(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コークス炉プラントの運転方法
(51)【国際特許分類】
C10B 45/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
C10B45/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524379
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022079312
(87)【国際公開番号】W WO2023072742
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリス、アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】カルカーニョ、リカルド
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012GB00
(57)【要約】
(a)高炉ガス流(B)及びコークス炉ガス流(C)を提供する;(b)CO変換ユニット(30)で高炉ガス流(B)の一部(B1)を処理して、処理された高炉ガス流を得る;(c)処理された高炉ガス流に、CO
2-枯渇ユニット(40)において処理を施して、1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)を得る;(d)1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)と高炉ガス流(B)の一定割合(B2)を第1の混合ユニット(60)で混合して、2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)を得る;(d)2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)とコークス炉ガス流(C)の一定割合を第2の混合ユニット(70)で混合して、3次CO
2-枯渇ガス流(F)を得る;(e)前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)をコークス炉プラントからコークス炉(80)のアンダーファイアシステムに供給して石炭をコークスに変換し、それによってコークス炉ガス(H)及び排ガス(G)を生成する;各工程を含むコークス炉プラントの運転方法であって、2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)の特性は、第1の混合ユニット(60)の下流の第1の分析器(65)によって決定され、第2の混合ユニット(70)の下流の第2の分析器(75)の3次CO
2-枯渇ガス流(F)の特性によって決定され;高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、前記第1(65)及び第2(75)の分析器によって決定される前記特性に基づいて、前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)中のCO
2含有量、CO含有量、H
2含有量、ウォッベ指数、化学量論的な燃焼空気要求量、及び低位発熱量の少なくとも1つを調整するよう制御され、それによりアンダーファイアシステムの運転を制御する、コークス炉プラントの運転方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一酸化炭素CO、二酸化炭素CO
2及び水素H
2を含む高炉ガス流(B)、及び水素H
2、一酸化炭素CO及びメタンCH
4を含むコークス炉ガス流(C)を提供する;
b)CO変換ユニット(30)で一酸化炭素を二酸化炭素に変換して高炉ガス流(B)の一部(B1)を処理して、処理された高炉ガス流を得る;
c)工程b)からの処理された高炉ガス流に、CO
2-枯渇ユニット(40)における二酸化炭素の除去を施して、1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)を得る;
d)工程c)からの1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)と高炉ガス流(B)の一定割合(B2)を第1の混合ユニット(60)で混合して、2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)を得る;
e)工程d)からの2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)とコークス炉ガス流(C)の一定割合を第2の混合ユニット(70)で混合して、3次CO
2-枯渇ガス流(F)を得る;
f)前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)をコークス炉プラントからコークス炉(80)のアンダーファイアシステムに供給して石炭をコークスに変換し、それによってコークス炉ガス(H)及び排ガス(G)を生成する;
各工程を含むコークス炉プラントの運転方法であって、
2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)の特性は、第1の混合ユニット(60)の下流の第1の分析器(65)によって決定され、かつ3次CO
2-枯渇ガス流(F)の特性は、第2の混合ユニット(70)の下流の第2の分析器(75)によって決定され;
高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、前記第1(65)及び第2(75)の分析器によって決定される前記特性に基づいて、前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)中のCO
2含有量、CO含有量、H
2含有量、ウォッベ指数、化学量論的な燃焼空気要求量、及び低位発熱量の少なくとも1つを調整するよう制御され、それによりアンダーファイアシステムの運転を制御する、コークス炉プラントの運転方法。
【請求項2】
高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)中のウォッベ指数及び低位発熱量の少なくとも1つを調整するための前記第1(65)及び第2(75)の分析器によって決定される前記特性に基づいて制御される、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、アンダーファイアシステムの運転における変動を低減するよう制御される、請求項1又は2に記載された方法。
【請求項4】
高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、排ガス(G)中のCO
2含有量及び/又は排ガス(G)のCO
2排出量を低減するよう制御される、請求項1又は2に記載された方法。
【請求項5】
高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合は、ウォッベ指数の目標値の達成及び/又は3次CO
2-枯渇ガス流(F)の低位発熱量を上昇するよう制御される、請求項1から4のいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
3次CO
2-枯渇流のウォッベ指数は、ウォッベ指数の事前設定された目標値の+/-20%、好ましくは+/-15%、より好ましくは+/-10%の範囲内になるように制御される、請求項5に記載された方法。
【請求項7】
3次CO
2-枯渇流のウォッベ指数は、3.5~7MJ/Nm
3の範囲内、好ましくは5~6MJ/Nm
3の範囲内に調整される、請求項5又は6に記載された方法。
【請求項8】
3次CO
2-枯渇流の低位発熱量を、高炉ガス供給源からの高炉ガスの低位発熱量と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%上昇する、請求項5から7のいずれか1項に記載された方法。
【請求項9】
3次CO
2-枯渇流の低位発熱量は、3700~5300kJ/Nm
3の範囲内、好ましくは4100~5000kJ/Nm
3の範囲内になるように制御される、請求項5から7のいずれか1項に記載された方法。
【請求項10】
工程b)において、CO変換ユニット(30)における高炉ガス流(B)の一定割合(B1)の処理は、水性ガスシフト反応を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載された方法。
【請求項11】
工程c)において、CO
2-枯渇ユニットにおける二酸化炭素の除去は、圧力スイング吸収(PSA)、真空圧力スイング吸収(VPSA)及び洗浄液(複数)による捕獲などの、物理的吸収及び/又は化学的吸収のうちの1つ以上を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載された方法。
【請求項12】
工程b)及びc)は、吸収増強水性ガスシフト反応器で行われる、請求項1から9のいずれか1項に記載された方法。
【請求項13】
工程c)において、CO
2-枯渇ユニットにおける二酸化炭素の除去は、1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)中のCO
2含有量が、最大7.5体積-%、好ましくは最大5体積-%、より好ましくは最大2.5体積-%であるようにすることである、請求項1から12のいずれか1項に記載された方法。
【請求項14】
a)高炉ガス供給源、とくに一酸化炭素CO、二酸化炭素CO
2及び水素H
2を含む高炉ガス流(B)を提供するように構成された、高炉ガスネットワーク(10)、及びコークス炉ガス供給源、とくに、水素H
2、一酸化炭素CO及びメタンCH
4を含むコークス炉ガス流(C)を提供するよう構成されたコークス炉ガスネットワーク(20);
b)前記高炉ガス供給源に接続され、かつ一酸化炭素を二酸化炭素に変換することで高炉ガス流(B)の一部(B1)を処理して、処理された高炉ガス流を得るように構成されたCO変換ユニット(30);
c)前記CO変換ユニット(30)に接続され、かつ1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)を得るために、前記処理された高炉ガス流から二酸化炭素を除去するよう構成されたCO
2-枯渇ユニット(40);
d)前記CO
2-枯渇ユニット(40)に接続され、かつ制御可能な高炉バイパス流調整器(15)を含んで、前記高炉ガス供給源に制御可能に接続された第1の混合ユニット(60)であって、前記CO
2-枯渇ユニット(40)からの1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)と前記高炉ガス流(B)の一定割合(B2)を混合して2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)を得るように構成された前記第1の混合ユニット(70);
e)前記第1の混合ユニット(60)に接続され、かつ制御可能なコークス炉ガス流調整器(25)を含んで、前記コークス炉ガス供給源に制御可能に接続された第2の混合ユニット(70)であって、第1の混合ユニット(60)からの2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)とコークス炉ガス流(C)の一定割合を混合して、3次CO
2-枯渇ガス流(F)を得るように構成された前記第2の混合ユニット(70);
f)前記第2の混合ユニット(70)に接続され、かつ石炭をコークスに変換するために前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)を燃焼させ、それによってコークス炉ガス(H)及び排ガス(G)を生成するように構成された、アンダーファイアシステムを含むコークス炉プラントのコークス炉(80);
を含むコークス炉プラントであって、
2次CO
2-枯渇高炉ガス流(E)の特性を決定するよう構成された第1の混合ユニット(60)の下流の第1の分析器(65)、及び3次CO
2-枯渇ガス流(F)の特性を決定するよう構成された、第2の混合ユニット(70)の下流の第2の分析器(75);前記第1(65)及び第2(75)の分析器によって提供される前記特性に基づいて、高炉ガス流(B)の一定割合(B2)及びコークス炉ガス流(C)の一定割合を決定することにより、及び制御可能な高炉バイパス流調整器(15)及び制御可能なコークス炉ガス流調整器(25)を、前記3次CO
2-枯渇ガス流(F)中のCO
2含有量、CO含有量、H
2含有量、ウォッベ指数、化学量論的な燃焼空気要求量、及び低位発熱量の少なくとも1つを調整するよう、制御することにより、アンダーファイアシステムの運転を制御するよう構成された制御ユニット、をさらに含む、
コークス炉プラント。
【請求項15】
CO変換ユニット(30)は水性ガスシフト反応器を含む、請求項14に記載されたコークス炉プラント。
【請求項16】
CO
2-枯渇ユニットは、圧力スイング吸収(PSA)装置、真空圧力スイング吸収(VPSA)装置及び洗浄液(複数)による捕獲装置などの1以上の物理的吸収装置及び/又は化学的吸収装置を含む、請求項14又は15に記載されたコークス炉プラント。
【請求項17】
CO変換ユニット(30)及びCO
2-枯渇ユニット(40)はいずれも吸収強化水性ガスシフト反応器で形成されている、請求項14に記載されたコークス炉プラント。
【請求項18】
CO
2-枯渇ユニットは、1次CO
2-枯渇高炉ガス流(D)中のCO
2含有量が、最大7.5体積-%、好ましくは最大5体積-%、より好ましくは最大2.5体積-%であるように運転される、請求項14から17のいずれか1項に記載されたコークス炉プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してコークス炉プラントの運転方法、ならびに対応するコークス炉プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、現代のコークス製造プラント又はコークス炉プラントは、わずか10個から100個以上のコークス炉チャンバーを含み得る列状に構成されている。炭化室(coking chambers)の物理的な寸法(狭い、長い、高い)のために、スロット炉(slot ovens)と呼ばれることもある。炉は、炭化プロセス中に石炭から発生する揮発性生成物を回収できるように設計されかつ運転される。炭化プロセスは通常、周期運転され(operated)、以下の主要な工程:投入;炭化;及び押し出し(空にすること)を繰り返す。
【0003】
炭化プロセスの運転に必要な熱は、概して可燃性ガスの燃焼によって提供される。これらのガスは任意の適切な性質のものであり得るが、経済的な理由から、コークス炉プラント内で利用可能な場合は高炉ガスが使用できる。
【0004】
さらに、高炉の運転は複雑であり、かつ良質で収率の高い銑鉄を製造するために多くのパラメータと入力変数の修正(modifying input variables)を常に考慮する必要がある、そのため得られる高炉ガスの組成は時間の経過と共に多かれ少なかれ大きく変動する。
【0005】
したがって、高炉ガスによるコークス炉の加熱/アンダーファイア(underfiring)システムの運転は、その低位発熱量だけではなく、大きく変動する組成からみて理想とはほど遠いものである。
【技術的問題】
【0006】
本発明の目的は、高炉ガスで加熱することができるコークス炉プラントの運転方法を提供することであり、さらに、特にコークス炉の最良の燃焼パラメータ及び効率をいつでも維持することを目指して、大幅に強化され、しかもより柔軟なアンダーファイアガスの制御を提供することで、アンダーファイアシステムにおける、より良好かつより信頼性の高い加熱を提供することである。好ましくは、この方法は、新規なコークス炉プラントだけではなく、既存のプラントにも適用可能である筈である。
【発明の概要】
【0007】
この目的を達成するために、第1の態様において、本発明はコークス炉プラントの運転方法であって:
a)一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及び水素(H2)を含む高炉ガス流、及び水素、一酸化炭素及びメタン(CH4)(及び他の炭化水素)を含むコークス炉ガス流を提供する;
b)CO変換ユニットで一酸化炭素を二酸化炭素に変換して高炉ガス流の(少なくとも)一部を処理して、処理された高炉ガス流を得る;
c)工程b)からの処理された高炉ガス流に、CO2-枯渇ユニット(CO2-depletion unit)における二酸化炭素の除去を施して、1次CO2-枯渇高炉ガス流を得る;
d)工程c)からの1次CO2-枯渇高炉ガス流と高炉ガス流の一定割合を第1の混合ユニットで混合して、2次CO2-枯渇高炉ガス流を得る;
e)工程d)からの2次CO2-枯渇高炉ガス流とコークス炉ガス流の一定割合を第2の混合ユニットで混合して、3次CO2-枯渇ガス流を得る;
f)前記3次CO2-枯渇ガス流をコークス炉プラントからコークス炉のアンダーファイアシステムに供給して石炭をコークスに変換し、それによってコークス炉ガス及び排ガスを生成する、各工程を含む方法を提案する。
【0008】
本発明によれば、2次CO2-枯渇高炉ガス流の1以上の特性は、第1の混合ユニットの下流の第1の分析器によって決定され、かつ3次CO2-枯渇ガス流の1以上の特性は、第2の混合ユニットの下流の第2の分析器によって決定される。高炉ガス流の一定割合(proportion)及びコークス炉ガス流の一定割合は、前記第1及び第2の分析器によって決定される前記特性に基づいて、前記3次CO2-枯渇ガス流中のCO2含有量(又はCO2の濃度)、CO含有量(又はCOの濃度)、H2含有量(又はH2の濃度)、ウォッベ指数、化学量論的な燃焼空気/酸素要求量、及び低位発熱量(Lower Heating Value)から選択される前記1以上の特性の少なくとも1つを調整するように制御され、それによりアンダーファイアシステムの運転を制御する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、ここに記載されたコークス炉プラントの運転方法を実施するために好ましく構成されたコークス炉プラントであって、
a)高炉ガス供給源、とくに一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2及び水素H2を含む高炉ガス流を提供するように構成された高炉ガスネットワーク、及びコークス炉ガス供給源、とくに水素H2、一酸化炭素CO及びメタンCH4(及び他の炭化水素)を含むコークス炉ガス流を提供するように構成されたコークス炉ガスネットワーク又はコークス炉プラント自体で生成されたコークス炉ガス;
b)前記高炉ガス供給源に流体的に接続され、かつ一酸化炭素を二酸化炭素に変換することで高炉ガス流の(少なくとも)一部を処理して、処理された高炉ガス流を得るように構成されたCO変換ユニット;
c)前記CO変換ユニットに流体的に接続され、かつ1次CO2-枯渇高炉ガス流を得るために、前記処理された高炉ガス流から二酸化炭素を除去するよう構成されたCO2-枯渇ユニット;
d)前記CO2-枯渇ユニットに流体的に接続され、かつ制御可能な高炉バイパス流調整器、例えば、第1の制御可能なバルブを含んで、前記高炉ガス供給源に制御可能に流体的に接続された第1の混合ユニットであって、前記CO2-枯渇ユニットからの1次CO2-枯渇高炉ガス流と前記高炉ガス流の一定割合を混合して2次CO2-枯渇高炉ガス流を得るように構成された前記第1の混合ユニット;
e)前記第1の混合ユニットに流体的に接続され、かつ第2の制御可能なバルブなどの制御可能なコークス炉ガス流調整器を含んで、前記コークス炉ガス供給源に制御可能に流体的に接続された第2の混合ユニットであって、第1の混合ユニットからの2次CO2-枯渇高炉ガス流とコークス炉ガス流の一定割合を混合して、3次CO2-枯渇ガス流を得るように構成された前記第2の混合ユニット;
及び
f)前記第2の混合ユニットに流体的に接続され、かつ石炭をコークスに変換するために前記3次CO2-枯渇ガス流を燃焼させ、それによってコークス炉ガス及び排ガスを生成するように構成された、アンダーファイアシステムを含むコークス炉プラントのコークス炉、を含む前記コークス炉プラントを提案する。
【0010】
本発明によるコークス炉プラントは、2次CO2-枯渇高炉ガス流の1以上の特性を決定するよう構成された、第1の混合ユニットの下流(及び第2の混合ユニットの上流)の第1の分析器、3次CO2-枯渇ガス流の1以上の特性を決定するよう構成された、第2の混合ユニットの下流(及びアンダーファイアシステムの上流)の第2の分析器、及び前記第1及び第2の分析器によって提供される前記特性に基づいて、高炉ガス流の一定割合及びコークス炉ガス流の一定割合を決定することにより、及び制御可能な高炉バイパス流調整器及び制御可能なコークス炉ガス流調整器を、前記3次CO2-枯渇ガス流中のCO2含有量(又はCO2の濃度)、CO含有量(又はCOの濃度)、H2含有量(又はH2の濃度)、ウォッベ指数、化学量論的な燃焼空気/酸素要求量、及び低位発熱量から選択される前記1以上の特性の少なくとも1つを調整するよう制御することにより、アンダーファイアシステムの運転を制御するように構成された制御ユニット、をさらに含む。
【0011】
高炉ガス(BFG)は、トップガスとも呼ばれ、鉄鉱石がコークスで金属鉄に還元されるときに発生する高炉運転の副産物である。高炉ガスは、主に窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、及びいくらかの水素で構成されている。従来のプロセスでは、高炉ガスには通常、約45~55%のN2、約15~25%のCO、約15~25%のCO2、及び約1~10%のH2が含まれている。高炉の運転やプロセスによっては、例えば、天然ガスを注入する高炉では、一酸化炭素の体積分率は25%を超え、一方水素の体積分率は10%を超え、H2が15%に達し得る。
【0012】
高炉ガスは概して発熱量が比較的乏しく、理想ガスではないが、コークス炉(列)のアンダーファイアシステムで使用できる。主な欠点は、概して発熱量が乏しいことは別として、冶金プロセスからの回避不能な残留物又は副産物であり、このプロセスはこの残留物の組成が何であれ、銑鉄を最良に生産するよう運転される。結果的にこの組成は高炉の実際の運転条件に基づいて時間的に大きく変動し得る。したがって、コークス炉の運転には大量の高炉ガスが必要であるだけではなく、さらに重要なことは、安定的に制御して運転することが非常に困難であるということである。
【0013】
コークス炉ガス即ち炭化作業中に生成されるガスは発熱量が高いので、このガスをある割合で付加することにより、高炉ガスの発熱量が乏しい問題を軽減することは知られているが、これによっては、高炉ガス組成の変動性、したがってコークス炉のアンダーファイアシステムにおけるその使用に関連するそれのいくつかの特性の変動性を大幅に緩和することはできない。それどころか、コークス炉ガスはそれ自体が副産物であり、その組成は時間の経過とともに個々に変化し得る、それによって、アンダーファイアシステムの不安定な運転(operation)を潜在的に一層悪化させ得る。
【0014】
本発明者らは、たとえ高炉ガスとコークス炉ガスを組み合わせて制御して使用しても、その特性がアンダーファイアシステムの最適な運転に対して適切かつ十分に一定であるガスを確実に提供することはできないと結論付けた。しかしながら、本発明者らは、全体的な処理能力は低下するものの、高炉ガスの一部から多くの割合のCO2を排除して、得られる流れに高熱量ガス(calorific gases)をより多くの割合で残すことで、両方の問題を大幅に低減することができることを見出した。さらに、本発明者らは、そのような仕方で処理することによって、実際に、アンダーファイアガスの特性の制御における本当のかつ追加の自由度から利益を得ることができ、それによって、生じるガスの異なる特性を、独立して、したがってより信頼性が高い制御ができることを突き止めた。実際、本発明者らは、高炉ガスの組成の変動の主要な要因が、そのCO2の含有量の変動であることが分かっただけではなく、それを(少なくとも部分的に)除去することで、著しく異なる望ましい特性を有するガスが生まれることも分かった。実際、好ましくは高炉ガスからその全てのCO2を(本質的に)枯渇させることにより、得られるガスの発熱量(calorific value)が増加するだけでなく、得られるCO2-枯渇高炉ガスの特により重要な特性が元の高炉ガスと比較して改善され、例えばそのウォッベ指数が増加する。ウォッベ指数は可燃性ガスの重要な特性であり、アンダーファイアシステムで使用されるバーナーは、この特性が妥当な範囲内に保たれているときに概して最適に機能するように設定される。
【0015】
大きく異なる特性を備え、しかし同じ安価な高炉ガスに由来する2つのガスを持つという事実により、コークス炉のより良い燃焼パラメータと効率が達成できる、大きくかつ柔軟な組み合わせのスペクトル(large and flexible spectrum)が提供される。大事なことを言い残したが、本発明のさらなる重要な利点は、これらの利点が、コークス炉の排気スタック(煙突;stack)におけるCO2排出量の大幅な低減に付随して得られることである。
【0016】
また、高炉ガスに含まれるCO量も大きく変動するため、高炉ガスからこのガスを除去(subtract)すると有利である。しかしながら、CO2とは対照的に、COは毒性が高く、その除去には遥かに厳しい安全対策が必要になるため、一方ではより問題がある。したがって、本発明は、任意の適切なプロセスにより一酸化炭素から二酸化炭素への変換を提供する。元のCO2及び新たに形成されたCO2は、次いで、以下にさらに詳述するように、公知の方法によって1回の運転で除去することができる。その一方でまた、CO2とは対照的に、COは依然として一定の発熱量を提供し、下流のアンダーファイアシステムで有意義に使用できる。以下でさらに説明するように、有益な実施形態において好適に用いられるCOからCO2への変換は、いわゆる水性ガスシフト反応(water gas shift reaction)である。当業者なら理解できると思われるが、これにより、コークス炉の排気スタックでのCO2排出量がさらに低減される。
【0017】
その結果、本発明は、第1の混合ユニットの下流でのガスの適切な特性の決定による妥当で制御された量の元の未処理高炉ガスを付加すること、及び適量の未処理高炉ガスを第1の混合ユニットに迂回させることによって得られる2次CO2-枯渇高炉ガスを提供することにより、発熱量変動及びウォッベ指数などのその他の特性をより良好に制御して、コークス炉の運転における柔軟性及び信頼性の向上を可能にしている。好ましくは、高炉ガスの対応する特性は、高炉ガスネットワークにおける監視(モニタリング)などにより既に利用可能であるか、又は、第3の分析器で別途決定されかつ3次CO2-枯渇流の特性の変動をより一層正確に低減するために制御ユニットに送付することができる。
【0018】
さらに、一定割合のコークス炉ガスが、今や結合された(now combined)少なくとも部分的にCO2-枯渇高炉ガス流(すなわち、2次CO2-枯渇高炉ガス)に導入されることを見越すことによって、少なくともアンダーファイアシステムに供給されるガスの発熱量は上がる。実際、コークス炉ガスは、概して空気/酸素の不存在下で石炭を1100℃に加熱することによって形成される。コークス炉ガスの典型的な組成は、例えば水素(H2-55%)、メタン(CH4-24%)、一酸化炭素(CO-8%)、その他の炭化水素(CnHm-1.5-3%)を含む。コークス炉ガスの対応する特性は、好ましくは、コークス炉ガスネットワークにおける監視などにより既に利用可能であるか、又は、第4の分析器で別途決定され、かつ3次CO2-枯渇流の特性の変動をより一層正確に低減するために制御ユニットに送付することができる。
【0019】
この方法の全体的な監視と制御は、2次CO2-枯渇高炉ガス流(即ち、必要に応じて未処理の高炉ガスと混合されるCO2-枯渇高炉ガス)及び3次CO2-枯渇ガス流(即ち、必要に応じて未処理の高炉ガス及びコークス炉ガスと混合されるCO2-枯渇高炉ガス)の1以上の特性を継続的に決定又は監視することによって、及び高炉ガスバイパス内及びコークス炉ガス供給路内に配置された制御可能なバルブ(弁)などの流れ調整器(stream regulators)を制御又は指揮すること(commanding)によって為される。勿論、必要又は有用であるとみなされた場合は、さらなる監視ポイント及び/又は制御ポイントを提供し得る。
【0020】
有利にも、高炉ガス流の割合及びコークス炉ガス流の割合は、前記3次CO2-枯渇ガス流におけるウォッベ指数及び低位発熱量のうちの少なくとも1つを調整するために、前記第1及び第2の分析器によって決定される前記特性に基づいて制御される。
【0021】
ウォッベ指数(概してIWと呼ばれる)は、次のように(MJ/Nm
3で)定義される:
VCがより高い発熱量(heating value)(又はより高い発熱量(calorific value))であり、かつGSが比重であれば、
ここで、ρ
STPは標準条件(0℃、101.325kPa)でのガスの密度、ρ
air,
STPは標準条件での空気の密度、Mはガスのモル質量、かつM
airは約28.96kg/kmolの空気のモル質量である。
【0022】
低位発熱量(Lower Heating Value)(LHV;正味発熱量;NCV、又は低位発熱価(lower calorific value;LCV))は、燃料の燃焼によって生成される利用可能な熱エネルギーの尺度であり、燃焼プロセスの水成分が燃焼終了時に蒸気状態のままであると仮定した、kJ/Nm3などの物質の単位質量又は体積当たりのエネルギーの単位として測定される。したがって、LHVは概して、生成物が150℃に冷却されたときに燃焼によって放出される熱量として定義され、水(及び場合によっては他の反応生成物)の気化潜熱が回収されないことを意味する。
【0023】
一言で言えば、本発明は、同じ高炉ガスからの2つの異なるガスの提供及び制御された組み合わせによって、ウォッベ指数などのアンダーファイアガスの重要な特性を著しく広い範囲内で柔軟に調整すること、及びさらに、必要に応じて又は望ましい場合に、コークス炉ガスを付加することにより、その低位発熱量など、アンダーファイアガスの他の特性を調整することにより、コークス炉アンダーファイアシステムの運転の著しく強化された信頼性の高い制御を可能にする。さらに、これらの利点は、炭化プロセス全体の炭素排出量の大幅な低減とともに達成される。
【0024】
好ましいことには、高炉ガス流の割合及びコークス炉ガス流の割合は、アンダーファイアシステムの運転における変動を低減するために、特に又は主に制御される。
【0025】
有利な実施形態では、3次CO2-枯渇流のCO2含有量、CO含有量、H2含有量、化学量論的な燃焼空気/酸素要求量、ウォッベ指数及び低位発熱量のうちから選択された1以上の特性の変動は、高炉ガス供給源又はネットワークからの高炉ガスの1以上の同じ特性の変動と比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%低減される。
【0026】
代替的又は追加的に、高炉ガス流の割合及びコークス炉ガス流の割合は、ウォッベ指数を目標値に近づけるため、及び/又は高炉ガスの低位発熱量を上げるために、特に又は主に制御される。
【0027】
有利な実施形態では、3次CO2-枯渇流のウォッベ指数は、(アンダーファイアシステムに特有な)ウォッベ指数の事前設定/目標値(preset/target value)の+/-20%、好ましくは+/-15%、より好ましくは+/-10%の範囲内になるように制御される。
【0028】
さらに有利な実施形態では、3次CO2-枯渇流の低位発熱量を、高炉ガス供給源又はネットワークからの高炉ガスのLHVと比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%上昇する。したがって、通常は、3次CO2-枯渇流のLHVは、3700~5300kJ/Nm3の範囲内、好ましくは4100~5000kJ/Nm3の範囲内になるように調整される。
【0029】
代替的又は追加的に、高炉ガス流の割合及びコークス炉ガス流の割合は、排ガス中のCO2含有量を低減するため、即ち、炭化プロセスの炭素排出量を低減するために、特に又は主に制御される。
【0030】
さらに別の有利な実施形態では、コークス炉の排ガスのCO2排出量は、他の全ての条件を同じにして、CO2-枯渇を行わずに運転した場合(即ち、バイパスを通る高炉ガス供給源からの高炉ガス及びコークス炉ガスだけの場合)のCO2排出量と比較して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%低減される。
【0031】
既に以上で手短に述べたように、好ましい実施形態では、この方法は、工程b)において、水性ガスシフト反応を実施し、COが水(蒸気)の存在下でCO2及び水素に変換されるCO変換ユニットにおける、高炉ガス流の(少なくとも)一部の処理を含んでいる。したがって、コークス炉プラントにおいて、CO変換ユニットは好ましくは水性ガスシフト反応器を含む。その場合、ここでCO2に変換されるCOの除去をなお可能にしつつ、得られるガスの発熱量にさらなる水素の生成が加わる。
【0032】
CO2-枯渇ユニットにおける二酸化炭素の除去は、1以上の工程の化学的吸収及び/又は物理的吸収など、任意の公知の適切な方法を用いて行うことができる。CO2-枯渇工程は、好ましくは圧力スイング吸収(PSA)、真空圧力スイング吸収(VPSA)、洗浄液による捕獲(capture)などの、物理的吸収及び/又は化学的吸収のうちの1以上を含む。
【0033】
CO2-枯渇ユニットは、例えば、吸収ユニットとストリッパーユニット(stripper unit)とを含み得る。吸収装置(absorber)では、洗浄液(アミン水溶液など)が高炉ガスからCO2(及び場合によってはH2Sなどの他の酸性ガス)を吸収する。吸収されたCO2を富化した洗浄液は、ストリッパーに送られ、そこで加熱される。これにより、洗浄液は吸収したCO2を放出し、洗浄液を吸収装置で再利用することができる。放出されたCO2は回収・貯留され、他の用途に利用することができる。
【0034】
洗浄液は、ガスからCO2を除去するのに適した洗浄液であればよい。例えば、洗浄は、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)及び/又はジグリコールアミン(DGA)の溶液を含み得る。
【0035】
圧力スイング吸収(PSA)は、種(species)の分子特性と吸収材に対する親和性に応じて、圧力下でガスの混合物から幾つかのガス種を分離するために使用する技術である。それは周囲温度に近い温度で作動する。捕獲材(trapping material)として選択的な吸収材(ゼオライト、活性炭など)が使用され、高圧で目標ガス種を優先的に吸収する。その後、プロセスは低圧にスイングして、吸収されたガスを脱着する。真空圧力スイング吸収(VPSA)は、周囲圧に近い状態でガス混合物からガスを分離する;その後、このプロセスは真空状態になり、吸収材を再生する。
【0036】
ある特定の実施形態では、水性ガスシフト反応(工程b))を、いわゆる吸収増強水性ガスシフト(SEWGS)反応器(sorption enhanced water gas shift(SEWGS) reactor)、例えば、容器が水性ガスシフト触媒及びCO2吸収材で満たされた多床圧力スイング吸収(PSA)ユニットにおいて、圧力スイング吸収(工程c))と組み合わせることができる。SEWGS反応器は、触媒による水性ガスシフト反応と固体吸収剤ベースのCO2分離(K-促進ハイドロタルサイト吸収剤など)を組み合わせて、CO変換とCO2捕獲の両方を1つのユニットで実現する。
【0037】
本発明の文脈において、工程b)及び/又はc)は、単一の段階(stage)又は装置に総合し得る、各工程は、代替的に、必要又は所望に応じて、同じタイプ又は異なるタイプの直列又は並列の複数の処理を含み得る。
【0038】
さらに、別の有利な実施形態では、化学量論的な燃焼空気要求量又は要件、又は化学量論的な燃焼酸素要求量(即ち、最大燃焼効率を達成するのに必要な空気又は酸素の量)は、アンダーファイアシステムに供給される酸素又は空気の量を制御できるようにするため、少なくとも前記第2の分析器によって決定される。
【0039】
本発明の文脈において、高炉ガスの文脈における「CO2-枯渇(depleted又はdepletion)」という用語は、高炉ガスネットワーク又は高炉の頂部から直接得られる高炉ガスなどの高炉ガス供給源によって提供される元々の高炉ガスと比較して、CO2濃度が低減されたガス(又は当該濃度を低減させる作用)を指すために使用される。CO2を除去した後も、高炉ガスには依然としてCO2の残留濃度が残り得る。したがって、「CO2-枯渇高炉ガス」とは、概して「CO2濃度の低い高炉ガス」を意味する。特に、CO2-枯渇ユニットにおける二酸化炭素の除去は、1次CO2-枯渇高炉ガス流中のCO2含有量又は濃度が、最大で10体積-%、概して最大7.5体積-%、好ましくは最大5体積-%、より好ましくは最大2.5体積-%である。
【0040】
したがって、さらに別の態様において、本発明は、ここに記載されているコークス炉プラントの運転方法を使用すること、又は高炉ガスで加熱されるアンダーファイアシステムの運転における変動を低減するために、そのコークス炉プラントを使用することを提案する。
【0041】
代替的又は追加的に、本発明は、ウォッベ指数を事前設定された値又は目標値に近づけた状態を維持し、かつ高炉ガスの低位発熱量を上昇させるために、ここに記載されたコークス炉プラントの運転方法を使用すること、又はそのコークス炉プラントを使用することを提案する。
【0042】
代替的又は追加的に、本発明は、排ガス中の(再生-不能な)CO2含有量を低減するため、即ち、排ガス又は炭化プロセス全体のCO2排出量を低減するために、ここに記載されたコークス炉プラントの運転方法を使用すること、又はそのコークス炉プラントを使用することを提案する。
【0043】
ここに記載された1以上の実施形態による方法及びコークス炉プラントは、以下の結果及び利点の少なくとも幾つかを実現する:
【0044】
コークス炉プラントのスタックにおけるCO2排出量は30%~90%まで及びそれを超えて低減される。
【0045】
CO2の最終排出量は、新規又は既存のコークス炉列の熱調整に従って調整可能であり、ここに記載されているバイパス及び調整により、加熱煙道(heating flues)の最良の燃焼条件を維持し、コークス炉ガスへの入力ガスのLHV及び/又はウォッベ指数を調整することができる。
【0046】
専用の制御ユニット/自動化システム(既存の自動化システムに一体化されているか又は独立型モジュールとして)は、最適な燃焼条件及び/又は最小限のCO2排出量に合わせるために、設定ポイントや目標ポイントを管理することができる。
【0047】
標準的な機器(instrumentation)であれば、調整ループの最適な設定ポイントを評価するのに必要な流れの特性を、オンラインで計算するのに必要なデータを分析して提供するのにほぼ十分である。
【0048】
熱ガス入力を連続的に記録するための専用の自動化モジュールを提供でき、かつ専用の自動化モジュールは、燃焼結果に応じて入力ガスに対するコークス炉ガスのLHVとウォッベ指数を調整するために、列(battery)に必要な熱入力を維持するようレギュレーターバルブ(調整弁)の設定ポイントを調整する。スタックでのCO2排出量を最小限に抑えること、及びウォッベ指数及び最小LHVを制御しながら効率的に燃焼させること、の両方を再生加熱システムで実現するために、CO2-枯渇高炉ガス流の流量は調整可能である。
【0049】
CO2-枯渇高炉ガス流は、加熱するだけの従来の高炉ガスの代替物として使用できるが、上流の高炉ガスと比較していかなる場合もLHVがより高くかつ調整されたウォッベ指数を有し、かつ純粋な高炉ガスや混合ガスの場合よりもCO2排出量が少ない。
【0050】
さらに、CO2-枯渇ユニットが一時的に利用できない場合でも、コークス炉列を停止する必要はなく、コークス炉ガスの富化と共に高炉ガスバイパスを介して供給され得る。
【0051】
本発明の方法は、新規なコークス炉プラントと既存のコークス炉プラントの両方に実施することができ、それによって、既存のプラントをアップグレードするためのコスト効率の高い方法を提供し、運転における新規な柔軟性、アンダーファイアシステムのより良い制御及び効率、及び/又はCO2排出の低減を可能にしている。
【0052】
ここに開示するコークスプラントの運転方法は、(第1の混合ユニットにおける1次CO2-枯渇BFG流を優先することによる)少なくとも1つのCO2排出、(3次CO2-枯渇流中の、ウォッベ指数を安定化することによる又はLHVを調整することによる)コークス炉の燃焼パラメータ及び/又は(3次CO2-枯渇流における、ウォッベ指数及び/又はLHVなどの1以上の特性の変動を低減することによる)熱入力の安定化、のうちの少なくとも1つを最適化することを目的としたアルゴリズムによって、異なる流れの柔軟な管理を可能にする。
【0053】
最後に、本発明を新規又は既存のコークス炉プラントの両方で実施できることが本発明の特別な利点である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
好適な実施形態を、例として、添付の図面を参照して説明する。
【
図1】コークス炉プラント(の一部)の実施形態の概略図である。
【0055】
本発明のさらなる詳細及び利点は、添付図面を参照して、いくつかの限定的でない実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
コークス炉プラントの運転方法の実施形態、又はこのようなコークス炉プラント自体の実施形態は、
図1に概略的に示されている。
【0057】
コークス炉又はコークス炉列80には、いわゆる3次CO2-枯渇流Fであり、主としてBFGネットワーク10等のBFG供給源からの(n当初)高炉ガス(BFG)流B、及びCOGネットワークなどのCOG供給源からの、又はコークス炉からのコークス炉ガス流Hを直接使用する、一定割合のコークス炉ガス(COG)流Cで生成される、コークス炉供給流が供給される。
【0058】
図1から明らかなように、BFG流Bの一部B1、即ち第1の部分は、まずCO変換ユニット30に供給されて、BFGに含まれる一酸化炭素COの少なくとも一部、好ましくは本質的に全て、例えば>90モル-%、好ましくは>95モル-%、より好ましくは>99モル-%が二酸化炭素に変換される。有利なことに、CO変換ユニットは、水蒸気の存在下でCOをCO
2及びH
2に変換する水性ガスシフト反応器を含む。このCO変換により、有毒なCOの含有量が大幅に低減するだけではなく、次の工程で、元のCO
2と一緒に除去することができ、追加の水素を生成することで、COに依然として含まれているエネルギーが回収できる。
【0059】
得られた処理されたBFGは、その後、CO2-枯渇ユニット40に入り、(元々の及びCO変換ユニット30によって生成された)CO2の大部分を捕獲除去する。捕獲及び除去は、任意の適切な技術、例えば、1以上の物理的吸収及び/又は化学吸収プロセス、例えば圧力スイング吸収(PSA)、真空圧力スイング吸収(VPSA)、洗浄液による捕獲によりなし得る。CO2の全体的な低減は、COとCO2の当初の含有量、CO変換ユニットとCO2-枯渇ユニットの両方で使用されるプロセスに依っている。しかしながら、当初BFG B(又はB1又はB2)と比較して、CO2排出量の85%超、より好ましくは90%超、あるいは95%を超える低減が、概してCO2-枯渇ユニットを出て行く1次CO2-枯渇BFG流内で達成し得る。
【0060】
得られた1次CO2-枯渇BFG流Dは、その後、第1の混合ユニット60に供給され、そこで、そのCO2含有量、CO含有量、H2含有量、ウォッベ指数及び低位発熱量等の1以上の特性を調整するために、必要に応じて当初BFGの一定割合B2、即ち第2の部分(part)と混合され又は混合できる。これらの1以上の特性の調整は、第1の混合ユニット60の下流に位置する第1の分析器65によって行われるこれらの特性の測定に基づいて制御ユニット(図示せず)で制御することで、及び例えば、制御可能なバルブであり得る、BFGバイパス流調整器15を作動してBFGバイパス管(bypass line)を介して第1の混合ユニット60に付加されるBFG B2の量を制御することで、制御される。BFG処理流、即ち、一部B1、及びBFGバイパス流、即ち、一定割合B2の合計は、BFG流Bの合計量になる。
【0061】
BFGバイパス流調整器15の制御は、1次CO2-枯渇BFG流Dの使用を優先することで、CO2-枯渇BFGを主に使用するようにでき、それにより、コークス炉80のスタック90における排気G中のCO2の全体的な含有量を有意に低減することができる。代替的には、BFGバイパス流調整器15の制御は、少なくともこれが混合流B2及びDの流量(rates)内で可能である限り、前記特性(1つ又は複数)を最良に直線化するようバイパス管を通る流れを調整することによって、上述した特性のうちの1以上の変動を主として低減し得る。BFGバイパス流調整器15の制御により、勿論、排気G中のCO2の全体的な含有量を低減すること及び変動を低減すること、を最良に妥協させることもできる。
【0062】
当初BFG B2流のみに代わって、少なくとも幾つかの1次CO2-枯渇BFG流Dを使用することで、前記1以上の特性の変動の低減が達成できるが、これらと同じ理由で、即ち、変動の低減及び/又はガス流Dの発熱量の上昇のために、一定割合のコークス炉ガスをさらに制御可能に追加することが概して必要又は望ましい。
【0063】
したがって、第1の混合ユニット60を出て行く1次CO2-枯渇BFG流Eは、一定割合のコークス炉ガスGOG流Cと共に第2の混合ユニット70に供給され、前記割合はCOG流調整器25を介して制御可能である。ここでも、前記調整器の制御は、有利にも、第2の混合ユニット70の下流にある第2の分析器75によって決定される前述の1以上の特性に基づいて行われる。
【0064】
同様に、COG流調整器25を制御することで、2次CO2-枯渇BFG Eを主として使用させることができ、それにより、コークス炉80のスタック90における排気G中のCO2の全体的な含有量の低減を「維持」することができる。代替的には、COG流調整器25の制御により、少なくともこれが混合流C及びEの流量内で可能である限り、前記特性(1つ又は複数)を最良に直線化するためにCOG流Cの流れを調整することで、主として3次CO2-枯渇流内の上述の1以上の特性の変動を低減させることができる。ここでも、COG流調整器25を制御することで、もちろん、排気G中のCO2の全体的な含有量の低減と前記変動の低減を最良に妥協させることもできる。
【0065】
必要又は望ましい場合には、当初BFG流Bの1以上の特性を決定する第3の分析器10.5及び/又はCOG流Cの1以上の特性を決定する第4の分析器20.5等、さらなる分析器を提供し得る。コークス炉80のアンダーファイアシステムに供給される3次CO2-枯渇流の組成、及びしたがって特性の制御をさらに改善するために、決定された特性の値を制御ユニットに供給することができる。
【0066】
コークス炉(列)では、3次CO2-枯渇流Fを燃焼するアンダーファイアシステムによって生成される熱で、石炭がコークスに変換される。燃焼により排気流Gが生成され、かつ炭化運転によりコークス炉ガスHが生成され、初めのところで述べたように、それはCOG流CのCOGの発生源として使用できる。
【0067】
本発明で達成できることの1例として、CO2-枯渇をしない混合BFG(従来の高炉ガスとコークス炉ガスの混合)及びCOGで運転する場合と比較して、本発明(3次CO2-枯渇ガス)に依って運転した場合のいくつかの改善点を示す以下の表を参照する:LHVを適度に上昇させ、スタックでのCO2排出量を大幅に低減可能にしながらである。
【0068】
【符号の説明】
【0069】
10 高炉ガス(BFG)ネットワーク
10.5 第3の分析器
15 BFGバイパス流調整器
B 当初BFG流
B1 BFG処理流、いわゆる当初BFG流の一部
B2 BFGバイパス流、いわゆる当初BFG流の一定割合
20 コークス炉ガス(COG)ネットワーク
20.5 第4の分析器
25 COG流調整器
C COG流
30 CO変換ユニット
40 CO2-枯渇ユニット
D 1次CO2-枯渇BFG流
60 第1の混合ユニット
65 第1の分析器
E 2次CO2-枯渇BFG流
70 第2の混合ユニット
75 第2の分析器
F 3次CO2-枯渇BFG流
80 コークス炉、コークス炉列
G コークス炉排気流、排気流
90 排気スタック
H コークス炉で生成されたコークス炉ガス
【国際調査報告】