IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中石化(大連)石油化工研究院有限公司の特許一覧

特表2024-539277水素化触媒のグレーディングシステム及びその使用、並びに水素化触媒のグレーディング方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】水素化触媒のグレーディングシステム及びその使用、並びに水素化触媒のグレーディング方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/883 20060101AFI20241018BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B01J23/883 M
C10G45/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524611
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2022127053
(87)【国際公開番号】W WO2023071986
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111242776.0
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊占林
(72)【発明者】
【氏名】丁思佳
(72)【発明者】
【氏名】劉奕
(72)【発明者】
【氏名】彭紹忠
(72)【発明者】
【氏名】王会剛
(72)【発明者】
【氏名】姜虹
(72)【発明者】
【氏名】王継鋒
(72)【発明者】
【氏名】王方朝
(72)【発明者】
【氏名】王平
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BD02A
4G169BD03A
4G169CC02
4G169DA05
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC21Y
4G169EC27
4G169EE09
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC08
4H129AA02
4H129CA06
4H129CA07
4H129CA08
4H129CA09
4H129DA16
4H129DA17
4H129DA19
4H129KA06
4H129KB03
4H129KB04
4H129KC02X
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC06X
4H129KC07X
4H129KC10X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129NA04
4H129NA15
4H129NA29
(57)【要約】
本発明は、油製品の水素化分野に関し、水素化触媒のグレーディングシステム及びその使用、並びに水素化触媒のグレーディング方法に関する。本発明のシステムは、材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒を含み、Mは2以上の整数であり、N番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値以上であり、かつ、少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きく、Nは2以上M以下の整数であり、R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素のモル含有量と蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量含有量との比である。本発明による水素化触媒のグレーディングシステムは、表面のニッケル原子濃度の異なる水素化触媒をグレーディングすることによって、装置全体の脱窒効果を高め、しかも、触媒系の水素化飽和性を向上させるのに有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒のグレーディングシステムであって、
材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒を含み、Mは2以上の整数であり、
N番目の水素化触媒のR値が、N-1番目の水素化触媒のR値以上であり、かつ、少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きく、Nは2以上M以下の整数であり、
R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素のモル含有量と蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量含有量との比である、ことを特徴とする水素化触媒のグレーディングシステム。
【請求項2】
Mは3以上の整数、好ましくは3~7である、請求項1に記載のグレーディングシステム。
【請求項3】
前記N番目の水素化触媒のR値は、N-1番目の水素化触媒のR値よりも1%~20%、好ましくは2%~10%高い、請求項1又は2に記載のグレーディングシステム。
【請求項4】
水素化触媒のR値は、3~150%、好ましくは10~50%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のグレーディングシステム。
【請求項5】
N-1番目の水素化触媒の還元温度が、N番目の水素化触媒の還元温度以上であり、好ましくはN番目の水素化触媒の還元温度よりも5~150℃、より好ましくは10~50℃高く、前記水素化触媒の還元温度は、H-TPRにより特徴評価される還元ピークのピークトップ温度であり、
好ましくは、充填された1番目の水素化触媒の還元温度は350~550℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載のグレーディングシステム。
【請求項6】
隣接する水素化触媒の充填体積比が、1:20~20:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:5~5:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載のグレーディングシステム。
【請求項7】
各水素化触媒は、それぞれ独立して、担体、第VIB族金属活性成分、及び第VIII族金属活性成分を含み、
好ましくは、第VIB族金属活性成分はW及び/又はMoであり、第VIII族金属活性成分はNi及び/又はCoであり、
好ましくは、水素化触媒の全重量を基準にして、酸化物換算の第VIB族金属活性成分の含有量は9~50重量%であり、酸化物換算の第VIII族金属活性成分の含有量は1~15重量%であり、
好ましくは、前記担体は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、酸化マグネシウム、ジルコニア、酸化ボロン、及び二酸化チタンから選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載のグレーディングシステム。
【請求項8】
油製品の水素化処理における請求項1~7のいずれか1項に記載の水素化触媒のグレーディングシステムの使用であって、好ましくは油製品の水素化分解における使用、より好ましくは油製品の水素化分解前処理における使用である、使用。
【請求項9】
水素化触媒のグレーディング方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のグレーディングシステムにて行われる、方法。
【請求項10】
水素化処理対象の油製品を前記グレーディングシステムに投入して水素化反応を行うステップを含み、
好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力3~20MPa、全液空間速度0.2~4h-1、反応温度260~430℃を含み、
さらに好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力8~17MPa、全液空間速度0.8~2h-1、反応温度300~400℃を含み、
好ましくは、前記水素化処理対象の油製品は、ディーゼル、VGO、CGO、及びDAOから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記水素化反応は、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱酸素、及び水素化飽和のうちの少なくとも1種を含む、請求項9に記載のグレーディング方法。
【請求項11】
N番目の水素化触媒床の反応温度は、1番目の水素化触媒床の反応温度以上であり、
好ましくは、N番目の水素化触媒床の反応温度は、N-1番目の水素化触媒床の反応温度以上、好ましくは5~50℃高く、
好ましくは、最後の水素化触媒床の反応温度は、410℃以下である、請求項9又は10に記載のグレーディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2021年10月25日に提出された中国特許出願202111243451.4の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、油製品水素化の分野に関し、水素化触媒のグレーディングシステム及びその使用、並びに水素化触媒のグレーディング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の石油精製技術において、水素化分解とは、水素化反応を通じて原料中の高分子化合物の10%以上を低分子化合物に変換する水素化プロセスを指し、原料への適応性が高く、生産スキームの柔軟性が高く、製品の品質が良いという特徴があり、さまざまな低品質の重質供給原料を、市場で緊急に必要とされている高品質のジェット燃料、ディーゼル、潤滑油基材、ケミカルナフサ及びエチレン製造用のテールオイル水蒸気分解原料に直接変換でき、これは、現代の石油精製及び石油化学産業において最も重要な重質油高度加工プロセスの1つとなっており、中国の国内外でますます広く使用されている。
【0004】
水素化分解技術の中核は、前処理触媒や分解触媒などを含む触媒である。水素化分解前処理触媒の主な機能は次のとおりである。水素化により原料に含まれる硫黄、窒素、酸素や重金属などの不純物を除去し、水素化により多環芳香族炭化水素を飽和にし、石油製品の特徴を改善する。原料油中の窒素化合物、特に塩基性窒素化合物が分解触媒の酸中心に毒を与える可能性があるため、水素化脱窒性能は水素化分解前処理触媒を評価するための重要な指標である。
【0005】
工業用装置は断熱反応器であり、反応が進行するにつれて、反応温度が大幅に上昇し、水素分圧が低下し、硫化水素とアンモニア分圧が増加し、反応物中の窒素含有量が減少し、残りの含窒素化合物は脱窒反応が起こりにくい分子であり、一般に複数の側鎖を持つ構造である。触媒の上床と下床の反応条件には大きな違いがある。この反応環境の違いに対応するために、触媒の使用性能を最大限に引き出し、寿命を延ばすために、触媒グレーディングシステムを開発することが考えられる。
【0006】
CN112725014Aには、水素化触媒のグレーディング方法が開示されており、この方法は、N個の触媒床を充填しており、Nは2より大きい整数である。このうち、m番目の触媒床に充填される触媒は、250℃~500℃での酸含有量が最も高く、mは1より大きくN未満の整数であり、1~m番目の触媒床に充填される触媒は、250℃~500℃での酸含有量が増加傾向を示し、m~N番目の触媒床に充填される触媒は、250℃~500℃での酸含有量が減少傾向を示した。前記触媒床の反応温度は、流れに沿って上昇する傾向を示す。この方法は、水素化処理反応器の全体的な脱窒性能及び脱硫性能を向上させるだけでなく、触媒系の性能安定性も向上させることができる。
【0007】
CN109718867Aは、水素化精製触媒の分野に関するものであり、水素化精製触媒系及びその使用、並びに水素化精製触媒の製造方法及び留出油の水素化精製方法が開示される。触媒系は、第1触媒床及び第2触媒床を含み、第1触媒は、アルミナ、水素化脱硫触媒活性成分及びカルボン酸を含み、第2触媒は、無機耐火物成分、水素化脱硫触媒活性成分及びカルボン酸を含み、第2無機耐火物成分は、アモルファスシリコンアルミニウム及び/又は分子篩及びアルミナを含み、第1及び第2触媒は、それぞれ細孔径4~40nm及び細孔径100~300nmを有し、細孔径4~40nmの細孔容積が全細孔容積の60~95%を占め、細孔径100~300nmの細孔容積が全細孔容積の0.5~50%を占める。第1触媒と第2触媒は、細孔径が100~300nmで、性能が優れ、製造プロセスが短縮され、蒸留油を処理する触媒系の能力が向上する。
【0008】
CN106669861Aは、水素化分解触媒のグレーディング方法及びディーゼル水素化変換プロセスの触媒を開示している。本発明の水素化分解触媒のグレーディング方法は、水素化分解反応器を材料の流れの方向に沿って2~8の反応ゾーンに分割し、各反応ゾーンには水素化分解触媒と再生触媒を混合して充填するステップを含み、各反応ゾーンにおける水素化分解触媒と再生触媒の質量比は10:1~1:10であり、材料の流れの方向に沿って、各反応ゾーンにおける再生触媒に対する水素化分解触媒の質量比は徐々に減少する。また、上記の触媒グレーディングを利用したディーゼル水素化変換プロセスも提供する。分解反応器内で異なる反応特徴を持つ触媒をグレーディングして充填することにより、変換プロセスにおけるディーゼル/ガソリン成分の水素化選択性が向上し、高オクタン価ガソリン製品の収率が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水素化触媒のグレーディングシステム及びその使用、並びに水素化触媒のグレーディング方法を提供する。本発明による水素化触媒のグレーディングシステムを油製品の水素化プロセスに用いることにより、全体的な脱窒性能を向上させるとともに、芳香族炭化水素飽和性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒を含み、Mは2以上の整数であり、
N番目の水素化触媒のR値が、N-1番目の水素化触媒のR値以上であり、かつ、少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きく、Nは2以上M以下の整数であり、
R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素のモル含有量と蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量含有量との比である、水素化触媒のグレーディングシステムを提供する。
【0011】
好ましくは、前記N番目の水素化触媒のR値は、N-1番目の水素化触媒のR値よりも1%~20%、好ましくは2%~10%高い。
【0012】
本発明の第2態様は、油製品の水素化処理における第1態様に記載の水素化触媒のグレーディングシステムの使用であって、好ましくは油製品の水素化分解における使用、より好ましくは油製品の水素化分解前処理における使用である、使用を提供する。
【0013】
本発明の第3態様は、第1態様に記載の前記水素化触媒のグレーディングシステムにて行われる水素化触媒のグレーディング方法を提供する。
【0014】
好ましくは、N番目の水素化触媒床の反応温度は、1番目の水素化触媒床の反応温度以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による水素化触媒のグレーディングシステムは、表面のニッケル原子濃度の異なる水素化触媒をグレーディングすることによって、装置全体の脱窒効果を高め、しかも、触媒系の水素化飽和性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲の場合、個々の範囲の端点値の間、個々の範囲の端点値と個別の点値の間、及び個別の点値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書において具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0017】
本発明の第1態様は、材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒を含み、Mは2以上の整数であり、
N番目の水素化触媒のR値が、N-1番目の水素化触媒のR値以上であり、かつ、少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きく、Nは2以上M以下の整数であり、
R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素のモル含有量と蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量含有量との比である、水素化触媒のグレーディングシステムを提供する。
【0018】
特に断らない限り、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素の含有量とは、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の元素換算のVIII族金属元素のモル百分率含有量を指す。
【0019】
本発明では、X線光電子分光スペクトル(XPS)測定は、サーモフィッシャーサイエンティフィック製のMultiLab 2000 型X線光電子分光装置により行われ、励起源をMgKα、C1s(284.8ev)を内部標準として、荷電効果を校正する。
【0020】
特に断らない限り、蛍光X線スペクトル(XRF)により特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素の含有量とは、蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量百分率含有量を指す。
【0021】
本発明では、蛍光X線スペクトル(XRF)の特徴評価には理学社製のZSX100e波長分散型蛍光X線分析装置が使用され、PET分光結晶によりアルミニウムやシリコンなどの元素が分析され、LiF1分光結晶によりNi、Co、MoやWなどの元素が分析され、そして、その結果が標準レスサンプル分析ソフトウェアZSXにより正規化される。
【0022】
本発明によれば、本発明によるグレーディングシステムには、材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒が含まれており、具体的な充填方式について特に限定はなく、前記M個の水素化触媒は、M個の水素化触媒床に充填されてもよく、そのうちの2種又は複数種の水素化触媒は1つの水素化触媒床に充填されてもよく、材料がM個の水素化触媒に順次接触できればよいことが理解できる。本発明では、前記水素化触媒床の配置は特に限定されず、同一の水素化反応器に配置されてもよく、直列に接続された2つ以上の水素化反応器に配置されてもよく、M個の水素化触媒が材料流れの方向に沿って順次充填されることを確保できればよい。
【0023】
本発明では、材料流れの方向に沿って順次充填された水素化触媒のR値は、上昇する傾向を示し、すなわち、N番目の触媒のR値は、N-1番目の水素化触媒のR値以上である。ここで、R値は上昇する傾向を示すとは、システムが全体として上昇する傾向を示すが、充填された1つ又は複数の水素化触媒のR値が前の水素化触媒のR値に同一又は類似することを許可することを意味する。
【0024】
本発明に記載の「少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きい」とは、システム全体において少なくとも1つの後に充填される(N番目の)水素化触媒のR値が前に充填された(N-1番目の)水素化触媒のR値よりも大きいことを意味する。
【0025】
本発明では、前記水素化触媒の充填や水素化触媒床の配置は特に限定されず、当業者であれば、本発明の形態は任意の手段により実現されてもよく、いずれも本発明によるグレーディングシステムの保護範囲内である。
【0026】
本発明では、Mの値の範囲は幅広く、つまり、グレーディングシステムに充填される水素化触媒の数の範囲は幅広く、効果と経済性の両方を考慮すると、好ましくは、Mは、3以上の整数であり、3~10の整数、例えば、3、4、5、6、7、8、9、又は10であってもよいが、好ましくは3~7である。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、前記N番目の水素化触媒のR値は、N-1番目の水素化触媒のR値よりも1%~20%、好ましくは2%~10%高い。このような好ましい実施形態では、グレーディングシステムの水素化脱窒能力及び芳香族炭化水素飽和能力の向上により寄与する。
【0028】
本発明によるグレーディングシステムによれば、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のモル含有量によるVIII族金属元素の含有量は、好ましくは0.1~6%、さらに好ましくは0.5~3%である。
【0029】
本発明によるグレーディングシステムによれば、蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物重量によるVIII族金属元素の含有量は、好ましくは1~15%、さらに好ましくは1.5~10%である。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、水素化触媒のR値は、3~150%、好ましくは10~50%である。
【0031】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、N-1番目の水素化触媒の還元温度は、N番目の水素化触媒の還元温度以上であり、前記水素化触媒の還元温度とは、H-TPRにより特徴評価される還元ピークのピークトップ温度を指す。このような好ましい実施形態では、材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒では、水素化触媒の還元温度は、低下する傾向を示し、ここで、還元温度は低下する傾向を示すとは、システムが全体として低下する傾向を示すが、1つ又は複数の水素化触媒の還元温度が前の水素化触媒の還元温度と同一又は類似であることを許可することを意味する。
【0032】
好ましくは、N-1番目の水素化触媒の還元温度は、N番目の水素化触媒床の還元温度よりも5~150℃、より好ましくは10~50℃高い。
【0033】
本発明では、前記水素化触媒の還元温度は、H-TPRにより特徴評価されることにより得られる。具体的には、前記H-TPR特徴評価には、米国Altamira社製の全自動化学吸着装置(AMI-200型)が使用される。キャリアガスとして高純度アルゴンガスを用い、反応气として5体積%のH-Arを用い、10℃/minの昇温速度で700℃に昇温する。
【0034】
好ましくは、充填された1番目の水素化触媒の還元温度は、350~550℃である。
【0035】
本発明では、各水素化触媒の充填量は特に限定されず、当業者であれば、上記の開示に基づいて適宜決定すればよい。好ましくは、隣接する水素化触媒の充填体積比は、1:20~20:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:5~5:1である。
【0036】
本発明によるグレーディングシステムでは、各水素化触媒の担体及び活性成分は、同一であってもよいし、異なってもよい。本発明では、前記水素化触媒の組成は特に限定されず、当該分野で水素化処理反応に適用できる触媒であれば、本発明に適用できる。好ましくは、各水素化触媒は、それぞれ独立して、担体、第VIB族金属活性成分、及び第VIII族金属活性成分を含む。
【0037】
好ましくは、第VIB族金属活性成分は、W及び/又はMoであり、第VIII族金属活性成分は、Ni及び/又はCoである。
【0038】
前記担体は、当該分野でよく使用される各種の無機耐熱酸化物であってもよく、好ましくは、前記担体は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、酸化マグネシウム、ジルコニア、酸化ボロン、及び二酸化チタンから選択される少なくとも1種である。
【0039】
本発明では、前記担体はドーピング元素をさらに含有してもよく、前記ドーピング元素は、例えば、リン、ケイ素、ホウ素、フッ素、ナトリウムなどの元素のうちの1種又は複数種であってもよい。前記ドーピング元素の添加量は、通常の添加量であってもよいが、好ましくは、担体の質量の0.5%~6%を占める。
【0040】
本発明では、各水素化触媒の組成の範囲は幅広く、大きな範囲で変化したり調整したりすることができ、上記のグレーディングシステムにおける傾向を満たせばよい。各水素化触媒中の第VIB族金属活性成分、第VIII族金属活性成分の含有量は、同一であってもよいし、異なってもよい。材料流れの方向に沿って、異なる水素化触媒中の第VIII族金属活性成分及び第VIB族金属活性成分の含有量は、それぞれ独立して、低から高、高から低、安定又は不規則な傾向を示す可能性があるが、本発明では、特に限定しない。好ましくは、N番目の水素化触媒の第VIII族金属活性成分及び第VIB族金属活性成分の含有量は、N-1番目の水素化触媒の第VIII族金属活性成分及び第VIB族金属活性成分の含有量以上である。
【0041】
好ましくは、水素化触媒の全重量を基準にして、酸化物換算の第VIB族金属活性成分の含有量は9~50重量%、酸化物換算の第VIII族金属活性成分の含有量は1~15重量%である。
【0042】
本発明によるグレーディングシステムでは、充填される水素化触媒は、市販品であってもよいし、従来の任意の触媒製造技術によって製造されてもよい。例えば、担体及び触媒の製造プロセス中に様々な無機又は有機添加剤を導入したり、触媒の熱処理温度を変更したりすることなどにより、第VIII族金属原子の分布を改善し、水素化触媒の還元温度を制御することができる。担体及び触媒の製造プロセスにおけるさまざまな無機又は有機添加剤の導入を例にとると、前記無機添加剤は、フッ素、ケイ素、リン、ホウ素、マグネシウム、ジルコニウムなどのうちの1種又は複数種であり、前記有機添加剤は、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、及び酸素含有有機化合物のうちの1種又は複数種であってもよい。無機助剤又は有機助剤は、第VIB族及びVIII族金属成分を含浸する前、含浸と同時に、及び含浸後の任意の1つ又は複数のステップなど、任意のステップで導入することができる。前記窒素含有有機化合物は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)及びシクロエチレンジアミン四酢酸などの、少なくとも1つの共有結合した窒素原子を含む有機化合物であってもよい。前記硫黄含有有機化合物は、チオール(一般式R-SH)、チオエーテル(一般式R-S-R)、ジスルフィド(一般式R-S-S-R)などの共有結合した硫黄原子を少なくとも1個含む有機化合物であってもよい。これらの硫黄含有有機化合物のRは、エチルメルカプタン、エチルプロピルスルフィド、ジメチルジスルフィドなどの、1~10個の炭素原子を含むアルキル基であってもよい。硫黄含有有機化合物には、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ジメルカプトプロパノールなどの、1つ又は複数のカルボキシル、カルボニル、エステル、エーテル、ヒドロキシル、又はメルカプト基置換が含まれてもよい。上記の含硫黄有機化合物に加えて、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホン及びスルホキシド化合物も含まれてもよい。前記含酸素有機化合物とは、少なくとも1つの炭素原子と1つの酸素原子とを含む有機物質である。酸素含有部分は、カルボキシル、カルボニル、ヒドロキシル部分、又はそれらの組み合わせであってもよい。これらの物質は、酢酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタンなどのアルコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチルグリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのエーテル類;グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロースなどの糖類;ケトン類;フェノール類;アルデヒド類、及び脂質類であってもよい。
【0043】
乾燥及び/又は焙焼の熱処理温度も、水素化触媒の表面の第VIII族金属原子の濃度に大きな影響を与える。Niを例にして、低温で処理する場合、ニッケル元素の同じ質量含有量では、水素化触媒の表面のニッケル原子濃度が高く、得られた水素化触媒の還元温度が低く、高温で処理する場合、ニッケル元素の同じ質量含有量では、水素化触媒の表面のニッケル原子濃度が低く、得られた水素化触媒の還元温度が高い。前記低温及び高温は、相対的なものであり、処理の温度範囲は80~700℃であり、例えば、熱処理温度が80~300℃、好ましくは120~200℃である場合は、低温で処理する、熱処理温度が350~800℃、好ましくは400~600℃である場合は、高温で処理するものとみなされる。
【0044】
本発明の第2態様は、油製品の水素化処理、好ましくは油製品の水素化分解、より好ましくは油製品の水素化分解前処理における第1態様に記載の水素化触媒のグレーディングシステムの使用を提供する。本発明によるグレーディングシステムを油製品の水素化分解前処理に用いると、油製品に含まれる硫黄、窒素、酸素や重金属などの不純物をできるだけ除去し、しかも、多環芳香族炭化水素の水素化飽和を行い、油製品の性質を改善し、水素化分解前処理の作用をよく発揮することができる。
【0045】
本発明の第3態様は、第1態様に記載の水素化触媒のグレーディングシステムにて行われる水素化触媒のグレーディング方法を提供する。
【0046】
好ましくは、この方法は、水素化処理対象の油製品を前記グレーディングシステムに投入して水素化反応を行うステップを含む。具体的には、水素化処理対象の油製品を前記グレーディングシステムに投入し、充填された1番目の水素化触媒と接触させ、次に、グレーディングシステムに充填された水素化触媒と順次接触させて反応する。
【0047】
好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力3~20MPa、全液空間速度0.2~4h-1、反応温度260~430℃を含み、さらに好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力8~17MPa、全液空間速度0.8~2h-1、反応温度300~400℃を含む。
【0048】
本発明による前記方法は、石油留分、石炭系液化油、バイオマスオイル、シェールオイル、コールタールなどを含む原料を処理することができ、好ましくは、ディーゼル、VGO、CGO及びDAOなどのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定される石油留分を処理する。その主要な性質は、好ましくは、初留点180℃以上、終留点600℃以下、密度0.8~0.95g・cm-3(20℃)、窒素含有量100~6000μg・g-1、硫黄含有量0.05~3重量%、芳香族炭化水素の全含有量20~80重量%を含む。
【0049】
本発明による方法によれば、好ましくは、前記水素化反応は、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱酸素、及び水素化飽和のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本発明による方法によれば、好ましくは、N番目の水素化触媒床の反応温度は1番目の水素化触媒床の反応温度以上であり、より好ましくは、N番目の水素化触媒床の反応温度はN-1番目の水素化触媒床の反応温度以上であり、好ましくは5~50℃、例えば5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、又はこれらの任意の2つからなる範囲よりも高い。本発明者らは、研究をした結果、特定のVIII族金属元素の分布を有する水素化触媒グレーディングシステムの上記の反応温度の変化傾向ではグレーディングシステムの水素化脱窒性及び芳香族炭化水素に対する水素化飽和性の向上により有利であることを見出した。
【0051】
本発明では、N番目の水素化触媒床とは、N番目の水素化触媒で形成される水素化セクションである。
【0052】
本発明では、工業用装置においては、前記反応温度とは平均反応温度を指し、水素化は放熱反応であり、水素化触媒床の温度が徐々に上昇する。触媒の各セグメントの温度の代数和を取得し、それをセグメントの数で割ったものを平均反応温度として記録する。実験室評価又は小型装置の場合、反応温度が固定され、操作が等温である場合、反応温度は固定反応温度になる。
【0053】
好ましくは、最後の水素化触媒床の反応温度は、410℃以下、例えば370~410℃である。このような好ましい実施形態によれば、グレーディングシステムにおける水素化触媒の安定性がより確保される。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を参照して本発明によるグレーディングシステム及びその使用についてさらに説明するが、以下の実施例は、本発明のシステム及び方法を限定するものではない。
【0055】
以下の実施例及び比較例の水素化触媒では、R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素の含有量と、蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素の含有量との比である。X線光電子分光スペクトルの特徴評価及び蛍光X線スペクトルの特徴評価の方法は上記の通りである。還元温度はH-TPRにより上記の方法で測定される。
【0056】
以下の実施例及び比較例では、特に断らない限り、%はすべて質量百分率である。
【0057】
以下の製造例は水素化触媒の製造を説明する。以下の製造例に使用される担体の性質を以下の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
製造例1
触媒Aの製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行った。含浸液は、ニッケル原子とのモル比が0.5:0.5:1となるように、ジエチレングリコール及びクエン酸を含有する。120℃で3h乾燥させ、540℃で2h焙焼し、得た触媒をAとした。
触媒Bの製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行った。含浸液は、ニッケル原子とのモル比が0.5:0.5:1となるように、ジエチレングリコール及びクエン酸を含有する。120℃で3h乾燥させ、440℃で2h焙焼し、得た触媒をBとした。
触媒Cの製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行った。含浸液は、ニッケル原子とのモル比が0.5:0.5:1となるように、ジエチレングリコール及びクエン酸を含有する。120℃で3h乾燥させ、得た触媒をCとした。
触媒Dの製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行った。含浸液は、ニッケル原子とのモル比が0.5:0.5:1となるように、ジエチレングリコール及びクエン酸を含有する。120℃で3h乾燥させ、得た触媒をDとした。
【0060】
製造例1で製造された触媒の性質を以下の表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1
本実施例では、本発明によるグレーディングシステムのグレーディング方法について説明する。
前記グレーディングシステムは、材料流れの方向に沿って設けられた3つの水素化触媒床を含み、床の体積は、それぞれ、30mL、30mL、及び30mLであり、反応温度は、それぞれ、340℃、360℃、及び380℃に制御される。
試験番号がPS1である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒A、触媒B、及び触媒Cが順次充填される。
試験番号がPS2である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒A、触媒A、及び触媒Cが順次充填される。
試験番号がPS3である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒B、触媒B、及び触媒Cが順次充填される。
試験番号がPS4である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒A、触媒B、及び触媒Dが順次充填される。
【0063】
実施例2
本実施例は、本発明によるグレーディングシステム及びグレーディング方法について説明する。
前記グレーディングシステムは、材料流れの方向に沿って同一の固定床水素化反応器に設けられた4つの水素化触媒床を含み、反応材料流れの方向における4つの反応床に触媒A、触媒B、触媒D、及び触媒Cが順次充填され、床の体積は、それぞれ、10mL、20mL、30mL、及び30mLであり、反応温度は、それぞれ、330℃、345℃、360℃、及び380℃に制御される。
【0064】
比較例1
前記グレーディングシステムは、材料流れの方向に沿って同一の固定床水素化反応器に設けられる3つの水素化触媒床を含み、床の体積は、それぞれ、30mL、30mL、及び30mLであり、反応温度は、それぞれ、340℃、360℃、及び380℃に制御される。
試験番号がPD1である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒C、触媒B、及び触媒Aが順次充填される。
試験番号がPD2である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒B、触媒B、及び触媒Bが順次充填される。
試験番号がPD3である場合、反応材料流れの方向に沿って3つの反応床に触媒C、触媒C、及び触媒Cが順次充填される。
【0065】
比較例2
本比較例は、金属の含有量が徐々に上昇するように金属を配置するような通常の方法によって、3個の触媒を製造し、グレーディングする形態について説明する。
触媒cat-21の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、120℃で3h乾燥させ、500℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-21とした。
触媒cat-22の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、20℃で3h乾燥させ、500℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-22とした。
触媒cat-23の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、120℃で3h乾燥させ、500℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-23とした。
【0066】
金属の含有量が徐々に上昇するようなグレーディング原則に従って、触媒をグレーディングし、使用される触媒の性質及び含有量や充填形態を以下の表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
比較例3
Niの含有量を徐々に上昇するようにグレーディングする形態について、触媒Moの含有量をほぼ一定に維持する場合、触媒をグレーディングし、使用される触媒の性質及び充填形態を表4に示す。
触媒cat-31の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、120℃で3h乾燥させ、550℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-31とした。
触媒cat-32の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、120℃で3h乾燥させ、550℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-32とした。
触媒cat-33の製造方法:Mo及びNiを含有する含浸液を用いてアルミナ担体Zの等体積含浸を行い、120℃で3h乾燥させ、550℃で2h焙焼し、得た触媒をcat-33とした。
【0069】
【表4】
【0070】
適用例
本適用例は、上記の実施例及び比較例によるグレーディングシステム及びグレーディング方法について、性能を評価し、この性能の評価実験は、小型水素化装置にて行われ、活性評価前に触媒を予備加硫し、加硫の条件としては、硫化油としてジメチルジスルフィド3体積%を含有する直留航空ケロシンが使用され、加硫圧力は14.5MPaであり、全液空間速度は2h-1であり、水素/油体積比は1000:1であり、230℃及び370℃はそれぞれ8時間保温する。
評価条件は、反応総圧14.5MPa、全液空間速度1h-1、水素/油体積比1000:1であり、性能の評価実験に使用される原料油の性質を表5、活性の評価結果を表6に示す。
表6には、前記脱窒活性は、1級反応に従って、以下の計算式により計算される。
相対脱窒活性=ln(製品中の窒素含有量/原料中の窒素含有量)/ln(PD1製品中の窒素含有量/原料中の窒素含有量)×100%。比較例1における試験PD1の脱窒活性を100%とした。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
表6に記載の500時間後の触媒活性の評価結果から分かるように、比較例と比較して、本発明による水素化触媒のグレーディングシステムを用いると、脱窒活性が大幅に向上し、芳香族炭化水素飽和性も良好であり、水素化分解セグメントへ高品質材料を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒のグレーディングシステムであって、
材料流れの方向に沿って順次充填されたM個の水素化触媒を含み、Mは2以上の整数であり、
N番目の水素化触媒のR値が、N-1番目の水素化触媒のR値以上であり、かつ、少なくとも1つのN番目の水素化触媒のR値がN-1番目の水素化触媒のR値よりも大きく、Nは2以上M以下の整数であり、
R値は、X線光電子分光スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中のVIII族金属元素のモル含有量と蛍光X線スペクトルにより特徴評価される水素化触媒中の酸化物換算のVIII族金属元素の重量含有量との比である、ことを特徴とする水素化触媒のグレーディングシステム。
【請求項2】
Mは3以上の整数、好ましくは3~7である、請求項1に記載のグレーディングシステム。
【請求項3】
前記N番目の水素化触媒のR値は、N-1番目の水素化触媒のR値よりも1%~20%、好ましくは2%~10%高い、請求項に記載のグレーディングシステム。
【請求項4】
水素化触媒のR値は、3~150%、好ましくは10~50%である、請求項に記載のグレーディングシステム。
【請求項5】
N-1番目の水素化触媒の還元温度が、N番目の水素化触媒の還元温度以上であり、好ましくはN番目の水素化触媒の還元温度よりも5~150℃、より好ましくは10~50℃高く、前記水素化触媒の還元温度は、H-TPRにより特徴評価される還元ピークのピークトップ温度であり、
好ましくは、充填された1番目の水素化触媒の還元温度は350~550℃である、請求項に記載のグレーディングシステム。
【請求項6】
隣接する水素化触媒の充填体積比が、1:20~20:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:5~5:1である、請求項に記載のグレーディングシステム。
【請求項7】
各水素化触媒は、それぞれ独立して、担体、第VIB族金属活性成分、及び第VIII族金属活性成分を含み、
好ましくは、第VIB族金属活性成分はW及び/又はMoであり、第VIII族金属活性成分はNi及び/又はCoであり、
好ましくは、水素化触媒の全重量を基準にして、酸化物換算の第VIB族金属活性成分の含有量は9~50重量%であり、酸化物換算の第VIII族金属活性成分の含有量は1~15重量%であり、
好ましくは、前記担体は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、酸化マグネシウム、ジルコニア、酸化ボロン、及び二酸化チタンから選択される少なくとも1種である、請求項に記載のグレーディングシステム。
【請求項8】
油製品の水素化処理における請求項1~7のいずれか1項に記載の水素化触媒のグレーディングシステムの使用であって、好ましくは油製品の水素化分解における使用、より好ましくは油製品の水素化分解前処理における使用である、使用。
【請求項9】
水素化触媒のグレーディング方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のグレーディングシステムにて行われる、方法。
【請求項10】
水素化処理対象の油製品を前記グレーディングシステムに投入して水素化反応を行うステップを含み、
好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力3~20MPa、全液空間速度0.2~4h-1、反応温度260~430℃を含み、
さらに好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力8~17MPa、全液空間速度0.8~2h-1、反応温度300~400℃を含み、
好ましくは、前記水素化処理対象の油製品は、ディーゼル、VGO、CGO、及びDAOから選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記水素化反応は、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱酸素、及び水素化飽和のうちの少なくとも1種を含む、請求項9に記載のグレーディング方法。
【請求項11】
N番目の水素化触媒床の反応温度は、1番目の水素化触媒床の反応温度以上であり、
好ましくは、N番目の水素化触媒床の反応温度は、N-1番目の水素化触媒床の反応温度以上、好ましくは5~50℃高く、
好ましくは、最後の水素化触媒床の反応温度は、410℃以下である、請求項に記載のグレーディング方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2021年10月25日に提出された中国特許出願202111242776.0の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【国際調査報告】