(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】アルジロダイト型の構造を有する無機化合物、その調製方法および電気化学的用途におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 25/14 20060101AFI20241018BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241018BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20241018BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241018BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241018BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241018BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241018BHJP
【FI】
C01B25/14
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M10/0565
H01M10/0567
H01M10/0562
H01M4/40
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/054
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525435
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CA2022051593
(87)【国際公開番号】W WO2023070216
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナソイ, ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】フルート, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ジラール, マルク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】デュシェーヌ, スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ペレア, アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】ロゾン, ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】クラチコフスキー, セルゲイ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM01
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ02
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ14
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA10
5H050EA23
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本技術は、アルカリ金属の硫化物、アルカリ金属の硫酸塩、五硫化リン、およびアルカリ金属のハロゲン化物を摩砕するステップを含む調製方法によって得られる、アルカリ金属をベースとするアルジロダイト型構造を有する無機化合物に関する。同様に、アルジロダイト型構造を有する前記無機化合物を含む電極材料、電極、電解質、および電気化学セル、例えば、電気化学的蓄電池、特に全固体電池におけるそれらの使用が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属をベースとするアルジロダイト型構造を有する無機化合物を調製するための方法であって、前記アルカリ金属の硫化物、前記アルカリ金属の硫酸塩、五硫化リンおよび前記アルカリ金属のハロゲン化物を摩砕するステップを含み、前記アルカリ金属が、リチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択され、例えば、前記アルカリ金属がリチウムである、方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属のフッ化物、前記アルカリ金属の塩化物、前記アルカリ金属の臭化物、前記アルカリ金属のヨウ化物およびそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属の塩化物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属の臭化物である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属のヨウ化物である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属の塩化物および前記アルカリ金属の臭化物の混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属の前記ハロゲン化物が、前記アルカリ金属の塩化物、前記アルカリ金属の臭化物および前記アルカリ金属のヨウ化物の混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記アルジロダイト型構造が、式M
6-xPS
5-x-yO
yZ
1+xのものであり、Mは、Li、NaおよびKから選択される前記アルカリ金属であり、例えば、MはLiであり、Zは、F、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲン原子であり、xは1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数である(例えば、0≦x≦1および0<y≦1)、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
xがゼロとは異なる数(例えば、0<x≦1)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
xおよびyが、電気的中性を達成するように選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルジロダイト型構造が、式M
5.4PS
4.3O
0.1Cl
1.6、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6、M
5.4PS
3.9O
0.5Cl
1.6、M
5.4PS
3.65O
0.75Cl
1.6、M
5.7PS
4.4O
0.3Cl
1.3、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6、M
5.4PS
3.9O
0.5Cl
1.6、M
5.4PS
4.1O
0.3Br
1.6、M
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.6、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.8Br
0.8、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.6Br、M
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.5I
0.1、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.75Br
0.75I
0.1、M
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.7Br
0.7I
0.2およびM
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.4I
0.2[Mは、請求項8に定義されている通りである]のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルジロダイト型構造が、式Li
5.4PS
4.3O
0.1Cl
1.6、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6、Li
5.4PS
3.9O
0.5Cl
1.6、Li
5.4PS
3.65O
0.75Cl
1.6、Li
5.7PS
4.4O
0.3Cl
1.3、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6、Li
5.4PS
3.9O
0.5Cl
1.6、Li
5.4PS
4.1O
0.3Br
1.6、Li
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.6、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.8Br
0.8、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.6Br、Li
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.5I
0.1、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.75Br
0.75I
0.1、Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.7Br
0.7I
0.2およびLi
5.4PS
4.1O
0.3ClBr
0.4I
0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルジロダイト型構造が、式M
6-x-2yPS
5-x-yO
yZ
1+xのものであり、Mは、Li、NaおよびKから選択される前記アルカリ金属であり、例えば、MはLiであり、Zは、F、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲン原子であり、xは1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数である(例えば、0≦x≦1および0<y≦1)、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
xがゼロとは異なる数(例えば、0<x≦1)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルジロダイト型構造が、式M
5.2PS
4.3O
0.1Cl
1.6、M
5.1PS
4.4O
0.3Cl
1.3およびM
4.8PS
4.1O
0.3Cl
1.6[Mは、請求項13に定義されている通りである]のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルジロダイト型構造が、式Li
5.2PS
4.3O
0.1Cl
1.6、Li
5.1PS
4.4O
0.3Cl
1.3およびLi
4.8PS
4.1O
0.3Cl
1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記摩砕するステップが、ミルを使用して行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ミルがプラネタリーミルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記摩砕するステップが、約300rpm~約800rpmの範囲の回転速度で行われる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記摩砕するステップが、約400rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行われる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記摩砕するステップが、約500rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行われる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記摩砕するステップが、約600rpmの回転速度で行われる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記摩砕するステップが、約5時間~約20時間の範囲の時間行われる、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記摩砕するステップが、約10時間行われる、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記摩砕するステップが、約10~約30の範囲のミリングビーズ:前駆体の比で行われる、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記摩砕するステップが、約30のミリングビーズ:前駆体の比で行われる、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
約400℃の最高温度で行われるアニーリングステップをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
約300℃の最高温度で行われるアニーリングステップをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
アニーリングステップを含まない、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に定義されている方法によって得られる、アルジロダイト型構造を有する無機化合物。
【請求項31】
電気化学的活性材料、および請求項30に定義されている、または請求項1から29のいずれか一項に定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む、電極材料。
【請求項32】
アルジロダイト型構造を有する前記無機化合物が、添加物として存在する、請求項31に記載の電極材料。
【請求項33】
アルジロダイト型構造を有する前記無機化合物が、コーティング材料として存在する、請求項31または32に記載の電極材料。
【請求項34】
前記コーティング材料が前記電気化学的活性材料の表面にコーティング層を形成する、請求項33に記載の電極材料。
【請求項35】
前記電気化学的活性材料が、金属酸化物、金属硫化物、金属酸硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレンおよびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項31から34のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項36】
前記電気化学的活性材料の金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項35に記載の電極材料。
【請求項37】
前記電気化学的活性材料の金属が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)およびマグネシウム(Mg)から選択される、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む、請求項35または36に記載の電極材料。
【請求項38】
前記電気化学的活性材料がリチウム金属酸化物である、請求項31から37のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項39】
前記リチウム金属酸化物が、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの混合酸化物(NCM)である、請求項38に記載の電極材料。
【請求項40】
前記電気化学的活性材料が、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属酸硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素コンポジット(Si-C)、酸化ケイ素(SiO
x)、酸化ケイ素-炭素コンポジット(SiO
x-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素コンポジット(Sn-C)、酸化スズ(SnO
x)、酸化スズ-炭素コンポジット(SnO
x-C)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項31から34のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項41】
前記電気化学的活性材料がドーピング元素をさらに含む、請求項31から40のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項42】
前記電気化学的活性材料がコーティング材料をさらに含む、請求項31から41のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項43】
前記コーティング材料が電子伝導性材料である、請求項42に記載の電極材料。
【請求項44】
前記電子伝導性材料が炭素である、請求項43に記載の電極材料。
【請求項45】
前記コーティング材料が、Li
2SiO
3、LiTaO
3、LiAlO
2、Li
2O-ZrO
2、LiNbO
3、他の類似のコーティング材料およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項42に記載の電極材料。
【請求項46】
前記コーティング材料がLiNbO
3である、請求項45に記載の電極材料。
【請求項47】
少なくとも1種の電子伝導性材料をさらに含む、請求項31から46のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項48】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブおよびそれらのうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項47に記載の電極材料。
【請求項49】
前記電子伝導性材料が、カーボンブラックおよび気相成長炭素繊維(VGCF)の混合物である、請求項48に記載の電極材料。
【請求項50】
少なくとも1種の添加物をさらに含む、請求項31から49のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項51】
前記添加物が、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、塩およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項50に記載の電極材料。
【請求項52】
結合剤をさらに含む、請求項31から51のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項53】
前記結合剤が、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエステルのタイプのポリマー結合剤、フッ素化ポリマーおよび水溶性結合剤からなる群から選択される、請求項52に記載の電極材料。
【請求項54】
集電体上に、請求項31から53のいずれか一項に定義されている電極材料を含む電極。
【請求項55】
請求項31から53のいずれか一項に定義されている電極材料を含む、自己支持電極。
【請求項56】
請求項30に定義されている、または請求項1から29のいずれか一項に定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む、電解質。
【請求項57】
前記電解質が、溶媒中に塩を含む液体電解質である、請求項56に記載の電解質。
【請求項58】
前記電解質が、溶媒中および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である、請求項56に記載の電解質。
【請求項59】
前記電解質が、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、請求項56に記載の電解質。
【請求項60】
アルジロダイト型構造を有する前記無機化合物が、添加物として存在する、請求項56から59のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項61】
前記電解質が、無機固体電解質である、請求項56に記載の電解質。
【請求項62】
前記電解質が、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である、請求項56に記載の電解質。
【請求項63】
アルジロダイト型構造を有する前記無機化合物が、無機固体電解質材料として存在する、請求項61または62に記載の電解質。
【請求項64】
少なくとも1種の追加の構成成分をさらに含む、請求項56から63のいずれか一項に記載の電解質。
【請求項65】
前記追加の構成成分が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、請求項64に記載の電解質。
【請求項66】
負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、前記正極または前記負極のうちの少なくとも一方が、請求項54もしくは55に定義されている通りであるか、または請求項31から53のいずれか一項に定義されている電極材料を含む、電気化学セル。
【請求項67】
負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、前記電解質が請求項56から65のいずれか一項に定義されている通りである、電気化学セル。
【請求項68】
前記負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1種のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含む合金、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属、または合金または金属間化合物を含む電気化学的活性材料を含む、請求項66または67に記載の電気化学セル。
【請求項69】
前記負極の前記電気化学的活性材料が、金属リチウム、または金属リチウムを含むもしくは金属リチウムをベースとする合金を含む、請求項68に記載の電気化学セル。
【請求項70】
前記正極が、プレリチウム化されており、前記負極がリチウムを実質的に含まない、請求項66から68のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項71】
前記負極が、前記電気化学セルのサイクリング中にin situでリチウム化される、請求項70に記載の電気化学セル。
【請求項72】
請求項66から71のいずれか一項に定義されている少なくとも1つの電気化学セルを備える、電気化学的蓄電池。
【請求項73】
前記電気化学的蓄電池が、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池およびマグネシウムイオン電池から選択される電池である、請求項72に記載の電気化学的蓄電池。
【請求項74】
前記電池が、リチウム電池またはリチウムイオン電池である、請求項73に記載の電気化学的蓄電池。
【請求項75】
前記電気化学的蓄電池が、全固体電池である、請求項72から74のいずれか一項に記載の電気化学的蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下、2021年10月27日出願のカナダ特許出願第3,136,69号、および2022年10月12日出願の、発明の名称「COMPOSES INORGANIQUES POSSEDANT UNE STRUCTURE DE TYPE ARGYRODITE,LEURS PROCEDES DE PREPARATION ET LEURS UTILISATIONS DANS DES APPLICATIONS ELECTROCHIMIQUES」のカナダ特許出願への優先権を主張し、それらの内容の全体が参照により、およびすべての目的のため、本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本出願は、アルジロダイト型構造を有する酸硫化物ベースの無機化合物の分野、および電気化学的用途におけるそれらの使用に関する。より詳細には、本出願は、アルジロダイト型構造を有する酸硫化物ベースの無機化合物の分野、それらを含む電極材料および固体電解質、それらの製造方法、ならびに電気化学セル、特に全固体電池におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
硫化物ベースのセラミック、ガラスおよびガラス-セラミックなどの無機化合物は、実質的により安全な全固体電気化学システムの開発を可能にするので、多くの技術的用途にとって有望な材料である。
【0004】
さらに、硫化物ベースの無機化合物は、幅広い電気化学的安定性ウィンドウ、および室温における実質的により高いイオン伝導率を示す。実際に、それらを含む無機固体電解質は、室温において、液体有機電解質のイオン伝導率と同等のイオン伝導率を示し、したがって、固体ポリマー電解質の使用に基づいた、それらの対応物のイオン伝導率よりも実質的に高い。例えば、式Li6PS5X(Xは、Cl、BrまたはIである)のアルジロダイトは、室温において、mS.cm-1範囲のイオン伝導率を有する。
【0005】
しかし、アルジロダイト型の無機化合物の使用は、特に、前駆体として硫化リチウム(Li2S)および硫黄源の使用、ならびに興味深いイオン伝導率を得ることを可能にする高温アニーリングステップのために、それらの生産コストが高いことによって制限を受ける。したがって、このタイプの無機化合物の生産に関連する工業的要件の重要な要素の1つは、かなり高いイオン伝導率を維持しながら、Li2S利用率およびアニーリング温度を低下させることによって、コストを最小限にすることである。
【0006】
さらに、アルジロダイト型の無機化合物は、その界面安定性ならびに周囲空気および湿度におけるその安定性に関連する問題を伴う。より正確には、これらの無機固体電解質は、湿った空気に接触すると、硫化水素(H2S)ガスを発生し、したがって、不活性雰囲気下で調製、組み立ておよび操作されなければならない。この問題を解決するために用いられる1つの戦略は、酸硫化物をベースとする無機アルジロダイト化合物の使用を含む。実際に、酸素によるこれらの無機化合物中の硫黄および/またはリチウムの部分的な原子の置換により、湿気の存在下でのH2S発生が顕著に低下する。
【0007】
したがって、上記の欠点の1つまたは複数を排除する全固体電気化学システムにおける使用のための無機化合物の開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
一部の態様によれば、本明細書に記載されている技術の実施形態は、以下の項目を含む:
1. アルカリ金属をベースとするアルジロダイト型構造を有する無機化合物を調製するための方法であって、アルカリ金属の硫化物、アルカリ金属の硫酸塩、五硫化リンおよびアルカリ金属のハロゲン化物を摩砕するステップを含み、アルカリ金属が、リチウム、ナトリウムおよびカリウムから選択され、例えば、アルカリ金属がリチウムである、方法。
2. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属のフッ化物、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物、アルカリ金属のヨウ化物およびそれらのうちの少なくとも2種の混合物から選択される、項目1の方法。
3. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属の塩化物である、項目2の方法。
4. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属の臭化物である、項目2の方法。
5. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属のヨウ化物である、項目2の方法。
6. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属の塩化物およびアルカリ金属の臭化物の混合物である、項目2の方法。
7. アルカリ金属のハロゲン化物が、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物およびアルカリ金属のヨウ化物の混合物である、項目2の方法。
8. アルジロダイト型構造が、式M6-xPS5-x-yOyZ1+xのものであり、Mは、Li、NaおよびKから選択されるアルカリ金属であり、例えば、MはLiであり、Zは、F、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲン原子であり、xは1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数である(例えば、0≦x≦1および0<y≦1)、項目1から7のいずれか1つの方法。
9. xがゼロとは異なる数(例えば、0<x≦1)である、項目8の方法。
10. xおよびyが、電気的中性を達成するように選択される、項目8または9の方法。
11. アルジロダイト型構造が、式M5.4PS4.3O0.1Cl1.6、M5.4PS4.1O0.3Cl1.6、M5.4PS3.9O0.5Cl1.6、M5.4PS3.65O0.75Cl1.6、M5.7PS4.4O0.3Cl1.3、M5.4PS4.1O0.3Cl1.6、M5.4PS3.9O0.5Cl1.6、M5.4PS4.1O0.3Br1.6、M5.4PS4.1O0.3ClBr0.6、M5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8、M5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br、M5.4PS4.1O0.3ClBr0.5I0.1、M5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1、M5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2およびM5.4PS4.1O0.3ClBr0.4I0.2(Mは、項目8に定義されている通りである)のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、項目8から10のいずれか1つの方法。
12. アルジロダイト型構造が、式Li5.4PS4.3O0.1Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6、Li5.4PS3.65O0.75Cl1.6、Li5.7PS4.4O0.3Cl1.3、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Br1.6、Li5.4PS4.1O0.3ClBr0.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br、Li5.4PS4.1O0.3ClBr0.5I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2およびLi5.4PS4.1O0.3ClBr0.4I0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、項目8から10のいずれか1つの方法。
13. アルジロダイト型構造が、式M6-x-2yPS5-x-yOyZ1+xのものであり、Mは、Li、NaおよびKから選択されるアルカリ金属であり、例えば、MはLiであり、Zは、F、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲン原子であり、xは1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数である(例えば、0≦x≦1および0<y≦1)、項目1から7のいずれか1つの方法。
14. xがゼロとは異なる数(例えば、0<x≦1)である、項目13の方法。
15. アルジロダイト型構造が、式M5.2PS4.3O0.1Cl1.6、M5.1PS4.4O0.3Cl1.3およびM4.8PS4.1O0.3Cl1.6(Mは、項目13に定義されている通りである)のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、項目13または14の方法。
16. アルジロダイト型構造が、式Li5.2PS4.3O0.1Cl1.6、Li5.1PS4.4O0.3Cl1.3およびLi4.8PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択される、項目15の方法。
17. 摩砕するステップが、ミルを使用して行われる、項目1から16のいずれか1つの方法。
18. ミルがプラネタリーミルである、項目17の方法。
19. 摩砕するステップが、約300rpm~約800rpmの範囲の回転速度で行われる、項目1から18のいずれか1つの方法。
20. 摩砕するステップが、約400rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行われる、項目1から18のいずれか1つの方法。
21. 摩砕するステップが、約500rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行われる、項目1から18のいずれか1つの方法。
22. 摩砕するステップが、約600rpmの回転速度で行われる、項目1から18のいずれか1つの方法。
23. 摩砕するステップが、約5時間~約20時間の範囲の時間行われる、項目1から22のいずれか1つの方法。
24. 摩砕するステップが、約10時間行われる、項目1から22のいずれか1つの方法。
25. 摩砕するステップが、約10~約30の範囲のミリングビーズ:前駆体の比で行われる、項目1から24のいずれか1つの方法。
26. 摩砕するステップが、約30のミリングビーズ:前駆体の比で行われる、項目1から24のいずれか1つの方法。
27. 約400℃の最高温度で行われるアニーリングステップをさらに含む、項目1から26のいずれか1つの方法。
28. 約300℃の最高温度で行われるアニーリングステップをさらに含む、項目1から26のいずれか1つの方法。
29. アニーリングステップを含まない、項目1から26のいずれか1つの方法。
30. 項目1から29のいずれか1つに定義されている方法によって得られる、アルジロダイト型構造を有する無機化合物。
31. 電気化学的活性材料、および項目30に定義されている、または項目1から29のいずれか1つに定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む、電極材料。
32. アルジロダイト型構造を有する無機化合物が、添加物として存在する、項目31の電極材料。
33. アルジロダイト型構造を有する無機化合物が、コーティング材料として存在する、項目31または32の電極材料。
34. コーティング材料が電気化学的活性材料の表面にコーティング層を形成する、項目33の電極材料。
35. 電気化学的活性材料が、金属酸化物、金属硫化物、金属酸硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、硫黄、セレンおよびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目31から34のいずれか1つの電極材料。
36. 電気化学的活性材料の金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目35の電極材料。
37. 電気化学的活性材料の金属が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)およびマグネシウム(Mg)から選択される、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をさらに含む、項目35または36の電極材料。
38. 電気化学的活性材料がリチウム金属酸化物である、項目31から37のいずれか1つの電極材料。
39. リチウム金属酸化物が、リチウム、ニッケル、マンガンおよびコバルトの混合酸化物(NCM)である、項目38の電極材料。
40. 電気化学的活性材料が、非アルカリ金属または非アルカリ土類金属、金属間化合物、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩、金属ハロゲン化物、金属フッ化物、金属硫化物、金属酸硫化物、炭素、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素コンポジット(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素コンポジット(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素コンポジット(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素コンポジット(SnOx-C)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目31から34のいずれか1つの電極材料。
41. 電気化学的活性材料がドーピング元素をさらに含む、項目31から40のいずれか1つの電極材料。
42. 電気化学的活性材料がコーティング材料をさらに含む、項目31から41のいずれか1つの電極材料。
43. コーティング材料が電子伝導性材料である、項目42の電極材料。
44. 電子伝導性材料が炭素である、項目43の電極材料。
45. コーティング材料が、Li2SiO3、LiTaO3、LiAlO2、Li2O-ZrO2、LiNbO3、他の類似のコーティング材料およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目42の電極材料。
46. コーティング材料がLiNbO3である、項目45の電極材料。
47. 少なくとも1種の電子伝導性材料をさらに含む、項目31から46のいずれか1つの電極材料。
48. 電子伝導性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブおよびそれらのうちの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、項目47の電極材料。
49. 電子伝導性材料が、カーボンブラックおよび気相成長炭素繊維(VGCF)の混合物である、項目48の電極材料。
50. 少なくとも1種の添加物をさらに含む、項目31から49のいずれか1つの電極材料。
51. 添加物が、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック、ナノセラミック、塩およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目50の電極材料。
52. 結合剤をさらに含む、項目31から51のいずれか1つの電極材料。
53. 結合剤が、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエステルのタイプのポリマー結合剤、フッ素化ポリマーおよび水溶性結合剤からなる群から選択される、項目52の電極材料。
54. 集電体上に、項目31から53のいずれか1つに定義されている電極材料を含む電極。
55. 項目31から53のいずれか1つに定義されている電極材料を含む、自己支持電極。
56. 項目30に定義されている、または項目1から29のいずれか1つに定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む、電解質。
57. 電解質が、溶媒中に塩を含む液体電解質である、項目56の電解質。
58. 電解質が、溶媒中および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である、項目56の電解質。
59. 電解質が、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である、項目56の電解質。
60. アルジロダイト型構造を有する無機化合物が、添加物として存在する、項目56から59のいずれか1つの電解質。
61. 電解質が、無機固体電解質である、項目56の電解質。
62. 電解質が、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である、項目56の電解質。
63. アルジロダイト型構造を有する無機化合物が、無機固体電解質材料として存在する、項目61または62の電解質。
64. 少なくとも1種の追加の構成成分をさらに含む、項目56から63のいずれか1つの電解質。
65. 追加の構成成分が、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、項目64の電解質。
66. 負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、正極または負極のうちの少なくとも一方が、項目54もしくは55に定義されている通りであるか、または項目31から53のいずれか1つに定義されている電極材料を含む、電気化学セル。
67. 負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、電解質が項目56から65のいずれか1つに定義されている通りである、電気化学セル。
68. 負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1種のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含む合金、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属、または合金または金属間化合物を含む電気化学的活性材料を含む、項目66または67の電気化学セル。
69. 負極の電気化学的活性材料が、金属リチウム、または金属リチウムを含むもしくは金属リチウムをベースとする合金を含む、項目68の電気化学セル。
70. 正極が、プレリチウム化されており、負極がリチウムを実質的に含まない、項目66から68のいずれか1つの電気化学セル。
71. 負極が、前記電気化学セルのサイクリング中にin situでリチウム化される、項目70の電気化学セル。
72. 項目66から71のいずれか1つに定義されている少なくとも1つの電気化学セルを備える、電気化学的蓄電池。
73. 電気化学的蓄電池が、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池およびマグネシウムイオン電池から選択される電池である、項目72の電気化学的蓄電池。
74. 前記電池が、リチウム電池またはリチウムイオン電池である、項目73の電気化学的蓄電池。
75. 電気化学的蓄電池が、全固体電池である、項目72から74のいずれか1つの電気化学的蓄電池。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例2に記載されている、アルジロダイト1~4および8の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0010】
【
図2】
図2は、実施例2に記載されている、アルジロダイト2および5~7の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0011】
【
図3】
図3は、実施例2に記載されている、アルジロダイト2、3、9および10の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0012】
【
図4】
図4は、実施例2に記載されている、アルジロダイト2および12~15の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0013】
【
図5】
図5は、実施例2に記載されている、アルジロダイト16~19の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0014】
【
図6】
図6は、実施例2に記載されている、アルジロダイト2、13、20および21の粉末に対して得られたX線回折パターンを表す。
【0015】
【
図7】
図7は、実施例3に記載されている、アルジロダイト2および9に対して得られたリチウム核磁気共鳴(
6Li NMR)スペクトルを表す。
【0016】
【
図8】
図8は、実施例3に記載されている、アルジロダイト2および9に対して得られたリン核磁気共鳴(
31P NMR)スペクトルを表す。
【0017】
【
図9】
図9は、実施例3に記載されている、アルジロダイト7に対して得られたリチウム核磁気共鳴(
6Li NMR)スペクトルを表す。
【0018】
【
図10】
図10は、実施例3に記載されている、アルジロダイト7に対して得られたリン核磁気共鳴(
31P NMR)スペクトルを表す。
【0019】
【
図11】
図11は、実施例3に記載されている、アルジロダイト13および16に対して得られたリチウム核磁気共鳴(
6Li NMR)スペクトルを表す。
【0020】
【
図12】
図12は、実施例3に記載されている、アルジロダイト13および16に対して得られたリン核磁気共鳴(
31P NMR)スペクトルを表す。
【0021】
【
図13】
図13は、実施例4に記載されている、アルジロダイト2、7、8、11、13および16に関する、時間の関数としての、発生したアルジロダイトの質量によって正規化したガス状H
2Sの体積のプロットを示す。
【0022】
【
図14】
図14は、実施例5(b)に記載されている、セル1(丸)、2(三角)、3(菱形)、4(星)および8(四角)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0023】
【
図15】
図15は、実施例5(b)に記載されている、セル2(三角)、5(四角)、6(丸)および7(菱形)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0024】
【
図16】
図16は、実施例5(b)に記載されている、セル2(四角)、3(丸)、9(三角)および10(菱形)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0025】
【
図17】
図17は、実施例5(b)に記載されている、セル2(四角)、12(丸)、13(三角)、14(菱形)および15(星)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0026】
【
図18】
図18は、実施例5(b)に記載されている、セル16(四角)、17(丸)、18(三角)および19(菱形)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0027】
【
図19】
図19は、実施例5(b)に記載されている、セル2(四角)、20(丸)、13(三角)および21(菱形)に関する、温度の関数としてのイオン伝導率結果を示すグラフである。
【0028】
【
図20】
図20は、実施例6(b)に記載されている、約30℃の温度における、Li/Li
+に対する2.5V~4.2Vの間の0.05mV/sの走査速度で記録した、セル22および23に関して得られた、サイクリックボルタモグラムを表す。
【0029】
【
図21】
図21は、実施例7(c)に記載されている、セル24に関して得られた、100サイクルにわたるサイクル数の関数としての、充電容量(丸)および放電容量(四角)およびクーロン効率(三角)のグラフを示す。
【0030】
【
図22】
図22は、実施例7(c)に記載されている、30℃の温度において、Li/Li
+に対して記録した、C/10、C/4およびC/2の充電電流および放電電流で得られた容量の関数としてのセル24に関して得られた、放電プロファイルを表す。
【0031】
【
図23】
図23は、実施例7(c)に記載されている、30℃の温度において、Li/Li
+に対して記録した、C/10、C/4およびC/2の充電電流および放電電流で得られた時間の関数としてのセル24に関して得られた、放電プロファイルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
以下の詳細な説明および実施例は、例示目的に過ぎず、本発明の範囲をさらに限定するものと解釈されるべきではない。それどころか、以下の詳細な説明および実施例は、本記載によって定義されるものとして含まれ得る、代替、変形および等価物のすべてを網羅することが意図される。アルジロダイト型構造を有する本無機化合物、その調製方法、ならびにそれらを含む電極材料、電極、電解質、電気化学セルおよび電気化学的蓄電池の目的、利点および他の特徴は、以下の非限定的な記載および添付の図面に対してなされる参照から、より明白になり、より良好に理解されよう。
【0033】
本明細書において使用される技術用語および科学用語ならびに表現はすべて、本技術に関連する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。それでもやはり、本明細書において使用されているいくつかの用語および表現の定義は、以下に提示されている。
【0034】
用語「約」が、本明細書において使用される場合、それは、およそ、概ね、またはほぼを意味する。例えば、用語「約」が、数値に関して使用される場合、この用語は、その名目値の上下10%のばらつきによってその値を修飾している。この用語はまた、例えば、測定デバイスの実験誤差または四捨五入を考慮に入れることができる。
【0035】
値の範囲が、本出願中に明記されている場合、間隔の下限値および上限値は、特に示さない限り、定義に常に含まれる。値の範囲が、本出願中に明記されている場合には、この値の範囲に含まれるすべての中間範囲および部分範囲、ならびに個々の値が、定義に含まれる。
【0036】
冠詞「1つの(a)」が、本出願中の要素を紹介するために使用される場合、この冠詞は、「1つだけ」の意味を有するのではなく、「1つまたは複数の」という意味を有する。当然ながら、記載が、特定のステップ、構成成分、要素または特徴を、含むことが「できる」または含むことが「あり得る」と明記する場合、その特定のステップ、構成成分、要素または特徴は、各実施形態において含まれる必要はない。
【0037】
用語「自己支持電極」は、本明細書において使用する場合、金属集電体のない電極を指す。
【0038】
本技術は、M2S-P2S5-M2SO4-MZをベースとするアルジロダイト型構造を有する無機化合物(Mは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択されるアルカリ金属であり、Zは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)またはそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択されるハロゲン原子である)を調製するための方法であって、前駆体を直接摩砕するステップを含む、方法に関する。一部の例によれば、Mはリチウムである。前駆体は、アルカリ金属硫化物(M2S)、アルカリ金属硫酸塩(M2SO4)、五硫化リン(P2S5)、およびアルカリ金属のフッ化物、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物、アルカリ金属のヨウ化物から選択されるアルカリ金属のハロゲン化物、ならびにそれらのうちの少なくとも2種の混合物からなる。
【0039】
一例によれば、アルジロダイト型を有する無機化合物は、それぞれ、式M6-xPS5-x-yOyZ1+xおよびM6-x-2yPS5-x-yOyZ1+xとすることができ、ZおよびMは、本明細書において定義されている通りであり、xは、1より大きなZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数であり、例えば、0≦x≦1および0<y≦1である。一例によれば、xは、ゼロとは異なる数(例えば、0<x≦1)である。したがって、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、それぞれ、以下の反応式:
(2,5-y/4-x)M2S+y/4 M2SO4+1/2 P2S5+(1+x)MZ → M6-xPS5-x-yOyZ1+x+y S 式(1)
(2,5-5/4y-x)M2S+y/4 M2SO4+1/2 P2S5+(1+x)MZ → M6-x-2yPS5-x-yOyZ1+x 式(2)
(式中、x、y、MおよびZは、本明細書で定義されている通りである)
に従って、本明細書で定義されている前駆体から摩砕することによって得ることができる。
【0040】
一例によれば、無機化合物が、アルジロダイト型構造を有する場合、xは、1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数であり、xおよびyは、所望の化学量論を達成するよう、または電気的中性を達成するよう選択される。式1によるアルジロダイト型構造を有する無機化合物の非限定例は、式M5.4PS4.3O0.1Z1.6、M5.4PS4.1O0.3Z1.6、M5.4PS3.9O0.5Z1.6、M5.4PS3.65O0.75Z1.6およびM5.7PS4.4O0.3Z1.3のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含み、MおよびZは、本明細書において定義されている通りである。無機化合物が、少ない量のアルカリ金属しか含まないアルジロダイト型構造を有する場合(すなわち、式2によるアルジロダイト型構造を有する無機化合物)、xは、1より大きいZの数を表すか、またはゼロに等しく、yはゼロとは異なる数であり、xおよびyは、所望の化学量論が得られるように選択される。式2によるアルジロダイト型構造を有する無機化合物の非限定例は、式M5.1PS4.4O0.3Z1.3およびM4.8PS4.1O0.3Z1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含み、MおよびZは、本明細書において定義されている通りである。
【0041】
対象とする例によれば、Zは塩素原子であり、アルカリ金属のハロゲン化物はアルカリ金属の塩化物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.3O0.1Cl1.6、M5.4PS4.1O0.3Cl1.6、M5.4PS3.9O0.5Cl1.6、M5.4PS3.65O0.75Cl1.6、M5.7PS4.4O0.3Cl1.3、M5.1PS4.4O0.3Cl1.3およびM4.8PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。
【0042】
対象とする別の例によれば、Zは臭素原子であり、アルカリ金属のハロゲン化物はアルカリ金属の臭化物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.3O0.1Br1.6、M5.4PS4.1O0.3Br1.6、M5.4PS3.9O0.5Br1.6、M5.4PS3.65O0.75Br1.6、M5.7PS4.4O0.3Br1.3、M5.1PS4.4O0.3Br1.3およびM4.8PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物とすることができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。
【0043】
対象とする別の例によれば、Zはヨウ素原子であり、アルカリ金属のハロゲン化物はアルカリ金属のヨウ化物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.3O0.1I1.6、M5.4PS4.1O0.3I1.6、M5.4PS3.9O0.5I1.6、M5.4PS3.65O0.75I1.6、M5.7PS4.4O0.3I1.3、M5.1PS4.4O0.3I1.3およびM4.8PS4.1O0.3I1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。
【0044】
対象とする例によれば、Zは、塩素および臭素を含む組合せであり、アルカリ金属のハロゲン化物は、アルカリ金属の塩化物およびアルカリ金属の臭化物の混合物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.6、M5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8およびM5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br1.0のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。
【0045】
対象とする例によれば、Zは、塩素、臭素およびヨウ素を含む組合せであり、アルカリ金属のハロゲン化物は、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物およびアルカリ金属のヨウ化物の混合物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式M5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.5I0.1、M5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1、M5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2およびM5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.4I0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができ、Mは、本明細書において定義されている通りである。
【0046】
対象とする例によれば、アルカリ金属はリチウムであり、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、Li2S-P2S5-Li2SO4-LiZをベースとし(Zは、F、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲン原子またはそれらのうちの少なくとも2種の組合せである)、方法は、前駆体の直接摩砕のステップを含む。硫化リチウム(Li2S)、硫酸リチウム(Li2SO4)、五硫化リン(P2S5)、およびフッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)から選択されるハロゲン化リチウム、およびそれらのうちの少なくとも2種の混合物からなる前駆体。
【0047】
式1によるアルジロダイト型構造を有する無機化合物の非限定例は、式Li5.4PS4.3O0.1Z1.6、Li5.4PS4.1O0.3Z1.6、Li5.4PS3.9O0.5Z1.6、Li5.4PS3.65O0.75Z1.6およびLi5.7PS4.4O0.3Z1.3のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含み、Zは、本明細書において定義されている通りである。式2によるアルジロダイト型構造を有する無機化合物の非限定例は、式Li5.1PS4.4O0.3Z1.3およびLi4.8PS4.1O0.3Z1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含み、Zは、本明細書において定義されている通りである。
【0048】
対象とする例によれば、Zは塩素原子であり、ハロゲン化リチウムはLiClである。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.3O0.1Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6、Li5.4PS3.65O0.75Cl1.6、Li5.7PS4.4O0.3Cl1.3、Li5.1PS4.4O0.3Cl1.3およびLi4.8PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができる。
【0049】
対象とする別の例によれば、Zは臭素原子であり、ハロゲン化リチウムはLiBrである。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.3O0.1Br1.6、Li5.4PS4.1O0.3Br1.6、Li5.4PS3.9O0.5Br1.6、Li5.4PS3.65O0.75Br1.6、Li5.7PS4.4O0.3Br1.3、Li5.1PS4.4O0.3Br1.3およびLi4.8PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができる。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物とすることができる。
【0050】
対象とする別の例によれば、Zはヨウ素原子であり、ハロゲン化リチウムはLiIである。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.3O0.1I1.6、Li5.4PS4.1O0.3I1.6、Li5.4PS3.9O0.5I1.6、Li5.4PS3.65O0.75I1.6、Li5.7PS4.4O0.3I1.3、Li5.1PS4.4O0.3I1.3およびLi4.8PS4.1O0.3I1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができる。
【0051】
対象とする例によれば、Zは、塩素および臭素を含む組合せであり、ハロゲン化リチウムは、LiClおよびLiBrの混合物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8およびLi5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br1.0のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができる。
【0052】
対象とする例によれば、Zは、塩素、臭素およびヨウ素を含む組合せであり、ハロゲン化リチウムは、LiCl、LiBrおよびLiIの混合物である。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.5I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2およびLi5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.4I0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物から選択することができる。
【0053】
対象とする別の例によれば、本明細書において定義されている方法は、単一ステップで行われる。すなわち、好ましくは、方法は、アニーリングステップを含まない。代替的に、方法は、必要に応じた低温アニーリングステップを含むことができる。例えば、方法がアニーリングステップを含む場合、アニーリングステップは、約400℃の最高温度で、または約300℃の最高温度で行うことができる。
【0054】
別の例によれば、摩砕するステップは、ミル、例えば、プラネタリーミルを使用して行うことができる。任意の公知の適合可能なタイプのミルが企図される。例えば、摩砕するステップは、所望のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を得るようなミリングビーズ:前駆体の比で、指定時間の間、ある回転速度で行うことができる。
【0055】
別の例によれば、摩砕するステップは、約300rpm~約800rpm、または約400rpm~約700rpm、または約500rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行うことができる。例えば、摩砕するステップは、約600rpmの回転速度で行うことができる。
【0056】
別の例によれば、摩砕するステップは、約5時間~約20時間の範囲の期間で行うことができる。例えば、摩砕するステップは、約10時間行うことができる。
【0057】
別の例によれば、摩砕するステップは、約10~約30の範囲のミリングビーズ:前駆体の比で行うことができる。例えば、摩砕するステップは、約30のミリングビーズ:前駆体の比で行うことができる。
【0058】
一部の例によれば、摩砕ビーズ:前駆体の比は、約30であり、摩砕するステップは、約10時間、約500rpm~約700rpmの範囲の回転速度で行われて、所望のアルジロダイト型構造を有する無機化合物が得られる。例えば、摩砕するステップは、約600rpmの回転速度で行われる。
【0059】
所望のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を得るための摩砕するステップのパラメーター(例えば、回転速度、摩砕時間、ミリングビーズ:前駆体の比など)は、使用するミルのタイプに応じて、選択および/または最適化することができることを理解すべきである。
【0060】
本明細書で定義されている方法において、前駆体としてアルカリ金属硫酸塩(例えば、Li2SO4)の使用により、アニーリングステップなしに、または低温アニーリングステップを用いて、アルジロダイト型構造を得ることが可能であり得る。さらに、本明細書で定義されている方法は、異なる前駆体からの、アニーリングステップを含む従来の方法によって得られる無機化合物に関して報告されているイオン伝導率と実質的に類似のイオン伝導率を有する無機化合物を得ることが可能であり得る。
【0061】
本方法のある特定の実施形態により得られる本無機化合物のある特定の特性はまた、従来の方法によって、例えば、前駆体としてアルカリ金属硫酸塩(例えば、Li2SO4)の代わりにアルカリ金属酸化物(例えば、Li2O)を使用する方法によって、調製される化合物によって実証されるものとは異なり得る。例えば、一部の実施形態によれば、本明細書において得られる化合物は、慣用的に得られる化合物と比較して、より高い電気化学的安定性、H2Sの放出量の低下、より大きな臨界電流密度または分極の低下を示すことができる。ある特定の実施形態による本明細書に記載されている無機化合物は、6Liまたは31P NMRによる、アルジロダイト構造のより高い純度、ならびに/または31P NMRにおける、PO2S2、PO3Sおよび/もしくはPO4基に関連するピークの相対強度の低下を実証することができる。例えば、PO2S2、PO3SおよびPO4ピークの相対強度は、それぞれ、1.5未満、0.8未満および0.3未満であり得る。
【0062】
本技術はまた、本明細書で定義されている方法によって得られる、本明細書で定義されているアルジロダイト型構造を有する無機化合物に関する。
【0063】
本技術はまた、電気化学的活性材料、および本明細書で定義されている、または本明細書で定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む電極材料に関する。
【0064】
一例によれば、本明細書で定義されているアルジロダイト型構造を有する無機化合物は、電極材料における添加物として、および/またはコーティング材料として存在することができる。例えば、アルジロダイト型構造を有する無機化合物は、電気化学的活性材料の表面にコーティング層を形成することができる。
【0065】
別の例によれば、前記電極材料は、正極材料であり、電気化学的活性材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属酸硫化物、金属リン酸塩、金属フルオロリン酸塩、金属オキシフルオロリン酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、硫黄、セレンおよびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される。別の例によれば、電気化学的活性材料の金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)および適合可能な場合、それらの組合せから選択される。電気化学的活性材料は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはマグネシウム(Mg)を必要に応じてさらに含むことができる。
【0066】
電気化学的活性材料の非限定例には、リチウム金属リン酸塩、複合酸化物、例えば、LiM’PO4(M’は、Fe、Ni、Mn、Coまたはそれらの組合せである)、LiV3O8、V2O5、LiMn2O4、LiM’’O2(M’’は、Mn、Co、Niまたはそれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O2(M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、TiもしくはZr、またはそれらの組合せである)、および適合可能な場合、それらの組合せが含まれる。
【0067】
対象とする例によれば、電気化学的活性材料は、上記の酸化物である。例えば、電気化学的活性材料は、酸化マンガンリチウムとすることができ、ここでマンガンは、第2の遷移金属により部分的に置換され得、例えばリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)である。対象とする一実施形態によれば、電気化学的活性材料は、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC622)である。
【0068】
別の例によれば、前記電極材料は負極材料であり、電気化学的活性材料は、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)およびビスマス(Bi))、金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2およびCoSn2)、金属酸化物、金属窒化物、金属リン化物、金属リン酸塩(例えば、LiTi2(PO4)3)、金属ハロゲン化物(例えば、金属フッ化物)、金属硫化物、金属酸硫化物、炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、還元型酸化グラフェン、硬質炭素、軟質炭素、剥離グラファイトおよびアモルファスカーボン)、ケイ素(Si)、ケイ素-炭素コンポジット(Si-C)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化ケイ素-炭素コンポジット(SiOx-C)、スズ(Sn)、スズ-炭素コンポジット(Sn-C)、酸化スズ(SnOx)、酸化スズ-炭素コンポジット(SnOx-C)、および適合可能な場合、それらの組合せから選択される。例えば、金属酸化物は、式M’’’’bOc(M’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nbまたはそれらの組合せであり、bおよびcは、比c:bが2~3の範囲となるような数である)(例えば、MoO3、MoO2、MoS2、V2O5およびTiNb2O7)、スピネル酸化物(例えば、NiCo2O4、ZnCo2O4、MnCo2O4、CuCo2O4およびCoFe2O4)およびLiM’’’’’O(M’’’’’は、Ti、Mo、Mn、Ni、Co、Cu、V、Fe、Zn、Nbまたはそれらの組合せである)(例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12など)またはリチウムモリブデン酸化物(Li2Mo4O13など)の化合物から選択することができる。
【0069】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、例えば、その電気化学的性質を調節または最適化するために、より少量で含まれる他の元素で必要に応じてドープすることができる。電気化学的活性材料は、他のイオンでの金属の部分置換によってドープすることができる。例えば、電気化学的活性材料は、遷移金属(例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、WまたはY)および/または遷移金属以外の金属(例えば、Mg、AlまたはSb)でドープすることができる。
【0070】
別の例によれば、電気化学的活性材料は、新しく形成され得るか、または商業的供給源に由来し得る粒子(例えば、マイクロ粒子および/またはナノ粒子)の形態にあることができる。例えば、電気化学的活性材料は、コーティング材料の層によりコーティングされた粒子の形態にあることができる。コーティング材料は、導電性炭素コーティング剤などの電子伝導性材料とすることができる。代替的に、コーティング材料により、電気化学的活性材料と電解質、例えば、固体電解質、特に、硫化物または酸硫化物をベースとする無機セラミックタイプの固体電解質(例えば、本明細書で定義されているアルジロダイト型構造を有する無機化合物をベースとする)との間の界面における界面反応を実質的に低減することが可能になり得る。例えば、コーティング材料は、Li2SiO3、LiTaO3、LiAlO2、Li2O-ZrO2、LiNbO3、適合可能な場合、それらの組合せ、および他の類似材料から選択することができる。対象とする一実施形態によれば、コーティング材料は、LiNbO3を含む。
【0071】
別の例によれば、本明細書で定義されている電極材料は、電子伝導性材料をさらに含む。電子伝導性材料の非限定例は、カーボンブラック(例えば、Ketjen(商標)炭素およびSuper P(商標)炭素)、アセチレンブラック(例えば、Shawinigan炭素およびDenka(商標)カーボンブラック)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、気相成長炭素繊維(VGCF))、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(CNT)、およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せなどの炭素源を含む。対象とする一実施形態によれば、電子伝導性材料は、Li400カーボンブラック(Denka(商標))およびVGCFの混合物(好ましくは、65:35~85:15の範囲の重量比)である。
【0072】
別の例によれば、本明細書で定義されている電極材料は、添加物をさらに含む。例えば、添加物は、無機イオン伝導性材料、無機材料、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック(ナノセラミック(Al2O3、TiO2、SiO2および他の類似化合物など)を含む)、塩(例えば、リチウム塩)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される。例えば、添加物は、結晶形態および/またはアモルファス形態の、LISICON、チオ-LISICON、アルジロダイト、ガーネット、NASICON、ペロブスカイト、酸化物、硫化物、リン化物、フッ化物、ハロゲン化硫黄、リン酸塩、チオリン酸塩、およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せから選択される、無機イオン伝導体とすることができる。
【0073】
別の例によれば、本明細書で定義されている電極材料は、結合剤をさらに含む。例えば、結合剤は、電気化学セルの様々な構成成分との適合性を理由に選択される。任意の公知の適合可能な結合剤が企図される。例えば、結合剤は、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはポリエステルのタイプのポリマー結合剤、フッ素化ポリマーおよび水溶性結合剤から選択され得る。一例によれば、結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素化ポリマーである。別の例によれば、結合剤は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、エピクロロヒドリンゴム(CHR)またはアクリル酸ゴム(ACM)などの水溶性結合剤であり、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤もしくはポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMMA)などのポリマー、またはそれらの組合せを必要に応じて含む。別の例によれば、結合剤は、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤である。例えば、ポリエーテルタイプのポリマー結合剤は、線状、分岐状および/または架橋状であり、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、またはそれらの組合せ(EO/POコポリマーなど)をベースとし、架橋性単位を必要に応じて含む。例えば、ポリマーの架橋性セグメントは、照射または熱処理によって多次元架橋可能な、少なくとも1つの官能基を含む、ポリマーセグメントとすることができる。
【0074】
本技術はまた、本明細書で定義されている電極材料を含む電極に関する。一例によれば、電極は、集電体(例えば、アルミニウム製または銅製ホイル)上に存在することができる。代替的に、電極は自己支持性であり得る。
【0075】
本技術はまた、本明細書で定義されている、または本明細書で定義されている方法によって得られるアルジロダイト型構造を有する無機化合物を含む電解質に関する。
【0076】
一例によれば、電解質は、電気化学セルの様々な要素との適合性を理由に選択することができる。電解質の適合可能な任意のタイプが企図される。一例によれば、電解質は、溶媒中に塩を含む液体電解質である。代替例によれば、電解質は、溶媒中および必要に応じて溶媒和ポリマー中に塩を含むゲル電解質である。別の代替例によれば、電解質は、溶媒和ポリマー中に塩を含む固体ポリマー電解質である。別の代替例によれば、電解質は、無機固体電解質材料を含み、例えば、電解質は、セラミックタイプの無機固体電解質とすることができる。別の代替例によれば、電解質は、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質である。
【0077】
別の例によれば、塩は、電解質中に存在する場合、リチウム塩などのイオン性塩とすることができる。リチウム塩の非限定例には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C6O2)2](LiBBB)およびそれらのうちの少なくとも2種の組合せが含まれる。
【0078】
別の例によれば、溶媒は、電解質中に存在する場合、非水性溶媒とすることができる。溶媒の非限定例には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)などの環式カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)などの非環式カーボネート;γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL)などのラクトン:1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、トリメトキシメタンおよびエチルモノグライムなどの非環式エーテル;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよびジオキソラン誘導体などの環式エーテル;ならびにジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン、メチルスルホラン、プロピレンカーボネート誘導体などの他の溶媒、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0079】
別の例によれば、電解質は、ゲル電解質またはゲルポリマー電解質である。ゲルポリマー電解質は、例えば、ポリマー前駆体および塩(例えば、先に定義した塩)、溶媒(例えば、先に定義した溶媒)、ならびに必要な場合、重合開始剤および/または架橋開始剤を含むことができる。ゲル電解質の例には、第WO2009/111860号(Zaghibら)および第WO2004/068610号(Zaghibら)下で公開されているPCT特許出願に記載されているものなどのゲル電解質を非限定的に含む。
【0080】
別の例によれば、上で定義したゲル電解質または液体電解質はまた、ポリマーセパレーターなどのセパレーターを含浸することができる。セパレーターの例は、以下に限定されないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン(PP/PE/PP)製のセパレーターを含む。例えば、セパレーターは、Celgard(商標)タイプの市販のポリマーセパレーターである。
【0081】
別の例によれば、電解質は、固体ポリマー電解質である。例えば、固体ポリマー電解質は、任意の公知の固体ポリマー電解質から選択することができ、電気化学セルの様々な要素との適合性を理由に選択され得る。固体ポリマー電解質は、一般に、塩、および必要に応じて架橋化されている1種または複数種の固体極性ポリマーを含む。ポリエチレンオキシド(POE)をベースとするものなどのポリエーテルタイプのポリマーを使用することができるが、いくつかの他の適合可能なポリマーもまた、固体ポリマー電解質の調製に対して公知であり、やはり企図されている。ポリマーは、架橋化され得る。このようなポリマーの例は、分岐ポリマー、例えば、第WO2003/063287(Zaghibら)号下で公開されているPCT特許出願に記載されているものなどの星型ポリマーまたはくし型ポリマーを含む。
【0082】
別の例によれば、固体ポリマー電解質は、少なくとも1種のリチウムイオン溶媒和セグメントおよび必要に応じて、少なくとも1種の架橋性セグメントから構成されるブロックコポリマーを含むことができる。好ましくは、リチウムイオン溶媒和セグメントは、式Iの繰り返し単位:
【化1】
(式中、
Rは、水素原子およびC
1~C
10アルキルまたは-(CH
2-O-R
aR
b)基から選択され、
R
aは、(CH
2-CH
2-O)
yであり、
R
bは、水素原子およびC
1~C
10アルキル基から選択され、
xは、10~200,000の範囲から選択される整数であり、
yは、0~10の範囲から選択される整数である)
を有する、ホモポリマーまたはコポリマーから選択される。
【0083】
別の例によれば、コポリマーの架橋性セグメントは、照射または熱処理によって多次元架橋可能な少なくとも1つの官能基を含む、ポリマーセグメントである。
【0084】
電解質が、液体電解質、ゲル電解質または固体ポリマー電解質である場合、本明細書で定義されているアルジロダイト型構造を有する無機化合物は、電解質中に添加物として存在することができる。
【0085】
電解質が、ポリマー-セラミックハイブリッド固体電解質またはセラミック型無機固体電解質である場合、本明細書で定義されているアルジロダイト型構造を有する無機化合物は、無機固体電解質(セラミック)材料として存在することができる。
【0086】
別の例によれば、電解質は、イオン伝導性材料、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子および同じタイプの他の添加物などの、追加の構成成分を必要に応じて含むことができる。追加の構成成分は、電気化学セルの様々な要素との適合性を理由に選択することができる。一例によれば、追加の構成成分は、電解質に実質的に分散され得る。代替的に、追加の構成成分は、個別の層中に存在することができる。
【0087】
本技術はまた、負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、正極または負極のうちの少なくとも一方が、本明細書で定義されている通りであるか、または本明細書で定義されている電極材料を含む、電気化学セルに関する。
【0088】
一例によれば、負極は、本明細書で定義されている通りであるか、または本明細書で定義されている電極材料を含む。例えば、負極の電気化学的活性材料は、本明細書において定義されている電気化学セルの様々な要素との電気化学的適合性を理由に選択することができる。例えば、負極材料の電気化学的活性材料は、正極の電気化学的活性材料よりも実質的に低い酸化-還元電位を有することができる。
【0089】
別の例によれば、正極は、本明細書で定義されている通りであるか、または本明細書で定義されている電極材料を含み、負極は、任意の公知の適合可能な電気化学的活性材料から選択される電気化学的活性材料を含む。例えば、負極の電気化学的活性材料は、本明細書において定義されている電気化学セルの様々な要素との電気化学的適合性を理由に選択することができる。負極の電気化学的活性材料の非限定例は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金、非アルカリ金属および非アルカリ土類金属(例えば、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)およびビスマス(Bi))、ならびに金属間合金または金属間化合物(例えば、SnSb、TiSnSb、Cu2Sb、AlSb、FeSb2、FeSn2およびCoSn2)を含む。例えば、負極の電気化学的活性材料は、フィルムの形態にあることができる。対象とする一実施形態によれば、負極の電気化学的活性材料は、金属リチウムのフィルム、または金属リチウムを含むもしくは金属リチウムをベースとする合金のフィルムを含むことができる。
【0090】
別の例によれば、正極は、プレリチウム化され得、負極は、最初(すなわち、電気化学セルをサイクリングする前)は、実質的にまたは完全にリチウムを含まなくてもよい。負極は、前記電気化学セルのサイクリングの間、特に、最初の充電の間に、in situでリチウム化され得る。一例によれば、金属リチウムは、電気化学セルのサイクリングの間、特に最初の充電の間に、集電体(例えば、銅集電体)上にin situで堆積され得る。別の例によれば、金属リチウムを含む合金は、電気化学セルのサイクリングの間、特に最初の充電の間に、集電体(例えば、アルミニウム集電体)の表面に生成され得る。負極は、電気化学セルのサイクリングの間、特に、最初の充電の間に、in situで生成され得ることが理解される。
【0091】
別の例によれば、正極および負極はどちらも、本明細書で定義されている通りであるか、またはどちらも、本明細書で定義されている電極材料を含む。
【0092】
本技術はまた、負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、電解質が本明細書で定義されている通りである、電気化学セルに関する。
【0093】
本技術はまた、負極、正極および電解質を備える電気化学セルであって、電解質が本明細書で定義されている通りであり、正極または負極の少なくとも一方が、本明細書で定義されている通りであるか、または本明細書で定義されている電極材料を含む、電気化学セルに関する。
【0094】
一例によれば、正極は、本明細書で定義されている通りであるか、または本明細書で定義されている電極材料を含む。
【0095】
本技術はまた、本明細書で定義されている少なくとも1つの電気化学セルを備える電池に関する。例えば、電池は、一次電池または二次電池とすることができる。一例によれば、電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池、カリウム電池およびカリウム-イオン電池からなる群から選択される。対象とする変形によれば、電池は、全固体電池である。
【0096】
一例によれば、本明細書で定義されている方法における前駆体としてのアルカリ金属硫酸塩(例えば、Li2SO4)の使用により、Li2Sの使用量の低下、および/またはアニーリングステップのないこと、もしくはアニーリング温度を低下させることにより、生産コストを削減することが可能となり得る。
【0097】
別の例によれば、本明細書で定義されている方法により、異なる前駆体からの、アニーリングステップを含む、従来の方法によって得られる無機化合物に関して報告されているイオン伝導率と実質的に類似のイオン伝導率を有する無機化合物を得ることが可能となり得る。
【0098】
別の例によれば、本明細書で定義されている方法により、電気化学的安定性の改善された無機化合物を得ることが可能となり得る。
【0099】
別の例によれば、本明細書で定義されている方法により、例えば、湿気または周囲空気への無機化合物の曝露によって発生するH2Sの量が実質的に低減されることによって、安全性の改善された無機化合物を得ることが可能となり得る。
【0100】
別の例によれば、本明細書で定義されている方法により、より大きな臨界電流密度、したがって、金属製負極または金属合金負極に接触した際に、より優れた安全性を得ることが可能となり得る。
【実施例】
【0101】
以下の実施例は、例示目的のためであり、企図される本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照することによってよりよく理解されよう。
【0102】
特に示さない限り、本明細書において使用される、構成成分の量、調製条件、濃度、特性などを表現する数はすべて、すべての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。最低でも、各数値パラメーターは、報告されている有効桁数を考慮して、および通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。したがって、特に反対の記載がない限り、本明細書において説明されている数値パラメーターは、得ようとする特性に応じて、変動し得る概数である。実施形態の幅広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターが概数であるにもかかわらず、以下の実施例中に説明されている数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、実験、試験測定、統計分析などの変動に起因するある特定の誤差を本質的に含有する。
(実施例1)
アルジロダイトの合成
【0103】
式Li5.4PS4.3O0.1Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6、Li5.4PS3.65O0.75Cl1.6、Li5.7PS4.4O0.3Cl1.3、Li5.1PS4.4O0.3Cl1.3、Li4.8PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS4.4Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6、Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6、Li5.4PS4.1O0.3Br1.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.6、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br1.0、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.5I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1、Li5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2、Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.4I0.2およびLi6PS5Clのアルジロダイト型構造を有する無機化合物は、熱処理なしで、固相反応方法によって、不活性雰囲気(H2O<0.1ppm;O2<0.1ppm)下、グローブボックス中で完全に調製した。以下の反応式に従って所望の化学量論を有する粉末を得るため、前駆体Li2S、P2S5、Li2SO4またはLi2Oおよび少なくとも1つのハロゲン化Li(LiCl、LiBrおよび/またはLiI)から、摩砕方法によって、無機化合物を得た:
(3,5-y/4-t-z-w)Li2S+y/4 Li2SO4+1/2 P2S5+t LiCl+z LiBr+w LiI → Li7-t-z-wPS6-t-y-z-wOyCltBrzIw+y S 式(3)
(3,5-5/4y-t)Li2S+y/4 Li2SO4+1/2 P2S5+t LiCl →Li7-t-2yPS6-t-yOyClt 式(4)
(3,5-y-t)Li2S+y Li2O+1/2 P2S5+t LiCl → Li7-tPS6-t-yOyClt 式(5)
【0104】
粉末の摩砕は、2種の異なる方法によって行った。
粉末を摩砕するための第1の方法(方法1):
【0105】
PULVERISETTE7プラネタリーミルを使用して、粉末の摩砕を行った。1.7gの粉末および直径10mmを有する15個のイットリア化ジルコニアミリングビーズ(ビーズ:粉末=30の質量比)を、45mLイットリア化ジルコニア摩砕ジャーに入れた。粉末を約10時間、約600rpmの速度で摩砕して、アルジロダイト型構造を有する無機化合物を生成した。
粉末を摩砕するための第2の方法(方法2):
【0106】
PM100プラネタリーミルを使用して、粉末の摩砕を行った。14gの粉末および直径20mmを有する16個のイットリア化ジルコニアミリングビーズ(ビーズ:粉末=30の質量比)を、250mLのイットリア化ジルコニア摩砕ジャーに入れた。粉末を約10時間、約650rpmの速度で摩砕して、アルジロダイト型構造を有する無機化合物を生成した。
式Li5.4PS4.3O0.1Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト1):
【0107】
式Li5.4PS4.3O0.1Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.1)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト2):
【0108】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト3):
【0109】
式Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.5)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS3.65O0.75Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト4):
【0110】
式Li5.4PS3.65O0.75Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.75)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.7PS4.4O0.3Cl1.3のアルジロダイト(アルジロダイト5):
【0111】
式Li5.7PS4.4O0.3Cl1.3のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.3;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.1PS4.4O0.3Cl1.3のアルジロダイト(アルジロダイト6):
【0112】
式Li5.1PS4.4O0.3Cl1.3のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式4(t=1.3;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li4.8PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト7):
【0113】
式Li4.8PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式4(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.4Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト8)(比較例):
【0114】
式Li5.4PS4.4Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0)に従って、前駆体Li2S、P2S5およびLiClから本実施例の方法1によって比較目的のために得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト9)(比較例):
【0115】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式5(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2Oから本実施例の方法1によって比較目的のために得た。
式Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト10)(比較例):
【0116】
式Li5.4PS3.9O0.5Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式5(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.5)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2Oから本実施例の方法1によって比較目的のために得た。
式Li6PS5Clのアルジロダイト(アルジロダイト11)(比較例):
【0117】
式Li6PS5Clのアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.0;z=0;w=0;およびy=0)に従って、前駆体Li2S、P2S5およびLiClから本実施例の方法1によって比較目的のために得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.6のアルジロダイト(アルジロダイト12):
【0118】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.0;z=0.6;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBrおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8のアルジロダイト(アルジロダイト13):
【0119】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0.8;z=0.8;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBrおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br1.0のアルジロダイト(アルジロダイト14):
【0120】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.6Br1.0のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0.6;z=1;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBrおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト(アルジロダイト15):
【0121】
式Li5.4PS4.1O0.3Br1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0;w=0;z=1.6;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiBrおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.5I0.1のアルジロダイト(アルジロダイト16):
【0122】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.5I0.1のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.0;z=0.5;w=0.1;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBr、LiIおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1のアルジロダイト(アルジロダイト17):
【0123】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.75Br0.75I0.1のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0.75;z=0.75;w=0.1;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBr、LiIおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2のアルジロダイト(アルジロダイト18):
【0124】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.7Br0.7I0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0.7;z=0.7;w=0.2;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBr、LiIおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.4I0.2のアルジロダイト(アルジロダイト19):
【0125】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.0Br0.4I0.2のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.0;z=0.4;w=0.2;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBr、LiIおよびLi2SO4から本実施例の方法1によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト(アルジロダイト20):
【0126】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl1.6のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=1.6;z=0;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiClおよびLi2SO4から本実施例の方法2によって得た。
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8のアルジロダイト(アルジロダイト21):
【0127】
式Li5.4PS4.1O0.3Cl0.8Br0.8のアルジロダイト型構造を有する無機化合物を、式3(t=0.8;z=0.8;w=0;およびy=0.3)に従って、前駆体Li2S、P2S5、LiCl、LiBrおよびLi2SO4から本実施例の方法2によって得た。
(実施例2)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物のX線回折(XRD)特性評価
【0128】
実施例1において調製したアルジロダイトの結晶構造をXRDによって検討した。分析を全体的に無水チャンバー中で行い、X線スペクトルを、コバルトX線源を装備したRigaku MiniFlex(商標)X線回折計を使用して得た。
【0129】
実施例1において調製した80mgのアルジロダイト粉末を圧縮することによって、ペレットを調製した。次いで、ペレットを不活性雰囲気下、グローブボックス中で閉鎖した密封試料ホルダーに入れた。
【0130】
図1~6において表されているX線回折パターンにおいて、Li
3PO
4、Li
2SおよびLiCl不純物に対応するピークは、それぞれ、実線、破線および二点鎖線によって識別した。「D」ピークは、XRD分析において使用したドームに由来している。他のピークは、アルジロダイト型構造に対応する。
【0131】
図1は、アルジロダイト(アルジロダイト1~4および8)に対して得られたX線回折パターンを表す。
図1に表されているX線回折パターンにより、アルジロダイト型構造が実際に、全組成に対して得られていることが示される。最も酸素に富む組成(y>0.3)(アルジロダイト3および4)の場合、実質的により多い量の不純物(LiCl、Li
2SおよびLi
3PO
4)の存在を観察することができる。
【0132】
図2は、アルジロダイト2および5~7に対して得られたX線回折パターンを表す。
図2は、t=1.3およびy=0.3(アルジロダイト5および6)の場合、およびこれは、2つの合成(式3および4)の場合に、アルジロダイト構造が実際に得られたことを示している。
図2において、アルジロダイト5の構造よりも、アルジロダイト6の構造の方が、残留Li
2Sの存在が少ないことを観察することができる。
図2はまた、式Li
4.8PS
4.1O
0.3Cl
1.6(t=1.6およびy=0.3)のアルジロダイトの構造(アルジロダイト7)の分解を示している。実質的により多い量の残留LiClの量が観察することができるが、Li
2Sの痕跡は観察することができない。これによって、少ない量のリチウムを含むアルジロダイト型構造は、アルジロダイト型および寄生位相(例えば、LiCl)の混合物を誘導し得ることが示される。
【0133】
図3は、Li
2SO
4(アルジロダイト2および3)およびLi
2O(アルジロダイト9および10)前駆体から得られたアルジロダイトのX線回折パターンを表す。
図3は、酸素含有率0.3(アルジロダイト2および9)の場合、2つの異なる前駆体から得られた無機化合物のアルジロダイトの構造に観察可能な有意な差異がないことを示している。しかし、酸素含有率0.5の場合、Li
2Oから調製されたアルジロダイト(アルジロダイト10)は、実質的により多い不純物(とりわけ、LiCl)を含有し、Li
2SO
4から調製されたアルジロダイト(アルジロダイト3)と比較して、実質的にそれほど明確な構造を有していない。したがって、一般に使用されるLi
2O前駆体と比較して、幅広い組成範囲にわたり、Li
2SO
4前駆体から実質的により純度の高い酸化されたアルジロダイトを得ることができる。
【0134】
図4は、LiCl(アルジロダイト2)またはLiBr(アルジロダイト15)から得られた同じ組成のX線回折パターンと比較した、Li
2SO
4前駆体、およびLiClとLiBrとを含むハロゲン化物の混合物から得られたアルジロダイト(アルジロダイト12~14)のX線回折パターンを表す。
図4は、アルジロダイト構造が、BrおよびCl含有率とは無関係に、良好に保存されていることを示している。ピークの位置は、Br含有率が増加するにつれて低下する。これは、文献において公知の現象である、格子パラメーターの増大に起因し得る。
【0135】
図5は、Li
2SO
4前駆体、ならびにLiCl、LiBrおよびLiIを含むハロゲン化物の混合物から得た、アルジロダイト(アルジロダイト16~19)のX線回折パターンを表す。
図5は、3種のハロゲン化物の混合物を用いても、アルジロダイト構造が良好に保存されていることを示している。
【0136】
したがって、組成、およびハロゲン化物の混合物とは無関係に、Li2SO4前駆体からの酸化により、酸化されたアルジロダイト構造を有する化合物を得ることができる。
【0137】
図6は、少容量のジャー中で、Li
2SO
4前駆体から得られたアルジロダイト2および13(実施例1に表されている方法1に従って)、ならびにより多い容量のジャー中で、Li
2SO
4前駆体から得たアルジロダイト20および21(実施例1に表されている方法2に従って)のX線回折パターンを表す。アルジロダイト2および20の組成は類似しており、同様にアルジロダイト13および21の組成は類似している。
図5は、アルジロダイトの組成とは無関係に、および合成量とは無関係に、アルジロダイト構造が良好に保存されていることを示しており、こうして記載されている方法は、工業的規模で適用され得ることを実証する。
(実施例3)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物の核磁気共鳴(NMR)特性評価
【0138】
実施例1において調製したアルジロダイトの組成をNMRによって検討した。リチウム(6Li NMR)およびリン(31P NMR)の核磁気共鳴スペクトルを、最大マジック角度回転速度15kHzでの、4mmの三重共鳴プローブを備えたBruker Avance NEO 500MHz分光計を使用するMAS(マジック角度回転)技法によって得た。
【0139】
図7および8は、それぞれ、前駆体Li
2SO
4(アルジロダイト2)およびLi
2O(アルジロダイト9)から得られた、組成Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6のアルジロダイトに対して得られた
6Li NMRおよび
31P NMRスペクトルを表す。
【0140】
2種のアルジロダイト(アルジロダイト2および9)に関し、
図7において表される
6Li NMRスペクトルにおける主要ピークは、アルジロダイトに対応する一方、二次ピークは、LiCl残留物に対応する。
【0141】
アルジロダイト2および9に関し、
図8に表される
31P NMRスペクトルにおける主要ピークは、アルジロダイトに対応する一方、二次ピークは、P
2S
6
4-、PO
2S
2、PO
3SおよびPO
4相に対応する。
31P NMRピークの相対強度を表1に示す。
【表1】
【0142】
表1に表されているピークの相対強度は、前駆体としてのLi2SO4(アルジロダイト2)の使用により、Li2O(アルジロダイト9)の使用と比較して、PO2S2、PO3SおよびPO4二次相の形成を顕著に低減することが可能となることを示している。こうして、酸素は、Li2SO4前駆体のおかげでアルジロダイト構造に良好に組み込まれ、こうして、さらなる相の生成はより少なくなることを観察することができる。これによって、Li2SO4から合成したアルジロダイトを、前駆体としてLi2Oまたは任意の他の酸素源から調製されたアルジロダイトと区別することが可能となる。
【0143】
図9および10は、それぞれ、Li
2SO
4前駆体から得られた、式Li
4.8PS
4.1O
0.3Cl
1.6のアルジロダイト(アルジロダイト7)に対して得られた
6Li NMRおよび
31P NMRスペクトルを表す。
【0144】
図9に表されている
6Li NMRスペクトルにおいて、6個のリチウムおよび1個の塩素を有するアルジロダイト相に対応する1.2ppmにおけるピーク、過剰の塩素を有する構造を有するアルジロダイト相に対応する0.2ppmにおける第2のピーク、およびLiClに対応する-1.1ppmにおける第3のピークを観察することができる。
【0145】
図10に表されている
31P NMRスペクトルにおいて、アルジロダイトに対応する主要ピーク、ならびにP
2S
6
4-、PO
2S
2およびPO
3S相に対応する3つの二次ピークを観察することができる。
図10はまた、主要ピークの拡大を表しており、主要ピークは、二次リン構造において、1個(P1)、2個(P2)および3個(P3)の塩素に対応する3つのピークに分かれることを示している。P1およびP3の同時過剰により、塩素の割合が低い、および高い、2つのタイプのアルジロダイトの存在が確認される。
【0146】
したがって、リチウム含有率の実質的な低下により、少なくとも2つのアルジロダイト相の存在をもたらすことができる。
【0147】
図11および12は、それぞれ、Li
2SO
4前駆体から得られた、式Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.8Br
0.8のアルジロダイト(アルジロダイト13)、および式Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.0Br
0.5I
0.1のアルジロダイト(アルジロダイト16)に対して得られた、
6Li NMRおよび
31P NMRスペクトルを表す。
図11に表されている
6Li NMRスペクトルにおける主要ピークは、アルジロダイトに対応する。
図12に表されている
31P NMRスペクトルにおいて、アルジロダイトに対応する主要ピーク、ならびにP
2S
6
4-およびPO
2S
2相に対応する弱い二次ピークの存在を観察することができる。これによって、ハロゲン化物の組成とは無関係に、X線回折によって得られた結果、すなわちLi
2SO
4から純粋な酸化されたアルジロダイト相が得られたことが裏付けられる。
(実施例4)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物の空気への曝露時のH
2Sの発生
【0148】
H2S発生に及ぼすアルジロダイトの影響を評価するため、安全性試験を行った。約10mg(±3mg)のアルジロダイト粉末を、不活性雰囲気下、密封セルに入れた。
【0149】
密封セルに、約24.5℃(±0.5℃)の制御温度、および50%(±5%)の制御湿度において、ほぼ0.3L/分の流量の空気ストリームを導入した。セル出口に置いた先に較正したマルチガス検出器(MSA ALTAIR(商標)5X)を用いて、約15秒ごとに、発生したH2Sガスの濃度を測定した。これらのデータから、アルジロダイトの質量によって正規化した、H2Sガスの発生体積を計算した。
【0150】
これらの分析の結果を
図13に表す。
図13は、実施例1において調製した、アルジロダイト2(Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6)(点線)、7(Li
4.8PS
4.1O
0.3Cl
1.6)(一点鎖線)、8(Li
5.4PS
4.4Cl
1.6)(破線)、11(Li
6PS
5Cl)(実線)、13(Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
0.8Br
0.8)(二点鎖線)および16(Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.0Br
0.5I
0.1)(小破線)に関する、時間(時)に対するアルジロダイト粉末1グラムあたりに発生したH
2Sガスの体積(mL/g)のグラフを示している。
【0151】
Li
6PS
5Cl型の従来のアルジロダイト(アルジロダイト11)は、Li
5.4PS
4.4Cl
1.6型の塩素をドープしたアルジロダイト(アルジロダイト8)よりも実質的に大きな体積のH
2Sガスを発生することを観察することができ、安全性に対する塩素をドープすることの利点を実証している。Li
2SO
4前駆体をベースとするアルジロダイトはまた、アルジロダイトLi
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6(アルジロダイト2)の場合と同様に、H
2Sガスの体積を低下させることが可能となることを観察することもできる。同じ酸素およびリチウム含有率を維持しながら、先の組成からの臭素および/またはヨウ素の追加により、H
2S発生をやはり低下させることが可能となる。最後に、
図13は、Li
2SO
4前駆体から生成した、リチウムが大幅に少ないアルジロダイト型構造(アルジロダイト7)は、発生するH
2Sガスの体積をさらに低減すること、ならびにしたがって、Li
2Sの使用量の低下によって、およびアニーリングステップのないことまたは減少によって生産コストを削減しながらも、安全性を改善することを可能にすることを示している。
(実施例5)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物のイオン伝導率
a)イオン伝導率測定のための対称セルの調製
【0152】
実施例1において調製したアルジロダイト型構造を有する無機化合物のイオン伝導率を測定するため、対称セルを以下の手順に従って組み立てた。
【0153】
2枚のステンレス鋼製電極間に、360MPaの圧力下で、実施例1において調製したアルジロダイト型構造を有する無機化合物の粉末160mgを圧縮することによってペレットを調製した。次いで、2枚のステンレス鋼製電極間に置いたペレットを、20MPaの圧力に維持した不活性雰囲気下のグローブボックス中で閉鎖した、密封伝導率セルに組み立てた。
【0154】
対称セルを、表2に表示されている構成で組み立てた。
【表2】
【0155】
b)対称セルのイオン伝導率の測定
実施例5(a)において組み立てた対称セルのイオン伝導率の測定を、VMP-300マルチチャネルポテンシオスタット(BioLogic)を用いて行った。測定は、-10℃から70℃までの温度範囲(10℃ごとに昇温および降温)において、50mVの振幅下、7MHzから200mHzまでの周波数範囲で行った。
【0156】
その温度において約1時間のオーブン温度安定化後に、各イオン伝導率測定値を得た。イオン伝導率は、測定したペレットに関連する抵抗を推定するために使用した等価回路の関数として推定した。実施例5(a)において調製した対称セルに対して、直線を得た。これらの線の傾きが活性化エネルギーに対応し、約0.3eVの値を有する。
【0157】
図14は、セル1(丸)、2(三角)、3(菱形)、4(星)および8(四角)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図14において、最も酸素が不足しているアルジロダイト(y≦0.3)(セル1および2)のイオン伝導率は、酸化物不含アルジロダイト(セル8)のイオン伝導率と類似することを観察することができる。伝導率の低下が、最も酸素に富むアルジロダイト(y>0.3)(セル3および4)に対して観察される。Li
2SO
4から調製した式Li
5.4PS
4.1O
0.3Cl
1.6のアルジロダイト(セル2)のイオン伝導率は、酸化物不含アルジロダイト(セル8)のイオン伝導率と実質的に同一であることに留意すべきである。
【0158】
図15は、セル2(三角)、5(四角)、6(丸)および7(菱形)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図15は、2種の異なる合成(それぞれ、式(3)および(4))によって得られた、それぞれ、アルジロダイト5および6(t=1.3およびy=0.3)を含むセル5および6のイオン伝導率の値が実質的に類似することを示している。t=1.6およびy=0.3の場合、
図15はまた、アルジロダイト2を含むセル2のイオン伝導率と比較して、アルジロダイト7を含むセル7のイオン伝導率の値が実質的により低いことを示している。観察され得る通り、Li
2SO
4前駆体のおかげで、実質的に同じ範囲のイオン伝導率に留まりながらも、リチウム酸硫化物アルジロダイトの組成(例えば、リチウム、酸素および硫黄の含有率)を調節することができる。著しいリチウム欠乏が、イオン伝導率の低下を誘発することも観察することができる。
【0159】
図16は、セル2(四角)、3(丸)、9(三角)および10(菱形)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図16は、同じ組成の場合、Li
2SO
4前駆体から得られたアルジロダイト(アルジロダイト2および3)のイオン伝導率は、Li
2O前駆体から得られたアルジロダイト(アルジロダイト9および10)のイオン伝導率よりも実質的に高いことを示している。
図8に示されている通り、Li
2SO
4型前駆体の使用により、アルジロダイト構造内への酸素のよりよい組み込みが可能となり、これは、
図16における結果によって実証される通り、伝導率の向上になる。
【0160】
図17は、セル2(四角)、12(丸)、13(三角)、14(菱形)および15(星)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図17は、2種のハロゲン(すなわち、塩素および臭素)に由来する組成の調節により、イオン伝導率は実質的に改変されないこと、および依然として高い伝導率を維持することを示している。アルジロダイト14が、最良の伝導率を示すことに留意すべきである。
【0161】
図18は、セル16(四角)、17(丸)、18(三角)および19(菱形)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図18は、Li
2SO
4の存在下で、3種のハロゲン(すなわち、塩素、臭素およびヨウ素)の組み込みにより、イオン伝導率が実質的に改変されないこと、および依然として高い伝導率を維持することを示している。0.1のヨウ素含有率により、より高い含有率よりも優れた伝導率を得ることが可能となることが観察され得る。
【0162】
したがって、様々な分析を積み上げることによって、Li2SO4前駆体のおかげで、酸化物を含まないものと同じイオン伝導率を示し、Li2O前駆体の使用と比較して改善されたアルジロダイト酸硫化物を得ることができる。さらに、高いイオン伝導率を維持しながら、様々なハロゲン化物含有率およびタイプを有するLi2SO4ベースのアルジロダイトの組成を調節することができる。さらに、この調節により、良好な伝導特性を保ちながら、安全性を改善することが可能となる。
【0163】
図19は、セル2(四角)、20(丸)、13(三角)および21(菱形)に関する、温度の関数として測定したイオン伝導率結果を表す。
図19は、Li
2SO
4ベースのアルジロダイトの組成とは無関係に、合成量を増加させると、イオン伝導率がわずかに向上することを示している。このことは、提案された解決策は、性能の喪失なしに、工業的規模で容易に適用可能となり得ることを実証する。
(実施例6)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物の電気化学的安定性
a)電気化学的安定性測定のための偽電池の調製
【0164】
実施例1において調製したアルジロダイト2および9の電気化学的安定性を決定するため、以下の手順に従って偽電池を組み立てた。
【0165】
5重量%のVGCFを95重量%のアルジロダイト2および9と混合して、コンポジット正偽電極を得、こうして、電池構成において使用することができる、最終コンポジット正極組成の実質的に代表的な酸化-還元反応を観察する。
【0166】
次いで、同じアルジロダイトから構成される固体電解質をコンポジット正偽電極の表面に置いた。次いで、金属リチウム製の負極を、固体電解質の表面に堆積させた。
【0167】
次いで、コンポジット正偽電極、固体電解質および金属リチウム製負極を備える組立体を圧縮し、不活性雰囲気下、グローブボックス中で密封セルに組み立てた。
【0168】
偽電池を、表3に表示されている構成で組み立てた。
【表3】
【0169】
b)サイクリックボルタンメトリー
VMP-300マルチチャネルポテンシオスタット(BioLogic)を使用して、実施例6(a)に記載されている偽電池の電気化学的酸化安定性を測定した。
【0170】
図20は、約30℃の温度における、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)の電位範囲、すなわちLi/Li+に対して2.5V~4.3Vの間における、0.05mV/sの走査速度で記録した、セル22およびセル23(比較電池)に対して得られたサイクリックボルタンメトリーの結果を表す。
図20は、2種の偽電池の各々に対して、最初の4サイクルの間に得られた結果を表す。
【0171】
図20は、リチウム金属との反応が観察され得なかったことを示しており、アルジロダイトのリチウム金属との化学的および電気化学的安定性を実証している。NMCの電位範囲では、どちらの偽電池の場合も、弱い酸化-還元反応を観察することができ、前駆体としてLi
2SO
4を使用して得られたアルジロダイトを含むセル22の場合、より低い電流密度(0.3μA/cm2)およびより低い分極ヒステリシスが生じた。この反応は可逆的であることを観察することもできる。したがって、アルジロダイトは、NMCの電位範囲において、電気化学的に実質的に安定であると思われ、前駆体としてLi
2SO
4を使用して得られたアルジロダイトの場合、電気化学的安定性が実質的に改善された。したがって、前駆体としてLi
2SO
4を使用して得られたアルジロダイトは、リチウム金属電池の全電位範囲にわたり、実質的に安定である。
(実施例7)
アルジロダイト型構造を有する無機化合物の電気化学的特性
【0172】
実施例1において調製したアルジロダイト2の電気化学的特性を検討した。
a)コンポジット正極材料の調製
実施例1において調製した35重量%のアルジロダイト2粉末を、65重量%のLiNi0.6Mn0.2Co0.2O2粒子(NMC622)、および5重量%のLi400カーボンブラック(Denka(商標))とVGCF(75:25質量比)との混合物と混合した。ボルテックスミキサーを使用して乾燥粉末を混合し、次いで、乳鉢を用いて混合して、コンポジット正極材料を均質にした。
b)電気化学セルの構成(セル24)
【0173】
電気化学セルを以下の手順に従って組み立てた。
【0174】
200MPaの圧力下、直径10mmの金型に、実施例1において調製したアルジロダイト2粉末80mgを入れることによって固体電解質を調製した。次いで、金型内で固体電解質上に実施例7(a)において調製したコンポジット正極材料13mg、その後アルミニウム集電体を加えた。次いで、固体電解質層、コンポジット正極層およびアルミニウム集電体を含む金型の内容物を、約10分間、360MPaの圧力下で圧縮した。次いで、ステンレス鋼製集電体の上に、固体電解質層に面して直径10mmの金属リチウム電極を加え、組立体を約5分間、120MPaの圧力下で圧縮した。
【0175】
次いで、電気化学セルを、20MPaの圧力に維持した不活性雰囲気下のグローブボックス中で閉鎖した密封サイクリングセルに組み立てた。
c)電気化学セルの電気化学的挙動
【0176】
実施例7(b)において組み立てたセル24を、Li/Li+に対して、2.5V~4.3Vの間でサイクリングした。最初の5回のサイクルをC/10で、その後4回のサイクルをC/4で行い、次いで、1.8mAh/cm2の表面容量に対し、30℃の温度において、C/2の一定の充電電流および放電電流でエージング実験を行った。
【0177】
図21は、100サイクルにわたるサイクル数の関数としての、充電容量(丸)および放電容量(四角)およびクーロン効率(三角)のグラフを示している。
【0178】
図22および
図23は、異なる充電電流および放電電流における、放電プロファイルを示している。より詳細には、
図22および
図23は、それぞれ、放電容量および時間(時)の関数としての電位のグラフを示している。
【0179】
C/10、C/4およびC/2において、この電気化学セルは、それぞれ、約170mAh.g-1、160mAh.g-1および150mAh.g-1の容量を実現することを観察することができる。
【0180】
100サイクル後の実質的な容量保持を観察することができ、
図22に実証される通り、安定なエージング性能が可能となる。30℃の温度において、充電および放電におけるC/2での電気化学セルの適正なサイクル性を観察することができ、電位における、ならびに電子伝導性材料(すなわち、Li400カーボンブラックとVGCFの混合物)および電気化学的活性材料(すなわち、NCM)に対する、アルジロダイト2の電気化学的安定性が良好であることを実証している。
【0181】
企図される本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態のいずれにも、いくつかの改変を行うことができる。本出願において参照される参照文献、特許または科学文献が、すべての目的のため、その全体が参照により本明細書において組み込まれている。
【国際調査報告】