(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ナノスコピックデバイスの3次元積層配置、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
H10N 10/00 20230101AFI20241018BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20241018BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H10N10/00 S
H10N10/01
H01L29/06 601N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524755
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022082862
(87)【国際公開番号】W WO2023094400
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301033396
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンハルト ヨッヒェン
(57)【要約】
ナノスコピックデバイス(10)の3次元配置(100)であって、配置(100)は、足場構造(11)と、複数のナノスコピックデバイス(10)とを備え、ナノスコピックデバイス(10)は、電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成され、ナノスコピックデバイス(10)は、足場構造(11)に付着され、ナノスコピックデバイス(10)の大部分は、電子量子波束のより高い伝送確率の1つの同じ伝送方向に向けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスコピックデバイスの3次元配置(100)であって、
-足場構造(11)、及び
-複数のナノスコピックデバイス(10)であって、電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成される、前記ナノスコピックデバイス(10)、を備え、
-前記ナノスコピックデバイス(10)は前記足場構造(11)に付着されており、前記ナノスコピックデバイス(10)の大部分は、前記電子量子波束のより高い伝送確率の1つの同じ伝送方向に向けられている、ナノスコピックデバイスの3次元配置(100)。
【請求項2】
前記ナノスコピックデバイス(10)の各々は、少なくとも2つの接点(2)を備え、前記2つの接点(2)間の電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成されている、請求項1に記載の3次元配置(100)。
【請求項3】
前記ナノスコピックデバイス(10)のほぼ各々は、他の2つのナノスコピックデバイス(10)の間に接続されている、請求項1または2に記載の3次元配置(100)。
【請求項4】
ナノスコピックデバイス(10)の各々は、環境の熱を前記2つの接点(2)の前記電気化学電位の差に変換するようにさらに構成されている、請求項2または3に記載の3次元配置(100)。
【請求項5】
前記2つの接点(2)は、第1の接点(2)と第2の接点(2)とを含み、前記3次元配置(100)は、
前記2つの接点(2)間に接続され、前記電子量子波束を少なくとも部分的に位相コヒーレントな方法で前記第1の接点(2)から前記第2の接点(2)へ、場合によっては前記第2の接点(2)から前記第1の接点(2)へ伝送するように構成された非往復的伝送構造をさらに備える、請求項2から4のいずれか1項に記載の3次元配置(100)。
【請求項6】
前記非往復的伝送は、前記第1端子及び前記第2端子の一方または両方に外部から電圧または電流を印加しなくても存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の3次元配置(100)。
【請求項7】
前記足場構造(11)の反対側に接続された少なくとも2つの電気接点(12)をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の3次元配置(100)。
【請求項8】
10個以上、好ましくは10
3個以上のナノスコピックデバイス(10)が前記足場構造(11)に付着されている、先行請求項のいずれか1項に記載の3次元配置(100)。
【請求項9】
前記足場構造(11)は、複数の繊維またはナノチューブ、複数のシートまたは箔、複数のグラフェン層、または複数の半導体キャリアのうちの1つ以上を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の3次元配置(100)。
【請求項10】
前記足場構造は電気接続構造を備える、先行請求項のいずれか1項に記載の3次元配置。
【請求項11】
ナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法であって、
-足場構造をもたらすこと、及び
-複数のナノスコピックデバイスを前記足場構造に付着させることであって、前記ナノスコピックデバイスは少なくとも2つの接点を備え、前記2つの接点間の電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成される、前記付着させること、を含み、
前記ナノスコピックデバイスを前記足場構造に付着させることは、前記ナノスコピックデバイスのほぼ各々が他の2つのナノスコピックデバイス間に接続されるように行われ、すべてのナノスコピックデバイスが、前記電子量子波束の1つの同じ伝送方向に向けられる、前記方法。
【請求項12】
前記足場構造は、複数の繊維またはナノチューブ、複数のシートまたは箔、複数のグラフェン層、または複数の半導体キャリアのうちの1つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のナノスコピックデバイスを、対称性を破るプロセスを適用して、前記ナノスコピックデバイスを1つまた前記電子量子波束の同一の伝送方向に沿って配向するように付着させる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記足場構造に電気接点を適用することをさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
-熱力学の第0法則または第2法則からの逸脱を達成するためのデバイス、
-システムを熱平衡状態からシフトさせること、
-1つの物体内または複数の物体間で温度差や電圧差を発生させること、
-粒子、情報、運動量、角運動量、電荷、磁気モーメント、またはエネルギーを輸送すること、
-電流及び/または電力を生成することののうちの1つ以上のための、請求項1から11のいずれか1項に記載のナノスコピックデバイスの3次元配置の使用。
【請求項16】
前記デバイスは1mK~4000Kの範囲の温度で動作する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記第1波または第2波のエネルギー分布は、少なくとも部分的には熱エネルギーによって生成される、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記デバイスは、コンデンサまたはバッテリーなどのエネルギー、波、物質の貯蔵システムを充電する、請求項11から17のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノスコピックデバイスの3次元配置、その製造方法、及びその使用について説明する。この配置の中では、多数のナノスコピックデバイスが一緒に組み立てられ、その各々は熱駆動による小さな電圧または電流を生成して複合構造になり、全体の構造の電気出力は個々のナノスコピックデバイスの出力の合計とほぼ比例するようにする。
【背景技術】
【0002】
以下の説明では、以下の文書を参照する。
[Mannhart, 2018a] J. Mannhart, Journal of Superconductivity and Novel Magnetism 31, 1649 (2018)
[Mannhart, 2018b] J. Mannhart and D. Braak, Journal of Superconductivity and Novel Magnetism 31, 1649 (2018)
[Bredol, 2019] P. Bredol et al., arXiv:1912.11948v1 (2019)
[Mannhart, 2019] J. Mannhart et al., Physica E 109, 198-200 (2019)
[Mannhart, 2020] J. Mannhart, Journal of Superconductivity and Novel Magnetism 33, 249 (2020)
[Lettiere, 2020] B.R. Lettiere et al., ACS Appl. Nano Mater. 3, 77 2020
[Mannhart, 2021] J. Mannhart, H. Boschker, and P. Bredol, Nano Express 2, 014998 (2021)
[Bredol, 2021] P. Bredol et al., Phys. Rev. B 104, 115413 (2021)
[Mannhart_001]WO2019/166187として公開された特許出願
[Mannhart_002] WO2020/001822として公開された特許出願
[Mannhart_003] WO2020/053333として公開された特許出願
[Mannhart_004] WO2021/018515として公開された特許出願
【0003】
出版物[Mannhart, 2018a, b;2019;2020;2021;Bredol, 2019]及び特許出願[Mannhart_001]から[Mannhart_004]には、電子量子波束の非往復的伝送と非弾性散乱プロセスによって熱をナノエレメントの2つの接点の電気化学ポテンシャルの差に変換する、今後ナノエレメントまたはナノスコピックデバイスと呼ばれるナノデバイス及び分子が開示されている。熱は、ナノエレメントの接点で熱電気ノイズ(ナイキスト・ジョンソンノイズ)を生成するために使用され、それは、kTのオーダーであり、kはボルツマン定数、Tは温度である。生成される電気化学ポテンシャルの差は、熱ノイズよりも数桁小さくなる。
【0004】
したがって、マクロ的な電気出力を生成するには、多数の(好ましくは1020個超)ナノエレメントを電気的に接続する必要がある。出版物[Bredol 2019]では、例えば、このようなナノエレメントの対応する2次元配置が示されている。
【0005】
ナノデバイスの3次元配置は、ナノデバイスが天然の3次元結晶の単位セルを形成するという特定のケースについて言及されている[Bredol 2019]。しかし、天然の結晶を形成しないナノデバイスに対し、または天然の結晶では最適な構造が得られない場合、例えば、そのような結晶ではナノデバイスの最適な回路接続が得られない、または外的熱バスへの最適な熱接続が得られない場合に対し、そのような配置を形成するためのさらなる方法が求められている。
【0006】
当業者は、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を考慮することで、追加の特徴及び利点を認識する。
【0007】
ナノエレメントの出力は小さく、そのエネルギースケールはkTよりもはるかに小さい。例えば、mW、Wなどの実用的なエネルギーのデバイス出力を得るには、ナノエレメントの正しい極性に注意しながら、多数のナノエレメントを電気的に接続して配置しなければならない。ここでは、106個以上のマクロの数のナノエレメントの接続が最も有用である。デバイスの機能にとって、個々のナノエレメントがデバイス外部にある熱バスに熱的に良好に接続されていることも重要である。したがって、ナノエレメントを3次元配置で組み立て、説明したように接続し、外的熱バスに結合する方法が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の第1の態様によれば、ナノスコピックデバイスの3次元配置は、足場構造、及び複数のナノスコピックデバイスであって、特に非弾性散乱プロセスと共に、電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成される、ナノスコピックデバイス、を備え、ナノスコピックデバイスは足場構造に付着されており、ナノスコピックデバイスの大部分は、電子量子波束の1つの同じ伝送方向に向けられる。専門用語では、大部分とは通常50%以上を意味するが、特定の状況では70%、80%、または90%以上を目指す必要がある。
【0009】
より具体的には、非往復的伝送確率とは、ナノスコピックデバイスが、電子などの粒子の伝送確率が逆伝送方向の伝送確率よりも高い伝送方向を含むことを意味する。ナノスコピックデバイスは、少なくとも主に、より高い伝送確率の1つの同じ伝送方向の方向に沿って、すなわちデバイスの粒子がより高い伝送確率を有する方向に沿って配向される。
【0010】
したがって、この問題は、足場要素として機能する第2の材料の表面に、微視的スケールでナノエレメントを局所的に微視的に組み立てることによって解決される。このような足場要素が組み合わされて、ナノエレメントの所望の配置に最適化されたマクロな3次元の物体である足場が形成される。いくつかの実装形態では、この足場自体がまた、熱伝導体の役割も果たす場合がある。他の実装形態では、第3の材料の別の3次元構造がこの機能を果たす場合がある。
【0011】
したがって、全体の配置は、足場を形成する少数の足場要素に付着された多数のナノスコピックのデバイスまたはナノエレメント、外部への電気接点、及び場合によっては熱伝導経路を設ける物体を含む複合構造を含む。
【0012】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、足場構造は少なくとも1つの足場要素を含む。
【0013】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、ナノスコピックデバイスのそれぞれは、少なくとも2つの接点と、2つの接点間の電子量子波束の非往復的伝送確率とを備える。
【0014】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、2端子デバイスを介した非往復的伝送の発生には、以下の2つの条件が伴う。
a)波束が1つの接点によってナノデバイスに挿入されると、波束は他の接点によって挿入される場合と比較して、より長い時間デバイスに滞在する。
b)波束はナノデバイスを一方向に通過する確率が高くなる。熱平衡を特徴とする状況では、このデバイスの動作はマクスウェルの悪魔の動作に匹敵する。
条件(b)は、デバイスが(a)に従い、さらに特許出願[Mannhart_001]から[Mannhart_004]及び[Bredol, 2021]に示されているように、デバイスに非弾性散乱が存在する場合に機能する。
【0015】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、ナノスコピックデバイスのほぼ各々は、他の2つのナノスコピックデバイスの間に接続されている。
【0016】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、ナノスコピックデバイスの各々は、環境の熱を2つの接点の電気化学電位の差に変換するようにさらに構成されている。
【0017】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、2つの接点は、第1の接点と第2の接点とを含み、3次元配置は、2つの接点間に接続され、電子量子波束を少なくとも部分的に位相コヒーレントな方法で第1の接点から第2の接点へ、場合によっては第2の接点から第1の接点へ伝送するように構成された非往復的伝送構造をさらに備える。
【0018】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、電子量子波束の伝送の時間反転対称性は、伝送構造の少なくとも一部に関して破られる。
【0019】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、時間反転対称性は、伝送構造が、第1の端子から第2の端子への第1の方向に移動する粒子の伝送確率が、第2の端子から第1の端子への第2の方向に移動する粒子の伝送確率よりも高くことを備えるように、破られる。
【0020】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、非往復的伝送は、第1端子及び第2端子の一方または両方に外部から電圧または電流を印加しなくても存在する。
【0021】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、3次元配置は、互いに反対側の足場構造の側面に接続された少なくとも2つの電気接点をさらに備える。
【0022】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、配置は、10個以上、好ましくは1000個以上のナノスコピックデバイスが足場構造に付着され、好ましくは足場構造の可能なアンサンブルに109個以上を含む。
【0023】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、足場構造は、複数の繊維またはナノチューブ、複数のシートまたは箔、複数のグラフェン層、または複数の半導体キャリアのうちの1つ以上を含む。
【0024】
ナノスコピックデバイスを足場構造、特に足場構造の足場要素に付着させるメカニズムは、異なっていてもよい。足場要素は、ナノスコピックデバイスのドッキングサイトとして適切に機能し、ナノスコピックデバイスの望ましい高伝送方向が制御可能な方向に向けられ、整列されるように、ナノスコピックデバイスが外部接点の特定の方向でドッキングサイトに接続されることを常に確実にするべきである。あるいは、メカニズムは、例えば適切な接着コーティングによる機械的な性質のものであってもよく、あるいは電気伝導性、磁気的または熱的特性を利用することもできる。以下では、例えば、ナノスコピックデバイスの特定の側鎖と足場構造のドッキングサイトとの間の化学結合を、標的ドッキングにどのように使用できるかについて、より詳しく説明する。
【0025】
第1の態様の3次元配置の実施形態によれば、足場構造は電気接続構造を含む。
【0026】
本開示の第2の態様によれば、ナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法であって、足場構造をもたらすこと、及び複数のナノスコピックデバイスを足場構造に付着させることであって、ナノスコピックデバイスは電子量子波束の非往復的伝送確率を示すように構成される、付着させること、を含み、ナノスコピックデバイスを足場構造に付着させることは、ナノスコピックデバイスの大部分が他の2つのナノスコピックデバイス間に接続されるように行われ、すべてのナノスコピックデバイスが、電子量子波束の1つの同じ伝送方向に向けられるように実行される。
【0027】
第2の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法の実施形態によれば、足場構造は、複数の繊維またはナノチューブ、複数のシートまたは箔、複数のグラフェン層、または複数の半導体キャリアのうちの1つ以上を含む。
【0028】
第2の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法の実施形態によれば、複数のナノスコピックデバイスを、対称性を破るプロセスを適用して、ナノスコピックデバイスを1つまた電子量子波束の同一の伝送方向に沿って配向するように付着させる。
【0029】
第2の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法の実施形態によれば、方法は、さらに、足場構造に電気接点を適用することを含む。
【0030】
第2の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置を製造する方法のさらなる実施形態は、第1の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置に関連して説明した任意の実施形態または特徴と組み合わせることによって、形成することができる。
【0031】
本開示の第3の態様によれば、第1の態様によるナノスコピックデバイスの3次元配置の使用は、
-熱力学の第0法則または第2法則からの逸脱を達成するためのデバイス、
-システムを熱平衡状態からシフトさせること、
-1つの物体内または複数の物体間で温度差や電圧差を発生させること、
-粒子、情報、運動量、角運動量、電荷、磁気モーメント、またはエネルギーを輸送すること、
-電流及び/または電力を生成することのうちの1つ以上が提供される。
【0032】
ノスコピックデバイスの3次元配置の使用のさらなる実施形態は、第1の態様のナノスコピックデバイスの3次元配置に関連して説明した任意の実施形態または特徴と組み合わせることによって、形成することができる。
【0033】
添付の図面は、例のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図は例を図解しており、説明と合わせて例の原理を説明する機能を果たしている。その他の例及び例の意図された利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することでよりよく理解され、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】
図1aは、ナノエレメントのスケッチを示す。
【
図1b】
図1bは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図1c】
図1cは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図1d】
図1dは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図1e】
図1eは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図1f】
図1fは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図1g】
図1gは、ナノエレメントの様々な実装形態のスケッチを示す。
【
図2】足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしての分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【
図3】足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしてのいくつかの分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【
図4】足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしての複数の分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【
図5a】
図5aは、分子が付着したいくつかの足場要素の配置を示す。
【
図5b】
図5bは、足場構造が電気接続構造によって形成された配置の表現の斜視図を示す。
【
図5c】
図5cは、足場構造が電気接続構造によって形成された配置の表現の斜視図を示す。
【
図5d】
図5dは、足場構造が電気接続構造によって形成された配置の表現の斜視図を示す。
【
図6】外部の熱バスとの熱結合をもたらす熱伝導体を含む複合構造を図解するスケッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明では、「結合された」及び「接続された」という用語とその派生語が使用される場合がある。これらの用語は、2つの要素が直接物理的または電気的に接触しているか、またはそれらが直接的または物理的または電気的に互いに接触していないかどうか、つまり2つの要素の間に1つ以上の中間的な要素が存在する場合、に関係なく、それらが相互に協力または相互作用することを示すために使用される場合があることを理解されたい。
【0036】
以下でナノエレメントまたはナノスコピックデバイスについて説明する場合、これらの用語は広く広範囲に理解されるべきであることに留意すべきである。機能に関しては、それは基本的には電子量子波束の非往復的伝送を含むデバイスとして機能する。その構造に関しては、例えば電線または電線路がさまざまな技術的方法によって製造される人工的または人造の構造物として理解することができる。しかし、それはまた、例えば分子、分子化合物、ベンゼン環のような分子環などの化学成分からなる、またはそれらを含むものとして理解することもできる。さらに、それはデバイスの機能を発揮する結晶構造などの固体の化合物を指すこともある。
【0037】
「ナノスコピック」という用語は、例えば、0.5nmから1000nmの範囲で、3次元配置で使用されるデバイスの平均のサイズに関する。特に、上記の分子、分子化合物、ベンゼン環のような分子環などの化学成分の平均のサイズは、0.5nmから50nmまたはそれより大きい範囲であり得る。一方、例えば電線または電線路などの形で技術的に製造された量子デバイスの平均サイズは、2nmから200nmまたはそれより大きい範囲になり得る。
【0038】
さらに強調すべきことは、以下に示され説明されるナノスコピックデバイスの3次元配置の実施形態では、個々のデバイスのいずれか1つ、または配置全体に外部電圧または電流を印加する必要がないことである。その場合、デバイスは、特に電圧、電流、または整列の源として、または損失のない、及び/または非超伝導及び/または非ジョセフソン伝導の方法で、電流の導体としてそれ自体機能する。より一般的に言えば、この場合、温度T>0Kの熱バス以外に、粒子をデバイス内に押し込むために必要な外力は要求されない。ただし、少なくとも1つのデバイスに外的電圧、電流、または温度勾配を適用することも可能である。
【0039】
図1は、
図1a~
図1gを含み、
図1aは、ナノスコピックデバイスのスケッチを示し、
図1b~gは、ナノスコピックデバイスの異なる実装形態のスケッチを示す。
【0040】
特に、
図1aは、電気導体1と、電気導体1の反対側のポートに接続された電気接点2とを含むナノスコピックデバイスの概略図を示す。電気導体1は、電子量子波束の非往復的伝送を特徴とし、この場合、導体が矢印の形状であることによってそれが可能となる。電気導体1は、下部入力ポートと上部出力を備え、第1電気接点2が下部入力ポートに接続され、第2電気接点2が上部出力ポートに接続される。電子量子波束は、第1電気接点2から第2電気接点2の方向に放射され、その逆も同様である。量子デバイスは、電子波束の正味の電流が第1の電気接点から第2の電気接点の方向になるように構築される。電子波束の動きは外的熱バスからの熱エネルギーの抽出によって生じる。
【0041】
ナノスコピックデバイスは、原理的には、上記の特許出願[Mannhart_001]から[Mannhart_004]の1つに記載されている電子デバイスのいずれか1つであり得る。ナノスコピックデバイスのさらにいくつかの例を次の
図1b~1gに示す。
【0042】
図1bは、
図1aによる量子デバイスの可能な実現としてのナノスコピックデバイスを示す。
【0043】
図1bに示す量子デバイスは、非弾性散乱中心を含み、電気導体1の入力ポートから出力ポートの方向に先細りする円錐構造に形成された、例えばシリコンなどの半導体をベースに製造されるような、電気導体1を含む。言い換えれば、円錐の底部は第1の電気接点に配置されている。先端が尖った状態、または円錐台形へ先細る円錐があり得るが、いずれの場合も円錐の先端は第2の電気接点の下方にある。
図1bに示す円錐は円形の錐体である。しかし、ピラミッド、切頂ピラミッド、四面体、オベリスクなど、他の幾何学的形状も考えられる。
【0044】
図1cは、ナノエレメントとして用いられる分子のスケッチを示す。
【0045】
図1cに示す量子デバイスは、例えばベンゼン環10のような環状分子10を含む。よく知られているように、ベンゼン環10の基本構造は、6個の炭素原子からなり、それらは互いに環状に結合している。各炭素原子には4つの価電子があり、そのうち2つは、その原子を隣接するC原子に結合させる。
図1bの分子10には、ベンゼン環10の水素原子の代わりに、2つの電気接点2、分子を足場要素に付着させるための2つの側鎖4、及び対称性の破れをもたらす側鎖3が含まれている。
【0046】
対称性の破れは以下のようにして生成される。シュレーディンガー方程式で説明されているように、分子またはナノデバイスの電子は電子波を形成する(原子の場合はs、p、d軌道など)。電子波は、それらが占有できるすべての場所を伝播し、したがって、対応するエネルギーレベルが適合している場合は、分子に追加された原子または側鎖も伝播する。したがって、電子が非対称分子に供されると、原則として、電子状態と、これらの状態から形成される波束の時間的な変化も非対称になる。これが望まれているものである。したがって、説明のため、簡単な例として、
図1cの本質的に環状の分子に側鎖3を含める。
【0047】
非対称電子状態を実現する他の方法としては、例えば、分子自体に三角形などの非対称の形状をもたらすこと、対称的な形状であるが分子における原子サイトが数種類の原子またはイオンによって非対称に占有されている分子を選択すること、または、すでに述べたように、人工ナノエレメントを使用することなどが挙げられる。
【0048】
図1dは、2つの異なる原子と非弾性散乱中心を含むナノチューブからなるナノデバイスのスケッチを示す。
【0049】
図1dに示す量子デバイスは、ナノチューブ5の形状の電気導体1と、ナノチューブ5に付着または埋め込まれた少なくとも2つの異なる原子またはイオン6a、6bとを備え、少なくとも2つの異なる原子6a、6bは対称性の破れのために使用される。
図1dの量子デバイスは、さらに、矢印で示される方向にナノエレメントを向けるために使用される磁性、誘電体、または強誘電体コンポーネント7の形態の2つの電気接点2を備える。
【0050】
図1eは、
図1dと同様のナノチューブの形状のナノデバイスのスケッチを示す。
【0051】
図1eに示す量子デバイスは、非弾性散乱中心を含むナノチューブ5の形態の電気導体1を備える。さらに、この実装形態では、強誘電体粒子8がナノチューブ5に付着または埋め込まれ、同時に電子輸送の相互性を破壊し、矢印で示されるように、ナノチューブ5を配向する手段が得られる。
【0052】
図1fは、グラフェンシートを含むナノデバイスのスケッチを示す。
【0053】
図1fに示す量子デバイスは、グラフェンシート1の形状の電気導体1を備え、二重層グラフェンを含む三角形のセクション1Aを組み込むことによって電子輸送の相反性が破壊されている。さらに、C原子に追加された追加原子1A.1の形で非弾性散乱サイトがある。三角形のセクション1Aを形成する炭素原子は拡大して描かれ、追加された原子を含む中央のC原子はさらにわずかに大きく描かれている。
【0054】
図1gは、非対称の形状のキャリアに付着したグラフェンシートを含むナノデバイスのスケッチを示す。
【0055】
図1gに示す量子デバイスは、
図1fによるナノデバイスを備え、グラフェンシート1が非対称の形状のキャリア9に付着され、電気接点2が備えられている。非対称性は、キャリア9が量子デバイスの上部に向かって先細りすることによって生成される。
【0056】
図1gに示す構造は、おそらく実装及びより具体的な用語での説明が最も簡単である。同様の構造は、いわゆる2次元材料(
図1fに示すようなグラフェンなど)に対して、現在標準的に生成されている。このことは、例えば、“Two-dimensional van der Waals materials” of P. Ajayan et al. in PHYSICS TODAY, September 2016, Pages 39 - 44、“Integration of bulk materials with two-dimensional materials for physical coupling and applications” of S.-H. Bae et al., in NATURE MATERIALS, Vol. 18, June 2019 Pages 550 - 560、及び “Graphene and two-dimensional materials for silicon technology” of D. Akinwande et al., in NATURE, 26 September 2019, Vol. 573, Pages 507 - 518.などの出版物で示されている。
【0057】
図2は、足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしての分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【0058】
図2に示す配置は、繊維11の形態の足場要素11と、繊維11に付着した分子10の形態のナノエレメント10とを含む。分子10は、
図1cに関連して上で示され、説明されたものであり得る。
【0059】
図3は、足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしてのいくつかの分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【0060】
図3に示す配置は、繊維11の形態の足場要素11と、繊維11に付着した分子10の形態のいくつかのナノエレメント10とを含む。繊維軸に沿った分子10の方向は保持され、矢印で示される。右側の2つの分子10は、接点端部2を介して電気的に接触していることが示されている。
【0061】
図4は、足場要素としての繊維と、繊維に付着されたナノエレメントとしての複数の分子とを含む配置の概略的な透視図を示す。
【0062】
図4に示す配置100は、繊維11の形態の足場要素11と、繊維11に付着した分子10の形態の複数のナノエレメント10とを含む。繊維軸に沿った分子10の方向は保持され、矢印で示される。配置100は、それぞれ繊維の上部と下部に付着された2つの電気接点12を備える。最下部の分子10は、それぞれの最下部の接点2を介して下部電気接点12に接続され、最上部の分子10は、それぞれの最上部の接点2(この図では示されていない)を介して上部電気接点12に接続されている。他のすべての分子10は、隣接する2つの他の分子の間に結合している。
【0063】
図5は、
図5aから
図5dを含み、ナノスコピックデバイスの3次元配置の異なる実施形態のスケッチを示す。
【0064】
図5は、
図5aから
図5dを含み、
図5aは、分子が付着したいくつかの足場要素の配置を示し、
図5bから
図5dは、足場構造が電気接続構造によって形成された配置の表現の斜視図を示す。
【0065】
図5aに示す配置200は、分子の形態のナノエレメントが付着した繊維の形態の複数の足場要素100の束を示している。足場要素100は、
図4に関連して示され、説明されたのと同じ方法で構築できる。プレート13の形態の電気接点は、足場要素の並列接続及び直列接続を設けるために使用される。プレート13は、最上部のプレート13、最下部のプレート13、及び2つの中間プレート13で構成される。
【0066】
図5bから
図5dは、足場構造が電気接続構造によって形成された配置の表現を示す。
【0067】
図5bに示す配置300は、
図1gに関連して示され、説明されたようないくつかのナノエレメント、すなわち、非対称の形状のキャリア9に付着され、電気接点2が備えられたグラフェン層1を示している。これらのナノエレメントは、プレート13の形態の電気接点に直接接続されている。プレート13は、最上部のプレート13、最下部のプレート13、及び2つの中間プレート13で構成される。したがって、この実施形態では、プレート13からなる電気接続構造それ自体が足場構造として機能する。
【0068】
図5cに示す配置400は、
図1dに関連して示され、説明されたようないくつかのナノエレメント、すなわちナノチューブを示す。これらのナノエレメントは、プレート13の形で電気接点に直接接続される。プレート13は、最上部のプレート13、最下部のプレート13、及び2つの中間プレート13で構成される。したがって、この実施形態でも、プレート13からなる電気接続構造それ自体が足場構造として機能する。もちろん、この実施形態では、
図1eに関連して示され、説明されたナノチューブを使用することもできる。
【0069】
図5dに示す配置500は、
図1bに関連して示され、説明されたようないくつかのナノエレメント10、すなわち円錐を示す。これらのナノエレメント10は、プレート13の形で電気接点に直接接続される。プレート13は、最上部のプレート13、最下部のプレート13、及び2つの中間プレート13で構成される。したがって、この実施形態でも、プレート13からなる電気接続構造それ自体が足場構造として機能する。
【0070】
図5に示すデバイスを製造するには、様々な方法が考えられる。
図5の構造の層を作成するために、例えば、ナノエレメント100をそのとき配置するプレート13において穴を画定するフォトリソグラフィプロセスなどを考えることができる。その後、異なる層を、手作業か、適切な既知のアパレーティブな方法を使用して積み重ねることができる。
【0071】
図6は、外部の熱バスとの熱結合をもたらす熱導体を含む複合構造を図解するスケッチを示す。
【0072】
図6に示すアセンブリは、
図5aに関連して示され説明されたもののような3つの3次元配置200を含む。これらの配置200は、電気プレート13に接続され、中央の熱導体14の周囲にグループ化されている。熱導体14は、金属のような高熱伝導性の材料から製造することができ、外部の熱バスとの熱結合の役割を果たす。
【0073】
1.繊維ベースの足場要素を使用した実装形態
この実装形態では、ナノチューブなどの繊維が足場要素として使用される。アセンブリ全体を製造するには3つの手順が必要である。この説明で使用されるステップの順序は必須ではなく、ステップの一部またはすべてのステップを例えば並行して実行することもできる。
【0074】
堆積ステップ(a)では、ナノエレメントは繊維に直接堆積されるか、または機能性緩衝層または緩衝層システムでコーティングされた繊維の上に堆積される。得られた例では、ナノエレメントの機能化された末端基が、それらが繊維に結合する側を決定している。
【0075】
アセンブリが機能するには、ナノエレメントが繊維軸に沿って正しい極性でさらに配向されていることが必要である。このステップは、ナノエレメントの端部が別のナノエレメントまたは異なる導体と電気的に接触するように実行する必要がある。
【0076】
したがって、ナノエレメントを組み立てる際には、対称性を破るプロセスを適用して、ナノエレメントとしての分子を繊維軸に沿って配向させる必要がある。ナノエレメントを付着させる際に磁場、圧力勾配、または電場勾配、または粒子衝撃を適用することは、この対称性を破る手段の例を示す。さらに、繊維または繊維において成長した緩衝層の適切な表面構造も、同じ目標に対して機能することができる。
【0077】
組み立てステップ(b)では、繊維の3次元配置を確立する必要がある。このためには、例えばナノチューブフォレストを製造するための既知の技術(例えば、[Lettiere 2020]を参照)が適用可能である。組み立ては、繊維を機械的に整列させて束に組み立てることによっても実行でき、これにより繊維の極性が維持される。
【0078】
繊維は、ナノチューブ(例えばグラフェン)、ガラス繊維、またはポリマー繊維であり得、いずれも緩衝層または緩衝層システムでコーティングされ得る。繊維は、液相からの堆積(例えば、ラングミュア・ブロジェットコーティング)または気相からの堆積(例えば、MOCVD)によってコーティングすることができる。ナノスコピックデバイスと繊維との間の結合が弱すぎる場合には、ナノスコピックデバイス10の側鎖4と繊維との間の結合を強化するようにコーティング層を選択することができる。この結合層は、単に接着剤からなる場合もあれば、繊維に強力に結合し、側鎖4にチオール結合(S-H)などの特定の結合をもたらす分子から構成される場合もある。
【0079】
繊維材料は、電気接点12間に電気シャントが生じないように、絶縁性を有するように選択されることが好ましい。繊維材料は、ナノデバイスを通過する電子の望ましくない位相シフトを誘発しないように、強磁性、フェリ磁性、反強磁性のいずれでもないように、または別の方法で磁場を生成するように選択されることがさらに好ましい。
【0080】
さらに、配置の一定温度またはそれを通る大きな熱流を必要とする用途では、熱伝導率の高い繊維を選択することがさらに好ましい。
【0081】
堆積、組み立て、及び接触のステップにおいて、前述の緩衝層(システム)による繊維のパターン化または構造化コーティングの使用は有益であり得る。
【0082】
2.基板キャリア足場要素を使用した実装形態
図1f、1g、5bに図解されているこの実装形態では、ナノエレメントは、足場要素として機能する非対称の形状の極薄Siウェハなどのキャリアに堆積されるか、またはキャリアに固定される。ナノエレメントをキャリアにて組み立てる作業は、その時、
図6aに示したデバイスで説明した組み立てと同様に実行される。
【0083】
基板キャリア材料は、電気シャントを生じさせないように絶縁性となるように選択されることが好ましい。基板キャリア材料は、ナノデバイスを通過する電子の望ましくない位相シフトを誘発しないように、強磁性、フェリ磁性、反強磁性のいずれでもないように、または別の方法で磁場を生成するように選択されることがさらに好ましい。
【0084】
基板キャリアは、例えば、自立型の酸化物、窒化物、または炭化物の膜、薄い半導体ウェハ、または、例えばレーザー切断によって所望の形状にパターン化されたプラスチック箔からなり得るシートまたは箔で形成することもできる。基板キャリアへのナノエレメントの接着は、基板キャリア上に堆積された薄層によって強化され得、ナノデバイスとの良好な化学結合が実現される。さらに、基板キャリア材料は、電気シャントをもたらさないように絶縁性であるように選択されることが好ましい。
【0085】
基板キャリア材料は、ナノデバイスを通過する電子の望ましくない位相シフトを誘発しないように、強磁性、フェリ磁性、または反強磁性のいずれでもない、または別の方法で磁場を生成するように選択されることがさらに好ましい。さらに、配置の一定温度またはそれを通る大きな熱流を必要とする用途では、熱伝導率の高い基板キャリア材料を選択することがさらに好ましい。
【0086】
3.シートベースの足場要素を使用した実装形態
堆積ステップ(a)では、ラングミュア・ブロジェット堆積技術や自己集合による成長などの標準的な堆積技術を使用して、ナノエレメントをシートに組み立てる。上述の繊維の場合と同様に、シートの表面は緩衝層を堆積させることによって事前に準備されてもよい。また、上述の繊維の場合と同様に、付着したナノエレメントの選択された極性を設けるために、シートのナノエレメントの堆積プロセスの面内対称性を破る必要がある。ここでは、磁場、圧力勾配、電場勾配、または粒子衝撃などの適用の他に、表面の配向(近接切断)、またはすでに所望の対称性の破れを有している結晶構造を備えた材料の選択が、使用され得る。
【0087】
シートまたは箔は、例えば、自立型の酸化物、窒化物、または炭化物の膜、グラフェンまたは遷移金属ジカルコゲニドなどのファンデルワールス材料またはそのスタック、またはポリカーボネート箔で構成されていてもよい。例えば、粘性切断面を反映する単位セルのステップまたはリソグラフィで誘発されたパターンから生じる表面構造は、ナノデバイスの方向付けに使用できる。シート材料は、電気シャントをもたらさないように絶縁性であるように選択されることが好ましい。
【0088】
シート材料は、ナノデバイスを通過する電子の望ましくない位相シフトを誘発しないように、強磁性、フェリ磁性、または反強磁性のいずれでもない、または別の方法で磁場を生成するように選択されることがさらに好ましい。
【0089】
さらに、配置の一定温度またはそれを通る大きな熱流を必要とする用途では、熱伝導率の高いシート材料基板を選択することがさらに好ましい。
【0090】
シートの表面にパターン化された電気導体を予め備えさせる、及び/またはシートに熱伝導構造、例えばシート側に付着された熱伝導層またはシートに埋め込まれた熱伝導層を備えさせることによって、利点が得られる可能性がある。
【0091】
組み立てステップ(b)では、ナノデバイスが付着されたシートを、例えば折り曲げる、巻く、または積み重ねることで、バルクの3次元構造に形成する。
次に、シートを電気的に接触させる(ステップ(c))。
【0092】
4.足場構造が電気接続構造によって与えられる実装形態
これらの実装形態では、ナノエレメントは、これらがまた足場要素の機能を備わせるように設計されている。これに対し、2つの例が提示されている。
図5cに図解している例では、個々のナノチューブの機械的強度を利用して、
図5cに示す構造を組み立てる。この場合、接触要素13の間に追加のスペーサーとしてさらに足場要素を追加することが有用であり得る。
図5dに示す例は、
図1bに示す円錐形のナノエレメントが使用されていることを除いて、
図5cの例と類似している。
【0093】
5.組み立てられた構造のアーキテクチャ
上述の異なる組み立てプロセスは、
図6に示すように、ナノデバイスと外的熱バスとの間で熱エネルギーを輸送するため熱伝導体を任意選択で統合することをもたらす。
【0094】
足場のアセンブリのアーキテクチャは、ナノデバイスが最初に電気的に接続されてモジュールになるように選択することができる。第2のステップで、これらのモジュールが互いに電気的に接続され、アセンブリ全体の所望の出力インピーダンスが達成される。
【0095】
繊維またはシートに関連して上述した組み立てプロセスは、ナノデバイスと外的熱バスとの間で熱エネルギーを輸送するために熱伝導体を任意選択で統合することをもたらす。[0099]さらに、足場の組み立てのアーキテクチャは、ナノデバイスが最初に電気的に接続されてモジュールになるように選択することができる。第2のステップで、これらのモジュールが互いに電気的に接続され、アセンブリ全体の所望の出力インピーダンスが達成される。
【0096】
本開示は、1つ以上の実装形態に関して図解および説明してきたが、添付の特許請求の範囲及び趣旨から逸脱することなく、変更及び/または修正を示された実施例に加えることができる。特に、上述の構成要素、または構造(アセンブリ、デバイスなど)によって実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を説明するために使用される用語は、別段の指示がない限り、開示の本明細書に説明される例示的な実装形態においてその機能を実行する開示される構造と構造的に同等でなくても、説明される構成要素の特定の機能を実行する開示された構造と構造的に同等でなくても、記載の構成要素(例えば機能的に等価な)の指定された機能を実行するいずれかの構成要素または構造に対応することが意図される。
【国際調査報告】