(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電気化学装置およびそれを含む電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241018BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/131
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524759
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2022076462
(87)【国際公開番号】W WO2023070992
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/126213
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周▲墨▼林
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ08
5H029HJ13
5H029HJ20
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050HA01
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は電気化学装置および電子装置に関するものである。電気化学装置は正極、負極、セパレーターおよび電解液を含み、正極は正極活物質層を含み、正極活物質層は式(1)で示される正極活物質を含み、
【化1】
式(1)中、r、p、qおよびsが0<r≦1、0<p<1、0<q<1、0<p+q<0.5、0≦s<0.2を満たし、M1およびM2がそれぞれ独立してCo、Mn、Fe、Ti、Al、V、Cr、Nb、Zr、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、M3がS、N、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、正極の抵抗がR Ωであり、正極の圧縮密度がP g/cm
3であり、正極の片面の面密度がQ g/1540.25mm
2である場合、正極が式(2)を満たし、
【化2】
電解液はフルオロエチレンカーボネートを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置であって、
前記正極が正極活物質層を含み、
前記正極活物質層が式(1)で示される正極活物質を含み、
【化1】
式(1)中、r、p、qおよびsが0<r≦1、0<p<1、0<q<1、0<p+q<0.5、0≦s<0.2を満たし、M1およびM2がそれぞれ独立してCo、Mn、Fe、Ti、Al、V、Cr、Nb、Zr、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、M3がS、N、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記正極の抵抗がR Ωであり、前記正極の圧縮密度がP g/cm
3であり、前記正極の片面の面密度がQ g/1540.25mm
2である場合、前記正極が式(2)を満たし、
【化2】
前記電解液がフルオロエチレンカーボネートを含む、電気化学装置。
【請求項2】
前記正極は更に式(3)を満たす、
【化3】
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
RがR≦3を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
RがR≦1.5を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
Pが2.8<P≦3.6を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
Qが0.16<Q<0.32を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記電解液の全重量に対して、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率が0超15%以下である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記正極活物質層の全重量に対して、前記正極活物質の重量百分率が80%~98%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記正極活物質は、A相およびB相を含み、
前記A相は、17°~19°に(003)面の特徴的な回折ピークA1が現れ、
前記B相は、16°~18°に(001)面の特徴的な回折ピークB1が現れ、
前記特徴的な回折ピークA1の強度I
Aおよび特徴的な回折ピークB1の強度I
Bは、式(4)を満たす、
【化4】
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー貯蔵技術分野に関し、特に電気化学装置およびそれを含む電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池においては、初回充放電サイクルの過程で、その負極表面に固体電解質界面(SEI)が形成され、不可逆的な容量損失が引き起こされて、リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー密度が低下される。黒鉛を負極材料として用いたリチウムイオン電池では、初回充放電サイクルの過程に活性リチウム源の約10%が消費される。そして、合金類(シリコンまたはスズなど)、酸化物類(酸化シリコンまたは酸化スズ)およびアモルファスカーボン負極等の高比容量の負極材料を使用するリチウムイオン電池では、初回充放電サイクルの過程において活性リチウム源の消費がさらに激しくなる。
【0003】
初回充放電サイクルの過程における活性リチウム源の消費を補充するため、当分野の研究者は負極にリチウムを補充する方法によってリチウムイオン電池を改善しようとしている。例えば、公告番号がCN1290209Cである特許文献には、金属リチウム粉、負極材料および非水液体を混合してスラリーを形成し、スラリーを負極集電体に塗布した後、乾燥、ロールプレス、注液などの工程を経てエネルギー貯蔵デバイスの組み立てを完成するという負極リチウム補充方法が提案されている。このような方法によって、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることができるが、金属リチウムの反応活性が極めて高く、空気中の水分と反応しやすいため、調製プロセスにリチウムと反応しない非水有機溶媒を採用する必要があり、かつ水分を厳密に制御する必要がある。それによって、プロセスの難易度が高くなっている。アメリカのFMC社はリチウム粉に対してある程度の改善処理を行った。当該社が生産する安定化金属リチウム粉(SLMP)は更に良好な安定性を有する。しかし、当該金属リチウム粉であっても、乾燥空気中において、数時間しか安定して存在しない。この時間的制限によって、リチウムイオン電池の調製プロセス(調合、塗布、乾燥、スリット、ロールプレス、巻き取り、注液などを含む)に対して厳しい要求が課せらる。そして、SLMPは操作環境の湿度および酸素含有量に対する要求も同様に厳しい。ドライ操作を採用すると、リチウム粉が空気中に浮遊しやすく、安全上の懸念がある。湿式操作を採用すると、同様に非水溶媒を選択し、水分を制御する必要がある。
【0004】
負極にリチウムを補充する方法は大きな困難に直面しているため、正極にリチウムを補充するためのより安全で操作しやすい方法は産業界からますます注目されている。例えば、公開番号がCN104037418Aである特許文献には、リチウム酸素化合物、リチウム源およびアルキルリチウムからなる正極補充リチウム材料が開示されている。しかし、リチウム酸素化合物の分解電位が比較的高く、かつ分解過程で酸素またはその他の副生成物が発生し、電池寿命に影響を及ぼす。公告番号がCN101877417Bである特許文献には、Li2NiO2類のリチウム補充材料が開示されている。このようなリチウム補充材料は、比容量が高く、調製方法が簡単で、活性リチウムを良好に補充することができるものの、初回充電の脱リチウム後に、極片に不活性成分が残留してしまうので、リチウムイオン電池のエネルギー密度の更なる向上に不利である。また、初回充電の過程で、大量な活性リチウムが負極に挿入し、それによって、負極の真の電位がさらに低下し、かつ電解液における溶媒は負極で還元反応を起こし続け、抵抗を持続的に増加させるので、サイクル特性に影響を及ぼしてしまう。
【0005】
そのため、リチウムイオン電池に対して、いかにエネルギー密度を高めながら、良好なサイクル特性とレート特性を持たせるかということが電池分野の研究開発の重点となっている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は関連分野に存在する少なくとも1つの問題を少なくともある程度に解決する電気化学装置を提供する。
【0007】
本発明は、正極、負極、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置であって、正極が正極活物質層を含み、正極活物質層が式(1)で示される正極活物質を含み、
【化1】
式(1)中、r、p、qおよびsが0<r≦1、0<p<1、0<q<1、0<p+q<0.5、0≦s<0.2を満たし、M1およびM2がそれぞれ独立してCo、Mn、Fe、Ti、Al、V、Cr、Nb、Zr、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、M3がS、N、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
正極の抵抗がR Ωであり、正極の圧縮密度がP g/cm
3であり、正極の片面の面密度がQ g/1540.25mm
2である場合、正極が式(2)を満たし、
【化2】
電解液がフルオロエチレンカーボネートを含む、電気化学装置を提供する。
【0008】
本発明のいくつかの実施例によれば、正極はさらに式(3)満たす。
【化3】
【0009】
本発明のいくつかの実施例によれば、RはR≦3を満たす。
【0010】
本発明のいくつかの実施例によれば、RはR≦1.5を満たす。
【0011】
本発明のいくつかの実施例によれば、Pは2.8<P≦3.6を満たす。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Qは0.16<Q<0.32を満たす。
【0013】
本発明のいくつかの実施例によれば、電解液の全重量に対して、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率は0超15%以下である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、正極活物質層の全重量に対して、正極活物質の重量百分率は80%~98%である。
【0015】
本発明のいくつかの実施例によれば、正極活物質は、A相およびB相を含み、A相は、17°~19°に(003)面の特徴的な回折ピークA1が現れ、B相は、16°~18°に(001)面の特徴的な回折ピークB1が現れ、特徴的な回折ピークA1の強度I
Aおよび特徴的な回折ピークB1の強度I
Bは、式(4)を満たす。
【化4】
【0016】
本発明は、さらに、上記のいずれか1つの電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0017】
本発明の追加的な態様および利点を以下の説明において部分的に説明し、図示し、または本発明の実施形態の実施を通じて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概略に説明する。以下に説明される図面は、本発明の実施例の一部にすぎないことは明らかである。当業者にとって、創造的な労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面に例示される構造により他の実施例の図面を得ることができる。
【
図1】
図1は本発明の実施例1における正極活物質であるLi
1.2Ni
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2のX線回折(XRD)図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2および比較例5の初回充電曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。ここに説明される実施例は例示的であり、本発明の基本的な理解を提供するために使用される。本発明の実施例は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0020】
本明細書に使用されたように、「ほぼ」、「大体」、「実質的に」および「約」という用語は、小さな変化を表すためにまたは説明するために使用される。イベントまたは状況と合わせて使用される場合、これらの用語は、イベントまたは状況が正確に発生する例を指してもよく、イベントまたは状況が非常に近似的に発生する例を指してもよい。例を挙げると、数値と合わせて使用される場合、これらの用語は、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下等、当該数値の±10%以下の変化範囲を意味し得る。例を挙げると、2つの数値の差が当該数値の平均値の±10%以下(例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下)である場合、2つの数値は「大体」同じであると考えられる。
【0021】
なお、本明細書において、量、比率およびその他の数値を範囲の形式で表すことがある。このような範囲形式は、便宜上簡潔にするために用いられ、範囲限定として明示的に指定された数値だけでなく、指定された範囲内に含まれるすべての各数値または部分範囲をも包含するように柔軟に読み取られるべきであると、理解すべきである。
【0022】
詳細な説明および請求の範囲において、「からなる群より選ばれる少なくとも一方」との用語、「からなる群より選ばれる少なくとも1つ」との用語、「からなる群より選ばれる少なくとも1種」との用語、または、他の類似な用語で接続される項目のリストは、リストされる項目の任意の組み合わせを意味する。例えば、項目Aおよび項目Bがリストされると、フレーズ「AおよびBからなる群より選ばれる少なくとも一方」は、Aのみ、Bのみ、または、AおよびBを意味する。他の実例では、項目A、項目B、および項目Cがリストされると、フレーズ「A、B、およびCからなる群より選ばれる少なくとも一方」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB(Cを除く)、AおよびC(Bを除く)、BおよびC(Aを除く)、または、A、BおよびCのすべてを意味する。項目Aは1つの要素または複数の要素を含んでもよい。項目Bは1つの要素または複数の要素を含んでもよい。項目Cは1つの要素または複数の要素を含んでもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施例は、正極、負極、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置に関するものである。いくつかの実施例では、電気化学装置はリチウムイオン電池である。
【0024】
本発明の電気化学装置は、高エネルギー密度、良好なレート特性、および長いサイクル寿命という利点を有する。一方では、本発明の電気化学装置における正極は、高い初回充電比容量を有するニッケル系正極活物質を含むので、固体電解質界面(SEI)の生成による活性リチウムの損失を補充することができる。これによって、電気化学装置のエネルギー密度を向上させることができる。もう一方では、本発明の電気化学装置における電解液は、フルオロエチレンカーボネートを含むので、正極にリチウムを補充するとともに、負極により均一かつ緻密なSEIが形成され、活性リチウムの持続的な消費を減らすことができる。もう一方では、本発明の電気化学装置における正極の抵抗、圧縮密度および片面の面密度が所定のデザイン要件を満たすので、電気化学装置のサイクル寿命とレート特性を著しく向上させる。
【0025】
一、電気化学装置
本発明は、正極、負極、セパレーターおよび電解液を含む電気化学装置であって、正極が正極活物質層を含み、正極活物質層が式(1)で示される正極活物質を含み、
【化5】
式(1)中、r、p、qおよびsが0<r≦1、0<p<1、0<q<1、0<p+q<0.5、0≦s<0.2を満たし、M1およびM2がそれぞれ独立してCo、Mn、Fe、Ti、Al、V、Cr、Nb、Zr、LaおよびYからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、M3がS、N、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、正極の抵抗がR Ωであり、正極の圧縮密度がP g/cm
3であり、正極の片面の面密度がQ g/1540.25mm
2である場合、正極が式(2)を満たし、
【化6】
電解液がフルオロエチレンカーボネートを含む、電気化学装置を提供する。
【0026】
正極活物質であるLi1+rNi1-p-qM1pM2qO2-sM3sは、二つの相、即ち、A相およびB相を含む。A相(例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM))はR-3m空間群に属し、高い比容量を有する正極活物質とすることができる。B相(例えば、Liを過剰吸蔵したNCM)は、F-3m1空間群に属し、比容量が高く、初回充電の時に、SEIの形成による活性リチウムの損失を補充するために、大量のリチウムイオンを放出して活性リチウムを補充することができ、そして、リチウムを放出した後に、A相に転移し、正極活物質として後続の充放電サイクルに関与する。
【0027】
いくつかの実施例では、A相は、17°~19°に(003)面の特徴的な回折ピークA1が現れ、B相は、16°~18°に(001)面の特徴的な回折ピークB1が現れ、特徴的な回折ピークA1の強度I
Aおよび特徴的な回折ピークB1の強度I
Bは、式(4)満たす。
【化7】
【0028】
いくつかの実施例では、IA/IBは、約0、約0.01、約0.05、約0.1、約0.13、約0.15、約0.2、約0.5、約1、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約99であり得る。または、IA/IBは、例えば、約0.01~約0.2、約0.01~約10、約0.1~約50、0~約50、もしくは約0.1~約100のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0029】
正極活物質であるLi1+rNi1-p-qM1pM2qO2-sM3sの比容量はLi1+rNi1-p-qM1pM2qO2-sM3sにおけるrの大きさに依存する。rが大きいほど、リチウムの過剰吸蔵の程度が高くなり、初回充電の比容量が大きくなることを意味する。いくつかの実施例では、正極活物質であるLi1+rNi1-p-qM1pM2qO2-sM3sにおけるNiの含有量は50%超である。
【0030】
いくつかの実施例では、正極活物質は、s=0であり、M1がCoであり、M2がMnおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、例えば、Li1.2Ni0.8Co0.1Mn0.1O2、Li1.2Ni0.6Co0.2Mn0.2O2またはLi1.2Ni0.8Co0.08Mn0.1Al0.02O2などである。
【0031】
いくつかの実施例では、正極活物質は、M1がCoであり、M2がMnであり、かつM3がFおよびSからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、例えば、Li1.2Ni0.8Co0.1Mn0.1O1.95F0.05またはLi1.2Ni0.8Co0.1Mn0.1O1.9S0.05F0.05である。
【0032】
いくつかの実施例では、正極は正極集電体を含み、正極集電体は自身の厚み方向に対向する二つの表面を含み、正極活物質層が正極集電体の少なくとも1つの表面に設置され、正極活物質層は式(1)で示される正極活物質を含む。
【0033】
いくつかの実施例では、正極活物質層の全重量に対して、正極活物質の重量百分率は約80%~約98%である。いくつかの実施例では、正極活物質層の全重量に対する正極活物質の重量百分率は、約80%、約82%、約84%、約86%、約88%、約90%、約92%、約94%、約96%、約98%であり得る。または、正極活物質層の全重量に対する正極活物質の重量百分率は、例えば、約80%~約85%、約80%~約90%、約85%~約95%もしくは約90%~約98%などの上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0034】
正極の抵抗(R Ω)はシート抵抗であり、直流両プローブ法によって測定することができる。正極の圧縮密度(P g/cm3)は、式P=m/vによって算出することができる。ここで、この式におけるmは正極活物質層の重量であり、単位はgであり、vは正極活物質層の体積であり、単位はcm3である。正極活物質層の体積vは、正極活物質層の面積Arと正極活物質層の厚みとの積であってもよい。正極の片面の面密度(Q g/1540.25mm2)は、式Q=1540.25m/Arによって算出することができる。ここで、式におけるmは正極活物質層の重量であり、単位はgであり、Arは正極活物質層の面積であり、単位はmm2である。
【0035】
本発明では、正極の抵抗、圧縮密度および片面の面密度は電気化学装置の設計と調製の重要なパラメータである。正極の抵抗が大きすぎると、電気化学装置のサイクル特性およびレート特性が悪化する。圧縮密度が大きすぎまたは小さすぎると、何れも電気化学装置のサイクル特性およびレート特性を悪くさせる。正極の片面の面密度が大きすぎると、電気化学装置のサイクル寿命が低下し、電解液の浸透に影響を及ぼし、更に電気化学装置のレート特性が低下し、特に、電気化学装置の高レートでの放電容量が低下する。正極の片面の面密度が小さすぎると、同じ電池容量で、集電体およびセパレーターの長さを増加させると意味し、電気化学装置の内部抵抗を増加させる。発明者の研究によると、電気化学装置の調製中、正極が上記式(2)を満たすように、これらのパラメータに対して、総合的に設計することによって、電気化学装置のサイクル特性およびレート特性を効果的に向上させることができる。
【0036】
いくつかの実施例では、R・P/Qは、約3.5、約3.7、約3.8、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約13、約14、約15、約18、約19、約20、約22、約25、約28、約29、約30であってもよい。または、R・P/Qは、例えば、約3.5~約10、約3.7~約9、約5~約8、約5~約10、約5~約15、約8~約12、約10~約12、約10~約20、約10~約30、約15~約30、もしくは約20~約30のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0037】
いくつかの実施例では、正極は更に式(3)を満たし、例えば、R・P/Qは約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12であってもよい。または、R・P/Qは、例えば、約5~約8、約5~約10、約8~約12、もしくは約10~約12のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【化8】
【0038】
いくつかの実施例では、正極の抵抗は、電気化学装置のサイクル特性およびレート特性を良好に改善するために、3Ω以下(即ち、R≦3)である。Rは3以下の任意の値もしくは任意の範囲であってもよく、例えば、Rは、2.8以下、2.5以下、2以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下であってもよく、または、Rは、約3、約2.8、約2.5、約2、約1.8、約1.5、約1.2、約1、約0.8、約0.6、約0.5、約0.3、約0.1などであってもよい。または、Rは、例えば、約0.1~約1、約0.5~約1、約0.4~約1.5、約0.6~約1.5、約0.5~約1.5、約1~約2、約0.5~約3、もしくは約1.5~約3のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。いくつかの実施例では、正極の抵抗は1.5Ω以下(即ち、R≦1.5)である。
【0039】
いくつかの実施例では、正極の圧縮密度は2.8g/cm3超3.6g/cm3以下であり、即ち、2.8<P≦3.6である。Pは、2.8超3.6以下の範囲内の任意の値もしくは任意の範囲であってもよく、例えば、Pは、2.8超3.0以下、2.8超3.5以下、3.0以上3.3以下、3.0以上3.6以下、3.2以上3.6以下などであってもよく、または、Pは、約2.85、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6であってもよい。または、Pは、例えば、約2.9~約3.3、約3.0~約3.5、もしくは約2.9~約3.6のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。正極の圧縮密度が上記範囲内であることは、正極における電子およびイオンの移動に有利であるため、電気化学装置のサイクル特性を向上させる。
【0040】
いくつかの実施例では、充放電容量を確保しながら電気化学装置のサイクル特性およびレート特性を向上させるように、正極の片面の面密度が0.16g/1540.25mm2超0.32g/1540.25mm2未満(即、0.16<Q<0.32)である。Qは、0.16超0.32未満の範囲内の任意の値もしくは任意の範囲であってもよく、例えば、Qは、0.16超0.30未満、0.16超0.28未満、0.16超0.25未満、0.16超0.20未満、0.20以上0.32未満、0.25以上0.32未満、0.30以上0.32未満であってもよい。または、Qは、約0.17、約0.18、約0.19、約0.20、約0.21、約0.22、約0.23、約0.24、約0.25、約0.26、約0.27、約0.28、約0.29、約0.30、約0.31であってもよい。または、Qは、例えば、約0.17~約0.31、約0.18~約0.31、約0.20~約0.31、約0.25~約0.30のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0041】
更に、本発明は、電解液にフルオロエチレンカーボネートを添加することにより、LiF成分に富んだ均一かつ緻密なSEI膜が負極に形成され、活性リチウムの持続的な損失が効果的に抑制される。同時に、フルオロエチレンカーボネートは正極側で高圧酸化に対する耐性がより高いため、電気化学装置のサイクル寿命をさらに向上させる。
【0042】
いくつかの実施例では、電解液の全重量に対して、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率は0超15%以下である。いくつかの実施例では、電解液の全重量に対して、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率は、0超15%以下の範囲内の任意の値もしくは任意の範囲であってもよく、例えば、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率は、約0.1%、約0.5%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、約10.0%、約11.0%、約12.0%、約13.0%、約14.0%、約15.0%であってもよい。または、フルオロエチレンカーボネートの重量百分率は、例えば、約0.1%~約15.0%、約0.5%~約15.0%、約1%~約15.0%、約5%~約10.0%、約5%~約15.0%、もしくは約10%~約15.0%のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0043】
本発明の電気化学装置は、高い比容量のニッケル系正極活物質およびフルオロエチレンカーボネートを含むとともに、正極の抵抗、圧縮密度および片面の面密度を調整することにより、高いエネルギー密度、良好なレート特性および長いサイクル寿命のバランスのとれた向上が実現される。
【0044】
いくつかの実施例では、正極活物質層は更にバインダーを含む。バインダーは、正極活物質粒子同士の結合を高めるとともに、正極活物質と正極集電体との結合を高める。
【0045】
いくつかの実施例では、バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、およびポリビニルアルコール(PVA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むが、これらに限らず、実際のニーズに応じてバインダーを選択することができる。
【0046】
いくつかの実施例では、低い正極シート抵抗が得られるように、正極活物質層の全重量に対して、バインダーの重量百分率は2.0%以下である。いくつかの実施例では、正極活物質層の全重量に対するバインダーの重量百分率は、約2.0%、約1.8%、約1.5%、約1.2%、約1.0%、約0.8%、約0.5%、約0.3%、約0.1%であってもよく、または、例えば、約0.1%~約2.0%、約0.5%~約2.0%、約0.1%~約1.0%、もしくは約1.0%~約2.0%のような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0047】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、更に導電剤を含み、導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むが、これらに限らず、実際のニーズに応じて導電剤を選択することができる。
【0048】
いくつかの実施例では、低い正極シート抵抗が得られるように、正極活物質層の全重量に対して、導電剤の重量百分率は0.5%以上である。いくつかの実施例では、正極活物質層の全重量に対して、導電剤の重量百分率は0.5%以上、1.0%以上、または1.5%以上などである。
【0049】
いくつかの実施例では、正極集電体は、金属箔材料または多孔質金属板を使用することができ、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、または銀などの金属もしくはそれらの合金を使用する箔材料または多孔質板、例えばアルミニウム箔を使用することができるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施例では、正極集電体の厚みは、約5μm~約20μmであり、例えば、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約10μm、約12μm、約14μm、約16μm、約18μm、約20μmであり、または、例えば、約6μm~18μm、もしくは約8μm~約16μmのような上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0051】
いくつかの実施例では、正極活物質層は、正極活物質およびバインダー(必要に応じて使用される導電材料および増粘剤など)を乾式混合してシート状にし、得られたシートを正極集電体に圧着するか、またはこれらの材料を液体媒体に溶解または分散させてスラリー状にし、正極集電体に塗布して乾燥させる、という操作によって調製することができる。
【0052】
いくつかの実施例では、正極は、当分野で周知の調製方法によって調製することができる。例えば、正極は、正極活物質、導電材およびバインダーを溶媒に混合して、活物質組成物を調制し、当該活物質組成物を正極集電体に塗布する、という方法によって得ることができる。いくつかの実施例では、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)などを含むことができるが、これに限定されない。
【0053】
いくつかの実施例では、負極は、金属リチウム片であってもよく、負極集電体と負極集電体の少なくとも1つの表面に設置される負極活物質層とを含むものであってもよい。
【0054】
いくつかの実施例では、負極活物質層は、負極活物質を含み、任意に、導電剤、バインダーおよび増粘剤を含む。
【0055】
いくつかの実施例では、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-カーボン複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO2、スピネル構造のチタン酸リチウムLi4Ti5O12、Li-Al合金およびリチウム金属からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0056】
いくつかの実施例では、導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノ繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
【0057】
いくつかの実施例では、バインダーは、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルブチラール、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース、およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることができる。
【0058】
いくつかの実施例では、増粘剤はカルボキシメチルセルロースであることができる。
【0059】
本発明の電気化学装置における負極は、上記の材料に限定されるものではなく、本発明は、更に、リチウムイオン電池の負極活物質、導電剤、バインダーおよび増粘剤として使用可能な他の材料を使用することができる。
【0060】
負極集電体は、金属箔材料または多孔質金属板、例えば、銅、ニッケル、チタン、または鉄などの金属もしくはそれらの合金を使用する箔材料または多孔質板、例えば、銅箔を使用することができる。
【0061】
負極は、当分野の常法に従って調製することができる。通常、負極活物質と任意の導電剤、バインダーおよび増粘剤を溶媒(N-メチルピロリドンまたは脱イオン水)に分散させて、均一な負極スラリーを形成し、当該負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、負極片を得る。
【0062】
本発明の電気化学装置におけるセパレーターは、特に制限がなく、電気化学安定性および化学的安定性を有する任意な既知の多孔質構造のセパレーターを選択することができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリフッ化ビニリデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の単層または多層フィルムを選択して使用することができる。
【0063】
本発明の電気化学装置における電解液は、フルオロエチレンカーボネートのほか、更に、有機溶媒、電解質リチウム塩、および添加剤を含む。本発明は、有機溶媒および電解質リチウム塩の種類に対して特に制限がなく、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0064】
いくつかの実施例では、有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることができる。いくつかの実施例では、有機溶媒は上記の化合物からなる群より選ばれた少なくとも2種を含む。
【0065】
いくつかの実施例では、電解質リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOP)、およびリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート(LiTFOP)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることができる。
【0066】
いくつかの実施例では、電解液は、任意に、他の添加剤を含むことができる。他の添加剤は、リチウムイオン電池の添加剤として使用可能な任意のものであってもよく、特に制限がなく、実際のニーズに応じて選択すればよい。いくつかの実施例では、添加剤は、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(AND)、1-プロペン1,3-スルトン(PST)、スルホン酸エステル環状四級アンモニウム塩、トリス(トリメチルシラン)ホスフェート(TMSP)、トリス(トリメチルシラン)ボレート(TMSB)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることができる。
【0067】
本発明の電気化学装置における電解液は、当分野の常法に従って調製することができる。例えば、前記電解液は、有機溶媒、電解質リチウム塩、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の任意の添加剤を均一に混合することによって得ることができる。各材料を添加する順番は特に制限されない。例えば、電解質リチウム塩、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の任意の添加剤を有機溶媒に入れて、均一に混合し、電解液を得る。このうち、電解質リチウム塩を有機溶媒に添加した後、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の任意の添加剤をそれぞれに、または同時に有機溶媒に添加することによって行うことができる。
【0068】
本発明の電気化学装置は、当分野の常法に従って調製することができる。例えば、上記の正極、セパレーターおよび負極を順番に積層し、セパレーターを正極と負極との間を分離するように位置させて、セルを得ることができるし、または、巻回によってセルを得ることができる。そして、セルを外装ケースに入れ、電解液を注入して封口して、電気化学装置を得る。
【0069】
二、電子装置
本発明に記載される電気化学装置が各分野の電子装置に適用される。
【0070】
本発明の電気化学装置の用途に対して特に限定がなく、先行技術で知られているあらゆる用途に使用できる。1つの実施例では、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力型パソコン、モバイルパソコン、電子書籍プレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯複写機、携帯プリンター、ヘッドマウントステレオヘッドホン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、携帯クリーナー、携帯CDプレーヤー、ミニディスク、送受信機、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯レコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュライト、カメラ、家庭用大型蓄電池、およびリチウムイオンキャパシタなどに使用されることができるが、これらに限定されない。
【0071】
三、実施例
以下、実施例と比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、これらの実施例に限定するものではない。
【0072】
リチウムイオン電池の調製
(1)正極の調製
正極活物質と、バインダーであるポリフッ化ビニリデンと、導電性カーボンブラックとを重量比97.6:1.3:1.1で混合し、溶媒であるNMPを加え、真空撹拌作用で均一になるまで撹拌し、正極スラリーを得た。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布した後、オーブンに移して、120℃の乾燥温度で乾燥させ、冷間プレス、スリットを経て、正極を得た。
【0073】
(2)負極の調製
負極活物質である人造黒鉛、一酸化ケイ素、バインダーであるポリアクリル酸および導電性カーボンブラックを質量比85.9:10:2.8:1.3で混合し、溶媒である脱イオン水を加え、真空攪拌作用で負極スラリーを得た。負極スラリーを負極集電体である銅箔に均一に塗布した後、オーブンに移して、120℃の乾燥温度で乾燥させ、冷間プレス、スリットを経て、負極を得た。
【0074】
(3)電解液の調製
エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを体積比1:1:1で均一に混合し、有機溶媒を得た。1mol/LのLiPF6を上記の有機溶媒に溶解し、更に一定の含有量のフルオロエチレンカーボネートを加えて均一に混合し、電解液を得た。
【0075】
(4)セパレーターの調製
セパレーターは、厚みが14μmであるポリプロピレンフィルム(Celgard社より提供)を用いた。
【0076】
(5)リチウムイオン電池の調製
正極、セパレーター、負極をこの順に積層し、隔離の役割を果たすようにセパレーターを正極と負極との間に位置させ、その後、巻回してベアセルを得た。ベアセルを外装箔であるアルミフィルム内に置き、上記で調制された電解液を乾燥後の電池に注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池の調製が完成された。
【0077】
上記の調製方法に従って実施例1~21および比較例1~5のリチウムイオン電池を調製した。各実施例および各比較例における、正極活物質、正極の抵抗、正極の圧縮密度、正極の片面の面密度および電解液の全重量に対する電解液におけるフルオロエチレンカーボネートの重量百分率は、以下の表1に示す通りであった。調製されたリチウムイオン電池について以下のように試験を行った。比較例5における正極活物質はLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2であった以外、ほかのパラメータは実施例2と完全に同様した。以下の高温サイクル特性試験において、実施例2と比較例5の初回充電曲線を作成した。
【0078】
【0079】
試験方法
(1)正極の抵抗試験
日置BT3562型抵抗測定器を用いて正極の抵抗を測定した。具体的には、内部抵抗測定器の二つの導電端子の間に正極を挟み、圧力をかけて固定し、正極の電気抵抗rを測定した。このうち、プローブと正極片との接触面積は49πmm2、導電端子の直径は14mm、印加圧力は15MPa~27MPa、採点時間の範囲は5s~17sであった。
【0080】
(2)高温サイクル特性試験
調製されたリチウムイオン電池を45℃の恒温槽に入れ、リチウムイオン電池を1.5Cのレートで4.3Vまで定電流充電し、更に、4.3Vで電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、そして、1Cのレートで3.0Vまで定電流放電することを1つの充放電サイクルとした。リチウムイオン電池の放電容量が初回サイクルの放電容量の80%に減衰するまで、リチウムイオン電池を上記方法に従って充放電サイクルを行い、リチウムイオン電池の初回サイクルの放電容量およびその後の毎回のサイクルの放電容量を記録し、この時の充放電サイクルの回数を記録した。
【0081】
(3)レート特性試験
25℃で、リチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.3Vまで定電流充電し、更に4.3Vで電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、そして、0.2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、0.2Cレートでの放電容量を記録した。
【0082】
25℃で、リチウムイオン電池を0.2Cのレートで4.3Vまで定電流充電し、更に4.3Vで電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、そして、2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、2Cレートでの放電容量を記録した。
リチウムイオン電池の2Cレートでの放電容量維持率(%)=2Cレートでの放電容量/0.2Cレートでの放電容量×100%
【0083】
(4)X線回折試験
X線回折測定器(オランダのパナコ社、XPertPro MPD)を用い、試験条件をCuKα放射(λ=1.5418Å)、作動電流250mA、連続走査、作動電圧40kV、走査範囲2θ 10°~70°、ステップサイズ0.1°、走査速度0.2秒/ステップに設定し、実施例の試料粉末に対して回折試験を行い、試料相を確認した。
【0084】
試験結果
図1は、本発明の実施例1における正極活物質であるLi
1.2Ni
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2のX線回折(XRD)図である。B相の16°~18°に現れた(001)面の特徴的な回折ピークB1の強度I
Bに対するA相の17°~19°に現れた(003)面の特徴的な回折ピークA1の強度I
Aの比値I
A/I
B=7.2であった。
【0085】
図2は、実施例2および比較例5の初回充電曲線図である。
図2から分かるように、本発明の正極活物質の初回充電比容量が高く、SEIの生成による活性リチウムの損失を効果的に補充しているので、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0086】
表2は、実施例1~21および比較例1~5のリチウムイオン電池の試験結果である。
【0087】
【0088】
実施例2と比較例5とを比較することによって分かるように、本発明の正極活物質の初回充電比容量が高く、SEIの生成による活性リチウムの損失を効果的に補充しているので、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0089】
実施例1、2および7と比較例1~3とを比較することによって分かるように、本発明は、正極抵抗R、圧縮密度Pおよび片面の面密度Qを3.5≦R・P/Q≦30に満たすように制御することにより、リチウムイオン電池に良好なサイクル特性およびレート特性を持たせることができる。
【0090】
実施例1、2、7、8および9と比較例1とを比較することによって分かるように、本発明における電解液に添加されたフルオロエチレンカーボネートは、正極にリチウムを補充する戦略と相乗効果を発揮することができる。初回充電の時、大量な活性リチウムが負極に吸蔵されるため、負極の真の電位がさらに低下し、電解液における溶媒が還元反応を起こし続け、サイクル特性に影響を及ぼす。フルオロエチレンカーボネートを電解液に添加することによって、より緻密で薄いSEI層を生成させ、電解液の持続的な消費を阻止することができる。また、フルオロエチレンカーボネートは、高圧酸化に対する耐性がより高いため、高電圧領域でのサイクル寿命の向上に有利である。電解液におけるフルオロエチレンカーボネートを15%以下に制御することによって、より良い高温サイクル特性を実現することができる。
【0091】
明細書全体において、「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「1つの実施例」、「もう1つの例」、「例」、「具体例」または「一部の例」による引用は、本発明の少なくとも1つの実施例または例が、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実施例では」、「実施例では」、「1つの実施例では」、「もう1つの例では」、「1つの例では」、「特定な例では」または「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例または例を引用するとは限らない。さらに、本明細書における特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施例または例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0092】
例示的な実施例を示して説明したが、当業者は、上述の実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、および、本発明の趣旨、原理および範囲から逸脱することなく、代替や修正を行ってもよいこと、を理解すべきである。
【国際調査報告】