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特表2024-5392511,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒、その調製方法及び使用、並びに1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒、その調製方法及び使用、並びに1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/198 20060101AFI20241018BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 35/53 20240101ALI20241018BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07C 63/313 20060101ALI20241018BHJP
   C07C 51/54 20060101ALI20241018BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B01J27/198 Z
B01J37/02 301Z
B01J35/53
B01J37/00 E
C07C63/313
C07C51/54
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524388
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 CN2022128240
(87)【国際公開番号】W WO2023072247
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111282786.7
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523187158
【氏名又は名称】中石化(北京)化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安欣
(72)【発明者】
【氏名】袁濱
(72)【発明者】
【氏名】劉玉芬
(72)【発明者】
【氏名】師慧敏
(72)【発明者】
【氏名】張東順
(72)【発明者】
【氏名】張作峰
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA10A
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BA21C
4G169BB04C
4G169BB06C
4G169BB08C
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BB12C
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BB15A
4G169BB16C
4G169BC01A
4G169BC02C
4G169BC06A
4G169BC06B
4G169BC15A
4G169BC24A
4G169BC26A
4G169BC26B
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BC49A
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC55A
4G169BC55B
4G169BC57A
4G169BC65A
4G169BC69A
4G169BD01C
4G169BD05A
4G169BD06A
4G169BD06C
4G169BD07A
4G169BD12C
4G169BE08C
4G169CB07
4G169CB74
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC29
4G169EE06
4G169FA02
4G169FB24
4G169FB29
4G169FB62
4G169FB63
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC47
4H006BA10
4H006BA12
4H006BA30
4H006BA55
4H006BJ50
4H006BS80
4H039CA65
4H039CC30
(57)【要約】
本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化による1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製のための触媒、その調製方法及び使用、並びに、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法を開示する。本発明に係る触媒は、担体と、前記担体上に付着された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れており、第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比がTi/Vをとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である。本発明に係る触媒は、向上した触媒活性を示し、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の収率を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒であって、
担体と、前記担体上に担持された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは、第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れており、前記第1コーティング及び前記第2コーティングは、それぞれ独立に、バナジウム元素及びチタン元素を含有し、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/Vとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、触媒。
【請求項2】
前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素と第1コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは7~8.5:1である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素と第2コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは12~15.5:1である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、40~60質量%の範囲内であり、及び/又は
前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、45~65質量%の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒活性成分コーティングは、第VA族非金属元素、アルカリ金属元素、及び助剤金属元素からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、
好ましくは、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記第2コーティングは、前記第1コーティングの表面に付着されており、
好ましくは、前記第1コーティングは、前記担体の表面に付着されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒の総細孔容積は0.03~0.08mL/gである、請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
前記担体は、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒の調製方法であって、
第1分散媒体、第1バナジウム源、及び第1チタン源を含有する第1スラリーを担体の表面に塗布して、第1コーティングを形成するステップ(1)と、
第2分散媒体、第2バナジウム源、第2チタン源、及び細孔拡張剤を含有する第2スラリーを担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布して、第2コーティングを形成するステップ(2)と、を含み、
前記第1コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 12、前記第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 12、前記第2コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 22、前記第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 22とすると、Ti/V12=CTi 12/C 12、Ti/V22=CTi 22/C 22、Ti/V22=Ti/V12+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、調製方法。
【請求項10】
第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 12は、40~60質量%の範囲内であり、あるいは
第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 22は、45~65質量%の範囲内である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1バナジウム源及び第2バナジウム源は、それぞれ独立に、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、及びバナジウム酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第1チタン源及び前記第2チタン源は、それぞれ独立に、二酸化チタン及びメタチタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記担体は、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1コーティング、前記第2コーティング、及び前記担体の重量比は5.5~6.8:1.9~3.5:100である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1スラリーは、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び助剤金属元素を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入される第VA族非金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.5質量%であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入されるアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.3質量%であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入される助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、酸化物換算で1~6質量%であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素を含有する化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及び五酸化リンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素を含有する化合物は、MNO、MSO、MCl、及びMCOからなる群から選択される少なくとも1種であり、Mはアルカリ金属元素であり、
好ましくは、前記助剤金属元素を含有する化合物は、助剤金属の酸化物及び前記助剤金属を含有する水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2スラリーは、アルカリ金属元素を含有する化合物、助剤金属元素を含有する化合物、及び任意の第VA族非金属元素を含有する化合物をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第2コーティングに導入されるアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.7質量%であり、
好ましくは、前記第2コーティングに導入される助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、酸化物換算で1~6質量%であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素を含有する化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及び五酸化リンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素を含有する化合物は、MNO、MSO、MCl、及びMCOからなる群から選択される少なくとも1種であり、Mはアルカリ金属元素であり、
好ましくは、前記助剤金属元素を含有する化合物は、助剤金属の酸化物、及び前記助剤金属を含有する水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第2スラリーの全量を基準にして、細孔拡張剤の含有量は、3.9~4.2質量%であり、
好ましくは、前記細孔拡張剤は、ステアリン酸及びステアリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1スラリーの塗布温度は前記第2スラリーの塗布温度よりも高く、
好ましくは、前記第1スラリーの塗布温度をT、前記第2スラリーの塗布温度をTとすると、T-Tは、70~150℃の範囲内、好ましくは80~120℃の範囲内、より好ましくは85~105℃の範囲内であり、
好ましくは、前記第1スラリーの塗布温度は、200~250℃であり、
好ましくは、前記第2スラリーの塗布温度は、100~130℃であり、
好ましくは、前記第2コーティングを形成する方法は、担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布された第2スラリーをパージ気流でパージすることを含み、前記パージ気流の温度は好ましくは380~450℃である、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項9~16のいずれか1項に記載の方法によって調製される触媒。
【請求項18】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製するための反応の触媒としての、請求項1~8及び17のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【請求項19】
1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法であって、
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼン及び酸素ガスを含むガスを請求項1~8及び17のいずれか1項に記載の触媒に接触させ、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を含有する生成物気流を得るステップを含む、調製方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年11月01日に提出された中国特許出願202111282786.7の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、触媒に関し、特に1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製するための触媒に関し、本発明はまた、前記触媒の調製方法及び使用に関し、本発明はさらに、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法に関する。
【0003】
[背景技術]
ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、以下、ピロメリット酸二無水物と略す)は、非常に重要な化学原料である。ピロメリット酸二無水物及びその誘導体は、非常に重要で、広範な用途を有し、特にピロメリット酸二無水物は、ポリイミドを生産するための主要モノマーの1つとして有用である。ポリイミドは高温下での性能が全面的なため、現在の有機高分子材料の中で使用温度が最も広く、高温下での寸法安定性、耐放射線性、機械特性、電気特性、耐食性がいずれも良好な新しい工学材料である。
【0004】
初期、デュレンを原料としてピロメリット酸二無水物を製造するには、主に、原料を液相酸化して酸を製造し、その後、酸を脱水して無水物を製造する液相酸化法が採用されている。現在、一般的に採用されているプロセスは、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンを原料として、空気酸化により一段階で1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を製造する気相酸化法である。気相酸化方法は、プロセスが簡単で、酸を脱水して無水物にする工程が不要であり、酸化剤として空気を使用するため、液相酸化プロセスにおける触媒分離工程が不要であり、連続生産が可能であり、自動化が容易であることを特徴とする。
【0005】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化によるピロメリット酸二無水物の製造は選択的酸化における発熱が比較的に強い反応過程であるため、ピロメリット酸二無水物の理論収率は高いが実際の収率は低い。
【0006】
触媒の元素組成を制御することは従来技術で主に採用されているピロメリット酸二無水物の収率を高める技術手段の1つである。CN107866241Aは、不活性担体を使用し、活性成分としてバナジウム元素、チタン元素、VA族元素及びアルカリ金属元素のうちの少なくとも1種を含む、デュレンを酸化してピロメリット酸二無水物を製造するための触媒であり、CN107866257Aは、α-Al、炭化ケイ素、セラミックスリング又はこれらの混合物を担体とし、活性成分としてバナジウム元素、鉄系元素、IIB族元素及びアルカリ金属元素のうちの少なくとも1種を含む、デュレンからピロメリット酸二無水物を製造するための触媒である。
【0007】
触媒を段階的に充填することは、ピロメリット酸二無水物の収率を高める従来技術のもう1つの技術手段である。CN1116197Aは、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を生産する方法を開示しており、この方法は、触媒を段階的に反応器に充填して多段触媒を形成し、バナジウム(a)と、モリブデン及びタングステンから選択される少なくとも1種の金属(b)とを含有し、バナジウム(a)に対する金属(b)の原子比が0.01~2である第1触媒を反応器の生成物ガスの出口側に充填し、バナジウム(a)とモリブデン及びタングステンから選択される少なくとも1種の金属(b)とを含有し、バナジウム(a)に対する金属(b)の原子比が第1触媒の原子比よりも小さい第2触媒と、バナジウム(a)及びアルカリ金属(c)を含有し、バナジウム(a)に対するアルカリ金属(c)の原子比が0.2~2.5である第3触媒とから選択される少なくとも1種の他の触媒を、反応器の原料混合ガスの入口側に充填する。
【0008】
触媒の元素組成を制御することや、触媒を段階的に充填することは、ピロメリット酸二無水物の収率を高める面で一定の効果を得たが、ピロメリット酸二無水物の実際の収率と理論の収率との間には依然として比較的に大きい差が存在し、如何にピロメリット酸二無水物の実際の収率を更に高めるかは、依然として解決すべき技術的課題となっている。
【0009】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化によりピロメリット酸二無水物を製造するための従来のバナジウム系触媒のほとんどは、担体の表面に触媒活性成分を含有するコーティングを形成したものであるが、本発明者らは、デュレンの気相酸化によりピロメリット酸二無水物を製造する場合に生成物の収率が低いという従来技術の問題を鋭意検討した結果、バナジウム系触媒の担体の表面に触媒活性成分を含有するコーティングを形成する際に、担体に近いコーティング中のチタン/バナジウムの質量比が担体から離れたコーティング中のチタン/バナジウムの質量比よりも低く、両方の差が所定の範囲内にあるように、コーティングの径方向におけるチタン/バナジウムの質量比を制御することによって、ピロメリット酸二無水物の収率を効果的に向上できることを見出した。上記の知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0010】
[課題を解決するための手段]
本発明の第1態様によれば、本発明は、
担体と、前記担体上に担持された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは、第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れており、前記第1コーティング及び前記第2コーティングは、それぞれ独立に、バナジウム元素及びチタン元素を含有し、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/Vとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼン気相酸化用の触媒を提供する。
【0011】
本発明の第2態様によれば、本発明は、
第1分散媒体、第1バナジウム源、及び第1チタン源を含有する第1スラリーを担体の表面に塗布して、第1コーティングを形成するステップ(1)と、
第2分散媒体、第2バナジウム源、第2チタン源、及び細孔拡張剤を含有する第2スラリーを担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布して、第2コーティングを形成するステップ(2)と、を含み、
前記第1コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 12、前記第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 12、前記第2コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 22、前記第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 22とすると、Ti/V12=CTi 12/C 12、Ti/V22=CTi 22/C 22、Ti/V22=Ti/V12+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒の調製方法を提供する。
【0012】
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法によって調製される触媒を提供する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製するための反応の触媒としての本発明の第1態様又は第3態様に記載の触媒の使用を提供する。
【0014】
本発明の第5態様によれば、本発明は、
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼン及び酸素ガスを含むガスを本発明の第1態様又は第3態様に記載の触媒に接触させ、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を含有する生成物気流を得るステップを含む、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法を提供する。
【0015】
本発明に係る触媒は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製するための反応の触媒として使用される場合、向上した触媒活性を示し、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の収率を効果的に向上させることができる。
【0016】
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値、及び個々の点値の間、及び個々の点値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0017】
本発明では、特に断らない限り、材料名又はステップの前に出現する「第1」及び「第2」は、順序を表すものでもなく、個々の材料又はステップを限定するものでもなく、単にその材料名又はステップを区別するために使用されるものである。例えば、「第1コーティング」と「第2コーティング」のうち、「第1」と「第2」は、2種類のコーティングを区別するためのものである。本発明では、「任意の」という用語は、「任意の」に続く用語が必須ではないことを意味し、この用語を含有するか、含有しない、あるいは含むか、含まないものと理解することができる。
【0018】
本発明では、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンは、式Iに示される化合物から選択される1種又は2種以上であってもよい。
【化1】

式I中、R、R、R、及びRは、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C~Cのアルキルである。本発明では、C~Cのアルキルは、C~Cの直鎖状アルキル及びC~Cの分岐状アルキルを含み、その具体例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、及びビネオペンチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
好ましくは、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンは、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(すなわち、デュレン)である。
【0020】
本発明の第1態様によれば、本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒を提供する。本発明による触媒は、担体と、前記担体上に担持された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは、第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れている。
【0021】
本発明の触媒によれば、前記第1コーティング及び前記第2コーティングは、それぞれ独立に、バナジウム元素及びチタン元素を含有する。本発明の触媒によれば、前記第1コーティング及び前記第2コーティング中のチタン元素とバナジウム元素との質量比(すなわち、Ti/Vの質量比)は異なり、ここで、前記第2コーティング中のTi/Vの質量比は前記第1コーティング中のTi/Vの質量比よりも高い。本発明者らは、検討した結果、触媒において、担体の表面に近い内側コーティングである第1コーティング中のTi/Vの質量比が、担体の表面から離れた外側コーティングである第2コーティング中のTi/Vの質量比よりも低く、これらの両方の差が特定の範囲内に制御されることによって、触媒の活性を効果的に向上させ、より高い生成物収率を得ることができる。本発明の触媒によれば、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/Vとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは、3~9の範囲内である。具体的には、ΔTi/Vは、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、又は9であってもよい。好ましくは、ΔTi/Vは、3.5~8.5の範囲内である。
【0022】
本発明の触媒によれば、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素と第1コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは、7~8.5:1、例えば、7:1、7.1:1、7.2:1、7.3:1、7.4:1、7.5:1、7.6:1、7.7:1、7.8:1、7.9:1、8:1、8.1:1、8.2:1、8.3:1、8.4:1、又は8.5:1であってもよい。
【0023】
本発明の触媒によれば、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素と第2コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは、12~15.5:1、例えば、12:1、12.1:1、12.2:1、12.3:1、12.4:1、12.5:1、12.6:1、12.7:1、12.8:1、12.9:1、13:1、13.1:1、13.2:1、13.3:1、13.4:1、13.5:1、13.6:1、13.7:1、13.8:1、13.9:1、14:1、14.1:1、14.2:1、14.3:1、14.4:1、14.5:1、14.6:1、14.7:1、14.8:1、14.9:1、15:1、15.1:1、15.2:1、15.3:1、15.4:1、又は15.5:1であってもよい。
【0024】
本発明の触媒によれば、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、40質量%~60質量%の範囲内、例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60%であってもよい。好ましくは、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、45~55質量%の範囲内である。
【0025】
本発明の触媒によれば、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、45~65質量%の範囲内、例えば、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65%であってもよい。好ましくは、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、50~60質量%の範囲内であってもよい。
【0026】
本発明では、第1コーティング及び第2コーティング中のチタン元素とバナジウム元素との質量比(即ち、Ti/Vの質量比)は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分光計で測定され、具体的な試験方法は以下の通りである。触媒粒子を液体窒素で冷却した後、コーティングを有さない側から縦方向に沿って切断し、断面が露出した触媒半粒子を得て、触媒半粒子を導電性テープに固定し、その表面に金、白金又は炭素をコーティングしてその導電性を向上させ、試験サンプルを得る。試験サンプルを走査型電子顕微鏡のサンプルステージに置き、触媒半粒子の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、エネルギー分光計を用いてコーティングの様々な厚さ(「縦方向」ともいう)でのTi/Vの質量比を測定する。ここで、同一コーティング厚さでのTi/Vの質量比の測定方法は以下の通りである。コーティングの水平方向(即ち、コーティングの厚さ方向と垂直又はほぼ垂直な方向)に沿って隣接する3つの点をランダムに選択し、同じ倍数(拡大倍数は一般には500~1000倍)に拡大し、エネルギー分光計により当該点でのTi/Vの質量比を測定し、3つの点で測定された値を平均化して、この水平方向のTi/Vの質量比とする。本発明では、コーティングの厚さ方向に沿って隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差によって第1コーティング及び第2コーティングを区別し、隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差が本発明で定義されたΔTi/Vの範囲内であれば、この2つの点は、それぞれ第1コーティング及び第2コーティングに属し、隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差が、本発明で定義されたΔTi/Vの範囲内(2つの端点値を含む)を下回っていれば、この2つの点は、同一コーティングに属する。
【0027】
本発明の触媒によれば、前記触媒活性成分コーティングは、微量の調整元素をさらに含有してもよい。一つの好ましい実施形態では、前記触媒活性成分コーティングは、VA族非金属元素、アルカリ金属元素、及び助剤金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0028】
本発明の触媒によれば、前記第VA族非金属元素は、好ましくはリン(P)である。前記第1コーティングでは、元素換算の第VA族非金属元素の含有量は、0.1~0.5質量%、好ましくは0.3~0.4質量%である。本発明の触媒によれば、前記第2コーティングは、第VA族非金属元素を含有してもよいし、第VA族非金属元素を含有しなくてもよい。好ましくは、前記第2コーティングは、第VA族非金属元素を含有しない。
【0029】
本発明の触媒によれば、前記アルカリ金属元素は、好ましくは、セシウム(Cs)である。前記第1コーティングでは、元素換算のアルカリ金属元素の含有量は、0.1~0.3質量%であってもよく、好ましくは0.15~0.2質量%である。前記第2コーティングでは、元素換算のアルカリ金属元素の含有量は、0.1~0.7質量%であってもよいが、好ましくは0.3~0.5質量%である。
【0030】
本発明の触媒によれば、前記助剤金属元素の具体例としては、ルビジウム(Rb)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ジルコニウム(Zr)、及びエルビウム(Er)からなる群から選択される少なくとも1種が含まれるが、これらに限定されない。1つの好ましい実施形態では、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0031】
本発明の触媒によれば、前記第1コーティングでは、酸化物換算の助剤金属元素の含有量は、1~6質量%であってもよいが、好ましくは1.5~5質量%、より好ましくは2~4.5%、さらに好ましくは3~4質量%である。1つの好ましい実施形態では、前記第1コーティング中の助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンである。この好ましい実施形態では、前記第1コーティングにおいて、Nb換算のニオブ元素含有化合物の含有量は、0.15~0.2質量%であってもよく、ZrO換算のジルコニウム元素含有化合物の含有量は、0.4~0.45質量%であってもよく、Sb換算のアンチモン元素含有化合物の含有量は、2.8~3.2質量%であってもよい。
【0032】
前記第2コーティングにおいて、酸化物換算の助剤金属元素の含有量は、1~6質量%であってもいが、好ましくは1.2~5%、より好ましくは1.5~3%であってもよい。1つの好ましい実施形態では、前記第2コーティング中の助剤金属元素は、ニオブ及びアンチモンである。この好ましい実施形態では、前記第2コーティングにおいて、Nb換算のニオブ元素含有化合物の含有量は、0.12~0.18質量%であってもよく、Sb換算のアンチモン元素含有化合物の含有量は、1.5~2質量%であってもよい。
【0033】
本発明では、コーティング中のチタン元素、第VA族非金属元素、アルカリ金属元素、及び助剤金属元素は、投入量で算出され、コーティングを形成する原料の全量(酸化物換算)を基準として算出され、前記原料は分散媒体を含まない。
【0034】
本発明の触媒によれば、前記第2コーティングと比べて、前記第1コーティングの担体からの距離が短く、すなわち、第2コーティングと比べて、第1コーティングは担体の表面に近い。1つの好ましい実施形態では、前記第2コーティングは、前記第1コーティングの表面に付着されている。1つのより好ましい実施形態では、前記第2コーティングは、前記第1コーティングの表面に付着されており、前記第1コーティングは、前記担体の表面に付着されている。このより好ましい実施形態では、前記第2コーティングは、外側コーティングとして環境に露出しており、前記第1コーティングは、内側コーティングとして前記担体と前記第2コーティングを接続する。
【0035】
本発明の触媒によれば、前記第1コーティング、前記第2コーティング、及び前記担体の重量比は、5.5~6.8:1.9~3.5:100であってもよいが、好ましくは5.8~6.7:1.9~2.9:100である。
【0036】
本発明の触媒によれば、前記触媒の総細孔容積は、0.03~0.08mL/gである。
【0037】
本発明では、触媒的総細孔容積は、BET比表面法によって測定される。
【0038】
本発明の触媒によれば、前記担体は、触媒活性コーティングを支持することに用いられ、前記担体は、不活性無機担体であり、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0039】
本発明の触媒によれば、前記触媒の形状は、円柱状、球状、環状、又は顆粒状であってもよい。好ましくは、前記触媒の形状は環状である。1つの好ましい実施形態では、前記触媒は環状であり、前記触媒の外径(即ち、外輪の直径)は、3~13mm、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13mmであってもよい。好ましくは、前記触媒の外径は5~9mmである。この好ましい実施形態では、前記触媒の肉厚(即ち、外輪の直径と内輪の直径との差/2)は、0.1~10mm、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは1~3mmである。この好ましい実施形態では、前記触媒の高さは、2~12mm、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12mmであってもよいが、好ましくは3~8mmである。
【0040】
本発明の第2態様によれば、本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒の調製方法であって、
第1分散媒体、第1バナジウム源、及び第1チタン源を含有する第1スラリーを担体の表面に塗布して、第1コーティングを形成するステップ(1)と、
第2分散媒体、第2バナジウム源、第2チタン源、及び細孔拡張剤を含有する第2スラリーを担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布して、第2コーティングを形成するステップ(2)と、を含む、方法を提供する。
【0041】
本発明の方法によれば、前記第1コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 12、前記第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 12、前記第2コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 22、前記第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 22とすると、Ti/V12=CTi 12/C 12、Ti/V22=CTi 22/C 22、Ti/V22=Ti/V12+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは、3~9の範囲内である。具体的には、ΔTi/Vは、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、又は9であってもよい。好ましくは、ΔTi/Vは、3.5~8.5の範囲内である。
【0042】
本発明の触媒の調製方法によれば、第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 12は、40質量%~60質量%の範囲内、例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60質量%であってもよい。好ましくは、第1コーティングに導入されるチタン元素のTi換算の含有量CTi 12は、45~55質量%の範囲内である。
【0043】
本発明の触媒によれば、第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 22は、45~65質量%の範囲内、例えば45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65%であってもよい。好ましくは、第2コーティングに導入されるチタン元素のTi換算の含有量CTi 22は、50~60質量%の範囲内である。
【0044】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1バナジウム源及び前記第2バナジウム源は、同一であってもよいし、異なってもよい。前記第1バナジウム源及び第2バナジウム源は、それぞれ独立に、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、及びバナジウム酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。好ましくは、前記第1バナジウム源及び第2バナジウム源は、メタバナジン酸アンモニウムである。
【0045】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1チタン源及び前記第2チタン源は、同一であってもよいし、異なってもよい。前記第1チタン源及び前記第2チタン源は、それぞれ独立に、二酸化チタン及び/又は二酸化チタンの前駆体であってもよい。1つの好ましい実施形態では、前記第1チタン源及び前記第2チタン源は、それぞれ独立に、二酸化チタン及びメタチタン酸からなる群から選択される少なくとも1種である。前記二酸化チタンは、好ましくは、アナターゼ型TiOである。前記アナターゼ型TiOの比表面積は、10~30m/gであってもよい。
【0046】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1コーティングに導入されるTi換算のチタン元素と第1コーティングに導入されるV換算のバナジウム元素との質量比Ti/V12は、7~8.5:1、例えば、7:1、7.1:1、7.2:1、7.3:1、7.4:1、7.5:1、7.6:1、7.7:1、7.8:1、7.9:1、8:1、8.1:1、8.2:1、8.3:1、8.4:1、又は8.5:1であってもよい。
【0047】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第2コーティングに導入されるTi換算のチタン元素と第2コーティングに導入されるV換算のバナジウム元素との質量比Ti/V22は、12~15.5:1、例えば、12:1、12.1:1、12.2:1、12.3:1、12.4:1、12.5:1、12.6:1、12.7:1、12.8:1、12.9:1、13:1、13.1:1、13.2:1、13.3:1、13.4:1、13.5:1、13.6:1、13.7:1、13.8:1、13.9:1、14:1、14.1:1、14.2:1、14.3:1、14.4:1、14.5:1、14.6:1、14.7:1、14.8:1、14.9:1、15:1、15.1:1、15.2:1、15.3:1、15.4:1、又は15.5:1であってもよい。
【0048】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1スラリー及び前記第2スラリーは、それぞれ独立に、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び助剤金属元素を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよく、それによって、第1コーティング及び第2コーティングは、それぞれ独立に、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び助剤金属元素を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種である。一実施形態では、前記第1スラリーは、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び助剤金属元素を含有する化合物を含有する。前記第2スラリーは、アルカリ金属元素を含有する化合物、助剤金属元素を含有する化合物、及び任意の第VA族非金属元素を含有する化合物を含有する。
【0049】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第VA族非金属元素は、好ましくは、リン(P)である。好ましくは、前記第VA族非金属元素を含有する化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及び五酸化リンからなる群から選択される少なくとも1種である。第1コーティングに導入される元素換算の第VA族非金属元素を含有する化合物の含有量は、0.1~0.5質量%であってもよいが、好ましくは0.3~0.4質量%である。本発明の触媒の調製方法によれば、前記第2コーティングは、第VA族非金属元素を含有する化合物を含有してもよいし、第VA族非金属元素を含有する化合物を含有しなくてもよい。前記第2スラリーは、VA族非金属元素を含有してもよいし、第VA族非金属元素を含有しなくてもよい。好ましくは、前記第2スラリーは、第VA族非金属元素を含有しない。
【0050】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記アルカリ金属元素は、好ましくは、セシウム(Cs)である。好ましくは、前記アルカリ金属元素を含有する化合物は、MNO、MSO、MCl、及びMCOからなる群から選択される少なくとも1種であり、Mはアルカリ金属元素である。第1コーティングに導入される元素換算のアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、0.1~0.3質量%であってもよいが、より好ましくは、0.15~0.2質量%である。第2コーティングに導入される元素換算のアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、0.1~0.7質量%であってもよいが、より好ましくは、0.3~0.5質量%である。
【0051】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記助剤金属元素の具体例として、ルビジウム(Rb)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銀(Ag)、コバルト(Co)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ジルコニウム(Zr)、及びエルビウム(Er)からなる群から選択される少なくとも1種が含まれてもよいが、これらに限定されない。1つの好ましい実施形態では、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種である。好ましくは、前記助剤金属元素を含有する化合物は、助剤金属の酸化物及び前記助剤金属を含有する水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である。前記水溶性金属塩とは、水中の溶解度が1g/100g水以上の物質を指し、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、及び塩化物からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0052】
本発明の触媒の調製方法によれば、第1コーティングに導入される酸化物換算の助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、1~6質量%であってもよいが、好ましくは1.5~5質量%、より好ましくは2~4.5質量%、さらに好ましくは3~4質量%である。第2コーティングに導入される酸化物換算の助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、1~6質量%であってもよいが、好ましくは1.2~5質量%、より好ましくは1.5~3質量%である。
【0053】
本発明の触媒の調製方法によれば、1つの好ましい実施形態では、前記第1スラリー中の助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンである。この好ましい実施形態では、第1コーティングに導入されるNb換算のニオブ元素含有化合物の含有量は、0.15~0.2質量%であってもよく、第1コーティングに導入されるZrO換算のジルコニウム元素含有化合物の含有量は、0.4~0.45質量%であってもよく、第1コーティングに導入されるSb換算のアンチモン元素含有化合物の含有量は、2.8~3.2質量%であってもよい。
【0054】
本発明の触媒の調製方法によれば、1つの好ましい実施形態では、前記第2コーティング中の助剤金属元素は、ニオブ及びアンチモンである。この好ましい実施形態では、第2コーティングに導入されるNb換算のニオブ元素含有化合物の含有量は、0.12~0.18質量%であってもよく、第2コーティングに導入されるSb換算のアンチモン元素含有化合物の含有量は、1.5~2質量%であってもよい。
【0055】
本発明の触媒の調製方法において、第1コーティング及び第2コーティングに導入される各元素の含有量は、投入量によって算出され、コーティングを形成する原料の全量(酸化物換算)を基準にして算出され、前記原料は分散媒体を含有しない。
【0056】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1スラリー及び前記第2スラリーは、それぞれ独立に、シュウ酸を含有してもよい。前記第1スラリー及び前記第2スラリーにおいて、シュウ酸とバナジウム源との質量比は、それぞれ2~2.5:1であってもよい。
【0057】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1スラリー及び前記第2スラリーは、それぞれ独立に、バインダを含有してもよい。前記バインダは、酢酸ビニル-アクリレートコポリマー乳液、酢酸ビニル-エチレンコポリマー乳液、酢酸ビニル-マレイン酸エステルコポリマー乳液、及びアクリル酸-マレイン酸コポリマー乳液からなる群から選択される少なくとも1種である。第1スラリーの全量を基準にして、バインダの含有量は、4~4.3質量%であってもよい。前記第2スラリーにおいて、バインダの含有量は、4.3~4.6質量%であってもよい。
【0058】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第2スラリーは、細孔拡張剤を含有する。前記細孔拡張剤は、ステアリン酸及びステアリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。第2スラリーの全量を基準にして、細孔拡張剤の含有量は、3.9~4.2質量%であってもよい。本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1スラリーは、好ましくは、細孔拡張剤を含有しない。
【0059】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1分散媒体及び前記第2分散媒体は、それぞれ独立に、水及び水系有機溶剤を含有する。好ましくは、前記水系有機溶剤は、メタノール、エタノール、ホルムアミド、及びN,N-ジメチルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である。本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1分散媒体及び前記第2分散媒体において、水と水系有機溶剤との質量比は、それぞれ独立に、1:0.1~1であってもよいが、好ましくは1:0.3~0.8、より好ましくは1:0.4~0.7である。
【0060】
本発明の触媒の調製方法によれば、各成分を均一に混合することによって、第1スラリー及び第2スラリーを得ることができる。
【0061】
一実施形態では、前記第1スラリーは、以下のステップを含む方法によって調製されてもよい。
【0062】
(1-1)シュウ酸、バナジウム源、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び第1分散媒体を混合して、混合液Aを得る。
【0063】
(1-2)前記混合液Aをチタン源、助剤金属元素を含有する化合物及びバインダと混合して、第1スラリーを得る。
【0064】
ステップ(1-1)及びステップ(1-2)における混合は、それぞれ、20~90℃の温度で行われてもよい。ステップ(1-2)における混合は、ボールミルにおいて行われてもよく、ボールミーリング時間は、1~5時間であってもよいが、好ましくは2~4時間である。
【0065】
一実施形態では、前記第2スラリーは、以下のステップを含む方法によって調製されてもよい。
【0066】
(2-1)シュウ酸、バナジウム源、任意の第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び第1分散媒体を混合して、混合液Bを得る。
【0067】
(2-2)前記混合液Bをチタン源、助剤金属元素を含有する化合物、及びバインダと混合して、第2スラリーを得る。
【0068】
ステップ(2-1)及びステップ(2-2)における混合は、それぞれ、20~90℃の温度で行われてもよい。ステップ(2-2)における混合は、ボールミルにおいて行われてもよく、ボールミーリング時間は、1~5時間であってもよいが、好ましくは2~4時間である。
【0069】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記担体は、不活性無機担体であり、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。本発明の触媒の調製方法によれば、前記担体の形状は、円柱状、球状、環状、又は顆粒状であってもよい。好ましくは、前記担体の形状は、環状である。1つの好ましい実施形態では、前記担体は、環状担体であり、前記担体の外径(即ち、外輪の直径)は、3~13mm、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13mmであってもよい。好ましくは、前記担体の外径は、5~9mmである。この好ましい実施形態では、前記担体の肉厚(即ち、外輪の直径と内輪の直径との差/2)は、0.1~10mm、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは1~3mmである。この好ましい実施形態では、前記担体の高さは、2~12mm、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12mmであってもよいが、好ましくは3~8mmである。
【0070】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1コーティング、前記第2コーティング、及び前記担体の重量比は、5.5~6.8:1.9~3.5:100であってもよいが、好ましくは5.8~6.7:1.9~2.9:100である。
【0071】
本発明の触媒の調製方法によれば、前記第1スラリーの塗布温度は、前記第2スラリーの塗布温度よりも高い。本発明では、塗布温度とは、吹き付けるときの担体の温度を指す。好ましくは、前記第1スラリーの塗布温度をT、前記第2スラリーの塗布温度をTとすると、T-T(TとTとの差)は、70~150℃の範囲内、好ましくは80~120℃の範囲内、より好ましくは85~105℃の範囲内である。1つの好ましい実施形態では、前記第1スラリーの塗布温度は、200~250℃、例えば、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、又は250℃であってもよい。別の好ましい実施形態では、前記第2スラリーの塗布温度は、100~130℃、例えば、100、105、110、115、120、125、又は130℃であってもよい。
【0072】
本発明の触媒の調製方法によれば、常法によって担体の表面に形成された第1スラリー層を硬化して、第1コーティングを形成してもよい。本発明では、「硬化」という用語とは、スラリー層が流動性を失い、液体から固体に変わることを指す。一実施形態では、第1気流で第1スラリー層を乾燥させて、第1コーティングを形成してもよい。前記第1気流の温度は、第1スラリー層に流動性を失わせて、コーティングを形成することができる程度である。前記第1気流の温度は、200~250℃、例えば、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、又は250℃であってもよい。
【0073】
本発明の触媒の調製方法によれば、第1コーティングが形成された表面上に第2スラリーを塗布して、第2スラリー層を形成し、塗布完了後、直接パージガスでパージし、第2コーティングを形成してもよいし、まず、第2気流で乾燥させ、次に、パージ気流でパージし、第2コーティングを形成してもよい。前記パージ気流の温度は、好ましくは380-450℃、例えば、380、385、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、又は450℃であってもよい。前記第2気流の温度は、好ましくは100~150℃、例えば、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、又は150℃であってもよい。
【0074】
本発明の触媒の調製方法によれば、常法によって第1スラリー及び第2スラリーを担体上に塗布してもよい。一実施形態では、吹き付けることによって第1スラリー及び第2スラリーをそれぞれ担体上に塗布する。この実施形態では、担体2000gあたり、前記第1スラリー及び前記第2スラリーを吹き付ける速度は、それぞれ独立に、30~60mL/min、例えば、30mL/min、35mL/min、40mL/min、45mL/min、50mL/min、55mL/min、又は60mL/minであってもよいが、好ましくは35~50mL/minである。
【0075】
吹き付けることは、一般的な吹き付け装置によって行われてもよい。一例として、吹き付け装置は、熱風送風機、塗布本体、排風機、スラリー吹き付けシステム、制御システム、及び強電電源キャビネットを含んでもよい。前記塗布本体は、塗布ドラム及びその動力機構を含んでもよく、塗布ドラムは、塗布本体内に収納されており、回転速度が調整可能である。塗布ドラムは、水平中空柱状構造を採用しており、この構造は、活性成分と不活性担体材料との接触の確率を高めることができる。水平中空柱状構造には、孔径が1~8mmの丸いメッシュ、好ましくは3~4mmの丸いメッシュが開けられており、熱空気を塗布ドラムに入れることができ、担体上のスラリー中の溶媒を蒸発させた後、揮発した溶媒を塗布ドラムから除去し、前記塗布ドラムの回転数は、好ましくは5~10rpmである。スラリー吹き付けシステムは、ノズル及び供給システムを含み、供給システムは、タンク、撹拌器、供給ポンプ、及び輸送パイプラインを含む。供給ポンプは、吹き付け速度を調整することができ、ノズルは、供給ポンプによって供給されたスラリーを担体の表面に均一にスプレーすることに用いられる。
【0076】
本発明の第3態様によれば、本発明は、本発明の第2態様に記載の方法によって調製される触媒を提供する。
【0077】
本発明の第2態様に記載の方法によって調製された触媒は、担体と、前記担体上に担持された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは、第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れており、ここで、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/Vとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは、3~9の範囲内である。好ましくは、ΔTi/Vは、3.5~8.5の範囲内である。
【0078】
本発明の第4態様によれば、本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製する反応のための触媒としての、本発明の第1態様に記載の触媒、又は第3態様に記載の触媒の使用を提供する。
【0079】
前記1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンは、好ましくは1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(即ち、デュレン)である。
【0080】
本発明の第5態様によれば、本発明は、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼン及び酸素ガスを含むガスを本発明の第1態様又は第3態様に記載の触媒に接触させ、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を含有する生成物気流を得るステップを含む、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法を提供する。
【0081】
本発明の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法によれば、前記1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンは、好ましくは、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(即ち、デュレン)である。
【0082】
本発明の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法によれば、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの濃度は、1~50g/mであってもよいが、好ましくは10~30g/mである。1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの濃度とは、単位体積の酸素ガスを含むガスに含まれる1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンのグラムを指し、数値が高いほど、酸素ガスを含むガス中のデュレンの含有量が高いことを示す。
【0083】
本発明の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法によれば、前記原料混合ガスと触媒が接触する温度は、300~400℃であってもいが、好ましくは320~360℃、より好ましくは330~350℃である。
【0084】
本発明の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法によれば、1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンを含有する原料の混合ガスと酸素ガスは、一般的な反応器内で行われてもよい。一実施形態では、前記反応器は、流動層反応器である。1つの好ましい実施形態では、前記反応器は、固定層反応器である。より好ましい実施形態では、前記反応器は、固定層単管反応器である。このより好ましい実施形態では、固定層単管反応器は、管長さ3000~4800mm、内径20~30mmであってもよい。固定層単管反応器の反応管の外部は、溶融塩を循環させることにより反応熱を強制的に交換してもよい。この好ましい実施形態では、触媒は、単一段(即ち、固定層単管反応器の反応管内に1段の触媒が充填されている)であってもよいし、2段以上(即ち、固定層単管反応器の反応管内に2段以上の触媒が充填されている)であってもよい。
【0085】
本発明の1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法によれば、酸素ガスを含むガスの体積空間速度は、1500~5000h-1であってもよいが、好ましくは2000~4000h-1である。
【0086】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲を限定しない。
【0087】
以下の実施例及び比較例では、触媒の第1コーティング及び第2コーティング中のチタン元素とバナジウム元素との質量比(Ti/V及びTi/V)は、エネルギー分光計(EDAX GENESIS XM2 SYSTEM 60x)が装備された走査型電子顕微鏡(HITACHI-4800)によって測定され、試験方法は、具体的には、以下の通りである。EDAXエネルギー分光計(TEAM Octane Super)によって、走査型電子顕微鏡と同様の試験条件下で試験を行い、触媒粒子を液体窒素で冷却した後、コーティングを有さない側から縦方向に沿って切断し、断面が露出した触媒半粒子を得て、触媒半粒子を導電性テープに固定し、その表面に金、白金又は炭素をコーティングしてその導電性を向上させ、試験サンプルを得る。試験サンプルを走査型電子顕微鏡のサンプルステージに置き、触媒半粒子の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、エネルギー分光計を用いてコーティングの様々な厚さ(「縦方向」ともいう)でのTi/Vの質量比を測定する。ここで、同一コーティング厚さでのTi/Vの質量比の測定方法は以下の通りである。コーティングの水平方向(即ち、コーティング厚さ方向と垂直又はほぼ垂直な方向)に沿って隣接する3つの点をランダムに選択し、同じ倍数(拡大倍数は一般には500~1000倍)に拡大し、エネルギー分光計により当該点でのTi/Vの質量比、及びバナジウム含有量とチタン含有量を測定し、3つの点で測定された値を平均化して、この水平方向のTi/Vの質量比とする。コーティングの厚さ方向に沿って隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差によって第1コーティング及び第2コーティングを区別し、隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差が本発明で定義されたΔTi/Vの範囲内であれば、この2つの点は、それぞれ第1コーティング及び第2コーティングに属し、隣接する2つの点のTi/Vの質量比の差が、本発明で定義されたΔTi/Vの範囲内(2つの端点値を含む)を下回っていれば、この2つの点は、同一コーティングに属する。エネルギー分光計の試験条件としては、励起源は、エネルギー15kvの高エネルギー電子ビームである。
【0088】
以下の実施例及び比較例では、触媒の総細孔容積は、BET比表面法によって、米国Micromeritics社製の全自動物化学吸着分析装置上で測定され、試験方法は、具体的には、以下の通りである。所定量のサンプルをサンプル管内に入れ、10℃/minで350℃に升温して4h真空吸引する脱气条件でサンプル管を脱気処理し、次に、サンプル管を分析機器に入れて、介孔等温セン全分析を行い、BET方法によって触媒の比表面積を算出する。
【0089】
以下、実施例及び比較例では、スラリーの調製は、室温(25℃)で行われる。
【0090】
以下、実施例及び比較例では、二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンであり、比表面積が20~30m/gの範囲内である。
【0091】
実施例1~4は、本発明による触媒を調製する。
実施例1
【0092】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム123.23g、シュウ酸275.36g、硫酸セシウム2.11g、リン酸二水素アンモニウム10.23g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-1を調製した。
(1-ii)溶液A-1を、二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ6.12g、硫酸ジルコニウム7.24g、及び三酸化アンチモン23.1gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム69.82g、シュウ酸161.3g、硫酸セシウム4.57g、ホルムアミド、水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-1を調製した。
(2-ii)溶液B-1を、二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ4.86g、三酸化アンチモン13.96g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(外径8mm、高さ6mm、肉厚1.5mm、材質はタルクリング)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の6.2wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の2.3wt%になると、吹き付けを完了させて、400℃の熱風で2hパージし、触媒S1を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒S1は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング(即ち、内側コーティング)及び第2コーティング(即ち、外側コーティング)と、を含み、触媒S1において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.2:2.3:100であった。
実施例2
【0093】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム123.23g、シュウ酸275.36g、硫酸セシウム2.11g、リン酸二水素アンモニウム10.23g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-1を調製した。
(1-ii)溶液A-1を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ6.12g、硫酸ジルコニウム7.24g、及び三酸化アンチ23.1gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム57.31g、シュウ酸123.89g、硫酸セシウム3.77g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-2を調製した。
(2-ii)溶液B-2を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ3.92g、三酸化アンチモン11.29g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(外径8mm、高さ6mm、肉厚1.5mm、材質はタルクリング)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の5.8wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の1.9wt%になると、吹き付けを完了させて、400℃の熱風で2hパージし、触媒S2を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒S2は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング(即ち、内側コーティング)及び第2コーティング(即ち、外側コーティング)と、を含み、触媒S2において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は5.8:1.9:100であった。
実施例3
【0094】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム102.55g、シュウ酸230.27g、硫酸セシウム1.72g、リン酸二水素アンモニウム8.76g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-3を調製した。
(1-ii)溶液A-3を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ5.83g、硫酸ジルコニウム7.15g、及び三酸化アンチ21.8gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム69.82g、シュウ酸161.3g、硫酸セシウム4.57g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-1を調製した。
(2-ii)溶液B-1を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ4.86g、三酸化アンチモン13.96g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(外径8mm、高さ6mm、肉厚1.5mm、材質はタルクリング)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の6.5wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の2.7wt%になると、吹き付けを完了させて、400℃の熱風で2hパージし、触媒S3を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒S3は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング(即ち、内側コーティング)及び第2コーティング(即ち、外側コーティング)と、を含み、触媒S3において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.5:2.7:100であった。
実施例4
【0095】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム102.55g、シュウ酸230.27g、硫酸セシウム1.72g、リン酸二水素アンモニウム8.76g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-3を調製した。
(1-ii)溶液A-3を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ5.83g、硫酸ジルコニウム7.15g、及び三酸化アンチモン21.8gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム57.31g、シュウ酸123.89g、硫酸セシウム3.77g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-2を調製した。
(2-ii)溶液B-2を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ3.92g、三酸化アンチモン11.29g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(外径8mm、高さ6mm、肉厚1.5mm、材質はタルクリング)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の6.7wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の1.9wt%になると、吹き付けを完了させて、450℃の熱風で2hパージし、触媒S4を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒S4は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング(即ち、内側コーティング)及び第2コーティング(即ち、外側コーティング)と、を含み、触媒S4において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.7:1.9:100であった。
比較例1
【0096】
比較例1では、第2スラリーが調製されておらず、調製された触媒は、第2コーティングを含まない以外、実施例1と同様の方法によって触媒を調製した。具体的な操作は以下の通りである。実施例1と同様の方法によって第1スラリーを調製し、担体セラミックスリング(実施例1と同様)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の8.3wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒DS1を得た。触媒DS1は、担体と、担体上に担持されたコーティングと、を含み、触媒DS1において、コーティングと担体との重量比は8.3:100であった。
比較例2
【0097】
比較例2では、第1スラリーが調製されておらず、調製された触媒は、第1コーティングを含まず、実施例1と同様の方法によって調製された第2スラリーは、直接担体の表面に吹き付けられてコーティングを形成する以外、実施例1と同様の方法によって触媒を調製した。具体的な操作は以下の通りである。実施例1と同様の方法によって第2スラリーを調製し、担体セラミックスリング(実施例1と同様)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御し、第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/min、に制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の8.8wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒DS2を得た。触媒DS2は、担体と、担体上に担持されたコーティングと、を含み、触媒DS2において、コーティングと担体との重量比は8.8:100であった。
比較例3
【0098】
比較例3では、第1スラリーが調製されておらず、調製された触媒は第1コーティングを含まず、実施例2と同様の方法によって調製された第2スラリーは、直接担体の表面に吹き付けられてコーティングを形成する以外、実施例2と同様の方法によって触媒を調製した。具体的な操作は以下の通りである。実施例2と同様の方法によって第2スラリーを調製し、担体セラミックスリング(実施例2と同様)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御し、第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の8.7wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒DS3を得た。触媒DS3は、担体と、担体上に担持されたコーティングと、を含み、触媒DS3において、コーティングと担体との重量比は8.7:100であった。
比較例4
【0099】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム102.55g、シュウ酸230.27g、硫酸セシウム1.72g、リン酸二水素アンモニウム8.76g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-3を調製した。
(1-ii)溶液A-3を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ5.83g、硫酸ジルコニウム7.15g、及び三酸化アンチモン21.8gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム90.28g、シュウ酸218.12g、硫酸セシウム5.97g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-4を調製した。
(2-ii)溶液B-4を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ6.51g、三酸化アンチモン17.85g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(実施例3と同様)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の6.8wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の1.9wt%になると、吹き付けを完了させて、400℃の熱風で2hパージし、触媒DS4を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒DS4は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング及び第2コーティングと、を含み、触媒DS4において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.8:1.9:100であった。
比較例5
【0100】
1、第1スラリーの調製
(1-i)メタバナジン酸アンモニウム102.55g、シュウ酸230.27g、硫酸セシウム1.72g、リン酸二水素アンモニウム8.76g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液A-3を調製した。
(1-ii)溶液A-3を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ5.83g、硫酸ジルコニウム7.15g、及び三酸化アンチモン21.8gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第1スラリーを得た。
2、第2スラリーの調製
(2-i)メタバナジン酸アンモニウム40.19g、シュウ酸84.32g、硫酸セシウム2.33g、ホルムアミド、及び水350gを混合し、ホルムアミドと水との重量比が0.7:1の溶液B-5を調製した。
(2-ii)溶液B-5を二酸化チタン630g、シュウ酸ニオブ2.48g、三酸化アンチモン7.32g、及びステアリン酸63gとともにボールミルに投入し、その後、酢酸ビニル/エチレン共重合乳液70gを添加し、4hボールミーリングして、第2スラリーを得た。
3、触媒の調製
(1-iii)担体セラミックスリング(実施例3と同様)2000gをドラムに入れて、ドラム速度を10rpmに制御した。第1スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体セラミックスリングを予熱し、担体セラミックスリングの温度が210℃になると、供給ノズルを開き、第1スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第1スラリーをノズルから担体の表面に吹き付け、220℃の熱風で迅速に乾燥させた。内側コーティングの含有量が担体の重量の6.9wt%になると、吹き付けを完了させて、触媒中間体を得た。
(2-iii)第2スラリーを液体材料吹き付けシステムの撹拌缶に入れて撹拌した。熱風送風機を起動させて、100℃の熱風をドラムに通し、担体の温度が120℃になると、供給ノズルを開き、第2スラリーの吹き付け速度を30mL/minに制御し、第2スラリーをノズルから触媒中間体の表面に吹き付け、120℃の熱風で迅速に乾燥させた。外側コーティングの含有量が担体の重量の2.1wt%になると、吹き付けを完了させて、400℃の熱風で2hパージし、触媒DS5を得た。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒DS5は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング及び第2コーティングと、を含み、触媒DS5において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.9:2.1:100であった。
比較例6
【0101】
ステップ3の(1-iii)には第2スラリー、ステップ(2-iii)には第1スラリーを用い、すなわち、第2スラリーを用いて第1コーティングを形成し(即ち、内側コーティング)、第1スラリーを用いて第2コーティングを形成し(即ち、外側コーティング)、触媒DS6を得た以外、実施例1と同様の方法によって触媒を調製した。この触媒の組成及び総細孔容積は表1に示されている。触媒DS6は、担体と、担体上に順次担持された第1コーティング(即ち、内側コーティング)及び第2コーティング(即ち、外側コーティング)と、を含み、触媒DS6において、第1コーティング、第2コーティング、及び担体の重量比は6.2:2.3:100であった。
【0102】
【表1】
【0103】
1:第1コーティング中のチタン/バナジウムの質量比(Ti/V)及び第2コーティング中のチタン/バナジウムの質量比(Ti/V)は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分光法によって測定され、Ti/Vは、第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比であり、Ti/Vは、第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比であり、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vである。
【0104】
2:チタン(Ti)、リン(P)、セシウム(Cs)、及び助剤の含有量は、投入量によって算出され、コーティングを形成する原料の全量(酸化物換算)を基準にして算出され、前記原料は分散媒体を含まず、チタン(Ti)の含有量は、チタン元素換算、リン(P)の含有量はP換算、セシウム(Cs)の含有量はCs換算、助剤の含有量は酸化物換算である。
試験例及び試験比較例
【0105】
工業生産条件を模擬した固定層単管反応器を用いて触媒性能を評価し、固定層単管反応器は、内径29mm、管長4400mmで、反応管の外部は溶融塩を循環させることにより熱移動を行った。反応器の出口は、分析システム及び反応物収集システムに接続される。
触媒は、単段(つまり、単管1段)又は2段(つまり、単管2段)充填方式を採用しており、触媒の総充填高さは2000mmであり、2段充填の際には、反応管の入口端に第1段、反応管の出口端に第2段が充填されており、第1段の充填高さは1200mm、第2段の充填高さは800mmとする。
試験例及び試験比較例では、反応前に触媒を酸化雰囲気中でそれぞれ410℃の温度で4h活性化した。
【0106】
試験例及び試験比較例では、気相酸化反応の方法は同じであり、反応の圧力は常圧(すなわち、1標準大気圧)で、酸素含有ガスとして空気が使用され、空気の空間速度は2000h-1である。反応の過程で、デュレンの供給濃度を段階的に高め、反応器の出口でサンプリング分析を各条件で行い、触媒の最高負荷(すなわち、デュレンの最高供給濃度、すなわち表2に記載したデュレン濃度)、及び表2に記載の溶融塩温度と最高負荷でのデュレン転化率とピロメリット酸二無水物の収率を評価し、試験結果を表2に記載した。
【0107】
【表2】
【0108】
試験例1、試験比較例1及び試験比較例2を比較すると、試験例1は、本発明に係る第1コーティング及び第2コーティングが形成された触媒を用いることにより、担体の表面に触媒活性コーティングを単層形成するよりも、ピロメリット酸二無水物の収率を効果的に向上ができることが分かった。試験例1と試験比較例6を比較すると、本発明の方法を用いて担体の表面に第1コーティングと第2コーティングを形成することが、ピロメリット酸二無水物の収率を向上させるのに有効であることが分かった。
【0109】
試験例3、試験比較例4及び試験比較例5を比較すると、第1コーティング及び第2コーティング中のTi換算のチタン含有量とV換算のバナジウム含有量との質量比を本発明で定義された範囲内に制御することは、触媒活性を効果的に改善し、顕著に改善されたピロメリット酸二無水物の選択性を得ることができることが分かった。
【0110】
試験例5と試験比較例3を比較すると、1本の反応管に2段の触媒を充填した場合、本発明による触媒はより高いデュレン濃度で作用できるだけでなく、デュレンの転化率及びピロメリット酸二無水物の選択性を向上できることが分かった。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒であって、
担体と、前記担体上に担持された触媒活性成分コーティングと、を含有し、前記触媒活性成分コーティングは、第1コーティング及び第2コーティングを含有し、前記第1コーティングは前記担体の表面に近く、前記第2コーティングは前記担体の表面から離れており、前記第1コーティング及び前記第2コーティングは、それぞれ独立に、バナジウム元素及びチタン元素を含有し、前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/V、前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素とV換算のバナジウム元素との質量比をTi/Vとすると、Ti/V=Ti/V+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、触媒。
【請求項2】
前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素と第1コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは7~8.5:1である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素と第2コーティング中のV換算のバナジウム元素との質量比Ti/Vは12~15.5:1である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記第1コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、40~60質量%の範囲内であり、及び/又は
前記第2コーティング中のTi換算のチタン元素の含有量CTi は、45~65質量%の範囲内である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒活性成分コーティングは、第VA族非金属元素、アルカリ金属元素、及び助剤金属元素からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、
好ましくは、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記第2コーティングは、前記第1コーティングの表面に付着されており、
好ましくは、前記第1コーティングは、前記担体の表面に付着されている、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒の総細孔容積は0.03~0.08mL/gである、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記担体は、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの気相酸化用の触媒の調製方法であって、
第1分散媒体、第1バナジウム源、及び第1チタン源を含有する第1スラリーを担体の表面に塗布して、第1コーティングを形成するステップ(1)と、
第2分散媒体、第2バナジウム源、第2チタン源、及び細孔拡張剤を含有する第2スラリーを担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布して、第2コーティングを形成するステップ(2)と、を含み、
前記第1コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 12、前記第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 12、前記第2コーティングに導入されるバナジウム源のV換算の質量をC 22、前記第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の質量をCTi 22とすると、Ti/V12=CTi 12/C 12、Ti/V22=CTi 22/C 22、Ti/V22=Ti/V12+ΔTi/Vであり、ΔTi/Vは3~9の範囲内である、調製方法。
【請求項10】
第1コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 12は、40~60質量%の範囲内であり、あるいは
第2コーティングに導入されるチタン源のTi換算の含有量CTi 22は、45~65質量%の範囲内である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1バナジウム源及び第2バナジウム源は、それぞれ独立に、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、及びバナジウム酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第1チタン源及び前記第2チタン源は、それぞれ独立に、二酸化チタン及びメタチタン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記担体は、アルミナ、タルク、炭化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、石英、及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1コーティング、前記第2コーティング、及び前記担体の重量比は5.5~6.8:1.9~3.5:100である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1スラリーは、第VA族非金属元素を含有する化合物、アルカリ金属元素を含有する化合物、及び助剤金属元素を含有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入される第VA族非金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.5質量%であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入されるアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.3質量%であり、
好ましくは、前記第1コーティングに導入される助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、酸化物換算で1~6質量%であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素を含有する化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及び五酸化リンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素を含有する化合物は、MNO、MSO、MCl、及びMCOからなる群から選択される少なくとも1種であり、Mはアルカリ金属元素であり、
好ましくは、前記助剤金属元素を含有する化合物は、助剤金属の酸化物及び前記助剤金属を含有する水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2スラリーは、アルカリ金属元素を含有する化合物、助剤金属元素を含有する化合物、及び任意の第VA族非金属元素を含有する化合物をさらに含有し、前記助剤金属元素は、希土類元素、第VIB族元素、VIII族元素、第IIIA族金属元素、第VA族金属元素、及びチタン元素以外の第IVB族元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第2コーティングに導入されるアルカリ金属元素を含有する化合物の含有量は、元素換算で0.1~0.7質量%であり、
好ましくは、前記第2コーティングに導入される助剤金属元素を含有する化合物の含有量は、酸化物換算で1~6質量%であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素はリンであり、前記アルカリ金属元素はセシウムであり、前記助剤金属元素は、ニオブ、ジルコニウム、及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記第VA族非金属元素を含有する化合物は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及び五酸化リンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記アルカリ金属元素を含有する化合物は、MNO、MSO、MCl、及びMCOからなる群から選択される少なくとも1種であり、Mはアルカリ金属元素であり、
好ましくは、前記助剤金属元素を含有する化合物は、助剤金属の酸化物、及び前記助剤金属を含有する水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第2スラリーの全量を基準にして、細孔拡張剤の含有量は、3.9~4.2質量%であり、
好ましくは、前記細孔拡張剤は、ステアリン酸及びステアリン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1スラリーの塗布温度は前記第2スラリーの塗布温度よりも高く、
好ましくは、前記第1スラリーの塗布温度をT、前記第2スラリーの塗布温度をTとすると、T-Tは、70~150℃の範囲内、好ましくは80~120℃の範囲内、より好ましくは85~105℃の範囲内であり、
好ましくは、前記第1スラリーの塗布温度は、200~250℃であり、
好ましくは、前記第2スラリーの塗布温度は、100~130℃であり、
好ましくは、前記第2コーティングを形成する方法は、担体の第1コーティングが形成された表面上に塗布された第2スラリーをパージ気流でパージすることを含み、前記パージ気流の温度は好ましくは380~450℃である、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼンの酸化により1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を調製するための反応の触媒としての、請求項1~8のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【請求項18】
1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物の調製方法であって、
1,2,4,5-テトラアルキルベンゼン及び酸素ガスを含むガスを請求項1~8のいずれか1項に記載の触媒に接触させ、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸無水物を含有する生成物気流を得るステップを含む、調製方法。
【国際調査報告】