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特表2024-539304トリメチルベンゼン化合物用の吸着剤およびその調製方法、ならびに、トリメチルベンゼン化合物の分離方法および分離装置
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  • 特表-トリメチルベンゼン化合物用の吸着剤およびその調製方法、ならびに、トリメチルベンゼン化合物の分離方法および分離装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】トリメチルベンゼン化合物用の吸着剤およびその調製方法、ならびに、トリメチルベンゼン化合物の分離方法および分離装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/22 20060101AFI20241018BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241018BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07C 7/12 20060101ALI20241018BHJP
   C07C 15/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C01B39/22
B01J20/18 B
B01J20/30
B01D15/00 K
B01D15/00 101A
C07C7/12
C07C15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525019
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2022127260
(87)【国際公開番号】W WO2023072035
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111238672.2
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111238515.1
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喬曉菲
(72)【発明者】
【氏名】劉偉強
(72)【発明者】
【氏名】馬劍鋒
(72)【発明者】
【氏名】楊彦強
(72)【発明者】
【氏名】王紅超
(72)【発明者】
【氏名】劉宇斯
(72)【発明者】
【氏名】李倫西
(72)【発明者】
【氏名】蒋志超
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4G073
4H006
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017BA05
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA02
4D017EA01
4G066AA13D
4G066AA51D
4G066AA62B
4G066AA63D
4G066AA64D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA26
4G066BA38
4G066CA51
4G066DA10
4G066FA01
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA22
4G066FA25
4G066FA34
4G066FA37
4G073AA01
4G073BA02
4G073BA03
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA10
4G073BA11
4G073BA12
4G073BA13
4G073BA75
4G073BA81
4G073BA86
4G073BD21
4G073CM05
4G073CM06
4G073CM09
4G073CM16
4G073CM24
4G073CZ04
4G073DZ03
4G073FB29
4G073FB30
4G073GA01
4G073GA12
4G073GA19
4G073UA06
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD17
4H006BA71
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD82
4H006BD84
(57)【要約】
本発明は、トリメチルベンゼン化合物用の吸着剤を提供する。前記吸着剤は、X型モレキュラーシーブとマトリクスとの総量に対して、X型モレキュラーシーブ93~99質量%と、マトリクス1~7質量%と、を含み、前記マトリクスは、粘土鉱物のin-situ結晶化および結晶変換の後に得られる物質である。前記吸着剤は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+から選択される少なくとも1種の2価陽イオンで修飾され、任意で、前記吸着剤は、Li、Na、K、Rb、およびCsから選択される少なくとも1種の1価陽イオンで修飾される。本発明はさらに、前記吸着剤を調製する方法、前記吸着剤を使用することによってトリメチルベンゼン化合物を分離する方法、および、トリメチルベンゼン化合物を分離する装置を提供する。本発明のトリメチルベンゼン化合物用の吸着剤は、優れたトリメチルベンゼンに対する優先吸着選択性、ならびに、優れた圧縮強度およびかさ密度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤であって、
X型モレキュラーシーブとマトリクスとの総量に対して、X型モレキュラーシーブ93~99重量%と、マトリクス1~7重量%と、を含み、
前記マトリクスは、粘土鉱物のin-situ結晶化を経由した結晶変換後の物質であり、
前記吸着剤は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンで修飾され、
任意で、前記吸着剤は、Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンで修飾されることを特徴とする、吸着剤。
【請求項2】
前記吸着剤は、1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは2.5~6.0%である水の質量分率を有することを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記吸着剤は、560m/g以上、好ましくは590m/g以上であるBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記吸着剤は、75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上である2価陽イオンの交換度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記吸着剤は、0.3%~1.0%(好ましくは0.3%~0.6%)である130Nにおける破砕率、0.40~0.95g/cm(好ましくは0.75~0.78g/cm)であるかさ密度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項6】
前記X型モレキュラーシーブは、0.5~2.0ミクロンである結晶粒子径を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記X型モレキュラーシーブは、2.0~2.6、好ましくは2.0~2.4であるシリカのアルミナに対するモル比を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項8】
前記粘土鉱物は、非金属粘土鉱物から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項9】
前記粘土鉱物は、カオリン鉱物、ベントナイト鉱物、アタパルジャイト鉱物、セピオライト鉱物、およびイライト鉱物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項10】
前記カオリン鉱物は、カオリン石、ディク石、ナクル石、火打ち石、およびハロイ石のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項11】
前記ベントナイト鉱物は、活性白土、天然漂白粘土、およびオルガノベントナイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のトリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の調製方法であって、
(1)粒子への成形:Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で混合し、粒子に成形し、任意で乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程;
(2)in-situ結晶化:焼成された粒子をアルカリ溶液で処理し、次いで乾燥して、マトリクスとしての粒子を生産し、前記アルカリ溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.2mol/L~2.0mol/L(好ましくは0.2mol/L~1.6mol/L)である工程;
(3)イオン交換:工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物、ならびに、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液との陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程;
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項13】
工程(3)の後、前記方法は、
(4)活性化工程:工程(3)の前記乾燥した生成物を、好ましくは150℃~260℃、より好ましくは180℃~250℃の活性化温度で活性化する工程;
をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
前記アルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1種の溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液であり、より好ましくは前記アルカリ溶液中のK/(Na+K)のモル比は、0~0.50(好ましくは0.15~0.40)であることを特徴とする、請求項12または13に記載の調製方法。
【請求項15】
前記アルカリ溶液の前記焼成された粒子に対する液体/固体比は、1.5L/kg~5.0L/kgであることを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
前記in-situ結晶化の工程において、結晶化温度は、80℃~100℃であることを特徴とする、請求項12~15のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
前記in-situ結晶化の工程において、乾燥後に得られた前記マトリクスとしての粒子は、400ミクロン~950ミクロンの粒径を有することを特徴とする、請求項12~16のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項18】
前記イオン交換の工程において、
前記Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩および塩酸塩のうちの少なくとも1種から選択され、
前記Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩、塩酸塩、および炭酸塩のうちの少なくとも1種から選択されることを特徴とする、請求項12~17のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項19】
前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの濃度は、0.15mol/L以上であり、前記交換溶液の前記粒子に対する体積比は、3以上であることを特徴とする、請求項12~18のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの前記1価陽イオンに対するモル比は、3以上、好ましくは4以上であることを特徴とする、請求項12~19のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
トリメチルベンゼン系化合物の分離方法であって、
吸着分離:トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料を、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸着剤または請求項12~20のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤と接触させて、トリメチルベンゼン系化合物を吸着させ、次いで分離を行って、トリメチルベンゼン系化合物を生産する工程;
を含む分離方法。
【請求項22】
前記重質芳香族炭化水素原料は、改質生成物、熱分解ガソリン、ナフサ、エチルベンゼン装置副産物、または接触分解ガソリンから選択され、好ましくは改質重質芳香族炭化水素留分であり、より好ましくは150℃以上の沸点を有する改質重質芳香族炭化水素留分であることを特徴とする、請求項21に記載の分離方法。
【請求項23】
前記重質芳香族炭化水素原料は、20%以上のトリメチルベンゼン系化合物の総質量分率を有する改質重質芳香族炭化水素であることを特徴とする、請求項22に記載の分離方法。
【請求項24】
前記重質芳香族炭化水素原料の流量率は、吸着剤の単位質量に対して、0.16kg/(h・kg吸着剤)以上、好ましくは0.20kg/(h・kg吸着剤)以上、より好ましくは0.23kg/(h・kg吸着剤)以上である、請求項21~23のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項25】
トリメチルベンゼン系化合物は、脱着剤としてアルキルベンゼン(好ましくはトルエン)を使用することによって、前記吸着剤から分離されることを特徴とする、請求項21~24のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項26】
前記吸着分離の工程において、擬似移動床装置を使用し、好ましくは、
前記擬似移動床装置は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、請求項21~25のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項27】
1ステップ時間の間において、前記擬似移動床の材料が流れる方向における各材料の引出しおよび注入の順序は、脱着剤、抽出液、原料、およびラフィネートであることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項28】
前記擬似移動床装置の構成の圧力は、0.5MPa~1.2MPa(好ましくは0.6MPa~1.0MPa)であり、温度は、120℃~200℃(140℃~180℃)であることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項29】
前記擬似移動床装置内に注入される前記脱着剤と前記重質芳香族炭化水素原料との質量流量率の比(脱着剤/重質芳香族炭化水素原料)は、3.6以下、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.2以下であることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項30】
前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有することを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項31】
前記擬似移動床装置は、18~60分間、好ましくは25~35分間の1サイクル期間を有することを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項32】
前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入されることを特徴とする、請求項26に記載の分離方法。
【請求項33】
各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられていることを特徴とする、請求項32に記載の分離方法。
【請求項34】
各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられていることを特徴とする、請求項32に記載の分離方法。
【請求項35】
各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流であることを特徴とする、請求項32に記載の分離方法。
【請求項36】
前記方法は、
蒸留工程:前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物を蒸留に供し、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産する工程;
をさらに含むことを特徴とする、請求項21~35のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項37】
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を垂直分割型カラムに送り、
前記垂直分割型カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産することを特徴とする、請求項36に記載の分離方法。
【請求項38】
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムのカラム下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産することを特徴とする、請求項36に記載の分離方法。
【請求項39】
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムの下部生成物を第3蒸留カラムに送り、
前記第3蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,3-トリメチルベンゼンを生産し、前記下部生成物は、高沸点を有する芳香族溶剤油であることを特徴とする、請求項36に記載の分離方法。
【請求項40】
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物であり、
1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを、結晶化工程を使用することによって、さらに分離することを特徴とする、請求項36に記載の分離方法。
【請求項41】
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流から、結晶化工程を使用することによって、1,2,3-トリメチルベンゼンを分離することができ、
残留した1,2,4-トリメチルベンゼンと1,3,5-トリメチルベンゼンとの混合物流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンであることを特徴とする、請求項36に記載の分離方法。
【請求項42】
前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物は、99重量%以上の総純度を有することを特徴とする、請求項21~41のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項43】
前記蒸留工程から得られた1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ97.0重量%以上、98.0重量%以上、および95.0重量%以上の純度を有し、好ましくはそれぞれ98.5重量%以上、99.3重量%以上、および97.0重量%以上の純度を有することを特徴とする、請求項36~42のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項44】
前記方法は、
異性化工程:前記吸着分離の工程と前記蒸留工程との間にあり、トリメチルベンゼン系化合物を、前記異性化に供し、
または前記蒸留工程の後にあり、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を、前記異性化に供する工程;
をさらに含むことを特徴とする、請求項21~43のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項45】
トリメチルベンゼンの1種またはトリメチルベンゼンの混合物が異性化された後、得られた熱力学的平衡濃度を有するトリメチルベンゼンの混合物流は、分離のために前記吸着分離の工程に戻されることを特徴とする、請求項44に記載の分離方法。
【請求項46】
前記蒸留工程において、2基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、第1蒸留カラムの側部から生産し、または、
前記蒸留工程において、3基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、前記第1蒸留カラムまたは前記第2蒸留カラムの側部から生産することができることを特徴とする、請求項44に記載の分離方法。
【請求項47】
前記方法は、
ラフィネート分離工程:前記擬似移動床装置からのラフィネートを蒸留に供し、脱着剤、および、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分を生産する工程;
をさらに含むことを特徴とする、請求項26~46のいずれか1項に記載の分離方法。
【請求項48】
トリメチルベンゼン系化合物の分離装置であって、
吸着分離ユニット:請求項1~11のいずれか1項に記載の吸着剤または請求項12~20のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤を有し、トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料から、トリメチルベンゼン系化合物を吸着および分離して、トリメチルベンゼン系化合物を生産するために使用されるユニット;
を備える装置。
【請求項49】
前記吸着分離ユニットは、擬似移動床を採用し、好ましくは、
前記擬似移動床は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、請求項48に記載の分離装置。
【請求項50】
前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有することを特徴とする、請求項49に記載の分離装置。
【請求項51】
前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入されることを特徴とする、請求項49に記載の分離装置。
【請求項52】
各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられていることを特徴とする、請求項49に記載の分離装置。
【請求項53】
各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられていることを特徴とする、請求項49に記載の分離装置。
【請求項54】
各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流であることを特徴とする、請求項49に記載の分離装置。
【請求項55】
前記装置は、
蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産するユニット;
をさらに備えることを特徴とする、請求項48~54のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項56】
前記蒸留ユニットは、垂直分割型カラムを備え、
前記垂直分割型カラムには、前記吸着分離の工程からの前記抽出液流が導入され、
前記垂直分割型カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムの側部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられることを特徴とする、請求項55に記載の分離装置。
【請求項57】
前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラムおよび第2蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられていることを特徴とする、請求項55に記載の分離装置。
【請求項58】
前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラム、第2蒸留カラム、および第3蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部は、前記第3蒸留カラムに接続され、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム上部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム下部には、高沸点を有する芳香族溶剤油の排出口が設けられていることを特徴とする、請求項55に記載の分離装置。
【請求項59】
前記装置は、
ラフィネート蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された前記重質芳香族炭化水素成分を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分、および脱着剤をそれぞれ生産するユニット;
をさらに備えることを特徴とする、請求項48~57のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項60】
前記分離装置は、
異性化ユニット:前記吸着分離ユニットと前記蒸留ユニットとの間に位置し、前記吸着分離ユニットからトリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容するために使用され、前記異性化が行われ、または、
前記蒸留ユニットの下流に接続され、前記蒸留ユニットから1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を受容するために使用され、前記異性化が行われるユニット;
をさらに備えることを特徴とする、請求項48~59のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項61】
前記蒸留ユニットが2基の蒸留カラムを有する場合、前記第1蒸留カラムの側部には、異性化流の出口が設けられ、または、
前記蒸留ユニットが3基の蒸留カラムを有する場合、前記第1蒸留カラムまたは前記第2蒸留カラムの側部は、異性化流の出口を有することを特徴とする、請求項60に記載の分離装置。
【請求項62】
重質芳香族炭化水素原料からトリメチルベンゼン系化合物を吸着するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸着剤または請求項12~20のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤、その調製方法、ならびに、トリメチルベンゼン系化合物を全体として吸着することによって分離するために、前記吸着剤を適用するための分離方法および分離装置に関する。具体的には、本発明は、高純度の1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンを吸着することによって分離するための吸着剤、ならびに、高純度の1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンを吸着することによって分離するための分離方法および分離装置に関する。
【0002】
〔技術背景〕
C9+重質芳香族炭化水素は、石油化学および石炭コークス化のプラントの重要な副産物である。近年、化学工業は、それらの総合的な利用にますます注目している。多くの国内の統合事業の相次ぐ委託に伴い、改質ユニットの生産能力は2022年に1億9000万トンに達し、改質重質芳香族炭化水素の生産能力は3000万トン超になると予想される。現在、重質芳香族炭化水素を利用する方法は3つある。1つ目は、石油混合成分として、2つ目は、BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン混合物)のような軽質芳香族炭化水素の生産量を増加させるため、3つ目は、高沸点溶剤油(solvent oil)を生産するためである。3つ目の利用ルートは、資源を浪費する度合いがより高く、製品の付加価値もより低い。
【0003】
一方では、重質芳香族炭化水素の資源量は増加していて、原料価格は下落している。過去10年間、重質芳香族炭化水素の価格は総じて下落傾向を示してきた。2021年には、1トン当たりの重質芳香族炭化水素の価格は3200元まで引き下げられている。もう一方では、多くの製造業者の重質芳香族炭化水素の利用装置は、現在、複数の蒸留カラムと組み合わされた、抽出、低温結晶化、およびアルキル化のような反応を含む。それらの製品は、比較的単一であり、純度と収率とが低く、工程の流れが複雑であり、投資コストが高く、運転時のエネルギーの消費量が多く、総合的な抽出度が低く、製品の付加価値が低い。したがって、市場は、重質芳香族炭化水素の資源利用を改善し、重質芳香族炭化水素製品の経済的付加価値を最大化し、産業チェーンを拡大するための技術革新を、緊急で必要としている。
【0004】
重質芳香族炭化水素のほぼ半分を占めるトリメチルベンゼン3種は、改質された重質芳香族炭化水素における割合が最も高い。それらは、利用価値の高い重要な精製化学製品の中間体である。1,2,4-トリメチルベンゼンは、現在、多段(multiple-column)蒸留または抽出蒸留によって得られるが、原料の組成に対する要件があり、特にtert-ブチルベンゼンの含有量に対する要件は比較的厳しい。中国は1,2,4-トリメチルベンゼンの最大の生産国および消費国であり、その需要は年々増加している。ビタミンEの生産の中間体であるトリメチルヒドロキノンだけでなく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物を生産し、環境にやさしい可塑剤をさらに生産するために、または、メチル化してデュレンを生産し、航空宇宙、超音速航空機、原子力産業、電気機械産業のような分野で広く使用されている21世紀で最も有望なプラスチックであるポリイミドをさらに生産するために、1,2,4-トリメチルベンゼンを使用することができる。現在、1,3,5-トリメチルベンゼンは、抽出蒸留、アルキル化、または、異性化によって得られるが、各方法にはある種の欠点がある。例えば、抽出蒸留は、エネルギーの消費量が多い。アルキル化は、大量のプロピレンを消費し、コストが高い。異性化は、他のC9成分の干渉を受けやすく、製品の収率は15%程度しかない。高価な酸化防止剤、染料、および環境にやさしい除草剤を生産するために、1,3,5-トリメチルベンゼンを使用することができる。中国は農業大国であり、環境にやさしい除草剤の需要も年々増加している。現在、1,2,3-トリメチルベンゼンは、高沸点溶剤油として一般に販売されており、そのモノマーは、アルキル化、抽出-精密蒸留、精密蒸留-低温結晶化、および同様の工程によって得られる。しかしながら、インダン成分との分離が極めて困難であるため、分離工程全体は多くのエネルギーを消費し、純度は50重量%~80重量%しかなく、経済性に劣る。化粧品および日用化学製品中の日用香料としてムスクチベテンを生産するために、または、アニリン染料、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、およびトリメシン酸を生産するために、または、塩化ベンゾイルや塩化フェニルアセチルと反応させて鎮痛剤、血小板抗凝固剤、トロンビン阻害剤、および他の医薬品を生産するために、1,2,3-トリメチルベンゼンを使用することができる。しかしながら、その分離および精製における莫大な投資のため、中国における工業生産は少ない。
【0005】
吸着分離工程は、特定の成分を選択的に吸着する特徴を有し、工程の流れが比較的単純であり、副生成物がより少なく、他の成分からの干渉をより受けにくい。直列に接続された多段蒸留カラムに比べ、エネルギーの消費量がより少ない。
【0006】
米国特許3558730は、BaXおよびKXよりもパラキシレン(PX、para-xylene)に対する選択性が著しく高いBaKXモレキュラーシーブを開示した。米国特許3997620は、BaKXと比べ、Xモレキュラーシーブ(X molecular sieve)をSr2+およびBa2+と交換した後、パラキシレン/メタキシレン(PX/MX、para-xylene/meta-xylene)およびパラキシレン/オルトキシレン(PX/OX、para-xylene/ortho-xylene)は減少したものの、しかしながら、パラキシレン/エチルベンゼン(PX/EB、para-xylene/ethylbenzene)およびパラキシレン/パラジエチルベンゼン(PX/PDEB、para-xylene/para-diethylbenzene)は著しく増加したことを見出した。中国1565718Aは、物質移動性能を改善し、かつ、吸着容量を増加させるために、吸着剤の活性成分として、0.1~0.4ミクロンの結晶粒子径をもつ小結晶粒子Xモレキュラーシーブを使用している。
【0007】
改質された重質芳香族炭化水素中のトリメチルベンゼンの異性体3種の配置および静電ポテンシャル分布は、ある種の一般的な特徴を有する。したがって、吸着分離および蒸留工程を組み合わせることによって、トリメチルベンゼンの異性体3種は、重質芳香族炭化水素から同時に分離され得、次いで、蒸留のような従来の工程を経由して高収率および高純度でモノマー製品が得られる。現在、活性成分としてX型モレキュラーシーブ(X-type molecular sieve)を使用する吸着剤の多くが、パラ芳香族炭化水素の吸着および分離のために使用されている。しかしながら、トリメチルベンゼンの異性体3種のすべてに対する選択性を示し、かつ、高いかさ密度および高い圧縮強度を併せ持つ、吸着剤の報告はない。
【0008】
〔発明の概要〕
上記課題を解決するために、本発明の発明者らは、詳細な研究を実施し、X型モレキュラーシーブと、粘土鉱物のin-situ結晶化を経由した結晶変換後に得られた物質とを組み合わせることによって、特定のイオン交換修飾を経由して得られた吸着剤は、トリメチルベンゼン系化合物に対する非常に高い選択性を有し、重質芳香族炭化水素から高純度のトリメチルベンゼンモノマーを分離するために使用することができることを、驚くべきことに見出した。
【0009】
すなわち、本発明は次の技術的解決策を提供する。
【0010】
[1]
トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤であって、
X型モレキュラーシーブとマトリクスとの総量に対して、X型モレキュラーシーブ93~99重量%と、マトリクス1~7重量%と、を含み、
前記マトリクスは、粘土鉱物のin-situ結晶化を経由した結晶変換後の物質であり、
前記吸着剤は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンで修飾され、
任意で、前記吸着剤は、Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンで修飾されることを特徴とする、吸着剤。
【0011】
[2]
前記吸着剤は、1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは2.5~6.0%である水の質量分率を有することを特徴とする、[1]に記載の吸着剤。
【0012】
[3]
前記吸着剤は、560m/g以上、好ましくは590m/g以上であるBET比表面積を有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の吸着剤。
【0013】
[4]
前記吸着剤は、75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上である2価陽イオンの交換度を有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0014】
[5]
前記吸着剤は、0.3%~1.0%(好ましくは0.3%~0.6%)である130Nにおける破砕率、0.40~0.95g/cm(好ましくは0.75~0.78g/cm)であるかさ密度を有することを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0015】
[6]
前記X型モレキュラーシーブは、0.5~2.0ミクロンである結晶粒子径を有することを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0016】
[7]
前記X型モレキュラーシーブは、2.0~2.6、好ましくは2.0~2.4であるシリカのアルミナに対するモル比を有することを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0017】
[8]
前記粘土鉱物は、非金属粘土鉱物から選択されることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0018】
[9]
前記粘土鉱物は、カオリン鉱物(kaolin mineral)、ベントナイト鉱物(bentonite mineral)、アタパルジャイト鉱物(attapulgite mineral)、セピオライト鉱物(sepiolite mineral)、およびイライト鉱物(illite mineral)のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1項に記載の吸着剤。
【0019】
[10]
前記カオリン鉱物は、カオリン石(kaolinite)、ディク石(dickite)、ナクル石(nacrite)、火打ち石(firestone)、およびハロイ石(halloysite)のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、[9]に記載の吸着剤。
【0020】
[11]
前記ベントナイト鉱物は、活性白土(activated clay)、天然漂白粘土(natural bleaching earth)、およびオルガノベントナイト(organobentonite)のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、[9]に記載の吸着剤。
【0021】
[12]
[1]~[11]のいずれか1項に記載のトリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の調製方法であって、
(1)粒子への成形:Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で混合し、粒子に成形し、任意で乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程;
(2)in-situ結晶化:焼成された粒子をアルカリ溶液で処理し、次いで乾燥して、前記マトリクスとしての粒子を生産し、前記アルカリ溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.2mol/L~2.0mol/L(好ましくは0.2mol/L~1.6mol/L)である工程;
(3)イオン交換:工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物、ならびに、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液との陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程;
を含むことを特徴とする調製方法。
【0022】
[13]
工程(3)の後、前記方法は、
(4)活性化工程:工程(3)の前記乾燥した生成物を、好ましくは150℃~260℃、より好ましくは180℃~250℃の活性化温度で活性化する工程;
をさらに含むことを特徴とする、[12]に記載の調製方法。
【0023】
[14]
前記アルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1種の溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液であり、より好ましくは前記アルカリ溶液中のK/(Na+K)のモル比は、0~0.50(好ましくは0.15~0.40)であることを特徴とする、[12]または[13]に記載の調製方法。
【0024】
[15]
前記アルカリ溶液の前記焼成された粒子に対する液体/固体比は、1.5L/kg~5.0L/kgであることを特徴とする、[12]~[14]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0025】
[16]
前記in-situ結晶化の工程において、結晶化温度は、80℃~100℃であることを特徴とする、[12]~[15]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0026】
[17]
前記in-situ結晶化の工程において、乾燥後に得られた前記マトリクスとしての粒子は、400ミクロン~950ミクロンの粒径を有することを特徴とする、[12]~[16]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0027】
[18]
前記イオン交換の工程において、
前記Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩および塩酸塩のうちの少なくとも1種から選択され、
前記Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩、塩酸塩、および炭酸塩のうちの少なくとも1種から選択されることを特徴とする、[12]~[17]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0028】
[19]
前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの濃度は、0.15mol/L以上であり、前記交換溶液の前記粒子に対する体積比は、3以上であることを特徴とする、[12]~[18]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0029】
[20]
前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの前記1価陽イオンに対するモル比は、3以上、好ましくは4以上であることを特徴とする、[12]~[19]のいずれか1項に記載の調製方法。
【0030】
[21]
トリメチルベンゼン系化合物の分離方法であって、
吸着分離:トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料を、[1]~[11]のいずれか1項に記載の吸着剤または[12]~[20]のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤と接触させて、トリメチルベンゼン系化合物を吸着させ、次いで分離を行って、トリメチルベンゼン系化合物を生産する工程;
を含む分離方法。
【0031】
[22]
前記重質芳香族炭化水素原料は、改質生成物、熱分解ガソリン、ナフサ、エチルベンゼン装置(ethylbenzene-apparatus)副産物、または接触分解ガソリンから選択され、好ましくは改質重質芳香族炭化水素留分であり、より好ましくは150℃以上の沸点を有する改質重質芳香族炭化水素留分であることを特徴とする、[21]に記載の分離方法。
【0032】
[23]
前記重質芳香族炭化水素原料は、20%以上のトリメチルベンゼン系化合物の総質量分率を有する改質重質芳香族炭化水素であることを特徴とする、[22]に記載の分離方法。
【0033】
[24]
前記重質芳香族炭化水素原料の流量率は、吸着剤の単位質量に対して、0.16kg/(h・kg吸着剤)以上、好ましくは0.20kg/(h・kg吸着剤)以上、より好ましくは0.23kg/(h・kg吸着剤)以上である、[21]~[23]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0034】
[25]
トリメチルベンゼン系化合物は、脱着剤としてアルキルベンゼン(好ましくはトルエン)を使用することによって、前記吸着剤から分離されることを特徴とする、[21]~[24]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0035】
[26]
前記吸着分離の工程において、擬似移動床装置を使用し、好ましくは、
前記擬似移動床装置は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、[21]~[25]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0036】
[27]
1ステップ時間の間において、前記擬似移動床の材料が流れる方向における各材料の引出しおよび注入の順序は、脱着剤、抽出液、原料、およびラフィネートであることを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0037】
[28]
前記擬似移動床装置の構成の圧力は、0.5MPa~1.2MPa(好ましくは0.6MPa~1.0MPa)であり、温度は、120℃~200℃(140℃~180℃)であることを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0038】
[29]
前記擬似移動床装置内に注入される前記脱着剤と前記重質芳香族炭化水素原料との質量流量率の比(脱着剤/重質芳香族炭化水素原料)は、3.6以下、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.2以下であることを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0039】
[30]
前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有することを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0040】
[31]
前記擬似移動床装置は、18~60分間、好ましくは25~35分間の1サイクル期間を有することを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0041】
[32]
前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液(flushing liquor)管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブ(on-off valve)が設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入されることを特徴とする、[26]に記載の分離方法。
【0042】
[33]
各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられていることを特徴とする、[32]に記載の分離方法。
【0043】
[34]
各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられていることを特徴とする、[32]に記載の分離方法。
【0044】
[35]
各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流であることを特徴とする、[32]に記載の分離方法。
【0045】
[36]
前記方法は、
蒸留工程:前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物を蒸留に供し、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産する工程;
をさらに含むことを特徴とする、[21]~[35]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0046】
[37]
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を垂直分割型カラム(dividing wall column)に送り、
前記垂直分割型カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産することを特徴とする、[36]に記載の分離方法。
【0047】
[38]
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムのカラム下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産することを特徴とする、[36]に記載の分離方法。
【0048】
[39]
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムの下部生成物を第3蒸留カラムに送り、
前記第3蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,3-トリメチルベンゼンを生産し、前記下部生成物は、高沸点を有する芳香族溶剤油であることを特徴とする、[36]に記載の分離方法。
【0049】
[40]
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物であり、
1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを結晶化工程を使用することによって、さらに分離することを特徴とする、[36]に記載の分離方法。
【0050】
[41]
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流から、結晶化工程を使用することによって、1,2,3-トリメチルベンゼンを分離することができ、
残留した1,2,4-トリメチルベンゼンと1,3,5-トリメチルベンゼンとの混合物流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンであることを特徴とする、[36]に記載の分離方法。
【0051】
[42]
前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物は、99重量%以上の総純度を有することを特徴とする、[21]~[41]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0052】
[43]
前記蒸留工程から得られた1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ97.0重量%以上、98.0重量%以上、および95.0重量%以上の純度を有し、好ましくはそれぞれ98.5重量%以上、99.3重量%以上、および97.0重量%以上の純度を有することを特徴とする、[36]~[42]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0053】
[44]
前記方法は、
異性化工程:前記吸着分離の工程と前記蒸留工程との間にあり、トリメチルベンゼン系化合物を、前記異性化に供し、
または前記蒸留工程の後にあり、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を、前記異性化に供する工程;
をさらに含むことを特徴とする、[21]~[43]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0054】
[45]
トリメチルベンゼンの1種またはトリメチルベンゼンの混合物が異性化された後、得られた熱力学的平衡濃度を有するトリメチルベンゼンの混合物流は、分離のために前記吸着分離の工程に戻されることを特徴とする、[44]に記載の分離方法。
【0055】
[46]
前記蒸留工程において、2基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、第1蒸留カラムの側部から生産し、または、
前記蒸留工程において、3基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、前記第1蒸留カラムまたは前記第2蒸留カラムの側部から生産することができることを特徴とする、[44]に記載の分離方法。
【0056】
[47]
前記方法は、
ラフィネート分離工程:前記擬似移動床装置からのラフィネートを蒸留に供し、脱着剤、および、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分を生産する工程;
をさらに含むことを特徴とする、[26]~[46]のいずれか1項に記載の分離方法。
【0057】
[48]
トリメチルベンゼン系化合物の分離装置であって、
吸着分離ユニット:[1]~[11]のいずれか1項に記載の吸着剤または[12]~[20]のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤を有し、トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料から、トリメチルベンゼン系化合物を吸着および分離して、トリメチルベンゼン系化合物を生産するために使用されるユニット;
を備える装置。
【0058】
[49]
前記吸着分離ユニットは、擬似移動床を採用し、好ましくは、
前記擬似移動床は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入の間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、[48]に記載の分離装置。
【0059】
[50]
前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有することを特徴とする、[49]に記載の分離装置。
【0060】
[51]
前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入されることを特徴とする、[49]に記載の分離装置。
【0061】
[52]
各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられていることを特徴とする、[49]に記載の分離装置。
【0062】
[53]
各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられていることを特徴とする、[49]に記載の分離装置。
【0063】
[54]
各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流であることを特徴とする、[49]に記載の分離装置。
【0064】
[55]
前記装置は、
蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産するユニット;
をさらに備えることを特徴とする、[48]~[54]のいずれか1項に記載の分離装置。
【0065】
[56]
前記蒸留ユニットは、垂直分割型カラムを備え、
前記垂直分割型カラムには、前記吸着分離の工程からの前記抽出液流が導入され、
前記垂直分割型カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムの側部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられることを特徴とする、[55]に記載の分離装置。
【0066】
[57]
前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラムおよび第2蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられていることを特徴とする、[55]に記載の分離装置。
【0067】
[58]
前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラム、第2蒸留カラム、および第3蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部は、前記第3蒸留カラムに接続され、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム上部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム下部には、高沸点を有する芳香族溶剤油の排出口が設けられていることを特徴とする、[55]に記載の分離装置。
【0068】
[59]
前記装置は、
ラフィネート蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された前記重質芳香族炭化水素成分を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分、および脱着剤をそれぞれ生産するユニット;
をさらに備えることを特徴とする、[48]~[57]のいずれか1項に記載の分離装置。
【0069】
[60]
前記分離装置は、
異性化ユニット:前記吸着分離ユニットと前記蒸留ユニットとの間に位置し、前記吸着分離ユニットからトリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容するために使用され、前記異性化が行われ、または、
前記蒸留ユニットの下流に接続され、前記蒸留ユニットから1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を受容するために使用され、前記異性化が行われるユニット;
をさらに備えることを特徴とする、[48]~[59]のいずれか1項に記載の分離装置。
【0070】
[61]
前記蒸留ユニットが2基の蒸留カラムを有する場合、前記第1蒸留カラムの側部には、異性化流の出口が設けられ、または、
前記蒸留ユニットが3基の蒸留カラムを有する場合、前記第1蒸留カラムまたは前記第2蒸留カラムの側部は、異性化流の出口を有することを特徴とする、[60]に記載の分離装置。
【0071】
[62]
重質芳香族炭化水素原料からトリメチルベンゼン系化合物を吸着するための、[1]~[11]のいずれか1項に記載の吸着剤または[12]~[20]のいずれか1項に記載の調製方法で調製した吸着剤の使用。
【0072】
〔技術効果〕
本発明の吸着剤は、高いかさ密度、および、高い圧縮強度を有すると同時に、トリメチルベンゼン3種に対する優れた選択性を有し、重質芳香族炭化水素から高純度のトリメチルベンゼンモノマーを吸着して分離するのに好適であり、これによって、重質芳香族炭化水素の資源利用を改善させ、かつ、重質芳香族炭化水素の経済的付加価値を高める。
【0073】
本発明のトリメチルベンゼン化合物の分離方法によれば、高純度のトリメチルベンゼンモノマーを、重質芳香族炭化水素から高純度、高選択率、および、高収率で連続的に分離することができる。本発明の分離方法で得られたトリメチルベンゼン系化合物は、99重量%以上の総純度を有する。吸着分離を経由して得られたトリメチルベンゼン系化合物については、高純度の、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのモノマーを、高収率、比較的単純な工程、良好な製品品質、および少ないエネルギーの消費量で、蒸留工程を経由して同時に生産することができる。資源利用の効率を改善することができ、かつ、重質芳香族炭化水素製品の経済的付加価値を大幅に増加させることができ、その結果、企業に大きな経済的利益をもたらす。
【0074】
〔図面の説明〕
図1は、本発明の高選択性吸着剤に基づく、パルス装置を使用した重質芳香族炭化水素の吸着分離のパルスピーク図であって、トレーサーとしてn-ノナンを使用し、重質芳香族炭化水素成分は、4-エチルトルエン、3-エチルトルエン、2-エチルトルエン、プロピルベンゼン、4-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、2-プロピルトルエン、パラジエチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、2-エチルパラキシレン、4-エチルメタキシレン、およびインダンである、パルスピーク図である。
【0075】
図2は、本発明の擬似移動床吸着分離工程の概略図である。
【0076】
図3は、本発明の吸着分離および蒸留が複合された工程のための装置の概略図である。
【0077】
〔詳細な説明〕
本発明の具体的な実施形態を以下に詳述するが、本発明の保護範囲は、これらの具体的な実施形態によって限定されるものではなく、付属書における特許請求の範囲によって決定されることを指摘する。
【0078】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。矛盾がある場合、本明細書における定義を優先するものとする。
【0079】
本明細書において、材料、物質、方法、工程、装置、構成要素、または同様のものが「当業者に周知である」、「先行技術である」、または同様のものであると記載されているとき、それらは、出願時に当技術分野において一般的に使用されているもの、および、現時点では一般的に使用されていないが、同様の目的に有用であるとして当技術分野において知られるようになるもの、を対象とすることを意図している。
【0080】
本明細書の文脈において、明示的に記載されているものを除き、言及されていない項目または事項は、当技術分野で公知のものに、いかなる変更もなく直接適用可能である。さらに、本明細書に記載された任意の実施形態を、本明細書に記載された1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、これによって形成された技術的解決策または技術的アイデアは、当業者がその組み合わせが明らかに不合理であると考えない限り、本発明の当初の開示または内容の一部とみなされ、本明細書において開示または予想されていない新規事項とはみなされない。
【0081】
本明細書の文脈において、「例示的」とは、「図示、例示、または説明として使用される」ことを意味する。ここで「例示的」として説明されるいかなる実施例も、他の実施例よりも優越している、または良好であるとして解釈される必要はない。図面において実施例の様々な態様が示されているが、別に特定されない限り、図面を縮尺通りに描く必要はない。
【0082】
本発明において、トリメチルベンゼン系化合物とは、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの任意の割合の混合物をいう。加えて、トリメチルベンゼン系化合物は、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちのいずれか1種、または、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちのいずれか2種の任意の割合の混合物を表すこともできる。
【0083】
本発明の第1態様は、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤であって、
X型モレキュラーシーブとマトリクスとの総量に対して、X型モレキュラーシーブ93~99重量%と、マトリクス1~7重量%と、を含み、
前記マトリクスは、粘土鉱物のin-situ結晶化を経由した結晶変換後の物質であり、
前記吸着剤は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンで修飾され、
任意で、前記吸着剤は、Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンで修飾されることを特徴とする、吸着剤(以後、吸着剤または高選択性吸着剤とも称することがある)を提供する。
【0084】
本発明の一実施形態において、2価陽イオンは、好ましくはSr2+である。その結果、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の優先選択性を著しく増加させることができる。
【0085】
本発明の一実施形態において、1価陽イオンは、好ましくはLiである。その結果、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の吸着容量を増加させることができる。
【0086】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤は、1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは2.5~6.0%である水の質量分率を有する。
【0087】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤は、560m/g以上、好ましくは590m/g以上であるBET比表面積を有する。
【0088】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤の2価陽イオンの交換度は特に限定されない。続くイオン交換工程を行うときは、イオン交換平衡に達するまで、通常は十分なイオン交換が行われる。本発明のトリメチルベンゼン系化合物の吸着効果を達成するためには、2価陽イオンの交換度は、通常、75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上である。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤は、0.3%~1.0%、好ましくは0.3%~0.6%である130Nにおける破砕率を有する。本発明における、130Nにおける破砕率の測定方法は、以下に記載されている。
【0090】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤は、0.40~0.95g/cm、好ましくは0.75~0.78g/cmであるかさ密度を有する。本発明において、かさ密度は、燃焼ベースのかさ密度(ignition-based bulk density)であり、その測定方法は、以下に記載されている。
【0091】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤内の前記X型モレキュラーシーブは、0.5~2.0ミクロンである結晶粒子径を有する。
【0092】
理論によって束縛されることを望まないが、モレキュラーシーブの結晶粒子径は、吸着剤の物質移動および強度に影響すると考えられている。結晶粒子径が大きいほど、吸着剤内における重質芳香族炭化水素原料および脱着剤の物質移動能力が悪く、吸着分離の効率にもまた影響する。もし結晶粒子径が小さすぎると、吸着剤の強度が低下し、よって吸着剤の寿命に影響する。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記吸着剤内の前記X型モレキュラーシーブは、2.0~2.6、好ましくは2.0~2.4である、シリカのアルミナに対するモル比を有する。
【0094】
理論によって限定されることを望まないが、モレキュラーシーブ内のシリカのアルミナに対するモル比も、吸着剤の吸着容量に大きな影響を与えると考えられている。もしモル比が高すぎると、吸着剤の選択性が悪くなり、一方で低すぎるモル比は、吸着剤の吸着容量を低下させるだけでなく、モレキュラーシーブの内部構造も変化させる。
【0095】
本発明者らは、長期の研究と実践とを経て、トリメチルベンゼンモノマーを分離するために適している、モレキュラーシーブの結晶粒子径の範囲、および、シリカのアルミナに対するモル比の範囲を見出した。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記粘土鉱物は、非金属粘土鉱物から選択される。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記粘土鉱物は、カオリン鉱物、ベントナイト鉱物、アタパルジャイト鉱物、セピオライト鉱物、およびイライト鉱物のうちの少なくとも1種である。
【0098】
本発明の一実施形態において、前記カオリン鉱物は、カオリン石、ディク石、ナクル石、火打ち石、およびハロイ石のうちの少なくとも1種である。カオリン鉱物中の結晶化物質の質量分率は、少なくとも92%、好ましくは94%~99%である。
【0099】
本発明の一実施形態において、前記ベントナイト鉱物は、活性白土、天然漂白粘土、およびオルガノベントナイトのうちの少なくとも1種である。
【0100】
本発明の第2態様は、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の調製方法であって、
(1)粒子への成形:Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で混合し、粒子に成形し、任意で乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程;
(2)in-situ結晶化:焼成された粒子をアルカリ溶液で処理し、次いで乾燥して、マトリクスとしての粒子を生産し、前記アルカリ溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.2mol/L~2.0mol/L(好ましくは0.2mol/L~1.6mol/L)である工程;
(3)イオン交換:工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物、ならびに、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液との陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程;
を含むことを特徴とする調製方法を提供する。
【0101】
本発明の一実施形態において、前記粒子への成形の工程において、Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを混合する方法は特に限定されない。ボールローリング成形(ball-rolling-shaping)、混練成形(kneading-shaping)、および押出成形(extrusion-shaping)のような、当技術分野における従来の粒子製造方法であってもよい。本発明の一実施形態において、粒子への成形の工程は、Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを混合し、次いでボールローリング成形をすることである。この場合、強力な混合機およびボールローリング機(ball-rolling machine)のような装置を使用することができる。ボールローリング成形の場合、均一に混合された固体原料を回転装置に投入する。攪拌パドルとローラーとが逆に回転し、回転している間は水を噴射する。高速回転する攪拌パドルが材料に接触し、瞬時に局所的な高圧を発生させ、材料の一部が付着して一体になることを引き起こす。同時に、ローラーの作用のもと、固体粉末が付着および凝集して小球になり、小球の密度が高くなる。
【0102】
本発明の一実施形態において、粒子への成形(例えばボールローリング成形)に際して、水の添加量は、固体の総質量の5%~30%、好ましくは10%~20%である。
【0103】
本発明の一実施形態において、粒子への成形の間の乾燥条件は特に限定されず、乾燥は50℃~100℃において2時間から10時間行ってもよい。粘土鉱物を結晶状物質に変換するためには、焼成を行う必要がある。焼成温度は、500℃~680℃、好ましくは530℃~650℃である。
【0104】
本発明の一実施形態において、粒子への成形の間の焼成時間は特に限定されず、それは2.0時間~5.0時間であってもよい。焼成後、小球内のカオリンは結晶状物質に変換され、in-situ結晶化の工程の間に、そのFAU型モレキュラーシーブへの結晶変換を助長する。
【0105】
本発明の一実施形態において、粒子への成形の工程は、Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で均等に混合し、ボールローリング成形を行い、乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程を含む。
【0106】
本発明の一実施形態において、前記粘土鉱物は、非金属粘土鉱物から選択される。
【0107】
本発明の一実施形態において、前記粘土鉱物は、カオリン鉱物、ベントナイト鉱物、アタパルジャイト鉱物、セピオライト鉱物、およびイライト鉱物のうちの少なくとも1種である。
【0108】
本発明の一実施形態において、前記カオリン鉱物は、カオリン石、ディク石、ナクル石、火打ち石、ハロイ石、またはそれらの混合物から選択される。カオリン鉱物中の結晶化物質の質量分率は、少なくとも92%、好ましくは94%~99%である。
【0109】
本発明の一実施形態において、前記ベントナイト鉱物は、活性白土、天然漂白粘土、およびオルガノベントナイトのうちの少なくとも1種である。
【0110】
本発明では、始めのX型モレキュラーシーブ粉末が、粒子への成形の工程(例えば、ボールローリング成形)の間に付着および凝集して(小球のような)粒子になり、向上した機械的強度を有するように、粘土鉱物が結合剤の役割を果たす。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記粒子への成形の工程(例えばボールローリング成形)において、粒子(例えば小球)が形成され、篩分けされる。特定の粒子の直径範囲(例えば400ミクロン~950ミクロン、好ましくは450ミクロン~900ミクロン、より好ましくは500ミクロン~800ミクロンであってもよい)を有する粒子(例えば小球)を乾燥、および、焼成する。
【0112】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、前記アルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1種の溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液である。
【0113】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、前記アルカリ溶液がNaイオンおよびKイオンを含む場合、前記アルカリ溶液中のK/(Na+K)のモル比は、0~0.50、好ましくは0.15~0.40である。
【0114】
理論に限定されないが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液を使用することは、本発明の吸着剤のかさ密度を増加させ、その破砕率を低下させることの一助となると考えられている。吸着剤の充填度(loading degree)を増加させることができ、それによって吸着分離工程の生産能力を増加させ、かつ、吸着剤の耐用年数を増加させる、高いかさ密度と低い破砕率とは、トリメチルベンゼンの吸着分離工程にとって極めて有益である。
【0115】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、前記アルカリ溶液の前記焼成された粒子に対する液体/固体比は、1.5L/kg~5.0L/kg、好ましくは2.0L/kg~4.5L/kg、より好ましくは2.5L/kg~4.0L/kgである。
【0116】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、結晶化温度は、80℃~100℃、好ましくは85℃~99℃、より好ましくは90~98℃である。結晶化時間は、特に限定されず、1~8時間であってもよい。
【0117】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、アルカリ溶液で処理された前記マトリクスとしての粒子は、任意で、水で洗浄される。このとき、水洗浄は、pHが7~10になるまで行ってもよい。
【0118】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、乾燥後に得られた前記マトリクスとしての粒子は、400ミクロン~950ミクロン、好ましくは450ミクロン~900ミクロン、より好ましくは500ミクロン~800ミクロンの粒径を有する。
【0119】
本発明の一実施形態では、前記in-situ結晶化の工程において、乾燥温度および条件は、特に限定されず、乾燥は、50℃~100℃において2時間から10時間行ってもよい。
【0120】
アルカリ溶液の組成および濃度、液体/固体比、ならびに結晶化温度のような、in-situ結晶化のための条件を合理的に選択することによって、in-situ結晶化の効率を改善させることができ、結晶化効果を改善させることができ、かつ、最終的に形成されたトリメチルベンゼン用の吸着剤の吸着容量を改善させることができる、と考えられている。
【0121】
イオン交換においては、in-situ結晶化後のマトリクスとしての粒子を陽イオン交換に供する。in-situ結晶化後のマトリクスとしての粒子を陽イオン溶液と接触させ、モレキュラーシーブ中の陽イオンサイトへ陽イオンを交換する。
【0122】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、当工程は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物の交換溶液を使用し、工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程を含む。トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の優先選択性を著しく増加させることができるSr2+を使用してイオン交換を行うことが好ましい。
【0123】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、当工程は、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液を使用し、工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程を含む。
【0124】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物の交換溶液と、Li、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液とは、独立して使用される2つの交換溶液であってもよい。この場合、2価陽イオンの濃度および1価陽イオンの濃度は、それぞれ2つの交換溶液のそれぞれの濃度を意味する。イオン交換の間、2つの交換溶液をそれぞれ使用してイオン交換を行い、それらの順序は特に限定されない。
【0125】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物の交換溶液と、Li、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液とはまた、複合された交換溶液であってもよい。この場合、2価陽イオンの濃度および1価陽イオンの濃度は、複合溶液中の2価陽イオンの濃度および1価陽イオンの濃度である。イオン交換の間、複合された交換溶液を使用してもよい。
【0126】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、前記Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物は、各化合物の硝酸塩および塩酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0127】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、前記Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物は、各化合物の硝酸塩、塩酸塩、および炭酸塩のうちの少なくとも1種である。
【0128】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、交換溶液中の、2価陽イオンの濃度は、当技術分野における従来の濃度であってもよく、例えば、それは、0.1mol/L~1.0mol/L、好ましくは0.15mol/L~0.8mol/L、より好ましくは0.2mol/L~0.6mol/Lであってもよい。
【0129】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、交換溶液中の、1価陽イオンの濃度は、当技術分野における従来の濃度であってもよく、例えば、それは、0.05mol/L~0.6mol/L、好ましくは0.08mol/L~0.5mol/L、より好ましくは0.1mol/L~0.4mol/Lであってもよい。
【0130】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの濃度は、0.15mol/L以上である。
【0131】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、前記交換溶液の前記粒子に対する体積比は、3以上である。
【0132】
本発明の一実施形態では、前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの前記1価陽イオンに対するモル比は、3以上、好ましくは4以上である。このとき、2価陽イオンを含む交換溶液と1価陽イオンを含む交換溶液とがそれぞれ独立した交換溶液である場合、2価陽イオンを含む交換溶液の2価陽イオンのモル濃度と1価陽イオンを含む交換溶液の1価陽イオンのモル濃度とを制御することによって、上記モル比を達成することができる。2価陽イオンを含む交換溶液と1価陽イオンを含む交換溶液とが複合された交換溶液である場合、交換溶液中の2価陽イオンのモル濃度と1価陽イオンのモル濃度とを制御することによって、上記モル比を達成することができる。
【0133】
本発明の一実施形態において、陽イオン交換の方法は、当技術分野における従来の方法であってもよく、例えば、マトリクスとしての粒子を、交換されるべき所望の陽イオンを含む溶液中に含浸させ、または、陽イオン交換を釜またはカラム容器内で、好ましくはカラム容器内で連続的に行ってもよい。イオン交換のための条件は、十分なイオン交換が行われる限り、特に限定されない。例えば、交換温度は、80℃~120℃、好ましくは90℃~100℃であり、時間は、6時間~25時間、好ましくは8時間~15時間であり、交換溶液の体積空間速度は、2h-1~8h-1、好ましくは3h-1~5h-1である。
【0134】
本発明の一実施形態において、前記in-situ結晶化の工程において、前記陽イオン交換されたマトリクスとしての粒子は、任意で、水で洗浄される。このとき、水洗浄は、pHが7~10になるまで行ってもよい。
【0135】
次いで、陽イオン交換されたマトリックスとしての粒子を乾燥する。乾燥は、通常の条件のもとで行うことができる。例えば、乾燥は、流れる熱風または窒素中で行い、乾燥温度は、50℃~100℃、好ましくは60℃~90℃であり、および、乾燥時間は、10時間~20時間である。
【0136】
本発明の一実施形態において、イオン交換平衡に達するまで、十分なイオン交換を行う。通常、吸着剤の金属イオンに対する2価陽イオンの交換度は、75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上である。
【0137】
本発明の一実施形態において、吸着剤の水の質量分率は、1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは2.5~6.0%である。
【0138】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の吸着剤は、次の方法によって調製される:
(1)ボールローリング成形:Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で均等に混合し、ボールローリング成形を行い、乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程;
(2)in-situ結晶化:その中の粘土鉱物がin-situ結晶化して、乾燥してマトリックスとしての小球が生産されるFAU型モレキュラーシーブになるように、焼成後に得られた小球を水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液で処理し、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液中のK/(Na+K)モル比は0~0.50、水酸化物イオンの濃度は0.2mol/L~2.0mol/Lである工程;
(3)イオン交換:in-situ結晶化で得られたマトリクスとしての小球を、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物の交換溶液、ならびに、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液との陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程。
【0139】
本発明の吸着剤の調製方法において、X型モレキュラーシーブを結合剤としての粘土鉱物と混合し、得られた粒子(小球)を高温(500℃~680℃)において焼成し、その中の粘土を結晶状物質に変換させた後、アルカリ処理を行ってin-situ結晶化およびFAU型モレキュラーシーブへの変換を引き起こし、次いでイオン交換を行って本発明の吸着剤を生産する。調製した吸着剤は、優れた、トリメチルベンゼン系化合物を吸着するための優先選択性、圧縮強度、および、かさ密度を有する。
【0140】
本発明の一実施形態において、工程(3)の後、前記方法は、
(4)活性化工程:工程(3)の前記乾燥した生成物を、好ましくは150℃~260℃、より好ましくは180℃~250℃の活性化温度で活性化する工程;
をさらに含む。本発明の一実施形態において、活性化時間は、3~10時間である。本発明の一実施形態において、活性化は、窒素雰囲気中で行う。
【0141】
本発明の一実施形態において、本発明によって提供される吸着剤は、比較的高い圧縮強度、かさ密度、およびトリメチルベンゼン系化合物を吸着するための優先選択性を有する。
【0142】
DL-II型粒子強度計(大連化工研究設計院)を用いた、蓄積された圧力のもとでの、特定の体積の試料の破砕率を測定する方法が、その圧縮強度を評価するために使用される。測定された吸着剤は、0.3%~1.0%、好ましくは0.3%~0.6%である、130Nにおける破砕率を有する。振動式密度計を使用し、特定の質量の吸着剤粒子を特定の条件のもとで十分に振動させ、振動体積を求め、次いで試料質量を振動体積で除して、自然ベースのかさ密度(nature-based bulk density)を得、次いで自然ベースのかさ密度に試料の燃焼ベースの含有率(ignition-based percentage content)を乗じて、燃焼ベースのかさ密度を得る方法が使用される。測定された燃焼ベースのかさ密度は、0.40~0.95g/cm、好ましくは0.75~0.78g/cmであり、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼン混合物の吸着分離に非常に有益である。
【0143】
本発明の第3の態様は、トリメチルベンゼン系化合物の分離方法(以後、本発明の分離方法とも称することがある)であって、
吸着分離:トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料を、本発明の吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤と接触させて、トリメチルベンゼン系化合物を吸着させ、次いで分離を行って、トリメチルベンゼン系化合物を生産する工程;
を含む分離方法を提供する。
【0144】
本発明の一実施形態において、重質芳香族炭化水素原料は、特にC9+重質芳香族炭化水素(すなわち、C9以上の芳香族炭化水素に富む重質芳香族炭化水素)であり、改質生成物、熱分解ガソリン、ナフサ、エチルベンゼン装置副産物、または接触分解ガソリンから選択され、好ましくは改質重質芳香族炭化水素留分であり、より好ましくは150℃以上の沸点を有する改質重質芳香族炭化水素留分である。
【0145】
本発明の一実施形態において、前記重質芳香族炭化水素原料は、20%以上のトリメチルベンゼン系化合物の総質量分率を有する改質重質芳香族炭化水素である。
【0146】
本発明の一実施形態において、前記重質芳香族炭化水素原料の流量率は、吸着剤の単位質量に対して、0.16kg/(h・kg吸着剤)以上、好ましくは0.20kg/(h・kg吸着剤)以上、より好ましくは0.23kg/(h・kg吸着剤)以上である。
【0147】
本発明の一実施形態において、トリメチルベンゼン系化合物は、脱着剤としてアルキルベンゼン(好ましくはトルエン)を使用することによって、前記吸着剤から分離される。
【0148】
本発明の一実施形態において、トリメチルベンゼン系化合物は、脱着剤としてトルエンを使用することによって、前記吸着剤から分離されることが好ましい。
【0149】
本発明の一実施形態において、前記吸着分離の工程において、擬似移動床装置を使用し、好ましくは、
前記擬似移動床装置は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入の間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成する。
【0150】
本発明の一実施形態において、1ステップ時間の間において、前記擬似移動床の材料が流れる方向における各材料の引出しおよび注入の順序は、脱着剤、抽出液、原料、およびラフィネートである。
【0151】
本発明の一実施形態において、前記擬似移動床装置の構成の圧力は、0.5MPa~1.2MPa(好ましくは0.6MPa~1.0MPa)であり、温度は、120℃~200℃(140℃~180℃)である。
【0152】
本発明の一実施形態において、前記擬似移動床装置内に注入される前記脱着剤と前記重質芳香族炭化水素原料との質量流量率の比(脱着剤/重質芳香族炭化水素原料)は、3.6以下、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.2以下である。
【0153】
本発明の一実施形態において、前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有する。
【0154】
本発明の一実施形態において、前記擬似移動床装置は、18~60分間、好ましくは25~35分間の1サイクル期間を有する。
【0155】
本発明の一実施形態において、前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入される。
【0156】
本発明の一実施形態において、各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられている。
【0157】
本発明の一実施形態において、各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられている。
【0158】
本発明の一実施形態において、各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流である。
【0159】
本発明の一実施形態において、本発明の吸着剤は、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンの混合物を分離するために特に適している。重質芳香族炭化水素、好ましくは改質重質芳香族炭化水素を原料として使用し、当該原料は、擬似移動床である吸着分離装置であって、吸着剤は本発明による吸着剤であり、脱着剤はアルキルベンゼン、好ましくはトルエンである吸着分離装置、に送られる。図2に示すように、本発明の前記擬似移動床装置は、吸着剤を装填した複数の吸着床、例えば図2に示す吸着床24床、を含む。各床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割する。脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成する。吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンの床数の比率は、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%である。擬似移動床の運転の間、吸着カラムの、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される各材料の位置は、周期的に変更してもよい。異なる吸着床から引き出される、および異なる吸着床に注入されるように各材料を制御するために、多方ロータリーバルブまたはプログラムされたスイッチバルブグループを使用してもよい。特定の瞬間において、各材料は、特定の床層に接続される。特定の時間間隔、すなわち1ステップ時間において、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床に注入される各材料の位置は、図2に示すように、1吸着床下方に移動し、実線矢印から破線矢印の位置に移動する。特定の材料が前記吸着床に注入され(または、特定の材料が前記吸着床から引き出され)、すべての吸着床を通って開始位置に戻るために要する時間は、1サイクルであり、通常18分間から60分間、好ましくは25分間から35分間である。
【0160】
本発明の吸着分離方法で得られる抽出液は、基本的にトリメチルベンゼンの異性体3種しか含まず、他の成分の含有量は極めて少ない。
【0161】
本発明の一実施形態において、前記吸着分離の工程から得られた前記トリメチルベンゼン系化合物は、99重量%以上の総純度を有する。
【0162】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離方法は、
蒸留工程:前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物を蒸留に供し、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産する工程;
をさらに含む。
【0163】
本発明の一実施形態では、前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を垂直分割型カラムに送り、
前記垂直分割型カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記垂直分割型カラムの下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産する。
【0164】
本発明の一実施形態では、前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムのカラム下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産する。
【0165】
本発明の一実施形態において、前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、
前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、
前記第2蒸留カラムの下部生成物を第3蒸留カラムに送り、
前記第3蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,3-トリメチルベンゼンを生産し、前記下部生成物は、高沸点を有する芳香族溶剤油である。
【0166】
本発明の一実施形態では、前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物であり、
1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを結晶化工程を使用することによって、さらに分離する。
【0167】
本発明の一実施形態では、前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流から、結晶化工程を使用することによって、1,2,3-トリメチルベンゼンを分離することができ、
残留した1,2,4-トリメチルベンゼンと1,3,5-トリメチルベンゼンとの混合物流を前記第1蒸留カラムに送り、
前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンである。
【0168】
本発明の一実施形態では、前記蒸留工程から得られた1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ97.0重量%以上、98.0重量%以上、および95.0重量%以上の純度を有し、好ましくはそれぞれ98.5重量%以上、99.3重量%以上、および97.0重量%以上の純度を有する。
【0169】
本発明の一実施形態において、図3に示すように、重質芳香族炭化水素原料は、吸着分離を通って流れ、抽出流およびラフィネート流を生産し、これらはそれぞれ抽出物カラムおよびラフィネートカラムに送られる。脱着剤を再利用するために回収した後、抽出カラムのカラム下部から純度99重量%以上のトリメチルベンゼン系化合物(トリメチルベンゼン3種の混合物)を生産し、抽出液をさらなる分離のために蒸留工程に送る。ラフィネートカラムのカラム下部から得られたトリメチルベンゼン以外の他の重質芳香族炭化水素成分は、ガソリンブレンド成分または高沸点を有する芳香族溶剤油成分として継続的に利用される。図3に示すように、蒸留工程において垂直分割型カラムを使用してもよく、吸着分離工程の抽出カラムの下部を垂直分割型カラムに送り、前記垂直分割型カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産することができ、側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産することができ、カラム下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産することができる。本発明の別の実施態様において、直列に連続的に接続された2基の蒸留カラムを蒸留工程に使用してもよい。吸着分離工程の抽出カラムの下部を第1蒸留カラムに送り、上部生成物は1,3,5-トリメチルベンゼンであり、下部生成物は1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物流である。混合物流を続いて第2蒸留カラムに送り、上部生成物は1,2,4-トリメチルベンゼンであり、下部生成物は1,2,3-トリメチルベンゼンである。吸着分離で得られたトリメチルベンゼン3種の混合物は、蒸留および結晶化が複合された工程で分離してもよい。混合物流を第1蒸留カラムに送り、カラム上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産することができ、カラム下部は1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物であり、これらを結晶化工程で分離することができる。
【0170】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離方法は、
異性化工程:前記吸着分離の工程と前記蒸留工程との間にあり、トリメチルベンゼン系化合物を、前記異性化に供し、
または、前記蒸留工程の後にあり、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を、前記異性化に供する、工程;
をさらに含む。
【0171】
本発明の一実施形態において、トリメチルベンゼンの1種またはトリメチルベンゼンの混合物が異性化された後、得られた熱力学的平衡濃度を有するトリメチルベンゼンの混合物流は、分離のために前記吸着分離の工程に戻される。
【0172】
本発明の一実施形態において、前記蒸留工程において、2基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、第1蒸留カラムの側部から生産し、または、
前記蒸留工程において、3基の蒸留カラムを使用する場合、前記異性化ユニットに送る流れは、前記第1蒸留カラムまたは前記第2蒸留カラムの側部から生産する。
【0173】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離方法は、
ラフィネート分離工程:前記擬似移動床装置からのラフィネートを蒸留に供し、脱着剤、および、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分を生産する工程;
をさらに含む。
【0174】
本発明の一実施形態において、図3に示すように、抽出カラムのカラム下部から得られたトリメチルベンゼン系化合物以外の他の重質芳香族炭化水素成分は、ガソリンブレンド成分または高沸点を有する芳香族溶剤油成分としてさらに利用されてもよく、重質芳香族炭化水素製品の経済的付加価値を著しく増加させ、かつ、大きな経済的利益をもたらす。
【0175】
本発明の一実施形態において、本発明の分離方法は、吸着分離および蒸留の工程を含み、重質芳香族炭化水素原料を吸着分離工程に供し、抽出液から脱離剤を回収して、異性体3種、すなわち、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物流を生産する。異性体3種の混合物流を次いで蒸留工程に供し、対応するモノマーを生産する。吸着分離工程のラフィネートから脱着剤を回収し、ガソリンブレンド成分または高沸点を有する芳香族溶剤油成分を生産し、本発明の吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤を吸着分離工程で使用する。
【0176】
本発明の第4態様は、トリメチルベンゼン系化合物の分離装置(以後、本発明の分離装置とも称することがある)であって、
吸着分離ユニット:本発明に係る吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤を有し、トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料から、トリメチルベンゼン系化合物を吸着および分離して、トリメチルベンゼン系化合物を生産するために使用されるユニット;
を含む装置を提供する。
【0177】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットは、本発明の吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤を有する限り、任意である。例えば、吸着分離ユニットは、本発明の吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤を充填した、クロマトグラフィカラム、移動床、置換クロマトグラフィ(displacement chromatography)、多段吸着、圧力スイング吸着装置(pressure swing adsorption device)、および同様のユニットであってもよい。
【0178】
本発明の一実施形態において、前記吸着分離ユニットは、擬似移動床を採用し、好ましくは、
前記擬似移動床は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成する。
【0179】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットが擬似移動床を採用する場合、前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有する。
【0180】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットが擬似移動床を採用する場合、前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入される。
【0181】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットが擬似移動床を採用する場合、各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられている。
【0182】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットが擬似移動床を採用する場合、各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられている。
【0183】
本発明の一実施形態において、吸着分離ユニットが擬似移動床を採用する場合、各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流である。
【0184】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離装置は、
蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産するユニット;
をさらに備える。
【0185】
本発明の一実施形態において、前記蒸留ユニットは、垂直分割型カラムを備え、
前記垂直分割型カラムには、前記吸着分離の工程からの前記抽出液流が導入され、
前記垂直分割型カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムの側部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記垂直分割型カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられる。
【0186】
本発明の一実施形態において、前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラムおよび第2蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられている。
【0187】
本発明の一実施形態において、前記蒸留ユニットは、直列に連続的に接続された第1蒸留カラム、第2蒸留カラム、および第3蒸留カラムを備え、
前記第1蒸留カラムのカラム下部は、前記第2蒸留カラムに接続され、
前記第1蒸留カラムのカラム上部には、1,3,5-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第2蒸留カラムのカラム下部は、前記第3蒸留カラムに接続され、
前記第2蒸留カラムのカラム上部には、1,2,4-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム上部には、1,2,3-トリメチルベンゼンの排出口が設けられ、
前記第3蒸留カラムのカラム下部には、高沸点を有する芳香族溶剤油の排出口が設けられている。
【0188】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離装置は、
ラフィネート蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された前記重質芳香族炭化水素成分を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分、および脱着剤をそれぞれ生産するユニット;
をさらに備える。
【0189】
本発明の一実施形態において、本発明の前記分離装置は、
異性化ユニット:前記吸着分離ユニットと前記蒸留ユニットとの間に位置し、前記吸着分離ユニットから前記トリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容するために使用され、前記異性化が行われるユニット、または、
前記蒸留ユニットの下流に接続され、前記蒸留ユニットから1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を受容するために使用され、前記異性化が行われるユニット;
をさらに備える。
【0190】
本発明の一実施形態において、前記蒸留ユニットが2基の蒸留カラムを有する場合、前記第1蒸留カラムの側部には、異性化流の出口が設けられ、または、
前記蒸留ユニットが3基の蒸留カラムを有する場合、前記第2蒸留カラムの側部は、異性化流の出口を有する。
【0191】
本発明の一実施形態において、異性化ユニットは、異性化反応器、気液分離器、および軽質炭化水素除去蒸留カラム(lighter hydrocarbon-removing distillation column)を備え、トリメチルベンゼン系化合物または任意のトリメチルベンゼンモノマーを異性化反応に供し、得られた混合物流を気液分離器に送り、分離器の上部には、ガスの出口が設けられ、上部の出口から水素ガスを生産し、下部には、液相の出口が設けられ、分離器の下部から液相流を生産し、軽質炭化水素除去カラムに送り、軽質炭化水素除去カラムの上部には、軽質炭化水素の出口が設けられ、そこから軽質炭化水素を生産し、軽質炭化水素除去カラムの下部には、異性化反応後の流れの出口が設けられ、当該出口から下部の流れを生産し、吸着分離ユニットに送り、分離を継続する。
【0192】
本発明の第5態様は、前記重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼン系化合物を吸着するために、本発明の吸着剤または本発明に係る調製方法で調製した吸着剤の使用を提供する。
【0193】
〔実施例〕
以下は、添付の図および実施例を通じた、本願のさらに詳しい説明である。これらの説明を通じて、本願の特徴と利点とがより明確に、およびより決定的になるであろう。
【0194】
以下の実施例を通じて、本発明をさらに説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0195】
トルエン吸着容量、燃焼ベースのかさ密度、強度、BET比表面積、水の質量分率、および金属交換度の測定方法を以下に記載する。
【0196】
吸着剤の物理化学的特性を評価するために、本発明は、以下の実験を測定のために使用している。トルエン気相吸着実験を、吸着剤の吸着容量を判定するために使用する。具体的な操作方法は、トルエンを含む窒素ガス(トルエン分圧0.05MPa)に、35℃でトルエンが吸着平衡に達するまで、特定の質量の吸着剤を接触させる。試験した吸着剤の吸着容量は、トルエン吸着前後の吸着剤の質量差に基づき、次式を使用して算出する。
【0197】
【数1】
【0198】
ここで、Cは吸着容量であり、単位はミリグラム毎(per)グラムである。mはトルエンを吸着させる前の試験した吸着剤の質量であり、単位はグラムである。mはトルエンを吸着させた後の試験した吸着剤の質量であり、単位はグラムである。
【0199】
吸着剤の燃焼ベースのかさ密度の測定方法:吸着剤50mLを100mLメスシリンダーに加え、振動式密度計(遼寧儀表研究所有限責任公司製)で5分間振動させ、次いで吸着剤50mLを加え、5分間振動させる;質量の、メスシリンダー内の吸着剤の体積に対する比が、吸着剤のかさ密度である;特定の質量の吸着剤を取り出し、600℃で2時間燃焼させ、デシケータ内に置いて室温まで冷却する:燃焼前の吸着剤の質量の、燃焼後の吸着剤の質量に対する比が、燃焼基準量(ignition basis)であり、燃焼基準量(ignition base)と吸着剤のかさ密度との積が、燃焼ベースのかさ密度である。
【0200】
吸着剤の圧縮強度は、特定の圧力下での小球吸着剤の破砕率で表される。破砕率が低いほど、圧縮強度は高い。吸着剤の圧縮強度の判定方法:粒子強度を測定するために、DL-II型粒子強度計(大連化工研究設計院製)を使用する。吸着剤の小球を300ミクロンのふるいを通過させた後、吸着剤約1.5mLをステンレス製シリンダー内に充填する。測定の間、ステンレス製シリンダーに締まり嵌めするシンブルを取り付け、あらかじめ設定した圧力で1回押圧し、吸着剤を流出させ、次いで300ミクロンのふるいを通過させ、秤量する。加圧試験前後の吸着剤の質量の減少量が、設定圧力における吸着剤の破砕率、すなわち300Nでの破砕率である。
【0201】
BET法は、吸着物として窒素、キャリアガスとしてヘリウムもしくは水素を使用して、比表面積を判定する。2つのガスは特定の割合で混合され、特定の相対圧力に達し、次いで固体材料を通って流れる。この相対圧力における試料の吸着容量は、補正ピークおよび脱離ピークのピーク面積に基づいて算出することができる。吸着剤の比表面積および細孔容積は、BET比表面積判定装置で判定される。
【0202】
吸着剤の水の質量分率を測定する方法は、次の通りである:吸着剤の温度を600℃までゆっくりと上昇させ、質量が変化しなくなるまで数時間維持する。冷却後の質量を、燃焼ベースの質量(ignition-based mass)としてみなす。異なる温度で活性化した後の吸着剤の質量から燃焼ベースの質量を引いた差の、吸着剤の質量に対する比が、吸着剤の水の質量分率である。
【0203】
イオン交換試験後の吸着剤構造中の金属イオンの質量分率を評価するために、蛍光X線分析装置を使用して、吸着剤中の金属酸化物の質量分率を判定した。これに基づいて金属イオンのモル分率を算出し、吸着剤のイオン交換度を、次式を使用してさらに算出する。
【0204】
【数2】
【0205】
ここで、ηはイオン交換度であり、mおよびmはイオン交換実験前の吸着剤中のNaOおよびKOの質量分率であり、mはイオン交換後の吸着剤中の目標金属(交換されるべき金属)酸化物の質量分率であり、MおよびMはイオン交換実験前の吸着剤中のNaOおよびKOのモル質量であり、Mはイオン交換実験後の吸着剤中の目標金属(交換されるべき金属)酸化物のモル質量であり、ηの単位は%である。
【0206】
液相中の芳香族炭化水素用の吸着剤の吸着容量Aは、次のように測定される:脱水化および活性化した吸着剤の粉末試料約3gをポリテトラフルオロエチレン製密閉キャップ付きガラス瓶内に入れ、調合した吸着溶液18gを滴下添加し、瓶のキャップを締める。吸着は70℃の一定温度で24時間行い、次いでクロマトグラフィ分析のために微量の溶液を採取した。n-ノナンは全く吸着されないと仮定すると、吸着前後の液相成分の濃度変化を通じて、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素に対する吸着容量を算出するために、n-ノナンを内部標準として使用することができる。総吸着容量A=1000×m溶液×(1-Zn-ノナン,初期/Zn-ノナン)/m吸着剤であり、Aの測定単位はmg/gであり、m溶液およびm吸着剤はそれぞれ吸着溶液および吸着剤の質量であり、Zn-ノナン,初期およびZn-ノナンはそれぞれ初期吸着溶液中のおよび吸着平衡後の吸着溶液中のn-ノナンの質量分率であり、吸着剤中の成分iの吸着容量A=1000×m溶液×(Zi0-Zn-ノナン,初期/Zn-ノナン)であり、Zi0は初期吸着溶液中の成分iの質量分率であり、Zは吸着平衡溶液中の成分iの質量分率である。
【0207】
<実施例1>
本発明の高選択性吸着剤の調製。
【0208】
高選択性吸着剤を、次の工程を経由して調製した:
(1)ボールローリング成形:結晶粒子径0.5~1.0ミクロン、およびSiO/Alモル比2.3のNaXモレキュラーシーブ粉末93kg(燃焼質量)と、カオリン7kgとを均等に混合し、強力なボールローリング機内に入れて、固形粉末が小球に凝集するように、脱イオン水適量を噴射しながら撹拌を行った。ボールをローリングしたときに噴射した水の量は、固形粉末の質量の10%であった。篩い分け後、粒径500~800ミクロンの小球を採取し、90℃で5時間乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0209】
(2)in-situ結晶化:前記ボールローリング成形の工程からの焼成した小球65kgを、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液210リットル中に置いた。混合溶液中の水酸化物イオン濃度は0.4mol/Lであり、K/(Na+K)モル比は0.3であった。in-situ結晶化の処理を90℃で3時間行い、in-situ結晶化した小球を洗浄液のpHが10未満になるまで水洗浄し、90℃で3時間乾燥してマトリクスとしての小球を得た。
【0210】
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.40M塩化ストロンチウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、96℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化ストロンチウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Aを生産した。
【0211】
<実施例2>
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.35M塩化マグネシウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、96℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化マグネシウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Bを生産した
ことを除き、調製方法は実施例1のそれと同一であった。
【0212】
<実施例3>
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.40M塩化カルシウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、97℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化カルシウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Cを生産した
ことを除き、調製方法は実施例1のそれと同一であった。
【0213】
<実施例4>
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.30M塩化コバルト溶液を用いて、体積空間速度5.5h-1、98℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化コバルト溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Dを生産した
ことを除き、調製方法は実施例1のそれと同一であった。
【0214】
<実施例5>
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.15M塩化リチウムと0.30M塩化ストロンチウムとの混合溶液を用いて、体積空間速度4.5h-1、94℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化リチウム溶液の総量は6Lであり、使用した塩化ストロンチウム溶液の総量は18Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Eを生産した
ことを除き、調製方法は実施例1のそれと同一であった。
【0215】
<比較例1>
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.20M塩化バリウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、94℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化バリウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、吸着剤Fを生産した
ことを除き、調製方法は実施例1のそれと同一であった。
【0216】
調製した吸着剤における、水の質量分率、トルエン吸着容量、液相静的吸着容量、BET比表面積、および交換度を、表1に示す。
【0217】
【表1】
【0218】
<実施例6>
吸着剤を、次の工程を経由して調製した:
(1)ボールローリング成形:結晶粒子径0.5~1.0ミクロン、およびSiO/Alモル比2.3のNaXモレキュラーシーブ粉末93kg(燃焼質量)と、カオリン7kgとを均等に混合し、強力なボールローリング機内に入れて、固形粉末が小球に凝集するように、脱イオン水を適量噴射しながら撹拌を行った。ボールをローリングしたときに噴射した水の量は、固形粉末の質量の10%であった。篩い分け後、粒径500~800ミクロンの小球を採取し、90℃で5時間乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0219】
(2)in-situ結晶化:前記ボールローリング成形の工程からの、焼成した小球65kgを、水酸化ナトリウム210リットル中に置いた。溶液中の水酸化物イオン濃度は0.4mol/Lであった。in-situ結晶化の処理を90℃で3時間行い、in-situ結晶化した小球を洗浄液のpHが10未満になるまで水で洗浄し、90℃で3時間乾燥してマトリクスとしての小球を得た。
【0220】
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.40M塩化ストロンチウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、96℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化ストロンチウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、高選択性吸着剤Gを生産した。調製した高選択性吸着剤Gにおける、水の質量分率、トルエン吸着容量、液相静的吸着容量、破砕率、かさ密度、および交換度を、表2に示す。
【0221】
【表2】
【0222】
表2からわかるように、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液をin-situ結晶化のために使用すると、吸着剤のかさ密度を増加させ、かつ、吸着剤の破砕率を低下させることができた。
【0223】
<比較例2>
比較例の吸着剤を、次の工程を経由して調製した:
(1)ボールローリング成形:結晶粒子径0.5~1.0ミクロン、およびSiO/Alモル比2.3のNaXモレキュラーシーブ粉末85kg(燃焼質量)と、カオリン15kgとを均等に混合し、強力なボールローリング機内に入れて、固形粉末が小球に凝集するように、脱イオン水を適量噴射しながら撹拌を行った。ボールをローリングしたときに噴射した水の量は、固形粉末の質量の10%であった。篩い分け後、粒径500~800ミクロンの小球を採取し、90℃で5時間乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0224】
他の工程は実施例1のそれと同一であり、吸着剤Hを調製した。
【0225】
調製した吸着剤Hにおける、水の質量分率、トルエン吸着容量、液相静的吸着容量、破砕率、かさ密度、および交換度を、表3に示す。
【0226】
【表3】
【0227】
表3から分かるように、比較例2において、Xモレキュラーシーブとカオリン鉱物とを85:15の質量比で混合し、成形した。調製した吸着剤において、吸着容量、かさ密度、および金属交換度を著しく低下させ、処理装置の原料処理能力を低下させ、目標生成物の純度および収率にさらに影響を与え、装置のエネルギーの消費量を増加させた。
【0228】
<比較例3>
(1)ボールローリング成形:結晶粒子径0.5~1.0ミクロン、およびSiO/Alモル比1.0のNaAモレキュラーシーブ粉末95kg(燃焼質量)と、カオリン3kgと、セスバニア粉末2kgとを均等に混合し、強力なボールローリング機内に入れて、固形粉末が小球に凝集するように、脱イオン水を適量噴射しながら撹拌を行った。ボールをローリングしたときに噴射した水の量は、固形粉末の質量の10%であった。篩い分け後、粒径500~800ミクロンの小球を採取し、90℃で5時間乾燥し、550℃で3時間焼成した。
【0229】
(2)in-situ結晶化:前記ボールローリング成形の工程からの、焼成した小球65kgを、水酸化ナトリウム210リットル中に置いた。溶液中の水酸化物イオン濃度は0.4mol/Lであった。in-situ結晶化の処理を90℃で3時間行い、in-situ結晶化した小球を洗浄液のpHが10未満になるまで水洗し、90℃で3時間乾燥してマトリクスとしての小球を得た。
【0230】
(3)イオン交換:in-situ結晶化し、かつ、乾燥したマトリクスとしての小球600mLを、陽イオン交換のために、イオン交換カラム内に充填し、0.40M塩化ストロンチウム溶液を用いて、体積空間速度5.0h-1、96℃、0.1MPaの条件下で8時間、交換を連続で行った。使用した塩化ストロンチウム溶液の総量は、24Lであった。イオン交換の完了後、固体を、脱イオン水6Lを用いて80℃で洗浄し、窒素雰囲気下、70℃で16時間乾燥し、180℃で3時間、窒素雰囲気中で活性化し、吸着剤Iを生産した。
【0231】
調製した吸着剤Iにおける、水の質量分率、トルエン吸着容量、液相静的吸着容量、破砕率、およびかさ密度を、表4に示す。
【0232】
【表4】
【0233】
表4から分かるように、比較例3において、A型モレキュラーシーブを使用することによって調製した吸着剤は、ほぼゼロである芳香族炭化水素に対する吸着能力、低下したかさ密度、および増加した破砕率を有し、処理装置の原料処理能力を低下させ、吸着剤の強度を低下させ、目標生成物の収率にさらに影響を与え、適格な純度の製品を生産することができなかった。同時に、小球状の吸着剤の強度低下は、吸着カラム内の圧力損失を悪化させ、吸着剤の寿命を短くする。
【0234】
<実施例7>
本発明の高選択性吸着剤の吸着選択性を評価するために、ダイナミックパルス実験装置を使用し、その吸着選択性、ならびに分離された目標生成物の吸着率および脱着率を測定した。装置は、供給系、吸着カラム、加熱炉、圧力制御弁などからなった。吸着カラムは、Ф8×900mmのステンレス管であった。吸着カラムの下部入口は供給および窒素系に接続され、上部出口は圧力制御弁に接続され、次いで廃液コレクターに接続された。
【0235】
吸着剤の吸着選択性の測定方法は、次の通りである:測定する秤量した吸着剤粒子を吸着カラム内に入れ、十分に振とうし、窒素雰囲気中で系内のガスを除去した。系内圧力を0.85MPaまで増加させ、温度を145℃まで増加させた。脱着剤の導入を停止した後、パルス供給溶液5mL~10mLを、液体流量1.5mL/hで系内に注入した。この供給溶液は、吸着されなかったトレーサーを含んでいた。続いて、脱着剤を、脱着のために同じ体積空間速度で導入した。2mL毎に脱着溶液試料3滴を採取し、ガスクロマトグラフィで分析した。脱着のために使用した脱着剤の体積を横軸、パルス供給溶液の各成分の濃度を縦軸とし、図1に示すように、パルス供給溶液の各要素の脱着曲線をプロットした。それらのうち、吸着されなかったトレーサーは、吸着系のデッドボリュームを得るために使用することができた。トレーサーの半値幅の中点をゼロ点とし、各成分の半値幅の中点からゼロ点までの正味保持体積を測定した。各成分の正味保持体積は、吸着平衡における分配係数に比例し、各成分と吸着剤材料との間の作用力を反映していた。2成分の正味保持体積の比は、分離係数βであった。例えば、1,2,3-トリメチルベンゼンの正味保持体積の、インダンの正味保持体積に対する比は、両者に対する吸着剤材料の吸着能力比であり、すなわちインダンに対する1,2,3-トリメチルベンゼンの分離係数であり、β1,2,3-トリメチルベンゼン/インダンと表記した。分離度は、通常、吸着剤の分離効率の指標の1つとして、特に同じ操作パラメータの下で異なる吸着剤の吸着および分離性能を評価するときに、使用することができた。分離度は、隣接するパルスピークの正味保持体積の差の、2つのパルスピークの半値幅の平均値に対する比に等しかった。例えば、1,2,3-トリメチルベンゼンの正味保持体積とインダンの正味保持体積との差の、2つのパルスピークの半値幅の平均値に対する比が、2つのピーク間の分離度であり、R1,2,3-トリメチルベンゼン/インダンと表記した。
【0236】
実施例1で調製した高選択性吸着剤A26mLを、液相パルス実験のために採取し、その吸着選択性および分離度、ならびに、4-エチルトルエンの吸着および脱着率を測定した。実験において使用した脱着剤は、トルエン50重量%およびn-ヘプタン50重量%であった。パルス供給溶液の組成は、メチルエチルベンゼンの異性体3種、トリメチルベンゼンの異性体3種、メチルプロピルベンゼンの異性体3種、プロピルベンゼン、パラジエチルベンゼン、インダン、2-エチルパラキシレン、4-エチルメタキシレン、およびn-ノナン(NC9)それぞれ2重量%、および脱着剤70重量%であって、n-ノナンをトレーサーとした。得られた脱着曲線を図1に示した。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表5に示す。
【0237】
【表5】
【0238】
<実施例8>
吸着剤を吸着剤Bとしたことを除き、実施例7の方法に準じて、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼンの分離を行った。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表6に示す。
【0239】
【表6】
【0240】
<実施例9>
吸着剤を吸着剤Cとしたことを除き、実施例7の方法に準じて、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼンの分離を行った。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表7に示す。
【0241】
【表7】
【0242】
<実施例10>
吸着剤を吸着剤Dとしたことを除き、実施例7の方法に準じて、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼンの分離を行った。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表8に示す。
【0243】
【表8】
【0244】
<実施例11>
吸着剤を吸着剤Eとしたことを除き、実施例7の方法に準じて、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼンの分離を行った。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表9に示す。
【0245】
【表9】
【0246】
<比較例4>
吸着剤を吸着剤Fとしたことを除き、実施例7の方法に準じて、重質芳香族炭化水素からのトリメチルベンゼンの分離を行った。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのそれぞれと、他の成分との間の分離係数および分離度の結果を、表10に示す。
【0247】
【表10】
【0248】
<実施例12>
小型の擬似移動床装置を使用し、重質芳香族炭化水素の液相吸着分離を行い、その中にあるトリメチルベンゼンの異性体を分離した。装置は、直列に接続された24本のカラムによって構成されていた。吸着床として、本発明の選択性吸着剤を収容するために使用したカラム内の空洞は、高さ200mmであり、直径40mmであった。第24カラムは、カラム内の流体が循環し、カラムの継ぎ目から物質を導入または抽出することができるように、ポンプを介して第1カラムに接続されていた。カラム7本は、ラフィネート出口と原料入口との間にあり、吸着ゾーンとして使用された。カラム9本は、原料入口と抽出液出口との間にあり、精製ゾーンとして使用された。カラム5本は、抽出液出口と脱着剤入口との間にあり、脱着ゾーンとして使用された。カラム3本は、脱着剤入口とラフィネート出口との間にあり、隔離ゾーンとして使用された。材料の入口および出口の位置は、ステップ時間に応じて変更され、1つのステップ時間ごとに、入口および出口を1カラムずつ前進させた。図2に示すように、入口および出口を、実線矢印の位置から点線矢印の位置へ移動させた。次のステップ時間において、移動は所定の方向へ進められ、以下同様であった。入口および出口の位置は、それらの開始位置に戻るまで順次変更され、それが1サイクルであった。1ステップ時間は80秒間であり、1サイクルは32分間であった。
【0249】
吸着原料は、改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2400gの吸着剤Aが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.50kg/hであり、脱着剤注入率は1.52kg/hであり、抽出液の引出し率は0.70kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.32kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.04であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.21kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0250】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0251】
【数3】
【0252】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0253】
【数4】
【0254】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0255】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ90.97%および99.21重量%であった。
【0256】
<実施例13>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は、改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計1950gの吸着剤Bが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.45kg/hであり、脱着剤注入率は1.57kg/hであり、抽出液の引出し率は0.75kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.27kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.49であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.23kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0257】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0258】
【数5】
【0259】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0260】
【数6】
【0261】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0262】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ86.31%および99.08重量%であった。
【0263】
<実施例14>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は、改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2250gの吸着剤Dが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.50kg/hであり、脱着剤注入率は1.68kg/hであり、抽出液の引出し率は0.72kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.46kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.36であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.22kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0264】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0265】
【数7】
【0266】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0267】
【数8】
【0268】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0269】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ88.11%および99.15重量%であった。
【0270】
<実施例15>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は、改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2350gの吸着剤Gが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.50kg/hであり、脱着剤注入率は1.68kg/hであり、抽出液の引出し率は0.72kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.46kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.36であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.21kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0271】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0272】
【数9】
【0273】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0274】
【数10】
【0275】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0276】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ89.00%および99.15重量%であった。
【0277】
<実施例16>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2000gの吸着剤Eが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.55kg/hであり、脱着剤注入率は1.52kg/hであり、抽出液の引出し率は0.70kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.32kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は2.76であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.28kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0278】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0279】
【数11】
【0280】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0281】
【数12】
【0282】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0283】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ90.90%および99.15重量%であった。
【0284】
<比較例5>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2890gの吸着剤Fが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.40kg/hであり、脱着剤注入率は1.88kg/hであり、抽出液の引出し率は0.85kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.43kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は4.70であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.14kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0285】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0286】
【数13】
【0287】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0288】
【数14】
【0289】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0290】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ50.31%および48.08重量%であった。
【0291】
<比較例6>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計2280gの吸着剤Hが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.50kg/hであり、脱着剤注入率は1.52kg/hであり、抽出液の引出し率は0.70kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.32kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.04であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.22kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0292】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0293】
【数15】
【0294】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0295】
【数16】
【0296】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0297】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ80.92%および97.42重量%であった。
【0298】
<比較例7>
実施例12の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンを分離した。吸着原料は改質重質芳香族炭化水素であった。吸着床に入る吸着原料の温度を160℃に制御し、操作圧力は0.88MPaであった。合計1900gの吸着剤Iが充填され、脱着剤はトルエン99.9重量%であり、原料供給率は0.50kg/hであり、脱着剤注入率は1.52kg/hであり、抽出液の引出し率は0.70kg/hであり、ラフィネートの引出し率は1.32kg/hであり、擬似移動床に入る脱着剤および重質芳香族炭化水素原料の質量流量の比は3.04であり、吸着剤の単位質量当たりの重質芳香族炭化水素原料の流量率は0.26kg/(h・kg吸着剤)であった。
【0299】
擬似移動床が安定して作動した後、1サイクル分の抽出液とラフィネートとの混合試料を採取し、その組成を分析した。分析結果によれば、トリメチルベンゼン混合物の純度および収率の算出方法は、以下であった:
【0300】
【数17】
【0301】
ここで、Xは、抽出液中の各成分の質量分率である;
【0302】
【数18】
【0303】
ここで、XTMB,抽出液は、抽出液中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Q抽出液は、抽出液の質量流量率であり、ここで、XTMB,ラフィネートは、ラフィネート中のトリメチルベンゼン3種の質量分率の和であり、Qラフィネートは、ラフィネートの質量流量率である。
【0304】
目標生成物として得られたトリメチルベンゼン3種の収率および純度は、それぞれ10.22%および10.11重量%であった。
【0305】
<実施例17>
図3に示すように、吸着分離および蒸留を組み合わせた工程を使用する装置によって、トリメチルベンゼンモノマー3種をそれぞれ得た。重質芳香族炭化水素の供給率は20t/hであった。吸着分離ユニットの温度は160℃であり、圧力は0.8MPaであり、脱着剤はトルエンであり、充填した吸着剤は吸着剤Aであった。蒸留ユニットは垂直分割型カラムであった。カラム上部における温度は165℃であった。カラム上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産した。カラム側部の温度は173℃であった。カラム側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産した。カラム下部において1,2,3-トリメチルベンゼンを生産した。垂直分割型カラム内のすべての圧力は0.1MPaであった。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの純度および収率を、表11に示す。
【0306】
【表11】
【0307】
<実施例18>
実施例17の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンの分離を行った。吸着分離および蒸留を組み合わせた工程を使用する装置によって、トリメチルベンゼンモノマー3種をそれぞれ得た。重質芳香族炭化水素の供給率は20t/hであった。吸着分離ユニットの温度は162℃であり、圧力は0.8MPaであり、脱着剤はトルエンであり、充填した吸着剤は吸着剤Bであった。蒸留ユニットは垂直分割型カラムであった。カラム上部における温度は165℃であった。カラム上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産した。カラム側部の温度は175℃であった。カラム側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産した。カラム下部において1,2,3-トリメチルベンゼンを生産した。垂直分割型カラム内のすべての圧力は0.1MPaであった。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの純度および収率を、表12に示す。
【0308】
【表12】
【0309】
<実施例19>
実施例17の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンの分離を行った。吸着分離および蒸留を組み合わせた工程を使用する装置によって、トリメチルベンゼンモノマー3種をそれぞれ得た。重質芳香族炭化水素の供給率は20t/hであった。吸着分離ユニットの温度は165℃であり、圧力は0.8MPaであり、脱着剤はトルエンであり、充填した吸着剤は吸着剤Dであった。蒸留ユニットは垂直分割型カラムであった。カラム上部における温度は165℃であった。カラム上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産した。カラム側部の温度は175℃であった。カラム側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産した。カラム下部において1,2,3-トリメチルベンゼンを生産した。垂直分割型カラム内のすべての圧力は0.1MPaであった。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの純度および収率を、表13に示す。
【0310】
【表13】
【0311】
<比較例8>
実施例17の方法によって、重質芳香族炭化水素からトリメチルベンゼンの分離を行った。吸着分離および蒸留を組み合わせた工程を使用する装置によって、トリメチルベンゼンモノマー3種をそれぞれ得た。重質芳香族炭化水素の供給率は20t/hであった。吸着分離ユニットの温度は165℃であり、圧力は0.8MPaであり、脱着剤はトルエンであり、充填した吸着剤は吸着剤Fであった。蒸留ユニットは垂直分割型カラムであった。カラム上部における温度は165℃であった。カラム上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産した。カラム側部の温度は175℃であった。カラム側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産した。カラム下部において1,2,3-トリメチルベンゼンを生産した。垂直分割型カラム内のすべての圧力は0.1MPaであった。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの純度および収率を、表14に示す。
【0312】
【表14】
【0313】
<比較例9>
蒸留装置によって、トリメチルベンゼンモノマー3種をそれぞれ得た。重質芳香族炭化水素の供給率は20t/hであった。重質芳香族炭化水素原料は、前処理をしてC8を除去し、次いで第1蒸留カラムに送った。第1蒸留カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産した。第1蒸留カラムの下部の材料を、第2蒸留カラムに送った。第2蒸留カラムの上部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、第2蒸留カラムの下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産した。第1蒸留カラムは、166℃のカラム上部の温度および100の段数を有した。第2蒸留カラムは、170℃のカラム上部の温度および90の段数を有した。蒸留カラムのすべての圧力は0.1MPaであった。1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンの純度を、表15に示す。
【0314】
【表15】
【0315】
表14および表15からわかるように、本発明の範囲外の従来の蒸留工程および吸着剤では、トリメチルベンゼンモノマー3種を高純度で得られず、続くさらなる利用に対する要件を満たすことができない。吸着分離および蒸留を組み合わせた工程によって、トリメチルベンゼンを優先的に吸着する特殊な吸着剤を使用して、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンモノマーが高純度および高収率にて得られる。特に、トリメチルベンゼン3種が、極めて高収率で極めて高純度で得られる。付加価値が高いトリメチルベンゼン3種が、高純度で高収率で得られ、工程の運転コストを低下させ、重質芳香族炭化水素の資源利用率を改善させるだけでなく、重質芳香族炭化水素製品の経済的付加価値を最大化し、産業チェーンを拡大する。
【0316】
〔産業への応用〕
本発明は、トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤およびその調製方法を提供する。本発明の吸着剤は、トリメチルベンゼン系化合物に対する優れた選択性を有する。本発明の吸着剤を使用した分離方法および分離装置は、トリメチルベンゼン系化合物およびそれらのそれぞれのモノマーを、高純度で高収率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0317】
図1】本発明の高選択性吸着剤に基づく、パルス装置を使用した重質芳香族炭化水素の吸着分離のパルスピーク図であって、トレーサーとしてn-ノナンを使用し、重質芳香族炭化水素成分は、4-エチルトルエン、3-エチルトルエン、2-エチルトルエン、プロピルベンゼン、4-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、2-プロピルトルエン、パラジエチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、2-エチルパラキシレン、4-エチルメタキシレン、およびインダンであるパルスピーク図である。
図2】本発明の擬似移動床吸着分離工程の概略図である。
図3】本発明の吸着分離および蒸留の複合された工程のための装置の概略図である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤であって、
X型モレキュラーシーブとマトリクスとの総量に対して、X型モレキュラーシーブ93~99重量%と、マトリクス1~7重量%と、を含み、
前記マトリクスは、粘土鉱物のin-situ結晶化を経由した結晶変換後の物質であり、
前記吸着剤は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンで修飾され、
任意で、前記吸着剤は、Li、Na、K、Rb、およびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンで修飾されることを特徴とする、吸着剤。
【請求項2】
前記吸着剤は
1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは2.5~6.0%である水の質量分率という特徴;
560m /g以上、好ましくは590m /g以上であるBET比表面積という特徴;
75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上である2価陽イオンの交換度という特徴;および
0.3%~1.0%(好ましくは0.3%~0.6%)である130Nにおける破砕率、0.40~0.95g/cm (好ましくは0.75~0.78g/cm )であるかさ密度という特徴;
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記X型モレキュラーシーブは、0.5~2.0ミクロンである結晶粒子径を有し、および/または、前記X型モレキュラーシーブは、2.0~2.6、好ましくは2.0~2.4であるシリカのアルミナに対するモル比を有することを特徴とする、請求項に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記粘土鉱物は、カオリン鉱物、ベントナイト鉱物、アタパルジャイト鉱物、セピオライト鉱物、およびイライト鉱物のうちの少なくとも1種であり、ならびに、
前記カオリン鉱物は、カオリン石、ディク石、ナクル石、火打ち石、およびハロイ石のうちの少なくとも1種であり、
前記ベントナイト鉱物は、活性白土、天然漂白粘土、およびオルガノベントナイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする、請求項に記載の吸着剤。
【請求項5】
請求項に記載のトリメチルベンゼン系化合物用の吸着剤の調製方法であって、
(1)粒子への成形:Xモレキュラーシーブと粘土鉱物とを91~98:2~9である質量比で混合し、粒子に成形し、任意で乾燥し、次いで500℃~680℃において焼成する工程;
(2)in-situ結晶化:焼成された粒子をアルカリ溶液で処理し、次いで乾燥して、マトリクスとしての粒子を生産し、前記アルカリ溶液中の水酸化物イオンの濃度は、0.2mol/L~2.0mol/L(好ましくは0.2mol/L~1.6mol/L)である工程;
(3)イオン交換:工程(2)で得られた前記マトリクスとしての粒子を、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、およびZn2+(好ましくはSr2+)から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物、ならびに、任意でLi、Na、K、RbおよびCs(好ましくはLi)から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物の交換溶液との陽イオン交換に供し、次いでイオン交換した固体を乾燥する工程;および
(4)任意の活性化工程:工程(3)の前記乾燥した生成物を、好ましくは150℃~260℃、より好ましくは180℃~250℃の活性化温度で活性化する工程;
を含み、ならびに、
前記アルカリ溶液は、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムのうちの少なくとも1種の溶液であり、好ましくは水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合溶液であり、より好ましくは前記アルカリ溶液中のK/(Na+K)のモル比は、0~0.50(好ましくは0.15~0.40)であることを特徴とする調製方法。
【請求項6】
前記調製方法は、
前記アルカリ溶液の前記焼成された粒子に対する液体/固体比は、1.5L/kg~5.0L/kgである条件;
前記in-situ結晶化の工程において、結晶化温度は、80℃~100℃である条件;
前記in-situ結晶化の工程において、乾燥後に得られた前記マトリクスとしての粒子は、400ミクロン~950ミクロンの粒径を有する条件;
前記イオン交換の工程において、
前記Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、Fe 2+ 、Co 2+ 、Ni 2+ 、およびZn 2+ (好ましくはSr 2+ )から選択される少なくとも1種の2価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩および塩酸塩のうちの少なくとも1種から選択され、
前記Li 、Na 、K 、Rb 、およびCs (好ましくはLi )から選択される少なくとも1種の1価陽イオンを含有する化合物は、それらの硝酸塩、塩酸塩、および炭酸塩のうちの少なくとも1種から選択される、条件;
前記イオン交換の工程において、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの濃度は、0.15mol/L以上であり、前記交換溶液の前記粒子に対する体積比は、3以上であり、前記交換溶液中の前記2価陽イオンの前記1価陽イオンに対するモル比は、3以上、好ましくは4以上である条件;
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項に記載の調製方法。
【請求項7】
トリメチルベンゼン系化合物の分離方法であって、
吸着分離:トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料を、請求項に記載の吸着剤または請求項に記載の調製方法で調製した吸着剤と接触させて、トリメチルベンゼン系化合物を吸着させ、次いで分離を行って、トリメチルベンゼン系化合物を生産する工程;
任意のラフィネート分離工程:前記擬似移動床装置からのラフィネートを蒸留に供し、脱着剤、および、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分を生産する工程;
を含む分離方法。
【請求項8】
前記重質芳香族炭化水素原料の流量率は、吸着剤の単位質量に対して、0.16kg/(h・kg吸着剤)以上、好ましくは0.20kg/(h・kg吸着剤)以上、より好ましくは0.23kg/(h・kg吸着剤)以上である、請求項に記載の分離方法。
【請求項9】
前記吸着分離の工程において、擬似移動床装置を使用し、好ましくは、
前記擬似移動床装置は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項10】
前記分離方法は、
1ステップ時間の間において、前記擬似移動床の材料が流れる方向における各材料の引出しおよび注入の順序は、脱着剤、抽出液、原料、およびラフィネートである特徴;
前記擬似移動床装置の構成の圧力は、0.5MPa~1.2MPa(好ましくは0.6MPa~1.0MPa)であり、温度は、120℃~200℃(140℃~180℃)である特徴;
前記擬似移動床装置内に注入される前記脱着剤と前記重質芳香族炭化水素原料との質量流量率の比(脱着剤/重質芳香族炭化水素原料)は、3.6以下、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.2以下である特徴;
前記擬似移動床装置は、吸着ゾーン、精製ゾーン、脱着ゾーン、および隔離ゾーンを備え、29±10%:37±15%:21±5%:13±4%の床数の比率を有する特徴;
前記擬似移動床装置は、18~60分間、好ましくは25~35分間の1サイクル期間を有する特徴;
のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項11】
前記擬似移動床の各吸着床には、格子が設けられ、
前記格子には、前記床の材料注入管路および引出し管路が設けられ、
各吸着床の材料注入管路および引出し管路と並列に2本のフラッシング液管路が設置され、
各管路には、オンオフバルブが設けられ、
前記抽出液は、前記フラッシング液として使用され、
一方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記原料注入床の1床上流に位置する床に注入され、
他方のフラッシング液管路からの前記フラッシング液は、前記抽出液引出し位置の2~4床下流に位置する床に注入され
各吸着床の前記格子には、1本の引出しおよび注入管路が備えられ、
前記管路には、前記吸着床から引き出される、および前記吸着床内に注入される材料を制御するために、複数の並列オンオフバルブが設けられており、
各吸着床の前記引出し管路および注入管路には、6~7個のオンオフバルブが設けられており、
各吸着床には、前記フラッシング液が前記脱着剤として使用される管路が設けられ、
前記注入位置は、前記抽出液引出し位置の1床上流であることを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項12】
前記分離方法は、
蒸留工程:前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物を蒸留に供し、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産し、前記蒸留工程から得られた1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンは、それぞれ97.0重量%以上、98.0重量%以上、および95.0重量%以上の純度を有し、好ましくはそれぞれ98.5重量%以上、99.3重量%以上、および97.0重量%以上の純度を有する工程
をさらに含み、
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を垂直分割型カラムに送り、前記垂直分割型カラムの上部から1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記垂直分割型カラムの側部から1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、前記垂直分割型カラムの下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産する、または、
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、前記第2蒸留カラムのカラム下部から1,2,3-トリメチルベンゼンを生産する、または、
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記第1蒸留カラムの下部生成物を第2蒸留カラムに送り、前記第2蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,4-トリメチルベンゼンを生産し、前記第2蒸留カラムの下部生成物を第3蒸留カラムに送り、前記第3蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,2,3-トリメチルベンゼンを生産し、前記下部生成物は、高沸点を有する芳香族溶剤油である、または、
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流を前記第1蒸留カラムに送り、前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンの混合物であり、1,2,4-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを、結晶化工程を使用することによって、さらに分離する、または、
前記蒸留工程において、前記吸着分離の工程からの抽出液流から、結晶化工程を使用することによって、1,2,3-トリメチルベンゼンを分離することができ、残留した1,2,4-トリメチルベンゼンと1,3,5-トリメチルベンゼンとの混合物流を前記第1蒸留カラムに送り、前記第1蒸留カラムのカラム上部からの分離によって、1,3,5-トリメチルベンゼンを生産し、前記カラム下部流は、1,2,4-トリメチルベンゼンであることを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項13】
前記吸着分離の工程から得られたトリメチルベンゼン系化合物は、99重量%以上の総純度を有することを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項14】
前記分離方法は、
異性化工程:前記吸着分離の工程と前記蒸留工程との間にあり、トリメチルベンゼン系化合物を、前記異性化に供し、
または前記蒸留工程の後にあり、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を、前記異性化に供する工程;
をさらに含み
トリメチルベンゼンの1種またはトリメチルベンゼンの混合物が異性化された後、得られた熱力学的平衡濃度を有するトリメチルベンゼンの混合物流は、分離のために前記吸着分離の工程に戻されることを特徴とする、請求項に記載の分離方法。
【請求項15】
トリメチルベンゼン系化合物の分離装置であって、
吸着分離ユニット:請求項に記載の吸着剤を有し、トリメチルベンゼン系化合物を含有する重質芳香族炭化水素原料から、トリメチルベンゼン系化合物を吸着および分離して、トリメチルベンゼン系化合物を生産するために使用されるユニット;
任意の蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンをそれぞれ生産するユニット;
任意のラフィネート蒸留ユニット:前記吸着分離ユニットの下流に接続され、前記吸着分離ユニットから、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された前記重質芳香族炭化水素成分を含有する流れを受容し、前記蒸留を行って、トリメチルベンゼン系化合物が吸着によって分離された重質芳香族炭化水素成分、および脱着剤をそれぞれ生産するユニット;
任意の異性化ユニット:前記吸着分離ユニットと前記蒸留ユニットとの間に位置し、前記吸着分離ユニットからトリメチルベンゼン系化合物を含有する流れを受容するために使用され、前記異性化が行われ、または、
前記蒸留ユニットの下流に接続され、前記蒸留ユニットから1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、および1,2,3-トリメチルベンゼンのうちの少なくとも1種を受容するために使用され、前記異性化が行われるユニット;
を備える装置。
【請求項16】
前記吸着分離ユニットは、擬似移動床を採用し、好ましくは、
前記擬似移動床は、吸着剤を装填した複数の吸着床を備え、
各吸着床は、その材料注入管路および引出し管路を有し、
前記擬似移動床装置から引き出される、および前記擬似移動床装置内に注入される材料は、その中の吸着床を脱着ゾーン、精製ゾーン、吸着ゾーン、および隔離ゾーンに分割し、
脱着剤注入と抽出液引出しとの間の前記吸着床は、前記脱着ゾーンを構成し、
抽出液引出しと原料注入との間の前記吸着床は、前記精製ゾーンを構成し、
原料注入とラフィネート引出しとの間の前記吸着床は、前記吸着ゾーンを構成し、
ラフィネート引出しと脱着剤注入との間の前記吸着床は、前記隔離ゾーンを構成することを特徴とする、請求項15に記載の分離装置。
【国際調査報告】