(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】回折ベースのホログラフィックディスプレイのためのエネルギー調節システム
(51)【国際特許分類】
G03H 1/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G03H1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525679
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2021058499
(87)【国際公開番号】W WO2023086072
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519006883
【氏名又は名称】ライト フィールド ラボ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャールズ、シー.
(72)【発明者】
【氏名】カラフィン、ジョナサン ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ベヴェンシー、ブレンダン エルウッド
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008AA04
2K008EE01
2K008FF17
(57)【要約】
本開示の実施例によると、ホログラフィックエネルギーシステムは、連続的な三次元エネルギー媒体と、連続的な三次元エネルギー媒体内にホログラムを定義するために連続的な三次元エネルギー媒体を修飾するように動作可能な第1のエネルギーを出力するように構成されたエネルギーデバイスのアレイと、連続的な三次元エネルギー媒体にコヒーレントEMエネルギーを出力するように動作可能なEMエネルギー源と、連続的な三次元エネルギー媒体内に定義されたホログラムが、複雑な振幅を有する波面を生成するために、複雑な振幅関数に従ってコヒーレントEMエネルギーを調節するように、エネルギーデバイスのアレイに命令を提供するように動作可能なコントローラと、を含み得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックエネルギーシステムであって、
連続的な三次元エネルギー媒体と、
前記連続的な三次元エネルギー媒体内にホログラムを定義するために前記連続的な三次元エネルギー媒体を修飾するように動作可能な第1のエネルギーを出力するように構成されたエネルギーデバイスのアレイと、
前記連続的な三次元エネルギー媒体にコヒーレントEMエネルギーを出力するように動作可能なEMエネルギー源と、
前記連続的な三次元エネルギー媒体内に定義された前記ホログラムが、複雑な振幅を有する波面を生成するために、複雑な振幅関数に従って前記コヒーレントEMエネルギーを調節するように、前記エネルギーデバイスのアレイに命令を提供するように動作可能なコントローラと、を備え、
前記コントローラが、動的に更新された波面を生成するために、更新された複雑な振幅関数に従って前記コヒーレントEMエネルギーを調節するように、前記連続的な三次元エネルギー媒体内に定義された前記ホログラムを更新するために、前記エネルギーデバイスのアレイに対する前記命令を動的に更新するように更に動作可能である、ホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項2】
前記連続的な三次元エネルギー媒体が、第1及び第2の不混和性相を含む、請求項1に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項3】
前記第1の不混和性相が、第1の分散媒体を形成し、前記第2の不混和性相が、前記第1の分散媒体中に第1の分散相を形成する、請求項2に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項4】
前記第1の分散相及び前記第1の分散媒体が、第1のコロイドを定義し、前記第1の分散相が、実質的に沈降しない、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項5】
前記第1の分散相及び前記第1の分散媒体が、第1の懸濁液を定義する、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項6】
前記第1の分散媒体が、固体、液体、又は気体物質を含む、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項7】
前記第1の分散相が、固体、液体、又は気体物質を含む、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項8】
第1の分散媒体及び前記第1の分散相及び前記第1の分散媒体が、液体エアロゾル、固体エアロゾル、液体発泡体、固体発泡体、エマルション、ゲル、液体固体ゾル、又は固体固体ゾルを形成する、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項9】
前記第1の分散相が、有機物質、無機物質、高分子物質、金属物質、ガラス系物質、複合物質、放射性物質、微生物物質、及び生物発光物質を含む、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項10】
前記第1の分散相が、プログラム可能な物質を含み、前記第1のエネルギーが、前記プログラム可能な物質の少なくとも1つの特性を変更するために、前記プログラム可能な物質と相互作用するように動作可能である、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの特性が、前記プログラム可能な物質の集合特性を含む、請求項10に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの特性が、前記プログラム可能な物質の局所化特性を含む、請求項10に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの特性が、形態、配向、幾何学的特性、空間特性、時間、光学特性、回折特性、屈折特性、反射特性、透過率、色彩特性、散乱特性、拡散特性、及び発光特性を含む、請求項10に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項14】
前記プログラム可能な物質が、ナノ粒子、メタマテリアル、液晶、プログラム可能なバイオハイブリッド、又はナノマシンを含む、請求項10に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項15】
前記メタマテリアルが、再構成可能なメタデバイスを形成する、請求項14に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項16】
前記メタデバイスが、アクティブなメタ表面を備える、請求項15に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項17】
前記アクティブなメタ表面の少なくとも1つのメタ原子特性が、遊離キャリア注入、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁エネルギー、又は熱エネルギーによって調節されるように動作可能である、請求項16に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項18】
前記アクティブなメタ表面が、半導体物質を含む、請求項17に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項19】
前記アクティブなメタ表面が、電気光学ポリマー又は液晶を含む、請求項17に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項20】
前記アクティブなメタ表面が、二酸化バナジウム又はカルコゲナイド化合物を含む、合金を含む、請求項17に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項21】
前記アクティブなメタ表面が、光相変化物質を含む、請求項17に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項22】
前記アクティブなメタ表面が、変形可能な格子構造を含む、請求項16に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項23】
前記アクティブなメタ表面が、可撓性基材中にメタ原子を含み、前記メタ原子が、前記可撓性基材の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する高屈折率物質を含む、請求項22に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項24】
前記メタ原子の間隔が、前記メタ表面上に直接的又は間接的に加えられる機械力によって調整されるように構成されている、請求項23に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項25】
前記メタ原子の間隔が、前記メタ表面に提供されるエネルギーによって調整されるように構成されている、請求項22に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項26】
前記アクティブなメタ表面が、可変焦点距離を有するメタレンズ、調整可能な配色を有する光学素子、及び調整可能な共振フィルタ、調整可能な相を有する光学素子、又は調整可能な振幅を有する光学素子を含む、請求項22に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項27】
前記連続的な三次元エネルギー媒体が、前記連続的な三次元エネルギー媒体の前記第1及び第2の不混和性相と不混和性である第3の相を含む、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項28】
前記連続的な三次元エネルギーの前記第3の相が、均質な相を含む、請求項27に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項29】
前記連続的な三次元エネルギー媒体の前記第3の相が、第2の分散媒体を形成する、請求項27に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項30】
前記第1の分散相が、前記第2の分散媒体中に分散される、請求項29に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項31】
前記第1の分散相が、前記第3の相に分散されず、前記連続的な三次元エネルギー媒体が、前記連続的な三次元エネルギー媒体の前記第1、第2、及び第3の相と不混和性である第4の相を含み、前記第4の相が、前記第2の分散媒体中に分散される第2の分散相を形成する、請求項29に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項32】
前記第2の分散相が、前記第1の分散媒体中に分散される、請求項31に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項33】
前記第4の相は、前記第2の分散媒体中に分散される第2の分散相を形成し、前記第2の分散相が、前記第1の分散媒体中に分散されない、請求項30に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項34】
前記連続的な三次元エネルギー媒体が、前記連続的な三次元エネルギー媒体の前記第1及び第2の相と不混和性である第3の相を含み、前記第3の相が、前記第1の分散媒体中に分散される第2の分散相を形成する、請求項3に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項35】
前記第1及び第2の不混和性相が、それらの間に共形のプログラム可能な界面を定義する、請求項2に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項36】
前記第1及び第2の不混和性相のうちの少なくとも1つが、プログラム可能な液体金属を含む、請求項35に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項37】
前記プログラム可能な液体金属の形態が、前記第1のエネルギーとの相互作用に起因して変わるように動作可能である、請求項36に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項38】
前記プログラム可能な液体金属が、ガリウム系液体金属を含む、請求項36に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項39】
前記プログラム可能な液体金属が、インジウム系液体金属を含む、請求項36に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項40】
前記プログラム可能な液体金属が、液体金属合金を含む、請求項36に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項41】
前記第1及び第2の不混和性相のうちの他方が、調整可能な光学素子を含む、請求項36に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項42】
前記第1のエネルギーが、印加された磁場を含む、請求項1に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【請求項43】
前記第1のエネルギーが、印加された電界を含む、請求項1に記載のホログラフィックエネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホログラムに関し、より具体的には、回折原理に従ってエネルギーを調節するホログラフィックディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィーは、光場などのエネルギー場を記録し、かつ元の物体が存在しないために、元のエネルギー場がもはや存在しないときに後で再構成することを可能にする技術である。ホログラフィーは、音声記録と多少類似していると考えることができ、それによって、音楽機器又は音声コードなどの振動物質によって生成される音場は、元の振動物質の存在なしに、後で再現され得るようにコードされる。
【0003】
従来の光学ホログラフィーでは、ホログラムは、反射ホログラム及び透過ホログラムとして感光性フィルムに記録されている。両方のタイプのフィルムベースのホログラムは、通過する光の振幅及び位相を調節して、実際の物体の画像を再構成するように動作可能である。反射ホログラムは、干渉パターンとして記録され、かつ再構成に使用される光が干渉パターンから反射するにつれて、光場を形成するように動作可能である。透過ホログラムは、再構成中にホログラムを通して光が回折するにつれて光場を形成する。
【0004】
ホログラフィー原理の最近の適用は、ホログラフィックディスプレイにまで拡張されている。回折ベースのホログラフィックディスプレイは、当技術分野では、光を調節するために空間光変調器に依存することが知られている。例えば、米国特許第10,416,762号は、入射光を回折することによってホログラム画像を再現するように構成された空間光変調器(「SLM」)を含むホログラフィックディスプレイ装置を記載する。別の実施例は、米国特許第10,488,822号である。ホログラム画像を生成するためにSLMに依存するホログラフィックディスプレイは、SLMのピクシレーション及び二次元性によって性能が制限される。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施例によると、ホログラフィックエネルギーシステムは、連続的な三次元エネルギー媒体と、連続的な三次元エネルギー媒体内にホログラムを定義するために連続的な三次元エネルギー媒体を修飾するように動作可能な第1のエネルギーを出力するように構成されたエネルギーデバイスのアレイと、連続的な三次元エネルギー媒体にコヒーレントEMエネルギーを出力するように動作可能なEMエネルギー源と、連続的な三次元エネルギー媒体内に定義されたホログラムが、複雑な振幅を有する波面を生成するために、複雑な振幅関数に従ってコヒーレントEMエネルギーを調節するように、エネルギーデバイスのアレイに命令を提供するように動作可能なコントローラと、を含み得る。一実施形態では、コントローラは、動的に更新された波面を生成するために、更新された複雑な振幅関数に従ってコヒーレントEMエネルギーを調節するように、連続的な三次元エネルギー媒体内に定義されたホログラムを更新するために、エネルギーデバイスのアレイに対する命令を動的に更新するように更に動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1B】高品質のフィルムベースのホログラムの実施例である。
【
図1C】フィルムベースのホログラムに使用される様々な物質の粒径及び対応する解像度を示す表である。
【
図1E】干渉の複数の平面を形成する物体波及び参照波の概略図である。
【
図2】ホログラムをコードするためのデジタル化されたアプローチを示す。
【
図3A】ディスプレイの画素ピッチとディスプレイの視野角との関係を示す。
【
図3B】液晶ディスプレイなどの従来のデジタルエネルギー調節デバイスにおける画素ピッチの限界を示す。
【
図3C】現在の最新の電子機器によって許容される画素ピッチを示す図である。
【
図4A】光学機能の離散化の概略的な視覚化である。
【
図4B】ホログラムをコードする様々なアプローチの回折効率を比較する表である。
【
図4C】バイナリコードされたパターンと比較した複雑なホログラムの実施例、及びバイナリコードされたパターンにおける品質の劣化を示す。
【
図5A】色情報が失われる振幅変調ホログラムを示す。
【
図5B】位相のみの変調器と振幅のみの変調器との組み合わせの直列での使用を示す。
【
図6A】本開示によるホログラフィックエネルギーシステムの一実施形態を示す。
【
図6B】LFディスプレイモジュールにおける
図6Aのホログラフィックエネルギーシステムの実装形態を示す。
【
図7】
図6Aのホログラフィックエネルギーシステムの動作を示すフローチャート図である。
【
図8B】結合された波モデルの回折格子ジオメトリである。
【
図9A】異なる3Dエネルギー媒体構成を通した波場の伝播を示す。
【
図9B】異なる3Dエネルギー媒体構成を通した波場の伝播を示す。
【
図9C】異なる3Dエネルギー媒体構成を通した波場の伝播を示す。
【
図10A】個々のメタ原子によって調整されたメタデバイスの一実施形態を示す。
【
図10B】メタ原子によって形成された集合的メタ表面によって調整されたメタデバイスの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
観察者は、観察者によって感知され得る光波及び音波などのエネルギー波を反射、散乱、又は放射するときに物体を知覚する。波としてのエネルギーは、媒体によって空間的に調節され得る振幅及び相を有する。例えば、真のホログラムは、複雑な振幅関数に従って振幅及び相の両方を調節することができる。
【0008】
図1Aは、媒体100内の物体波102及び参照波103の干渉を示す。ホログラムの従来の光学記録では、1つ以上の物理的物体に由来し、かつ物体波で伝播する波面は、参照波で伝播する参照波面と相互作用し、それによって、干渉パターンを生成する。2つの波面の干渉パターンは、複雑な振幅関数に従って通過する光を調節することができる記録媒体100に光学的に記録され得るとみなされ得る。言い換えれば、ホログラム記録は、複雑な光学場分布の表現を捕捉し、かつ複雑な振幅関数に従って光場を生み出すように動作可能である。記録されたホログラムの再生では、記録されたホログラムは、再生参照波を調節して、元の物体波の波面を再現する信号波をもたらすことができる。参照波の再生の選択は、再構成されるホログラムのタイプ、及び記録プロセス中に使用される参照波の選択に依存し得る。
【0009】
1つ以上の物理的物体からの波面に基づいてホログラムが生成される従来の光学ホログラム記録のアプローチとは対照的に、コンピュータ生成ホログラム(「CGH」)のアプローチは、物理的物体からの波面なしに計算的にホログラムを生成し、かつ二次元(2D)空間光変調器(「SLM」)の画素などの物理的媒体中の計算的に決定されたホログラムをコードする。
【0010】
フィルムでの光学記録
フィルムベースのホログラムに光学的に記録することにより、高品質の光場を可能にし得る。
図1Bは、高品質のフィルムベースのホログラムの実施例である。高品質のフィルムベースのホログラムに寄与し得るいくつかの要因がある。1つの要因は、ホログラムを記録するために使用される物質である。
図1Bに示すようなホログラムは、ナノメートルのスケールで粒径を有する微粒子エマルションでコードされる干渉パターンを有する。
図1Cは、フィルムベースのホログラムに使用される様々な物質の粒径及び対応する解像度を示す表である。ナノメートルのスケールにあるフィルム粒径は、ホログラムを記録し、かつ高精度及び解像度で再生することを可能にする。
【0011】
一部のフィルムベースのホログラムの高品質に寄与する別の要因は、三次元ボリュームである記録ボリュームである。十分な奥行きを考慮すると、三次元ボリュームは、奥行き寸法における正確な干渉情報が保持され、かつ何らかの方法で近似される必要がないように、干渉の複数の平面を記録し得る。
図1Dは、入ってくる波面を受ける記録物質の表面に対して垂直である奥行き方向104の縞パターンの拡大図である。
図1Eは、干渉パターンを形成する物体波105及び参照波106の概略図である。干渉パターンは、記録物質が三次元ボリュームにも十分に及ぶ場合に、正確に記録され得る三次元ボリュームに及ぶ干渉の複数の平面108を有する。
【0012】
ナノスケール粒径と三次元縞パターンを記録する能力との組み合わせにより、一部のフィルムベースのホログラムは、正確な波面、及び強度、反射、屈折、透明度、ダイナミックレンジなどの真のホログラムの特徴の再構成を可能にすることができる。
【0013】
画素化された動的調節
フィルムベースのホログラムは、光場の高品質の記録及び再構成を可能にするが、ホログラムの動的更新及びリフレッシュは可能にしない。対照的に、CGHを使用して、光を調節して、物理的に存在しない物体のリアルタイム動的画像に対応する波面を生み出すことができる。
図2は、干渉パターン204でコードして、それを通過する光エネルギーの位相又は振幅を調節して、デジタルシーンを含む所望の光場を提示し得る、従来の2D画素平面202の図である。
図2の2D画素平面202は、画素の物理的構造に起因して、特定の制限を有するホログラムをコードするためのデジタル化されたアプローチを示す。
【0014】
図2に示すように、画素平面202は、フィルムベースのホログラムにおける干渉パターンのボリュームと比較して、単一の干渉面のみを提供する。追加的に、画素平面202は、様々な度合いに照射される画素間に非機能空間を有する。照射されたデッドエリア206は、未調節光を追加し、望ましくないアーチファクト及び異常を引き起こす。照射されていないとしても、デッドエリアは、回折視野を制限する。
【0015】
「フリンジ出力」ディスプレイが送達することができる最小有効画素サイズは、その最大利用可能な回折角にリンクされているため、ホログラフィックディスプレイは、直接視認に適した視野角を有する説得力のあるホログラフィック画像を送達するために、照射光の波長程度の有効な画素サイズを提供する必要がある。しかしながら、現在の最新のディスプレイ技術は、この画素ピッチ要件には程遠いものである。
図3Aは、ディスプレイの画素ピッチとディスプレイの視野角との関係を示し、
図3Bは、液晶ディスプレイなどの従来のデジタルエネルギー調節デバイスにおける画素ピッチの制限を示す。これらの図に示すように、デジタルディスプレイの現在の最新技術は、約2ミクロンでの画素ピッチの制限を有し、これは、約20度の対応する視野角を提供する。更に、デジタルディスプレイのための最新技術のエネルギー調節構成要素(例えば、液晶セル)が2ミクロンを超えて減少し得る場合であっても、画素を駆動する電子機器のサイズは、画素ピッチを低減するための別のボトルネックである。
図3Cは、画素ピッチを2~3ミクロンの現在の最新画素ピッチまで減少させる電子構成要素の減少を示す図であるが、小さな画素ピッチを可能にする電子構成要素の更なる減少を達成する方法はまだ知られていない。画素ピッチの制限は、現在の最新のデジタルディスプレイが、フィルムベースのホログラムに匹敵する品質を有するホログラムを生み出すことさえできない理由の1つである。
【0016】
2D画素平面にホログラムをコードすることは、必ずしも複雑な振幅関数を区別する必要があり、これは不正確かつ非効率につながる。
図4Aは、光学機能の離散化の概略的視覚化であり、
図4Bは、ホログラムをコードする様々なアプローチの回折効率を比較する表である。
図4Cは、バイナリコードされたパターンと比較した複雑なホログラムの実施例、及びバイナリコードされたパターンにおける品質の劣化を示す。
【0017】
図1A、
図1D、及び
図1Eに示す通り、記録物質のボリュームに記録されたホログラムはボリューム効果を有し、干渉の複数の平面を作り出し、これは、複雑な振幅関数によるエネルギー場の正確な調節を可能にする。上述のように、2D画素平面202のホログラムをコードすることは、有意な量のホログラムが失われ、ここでエネルギー場の調節がボリュームの複数の平面から調節のただ1つの平面まで低減されることを意味する。結果として、2D画素平面にコードされるホログラムは、位相又は振幅のみを調節することができるが、両方を調節することができないため、単色であり、色を調節するために時間多重化ソリューションが必要である。
図5Aは、色情報が失われる振幅変調ホログラムを示す。
図5Bは、複雑な振幅関数を作り出そうと試みるために、位相のみの変調器510と振幅のみの変調器506との組み合わせの直列での使用を示す。示すように、パネル502a、502b、及び502cからのコヒーレント光は、x立方体504によって組み合わされ得、組み合わされた光は、振幅のみのSLM変調器506によって調節され、4Fリレーシステム508によって位相のみのSLM変調器510にリレーされる。こうしたアプローチは、ナノスケール粒径を有するフィルムベースのホログラムとほぼ同等である品質に近づくために、ナノメートルのスケールでの位相のみの変調器及び振幅のみの変調器の整列を必要とする。しかしながら、現在の最新のディスプレイ技術は、こうした正確な整列を可能にせず、
図5Bのアプローチによって生み出されたときに、穀粒であり、品質が悪いホログラムをもたらす。
【0018】
画素化されていない動的調節
上記のアプローチとは対照的に、
図6Aは、本開示の原理に従って、複雑な振幅関数に従って出力波面を生成するように動作可能なホログラフィックエネルギーシステム600の実施形態を示す。一実施形態では、システム600は、連続的な三次元エネルギー媒体602と、連続的な三次元エネルギー媒体602内にホログラムを定義するために連続的な三次元エネルギー媒体602と相互作用するように動作可能な第1のエネルギーを出力するように構成されたエネルギーデバイス604のアレイと、連続的な三次元エネルギー媒体内のホログラム上に入射するコヒーレントEMエネルギーを出力するように位置付けられた電磁(EM)エネルギー源606と、連続的な三次元エネルギー媒体602内のホログラムが、出力波面を生成するために、複雑な振幅関数に従ってコヒーレントEMエネルギーを調節するように、エネルギーデバイス604のアレイに命令を提供するように動作可能なコントローラ608と、を含む。一実施形態では、コントローラ608は、命令をエネルギーデバイス604のアレイに更新して、エネルギー媒体602のホログラムを動的に更新して、動的に更新された出力波面を生成するように動作可能である。
【0019】
動作中、ホログラフィックエネルギーシステム600は、
図7のフローチャート図に示すステップに従って、複雑な振幅を有する所望の波面を生み出すために使用され得る。
図7のステップ702では、所望の波面を生み出すために、複雑な振幅関数に従って参照コヒーレントEMエネルギーを調節するためのホログラムが、計算的に決定され得る。一実施形態では、ホログラムの計算的な決定は、ホログラフィー原理に基づくCGH技術を含み得、これは、本開示で以下で論じる実施形態に関して示される。
【0020】
ステップ704では、SLMの2D平面の画素にホログラムをコードする従来のCGH技術とは対照的に、ホログラフィックエネルギーシステム600のコントローラ608は、エネルギーデバイス604を動作させて、ホログラフィックエネルギーシステム600の3Dエネルギー媒体602と相互作用して、3Dエネルギー媒体602に計算されたホログラムを形成するように動作可能な第1のエネルギーを出力する。第1のエネルギーは、3Dエネルギー媒体602の状態を相互作用及び修正する任意の形態のエネルギーであり得、例えば、3Dエネルギー媒体602の構成に応じて、電気的、磁気的、電磁的、機械的、化学的、熱的、及び他の形態のエネルギーであり得る。3Dエネルギー媒体602の状態を相互作用及び修正するための例示的な物質及び方法は、本開示の実施形態を参照して以下で論じる。
【0021】
ステップ706では、EMエネルギー源606は、3Dエネルギー媒体602内に形成されたホログラムが、所望の波面を生み出すために、複雑な振幅関数に従ってコヒーレントEMエネルギーを調節するように、コヒーレントEMエネルギーを3Dエネルギー媒体602に出力するように動作し、これは、ステップ702、704、及び706を繰り返すことによって動的に更新され得る。
【0022】
一実施形態では、
図6Bに示す通り、ホログラフィックエネルギーシステム600及び
図7に示す通りの動作は、ディスプレイエリア650を有する光場(LF)ディスプレイモジュール610として実装され得る。視認ボリューム630の観察者640は、ホログラフィック物体ボリューム660内に1つ以上のホログラフィック物体620を形成する、LFディスプレイモジュール610のディスプレイエリア650から出力波面を知覚し得る。ホログラフィック物体620は、ホログラフィック物体ボリューム660内の任意の場所で知覚されるように提示され得る。ホログラフィック物体ボリューム660内のホログラフィック物体は、空間内に浮いているように観察者640に現れ得る。
【0023】
ホログラフィック物体ボリューム660は、ホログラフィック物体が観察者640によって知覚され得るボリュームを表す。ホログラフィック物体ボリューム660は、ホログラフィック物体がディスプレイエリア650の平面の前に提示され得るように、ディスプレイエリア650の表面の前に(すなわち、観察者640に向かって)延在し得る。追加的に、ホログラフィック物体ボリューム660は、ディスプレイエリア650の表面の後方に(すなわち、観察者640から離れるように)延在し得、ホログラフィック物体がディスプレイエリア650の平面の後方にあるかのように提示されることを可能にする。言い換えれば、ホログラフィック物体ボリューム660は、ディスプレイエリア650から生じる(例えば、投影される)全ての光の光線を含み得、ホログラフィック物体を作り出すために収束することができる。本明細書では、光線は、ディスプレイ表面の前方、ディスプレイ表面、又はディスプレイ表面の後方にある点で収束し得る。より簡単には、ホログラフィック物体ボリューム660は、ホログラフィック物体が観察者によって知覚され得る全てのボリュームを包含する。
【0024】
視認ボリューム630は、LFディスプレイシステムによってホログラフィック物体ボリューム660内に提示されるホログラフィック物体(例えば、ホログラフィック物体620)が完全に視認可能である空間のボリュームである。ホログラフィック物体は、ホログラフィック物体ボリューム660内に提示され、実際の物体と区別できないように、視認ボリューム630内で視認され得る。ホログラフィック物体は、物理的に存在していた物体の表面から生成されるであろう同一の光線を投影することによって形成される。
【0025】
一部の事例では、ホログラフィック物体ボリューム660及び対応する視認ボリューム630は、単一の観察者のために設計されるように、比較的小さくてもよい。他の実施形態では、LFディスプレイモジュールは、より大きなホログラフィック物体ボリューム及び広範囲の観察者(例えば、1人~数千人)を収容することができる対応する視認ボリュームを作り出すために拡大され得、かつ/又は並べられ得る。視認ボリューム630の可撓性のサイズ及び/又は形状は、観察者が視認ボリューム630内で制約されることを可能にする。例えば、観察者640は、視認ボリューム630内の異なる位置に移動し、対応する視点からホログラフィック物体620の異なる視界を見ることができる。例示するために、
図1を参照すると、観察者640は、ホログラフィック物体620がドルフィンの正面図であるように見えるように、ホログラフィック物体620に対して第1の位置にある。観察者640は、ホログラフィック物体620に対する他の場所に移動して、ドルフィンの異なる図を見ることができる。例えば、観察者640は、観察者640が実際のドルフィンを見て、その相対位置を実際のドルフィンに変更して、ドルフィンの異なる視界を見るのと全く同じように、ドルフィンの左側、ドルフィンの右側などを見るように移動し得る。一部の実施形態では、ホログラフィック物体620は、ホログラフィック物体620への視認の遮られない線(すなわち、物体/人によって遮られていない)を有する視認ボリューム630内の全ての観察者に見える。これらの観察者は、ホログラフィック物体620の異なる視点を見るために、視認ボリューム内で動き回ることができるように、制約されない場合がある。したがって、LFディスプレイシステムは、複数の制約のない観察者が、ホログラフィック物体が物理的に存在しているかのように、現実世界の空間でホログラフィック物体の異なる視点を同時に見ることができるように、ホログラフィック物体を提示し得る。
【0026】
対照的に、従来のディスプレイ(例えば、立体視、仮想現実、拡張現実、又は混合現実)は、一般に、コンテンツを見るために、各観察者が何らかの外部デバイス(例えば、3-Dガラス、ニアアイディスプレイ、又はヘッドマウントディスプレイ)を着用することを必要とする。追加的に、及び/又は代替的に、従来のディスプレイは、観察者が特定の視認位置(例えば、ディスプレイに対して固定位置を有する椅子内)に拘束されることを必要とし得る。例えば、立体視ディスプレイによって示される物体を見るときに、観察者は、物体上ではなく、常にディスプレイ表面に焦点を合わせ、ディスプレイは、その知覚される物体の周りを移動しようと試みる観察者に従う物体の2つのビューのみを常に提示し、その物体の知覚に歪みを引き起こす。しかしながら、光場ディスプレイでは、LFディスプレイシステムによって提示されるホログラフィック物体の観察者は、ホログラフィック物体を見るために、外部デバイスを着用する必要はなく、また特定の位置に限定される必要もない。LFディスプレイシステムは、特別なアイウェア、眼鏡、又はヘッドマウント付属品を必要とせずに、物理的な物体が観察者に見えるのとほぼ同じ方法で観察者に見える様式でホログラフィック物体を提示する。更に、観察者は、視認ボリューム内の任意の場所からホログラフィックコンテンツを見ることができる。
【0027】
一実施形態では、LFディスプレイシステムはまた、ホログラフィックコンテンツを他の感覚的コンテンツ(例えば、タッチ、音声、匂い、温度など)で拡張してもよい。例えば、集束超音波波の投影は、ホログラフィック物体の一部又は全ての表面をシミュレートすることができる、空気中程度の触覚感覚を生成し得る。LFディスプレイシステムは、1つ以上のLFディスプレイモジュール610を含む。
【0028】
連続的な三次元エネルギー媒体
図6Aに戻ると、3Dエネルギー媒体602の連続的及びボリューム的性質は、2D画素平面よりも性能を大幅に改善することを可能にする。3Dエネルギー媒体602は、連続的な三次元ボリュームを通過するコヒーレントEMエネルギーを調節し、それによって、フィルムベースのホログラムに匹敵するボリューム効果及び解像度を提供し、これは次に、動的に更新及びリフレッシュされるように動作可能である一方で、高品質の波面の出力を可能にする。
【0029】
本開示の原理を実装するために、3Dエネルギー媒体602の様々な構成を採用してもよい。一実施形態では、連続的な三次元エネルギー媒体602は、少なくとも第1及び第2の不混和性相を含む。一実施形態では、3Dエネルギー媒体602は、第1及び第2の不混和性相に加えて、追加の不混和性相を含み得る。
【0030】
一実施形態では、第1の不混和性相は、第1の分散媒体を形成し、第2の不混和性相は、第1の分散媒体内に第1の分散相を形成する。第1の分散媒体及び第1の分散相は、懸濁液又はコロイドを形成し得る。懸濁液は、溶質粒子が溶解しないが、溶媒の大部分にわたって懸濁され、培地中で自由に浮遊する、不均一な混合物であると理解され得る。内相(固体)は、特定の賦形剤又は懸濁剤の使用により、機械的撹拌を介して外相(流体)全体にわたって分散される。懸濁液の一実施例は、水中の砂である。懸濁した粒子は、顕微鏡下で見え、妨げられずに放置されると経時的に沈降する。これは、浮遊粒子がより小さく、沈殿しないコロイドと懸濁液を区別するコロイドは、顕微鏡的に分散された不溶性粒子の1つの物質が別の物質全体に分散される混合物であると理解され得る。コロイドは、分散相(懸濁粒子)及び連続相(懸濁媒体)を有する。コロイド及び懸濁液は、溶解した物質(溶質)が別個の相として存在しない溶液とは異なり、溶媒及び溶質が均一に混合される。
【0031】
一実施形態では、第1の分散媒体及び第1の分散相及び第1の分散媒体は、液体エアロゾル、固体エアロゾル、液体発泡体、固体発泡体、エマルション、ゲル、液体固体ゾル、又は固体固体ゾルを形成し得る。
【0032】
第1の分散相は、有機物質、無機物質、高分子物質、金属物質、ガラス系物質、複合物質、放射性物質、微生物物質、及び生物発光物質を含む、様々な物質を含むことを含み得る。プルトニウム、ウラニウム、及びトリウムなどの放射性物質の使用は、広範な規制及び安全性要件の対象となる場合があるが、相乗効果は、X線又はガンマ線回折に基づく特定の光学用途において見出され得る。こうした実施形態では、マクスウェル方程式に基づく様々な波伝播モデルを含む、本開示に記載されるホログラフィー原理は、相対性の特別な理論及びシュロディンジャー方程式を含む量子力学原理に従って波挙動を説明するように更に修正され得ることが理解されるべきである。
【0033】
一実施形態では、第1の分散物質は、プログラム可能な物質を含み得、第1のエネルギーは、プログラム可能な物質の少なくとも1つの特性を変更するために、プログラム可能な物質と相互作用するように動作可能である。プログラム可能な物質は、ナノ粒子、メタマテリアル、液晶、プログラム可能なバイオハイブリッド、又はナノマシンを含み得る。プログラム可能な物質のタイプに応じて、形態、配向、幾何学的特性、空間特性、時間的、光学特性、回折特性、屈折特性、反射特性、透過率、色彩特性、散乱特性、拡散特性、及び発光特性を含む、プログラム可能な物質の様々な特性は、入力エネルギーと動的に相互作用して、所望の出力エネルギー波面を提供するようにプログラムされ得る。プログラム可能な物質のプログラム可能な特性は、プログラム可能な物質の集合的又は局所的な特性を含み得る。
【0034】
上記の実施形態は、少なくとも分散相及び分散媒体を含む少なくとも第1及び第2の不混和性相を有する様々な3Dエネルギー媒体602を示すために提供されるが、3Dエネルギー媒体602の他の構成が使用され得る。一実施形態では、3Dエネルギー媒体の第1及び第2の不混和性相は、それらの間に共形のプログラム可能な界面を定義するように形成され得る。一実施形態では、第1及び第2の不混和性相のうちの少なくとも1つは、プログラム可能な液体金属を含む。プログラム可能な液体金属の形態は、エネルギーデバイス604から提供される第1のエネルギーとの相互作用に起因して変わり得る。一実施形態では、プログラム可能な液体金属は、ガリウム系液体金属、インジウム系液体金属、液体金属合金、又は第1のエネルギーと相互作用するように動作可能な任意の他のプログラム可能な液体金属を含む。一実施形態では、第1及び第2の不混和性相のうちの他方は、調整可能な光学素子を含む。
【0035】
調節システム構成
図6A、
図6B、及び
図7を参照すると、3Dエネルギー媒体602は、反射構成要素、透過構成要素、屈折構成要素、又は回折構成要素の様々な組み合わせを有し得ることが理解されるべきである。3Dエネルギー媒体602の構成に応じて、ステップ704における3Dエネルギー媒体602におけるホログラムの形成、及びステップ706における複雑な振幅関数による出力波面の再構成は、エネルギーデバイス604及びEMエネルギー源606を互いに対して、かつ3Dエネルギー媒体602に対する様々な位置に位置させることによって実装され得る。
図6Aに示すのは、出力波面がそれに沿って概して視認ボリューム630に向かって伝搬し得る方向680であり、その一例が
図6Bに示される。一実施形態では、EMエネルギー源606は、方向680に沿った出力波面の伝播を妨害しない任意の位置及び配向に位置し得る。一実施形態では、
図6Aの位置A、B、及びEによって例示されるように、EMエネルギー源606は、EMエネルギー源606からのEMエネルギーがエネルギー媒体602を通して少なくとも部分的に伝搬されるように位置し得る。これらの実施形態では、エネルギー媒体602は、回折、屈折、反射、散乱、又はそれらの任意の組み合わせによってそれを通るエネルギーの伝播を可能にするために、少なくとも部分的に透過性又は放射性の構成要素を有し得る。一実施形態では、
図6Aの位置C及びDによって例示されるように、EMエネルギー源606は、EMエネルギー源606からのEMエネルギーがエネルギー媒体602によって少なくとも部分的に反射されるように位置し得る。これらの実施形態では、エネルギー媒体602は、回折、屈折、反射、散乱、又はそれらの任意の組み合わせによってそれを通るエネルギーの伝播を可能にするために、少なくとも部分的に反射性又は放射性の構成要素を有し得る。
【0036】
一実施形態では、エネルギーデバイス604によって出力されるエネルギーのタイプに応じて、エネルギーデバイス604は、透明な物質で作製され、3Dエネルギー媒体602に対してどこにでも位置することができる。例えば、一実施形態では、エネルギーデバイス604は、透明誘電体、二酸化ケイ素、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電性酸化物、及び液晶物質などの透明物質で作製され得る。一実施形態では、透明なエネルギーデバイス604は、方向680に沿った経路に配置されたとしても、エネルギー媒体602からの変調されたエネルギーが、損失することなく実質的に伝搬し続けることを可能にする。一実施形態では、例示的な位置A、B、C、D、Eによって例示されるように、透明なエネルギーデバイス604は、EMエネルギー源606からのコヒーレントEMエネルギーを傍受するであろう場所に配置されたとしても、コヒーレントEMエネルギーが、それを通してエネルギー媒体602に実質的に損失することなく伝搬することを可能にする。
【0037】
3Dエネルギー媒体構成の例示的な実施例、及び3Dエネルギー媒体にホログラムを形成する対応する方法を、以下で論じる。
【0038】
ホログラムを計算するためのホログラフィー原理
上述のように、様々なホログラフィー原理及びモデルを使用して、複雑な振幅関数に従って参照コヒーレントEMエネルギーを調整して所望の波面を生み出すための計算ホログラムを計算的に決定することができる。ホログラフィー原理及びモデルは、エネルギーを任意の波長の電磁波とみなす波物理学に基づく。電磁波の伝播及び干渉は、計算ホログラムを決定するための分析塩基を提供する。
【0039】
波方程式は、電磁波の伝播のための分析フレームワークを定義する。波方程式に対する分析ソリューションは、空間内の任意の場所で伝播する波面の波場を記載する。しかしながら、任意の形状及びサイズを有する任意の物体の分析ソリューションを得ることは複雑であり、ほぼ不可能である。代わりに、波方程式の数解は、計算的に決定され得るが、計算的決定でさえ、時間がかかり、実用的でない場合がある。このように、様々な近似モデルを導き、使用して、波方程式の数解の計算決定を簡略化することができる。
【0040】
1つのアプローチでは、ベクトル波方程式に対する解は、波方程式をスカラー成分に減少させるために特定の仮定を行うことによって近似される。これらの積分式は、本質的にスカラーであり、したがって、スカラー回折式とも呼ばれる。スカラー回折に基づくこれらの近似されたソリューションは、「スカラー理論」と呼ぶことができ、ホログラフィックディスプレイ用途において満足のいく解像度及び精度でホログラムの計算決定を簡略化することができる。
【0041】
スカラー回折理論の開始点は、電磁エネルギー波を記述するマクスウェル方程式である。電磁エネルギー波が直線状、均一、等方性、均質、及び非分散物質で伝播していると仮定される場合、以下のベクトル波方程式1.1は、電界成分を記述するために、マクスウェル方程式から導出され得る。
【数1】
式中、ε
0は、真空の誘電率であり、ε
rは、相対誘電率であり、μ
0は、真空の透過性である。
【0042】
光は波のように挙動するため、ベクトル波方程式1.1は、以下のスカラー波方程式1.2の形態で記述され得る。
【数2】
式中cは、誘電体媒体中の波の速度である。ベクトル波並びにスカラー波方程式1.1及び1.2を比較して、光の速度を以下のように記述することができる。
【数3】
式中、c
0は、真空中の光の速度であり、
【数4】
に等しく、nは屈折率であり、
【数5】
に等しい。
【0043】
成分u(p、t)は、屈折率nを有する物質において、所与の位置p及び時間tでスカラーフィールド成分を定義する波関数とみなすことができる。単色波については、スカラーフィールド関数は、以下の式1.4に従って複雑な振幅として記述され得る。
【数6】
式中、ωは、光の周期周波数であり、2πνに等しい。
【0044】
関数U(p)は、以下の式1.5によって与えられる複雑な振幅と呼ばれる。
【数7】
式中、A(p)は、振幅として理解され得る実値でありφ(p)は、複雑な振幅の位相として理解され得る。複雑な振幅U(p)は、三次元関数であり、所与の平面におけるその二次元分布は、波場と呼ばれる。
【0045】
方程式1.4及び1.5を方程式1.2の波方程式に置換すると、波方程式は、以下のようにヘルムホルツ方程式と同じ形態で書き直すことができる。
式中、λは、光の波長であり、kは、2π/λに等しく、波数と呼ばれる。
【0046】
CGHモデリング平面及び球状の波
CGHモデルでは、物体波、参照波、及び信号波は、上で論じた波方程式に基づいて、平面波又は球状の波としてモデル化され得る。平面波は、平面波面を有し、一定の周波数及び振幅を有し、実際の物理的挙動ではない無期限に延在する。しかしながら、所与の空間については、任意の複雑な波面を局所平面波としてモデル化することができる。平面波に対する上記の波方程式に対する解は、以下の通りである。
【数8】
式中、φ
0は、時間t=0及びr=0でのコサイン関数の位相を定義する定数であり、
【数9】
は、位置ベクトルであり、
【数10】
は、λ
0が真空中の光の波長である長さ
【数11】
で伝播方向を指す波ベクトルを定義する。
【0047】
式1.4及び1.5に基づいて、式1.7によって記述される平面波の複雑な振幅は、以下のように記述され得る。
【数12】
【0048】
デカルト座標では、z=z
0での平面波の波場は、以下となる。
【数13】
【0049】
球状の波は、単一の点源から放射され、球状の波面を有する。平面波に対する上記の波方程式に対する解は、以下の通りである。
式中、rは、球状座標系における半径方向距離であり、式1.11に示すように、デカルト座標x、y、zに基づいて決定され得る。
【数14】
【0050】
方程式1.4及び1.5に基づいて、方程式1.10によって記述される球状の波の複雑な振幅は、以下のように記述され得る。
【0051】
デカルト座標では、z=z
0での球状の波の波場は、以下となる。
ここで、
【数15】
【0052】
式1.9及び1.14に基づいて、波場は、それぞれ平面波又は球状の波に対してz=z0平面での様々な(x、y)位置でサンプリングされ得る。
【0053】
フィールド伝播のCGHモデリング
スカラー理論の仮定による自由空間の波は、波方程式1.2及び1.6によって記述され、上で論じた平面及び球状の波は、波方程式1.2及び1.6に対する特定の解である。境界条件は、波方程式1.2及び1.6を解いて、自由空間で伝播する波に対するより一般的なソリューションを提供するのに役立ち得る。光が開口によって回折されるときに、境界条件は、関数の値が開口内部で単一であり、開口外部でゼロである、バイナリ関数であると理解され得る。一実施形態では、第1の平面における第1の複雑な振幅によって定義される波場は、波方程式1.2及び1.6を解くための境界条件として使用されて、3D空間内の任意の場所における第2の平面における第2の複雑な振幅によって定義される回折波場を取得することができる。一実施形態では、このプロセスの計算的な実装形態は、数値場伝播と呼ばれてもよく、ソース波場(すなわち、第1の振幅)をサンプリングし、それを境界条件として使用して、波方程式を数値的に解いて、目的地/回折された場(すなわち、第2の複雑な振幅)をシミュレートするステップを含む。
図8Aは、上で論じたこの分析フレームワークの座標系を示す。デカルト座標系では、ソースフィールドU(x、y;z
0)は、ソース平面802内に位置し、平面804内に位置する回折されたフィールドU(x'、y';z)までの距離dだけ伝播される。平面802内の点及び平面804内の点の空間座標は、それぞれ座標(x'、y'、0)及び(x、y、z)を有する。
【0054】
波場の伝播は、フレネル・キルヒホッフ回折及びレイリー・ゾンマーフェルト回折を含む、当技術分野で既知の多数の回折式に従ってモデル化され得る。フレネル・キルヒホッフ式及びレイリー・ゾンマーフェルト式の両方は、当該技術分野で広範に導出及び記載されており、したがって、詳細な導出はここでは繰り返さない。
【0055】
フレネル・キルヒホッフ回折式は、波方程式及びPを囲む任意の表面上の全ての点におけるその一次導関数の関数として、任意の点Pで障害を表現するためのグリーンの同一性に依存する。その最も一般的な形態は、以下の式1.15として記述され得る。
【数16】
式中、Uは、表面における障害の複雑な振幅であり、sは、Pから表面までの距離である。
【0056】
図8の座標系では、フレネル・キルヒホッフ式は、以下の式1.16として記述され得る。
【数17】
式中、r=[(x-x')
2+(y-y')
2+z
2〕
1/2であり、χは、回折波とz=0平面の法線との間の点(x'、y'、0)での回折角である。フレネル・キルヒホッフ式は、開口に非常に近接しない限り、概して正確であるヘルムホルツ方程式のおよそのスカラーソリューションである。式1.16
【数18】
の構成要素はまた、傾斜係数としても知られており、回折角が小さいときに1と近似することができる。
【0057】
方程式1.16の積分に対するソリューションを決定することは、ほとんどの用途にとって困難であり得、分析的又は数値的にのいずれかで解決することがより容易な当技術分野で既知の近似回折モデルを導出するために、方程式1.16のrについて特定の仮定を行うことができる。
【0058】
例えば、フレネル近似は、いくつかの近似を行うことによって方程式1.16を単純化することができる既知の近似モデルである。第1の近似は、回折角が小さいという仮定に基づいており、したがって、傾斜係数としても知られる式1.16の成分
【数19】
は、1に近似され得る。回折角が小さいという仮定はまた、
【数20】
の分母におけるrの近似がzであることを可能にする。しかしながら、
【数21】
の指数では、rの小さな変動は、e
ikrの値を大幅に変化させることができる。したがって、式1.17に従ってr=(x-x')
2+(y-y')
2+z
2〕
1/2の展開を切り捨てたz≫(x-x')
2+(y-y')
2を仮定することによって、rのより正確な近似を行うことができる。
【数22】
【0059】
式1.17で積分されたフレネル回折は、上記の仮定から導出され得る。
【数23】
フレネル回折積分は、高速フーリエ変換を含む、当該技術分野で既知の様々な数値技術を使用して解決され得る。
【0060】
フラウンホーファ近似は、フレネル・キルヒホッフ回折式を単純化することができる別の近似である。回折パターンがz方向に沿って開口から離れて連続的に進化するにつれて、最終的には、伝播し続けるにつれてそれ自体を維持する最終回折パターンに進化する(ただし、距離に比例してそのサイズが増加する)。遠視野におけるこの遠方回折パターンは、フラウンホーファ近似によって記述される。これは、開口から離れた距離で磁場が観察される場合のフレネル近似の限定的な事例である。
【0061】
式1.18は、以下の式1.19に拡張することができる。
【数24】
遠視野条件(z≫k/2))では、式1.19
【数25】
の指数成分は、1に近似することができ、以下の式1.20に示すように、フラウンホーファ回折積分をもたらす。
【数26】
【0062】
フラウンホーファ積分は、kx/z及びky/zが空間周波数とみなされ得る、ソース波フィールドU(x'、y';0)上の二次元(逆)フーリエ変換として解釈され得る。
【0063】
上述のフレネル近似及びフラウンホーファ近似はまた、回折のレイリー・ゾンマーフェルト式に適用され得る。フレネル・キルヒホッフ式と比較して、レイリー・ゾンマーフェルト式は、2つの異なる境界条件を使用して、式1.21(第1のソリューション)及び1.22(第2のソリューション)においてより厳格なソリューションを提供する。
【数27】
及び
【数28】
【0064】
図8の座標系では、レイリー・ゾンマーフェルト式に対する第1のソリューションは、以下の式1.23として記述され得る。
【数29】
【0065】
上で論じたフレネル近似(すなわち、非指数成分については
【数30】
、及び指数成分については
【数31】
)に同じ仮定を適用することによって、式1.23を式1.24に単純化することができる。
【数32】
【0066】
方程式1.24のフレネル近似から、フラウンホーファ近似を同様に適用して、方程式1.24を
【数33】
に更に簡略化することができる。
【0067】
レイリー・ゾンマーフェルト式は、前者の数学的一貫性、及び後者の開口のすぐ後ろの回折された磁場を厳密に再現する能力のため、フレネル・キルヒホッフ式よりも厳しいモデルである。しかしながら、レイリー・ゾンマーフェルト式は、平面表面の仮定によって制限され、フレネル・キルヒホッフ式は、任意の形状の表面を取り扱うことができ、それによって、光学用途におけるより正確な伝播を可能にする。
【0068】
上で論じたスカラー理論の仮定は、一部の用途では適用されない場合がある。例えば、一実施形態では、スカラー理論の仮定から著しい偏差がある一部の用途(すなわち、単色波、線形、均一、等方性、均質、及び非分散物質)では、より正確なものが必要とされ得る。より厳密なアプローチを使用して、スカラー理論の下でなされる仮定の一部又は全てなしに、変調3Dエネルギー媒体602を通した波面の伝播をモデル化してもよい。
【0069】
より厳密な回折モデルは、電気の様々な構成要素と磁場との間の結合を説明することができる。一実施形態では、本開示の実装形態に適したより厳密な回折モデルは、近似することなく正確に解決することができる波方程式及び境界条件を提供することを含み得る。より厳密な回折モデルのための分析ソリューションは、より広範な用途に対してより正確であり得るが、数学的複雑さは、分析ソリューションの決定を実用的でないものにし得る。代わりに、一実施形態では、本開示の一部の実装形態では、より厳密なモデルについて数解を決定することができる。
【0070】
結合された波状理論では、周期的な格子構造及び回折された場は、フーリエシリーズの形態で記述され得る。フーリエ表現は、境界問題の数学的複雑さを低減するのに役立つ。
【0071】
図8Bは、回折格子ジオメトリを示し、ここで、空間は、I(Z<0)、II(0≦Z≦h)、及びIII(Z>h)として標識された3つの領域に分割される。領域I及び領域IIIのメディアは、均一であると想定されている。領域IIは、周期的構造を含み、これはx方向に調節されるが、y方向には不変である。この周期的構造は、領域II内の電磁場のTE及びTM構成要素の分解を可能にする。
【0072】
波長λを有する単位振幅単色平面波(I0)が、xz平面のz軸に対して角度θで領域Iから領域IIに入射する。領域I及び領域IIIの両方の回折されたフィールドは、一連の平面波として表現される。
【0073】
領域IIの内側の電磁場は、格子溝に対して平行な電界ベクトル及び格子溝に対して垂直な電界ベクトルの2つの直交構成要素に分解され得る。格子溝に対して平行な電界ベクトルの偏光方向では、場は、E
y(x、z)=X(x)Z(z)として分離され、ヘルムホルツ波方程式に適用され得、Z(z)及びX(x)を解き、マトリクス形態MP=γ2Pで表現され得る線形方程式のセットを導出するために使用され得る。偏光における領域IIの電磁場は、以下のように表現され得、
【数34】
ここで、係数P
mn及びγ
nは、標準的な数値技術によってマトリクスM固有値問題から解くことができる。格子溝に対して垂直な電界ベクトルの偏光方向について、同様の表現を得ることができる。全ての領域I~IIIにおける電磁場の正確な表現により、結合された波理論は、電磁境界条件から未知のパラメータRm、Tm、An、及びBnを解くことを可能にする。
【0074】
上述の結合された波理論は、スカラー理論を仮定することなく、エネルギー波場伝播のためのモデルの例として本明細書に提供されることが理解されるべきである。N結合波理論及びパラレルスタックミラー理論などの、スカラー理論の仮定に基づかない多くの他のモデリングアプローチがまた、当該技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さない。当業者であれば、これらのモデルがまた、本開示の原理に従ってエネルギー場の伝搬をモデル化するために、結合波理論のように本明細書で実装されるのに適していることを理解するであろう。
【0075】
様々なエネルギー媒体構造を通した伝播
ホログラムの計算は、様々な物理的干渉モデリング及び変調モデリングアプローチを使用して実装され得る。物理的干渉モデリングでは、物体波の波面と模擬参照波の波面との間の光干渉が伝播されて、物体波と参照波との間の干渉を決定し、ホログラムを生成する。変調モデリングでは、ホログラムは、参照波面のその変調に基づいて計算的に決定され、ホログラフィックボリューム内の物体として観察者によって観察され得る所望の変調波面を形成する。物理的干渉アルゴリズムと比較して、変調モデリングアルゴリズムは、一部の実施形態では、計算コストの低減を提供する。
【0076】
図9A~
図9Cに戻ると、3Dエネルギー媒体602の一実施形態が、3Dエネルギー媒体602、602'、及び602''を通る波場の伝播を実証するために概略的に示されている。一実施形態では、3Dエネルギー媒体602上に入射する参照波面902は、
図6に示す電磁エネルギー源606から提供されるコヒーレント電磁エネルギー波を含み得る。参照波面902は、本開示に開示される原理に従って、平面波、球状の波、又は当技術分野で既知の任意の他の波面モデルとしてモデル化され得る。3Dエネルギー媒体602は、視認ボリューム内の観察者によって1つ以上のホログラフィック物体910として知覚され得る出力波面904をもたらすために、複雑な振幅関数に従って入射参照波面902を調節するように3Dエネルギー媒体602内にホログラムを形成するように構成され得る。
【0077】
一実施形態では、既知の所望の出力波面904及び参照波面902を考慮すると、参照波面902を変調して、波面904を出力するために定義されるホログラムは、反復プロセスを使用して数値的に決定され得る。一実施形態では、反復プロセスは、3Dエネルギー媒体602のホログラムによって定義される複雑な振幅関数が、参照波面902の入射波場と実質的に同じ波場をもたらすまで、出力波面904から3Dエネルギー媒体602を通る後方へのエネルギー波の伝播をモデル化することによって実装され得る。別の実施形態では、反復プロセスは、出力波面が出力波面904のものと実質的に合致するまで、3Dエネルギー媒体602を通して前方への参照波面902の入射波面の伝播をモデル化することによって実装され得る。
【0078】
任意の方向における3Dエネルギー媒体602を通る波面の伝播は、3Dエネルギー媒体602の一連の平面における一連の波場伝播としてモデル化され得る。例えば、
図9Aに示した実施形態は、3Dエネルギー媒体602が、間隔I、II、III、及びIVだけ離間した、z=a、b、c、d、及びeで5つの平面を含むことを示す。伝播平面の数及び間隔サイズは、3Dエネルギー媒体602の物理的構成(すなわち、位相境界、粒子の分布など)、計算能力、及び伝播モデリングの制約などの様々な要因に応じて変化し得ることが理解されるべきである。
【0079】
一実施形態では、各伝播面は、エネルギー媒体602内の物理相境界(液体-液体、液体-固体、空気-液体など)に対応し得る。各伝搬面において、入力波場は、本開示で考察される波伝播式及び近似のうちのいずれかを使用して、次の伝搬面における出力波場に決定及び伝搬され得る。例えば、z=平面での第1の波場910は、参照波面902を使用して決定され得、第1の波場910は、本開示で考察される波伝播式及び近似を使用して、z=b平面で第2の波場912に伝播され得る。後続の伝搬面については、第2の波場912は、波場914、916、及び918に直列に伝搬され得る。z=e平面の波場918は、出力波面904と合致しなければならない。物理相境界に対応する各伝搬面における波場の伝搬は、界面選択性などの表面相互作用の影響を考慮するモデルを使用して決定され得る。こうしたモデルの例は、結合された波理論に基づく過渡格子モデルである。この例示的なモデルのソリューションは、以下に提供されるような反射回折された電界振幅(式1.27)及び透過回折場振幅(式1.28)を有する。
【数35】
ここで、
【数36】
【0080】
他のモデルが当技術分野でよく知られているため、ここでは繰り返さないことが理解されるべきである。
【0081】
ここで
図9Bを参照すると、3Dエネルギー媒体602'を通る波場の伝播はまた、エネルギー波と媒体602'内の粒子の分布及び配置との相互作用を考慮し得る。一実施形態では、エネルギー媒体602'は、その中に分散された粒子902を含み得る。媒体602'内の位置r
p=(x
p、y
p、z
p)でのコロイド球920の一次散乱は、以下の方程式を使用してモデル化され得る。
【数37】
式中、f
s(kr)は、直径d
p及び屈折率n
pの球がどのように入射平面波を散乱するかを説明するローレンツ・ミー散乱関数である。コロイド粒子による複数の散乱は、上記の方程式の指数依存によってモデル化され得る量だけ一次磁場を減衰させる。上記の方程式は、波方程式1.2及び1.6に再び挿入されて、その中に位置する粒子の特定の配置及び分布を有する媒体602'を通る波場伝播のための近似ソリューションを導出することができる。
【0082】
ローレンツ・ミー散乱関数は、マクスウェル方程式に対するソリューションであり、ソリューションの半径方向及び角度依存性が別個の方程式で表現され得る任意のジオメトリによる散乱に採用され得ることが理解されるべきである。ローレンツ・ミー散乱関数の一部の例示的な用途には、メタマテリアル及び生体物質が含まれる。例えば、レイリー散乱関数、統一散乱関数、及びレイリーガンス近似を含む、コロイド媒体を通したエネルギー波場の伝播のモデル化に他の散乱関数を使用することができることが更に理解されるべきである。離散双極子近似法及び有限要素法などの数値法がまた使用され得る。これらの散乱モデル及び近似アプローチは、当該技術分野で広く説明されており、ここでは再現しない。
【0083】
一実施形態では、媒体602'は、規則正しいコロイド及び無秩序なコロイドの両方を含み得る。例えば、コロイド媒体は、エネルギーデバイス604によって生成されるエネルギー場によって順序付けられて配置又は分布を形成し得る第1のコロイド粒子と、エネルギー媒体602'内にランダムに分布し、かつ602'上の波面入射の振幅及び位相応答に影響を与えるように動作可能な第2のコロイド粒子とを含み得る。順序付けられたコロイドによって散乱されたエネルギー波は、上述のアプローチを使用してモデル化され得るが、無秩序なコロイドによって散乱されたエネルギー波は、散乱された波場の振幅及び/又は位相のジョイント確率密度をレイリー分布として考慮することによってモデル化され得る。振幅及び/又は位相応答に影響を与え得る無秩序なコロイド粒子のパラメータは、粒子サイズ及び凝集の程度を含み得る。無秩序なコロイドの例としては、金、銀、銅、元素炭素などの無機粒子を含むことができるが、これらに限定されない。他の例としては、有機物質、無機物質、高分子物質、金属物質、ガラス系物質、複合物質、放射性物質、微生物物質、及び生物発光物質が含まれる。
【0084】
ここで
図9Cを参照すると、エネルギー媒体602''は、物理的界面及びその中に分散された粒子の組み合わせを含み得る。物理的界面及び粒子は、上述のモデルの任意の組み合わせを使用してモデル化され得る。示した実施例では、エネルギー媒体602''の部分は、光学素子(例えば、レンズ、フレネルレンズなど)の様々な組み合わせとして、部分的又は全体的にモデル化され得る。
【0085】
図9A~
図9Cに関して上述した伝播モデル及び方法は、z=e平面からz=a平面への、又はz=a平面からz=e平面への波場開始を伝播するために実装され得ることが理解されるべきである。
【0086】
物体のCGHモデリング-点群方法及び多角形方法
コンピュータグラフィック(CG)では、3D物体は、点、線、多角形、又は表面などのモデリングプリミティブの集合として記述され得る。物理的干渉モデリングの一実施形態では、例えば、点群ベースのアプローチは、3Dシーンが点光源の集合であると仮定し得、これらの点源から放射される球状の波が計算され、かつホログラム平面に重ね合わせられる。このアプローチは、実装が簡単かつ柔軟であるが、フォトリアリスティック効果を説明するために多数の点源が使用されるため、完全視差CGHには非常に時間がかかる。物理的干渉モデリングの一実施形態では、多角形ベースのアプローチは、物体が、多角形形状を有する小さな平面光源の集合であるとみなしてもよく、これらの多角形源によって放射される波場が計算され、かつホログラム平面に重ねられる。
【0087】
実施例:メタマテリアル
例えば、一実施形態では、プログラム可能な物質は、再構成可能なメタデバイスを形成するメタマテリアルを含み得る。メタデバイスは、
図10Aに示されるように個々のメタ原子によって、又は
図10Bに示されるようにメタ原子によって形成される集合的なメタ表面を調整することによって調整され得る。
【0088】
プログラム可能な物質が、再構成可能なメタデバイスを形成するメタマテリアルを含む実施例では、メタデバイスは、アクティブなメタ表面を含み得る。光周波数でのアクティブなメタ表面における調整機構は、一般に、2つのカテゴリー、すなわち、個々の応答が修飾されていないままである間にメタ原子間の間隔が変更される格子変形、及びメタ原子の光学特性が調節されるメタ原子調整に分類され得る。後者のアプローチでは、遊離キャリア注入、熱光学、電気光学、又は磁気光学効果、O-PCM、電気化学プロセス、又は光学非線形性を含む、メタ原子特性の直接的な調節のために、いくつかの機構を適用することができる。
【0089】
格子変形は、エラストマーマトリクス内にメタ原子を包埋することによって実装され得る。次いで、軟質基材は、大きな歪みに耐えることができ、メタ原子間隔の連続的な変化を可能にする。同時に、メタ原子は、弾性係数を有する高屈折率半導体又は誘電体物質で作製され得るため、エラストマーマトリクスよりも数桁大きい、無視できる変形又は調節を経験する。可変焦点距離を有するメタレンズ、動的配色のためのメタ表面、及び調整可能な共振フィルタを含む、多くの再構成可能なメタ表面デバイスは、このアプローチに基づいて設計され得る。光学応答の機械的調整を容易にすることに加えて、伸縮性のメタ表面は、従来の屈折若しくは反射光学素子の曲線面上の共形統合、又は他の可撓性フォトニック構成要素との結合で構成されて、追加の機能を達成し得る。メタ表面構造の機械的作動はまた、直接的な歪みを加える代わりに、刺激応答物質によって駆動され得る。格子変形に加えて、メタ光学デバイスの機械的調整は、互いに、又は他の光学素子に対する構成メタ表面の相対的動きによって実装され得る。この場合、個々のメタ表面は、依然として受動的であり得る。例えば、微小電気機械システム(MEMS)調整可能なメタレンズの焦点距離は、2つのメタ表面間の間隔を調整することによって変化させることができる。他の実施例には、ビームステアリングのためのMEMS統合型メタレンズの傾斜、及び可変焦点ズーム撮像のためのメタ表面プレート間の相対的変位が含まれる。
【0090】
一実施形態では、従来の半導体及び透明導電性酸化物(TCO)における遊離担体の蓄積又は枯渇は、複雑な屈折率変化を誘発する。これらの物質中の遊離担体濃度は、光学技術を利用することによって制御され得る。しかしながら、一部の実施形態では、金属酸化膜半導体(MOS)コンデンサ構造又は半導体ヘテロ接合における電界効果がまた利用され得る。屈折率の遊離担体誘発性の変化は、光の位相及び振幅を調節することを可能にする。一実施形態では、遊離担体注入は、ドープされた物質におけるバンド充填を変え、光学吸収縁部をシフトさせる。この機構は、調整可能なプラズモニックデバイスを実装するために用いられ得る。
【0091】
遊離担体ベースのスイッチング方法は多用途であり、オンチップ統合に適しているが、屈折率及び吸収変化の同時発生は、デバイスの光学効率を損ない、更に望ましくない波面歪みをもたらし得る。純粋なインデックスのみの変調は、電気屈折機構を介して達成され得る。メタ表面調整のこの機構は、電気光学ポリマー、及び液晶などの電気光学物質で達成され得る。液晶では、複屈折分子は、大きな屈折率変化を生成するように再配向され得る。一実施形態では、プラズモニック及び誘電体共振器アレイにおける共鳴の電気調整は、液晶セルにメタ表面構造を浸漬することによって達成され得る。一実施形態では、メタ表面調整は、電気調整の代わりに液晶を熱的に切り替えることによって達成され得る。例えば、相転移点の上方で液晶を加熱することは、整列されたネマティック相から、無秩序な分子配向を有する等方性相に変換され得る。液晶と接触するメタ表面の光学応答は、屈折率の変化又はキラリティの変化によって調節され得る。液晶ベースの調整の主な課題は、位相応答及び振幅応答の変調を分離することである。一実施形態では、この問題は、液晶層に浸された透過相のみのナノアンテナを使用することによって対処され得る。磁場支援配向及び光異性化は、液晶の他の可能なスイッチング機構のうちの1つである。
【0092】
一実施形態では、光学相転移物質及び相変化物質は、固体相転移を受ける際に屈折率コントラスト(通常、Δnが良好に単一を超える)を可能にする。二酸化バナジウム(VO2)及びカルコゲン化物化合物、例えば、Ge―Sb―Te(GST)又はAg―In―Sb―Te(AIST)合金は、非晶質相と結晶相とを切り替えるいくつかの例である。相関酸化物及びカルコゲン化物における光学コントラストの構造的起源は異なる。酸化物は、光学特性の変化が電子ドーピングに起因する、Mott型金属絶縁体遷移(MIT)を呈する。カルコゲン化物相変化合金では、屈折率コントラストは、化学結合タイプの不揮発性変化に起因する。2つのクラスの物質はまた、特有のスイッチング方法に依存する。VO2では、MITは、ほとんど揮発性であるが、MIT中の核形成動態を制御して、VO2のヒステリシスループを(例えば、ドーピングを介して)操作し、それによって、有限温度ウィンドウにわたって不揮発性応答を導入することが可能であり得る。VO2中のMITは、加熱、電界、テラヘルツパルス、又は光学ポンプによって誘導され得る。VO2とは対照的に、カルコゲン化物O-PCMの相転移は、主に不揮発性であり、したがって、アクティブなスイッチングプロセス中にのみ作動を必要とする。一実施形態では、カルコゲン化物中の非晶質相と結晶質相との間の遷移は、レーザパルス又は一体型マイクロヒータを用いた電気熱加熱を介して作動し得る。
【0093】
相転移及び相変化物質は、幅広いメタ表面デバイスを可能にし得る。VO2は、プラズモニックアンテナアレイの自由空間位相振幅及び偏光変調器、プラズモニック色生成、適応熱カムフラッジ、調整可能な吸収体及びエミッタ、並びに自由形態メタデバイスの周波数制御に適用され得る。VO2と比較して、GSTによって例示されるカルコゲン化物O-PCMは、最大2.8の指数変化を有する近IR及びUVスペクトルレジームにおいて、更に大きな光学コントラストを提供する。同一のメタ原子アレイの調整応答に加えて、可変焦点メタレンズ、メタ表面色ディスプレイ、空間光変調器、スペクトルフィルタ、ビームステアリングメタデバイス、再構成可能なホログラム、調整可能な熱吸収体及びエミッタ、スイッチ、自由形態の書き換え可能なメタ表面、並びに形態的に最適化されたメタデバイスを含む、メタ表面デバイスの高度なアクティブな制御がまた、GST合金の相変化挙動を利用して実験的に実証されている。
【0094】
調整可能なメタ原子内の電磁多極を利用することによって、それらの光学応答を制御して、出力波面を正確に調整することができる。メタデバイスの調整に戻ると、非機械的なアクティブなメタ表面の動作原理は、個々のメタ原子調整及び集合的メタ表面調整の2つのグループに分類され得る。一実施形態では、
図10Aに示すような個々のメタ原子調整アプローチは、スイッチングマトリクスからの追加のDOFを利用することによって、簡略化された単位セル設計を可能にする。更に、原理的には、個々のメタ原子変調は、単一のデバイスに対する任意かつ連続的に調整可能な光学機能を可能にする。一実施形態では、
図10Bに概略的に示されるように、メタ表面パッチの瞬間的な切り替えは、制御プロセスを簡略化することができる。しかしながら、一部の実施形態では、集合変調スキームは、任意の光学関数にもかかわらず、所定の状態の別個のセット間の切り替えを達成することができる。このアプローチの一実施形態は、同じ開口領域上の異なる機能のために設計されたメタ原子サブアレイを混合し、光学機能切り替えを可能にするためにアレイの部分を選択的にオン/オフすることである。
【0095】
一実施形態では、O-PCMを毛布層として使用して、それらの上に置かれる金属構造におけるモード遷移、又は遷移を直接的に調節するメタ原子の建物物質のいずれかをトリガすることができる。一実施形態では、金ナノディスクアレイから構成される調整可能な共振器は、GST薄層上に配置され得る。金ナノディスクの寸法及び周期性は、GST層の厚さとともに、近距離IRにおける有意な共鳴シフトを達成するように選択され得る。この共振シフトは、2.4μm波長で約50%の透過光強度の大きな変調を可能にした。GSTとは別に、この変調アプローチはまた、VO2などの他の物質で達成され得る。一実施形態では、サブ波長の金格子アレイをガラス基材上にコーティングされたVO2フィルム上に堆積させて、再構成可能な偏光子を実現した。
【0096】
O-PCMがメタ原子の建物物質として使用される場合、構造遷移中に異なる多極共鳴を物質内で励起することができ、これは、次に入射光の振幅及び位相を調節するために利用され得る。一実施形態では、特定の波長での反射及び透過共鳴を利用することによって、多焦点フレネルゾーンプレート、レンズ、及びグレースケールホログラムなどの再構成可能なデバイスは、GSTキャンバス上の2-Dバイナリ又はグレースケールパターンを書き込み、消去し、かつ書き直すことによって達成され得る。より具体的には、励起レーザパルスを使用して、最大100%の反射率の連続的な相対的変化が達成された。光伝送制御に加えて、パッチアンテナにおけるGSTの構造的遷移はまた、連続位相シフト変調をトリガし得る。最大2πまでの連続相変調は、銀パッチの長さを調整することによって達成され得る。
【0097】
同様に、2つの別個のメタ原子を利用して、相カバレッジを増強してもよい。例えば、光学構造は、スペーサ層を有する金ミラー上に配置された長方形形状のGSTナノロッドを含み得る。
【0098】
集合調整を介した位相プロファイル再構成可能なメタ表面光学の設計原理は、波面工学を介した任意の機能間の調整に採用され得る。一部の性能指標は、異なる光学状態での光学効率、コントラスト比、及び撮像品質である。この一般的な設計アプローチは、異なるスペクトル範囲にわたる様々なメタ原子プラットフォームに使用され得る。Nが2π位相範囲をカバーする位相レベルの数であり、Mが切り替え可能なメタデバイス状態の数であると仮定すると、Mの任意の機能を実現するために、NMの別個のメタ原子設計を必要とするであろう。最も単純な事例では、2つの相レベル(すなわち、0°及び180°)を使用して、2π相範囲をサンプリングする。より多くの相レベルが光学効率を増加させることが予想される。2つの状態(例えば、O-PCMの非晶質状態及び結晶状態)間で移行するために、メタ表面設計は、4つのメタ原子のライブラリを必要とする。選択されたメタ原子の各々は、O-PCM状態に対応する2つの相値の別個の組み合わせを提供する。次いで、選択されたメタ原子を2-Dアレイにその後組み立てて、所望の相プロファイルを生成する。メタ原子は、単純な1ステップエッチング製造プロセスを容易にする超薄型の深層サブ波長プロファイルを特徴とする全誘電性ヒュイゲン共振器として実装され得る。他のタイプのメタ表面(例えば、切断導波路又は幾何学的相アンテナ)も、同じ設計フレームワークを使用して利用することができる。
【0099】
実施例:ナノ粒子
別の実施例では、プログラム可能な物質は、自己組み立てのために方向付けられるように動作可能なナノ粒子を含む。方向付けされた自己アセンブリ(DSA)は、テンプレート化された、テンプレートのない、及び外部のフィールド指向の技術で実装され得る。外部磁場指向技術は、一組の変換器を採用して、調整可能なマスクとして作用し、かつ変換器の配設及び動作パラメータを調節することによってナノ粒子のパターンを修正することを可能にする、電界、磁気場、又は超音波場を生成する。超音波DSAは、超音波波場と関連付けられた音響放射力に依存して、ナノ粒子をホログラムに組織化する。
【0100】
しかしながら、超音波DSAを使用することは、超音波変換器の配置及び超音波波場を生成するパラメータを、パターン設計者によって事前に指定されたように、組み立てられたナノ粒子の結果的なパターンに関連付けることを伴う。これは、2つの問題、すなわち、(1)超音波変換器パラメータから生じるナノ粒子のパターンを計算することを伴う、「前方超音波DSA問題」、及び(2)波場を調節するためにナノ粒子を所望の場所に組み立てるために必要な超音波変換器パラメータを計算することを伴う「逆超音波DSA問題」に変換される。前方超音波DSA問題を解決することは、超音波変換器によって生成される超音波波場と関連付けられた音響放射力を計算することを伴い得る。次いで、ナノ粒子の結果的なパターンは、音響放射力の安定した固定位置xf、すなわち、力がゼロであり、かつ周辺領域のxfの方を向く場所として見出される。逆超音波DSAの問題は、直接的又は間接的に解決される。間接的な方法は、超音波変換器パラメータの範囲に対する前方超音波DSA問題を解決し、かつ変換器パラメータに対するナノ粒子パターンに関する「マップ」を作成する。
【0101】
超音波変換器パラメータに対するナノ粒子のパターンは、2つのステップで達成され得る。第一に、超音波波場は、グリーンの第3の同一性に基づいて、境界要素方法を使用して、超音波変換器の周囲の周りに超音波変換器で裏打ちされた任意の形状の貯蔵部について計算され得、これは、単に閉じたドメイン内の波場を、そのドメインの周囲に課される境界条件に関連する。次に、球状粒子に作用する音響放射力が計算されて、超音波波場から生じるナノ粒子のパターンを決定する。最後に、波場を調節するためにナノ粒子を所望の場所に組み立てるために必要な超音波変換器パラメータは、固有分解を使用して、制約された非凸状四角形最適化問題を解決することによって決定され得る。
【0102】
図11は、密度ρ
m及び音速c
mの流体媒体で充填され、周囲の周りに音響インピーダンスZ
tのN
t超音波変換器で裏打ちされた、二次元の任意の形状の貯蔵部を示す。
図11は、任意の配置で選択され得る、N
b>N
t境界要素へのドメイン周囲S及びN
dドメイン点へのドメインDの離散化を示す。その中心点q
jによって識別されるj
番目の境界要素は、ε(q
j)幅であり、超音波変換器パラメータv(q
j)、すなわち、超音波波場を作り出すためのピストン源として作用する、その法線方向n(q
j)に沿った変換器表面の複雑な高調波速度(振幅及び位相)によって駆動される。追加的に、任意の点X
lは、ドメインD内に位置し、貯蔵部座標(x、y)を有する。
【0103】
境界要素方法を使用して、周波数ω
0を有する超音波波場は、D内の各ドメイン点における時間非依存性の複雑なスカラー速度電位φの観点から決定され得る。超音波波場を解決するための制約のうちの1つは、φが、Dのヘルムホルツ方程式
【数38】
を満たす必要があることであり、式中、k
0は、流体媒体中の超音波波場の波数である。追加的に、インピーダンス境界条件∂φ/∂n+ik
0Zφ=vは、S上で満たされなければならず、ここで、Z
t=ρ
mc
m/Z
tは、インピーダンス比であり、超音波変換器表面と相互作用する際の流体媒体内の超音波波の吸収及び反射を考慮する。
【0104】
全ての超音波変換器パラメータv(q
j)をベクトルvに配設し、式(1.30)を使用して、全てのN
dドメイン点で超音波波場を計算する。
式中、Wは、境界要素をその対応する超音波変換器にマッピングするマトリクスであり、すなわち、j
番目の境界要素がn
番目の変換器内に含有される場合、w
jn=1であり、そうでなければ、wj
n=0である。追加的に、マトリクスPの各用語p
ijは、貯蔵部壁からの全ての反射を含む、S上のq
jに位置する点源によってx
lで生成される超音波波場に対応する。当該技術分野でよく知られているように、全てのp
ij用語は、グリーン関数を使用してマトリクス形式で計算されて、q
jに位置し、かつ位置x
lで測定される点源から放射される自由場超音波波を表すことができる。
【0105】
上記は、超音波変換器パラメータを結果として生じる超音波波場に相関させる。超音波波場をナノ粒子のパターンに相関させるために、場所x
lで流体媒体中に分散された密度r
p及び音速c
pのナノ粒子上の音響放射力作用f
lを、式1.31を使用して決定することができる。
式中、U
lは、x
lでの音響放射電位である。一実施形態では、ナノ粒子は、半径r
p<<l
0=2pc
m/w
0を有する球状粒子であると仮定され得る。したがって、U
lは、以下の式1.32を使用して決定され得る。
式中、v
Hは、vのコンジュゲート転位であり、エルミートマトリクスQは、式1.33として表現され得る。
【数39】
式中、p
Hは、Pのl
番目の行であり、b
m及びb
pは、それぞれ流体媒体及び粒子の圧縮性である。式1.32は、U
lが局所的に最小である点x
lに基づいてナノ粒子のパターンを決定することを可能にする。言い換えれば、ナノ粒子の所望の配置のアセンブリは、所望の位置X
desのセットであり、各位置x
l∈X
desに対応する各値U
lは、貯蔵部座標(x、y)に対して局所的に最小である。物理的には、これは、粒子が、超音波変換器表面の高調波速度振幅を増加させることによって、所望の位置でより効果的に組み立てられることを意味する。実際には、超音波変換器を通電する機能発生器は、変換器表面の高調波速度振幅を有限値に制限する。したがって、大きさ|v|=αを制約し、式中、αは、機能発生器で達成され得る超音波変換器表面の最大高調波速度を表す実際のスカラー値である。このように、ナノ粒子の配置を組み立てるための超音波変換器パラメータv*は、v*が長さαを有するQの最小固有値に対応する固有ベクトルとして決定され得る。
【0106】
流体媒体中に分散されたナノ粒子を配設する上記に例示したアプローチは、任意の流体媒体中に分散された任意のコロイドを配設して、それによって、入射波場を調節し、本開示で考察されたCGHアプローチに従って波場を生成するために、一般化及び適用され得る。
【0107】
ここで、本明細書の一部を形成し、実施され得る例示の実施形態を示す添付図面を参照して、例示の実施形態を以下に記載する。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「実施形態」、「例示の実施形態」、及び「例示的な実施形態」という用語は、必ずしも単一の実施形態を指すものではないが、それらは、例示の実施形態の範囲又は趣旨から逸脱することなく、様々な例示の実施形態を容易に組み合わせて交換することができる。更に、本明細書で使用される用語は、例示の実施形態を説明する目的のみであり、限定することを意図するものではない。これに関して、本明細書で使用される場合、「内(in)」という用語は、「内(in)」及び「上(on)」を含み得、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、単数形及び複数の参照を含み得る。更に、本明細書で使用される場合、「によって(by)」という用語はまた、文脈に応じて、「から(from)」を意味する場合がある。更に、本明細書で使用される場合、「の場合(if)」という用語はまた、文脈に応じて、「のとき(when)」又は「に際して(upon)」を意味する場合がある。更に、本明細書で使用される場合、「及び/又は(and/or)」という語は、関連付けられた列挙された項目のうちの1つ以上の可能性のある組み合わせのいずれか及び全てを参照し、かつ包含し得る。
【0108】
本明細書に開示された原理に従う様々な実施形態が上述されてきたが、それらの実施形態は、単なる例示としての目的のために示されており、限定されないことを理解されたい。したがって、本発明の幅広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、本開示に由来する特許請求の範囲、及びそれらの等価物に従ってのみ定義されるべきである。更に、上記の利点及び特徴は、記載された実施形態において提供されているが、上記の利点のいずれか又は全てを達成するプロセス及び構造に対して、かかる由来の特許請求の範囲の適用を限定しない。
【0109】
本開示の原理的な特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく様々な実施形態の中で使用することができることを理解されたい。当業者は、日常的なわずかな実験を使用して、本明細書に記載された特定の手順に対する多くの等価物を認識するか、又は探求することができるであろう。かかる等価物は、本開示の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲により網羅される。
【0110】
追加的に、このセクションの見出しは、37 CFR 1.77に基づく示唆との一貫性を持たせるために、又はそれ以外では構成上の手がかりを提供するために、提供されている。これらの見出しは、本開示に由来し得る任意の特許請求の範囲の中に記載された本発明を限定又は特徴付けるものではない。具体的には、一例として、見出しが「発明の分野」と称していても、かかる特許請求の範囲は、いわゆる技術分野を説明するためのこの見出しの文言によって限定されるべきではない。更に、「発明の背景」の節における技術の説明は、技術が本開示内の任意の発明の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。「要約」は、論点となる特許請求の範囲に記載された本発明の特徴付けとは、決してみなされない。更に、本開示内での単数形の「発明」の言及は、本開示において単一の新規性のみ存在すると主張するために使用されるべきではない。複数の発明が、本開示に由来する複数の請求項の制限に従って記載される可能性があり、したがって、かかる請求項は、それによって保護される本発明及びそれらの等価物を定義する。全ての例では、かかる請求項の範囲は、本開示に照らしてそれら自体のメリットを考慮されるであろうが、本明細書内で記載された見出しによって制約されるべきではない。
【0111】
特許請求の範囲及び/又は明細書中の「備える(comprising)」という用語と併せて使用されるときに使われる「1つ(a)」又は「1つ(an)」という語は、「1つ(one)」を意味し得るが、それはまた、「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、及び「1つを超える(one or more than one)」の意味とも矛盾しない。特許請求の範囲の中で使用される「又は(or)」という用語は、代替物のみに明示的に言及せず、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は(and/or)」を意味するように使用されているが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/又は(and/or)」を指す定義を支持する。本出願全体を通じて、「約(about)」という用語は、1つの値が、デバイスの固有の誤差ばらつきを含むことを示すために使用され、方法は、その値、又は研究課題の間に存在するばらつきを判定するために使用されている。一般に、ただし前述の考察に対する対象であるが、「約(about)」などの近似の語により修飾された本明細書中の数値は、記述された値から、少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12、又は15%だけ変化する可能性がある。
【0112】
本明細書及び請求項で使用されているように、「備える(comprising)」(並びに「comprise」及び「comprises」などの任意の形式の備える)、「有する(having)」(並びに「have」及び「has」などの任意の形式の有する)、「含む(including)」(並びに「includes」及び「include」などの任意の形式の含む)、又は「containing」(並びに「contains」及び「contain」などの任意の形式の包含する)という語は、包括的又は開放的、追加的、引用されていない要素又は方法ステップを排除しない。
【0113】
「そのとき(at the time)」、「同等(equivalent)」、「間中(during)」、「完全(complete)」などの比較、測定、及びタイミングに関する語は、「実質的にそのとき(substantially at the time)」、「実質的に同等(substantially equivalent)」、「実質的に~間中(substantially during)」、「実質的に完全(substantially complete)」等を意味すると理解されるべきであり、ここで、「実質的に(substantially)」とは、そのような比較、測定、及びタイミングが、暗黙のうちに、又は明示的に記述された所望の結果を達成するために、実用的であることを意味している。「近く(near)」、「近接する(proximate to)」、「隣接する(adjacent to)」などの要素の相対的位置に関係する語は、それぞれのシステム要素の相互作用に実質的な影響を及ぼすのに十分近いことを意味するものとする。近似の他の語は、同様に、そのように変更されたとき、必ずしも絶対的又は完全であるとはみなされないが、存在しているとしてその条件を指定することを保証するために、当業者にとっては十分近いとみなされるであろうという条件を指す。記述が変わる可能性の程度は、どのように大きな変化がもたらされるかに依存し、当業者であれば、修正されていない特徴の所望の特性及び可能性を依然として有するような修正された特徴を認識するであろう。
【0114】
本明細書で使用される場合、「又はそれらの組み合わせ(or combinations thereof)」という用語は、当該用語に先行する列挙された項目の全ての置換及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ(A,B,C,or combinations thereof)は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことを意図している。本実施例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、文脈から別途明らかでない限り、典型的には、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0115】
本明細書で開示及び特許請求される組成物及び/又は方法の全ては、本開示を考慮して過度の実験を行うことなく作製及び実行され得る。本開示の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、組成物及び/又は方法、並びに本明細書に記載の方法のステップ又は一連のステップに変形が適用され得ることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかである全てのこうした類似の代替及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の趣旨、範囲、及び概念の範囲内であるとみなされる。
【国際調査報告】