(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】抗CD26抗体とその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241018BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241018BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241018BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241018BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241018BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525795
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2022126880
(87)【国際公開番号】W WO2023071953
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111245489.5
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524159077
【氏名又は名称】江蘇衆紅生物工程創薬研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZONHON BIOPHARMA INSTITUTE,INC
【住所又は居所原語表記】Block 2,3/F,518 Yunhe Road,Xinbei,Changzhou,Jiangsu 213125,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 永
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲ペー▼沛
(72)【発明者】
【氏名】杭 建花
(72)【発明者】
【氏名】葛 晨楠
(72)【発明者】
【氏名】張 韜
(72)【発明者】
【氏名】孫 芳
(72)【発明者】
【氏名】姚 翔
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】ヒトCD26と結合する抗体又は抗原結合性断片の提供、及びCD26高発現腫瘍を治療する薬物の製造における上記抗体又は抗原結合性断片の応用。
【解決手段】本発明は、一種のCD26ネズミ由来抗体及びそれを親抗体として得られたキメラ抗体またはヒト化抗体を提供することによって、ほかのネズミ抗体及び相応するキメラ抗体またはヒト化抗体よりも優れた抗原親和性と良好な安全性・有効性を実現した。また本発明はCD26を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体を提供することによって、既存のCD26全長抗体よりもよい安全性と有効性が得られ、疾患治療において、投与量の減量、よりよい治療効果の取得、不良反応発生率の低減を実現した。さらに本発明のCD26を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体は、関連の腫瘍に対する既存の第一選択治療法(例えば、BAVENCIOによる腎臓癌の治療)と比較して、際立った有効性と安全性を呈している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD26と特異的に結合する抗体又は抗原結合性断片であって、SEQ ID NO:1に示したHCDR1、SEQ ID NO:2に示したHCDR2、SEQ ID NO:3に示したHCDR3、およびSEQ ID NO:4に示したLCDR1、Arg Met SerからなるLCDR2と、SEQ ID NO:5に示したLCDR3を含むことを特徴とする、抗体又は抗原結合性断片。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体または抗原結合性断片であって、アミノ酸配列がSEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域を含み、及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に示した配列と少なくとも90%、91%、92 %、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、抗体または抗原結合性断片。
【請求項3】
請求項2に記載の抗体または抗原結合性断片において、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9に示した配列の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸が挿入、欠失、または置換され、前記アミノ酸置換は保守的アミノ酸置換であることを特徴とする、抗体または抗原結合性断片。
【請求項4】
請求項2に記載の抗体または抗原結合性断片であって、SEQ ID NO:6に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:7に示した軽鎖可変領域を含むか、またはSEQ ID NO:8に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:9に示した軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、抗体または抗原結合性断片。
【請求項5】
CD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体であって、前記二重特異性T細胞誘導抗体は抗原特異性を持つ2つの単鎖可変領域フラグメント(scFv)をリンカーによって連結して形成され、前記一つのscFvはCD26を標的として認識しCD26を認識する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域をリンカーでつなげて形成され、もう一つのscFvはCD3を標的として認識しCD3を認識する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域をリンカーでつなげて形成され、前記CD26を標的として認識するscFvは、SEQ ID NO:1に示したHCDR1、SEQ ID NO:2に示したHCDR2、SEQ ID NO:3に示したHCDR3、およびSEQ ID NO:4に示したLCDR1、Arg Met SerからなるLCDR2と、SEQ ID NO:5に示したLCDR3を含むことを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項6】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)であって、前記CD26を標的として認識するscFvは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域、およびアミノ酸配列がSEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項7】
請求項6に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)であって、前記CD26を標的として認識するscFvにおいて、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9に示した配列の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸が挿入、欠失、または置換され、前記アミノ酸置換は保守的アミノ酸置換であることを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項8】
請求項6に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)であって、前記CD26を標的として認識するscFvは、SEQ ID NO:6に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:7に示した軽鎖可変領域を含むか、またはSEQ ID NO:8に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:9に示した軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項9】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)であって、前記CD3を標的として認識するscFvは、OKT-3、L2K、TR66、UCHT1、SP34、IORT3、Catumaxomab、Blinatumomab、Solitomabに由来することを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項10】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)であって、前記scFvの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結するリンカーは、当該技術分野においてよく使用されるリンカーであるKESGSVSSEQLAQFRSLD、EGKSSGSGSESKST、GSTSGGGSGGGSGGGGSS、GSTSGSGKPGSGEGSTKG、または(GGGGS)
nから選択され、nは1~5の整数であることを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項11】
請求項10に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体であって、前記scFvの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結するリンカーの配列はSEQ ID NO:12で示されることを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項12】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体であって、前記2つのscFvを連結するリンカーは、当該技術分野においてよく使用されるリンカーから選択され、例えば(GGGGS)
n、nは1~5の整数であることを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項13】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体であって、前記2つのscFvを連結するリンカーの配列は、当該技術分野においてよく使用されるリンカーの配列から選択され、例えばSEQ ID NO:13に示した配列を選択することを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項14】
請求項5に記載のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体であって、前記二重特異性T細胞誘導抗体のアミノ酸配列がSEQ ID NO:14またはSEQ ID NO:15で示されることを特徴とする、二重特異性T細胞誘導抗体。
【請求項15】
請求項1-14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【請求項16】
請求項15に記載のヌクレオチドを含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1-14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物。
【請求項19】
CD26高発現腫瘍を治療する方法であって、請求項1-14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片を有効量で患者に投与することを含み、前記腫瘍は腎癌、中皮腫、肺癌、肝癌、前立腺癌を含むが、これらに限定されないことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD26と結合する抗体又は抗原結合性断片、及びCD26高発現腫瘍を治療する薬物の製造におけるそれらの抗体又は抗原結合性断片の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD26は多機能なII型膜貫通型糖タンパク質であり、また溶解の形態で血漿中にも存在している。CD26はよくホモ二量体として存在し、その単量体は766個のアミノ酸を含み、相対分子質量が約110kDaである。CD26のアミノ酸残基は、内側から外側へ、細胞内ドメイン(1~6)、膜貫通ドメイン(7~28)、高グリコシル化ドメイン(29~323)、システインに富むドメイン(324~551)、C末端触媒ドメイン(552~766)の5つの部分に分けられ、その分子の立体構造はその機能と密接に関係する。CD26(DPP4)阻害剤は臨床上II型糖尿病の治療に数十年にわたって使用されてきた。CD26の発現量は、例えば悪性中皮腫、腎癌、前立腺癌、肺癌など、様々な腫瘍細胞の表面に著しく上昇する。CD26高発現のこれらの腫瘍にとって、CD26は重要な価値を持つ作用標的であると考えられる(CD26/DPP4-a potential biomarker and target for cancer therapy, Pharmacology & Therapeutics(2019), 198: 135-159)。
【0003】
現在、CD26を標的とする標的型の抗がん薬の研究で、最も進展が速かったのはY’S Therapeutics社のモノクローナル抗体YS110であり、すでに第I/II相臨床試験が終了した。しかし、既存文献の分析によれば、YS110は前臨床研究においてin vivoおよびin vitroの両方とも活性が低いという問題があった。例えば、文献「A humanized anti-CD26 monoclonal antibody inhibits cell growth of malignant mesothelioma via retarded G2/M cell cycle transition, Cancer Cell Int(2016) 16:35」には、濃度250ug/mlのYS110が48h作用した後、腫瘍細胞株の成長阻害率が18.3%であるのに対して、IC50値は250ug/mlよりはるかに高い。in vitroでの活性が比較的に低いということが窺われる。また、特許「抗CD26抗体およびその使用方法(出願番号:CN200680034937.4)」には、多種のCD26高発現細胞株のマウス腫瘍モデルに対するYS110の治療が示され、YS110はある程度腫瘍のサイズを縮小し、腫瘍の成長を阻害したが、腫瘍の成長を完全に抑制して腫瘍の治癒を達成することはできなかった。それは動物モデルにおけるその活性がまだ満足のいくものではないことを示している。すでに完了したYS110の第II相臨床試験の結果により、YS110の忍容性は良好であったものの、その病勢コントロール率は期待通りにならなかった。この結果は前臨床試験で示したYS110の低活性に対応している。
【0004】
文献や資料にはCD26は広範に分布することが述べられているが、YS110の使用は良好な安全性を有することが証明されたことから、臨床使用においてその安全性が十分に保証されたものであると考えられる。YS110の臨床試験に参加した31名の患者のうち、死亡事例は発生しておらず、主な副作用は輸液反応(16.1%)、しゃっくり(9.7%)、下痢(6.5%)などであった。(Phase 2 Study of YS110, a Recombinant Humanized Anti-CD26 Monoclonal Antibody, in Japanese Patients With Advanced Malignant Pleural Mesothelioma, JTO Clinincal and Research Reports(2021), 2(6) )
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】CD26/DPP4-a potential biomarker and target for cancer therapy, Pharmacology & Therapeutics(2019), 198: 135-159
【非特許文献2】A humanized anti-CD26 monoclonal antibody inhibits cell growth of malignant mesothelioma via retarded G2/M cell cycle transition, Cancer Cell Int(2016) 16:35
【非特許文献3】Phase 2 Study of YS110, a Recombinant Humanized Anti-CD26 Monoclonal Antibody, in Japanese Patients With Advanced Malignant Pleural Mesothelioma, JTO Clinical and Research Reports(2021), 2(6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べたように、CD26標的の安全性はすでに臨床試験で確認されたが、CD26を治療標的とする既存の抗体では腫瘍に対して十分な治療効果を得ることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決しようとして、本発明の第一の目的は、より有効でより安全なCD26抗体または抗原結合性断片を提供することである。
【0009】
本発明が提供するヒトCD26と特異的に結合する抗体又は抗原結合性断片は、SEQ ID NO:1に示したHCDR1、SEQ ID NO:2に示したHCDR2、SEQ ID NO:3に示したHCDR3、およびSEQ ID NO:4に示したLCDR1、Arg Met SerからなるLCDR2と、SEQ ID NO:5に示したLCDR3を含む。
【0010】
前記抗体または抗原結合性断片は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域を含み、及びアミノ酸配列がSEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に示した配列と少なくとも90%、91%、92 %、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の軽鎖可変領域を含む。
【0011】
前記抗体または抗原結合性断片は、そのSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9に示した配列において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸が挿入、欠失、または置換されてもよい。そのアミノ酸置換は保守的アミノ酸置換である。
【0012】
前記抗体または抗原結合性断片は、SEQ ID NO:6に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:7に示した軽鎖可変領域を含むか、またはSEQ ID NO:8に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:9に示した軽鎖可変領域を含む。
【0013】
本発明の第二の目的は、CD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)を提供することである。
【0014】
本発明のCD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)は、抗原特異性を持つ2つの単鎖可変領域フラグメント(scFv)をリンカーによって連結される。そのうち、一つのscFvはCD26を標的として認識し、CD26を認識する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域がリンカーでつなげられ、もう一つのscFvはCD3を標的として認識し、CD3を認識する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域がリンカーでつなげられている。
【0015】
前記CD26を標的として認識するscFvは、SEQ ID NO:1に示したHCDR1、SEQ ID NO:2に示したHCDR2、SEQ ID NO:3に示したHCDR3、およびSEQ ID NO:4に示したLCDR1、Arg Met SerからなるLCDR2と、SEQ ID NO:5に示したLCDR3を含む。
【0016】
前記CD26を標的として認識するscFvは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:8に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域、およびアミノ酸配列がSEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に示した配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の軽鎖可変領域を含む。
【0017】
前記CD26を標的として認識するscFvは、そのSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:9に示した配列において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸が挿入、欠失、または置換されてもよい。そのアミノ酸置換は保守的アミノ酸置換である。
前記CD26を標的として認識するscFvは、SEQ ID NO:6に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:7に示した軽鎖可変領域を含むか、またはSEQ ID NO:8に示した重鎖可変領域を含み、且つSEQ ID NO:9に示した軽鎖可変領域を含む。
【0018】
前記CD3を標的として認識するscFvは、OKT-3、L2K、TR66、UCHT1、SP34、IORT3、Catumaxomab、Blinatumomab、Solitomabなど当該技術分野において公知のCD3抗体配列に由来する。例えば、SEQ ID NO:10に示した抗CD3重鎖可変領域、SEQ ID NO:11に示した抗CD3軽鎖可変領域がそれに該当する。
【0019】
前記scFvの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結するリンカーは、当該技術分野においてよく使用されるリンカー、例えば、KESGSVSSEQLAQFRSLD、EGKSSGSGSESKST、GSTSGGGSGGGSGGGGSS、GSTSGSGKPGSGEGSTKG、(GGGGS)nなどから選択される。そのうち、nは1~5の整数であってよく、好ましくは、nは1~3の整数であってよく、さらに好ましくは、nはSEQ ID NO:12に示したように3であってよい。
【0020】
前記2つのscFvを連結するリンカーは、当該技術分野においてよく使用されるリンカー、例えば(GGGGS)nなどから選択される。そのうち、nは1~5の整数であってよく、好ましくは、nは1~3の整数であってよく、さらに好ましくは、nはSEQ ID NO:13に示したように1であってよい。
【0021】
前記CD26抗体または抗原結合性断片の配列を含む二重特異性T細胞誘導抗体は、好ましくはそのアミノ酸配列がSEQ ID NO:14(18G272 BiTEのアミノ酸配列)またはSEQ ID NO:15(19G294 BiTEのアミノ酸配列)で示されている。
【0022】
本発明はまた、前記抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に関する。さらに、本発明は前記ヌクレオチドを含むベクター、当該ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0023】
本発明はまた、抗体または抗原結合性断片の作製に用いられる方法に関する。前記方法は、前記宿主細胞を培養し、培養物から抗体または抗原結合性断片を回収することを含む。
【0024】
本発明はまた、前記抗体または抗原結合性断片を含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明はまた、腫瘍を治療する方法に関する。前記方法は、前記抗体または抗原結合性断片を有効量で患者に投与することを含む。前記腫瘍は、CD26を高発現する腫瘍であり、腎癌、中皮腫、肺癌、肝癌、前立腺癌などを含むが、これらに限定されない。前記抗体または抗原結合性断片は、単独で投与または他の抗癌剤と併用で投与される。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、既存の技術に比べて以下の利点を有する:
第一、本発明がスクリーニングしたネズミ由来抗体は明らかに優れている。
実施例1のデータに、本発明がスクリーニングした62番ネズミ由来抗体は、他のネズミ由来抗体よりもヒト由来腫瘍細胞に対する溶解能力がはるかに高いことが示されている。また、本発明がスクリーニングしたネズミ由来抗体は、第2相臨床試験が終了したヒト化抗体YS110に相当するヒト由来腫瘍細胞の殺傷能力を持つことにより、本発明のネズミ由来抗体の優位性がより十分に証明されている。
【0027】
また、実施例5、8、10のデータに、62番ネズミ由来抗体の可変領域に基づき改造して得られたキメラ抗体またはヒト化抗体は、他のネズミ抗体由来の相応する抗体に比べて、より高いドット・ブロットの活性及びより優れた抗原の親和性を有することが示されている。
【0028】
他のネズミ抗体由来のBiTEに比べて、本発明の62番ネズミ抗体の可変領域に基づき改造して得られたBiTEはより高い有効性を示した。実施例11に、異なる標的細胞に対するBiTEを介したPBMCの細胞毒性作用をin vitroで比較した結果が示され、本発明の62番に由来するBiTEは、複数の腫瘍細胞に対してYS110に由来するCD26抗体配列を用いたBiTEより殺傷能力が優れている。実施例17~22の結果、本発明のBiTEは複数の動物腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を著しく抑制し、一部のモデルでは腫瘍の成長が完全に抑止され、その有効性は、CD26抗体配列がYS110に由来したBiTEより著しく優れている。
【0029】
さらに、他のネズミ抗体由来のBiTEに比べて、本発明の62番ネズミ抗体の可変領域に基づき改造して得られたBiTEは、より高い安全性を示し、サイトカインストームを引き起こすリスクがより低い(実施例13)。
【0030】
第二、本発明のCD26を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体は、既存の抗CD26モノクローナル全長抗体よりも効果的で、安全である。
【0031】
有効性について、実施例11のデータは、本発明のBiTE構造の二重特異性抗体は、複数のCD26陽性腫瘍細胞に対する殺傷効果が、IgG全長抗体のYS110より優れることを示した。実施例23、24のデータは、本発明のBiTE構造の二重特異性抗体は、複数の動物腫瘍モデルにおいての腫瘍成長抑制効果が、IgG全長抗体のYS110より著しく優れることを示した。
【0032】
安全性について、実施例12により分かるように、IgG全長の抗CD26抗体はT細胞の活性化を効果的に誘導することができないが、本発明のBiTE構造のCD26-CD3二重特異性抗体は、腫瘍部位に到達する前にT細胞の活性化を明らかに引き起こすことなく、抗体が腫瘍細胞と結合してから腫瘍組織周囲のT細胞を活性化しそして腫瘍細胞を殺傷し、作用の安全性を向上させた。実施例23、24のデータは、本発明のBiTE構造の二重特異性抗体は、多種の動物腫瘍モデルにおいて、IgG全長抗体であるYS110より著しく優れた安全性があることを示した。
【0033】
第三、関連の腫瘍に対する既存の第一選択治療法(例えば、BAVENCIOによる腎臓癌の治療)と比較して、本発明のCD26を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体は、より際立った有効性と安全性を示している(実施例15、22、23)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ドット・ブロット法によるヒト化二重特異性抗体の活性測定、そのうち、(a)はドット・ブロット法によるヒト化二重特異性抗体18G272と18G278の活性測定であり、(b)はドット・ブロット法によるヒト化二重特異性抗体19G294の活性の測定を示す図である。
【
図2】フローサイトメトリーによる抗体と標的細胞抗原との結合特異性の測定結果を示すグラフである。
【
図3】19G294とCD26たんぱく質、CD3たんぱく質との同時結合を示すグラフである。
【
図4】ヒト化二重特異性抗体を介したPBMC細胞のPBMC細胞への細胞毒性作用を示すグラフである。
【
図5】PC-3細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群、19G294投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図6】PC-3細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群、19G294投与群の動物腫瘍体重を示すグラフである。
【
図7】NCI-H596細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図8】NCI-H226細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図9】NCI-H226細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群の動物体重を示すグラフである。
【
図10】A498細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図11】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける17G29投与群、19G295投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図12】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群、19G295投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図13】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群、19G295投与群の動物生存率を示すグラフである。
【
図14】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける18G272投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図15】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図16】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群、21G587投与群の動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図17】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける異なる投与量での19G294投与群、21G587投与群の動物体重を示すグラフである。
【
図18】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける19G294投与群、BAVENCIO+Axitinib併用群などの動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図19】OS-RC-2細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける接種26日目の19G294投与群、BAVENCIO+Axitinib併用群などの動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図20】A498細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける接種26日目の19G294投与群、BAVENCIO+Axitinib併用群などの動物腫瘍体積を示すグラフである。
【
図21】A498細胞皮下移植NOD/SCIDマウスモデルにおける接種65日後の19G294投与群、BAVENCIO+Axitinib併用群などの動物腫瘍重量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書において明示的に定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有している。
単数形の語、例えば「1つ(a、an)」「前記(the)」などは、それぞれの指示対象物の複数形をも含む。
【0036】
用語「または(or)」は、「および/または(and/or)」を意味し、「および/または(and/or)」と互換的に用いられてもよい。
用語「CD26」は、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4;dipeptidyl peptidase 4)とも呼ばれる。ヒトCD26のアミノ酸配列は、登録番号NP_001926.2でGenbankで検索でき、そのcDNA配列は登録番号NM_001935.3でGenbankで検索できる。
【0037】
用語「アミノ酸の保守的置換」は、原始アミノ酸を新アミノ酸に置換する場合、新アミノ酸が抗体または断片の化学的、物理的および/または機能的な特性(例えばCD26への結合親和性など)をほとんど変更しないことを指す。アミノ酸の保守的置換は、当該技術分野において周知であり、例えば、AlaからGly、Serへの保守的置換、ArgからLys、Hisへの保守的置換、AsnからGln、Hisへの保守的置換などを行うことができる。
【0038】
用語「親和性」は、抗体と抗原間の相互作用の強さを指す。抗体の可変領域は非共有結合力によって抗原と相互作用し、相互作用が多ければ多いほど、親和性が強くなる。
【0039】
用語「抗体」は、相応する抗原と非共有結合的、可逆的かつ特異的に結合できる免疫グロブリンファミリーを指す。例えば、天然に存在するIgG抗体は4量体であり、互いにジスルフィド結合で結合した少なくとも2本の重鎖と2本の軽鎖を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成され、重鎖定常領域はCH1、CH2、CH3という3つのドメインから構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成され、軽鎖定常領域はCLという一つのドメインから構成されている。VHとVLは、さらに変動性の高い相補性決定領域(CDR、超可変領域とも称される)と、より保存性の高いフレームワーク領域(FR)に細分化することができる。一つのVH、または一つのVLは、三つのCDRと四つのFRから構成され、アミノ基末端からカルボキン基末端へFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に並んでいる。HCDR1、HCDR2、HCDR3は3つの重鎖相補性決定領域であり、LCDR1、LCDR2、LCDR3は3つの軽鎖相補性決定領域である。CDRとフレームワーク領域の位置は、Kabat、Chothia、IMGTなど当該技術分野でよく知られる各種のナンバリングシステムを使用して決定することができる。本願はIMGTを使用して位置を決定する。重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は抗原認識の役割を担い、特にその相補性決定領域(CDR)は通常、抗原の異なるエピトープに対する特異性を有する。定常領域は主にエフェクター機能を担う。
【0040】
用語「抗原結合性断片」は、抗体の抗原結合フラグメントを指し、すなわち抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の断片のことであり、例えばCDR領域を1つあるいは複数保有しているフラグメントなど、それはFab断片、FV断片、二重抗体、線形抗体、一本鎖抗体、ナノ抗体、多特異性抗体などを含むが、これらに限定されない。
【0041】
用語「モノクローナル抗体」は、基本的に同質な抗体の集団を指し、即ち自然発生可能性のあるわずかな変異を除いて、集団内の抗体分子のアミノ酸配列が同じである。対照的に、ポリクローナル抗体は通常、アミノ酸配列が異なる可変領域(特に相補性決定領域)を有する多種の抗体を含む。モノクローナル抗体は当該技術分野の当業者に既知の方法により得られる。本願では、ハイブリッドーマ技術によりモノクローナル抗体を取得する。この方法は既知の多くのモノクローナル抗体取得方法の1つである。
【0042】
用語「ネズミ由来抗体」は、ラットあるいはマウスの免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0043】
用語「キメラ抗体」は、可変領域が非ヒト(例えばネズミ)抗体配列から由来し、ほかの部分がヒト抗体配列から由来する抗体を指す。
【0044】
用語「ヒト化抗体」は、CDR領域が非ヒト(例えばネズミ)抗体配列から由来し、ほかの部分がヒト抗体配列から由来する抗体を指す。
【0045】
用語「二重特異性抗体」は、同一または異なる抗原に対する特異的結合部位を2つ持つ抗体を指す。
【0046】
用語「BiTE」は、一種の二重特異性抗体のことを指し、その全称が「二重特異性T細胞誘導抗体(Bispecific T cell engager)」である。それは抗原特異性を持つ2つの単鎖可変断片(single chain variable fragment,scFv)をリンカーで連結して形成され、一つのscFVは腫瘍関連の表面抗原を標的として認識し、もう一つのscFVはT細胞表面のCD3を標的として認識する。単鎖可変断片(scFv)は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域をリンカーで連結して形成される。「リンカー」は異なるタンパク質断片を連結するために使用するアミノ酸配列であり、その設計と選択に関して、多くの研究がなされてきた。BiTEにおいて、リンカーは一つの重鎖可変領域と一つの軽鎖可変領域を連結してscFVを形成し、また自由に回転してもいいように二つのscFVを直列連結するが、一般にGGGGSの繰り返し構造で構成される(Sはセリン、Gはグリシンを表す)。グリシンは分子量が小さく側鎖が短いため、側鎖の柔軟性を増すことができ、セリンは親水性が比較的に強いため、ペプチド鎖の親水性を増すことができる。繰り返しの回数を最適化することは、scFvの軽鎖と重鎖を正しいコンフォメーションで締結させることに役に立つだけでなく、2つのscFv間の距離に影響を与えることによって、免疫シナプスにおけるT細胞と標的細胞間の最適な相互作用をも促進する(出典: 周沖など.二重特異性単鎖抗体BiTEの研究進展[J]. 生物雑誌, 2018)。scFVの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結するによく使用されるリカーにはKESGSVSSEQLAQFRSLD、EGKSSGSGSESKST、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(US20180326032)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(Preclinical Development of Bivalent Chimeric Antigen Receptors Targeting Both CD19 and CD22)などがある。本願の具体的な実施例では、1つの重鎖と1つの軽鎖を連結してscFvを形成するには、GGGGSの3回繰り返し配列で構成されるフレキシブルリンカーを使い、二つのscFVを直列接続するにはGGGGSのフレキシブルリンカーを使っている。当該技術領域の当業者は、既存技術の教えに基づき、通常の実験法および有限回数の実験によって既知のリンカーからリンカーを選択して決定することができ、また2種類のフレキシブルリンカーにあるGGGGSの繰り返し回数を最適化したり、GGGGS以外のほかのフレキシブルリンカーを用いたりすることも可能である。
【0047】
CD3はT細胞のシグナル伝達の構成要素である。BiTE分子がT細胞と腫瘍細胞の両方に結合すると、T細胞が活性化され、CD8+T細胞が直接にパーフォリンとグランザイムを分泌するのが促進され、CD4+T細胞がサイトカインを分泌してさらに腫瘍細胞傷害性のT細胞が呼び寄せられ活性化され、これにより腫瘍細胞を傷害する。CD3抗体配列はOKT-3、L2K、TR66、UCHT1、SP34、IORT3、Catumaxomab、Blinatumomab、Solitomab、WBP3311_2.306.4(特許CN201880061333.1)など、当該技術分野において既知のCD3抗体配列から選択できる。本願の具体的な実施例ではSolitomab、WBP3311_2.306.4のCD3抗体配列を用いているが、当業者は本願の具体的な実施例で用いている特定のCD3抗体配列に限定されることなく、通常の実験法および有限回数の実験によって既知のほかのCD3抗体からCD3抗体を選択して決定することができる。
【0048】
用語「キメラBiTE二重特異性抗体」は本願において、ネズミ由来CD26 scFvをリンカーでヒト由来CD3 scFvと連結したものを指す。
【0049】
用語「投与」(「administration」、「administering」)、「治療」(「treating」および「treatment」)は、外因性の薬剤、治療薬、診断薬と被験者の組織、器官、細胞、または生体流体との接触を指す。「治療」とは、病気の臨床症状の進行を遅らせるか止めるか、あるいは少なくとも1つの物理的パラメータを緩和するか改善するか、あるいは病気の進行を予防することを意味する。
【実施例】
【0050】
実施例1. 抗ヒトCD26ハイブリドーマ細胞株の作製とスクリーニング
ステップ1:動物免疫
GenBankが公開しているCD26のcDNA配列(GenBank登録番号:NM_001935.3)に基づき、rCD26発現ベクターを設計し、コドンの5'末端にHisタグを導入して全遺伝子合成をし、pCHO1.0プラスミド内に連結し、CHO-S宿主細胞の発現、純化を行った。一般の免疫プロセスに基づき、調製した組換えCD26標的タンパク質でメスBALB/cマウスを免疫した。免疫の詳細については「抗体調製および使用の実験ガイド」を参考にすることができる。間接ELISA法により、免疫されたマウスの血清のタイターを追跡し、最も血清力価の高いマウスを選び出し、その脾臓細胞と骨髄腫細胞との融合実験を行った。
【0051】
ステップ2:細胞融合
(1). 脾臓細胞の作製
免疫されたマウスから眼球摘出により採血し、頸椎脱臼でマウスを死なせ、75%(v/v)のアルコールに10分間浸し、無菌操作台に置き脾臓を取り出しセルストレーナーに入れ、細胞を充分に破砕してセルストレーナーを通過させ、無菌1640培地(Gibco社から購入)で数回遠心洗浄した。細胞を再懸濁して単細胞懸濁液を調製し、細胞数を計数し、後で使うように置いておく。
【0052】
(2). 培養細胞の作製
8~10周齢のメスBALB/cマウスを一匹取って、眼球摘出により陰性血清を採取して、頸椎脱臼で死なせ、75%(v/v)のアルコールに10分間浸し、無菌で腹部の皮膚を剥がし、腹膜を露出させ、注射器で約10mLの1640HT培地(SIGMA社から購入)を腹腔に注入し、腹部を軽くマッサージして数回ブローした。マクロファージを含む培地を吸い取り、20%の1640HAT培地に注入して、後で使うように置いておく。
2~3週齢のメスBALB/cマウスを一匹取り、頸椎脱臼で死なせ、75%(v/v)のアルコールに10分間浸し、無菌で胸腺を取りセルストレーナーに入れ、破砕してセルストレーナーを通過させ、取得した胸腺細胞を上記のマクロファージを含む20%の1640HAT培地に置き、後で使うように置いておく。
【0053】
(3). 細胞融合
対数増殖期にあるマウス骨髄腫細胞株SP2/0を選んで収集して計数した。上記の脾臓細胞を約108個、上記のSP2/0細胞株を約2×107個取って、融合管に加えて混合させ、1000 rpmで10分間遠心分離して上清を捨て、融合管を手のひらに置き軽く往復摩擦して沈殿を分散させた。60秒内で予熱したPEG1450(ポリエチレングリコール1450、SIGMA社から購入)1mLを最初はゆっくりと次第に速めて加え、1640 HT培地30mLを加えて終止させ、1000rpmで10分間遠心分離して、上清を捨て、軽く摩擦して沈殿を分散させ、ステップ2で得た20%の1640HAT培地に加えた。
上記のHAT培地を充分に混ぜ合わせた後、200μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに入れ、37℃、5%CO2の細胞培養ボックスに置き培養した。1週間後、20%の1640HAT培地を10%の1640HT培地に取り替え、3日後に上清を採集して測定した。
【0054】
ステップ3:抗CD26特異性ハイブリドーマ細胞株のスクリーニング
(1). 測定プレートの準備:CBコーティング液で組換えCD26標的タンパク質を1μg/mlに希釈し、96ウェルELISA酵素標識プレートをコーティングし、100μl/ウェル、2~8℃で一晩コーティングし、一回洗浄してたたいて乾かした。2%BSAを含むPBST緩衝液でブロッキングし(200μl/ウェル)、37℃で2時間ブロッキングし、たたいて乾かし、後で使うように置いておく。
【0055】
(2). 陽性クローンのスクリーニング:被検細胞培養上清を100μl/ウェルで上記の測定プレートに加え、37℃で30分間反応した後、洗浄してたたいて乾かし、100μl/ウェルで希釈されたHRP標識ヤギ抗マウスIgGを加え、37℃で30分間反応した後、洗浄してたたいて乾かし、100μl/ウェルでTMB発色液を加え、37℃で遮光して15分間発色させ、ウェル毎に50μlの2M H2SO4を加え反応を終止させ、OD450でデータを読み取った。陽性ウェルを決める原則:OD450値/陰性対照値≧2.1であること。陽性クローン株を選んで細胞クローン化のスクリーニングを行った。3回か4回かのクローン化スクリーニングを経て、モノクローナル細胞株の陽性率が100%となれば安定発現細胞株と確定し、細胞株を固定化した。
【0056】
ステップ4:CD26ネズミモノクローナル抗体の活性評価
786-0細胞反応系において、786-0細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、786-0細胞を細胞濃度6×10
5cells/mlで、U-型96ウェル細胞培養プレートにウェル毎に50μl接種し、各群はそれぞれ3つの並行ウェルを設け、各サンプルウェルの反応ウェルに終濃度が100ng/mlのCD26抗体を50ul加え、空白対照ウェルに対照として50ulの培地を加え、陽性対照ウェルに終濃度が1%のTritonX-100を 50ul加え、37℃の培養箱で30min培養して、さらに10:1のE/T比で濃度が6×10
6cells/mlのPBMC細胞(末梢血単核細胞)を加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を採取し、新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件で測定した。細胞溶解率の計算式=(V
sample -V
vehicle control)/(V
TritonX-100-V
vehicle control)×100%。(ここで、V
sampleは励起光波長と放出光波長で測定した薬物処理群の蛍光信号の読み取り値の平均値であり、V
vehicle controlは励起波長と放出光波長で測定した空白対照群の蛍光信号の読み取り値の平均値であり、V
TritonX-100は、励起光波長と放出光波長で測定した陽性対照群の蛍光信号の読み取り値の平均値である。)
【表1】
【0057】
上記の結果より、抗体濃度が100ng/mlで、5h作用する場合、62番ネズミ抗体を介したPBMCによる標的細胞786-0への細胞溶解率が53.1%であり、72番、160番、51番、212番といった他のネズミモノクローナル抗体より遥かに高く、既にヒト化抗体のYS110に相当することが分かる。
786-0はヒト腫瘍細胞である。理論的に言えば、ヒト化に成功したヒト化抗体は、親ネズミ抗体よりもヒト由来細胞との親和性がはるかに高く、当該腫瘍細胞に対する溶解力もより強いのである。本願がスクリーニングした62番ネズミ抗体は、そのヒト腫瘍細胞に対する傷害効果が既に第2相臨床試験が終了したヒト化抗体YS110に相当しており、62番ネズミ抗体の優位性が証明されたのである。当業者は、62番ネズミ抗体を親抗体としたヒト化抗体が62番ネズミ抗体自体よりもYS110よりも優れたヒト腫瘍細胞傷害効果を有することを合理的に予想できる。それは実施例11においても実証された。
【0058】
実施例2. ハイブリドーマ細胞株可変領域のシーケンシングとスクリーニング
ステップ1.CD26 ハイブリドーマ細胞よりトータルRNAの抽出
ハイブリドーマ細胞株をT75培養フラスコに継代培養し、細胞がおよそ90%コンフルエントになった際に消化し、細胞を遠心分離して収集した。RNA 抽出キット(Roche から購入)を用いてモノクローナルハイブリドーマ細胞株よりトータルRNA を抽出した。次いで、トータルRNAを鋳型として、cDNA逆転写キット(Thermoから購入)を用いてcDNAの第1鎖を逆転写し増幅した。反応生成物を-20℃で保存していた。長期保存する場合は-70℃で保存する。
【0059】
ステップ2.重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子のPCR増幅
ハイブリドーマ細胞の第一鎖cDNAを鋳型として、50μlの反応系において、cDNAを1μl、10×PCR緩衝液を5μl、上流プライマーと下流プライマーをそれぞれ1μl (25 pmo1)、dNTPを1μl、25 mmol/L MgCl2 を1μl、H2O を39μl加え、95℃で10分間初期変性し、Taq酵素を1μl加え、温度サイクルに入り、PCR増幅を行った。反応条件は94℃である。変性を58℃で1分間した。アニーリングを1分間、伸長を72℃で1.5分間、合計30サイクルを行い、その後72℃で10分間保持した。PCR産物を5μl採集して1.2%アガロースゲル電気泳動をした。
【0060】
ステップ3.重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子のクローニングとシーケンシング
pGM-T Fast Ligation Kit(北京天根生化科技有限公司、VT207-02)の説明書に従って、重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子をそれぞれpGM-Tベクターに連結し、そして大腸菌Top10コンピテントセルに転換し、ブルー・ホワイトセレクションをし、37℃で12-16時間培養した。
【0061】
得られた白色コロニーを、最終濃度100μlのアンピシリンを含む1-5mlのLB培地に接種し、シェーカーで37℃で3-4時間振とうした。その後、PCRで配列が正確に挿入されたクローンをスクリーニングし、同時に、PCRで陽性クローンをスクリーニングしシーケンシングした。シーケンシング結果をコンピュータネットワークのジーンバンクIMGTにより比較・解析し、抗体の重鎖、軽鎖可変領域、CDR領域のアミノ酸配列を得た。
【0062】
62番ネズミ抗体は、SEQ ID NO: 1で示されるHCDR1、SEQ ID NO: 2で示されるHCDR2、SEQ ID NO: 3で示されるHCDR3、SEQ ID NO: 4で示されるLCDR1、Arg Met Serで構成されるLCDR2(ここで、Argはアルギニンを表し、Metはメチオニンを表し、Serはセリンを表す)、およびSEQ ID NO: 5で示されるLCDR3を含む。その重鎖可変領域はSEQ ID NO: 31に示し、軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 32に示している。
【0063】
実施例3. キメラBiTE二重特異性抗体の設計
実施例1で得られた72番、160番、62番、51番のネズミ由来モノクローナル抗体を実施例2の方法によりシーケンシングし、得られた重鎖と軽鎖の配列に基づき、CD26とCD3の両方を標的とする二重特異性抗体を設計した。
【0064】
第一抗原のCD26を標的とする軽鎖可変領域が、連結ショートペプチド(SEQ ID NO: 12で示される)により、CD26を標的とする重鎖可変領域に連結されCD26単鎖抗体ドメインとして融合された。それぞれは72番ネズミ抗体由来の一本鎖抗体(SEQ ID NO: 16で示される)、160番ネズミ抗体由来の一本鎖抗体(SEQ ID NO: 17で示される)、62番ネズミ抗体由来の一本鎖抗体(SEQ ID NO: 18で示される)、51番ネズミ抗体由来の一本鎖抗体(SEQ ID NO: 19で示される)であった。
【0065】
第二抗原のCD3タンパク質を標的とする一本鎖抗体の配列は、連結ショートペプチド(SEQ ID NO: 12で示される)により重鎖可変領域(SEQ ID NO: 10で示される)と軽鎖可変領域(SEQ ID NO: 11で示される)を連結して形成された。
【0066】
4種類の第一認識領域の配列と1種の第二認識領域の配列が、連結ショートペプチド(SEQ ID NO: 13で示される)により融合されBiTE構造の二重特異性抗体を形成し、4つのBiTEの配列を形成した。それぞれは72番ネズミ抗体由来の17G105(SEQ ID NO: 20で示される)、160番ネズミ抗体由来の17G108(SEQ ID NO: 21で示される)、62番ネズミ抗体由来の17G61(SEQ ID NO: 22で示される)、51番ネズミ抗体由来の17G131(SEQ ID NO: 23で示される)であった。
【0067】
実施例4. 抗CD26-CD3キメラ二重特異性抗体の発現プラスミドの構築、発現および精製
上記のCD26一本鎖抗体のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 16-19)の上流にネズミ(Musmusculus)IgG kシグナルペプチド配列(SEQ ID NO: 24で示される)を付加し、哺乳動物細胞CHOのコドン選好性に基づき最適化し、最適化したCD26一本鎖抗体の遺伝子配列(SEQ ID NO:25-28で示される)を得て、上流にAvrII制限酵素部位およびkozak配列を導入した。Solitomab CD3一本鎖抗体のアミノ酸配列をコドン最適化し、最適化した遺伝子配列(SEQ ID NO: 29)を得て、この遺伝子の上流に連結ショートペプチドの遺伝子(SEQ ID NO: 30で示される)を付加して、下流に終止コドンとBstZ17I制限酵素部位を付加した。すなわち、上記最適化したAvrII制限酵素部位、kozak 配列、シグナルペプチド、CD26一本鎖抗体配列を、連結ペプチドにより、CD3一本鎖抗体、終止コドンおよびBstZ17I制限酵素部位とそれぞれ遺伝子融合し、4つのキメラBiTE遺伝子を形成した。上記の遺伝子を合成して、pUC57プラスミドに構築し、複数の長期保存プラスミドを形成し、それぞれpUC57-17G105、pUC57-17G108、pUC57-17G61、pUC57-17G131 と命名した。
【0068】
目的遺伝子を増幅し、1%アガロース電気泳動でPCR 産物を回収し、最終的に得た目的遺伝子に対してAvrIIとBstZ17IによりPCR回収産物とpZHK2.0ベクターを二重消化した。ベクターバックボーンpCHO 1.0をInvitrogen社から購入し、制限酵素SfiIにより「発現カセット1」を消化し、その後T4リガーゼで環化し、pZHK2.0ベクターを形成した。
T4リガーゼで二重消化したPCR産物をpZHK 2.0ベクターに連結し、そしてTop10コンピテントセルに転換し、カナマイシン忍容性を有するLBプレートに塗り、37℃で一晩培養した。翌日、陽性クローンをスクリーニングし、そしてシーケンシングして比較し、そのシーケンスが予想した配列と完全に一致していた。
【0069】
CD26-CD3キメラBiTE二重特異性抗体を安定して高発現する哺乳動物細胞株を、Dynamis培地(A2617501、Thermo Fisher社から購入)に接種し、37℃、8% CO2、130rpmでフェドバッチ流加培養した。培養液の上清を採り、12,000rpm、15分間、低温で遠心分離して上清を採集し、0.45μmのコレクションフィルターメンブレンでろ過して処理済みの培養液上清を得て、クロマトグラフィー精製を行った。取得した目的産物のサイズは約55kDaで正確であった。
【0070】
実施例5. 抗CD26-CD3キメラ二重特異性抗体とCD26タンパク質、CD3タンパク質との親和性測定
Fortebio分子間相互作用Octet QK
e装置を用いて、キメラ抗体と抗原タンパク質CD26との親和性を測定した。まずは、アミノ・カップリング・バイオセンサーAR2GをEDC/s-NHSで活性化し、活性化したバイオセンサーAR2Gを10mM酢酸ナトリウム(pH5.0)溶液で希釈されたCD26タンパク質溶液に置き固定化させ、CD26タンパク質を固定化したバイオセンサーを、1Mエタノールアミン(pH8.5)溶液に置きクエンチさせ、さらに1×動力学的溶液に置き平衡化させた。平衡化後、ヒト化二重特異性抗体溶液と結合し、1×動力学的溶液に置き解離させた。ソフトウェアFortebio Data Analysis 8.0を用いてデータ解析を行い、親和性定数(KD)、結合速率定数(kon)および解離速率定数(kdis)を計算した。Response値は、抗原と結合できる抗体分子の数量を示し、konは、抗体が相応する受容体と結合する速率を示し、kdisは、抗体が相応する受容体から解離する速率を示し、NAは、有効なデータがないことを示す。
【表2】
【0071】
上記のデータから、キメラ抗体はCD26タンパク質と結合・解離することができることがわかる。17G61(62番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3キメラ二重特異性抗体)とCD26タンパク質とは、最も高い応答値(response)を有している。これは、同じ濃度という条件下で、より多くの17G61分子がCD26タンパク質に結合したことを表している。17G105(72番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3キメラ二重特異性抗体)、17G131(51番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3キメラ二重特異性抗体)は、CD26タンパク質と結合して、その応答値がいずれも明らかに17G61より低かった。17G61とCD26とのKD値がより小さいので、17G61とCD26タンパク質との親和性がより強いのである。
【0072】
Fortebio分子間相互作用Octet QK
e装置を用いて、キメラ抗体と抗原タンパク質CD3との親和性を測定した。まずは、アミノ・カップリング・バイオセンサーAR2GをEDC/s-NHSで活性化し、活性化したバイオセンサーAR2G を、10mM酢酸ナトリウム(pH 5.0)溶液で希釈されたCD3タンパク質溶液に置き固定化させ、CD3タンパク質を固定化したバイオセンサーを、1Mエタノールアミン(pH8.5)溶液に置きクエンチさせ、さらに1×動力学的溶液に置き平衡化させた。平衡化後、ヒト化二重特異性抗体溶液と結合し、1×動力学的溶液に置き解離させた。ソフトウェアFortebio Data Analysis 8.0を用いてデータ解析を行い、親和性定数値(KD)を計算した。
【表3】
【0073】
上記のデータから、17G61とCD3タンパク質とは、最も高い応答値を有することが分かる。これは、同じ濃度という条件下で、より多くの17G61分子がCD3タンパク質に結合したことを表している。17G105は、CD3タンパク質と結合して、その応答値が17G61より低かった。上記の研究結果は、17G61がCD3タンパク質とよく結合・解離を起こすことを表した。
【0074】
実施例6. 抗CD26ネズミ抗体のヒト化
実施例1においてCD26と高結合親和性を有し、CD26高発現腫瘍細胞に対して高殺傷活性を有する候補の62番と212番ネズミ抗体の配列に基づいて、ヒト化設計を行った。62番ネズミ抗体の重鎖(SEQ ID NO:31で示される)、軽鎖(SEQ ID NO:32で示される)の可変領域、および212番ネズミ抗体の重鎖(SEQ ID NO:33で示される)、軽鎖(SEQ ID NO:34で示される)の可変領域に対してヒト化分析を行った。計算と予測によって、各抗体からヒト化重鎖と軽鎖のペアを複数取得した。62番ネズミ抗体をヒト化して、下記に示すように異なる重鎖と軽鎖のアミノ酸配列のペアを4つ取得した:18G272-VL(SEQ ID NO:7)、18G272-VH(SEQ ID NO:6)、19G292-VL(SEQ ID NO:35)、19G292-VH(SEQ ID NO:36)、19G293-VL(SEQ ID NO:37)、19G293-VH(SEQ ID NO:38)、19G294-VL(SEQ ID NO:9)、19G294-VH(SEQ ID NO:8)。
【0075】
212番ネズミ抗体をヒト化して、下記に示すように異なる重鎖と軽鎖のアミノ酸配列のペアを4つ取得した:18G278-VL(SEQ ID NO:39)、18G278-VH(SEQ ID NO:40)、19G295-VL(SEQ ID NO:41)、19G295-VH(SEQ ID NO:42)、19G296-VL(SEQ ID NO:43)、19G296-VH(SEQ ID NO:44)、19G297-VL(SEQ ID NO:45)、19G297-VH(SEQ ID NO:46)。
YS110のヒト化抗体を陽性対照とし、その重鎖および軽鎖の番号と配列が下記の通りである: YS110-VL(SEQ ID NO:47)、YS110-VH(SEQ ID NO:48)。
【0076】
実施例7. ヒト化二重特異性抗体の発現プラスミド構築、安定発現および精製
上記ヒト化したCD26抗体(18G272、19G292、19G293、19G294、18G278、19G295、19G296、19G297)の軽鎖と重鎖のペアを、それぞれ一つの連結ショートペプチド(SEQ ID NO:12)で連結し、下流に連結ショートペプチド(SEQ ID NO:13)を付加し、哺乳動物細胞CHOコドンの選好性に基づき最適化し、最適化したCD26一本鎖抗体の遺伝子配列(SEQ ID NO:49-56)を得て、上流にAvrII制限酵素部位とkozak配列を、下流にCD3一本鎖抗体の遺伝子(SEQ ID NO:29)、終止コドンおよびBstZ17I制限酵素部位を付加した。ヒト化CD26-CD3 BiTE遺伝子配列を得て、直接合成してPUC57プラスミドに構築し、pUC57-18G272、pUC57-19G292、pUC57-19G293、pUC57-19G294、pUC57-18G278、pUC57-19G295、pUC57-19G296、pUC57-19G297と命名した。
【0077】
同時に、YS110抗体の軽鎖と重鎖をも一つの連結ショートペプチド(SEQ ID NO:12)で連結して、下流に連結ショートペプチド(SEQ ID NO:13)を付加して、上流にAvrII制限酵素部位とkozak配列を、下流にCD3一本鎖抗体の遺伝子(SEQ ID NO:29)、終止コドンおよびBstZ17I制限酵素部位を付加した。ヒト化CD26-CD3 BiTE遺伝子配列を得て、直接合成してPUC57プラスミドに構築し、pUC-17G29と命名した。
【0078】
また、19G294の軽鎖と重鎖を連結ショートペプチド(SEQ ID NO:12)で連結するように設計し、下流に連結ショートペプチド(SEQ ID NO:13)を付加し、WBP3311_2.306.4由来のCD3抗体の重鎖と軽鎖を連結ショートペプチド(SEQ ID NO:12)で連結して形成した一本鎖抗体(SEQ ID NO:57)と接続し、CHOコドン選好性に基づき最適化を行った。そして上流にAvrII制限酵素部位とkozak配列を導入し、下流に終止コドンとBstZ17I制限酵素部位を付加し、直接合成してPUC57プラスミドに構築し、pUC57-21G587と命名した。
【0079】
目的遺伝子を増幅し、1%アガロース電気泳動でPCR産物を回収し、AvrIIとBstZ17IによりPCR回収産物とpZHK2.0ベクターを二重消化し、T4リガーゼで二重消化したPCR産物をpZHK 2.0ベクターに連結し、そしてTop10コンピテントセルに転換し、カナマイシン忍容性を有するLBプレートに塗り、37℃で一晩培養した。 翌日、陽性クローンをスクリーニングし、そしてシーケンシングして比較し、そのシーケンスが予想した配列と完全に一致していた。すなわち、ヒト化 CD26-CD3 BiTE二重特異性抗体発現プラスミドが得られた。
【0080】
CD26-CD3ヒト化BiTE二重特異性抗体を安定して高発現する哺乳動物細胞株を、Dynamis培地に接種し、37℃、8% CO2、130rpmでフェドバッチ流加培養した。培養液の上清を採り、12,000 rpm、15分間、低温で遠心分離して上清を採集し、0.45μmのコレクションフィルターメンブレンでろ過して処理済みの培養液上清を得て、クロマトグラフィー精製を行った。取得した目的産物のサイズはいずれも約55kDaで正確であった。
【0081】
実施例8. ヒト化二重特異性抗体精製サンプルのドット・ブロット測定
精製したサンプルを異なる濃度勾配に希釈し、希釈されたサンプルを2ul取ってNCメンブレンにスポットし、陽性対照サンプルを17G29にし、完全に吸収されたら、5%脱脂粉乳ブロッキング液を使用して、室温で水平シェーカーで1時間ブロッキングし、TBSTで毎回5分間、3回洗浄を行った。1:1000の比例でCD3-HRPタンパク質を2.5%脱脂粉乳ブロッキング液に加え(調製した2.5%脱脂粉乳ブロッキング液50mLにCD3-HRPを50ul加える)、室温で水平シェーカーで1時間振とうし、TBSTで毎回5分間、3回洗浄を行った。1:1000の比例でCD26-HRPタンパク質を2.5%脱脂粉乳ブロッキング液に加え(調製した2.5%脱脂粉乳ブロッキング液50mLにCD26-HRPを50ul加える)、室温で水平シェーカーで1時間振とうし、TBSTで毎回5分間、3回洗浄を行った。メンブレン上のTBST溶液をペーパータオルで吸って乾かし、発色液(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate)を加え、1分間発色させ、ペーパータオルで発色液を吸って乾かし、ゲルイメージングシステムに置いて露光させ、連続露光プログラムを選択し、15秒/フレーム、連続露光12フレームに設定した。18G272(ヒト化の62番ネズミ抗体)と18G278(ヒト化の212番ネズミ抗体)をドット・ブロットにより測定した結果、18G272は異なる濃度でCD26とCD3への結合活性がすべて陽性対照の17G29(YS110由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体)に近く、18G278より明らかに高かった(
図1(a))。19G292-19G297(62番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体)合計6つのサンプルをドット・ブロットにより測定した結果、19G292-19G297はいずれもCD26またはCD3に対する結合活性を有し、19G292-19G296のCD26に対する結合活性は陽性対照の17G29に近い、とくに19G294は陽性対照よりもさらに優れている(
図1(b))。
【0082】
実施例9 ヒト化二重特異性抗体と標的細胞抗原との結合特異性の研究
1、CD26陽性とCD26陰性細胞のスクリーニング
標的細胞をT75細胞培養フラスコで培養し、細胞が80 %以上に融合したら、細胞をトリプシンで消化して収集し、PBSで1回洗浄し、血球計算盤で計数して細胞を5×105個/部に分けた。抗CD26モノクローナル抗体を一次抗体として、標的細胞と室温で約40分間インキュベートした。インキュベート終了後、遠心して上清を捨て、細胞沈殿をPBSで再懸濁し、再度遠心して上清を捨て、細胞沈殿を収集した。さらに、相応する抗体Alexa Fluor 488ネズミ抗ヒトIgG1を二次抗体として、細胞沈殿を再懸濁し、室温で遮光して約30分間インキュベートした。インキュベート終了後、PBSで2回洗浄し、遠心して上清を捨て、細胞沈殿を収集した。約200 ulのPBS溶液で細胞沈殿を再懸濁し、1時間内でフローサイトメータでCD26陽性率を測定し解析した。
【0083】
フローサイトメーターで同定した結果、CD26陽性細胞株は786-0、OS-RC-2、A498、NCI-H226、NCI-H2052、NCI-H596、HCC827、Huh-7、PC-3があり、CD26陰性細胞株はG401、A-375があった。その陽性率は表4に示している。CD26陽性細胞株は参考文献の記載と一致している(中国特許出願番号CN200680034937.4,CD26/DPP4-a potential biomarker and target for cancer therapy, Pharmacology & Therapeutics(2019), 198:135-159)。
【表4】
【0084】
2、FITC標識抗体:
フルオレセインFITCを秤取し、DMSO溶液で終濃度が1mg/mlになるように溶解し、別途18G272抗体を500ul取り、終濃度1mg/mlに調整し、1/10体積で1M Na2CO3を加え均一に混合し、そしてFITC溶液を15ul加え、均一に混合し、室温で遮光して3.5時間インキュベートした。終了後、18G272に結合していないFITCを徹底的に除去するように分画直径10 KDaの限外濾過濃縮管で遠心して、濃縮管の中にある溶液を収集した。
【0085】
3、フローサイトメータでの測定
T75細胞培養フラスコで80%程度に培養した細胞を、トリプシンで消化して収集し、適量のPBSで再懸濁し、血球計算盤で計数し、5×105個/部に分け、遠心して細胞沈殿を収集し、FITCで標識された18G272で標的細胞を再懸濁し、ホモジナイザーに置き、室温で遮光して30分間インキュベートした。インキュベート終了後、PBSで再懸濁し、遠心して上清を捨てた。同じ操作を1回繰り返して、500ulのPBS溶液で細胞沈殿を再懸濁した。
陰性対照の設定:もう1つのサンプルに対して標識プロセスで抗体サンプルを加えず、そのほかの操作は上記手順と平行に操作し、得られた溶液をFITC標識の陰性対照とした。BD Accuri C6フローサイトメータを用いて測定し、FITC標識の陽性率を解析した。
【0086】
結果、ヒト化二重特異性抗体18G272は、CD26陽性の786-0細胞、NCI -H226細胞、PC-3細胞、HCC827細胞等といずれも結合したが、CD26陰性のA375細胞とは結合しなかった。18G272とCD26標的との結合は特異性を有している。
【0087】
同じ方法で、ヒト化二重特異性抗体19G294と標的細胞抗原との結合特異性を測定した。19G294とCD26陽性の786-0細胞、NCI-H226細胞、PC-3細胞、OS-RC-2細胞等といずれも結合したが、CD26陰性のG401細胞とは結合しなかった。ヒト化二重特異性抗体19G294はCD26陽性の細胞と結合し、CD26陰性の細胞と結合せず、そのCD26抗原標的との結合は特異性を有している。
フローサイトメトリーで抗体と標的細胞抗原との結合特異性を測定した代表的な図面を
図2に示し、詳細なデータを表5、表6に示している。
【表5】
【表6】
本発明のほかの二重特異性抗体も、CD26陽性細胞と結合し、CD26陰性細胞と結合せず、そのCD26抗原標的との結合は特異性を有している。
【0088】
実施例10 ヒト化二重特異性抗体とCD26タンパク質、CD3タンパク質との親和性分析
1、CD26タンパク質との親和性の研究
まず、CD26タンパク質をビオチンEZ-link NHS-PEG12-Biotinでビオチン化した。SAバイオセンサーでビオチン化したCD26タンパク質を固定し、1×Kinetics溶液に置き平衡化し、待測定する抗体分子溶液と結合し、待測定する分子の濃度勾配が31.3nM、62.5nM、125nM、250nM、500nMであり、1×Kinetics溶液に置き解離させ、ソフトウェアFortebio Data Analysis 8.0でデータ解析を行い、親和性定数値を算出した。
【表7】
【0089】
上記のデータから、抗CD3部分が同じ場合、62番ネズミ由来のヒト化抗体(19G292、19G293、19G294)の親和性定数は、いずれも212番ネズミ抗体由来またはYS110由来のヒト化抗体より低いが、前者とCD26との親和性がより高いことが分かる。一方、19G294、21G587の抗CD26部分が同じく、抗CD3部分が異なるが、両者のCD26タンパク質との親和性が同等のレベルであった。
【0090】
2、抗体とCD3タンパク質との親和性の研究
まず、CD3タンパク質をビオチンEZ-link NHS-PEG12-Biotinでビオチン化した。SAバイオセンサーでビオチン化したCD3タンパク質を固定し、1×Kinetics溶液に置き平衡化し、ヒト化二重特異性抗体溶液と結合し、ヒト化二重特異性抗体の測定濃度勾配は200nM、400nM、800nM、1600nMであり、1×Kinetics溶液中に置き解離させ、ソフトウェアFortebio Data Analysis 8.0でデータ解析を行い、親和性定数値を算出した。
【表8】
【0091】
この実験では、19G294とCD3タンパク質との親和性定数は0.751nMであった。19G296、19G297はCD3と結合して、その解離速度が比較的に速かった。抗CD3部分が同じである62番ネズミ抗体由来のヒト化二重特異性抗体19G294、19G292、19G293は、YS110由来のヒト化二重特異性抗体17G29より、CD3タンパク質との親和性が明らかに高かった。一方、19G294、21G587の抗CD26部分が同じく、抗CD3部分が異なるが、両者とCD3タンパク質との親和性が同等のレベルであった。
【0092】
上記抗体とCD26タンパク質との親和性データ(表7)、およびCD3タンパク質との親和性データ(表8)により、62番ネズミ抗体由来のヒト化抗体(19G292、19G293、19G294)は、212番ネズミ抗体由来のヒト化抗体(19G296、19G297)より、より優れたCD26タンパク質結合力があることが示されている。62番ネズミ由来のヒト化抗体(19G292、19G293、19G294)は、212番ネズミ由来のヒト化抗体(19G296、19G297)及びYS110のヒト化抗体(17G29)と比べて、よりよいCD3タンパク質結合力及び解離力を示しており、19G294がより優位性のある二重特異性抗体分子の組み合わせ方である。
【0093】
3、二重特異性抗体とCD26タンパク質及びCD3タンパク質との同時結合の観察
まず、19G294タンパク質をビオチンEZ-link NHS-PEG12-Biotinでビオチン化した。SAバイオセンサーでビオチン化した19G294タンパク質を固定し、1×Kinetics溶液に置き平衡化し、最初は400nMのCD26タンパク質溶液と結合し、後は400nM CD3タンパク質を含むCD26溶液(400nM)に置き、または最初は400nM CD3タンパク質溶液と結合し、後は400nM CD26タンパク質を含むCD3溶液(400nM)に置いた。ソフトウェアFortebio Data Analysis 8.0で結合状況を観察した。
【0094】
図3に示すように、SAセンサーで固定した19G294は、CD26との結合が飽和になった後も、CD26溶液においてCD3タンパク質と引き続き結合することができ(
図3 SensorG9で示される曲線)、またCD3との結合が飽和になった後も、CD3溶液においてCD26タンパク質と引き続き結合することができる(
図3 SensorH9で示される曲線)。
図3 SensorF9に示したのは陰性対照であり、センサーと溶液との非特異的結合が発生していないことを証明する。こういった結果は、19G294がCD26タンパク質またはCD3タンパク質の一方と先に結合した後も、CD3タンパク質あるいはCD26タンパク質と引き続き結合することができ、結合上には先後順序がないことを表明した。
【0095】
実施例11 ヒト化二重特異性抗体を介したPBMCによる標的細胞への細胞毒性の評価
1、ヒト腎癌細胞786-0細胞モデル
786-0細胞反応系において、786-0細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlの786-0細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに10:1のE/T比で濃度6×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0096】
2、ヒト腎癌細胞OS-RC-2モデル
OS-RC-2細胞反応系において、OS-RC-2細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのOS-RC-2細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに15:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0097】
3、ヒト中皮種NCI-H226細胞モデル
NCI-H226細胞反応系において、NCI-H226細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのNCI-H226細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに15:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0098】
4、ヒト中皮種NCI-H2052細胞モデル
NCI-H2052細胞反応系において、NCI-H2052細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのNCI-H2052細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに15:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0099】
5、ヒト前立腺癌PC-3細胞モデル
PC-3細胞反応系において、PC-3細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのPC-3細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに15:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って470nmの励起光波長と515nmの放出光波長の条件下で測定した。
【0100】
6、ヒト非小細胞肺癌HCC 827細胞モデル
HCC 827細胞反応系において、HCC 827細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのHCC 827細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに陽性対照として終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに10:1のE/T比で濃度6×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0101】
7、実験結果
細胞溶解率=(V
sample - V
vehicle control)/(V
TritonX-100 - V
vehicle control)×100%。(ここで、V
sampleは薬物処理群の蛍光信号読み取り値の平均値であり、V
vehicle controlは溶剤対照群の蛍光信号読み取り値の平均値であり、V
TritonX-100は陽性対照群の蛍光信号読み取り値の平均値である。)
細胞溶解率とサンプル濃度値をソフトウェアGraphPad Prism 7. 00で計算してサンプルを介したPBMCの標的細胞に対するIC
50値を求めた。
【表9】
【0102】
62番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体、例えば18G272、19G292、19G293、19G294のいずれかを介しても、PBMCによる複数種類のCD26陽性腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を引き起すことができ,in vitro試験において殺傷活性を有していた。212番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体、例えば19G295、19G296、19G297のいずれかを介しても、PBMCによるCD26陽性腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を引き起こすことができなかった。
【0103】
このことから、本願がスクリーニングしたネズミ抗体は、CD26陽性腫瘍細胞に対してより優れた殺傷活性を有し、62番ネズミ抗体由来の抗CD26- CD3ヒト化抗体は、複数種類のCD26陽性腫瘍に対する殺傷効果が、17G29(62番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化抗体)、212番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化抗体よりも、優れていることがわかる。さらに、本願のBiTE構造の二重特異性抗体(18G272、19G292、19G293、19G294、17G29)は、複数種類のCD26陽性腫瘍に対する殺傷効果がIgG全長抗体のYS110よりも優れていることもわかる。
【0104】
実施例12 ヒト化二重特異性抗体を介したPBMCによる標的細胞への細胞毒性効果の過程におけるPBMC細胞の活性化
PBMC細胞+二重特異性抗体系:PBMC細胞を収集し計数し、1×106cells/mlとなるように再懸濁し、ウェル毎に200ulを12ウェル細胞培養プレートに加え、抗体を終濃度1ng/mlに希釈し、24時間共インキュベートした。PBMC細胞+二重特異性抗体+ OS-RC-2細胞系:PBMC細胞を収集し計数し、6×105cells/mlとなるように再懸濁し、100ul/ウェルで12ウェル細胞培養プレートに加え、抗体を終濃度1ng/mlに希釈し、OS-RC-2細胞を9×106cells/mlに希釈し、100ul/ウェルで相応する12ウェル細胞培養プレートに加え、24時間共インキュベートした。
【0105】
インキュベート終了後、遠心して細胞沈殿を収集し、PBSで再懸濁し、anti-CD25-APC抗体(Miltenyl社から購入)、anti-CD69-PE抗体を加え、冷蔵庫に4℃で10分間インキュベートし、終了後はPBSで二回洗浄し、PBSで再懸濁し、その後BD ACCURI C6フローサイトメータで測定した。
【0106】
「PBMC細胞+二重特異性抗体」系では、二重特異性抗体はPBMC細胞のCD25、CD69の発現増加を誘導しなかった。「PBMC細胞+二重特異性抗体+OS-RC-2細胞」系では、二重特異性抗体はPBMC細胞のCD25、CD69の発現増加を誘導し、PBMC細胞の活性化を促進した。「PBMC細胞+YS110+OS-RC-2細胞」系では、YS110はPBMC細胞のCD25、CD69の発現増加を誘導できなかった。結果は表10に示されている。
【表10】
【0107】
786-0など他のCD26陽性腫瘍細胞においても同様の現象が観察された。すなわち、「PBMC細胞+二重特異性抗体」系では、二重特異性抗体はPBMC細胞のCD25、CD69の発現増加を誘導しなかったが、「PBMC細胞+二重特異性抗体+その他のCD26陽性腫瘍(786-0等)細胞」においては、PBMC細胞のCD25、CD69の発現増加を誘導した。
【0108】
CD25、CD69はT細胞活性化した際の重要なマーカーである。上記の結果は、IgG全長抗体YS110はT細胞を効果的に活性化することができないこと、CD26-CD3二重特異性抗体は腫瘍部位に到達する前に明らかなT細胞活性化を引き起こすことがなく、抗体と腫瘍細胞と結合してから初めて腫瘍組織周囲のT細胞を活性化しさらに腫瘍細胞を殺傷し、その作用の安全性が向上したことを証明した。
【0109】
実施例13 ヒト化二重特異性抗体を介したPBMCによる標的細胞の細胞毒性効果の過程におけるサイトカインの測定
OS-RC-2細胞を6×105cells/mlに再懸濁し、ウェル毎に100μlを12ウェルプレートに加え、単一ドナー由来のPBMC細胞を収集し、9×106 cells/mlに再懸濁し、ウェル毎に100μlを加え、0ng/ml、3ng/mlの19G294、18G272、17G29のサンプルをそれぞれ100μlずつ加え、最終体積が300μlとなり、反応系を37℃培養下で2時間、4時間、6時間、21時間共インキュベートし、培養上清を収集し、遠心して上清を採集しELISA測定を行った。ELISAキットを用いてサイトカインのIFN-γ、TNF-α、L-4、IL-10を測定した。
【0110】
ELISAキットで測定した各サンプルのサイトカイン含有量を以下の表に示している。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0111】
以上のように、ヒト化二重特異性抗体を介したPBMCによる標的細胞に対する殺傷過程において、同じ使用量という条件下では、62番ネズミ抗体由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体19G294、18G272により引き起こされたPBMC細胞のサイトカイン分泌は、各測定時点においてその含有量がすべて17G29(YS110由来の抗CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体)より低かった。こういったCD3を標的としてT細胞を活性化する分子構造は、引き起こしたT細胞のサイトカイン分泌によるサイトカインストームが比較的に低い場合、より高い安全性を有するのである(A FAD oncology analysis of CD3 bispecific constructs and first-in-human dose selection(2017), Regulatory Toxicology and Pharmacology, 90:144-152.)。同じCD3配列の認識領域を有する17G29と同じ条件下で比較すると、本願の二重特異性抗体19G294、18G272には誘導したT細胞のサイトカイン分泌量がより低いという利点があった。それはそのCDR領域が認識するCD26抗原のエピトープが17G29と異なることと関連する可能性があり、他のエピトープと比べて、本願の抗体が認識する抗原のエピトープはサイトカインストームリスクの低減と安全性の向上に関連している。
【0112】
実施例14 ヒト化二重特異性抗体を介したPBMCによるPBMCに対する毒性
1、786-0細胞モデル
PBMC細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlの786-0細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体18G272を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに10:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0113】
2、OS-RC-2細胞モデル
PBMC細胞を蛍光染料Calcein-AMにより緑色の蛍光信号で標識し、細胞濃度6×105cells/mlで、ウェル毎に50μlのOS-RC-2細胞をU-型96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応するサンプル反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlのヒト化二重特異性抗体を50μl加え、空白対照ウェルに50μlの培地を加え、陽性対照ウェルに終濃度1%のTritonX-100を50μl加え、さらに15:1のE/T比で濃度9×106cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で5時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を取得し新しい96ウェルプレートに置き、再び遠心を行い、上清を80μl採集して黒い96ウェルプレートに置き、マイクロプレートリーダーを使って励起光波長470nmと放出光波長515nmの条件下で測定した。
【0114】
3、結果分析
細胞溶解率=(Vsample - Vvehicle control)/(VTritonX-100 - Vvehicle control)×100%。(ここで、Vsampleは薬物処理群の蛍光信号読み取り値の平均値であり、Vvehicle controlは溶剤対照群の蛍光信号読み取り値の平均値であり、VTritonX-100は陽性対照群の蛍光信号読み取り値の平均値である。)細胞溶解率とサンプル濃度値をソフトウェアGraphPad Prism 7. 00で計算して各サンプルを介したPBMC細胞のPBMC細胞に対するIC50値を求めた。
【0115】
抗体18G272を介したPBMCによる標的細胞786-0への殺傷過程において、PBMC によるPBMC細胞への殺傷を引き起す能力は極めて低かった。抗体18G272を介したPBMC(4#)によるPBMC(4#)細胞への細胞毒性効果のIC
50値は約99730000pg/mlであり、抗体18G272を介したPBMC(6#)によるPBMC(6#)細胞への細胞毒性効果はなかったのである。結果を
図4に示している。
【0116】
抗体18G272を介したPBMCによる標的細胞OS-RC-2への殺傷過程において、PBMCによるPBMC細胞への殺傷は引き起こさなかった。抗体18G272を介したPBMC(1#)によるPBMC(1#)細胞への細胞毒性効果はなかったのであり、抗体18G272を介したPBMC(3#)によるPBMC(3#)細胞への細胞毒性効果はなかったのである。
【0117】
抗体19G294を介したPBMCによる標的細胞786-0への殺傷過程において、PBMC によるPBMC細胞への殺傷を引き起こす能力は極めて低かった。抗体19G294を介したPBMC(2#)によるPBMC(2#)細胞への細胞毒性効果のIC50値は約1915313pg/mlであり、抗体19G294を介したPBMC(3#)によるPBMC(3#)細胞への細胞毒性効果のIC50値は約1947224pg /mlであった。
【0118】
抗体19G294を介したPBMCによる標的細胞OS-RC-2への殺傷過程において、PBMC によるPBMC細胞への殺傷を引き起こす能力は極めて低かった。抗体19G294を介したPBMC(2#)によるPBMC(2#)細胞への細胞毒性効果のIC50値は約47920315pg/mlであり、抗体19G294を介したPBMC(3#)によるPBMC(3#)細胞への細胞毒性効果のIC50値は約1406115138pg/mlであった。
以上のように、CD26-CD3ヒト化二重特異性抗体はPBMCを正確に認識できる。T細胞がCD26を発現することが文献に報道されているが、本願の二重特異性抗体18G272、19G294を介してPBMC細胞による有意な細胞毒性効果が引き起こされないことから、その高い安全性が証明された。
【0119】
実施例15 19G294とB薬(BAVENCIO、PD-L1抗体)のin vitro薬効の比較
標的細胞をT75細胞培養フラスコで培養し、細胞が80%以上に融合したら、細胞をトリプシンで消化して収集し、PBSで1回洗浄し、血球計算盤で計数して細胞を5×10
5個/部に分けた。PEで標識された抗PD-L1モノクローナル抗体(Sino Biologicalから購入)と標的細胞を室温で遮光して約40分間共インキュベートし、インキュベート終了後、遠心して上清を捨て、細胞沈殿をPBSで再懸濁し、再度遠心して上清を捨て、細胞沈殿を収集し、約200ulのPBS溶液で細胞沈殿を再懸濁し、1時間内でフローサイトメータでPD-L1の陽性率を測定し解析した。
フローサイトメーターで同定した結果、786-0細胞株のPD-L1陽性率は66.2%であり、A498細胞のPD-L1陽性率は29.6%であった。
【表15】
【0120】
ヒト腎癌786-0-LUC細胞(786-0細胞にレポーター遺伝子Luciferenceを導入した)、ヒト腎癌A498-LUC細胞(A498細胞にレポーター遺伝子Luciferenceを導入した)を細胞濃度3×10
5cells/mlで、ウェル毎に50μlを白い底の不透明の96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応する反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlの抗体を50μl加え、さらに10:1のE/T比で濃度が3×10
6cells/mlのPBMC細胞を50μl加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で21時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を捨て、レポーター遺伝子測定試薬(Vazyme社から購入)を100ul加え、400rpmでマイクロプレート振とう器にて5分間振とうし、その後直ちにマイクロプレートリーダーを使ってLum条件下で測定を行った。測定したデータはソフトウエアGraphPad Prism 7.00を用いて、レポーター遺伝子低減レベルと抗体量に基づいて4パラメータ曲線を作成し、EC
50値を計算した。結果を表16に示している。
【表16】
【0121】
上記データにより、19G294を介したPBMCによる2種類の標的細胞に対する細胞毒性効果のEC50値はBAVENCIOより遥かに低い。786-0、A498のPD-L1発現率はそれぞれ66.2 %と29.6 %であるから、いかなるPD-L1発現レベルの細胞に対しても、19G294の活性はBAVENCIOより明らかに高いのであることが分かる。
【0122】
実施例16 21G587と19G294のin vitro薬効の比較
ヒト腎癌786-0-LUC細胞(786-0細胞にレポーター遺伝子Luciferenceを導入した)、ヒト腎癌A498-LUC細胞(A498細胞にレポーター遺伝子Luciferenceを導入した)を細胞濃度3×10
5cells/mlで、ウェル毎に50μlを白い底の不透明の96ウェル細胞培養プレートに接種し、相応する反応ウェルにそれぞれ終濃度が100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、0.1ng/ml、0.01ng/ml、0.001ng/mlの抗体を50μl加え、さらに10:1のE/T比で濃度が3×10
6cells/mlのPBMC細胞を加え、反応系を37℃、二酸化炭素培養下で21時間インキュベートした。反応終了後、遠心して上清を捨て、レポーター遺伝子測定試薬(Vazyme社から購入)を100ul加え、400rpmでマイクロプレート振とう器にて5分間振とうし、その後直ちにマイクロプレートリーダーを使ってLum条件下で測定を行った。測定したデータはソフトウエアGraphPad Prism 7.00を用いて、レポーター遺伝子低減レベルと抗体量に基づいて4パラメータ曲線を作成し、EC
50値を計算した。結果を表17に示している。
【表17】
【0123】
上記データにより、本願の抗CD26抗体の配列と異なる抗CD3の配列と組み合わせ、例えば19G294、21G587の抗CD26の部分は同じだが、抗CD3の部分は異なり、両者は同レベルのin vitro薬効を有するのである。
【0124】
実施例17 PC-3(前立腺癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体18G272、19G294の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、5×10
6 Cells/0.1mlのPC-3細胞懸濁液と1×10
7cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに3つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、19G294群(30μg/匹/回)、18G272群(30μg/匹/回)とする。一群6匹の動物である。Model群と各治療群は静脈注射投与で、接種当日から投与を開始し、5日連続投与し、2日休薬して、2コース目の投与を実施する。初回投与時間は細胞をマウスの皮下に接種してから1時間後であり、すなわち第1コースはD1、D2、D3、D4、D5で、第2コースはD8、D9、D10、D11、D12である。投与頻度は1日1回である。
一般的臨床観察:検疫期間及び実験期間は、腫瘍の成長及び治療による動物の正常行動への影響を含み、少なくとも一日一回観察する。具体的には、動物(担癌)の死亡あるいは瀕死、精神状態、行為活動及びその他の異常状況などの内容が含まれる。
体重:毎週2~3回測定する。
腫瘍体積:毎週2~3回測定する。ノギスで腫瘍の長径と短径をそれぞれ量る。
腫瘍体積(mm
3)=長径*短径
2/2。相対的腫瘍抑制率:TGI(%)=(1-T/C)×100%。一般に、Tは投与群のある時点の相対的腫瘍体積(今回測定した腫瘍体積と群分け時の腫瘍体積の比の値)を表し,CはModel群のある時点の相対的腫瘍体積(今回測定した腫瘍体積と群分け時の腫瘍体積の比の値)を表す。ところが、本願では実験の接種当日に体重で群分けするので、TGIを計算する際にT、Cはそれぞれ今回で実際に測定した投与群、Model群の腫瘍体積を表す。
腫瘍重量:最終回の測定終了後、実験動物に安楽死を実施し、腫瘍塊を剥離し、生理食塩水で洗い流して、濾紙で水分を吸って乾かし、腫瘍塊の重量を量り、写真を撮る。相対的腫瘍抑制率TGI(%)=(1-T
TW/C
TW)×100%、T
TWは実験終了時の治療群の平均腫瘍重量を表し、C
TWは実験終了時のModel群の平均腫瘍重量を表す。
結論:18G272は投与量30μg/匹でPC-3ヒト前立腺癌モデルマウスの腫瘍成長を抑制する傾向があり、19G294はPC-3ヒト前立腺癌モデルマウスの腫瘍成長をほぼ完全に抑制できた。結果は
図5、表18に示している。供試品19G294、18G272は投与量30μg/匹の場合、動物体重が上昇傾向にあり、Model群の動物体重に相当し、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は
図6、表18に示している。
【表18】
【0125】
実施例18 NCI-H596(肺癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体18G272の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、8×10
6 Cells/0.1mlのNCI-H596細胞懸濁液と1.6×10
7cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに2つの群に分け、それぞれModel群(PBS、6匹/群)、18G272群(30μg/匹/回、6匹/群)とする。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:供試品18G272は投与量30μg/匹でヒト肺腺鱗癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。供試品18G272は投与量30μg/匹の場合、動物の体重が上昇傾向にあり、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は
図7、表19に示している。
【表19】
【0126】
実施例19 NCI-H226(中皮腫)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体19G294の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、5×10
6 Cells/0.1mlのNCI-H226細胞懸濁液と1.5×10
7cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに2つの群に分け、それぞれModel群(PBS、5匹/群)、19G294群(60μg/匹/回、5匹/群)とする。投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:供試品19G294は投与量60μg/匹でヒト肺腺鱗癌(中皮腫)モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。
図8に示している。供試品19G294は投与量60μg/匹の場合、動物体重が上昇傾向にあり、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は
図9、表20に示している。
【表20】
【0127】
実施例20 A498(腎癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体19G294の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、1×10
7 Cells/0.1mlのA498細胞懸濁液と1×10
7cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに2つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、19G294群(30μg/匹/回)とする。一群5匹の動物である。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:供試品19G294は投与量30μg/匹でヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。
図10、表21に示している。供試品19G294は投与量30μg/匹の場合、動物体重の低減が発生しておらず、治療期間中の忍容性が良好であった。
【表21】
【0128】
実施例21 OS-RC-2(腎癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体18G272、19G294などの薬効
実験一:
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、5×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と1×10
7cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに3つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、17G29群(15μg/匹/回)、19G295群(15μg/匹/回)とする。一群8匹の動物である。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:17G29、19G295は投与量15μg/匹で、D15のときにともに腫瘍成長を著しく抑制できた。
図11に示している。だが、D39のときに、17G29、19G295はともに腫瘍成長を抑制できなかった。両者の間に著しい差がなかった。また、OS-RC-2ヒト腎癌モデルは実験期間中に動物の死亡が発生するが、17G29、19G295は投与量15μg/匹でともにマウスの生存期間中央値を延長した。両者の間に統計的な差がなかった。
【表22】
【0129】
実験二:
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、3×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と6×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに3つの群に分け、それぞれModel群(PBS、6匹)、18G272群(30μg/匹/回、6匹)、19G295群(30μg/匹/回、6匹)とする。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:Model群と比較して、18G272は投与量30μg/匹で、D22のときに腫瘍成長を著しく抑制できた。一方、19G295は腫瘍成長を抑制する傾向があったが、著しい差がなかった。D30のときに、18G272群は依然としてよい腫瘍抑制効果があり、かつ著しい差があった。一方、19G295群は腫瘍を抑制する傾向があったが、Model群と顕著な差がなかった。
図12、表23に示している。OS-RC-2ヒト腎癌モデルは実験期間中に動物の死亡が発生するが、供試品18G272は投与量30μg/匹で動物死亡が発生しなかった。19G295群は動物死亡が発生した。
図13、表23に示している。以上のように、18G272は19G295よりも抗腫瘍効果が優れている。
【表23】
【0130】
実験三:
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、3×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と6×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに2つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、18G272群(30μg/匹/回)とする。一群6匹の動物である。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積、腫瘍重量の測定方法は実施例17と同様である。
結論:18G272は投与量30μg/匹で、OS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。結果は
図14、表24に示している。OS-RC-2ヒト腎癌モデルは実験期間中に動物の死亡が発生するが、本実験の条件下で、18G272は投与量30μg/匹でOS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの生存期間中央値(MST)を著しく延長し、動物の死亡率を低減し、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は表24に示している。
【表24】
【0131】
実験四:
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、3×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と6×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに2つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、19G294群(30μg/匹/回)とする。一群5匹の動物である。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積の測定方法は実施例17と同様である。
結論:19G294は投与量30μg/匹で、OS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。結果は
図15、表25に示している。OS-RC-2ヒト腎癌モデルは実験期間中に動物の死亡が発生するが、本実験の条件下で、19G294は動物の死亡率を低減し、動物の生存期間を延長し、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は表25に示している。
【表25】
【0132】
上記4つの実験結果を合わせて見ると、OS-RC-2(腎癌)異種移植腫瘍NOD / SCID担癌マウスモデルにおいて、薬効の面について、17G29は19G295に相当し、19G295は18G272に及ばなく、19G294は18G272に相当してともに腫瘍成長を著しく抑制、または完全に抑制できる。安全性の面について、19G295は17G29に相当し、19G295は18G272に及ばなく、19G294は18G272に相当する。要するに、18G272、19G294は、17G29より優れたIn vivo薬効および安全性を有している。
【0133】
実施例22 OS-RC-2(腎癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおける異なる投与量のヒト化二重特異性抗体19G294、21G587の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、3×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と6×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに5つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、19G294群(5μg/匹/回)、19G294群(15μg/匹/回)、19G294群(30μg/匹/回)、21G587群(30μg/匹/回)とする。一群3匹の動物である。
投与経路、投与間隔は実施例17と同様である。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積・腫瘍重量の測定方法は実施例17と同様である。
結論:供試品19G294は投与量15、30μg/匹で、21G587は投与量30μg/匹で、いずれもOS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。19G294は低投与量群、中投与量群、高投与量群において薬効が与量依存性を呈した。OS-RC-2ヒト腎癌モデルは実験期間中に動物の死亡が発生するが、本実験の条件下で、供試品19G294(5、15、30μg/匹)、21G587(30μg/匹)は腫瘍成長による動物状態の低下が改善でき、動物の死亡率を低減し、治療期間中の忍容性が良好であった。結果は
図16、
図17、表26に示している。
【表26】
【0134】
実施例23 OS-RC-2(腎癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体19G294、Axitinib+BAVENCIO併用療法、YS110の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、3×10
6 Cells/0.1mlのOS-RC-2細胞懸濁液と6×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに5つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、陽性対照群-A(BAVENCIO、1.8 mg/匹/回;Axitinib、30μg/匹/回)、陽性対照群-B(BAVENCIO、1.8 mg/匹/回;Axitinib、60μg/匹/回)、19G294群(30μg/匹/回)、YS110組(205μg /匹/回)とする。一群3~4匹の動物である。Axitinibは胃内投与で、BAVENCIOと供試品とPBSは静脈注射投与で投与する。Axitinib、19G294、PBSは接種当日から投与を開始し、5日連続投与し、2日休薬して、2コース目の投与を実施し(5日連続投与)、投与頻度が1日/回(計10回)である。BAVENCIOは接種当日から投与を開始し、1回/週で、2週間連続投与する(計2回)。YS110は接種当日から投与を開始し、2回/週で、2週間連続投与する(計4回)。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積・腫瘍重量の測定方法は実施例17と同様である。
結論:供試品19G294は投与量30μg/匹で、OS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。BAVENCIO(1.8 mg/匹)+Axitinib(30μg/匹、60μg/匹)併用療法、YS110(205μg/匹)はいずれもOS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できなかった。OS-RC-2ヒト腎癌モデルは、実験期間中に動物体重の著しい低減または死亡が発生するが、本実験の条件下で、供試品19G294(30μg/匹)は腫瘍成長による動物状態の低下が改善でき、動物の死亡率を低減し、治療期間中の忍容性が良好であった。BAVENCIO+Axitinib併用(2つの投与量群)、YS110はともに上記の改善や効果を呈していなかった。要するに、本実験の条件下で、19G294の薬効は、BAVENCIO+Axitinib併用、YS110よりも優れている。結果は
図18、
図19、表27に示している。
【表27】
【0135】
実施例24 A498(腎癌)異種移植腫瘍NOD/SCID担癌マウスにおけるヒト化二重特異性抗体19G294、Axitinib+BAVENCIO併用療法、YS110の薬効
方法:体重18~22g、約5~7週齢のNOD/SCIDマウスを選び、7×10
6 Cells/0.1mlのA498細胞懸濁液と7×10
6cells/0.1mlのPBMC細胞懸濁液を1:1(体積比)で十分に混合してNOD/SCIDマウスの皮下に接種する。一匹当たりの接種量は0.2mlである。体重で動物をランダムに5つの群に分け、それぞれModel群(PBS)、陽性対照群-B(BAVENCIO、1.8 mg/匹/回;Axitinib、60μg/匹/回)、陽性対照群-C(BAVENCIO、1.8 mg/匹/回;Axitinib、120μg/匹/回)、19G294群(30μg/匹/回)、YS110組(205μg /匹/回)とする。一群3匹の動物である。Axitinibは胃内投与で、BAVENCIOと供試品とPBSは静脈注射投与で投与する。Axitinib、19G294、PBSは接種当日から投与を開始し、5日連続投与し、2日休薬して、2コース目の投与を実施し(5日連続投与)、投与頻度が1日/回(計10回)である。BAVENCIOは接種当日から投与を開始し、1回/2週(計1回)である。YS110は接種当日から投与を開始し、2回/週で、2週間連続投与する(計4回)。
一般的臨床観察、体重・腫瘍体積・腫瘍重量の測定方法は実施例17と同様である。
臓器重量、臓器係数:最終回の測定が終了後、動物に安楽死を実施し、マウス臓器を分離し、生理食塩水で洗い流し、濾紙で水分を吸い乾かし、臓器重量を秤量し、写真を撮る。臓器係数=臓器重量/マウス体重×100%(臓器重量、マウス体重の単位がgである)。
結論:供試品19G294は投与量30μg/匹で、A498ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できた。BAVENCIO(1.8 mg/匹)+Axitinib(60μg/匹、120μg/匹)併用療法、YS110(205μg/匹)はいずれもOS-RC-2ヒト腎癌モデルマウスの腫瘍成長を著しく抑制できなかった。供試品19G294(30μg/匹)、BAVENCIO+Axitinib併用(2つの投与量群)、YS110は治療期間中の忍容性が良好であった。供試品19G294(30μg/匹)、YS110はマウスの腎臓、脾臓、肝臓、肺臓及び相応する臓器係数に著しく影響しなかった。BAVENCIO+Axitinib併用(2つの投与量群)は肝臓及び/または相応する臓器係数に著しい影響があり、腎臓、脾臓、肺臓及び相応する臓器係数に著しい影響がなかった。要するに、本実験の条件下で、19G294の薬効はBAVENCIO+Axitinib併用、YS110より優れており、安全性はBAVENCIO+Axitinib併用より優れている。結果は
図20、
図21、表28、表29に示している。
【表28】
【表29-1】
【表29-2】
【配列表】
【国際調査報告】