(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】制御棒遠隔連結解除機構
(51)【国際特許分類】
G21C 7/10 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G21C7/10 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525298
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022048446
(87)【国際公開番号】W WO2023076682
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521315799
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー アドバンスト テクノロジーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャーゴッツ、スコット、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジーグラー、ライアン、ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ジェイソン、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハスレット、デイビット、ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】フレミング、エミリー、ディー.
(57)【要約】
連結棒と、スパイダと、複数の制御棒と、連結棒に固定され、少なくとも1つのカム・ピンを画定する本体部を備える結合スリーブと、カム軌道を画定し、スパイダに回転可能に固定されているバレル・カムとを有する制御棒組立体。カム軌道は第1のカム面と第2のカム面とを備え、第1のカム面及び第2のカム面は、少なくとも1つのカム・ピンが第1のカム面及び第2のカム面に沿って摺動する際にバレル・カムが第1の方向に回転するように構成されている。バレル・カム棒は、スパイダが連結棒に連結されている第1の位置と、スパイダが連結棒から連結解除されている第2の位置との間で回転可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉心とともに用いられる制御棒組立体であって、
細長の連結棒と、
前記連結棒に離脱自在に固定可能なスパイダ組立体と、
前記スパイダ組立体から下方に延在する複数の制御棒と、
前記連結棒の下端に固定され、円柱状の中央内腔を画定する内壁を有する本体部と前記中央内腔の前記内壁から内径方向に延出する少なくとも1つのカム・ピンとを含む、結合スリーブと、
カム軌道を画定する外面を有する円柱状の本体部を有する前記スパイダ組立体の上部に回転可能に固定されているバレル・カムであって、前記カム軌道は、前記バレル・カムの前記本体部の上端面によって画定される少なくとも1つの進入開口部と少なくとも1つの第1のカム面と少なくとも1つの第2のカム面とを含み、前記少なくとも1つの第1のカム面及び前記少なくとも1つの第2のカム面は、前記少なくとも1つのカム・ピンが前記少なくとも1つの第1のカム面及び前記少なくとも1つの第2のカム面に沿って摺動するように前記バレル・カムが第1の方向に回転するように構成されている、バレル・カムと、
を備え、
前記バレル・カムは、前記スパイダが前記連結棒に連結されている第1の位置と、前記スパイダが前記連結棒から連結解除されている第2の位置との間で、前記連結棒に対して回転可能である、制御棒組立体。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカム・ピンが一対のカム・ピンを更に備える場合、前記少なくとも1つの第1のカム面は一対の第1のカム面を更に備え、前記少なくとも1つの第2のカム面は一対の第2のカム面を更に備える、請求項1に記載の制御棒組立体。
【請求項3】
前記バレル・カムの上端に隣接する前記スパイダ組立体の前記上部に固定された、位置合わせされたコア組立体を更に備え、前記位置合わせコアは、円錐台状の上面を備え、前記結合スリーブの前記中央内腔内に摺動可能に受けられることが可能である、請求項1に記載の制御棒組立体。
【請求項4】
中央内腔を画定する係止スリーブと前記係止スリーブから内径方向に延出する係止鍵部とを更に備え、前記係止鍵部が前記スパイダ組立体の前記上部の外面に形成される係止スロット内に摺動可能に受けられるように、前記係止スリーブが前記スパイダ組立体の上部の周りに配設されることにより、前記係止スリーブは前記スパイダ組立体の前記上部に回転不能に取り付けられる、請求項1に記載の制御棒組立体。
【請求項5】
前記係止スリーブに対して上方向の付勢力をかけるように、前記係止リングと前記スパイダ組立体の一部との間に配設されている係止ばねを更に備える、請求項4に記載の制御棒組立体。
【請求項6】
前記バレル・カムは前記本体部の前記外面に位置合わせスロットを更に画定し、前記バレル・カムが前記第1の位置にある場合でも前記第2の位置にある場合でも、前記係止スリーブの前記係止鍵部は前記位置合わせスロットと前記スパイダ組立体の前記係止スロットの双方の中に配設される、請求項4に記載の制御棒組立体。
【請求項7】
前記係止リングの前記係止鍵部は、前記バレル・カムが前記第1の位置にある場合でも前記第2の位置にある場合でも、前記バレル・カムと係合していることにより、前記バレル・カムが前記第1の位置にある場合でも前記第2の位置にある場合でも、前記バレル・カムの前記スパイダ組立体に対する回転を防止する、請求項4に記載の制御棒組立体。
【請求項8】
前記結合スリーブの前記少なくとも1つのカム・ピンは、前記スパイダ組立体の前記位置合わせスロット内に摺動可能に受けられることが可能であり、前記係止カム組立体の前記少なくとも1つのカムは2つのカムを含み、前記係止環部の前記少なくとも1つの係止凹部は2つの係止凹部を含む、請求項4に記載の制御棒組立体。
【請求項9】
前記バレル・カムの前記カム軌道は、上部支持面を含む少なくとも1つの把持スロットを更に備え、前記把持スロットは、自らの内に前記少なくとも1つのカム・ピンを摺動可能に受けることにより、前記少なくとも1つのカム・ピンが前記上部支持面と接触することで前記スパイダ組立体が支持されるように構成されている、請求項1に記載の制御棒組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれている、2021年10月29日に出願した米国特許仮出願番号63/273,687号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書にて開示される発明は一般に、原子炉における反応炉出力レベルを制御するシステム及びその使用方法に関し、より詳細には、熱原子炉用制御棒の動作を制御するシステム及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
熱原子力発電所において、原子炉心は、所望の核分裂連鎖反応を支持するように選択されたサイズ及び組成を有する核分裂性物質を備える。炉心は、一次冷却水中に浸漬された圧力容器内に配設される。更に、中性子吸収材を備える「制御棒」を反応炉心を通過する案内管に挿入することで、反応を制御し又は停止させることが知られている。制御棒は挿入されると、連鎖反応を減速又は停止させるように中性子を吸収する。
【0004】
制御棒は、制御棒駆動機構(CRDM:control rod drive mechanism)によって動作される。制御棒を「調整する(regulating)」ことによって、反応速度制御を連続的に調節可能にするように制御棒の挿入を連続的に調節可能である。「停止(shutdown)」用の制御棒については、挿入度合いは全挿入か全引抜かのいずれかである。通常稼働では停止棒は反応炉心から完全に引き抜かれているが、スクラム(SCRAM)時には連鎖反応を迅速に停止させるように停止棒が完全に挿入される。制御棒は調整棒と停止棒の双方の機能を果たすように設計されることもできる。いくつかのそのような二重の機能を持った制御棒では、SCRAM発生時に制御棒がCRDMから取り外し可能となって、外れた制御棒が重力の作用で反応炉心内に落下するように構成されている。艦船のシステム等のいくつかのシステムでは、液圧又は他の(重力以外の)積極的な力も加えて、外れた制御棒を炉心内に駆動する。
【0005】
制御システムを完全にするために、制御棒/CRDM結合が設けられる。既知の結合には、下端にスパイダが固定されている連結棒を含む。連結棒の上部は、CRDMと動作可能に連結する。調整棒では、この連結部は、送りねじ又は他の漸進的な調節要素を含む。従来、送りねじは、連結棒、スパイダ及び制御棒とともに、並進する組立体(「制御棒組立体」としても知られる)として緊急脱落する。しかし、いくつかの既知の手法では、送りねじはCRDM内に保持されることができ、制御棒組立体の残りの部分が緊急脱落する。費用とシステム全体の複雑性を軽減するために、典型的には単独のCRDMがスパイダを介して複数の制御棒と連結される。この仕組みでは、全ての制御棒が単独のスパイダと、ともに並進する制御棒組立体(CRA:control rod assembly)として結合する。実際には、多少の冗長性をもたらすように、いくつかのCRDMユニットが設けられ、その各々がスパイダを介して複数の制御棒と結合する。スパイダは、連結棒の下端から横方向に延在して、複数の制御棒の取り付け箇所が設けられる。
【0006】
例えばメンテナンスのための長期停止等のある種の作業の際には、CRAの並進する制御棒を反応炉心中に長期間全挿入することが必要となる場合がある。従って、並進する制御棒は、連結棒とスパイダとの間等の決まった位置で、連結棒の垂直運動によって遠隔でCRDMに対して係合及び係合解除が可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施の形態は、反応炉心とともに用いられる制御棒組立体であって、細長の連結棒と、連結棒に離脱自在に固定可能なスパイダ組立体と、スパイダ組立体から下方に延在する複数の制御棒と、連結棒の下端に固定され、円柱状の中央内腔を画定する内壁を有する本体部と中央内腔の内壁から内径方向に延出する少なくとも1つのカム・ピンとを含む、結合スリーブと、スパイダ組立体の上部に回転可能に固定されており、カム軌道を画定する外面を有する円柱状の本体部を有するバレル・カムであって、カム軌道は、バレル・カムの本体部の上端面によって画定される進入開口部と第1のカム面と第2のカム面とを含み、第1のカム面及び第2のカム面は、少なくとも1つのカム・ピンが第1のカム面及び第2のカム面に沿って摺動するようにバレル・カムが第1の方向に回転するように構成されているバレル・カムと、を有し、バレル・カムは、スパイダが連結棒に連結されている第1の位置と、スパイダが連結棒から連結解除されている第2の位置との間で連結棒に対して回転可能である、制御棒組立体を提供する。
【0008】
本開示の別の一実施の形態は、トルク・チューブを有する制御棒駆動機構とともに用いられる連結解除機構であって、トルク・チューブ内に回転不能に配設される連結棒と、連結棒の下端に回転可能に固定され、本体部と本体部から外径方向に延出する少なくとも1つの係止カムとを含む、係止カム組立体と、トルク・チューブ内に回転不能に配設され、中央内腔を画定する内面と内面中にある少なくとも1つの係止凹部とを含む、係止環部であって、係止凹部が係止環部の上縁から下方に延在する進入スロットを含む、係止環部と、を含み、連結棒は、係止カム組立体が連結棒に対して回転可能である第1の位置と、係止カム組立体が連結棒に対して回転不能である第2の位置との間を、制御棒駆動機構に関して軸方向に可動である連結解除機構を提供する。
【0009】
添付の図面は、本明細書に組み込まれその一部を構成しており、本発明の1つ又は複数の実施の形態を図示し、且つその記述とともに本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0010】
以下で、添付の図面を参照して本発明の記述をより十全に行うが、図面において本発明の実施の形態をいくつか示すものの、その全ては示さない。実際、本発明は多くの異なった形態で実施することができ、本明細書に記載する実施の形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、本開示が該当する法的要件を満たすようにそれらの実施の形態は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な制御棒組立体を含む、原子炉圧力容器の下部の部分斜視図である断面図である。
【
図3】
図2に示す制御棒組立体の制御棒及び連結棒の斜視図である。
【
図4A】本開示の一実施の形態による連結解除機構を含む制御棒組立体の下端の断面図である。
【
図4B】本開示の一実施の形態による連結解除機構を含む制御棒組立体の下端の斜視図である。
【
図5A】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、係合解除状態における斜視図である。
【
図5B】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、係合状態における斜視図である。
【
図6A】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6B】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6C】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6D】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6E】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6F】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6G】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6H】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図6I】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒から連結解除する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7A】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7B】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7C】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7D】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7E】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7F】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7G】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7H】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【
図7I】
図4A及び
図4Bに示す制御棒組立体の連結解除機構の、連結棒を制御棒に連結する過程が進行している斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び図面では参照符号を反復使用するが、そのことによって本開示に基づく本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表すことが意図されている。
【0013】
以下で、本発明の現在の好ましい実施の形態について述べるが、そのうちの1つ又は複数の例を添付の図面に示す。各例は本発明を限定するためではなく、説明するために提供される。実際、本発明においてはその範囲及び精神から逸脱することなく変更及び変形が可能であることが当業者に明らかとなる。例えば、一実施の形態の部分として図示又は記述される特徴は、別の一実施の形態に用いられて、更に別の一実施の形態を生み出すことができる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものの範囲内に該当するような変更及び変形を含むものとする。
【0014】
本明細書では、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「上方(above)」又は「下方(below)」等の、しかしこれらに限定されない、遠隔の連結解除機構を有する制御棒組立体の向きに対する方向又は位置を指す言葉は、本明細書の図に示す、通常の意図する操作における連結解除機構の向きに対する方向及び相対位置を指す。従って、例えば「垂直」及び「上」という語は、図の視点における垂直の方向及び相対的に上の位置を指し、時に反応炉が異なった向きに配置されるとしても、上記の意味合いで理解すべきものである。
【0015】
更に、本開示及び添付の特許請求の範囲で用いる「又は(or)」の語は、排他的な「又は」ではなく、両立的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の指定があるか、文脈から明らかであるのでない限り、「XはA又はBを用いる」という文言は、自然数個取り出す組合せ(natural inclusive permutation)のうちの任意のものを意味することが意図されている。つまり、「XはA又はBを用いる」という文言は、「XはAを用いる」、「XはBを用いる」又は「XはAとBの双方を用いる」という場合のうちの任意のものによって満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲で用いる冠詞「a」及び「an」は、単数形に関するものであるように別段の指定があるか、文脈から明らかであるのでない限り、一般に「1つ又は複数の」を意味すると解釈されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、以下の用語は、文脈で別様に定まるのでない限り、ここで明示的に関連付けた意味を少なくとも有する。以下で特定する意味は必ずしも用語を限定せず、単に用語の説明的な例を記載したものである。「a」、「an」及び「the」の意味は複数を指すことを含んでよく、「~に(in)」の意味は「~内に(in)」及び「~上に(on)」を含んでよい。本明細書で用いる「一実施の形態において」という句は、同一の実施の形態を指す場合があるとはいえ、必ずしもそうであるとは限らない。
【0016】
図1を参照すると、例示的な原子炉圧力容器10の関連する部分は、圧力容器10の底に近接して配置される反応炉心12を含む。炉心12は、例として、濃縮酸化ウラン(すなわち、
235U/
238U比を上げるように処理されたUO
2)等の放射性物質を含む、又は含有する。制御棒駆動機構(CRDM)14組立体を概略的に図示する。例示的なCRDM14は、圧力容器10の内に配設された内部型CRDMである。代替の実施の形態では、外部型CRDMを採用することができる。通常、各々複数の制御棒と結合する複数のCRDMユニットが存在するが、
図1においてこれらのCRDMユニットは追加して示さない。圧力容器10は、そのような追加のCRDMユニットのための空間を示して描かれている。
【0017】
CRDM14の下方には制御棒案内フレーム16が存在し、
図1の斜視図では制御棒/CRDM結合組立体(すなわちスパイダ32及び連結棒30、両者とも
図3に示す)を視界から遮蔽している。案内フレーム16の下方に延出しているのが、複数の制御棒18である。
図1は、制御棒18が炉心12内に最大限挿入される全挿入の位置における制御棒18を示す。全挿入の位置では、スパイダ32(
図3)は制御棒案内フレーム16内の下部位置20に位置する。
図1の例示的な実施の形態では、CRDM14及び制御棒案内フレーム16は、両端がそれぞれCRDM14及び案内フレーム16と結合し内部を連結棒30(
図3)が通過する中空管を備えるスタンドオフ22によって、離隔される。
【0018】
図1は、例示的な圧力容器10の下部のみを示す。原子炉を稼働させる際には、図示の開いた上端24が1つ又は複数の圧力容器上部(図示せず)と連結され、この上部が圧力容器10の図示した下部とともに、反応炉心12、制御棒18、案内フレーム16及び内部型CRDM14を収容する密閉圧力空間を形成する。代替の一実施の形態では、CRDM14は外部型であり、反応炉圧力容器の上方に位置する。このような実施の形態では、外部型CRDMは、連結棒30が圧力容器の上部の門部を通って延出する制御棒/CRDM結合組立体によって、制御棒18と連結される。
図2を参照すると、CRDM14、制御棒案内フレーム16、介在するスタンドオフ22及び制御棒18を含む制御組立体が、反応炉圧力容器から分離されて示されている。
図3を参照すると、制御棒18及び制御棒組立体40の連結棒30が、それらを隠蔽するいかなる構成要素もなしに(例えば、案内フレーム、スタンドオフ又はCRDMなしに)示されている。スパイダ32によって、複数の制御棒18が対応する連結棒30の下端と連結される。
【0019】
ここで
図4A、
図4B、
図5A及び
図5Bを参照すると、本開示による連結解除機構50を含む制御棒組立体40が示されている。連結解除機構50は、連結棒30(
図3)の下端に回転不能に取り付けられている結合スリーブ52を含む。加えて、連結解除機構50は、スパイダ32と、スパイダ受け34と、係止スリーブ36と、位置合わせ円錐体組立体43と、バレル・カム60と、を含み、これら全ては結合スリーブ52を介して連結棒30に離脱自在に連結可能である。図に示すように、結合スリーブ52は連結棒30の下端に回転不能且つ軸方向に取り付けられている。係止スリーブ36及び位置合わせ円錐体43も同様にスパイダ受け34に回転不能に取り付けられているが、係止スリーブ36はスパイダ受け34の上部に沿って軸方向に摺動可能である。バレル・カム60はスパイダ受け34の上部に軸方向では取り付けられているものの、以下で更に検討するようにその周りを回転可能である。
【0020】
図に示す好適な実施の形態では、スパイダ32は円柱状本体部31を含み、円柱状本体部31は自らの内にスクラムばね21及びプランジャ23を受けるように構成されている。これらの構成要素の動作は本開示と関連するものではなく、従って本明細書ではこれ以上検討しない。スパイダ32の円柱状本体部31の上端は、スパイダ受け34の円柱状本体部33の底部において画定される円柱状凹部37内に受けられる。図に示すように、一対の対向する係止スロット35がスパイダ受け34の円柱状本体部33の外面に形成されており、その上端から下方に延伸している。
図5A及び
図5Bから最もよく分かるように、スパイダ受け34の各々の係止スロット35は、係止スリーブ36によって画定される円柱状内腔38の内面から内径方向に迫り出す、対応する係止鍵部41を摺動可能に受けるように構成されている。従って、係止スリーブ36はスパイダ受け34に対して軸方向に移動することができるが、スパイダ受け34に回転不能に固定されている。係止ばね42は、係止スリーブ36をスパイダ受け34に対して上方に付勢するように、係止スリーブ36の下縁43とスパイダ受け34の座面19との間に配設されている。また、円柱状の軸部17がスパイダ受け34の円柱状本体部33から上方に延在する。軸部17は、以下で更に検討するように自らの上にバレル・カム60を回転可能に受けるように構成されている。
【0021】
図に示すように、バレル・カム60は、円柱状内腔62を画定する円柱状本体部63を含む。第1の軸受フランジ64がバレル・カム60の円柱状内腔62の下端に画定され、第2の軸受フランジ67が円柱状内腔62の上端に画定されている。第1の軸受フランジ64は、自らとスパイダ受け34の円柱状本体部33の上端との間に第1のリング軸受53を受けるように構成され、第2の軸受フランジ67は自らと位置合わせ円錐体43の下端上に配設された対応する軸受フランジ39との間に第2のリング軸受51を受けるように構成されている。第1の軸受リング53及び第2の軸受リング51は、
図4Bから最もよく分かるように、バレル・カム60をスパイダ受け34の軸部17の表面上で回転可能に支持する。図に示すように、位置合わせ円錐体43は、スパイダ受け34の軸部17の上部を受けるように構成されている取り付け内腔33を画定する。位置合わせ円錐体組立体43はスパイダ受け34に軸方向で取り付けられ、それによりバレル・カム60を軸部17に軸方向で固定する。位置合わせ円錐体組立体43は、バレル・カム60が結合スリーブ52の円柱状内腔56内に摺動可能に受けられる際に結合スリーブ52をバレル・カム60に適切に位置合わせするように構成された円錐台状44の上面を含むことが好ましい。位置合わせ円錐体組立体43はスパイダ受けの軸部に対して回転が可能であっても可能でなくてもよい。
【0022】
図5A及び
図5Bから最もよく分かるように、バレル・カム60の円柱状外面65は、結合スリーブ52の円柱状内腔56の内面から内径方向に迫り出す一対のカム・ピン54を摺動可能に受けるように構成されたカム軌道66を画定する。カム軌道66は、バレル・カム60の上端面59と連通する進入開口部69を各々含む一対の進入スロット68を含むことが好ましい。図に示すように、バレル・カム60の下端面61は、スパイダ受け34の円柱状本体部33の上端面に隣接した状態で保たれる。一対の位置合わせスロット82は、バレル・カム60の下端面61に隣接して形成されている。以下で更に検討するように、制御棒組立体40の連結棒30がスパイダ受け34に対して連結する場合でも連結解除する場合でも、位置合わせスロット82は、スパイダ受け34の円柱状本体部33の外面に形成された係止スロット35に軸方向で位置が合うように構成されている。
【0023】
ここで
図6A~
図6Iを参照して、連結棒30をスパイダ受け34及び対応する制御棒18に連結する動作を検討する。
図6Aに示すように、動作は連結棒30(
図3)、ひいては連結解除機構50の結合スリーブ52がスパイダ受け34の表面のバレル・カム60から連結解除されている状態から始まる。連結棒30をバレル・カム60及びスパイダ受け34に連結するために、連結棒30をスパイダ受け34に対して下方に駆動するように制御棒駆動機構14(
図2)を作動させる。加えて
図6Bを参照すると、連結棒30が下方に移動するにつれて、連結棒30の下端に回転不能且つ軸方向で取り付けられている結合スリーブ52がスパイダ受け34に対して下方に移動して、結合スリーブ52の下縁57が位置合わせ円錐体組立体43を通過し始める。結合スリーブ52がバレル・カム60において適切に位置合わせされていない場合、位置合わせコア組立体43の円錐台状の上面44は、結合スリーブ52の下縁57と相互作用することで、バレル・カム60が確実に中心合わせされることに寄与する。連結棒30は一たび適切に中心合わせされると、下方向に移動し続けて結合スリーブ52の下縁57が係止スリーブ36の上縁17と接触する。
【0024】
図6Bに示すように、結合スリーブ52が係止スリーブ36と接触するためには、結合スリーブ52の内側面から内径方向に迫り出すカム・ピン54をカム軌道66の進入スロット68の開口部69内に摺動可能に受けなければならない。そのようにするためには、バレル・カム60を結合スリーブ52のカム・ピン54に適切に位置合わせしなければならない。バレル・カム60はスパイダ受け34に対して回転可能であるものの、係止スリーブ36はそうではない。先述の通り、係止スリーブ36の表面の一対の係止鍵部41は、スパイダ受け34の表面の対応する係止スロット35と係合している。
図6Aに示すように、係止スリーブ36の係止鍵部41は、係止スリーブ36の軸方向の全長にわたって延在し、またバレル・カム60の外面に形成されその下縁に隣接した、1組の対応する位置合わせスロット82と係合するように構成されている。連結棒30がスパイダ受け34から連結解除され、係止スリーブ36が係止ばね42によって最も上の位置に推進される場合、係止スリーブ36の係止鍵部41は、バレル・カム60の位置合わせスロット82とスパイダ受け34の係止スロット35の双方と係合する。従って、バレル・カム60は、結合スリーブ52のカム・ピン54がカム軌道66の進入スロット68の開口部69に軸方向で位置合わせされるようになる位置で、スパイダ受け34に回転不能に取り付けられる。
【0025】
加えて
図6Cを参照すると、結合スリーブ52がバレル・カム60に対して下方向に移動し続けることにより、結合スリーブ52が係止スリーブ36をスパイダ受け34の円柱状本体部33に対して下方に推進して、係止スリーブ36の係止鍵部41は、バレル・カム60の位置合わせスロット82から脱出する。この時、バレル・カム60は最早、係止スリーブ36によってスパイダ受け34に回転不能に固定されていない。従って、
図6Dに示すように、カム・ピン54の第1のカム面70との相互作用によって、バレル・カム60はスパイダ受け34に対して上から見て反時計回り方向に回転する。
図6Eに示すように、連結棒30に回転不能に固定されている結合スリーブ52のカム・ピン54は、スパイダ受け34の係止スロット35に軸方向で位置合わせされて、連結動作を行おうとする際に連結棒が下方向に動き過ぎることによる損傷を防止する。カム・ピン54は、スパイダ受け34の円柱状本体部33と衝突した結果損傷するようなこともなく、スパイダ受け34の係止スロット35内に摺動可能に受けられて、連結棒30は最終的に上方向へと戻って行く。係止ばね42が係止スリーブ36に対して上方向の付勢力を常にかけ続けることにより、連結棒30が下方向に動く際も上方向に動く際も、係止スリーブ36は結合スリーブ52に隣接した状態であることに留意されたい。
【0026】
ここで
図6F及び
図6Gを参照すると、連結棒30をスパイダ受け34と係合させるために、連結棒30は次いで上方に動かされて、結合スリーブ52のカム・ピン54がカム軌道66の対応する第2のカム面74と係合する。カム・ピン54が上方向に移動し続けると、バレル・カム60が反時計回り方向に更に回転して、各々のカム・ピン54は対応する把持スロット76と係合する。各々の把持スロット76は、スパイダ受け34及び対応する制御棒18が
図3及び
図6Iに示すように一対のカム・ピン54から吊り下げ可能となる、上部接触面78を含む。連結棒30がバレル・カム60に対して上方に移動することによって、カム・ピン54が第2のカム面74に沿って摺動するにつれて、バレル・カム60は回転して、位置合わせスロット82が今一たびスパイダ受け34の係止スロット35に位置合わせされることにも留意されたい。従って、係止スリーブ36の係止鍵部41は、カム・ピン54が把持スロット76内を上方に移動する際に、バレル・カム60の位置合わせスロット82とスパイダ受けの係止スロット35の双方と同時に係合することができる。このようにして、連結棒30がスパイダ受け34と完全に係合すると、バレル・カム60は係止スリーブ36の係止鍵部41によってスパイダ受けに回転不能に固定される。この時、操作者は、制御棒駆動機構によって制御棒の上昇も下降も所望の通りに自在に行うことができる。
【0027】
ここで
図7A~
図7Iを参照して、連結棒をスパイダ受け34及び対応する制御棒18から連結解除する動作を検討する。
図7Aに示すように、動作は、カム・ピン54が対応する把持スロット76の上部接触面78に対して完全に嵌合して、連結棒30(
図3)、ひいては連結解除機構50の結合スリーブ52がスパイダ受け34の表面のバレル・カム60に連結されている状態から始まる。連結棒30をバレル・カム60及びスパイダ受け34から連結解除するために、連結棒30をスパイダ受け34に対して下方に駆動するように制御棒駆動機構14(
図2)を作動させる。加えて
図7Bを参照すると、連結棒30が下方に移動するにつれて、連結棒30の下端に回転不能且つ軸方向で取り付けられている結合スリーブ52が、係止ばね42によって係止スリーブ36に対してかかる上方向の付勢力に抗してバレル・カム60に対して下方に動かされる。制御棒30が下方に移動するにつれて、
図7B及び
図7Cから最もよく分かるように、係止スリーブ36の係止鍵部41はバレル・カム60の位置合わせスロット82とスパイダ受け34の係止スロット35の双方の中を下方に移動する。係止スリーブ36の係止鍵部41が一たびバレル・カム60の位置合わせスロット82から完全に抜去されると、バレル・カム60は自在に回転する。
【0028】
上述のように、結合スリーブ52がバレル・カム60に対して下方向に移動し続けると、結合スリーブ52が係止スリーブ36をスパイダ受け34の円柱状本体部33に対して下方に推進して、係止スリーブ36の係止鍵部41は、バレル・カム60の位置合わせスロット82から脱出する。この時、バレル・カム60は最早、係止スリーブ36によってスパイダ受け34に回転不能に固定されていない。従って、
図7Cに示すように、カム・ピン54の第1のカム面80との相互作用によって、バレル・カム60はスパイダ受け34に対して上から見て反時計回り方向に回転する。
図7D及び
図7Eから最もよく分かるように、連結棒30に回転不能に固定されている結合スリーブ52のカム・ピン54は、スパイダ受け34の係止スロット35に軸方向で位置合わせされて、連結解除動作を行おうとする際に連結棒が下方向に動き過ぎることによる損傷を防止する。先述の通り、カム・ピン54は、スパイダ受け34の円柱状本体部33と衝突した結果損傷するようなこともなく、スパイダ受け34の係止スロット35内に摺動可能に受けることが可能であって、連結棒30は最終的に上方向へと戻って行く。
【0029】
ここで
図6F及び
図6Gを参照すると、連結棒30をスパイダ受け34から係合解除させるために、連結棒30は次いで上方に動かされて、結合スリーブ52のカム・ピン54がカム軌道66の対応する第4のカム面84と係合する。カム・ピン54が上方向に移動し続けると、バレル・カム60が反時計回り方向に更に回転して、各々のカム・ピン54は対応する進入スロット68と再係合する。先述の通り、各々の脱出スロット68は、カム・ピン54が
図7H及び
図7Iに示すようにカム軌道66から垂直方向に除去可能となる、開口進入口69を含む。連結棒30がバレル・カム60に対して上方に移動することによって、カム・ピン54が第4のカム面84に沿って摺動する際に、バレル・カム60は回転して、位置合わせスロット82が今一たびスパイダ受け34の係止スロット35に位置合わせされることにも留意されたい。従って、係止スリーブ36の係止鍵部41は、カム・ピン54が進入スロット68内を上方に移動する際に、バレル・カム60の位置合わせスロット82とスパイダ受けの係止スロット35の双方と同時に係合することができる。このようにして、連結棒30がスパイダ受け34から完全に連結解除されると、バレル・カム60は係止スリーブ36の係止鍵部41によってスパイダ受けに回転不能に固定され、その結果将来結合スリーブ52と再係合するために適切に位置合わせされる。
【0030】
本発明の1つ又は複数の好ましい実施の形態を上記で記述しているが、本発明においてはその範囲及び精神から逸脱することなく種々の変更及び変形が可能であると当業者は認識すべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものの範囲及び精神内に該当するような変更及び変形を含むものとする。
【国際調査報告】