IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】研磨組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241018BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241018BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525732
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022047394
(87)【国際公開番号】W WO2023076114
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,720
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、エリク
(72)【発明者】
【氏名】フー、ピン
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ヤンナン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン、ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナウ、ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED02
3C158ED10
3C158ED22
3C158ED23
3C158ED26
3C158ED28
5F057BB16
5F057BB19
5F057BB22
5F057BB25
5F057EA07
5F057EA21
5F057EA22
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA26
5F057EA29
5F057EA32
(57)【要約】
研磨組成物は、アニオン性研磨剤、pH調整剤、遷移金属触媒、及びアミノ酸を含む。基板を研磨する方法は、本開示に記載の研磨組成物を基板の表面に付与するステップであって、前記表面がタングステン又はモリブデンを含む、前記ステップ;及び前記基板の前記表面にパッドを接触させ、そして前記パッドを前記基板に対して動かすステップ、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性シリカ研磨剤であって、式(I)の末端基を含み、
-O-Si-(CH-CH (I)
式中、mは1~3の整数であり、nは0~10の整数であり、-(CH-CH基は少なくとも1つのカルボン酸基で置換されている、アニオン性シリカ研磨剤;
pH調整剤;
遷移金属触媒;及び
アミノ酸
を含み、
約1~約7のpHを有する
研磨組成物。
【請求項2】
前記アニオン性シリカ研磨剤が、前記組成物に対して約0.01重量%~約50重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記pH調整剤が、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジプロピルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、水酸化コリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記pH調整剤が、前記組成物に対して約0.0001重量%~約30重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記遷移金属触媒が、Ag、Co、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Nb、Ni、Os、Pd、Ru、Sn、Ti、及びVの金属塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される1種又はそれ以上の種類の金属塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記遷移金属触媒は、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、シュウ酸鉄(III)アンモニウム三水和物、硝酸鉄(III)若しくはその水和物、三塩基性クエン酸鉄(III)一水和物、アセチルアセトナート鉄(III)、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム塩水和物、硫酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、トリス(オキサラト)マンガン(II)酸カリウム、ヘキサシアノマンガン(II)酸アンモニウム、ヘキサシアノマンガン(II)酸カリウム、クエン酸マンガン(II)、クエン酸マンガン(II)アンモニウム、シュウ酸マンガン(II)アンモニウム三水和物、硝酸マンガン(II)若しくはその水和物、三塩基性クエン酸マンガン(II)一水和物、アセチルアセトナートマンガン(II)、エチレンジアミン四酢酸マンガン(II)二ナトリウム塩水和物、又は過マンガン酸カリウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記遷移金属触媒は、前記組成物に対して約0.0001重量%~約1重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノ酸は、アミノ酢酸、グリシン、ビシン、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、又はチロシンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミノ酸が、前記組成物に対して約0.001重量%~約10重量%の量である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシルエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチリデン二ホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択されるキレート剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記キレート剤が、前記組成物に対して約0.001重量%~約1重量%の量である、請求項10に記載の研磨組成物。
【請求項12】
過酸化水素、オルト過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸、ジメソ過ヨウ素酸、ジオルト過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記酸化剤が、前記組成物に対して約0.001重量%~約5重量%の量である、請求項12に記載の研磨組成物。
【請求項14】
トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1,2,4-トリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ジクロロベンゾトリアゾール、クロロメチルベンゾトリアゾール、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンゾイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、アゾール含有防錆剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項15】
前記アゾール含有防錆剤が、前記組成物に対して約0.0001重量%~約1重量%の量である、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項16】
さらに水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記水は、前記組成物に対して約20重量%~約99重量%の量である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の研磨組成物を基板の表面に付与すること、ここで前記表面はタングステン又はモリブデンを含む;及び
前記基板にパッドを接触させ、そして前記パッドを前記基板に対して動かすステップ、
を含む、方法。
【請求項19】
前記研磨組成物で処理された前記基板から半導体デバイスを製造することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は研磨組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2021年10月28日出願の米国仮出願番号63/272,720からの優先権を主張する。該米国仮出願の内容は、その全体が参照により本開示に取り込まれる。
【0003】
半導体産業は、プロセス及び集積のイノベーションを通じてのデバイスのさらなる小型化によって、チップ性能を向上するよう常に駆られている。化学機械研磨/平坦化(CMP)は、トランジスタレベルでの多くの複雑な集積スキームを可能にし、それいよって増大したチップ密度を促進するため、強力な技術である。
【0004】
タングステン及びモリブデンは、トランジスタのソース及びドレインのためのコンタクトを形成するために一般的に用いられている。これらの金属はゲートコンタクトとして及び金属層インターコネクトとしても用いることができる。それらのトランジスタへの近接性及び小さなフィーチャサイズのため、これらの金属の効果的なCMPが重要である。
【発明の概要】
【0005】
この概要記載は、以下でさらに詳細な説明において説明される概念のセレクションを紹介するために与えられる。この概要記載は、特許請求の範囲に記載の主題の重要な又は必須の特徴を特定することを意図するものでもなければ、特許請求の範囲に記載の主題の範囲を制限することの助けとして用いられることを意図したものでもない。
【0006】
本開示において用いられる場合、他に断りがなければ、記載されたパーセント値は全て、研磨組成物の総重量に対する重量パーセント値であると理解されるべきである。
【0007】
1つの態様では、本開示は、
(1)アニオン性シリカ研磨剤であって、式(I)
-O-Si-(CH-CH (I)
の末端基を含み、式中、mは1~3の整数であり、nは0~10の整数であり、そして-(CH-CH基は少なくとも1つのカルボン酸基で置換されている、アニオン性シリカ研磨剤;
(2)pH調整剤;
(3)遷移金属触媒;及び
(4)アミノ酸
を含む、研磨組成物を主題とする。前記研磨組成物は、約1~約7のpHを有する。
【0008】
他のある態様では、本開示は、本開示に記載の研磨組成物を基板の表面に付与するステップであって、前記表面がタングステン又はモリブデンを含む、前記ステップ;及び前記基板の前記表面にパッドを接触させ、そして前記パッドを前記基板に対して動かすステップ、を含む、基板を研磨する方法を主題とする。
【0009】
特許請求の範囲に記載の主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
【0011】
半導体作製においてマルチコンポーネント集積スキームがより多く使われそしてそのサイズが減少していることに伴い、タングステン及びモリブデンを含む基板を効果的に研磨することができ、そして他の全てのコンポーネントについてはケイ素酸化物(例えば、TEOS)、ケイ素窒化物、スピンオンフィルム(例えば、有機膜又は無機膜)、及びポリシリコンの最小限の除去速度及び選択性を有する、CMPスラリーに対する市場のニーズがある。
【0012】
本開示に開示された実施形態は、一般に、組成物、ならびに、該組成物を用いて、少なくともタングステン(W)部分及び/又はモリブデン(Mo)部分を含み、そしてTEOS又はケイ素窒化物など他の材料を含んでもよい基板を研磨する方法に関する。本開示に記載の組成物は、TEOS又はケイ素窒化物についての除去速度を最小化しつつ、効果的にタングステン及び/又はモリブデンを除去することができる。
【0013】
タングステン及びモリブデンは硬質金属と考えられており、CMPプロセス中に除去することが非常に難しい。実際には、タングステン膜の除去のためには、タングステンの除去速度を増大させることができる過酸化物の活性化を触媒するために、CMPスラリーには金属触媒が一般に添加される。しかし、CMPスラリーに金属触媒を添加することは、制御されていない金属除去、金属夾雑物(metal contamination)、及び/又は欠陥形成の可能性も与え、これらは全て、半導体デバイスの寿命にわたって欠陥又は低下した性能を生じうる。結果として、旧来の又はあまり先進でないスラリーは、許容不能な、腐食、ウェハトポグラフィー、欠陥、及び/又は研磨対象の多コンポーネント基板の1つ又はそれ以上のコンポーネントについての除去選択性を呈しうる。驚くべきことに、本開示の研磨組成物は、従来の研磨組成物と比べて低い金属触媒ローディングで、タングステン及びモリブデンについての高い除去速度を与えることができる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、アニオン性シリカ研磨剤、pH調整剤、遷移金属触媒、及びアミノ酸を含む。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記研磨組成物は、任意に(optionally)、アゾール含有防錆剤、キレート剤、及び/又は酸化剤を含んでもよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、約0.1重量%~約50重量%の研磨剤、約0.0001重量%~約30重量%のpH調整剤、約0.0001重量%~約1重量%の遷移金属触媒、及び約0.001重量%~約10重量%のアミノ酸を含んでもよい。そのような実施形態では、残りの成分は溶媒(例えば、脱イオン水)を含んでもよく、溶媒は、研磨組成物に対して約20重量%~約99重量%であってもよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記研磨組成物は、約0.0001重量%~約1重量%のアゾール含有防錆剤、約0.001重量%~約1重量%のキレート剤、及び/又は約0.001重量%~約5重量%の酸化剤をさらに含んでもよい。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示は、使用前に水で最大2倍まで(up to a factor of two)、又は最大4倍まで、又は最大6倍まで、又は最大8倍まで、又は最大10倍まで希釈することができる濃縮研磨組成物を提供する。他の実施形態では、本開示は、タングステン又はモリブデンを含む基板上での使用のための使用時(point-of-use)(POU)研磨組成物であって、上述の研磨組成物、水、及び任意に(optionally)酸化剤を含む使用時(POU)研磨組成物を提供する。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)アニオン性シリカ研磨剤を含んでよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記少なくとも1種のアニオン性シリカ研磨剤は、1つ又はそれ以上の(例えば、2つ又は3つの)式(I)の末端基を含んでよい。
-O-Si-(CH-CH (I)
式中、mは1~3の整数であり、nは0~10の整数であり、-(CH-CH基は少なくとも1つの(例えば、2つ、3つ、又は4つの)カルボン酸基で置換されている。いくつかの実施形態では、カルボキシル基による置換は、-(CH-CH基の中央の炭素及び/又は末端の炭素におけるものであってよい。いくつかの実施形態では、前記末端基は、式(II)の末端基であってもよい。
-O-Si-(CH-CH(3-p) (II)
式中、mは1~3の整数であり、nは0~10の整数であり、pは1~3の整数であり、そしてYはカルボン酸基である。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記少なくとも1種のアニオン性シリカ研磨剤は高純度であり、そして、約100ppm未満のアルコール、約100ppm未満のアンモニア、及び約100十億分率(ppb)のアルカリカチオン(例えばナトリウムカチオン)を有してもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、カルボン酸基を含む前記アニオン性シリカ研磨剤は、W及び/又はMoについての十分な除去速度を達成するために必要とされる遷移金属触媒の量を顕著に減少させることができ、また、研磨組成物によって研磨された半導体基板上に形成された欠陥を顕著に減少させることができると考えられる。
【0018】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨剤は、約1nm以上(例えば、約5nm以上、約10nm以上、約20nm以上、約40nm以上、約50nm以上、約60nm以上、約80nm以上、又は約100nm以上)から約1000nm以下(例えば、約800nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約200nm以下、又は約150nm以下)の平均粒子径を有してもよい。本開示において用いられる場合、平均粒子径(MPS)は、動的光散乱技術によって求められる。1つ又は複数の実施形態では、前記研磨剤は、単一の化学種(例えば、シリカ粒子)の粒子であってもよく、また、前記研磨組成物は、2種類以上の材料の複合体(例えば、セラミックマトリクスに埋め込まれたシリカ粒子)である研磨剤を含まなくてもよい。
【0019】
1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種のアニオン性シリカ研磨剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.1重量%以上(例えば、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約12重量%以上、約15重量%以上、又は約20重量%以上)から約50重量%以下(例えば、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、又は約5重量%以下)の量である。
【0020】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)pH調整剤(pH adjuster or pH adjusting agent)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は、ギ酸、酢酸、マロン酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、シュウ酸、過酢酸、酢酸カリウム、フェノキシ酢酸、安息香酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、塩酸、過ヨウ素酸、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジプロピルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、水酸化コリン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。1つ又はそれ以上の実施形態では、pH調整剤はモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はトリカルボン酸である。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.0001重量%以上(例えば、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、又は約8重量%以上)から約30重量%以下(例えば、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量である。
【0022】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記研磨組成物のpH値は、約1以上(例えば、約1.5以上、約2以上、約2.5以上、約3以上、約3.5以上、約4以上、約4.5以上、又は約5以上)から約7以下(例えば、約6.5以下、約6以下、約5.5以下、約5以下、約4.5以下、又は約4以下)であってもよい。研磨組成物がタングステン又はモリブデンを除去するように設計されたある実施形態では、理論に拘束されることを望むものではないが、pHが1未満の研磨組成物は金属不足を許容不能に増加させ、pHが7超の研磨組成物はW及びMoの腐食を顕著に増加させると考えられる。所望のpHを得るために、本開示に記載の研磨組成物中における相対的な成分濃度を調整してもよい。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)遷移金属触媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記遷移金属触媒は、Ag、Co、Cr、Cu、Fe、Mo、Mn、Nb、Ni、Os、Pd、Ru、Sn、Ti、及びVの金属塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される1種又はそれ以上の種類の金属塩を含んでもよい。好適な遷移金属触媒の例としては、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(オキサラト)鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、シュウ酸鉄(III)アンモニウム三水和物、硝酸鉄(III)若しくはその水和物、三塩基性クエン酸鉄(III)一水和物、アセチルアセトナート鉄(III)、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム塩水和物、硫酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、トリス(オキサラト)マンガン(II)酸カリウム、ヘキサシアノマンガン(II)酸アンモニウム、ヘキサシアノマンガン(II)酸カリウム、クエン酸マンガン(II)、クエン酸マンガン(II)アンモニウム、シュウ酸マンガン(II)アンモニウム三水和物、硝酸マンガン(II)若しくはその水和物、三塩基性クエン酸マンガン(II)一水和物、アセチルアセトナートマンガン(II)、エチレンジアミン四酢酸マンガン(II)二ナトリウム塩水和物、及び過マンガン酸カリウムが挙げられる。
【0024】
1つ又はそれ以上の実施形態では、遷移金属触媒は、本開示に記載の研磨組成物に対して、約0.0001重量%以上(例えば、約0.0002重量%以上、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)から約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、又は約0.005重量%以下)の量である。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、任意に(optionally)、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)アミノ酸を含んでもよい。好適なアミノ酸の例としては、アミノ酢酸、グリシン、ビシン、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、及びチロシンが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物がアミノ酸とpH調整剤(または、キレート剤などその他の酸性材料)の両方を含むならば、前記アミノ酸は前記pH調整剤(又はその他の酸性材料)とは異なる。理論に拘束されることを望むものではないが、アミノ酸は、研磨組成物によって研磨された半導体基板の腐食及び表面粗さを顕著に減少させることができる、と考えられる。
【0026】
1つ又はそれ以上の実施形態では、アミノ酸は、本開示に記載の研磨組成物に対して、約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)から約10重量%以下(例えば、約8重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、又は約0.05重量%以下)の量である。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、任意に(optionally)、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)アゾール含有防錆剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のアゾール含有防錆剤は、置換若しくは無置換のトリアゾール、置換若しくは無置換のテトラゾール、置換若しくは無置換のベンゾトリアゾール、置換若しくは無置換のピラゾール、及び置換若しくは無置換のイミダゾールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、好適な置換基としてハロ(例えば、F、Cl、Br、又はI)、アミノ、アリール、又は任意に(optionally)アリールで置換されているC1~C6アルキルが挙げられる。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記アゾール含有防錆剤は、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(例えば、1-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、及び5-メチルベンゾトリアゾール)、エチルベンゾトリアゾール(例えば、1-エチルベンゾトリアゾール)、プロピルベンゾトリアゾール(例えば、1-プロピルベンゾトリアゾール)、ブチルベンゾトリアゾール(例えば、1-ブチルベンゾトリアゾール及び5-ブチルベンゾトリアゾール)、ペンチルベンゾトリアゾール(例えば、1-ペンチルベンゾトリアゾール)、ヘキシルベンゾトリアゾール(例えば、1-ヘキシルベンゾトリアゾール及び5-ヘキシルベンゾトリアゾール)、ジメチルベンゾトリアゾール(例えば、5,6-ジメチルベンゾトリアゾール)、クロロベンゾトリアゾール(例えば、5-クロロベンゾトリアゾール)、ジクロロベンゾトリアゾール(例えば、5,6-ジクロロベンゾトリアゾール)、クロロメチルベンゾトリアゾール(例えば、1-(クロロメチル)-1-H-ベンゾトリアゾール)、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンゾイミダゾール、アミノテトラゾール、並びにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記研磨組成物は、ベンゾトリアゾールとベンゾトリアゾール誘導体(例えば、置換ベンゾトリアゾール)の両方を含んでもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、(上記のものなどの)アゾール含有防錆剤は、半導体基板中における銅の除去速度を顕著に減少又は最小化させることができると考えられる。
【0028】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記アゾール含有防錆剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して、0.0001重量%以上(例えば、約0.0002重量%以上、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)から約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、約0.005重量%以下)の量である。
【0029】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、任意に(optionally)、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)キレート剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の任意成分としての(optional)キレート剤は、アミノ含有カルボン酸(例えば、ポリアミノポリカルボン酸)又はホスホン酸であってもよい。いくつかの実施形態では、前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシルエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチリデン二ホスホン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンホスホン酸、アミノ酢酸、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物がキレート剤とpH調整剤(又はアミノ酸などの、その他の酸性材料)の両方を含むならば、前記キレート剤は前記pH調整剤(又は前記その他の酸性材料)とは異なる。理論に拘束されることを望むものではないが、(上述のものなどの)キレート剤を本開示に記載の研磨組成物に含ませることは、(銅ウェハの表面上の欠陥などの)半導体基板上に観察される欠陥を顕著に減少又は最小化させることができると考えられる。
【0030】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記キレート剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して、0.001重量%以上%(例えば、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)から約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、又は約0.005重量%以下)の量である。
【0031】
濃縮スラリーを希釈してPOUスラリーを形成する際には、任意成分としての(optional)酸化剤(oxidizer (or oxidizing agent))を加えてもよい。前記酸化剤は、過酸化水素、オルト過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸、ジメソ過ヨウ素酸、ジオルト過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ヨウ素酸、ヨウ素酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択してもよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記酸化剤は、過酸化水素であってもよい。
【0032】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記酸化剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して、約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.004重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.025重量%以上、約0.05重量%以上、約0.075重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、又は約2重量%以上)から約5重量%以下(例えば、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量である。いくつかの実施形態では、理論に拘束されることを望むものではないが、前記酸化剤は、ハードマスクを含む基板中のハードマスク材料を除去することを助けることができると考えられる。
【0033】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、水などの溶媒(例えば、主溶媒(primary solvent))を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記溶媒(例えば、水)は、本開示に記載の研磨組成物に対して、約20重量%以上(例えば、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、約92重量%以上、約94重量%以上、約95重量%以上、又は約97重量%以上)から約99重量%以下(例えば、約98重量%以下、約96重量%以下、約94重量%以下、約92重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、又は約65重量%以下)の量である。
【0034】
1つ又はそれ以上の実施形態では、任意成分としての(optional)第2溶媒(secondary solvent)(例えば、有機溶媒)を、本開示の研磨組成物(例えば、POU研磨組成物若しくは濃縮研磨組成物)中で用いてもよく、これは、アゾール含有防錆剤などの成分の溶解を助けることができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記第2溶媒は、1種又はそれ以上の種類の、アルコール、アルキレングリコール、又はアルキレングリコールエーテルを含んでもよい。1つ又はそれ以上の実施形態では、前記第2溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジメチルスルホキシド、及びエチレングリコールからなる群から選択される1種又はそれ以上の種類の溶媒を含む。
【0035】
1つ又はそれ以上の実施形態では、前記第2溶媒は、本開示に記載の研磨組成物に対して、約0.0025重量%以上(例えば、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、又は約1重量%以上)から約5重量%以下(例えば、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量である。
【0036】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、有機溶媒、pH調整剤(例えば、ジカルボン酸又はトリカルボン酸)、4級アンモニウム化合物(例えば、塩又は水酸化物)、アミン、(アルカリ水酸化物などの)アルカリ塩基、フッ素含有化合物(例えば、(ポリマー/界面活性剤などの)フッ化物化合物若しくはフッ素化化合物)、シランなどのケイ素含有化合物(例えば、アルコキシシラン若しくは無機シリケート)、イミン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)などのアミジン)、塩(例えば、ハロゲン化物塩又は金属塩)、ポリマー(例えば、カチオン性又はアニオン性のポリマー)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、若しくはノニオン性界面活性剤)、可塑剤、酸化剤(例えば、H若しくは過ヨウ素酸)、防錆剤(例えば、アゾール防錆剤若しくは非アゾール防錆剤)、電解質(例えば、高分子電解質)、及び/又はある種の研磨剤(例えば、ポリマー性研磨剤、セリア研磨剤、ノニオン性研磨剤、表面改質研磨剤、セラミック研磨剤複合体、若しくは負帯電/正帯電研磨剤)などの、1種又はそれ以上の種類の特定の成分について実質的に非含有であってもよい。前記研磨組成物に非含有としてもよいハロゲン化物塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化ナトリウム若しくはハロゲン化カリウム)又はハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)が挙げられ、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物であってもよい。本開示において用いられる場合、研磨組成物に「実質的に非含有」である成分とは、研磨組成物に意図的に添加されていない成分のことを指す。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、研磨組成物に実質的に非含有である上記の1種又はそれ以上の種類の成分を、約1000ppm以下(例えば、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下、又は約1ppm以下)で有してもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、上記の1種又はそれ以上の種類の成分について完全に非含有であってもよい。
【0037】
本開示は、上記の研磨組成物(例えば、濃縮物又はPOUスラリー)のうち任意のものを用いる方法も想定する。濃縮物については、前記方法は、濃縮物を(例えば、2倍以上に)希釈してPOUスラリーを形成するステップ、及びそれから、W及び/又はMoを少なくとも部分的に含む表面を前記POUスラリーに接触させるステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記希釈の前、後、又は希釈中に、酸化剤を前記スラリーに加えてもよい。POUスラリーについては、前記方法は、W及び/又はMoを少なくとも部分的に含む表面を前記スラリーに接触させるステップを含む。
【0038】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示は、本開示に係る研磨組成物を、基板の表面に少なくともタングステン又はモリブデンを有する前記基板(例えば、ウェハ)に付与すること;及び前記基板の前記表面にパッドを接触させ、そして前記パッドを前記基板に対して動かすこと、を含んでもよい研磨方法を主題とする。いくつかの実施形態では、前記基板が、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、タングステン、及び/又はモリブデンのうち1つ又はそれ以上を少なくとも含む場合、前記方法は、顕著な腐食又は望ましくない除去速度選択性無しにW及び/又はMoを効果的に除去することができる。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物及び方法は、W又はMoについての除去速度が、約500オングストローム/分以上(例えば、約600オングストローム/分以上、約700オングストローム/分以上、約800オングストローム/分以上、約900オングストローム/分以上、又は約1000オングストローム/分以上)から約2000オングストローム/分以下(例えば、約1900オングストローム/分以下、約1800オングストローム/分以下、約1700オングストローム/分以下、約1600オングストローム/分以下、又は約1500オングストローム/分以下)であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物及び方法は、TEOS又はSiN除去速度に対するW又はMoの除去速度の比(つまり、W/TEOS、Mo/TEOS、W/SiN、又はMo/SiN)の大きさが約2:1以上(例えば、約3:1以上、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約8:1以上、約10:1以上、約15:1以上、又は約20:1以上)から約50:1以下(例えば、約45:1以下、約40:1以下、約35:1以下、約30:1以下、約25:1以下、約20:1以下、約15:1以下、又は約10:1以下)であってもよい。
【0039】
本開示に記載される用語「ケイ素酸化物」は、ケイ素酸化物の非ドープ型とドープ型の両方を範囲に含むことが明示的に意図される。例えば、1つ又はそれ以上の実施形態では、前記ケイ素酸化物は、炭素、窒素(ケイ素酸化物に対して)、酸素、水素、又はケイ素酸化物のためのその他の任意のドーパントから選択される少なくとも1種のドーパントでドープされていてもよい。ケイ素酸化物膜の種類のいくつかの例としては、TEOS(テトラエチルオルトケイ酸)、SiOC、SiOCN、SiOCH、SiOH、及びSiONが挙げられる。
【0040】
1つ又はそれ以上の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物を用いる前記方法は、前記研磨組成物によって処理された基板から、1つ又はそれ以上のステップを介して、半導体デバイスを製造することをさらに含んでもよい。例えば、本開示に記載の研磨組成物によって処理された基板から半導体デバイスを製造するために、フォトリソグラフィー、イオン注入(ion implantation)、ドライ/ウェットエッチング、プラズマエッチング、堆積(例えば、PVD、CVD、ALD、ECD)、ウェハマウンティング、ダイカッティング、パッケージング、及び検査を行うことができる。
【0041】
以下の具体例は単に例示的なものであって、いかなる面でも本開示の残りの部分に対して限定的ではないと、解釈するべきである。さらなる詳細説明が無くても、本開示の記載を基にして、当業者は本発明をその全域にわたって利用することができると考えられる。
【実施例
【0042】
AMAT Mirra CMP研磨機、Fujiboソフトパッド、押し下げ圧(downforce pressure)1.5psi、及びスラリー流速100~400mL/分を用いて、研磨を200mmウェハに対して行った。以下の実施例において研磨組成物中で用いた成分及びその量を表1にまとめる。
【0043】
【表1】
【0044】
●実施例1
以下の表2は、カルボン酸修飾シリカ又はスルホン酸修飾シリカと、種々のレベルの硝酸鉄触媒とを含む研磨組成物によって研磨した場合の、ブランケットウェハを用いた、TEOS、CVD-SiN、W、及びMoについての除去速度を示す。研磨組成物の他の全ての成分は同じであって、pH調整剤としてジカルボン酸を用いていた。
【0045】
【表2】
【0046】
結果は、驚くべきことに、カルボン酸修飾研磨剤の使用は、従来用いられていた量よりも少ない硝酸鉄触媒の使用を可能とすることを示している。具体的には、バルク研磨用途のための十分なW/Mo除去速度を達成するためには、600ppmの硝酸鉄触媒のローディングが典型的には用いられる。しかし、上記の表2に示されるように、カルボン酸修飾研磨剤を用いた場合、600ppmの硝酸鉄触媒のローディングはウェハを完全に除去してしまった(このことは望ましくない)が、一方たった100ppm又は200ppmの硝酸鉄触媒が、バルク研磨用途のための好適なW/Mo除去速度を達成することができた。重要なことに、硝酸鉄触媒は、研磨後も残る欠陥を形成し得、したがって、カルボン酸修飾研磨剤を含む研磨組成物に用いられる硝酸鉄触媒の量の顕著な減少は、研磨された基板上の欠陥をより少なくすると考えられる。意味あることに、スルホン酸修飾研磨剤の使用では、W/Mo除去速度の増加がずっと小さかったことが示された。したがって、上昇したW/Mo除去速度は、単にアニオン性研磨剤を用いたことの結果ではない。
【0047】
●実施例2
以下の表3は、カルボン酸修飾シリカ又はスルホン酸修飾シリカと、種々のレベルの硝酸鉄触媒とを含む研磨組成物によって研磨した場合の、ブランケットウェハを用いた、TEOS、CVD-SiN、及びWについての除去速度を示す。研磨組成物の他の全ての成分は同じであって、pH調整剤としてモノカルボン酸を用いていた。以下の調製物のいずれにもアミノ酸は含まれていなかった。
【0048】
【表3】
【0049】
結果は、驚くべきことに、カルボン酸修飾研磨剤の使用は、スルホン酸修飾研磨剤の使用と比較して、鉄触媒の存在下でのタングステン研磨速度を大きく増加させたことを示している。意味あることに、鉄触媒は、多座配位子(例えば、ジカルボン酸)の存在下で最も効果的に働くと一般に考えられている。これは、該配位子が触媒を可溶化することを助け、酸化剤とのその相互作用を調節して、活性酸素種の産生を効果的に制御するためである。しかし、モノカルボン酸の存在下でさえ、カルボン酸修飾研磨剤は驚くべきことに上昇したタングステン除去速度を示したが、このことは、研磨剤そのものが金属触媒に対する多座配位子として働いている可能性を示している。スルホン酸はカルボン酸と同じキレート能を有さず、したがって、タングステン除去速度は同じ増加を示さない。
【0050】
以上では、少数の例示的な実施形態を詳細に説明してきたが、当業者は、本発明から実体的に逸脱すること無しに前記例示的実施形態において多くの改変が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、そのような改変の全てが、以下の特許請求の範囲に規定された本開示の範囲に含まれることが意図される。
【国際調査報告】