(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】縮合硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241018BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20241018BHJP
C08G 18/71 20060101ALI20241018BHJP
C08L 101/10 20060101ALI20241018BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241018BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20241018BHJP
C09J 201/10 20060101ALI20241018BHJP
C09D 201/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L101/00
C08G18/30 020
C08G18/71 080
C08L101/10
C08L75/04
C08K5/5415
C09J201/10
C09D201/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525269
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022047787
(87)【国際公開番号】W WO2023076316
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チャベス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マッキンストリー,エイミー,フア
(72)【発明者】
【氏名】プカン,モンジット
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CK021
4J002EX076
4J002FD206
4J002GH00
4J034CE01
4J034DA01
4J034DB04
4J034DK02
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB16
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034LA12
4J034RA07
4J038DG091
4J038DG131
4J038DG261
4J038GA15
4J038PA20
4J040EF131
4J040EF281
4J040GA31
4J040HD32
4J040JB04
4J040KA27
(57)【要約】
本願では湿気硬化性組成物が示され説明される。湿気硬化性組成物は、湿気硬化性樹脂と、シアノアルキルアルコキシシランから選択される水分捕捉剤を含んでいる。シアノアルキルアルコキシシランを湿気硬化性組成物に含有させることは、水分を効果的に捕捉し、そして組成物の硬化速度および粘度上昇を制御することが見出されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性組成物であって:
(a)水と反応性であるポリマーを含む湿気硬化性樹脂;および
(b)シアノアルキルアルコキシシランから選択された水分捕捉剤
を含む、湿気硬化性組成物。
【請求項2】
シアノアルキルアルコキシシランは式:
NC-R
1-Si(R
2)(R
3)(R
4)
のものであり、式中R
1はC1~C20の2価の炭化水素基から選択され;R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立してC1~C30の1価の炭化水素、ハライド、および-OR
5から選択され、ここでR
5は独立してC1~C30の1価の炭化水素から選択され、但しR
2、R
3、およびR
4の少なくとも1つは-OR
5から選択される、請求項1の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
R
1はC1~C20アルキレンから選択され;R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立してC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、およびC6~C30アリールから選択され;そしてR
5は独立してC1~C20アルキルから選択される、請求項2の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
R
1はC1~C20アルキレンから選択され;R
2、R
3、およびR
4のそれぞれはC1~C10アルキルから選択され、そしてR
5はC1~C10アルキルから選択される、請求項2の湿気硬化性組成物。
【請求項5】
R
1はC1~C4アルキレンから選択され、そしてR
2、R
3、およびR
4のそれぞれは-OR
5から選択され、ここでR
5は独立してC1~C4アルキルから選択される、請求項2の湿気硬化性組成物。
【請求項6】
シアノアルキルアルコキシシランは、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリプロポキシシラン、2-シアノエチルジメトキシメチルシラン、2-シアノエチルジメトキシエチルシラン、2-シアノエチルジエトキシメチルシラン、2-シアノエチルジエトキシエチルシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリプロポキシシラン、3-シアノプロピルジメトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジメトキシエチルシラン、3-シアノジエトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジエトキシエチルシラン、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される、請求項1の湿気硬化性組成物。
【請求項7】
シアノアルキルシロキサンは、湿気硬化性樹脂(a)の合計重量に基づいて約0.1重量%から約20重量%の量で存在する、請求項1から6のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項8】
シアノアルキルシランは、湿気硬化性樹脂(a)の合計重量に基づいて約0.5重量%から約10重量%の量で存在する、請求項1から7のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項9】
湿気硬化性樹脂は加水分解性シリル基を含む、請求項1から8のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項10】
湿気硬化性樹脂(a)は、シリル化ポリオール;シリル化ポリエーテル;シリル化ポリウレタン;ビニルシラン、アリルシラン、メタリルシラン、アクリロキシアルキルシラン、メタクリロキシアルキルシランから選ばれるエチレン性不飽和シランと、オレフィン性炭化水素、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸から選ばれるエチレン性不飽和モノマー、および/またはエチレン性不飽和モノマーの無水物、エチレン性不飽和を有するオリゴマーおよび/またはポリマーの共重合から導かれるシラン含有コポリマー;これらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される、請求項1から9のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項11】
湿気硬化性樹脂(a)はシリル化ポリウレタンから選択される、請求項2から8のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項12】
シリル化ポリウレタンは式:
R
z-[OC(O)NH-R
6Si(R
7)
x(OR
8)
3-x]
y
のポリマーから選択され、式中R
zは有機ポリマーの部分であり、R
6は12までの炭素原子のアルキレン基であって任意選択的に1つまたはより多くのヘテロ原子を含み、R
7のそれぞれは同一または異なる8までの炭素原子のアルキル基またはアリール基であり、R
8のそれぞれは同一または異なる6までの炭素原子のアルキル基であり、xは0、1または2、そしてyは1から6である、請求項11の湿気硬化性組成物。
【請求項13】
R
1はC1~C20の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基から選択され;R
2、R
3、およびR
4はそれぞれ独立してC1~C10アルキルから選択され;ここでR
5はC1~C10アルキルから選択される、請求項11の湿気硬化性組成物。
【請求項14】
R
2、R
3、およびR
4のそれぞれはC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、C6~C30アリール、または-OR
5から選択される、請求項11の湿気硬化性組成物。
【請求項15】
R
1はC1~C20の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基から選択され、そしてR
2、R
3、およびR
4のそれぞれは-OR
5から選択され、ここでR
5は独立してC1~C4アルキルから選択される、請求項11の湿気硬化性組成物。
【請求項16】
組成物はさらに、顔料、フィラー、硬化触媒、染料、可塑剤、増粘剤、カップリング剤、増量剤、溶媒、湿潤剤、粘着付与剤、架橋剤、熱可塑性ポリマー、接着促進剤、UV安定剤、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される添加剤を含む、請求項1から15のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項17】
組成物はさらに、硬化条件の下で湿気硬化性樹脂(a)と水との反応を触媒する触媒を含む、請求項1から16のいずれかの湿気硬化性組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかの湿気硬化性組成物と水との接触によって生成される硬化組成物。
【請求項19】
請求項1から17のいずれかの湿気硬化性樹脂組成物を含有する、湿気硬化性シーラント、接着剤またはコーティング。
【請求項20】
請求項1から17のいずれかの湿気硬化性組成物を水と接触させることを含む、硬化組成物の形成方法。
【請求項21】
請求項1から17のいずれかの湿気硬化性組成物を基材の表面に塗布することを含む、基材の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関し、特に縮合硬化性組成物に関する。この組成物は、湿気に曝露された場合の組成物の安定性を制御するための水分捕捉剤を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
シランがグラフト化したポリマー、樹脂、エラストマー、接着剤、シーラント、コーティングその他は多くの場合、これらの材料を安定化させるために水分捕捉剤を用いている。特に、水分捕捉剤は典型的には、シラングラフト化材料よりも水に対して高い反応性を有する成分をもたらすために含有されて組成物を安定化させ、シラングラフト化材料が早く反応し過ぎるのを防止し、また使用前に水と反応するのを防止する。これによって材料は長い貯蔵寿命を有し、より長い可使時間を有することが可能となり、および/または材料の良好な処理および適用を行うことが可能になる。湿気硬化性ポリマー組成物においては、例えばビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびプロピルトリメトキシシランのようなアルコキシシランが、水分捕捉剤として使用されてきている。これらの物質は一般に水分捕捉剤として適しているものの、特定の用途については必要とされる所望レベルの性能をもたらさない場合があり、またこれらの物質の幾つかのものは安全性に関する懸念(毒性、可燃性、その他)を有する場合があり、また将来的にこれらの使用を制限する規制の対象になっている。例えば、ビニルトリメトキシシランは幾つかの国において皮膚感作物質として潜在的な規制対象であり、湿気硬化性組成物におけるこうした物質の使用はより制限されたものとなりうる。
【発明の概要】
【0003】
以下では幾つかの態様の基本的な理解をもたらすための、本開示の概略を提示する。この概略は主要なまたは重要な要素を特定することを意図したものではなく、また実施形態や特許請求の範囲に対する何らかの限定を規定するものでもない。さらにまた、この概略は幾つかの態様の単純化された概要を提示するものであってよく、それらは本開示の他の部分においてより詳細に記述されてよい。
【0004】
1つの態様において提供されるのは、加水分解性シリル基を含むポリマーのような、水と反応性のポリマーと、そしてシアノアルキルアルコキシシランから選ばれる水分捕捉剤とを含む、湿気硬化性組成物である。本発明者は驚くべきことに、シアノアルキルアルコキシシランが水分捕捉剤材料として機能しうることを見出した。こうした材料はまた、比較的低い毒性および可燃性を示し、そのためこうした材料は多くの用途において使用するのに適している。
【0005】
別の態様において提供されるのは、湿気硬化性組成物を水と接触させることによって生成される硬化組成物である。
【0006】
さらに別の態様において提供されるのは、この湿気硬化性樹脂を含有する湿気硬化性シーラント、接着剤、またはコーティングである。
【0007】
なおさらに別の実施形態において提供されるのは、本湿気硬化性組成物を基材表面に塗布することを含む、基材の処理方法である。
【0008】
1つの態様において提供されるのは:(a)水と反応性のポリマーを含む湿気硬化性樹脂;および(b)シアノアルキルアルコキシシランから選択される水分捕捉剤を含む、湿気硬化性組成物である。
【0009】
1つの実施形態において、シアノアルキルアルコキシシランは式:
NC-R1-Si(R2)(R3)(R4)
のものであり、式中R1はC1~C20の2価の炭化水素基から選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C30の1価の炭化水素、ハライド、および-OR5から選択され、ここでR5は独立してC1~C30の1価の炭化水素から選択されるが、但しR2、R3、およびR4の少なくとも1つは-OR5から選択される。
【0010】
1つの実施形態において、R1はC1~C20アルキレンから選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、およびC6~C30アリールから選択され;そしてR5は独立してC1~C20アルキルから選択される。
【0011】
1つの実施形態において、R1はC1~C20アルキレンから選択され;R2、R3、およびR4のそれぞれはC1~C10アルキルから選択され、そしてR5はC1~C10アルキルから選択される。
【0012】
1つの実施形態において、R1はC1~C4アルキレンから選択され、そしてR2、R3、およびR4のそれぞれは-OR5から選択され、ここでR5は独立してC1~C4アルキルから選択される。
【0013】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、シアノアルキルアルコキシシランは、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリプロポキシシラン、2-シアノエチルジメトキシメチルシラン、2-シアノエチルジメトキシエチルシラン、2-シアノエチルジエトキシメチルシラン、2-シアノエチルジエトキシエチルシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリプロポキシシラン、3-シアノプロピルジメトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジメトキシエチルシラン、3-シアノジエトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジエトキシエチルシラン、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される。
【0014】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、シアノアルキルシロキサンは湿気硬化性樹脂(a)の合計重量に基づいて約0.1重量%から約20重量%の量で存在する。
【0015】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、シアノアルキルシランは湿気硬化性樹脂(a)の合計重量に基づいて約0.5重量%から約10重量%の量で存在する。
【0016】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、湿気硬化性樹脂は加水分解性シリル基を含んでいる。
【0017】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、湿気硬化性樹脂(a)は、シリル化ポリオール;シリル化ポリエーテル;シリル化ポリウレタン;ビニルシラン、アリルシラン、メタリルシラン、アクリロキシアルキルシラン、メタクリロキシアルキルシランから選ばれるエチレン性不飽和シランと、オレフィン性炭化水素、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸から選ばれるエチレン性不飽和モノマー、および/またはエチレン性不飽和モノマーの無水物、エチレン性不飽和を有するオリゴマーおよび/またはポリマーの共重合から導かれるシラン含有コポリマー;これらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される。
【0018】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、湿気硬化性樹脂(a)はシリル化ポリウレタンから選択される。
【0019】
1つの実施形態において、シリル化ポリウレタンは式:
Rz-[OC(O)NH-R6Si(R7)x(OR8)3-x]y
のポリマーから選択され、式中Rzは有機ポリマーの部分であり、R6は12までの炭素原子のアルキレン基であって任意選択的に1つまたはより多くのヘテロ原子を含み、R7のそれぞれは同一または異なる8までの炭素原子のアルキル基またはアリール基であり、R8のそれぞれは同一または異なる6までの炭素原子のアルキル基であり、xは0、1または2、そしてyは1から6である。
【0020】
1つの実施形態において、R1はC1~C20の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基から選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C10アルキルから選択され;ここでR5はC1~C10アルキルから選択される。
【0021】
1つの実施形態において、R2、R3、およびR4のそれぞれはC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、C6~C30アリール、または-OR5から選択される。
【0022】
1つの実施形態において、R1はC1~C20の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基から選択され、そしてR2、R3、およびR4のそれぞれは-OR5から選択され、ここでR5は独立してC1~C4アルキルから選択される。
【0023】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、組成物はさらに、顔料、フィラー、硬化触媒、染料、可塑剤、増粘剤、カップリング剤、増量剤、溶媒、湿潤剤、粘着付与剤、架橋剤、熱可塑性ポリマー、接着促進剤、UV安定剤、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせから選択される添加剤を含んでいる。
【0024】
上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物の1つの実施形態において、組成物はさらに硬化条件の下で湿気硬化性樹脂(a)と水との反応を触媒する触媒を含んでいる。
【0025】
別の態様において提供されるのは、上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物と水との接触によって生成される硬化組成物である。
【0026】
さらに別の態様において提供されるのは、上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性樹脂組成物を含有する、湿気硬化性シーラント、接着剤またはコーティングである。
【0027】
なおさらに別の態様において提供されるのは、上述の実施形態のいずれかによる組成物を水と接触させることを含む、硬化組成物の形成方法である。
【0028】
なおさらに別の態様において提供されるのは、上述の実施形態のいずれかによる湿気硬化性組成物を基材の表面に塗布することを含む、基材の処理方法である。
【0029】
以下の説明および図面は種々の例示的な態様を開示している。幾つかの改善点および新規な態様は明示的に特定されていてよいが、その他は説明および図面から明らかなものであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に例示的な実施形態を参照すると、その例は以下の詳細な説明に記載されている。理解されるように、他の実施形態も利用してよく、構造的および機能的な変更も行ってよい。さらにまた、種々の実施形態の特徴を組み合わせまたは変更してよい。よって、以下の記載は単に例示として提示されており、例示した実施形態に対して行ってよい種々の代替や修正をいかなる仕方でも限定するものではない。本開示においては、幾つもの具体的な詳細事項が、開示された主題の完全な理解をもたらす。本開示の態様は、本願その他に記載されたすべての側面を必ずしも含まない他の実施形態で実施されてよいことが理解されねばならない。
【0031】
本願で使用するところでは、「例」および「例示」という用語は、実例または説明を意味している。「例」および「例示」という用語は、必須のまたは好ましい態様または実施形態を示すものではない。「または」という用語は、文脈が異なる示唆をしていない限り、排他的ではなく包括的であることを意図したものである。例えば、「AはBまたはCを用いる」という言い方は、任意の包括的な置き換え(例えば、AはBを用いる;AはCを用いる;またはAはBおよびCの両者を用いる)を含んでいる。別の事項として、「ひとつの」および「ある」という冠詞は一般に、文脈が異なる示唆をしていない限り、「1つのまたはより多く」を意味することが意図されている。
【0032】
本願で使用するところでは、用語「ポリマー」および「樹脂」または「ポリマー樹脂」は、相互に互換的に使用される。
【0033】
それぞれの成分の範囲についての値は組み合わせて、新たな特定されていない範囲を形成することができる。
【0034】
提供されるのは、(a)湿気硬化性ポリマーおよび(b)水分捕捉剤を含む組成物であり、ここで水分捕捉剤は(シアノアルキル)アルコキシシランから選択される。この(シアノアルキル)アルコキシシランは、優れた水分捕捉剤であることが見出されており、従来のアルコキシシランのような水分捕捉剤と比較したときに匹敵する、またはより良好な水分捕捉作用をもたらす。水分捕捉剤の有効性の1つの指標は、湿気に曝露された場合の組成物の粘度にある。湿気硬化性組成物における湿気への曝露は架橋をもたらし、その物質の粘度を増大させる。適切な水分捕捉剤は、粘度の増大を減速させる効果を有している。
【0035】
水分捕捉剤(b)は、シアノアルキルアルコキシシランから選択される。1つの実施形態において、シアノアルキルアルコキシシランは式:
NC-R1-Si(R2)(R3)(R4)
の化合物から選択され、ここでR1はC1~C20の2価の炭化水素基から選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C30の1価の炭化水素、ハライド、および-OR5から選択され、ここでR5はC1~C20の1価の炭化水素から選択されるが、但しR2、R3、およびR4の少なくとも1つはハライドまたは-OR5から選択される。
【0036】
2価の炭化水素および1価の炭化水素は、直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素から選択することができる。分岐鎖の炭化水素は一般に、3つまたはより多くの炭素原子を含んでいる。環状の炭化水素は一般に、4つまたはより多くの炭素原子を含んでいる。環状の炭化水素はまた、1つまたはより多くの不飽和C-C結合を含んでいてよく、そして実施形態においては、1つまたはより多くの芳香族を含んでいてよい。1つの実施形態において、1価の炭化水素はアルキル、シクロアルキル、およびアリールから選択される。1つの実施形態において、2価の炭化水素はアルキレンから選択される。アルキレンはシクロアルキレンを含んでいてよい。ハライドは、クロライド、ブロマイド、またはイオダイドから選択することができる。
【0037】
1つの実施形態において、R1はC1~C20アルキレンから選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、C6~C30アリールから選択され;そしてR5はC1~C20アルキルから選択される。
【0038】
シクロアルキルは1つまたはより多くのシクロアルキル環を備えた基を含んでいてよく、これらは結合、連結基によって分離され、または融合されていてよく、任意選択的に環に結合された1つまたはより多くの基(例えば、アルキル、アルコールその他)を含んでいる。アリール基は1つまたはより多くの芳香環を備えた基を含み、ここで1つよりも多い環を備えた基は、結合、連結基によって結合され、または融合されていてよく、任意選択的に環に結合された1つまたはより多くの基(例えば、アルキル、アルコールその他)を含んでいることができる。C6~C30のアリール基は、例えば、C7~C30アリールアルキル基およびC7~C30アルキルアリール基を含むことができる。
【0039】
1つの実施形態において、R1はC1~C10アルキレン、C2-C8アルキレン、またはC3-C6アルキレンから選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれ独立してC1~C10アルキル、C3~C8アルキル、C4~C6アルキル、および-OR5から選択され、ここでR5はC1~C10アルキル、C2~C8アルキル、またはC3~C6アルキルから選択される。1つの実施形態において、R1はC2アルキレンから選択され;R2、R3、およびR4はそれぞれC1アルキルであり;そしてR5はC1アルキルである。
【0040】
1つの実施形態において、R1はC1~C20アルキレンから選択され、そしてR2、R3、およびR4のそれぞれは-OR5から選択され、ここでR5は独立してC1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、およびC6~C30アリールから選択される。1つの実施形態において、R1はC2~C4アルキレンから選択され、そしてR2、R3、およびR4のそれぞれは-OR5から選択され、ここでR5は独立してC2~C4アルキルから選択される。
【0041】
適切なシアノアルキルアルコキシシランの例には、限定するものではないが、シアノメチルトリメトキシシラン、シアノメチルトリエトキシシラン、シアノメチルトリプロポキシシラン、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリプロポキシシラン、2-シアノエチルジメトキシメチルシラン、2-シアノエチルジメトキシエチルシラン、2-シアノエチルジエトキシメチルシラン、2-シアノエチルジエトキシエチルシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリプロポキシシラン、3-シアノプロピルジメトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジメトキシエチルシラン、3-シアノプロピルジエトキシメチルシラン、3-シアノプロピルジエトキシエチルシラン、およびその他、またはこれらの2つまたはより多くの組み合わせが含まれる。
【0042】
水分捕捉剤は組成物中に、ポリマー(a)の合計重量に基づいて、約0.2重量%から約2重量%、約0.5重量%から約1.75重量%、約0.75重量%から約1.5重量%、または約1重量%から約1.25重量%の量で存在する。
【0043】
湿気硬化性ポリマー(a)は特に限定されず、特定の目的または意図する用途に対して所望に応じて選択することができる。湿気硬化性ポリマーは、湿気に曝露された場合に加水分解と続いての縮合を行って、特定の目的または意図する用途に対して適切な性質を有する樹脂をもたらすポリマーである。一般に、湿気硬化性ポリマーは、接着剤、シーラント、コーティング、およびその他に使用するのに適した材料を形成するのに適している。
【0044】
このポリマーの基本構造、繰り返し単位、または主鎖は一般に限定されたものではなく、特定の目的または意図する用途に対して所望に応じて選択することができる。1つの実施形態においてこのポリマーは、湿気に曝露された場合にポリマーを反応性とする加水分解性官能基を含む、ポリエポキシド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリフルオロアルケン、ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびその他から選択される。
【0045】
1つの実施形態において、湿気硬化性ポリマーは加水分解性シリル基を含むポリマー樹脂である。これらはシリル化ポリマーとも呼ばれてよい。適切なシリル化ポリマーの例には、限定するものではないが、シリル化ポリオール、シリル化ポリエーテル、シリル化ポリウレタン樹脂、並びにビニルシラン、アリルシランおよびメタリルシラン、アクリロキシアルキルシラン、メタクリロキシアルキルシランのような1つまたはより多くのエチレン性不飽和シランと、オレフィン性炭化水素、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのような1つまたはより多くの他のエチレン性不飽和モノマー、エチレン性不飽和ジカルボン酸および/またはエチレン性不飽和を有するそれらの無水物、オリゴマーおよび/またはポリマーとの共重合から導かれるシラン含有コポリマーが含まれる。1つの実施形態において、湿気硬化性ポリマーはシリル化ポリウレタン樹脂(SPUR)から選択される。湿気硬化性ポリウレタンは特に限定されたものではなく、特定の目的または意図する用途に対して所望に応じて選択することができる。
【0046】
シリル化樹脂については、この樹脂は適切なシラン官能性材料を前駆体樹脂と反応させることによって形成することができる。こうした適切な前駆体樹脂は一般的に知られるところであり、または当業者によって決定可能である。1つの実施形態において、適切な前駆体樹脂には、(i)ポリエーテルポリオール、(ii)ポリエステルポリオール、(iii)ヒドロキシ末端ポリブタジエン、(iv)これらのいずれかから誘導されるヒドロキシ末端およびイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー、(v)ポリアミンから誘導されるイソシアネート末端およぴアミン末端ポリウレタンポリ尿素(ポリ(ウレタン尿素)またはポリウレタン尿素)プレポリマーおよびポリ尿素プレポリマー、並びに(vi)ヒドリドシランとヒドロシリル化を行うことのできるオレフィン性不飽和ポリマー、例えば末端にオレフィン性不飽和を有するポリオレフィンおよびポリエーテルが含まれる。この樹脂は、これらのおよびこれらに類似した前駆体樹脂を任意の既知の仕方で、または将来発見される仕方でシリル化することによって得ることができる。シリル化樹脂を得るための幾つかの既存のプロセスには、例えば、イソシアネートシランとの反応によるヒドロキシル末端樹脂のシリル化、メルカプトまたはアミノ官能性のようなイソシアネートに対して反応性である官能性を有するシランとのイソシアネート末端樹脂のシリル化、およびヒドロシリル化反応条件下でのヒドリドシラン(ヒドロシラン)との反応によるオレフィン性不飽和樹脂のシリル化が含まれる。
【0047】
1つの実施形態において、湿気硬化性樹脂は、限定するものではないが、米国特許第5,990,257号に記載されたような、またそこに記載のいずれかの方法によって作成することができるシリル化SPURであり、この米国特許の全内容は参照によってすべてを本願に取り入れる。
【0048】
イソシアネート末端PURプレポリマーは、1つまたはより多くのポリオール、有利にはジオールを、1つまたはより多くのポリイソシアネート、有利にはジイソシアネートと、得られるプレポリマーがイソシアネートで終端するような割合で反応させることによって得ることができる。ジオールをジイソシアネートと反応させる場合には、モル過剰のジイソシアネートが用いられる。
【0049】
イソシアネート末端PURプレポリマーの調製のために利用することのできるポリオールに含まれるものは、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシル末端ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとε-カプロラクトンとの反応から得られるもののようなポリエーテルエステルポリオール、ヒドロキシル末端ポリカプロラクトンとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのような1つまたはより多くのアルキレンオキシドとの反応から得られるもののようなポリエステルエーテルポリオール、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、およびその他である。
【0050】
イソシアネート末端PURプレポリマーの調製のために利用することのできる具体的な適切なポリオールに含まれるものは、ポリ(オキシアルキレン)エーテルジオール(すなわち、ポリエーテルジオール)、特に、ポリ(オキシエチレン)エーテルジオール、ポリ(オキシプロピレン)エーテルジオールおよびポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)エーテルジオール、ポリ(オキシアルキレン)エーテルトリオール、ポリ(テトラメチレン)エーテルグリコール、ポリアセタール、ポリヒドロキシポリアクリレート、ポリヒドロキシポリエステルアミド、ポリヒドロキシポリチオエーテル、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール、およびその他である。本発明の1つの実施形態において、イソシアネート末端PURプレポリマーの製造に用いられるポリオールは、当量重量が約500から約25,000のポリ(オキシエチレン)エーテルジオールである。本発明の別の実施形態において、イソシアネート末端PURプレポリマーの製造に用いられるポリオールは、当量重量が約1,000から約20,000のポリ(オキシプロピレン)エーテルジオールである。種々の構造、分子量、および/または官能性のポリオールの混合物もまた使用することができる。
【0051】
ポリエーテルポリオールは、約8までの官能性を有することができるが、しかし有利には2から4の官能性を有し、そしてより有利には2の官能性(すなわち、ジオール)を有する。特に適切なのは、複金属シアン化物(DMC)触媒、アルカリ金属水酸化物触媒、またはアルカリ金属アルコキシド触媒の存在下で調製されたポリエーテルポリオールである;例えば、米国特許第3,829,505号、第3,941,849号、第4,242,490号、第4,335,188号、第4,687,851号、第4,985,491号、第5,096,993号、第5,100,997号、第5,106,874号、第5,116,931号、第5,136,010号、第5,185,420号、および第5,266,681号を参照。これらの特許のそれぞれの全内容は、参照によってすべてを本願に取り入れる。1つの実施形態において、ポリエーテルポリオールは好ましくは約1,000から約25,000、より好ましくは約2,000から約20,000、そしてよりさらに好ましくは約4,000から約18,000の数平均分子量を有する。イソシアネート末端PURプレポリマーを作成するのに適した商業的に入手可能なジオールの例には、ARCOL R-1819(数平均分子量8,000)、E-2204(数平均分子量4,000)、およびARCOL E-2211(数平均分子量11,000)が含まれる。
【0052】
数多くのポリイソシアネートのいずれか、有利にはジイソシアネートおよびその混合物を使用して、イソシアネート末端PURプレポリマーをもたらすことができる。1つの実施形態において、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(「PMDI」)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、液状のカルボジイミド変性MDIおよびその誘導体、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、特に2,6-TDI異性体、並びに技術分野において十分に確立されている種々の他の脂肪族および芳香族ポリイソシアネート、およびその組み合わせであることができる。
【0053】
上述したイソシアネート末端PURプレポリマーと反応するためのシリル化反応物質は、イソシアネートと反応性の官能性、および少なくとも1つの容易に加水分解性でその後架橋性の基、例えばアルコキシを含んでいる。特に有用なシリル化反応物質は、一般式:
X-R6-Si(R7)x(OR8)3-x
のシランであり、式中Xはイソシアネートに対して反応性の活性水素含有基、例えば-SHまたは-NHR9であり、このR9はH、8までの炭素原子の1価の炭化水素基、または-R10-Si(R11)y(OR12)3-yであり、R6およびR10のそれぞれは同一または異なる12までの炭素原子の2価の炭化水素基であって任意選択的に1つまたはより多くのヘテロ原子を含み、R7およびR11のそれぞれは同一または異なる8までの炭素原子の1価の炭化水素基であり、R8およびR12のそれぞれは同一または異なる6までの炭素原子のアルキル基であり、そしてxおよびyのそれぞれは独立して0、1または2である。
【0054】
樹脂をシリル化するために反応物質として使用することのできるシランの例には、限定するものではないが、メルカプトシラン、例えば2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリsec-ブトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリ-t-ブトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルトリオクトキシシラン、2-メルカプトエチルトリ-2′-エチルヘキソキシシラン、2-メルカプトエチルジメトキシエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメトキシエトキシプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルシクロヘキソキシジメチルシラン、4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプト-3-メチルプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプト-3-メチルプロピル-トリプロポキシシラン、3-メルカプト-3-エチルプロピル-ジメトキシメチルシラン、3-メルカプト-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプト-2-メチルプロピルジメトキシフェニルシラン、3-メルカプトシクロヘキシル-トリメトキシシラン、12-メルカプトドデシルトリメトキシシラン、12-メルカプトドデシル-トリエトキシシラン、18-メルカプトオクタデシルトリメトキシシラン、18-メルカプトオクタデシルメトキシジメチルシラン、2-メルカプト-2-メチルエチル-トリプロポキシシラン、2-メルカプト-2-メチルエチル-トリオクトキシシラン、2-メルカプトフェニルトリメトキシシラン、2-メルカプトフェニルトリエトキシシラン、2-メルカプトトリルトリメトキシシラン、2-メルカプトトリルトリエトキシシラン、1-メルカプトメチルトリルトリメトキシシラン、1-メルカプトメチルトリルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルフェニルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルフェニルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルフェニルトリメトキシシラン、および3-メルカプトプロピルフェニルトリエトキシシラン、並びにアミノシラン、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、N-メチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリエトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、3-(N-メチル-2-アミノ-1-メチル-1-エトキシ)-プロピルトリメトキシシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチル-ブチルジメトキシメチルシラン、N-エチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシ-シラン、N-(シクロヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシ-シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス-(3-トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)アミン、およびN-(3’-トリメトキシシリルプロピル)-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシランが含まれる。
【0055】
イソシアネート末端PURプレポリマーの調製のためには、通常は触媒が使用される。PURの調製には、一般的には縮合触媒が用いられる。これらの触媒はまた、湿気硬化性組成物のSPUR樹脂成分の硬化(加水分解とその後の架橋)を触媒してよい。適切な縮合触媒には、限定するものではないが、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズアセテートのようなジアルキルスズジカルボキシレート、3級アミン、オクタン酸第一スズおよび酢酸第一スズのようなカルボン酸のスズ塩、およびその他が含まれる。本発明の1つの実施形態においては、PURプレポリマーの製造にはジブチルスズジラウレート触媒が使用される。他の有用な触媒には、キングインダストリー社から市販されているK-KAT XC6212、K-KAT XC-A209およびK-KAT 348のようなジルコニウム含有錯体およびビスマス含有錯体、ドルフケタル社から市販されているTYZOR登録商標タイプおよびケンリッチペトロケミカル社から市販されているKRタイプのようなアルミニウムキレート、並びに他の有機金属触媒、例えば、Zn、Co、Ni、Fe、およびその他のような金属を含有するものが含まれる。
【0056】
別の実施形態において、湿気硬化性SPUR樹脂は、ヒドロキシル末端PURプレポリマーから得ることができる。湿気硬化性SPUR樹脂は、上述したように、ヒドロキシル末端PURプレポリマーをイソシアネートシランと反応させることによって調製することができる。ヒドロキシル末端PURプレポリマーは、実質的に同じ材料、すなわちポリオール、ポリイソシアネートおよび任意選択的に触媒(好ましくは縮合触媒)を用いて、イソシアネート末端PURプレポリマーの調製について上記に記載したのと実質的に同じ仕方で得ることができる。これらの反応における1つの主要な相違は、ポリオールとポリイソシアネートが結果的に、得られるプレポリマーにおいてヒドロキシル末端となるような比率で用いられることである。かくして例えば、ジオールとジイソシアネートの場合、前者がモル過剰で使用されて、それによりヒドロキシル末端ヒドロキシル末端PURプレポリマーが得られる結果となる。
【0057】
ヒドロキシル末端SPUR樹脂のための有用なシリル化反応物質は、イソシアネート末端および容易に加水分解可能な官能性、例えば1から3のアルコキシ基を含むものである。適切なシリル化反応物質は、一般式:
OCN-R6-Si(R7)x(OR8)3-x
のイソシアネートシランであり、ここでR6は任意選択的に1つまたはより多くのヘテロ原子を含む12までの炭素原子のアルキレン基であり、R7のそれぞれは8までの炭素原子の同一または異なるアルキルまたはアリール基であり、R8のそれぞれは6までの炭素原子の同一または異なるアルキル基であり、xは0、1または2である。1つの実施形態において、R6は1から4の炭素原子を有し、R8のそれぞれは同一または異なるメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピル基であり、そしてxは0である。
【0058】
ヒドロキシル末端PURプレポリマーと反応して湿気硬化性SPUR樹脂をもたらすために使用することのできる具体的なイソシアネートシランには、限定するものではないが、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートイソプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート-n-ブチルトリメトキシシラン、イソシアネート-t-ブチルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートイソプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート-n-ブチルトリエトキシシラン、イソシアネート-t-ブチルトリエトキシシラン、およびその他が含まれる。
【0059】
このポリマーは、種々の実施形態において、一般式:
Rz-[OC(O)NH-R6Si(R7)x(OR8)3-x]y
を有していてよく、式中Rzは有機ポリマー部分であり、R6、R7、およびR8は上記した通りであり、そしてyは1から6である。1つの実施形態において、有機ポリマー部分は少なくとも1つのウレタン基を含むポリマー部分である。
【0060】
実際的な用途については、湿気硬化性組成物は任意選択的に、顔料、フィラー、硬化触媒、染料、可塑剤、増粘剤、カップリング剤、増量剤、揮発性有機溶媒、湿潤剤、粘着付与剤、架橋剤、熱可塑性ポリマー、およびUV安定剤のような添加剤を含んでいてよい。これらの添加剤は、特定の目的または意図する用途に対して有用であるとして、技術分野における当業者に理解されている任意の適切な量で使用されてよい。
【0061】
湿気硬化性組成物の触媒(c)は、湿気に曝露された場合に生ずる湿気硬化性ポリマー(a)と反応変性剤(b)との間の反応を促進するのに効果的な、任意の触媒であることができる。適切な硬化触媒には、限定するものではないが、有機金属触媒、アミン触媒、およびその他が含まれる。好ましくは触媒は、有機スズ化合物、ジルコニウム錯体、アルミニウムキレート、チタンキレート、有機亜鉛、有機コバルト、有機鉄、有機ニッケル、および有機ビスマス、およびこれらの混合物からなる群より選択される。アミン触媒は、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アミノシラン、およびこれらの混合物からなる群より選択される。触媒は、有機金属触媒とアミン触媒の混合物であることができる。
【0062】
触媒の代表的な例には、限定するものではないが、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、オクタン酸第一スズ、酢酸第一スズ、酸化第一スズ、モルホリン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリ-イソプロピルアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、およびピペラジンが含まれる。他の有用な触媒には、キングインダストリー社から市販されているK-KATTMXC6212、K-KATTM5218およびK-KATTM348のような、ジルコニウム含有、アルミニウム含有、およびビスマス含有錯体、ドルフケタル社から市販されているTYZOR登録商標タイプおよびケンリッチペトロケミカル社から市販されているKRTMタイプのようなチタンキレート、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から市販されているNIAXTMA-99アミンのようなアミン、およびその他が含まれる。
【0063】
触媒は湿気硬化性組成物中に、成分(a)、(b)および(c)の合計重量に基づいて約0.05重量%から約5重量%の量、好ましくは成分(a)、(b)および(c)の合計重量に基づいて約0.1重量%から約3重量%の量、そして最も好ましくは成分(a)、(b)および(c)の合計重量に基づいて約0.5重量%から約2重量%の量で存在してよい。
【0064】
本願の湿気硬化性樹脂組成物に対して適切である典型的なフィラーには、限定するものではないが、例えば、ステアリン酸塩またはステアリン酸のような化合物で処理された、粉砕、沈降、およびコロイド状の炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル、並びに疎水化シリカおよびシリカゲルのような補強用シリカ;破砕および粉砕石英、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、カーボンブラックおよびグラファイト、またはカオリン、ベントナイトまたはモンモリロナイトのようなクレイ、タルク、マイカ、およびその他が含まれる。本発明の1つの実施形態において、フィラーの量は組成物の合計の0.1重量%から約90重量%である。本発明のさらに別の実施形態において、フィラーの量は組成物の合計の約5重量%から約60重量%である。本発明のさらに別の実施形態において、フィラーの量は組成物の合計の約10重量%から約40重量%である。フィラーは単一の種類であってよく、または2つまたはより多くの種類の混合物であってもよい。
【0065】
本発明の湿気硬化性樹脂組成物に通例用いられる可塑剤はまた、本発明においてフィラーの性質を変性して高レベルでのフィラーの使用を容易にするために使用することもできる。例示的な可塑剤には、フタル酸エステル、ジプロピレンおよびジエチレングリコールジベンゾエート、アルキルスルホネートフェノール、アルキルフェナントレン、アルキル/ジアリールホスフェートおよびこれらの混合物並びにその他が含まれる。本発明の湿気硬化性樹脂組成物は、種々のチキソトロープ剤またはノンサグ剤を含むことができる。種々のひまし硬化油、ヒュームドシリカ、処理済クレイ、およびポリアミドが、この種類の添加剤の典型例である。この発明の湿気硬化性樹脂組成物に取り入れることができる安定剤には、例えば、ヒンダードアミンおよびジアルキルヒドロキシアミンが含まれる。本発明の湿気硬化性組成物には、接着促進剤、例えばアルコキシシラン接着促進剤が有用である。
【0066】
本願の湿気硬化性組成物に適している可塑剤の例には、限定するものではないが、フタル酸エステル、ジプロピレンおよびジエチレングリコールジベンゾエート、並びにこれらの混合物、エポキシ化大豆油、およびその他が含まれる。ジオクチルフタレートおよびジイソデシルフタレートは、エクソンケミカル社から商品名JayflexDOPおよびJayFlexDIDPの下に商業的に入手可能である。ジベンゾエートは、ベルシコールケミカル社からBenzoflex9-88、Benzoflex9-88SG、Benzoflex50、およびBenzoflex400として入手可能である。エポキシ化大豆油はヒュートンケミカル社からFlexol EPOとして入手可能である。可塑剤は湿気硬化性組成物中に、全組成物の100重量部当たり0から50重量部、そして好ましくは5から15重量部のレベルで存在することができる。
【0067】
有用な溶媒には、限定するものではないが、芳香族および脂肪族のエステルおよびケトンが含まれる。1つの実施形態において、溶媒は本発明の湿気硬化性組成物の合計100重量部当たり約0.1から約20重量部、約0.5から約5重量部、または約1から約3重量部の量で存在する。
【0068】
1つの実施形態において、組成物はさらに接着促進剤を含んでいてよい。1つの実施形態において、接着促進剤はn-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよび1,3,5-トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの組み合わせブレンドであってよい。本発明において有用な他の接着促進剤には、限定するものではないが、n-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、β-シアノエチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-アミノ-3,3,-ジメチルブチルトリメトキシシラン、およびn-エチル-3-トリメトキシシリル-2-メチルプロパンアミン、およびその他が含まれる。
【0069】
接着促進剤は組成物に対して、約0.1重量%から約20重量%の範囲内で添加することができる。本発明の1つの実施形態において、接着促進剤は組成物の合計の約0.3重量%から約10重量%の範囲にわたることができる。本発明の別の実施形態において、接着促進剤は全組成物の約0.5重量%から約2重量%の範囲にわたることができる。
【0070】
別の態様において、本発明はまた、上述した湿気硬化性樹脂組成物を硬化することにより製造される硬化組成物、並びにホットメルトシーラントを含むシーラント、プライマー、ホットメルト接着剤を含む接着剤、およびそうした硬化組成物を含有するコーティングにも関する。本発明の硬化組成物は、湿気硬化性組成物を水と接触させることにより製造されてよい。本願で使用されるところでは、用語「水」は、大気中の湿気、蒸気、液体の水、氷、または有機溶媒のような他の有機化合物と混合された水を意味し、そして好ましくは大気中の湿気である。水の有効量は、加水分解性シリル基と反応して組成物の硬化を行うのに十分な量である。例示的に、硬化組成物はホットメルト組成物を含んでいる。用語「ホットメルト組成物」は本願で使用するところでは、室温において固体の材料であり、基材に塗布するために加熱すると溶融し、そして冷却すると再度固化して固体材料と基材の間に強固な結合を形成する。ホットメルト組成物には、限定するものではないが、ホットメルトシーラントおよびホットメルト接着剤が含まれる。
【0071】
以上の詳細な説明においては本件技術を種々の態様および実施形態を参照して記載してきた。この技術は以下の実施例を参照してさらに理解されてよい。実施例は、本件技術の態様および実施形態をさらに例示することを意図しているが、必ずしもそうした態様および実施形態に限定されるものではない。
【0072】
実施例
【0073】
シラングラフト化ポリマーAの合成手順
【0074】
1Lの4口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、熱電対、N2スパージ用の浸漬レッグ、およびシュレンクラインと整列した凝縮器を装着した。N2によってこれを不活性化した。フラスコにポリエポキシジオールHMBT120(500グラム)を仕込んだ。これを40~50mmHgの圧力下でN2をスパージしながら80℃で一晩撹拌した。温度を70℃まで低下させた。イソホロンジイソシアネート(IPDI、5.1グラム)およびジブチルスズジラウレート(DBTDL、0.011グラム)を添加し、そして反応混合物を70~75℃で撹拌した。反応混合物の粘度はブルックフィールドDV3THBCJ0コーンプレート粘度計によって25℃で測定し、約30,000cpsに達するまでモニターした。3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製SILQUEST A-LINK35シラン、9.6グラム)を撹拌しながら添加した。反応温度を80~85℃まで昇温させ、粘度を再度モニターした。粘度が60,000~70,000cpsに達した時点でメタノール(0.4グラム)を添加して反応を急冷した。この混合物をさらに10分間撹拌し、そして冷却し、粘稠な材料が与えられた(シラングラフト化ポリマーA)。
【0075】
シラングラフト化ポリマーBの合成手順
【0076】
1Lの4口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、熱電対、N2スパージ用の浸漬レッグ、およびシュレンクラインと整列した凝縮器を装着した。N2を使用してこれを不活性化した。フラスコにポリエポキシジオールHMBT80(500グラム)を仕込んだ。これを40~50mmHgの圧力下でN2をスパージしながら80℃で一晩撹拌した。イソホロンジイソシアネート(IPDI、4.2グラム)およびジブチルスズジラウレート(DBTDL、0.032グラム)を添加し、そして反応混合物を約80℃で撹拌した。反応混合物の粘度は約15,000cpsで一定になるまで30分おきにモニターした。3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製SILQUEST A-LINK25シラン、22.1グラム)を撹拌しながら添加した。反応温度は約80℃に保持し、そして粘度を再度モニターした。粘度が一定になった時点でエタノール(0.9グラム)を添加して反応を急冷した。この混合物をさらに10分間撹拌し、そして冷却し、粘稠な材料が与えられた(シラングラフト化ポリマーB)。
【0077】
シラングラフト化ポリマーにおける水分捕捉剤の性能評価
【0078】
水分捕捉剤の性能は、湿気に曝露した際のシラングラフト化ポリマーの粘度変化をモニターすることによって評価した。シラングラフト化ポリマーにおいて、空気/湿気に曝露した際のシラン末端の加水分解およびその後の分子間架橋は、粘度の増大をもたらす。粘度変化が小さければ、シラングラフト化ポリマーに添加された水分捕捉剤の性能が良好であることが示される。
【0079】
性能試験のための典型的な試料は、以下のようにして調製した:
【0080】
シラングラフト化ポリマーAまたはシラングラフト化ポリマーB(10.0~50.0グラム)をプラスチック製の上部が開放した容器内に入れた。表1に示すような水分捕捉剤材料をポリマーAまたはBに対して2.0重量%である0.10~1.0グラムの量で容器内に添加し、スピードミキサー(FlackTekスピードミキサー、DAC600.2VAC-P)で十分に混合した。試料は23℃、相対湿度50%の恒湿チャンバに置いた。試料の粘度は7日間の間隔を置いて周期的に測定した。粘度はブルックフィールドDV3THBCJ0コーンプレート粘度計によって25℃で測定した。
【表1】
【0081】
水分捕捉剤S-3およびS-7は本発明の捕捉剤である。水分捕捉剤S-1、S-2、S-4、S-5、およびS-6は公知の/従来の捕捉剤である。試験結果の概要は表2、3、および4に示されている。試験例C1~C10は比較例である。試験例E1~E3は本発明の技術に従う態様および実施形態による実施例に対応している。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
シーラント配合物の調製手順
【0086】
水分捕捉剤を含まないシーラント材料のマスターバッチ:
【0087】
モメンティブ社のSPUR+1015プレポリマー(688.2グラム)、BASF社のTinuvin登録商標213UV吸収剤(6.9グラム)、およびBASF社のTinuvin登録商標765光安定剤(6.9グラム)をロス社のミキサー中において低真空で10分間混合した。次いでジイソデシルフタレート(DIDP、543.0グラム)、沈降炭酸カルシウム(PCC、990.0グラム)、粉砕炭酸カルシウム(GCC、660.0グラム)、二酸化チタン(34.5グラム)、およびヒュームドシリカ(キャボット社TS720、34.5グラム)を段階的に添加し、そして粒子が十分に分散するまで混合物を高速で1~2時間混合した。これを室温まで冷却し、約2900グラムのシーラント材料のマスターバッチを得た。
【0088】
水分捕捉剤を含むシーラント配合物
【0089】
上記のシーラント材料のマスターバッチ(167.96グラム)をプラスチック製のカップに仕込んだ。モメンティブ社のSILQUEST A-1120Jシラン(0.97グラム)を添加し、スピードミキサーで真空下に混合した。次いでこれを約30℃に冷却した。触媒Fomrez登録商標SUL-4(ジブチルスズジラウレート、102mg)および水分捕捉剤の候補(1.02グラム、表1から選択したもの)を混合物に添加し、これをさらに1分間混合した。異なる水分捕捉剤を含む試料を調製し、同時並行で試験した。それらの性能を表5に示している。
【0090】
機械的性質
【0091】
水分捕捉剤を含むシーラント配合物を流延してフィルム状とし、23℃および相対湿度50%の恒湿チャンバ内で7日間硬化した。引張特性をASTM D412に従って試験し、また硬度をASTM C661のもとで試験した。これらの試験結果を表5に示す。
【0092】
指触乾燥時間の測定
【0093】
水分捕捉剤を含むシーラント配合物をアルミニウム製の計量皿に注入し、直ちに恒湿チャンバ内に置いた。指触乾燥時間は、試料表面に接触する木片を使用し、数分間隔で持ち上げることによって評価した。指触乾燥時間は、木片によって持ち上げられる材料がない時点で決定された。結果を表5に概略的に示す。
【0094】
押し出し速度の測定
【0095】
水分捕捉剤を含むシーラント配合物をプラスチック製のカートリッジ内にパッケージ化した。初期押し出し速度は、これを直径(1/8)インチのノズルを介して押し出しを行うことによって測定した。カートリッジは次いで、しっかりと封止/キャップした。これを50℃において2週間にわたりエージングし、そして押し出し速度を再度測定した。次いでこれを再度封止し、さらに50℃において2週間にわたりエージングし(合計で4週間)、そして最後に最終押し出し速度を測定した。押し出し速度は、押し出された材料の重量を時間で割ることによって計算した。材料がカートリッジ内で完全に硬化して押し出し不能である場合には、結果的に押し出し速度は0であるとした。これらの結果を表5にまとめた。試験例C11およびC12は比較例である。試験例E4は本発明の実施例である。
【0096】
【0097】
表2における結果は、いずれの水分捕捉剤を添加しても、粘度の増大速度を遅くするのに役立つことを示している。他方、S-3およびS-1は、水分捕捉剤としては同等の性能を示し、S-3がS-1を僅かに上回る性能を有している。しかしそれらはS-2およびS-4よりも、シラングラフト化ポリマーAをより有効に安定化させる。
【0098】
表3における水分捕捉剤の試験は、S-1、S-2、およびS-3の性能を、エトキシシラングラフト化ポリマーであるポリマーBにおいて比較している。この比較はまた、ポリマーを安定化させるといった用途においてS-3がS-1と同等に作用し、またそれらはS-2よりも改善されていることを確認している。これらの実験結果はまた、メトキシシラン水分捕捉剤(S-1/-2/-3)がエトキシシラングラフト化ポリマーにおいて非常に有効であることを示している。
【0099】
S-1、S-2、およびS-3のエトキシ類縁体はS-5、S-6、およびS-7のそれぞれである。これらのエトキシ水分捕捉剤の性能もまた、エトキシシラングラフト化ポリマーBにおいて評価した。表4はそれらの性能を乾燥剤として概略的に示している。水分捕捉剤S-5、S-6、およびS-7は、それらのメトキシ対応物(表3における)と比較すると相対的に有効性が劣るが、それらは依然として粘度変化速度を低下させる効果を有している。
【0100】
シラングラフト化ポリマーにおけるS-1、S-2、およびS-3の水分捕捉剤としての優れた安定化性能に基づいて、それらをさらにシーラント配合物において評価し、これを表5に示している。
【0101】
表5における結果は、試験された中でS-3が最も長い指触乾燥時間を有することを示している。このことは配合物において吸水性能が強いことを示しており、長い可使時間がもたらされうる。このことは配合者に、配合を調整し、可使時間を所望の範囲とするための大きな余地をもたらす。表5に示すように、2つの従来の捕捉剤(S-1およびS-2)と本技術による捕捉剤S-3は、機械的性質および対応するシーラント配合物の硬度に関して、類似した性能を示している。
【0102】
エージング時の押し出し速度は、シーラント配合物の貯蔵寿命を評価するための1つの方法である。試験されたシラン物質はまた、シーラントの貯蔵寿命を延長させるための水分捕捉剤としても試験された。実験データを表5に示している。S-1、S-2、およびS-3は、妥当な流動性、ガン吐出性、および押し出し性をもたらすことができた。
【0103】
性能試験は、本発明のシアノアルキルアルコキシシランが、従来の水分捕捉剤と比較して同等の、またはより良好な水分捕捉剤であることを示している。それらは他のシラン(例えばプロピルトリメトキシシランなど)よりも優れた乾燥剤である。他方、シアノアルキルアルコキシシランは、より一般的なトリアルコキシシランと比較して皮膚感作物質でも可燃性材料でもないと考えられることから、一般により実用性のある代替手段であると考えられる。
【0104】
これら2つの利点の組み合わせ、すなわち水分捕捉剤としての実証された有効性、およびその安全性の側面により、シアノアルキルアルコキシシランは、ポリマー、エラストマー、樹脂、接着剤、シーラント、コーティング、およびフィラー処理、並びにその他について、非常に望ましい水分捕捉剤となる。
【0105】
上記に説明したところは、本明細書の例を含んでいる。もちろん、本明細書の記載を行う目的について、成分または方法論のすべての認識可能な組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者は、本明細書の多くのさらなる組み合わせおよび置き換えが可能であることを認識してよい。したがって本明細書は、添付の特許請求の範囲の思想および範囲内に包含される、すべてのそうした変更、修正および変種を包囲することを意図している。さらにまた、詳細な説明または特許請求の範囲において「包含する」という用語が使用される限りにおいて、そうした用語は「含む」と同様の仕方で包括的であることを意図しているが、これは「含む」が特許請求の範囲において転換語として用いられた場合に解釈されるのと同様である。
【0106】
以上の説明は、シアノアルキルアルコキシシラン水分捕捉剤を含む湿気硬化性組成物の種々の、非限定的な実施形態を特定している。本技術分野の当業者および本発明を作成および使用する可能性がある者には、変更が想起されてよい。開示された実施形態は単に例示目的のためのものであり、本発明の範囲または以下の特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図したものではない。
【国際調査報告】