(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】腸内マイクロバイオーム調節のためのプロバイオティクス組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20241018BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241018BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241018BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241018BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241018BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241018BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241018BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241018BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20241018BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20241018BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241018BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20241018BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241018BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241018BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20241018BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241018BHJP
C12Q 1/689 20180101ALN20241018BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20241018BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20241018BHJP
【FI】
A23L33/135
A61P3/10
A61P3/04
A61P1/16
A61P37/08
A61P25/24
A61P25/16
A61P25/28
A61P37/02
A61K35/74 A
A61K35/747
A61K35/744
A61K35/741
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/16
A23K10/16
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
C12Q1/689 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525195
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022079755
(87)【国際公開番号】W WO2023072921
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボード シュペックマン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ゴベッティ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガ カロラ パンコケ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ フリューゲル
(72)【発明者】
【氏名】ロレーナ シュタネク-ゲーベル
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ トム ディーク
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B063
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
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2B150AA06
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4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、ヒトおよび動物におけるディスバイオシスを治療または予防するための調製物の使用であって、該調製物は、プロバイオティクス菌株ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355を含む、使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトおよび動物におけるディスバイオシスを治療または予防するための調製物の使用であって、前記調製物は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355を含む、使用。
【請求項2】
前記調製物が、腸内マイクロバイオータの組成および活性の調節に使用され、前記調節が、以下:
a)前記調製物が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)に属する分類群の増加をもたらす、
b)前記調製物が、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、ナイセリア(Neisseria)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ボルデテラ(Bordetella)、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、バクテロイデス(Bacteroides)、プレボテラ(Prevotella)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、エルシニア(Yersinia)、シュードモナス(Pseudomonas)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ(Klebsiella)に属する分類群の減少をもたらす、
c)前記調製物が、前記腸内マイクロバイオータのαまたはβ多様性の増加をもたらす
のうち1つ以上から選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記菌株のコンソーシアムが、ヒトおよび動物の前記腸内マイクロバイオームのタンパク質分解および糖質代謝能力の増加をもたらす、請求項1記載の使用。
【請求項4】
プロバイオティクス菌株が、休眠形態でまたは植物細胞として存在する、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記調製物が、1つ以上のプロバイオティクス菌株をさらに含み、前記菌株が、好ましくはペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)、より好ましくはペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)DSM 33371から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記調製物が、以下:アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)、ロシア・ムシラギノーサ(Rothia mucilaginosa)、ロシア・アエリア(Rothia aeria)、サブチリシン(subtilisins)、ナットウキナーゼ、アラビノキシラン、大麦穀物繊維、オート麦穀物繊維、ライ麦繊維、小麦ふすま繊維、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、レジスタントスターチ、β-グルカン、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナン、グアーガム、キシロオリゴ糖、アルギン酸塩から精製された微生物プロテアーゼのうち1つ以上をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記調製物が、グルテン関連障害、好ましくはセリアック病、非セリアックグルテン過敏症、小麦アレルギー、およびグルテン感受性過敏性腸症候群から選択されるグルテン関連障害を、それを必要とする対象または動物において治療または予防するためのものである、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
グルテン除去食、グルテンまたは穀類または穀類由来もしくは穀類含有食料の摂取を低減した食品を含む、特別な食事療法の実践を遵守することに由来するディスバイオシスを治療または予防するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
ディスバイオシス、好ましくは、2型糖尿病、肥満症、非アルコール性脂肪肝疾患、アレルギー性疾患、大うつ病性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患に関連するディスバイオシスを治療または予防するための、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)のメンバーの微生物細胞膜の透過剤として作用する物質、好ましくはアルギン酸塩をさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、およびワイセラ属(Weissella sp.)から選択される前記プロバイオティクス菌株のうち1つ以上が、個々に、またはコンソーシアムとして固定化される、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記調製物が、食品もしくは飼料サプリメント、または機能性食品もしくは食用製品、または医薬品である、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記調製物が、経口用に、好ましくは、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒状散剤、オペルキュラム、可溶性顆粒剤、袋剤、丸剤もしくは飲用バイアルとして配合されるか、またはシロップもしくは飲料として配合されるか、または食品、好ましくは、シリアル、グミ、パン、ミューズリー、ミューズリーバー、ヘルスバー、ビスケット、チョコレート、ヨーグルトもしくはスプレッドに添加される、請求項12記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物におけるディスバイオシスを治療または予防するための調製物の使用であって、該調製物は、プロバイオティクス菌株ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355を含む、使用に関する。
【0002】
健康障害(糖尿病、アレルギー性および自己免疫疾患、がん、炎症性腸疾患、脳障害など)の数が増えており、これと腸内マイクロバイオームの機能不全とが関連づけられている[1]。この関連性は双方向的であるように思われるため、マイクロバイオータを標的とした戦略は、これらの障害を予防または治療するための新たな治療可能性と考えられてきた。腸内マイクロバイオームは、例えば、微生物代謝に由来する可溶性因子、局所的および全身的免疫細胞の調節、腸神経系や迷走神経の調節を介して、ヒトや動物の生理機能に影響を及ぼす。一方、腸内マイクロバイオータの組成および活性は、内在性因子(ゲノム、性別、年齢、疾患)および多数の外在性因子によって影響を受けるが、食事はおそらく最も重要な決定因子である。食事によるマイクロバイオータの組成および活性の調節には、プレバイオティクス、プロバイオティクス、シンバイオティクスおよび抗生物質の適用が含まれる。最も研究され市販されているプロバイオティクスは、主にラクトバチルス(Lactobacillus)属やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の種の微生物である。
【0003】
例えばヒスタミン[2]やグルテン[3]に対する食物不耐症の患者について、ディスバイオシスが説明されている。セリアック病(CD)患者の糞便および/または十二指腸の腸内マイクロバイオータ組成を健常対照群と比較して評価したところ、α多様性の減少、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、バクテロイデス(Bacteroides)属、プレボテラ(Prevotella)属、エシェリヒア(Escherichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ナイセリア(Neisseria)属、セラチア(Serratia)属およびヘモフィルス(Haemophilus)属のレベルの増加、ならびにストレプトコッカス(Streptococcus)、アッカーマンシア(Akkermansia)、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)およびラクトバシリ(Lactobacilli)のレベルの減少が明らかになった[3~6]。近年、CD患者の唾液、十二指腸および糞便のマイクロバイオータにおいて、特にナイセリア属(Neisseria spp.)のプロテオバクテリアの存在量の増加が生じていることが確認された[7~9]。
【0004】
CD患者のディスバイオシスは、疾患の経過中に発症する可能性があり、その意味ではむしろ傍観者的な役割を担っている。しかし他の研究では、ディスバイオシスは、CDの発症に先行し、疾患の増悪因子として作用する可能性があることが示されている[10]。この見解は、ヒトの腸内マイクロバイオータのディスバイオシスの優勢種の機能解析によって裏付けられている(例えば、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)およびシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa))[6,8]。同様に、CD患者の糞便サンプルから単離されたエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)ENT CAI:5株は、清浄なSPFマウスにおいてグルテン誘発免疫病理を悪化させた[11]。ヒトの消化性プロテアーゼは、プロリンに富むグリアジンを部分的にしか消化しない。一般的に、この消化酵素の能力が低いと、消化プロセスが制限されてグルテン由来のペプチド(エピトープ)が生成され、これは、罹患性が高い人においてセリアック病のトリガー因子として作用する[12]。ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)およびシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)は、これらのエピトープの含分を増加させる能力を有し[13]、腸粘膜バリアを効率的に通過する[14]。これらの特徴から、セリアック病[10]の病因や、おそらくは非セリアックグルテン過敏症(NCGS)のような他のグルテン関連障害の病因においても、ディスバイオシスに関連する病原体が有害な役割を担っていると考えられる。NCGSは、症状や治療法(グルテン除去食)に関してCDと共通の特徴を有しており、一連のグルテン関連障害の中でも2番目に大きな症状発現である。NCGSの腸内マイクロバイオータの組成に関する報告はほとんど存在しない。NCGSの診断が正確でなく、過敏性腸症候群と症状が重複していることから、これらの解析はCDに比べて数が少ないだけでなく、明確でもない。それにもかかわらず、NCGS患者の腸内マイクロバイオータは一般的に、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)および酪酸産生ファーミキューテス(Firmicutes)のレベルの減少[15,16]、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、アクチノバチルス(Actinobacillus)およびフィネゴルディア(Finegoldia)のレベルの増加、ならびにその豊富さの低下を示す[16]。グルテン除去食(GFD)は、NCGSおよびCDの両患者にとって唯一利用可能であり、したがって必須の治療法である。両疾患について、グルテン除去食が腸内マイクロバイオータの組成に及ぼす影響が研究されている。メキシコのNCGS患者はGFDに反応し、ガンマプロテオバクテリア(Gammaproteobacteria)およびシュードモナス(Pseudomonas)の存在量が増加した[17]。他の研究では、GFDで治療されたNCGSでは、バクテロイデス(Bacteroides)、ブラウチア(Blautia)、ドレア(Dorea)、コプロコッカス(Coprococcus)、コリンセラ(Collinsella)、ラクノスピラシー(Lachnospiraceae)が減少し、バクテロイダシー(Bacteroidaceae)が増加したことが報告されている[18]。CD患者のマイクロバイオータ組成もGFDによって(負の)影響を受け、プロテオバクテリア(Proteobacteria)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、プレボテラ(Prevotella)属およびストレプトコッカス(Streptococcus)属の増加が報告されているが、ラクトバシリイ(Lactobacillii)およびビフィドバクテリア(Bifidobacteria)の多様性および存在量は明らかに減少している[18]。GFDはCD患者にとって現在利用可能な唯一の治療法であるため、その不利な副作用は、結果として、マイクロバイオームを調節する新規の(共同)治療戦略が必要に迫られていることを示している。
【0005】
GFDは、グルテン関連障害に罹患している患者以外にも人気を博しており、現在では最も需要のある除去食の一つであるが[19]、特に健康な人には欠点や潜在的な害をもたらす[20]。GFDやグルテン含有量の少ない(1日2gまで)食事が健康な人の細菌集団の存在量に及ぼす影響について研究され、まとめられている[18]。全般的に、グルテン除去により、ビフィドバクテリア(Bifidobacteria)、ラクトバシリイ(Lactobacillii)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)、ドレア(Dorea)属(例えば、ドレア・ロンギカテナ(Dorea longicatena))、ブラウティア・ウェクスレレ(Blautia wexlerae)、ベイロネラシー(Veillonellaceae)、ロセブリア(Roseburia)、アネオスチペス・ハヅルス(Anaeostipes hadrus)、エウバクテリウム・ハリイ(Eubacterium hallii)が減少し、E.コリ(E. coli)、スラキア(Slackia)、エンテロバクテリアシー(Enterobacteriaceae)、コリオバクテリアシー(Coriobacteriaceae)およびプロテオバクテリアシー(Proteobacteriaceae)が増加した[18,21,22]。
【0006】
総括すると、腸内ディスバイオシスは、食物不耐症を含む増加する数の病的状態と関連しており、その因果関係は不明確なことが多いが、異なる流行を示すいくつかの分類群の作用機序が発見されたことで、ディスバイオシスが、標的とする価値のある疾患要因となりうることが判明した。様々な状況において、プレバイオティクス、プロバイオティクスおよびシンバイオティクスの適用によってディスバイオシスの是正が非常に多く試みられてきたが、現在利用可能なマイクロバイオーム調節介入の限界は、その正確性の欠如および臨床効果の不明確さである。
【0007】
国際公開第2021/129998号および[12]において、本出願人らは以前、バチルス(Bacillus)属菌株およびラクトバチルス(Lactobacillus)属菌株の様々な組み合わせと、グルテンを完全に消化するその能力とを開示した。しかし、これらの菌株やその組み合わせによるプレバイオティクスまたはマイクロバイオーム調節効果-これが本発明の主題である-は、これまでどこにも開示されていなかった。
【0008】
Francavillaらは、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)LMG 101/37 P-17504菌株、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)CECT 4528菌株、ビフィドバクテリウム亜種アニマリス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)Bi1 LMG P-17502菌株、およびビフィドバクテリウム・ブレブ(Bifidobacterium breve)Bbr8 LMG P-17501菌株を含む組成物で6週間治療した際のCD患者の糞便において、推定的な乳酸菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の存在量が増加していることを報告している[23]。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の他の菌株(B.ブレブ(B.breve)、B.ロンガム(B.longum))を腸内マイクロバイオータに限定的に作用させるための応用については、ファーミキューテス(Firmicutes)、バクテロイデーテス(Bacteroidetes)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)の量を調節することなどがまとめられているが、これらの群を含む分類群についてはこれ以上評価されていない。
【0009】
本発明者らは以前、グルテンを完全に加水分解し、無毒で免疫原性のない消化物にする多菌株プロバイオティクス組成物を開示した(PCT/EP2020/083770、[12])。驚くべきことに、本発明者らは、この組成物が、グルテン除去食や制御されたグルテン含有食を背景に、ヒトの腸内マイクロバイオームに有益な変化をもたらすことを発見した。こうした変化は、この組成物や他の組成物についてこれまで開示されていない。これらの変化には、これまでグルテン関連障害やグルテン除去食に関連していたいくつかの分類群の、従来にない調節が含まれていた。本発明者らによるこの多菌株プロバイオティクス配合物のプレバイオティクス機能の発見は、特にグルテン除去食やグルテン低減食を遵守しているヒトや動物、あるいはセリアック病や同様のグルテン関連障害に罹患しているヒトや動物に対して、マイクロバイオームの機能不全に関連する障害や病態を予防、治療および/または治癒するための新規戦略への道を拓くものである。
【0010】
したがって、本発明は、ヒトおよび動物におけるディスバイオシスを治療または予防するための調製物の使用であって、該調製物は、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355を含む、使用を対象とする。
【0011】
これらの菌株は、国際公開第2021129998号に既に開示されている。
【0012】
好ましい実施形態において、腸内マイクロバイオータの組成および活性の調節は、以下:
a)調製物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)に属する分類群の増加をもたらす、
b)調製物は、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、ナイセリア(Neisseria)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ボルデテラ(Bordetella)、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、バクテロイデス(Bacteroides)、プレボテラ(Prevotella)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、エルシニア(Yersinia)、シュードモナス(Pseudomonas)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ(Klebsiella)に属する分類群の減少をもたらす、
c)調製物は、腸内マイクロバイオータのαまたはβ多様性の増加、および腸内マイクロバイオータの均一性の増加をもたらす
のうち1つ以上から選択される。
【0013】
具体的構成において、調製物は、偽薬群と比較して、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(Faecalibacterium prausnitzii)に属する分類群の少なくとも5%の相対的な増加をもたらす。
【0014】
別の具体的構成において、調製物は、偽薬群と比較して、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、ナイセリア(Neisseria)、ナイセリア・フラベセンス(Neisseria flavescens)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ボルデテラ(Bordetella)、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、バクテロイデス(Bacteroides)、プレボテラ(Prevotella)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、エルシニア(Yersinia)、シュードモナス(Pseudomonas)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエラ(Klebsiella)に属する分類群の少なくとも5%の相対的な減少をもたらす。
【0015】
別の具体的構成において、調製物は、偽薬群と比較して、腸内マイクロバイオータのαまたはβ多様性の少なくとも5%の相対的な増加、および腸内マイクロバイオータの均一性の増加をもたらす。
【0016】
本発明の菌株の細胞は、本発明の組成物中に、芽胞として(休眠状態である)、植物細胞として(成長中である)、移行状態細胞として(植物細胞から芽胞に移行中であるか、またはその逆である)、細胞抽出物として、またはこれらのタイプの細胞の少なくとも2つの組み合わせとして存在することができる。好ましい実施形態において、プロバイオティクス菌株は、休眠形態でまたは植物細胞として存在する。代替的実施形態において、プロバイオティクス菌株の細胞質抽出物または無細胞上清または加熱死滅バイオマスが使用される。
【0017】
さらなる好ましい実施形態において、調製物は、1つ以上のプロバイオティクス菌株をさらに含み、前記菌株は、好ましくはペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)、より好ましくはペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)DSM 33371から選択される。
【0018】
さらなる好ましい実施形態において、調製物は、以下:アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)、ロシア・ムシラギノーサ(Rothia mucilaginosa)、ロシア・アエリア(Rothia aeria)、サブチリシン(subtilisins)、ナットウキナーゼ、アラビノキシラン、大麦穀物繊維、オート麦穀物繊維、ライ麦繊維、小麦ふすま繊維、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、レジスタントスターチ、β-グルカン、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナン、グアーガム、キシロオリゴ糖、アルギン酸塩から精製された微生物プロテアーゼのうち1つ以上をさらに含む。
【0019】
本発明はまた、グルテン関連障害、好ましくはセリアック病、非セリアックグルテン過敏症、小麦アレルギー、およびグルテン感受性過敏性腸症候群から選択されるグルテン関連障害の発症を背景として、またはその発症に先行して典型的に起こるディスバイオシスを、それを必要とする対象または動物において是正するための調製物の使用も対象とする。
【0020】
好ましい構成において、調製物は、グルテン除去食、グルテンまたは穀類または穀類由来もしくは穀類含有食料の摂取を低減した食品を含む、特別な食事療法の実践を遵守することに由来するディスバイオシスを治療または予防するためのものである。
【0021】
さらに、調製物は、ディスバイオシス、好ましくは、2型糖尿病、肥満症、非アルコール性脂肪肝疾患、アレルギー性疾患、大うつ病性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、自己免疫疾患に関連するディスバイオシスを治療または予防するためのものである。
【0022】
好ましい実施形態において、調製物は、バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、ワイセラ属(Weissella sp.)のメンバーの微生物細胞膜の透過剤として作用する物質、好ましくはアルギン酸塩をさらに含む。
【0023】
代替的実施形態において、バチルス属(Bacillus sp.)、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)、ペディオコッカス属(Pediococcus sp.)、およびワイセラ属(Weissella sp.)から選択されるプロバイオティクス菌株のうち1つ以上が、個々に、またはコンソーシアムとして固定化される。固定化は、セルロースやキトサンのような固体表面上でも、アルギン酸塩、k-カラギーナン、寒天、キトサン、ポリガラクツロン酸のような多糖類ゲルや、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコールのような他のポリマーマトリックスといった多孔性マトリックス内への取込みとしても、凝集およびマイクロカプセル化、またはエレクトロスプレー技術によっても実現可能である。
【0024】
本発明の1つの主題は、本発明による調製物の使用であって、調製物が、食品もしくは飼料サプリメント、または機能性食品もしくは食用製品、または医薬品である、使用である。本発明による好ましい食料は、チョコレート製品、グミ、ミューズリー、ミューズリーバー、および乳製品である。
【0025】
本発明のさらなる主題はまた、食用製品中のシンバイオティクス成分としての本発明の調製物の使用である。
【0026】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つのさらなる食品成分であって、好ましくは、タンパク質、糖質、脂肪、さらなるプロバイオティクス、プレバイオティクス、酵素、ビタミン、免疫調節剤、乳代用剤、ミネラル、アミノ酸、コクシジオスタット、酸ベースの製品、医薬品、およびそれらの組み合わせから選択される食品成分をさらに含む食料組成物としての調製物の使用である。
【0027】
具体的構成において、調製物は、経口用に、好ましくは、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒状散剤、オペルキュラム、可溶性顆粒剤、袋剤、丸剤もしくは飲用バイアルとして配合されるか、またはシロップもしくは飲料として配合されるか、または食品、好ましくは、シリアル、グミ、パン、ミューズリー、ミューズリーバー、ヘルスバー、ビスケット、チョコレート、ヨーグルトもしくはスプレッドに添加される。
【0028】
本発明による食料組成物には、例えば、丸剤、カプセル剤、錠剤、散剤または液剤の形態の栄養補助食品も含まれる。
【0029】
本発明のさらなる主題は、本発明による調製物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物としての調製物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ヒトグルテンチャレンジ試験の概要を示す図である。
【
図2】プロバイオティクス組成物の毎日の摂取が、腸内マイクロバイオータの組成を有益に調節することを示す図である。
【0031】
実施例
実施例1:グルテンチャレンジ試験の概要
図1に、試験のセットアップの実例を示す。治療群には、34日間、実薬または偽薬のカプセルを投与したが、ただしその際、1日目から41日目までグルテン除去食を摂取し、11日目以降は1日あたり50mgから10gまで段階的に、カプセルまたはパンの形で決められた量のグルテンを摂取することを遵守した。
【0032】
図1に、ヒトグルテンチャレンジ試験の概要を示す。18~50歳の健常人を2群に分け、(i)40~50名にプロバイオティクスを投与し、(ii)20~30名に偽薬を投与した。試験の1日目から41日目まで、プロバイオティクスまたは偽薬のカプセルを摂取した。両群とも、最初の10日間はグルテン除去食を摂取し、糞便から残留する微量のグルテンおよび同様のタンパク質を除去することを遵守した。10日後、両群ともグルテンの投与を以下のように開始した(
図1参照):50mg/日(グルテンのカプセル)を4日間、1g/日(グルテンのカプセル)を4日間、3g/日(同量のスライドパンを再投入)を4日間、および10g/日(同量のスライドパンを再投入)を17日間。この最後のグルテンの投与量は、ほとんどの欧州諸国におけるグルテンの平均摂取量に相当する。この段階(10日+4日+4日+4日+10日+7日=合計41日)で、実薬調製物および偽薬調製物の投与を中止し、7日間のウォッシュアウト期間を設けた。ウォッシュアウト期間は、プロバイオティクス調製物が消化管内でより長期間コロニー形成する能力に関する情報を提供するために設けられた。参加者数は、実薬群と偽薬群とを比較して統計学的に異なる効果を検出できるように、統計的検出力の推定に基づいて計算した。各期間の開始時/終了時に糞便サンプルを採取し、微生物学的、グルテン学的、免疫学的、およびメタボローム的な解析を行った。
【0033】
実施例2:腸内マイクロバイオームの組成、豊富さ、およびα/β多様性に対するプロバイオティクス配合物の効果
【表1】
表1:プロバイオティクス組成物(ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355)カプセルおよび偽薬カプセルを健常成人に1日1カプセル摂取させた場合の糞便中のマイクロバイオータの組成、豊富さおよびα多様性の比較。
図1に示すように、グルテン含有量を制御した食事(グルテン除去、1日あたりグルテン50mg、1日あたりグルテン1g、または1日あたりグルテン10g)を背景に、実薬カプセルおよび偽薬カプセルを摂取した。「↑」は、偽薬群と比較してプロバイオティクス群において分類群の存在量が有意に増加したことを表し、「↓」はその逆である。アスタリスクで示したフィールドの例示的パラメータを、
図2に詳細に示す。
【0034】
図2に、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355を含むプロバイオティクス組成物の毎日の摂取が、腸内マイクロバイオータの組成を有益に調節することを示している。プロバイオティクス(n=33)または偽薬(n=11)で処置した個体間の観測されたOTUカウント数および豊富さの指標(Chao1、Shannon、Simpson、およびFisher)。偽薬群およびプロバイオティクス群の平均値の比較には、ペアワイズのウィルコクソンの符号順位検定を用いた(p<0.05)。
【0035】
表1に示されたデータに加え、バチルス(Bacillus)、ラクチカゼイバチルス(Lacticaseibacillus)、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)、リモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)、ラクチカゼイバチルス・パラカゼイ(Lacticaseibacillus paracasei)、リモシラクチバチルス・ロイテリ(Limosilactibacillus reuteri)の存在量は、偽薬と比較してプロバイオティクスを補給した被験者ですべて高かった。結論として、プロバイオティクスの摂取によって、グルテン関連障害やグルテン除去食を背景に損なわれると報告されている多くの微生物パラメータが改善された。
【0036】
糞便サンプルの分析は、投与されたプロバイオティクスの生存率、より一般的には消化管マイクロバイオータへのその影響を推定するために、培養依存的手法および培養非依存的手法で行った。培養依存的アプローチでは、選択培地を用いて、投与したプロバイオティクスの生存率を定量した。糞便サンプル(5g)と滅菌生理溶液45mlとの混合物をホモジナイズした。比較的選択性の高い培地は、以下のとおりであった:
- 推定的なラクトバチルス(Lactobacillus)向けのMRS寒天培地およびロゴサ寒天培地;
- 推定的なバチルス(Bacillus)向けのLBG寒天培地。
【0037】
RAPD-PCR解析および16S遺伝子の部分配列決定を行って、糞便から得た投与されたプロバイオティクス調製物の種/菌株を同定した。投与されたプロバイオティクスのゲノム配列に基づき、RT-PCR解析を用いて特異的プローブの設計を行い、糞便中のラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355の同定を確認した。培養非依存的分析では、Stool total RNA purification kit(Norgen Biotek Corp.、カナダオンタリオ州、米国)を用いて、約200mgの糞便サンプルのアリコートからRNAを抽出した。1%アガロース-0.5X TBEゲル、ならびにNanoDrop ND-1000 Spectrophotometerによる260nm、280nmおよび230nmでの分光光度測定を用いて、RNA抽出物の品質および豊富さを測定した。ランダムエキサマーおよびBioline社(Bioline USA Inc、米国マサチューセッツ州タナントン(Tanunton))製Tetro cDNA合成キットを製造業者の指示に従って用いて、抽出した全RNAの1μgのアリコートをcDNAに転写した。プライマー:フォワードプライマー28F:GAGTTTGATCNTGGCTCAGおよびリバースプライマー519R:GTNTTACNGCGGCKGCTGは、16S rRNA遺伝子のV1-V3領域(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)27-519位)に基づくものであり、これを糞便のマイクロバイオームの検出に使用した。cDNAシーケンス解析を、イルミナプラットフォームを用いて行った。生配列データに対して、QIIMEパイプラインバージョン1.4.0(http://qiime.sourceforge.net)を用いて、デフォルト設定でスクリーニング、トリミングおよびフィルター処理を行った。キメラは、B2C2(http://www.researchandtesting.com/B2C2.html)を用いて除外した。250bp未満の配列は除去した。キメラを除いた各サンプルのFASTA配列を、GenBank(http://ncbi.nlm.nih.gov)由来のデータベースに対してBLASTnを用いて評価した。配列をまず、USEARCHを用いて、同一性97%(相違3%)のOTU(Operational Taxonomic Unit、分類学的操作単位)クラスターにクラスタリングした。細菌の同一性を決定するために、まず、NCBIに由来する高品質の16S細菌配列データベースに対して、分散BLASTn.NETアルゴリズムを用いて配列を照会した。データベース配列は、Ribosomal Database Project(RDP, v10.28)が独自に記述した基準に基づいて高品質と判定された。α多様性(レアファクション、Good’s coverage、Chao1 richness、Pielou’s evenness、およびShannon diversityの指数)およびβ多様性の指標を計算し、QIIMEを用いてプロットした。種およびその他の関連する分類レベルでの最終データセットは、糞便サンプルと処理との間の組成分析用に別のワークシートにまとめられる。
【0038】
さらに、糞便サンプルを、[24]に記載のとおりに16S rRNA遺伝子の増幅および塩基配列決定に供した:微生物組成の塩基配列決定のため、すべての絶食サンプルをBiomes NGS GmbH(ドイツ、ヴィルダウ)により16S rRNA遺伝子の増幅および塩基配列決定により分析した。糞便から微生物ゲノムDNAをビーズビート法で抽出した。細菌および古細菌のプライマーペアで最も有望なものとして[25]、16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を増幅し、製造業者の指示(Illumina、米国カリフォルニア州サンディエゴ)に従い、Illumina MiSeqプラットフォームで2×300bpペアエンドプロトコルを用いて塩基配列を決定した。
【0039】
バイオインフォマティクス
生の微生物配列を、QIIME(Quantitative Insights Into Microbial Ecology)パイプラインを使用して処理した[26]。高品質のリードを、UCLUST[27]および「de novo」アプローチを用いて、類似度閾値97%でOTUs(Operational Taxonomic Units、分類学的操作単位)にビニングした。分類の割当を、Greengenesデータベースに対してRibosomal Database Project(RDP)classifierを用いて行った。キメラ配列の大部分を除去するため、すべてのシングルトンOTUを除去した。微生物のα多様性を、Chao1指数、Shannonエントロピー、Simpson指数、および系統学的多様性ホールツリーメトリックスを用いて分析し、β多様性を、Bray-Curtis非類似度指数に基づいて推定し、CLC Genomics Workbench version 20.0.4(QIAGEN)を用いて多次元尺度法または主座標分析(PCoA)としてプロットした。マン・ホイットニーのU検定を用いて、GraphPad Prism version 9.0.0(米国カリフォルニア州サンディエゴ)によりα多様性指数の平均差を分析し、平均値±SDとしてプロットした。p値<0.05を、統計的に有意とみなした。各群の微生物群集組成の差(β多様性)を、並び替え多変量分散分析(PERMANOVA)を用いて試験した。
【0040】
実施例3:腸内マイクロバイオーム活性に対するプロバイオティクス調製物の効果
実薬群(ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355)と偽薬群との間での、および食事からのグルテン摂取量に応じた腸内マイクロバイオームの機能的能力の変化を探るため、上記のように試験参加者の糞便の16S配列データを分析した。マーカー遺伝子の配列プロファイルを基に、PICRUSt 2[28]を用いて細菌群集の機能ポテンシャルを予測し、各食事のグルテン摂取レジームについて、実薬群および偽薬群の結果を比較した。表2に示すように、プロバイオティクスの摂取によって、グルテンの摂取量に関係なく、腸内マイクロバイオームのタンパク質分解能力および糖質代謝能力が向上した。
【0041】
【表2】
表2:プロバイオティクス組成物(ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33363、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)DSM 33364、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)DSM 33373、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)DSM 33374、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)DSM 33300、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33297、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)DSM 33355)カプセルおよび偽薬カプセルを1日1カプセル摂取させた健常成人の糞便の16S rRNAマイクロバイオームデータのPICRUSt2予測代謝機能の比較。
図1に示すように、グルテン含有量を制御した食事(グルテン除去、または1日あたりグルテン50mg、または1日あたりグルテン1g)を背景に、実薬カプセルおよび偽薬カプセルを摂取した。「↑」は、偽薬群と比較してプロバイオティクス群において予測される代謝機能の存在量が有意に増加したことを表し、「↓」はその逆である。
【0042】
【国際調査報告】