(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コンピューティング機器の集合体から廃熱を電気に変換するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20241018BHJP
F01K 27/02 20060101ALI20241018BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241018BHJP
H02K 35/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F01K25/10
F01K27/02 Z
H05K7/20 M
H02K35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525927
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 IB2022060466
(87)【国際公開番号】W WO2023073660
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524161450
【氏名又は名称】ノボパワー インターナショナル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NovoPower International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラファルス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ベルテニー,タマス
(72)【発明者】
【氏名】ノーディン,ジョリス
【テーマコード(参考)】
3G081
5E322
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BB10
3G081BC30
3G081BD10
5E322AA05
5E322AA09
5E322AA10
5E322DA01
5E322DA02
5E322DA03
5E322DA04
5E322FA01
(57)【要約】
本発明は、液冷式データセンタ及びコンピューティングセンタのための廃熱回収及び発電システムを提供して、それらの廃熱を捕捉して使用し、それを発電に使用し、データセンタ及びコンピューティングセンタが費用対効果の高い方法で電気的必要性の一部を自己供給することを可能にする。システムは、電子部品から収集された熱を使用して、作動流体を加熱し気化させ、気化した作動流体(複数の場合もある)を使用して膨張器に動力を供給し、膨張機を使用して発電機を駆動し、凝縮器を使用して膨張器から排出された部分的に冷却された蒸気を凝縮し、ポンプを使用して凝縮した作動流体を蒸発器システムに戻し、制御システムを使用して熱捕捉システム及び膨張器の弁を管理し、生成システムの順序を管理して効率及び電力品質を最大化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するためのシステムであって、
内部に液体熱伝達媒体を保持するように構成された熱捕捉サブシステムであって、使用時に、前記液体熱伝達媒体がコンピューティング機器の前記少なくとも1つの集合体からの前記廃熱を吸収することを可能にする、熱捕捉サブシステムと、
相変化作動流体を含む蒸発器サブシステムであって、前記作動流体が、前記液体熱伝達媒体に吸収された前記廃熱を吸収することによって液体状態から気体状態に変化するように構成されている、蒸発器サブシステムと、
少なくとも1つのモジュール式膨張デバイスを含むモジュール式膨張器サブシステムであって、前記膨張器サブシステムが、少なくとも1つの流体流れ制御要素を介して前記蒸発器サブシステムに結合され、前記気体状態の加圧作動流体が、前記少なくとも1つの流体流れ制御要素を使用して前記膨張器サブシステムに向けられ、前記加圧気体状作動流体が膨張し、機械的仕事を生み出す、モジュール式膨張器サブシステムと、
前記膨張器サブシステムに結合されたモジュール式生成サブシステムであって、動作時に、モジュール式発電機が、前記モジュール式膨張デバイス内の前記加圧気体状作動流体の膨張によって引き起こされた前記機械的仕事から電気エネルギを生み出すように構成されている、モジュール式生成サブシステムと、
前記膨張器サブシステムに接続された凝縮器サブシステムであって、凝縮器が、動作時に、膨張した作動流体を気体状態又は混合状態から液体状態に液化し、次いで液体状態の作動流体を前記蒸発器サブシステムに戻す、凝縮器サブシステムと、
前記他のサブシステムの少なくとも1つの動作を制御する制御サブシステムと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記凝縮器サブシステムが、冷熱源と、冷却器と、冷却液と、凝縮器と、前記冷却器と前記凝縮器との間で前記冷却液を循環させる冷却剤ポンプとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記蒸発器サブシステムが、前記液体熱伝達媒体の温度及び前記凝縮器を冷却する前記冷熱源の温度に基づいて選択される相変化作動流体と、前記作動流体を循環させてその圧力を増加させる作動流体ポンプと、前記液体熱伝達媒体から前記作動流体に熱を伝達して前記作動流体を液体状態から気体状態に変化させる相変化熱交換蒸発器とを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項3】
前記作動流体が、前記液体熱伝達媒体及び前記冷熱源の温度並びに以下の基準、すなわち(i)安全性(非毒性、不燃性)、(ii)環境受容性(地球温暖化係数、オゾン層の影響)、(iii)可用性及びコスト、並びに(iv)その他の基準を考慮に入れて、前記システムの熱力学的効率を最適化するために物理的特性に基づいて選択された化学物質又は化学物質の組み合わせからなるか、又はそれらを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御サブシステムが、
液体熱伝達媒体ポンプを制御することによる前記熱捕捉サブシステムの動作と、
前記作動流体ポンプを制御することによる前記蒸発器サブシステムの動作と、
前記冷却剤ポンプを制御することによる前記凝縮器サブシステムの動作と、
前記膨張デバイスの弁を制御することによる前記膨張器サブシステムの動作と、
前記発電機を制御することによる前記モジュール式生成サブシステムの動作とを制御するように構成されている、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記冷熱源の温度が、地上源冷却、自然体の水又は帯水層から循環される水、冷蔵又は任意の他の手段によって更に低下する、請求項2、3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記発電機に電気的に結合された可変周波数ドライブ(VFD)を更に含み、前記VFDが、動作時に、前記発電機に電気負荷を提供する、請求項1、2、3、4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
モジュール式生成制御システムが、前記モジュール式発電機によって生み出される電力を調整するために、前記モジュール式発電機の速度を制御するために前記VFDによって提供される前記電気負荷を制御する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記発電機からの電力出力を平滑化するために、ハイパーキャパシタ、スーパーキャパシタ、又は他の高速蓄電デバイスが使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記モジュール式膨張デバイスは、バウンスチャンバの有無にかかわらず、単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリである、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記モジュール式発電機が、リニア発電機である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記熱捕捉サブシステムが、前記液体熱伝達媒体で満たされた槽として実装され、前記液体熱伝達媒体が誘電性流体であり、コンピューティング機器の前記少なくとも1つの集合体が前記液体熱伝達媒体に浸漬される、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記誘電性流体が、前記槽の上方に配置されたコイル内を循環する前記相変化作動流体によって冷却される相変化流体である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記誘電性流体が、その気体状態で前記膨張器サブシステム内に導入される前記作動流体として作用する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作動流体が、非共沸流体である、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記加熱された相変化作動流体の温度が、太陽熱加熱デバイス又は任意の他の手段によって更に上昇する、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
次の夏の間に前記地上源温度を低下させるように地面を更に冷却するために、冬の間、冷たい周囲空気が地下で循環される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムが、前記蒸発器サブシステムをバイパスし、加熱された液体熱伝達媒体を冷却器に直接接続された熱交換器に導入するための弁を含み、前記蒸発器サブシステム、前記モジュール式膨張器サブシステム、又は前記モジュール式生成サブシステムが保守又は他の理由で利用できないときはいつでも、前記システムの動作を継続することを可能にする、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記相変化作動流体が、周囲温度及び大気圧で気体状態にある物質からなり、又は前記物質を含み、前記凝縮器が、前記作動流体が前記凝縮器から液体形態で出現するように大気圧よりも高い圧力に維持される、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記相変化作動流体の配合が、前記周囲温度の季節変動を考慮に入れて、前記システムの前記熱力学的効率を最適化するために、季節ごとに変更される、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
複数のモジュール式膨張器及び複数のモジュール式発電機が実装され、動作中のモジュール式膨張器及びモジュール式発電機の数が、利用可能な廃熱の量に基づいて選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記複数のモジュール式膨張器が、互いに対して位相がずれて動作する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記膨張器サブシステム及び前記発電機が、前記膨張器サブシステム及び前記発電機の機能を実行する膨張器-発電機アセンブリに統合される、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
統合された膨張器-発電機アセンブリであって、
複数の永久磁石と、
複数のコイルと、
ピストンと、
シリンダと、
を備え、
前記複数の永久磁石が前記ピストンの内部に配置され、前記複数のコイルが前記シリンダの長さに沿って配置されるように配置され、
使用時に、前記統合された膨張器-発電機アセンブリ内で膨張する加圧ガスが、前記シリンダ内の前記ピストンを作動させる機械的力を生み出し、そのような作動時に、前記複数の永久磁石と前記複数のコイルとの間の相対運動が電気を生み出す、統合された膨張器-発電機アセンブリ。
【請求項24】
請求項25に記載の統合された膨張器-発電機アセンブリを含むシステム。
【請求項25】
前記一体型膨張器-発電機アセンブリが、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するための請求項1~24のいずれか一項に記載のシステムで使用可能である、請求項25に記載の統合された膨張器-発電機アセンブリ。
【請求項26】
少なくとも1つの抵抗器と少なくとも1つのリレーとを備えるブレーキアセンブリであって、故障状態が検出されると、前記少なくとも1つのリレーが、発電機シャフトの減速を引き起こして発電機の前記シャフトの移動を妨げるように、前記発電機を前記少なくとも1つの抵抗器に電気的に結合するように構成される、ブレーキアセンブリ。
【請求項27】
障害状態が発生した場合に前記システムの物理的構成要素を保護するために、請求項28に記載のブレーキアセンブリが使用される、請求項1~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するための方法であって、
熱伝達流体を内部に保持するように熱捕捉サブシステムを配置することであって、前記熱捕捉サブシステムが、使用時に、前記熱伝達流体が前記コンピューティング機器の前記少なくとも1つの集合体からの前記廃熱を吸収することを可能にすることと、
前記熱捕捉サブシステムに結合される相変化熱交換器を含む蒸発サブシステムを配置し、前記相変化熱交換器に作動流体を充填することであって、前記作動流体が前記熱伝達流体から前記廃熱を吸収すると、前記作動流体が液相から気相に気化され、前記作動流体が、コンピューティング機器の前記少なくとも1つの集合体によって放出される前記廃熱の温度に基づいて選択されることと、
少なくとも1つの流体流れ制御要素を介して前記蒸発器サブシステムに結合されるように膨張器サブシステムを配置することであって、前記蒸発器サブシステムから発する前記作動流体の加圧された蒸気が、前記少なくとも1つの流体流れ制御要素を使用して前記膨張器サブシステムに向けられ、前記膨張器サブシステムが使用されているとき、前記加圧された作動流体蒸気が、前記膨張器サブシステム内で膨張することができ、前記膨張器を作動させるための機械的力を生み出すことと、
前記膨張器サブシステムに結合されるように発電機サブシステムを配置することであって、前記発電機が、動作時に、前記加圧された作動流体蒸気の膨張によって引き起こされた前記機械的力を使用して電気を生み出すことと、
前記膨張器サブシステムに接続されるように凝縮器サブシステムを配置することであって、前記凝縮器が、動作時に、前記膨張した作動流体蒸気を前記気相から前記液相に液化し、前記凝縮した作動流体が、圧力下で前記蒸発器サブシステムに戻されることと、
他のサブシステムの動作を制御するための制御サブシステムを構成することと、
を含む、方法。
【請求項29】
前記発電機に電気的に結合されるように可変周波数ドライブ(VFD)を配置することを更に含み、前記VFDが、前記作動流体の前記加圧蒸気によって生み出される前記機械的力に対向する抵抗力を生み出すために前記発電機に電気負荷を提供するように動作可能である、請求項30に記載の方法。
【請求項30】
前記発電機の前記電力出力を調整するために前記VFDによって提供される前記電気負荷を制御するためのコントローラを構成することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項31】
前記膨張器サブシステム及び前記発電機が、前記膨張器サブシステム及び前記発電機の機能を実行する膨張器-発電機アセンブリに統合されるように配置される、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収及び再利用の分野に関し、特に、データセンタ、コンピューティングセンタ、サーバファーム及び同様の設備(「データセンタ」と本明細書で総称される)に典型的に見られるような、コンピューティング機器(computing equipment, コンピュータを使用した機器)の集合体から回収された廃熱からの電力の生成に関する。
【0002】
特に、排他的ではないが、本発明は、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するためのシステムに関し、システムは、統合された膨張器-発電機アセンブリ及びブレーキアセンブリを更に含む。更に、本発明は、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、高出力コンピューティング機器の使用が飛躍的に増加している。コンピューティング機器は、インターネットサービス、電子商取引、データストレージ、データ管理、暗号通貨マイニングなどの様々な用途のためにデータセンタで使用されている。そのようなデータセンタに電力を供給するためには膨大な量の電気が必要である。コンピューティング機器によって使用される電気は廃熱の生成をもたらし、これはコンピューティング機器の電子部品の温度を製造業者の仕様内に維持するために除去されなければならない。この廃熱を除去するために相当量の電気エネルギが消費され、その結果、データセンタのオペレータのコスト及びこの電気の生成に関連付けられる温室効果ガス排出及び他の環境への影響が生じる。
【0004】
前述の問題を軽減する試みにおいて、コンピューティング機器から発する熱を管理及び再利用するためにいくつかの手法が使用されてきた。廃熱を捕捉して利用するために、様々なシステム及び方法が使用されてきた。例えば、データセンタから発する熱は、温室を加熱し、地域加熱システムに熱を供給するために利用されてきた。
【0005】
このような手法は、データセンタ動作の持続可能性を高める。しかしながら、データセンタ動作の廃熱を回収及び再利用するための従来のシステム及び方法に関連付けられるいくつかの制限がある。廃熱を電気に変換することができる場合、廃熱を生み出すコンピューティング機器の集合体に電力を供給することを含む、多種多様な目的に使用することができる。データセンタ自身の廃熱からの電気の自己供給は、循環経済の一例を構成し、データセンタの持続可能性に寄与する。
【0006】
従来、空冷は、データセンタにおいてそのような廃熱を処分するために利用されてきた。しかしながら、空冷は相当量のエネルギを必要とし、加熱された空気から回収できる熱の有用性は限られている。
【0007】
データセンタのコンピューティング機器を冷却するために必要なエネルギ量を削減し、それによってこれらのセンタを運用するコストと環境への影響の両方を削減するための駆動により、特にコンピューティング機器を冷却するための液体(「液冷」)の使用に関して、かなりの革新をもたらした。空気からよりも液体から熱を抽出する方が効率的であるため、液冷は、コンピューティング機器の電子部品を冷却するコストを削減する。
【0008】
革新的なタイプの液冷技術の1つは、電子部品が誘電性流体の槽に浸漬される「浸漬冷却」として知られている。
【0009】
第2の革新は、相変化(又は「二相」)浸漬冷却からなる。ここで、発熱する電子部品が浸漬される誘電性流体は、加熱されると蒸発する相変化流体である。蒸気は、電子部品を収容するチャンバ内で上昇し、それらの上方の一連のコイルによって凝縮され、冷却剤が循環する。誘電性流体は、コイル上で凝縮し、その後、電子部品を収容する槽内に落下する。本発明により、冷却のコストがまた更に削減される。
【0010】
ダイレクトチップ及び他の構成を含む他の形態の液冷も開発されており、これにより、コンピューティング機器によって出される熱の大部分を液体熱伝達媒体を使用して除去することができる。
【0011】
液冷は、建物又は温室を加熱するため、又は他の熱目的のために、データセンタの廃熱の使用を容易にする。しかしながら、これらの目的のために廃熱を使用するために必要とされるインフラストラクチャ構成は、それらの用途を大きく制限する。更に、これらの手法は、データセンタが必要とする電力を低減するために回収された熱を実際にリサイクルしない。この廃熱の一部を電力に変換する「循環経済」革新は、施設オペレータが自身の廃熱からそのコンピューティング機器に電力を供給するために必要な電気の一部を生み出すことを可能にし、それによってそのコスト及びその環境フットプリントを削減する。したがって、データセンタに適合した廃熱生成システムが必要とされている。
【0012】
液冷式データセンタでは、廃熱は比較的高い温度で液体形態で収集されるため、この廃熱から電気を生み出すことは、空冷式データセンタの場合よりも実現可能である。したがって、データセンタにおける液冷への漸進的な移行は、データセンタの電力要件を低減するために廃熱を使用する扉を開く。
【0013】
廃熱から電力を生み出すために、多くの有機ランキンサイクル(以下、「ORC」という)ソリューションが提案されている。これらのORCソリューションは、廃熱を使用して流体(通常、有機流体)を蒸発させて対応する蒸気を形成し、蒸気を使用してタービン又はスクリュー膨張器などの電力変換デバイスを駆動する。しかしながら、従来のORCシステムは、一般に、液冷を使用するものを含む、データセンタから捕捉された廃熱に見られる温度よりも高い温度を必要とする。したがって、従来のORCシステムは、データセンタの廃熱を電力に経済的に変換することができない。更に、利用可能な廃熱の量は経時的に大きく変化する可能性があり、従来のORCシステムで使用されるタービン及びスクリュー膨張器は、一般に、狭い範囲の動作条件でのみ効率的である。
【0014】
これらすべての理由から、データセンタ及びコンピューティング機器の他のアセンブリのオペレータが、それらの廃熱を捕捉し、費用効果の高い方法で電気を生み出すためにそれを再利用する(すなわち「リサイクル」する)ことを可能にする革新的なシステムが必要とされている。本発明の目的は、データセンタの廃熱のこのようなリサイクルを可能にすることである。
【0015】
先行する背景情報は、本発明に関連する可能性があると出願人が考える情報を明らかにするために提供される。前述の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成することを必ずしも意図しておらず、解釈すべきでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、コンピューティングセンタ、データセンタ、サーバファーム、暗号通貨マイナ、及びコンピューティング機器の他の集合体のための廃熱回収及び発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様によると、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するためのシステムであって、
内部に液体熱伝達媒体を保持するように構成された熱捕捉サブシステムであって、使用時に、液体熱伝達媒体がコンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を吸収することを可能にする、熱捕捉サブシステムと、
相変化作動流体を含む蒸発器サブシステムであって、作動流体が、液体熱伝達媒体に吸収された廃熱を吸収することによって液体状態から気体状態に変化するように構成されている、蒸発器サブシステムと、
少なくとも1つのモジュール式膨張デバイスを含むモジュール式膨張器サブシステムであって、膨張器サブシステムが、少なくとも1つの流体流れ制御要素を介して蒸発器サブシステムに結合され、気体状態の加圧作動流体が、少なくとも1つの流体流れ制御要素を使用して膨張器サブシステムに向けられ、加圧気体状作動流体が膨張し、機械的仕事を生み出す、モジュール式膨張器サブシステムと、
膨張器サブシステムに結合されたモジュール式生成サブシステムであって、動作時に、モジュール式発電機が、モジュール式膨張デバイス内の加圧気体状作動流体の膨張によって引き起こされた機械的仕事から電気エネルギを生み出すように構成されている、モジュール式生成サブシステムと、
膨張器サブシステムに接続された凝縮器サブシステムであって、凝縮器が、動作時に、膨張した作動流体を気体状態又は混合状態から液体状態に液化し、次いで液体状態の作動流体を蒸発器サブシステムに戻す、凝縮器サブシステムと、
制御サブシステムと、
を含む、システムが提供される。
【0018】
第2の態様によると、統合された膨張器-発電機アセンブリであって、
複数の永久磁石と、
複数のコイルと、
ピストンと、
シリンダと、
を備え、
複数の永久磁石がピストンの内部に配置され、複数のコイルがシリンダの長さに沿って配置されるように配置され、
使用時に、統合された膨張器-発電機アセンブリ内で膨張する加圧ガスが、シリンダ内のピストンを作動させる機械的力を生み出し、そのような作動時に、複数の永久磁石と複数のコイルとの間の相対運動が電気を生み出す、統合された膨張器-発電機アセンブリが提供される。
【0019】
任意選択的に、統合された膨張器-発電機アセンブリは、第1の態様のシステムで使用される。
【0020】
第3の態様によると、少なくとも1つの抵抗器と少なくとも1つのリレーとを備えるブレーキアセンブリであって、故障状態が検出されると、少なくとも1つのリレーが、発電機のシャフトの減速を引き起こして発電機のシャフトの移動を妨げるように、発電機を少なくとも1つの抵抗器に電気的に結合するように構成される、ブレーキアセンブリが提供される。
【0021】
任意選択的に、ブレーキアセンブリは、第1の態様のシステムで使用される。
【0022】
第4の態様によると、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を電気に変換するための方法であって、
熱伝達流体を内部に保持するように熱捕捉サブシステムを配置することであって、熱捕捉サブシステムが、使用時に、熱伝達流体がコンピューティング機器の少なくとも1つの集合体からの廃熱を吸収することを可能にすることと、
熱捕捉サブシステムに結合される相変化熱交換器を含む蒸発サブシステムを配置し、相変化熱交換器に作動流体を充填することであって、作動流体が熱伝達流体から廃熱を吸収すると、作動流体が液相から気相に気化され、作動流体が、コンピューティング機器の少なくとも1つの集合体によって放出される廃熱の温度に基づいて選択されることと、
少なくとも1つの流体流れ制御要素を介して蒸発器サブシステムに結合されるように膨張器サブシステムを配置することであって、耐圧容器から発する作動流体の加圧された蒸気が、少なくとも1つの流体流れ制御要素を使用して膨張器サブシステムに向けられ、膨張器サブシステムが使用されているとき、加圧された作動流体蒸気が、膨張器サブシステム内で膨張することができ、膨張器を作動させるための機械的力を生み出すことと、
膨張器サブシステムに結合されるように発電機サブシステムを配置することであって、発電機が、動作時に、加圧された作動流体蒸気の膨張によって引き起こされた機械的力を使用して電気を生み出すことと、
膨張器サブシステムに接続されるように凝縮器サブシステムを配置することであって、凝縮器が、動作時に、作動流体の膨張した蒸気を気相から液相に液化し、凝縮した作動流体は、圧力下で蒸発器サブシステムに戻されることと、
他のサブシステムの動作を制御するための制御サブシステムを構成することと、
を含む、方法が提供される。
【0023】
第5の態様によれば、コンピューティングセンタ、データセンタ、又は電子部品を含むコンピューティング機器の他の集合体から廃熱を回収して利用するためのシステムであって、
電子部品の動作からの熱が、液体によって吸収され、
当該液体からの熱が、耐圧容器内の作動流体に直接的又は間接的に伝達され、当該作動流体を気化させ、
制御システムによって動作されるポート又は弁が、気化した作動流体が耐圧容器から膨張器に通過することを可能にし、
耐圧容器から放出された気化した作動流体を膨張器内で膨張させ、機械的動力を生み出し、
膨張器で生み出された機械的動力が、発電機に動力を供給し、電気を生み出すために使用され、
凝縮器が、膨張器から排出された部分的に冷却された蒸気を凝縮するために使用され、
ポンプが凝縮した作動流体を耐圧容器に戻し、
制御システムが、当該弁及びポンプの動作を制御する、システムが提供される。
【0024】
第6の態様によれば、コンピューティングセンタ、データセンタ、又は電子部品を含むコンピューティング機器の他の集合体から廃熱を回収及び利用するための方法であって、
耐圧容器内に収容された、電子部品が浸漬されている相変化誘電性流体内の電子部品から熱を収集することと、
電子部品が液体誘電性流体に浸漬されたままであり、容器内の圧力が選択されたレベルまで上昇するように、気化した作動流体の耐圧容器からの流出を制限することと、
耐圧容器から放出された気化した作動流体(複数の場合もある)を膨張器に向けることであって、膨張器が機械的動力を生み出すことと、
膨張器で生み出された機械的動力を使用して発電機に動力を供給し、電気を生み出すことと、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示による廃熱を電気に変換するためのシステムの全体的なアーキテクチャの概略図であり、システムは、熱捕捉サブシステム、蒸発器サブシステム、モジュール式膨張器サブシステム、モジュール式発電機サブシステム、及び凝縮器サブシステム、並びに他のサブシステムの各々を制御する制御サブシステムを含む。
【
図2】
図1のシステムのより詳細な図の概略図であり、各サブシステムの多くの重要な構成要素、並びにそれらの要素は、制御サブシステムによって制御される。
【
図3】モジュール式膨張器サブシステムとモジュール式発電機サブシステムとの間で使用可能なリンケージの一実施形態の図である。
【
図4】統合された膨張器-発電機アセンブリの一実施形態の図である。
【
図5】電子緊急ブレーキのアーキテクチャの図である。
【
図6】二相浸漬冷却システムで使用するための熱捕捉サブシステム及び膨張器サブシステムの一実施形態の概略図である。
【
図7】誘電性流体が相変化作動流体の役割も果たす二相浸漬冷却システムの一実施形態の概略図である。
【
図8】本開示の方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明は、本出願の実施形態及びそれらを実装することができる方法を示す。本教示を実行するいくつかの方式が開示されているが、当業者は、本教示を実行又は実施するための他の実施形態も可能であることを認識するであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、公称値から+/-10%の変動を指す。そのような変動は、具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書で提供される所与の値に常に含まれることを理解されたい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「データセンタ」という用語は、任意のコンピューティングセンタ、データセンタ、サーバファーム、暗号通貨インストール、又はコンピュータ若しくは関連電子機器の他の大きな集合体を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「誘電性流体」という用語は、電気の非常に低い導電率を示す任意の流体、すなわち実際の目的のための効果的な電気絶縁体を指す。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
概要
【0031】
本発明は、データセンタからの廃熱を効率的かつ費用効果的に捕捉し、捕捉された廃熱の一部を電気に変換するように構成された、
図1に示す廃熱回収及び発電システム100(以下、「システム100」と称する場合がある)を提供する。
【0032】
システム100のその構成要素のいくつかは、従来技術で説明されてきたが、本開示に準拠する方法で構成されていない。システム100は、循環経済の一部としてより持続可能な方法で動作するために、データセンタが廃熱から電気を経済的に生み出し、それによって動作電力要件の一部を自己供給することを可能にするように構成される。本開示の発明では、多様な要素を革新的な方法で組み合わせて統合することにより、他のシステムが直面する障害を克服する。
【0033】
データセンタのシステム100は、a)データセンタの電子部品から廃熱を捕捉し、b)捕捉された廃熱の一部を電気に変換するように構成される。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、
図1に示すシステム100は、
熱捕捉サブシステム101と、
蒸発器サブシステム102と、
モジュール式膨張器サブシステム103と、
モジュール式生成サブシステム104と、
凝縮器サブシステム105と、
他の前述のサブシステムの態様を制御する制御サブシステム106と、
を含む。
【0035】
これらのサブシステム101、102、103、104、105、106は、システム100がデータセンタからの廃熱を効率的かつ費用効果的に捕捉し、捕捉された廃熱の一部を電気に変換するように機能することを可能にするために、図示のように互いに接続されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、これらのサブシステム101、102、103、104、105、106の各々は、システム100の動作パラメータをリアルタイムで変化させることができるコントローラを使用する。
【0037】
以下、前段落で説明したような各サブシステム101、102、103、104、105、106の機能を制限なく説明する。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、記載された機能を達成するために様々な代替形態が実装され得ることが当業者によって理解され得る。
サブシステム101、102、103、104、105、106の詳細な説明
【0038】
図2には、システム100のより詳細な図が示されている。
熱捕捉サブシステム201
【0039】
システム100は、熱捕捉サブシステム201であって、電子部品203から熱を抽出することによって電子部品203を含むコンピューティング機器を冷却する液体熱伝達媒体202と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、電子部品203が浸漬される誘電性流体の槽(図示せず)と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、電子部品203が浸漬される相変化誘電性流体の気密封止槽(図示せず)と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、槽及び電子部品203が封入された密閉耐圧容器(図示せず)と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、液体熱伝達媒体202を熱発生電子部品203に接触させることなく近接させる熱交換器、パイプ及びマニホールドのアセンブリ(図示せず)と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、誘電性流体から熱を抽出するための相変化熱交換器204と、
任意選択的に、いくつかの実施形態では、液体熱伝達媒体202を循環させるための液体熱伝達媒体ポンプ205と、前述のポンプ205の動作を制御するための熱伝達媒体制御システム(HTMCS)219とを含む、熱捕捉サブシステム201を含む。
【0040】
より具体的には、熱捕捉サブシステム201は、電子部品203から熱を抽出することによってコンピューティング機器の電子部品203を冷却する液体熱伝達媒体202と、液体熱伝達媒体202を循環させるための液体熱伝達媒体ポンプ205とを含む。ポンプ205の動作は、熱伝達媒体制御サブシステム219によって制御される。
【0041】
いくつかの実施形態では、液体熱伝達媒体202は、パイプ及びマニホールドの集合体内に収容され、熱発生電子部品203(「ダイレクトチップ冷却」(図示せず)に直接循環される。
【0042】
いくつかの実施形態では、液体熱伝達媒体202は誘電性流体(「単相浸漬冷却」(図示せず))の槽を含み、その中にコンピューティング機器の電子部品203が浸漬される。次いで、誘電性流体は、液体熱伝達媒体ポンプ205を使用して蒸発器サブシステム207に循環される(102)。相変化熱交換蒸発器204では、誘電性流体は、相変化作動流体208に熱を伝達し、それによって冷却されてから槽に戻される。他の実施形態では、相変化熱交換蒸発器204は、任意選択的に、液体熱伝達媒体202(図示せず)内に配置されたチューブの形態の熱交換器を含むことができる。
【0043】
図2には、制御サブシステム106(218)も含まれている。
【0044】
図6において、いくつかの実施形態では、電子部品203(602)及び誘電性流体の槽603は、密閉容器601内に収容され、電子部品602からの熱により、誘電性流体603の一部が気化し、このような冷却方法は、「二相浸漬冷却」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、誘電性流体603の蒸気は、電子部品602が熱的に結合された金属又はセラミックヒートシンクから生成される。いくつかの実施形態では、蒸気は容器601内に残り、そこで熱伝達剤が循環される電子部品602(203)の上方に懸架された冷却コイル605によって凝縮され、誘電性流体の凝縮した蒸気は液体形態で槽内に戻る(603)。他の実施形態では、相変化作動流体をコイル605に直接導入することができ、それにより、相変化作動流体の気化を密閉容器601内の冷却コイル内で生じさせ、同時に気体状誘電性流体を冷却及び液化することができる。
図6に示すコイル605の形態は純粋に例示的なものであり、それらは任意の他の形態をとることができることが理解される。これらの実施形態では、コイル605は、蒸発器サブシステム102を構成し、蒸発器サブシステム102は、使用時に相変化作動流体を蒸発させるように構成される。
【0045】
いくつかの実施形態では、密閉容器601は、例えば
図7の701によって示されるように、耐圧性でもある。これらの実施形態では、耐圧容器701に収容された誘電性流体の一部が電子部品203、602からの熱によって気化する。次いで、得られた加圧蒸気702は、制御サブシステム106(
図7には図示せず)によって制御されるポート又は弁を介してモジュール式膨張器サブシステム103、703に放出され、液体熱伝達媒体202が相変化作動流体としても作用することを可能にし、それにより、熱捕捉サブシステム101、201が蒸発器サブシステム102、207の機能も実行することを可能にする。膨張した気体状誘電性流体は、凝縮器704で凝縮された後、液浸用流体ポンプ205、705で加圧されて耐圧容器701に戻される。
【0046】
いくつかの実施形態では、液体熱伝達媒体202は、その温度を更に上昇させるために、太陽熱収集器(図示せず)によって、又は任意の他の手段によって更に加熱される。
【0047】
いくつかの実施形態では、熱捕捉サブシステム101、201は、蒸発器サブシステム102、207をバイパスし、加熱された液体熱伝達媒体202を冷却器に直接接続された熱交換器(図示せず)に導入するための1つ以上の弁(図示せず)を含み、蒸発器サブシステム102、モジュール式膨張器サブシステム103、又はモジュール式生成サブシステム104が保守又は他の理由で利用できないときはいつでも、動作を継続する。
蒸発器サブシステム102、207
【0048】
再び
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、蒸発器サブシステム102、207は、
その熱力学的特性及び他の特性に従って選択された相変化作動流体208と、
液体熱伝達媒体202に収容される熱を相変化熱交換器204に伝達する前述の当該相変化熱交換器204と、
相変化熱交換器204と、モジュール式膨張器211と、凝縮器212との間で作動流体を循環させる作動流体ポンプ205とを含む。
作動流体208は、相変化熱交換蒸発器204内で蒸発すると、次に、モジュール式膨張器制御サブシステム106、221によって制御されるポート又は弁(図示せず)を介して、モジュール式膨張器サブシステム103、211に放出される。
【0049】
1つ以上の実施形態では、作動流体208は、液体熱伝達媒体202及び冷熱源224の温度並びに以下の基準、すなわち
(i)安全性(非毒性、不燃性)、
(ii)環境受容性(地球温暖化係数、オゾン層の影響など)、
(iii)可用性及びコスト、並びに
(iv)その他の基準
を考慮に入れて、システム100の熱力学的効率を最適化する物理的特性に基づいて選択された化学物質又は化学物質の組み合わせからなるか、又はそれらを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、作動流体208(すなわち、「非共沸」流体)の熱力学的特性を変更するために、化合物の混合物を使用することができる。いくつかの実施形態では、作動流体208は、当該目的のために特別に設計された1つ以上の化合物から構成されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、作動流体208は、周囲温度及び大気圧で液体である物質からなるか、又はそれを含む。他の実施形態では、作動流体208は、周囲温度及び大気圧で気体状態である物質からなるか、又はそれを含む。当該実施形態では、凝縮器は、当該凝縮器から出てくる作動流体208が液体形態であるように、大気圧よりも高い圧力に維持される。
【0052】
1つ以上の実施形態では、電子部品203は、当該電子部品203によって提供される熱によって蒸発させられるように熱力学的特性を有する誘電性流体に浸漬され(二相浸漬冷却)、当該槽は耐圧容器に収容され、熱捕捉サブシステム101、201は、
図6及び
図7に示すように、蒸発器サブシステム102、207としても機能し得る。
モジュール式膨張器サブシステム103、216
【0053】
モジュール式膨張器サブシステム103、216は、蒸発器サブシステム102、207によって供給される加圧蒸気を使用して機械的仕事を生み出す。
【0054】
1つ以上の実施形態では、モジュール式膨張器サブシステム103、216内の各モジュールは、膨張する蒸気から機械的仕事を生み出すために、入力及び出口弁又はポート(図示せず)を有するモジュール式膨張器211を含む。
【0055】
1つ以上の実施形態では、膨張器211の各モジュールは、
図4に示すように、その中に発電機の必須構成要素を含み、モジュール式生成システムとしても機能することを可能にする。いくつかの実施形態では、発電機は、吸気及び出口弁又はポート422を有する、電気コイル406及び永久磁石404を含むピストンを含むシリンダ壁を備える。コイル406に対する磁石404の往復運動は、電力出力を生成する。
【0056】
任意選択的に、膨張器211のモジュールのピストン及び関連するピストンは、システム100内の振動及び関連する動作の音響ノイズを低減するために、所与の対について、ピストンの動きが互いに同期し、互いに反対方向になるように対で構成される。任意選択的に、3つ組又はより高次のピストン及び関連するシリンダは、半径方向構成で配置され、モジュール式膨張器サブシステム103、216内の振動が低減されるようにそれらの動作において同期される。任意選択的に、2つ以上のピストン及び関連するシリンダは、出力品質を改善するために、互いに位相がずれて動作される。
【0057】
一実施形態が
図3に示されているモジュール式膨張器サブシステム103では、蒸発器サブシステム102によって生み出された気化した作動流体は、モジュール式膨張器制御システム221によって制御されるポート又は弁302を通ってモジュール式膨張器302に入る。いくつかの実施形態では、入口及び出口弁は電気的に制御され、高速に作用し、高流量を可能にするように設計される。いくつかの実施形態では、弁は電磁弁であってもよい。他の実施形態では、ポート又は弁は、いかなる制限もなく他の設計のものであってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、このモジュール式膨張器サブシステム103は、バウンスチャンバ(図示せず)の有無にかかわらず、単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリを含むことができる。他の実施形態では、タービン若しくはスクリュー膨張器、又は他のデバイス(図示せず)を含むことができ、例えば、多段タービンを採用してもよい。
【0059】
気化した作動流体は、モジュール式膨張器302内で膨張すると、モジュール式発電機303に対して仕事をする。膨張器302がピストン-シリンダアセンブリ306である場合、仕事は、シャフト304によってモジュール式発電機に伝達される力をピストンに加えることからなってもよい。他の実施形態(図示せず)では、仕事は、シャフトに伝達されるトルクからなってもよい。
【0060】
気体が所望の膨張比まで膨張したとき、モジュール式膨張制御サブシステム221によって制御されるポート又は弁301の開口は、膨張した気体が凝縮器サブシステム216に入ることを可能にする。
【0061】
凝縮器サブシステム105
再び
図2を参照すると、凝縮器サブシステム105は、
凝縮器212内の作動流体208を冷却するために使用される冷却剤213であって、任意選択的に、冷却剤213がグリコール化水を含む、冷却剤と、
当該冷却剤213を循環させる冷却剤ポンプ214と、
周囲空気、自然体の水、帯水層、又は任意の他の冷熱源からなるか、又はそれらを含む冷熱源224と、
冷却剤を凝縮器に戻す前に冷却剤から冷熱源に熱を伝達するための、乾式冷却器、冷却塔若しくは地熱冷却システム、又は任意の他のそのようなデバイス若しくはシステムのいくつかの実施形態で構成される冷却器215と、
膨張した作動流体蒸気が液相に入るまで冷却する凝縮器212と、
凝縮した作動流体を加圧して相変化熱交換器204に戻すための作動流体ポンプ209と、
を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、凝縮器212は、循環空気を使用して作動流体208(図示せず)から熱を取り出す。他の実施形態では、蒸発(図示せず)と共に、又は蒸発と共に、循環水又は別の流体を使用して、作動流体208から熱を取り出す。いくつかの実施形態では、設備が寒冷地に位置する場合、外気の低温は、作動流体208を冷却するために直接的又は間接的に使用される。他の実施形態では、地熱ループを使用して地上源冷却を行う。他の実施形態では、自然体の水、帯水層又は任意の他の冷熱源を使用して、冷却剤213の温度を更に低下させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、冷却剤は、モジュール式膨張器の高温側と低温側との間の温度差を増大させるために、冷蔵又は任意の他の技術によって更に冷却される。
【0064】
いくつかの実施形態では、凝縮器212の温度及び圧力は、冬に利用可能なより冷たい凝縮温度を利用するために、季節ごとに変化する。
【0065】
地上源冷却を使用するいくつかの実施形態では、次の夏の間に地上源温度を低下させるように地面を更に冷却するために、冬の間、冷たい周囲空気が地下で循環される。
【0066】
いくつかの実施形態では、作動流体208及び冷却剤213の少なくとも1つの配合は、冬に利用可能なより冷たい凝縮温度を利用するために、季節ごとに変化する。
モジュール式生成サブシステム104
【0067】
モジュール式生成サブシステム104、217は、1つ以上のモジュール式生成デバイスを含む。1つ以上の実施形態では、モジュール式生成サブシステムの各モジュールは、
図3に示すように、機械的仕事を電力に変換するために、ピストン-シリンダアセンブリ302のシャフト304に結合されたリニア発電機303と、
可変周波数ドライブ(VFD)504と、
電気緊急ブレーキ501と、
を含む。
【0068】
他の実施形態では、モジュール式生成サブシステム104の各モジュールは、直線運動を回転運動に変換する機構と、回転発電機(図示せず)とを含む。
【0069】
1つ以上の実施形態では、モジュール式生成サブシステム104の各モジュールは、単一の装置が
図4に示すように2つの機能(膨張器及び発電機)を実行するように、モジュール式膨張器に組み込まれる。
【0070】
モジュール式生成サブシステム104、217の各モジュールは、モジュール式膨張器サブシステム103、216の1つのモジュールによって生み出された機械的仕事を使用して電力を生み出す。仕事がピストンに及ぼされる力の形態をとるいくつかの実施形態では、モジュール式生成サブシステム104、217は、可変周波数ドライブ(VFD)504に結合されたリニア発電機303を含むことができる。いくつかの実施形態では、ピストンの直線力は、機械的又は油圧的手段によって回転力に変換され、その後、回転発電機(図示せず)と結合されて電気を生成させる。
【0071】
いくつかの実施形態では、リニア発電機は、管状リニア永久磁石同期機の形態である。他の実施形態では、それは異なる形態であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、モジュール式生成サブシステム104及びモジュール式膨張器サブシステム103は、単一のデバイスに統合される(
図4を参照)。いくつかの実施形態では、前述の永久磁石404はピストン412に統合され、電気コイル406は、バウンスチャンバ(図示せず)の有無にかかわらず、単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリのシリンダ壁418に統合され、それにより、加圧蒸気がシリンダに入る結果としてピストンが移動するときにコイルに電流が生成される。
【0073】
リニア発電機の物理的パラメータは、全体的な電力生産及び効率を最適化するように選択することができる。これらのパラメータは、限定はしないが、永久磁石(PM)の半径方向及び軸方向の厚さ、PM磁極ピッチ及びギャップ、スロットピッチ、幅、開口幅及び高さ、歯幅及びシュー高さ、ステータコア及びシャフト/PM外径、並びにエアギャップの長さ及び直径を含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、VFD504は、モジュール式発電制御サブシステム106、507によって固定されたレベルでモジュール式発電機506に電気負荷を提示し、これはシステム条件に基づいてリアルタイムで変化し得る。いくつかの実施形態では、VFD504は、モジュール式発電制御サブシステム106、507によって設定された周波数及び電圧で、発電機のAC出力をDCに変換し、次いでACに戻す。
【0075】
1つ以上の実施形態では、VFD504はまた、有効なすべての規制基準を尊重して、システムによって生み出された電力をローカル電力網(例えば、50Hz又は60Hzの公共電力網)に伝えることを可能にするグリッドタイインターフェース505を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、電気緊急ブレーキ501は、電気的又は機械的障害の場合にピストンを非常に迅速に停止するように機能する。
【0077】
いくつかの実施形態では、当該電気緊急ブレーキ501は、緊急事態において抵抗器502をモジュール式発電機506に選択的に結合するために、抵抗器502のバンク及びリレー503のセットからなるか、又はそれらを含む。したがって、リレー503は、故障状態下では、モジュール式発電機506がVFD504ではなく抵抗器バンク502に接続され、発電機シャフトを減速させて急速に停止させるように構成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、モジュール式生成サブシステム104はまた、ハイパーキャパシタ、スーパーキャパシタ、又は別の高速蓄電デバイス(図示せず、例えば固体電解質電池)を含み、これは、ピストン軌道の変化によって引き起こされ得る変動にもかかわらず、経時的に電力出力が一定のままであることを保証するように設計され、実施形態では、方向を変える瞬間にリニア発電機を含む。
制御サブシステム106
【0079】
本開示の実施形態では、制御サブシステム106、218は、
図1及び
図2に示すように、6つの一次サブシステムを有する。それらは以下の通りである。
(i)電子部品機器203と蒸発器サブシステム102との間で液体熱伝達媒体202を循環させる単一又は複数のポンプ205を確実に制御する熱伝達媒体制御システム(HTMCS)107、219であって、熱伝達媒体202の温度を適切な温度に維持する、例えば、コンピューティング機器203の最適な動作条件を確実にし、廃熱の電力への変換効率を最大にする、熱伝達媒体制御システム。
(ii)蒸発器サブシステム102を様々なモジュール式膨張器サブシステム103に接続する弁を制御するモジュール制御システム(MCS)(図示せず)。MCSは、利用可能な熱に応じて、任意の所与の瞬間にどの膨張器及び発電機モジュールが動作しているかを判定し、これはデータセンタの活動レベルに依存する。電力変換の効率を最大化するために、動作中の発電機モジュールの大部分は、それらの最大効率点又はその付近で動作することができ、1つ以上のモジュールは、その最大効率点からより遠いレベルで動作することができる。
(iii)蒸発器204と凝縮器212とモジュール式膨張器211(複数の場合もある)との間で作動流体208を循環させる作動流体ポンプ205の動作を制御する蒸発器制御システム(ECS)108、220。
(iv)モジュール式膨張器サブシステム103、216の弁301の開閉のタイミングを制御するモジュール式膨張器制御システム(MECS)109、221であって、加圧ガスを各モジュール式膨張器に流入させる入口弁(図示せず)、及び各モジュール式膨張器211からの使用済みの気体を凝縮器212に流入させる出口弁(図示せず)を含む、モジュール式膨張器制御システム。これらの弁タイミングは、電力生産及び効率を最適化するように選択される。いくつかの実施形態では、これは、有効ストローク長を最大化し、膨張比を最大化し、ターンアラウンドタイムを最小化し、ストローク終了時の電力ドロップオフを最小化することによって達成される。いくつかの実施形態では、モジュール式膨張器サブシステム103、216が複数の膨張器からなるか又はそれらを含む場合、モジュール式膨張器制御システム109、221は、様々なモジュール式膨張器が互いに位相がずれて動作することを確実にすることができる。
(v)発電機、及びいくつかの実施形態では可変周波数ドライブ504を制御するモジュール式生成制御システム(MGCS)110、217。いくつかの実施形態では、MGCS110、217は、膨張器のピストン(又は、いくつかの実施形態では、シャフトの減少する速度及びトルク)の速度及び力が低下しているにもかかわらず一定の電力出力を維持するために、発電機に提示される負荷をリアルタイムで管理する。より具体的には、MGCS110、217は、力(又はトルク)が減少するにつれて膨張器速度が増加するように負荷を減少させる。その結果、電流が減少するにつれて電圧が増加し、電力出力は一定のままである。いくつかの実施形態では、MGCS110、217はまた、グリッドタイインターフェース505を制御する。いくつかの実施形態では、MGCS110、217は、電力品質を保証するハイパーキャパシタ、スーパーキャパシタ、又は高速蓄電デバイス(図示せず)も制御する、及び
(vi)凝縮器温度及び圧力がそれらの最適なレベルのままであることを確実にするために、冷却剤ポンプ214の流量を制御する凝縮器制御サブシステム(CCS)111、223。
【0080】
いくつかの実施形態では、制御サブシステム106は、システム100の動作の他の態様も制御する。
【0081】
また、本開示は、上記のような廃熱回収及び発電のための方法に関する。上記で開示された様々な実施形態及び変形形態は、本方法に限定されることなく準用される。本方法のステップ800~830が
図8に示されている。本方法は、コンピューティングセンタ、データセンタ、又は電子部品203を含むコンピューティング機器の他の集合体から廃熱を回収及び利用するために使用される。第1のステップ800において、方法は、電子部品203からの熱を熱伝達流体に収集することを含む。第2のステップ810において、方法は、熱伝達流体から相変化熱交換器内の加圧相変化作動流体に熱を伝達することを含む。第3のステップ820において、方法は、相変化熱交換器から放出された気化した作動流体(複数の場合もある)を膨張器に向けることを含み、作動流体は機械的動力を生み出す。第4のステップ830において、方法は、膨張器で生み出された機械的動力を使用して発電機に動力を供給し、電気を生み出すことを含む。
【0082】
任意選択的に、本方法は、膨張器を、1つ以上の単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリからなるように、又はそれらを含むように構成することを含む。
【0083】
任意選択的に、本方法は、可変周波数ドライブ(VFD)に結合されたリニア発電機を駆動するように単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリを構成することを含む。
【0084】
ここで、システム100として実装される本発明を、特定の例示的な実装形態を参照して説明することができる。以下の例示的な実施形態は、本発明の実施形態を説明することを意図しており、決して本発明を限定することを意図していないことが理解されよう。
システム100の流体
【0085】
以上、液体熱伝達媒体202の一例について説明した。しかしながら、システム100を実装するときに、代替的又は追加的に、他のタイプの液体熱伝達媒体202を使用することができることが理解されよう。
【0086】
例えば、液体熱伝達媒体202を実装するための代替のタイプの流体は、限定されず、以下、すなわち、
(i)水(例えば、ダイレクトチップ用途の場合)、
(ii)https;//www.3mcanada.ca/3M/en CA/novec-ca/immersion-cooling-for-data-centres/に記載されているように、3M Corporationによって開発されたNovec(注:「Novec」は商標である)範囲の独自製品の浸漬液、例えば、1-メトキシヘプタフルオロプロパン(C3 F 7 OCH 3)であるNovec 7000及び/又はメチルノナフルオロブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物であるNovec 7300、
(iii)例えば鉱油を含む1つ以上のタイプの油、
(iv)ハロゲン化炭化水素又はハロゲン化炭素化合物、例えば四塩化炭素、
(v)メタンから生み出された浸漬液のうちの1つ以上を含む。
【0087】
適切な作動流体208を選択する場合、限定されず、以下の物質、すなわち、
(i)プロピレン、
(ii)プロパン、
(iii)R1234yf、
(iv)R227ea、
(v)R134a、
(vi)R1234ze、
(vii)RC318、
(viii)R152a、
(ix)R600a、
(x)R236fa、
(xi)R245fa、
(xii)R245ca、
(xiii)MM、
(xiv)シクロヘキサン、
(xv)ベンゼン、
(xvi)トルエン、
(xvii)MDMのうちの1つ以上をシステム100で使用することができる。
【0088】
冷却剤213については、水の凝固点を低下させる1つ以上の添加剤と組み合わせて水性流体、例えば水を使用することが最も便利である。1つ以上の添加剤の例としては、
(i)エチレングリコール及び
(ii)プロピレングリコールがある。
実際の実装
【0089】
一例では、企業は、最大1000kWの電力を消費するクラウドコンピューティングサービスを提供するデータセンタを運営する。コンピューティング機器(203)は、単相浸漬冷却によって冷却され、コンピューティング機器の集合体は、誘電性流体の槽に浸漬される。
【0090】
ポンプは、浸漬槽から熱交換蒸発器に当該誘電性流体を循環させる。ポンプ流量は、コンピューティング機器の消費電力の変動にもかかわらず、槽中の温度が65℃で一定のままであるように制御される。
【0091】
熱交換蒸発器は、当該誘電性流体からハイドロフルオロオレフィン冷媒からなる作動流体(208)に熱を伝達する。作動流体ポンプは、当該熱交換蒸発器において、冷媒が12バールの圧力で58℃に加熱され、誘電性流体が25℃に冷却されるように作動流体の流れを調整する。
【0092】
蒸発器によって生成された加圧蒸気は、この例では、任意の所与の時間に生成される廃熱の量に応じて、3つ又は4つのモジュール式膨張器に配管によって向けられる。いくつかの実施形態では、各モジュール式膨張器は複動ピストンシリンダアセンブリからなり、そのシャフトはモジュール式生成サブシステムのモジュールに接続されている。他の実施形態では、膨張器はまた、ピストンに永久磁石を含み、シリンダ壁にコイルを含むことにより、モジュール式生成サブシステムの機能を果たす。
【0093】
モジュール式膨張器制御システムによって制御されるポート又は弁は、蒸気がモジュール式膨張器に入ることを可能にする。これらの弁は、一定の時間が経過した後に閉じられ、蒸気がシリンダ内で膨張することを可能にし、ピストンに力を加え、次に、いくつかの実施形態では、モジュール式生成サブシステムのシャフトを変位させる。所望の膨張比が達成されると、モジュール式膨張器制御システムによって制御される第2の弁が開き、膨張した気体を凝縮器に排出することができる。凝縮器では、水、空気又は別の媒体を使用して、膨張した蒸気が凝縮して液相になる点まで冷却し、その後、作動流体ポンプがこれを加圧容器に戻す。
【0094】
いくつかの実施形態では、モジュール式生成サブシステムは、ディスクスペーサと交互に配置された軸方向に磁化された永久磁石を収容する管状スライダと、直列接続された三相巻線からなるステータとからなる同期リニア発電機である。
【0095】
モジュール式生成サブシステムによって生成される電流のアンペア数、電圧、及び周波数は、ピストンの力及び速度、並びにモジュール式生成サブシステムに提示される電気負荷に応じて変化する。ピストンの力は、その背後の蒸気の圧力に依存し、これは蒸気膨張段階中に変化する。ピストンは、その力が、モジュール式生成制御システムによって制御される発電機負荷から生じる有効力よりも大きいときに加速する。
【0096】
モジュール式生成サブシステムによって生み出された電流は、ワイヤによって可変周波数ドライブ(VFD)に運ばれ、可変周波数ドライブは、最初にそれを直流に変換し、次いで、電力網と同期した交流に戻す。VFDは、加圧された蒸気の抵抗力又は負荷に対抗する抵抗力又は負荷を引き起こす。いくつかの実施形態では、VFDによって発電機に提示される負荷は、モジュール式発電機からの電力出力が一定又はほぼ一定のレベルに維持されるように、生成制御システムによってリアルタイムで管理される。
【0097】
いくつかの実施形態では、ハイパーコンデンサ、スーパーキャパシタ、固体電解質電池又は他の蓄電システムを発電機に接続することにより、電力出力を経時的に均等化することができる。
【0098】
この例では、データセンタがフル容量で動作している場合、4つのモジュール式ユニットはそれぞれほぼ25kWを生み出す。生み出された100kWは、データセンタがその同じ量だけローカルユーティリティからの購入を削減することを可能にし、データセンタのコスト及び環境フットプリントを削減する。データセンタの電力消費が750kWを下回ると、MCSは、1つ以上のモジュール式生成ユニットを動作から取り外し、その結果、3つ以下のモジュール式生成ユニットが稼働している。
【0099】
システム100の更なる例示的な実装形態は以下の通りである。
実施例1:コンピューティングセンタ、データセンタ、又は(電子部品を含む)コンピューティング機器の他の集合体から廃熱を回収して利用するためのシステムであって、
電子部品の動作からの熱が、液体によって吸収され、
当該液体からの熱が、耐圧容器内の作動流体に直接的又は間接的に伝達され、当該作動流体を気化させ、
制御システムによって動作される弁が、気化した作動流体が耐圧容器から膨張器に通過することを可能にし、
耐圧容器から放出された気化した作動流体を膨張器内で膨張させ、機械的動力を生み出し(例えば、発電機を駆動し)、
凝縮器が、膨張器から排出された部分的に冷却された蒸気を凝縮するために使用され、
ポンプが凝縮した作動流体を耐圧容器に戻し、
制御システムが、当該弁及びポンプの動作を制御する、システム。
【0100】
実施例2:液体が、電子部品が浸漬された誘電性流体である、実施例1に記載のシステム。
【0101】
実施例3:誘電性流体が、浸漬された電子部品の上方に配置されたコイルによって冷却される相変化流体であり、これを通って熱伝達流体が循環する、実施例2に記載のシステム。
【0102】
実施例4:熱伝達流体が、その気化状態において膨張器内で膨張させることができる作動流体として作用する相変化流体である、実施例3に記載のシステム。
【0103】
実施例5:誘電性流体が熱交換蒸発器を通って循環し、作動流体を蒸発させる、実施例2に記載のシステム。
【0104】
実施例6:作動流体が、その熱力学的特性がシステムからの最適な熱回収をもたらすように選択される、実施例1、2、3、4及び5に記載のシステム。
【0105】
実施例7:システムからの最適な熱回収をもたらすように設計された作動流体が、非共沸流体である、実施例1、2、3、4、5及び6に記載のシステム。
【0106】
実施例8:膨張器が、発電機を駆動するために使用される1つ以上の単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリからなる、実施例1、2、3、4、5、6及び7に記載のシステム。
【0107】
実施例9:発電機が可変周波数ドライブ(VFD)に結合されている、実施例8に記載のシステム。
【0108】
実施例10:発電機の電力出力を調整するためにVFDが制御される、実施例9に記載のシステム。
【0109】
実施例11:凝縮器の温度及び圧力が、冬に利用可能なより冷たい凝縮温度を利用するために、季節ごとに変化する、実施例10に記載のシステム。
【0110】
実施例12:発電機がリニア発電機である、実施例11に記載のシステム。
【0111】
実施例13:ピストン軌道を管理し、発電機の電力出力をほぼ一定のレベルに維持するために、VFDによって提供される負荷がリアルタイムで制御される、実施例12に記載のシステム。
【0112】
実施例14:各アセンブリがその最適な動作レジームで又はそれに近い状態で動作するように、蒸気流が変化すると、1つ以上のピストンシリンダアセンブリ及び個々のアセンブリを動作に追加又は動作から削除することができる、実施例13に記載のシステム。
【0113】
実施例15:電力品質を改善するために、様々なアセンブリが互いに位相がずれて動作する、実施例13に記載のシステム。
【0114】
実施例16:モジュール式生成サブシステムの各モジュールが、単一の装置が2つの機能(膨張器及び発電機)を実行するように、モジュール式膨張器に組み込まれる、実施例1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13に記載のシステム。
【0115】
実施例17:永久磁石がピストンヘッドに統合され、コイルが、単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリのシリンダ壁に統合され、それにより、加圧蒸気がシリンダに入る結果としてピストンが移動するときにコイルに電流が生成される、実施例16に記載のシステム。
システム100を動作させる方法の例は、以下に提供される。
【0116】
実施例18:コンピューティングセンタ、データセンタ、又はコンピューティング機器の他の集合体から廃熱を回収及び利用するための方法であって、
膨張器で生み出された機械的動力を使用して発電機に動力を供給し、電気を生み出すことを含む、方法。
【0117】
実施例19:膨張器が、1つ以上の単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリからなる、実施例18に記載の方法。
【0118】
実施例20:単動又は複動ピストン-シリンダアセンブリが、可変周波数ドライブ(VFD)に結合されたリニア発電機を駆動する、実施例18に記載の方法。
【国際調査報告】