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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】キメラサイトカイン受容体
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241018BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241018BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/24
C07K14/54
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K38/16
A61K48/00
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/00
A61P37/08
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524636
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 GB2022052707
(87)【国際公開番号】W WO2023073352
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2115329.1
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517215973
【氏名又は名称】オートラス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーギ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】プーレ, マーティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084DA45
4C084NA14
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA16
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB13
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA51
4H045EA22
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、2つのポリペプチド:(i)(a)第1の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメインを含む第1のポリペプチド;および(ii)(a)第2の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメインを含む第2のポリペプチドを含む、キメラサイトカイン受容体(CCR)を提供する。第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、自発的に二量体化して、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを介して生じるIL18型シグナル伝達を引き起こす。本発明はまた、そのようなCCRおよび必要に応じて、キメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞ならびに例えば、がんまたは自己免疫疾患の処置におけるそのような細胞の使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのポリペプチド:
(i)(a)第1の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第1のポリペプチド;および
(ii)(a)前記第1の二量体化ドメインと自発的に二量体化する第2の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第2のポリペプチド
を含む、キメラサイトカイン受容体(CCR)。
【請求項2】
前記第1および第2の二量体化ドメインの一方が重鎖定常ドメイン(CH)を含み、他方が軽鎖定常ドメイン(CL)を含む、請求項1に記載のCCR。
【請求項3】
前記第1および第2の二量体化ドメインがコイルドコイルドメインを含む、請求項1に記載のCCR。
【請求項4】
前記第1および第2の二量体化ドメインがロイシンジッパードメインを含む、請求項3に記載のCCR。
【請求項5】
前記第1および第2の二量体化ドメインがFos/Junまたはドッキングドメイン(DDD1)/アンカードメイン(AD1)ロイシンジッパードメインを含む、請求項4に記載のCCR。
【請求項6】
4つのポリペプチド:
(i)(a)第1の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第1のポリペプチド;
(ii)(a)第2の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第2のポリペプチド;
(i)(a)第3の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第3のポリペプチド;
(ii)(a)第4の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第4のポリペプチドを含み、
前記四量体化ドメインがSNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のA、B、CおよびD鎖を含む、請求項3に記載のCCR。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかに記載のキメラサイトカイン受容体を含む細胞。
【請求項8】
キメラ抗原受容体も含む、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
核酸構築物が、前記第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列および前記第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含む、請求項1から5のいずれかに記載のキメラサイトカイン受容体(CCR)をコードする核酸構築物。
【請求項10】
核酸構築物が、前記第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列;前記第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列;前記第3のポリペプチドをコードする第3の核酸配列;および前記第4のポリペプチドをコードする第4の核酸配列を含む、請求項6に記載のキメラサイトカイン受容体(CCR)をコードする核酸構築物。
【請求項11】
キメラ抗原受容体をコードする核酸配列も含む、請求項9または10に記載の核酸構築物。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の核酸構築物を含むベクター。
【請求項13】
i)請求項1から5のいずれかで定義された第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;および
ii)請求項1から5のいずれかで定義された第2のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター
を含むキット。
【請求項14】
i)請求項6で定義された第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;
ii)請求項6で定義された第2のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;
iii)請求項6で定義された第3のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;および
iv)請求項6で定義された第4のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター
を含むキット。
【請求項15】
請求項9から11のいずれかに記載の核酸構築物;請求項12に記載のベクター;または請求項13もしくは14に記載のベクターのキットを、ex vivoで細胞中に導入するステップを含む、請求項7または8に記載の細胞を作製するための方法。
【請求項16】
請求項7または8に記載の複数の細胞を含む医薬組成物。
【請求項17】
がんまたは自己免疫疾患の処置における使用のための請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項16に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、がんまたは自己免疫疾患を処置するための方法。
【請求項19】
がんまたは自己免疫疾患の処置のための医薬組成物の製造における使用のための、請求項7または8に記載の複数の細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、IL-18受容体細胞内ドメインを有するキメラサイトカイン受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
キメラ抗原受容体(CAR)
治療的モノクローナル抗体(mAb)、二重特異性T細胞エンゲージャーおよびキメラ抗原受容体(CAR)などのいくつかの免疫治療剤が、がん処置における使用のために記載されている。
【0003】
キメラ抗原受容体は、T細胞のエフェクター機能に対してモノクローナル抗体(mAb)の特異性を移植するタンパク質である。その通常の形態は、T細胞生存および活性化シグナルを伝達する化合物細胞内ドメインに全て接続された、抗原認識アミノ末端、スペーサー、膜貫通ドメインを有するI型膜貫通ドメインタンパク質のものである。
【0004】
これらの分子の最も一般的な形態は、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してシグナル伝達細胞内ドメインに融合された標的抗原を認識するモノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)の融合物である。そのような分子は、その標的のscFvによる認識に応答してT細胞の活性化をもたらす。T細胞がそのようなCARを発現する場合、それらは標的抗原を発現する標的細胞を認識し、殺傷する。いくつかのCARは腫瘍関連抗原に対して生じ、そのようなCARを発現するT細胞を使用する養子移入手法は、現在、種々のがんの処置のための臨床試験中である。
【0005】
今まで、CAR T細胞の成功の大部分は血液悪性腫瘍におけるものであった。B細胞抗原CD19に標的化されたCARは、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)を処置するために初めて上手く使用された。2017年8月に、FDAは、小児再発性または不応性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置するためのCART19(Kymriah)の使用を認可し、同じ年の10月には、成人再発性または不応性大細胞型B細胞リンパ腫について別のCD19を標的とするCAR(Yescarta)がFDAによって認可された。さらに、欧州医薬品庁(EMA)も、2018年の6月に両方のこれらの薬物の使用を認可した。しかしながら、大規模な研究にも拘わらず、固形腫瘍のためのCAR T細胞療法は、ほぼ成功していない。
【0006】
固形がんの細胞に基づく免疫治療処置の成功のために克服する必要がある重要なハードルの1つは、T細胞にとって不利なものとして広く特徴付けられた腫瘍微小環境(TME)である。CAR T細胞は、TME内に生着し、拡大できない場合がある。
CAR T細胞の持続性および活性は、サイトカインの投与によって、またはサイトカインを構成的に産生するCAR T細胞によって増強させることができる。しかしながら、これらの手法は制限がある:サイトカインの全身投与は毒性的であり得る;サイトカインの構成的産生は制御されていない増殖および形質転換をもたらし得る(Nagarkatti et al (1994) PNAS 91:7638-7642;Hassuneh et al (1997) Blood 89:610-620)。
キメラサイトカイン受容体(CCR)
WO2017/029512は、Fab様細胞外ドメインおよびIL2またはIL7受容体の細胞内ドメインを有する構成的に活性な「キメラサイトカイン受容体」(CCR)を記載する。IL7 CCRと、キメラ抗原受容体(CAR)との同時発現は、in vivoでのCAR T細胞の生着および拡大を助けることが示された(Achkova et al Society for the Immunotherapy of Cancer (SITC) meeting 2019 Abstract P146)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2017/029512号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nagarkatti et al (1994) PNAS 91:7638-7642
【非特許文献2】Hassuneh et al (1997) Blood 89:610-620
【非特許文献3】Achkova et al Society for the Immunotherapy of Cancer (SITC) meeting 2019 Abstract P146
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1-1】IL-18キメラサイトカイン受容体を例示する模式図。A.係留されたIL18-CCR:可撓性リンカーを用いてIL18R1またはIL18RAPのいずれかに連結されたトランケートされたIL18。B.リガンド誘導性IL18-CCR:リガンド(例えば、PSA)特異的scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してIL18R1またはIL18RAP細胞内ドメインに連結されている。C.TGFβ-IL18スイッチ受容体:IL18R1またはIL18RAP細胞内ドメインは、TGFβR1またはTGFβR2細胞外ドメインのいずれかに融合されている。D.TGFβ-IL18 CARエンハンサー:TGFβは活性化されたIL18受容体に結合し、第1世代のCARを増強する。E.構成的に活性なIL18-CCR:IL18R1またはIL18RAP細胞内ドメインに連結された抗体に由来する重鎖定常ドメイン(CH)および軽鎖定常ドメイン(CL)。
図1-2】同上。
図2】(図2A)in vitro試験のために使用されるベクターを例示する模式図。(図2B)形質導入されたT細胞と標的細胞との同時培養後の、標的細胞の死滅、IFNγおよびIL-2の放出を示すグラフ。
図3】in vivo試験におけるCT26-GD2+免疫応答性動物モデルの実験概要を例示する模式図。
図4】GD2 CARのみを発現する、またはGD2 CARとIL2、IL7またはIL18 CCRとを同時発現する細胞を用いた処置後のCT26-GD2+免疫応答性モデルマウスにおける腫瘍体積を示すグラフ。
図5】GD2 CARのみを発現する、またはGD2 CARとIL2、IL7またはIL18 CCRとを同時発現する細胞を用いた処置後のCT26-GD2+免疫応答性モデルマウスの末梢血中のT細胞を示すグラフ。
図6】GD2 CARのみを発現する、またはGD2 CARとIL2、IL7またはIL18 CCRとを同時発現する細胞を用いた処置後のCT26-GD2+免疫応答性モデルマウスのKaplan Meyerの生存曲線。
図7】IL7-またはIL18-CCRのいずれかを発現する活性化および非活性化CAR-T細胞に関する800個の遺伝子のCAR T細胞パネルの分析により算出された、主成分分析(PCA)の結果を示すプロット。
図8-1】IL18-CCRを発現する活性化および非活性化CAR-T細胞中での遺伝子発現を示すVolcanoプロット。IL7 CCRを、示差的遺伝子発現の計算のためのベースラインとして使用した。
図8-2】IL18-CCRを発現する活性化および非活性化CAR-T細胞中での遺伝子発現を示すVolcanoプロット。IL7 CCRを、示差的遺伝子発現の計算のためのベースラインとして使用した。
図9】1:4のE:T比の、IL7-またはIL18-CCRのいずれかを発現するCAR-T細胞と、SupT1 GD2+標的細胞との同時培養に由来するCBAアッセイを示すグラフ。
図10】酸/塩基ロイシンジッパーに由来するコイルドコイルドメインを使用して作製されたIL-18 CCRの概略図。CCRの一方のポリペプチドは、アルファヘリックスのコイルドコイルの第1のペア(コイルドコイル1、例えば、酸ジッパー)を含み、他方は第2のペア(コイルドコイル2、例えば、塩基ジッパー)を含む。これらのドメインは自発的に二量体化し、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にし、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
図11】SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体に由来するコイルドコイルドメインを使用して作製されたIL-18 CCRの概略図。この系では、CCRの1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のA鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のB鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のC鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のD鎖を含む。これらのドメインは自発的にヘテロ二量体化し、2コピーのIL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にし、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の態様の概要
本発明者らは驚くべきことに、CARおよびIL-18受容体細胞内ドメインを有するCCRを同時発現する細胞が、CARおよびIL-7またはIL-2 CCRを同時発現する同等の細胞よりも、免疫応答性動物モデルにおいてin vivoでCAR-T細胞の持続性および抗腫瘍活性の改善を示すことを見出した。
【0011】
かくして、第1の態様では、本発明は、2つのポリペプチド:
(i)(a)第1の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第1のポリペプチド;および
(ii)(a)第1の二量体化ドメインと自発的に二量体化する第2の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第2のポリペプチド
を含むキメラサイトカイン受容体(CCR)を提供する。
【0012】
二量体化ドメインは、抗体の二量体化ドメインに基づくものであってよい。この点において、第1および第2の二量体化ドメインの一方は重鎖定常ドメイン(CH)を含んでもよく、他方は軽鎖定常ドメイン(CL)を含んでもよい。
【0013】
あるいは、第1および第2の二量体化ドメインは、コイルドコイルドメインを含んでもよい。
【0014】
例えば、第1および第2の二量体化ドメインは、Fos/Junドメインまたはドッキングドメイン(DDD1)/アンカードメイン(AD1)ロイシンジッパードメインなどの、ロイシンジッパードメインを含んでもよい。
【0015】
CCRは、四量体であってもよい。この実施形態では、CCRは、4つのポリペプチド:
(i)(a)第1の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第1のポリペプチド;
(ii)(a)第2の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第2のポリペプチド;
(i)(a)第3の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第3のポリペプチド;
(ii)(a)第4の四量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第4のポリペプチド
を含む。
【0016】
この実施形態では、四量体化ドメインは、例えば、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のA、B、CおよびD鎖を含んでもよい。
【0017】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によるキメラサイトカイン受容体を含む細胞を提供する。
【0018】
細胞はまた、キメラ抗原受容体を含んでもよい。
【0019】
第3の態様では、本発明の第1の態様によるキメラサイトカイン受容体(CCR)をコードする核酸構築物であって、第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列および第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含む、核酸構築物が提供される。
【0020】
四量体CCRを生産するために、核酸構築物は、第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列;第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列;第3のポリペプチドをコードする第3の核酸配列;および第4のポリペプチドをコードする第4の核酸配列を含んでもよい。
【0021】
核酸構築物はまた、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含んでもよい。
【0022】
第4の態様では、本発明の第3の態様による核酸構築物を含むベクターが提供される。
【0023】
第5の態様では、
i)上で定義された第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;および
ii)上で定義された第2のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター
を含むキットが提供される。
【0024】
四量体CCRを生産するために、キットは、
i)上で定義された第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;
ii)上で定義された第2のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;
iii)上で定義された第3のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;および
iv)上で定義された第4のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター
を含んでもよい。
【0025】
第6の態様では、本発明の第2の態様による細胞を作製するための方法であって、本発明の第3の態様による核酸構築物;本発明の第4の態様によるベクター;または本発明の第5の態様によるベクターのキットを、ex vivoで細胞中に導入するステップを含む、方法が提供される。
【0026】
第7の態様では、本発明の第2の態様による複数の細胞を含む医薬組成物が提供される。
【0027】
第8の態様では、がんまたは自己免疫疾患の処置における使用のための本発明の第7の態様による医薬組成物が提供される。
【0028】
第9の態様では、がんまたは自己免疫疾患を処置するための方法であって、本発明の第7の態様による医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0029】
第11の態様では、がんまたは自己免疫疾患の処置のための医薬組成物の製造における使用のための、本発明の第2の態様による複数の細胞の使用が提供される。
【0030】
本発明のさらなる態様
本発明のさらなる態様は、以下の番号付き段落に提示される:
1.2つのポリペプチド:
(i)(a)第1の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン
を含む第1のポリペプチド;および
(ii)(a)第2の二量体化ドメインを含む細胞外ドメイン;
(b)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む第2のポリペプチド
を含む、キメラサイトカイン受容体(CCR)。
2.第1および第2の二量体化ドメインが自発的に二量体化する、段落1に記載のCCR。
3.第1および第2の二量体化ドメインの一方が重鎖定常ドメイン(CH)を含み、他方が軽鎖定常ドメイン(CL)を含む、段落2に記載のCCR。
4.第1および第2の二量体化ドメインがリガンドの存在下で二量体化する、段落1に記載のCCR。
5.第1および第2の二量体化ドメインが、リガンドに独立に結合する、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン結合剤(dAb)である、段落4に記載のCCR。
6.第1および第2の二量体化ドメインの一方が重鎖可変ドメイン(VH)を含み、他方が軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、一緒にリガンドに結合する、段落4に記載のCCR。
7.第1および第2の二量体化ドメインの一方がトランスフォーミング増殖因子ベータ受容体I(TBRI)の細胞外領域を含み、他方がトランスフォーミング増殖因子ベータ受容体II(TBRII)の細胞外領域を含み、リガンドがトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)である、段落4に記載のCCR。
8.第1のポリペプチドが、
(i)抗原結合性ドメイン、
(ii)リンカー、
(iii)第1のトランスフォーミング増殖因子ベータ受容体(TBR)の細胞外領域、
(iv)第1の膜貫通ドメイン、
(v)インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメイン、および
(vi)CD3z細胞内ドメイン
を含み、
第2のポリペプチドが、
(i)第2のTBRの細胞外領域、
(ii)第2の膜貫通ドメイン、および
(iii)インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)細胞内ドメイン
を含む、
または第1のポリペプチドが、
(i)抗原結合性ドメイン、
(ii)リンカー、
(iii)第1のトランスフォーミング増殖因子ベータ受容体(TBR)の細胞外領域、
(iv)第1の膜貫通ドメイン、および
(v)IL18RAP細胞内ドメイン、および
(vi)CD3z細胞内ドメイン
を含み、
第2のポリペプチドが、
(i)第2のTBRの細胞外領域、
(ii)第2の膜貫通ドメイン、および
(iii)IL18R1細胞内ドメイン
を含む、段落8に記載のCCR。
9.先行する段落のいずれかに記載のキメラサイトカイン受容体を含む細胞。
10.キメラ抗原受容体も含む、段落6に記載の細胞。
11.核酸構築物が、第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列および第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含む、段落1~8のいずれかに記載のキメラサイトカイン受容体(CCR)をコードする核酸構築物。
12.段落11に記載の核酸構築物を含むベクター。
13.i)段落1~8のいずれかで定義された第1のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター;および
ii)段落1~8のいずれかで定義された第2のポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター
を含むキット。
14.段落11に記載の核酸構築物;段落12に記載のベクター;または段落13に記載のベクターのキットを、ex vivoで細胞中に導入するステップを含む、段落9または10に記載の細胞を作製するための方法。
15.段落11または12に記載の複数の細胞を含む医薬組成物。
16.がんまたは自己免疫疾患の処置における使用のための段落15に記載の医薬組成物。
17.段落15に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、がんまたは自己免疫疾患を処置するための方法。
18.がんまたは自己免疫疾患の処置のための医薬組成物の製造における使用のための、段落9または10に記載の複数の細胞の使用。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
キメラサイトカイン受容体(CCR)
キメラサイトカイン受容体(CCR)は、サイトカイン受容体細胞内ドメインおよび細胞外ドメインを含む分子である。細胞外ドメインは、サイトカイン受容体以外のタンパク質に由来してもよい。細胞外ドメインは、IL-18受容体以外のタンパク質に由来してもよい。
【0032】
細胞外ドメインは、キメラサイトカイン受容体を構成的に活性にしてもよい。例えば、CCRは、自発的に二量体化する細胞外ドメインを含んでもよい。
【0033】
図1Eに概略的に示される配置では、CCRの一方のポリペプチドは重鎖定常ドメイン(CH)を含み、他方は軽鎖定常ドメイン(CL)を含む。これらのドメインは自発的に二量体化し、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にし、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【0034】
あるいは、構成的に活性な本発明のCCRは、自発的な二量体化または多量体化(例えば、四量体化)を与えるコイルドコイルドメインを含んでもよい。
【0035】
図10に概略的に示される配置では、CCRの一方のポリペプチドは、アルファヘリックスのコイルドコイルの第1のペア(コイルドコイル1、例えば、酸ジッパー)を含み、他方は第2のペア(コイルドコイル2、例えば、塩基ジッパー)を含む。これらのドメインは自発的に二量体化し、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にし、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【0036】
図11に概略的に示される配置では、CCRの1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のA鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のB鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のC鎖を含み;1つのポリペプチドは、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体のD鎖を含む。これらのドメインは自発的にヘテロ二量体化し、2コピーのIL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にし、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【0037】
図1Aに概略的に示される配置では、受容体はIL-18Rαおよびβ鎖を含み、鎖の1つはまた、リンカーによってポリペプチドに係留されたIL-18分子を含む。係留されたIL-18は、その永続的な物理的近接性のため、IL18R1およびIL18RAP鎖に結合し、二量体化して、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【0038】
あるいは、細胞外ドメインは、二量体化の化学的誘導因子(CID)またはリガンドの存在下でキメラサイトカイン受容体を活性にしてもよい。
【0039】
図1Bに概略的に示される配置では、CCRの第1および第2のポリペプチドは、それぞれ、リガンドに結合する、scFvまたはdAbなどの結合性ドメインをそれぞれ含む。リガンドの存在下では、細胞外ドメインは両方とも結合し、細胞内ドメインを一緒にし、リガンド依存的IL-18シグナル伝達を与える。
【0040】
リガンドは、例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)および血管内皮増殖因子(VEGF)またはCA125などの腫瘍により分泌される因子であってもよい。
【0041】
図1Cに概略的に示される配置では、CCRの第1および第2のポリペプチドはそれぞれ、TGFβ受容体に由来する細胞外ドメインを含む。例えば、一方のポリペプチドはTGFβ受容体Iに由来する細胞外ドメインを含み、他方のポリペプチドはTGFβ受容体IIに由来する細胞外ドメインを含んでもよい。TGFβの存在下では、2つのTGFβ受容体細胞内ドメインは一体化して、IL-18型シグナル伝達を引き起こす。
【0042】
図1Dに概略的に示される配置も、IL-18型シグナル伝達であり、これもTGFβの存在によって誘発される。この配置では、一方のポリペプチドは、ITAM含有細胞内ドメインおよび抗原結合性ドメインを含む。このポリペプチドは、それが標的抗原の存在下で細胞の活性化を誘導する点でCARのように作用する。このポリペプチドはまた、IL-18受容体細胞内ドメインの1つおよびTGFβ受容体細胞外ドメインも含む。CCR中の他方のポリペプチドは、第2のTGFβ受容体細胞外ドメインおよび他のIL-18受容体細胞内ドメイン鎖を含む。TGFβの存在下では、2つのTGFβ受容体細胞内ドメインは一体化して、IL-18型シグナル伝達を引き起こす。TGFβと標的抗原との両方の存在下で、細胞は活性化シグナルとIL-18型増殖シグナルとの両方を受け取る。
【0043】
IL18受容体細胞内ドメイン
IL-18は、IL-1スーパーファミリーに属し、主にマクロファージによって産生されるが、他の細胞型によっても産生され、細胞刺激における多面的な機能を有する。IL-18は、1型応答を容易にする炎症性サイトカインである。IL-12と共に、それはリポ多糖(LPS)のような微生物生成物と共に感染後の細胞媒介性免疫を誘導する。IL-18は、IL12と共に、CD4、CD8 T細胞およびNK細胞に対して作用して、マクロファージまたは他の細胞の活性化において重要な役割を果たすII型インターフェロンであるIFNγの産生を誘導する。このIL-18とIL-12との組合せは、B細胞中でIL-4依存的IgEおよびIgG1産生を阻害し、IgG2a産生を増強することが示されている。in vivoで、IL-12またはIL-15がない場合、IL-18はIFNγ産生を誘導しないが、ナイーブなT細胞のTh2細胞への分化において重要な役割を果たし、肥満細胞および好塩基球を刺激して、IL-4、IL-13、およびヒスタミンなどの化学メディエーターを産生させる。
【0044】
IL-18受容体は、誘導性成分である、低い親和性で成熟IL-18に結合するインターロイキン-18受容体1(IL18R1)および構成的に発現される共受容体インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)からなる。IL-18は、リガンド受容体IL18R1に結合し、IL18RAPの動員を誘導して、toll/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメインを介してシグナル伝達する高親和性複合体を形成する。このシグナル伝達ドメインは、炎症促進性プログラムおよびNF-κB経路を活性化するMyD88アダプタータンパク質を動員する。
【0045】
ヒトIL18受容体1(IL18受容体α鎖としても公知である)のアミノ酸配列は、Uniprot受託番号Q13478から入手可能であり、配列番号1として以下に示される。この配列において、残基22~329は細胞外ドメインを表し、残基330~350は膜貫通ドメインを表し、残基351~541は細胞質ドメインを表す。
【化1】
【0046】
1つのポリペプチドがIL18R1細胞外ドメインおよび細胞内ドメインを含む本発明の実施形態、例えば、図1Aに例示される実施形態について、ポリペプチドは、配列番号1の残基22~541を含んでもよい。
【0047】
1つのポリペプチドがIL18R1細胞内ドメインおよび異種細胞外ドメインを含む本発明の実施形態について、ポリペプチドは、配列番号1の残基330~541(ポリペプチドがIL18R1膜貫通ドメインを含む場合-以下の配列番号8および9)または残基351~541(ポリペプチドが異種膜貫通ドメインを有する場合)を含んでもよい。
【0048】
本発明のCCRは、配列番号1として示される配列の一部または全部のバリアントを含んでもよく、バリアントは、バリアント配列を含むポリペプチドが、IL18RAP細胞内ドメインを含むポリペプチドと二量体化した場合、細胞中でIL-18シグナルを誘発する能力を保持するという条件で、例えば、配列番号1として示される配列(またはその同定された部分)に対する70、80、90、95または99%の同一性を有してもよい。
【0049】
ヒトIL18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP、IL18受容体β鎖としても公知である)のアミノ酸配列は、Uniprot受託番号O95256から入手可能であり、配列番号2として以下に示される。この配列において、残基20~356は細胞外ドメインを表し、残基357~377は膜貫通ドメインを表し、残基378~599は細胞質ドメインを表す。
【化2】
【0050】
1つのポリペプチドがIL18RAP細胞外ドメインおよび細胞内ドメインを含む本発明の実施形態、例えば、図1Aに例示される実施形態について、ポリペプチドは、配列番号2の残基20~599を含んでもよい。
【0051】
1つのポリペプチドがIL18RAP細胞内ドメインおよび異種細胞外ドメインを含む本発明の実施形態、例えば、図1B~Eに例示される実施形態について、ポリペプチドは、配列番号2の残基357~599(ポリペプチドがIL18RAP膜貫通ドメインを含む場合-以下の配列番号12および13を参照されたい)または残基378~599(ポリペプチドが異種膜貫通ドメインを有する場合)を含んでもよい。
【0052】
本発明のCCRは、配列番号2として示される配列の一部または全部のバリアントを含んでもよく、バリアントは、バリアント配列を含むポリペプチドが、IL18R1細胞内ドメインを含むポリペプチドと二量体化した場合、細胞中でIL-18シグナルを誘発する能力を保持するという条件で、例えば、配列番号2として示される配列(またはその同定された部分)に対する70、80、90、95または99%の同一性を有してもよい。
【0053】
IL18細胞内ドメインのトランケーション
一部のI型サイトカイン受容体細胞内ドメインのトランケーションは、CCRが野生型バージョンに関してT細胞中で発現される場合に増殖を増加させ得ることが公知である。WO2021/023987は、構成的に活性なCCRのIL-2受容体β鎖が連続する20merの欠失を与えられた試験を記載する。ccrはT細胞中で発現され、生きた、形質導入された細胞の絶対数は、フローサイトメトリーによって評価された。IL-2受容体β鎖細胞内ドメインの、20または40アミノ酸(すなわち、それぞれ、アミノ酸266~551から266~531および266~511まで)によるトランケーションは、増殖を増加させ、最も高いレベルの増殖は、IL2Rベータaa266~511について観察された。IL-2受容体β鎖細胞内ドメインのさらなるトランケーションは、aa266~471>aa266~451>aa266~411>aa266~391>aa266~371の順で増殖の段階的減少をもたらし、その点でそれは増殖レベルの有意な効果を有しないさらなる欠失に関してプラトーに達した。したがって、一方または両方のサイトカイン受容体細胞内ドメインのトランケーションによってキメラサイトカイン受容体の活性を減少させることができる。また、所望のレベルの活性を与える細胞内ドメインのトランケーションを選択することによって、所望のレベルのサイトカイン産生を有するようにCCRを「調整」することもできる。
【0054】
トランケート型のIL18R1またはIL18RAPは、C末端から10~180アミノ酸、例えば、20~170アミノ酸、40~160、60~150、80~130または100~120アミノ酸のトランケーションを有してもよい。トランケーションは、C末端から1~40アミノ酸、例えば、C末端から5~35、10~30、または15~25アミノ酸の除去を含んでもよい。
【0055】
表1は、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメイン配列のトランケーションを示す。本発明のCCRは、表1に示されるトランケート型のIL18R1および/またはIL18RAPの1つを含んでもよい。トランケート型のIL18R1および/またはIL18RAPは、配列番号36~53、および62として示される配列の1つを有してもよい。トランケート型のIL18R1および/またはIL18RAPは、表1に示される2つのトランケートされた配列「間」の配列を有してもよく、例えば、細胞内ドメイン配列の最後の11アミノ酸を失っているIL18R1トランケーション10(配列番号44)と、細胞内ドメイン配列の最後の31アミノ酸を失っているIL18R1トランケーション9(配列番号43)との「間」の配列は、IL18R1細胞内ドメイン配列の最後の30、29、28...など...14、13および12アミノ酸のトランケーションである。
【0056】
トランケーションは、トランケート型のIL18R1またはIL18RAP細胞内ドメインを用いて作製されたCCRが、T細胞中で発現された場合、野生型(すなわち、トランケートされていない)細胞内ドメイン配列を有する同等のCCRを発現する同等の細胞と比較して、T細胞の増殖を増加させるようなものであってよい。
【表1-1】
【表1-2】
【0057】
細胞外ドメインの二量体化
本発明のキメラサイトカイン受容体は、二量体化して、IL18R1およびIL18RAP細胞内ドメインを一緒にする第1および第2のポリペプチドを含む。
【0058】
二量体化は、自発的に起こってもよく、その場合、キメラ膜貫通タンパク質は構成的に活性となるであろう。あるいは、二量体化は、二量体化の化学誘導因子(CID)またはリガンドの存在下でのみ起こってもよく、その場合、膜貫通タンパク質は、CIDまたはリガンドの存在下でのみサイトカイン型シグナル伝達を引き起こす。
【0059】
構成的に活性な系
二量体化ドメインが自発的にヘテロ二量体化する場合、それは抗体の二量体化ドメインに基づくものであってよい。特に、それは、重鎖定常ドメイン(CH)および軽鎖定常ドメイン(CL)の二量体化部分を含んでもよい。定常ドメインの「二量体化部分」は、鎖間ジスルフィド結合を形成する配列の部分である。
【0060】
「Fab」型細胞外ドメインを有するそのようなCCRの好適な配置は、図1Eに概略的に示されている。
【0061】
軽鎖定常ドメインは、配列番号3として示される配列を含んでもよく、重鎖定常ドメインは、配列番号4として示される配列を含んでもよい。
【化3】
【0062】
図1Eに示される「Fab型」CCRの例示的配列は、以下に示され、個々の成分が同定される。
【0063】
「Fab型」CCR
【化4-1】
【化4-2】
【0064】
自発的に二量体化(または多量体化)する別の型のCCRは、コイルドコイルドメインを含むものである。
【0065】
コイルドコイルは、2~7個のアルファヘリックスがロープの鎖のように一緒に巻かれている構造モチーフである。コイルドコイルは通常、7回反復と称される、反復パターン、hxxhcxcの疎水性(h)および荷電(c)アミノ酸残基を含有する。コイルドコイル境界面でのパッキングは例外的に緊密であり、側鎖間でほぼ完全なファンデルワールス接触を示す。多くの内因性タンパク質は、ロイシンジッパーなどの、コイルドコイルドメインを含む。
【0066】
ロイシンジッパーは、二量体化ドメインとして機能するスーパー二次構造である。それらの存在は、平行なアルファヘリックスにおいて接着力を生成する。単一のロイシンジッパーは、およそ7残基間隔の複数のロイシン残基からなり、一方の側に沿って走る疎水性領域と両親媒性アルファヘリックスを形成する。この疎水性領域は、二量体化のための領域を提供し、モチーフが一緒に「ジッパーで留まる」のを可能にする。ロイシンジッパーは、典型的には、20~40アミノ酸の長さ、例えば、およそ30アミノ酸である。そのようなロイシンジッパーは、c-fosおよびc-junなどの転写因子に見出され、アダプタータンパク質-1転写複合体を形成する。Jun-Fosロイシンジッパーは、scFv抗体、インターフェロンγ受容体βサブユニットならびにサイトカイン顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子および増殖ホルモンのための受容体を二量体化させるために以前に使用されていた。
【0067】
第1および/または第2のヘテロ二量体化ドメインは、配列番号54または55として示される配列を含んでもよい。第1のヘテロ二量体化ドメインは、配列番号54として示される配列を含んでもよく、第2のヘテロ二量体化ドメインは、配列番号55として示される配列を含んでもよく、またはその逆も同様である。
配列番号54:QLEKELQALEKENAQLEWELQALEKELAQ
配列番号55:QLEKKLQALKKKNAQLKWKLQALKKKLAQ
【0068】
ある特定の実施形態では、第1および第2のヘテロ二量体化ドメインは、酸性(例えば、配列番号54)または塩基性(例えば、配列番号55)ロイシンジッパーであってもよい。特に、第1のヘテロ二量体化ドメインが酸性ロイシンジッパーである場合、第2のヘテロ二量体化は塩基性ロイシンジッパーであり、およびその逆も同様である。
【0069】
第1および第2のヘテロ二量体化ドメインは、二量体化およびドッキングドメイン(DDD1)およびアンカードメイン(AD1)であってもよい。
【0070】
DDD1は、タンパク質キナーゼA(PKA)に由来する短いアルファヘリックス構造である。AD1は、A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP)に由来する短いアルファヘリックス構造である。
【0071】
DDD1ドメインは、配列番号56として示される配列を含んでもよい。
配列番号56:SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA
【0072】
AD1ドメインは、配列番号57として示される配列を含んでもよい。
配列番号57:VQIEYLAKQIVDNAIQQA
【0073】
コイルドコイルドメインは、二量体または多量体、特に、2の位数である多量体(例えば、2、4、6または8個の鎖)を形成してもよい。CCRは、例えば、SNAP-25/SNAREヘテロ四量体複合体に由来するコイルドコイルドメインを使用することによって四量体を形成してもよい。この複合体は、以下に示されるような、4個の鎖:鎖A、鎖B、鎖Cおよび鎖Dを含む。
SNAP-25およびSNARE:平行ヘテロ四量体
【化5】
【0074】
図11に概略的に示されるように、IL18RAP細胞内ドメインを含むこれらの鎖の2つと、IL18BR1細胞内ドメインを含むこれらの鎖の2つとの四量体化ドメインを連結することによって、2コピーのIL18RAP細胞内ドメインは、2コピーのIL18BR1細胞内ドメインと一体化し、構成的なIL-8シグナル伝達を与える。
【0075】
別の構成的に活性なCCRは、第1または第2のポリペプチドが不可欠のIL-18分子を含むものである。そのような配置は図1Aに概略的に示され、受容体はIL-18Rαおよびβ鎖を含み、鎖の1つはまた、リンカーによってポリペプチドに係留されたIL-18分子を含む。係留されたIL-18は、その永続的な物理的近接性のため、IL18R1およびIL18RAP鎖に結合し、二量体化して、構成的なIL-18シグナル伝達を与える。
【0076】
ヒトIL-18の配列は、Uniprot受託番号Q14116から入手可能であり、配列番号14として以下に示される。本発明のCCRは、シグナル配列を欠く、トランケート型のIL-18を含んでもよい。そのようなトランケートされた配列は、配列番号15として以下に示される。
【化6】
【0077】
IL-18分子、またはトランケートされたIL-18分子を、第1または第2のポリペプチドに係留することができる。それは、IL18R1細胞外ドメインまたはIL18RAP細胞外ドメインに対してN末端であってもよい。それを、セリン-グリシンリンカーなどのリンカーによって係留することができる。リンカーは、例えば、10~40アミノ酸の長さ、例えば、20~30または24~28アミノ酸の長さであってもよい。
【0078】
図1Aに示されるCCRを作出するための2つの例示的配列は、以下に示され、個々の成分が同定される。第1の配列において、トランケートされたIL-18分子は、IL18R1のN末端に結合し、第2の配列において、トランケートされたIL-18分子は、IL18RAPのN末端に結合している。
【0079】
係留されたIL-18-バージョン1
【化7】
【0080】
係留されたIL-18-バージョン2
【化8-1】
【化8-2】
【0081】
図1Aに例示される型のCCRを生成するためには、連結されたIL-18分子を含有するポリペプチド鎖を組換え的に発現させることのみが必要である。このポリペプチドは、IL18受容体の相補的部分の内因性の鎖と対合して、CCRを産生するであろう。したがって、IL-18がリンカーを介してIL18R1に係留されている上記のバージョン1は、内因性IL18RAPと対合するであろう;およびIL-18がリンカーを介してIL18RAPに係留されている上記のバージョン2は、内因性IL18R1と対合するであろう。
【0082】
CID/リガンド活性化系
構成的に活性な系の代替として、二量体化は、二量体化の化学誘導因子(CID)またはリガンドの存在下でのみ起こってもよく、その場合、膜貫通タンパク質は、CIDまたはリガンドの存在下でのみサイトカイン型シグナル伝達を引き起こす。
【0083】
好適な二量体化ドメインおよびCIDは、WO2015/150771に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
例えば、一方の二量体化ドメインはFK結合性タンパク質12(FKBP12)のラパマイシン結合性ドメインを含んでもよく、他方はmTORのFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含んでもよく;CIDはラパマイシンまたはその誘導体であってもよい。
【0085】
一方の二量体化ドメインはFK結合性タンパク質12(FKBP12)のFK506(タクロリムス)結合性ドメインを含んでもよく、他方の二量体化ドメインはシクロフィリンAのシクロスポリン結合性ドメインを含んでもよく;CIDはFK506/シクロスポリン融合物またはその誘導体であってもよい。
【0086】
一方の二量体化ドメインはエストロゲン結合性ドメイン(EBD)を含んでもよく、他方の二量体化ドメインはストレプトアビジン結合性ドメインを含んでもよく;CIDはエストロン/ビオチン融合タンパク質またはその誘導体であってもよい。
【0087】
一方の二量体化ドメインは糖質コルチコイド結合性ドメイン(GBD)を含んでもよく、他方の二量体化ドメインはジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)結合性ドメインを含んでもよく;CIDはデキサメタゾン/メトトレキサート融合タンパク質またはその誘導体であってもよい。
【0088】
一方の二量体化ドメインはO6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)結合性ドメインを含んでもよく、他方の二量体化ドメインはジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)結合性ドメインを含んでもよく;CIDはO6-ベンジルグアニン誘導体/メトトレキサート融合タンパク質またはその誘導体であってもよい。
【0089】
一方の二量体化ドメインはレチノイン酸受容体ドメインを含んでもよく、他方の二量体化ドメインはエコジソン(ecodysone)受容体ドメインを含んでもよく;CIDはRSL1またはその誘導体であってもよい。
【0090】
患者に外部的に投与される二量体化の化学誘導因子によって活性化されるよりもむしろ、CCRは、腫瘍により分泌される因子またはTGFβなどの、天然に存在するリガンドの存在下で二量体化してもよい。
【0091】
図1Bに概略的に示される配置では、CCRの第1および第2のポリペプチドは、それぞれがリガンドに結合する、svFvまたはdAbなどの結合性ドメインをそれぞれ含む。リガンドの存在下では、細胞外ドメインは両方とも結合し、細胞内ドメインを一緒にし、リガンド依存的IL-18シグナル伝達を与える。
【0092】
リガンドは、例えば、腫瘍により分泌される因子またはケモカインまたは細胞表面抗原であってもよい。
【0093】
いくつかのリガンド結合性ドメインが当業界で公知であり、抗体、抗体模倣物質、およびT細胞受容体の抗原結合部位に基づくものを含む。例えば、抗原結合性ドメインは、モノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv);標的抗原に対する天然の受容体に由来する結合性ドメイン;標的リガンドに対する十分な親和性を有するペプチド;ラクダ科などの単一ドメイン結合剤;Darpinとしての単一の人工結合剤;またはT細胞受容体に由来する単鎖を含んでもよい。
【0094】
用語「リガンド」は、CCRの抗原結合性ドメインによって特異的に認識および結合される実体を意味するように「抗原」と同義的に使用される。
【0095】
リガンドは、前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)および血管内皮増殖因子(VEGF)またはCA125などの腫瘍により分泌される因子であってもよい。
【0096】
図1Bに示されるようなPSAを感知するCCRを作出するための2つの例示的配列は、以下に示され、個々の成分が同定される。CCRのPSA結合性ドメインは、WO2017/029512に記載されている5D3D11および5D5A5である。第1のバージョンでは、5D3D11 scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1細胞内ドメインに結合しており;5D5A5 scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAP細胞内ドメインに結合している。第2のバージョンでは、5D5A5 scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1細胞内ドメインに結合しており;5D3D11 scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAP細胞内ドメインに結合している。
【0097】
PSA感知-バージョン1
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【0098】
PSA感知-バージョン2
【化10-1】
【化10-2】
【0099】
本発明のCCRは、細胞外環境においてTGFβの存在によって誘発され得る。例えば、図1Cに概略的に示される配置では、CCRの第1および第2のポリペプチドはそれぞれ、TGFβ受容体に由来する細胞外ドメインを含む。例えば、一方のポリペプチドはTGFβ受容体Iに由来する細胞外ドメインを含んでもよく、他方のポリペプチドはTGFβ受容体IIに由来する細胞外ドメインを含んでもよい。TGFβの存在下では、2つのTGFβ受容体細胞内ドメインは一体化して、IL-18型シグナル伝達を引き起こす。
【0100】
図1Cに示されるようなTGFβにより誘発されるCCRを作出するための2つの例示的配列は、以下に示され、個々の成分が同定される。第1のバージョンでは、TGFβR2細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1細胞内ドメインに結合しており;TGFβR1細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAP細胞内ドメインに結合している。第2のバージョンでは、TGFβR1細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAP細胞内ドメインに結合しており;TGFβR2細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1細胞内ドメインに結合している。
【0101】
TGFベータ-IL18スイッチ受容体:バージョン1
【化11-1】
【化11-2】
【0102】
TGFベータ-IL18スイッチ受容体-バージョン2
【化12】
【0103】
図1Dに概略的に示される配置も、TGFβの存在によって誘発される。この配置では、一方のポリペプチドは、ITAM含有細胞内ドメインおよび抗原結合性ドメインを含む。このポリペプチドは、それが標的抗原の存在下で細胞の活性化を誘導する点でCARのように作用する。このポリペプチドはまた、IL-18受容体細胞内ドメインの1つおよびTGFβ受容体細胞外ドメインも含む。CCR中の他方のポリペプチドは、第2のTGFβ受容体細胞外ドメインおよび他のIL-18受容体細胞内ドメイン鎖を含む。TGFβの存在下では、2つのTGFβ受容体細胞内ドメインは一体化して、IL-18型シグナル伝達を引き起こす。TGFβと標的抗原との両方の存在下で、細胞は活性化シグナルとIL-18型増殖シグナルとの両方を受け取る。
【0104】
そのようなTGFベータ-IL18 CARエンハンサーを作出するための2つの例示的配列は、以下に示され、個々の成分が同定される。この系は、抗原結合性ドメインとして抗EGFRvIIIドメイン抗体(dAb)を含み、したがって、EGFRvIIIを、モデル標的抗原として使用することができる。dAbまたはscFv中で他の結合特異性と交換することによって他の標的抗原を標的とする同等の系を作出することができる。以下に示される第1のバージョンの配列では、抗EGFRvIII dAbおよびTGFβR2細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1およびCD3z細胞内ドメインに結合しており;TGFβR1細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAP細胞内ドメインに結合している。第2のバージョンでは、抗EGFRvIII dAbおよびTGFβR1細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18RAPおよびCD3z細胞内ドメインに結合しており;TGFβR2細胞外ドメインは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介して、IL18R1細胞内ドメインに結合している。
【0105】
TGFベータ-IL18 CARエンハンサー-バージョン1
【化13-1】
【化13-2】
【0106】
TGFベータ-IL18 CARエンハンサー-バージョン2
【化14-1】
【化14-2】
【0107】
スペーサー
本発明のキメラサイトカイン受容体、特に、図1Bに概略的に示されるリガンド活性化バージョンは、リガンド結合性ドメインを膜貫通ドメインと接続し、リガンド結合性ドメインを細胞内ドメインから空間的に隔てるためのスペーサーを含んでもよい。可撓性スペーサーは、リガンド結合性ドメインを異なる方向に向けさせて、抗原結合を可能にする。
【0108】
本発明の細胞が2つまたはそれより多いキメラサイトカイン受容体を含む場合、スペーサーは同じであるか、または異なっていてもよい。本発明の細胞がキメラサイトカイン受容体(CCR)およびキメラ抗原受容体(CAR)を含む場合、CCRおよびCARのスペーサーは異なっていてもよく、例えば、異なる長さを有してもよい。CARのスペーサーは、CCRまたはそれぞれのCCRのスペーサーよりも長くてもよい。
【0109】
スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはCD8ストークを含んでもよい。あるいは、リンカーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジまたはCD8ストークと類似する長さおよび/またはドメイン間隔特性を有する代替的なリンカー配列を含んでもよい。
【0110】
ヒトIgG1スペーサーを変化させて、Fc結合性モチーフを除去することができる。
【0111】
スペーサーを改変して、それが単量体であるように、システイン残基を除去することができる。単量体CD8ストークの配列は、配列番号24として上に示されている。
【0112】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜に広がるCCRの配列である。それは疎水性アルファヘリックスを含んでもよい。膜貫通ドメインは、CD28に由来してもよく、良好な受容体安定性を与える。
【0113】
図1Aおよび図1Eに概略的に示される構成的に活性なCCRならびに図1Bに概略的に示されるリガンドにより活性化されたCCRは、それぞれ、配列番号8および12として上に示されているIL18R1およびIL18RAP膜貫通ドメインを含んでもよい。あるいは、一方または両方の鎖のTMドメインを、異なるTMドメイン配列に交換してもよい。
【0114】
図1Cおよび図1Dに概略的に示されるTGFβにより活性化されたCCR系は、それぞれ、配列番号32および30として上に示されているTGFβ1およびTGFβ2膜貫通ドメインを含んでもよい。あるいは、一方または両方の鎖のTMドメインを、異なるTMドメイン配列に交換してもよい。
【0115】
リガンド
図1Bに概略的に示されるCCR型の第1および第2のポリペプチドは、リガンドに特異的に結合する。
【0116】
リガンドは、腫瘍により分泌される因子またはケモカインなどの可溶性リガンドであってもよい。
【0117】
あるいは、リガンドは、細胞表面抗原などの膜結合リガンドであってもよい。
【0118】
用語「可溶性リガンド」は、細胞の一部ではない、または細胞に結合していないが、細胞外空間中で、例えば、目的の組織の体液中で自由に移動するリガンドまたは抗原を示すために使用される。可溶性リガンドは、個体の血清、血漿または他の体液中に無細胞状態で存在してもよい。
【0119】
可溶性リガンドは、がんなどの特定の疾患の存在または病理と関連していてもよい。
【0120】
可溶性リガンドは、がんセクレトーム、すなわち、がん幹細胞、非幹細胞または周囲の間質に由来する、腫瘍によって分泌される因子の収集物の一部であってもよい。可溶性リガンドは、腫瘍細胞によって分泌または発散され得る(次の小節を参照されたい)。
【0121】
可溶性リガンドは、疾患または疾患組織に特徴的であってよい。それは、健康な対象に対して疾患を有する対象において、または健康な組織に対して疾患組織において、専ら、またはより高レベルで見出され得る。可溶性リガンドは、健康な対象に対して疾患を有する対象において、または健康な組織に対して疾患組織において、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍または100,000倍高いレベルで発現され得る。
【0122】
用語「細胞表面抗原」および「細胞表面リガンド」は、「膜結合抗原」および「膜結合リガンド」と同義的に使用され、細胞の表面上に結合または発現しているリガンドを意味する。細胞表面リガンドは、例えば、膜貫通タンパク質であってもよい。
【0123】
細胞表面リガンドが見出される細胞は、がん細胞などの標的細胞であってもよい。
【0124】
細胞表面リガンドは、がんなどの特定の疾患の存在または病理と関連していてもよい。あるいは、細胞表面リガンドは、疾患状態と必ずしも関連することなく、標的細胞(例えば、B細胞)の細胞型に特徴的であってもよい。
【0125】
細胞表面リガンドが疾患または疾患組織に特徴的である場合、それは、健康な対象に対して疾患を有する対象において、または健康な組織に対して疾患組織において、関連細胞上で専ら、またはより高レベルで見出され得る。細胞表面リガンドは、健康な対象に対して疾患を有する対象の細胞上で、または健康な組織に対して疾患組織において、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍または100,000倍高いレベルで発現され得る。
【0126】
腫瘍により分泌される因子
CCRによって認識されるリガンドは、腫瘍によって分泌されるか、または腫瘍から発散される可溶性リガンドであってもよい。
【0127】
この「腫瘍により分泌される因子」は、例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、血管内皮増殖因子(VEGF)またはがん抗原-125(CA-125)であってもよい。
【0128】
腫瘍により分泌される因子は、サイトカインではない可溶性リガンドであってもよい。したがって、本発明のCCRは、非サイトカインリガンドに対する結合特異性を、サイトカイン受容体の細胞内ドメイン上に移植する。
【0129】
前立腺特異的抗原(PSA)
可溶性リガンドは、前立腺特異的抗原(PSA)であってもよい。
【0130】
ガンマ-セミノタンパク質またはカリクレイン-3(KLK3)としても公知である前立腺特異的抗原(PSA)は、KLK3遺伝子によってヒトにおいてコードされる糖タンパク質酵素である。PSAは、カリクレイン関連ペプチダーゼファミリーのメンバーであり、前立腺の上皮細胞によって分泌される。
【0131】
PSAは、健康な前立腺を有する男性の血清中に少量で存在するが、前立腺がんおよび他の前立腺障害を有する個体においては上昇する。
【0132】
PSAは、237残基の糖タンパク質であり、KLK2によって活性化される。その生理学的役割は、精子の放出をもたらす精液の凝固物成分の液化である。がんにおいては、PSAは新生物の増殖および転移のプロセスに関与し得る。
【0133】
PSAは、典型的なHis-Asp-Serトライアドおよび他のカリクレイン関連ペプチダーゼのものと類似する触媒ドメインを有するキモトリプシン様セリンプロテアーゼである。PSAの結晶構造は、i)モノクローナル抗体(mAb)8G8F5との複合体ならびにii)mAb 5D5A5および5D3D11とのサンドイッチ複合体中で得られた(Stura et al (J. Mol. Biol. (2011) 414:530-544)。
【0134】
Bavat et al Avicenna J. Med. Biotechnol. 2015, 7:2-7およびLeinonen (2004) 289:157-67に記載されたクローン2G2-B2、2D8-E8、IgG1/Kを含む、様々なモノクローナル抗体が公知である。
【0135】
本発明のCCRは、例えば、8G8F5、5D5A5または5D3D11などのPSA結合mAbに由来する6個のCDRまたはVHおよび/もしくはVLドメインを含んでもよい。
【0136】
CCRが、PSA上の異なるエピトープに結合する、2つの抗原結合特異性を含む場合、1つは例えば、5D3D11に基づいてもよく、1つは例えば、5D5A5に基づいてもよい。
【0137】
5D3D11および5D5A5のVHおよびVLのアミノ酸配列は、配列番号21、23、26および27として上に示されている。
【0138】
癌胎児性抗原(CEA)
可溶性リガンドは、CEAであってもよい。
【0139】
癌胎児性抗原(CEA)は、細胞接着に関与する高度に関連する糖タンパク質のセットを記載する。CEAは通常、胎児発生中の消化管組織において産生されるが、誕生前に産生は停止する。したがって、CEAは通常、健康な成人の血液中にごく低レベルでのみ存在する。しかしながら、一部の型のがんにおいてはその血清レベルは上昇し、これは、それを臨床試験における腫瘍マーカーとして使用することができることを意味する。
【0140】
CEAは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)細胞表面アンカー糖タンパク質であり、その特殊なシアロフコシル化された糖型は、機能的な結腸癌L-セレクチンおよびE-セレクチンリガンドとして働き、結腸癌細胞の転移性播種にとって重要であり得る。免疫学的には、それらは分化抗原群CD66のメンバーとして特徴付けられている。
【0141】
CEAおよび関連遺伝子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するCEAファミリーを構成する。ヒトにおいては、癌胎児性抗原ファミリーは、29種の遺伝子からなり、そのうちの18種は正常に発現される。以下は、癌胎児性抗原関連細胞接着タンパク質をコードするヒト遺伝子の一覧である:CEACAM1、CEACAM3、CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、CEACAM8、CEACAM16、CEACAM18、CEACAM19、CEACAM20、CEACAM21
【0142】
CEAを標的とする様々な抗体がWO2011/034660に記載されている。
【0143】
CEAに対するCCRを発現する細胞は、例えば、結腸直腸がんの処置において有用であり得る。
【0144】
血管内皮増殖因子(VEGF)
可溶性リガンドは、VEGFであってもよい。
【0145】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管形成および血管新生を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質である。それは、血液循環が不十分である場合に組織への酸素供給を回復させる系の一部である。VEGFの血清濃度は、気管支喘息および糖尿病において高い。VEGFの正常な機能は、胚発生の間の新血管、傷害後の新血管、運動後の筋肉、および遮断された血管をバイパスするための新血管(副行循環)を作出することである。
【0146】
VEGFが過剰発現される場合、それは疾患に寄与し得る。固形がんは、十分な血液供給なく限られたサイズを超えて増殖することができない;VEGFを発現することができるがんは、増殖および転移することができる。
【0147】
VEGFは、システイン-ノット増殖因子の血小板由来増殖因子ファミリーのサブファミリーである。それらは、血管形成(胚性循環系のde novoでの形成)と、血管新生(元々存在する血管系からの血管の増殖)との両方に関与する重要なシグナル伝達タンパク質である。
【0148】
VEGFファミリーは、哺乳動物においては、5つのメンバー:VEGF-A、胎盤増殖因子(PGF)、VEGF-B、VEGF-CおよびVEGF-Dを含む。
【0149】
ベバシズマブ(Avastin)およびラニビズマブ(Lucentis)などの、VEGFに対する様々な抗体が公知である。
【0150】
がん抗原125(CA-125)
CA-125は、卵巣がんと関連し、卵巣がん検出のための最も頻繁に使用されるバイオマーカーである。CA-125は卵巣がんのためのマーカーとして最も知られているが、それは子宮内膜がん、卵管がん、肺がん、乳がんおよび消化管がんを含む他のがんにおいても上昇することがある。
【0151】
ヒトCA-125(ムチン-16としても公知である)の配列は、NCBI受託番号078966から入手可能である。
【0152】
OC125およびM11を含む、いくつかのCA125結合性モノクローナル抗体が公知である(Nustad et al 1996, Tumour Biol. 17:196-329)。この研究では、CA125抗原に対する26種のモノクローナル抗体の特異性が調査された。CA125抗原は、OC125様(A群)またはM11様(B群)として抗体を分類する、ただ2つの主要な抗原性ドメインを担持することが見出された。
【0153】
本発明のキメラサイトカイン受容体は、そのような抗体に由来する抗原結合性ドメインを含んでもよい。そのようなCCRを含む細胞は、例えば、卵巣がんの処置において有用であり得る。
【0154】
腫瘍により分泌される因子(または、膜結合型の場合、膜貫通タンパク質)は、以下の非網羅的な一覧から選択され得る:
【0155】
ALK遺伝子再配置および過剰発現を与える突然変異型のALKタンパク質
アルファ-フェトタンパク質(AFP)
ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)
ベータ-ヒト絨毛ゴナドトロピン(ベータ-hCG)
BRAF V600突然変異を与える突然変異B-REFタンパク質
C-kit/CD117
CA15-3/CA27.29
CA19-9
カルシトニン
CD20
クロモグラニンA(CgA)
サイトケラチン断片21-1
EGFR遺伝子突然変異分析
エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR)
フィブリン/フィブリノゲン
HE4
HER2/neu遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現
免疫グロブリン
KRAS遺伝子突然変異分析
乳酸デヒドロゲナーゼ
ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)
核マトリクスタンパク質22
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)
サイログロブリン
ウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(uPA)およびプラスミノゲンアクチベーター阻害因子(PAI-1)
【0156】
ケモカイン
ケモカインは、走化性サイトカインである。細胞遊走は、細胞外基質中に埋め込まれ、固定されたケモカイン勾配によって導かれる。CXCL12のような正に荷電したケモカインは、負に荷電したECM分子に結合する。これらの勾配は、がん細胞および免疫細胞帰巣のための通り道を提供する。T細胞に対する作用は、細胞傷害性T細胞の帰巣にとって阻害的であると考えられるが、調節性T細胞は誘引されると考えられる。
【0157】
ケモカインは、質量およそ8~10キロダルトンであり、その3次元形状を形成するための鍵である保存された位置に4個のシステイン残基を有する。
【0158】
一部のケモカインは、炎症促進性であると考えられ、免疫系の細胞を感染部位に動員するための免疫応答中に誘導され得るが、他のものは恒常的であると考えられ、組織維持または発達の正常なプロセスの間に細胞の遊走を制御するのに関与している。
【0159】
ケモカインは、4つの主なサブファミリー:CXC、CC、CX3CおよびXCに分類されている。これらのタンパク質は全て、その標的細胞の表面上に選択的に見出されるケモカイン受容体と呼ばれるGタンパク質結合膜貫通受容体と相互作用することによってその生物学的効果を発揮する。
【0160】
ケモカインの主な役割は、細胞の遊走を導く化学誘引物質として作用することである。ケモカインによって誘引される細胞は、ケモカインの供給源に向かう増大するケモカイン濃度のシグナルを辿る。一部のケモカインは、リンパ球をリンパ節に方向付けることなど、免疫監視のプロセス中に免疫系の細胞を制御し、それらがこれらの組織中に存在する抗原提示細胞と相互作用することによって病原体の侵入についてスクリーニングすることができるようにする。他のケモカインは炎症性であり、細菌感染、ウイルスおよび他の薬剤に応答して様々な細胞から放出される。それらの放出は、インターロイキン1などの炎症性サイトカインによって刺激されることが多い。炎症性ケモカインは、白血球のための化学誘引物質として主に機能し、単球、好中球および他のエフェクター細胞を、血液から、感染部位または組織損傷の部位に動員する。ある特定の炎症性ケモカインは、細胞を活性化して、免疫応答を開始させるか、または創傷治癒を促進する。それらは多くの異なる細胞型によって放出され、自然免疫系と適応免疫系との両方の細胞を導くように働く。
【0161】
CCケモカイン
CCケモカイン(またはβ-ケモカイン)タンパク質は、そのアミノ末端の近くに、2個の隣接するシステイン(アミノ酸)を有する。CCケモカインリガンド(CCL)-1~-28と呼ばれる、哺乳動物について報告されたこのサブグループの少なくとも27種の異なるメンバーがあった;CCL10は、CCL9と同じである。このサブファミリーのケモカインは通常、4個のシステイン(C4-CCケモカイン)を含有するが、少数のCCケモカインは、6個のシステインを有する(C6-CCケモカイン)。C6-CCケモカインは、CCL1、CCL15、CCL21、CCL23およびCCL28を含む。CCケモカインは、単球ならびにNK細胞および樹状細胞などの他の細胞型の遊走を誘導する。
【0162】
CCケモカインの例としては、単球が血流を出て、周囲の組織に進入して、組織マクロファージになるのを誘導する、単球走化性タンパク質-1(MCP-1またはCCL2)が挙げられる。
【0163】
CCL5(またはRANTES)は、受容体CCR5を発現するT細胞、好酸球および好塩基球などの細胞を誘引する。
【0164】
CXCケモカイン
CXCケモカイン(またはα-ケモカイン)の2個のN末端システインは、この名称において「X」を用いて表される、1個のアミノ酸によって隔てられている。哺乳動物において記載された17種の異なるCXCケモカインが存在し、CXCモチーフの最初のシステインの直前にグルタミン酸-ロイシン-アルギニン(または略してELR)の特定のアミノ酸配列(またはモチーフ)を有するもの(ELR陽性)と、ELRモチーフを有しないもの(ELR陰性)との2つのカテゴリーに細分される。ELR陽性CXCケモカインは、好中球の遊走を特異的に誘導し、ケモカイン受容体CXCR1およびCXCR2と相互作用する。
【0165】
Cケモカイン
ケモカインの第3の群は、Cケモカイン(またはγケモカイン)として公知であり、それがわずか2個のシステイン;1個のN末端システインおよび下流の1個のシステインを有する点で他の全てのケモカインと異なる。2個のケモカインは、このサブグループについて記載されており、XCL1(リンホタクチン-α)およびXCL2(リンホタクチン-β)と呼ばれる。
【0166】
CX3Cケモカイン
CX3Cケモカインは、2個のシステインの間に3個のアミノ酸を有する。現在のところ発見された唯一のCX3Cケモカインは、フラクタルキン(またはCX3CL1)と呼ばれる。それは、いずれもそれを発現する細胞の表面に分泌および係留され、それによって、化学誘引物質および接着分子としての両方として働く。
【0167】
ケモカイン受容体は、白血球の表面上に見出される7回膜貫通ドメインを含有するGタンパク質共役受容体である。現在までおよそ19種の異なるケモカイン受容体が特徴付けられており、それらが結合するケモカインの型に応じて4つのファミリー;CXCケモカインに結合するCXCR、CCケモカインに結合するCCR、唯一のCX3Cケモカイン(CX3CL1)に結合するCX3CR1、および2種のXCケモカイン(XCL1およびXCL2)に結合するXCR1に分割される。それらは多くの構造的特徴を共有する;それらは、サイズ(約350アミノ酸を有する)において類似しており、短い酸性のN末端、3個の細胞内および3個の細胞外親水性ループを有する、7個のらせん状膜貫通ドメイン、ならびに受容体調節にとって重要なセリンおよびトレオニン残基を含有する細胞内C末端を有する。ケモカイン受容体の最初の2個の細胞外ループはそれぞれ、これらのループの間でのジスルフィド架橋の形成を可能にする保存されたシステイン残基を有する。Gタンパク質は、ケモカイン受容体のC末端と共役して、受容体活性化後の細胞内シグナル伝達を可能にするが、ケモカイン受容体のN末端ドメインは、リガンド結合特異性を決定する。
【0168】
CXCL12
CXCL12は、リンパ球に対して強く走化性である。CXCL12は、CXCR4依存的機構を介して骨髄から内皮前駆細胞(EPC)を動員することによって血管新生において重要な役割を果たす。発癌および腫瘍進行と関連する新血管形成における非常に重要な因子にすることがCXCL12のこの機能である。CXCL12はまた、受容体CXCR4を発現するがん細胞がリガンドCXCL12を放出する転移標的組織に誘引される腫瘍転移における役割も有する。
【0169】
CXCL12の受容体は、CXCR4である。本発明のCCRは、IL-2受容体などのサイトカイン受容体に由来する細胞内ドメインに連結されたCXCR4に由来するCXCL12結合性ドメインを含んでもよい。
【0170】
IL2のCXCR4共役発現は、がん療法のための治療的T細胞の生着を支援する。多発性骨髄腫では、そのようなCCRを発現する細胞は、細胞を移動させ、骨髄環境を変化させ得る。そのような細胞はまた、固形腫瘍微小環境を改変することによって固形がんの処置において有用である。
【0171】
CXCR7もまた、CXCL12に結合する。
【0172】
CCL2
ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)はまた、単球走化性タンパク質1(MCP1)および低分子誘導性サイトカインA2とも称される。CCL2は、単球、記憶T細胞、および樹状細胞を、組織傷害または感染のいずれかによって作られる炎症部位に動員する。
【0173】
CCR2およびCCR4は、CCL2に結合する2つの細胞表面受容体である。
【0174】
本発明のCCRは、そのリガンド結合性ドメイン中にCCR2またはCCR4のCCL2結合部位を含んでもよい。
【0175】
細胞表面抗原
リガンドは、膜貫通タンパク質などの細胞表面抗原であってもよい。
【0176】
細胞表面抗原は、CD22であってもよい。
【0177】
CD22、または分化抗原群-22は、レクチンのSIGLECファミリーに属する分子である。それは成熟B細胞の表面上に見出され、比較的程度は低いが一部の未熟B細胞上にも見出される。一般的に言えば、CD22は、免疫系の過剰活性化および自己免疫疾患の発症を防止する調節分子である。
【0178】
CD22は、シアル酸に特異的に結合する糖結合性膜貫通タンパク質であり、そのN末端に免疫グロブリン(Ig)ドメインが位置する。Igドメインの存在は、CD22を、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーにする。CD22は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達のための阻害的受容体として機能する。
【0179】
CD22の発現の増加は、非ホジキンリンパ腫および他のリンパ腫において見られる。エプラツズマブ、イノツズマブオゾガマイシン、m971およびm972を含む、CD22を標的とする種々のモノクローナル抗体が公知である。
【0180】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明の細胞はまた、1つまたは複数のキメラ抗原受容体を含んでもよい。CARは、腫瘍関連抗原に特異的であってよい。あるいは、CARは、それが病原性B細胞によって産生される自己抗体に結合するような、自己抗原、またはその一部を、その細胞外ドメイン中に含んでもよい。
【0181】
古典的なCARは、細胞外抗原認識ドメイン(結合剤)を細胞内シグナル伝達ドメイン(細胞内ドメイン)に接続するキメラI型膜貫通タンパク質である。結合剤は、典型的には、モノクローナル抗体(mAb)に由来する単鎖可変断片(scFv)であるが、それは抗体のような、またはリガンドに基づく抗原結合部位を含む他の形式に基づくものであってよい。膜貫通ドメインは、細胞膜中にタンパク質を固定し、細胞内ドメインにスペーサーを接続する。
【0182】
初期のCAR設計は、FcεR1またはCD3ζのいずれかのγ鎖の細胞内部分に由来する細胞内ドメインを有していた。結果として、これらの第1世代の受容体は免疫学的シグナル1を伝達し、これは同族標的細胞のT細胞死滅を誘発するのに十分なものであったが、増殖および生存するようにT細胞を完全に活性化することはできなかった。この制限を克服するために、複合細胞内ドメインを構築した:T細胞共刺激分子の細胞内部分と、CD3ζのものとの融合物は、抗原認識後に同時的に活性化および共刺激シグナルを伝達することができる第2世代の受容体をもたらす。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28のものである。これは、最も強力な共刺激シグナル、すなわち、T細胞増殖を誘発する免疫学的シグナル2を供給する。生存シグナルを伝達する、密接に関連するOX40および41BBなどの、TNF受容体ファミリー細胞内ドメインを含む、一部の受容体も記載されている。活性化、増殖および生存シグナルを伝達することができる細胞内ドメインを有する、さらにより強力な第3世代のCARがここで記載されている。
【0183】
CARをコードする核酸を、例えば、レトロウイルスベクターを使用してT細胞に移行させることできる。このように、多数の抗原特異的T細胞を、養子細胞移入のために生成することができる。CARが標的抗原に結合する場合、これは、活性化シグナルの、それが発現されるT細胞への伝達をもたらす。かくして、CARは、T細胞の特異性および細胞傷害性を、標的抗原を発現する細胞に対して方向付ける。
【0184】
本発明の細胞は、1つまたは複数のCARを含んでもよい。
【0185】
CARは、抗原結合性ドメイン、スペーサードメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含んでもよい。細胞内ドメインは、T細胞活性化シグナルを伝達するドメインを含むか、またはそれと会合してもよい。
【0186】
CAR抗原結合性ドメイン
抗原結合性ドメインは、抗原を認識するCARの部分である。
【0187】
いくつかの抗原結合性ドメインが当業界で公知であり、抗体、抗体模倣物質、およびT細胞受容体の抗原結合部位に基づくものを含む。例えば、抗原結合性ドメインは、モノクローナル抗体に由来する単鎖可変断片(scFv);標的抗原の天然のリガンド;標的に対する十分な親和性を有するペプチド;ラクダ科などの単一ドメイン結合剤;Darpinとしての単一の人工結合剤;またはT細胞受容体に由来する単鎖を含んでもよい。
【0188】
細胞表面抗原
CARは、細胞表面抗原、すなわち、腫瘍細胞などの標的細胞の表面上で発現される膜貫通タンパク質などの実体を認識してもよい。
【0189】
CARは、腫瘍関連細胞表面抗原に特異的に結合することができる。
【0190】
種々の腫瘍関連抗原(TAA)が公知であり、その一部は表2に示される。本発明において使用される抗原結合性ドメインは、そこに示されるようなTAAに結合することができるドメインであってもよい。
【表2】
【0191】
CARがB細胞リンパ腫または白血病抗原(CD19、CD20、CD52、CD160またはCD5など)を認識する場合、CCRは、CD22などの別のB細胞抗原を認識してもよい。
【0192】
前立腺がん関連抗原
CARは、前立腺幹細胞抗原(PSCA)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)などの、前立腺がんと関連する細胞表面抗原に特異的に結合してもよい。
【0193】
PSCAは、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー細胞膜糖タンパク質である。それは、前立腺がんの大部分において上方調節され、膀胱および膵臓のがんにおいても検出される。
【0194】
7F5(Morgenroth et al (Prostate (2007) 67:1121-1131);1G8(Hillerdal et al (2014) BMC Cancer 14:30);およびHa1-4.117(Abate-Daga et al (2014) 25:1003-1012)などの、様々な抗PSCA抗体が公知である。
【0195】
本発明のCCR発現細胞はまた、これらの抗体の1つに基づく抗原結合性ドメインを含んでもよい抗PSCA CARを発現してもよい。
【0196】
PSMAは、膜に存在する亜鉛金属酵素である。PSMAは、ヒト前立腺において強力に発現され、多くの他の組織における発現よりも100倍多い。がんにおいては、その発現は上方調節され、前立腺がんにおいては2番目に最も上方調節される遺伝子と呼ばれており、非がん性前立腺と比較して8~12倍増加する。ヒト前立腺および前立腺がんにおける発現に加えて、PSMAは、例えば腎臓、乳房、結腸などのあらゆる型の固形腫瘍の正常な血管系ではなく、腫瘍新血管において高度に発現されることもわかっている。
【0197】
7E11、J591、J415、およびHybritech PEQ226.5およびPM2J004.5などの様々な抗PSMA抗体が公知であり、それぞれPSMAの異なるエピトープに結合する(Chang et al (1999) Cancer Res 15:3192-8)。
【0198】
本発明のCCR発現細胞はまた、これらの抗体の1つに基づく抗原結合性ドメインを含んでもよい抗PSMA CARを発現してもよい。
【0199】
例えば、CCRは、配列番号35として示される配列を有する、J591に基づくscFvを含んでもよい。
【化15】
【0200】
自己抗体受容体
自己免疫疾患は、機能する身体部分に対する異常な免疫応答から生じる状態である。自己免疫は、それから生じる損傷または病状を有する、または有しない、自己反応性免疫応答(例えば、自己抗体、自己反応性T細胞)の存在である。自己抗体は、多くの自己免疫障害の特質である。
【0201】
CARに基づく手法を使用して、異常な、または望ましくない免疫応答と関連する、自己免疫疾患および他の障害を処置することができる。自己免疫疾患と関連する病原性B細胞を同定し、死滅させるために、CAR細胞外ドメインは、1つまたは複数の自己抗体に結合してもよい。細胞外ドメインは、例えば、抗イディオタイプ抗体などの自己抗体結合実体を含んでもよいか、またはそれは単に自己抗原自体、またはその一部を含んでもよい。
【0202】
自己免疫障害としては、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症(MS)、円形脱毛症、アジソン病、悪性貧血、乾癬、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、粘膜尋常性天疱瘡(mPV)、皮膚粘膜尋常性天疱瘡(mcPV)、膜性腎症(MN)および重症筋無力症(MG)が挙げられる。
【0203】
CARの細胞外ドメインは、自己抗原の全部または一部、例えば、細胞接着タンパク質デスモグレイン3(DSG3)またはDSG1;筋肉特異的受容体チロシンキナーゼ(MuSK);アセチルコリン受容体(AChR);ホスホリパーゼ(Phosphlipase)A2受容体(PLA2R)またはアクアポリン-4(AQP4)を含有してもよい。
【0204】
他の望ましくない免疫応答としては、アレルギー、宿主対移植片応答および第VIII因子に対する抗体を生じる血友病A患者などの、療法に対する免疫応答が挙げられる。この後者の例では、その細胞外ドメインとしてFVIIIの一部または全部を含むCARの使用は、FVIII凝固因子を中和する抗体およびB細胞を破壊し得る。
【0205】
CAR膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜に広がるCARの配列である。それは疎水性アルファヘリックスを含んでもよい。CAR膜貫通ドメインは、CD28に由来してもよく、良好な受容体安定性を与える。
【0206】
CARシグナルペプチド
本明細書に記載のCARおよびCCRは、それがT細胞などの細胞中で発現される場合、新生タンパク質が、小胞体、および次いで、細胞表面に方向付けられ、そこでそれが発現されるようなシグナルペプチドを含んでもよい。
【0207】
シグナルペプチドのコアは、単一のアルファヘリックスを形成する傾向を有する疎水性アミノ酸の長い伸長物を含有してもよい。シグナルペプチドは、転位の間にポリペプチドの適切なトポロジーを強化するのを助ける、アミノ酸の短い正に荷電した伸長物から始まってもよい。シグナルペプチドの終わりに、典型的には、シグナルペプチダーゼによって認識および切断されるアミノ酸の伸長物が存在する。シグナルペプチダーゼは、転位の完了の間または後のいずれかで切断して、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質を生成することができる。次いで、遊離シグナルペプチドは、特定のプロテアーゼによって消化される。
【0208】
シグナルペプチドは、分子のアミノ末端にあってもよい。
【0209】
シグナルペプチドは、上に配列番号5または11として示された配列を含んでもよい。
【0210】
CAR細胞内ドメイン
細胞内ドメインは、CARのシグナル伝達部分である。それはCARの細胞内ドメインの一部であるか、またはそれと会合してもよい。抗原認識後、受容体クラスター、天然のCD45およびCD148は、シナプスから排除され、シグナルは細胞に伝達される。最も一般的に使用される細胞内ドメイン成分は、3つのITAMを含有するCD3-ゼータのものである。これは、抗原が結合した後、T細胞に活性化シグナルを伝達する。CD3-ゼータは、完全に能力のある活性化シグナルを提供することができず、さらなる共刺激シグナル伝達が必要とされ得る。共刺激シグナルは、T細胞の増殖および生存を促進する。2つの主な型の共刺激シグナル:Igファミリー(CD28、ICOS)およびTNFファミリー(OX40、41BB、CD27、GITRなど)に属するものが存在する。例えば、キメラCD28およびOX40を、CD3-ゼータと共に使用して、増殖/生存シグナルを伝達することができるか、または3つ全部を一緒に使用することができる。
【0211】
細胞内ドメインは、
(i)CD3ゼータに由来する細胞内ドメインなどの、ITAM含有細胞内ドメイン;および/または
(ii)CD28もしくはICOSに由来する細胞内ドメインなどの、共刺激ドメイン;および/または
(iii)生存シグナルを伝達するドメイン、例えば、OX-40、4-1BB、CD27もしくはGITRなどのTNF受容体ファミリー細胞内ドメイン
を含んでもよい。
【0212】
WO2015/150771;WO2016/124930およびWO2016/030691に記載されたものなどの、抗原認識部分がシグナル伝達部分に由来する別々の分子上にある、いくつかの系が記載されている。本発明のCARはしたがって、シグナル伝達ドメインを含む別々の細胞内シグナル伝達成分と相互作用することができる、抗原結合性ドメインおよび膜貫通ドメインを含む抗原結合成分を含んでもよい。本発明のベクターは、そのような抗原結合性成分および細胞内シグナル伝達成分を含むCARシグナル伝達系を発現してもよい。
【0213】
核酸配列/構築物
本発明はまた、本発明のCCRをコードする核酸配列および核酸構築物を提供する。
【0214】
本発明は、図1Aに概略的に示されるキメラサイトカイン受容体を生産するための核酸配列を提供する。上で説明された通り、組換え手段によってこのCCRの2つの鎖のうちの一方をコードすることだけが必要であるが、これは、それが細胞内で相補的内因性鎖と会合するであろうためである。核酸配列は、IL-18分子に係留されたインターロイキン-18受容体1(IL18R1)またはインターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)を含むポリペプチドをコードし、以下の一般構造:
IL18-L-IL18R1ecto-TM-IL18R1endoまたは
IL18-L-IL18RAPecto-TM-IL18RAPendo
(ここで、
IL18は、トランケートされた、または非機能的なシグナルペプチドと共にIL18分子をコードする核酸配列であり、
Lは、可撓性リンカーをコードする核酸配列であり、
IL18R1ectoは、インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
IL18R1endoは、IL18R1細胞内ドメインをコードする核酸配列であり、
IL18RAPectoは、インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)の細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
IL18RAPendoは、IL18RAPの細胞内ドメインをコードする核酸配列である)
を有してもよい。
【0215】
本発明の核酸構築物は、第1のポリペプチドをコードする第1の核酸配列、および第2のポリペプチドをコードする第2の核酸配列を含んでもよい。
【0216】
核酸構築物は、以下の構造:
ecto1-スペーサー1-TM1-IL18R1endo-coexpr-ecto2-スペーサー2-TM2-IL18RAPendo、または
ecto1-スペーサー1-TM1-IL18RAPendo-coexpr-ecto2-スペーサー2-TM2-IL18R1endo
(ここで、
ecto1は、第1のポリペプチドの細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー1は、第1のポリペプチドのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM1は、第1のポリペプチドの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
IL18R1endoは、インターロイキン-18受容体1(IL18R1)細胞内ドメインをコードする核酸配列であり、
coexprは、別の実体として両方のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり、
ecto2は、第2のポリペプチドの細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
スペーサー2は、第2のポリペプチドのスペーサーをコードする核酸配列であり、
TM2は、第2のポリペプチドの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
IL18RAPendoは、インターロイキン-18受容体アクセサリータンパク質(IL18RAP)の細胞内ドメインをコードする核酸配列である)
を有してもよい。
【0217】
第1および第2のポリペプチドの細胞外ドメインは、自発的に二量体化して、構成的に活性なCCRを産生することができてもよい。endo1およびendo2は、例えば、いずれかの順序の重鎖定常ドメイン(HC)および軽鎖定常ドメイン(LC);またはロイシンジッパーなどの、コイルドコイル構造を形成することができる2つのドメインをコードしてもよい。
【0218】
核酸構築物がT細胞などの細胞中で発現される場合、それは第1および第2のポリペプチドが細胞表面で同時発現されるような切断部位で切断されるポリペプチドをコードする。
【0219】
本発明はまた、本発明の第1および第2のポリペプチドならびにCARをコードする核酸構築物を提供する。そのような構築物は、構造:
(i)CCRecto1-CCRスペーサー1-CCRTM1-CCRendo1-coexpr1-CCRecto2-CCRスペーサー2-CCRTM2-CCRendo2-coexpr2-CARAgB-CARスペーサー-CARTM-CARendo;
(ii)CCRecto1-CCRスペーサー1-CCRTM1-CCRendo1-coexpr1-CARAgB-CARスペーサー-CARTM-CARendo-coexpr2-CCRecto2-CCRスペーサー2-CCRTM2-CCRendo2;または
(iii)CARAgB-CARスペーサー-CARTM-CARendo-coexpr1-CCRecto1-CCRスペーサー1-CCRTM1-CCRendo1-coexpr2-CCRecto2-CCRスペーサー2-CCRTM2-CCRendo2
(ここで、
CCRecto1は、CCRの第1のポリペプチドの細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
CCRスペーサー1は、CCRの第1のポリペプチドのスペーサーをコードする核酸配列であり、
CCRTM1は、CCRの第1のポリペプチドの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
CCRendo1は、CCRの第1のポリペプチドの細胞内ドメインをコードする核酸配列であり、
CCRecto2は、CCRの第2のポリペプチドの細胞外ドメインをコードする核酸配列であり、
CCRスペーサー2は、CCRの第2のポリペプチドのスペーサーをコードする核酸配列であり、
CCRTM2は、CCRの第2のポリペプチドの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
CCRendo2は、CCRの第2のポリペプチドの細胞内ドメインをコードする核酸配列であり、
coexpr1およびcoexpr2は、2つのフランキング配列の同時発現を可能にする、同じか、または異なっていてもよい核酸配列であり、
CARAgBは、CARの抗原結合性ドメインをコードする核酸配列であり、
CARスペーサーは、CARのスペーサーをコードする核酸配列であり、
CARTMは、CARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり、
CARendoは、CARの細胞内ドメインをコードする核酸配列である)
を有してもよい。
【0220】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」は、互いに同義であることが意図される。
【0221】
当業者であれば、いくつかの異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、遺伝子コードの縮重性の結果として同じポリペプチドをコードし得ることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、日常的な技術を使用して、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するように、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響しないヌクレオチド置換を作製することができることが理解されるべきである。
【0222】
本発明による核酸は、DNAまたはRNAを含んでもよい。それらは、一本鎖または二本鎖であってもよい。それらはまた、その中に合成または改変ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる型の改変が当業界で公知である。これらのものとしては、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端でのアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が挙げられる。本明細書に記載される使用の目的のために、ポリヌクレオチドを当業界で利用可能な任意の方法によって改変することができることが理解されるべきである。そのような改変を実行して、目的のポリヌクレオチドのin vivoでの活性または寿命を増強することができる。
【0223】
ヌクレオチド配列と関連する用語「バリアント」、「ホモログ」または「誘導体」は、配列からの、または配列に対する、1個(または複数)の核酸の任意の置換、変形形態、改変、置き換え、欠失または付加を含む。
【0224】
上の構造において、「coexpr」は、第1および第2の両方のCARの同時発現を可能にする核酸配列である。それは、核酸構築物が切断部位によって結合された、2つもしくはそれより多いCCR、または1つのCCRと、CARとを含むような、切断部位をコードする配列であってもよい。切断部位は、ポリペプチドが産生される場合に、それがいかなる外部的な切断活性も必要とせずに個々のペプチドに即時に切断されるような、自己切断性であってもよい。
【0225】
切断部位は、CCRの第1および第2のポリペプチド;またはCCRおよびCARが分離されるのを可能にする任意の配列であってもよい。
【0226】
用語「切断」は、便宜上本明細書で使用されるが、切断部位は、古典的な切断以外の機構によってペプチドを個々の実体に分離させ得る。例えば、手足口病ウイルス(FMDV)2A自己切断性ペプチド(以下を参照されたい)について、「切断」活性:宿主細胞プロテイナーゼによるタンパク質分解、自己タンパク質分解または翻訳効果を説明するための様々なモデルが提唱されている(Donnelly et al (2001) J. Gen. Virol. 82:1027-1041)。切断部位が、タンパク質をコードする核酸配列間に位置する場合、タンパク質を別々の実体として発現させる限り、そのような「切断」の正確な機構は本発明の目的にとって重要ではない。
【0227】
切断部位は、フューリン切断部位であってもよい。
【0228】
フューリンは、スブチリシン様プロタンパク質変換酵素ファミリーに属する酵素である。このファミリーのメンバーは、潜在性前駆体タンパク質をその生物学的に活性な生成物にプロセシングするプロタンパク質変換酵素である。フューリンは、その対合した塩基性アミノ酸プロセシング部位で前駆体タンパク質を効率的に切断することができるカルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼである。フューリン基質の例としては、プロ副甲状腺ホルモン、トランスフォーミング増殖因子ベータ1前駆体、プロアルブミン、プロ-ベータ-セクレターゼ、膜型マトリックスメタロプロテイナーゼ1、プロ神経増殖因子のベータサブユニットおよびフォン・ヴィレブランド因子が挙げられる。フューリンは、塩基性アミノ酸標的配列(標準的には、Arg-X-(Arg/Lys)-Arg’)のすぐ下流でタンパク質を切断し、ゴルジ装置中で豊富である。
【0229】
切断部位は、タバコエッチウイルス(TEV)切断部位であってもよい。
【0230】
TEVプロテアーゼは、キモトリプシン様プロテアーゼである高度に配列特異的なシステインプロテアーゼである。それは、その標的切断部位に非常に特異的であり、したがって、in vitroとin vivoとの両方において融合タンパク質の制御された切断のために頻繁に使用される。コンセンサスTEV切断部位は、ENLYFQ\S(式中、「\」は切断されるペプチド結合を示す)である。ヒト細胞などの哺乳動物細胞は、TEVプロテアーゼを発現しない。かくして、本発明の核酸構築物がTEV切断部位を含み、哺乳動物細胞中で発現される実施形態では、外因性TEVプロテアーゼも哺乳動物細胞中で発現されなければならない。
【0231】
切断部位は、自己切断性ペプチドをコードしてもよい。
【0232】
「自己切断性ペプチド」とは、タンパク質および自己切断性ペプチドを含むポリペプチドが産生される場合、それがいかなる外部的な切断活性も必要とすることなく、異なる個別の第1および第2のポリペプチドに即時に「切断」されるか、または分離されるように機能するペプチドを指す。
【0233】
自己切断性ペプチドは、アフトウイルスまたはカルジオウイルスに由来する2A自己切断性ペプチドであってもよい。アフトウイルスおよびカルジオウイルスの一次2A/2B切断は、それ自身のC末端での2A「切断」によって媒介される。手足口病ウイルス(FMDV)およびウマ鼻炎Aウイルスなどのアフトウイルスでは、2A領域は、約18アミノ酸の短いセクションであり、タンパク質2BのN末端残基(保存的プロリン残基)と一緒になって、それ自身のC末端での「切断」を媒介することができる自律エレメントを表す(上記のDonelly et al (2001))。
【0234】
「2A様」配列は、アフトウイルスまたはカルジオウイルス以外のピコルナウイルス、「ピコルナウイルス様」昆虫ウイルス、C型ロタウイルスならびにトリパノソーマ種内の反復配列および細菌配列に見出されている(上記のDonnelly et al (2001))。本発明の核酸構築物は、1つまたはこれらの2A様切断配列をコードしてもよい。好適な配列は、上に与えられている(配列番号10)。
【0235】
ベクター
本発明はまた、本発明によるCCRおよび必要に応じて、1つまたは複数のCARをコードする1つまたは複数の核酸配列を含む、ベクター、またはベクターのキットを提供する。そのようなベクターを使用して、それが本発明によるCCRを発現するように宿主細胞中に核酸配列を導入することができる。
【0236】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクター、またはトランスポゾンに基づくベクターまたは合成mRNAであってもよい。
【0237】
ベクターは、T細胞またはNK細胞などの細胞をトランスフェクトまたは形質導入することができてもよい。
【0238】
細胞
本発明は、本発明のCCRおよび必要に応じて、1つまたは複数のCARを含む細胞を提供する。
【0239】
細胞は、本発明の核酸またはベクターを含んでもよい。
【0240】
細胞は、T細胞またはNK細胞などの細胞溶解性免疫細胞であってもよい。
【0241】
T細胞またはTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の型である。それらは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの他のリンパ球から識別することができる。以下にまとめられるように、様々な型のT細胞が存在する。
【0242】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞および記憶B細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスにおいて他の白血球を支援する。TH細胞は、その表面上にCD4を発現する。TH細胞は、それらが抗原提示細胞(APC)の表面上にMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された時に活性化する。これらの細胞は、異なる型の免疫応答を容易にするために異なるサイトカインを分泌する、TH1、TH2、TH3、TH17、Th9、またはTFHを含む、いくつかのサブタイプの1つに分化することができる。
【0243】
細胞溶解性T細胞(TC細胞、またはCTL)は、ウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関与している。CTLは、その表面にCD8を発現する。これらの細胞は、全ての有核細胞の表面上に存在する、MHCクラスIと会合した抗原に結合することによってその標的を認識する。調節性T細胞によって分泌されるIL-10は、アデノシンおよび他の分子を介して、CD8+細胞を、実験的自己免疫性脳脊髄炎などの自己免疫疾患を防止する、アネルギー状態に不活化することができる。
【0244】
記憶T細胞は、感染が解消した後も長期間持続する抗原特異的T細胞のサブセットである。それらはその同種抗原への再曝露の際に多数のエフェクターT細胞に急速に拡大し、かくして、免疫系に過去の感染に対する「記憶」を提供する。記憶T細胞は、3つのサブタイプ:中心記憶T細胞(TCM細胞)および2つの型のエフェクター記憶T細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)を含む。記憶細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであってもよい。記憶T細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0245】
以前はサプレッサーT細胞として知られた、調節性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持にとって重要である。その主な役割は、免疫反応の終わりに向かってT細胞性免疫をシャットダウンすること、および胸腺における陰性選択のプロセスを逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。
【0246】
2つの主なクラスのCD4+Treg細胞が記載されている-天然に存在するTreg細胞および適応性Treg細胞。
【0247】
天然に存在するTreg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても公知である)は、胸腺中で生じ、発生中のT細胞と、TSLPにより活性化された骨髄(CD11c+)および形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方との間の相互作用と関連している。天然に存在するTreg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在によって他のT細胞から識別することができる。FOXP3遺伝子の突然変異は、調節性T細胞発生を防止し、致命的な自己免疫疾患IPEXを引き起こし得る。
【0248】
適応性Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても公知である)は、正常な免疫応答の間に生じ得る。
【0249】
細胞は、ナチュラルキラー細胞(またはNK細胞)であってもよい。NK細胞は、自然免疫系の一部を形成する。NK細胞は、MHC非依存的様式でウイルス感染細胞に由来する自然シグナルに対する迅速な応答をもたらす。
【0250】
NK細胞(自然リンパ球の群に属する)は、大型顆粒リンパ球(LGL)と定義されており、BおよびTリンパ球を生成する共通のリンパ前駆細胞から分化した第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺および胸腺において分化および成熟した後、循環中に入ることが公知である。
【0251】
本発明のCCR発現細胞は、上記の細胞型のいずれかであってもよい。
【0252】
本発明の第1の態様によるTまたはNK細胞は、患者自身の末梢血(第1の団体)から、またはドナーの末梢血に由来する造血幹細胞移植の設定で(第2の団体)、または関係のないドナーに由来する末梢血(第3の団体)からのいずれかでex vivoで作出することができる。
【0253】
あるいは、本発明の第1の態様によるTまたはNK細胞は、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のTまたはNK細胞へのex vivoでの分化に由来してもよい。あるいは、その溶解機能を保持し、治療剤として作用し得る不死化T細胞系を使用することができる。
【0254】
これら全ての実施形態では、CCR発現細胞は、ウイルスベクターを用いた形質導入、DNAまたはRNAのトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つによって、CCRまたはそれぞれのCCRをコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0255】
本発明の細胞は、対象に由来するex vivoのTまたはNK細胞であってもよい。TまたはNK細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)試料に由来してもよい。TまたはNK細胞を、例えば、抗CD3モノクローナル抗体を用いた処理により、本発明の第1の態様によるCCRを提供する分子をコードする核酸を形質導入する前に活性化および/または拡大することができる。
【0256】
本発明のTまたはNK細胞を、
(i)対象または上に列挙された他の供給源に由来するTまたはNK細胞含有試料の単離;および
(ii)CCRをコードする1つまたは複数の核酸配列を用いたTまたはNK細胞の形質導入またはトランスフェクション
によって作製することができる。
【0257】
次いで、TまたはNK細胞を、抗原結合性ポリペプチドの抗原結合性ドメインの発現に基づいて精製、例えば、選択することができる。
【0258】
医薬組成物
本発明はまた、本発明による複数の細胞を含有する医薬組成物にも関する。
【0259】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含んでもよい。医薬組成物は、必要に応じて、1つまたは複数のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含んでもよい。そのような製剤は、例えば、静脈内輸注にとって好適な形態であってもよい。
【0260】
処置方法
本発明は、本発明の細胞(例えば、上記の医薬組成物中の)を対象に投与するステップを含む、疾患を処置および/または防止するための方法を提供する。
【0261】
疾患を処置するための方法は、本発明の細胞の治療的使用に関する。疾患と関連する少なくとも1つの症状を軽減する、低減させる、もしくは改善するため、および/または疾患の進行を減速させる、低減させる、もしくは遮断するために、細胞を存在する疾患または状態を有する対象に投与することができる。
【0262】
疾患を防止するための方法は、本発明の細胞の予防的使用に関する。疾患の原因を防止するか、もしくは弱めるため、または疾患と関連する少なくとも1つの症状の発生を減少させる、もしくは防止するために、そのような細胞を、疾患にまだ罹ったことがない、および/または疾患のいかなる症状も示していない対象に投与してもよい。対象は、疾患の素因を有してもよい、または疾患を発症するリスクがあると考えられる。
【0263】
方法は、
(i)TまたはNK細胞含有試料を単離するステップ;
(ii)本発明によって提供される核酸配列またはベクターを用いてそのような細胞を形質導入またはトランスフェクトするステップ;
(iii)(ii)に由来する細胞を対象に投与するステップ
を含んでもよい。
【0264】
TまたはNK細胞含有試料を、例えば、上記のように、対象から、または他の供給源から単離することができる。TまたはNK細胞を、対象自身の末梢血(第1の団体)から、またはドナーの末梢血に由来する造血幹細胞移植の設定で(第2の団体)、または関係のないドナーに由来する末梢血(第3の団体)から単離することができる。
【0265】
本発明は、疾患の処置および/または防止における使用のための本発明のCCR発現細胞を提供する。
【0266】
本発明はまた、疾患の処置および/または防止のための医薬の製造における本発明のCCR発現細胞の使用にも関する。
【0267】
本発明の方法によって処置および/または防止される疾患は、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(腎細胞)、白血病、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵がん、前立腺がんおよび甲状腺がんなどのがん性疾患であってもよい。
【0268】
具体的には、がんは、固形がんであってよい。がんは、いわゆる「冷たい腫瘍(cold tumour)」、すなわち、強力な免疫応答を誘発する可能性が低い腫瘍をもたらしてもよい。冷たい腫瘍は、腫瘍細胞を攻撃し、それらを死滅させないようT細胞を抑制することができる細胞によって取り囲まれている傾向がある。冷たい腫瘍は、低い免疫浸潤を有し、通常、免疫療法に応答しない。冷たい腫瘍の例としては、結腸、前立腺、卵巣および膵臓のがん、神経芽腫および神経膠芽腫が挙げられる。
【0269】
がんは、比較的低いレベルの新抗原を含むがんであってもよい。新抗原は、細胞形質転換の間に生じる非同義突然変異によって生成される腫瘍特異的抗原である。それらは宿主ゲノムにとって外来であるため、それらは中枢性トレランスを受けず、高度に免疫原性であり得る。低レベルの新抗原を含むがんの例としては、前立腺がん、膵がんおよび卵巣がん、神経芽腫、腎癌およびメルケル細胞癌が挙げられる。
【0270】
CCRがリガンドPSAによって活性化される場合、がんは前立腺がんであってもよい。
【0271】
本発明の細胞は、がん細胞などの標的細胞を死滅させることができてもよい。標的細胞は、標的細胞の近くにある腫瘍により分泌されるリガンドまたはケモカインリガンドの存在を特徴としてもよい。標的細胞は、標的細胞表面での腫瘍関連抗原(TAA)の発現と共に可溶性リガンドの存在を特徴としてもよい。
【0272】
本発明の方法によって処置および/または防止される疾患は、自己免疫疾患、アレルギー、または不適切な、もしくは望ましくない免疫応答と関連する他の状態であってもよい。
【0273】
自己免疫障害としては、セリアック病、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症(MS)、円形脱毛症、アジソン病、悪性貧血、乾癬、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、粘膜尋常性天疱瘡(mPV)、皮膚粘膜尋常性天疱瘡(mcPV)、膜性腎症(MN)および重症筋無力症(MG)が挙げられる。
【0274】
本発明の細胞は、自己反応性または他の望ましくない抗体(移植片または処置に対する抗体など)を産生する細胞であることができ得る。本発明の細胞は、自己抗体を産生するB細胞を死滅させることができてもよい。標的細胞は、自己抗体などの望ましくない抗体の発現および/またはそれらを分泌する能力を特徴としてもよい。
【0275】
本発明の細胞および医薬組成物は、上記の疾患の処置および/または防止における使用のためのものであってよい。
【0276】
本発明の細胞および医薬組成物は、上記の方法のいずれかにおける使用のためのものであってよい。
【0277】
本発明は、ここで実施例を用いてさらに説明されるが、実施例は、本発明の実行において当業者を支援するのに役立つことを意味し、いかなる方法であっても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0278】
(実施例1)
in vitroでのCARとIL-18 CCRとの同時発現の効果の調査
【0279】
構成的に活性なIL-18シグナル伝達キメラサイトカイン受容体を、IL-18受容体細胞内ドメインを「Fab」型細胞外ドメインに連結することによって生産した(図1Eに概略的に示される実施形態を参照されたい)。この構造は、抗体の天然の二量体化成分、すなわち、重鎖および軽鎖定常領域に由来する二量体化ドメインを使用する。キメラサイトカイン受容体は、2つの鎖;抗体κ軽鎖(配列番号3として示される)およびIL18R1 TMドメイン(配列番号8)および細胞内ドメイン(配列番号9)を含む第1のポリペプチド;ならびに抗体重鎖CH1(配列番号4)およびIL18RAP TMドメイン(配列番号12)および細胞内ドメイン(配列番号13として示される)を含む第2のポリペプチドを有する。
【0280】
2Aペプチドコード配列によって隔たれた、これらの2つのポリペプチドをコードする核酸配列を、インフレームにクローニングした。
【0281】
ベクターを、図2Aに概略的に例示されるように構築した。両方のベクターは、a)WO2013/153391に記載されている選別自殺遺伝子RQR8;ならびにb)WO2015/132604に記載されたGD2結合性ドメインおよび41BB-CD3z細胞内ドメインを有する第2世代のCARを発現した。一方のベクターは、IL-18 CCRも発現した。
【0282】
T細胞にこれらの構築物を形質導入した後、野生型SupT1細胞(GD2を発現しない)またはGD2を発現するように形質導入されたSupT1標的細胞のいずれかと同時培養した。簡単に述べると、12.5×10個の形質導入されたCAR T細胞を、5×10個の標的細胞と同時培養し、1:4のE:T比を得た。標的細胞死滅をFACSによって分析し、IL2およびIFNγの上清中への放出をELISAによって分析した。その結果を、図2Bに示す。IL-18 CCRの同時発現は標的細胞死滅を維持したが、CARのみを発現する細胞と比較してサイトカイン放出を改善した。
【0283】
(実施例2)
CT26-GD2+結腸癌動物モデルにおけるin vivoでのIL2、IL7またはIL18 CCRの同時発現の効果の比較
Balb/cマウスにおける確立された結腸癌免疫応答性モデルにおいてCARおよびCCRを同時発現するマウスT細胞の生着および抗腫瘍活性を評価するためのin vivoでの実験を行った。
【0284】
実験設計は、図3に概略的に示されている。簡単に述べると、6~8週齢のBalb/c雌マウスに、GD2を発現するように改変された1×10個のCT26結腸癌細胞を皮下注射した。9日間にわたる腫瘍生着後、マウスに5Gyの全身照射(TBI)を亜致死的に照射した。GD2 CARを発現する単一ベクター(GD2 CAR);またはGD2 CARと、IL2-CCR、IL-7 CCRまたはIL-18 CCRのうちの1つを同時発現する2シストロン性ベクターのいずれかを細胞に形質導入することによって、マウスCAR-T細胞を作製した。TBIの1日後、1×10個の形質導入されたCAR T細胞を、静脈内注射によって投与した。腫瘍増殖を、カリパスによって週2回モニタリングした。末梢血を7日毎に採取し、マーカーCD3およびThy1.1によって形質導入されたCAR T細胞の存在について分析した。CD3マーカーを使用して、総CD45+免疫細胞内のリンパ球集団を同定した。THY1.1を使用して、総T細胞集団内の形質導入されたCD3 T細胞を同定した。腫瘍が1cmの最大の長さもしくは幅に達した時、またはマウスの体重が突然20%以上減少した時、マウスを安楽死させた。CAR T細胞追跡のために安楽死の時点で脾臓および腫瘍を収集した。
【0285】
結果を図4(腫瘍体積)および図5(末梢血T細胞計数)に示す。
【0286】
CT26 GD2腫瘍は、GD2 CARのみを発現する細胞またはIL2-CCRもしくはIL7-CCRと共にGD2 CARを同時発現する細胞によって使われなかった。対照的に、IL18-CCRを発現する2シストロン性ベクターを形質導入されたCAR T細胞は、強力な抗腫瘍活性を示し、確立された腫瘍負荷を有するBalb/cマウスの生存を延長させたと共に、8匹のマウスのうちの4匹において50日目まで腫瘍が検出不可能であった。
【0287】
IL18-CCR GD2 CAR T細胞による腫瘍制御の増強はまた、CAR T細胞のより高い生着も伴っていた。IL18 CCR CAR T細胞は、最も高い程度の生着を示し、輸注後10日目でピークに達し、実験の終了まで形質導入されたCAR T細胞の高い末梢持続性を持続させた。
【0288】
Kaplan Meyer生存曲線(図6)は、IL2またはIL7 CCRを発現するCAR-T細胞を受ける動物における生存改善の程度を示したが、これはIL18 CCRを発現するCAR-T細胞を受ける動物において大きく増加した。IL18 CCR形質導入コホートにおけるマウスの50%が、CAR T細胞注射後、50日目まで生存していた。
【0289】
(実施例3)
IL7またはIL-18 CCRを発現する活性化および非活性化CAR-T細胞中での遺伝子発現の差異の調査
IL7-またはIL-18 CCRを発現する活性化および非活性化CAR-T細胞について、800種の遺伝子パネルの発現を分析した。主成分分析(PCA)の結果を、図7に示す。非活性化状態と活性化状態との両方において、IL7-またはIL-18 CCRを発現するCAR-T細胞間で明確な差異が観察された。
【0290】
これをさらに調査するために、個々の遺伝子に関する発現の変化を、示差遺伝子発現計算のためのベースラインとしてIL7 CCRを使用して、活性化状態と非活性化状態との両方においてIL18 CCR発現細胞について分析した。
【0291】
その結果を、図8に示す。一部の遺伝子、とりわけ、ケモカインCCL22、CCL17、CXCL8およびインターロイキンIL1Aをコードする遺伝子の発現は、IL-7 CCRを発現するCAR-T細胞と比較して、IL-18 CCRを発現するCAR-T細胞において有意に上方調節される。
【0292】
この観察は、IL-7およびIL-18 CCRがCAR-T機能を支援する機構は根本的に異なってもよいことを示唆する。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、IL-18 CCRが、CAR-T細胞自体に対する直接効果を有することよりもむしろ、宿主免疫系と相互作用することによって機能すると予測する。これは、サイトカインとしてのIL-18が、IL-7と違って、T細胞増殖を直接誘導しないという事実と一致している。CCL22、CXCL8およびCCL17などのケモカインの示差的発現は、IL-18 CCRが、主に宿主免疫系の細胞を腫瘍部位に動員することによって機能することを示唆する。
【0293】
この機構は、CT-26-GD2+マウスモデルにおける観察された結果を支持すると考えられる。この免疫応答性動物モデルは、冷たい腫瘍、すなわち、免疫障害がある可能性が高いものと考えることができる。冷たい腫瘍は、T細胞を抑制することができる細胞によって取り囲まれている傾向があり、それらは典型的には、免疫療法に応答しない。免疫応答性動物モデルはまた、低レベルの新抗原を有する。このモデルを使用して、IL-18 CCRを発現するCAR-T細胞は、IL-7 CCRを発現するCAR T細胞よりも腫瘍の制御において有意に良好であった。IL-18 CCRを発現するCAR-T細胞による腫瘍部位への宿主免疫細胞の動員は、CAR-T細胞自体の活性をブーストするよりもこの結腸癌腫瘍モデルに取り組むのに重要であり得る。
【0294】
対照的に、強力な免疫応答を誘発する可能性が高い熱い腫瘍(hot tumour)、または新抗原に誘導される腫瘍殺傷活性を誘発することができるより高いレベルの新抗原が存在する腫瘍は、例えば、IL2-またはIL7-CCRの増殖効果によってブーストされる可能性が高い。
【0295】
上記の明細書に記載された全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された方法およびシステムの様々な改変および変更が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と関連して記載してきたが、特許請求される本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、本発明を実行するための記載された様式の様々な改変は、分子生物学または関連する分野の当業者には自明であり、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】