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特表2024-539365in vitroニューロンをトレーニングするためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】in vitroニューロンをトレーニングするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/00 20230101AFI20241018BHJP
【FI】
G06N3/00 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525907
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 AU2022051305
(87)【国際公開番号】W WO2023070168
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,807
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/048,820
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/048,821
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524158106
【氏名又は名称】シーシーラブス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ホン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ケーガン, ブレット ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】キッチン, アンディー シー.
(57)【要約】
コンピューティングデバイスをin vitro生物学的ニューロンとインターフェースするためのシステムおよび方法が説明される。一実施形態では、複数のin vitro生物学的ニューロンとインターフェースする方法が、処理デバイスによって、仮想環境の状態を示す第1のテンソルを生成することと、第1のテンソルを命令に符号化することと、第1の複数の電極、1つまたは複数の化学エミッタ、または1つまたは複数の光源を使用して、命令に従って第1のシグナルを生成することと、第2の複数の電極、1つまたは複数の化学センサー、または1つまたは複数の画像センサーによって、第2のシグナルを検出することであって、第2のシグナルが、複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって生成されており、第2のシグナルが、仮想環境に関連付けられた活動を表現する、第2のシグナルを検出することと、第2のシグナルを第2のテンソルに復号することと、第2のテンソルに基づいて活動を仮想環境に適用することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のin vitro生物学的ニューロンとインターフェースする方法であって、
処理デバイスによって、仮想環境または現実環境の状態を示す第1のテンソルを生成することと、
第1のレートベースコーディング方式または第1の場所ベースコーディング方式のうちの少なくとも1つを使用して、前記第1のテンソルを複数の命令に符号化することと、
第1の複数の電極、1つもしくは複数の化学エミッタ、または1つもしくは複数の光源を使用して、前記複数の命令に従って第1のシグナルを生成することと、
第2の複数の電極、1つもしくは複数の化学センサー、または1つもしくは複数の画像センサーによって、第2のシグナルを検出することであって、前記第2のシグナルが、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって生成されており、前記第2のシグナルが、前記仮想環境または前記現実環境に関連付けられた活動を表現する、第2のシグナルを検出することと、
第2のレートベースコーディング方式または第2の場所ベースコーディング方式のうちの少なくとも1つを使用して、前記第2のシグナルを第2のテンソルに復号することと、
前記第2のテンソルに基づいて前記活動を前記仮想環境または前記現実環境に適用することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記符号化することが、前記第1のレートベースコーディング方式を使用して実施され、前記符号化することが、
前記仮想環境または前記現実環境の前記状態に基づいて、前記第1のシグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記符号化することが、前記第1の場所ベースコーディング方式を使用して実施され、前記符号化することが、
前記仮想環境または前記現実環境の前記状態に基づいて、前記第1のシグナルを適用すべき1つまたは複数の位置を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記符号化することが、前記第1のレートベースコーディング方式と前記第1の場所ベースコーディング方式とを組み合わせた混合コーディング方式を使用して実施され、前記符号化することが、
前記仮想環境または前記現実環境の前記状態に基づいて、前記第1のシグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数と、前記第1のシグナルを適用すべき1つまたは複数の位置とを決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記復号することが、前記第2のレートベースコーディング方式を使用して実施され、前記復号することが、
前記第2のシグナルの1つまたは複数の周波数を決定することと、
前記第2のシグナルの前記1つまたは複数の周波数に少なくとも部分的に基づいて、実施されるべき前記活動を決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記復号することが、前記第2の場所ベースコーディング方式を使用して実施され、前記復号することが、
前記第2のシグナルの1つまたは複数の位置を決定することと、
前記第2のシグナルの前記1つまたは複数の位置に少なくとも部分的に基づいて、実施されるべき前記活動を決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記復号することが、前記第2のレートベースコーディング方式と前記第2の場所ベースコーディング方式とを組み合わせた混合コーディング方式を使用して実施され、前記復号することが、
前記第2のシグナルの1つまたは複数の周波数を決定することと、
前記第2のシグナルの1つまたは複数の位置を決定することと、
前記第2のシグナルの前記1つまたは複数の周波数と前記第2のシグナルの前記1つまたは複数の位置とに少なくとも部分的に基づいて、実施されるべき前記活動を決定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のテンソルを前記生成することと、前記第1のテンソルを前記符号化することと、前記第1のシグナルを前記生成することと、前記第2のシグナルを前記検出することと、前記第2のシグナルを前記復号することと、前記第2のシグナルを前記復号することからの、前記活動を前記仮想環境または前記現実環境に前記適用することとが、閉ループシステムにおいて実施され、前記方法が、
前記活動を前記仮想環境に適用することに応答して将来の刺激を決定することと、
前記処理デバイスによって、前記将来の刺激に基づいて新しいテンソルを生成することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記将来の刺激が、前記第2のシグナルを前記復号することに少なくとも部分的に基づいて決定される新しいシグナルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記将来の刺激が、前記第2のシグナルを前記復号することに基づいて決定されるさらなる刺激の欠如を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
処理すべき前記第2のシグナルの第1のサブセットと、無視すべき前記第2のシグナルの第2のサブセットとを決定するために、ブラインディング技法を適用すること
をさらに含み、
前記第2のシグナルを復号することが、前記第2のシグナルの前記第2のサブセットを復号することなしに、前記第2のシグナルの前記第1のサブセットを復号することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ブラインディング技法を適用することは、
前記第1のシグナルが生成された略第1の時間を決定することと、
前記略第1の時間に関連付けられた時間ウィンドウ内で生成された、前記第2のシグナルからのシグナルを、前記第2のサブセットに割り当てることと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ブラインディング技法を適用することが、
前記第2のシグナルの各々の大きさを決定することと、
しきい値を超える大きさを有する、前記第2のシグナルからのシグナルを、前記第2のサブセットに割り当てることと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ブラインディング技法を適用することが、
前記第2のシグナルの各シグナルについて、前記シグナルを検出した電極の数を決定することと、
しきい値数の電極によって検出された、前記第2のシグナルからのシグナルを、前記第2のサブセットに割り当てることと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の化学エミッタが、化学化合物を放出して、前記第1のシグナルを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化学化合物が、前記in vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数を調整する神経伝達物質を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のシグナルが化学シグナルを含み、前記第2のシグナルを検出することが、前記1つまたは複数の化学センサーを使用して前記化学シグナルの存在を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記活動に基づいて前記仮想環境または前記現実環境のうちの少なくとも1つを修正すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のin vitro生物学的ニューロンが、前記仮想環境または前記現実環境と相互作用することあるいは前記仮想環境または前記現実環境を修正することを引き起こす様式で、前記複数のin vitro生物学的ニューロンの自己組織化挙動を引き出すための規準を前記第2のテンソルが満たすことに失敗することに応答して、時間期間の間、前記in vitro生物学的ニューロンに刺激を送達することを中止すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記in vitro生物学的ニューロンの一様でない分布が、前記第1のシグナルを生成することまたは前記第2のシグナルを検出することのうちの少なくとも1つを行うデバイス上に配設され、前記方法が、
前記デバイスの各領域について、前記in vitro生物学的ニューロンの前記一様でない分布に基づいて、前記領域において前記in vitro生物学的ニューロンによって生成されたシグナルに適用すべきそれぞれの利得を決定することと、
各領域について、前記領域に関連付けられた前記それぞれの利得を、前記領域によって生成された、前記第2のシグナルのうちのシグナルに適用することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の命令が複数の電気ポテンシャルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
コンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに動作可能に接続された細胞励起および測定デバイスであって、前記細胞励起および測定デバイスが、その上に配設された複数のin vitro生物学的ニューロンを備え、前記細胞励起および測定デバイスが、
前記in vitro生物学的ニューロンを励起するように構成された、複数の電極、複数の化学エミッタ、および/または1つもしくは複数の光源と、
励起に対する前記複数のin vitro生物学的ニューロンの応答を測定するための、前記複数の電極、複数の化学センサー、または1つもしくは複数の画像センサーと
をさらに備える、細胞励起および測定デバイスと
を備える、システムであって、
前記コンピューティングデバイスが、
仮想環境または現実環境の状態を示す第1のテンソルを生成することと、
第1のレートベースコーディング方式または第1の場所ベースコーディング方式のうちの少なくとも1つを使用して、前記第1のテンソルを複数の命令に符号化することと
を行うためのものであり、
前記細胞励起および測定デバイスは、
前記複数の電極の第1のサブセット、前記複数の化学エミッタの第1のサブセット、または前記1つまたは複数の光源の第1のサブセットを使用して、前記複数の命令に従って第1のシグナルを生成することと、
前記複数の電極の第2のサブセット、前記複数の化学センサーの第2のサブセット、または前記1つまたは複数の画像センサーの第2のサブセットのうちの少なくとも1つを使用して、第2のシグナルを検出することであって、前記第2のシグナルが、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって生成されており、前記第2のシグナルが、前記仮想環境または前記現実環境に関連付けられた活動を表現する、第2のシグナルを検出することと
を行うためのものであり、
前記コンピューティングデバイスが、
第2のレートベースコーディング方式または第2の場所ベースコーディング方式のうちの少なくとも1つを使用して、前記第2のシグナルを第2のテンソルに復号することと、
前記第2のテンソルに基づいて前記活動を前記仮想環境または前記現実環境に適用することと
をさらに行うためのものである、システム。
【請求項23】
複数のin vitro生物学的ニューロンとインターフェースする方法であって、
処理デバイスによって、仮想環境または現実環境の状態を示す第1のテンソルを生成することと、
前記第1のテンソルを複数の命令に符号化することと、
前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数における活動ポテンシャルを刺激するために、第1の複数の電極、1つまたは複数の化学エミッタ、または1つもしくは複数の光源を使用して、前記複数の命令に従って第1のシグナルを生成することと、
第2の複数の電極、1つもしくは複数の化学センサー、または1つもしくは複数の画像センサーによって、第2のシグナルを検出することであって、前記第2のシグナルが、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数によって生成されており、前記第2のシグナルが、前記仮想環境または前記現実環境に関連付けられた活動を表現する、第2のシグナルを検出することと、
前記第2のシグナルを第2のテンソルに復号することと、
前記第2のテンソルに基づいて前記活動を前記仮想環境または前記現実環境に適用することと
を含む、方法。
【請求項24】
前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の光源を使用して生成された光学シグナルであり、前記光学シグナルは、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数の膜における細孔が開くことを引き起こし、結果的に前記膜を通る相対電流フローの変化が生じる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の光源を使用して生成された光学シグナルであり、前記光学シグナルが、電圧を生成するために、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数における遺伝的に符号化された電圧生成器を刺激する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
イオンチャネル、タンパク質、膜内構造、膜外構造、または膜内外構造のうちの少なくとも1つの光ベース操作を介して、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数の細胞膜特性の変化を刺激すること
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の光源を使用して生成された光学シグナルであり、前記第1のシグナルが波長を有し、
前記第2のシグナルが、前記1つまたは複数の画像センサーを使用して検出された光学シグナルであり、前記第2のシグナルが、前記波長に敏感なタンパク質の励起からの光を放出する、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数における、蛍光性レポータによって生成された、
請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のシグナルが電気シグナルであり、前記第2のシグナルが光学シグナルである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のシグナルが光学シグナルであり、前記第2のシグナルが電気シグナルである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の細胞の電気生理学的特質またはソマティック特質のうちの少なくとも1つを修正するために、前記複数のin vitro生物学的ニューロンの1つまたは複数の細胞を刺激する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のin vitro生物学的ニューロンがデバイス上に配設され、前記デバイスが、電気デバイス、光学デバイス、または光学構成要素と電気構成要素とを備えるハイブリッドデバイスであり、前記第1の複数の電極、前記1つまたは複数の化学エミッタ、または前記1つまたは複数の光源と、前記第2の複数の電極、前記1つまたは複数の化学センサー、または前記1つまたは複数の画像センサーとが、前記デバイス上にアレイで配設される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記デバイスが多電極アレイ(MEA)を備える、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のin vitro生物学的ニューロンが、前記第2のシグナルを生成するために蛍光を発する、遺伝的に符号化された電圧インジケータ(GEVI)と、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)とを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の命令が複数の電気ポテンシャルを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のシグナルが光学シグナルであり、前記第2のシグナルが光学シグナルである、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
コンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに動作可能に接続された細胞励起および測定デバイスであって、前記細胞励起および測定デバイスが、その上に配設された複数のin vitro生物学的ニューロンを備え、前記細胞励起および測定デバイスが、
前記in vitro生物学的ニューロンを励起するように構成された、複数の電極、複数の化学エミッタ、または1つまたは複数の光源のうちの少なくとも1つと、
励起に対する前記複数のin vitro生物学的ニューロンの応答を測定するための、前記複数の電極、複数の化学センサー、または1つまたは複数の画像センサーのうちの少なくとも1つと
をさらに備える、細胞励起および測定デバイスと
を備える、システムであって、
前記コンピューティングデバイスが、仮想環境または現実環境の状態を示す第1のテンソルを生成することと、前記第1のテンソルを複数の命令に符号化することとを行うためのものであり、
前記細胞励起および測定デバイスは、
前記複数の電極の第1のサブセット、前記複数の化学エミッタの第1のサブセット、または前記1つまたは複数の光源の第1のサブセットを使用して、前記複数の命令に従って第1のシグナルを生成することと、
前記複数の電極の第2のサブセット、前記複数の化学センサーの第2のサブセット、または前記1つまたは複数の画像センサーの第2のサブセットのうちの少なくとも1つを使用して、第2のシグナルを検出することであって、前記第2のシグナルが、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって生成されており、前記第2のシグナルが、前記仮想環境または前記現実環境に関連付けられた活動を表現する、第2のシグナルを検出することと
を行うためのものであり、
前記コンピューティングデバイスが、
前記第2のシグナルを第2のテンソルに復号することと、
前記第2のテンソルに基づいて前記活動を前記仮想環境または前記現実環境に適用することと
をさらに行うためのものである、システム。
【請求項37】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記1つまたは複数の光源と前記複数の電極とを備え、前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の光源の前記第1のサブセットを使用して生成された光学シグナルであり、前記光学シグナルは、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数の膜における細孔が開くことを引き起こし、結果的に前記膜を通る相対電流フローの変化が生じる、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記1つまたは複数の光源と前記複数の電極とを備え、前記第1のシグナルが、前記1つまたは複数の光源の前記第1のサブセットを使用して生成された光学シグナルであり、前記光学シグナルが、電圧を生成するために、前記複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの前記1つまたは複数における遺伝的に符号化された電圧生成器を刺激する、請求項36に記載のシステム。
【請求項39】
前記複数のin vitro生物学的ニューロンは、前記複数のin vitro生物学的ニューロンの、イオンチャネル、タンパク質、膜内構造、膜外構造、または膜内外構造のうちの少なくとも1つの光ベース操作が、前記複数のin vitro生物学的ニューロンの細胞膜特性の変化を刺激するように、構成された、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記1つまたは複数の光源と前記1つまたは複数の画像センサーとを備え、前記複数のin vitro生物学的ニューロンが、前記1つまたは複数の光源によってもたらされた波長に敏感なタンパク質の励起からの光を放出する蛍光性レポータを備える、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記第1のシグナルを生成するための前記1つまたは複数の光源と、前記第2のシグナルを記録するための前記1つまたは複数の画像センサーとを備える、請求項36に記載のシステム。
【請求項42】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記第1のシグナルを生成するための前記複数の電極と、前記第2のシグナルを検出するための前記1つまたは複数の画像センサーとを備える、請求項36に記載のシステム。
【請求項43】
前記細胞励起および測定デバイスが、前記第1のシグナルを生成するための前記1つまたは複数の光源と、前記第2のシグナルを検出するための前記複数の電極とを備える、請求項36に記載のシステム。
【請求項44】
前記細胞励起および測定デバイスが多電極アレイ(MEA)を備える、請求項36に記載のシステム。
【請求項45】
前記複数のin vitro生物学的ニューロンが、前記第2のシグナルを生成するために蛍光を発する、遺伝的に符号化された電圧インジケータ(GEVI)と、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)とを備える、請求項36に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、神経学的計算および実験プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンコンピューティングパフォーマンスは、ムーアの法則に従って、ここ50年間でトランジスタサイズを縮小することによって18ヶ月ごとに約2倍になっている。しかしながら、2015年以来、パフォーマンス増加が減速している。トランジスタは現在10nmのものであり、さらなる縮小は、量子効果により困難である。技術的進歩を続けるために、シリコンベースコンピューティングおよびフォンノイマンアーキテクチャに取って代わるための代替計算技術が開発される必要がある。
【0003】
現在、スタートアップだけでも266億USDを超える、かなりの量の資金提供が、機械学習など、古典的なコンピューティング方法を使用することに基づく人工知能(AI)研究にあてられている。深層学習などの現在のAI手法は、しばしば、狭く、もろいものであり、各タスクのために大規模な人間のチューニングおよび設計を必要とする。タスクの軽微な変動でさえ、深層ニューラルネットワークを壊し、再トレーニングを必要とすることがある。パフォーマンスと等しく重要であるのは、これらのプロセスを稼働するための要件である。強化学習ベースAIを使用して、ロボットハンドにルービックキューブを操作することを教える最近の試みは、成功したが、2.8ギガワットの電力という犠牲を払った。さらに、強化学習手法を使用するトレーニングは、しばしば、必要とされる比較的長い学習時間(100年超相当)を補償するために加速されたシミュレーションにおいて行われる。これにより、これらのシステムは、連続的に稼働することが持続不可能になり、リアルタイムで動的に変化するシナリオに応答することができなくなる。シリコンチップの生産者に現在突きつけられている物理的限界に加えて、ハードリミットに達しているトランジスタ密度の漸進的改善が、ここで手短に説明された問題をどのように解決するかを確かめることは、困難である。AIの可能性に満ちているにもかかわらず、AIからの実際の社会的利益は、提案者が希望したものには及んでいない。
【0004】
本明細書で説明される実施形態は、以下で与えられる詳細な説明から、および添付の図面から、より十分に理解されるが、これらは、本出願を特定の実施形態に限定するものととられるべきでなく、説明および理解のためのものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態による、生物学的(biological)コンピューティングプラットフォームのための例示的なシステムアーキテクチャを示す図である。
図2A】一実施形態による、開フィードバックシステムを示す図である。
図2B】一実施形態による、閉ループフィードバックシステムを示す図である。
図3】一実施形態による、生物体が主要な状態において存在し、外部環境を予測および操作して驚きを最小化するようにそれらの状態の事前分布(prior)を修正する、自由エネルギー原理(free energy principle)の概要を示す図である。
図4】生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法のための一実施形態を示すシーケンス図である。
図5】生物学的コンピューティングプラットフォームにおいて生物学的ニューロンに強化学習を提供する方法のための一実施形態を示すシーケンス図である。
図6】一実施形態による、ゲームPongの例示的な仮想環境を示す図である。
図7】刺激電極を含む感覚野、複数の運動領域のロケーションを含む、その上に細胞培養物を有するMEAの複数の異なる電極レイアウト概略図である。
図8A】生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法のための一実施形態を示す流れ図である。
図8B】生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法のための一実施形態を示す流れ図である。
図9】一実施形態による、例示的なコンピューティングデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
生物学的ニューロンのin vitroトレーニングを実施するために使用可能な生物学的コンピューティングプラットフォームの実施形態が本明細書で説明される。生物学的コンピューティングプラットフォームは、in vitro生物学的ニューロンをリアルタイム合成生物学的知能(SBI:synthetic biological intelligence)にトレーニングすることができる、(ニューラル計算および実験プラットフォームとも呼ばれる)生物学的コンピューティング研究プラットフォームとして実装され得る。生物学的コンピューティングプラットフォームは、生物学的ニューラルネットワークへのネットワークアクセスを提供する(たとえば、クラウドを通して生物学的ニューラルネットワークリソースを公開する)、生物学的コンピューティングクラウドプラットフォームであり得る。一実施形態では、生物学的コンピューティングプラットフォームは、生物学的ニューロン(たとえば、皮質ニューロン)のネットワークを外面化し、生物学的ニューラルネットワークとコンピューティングデバイス上で実行される仮想環境との間のインターフェースを提供する。したがって、生物学的コンピューティングプラットフォームは、生物学的ニューラルネットワークと仮想環境との間の遠心性(efferent)(たとえば、視覚入力または他の入力)/遠心性(たとえば、運動出力または他の出力)ループを作成する。
【0007】
実施形態は、経時的なタスクにおけるパフォーマンスを増加させるように挙動を適応させる純粋なSBIデバイスを実証する。これらのニューロンを仮想環境(たとえば、パドルを移動させることの成果(outcome)が自由エネルギー原理の直接的解釈によって通知される、シミュレートされたゲーム世界)に組み込むことによって、実施形態は、ニューラルシステムが、トレーニング刺激に応答して自己組織化することになることを示す。一例では、ニューラルシステムは、驚くべき、予測不可能な刺激を限定し、予測可能な刺激を最大化する、やり方で挙動するように自己組織化することになる。一例では、ニューラルシステムは、継続的刺激を保証する(たとえば、刺激が保留される事態を回避する)やり方で挙動するように自己組織化することになる。一例では、ニューラルシステムは、正のフィードバックを最大化し、負のフィードバックを最小化する、やり方で挙動するように自己組織化することになる。
【0008】
生物学的ニューロンは、ほぼ無限にスケーラブルであり、(特に、シリコンベースプロセッサと比較して)エネルギー効率が高く、小さいものであり、(たとえば、シリコンベースプロセッサと比較して)ごくわずかな熱をもたらす。たとえば、多電極アレイ(MEA:multi-electrode array)または他のニューラル処理ユニット(たとえば、細胞励起および測定デバイス)における生物学的ニューラルネットワークは、約2E-10ジュールのシナプス当たりのエネルギー使用を有する。対照的に、例示的なシリコン処理デバイスにおけるトランジスタ当たりのエネルギー使用は、約2E-7ジュールである。さらに、生物学的ニューラルネットワークは、フォールトトレラントであり、多くの事例では、生物学的ニューラルネットワークの1/2の破壊に耐えることができ、依然として、機能することが可能であり得る。生物学的ニューラルネットワークはまた、神経可塑性を呈し、これは、多くの異なる適用例に好適である高度に適応可能な知能を可能にする。
【0009】
人工ニューラルネットワークを符号化および復号するように開発された機構は、概して、生物学的ニューラルネットワークに適用不可能である。人工ニューラルネットワークでは、データが、浮動小数点ベクトルとして頻繁に符号化され、これは、次いで、人工ニューラルネットワークに入力される。人工ニューラルネットワークは、次いで、概して、さらなるベクトルを出力するようにトレーニングされ、これらのベクトルは、容易に復号可能である。しかしながら、生物学的ニューラルネットワークでは、データは、生物学的ニューロンの集団(population)の活動ポテンシャル(action potential)のスパイク(たとえば、細胞膜にわたる電圧変動)として符号化される。ニューラル細胞が、活動ポテンシャル、またはより口語的に「発火」と呼ばれる、生物学的プロセスを介したスパイキング電気アクティビティ(activity)を使用して通信する。発達中に、細胞は、細胞およびシステムレベルにおける生理的成熟にリンクされた自発的アクティビティの別個のパターンを示す。1次供給源(primary source)からの皮質培養物の場合、アクティビティは、およそ2週から、漸進的により安定するようになることが示されている。多能性供給源(pluripotent source)から分化された培養物は、より長くかかり得、いくつかの場合には、アクティビティが、in-vitro日数(DIV:day in-vitro)40辺りで始まり、DIV80の後により複雑になる。
【0010】
実施形態では、生物学的コンピューティングプラットフォームは、生物学的ニューラルネットワークによって解釈され得るシグナルを生成するための、および生物学的ニューラルネットワークによって生成された出力シグナルを復号するための、エンコーダ/デコーダとして働く。
【0011】
生きているニューロンの生来の計算能力を利用することは、理論的前進と技術的前進の両方を必要とし、これらは、本明細書の実施形態において説明される。実施形態は、リアルタイム合成生物学的知能(SBI)が可能なデバイス、高密度多電極アレイ(MEA)を介した生物学的皮質細胞とシリコンベースの旧来のコンピューティングとの統合について説明する。実施形態では、皮質ニューロン細胞が、ヒト人工多能性幹細胞(hIPSC:human induced pluripotent stem cell)から分化されるか、または胚マウスなどの胚動物から採取され得る。これらの細胞は、たとえば、CMOSベース高密度MEA上にプレーティングされたとき、豊富なスパイキングアクティビティとの密な接続を形成する。閉ループシステムが、ニューラル細胞とシリコンコンピューティングとの間の共有言語として電気アクティビティを適用することによって、これらの培養物を仮想環境(たとえば、古典的なアーケードゲーム「Pong」を表現するシミュレートされたゲーム世界)に組み込むように確立され得る。1つまたは複数のタスクを完了することのパフォーマンス(たとえば、ゲームプレイパフォーマンス)に応答して外部刺激を向けるために、自由エネルギー原理(FEP)から導出された原理を活用して、皮質ニューロンの統計的に有意なパフォーマンスが観測されている。「学習」は、5分内の仮想環境とのリアルタイム相互作用(たとえば、ゲームプレイ)で明らかになり、パフォーマンスの段階的増加として見られた。これは、比較的疎な情報に応答してこれらの培養物がアクティビティを自己組織化する能力を示し、したがって、生物学的知能の背後の生来の推進力(drive)の経験的証拠を示す。神経学的システムのこの上ない計算能力を利用することによって旧来のin-silico機械学習手法と対照をなす、新規の生物学的コンピューティングプラットフォームが、本明細書で説明される。
【0012】
実施形態は、コンピューティングデバイスに接続された光学入力および/または出力シグナルを使用する、多電極アレイ(MEA)、および/またはMEAに対するオプティクスベース等価物、および/またはMEAに対する化学ベース等価物を含み得る、生物学的コンピューティングプラットフォームを提供する。MEA、MEAに対するオプティクスベース等価物、化学エミッタおよび/または化学センサーを使用するMEAの化学ベース等価物、ならびにMEAのハイブリッド、MEAのオプティクスベース等価物およびMEAの化学ベース等価物は、本明細書では細胞励起および測定デバイスと呼ばれ、または単にMEAと呼ばれる。コンピューティングデバイスは、物理的コンピューティングデバイスまたは仮想コンピューティングデバイスであり得る。コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイスが、MEAおよび/または他のシステムと(ならびにMEAおよび/または他のシステム内に含まれている生物学的ニューラルネットワークと)通信することを可能にする、インターフェース(本明細書ではMEAインターフェースと呼ばれるが、それは、オプティクスベースシステムまたは光学システムを備える基板など、他のシステムとインターフェースする(interface)こともできる)を実行し得る。光学システムは、光学MEA、phosomiliaシステム(phosomilia system)、または光学エネルギー交換システムと呼ばれることがある。コンピューティングデバイスは、さらに、MEAインターフェースとインターフェースする、実験論理または仮想環境を実行し得る。MEAインターフェースは、実験論理または仮想環境からデジタル入力シグナルを受信し、デジタル入力シグナルをMEAおよび/または他のシステムのための命令に変換し、次いで、それらの命令をMEAおよび/または他のシステムに送り得る。それらの命令は、MEAおよび/または他のシステムが、2Dグリッド上の座標を有する励起サイト、あるいはMEAおよび/または他のシステムにおける励起サイトの他のアレイにおいて、複数の電気または光学インパルスを適用することを引き起こし得る。MEAインターフェースは、さらに、MEAおよび/または他のシステムからの2Dグリッドまたは他のアレイ上のロケーションにおいて測定された、電気および/または光学シグナルの表現を受信し、その表現に基づいて実験論理または仮想環境のための応答を生成し、それらの応答を実験論理または仮想環境に送り得る。このようにして、MEAインターフェースは、仮想環境または実験論理が、MEAおよび/または他のシステム上の生物学的ニューラルネットワークと相互作用することを可能にする。いくつかの実施形態は、仮想環境に関して説明される。しかしながら、いかなるそのような実施形態についても、仮想環境が、実験論理と置き換えられるかまたは実験論理によって補足され得ることを理解されたい。さらに、実施形態では、仮想環境ではなく、現実環境または物理的環境が使用され得る。いくつかの実施形態では、仮想環境は現実環境のシミュレーションである。
【0013】
一実施形態では、生物学的コンピューティングプラットフォームは、コンピューティングデバイスに接続された、MEAまたは同様のデバイスを含む。MEAまたは同様のデバイスは、励起サイトの2次元(2D)または3次元(3D)グリッドと、MEAまたは同様のデバイス上に配設された、複数の生物学的ニューロンと、処理デバイスまたは集積回路とを含み得る。代替的に、MEAまたは同様のデバイスは、回路のないチップであり得、これは、(たとえば、プリント回路板を介して)処理デバイスまたは集積回路に接続され得る。処理デバイスは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)チップであり得る。一実施形態では、処理デバイスは、ネットワークアダプタ、アナログデジタル変換器および/またはデジタルアナログ変換器を含む、システムオンチップ(SoC)の構成要素である。
【0014】
コンピューティングデバイスは、デジタル入力シグナルを受信または生成し、デジタル入力シグナルを複数の電気、化学および/または光学インパルスのための命令に変換し、それらの命令をMEAおよび/または他のシステムに送り得る。MEAおよび/または他のシステムは、デジタルアナログ変換器(DAC)を使用して、それらの命令をデジタル形式からアナログ形式に変換し得、MEAおよび/または他のシステムの処理デバイスは、2Dグリッド上の座標を有する励起サイトまたは励起サイトの他のアレイにおいて、複数の電気、化学および/または光学インパルスを適用し得る。実施形態では、細胞における電気応答を引き出すように設計された光学刺激と、細胞における電気応答を引き出すための電気刺激とは、両方とも、電気シグナルと呼ばれる。1つまたは複数のセンサーおよび/または処理デバイスは、2Dグリッドまたは他のアレイの座標において複数の生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって出力された、電気シグナルおよび/または他のシグナル(たとえば、光学シグナルまたは化学シグナル)を測定し得る。実施形態では、ニューロンの励起は、光学センサーを使用してキャプチャされ得る。たとえば、ニューロンが発火したとき、そのような発火は、1つまたは複数の光学センサーによって光学的に検出され得る。したがって、本明細書で説明されるニューロンによって出力される電気インパルスは、ニューロンの電気的状態を表現する光学シグナルとしてキャプチャされ得る。したがって、ニューロンによって出力される電気シグナルの本明細書におけるいかなる説明も、代わりに、1つまたは複数の光学センサーによって検出される光学シグナルであり得る。処理デバイスは、次いで、電気シグナルおよび/または光学シグナルの表現を生成し得、その表現をコンピューティングデバイスに送り返し得る。さらに、ニューロンによって出力される電気シグナルのいかなる説明も、1つまたは複数の化学センサーによって検出される化学シグナルであり得る。コンピューティングデバイスは、その表現を、仮想環境または実験論理によって可読な応答に変換し得、その応答を実験論理または仮想環境に送り得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、生物学的コンピューティングプラットフォームは、MEAがない完全光学システムである。代替的に、生物学的コンピューティングプラットフォームは、光学シグナルをニューロンに提供する、および/または光学シグナルをニューロンから受信する、光学システムとともにMEAを含み得る。MEAに関して本明細書で説明される実施形態が、MEA、ならびにMEAと光学構成要素(たとえば、画像センサーおよび/または光源)とを含むハイブリッドシステムではなく、完全光学インターフェースが使用される、代替形態にも適用されることを理解されたい。光学インターフェースは、そのような実施形態においてMEAによって旧来実施されるものと同様の機能を実施し得る。したがって、MEAへの言及は、MEAと同様の機能を実施する光学構成要素にも適用される。その上、本明細書で説明されるいかなる電気シグナルも、ニューロンに送達される電気シグナルとニューロンから受信される電気シグナルとを含む、電気シグナルの代わりにまたはそれに加えて光学シグナルが使用されるように、修正され得る。
【0016】
一実施形態では、生物学的コンピューティングプラットフォームを提供する方法が、処理論理からデジタル入力シグナルを受信することを含む。方法は、デジタル入力シグナルを複数の電気、化学および/または光学インパルスのための命令に変換することをさらに含み、複数の電気、化学および/または光学インパルスの各電気、化学、および/または光学インパルスが、2次元(2D)座標または3次元(3D)座標に関連付けられる。方法は、それらの命令に従って、多電極アレイ(MEA)および/または他のシステム(たとえば、細胞励起および測定デバイス)における2Dグリッドまたは3D行列の指定された座標において、複数の電気、化学および/または光学インパルスを適用することをさらに含み、複数の生物学的ニューロンが、MEAおよび/または他のシステム上に配設される。方法は、2Dグリッドまたは3D行列の1つまたは複数の追加の座標において、複数の生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって出力された電気、化学および/または光学シグナルを測定することさらに含む。方法は、1つまたは複数の電気、化学および/または光学シグナルの表現を生成することと、1つまたは複数の電気、化学および/または光学シグナルの表現を処理論理に送ることとをさらに含む。
【0017】
一実施形態では、複数のin vitro生物学的ニューロンとインターフェースする方法が、処理デバイスによって、仮想環境の状態を示す第1のテンソルを生成することを含む。第1のテンソルは、複数の電気ポテンシャル(electrical potential)、化学濃度、および/または光強度に符号化され得、複数の電気ポテンシャルを有する第1の電気シグナル、化学濃度を有する化学シグナル、および/または複数の光強度を有する光学シグナルが、第1の複数の電極、第1の複数の化学エミッタ、および/または第1の複数の光源を使用して生成される。使用され得る可能なコーディング方式が、レートベースコーディング方式と、場所ベースコーディング方式と、(たとえば、場所ベースコーディングとレートベースコーディングとを混合する)混合コーディング方式と、複数のニューロンのための複数のシグナル間の関係が符号化される混合集団ベースコーディング方式を生じさせる上記のものの任意の組合せとを含む。方法は、第2の複数の電極、1つw複数の画像センサー(たとえば、カメラ)、および/または1つもしくは複数の化学センサーによって、第2の電気、化学および/または光学シグナルを検出することをさらに含み、第2の電気、化学および/または光学シグナルは、複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数によって生成された。第2の電気、化学および/または光学シグナルは、仮想環境に関連付けられた活動を表現する。方法は、第2の電気、化学および/または光学シグナルを第2のテンソルに復号することと、第2のテンソルに基づいて活動を仮想環境に適用することとをさらに含む。復号するために使用され得る可能なコーディング方式が、レートベースコーディング方式と、場所ベースコーディング方式と、(たとえば、場所ベースコーディングとレートベースコーディングとを混合する)混合コーディング方式と、複数のニューロンのための複数のシグナル間の関係が復号される混合集団ベースコーディング方式を生じさせる上記のものの任意の組合せとを含む。
【0018】
電気生理学的アクティビティの操作および測定を可能にするシリコン処理チップの表面上にニューロンを埋め込むことによって、入出力ブリッジが、生物学的ニューラルネットワークとコンピュータシステムとの間に確立される。これは、合成生物学的知能(SBI)を生じさせる。SBIを移植することにおける1つの課題が、ソフトウェア統合である。ソフトウェア統合を達成することは、神経学的知能の基本的な基礎と、それがどのように操作され得るかとを理解することにおける有意な理論的前進を必要とする。単一のニューロンの個別活動ポテンシャルがニューロンのアセンブリのアクティビティにどのように関係するかと、その個別活動ポテンシャルが動的環境における生物体の挙動に最終的にどのように関係するかとを理解することが重要である。以下の開示は、高密度多電極アレイ(HD-MEA)、または細胞の光学インターフェースを行うのに好適な他の基板など、培地(media)上に、両方とも1次供給源から派生された、あるいは、ヒト人工多能性幹細胞(hIPSC)供給源、ヒト胚性多能性幹細胞(hESC:human embryonic pluripotent stem cell)供給源、またはニューロン細胞集団を生じさせ得る任意の他の幹細胞供給源のいずれかから分化された、皮質細胞の機能ネットワークについて説明する。
【0019】
ハードウェアと細胞(ウェットウェア)との適合性を仮定すれば、知能挙動のために必要とされるような、ニューラルシステムにおいて考えられ得る2つの相互に関係するプロセスが依然としてある。第1に、システムは、外部状態が内部状態によってどのように影響を及ぼされ得るかと、この影響の成果とを学習し、第2に、システムは、環境から、システムがその環境に関して特定の状態(挙動)をいつ採用するべきであるかを推論し、これは、その採用された状態がその環境にどのように影響を及ぼすことになるかの予測に基づかなければならない。第1のものに対処するために、カスタムソフトウェアドライバが、(たとえば、ゲームプレイ環境をシミュレートする)仮想環境、(たとえば、現実世界のセンサーからのデータに基づく)物理的環境、または電気刺激を通したこれらの生物学的ニューラルネットワーク(BNN)のための物理的(すなわち、現実世界の)環境のシミュレーションである仮想環境を提供する、低レイテンシ閉ループフィードバックシステムを作成するために使用され得る。
【0020】
次に図1を参照すると、図1は、一実施形態による、ニューロンとインターフェースするために使用され得る、生物学的コンピューティングプラットフォーム100のための例示的なシステムアーキテクチャを示す。示されているように、生物学的コンピューティングプラットフォーム100は、ネットワーク120を介して1つまたは複数のサーバコンピューティングデバイス110に接続された1つまたは複数のMEA105を含む。ネットワーク120は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、プライベートネットワーク(たとえば、イントラネット)、パブリックネットワーク(たとえば、インターネット)、またはそれらの組合せであり得る。(1つまたは複数の)MEA105と(1つまたは複数の)サーバコンピューティングデバイス110との間の接続は、ワイヤード接続、ワイヤレス接続、またはそれらの組合せを含み得る。代替的に、(1つまたは複数の)MEA105は、(たとえば、ワイヤードまたはワイヤレス接続を介して)(1つまたは複数の)サーバコンピューティングデバイス110に直接接続され得る。(1つまたは複数の)MEA105はまた、MEAの化学、光学および/または光学/電気等価物であり得、これらは、便宜上、本明細書では(1つまたは複数の)MEAのタイプとも呼ばれる。
【0021】
サーバコンピューティングデバイス110は、物理機械、および/または物理機械によってホストされる仮想機械を含み得る。物理機械は、ラックマウントサーバ、デスクトップコンピュータ、または他のコンピューティングデバイスであり得る。一実施形態では、サーバコンピューティングデバイス110は、クラウドプロバイダシステムによって管理および提供される仮想機械を含む。クラウドサービスプロバイダによって与えられる各仮想機械は、クラウドの一部として構成された物理機械上でホストされ得る。そのような物理機械は、しばしば、データセンター中に位置する。クラウドプロバイダシステムおよびクラウドは、サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)層として提供され得る。そのようなクラウドの一例は、Amazon(登録商標)のElastic Compute Cloud(EC2(登録商標))である。
【0022】
サーバコンピューティングデバイス110は、MEAインターフェース150と1つまたは複数の仮想環境155とをホストし得る。MEAインターフェース150と(1つまたは複数の)仮想環境155とは、同じサーバコンピューティングデバイス110上でホストされ得るか、または、ネットワーク120を介して接続され得る、別個のサーバコンピューティングデバイス上でホストされ得る。
【0023】
(微小電極アレイとしても知られる)MEA105は、ニューラルシグナルがそれらを通して取得および/または送達される複数のプレートまたはシャンクを含んでいるデバイスである。実施形態では、HD-MEAが使用される。プレートまたはシャンクは、概して、グリッドまたは他のアレイで配置され、ニューロン135を電子回路に接続するニューラルインターフェースとして働く。MEA105は、多くの生物学的ニューロン135および/あるいは溶液または他の培地(たとえば、食塩水溶液)を収容する、記録チャンバ140を含む。これらの生物学的ニューロン135は、(たとえば、幹細胞から培養された)培養されたニューロン、および/または(たとえば、ラット脳から抽出された)抽出されたニューロンであり得る。生物学的ニューロン135は、一般的な細胞株からのものであり得るか、またはテストされるべき特定の形質をもつ細胞株からのものであり得る。たとえば、生物学的ニューロン135は、特定の遺伝子型を有する人の幹細胞から、またはテストが実施されるべきである特定の人から、または特定の病状を有する人から、培養され得る。一実施形態では、ニューロン135は、胚げっ歯類供給源からの皮質細胞を備える。一実施形態では、ニューロン135は、ヒト人工多能性幹細胞(hIPSC)供給源からの皮質細胞を備える。
【0024】
多数の供給源から、ニューロンが、複数の方法を介して、増殖または採取され得る。ニューラル細胞に対するたいていの詳細なin vitro電気生理学的調査は、1次ニューロンに対して行われている。このプロセスは、(一般に)げっ歯類胚の切開された皮質から皮質細胞を分離することを伴う。これらの細胞は、次いで、栄養分の豊富な培地において増殖され、数ヶ月のオーダーで維持され得る。これらの培養物は、多数の樹状および軸索接続(dendritic and axonal connection)をもつ、複雑な形態を発達させ、これは、機能的生物学的ニューラルネットワーク(BNN)をもたらすことになる。いくつかの実施形態では、そのような培養物は、胚(たとえば、マウス胚)から発達したものである。単層、スライスまたは器官型培養物の特質(property)が、関連する電気生理学的方法を使用して調査され得る。培養物からの自発的アクティビティの発達は、十分に文書化されている。これらの発達段階はまた、モデル化されており、基礎的臨界を示す創発的(emergent)接続性および発火レートを示すことが発見されている。
【0025】
胚から発達したニューロン培養物の使用に対する説得力のある代替形態として、幹細胞エンジニアリングにおける進歩は、幹細胞(たとえば、人工PSC、胚性PSC、神経前駆体細胞(neural precursor cell)など)が、成熟した機能的特質を示す単層の活性皮質ニューロン(active cortical neuron)に効率的に分化されることを可能にした。この方法は、上層皮質ニューロンと下層皮質ニューロンの両方ならびに他の神経表現型(neural phenotype)を分化する能力を有する。このプロトコールは、皮質前駆細胞の異種培養物を生成するために、特定の培養物条件下で、限定された神経誘導培地および維持培地(defined neural induction and maintenance media)を使用する。多能性細胞は、限定はしないが、自然個体発生を再現するための小分子の使用、特定のまたは変動する神経表現型を生じさせるために細胞株における遺伝子の発現を挿入または修正するためのウイルスまたは他のベクターの使用による直接的再プログラミング、あるいは指定されたまたは変動するニューロン細胞タイプを生じさせる他の遺伝的修正技法の使用を含む、様々な技法を使用して分化され得る。
【0026】
実施形態では、hIPSCおよび/または他の供給源からの(たとえば、長期皮質ニューロンおよび/または他のタイプのニューロンの)ニューロン培養物が、細胞が、ニューラルのものであるだけでなく、より具体的に皮質のものであることを示す、適切なバイオマーカーとともに、生物体内のin vivoニューロンネットワーク、または1次ニューロン細胞培養物において発見されるin vitroネットワークと同等の、ネットワークを形成するために実装される。胚げっ歯類を採取することに関する倫理的問題を避けるとともに、hIPSC派生細胞は、実施形態において、維持されたアクティビティを伴って6ヶ月超の間生存することが実証されており、指数スケールで増殖され得、これは、高い生産量において細胞当たりのコストを比較的低くする。これは、計算のためのニューロンの「ウェットウェア」が機能的やり方で増殖され、維持されることを可能にする。
【0027】
歴史的に、検討されているニューラル培養物は、2次元である(たとえば、数千個のニューロンをもつ)疎なニューラル培養物であった。疎なニューラルネットワークは、それらが互いに重複しないように、2Dグリッド上に広げられた。そのようなセル配置は、それらが、個々の細胞が検討されることを可能にすることによって、検討するのがより容易になるので、使用された。しかしながら、いくつかの実施形態では、過去に使用されたよりもはるかに密なニューロンの配置が使用される。(たとえば、数十万個から数百万個のニューロンによる)ニューロンの密な配置は、ニューロンが、互いに重複することと、複数のニューロンが、2次元グリッド上に配置されることに加えて、垂直方向に積み重なり得る、3次元配置を形成することとを引き起こす。ニューロンの密な配置は、ニューロンが、神経球などの自発的3次元(3D)構造を形成することを可能にし、これは、ニューロン135を組み込む生物学的ニューラルネットワークの知能を効果的に増加させる。一実施形態では、ニューロン135の密な配置は、1平方ミリメートル当たり少なくとも10,000個の細胞、1平方ミリメートル当たり少なくとも20,000個の細胞、または1平方ミリメートル当たり少なくとも50,000個の細胞を含む。ニューロンの密な配置は、実施形態においてニューロン135の計算アセンブリの発達を可能にする。
【0028】
生物学的ニューロンは、MEA105または同様のデバイス(便宜上、本明細書では一緒にMEAと呼ばれる)上に置かれ得る。MEA105は、ニューロンの刺激を提供するために電極および/または光源を含み得る。追加または代替として、MEA105は、MEA105上のターゲットロケーションにおいて化学物質をリリースすることができる、化学生成器または化学エミッタを含み得る。電極はニューロンの電気刺激を提供し得、光源はニューロンの光学または光ベース刺激を提供し得、化学生成器または化学エミッタはニューロンの化学刺激を提供することができる。実施形態では、電極、化学生成器/エミッタおよび/または光源は、グリッドで配置される。これは、ピンポイント正確さでのニューロンのターゲット刺激を可能にし得る。
【0029】
多くの発光ダイオード(LED)が、一実施形態ではグリッドで配置され得る。別の実施形態では、スクリーンが、1つまたは複数の光源とニューロンとの間に介在され得る。スクリーンは、ニューロンが光に露出されるべきでないエリアにおいて不透明であり得、スクリーンは、ニューロンが光に露出されるべきであるエリアにおいて光に対して透明であり得る(たとえば、開き得る)。スクリーンのどの領域が不透明であり、どの領域が透明であるかが、適宜に調節され得る。一実施形態では、ディスプレイ(たとえば、液晶ディスプレイまたは有機発光ダイオードディスプレイ)が、光源として使用される。
【0030】
一実施形態では、光源は、ターゲット座標において(たとえば、ターゲットニューロンにおいて)光を投射するように可動であり得る1つまたは複数のレーザーを備える。たとえば、レーザーは、複数の軸を中心としてレーザーを回転させることができる、アクチュエータまたはサーボモーターに取り付けられ得る。別の例では、レーザーは固定され得るが、1つまたは複数の可動ミラーが、レーザーからターゲットニューロンまたはロケーションに光を向け得る。
【0031】
実施形態では、化学エミッタのグリッドが、MEA上に配置される。化学生成器/エミッタによってリリースされ得る化学化合物の例は、神経伝達物質、ドーパミン、セロトニン、glutemate、GABA、ACHなどを含む。神経伝達物質は、ニューロンを調整する化学化合物である。たとえば、神経伝達物質は、それらの神経伝達物質に露出されたニューロンの内部発火キャパシティをアップレギュレートまたはダウンレギュレートし得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、複数のタイプの刺激がニューロンに適用され得る。たとえば、電気、光学および/または化学刺激の任意の組合せが、連続的におよび/または並列にニューロンに適用され得る。
【0033】
いくつかのニューロンが励起されることに応答して、それらのニューロンは、電流、電圧、化学物質、光、またはそれらの任意の組合せを生成し得る。これは、電流、電圧、化学物質および/または光を生成するように他の近くのニューロンをトリガし得る。このプロセスは繰り返し得、励起されたニューロンが、次いで、さらに他のニューロンを励起し、以下同様である。
【0034】
MEA105は、ニューロンアクティビティを検出するための1つまたは複数の光学および/または電気センサーをさらに含み得る。追加または代替として、MEA105は、1つまたは複数の化学センサーを含み得る。一実施形態では、MEA105は、ニューロンのロケーションにおいて電圧および/または電流を測定することができる電極のグリッドを含む。実施形態では、電極の同じグリッドが、ニューロンの励起と、そのような励起に応答するニューロンの電気アクティビティを測定することとの両方のために、使用され得る。一実施形態では、化学センサーのグリッドが、特定の化学物質が存在するロケーションを検出するために、MEA105上に配置される。
【0035】
ニューロンは、いくつかの条件下で(たとえば、刺激に応答して)蛍光を発するように設計され得る。そのような事例では、光学センサーが、ニューロンが蛍光を発している、MEA上のロケーションを検出するために(たとえば、どのニューロンが、刺激され、出力を生成しているかを検出するために)使用され得る。一実施形態では、MEA105は、光学センサーのグリッドを含む。一実施形態では、MEA105は、1つまたは複数のカメラを含む。カメラの視野内の異なる領域が、異なるニューロンおよび/またはMEA座標に関連付けられ得る。(1つまたは複数の)カメラによって生成された画像が、ニューロンがアクティブ化された、MEA上のロケーションを決定するために使用され得る。たとえば、画像中の各ピクセルが、MEA105上の特定のx,yロケーションに関連付けられ得る。カメラは、MEA105上のどのx,yロケーションが、所与の時間において蛍光を発したニューロンを有するかを決定するために分析され得る、画像を生成することができる。
【0036】
(1つまたは複数の)MEA105のうちの1つまたは複数が、CMOS回路など、集積回路145(または複数の集積回路)を含む、アクティブMEAであり得る。(1つまたは複数の)集積回路145は、処理論理(たとえば、汎用または専用プロセッサ)、ネットワークアダプタ、デジタルアナログ変換器(DAC)、アナログデジタル変換器(ADC)、および/または他の構成要素を含み得る。ネットワークアダプタは、ワイヤードネットワークアダプタ(たとえば、イーサネットネットワークアダプタ)またはワイヤレスネットワークアダプタ(たとえば、Wi-Fiネットワークアダプタ)であり得、(1つまたは複数の)MEA105がネットワーク120に接続することを可能にし得る。一実施形態では、集積回路145は、汎用プロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、マイクロプロセッサ、あるいはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)などのプログラマブル論理デバイスであり得る、処理デバイスを含む。一実施形態では、集積回路145は、不揮発性メモリ(たとえば、RAM)および/または揮発性メモリ(たとえば、ROM、フラッシュなど)であり得る、メモリを含む。一実施形態では、集積回路145は、処理デバイス、メモリ、ネットワークアダプタ、DAC、および/またはADCを含む、システムオンチップ(SoC)である。
【0037】
一実施形態では、(1つまたは複数の)MEA105のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のリード線および/またはプリント回路板(PCB)を介して1つまたは複数の集積回路145に接続された、パッシブMEAである。
【0038】
一実施形態では、MEA105のうちの1つまたは複数は、2Dグリッドにおける指定された2D座標に光学インパルスを提供することが可能である光学供給源(optical source)をさらに含む。光学供給源は、1つまたは複数の指定された波長を有する光を放出することが可能である発光要素(たとえば、発光ダイオード(LED)、電球、レーザーなど)を含み得る。したがって、optogenicsが、ニューラルアクティビティを操作するために使用され得る。さらに、特定の波長のレーザーが、特定のニューロンの高度に正確なターゲッティングのために使用され得る。光学刺激に対する応答は、次いで、(1つまたは複数の)MEA105において電極によって測定され得る。電気刺激とは異なり、光刺激は、ターゲットにされたオプシンタンパク質を発現し得る特定の細胞(たとえば、ニューロン)を操作し、それにより、神経回路におけるニューロンの部分母集団の役割を調査することを可能にする。また、いくつかの実施形態では、ニューロンに入ると切断およびアクティブ化される特異的に修正されたカルシウムの免疫蛍光が、ニューロンのアクティブ化を画像化するためにカメラとペアにされ得る。したがって、実施形態では、MEA105は、指定された2D座標に光学刺激を提供し、応答して、ニューロン135によって生成された電気シグナルを測定する。
【0039】
一実施形態では、MEA105のうちの1つまたは複数は、2Dグリッドにおける指定された2D座標に電気刺激を提供するが、光学シグナルが測定される。MEA105は、ニューロンの電気励起を光学的に検出し、ニューロンのそのような検出された電気励起に基づいて光学シグナルを生成することが可能な、1つまたは複数の光学センサーを含み得る。したがって、optogenicsが、ニューラルアクティビティを検出するために使用され得る。光学センサーは、電荷結合デバイス(CCD)、相補型金属酸化物(CMOS)デバイス、および/または他のタイプの光学センサーを含み得る。
【0040】
ニューラルアクティビティを光学的に検出するための機構が、以下でさらに詳細に説明される。いくつかの実施形態では、ニューロンに入ると切断およびアクティブ化される特異的に修正されたカルシウムの免疫蛍光が、ニューロンのアクティブ化を画像化するために1つまたは複数の画像センサーとペアにされ得る。いくつかの実施形態では、遺伝的に符号化された電圧検出器が、所与のポイントにおいて細胞に導入され、光で刺激されたときにニューロンのアクティブ化を検出するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼベース反応が、細胞に導入され、外部光刺激の必要なしに電圧の変化を検出するようにニューロンの電圧変化を検出する別の方法とペアにされ得る。
【0041】
一実施形態では、完全光学システムが、MEAの代わりに使用され得る。そのような実施形態では、ニューロンがプレーティングされた基板、および/または追加の構成要素が、2Dグリッドにおける指定された2D座標に光学インパルスを提供することが可能である、光学供給源を含み得る。光学供給源は、1つまたは複数の指定された波長を有する光を放出することが可能である発光要素(たとえば、発光ダイオード(LED)、電球、レーザーなど)を含み得る。さらに、特定の波長のレーザーが、特定のニューロンの高度に正確なターゲッティングのために使用され得る。さらに、基板および/または他の構成要素は、ニューロンの電気励起を光学的に検出し、ニューロンのそのような検出された電気励起に基づいて光学シグナルを生成することが可能な、1つまたは複数の光学センサーを含み得る。したがって、optogenicsが、ニューラルアクティビティを操作および検出するために使用され得る。
【0042】
アクティブMEA105の場合、オンチップシグナル多重化が、(たとえば、HD-MEAの場合と同様に)電気および/または光学シグナルを記録することと、電気インパルスを提供することとにおいて、高い空間時間分解能を達成するために、多数の電極を提供するために使用され得る。その上、弱いニューロンシグナルが、専用回路ユニットによって電極において正しく調整され得、これは、大きいシグナル対ノイズ比を提供する。最終的に、アナログデジタル変換がチップ上で実施され得、したがって、安定したデジタルシグナルが生成される。
【0043】
生物学的ニューロンは、様々な機構を介して、蛍光を発すること、電流を生成すること、電圧を生成すること、化学化合物をリリースすることなどを行うように、設計され得る。いくつかの実施形態では、生物学的ニューロンの励起が、細胞膜特性の変化を刺激し、これは、生物学的ニューロンが、蛍光を発すること、電流を生成すること、電圧を生成すること、化学化合物をリリースすることなどを引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、イオンチャネル、タンパク質、膜内構造、膜外構造、および/または膜内外構造が、ニューロンの刺激に応答して電流、電圧、光および/または化学化合物を生成する。いくつかの実施形態では、チャネル(たとえば、イオンチャネル)が、電流を生成するために、細胞膜において、(たとえば、光への、電圧への、電流への、化学化合物へのなど、露出に応答して)開かれおよび/または閉じられる。いくつかの実施形態では、ニューロンは、(たとえば、タンパク質を介して)電圧を直接生成するように設計され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、生物学的ニューロンは、励起されたとき、それらの膜を通してイオン電流を作成し、これは、細胞の内側と外側との間の電圧の変化を引き起こす。記録するとき、MEA上の電極は、イオンによって運ばれる、環境からの電圧の変化を、電子によって運ばれる電流(電子電流)にトランスデュースする。刺激するとき、電極は、電子電流を、MEAを通るイオン性電流にトランスデュースし得る。これは、興奮性ニューロン(excitable neuron)の膜上の電圧依存性(voltage-gated)イオンチャネルをトリガし、ニューロンが、活動ポテンシャルを脱分極およびトリガすることを引き起こす。
【0045】
いくつかの実施形態では、ニューロンは、刺激に応答してレポータ(たとえば、遺伝子レポータ)を発現する。発現されたレポータは、ニューロンが、ある波長において蛍光を発すること、および/または化学化合物をリリースすることを引き起こし得る。たとえば、ニューロンは、刺激されたときに蛍光を発する蛍光性タンパク質を有するように設計され得る。別の例では、ニューロンは、刺激されたときに(たとえば、光を介して刺激されたときに)別のタンパク質または化学物質を切断してリリースするように設計され得る。いくつかの実施形態では、光は、ニューロン細胞の細胞小器官をターゲットにするために使用され得る。いくつかの実施形態では、光は、ニューロン細胞の細胞膜において、その細胞膜上にまたはその細胞膜を通して、反応をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、ニューロン細胞の刺激は、イオンチャネルを開くまたは閉じる、ニューロン細胞におけるタンパク質をアクティブ化する、膨張させる、抑制する、または切断するなどを行うことができる。
【0046】
一実施形態では、プロトコールが、ニューロン細胞のデュアルSMADシグナル伝達経路を抑制することを介して動作する。SMADは、細胞発達および増殖をレギュレートするために重要である、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-B)スーパーファミリーの受容体のための主要なシグナルトランスデューサである、構造的に同様のタンパク質のファミリーを含む。その略語は、カエノラブディティスエレガンスSMA(「小さい」ワームの表現型)と、ショウジョウバエにおける遺伝子のMADファミリー(「マザーズアゲインストデカペンタプレジック(Mothers Against Decapentaplegic)」)とに対するホモロジーを指す。SMAD抑制は、前方神経外胚葉系への分化を推進することが発見されている。
【0047】
記録されるシグナルのサイズおよび形状は、1つまたは複数のニューロンが位置する培地(たとえば、溶液)の性質(たとえば、培地の導電率、キャパシタンス、および均一性)と、ニューロンと電極との間の接触の性質(たとえば、接触のエリア、および密着性)と、電極の性質(たとえば、電極のジオメトリ、インピーダンス、およびノイズ)と、アナログシグナル処理(たとえば、システムの利得、帯域幅、およびカットオフ周波数の外側の挙動)と、データサンプリング特質(たとえば、サンプリングレートおよびデジタルシグナル処理)とに依存し得る。平面電極を部分的にカバーする単一のニューロンの記録では、接触パッドにおける電圧は、ニューロンと電極との重複する領域の電圧に、その重複する領域の表面エリアと電極全体のエリアとの比を乗算したものにほぼ等しい。ニューロン-電極挙動を予測する代替手段は、集中回路要素図においてシステムを単純化しすぎることの限界を避ける試みにおいて、ジオメトリベース有限要素分析を使用してシステムをモデル化することによるものである。
【0048】
いくつかの実施形態では、ブラインディングが、ニューロンによって生成された電気シグナル、化学シグナルおよび/または光学シグナルの検出と、命令に基づいてMEA105によって生成された電気シグナル、化学シグナルおよび/または光学シグナルの検出とを区別する能力を容易にするために使用される。ブラインディングは、MEAインターフェース150および/または仮想環境155からの命令に基づいて引き起こされた電極/光学センサー/化学センサーの刺激が、ニューロン135によって生成された電気シグナル/光/化学シグナルの検出と干渉することを防ぐ。1つまたは複数のブラインディング方式が使用され得る。MEAインターフェース150は、処理すべきシグナルの第1のサブセットと、無視、削除、またはフィルタで除去すべきシグナルの第2のサブセットとを決定するために、ブラインディング技法を適用し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、MEAインターフェース150および/または集積回路145は、電極がいつ刺激されるか、および/またはどの電極が刺激されるかを知り得る。電極を刺激することによって生成される電気フィールドは、ニューロン135によって生成される電気フィールドよりもはるかに大きくなり得る。したがって、一実施形態では、検出された電気シグナルは、フィルタに適用され、このフィルタは、しきい値サイズよりも大きい(たとえば、しきい値数よりも多い電極によって検出された)電気フィールド/シグナルをフィルタで除去し得、これらの電気フィールド/シグナルは、集積回路145および/またはMEAインターフェース150による電極のアクティブ刺激によって引き起こされる。そのようなフィルタ処理は、たとえば、集積回路145および/またはサーバコンピューティングデバイス110によって、実施され得る。しかしながら、ニューロン135によって引き起こされるより小さい電気フィールドは、少数の電極によってのみ検出され得、したがって、フィルタで除去されないことがある。さらに、シグナルは、電圧に基づいてフィルタで除去され得る。たとえば、電極130によって引き起こされる電気シグナルは、ニューロン135によって生成される電気シグナルよりもはるかに大きい電圧を有し得る。たとえば、電極130によって生成される電気シグナルは、1000分の1ボルトのオーダーの電圧を有し得、ニューロン135によって生成される電気シグナルは、100万分の1ボルトのオーダーの電圧を有し得る。したがって、電気シグナルは、追加または代替として、電圧に基づいてフィルタ処理され得る。同様のブラインディング技法が、上記および以下で説明されるブラインディング技法のための光学および/または化学シグナルについても適用され得る。
【0050】
一実施形態では、電気シグナルが電極に出力される、および/または光学シグナルが光学構成要素を介して出力される、大まかなタイミングが知られる。タイミングの知識は、コマンド送達における予測不可能な遅延のために完全でないことがある。したがって、ブラインディングは、電気および/または光学シグナルが電極130および/または光学構成要素に出力される時間において、またはその時間の辺りに出力される電気および/または光学シグナルを無視することによって実施され得る。一実施形態では、コマンドの内部カウンタが、(たとえば、サーバコンピューティングデバイス110および/または集積回路145によって)維持される。内部カウンタが増分するたびに、これは、新しい電気および/または光学シグナルが1つまたは複数の電極に出力されることを示し得る。したがって、一実施形態では、内部カウンタが増分したとき、電気および/または光学シグナルが、設定された時間量の間無視される。
【0051】
いくつかの実施形態では、複数のブラインディング技法が組み合わせられ得る。
【0052】
一実施形態では、15個超の同時の大きい(75mV超の)スパイクが検出されたときのすべてのシグナルをブラインディングすることに基づく、ブラインディング方法(たとえば、コンセンサスブラインド)が、システムによって送達される刺激が、細胞のアクティビティとして登録されることをブロックするために実装される。いくつかの実施形態では、「コマンドカウントブラインディング」と呼ばれる、新しいブラインディング方法が実装される。この方法は、任意の形態の刺激を生成するためにコマンドが送られたとき、すべての運動アクティビティの読出しをブラインディングする。テスト中に、これは、前に使用されたコンセンサスブラインディングよりも著しくロバストであることが発見され、感覚刺激の増加された密度および変動性を可能にした。
【0053】
(1つまたは複数の)MEA105は、分離された細胞培養物(たとえば、生物学的ニューロンの培養物)に対して電気生理学的実験を実施するために使用され得る。分離されたニューロン培養物では、ニューロンは、生物学的ニューラルネットワークを自発的に形成する。この現象は、上記のように、極めて密なニューラル培養物を使用することによって増加され得る。(1つまたは複数の)MEA105は、電極130のアレイと、生物学的ニューロン135の生きている培養物を、生物学的ニューロンを生きているように保つ栄養分の豊富な溶液において含んでいる、記録チャンバ140とを含み得る。電極130のアレイは、平面アレイ(たとえば、2次元(2D)グリッド)または3次元(3D)アレイ(たとえば、3D行列)であり得る。優れたシグナル品質において、高い空間および時間分解能において、2D座標(または3D座標)において測定を行うために使用され得る、電極130のアレイ。さらに、電極130のアレイは、2D座標または3D座標において電気インパルスを適用するために使用され得る。
【0054】
実施形態において1つまたは複数のHD-MEA(たとえば、Maxwell BiosystemsによるMaxOne MEA)上に皮質ニューロンをプレーティングすることによって、高い空間および時間分解能における、ニューラルシステムにおける電気生理学的アクティビティのin-vitro発達のマッピングが、達成された。一実施形態では、E15.5げっ歯類からの1次皮質細胞におけるロバストなアクティビティが、DIV14において発見され、同期されたアクティビティのバーストが定期的に観測された。対照的に、一実施形態では、同様の同期されたバーストアクティビティが、DIV73まで、iPSCバックグラウンドからの皮質細胞において観測されなかった。一例では、単一のスパイキングニューロンが、一実施形態においてDIV42という早期にこれらの後者の培養物において識別されたが、より規則正しいクラスター化されたスパイキングは、およそDIV82まで観測されなかった。
【0055】
活動ポテンシャルからもたらされる電気アクティビティの変化を記録するとともに、MEA105は、電圧の範囲において細胞を刺激するポテンシャルを有する。外部電気刺激を提供することは、細胞に対して比較的非侵襲性であり、内部電気刺激と同等の様式で活動ポテンシャルまたは応答を効果的に引き出す。適切なコーディング方式により、外部電気刺激が、様々な情報を伝えることが可能である。異なるコーディング方式が、以下でさらに詳細に説明される。この方法を通して、ニューラル培養物から情報を「読み取る」だけでなく、ニューラル培養物にデータを「書き込む」、キャパシティがある。
【0056】
MEAインターフェース150は、(1つまたは複数の)仮想環境155の入力/出力と、(1つまたは複数の)MEA105の入力/出力との間で翻訳することを担当し得る。互いの間の電気アクティビティの共有「言語」を有する、ニューロンの固有の特質は、シリコンと生物学的システムとの間のリンクが、電気刺激を通して形成され得ることを意味する。この理由で、電気刺激(ならびに光学および化学刺激)は、in vitroでニューロン可塑性を誘導するために、または、細胞に関する構造化された情報を、環境におけるこれらの細胞の具現化を容易にするために提供するために、使用され得る。
【0057】
実施形態は、生物学的ニューラルネットワーク(たとえば、ニューロン培養物)を電子システムと(たとえば、コンピューティングデバイス上で実行する仮想環境または論理と)インターフェースするための(MEAインターフェース150と呼ばれる)ニューラルインターフェースを提供する。ニューラルインターフェースの役割は、処理論理によって出力された情報を、生物学的ニューラルネットワークに送達され、生物学的ニューラルネットワークによって理解され得る、フォーマットに配置することを含む、符号化することと、生物学的ニューラルネットワークによって出力された情報を、処理論理に送達され、処理論理によって理解され得る、フォーマットに配置することを含む、復号することとを実施することである。ニューラルリンクは、数百個の電極からの不規則な電気、化学および/または光学シグナルをとり、次いで、それらの不規則な電気、化学および/または光学シグナルを解釈し、それらの不規則な電気、化学および/または光学シグナルに基づいて有用な何かを行う、コア機能を実施する。たとえば、本明細書で説明されるニューラルインターフェースは、生物学的ニューラルネットワークが、ロボット(たとえば、ロボットアーム)のアクティビティを制御すること、ゲームをプレイすること、仮想環境と相互作用すること、自動車を運転することなどを可能にするために、使用され得る。本明細書の実施形態は、(旧来のMEAあるいは光学アナログまたは電気/光学アナログであり得る)MEA105上のニューロン135のニューロン培養物である生物学的ニューラルネットワークについて説明するが、代替実施形態では、生物学的ニューラルネットワークは、生きている人または動物の脳の一部であり得る。本明細書の実施形態で説明されるニューラルインターフェースは、人間の脳のニューロンと処理論理および/またはコンピューティングデバイスとの間のブリッジとして使用され得る。
【0058】
一実施形態では、ニューラルインターフェース(たとえば、MEAインターフェース150)は、時間/レート符号化および/または場所/位置符号化をベクトルおよび/またはテンソルに変換することができ、ベクトルおよび/またはテンソルを時間/レート符号化および/または場所/位置符号化に変換することができる、ベクトル化ブリッジを提供する。デジタルシステムを生物学的ニューラルアクティビティと効果的にインターフェースするために、リアルタイムin-vitroニューラルアクティビティをとり、そのニューラルアクティビティをベクトルおよび/またはテンソル(たとえば、数のリスト)に翻訳するための、効率的な機構が、重要であり得る。ベクトルおよびテンソルは値の静的リストであり、ニューラルインターフェースは、値のこれらの静的リストを電極の実際のポテンシャルスパイキングに変換し、ポテンシャルスパイキングは、レートベースコーディング方式、場所ベースコーディング方式および/または混合コーディング方式に従って実施され得る。したがって、ポテンシャルスパイキング(たとえば、刺激パターン)は、レートコーディングに従って、また、2Dまたは3D空間レイアウトに関して、実施され得る。さらに、ニューラルインターフェース(たとえば、MEAインターフェース150)は、測定されたポテンシャルスパイキング(たとえば、時間および/または空間にわたる電極シグナル)を値の静的リスト(たとえば、ベクトルおよび/またはテンソル)に変換する。ニューラルインターフェースは、たとえば、いつおよびどこで刺激を提供すべきかを選定するための、生物学的に適合性がある機構を提供する。これは、どの電極に電気シグナルを適用すべきか(または、光学シグナルの生成のために、どの光源にシグナルを適用すべきか)、使用すべき電圧、使用すべき電流、使用すべき周波数などを決定することを含むことができる。したがって、ベクトルまたはテンソルが、たとえば、時間的、および電極による、電圧レベルをキャプチャする、値のセットを含み得る。ニューラルインターフェースは、いくつかの実施形態においてサーバコンピューティングデバイス110上にあるように示されているが、ニューラルインターフェースはまた、実施形態において(たとえば、集積回路145を使用して実装された)MEA上にあり得る。いくつかの実施形態では、ニューラルインターフェースのいくつかの動作が、MEA105によって実施され、ニューラルインターフェースの他の動作が、(たとえば、MEAインターフェース150によって)サーバコンピューティングデバイス110において実施される。
【0059】
ニューラル培養物をタスクを実施するように(すなわち、Pongをプレイするかまたは他のタスクを実施するように)トレーニングするために、MEAのエリア(たとえば、電極のグリッド)または他のデバイス(たとえば、完全光学デバイス)が、領域に分割され得、各領域が役割を割り当てられ得る。一例が、図7に関して以下に記載される。1つの役割が、仮想環境に関連付けられた入力がニューラル培養物に提供される、シミュレートされた感覚野である。シミュレートされた感覚野はまた、ニューラル培養物のトレーニング中のフィードバック(たとえば、罰刺激および/または報酬刺激)のために使用され得る。代替的に、フィードバックの役割が、別の領域に割り当てられ得る。また、他の役割が、ニューラル培養物が、もたらすようにトレーニングされることになる、出力の各タイプについて割り当てられ得る。たとえば、ニューラル培養物を、ゲームPongをプレイするようにトレーニングする場合、パドルを上に(または左に)移動させるための1つの役割と、パドルを下に(または右に)移動させるための1つの役割とがあり得る。パドルを上に移動させる役割はある領域に割り当てられ得、パドルを下に移動させる役割は別の領域に割り当てられ得る。可能な役割の数は恣意的に大きくなり得、それらの役割が何を表現するかについてのオプションはほぼ無限である。
【0060】
上記のように、異なる意味がMEA上の異なるロケーションにおける刺激(たとえば、電気、化学および/または光学刺激)に関連付けられる、場所ベースまたは位置ベース符号化方式が、実施形態において使用され得る。たとえば、感覚野における刺激が、仮想環境の状態を表現し得る。感覚野における刺激の符号化が、電極の位置と仮想環境からの情報との間の相関に基づき得る(場所ベース符号化)。一例では、場所ベース符号化は、第1の軸(たとえば、x軸)上のおよび/または第2の軸(たとえば、y軸)上の、パドルとボールとの間の距離を伝えるために使用される。したがって、一例では、どの電極が電気インパルスを出力するかが、ボールがx軸上のどこにあるか、および/またはボールがy軸上のどこにあるかを示し得る。同様に、復号では、ニューラルアクティビティがどこで検出されたかが、ニューラルアクティビティをどんな活動に復号すべきかを示し得る。たとえば、第1の領域におけるニューロンの発火が、パドルがある方向に移動するべきであることを示し得、第2の領域におけるニューロンの発火が、パドルが別の方向に移動するべきであることを示し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、レートベース符号化方式も使用され得る。レートベース符号化方式では、ニューロンアクティブ化の周波数が、意味に関連付けられ得る。たとえば、ニューロンアクティブ化の第1の周波数が、第1の意味(たとえば、パドルが仮想環境においてボールの近くにある、または第1の軸におけるボールとパドルとの間の第1の距離)を伝え得、ニューロンアクティブ化の第2の周波数が、第2の意味(たとえば、パドルが仮想環境においてボールから遠くにある、または第1の軸におけるボールとパドルとの間の第2の距離)を伝え得る。同様に、復号では、ニューラルアクティビティが検出された周波数が、ニューラルアクティビティをどんな活動に復号すべきかを示し得る。たとえば、第1のレートにおけるニューロンの発火が、パドルを移動させるための第1の速さを示し得、第2のレートにおけるニューロンの発火が、パドルを移動させるための第2の速さを示し得る。
【0062】
一例では、一定の予測不可能な刺激は、変動する周波数において1つのDACを通して培養物に提供され得、同時のおよび2次の場所およびレートコーディングされた刺激は、2次DACを通して提供される。これらのシグナルの組合せは、多次元空間におけるターゲットへのベクトル化方向を提供するだけでなく、所与のターゲットからの差異を通知することもできる。
【0063】
さらなる実施形態では、一部の情報が、ニューロンに提供された電気、化学および/または光学シグナルの位置に基づいて伝えられ、他の情報が、ニューロンに提供された電気、化学および/または光学シグナルの周波数に基づいて伝えられる、混合符号化方式が使用され得る。感覚野における刺激の符号化が、電極の位置と仮想環境からの情報との間の相関に基づき(場所ベース符号化)、および/または電極の発火の周波数間の相関に基づき得る(レートベース符号化)。混合符号化方式が、仮想環境に関する情報をニューロンに伝えるために使用される、一例では、場所ベース符号化は、第1の軸(たとえば、x軸)上のパドルとボールとの間の距離を伝えるために使用され、レートベース符号化は、第2の軸(たとえば、y軸)上のパドルとボールとの間の距離を伝えるために使用される。したがって、一例では、どの電極が電気インパルスを出力するかが、ボールがx軸上のどこにあるかを示し得、それらの電極がインパルスを生成する周波数が、ボールがy軸上のどこにあるかを示し得る。いくつかの実施形態では、一部の情報が、ニューロンによって出力された電気、化学および/または光学シグナルの位置に基づいて伝えられ、他の情報が、ニューロンによって出力された電気、化学および/または光学シグナルの周波数に基づいて伝えられる、混合復号方式が使用され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、情報入力のより高い密度と予測可能な刺激とが、改善されたパフォーマンスをもたらす。いくつかの実施形態では、刺激は、シータ範囲(4Hz)のみにおいて送達される。これは、シータ律動が、感覚刺激のアクティブ取入れと刺激サンプリングとにリンクされることが提案されているので、正当化される。しかしながら、動物モデルにおける説得力のある研究が、ベータ周波数(およそ15~40Hz)律動が、視覚野にわたるフィードバック相互作用を促進するためのトップダウン処理に関与し得ることを示唆する。また、ベータ振動が、視覚刺激の予期と視覚応答の後続のキューイングとにリンクされている。したがって、実施形態では、刺激は、ベータ周波数範囲において送達される。
【0065】
いくつかの実施形態では、場所ベースコーディングのみにより、単一のタイプよりも多くの情報についてコーディングすることが困難であるので、標準的な静的な純粋に場所コーディングされたデータが、理想的でないことがある。単一の固定周波数刺激が、概して、単一の次元のみについてコーディングし得る。可変周波数を使用することが、Pongの例では、他の軸上のパドルからの相対距離を通信する能力など、追加情報を伝える能力を与える。これを仮定すれば、組合せレートおよび場所コーディングされたシグナルを使用することの効果を調査することが望ましいと考えられた。いくつかの実施形態では、刺激アクティビティは、仮想環境内の条件に基づいて(たとえば、Pongの例におけるx軸上のパドルまでの距離に基づいて)、4~40Hzの間で変化する。いくつかの実施形態では、刺激アクティビティが提供される電極は、追加または代替として、場所コーディングされた情報に従って仮想環境内の条件に基づいて変化する(たとえば、場所コーディングされた情報が、Pongの例におけるy軸上のパドルからの距離を通信し得る)。
【0066】
上述のように、レートベースおよび/または位置ベース復号方式は、ニューロンによって出力されたシグナルを復号するためにも使用され得る。たとえば、場所ベース復号方式は、第1の出力領域(たとえば、第1の運動領域)からのシグナルを第1の活動コマンドとして解釈するために、および第2の出力領域(たとえば、第2の運動領域)からのシグナルを第2の活動コマンドとして解釈するために、使用され得る。別の例では、レートベース復号方式は、運動領域の連続体を含む、1つまたは複数の出力領域からのシグナルを解釈するために使用され得る。たとえば、シグナルの第1のレートが、パドルを左に移動させることを示し得、シグナルの第2のレートが、パドルを右に移動させることを示し得る。
【0067】
実施形態では、各場所コーディングされた領域は、x軸に対する値を表現し得、レートコーディングは、y軸に対する値を表現し得る。混合場所-レートコードの一例が、仮想ひげを使用してその環境をナビゲートする、マウスのような仮想エージェントであり得る。各ひげが固定空間ロケーションにあり、そのひげが特定の物体に触れている距離が、レートコーディングされたパターンに翻訳されるので、活動ポテンシャルの異なるレートをもつ異なるひげを、それらの特定のロケーションにおいて有することが、その周囲環境の「3D検知」を可能にする。
【0068】
Pongの例を進めると、第1の運動領域におけるシグナルの第1の周波数が、パドルが第1の方向に移動するべきであることと、そのパドルを第1の方向に移動させるための速度との両方を示し得る。第1の運動領域におけるシグナルの第2の周波数が、パドルが第1の方向に移動するべきであることと、そのパドルを第1の方向に移動させるための第2の速度との両方を示し得る。第2の運動領域におけるシグナルの第1の周波数が、パドルが第2の方向に移動するべきであることと、そのパドルを第2の方向に移動させるための第1の速度との両方を示し得る。第2の運動領域におけるシグナルの第2の周波数が、パドルが第2の方向に移動するべきであることと、そのパドルを第2の方向に移動させるための第2の速度との両方を示し得る。レートベースコーディングと場所ベースコーディングとを随意に含む、混合コーディングおよび/または復号が、仮想環境と、ニューラル培養物が実施するようにトレーニングされた1つまたは複数のタスクとに応じて、多くの他の意味を伝えるために使用され得る。
【0069】
コーディングおよび/または復号方式はまた、電圧レベルおよび/または電流レベルに少なくとも部分的に基づき得る。したがって、混合コーディング方式は、情報の符号化および/または復号のために、位置、レート、電圧および/または電流に基づく情報を伝え得る。
【0070】
研究は、刺激が、得られたニューラルアクティビティと切り離された、開ループシステムを旧来使用していた。この作業は、電気刺激が、ニューラル細胞の培養物において持続性応答を誘導することができるが、有意味な目標指向挙動を引き出すかまたは観測するやり方でこれらの応答を導くことができなかった、ことを実証することに限定されていた。これらの検討は、細胞が自己組織化する機構へのある程度の理解を可能にした。対照的に、実施形態では、閉ループ適応トレーニングアルゴリズムが、発火パターンとアクティビティ状態とを変調するためにin vitroニューラルネットワークのために使用され得、神経電気アクティビティを変えることにおいて、開ループ刺激パターンよりも著しく効果的である。閉ループシステムは、ニューラル培養物からの挙動の因果的効果に関するフィードバックを提供することによって、in vitro培養物実施形態を与える。
【0071】
図2A図2Bは、開ループフィードバックシステムと閉ループフィードバックシステムとの間の差を示す。図2Aは、例示的な開ループフィードバックシステム200を示す。(非フィードバックシステムまたは開ループシステムとも呼ばれる)開ループフィードバックシステムは、何らかのプロセス210によって生成された出力215が、制御活動または入力205に対して影響または効果を有しない、連続制御システムである。したがって、開ループフィードバックシステム200では、入力205が、プロセス210によって処理されて、出力215を生成する。後で、出力215によって影響を及ぼされない新しい入力が、プロセス210に入力されて、新しい出力を生成し得る。したがって、開ループシステムは、最終結果(出力215)にかかわらず、その入力205または設定ポイントに対して働くことが予想される。
【0072】
図2Bは、(閉ループシステムとも呼ばれる)閉ループフィードバックシステム250を示す。開ループシステムと同様に、閉ループシステムでは、入力255が、プロセス260に提供され、プロセス260は、入力255に対して動作して、出力265を生成する。したがって、閉ループシステムは、開ループシステムと同様の順方向パスを使用する。しかしながら、閉ループシステム250は、その出力265と入力255との間の1つまたは複数のフィードバックループを有し、1つまたは複数のフィードバックループは、プロセス260へのさらなる入力として使用され得るフィードバック270を提供する。ニューロンが、仮想または物理的環境に作用するために、それら自体を修正することを可能にし、環境が、ニューロンがどのように挙動するかを修正することを可能にする、閉ループシステムが使用され得る。閉ループシステムは、ターゲット出力条件を実際の条件と比較することによって、ターゲット出力条件を自動的に達成および維持するように、設計され得る。いくつかの実施形態では、閉ループシステムは、出力265と基準値または基準状態との間の差である、誤差シグナルを生成する。言い換えれば、「閉ループシステム」は、そのシステムの制御活動が何らかのやり方で出力に依存する、完全自動制御システムである。
【0073】
実証された実施形態は、閉ループフィードバックシステム(たとえば、電気生理学的閉ループフィードバックシステム)が、開フィードバックシステムにより達成され得るものに勝り、それを越える、有意なネットワーク可塑性と、潜在的に、挙動的な適応とを生じることを示した。システムが採用した状態の結果に関してシステムにフィードバックを提供することは、ニューラルシステムが、所与のねらいのために必要とされるように、挙動を適応させ、変えるために、必要とされる情報を提供すると考えられる。電気生理学的閉ループシステムなどの閉ループフィードバックシステムは、1つまたは複数の生物学的システムの機能から直接または間接的に生成される所与の情報をとり、この情報、またはこの情報の派生物を、外部環境またはシステムに適用または通信させ、それにより、外部環境を変えおよび/または外部環境に影響を与え、次いで、変化した環境状態を1つまたは複数の生物学的システムに適用または通信することによって、機能する。一例では、これは、電気刺激を生物学的ニューロンに提供し、生物学的ニューロンのアクティビティを記録し、次いで、記録されたアクティビティを、シミュレートされたデバイスまたは物理デバイスの活動を制御するためのメトリックとして使用することを伴うことができる。シミュレートされたデバイスまたは物理デバイスに対するこの制御の成果は、次いで、提供される電気刺激の変化を介して生物学的ニューロンに中継される。
【0074】
図1に戻ると、各仮想環境155(または実験論理または現実環境)が、1つまたは複数のMEA105および/または外部供給源から入力を受信し得る、ならびに出力を生成し得る、何らかの処理論理を含み得る。仮想環境の処理論理の一例は、人工ニューラルネットワーク、深層ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワークなど、機械学習モデルである。仮想環境中に含まれる他の機械学習モデルは、k近傍法アルゴリズム、学習ベクトル量子化、自己組織化マップ、回帰分析、規則化アルゴリズムなどを適用し得る。仮想環境の処理論理の別の例は、サーバコンピューティングデバイス上で実行するアプリケーションである。たとえば、アプリケーションは、ゲーム(たとえば、Pong)であり得、MEA105上の生物学的ニューロン135は、ゲームをプレイするようにトレーニングされ得る。アプリケーションはまた、実施されるべき1つまたは複数のタスクまたは解決されるべき問題を含む、任意の他のプログラムであり得、MEA105上の生物学的ニューロン135は、1つまたは複数のタスクを実施するようにトレーニングされ得る。
【0075】
サーバコンピューティングデバイス110は、サードパーティが、仮想環境155をアップロードし、それらの仮想環境155を1つまたは複数のMEA105に接続することを可能にする、1つまたは複数のアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を提供し得る。各仮想環境155は、以下でより詳細に説明されるように、1つまたは複数のMEA105を割り当てられ得、それらのMEA105上のニューロン135を何らかのタスクを実施するようにトレーニングし得る。各仮想環境155は、仮想環境識別子(ID)を割り当てられ得、各MEA105が、MEA IDを割り当てられ得る。仮想環境IDは、データベースまたは他のデータストアにおいてMEA ID105に関連付けられ得、これらは、(1つまたは複数の)サーバコンピューティングデバイス110によって維持され得る。実施形態では、1つまたは複数の仮想環境が、現実環境の仮想化であり得る。そのような仮想環境は、仮想環境によって反映される現実環境の状態に基づいて、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで更新され得る。これは、仮想環境が、生物学的ニューロンとインターフェースし、また、現実世界のシステムを制御するための命令を提供することを可能にする。
【0076】
仮想環境155がMEA105とペアにされると、その仮想環境は、MEA105のためにデジタル入力シグナルを提供し始め得る。仮想環境155は、たとえば、ベクトル(たとえば、疎なベクトルおよび/または浮動小数点ベクトル)、何らかの通信プロトコールに準拠するメッセージ、あるいは値の2Dまたは3D行列であり得る、デジタル入力シグナルを生成し得る。MEAインターフェース150は、MEA105の電極130のアレイ、光源、化学エミッタ、光学センサー、化学センサーなどに関する情報を含み得る。これは、たとえば、電極130の数、および電極130が記録チャンバ140においてどのように配置されるか(たとえば、電極の2Dグリッドでは、電極の数または行および列)に関する情報を含み得る。MEAインターフェース150は、符号化方式に従って、仮想環境155からのデジタル入力シグナルを、1つまたは複数の電気、化学および/または光学インパルスのための命令に変換し得、各電気、化学および/または光学インパルス命令が、2D座標または3D座標に関連付けられる。各電気、化学および/または光学インパルス命令は、適用すべきインパルスの振幅または強度、適用すべきインパルスの周波数または波長、電気、化学および/または光学インパルスをいつ適用すべきかのタイミング、ならびに/あるいは適用すべきインパルスの電流に関する情報をさらに含み得る。したがって、各インパルスのための情報は、(x座標、y座標、z座標、強度/振幅、周波数/波長、電流、または他のコーディングされた情報)のうちの1つまたは複数を含むタプルであり得る。
【0077】
MEAインターフェース150が、仮想環境からのデジタル入力シグナルを、1つまたは複数の光学、化学および/または電気インパルスのための情報に変換する(本明細書では符号化と呼ばれる)と、MEAインターフェース150は、情報を適切なMEA105に送り得る。上記で説明されたように、そのような符号化は、場所ベース符号化方式、レートベース符号化方式、ハイブリッド符号化方式、または別のタイプの符号化方式であり得る、符号化方式に従って実施され得る。MEA105の集積回路145、またはコンピューティングデバイスが、(たとえば、DACを使用して)情報を光学または電気インパルスのための1つまたは複数のアナログシグナルに変換し得る。MEA105は、指定された座標において、および/または指定された強度/振幅、周波数/波長などで、光学、化学および/または電気インパルスを適用するために、1つまたは複数のアナログシグナルを適切な電極130(または発光要素または化学エミッタ)に適用する。
【0078】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のカメラが、アクティブ化されたニューロンを測定するために使用される。実施形態では、ニューロンは、それらのニューロンが発火するとき、蛍光を発するように修正され得、蛍光は、画像センサー(たとえば、カメラ)によってキャプチャされ得る。一実施形態では、修正されたカルシウムセンサーは、細胞カルシウムレベルが変化したとき、ニューロンが蛍光を発することを引き起こすために使用され得る。カルシウムセンサーは、カルシウムセンサーが入り、細胞エステラーゼによって、ニューロンを可能にし得るとき、切断およびアクティブ化され得る(これは、ニューロンまたはニューロンのペアがアクティブ化されたとき、起こり得る)。カルシウムセンサーの切断は、細胞カルシウムを結びつけることに応答して蛍光を呈することである。
【0079】
一実施形態では、遺伝的に符号化された電圧インジケータ(GEVI:genetically encoded voltage indicator)が使用される。GEVIは、膜ポテンシャルの蛍光性タンパク質レポータである。したがって、GEVIは、細胞における膜ポテンシャルを検知し、電圧の変化を出力の形態に関係付けることができる、タンパク質である。実施形態では、タンパク質は、蛍光を発することによって出力を生成する。GEVIは、電圧検知機能を実現するために多くの構成設計を有することができる。実施形態では、GEVIは、細胞膜上にまたは細胞膜中にある。GEVIは、電圧感受性ドメイン(VSD:voltage-sensitive domain)ベースセンサーの一部として電圧差を検知して、蛍光の変化によってその電圧差を報告する。別の実施形態では、GEVIは、ロドプシン(網膜中の桿細胞において発見されるGタンパク質結合受容体(coupled receptor))ベースセンサーであり得る。別の実施形態では、GEVIは、ロドプシン-蛍光共鳴エネルギー転移(FRET:fluorescence resonance energy transfer)センサーであり得る。
【0080】
一実施形態では、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET:Bioluminescence resonance energy transfer)が使用される。一実施形態では、BRETは、蛍光性タンパク質がルシフェラーゼ酵素の近くにある場合、蛍光性タンパク質を励起するために使用され得る、ルシフェラーゼ反応から派生されたエネルギーに基づく。BRETは、当該のタンパク質へのドナー(ルシフェラーゼ)分子とアクセプタ(蛍光性)分子との融合を含む。エネルギーは、近傍にあるときにドナーからアクセプタに非放射ダイポール-ダイポール結合を通して転移され、結果的に特定の波長において蛍光放出が生じる。ドナーによって放出されるエネルギーに対するアクセプタによって放出されるエネルギーは、BRETシグナルと呼ばれる。BRETシグナルは、ドナー分子とアクセプタ分子とのスペクトル特質、比、距離および相対配向、ならびに当該のタンパク質間の相互作用の強さおよび安定性に依存する。
【0081】
一実施形態では、GEVIは、細胞において電圧変化が発生したとき、光の放出(たとえば、ルシフェラーゼベース放出)を可能にするために、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)技法と一緒に発現される。これは、追加の蛍光画像化なしに発火細胞の観測を可能にする。一実施形態では、MEAにおける複数のin vitro生物学的ニューロンは、各々、第2のシグナルを生成するために蛍光を発する、遺伝的に符号化された電圧インジケータ(GEVI)と、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)とを備える。別の実施形態では、遺伝的エンジニアリングとタンパク質エンジニアリングとを通して、ロドプシンベース電圧感受性ユニットまたは別のVSDのいずれかが、電圧が変化したとき、埋め込まれたフルオロフォアをもつユニットから、結びつけられたルシフェラーゼを切断するかまたは転移させるように働き、それにより、細胞の内側のまたは細胞の周りの、活動ポテンシャルなど、電圧変化をマークする光の波長を放出する。別の実施形態では、膜電圧の変化は、ルシフェラーゼにおいて結びつけられたエネルギーのリリースをトリガし、それにより、フルオロフォアを励起する、局所的な電気化学ポテンシャルに影響を及ぼすことになる。
【0082】
1つまたは複数のカメラは、蛍光を検出し、蛍光が発生したロケーションを決定することができる。代替的に、MEAまたはコンピューティングデバイスは、カメラから画像を受信し、蛍光がどこで発生したかを決定することができる。特に、MEAまたはコンピューティングデバイスは、光が画像から測定されたところの座標を決定し得る。MEAまたはコンピューティングデバイスは、次いで、光が検出されたロケーション(たとえば、免疫蛍光を呈したロケーション)のデジタル表現を生成し得る。
【0083】
MEAインターフェース150は、MEA105からデジタル表現を受信し得る。MEAインターフェース150は、次いで、MEA105から受信されたデジタル表現に基づいて応答メッセージを生成し(たとえば、復号を実施し)得る。上記で説明されたように、そのような復号は、場所ベースコーディング方式、レートベースコーディング方式、ハイブリッドコーディング方式、または別のタイプのコーディング方式であり得る、復号方式に従って実施され得る。応答メッセージを生成することは、その表現を、仮想環境155によって可読であるフォーマットに変換することを含み得る。これは、一実施形態では、(たとえば、様々な座標における電気シグナルを表現する値の行列の形態のものであり得る)その表現を、疎なベクトルまたはテンソルに変換することを含み得る。MEAインターフェース150は、次いで、応答メッセージを仮想環境155に送り得る。
【0084】
仮想環境155は、応答メッセージを処理し得、その処理に基づいて、ニューロン135によって出力された電気シグナルが、仮想環境155(または他の論理)によって設定されたターゲットに対応するかどうかを決定し得る。ターゲットは、MEAインターフェース150および/またはMEA105に知られていないことがある。電気シグナルがターゲットに対応した場合、仮想環境155は、MEAインターフェース150のAPIを使用して、正の強化トレーニングシグナルをMEAインターフェース150に送り得る。正の強化トレーニングシグナルは、デジタル入力シグナルに応答してニューロン135によって出力されたシグナル(たとえば、電気、化学および/または光学シグナル)が、仮想環境155の何らかの規準を満たしたことを示す(たとえば、仮想環境の何らかのターゲット目的が1つまたは複数の電気シグナルの表現によって満たされたことを示す)。代替的に、いくつかの実施形態では、正の強化トレーニングシグナルは、生成されないかまたはMEAインターフェースに送られない。また、シグナルがターゲットに対応することに失敗した場合、仮想環境155は、MEAインターフェース150のAPIを使用して、負の強化トレーニングシグナルをMEAインターフェース150に送り得る。負の強化トレーニングシグナルは、デジタル入力シグナルに応答してニューロン135によって出力されたシグナルが、仮想環境155の何らかの規準を満たすことに失敗したことを示す(たとえば、仮想環境の何らかのターゲット目的が1つまたは複数の電気シグナルの表現によって満たされなかったことを示す)。代替的に、いくつかの実施形態では、負の強化トレーニングシグナルは、生成されないかまたは送られない。代わりに、ニューロン135に対するすべての入力が、シグナルがターゲットに対応することに失敗した場合、短い時間期間の間休止され得る。一実施形態では、正の強化シグナルは使用されるが、負の強化シグナルは使用されない。一実施形態では、正の強化シグナルと負の強化シグナルの両方が使用される。一実施形態では、正の強化シグナルではなく、負の強化シグナルが使用される。
【0085】
一実施形態では、正の強化シグナルは、予測可能なシグナルであるかまたは予測可能なシグナルを含み、負の強化シグナルは、予測不可能なシグナルであるかまたは予測不可能なシグナルを含む。予測可能なシグナルは、設定されたパターンに従うシグナルであり得る。理論上、ニューロン(および脳)は、予測機械であり、予測可能な刺激を引き起こすような様式で働く(たとえば、予測可能な刺激を望む)。したがって、予測可能な刺激または予測不可能な刺激が、電気刺激、光学刺激、または化学刺激であるかどうかにかかわらず、予測不可能な刺激は、罰の形態として使用され得、予測可能な刺激は、報酬の形態として使用され得る。予測可能な刺激と予測不可能な刺激とは、実施形態においてニューロンの挙動を整形するために使用され得る。一例では、MEAは、2~20個の(たとえば、8つまたは10個の)感覚電極、または所与のあらかじめ定義されたエリアにわたる感覚野の連続体など、(刺激電極とも呼ばれる)複数の感覚電極を含み得る。これらの感覚電極(および/または光学構成要素)は、仮想環境155および/またはトレーニング論理の1つまたは複数のルールに従って電気および/または光学シグナルを送達し得る。同様に、化学エミッタが、仮想環境155および/またはトレーニング論理の1つまたは複数のルールに従って化学シグナルを送達し得る。同様に、光学構成要素(たとえば、光源)が、仮想環境155および/またはトレーニング論理の1つまたは複数のルールに従って光学シグナルを送達し得る。これは、ニューロンを、これらの感覚電極(または感覚電極の何らかのサブセット)が、仮想環境155のルールに従って、いくつかの予測可能な状況下で電気刺激を受信することを予想するように、トレーニングすることができる。同様に、これは、ニューロンを、仮想環境のルールに従って、いくつかの予測可能な状況下で光学および/または化学シミュレーションを予想するように、トレーニングすることができる。そのような電気、化学および/または光学シグナルが、予想されるように受信されたとき、これは、ニューロンに対する報酬として働く。しかしながら、電気、化学および/または光学シグナルは、ランダム様式で、または仮想環境155のために適用されていない1つまたは複数の何らかの他のルールに従って、送達され得、これらは、すべて予測不可能な刺激である。
【0086】
一例では、仮想環境がゲームPongである場合、移動するボールの近傍にあるロケーションに関連付けられた感覚電極のうちの1つまたは複数は、ニューロンが、パドルが移動するボールの前に移動されることを引き起こしたとき、励起され得、これらの感覚電極の励起は、断定できる刺激であることになる。しかしながら、仮想環境155におけるパドルがボールの前に移動されない場合、感覚電極のすべてまたは感覚電極のランダムサンプリングが励起され得、これらの感覚電極の励起は、予測不可能な刺激であることになる。
【0087】
予測不可能な刺激は、たとえば、感覚電極のランダム選択による、電気、化学および/または光学シグナルのランダムシーケンスであり得、ランダムシーケンスは、いかなる構造も有しない。実験は、予測不可能な刺激が生物学的ニューラルネットワークの内部ダイナミクスを混乱させ得ることと、予測可能な刺激がニューロン間の既存の接続を強化することとを示した。
【0088】
いくつかの実施形態では、ニューロン135は、いかなる報酬刺激も罰刺激も使用することなしにトレーニングされる。標準的な動作中のニューロン135に対する仮想環境155を表現する、またはその仮想環境155に関連付けられた、シグナルの定常ストリームまたは周期的ストリームがあり得る。シグナルの各セットが、指定された座標において、および/または指定された強度/振幅、周波数/波長などで、光学、化学および/または電気インパルスを適用するために、適切な電極130(または発光要素または化学エミッタ)に送達される、アナログシグナルを含み得る。シグナルの各セットについて、ニューロン135は、(たとえば、電気インパルス/シグナルを生成すること、蛍光を発すること、化学化合物を放出することなどによって)応答を生成し得る。ニューロン135によって生成されたシグナルがターゲットに対応する(たとえば、ターゲット範囲内である)場合、仮想環境に関連付けられたシグナルのストリームは継続し得る。しかしながら、ニューロン135によって生成されたシグナルがターゲットに対応しない場合、仮想環境に関連付けられたシグナルのストリームはある期間(たとえば、1~5秒)の間休止され得、したがって、これは、ニューロン135から刺激を奪う。したがって、システムは、複数のin vitro生物学的ニューロンが、仮想環境または物理的環境と相互作用することあるいは仮想環境または物理的環境を修正することを引き起こす様式で、複数のin vitro生物学的ニューロンの自己組織化挙動を引き出すための規準をそれらの生物学的ニューロンの出力シグナルが満たすことに失敗することに応答して、時間期間の間、in vitro生物学的ニューロンに刺激を送達することを中止し得る。実験は、ニューロンが、刺激を効果的に望み、刺激を受信する機会を増加させる様式で動作することになることを示した。したがって、ニューロンは、ニューロンが、望まれるように働くことに失敗したとき、ニューロンから刺激を奪うことによって、タスクを実施するようにトレーニングされ得る。これは、これらの実施形態では、明示的に設定された報酬シグナルまたは罰シグナルがないことがあるので、強化学習とは異なる、学習のパラダイムである。
【0089】
(報酬シグナルまたは罰シグナルであり得る)トレーニングシグナルを受信することに応答して、MEAインターフェース150は、報酬もしくは罰として働く光学、化学もしくは電気刺激、または生物学的ニューロン135のための報酬として働く化学処置を決定し得、ならびに/あるいは電気もしくは光学シミュレーション(たとえば、報酬刺激または罰刺激)、および/または報酬として働く化学処置を出力するための命令をMEA105に送り得る。代替的に、MEAインターフェース150は、仮想環境に関連付けられた刺激を提供することを継続するべきであるのか、仮想環境に関連付けられた刺激を提供することをある時間の間停止すべきであるのかを決定し得る。集積回路145は、報酬刺激または罰刺激を出力するための(あるいは仮想環境に関連付けられた刺激を提供することを継続するかまたは停止するための)命令を受信し得、次いで、報酬刺激または罰刺激が生物学的ニューロン135に出力されることを引き起こし得る(あるいは仮想環境に関連付けられた刺激が継続することを許可するか、または仮想環境に関連付けられた刺激がニューロン135に送達されることを停止し得る)。
【0090】
生成されたモデルと観測されたデータとの間のギャップ(「驚き」)が、2つのやり方で改善(すなわち、最小化)され得る。第1に、脳によって、生成モデルにおける変数に関する確率的信念を最適化することによって、または第2に、世界が内部生成モデルにより合致するように、世界に対して働きかけることによって、のいずれか。これは、内部モデルと世界との間の適合をスコアリングする、活動および知覚のための共通の目的関数(すなわち、変分自由エネルギー)を暗示する。内部生成モデルと世界との間のギャップは、ベイズ統計における(対数)モデル証拠と等価である、驚きと呼ばれる。変分自由エネルギーは、単純にこのモデル証拠に関する下限である。要約すると、ニューロン135など、細胞のシステムが、世界の状態に関する信念を保持する場合、そのシステムは、変分自由エネルギーを最小化するようにこれらの信念を連続的に更新するべきである。したがって、応答が予測不可能な刺激を通して驚きを生じるシステムは、この予測不可能な刺激を限定するようにアクティビティを自己組織化するべきである。ニューロン135をトレーニングするための予測不可能な刺激の使用は、上記で説明された。この作業では、細胞の集合がそれらの出力をキャプチャさせるだけでは、不十分である。細胞はまた、観測可能であるような活動の効果を伴う何らかの様式で世界に影響を及ぼすこと、言い換えれば、閉ループシステムに組み込まれることが可能であるべきである。
【0091】
一実施形態では、報酬刺激または罰刺激は、電極130のアレイを介して送達され得る電気刺激である。たとえば、報酬刺激は、デルタ波形を有する電気インパルスであり得る。デルタ波形を有する電気インパルスは、複数の電極において(たとえば、いくつかの実施形態では電極のすべてにおいて)適用されて、アレイにおける(たとえば、2Dまたは3Dグリッドにおける)複数のロケーションに電気インパルスを送達して、生物学的ニューロン135にデルタ形の刺激を提供し得る。
【0092】
一実施形態では、強制過分極細胞が発火することを防ぐために、(たとえば、Pongの例において、ボールがパドルに対してどこにあるかに関し得る)感覚刺激電圧として4Hzにおける75mVが選定された。予測不可能な外部刺激をシステムに追加するために、培養物が、ボールと接続するようにパドルを整列させることに失敗したとき、「罰を与える」刺激が、電圧および/または周波数の増加された変動性とともに設定され得る。このより高い電圧は、刺激を受けた細胞に、その細胞があった状態にかかわらず、活動ポテンシャルを強制するのに十分であり、それにより、培養物になお一層混乱を生じさせると仮定される。
【0093】
一実施形態では、報酬刺激は化学報酬刺激である。MEA105は、特定の波長の光を放出することができる1つまたは複数の光源をさらに含むか、またはそれらの光源に接続され得る。これらの光源は、実施形態において集積回路145によってアクティブ化され得る。さらに、記録チャンバ140は、光の特定の波長に敏感である、その中に配設されたタンパク質を含み得る。タンパク質(たとえば、オプシンタンパク質)は、ドーパミンあるいは別の化合物または物質と結びつけられ得る。タンパク質が光の特定の波長に露出されたとき、タンパク質は、いくらかの量の結びつけられたドーパミンあるいは他の化合物または物質をリリースし得る。
【0094】
一実施形態では、報酬刺激は、1つまたは複数のニューロンのテタヌス刺激(tetanic stimulation)を含む。テタヌス刺激は、ニューロン(またはニューロンのグループ)の個々の刺激の高周波シーケンスを含む。一実施形態では、高周波刺激は、約100Hz以上の周波数において送達される1つまたは複数のニューロンの個々の刺激のシーケンスを備える。一実施形態では、高周波刺激は、約100Hz以上の周波数において送達される1つまたは複数のニューロンの個々の刺激のシーケンスを備える。高周波刺激は、テタヌス刺激後増強(post-tetanic potentiation)と呼ばれるリリースの増加を引き起こす。シナプス前イベントは、カルシウム流入によって引き起こされる。カルシウム-タンパク質相互作用が、次いで、ベシクルエキソサイトーシスの変化をもたらす。そのような変化の結果は、シナプス後ニューロンが活動ポテンシャルを発火する可能性が高くなることを引き起こす。
【0095】
化学報酬刺激、電気報酬刺激、およびテタヌス刺激形態の報酬刺激は、すべて、生物学的ニューロン135のために強化学習の形態を提供する。罰刺激も、強化学習の形態を提供し得る。生物学的ニューロン135は、生物学的ニューロン135が、仮想環境155の何らかの規準を満たす電気シグナルを生成したとき、報酬を与えられ、および/または生物学的ニューロン135が規準を満たすことに失敗する電気シグナルを生成したとき、罰を与えられ、経時的に、ターゲットが何であるかを学習し、それらのターゲットをどのように達成すべきかを学習することになる。生物学的ニューロン135は、自己組織化していることがあり、ターゲットを達成するために接続を形成し得る。一実施形態では、生物学的ニューロン135の各成功とともに、化学または電気報酬刺激は低減される(たとえば、リリースされるドーパミンの量は低減される)。一実施形態では、ニューロン135は、ヘッブ学習を介して学習し得る。たとえば、2つのニューロンが、一緒に発火して、何かを起こし、報酬を与えられた場合、次回、それらの2つのニューロンに再び発火させるためのアクティブ化または電圧が少なくなり、したがって、この出来事の頻度を増加させる。
【0096】
図3は、生物体310が主要な状態において存在し、外部環境305を予測および操作して驚きを最小化するようにそれらの状態の事前分布を修正する、自由エネルギー原理(FEP)の概要を示す。ここで、生物体310によって、外部状態315が感覚状態325を介して検知され、これは、所与の内部状態320につながる。内部状態320の結果は、センサー状態325とともに、最終的に外部状態315に影響を与えることができるアクティブ状態330を生じさせる。外部状態315が、他の状態の外部の、アクティブ状態330によって影響を及ぼされることも影響を及ぼされないこともある、環境として定義され得ることに留意されたい。その上、生物体310が、とられたそれ自体の活動に気づいているとき、アクティブ状態330と感覚状態325との間で交換が発生し得、それにより、これは、感覚状態325が、外部状態315とアクティブ状態330の両方によって影響を及ぼされる確率的成果であることを引き起こす。一例では、これは、限定はしないが、電気生理学的刺激を通して外部の、シミュレートされた環境に関する情報を受信する、人間の脳を含む、生物学的ニューラルネットワークをなすことができる。生物学的ニューラルネットワークは、(たとえば、感覚状態325を介して)電気生理学的刺激を検知することと、(たとえば、アクティブ状態330を介して)内部で生成された(電気生理学的)活動ポテンシャルから情報を受信することとの両方から、(内部状態320に対する)情報を受信する。これらのニューロンの活動は、次いで、アクティブ状態330を介して外部のシミュレートされた世界に適用され得、外部状態315における外部世界に関する入来情報を変える活動を引き起こすことができ、その情報は感覚状態325によって受信され、それにより、サイクルを継続する。ニューロンが、システムに入る情報エントロピーを減少させるために、シミュレートされた外部世界(外部環境305)からの将来の入来刺激をより良く予測または制御するようにアクティブ状態330を修正するための、修正された内部状態320を示す場合、これは、FEPに合致することになる。同様に、生物学的ニューラルネットワークが、アクティブ状態330からの活動に続いて、外部状態315から感覚状態325を介して、予測不可能なまたは驚くべき情報を受信した場合、それは、生物体が、将来における驚きを減少させるように、将来のアクティブ状態330、または内部状態320の前の予想を修正するための、FEPと一致することになる。別の例では、単一のニューロン(たとえば、単一のニューロンの内部状態320)が、ニューロンの外部グループ(たとえば、外部状態315)から(たとえば、アクティブ状態330からの)化学情報を受信し得る。ニューロン(たとえば、ニューロンの内部状態320)は、細胞内または細胞外機構を通して(たとえば、アクティブ状態330を介して)この入来情報に反応し得、これは、次いで、ニューロンが、(外部状態315からの)将来の入来情報をどのように(たとえば、感覚状態325を介して)検知するかに影響を与えることができ、および/または外部状態315に直接影響を与える。
【0097】
生物学的自己組織化は、複数のレベル、脳のレベルにおいてとニューロンにおけるレベルにおいての両方において発見されている。自己組織化されたニューラルネットワークは、実施形態において(1つまたは複数の)MEA105上のニューロン135において形をなすことが観測されている。生物学的ニューラルネットワークの生来の特徴は、一定の外部摂動と進行中の内部プロセスとにもかかわらず、細胞間のアクティビティパターンの安定性である。恒常的可塑性と呼ばれる、この安定性は、ニューラル符号化のカノニカルな特徴であることが発見されている。それは、システムにおける抑制性アクティビティと興奮性アクティビティとの間のバランスから生じる。説得力のある証拠が、これらのニューラルシステムが、これらのシステムが動作する設定ポイントとして存在する、「臨界」と呼ばれるネットワーク状態を示すことを裏付ける。臨界状態、および外部環境との非平衡(定常状態)における、システムが、情報キャパシティと情報伝達の両方を最大化することになる。
【0098】
皮質ネットワークと運動ネットワークとが、異なるが、適合性がある、臨界のモデルを介して動作する、脳における別個のタイプの臨界が観測されている。ニューラルネットワークが臨界の状態をどのように維持するかについての理論が、自由エネルギー原理(FEP)を活用することによるものである。ニューロンは、状態依存型ヘッブ可塑性を介してブラインド源分離(blind-source separation)を実施することができ、これは、FEPに合致する。FEPは、その環境との非平衡定常状態における自己組織化システムが、その変分自由エネルギーを最小化しなければならないことを提案した。このようにして、空間および時間スケールにおける脳は、内部生成モデルを使用して入来感覚データを予測することによる、アクティブ推論に関与する。このようにして、脳は、ベイズ推論機械として働くことが提案される。
【0099】
指定された座標における電気、化学および/または光学インパルスの適用に応答して、記録チャンバ140における生物学的ニューラルネットワークにおける生物学的ニューロン135のうちの1つまたは複数は、電気、化学および/または光学シグナルを生成することになる。電極130は、アレイ(たとえば、電極130の2Dまたは3Dグリッド)内の様々な座標において発生し得る電気シグナルを測定するためのセンサーとして使用され得る。たとえば、集積回路145(たとえば、CMOSチップ)は、電極130において受信された電気インパルスを読み取り得る。代替的に、別個のセンサーが、記録チャンバ140において配置され得る。ニューロン135によって出力された電気シグナル、化学シグナル、および/または光学シグナルは測定され得、それらの座標がその測定に関連付けられ得る。振幅(たとえば、電圧)、強度、濃度、電流および/または周波数など、他の情報も測定され得る。集積回路145は、次いで、(たとえば、ADCを使用して)1つまたは複数の測定された電気シグナルのデジタル表現を生成し得る。このプロセスは復号と呼ばれることがある。このデジタル表現は、次いで、MEA105からMEAインターフェース150に送られ得る。
【0100】
生物学的ニューラルネットワークにおける1つまたは複数の生物学的ニューロン135がシグナル(たとえば、電気、光学および/または化学シグナル)を生成したとき、いくつかの状況では、これは、1つまたは複数の近くの生物学的ニューロンも、電気シグナルを生成することを引き起こし得る。一例では、1つまたは複数の近くの生物学的ニューロンの電気シグナルは、またさらなる生物学的ニューロンをも、電気シグナルを生成するようにトリガすることもトリガしないこともあり、これは、さらにより多くのニューロンのアクティビティをトリガし得、以下同様である。ニューロンのグループからの実験記録は、べき乗則分布に従うサイズをもつ、アクティビティのバースト、いわゆるニューロンなだれを示した。神経科学では、臨界脳仮説は、いくつかの生物学的ニューラルネットワークが相転移(phase transition)の近くで動作することを述べている。この仮説によると、脳(または概して、生物学的ニューラルネットワーク)のアクティビティは、2つの相、アクティビティが急速に低減し、消えることになる相と、アクティビティが経時的に蓄積し、増幅することになる別の相との間で転移する(transition)。神経臨界(neuro criticality)では、情報のための生物学的ニューラルネットワークキャパシティは、臨界未満の、臨界のおよびわずかに臨界超過の分岐プロセスが、生物学的ニューラルネットワークがどのように機能するかを記述し得るように、向上される。(ターゲット神経臨界値を有し得る)神経臨界は、相転移の値またはポイントを指す。相転移のポイントは、チッピングポイントにおけるものであるアクティビティの量であり、それを下回ると減衰力が優勢であり(ニューラルアクティビティが急速に消滅し)、それを上回ると強化力が優勢である(アクティビティの指数関数的急増がある)。神経臨界は、平均して、ニューロンが発火する(たとえば、電気シグナルを生成する)たびに、これが、平均して、1つの他のニューロンも発火することを引き起こすことを暗示する。しかしながら、(ターゲット神経臨界値を上回る)一部の入力は、アクティビティのカスケードを引き起こすことがあり、(ターゲット神経臨界値を下回る)他の入力は、ごくわずかなアクティビティを引き起こすことがある。
【0101】
実施形態では、生物学的ニューラルネットワークの1つまたは複数の神経臨界値が測定される。そのような神経臨界値は、ニューロンの電気アクティビティを経時的に測定し、ニューラルアクティビティの統計的分析を実施することによって、測定され得る。これらの測定された神経臨界値は、次いで、デバイス上の計算を向上させ、予測し、および/または達成するために使用され得る。たとえば、生物学的ニューラルネットワークにおける神経臨界のための統計的マーカーが、生物学的ニューラルネットワークの電気アクティビティを分析することによって決定され得る。たとえば、電気アクティビティ情報が、電気アクティビティのカスケードを識別すること、電気アクティビティの分布を決定すること、カスケードがどのくらい長く持続するかを決定すること、発火ニューロンのチェーンによって形成されるパスを決定することなどを行うために、電気アクティビティ情報に対する統計的分析を実施する、処理論理に入力され得る。そのような情報は、生物学的ニューラルネットワークの神経臨界値を決定するために使用され得る。
【0102】
実施形態では、生物学的ニューラルネットワークのためのターゲット神経臨界値があり得る。測定された神経臨界値がターゲット臨界値を下回る場合、生物学的ニューラルネットワークは、臨界を下回ると決定され得る。測定された臨界値がターゲット神経臨界値を上回る場合、生物学的ニューラルネットワークは、臨界を上回ると決定され得る。臨界を上回るまたは下回るのいずれかであることは、生物学的ニューラルネットワークの機能を損なうことがある。したがって、生物学的ニューラルネットワークの臨界値を測定し、その臨界値が、臨界(たとえば、ターゲット神経臨界値)にあるのか、臨界を上回るのか、臨界を下回るのかを決定する、能力が、生物学的ニューラルネットワークの認知機能を評価することにおいて有用であり得る。
【0103】
実施形態では、ニューラルアクティビティの1つまたは複数の他の測度も、測定され、デバイス上の計算を向上させ、予測し、および/または達成するために、使用され得る。そのような他の測度は、情報含有量、複雑さ、エントロピー、またはそれらの組合せを測定し得る。いかなるそのような測度も、実施形態において、別々に使用されるかまたは神経臨界とともに使用され得る。
【0104】
図1に戻ると、デジタル入力シグナル、電気、化学または光学インパルスのための命令、電気、化学および/または光学シグナルの表現ならびに/あるいは応答メッセージは、(たとえば、検討および/または分析のために)データストアに記憶され得る。世界中からの研究者が、ネットワーク120に接続されたクライアントコンピューティングデバイス125を介して検討のために、記憶されたデータおよび/または仮想環境にアクセスし得る。たとえば、研究者は、人工環境または仮想環境155(たとえば、ゲーム)を開発し、ゲームをニューロン135に適用する実験を稼働し、その実験からのデータを受信し得る。実験からのデータは、その場合、クラウドを介して、その研究者および/または他の研究者にとって利用可能であり得る。
【0105】
一実施形態では、サーバコンピューティングデバイス110は、(たとえば、仮想環境155の外部にあり得る)人工ニューラルネットワークをさらに含む。人工ニューラルネットワークは、ニューロン135を備える生物学的ニューラルネットワークと並列にトレーニングされ得る。たとえば、デジタル入力シグナルが、人工ニューラルネットワークに入力され得、そのデジタル入力シグナルに関連付けられたターゲットが、人工ニューラルネットワークに提供され得る。人工ニューラルネットワークは、生物学的ニューラルネットワークがトレーニングされるのと同時に、(たとえば、バックプロパゲーションを使用して)トレーニングされ得る。
【0106】
一実施形態では、ニューロン135が、仮想環境155によってタスクを実施するようにトレーニングされると、タスクを実施することにおけるニューロン135の技能のレベルまたは成功の程度を示すスコアまたは値が決定され得る。ニューロン135が実施するようにトレーニングされ得る多くの異なるタイプのタスクがある。スコアまたは値が何を表現するかと、スコアまたは値がどのように計算されるかとは、ニューロン135が実施するようにトレーニングされた1つまたは複数のタスクのタイプに依存し得る。値は、たとえば、生物学的ニューラルネットワークの認知機能を表現する認知機能値であり得る。いくつかの実施形態では、値は、神経臨界値であり、および/または神経臨界値に少なくとも部分的に基づく。別の実施形態では、値は、1つまたは複数のニューラル培養物の全体にわたって計算される集団ベース値である。
【0107】
BNNが実施するようにトレーニングされ得るタスクの一例は、コンピュータゲームPongをプレイするタスクである。Pongは、2つのパドルとボールとを特徴とする単純な「テニスのような」ゲームである(とはいえ、いくつかの実施形態では単一のパドルのみがモデル化され得る)。pongの目標は、(たとえば、仮想環境によって提供されるコンピュータ対戦相手、実際の人間の対戦相手、またはトレーニングされたニューロンの別のセットであり得る)対戦相手を、最初に10ポイントを獲得するものになることによって負かすことである。Pongでは、プレーヤは、対戦相手がボールを逃すと(これは、それらが、それらのパドルをボールの前に移動させることに失敗し、ボールがそれらのパドルを過ぎてスクリーンのエッジまで移動することを可能にしたとき、発生する)、ポイントを受信する。ニューロン135は、移動するボールと2つのパドルとを含む、Pongゲームエリアを知覚し、パドルのうちの1つを移動させてボールをインターセプトするようにトレーニングされ得る。認知機能値または他の値/スコアが、トレーニングされたニューロンがPongゲームをどのくらいうまくプレイするかに基づいて決定され得る。たとえば、認知機能値は、ニューロンの勝利対敗北比に基づき得る、ニューロンがどのくらい長くボールをプレイ中に保つことが可能であるかに基づき得る、ニューロンが、Pongゲームで敗北する前にどのくらい多くのポイントを達成することができるかに基づき得る、などである。
【0108】
一実施形態では、MEAインターフェース150は、ニューロン135のための認知機能値を決定する。認知機能値は、ニューロンが実施するようにトレーニングされたタスクを実施するためのニューロンの1つまたは複数の試みに基づいて決定され得る。一実施形態では、認知機能値は、タスクを実施するためのニューロン135の各試みについて決定され、平均認知機能値が、認知機能値の平均(たとえば、移動平均)に基づいて決定される。
【0109】
一実施形態では、MEAインターフェース150は、上記で説明されたように、ニューロン135のための神経臨界値を決定する。神経臨界値は、ターゲット臨界値におけるものまたはその近くのものであり得、したがって、臨界におけるもの(たとえば、相転移におけるもの)であると見なされ得る。一実施形態では、認知機能値は、ベースライン神経臨界値であるか、ベースライン神経臨界値に少なくとも部分的に基づく。一実施形態では、認知機能値は、臨界値とは別個のものである。そのような実施形態では、認知機能値と臨界値とは、ニューロン135の認知機能を確立するために一緒に使用され得る。
【0110】
図4図5および図8は、生物学的コンピューティングプラットフォームを提供する方法を示す流れ図およびシーケンス図である。これらの方法は、サーバコンピューティングデバイスの処理論理ならびに(便宜上まとめてMEAと呼ばれる)MEAまたは同様のデバイスの処理論理によって実施され得、その各々は、ハードウェア(たとえば、回路、専用論理、プログラマブル論理、マイクロコードなど)、(処理デバイス、汎用コンピュータシステム、または専用機械上で稼働される命令などの)ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを含み得る。方法は、MEAおよび/またはサーバコンピューティングデバイスによって実施され得る。たとえば、一部の動作がMEAによって実施され得、他の動作がコンピューティングデバイスによって実施され得る。
【0111】
説明を簡単にするために、方法は、一連の行為として示され、説明される。ただし、本開示による行為は、様々な順序でおよび/または同時に、ならびに本明細書で提示および説明されない他の行為とともに行われ得る。さらに、開示される主題による方法を実装するために、すべての図示された行為が実施されるとは限らない。さらに、当業者は、方法が、代替的に、状態図またはイベントを介して一連の相関状態として表現され得ることを理解し、諒解するであろう。
【0112】
図4は、生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法400のための一実施形態を示すシーケンス図である。クライアントコンピューティングデバイス125が、サーバコンピューティングデバイス110に(人工環境または実験論理とも呼ばれる)仮想環境をアップロードし得る405。仮想環境は、いくつかの実施形態における現実環境または物理的環境のシミュレーションであり得る。サーバコンピューティングデバイス110は、次いで、ブロック410において仮想環境を実行し得、仮想環境は、デジタル入力シグナルを生成し得る。サーバコンピューティングデバイス110上で実行するMEAインターフェースが、デジタル入力シグナルを受信し、ブロック415においてデジタル入力シグナルを電気、化学および/または光学インパルスのための命令に変換し得る。サーバコンピューティングデバイス110は、次いで、それらの命令をMEA105に送り得る。いくつかの実施形態では、デジタル入力シグナルは、MEA105の集積回路(たとえば、処理デバイス)によって可読であり、ブロック415において変換が実施されない。そのような実施形態では、デジタル入力シグナルは、ブロック420において、MEA105に送られ、MEAによって処理され得る。
【0113】
MEA105は、命令に基づいて(またはデジタル入力シグナルに基づいて)、1つまたは複数のアナログ光学、化学および/または電気インパルス(入力シグナル)を生成し得る。それらのシグナルは、ブロック425において、特定のロケーション(たとえば、x,y座標またはx,y,z座標)を有する、特定の電極、光源、化学エミッタなどにおいて適用され得る。ブロック430において、MEA105は、次いで、MEA105における生物学的ニューラルネットワークの生物学的ニューロンによって生成された出力電気、化学および/または光学シグナルを測定し得る。MEAは、次いで、ブロック435において、電気、化学および/または光学シグナルの表現を生成し得る。これは、アナログデジタル変換器を使用して、アナログ電気、化学および/または光学シグナルをデジタル値に変換することを含み得る。
【0114】
ブロック440において、MEAは、ニューロンによって出力された測定された電気、化学および/または光学シグナルの表現をサーバコンピューティングデバイスに送る。ブロック445において、サーバコンピューティングデバイス上のMEAインターフェースは、表現を、仮想環境の処理論理によって可読である仮想環境のための応答メッセージに変換し得る。MEAインターフェースは、次いで、応答メッセージを仮想環境に送り得る。ブロック450において、仮想環境は、次いで、応答メッセージを処理し得る。いくつかの実施形態では、電気、化学および/または光学シグナルの表現は、仮想環境によって可読であり、ブロック445において変換が実施されない。そのような実施形態では、表現は、仮想環境に送られ、仮想環境によって処理され得る。仮想環境は、次いで、結果を生成し得、サーバコンピューティングデバイス110は、それらの結果をクライアントコンピューティングデバイス125に送り得る。
【0115】
実施形態では、ブロック410~450は、何らかの停止シグナルが適用されるまで連続的に稼働されるループを形成する。たとえば、ブロック450の動作が完了した後に、方法はブロック410に戻り得、ブロック410の動作は繰り返され得る。
【0116】
図5は、生物学的コンピューティングプラットフォームにおいて生物学的ニューロンに強化学習を提供する方法500のための一実施形態を示すシーケンス図である。方法500は、方法400が完了した後に実施され得る。ブロック505において、サーバコンピューティングデバイス110上で実行する仮想環境は、応答メッセージ(またはMEA105上のニューロンによって出力された電気、化学および/または光学シグナルの表現)が何らかの規準を満たすかどうかを決定する。応答メッセージ(または電気、化学および/または光学シグナルの表現)が規準を満たした場合、仮想環境は、第1のトレーニングシグナルを生成し、サーバコンピューティングデバイス110上で実行するMEAインターフェースに第1のトレーニングシグナルを提供し得る。応答メッセージ(または電気、化学および/または光学シグナルの表現)が規準を満たすことに失敗した場合、仮想環境は、第2のトレーニングシグナルを生成し、サーバコンピューティングデバイス110上で実行するMEAインターフェースに第2のトレーニングシグナルを提供し得る。MEAインターフェースは、次いで、第1のトレーニングシグナルに基づく報酬命令、または第2のトレーニングシグナルに基づく罰命令を生成し(ブロック515)、報酬命令または罰命令をMEA105に送り得る(ブロック520)。代替的に、MEAインターフェースは、トレーニングシグナルをMEA105にフォワーディングし得る。ブロック525において、MEAは、次いで、適宜に、電気、光学および/または化学報酬刺激あるいは罰刺激をMEA105上の生物学的ニューラルネットワークに出力し得る。
【0117】
一例では、仮想環境は、Pongなどのビデオゲームを含む。フィールド615においてボール610と1つまたは複数のパドル605とを含む、Pong環境600の一例が、図6に示されている。そのような実施形態では、デジタル入力シグナルは、ゲーム世界の投影(たとえば、ディスプレイのフレームまたはゲームのユーザインターフェース)であり得る。一実施形態では、ゲーム世界の投影は、所与の時間的ポイントにおけるゲームのためのディスプレイのピクセルのマッピングである。ディスプレイにおける各ピクセルが、MEA105上の電極の2Dグリッドにおけるロケーションに関連付けられ得る。ディスプレイの分解能と電極の2Dグリッドにおける行および列の数とに応じて、ディスプレイのピクセルとMEAにおける電極との間の1対1マッピング、1対XマッピングまたはX対1マッピングがあり得、ここで、Xは正の整数である。サーバコンピューティングデバイス110上で稼働するMEAインターフェースが、ゲームのためのディスプレイのピクセルとMEA105における2Dグリッドとの間のマッピングを決定し得る。たとえば、x,yピクセル1,3が、2Dグリッドの列2,行6における電極にマッピングし得る。一実施形態では、デジタル入力シグナルを変換することは、2Dグリッドの各ロケーションについて、ロケーションが、アクティブ化されるべきであるのか(インパルスがロケーションにおける電極に送られる)、非アクティブ化されるべきであるのか(インパルスがロケーションにおける電極に送られない)を決定することを含む。したがって、電気または光学シグナルは、指定されたアクティブ化されたロケーションにおいて適用され得る。
【0118】
Pongの例では、電気/光学インパルスのための命令は、コート、コートにおけるボールの位置およびパドルの位置を表現し得る。この例では、生物学的ニューラルネットワークは、パドルを移動させてボールをインターセプトするようにトレーニングされ得る。あらかじめ定義された運動領域の電気生理学的アクティビティが、たとえば、「パドル」がどのように移動することになるかを決定するために記録され得る。これは、MEA105における2Dグリッドを4つの象限に分画することによって達成され得る。生物学的ニューラルネットワークに適用される電気/光学インパルスの各セットにより、ニューロンによって生成された電気シグナルは測定され得る。測定された電気シグナルの大部分が右上象限からのものである場合、これは、仮想環境が右パドルを上に移動させることを引き起こし得る。測定された電気シグナルの大部分が右下象限からのものである場合、これは、仮想環境が右パドルを下に移動させることを引き起こし得る。次いで、上記で説明されたように、ボールが右パドルをインターセプトしたとき、正の報酬刺激または他のフィードバックまたはフィードバックの欠如が、生物学的ニューラルネットワークに提供され得る。
【0119】
このようなシステムに固有の多数の可能な変動を仮定すれば、いくつかのパラメータを固定し、他のパラメータを経験的にテストすることが有益であった。一例では、刺激は、パドルの現在の位置に対して感覚野においてトポグラフィックに合致する様式で、主要な電極に、特定のロケーション、周波数、および電圧において送達される(たとえば、仮想環境がPongゲームである場合)。
【0120】
広義に、上記で説明されたように、2つの重要なやり方、すなわち、情報の符号化とアクティビティの復号とが、パフォーマンスを修正するために提案された。一実施形態では、第1の運動領域における刺激が、仮想環境の内側でパドルを第1の方向に移動させるための出力またはコマンドを表現し得、第2の運動領域における刺激が、仮想環境の内側のパドルを第2の方向に移動させるための出力またはコマンドを表現し得る。
【0121】
(たとえば、構成0および構成1に記載されているように)アクティビティが刺激された、合同であった2つの運動領域においてアクティビティを測定する、単純化された復号システムは、非効率的であるだけでなく、バイアスを受けやすいことがあると仮定された。これをさらに調査するために、EXP3機械学習アルゴリズムが、2つのあらかじめ定義された運動領域をサンプリングして、6つの可能な構成(たとえば、図7に示されている構成0~5)から最も良好な構成を選択し、このパドルのための移動コマンドを解釈するために、使用された。
【0122】
図7は、刺激電極を含む感覚野、複数の運動領域のロケーションを含む、その上に細胞培養物を有するMEAの複数の異なる電極レイアウト概略図の一例を示す。運動領域は、(たとえば、仮想Pong環境内のパドルを上に移動させる)第1の活動を実施する1つまたは複数の第1の運動領域と、(たとえば、仮想Pong環境内のパドルを下に移動させる)第2の活動を実施する1つまたは複数の第2の運動領域とに分割され得る。例示的な構成の表現が1つの例示的な仮想環境のために提供され、これらは以下で説明される。例示的な電極レイアウト概略図において、刺激が、あらかじめ定義された感覚野に送達され、アクティビティが、パドルがどのように移動することになるかを決定するために複数の運動領域において測定される。次いで、フィードバックが、運動野アクティビティの成果に基づいて、感覚野を介して提供される。しかしながら、Pong仮想環境の例に関して説明される原理は、無数の他の仮想環境に適用可能であることを理解されたい。たとえば、より多くの制御オプション、またはニューラル培養物が生成し得る出力がある、環境では、電極レイアウト概略図は、運動領域であることもそうでないこともある、より多くの出力領域を含み得る。たとえば、より複雑な仮想環境では、上および下の移動に加えて左移動および右移動のための運動領域があり得る。さらに、運動または移動出力以外の他のタイプの出力のための領域があり得る。
【0123】
実施形態では、オンライン機械学習モデルの使用を含み得る、EXP3などのオンライン最適化方法が、役割または活動を選択して、生物学的ニューラルネットワーク(たとえば、ニューラル培養物)の異なる出力に関連付けるために使用される。たとえば、第1の役割または第1の活動に関連付けられた第1の領域における電気アクティビティスパイクが、第1の活動を実施するための出力または命令として解釈され得る。第2の役割または第2の活動に関連付けられた第2の領域における電気アクティビティスパイクが、第2の活動を実施するための出力または命令として解釈され得る。ゲームPongをプレイするようにトレーニングされたニューラル培養物の例では、オンライン最適化方法は、第1の運動制御のための1つまたは複数の第1の領域と第2の運動制御のための1つまたは複数の第2の領域とを選択するために使用される。オンライン最適化方法は、可能な構成の個別セットで開始し得る。各構成が出力領域の異なるセットを含み得、各出力領域がニューラル培養物の異なる出力(たとえば、活動)に関連付けられる。オンライン最適化方法は、異なる構成オプションを使用してテストを実施し、オプションの各々のためのスコアを生成する。一実施形態では、決定されたスコアは、上述の認知機能値に対応する。たとえば、スコアは、ニューラル培養物が、ニューラル培養物が実施するようにトレーニングされたタスクをどのくらいうまく実施するかに基づき得る。一実施形態では、スコアは、測定された神経臨界値、あるいはニューラルアクティビティから導出された1つまたは複数の他の細胞固有または集団ベース値に少なくとも部分的に基づく。たとえば、神経臨界値は、動作条件の特定のセット、および/または特定の構成のために決定され得る。神経臨界値は、ターゲット神経臨界値と比較され得、これは、臨界の状態に関連付けられ得る。神経臨界値がターゲット神経臨界値を下回る(たとえば、臨界を下回る)場合、構成は、低いスコアを割り当てられ得る。
【0124】
オンライン最適化方法を使用して構成をテストすることに加えて、使用される報酬/罰のタイプ、刺激が提供されるロケーション、使用される刺激のタイプ、使用される電圧および/または電流など、他の変数も、オンライン最適化方法を使用してテストされ得る。
【0125】
オンライン最適化モデルは、テストすべき構成を、その同じ構成、および/または構成の個別セットにおける1つまたは複数の他の構成のテストの結果に基づいて選択し得る。代替的に、オンライン最適化モデルは、いくつかの実施形態における新しい構成をランダムに生成およびテストし得る。新しい構成は、その場合、考慮中の構成のリストに追加され得る。したがって、いくつかの実施形態では、テストされるべき可能な構成のすべてが、オンライン最適化モデルを稼働するより前に、アプリオリに決定される。他の実施形態では、オンライン最適化モデルに、構成が提供されないことがあるか、または開始構成の小さい試料が提供され得、オンライン最適化モデルは、テストすべき複数の異なる構成を生成し得る。スコアは、さらなるテストが様々な構成に対して稼働されるにつれて、継続的に更新され得る。最終的に、最高スコアを有する構成が、ニューラル培養物のために選択され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、線形デコーダが、異なる領域またはゾーン(あるいは領域またはゾーンの連続体)の最適なレイアウトおよび割当てと、MEAに対する領域またはゾーンの各々に対する出力または役割とを選択するために使用される。線形デコーダは、各電極に、1つまたは複数の異なる役割または出力に関連付けられた重みを割り当てる。たとえば、5つの異なる出力がある場合、5つの異なる重みが電極に割り当てられ得る。2つの異なる出力がある場合、2つの異なる重みが電極に割り当てられ得る。割り当てられた重みは、正値および/または負値であり得る。(たとえば、強化学習を含み得る)オンライン機械学習が、最適な重みを電極に割り当てるために適用され得る。したがって、線形デコーダは、最適な役割または出力を決定して、各電極に関連付け得る。
【0127】
線形デコーダを使用して構成をテストすることに加えて、使用される報酬/罰のタイプ、刺激が提供されるロケーション、使用される刺激のタイプ、使用される電圧および/または電流など、他の変数も、線形デコーダを使用してテストされ得る。
【0128】
一実施形態では、オンライン機械学習モデルまたは他のオンライン最適化モデル(たとえば、EXP3アルゴリズム、他のワンアームバンディット(one-arm bandit)アルゴリズム、または線形デコーダ)が、ニューラル培養物がタスクまたはタスクのセットを実施するようにトレーニングされることを可能にする、MEAのための電極の最適なレイアウトを決定するために使用される。
【0129】
図7を参照すると、実施形態では、構成2~4が、構成0および1よりもEXP3アルゴリズムによって多く選択されることが示された。構成2~4についてのそのような改善されたスコアは、側方抑制の現象に少なくとも部分的に起因すると考えられる。実施形態では、入力および出力領域へのMEAのエリアのレイアウトまたは構成は、ニューロンの側方抑制を利用するように選択される。生物学的システムでは、側方抑制は、1つのニューロンが発火したとき、同じタイプのおよび/または同じレベルにおける1つまたは複数の隣接ニューロンまたは側方ニューロンが、同じく発火することから抑制される、生物学的現象である。したがって、実施形態では、反対の活動または役割に関連付けられた領域(たとえば、パドルを上に移動させるための運動制御に関連付けられた第1の領域、およびパドルを下に移動させるための運動制御に関連付けられた第2の領域)は、互いに隣接するかまたは近くに配置される。したがって、実施形態では、電極の構成は、側方抑制が生物学的コンピューティングデバイスの制御を改善することを可能にするように選択され得る。したがって、例示的な構成2~5では、パドルを上に移動させることに関連付けられたニューロンが発火したとき、これは、パドルを下に移動させることに関連付けられたニューロンの発火を抑制し得る。同様に、パドルを下に移動させることに関連付けられたニューロンが発火したとき、これは、パドルを上に移動させることに関連付けられたニューロンの発火を抑制し得る。
【0130】
実施形態では、機械学習および/または側方抑制は、電気システムが、生物学的システム(たとえば、ニューラル培養物)の生物学的アクティビティとより効率的にインターフェースすることを可能にするために使用される。
【0131】
第1の構成(構成0)は、外部世界を表現するためのほぼすべてのニューラルシステムにおいて通常発見される、網膜部位表現およびトポグラフィック表現を模倣するように設計された。システムが、ボールに接触するための正しい位置に「パドル」を移動させるように、運動領域におけるアクティビティを変えることに失敗した場合、負のフィードバックまたは罰刺激(たとえば、ランダム不規則刺激)が、1つまたは複数の刺激電極を介してニューラル培養物に適用され得る。代替的に、仮想環境に関連付けられた入力シグナルが時間期間の間ニューロンから保留され得る、感覚遮断が実施され得る。電圧など、他のパラメータが、経験的テストを通して決定され得る。
【0132】
一例では、構成0に示されているように、2つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させた。別の例では、構成1に示されているように、2つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させた。別の例では、構成2に示されているように、4つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域3におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域4におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させた。別の例では、構成4に示されているように、4つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域3におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域4におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させた。別の例では、構成5に示されているように、4つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域3におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域4におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させた。別の例では、構成4に示されているように、4つの別個のエリアが「運動領域」として定義され、運動領域1におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させ、運動領域2におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域3におけるアクティビティがパドルを「下」に移動させ、運動領域4におけるアクティビティがパドルを「上」に移動させた。示されていない別の実施形態では、運動領域は具体的に定義されず、移動が、ニューロン間のアクティビティの関係に基づいて、あらかじめ定義された境界なしの複数のニューロンにわたる全体的アクティビティに基づいて行われる。異なる電極レイアウト構成が、(たとえば、Pongゲームをプレイするための)所与のタスクのための最適な構成を決定するためにテストされた。Pongゲームをプレイするためのニューラル培養物のための電気レイアウトを決定するための本明細書に記載される原理は、任意の他の恣意的に複雑なタスクを実施するようにニューラル培養物をトレーニングするための電極レイアウトをどのように決定すべきかにも適用される。
【0133】
実施形態では、ニューラル培養物は完全に対称的でないことがある。たとえば、MEAの一方の側に、MEAの別の側よりも多くのニューロンがあり得る。さらに、MEAの異なる領域上のニューロンの数にかかわらず、異なる領域において(たとえば、図7に示されている異なる運動領域において)完全に対称的な電気アクティビティを示すニューロンを培養することは技術的に困難であり得る。その結果、一部の運動領域(または他の出力領域)が、他の運動領域(または他の出力領域)よりも強い電気応答を呈し、および/または他の運動領域(または他の出力領域)よりも高いベースライン電気アクティビティを有し得る。これは、一部のタイプの出力(たとえば、パドルを左に移動させる)を他のタイプの出力(たとえば、パドルを右に移動させる)よりも多く検出するようにシステムをバイアスし得る。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、「利得」がシステムに追加される。システムは、時間期間にわたって、各運動領域(または他の出力領域)における平均発火(たとえば、平均電気インパルスアクティビティ)に基づいて、移動平均などのリアルタイム値をとり、各運動領域(または他の出力領域)における平均発火に、領域全体にわたる正規化されたターゲット値(たとえば、20Hzのターゲット値)を達成するための値を乗算し得る。実施形態では、ターゲット公称電気アクティビティが設定され得、各領域の移動平均電気アクティビティが、その領域のためのターゲット公称電気アクティビティを達成する値を乗算され得る。これは、各所与の領域のアクティビティの変化が、それらの変化が異なる潜在自発的アクティビティを示した場合でも、パドル位置に影響を及ぼすことを可能にすることになる。たとえば、第1の領域が60Hzの平均発火を有する場合、その第1の領域からの電気シグナルが、1/3を乗算され得る。第2の領域が10Hzの平均発火を有する場合、第2の領域からの電気シグナルが、2を乗算され得る。これは、ニューラル培養物による特定の出力または活動に対するバイアスがないように、異なる領域からの電気アクティビティを効果的に正規化する。
【0135】
したがって、実施形態では、ニューロンに送達される第1のシグナルを生成すること、またはニューロンの励起に基づいて第2のシグナルを検出することのうちの少なくとも1つを行う、デバイス上に配設された、in vitro生物学的ニューロンの一様でない分布が存在する。処理論理が、デバイスの各領域について、in vitro生物学的ニューロンの一様でない分布に基づいて、その領域においてin vitro生物学的ニューロンによって生成されたシグナルに適用すべきそれぞれの利得を決定し得る。処理論理は、次いで、各領域について、その領域に関連付けられたそれぞれの利得を、その領域によって生成された、第2のシグナルのうちのシグナルに適用し得る。これは、異なる領域においてニューロンによって出力されたシグナルを効果的に正規化する。
【0136】
一実施形態では、電気シグナルをスケーリングするための上限および下限しきい値がある。たとえば、領域における電気シグナルが、一実施形態において、4超を乗算されないかまたは4超で除算されないことがある。これの1つの理由は、あまりに大きい値を乗算することが、システムのシグナル対ノイズ比を、下限SNRしきい値を下回って減少させ得ることである。
【0137】
一実施形態では、バックグラウンド電気アクティビティが、各出力領域について(たとえば、各運動領域について)決定される。バックグラウンド電気アクティビティは、移動平均を使用して決定され得る。領域についてのバックグラウンド電気アクティビティは、その場合、その領域についての現在の電気アクティビティから減算されて、領域についての正規化された電気アクティビティを決定し得る。
【0138】
図8Aは、生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法800のための一実施形態を示す流れ図である。ブロック805において、コンピューティングデバイスが、仮想環境からまたは現実環境から、デジタル入力シグナルを受信する。デジタル入力シグナルは、たとえば、テンソルであり得る。いくつかの実施形態では、仮想環境は、現実環境のシミュレーションであり、現実(たとえば、物理的)環境の状態を反映し得る。現実環境からのデジタル入力シグナルは、いくつかの実施形態において、物理的環境の、1つまたは複数の測定値、設定、パラメータなどを含むかまたはそれらに基づき得る。
【0139】
ブロック810において、コンピューティングデバイスは、デジタル入力シグナルを、電気および/または光学インパルスまたはシグナルのための命令に変換する(たとえば、受信されたテンソルを符号化する)。デジタル入力シグナルは、場所ベース符号化方式、時間ベース符号化方式、または場所ベース符号化と時間ベース符号化とを組み合わせたハイブリッド符号化方式であり得る、符号化方式に従って、電気、化学および/または光学インパルスまたはシグナルのための命令に変換される。いくつかの実施形態では、デジタル入力シグナルは、電気および/または光学インパルスのための命令の代わりに、あるいはそれらの命令に加えて、化学インパルスのための命令に変換される。
【0140】
一実施形態では、符号化は、レートベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数を決定することを含む。一実施形態では、符号化は、場所ベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の位置を決定することを含む。一実施形態では、符号化は、レートベースコーディング方式と場所ベースコーディング方式とを組み合わせた混合コーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数と、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の位置とを決定することを含む。
【0141】
ブロック820において、コンピューティングデバイスは、命令をMEAに提供し、MEAは、電極、光源、化学エミッタなどが、電気インパルス、光学(たとえば、光)インパルス、および/または化学インパルスを生成することを引き起こすために、電極のアレイ(たとえば、電極の2Dグリッドまたは3D行列)に、1つまたは複数の光源に、1つまたは複数の化学生成器/エミッタになど、インパルスを適用する。一実施形態では、符号化は、MEAにおいて実施される。一実施形態では、光学シグナル/インパルスは、1つまたは複数の光源を使用して生成される。これらの光学シグナルは、複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数の膜における細孔が開くことを引き起こし、膜を通る相対電流フローの変化を生じ得る。代替または追加として、光学シグナルは、電圧を生成するために、複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数における遺伝的に符号化された電流生成器(GECG:genetically encoded current generator)を刺激し得る。GECGは、光感受性(light sensitive)タンパク質であり、さらには1つまたは複数の光源により影響を及ぼされたときに変化を受け、それにより、刺激に従って所与の方向において電流を変化させる、細胞であることになる。一実施形態では、光学シグナルは、イオンチャネル(たとえば、イオンチャネルが開くまたは閉じることを引き起こす)、タンパク質(たとえば、タンパク質が、アクティブ化、切断、抑制することなどを引き起こす)、膜内構造、膜外構造、または膜内外(trans-membrane)構造などのうちの少なくとも1つの光ベース操作を介して、複数のin vitro生物学的ニューロンのうちの1つまたは複数の細胞膜特性の変化を刺激する。実施形態では、光学、化学および/または電気シグナルは、1つまたは複数の細胞の電気生理学的特質またはソマティック(somatic)特質のうちの少なくとも1つを修正するために、複数のin vitro生物学的ニューロンの1つまたは複数の細胞を刺激する。
【0142】
ブロック825において、MEAは、アレイの座標において(たとえば、2Dグリッドまたは3D行列の座標において)生物学的ニューロンによって出力された、電気シグナル、化学シグナルおよび/または光学シグナルを測定する。電気、化学および/または光学シグナルは、実施形態においてアナログシグナルであり得る。
【0143】
一実施形態では、ブロック828において、MEAまたはコンピューティングデバイスは、処理すべき測定された電気、化学および/または光学シグナルの第1のサブセットと、無視すべき測定された電気および/または光学シグナルの第2のサブセットとを決定するために、1つまたは複数のブラインディング技法を適用する。MEAまたはコンピューティングデバイスは、次いで、第2のサブセットにおけるそれらの測定された電気、化学および/または光学シグナルをフィルタで除去、無視、または削除し得る。
【0144】
一実施形態では、ブラインディング技法を適用することは、入力シグナルが生成された略第1の時間を決定することと、略第1の時間に関連付けられた時間ウィンドウ内で発火ニューロンに基づいて生成された、出力シグナルからのシグナルを、第2のサブセットに割り当てることとを含む。一実施形態では、ブラインディング技法を適用することは、出力シグナルの各々の大きさを決定することと、しきい値を超える大きさを有する、出力シグナルからのシグナルを、第2のサブセットに割り当てることとを含む。一実施形態では、ブラインディング技法を適用することは、出力シグナルの各シグナルについて、そのシグナルを検出した電極の数を決定することと、しきい値数の電極によって検出された、出力シグナルからのシグナルを、第2のサブセットに割り当てることとを含む。本明細書で説明される他のブラインディング技法のいずれかなど、他のブラインディング技法も使用され得る。
【0145】
ブロック830において、MEAは、電気シグナルおよび/または光学シグナルのデジタル表現を生成し得る。MEAは、デジタル表現をコンピューティングデバイスに送り得、コンピューティングデバイスは、デジタル表現を、仮想環境のための応答メッセージに、現実環境または仮想環境においてあるいは現実環境または仮想環境上で実施されるべき活動に、デバイス(たとえば、現実環境におけるデバイス)のためのパラメータまたは設定になど、変換し得る。デジタル表現を生成することは、アナログデジタル変換器(たとえば、物理的または仮想アナログデジタル変換器)を使用して、測定された電気、化学および/または光学シグナルをデジタル表現に変換することを含み得る。一実施形態では、電気、化学および/または光学シグナルはデジタル表現に変換され、デジタル表現は、次いで、コンピューティングデバイスに送るための出力を決定するために復号方式に従って処理される。そのような復号はまた、コンピューティングデバイスにおいて実施され得る。一実施形態では、復号方式は、電気、化学および/または光学シグナルからデジタル表現を生成するために使用される。どちらの事例においても、復号方式は、場所ベース符号化方式、時間ベース符号化方式、または場所ベース符号化と時間ベース符号化とを組み合わせたハイブリッド符号化方式であり得る。復号方式は、符号化のために使用されるものと同じコーディング方式であり得るか、または符号化のために使用されるものとはまったく異なるコーディング方式であり得る。単純化した例として、場所ベースコーディング方式が符号化のために使用され得、時間ベースコーディング方式が復号のために使用され得る。
【0146】
一実施形態では、復号は、レートベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、復号は、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の周波数を決定することと、測定された電気および/または光学シグナルの1つまたは複数の周波数に少なくとも部分的に基づいて、仮想環境に送られるべき応答、仮想環境において実施されるべき活動、現実環境において実施されるべき活動などを決定することとを含む。
【0147】
一実施形態では、復号は、場所ベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、復号は、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の位置を決定することと、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の位置に少なくとも部分的に基づいて、仮想環境に送られるべき応答、仮想環境において実施されるべき活動、現実環境において実施されるべき活動などを決定することとを含む。
【0148】
一実施形態では、復号は、レートベースコーディング方式と場所ベースコーディング方式とを組み合わせた混合コーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、復号は、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の周波数を決定することと、第2のシグナルの1つまたは複数の位置を決定することと、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の位置と、測定された電気、化学および/または光学シグナルの1つまたは複数の周波数とに少なくとも部分的に基づいて、仮想環境に送られるべき応答、仮想環境において実施されるべき活動、現実環境において実施されるべき活動などを決定することとを含む。
【0149】
実施形態では、測定された電気、化学および/または光学シグナルの第1のサブセットは、測定された電気、化学および/または光学シグナルの第2のサブセットを復号することなしに復号される。
【0150】
方法は、次いで、ブロック845に進み得、ブロック845において、コンピューティングデバイスは、仮想環境および/または現実(たとえば、物理的)環境に応答メッセージ、活動、設定、パラメータなどを提供し得る。いくつかの実施形態では、ブロック830において、表現は、追加または代替として、ニューロンに戻って提供されるべき将来の刺激(たとえば、新しいテンソル)として働くことになる、更新されたデジタル入力シグナルに変換される。したがって、実施形態では、方法は、ブロック810に戻り、ブロック830に生成された更新されたデジタルシグナルは、新しい電気および/または光学および/または化学インパルスのための命令に変換される。いくつかの実施形態では、ブロック830において、電気、化学および/または光学シグナルの表現は、ターゲットと比較され、誤差が、ターゲットと電気、化学および/または光学シグナルの表現との間の差に基づいて決定される。誤差は、次いで、更新されたデジタルシグナルを生成するために使用され得、更新されたデジタルシグナルは、次いで、ブロック810において、新しい命令あるいは電気、光学および/または化学インパルスに変換され得る。したがって、実施形態では、閉ループフィードバックシステムが提供される。
【0151】
ブロック848において、現実環境または仮想環境は、ブロック830において生成された出力に基づいてその環境の状態を更新し得る。現実環境または仮想環境は、次いで、その環境の更新された状態に基づいて新しい入力シグナルを生成し得る。これは、ニューロンのための将来の刺激を決定することと、将来の刺激を表現する新しいテンソルを生成することとを含み得る。新しいデジタル入力シグナルが環境によって生成されない場合、方法は終了し得る。新しいデジタル入力シグナルが環境によって生成された場合、方法は、ブロック810に戻り得、新しいデジタル入力シグナルは、電気、光学および/または化学インパルスのための命令に変換され得る。
【0152】
図8Bは、生物学的コンピューティングプラットフォームを使用する方法850のための一実施形態を示す流れ図である。方法850は、方法800に関して説明された動作の一部または全部を含み得、トレーニングを対象とする1つまたは複数の追加の動作を含み得る。
【0153】
一実施形態では、ブロック805において、コンピューティングデバイスが、仮想環境からまたは現実環境から、デジタル入力シグナルを受信する。いくつかの実施形態では、仮想環境は、現実環境のシミュレーションであり、現実(たとえば、物理的)環境の状態を反映し得る。現実環境からのデジタル入力シグナルは、いくつかの実施形態において、物理的環境の、1つまたは複数の測定値、設定、パラメータなどを含むかまたはそれらに基づき得る。
【0154】
ブロック810において、コンピューティングデバイスは、デジタル入力シグナルを、電気、化学および/または光学インパルスまたはシグナルのための命令に変換する。デジタル入力シグナルは、場所ベース符号化方式、時間ベース符号化方式、または場所ベース符号化と時間ベース符号化とを組み合わせたハイブリッド符号化方式であり得る、符号化方式に従って、電気、化学および/または光学インパルスまたはシグナルのための命令に変換される。いくつかの実施形態では、デジタル入力シグナルは、電気、化学および/または光学インパルスのための命令の代わりに、あるいはそれらの命令に加えて、化学インパルスのための命令に変換される。
【0155】
一実施形態では、符号化は、レートベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数を決定することを含む。一実施形態では、符号化は、場所ベースコーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の位置を決定することを含む。一実施形態では、符号化は、レートベースコーディング方式と場所ベースコーディング方式とを組み合わせた混合コーディング方式を使用して実施される。そのような実施形態では、符号化は、仮想環境または現実環境の状態に基づいて、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の周波数と、電気、化学および/または光学シグナルを適用すべき1つまたは複数の位置とを決定することを含む。
【0156】
ブロック820において、コンピューティングデバイスは、命令をMEAに提供し、MEAは、電極のアレイ(たとえば、電極の2Dグリッドまたは3D行列)に、1つまたは複数の光源に、1つまたは複数の化学生成器/エミッタになど、電気、化学および/または光学インパルスを適用する。
【0157】
ブロック825において、MEAは、アレイの座標において(たとえば、2Dグリッドまたは3D行列の座標において)生物学的ニューロンによって出力された、電気シグナル、化学シグナルおよび/または光学シグナルを測定する。電気、化学および/または光学シグナルは、実施形態においてアナログシグナルであり得る。
【0158】
一実施形態では、ブロック828において、MEAまたはコンピューティングデバイスは、処理すべき測定された電気、化学および/または光学シグナルの第1のサブセットと、無視すべき測定された電気および/または光学シグナルの第2のサブセットとを決定するために、1つまたは複数のブラインディング技法を適用する。MEAまたはコンピューティングデバイスは、次いで、第2のサブセットにおけるそれらの測定された電気、化学および/または光学シグナルをフィルタで除去、無視、または削除し得る。
【0159】
ブロック830において、MEAは、電気シグナル、化学シグナルおよび/または光学シグナルのデジタル表現を生成し得る。これは、ニューロンによって出力され、電気、化学および/または光学センサーによって検出された、アナログ電気、化学および/または光学シグナルを、デジタルシグナルに変換するために、物理的または仮想アナログデジタル変換器を使用することを含み得る。
【0160】
ブロック840において、MEAは、デジタル表現をコンピューティングデバイスに送り得、コンピューティングデバイスは、デジタル表現を現実環境または仮想環境にとって理解可能な出力に変換し得る。これは、場所ベース符号化方式、時間ベース符号化方式、または場所ベース符号化と時間ベース符号化とを組み合わせたハイブリッド符号化方式であり得る、復号方式に従って、デジタル表現に基づく仮想環境または現実環境のための出力または命令を生成し得る。復号方式は、符号化のために使用されるものと同じコーディング方式であり得るか、または符号化のために使用されるものとはまったく異なるコーディング方式であり得る。単純化した例として、場所ベースコーディング方式が符号化のために使用され得、時間ベースコーディング方式が復号のために使用され得る。
【0161】
ブロック845において、コンピューティングデバイスは、仮想環境および/または現実(たとえば、物理的)環境に、出力または命令(たとえば、応答メッセージ、活動、設定、パラメータなど)を提供し得る。
【0162】
ブロック851において、コンピューティングデバイスは、仮想環境または現実環境からトレーニングシグナルを受信し得る。トレーニングシグナルは、出力または命令が、仮想環境または現実環境が、ターゲット状態または条件に達すること、あるいは場合によっては何らかの条件または規準を満たすことを引き起こしたかどうかを示し得る。ブロック852において、処理論理が、1つまたは複数の規準(たとえば、ターゲット目的)が満たされたかどうか、および/またはトレーニングシグナルが、報酬(正の強化)シグナルであるのか罰(負の強化)シグナルであるのかを決定し得る。その目的が満たされた、および/またはトレーニングシグナルが報酬シグナルであった場合、方法はブロック855に続く。その目的が満たされなかった、および/またはトレーニングシグナルが罰シグナルであった場合、方法はブロック865に続く。
【0163】
ブロック855において、コンピューティングデバイスは、電気、光学または化学報酬刺激(たとえば、予測可能な刺激)を決定し、その報酬刺激を適用するようにMEAに命令し得る。報酬刺激は、本明細書の他の場所で説明されるように、ニューロンへの刺激の継続、特定の電気、光学および/または化学刺激などを含み得る。代替的に、コンピューティングデバイスは、MEAにトレーニングシグナルをフォワーディングし得、MEAは、次いで、提供すべき報酬刺激を決定し得る。ブロック860において、MEAは、次いで、生物学的ニューロンに報酬刺激を適用する。
【0164】
ブロック865において、コンピューティングデバイスは、電気、光学または化学罰刺激(たとえば、予測不可能な刺激)を決定し、その罰刺激を適用するようにMEAに命令し得る。罰刺激は、本明細書の他の場所で説明されるように、ニューロンへの刺激の中止、特定の電気、光学および/または化学刺激などを含み得る。一実施形態では、MEAは、複数のin vitro生物学的ニューロンが、仮想環境または物理的環境と相互作用することあるいは仮想環境または物理的環境を修正することを引き起こす様式で、複数のin vitro生物学的ニューロンの自己組織化挙動を引き出すための、ターゲット物体が満たされなかったことに応答して、時間期間の間、in vitro生物学的ニューロンに刺激を送達することを中止する。一実施形態では、コンピューティングデバイスは、MEAにトレーニングシグナルをフォワーディングし得、MEAは、次いで、提供すべき罰刺激を決定し得る。ブロック870において、MEAは、次いで、生物学的ニューロンに罰刺激を適用する。
【0165】
このプロセスは継続し得、生物学的ニューラルネットワークがトレーニングされ得る。トレーニングは、進行中であり得、生物学的ニューラルネットワークが実施形態においてフィールドにおいて使用されている間、実施され得る。いくつかの実施形態では、方法800の動作と方法850の動作とは組み合わせられる。
【0166】
図9は、機械に本明細書で説明される方法論のうちのいずれか1つまたは複数を実施させるための命令のセットが実行され得る、コンピューティングデバイス900の例示的な形態の機械の図式表現を示す。代替実施形態では、機械は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イントラネット、エクストラネット、またはインターネット中で他の機械に接続され(たとえば、ネットワーク化され)得る。機械は、クライアントサーバネットワーク環境内のサーバ機械またはクライアント機械の資格で動作するか、あるいはピアツーピア(または分散型)ネットワーク環境内のピア機械として動作し得る。機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、セットトップボックス(STB)、携帯情報端末(PDA)、セルラー電話、ウェブアプライアンス、サーバ、ネットワークルータ、スイッチまたはブリッジ、あるいはその機械によってとられるべき活動を指定する命令のセット(連続またはそれ以外)を実行することが可能な任意の機械であり得る。さらに、単一の機械のみが示されているが、「機械」という用語はまた、本明細書で説明される方法論のうちのいずれか1つまたは複数を実施するために命令のセット(または複数のセット)を個々にまたは一緒に実行する、機械(たとえば、コンピュータ)の任意の集合を含むと解釈されるものとする。
【0167】
例示的なコンピューティングデバイス900は、バス930を介して互いと通信する、処理デバイス902と、メインメモリ904(たとえば、読取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、同期DRAM(SDRAM)またはRambus DRAM(RDRAM)などのダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)など)と、スタティックメモリ906(たとえば、フラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)と、2次メモリ(たとえば、データストレージデバイス918)とを含む。
【0168】
処理デバイス902は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニットなど、1つまたは複数の汎用プロセッサを表現する。より詳細には、処理デバイス902は、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組合せを実装するプロセッサであり得る。処理デバイス902はまた、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなど、1つまたは複数の専用処理デバイスであり得る。処理デバイス902は、本明細書で説明される動作およびステップを実施するための処理論理(命令922)を実行するように構成される。
【0169】
コンピューティングデバイス900は、ネットワークインターフェースデバイス908をさらに含み得る。コンピューティングデバイス900は、ビデオディスプレイ910(たとえば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))、英数字入力デバイス912(たとえば、キーボード)、カーソル制御デバイス914(たとえば、マウス)、および/またはシグナル生成デバイス916(たとえば、スピーカー)をも含み得る。
【0170】
データストレージデバイス918は、本明細書で説明される方法論または機能のうちのいずれか1つまたは複数を具現する命令922の1つまたは複数のセットが記憶された機械可読記憶媒体(またはより詳細には、コンピュータ可読記憶媒体)928を含み得る。命令922はまた、コンピュータシステム900による命令922の実行中に、メインメモリ904内におよび/または処理デバイス902内に完全にまたは少なくとも部分的に存在し得、メインメモリ904および処理デバイス902は、コンピュータ可読記憶媒体をも構成する。
【0171】
コンピュータ可読記憶媒体928はまた、(前の図に関して説明されたような)MEAインターフェース150および/または仮想環境155、ならびに/あるいはMEAインターフェース150および/または仮想環境155を呼び出す方法を含んでいるソフトウェアライブラリを記憶するために使用され得る。コンピュータ可読記憶媒体928は、例示的な実施形態において単一の媒体であることが示されているが、「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、命令の1つまたは複数のセットを記憶する単一の媒体または複数の媒体(たとえば、集中型または分散型データベース、ならびに/あるいは関連付けられるキャッシュおよびサーバ)を含むと解釈されるべきである。「コンピュータ可読記憶媒体」という用語はまた、本明細書で説明される方法論のうちのいずれか1つまたは複数を機械に実施させる、機械による実行のための命令のセットを記憶または符号化することが可能である、任意の非一時的媒体を含むと解釈されるものとする。「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、したがって、限定はしないが、固体メモリと、光学および磁気媒体とを含むと解釈されるものとする。
【0172】
詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビット上の動作のアルゴリズムおよび記号表現の見地から提示された。これらのアルゴリズム説明および表現は、データ処理技術分野の当業者が、他の当業者に自身の仕事の本質を最も効果的に伝えるために使用される手段である。アルゴリズムは、ここでは、および一般的には、所望の結果をもたらすステップの自己矛盾のないシーケンスであると考えられる。それらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするステップである。通常、ただし必ずしもそうであるとは限らないが、これらの量は、記憶され、転移され、組み合わせられ、比較され、場合によっては操作されることが可能な電気シグナルまたは磁気シグナルの形態をとる。場合によっては、主に広く使用されているという理由から、これらのシグナルを、ビット、値、要素、シンボル、文字、項、数などと呼ぶことが好都合であることが判明している。
【0173】
しかしながら、これらの用語および同様の用語はすべて適切な物理量に関連付けられ、これらの量に適用される好都合な標識にすぎないことを念頭に置くべきである。別段に明記されていない限り以下の説明から明らかなように、説明全体にわたって、「受信すること」、「変換すること」、「送ること」などの用語を利用する説明は、コンピュータシステムまたは同様の電子コンピューティングデバイスの活動およびプロセスを指し、これは、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子)量として表現されるデータを操作し、そのデータを、コンピュータシステムメモリまたはレジスタ、あるいは他のそのような情報ストレージ、送信または表示デバイス内の物理量として同様に表現される他のデータにトランスフォームすることを諒解されたい。
【0174】
本開示の実施形態はまた、本明細書の動作を実施するための装置に関する。この装置は、説明される目的のために特別に構築され得、および/または、この装置は、コンピュータシステムに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的にプログラムされる汎用コンピュータシステムを備え得る。そのようなコンピュータプログラムは、限定はしないが、各々がコンピュータシステムバスに結合された、フロッピーディスクと、光学ディスクと、CD-ROMと、磁気光学ディスクとを含む、任意のタイプのディスク、読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、他のタイプの機械アクセス可能記憶媒体、または電子命令を記憶するのに好適な任意のタイプの媒体など、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【0175】
上記の説明は、例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。多くの他の実施形態は、上記の説明を読み、理解すると、当業者には明らかであろう。本開示は特定の例示的な実施形態に関して説明されたが、本開示が、説明された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で修正および改変を加えて実施され得ることを認識されよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきである。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照しながら、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲とともに、決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【国際調査報告】