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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P17/06
A61P1/04
A61P27/02
A61P17/02
A61P43/00 111
A61K39/395 D
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
C07K16/40
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524494
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022079182
(87)【国際公開番号】W WO2023067049
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2115121.2
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524150476
【氏名又は名称】ユーシービー ビオファルマ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】UCB BIOPHARMA SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ピアボーム、 クラウデ
(72)【発明者】
【氏名】ボーネン、 ミカエル ジョゼフ エデュアルド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC07
4C076DD23Z
4C076DD43Z
4C076DD51Z
4C076EE23
4C076FF15
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
製剤。本発明は、医薬製剤の分野に関する。より詳細には、抗TG2抗体を含む液体製剤及びそのような製剤の製造方法に関する。本発明による液体製剤は、約2~25℃の温度で適切な期間保存すると安定である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TG2抗体、pHを約5.0~7.0に保つ緩衝液及びグリシン又はNaClからなる群から選択される安定化剤を含む安定な液体製剤。
【請求項2】
前記緩衝液は、ヒスチジン又はクエン酸緩衝液である、請求項1に記載の安定な液体製剤。
【請求項3】
前記ヒスチジン緩衝液は、pHを5.5若しくは約5.5±0.2に保つ又は前記クエン酸緩衝液がpHを6.5若しくは約6.5±0.2に保つ、請求項2に記載の安定な液体製剤。
【請求項4】
前記緩衝液の濃度は、10若しくは約10~100mM、好ましくは、20~80mM、さらに好ましくは、40~60mMである、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤。
【請求項5】
前記安定化剤は、グリシンであり、約150mM~350mM、好ましくは、200~300mM、さらに好ましくは、220~280mMの量である、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤。
【請求項6】
前記安定化剤は、NaClであり、約100mM~200mM、好ましくは、125~175mMの量である、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤。
【請求項7】
さらに任意選択で、ポリソルベ-ト界面活性剤を含む、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤。
【請求項8】
前記ポリソルベ-ト界面活性剤の濃度は、0.01若しくは約0.01~0.5mg/mLである、請求項7に記載の安定な液体製剤。
【請求項9】
前記抗TG2抗体の濃度は、約10mg/mL~約200mg/mL、好ましくは、約30mg/mL~約180mg/mL又は好ましくは、約50mg/mL~約150mg/mLである、前記請求項の何れか1項に記載の安定な液体製剤。
【請求項10】
前記製剤は、約100mg/mLの抗TG2抗体、pHを5.5若しくは約5.5に保つ約50mMのヒスチジン緩衝液、約250mMのグリシン又は約150mMのNaCl及び任意選択で、約0.02~0.06mg/mLのポリソルベ-トを含む、前記請求項の何れか1項に記載の安定な液体製剤。
【請求項11】
前記製剤は、約100mg/mLの抗TG2抗体、pHを6.5若しくは約6.5に保つ約50mMのクエン酸緩衝液、約250mMのグリシン又は約150mMのNaCl及び任意選択で、約0.02~0.06mg/mLのポリソルベ-トを含む、請求項1~9の何れか1項に記載の安定な液体製剤。
【請求項12】
前記抗TG2抗体は、以下を含む、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤:
1)配列番号NO:1に定義される配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号NO:2に定義される配列を有する重鎖可変ドメイン、
2)配列番号NO:1で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号NO:2で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する重鎖可変ドメイン、
3)配列番号NO:3で定義される配列を有する軽鎖及び配列番号NO:4で定義される配列を有する重鎖、又は、
4)配列番号NO:3で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号NO:4で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する重鎖。
【請求項13】
抗TG2抗体と、1)ヒスチジン又はクエン酸緩衝液、2)グリシン又はNaCl、及び、任意選択で、3)ポリソルベ-ト界面活性剤との混合物を形成する工程を含む、前記請求項の何れかに記載の安定な液体製剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1から12の何れか1項に記載の安定な液体製剤を含む容器を含む製造物品。
【請求項15】
治療に使用するための、請求項1~12の何れか1項に記載の安定な液体製剤。
【請求項16】
請求項1~12の何れか1項に記載の安定な液状製剤を投与することによる、疾患又は疾病の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤(pharmaceutical formulations)の分野に関する。より詳細には、抗TG2抗体を含む液体製剤及びそのような製剤の製造方法に関する。本発明に係る液体製剤は、約2~25℃の温度で適切な期間保存すると安定である。
【背景技術】
【0002】
組織トランスグルタミナ-ゼ(Tissue transglutaminase)(TG2)は、イプシロン(ガンマ-グルタミル)リジン架橋を介してタンパク質間に架橋を形成する酵素である。TG2の高発現は、異常なタンパク質架橋を引き起こし、様々なタイプの組織瘢痕化、いくつかの脳疾患における神経原線維のもつれの形成、いくつかの癌における化学療法への抵抗性等、いくつかの病態に関連している。低分子、サイレンシングRNA又は抗体等の様々なTG2阻害剤(例えば、特許文献1、特許文献2又は特許文献3)が、TG2が介在する疾病(disorder)の可能性のある治療のために開示されている。
TG2に対する抗体は文献に記載されているが、安定な製剤は今のところ提案されていない。抗体等の生理活性タンパク質を含む医薬組成物を調製する場合、当該組成物は、タンパク質が適切な期間安定であるように製剤化されなければならない。タンパク質の活性/安定性の低下は、特に変性、凝集、酸化によるタンパク質の化学的又は物理的不安定性から生じ得る。そのため、得られた生成物は、薬学的に許容できない可能性がある。賦形剤の使用は所与のタンパク質の安定性を高めることが知られているが、これらの賦形剤の安定化効果は、賦形剤の性質及び生物活性タンパク質自体に大きく依存する。
抗TG2抗体を有効成分として含有する液体製剤であって、当該製剤が適切な期間安定であり、静脈注射又は皮下注射等の注射に使用するのに適している液体製剤に対する必要性が残っている。当該製剤は、TG2が介在する疾病又は疾患の治療における投与に有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/100679号
【特許文献2】国際公開第2012/146901号
【特許文献3】国際公開第2013/175229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、抗TG2抗体を含む新規製剤を提供することである。より詳細には、前記製剤は、抗TG2抗体を含む安定な液体製剤である。本発明はまた、本発明に係る液体製剤を調製する方法も提供する。本明細書に記載の液体製剤は、TG2が介在する疾病又は疾患の治療における投与に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、抗TG2抗体、pHを5.0若しくは約5.0~7.0若しくは約7.0に保つ緩衝液、安定化剤(アミノ酸又は塩等)及び任意選択で、ポリソルベ-ト界面活性剤を含む、又はそれらからなる安定な液体製剤を提供する。好ましい実施形態では、前記緩衝液は、ヒスチジン又はクエン酸緩衝液であり、前記安定化剤は、アミノ酸、好ましくはグリシン、又は、塩、好ましくはNaClの何れかである。さらに好ましい実施形態では、前記緩衝液は、pHを5.5若しくは約5.5~6.5若しくは約6.5に保つ。さらに好ましい実施形態では、前記抗TG2抗体は、10若しくは約10mg/mL~200若しくは約200mg/mLの量である。好ましくは、前記抗TG2抗体は、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域(light chain variable region)及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域(heavy chain variable region)を含む。
【0006】
第2の態様において、本発明は、抗TG2抗体と、緩衝液、安定化剤(アミノ酸又は塩等)、及び任意選択で、ポリソルベ-ト界面活性剤とともに混合物を形成する工程を含む、安定な液体製剤の製造方法を提供する。好ましい実施形態では、前記緩衝液は、ヒスチジン又はクエン酸緩衝液であり、前記安定化剤は、アミノ酸、好ましくはグリシン、又は、塩、好ましくはNaClの何れかである。好ましい実施形態では、前記緩衝液は、pHを、5.0若しくは約5.0~7.0若しくは約7.0、より詳細には5.5若しくは約5.5~6.5若しくは6.5に保つ。好ましくは、前記抗TG2抗体は、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域を含む。
【0007】
第3の態様において、本発明に係る安定な液体製剤を含む容器を含む、医薬用又は獣医学用の製造物品が提供される。
【0008】
第4の態様において、本発明は、治療に使用するための、本発明に係る安定な液体製剤を提供する。
【0009】
第5の態様において、本発明は、本発明に係る安定な液体製剤を投与することにより、疾患又は疾病を治療する方法を提供する。
【0010】
定義:
- 用語「約(about)」は、およそ(approximately)、又は、ほぼ(nearly)を意味し、本明細書に記載される数値の文脈では、好ましくは、言及される(recited)又は特許請求される数値を中心に±10%を意味する。
- 値の範囲が言及される又は特許請求される場合、その範囲は言及されている値を含むことを意図している。
【0011】
- 本明細書で使用する場合、「抗TG2抗体」という用語は、イプシロン(ガンマ-グルタミル)リジン架橋を介してタンパク質間に架橋を形成する酵素である組織トランスグルタミナ-ゼ(TG2)タンパク質と結合する抗体分子を意図している。このような抗体の例は、国際公開第2013/175229号に記載されている。限定はしないが、本発明に従って使用できる抗TG2抗体は、例えば、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域を含む。
【0012】
- 本明細書で使用する「抗体」という用語には、モノクロ-ナル抗体、ポリクロ-ナル抗体及び当技術分野で知られているような組換え技術によって生成される組換え抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。「抗体」には、あらゆる種の抗体、特に哺乳類の抗体、例えば、あらゆるアイソタイプ(isotype)のヒト抗体、例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE、IgD、及び、IgGA1、IgGA2又はIgMのような5量体並びにそれらの修飾バリアントを含むこれらの基本構造の2量体として産生される抗体;非ヒト霊長類抗体、例えば、チンパンジ-、ヒヒ、アカゲザル又はシノモルガン猿由来の抗体;げっ歯類抗体、例えば、マウス又はラット由来の抗体;ウサギ又はヤギ又はウマ抗体;ラクダ類抗体(例えば、Nanobodies(登録商標)のようなラクダ又はラマ由来の抗体)及びその誘導体;ニワトリ抗体のような鳥類種の抗体;又はサメ抗体のような魚類種の抗体、が含まれる。「抗体」という用語は、少なくとも1つの重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第1部分(first portion)が第1種(first species)由来で、前記重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第2部分(second portion)が第2種(second species)由来である「キメラ」抗体も指す。本明細書で関心のあるキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル等の旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化(primatized)」抗体が含まれる。「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体由来の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基を、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナ-抗体)の超可変領域[又は相補性決定領域(complementarity determining region)(CDR)]の残基で置換したヒト抗体(レシピエント抗体)であり、所望の特異性、親和性及び活性を有する。ほとんどの場合、CDRの外側、すなわちフレ-ムワ-ク領域(FR)のヒト(レシピエント)抗体の残基は、対応する非ヒト残基でさらに置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナ-抗体にもない残基を含むことがある。これらの修飾は、抗体の特性をさらに洗練させるために行われる。ヒト化によって、ヒト以外の抗体のヒトにおける免疫原性が低下するため、ヒトの疾患治療への抗体の応用が容易になる。ヒト化抗体とその生成技術は当技術分野でよく知られている。また、「抗体」という用語は、ヒト化の代替として生成できるヒト抗体も指す。例えば、内在性マウス抗体の産生がなくても、免疫によりヒト抗体の全レパ-トリ-を産生できるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作製することは可能である。ヒト抗体/抗体フラグメントをインビトロで得るための他の方法は、ファ-ジディスプレイ(phage display)やリボソ-ムディスプレイ技術(ribosome display technology)等のディスプレイ技術に基づくもので、少なくとも部分的に人工的に生成された、あるいはドナ-の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパ-トリ-から生成された組み換えDNAライブラリ-が使用される。ヒト抗体を生成するためのファ-ジ及びリボソ-ムディスプレイ技術は当技術分野でよく知られている。ヒト抗体はまた、目的の抗原でエクスビボ免疫した単離ヒトB細胞から生成することもでき、その後融合させてハイブリド-マを作製し、最適なヒト抗体をスクリ-ニングすることができる。「抗体」という用語は、グリコシル化抗体及びアグリコシル化抗体の両方を指す。さらに、本明細書で使用する「抗体」という用語は、完全長抗体だけでなく、抗体フラグメント、より詳細にはその抗原結合フラグメントも指す。抗体フラグメントは、当該技術分野で知られているように、少なくとも1つの重鎖又は軽鎖免疫グロブリンドメインを含み、1つ又は複数の抗原に結合する。本発明に係る抗体フラグメントの例には、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、Fab-Fv-Fv、scFv及びBis-scFvフラグメントが含まれる。前記フラグメントは、ダイアボディ、トライボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、sdAb、VL、VH、VHH又はラクダ科抗体(例えば、Nanobody(登録商標)のようなラクダ又はラマ由来)のようなシングルドメイン抗体(dAb)及びVNARフラグメントであることもできる。本発明に係る抗原結合フラグメントはまた、1つ又は2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含むことができ、各scFv又はdsscFvは、同一又は異なる標的(例えば、治療標的を結合する1つのscFv又はdsscFvと、例えばアルブミンを結合することによって半減期を増加させる1つのscFv又はdsscFv)を結合する。このような抗体フラグメントの例としては、FabdsscFv(BYbe(登録商標)とも呼ばれる)又はFab-(dsscFv)(TrYbe(登録商標)とも呼ばれ、例えば国際公開第2015/197772号を参照)が挙げられる。上記で定義した抗体分子は、その抗原結合フラグメントを含め、当技術分野で知られている。
【0013】
- 「安定性(stability)」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明に係る抗TG2抗体製剤の物理的、化学的及びコンフォメ-ション安定性(生物学的効力の維持を含む)を指す。前記抗体製剤の不安定性は、高次ポリマ-を形成するための抗体の化学的分解又は凝集、脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化又は抗体の少なくとも1つの生物学的活性を低下させる他の構造修飾によって引き起こされ得る。
【0014】
- 「安定な製剤(stable formulation)」という用語は、目的のタンパク質(ここでは抗TG2抗体)が保存時に、その物理的、化学的及び生物学的特性を本質的に保持する製剤を指す。製剤中の抗体の安定性を測定するために、様々な分析法が当業者の知識の範囲内にある(実施例のセクションでのいくつかの例を参照されたい)。安定性は通常、選択された温度(例えば、-70℃、2~8℃、25℃、35℃以上)で、選択された期間(例えば、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月以上)評価される。一旦製剤化された抗体は、患者に投与される前に、典型的には冷蔵庫(典型的には2~8℃)又は室温(典型的には15~25℃)で保存されるため、本明細書において、例えば、2~8℃及び25℃と示されるように、前記製剤化された抗体が少なくとも2~25℃の温度範囲で経時的に安定であることが重要である。所与の期間にわたる安定性について結論付けるために、例えば、以下のような様々な値を使用することができる(これらに限定されない):1)抗体の単量体型が90%以下、2)抗体の単量体型の変化が10%以下(初期デ-タとの比較において)、3)高分子量種(HMW又はHMWS;本明細書では凝集体ともいう)が5%以下、又は、4)pHの変動が±0.2単位以下(初期デ-タとの比較において)。
【0015】
- 「安定化剤(stabilizing agent)」、「安定化剤(stabilizer)」又は「等張化剤(isotonicity agent)」という用語は、本明細書で使用される場合、生理学的に許容され、製剤に適切な安定性/張り(tonicity)を付与する化合物である。製剤と接触している細胞膜を通過する水の正味の流れを顕著に防ぐ。このような目的には、グリセリン等の化合物がよく使われる。他の適切な安定化剤としては、アミノ酸又はタンパク質(例えばグリシン又はアルブミン)、塩(例えば塩化ナトリウム)、及び糖(例えばデキストロ-ス、マンニト-ル、スクロ-ス及びラクト-ス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
- 「緩衝液(buffer)」という用語は、本明細書で使用する場合、医薬用又は獣医用製剤において安全であることが知られており、製剤のpHを製剤に望まれるpH範囲に維持又は制御する効果を有する化合物の溶液を指す。中程度の酸性pHから中程度の塩基性pHでpHを制御するために許容される緩衝液としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、ヒスチジン及びTRIS(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3,-プロパンジオ-ル、この用語は薬学的に許容されるその塩を含む)緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
- 「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用する場合、疎水性、油性物質の水溶性を高めるため、あるいは疎水性の異なる2つの物質の混和性を高めるために特に使用できる可溶性化合物を指す。このため、これらのポリマ-は、工業用途、化粧品、医薬品によく使われている。また、特に薬物の吸収や標的組織への送達を変化させるために、薬物送達アプリケ-ションのモデル系としても使用される。よく知られている界面活性剤には、ポリソルベ-ト(ポリオキシエチレン誘導体;Tween)及びポロキサマ-(すなわち、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをベ-スとするコポリマ-で、Pluronics(登録商標)としても知られている)が挙げられる。
【0018】
- 「バイアル(vial)」又は「容器(container)」という用語は、本明細書で使用する場合、抗TG2抗体製剤を液状で保持するのに適したリザ-バ-を広く指す。本発明で使用できるバイアルの例としては、アンプル、チュ-ブ、ボトル、注射器(syringe)(充填済み注射器(pre-filled syringe)等)、カ-トリッジ、注射、好ましくは静脈内注射又は皮下注射により抗TG2抗体製剤を患者に送達するのに適した他のリザ-バ-が挙げられる。
【0019】
- 「溶媒」という用語は、本明細書で使用する場合、水性又は非水性の液体溶媒を指す。溶媒の選択は、当該溶媒に対する薬剤化合物の溶解度と投与様式に特に依存する。水性溶媒は、水のみからなる場合もあれば、水と1つ又は複数の混和性溶媒からなる場合もあり、糖、緩衝液、塩、その他の賦形剤等の溶解溶質を含む場合もある。より一般的に使用される非水溶媒は、メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル等の短鎖有機アルコ-ル、アセトン等の短鎖ケトン、グリセロ-ル等の多価アルコ-ルである。本発明によれば、好ましい溶媒は、水又は生理食塩水のような水性溶媒である。
【0020】
- 疾患状態の「治療(treating)」又は「処置(treatment)」という用語には、以下のものが含まれる:(i)疾患状態を抑制すること、すなわち疾患状態又はその臨床症状の発症を阻止すること、又は、(ii)疾患状態を緩和すること、すなわち疾患状態又はその臨床症状を一時的又は永続的に退行させること。
【0021】
- 疾患状態の「予防(preventing)」又は「防止(prevention)」という用語には、疾患状態に曝される可能性がある 又は疾患状態にかかりやすい可能性があるが、まだ病態の症状を経験又は示していない対象において、病態の臨床症状を発症させないようにすることが含まれる。
- 本発明の全ての実施形態において、「医薬組成物(pharmaceutical composition)」は、何ら区別することなく「安定な医薬組成物(stable pharmaceutical composition)」とも称することができる。
【0022】
発明の詳細な説明:
本発明は、グリシン又はNaClからなる群から選択される安定化剤と、pHを5.0~7.0に保つヒスチジン又はクエン酸緩衝液等の緩衝液との組み合わせに基づいており、医薬組成物の加工性及び抗体の長期安定性に影響を与えることなく、抗TG2抗体のヒトへの使用に適した医薬組成物を調製することができる。本発明者らは、本発明に係る医薬組成物は、実施例のセクションの2~8℃及び25℃で示されているように、特に約2~25℃で保存した場合に、経時的に安定しているという知見を得た。
【0023】
本発明の主な目的は、抗TG2抗体、pHを約5.0~約7.0に保つ緩衝液、及び安定化剤を含むか又はそれらからなる安定な液体製剤である。好ましい実施形態において、前記緩衝液は、ヒスチジン緩衝液又はクエン酸緩衝液であり、安定化剤はグリシン又はNaClからなる群から選択される。任意選択で、前記製剤は、ポリソルベ-ト界面活性剤等の界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0024】
本発明はさらに、抗TG2抗体の本明細書に記載の安定な液体製剤の何れかを製造するための方法を提供し、この方法は、抗TG2抗体を、緩衝液、安定化剤、及び任意選択で、界面活性剤、例えばポリソルベ-ト界面活性剤と組み合わせる工程を含む。前記ステップは、通常、従来の手順に従って緩衝液交換によって行われる。一例として、適切な安定な製剤を調製するために、所定量の抗TG2抗体を、1)pHを5.0~7.0又は約5.0~7.0に保つクエン酸緩衝液又はヒスチジン緩衝液、2)安定化剤(好ましくはグリシン又はNaClからなる群から選択される)と緩衝液交換する。前記製剤が界面活性剤を含む場合、好ましくは緩衝液交換工程の後に添加する。緩衝液交換後、前記製剤をろ過する(最終ろ過)。抗体の目標濃度によっては、緩衝液交換の工程と最終ろ過の間に製剤を濃縮することができる。これらの化合物(すなわち、抗TG2抗体、緩衝液、安定化剤、及び任意選択で、界面活性剤)はそれぞれ、本明細書に記載の濃度、pH、及び/又は比率に従って使用することができる。得られた混合物はバイアルに分注される。このプロセスのバリエ-ションは、当業者であれば認識できるであろう。
【0025】
本発明はまた、医薬用又は獣医学用の製造物品であって、本明細書に記載された安定な液体製剤の何れかを含む容器からなり、前記製剤は、抗TG2抗体、緩衝液、安定化剤、及び任意選択で、界面活性剤を含むか、又はこれらからなる、製造物品を提供する。これらの化合物(すなわち、抗TG2抗体、緩衝液、安定化剤及び任意選択で、界面活性剤)はそれぞれ、本明細書に記載の濃度、pH、及び/又は比率に従って使用することができる。
【0026】
また、使用説明書を提供する包装材も記載する。
好ましくは、本発明に従って使用される抗TG2抗体は、全体として以下を含む(表Aも参照されたい):
1)配列番号NO:1で定義される配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号NO:2で定義される配列を有する重鎖可変ドメイン、
2)配列番号NO:1で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する軽鎖可変ドメイン、及び配列番号NO:2で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する重鎖可変ドメイン、
3)配列番号NO:3で定義される配列を有する軽鎖及び配列番号NO:4で定義される配列を有する重鎖;又は
4)配列番号NO:3で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する軽鎖、及び配列番号NO:4で定義される配列と少なくとも80%の同一性又は類似性、好ましくは90%の同一性又は類似性を有する重鎖。
【0027】
【表A】
【0028】
本発明全体の文脈において、製剤中の抗TG2抗体の量は、好ましくは、10若しくは約10~200若しくは約200mg/mL、好ましくは、30若しくは約30mg/mL~180若しくは約180mg/mL、又は、好ましくは、50若しくは約50mg/mL~150若しくは約150mg/mL、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150mg/mLである。あるいは、抗TG2抗体は、100mLあたりの重量%(%w/v)で表される量でタンパク質製剤中に存在する。このような場合、全体として本発明に係る製剤中に含まれる抗TG2抗体は、約1~20若しくは約20%w/vの量で、好ましくは約3~18若しくは約18%w/vの量で、又は、好ましくは約5~15若しくは約15%w/vの量で、例えば、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5又は15.0%w/vで存在する。
【0029】
前記抗TG2抗体は、例えば、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域を含んでいてもよい(ただし、これらに限定されない)。
【0030】
本発明に係る好ましい緩衝液は、全体としてヒスチジン(好ましくはL-ヒスチジン)又はクエン酸緩衝液であり、約5.0~約7.0で構成される、好ましくは、約5.2~約6.0で構成される、例えば、ヒスチジン緩衝液では、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9及び6.0で構成される、好ましくは、約6.2~約7.0で構成される、例えば、クエン酸緩衝液では、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0で構成される、pHに保つ。さらに好ましくは、pHは、ヒスチジン緩衝液では、5.5若しくは約5.5、クエン酸緩衝液では、6.5若しくは約6.5である。本発明のすべての実施形態において、特に指示がない限り、pH値は、室温で測定され、好ましくは、目標とするpH単位の±0.1又は±0.2以内である(例えば、ヒスチジン緩衝液の場合は、5.5±0.1又は5.5±0.2であり、クエン酸緩衝液の場合は、6.5若しくは約6.5±0.1又は6.5若しくは約6.5±0.2である)。
【0031】
本発明全体の文脈では、緩衝液濃度は、好ましくは、10若しくは約10~100若しくは約100mMである。好ましい実施形態では、前記緩衝液の濃度は、20若しくは約20~80若しくは約80、さらに好ましくは約40~約60mM、例えば40、45、50、55又は60mMである。好ましくは、緩衝液の濃度は50又は約50mMである。
【0032】
本発明全体の文脈において、前記安定化剤は、グリシン(好ましくはL-グリシン)又はNaClからなる群から選択される。前記安定化剤がグリシンである場合、その濃度は、好ましくは、150若しくは約150mM~350若しくは約350mM、好ましくは、200若しくは約200~300若しくは約300mM、さらに好ましくは、220若しくは約220~280若しくは約280mM、例えば220、230、240、250、260、270又は280mMである。前記安定化剤がNaClである場合、その濃度は、好ましくは、100若しくは約100mM~200若しくは約200mM、より好ましくは、125若しくは約125~175若しくは約175mM、例えば125、130、135、140、145、150、155、160、165、170及び175mMである。
【0033】
本発明全体の文脈では、界面活性剤を任意選択で、存在させることができる。界面活性剤が存在する場合、好ましくは、ポリソルベ-ト20(PS20、Tween(登録商標)20としても知られる)又はポリソルベ-ト80(PS80、Tween(登録商標)80としても知られる)等のポリソルベ-ト界面活性剤である。好ましくは、前記界面活性剤は、製剤中に0.01若しくは約0.01~5若しくは約5mg/mL、より好ましくは0.01若しくは約0.01~1若しくは約1mg/mL、より特に0.1若しくは約0.1~0.6若しくは約0.6mg/mL、例えば、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55又は0.6mg/mLの量で存在する。あるいは、前記ポリソルベ-ト界面活性剤は、好ましくは、100mLあたりの重量%(%w/v)で表される量でタンパク質製剤中に存在する。このような場合、全体として本発明に係る製剤中に含まれるポリソルベ-ト界面活性剤は、0.001~0.5%w/v、好ましくは0.01~0.1%w/v、さらに好ましくは0.01~0.06%w/v、例えば、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.045、0.05、0.055又は0.06%w/vである。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明に係る安定な液体製剤は、全体として、50若しくは約50~200若しくは約200mg/mLの抗TG2抗体、pH約5.5で約10~約100mMのヒスチジン(又はpH約6.5で約10~約100mMのクエン酸緩衝液)、約150~約350mMのグリシン又は約100~約200mMのNaCl、及び、任意選択で、約0.001mg/mL~約0.5mg/mLの界面活性剤(ポリソルベ-ト界面活性剤等)を含むか、又はそれらからなる。あるいは、安定な液体製剤は、約5.0~約20%w/vの抗TG2抗体、pH約5.5で約10~約100mMのヒスチジン(又はpH約6.5で約10~約100mMのクエン酸緩衝液)、約150~約350mMのグリシン又は約100~約200mMのNaCl、及び任意選択で、0.001~0.5%w/vの界面活性剤(ポリソルベ-ト界面活性剤等)を含むか、又はそれらからなる。具体的な例として(ただし、これらに限定されない)、約100mg/mLの抗TG2抗体、pHを約5.5に保つ約50mMのヒスチジン緩衝液、約250mMのグリシン、及び、任意選択で、約0.02~0.06%w/vのPS80を含むか、又はこれらからなる安定な液体製剤が提供される。さらなる具体例として(ただし、これらに限定されない)、約100mg/mLの抗TG2抗体、pHを5.5若しくは約5.5に保つ約50mMのヒスチジン緩衝液、約150mMのNaCl、及び、任意選択で、約0.02~0.06%w/vのPS80を含むか、又はこれらからなる安定な液体製剤が提供される。さらなる例(ただし、これらに限定されない)では、約100mg/mLの抗TG2抗体、pHを約5.5に保つ約50mMのクエン酸緩衝液、約250mMのグリシン、任意選択で、約0.02~0.06%w/vのPS80を含むか、又はこれらからなる安定な液体製剤が提供される。前記抗TG2抗体は、例えば、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域を含んでいてもよい。
【0035】
好ましくは、本発明の製剤は、少なくとも12ヶ月、好ましくは少なくとも24ヶ月、さらに好ましくは少なくとも36ヶ月、さらに一層好ましくは少なくとも48ヶ月(最初の使用前)の期間にわたって、製剤化及び/又は包装時の抗TG2抗体の生物学的活性の少なくとも80%を保持する。抗TG2抗体活性は、Elisa又はセルベ-スアッセイ(cell-based assays)等の日常的な方法に従って測定することができる。
【0036】
本発明に係る医薬組成物内で使用するための追加の賦形剤としては、粘度増強剤、増量剤、可溶化剤又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明はまた、本発明に係る医薬組成物を含む容器を提供する。特に、容器は、制限なく、医薬組成物を含むバイアル、アンプル、チュ-ブ、ボトル又は注射器(充填済み注射器等)であり得る。
【0038】
前記容器は、本発明に係る医薬組成物を含む1つ又は複数の容器と、注射器、充填済み注射器、自動注射器、無針デバイス、インプラント又はパッチ等の送達装置、又は他の親投与用装置及び使用説明書からなるキットオブパ-ツ(kit-of-parts)の一部であってもよい。
【0039】
本発明の液体製剤は、少なくとも約12ヵ月から約48ヵ月間保存することができる。好ましい保存条件下では、最初の使用前に、製剤は明るい光を避け(好ましくは暗所に)、約2~25℃の温度、例えば室温(25若しくは約25℃)又は2~8℃で保存される(以下の実施例を参照されたい)。前記製剤は、活性原理、すなわち抗TG2抗体の損失を最小限に抑える。また、前記製剤は酸性化しにくく、タンパク質の凝集体の形成等の分解を受けにくいことも判明している。
【0040】
本発明は、治療に使用する抗TG2抗体の安定な液体製剤を提供する。例えば、本明細書に記載された抗TG2抗体の安定な液体製剤は、医薬用又は獣医用に適する。本発明はまた、抗TG2抗体の安定な液体製剤を投与することにより、疾患又は疾病を治療する方法を提供する。
【0041】
本発明に係る抗TG2抗体を含む安定な液体製剤は、TG2を介する疾病又は疾患を改善又は治療するために投与することができる。このようなTG2が介在する疾病又は疾患は、例えば、セリアック病、創傷治癒異常、瘢痕形成、ケロイド及び肥厚性瘢痕、眼の瘢痕形成、炎症性腸疾患、黄斑変性症、グレ-ブ眼症、薬剤誘発性エルゴチズム、乾癬、線維性疾患又は線維症関連疾患、アテロ-ム性動脈硬化症、再狭窄、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性/神経疾患(例えば、ハンチントン病、アルツハイマ-病、パ-キンソン病、多発性グルタミン病、脊髄球性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7及び12、赤核淡蒼球萎縮症、脊髄小脳麻痺)及び/又はがん(例えば、リ・フラウメニ症候群の神経膠芽腫及び散発性神経膠芽腫等の神経膠芽腫、悪性黒色腫、膵管腺癌、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖症候群、婦人科癌、カポジ肉腫、ハンセン病、膠原病性大腸炎)からなる群から選択され得る。
【0042】
本発明に係る医薬組成物は、治療上有効な量(therapeutically effective amount)で投与することができる。本明細書で使用する「治療上有効な量」という用語は、TG2が介在する疾病若しくは疾患を、治療、改善若しくは予防するために、又は検出可能な治療効果、薬理効果もしくは予防効果を示すために必要な治療薬(すなわち抗体)の量を指す。どの抗体についても、治療上有効な量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル(通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、霊長類)の何れかで最初に推定することができる。前記動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも使用できる。このような情報は、ヒトへの投与に有用な用量や投与経路を決定するために利用できる。
【0043】
上記の疾患及び/又は疾病の治療において、適切な投与量は、例えば、採用する特定の抗体、治療対象、投与様式、治療する病態の性質及び重症度によって異なる。特定の実施形態において、本発明に係る医薬組成物は、静脈内又は皮下経路により投与される。静脈注射で投与する場合は、ボ-ラス注射でも持続点滴でもよい。本発明の何れかの実施形態による医薬組成物はまた、筋肉内注射によって投与され得る。投与様式によっては、本明細書に記載の製剤は、使用前に溶媒(NaCl等)で希釈することができる。医薬組成物は、注射器、自動注射器等の注射装置、無針装置、インプラント及びパッチを使用して注射することができる。本発明の液体医薬製剤は、一度に又は一連の治療にわたって患者に好適に投与され、診断以降いつでも患者に投与することができ;唯一の治療として、又は、本明細書に前述したような状態の治療に有用な他の薬物又は治療と併用して投与することができる。
【0044】
抗TG2抗体は、液体医薬製剤中の唯一の有効成分であってもよい。あるいは、抗体は、1つ又は複数の他の治療活性成分と、例えば、同時、順次又は別々に、組み合わせて投与することもできる。本明細書で使用される有効成分とは、適切な用量で治療効果等の薬理学的効果を有する成分を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の抗体は、他の炎症性又は自己免疫疾患を治療するために、同じ投与経路又は異なる投与経路で投与される、他の抗体又は非抗体成分を含む他の活性成分を伴うことができる。一実施形態では、対象には、抗TNF抗体等の他の抗体成分又は低分子薬剤分子等の非抗体成分が、同時又は順次(前及び/又は後に)投与される。
【0045】
以下の実施例は、本発明の製剤及び組成物の調製をさらに説明するために提供される。本発明の範囲は、単に以下の実施例からなるものと解釈してはならない。
【実施例
【0046】
材料:
抗TG2抗体:
以下の実施例で使用した抗TG2モノクロ-ナル抗体(mAb)は、配列番号NO:1で定義される軽鎖可変領域及び配列番号NO:2で定義される重鎖可変領域を含む。以下の実施例ではmAb1と命名される。
【0047】
方法:
タンパク質濃度:
タンパク質濃度は、紫外可視分光法を用い、以下の式で求めた。
濃度(mg/mL)=[(A280)/a×b]
ここで、A280=280nmにおける吸光度(AU)、a=質量消衰係数(1.34mL mg-1 cm-1)、b=経路長(1cm)である。
【0048】
熱安定性:
タンパク質は、特定の温度範囲で展開(unfolded)できる。この温度は、融解温度(Tm)とも呼ばれ、タンパク質の熱安定性を表す固有のパラメ-タ-である。Tmは、タンパク質の展開時のピ-ク温度である。キャピラリ-示差走査熱量計(DSC)を用いてmAb1のTmを決定した。オ-トサンプラ-を使用して、ウェル(well)にそれぞれ約300μLの緩衝液及びmAb1サンプルを満たした。参考ウェルは、緩衝液のみで満たした。DSCスキャンは、MicroCal Origin(登録商標)ソフトウェアを使って分析した。それぞれの緩衝液スキャンを差し引いた後、タンパク質スキャンをタンパク質濃度に対して正規化した。Tm値は、MicroCal Origin(登録商標)ソフトウェアの「Pick Peak」ツ-ルを使って決定した。
【0049】
拡散挙動:
標準的な方法に従って、動的光散乱(DLS)をその目的に使用した。評価した様々なパラメ-タ-のうち、メイン種のピ-ク径と幅:各ピ-クは、明確で分離可能な種又は粒子の集団を表す。ピ-ク径は、分離された化学種の流体力学的直径(nm単位で表示)を表す。ピ-ク幅は、ピ-ク中の粒子集団の多分散性の尺度である。「ピ-ク1」は主要種のピ-クとみなされ、一般的にタンパク質の非凝集型に対応する。
【0050】
凝集とフラグメント化:
サイズ排除クロマトグラフィ-(SEC)、例えばサイズ排除高速液体クロマトグラフィ-(SE-HPLC)を標準的な方法に従って使用した。メイン種と、メイン種の前後に溶出する種、それぞれ高分子量(HMW)及び低分子量(LMW)と呼ぶ、のピ-ク面積のパ-センテ-ジ値を評価した。
【0051】
還元又は非還元条件下での純度:
還元又は非還元条件下での純度(IgGモノマ-)は、キャピラリ-ゲル電気泳動(CGE)又はオンチップベ-スの電気泳動(Bioanalyzer)を用いて、標準的な方法(変性条件下での流体力学的サイズの違いに基づくタンパク質の分離)に従って評価した。様々なmAb1種が220nmのフォトダイオ-ドアレイ(PDA)検出器によって検出された。
【0052】
酸性種及び塩基性種:
酸性種及び塩基性種の存在は、標準的なiCE法(電荷の違いに基づいてタンパク質を分離する)に従って、等電点キャピラリ-電気泳動(iCE)を用いて評価した。通常、メインピ-クの前に溶出するピ-クは酸性種、メインピ-クの後に溶出するピ-クは塩基性種としてラベル付けする。
浸透圧:
浸透圧は、脱イオン水(0mOsm/kg)、100mOsm/kg、500mOsm/kg及び1500mOsm/kgの標準溶液で校正したOsmette XL 5007浸透圧計を用いて、mAb1サンプルの分析前に標準的な方法に従って評価した。
pH:
温度補償電極を備えたpHメ-タ-を用い、標準的な方法に従ってpHを評価した。
【0053】
粘度:
粘度測定は、標準的な方法に従い、Rheosense MicroVisc(登録商標)を用いて行った。粘度測定は4回に分けて行い、平均した動的粘度の結果を報告する。
【0054】
実施例1-予備スクリ-ニング
1.1.緩衝液及びpHスクリ-ニング
mAb1の熱安定性と物理的安定性に対する影響について、それぞれ2~3種類のpHの異なる5種類の緩衝液を評価した。mAb1サンプルは、標準的な方法に従って、表1に示す緩衝液に緩衝液交換した。この予備スクリ-ニングの標的タンパク質濃度は2mg/mLであった。調製されたサンプルは、pH、タンパク質濃度、熱安定性、コンフォメ-ション安定性について分析した。各サンプルのpHは、緩衝液交換工程後に測定した。各サンプルのpHは、目標pH値から0.2pH単位以内であった(デ-タは示さず)。各サンプルのmAb1濃度は、UV分光法を用いて測定した(表1参照)。全体として、回収率は52%から127%であった。これらの結果のばらつきを考慮すると、明確な傾向は見られなかった。
【0055】
【表1】
【0056】
その後、mAb1サンプルを拡散挙動についてはDLSで、凝集種についてはDSCで分析した(デ-タは示していない)。製剤サンプルのTmは、75.3℃から77.6℃と比較的類似していたが、オンセット温度はより有益であった。pH<5.5の製剤は、オンセット温度≦53℃を示した。さらに、pH<5.5の製剤は、すべて3つの熱転移を示したが、その他の製剤では2つの熱転移しか示さなかった。デ-タから見て、pH≧5.5の緩衝系がより最適と思われる。これらの結果に基づき、リン酸緩衝液は、他の緩衝系と比較して利点がないこと、凍結融解の潜在的な問題があることから、今後の評価から除外した。さらに、DSCデ-タに基づいて、賦形剤スクリ-ニングのためにpH5.5を選択した。
【0057】
1.2.賦形剤スクリ-ニング
緩衝液及びpHのスクリ-ニング結果に基づき、pH5.5の4つの緩衝液と様々な賦形剤(表2参照)を組み合わせて評価し、mAb1に安定性を与える能力を測定した。mAb1サンプルは、標準的な方法に従って、表6に示した緩衝液に緩衝液交換した。標的mAb1濃度は2mg/mLであった。各mAb1サンプルのpH及び回収率を測定し、様々な緩衝液中でのmAb1の熱安定性及びコンフォメ-ション安定性を測定した(DSC及びDLSを使用、デ-タは示さず。)
【0058】
【表2】
【0059】
各サンプルのpHは、緩衝液交換工程後に測定した。3つの製剤(グリシン、塩化ナトリウム(NaCl)又はソルビト-ルの何れかを添加した酢酸緩衝液)を除き、各pHは目標pHである5.5の0.2単位以内であった(デ-タは示さず)。グリシン、NaCl及びソルビト-ルを加えた酢酸緩衝液のpHは、それぞれ5.8、5.8、5.9であった。
【0060】
各サンプルのmAb1濃度は、UV分光法を用いて測定した(表2参照)。3つのサンプル(酢酸/アルギニン、ヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/ソルビト-ル)は、回収率が≦60%と悪かった。残りの製剤は、≧84%と妥当な回収率であった。これらの製剤間のばらつきは、明確な傾向を示唆するものではなかった。次にmAb1サンプルをDLSで分析した(デ-タは示していない)。スクロ-スを含むすべてのサンプルは、スクロ-ス特有の不純物ピ-クを示し、観測を妨げた。全体的には、明確な傾向は見られなかった。コハク酸/ソルビト-ルサンプルは、ソルビト-ルを含む他の製剤では観察されなかった凝集種を示したことが注目される。さらに、コハク酸/NaClサンプルは、他のすべてのサンプルと比較して、モノマ-幅が最も高かった。DSCの結果を表3に示す。どのような緩衝系であっても、グリシンを用いた製剤は、アルギニンを用いた製剤よりも高いオンセット温度及びTmファイナル温度を示した。NaClを含む製剤は、ヒスチジンを除くすべての製剤でアルギニンよりも高いオンセット温度を示した。ソルビト-ル及びスクロ-スのオンセット温度は同等で、互いに1℃以内であった。
【0061】
【表3】
【0062】
まとめると、DSCデ-タは、グリシン及びNaClは、アルギニンよりも好ましいことを示していた。したがって、アルギニンは、今後の評価から除外した。DLS及びDSCのデ-タは、いずれも、スクロ-スとソルビト-ルが同等であることを示していた。しかし、特徴的なスクロ-ス不純物のピ-クが、タンパク質の凝集の検出を難しくしていた。そのため、ソルビト-ルが好ましく、スクロ-スはさらなる評価には選ばなかった。最後に、コハク酸/ソルビト-ルサンプルには、他のソルビト-ルサンプルでは観察されなかった凝集種が含まれていたため、コハク酸はさらなる評価には選ばなかった。
【0063】
1.3.溶解度試験:
mAb1の溶解性は、表4に示した緩衝液中で、濃度を変えて評価した。
【0064】
【表4】
【0065】
mAb1サンプルは、標準的な方法に従って適切な緩衝液に緩衝液交換した。この試験では、体積減少に基づいて3つのmAb1濃度:100mg/mL、150mg/mL及び200mg/mLを目標とした。各サンプルの濃度、回収率、目視観察結果を表5に示す。
【0066】
回収率は、直近の評価で測定した濃度に基づいて計算した。この溶解度評価の範囲では、目視観察による「透明(clear)」という呼称は、「無色透明(clear,colourless)」と同等とみなす。すべての製剤は、目標濃度の100mg/mL及び150mg/mlを達成し、回収率はそれぞれ54%~79%及び59%~98%であった。すべてのサンプルは、無色透明(CC)であることを確認した。すべてのサンプルは、さらに目標の200mg/mLまで濃縮した。酢酸/グリシン及び酢酸/ソルビト-ルサンプルは、それぞれ178mg/mL及び162mg/mLに達した。その他のサンプルはすべて、回収率>80%で濃度>180mg/mLを達成した。これらの高濃度では、ヒスチジン/NaClサンプルが透明で粘性(CV)を示した以外は、すべてのサンプルが透明でゲル状(CG)であることが観察された。全体的に、回収率はすべての濃度にわたって明確な傾向を示さなかった。
【0067】
【表5】
CC=透明、無色、CV=透明、粘性、CG=透明、ゼラチン状、Avg Conc=平均濃度、% rec=回収率、Obs=目視観察。
【0068】
実施例2-DOE(実験計画法)試験:
実施例1に従って行った予備的試験に基づき、緩衝液の種類(より有望であったヒスチジン及びクエン酸緩衝液に注目)、緩衝液の強度、pH及び賦形剤を評価するDOEを準備した(表6参照)。
【0069】
【表6-1】
【表6-2】
【0070】
タンパク質サンプルは、標準的な方法に従って、緩衝液/賦形剤の組み合わせ(表6参照)に緩衝液交換した。必要に応じて、緩衝液交換後、PS80界面活性剤を指定濃度で適切なサンプルに添加した(spiked into)。各製剤のバイアルは5℃又は37℃に置き、4週間及び7週間のインキュベ-ションを行った。
浸透圧:
T0での浸透圧は、すべてのサンプルで予想される範囲内(340~380mOsm/kg)(デ-タは示さず)であった。
【0071】
粘度:
粘度は、すべてのサンプルで許容範囲内(T0で2.5~4.0)(デ-タは示さず)であった。
pH:
すべてのサンプルのpH値は、サンプル#21を除き、緩衝液のpHの0.2pH単位以内であり、サンプル#21は、T0、5℃で4週、37℃で4週、5℃で7週の時点でpHが6.2(デ-タは示さず)であった。
【0072】
目視観察:
T0、4週(5℃、37℃)、7週(5℃、37℃)の各サンプルの外観を評価した(デ-タは示さず)。すべてのサンプルは、T0では、無色透明の液体で、目に見える微粒子はなかった。5℃で4週間保存したサンプルは、サンプル1、2及び4を除き、すべて無色透明な液体で、目に見える微粒子はないことが観察され、サンプル1、2及び4は、わずかに黄色がかった透明の液体であり、目に見える粒子はなかった。37℃で4週間保存したサンプルは、サンプル12、22、28、30、32、35及び36を除き、すべて微粒子を含まないわずかに黄色がかった透明な液体であることが観察され、サンプル12、22、28、30、32、35及び36は、無色透明の液体であった(目に見える粒子はない)。5℃で7週間保存したサンプルはすべて、目に見える微粒子を含まない無色透明の液体であることが観察された。37℃で7週間保存したサンプルはすべて、わずかに黄色がかった透明な液体(目に見える微粒子はない)であることが観察された。
【0073】
DSC:
T0時点におけるDSC結果を表7に示す。試料8-23のサ-モグラムは、より広いピ-クを示し、予想より低いシグナルを示した。
【0074】
【表7】
【0075】
SEC:
4週間(5℃、37℃)及び7週間(5℃、37℃)の時点におけるSEC結果を表8に示す。
【0076】
【表8-1】
【表8-2】
#=サンプル#。
【0077】
cIEF:
4及び7週目(5℃、37℃)の時点におけるcIEF(毛細管等電点集束法)の結果を表9に示す。
【0078】
【表9-1】
【表9-2】
【0079】
実施例1及び2に示したプレ製剤開発試験の主な目的は、抗TG2抗体の最適な化学的及び物理的安定性をもたらす製剤成分を同定することであった。利用可能なデ-タを総合すると、pH5.5~6.5の範囲のクエン酸又はヒスチジン緩衝液と、250mMのグリシン又は150mMのNaClの組み合わせが最適であることが示された。
DoE試験で得られたSEC及びiCEの結果は、JMPソフトウェアを用いて再解析した(デ-タは示していない)。各デ-タセットからJMPが推奨する好ましい配合の比較を実施した(SECデ-タセットは、5℃及び37℃の両方で、モノマ-の割合、HMWSの割合、LMWSの割合について、iCEデ-タセットは、5℃及び37℃の両方で、メインピ-クの割合、酸性種の割合、塩基性種の割合について)。全体として、この統計分析から以下のことが判明した:
- クエン酸塩及びヒスチジンの両方が非常に優れた緩衝特性を持ち、ヒスチジンの方がわずかに好ましい。
- 緩衝液としてのクエン酸塩のpHは6.5、ヒスチジンのpHは5.0~5.5が好ましい。
- 50mMの緩衝液強度が最も望ましい、
- NaCl及びグリシンも良い結果をもたらした、
- 界面活性剤を添加する利点は明確ではなかった。
【0080】
実施例3-選択した製剤の長期(12ヶ月)安定性試験:
上記の実施例に基づき、以下の4つの製剤を長期試験用に選択した(いずれも抗TG2抗体mAb1を100mg/ml含有する):
- F1:50mMヒスチジン、250mMグリシン、pH5.5、
- F2:50mMクエン酸塩、250mMグリシン、0.06% w/v PS80、pH5.6、
- F3:50mMヒスチジン、150mM NaCl、pH5.0、
- F4:50mMヒスチジン、250mMグリシン、0.05% w/v PS80、pH5.5。
-60℃(デ-タは示さず)、2~8℃、25℃及び40℃の4つの保存条件で試験した。
【0081】
外観:
試験中、経時的な著しい外観変化(粒子、沈殿物、色・・・)は、観察されなかった。わずかに観察されたのは、40℃と25℃での安定性に沿って、液剤がゆっくりとわずかに黄色に変色したことだけであった。≦-60℃の保存状態から解凍したサンプルは、懸濁する微小気泡のためにごくわずかに濁って見えることがある。
【0082】
タンパク質濃度及びpH(デ-タは示さず):
試験中、濃度に有意な変動は認められなかった。同様に、試験中、製剤間で安定したpHが観察された。
【0083】
粘度及び浸透圧:
粘度及び浸透圧は、ともに許容範囲内であり、それぞれ2.3~3.5cP、335~385mOsm/kg水であった(デ-タは示さず)。
【0084】
SECの結果:
≦60℃で保存したサンプルのHMWS%に有意な変化は観察されなかった。表10~15に示すように、サンプルを2~8℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで保存した場合、経時的なHMWS%の増加は3ヵ月まで直線的であった。この3ヵ月後、HMWS%は、安定する傾向にある。四半期ごとのHMWS%率(勾配×3)は、2~8℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで保存したサンプルについて、最初の3ヵ月で測定した結果の勾配(率/月)に基づいて算出した(デ-タは示さず)。要約すると、2~8℃及び25℃/60%RHでは、ヒスチジン緩衝液製剤が経時的に最も安定であった。ヒスチジン/グリシン又はヒスチジン/NaClの製剤間に有意差は認められなかった。ヒスチジン/グリシン製剤にPS80を添加しても、分子の安定性に明らかな付加価値は見られなかった。40℃/75%RHでは、クエン酸緩衝液製剤が最も安定であった。
【0085】
【表10】
【0086】
【表11】
【0087】
【表12】
【0088】
iCEの結果:試料を≦60℃及び2~8℃で保存した場合、主要な化学種の有意な変化は観察されなかった。25℃/60%RH及び40℃/75°RHでは、ヒスチジン緩衝液製剤が最も安定であり、PS80の添加は製剤の安定性に付加価値を示さなかった。
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
【表15】
【0092】
実施例4-追加の長期(12~48ヶ月)安定性試験:
実施例3の結果に基づき、試験した4つの製剤は非常に安定であったが、F1の2~8℃での長期保存(最長4年)が試験された。安定性はさらに、浸透圧、電荷の変化(charge variants)、凝集体(aggregates)、及び、フラグメント化(fragmentation)に基づいて評価された。
【0093】
【表16】
【0094】
デ-タは、選択された製剤(F1)が2~8℃の温度で36ヶ月以上(48ヶ月まで)経時的に安定であったことを示している。
【0095】
全体的な結論:
驚くべきことに、抗TG2抗体はグリシン又はNaClの存在下で安定化することが示されている。10%の抗TG2抗体を含む最も安定な製剤は、1)F1:50mMヒスチジン、250mMグリシン、pH5.5、及び、2)F2:50mMクエン酸塩、250mMグリシン、0.06% w/v PS80、pH6.5又は5.6であった。250mMグリシンの代わりに150mM NaClを含む製剤も非常に有望であった。製剤F1は長期にわたって試験された。特に、2~8℃の温度範囲で、36~48ヶ月間、経時的に非常に安定していることが示された。この製剤の25℃における12ヶ月間の有望な結果を鑑みると、この安定性はより長期間に及ぶことが予想される。F2からF4も良い選択肢になるだろう。
【0096】
参考文献:
1)国際公開第2006100679号
2)国際公開第2012146901号
3)国際公開第2013175229号
【配列表】
2024539265000001.xml
【国際調査報告】