(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】負極活物質、電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20241018BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241018BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241018BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/136
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525747
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2021127966
(87)【国際公開番号】W WO2023070668
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】リー シン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、負極活物質、電気化学装置および電子装置に関する。当該負極活物質は、炭素ケイ素酸素粒子と、前記炭素ケイ素酸素粒子の表面に位置するアルミナ層とを含み、前記炭素ケイ素酸素粒子はSiC
xO
yで示され、xおよびyは、0<x<0.04、0.8<y<1.2を満たす。当該負極活物質は電気化学装置に用いられ、サイクル特性を著しく改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質であって、
前記負極活物質が炭素ケイ素酸素粒子と、前記炭素ケイ素酸素粒子の表面に位置するアルミナ層とを含み、
前記炭素ケイ素酸素粒子がSiC
xO
yで示され、xおよびyが0<x<0.04、0.8<y<1.2を満たす、負極活物質。
【請求項2】
xおよびyは、0.01≦x≦0.035、0.85≦y≦1.0を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記アルミナ層の厚さは、0.5nm~10nmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記負極活物質は、
(a)前記負極活物質の質量に対して、前記ケイ素元素の含有量がa%である場合、aは45≦a≦70を満たすこと、
(b)前記負極活物質の質量に対して、前記炭素元素の含有量がb%である場合、bは0.9≦b≦11を満たすこと、および
(c)前記負極活物質の質量に対して、前記アルミニウム元素の含有量がc%である場合、cは0.04≦c≦1.0を満たすこと、
のうちの少なくとも1方を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記負極活物質の質量に対して、前記ケイ素元素の含有量がa%であり、前記アルミニウム元素の含有量がc%である場合、aおよびcは0.001≦c/a≦0.015を満たし、および/または、前記炭素元素の含有量がb%であり、前記アルミニウム元素の含有量がc%である場合、bおよびcは0.008≦c/b≦0.30を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記負極活物質は、
(d)前記炭素ケイ素酸素粒子のDv50の範囲は、2.5μm~10μmであること、
(e)前記炭素ケイ素酸素粒子の粒度分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たすこと、
(f)前記炭素ケイ素酸素粒子は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最高強度値がI2であり、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最高強度値がI1である場合、I2およびI1は0<I2/I1≦1を満たすこと、
(g)前記炭素ケイ素酸素粒子の比表面積は1m
2/g~50m
2/gであること、および
(h)前記負極活物質の粉末電気伝導率は2.0S/cm~30S/cmであること
のうちの少なくとも1方を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記負極活物質の調製方法は、炭素ケイ素酸素材料とアルミニウム源とを堆積反応させて、反応生成物を得るステップと、焼成温度300℃~800℃および/または焼成時間1時間~5時間で反応生成物を焼成するステップと、を含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
電気化学装置であって、
前記電気化学装置が負極を含み、前記負極が請求項1~7のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、電気化学装置。
【請求項9】
前記負極のシート抵抗は、0.2Ω~1Ωである、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には負極活物質、電気化学装置および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケイ素は、可逆容量が4200mAh/gと高いことから、大規模に使用される可能性が最も高いリチウムイオン電池負極材料と考えられている。しかしながら、ケイ素は、充放電において、体積が約400%膨張してしまい、巨大な体積膨張により固体電解質界面(SEI)の破壊を引き起こす。界面の破壊によって露出した新鮮な材料の表面は、電解液を継続的に消費するため、SEIを繰り返して形成してしまう。ケイ素材料に対してケイ素酸素材料の容量がある程度低下したが、ケイ素酸素材料はある程度体積の膨張を著しく低下させることができる。ケイ素酸素材料のケイ素と酸素との割合や粒子の大きさを合理的に設計することおよび電池の製造プロセスを最適化することなどにより、ケイ素酸素材料の体積膨張がわずか120%であり得るが、現在のリチウムイオン電池の高サイクル寿命の要求を依然として満足することができない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、従来技術に存在する問題を解決するために、負極活物質および当該負極活物質を含む電気化学装置を提供する。当該負極活物質を電気化学装置に用いると、電気化学装置のサイクル特性を著しく改善することができる。
【0004】
第1の態様において、本発明で提供される負極活物質は、炭素ケイ素酸素粒子と、炭素ケイ素酸素粒子の表面に位置するアルミナ層とを含み、炭素ケイ素酸素粒子はSiCxOyで示され、xおよびyは、0<x<0.04、0.8<y<1.2を満たす。炭素ケイ素酸素粒子の表面にあるアルミナ(Al2O3)が電解液の分解によって生成されるHFと反応することにより、炭素ケイ素酸素粒子の表面にケイ素水素結合(Si-H)を生成することを抑制し、さらに、炭素ケイ素酸素粒子の凝集を抑制することができるため、炭素ケイ素酸素材料の界面の安定性を改善し、それにより、当該負極活物質を用いた電気化学装置の容量保持率および膨張率を改善することができる。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SiCxOyにおけるxおよびyは、0.01≦x≦0.035、0.85≦y≦1.0を満たす。x値が大きくなるにつれて、負極活物質における炭素の含有量が増加し、活性ケイ素の含有量が低減するため、負極活物質のグラム容量が低下し、同一の容量を設計した場合、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。x値が小さくなるにつれて、負極活物質における炭素の含有量が低減し、活性ケイ素の含有量が増加するため、負極活物質のグラム容量が高めるが、構造の安定性が悪くなり、同一の容量を設計した場合、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アルミナ層の厚さは、0.5nm~10nmである。アルミナ層の厚さが薄いと、Alの含有量が低減し、界面のイオン伝導性が改善され、材料のグラム容量がわずかに高める。しかしながら、アルミナ層が薄くなるため、HFの腐食に対する耐性効果が弱くなった結果、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。アルミナ層の厚さが厚いと、Alの含有量が増加し、界面のイオン伝導性が悪くなり、材料のグラム容量が低下する。それなりに、アルミナ層が厚すぎると、Al2O3とHFが反応して生成したH2Oが増加するため、電解液の分解が速くなり、より多くのHFが生成し、界面の効果的な保護が達成できず、さらに、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、ケイ素元素の含有量がa%である場合、aは45≦a≦70を満たす。ケイ素の含有量が高すぎると、負極活物質が過剰に膨張するため、材料のサイクル特性が悪くなる。ケイ素の含有量が低すぎると、負極活物質のグラム容量が低くなり、それなりに電気化学装置のエネルギー密度が低くなる。本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、炭素元素の含有量がb%である場合、bは0.9≦b≦11を満たす。炭素の含有量が低すぎると、ケイ素炭素結合(Si-C)が少なくなるため、負極活物質の安定性が悪くなった結果、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。前記負極活物質の質量に対して、アルミニウム元素の含有量がc%である場合、cは0.04≦c≦1.0を満たす。アルミニウムの含有量が高すぎると、界面のイオン伝導性が悪くなった結果、電気化学装置のサイクル特性および膨張特性が悪くなる。アルミニウムの含有量が低すぎると、炭素ケイ素酸素材料の界面に対する保護作用が弱くなった結果、同様に電気化学装置のサイクル特性および膨張特性が悪くなる。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、ケイ素元素の含有量a%およびアルミニウム元素の含有量c%は0.001≦c/a≦0.015を満たす。本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、炭素元素の含有量b%およびアルミニウム元素の含有量c%は0.008≦c/b≦0.30を満たす。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該負極活物質は、(d)炭素ケイ素酸素粒子のDv50の範囲は、2.5μm~10μmであること、(e)炭素ケイ素酸素粒子の粒度分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たすこと、(f)炭素ケイ素酸素粒子は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最高強度値がI2であり、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最高強度値がI1である場合、I2およびI1は0<I2/I1≦1を満たすこと、および(g)炭素ケイ素酸素粒子の比表面積は1m2/g~50m2/gであることのうちの少なくとも1方を満たす。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の粉末電気伝導率が2.0S/cm~30S/cmである。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質は黒鉛をさらに含む。負極活物質に黒鉛を添加することにより、負極活物質のグラム容量を高めることができる。いくつかの実施形態において、黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛、およびメソカーボンマイクロビーズのうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の調製方法は、炭素ケイ素酸素材料とアルミニウム源とを堆積反応させて、反応生成物を得るステップと、反応生成物を焼成するステップと、を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼成温度は300℃~800℃である。焼成温度が下がると、アルミニウム酸素結合(Al-O)間の結合能力が弱くなり、負極活物質の表面にあるアルミナの安定性が悪くなった結果、界面に対するアルミナの保護作用が悪くなり、さらに、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成温度が上昇すると、ケイ素酸素結合(Si-O)間の結合能力が強くなり、結晶化現象が発生した結果、サイクル過程における応力分布が不均一になり、より多くの新しい界面を生成し、さらに、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼成時間は1時間~5時間である。焼成時間が短すぎると、Al-O間の結合強度が不足し、Al-O間の結合が不十分になり、表面にあるアルミナの安定性が悪くなった結果、界面に対するアルミナの保護作用が悪くなり、さらに、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成時間が長すぎると、ケイ酸塩相が増加し、ケイ素ケイ素結合(Si-Si)の結合強度が弱くなるとともにSi-O結合の結合強度が強くなり、さらに材料の構造安定性が悪くなった結果、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0015】
第2の態様において、本発明は、第1の態様に記載の負極活物質を含む負極を含む電気化学装置を提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、負極のシート抵抗は、0.2Ω~1Ωである。
【0016】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0017】
本発明は、負極活物質を提供する。当該負極活物質において、炭素ドープケイ素酸素材料の表面にアルミナ層が存在し、当該アルミナ層を利用してケイ素材料の界面をHF等による腐食から保護し、それにより、材料の界面安定性を効果的に改善し、さらに当該活物質を含む電気化学装置のサイクル特性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る負極活物質の構造の模式図であり、1はSiC
xO
yを表し、2はアルミナ層を表す。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1における負極活物質のEDS分層画像である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1における負極活物質のXRDパターンである。
【
図4】
図4は、実施例1と比較例1のリチウムイオン電池の容量保持率の比較図およびサイクル膨張の比較図であり、3は実施例1を表し、4は比較例1を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の目的、技術案および利点をより明確に理解させるために、実施例を参照して、本発明に係る技術案を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、すべての実施例ではなく、本発明の実施例の一部にすぎない。ここで、説明される関連する実施例は例示的なものであり、本発明を基本的に理解するために用いられる。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0020】
簡潔のために、いくつかの数値範囲のみが本発明に具体的に開示される。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成してもよく、そして、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成してもよい。さらに、個々に開示される各点または個々の数値自体は、下限または上限として、任意の他の点または個々の数値と組み合わせて、または他の下限若しくは他の上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を形成し得る。
【0021】
本明細書の説明では、「以上」、「以下」は、特に断らない限り、その数を包含するものとする。
【0022】
特に断らない限り、本発明で使用される用語は、当業者によって一般的に理解される一般的な意味を有する。特に断らない限り、本発明で言及される各パラメータの値は、当該技術分野で一般的に使用される様々な測定方法を使用して測定することができる(例えば、本発明の実施例に記載の方法に従って測定することができる)。
【0023】
用語「のうちの少なくとも1方」、「のうちの少なくとも1つ」、「のうちの少なくとも1種」、または、他の類似用語によって接続された項目のリストは、リストされた項目の任意の組み合わせを意味する。例えば、項目Aおよび項目Bがリストされている場合、「AおよびBのうちの少なくとも1方」との表現は、Aのみ、Bのみ、またはAとBを意味する。他の具体例において、項目A、項目B、および項目Cがリストされている場合、「A、B、およびCのうちの少なくとも1方」との表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB(Cを除く)、AとC(Bを除く)、BとC(Aを除く)、またはAとBとCとのすべてを意味する。項目Aは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項目Bは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項目Cは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。
【0024】
一.負極活物質
第1の態様において、本発明で提供される負極活物質は、炭素ケイ素酸素粒子と、炭素ケイ素酸素粒子の表面に位置するアルミナ層とを含み、炭素ケイ素酸素粒子はSiCxOyで示され、xおよびyは、0<x<0.04、0.8<y<1.2を満たす。炭素ケイ素酸素粒子の表面にあるアルミナが電解液の分解によって生成されるHFと反応することにより、炭素ケイ素酸素粒子の表面にケイ素水素結合(Si-H)を生成することを抑制し、さらに、炭素ケイ素酸素粒子の凝集を抑制することができるため、炭素ケイ素酸素材料の界面の安定性を改善し、それにより、当該負極活物質を用いた電気化学装置の容量保持率および膨張率を改善することができる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、SiCxOyにおいて、xは0.005、0.015、0.017、0.02、0.023、0.025、0.027、0.03、0.033、0.037、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、xは、0.01≦x≦0.035を満たす。本発明のいくつかの実施形態によれば、SiCxOyにおいて、yは0.87、0.90、0.93、0.95、0.97、1.05、1.1、1.15、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、yは、0.85≦y≦1.0を満たす。x値が大きくなるにつれて、負極活物質における炭素の含有量が増加し、活性ケイ素の含有量が低減するため、負極活物質のグラム容量が低下し、同一の容量を設計した場合、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。x値が小さくなるにつれて、負極活物質における炭素の含有量が低減し、活性ケイ素の含有量が増加するため、負極活物質のグラム容量が高めるが、構造の安定性が悪くなり、同一の容量を設計した場合、電気化学装置のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アルミナ層の厚さは、0.5nm~10nmである。いくつかの実施形態において、アルミナ層の厚さは1.5nm、2.5nm、3nm、4nm、5.5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。アルミナ層の厚さが薄いと、Alの含有量が低減し、界面のイオン伝導性が改善され、材料のグラム容量がわずかに高める。しかしながら、アルミナ層が薄くなるため、HFの腐食に対する耐性効果が弱くなった結果、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。アルミナ層の厚さが厚いと、Alの含有量が増加し、界面のイオン伝導性が悪くなり、材料のグラム容量が低下する。それなりに、アルミナ層が厚すぎると、Al2O3とHFが反応して生成したH2Oが増加するため、電解液の分解が速くなり、より多くのHFが生成し、界面の効果的な保護が達成できず、さらに、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、ケイ素元素の含有量がa%である場合、aは45≦a≦70を満たす。いくつかの実施形態において、aは48、52、55、57、59、62、64、66、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、aは50≦a≦65を満たす。ケイ素の含有量が高すぎると、負極活物質が過剰に膨張するため、材料のサイクル特性が悪くなる。ケイ素の含有量が低すぎると、負極活物質のグラム容量が低くなり、それなりに電気化学装置のエネルギー密度が低くなる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、炭素元素の含有量がb%である場合、bは0.9≦b≦11を満たす。いくつかの実施形態において、bは0.98、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10.5、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、bは1≦b≦10を満たす。炭素の含有量が低すぎると、ケイ素炭素結合(Si-C)が少なくなるため、負極活物質の安定性が悪くなった結果、電気化学装置のサイクル特性および膨張特性が悪くなる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記負極活物質の質量に対して、アルミニウム元素の含有量がc%である場合、cは0.04≦c≦1.0を満たす。いくつかの実施形態において、cは0.07、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、cは0.05≦c≦0.8を満たす。アルミニウムの含有量が高すぎると、界面のイオン伝導性が悪くなった結果、電気化学装置のサイクル特性および膨張特性が悪くなる。アルミニウムの含有量が低すぎると、炭素ケイ素酸素材料の界面に対する保護作用が弱くなった結果、同様に電気化学装置のサイクル特性および膨張特性が悪くなる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、ケイ素元素の含有量a%およびアルミニウム元素の含有量c%は0.001≦c/a≦0.015を満たす。いくつかの実施形態において、c/aは0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.12、0.13、0.145、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、aおよびcは0.001≦c/a≦0.014を満たす。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の質量に対して、炭素元素の含有量b%およびアルミニウム元素の含有量c%は0.008≦c/b≦0.30を満たす。いくつかの実施形態において、c/bは0.01、0.03、0.05、0.07、0.09、0.1、0.13、0.15、0.17、0.19、0.2、0.23、0.25、0.27、0.29、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、cおよびbは0.01≦c/b≦0.29を満たす。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炭素ケイ素酸素粒子のDv50の範囲は、2.5μm~10μmである。いくつかの実施形態において、炭素ケイ素酸素粒子のDv50は、2.5μm、3.0μm、4.0μm、4.5μm、5.5μm、6.0μm、7.0μm、8.0μm、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。本発明において、Dv50は、粒子の累積体積百分率が50%に達したときに対応する粒子径である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炭素ケイ素酸素粒子の粒度分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす。例えば、Dn10/Dv50は、0.35、0.4、0.45、0.5または0.55などである。本発明において、Dn10は、粒子の累積数量百分率が10%に達したときに対応する粒子径である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炭素ケイ素酸素粒子は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最高強度値がI2であり、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最高強度値がI1である場合、I2およびI1は0<I2/I1≦1を満たす。本発明のいくつかの実施形態によれば、炭素ケイ素酸素粒子の比表面積は1m2/g~50m2/gである。いくつかの実施形態において、炭素ケイ素酸素粒子の比表面積は、1m2/g、10m2/g、20m2/g、30m2/g、40m2/g、45m2/g、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質の粉末電気伝導率が2.0S/cm~30S/cmである。いくつかの実施形態において、負極活物質の粉末電気伝導率は、3.0S/cm、5.0S/cm、7.0S/cm、10S/cm、15S/cm、20S/cm、25S/cm、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極活物質は黒鉛をさらに含む。負極活物質に黒鉛を添加することにより、負極活物質のグラム容量を高めることができる。いくつかの実施形態において、黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛、およびメソカーボンマイクロビーズのうちの少なくとも1種を含む。
【0037】
二.負極活物質の調製方法
本発明に係る負極活物質の調製方法は、炭素ケイ素酸素材料とアルミニウム源とを堆積反応させて、反応生成物を得るステップと、反応生成物を焼成するステップと、を含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼成温度は300℃~800℃である。いくつかの実施形態において、焼成温度は、350℃、430℃、450℃、470℃、490℃、510℃、530℃、550℃、570℃、590℃、610℃、630℃、650℃、670℃、690℃、710℃、730℃、750℃、770℃、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、焼成温度は400℃~700℃である。焼成温度が下がると、Al-O間の結合能力が弱くなり、負極活物質の表面にあるAl2O3の安定性が悪くなった結果、界面に対するAl2O3の保護作用が悪くなり、さらに、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成温度が上昇すると、Si-O間の結合能力が強くなり、結晶化現象が発生した結果、サイクル過程における応力分布が不均一になり、より多くの新しい界面を生成し、さらに、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、焼成時間は、1時間~5時間である。いくつかの実施形態において、焼成時間は1.3時間、1.5時間、1.7時間、1.9時間、2.0時間、2.3時間、2.5時間、2.7時間、2.9時間、3.1時間、3.3時間、3.5時間、3.7時間、4.0時間、4.2時間、4.5時間、4.7時間、または、これらの数値のいずれか2つからなる範囲である。いくつかの実施形態において、焼成時間は、1.5時間~4.5時間である。焼成時間が短すぎると、Al-O間の結合強度が不足し、Al-O間の結合が不十分になり、表面にあるAl2O3の安定性が悪くなった結果、界面に対するAl2O3の保護作用が悪くなり、さらに、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成時間が長すぎると、ケイ酸塩相が増加し、Si-Si結合の結合強度が弱くなるとともにSi-O結合の結合強度が強くなり、さらに材料の構造安定性が悪くなった結果、電気化学装置の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、堆積反応は、化学気相原子層堆積法(ALD)または化学液相堆積法などの本分野における公知の化学堆積法である。ALDにおいて、化学反応物(例えば、トリメチルアルミニウムおよび水性ガス)はガスの状態で反応室に導入され、パルスの形態で反応器に到達する。そして、反応物は、パージガスの流れまたはポンピングによって互いに分散される。各反応物のパルスは、粒子の表面と化学反応した結果、ALDは、自己制限プロセスによって単層で正確に成長しながら、均一に被覆することができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アルミニウム源は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびイソプロピルアルミニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、炭素ケイ素酸素材料の調製方法は、SiOガスを生成するための原料を加熱し、600℃~1100℃の範囲内でアセチレンなどの炭素源を導入するステップを含む。
【0043】
三.電気化学装置
本発明で提供される電気化学装置は、負極を含み、当該負極は、第1の態様に記載の負極活物質を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、負極のシート抵抗は、0.2Ω~1Ωである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に設けられる負極活物質層とを含み、当該負極活物質層は、第1の態様に記載の負極活物質を含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層はバインダーをさらに含み、当該バインダーは各種のバインダー重合体を含むことができる。いくつかの実施形態において、バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、およびスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層は、電極の電気伝導率を改善するように、導電性材料をさらに含む。この導電性材料として、化学的変化を起こさない限り、任意の導電性材料を使用することができる。いくつかの実施形態において、導電性材料は、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負極集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、導電性金属で被覆された重合体基板、またはそれらの組み合わせを含む。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該電気化学装置は正極をさらに含み、正極は、集電体と、当該集電体上に位置する正極活物質層とを含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元系材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)またはマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を含むが、それらに限定されない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極活物質層は、導電剤およびバインダーをさらに含む。いくつかの実施形態において、バインダーは、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含む重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂またはナイロン等を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、導電剤は、炭素による材料、金属による材料、導電性重合体およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素による材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例において、金属による材料は、金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀から選択される。いくつかの実施例において、導電性重合体はポリフェニレン誘導体である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、正極集電体は、金属箔または複合集電体を用いることができる。例えば、アルミニウム箔を使用することができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金等)を高分子基材上に形成することにより形成することができる。
【0050】
本発明における正極は、本分野で公知の方法により製造することができる。一般的には、正極材料、並びに選択可能な導電剤(例えば、カーボンブラック等の炭素材料および金属粒子等)、バインダー(例えば、SBR)、および他の選択可能な添加剤(例えば、PTCサーミスタ材料)等の材料を混合し、溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、均一に撹拌した後に正極集電体に均一に塗布し、乾燥させた後に、正極シートを有する正極を得る。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該電気化学装置は、電解液または固体電解質をさらに含む。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の実施例に使用できる電解液は、従来技術で公知の電解液であってもよい。
【0053】
いくつかの実施例において、前記電解液は、有機溶媒、リチウム塩および添加剤を含む。本発明に係る電解液における有機溶媒は、電解液の溶媒として使用できる従来技術で公知の任意の有機溶媒であってもよい。本発明に係る電解液に使用される電解質は、制限がなく、従来技術で公知の任意の電解質であってもよい。本発明に係る電解液における添加剤は、電解液の添加剤として使用できる従来技術で公知の任意の添加剤であってもよい。いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、炭酸プロピレンまたはエチルプロピオネートを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、有機溶媒は、エーテル系溶媒を含み、例えば、1,3-ジオキソラン(DOL)およびエチレングリコールジメチルエーテル(DME)のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、有機リチウム塩および無機リチウム塩のうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムビス(オキサラト)ボレートLiB(C2O4)2(LiBOB)またはリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートLiBF2(C2O4)(LiDFOB)を含むが、それらに限定されない。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記固体電解質は、Li2+xAl2+xSi1-xS6(0≦x<1)、Li3YCl6、Li3YBr6、Li3OCl、LiPON、Li0.5La0.5TiO3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3、Li7La3Zr2O12、Li10GeP2S12(LGPS)、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li3.25Ge0.25P0.75S4、Li11AlP2S12、およびLi7P3S11のうちの少なくとも1種を含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、当該電気化学装置には、短絡を防止するために、正極と負極の間にセパレータが設けられる。本発明の実施例に使用されるセパレータの材料と形状は、特に制限がなく、従来技術で開示された任意の技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料で形成された重合体または無機物等を含む。例えば、セパレータは、基材層および表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルムまたは複合フィルムである。基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドのうちの少なくとも1種を含む。具体的には、基材層は、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜から選択することができる。基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられ、表面処理層は、重合体層または無機物層であってもよく、重合体と無機物を混合して得られた層であってもよい。無機物層は、無機粒子およびバインダーを含み、無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムのうちの少なくとも1種を含む。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1種を含む。重合体層は、重合体を含む。重合体の材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の電気化学装置は、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはコンデンサーを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、前記電気化学装置はリチウム二次電池である。いくつかの実施例において、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池またはリチウムイオン重合体二次電池を含むが、それらに限定されない。
【0057】
四.電子装置
本発明の電子装置は、本発明の第3の態様による電気化学装置を使用する任意の装置であり得る。
【0058】
いくつかの実施例において、前記電子装置は、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池またはリチウムイオンキャパシタなどを含むが、これらに限定されない。
【0059】
実施例および比較例
一.SiCxOy@Al2O3材料の調製
ステップ1:SiCxOy材料を流動床システムの処理室内に置き、処理室内の圧力を0.3mbar~0.5mbarの範囲内にあるように抽出した。
ステップ2:脱イオン水を用いて0.1s~0.5s、例えば0.3sでパルスを行い、30s~90s、例えば60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分な水分をパージした。
ステップ3:トリメチルアルミニウムを用いて3s~10s、例えば5sでパルスを行い、30s~90s、例えば60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分なトリメチルアルミニウムをパージした。
ステップ4:脱イオン水を用いて0.1s~0.5s、例えば0.3sでパルスを行い、30s~90s、例えば60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分な水分をパージした。
ステップ5:SiCxOy材料の表面に一定の厚さを有するナノ被覆層が形成されるまでステップ2~ステップ4を繰り返した。
ステップ6:Ar雰囲気中、ステップ5で得られた粉末を一定温度で一定時間焼成し、SiCxOy@Al2O3材料を得た。
【0060】
ここで、SiCxOy材料の調製において、SiOガスを生成するための原料を加熱し、600℃~1100℃の範囲内でアセチレンを導入し、SiCxOy材料を得るステップを含んだ。ここで、SiOガスを生成するための原料およびアセチレンの含有量を調整することによってxとyの値を調整した。
【0061】
二.リチウムイオン電池の調製
SiCxOy@Al2O3材料と黒鉛を一定の割合で混合し、設計された混合グラム容量850mAh/gの混合粉末を得、混合粉末、導電剤のアセチレンブラック、PAAを重量比95:1.2:3.8で脱イオン水溶媒系中に十分に攪拌して混合した後、Cu箔上に塗布し、乾燥させ、冷間プレスし、負極シートを得た。
【0062】
正極活物質のLiCoO2、導電剤のカーボンブラックSupper-P、バインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDFと略記し、バインダー中のポリフッ化ビニリデンの質量百分率は10%である)を溶媒のN-メチルピロリドンに均一に分散させ、正極スラリーを調製した。正極スラリー中の固形分の含有量は75%であり、固形分の中では、コバルト酸リチウムが96%、PVDFが2%、導電性カーボンブラックSuper-Pが2%であった。正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥させた後、冷間プレスし、正極シートを得た。
【0063】
乾燥アルゴン雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比約1:1:1)で混合された溶媒に、濃度が1.15mol/LであるLiPF6を添加して均一に混合し、濃度が約7.5%であるフルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに添加した後に、均一に混合し、電解液を得た。
【0064】
PE多孔質重合体フィルムをセパレータとした。セパレータを正極シートと負極シートの間に位置させて隔離する役目を果たすように、正極シート、セパレータ、負極シートをこの順に積層し、巻き回して電極組立体を得た。電極組立体を外装に入れ、調製された電解液を注入し、封止し、化成、脱気、トリミングなどのプロセスフローを経て、リチウムイオン電池を得た。
【0065】
実施例1
ステップ1:SiCxOy材料を流動床システムの処理室内に置き、処理室内の圧力を0.3mbar~0.5mbarの範囲内にあるように抽出した。
ステップ2:脱イオン水を用いて0.3sでパルスを行い、60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分な水分をパージした。
ステップ3:トリメチルアルミニウムを用いて5sでパルスを行い、60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分なトリメチルアルミニウムをパージした。
ステップ4:脱イオン水を用いて0.3sでパルスを行い、60sで吸着反応を行い、その後、不活性ガスを用いて余分な水分をパージした。
ステップ5:SiCxOy材料の表面に1nmのナノ被覆層が形成されるまでステップ2~ステップ4を繰り返した。
ステップ6:Ar雰囲気中、ステップ5で得られた粉末を温度600℃で3時間焼成し、SiCxOy@Al2O3材料を得た。
ステップ7:リチウムイオン電池の製造方法は「二.リチウムイオン電池の調製」に説明された方法と同一であった。
【0066】
SiCxOy@Al2O3において、xは0.015であり、yは0.95であり、表面のAl2O3層の厚さは1nmであった。負極活物質のSiCxOy@Al2O3において、Si元素の含有量は60%であり、炭素元素の含有量は3.3%であり、Al元素の含有量は0.086%であり、Si元素に対するAl元素の割合は0.0014であり、C元素に対するAl元素の割合は0.026であった。
【0067】
SiCxOyは、Dv50が5.7μmであり、Dn10/Dv50の比の値が0.49であり、I2/I1が0.78であり、BETが1.78m2/gであった。
【0068】
SiCxOy@Al2O3材料の粉末のグラム容量は1505mAh/gであり、リチウムイオン電池の400サイクル後の容量保持率は92.5%であり、膨張率は9%であった。
【0069】
実施例2~実施例5
SiCxOy@Al2O3材料の調製過程およびリチウムイオン電池の製造過程は実施例1を参照したが、異なる点は、実施例2~実施例5において、ステップ5で形成されたAl2O3層の厚さが異なることであった。詳細は表1に示す。
【0070】
実施例6~実施例10
SiCxOy@Al2O3材料の調製過程およびリチウムイオン電池の製造過程は実施例1を参照したが、異なる点は、実施例6~実施例9において、ステップ6でAr雰囲気下での焼成温度が異なることであった。詳細は表2に示す。実施例10において、ステップ6でAr雰囲気下での焼成時間が異なった。詳細は表2に示す。
【0071】
実施例11~実施例12
SiCxOy@Al2O3材料の調製過程およびリチウムイオン電池の製造過程は実施例1を参照したが、異なる点は、実施例11~実施例12において、用いられたSiCxOyが異なることであった。詳細は表3に示す。
【0072】
比較例1
ステップ1:Ar雰囲気下で、SiCxOy材料を温度600℃で3時間焼成し、高温処理後のxが0.002であり、yが0.98であるSiCxOy材料を得た。
ステップ2:リチウムイオン電池の製造方法は「二.リチウムイオン電池の調製」に説明された方法と同一であった。
ステップ3:得られたSiCxOy材料には、Al元素が含まれておらず、粉末のグラム容量が1510mAh/gであった。リチウムイオン電池の400サイクル後の容量保持率は87%、膨張率は11%であった。
【0073】
測定方法
SEM測定:
(1)負極イオンの研磨(CP,Cross Section Polisher)試料の調製:負極活物質粉末を試料台に固定し、その後、アルゴンイオン研磨(パラメータ:加速電圧8KV、試料ごとに4時間研磨)を用いて処理し、負極活物質CP試料を得た。
(2)負極活物質CP試料の調製が完了した後、走査型電子顕微鏡(PhilipsXL-30型電界放出走査電子顕微鏡)を用いて10kV、10mAの条件で負極活物質CP試料のSEM写真を撮影した。ここで、スクライブラインによりAl2O3層の厚さを測定した。
【0074】
炭素含有量の測定:酸素が豊富な条件下で、試料を高周波炉で高温加熱して燃焼させ、炭素を二酸化炭素に酸化させ、硫黄を二酸化硫黄に酸化させ、当該ガスは処理を経て対応する吸収セルに入り、対応する赤外線輻射を吸収し、検出器により対応するシグナルに転換した。このシグナルはコンピュータによりサンプリングし、直線性補正した後、二酸化炭素および二酸化硫黄の濃度と比例する数値に転換され、そして、分析過程における全ての数値を累加して分析した後、コンピュータでこの累加した値を重量の値で除し、校正係数を掛け、空白を引いて、試料中の炭素、硫黄の百分率を得た。高周波赤外線硫黄炭素分析装置(Shanghai Dekai Instrument Co., Ltd.製HCS-140)を用いて試料を測定した。
【0075】
ケイ素含有量やアルミニウム含有量の測定:一定量の試料を秤量して一定量の濃硝酸を加え、マイクロ波で分解した後に溶液を得て、そして、得られた溶液とフィルターケークを複数回洗浄して一定の体積まで定容し、ICP-OESを用いてその中の元素のプラズマ強度を測定し、測定された元素の標準曲線に基づいて溶液における元素の含有量を算出し、それによって材料に含まれた元素の量を算出した。
【0076】
粉末電気伝導率:抵抗計(Suzhou Jingge Electronic Co.,Ltd.製ST-2255A)を使用した。粉末試料5gを取り、電子プレス装置を用いて5000kg±2kgまで加圧し、当該力で15s~25s維持した。試料を抵抗計の電極間に置き、ここで、試料の高さがh(cm)、両端の電圧がU、電流がI、抵抗がR(KΩ)、プレスされた粉末片の面積が3.14cm2であった。式δ=h/(3.14×R)/1000により粉末の電子伝導率(S/cm)を算出した。
【0077】
比表面積の測定:恒温の低温で、異なる相対圧力で固体表面へのガスの吸着量を測定した後、Brownauer-Emmett-Teller吸着理論とその公式(BET公式)より、試料単分子層の吸着量を求め、固体の比表面積を算出した。
【0078】
粒度分布の測定:50mlの清潔なビーカーに、約0.02gの粉末試料を加え、約20mlの脱イオン水を加え、1%の界面活性剤をさらに数滴滴下し、粉末を水に完全に分散させ、120Wの超音波洗浄機で5分間超音波処理し、MasterSizer 2000で粒度分布を測定した。
【0079】
負極活物質のグラム容量の測定:乾燥アルゴン雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、およびジエチルカーボネート(DEC)(重量比約1:1:1)を混合して得られた溶媒に、LiPF6の含有量が約12%であるように、LiPF6を添加して均一に混合し、そして、約7.5%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加した後に均一に混合し、電解液を得た。
【0080】
負極活物質、導電性カーボンブラックおよびバインダーのPAA(変性ポリアクリル酸、PAA)を約80:10:10の重量比で脱イオン水に入れ、撹拌してスラリーを形成し、ドクターブレードにより厚さが約100μmの塗工層を形成し、真空乾燥箱に置き、約85℃で約12時間乾燥し、乾燥の雰囲気下で打抜機を用いて直径が約1cmの丸片に裁断し、グローブボックスでリチウム金属片を対電極として、ceglard複合膜をセパレータとして選択し、上記電解液を入れて、ボタン式電池に組み立てた。ランド(LAND)シリーズ電池試験システムで電池に対して充放電測定を行った。
【0081】
具体的には、組み立てられたボタン式電池を取り、正常な開回路電圧(OCV)を確保し、そして、各グループには少なくとも4つの複製サンプルが含まれた。ボタン式電池の電圧窓は0V~2.5Vに設定された。25℃で1時間静置し、さらに0.05C/50μA/20μAである三段階の小電流で電池を放電し、SEI(固体電解質界面膜)の成膜を実現し、リチウム吸蔵の容量を記録した。その後、0.1Cの電流で電池を2.5Vになるまで充電し、負極活物質のグラム容量であるリチウム放出の容量を記録した。
【0082】
サイクルの測定:測定温度25℃で、0.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cにて3.0Vまで放電した。このステップで得られた容量を初期容量とした。そして、0.5C充電/0.5C放電でサイクル測定を行い、初期容量に対して各サイクル後の容量の比率を計算し、容量減衰曲線を得た。ここで、n回目の容量保持率=n回目の放電容量/初期容量×100%であった。
【0083】
リチウムイオン電池の満充電での膨張率の測定:測定温度25℃で、0.5Cの定電流で4.45Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cにて3.0Vまで放電した。スパイラルマイクロメータを用いて、初期半分に充電されたときのリチウムイオン電池の厚さを測定し、h0とした。400回までサイクルし、リチウムイオン電池を完全に充電された状態にあったとき、スパイラルマイクロメータを用いて、このときのリチウムイオン電池の厚さを測定し、hとした。リチウムイオン電池の膨張率=(h-h_0)/h_0 ×100%であった。
【0084】
測定結果
表1は、負極活物質および当該負極活物質を含むリチウムイオン電池の特性に対するアルミナ層の厚さによる影響を示す。
【0085】
比較例1のSiCxOy材料と実施例1~実施例5のSiCxOy@Al2O3材料は、調製過程において、焼成温度が600℃であり、焼成時間が3時間であった。
【0086】
比較例1のSiCxOy材料と実施例1~実施例5のSiCxOy@Al2O3材料は、xが0.015であり、yが0.95であった。SiCxOyは、Dv50がいずれも5.7μmであり、Dn10/Dv50の比がいずれも0.49であり、I2/I1がいずれも0.78であった。
【0087】
比較例1および実施例1~実施例5のSiCxOyは、BETがそれぞれ1.78m2/g、1.78m2/g、1.46m2/g、1.98m2/g、2.02m2/g、2.58m2/gであった。
【0088】
【0089】
表1のデータから以下のことがわかる。Al2O3層の厚さが薄くなると、Alの含有量が低減し、界面のイオン伝導性が改善され、SiCxOy@Al2O3材料のグラム容量がわずかに高める。しかしながら、Al2O3層が薄くなるため、HFの腐食に対する耐性効果が弱くなった結果、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。Al2O3層の厚さが厚くなると、Alの含有量が増加し、界面のイオン伝導性が悪くなり、SiCxOy@Al2O3材料のグラム容量が低下する。それなりに、Al2O3層が厚すぎると、Al2O3とHFが反応して生成したH2Oが増加するため、電解液の分解が速くなり、より多くのHFが生成し、界面の効果的な保護が達成できず、さらに、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0090】
表2は、負極活物質の調製方法のステップ6における焼成温度および焼成時間は、得られた負極活物質および当該負極活物質を含むリチウムイオン電池の特性に与える影響を示す。
【0091】
実施例6~実施例10のSiCxOy@Al2O3材料は、アルミナ層の厚さが1nmであり、xが0.015であり、yが0.95であった。SiCxOyは、Dv50がいずれも5.7μmであり、Dn10/Dv50の比がいずれも0.49であり、I2/I1がいずれも0.78であり、BETがいずれも1.78m2/gであった。
【0092】
【0093】
表2のデータから以下のことがわかる。焼成温度が下がると、Al-O間の結合能力が弱くなり、表面にあるAl2O3の安定性が悪くなった結果、界面に対するAl2O3の保護作用が悪くなり、さらに、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成温度が上昇すると、Si-O間の結合能力が強くなり、結晶化現象が発生した結果、サイクル過程における応力分布が不均一になり、より多くの新しい界面を生成し、さらに、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0094】
焼成時間が短すぎると、Al-O間の結合強度が不足し、Al-O間の結合が不十分になり、表面にあるAl2O3の安定性が悪くなった結果、界面に対するAl2O3の保護作用が悪くなり、さらに、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。焼成時間が長すぎると、ケイ酸塩相が増加し、Si-Si結合の結合強度が弱くなるとともにSi-O結合の結合強度が強くなり、さらに、SiCxOy@Al2O3材料の構造安定性が悪くなった結果、リチウムイオン電池の容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0095】
表3は、負極活物質におけるxおよびyの値は負極活物質および当該負極活物質を含むリチウムイオン電池の特性に与える影響を示す。
【0096】
実施例11~実施例12のSiCxOy@Al2O3材料は、調製過程において、焼成温度が600℃であり、焼成時間が3時間であった。
【0097】
実施例11~実施例12のSiCxOy@Al2O3材料は、アルミナ層の厚さが1nmであった。SiCxOyは、Dv50がいずれも5.7μmであり、Dn10/Dv50の比がいずれも0.49であり、I2/I1がいずれも0.78であり、BETがいずれも1.78m2/gであった。
【0098】
【0099】
表3のデータから以下のことがわかる。x値が大きくなるにつれて、SiCxOy@Al2O3材料における炭素の含有量が増加し、活性ケイ素の含有量が低減するため、SiCxOy@Al2O3材料のグラム容量が低下し、同一の容量を設計した場合、リチウムイオン電池のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。x値が小さくなるにつれて、SiCxOy@Al2O3材料における炭素の含有量が低減し、活性ケイ素の含有量が増加するため、SiCxOy@Al2O3材料のグラム容量が高めるが、構造の安定性が悪くなり、同一の容量を設計した場合、リチウムイオン電池のサイクル容量保持率が低下するとともに膨張率が向上する。
【0100】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を開示および説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されない。むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して様々な修正および変更を行うことができることを認識すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質であって、
前記負極活物質が炭素ケイ素酸素粒子と、前記炭素ケイ素酸素粒子の表面に位置するアルミナ層とを含み、
前記炭素ケイ素酸素粒子がSiC
xO
yで示され、xおよびyが0<x<0.04、0.8<y<1.2を満たす、負極活物質。
【請求項2】
xおよびyは、0.01≦x≦0.035、0.85≦y≦1.0を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記アルミナ層の厚さは、0.5nm~10nmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記負極活物質は、
(a)前記負極活物質の質量に対して
、ケイ素元素の含有量がa%である場合、aは45≦a≦70を満たすこと、
(b)前記負極活物質の質量に対して
、炭素元素の含有量がb%である場合、bは0.9≦b≦11を満たすこと、および
(c)前記負極活物質の質量に対して
、アルミニウム元素の含有量がc%である場合、cは0.04≦c≦1.0を満たすこと、
のうちの少なくとも1方を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記負極活物質の質量に対して
、ケイ素元素の含有量がa%であり
、アルミニウム元素の含有量がc%である場合、aおよびcは0.001≦c/a≦0.015を満たし、および/または
、炭素元素の含有量がb%であり、前記アルミニウム元素の含有量がc%である場合、bおよびcは0.008≦c/b≦0.30を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記負極活物質は、
(d)前記炭素ケイ素酸素粒子のDv50の範囲は、2.5μm~10μmであること、
(e)前記炭素ケイ素酸素粒子の粒度分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たすこと、
(f)前記炭素ケイ素酸素粒子は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最高強度値がI2であり、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最高強度値がI1である場合、I2およびI1は0<I2/I1≦1を満たすこと、
(g)前記炭素ケイ素酸素粒子の比表面積は1m
2/g~50m
2/gであること、および
(h)前記負極活物質の粉末電気伝導率は2.0S/cm~30S/cmであること
のうちの少なくとも1方を満たす、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記負極活物質の調製方法は、炭素ケイ素酸素材料とアルミニウム源とを堆積反応させて、反応生成物を得るステップと、焼成温度300℃~800℃および/または焼成時間1時間~5時間で反応生成物を焼成するステップと、を含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
電気化学装置であって、
前記電気化学装置が負極を含み、前記負極が請求項1~7のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、電気化学装置。
【請求項9】
前記負極のシート抵抗は、0.2Ω~1Ωである、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【国際調査報告】