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特表2024-539300電気化学装置及びそれを含む電子装置
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  • 特表-電気化学装置及びそれを含む電子装置 図1
  • 特表-電気化学装置及びそれを含む電子装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電気化学装置及びそれを含む電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20241018BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241018BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241018BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20241018BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20241018BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0567
H01M10/052
H01G11/06
H01G11/46
H01G11/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524760
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022075971
(87)【国際公開番号】W WO2023070989
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/126213
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周▲墨▼林
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA02
5E078AA05
5E078AB06
5E078BA05
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA44
5E078BA53
5E078BA68
5E078BA71
5E078BA73
5E078DA03
5E078DA19
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ08
5H029HJ13
5H029HJ20
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、電気化学装置、それを含む電子装置を提供する。リチウムイオン二次電池は正極と、負極と、セパレータと、電解液とを含む。正極は第1の正極材料と第2の正極材料とを含み、ここで、第1の正極材料は良好なサイクル安定性と高い初回クーロン効率を有し、かつ第2の正極材料は高い初回充電比容量と低い初回クーロン効率を有し、SEIの生成による活性リチウムの損失を補うことができる。リチウムイオン二次電池は良好なレート特性と長いサイクル寿命の利点を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置であって、
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極材料層とを含み、前記正極材料層は第1の正極材料と第2の正極材料とを含み、
前記第1の正極材料は式(I)で表され、
Li1+xCoMe1-y-z2-t 式(I)
ここで、-0.1<x<0.2、0.8<y≦1、0≦z≦1、0<y+z≦1、0≦t<0.2、MeとMはそれぞれ独立してNi、Mn、Al、Mg、Ti、Zr、LaおよびYのうちの少なくとも1種を含み、かつMeとMは異なり、AはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、
前記第2の正極材料は式(II)で表され、
Li1+rMn1-p2-s 式(II)
ここで、-0.1<r<0.2、0≦p<0.2、0≦s<0.2、XはFe、Co、Ni、Ti、Zn、Mg、Al、V、CrおよびZrのうちの少なくとも1種を含み、かつTはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、
前記正極は式(1)を満たし、
2.0≦R×P/Q≦36 式(1)
ここで、Rは前記正極の抵抗であり、単位はΩであり、Pは前記正極の圧縮密度であり、単位はg/cmであり、かつQは前記正極の片面の面密度であり、単位はg/1540.25mmである、電気化学装置。
【請求項2】
前記正極は、式(2)を満たす、
5.0≦R×P/Q≦32 式(2)
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記Rは、R≦3Ωを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記Pは、4.0g/cm≦P≦4.3g/cmを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記Qは、0.16g/1540.25mm<Q<0.38g/1540.25mmを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記第2の正極材料に対する前記第1の正極材料の質量比は5:1~99:1である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記正極材料層の全質量に対して、前記第1の正極材料の含有量は80%~98%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記第2の正極材料のX線回折スペクトルは、
15°~16°の範囲内に特徴回折ピークAを有し、および/または
18°~19°の範囲内に特徴回折ピークBを有し、
特徴回折ピークAの強度Iと特徴回折ピークBの強度Iとの比の値I/Iは、式(3)を満たす、
0<I/I≦0.2 式(3)、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記第2の正極材料は、初回サイクルでの充電後のX線回折スペクトルにおいて、特徴回折ピークAと特徴回折ピークBの両方が低角度方向にシフトし、シフトの幅は、シフトの幅<0.5°を満たす、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記第1の正極材料は、LiCoO、LiCo0.9Ni0.1、LiCo0.9Ni0.05Mn0.05およびLi0.95Co0.99Al0.011.950.05のうちの少なくとも一つを含む、および/または
前記第2の正極材料は、LiMnO、LiMn0.9Ni0.1、LiMn0.9Ni0.05Cr0.05、Li0.95MnO1.950.05およびLi0.95MnO1.90.050.05のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記電解液はフルオロエチレンカーボネートを含み、前記電解液の全質量に対して、前記フルオロエチレンカーボネートの含有量は1%~15%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の電気化学装置を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には電気化学装置およびそれを含む電子装置、特にリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の産業化規模の拡大と関連技術の発展に伴い、リチウムイオン電池のサイクル寿命はますます多くの注目と挑戦を受けている。リチウムイオン二次電池は、初回充放電過程において、負極の表面に固体電解質界面(SEI)が形成し、不可逆的な容量損失が生じる。負極として黒鉛を用いたリチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスでは、初回サイクルで活性リチウム源の約10%が消耗される。負極として合金系(ケイ素、スズなど)、酸化物系(酸化ケイ素、酸化スズなど)、およびアモルファス炭素などの高い比容量を有する負極材料を用いた場合は、活性リチウム源の消耗がさらに増大する。また、後続のサイクル過程において、SEIの破壊と再生により、活性リチウム源がさらに消耗されることで、サイクル寿命が減衰してしまう。このため、リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイスのサイクル寿命をさらに向上させるために、リチウムを補充する適切な方法を提供することが重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、従来技術に存在する問題をある程度解決するために、レート特性およびサイクル寿命を向上させた電気化学装置および電子装置を提供する。
【0004】
一つの実施例において、本発明は、正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置を提供する。正極は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極材料層とを含み、正極材料層は第1の正極材料と第2の正極材料とを含み、
第1の正極材料は式(I)で表され、
Li1+xCoMe1-y-z2-t 式(I)
ここで、-0.1<x<0.2、0.8<y≦1、0≦z≦1、0<y+z≦1、0≦t<0.2、MeとMはそれぞれ独立してNi、Mn、Al、Mg、Ti、Zr、LaおよびYのうちの少なくとも1種を含み、かつMeとMは異なり、AはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、
第2の正極材料は式(II)で表され、
Li1+rMn1-p2-s 式(II)
ここで、-0.1<r<0.2、0≦p<0.2、0≦s<0.2、XはFe、Co、Ni、Ti、Zn、Mg、Al、V、CrおよびZrのうちの少なくとも1種を含み、かつTはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、そして、
正極は式(1)を満たし、
2.0≦R×P/Q≦36 式(1)
ここで、Rは正極の抵抗であり、単位はΩであり、Pは正極の圧縮密度であり、単位はg/cmであり、かつQは正極の片面の面密度であり、単位はg/1540.25mmである。
【0005】
いくつかの実施例において、正極は、式(2)を満たす。
5.0≦R×P/Q≦32 式(2)
【0006】
いくつかの実施例において、Rは、R≦3Ωを満たす。
【0007】
いくつかの実施例において、Pは、4.0g/cm≦P≦4.3g/cmを満たす。
【0008】
いくつかの実施例において、Qは、0.16g/1540.25mm<Q<0.38g/1540.25mmを満たす。
【0009】
いくつかの実施例において、第2の正極材料に対する第1の正極材料の質量比は5:1~99:1である。
【0010】
いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、第1の正極材料の含有量は80%~98%である。
【0011】
いくつかの実施例において、第2の正極材料のX線回折スペクトルは、15°~16°の範囲内に特徴回折ピークAを有し、および/または18°~19°の範囲内に特徴回折ピークBを有し、特徴回折ピークAの強度Iと特徴回折ピークBの強度Iとの比の値I/Iは、式(3)を満たす。
0<I/I≦0.2 式(3)
【0012】
いくつかの実施例において、第2の正極材料は、初回サイクルでの充電後のX線回折スペクトルにおいて、特徴回折ピークAと特徴回折ピークBの両方が低角度方向にシフトし、シフトの幅は、シフトの幅<0.5°を満たす。
【0013】
いくつかの実施例において、第1の正極材料は、LiCoO、LiCo0.9Ni0.1、LiCo0.9Ni0.05Mn0.05およびLi0.95Co0.99Al0.011.950.05のうちの少なくとも1方を含み、および/または第2の正極材料は、LiMnO、LiMn0.9Ni0.1、LiMn0.9Ni0.05Cr0.05、Li0.95MnO1.950.05およびLi0.95MnO1.90.050.05のうちの少なくとも一方を含む。
【0014】
いくつかの実施例において、電解液はフルオロエチレンカーボネートを含み、ここで、電解液の全質量に対して、フルオロエチレンカーボネートの含有量は1%~15%である。
【0015】
別の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の電気化学装置を備える電子装置を提供する。
【0016】
本発明は、正極リチウム補充材料を含む正極およびそれを含むリチウムイオン二次電池を提供する。第一に、本発明に用いられた第2の正極材料は、表面の遊離リチウムの含有量が低く、加工性に優れている。また、この第2の正極材料の比容量は、第1の正極材料に比べて相対的に高いため、初回充電時に大量のリチウムイオンを放出することで活性リチウムの損失を補うことができ、この第2の正極材料を、層状構造を有する比容量が高い第1の正極材料と組み合わせることで、電池のサイクル寿命を効果的に向上させることができる。第二に、本発明では、正極のシート抵抗、圧縮密度および面密度を設計することにより、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命およびレート特性を著しく向上させることができる。第三に、電解液に添加剤としてフルオロエチレンカーボネートを添加することにより、負極にLiF成分を大量に含んだ均一で緻密なSEI膜を形成することで、活性リチウムの持続的な損失を抑制できる。同時に、フルオロエチレンカーボネートは、正極側で高圧酸化に対する耐性がより強いため、リチウムイオン二次電池のサイクル寿命をより一層向上させることができる。
【0017】
本発明の実施例のさらなる態様および利点について、以下の説明において、部分的に説明し/図示し、または本発明の実施例の実施を通じて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1における第2の正極材料の初回サイクルでの充電前後のXRDスペクトルを示す。
図2図2は、図1の部分拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例は、以下に詳細に説明される。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0020】
なお、本明細書において、量、比率、およびその他の数値を範囲形式で示すことがある。このような範囲形式は、利便性と簡潔性のために使用されることを理解すべきである。また、範囲制限として明示的に指定された数値だけでなく、各数値およびサブ範囲を明示的に指定する範囲内に含まれるすべての個別の数値またはサブ範囲をも包含するように柔軟に読み取られるべきであると理解すべきである。
【0021】
具体的な実施形態および請求の範囲において、用語「のうちの一方」、「のうちの1つ」、「のうちの1種」、またはその他の類似用語によって接続された項目のリストは、リストされた項目のいずれかを意味する。例えば、項目Aおよび項目Bがリストされている場合、フレーズ「AおよびBのうちの一方」は、AのみまたはBのみを意味する。その他の実例において、項目A、項目B、および項目Cがリストされている場合、フレーズ「A、BおよびCのうちの一方」は、Aのみ、BのみまたはCのみを意味する。項目Aは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項目Bは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項目Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。
【0022】
具体的な実施形態および請求の範囲において、用語「のうちの少なくとも一方」、「のうちの少なくとも1つ」、「のうちの少なくとも1種」、またはその他の類似用語によって接続された項目のリストは、リストされた項目の任意の組み合わせを意味する。例えば、項目Aおよび項目Bがリストされている場合、フレーズ「AおよびBのうちの少なくとも1方」は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBを意味する。その他の実例において、項目A、項目B、および項目Cがリストされている場合、フレーズ「A、B、およびCのうちの少なくとも一方」は、Aのみ、またはBのみ、Cのみ、AおよびB(Cを除く)、AおよびC(Bを除く)、BおよびC(Aを除く)、またはA、B、Cのすべてを意味する。項目Aは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項目Bは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項目Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。
【0023】
一.電気化学装置
いくつかの実施例において、本発明は、正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置を提供する。
【0024】
1.正極
いくつかの実施例において、正極は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面上に位置する正極材料層とを含み、正極材料層は第1の正極材料と第2の正極材料とを含み、
第1の正極材料は式(I)で表され、
Li1+xCoMe1-y-z2-t 式(I)
ここで、-0.1<x<0.2、0.8<y≦1、0≦z≦1、0<y+z≦1、0≦t<0.2、MeとMはそれぞれ独立してNi、Mn、Al、Mg、Ti、Zr、LaおよびYのうちの少なくとも1種を含み、かつMeとMは異なり、AはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、
第2の正極材料は式(II)で表され、
Li1+rMn1-p2-s 式(II)
ここで、-0.1<r<0.2、0≦p<0.2、0≦s<0.2、XはFe、Co、Ni、Ti、Zn、Mg、Al、V、CrおよびZrのうちの少なくとも1種を含み、かつTはS、N、F、ClおよびBrのうちの少なくとも1種を含み、そして、
正極は式(1)を満たし、
2.0≦R×P/Q≦36 式(1)
ここで、Rは正極の抵抗であり、単位はΩであり、Pは正極の圧縮密度であり、単位はg/cmであり、かつQは正極の片面の面密度であり、単位はg/1540.25mmである。
【0025】
本明細書では、R・P/Qの計算は数値の計算にのみ関連し、例えば、正極の抵抗Rは1.0Ω、圧縮密度Pは4.2g/cm、正極の片面の面密度Qは0.26g/1540.25mmである場合、R・P/Q=16.15である。
【0026】
正極の抵抗Rは直流二探針法により測定された抵抗値であり、ここで、探針と正極との接触面積は49πmmである。一例として、正極の上下側を極片抵抗計の2つの導電端子の間に挟み込み、圧力を加えて固定し、導電端子の直径は14mm、加えた圧力は15Mpa~27MPaである。極片抵抗計は日置BT23562型バッテリーテスターである。
【0027】
正極の圧縮密度は、式P=m/vで算出することができ、この式において、mは正極材料層の重量であり、単位はgであり、vは正極材料層の体積であり、単位はcmである。ここで、正極材料層の体積vは、正極材料層の面積Aと正極材料層の厚さとの積であってもよい。
【0028】
正極の片面の面密度Qは、式Q=1540.25m/Aで算出することができ、この式において、mは正極材料層の重量であり、単位はgであり、Aは正極材料層の面積であり、単位はmmである。
【0029】
いくつかの実施例において、正極材料層は、正極集電体の1つの表面上に位置する。いくつかの実施例において、正極材料層は、正極集電体の2つの表面上に位置する。
【0030】
いくつかの実施例において、第1の正極材料は、LiCoO、LiCo0.9Ni0.1、LiCo0.9Ni0.05Mn0.05およびLi0.95Co0.99Al0.011.950.05のうちの少なくとも1方を含む。いくつかの実施例において、第2の正極材料は、LiMnO、LiMn0.9Ni0.1、LiMn0.9Ni0.05Cr0.05、Li0.95MnO1.950.05およびLi0.95MnO1.90.050.05のうちの少なくとも1方を含む。
【0031】
いくつかの実施例において、R、P、Qは、5.0≦R×P/Q≦32を満たす。いくつかの実施例において、R×P/Qの値は、5.0、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、もしくは32であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0032】
いくつかの実施例において、Rは、R≦3Ωを満たす。いくつかの実施例において、Rは、0.2Ω、0.5Ω、1Ω、1.2Ω、1.5Ω、1.8Ω、2.0Ω、2.2Ω、2.5Ω、もしくは3.0Ωであり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。Rが上記範囲内にあると、リチウムイオン二次電池のサイクル特性およびレート特性を向上させるのに有利である。
【0033】
いくつかの実施例において、Pは、4.0g/cm<P<4.3g/cmを満たす。いくつかの実施例において、Pは4.0g/cm、4.1g/cm、4.2g/cm、もしくは4.3g/cmであり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。Pが上記範囲内にあると、正極における電子およびイオンの移動に寄与し、それにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させる。
【0034】
いくつかの実施例において、Qは、0.16g/1540.25mm<Q<0.38g/1540.25mmを満たす。いくつかの実施例において、Qは、0.16g/1540.25mm、0.18g/1540.25mm、0.2g/1540.25mm、0.25g/1540.25mm、0.28g/1540.25mm、0.30g/1540.25mm、0.34g/1540.25mm、0.36g/1540.25mm、もしくは0.38g/1540.25mmであり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。Qが上記範囲内にあると、充放電の容量を確保しつつ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性およびレート特性を向上させることができる。
【0035】
いくつかの実施例において、第2の正極材料に対する第1の正極材料の質量比は5:1~99:1である。いくつかの実施例において、第2の正極材料に対する第1の正極材料の質量比は、5:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、もしくは99:1であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。第2の正極材料に対する第1の正極材料の質量比が上記範囲内にあると、正極に含まれる第1の正極材料の含有量がより高いので、正極はより高い構造安定性を有し、正極材料の構造の破壊による容量の損失およびインピーダンスの増加を減少させることができ、それにより、リチウムイオン電池のサイクル安定性および動力学的性能を維持することができる。
【0036】
いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、第1の正極材料の含有量は80%~98%である。いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、第1の正極材料の含有量は80%、82%、84%、85%、88%、90%、92%、94%、96%、もしくは98%であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0037】
いくつかの実施例において、第2の正極材料のX線回折スペクトルは、15°~16°の範囲内に特徴回折ピークAを有し、および/または18°~19°の範囲内に特徴回折ピークBを有し、特徴回折ピークAの強度Iと特徴回折ピークBの強度Iとの比の値I/Iは、式(3)を満たす。
0<I/I≦0.2 式(3)
【0038】
いくつかの実施例において、I/Iの値は、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、もしくは0.2であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0039】
いくつかの実施例において、第2の正極材料は、初回サイクルでの充電後のX線回折スペクトルにおいて、特徴回折ピークAと特徴回折ピークBの両方が低角度方向にシフトし、シフトの幅は、シフトの幅<0.5°を満たす。いくつかの実施例において、シフトの幅は、0.1°、0.2°、0.3°、0.4°、もしくは0.45°であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0040】
いくつかの実施例において、正極材料層は導電剤を含む。いくつかの実施例において、導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1方を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、導電剤の含有量は0.5~20%である。いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、導電剤の含有量は0.5%、1%、5%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、もしくは20%であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0042】
いくつかの実施例において、正極材料層はバインダーを含む。いくつかの実施例において、バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、およびポリビニルアルコール(PVA)のうちの少なくとも一つを含む。
【0043】
いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、バインダーの含有量は0.1~2.5%である。いくつかの実施例において、正極材料層の全質量に対して、バインダーの含有量は0.1%、0.2%、0.5%、0.8%、1%、1.2%、1.5%、1.8%、2%、もしくは2.5%であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0044】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔や多孔質金属板を含む。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタンまたは銀などの金属あるいはそれらの合金の箔や多孔質板を含む。いくつかの実施例において、正極集電体は、銅箔およびアルミニウム箔のうちの少なくとも1種を含む。
【0045】
いくつかの実施例において、正極集電体の厚さは5μm~20μmである。いくつかの実施例において、正極集電体の厚さは5μm、8μm、10μm、12μm、15μm、18μm、もしくは20μmであり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0046】
いくつかの実施例において、正極は、溶媒中に正極活物質、導電剤およびバインダーを混合して活物質組成物を調製し、当該活物質組成物を集電体上に塗布する方法により得ることができる。いくつかの実施例において、溶媒は、N-メチルピロリドンなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0047】
本発明に提供された正極は、第1の正極材料と第2の正極材料との相乗効果を十分に発揮することができる。一方、初回サイクルでの充電時では、第2の正極材料の初回充電比容量が高く、初回クーロン効率が低いという特性を利用して、SEIの生成による活性リチウムの損失を効果的に補うことにより、初回放電時に十分なリチウムイオンが第1の正極材料に戻されて挿入され、電池のエネルギー密度を効果的に向上させる。他方、本発明に用いられた第1の正極材料の比容量が高く、充放電過程での体積の変化が小さいため、サイクル安定性は良好である。また、正極のシート抵抗、圧縮密度および面密度を設計することにより、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度およびレート特性をさらに向上させることができる。したがって、本発明に提供された正極を使用すると、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度、良好なレート特性および長いサイクル寿命を得ることができる。
【0048】
なお、正極のシート抵抗、圧縮密度および片面の面密度は、リチウムイオン二次電池の設計と製造における重要なパラメータである。正極のシート抵抗が大きすぎると、リチウムイオン二次電池のサイクル特性およびレート特性が悪化する。一方、圧縮密度が大きすぎても小さすぎても、電池のサイクル特性およびレート特性が悪くなる。正極の片面の面密度が大きすぎると、電池のサイクル寿命が低下し、電解液の含浸にも影響し、さらに電池のレート特性にも影響し、特に電池の高いレートでの放電容量を低減させる。正極の片面の面密度が小さすぎるということは、同じ電池容量で、集電体とセパレータの長さが増加し、電池のオーム内部抵抗が増大することを意味する。
【0049】
本発明では、正極が第1の正極材料および第2の正極材料の両方を含む場合、正極のシート抵抗、圧縮密度および片面の面密度などのパラメータを総合的に設計することにより、リチウムイオン二次電池の電気化学的特性を所望の結果にする。
【0050】
2.電解液
いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、電解質と、この電解質を溶解する溶媒とを含む。いくつかの実施例において、電解液は、添加剤を含み、添加剤はフルオロエチレンカーボネートを含み、ここで、電解液の全質量に対して、フルオロエチレンカーボネートの含有量は1%~15%である。
【0051】
いくつかの実施例において、フルオロエチレンカーボネートの含有量は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、もしくは15%であり、あるいはこれらの数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0052】
いくつかの実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、エチルメチルスルホン(EMS)およびジエチルスルホン(ESE)のうちの少なくとも一つを含む。
【0053】
いくつかの実施例において、電解液は、リチウムイオン二次電池の添加剤として任意に使用できるその他の添加剤をさらに含む。いくつかの実施例において、その他の添加剤は、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(AND)、1,3‐プロペンスルトン(PST)、スルホン酸エステル環状第四級アンモニウム塩、トリス(トリメチルシリル)ホスファート(TMSP)、およびトリス(トリメチルシリル)ボラート(TMSB)のうちの少なくとも一つであり得る。
【0054】
電解質は、特に限定されない。いくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池の場合、電解質はリチウム塩を含むことができる。実例として、電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート(LiDFOP)およびリチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(LiTFOP)を含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施例において、電解質の含有量は、本発明の効果を損なわなければ特に制限されない。いくつかの実施例において、電解液中のリチウムの総モル濃度は、0.3mol/Lより大、0.4mol/Lより大、または0.5mol/Lより大である。いくつかの実施例において、電解液中のリチウムの総モル濃度は3mol/L未満、2.5mol/L未満、または2.0mol/L未満である。いくつかの実施例において、電解液中のリチウムの総モル濃度は、上記の任意の2つの数値からなる範囲内にある。電解質濃度が上記範囲内にあると、帯電粒子であるリチウムが少なすぎることがなく、粘度を適切な範囲にすることができるので、良好な導電率を確保しやすい。
【0056】
上記電解液は、本分野における一般的な方法に従って調製することができる。有機溶媒、電解質リチウム塩、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の選択可能な添加剤を均一に混合し、電解液を得ることができ、ここで、各材料の添加順序は特に制限されない。例えば、電解質リチウム塩、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の選択可能な添加剤を有機溶媒に加えて均一に混合し、電解液を得る。ここで、電解質リチウム塩を有機溶媒に添加した後、フルオロエチレンカーボネートとその他の選択可能な添加剤をそれぞれまたは同時に有機溶媒に添加することができる。
【0057】
3.負極
いくつかの実施例において、負極は、負極集電体と、負極集電体の1つまたは2つの表面上に位置する負極活物質層とを含む。負極活物質層は負極活物質を含む。負極活物質層は、単層であってもよく、多層であってもよく、多層負極活物質における各層は、同一または異なる負極活物質を含んでもよい。負極活物質は、リチウムイオンなどの金属イオンを可逆的に吸蔵および放出可能な任意の物質である。いくつかの実施例において、充電中にリチウム金属が意図せずに負極上に析出することを防止するために、負極活物質の充電可能容量は、負極活物質の放電容量より大きい。
【0058】
いくつかの実施例において、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-カーボン複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のチタン酸リチウムLiTi12、Li-Al合金、およびリチウム金属のうちの少なくとも一つを含む。いくつかの実施例において、負極活物質は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0059】
いくつかの実施例において、負極集電体は、銅、ニッケル、チタンまたは鉄などの金属あるいはそれらの合金の箔や多孔質板などの金属箔や多孔質金属板等の材料を使用してもよく、例えば、銅箔を使用してもよい。
【0060】
いくつかの実施例において、負極集電体が金属材料である場合、負極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、金属メッシュシート、パンチングメタル、発泡メタルなどを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は金属薄膜である。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔である。いくつかの実施例において、負極集電体は、圧延法による圧延銅箔または電解法による電解銅箔である。
【0061】
いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、1μmより大、または5μmより大である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、100μm未満、または50μm未満である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、上記数値のいずれか2つからなる範囲内にある。
【0062】
いくつかの実施例において、負極活物質層は、負極バインダーをさらに含む。負極バインダーは、負極活物質の粒子同士の結合および負極活物質と集電体との結合を向上させることができる。負極バインダーの種類は、特に限定されず、電解液または電極製造中に用いる溶媒に対して安定な材料であればよい。いくつかの実施例において、負極バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、水性アクリル樹脂、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)のうちの少なくとも一つを含む。
【0063】
いくつかの実施例において、負極活物質層は増粘剤をさらに含むことができる。いくつかの実施例において、増粘剤はカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。
【0064】
いくつかの実施例において、負極は、以下の方法により調製することができる。負極活物質、樹脂バインダーなどを含む負極合剤スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥後にプレスして負極集電体の両面に負極活物質層を形成することにより、負極を得ることができる。
【0065】
4.セパレータ
いくつかの実施例において、短絡を防止するために、正極と負極との間に、通常、セパレータが設けられている。この場合、本発明の電解液は、通常、このセパレータに含浸して用いられる。
【0066】
セパレータの材料および形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されない。セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる樹脂、ガラス繊維、無機物などであってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、保液性に優れた多孔質シートまたは不織布状形態の物質などを含む。樹脂またはガラス繊維セパレータの材料の実例は、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホンなどを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。いくつかの実施例において、ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。上記セパレータの材料は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記セパレータは、上記材料を積層してなる材料であってもよく、その実例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンをこの順で積層してなる三層セパレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0068】
無機物の材料の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなど)を含み得るが、これらに限定されない。無機物の形態は、粒子状または繊維状を含み得るが、これらに限定されない。
【0069】
セパレータの形態は、薄膜形態であってもよく、その実例は、不織布、織布、微多孔質フィルムなどを含むが、これらに限定されない。薄膜形態では、セパレータの孔径が0.01μm~1μmであり、厚さが5μm~50μmである。上記独立の薄膜状セパレータ以外に、樹脂類のバインダーを用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔質層を正極および/または負極の表面上に形成してなるセパレータ、例えば、バインダーとしてフッ素樹脂を使用して90%粒径が1μm未満の酸化アルミニウム粒子を正極の両面に多孔質層を形成してなるセパレータを用いることもできる。
【0070】
セパレータの厚さは、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、1μmより大、5μmより大、または8μmより大である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、50μm未満、40μm未満、または30μm未満である。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、上記の任意の2つの数値からなる範囲内にある。セパレータの厚さが上記範囲内にあると、絶縁性および機械的強度を確保しつつ、電気化学装置のレート特性およびエネルギー密度を確保することができる。
【0071】
セパレータとして多孔質シートまたは不織布などの多孔質材料を用いる場合、セパレータの孔隙率は、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、10%より大、15%より大、または20%より大である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、60%未満、50%未満、または45%未満である。いくつかの実施例において、セパレータの孔隙率は、上記数値のいずれか2つからなる範囲内にある。セパレータの孔隙率が上記範囲内にあると、絶縁性および機械的強度を確保しつつ、シート抵抗を抑制することができ、電気化学装置に良好な安全性を持たせる。
【0072】
セパレータの平均孔径も、任意である。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、0.5μm未満、または0.2μm未満である。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、0.05μmより大である。いくつかの実施例において、セパレータの平均孔径は、上記数値のいずれか2つからなる範囲内にある。セパレータの平均孔径が上記範囲を超えると、短絡が発生しやすい。セパレータの平均孔径が上記範囲内にあると、電気化学装置に良好な安全性を持たせる。
【0073】
いくつかの実施例において、セパレータは、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)のうちの1種以上の単層または多層のフィルムである。
【0074】
5.電気化学装置
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が起こる任意の装置を含み、その具体的な実例は、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタを含む。特に、この電気化学装置は、リチウム金属二次電池またはリチウムイオン二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0075】
本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0076】
本発明の電気化学装置の用途は、特に限定されず、従来技術で既知の任意の電子装置に用いることが可能である。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力型パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー機、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池およびリチウムイオンキャパシタなどに利用されるが、これらに限定されない。
【0077】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製について説明し、当業者は、本発明に記載されている調製方法が単なる例示であり、その他の任意の好適な調製方法がいずれも本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0078】
実施例
以下に、本発明のリチウムイオン電池の実施例と比較例に対して特性評価を行う。
【0079】
一.リチウムイオン電池の調製
実施例1
1.正極の調製
第1の正極材料としてのLiCoO、第2の正極材料としてのLiMnO2、バインダーとしてのPVDFおよび導電性カーボンブラックを質量比90.0:7.6:1.3:1.1で混合し、溶媒としてのNMPを添加し、真空攪拌下で、体系が均一で透明状になるまで攪拌して、正極スラリーを得た。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、その後オーブンに移して乾燥し、乾燥温度は120℃であった。そして、冷間プレス、スライスを経た後、正極を得た。ここで、正極材料層の全質量に対して、第1の正極材料のLiCoOの含有量は90.0%であり、第2の正極材料のLiMnOの含有量は7.6%であった。
【0080】
2.負極の調製
負極材料としての人造黒鉛、一酸化ケイ素、バインダーとしてのポリアクリル酸(PAA)および導電性カーボンブラックを質量比85.9:10:2.8:1.3で混合し、溶媒としての脱イオン水を添加し、真空攪拌機により負極スラリーを得た。負極スラリーを負極集電体である銅箔に均一に塗布する。オーブンに移して乾燥し、乾燥温度は120℃であった。そして、冷間プレス、スライスを経た後、負極を得た。
【0081】
3.電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で均一に混合し、有機溶媒を得た。LiPFを上記有機溶媒に溶解して基礎電解液を得、ここで、基礎電解液において、LiPFの濃度が1mol/Lであった。当該基礎電解液にフルオロエチレンカーボネートを加え、均一に混合し、電解液を得た。当該電解液の全質量に対して、フルオロエチレンカーボネートの含有量は5%であった。
【0082】
4.セパレータの調製
厚さ14μmのポリプロピレン(PP)薄膜(Celgard社製)をセパレータとした。
【0083】
5.リチウムイオン電池の調製
正極、セパレータおよび負極を順に積層し、正極と負極を隔離する役割を果たすようにセパレータを正極と負極の間に位置させ、その後、それらを巻き取ってベアセルとし、タブを溶接した。ベアセルを外装に入れ、電解液を注入して封止し、その後、静置、フォーメーション、整形などの工程を経て、リチウムイオン二次電池を得た。
【0084】
実施例2~15
実施例2~15と実施例1との違いは、正極材料の種類、関連特性パラメータおよび電解液中の添加剤の含有量が異なることであり、詳細は表1に示す。
【0085】
比較例1
比較例1と実施例1との違いは、比較例1における正極材料にはLiCoOのみが含まれることである。
【0086】
比較例2
比較例2と実施例1との違いは、比較例2における正極材料にはLiMnOのみが含まれることである。
【0087】
比較例3~4
比較例3~4と実施例1との違いは、正極における第2の正極材料に対する第1の正極材料の質量比が異なることであり、詳細は表1に示す。
【0088】
比較例5~7
比較例5~7と実施例1との違いは、正極のシート抵抗、圧縮密度および片面の面密度が異なることであり、詳細は表1に示す。
【0089】
比較例8~9
比較例8~9と実施例1との違いは、電解液中のフルオロエチレンカーボネートの含有量が異なることであり、詳細は表1に示す。
【0090】
二.測定方法
1.正極のシート抵抗の測定方法
日置BT3562型バッテリーテスターを用いて正極のシート抵抗を測定した。測定方法は、正極をバッテリーテスターの2つの導電端子の間に挟み込み、圧力を加えて固定し、正極の抵抗Rを測定することを含む。ここで、導電端子の直径は14mm、加えた圧力は15MPa~27MPa、サンプリング時間の範囲は5s~17sであった。
【0091】
2.リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性の測定方法
45℃で、リチウムイオン二次電池を1.5Cのレートで4.5Vまで定電流充電し、その後、電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1Cのレートで3.0Vまで定電流放電した操作を一回の充放電サイクルとし、リチウムイオン二次電池の一回目サイクルの放電容量を記録した。リチウムイオン二次電池を上記方法に従って充放電サイクルを行い、リチウムイオン二次電池の放電容量が一回目サイクルの放電容量の80%に低減するまで毎回のサイクルの放電容量を記録し、充放電サイクルの回数を記録した。
【0092】
3.リチウムイオン二次電池のレート特性の測定方法
25℃で、リチウムイオン二次電池を0.2Cのレートで4.5Vまで定電流充電し、その後、電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに0.2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、0.2Cのレートでの放電容量を記録した。
【0093】
25℃で、リチウムイオン二次電池を0.2Cのレートで4.5Vまで定電流充電し、その後、電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに2Cのレートで3.0Vまで定電流放電し、2Cのレートでの放電容量を記録した。
【0094】
リチウムイオン二次電池の2Cのレートでの放電容量維持率(%)=2Cのレートでの放電容量/0.2Cのレートでの放電容量×100%。
【0095】
三、測定結果
表1は、比較例1~9および実施例1~15における正極の組成、関連特性パラメータおよび電解液中の添加剤の種類と含有量を示す。ここで、第1の正極材料および第2の正極材料の含有量は正極材料層の全質量に基づいて計算して得られ、かつ電解液中のフルオロエチレンカーボネートの含有量は電解液の全質量に基づいて計算して得られる。
【0096】
【表1】
【0097】
表2は、比較例1~9および実施例1~15におけるリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性およびレート特性を示す。
【0098】
【表2】
【0099】
上記した実施例と比較例との比較からわかるように、正極が第1の正極材料または第2の正極材料のみを含むリチウムイオン電池に比べて、正極が第1の正極材料および第2の正極材料の両方を含むリチウムイオン電池は、高温サイクル特性が著しく向上するが、レート特性が著しく変化しない。それにより、第1の正極材料および第2の正極材料を併用することで相乗効果を生み出すことがわかる。いかなる理論に限定されていないが、上述した相乗効果を生み出すのは、以下の理由に起因する可能性がある。第1に、本発明に用いられた第2の正極材料は表面の遊離リチウムの含有量が少ないため、当該第2の正極材料を正極に添加して得られたスラリーは安定性が良好であり、加工性に優れている。第二に、本発明に用いられた第2の正極材料は初回充電比容量が高く、初回クーロン効率が低いので、SEIの生成による活性リチウムの損失をよりよく補うことにより、放電時により多くのリチウムイオンが第1の正極材料の結晶格子に戻されて挿入され、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を効果的に向上させる。そして、第三に、第1の正極材料はサイクル特性が良好であり、比容量が高いので、正極片のシート抵抗R、圧縮密度Pおよび片面の面密度Qを本発明の範囲内に制御することにより、リチウムイオン二次電池に良好なサイクル特性およびレート特性を持たせることができる。
【0100】
また、比較例7と実施例1の比較結果からわかるように、電解液に添加されたフルオロエチレンカーボネートは、第1の正極材料および第2の正極材料の両方を含む正極と相乗効果を発揮することができる。これは、初回充電時に、第2の正極材料から放出された大量の活性リチウムが負極に挿入するため、負極の実電位(real potential)がさらに低下し、電解液中の溶媒が持続的に還元され、サイクル特性に影響を与え、添加剤としてフルオロエチレンカーボネートを使用することにより、より緻密で軽薄なSEI層の生成を誘導することができ、電解液の持続的な消耗を阻止することができるためである。そして、フルオロエチレンカーボネートは高圧酸化に対する耐性がより強く、高電圧の第1の正極材料に配合するのに有利である。
【0101】
明細書全体において、「いくつかの実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」または「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例または例は、当該実施例または例に記載された特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例または例を引用する訳ではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0102】
例示的な実施例が記載および説明されたが、当業者は、上記した実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、および範囲から逸脱しない場合に実施例への変更、置換および修正が可能であること、を理解すべきである。
図1
図2
【国際調査報告】