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特表2024-539255透明領域を有する包装紙、透明領域を有する包装紙を製造する方法、及びそのような包装紙を含む包装
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】透明領域を有する包装紙、透明領域を有する包装紙を製造する方法、及びそのような包装紙を含む包装
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20241018BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20241018BHJP
   B32B 23/06 20060101ALI20241018BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20241018BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B65D65/42 C
B32B29/00
B32B23/06
B32B23/08
B32B9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524422
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2022060365
(87)【国際公開番号】W WO2023073620
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2021/5844
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523394996
【氏名又は名称】エース パッケージング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ティリオンズ,ベニー フランソワ エミール
(72)【発明者】
【氏名】スタッパーツ,デイブ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC06
3E086AC25
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB02
3E086BB22
3E086BB74
3E086CA01
3E086CA05
3E086CA17
3E086CA18
3E086CA22
3E086DA08
4F100AJ02C
4F100AJ04
4F100AJ04A
4F100AJ04B
4F100AK03C
4F100AR00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA32B
4F100CA19
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG10
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EH46C
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JN01
4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
透明領域を有する包装紙であって、包装紙及び領域が1つのセルロース層から作成され、透明領域が包装紙に塗布されたコーティング層材料を含み、コーティング層材料がパラフィン又は植物油などの油性化合物を含む、包装紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明領域(110)を有する包装紙(100)であって、前記包装紙(100)及び前記透明領域(110)が1つのセルロース層から作成され、前記透明領域(110)が前記包装紙(100)に塗布されたコーティング層材料を含み、前記コーティング層材料がパラフィン又は植物油などの油性化合物を含む、包装紙(100)。
【請求項2】
前記透明領域(110)が、前記セルロース層の長手方向(Y)に、少なくとも部分的に延在する、請求項1に記載の包装紙(100)。
【請求項3】
前記透明領域(110)が、前記セルロース層の幅方向(X)に、少なくとも部分的に延在する、請求項1~2のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項4】
前記透明領域(110)が、ストリップの形態で、前記セルロース層上に延在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項5】
前記透明領域(110)が、ISO 2471に従って、1%~35%の間、より好ましくは、3%~25%の間、最も好ましくは、5%~15%の間にある、不透明度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項6】
前記塗布されたコーティング層材料が、少なくとも1g/mの表面密度、好ましくは、2.5~6g/mにある表面密度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項7】
前記セルロース層が、18g/mより高い表面密度を有し、前記セルロース層が、好ましくは、最大で50g/m、より好ましくは、最大で35g/mの表面密度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項8】
前記セルロース層の少なくとも第1の側の表面が、220ml/分未満、好ましくは、100ml/分未満、より好ましくは、80ml/分未満、最も好ましくは40ml/分未満の、表面粗さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項9】
前記コーティング層材料が、前記透明領域(110)を実質的に完全にコーティングする、請求項1~8のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項10】
前記セルロース層が、漂白セルロース層である、請求項1~9のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項11】
前記セルロース層が、長繊維と短繊維との混合物を含み、少なくとも40%の長繊維、好ましくは、少なくとも50%の長繊維、より好ましくは、少なくとも70%の長繊維を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項12】
前記透明領域(110)内の前記コーティング層材料が、前記透明領域(110)が形成されるように、第1の温度範囲内の第1の温度で前記包装紙(100)に塗布され、第2の温度範囲内の第2の温度で段階的に硬化される、請求項1~11のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項13】
前記透明領域(110)内の前記コーティング層材料が、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~7秒間の間、好ましくは、少なくとも7秒間にわたって、前記第2の温度に曝露される、請求項12に記載の包装紙(100)。
【請求項14】
前記第2の温度範囲が、30℃~120℃の間、好ましくは、40℃~110℃の間、より好ましくは、50℃~100℃の間にある、請求項12~13のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項15】
前記第2の温度範囲が、前記コーティング層材料の塗布によって得られる、残留熱によって提供され得る、請求項12~14のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項16】
前記第1の温度範囲が、150℃~180℃の間、好ましくは、80℃~150℃の間、より好ましくは、100℃~120℃の間にある、請求項12~15のいずれか一項に記載の包装紙(100)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の包装紙(100)を備える、セルロース包装。
【請求項18】
前記透明領域が、前記セルロース包装内に窓を形成する、請求項17に記載のセルロース包装。
【請求項19】
透明領域(110)を有する包装紙(100)を製造する方法であって、前記方法が、
-第1の側及び第2の側を有するセルロース層を提供する工程と、
-第1の温度範囲内にある第1の温度で、所定量のコーティング層材料を領域の位置に塗布する工程であって、前記コーティング層材料が、パラフィン又は植物油などの油性化合物を含む工程と、
-前記透明領域(110)を形成するために、塗布された前記所定量のコーティング層材料を、第2の温度範囲内にある第2の温度で段階的に硬化させる工程とを含む、方法。
【請求項20】
前記第2の温度範囲が、30℃~120℃の間、好ましくは、40℃~110℃の間、より好ましくは、50℃~100℃の間にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記所定量のコーティング層材料を塗布する工程が、
-無端移動面を提供する工程と、
-前記無端移動面内で前記所定量のコーティング層材料を取上げる工程と、
-前記無端移動面を前記セルロース層の前記第1の側と接触させる工程とを含む、請求項19~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の温度範囲が、前記コーティング層材料の塗布によって得られる、残留熱によって提供され得る、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の温度範囲が、70℃~180℃の間、好ましくは、80℃~150℃の間、より好ましくは、100℃~120℃の間にある、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記透明領域(110)が、前記セルロース層の長手方向(Y)に見て、前記セルロース層上に少なくとも部分的に延在して配置される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記透明領域(110)が、前記セルロース層の幅方向(X)に見て、前記セルロース層上に少なくとも部分的に延在して配置される、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記透明領域(110)が、ストリップの形態を取る、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記透明領域(110)の不透明度が、ISO 2471に従って、1%~35%の間、より好ましくは、3%~25%の間、最も好ましくは、5%~15%の間にある、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記所定量のコーティング層材料が、少なくとも1g/mであり、好ましくは、2.5~6g/mの間にある表面密度に対応する、請求項19~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記所定量のコーティング層材料を有する前記セルロース層が、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~7秒間の間、好ましくは、少なくとも7秒間、前記第2の温度範囲に曝露される、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記セルロース層が、18g/mより高い比重を有し、前記セルロース層が、好ましくは、最大で50g/m、より好ましくは、最大で35g/mの比重を有する、請求項19~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記セルロース層の少なくとも前記第1の側上の表面が、220ml/分未満、好ましくは、100ml/分未満、より好ましくは、80ml/分未満、最も好ましくは、40ml/分未満の、表面粗さを有する、請求項19~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティング層材料が、前記透明領域(110)を実質的に完全にコーティングする、請求項19~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記セルロース層が、漂白セルロース層である、請求項19~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記セルロース層が、長繊維と短繊維との混合物を含み、少なくとも40%の長繊維、好ましくは、少なくとも50%の長繊維、より好ましくは、少なくとも70%の長繊維を含む、請求項19~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装紙に関する。本発明は更に、包装紙を備えるセルロース包装、及び包装紙を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓が設けられ、更に紙を含む袋状包装は、特に、パン、焼き菓子、野菜、肉、及び果物に適用される。窓は、概して透明であり、その目的のために、顧客及び店員が、袋状包装内に、包装された物体を視認できる。窓は、典型的には、紙の両側に接着されたストリップによって形成され、ポリプロピレン(PP)、若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料、又は任意選択的に、別のポリエステルから製造される。
【0003】
そのような包装を作成する方法、及びその結果得られる包装は、欧州特許第1894714B1号、及び欧州特許第3095723A1号から、知られている。しかしながら、窓を有するそのような包装は、実際には、製造することが困難である。紙のロール、及びプラスチック窓材料のロールは、したがって、典型的には、この目的のために必要とされる。これらのロールを巻出して、接着材料が、紙及び窓材料の少なくとも一方に塗布される。窓材料は、接着材料を使用して、紙に接着される。窓材料は、窓材料の配置中に緩む傾向があるので、この製造プロセスは、制御が困難である。この問題を回避するために、製造プロセス中に責任を負う製造作業員は、高度に熟練している必要がある。この高度に熟練した人員への依存は、望ましくない。更に、実現された相互の接続は、次善の品質である。したがって、窓は、紙から引き剥がされる傾向にある。これは、包装の使用において、望ましくない。更に、プラスチック窓は、紙と比較して高価である。したがって、結果として得られる包装も、高価である。持続可能性を目的とした生態学的観点から、加えて、得られる包装は、リサイクルが困難又は不可能である場合がある。
【0004】
国際公開第2020170226号は、異なるリサイクル可能な材料から製造される、複合包装を記載している。国際公開第2020170226号に記載される複合包装は、異なる材料、特に、リサイクル可能なベース材料と、部分的に透明であり、複合包装に窓を形成するために、第1のリサイクル可能なベース材料に取り付けられる、リサイクル可能な窓材料とから構築される、組立てられた包装である。国際公開第2020170226号の複合包装の製造プロセスは、窓材料の配置中に窓材料が緩む傾向があるため、制御が困難である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、簡単な方法でより安価に製造することができる、包装紙を提供することである。本発明の更なる目的は、そのような包装紙を製造する方法を提供すること、及び包装紙を有する包装を提供することである。
【0006】
本発明は、この目的のために、透明領域を有する包装紙であって、包装紙及び透明領域が1つのセルロース層から作成され、透明領域が包装紙に塗布されたコーティング層材料を含む、包装紙を提供する。コーティング層材料は、パラフィン又は植物油などの、油性化合物を含む。このようにして、少なくとも部分的に半透明又は透明な、包装紙が提供される。したがって、顧客及び店員は、包装紙で作成された包装内に、包装された物体を視認できる。このようにして、プラスチック材料の使用が回避される。このような包装紙は、より持続可能であり、より安価であり、製造がより簡単である。
【0007】
透明領域は、好ましくは、セルロース層の長手方向に、少なくとも部分的に延在する。
【0008】
透明領域は、好ましくは、セルロース層の幅方向に、少なくとも部分的に延在する。
【0009】
透明領域は、好ましくは、ストリップの形態で、セルロース層にわたって延在する。しかしながら、透明領域が異なる形態を取り得ることは、当業者には明らかであろう。
【0010】
透明領域は、好ましくは、ISO 2471に従って測定して、1%~35%の間、より好ましくは、3%~25%の間、最も好ましくは、3%~15%の間の、不透明度を有する。
【0011】
塗布されたコーティング層材料は、好ましくは、少なくとも1g/mの表面密度、より好ましくは、2.5~6g/mの間の、表面密度を有する。なお、コーティング層材料の所定量は、セルロース層の種類等の特性に応じて、選択できることに留意されたい。白色紙とも呼ばれる漂白セルロース層の場合、例えば、約8g/mのコーティング層材料を塗布することができ、又は、更なる例によれば、褐色紙の場合、約10g/mを塗布することができる。更なる試験は、塗布されたコーティング層材料が2.5~15g/mの間の、表面密度を有することを示した。コーティング層材料のそのような所定量、又は塗布されたコーティング層材料の表面密度は、コーティング層材料が塗布されるセルロース層が飽和するように、選択される。
【0012】
セルロース層は、好ましくは、18g/mより高い表面密度を有し、セルロース層は、好ましくは、最大50g/m、より好ましくは、最大35g/mである、表面密度を有する。このようなセルロース層は、比較的軽量であり、このことは、包装紙が、容易に輸送可能であり、より安価であるという利点を有する。そのようなセルロース層は、更に、コーティング層材料によって、より均一に浸透され得る。その有利な効果は、そのような表面密度又は比重を有するセルロース層の、より低い繊維密度によるものである。
【0013】
セルロース層の少なくとも第1の側の表面は、220ml/分未満、好ましくは、100ml/分未満、より好ましくは、80ml/分未満、最も好ましくは、40ml/分未満の、ISO 8791/2(ベントセン粗さ法とも呼ばれる)による、表面粗さを有することが好ましい。セルロース層は、第1の側及び第2の側の両方に、そのような表面粗さを有することができることに、留意されたい。表面粗さは、第1の側と第2の側とで、異なっていてもよい。セルロース層は更に、第1の及び第2の側に、実質的に均一な表面粗さを有してもよい。このような表面粗さは、紙の平滑度に対応する。本発明者らは、驚くべきことに、より平滑な紙が、より少量のコーティング層材料で、より透明になる傾向を有することを見出した。この効果は、平滑な紙中ではセルロース繊維が比較的同様に整列され、それにより、コーティング層材料がセルロース層により均一に浸透及び含浸されることで、達成されると推測される。
【0014】
コーティング層材料は、好ましくは、透明領域を実質的に完全にコーティングする。換言すれば、透明領域の表面全体が、コーティング層材料を含むことが好ましい。しかしながら、透明領域がコーティング層材料を含まない部分を含むことも可能である。
【0015】
セルロース層は、好ましくは、漂白セルロース層である。
【0016】
セルロース層は、好ましくは、長繊維と短繊維との混合物を含み、少なくとも40%の長繊維、より好ましくは、少なくとも50%の長繊維、より好ましくは、少なくとも70%の長繊維を含む。このようなセルロース層は、引裂きに耐性があるという、利点を有する。したがって、その後に実現される包装は、例えば、グラシン紙と比較してより強い。このようなセルロース層は、更に、通常の方法で製造することができるという利点を有する。このような繊維組成を有するセルロース層の価格は、グラシン紙と比較して、かなり安価に製造することができる。更に、そのようなセルロース層の製造は、より単純で、より迅速で、より持続可能である。一例によれば、セルロース層は、ほぼ100%の長繊維を含むことさえできる。このようなセルロース層は、セルロース層の製造中に、長繊維のみを添加することによって得られる。換言すれば、短繊維は、添加されない。
【0017】
透明領域内のコーティング層材料は、好ましくは、第1の温度範囲内の第1の温度で包装紙に塗布され、透明領域が形成されるように、第2の温度範囲内の第2の温度で段階的に硬化される。ここで、第1の温度は、第2の温度よりも高い。本発明の利点は、既知の製造プロセスにおいては、コーティング層材料が、例えば、冷却ローラを用いて、典型的には、5℃などの低温で、直ちにかつ瞬間的に冷却されるという洞察に基づく。したがって、セルロース層上のコーティング層材料は、非常に迅速に硬化する。これは、包装紙の迅速な更なる処理を可能とする。したがって、既知のプロセスでは、コーティング層材料は、セルロース層に更に浸透する時間を常に有する訳ではなく、その結果、突然の温度低下のために、曇った又は不透明な結果を伴う構造に硬化する。本発明者は、驚くべきことに、段階的硬化によって、コーティング層材料が浸透した領域が透明になり(ガラス質とも呼ばれる)、したがって、透明領域を形成することを見出した。コーティング層材料の段階的硬化によって、油性材料が硬化して、光に対して透明な、セルロース層を通る経路を形成することが可能となる。このようにして、コーティング層材料は、実質的にガラス質の構造に硬化するように思われる。このようにして、透明領域の透明度が、大幅に改善される。
【0018】
透明領域内のコーティング層材料は、好ましくは、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~7秒間の間、好ましくは、少なくとも7秒間、第2の温度に曝露される。ここで、第2の温度は、第2の温度範囲内で変動し得る。
【0019】
透明領域は、好ましくは、第1の温度範囲内にある第1の温度で、所定量のコーティング層材料を領域の位置に塗布し、
塗布された所定量のコーティング層材料を、第2の温度範囲内にある第2の温度で、段階的に硬化させて、透明領域を形成することによって、得ることができる。本発明の利点は、既知の製造プロセスにおいては、コーティング層材料をセルロース層上に急速に硬化させるために、コーティング層材料が、例えば、冷却ローラを用いて、典型的には、5℃などの低温で、直ちに冷却されるという洞察に基づく。これは、包装紙の迅速な更なる処理を可能とする。したがって、既知のプロセスでは、コーティング層材料は、セルロース層に浸透する時間を常に有する訳ではなく、その結果、突然の温度低下のために、曇った又は不透明な結果を伴う構造に硬化する。本発明者は、驚くべきことに、段階的硬化によって、コーティング層材料が浸透した領域が透明になり、したがって、透明領域を形成することを見出した。コーティング層材料の段階的硬化によって、油性材料が硬化して、光に対して透明な、セルロース層を通る経路を形成することが可能となる。コーティング層材料は、このようにして、実質的にガラス質構造に硬化すると推測される。このようにして、透明領域の透明度が改善される。
【0020】
所定量のコーティング層材料を有するセルロース層は、好ましくは、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~7秒間の間、好ましくは、少なくとも7秒間、第2の温度範囲に曝露される。
【0021】
第2の温度範囲は、好ましくは、30℃~120℃の間、好ましくは、40℃~110℃の間、より好ましくは、50℃~100℃の間にある。このような温度範囲は、塗布されたコーティング層材料の粘度を高め、それによって、コーティング層材料がセルロース層により良好に浸透する。第2の温度範囲は、任意選択的である。したがって、第1の温度範囲が十分に温かい、例えば約150℃である場合、第2の温度範囲は、限定された効果のみを有するか、又は効果を有さないことに留意されたい。
【0022】
所定量のコーティング層材料の塗布は、好ましくは、
-無端移動面を提供する工程と、
-無端移動面内で所定量のコーティング層材料を取上げる工程と、
-無端移動面をセルロース層の第1の側と接触させる工程と、を含む。
【0023】
第2の温度範囲は、好ましくは、コーティング層材料の塗布によって得られる、残留熱によって提供され得る。
【0024】
第1の温度範囲は、好ましくは、70℃~180℃の間、好ましくは、80℃~150℃の間、より好ましくは、100℃~120℃の間にある。
【0025】
包装紙の利点は、必要な変更を加えて、セルロース包装、及びその製造方法に適用される。
【0026】
第2の態様によれば、本発明は、上記の包装紙を含む、セルロース包装を提供する。領域は、好ましくは、セルロース包装に窓を形成する。
【0027】
第3の態様によれば、本発明は、透明領域を有する包装紙を製造する方法を提供し、方法は、
-第1の及び第2の側を有するセルロース層を提供する工程と、
-領域の位置に、第1の温度範囲内にある第1の温度を有する、所定量のコーティング層材料を塗布する工程と、
-塗布された所定量のコーティング層材料を、第2の温度範囲内にある第2の温度で段階的に硬化させて、透明領域を形成する工程とを含む、方法である。
【0028】
第2の温度範囲は、好ましくは、30℃~120℃の間、好ましくは、40℃~110℃の間、より好ましくは、50℃~100℃の間にある。
【0029】
所定量のコーティング層材料の塗布は、好ましくは、
-無端移動面を提供する工程と、
-無端移動面内で所定量のコーティング層材料を取上げる工程と、
-無端移動面をセルロース層の第1の側と接触させる工程と、を含む。
【0030】
第2の温度範囲は、好ましくは、所定量のコーティング層材料の塗布中に得られる、残留熱によって提供され得る。
【0031】
第1の温度範囲は、好ましくは、70℃~180℃の間、好ましくは、80℃~150℃の間、より好ましくは、100℃~120℃の間にある。
【0032】
透明領域は、好ましくは、セルロース層の長手方向に見て、少なくとも部分的にセルロース層上に延在して配置される。
【0033】
透明領域は、好ましくは、セルロース層の幅方向に見て、少なくとも部分的にセルロース層上に延在して配置される。
【0034】
透明領域は、好ましくは、ストリップの形態で、施用される。
【0035】
ISO 2471によれば、透明領域の不透明度は、好ましくは、1%~35%の間、より好ましくは、3%~25%の間、最も好ましくは、5%~15%の間にある。
【0036】
コーティング層材料の所定量は、好ましくは、少なくとも1g/mであり、より好ましくは、2.5~6g/mの間の表面密度に対応する。
【0037】
所定量のコーティング層材料を有するセルロース層は、好ましくは、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~7秒間の間、好ましくは、少なくとも7秒間、第2の温度範囲に曝露される。
【0038】
セルロース層は、好ましくは、18g/mより高い比重を有し、セルロース層は、好ましくは、最大50g/m、より好ましくは、最大35g/mである比重を有する。
【0039】
セルロース層の少なくとも第1の側上の表面は、220ml/分未満、より好ましくは、100ml/分未満、更により好ましくは、80ml/分未満、最も好ましくは、40ml/分未満の、表面粗さを有することが好ましい。表面粗さは、ここでは、ISO 8791-2に従って決定され、ベントセン粗さとしても知られる。このようにして、コーティング層材料は、セルロース層に、より均一に浸透することができる。
【0040】
コーティング層材料は、好ましくは、透明領域を実質的に完全にコーティングする。
【0041】
セルロース層は、好ましくは、漂白セルロース層である。
【0042】
セルロース層は、好ましくは、長繊維と短繊維との混合物を含み、少なくとも40%の長繊維、より好ましくは、少なくとも50%の長繊維、好ましくは、少なくとも70%の長繊維を含む。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の、上記の、及び他の有利な特性及び目的は、添付の図面及び表と組合わせて読まれるとき、以下の詳細な説明を参照して、より明らかになり、本発明はより良く理解されるであろう。
図1】A、B、C、D、E、F、G、H、は、各々、例示的な実施形態による透明領域を有する、包装紙の上面図を示す。
図2A】セルロース層の断面図に基づいて透明領域を有する、包装紙を製造する方法を示す。
図2B】セルロース層の断面図に基づいて透明領域を有する、包装紙を製造する方法を示す。
図2C】セルロース層の断面図に基づいて透明領域を有する、包装紙を製造する方法を示す。
図2D】セルロース層の断面図に基づいて透明領域を有する、包装紙を製造する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、図面に示された例示的な実施形態に基づいて、本発明を更に説明する。同一の又は類似の要素は、図面において同一の参照番号で示される。
【0045】
図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hは、透明領域110を有する包装紙100の、例示的な実施形態を示す。図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hには、座標系X、Yが示されており、示された軸Xは、包装紙の幅方向を示し、示された軸Yは、包装紙の長手方向を示す。
【0046】
図において、包装紙100は、長方形である。このような形態は、典型的には、包装紙100の製造中に得られる。より具体的には、包装紙100は、セルロース層とも呼ばれる紙のロールから製造される。しかしながら、包装紙100が異なる形態を取ることもできることは、当業者には明らかであろう。包装紙100の製造中、セルロース層は、典型的には、バルクで、より具体的には、巻上げられた形態のセルロース層を含む、ロールの形態で供給される。ロールから巻出した後、セルロース層は、ストリップを形成する。ストリップは、例えば、図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hに示される幅に対応する幅を有し、更に以下に説明され、特に、セルロース層のストリップを処理して、それを、図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hに示される包装紙100に切断するように構成される、処理装置を通して誘導される。しかしながら、包装紙100が異なる形態を取ることができることは、明らかであろう。したがって、図に示される直線とは対照的に、包装紙100の端縁部は、1つ以上の突出部及び/又は1つ以上の陥没部が形成されるように、形成することができる。端縁部は、セルロース層の長手方向に対して実質的に横断する方向にある、縁を意味すると理解される。横断方向縁部はまた、切抜かれ得るか、又は1つ以上の突出部及び/若しくは1つ以上の陥没部とともに、予め形成され得る。突出部及び/又は陥没部は、例えば、袋状包装を形成するために、包装紙100を対応する包装紙に取り付ける役割を果たすことができる。セルロース層のストリップの切断(チョッピングとも呼ばれる)は、それ自体当業者に知られており、したがって、簡単な記載のために説明しない。
【0047】
包装紙100は透明領域110を有し、より具体的には、透明領域110を有する包装紙100が示される。包装紙100及び透明領域110は、1つのセルロース層から製造される。換言すれば、包装紙は、一片のセルロース層から製造される。したがって、窓とも呼ばれる透明領域110は、包装紙100の不透明領域と同一のセルロース層から製造される。これは、ポリプロピレン(PP)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、又は任意選択的に、別のポリエステルなどの、プラスチック窓材料が設けられた既知の包装紙とは、全く対照的である。既知の包装紙は、窓が設けられた包装材料を実現するために、2つの異なる材料タイプ、すなわち、セルロース層及びプラスチック層、又は第1のセルロース層及び第2のセルロース層を組合わせており、前文で述べた結果として生じる欠点を有している。したがって、既知の包装紙は、典型的には接着によって組合わされる、少なくとも2つの異なる別個の材料からなる。
【0048】
透明領域110は、包装紙100に塗布された、コーティング層材料を含む。コーティング層材料は、好ましくは、油性化合物、好ましくは、パラフィンを含む。油性化合物は、図2Cに示すように、セルロース層に浸透し、コーティング層材料が塗布された領域の位置で、光がセルロース層を通過することを可能とする。浸透したコーティング層材料が包装紙を通る光の通過を可能とする場所は、透明領域110と呼ばれる。本出願の文脈において、透明性又は半透明性は、材料、すなわちセルロース層を通して視認可能な程度として定義される。この特性は、とりわけ、セルロース層が光を通過させる程度に依存する。コーティング層材料を含まないセルロース層は、光を吸収又は反射する。透明性は、より広い用語「透過」に該当する。物理学では、透過は、光、音波、又は電磁波などの波に対する、媒体の透過性を意味すると理解され、この場合の媒体は、セルロース層である。本出願の文脈において、透過率は、透明領域を透過する、入射放射束又は光束の部分を表す。透過率の逆数である不透明度も、追加的に使用される。ISO 2471によれば、透明領域の不透明度は、好ましくは、1%~35%の間、より好ましくは、3%~25%の間、最も好ましくは、5%~15%の間にある。このようにして、少なくとも部分的に半透明又は透明な包装紙100が、提供される。したがって、顧客及び店員は、包装紙から形成された包装内に、包装された物体を視認できる。このようにして、プラスチック材料の使用が回避される。このような包装紙は、より持続可能であり、より安価であり、製造がより簡単である。代替的に又は追加的に、コーティング層材料は、植物油を含むことができる。植物油のみを含む透明領域110を有する包装紙は、更に、リサイクル可能及び/又は堆肥化可能である。油性化合物を塗布し、セルロース層をそれで飽和させることによって形成される、透明領域の更なる利点は、プラスチック窓は十分に強くなく、及び/又は包装材料中の製品の重量の下では、プラスチックの予測できない伸び及び/又は引裂きをもたらす可能性があり、その結果、製品が包装材料から落ちる可能性があるという、洞察に基づく。プラスチック窓の使用における更なる問題は、プラスチックと紙との間の接続線が、典型的には、引裂かれやすい弱い領域であることである。一片のセルロース層から形成される包装材料100は、これらの問題をほぼ完全に解消する。
【0049】
図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hは、透明領域110が、好ましくは、セルロース層上に少なくとも部分的に延在することを示す。図示されていないが、透明領域110は、セルロース層の表面全体にわたって、延在することもできる。このようにして、包装紙100全体が透明になる。透明領域110は、好ましくは、ストリップの形態で延在する。
【0050】
図1Aの好ましい実施形態によれば、透明領域110は、セルロース層の長手方向Yに延在する。図1Aでは、透明領域110は、一方の端縁部から反対側の端縁部まで延在する。このようにして、透明領域110は、その長手方向に見られるように、セルロース層に透明なストリップを形成する。この包装紙が、例えば袋状包装として使用される場合、これにより、包装紙100の長手方向全体を通して、袋状包装内を視認できる。図1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hの各々に示されるのは、包装紙100に包装された、物品Pの表現である。製品の可視性は、透明領域110の透明度、及び不透明領域の不透明度を示す。
【0051】
図1Aでは、透明領域110は、セルロース層の中央に配置される。このようにして、2つの非透明領域120が、透明領域110の両側に配置される。不透明領域(opaque zones)120とも呼ばれる不透明領域(non-transparent zones)120は、コーティング層材料が塗布されないか、又は少量のコーティング層材料のみが塗布される、セルロース層の一部であり得る。セルロース層のそのような未処理部分は、不透明である。不透明領域は、透明領域よりも高い透湿性を有する。透明領域と不透明領域の面積比を変化させることにより、透湿度を更に制御することができる。これは、包装紙に包装された製品が、例えば、プラスチック包装に対して、カビを生じるリスクを低減する。セルロース層の未処理部分は、更に、包装紙を、それ自体又は別の材料に、最適に接着することを可能とする。
【0052】
図1Aと比較して、図1Bは、透明領域110が包装紙100の周縁部、例えば、包装紙100の横断方向縁部に配置されてもよいことを示す。
【0053】
図1Cは、透明領域110が、セルロース層の幅方向Xにも延在し得ることを示す。したがって、図1Cの透明領域110は、図1A及び1Bに示される透明領域110よりも、広い形態を取る。包装された物品Pは、このようにして、より明確に視認できる。この実施形態では、図1Cの不透明領域は、図1A及び1Bの不透明領域よりも、小さい表面積を有する。このようにして、図1Cの包装紙100は、図1A及び1Bに示される包装紙100よりも、低い透湿性を有する。
【0054】
図1Dは、セルロース層の幅方向Xに見て、第1の横断方向縁部から、第1の横断方向縁部の反対側にある第2の横断方向縁部まで延在する、透明領域110を有する包装紙100を示す。したがって、図1Dの透明領域110は、長手方向Yに見て、図1A、1B、及び1Cに示される透明領域よりも小さい。このようにして、透明領域は、セルロース層の幅方向に見て、透明ストリップを形成する。図1A、1B、及び1Cと同様に、2つの非透明領域が、透明領域の両側に位置する。形成された横断ストリップは、セルロース層の端縁部に隣接して位置するように形成することもできることは、明らかであろう。
【0055】
図1E、1F、及び1Gは、複数の透明領域110を有する、包装材料を示す。したがって、図1Eは、例えば、2つ以上の透明領域110が、横断ストリップの形態を取ることができることを示す。透明領域110は、セルロース層の長手方向に見て、相互に距離を置いて位置する。図1Gは、例えば、2つ以上の透明領域110が、長手方向ストリップの形態を取ることができることを示す。これらの透明領域110はまた、セルロース層の長手方向に見て、相互に距離を置いて位置する。図1Fは、複数の透明領域が一致する例を示す。図1Fに示す例は、横断方向ストリップを形成する第1の透明領域と、長手方向ストリップを形成する第2の透明領域とを含む。図1Fに基づいて、複数の透明領域が、重なり合って、1つの透明領域を一緒に形成できることが明らかであろう。透明領域は、実質的に直線の縁部を有する、実質的に長方形として上述される。しかしながら、透明領域は、少なくとも部分的に湾曲及び/又は屈曲した、縁部を有することもできる。したがって、透明領域は、例えば、円形又は楕円形などの、丸い形状を取ることもできる。透明領域は、更に、複数の形状の組合せであってもよく、又は幾何学的形態とは異なる形状、例えば、人型のシルエットを有してもよい。透明領域が任意の形態を取ることができ、例えば、ロゴ、包装された物体又は食品の形状などに基づいて、適合させることができることは、当業者には明らかであろう。
【0056】
包装紙110は、セルロース層に、第1の側及び第2の側を提供することによって、製造することができる。セルロース層を製造する方法は、図2A、2B、2C、及び2Dを参照して説明される。
【0057】
図2A、2B、2C、及び2Dは、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1Hに関連して説明したような、セルロース層130の断面を示す。この方法は、第1の側131及び第2の側132を有する、セルロース層130を提供することを含む。図2Aに示すように、セルロース層130は、最初は不透明である。したがって、セルロース層130の下に位置する製品Pは、視認できないか、又は識別できないか、又は限定された範囲でしかそれらができない。セルロース層130は、好ましくは、18g/mより高い、比重を有する。セルロース層130は、更に好ましくは、最大50g/m、より好ましくは、最大35g/mである、比重を有する。このようなセルロース層は、比較的軽量であり、このことは、包装紙が、容易に輸送可能であり、より安価であるという利点を有する。そのようなセルロース層130は、更に、コーティング層材料140によって、より容易に浸透可能である。換言すれば、そのようなセルロース層は、塗布されたコーティング層材料140によって、有利に飽和され得る。その有利な効果は、そのような比重を有するセルロース層の、より低い繊維密度に起因すると考えられる。
【0058】
セルロース層130の少なくとも第1の側131上の表面は、220ml/分未満、好ましくは、100ml/分未満、より好ましくは、80ml/分未満、最も好ましくは、40ml/分未満の、表面粗さを有することが好ましい。表面粗さは、ここでは、ISO 8791-2に従って決定され、ベントセン粗さとしても知られる。このようにして、この第1の側に塗布されたコーティング層材料は、セルロース層130に、より均一に浸透することができる。
【0059】
セルロース層130は、漂白セルロース層、例えば、白色紙であることが好ましい。このようにして、最適な透明な結果が得られるが、白色紙は必須ではないことに留意されたい。これは、褐色紙でほぼ同一の透明度を実現できることが、試験によって示されたからである。
【0060】
セルロース層130は、更に好ましくは、長繊維と短繊維との混合物を含み、少なくとも40%の長繊維、より好ましくは、少なくとも50%の長繊維、好ましくは、少なくとも70%の長繊維を含む。このようなセルロース層は、引裂きに耐性があるという、利点を有する。したがって、その後に実現される包装は、例えば、グラシン紙と比較してより強い。このようなセルロース層は、更に、通常の方法で製造することができるという利点を有する。このような繊維組成を有するセルロース層の価格は、グラシン紙と比較して、かなり安価に製造することができる。更に、そのようなセルロース層の製造は、より単純で、より迅速で、より持続可能である。
【0061】
図2Bに示すように、第1の温度を有する所定量のコーティング層材料140が、領域の位置で、第1の側に塗布される。コーティング層材料は、好ましくは、その塗布直前に第1の温度にされる。第1の温度は、第1の温度範囲内にある。第1の温度は、第1の温度範囲の限界の間で変化し得る。第1の温度範囲は、好ましくは、150℃~180℃の間、より好ましくは、80℃~150℃の間、最も好ましくは、100℃~120℃の間にある。このような温度範囲は、塗布されたコーティング層材料140の粘度を向上させる。このようにして、コーティング層材料は、より粘性になり、すなわち、より流動性又は液体になり、それによって、コーティング層材料は、改善された方法でセルロース層130に浸透し、効率的な方法でセルロース層130を飽和させることができる。100℃~120℃の間の温度範囲は、コーティング層材料が燃焼し得ないという、更なる利点を実現する。コーティング層材料140の粘度は、好ましくは、100℃の温度で測定して、5mPa/s~500mPa/sの間にある。コーティング層材料140の粘度は、より好ましくは、100℃の温度で測定して、5mPa/s~250mPa/sの間にある。セルロース層は、コーティング層材料が塗布される前に加熱されてもよいことに留意されたい。これは、コーティング層材料が改善された方法で、セルロース層に更に浸透することを可能とする。
【0062】
コーティング層材料140の浸透は、セルロース層130に示される円によって図示される。コーティング層材料140は、セルロース層の繊維間に、好ましくは、第2の側132(に近い位置)まで浸透する。このようにして、セルロース層130を通るコーティング層材料の、実質的に連続した流れが形成される。透明性を実質的に保証するために、十分に大きな所定量のコーティング層材料を選択することが好ましい。したがって、コーティング層材料の所定量は、好ましくは、少なくとも1g/mであり、より好ましくは、2.5~6g/mの間の表面密度に対応する量である。このようにして、コーティング層材料はセルロース層を飽和させ、所望の透明度が実質的に保証される。コーティング層材料の所定量は、より好ましくは、最大12g/mである。コーティング層材料の所定量は、セルロース層の種類を考慮して選択され得ることに留意されたい。白色紙とも呼ばれる漂白セルロース層の場合、例えば、6~8g/mのコーティング層材料を塗布することができ、又は更なる例によれば、褐色紙の場合、8~10g/mを塗布することができる。更なる例示的な実施形態によれば、1~15g/mのコーティング層材料を、代替的に塗布することができる。このように選択された所定量のコーティング層材料は、セルロース層を飽和させる。更に、コーティング層材料が第1の及び第2の側の両方に塗布される場合、透明性が更に改善されることに留意されたい。コーティング層材料の量は、第1の側と第2の側とで異なっていてもよいが、第1の及び第2の側のコーティング層材料の集合的な表面密度が、上述の値に対応することが好ましい。コーティング層材料を両側に塗布することにより、コーティング層材料がセルロース層を貫通し、コーティング層材料がセルロース層を飽和させることが、ほぼ確実に保証される。本発明者らは、驚くべきことに、コーティング層材料がセルロース層の両側に塗布される場合、透明性が更に改善されることを見出した。
【0063】
図2Cは、コーティング層材料140が、セルロース層130を貫通したことを示す。コーティング層材料140の一部が、セルロース層130から突出してもよいことは、明らかであろう。換言すれば、ある量のコーティング層材料140が、セルロース層130の表面上に、依然として存在し得る。特に、セルロース層がコーティング層材料140によって完全に飽和される有利な状況では、コーティング層材料140の残留物、又は過剰分が、セルロース層表面上に残る可能性がある。次に、塗布された所定量のコーティング層材料を、第2の温度で段階的に硬化させる。第2の温度は、第2の温度範囲内にある。第2の温度は、第2の温度範囲の限界の間で変化し得る。段階的硬化によって、コーティング層材料が浸透した領域が透明になり、したがって、透明領域110を形成する。コーティング層材料の段階的硬化によって、油性材料が硬化して、したがって、図2Dに示されるように、セルロース層130を通る光に対して透明な経路を形成することが可能となる。段階的硬化は、セルロース層上のコーティング層材料を硬化させるために、コーティング層材料が、冷却ローラを用いて、典型的には、約5℃などの非常に低い温度で、直ちに冷却されるという、既存の製造プロセスとは著しく異なることに留意されたい。既知のプロセスでは、コーティング層材料は、セルロース層に浸透する時間を有さず、その結果、突然の温度低下のために、不透明な結果を伴う構造に硬化する。第1の及び第2の温度範囲は、コーティング層材料の融点よりも高い。例えば、パラフィンのように、コーティング層材料の融点が50℃である場合には、50℃以上で段階的に硬化させる。段階的硬化は、好ましくは、30℃~120℃の間、好ましくは、40℃~110℃の間、より好ましくは、50℃~100℃の間にある、第2の温度範囲で行われる。第2の温度範囲の更なる具体的な好ましい限界が、使用されるコーティング層材料に依存することは、当業者には明らかであろう。段階的硬化はまた、塗布されたコーティング層材料を有する、セルロース層の加熱を含むことができる。したがって、コーティング層材料は、コーティング層材料及びセルロース層が第2の温度範囲に曝露される前に、例えば、更に説明されるように、熱風吹付け装置を用いて、最初に既に硬化されてもよい。所定量のコーティング層材料を有するセルロース層は、更に好ましくは、少なくとも0.1秒間、好ましくは、0.5~5秒間、好ましくは、少なくとも7秒間、第2の温度範囲に曝露される。コーティング層材料は、このようにして、実質的にガラス質構造に硬化すると推測される。実験は、透明度がこのようにして改善されることを示した。
【0064】
段階的硬化は、異なる方法で、例えば、第2の温度範囲でセルロース層を加熱する、加熱装置150を使用して行うことができる。代替的に又は追加的に、第2の温度範囲は、所定量のコーティング層材料の塗布によって得られる、残留熱によって提供され得る。加熱装置150は、第2の温度範囲内にある温度の空気を、塗布されたコーティング層材料を有するセルロース層上に吹き付ける、熱風装置であってもよい。加熱空気は、コーティング層材料を再加熱し、その結果、コーティング層材料は、セルロース層を飽和させるために、セルロース層を通って更に広がることができる。このような好ましい実施形態は、簡単な方法で実現することができる。加熱装置150は、コーティング層材料の塗布から、例えば、約0.1~7メートルの距離に、設けることができる。これにより、コーティング層材料を短時間で少なくとも部分的に硬化させ、次いで再び溶融させることができる。驚くべきことに、透明領域の最終的な透明度は、このようにして更に改善されることが見出された。第2の温度範囲に達するために、コーティング層材料を有するセルロース層を加熱する、1つ以上の加熱ローラが、代替的に又は組合わせて設けられてもよい。例えば、加熱された圧力ローラを使用することによって、紙を増加した圧力に曝露させることによって、コーティング層材料の浸透を更に改善することが、更に可能である。上記のように、セルロース層は、任意選択的に、コーティング層材料の塗布前、及びコーティング層材料の塗布後の両方で、加熱することができる。更に驚くべきことに、試験は、例えば、冷却液が冷却ローラを通って流れるのを防止することによって、又は冷却ローラを取り外すことによって、冷却ローラが使用不能にされたときにも、コーティング層材料が段階的に硬化することを示した。公知の装置では、そのような冷却ローラは、コーティング層材料が塗布される位置の下流に、典型的にはそのすぐ近くに配置され、その結果、コーティング層材料は直ちに硬化され、上述の不透明な外観をもたらす。冷却ローラを使用不能にすることによって、段階的硬化が、非常に簡単な方法で実現される。そのような好ましい実施形態では、コーティング層材料がセルロース層の両側に塗布される場合、透明領域の透明度は更に改善される。
【0065】
透明領域を有する包装紙100は、パン、焼き菓子、野菜、果物、チーズ、若しくは肉などの食品、又は非食品用の、セルロース包装材料として非常に有利である。包装紙100は、例えば、セルロースバッグに加工、又は形成することができる。包装紙はまた、例えば、精肉店で紙のシートとして機能することができ、又はロールで供給することができる。透明領域を有する包装紙は更に、例えば、それ自体閉じられた袋を形成するために、包装紙の簡単な接着を可能とする。更に別の利点は、包装紙が、グラシン紙と比較してかなり安価であることである。この利点は、グラシンがスーパーカレンダーを使用して製造されるという洞察に基づく。このような製造プロセスは多くのエネルギーを必要とし、これは、包装紙100と比較して、グラシン紙のコストを大幅に上昇させる。グラシンは、更に、繊維が非常に細かく粉砕されているので破れやすい。
【実施例
【0066】
上述した利点は、以下に述べる非限定的な例示的実施形態において実証される。
【0067】
実施例1
実施例1は、紙製のパンバッグの透湿性を劇的に増加させるための、既知の方法及び装置を記載する。
【0068】
STARKRAFTからのFlexpack Smoothは、約35g/mの比重を有する、セルロース層130の例示的実施形態である。第1の実施例によれば、STARKRAFT製のFlexpack Smoothは、HOLWEG-WEBER(登録商標)CTH1ワックスがけユニットを備えた、HOLWEG-WEBER(登録商標)RS26紙袋製造機によって、セルロース層130の片側、すなわち第1の側131若しくは第2の側132、又はセルロース層130の両側、すなわち第1の側131及び第2の側132の両方に、g/m単位の、異なる単位面積当たり重量を有する、パラフィンのコーティング層材料140でコーティングされる。HOLWEG-WEBER(登録商標)RS26紙袋製造機のパラフィン浴は、120℃の温度を有する。セルロース層は、約110m/分の生産速度で、HOLWEG-WEBER(登録商標)RS26紙袋製造機を通して駆動される。第1の例示的実施形態によれば、HOLWEG-WEBER(登録商標)RS26紙袋製造機の冷却ローラは、約6~7℃の温度を有する。紙の透湿性は、典型的には、このようにして高められる。既知の方法によれば、紙は、その後、例えば消費者によるパンバッグとしての使用のために、更に仕上げられる。
【0069】
例示的実施形態
実施例1から続けると、コーティング層材料140によるセルロース層130、例えば、STARKRAFTからのFlexpack Smoothの更なる処理は、セルロース層130が局所的に透明にされることを可能とする。換言すれば、セルロース層130内に透明領域110を更に作り出すことが可能である。
【0070】
例示的な実施形態の更なる説明において「紙」とも呼ばれる、セルロース層130が、コーティング層140を有すると、試料が採取される。例示的実施形態では、パラフィン層又はパラフィンコーティングが、コーティング層140として塗布される。紙を、例えば140℃のホットプレート上に、短時間、例えば約1分間保持することによって、試料を短時間高温に曝露する。これにより、紙は、局所的に、すなわちホットプレートに曝露される領域の位置で透明になる。非常に高い温度に曝露されることにより、塗布されたパラフィン層が再び溶融し、改善された方法で紙の孔に浸透すると推測される。紙の孔に浸透するパラフィンは、紙繊維構造の毛細管現象によって、主に駆動される。典型的には約1.48であるパラフィンの屈折率と、典型的には約1.52である紙又はセルロースとの屈折率が、ほぼ同一であるとき、紙は局所的に透明になる。
【0071】
処理された紙の透明度又は不透明度は、PCE-RM 100 Reflectance Meterで、測定することができる。代替の、いわゆる反射率計が使用され得ることが、当業者には明らかであろう。反射率計は、典型的には、0~100%の測定スケールを使用する。この場合では、0%が完全に透明であり、100%が完全に不透明である。測定値が低いほど、透明性が良好である。このような測定は、上述のISO 2471測定と組合わせて、又はその代替として、使用することができる。
【0072】
第1の例示的な実施形態(例示的実施形態1)では、紙は、Solenis(登録商標)からの、TopScreen(登録商標)Biowax系Barrier Coating ED9で、12g/mで、片側をコーティングされる。このパラフィンは、パーム油タイプである。測定された透明度は、16~19%で変化する。
【0073】
第2の例示的実施形態(例示的実施形態2)では、紙は、Solenis(登録商標)からの、TopScreen(登録商標)Biowax系Barrier Coating ED9で、第1の側に8.5g/m及び第2の側に4.5g/mで、両側をコーティングされる。この場合、透明度は、16~19%で変化する。
【0074】
紙が、第3の例示的実施形態(例示的実施形態3)で、例示的実施形態2と同様に、第1の側に8.5g/m及び第2の側に4.5g/mではあるが、Proquinatからの水素化及び精製された石油系パラフィン、Proquiwax(登録商標)56-58で、両側をコーティングされる場合、透明度は、20%より高い。
【0075】
紙は、第4の例示的実施形態(例示的実施形態4)で、Solenis(登録商標)からの、TopScreen(登録商標)Biowax系Barrier Coating ED9で、各側4.5g/mで、両側をコーティングされる場合、透明度は、13~17%で変化する。
【0076】
紙が、第5の例示的実施形態(例示的実施形態5)で、第4の例示的な実施形態と同様に、4.5g/mではあるが、Proquinatからの水素化及び精製された石油系パラフィン、Proquiwax(登録商標)56-58で、両側をコーティングされる場合、透明度は、15~19%の間で変化する。
【0077】
例示的実施形態2及び4を、例示的実施形態3及び5と比較すると、塗布されたパラフィンのタイプ及び量は、紙のタイプと組合わせて、透明度を決定することができるとわかる。
【0078】
更に、有利な方法で透明領域を作成する際に、時間も役割を果たすことに留意されたい。例えば、製造後1時間で、例示的実施形態1、2、及び4の透明度が、平均1%低下することが判明した。製造の24時間後、透明度の低下は、約2%であり、約100日後には、低下は4~14%であり得る。パラフィンは、関連する時間の間に、結晶化し続けると推測される。結晶化は、結晶縁部に起因してより多くの光散乱をもたらし、結果として透明性が低下する。
【0079】
第1の比較実験(比較実験1)では、Ahlstrom-Munksjo(登録商標)からの、Cristal(登録商標)Flexible&Transparent Paperを使用する。非常に高密度で透明なグラシン紙は、本出願の明細書導入部に記載されているように、スーパーカレンダリングによって得られる。追加のコーティングなしで、このグラシン紙は、17%の透明度を有する。グラシン紙を例示的実施形態1~5と比較すると、例示的実施形態1~5は、この高価で労働集約的なグラシン紙と、少なくとも同一の透明度を有することが明らかであり、これは、上述の単純で安価な方法によるものである。更に、例示的実施形態1~5による紙は、少なくとも部分的に耐湿性及び耐グリース性であり、これは、耐グリース性のみであるグラシン紙とは対照的である。
【0080】
グラシン紙が、Solenis(登録商標)からの、3.5g/mで、TopScreen(登録商標)Biowax-based Barrier Coating ED9で、両側コーティングされる、第2の比較実験(比較実験2)では、その透明性は13~15%に改善する。第3の比較実験(比較実験3)で、グラシン紙の片側を9g/mでコーティングすると、その透明度は約15%に増加し、したがって、これは以前の17%に対して改善された透明度である。
【0081】
比較実験1と、比較実験2及び3との比較、並びに例示的実施形態2と、例示的実施形態1及び3との比較は、改善された透明度を達成するために、最小量のパラフィンが必要であることを示す。しかしながら、より多くのコーティング量は、改善された透明性を保証しないことが更に示される。既に上述したように、Cristal(登録商標)Flexible&Transparent Paperなどの、非常に高密度で平滑な紙は、Flexpack Smooth Paperよりも少ないパラフィンを必要とする。
【0082】
第6の例示的実施形態(例示的実施形態6)では、例示的実施形態4による紙は、約140℃のホットプレートの上方5 cm未満に保持され、取り出され、ゆっくりと冷却される。なお、透明性は、更に向上して12%となっていることに留意されたい。これは、段階的冷却、あるいは段階的加熱が、改善された透明度をもたらし得ることを示す。
【0083】
当業者であれば、上記の説明に基づいて、本発明が異なる方法で、かつ異なる原理に基づいて具現化され得ることを理解するであろう。本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態及び図面は、純粋に例示的なものであり、単に本発明の理解を深めるのに役立つ。したがって、本発明は、本明細書に記載される実施形態に限定されず、特許請求の範囲において定義される。
図1A-1H】
図2A
図2B
図2C
図2D
【国際調査報告】