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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】呼吸器疾患を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20241018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K38/48
A61P11/00
A61K45/00
A61K45/06
A61P11/06
A61P11/08
A61P31/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524604
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 AU2022051294
(87)【国際公開番号】W WO2023070158
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2021903441
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520319750
【氏名又は名称】エムユーシーファーム ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MUCPHARM PTY LTD
【住所又は居所原語表記】13/53 High Street,Malvern,Victoria 3144 Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】モリス、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ、サラ
(72)【発明者】
【氏名】メッカウィ、アフメド
(72)【発明者】
【氏名】ピライ、クリシュナ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA23
4C084DC02
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA63
4C084ZB11
4C084ZB35
(57)【要約】
患者における呼吸器疾患を治療するための方法が本明細書に開示される。本方法は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入によって投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における呼吸器疾患を治療するための方法であって、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ(glycoprotein affecting protease)と痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが、システインプロテアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが、ブロメライン、パパイン、フィカイン、アクチニダイン、ジンギバイン、ファストゥオサイン(fastuosain)、及びアナナイン(ananain)からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記痰分解剤が、ジスルフィド結合破壊剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ジスルフィド結合破壊剤が、アセチルシステイン、ナシステリン、N-アシステリン(acystelyn)、システアミン、エルドステイン、s-カルボキシメチルシステイン、グルタチオン、ジチオスレイトール、メルカプト-エタンスルホネート、カルボシステイン、ドルナーゼアルファ、ゲルソリン(gelsolin)、チモシンP4、デキストラン、ジチオブチルアミン(DTBA)、及びヘパリンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記痰分解剤が、粘液溶解剤、DNase、PNAG分解剤、セラチオペプチダーゼ、アミラーゼ、ヒアルロニダーゼ、及びエラスターゼからなる群のうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤が、同時に又は逐次的に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤が、投与前に噴霧される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤が、乾燥粉末吸入器からの吸入のために粉末の形態で提供される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の追加の治療剤が、前記患者に、前記組み合わせとともに同時投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の追加の治療剤が、抗ウイルス剤、抗菌剤、気管支拡張剤、及び去痰剤からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記呼吸器疾患が、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、人工呼吸器関連肺炎、喘息、痰貯留、粘液栓、線毛機能不全、例えば、原発性線毛運動不全症、及び細菌感染症からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記呼吸器疾患が、ウイルス感染症ではない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記呼吸器疾患が、バイオフィルムを伴う細菌感染症ではない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
患者における呼吸器疾患を治療するための方法であって、前記患者の気道に、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを直接滴下することを含む、方法。
【請求項16】
前記組み合わせが、前記患者の気管、気管支、又は下気道に直接滴下される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組み合わせが、気管支鏡検査の際に前記疾患の部位又は前記気道内の粘液栓への直接注射によって滴下される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
患者における疾患又は状態を治療するための方法であって、前記患者に、治療上有効量の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼを吸入を介して投与することを含む、方法。
【請求項19】
患者におけるサイトカイン活性を阻害するための方法であって、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む、方法。
【請求項20】
患者における炎症応答を低減させるための方法であって、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む、方法。
【請求項21】
患者における呼吸器疾患を治療するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用であって、前記組み合わせが、吸入を介して投与される、使用。
【請求項22】
患者における呼吸器疾患を治療するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの、使用。
【請求項23】
患者における呼吸器疾患の治療に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物。
【請求項24】
患者における疾患又は状態を治療するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの使用であって、前記組み合わせが、吸入を介して投与される、使用。
【請求項25】
患者における疾患又は状態を治療するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの、使用。
【請求項26】
患者における疾患又は状態の治療に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼを含む、吸入可能な組成物。
【請求項27】
患者におけるサイトカイン活性を阻害するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用であって、前記組み合わせが、吸入を介して投与される、使用。
【請求項28】
患者におけるサイトカイン活性を阻害するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの、使用。
【請求項29】
患者におけるサイトカイン活性の阻害に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物。
【請求項30】
患者における炎症応答を低減させるための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用であって、前記組み合わせが、吸入を介して投与される、使用。
【請求項31】
患者における炎症応答を低減させるための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの、使用。
【請求項32】
患者における炎症応答の低減に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸器疾患を治療するための方法、及び糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ(glycoprotein affecting protease)の吸入による投与のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患(一般的に呼吸器状態とも称される)は、呼吸樹、特に肺に影響を及ぼし、世界で最も一般的な重篤な医学的状態のうちの1つである。より頻繁な呼吸器疾患のいくつかは、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び喘息である。多くの呼吸器疾患の影響は、主要な空気通路を拡張し、息切れを改善する治療で対処することができ、したがって、症状を制御し、疾患を有する人々の生活の質を向上させるのに役立つことができる。
【0003】
多くの呼吸器疾患は、気道内の痰(sputum)(痰(phlegm)と呼ばれることもある)の過剰産生を引き起こす。痰は、一般に、ムチン(特に、MUC5B及びMUC5AC)及び細胞材料を含み、塵粒子、病原体、及び気道への経路を見出す他の外因性物質などの異物が痰に巻き込まれ、空気通路内の線毛によって継続的に浄化される浄化機能を提供するため、健康な患者に有益である。しかしながら、人の肺が疾患又は損傷を受けているときに痰が過剰産生される可能性があり、タンパク質、DNA、及び他の細胞材料などの構成成分のレベルの上昇を含むため、その稠度は高くなる可能性がある。
【0004】
痰貯留は、乏しい酸素化、及び細菌感染症のリスクの増加をもたらす可能性があり、したがって、いくつかの療法は、気道を浄化するために痰の動員を促進する。粘液溶解剤は、時には感染があるときに抗菌剤と組み合わせて、停滞している痰のクリアランスを向上させるために使用されている多くのクラスの治療剤のうちの1つである。粘液溶解剤は、ムチンタンパク質に影響を及ぼし(例えば、分解又はさもなければ破壊することにより)、粘性を低下させ、したがって、身体によってより容易に浄化され、かつ/又は他の薬物(例えば、抗菌剤)が浸透しやすくなる。
【0005】
しかしながら、気道管、並びに特に、細気管支及び肺胞の感受性を考慮すると、ある特定の治療剤のみが吸入を介する投与(肺投与とも称される)のために承認されている。呼吸器疾患、及び特に、痰の過剰産生を伴う呼吸器疾患を治療するための更なる治療選択肢を提供することは有利であろう。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本発明は、患者における呼吸器疾患を治療するための方法を提供する。本方法は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む。
【0007】
以下に更に詳細に記載されるように、本発明者らは、特異的な糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼであるブロメラインが、実際には、動物モデルの気道を介して投与されるときに許容的であり得ることを発見した。ブロメラインは、これまでのところ、患者の皮膚上の重篤な火傷創傷の火傷の壊死組織切除のための局所使用のみが示されており、患者に全身投与された場合に重篤な副作用(特にその線維素溶解作用及び出血に対する効果)を有することが周知であることを考慮すると、試験動物モデルがその肺投与を許容したことは、本発明者らにとって非常に驚くべきことであった。気管支及び肺胞は非常に感受性であり、そのような薬剤を許容するとは予想されない。実際、パパイン及びブロメラインなどのシステインプロテアーゼへの曝露が、喘息発作、鼻炎、及びアレルギー性気道疾患などの呼吸器状態をもたらす可能性があることを実証している多数の公表された研究がある。
【0008】
本発明者らは、予備実験の結果が、本明細書に記載されるものを含む、ブロメラインに加えて糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼも、患者の気道を介して投与され、患者の肺に投与された場合に許容的であり、したがって、本明細書に記載されるものなどの治療用途に有効である可能性があるという合理的な予測につながると考えている。現在進行中及び計画されている両方の更なる実験により、本発明者らの予測が確認されるはずである。
【0009】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、システインプロテアーゼであってもよい。いくつかの実施形態では、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、ブロメライン、パパイン、フィカイン、アクチニダイン、ジンギバイン、ファストゥオサイン(fastuosain)、及びアナナイン(ananain)からなる群のうちの1つ以上から選択されてもよい。ブロメラインを使用する利点は、特に、以下に記載される。
【0010】
いくつかの実施形態では、痰分解剤は、粘液溶解剤、ジスルフィド結合破壊剤、DNase、PNAG分解剤、セラチオペプチダーゼ、アミラーゼ、ヒアルロニダーゼ、及びエラスターゼからなる群のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤は、同時に又は逐次的に投与されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、人工呼吸器関連肺炎、喘息、痰貯留、粘液栓、線毛機能不全、例えば、原発性線毛運動不全症、及び細菌感染症からなる群から選択されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤は、投与前に噴霧されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤は、乾燥粉末吸入器からの吸入のために粉末の形態で提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、患者に、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤とともに同時投与されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療される疾患又は状態(例えば、呼吸器疾患)は、COVID-19などのウイルス感染症又はウイルス性呼吸器疾患ではない。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療される疾患又は状態(例えば、呼吸器疾患)は、バイオフィルムを伴う細菌感染症ではない。
【0018】
第2の態様では、本発明は、患者における呼吸器疾患を治療するための方法を提供する。本方法は、患者の気道に、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを直接滴下することを含む。組み合わせは、例えば、患者の気管、気管支、又は下気道に直接滴下されてもよい。組み合わせは、例えば、気管支鏡検査と同時に、疾患の部位又は気道内の粘液栓への直接注射によって滴下されてもよい。
【0019】
ブロメラインが動物モデルの気道を介して投与されたときに驚くほど許容的であり得るという本発明者らの発見、及び本発明者らのその後の調査(それらのいくつかは以下に記載される)はまた、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの肺投与が全身的な治療効果を有する可能性があることを予測することにつながっている。
【0020】
したがって、第3の態様では、本発明は、患者における疾患又は状態を治療するための方法を提供する。本方法は、患者に、治療上有効量の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼを吸入を介して投与することを含む。
【0021】
第4の態様では、本発明は、患者におけるサイトカイン活性を阻害するための方法を提供する。本方法は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む。
【0022】
第5の態様では、本発明は、患者における炎症応答を低減させるための方法を提供する。本方法は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせを吸入を介して投与することを含む。
【0023】
第6の態様では、本発明は、患者における呼吸器疾患を治療するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供し、組み合わせは、吸入を介して投与される。
【0024】
第7の態様では、本発明は、患者における呼吸器疾患を治療するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供する。
【0025】
第8の態様では、本発明は、患者における呼吸器疾患の治療に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物を提供する。
【0026】
第9の態様では、本発明は、患者における疾患又は状態を治療するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの使用を提供し、組み合わせは、吸入を介して投与される。
【0027】
第10の態様では、本発明は、患者における疾患又は状態を治療するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの使用を提供する。
【0028】
第11の態様では、本発明は、患者における疾患又は状態の治療に使用するための糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼを含む、吸入可能な組成物を提供する。
【0029】
第12の態様では、本発明は、患者におけるサイトカイン活性を阻害するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供し、組み合わせは、吸入を介して投与される。
【0030】
第13の態様では、本発明は、患者におけるサイトカイン活性を阻害するための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供する。
【0031】
第14の態様では、本発明は、患者におけるサイトカイン活性の阻害に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物を提供する。
【0032】
第15の態様では、本発明は、患者における炎症応答を低減させるための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供し、組み合わせは、吸入を介して投与される。
【0033】
第16の態様では、本発明は、患者における炎症応答を低減させるための吸入可能な医薬の調製のための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を提供する。
【0034】
第17の態様では、本発明は、患者における炎症応答の低減に使用するための、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤を含む、吸入可能な組成物を提供する。
【0035】
本発明の第2の態様から第17の態様の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤は、本発明の第1の態様の文脈において本明細書に記載されるようなものであってもよい。同様に、本発明の第1の態様の文脈において本明細書に記載される追加の特色及び特徴付けは、一般に、本発明の第2の態様から第17の態様に適用可能である。
【0036】
本発明の第2の態様から第17の態様のいくつかの実施形態では、治療される疾患又は状態は、ウイルス感染症又はウイルス性呼吸器疾患ではない。いくつかの実施形態では、治療される疾患又は状態は、バイオフィルムを伴う細菌感染症ではない。
【0037】
本発明の特定の態様に関して本明細書に詳細に記載される任意の特色及び実施形態は、本発明の他の態様に等しく適用可能であることを理解されたい。本発明の他の態様、特色、及び利点を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】異なる濃度の噴霧BromAcで処理した試料中のブロメラインを測定するためのアゾカゼインアッセイの結果を示すグラフである。
図2】異なる濃度の噴霧BromAcで処理したムチン試料中のN-アセチルシステイン(NAC)を測定するためのNACアッセイの結果を示すグラフである。
図3】フロースルー法を使用するCOVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAcの粘液溶解効果を図示するグラフを示し、フロースルーの体積は、2%のNACに加えて、0、125及び250mcgのブロメラインによる曲線についての中央値及び四分位範囲(上部パネル)を有する散布図で表され、下部パネルでは、折れ線グラフを個々の値(n=8;右側)及び平均値(左側)と接続して表示される。
図4】BromAcの粘液溶解効果と気管吸引試料細胞性との相関を示しており、XY分散グラフは、フロースルーの体積に応じた総細胞計数(上部パネル)及び生細胞計数(下部パネル)を含む細胞性についての結果を示し、表は、ピアソンr係数、95%信頼区間、並びにP値及びP値要約の結果を表示している。
図5】N-アセチルシステイン(NAC)、BromAc 250mcg、及び未処理(UN)対照による処理後の粘度評価を示し、その結果は、最小及び最大並びに平均線を表すフローティングバー上の散布グラフとしてプロットされている。
図6】N-アセチルシステイン(NAC-赤色)、BromAc(登録商標)250mcg(青色)、及び対照として含まれる未処理(UN-緑色)による処理後に、スピンドルの速度に沿って評価される(毎分回転数で)粘度、剪断応力、剪断速度、及びトルクを示すグラフを示す。
図7】平均及び標準偏差を表し、COVID-19患者からの気管吸引試料中に存在するケモカインにおけるBromAcの効果を示すバー上の散布グラフを示す。
図8】平均及び標準偏差を表し、COVID-19患者からの気管吸引試料中に存在する炎症誘発性サイトカインにおけるBromAcの効果を示すバー上の散布グラフを示す。
図9】平均及び標準偏差を表し、COVID-19患者からの気管吸引試料中に存在する成長因子におけるBromAcの効果を示すバー上の散布グラフを示す。
図10】平均及び標準偏差を表し、COVID-19患者からの気管吸引試料中に存在する調節サイトカインにおけるBromAcの効果を示すバー上の散布グラフを示す。
図11】人工及び擬似性痰の動的粘度及びピペット流量時間に対するN-アセチルシステインの効果を示すグラフを示す。
図12】人工及び擬似性痰の動的粘度及びピペット流量時間に対するブロメラインの効果を示すグラフを示す。
図13】人工及び擬似性痰の動的粘度及びピペット流量時間に対するBromAcの効果を示すグラフを示す。
図14】ブロメライン、N-アセチルシステイン、及びBromAcに曝露した人工及び擬似性痰におけるブロメライン、N-アセチルシステイン、及びブロメラインの濃度を示すグラフを示す。
図15】薬剤に曝露されている人工及び擬似性痰における流速に対する動的粘度の比較を示すグラフを示す。
図16】BromAc、DNase、及びそれらの組み合わせで処理した人工ムチンのピペット流速を示すグラフを示す。
図17】BromAc、DNase、及びそれらの組み合わせで処理した人工ムチンの動的粘度を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上述したように、その最も一般的な形態では、本発明は、患者における疾患又は状態を治療するための方法を提供し、治療上有効量の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが吸入によって患者に投与される。他の広範な形態では、本発明は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との治療上有効な組み合わせが吸入によって患者に投与される治療方法を提供する。代替的に、組み合わせは、気管又は気管支又は下気道への直接滴下(患者の気道への直接滴下であるが、吸入を介さない)によって患者に投与されてもよい。1つの方法では、患者における呼吸器疾患又は状態が治療される。別の方法では、患者におけるサイトカイン活性が阻害される。更に別の方法では、患者における炎症応答が低減される。
【0040】
本発明に従って治療可能な疾患及び状態には、以下に更に詳細に記載される呼吸器疾患、並びに糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが治療効果を有する他の疾患及び状態が含まれる。糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの呼吸送達は、例えば、脳及び洞を含む全身治療を提供することができる。本発明者らが、本発明が治療効果を有すると予想する疾患及び状態には、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、人工呼吸器関連肺炎、喘息、痰貯留、粘液栓、線毛機能不全、例えば、原発性線毛運動不全症、及び細菌感染症が含まれる。
【0041】
上に記載したように、本発明は、ブロメラインが、代表的な動物モデルの気道を介して、治療上関連する量で有害作用なしに、驚くべきことに投与することができるという本発明者らの発見に続いて行われた。治療効果を達成するために必要とされるブロメラインの量は、おそらく、その線維素溶解作用及び出血に対する効果などのブロメラインの全身投与(例えば、注射を介する)に関連することが既知の有害な問題に加えて、喘息、アレルギー性反応、壊死、又は細胞改変などの有害な肺反応を引き起こすであろうと本発明者らが予想した量である。しかしながら、驚くべきことに、これらの問題は動物モデルにおいて観察されず、潜在的に、ブロメライン及び他の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼのための新規の送達機構を可能にした。望みを与える動物データにより、本発明者らの一部は、最大500μg/mlのブロメライン及び20mg/mlのN-アセチルシステインを含有する噴霧製剤を1日3回、10日間自己投与するよう促され、いずれの有害な副作用も観察されることはなかった。
【0042】
本出願の発明者らの一部は、ブロメラインなどのプロテアーゼとN-アセチルシステインなどの薬剤との組み合わせ(いくつかの呼吸器疾患の治療のために既に示されている)が、がん療法の文脈においてムチンの溶解に対して相乗効果を有することができることを以前に発見している。嚢胞性線維症などの代表的な呼吸器疾患によって産生される痰についても同様であることが本発明者らの現在の研究で確認されており、その一部は以下に記載されている。本発明者らは、それらの予備実験の結果が、本明細書に開示される治療用途の合理的な予測を支持すると考えている。本発明者らはまた、それらの予備実験の結果が、他の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤が本発明において有用性を有するという合理的な予測を支持すると考えている。繰り返すが、現在進行中及び計画されている両方の更なる実験により、本発明者らの予測が確認されるはずである。
【0043】
「BromAc」という用語は、本明細書で使用される場合、ブロメラインとN-アセチルシステイン(NAC)との組み合わせであり、上述したように、粘液性がんを治療するために本発明者らの一部によって開発されている薬物の組み合わせである。BromAcは、腫瘍ムチンを迅速に溶解及び除去することが見出されたが、いずれの薬物も単独では働かなかった。BromAcは、糖タンパク質及びジスルフィド結合に対するその効果に起因して、MUC1、MUC2、MUC4、MUC5B、MUC5AC、及びMUC16を含むがんによって発現されたムチン保護フレームワークを除去することが示されている。
【0044】
本発明は、任意の好適な患者又は対象における呼吸器疾患を治療し、サイトカイン活性を阻害し、かつ/又は炎症応答を低減させるために使用されてもよい。理解されるように、患者における呼吸器疾患、サイトカイン活性、及び炎症応答は関連する可能性があり、本発明の方法を実施することは、これらの効果のうちの1つ以上が達成される可能性がある。本発明者らのデータにより、本発明に従って治療可能であるべきであると予測することにつながっている呼吸器疾患は、上に記載したものを含む。
【0045】
患者におけるサイトカイン活性が阻害される方法では、例えば、痰産生が低減され、ARDSなどの状態が緩和されるであろう。ヒアリン形成の予防はまた、肺線維症などのARDSの長期的な影響に対抗して、低減されてもよい。患者における炎症応答が低減される方法では、痰産生が低減され、ARDSなどの状態が緩和され、例えば、より良好な換気のコンプライアンスが達成されるであろう。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者は、哺乳動物対象である。典型的には、患者は、ヒト患者であるが、他の対象が本発明から利益を得る可能性がある。例えば、対象は、ブタ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、又は社会的、経済的、又は研究的に重要な任意の他の哺乳動物であってもよい。
【0047】
本発明は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ、又は糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせの使用を伴う。これらの各々を以下に順次記載する。
【0048】
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、糖タンパク質のタンパク質分解を引き起こすタンパク質分解酵素である。糖タンパク質のグリコシド結合(及び他のペプチド結合)を加水分解することによって糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ酵素である、ブロメラインについての予備データを考慮すると、本発明者らは、任意の特定の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの適合性を決定するために(本明細書に含まれる教示に照らして)必要とされる全ての日常的な試験及び実験を伴い、任意の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが本発明において使用されてもよいと考えている。本明細書で使用される場合、「影響を及ぼす糖タンパク質」という用語は、例えば、消化、液化、又はそうでなければ糖タンパク質を崩壊若しくは分解させることによってなどの、任意の治療上有効な様式で糖タンパク質(及び場合によっては他のペプチド)に影響を及ぼすと理解されるべきである。糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、例えば、糖タンパク質を崩壊させるのに有効である可能性がある。糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、例えば、糖タンパク質のグリコシド結合を加水分解するのに有効である可能性がある。
【0049】
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼは、例えば、システインプロテアーゼであってもよい。システインプロテアーゼ(チオールプロテアーゼとしても既知である)は、一般的な触媒機構を介してタンパク質を分解し、一般的にパパイヤ、パイナップル、イチジク、及びキウイフルーツを含む果物から供給される。システインプロテアーゼの例には、ブロメライン、パパイン(パパイヤから抽出される)、及びアナナイン、システインプロテアーゼのパパインスーパーファミリーにおける植物システインプロテアーゼが含まれる。
【0050】
ブロメラインと同じ特徴を発現する他の植物由来のタンパク質分解酵素があり、本発明者らは、糖タンパク質に対する影響を有する任意の植物由来のプロテアーゼ酵素が本発明において使用されてもよいと予想している。繰り返すが、日常的な実験により、任意の特定の植物由来のプロテアーゼ酵素の適合性を確認することができるはずである。いくつかの実施形態では、例えば、植物由来のプロテアーゼ酵素は、ブロメライン、パパイン(パパイヤから抽出される)、フィカイン(イチジクから抽出される)、アクチニダイン(キウイフルーツ、パイナップル、マンゴー、バナナ及びパパイヤを含む果物から抽出される)、ジンギバイン(ショウガから抽出される)、及びファストゥオサイン(Bromelia fastuosaからのシステインプロテアーゼ)からなる群のうちの1つ以上から選択されてもよい。アスパラガス、マンゴー、並びに他のキウイフルーツ及びパパイヤプロテアーゼも使用されてもよい。
【0051】
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの活性画分が、本発明において使用されてもよく、画分自体が糖タンパク質に影響を及ぼすことを条件として、プロテアーゼ抽出物中の全ての物質が含まれる必要はない場合があることに留意されたい。遺伝子組換えを使用して得られる糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ酵素も、本発明において使用されてもよいことが予想される。
【0052】
ブロメラインは、パイナップル植物(Ananas Comosus)の抽出物であり、物質(異なるチオールエンドペプチダーゼ、並びにホスファターゼ、グルコシダーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、及びいくつかのプロテアーゼ阻害剤などの他の構成成分を含む)の混合物であり、組み合わせにおける物質の画分が少なくとも糖タンパク質に影響を及ぼすことができることを条件として、これらの物質の全てが組み合わせに含まれる必要はない場合がある。
【0053】
本明細書に記載される実験において使用されるブロメラインは、Enzybel Groupから商業的に供給されており、任意の更なる処理はMucpharm Pty Ltdによって実施された。
【0054】
痰分解剤
本発明はまた、痰分解剤を含む。治療上許容性があり、痰を分解するのに有効である任意の薬剤が、本発明において使用されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、例えば、痰分解剤は、ジスルフィド結合破壊剤、粘液溶解剤、DNase、PNAG分解剤、セラチオペプチダーゼ、アミラーゼ、ヒアルロニダーゼ、及びエラスターゼからなる群のうちの1つ以上から選択されてもよい。
【0056】
ジスルフィド結合破壊剤は、タンパク質中のジスルフィド架橋を切断することができる還元剤である。多くのムチンタンパク質の完全性がジスルフィド架橋に依存しているため、それらの切断はタンパク質の展開をもたらすはずであり、したがって痰を分解する。
【0057】
本発明者らが本発明において使用されてもよいと考えているジスルフィド結合破壊剤は、アセチルシステイン(N-アセチルシステイン又はNACとしても既知である)、ナシステリン、N-アシステリン(acystelyn)、システアミン、エルドステイン、s-カルボキシメチルシステイン、グルタチオン、ジチオスレイトール、メルカプト-エタンスルホネート、カルボシステイン、ドルナーゼアルファ、ゲルソリン(gelsolin)、チモシンP4、デキストラン、ジチオブチルアミン(DTBA)、及びヘパリンを含む。
【0058】
本発明者らによって実行された概念実証実験のいくつか(そのうちのいくつかは以下に更に詳細に記載される)では、アセチルシステインが痰分解剤として使用された。アセチルシステインは、生物学的システムにおける還元可能性を有する抗酸化剤であり、タンパク質中のジスルフィド架橋を切断することが既知であり、プロテアーゼ-増強及び再生に対して活性影響を有するスルフィドリルドナーでもある。多くのムチンタンパク質の完全性がジスルフィド架橋に依存しているため、本発明者らは、アセチルシステインによるそれらの切断がこれらのタンパク質の展開を引き起こし、それが痰を分解するのを助けると仮定する。
【0059】
有利には、アセチルシステインは、嚢胞性線維症及び慢性閉塞性肺疾患の治療に使用するための承認された製品である。アセチルシステインは、最大で1日4回、4ml(w/v)中10%又は20%のいずれかの投薬量で、吸入によって投与される。本発明者らは、したがって、アセチルシステインを含む医薬のための規制当局の承認を得ることがより容易である可能性があることに留意している。
【0060】
アセチルシステインを含む本発明の実施形態を以下に更に詳細に記載する。しかしながら、当業者は、本明細書に含まれる教示が、日常的な試験及び実験を使用して、痰分解効果を有する任意の薬剤に適合される可能性が高いことを理解するであろう。
【0061】
この関連で、DNA及び細胞材料はまた、呼吸困難下にある患者によって産生された痰の重要な構成成分であり得、本発明者は、DNA又はDNaseなどの細胞分解剤が本発明において使用される場合、痰に対する向上した効果を実証している(以下に更に詳細に記載される)。本発明者らが本発明において使用されてもよいと考えているDNaseには、ドルナーゼアルファ、DNase I型、及びDNase II型が含まれる。DNase I型は、特に、主要な有害反応を伴わない多くの臨床用途について試験されており、FDAによって承認されている。これは、嚢胞性線維症、喘息、全身性エリテマトーデス、及び肺気腫の治療において肯定的な転帰を示している。
【0062】
ポリ-N-アセチルグルコサミン(PNAG)は、痰中に存在する可能性がある細胞外多糖であり、本発明者は、グルコン酸カルシウム、ディスパーシン(dispersin)B、及びサブチリンなどのPNAG分解剤が本発明に含まれる場合、なお更に向上した効果が生じることを予想している。
【0063】
痰分解効果を有する他の薬剤には、粘液溶解剤、並びに酵素のセラチオペプチダーゼ、アミラーゼ、ヒアルロニダーゼ、及びエラスターゼが含まれる。
【0064】
組み合わせにおける糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤の相対的な割合は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び痰分解剤の種類、並びにそれらの意図される用途などの要因に応じて変化する可能性がある。しかしながら、一般的に言えば、組み合わせ又は組成物は、約5μg/mL~約2mg/mLの糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼを含んでもよい。これらの量は、治療効果を達成するために必要とされる場合がある量よりも多いが、本発明者らは、噴霧によって投与された薬物の画分のみが、気道内に沈着し、呼気、チューブ上の結露、及び上気道への送達に起因する損失が生じることに留意する。これまでのそれらの実験では、例えば、本発明者らは、そのような損失のために、最大1000μg/mLのブロメラインを噴霧している。薬物の損失は、治療レジメンと装置との間で変化する可能性があるため、以下に記載する糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの量は、患者の気道に受容されるものを指し、そのようなものは、日常的な技術を使用して測定可能である(その例を以下に記載する)。
【0065】
約5μg/mL未満の糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼの量は有効ではない場合があり、約1,000μg/mLを超える量は、望ましくない副作用を引き起こす可能性が高い。いくつかの実施形態では、例えば、約5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、60μg/mL、80μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mL、250μg/mL、300μg/mL、350μg/mL、400μg/mL、450μg/mL、500μg/mL、550μg/mL、600μg/mL、650μg/mL、700μg/mL、750μg/mL、800μg/mL、850μg/mL、900μg/mL、950μg/mL、1,000μg/mLの糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが患者の気道に投与されてもよい。上記に列挙された量の範囲内に入る範囲もまた企図される。
【0066】
組み合わせにおける痰分解剤の量は、主に薬剤の性質に依存する。いくつかの実施形態では、例えば、痰分解剤は、ジスルフィド結合破壊剤(例えば、NAC)であってもよく、その場合、組み合わせ又は組成物は、約0.5%、1%、2%、3%、5%、4%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%(w/v)の痰分解剤を含んでもよい。患者の気道に投与される約0.5mg/mL未満のNACの量は有効である可能性が低く、約20mg/mLを超える量は、望ましくない副作用を引き起こす可能性が高い。上記に列挙された量の範囲内に入る範囲もまた企図される。
【0067】
他の実施形態では、例えば、痰分解剤は、DNaseであってもよく、その場合、組み合わせ又は組成物は、約1μg/mL~約1000μg/mlを含んでもよい。CFを治療するための噴霧のためのDNase、例えば、ドルナーゼアルファの単位用量は、1mg/mlである。本明細書に記載される組み合わせ効果は、従来必要とされるものよりも低用量のDNaseの使用を可能にすると予想されるが、約1μg/mL未満の量は、著しい治療効果を有する可能性が低い。いくつかの実施形態では、例えば、約1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、40μg/mL、50μg/mL、60μg/mL、80μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、300μg/mL、400μg/mL、500μg/mL、600μg/mL、700μg/mL、800μg/mL、900μg/mL、又は1mg/mlのDNaseの形態での痰分解剤が患者の気道に投与されてもよい。上記に列挙された量の範囲内に入る範囲もまた企図される。
【0068】
一部の呼吸器疾患及び/又は患者については、有効な治療を完了するためには、反復治療が有益(又は必要)である可能性があることが想定される。また、一部の呼吸器疾患及び/又は患者については、痰分解剤の組み合わせ(例えば、NAC及びDNaseの組み合わせ)が使用されてもよいことが想定される。
【0069】
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせ又は組成物は、意図された治療効果を提供する任意の様式で患者に投与されてもよい。それらは、例えば、同時に(例えば、単一の組成物中で)投与されるか、逐次的に(例えば、別々の組成物中で、次々に)投与されるか、又は別々に(例えば、別々の組成物中で、異なる時間で)投与されてもよい。
【0070】
本発明の組み合わせ及び組成物はまた、追加の治療剤を含んでもよい。呼吸器感染症の治療の文脈において適切な適応を有する任意の追加の治療剤は、患者に同時投与されてもよい。追加の治療剤の例には、抗ウイルス剤、抗菌剤、気管支拡張剤、及び/又は去痰剤が含まれる。追加の治療剤は、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ及び/又は痰分解剤と同時に、又は(より可能性が高い)逐次的に投与されてもよい。
【0071】
必要(又は有益)な場合、そのような追加の治療剤の量は、必要に応じて、日常的な試験及び実験のみを使用して決定されてもよい。
【0072】
例えば、本発明の文脈において治療効果を提供する可能性がある抗生物質、抗ウイルス剤、気管支拡張剤、又は去痰剤が使用されてもよい。本発明者が有用である可能性があると予想する抗生物質には、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、及びペニシリン抗生物質(例えば、アンピシリン)が含まれる。本発明者が有用である可能性があると予想する抗ウイルス剤は、オセルタミビルである。本発明者が有用である可能性があると予想する気管支拡張剤には、サルブタモール、B2アゴニスト、及び抗コリン薬が含まれる。本発明者らが有用である可能性があると予想する去痰剤には、グアイフェネシン、高張性生理食塩水、一酸化窒素、及びブロムヘキシンが含まれる。
【0073】
追加の治療剤を含む組成物では、薬剤は、有益な効果を提供する任意の量で組成物中に存在してもよい。任意のそのような追加の治療剤の適切な量を決定することは、当業者の能力の範囲内である。いくつかの実施形態では、2つ以上の追加の治療剤は、特に、それらの治療効果が異なる機構を介している場合、有益な効果を提供する可能性がある。
【0074】
直接的な治療効果を必ずしも有さない他の構成成分が本発明に含まれてもよい。例えば、マンニトールなどの水和剤が、糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ又は痰分解剤の任意の乾燥効果に対抗するために使用されてもよい。
【0075】
投与
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼ、又は糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと痰分解剤との組み合わせは、意図された治療又は予防効果を提供する任意の様式で患者の気道に投与されてもよい。組み合わせは、例えば、(例えば、噴霧された後に)患者の肺に投与されてもよい。例えば、気管支鏡を介するなどの、特殊な医療機器を使用して患者の気管又は気管支にスプレーされてもよい。代替的に(又は加えて)、組成物は、吸入するときに患者の鼻又は口にスプレーされてもよい。代替的に(又は加えて)、組み合わせは、閉じた系のテント又は治療のための他の閉じた環境空間などの患者を取り巻く雰囲気に噴霧され、送達されてもよい。
【0076】
噴霧は、薬物を気道に送達するために一般的に使用される方法である。ネブライザーは、肺に吸入されるミストの形態で医薬品を投与するために使用される送達デバイスであり、酸素、圧縮空気、又は超音波力を使用して、溶液及び懸濁液をデバイスのマウスピースから吸入される小さなエアロゾル液滴に分解することができる。
【0077】
薬物を気道に送達するための別の一般的に使用される方法は、乾燥粉末吸入器又は定量吸入器を使用することである。そのような吸入器は、当該技術分野で周知であり、通常、吸入を介して患者によって自己投与されるエアロゾル化薬の短いバーストの形態で、特定量の医薬品を肺に送達する。
【0078】
発明者らによってこれまでに実行された実験は、ガスがノズルを通過し、ベンチュリ効果によって流体を引き上げるネブライザーであるジェットネブライザー、及び振動メッシュネブライザーを使用している。ジェットネブライザーは安価で、幅広く利用可能である。振動メッシュネブライザーはまた、機械的換気の一部として集中治療室で一般的に利用される。メッシュの振動は、ピエゾ電気デバイスに起因するものである。ポータブルデバイスが利用可能である(例えば、Aerogen ProX)。超音波ネブライザーはまた、非常に小さな粒子を達成する。本発明者らは、複数のデバイス(例えば、Aerogen ProX Solo、Pari Turbo-Boy、Philips Respironics)を使用して、ブロメライン及びアセチルシステインの組成物の送達を具体的に調査しており、そのような組成物の噴霧は、0.9%の通常の生理食塩水と著しく異なるものではないことに留意する。
【0079】
薬学的組成物
糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼと、痰分解剤と、本発明の方法において使用される任意選択的な更なる薬剤との組み合わせは、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物の形態で提供されてもよい。
【0080】
そのような薬学的に許容される担体は、組成物の投与経路に依存する。液体形態調製物は、例えば、鼻腔内又は気管内送達のためのエアロゾルを作製するための0.9%の生理食塩水中の溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含んでもよい。本発明の薬学的組成物に使用するための好適な薬学的に許容される担体には、生理学的緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、及びリンガー溶液などが含まれる。
【0081】
上述したように、吸入のための粉末製剤もまた想定される。
【0082】
患者への送達に好適な薬学的組成物は、患者の身体内への送達の直前に調製されてもよいか、又は事前に調製され、事前に適切に保管されてもよい。
【0083】
本発明に使用するための薬学的組成物及び医薬は、薬学的に許容される担体、アジュバント、安定剤、賦形剤、及び/又は希釈剤を含んでもよい。担体、希釈剤、賦形剤、及びアジュバントは、組成物又は医薬の他の成分及び送達方法と適合性があるという点で「許容される」ものでなければならず、一般に、そのレシピエントに有害であってはならない。
【0084】
適切であれば、本明細書に記載される組み合わせ又は薬学的組成物における構成成分のいくつかは、その代謝物、薬学的に許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグの形態で提供されてもよいことが理解されるであろう。本発明の構成成分の「代謝物」は、代謝の中間体及び産物を指す。
【0085】
「薬学的に許容される」、例えば、薬学的に許容される担体、賦形剤などは、薬理学的に許容され、特定の化合物が投与される対象に実質的に無毒性であることを意味する。
【0086】
「薬学的に許容される塩」は、構成成分の生物学的有効性及び特性を保持し、かつ好適な無毒性の有機若しくは無機酸、又は有機若しくは無機塩基から形成される、従来の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。試料酸付加塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸に由来するもの、並びに有機酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などに由来するものが含まれる。試料塩基付加塩には、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化四級アンモニウムに由来するものが含まれる。薬学的化合物(すなわち、薬物)の塩への化学修飾は、化合物の物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動能力、並びに溶解性を向上させるために薬学者に周知の技術である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるH.Ansel et.al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(6th Ed.1995)at pp.196 and 14561457を参照されたい。
【0087】
いくつかの構成成分の「プロドラッグ」及び「溶媒和物」もまた企図される。「プロドラッグ」という用語は、本発明によって必要とされる化合物を得るためにインビボで形質転換される化合物(例えば、薬物前駆物質)、又はその代謝物、薬学的に許容される塩、若しくは溶媒和物を意味する。形質転換は、様々な機構によって(例えば、代謝又は化学プロセスによって)生じる可能性がある。プロドラッグの使用の考察は、T.Higuchi and W.Stella,“Prodrugs as Novel Delivery Systems,”Vol.14 of the A.C.S.Symposium Seriesによって、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987において提供されている。
【0088】
実験結果
ここで、本発明の特定の実施形態の効果を実証するために本発明者らによって実行された実験を記載する。
【0089】
以下に記載される実験において使用されるブロメラインは、滅菌粉末としてMucpharm Pty Ltd(Australia)によって製造及び提供された。ブロメラインを、単剤として使用した場合にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、又は組み合わせにおけるものとして使用した場合には直接的にアセチルシステイン溶液中(実施例では「BromAc」と称されることがある)のいずれかで希釈して、様々な濃度の製剤を調製した。アセチルシステイン(実施例では「Ac」と称されることがある)200mg/mlは、Link Pharma(Australia)から購入したか、又はMucpharm Pty Ltdによって製造及び提供された。他の全ての試薬は、Sigma Aldrich、Sydney,Australiaからの分析グレードのものであった。
【0090】
実施例1-BromAcの噴霧
上に記載したように、液体の噴霧は、薬物を気道に送達するために一般的に使用される方法である。本発明者らは、複数のデバイス(例えば、Aerogen ProX、Pari Turbo-Boy、Philips Respironics)を使用してBromAcの潜在的な肺送達を調査しており、BromAcの噴霧が、0.9%の通常の生理食塩水の噴霧と著しく異なるものではないことを見出した。
【0091】
いくつかの振動メッシュネブライザーでの発熱は可変であり、しかしブロメラインは熱に感受性であるため懸念されるが、10分間にわたるチャンバ内のおよそ10℃の温度上昇は、薬物活性にいずれの著しい影響を有する可能性が低い。実際、本発明者らは、損失なしに、最大42℃までのBromAc活性を調査している。振動メッシュネブライザー(人工呼吸器回路)に沿ったFisher&Paykel加湿器は、多数の実験において使用されており、薬物の有効性を改変させることは見出されていない。
【0092】
実施例1.1-Pari LC Sprintネブライザーから放出されたBromAcエアロゾルの粒径分布
異なる濃度でのブロメライン及びアセチルシステインを含有する5つの製剤の粒径分布(PSD)を決定した。製剤を、Pari LC Sprintネブライザー(PARI GmbH、USA)と組み合わせたPARI TurboBOY SXコンプレッサーを使用してエアロゾル化した。ネブライザーをUSP誘導ポート(咽喉)に接続し、粒径をSpraytec粒径分析計(Malvern Instruments、Malvern,UK)において15L/分の流量で測定した。測定を3回繰り返し実施した。結果を、累積分布における10、50、及び90%での粒子直径を示す、D10、D50、及びD90として表す。
【0093】
製剤を生理食塩水(0.9% w/v)中で調製し、分析前に-20℃で保持した。試験した製剤は以下のとおりであった。
1.対照:生理食塩水(塩化ナトリウム0.9% w/v)
2.低濃度のAc(8mg/mL)
3.高濃度のAc(60mg/mL)
4.50μg/mLでのBrom
5.組み合わせ1:低Ac(8mg/mL)+Brom(50μg/mL)
6.組み合わせ2:高Ac(60mg/mL)+Brom(50μg/mL)
【0094】
全ての製剤を、PARI TurboBoy SX、LC Sprinterネブライザーを使用して首尾よく噴霧した。表1で見ることができるように、全ての製剤について同様の粒径分布が観察され、全ての製剤のD50は5μm未満であり、これはエアロゾル送達に好適であると考えられる。
【表1】
【0095】
実施例1.2-鼻スプレーボトル、MADデバイス、及びジェットネブライザーInnoSpire Eleganceから放出されたBromAcエアロゾルの粒径分布
鼻スプレーボトルSnotty、MADデバイス、及びジェットネブライザーInnoSpire Elegance(Philips Respironics)から放出されたNaCl溶液中の50及び250μg/mLのブロメライン+20mg/mLのアセチルシステインを含有するエアロゾルの粒径分布を決定するために、以下の試験を実施した。各デバイスから放出された液滴の径分布を、レーザー回折計(Spraytec(登録商標)、Malvern Panalytical、Malvern,UK)上で測定した。Spraytecは、レーザービームを通過するエアロゾルのリアルタイムのインサイチュ粒径分布を測定する。
【0096】
エアロゾル化された液滴を、吸入セルで、及び2.5kHzの取得周波数でサイズ決定した。各デバイスの出口は、測定中の蒸発を最小化するために、レーザー測定ゾーンから1cmに位置付けた。吸入セルの他端に接続された真空ポンプを使用して、エアロゾルを連続的に除去し、1)レーザー測定ゾーンへの液滴の再取り込みを防止し、2)レーザー信号伝送を>70%に保持し、多重散乱を最小化した。ビームステアリング効果を考慮して、検出器1~7からの信号を除外した。液滴についての実屈折率及び虚屈折率は、水のものと同じであるとされ、それぞれ1.33及び0.00であった。空気についての屈折率は1.00であった。これらの値は、全ての測定が低残差値(<0.5%)を示したため、適切であると考えられた。生データを処理して、所与の実行における、ある期間の平均体積直径分布を得た。
【0097】
1回の測定のために、1mLの溶液を鼻スプレーボトル及びMADデバイスの各々に充填した。MADデバイスは、6mLシリンジに取り付けられ、これは、オペレータが片手で一貫した圧力を快適に適用することを可能にするために、オペレータの手に理想的に適合するように選択された。これらの2つのデバイスからの試料を6回測定した。鼻スプレーボトルを、均一なスプレーが観察されるまで、測定の前に5~7回プライムした。ジェットネブライザーのリザーバに10mLの溶液を充填し、測定を3回繰り返した。噴霧の持続時間は、10mLの溶液全体を噴霧する時間であった。粒径分布は、d10(粒子の10%が存在する体積直径)、d50(体積中央値直径)、d90(粒子の90%が存在する体積直径)、及びエアロゾルの多分散性を説明するスパンとして表した。加えて、スプレー全体の10及び5μm未満の径を有する粒子のパーセンテージ(体積)を含めた。結果を以下で表にする。
【表2】

【表3】

【表4】
【0098】
表2は、鼻スプレーボトルが、50μg/mL及び250μg/mLのブロメライン濃度について、それぞれ37.5±2.7μm及び34.5±2.0μmの体積中央値直径を有する一貫した液滴径分布を生成したことを示す。ボトルの側面をしっかりと素早く押し下げることによって、一貫した液滴を生成した。
【0099】
MADデバイスは、3つのデバイスの中で最大の液滴を生成し、体積中央値直径は、50μg/mL及び250μg/mLのブロメライン濃度について、それぞれ191.4±44.5μm及び183.0±23.5μmであった(表3)。オペレータは、シリンジプランジャーを押すときに最善を尽くして一貫した圧力を加えたが、両方のブロメライン濃度について液滴径分布の大きな変動が観察された。
【0100】
表4は、ジェットネブライザーによって生成された液滴が最も狭い分布で最も小さかったことを示している。50μg/mL及び250μg/mLのブロメライン濃度についての体積中央値直径値は、それぞれ7.7±0.2μm及び7.4±0.2μmであった。液滴径分布は、噴霧の全期間にわたって安定しており、各噴霧の終了時にリザーバに残っていた溶液の残量は非常に少なかった(<0.3mL)。
【0101】
これらのデータは、治療上関連する量のBromAcが生理食塩水と同じ粒径を有していたことを示し、患者の下気道に送達される適切な径の粒子に噴霧することができたことを意味する。
【0102】
表5は、患者の気道へのBromAcの送達に好適であると思われる既存のシステムの本発明者らの評価を要約する。
【表5-1】

【表5-2】
【0103】
実施例1.3-噴霧BromAcに曝露したムチン試料中のブロメライン及びNACの濃度
これらの実験では、試験肺に接続された気管内管とインラインで人工呼吸器(Drager Evita XL)を設置した。人工痰(実施例4に記載されるように調製した)を気管内管内に配置し、部分的な閉塞を引き起こし、BromAcを回路内に噴霧した。休息期間の後、BromAcの第2の曝露を適用した。
【0104】
処理した試料を、次のように番号付けした。
番号65-BR 250μg/ml及び2%のNAC(10ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。両方の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
番号66-BR 250μg/ml及び2%のNAC(10ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。両方の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
番号67-BR 250μg/ml及び2%のNAC(10ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。両方の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
(試料68なし)
番号69-BR 250μg/ml及び2%のNAC(16ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。2回目の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
番号70-BR 250μg/ml及び2%のNAC(10ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。2回目の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
番号71-02/10/21でET管において10mlの生理食塩水を10mlの生理食塩水で再処理する。2回目の用量を、37℃で加湿した
番号72-BR 250μg/ml及び2%のNAC(20ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。2回目の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
番号73-BR 500μg/ml及び4%のNAC(10ml)をBR 250μg/ml及び2%のNAC(10ML)で再処理する。2回目の用量を、ET管内で37℃で腐植化した
【0105】
これらの実験の結果を図1及び2に示す。これらのデータは、ブロメライン及びNACの両方が噴霧BromAcに曝露したムチン試料中に蓄積することを示す。蓄積された濃度は、痰内でムチン分解効果を生じると予想される範囲内である。
【0106】
実施例2-動物安全性研究
ウサギ及びげっ歯類モデルにおいてエアロゾルとしてのアセチルシステインを伴うか又は伴わずに、ブロメラインの投与の安全性を試験するために多くのパイロット研究を実行した。
【0107】
実施例2.1-パイロット研究:ウサギにおける吸入されたブロメラインの安全性
このパイロット研究では、5匹のニュージーランド白ウサギ(Pipers farms、NSW,AU)を使用して、エアロゾルとしてのブロメラインの投与の安全性を試験した。麻酔を、アセプロマジン1mg/kg SC+メデトミジン0.25mg/kg SCの混合物を使用して誘発し、1L/分の速度で酸素中のイソフルラン1~3%を吸入することによって治療中に維持した。ウサギに、薬物の潜在的な気管支収縮効果と戦うための、気管支拡張剤としてのサルブタモール800マイクログラム/Kg(Ventolin吸入器、カタログ番号AUST R 317221、GlaxoSmithKline plc.、UK)を術前に吸入投与した。サルブタモール投与と治療との間に10分間の待機期間を維持した。各ウサギは、以下のように、ネブライザー及びv-ゲル声門上気道デバイスを使用して、ブロメラインの累積用量を1回受けた。パイロット研究は以下のように2つの実験に分けられた。
【0108】
実験1:2匹のウサギを第1のブロメラインエアロゾル投与実験に使用した。16分間の吸入期間にわたって、第1のウサギは、生理学的生理食塩水溶液(0.9%のNaCl)のエアロゾルを受け、第2のウサギは、エアロゾル化ブロメライン0.1mg/mL(1.9mLの生理食塩水中の0.19mgの累積用量)を受けた(表1)。
【0109】
実験2:3匹のウサギを第2のブロメラインエアロゾル投与実験に使用した。11分間の吸入期間にわたって、第1のウサギは、生理学的生理食塩水溶液(0.9%のNaCl)のエアロゾルを受け、第2のウサギは、エアロゾル化された低用量のブロメライン0.01mg/mL(2.5mLの生理食塩水中の0.025mgのブロメラインの累積用量)を受け、第3のウサギは、エアロゾル化された高用量のブロメライン0.1mg/mL(2.5mLの生理食塩水中の0.25mgのブロメラインの累積用量)を受けた。
【0110】
実験中、動物の体重、腸静止、アレルギー又は出血の徴候、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を監視した。術後2日間の観察は、ウサギの活動が正常であり、正常な食事、飲み物の摂取、及び正常な呼吸であったことを示した。動物をイソフルランを使用して鎮静させながら、ウサギをIVペントバルビトンナトリウム100mg/kgを使用して治療後48時間で安楽死させた。血液試料及び内臓を病理学のために収集し、組織病理学、血漿中のブロメライン濃度のための定量的アッセイ、及び血液凝固アッセイを標準的な手順を使用して実行した。
【0111】
組織病理学的結果
2匹のウサギを第1のパイロット実験において使用した。対照ウサギ(生理学的生理食塩水溶液)及び治療したウサギ(0.1mg/mLのブロメライン)。対照ウサギと比較して、治療したウサギは、中央静脈の周りの肝細胞の軽度の細胞質空胞化を示した。気管上皮及び気管支上皮、並びにそれらの構造は無傷であった。対照ウサギ及び治療したウサギの両方が肺出血を示した。ブロメラインで治療した肺に他の異常は見出されなかった。
【0112】
3匹のウサギを、第2のパイロット研究、対照ウサギ(生理学的生理食塩水溶液)及び2匹の治療したウサギ(低用量の0.01mg/mLのブロメライン及び高用量の0.1mg/mLのブロメライン)において使用した。対照動物及び治療した動物からの胃食道接合部からの横断面は、負傷を示さなかった。3匹の動物の気管の試料も得た。気管組織並びに気管支及び細気管支の切片の組織病理学的検査は、負傷のない無傷の気道上皮及び構造を示した。気道線毛の細胞下検査は正常な構造を示した。
【0113】
肺経路及び胃腸経路を介して全身循環に入る薬物の量は、肝臓によって代謝されるか、又は腎臓によって排泄される。したがって、肝臓及び腎臓試料を組織病理学的分析のために採取した。3匹の動物の肝臓からの横断面は、実質及び門脈領域を含め、ブロメラインで治療した動物と対照との間に差を示さなかった。炎症効果又は血液外漏出の徴候はなかった。対照ウサギと治療したウサギとの肝臓実質細胞間に細胞下差はない。3匹の動物の腎臓は無傷であった。腎臓の皮質及び髄質の調査は、炎症及び血液外漏出の非存在を含むボウマン嚢及び尿細管における組織病理学的改変を示さなかった。腎臓の細胞下変化は観察されなかった。
【0114】
3匹のウサギの肺の組織学的検査は、第1の実験で対照ウサギ及び治療したウサギで観察されたものと同様の肺出血を示した。この所見はまた、肺の死後肉眼検査によって観察された血腫と一致している。この病理学的所見は、治療及び安楽死中の麻酔にイソフルランを使用したことに起因する可能性がある。肺の組織病理学的検査はまた、対照ウサギ及び低用量ブロメラインで治療したウサギの両方で炎症の観察を示したが、高用量ブロメラインで治療したウサギでは示さなかった。対照ウサギと比較して、生理学的生理食塩水中の0.19~0.25mgのブロメラインの累積用量の吸入は、肺に対して同様の影響を引き起こした(表6)。
【表6】
【0115】
肺出血は、全ての対照ウサギ及び治療したウサギで観察されている。本発明者らは、イソフルランが肺毛細血管出血を誘発する可能性があり、毛細血管透過性/漏出を引き起こすVEGFがイソフルランによって誘発されることを見出した。イソフルランは、治療中及び安楽死の誘導中にウサギによって吸入された。したがって、次のウサギ吸入研究では、イソフルランの使用は回避された(以下に記載する)。現在のパイロット研究における顕著な人工無気肺は、固定剤による肺の灌流不良に起因しており、これはその後のウサギ吸入研究でも回避された。
【0116】
血漿結果
第1の実験では、治療したウサギにおけるブロメラインの血漿濃度は、治療後48時間で800ng/mLであった。第2の実験では、ELISAアッセイは、0.025mg又は0.25mgのブロメラインの累積用量のいずれかの吸入後4、6、24、及び48時間で収集されたウサギの血漿試料中にブロメラインの痕跡を示さなかった。
【0117】
第2の実験では、血液試料を吸入後4、6、24、及び48時間で収集した。ELISAアッセイ及び0~1200ng/mLの範囲の標準曲線ウサギ第X因子(F10)(CUSABIO、カタログ番号#CSB-EL007915RB)を使用して、血漿中の第X因子を評価した。対照ウサギと治療したウサギ(ブロメライン0.01又は0.1mg/mLのいずれか)との間で、治療後4、6、及び24時間で著しい変化は見出されなかった。治療後48時間に、ウサギを、安楽死及び採血の前に、イソフルランを使用して麻酔した。0.1mg/mL(合計0.25mg)用量の治療したウサギの血漿中のF10濃度に変化はなかった。対照ウサギ及び0.01mg/mL(合計0.025mg)で治療したウサギにおいて第X因子濃度の減少が観察された。
【0118】
結論として、0.9%の生理学的生理食塩水溶液中の0.025、0.19、又は0.25mgのブロメラインの累積用量は、対照ウサギと治療したウサギとの間に差がないため、ウサギに吸入によって投与された場合に安全であった。
【0119】
実施例2.2-ウサギモデルにおける吸入BromAcの許容性研究
この第2のパイロット研究では、24匹のSPFウサギ(Flinders University、SA,AU)を使用して、ウサギモデルに吸入を介して送達されたときのアセチルシステインと組み合わせた異なる用量のブロメラインの安全性を試験した。
【0120】
ウサギを6つの治療群に等しく分け、各ウサギは、以下のように、ブロメライン及びアセチルシステインの累積用量による以下の治療のうちの1つを受けた。
治療A:0.9%の滅菌生理食塩水溶液(対照)(N=4)
治療B:アセチルシステイン20mg(N=4)
治療C:ブロメライン0.1mg(N=4)
治療D:ブロメライン0.25mg(N=4)
治療E:ブロメライン0.1mg及びアセチルシステイン20mg(N=4)
治療F:ブロメライン0.25mg及びアセチルシステイン20mg(N=4)
【0121】
ネブライザー及び鼻マスクを使用して、2.5mLの生理食塩水中のアセチルシステイン単独、ブロメライン単独、又はアセチルシステインと組み合わせたブロメラインの治療用量を、各ウサギに吸入のために噴霧した。前治療では、アセプロマジン1mg/kg体重SC及びメデトミジン0.25mg/kg体重SCの混合物を使用してウサギを鎮静させた。全てのウサギに、気管支拡張剤として術前にベントリン吸入(サルブタモール800マイクログラム/Kg)を投与して、薬物の潜在的な気管支収縮効果と戦わせた。サルブタモールの投与と治療との間で、少なくとも10分間の期間が維持されている。
【0122】
治療後、動物を、最初の1時間に15分毎に、次いで治療後の最初の6~8時間まで1時間毎に、次いで治療後12時間で、次いで翌日に3回(4時間の中間を有する朝、正午、及び夕方)、次いで治療後48時間(安楽死の前)に監視した。吸入治療を午前に実施し、動物の綿密な監視を可能にした。実験中、動物の体重、腸静止、RbtGSスケール(倫理プロトコルに添付)、呼吸困難、低酸素症、アレルギー又は出血の徴候、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を監視した。血液試料を、治療の4、6、24、及び48時間後のウサギの耳静脈から収集した。
【0123】
治療の2日後、治療した全ての動物を安楽死させた。第1のパイロット研究では、使用された麻酔及び安楽死剤に起因した肺出血が観察された。これらの影響を最小化するために、現在の研究では次の手順を使用した。最初に、ウサギを、アセプロマジン1mg/kg体重及びメデトミジン0.25mg/kg体重-SCの混合物の注射によって鎮静させた。次いで、ウサギに、ペントバルビトン50mg/kg及び塩化カリウム1mmol/kg IVの混合物を注射した。安楽死後、死後、比較観察、肺及び他の内臓の収集を病理学のために行った。人工無気肺を回避するため、抽出前に10%のホルマリンを使用するために肺を10分間灌流した。
【0124】
同様に、上記の実施例2.1に記載したものに対して組織病理学、血漿中のブロメライン濃度のための定量的アッセイ、及び血液凝固アッセイを実施した。結果は、ブロメライン単独又はアセチルシステインに加えたブロメラインの吸入は、一般的な健康状態、痛み、及び苦痛のパラメータによって示されるように、ウサギの一般的な健康に対して影響を有さないことを示した。治療後の検査はまた、治療した全てのウサギにおいて、アレルギー、出血、低酸素症、又は呼吸困難の徴候がなかったことを示した。死後検査は、試験ウサギの肺と対照ウサギの肺との間に明らかな肉眼的差を示さなかった。これらのウサギの肺の変化は、軽度から中程度までかなり変動していた。肺の組織学的評価は、全ての対照及び治療した肺において間質性肺炎の程度を示した。パイロット研究とは対照的に、ここでは肺の出血は見られず、時折、わずかに肺胞内出血が見られるだけである。肝臓、腎臓、及び心臓の組織学的評価は、対照ウサギと治療したウサギとの間に形態的差を示さなかった。表7は、ウサギの許容性研究における病理学的所見を要約する。
【0125】
ブロメライン又はアセチルシステインは、ELISAアッセイによって示されるように、0.1又は0.25mgのブロメライン単独又はアセチルシステインと組み合わせたブロメラインの累積用量の吸入後4、6、24、及び48時間で、ウサギの血漿試料中に検出されなかった。
【0126】
得られた結果によると、アセチルシステインと組み合わせたブロメライン(すなわち、BromAc)は、このモデルで調査した濃度でエアロゾルによって気道に送達されることが安全である。
【表7】
【0127】
実施例2.3-マウスにおける吸入されたブロメライン及びアセチルシステインの安全性
BRC動物施設に到着した後、72匹のマウスを、ヌードマウスのための標準的なプロトコルの下で環境順化のために少なくとも1週間収容した。この研究は、4つのカテゴリー(I、II、III、及びIV)に分けられた。各カテゴリーには3つの群が含まれた(群当たりN=6)。これらの群のうちの1つは、偽対照群(群A)であった。他の2つの群(群B、C)をブロメライン及びN-アセチルシステインの組み合わせで治療した。油性マジックによる尾部マーキング手順を使用して、動物を特定した。治療カテゴリー(I、II、III、又はIV)の動物を、それぞれ治療開始後5日、34日、10日、又は39日に安楽死させた。監視中にマーキングをチェックし、薄れている場合には尾部を再マーキングした。
【0128】
カテゴリーI:5日間連続の3回/日の曝露;合計15回の用量(実験1~5日目での曝露、5日目での安楽死):
群A.対照(ビヒクル)
群B.Brom 0.250mg/ml+Ac 20mg/ml
群C.Brom 0.500mg/ml+Ac 20mg/ml
【0129】
カテゴリーII:5日間連続の3回/日の曝露;合計15回の用量(実験1~5日目での曝露、28日間(6~33日目)の回復、34日目での安楽死):
群A.対照(ビヒクル)
群B.Brom 0.250mg/ml+Ac 20mg/ml
群C.Brom 0.500mg/ml+Ac 20mg/ml
【0130】
カテゴリーIII:10日間連続の3回/日の曝露;合計30回の用量(実験1~10日目での曝露、10日目での安楽死):
群A.対照(ビヒクル)
群B.Brom 0.250mg/ml+Ac 20mg/ml
群C.Brom 0.500mg/ml+Ac 20mg/ml
【0131】
カテゴリーIV:10日間の3回/日の曝露;30用量の合計用量(実験1~10日目での曝露、28日間(11~38日目)の回復、39日目での安楽死):
群A.対照(ビヒクル)
群B.Brom 0.250mg/ml+Ac 20mg/ml
群C.Brom 0.500mg/ml+Ac 20mg/ml
【0132】
1回当たりのN-アセチルシステインと組み合わせたブロメラインの1回の曝露用量を、各群毎に吸入させた(N=6)。マウスを標準的なマウスケージに入れて、吸入チャンバを使用して治療した。ケージに金属製の蓋を取り付け、蓋は、出口穴と、Philips Respironics InnoSpire Deluxe Compressor Nebuliserに接続された入口とを有していた。マウスは、上記のスケジュールに従って10分/用量の吸入治療を受けた。チャンバの呼吸ゾーン内のエアロゾルの濃度を、DustTrak 8520光散乱デバイス(TSI、St Paul,MN)を使用して連続的に監視し、各マウスが10分間の期間にわたって治療用量を連続的に受けるような方法で維持した。
【0133】
マウスを治療手順中に監視した。カテゴリーI及びIIIの動物を、曝露後30分間監視し、次いで、それらの安楽死まで毎日監視した。カテゴリーII及びIVの動物を、曝露後30分間監視し、次いで、10日目まで毎日監視した。次いで、動物を、それらの安楽死まで3回/週(週末を除く)で監視した。
【0134】
動物を、0.9%の生理食塩水中で希釈した60mg/kgの用量でペントバルビトンナトリウムをIP注射した後、放血(心臓穿刺)によって安楽死させた。希釈したペントバルビトンナトリウム溶液12mg/mLを調製した(325mg/mLの原液の0.184mL、及び0.9%の生理食塩水を5mLまで添加した)。マウス用量は、5mL/kg(すなわち、平均20gのマウスについて0.1mLのIP注射(体重の1%未満))であった。得られた全ての血液及び組織検体を、可能性のある毒性について分析し、結果を比較し、異なる群で対照した。細胞毒性の評価は、肺、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、及び腸の組織病理学によって実施されている。
【0135】
使用された分析技術は、上に記載したものと同様であり、当該技術分野で既知である。
【0136】
カテゴリーIの結果
吸入治療後に行われた観察は、マウスの活動が正常であり、正常な食事、飲み物の摂取、及び正常な呼吸であったことを示した。結果はまた、BromAcの吸入は、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を含む一般的な健康状態、痛み、及び苦痛のパラメータによって示されるように、マウスの一般的な健康監視スコアに対する影響を有さないことを示している。
【0137】
治療後の検査はまた、治療した全てのマウスにおいて、出血、低酸素症、又は呼吸困難の徴候がなかったことを示した。加えて、治療群における動物と対照における動物との間では、治療経過を通じて体重の変動に著しい変化はなかった。全ての治療群(対照及び治療)は、実験1日目を除いて体重の減少を示さなかった。更に、結果は、カテゴリーIの動物において、対照群とBromAc治療群との間で、気管支肺胞洗浄液中の大細胞(WBC)の総数に著しい差がないことを示した。
【0138】
肺組織学検査の際には、対照群(6匹中2匹)と比較してBromAC 0.5/20mg/mLの治療群(6匹中3匹)では、肺異常を有さない動物の数が増加した。BromAC 0.25/20mg/mLの治療群における全ての動物は異常を示したが、観察された異常の種類は対照群においても見られた。異常の総数/群を比較すると、対照(5匹)と比較してBromAC 0.250/20mg/mLの治療群(6匹)では、1つだけ余分な異常があった。薬物濃度の増加(BromAC 0.500/20mg/mLの治療群)では、対照(5匹)と比較して、異常の総数/群の減少があった(3匹)。
【0139】
対照マウスと比較して、BromAc 0.250/20mg/mLでのマウスの治療は、薬物治療マウスにおいて、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、及び腸における組織学的改変を示さなかった。
【0140】
カテゴリーIIの結果:
吸入治療後に行われた観察は、マウスの活動が正常であり、正常な食事、飲み物の摂取、及び正常な呼吸であったことを示した。結果はまた、BromAcの吸入は、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を含む一般的な健康状態、痛み、及び苦痛のパラメータによって示されるように、マウスの一般的な健康監視スコアに対する影響を有さないことを示している。
【0141】
治療後の検査はまた、治療した全てのマウスにおいて、出血、低酸素症、又は呼吸困難の徴候がなかったことを示した。治療後の回復期間(>5日)は、対照群及び治療群の両方において正常な健康監視スコアを示した。加えて、治療群における動物と対照における動物との間では、治療経過を通じて体重の変動に著しい変化はなかった。注目すべきことに、BromACで治療した動物は、実験1日目を除いて体重の減少を示さなかった。加えて、結果は、カテゴリーIIの動物において、対照群とBromAc治療群との間で、気管支肺胞洗浄液中の大細胞(WBC)の総数に著しい差がなかったことを示した。
【0142】
肺組織学検査の際には、対照(6匹中3匹)と比較して、BromAC 0.250/20mg/mL(6匹中6匹)で治療した全ての動物は異常を示さなかった。対照と比較してBromAC 0.500/20mg/mLの治療群では、肺異常を有さない動物の数に差はなかった(両方とも6匹中3匹)。「異常の総数/群」を比較すると、対照(4匹)と比較してBromAC 0.250/20mg/mL群(0匹)では異常はなかった。加えて、薬物濃度の増加により、BromAC 0.500/20mg/mL群は、対照(4匹)と比較して、異常の総数/群の減少を示した(2匹)。
【0143】
対照マウスと比較して、BromAc 0.500/20mg/mLでのマウスの治療は、薬物治療マウスにおいて、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、及び腸における組織学的改変を示さなかった。
【0144】
カテゴリーIIIの結果
吸入治療後に行われた観察は、マウスの活動が正常であり、正常な食事、飲み物の摂取、及び正常な呼吸であったことを示した。結果はまた、BromAcの吸入は、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を含む一般的な健康状態、痛み、及び苦痛のパラメータによって示されるように、マウスの一般的な健康監視スコアに対する影響を有さないことを示している。
【0145】
治療後の検査はまた、治療した全てのマウスにおいて、出血、低酸素症、又は呼吸困難の徴候がなかったことを示した。加えて、治療群における動物と対照における動物との間では、治療経過を通じて体重の変動に著しい変化はなかった。全ての治療群(対照及び治療)は、実験1日目を除いて体重の減少を示さなかった。更に、結果は、カテゴリーIIIの動物において、対照群とBromAc治療群との間で、気管支肺胞洗浄液中の大細胞(WBC)の総数に著しい差がないことを示した。
【0146】
肺組織学検査の際には、対照群(6匹中4匹)と比較してBromAC 0.250/20mg/mLの治療群(6匹中2匹)では、肺異常を有さない動物の数が減少した。しかしながら、BromAC 0.50/20mg/mLの治療群(6匹中4匹)における肺異常を有さない動物の数は、対照群と同様であった。「異常の総数/群」を比較すると、対照(2匹)と比較してBromAC 0.250/20mg/mL群(6匹)では4つの異常があった。しかしながら、薬物濃度の増加により、BromAC 0.500/20mg/mL群は、対照(5匹)と比較して、異常の総数/群の減少を示した(1匹のみ)。
【0147】
対照マウスと比較して、BromAc 0.500/20mg/mLでのマウスの治療は、薬物治療マウスにおいて、肝臓、腎臓、脾臓、及び膵臓における組織学的改変を示さなかった。
【0148】
カテゴリーIVの結果:
吸入治療後に行われた観察は、マウスの活動が正常であり、正常な食事、飲み物の摂取、及び正常な呼吸であったことを示した。結果はまた、BromAcの吸入は、外観、身体状態、自然な行動、及び挑発的な行動を含む一般的な健康状態、痛み、及び苦痛のパラメータによって示されるように、マウスの一般的な健康監視スコアに対する影響を有さないことを示している。
【0149】
治療後の検査はまた、治療した全てのマウスにおいて、出血、低酸素症、又は呼吸困難の徴候がなかったことを示した。治療後の回復期間(>10日)は、対照群及び治療群の両方において正常な健康監視スコアを示した。加えて、治療群における動物と対照における動物との間では、治療経過を通じて体重の変動に著しい変化はなかった。注目すべきことに、BromAcで治療した動物は、実験1日目よりも体重の減少を示さなかった。加えて、結果は、カテゴリーIVの動物において、対照群とBromAc治療群との間で、気管支肺胞洗浄液中の大細胞(WBC)の総数に著しい差がないことを示した。
【0150】
肺組織学検査の際には、BromAc 0.250/20mg/mL群で治療した6匹中5匹の動物は「肺異常なし」を示し、一方、対照群は6匹中4匹の動物に異常を示し、BromAc 0.500/20mg/mL群では3匹の動物に異常があった(6匹中3匹)。「異常の総数/群」を比較すると、対照動物における5つの異常、及びBromAC 0.500/20mg/mL群における3つと比較して、BromAC 0.250/20mg/mL群においては2つの異常のみであった。
【0151】
対照マウスと比較して、BromAc 0.500/20mg/mLでのマウスの治療は、薬物治療マウスにおいて、肝臓、腎臓、脾臓、及び腸における組織学的改変を示さなかった。
【0152】
吸入チャンバ研究におけるマウスの肺における病理学的所見を以下の表8に示す。
【表8-1】

【表8-2】
【0153】
得られた結果によれば、エアロゾルによって気道に送達されるBromAcの複数回投与は安全である。そのような治療レジメンは、慢性呼吸器疾患及び状態を治療するために必要とされる可能性が高い。
【0154】
実施例3-COVID-19患者の気管吸引粘液中のサイトカイン及びケモカイン阻害
これらの実験は、侵襲性機械的換気を必要としている重症のCOVID-19患者から得られた気管吸引試料中のBromAcの粘液溶解及び抗炎症効果を記載している。
【0155】
ブラジルにおける3つの病院の集中治療室で、機械的人工換気下にある18~80歳のCOVID-19患者の早朝ルーチン中に気管吸引(TA)試料(2~10ml)を収集した。この研究に含まれる全ての患者は、E遺伝子を標的とするRT-PCRによってSARS-CoV-2に対する陽性を試験した。分泌産生性患者のみをこの研究に含んだ。試料を滅菌した気管分泌収集器に吸引し、直ちにバイオセキュリティレベル3の実験室で処理した。気管吸引試料を、異なる濃度のブロメラインでのブロメライン(125及び250μg)及びNAC 2%(20mg/ml)(BromAc)の組み合わせで処理し、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、フロースルーアッセイ、レオメトリー測定、及びサイトカインストーム評価を実施した。責任のある家族全員が患者に代わって書面によるインフォームドコンセントに署名し、調査に参加することに同意した。この研究は、ヘルシンキ宣言の原則と、ヒトを含む研究のためのブラジル保健省の決議#466/2012に従った。
【0156】
全てのデータはパラメトリック分布に従い、したがって、群間の事後Dunnet多重比較検定に続いて、ANOVA一元配置によって分析した。全ての分析を、GraphPad Prism、バージョン8.0(San Diego,CA,USA)を使用して実施した。P値が0.05未満又はそれと等しい場合、有意な統計的差が考慮された。
【0157】
実施例3.1-COVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAcの粘液溶解有効性の決定
フロースルーアッセイ
COVID-19患者からの気管吸引(TA)試料の粘度におけるBromAc及びその粘液溶解効果の影響を評価するために、TA検体を、粘膜霧化デバイス(MAD nasal)(Teleflex)を使用して125~250μgのブロメライン及び2%のNAC(BromAc)で処理し、6ウェルプレート中で37℃でインキュベートした。BromAcで処理したTA検体のインキュベーション及び視覚的評価後、粘液溶解の時間を評価した。次いで、50mLのファルコンポリプロピレンチューブに配置した細胞ストレーナー(70μm)に、処理したTA試料を通過させた。試料を細胞ストレーナー中にピペットし、体積フロースルーを収集し、測定した。フロースルーを正確に測定するために、刻み及び反復ピペットを厳密に回避した。体積フロースルーを採取し、アリコートし、-80℃で保管した。
【0158】
レオメトリー測定
レオメトリーはまた、BromAc処理によって促進された粘度及び剪断応力を評価するためにも利用された。気管吸引試料のレオロジー的プロファイルの評価を、Brookfield回転粘度計、モデルDV III(Ametek Brookfield、Middleborough,USA)において実施した。分析は、3つの試料群:対照(処理なし)、NAC(n-アセチルシステインで処理)、BromAc 125(125μgでのブロメライン及びNAC 2%で処理)、及びBromAc 250(250μgでのブロメライン及びNAC 2%で処理)を使用して実施した。以前に実施した活性成分の調製及び添加後、全ての試料を1分間均質化し、37℃の水浴中に30分間置いた。続いて、各試料の1mLを回転粘度計のサンプリングカップに入れ、CP52スピンドルを使用して読み取りを得た。この機器は、Rheocalc V3.3ソフトウェア(Ametek Brookfield、Middleborough,USA)を使用して制御し、0.01~250RPMのスピンドル速度を変化するようにプログラムし、これらの値間で30ポイントの評価、及び各々の新しい速度での平衡時間30秒を伴った。粘度(cP)、トルク(%)、及び剪断応力(D/cm)データを収集し、結果を剪断速度(sec-1)の観点から提示した。
【0159】
COVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAcの有効性の決定
BromAc処理が用量依存的様式で気管吸引試料に粘液溶解効果を及ぼすかどうかを決定するために、試料を、2%でのNAC単独で、並びにBromAc 125mcg及び250mcg(2%のNACによる)で処理した。気管吸引試料を、材料及び方法に記載される条件下で30分間処理した。8人(8)のCOVID-19患者からの気管吸引試料を試験した。結果は、図3に示すように、用量依存的様式でのBromAcの堅牢な粘液溶解効果を示す。フロースルー回収は、BromAc 125mcgで処理した試料では68%であり、BromAc 250mcgで処理した試料では80%を超えていた。
【0160】
次いで、BromAc 250mcgで治療した後、COVID-19患者からの気管吸引試料の細胞性を評価した。その結果を図4に示す。データは、細胞性がBromAcの粘液溶解効果と逆相関することを示す(p=0.0002、ピアソン相関R平方=-0,9880)。加えて、この相関は、全ての試料BromAcで評価された生細胞区画とも見られた(p=0.0009、ピアソン相関R平方=-0,9520)。
【0161】
COVID-19患者からの気管吸引の粘度に対するBromAc処理の影響を測定する別の方法として、BromAc処理時に試料における粘度、剪断速度、剪断応力、及びトルクを評価するためにレオメトリー測定を実施した。図5は、COVID-19患者からの1つの気管吸引試料の10回繰り返した測定の結果を示している。
【0162】
粘度、剪断応力、剪断速度、及びトルクを、(スピンドルの)速度に沿ってCOVID-19患者からの気管吸引試料上で評価した。結果を図6に示す。レオメトリー測定は、未処理の試料対NAC及びBROMAC処理試料の間の明白かつ統計的に著しい差を表示する。結果は、NAC及び未処理の試料の両方と比較した場合、COVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAc 250mcgの著しい影響を示す。
【0163】
実施例3.2-重症COVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAcの抗炎症活性
COVID-19患者からの気管吸引試料中の免疫学的炎症媒介物質の評価
COVID-19患者からの気管吸引(TA)試料中に存在する炎症媒介物質におけるBromAcの効果を検証するために、TA検体を、以前に記載したようにMADデバイスを使用して、125~250μgのブロメライン及び2%のNAC(BromAc)で処理した。処理したTA検体及び未処理のTA検体を、6ウェルプレート中で37℃で1時間インキュベートした。その後、室温で800xgで10分間の遠心分離によってTA検体アリコートを最初に浄化し、TA上清を新鮮な2mLのマイクロチューブに移した。試料を1:10で希釈し、ケモカイン(CXCL8、CCL11、CCL3、CCL4、CCL2、及びCXCL10)、炎症性サイトカイン(IL-1b、IL-6、TNF-a、IL-12、IFN-g、IL-15、及びIL-17)、調節サイトカイン(IL-1Ra、IL-9、IL-10)、及び成長因子(FGF塩基性、PDGF、VEGF、G-CSF、GM-CSF、IL-2、及びIL-7)などのいくつかの免疫学的媒介物質に特異的なモノクローナル抗体で覆われた磁性ビーズとともにインキュベートした。実験を、Procarta Human Cytokine 27-plex Assay、(Invitrogen、CA,USA)を使用して製造業者の指示に従って実施した。免疫学的媒介物質をTA試料中で測定し、各試料の濃度を、5パラメーターロジスティックフィット分析を使用して試験した各分子についての標準曲線に従って決定した。結果を、試験した全ての媒介物質についてpg/mLとして表した。
【0164】
重症COVID-19患者からの気管吸引試料中のBromAcの抗炎症活性
COVID-19患者からの気管吸引試料中に存在する免疫構成成分に対するBromAcの効果を決定するために、BromAcで処理した後、ケモカイン、サイトカイン、及び成長因子の検出を実施した。この実験は、試料を2%でのNAC単独で、並びにBromAc 125mcg及び250mcgで処理した以前の曲線実験と同様の条件で実施した。気管吸引試料を、第1の実験と同じ条件下で60分間処理した。
【0165】
結果は、BromAc治療が全般的かつ大規模にケモカインを抑止したことを示す(図7)。留意すべきことに、BromAcは、炎症誘発性好中球及びマクロファージの肺への動員に関連するケモカインCCL2、CCL3、CCL4、及びCXCL8の発現を減少させた。
【0166】
更に、サイトカインストームは、一般に、BromAc処理によって変化し、IL-15、IFN-g、及びIL-17Aと並んで、COVID-19における主要な炎症プレーヤーであるIL-6のより低いレベルを示した(図8)。BromAcでの処理後、IL-6と関連した炎症誘発性サイトカインIL-1bのレベルの減少も並んで観察され、インフラマソーム関連経路の調節の可能性を示した。IL-1b及びTNFは、BromAcで処理した試料において減少した。
【0167】
COVID-19患者からの気管吸引試料中の成長因子に対するBromAcのエクスビボ活性の分析は、BromAcでの処理後に増加したVEGF-D、IL-2、PDGF、及びGM-CSFなどの他の成長因子とは対照的に、及び血管内皮成長因子VEGF-Aのレベルの減少を示した(図9)。血小板の動員に関連する成長因子であるPDGFの増加は、より良好に研究されるべきであるが、この成長因子の放出につながる血小板の分解に関連する可能性がある。同じ仮説が、BromAc処理後に膜結合し、細胞から剥離する可能性がある他の成長因子によって導き出される可能性がある。
【0168】
調節サイトカインに関して、結果は、これらの分子の主要な抑止を示す(図10)。IL-1RAレベルは、NACと比較して、BromAc処理によって著しく変化しなかったが、しかしながら、BromAc群を未処理の気管吸引試料と比較したときに、IL-9及びIL-10のレベルの減少が観察された。IL-9については、NAC処理群において同じ効果が観察されたが、しかしながら、IL-10については、このサイトカインのレベルの著しい減少は、BromAc群においてのみ観察された。過剰な制御は、ウイルスに対する応答性の減少、無反応、及びエフェクター応答の低下に関連する場合があるか、又はそれにつながる場合がある。したがって、これらの結果は、BromAcが、ウイルス相中にSARS-CoV-2に対する1型免疫応答などの完全なエフェクター応答の維持に寄与し得ることを示す場合がある。
【0169】
結論
上に記載した結果は、BromAcが、用量依存的様式で、COVID-19患者からの気管吸引試料中に堅牢な粘液溶解効果を示すことを実証する。加えて、BromAcは、抗炎症活性を示し、COVID-19を有する患者からの気管吸引試料中のサイトカインストームの作用を低減させた。BromAcはまた、NAC単独及び対照と比較して、MIP-1アルファ、CXCL8、MIP-1b、MCP-1、及びIP-10などのケモカインの低減をもたらした。加えて、IL-5、IL-10、IL-13 IL-1RAなどの調節サイトカインに作用があり、IL-9について全体的な低減があった。250mcgのBrom(+20mgのNAC)の濃度であっても、それは、主要な炎症誘発性サイトカインのうちの1つであるIL-6及び成長因子に作用し、125mcg及び250mcgの濃度でのG-CSF及びVEGF-Dの低減を示していた。
【0170】
これらの結果は、重症COVID-19患者からの気管吸引におけるBromAcの堅牢な粘液溶解及び抗炎症効果を示し、COVID-19に対する治療戦略としてのその可能性、並びにサイトカインストームが有害な役割を果たすか、又はサイトカイン活性を阻害することが有益である場合がある他の条件における治療用途のためのその可能性を示している。
【0171】
実施例4-人工及び擬似性痰のレオロジー的特性に対する噴霧NAC、ブロメライン、及びBromAcの効果
嚢胞性線維症などの呼吸器疾患は、粘膜毛様体(mucocilliary)クリアランスを回避する気道内の粘性分泌物のために治療が困難であり得る。したがって、噴霧NAC、ブロメライン、及びBromAcのゼラチン性気道を代表する痰モデルに対する効果を調査した。この研究において使用した2つの痰モデルは、人工痰(AS)及び擬似性痰(SS)であり、これは、厚い気道痰を表すように以下に記載されるように処理されている、腹膜偽粘液腫(PMP)患者からの粘液分泌物であった。
【0172】
材料及び試薬
人工痰を調製するために、以下の材料をSigma Aldrich、Sydney,Australiaから購入した:ブタムチン、鮭精子DNA、塩化カリウム、塩化ナトリウム、TRISMA塩基。TPTZ(2,4,6-トリピリジル-s-トリアジン)、塩化第一鉄。軟性グレードのPMPムチンは、その軟性指数について評価された臨床試料から得た。ピペット(0.5ml)、毛細管、気管内管サイズ9.0、ネブライザー機器(PHILIPS Respironics InnoSpire Essence Nebulizer Compressor、流量7L/分、10psi)。
【0173】
人工痰の調製
人工痰を、Kitchner et al(Kirchner,S.,et al.,Use of artificial sputum medium to test antibiotic efficacy against Pseudomonas aeruginosa in conditions more relevant to the cystic fibrosis lung.Journal of visualized experiments:JoVE,2012(64))によって詳述されるプロトコルに従って調製した。要約すると、250mgのブタムチン、200mgの精子DNA、295mgのジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)、25mgの塩化ナトリウム、110mgの塩化カリウム、140mgのTris塩基を、45mlの蒸留水の体積で混合し、Tris塩基を使用してpHを7.0に調整した。次いで、溶液の体積を50mlに調整した。次いで、所望に応じて粘度を調整するために、更なる希釈を実施した。
【0174】
痰のモデルとしてのPMPムチンの調製
6グラムの軟性PMPムチンを、ソニフィケーションによるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(3.0ml)を伴うシュレッダーを使用して均質化し、均質な混合物が形成されるまでボルテックスし、37℃でインキュベーションして気泡を除去し、その後粘度を調整した(PBSで更に希釈した)。1.0MのNaOH又は0.1Nの塩酸のいずれかを使用して、pHを7.0に調整した。
【0175】
動的粘度の測定
痰の動的粘度(γ)は、Santander,J.and G.Castellano,Determination of the kinematic viscosity by the liquid rise in a capillary tube.Revista Brasileira de Ensino de Fisica,2013.35に概説されているように、毛細管法を使用して測定した。
【0176】
ピペット流量時間の測定
60°の角度で固定された0.5mlのガラスピペットを使用して、25℃(周囲室温)で0.5mlの試料をピペットに吸い上げ、0.3mlの試料を空にするのにかかった時間を秒単位で計測した。ピペット流量時間
【数1】
は以下のように計算した:
【数2】
【0177】
エアロゾルアセチルシステインによる処理
人工痰(AS)を上に詳述したように調製し、1.5mlの人工痰を気管内管に慎重に空にした(3回繰り返し)。PBS(pH7.0)中の6.0mlのNAC 10mg/mlの体積を3回繰り返して、ネブライザーを使用してエアロゾル化し、水浴中で37℃に保持した気管内管内の痰試料上を通過させた。同様に、PBS(pH7.0)中のNAC 20mg/mlを使用して実験を反復した。対照はPBS(pH7.0)のみを受けた。各処理についての6.0mlを空にするためのエアロゾル送達時間は25分であった。
【0178】
痰の動的粘度は、毛細管法を使用する前後に測定したが、ピペット流量時間はまた、0.5mlのガラスピペットを使用して前に記載したように測定した。試料を測定前に25℃に平衡させた。
【0179】
PMPムチン擬似性痰(SS)についての比較動的粘度及びピペット流量時間を決定するために、上記と同様の調査を実施した。
【0180】
噴霧ブロメライン(人工痰、擬似性痰)による処理
PBS(pH7.0)を使用する対照とともに、PBS(pH7.0)中のブロメライン(125及び250μg/ml)を使用して、NACについて上に記載した実験と同様の処理を実施した。動的粘度及びピペット流量時間の両方を、人工及びPMP擬似性痰モデルの両方について先に概説したように測定した。
【0181】
エアロゾルBromAc(ブロメライン+NAC)(人工痰、擬似性痰)による処理
PBS(pH.7.0)中の125又は250μg/mlのブロメラインのいずれかとのNAC(20mg/ml)の組み合わせを使用して、先に概説したように同様の調査を実施し、人工及び擬似性痰モデルの両方について測定を行った。
【0182】
エアロゾル化された痰試料中のブロメラインの測定
PBS中の噴霧試料の1/5及び1/10などの好適な希釈を、その後の濾過(0.44um)を伴って実施した。250μlの試料に、250μlの1%のアゾカエシン(azocaesin)溶液(蒸留水中で調製)を添加した。試料を室温(25℃)/1時間でかき混ぜ、その後1.5mlの1%のトリクロロ酢酸を添加し、ボルテックスし、2500RPMで遠心分離した。マイクロウェル中の150μlの上清に、等しい量の0.5Mの水酸化ナトリウム溶液を添加し、410nmでのODを分光計を使用して読み取った。
【0183】
ブロメラインの標準曲線は、連続希釈した200μg/mlの範囲のブロメライン希釈を用いる同様の手順に従って生成した。
【0184】
痰試料中のアセチルシステインの測定
上記のように、エアロゾル化された試料及び濾過の1/5及び1/10などの好適な希釈を実施した。TPTZの10mMの溶液を蒸留水(dH2O)中で調製した。NAC 10mg/mlの原液をPBS中で調製し、pHを7.0に調整した。Fe(III)の原液(10mM)をdHO中で調製した。全ての試薬のpHを7.0に調整した。
【0185】
125μlのTPTZに125μlのFe(III)溶液を添加し、ボルテックス混合した後、続いて100μlの試験溶液を添加した。次いで、ボルテックスし、フルカラー(青色)が現れるまで、周囲室温(25℃)で1時間、穏やかな振とう器上に置く。次いで、これに2.0mlのdH2Oを添加し、ボルテックス混合し、96ウェルプレートに3回に分けて200μlのアリコートを使用して、ODを測定する。ブランクは、100μlのdHOのみを含有した。593nmでのODを、UV分光計(Shimadzu)を使用して読み取った。標準曲線の生成のために、200μg/ml以下の範囲のアセチルシステインの好適な希釈を調製した。
動的粘度(γ)及びピペット流量
【数3】
の両方についてのD値(%)の計算
【0186】
実施例4.1-人工痰及びPMP擬似性痰のレオロジー的特性(動的粘度及び層流)に対するNACエアロゾルの効果
表9は、動的粘度及びピペット流量時間などの2つのパラメトリック測定を使用する、人工痰及び擬似性痰の両方に対するエアロゾル化されたN-アセチルシステインの効果を示す。NAC:N-アセチルシステイン。↓=減少する;↑=増加する。
【表9】
【0187】
表9及び図11A~Dから見ることができるように、PBSによる処理は、人工痰(AS)の動的粘度(γ)に対して非常にわずかな効果を有したが、しかしながら、10及び20mg/mlでのNACは、それぞれ、γ、6.0%及び9.8%の顕著な減少を示した。ピペット流速
【数4】
は、PBSでの処理が20%まで影響を及ぼしたことを示し、水和がこのパラメータに実質的な役割を果たす可能性があることを示した。更に、NAC 10及び20mg/mlによる処理もまた、ピペット流量の対応する増加(それぞれ28%及び40%)を示した。
【0188】
擬似性痰(SS)の場合、PBS処理は、2つの濃度(10及び20mg/ml)でのNACの処理によってほぼ等しい効果(16%及び17%)を有する一方で、γにわずかに(2%)影響を及ぼした。更に、
【数5】
の対応する増加もあった。したがって、両方の痰モデルは、NACによるエアロゾル処理の影響を受けた。
【0189】
図11Aは、人工痰(AS)において、N-アセチルシステインの添加により、動的粘度の顕著な濃度依存的低減があることを示す。B)は、ASにおいて、増加量のNACの添加によるピペットの痰の流量の直線的な増加があることを示す。C)は、対照と比較して、NAC 10及び20mg/mlの添加による擬似性痰(SS)の動的粘度のかなりの低下があることを示す。D)は、SSモデルにおいて、増加量のNACを添加した後の、ピペットの痰の流量の増加を示す。
【0190】
実施例4.2-人工痰及びPMP擬似性痰のレオロジー的特性(動的粘度及び層流)に対するブロメラインエアロゾルの効果
表10は、2つのパラメトリック測定、動的粘度(γ)及びピペット流量時間
【数6】
を使用する、人工痰(AS)及び擬似性痰(SS)の両方に対するエアロゾル化されたブロメライン(BR)の効果を示す。↓=減少する;↑=増加する
【表10】
【0191】
表10及び図12A~Dから見ることができるように、痰AS及びSSの両方の動的粘度(γ)は、エアロゾルPBSによってそれぞれわずかに0.65%及び2.0%まで影響されたが、しかしながら、125及び250μg/mlでのブロメラインによる処理は、両方の痰モデルについて(γ)における顕著な低下を示し、ASについてははるかに大きい低下を示した。SSモデルにおける2つの濃度のブロメラインの効果はほぼ同じであった。ピペット流速
【数7】

を調査したところ、エアロゾルPBSは、AS及びSSにおける痰モデルの両方にそれぞれ20%及び12%の効果を示したが、しかしながら、両方のモデルにおいてブロメラインによって処理した場合、この効果は非常に高かった。
【0192】
図12A)は、人工痰(AS)において、ブロメライン(BR)の添加により、対照(PBS)と比較して粘度のかなりの低減があることを示す。B)は、ブロメラインで処理した場合、ASにおけるピペット流量が対照(PBS)と比較して大幅に増加することを示す。C)は、擬似性痰(SS)において、ブロメラインの添加が、対照(PBS)と比較して粘度の低減を示すことを示す。D)は、SSにおいて、ブロメラインでの処理後に、ピペット流量が対照(PBS)と比較して非常に増加することを示す。
【0193】
実施例4.3-人工痰及びPMP擬似性痰のレオロジー的特性(動的粘度及び層流)に対するBromAcエアロゾルの効果
表11は、動的粘度(γ)及びピペット流量時間
【数8】

などの2つのパラメトリック測定を使用する、人工痰(AS)及び擬似性痰(SS)の両方に対するエアロゾル化されたBromAc(登録商標)(ブロメライン(BR)125又は250μg/ml+NAC 20mg/ml)の効果を示す。↓=減少する;↑=増加する
【表11-1】

【表11-2】
【0194】
表11及び図13A~Dから見ることができるように、NAC 20mg/mlを伴う2つの濃度(125及び250μg/ml)でのブロメラインによる処理は、両方の痰モデルにおいて十分な減少を伴う(γ)に対する顕著な効果を有した。これは、両方のモデルにおいて非常に高い増加を伴う
【数9】

で更に示された。
【0195】
図13A)は、人工痰(AS)において、BromAc(ブロメライン125及び250μg/ml+NAC 20mg/ml)で処理した後の動的粘度の顕著な低下があることを示す。B)は、ASにおいて、BromAcの添加によって流量が増加することを示す。C)は、擬似性痰(SS)において、125又は250μg/mlのブロメライン+NAC 20mg/mlの添加による動的粘度のかなりの低下があることを示す。D)は、SSにおいて、増加量のブロメライン及び20mg/mlのNACの添加によって、流量(ピペットを空にする時間)のほぼ直線的な増加があることを示す。
【0196】
実施例4.4-人工痰及びPMP擬似性痰中のブロメライン及びアセチルシステインの蓄積
表12.は、ブロメラインのみ、NACのみ、又はそれらの組み合わせのいずれかを伴う、痰上の噴霧溶液を25分間にわたって通過させた後の、2つの痰モデル(AS及びSS)におけるブロメライン(BR)及びアセチルシステイン(NAC)の濃度を示している。
【表12】
【0197】
表12及び図14A~Cから見ることができるように、個々の薬剤としての125μg/mlのブロメラインは、ASにおいて30.58μg/mlの濃度を示し、250μg/mlでは、58.63μg/mlであり、濃度を倍増させることは、隔離ブロメラインをほぼ倍増させたことを示す。しかしながら、SSでは、2つのブロメライン濃度間の差は非常に小さかった(57.91対61.64μg/ml)。個々の薬剤としてのNACは、ASにおいて10mg/mlと20mg/mlとの間の濃度で小さな差のみを示したが、SSモデルではわずかに大きな差を示した。NAC 20mg/mlにおいてブロメラインを送達した場合、125μg/mlにおけるブロメライン濃度は、ASモデルでは250μg/mlのブロメライン濃度で見出されるものの半分であったのに対し、SSモデルでは11%の差のみであった。NAC 20mg/mlは、125又は250μg/mlのいずれかのブロメラインで送達されたが、NAC分析は、ASモデルでは差が小さく、SSモデルではわずかに大きな差があったことを示した。
【0198】
図14A)は、人工痰(AS)におけるブロメラインの濃度が、エアロゾル化されたブロメラインの濃度の2倍の増加(125対250μg/ml)に曝露されてほぼ2倍増加することを示す。しかしながら、この差は、SS、擬似性痰については58対62μg/mlで比較的小さいものであった。B)は、エアロゾル化されたNACに曝露した場合、人工痰(AS)における低(10mg/ml)と高(20mg/ml)との間のNACの差が比較的小さい(0.15mg/mlの差)ことを示す。しかしながら、擬似性痰(SS)では、比較的大きかった(1.85対2.37mg/ml)。約28%増加する。C)は、エアロゾル化された溶液に20mg/mlのNACを添加する前後の、人工痰及び擬似性痰におけるブロメラインの比較レベルを示す。NAC 20mg/mlの存在下では、ブロメラインの濃度は、両方の痰モデルにおいて比較的高い。
【0199】
人工痰と擬似性痰との間の動的粘度(γ)及び流速
【数10】

の両方のD値も比較した。粘液試料の粘度の小さな変化が、ピペットを空にする時間に基づく大きな流量に影響を及ぼす可能性があり、これが線毛クリアランスに関係する可能性があることが上記に示されている。
【0200】
人工痰におけるブロメライン125及び250μg/mlにNAC 20mg/mlを添加すると、粘度の減少は、ブロメライン単独と比較してわずか4~6%(それぞれ31~42%から27~36%)であったが、流速
【数11】

の大幅な増加があり、粘度の小さな減少が線毛運動による流体のクリアランスに影響を及ぼす可能性があることを示す。高いBromAc濃度の群は、低いBromAc群と比較して、ピペットを空にする時間のほぼ2倍の低減を示す。これは、高グリコシル化ムチンが粘度に著しいレベルに影響を及ぼす可能性があることを示す可能性がある、それらのそれぞれの動的粘度(γ)と相関していない。擬似性痰では、ブロメライン125及び250μg/mlにNAC 20mg/mlを添加すると、動的粘度の減少は、それぞれ、8%及び8.2%と比較して、19%及び27%であった。更に、両方の痰に同様の流速
【数12】

の傾向が見られた。
【0201】
表13は、ブロメライン125又は250μg/mlで、及びNAC 20mg/mlと組み合わせて処理した場合の、2つの痰モデル間の動的粘度(γ)及び流速
【数13】


の比較を示す。
【表13】

【0202】
表13は、(ブロメラインのみで、及びNAC 20mg/mlの添加とともに処理した人工痰(AA)と擬似性痰(SS)との間の動的粘度(γ)及び流速
【数14】

の両方についての)D値の比較を示す。NAC 20mg/mlを添加すると、ASではわずかな(γ)の増加があるが、SSモデルでは差がはるかに大きかった。更に、両方の痰に同様の
【数15】

の傾向が見られた。
【0203】
図15は、ブロメライン(BR)125又は250μg/mlのいずれかで単独で、又はNAC 20mg/mlと組み合わせて(BromAc)処理した場合の、人工痰(AS)及び擬似性痰(SS)における動的粘度(γ)及び流速
【数16】

などの測定された2つのパラメータの増強D(%)の相対的な差異を示す。異なる群における粘度変化は、後者に対する粘度の効果を示す流速において増幅される。BromAcによる処理は、ブロメライン単独での処理と比較して、流速に対してはるかに高い効果を有する。
【0204】
実施例4の結果の考察
気道分泌物のクリアランスは主にそのレオロジー的パラメータに依存するため、AS及びSS痰(厚く静的な痰を表すように製剤化)の動的粘度(γ)及び流速
【数17】

を、アセチルシステイン、ブロメライン、及びBromAcで処理する前後に測定した。γ及び
【数18】

(治療されたものとは対照的に前治療されたもの)の両方についての差を、Dによって示されるパーセンテージとして計算した。加えて、エアロゾル送達の前後の痰におけるブロメライン及びNACの隔離を調査して、痰内の薬剤の濃度とレオロジー的特性の変化との間に相関があるかどうかを評価した。
【0205】
エアロゾル化されたPBSによる人工痰(AS)の処理は、主に水和に起因する可能性があるγの微小な低下(0.65%)を示したが、NAC 10及び20mg/mlの両方では、それぞれ6.0%及び10%の低減であった。NACは周知の抗酸化剤であり、したがって、タンパク質及びムチン構成成分中に見出されるジスルフィド結合の低減は、粘度のこの変化に関与する可能性がある。比較すると、PBS中の擬似性痰(SS)は、NAC 10及び20mg/ml(それぞれγ=16%及び17%)において実質的な効果を有するγの2.0%の低下を示した。両方の痰の間のこの差は、それらの組成における差及び成分の可変性に起因する可能性がある。
【0206】
流速
【数19】

に対する効果は、PBS処理で実質的(20%の増加)であり、水和のみがASにおける痰の粘弾性特性に対してかなりの効果を有する可能性があることを示した。更に、NAC 10及び20mg/mlでは、効果はそれぞれ28%及び40%であった。比較すると、SSはPBS(12%)のみで流速
【数20】

の実質的な増加を示したが、NAC 10及び20mg/mlの両方がはるかに高い影響を有していた(34%及び46%の増加)。2つの痰モデル間の流速における差は、主にそれらの組成における差に起因する可能性がある。おそらく、SSモデルにおけるジスルフィド結合のパーセンテージは、ASモデルと比較してはるかに高くなる可能性があり、したがって、NACによるそれらの低減は、このパラメータに対してかなりの影響を示す。
【0207】
ブロメラインによる処理は、両方の処理群(0.125及び250μg/ml)でγの顕著な低下を示し、ASモデルではそれぞれ27%及び36%の低下を示し、
【数21】

に対して実質的な効果を示し(それぞれ336%及び480%)、痰の流速及び線毛クリアランスに対する動的粘度の影響を示した。SSモデルの場合、繰り返すが、2つの濃度のブロメライン(125及び250μg/ml)について、8.0%及び8.2%のγの低下があった。γにおけるこの類似性は、痰で存在する高いグリコシル化及び高いムチンに起因する可能性がある。しかしながら、γに対するブロメラインの効果は、示されるように
【数22】

に対する効果を増幅した(243%及び443%)。したがって、ブロメラインは、タンパク質及び糖タンパク質に対するその加水分解特性が両方の痰モデルのレオロジー的特性に影響を及ぼすことを示す、監視したパラメータの両方に影響を与えるようである。2つのモデル間の有効性の変動は、それらの組成における差に起因する可能性がある。
【0208】
NACと比較して、ブロメラインは、ASで監視した2つのレオロジー的パラメータに対してはるかに大きな効果を有する一方で、γへの影響はより少ないが、SSモデルについての
【数23】

に対してはるかに高い影響を有し、これらのモデルの痰に対する酵素反応が、監視したパラメータに影響を及ぼすより大きな解重合効果を有するはるかに高い活性を示すことを示している。注目すべきことに、SSモデルでは、試料痰中のジスルフィド含有量が高いことを示す可能性があるブロメラインと比較して、処理したNACにおいて、γ値に対する影響がより高かった。
【0209】
痰をBromAc(ブロメライン125及び250μg/ml+NAC 20mg/ml)で処理した場合、36%及び42%の値を有する125及び250μg/mlの両方のブロメラインについてのASにおける、未処理の痰と処理された痰との間のパーセンテージ差によって示されるように、γは大幅に影響を受けた。更に、この効果は、対応する556%及び600%での
【数24】
において増幅された。SSの場合、125~250μg/mlのブロメラインの間のγパラメータは、19%及び27%を示し、
【数25】

に実質的な差があった(それぞれ343%及び733%)。したがって、ブロメライン+NAC 20mg/mlによる処理のために、動的粘度に対する効果は、かなりの上昇で
【数26】

において実際に増幅された。2つのモデル間のこれらの変動は、主に、それらの組成における可変性に起因する可能性がある。
【0210】
処理後の痰におけるブロメラインの濃度は、ブロメライン単独では、125μg/mlのブロメラインと比較して、250μg/mlで処理したときにASが2倍の濃度を示し(それぞれ58.63対30.58μg/ml)、γに対するそれらの観察された効果にある程度の相関があったことを示した。これに対して、SSにおけるブロメラインの濃度は、その活性と相関して、ブロメライン群の両方でほぼ類似していた(57.91対61.64μg/ml)。これは、ブロメラインが25分間のエアロゾル送達にわたって、モデルにおいておそらく飽和まで蓄積した可能性があることを示している。2つの痰の間の差はまた、それらの不均一な組成に関連する可能性がある。NACの場合、AS痰で測定した濃度は、動的粘度によって測定したそれらの活性と相関しているようであり、SSモデルについても同様である。同様の相関関係が
【数27】

で見られた。
【0211】
最後に、BromAc処理におけるブロメラインについての分析は、ASモデルにおいて、125μg/mlのブロメラインとは対照的に250μg/mlのブロメラインでは対応する2倍の濃度(79対41μg/mlのブロメライン)があり、その活性との相関が示された。これは、SSモデルではそうではなく、125μg/ml群において約11μg/mlの減少のみを示し(78対88μg/ml)、ブロメラインの飽和に近い状態が起こった可能性があることを示していた。NAC 20mg/mlがASモデルにおいて両方の群で送達されたため、隔離されたNACは、高ブロメライン群及び低ブロメライン群の両方でほぼ同様であった。しかしながら、SSモデルでは、125μg/mlのブロメラインがより低いNAC濃度を有する(1.62対2.16mg/ml)という差があった。これらの変動は、繰り返すが、部分的には組成における差に起因する可能性がある。
【0212】
比較可能な基準での動的粘度(γ)及び流速
【数28】

は、両方の痰モデルが影響を受けたことを示す。SSにおけるγは、ASと比較してブロメラインによってより少ない影響を受け、これは、それらの組成における差に起因する可能性があり、前者は、後者と比較してより高いタンパク質及びグリコシド結合を有する。しかしながら、ブロメライン単独と比較してNAC 20mg/mlと組み合わせて処理した場合、SSでは、γに対する効果がより高く、NACが、痰のレオロジーに影響を及ぼす試料中のジスルフィド架橋の低減において重要な役割を果たしている可能性があることを示した。他方では、
【数29】

を調査すると、両方の痰が十分に影響を受けていた。ブロメラインと、NACとのその組み合わせとの間の
【数30】

には、痰の解重合におけるNACの重要性を示す顕著な違いがある。重要なことに、これらの結果は、これらの薬剤(ブロメライン、NAC、BromAc(登録商標))のγ及び
【数31】

への高い影響を更に強調し、その結果、前者の任意のわずかな増加により後者が拡大される。この所見は、肺からの痰の流量及びクリアランスを改善するための処方を開発する際に特に重要である。
【0213】
厚く静的な痰を表すように製剤化されたこれらの2つのモデル痰で観察されたレオロジー的効果は、ブロメライン及びBromAcのエアロゾル送達がCFなどの呼吸器疾患からの患者の痰に対してかなりの効果を有するであろうという合理的な予測を可能にする。確かに、これらの2つの薬剤の性能は、それ自体が胸部鬱血の緩和における臨床使用のために承認された薬剤であるNACと比較して著しくより良好であり、呼吸器疾患の治療における治療効果の向上の有望性を示している。
【0214】
実施例5-BromAc、DNase、及びそれらの組み合わせで処理した人工ムチンに対するレオロジー的効果
上に記載した実験は、2つのモデル痰(人工痰及び擬似性痰)を使用して、エアロゾル化されたBromAcが嚢胞性線維症痰のための効率的な粘液溶解であることを示している。本発明者らはまた、痰が二本鎖DNA(dsDNA)に豊富であることが多く、その粘度が増加するため、DNaseが嚢胞性線維症痰の治療のために(Pulmozymeというブランド名の下で)現在市販されていることに留意する。以下に記載する実験は、DNaseの添加が、嚢胞性線維症痰を表すように特別に製剤化された人工痰においてBromAcの粘液溶解特性を向上させるかどうかを調査する。
【0215】
前の実験と同様の成分を用いる方法論に従って、人工痰を調製した。バイアル内の1.5mlの人工痰に、必要とされるブロメライン、NAC、DNase、及びそれらの組み合わせを含有する0.5mlの試薬を添加した。対照バイアルは、0.5mlのPBSのみを含んでいた。混合物をボルテックス混合し、振とう器水浴中で37℃でインキュベートした。1時間の終わりに、試料を回収し、ボルテックス混合し、動的粘度及びピペット流量を測定する前に周囲室温に平衡させた。
【0216】
前の実験と同様に毛細管法を使用して動的粘度を決定し、60°の角度で傾斜させた0.5mlのピペットを使用してピペット流量を評価した。ピペット流量は以下に示すように計算した。
【数32】
【0217】
表14は、ブロメライン、NAC、DNaseによる、及び組み合わせにおける処理後の痰の流速を示す。
【表14】
【0218】
図16は、単剤としてのDNaseについてのピペット流速が、最大10μg/mlのブロメライン(250μg/ml)+DNase)とほぼ等量であり、その後、DNase単独の更なる添加は、痰の流速を増加させなかったことを示す。しかしながら、ブロメライン(250μg/ml)との組み合わせでは、ピペット流速は更に増加した。これは、最初の加水分解及びピペット流量の変化が主にdsDNA中に見出されるホスホジエステル結合の破壊に起因する可能性があり、その後(ブロメラインによる)タンパク質の更なる加水分解がピペット流量の増加のための主な理由である可能性があることを示している。
【0219】
NACの場合、DNaseの添加は、流速を実質的に10μg/mlのDNaseに増加させ、その後、流速の最小限の増加があった。この反応では、ジスルフィド結合の低減及びホスホジエステル結合の加水分解の両方がピペット流量の増加に寄与している可能性があり、流量の平坦化は基質の枯渇に起因する。観察された最高流速は、DNase+BromAc(ブロメライン250μg/ml+NAC 20mg/ml)を有する群にあり、これは、20μg/mlのDNASE添加までほぼ直線的な様式で増加した。これは、ブロメライン(タンパク質分解)及びDNase(ホスホジエステル加水分解)とともに、還元剤(NAC)の組み合わされた作用が、DNaseの添加とともにこの増強のほぼ直線的な様式に一緒に寄与した可能性があることを示す。
【0220】
表15は、ブロメライン、NAC、DNaseによる、及び組み合わせにおける処理後の、痰の動的粘度の変化を示す。
【表15】
【0221】
図17は、単剤としてのDNaseの動的粘度に対する効果が、それがDNA中に見出されるホスホジエステル結合を加水分解するのみであるため、他の全ての処理群と比較して少なかったことを示す。DNaseの添加に伴い、ブロメライン及びNACはほぼ等しく十分に機能した。しかしながら、DNaseの添加を伴うBromAcは、動的粘度の低減において他の全ての群よりも良好に機能し、DNaseの添加が、気道痰の可溶化及びクリアランスの改善におけるBromAcの性能を改善する可能性があることを示している。
【0222】
考察
2~20μgの範囲の濃度でのそのままのDNaseは、ブロメライン(250μg/ml)、NAC(20mg/ml)、及びBromAcとの組み合わせと比較して、監視したレオロジー的パラメータの両方に対して中程度の効果を示した。BromAc+DNaseは、他の治療群と比較して、両方のレオロジー的パラメータに影響を及ぼすより高い活性を示し、そのような組み合わせが、レオロジー的パラメータに同様の効果を有するBromAc濃度の低下を可能にする可能性があることを示唆した。
【0223】
DNaseの粘液溶解増強効果は、痰内に存在する二本鎖DNA(dsDNA)の量に依存する可能性が高い。DNaseは、加水分解剤(ホスホジエステル結合を標的とする)としての特定の特性を有する酵素であるが、ブロメラインは、可変基質優先を有するいくつかの酵素を有する。異なる機構を介して達成された、同様の治療効果を有する薬剤の組み合わせは、大きな可能性を示す。
【0224】
例6-換気されたヒツジの肺モデル
この研究では、本発明者らは、粘液性痰を用いてヒツジの肺に接続された気管内管に栓をすることによる呼吸困難のシミュレーションされたモデルを使用した。臨床人工呼吸器を使用して、生理食塩水、ブロメライン、NAC、及びBromAcなどの薬剤の治療用量を送達した。
【0225】
腹膜偽粘液腫(PMP)患者からの10mlのムチンをリン酸緩衝生理食塩水中で徹底的に剪断して、化膿性嚢胞性線維症又はCOVID-19患者の厚い/粘性及び粘着性の痰をシミュレーションした。これらの患者からのムチンは、MUC1、MUC5AC、細胞デブリ、分解細胞からの二本鎖RNA(dsRNA)、脂質、及び均質化され、呼吸器粘液栓に相当する粘度に調整された後の嚢胞性線維症の痰に類似する他の細胞材料を含有する。
【0226】
屠殺したばかりのヒツジの肺(気管を含む)がWestern Sydney Meat Worksにより寄付され、24~48時間以内に使用するために4℃で冷蔵した。ムチンを、以下に記載される方法を使用して、新鮮な10.0mlの生理食塩水、NAC、ブロメライン、又はBromAcのいずれかで60分間にわたって2回(30分の間隔)処理した。各処理(125μg/ml又は250μg/mlのブロメライン)を3回繰り返して実行した。処理時間(溶液をエアロゾル化する時間)は18分であり、フォローアップ時間は12分であり、ムチンの各試料についての合計処理時間は60分(18+12x2分)であった。
【0227】
Drager Evita XL人工呼吸器を、サイズ9.0の気管内管、Aerogenメッシュネブライザー、及びFisher&Paykel850加湿器を備える回路で使用した。ヒツジの肺を気管を介して気管内管の端部に接続した。人工呼吸器は、以下のパラメータで連続的な機械的換気に設定した。1回換気量(VT)-0.500L、吸気時間-2.0、頻度(f)-8.0bpm、Pmax-35cmHO、陽性呼気終圧(PEEP)-0cmH0、流量-21l/分。温度を37℃に維持した。安定した換気が確立されると(ベースライン)、粘液閉塞をシミュレーションするためにムチンを気管内管に投与した。人工呼吸器パラメータを閉塞ベースラインとして記録した。BromAcを回路内ネブライザーに充填し、開始した。換気パラメータは5分毎に記録した
【0228】
結果
60分間にわたって監視したコンプライアンス(肺が換気にいかに十分に応答するかの尺度であり、より高い値がより良好である)は、18分で最初の増加を示し、BromAcについてはほぼ一定のままであった。60分間にわたって監視した分時呼吸量(MV)は、生理食塩水処理について18、30、及び48分でわずかな低下があったことを示したが、しかしながら、他の3つの薬剤(BromAc、NAC、及びブロメライン)については、18分から開始して、監視した他の全ての時間での増加を伴って、MVの実質的な上昇があった。増加の順序は、最高では、BromAc、続いてNACとブロメラインとの組み合わせであり、臨床的に関連する時間において、BromAcが人工呼吸器パラメータに最も大きな効果を有したことを示している。
【0229】
次いで、2つの濃度のBromAc(125及び250μg/ml)の効果を評価した。コンプライアンス測定は、BromAc(250μg/mlのブロメライン+20.0mg/mlのNAC)が48分でコンプライアンスの急激な増加を示し、監視した60分で更にはるかに増加したことを示す。BromAc(125mg/ml+10mg/mlのNAC)についてのコンプライアンス読み取り値は、より高いBromAc濃度と比較してはるかに低かった。同様に、分時呼吸量(MV)は、高濃度でのBromAcについて18分で急激な上昇があり、監視した他の全ての期間で上昇し続けたことを示した。
【0230】
これらのデータは、粘液閉塞性疾患におけるBromAcの使用を示すために望みを与える。
【0231】
実施例7-健康なボランティアにおける噴霧されたBromAcの送達の安全性
12人の健康なボランティアを、噴霧療法としてのBromAcの安全性に関する第I相研究に動員した。ボランティアは他の点では健康であり、外来患者の環境を続けていた。BromAcは、0.9%の通常の生理食塩水とともに、マスクを通す噴霧エアロゾル送達(吸入)を介して気道に送達された。全ての参加者を症状及び副作用について評価した。
【0232】
この研究の目的は、3つの濃度レベルでのBromAcの噴霧送達(表16を参照)が安全であるかどうかを決定することであった。参加者は、合計3日間、割り当てられた用量レベルで噴霧BromAcを受けた。症状及び副作用は、この研究の主要な目的を評価するための特定の質問とともに、参加者、研究看護師、又は研究者によって報告された。
【0233】
用量漸増は、各治療レベルの完了時(3日目)に行った。研究参加者は、逐次的な用量設計で示されたレベルで薬物を受けた。最初の4人の参加者は、用量レベル1(開始用量)で開始され、安全性の評価後に漸増を行った。
【表16】
【0234】
各参加者は、血圧、心拍数、呼吸数、SpO、及び温度、心肺評価のための胸部聴診、並びに鼻及び口腔粘膜評価を含むベースライン臨床観察を受けた。次いで、薬物産物がハドソンマスクを介して7~8L/分の流量で噴霧された。
【0235】
噴霧中に10分毎に臨床観察を行い、次いで、30分、1時間、2時間、及び3時間で行った。心肺聴診及び鼻及び口腔粘膜評価は、噴霧終了時及び3時間での退院前に総鼻症状スコア(TNSS)を決定して完了した。参加者に、噴霧中及び噴霧後の任意の症状又は副作用を監視し、30分及び3時間で症状及び副作用(患者が報告した転帰)フォームを完了するように求めた。参加者は、医師の治験責任医師による3時間の監視及びレビューの後に診療所から退院した。フォローアップは、各治療日(1~3日目)、次いで、4日目、5日目、10日目、及び14日目に行った。
【0236】
これらの臨床試験の予備結果を以下に記載する。
【0237】
この研究において、動員した12人の全ての患者が、治療及びフォローアップの要件を完了した。用量漸増レベルの間には、用量レベルの増加に起因する可能性のある副作用は観察されなかった。4人の参加者(33%)は、平均15分間、噴霧後に鼻水を報告した。1人の参加者は、治療の1日目に単回の下痢のエピソードを報告した。1人の参加者は、研究の経過にわたってウイルス感染症を発症し、ベースライン血液は、炎症プロセスの開始を示したが、患者の全体的な転帰又は観察された治療に影響はなかった。1人の参加者は、5日目に激しい屋外活動後の胸部圧迫感及び喘鳴を報告した。参加者は、これらの症状を冷気に起因するものとし、それらが6日目に解消されたと報告した。
【0238】
全ての参加者において、血液パラメータ、バイタルサイン、粘膜及び心肺評価を含む追加のフォローアップ測定は、ベースラインと同等であった。
【0239】
結論として、調査した濃度でのBromAcの投与は、患者が報告した転帰、症状及び副作用評価、バイタルサイン、血液検査、並びに他の臨床観察に基づいて、健康なボランティアにおいて吸入後14日まで安全であることが示された。第1b相研究及び第2相研究において、呼吸器疾患を有する患者における安全性を更に調査する。
【0240】
上に記載した実験は、(BromAcの形態で提供される)本発明による組み合わせが、有害作用を伴わずにウサギ、マウス、及びヒトモデルの気道に投与され得ることを証明している。データはまた、少なくとも呼吸器疾患に見出されると予想されるムチンの種類を分解するという点で、噴霧BromAcが治療効果を有することを示している。本発明者らは、これらのデータが本明細書に記載される治療適応を支持すると考えている。
【0241】
本明細書に記載されるように、本発明は、呼吸器疾患などの疾患及び状態を治療するための、並びにサイトカイン活性を阻害し、炎症応答を低減させるための組成物及び方法であって、ブロメラインなどの糖タンパク質に影響を及ぼすプロテアーゼが吸入によって投与される方法を提供する。本発明の実施形態は、既存の療法よりも多くの利点を提供し、そのいくつかは上に記載されている。
【0242】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が行われる可能性があることは、本発明の当業者には理解されるであろう。そのような変更は全て、以下の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
【0243】
前述の説明は、微粒子、薬学的組成物、及び治療方法の特定の形態を指すが、そのような詳細は例示的な目的のためにのみ提供され、本発明の範囲をいかなる方法でも限定することを意図するものではないことも理解されるであろう。
【0244】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明において、文脈が表現言語又は必要な意味合いに起因して別段のことを必要とする場合を除き、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変化形は、包括的な意味で使用される、すなわち、本発明の様々な実施形態では、明記された特色の存在を特定するが、更なる特色の存在又は追加を妨げるものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】