているようなエポキシアミン付加物、イソシアネートアミン付加物[例えば、イミン合成の未反応アミノ基から、又は上記のアミノールからのもの、アミノールを使用する場合、好ましくはまず第1に、イミンの反応が起こり、続いてイソシアネートへの付加が行われる]、ブヘラ付加物及びマイケル付加物)。
【0089】
少なくとも1つの加水分解可能な基、例としてアルコキシ、例えばメトキシ又はエトキシ-ケイ素に結合している-を含むアミノアルキルシランも、アミンとして特に興味深い。これらは加水分解及び縮合し(得られる反応水又は供給される水によって)、したがって複数のアミノ基を保有し、ポリマーのREACH定義を満たすオリゴマーを形成することができる。したがって、このようなアミノアルキルシランからのイミンは、本発明の特に好ましい態様の基礎を形成する。この種の好ましいアミノアルキルシランは、例えば、以下の化合物:アミノアルキルトリ-若しくはジアルコキシシラン、例として3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN-(アミノアルキル)アミノアルキルトリ-若しくは-ジアルコキシシラン、例としてN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、更にウレイドアルキルトリメトキシシラン、例として3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、の1種以上を含む群から選択される。
【0090】
本発明の更に特定の態様では、第一級アミノ基を保有するアミノシラン処理充填剤、例としてアミノシラン処理石英粉末(例えば、Quarzwerke GmbH製のSilbond AST(R))、アミノシラン処理ケイ質土(例えばHoffmann Mineral製のAktisil AM(R))又はアミノシラン処理ヒュームドシリカを提供し、ポリアミンとして含めることができる。
【0091】
そのまま、又はアルジミン及び/又はケチミンの合成用に使用することができるアルデヒド及びケトンは、特に式(VII)のものである。
【化7】
(式中:
R
2、R
3は、それぞれ独立して、水素及び/又は非置換若しくは置換及び/又は単分岐状若しくは多分岐状若しくは直鎖有機官能基であり、任意選択で二重結合及び/又はヘテロ原子を有し、脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、複素環式分子構造及び/又は上述の分子構造の組合せを含むことができる)
【0092】
好ましくは、アルデヒド及び/又はケトンは、カルボニル基に属するアルファ炭素原子上に少なくとも1個以上の(第一級及び/又は第二級)水素原子を有する化合物である。そのようなアルデヒドの例は、プロパナール、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、若しくはメトキシアセトアルデヒド、又は3,7-ジメチル-6-オクテナール(シトロネラール)若しくは3,7-ジメチル-7-ヒドロキシオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)である。このようなケトンの例としては、メチルイソブチルケトン、アセトン、又はメチルエチルケトン若しくは6-メチル-5-ヘプテン-2-オンが挙げられる。
【0093】
アルデヒド及び/又はケトンは、特に好ましくは、カルボニル基に属するアルファ炭素原子上に二重結合及び/又は分岐を有する化合物である。結果として、特に好ましいアルデヒド及び/又はケトンは、カルボニル基に属するアルファ炭素原子上に(第三級)水素原子のみを有する。特に好ましいアルデヒドの例は、イソブチルアルデヒド、2-エチルヘキサナール、2-メチルブタナール、2-エチルブタナール、2-メチルバレルアルデヒド、2,3-ジメチルバレルアルデヒド、シクロヘキシルカルボキシアルデヒド、又は3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン(シトラール)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール(リリアール、リスメラール)、テトラヒドロフラン-3-カルボキシアルデヒド、テトラヒドロ-2-フランカルボキシアルデヒド、4-ホルミルテトラヒドロピラン、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルバルデヒド又はテトラヒドロ-ピラン-3-カルバルデヒドである。特に好ましいケトンの例としては、ジイソプロピルケトン、3-メチル-2-ペンタノン、2-メチルシクロヘキサノン又はベータ-イオノンが挙げられる。
【0094】
好適なアミン、好ましい及び特に好ましいアルデヒド及び/又はケトンについての上述の例は、好適なアミン、アルデヒド及び/又はケトンの範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ、説明のために、その特徴が好適である、好ましい及び特に好ましいと定義される上述の構造的特徴を有する化合物のいくつかの例のみを示すものである。
【0095】
上述の例に記載されたアルデヒド、ケトン又は合成されたアルジミン及び/又はケチミン、並びに特定のアミン、ケトン及びアルデヒド、又はこれらの2種以上の混合物は、そのまま加えられる、及び/又はアルジミン及び/又はケチミン、又はこれらの2種以上の混合物の合成に使用されるが、これらも特に好ましい。
【0096】
更に、反応性樹脂成分(A)は、通常の充填剤及び/又は添加剤を含有してもよい。いくつかの物質は、充填剤、及び任意選択で修飾された形態で添加剤の両方として使用することができることに留意されたい。例えば、ヒュームドシリカは、極性の非後処理形態で充填剤として好ましくは使用され、また、非極性の後処理形態で添加剤として好ましくは使用される。充填剤又は添加剤として全く同じ物質を使用できる場合、その総量は本明細書で決定された充填剤の上限を超えてはならない。
【0097】
建設用途、特に化学的留め付け(接着系アンカー)のための反応性樹脂成分を調製するために、本発明において使用されるレンガ粉末に加えて、更に従来の充填剤を反応性樹脂に加えることができる。これらの充填剤は、例えば以下に記載されるように、典型的には無機充填剤である。
【0098】
充填剤(レンガ粉末及び従来の充填剤)及び添加剤の合計割合は、反応性樹脂成分に基づいて、好ましくはおよそ50重量%~およそ80重量%、より好ましくはおよそ55重量%~およそ75重量%、更により好ましくはおよそ60重量%~およそ70重量%である。
【0099】
従来の(更なる)充填剤
本発明により使用されるレンガ粉末に加えて、使用される充填剤は、従来の充填剤、好ましくは、鉱物若しくは鉱物様充填剤、例として石英、ガラス、砂、石英砂、石英粉末、磁器、コランダム、セラミック、タルク、シリカ(例えば、ヒュームドシリカ、特に極性の非後処理ヒュームドシリカ)、ケイ酸塩、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ)、粘土、二酸化チタン、チョーク、重晶石、長石、玄武岩、水酸化アルミニウム、花崗岩若しくは砂岩、サーモセットなどの高分子充填剤、石膏、クイックライム、セメント(例えば、アルミン酸塩セメント(しばしばアルミナセメントと呼ばれる)若しくはポルトランドセメント)などの水硬性充填剤、アルミニウムなどの金属、カーボンブラック、及び更なる木材、鉱物若しくは有機繊維など、又はそれらの2つ以上の混合物である。充填剤は、任意の所望の形状、例えば粉末として、又は成形体として、例えば円筒形、環状、球形、プレートレット、棒、サドル若しくは結晶形状、又は繊維(繊維状充填剤)のような他の形状で存在してもよく、対応するベース粒子は、好ましくは、最大直径がおよそ10mmであり、最小直径がおよそ1nmである。これは、直径が約10mm又は約1nmを超える約10mm未満の任意の値であることを意味する。最大直径は、好ましくは直径でおよそ5mmの直径、より好ましくはおよそ3mm、更により好ましくはおよそ0.7mmである。およそ0.5mmの最大直径が極めて特に好ましい。より好ましい最小直径は、およそ10nm、更により好ましくはおよそ50nm、極めて特に好ましくはおよそ100nmである。この最大直径と最小直径との組合せから生じる直径範囲が特に好ましい。ただし、球状の不活性物質(球形)は、好ましい、より顕著な強化効果を有する。好ましくは球形のコアシェル粒子もまた、充填剤として使用することができる。
【0100】
好ましい充填剤は、セメント、シリカ、石英、石英砂、石英粉末、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。反応性樹脂成分(A)については、セメント、ヒュームドシリカ、特に未処理の極性ヒュームドシリカ、石英砂、石英粉末、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される充填剤が特に好ましい。
【0101】
添加剤
更に考えられる添加剤は、レオロジー添加剤、例として任意選択で有機的又は無機的に後処理されたヒュームドシリカ(まだ充填剤として使用されていない場合)、特に、非極性様式で後処理されたヒュームドシリカ、ベントナイト、アルキルセルロース及びメチルセルロース、ヒマシ油誘導体、可塑剤、例としてフタル酸又はセバシン酸エステル、安定剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー助剤、湿潤剤、例えば、それらの混合の制御を改善するために、成分を異なって染色するための染料若しくは、特に、顔料などの着色添加剤、又はそれらの2つ以上の混合物である。独国特許出願公開第102010008971号による無機酸及び/又は有機酸などのpHを調節するための薬剤、具体的には酸性基を有するコポリマー、例えばリン酸のエステルも使用することができる。非反応性希釈剤(溶媒)、例として低アルキルケトン、例えばアセトン、ジメチルアセトアミドなどのジ低アルキル低アルカノイルアミド、キシレン若しくはトルエンなどの低アルキルベンゼン、フタル酸エステル若しくはパラフィン、又は水、又はグリコールもまた、関連する成分(反応性樹脂モルタル、硬化剤)に基づいて、好ましくは最大30重量%、例えば1重量%~20重量%の量で存在し得る。更に、樹脂成分と硬化剤成分との間の相溶性を改善するための薬剤、例として、イオン性、非イオン性又は両性界面活性剤;石鹸、湿潤剤、洗剤;ポリアルキレングリコールエーテル;脂肪酸の塩、脂肪酸のモノグリセリド又はジグリセリド、糖グリセリド、レシチン;アルカンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、脂肪アルコールサルフェート、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールエーテルサルフェート、スルホン化脂肪酸メチルエステル;脂肪アルコールカルボキシレート;アルキルポリグリコシド、ソルビタンエステル、N-メチルグルカミド、スクロースエステル;アルキルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールカルボキシレート;第四級アンモニウム化合物、エステルクワット、第四級アンモニウム化合物のカルボキシレート、も使用することができる。
【0102】
更に、表面修飾ヒュームドシリカの形態の金属スカベンジャーを反応性樹脂成分に含めることができる。好ましくは、少なくとも1つのチキソトロピー剤が添加剤として存在し、特に好ましくは有機的又は無機的に後処理されたヒュームドシリカ、非常に特に好ましくは無極性様式で後処理されたヒュームドシリカ、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、特に好ましくは、無極性様式で後処理された実施例で使用されるヒュームドシリカである。
【0103】
これに関して、国際公開第02/079341号及び国際公開第02/079293号、並びに国際公開第2011/128061号が参照される。
【0104】
一態様では、反応性樹脂成分は、接着促進剤を更に含み得る。接着促進剤を用いることにより、掘削孔壁とモルタルマスとの架橋が改善され、硬化状態での接着が増加する。これは、例えばダイヤモンドドリルを使用して掘削された掘削孔で二成分留め付けコンパウンドを使用する場合に重要であり、破壊結合強度を増加させる。好適な接着促進剤は、更なる反応性有機基で官能化され、ポリマーネットワークに組み込むことができるシランの群から選択される。この群は、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、官能化テトラエトキシシラン、官能化テトラメトキシシラン、官能化テトラプロポキシシラン、官能化エチル又はプロピルポリシリケート、及びそれらの2つ以上の混合物を含む。これに関して、独国特許出願第10 2009 059210号が参照され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
接着促進剤は、反応性樹脂成分(A)の総重量に基づいて、約1重量%~約10重量%の量で好都合に含まれる。
【0106】
更に、反応性樹脂成分(A)はまた、チキソトロピー剤、好ましくは非極性様式で後処理されたヒュームドシリカ、特に好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)で後処理されたヒュームドシリカ、非常に特に好ましくは、無極性様式で後処理されたヒュームドシリカを含むことが好ましい。
【0107】
特に好ましい態様では、反応性樹脂又は反応性樹脂成分(A)の構成成分は、本発明による上述の例で述べた構成成分のうちの1つ以上である。本発明による個々の例に記載されているのと同じ構成成分を含むか、又は同じ構成成分からなる、好ましくはほぼこの例に記載されている比率の反応性樹脂又は反応性樹脂成分が特に好ましい。
【0108】
本発明の更なる要旨は、本発明による反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)を含む多成分系であり、硬化剤成分(B)は、反応性樹脂用の硬化剤を含む。
【0109】
本発明による多成分系は、カートリッジシステム又はフィルムパウチシステムの形態であってもよい。系の使用目的では、成分は、機械的な力の適用下で、又はガス圧によって、カートリッジ、又はフィルムパウチから排出され、好ましくは構成成分が通るスタティックミキサーによって、ともに混合され、掘削孔に導入され、その後、ねじ山付きアンカーロッドなどの取り付けられるべきデバイスが、硬化反応性樹脂を含む掘削孔に導入され、それに応じて調整される。
【0110】
本発明による多成分系は、主に建設部門で、例えば、ポリマーコンクリートとして、合成樹脂ベースのコーティングマスとして、又は冷硬化道路標示として、コンクリートの補修用に使用される。この系は、掘削孔、特に、種々の基材(被留め付け材)、特に鉱物基材、例としてコンクリート、気泡コンクリート、レンガ、石灰石、砂岩、天然石、ガラスなど、及び金属基材、例として鋼鉄から作製されたもの、の掘削孔に、アンカー、鉄筋、ねじなどのアンカー手段を化学的に留め付けするのに特に好適である。一態様では、掘削孔の基材は、コンクリートであり、アンカー手段は、鋼又は鉄からなる。更なる態様では、掘削孔の基材は、鋼であり、アンカー手段は、鋼又は鉄からなる。
【0111】
本発明による多成分系は、特に、異なる基材の掘削孔内にアンカー手段を留め付けるために、及び構造的な結合のために使用される。一態様では、掘削孔の基材は、コンクリートであり、アンカー手段は、鋼又は鉄からなる。更なる態様では、掘削孔の基材は、鋼であり、アンカー手段は、鋼又は鉄からなる。好ましくは、鋼掘削孔は溝を有する。
【0112】
本発明の更なる要旨は、反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)を有する多成分系における充填剤としてのレンガ粉末の、多成分系から調製されたモルタルマス及び留め付け手段を含む留め付け装置の性能を向上させるための使用であって、多成分系から調製されたモルタルマスを、水が充填された掘削孔に適用する、使用である。
【0113】
好ましい態様では、反応性樹脂成分(A)は、反応性樹脂としてラジカル硬化性化合物を含む。前述のすべての態様は、ラジカル硬化性化合物に適用される。
【0114】
代替の態様では、反応性樹脂成分(A)は、硬化性エポキシ樹脂を含むことも可能である。これらの場合、エポキシ樹脂を硬化させるためのアミンは、通常、多成分系における硬化剤成分(B)として使用される。特に好ましい反応性樹脂成分(A)及び硬化剤成分(B)は、国際公開第2020/058018号、国際公開第2020/058017号、国際公開第2020/058015号及び国際公開第2020/05816号に記載されており、これらの内容は、本明細書によって本出願に組み込まれる。
【0115】
本発明は、いくつかの実施例を参照して、以下でより詳細に説明される。すべての実施例及び図面は、特許請求の範囲の技術的範囲に含まれる。しかし、本発明は、実施例及び図面に示される特定の実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0116】
特に明記しない限り、ここに記載されている組成物のすべての構成成分は市販されており、通常の商業的品質で使用された。
【0117】
特に明記しない限り、実施例に示されているすべての%データは、計算の基礎として、記載されている組成物の総重量に基づく。
【0118】
使用されるPEG200DMAに関して、エチレングリコール繰り返し単位nの数は一意ではないことに留意すべきである。製品名PEG200DMAから、モル質量200g/molのポリエチレングリコールがモノマーに基づいていると結論付けることができる。これは、式HO-(-CH2-CH2-O-)n-Hの場合、n=4.2の値に相当する。モル質量における繰り返し単位(-CH2-CH2-O-)nのみを考慮すると、n=4.5と指定することができる。PEG200ジメタクリレートが調製されるPEG200は工業製品であり、引用されたジメタクリレートの製造業者(Sartomer、Evonik並びにGEO Speciality Chemicals)は、それらの技術データシートにおいてn=4又はn≒4を示しているので、主にこの仕様が想定される。
【0119】
実施例及び参考文献(略語の説明)で使用された構成成分のリスト、並びにそれらの商品名及び供給元:
【表1】
【表2】
【0120】
異なる製造業者からのレンガ粉末をレンガ粉末として使用し、使用前に篩分けした。対応するメッシュサイズを有する篩(Retsch GmbH)をこの目的のために使用した。使用したレンガ粉末を以下の表に示す:
【表3】
【0121】
すべてのレンガ粉末をオーブン中で120℃の温度で48時間乾燥させた。レンガ粉末は、0.2重量%未満の含水量を有する。
【0122】
反応性樹脂混合物HAの調製
表4に含まれる関連する反応性樹脂混合物(HA)のすべての構成成分をプラスチックビーカーに加え、溶液が形成されるまで室温にて磁気撹拌器上で撹拌した。
【表4】
【0123】
反応性樹脂A1~A19の調製
反応性樹脂成分A1~A19を製造するために、以下の表に示された構成成分をそれぞれ合わせ、ディゾルバー(PC実験室システム、タイプ0.3-1)中で、3500rpmで8分間、真空下(≦100mbar)にて、55mmのディゾルバーディスク及びエッジスクレーパーを用いて混合した。
【表5】
【表6】
【0124】
硬化剤成分(B)の調製
実施例で使用した硬化剤成分(B)は、表7に示したすべての構成成分を加え、ディゾルバー(タイプLDV 0.3-1)中で、3500rpmで8分間、真空下(圧力≦100mbar)、55mmのディゾルバーディスク及びエッジスクレーパーを用いて混合することによって調製した。
【表7】
【0125】
モルタルマスの調製
モルタルマスを調製するために、各場合において、表8による反応性樹脂成分A1~A4のうちの1つ及び硬化剤成分B1~B5のうちの1つを特定の体積比で硬質カートリッジに充填し、スタティックミキサー(HIT-RE-M、Hilti AG)を介してカートリッジから水が充填された掘削孔に適用した。
【0126】
荷重値(B8値)の決定
硬化したモルタルマスの結合強度(荷重値)を決定するために、高強度アンカーねじ山付きロッドM12を使用し、これを、約20℃で、関連する化学的モルタルマスにより、C20/25コンクリートにおいて14mmの直径及び72mmの掘削孔深さを有する、水が充填された掘削孔内に留め付けた。平均破壊荷重は、ねじ山付きアンカーロッドをしっかりと支えて中央から引き抜くことによって決定した。5本のねじ山付きアンカーロッドをそれぞれ留め付けて、室温で24時間の硬化時間後に荷重値を決定した。この場合に決定された平均荷重値(5回の測定の平均)を、以下の表8に列挙する。
【表8】
【0127】
表8の結果は、化学的留め付けの調製用の、モルタルマスにおける充填剤としてのレンガ粉末の本発明による使用によって、レンガ粉末を全く含有しない参照例と比較して、水が充填された掘削孔における荷重値の増加を達成することができることを示す。
【0128】
以下の表は、反応性樹脂成分(A)中の少なくとも1種のエポキシ樹脂及び硬化剤成分(B)中のエポキシ樹脂のための硬化剤としての少なくとも1種のアミンを含む多成分系の構成成分を示す。
【0129】
反応性樹脂成分(A)、硬化剤成分(B)、これらの2つの成分から調製された多成分系、及び対応するモルタルマスを、国際公開第2020/058018号の実験部分と同様に調製した。モルタルマスの適用及び引抜き試験は、既に上述したように行った。
【表9】
【国際調査報告】