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2024-539362ホストマトリックスから鉄含有不純物を分離するための方法
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  • -ホストマトリックスから鉄含有不純物を分離するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ホストマトリックスから鉄含有不純物を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   B03D 1/02 20060101AFI20241018BHJP
   B03D 1/002 20060101ALI20241018BHJP
   B03D 1/008 20060101ALI20241018BHJP
   B02C 4/02 20060101ALI20241018BHJP
   B02C 4/32 20060101ALI20241018BHJP
   B03D 101/04 20060101ALN20241018BHJP
   B03D 101/06 20060101ALN20241018BHJP
   B03D 101/02 20060101ALN20241018BHJP
   B03D 103/04 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
B03D1/02 102
B03D1/002
B03D1/008
B03D1/02 104
B02C4/02
B02C4/32
B03D101:04
B03D101:06
B03D101:02
B03D103:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525835
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 AU2022051288
(87)【国際公開番号】W WO2023077184
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2021903501
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524160187
【氏名又は名称】ビーエイチエムピーシー・インヴェストメンツ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BHMPC INVESTMENTS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ホバン,スティーブン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コッホマンスキー,ロバート
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063CC01
4D063GA07
4D063GC16
4D063GD13
4D063GD19
(57)【要約】
珪砂から鉄含有不純物を分離するための方法について記述される。方法は、浮選泡沫中の珪砂の鉄含有不純物を濃縮するように選択される捕集剤、起泡剤、および抑制剤の存在下、珪砂スラリーを泡沫浮選に供し、それによってテール生成物中の鉄含有不純物が減じた珪砂を生成する工程を含む。捕集剤は、≧60から≦70w/w%のトール油酸、≧10から≦30w/w%のポリ-α-ヒドロキシルアルキルエーテル、および最大3w/w%のトール油ロジンを含む。起泡剤は、非イオン性界面活性剤、特に1種または複数のアルキルポリプロポキシCおよび/またはポリエトキシC起泡剤を含み、n=0~6およびm=1~3である。抑制剤は、ケイ酸ナトリウムを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪砂から鉄含有不純物を分離するための方法であって、
浮選泡沫中の珪砂の鉄含有不純物を濃縮するように選択される捕集剤、起泡剤、および抑制剤の存在下、珪砂スラリーを泡沫浮選に供し、それによってテール生成物中の鉄含有不純物が減じた珪砂を生成する工程を含み、前記捕集剤が、≧60から≦70w/w%のトール油酸、≧10から≦30w/w%のポリ-α-ヒドロキシルアルキルエーテル、および最大3w/w%のトール油ロジンを含む、方法。
【請求項2】
前記起泡剤が、非イオン性界面活性剤、特に1種または複数のアルキルポリプロポキシCおよび/またはポリエトキシC起泡剤を含み、n=0~6およびm=1~3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抑制剤が、ケイ酸ナトリウムを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記捕集剤が、200~800g/tの量で存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記抑制剤が、25~250g/tの量で存在する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記起泡剤が、5~100g/tの量で存在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記珪砂スラリーは、固形分が25~45重量%の固形分含有量を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記泡沫浮選が、約pH7.2から約pH7.5の中性pHの範囲で行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
緩衝剤が、前記中性pHの範囲にpHを維持するために添加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記緩衝剤が、10~150g/tの量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記鉄含有不純物が、分離された珪砂生成物中においてFeが<500ppmまで低減される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記珪砂スラリーを泡沫浮選に供する前に、珪砂を微粉化および分級に供し、最大サイズを250~1200μmの範囲とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記微粉化工程が、20~40barの圧縮力を加え且つ10~20rpmのロール速度を有する高圧粉砕ロール(HPGR)で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
500ppm未満のFeを有する珪砂であって、請求項1から13のいずれか1項に記載の泡沫浮選プロセスで生成される、珪砂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホストマトリックスから鉄含有不純物を分離するための方法に関し、詳細には、珪砂から鉄含有不純物を分離するための泡沫浮選プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景の考察は、本開示の理解を容易にするものである。しかしながら本考察は、言及される材料のいずれかが、本出願の優先日時点で公開されおり、公知であり、または共通する一般的知識の部分であることを了承するものでも許可するものでもないことを理解すべきである。
【0003】
珪砂は、ガラス製造の主要な原材料であり、建設市場、上昇する自動車生産および販売、研磨剤、および水圧破砕からの、増大しつつある需要に供される。光起電力セルおよび携帯電話用の特殊ガラスならびにリチウムイオンバッテリに対して高まる世界的需要もあり、その結果、アルミニウム、鉄、チタン、カルシウム、マグネシウム、およびカリウム含有不純物による汚染が最小限に抑えられた高純度珪砂に対する需要をもたらす。
【0004】
鉄含有不純物は、一般に、
a)微粒子(約106um)に鉱物学的に含有される、解放されたおよび遊離した鉄;
b)機械的に除去することができるシリカ粒子表面コーティング;および
c)粗い粒子、個別の重鉱物、例えばヘマタイト、マグネタイト、またはイルメナイト
を含む3つのタイプのいずれか1つに存在し得る。
【0005】
第1のタイプの鉄含有不純物は、単純なスクリーニングおよびサイクロニング技法を介して管理され除去されてもよく、第2のタイプは、粒子の摩耗を介して対処されてもよく、第3は、螺旋重力技法によって除去されてもよい。
【0006】
しかしながら、一部の珪砂堆積物は、非常に少ない個別のおよびよりばらつきのある鉄スペシエーションを含む。特に、長石および白雲母などのケイ酸アルミニウムカリウムは、鉱物母材中に著しい鉄の変動を含有し得る。例えば、低量の長石(LF)は最大3000ppmのFeを含有していてもよく、中程度の長石(MF)は3000~5000ppmのFeを含有していてもよく、高い鉄量の低量の長石(HILF)は、>5000ppm Feを含有してもよい。上記にて論じられる従来の分離プロセスは、鉄グレードを約700ppmのFeに低減させ得るが、高純度シリカ仕様を満たすための、鉄グレードが500ppmよりも下のFeを含む最終生成物を生成することができない。
【0007】
本明細書に記述されるプロセスは、珪砂から鉄含有不純物を分離する代替プロセスを提供しようとするものであり、詳細には鉄含有不純物含有量を<500ppm Feに低減しようとするものである。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、珪砂などのホストマトリックスから鉄含有不純物を分離するための方法を提供する。
【0009】
本開示の一態様は、珪砂から鉄含有不純物を分離するための方法であって、
浮選泡沫中の珪砂の鉄含有不純物を濃縮するように選択される捕集剤、起泡剤、および抑制剤の存在下、珪砂スラリーを泡沫浮選に供し、それによってテール生成物中の鉄含有不純物が減じた珪砂を生成する工程を含み、捕集剤が、≧60から≦70w/w%のトール油酸、≧10から≦30w/w%のポリ-α-ヒドロキシルアルキルエーテル、および最大3w/w%のトール油ロジンを含む、
方法を提供する。
【0010】
一実施形態では、捕集剤は、200~800g/tの量で存在してもよい。
【0011】
一実施形態では、抑制剤はケイ酸ナトリウムを含む。抑制剤は、25~250g/tの量で存在してもよい。
【0012】
別の実施形態では、起泡剤は、非イオン性界面活性剤、特に1種または複数のアルキルポリプロポキシCおよび/またはポリエトキシC起泡剤を含み、n=0~6およびm=1~3である。起泡剤は、5~100g/tの量で存在してもよい。
【0013】
一実施形態では、珪砂スラリーは、固形分が25~45重量%の、特に固形分が28~40重量%の固形分含有量を有する。
【0014】
一実施形態では、泡沫浮選は、中性pHの範囲、特に約pH7.2から約pH7.5で行われる。一部の実施形態では、この中性pHの範囲にpHを維持するために緩衝剤が添加されてもよい。適切な緩衝剤は、炭酸ナトリウムを含む。緩衝剤は、10~150g/tの量で存在してもよい。
【0015】
一実施形態では、珪砂スラリーを泡沫浮選に供する前に、珪砂を微粉化(particle size reduction)および分級に供し、最大サイズ(top size)を250~1200μmの範囲とすることもできる。微粉化工程は、20~40barの圧縮力を加え、且つ10~20rpmのロール速度を有する高圧粉砕ロール(HPGR)で行われてもよい。HPGRの操作パラメータは、仕様要件を満たす所望の最大サイズ生成物を提供するように、適宜選択されてもよい。
【0016】
有利には、泡沫浮選プロセスは、珪砂粒子>425μm、または珪砂粒子<425μmを含む微粒珪砂を含む粗い珪砂から、鉄含有不純物を分離するのに使用されてもよい。
【0017】
粗い粒子は、浮選セルを、固めて身動きを取れなくさせやすい傾向があり、浮遊セルの性能ならびに珪砂からの鉄不純物の分離および除去を損なうことが理解されよう。したがって、本明細書に記述される泡沫浮選プロセスは、浮選供給材料の粒子径が<425μmであるとき、従来のタンクまたはDenver浮選セルで行われてもよいが、本発明者らは、浮選供給材料の20%またはそれよりも多くが>425μmであるとき、HydroFloatセルを使用することを推奨する。
【0018】
本開示のさらなる態様は、500ppm未満のFeを有する珪砂であって、上記にて定義された泡沫浮選プロセスに従い生成される、珪砂を提供する。
【0019】
概要で述べたプロセスの範囲内に包含され得る任意のその他の形にも関わらず、特定の実施形態について、以下の添付図面を参照しながら次に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】珪砂から鉄含有不純物を分離するためのプロセスの一実施形態によるフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、珪砂から鉄含有不純物を分離するための方法に関する。
【0022】
[一般用語]
本明細書の全体を通して、他に特に述べない限りまたは文脈がその他を必要としない限り、単一工程、組成物、工程の群、または組成物の群への言及は、これらの工程、組成物、工程の群、または組成物の群の1つまたは複数(即ち、1つまたはそれよりも多く)を包含すると解釈すべきである。したがって本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明示しない限り、複数態様を含む。例えば、「a」への言及は、単一ならびに2つまたはそれよりも多くを含み;「an」への言及は、単一ならびに2つまたはそれよりも多くを含み;「the」への言及は、単一ならびに2つまたはそれよりも多くなどを含む。
【0023】
本明細書に記述される本開示の各実施例は、特にその他のことが述べられない限り、変更すべきは変更して、それぞれおよび全てのその他の実施例に適用される。本開示は、本明細書に記述される特定の実施例によって範囲を限定するものではなく、単なる例示の目的であることが意図される。機能的に均等な生成物、組成物、および方法は、明らかに本明細書に記述される本開示の範囲内にある。
【0024】
「および/または」という用語、例えば「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解するものとし、両方の意味に関してまたはいずれかの意味に関して明示的な支持を提供すると解釈するものとする。
【0025】
本明細書の全体を通して、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形例は、記述される要素、整数、もしくは工程、または要素、整数、もしくは工程の群の包含を示唆するが、任意のその他の要素、整数、もしくは工程、または要素、整数、もしくは工程の群を除外するものではないことが、理解されよう。
【0026】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記述されるものに類似するまたは同等の方法および材料は、本発明の実施または試験で使用することができるが、適切な方法および材料について以下に記述する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先することになる。さらに材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定するものではない。
【0027】
本明細書で使用される「約」という用語は、所与の値または範囲の5%以内を意味し、より好ましくは1%以内を意味する。例えば、「約3.7%」は、3.5から3.9%を意味し、好ましくは3.66から3.74%を意味する。「約」という用語が値の範囲、例えば「約X%からY%」に関連するとき、「約」という用語は、列挙された範囲の下限(X)および上限(Y)値の両方を修飾するものとする。例えば「約20%から40%」は、「約20%から約40%」に等しい。
【0028】
[特定の用語]
本明細書で使用される「泡沫浮選」という用語は、スラリー混合物中の非疎水性鉱物から疎水性鉱物の固体粒子を選択的に分離するための湿式製錬プロセスを指す。液体混合物中に含有される気泡への疎水性固体粒子の選択的取着によって、液体混合物中のその他の固形分から微細な固形分を分離するのに、特に有用である。気体、典型的には空気は、液体-表面界面で持続した「泡沫」または泡の蓄積をもたらす速度で、液体混合物を通過する。気泡と液体との間の密度差は、浮力により取着された疎水性固体粒子を提供し、これらの粒子を表面に持ち上げ、親水性固体粒子がスラリー内に溜まる。次いで表面で濃縮された疎水性固体粒子は、スラリーを流出させることによってまたは表面を機械的に掬い取ることによって、スラリーから分離されてもよい。
【0029】
本明細書で使用される「起泡剤」という用語は、表面に疎水性固体粒子を運ぶ気泡を安定化させるため、泡沫浮選で使用される化学物質または化学組成物(即ち、化学物質の混合物)を指す。起泡剤は、極性(即ち、親水性)および無極性(即ち、疎水性)の化学的部分を含んでいてもよく、それによって使用中、起泡剤は、液体-空気界面で表面張力を増大させ、それによって泡沫中の気泡を安定化させる。
【0030】
本明細書で使用される「捕集剤」という用語は、粒子の湿潤能力を増大させ、それによって気泡への取着および泡沫中の粒子の濃度を高めるため、粒子の表面上に物理的にまたは化学的に吸着することが可能な泡沫浮選で使用される化学物質または化学組成物(即ち、化学物質の混合物)を指す。
【0031】
本明細書で使用される「抑制剤」という用語は、泡沫中で濃縮されるのではなく鉱物粒子がスラリー中に残されたままになるように、鉱物粒子と気泡との相互作用を選択的に阻止することが可能な、泡沫浮選で使用される化学物質または化学組成物(即ち、化学物質の混合物)を指す。
【0032】
界面活性剤は、疎水性(即ち、水不溶性)部分および親水性(即ち、水溶性)部分を含有する両親媒性有機化合物であり、それによって気体および液体などの2種の流体間の界面張力を低下させることを可能にする。疎水性部分は、大量の水相から気体中へと拡がり、一方、親水性部分は水性相に残る。本明細書で使用される「非イオン性界面活性剤」という用語は、帯電していない親水性部分を有する界面活性剤を指す。典型的には、親水性部分は、水性相における水素結合に係わる酸素基を含有することになる。非イオン性界面活性剤の例には、脂肪アルコールエチオキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エチオキシレート、エトキシル化アミン、および/または脂肪酸アミド、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステル、およびアルキルポリグルコシドが含まれるがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、鎖中に1から22個までの炭素を含有する直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキル基を含む、置換または非置換飽和炭化水素基を指す。
【0034】
「アルコキシ」という用語は、そこに取着された酸素を有するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、tert-ブトキシなどが含まれる。
【0035】
「アルキルエーテル」という用語は、酸素によって連結された2個の炭化水素基を指す。「アルファヒドロキシエーテル」という用語は、酸素エーテル結合に隣接する炭素上で炭化水素基がヒドロキシル基で置換される、アルキルエーテルを指す。
【0036】
本明細書で使用される「トール油酸」という用語は、トール油、木材パルプの副生成物の加水分解から誘導されたオレイン酸、リノール酸、およびロジン酸の混合物を指す。本明細書で使用される「トール油ロジン」という用語は、粗製トール油の蒸留生成物を指す。トール油ロジンは、アビエチン酸、イヒドロアビエチン(ihydroabietic)酸、パルストリン酸、ネオアビエチン酸、イソピマル酸を含むがこれらに限定されない、樹脂酸の混合物であり、最大6%の非鹸化性物質を含有し得る。
【0037】
[鉄含有不純物をホストマトリックスから分離するプロセス]
本明細書に記述される実施形態は一般に、鉄含有不純物をホストマトリックス、特に珪砂または石英から分離するプロセスに関する。
【0038】
本明細書に記述されるプロセスによって分離された鉄含有不純物は、遊離鉄、鉄酸化物、例えばマグネタイト、ヘマタイト、イルメナイト、およびリモナイト;硫化鉄、例えば黄鉄鉱、白鉄鉱、および磁硫鉄鉱;ケイ酸鉄、例えばシャモス石、サイロメラン、グリーナ石、ミネソタイト、グリュネル閃石;特に、鉄さび長石および白雲母を含んでもよい。
【0039】
図を参照すると、鉄含有不純物を含有する、採掘されたままの珪砂供給原料から、500ppm未満のFeを有する珪砂を生成するためのプロセスフローシートが示される。
【0040】
採掘されたままの前記珪砂は、クレイ汚染、脈石鉱物化、およびそこからの有機物を洗浄するためスクラバ10を通過する。+1mmの粗製粒子も不良とされ得る。スクラバ10は、トロンメルスクラバ、ドラム洗浄スクラバ、または回転式スクラバなど、任意の適切な従来のスクラバであってもよい。
【0041】
次いで洗浄されスクリーニングされた珪砂を、必要に応じて定密度タンク12に通してもよい。次いで定密度タンク12から分離された溢流(微細な材料)を、一定の密度および供給速度で、濃縮タンク14にポンプ送出する。底流(または、より粗い材料)は液体サイクロン16に供給され、そこで溢流(微細な材料)は元の定密度タンク12に供給され、底流は、直列に配置構成された1つまたは複数の摩耗器(attritioner)18に通す。
【0042】
1つまたは複数の摩耗器18は、珪砂の粒子表面を清浄化し、それによって鉄含有不純物の除去を増大させる。一般に、珪砂は約20分間、摩耗され得る。摩耗器18は、微細粒子を不良とするため1つまたは複数の上昇流分級器と共に配置構成されてもよい。一般に、微細粒子は粒子径<100μmを有するが、微細粒子の粒子径の定義は所望の販売製品仕様に応じて様々になり得ることが当業者に理解されよう。所望の販売製品仕様に応じて微細粒子を不良とする、適切なサイズの上昇流分級器を選択することが当業者に容易に明らかにされよう。
【0043】
次いで摩耗された珪砂を、分粒スクリーン20に通す。粗い過大サイズを、高圧粉砕ロール(HPGR)22に通し、そこで珪砂は微粉化および分級を受けて、最大サイズが250~1200μmの範囲となる。HPGRは、20~40barの圧縮力およびロール速度10~20rpmを発生させるように動作させてもよい。HPGRの操作パラメータは、仕様要件を満たす所望の最大サイズ生成物を提供するように、適宜選択してもよい。
【0044】
HPGR22からの最大サイズ生成物を、引き続き分粒スクリーン20を介して混合タンク24に通し、そこで水と混合して、固形分が約25~45重量%、特に固形分が約28~40重量%の固形分含有量を有する珪砂スラリーを生成する。混合タンク24は、調整タンクとして適宜動作させてもよく、そこで捕集剤、起泡剤、抑制剤、および緩衝剤の1種または複数がスラリーに添加され得る。代わりに捕集剤、起泡剤、抑制剤、および緩衝剤の1種または複数は、調整槽26でスラリーに添加されてもよい。スラリーは、約30秒から120秒の適切な滞留時間にわたり、調整タンク26に残されたままであってもよい。
【0045】
次いで調整されたスラリーを、浮選セル28、特に直列に配置構成された複数の浮選セル28a、28b、28c、28dに通してもよい。浮選セル28a、28b、28c、28dは、特に浮選供給材料の粒子径が<425μmであるとき、従来の浮選タンクまたはDenver浮選セルであってもよい。粗い粒子は、浮選セルを、固めて身動きを取れなくさせやすい傾向があり、浮遊セルの性能ならびに珪砂からの鉄不純物の分離および除去を損なう。したがって浮選供給材料の20%またはそれよりも多くが>425μmであるとき、本発明者らは、HydroFloatセルを含む浮選セル28を使用することを推奨する。
【0046】
起泡剤は、それをスラリー中に分散させるのに必要とされる期間および撹拌に応じて、浮選前の調整槽26または直接第1の浮選セル28aのいずれかに添加されてもよいことが理解されよう。
【0047】
起泡剤は、微細な粒子の回収を助けるため、安定化した泡沫の発生を容易にするよう作用する。鉄含有粒子は、浮選セルの最上部に上昇する気泡を安定させるため、これらの粒子の取着を通して濃縮される。その他の試薬は、所望の鉄含有粒子の選択的収集および珪砂の沈降を支援することができる。
【0048】
起泡剤は、アルキルポリプロポキシCおよび/またはアルキルポリエトキシC起泡剤であって、CO(CO)H、CO(CO)H、CO(CO)H、CO(CO)H、C13O(CO)H、(CO)H、CO(CO)H、CO(CO)Hを含むものの群から選択されてもよい。特に起泡剤は、Polyfroth(登録商標)H27などのプロポキシル化ブタノールを含む。
【0049】
起泡剤は、5~100g/tの量でスラリー中に存在してもよい。浮選セルがHydroFloatセルを含む実施形態では、起泡剤は、50~100g/tの量でスラリー中に存在してもよい。浮選セルが従来の浮選タンクまたはDenver浮選セルを含む代替の実施形態では、起泡剤は、5から30g/tの量でスラリー中に存在してもよい。
【0050】
抑制剤は、目標とする粒子と共に嵩高な質量の珪砂が浮選されないようにすることによって、シリカの回収を最大限にする。抑制剤の1つの適切な例には、ケイ酸ナトリウムが含まれる。ケイ酸ナトリウムは、中性pHで抑制剤として十分機能する。リグノスルホン酸ナトリウムおよびカルシウムなどのその他の抑制剤は、中性pHでシリカ抑制剤としても振る舞い得るが、過剰な発泡挙動に寄与する傾向を有するそれらの抑制剤は、それほど望ましくない。
【0051】
スラリー中に存在する抑制剤の量は、粒子径分布に主に依存することから、よって、より微細な浮選供給の粒子径分布とするには、多くの抑制剤投与量を必要とする。抑制剤は、25から250g/tの量で存在してもよい。
【0052】
捕集剤は、高度にカチオン性の化学種の表面活性化によって、鉄含有不純物、特に鉄さび長石種の表面に接着し活性化する。珪砂(主に、石英)は、いくらか不活性なままであり、捕集剤の影響を受けず、それによって目標とする鉄含有不純物粒子の泡沫への分離が強化され、スラリー中に珪砂粒子が滞留する。
【0053】
捕集剤は、≧60から≦70w/w%のトール油酸、≧10から≦30w/w%のポリ-α-ヒドロキシルアルキルエーテル、および最大3w/w%のトール油ロジンを含んでもよい。捕集剤は、200~800g/tの量で存在してもよい。
【0054】
捕集剤は、追加の抑制特性および発泡特性を有してもよい。さらに、抑制剤および起泡剤の濃度は、捕集剤が>600g/tのさらに高い投与量で存在するときに低下させてもよいことが理解されよう。
【0055】
泡沫浮選は、中性pHの範囲で、特に約pH7.2から約pH7.5で行われる。本発明者らは、プロセスが、中性から離れていくにつれてpHに対して感受性があることに留意した。特に、捕集剤性能の有効性は、酸性条件で低下する。したがって、中性pHの範囲にpHを維持するために緩衝剤が添加されてもよい。適切な緩衝剤には、限定するものではないが炭酸ナトリウムが含まれる。
【0056】
有利には、中性pHの範囲で泡沫浮選を行うことによって、高いまたは低いpHで動作するプロセスの承認を得ることに頻繁に関連付けられる環境上の懸念が緩和される。したがって本明細書に記述される泡沫浮選プロセスは、珪砂から鉄不純物を分離するのに使用される従来技術のプロセスよりもさらに非常に環境に優しい。
【0057】
捕集剤は、水に溶解するにつれて酸を発生させ、したがって緩衝剤の量は、スラリー中に存在する捕集剤の量に関係することになる。緩衝剤は、10~150g/tの量で存在してもよい。
【0058】
次いで鉄含有粒子に富む泡沫の濃度は、受動的に収集洗浄器内に溢れ出させることによってまたは機械的に掬い取ることのいずれかによって、浮選セルの最上部から収集される。次いで鉄含有不純物が減じた珪砂を含有するスラリーである底流は、サージタンク30に流れ、所望の消費者仕様に従い生成物スクリーン32で分級を受ける。
【0059】
以下の表は、本明細書に記述される泡沫浮選プロセスに様々な供給材料を供することによって、プロセスから生成された結果の生成物について記述する。
【0060】
【表1】
【0061】
本開示の広い一般的な範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に数多くの変形および/または修正を行ってもよいことが、当業者に理解されよう。したがって本発明の実施形態は、全ての観点で例示的と見なされることになり、限定するものではない。
【0062】
説明的言語または必要な示唆に起因して文脈がその他の内容を必要とする場合を除き、下記の請求項および先行する記述において、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形例は包括的意味で使用され、即ち言及される特徴の存在を指定するのに使用されるが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または付加を除外するものではない。
図1
【国際調査報告】