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特表2024-539335新規抗うつ剤、及び神経可塑剤とその治療的使用
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  • 特表-新規抗うつ剤、及び神経可塑剤とその治療的使用 図1
  • 特表-新規抗うつ剤、及び神経可塑剤とその治療的使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】新規抗うつ剤、及び神経可塑剤とその治療的使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20241018BHJP
   C07F 9/572 20060101ALI20241018BHJP
   C07F 9/59 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/4045
A61K31/675
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/16
A61P25/14
A61P39/02
C07F9/572 A
C07F9/59
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525471
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CA2022051579
(87)【国際公開番号】W WO2023070205
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,462
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522360046
【氏名又は名称】マーベル・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィリアムズ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZC37
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB21
(57)【要約】
式(6)、式(8)、及び式(10)の化合物は調製され、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、胎児性アルコール曝露、自閉症、統合失調症、外傷性脳損傷、脳卒中、中毒、ハンチントン病、脆弱X、及びレット症候群などの疾患、並びに状態の治療、及び/又は予防に有用であることが見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】
【化2】
及び、
【化3】
を含む群から選択される化合物。
【請求項2】
障害、又は状態を処置する、又は予防する方法であって、請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項3】
障害、又は状態を治療、又は予防するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項4】
障害、又は状態を治療、又は予防するための請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記障害、又は状態がうつ病である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法、使用、又は化合物。
【請求項6】
前記障害、又は状態が、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、胎児性アルコール曝露、自閉症、統合失調症、外傷性脳損傷、脳卒中、中毒、ハンチントン病、脆弱X、及びレット症候群のうち一つ以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法、使用、又は化合物。
【請求項7】
神経可塑性を調節する化合物とともに投与することをさらに含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法、使用、又は化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗うつ作用、及び神経可塑性を有する化合物、これらの化合物を含む医薬組成物、並びに神経細胞損傷を伴ったうつ病疾患の治療における、特にヒトに対するそれらの使用に関する。
【0002】
本出願は、2021年10月27日出願の米国仮出願第63/272、462号を基礎とする優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
うつ病は、すでに多数の治療薬が承認されているにもかかわらず、現在も重要な医学的問題である。現在の抗うつ剤に反応しない患者は3分の1に上り、もし反応したとしても、治療による有益な効果は、改善が感じられるまでに少なくとも2~4週間かかる。幻覚剤の分野に関心が大きくなっているが、その理由は、例えばケタミン、LSD、NMDA、及びトリプタミン類(DMT、シロシビン)などこれらの分子が持つ、神経可塑性の促進、及び抑うつ症状の速やかな軽減といった効能による(Ly C、Greb AC、Cameron LP、et al. Psychedelics Promote Structural and Functional Neural Plasticity.Cell Rep.2018;23(11):3170-3182.doi:10.1016/j.celrep. 2018.05.022)。いくつかメカニズムはあるが、脳由来神経栄養因子(BDNF)、及びその受容体TrkBが深く関わっている。
【0004】
神経可塑性を促進する効能は、うつ病及びその関連疾患だけでなく、神経疾患に潜在的に重要であり、そして、積極的に、且つ広くほかの疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、胎児性アルコール曝露、自閉症、統合失調症を含むが、これに限定されない)に対し影響を与える(CL、CBC、KY. 7、8-dihydroxyflavone、a small molecular TrkB agonist、is useful for treating various BDNF-implicated human disorders. Transl Neurodegener. 2016;5(1). doi: 10.1186/S40035-015-0048-7)。神経可塑性の促進の臨床的重要性という視点では、新規の治療剤を開発するため、神経可塑性を促進する化合物を特定する需要がある。神経可塑性を促進する複数の化合物が本明細書中で提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ly C、Greb AC、Cameron LP、et al. Psychedelics Promote Structural and Functional Neural Plasticity.Cell Rep.2018;23(11):3170-3182.doi:10.1016/j.celrep. 2018.05.022
【非特許文献2】CL、CBC、KY. 7、8-dihydroxyflavone、a small molecular TrkB agonist、is useful for treating various BDNF-implicated human disorders. Transl Neurodegener. 2016;5(1). doi: 10.1186/S40035-015-0048-7
【非特許文献3】Shen J、Ghai K、Sompol P、et al. N-acetyl serotonin derivatives as potentneuroprotectants for retinas. doi: 10.1073/pnas.1119201109
【非特許文献4】Jang SW、Liu X、Pradoldej S、et al. N-acetylserotonin activates TrkB receptor in a circadian rhythm. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(8):3876-3881. doi:10.1073/pnas.0912531107
【非特許文献5】Can A、Dao DT、Arad M、Terrillion CE、Piantadosi SC、Gould TD. The Mouse Forced Swim Test. J Vis Exp. 2012;(59):3638. doi:10.3791/3638
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの態様は、式(6):
【化1】
の化合物に関する。
【0007】
本発明の別の一つの態様は、式(8):
【化2】
を有する化合物に関する。
【0008】
本発明の別の一つの態様は、式(10):
【化3】
を有する化合物に関する。
【0009】
本発明はさらに、式(6)(8)、及び(10)の化合物の、うつ病の治療のための使用を教示する。本発明はさらに、式(6)(8)、及び(10)の化合物の、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、胎児性アルコール曝露、自閉症、統合失調症、外傷性脳損傷、脳卒中、中毒、ハンチントン病、脆弱X、及びレット症候群のうち一つ以上の治療のための使用を教示する。
【0010】
本発明は、以下に示すような図面を参照することでより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、複数の試験化合物、ビヒクルコントロール、及びポジティブコントロールアンタゴニストの不動状態時間をグラフで表したものである。
図2図2は、複数の試験化合物、ビヒクルコントロール、及びポジティブコントロールアンタゴニストの不動状態までの時間/潜時をグラフで表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の用語解説、及び結論となる実施例を含む以下の説明を参照することにより、より十分に理解され得る。
【0013】
以下の説明を通じて、当業者へより深い理解を提供するために、具体的な詳細が記載されている。しかしながら、周知の要素は、本開示を不必要に曖昧にすることを避けるために、詳細には示されておらず、又は記載されていない場合がある。したがって、本明細書、及び図面は、制限的な意味合いではなく例示的な意味合いで見なされるべきである。
【0014】
本発明者らは、トリプタミンファーマコフォアを有する新規複数の分子について、合成、及びそれら新規複数の分子の使用の原型的な例としてうつ病動物モデルにおいて試験を行った。これは、前記状態を治療、及び/又は予防するための重要な発見である。
【0015】
好ましい一つの実施形態では、疾患、障害、又は病状は、気分障害、及び気分感情障害、うつ病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、胎児性アルコール暴露、自閉症、外傷性脳損傷、脳卒中、中毒、ハンチントン病、脆弱X症候群、及びレット症候群、及び統合失調症、急性、及び慢性を含むがこれに限定されない神経疾患、及び精神疾患;並びに脳血管疾患のあらゆる後遺症から選択される。
【0016】
本明細書中で使用される用語「処置(treat)」、「治療(treatment)」、又は「処置(treating)」は、神経可塑性の調節を通して治療的、又は予防的利益に影響を及ぼす目的で、本発明の実施形態による活性剤、又は組成物を被験体に投与することを指し示すことが企図される。処置は疾患、障害、若しくは状態、又は神経可塑性活性の調節を介して媒介される前記疾患、障害、若しくは状態の一つ以上の症状を逆転させる、改善する、緩和する、進行を抑制する、重症度を軽減する、又は予防することを含む。用語「被験体」は、例えばヒトなど、前記治療を必要とする哺乳動物患者を指し示す。
【0017】
用語「調整」は、増加、増強、抑止、減少、抑制、及び類する言葉を一般的に生理学的に重要な方法で包含する。
【0018】
表現「薬学的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は妥当な利益/リスク比に見合った他の問題となる合併症を伴わず、ヒト、及び動物の組織との接触に適している化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指し示す。
【0019】
用語「有効量」は、疾患、障害、若しくは病状を予防するのに十分である、又は治療されている疾患、障害、若しくは病状の一つ以上の症状を予防するのに十分である、投与されている、又は投与されるべき、活性剤、及び化合物の量を指し示す。特定の実施形態では、用語「有効量」は、疾患、障害、若しくは病状の、又は疾患、障害、若しくは病状の一つ以上の症状、のリスクを低減させるために十分な、投与されている、又は投与されるべき、活性剤、及び化合物の量を指し示す。本発明の化合物の有効量、又は有効用量は、モデル化、用量漸増試験、又は臨床試験などの一般的な方法によって、及び一般的な因子、例えば、投与、又は薬剤送達の様式、若しくは経路、化合物の薬物動態、疾患、障害、又は状態の重症度、及び経過、被験体の以前の治療、又は進行中の治療、被験体の健康状態、及び薬物に対する反応、及び主治医の判断を考慮することによって、確認することができる。投与量の例としては、対象者の体重1 kg当たり1日約0.001~約200 mgの化合物、好ましくは約0.05~100 mg/kg/日、又は約1~35 mg/kg/日の範囲であり、一括、又は分割投与単位(例えば、BID、TID、QID)にて投与する。70 kgのヒトの場合、適切な投与量の例示的範囲は、約0.05~約7 g/日、又は約0.2~約2.5 g/日である。
【0020】
さらに、本発明の化合物は、前記状態の治療において、追加の有効成分と組み合わせて使用してもよい。追加の有効成分は、併用又は逐次投与のために別個に共投与してもよく、又は本発明による医薬組成物中に前記薬剤と共に含有させてもよい。一つの例示的な実施形態では、追加の有効成分とは、前記状態、障害、又は疾患を含む、神経可塑性活性によって媒介される状態、障害、又は疾患の治療に有効であることが既知、又は発見されているものであり、例えば、別の神経可塑性調節因子や、特定の状態、障害、又は疾患に関連する別の標的に対して活性を有する化合物などである。組み合わせは、(例えば、本発明による活性剤の効力、又は有効性を増強する化合物を組み合わせに含めることで)有効性を増加させる、一つ以上の副作用を減少させる、又は本発明による活性剤の必要用量を減少させる、働きをしてもよい。
【0021】
本発明の化合物は、単独で、又は一つ以上の追加の有効成分と組み合わせて、本発明の医薬組成物を製剤化するために使用されてもよい。本発明の医薬組成物は、(a)本発明に記載された少なくとも一つの化合物の有効量;及び(b)薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0022】
「薬学的に許容される賦形剤」は、薬理学的組成物に添加され、さもなければ薬剤の投与を容易にするためのビヒクル、担体、又は希釈剤として使用される、非毒性、生物学的に看過され、さもなければ被験体への投与に生物学的に適している物質、例えば不活性物質であって、これらと適合する物質を指し示す。また、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、香料、着色料、及び保存料も含まれる。賦形剤の例としては、炭酸ナトリウム、及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、及びリン酸カルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロースを含むセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、並びにそれらに類するものが挙げられる。例示的な液体経口賦形剤は、エタノール、グリセロール、水、植物油、及びそれらに類するものが含まれる。デンプン、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、結晶セルロース、及びアルギン酸は適した崩壊剤である。結合剤はデンプン、及びゼラチンを含んでもよい。潤滑剤が存在する場合は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってもよい。必要であれば、錠剤をモノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの物質でコーティングして消化管での吸収を遅らせる、又は腸溶性コーティングを施すなどしてもよい。
【0023】
活性剤としての本発明による化合物の一以上の投与単位を含む医薬組成物の送達形態は、公知の、又は当業者に利用可能である適切な医薬賦形剤、及び配合技術を用いて調製することができる。組成物は、適切な送達経路、例えば、経口、非経口、直腸、局所、又は眼経路によって、又は吸入によって投与され得る。
【0024】
製剤は、錠剤、カプセル剤、小袋剤、ドラジェ剤、粉末剤、顆粒剤、トローチ剤、再構成用粉末剤、液剤、又は坐剤の形態であってもよい。好ましくは、組成物は、静脈内注入、局所投与、又は経口投与のために処方される。
【0025】
経口投与の場合、本発明の化合物は、錠剤、若しくはカプセルの形態で、又は溶液、乳剤、若しくは懸濁液として提供することができる。経口組成物を調製するために、化合物は、例えば、1日当たり約0.05~約100 mg/kg、又は1日当たり約0.05~約35 mg/kg、又は1日当たり約0.1~約10 mg/kgの投与量となるように処方することができる。例えば、1日当たり約5mg~5gの総投与量は、1日当たり1回、2回、3回、又は4回の投与によって達成され得る。
【0026】
経口投与のためのカプセルは、硬質、及び軟質のゼラチンカプセルを含む。硬質のゼラチンカプセルを調製するためには、本発明の化合物は固体、半固体、又は液体の希釈剤と混合され得る。軟質のゼラチンカプセルは、本発明の化合物を、水、例えばピーナッツオイル、又はオリーブオイルなどの油、液体パラフィン、短鎖脂肪酸のモノ、及びジグリセリド、ポリエチレングリコール400、又はプロピレングリコールの混合物などと混ぜることで調製され得る。
【0027】
経口投与用の液体は、懸濁液、溶液、乳濁液、若しくはシロップの形態であってもよく、又は使用前に水又は他の適切なビヒクルで再構成するために、凍結乾燥されてもよく、若しくは乾燥品として提供されてもよい。前記液体組成物は、任意選択により、薬学的に許容される賦形剤、例えば懸濁剤(例えば、ソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、及びそれらに類するもの);非水性ビヒクル、例えば、油(例えば、アーモンドオイル、又は分留ココナッツオイル)、プロピレングリコール、エチルアルコール、又は水;保存料(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸 メチル、若しくはプロピル、又はソルビン酸);レシチンなどの湿潤剤;並びに、必要に応じて、香料、又は着色料を含み得る。
【0028】
本発明の化合物は、非経口経路で投与されてもよい。例えば、組成物は坐薬として直腸投与のために処方されてもよい。静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下経路を含む非経口的使用のために、本発明の化合物は、適切なpH、及び等張性に緩衝化された滅菌水溶液、若しくは懸濁液、又は非経口的に許容される油中で提供され得る。適した水性ビヒクルは、Ringerの溶液、及び等張塩化ナトリウムを含む。これらの形態は、アンプル若しくは使い捨て注射器などの単位投与形態、適切な用量が取り出せるバイアルなどの複数回投与形態、又は注射可能な製剤を調製するために使用できる固体形態、若しくはプレ濃縮物などの形で提供される。例示的な投与量としては、数分から数日にわたり、医薬用担体と混和された、1~1000 mcg/kg/minuteの化合物の範囲としうる。
【0029】
局所投与のために、化合物は薬学的担体と約0.1%から約10%のビヒクル/薬剤比の濃度で混合され得る。他の本発明の化合物の投与様式は、経皮送達に影響を与えるためにパッチ製剤を利用し得る。本発明の化合物は代替的に、本発明の方法で吸入により、例えば適切な担体も含むスプレー製剤で鼻腔、又は口腔の経路を介して投与され得る。
【実施例
【0030】
実施例1
N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピぺリジンカルボキサミドの合成 [化合物(1)]
本化合物は、神経可塑性1や神経保護を促進することが知られている経路である、脳由来神経栄養因子(BDNF)受容体TrkBを活性化することが示されている化合物N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソピぺリジン-3-カルボキサミド(HIOCとしても公知、CAS#314054-36-9)のリン酸化誘導体である(Shen J、Ghai K、Sompol P、et al. N-acetyl serotonin derivatives as potentneuroprotectants for retinas. doi: 10.1073/pnas.1119201109)。この化合物は、O-グルクロン酸化のような初回通過代謝を非常に受けやすいカテコール構造を持つため、通常この化合物は腹腔内注射を介して投与される(レファレンス)。カテコールをリン酸化することで化合物は、どちらも医薬品に望まれる性質である経口活性と水溶性を得る。
【数1】
【0031】
オーブン乾燥した丸底フラスコに撹拌子を備え、2-オキソピペリジン-3-カルボン酸(合成経路中1、0.565 g、3.95 mmol、1.00 当量)及び、CH2Cl2 (13 ml)を入れた。混合物はアルゴンでパージし、カルボニルジイミダゾール(0.647 g、3.99 mmol、1.01 当量)を一度に加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、ピリジン(13 ml)を加え、続いてセロトニン-HCI(合成経路中2、0.857 g、4.03 mmol、1.02 当量)を加えた。セロトニンが完全に溶解したら(約10~15分)、トリエチルアミン(1.0 ml、7.90 mmol、2.00 当量)を加えた。反応混合物を室温でさらに3時間撹拌し、40℃まで加熱し、ピリジンの完全な除去を確実にするために数回に分けてトルエン(合計約50 ml以下)を加えて共沸させながら、真空下で濃縮した。得られたガム(resulting gum)をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、精製物を90:10 EtOAc/MeOHで溶出した。該当するフラクション(90: 10 EtOAc/MeOHでRf値 0.22)を合わせ、真空下で濃縮した。得られた固体をガラスフリット上にロードし、カラムクロマトグラフィーで共溶出した微量のイミダゾールを除去するために150 mlの温めたジエチルエーテルで洗浄し、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド(HIOC、合成経路中3)を薄紫色の固体として得た(1.04 g、87%)。MS (ES+ve) C16H20N3O3 [M+H]+ (計算値):302.34;(実測値):302.41
【数2】
【0032】
オーブン乾燥した丸底フラスコに撹拌子を備え、HIOC (合成経路中3、0.301 g、1.00 mmol、1.0 当量)、及びDMF (5 ml)を入れた。混合物をアルゴンでパージし、最小量の水(約0.1 ml)にあらかじめ溶解しておいたNaOH(0.06 g、1.5 mmol、1.5 当量)を滴下して加えた。混合物を室温で15分間撹拌した。その後、新たに調製したジベンジルホスホリルクロリド(合成経路中4、347 μl、1.5 mmol、1.5 当量)をアルゴン雰囲気下、0℃で滴下して加えた。反応混合物を室温に温め、さらに1時間撹拌し、DMFの完全な除去を確実にするために45℃で加熱しながら、真空中で濃縮した。 得られたガム(resulting gum)をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、精製物をCH2Cl2/MeOH (92:8)で溶出した。該当するフラクション(CH2Cl2/MeOH;90:10でRf値 0.45)を合わせ、真空中で濃縮し、N-{2-[5-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド(合成経路中5)を無色のオイルとして得た(323 mg、58%)。MS (ES+ve)C30H33N3O6P [M+H]+ (計算値): 562.56;(実測値):562.50。
【0033】
N-{2-[5-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド(合成経路中5、200 mg、0.56 mmol)のエタノール10 ml中の撹拌溶液に、10% Pd-C (114 mg)を加え、水素雰囲気下(バルーン)、室温で3時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、真空中で濃縮した。酢酸エチル/ヘキサンからトリチュレーションすると、薄茶色の固体が得られ、これを高真空下で乾燥して、N-{2-[5-(ジヒドロキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド(合成経路中6、118mg、87%)を得た。MS (ES+ve) C16H19N3O6P [M-H]+ (計算値):380.32;(実測値):380.60。 1H-NMR (CD3OD; 400 MHz): δ (ppm) 7.40 (s、 1H)、 7.26 (d、 J = 11.2 Hz、 1H)、 7.13 (s、 1H)、 6.99 (d、 J = 11.2 Hz、 1H)、 3.50 (t、 J = 9.0 Hz、 2H)、 3.33-3.29 (m、 1H)、 3.22 (t、 J = 6.8 Hz、 2H)、 2.93 (t、 J = 8.8 Hz、 2H)、 2.06-1.59 (m、 4H); 31P-NMR (CD3OD; 121 MHz): δ (ppm) -3.96。
【0034】
実施例2
N-{2-[5-(ジヒドロキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}(2-オキソ-1-ピロリジニル)アセトアミドの合成 [化合物(2)]
HIOCと類似して、この新規化合物は神経可塑性のためのリン酸化N-アセチルセロトニン誘導体である(Jang SW、Liu X、Pradoldej S、et al. N-acetylserotonin activates TrkB receptor in a circadian rhythm. Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(8):3876-3881. doi:10.1073/pnas.0912531107)。この化合物も、リン酸基によって保護されたカテコールコア構造を有している。
【数3】
【0035】
オーブン乾燥した丸底フラスコに撹拌子を備え、(2-オキソ-1-ピロリジニル)酢酸(合成経路中7、0.401 g、2.80 mmol、1.00 当量)とCH2Cl2(10 mL)を入れた。混合物をアルゴンでパージし、カルボニルジイミダゾール(0.500 g、3.08 mmol、1.01 当量)を一度に加えた。得られた混合物は、室温で30分間撹拌され、ここにさらにピリジン(10 ml)を加え、続いてセロトニン-HCL(合成経路中2、0.607 g、2.86 mmol、1.02 当量)を加えた。セロトニンが完全に溶解したら(約10~15分)、トリエチルアミン(0.7 ml、5.60 mmol、2.00 当量)を加えた。反応混合物を室温でさらに3時間撹拌し、40℃まで加熱し、ピリジンに完全な除去を確実にするために数回に分けてトルエン(合計約45ml以下)を加えて共沸させながら、真空下で濃縮した。得られたガム(resulting gum)をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、精製物を90:10 EtOAc/MeOHで溶出した。該当するフラクション(90: 10 EtOAc/MeOHでRf値 0.22)を合わせ、真空下で濃縮した。得られた固体をガラスフリット上にロードし、カラムクロマトグラフィーで共溶出した微量のイミダゾールを除去するために、150 mlの温めたジエチルエーテルで洗浄し、わずかにイミダゾールが混じった、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-アセトアミド(合成経路中8)を薄紫色の固体として得た。MS (ES+ve) C16H20N3O3 [M+H]+ (計算値):302.34;(実測値):302.30。
【数4】
【0036】
オーブン乾燥した丸底フラスコに撹拌子を備え、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル](2-オキソ-1-ピロリジニル)アセトアミド (合成経路中8、1.00 g、3.32 mmol、1.0 当量) 、及び DMF (10 mL)を入れた。混合物は、アルゴンでパージし、最低限の水(約0.2 ml)に溶解させたNaOH(0.200 g、4.98 mmol、1.5 当量)を滴下した。混合物は、室温で15分撹拌した。その後、新たに調製したクロリドリン酸ジベンジル(合成経路中4、1.54 mL、6.64 mmol、1.5 当量)をアルゴン雰囲気下、0℃で滴下した。反応混合物を室温まで温め、さらに1時間撹拌し、DMFの完全な除去を確実にするために45℃まで加熱しながら真空下で濃縮した。得られたガム(resulting gum)をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、精製物を85:15 EtOAc/MeOHで溶出した。該当するフラクションを合わせ、真空下で濃縮し、N-{2-[5-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}(2-オキソ-1-ピルロリジニル)アセトアミド(合成経路中9)を無色のオイルとして得た(705 mg、二つの工程で44%)。MS (ES+ve) C30H33N3O6P [M+H]+ (計算値):562.56;(実測値):562.40。
【0037】
N-{2-[5-(ジベンジルオキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}(2-オキソ-1-ピルロリジニル)アセトアミド (合成経路中9、397 mg、0.71 mmol)の エタノール15 mL中の撹拌溶液に、10% Pd-C (225 mg) を加え、水素雰囲気下(バルーン)で室温にて3時間撹拌した。反応混合物は次にセライトでろ過し、真空下で濃縮された。酢酸エチル/ヘキサンからトリチュレーションを行うと、薄茶色の固体が得られ、これを高真空下で乾燥してN-{2-[5-(ジヒドロオキシホスホリルオキシ)-1H-インドール-3-イル]エチル}(2-オキソ-1-ピルロリジニル)アセトアミド (合成経路中10、208 mg、78%)を得た。MS (ES+ve) C16H19N3O6P [M-H]+(計算値):380.32;(実測値):380.60。 1H-NMR (D2O; 400 MHz): δ (ppm) 7.44-7.41 (m、2H)、7.23 (s、1H)、7.05(d、J = 11.6 Hz、1H)、3.83 (s、2H)、3.54 (t、J = 8.8 Hz、2H)、3.10 (t、J = 9.6 Hz、2H)、2.97 (t、J = 8.8 Hz、2H)、2.36 (t、J = 10.8 Hz、2H)、1.91 (quintet、J = 10.3 Hz、2H); 31P-NMR (D2O; 121 MHz): δ (ppm) -3.50。
【0038】
実施例3
うつ病前臨床モデルにおける化合物(1)及び(2)のin vivo試験
強制遊泳試験(Forced swim test:FST)は分子の抗うつ効果を試験する上で広く受け入れられている前臨床モデルである (Can A、Dao DT、Arad M、Terrillion CE、Piantadosi SC、Gould TD. The Mouse Forced Swim Test. J Vis Exp. 2012;(59):3638. doi:10.3791/3638)。
【0039】
簡単に説明すると、雄のCD-1マウス(約25-35g、n=8/群)に、ビヒクル(2%DMSO水溶液、0.5%カルボキシメチルセルロース)、化合物1(ビヒクル中50mgs/kg)、化合物2(ビヒクル中50mgs/kg)、又はフルオキセチン(Prozac(登録商標)としても公知、ビヒクル中30mg/kg)を1日1回、7日間経口投与した。7日間は経口投与薬の抗うつ効果を観察する上で比較的短い時間である。7日目に、動物をFSTで試験し、異常行動(例えば幻覚症状など)を観察した。
【0040】
図1、及び2で示される通り、化合物(1)及び(2)はいずれも、不動状態時間(2~6分間)でフルオキセチン(Prozac(登録商標))と比較して格段に良い結果を示し、不動状態までの時間/潜時でビヒクルコントロールよりも良い結果を示した。どの化合物においても幻覚作用の証拠はなかった。一元配置分散分析(one-way ANOVA)とフィッシャーLSD法(Fisher LSD method)による多群解析試験を用いることで、データは化合物(1)及び(2)が驚くほど速く作用する抗うつ剤であることを示唆する。
【0041】
ここまで数々の例示的な態様、及び実施形態が議論されてきたが、当業者らは特定のその変更、並べ替え、追加、及び下位の組み合わせを認識する。従って、前述の請求項、及び今後導入される請求項は、明細書全体の最も広い解釈と一致するようなすべての変更、順列、追加、及び下位の組合せを含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】