(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20241018BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241018BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20241018BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20241018BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M4/13
H01G11/60
H01G11/64
H01G11/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525183
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2022122425
(87)【国際公開番号】W WO2023071691
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111243754.6
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1 Industrial West Road,Songshan Lake High-tech Industrial Development Zone, Dongguan City, Guangdong Province, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】崔 輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 建
(72)【発明者】
【氏名】唐 超
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AB06
5E078BA44
5E078BA53
5E078BA63
5E078BA68
5E078CA06
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5E078DA06
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5E078FA02
5E078FA03
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5H029AJ02
5H029AK01
5H029AK03
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5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM01
5H029AM03
5H029AM05
5H029HJ01
5H029HJ08
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA00
5H050HA06
5H050HA08
(57)【要約】
本発明は、電気化学装置及び電子装置であって、電気化学装置が正極、負極及び電解液を含み、電解液が有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、有機溶媒が酢酸エステル化合物及びカーボネート化合物を含み、カーボネート化合物が、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを含み、電解液の全質量に対して、酢酸エステル化合物の質量分率Aは4%~50%であり、エチレンカーボネートの質量分率Bは5%~20%である、電気化学装置及び電子装置を提供する。本発明は、電解液中の溶媒の含有量及び種類を最適化し、添加剤の界面修飾効果を利用して、電気化学装置の充電能力を向上させ、充電中の充電温度の上昇を低減する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極及び電解液を含む電気化学装置であって、
前記電解液が有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、
前記有機溶媒が酢酸エステル化合物及びカーボネート化合物を含み、
前記カーボネート化合物が、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを含み、
前記電解液の全質量に対して、前記酢酸エステル化合物の質量分率Aは4%~50%であり、前記エチレンカーボネートの質量分率Bは5%~20%である、電気化学装置。
【請求項2】
前記酢酸エステル化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記電解液は、ポリニトリル化合物をさらに含み、
前記ポリニトリル化合物は、スクシノニトリル、アジポニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、エチレングリコール(ビスプロピオニトリル)エーテル、及び1,4-ジシアノ-2-ブテンのうちの少なくとも2つを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記ポリニトリル化合物の質量分率Cは0.1%~10%である、請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記ポリニトリル化合物の質量分率Cと前記酢酸エステル化合物の質量分率Aとは、0.1≦C/A≦0.8を満たす、請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネートを含み、
前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dと前記プロピレンカーボネートの質量分率Eとは、0.2≦D/E≦1を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記プロピレンカーボネートの質量分率Eは5%~30%であり、又は、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dは0.1%~15%である、請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記負極における負極活物質の圧縮密度は1.40g/cm
3~1.70g/cm
3である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記負極は、細孔を含み、
前記細孔は、
(a)細孔径が20μm~100μmであること、
(b)細孔深さ範囲が5μm~50μmであること、及び
(c)単位面積当たりの細孔数が0.5個/mm
2~100個/mm
2であること
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本発明は、出願番号が202111243754.6であり、出願日が2021年10月25日であり、発明の名称が「電気化学装置及び電子装置」である中国特許出願の優先権を主張し、当該中国特許出願の全体内容は参照により本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵の技術分野に関し、特に電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池などの電気化学装置は、動作電圧が高く、エネルギー密度が高く、環境に優しく、サイクルが安定し、安全であるなどの利点があるため、ウェアラブルデバイス、スマートフォン、ドローン、ノートパソコンなどの分野に広く応用されている。現代の情報技術の発展と電気化学装置の応用の拡大に伴い、電気化学装置の充電能力と充電温度の上昇に対する要求はますます高くなっている。
このため、エネルギー貯蔵の技術分野では、電気化学装置の充電能力の向上、及びその充電温度の上昇の低減が、早急に解決すべき問題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、充電温度の上昇を低減する電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、正極、負極及び電解液を含む電気化学装置であって、前記電解液が有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記有機溶媒が酢酸エステル化合物及びカーボネート化合物を含み、前記カーボネート化合物が、エチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)を含み、前記電解液の全質量に対して、前記酢酸エステル化合物の質量分率Aは4%~50%であり、前記エチレンカーボネートの質量分率Bは5%~20%である、電気化学装置を提供する。深く検討した結果、本発明者は、有機溶媒中に前記含有量の酢酸エステル化合物及びカーボネート化合物を含有することで、電気化学装置のサイクル特性を向上させ、充電温度の上昇を低減できることを見出した。
【0006】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記酢酸エステル化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記電解液は、ポリニトリル化合物をさらに含み、前記ポリニトリル化合物は、スクシノニトリル、アジポニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、エチレングリコール(ビスプロピオニトリル)エーテル、及び1,4-ジシアノ-2-ブテンのうちの少なくとも2つを含む。前記ポリニトリル化合物を選択することにより、電気化学装置のサイクル特性をさらに向上させ、充電温度の上昇をさらに低減することができる。
【0008】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記ポリニトリル化合物の質量分率Cは0.1%~10%である。
【0009】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記ポリニトリル化合物の質量分率Cと前記酢酸エステル化合物の質量分率Aとは、0.1≦C/A≦0.8の関係を満たす。C/Aの値を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させることができる。
【0010】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dと前記プロピレンカーボネートの質量分率Eとは、0.2≦D/E≦1の関係を満たす。
【0011】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記プロピレンカーボネートの質量分率Eは5%~30%であり、又は、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dは0.1%~15%である。フルオロエチレンカーボネートの質量分率やプロピレンカーボネートの質量分率を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記リチウム塩はLiPF6であり、電解液の全質量に対して、リチウム塩の質量分率は10%~20%である。
【0013】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記負極における負極活物質の圧縮密度は1.40g/cm3~1.70g/cm3である。負極活物質の圧縮密度を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性をさらに向上させ、充電温度の上昇をさらに低減することができる。
【0014】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記負極は、細孔を含み、前記細孔は、(a)細孔径が20μm~100μmであること、(b)細孔深さ範囲が5μm~50μmであること、及び、(c)単位面積当たりの細孔数が0.5個/mm2~100個/mm2であることのうちの少なくとも1つを満たす。負極細孔の細孔径、細孔深さ、単位面積あたりの細孔数を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性をさらに向上させ、充電温度の上昇をさらに低減することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様が提供する電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0016】
本発明の電気化学装置及び電子装置は、電解液中の溶媒の含有量及び種類を最適化することにより、電気化学装置の動力学的特性を改善し、充電能力を向上させ、充電温度の上昇を低減することができる。電解液に適切な添加剤を添加することにより、充電能力をさらに向上させ、充電温度の上昇をさらに低減することができる。
【0017】
もちろん、本発明のいずれか1つの製品又は方法を実施することは、前記利点のすべてを同時に達成することを必ずしも必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術案、及び利点をより明確にするために、本発明についてさらに詳細に説明する。明らかに、記載される実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、実施例のすべてではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
なお、本発明の発明内容では、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されるものではない。以下の説明は例示的な説明にすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではないことを当業者は理解すべきである。
【0019】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態について、より具体的に説明する。各種の試験及び評価は、下記の方法に従って行う。なお、特に断らない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、電気化学装置を提供し、前記電気化学装置が正極、負極及び電解液を含み、前記電解液が有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含み、前記有機溶媒が酢酸エステル化合物及びカーボネート化合物を含み、前記カーボネート化合物が、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを含み、電解液の全質量に対して、前記酢酸エステル化合物の質量分率Aは4%~50%であり、例えば、前記酢酸エステル化合物の質量分率Aは、4%、10%、12%、20%、28%、36%、50%、又は、これらの間の任意の範囲であり得、前記エチレンカーボネートの質量分率Bは5%~20%であり、例えば、前記エチレンカーボネートの質量分率Bは、5%、8%、11%、14%、17%、20%、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。
【0021】
検討した結果によって、本発明者は、有機溶媒を酢酸エステル化合物とカーボネート化合物とを含むように調整し、酢酸エステル化合物とエチレンカーボネートの質量分率を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル過程において、リチウム塩の解離速度の向上及び固体電解質界面(SEI)フィルムの安定性の向上に寄与し、これによって、電気化学装置の動力学的特性が改善され、サイクル特性が改善され、充電温度の上昇が低減されることを見出した。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、前記酢酸エステル化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルのうちの少なくとも1つを含む。いかなる理論に限らず、本発明者は、前記酢酸エステル化合物はいずれも低い粘度を有するため、充電中のリチウムイオンの輸送を向上させ、輸送インピーダンスを低下させることに有利であり、これによって、電気化学装置の充電温度の上昇を低減させることを見出した。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、前記電解液は、ポリニトリル化合物をさらに含み、前記ポリニトリル化合物はスクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(AND)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン(TCEP)、エチレングリコール(ビスプロピオニトリル)エーテル(DENE)、及び1,4-ジシアノ-2-ブテン(HEDN)のうちの少なくとも2つを含む。いかなる理論に限らず、本発明者は、前記ポリニトリル化合物のうちの少なくとも2つの組み合わせを選択すると、電気化学装置のサイクル過程において、SEI膜の安定性を向上させることに有利であり、これによって、電気化学装置のサイクル特性を向上させ、充電温度の上昇を低減させることに有利であることを見出した。
【0024】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記ポリニトリル化合物の質量分率Cは0.1%~10%であり、例えば、前記ポリニトリル化合物の質量分率Cは、0.1%、1%、2%、4%、6%、8%、10%、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。
【0025】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態において、前記ポリニトリル化合物の質量分率Cと前記酢酸エステル化合物の質量分率Aとは、0.1≦C/A≦0.8の関係を満たす。例えば、C/Aの値は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。本発明者は、C/Aの値が低すぎる場合、例えば0.1未満である場合、電気化学装置のサイクル特性の改善及び充電温度の上昇の改善が顕著ではないことと、C/Aの値が高すぎる場合、例えば0.8超である場合、ポリニトリル化合物の含有量が高すぎるか、酢酸エステルの含有量が低すぎるか、電解液の粘度が増加し、サイクル過程の分極が大きくなり、電気化学装置の充電温度の上昇及びサイクル特性に影響を与えることと、を見出した。C/Aの値を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性をさらに向上させ、充電温度の上昇をさらに低減することに有利である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を含み、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率がDであり、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dと前記プロピレンカーボネートの質量分率Eとは、0.2≦D/E≦1の関係を満たす。例えば、D/Eの値は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。いかなる理論に限らず、本発明者は、FECの質量分率とプロピレンカーボネートの質量分率との比が低すぎる場合、例えば、D/Eが0.2未満である場合、溶媒の粘度が大きいため、リチウムイオン電池の内部抵抗が増大し、充電温度の上昇が増加し、同時に、陽極への保護が不十分であり、サイクル特性が悪くなることと、FECの質量分率とプロピレンカーボネートの質量分率との比が高すぎる場合、例えば、D/Eが1超である場合、リチウム塩の解離が不十分であり、温度の上昇が増加し、同時に、FECの含有量が高すぎ、高温安定性が悪く、サイクルが悪くなることと、を見出した。フルオロエチレンカーボネートの質量分率とプロピレンカーボネートの質量分率との比を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させ、充電温度の上昇を低減することに有利である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記プロピレンカーボネートの質量分率Eは5%~30%であり、又は、前記フルオロエチレンカーボネートの質量分率Dは0.1%~15%であり、例えば、Eは、5%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、30%、又は、これらの間の任意の範囲であり得、Dは、0.1%、1%、3%、5%、7%、9%、11%、15%、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、リチウム塩はLiPF6であり、電解液の全質量に対して、リチウム塩の質量分率は10%~20%である。例えば、リチウム塩の質量分率は、10%、12%、14%、16%、18%、20%、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。いかなる理論に限らず、本発明者は、リチウム塩の質量分率を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル過程において、電気伝導度を向上させることに有利であり、これによって、電気化学装置のサイクル特性を向上させること、を見出した。
【0029】
本発明において、電解液は、さらにその他の非水溶媒を含んでもよく、本発明はその他の非水溶媒に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、その他の非水溶媒が、カルボン酸エステル系化合物、エーテル化合物、及びその他の有機溶媒のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。前記カルボン酸エステル系化合物は、ギ酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン及びカプロラクトンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。前記エーテル化合物は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1-エトキシ-1-メトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、及びテトラヒドロフランのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。前記その他の有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルメチルアミド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。電解液の全質量に対して、前記その他の非水溶媒の質量分率の合計は5%~60%であり、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。
【0030】
本発明において、電解液は、さらにその他の添加剤含んでもよく、本発明はその他の添加剤に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、その他の添加剤が、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、硫酸ビニル(DTD)、ビニリデンカーボネート(VC)、亜硫酸ビニル(PS)、及びリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、負極を含み、前記負極における負極活物質の圧縮密度は1.40g/cm3~1.70g/cm3であり、例えば、負極活物質の圧縮密度は1.40g/cm3、1.45g/cm3、1.50g/cm3、1.55g/cm3、1.60g/cm3、1.65g/cm3、1.70g/cm3、又は、これらの間の任意の範囲であり得る。いかなる理論に限らず、本発明者は、負極活物質の圧縮密度が低すぎる場合、例えば、1.40g/cm3未満である場合、電気化学装置における負極材料間の接触が不十分であり、電子伝導及びイオン伝導が妨害され、充電温度の上昇が増加し、そして、サイクル特性が悪くなることと、負極活物質の圧縮密度が高すぎる場合、例えば、1.70g/cm3超である場合、負極が過電圧になりやすく、充電能力が悪くなり、充電温度の上昇が高くなり、そして、サイクル特性が悪くなり、同時に、過電圧により、材料粒子の破砕が発生する危険性があることと、を見出した。負極活物質の圧縮密度を前記範囲内に制御することにより、電気化学装置のサイクル特性を向上させ、充電温度の上昇を低減することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、前記負極における負極材料は、炭素材料、シリコン、シリコン-酸素材料、及びシリコン-炭素材料のうちの少なくとも1つを含み、前記炭素材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、前記負極は、細孔を含み、前記細孔は、(a)細孔径が20μm~100μmであり、例えば、細孔径が、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、又は、これらの間の任意の範囲であり得ること、(b)細孔深さ範囲が5μm~50μmであり、例えば、細孔深さが、5μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、又は、これらの間の任意の範囲であり得ること、及び、(c)単位面積当たりの細孔数が0.5個/mm2~100個/mm2であり、例えば、単位面積当たりの細孔数が、0.5個/mm2、1個/mm2、10個/mm2、20個/mm2、30個/mm2、40個/mm2、50個/mm2、60個/mm2、70個/mm2、80個/mm2、90個/mm2、100個/mm2、又は、これらの間の任意の範囲であり得ることのうちの少なくとも1つを満たす。いかなる理論に限らず、本発明者は、赤外レーザーの強度を制御し、負極片の表面に穴をあけ、細孔径、細孔深さ、単位面積あたりの細孔数を前記範囲内に制御することにより、材料間での電解液の浸潤及びリチウムイオンの輸送に有利であり、輸送インピーダンスを低下させ、これによって、電気化学装置のサイクル特性を向上させ、充電温度の上昇を低減させることを見出した。
【0034】
本発明における正極片は、特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよい。前記正極片は、通常、正極集電体と正極活物質とを含む。前記正極集電体は特に制限されなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、及び複合集電体などの本技術分野で公知の任意の正極集電体であればよい。前記正極活物質は、特に制限されなく、先行技術における任意の正極活物質であってもよく、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、及び、リン酸マンガン鉄リチウムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0035】
本発明において、正極集電体の厚さ及び正極活物質の厚さは、特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよい。例えば、正極集電体の厚さが8μm~12μmであり、正極活物質の厚さが30μm~120μmである。
【0036】
本発明において、正極活物質層は、さらに導電剤を含んでもよく、本発明は、導電剤に対して、特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、導電剤が、導電性カーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ(CNTs)、炭素繊維、鱗片黒鉛、ケッチェンブラック、グラフェン、金属材料、及び、導電性ポリマーのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブを含むことができるが、これらに限定されない。前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)及び/又はナノ炭素繊維を含むことができるが、これらに限定されない。前記金属材料は、金属粉及び/又は金属繊維を含むことができるが、これらに限定されない。具体的には、金属は、銅、ニッケル、アルミニウム、及び、銀のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。前記導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、及びポリピロールのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明において、正極活物質層は、さらにバインダーを含んでもよく、本発明は、バインダーに対して、特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、バインダーが、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、(1,1-ジフルオロエチレン)重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンを含むことができるが、これらに限定されない。
【0038】
また、正極は、任意に、正極集電体と正極活物質層との間に位置する導電層を含んでもよい。本発明は、導電層の組成に対して、特に制限はなく、本技術分野で一般的に用いられる導電層であってもよく、例えば、導電層の組成が、前記導電剤及び前記バインダーを含むことができるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明における負極集電体は特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよく、銅、ニッケル、チタン又は鉄などの金属又はこれらの合金の箔又は多孔質板、例えば銅箔などの金属箔又は多孔質金属板などの材料を使用してもよい。負極活物質層は、負極活物質、導電剤、粘着剤及び増粘剤を含む。粘着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルブチラール(PVB)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、及び、カルボキシメチルセルロース(CMC)のうちの少なくとも1つであってもよく、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)であってもよい。本発明において、負極の集電体の厚さに対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、負極の集電体の厚さは4μm~12μmである。
【0040】
本発明において、負極活物質層は、さらに導電剤を含んでもよく、本発明は導電剤に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよい。
【0041】
本発明において、負極活物質層は、さらに粘着剤を含んでもよく、本発明は粘着剤に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよい。
【0042】
また、負極は、任意に、負極集電体と負極活物質層との間に位置する導電層を含んでもよい。本発明は導電層の組成に対して特に制限はなく、本技術分野で一般的に用いられる導電層であってもよい。
【0043】
本発明におけるセパレータは、特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよい。前記セパレータは、基材層と表面処理層とを含んでもよい。本発明は、基材層の材料に対して特に制限はなく、例えば、基材層の材料が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレンを主とするポリオレフィン(PO)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、セルロース、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、スパンデックス、アラミドのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されなく、基材層のタイプが、織布フィルム、不織布フィルム(不織布)、微多孔膜、複合膜、隔膜紙、ラミネートフィルム、及び、紡糸フィルムのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されなく、基材層の材料がPPであることが好ましい。本発明のセパレータは多孔質構造を有してもよく、孔径の寸法は特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、孔径の寸法は0.01μm~1μmであってもよい。本発明において、セパレータの厚さは、特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、セパレータの厚さは5μm~500μmであり得る。
【0044】
本発明において、前記基材層の少なくとも一つの表面上に表面処理層が設けられてもよく、本発明は表面処理層に対して特に制限はなく、表面処理層が、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物とを混合してなる層であってもよい。無機物層は、無機粒子と無機物層粘着剤を含むことができるが、これらに限定されない。本発明は無機粒子に対して特に制限はなく、例えば、無機粒子が、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。本発明は無機物層粘着剤に対して特に制限はなく、例えば、無機物層粘着剤が、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。ポリマー層には、ポリマーが含まれ、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルのポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の電気化学装置は、特に制限されなく、電気化学反応を起こす、任意の装置を含んでもよい。いくつかの実施例において、電気化学装置は、リチウムイオン電池を含むことができるが、これに限定されない。
【0046】
電気化学装置の製造プロセスは、当業者によく知られるものであり、本発明には特に制限はなく、例えば、正極片、セパレータ、負極片をこの順に積層し、必要に応じて巻き取り、折り畳みなどの操作を行って、巻き取り構造の電極アセンブリを得、電極アセンブリを包装袋に入れ、電解液を包装袋に注入して密封し、電気化学装置を得る工程と、あるいは、正極、セパレータ及び負極を順に積層した後、積層構造全体の4つの角をテープで固定して積層構造の電極アセンブリを得、電極アセンブリを包装袋内に入れ、電解液を包装袋に注入して密封し、電気化学装置を得る工程と、を含むことができるが、これらに限定されない。また、必要に応じて過電流防止素子、リード板などを包装袋に入れてもよく、これによって、電気化学装置内部の圧力上昇、過充電・過放電を防止することができる。
【0047】
本発明の第2の態様は、本発明の前述のいずれかの実施形態における電気化学装置を含む電子装置を提供する。本発明が提供する電気化学装置は、良好なサイクル特性と低い充電温度上昇を有するため、本発明が提供する電子装置は長い寿命と良好な性能を有する。
【0048】
本発明の電子装置は、特に限定されなく、先行技術で既知の任意の電子装置であってもよい。例えば、表示装置には、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯型テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、家庭用大型蓄電池、及びリチウムイオンキャパシタなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
測定方法とデバイス:
リチウム析出試験:
電池を温度25℃、3Cで4.45Vまで充電し、4.45Vで0.05Cまで定電圧充電し、さらに1.0Cで3.0Vまで定電流放電した。この充放電を10回繰り返し実施した後、分解してリチウム析出程度を観察した。リチウム析出が発見されていないか、リチウム析出面積が2%未満である場合をここではリチウム析出なしと呼び、リチウム析出面積が2%~20%の間にある場合をリチウム軽度析出と呼び、リチウム析出面積が20%超である場合をリチウム重度析出と呼ぶ。
【0050】
温度の上昇試験:
試験温度25℃、0.5Cの電流で4.45Vまで定電流充電し、さらに0.05Cまで定電圧充電し、60分間静置した。その後、0.5Cの電流でリチウムイオン電池を3Vまで定電流放電し、60分間静置した。その後、6Cの電流でリチウムイオン電池を4.45Vまで定電流充電し、さらに0.05Cまで定電圧充電し、この大電流充電中の温度を監視し、試験温度25℃を差し引いて、6Cの充電温度の上昇を得た。
【0051】
高温サイクル試験:
電池を45℃の恒温槽に入れ、1.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、4.45Vで0.05Cまで定電圧充電し、さらに1.0Cで3.0Vまで定電流放電することを1充放電サイクルとした。この充放電を800回繰り返し実施し、容量維持率を監視し、45℃サイクル容量維持率=(800サイクル目の放電容量/初期放電容量)×100%。
【0052】
電解液中の成分含有量試験:
セルを放電して遠心分離し、遠心分離して得られた液体をGC-MS試験を行い、各成分(酢酸エステル、EC、PC、添加剤)の質量分率を検出した。
【0053】
負極活物質の圧縮密度試験:
負極活物質の圧縮密度は、以下の方法により行った。
負極両面極片を用いて面積1540.25mm2の小ウェハに作製し、20枚の小ウェハを用いて重量及び厚さの測定を行い、負極活物質の圧縮密度=(小ウェハの重量-基材の重量)/(1540.25×(小ウェハの両面の厚さ-基材の厚さ))×1000、試験平均値をとり、実施例における負極の圧縮密度とした。
基材(銅箔)の重量と厚さは、活物質のない領域を用いて重量及び厚さの測定を行って得られた。
小ウェハの重量と基材の重量の単位は、mgであった。
小ウェハの両面の厚さと基材の厚さの単位は、μmであった。
【0054】
負極片上の細孔特性試験:
負極片上の細孔特性のデータ(細孔径、細孔深さ、単位面積当たりの細孔数)は、トンネル走査顕微鏡試験により得られた。
【0055】
実施例1
(1)負極片の調製:負極活物質の人造黒鉛、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を質量比97.4:1.2:1.4で混合し、次いで溶媒として脱イオン水を加え、固形分含有量70wt%のスラリーに調合し、均一に攪拌した。スラリーを厚さ8μmの銅箔の一方の表面に均一に塗布し、110℃の条件下で乾燥し、冷間圧延して、負極活物質層の厚さが150μmの片面に負極活物質層が塗布された負極片を得た後、この負極片の他方の表面に前記塗布工程を繰り返し、両面に負極活物質層が塗布された負極片を得た。負極片を(74mm×867mm)の仕様に切断し、タブを溶接した。後で使用するまでに置かれた。
【0056】
(2)正極片の調製:正極活物質のコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電剤のアセチレンブラック、粘着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比96:2:2で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を加え、真空攪拌機により系が均一になるまで攪拌し、固形分含有量75wt%の正極スラリーを得た。正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、85℃の条件下で乾燥し、冷間圧延して、正極活物質層の厚さが100μmの正極片を得た後、この正極片の他方の表面に前記塗布工程を繰り返し、両面に正極活物質層が塗布された正極片を得た。正極片を74mm×867mmの仕様に切断し、タブを溶接した。後で使用するまでに置かれた。
【0057】
(3)電解液の調製:含水量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックスに、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、酢酸エチル(EA)及びプロピオン酸エチル(EP)を均一に混合し、さらに十分に乾燥したリチウム塩LiPF6を前記非水溶媒に溶解し、添加剤のフルオロエチレンカーボネートを加え、最終的に基礎電解液になった。そのうち、リチウム塩の質量分率は10%であり、EC、PC、EA、FECの質量分率はそれぞれ10%、15%、4%、7.5%であり、電解液中の残りの部分はプロピオン酸エチルであり、ここで、フルオロエチレンカーボネートの質量分率とエチレンカーボネートの質量分率との比は0.5であった。
【0058】
(4)セパレータ:PE多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。
【0059】
(5)リチウムイオン電池の調製:正極片、セパレータ、負極片をこの順に積層し、セパレータ膜を正極片と負極片との間に介在させてセパレータとして機能させ、そして、巻き取って裸の電池を得た。裸の電池を外装箔に入れ、前記で調製した電解液を乾燥後の電池に注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、リチウムイオン電池の調製を完了した。
【0060】
実施例2~実施例21において、負極片の調製の工程、正極片の調製の工程、電解液の調製の工程、セパレータの調製の工程及びリチウムイオン電池の調製の工程はいずれも実施例1と同様であり、関連の調製パラメータ及び性能パラメータの変化を表1に示す。
【0061】
実施例22~実施例43、実施例46において、実施例3の電解液にポリニトリル化合物を加え、表2に示すようにポリニトリル化合物の種類と含有量、ポリニトリル化合物の総含有量、及びポリニトリル化合物の含有量と酢酸エステル化合物の含有量との比を調整した以外、実施例3と同様であった。
【0062】
実施例44において、実施例2の電解液にポリニトリル化合物を加え、表2に示すようにポリニトリル化合物の種類と含有量、ポリニトリル化合物の総含有量及びポリニトリル化合物の含有量と酢酸エステル化合物の含有量との比を調整した以外、実施例2と同様であった。
【0063】
実施例45において、実施例10の電解液にポリニトリル化合物を加え、表2に示すようにポリニトリル化合物の種類と含有量、ポリニトリル化合物の総含有量及びポリニトリル化合物の含有量と酢酸エステル化合物の含有量との比を調整した以外、実施例10と同様であった。
【0064】
実施例47~実施例55において、実施例23~31の電解液に基づいて、表3に示すように、負極活物質の圧縮密度、及び、負極片上の細孔の細孔径と細孔深さと単位面積当たりの細孔数を調整した以外、実施例23~31と同様であった。
【0065】
比較例1~比較例7において、負極片の調製の工程、正極片の調製の工程、電解液の調製の工程、セパレータの調製の工程及びリチウムイオン電池の調製の工程はいずれも実施例1と同様であり、関連の調製パラメータ及び性能の変化を表1に示す。
【0066】
各実施例及び比較例の調製パラメータ及び性能試験を表1~表3に示す。
【0067】
【表1】
表1において、「/」は、対応する調製パラメータが存在しないことを示す。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例1~実施例10及び比較例1~比較例3から、酢酸エチルの含有量の増加に伴い、リチウム析出状況と充電温度の上昇は改善されるが、酢酸エチルの含有量が高くなると、サイクル特性が低下し、酢酸エステル化合物が含まれないと、リチウム析出が悪化し、サイクル特性が悪くなり、充電温度の上昇が明らかに増加し、酢酸エステル化合物の含有量が低すぎると、リチウムが重度に析出し、サイクルが悪化し、充電温度の上昇が増加し、酢酸エステル化合物の含有量が高すぎると、サイクルできず、ガスが発生し、容量の急降下(capacity diving)が発生することがわかる。
【0071】
実施例3、実施例11~実施例13、比較例4及び比較例5から、ECの含有量が低くなると、リチウム塩の解離により、界面安定性が向上し、動力学的特性が改善されるため、サイクル特性が向上し、ECの含有量が高すぎると、粘度が増加し、安定性も悪くなり、そして、ECの含有量が低すぎると、サイクル特性が悪くなり、リチウムが重度に析出し、また、ECの含有量が高すぎると、サイクル特性が悪くなり、リチウムが重度に析出することがわかる。
【0072】
実施例3、実施例14~実施例21、比較例6及び比較例7から、FEC/PCの値が本発明の範囲内にあると、リチウム析出状況と充電温度の上昇が改善され、FEC/PCが小さすぎると、サイクル特性が低下し、FEC/PCが高すぎると、リチウムが重度に析出することがわかる。
実施例2、実施例3、実施例10及び実施例22~実施例46から、ポリニトリル化合物の添加に伴い、サイクル過程において、SEI膜の安定性をさらに向上させて、サイクル特性を向上させることがわかる。
【0073】
実施例40及び実施例47~実施例49から、負極片上の細孔の細孔径の増加に伴い、リチウム析出状況と充電温度の上昇が改善されることがわかる。
【0074】
実施例48、実施例50及び実施例51から、負極片上の細孔の細孔深さ範囲が本発明の範囲内にあると、得られたリチウムイオン電池は、リチウムが軽度に析出したり、リチウムが析出しなかったりし、充電温度の上昇が低くなり、サイクル容量維持率が高くなることがわかる。これは、リチウムイオン電池が良好なサイクル特性を有し、かつ、充電温度の上昇の問題が改善され、サイクル過程においてもリチウムが析出しにくいことを示している。
【0075】
実施例48、実施例52及び実施例53から、負極片上の単位面積当たりの細孔数が本発明の範囲内にあると、得られたリチウムイオン電池は、リチウムが軽度に析出したり、リチウムが析出しなかったりし、充電温度の上昇が低くなり、サイクル容量維持率が高くなることがわかる。これは、リチウムイオン電池が良好なサイクル特性を有し、かつ、充電温度の上昇の問題が改善され、サイクル過程においてもリチウムが析出しにくいことを示している。
【0076】
実施例47、実施例54及び実施例55から、負極片における負極活物質の圧縮密度が本発明の範囲内にあると、得られたリチウムイオン電池は、リチウムが軽度に析出したり、リチウムが析出しなかったりし、充電温度の上昇が低くなり、サイクル容量維持率が高くなることがわかる。これは、リチウムイオン電池が良好なサイクル特性を有し、かつ、充電温度の上昇の問題が改善され、サイクル過程においてもリチウムが析出しにくいことを示している。
【0077】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明の精神及び原則の範囲内でなされるいかなる修正、同等の置換、改善なども、本発明の保護の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】