(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
C07D 307/48 20060101AFI20241018BHJP
C07D 307/68 20060101ALI20241018BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20241018BHJP
B01J 23/52 20060101ALI20241018BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20241018BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20241018BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07D307/48
C07D307/68
B01J23/46 301Z
B01J23/52 Z
B01J23/42 Z
B01J23/44 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525302
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 CN2022127316
(87)【国際公開番号】W WO2023072053
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111271775.9
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】孫乾輝
(72)【発明者】
【氏名】陳公哲
(72)【発明者】
【氏名】鄭路凡
(72)【発明者】
【氏名】杜澤学
(72)【発明者】
【氏名】宗保寧
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02B
4G169BA05B
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB07
4G169EA01Y
4G169FA02
4G169FB14
4H039CA62
4H039CA65
4H039CC30
4H039CG10
(57)【要約】
5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって:(1)極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で、プロトン酸触媒の存在下、フルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成するステップ;および(2)ステップ(1)で得られた、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相に水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ、を含むプロセスを開示する。このプロセスは、フルクトースベースの炭水化物から出発して、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造することができ、2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスにおける5-ヒドロキシメチルフルフラールの分離および精製を回避することができ、簡便である、3つの廃棄物の発生および排出が少ない、環境に優しいなどの利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって、以下のステップ:
(1)極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で、プロトン酸触媒の存在下、フルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成するステップ;および
(2)ステップ(1)で得られた、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相に水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、前記5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
前記プロトン酸触媒は、塩酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、スルファミン酸、またはそれらの組合せから選択され、好ましくはスルファミン酸、硫酸およびスルホン酸から選択され;
前記酸化触媒は、担体および前記担体上に担持された活性金属成分を含み、前記活性金属成分は、Ru、Pt、Pd、Auまたはそれらの組合せから選択される貴金属を含み、好ましくはRuを含み、より好ましくはRu、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである、プロセス。
【請求項2】
ステップ(1)における前記フルクトースベースの炭水化物が、精製フルクトース、粗フルクトース、ポリフルクトース、フルクトースシロップ、フルクトースデキストロースシロップまたはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記スルホン酸が、メチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはそれらの組合せから選択される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
12ヒドロカルビルを有するハロゲン化第四級アンモニウム塩から選択され、好ましくは、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライドから選択され、より好ましくは、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリド、および、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムブロミドから選択され、さらに好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド、アリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、またはそれらの組合せから選択され、特に好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド、またはそれらの組合せから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記極性有機溶媒が、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンである、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ステップ(1)が、以下の特徴:
前記フルクトースベースの炭水化物の前記反応媒体に対する質量比は、1:1~1000、好ましくは1:2~100、より好ましくは1:5~20であり、前記反応系は、前記極性有機溶媒および前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液から構成される二液相反応媒体である;
前記反応媒体の総容量に対する前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液の容量の割合は、5%~50%、好ましくは10%~35%である;
プロトン酸の質量を基準として、前記反応媒体の水相中の前記プロトン酸触媒の濃度は、0.02g/mL~0.5g/mL、好ましくは0.03g/mL~0.1g/mLである;および
前記脱水反応の条件が:80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の反応温度;0.1時間~12時間、好ましくは0.1時間~1時間の反応時間を含む、
の1つ以上を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(2)の前記酸化触媒が、以下の特徴:
前記活性金属成分が、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであり、前記活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率が5%~100%、好ましくは20%~100%、より好ましくは40%~100%、さらに好ましくは50%~100%である;
前記担体の全質量を基準として、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の含有量が、0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%であり、特に好ましくはRuの含有量が5%~15%である;および
前記担体は、炭素含有材料から選択され、好ましくは、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは活性炭、特に好ましくは、1000m
2/g~2000m
2/g、好ましくは1000m
2/g~1500m
2/gの比表面積を有する活性炭である、
の1つ以上を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(2)が、以下の特徴:
5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相の水に対する質量比は、5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1である;
前記酸化触媒は、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の前記5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される;
前記酸化反応が、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる;および
前記酸化反応の条件が:50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、および、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含む、
の1つ以上を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスであって、以下のステップ:
有機溶媒および水を含む混合溶媒中、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
前記有機溶媒は、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンであり;
前記酸化触媒は、担体および前記担体上に担持された活性金属成分を含み、前記担体は、1000m
2/g~2000m
2/g、好ましくは1000m
2/g~1500m
2/gの比表面積を有する活性炭であり、前記活性金属成分は、Ruを含み、好ましくはRu、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである、
プロセス。
【請求項10】
前記活性金属成分が、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであり、前記活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率が40%~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは60%~100%であり;
さらに好ましくは、前記担体の全質量を基準として、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の含有量が0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%であり、特に好ましくはRuの含有量が5%~15%である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
以下の特徴:
前記混合溶媒は、前記有機溶媒および水から構成され、前記有機溶媒の水に対する質量比は、好ましくは5:1~0.5:1、より好ましくは3:1~1:1である;
前記5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび前記混合溶媒から形成される溶液において、前記5-ヒドロキシメチルフルフラールの質量割合は、0.1%~30%、好ましくは0.5%~20%、より好ましくは1%~10%である;
前記酸化触媒は、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の前記5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される;
前記酸化反応の条件が:50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、および、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含む;および
前記酸化反応が、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる、
の1つ以上を有する、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システムであって、脱水反応ユニット、相分離ユニットおよび酸化反応ユニットを備え、前記脱水反応ユニットは入口および出口を有し、前記相分離ユニットは入口、水相出口および有機相出口を有し、前記酸化反応ユニットは入口および出口を有し、前記脱水反応ユニットの出口は前記相分離ユニットの入口と連結され、前記相分離ユニットの水相出口は前記脱水反応ユニットの入口と連結され、前記相分離ユニットの有機相出口は前記酸化反応ユニットの入口と連結され、
フルクトースベースの炭水化物を、前記脱水反応ユニットにおいて、プロトン酸触媒の存在下、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む二相ストリームを生成し、前記二相ストリームを前記相分離ユニットで相分離させて、前記酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成し、前記酸触媒を含む前記水相を前記脱水反応ユニットに戻し、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相を前記酸化反応ユニットで酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を含むストリームを生成し;
好ましくは、前記脱水反応ユニットは、スラリー床、バブリング床、シェル&チューブ反応器、またはそれらの組合せから選択される脱水反応器を含み;
好ましくは、前記酸化反応ユニットは、スラリー床、固定床、バブリング床、またはそれらの組合せから選択される酸化反応器を含み;および
好ましくは、前記相分離ユニットは、相分離タンクを含む、反応システム。
【請求項13】
精製ユニットおよび乾燥ユニットをさらに備え、前記酸化反応ユニットからの2,5-フランジカルボン酸を含む前記ストリームが、前記精製ユニットおよび前記乾燥ユニットにおいて処理されて、2,5-フランジカルボン酸の生成物が得られ;
好ましくは、前記精製ユニットは、吸着塔、減圧蒸留塔、分子蒸留器、流動床、管状連続晶析装置、沈殿晶析装置、またはそれらの組合せから選択される装置を含み;
好ましくは、前記乾燥ユニットは、噴霧乾燥機、流動床乾燥機、空気式乾燥機、箱型乾燥機またはそれらの組合せから選択される乾燥機を含む、請求項12に記載の反応システム。
【請求項14】
脱色精製ユニットおよび凍結乾燥ユニットをさらに備え、前記相分離ユニットからの5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相の一部が、前記脱色精製ユニットおよび前記凍結乾燥ユニットにおいて処理されて、5-ヒドロキシメチルフルフラールの生成物が得られ、
好ましくは、前記脱色精製ユニットは、活性炭吸着塔、減圧蒸留塔および晶析装置を含み;および
好ましくは、前記凍結乾燥ユニットは、凍結乾燥機を含む、請求項12または13に記載の反応システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、酸素を含む有機化合物の調製に関し、特に、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスおよびシステムに関する。
【0002】
〔技術の背景〕
再生可能であり、かつ供給源が広範であるというバイオマスの特性のために、バイオマスを原料として、化学触媒作用によって燃料およびファインケミカルを調製する研究は、現在、バイオマスの利用および変換のための重要な研究ルートとなっている。グルコースおよびフルクトースに代表される糖化合物は、バイオマス資源の重要な成分である。糖化合物から出発して、新しいプラットフォーム化合物および中間体が化学プロセスを通じて調製される。さらなる変換により、化石資源から得られる化学製品を効果的に代替することができ、これにより、現在の化石資源の大量使用によるエネルギー危機および環境問題を効果的に緩和することができる。近年、ヘキソースを原料として脱水して得られる生成物である5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)が、重要なバイオベースのフラン化合物であるとみなされている。この化合物およびその誘導体は、さらに様々なファインケミカルに変換することができ、高分子単量体、フラン医薬中間体、農薬化学品、または他の分野への応用が期待されている。したがって、糖化合物を利用してHMFを調製する効率的なプロセスを開発することは、生物資源の有効利用にとって重要な課題である。一方、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)は、HMFの触媒酸化によって得られる。FDCAはバイオベースのポリマー材料の合成に使用され、耐熱性および機械的特性を効果的に向上させることができる。FDCAは石油由来のモノマーであるテレフタル酸(PTA)の理想的な代替品と考えられており、ポリエステル、ポリアミドおよびエポキシ樹脂などのバイオベースポリマーの合成に広く使用できる。したがって、2,5-フランジカルボン酸の合成プロセスを開発することは、重要な応用価値があり、バイオマスの持続可能な利用において重要である。
【0003】
HMFは、グルコースまたはフルクトースから調製することができる。グルコースと比較して、フルクトースのルートは、異性化を必要とせず、目的生成物を得るためにプロトン酸触媒の下でフルクトースの分子内脱水のみを必要とする。反応速度が速く、生成物の収率も高い。フルクトースのルートは、現在、HMF調製プロセスにおけるホットな研究テーマである。研究の結果、HMFの生産収率を向上させ、HMFの大規模生産を可能な限り早期に実現するためには、液体酸触媒に適した二液相溶媒系を確立し、HMFの連続生産技術を実現することが急務であることがわかった。しかし、一般的な液体酸触媒は、水および有機溶媒に対する溶解度が高く、反応媒体と生成物との分離が困難である。そのため、目的生成物の収率および純度を向上させつつ、適切な手段で液体酸触媒を回収する効果的なプロセスを確立し、その他の副生成物および不純物の効果的な分離および総合利用を強化して、環境負荷を低減する必要がある。また、HMFの収率向上における塩化合物の役割、既存の反応因子がHMF収率に及ぼす阻害要因の打破など、触媒および有機溶媒以外の反応因子にも注意を払う必要がある。
【0004】
一方、HMFの選択的酸化によりFDCAを調製するプロセスでは、FDCAの水への溶解度が低い(<1g/100mLの水、100℃)ため、研究者は、反応プロセスにおいてアルカリ性化合物を加えることが多く、これにより生成物であるFDCAとともにFDCAの可溶性塩化合物が生成し、したがって、プロセスの一方向処理能力が向上する。しかしながら、これらのプロセスで得られたFDCAの塩化合物は、ポリマーの製造および他のプロセスで直接使用することはできず、FDCA生成物に戻すためには酸性化(pH≒1)処理を施さなければならない。このため、FDCAの製造プロセス全体が複雑になり、環境への親和性が低下することは間違いない。CN108779088Aは、アルカリ化合物を導入することなく、HMFを一段階または二段階で酸化してFDCAを調製するプロセスを開示している。このプロセスは、水および有機溶媒の混合溶媒を使用することにより、FDCAの溶解度を効果的に向上させる。このプロセスで使用される触媒は担持金属触媒であり、金属成分はPtおよびAuであり、担体の比表面積は20m2/g~500m2/gの範囲に限定されている。PtおよびAuの価格が高いため(約300元/g~400元/g)、プロセス全体のコストが比較的高く、実際に適用することは困難である。CN111039906Aは、炭素ベースの担体の表面にN元素をドープすることにより、水および有機溶媒の混合溶媒中でHMFを酸化してFDCAを調製する方法を実現している。しかし、この方法では、担体に窒素をドープするプロセスが比較的複雑であり、それに応じて触媒の調製コストが高くなり、これもまた実際に適用することは困難である。
【0005】
したがって、既存の技術における上記の問題を解決するために、2,5-フランジカルボン酸を合成するための簡便、安価かつグリーンなプロセスを提供することが急務である。
【0006】
上述の「技術の背景」の項で開示された情報は、本出願の背景の理解を深めることのみを目的としており、したがって、当業者にとって既知の既存技術に関する情報が含まれている可能性があることに留意されたい。
【0007】
〔発明の概要〕
本出願の1つの目的は、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスおよびシステムを提供することである。このプロセスは、フルクトースベースの炭水化物から出発して、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造することができ、2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスにおける5-ヒドロキシメチルフルフラールの分離および精製を回避することができ、また、簡便である、3つの廃棄物の発生および排出が少ない、環境に優しいなどの利点を有する。
【0008】
本出願の別の目的は、5-ヒドロキシメチルフルフラールから2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスを提供することであり、このプロセスは、従来のプロセスにおけるアルカリ化合物の導入、およびそれによって引き起こされる酸性化処理などの複雑なプロセスを回避することができる。同時に、このプロセスでは、比表面積の高い炭素含有担体に担持されたRuベースの触媒を酸化触媒として使用することができる。触媒の調製法は簡単で安価であり、反応プロセスはグリーンで簡潔であり、FDCA収率は高い。
【0009】
上記の目的を達成するために、一態様において、本出願は、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって:
(1)極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で、プロトン酸触媒の存在下、フルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成するステップ;および
(2)ステップ(1)で得られた、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相に水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
プロトン酸触媒は、塩酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、スルファミン酸、またはそれらの組合せから選択され;
酸化触媒は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含み、活性金属成分は、Ru、Pt、Pd、Auまたはそれらの組合せから選択される貴金属を含む、
プロセスを提供する。
【0010】
別の態様において、本出願は、2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスであって、以下のステップ:
有機溶媒および水を含む混合溶媒中、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
有機溶媒は、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、
酸化触媒は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含み、担体は、1000m2/g~2000m2/gの比表面積を有する活性炭であり、活性金属成分はRuを含む、
プロセスを提供する。
【0011】
さらに別の態様において、本出願は、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システムを提供する。このシステムは、脱水反応ユニット、相分離ユニットおよび酸化反応ユニットを備え、脱水反応ユニットは入口および出口を有し、相分離ユニットは入口、水相出口および有機相出口を有し、酸化反応ユニットは入口および出口を有し、脱水反応ユニットの出口は相分離ユニットの入口と連結され、相分離ユニットの水相出口は脱水反応ユニットの入口と連結され、相分離ユニットの有機相出口は酸化反応ユニットの入口と連結され、
フルクトースベースの炭水化物を、脱水反応ユニットにおいて、プロトン酸触媒の存在下、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む二相ストリームを生成し、二相ストリームを相分離ユニットで相分離させて、酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成し、酸触媒を含む水相を脱水反応ユニットに戻し、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を酸化反応ユニットで酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を含むストリームを生成する。
【0012】
本出願の5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスおよびシステムは、以下の利点の1つ以上を有する:
1.使用する触媒および有機溶媒は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の大規模生産を助長する;
2.二相溶液中のHMFおよび酸触媒の溶解度を調整することにより、脱水反応後、HMFおよび酸触媒はそれぞれ有機相および水相に保持され、液体酸触媒の反応媒体および目的生成物からの分離という困難な問題を解決し、触媒の分離操作を大幅に簡素化し、反応の連続運転を実現する;
3.脱水反応中、HMFと酸触媒とのin-situ分離が達成され、有機相中のHMFの酸量が減少し、HMFの高温in-situ抽出中に酸触媒の存在によって引き起こされるHMFの分解が回避される;
4.HMFを含む有機相をそのまま原料として2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を製造することで、中間的な分離精製プロセスが回避され、FDCAの製造プロセスが簡素化される;
5.FDCAを調製するための酸化反応において、有機溶液および水から形成される混合溶媒を使用することで、FDCAの溶解度を高め、アルカリ化合物の導入を回避し、またFDCA塩生成物の生成を回避することができる。FDCAを含む溶液が直接得られ、溶液を分離精製した後、FDCAを得ることができるため、プロセスフローが大幅に簡略化され、同時に、酸性化プロセスにより大量の廃酸および廃水が発生する事態が回避される。
6.高い比表面積を有する炭素含有材料に担持されたRuベースの触媒は、本出願のプロセスの酸化反応ステップに使用することができる。この触媒の調製プロセスは簡単で、より安価で、かつ製造の大規模化に好都合であり、産業応用の見通しが良い。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を構成する添付の図面は、本出願のさらなる理解を提供するためのものであり、限定のためであると考えられるべきではない。本出願は、以下の詳細な説明と組み合わせて、図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1は、本出願の反応システムの好ましい実施形態の概略フローチャートである。
【0014】
〔発明の詳細な説明〕
以下では、添付の図面と組み合わせて、本出願の具体的な実施形態を詳細に説明する。本明細書で説明する具体的な実施形態は、本出願を例示し説明することのみを意図したものであり、本出願を限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0015】
本明細書で開示される任意の特定の数値(数値範囲の端点を含む)は、数値の正確な値に限定されるものではなく、正確な値に近い値、例えば正確な値の±5%以内のすべてのあり得る値をさらにカバーするものと理解されたい。さらに、開示された数値範囲について、範囲の端点値の間、範囲の1つの端点値と範囲内の1つの特定点値との間、および範囲内の任意の2つの特定点値の間の任意の組合せによって、1つ以上の新しい数値範囲を得ることができる。これらの新しい数値範囲も、本明細書に具体的に開示されているものとみなす。
【0016】
特に断りのない限り、本明細書において使用される用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書において用語が定義され、かつその定義が当該分野における一般的な理解と異なる場合、本明細書における定義が優先するものとする。
【0017】
本出願において、用語「スルホン酸」は、スルホン基(-SO3H)をヒドロカルビルと連結することによって形成される、一群の強酸性有機化合物を指し、一般式R-SO3Hを有し、Rは、アルキルまたはアリール、特にC1~C12アルキルまたはC6~C12アリールなどのヒドロカルビルであり、アルキル基およびアリール基はまた、任意に、ヒドロキシルなどの置換基を有することができる。
【0018】
本出願において、用語「低沸点極性有機溶媒」は、水の沸点に近い沸点もしくは水より低い沸点を有する(例えば、大気圧で110℃未満の沸点を有する)極性有機溶媒をいう。
【0019】
本出願において、用語「ハロゲン化第四級アンモニウム塩」は、当該技術分野において一般的に理解される意味を有し、特に、一般式R4NXを有する化合物を指し、各基Rは独立して、C1~C12ヒドロカルビルなどのヒドロカルビルであり、Xは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素などのハロゲンである。任意に、ヒドロカルビルRはまた、ヒドロキシルおよびハロゲンなどの置換基を有していてもよい。
【0020】
本出願において、用語「ヒドロカルビル」は、当該技術分野において一般的に理解される意味を有し、特には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アリル、シクロヘキシルおよびフェニルなどの種々の脂肪族、脂環式および芳香族のヒドロカルビルを含む、飽和または不飽和であり得る炭化水素化合物から、水素原子を除去することによって形成される基を指す。
【0021】
本出願において、明示的に記載されない限り、記載されていない課題または事項は、何ら変更されることなく、当該技術分野において公知のものがそのまま適用されるものとする。さらに、本明細書に記載された任意の実施形態は、本明細書に記載された1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして形成された技術的解決策または技術的思想は、当業者がその組合せが明らかに不合理であると考えない限り、本出願の当初の開示または内容の一部とみなされ、本明細書に開示または予想されていない新規事項とはみなされないものとする。
【0022】
教科書および雑誌論文を含むがこれに限定されない、本明細書で言及されているすべての特許文献および非特許文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0023】
上述のように、第1の態様において、本出願は、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって:
(1)極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で、プロトン酸触媒の存在下、フルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成するステップ;および
(2)ステップ(1)で得られた5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相に水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ、を含む、プロセスを提供する。
【0024】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物は、精製フルクトース、粗フルクトース、ポリフルクトース、フルクトースシロップ、フルクトースデキストロースシロップまたはそれらの組合せから選択される。
【0025】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、ハロゲン化第四級アンモニウム塩は、非置換のC1~C12ヒドロカルビルを有するハロゲン化第四級アンモニウム塩、ヒドロキシもしくはハロゲンで置換されたC1~C12ヒドロカルビルを有するハロゲン化第四級アンモニウム塩、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは、非置換のC1~C6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライド、ヒドロキシもしくはハロゲンで置換されたC1~C6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライド、またはそれらの組合せから選択され、さらに好ましくは、非置換のC1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリド、非置換のC1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムブロミド、ヒドロキシもしくはハロゲンで置換されたC1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリド、ヒドロキシもしくはハロゲンで置換されたC1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムブロミド、またはそれらの組合せから選択される。特に好ましくは、ハロゲン化第四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド(クロルメコートクロリド)、アリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、またはそれらの組合せから選択され、さらに好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド、またはそれらの組合せから選択される。
【0026】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、極性有機溶媒は、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンである。
【0027】
本出願のプロセスに適したプロトン酸触媒は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、硝酸などの無機酸;または脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸など)、スルホン酸、スルフィン酸などの有機酸であり得;好ましくは、塩酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、スルファミン酸、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは、スルファミン酸、硫酸およびスルホン酸から選択され、特に好ましくは、硫酸およびスルホン酸から選択される。本出願のプロセスにおいて、プロトン酸触媒としてスルファミン酸、硫酸およびスルホン酸を使用する場合、より高い触媒回収率を達成することができる。特に好ましい実施形態では、スルホン酸は、ベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸またはそれらの組合せから選択され、より好ましくはメチルスルホン酸である。
【0028】
本出願によれば、ステップ(1)において、プロトン酸触媒は、使用される特定の有機溶媒の存在下で、水とより強い水素結合ネットワークを確立することができ、そのため、触媒は、ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液には可溶であるが、有機溶媒には不溶であり、したがって、反応終了後、および有機溶媒とハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液とが相分離した後、酸触媒は下層のハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液に実質的に保持され、上層の目的生成物とはin-situで分離される。この時、水相溶液はハロゲン化第四級アンモニウム塩および液体酸の混合水溶液であり、ハロゲン化第四級アンモニウム塩を酸触媒からさらに分離する必要がなく、液分離により直接回収することができる。脱色後はそのまま再利用できる。有機相に残った少量の酸触媒は、同量のアルカリを加えて中和することができる。生成した塩は有機相から析出し、溶媒回収に影響を与えることなく直接ろ過することができる。このようにして、液体酸触媒を目的生成物から分離するという困難な問題を解決し、5-ヒドロキシメチルフルフラールの連続的な製造を達成することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、ステップ(1)は、酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を得るための脱水反応生成物の相分離をさらに含む。本出願によれば、ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物を脱水して目的生成物を調製する際に、5-ヒドロキシメチルフルフラールがリアルタイムで有機溶媒中に抽出される。したがって、反応終了後、および有機溶媒とハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液とが相分離した後、上層の有機溶媒中には5-ヒドロキシメチルフルフラールが存在する。同時に、反応中に生成した副生成物およびフミンなどの不純物が有機相に残存するため、上層の有機溶媒は褐色を呈する。具体的な例として、脱水反応の二液相反応系の相分離プロセスには:反応が終了し、撹拌を終了した後、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の塩析効果により、有機溶媒とハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液とが直ちに上層相と下層相とに分かれるものが含まれる。ここで、上層相は有機溶媒、下層相はハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液であり、二相の間には明確な相界面が存在する。この二相は、シリンジ抽出、分離漏斗分離、または二相を分離して取り出すための当該技術分野における他の従来のプロセスなどの、従来のプロセスによって分離することができる。
【0030】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、ステップ(1)において、相分離後、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相の一部を脱色し、分離精製して5-ヒドロキシメチルフルフラールを得る。好ましくは、脱色処理は、活性炭吸着により行うことができ、分離精製プロセスは、脱色された5-ヒドロキシメチルフルフラール溶液の減圧蒸留、次いで結晶化または再結晶化、次いで凍結乾燥を含むことができる。さらに、本出願のプロセスは、不純物を吸着した活性炭を高温で焼成し、活性炭の吸着能力を回復させることも含むことができる。
【0031】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物の反応媒体に対する質量比は、1:1~1000、好ましくは1:2~100、より好ましくは1:5~20であり、反応系は、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液から構成される二液相反応媒体である。
【0032】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物のハロゲン化第四級アンモニウム塩に対する質量比は、1:0.1~10、好ましくは1:1~5である。
【0033】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、反応媒体の総容量に対するハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液の容量の割合は、5%~50%、好ましくは10%~35%である。
【0034】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、プロトン酸の質量を基準として、反応媒体の水相中のプロトン酸触媒の濃度は、0.02g/mL~0.5g/mL、好ましくは0.03g/mL~0.1g/mLである。
【0035】
好ましい実施形態では、ステップ(1)において、脱水反応の条件が:80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の反応温度;0.1時間~12時間、好ましくは0.1時間~1時間の反応時間を含む。
【0036】
本出願によれば、ステップ(1)の脱水反応に使用する反応器は、厚肉の耐圧容器、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライニングを有するステンレス鋼反応器、および当該技術分野で一般的に使用される他の反応器を使用することができる。水相と有機相との相界面の観察を容易にし、二相の分離操作をさらに容易にするために、反応器は、好ましくは厚肉の耐圧容器である。
【0037】
本出願によれば、ステップ(1)で得られた、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相は、5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量が比較的多く、その中の不純物の含有量が比較的少ないため、分離精製プロセスを経ることなく、酸化触媒および酸素ガスの存在下で、ステップ(2)で説明した酸化反応を行うための2,5-フランジカルボン酸製造用原料として直接使用することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、ステップ(2)の酸化反応は、アルカリの存在なしに行われる。
【0039】
本出願によれば、ステップ(2)で使用される酸化触媒は担持金属触媒であり、好ましくは担体および担体上に担持された活性金属成分を含む。活性金属成分は、Ru、Pt、Pd、Auまたはそれらの組合せから選択される貴金属を含み、好ましくはRuを含む。好ましい実施形態では、酸化触媒の活性金属成分は、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである。例えば、活性金属成分は、RuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであってもよく、活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率は、5%~100%、好ましくは20%~100%、より好ましくは40%~100%、さらに好ましくは50%~100%、特に好ましくは60%~100%である。
【0040】
好ましい実施形態では、担体の全質量を基準として、酸化触媒中の活性金属成分の含有量は、0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%であり、特に好ましくは、Ruの含有量は5%~15%である。
【0041】
好ましい実施形態では、担体は炭素含有材料であり、好ましくは、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは活性炭である。さらに好ましい実施形態では、担体は、1000m2/g~2000m2/g、好ましくは1000m2/g~1500m2/gの比表面積を有する活性炭であり;特に好ましくは、活性炭は約1nm~5nmの孔径を有する。本出願の発明者らは、予想困難なこととして、高い比表面積(1000m2/g~2000m2/g)を有する炭素含有材料(活性炭等)に担持されたRuベースの触媒を使用することが、アルカリが無い条件下で水および有機溶媒から構成される混合溶媒中でFDCAを調製するためのHMF酸化の反応プロセスにより一層適しているを見出した。また、高い比表面積(1000m2/g~2000m2/g)を有する活性炭は、アルカリ性の窒素含有化合物で処理することなく担体として用いることができ、その結果、優れた性能を有するRuベースの触媒を得ることができ、触媒調製プロセスの簡略化およびコストの低減を図ることができる。したがって、本出願で使用する酸化触媒は、窒素元素を実質的に含まないもの、例えば、窒素元素の含有量が、触媒重量に対して0.01%未満であるものが特に好ましい。
【0042】
本出願によれば、酸化触媒は、等容含浸プロセス、インシピエント湿潤含浸プロセス、イオン交換プロセス、堆積沈殿プロセスまたは真空含浸プロセスなどの既存のプロセスに従って調製することができる。例えば、いくつかの具体的な実施形態において、活性金属成分を担体上に堆積させた後、得られた固体粉末を100℃~140℃の温度のオーブン中で約6時間~24時間乾燥させ、得られた触媒前駆体をまず窒素ガス中で300℃~800℃の温度で一定時間焼成し、次いで還元性雰囲気(H2、またはH2およびN2の混合雰囲気など)中で200℃~500℃の温度で約6時間~24時間還元して酸化触媒を得ることができる。本出願で使用する酸化触媒の調製プロセスは、簡便で、安価で、製造の大規模化が容易であり、良好な工業的応用の見通しを有している。
【0043】
好ましい実施形態では、ステップ(2)において、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相の水に対する質量比は、5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1である。
【0044】
好ましい実施形態では、ステップ(2)において、酸化触媒は、酸化触媒中の活性金属成分の5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される。
【0045】
好ましい実施形態では、ステップ(2)において、酸化反応の条件は、50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、および、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含み、さらに好ましくは、酸化反応は、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる。
【0046】
好ましい実施形態では、ステップ(2)は、酸化反応から得られた2,5-フランジカルボン酸溶液の生成物を分離精製して2,5-フランジカルボン酸を得ることをさらに含む。より好ましくは、分離精製プロセスは、2,5-フランジカルボン酸を含む溶液を減圧蒸留に供することを含み、蒸留温度は30℃~100℃、好ましくは30℃~50℃であり、蒸留時間は1時間~10時間、好ましくは2時間~4時間である;あるいは、分離精製プロセスは、2,5-フランジカルボン酸を含む溶液を結晶化または再結晶化に供することを含み、結晶化温度は-10℃~30℃、好ましくは0℃~20℃であり、結晶化時間は1時間~24時間、好ましくは5時間~10時間である。さらに好ましくは、精製プロセスは、蒸留後または結晶化後の生成物を乾燥するプロセスをさらに含み、乾燥プロセスは、好ましくは凍結乾燥である。乾燥時間は3時間~24時間、好ましくは18時間~24時間である。
【0047】
第2の態様において、本出願は、2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスであって、以下のステップ:
有機溶媒および水を含む混合溶媒中、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
酸化触媒は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含み、担体は、1000m2/g~2000m2/g、好ましくは1000m2/g~1500m2/gの比表面積を有する活性炭であり、活性金属成分は、Ruを含む、
プロセスを提供する。
【0048】
好ましい実施形態では、本出願のプロセスの酸化反応は、アルカリの存在なしに行われる。
【0049】
好ましい実施形態では、使用される有機溶媒は、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンであり;
本出願の第1および第2の態様のプロセスの酸化反応において、一方では、原料中の有機溶媒および加えられた水から形成される混合溶媒は、2,5-フランジカルボン酸の生成物の溶解度を増加させることができ、それによりアルカリ化合物の導入を回避し、また塩生成物の発生も回避することができる。2,5-フランジカルボン酸を含む溶液を直接得て、溶液を分離精製した後、2,5-フランジカルボン酸を得ることができるため、生成物の後処理ステップが簡略化され、その後の酸性化プロセスで大量の廃酸および廃水の発生を避けることができる。他方では、酸化触媒に使用される活性金属Ruの価格は、PtまたはAuなどの金属に比べて著しく低い。同時に、触媒は市販の活性炭および金属前駆体から簡単なプロセスで調製でき、FDCA収率も高い(90%超)。開示されたプロセスと比較して、本出願のプロセスはプロセスフローを大幅に簡略化し、コストを削減する。反応プロセスはグリーンで簡潔であり、FDCA収率は高い。工業的に大きな可能性を持つFDCA調製プロセスである。
【0050】
好ましい実施形態では、酸化触媒の活性金属成分は、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである。例えば、活性金属成分は、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであってもよく、活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率は40%~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは60%~100%である。本出願の第2の態様によれば、酸化触媒の他の特徴は、本出願の第1の態様で説明したものであってよく、ここでの再度の説明は省略する。
【0051】
好ましい実施形態では、混合溶媒は、有機溶媒および水からなる。さらに好ましくは、混合溶媒中、有機溶媒の水に対する質量比は、5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1である。
【0052】
好ましい実施形態では、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび混合溶媒から形成される溶液において、5-ヒドロキシメチルフルフラールの質量割合は、0.1%~30%、好ましくは0.5%~20%、より好ましくは1%~10%である。
【0053】
好ましい実施形態では、酸化触媒は、酸化触媒中の活性金属成分の5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される。
【0054】
好ましい実施形態では、酸化反応の条件が:50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含み、さらに好ましくは、酸化反応は、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる。
【0055】
第3の態様において、本出願は、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システムを提供する。本システムは、脱水反応ユニット、相分離ユニットおよび酸化反応ユニットを備え、脱水反応ユニットは入口および出口を有し、相分離ユニットは入口、水相出口および有機相出口を有し、酸化反応ユニットは入口および出口を有し、脱水反応ユニットの出口は相分離ユニットの入口と連結され、相分離ユニットの水相出口は脱水反応ユニットの入口と連結され、相分離ユニットの有機相出口は酸化反応ユニットの入口と連結され、
フルクトースベースの炭水化物を、脱水反応ユニットにおいて、プロトン酸触媒の存在下、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む二相ストリームを生成し、二相ストリームを相分離ユニットで相分離させて、酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成し、酸触媒を含む水相を脱水反応ユニットに戻し、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を酸化反応ユニットで酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を含むストリームを生成する。
【0056】
好ましい実施形態では、脱水反応ユニットは、スラリー床、バブリング床、シェル&チューブ反応器、またはそれらの組合せから選択される脱水反応器を含む。
【0057】
好ましい実施形態では、酸化反応ユニットは、スラリー床、固定床、バブリング床、またはそれらの組合せから選択される酸化反応器を含む。
【0058】
好ましい実施形態では、相分離ユニットは、相分離タンクなどを含む。
【0059】
好ましい実施形態では、反応システムは、精製ユニットおよび乾燥ユニットをさらに備え、酸化反応ユニットからの2,5-フランジカルボン酸を含むストリームが、精製ユニットおよび乾燥ユニットにおいて処理されて、2,5-フランジカルボン酸の生成物を得る。
【0060】
さらに好ましい実施形態では、精製ユニットは、蒸留分離ユニットであってもよく、分離装置は、減圧蒸留塔または分子蒸留器であってもよく;また、精製ユニットは、結晶化分離ユニットであってもよく、分離装置は、流動床、管状連続晶析装置または沈殿晶析装置などであってもよく;また、精製ユニットは、吸着分離ユニットであってもよく、分離装置は、活性炭吸着塔であってもよい。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、乾燥ユニットは、噴霧乾燥機、流動床乾燥機、空気式乾燥機、箱型乾燥機またはそれらの組合せから選択される乾燥機を含む。
【0062】
好ましい実施形態において、反応システムは、脱色精製ユニットおよび凍結乾燥ユニットをさらに備え、相分離ユニットからの5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相の一部が、脱色精製ユニットおよび凍結乾燥ユニットにおいて処理されて、5-ヒドロキシメチルフルフラールの生成物を得る。特に好ましくは、脱色精製ユニットは、活性炭吸着塔、減圧蒸留塔および晶析装置を含み、凍結乾燥ユニットは、凍結乾燥機を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、本出願の反応システムは、活性炭焼成炉および対応する排ガス吸収装置を備えていてもよい。
【0064】
本出願の5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システムの好ましい実施形態を、添付図面と併せて以下に詳細に説明する。
【0065】
図1に示すように、反応システムは、脱水反応ユニット、相分離ユニット、酸化反応ユニット、精製ユニットおよび乾燥ユニットを備え、フルクトースベースの炭水化物原料を、脱水反応ユニットにおいて、プロトン酸触媒の存在下、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む二相ストリームを生成する。二相ストリームを相分離ユニットで相分離させ、酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成する。酸触媒を含む水相は、脱水反応ユニットに戻される。5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相は、酸化反応ユニットで酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を含む溶液が生成される。この2,5-フランジカルボン酸を含む溶液を精製ユニットで分離および/または精製した後、乾燥ユニットで乾燥して、2,5-フランジカルボン酸の生成物を得る。
【0066】
好ましい実施形態では、本出願は、以下の技術的解決策を提供する:
1.5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって:
(1)低沸点極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液から構成される二相反応系において、スルホン酸基を含む強酸性液体酸触媒の触媒作用下、反応器中でフルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて;反応終了後、反応系を水相と5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相とに分離するステップ;および
(2)ステップ(1)の5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を原料として用い、水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、反応器中で5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させ、2,5-フランジカルボン酸を含む溶液を製造し、これを分離精製して2,5-フランジカルボン酸を得るステップ;を含み、
酸化触媒は担持金属触媒である。
【0067】
2.ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物が、精製フルクトース、粗フルクトース、ポリフルクトース、フルクトースシロップ、およびフルクトースデキストロースシロップのうちの1種である、項目1に記載のプロセス。
【0068】
3.ステップ(1)において、液体酸触媒が、硫酸、メチルスルホン酸またはそれらの組合せから選択される、項目1に記載のプロセス。
【0069】
4.ステップ(1)において、ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、C1~C12ヒドロカルビルハロゲン化第四級アンモニウム塩、およびヒドロキシまたはハロゲンで置換されたC1~C12ヒドロカルビルハロゲン化第四級アンモニウム塩から選択され、好ましくは、C1~C6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライド、およびヒドロキシまたはハロゲンで置換されたC1~C6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライドの1種以上、さらに好ましくは、C1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、およびヒドロキシまたはハロゲンで置換されたC1~C4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミドの1種以上である、項目1に記載のプロセス。
【0070】
5.ステップ(1)において、ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、テトラメチルアンモニウムクロリド、コリンクロリド、およびクロロコリンクロリドのうちの1種である、項目1に記載のプロセス。
【0071】
6.ステップ(1)において、極性有機溶媒が、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、およびアセトニトリルのうちの1種または2種であり、好ましくは1,4-ジオキサンである、項目1に記載のプロセス。
【0072】
7.ステップ(1)において、フルクトースベースの炭水化物の反応系に対する質量比が、1:1~1000、好ましくは1:2~100、より好ましくは1:5~20であり、ここで、反応系とは、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液の合計を指す、項目1に記載のプロセス。
【0073】
8.ステップ(1)において、ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液が、反応系の総容量の5%~50%、好ましくは10%~35%を構成する、項目1に記載のプロセス。
【0074】
9.ステップ(1)において、水相中の液体酸触媒の濃度が、0.02g/mL~0.5g/mL、好ましくは0.03g/mL~0.1g/mLである、項目1に記載のプロセス。
【0075】
10.ステップ(1)において、脱水反応の温度が80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃であり;脱水反応の時間が0.1時間~12時間、好ましくは0.1時間~1時間である、項目1に記載のプロセス。
【0076】
11.ステップ(2)において、担持金属触媒が、担体および当該担体上に担持された金属を含み、当該金属が、Ru、またはRuおよびPt、PdもしくはAuのうちの1種以上から構成される組合せである、項目1に記載のプロセス。
【0077】
12.ステップ(2)において、RuおよびPt、PdまたはAuのうちの1種以上から構成される組合せにおける、Ruの質量含有率が、5%~95%、好ましくは20%~90%、より好ましくは40%~80%である、項目11に記載のプロセス。
【0078】
13.ステップ(2)において、担持金属触媒において、金属が、担体の全質量を基準として、0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%の量で担持される、項目11に記載のプロセス。
【0079】
14.ステップ(2)において、担体が、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび酸化グラフェンのうちの1種以上を含む炭素含有材料から選択され、好ましくは活性炭である、項目11に記載のプロセス。
【0080】
15.ステップ(2)における担体が活性炭である場合、当該活性炭は、1000m2/g~1500m2/gの比表面積を有する、項目14に記載のプロセス。
【0081】
16.ステップ(2)において、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相の水に対する質量比が、5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1である、項目1に記載のプロセス。
【0082】
17.ステップ(2)において、担持金属触媒中の金属の5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250である、項目1に記載のプロセス。
【0083】
18.ステップ(2)において、酸素ガスは、純酸素、空気、または酸素ガスおよび窒素ガスから構成される混合ガスに由来し、酸素ガスは、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの分圧を有する、項目1に記載のプロセス。
【0084】
19.ステップ(2)において、酸化反応の反応温度が、50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃である、項目1に記載のプロセス。
【0085】
20.脱水反応ユニット、相分離ユニット、酸化反応ユニット、分離精製ユニットおよび乾燥ユニットを備える、5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システム。
【0086】
21.脱水反応ユニットにおいて、フルクトースベースの炭水化物を脱水して5-ヒドロキシメチルフルフラールを調製し、脱水反応器が、スラリー床、バブリング床またはシェル&チューブ反応器であり、反応終了後、二液相反応系を相分離ユニットに供給して自動的に相分離させる、項目20に記載の反応システム。
【0087】
22.相分離ユニットから分離された5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相が、酸化反応ユニットの反応器に供給され、酸化反応器が、スラリー床、固定床、またはバブリング床である、項目20に記載の反応システム。
【0088】
23.酸化反応ユニットから得られた2,5-フランジカルボン酸を含む反応溶液を、分離精製ユニットおよび乾燥ユニットに通して、2,5-フランジカルボン酸の生成物を得る、項目20に記載の反応システム。
【0089】
24.分離精製ユニットの反応器が、減圧蒸留塔、分子蒸留器、流動床、管状連続晶析装置または沈殿晶析装置から選択される、項目20に記載の反応システム。
【0090】
25.相分離ユニットから分離された5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相が、脱色精製ユニットおよび凍結乾燥ユニットに部分的に供給され、2,5-フランジカルボン酸の生成物を得る、項目20に記載の反応システム。
【0091】
26.脱色精製ユニットが、活性炭吸着塔、真空蒸留塔、および晶析装置を含み、凍結乾燥ユニットが、凍結乾燥機を含む、項目25に記載の反応システム。
【0092】
〔実施例〕
特に断りのない限り、以下の実施例および比較例で用いた実験方法は従来の方法である。
【0093】
以下の実施例および比較例で使用した材料、試薬などは、特に断りのない限り、市販の供給源から入手することができ、その純度は分析純度グレードであり、5-ヒドロキシメチルフルフラールの供給源は、Beijing Innochem Science and Technology Co.Ltd.であり;活性炭の供給源は、Beijing Dali Hongye Technology Co.Ltd.(分析的に純粋、以下「Dali Hongye」と称する)、Calgon Carbon (Suzhou) Co.Ltd.(ブランド:OVC 4x8、107C)、Cabot (China) Investment Co.Ltd.(ブランド:VXC72)であり;メチルスルホン酸およびスルファミン酸は、China Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から購入し;テトラメチルアンモニウムクロリドは、Beijing Innochem Science and Technology Co.Ltd.から購入した。
【0094】
以下の実施例および比較例では、高速液体クロマトグラフィーを用いて、反応基質の転化率、ならびに反応プロセスにおける目的生成物の選択率、収率および純度を分析および算出した。
【0095】
〔調製例1~6〕
酸化触媒10%Ru/Cは、インシピエント湿潤含浸法で調製した:
0.1gのRuを含むRuCl3水溶液および10.0mLの脱イオン水を混合し、均一に撹拌した。次いで、1.0gの活性炭担体を混合溶液に加えた。含浸は室温で10時間撹拌下で行った。水分を蒸発させて乾燥させた。次いで、得られた固体を110℃のオーブンに入れ、12時間乾燥させて触媒前駆体を得た。Ruの担持量は10(質量)%であった。上記のステップで調製した前駆体を石英管に入れ、まず窒素中で500℃、4時間焼成し、次いで20%H2+N2で500℃、3時間還元して、担持量10%Ru/C触媒C1を製造した。
【0096】
様々な市販の活性炭の粉末または粒子に、様々な担持量のRuを担持させた異なる触媒C2~C6を、同様の方法で調製した。これらの触媒の組成および比表面積を以下の表I-1に示す。
【0097】
〔調製例7~11〕
酸化触媒10%Ru-5%Pt/Cは、インシピエント湿潤含浸法で調製した:
0.1gのRuを含むRuCl3水溶液、0.05gのPtを含むH2PtCl6水溶液、および10.0mLの脱イオン水を混合し、均一に撹拌した。次いで、1.0gの活性炭担体を混合溶液に加えた。含浸は室温で10時間撹拌下で行った。水分を蒸発させて乾燥させた。次いで、得られた固体を110℃のオーブンに入れ、12時間乾燥させて触媒前駆体を得た。Ruの担持量は10(質量)%であり、Ptの担持量は5(質量)%であった。上記のステップで調製した前駆体を石英管に入れ、まず窒素中で500℃、4時間焼成し、次いで20%H2+N2で500℃、3時間還元して、担持量10%Ru-5%Pt/C触媒C7を製造した。
【0098】
様々な市販の活性炭の粉末または粒子に、様々な担持量のRuおよびPt/Pd/Auを担持させた異なる触媒C8~C11を、同様の方法で調製した。これらの触媒の組成および比表面積を以下の表I-1に示す。
【0099】
〔調製例8~12〕
調製例1の手順に従って、様々な市販の活性炭の粉末または粒子に、様々な担持量のPtまたはAuを担持させた異なる触媒D1~D5を調製した。これらの触媒の組成および比表面積を以下の表I-3に示す。
【0100】
〔調製例13~14〕
調製例1の手順に従って、市販のシリカ(SiO2)またはジルコニア(ZrO2)の粉末または粒子に、様々な担持量のRuを担持させた異なる触媒D6~D7を調製した。これらの触媒の組成および比表面積を以下の表I-4に示す。
【0101】
〔調製例15~16〕
特許CN111039906Aの調製例1~2に報告されている方法に従って、アルカリ性の窒素含有化合物で処理した活性炭粉末または粒子に、様々な担持量のRuを担持させた異なる触媒D8~D9を調製した。これらの触媒の組成および比表面積を以下の表I-5に示す。
【0102】
〔実施例I-1~I-4〕
この実施例は、本出願による2,5-フランジカルボン酸の合成プロセスを説明するために使用される。
【0103】
50mLの高圧反応器に、0.5gの5-ヒドロキシメチルフルフラール0.5g、0.2gの調製例1~4で得られた10%Ru/C酸化触媒C1~C4、ならびに10gの水および1,4-ジオキサンから構成される混合溶媒(水の1,4-ジオキサンに対する質量比=1:1)を加えた。反応器を密閉した後、反応器内に残存する空気を置換するために1MPaの酸素を充填した。これを3回繰り返した後、反応器に1MPaの酸素を充填し、反応器を加熱炉に載せて、反応温度100℃まで加熱した。撹拌下、回転速度700rpmで10時間反応を行った。反応終了後、反応器を加熱炉から取り出し、室温まで冷却した。濾過を行い、濾過ケーキを反応溶媒と同じ混合溶媒で洗浄し、最終的に容量を100mLとした。高速液体クロマトグラフィー分析のための液体試料を採取した。反応結果を表I-1に示す。
【0104】
〔実施例I-5~I-6〕
酸化触媒として、調製例5~6で得られたDali Hongye活性炭に担持したRu/C触媒C5~C6を用い、酸化触媒中のRuの担持量を5%または15%とした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-1に示す。
【0105】
〔実施例I-7~I-8〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、酸素圧力を2MPaまたは3MPaとした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-1に示す。
【0106】
〔実施例I-9~I-10〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応温度を120℃または140℃とした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-1に示す。
【0107】
〔実施例I-11~I-15〕
酸化触媒として、調製例7~11で得られたDali Hongye活性炭に担持した触媒C7~C11を用いた以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-1に示す。
【0108】
【0109】
表I-1のデータから、以下のことがわかる:
1.Ru/C酸化触媒の活性炭担体の比表面積は、触媒の活性、およびFDCAの収率に大きな影響を与えた。活性炭担体の比表面積が1000m2/g超の場合、FDCA収率は90%以上に達した;
2.Ru/C酸化触媒におけるRuの担持量は、触媒の性能に影響を与えるが、担持量が5%~15%の範囲では、FDCA収率は90%超であった;
3.酸素ガス分圧および反応温度も、Ru/C酸化触媒の性能に影響する。酸素ガス分圧および反応温度が高すぎると、FDCA収率が低下することがある;および
4.活性炭に担持されたRuおよびPt/Pd/Auからなる酸化触媒も、本出願の調査条件下で比較的良好な触媒性能を示した。
【0110】
〔実施例I-16~I-17〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応溶媒を水およびテトラヒドロフランから構成される混合溶媒(水のテトラヒドロフランに対する質量比=1:1)、または水およびジメチルスルホキシドから構成される混合溶媒(水のジメチルスルホキシドに対する質量比=1:1)とした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-2に示す。
【0111】
〔実施例I-18~I-19〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応溶媒を水および1,4-ジオキサンから構成される混合溶媒(水の1,4-ジオキサンに対する質量比=1:2または1:3)とした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-2に示す。
【0112】
〔実施例I-20~I-21〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応溶媒の全質量を5gまたは20gとした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-2に示す。
【0113】
【0114】
表I-2のデータから、水および1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシドからなる溶媒を、本出願の限定された範囲内で異なる質量比で使用することにより、FDCAを調製するためのHMF酸化の反応プロセスを効果的に達成できることがわかる。全溶媒添加量は触媒の性能に影響する。全溶媒添加量の増加、すなわち5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度の減少は、FDCAの収率の増加に寄与するであろうが、それに対応してこのプロセスの一方向処理能力も低下するであろう。
【0115】
〔実施例I-22~I-26〕
酸化触媒として、活性炭にPt、PdまたはAuを担持した、調製例8~12で調製した触媒D1~D5を用いた以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-3に示す。
【0116】
【0117】
表I-3のデータから分かるように、本出願の限定された範囲内で、活性炭にPt、Pd、またはAuを単独で担持させた酸化触媒は、いずれもRu/C酸化触媒に比べて著しく低い触媒性能を示したことから、本出願に係る比表面積の高い炭素含有材料に担持させたRu/C酸化触媒は、HMFをFDCAに酸化する反応に対して特別な触媒効果を有することがわかる。
【0118】
〔実施例I-27~I-28〕
酸化触媒として、SiO2またはZrO2にRuを担持した、調製例13~14で調製した触媒D6~D7を用いた以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-4に示す。
【0119】
【0120】
表I-4のデータから、本出願の限定された範囲内で、SiO2またはZrO2にRuを担持した酸化触媒は、いずれも本出願で使用したRu/C酸化触媒よりも著しく低い触媒性能を示したことがわかる。
【0121】
〔実施例I-29~I-30〕
酸化触媒として、アルカリ性の窒素含有化合物で処理した活性炭にRuを担持させた、調製例15~16で調製した触媒D8~D9を用いた以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-5に示す。
【0122】
【0123】
表I-1および表I-5のデータを比較すると、本出願で使用した比表面積の高い活性炭に担持したRu/C酸化触媒の触媒性能は、特許CN111039906Aにおいて報告された、アルカリ性の窒素含有化合物で処理した活性炭にRuを担持した触媒と同等であることがわかる。しかしながら、本出願で使用する触媒は、アルカリ性の窒素含有化合物による処理を必要としないため、調製がより簡便であり、大規模な応用に適している。
【0124】
〔比較例I-1~I-4〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応溶媒を純水、純1,4-ジオキサン、純テトラヒドロフラン、または純ジメチルスルホキシドとした以外は、実施例I-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表I-4に示す。
【0125】
【0126】
表I-4のデータから、純水、または1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、もしくはジメチルスルホキシド溶媒のみでは、反応で生成したFDCAを効果的に溶解することができず、反応で生成した少量のFDCAが酸化触媒の表面に付着して触媒活性部位を汚染し、その結果、酸化触媒の活性およびFDCAの収率が著しく低下することがわかる。
【0127】
〔実施例II-1〕
この実施例は、硫酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0128】
15mLの耐圧容器に、0.5gのフルクトース、0.06gの硫酸、1.5gの水、8.5gの1,4-ジオキサン、および0.5gのテトラメチルアンモニウムクロリドを加えた。マルチチャンネルヒーターを110℃に加熱した後、耐圧容器をマルチチャンネルヒーターに入れ、回転速度600r/minで25分間撹拌した。反応終了後、耐圧容器をマルチチャンネルヒーターから取り出し、室温まで自然冷却した。反応液を、相分離器を通して水相と5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相とに分離した。この二相を、高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、フルクトースの転化率およびHMFの収率を測定した。HMFの収率および対応するフルクトースの転化率、ならびに上層の有機相におけるHMFの包接率(すなわち、全HMF量に対する有機相中のHMF量の割合)を表II-1に示す。
【0129】
反応終了後、反応液を速やかに二相に分け、下層の有機第四級アンモニウム塩水溶液を、相分離器を用いて除去した。有機第四級アンモニウム塩水溶液には酸触媒が含まれていた。水相中の酸触媒の含有量をアルカリ滴定法により測定し、さらに触媒供給量を基準として、水相中の酸触媒の回収率(すなわち、酸触媒供給量に対する水相中の酸触媒量の割合)を算出した。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0130】
〔実施例II-2〕
この実施例は、硫酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0131】
テトラメチルアンモニウムクロリドの供給量を1.5gに増やした以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0132】
〔実施例II-3〕
この実施例は、硫酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0133】
テトラメチルアンモニウムクロリドの供給量を2.5gに増やした以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0134】
反応終了後、反応液を速やかに二相に分け、下層の水相溶液を、相分離器を用いて除去し、そのまま次のサイクル試験に投入した。サイクル試験の結果を表II-2に示す。
【0135】
〔実施例II-4〕
この実施例は、メチルスルホン酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0136】
硫酸触媒をメチルスルホン酸触媒に置き換え、触媒の供給量を0.2gに増やした以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0137】
〔実施例II-5〕
この実施例は、メチルスルホン酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0138】
硫酸触媒をメチルスルホン酸触媒に置き換え、触媒の供給量を0.2gに増やした以外は、実施例II-2に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0139】
〔実施例II-6〕
この実施例は、メチルスルホン酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0140】
硫酸触媒をメチルスルホン酸触媒に置き換え、触媒の供給量を0.2gに増やした以外は、実施例II-3に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0141】
〔実施例II-7〕
テトラメチルアンモニウムクロリドの供給量を3.0gに増やした以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0142】
〔実施例II-8〕
テトラメチルアンモニウムクロリドの供給量を3.0gに増やした以外は、実施例II-6に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0143】
〔実施例II-9〕
この実施例は、スルファミン酸触媒を用いて本出願のHMFを合成する脱水反応ステップを示す。
【0144】
硫酸触媒を等モル量のスルファミン酸触媒に置き換えた以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0145】
〔比較例II-1〕
テトラメチルアンモニウムクロリドを等モル比の塩化ナトリウムに置き換えた以外は、実施例II-1に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0146】
〔比較例II-2〕
テトラメチルアンモニウムクロリドを等モル比の塩化ナトリウムに置き換えた以外は、実施例II-2に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0147】
〔比較例II-3〕
テトラメチルアンモニウムクロリドを等モル比の塩化ナトリウムに置き換えた以外は、実施例II-3に従って反応を行った。対応する反応結果を表II-1に示す。
【0148】
【0149】
【0150】
実施例II-1~II-3および実施例II-7の結果を比較すると、反応系にテトラメチルアンモニウムクロリドを添加した後、テトラメチルアンモニウムクロリドの供給量が増加するにつれてHMF収率が徐々に増加し、その供給量が2.5gから3.0gに増加した場合、HMF収率は基本的に変化しないことがわかる。HMFの収率および製造コストを共に考慮すると、フルクトースのテトラメチルアンモニウムクロリドに対する好ましい質量比は1:1~5である。
【0151】
実施例II-4~II-6および実施例II-8の結果を比較すると、触媒をメチルスルホン酸に置き換えた後、HMF収率がテトラメチルアンモニウムクロリドの供給量と共に変化する傾向が見られ、フルクトースのテトラメチルアンモニウムクロリドに対する好ましい質量比は変化しなかった。
【0152】
実施例II-1、II-4およびII-9の結果を比較すると、同じ反応条件下で、触媒としてスルファミン酸を使用した場合、HMFの収率は、触媒として硫酸またはメチルスルホン酸を使用した場合よりも低いことがわかる。これは、スルファミン酸を使用すると、副生成物であるフミンがより多く生成するためである。したがって、スルファミン酸と比較して、硫酸およびメチルスルホン酸はより好ましい触媒である。
【0153】
表II-2の結果から、実施例II-3では、反応終了後、二液相系の下層水相溶媒を除去し、そのまま次のサイクル試験に投入したことがわかる。連続6サイクル後、フルクトースの転化率は、有意な低下なしに99.0%超を維持した。HMFの収率は4サイクル後にわずかに低下し、5サイクル目の反応では87.2%、6サイクル目の反応では86.8%まで低下し、相分離後の水相溶液は優れた回収性能を有していることが示された。
【0154】
比較例II-1~II-3の結果を比較すると、反応系に使用した塩化合物が無機塩の塩化ナトリウムになると、二液相系は依然として形成できるものの、塩化ナトリウムの供給量が増加してもHMFの収率は増加しなくなることがわかる。このことは、有機第四級アンモニウム塩化物塩とは異なり、通常の無機塩化物塩にはHMFの生成を促進する効果はないことを示していた。また、同じ塩濃度では、有機第四級アンモニウム塩についてのHMF収率は無機塩化物塩についてのHMF収率よりも高く、有機第四級アンモニウム塩のカチオンが金属カチオンに比べてHMFの生成を促進することが示された。
【0155】
〔実施例III-1~III-4〕
この実施例は、実施例II-1で得られた生成物を原料として使用する、2,5-フランジカルボン酸の合成プロセスを説明するために使用される。
【0156】
50mLの高圧反応器に、5gの実施例II-1で得られた5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相、0.2gの調製例1~4で得られた10%Ru/C酸化触媒C1~C4、および5gの水を加えた(水の有機相に対する質量比=1:1)。反応器を密閉した後、反応器内に残存する空気を置換するために1MPaの酸素を充填した。これを3回繰り返した後、反応器に1MPaの酸素を充填し、反応器を加熱炉に載せて反応温度100℃まで加熱した。撹拌下、回転速度700rpmで10時間反応を行った。反応終了後、反応器を加熱炉から取り出し、室温まで冷却した。濾過を行い、濾過ケーキを反応溶媒と同じ混合溶媒で洗浄し、最終的に容量を100mLとした。高速液体クロマトグラフィー分析のために液体試料を採取した。反応結果を表III-1に示す。
【0157】
〔実施例III-5~III-6〕
酸化触媒として、調製例5~6で得られたDali Hongye活性炭に担持したRu/C触媒C5~C6を用い、酸化触媒中のRuの担持量を5%または15%とした以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表III-1に示す。
【0158】
〔実施例III-7~III-8〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、酸素圧力を2MPaまたは3MPaとした以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表III-1に示す。
【0159】
〔実施例III-9~III-10〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を用い、反応温度を120℃または140℃とした以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表III-1に示す。
【0160】
〔実施例III-11~III-15〕
酸化触媒として、調製例7~11で得られたDali Hongye活性炭に担持した触媒C7~C11を用いた以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表III-1に示す。
【0161】
【0162】
表III-1および表I-1のデータを比較すると、本出願の脱水反応ステップから得られた5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む反応生成物を、酸化反応ステップの原料として直接使用することにより、純粋な5-ヒドロキシメチルフルフラールを原料として使用する場合と比較して、実質的に同等の反応結果が得られることが分かる。従って、本出願のプロセスは、フルクトースベースの炭水化物から5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造することができ、高い原料転化率および高い生成物収率を有することが証明できた。
【0163】
〔実施例III-16~III-20〕
酸化触媒として、活性炭にPt、PdまたはAuを担持した、調製例8~12で調製した触媒D1~D5を酸化触媒として用いた以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応結果を表III-2に示す。
【0164】
【0165】
表III-2のデータから、表I-3に示したデータと同様に、本出願の限定された範囲内で、活性炭にPt、PdまたはAuを単独で担持させた酸化触媒は、いずれもRu/C酸化触媒の触媒性能よりも著しく低い触媒性能を示したことから、本出願に係る比表面積の高い炭素含有材料に担持させたRu/C酸化触媒は、HMFをFDCAに酸化する反応に対して特別な触媒効果を有することがわかる。
【0166】
〔比較例III-1〕
酸化触媒として、調製例1で得られたDali Hongye活性炭に担持した10%Ru/C触媒C1を、水を添加せずに用いた以外は、実施例III-1の方法に従って実験を行った。反応後、HMFの転化率は14%であり、FDCAの収率は3%であった。
【0167】
比較例III-1からわかるように、水を添加しないと、有機溶媒のみでは、反応で生成したFDCAを効果的に溶解することができず、反応で生成した少量のFDCAが酸化触媒の表面に付着して触媒活性部位を汚染し、その結果、酸化触媒の活性およびFDCAの収率が著しく低下した。
【0168】
以上、本出願の好ましい実施形態について詳細に説明した。しかしながら、本出願は、上述の実施形態における特定の詳細に限定されるものではない。本出願の技術的思想の範囲内で、本出願の技術的解決手段に様々な簡単な変更を加えることができる。これらの簡単な修正は、すべて本出願の保護範囲に含まれる。
【0169】
さらに、上述した具体的な実施形態で説明した具体的な技術的特徴のそれぞれは、組み合わせることができることに留意すべきである。その組合せは、矛盾することなく、任意の適切な方法によって行うことができる。不必要な繰り返しを避けるために、様々な可能な組合せについては、本出願ではこれ以上説明しない。
【0170】
また、本出願の思想に反しない限り、本出願の様々な異なる実施形態間で任意の組み合わせも可能であり、それらも本出願の開示内容とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【
図1】本出願の反応システムの好ましい実施形態の概略フローチャートである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造するプロセスであって、以下のステップ:
(1)極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で、プロトン酸触媒の存在下、フルクトースベースの炭水化物を分子内脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成するステップ;および
(2)ステップ(1)で得られた、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相に水を加え、酸化触媒および酸素ガスの存在下、前記5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
前記プロトン酸触媒は、塩酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、スルファミン酸、またはそれらの組合せから選択され、好ましくはスルファミン酸、硫酸およびスルホン酸から選択され;
前記酸化触媒は、担体および前記担体上に担持された活性金属成分を含み、前記活性金属成分は、Ru、Pt、Pd、Auまたはそれらの組合せから選択される貴金属を含み、好ましくはRuを含み、より好ましくはRu、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである、プロセス。
【請求項2】
ステップ(1)における前記フルクトースベースの炭水化物が、精製フルクトース、粗フルクトース、ポリフルクトース、フルクトースシロップ、フルクトースデキストロースシロップまたはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記スルホン酸が、メチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはそれらの組合せから選択される、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
12ヒドロカルビルを有するハロゲン化第四級アンモニウム塩から選択され、好ましくは、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
6ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムハライドから選択され、より好ましくは、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムクロリド、および、ヒドロキシまたはハロゲンで任意に置換されたC
1~C
4ヒドロカルビルトリメチルアンモニウムブロミドから選択され、さらに好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド、アリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、またはそれらの組合せから選択され、特に好ましくは、テトラメチルアンモニウムクロリド、コリンクロリド、クロロコリンクロリド、またはそれらの組合せから選択される、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記極性有機溶媒が、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンである、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ステップ(1)が、以下の特徴:
前記フルクトースベースの炭水化物の前記反応媒体に対する質量比は、1:1~1000、好ましくは1:2~100、より好ましくは1:5~20であり、前記反応系は、前記極性有機溶媒および前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液から構成される二液相反応媒体である;
前記反応媒体の総容量に対する前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液の容量の割合は、5%~50%、好ましくは10%~35%である;
プロトン酸の質量を基準として、前記反応媒体の水相中の前記プロトン酸触媒の濃度は、0.02g/mL~0.5g/mL、好ましくは0.03g/mL~0.1g/mLである;および
前記脱水反応の条件が:80℃~200℃、好ましくは100℃~150℃の反応温度;0.1時間~12時間、好ましくは0.1時間~1時間の反応時間を含む、
の1つ以上を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップ(2)の前記酸化触媒が、以下の特徴:
前記活性金属成分が、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであり、前記活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率が5%~100%、好ましくは20%~100%、より好ましくは40%~100%、さらに好ましくは50%~100%である;
前記担体の全質量を基準として、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の含有量が、0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%であり、特に好ましくはRuの含有量が5%~15%である;および
前記担体は、炭素含有材料から選択され、好ましくは、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは活性炭、特に好ましくは、1000m
2/g~2000m
2/g、好ましくは1000m
2/g~1500m
2/gの比表面積を有する活性炭である、
の1つ以上を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(2)が、以下の特徴:
5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相の水に対する質量比は、5:1~0.5:1、好ましくは3:1~1:1である;
前記酸化触媒は、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の前記5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される;
前記酸化反応が、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる;および
前記酸化反応の条件が:50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、および、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含む、
の1つ以上を有する、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項9】
2,5-フランジカルボン酸を製造するプロセスであって、以下のステップ:
有機溶媒および水を含む混合溶媒中、酸化触媒および酸素ガスの存在下、5-ヒドロキシメチルフルフラールを酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を生成するステップ;を含み、
前記有機溶媒は、水と混和し得る非プロトン性極性有機溶媒であり、好ましくは、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組合せから選択され、より好ましくは1,4-ジオキサンであり;
前記酸化触媒は、担体および前記担体上に担持された活性金属成分を含み、前記担体は、1000m
2/g~2000m
2/g、好ましくは1000m
2/g~1500m
2/gの比表面積を有する活性炭であり、前記活性金属成分は、Ruを含み、好ましくはRu、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せである、
プロセス。
【請求項10】
前記活性金属成分が、Ru、またはRuとPt、PdおよびAuから選択される1種以上との組合せであり、前記活性金属成分の全質量を基準として、Ruの質量含有率が40%~100%、好ましくは50%~100%、より好ましくは60%~100%であり;
さらに好ましくは、前記担体の全質量を基準として、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の含有量が0.25%~30%、好ましくは1%~20%、より好ましくは5%~15%であり、特に好ましくはRuの含有量が5%~15%である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
以下の特徴:
前記混合溶媒は、前記有機溶媒および水から構成され、前記有機溶媒の水に対する質量比は、好ましくは5:1~0.5:1、より好ましくは3:1~1:1である;
前記5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび前記混合溶媒から形成される溶液において、前記5-ヒドロキシメチルフルフラールの質量割合は、0.1%~30%、好ましくは0.5%~20%、より好ましくは1%~10%である;
前記酸化触媒は、前記酸化触媒中の前記活性金属成分の前記5-ヒドロキシメチルフルフラールに対するモル比が、1:1~1000、好ましくは1:5~500、より好ましくは1:5~250となるような量で使用される;
前記酸化反応の条件が:50℃~170℃、好ましくは90℃~150℃の反応温度、および、0.2MPa~4MPa、好ましくは1MPa~3MPaの酸素ガス分圧を含む;および
前記酸化反応が、酸素ガス雰囲気下、空気雰囲気下、または酸素ガスおよび窒素ガスの混合雰囲気下で行われる、
の1つ以上を有する、請求項
9に記載のプロセス。
【請求項12】
5-ヒドロキシメチルフルフラールおよび2,5-フランジカルボン酸を連続的に製造する反応システムであって、脱水反応ユニット、相分離ユニットおよび酸化反応ユニットを備え、前記脱水反応ユニットは入口および出口を有し、前記相分離ユニットは入口、水相出口および有機相出口を有し、前記酸化反応ユニットは入口および出口を有し、前記脱水反応ユニットの出口は前記相分離ユニットの入口と連結され、前記相分離ユニットの水相出口は前記脱水反応ユニットの入口と連結され、前記相分離ユニットの有機相出口は前記酸化反応ユニットの入口と連結され、
フルクトースベースの炭水化物を、前記脱水反応ユニットにおいて、プロトン酸触媒の存在下、極性有機溶媒およびハロゲン化第四級アンモニウム塩水溶液を含む二液相反応媒体中で脱水反応させて、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む二相ストリームを生成し、前記二相ストリームを前記相分離ユニットで相分離させて、前記酸触媒を含む水相および5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む有機相を生成し、前記酸触媒を含む前記水相を前記脱水反応ユニットに戻し、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相を前記酸化反応ユニットで酸化反応させて、2,5-フランジカルボン酸を含むストリームを生成し;
好ましくは、前記脱水反応ユニットは、スラリー床、バブリング床、シェル&チューブ反応器、またはそれらの組合せから選択される脱水反応器を含み;
好ましくは、前記酸化反応ユニットは、スラリー床、固定床、バブリング床、またはそれらの組合せから選択される酸化反応器を含み;および
好ましくは、前記相分離ユニットは、相分離タンクを含む、反応システム。
【請求項13】
精製ユニットおよび乾燥ユニットをさらに備え、前記酸化反応ユニットからの2,5-フランジカルボン酸を含む前記ストリームが、前記精製ユニットおよび前記乾燥ユニットにおいて処理されて、2,5-フランジカルボン酸の生成物が得られ;
好ましくは、前記精製ユニットは、吸着塔、減圧蒸留塔、分子蒸留器、流動床、管状連続晶析装置、沈殿晶析装置、またはそれらの組合せから選択される装置を含み;
好ましくは、前記乾燥ユニットは、噴霧乾燥機、流動床乾燥機、空気式乾燥機、箱型乾燥機またはそれらの組合せから選択される乾燥機を含む、請求項12に記載の反応システム。
【請求項14】
脱色精製ユニットおよび凍結乾燥ユニットをさらに備え、前記相分離ユニットからの5-ヒドロキシメチルフルフラールを含む前記有機相の一部が、前記脱色精製ユニットおよび前記凍結乾燥ユニットにおいて処理されて、5-ヒドロキシメチルフルフラールの生成物が得られ、
好ましくは、前記脱色精製ユニットは、活性炭吸着塔、減圧蒸留塔および晶析装置を含み;および
好ましくは、前記凍結乾燥ユニットは、凍結乾燥機を含む、請求項
12に記載の反応システム。
【国際調査報告】