(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】モータ固定子及びそれを用いるモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H02K3/28 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525510
(86)(22)【出願日】2023-03-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2023079300
(87)【国際公開番号】W WO2023185368
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210318639.9
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523267494
【氏名又は名称】ジェジアン ジーカー インテリジェント テクノロジー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523267508
【氏名又は名称】ヴィリディ イー-モビリティ テクノロジー (ニンボー) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523267519
【氏名又は名称】ジェジアン ギーリー ホールディング グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ゼンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ルアン、オウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、リ
(72)【発明者】
【氏名】スン、シンドン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ディアンイェ
(72)【発明者】
【氏名】リ、タオ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ホンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シアンドン
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CD02
(57)【要約】
本発明は、モータ固定子及びそれを用いるモータを提案する。モータ固定子は、固定子鉄心と、固定子巻線と、を含む。固定子鉄心は、複数の溝層を含む固定子溝を有する。溝層は、固定子鉄心の径方向に沿って配置される。固定子巻線は、固定子溝に挿入され、複数の第1導体と複数の第2導体とを含む。第1導体と第2導体はいずれも、2つの直線セグメント部を含む。複数の第1導体の直線セグメント部は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置する。第1導体と第2導体は、2つの直線セグメント部を含む。前記第2導体の1つの直線セグメント部と前記第1導体の1つの直線セグメント部は、同一の前記固定子溝に位置する。第1導体の節ピッチをy1とし、第2導体の節ピッチをy2とし、固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層における隣接する2つの第1導体の直線セグメント部の間隔をL1とし、隣接する2つの第2導体の直線セグメント部の間隔をL2とする。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ固定子であって、
複数の溝層を含む固定子溝を有する固定子鉄心と、
前記固定子溝に挿入され、複数の第1導体と複数の第2導体とを含む固定子巻線と、
を含み、
複数の前記第1導体の直線セグメント部は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置し、前記第1導体と前記第2導体はいずれも、2つの直線セグメント部を含み、前記第2導体の1つの直線セグメント部と前記第1導体の1つの直線セグメント部は、同一の前記固定子溝に位置し、
前記第1導体の節ピッチをy1とし、前記第2導体の節ピッチをy2とし、前記固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層における隣接する2つの前記第1導体の間隔をL1とし、隣接する2つの前記第2導体の間隔をL2とする場合、y1=τ、L1=τまたはL1=y2、L2=τを満たす、
ことを特徴とするモータ固定子。
【請求項2】
前記第2導体の2つの直線セグメント部は、同一の溝層に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ固定子。
【請求項3】
前記固定子巻線は、少なくとも1つの相巻線を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ固定子。
【請求項4】
前記相巻線ごとは、少なくとも2つの分岐巻線を含み、前記分岐巻線の間は、直列に接続または並列に接続される、ことを特徴とする請求項3に記載のモータ固定子。
【請求項5】
前記相巻線ごとは、2つの分岐巻線を含み、2つの前記分岐巻線における前記第2導体の直線セグメント部は、隣接する固定子溝内に位置する、ことを特徴とする請求項3に記載のモータ固定子。
【請求項6】
2つの前記分岐巻線における前記第1導体の直線セグメント部は、隣接する固定子溝内に位置する、ことを特徴とする請求項5に記載のモータ固定子。
【請求項7】
前記固定子巻線は、さらに、前記第1導体と前記第2導体との間に位置する第3導体を含み、
前記第3導体の2つの直線セグメント部と前記第1導体の2つの直線セグメント部は、それぞれ同一の固定子溝に位置し、前記第3導体の節ピッチをy3とする場合、y3=y1を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ固定子。
【請求項8】
前記第1導体は、
前記第1導体の2つの直線セグメント部の一端の間に接続される頭部と、
前記第1導体の2つの直線セグメント部の他端にそれぞれ接続される折り曲げ部と
をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のモータ固定子。
【請求項9】
隣接する前記第2導体の間に位置する前記第1導体の折り曲げ部の延在方向は、対向であり、前記第2導体の外側に位置する前記第1導体の折り曲げ部の延在方向は、同方向である、ことを特徴とする請求項8に記載のモータ固定子。
【請求項10】
モータであって、
モータ本体と、
前記モータ本体に取り付けるモータ固定子と、
を含み、
前記モータ固定子は、
複数の溝層を含む固定子溝を有する固定子鉄心と、
前記固定子溝に挿入され、複数の第1導体と複数の第2導体とを含む固定子巻線と、
を含み、
前記溝層は、前記固定子鉄心の径方向に沿って配置され、前記第1導体と前記第2導体は、2つの直線セグメント部を含み、
複数の前記第1導体の直線セグメント部は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置し、前記第1導体と前記第2導体はいずれも、2つの直線セグメント部を含み、前記第2導体の1つの直線セグメント部と前記第1導体の1つの直線セグメント部は、同一の前記固定子溝に位置し、
前記第1導体の節ピッチをy1とし、前記第2導体の節ピッチをy2とし、前記固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層における隣接する2つの前記第1導体の間隔をL1とし、隣接する2つの前記第2導体の間隔をL2とする場合、y1=τ、L1=τまたはL1=y2、L2=τを満たす、
ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ技術分野に関し、特にモータ固定子及びそれを用いるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化、電動化の発展傾向に伴い、自動車用モータの高電子密度とトルク密度に対してより高い要求が提出されている。固定子鉄心巻線は、平角線(矩形線)の方式を採用するため、固定子巻線の裸銅溝の満杯率を大幅に高めることができる。それによって、モータの効率を大幅に高めることができる。
【0003】
しかしながら、固定子ピンコイルを接続してなった従来の巻線は、複数のコイル導体のうち、一方の導体が他方の導体を囲む現象が存在する。巻線の折り曲げ部の高さは、相対的に高い。上下層における導体の間は、生産の過程において、絶縁破壊が発生しやすい。高圧下で運転する場合、上下層における導体の間は、ブレークダウンされやすい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、巻線の折り曲げ部の位置が高いため、高圧下条件でブレークダウンされやすいという課題を解決するために、モータ固定子及びそれを用いるモータを提案し、以下の技術的方案を提案する。
【0005】
本発明は、モータ固定子を提供して、固定子鉄心と固定子巻線とを含む。
【0006】
前記固定子鉄心は、固定子溝を有する。前記固定子溝は、複数の溝層を含む。前記溝層は、前記固定子鉄心の径方向に沿って配置される。
【0007】
前記固定子巻線は、前記固定子溝に挿入される。前記固定子巻線は、複数の第1導体と複数の第2導体とを含む。前記第1導体と前記第2導体は、2つの直線セグメント部を含む。
【0008】
ここで、複数の前記第1導体の直線セグメント部は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置する。前記第1導体と前記第2導体はいずれも、2つの直線セグメント部を含む。前記第2導体の1つの直線セグメント部と前記第1導体の1つの直線セグメント部は、同一の前記固定子溝に位置する。
【0009】
前記第1導体の節ピッチをy1とし、前記第2導体の節ピッチをy2とし、前記固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層における隣接する2つの前記第1導体の間隔をL1とし、隣接する2つの前記第2導体の間隔をL2とする場合、y1=τ、L1=τまたはL1=y2、L2=τを満たす。
【0010】
本発明の一実施例にいて、前記第2導体の2つの直線セグメント部は、同一の溝層に位置する。
【0011】
本発明の一実施例にいて、前記固定子巻線は、少なくとも1つの相巻線を含む。
【0012】
本発明の一実施例にいて、前記相巻線ごとは、少なくとも2つの分岐巻線を含む。前記分岐巻線の間は、直列に接続または並列に接続される。
【0013】
本発明の一実施例にいて、前記相巻線ごとは、2つの分岐巻線を含む。2つの前記分岐巻線における前記第2導体の直線セグメント部は、隣接する固定子溝内に位置する。
【0014】
本発明の一実施例にいて、2つの前記分岐巻線における前記第1導体の直線セグメント部は、隣接する固定子溝内に位置する。
【0015】
本発明の一実施例にいて、固定子巻線は、さらに、前記第3導体を含む。
【0016】
前記第3導体は、前記第1導体と前記第2導体との間に位置する。記第3導体の2つの直線セグメント部と前記第1導体の2つの直線セグメント部は、それぞれ同一の固定子溝に位置する。前記第3導体の節ピッチをy3とする場合、y3=y1を満たす。
【0017】
本発明の一実施例にいて、前記第1導体は、さらに、頭部と折り曲げ部とを含む。
【0018】
前記頭部は、前記第1導体の2つの直線セグメント部の一端の間に接続される。
【0019】
前記折り曲げ部は、前記第1導体の2つの直線セグメント部の他端にそれぞれ接続される。
【0020】
本発明の一実施例にいて、隣接する前記第2導体の間に位置する前記第1導体の折り曲げ部の延在方向は対向であり、前記第2導体の外側に位置する前記第1導体の折り曲げ部の延在方向は同方向である。
【0021】
本発明は、モータをさらに提案し、モータ本体と、前記モータ本体に取り付けるモータ固定子と、を含む。
【0022】
前記モータ固定子は、固定子鉄心と、固定子巻線とを含む。
【0023】
前記固定子鉄心は、複数の溝層を含む固定子溝を有する。前記溝層は、前記固定子鉄心の径方向に沿って配置される。
【0024】
前記固定子巻線は、前記固定子溝に挿入され、複数の第1導体と複数の第2導体とを含む。前記第1導体と前記第2導体は、2つの直線セグメント部を含む。
【0025】
ここで、複数の前記第1導体の直線セグメント部は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置する。前記第1導体と前記第2導体はいずれも、2つの直線セグメント部を含む。前記第2導体の1つの直線セグメント部と前記第1導体の1つの直線セグメント部は、同一の前記固定子溝に位置する。
【0026】
前記第1導体の節ピッチをy1とし、前記第2導体の節ピッチをy2とし、前記固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層における隣接する2つの前記第1導体の間隔をL1とし、隣接する2つの前記第2導体の間隔をL2とする場合、y1=τ、L1=τまたはL1=y2、L2=τを満たす。
【0027】
本発明は、モータ固定子及びそれを用いるモータを提案し、固定子巻線における大量のコイルをネスティングする課題を解決し、固定子巻線の折り曲げ部の高さを下げて、モータ効率を高めて、モータのトルクと電力密度を改善して、固定子巻線の環流を回避して、損失を低減することができる。そして、ネスティングされたコイルの生産過程における絶縁破壊及び高圧ブレークダウンという問題を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係るモータ固定子の構造概略図である。
【
図2】本発明に係るモータ固定子のヘアピン端子の構造概略図である。
【
図3】本発明に係るモータ固定子の溶接端子の構造概略図である。
【
図4】本発明に係るモータ固定子において第1導体からなる第1コイル群の構造概略図である。
【
図5】本発明に係るモータ固定子の第1導体における第1種の導体の構造概略図である。
【
図6】本発明に係るモータ固定子の第1導体における第2種の導体の構造概略図である。
【
図7】本発明に係るモータ固定子において第3導体からなる第3コイル群の構造概略図である。
【
図8】本発明に係るモータ固定子の第3導体の構造概略図である。
【
図9】本発明に係るモータ固定子において第2導体からなる第2コイル群の構造概略図である。
【
図10】本発明に係るモータ固定子の第2導体の構造概略図である。
【
図11】本発明に係るモータ固定子の固定子巻線の配線図である。
【
図12】本発明に係るモータ固定子の固定子巻線の巻線概略図である。
【
図13】本発明に係るモータ固定子の固定子溝の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、特定の具体例を用いて本発明の実施形態を説明する。当業者は、本明細書に開示された内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明はさらに異なる具体的な実施形態によって実施または応用することができる。本明細書の各詳細はまた、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な修飾または変更を行うことができる。
【0030】
なお、本実施形態において提供される図面は、本発明の基本的な構想を概略的に説明するだけである。そのため、図面中には、本発明に関連する部品のみを表示し、実際の実施時の部品の数、形状、寸法に基づいて描画するのではない。実際の実施時には、各部品の形態、数、割合が任意に変化してもよく、その要素のレイアウト形態もより複雑である可能性もある。
【0031】
本発明は、モータ固定子及びそれを用いるモータを提案し、電気サーボ伝動分野や、交通輸送分野などに応用できる。例えば、本願に係るモータ固定子及びそれを用いるモータは、電気自動車に応用できる。本願の発明は、固定子巻線の環流を回避して、損失を低減することができる。固定子巻線における大量のコイルをネスティングする課題を解決し、固定子巻線の折り曲げ部の高さを下げて、モータ効率を向上させる。以下、本発明を具体的な実施形態により詳細に説明する。
【0032】
図1~3に示すように、本発明は、モータ固定子を提案する。いくつかの実施例において、モータ固定子100は、固定子鉄心300と固定子巻線500とを含んでよい。固定子鉄心300には、固定子鉄心300の内面に形成される複数の固定子溝が設けられてよい。固定子溝は、固定子鉄心300の周方向に沿って配置されてよい。固定子溝は、固定子鉄心300上に所定の溝ピッチで離間してよい。
図11及び
図12に示すように、複数の固定子溝は、固定子鉄心300の周方向において、それぞれ第1号の固定子溝、第2号の固定子溝、第3号の固定子溝、第4号の固定子溝……というように、例えば、固定子鉄心300の周方向に48個の固定子溝が配置されてよい。
図13に示すように、固定子溝ごとには、複数の溝層が配置されてよい。いくつかの実施例において、固定子溝ごとには、奇数の溝層が配置されてよい。例えば、固定子溝ごとには、5つの溝層が配置される。例えば、5つの溝層は、固定子鉄心300の径方向の内側から外側への方向に沿って、第1層の溝層、第2層の溝層、第3層の溝層、第4層の溝層、第5層の溝層の順に配置されてよい。すなわち、第1層の溝層は、固定子溝の内部に近い側に位置し、第5層の溝層は、固定子溝の外部に近い側に位置する。なお、固定子溝ごとの溝層の具体的な符号は、限定されず、内から外へ1~5の順に配置してもよいし、外から内へ1~5の順に配置してもよい。
【0033】
図4~6、
図9~10を参照する。いくつかの実施例において、固定子巻線500は、固定子溝内に挿入されることができる。固定子巻線500は、複数の第1導体510及び複数の第2導体520を含んでよい。複数の第1導体510は、第1コイル群を構成することができる。第1コイル群は、固定子鉄心300の固定子溝内に位置することができる。複数の第2導体520は、第2コイル群を構成することができる。第2コイル群は、固定子鉄心300の固定子溝内に位置することができる。第2コイル群は、固定子溝の内部に近い側に位置してよい。
【0034】
図4~6を参照する。いくつかの実施例において、第1導体510は、頭部501、直線セグメント部502、および折り曲げ部503を含んでよい。ここで、直線セグメント部502は、固定子溝内に挿入するために使用されることができる。第1導体510の2つの直線セグメント部502は、異なる固定子溝内に挿入されてよい。2つの直線セグメント部502の一端の間には、頭部501が接続されることができる。2つの直線セグメント部502の他端には、折り曲げ部503が接続されることができる。
【0035】
図9~10を参照する。いくつかの実施例において、第2導体520の構造は、第1導体510の構造と類似してもよい。第2導体520は、頭部501、直線セグメント部502および折り曲げ部503を含んでよい。直線セグメント部502は、固定子溝内に挿入するために使用されることができる。第2導体520の2つの直線セグメント部502は、異なる固定子溝内に挿入するために使用されることができる。2つの直線セグメント部502の一端の間には、頭部501が接続されることができる。2つの直線セグメント部502の他端には、折り曲げ部503が接続されることができる。
【0036】
以下、具体的な実施例により、第1導体510及び第2導体520について詳細に説明する。
【0037】
図4~6を参照する。いくつかの実施例において、第1導体510は、第1種の導体511と第2種の導体512とを含んでよい。ここで、第1種の導体511は、頭部501、直線セグメント部502および折り曲げ部503を含んでよい。直線セグメント部502は、固定子溝内に挿入するために使用されることができる。第1種の導体511の2つの直線セグメント部502は、異なる固定子溝内に挿入するために使用されることができる。2つの直線セグメント部502の一端の間には、頭部501が接続されることができる。2つの直線セグメント部502の他端には、折り曲げ部503が接続されることができる。
【0038】
ここで、第2種の導体512は、頭部501、直線セグメント部502および折り曲げ部503を含んでよい。直線セグメント部502は、固定子溝内に挿入するために使用されることができる。第2種の導体512の2つの直線セグメント部502は、異なる固定子溝内に挿入するために使用あれることができる。2つの直線セグメント部502の一端の間には、頭部501が接続されることができる。2つの直線セグメント部502の他端には、折り曲げ部503が接続されることができる。第1種の導体511と第2類の導体512との差異としては、第1種の導体511の2つの折り曲げ部503の延在方向が同じであり、同方向に向いている一方、第2種の導体512の2つの折り曲げ部の延在方向が逆であり、対向している、ということにある。
【0039】
図9~10を参照する。いくつかの実施例において、第2導体520は、二つの部分を含む。第2導体520の一部分は、節ピッチが固定子巻線500の極ピッチよりも大きく、第2導体520の他部分は、節ピッチが固定子巻線500の極ピッチよりも小さい。第2導体520の2つの部分の節ピッチの和の大きさは、固定子巻線500の極ピッチの大きさの2倍であってよい。例えば、固定子巻線500の極ピッチが6個の溝ピッチの大きさである場合は、第2導体520の一部分の節ピッチが5個の溝ピッチの大きさであり、第2導体520の他部分の節ピッチが7個の溝ピッチの大きさであってもよい。
【0040】
図11及び
図12を参照する。いくつかの実施例において、複数の第1導体510の直線セグメント部502は、それぞれ隣接する2層の溝層内に位置されてもよい。第2導体520の直線セグメント部502と第1導体510の直線セグメント部502は、同一の固定子溝内に位置してもよい。第1導体510の節ピッチの大きさは、固定子巻線500の極ピッチの大きさと同じであってもよい。いくつかの実施例において、同一の溝層の隣接する第1導体510の直線セグメント部502の間隔は、固定子巻線500の極ピッチ又は第2導体520の節ピッチであってもよい。隣接する2つの第2導体520の直線セグメント部502の間隔は、固定子巻線500の極ピッチであってもよい。例えば、第1導体の節ピッチの大きさをy1とし、第2導体の節ピッチの大きさをy2とし、固定子巻線の極ピッチをτとし、同一の溝層の隣接する2つの第1導体510の直線セグメント部502の間隔をL1とし、隣接する2つの第2導体の直線セグメント部502の間隔をL2とする場合、y1=τ、L1=τまたはL1=y2、L2=τを満たす。
【0041】
図1~3、
図11及び
図12を参照する。いくつかの実施例において、固定子鉄心300の固定子溝の数は、例えば48個であってもよい。固定子巻線500は、複数の相巻線を含んでよい。複数の相巻線は、電気位相において互いに異なる。例えば、固定子巻線500は、3個の相巻線を含んでよい。ここで、相巻線ごとは、2つの分岐巻線を含む。2個の分岐巻線の間は、直列または並列に接続してよい。分岐巻線ごとは、8個の磁極を含んでよい。固定子巻線の極ピッチは、6個の溝ピッチの大きさである。各極の各相の溝の数は、2であり、q=z/2pm。ここで、qは、各極の各相溝の数であり、zは、固定子溝の数であり、2pは、モータの極数であり、mは、モータの相数である。
【0042】
図1~3、
図11及び
図12を参照して、第1導体510の節ピッチの大きさは、固定子巻線500の極ピッチの大きさと同じであってもよく、6個の溝ピッチであってもよい。一部分の第2導体520の節ピッチの大きさは、7個の溝ピッチの大きさであってもよい。他部分の第2導体520の節ピッチの大きさは、5個のピッチの大きさであってもよい。1つの分岐巻線において、同一の溝層における隣接する2つの第1導体510の直線セグメント部502の間隔は、5個の溝ピッチまたは6個の溝ピッチまたは7個の溝ピッチであってもよい。隣接する2つの第2導体520の直線セグメント502の間隔は、6個の溝ピッチの大きさであってもよい。この場合、節ピッチが7個の溝ピッチである第2導体520および節ピッチが5個の溝ピッチである第2導体520は、固定子鉄心300の周方向に沿って交互に配置されてもよい。同一の固定子溝内には、第1導体510及び第2導体520が充填されてもよい。
【0043】
第1導体510の頭部501と第2導体520の頭部501に位置する固定子巻線500の一端は、ヘアピン端400であってもよい。第1導体510の折り曲げ部503と第2導体520の折り曲げ部503に位置する固定子巻線500の一端は、溶接端200であってもよい。
【0044】
図1~3、
図11及び
図12を参照する。いくつかの実施例において、相巻線ごとは、2つの分岐巻線を含んでよい。一部分の第2導体520の節ピッチの大きさは、7個の溝ピッチであり、他部分の第2導体520の節ピッチの大きさは、5個の溝ピッチであってよい。第1分岐巻線における節ピッチが5個の溝ピッチである第2導体520と、第2分岐巻線における節ピッチが7個の溝ピッチである第2導体520は、隣接する固定子溝内に位置してもよい。すなわち、第1分岐巻線の第2導体520の一つの直線セグメント部502と、第2分岐巻線の第2導体520の一つの直線セグメント部502は、隣接する固定子溝内に位置する場合、第1分岐巻線の第2導体520の他方の直線セグメント部502と、第2分岐巻線の第2導体520の他方の直線セグメント部502は、隣接する固定子溝内に位置する。すなわち、節ピッチが7個の溝ピッチである第2導体520は、節ピッチが5個の溝ピッチである第2導体520を囲む。
【0045】
図11及び
図12に示すように、第1分岐巻線の入線端が第27号の固定子溝の第1層の溝層に位置する場合は、この分岐巻線の出線端が第21号の固定子溝の第1層の溝層に位置することができる。第2分岐巻線の入線端が第28号の固定子溝の第1層の溝層に位置する場合は、第2分岐巻線の出線端が第22号の固定子溝の第1層の溝層に位置することができる。第1分岐巻線の入線端が第27号の固定子溝の第1層の溝層に位置する場合は、第2分岐巻線の入線端が第28号の固定子溝の第1層の溝層に位置することができる。このような巻線方式で巻線を行うことによって、固定子巻線500の各相の巻線の巻線構造を最適化することができる。このような巻線方式は、分岐巻線ごとの入線端と出線端をいずれも固定子巻線500の同一の側に配置して、溶接端200の高さを十分に利用することができる。
【0046】
2つの分岐巻線の入線端が隣接する固定子溝内に位置するため、2つの分岐巻線の入線端を容易に溶接することができる。同様に、2つの分岐巻線の出線端が隣接する固定子溝内に位置するため、溶接を容易にする。この場合、2つの分岐巻線を並列に接続することに属する。いくつかの実施例において、2つの分岐巻線を直列に接続することも実現できる。例えば、リード線を介して、一方の分岐巻線の出力端と他方の分岐巻線の入力端とを接続することができる。2つの分岐巻線を相巻線として接続することで、分岐数の調整ができて、アンバランスな電流が発生しにくく、環流現象の発生を防止できて、モータの失効を防止することができる。
【0047】
第2導体520は、第2コイル群を構成する。第2コイル群において、節ピッチが7個の溝ピッチである第2導体520は、節ピッチが5個の溝ピッチである第2導体520の外側に位置する状況が存在する。なわち、節ピッチが7個の溝ピッチである第2導体520は、節ピッチが5個の溝ピッチである第2導体520を囲む。第1導体510は、第1コイル群を構成する。第1コイル群における第1導体510は、互いに異面の関係にある。本発明は、固定子巻線における大量のコイルをネスティングする課題を解決し、固定子巻線の折り曲げ部の高さを下げて、モータ効率を高めて、モータのトルクと電力密度を改善して、固定子巻線の環流を回避して、損失を低減することができる。そして、ネスティングされたコイルの生産過程における絶縁破壊及び高圧ブレークダウンという問題を低減することができる。また、奇数層の巻線を採用することによって、各相の直列導体の数を分配する課題を解決し、特定のパワーとトルクを需要するモータを設計することができる。
【0048】
図1~3、
図7~8を参照する。いくつかの実施例において、モータ固定子は、第3導体530を含んでよい。いくつかの実施例において、第3導体530は、頭部501、直線セグメント部502、および折り曲げ部503を含んでよい。ここで、直線セグメント部502は、固定子溝内に挿入するために使用されることができる。第3導体530の2つの直線セグメント部502は、異なる固定子溝内に挿入するために使用されることができる。2つの直線セグメント部502の一端の間には、頭部501が接続されることができる。2つの直線セグメント部502の他端には、折り曲げ部503が接続されることができる。第3導体530は、第3コイル群を構成することができる。第3コイル群は、第1コイル群と第2コイル群との間に位置してよい。ここで、第3コイル群の数は、少なくとも1つである。
【0049】
図1~3、
図7~8、
図11~12を参照する。いくつかの実施例において、第3導体530の直線セグメント部502は、それぞれ隣接する両側の溝層内に位置してよい。第3導体530の節ピッチの大きさは、第1導体510の節ピッチの大きさと同じであってもよい。第3導体530と第1導体510との間は、互いに平行な関係にあってもよい。第3導体の節ピッチをy3とする場合、y3=y1を満たす。
【0050】
図4~10を参照する。いくつかの実施例において、第2導体520の折り曲げ部503は、延在方向が同じである。第2導体520は、第2コイル群を構成する。第2コイル群における第2導体520の折り曲げ部503の延在方向は、同じであり、時計方向又は反時計方向に沿ってもよい。第3導体530の折り曲げ部503の延在方向は、逆である。第3導体530は、第3コイル群を構成する。第3コイル群における第3導体530の一方の折り曲げ部503の延在方向が時計方向又は反時計方向に沿っている一方、第3導体530の他方の折り曲げ部503の延在方向が逆方向であってもよい。第1導体510は、第1コイル群を構成することができる。ここで、一部分の第1導体510の折り曲げ部503の延在方向は同じである一方、他部分の第1導体510の折り曲げ部503の延在方向は逆であってもよい。例えば、隣接する第2導体520の間に位置する第1導体510の折り曲げ部503の延在方向は、逆であってもよい。この部分の第1導体510の一方の折り曲げ部503は、第1コイル群上で反時計回りまたは時計回りに延在する一方、この第1導体510の他方の折り曲げ部503の延在方向は逆であってもよい。第2導体520の外側に位置する第1導体510の折り曲げ部503の延在方向は、同じであってもよい。この部分の第1導体510の折り曲げ部503の延在方向は、第1コイル群上で反時計回りまたは時計回りに延在してもよい。第1導体510の折り曲げ部503の延在方向、第2導体520の折り曲げ部503の延在方向、第3導体530の折り曲げ部503の延在方向は、特に限定されず、
図12に示す配線線路図を満たす必要がある。
【0051】
図14を参照する。いくつかの実施例において、本発明はさらに、モータ固定子100とモータ本体600とを含むモータを提案する。このモータ固定子100は、モータ本体600に取り付けられる。このモータ固定子100は、固定子鉄心300と固定子巻線500とを含む。固定子鉄心300は、固定子溝を有してもよい。固定子溝は、固定子鉄心300の径方向に沿って配置可能な複数の溝層を含んでよい。ここで、固定子巻線500は、固定子溝内に挿入することができる。固定子巻線500は、複数の第1導体510と複数の第2導体520とを含んでよい。第1導体510と第2導体520は、2つの直線セグメント部を含んでよい。ここで、複数の第1導体510は、それぞれ隣接する2層の溝層に位置することができる。第2導体520の直線セグメント部と第1導体510の直線セグメント部は、同一の固定子溝内に位置してもよい。第1導体510の節ピッチの大きさは、固定子巻線500の極ピッチの大きさと同じである。同一の溝層における隣接する2つの第1導体510の直線セグメント部502の間隔は、極ピッチ又は第2導体520の節ピッチであってもよい。隣接する2つの第2導体520の直線セグメント部502の間隔は極ピッチであってもよい。
【0052】
要するに、本発明は、モータ固定子及びそれを用いるモータを提案する。分岐巻線ごとの進線端と出線端との両方を固定子巻線の同側に配置するため、溶接端の高さを十分に利用することができる。また、本発明は、固定子巻線における大量のコイルをネスティングする課題も解決している。固定子巻線の折り曲げ部の高さを下げして、モータ効率を高めて、モータのトルクと電力密度を改善して、固定子巻線の環流を回避して、損失を低減することができる。そして、ネスティングされたコイルの生産過程における絶縁破壊及び高圧ブレークダウンという問題を低減することができる。また、奇数層の巻線を採用することによって、各相の直列導体の数を分配する課題も解決し、特定のパワーとトルクを需要するモータを設計することができる。
【0053】
以上の説明は、本願の好適な実施例及び運用される技術原理の説明にすぎない。当業者は、本願に係る発明の範囲が上述した技術的特徴の特定の組み合わせによるものに限定されず、上記発明の要旨を逸脱することなく、上記の技術的特徴またはその均等な特徴を任意に組み合わせて形成される他の技術的態様、例えば、上述の特徴と本願に開示されている(但しこれらに限定されない)類似の機能を有する技術的特徴とを互いに置き換えて形成された技術的態様も含むべきであると理解すべきである。
【0054】
明細書に記載された技術的特徴を除いて、他の技術的特徴は、当業者の既知技術である。本発明の革新的特徴を際立たせるために、他の技術的特徴は、ここでは説明しない。
【符号の説明】
【0055】
100、モータ固定子、200、溶接端子、300、固定子鉄心、400、ヘアピン端子、500、固定子巻線、501、頭部、502、直線セグメント部、503、折り曲げ部、510、第1導体、511、第1種の導体、512、第2種の導体、520、第2導体、530、第3導体、600、モータ本体
【国際調査報告】