(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ガス状CO2の電気化学的還元のための構成要素及び方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/032 20210101AFI20241018BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20241018BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20241018BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20241018BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B11/052
C25B1/26 B
C25B3/03
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526604
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 CA2022051587
(87)【国際公開番号】W WO2023070211
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524004847
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】カオ-タン ディン
(72)【発明者】
【氏名】コリン オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン ガバルド
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エドワーズ
(72)【発明者】
【氏名】シーチエ リウ
(72)【発明者】
【氏名】アーミン セディギアン ラスーリ
(72)【発明者】
【氏名】ミン トリエット ラム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マッカラム
(72)【発明者】
【氏名】ユエン ファン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シントン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.サージェント
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA16
4K011AA29
4K011DA10
4K021AB25
4K021BA02
4K021DB16
4K021DC15
(57)【要約】
ガス状CO
2及び/又はCOの多炭素生成物への電気化学的還元を持続するための多層ガス拡散電極であって、支持層を含むガス拡散層と、電解還元に利用可能なガス状CO
2及び/若しくはCO、又はそれらの組み合わせを維持するためにサイズ決定されている細孔を有する微多孔質層と、CO
2及び/又はCOの還元に有利な触媒を含む触媒層と、を含む多層ガス拡散電極が提供される。本明細書に記載のガス拡散電極、イオン交換膜と膜電極接合体のアノードとの間に位置決め可能なスペーサ、膜電極接合体及び支持構造を含む反応器、ガス拡散電極及びスペーサを含むことができるスタック反応器を生成するための方法、電解槽スタック反応器内の少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを診断及び隔離するための方法、並びに電解還元システムの稼働を促進するためのリンス方法もまた提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状CO
2、CO、又はそれらの組み合わせの多炭素生成物への電気化学的還元を持続するための多層ガス拡散電極(GDE)であって、
ガス拡散層(GDL)であって、
支持層、
電解還元に利用可能な前記ガス状CO
2、CO、又はそれらの組み合わせを維持するようにサイズ決定されている細孔を有する微多孔質層(MPL)を含む、ガス拡散層と、
前記CO
2、CO又はそれらの前記組み合わせの還元に有利な触媒を含む触媒層と、を含み、
前記支持層及び前記MPLのうちの各1つが、疎水性かつ導電性であり、前記GDEが、1つの層から別の層へと導電性である、多層ガス拡散電極(GDE)。
【請求項2】
前記支持層が、第1の伝導性材料及び第1の疎水性ポリマーを含む、請求項1に記載の多層GDE。
【請求項3】
前記第1の伝導性材料が、炭素紙、炭素フェルト、炭素クロス、又は金属メッシュである、請求項2に記載の多層GDE。
【請求項4】
前記第1の疎水性ポリマーが、PTFEである、請求項2又は3に記載の多層GDE。
【請求項5】
前記支持層が、5重量%~60重量%の第1の疎水性ポリマー含有量を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項6】
前記第1の疎水性ポリマー含有量が、30重量%~50重量%である、請求項5に記載の多層GDE。
【請求項7】
前記支持層が、50μm~1000μmの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項8】
前記支持層の前記厚さが、100μm~300μmである、請求項7に記載の多層GDE。
【請求項9】
前記MPLが、第2の伝導性材料及び第2の疎水性ポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項10】
前記第2の疎水性ポリマーが、PTFEである、請求項9に記載の多層GDE。
【請求項11】
前記第2の伝導性材料が、多孔質粒子を含む、請求項9又は10に記載の多層GDE。
【請求項12】
前記第2の伝導性材料が、炭素ナノ粒子を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項13】
前記第2の伝導性材料が、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ブラック、炭素ナノチューブ、グラファイト、グラフェン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の多層GDE。
【請求項14】
前記MPLが、60重量%~99重量%の第2の疎水性ポリマー含有量を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項15】
前記第2の疎水性ポリマー含有量が、80重量%~95重量%である、請求項14に記載の多層GDE。
【請求項16】
前記MPLが、0.5μm~500μmのMPL厚さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項17】
前記MPL厚さが、10μm~80μmである、請求項16に記載の多層GDE。
【請求項18】
前記触媒が、粒子として提供され、前記触媒層が、触媒粒子を結合し、前記触媒粒子へのイオン伝導性及びCO
2利用可能性を促進する結合剤を更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項19】
前記結合剤が、アイオノマー又はPTFEである、請求項18に記載の多層GDE。
【請求項20】
前記アイオノマーが、Nation(登録商標)、Fumion(登録商標)、又はそれらの類似体である、請求項19に記載の多層GDE。
【請求項21】
前記触媒粒子が、金属、金属酸化物又は混合金属である、請求項18~20のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項22】
前記触媒粒子が、ナノ粒子である、請求項18~21のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項23】
前記触媒粒子が、1nm~10000nmのサイズを有する、請求項22に記載の多層GDE。
【請求項24】
触媒ナノ粒子の前記サイズが、10nm~100nmである、請求項23に記載の多層GDE。
【請求項25】
前記触媒層が、最大で10μmの厚さを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項26】
前記多層ガス拡散電極の稼働中に前記触媒層が再構築するのを防止するために、官能基で修飾されている表面を有する固体粒子を含む安定化層を更に含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項27】
前記安定化層の前記固体粒子が、炭素、グラファイト、グラフェン、チタニア、シリカ、セリア、又はそれらの任意の組み合わせの粒子である、請求項26に記載の多層GDE。
【請求項28】
前記固体粒子が、1nm~1μmの粒子サイズを有する、請求項26又は27に記載の多層GDE。
【請求項29】
前記固体粒子が、10nm~100nmの粒子サイズを有する、請求項26又は27に記載の多層GDE。
【請求項30】
前記官能基が、イオン伝導性アイオノマーのイオン化ユニット、イミダゾリウム、スルホン酸、ポリ(アリールピペリジニウム)である、請求項26~29のいずれか一項に記載の多層GDE。
【請求項31】
前記イオン伝導性アイオノマーが、Nation(登録商標)、Fumion(登録商標)、又はそれらの類似体である、請求項30に記載の多層ガス拡散電極。
【請求項32】
前記安定化層が、最大で10μmの厚さを有する、請求項26~31のいずれか一項に記載の多層ガス拡散電極。
【請求項33】
ガス拡散層(GDL)及び触媒層を含むガス拡散電極(GDE)を生成するための方法であって、
疎水性かつ伝導性の支持層を提供すること、
前記支持層上に微多孔質層インクをブレードコーティングすることであって、前記微多孔質層インクが、微多孔質層(MPL)を形成するために、伝導性粒子及び疎水性ポリマーを含む、ブレードコーティングすること、
前記MPLを熱処理して、前記伝導性粒子のネットワーク内の前記疎水性ポリマーを焼結し、前記GDLを形成すること、
触媒粒子及び結合剤を含む触媒インクを前記GDL上に噴霧して、前記触媒層を形成すること、を含む、方法。
【請求項34】
前記触媒粒子、前記結合剤及び溶媒を混合することによって前記触媒インクを形成することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒粒子が、銅ナノ粒子であり、前記結合剤が、アイオノマーである、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記ブレードコーティングすることが、0.5μm~500μmの厚さを有する前記MPLを生成することを含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記MPLの前記熱処理が、前記GDLを300℃~400℃の温度で加熱することを含む、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記GDEが、官能基で修飾されている表面を有する固体粒子を含む安定化層を更に含み、前記方法が、前記固体粒子及び結合剤を含む安定化インクを前記触媒層上に噴霧することを更に含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記固体粒子、前記結合剤及び溶媒を混合することによって前記安定化インクを形成することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記固体粒子が、炭素ナノ粒子であり、前記結合剤が、イオン伝導性ポリマーである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
膜電極接合体のイオン交換膜とアノードとの間に位置決め可能なスペーサであって、親水性、多孔質かつ非伝導性層を含む、スペーサ。
【請求項42】
前記親水性、多孔質かつ非伝導性層が、ポリエステル、レーヨン、絹、綿、チーズクロス、PES、ナイロン、親水性PTFE、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はそれらの任意の組み合わせから作製されている、請求項41に記載のスペーサ。
【請求項43】
前記親水性、多孔質かつ非伝導性層が、織布繊維から作製されている、請求項41又は42に記載のスペーサ。
【請求項44】
前記織布繊維が、合成布繊維である、請求項43に記載のスペーサ。
【請求項45】
前記親水性、多孔質かつ非伝導性層上にアイオノマーのコーティングを更に含む、請求項41~44のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項46】
0.001mm~3mmの厚さを有する、請求項41~45のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項47】
前記スペーサの前記厚さが、100μm~400μmである、請求項46に記載のスペーサ。
【請求項48】
前記親水性、多孔質かつ非伝導性層が、10%~90%の多孔率を有する、請求項41~47のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項49】
前記親水性、多孔質かつ非伝導性層が、0.0001mm~1mmの細孔サイズを有する細孔を有する、請求項41~48のいずれか一項に記載のスペーサ。
【請求項50】
前記細孔サイズが、10μm~100μmである、請求項49に記載のスペーサ。
【請求項51】
CO
2、CO、又はそれらの混合物を多炭素生成物に電解還元するための膜電極接合体であって、
カソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に位置決めされたイオン交換膜であって、前記イオン交換膜が、前記カソードと接触している、イオン交換膜と、
前記イオン交換膜と前記アノードとの間に位置決めされたスペーサであって、前記スペーサが、親水性、多孔質かつ非伝導性層を含み、前記スペーサが、前記イオン交換膜と接触している一方の側面及び前記アノードと接触している他方の側面を有する、スペーサと、を含む、膜電極接合体。
【請求項52】
前記スペーサが、請求項41~50のいずれか一項において定義されるようなものである、請求項51に記載の膜電極接合体。
【請求項53】
前記スペーサが、前記アノード及び/又は前記イオン交換膜に接着されているか、固定されているか、ホットプレスされているか(電極)、接して配置されているか、又は接してプレスされている、請求項51又は52に記載の膜電極接合体。
【請求項54】
前記スペーサが除かれている膜電極接合体と比較して、少なくとも100%、少なくとも1000%、又は少なくとも2000%の寿命の向上を有する、請求項51~53のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
【請求項55】
前記カソードが、請求項1~32のいずれか一項において定義されるような前記ガス拡散電極である、請求項51~54のいずれか一項に記載の膜電極接合体。
【請求項56】
CO
2、CO、又はそれらの混合物の炭素生成物への電解還元を稼働させるための反応器であって、
カソード、アノード及びイオン交換膜を含む膜電極接合体と、
一対の対向する支持下部構造を含む支持構造であって、各支持下部構造が、前記膜電極接合体の一方の側に接触して、前記膜電極接合体を一対の対向する支持下部構造の中間に均一に維持する、支持下部構造と、を含み、
各支持下部構造が、前記膜電極接合体の前記アノード及び前記カソードへの、又は前記アノード及び前記カソードからの反応物、生成物、電解質、及び電子の流れを確実にするために、多孔質かつ導電性材料の少なくとも1つの層を含む、反応器。
【請求項57】
各支持下部構造が、前記膜電極接合体の前記カソード又は前記アノードに溶接されているか、接着されているか、固定されているか、ホットプレスされているか、又は接してプレスされている、請求項56に記載の反応器。
【請求項58】
前記多孔質かつ導電性材料が、チタン、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、青銅、黄銅、亜鉛めっき鋼、白金、ニッケル、炭素、炭素鋼、鉄、鉛、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項56又は57に記載の反応器。
【請求項59】
前記多孔質かつ導電性材料が、水素発生反応(HER)を触媒することを回避する金属である、請求項56~58のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項60】
前記多孔質かつ導電性材料が、耐腐食性である金属である、請求項56~58のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項61】
前記多孔質かつ導電性材料が、耐水素脆化である金属である、請求項56~58のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項62】
前記膜電極接合体が、少なくとも100cm
2のサイズを有する活性表面を有する、請求項56~61のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項63】
前記膜電極接合体の前記カソードと接触している前記支持下部構造が、カソードの支持下部構造であり、前記カソードの支持下部構造が、前記多孔質かつ導電性材料の単一層からなる、請求項56~62のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項64】
前記カソードの支持下部構造が、200~1300マイクロメートルの厚さを有する、請求項63に記載の反応器。
【請求項65】
前記カソードの支持下部構造の前記厚さが、600~900マイクロメートルである、請求項64に記載の反応器。
【請求項66】
前記カソードの支持下部構造の前記単一層が、1mm~10mm、任意選択的に、5mm~7mmの範囲の細孔サイズを有する細孔を有する、請求項63~65のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項67】
前記カソードの支持下部構造の前記単一層が、チタン、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、又はそれらの組み合わせから作製されている、請求項63~66のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項68】
前記膜電極接合体の前記アノードと接触している前記支持下部構造が、前記アノードの支持下部構造であり、前記アノードの支持下部構造が、多孔質の導電性かつ耐腐食性材料の複数の層からなる、請求項56~67のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項69】
前記アノードの支持下部構造が、少なくとも2つの層を含む、請求項68に記載の反応器。
【請求項70】
前記アノードの支持下部構造が、少なくとも4つの層を含む、請求項68又は69に記載の反応器。
【請求項71】
前記アノードの支持下部構造の前記複数の層のうちの各1つが、チタンから作製されている、請求項68~70のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項72】
前記アノードの支持下部構造が、500~3000マイクロメートルの厚さを有する、請求項68~71のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項73】
前記アノードの支持下部構造の前記厚さが、1000~2000マイクロメートルである、請求項72に記載の反応器。
【請求項74】
前記アノードの支持下部構造の各層が、1mm~10mm、任意選択的に、3mm~7mmの範囲の細孔サイズを有する細孔を有する、請求項68~73のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項75】
前記支持構造が、前記支持下部構造のうちの少なくとも1つに追加される乱流エンハンサを更に含む、請求項56~74のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項76】
前記一対の対向する支持下部構造の一方の支持下部構造と接触して提供されたカソードの流れ場と、前記一対の対向する支持下部構造の他方の支持下部構造と接触して提供されたアノードの流れ場と、を更に備える、請求項56~75のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項77】
前記膜電極接合体の前記カソードが、請求項1~32のいずれか一項において定義されるようなガス拡散電極である、請求項56~76のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項78】
前記膜電極接合体が、請求項51~55のいずれか一項において定義されるようなものである、請求項56~76のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項79】
CO
2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に変換する電解還元システムの稼働を促進するための方法であって、
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物を前記電解還元システムのカソードの区画の入口に注入して、前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の前記炭素生成物への電解還元を実施することであって、前記電解還元が、流路に沿って前記カソードの区画内で炭酸塩を形成することを含む、実施することと、
前記流路に沿って前記炭酸塩の少なくとも一部分を溶解及び除去して、塩富化流体を形成するために、前記カソードの区画の前記入口にリンス流体を注入することと、
前記カソードの区画の出口から前記炭素生成物及び前記塩富化流体のうちの少なくとも1つを回収することと、を含む、方法。
【請求項80】
前記リンス流体の注入が、前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の前記注入と交互に実施される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の注入が、前記リンス流体の前記注入の間維持される、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記リンス流体が、水、脱イオン水、水と表面張力低減分子との混合物、又は廃棄電解質である、請求項79~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記リンス流体の前記注入が、リンス期間中に周期的に実施される、請求項79~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記リンス期間が、20秒~30分の持続時間を有する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記リンス期間の前記持続時間が、1分~3分である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
リンス流体の体積流量対前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の体積流量の比が、0.05~0.5である、請求項79~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記リンス流体の前記注入が、毎分20~200の前記リンス流体の体積流量対前記カソードの区画の体積の比で実施される、請求項79~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記体積流量対前記カソードの区画の前記体積の前記比が、毎分50~80である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記リンス流体の前記注入が、30分~12時間のリンス頻度で実施される、請求項79~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記リンス頻度が、1時間~3時間である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
請求項51~55のいずれか一項において定義されるような膜電極接合体又は請求項56~78のいずれか一項において定義されるような反応器を前記電解還元システムの一部として提供することを含み、前記カソードの区画が、前記膜電極接合体内に含まれる、請求項79~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
CO
2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に変換する電解還元システムであって、
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の電解還元を持続するガス拡散電極、及び前記ガス拡散電極と流体連通している入口を含むカソードの区画と、
分配アセンブリであって、
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の供給源と流体連通し、かつ前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物を前記カソードの区画の前記入口に供給して、前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の前記炭素生成物への電解還元を実施する、第1の供給配管であって、前記電解還元が、前記カソードの区画内の流路に沿って炭酸塩を形成することを含む、第1の供給配管と、
リンス流体の供給源と流体連通している第2の供給配管と、
前記リンス流体を前記カソードの区画の前記入口に注入し、それによって、前記流路に沿って前記炭酸塩の少なくとも一部分を溶解及び除去して、塩富化流体を形成するために、前記カソードの区画の前記入口を前記第2の供給配管に流体接続するように作動可能である弁と、
前記カソードの区画への前記リンス流体の体積流量を制御するように作動可能であるポンプと、を含む、分配アセンブリと、を備える、電解還元システム。
【請求項93】
前記バルブ及び前記ポンプの自動作動のために前記バルブ及び前記ポンプに稼働可能に接続されて、リンス頻度で、かつリンス期間の間、前記リンス流体の注入を周期的にトリガするコントローラを更に備える、請求項92に記載のシステム。
【請求項94】
前記リンス期間が、20秒~30分の持続時間を有する、請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記リンス期間の前記持続時間が、1分~3分である、請求項94に記載のシステム。
【請求項96】
前記リンス頻度が、30分~12時間である、請求項93~95のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項97】
前記リンス頻度が、1~3時間である、請求項96に記載のシステム。
【請求項98】
前記第2の供給配管を介した前記リンス流体の前記体積流量対前記第1の供給配管を介した前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物の体積流量の比が、0.05~0.5である、請求項92~97のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項99】
前記リンス流体の前記供給源であるリンス流体リザーバと、前記回収された塩富化流体を受容する廃棄物収集タンクと、を更に備える、請求項92~98のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項100】
前記リンス流体が、水、脱イオン水、水と表面張力低減分子との混合物、又は廃棄電解質である、請求項92~99のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項101】
前記カソードの区画が、カソードの流れ場と、触媒を含む前記ガス拡散電極に接触し、かつ互いに流体連通して、前記流路を画定する、多孔質メッシュ支持下部構造と、を更に含む、請求項92~100のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項102】
前記カソードの区画が、請求項51~55のいずれか一項において定義されるような膜電極接合体、又は請求項56~78のいずれか一項において定義されるような前記反応器の一部である、請求項92~100のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項103】
CO
2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に還元するための電解槽スタック反応器であって、
一対のエンドプレートであって、近位エンドプレート及び遠位エンドプレートを含む、一対のエンドプレートと、
前記近位エンドプレートと前記遠位エンドプレートとの間に位置決めされた複数の繰り返しセルユニットであって、各繰り返しセルユニットが、
カソードの入口及びカソードの出口を有するカソードの流れ場と、
アノードの入口及びアノードの出口を有するアノードの流れ場と、
前記カソードの流れ場と前記アノードの流れ場との間に位置決めされた膜電極接合体と、を含む、複数の繰り返しセルユニットと、
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物、及び前記炭素生成物を各繰り返しセルユニットに、又は各繰り返しセルユニットから、並列に分配するためのマニホールドアセンブリであって、
前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物を前記カソードの流れ場を介して前記膜電極接合体に分配するために、各繰り返しセルユニットの前記カソードの入口に分岐したカソードの入口マニホールドと、
アノード液を前記アノードの流れ場を介して前記膜電極接合体に分配するために、各繰り返しセルユニットの前記アノードの入口に分岐したアノードの入口マニホールドと、
前記カソードの流れ場を介して前記膜電極接合体から前記炭素生成物を放出するために、各繰り返しセルユニットの前記カソードの出口に分岐したカソードの出口マニホールドと、
前記アノードの流れ場を介して前記膜電極接合体から使用済みアノード液を放出するために、各繰り返しセルユニットの前記アノードの出口に分岐したアノードの出口マニホールドと、を含む、マニホールドアセンブリと、
前記複数の繰り返しセルユニットにわたって延在する一対のバスバーであって、
前記複数の繰り返しセルユニットのうちの各1つの前記アノードの流れ場を並列に電気的に接続するアノードのバスバーと、
前記複数の繰り返しセルユニットのうちの各1つの前記カソードの流れ場を並列に電気的に接続するカソードのバスバーと、を含む、一対のバスバーと、を備える、電解槽スタック反応器。
【請求項104】
前記カソードの入口が、前記少なくとも1つの繰り返しセルユニットの上部に位置付けられている、請求項103に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項105】
前記アノードの入口が、前記少なくとも1つの繰り返しセルユニットの底部に位置付けられている、請求項103又は104に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項106】
前記アノード液及び前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物が、それぞれアノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールド内を並流で流れている、請求項103~105のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項107】
前記アノード液が、前記カソード入口マニホールド内を流れる前記CO
2、CO又はそれらの前記混合物に対して向流的に前記アノード入口マニホールド内を流れている、請求項103~105のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項108】
前記アノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールドの各々が、前記近位エンドプレート及び前記遠位エンドプレートの両方において画定された入口ポートを含む、請求項103~107のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項109】
前記アノード出口マニホールド及びカソード出口マニホールドの各々が、前記近位エンドプレート及び前記遠位エンドプレートの両方において画定された出口ポートを含む、請求項103~108のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項110】
前記カソード入口マニホールド及び出口マニホールド並びに前記アノード入口マニホールド及び出口マニホールドが、前記複数の繰り返しセルユニットから外部に延在する管類又はヘッダを介して、それぞれのカソードの入口及び出口並びにアノードの入口及び出口に分岐している、請求項103~109のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項111】
前記カソード入口マニホールド及び出口マニホールド並びに前記アノード入口マニホールド及び出口マニホールドが、前記複数の繰り返しセルユニットの各アノードの流れ場及びカソードの流れ場の筐体内で内部に画定されている内側入口ポート及び出口ポートを介して、それぞれのカソードの入口及び出口並びにアノードの入口及び出口に分岐している、請求項103~109のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項112】
前記複数の繰り返しセルユニットが、2~100の繰り返しセルユニットを備える、請求項103~111のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項113】
複数のヒューズを更に備え、各ヒューズが、前記アノードのバスバー及び前記カソードのバスバーのうちの少なくとも1つを対応する繰り返しセルユニットに直列に接続している、請求項103~112のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項114】
前記少なくとも1つの繰り返しセルユニットが、前記膜電極接合体と接触している一方の側面、及び前記アノードの流れ場又はカソードの流れ場と接触している他方の側面を有する、少なくとも1つの多孔質支持下部構造を含む、請求項103~113のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項115】
前記少なくとも1つの多孔質支持下部構造が、少なくとも1つの金属メッシュ層から作製されている、請求項114に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項116】
前記少なくとも1つの繰り返しユニットが、100cm
2~10000cm
2のセル面積を有する、請求項103~115のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項117】
前記膜電極接合体が、請求項51~55のいずれか一項において定義されるようなものである、請求項103~116のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項118】
各繰り返しセルユニットの前記カソードが、ガス拡散電極であり、請求項1~32のいずれか一項において定義されるようなものである、請求項103~116のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項119】
各繰り返しセルユニットが、請求項56~78のいずれか一項において定義されるような電解槽反応器である、請求項103~116のいずれか一項に記載の電解槽スタック反応器。
【請求項120】
近位エンドプレート及び遠位エンドプレート、並びに前記近位エンドプレートと前記遠位エンドプレートとの間に位置決めされた複数の繰り返しセルユニットを備える電解槽スタック反応器内の少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを診断及び隔離するための方法であって、
前記複数の繰り返しセルユニットの各カソードをカソードのバスバーに並列に電気的に接続することと、
前記複数の繰り返しセルユニットの各アノードをアノードのバスバーに並列に電気的に接続することと、
CO
2、CO又はそれらの混合物を分配し、炭素生成物を回収するために、前記複数の繰り返しセルユニットの各カソードをカソードマニホールドアセンブリに並列に流体接続することと、
アノード液を分配し、使用済みアノード液を回収するために、前記複数の繰り返しセルユニットの各アノードをアノードマニホールドアセンブリに並列に流体接続することと、
少なくとも1つの繰り返しセルユニットの潜在的な不良稼働を検出するために、各繰り返しセルユニットの電流を監視することと、
前記少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットが検出されるとき、前記少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを前記隣接する繰り返しセルユニットから流体的及び/又は電気的に切断することによって、前記不良繰り返しセルユニットをバイパスすることと、を含む、方法。
【請求項121】
前記電解槽スタック反応器の電圧を監視して、前記監視された電圧が減少するときに短絡を検出することを含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを電気的に切断することが、前記不良繰り返しセルユニットと直列に接続されているヒューズの切断することを介して実施される、請求項120又は121に記載の方法。
【請求項123】
請求項103~119のいずれか一項において定義されるような前記電解槽スタック反応器を提供することを含む、請求項120~122のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、概して、ガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせの炭素生成物への電気化学的換のための電解還元システムに関し、より具体的には、電気化学的変換を促進するように設計された電解還元システムの具体的な構成要素及びアセンブリ、並びにかかる構成要素及びアセンブリを製造及び稼働させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の電解還元反応器としては、小規模稼働(セル面積<5cm2)のために設計された膜電極接合体(membrane electrode assemblies、MEA)が挙げられる)。この技術を用いる反応器のサイズが大きくなるにつれて、様々な課題が生じるか、又は解決すべき課題が残る。
【0003】
例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)フィルタは、Dinh et al.「CO2 electroreduction to ethylene via hydroxide-mediated copper catalysis at an abrupt interface」Science.2018 May 18;360(6390):783-787によって説明されるように、それらの疎水性特性のために、MEAのカソードにおいて多孔質支持基材として使用することができる。しかしながら、PTFEは導電性ではなく、これは、電流伝導の欠如を引き起こし、大きい面内抵抗(すなわち、電極の面に沿う)及びセル電圧降下、特に、大電流セル(>80A/セル)におけるセル電圧降下につながり得る。
【0004】
別の例では、MEA中のイオン交換膜の安定性が重要であり、膜は、機械的穿孔、局所加熱、乾燥、化学分解などによって引き起こされる機械的不安定性に起因して機能しなくなる可能性がある。この分野における現在の最新の解決策は、強化膜を使用することである、しかしながら、これらの強化膜は、セル電圧の増加、膜-電極接触の低下、及び経時的な劣化をもたらす。
【0005】
別の例では、MEAを用いる反応器のサイズが大きくなるにつれて(>5cm2)、蛇行チャネルが、MEAの表面に沿った反応物及び生成物の流れをより良好に制御するために使用され得る。この手法では、支持されていないチャネル領域は、流れ場/集電体又は電流分配器との電気的接触が低下し、MEA中の機械的不安定に悩まされる可能性がある。加えて、流れ場のランド面積の真上のカソード/アノード面積は、種がこれらの面積に到達するためにチャネルから遠くに拡散しなければならず、逆もまた同様であるので、質量輸送が減少する可能性がある。この質量輸送の低減は、CO2/CO反応ガスへのアクセス制限をもたらし、反応効率を損なう。更に、対流効果の減少が観察され得、ホットゾーンの生成につながり、不均一な熱分布をもたらす。反応から放出される熱に起因して、これらの領域は、MEA及び/又は電解槽の構成要素に損傷を与え得る、より高い温度に達する可能性が高い。
【0006】
別の例では、既知のMEAの稼働中、CO2電解還元中にイオン交換膜を通って移動するカチオンは、CO2電気化学反応器のカソード側(カソードの区画)上の重炭酸アニオン又は炭酸アニオンと固体塩を形成する可能性がある。カソードの区画及びカソードの多孔質構造が固体塩で満たされると、CO2は触媒に到達することができず、CO2の還元反応は停止し、新たなCO2還元生成物は生成されない。
【0007】
別の例では、市販のCO2電解槽反応器は、典型的には、小さい面積(5cm2)及び単一セル設計に制限される。かかる反応器は、実験室規模で触媒及び反応条件を試験するのに有用であるが、工業的に意味のある変換率を実現しようとする場合、セルサイズ及び量の両方が増加する必要がある。いったん組み合わされると、単一セル内の任意の欠陥は、全体的な性能に影響を及ぼすであろう。
【0008】
このため、工業規模でのCO2又はCOの電解還元の分野における様々な改善が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、ガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせの多炭素生成物への電気化学的還元を持続するための多層ガス拡散電極(gas diffusion electrode、GDE)が提供され、多層ガス拡散電極は、
ガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)であって、
支持層、
電解還元に利用可能なガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせを維持するようにサイズ決定されている細孔を有する微多孔質層(microporous layer、MPL)を含む、ガス拡散層と、
CO2、CO又はそれらの組み合わせの還元に有利な触媒を含む触媒層と、を含み、
支持層及びMPLのうちの各1つが、疎水性かつ導電性であり、GDEが、1つの層から別の層へと導電性である。
【0010】
いくつかの実施態様では、支持層は、第1の伝導性材料及び第1の疎水性ポリマーを含む。例えば、第1の伝導性材料は、炭素紙、炭素フェルト、炭素クロス、又は金属メッシュであり得る。例えば、第1の疎水性ポリマーは、PTFEであり得る。支持層は、5重量%~60重量%の第1の疎水性ポリマー含有量を有することができる。任意選択的に、第1の疎水性ポリマー含有量は、30重量%~50重量%であり得る。
【0011】
いくつかの実施態様では、支持層は、50μm~1000μmの厚さを有することができる。任意選択的に、支持層の厚さは、100μm~300μmであり得る。
【0012】
いくつかの実施態様では、MPLは、第2の伝導性材料及び第2の疎水性ポリマーを含むことができる。例えば、第2の疎水性ポリマーは、PTFEであり得る。例えば、第2の伝導性材料は、多孔質粒子を含むことができる。任意選択的に、第2の伝導性材料は、炭素ナノ粒子からなるか、又は炭素ナノ粒子を含むことができる。更に任意選択的に、第2の伝導性材料は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ブラック、炭素ナノチューブ、グラファイト、グラフェン、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。MPLは、60重量%~99重量%の第2の疎水性ポリマー含有量を有することができ、任意選択的に、第2の疎水性ポリマー含有量は、80重量%~95重量%である。
【0013】
いくつかの実施態様では、MPLは、0.5~500μmのMPL厚さを有する。任意選択的に、MPL厚さは、10~80μmであり得る。
【0014】
いくつかの実施態様では、触媒は、粒子として提供することができ、触媒層は、触媒粒子を結合し、触媒粒子へのイオン伝導性及びCO2利用可能性を促進する結合剤を更に含む。例えば、結合剤は、アイオノマー又はPTFEであり得る。例えば、アイオノマーは、Nation(登録商標)、Fumion(登録商標)、又はそれらの類似体であり得る。
【0015】
いくつかの実施態様では、触媒粒子は、金属、金属酸化物又は混合金属である。例えば、触媒粒子は、ナノ粒子であり得る。触媒粒子は、1nm~10000nmのサイズを有することができる。任意選択的に、触媒のナノ粒子のサイズは、10nm~100nmであり得る。加えて、触媒層は、最大で10μmの厚さを有することができる。
【0016】
いくつかの実施態様では、多層GDEは、触媒層が多層ガス拡散電極の稼働中に再構築するのを防止するために、官能基で修飾されている表面を有する固体粒子を含む安定化層を更に含むことができる。例えば、安定化層の固体粒子は、炭素、グラファイト、グラフェン、TiO2、SiO2、セリア、又はそれらの任意の組み合わせの粒子であり得る。固体粒子は、1nm~1μmの粒子サイズを有することができる。固体粒子は、10nm~100nmの粒子サイズを有することができる。例えば、官能化基は、イオン伝導性アイオノマーのイオン化ユニット、イミダゾリウム、スルホン酸、ポリ(アリールピペリジニウム)であり得る。任意選択的に、イオン伝導性アイオノマーは、Nation(登録商標)、Fumion(登録商標)、又はそれらの類似体であり得る。加えて、安定化層は、最大で10μmの厚さを有することができる。
【0017】
別の態様では、ガス拡散層(GDL)及び触媒層を含むガス拡散電極(GDE)を生成する方法が提供される。方法は、
疎水性かつ伝導性の支持層を提供すること、
支持層上に微多孔質層インクをブレードコーティングすることであって、微多孔質層インクが、微多孔質層(MPL)を形成するために、伝導性粒子及び疎水性ポリマーを含む、ブレードコーティングすること、
MPLを熱処理して、伝導性粒子のネットワーク内の疎水性ポリマーを焼結し、GDLを形成すること、
触媒粒子及び結合剤を含む触媒インクをGDL上に噴霧して、触媒層を形成すること、を含む。
【0018】
いくつかの実施態様では、方法は、触媒粒子、結合剤、及び溶媒を混合することによって触媒インクを形成することを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施態様では、触媒粒子は、銅ナノ粒子であり得、結合剤は、アイオノマーである。
【0020】
いくつかの実施態様では、ブレードコーティングは、0.5μm~500μmの厚さを有するMPLを生成することを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施態様では、MPLの熱処理は、300~400℃の温度でGDLを加熱することを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施態様では、GDEは、官能基で修飾されている表面を有する固体粒子を含む安定化層を更に含むことができ、方法は、固体粒子及び結合剤を含む安定化インクを触媒層上に噴霧することを更に含むことができる。任意選択的に、方法は、固体粒子、結合剤、及び溶媒を混合することによって安定化インクを形成することを含むことができる。例えば、固体粒子は、炭素ナノ粒子であり得、結合剤は、イオン伝導性ポリマーであり得る。
【0023】
別の態様では、膜電極接合体のイオン交換膜とアノードとの間に位置決め可能なスペーサが提供され、スペーサは、親水性、多孔質かつ非伝導性層を含む。
【0024】
いくつかの実施態様では、親水性、多孔質かつ非伝導性層は、ポリエステル、レーヨン、絹、綿、チーズクロス、PES、ナイロン、親水性PTFE、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はそれらの任意の組み合わせから作製され得る。
【0025】
いくつかの実施態様では、親水性、多孔質かつ非伝導性層は、織布繊維から作製され得る。例えば、織布繊維は、合成布繊維であり得る。
【0026】
いくつかの実施態様では、スペーサは、親水性、多孔質かつ非伝導性層上へのアイオノマーのコーティングを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施態様では、スペーサは、0.001mm~3mmの厚さを有することができる。任意選択的に、スペーサの厚さは、100μm~400μmであり得る。
【0028】
いくつかの実施態様では、親水性、多孔質かつ非伝導性層は、10%~90%の多孔率を有することができる。例えば、親水性、多孔質かつ非伝導性層は、0.0001mm~1mmの細孔サイズを有する細孔を有することができる。任意選択的に、細孔サイズは、10~100μmであり得る。
【0029】
別の態様では、CO2、CO、又はそれらの混合物を炭素生成物に電解還元するための膜電極接合体が提供される。膜電極接合体は、
カソードと、
アノードと、
カソードとアノードとの間に位置決めされたイオン交換膜であって、イオン交換膜がカソードと接触している、イオン交換膜と、
イオン交換膜とアノードとの間に位置決めされたスペーサであって、スペーサが、親水性、多孔質かつ非伝導性層を含み、スペーサがイオン交換膜と接触している一方の側面及びアノードと接触している他方の側面を有する、スペーサと、を含む。
【0030】
いくつかの実施態様では、スペーサは、アノード及び/又はイオン交換膜に接着されるか、固定されるか、ホットプレスされるか(電極)、接して配置されるか、又は接してプレスされ得る。
【0031】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体は、スペーサが除かれている膜電極接合体と比較して、少なくとも100%、少なくとも1000%、又は少なくとも2000%の寿命の向上を有することができる。
【0032】
いくつかの実施態様では、スペーサは、本明細書で説明される少なくとも1つの特徴を更に含むことができる。
【0033】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体のカソードは、本明細書において記載されるガス拡散電極であり得る。
【0034】
別の態様では、CO2、CO、又はそれらの混合物の炭素生成物への電解還元を行うための反応器が提供される。反応器は、
カソード、アノード及びイオン交換膜を含む膜電極接合体と、
一対の対向する支持下部構造を含む支持構造であって、各支持下部構造が、膜電極接合体の一方の側に接触して、膜電極接合体を一対の対向する支持下部構造の中間に均一に維持する、支持構造と、を含み、
各支持下部構造が、膜電極接合体のアノード及びカソードへの、又はアノード及びカソードからの反応物、生成物、電解質、及び電子の流れを確実にするために、多孔質かつ導電性材料の少なくとも1つの層を含む。
【0035】
いくつかの実施態様では、各支持下部構造は、膜電極接合体のカソード又はアノードに溶接されるか、接着されるか、固定されるか、ホットプレスされるか、又は接してプレスされ得る。
【0036】
いくつかの実施態様では、多孔質かつ導電性材料としては、チタン、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、青銅、黄銅、亜鉛めっき鋼、白金、ニッケル、炭素、炭素鋼、鉄、鉛、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0037】
いくつかの実施態様では、多孔質かつ導電性材料は、水素発生反応(hydrogen evolution reaction、HER)を触媒することを回避する金属であり得る。
【0038】
いくつかの実施態様では、多孔質かつ導電性材料は、耐腐食性である金属であり得る。
【0039】
いくつかの実施態様では、多孔質かつ導電性材料は、耐水素脆化である金属であり得る。
【0040】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体は、少なくとも100cm2のサイズを有する活性表面を有することができる。
【0041】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体のカソードと接触する支持下部構造は、カソードの支持下部構造であり、カソードの支持下部構造は、多孔質かつ導電性材料の単一層からなることができる。例えば、カソードの支持下部構造は、200~1300マイクロメートルの厚さを有することができる。任意選択的に、カソードの支持下部構造の厚さは、600~900マイクロメートルである。例えば、カソードの支持下部構造の単一層は、1mm~10mm、任意選択的に、5~7mmの範囲の細孔サイズを有する細孔を有することができる。例えば、カソードの支持下部構造の単一層は、チタン、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、又はそれらの組み合わせから作製することができる。
【0042】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体のアノードと接触している支持下部構造は、アノードの支持下部構造であり、アノードの支持下部構造は、多孔質、導電性かつ耐食性材料の複数の層からなることができる。例えば、アノードの支持下部構造は、少なくとも2つの層を含むことができる。任意選択的に、アノードの支持下部構造は、少なくとも4つの層を含むことができる。例えば、アノードの支持下部構造の複数の層のうちの各1つは、チタンで作製することができる。例えば、アノードの支持下部構造は、500~3000マイクロメートルの厚さを有することができる。任意選択的に、アノードの支持下部構造の厚さは、1000~2000マイクロメートルであり得る。例えば、アノードの支持下部構造の各層は、1~10mm、任意選択的に、3~7mmの範囲の細孔サイズを有する細孔を有することができる。
【0043】
いくつかの実施態様では、支持構造は、支持下部構造のうちの少なくとも1つに追加される乱流エンハンサを更に含むことができる。
【0044】
いくつかの実施態様では、反応器は、一対の対向する支持下部構造の一方の支持下部構造と接触して提供されたカソードの流れ場と、一対の対向する支持下部構造の他方の支持下部構造と接触して提供されたアノードの流れ場と、を更に含むことができる。
【0045】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体のカソードは、本明細書において記載されるガス拡散電極であり得る。
【0046】
いくつかの実施態様では、膜電極接合体は、本明細書において説明される少なくとも1つの特徴を更に含むことができる。
【0047】
別の態様では、CO2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に変換する電解還元システムの稼働を促進するための方法が提供される。方法は、
CO2、CO又はそれらの混合物を電解還元システムのカソードの区画の入口に注入して、CO2、CO又はそれらの混合物の炭素生成物への電解還元を実施することであって、電解還元が、流路に沿ってカソードの区画内で炭酸塩を形成することを含む、実施することと、
流路に沿って炭酸塩の少なくとも一部分を溶解及び除去して、塩富化流体を形成するために、カソードの区画の入口にリンス流体を注入することと、
カソードの区画の出口から炭素生成物及び塩富化流体のうちの少なくとも1つを回収することと、を含む。
【0048】
いくつかの実施態様では、リンス流体の注入は、CO2、CO又はそれらの混合物の注入と交互に実施することができる。代替的に、CO2、CO又はそれらの混合物の注入は、リンス流体の注入の間、維持され得る。
【0049】
いくつかの実施態様では、リンス流体は、水、脱イオン水、水と表面張力低減分子との混合物、又は廃棄電解質であり得る。
【0050】
いくつかの実施態様では、リンス流体の注入は、リンス期間中に周期的に実施される。例えば、リンス期間は、20秒~30分の持続時間を有することができる。任意選択的に、リンス期間の持続時間は、1~3分であり得る。
【0051】
いくつかの実施態様では、リンス流体の体積流量対CO2、CO又はそれらの混合物の体積流量の比は、0.05~0.5であり得る。
【0052】
いくつかの実施態様では、リンス流体の注入が、毎分20~200のリンス流体の体積流量対カソードの区画の体積の比で実施され得る。任意選択的に、体積流量対カソードの区画の体積の比は、毎分50~80であり得る。
【0053】
いくつかの実施態様では、リンス流体の注入は、30分~12時間のリンス頻度で実施され得る。任意選択的に、リンス頻度は、1時間~3時間であり得る。
【0054】
いくつかの実施態様では、方法は、本明細書において説明されるような膜電極接合体又は本明細書において説明されるような反応器を電解還元システムの一部として提供することを含むことができ、カソードの区画は、膜電極接合体内に含まれる。
【0055】
別の態様では、CO2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に変換する電解還元システムが提供される。システムは、
CO2、CO又はそれらの混合物の電解還元を持続するガス拡散電極、及びガス拡散電極と流体連通している入口を含むカソードの区画と、
分配アセンブリであって、
CO2、CO又はそれらの混合物の供給源と流体連通し、かつCO2、CO又はそれらの混合物をカソードの区画の入口に供給して、CO2、CO又はそれらの混合物の炭素生成物への電解還元を実施する、第1の供給配管であって、電解還元が、カソードの区画内の流路に沿って炭酸塩を形成することを含む、第1の供給配管と、
リンス流体の供給源と流体連通している第2の供給配管と、
リンス流体をカソードの区画の入口に注入し、それによって、流路に沿って炭酸塩の少なくとも一部分を溶解及び除去して、塩富化流体を形成するために、カソードの区画の入口を第2の供給配管に流体接続するように作動可能である弁と、
カソードの区画へのリンス流体の体積流量を制御するように作動可能であるポンプと、を含む、分配アセンブリと、を含む。
【0056】
いくつかの実施態様では、システムは、バルブ及びポンプの自動作動のためにバルブ及びポンプに稼働可能に接続されて、リンス頻度で、かつリンス期間の間、リンス流体の注入を周期的にトリガするコントローラを更に備えることができる。例えば、リンス期間は、20秒~30分の持続時間を有することができる。任意選択的に、リンス期間の持続時間は、1~3分であり得る。例えば、リンス頻度は、30分~12時間であり得る。任意選択的に、リンス頻度は、1~3時間であり得る。
【0057】
システムのいくつかの実施態様では、第2の供給配管を介したリンス流体の体積流量対第1の供給配管を介したCO2、CO又はそれらの混合物の体積流量の比は、0.05~0.5であり得る。
【0058】
いくつかの実施態様では、システムは、リンス流体の供給源であるリンス流体リザーバと、回収された塩富化流体を受容する廃棄物収集タンクと、を更に備えることができる。
【0059】
システムのいくつかの実施態様では、リンス流体は、水、脱イオン水、水と表面張力低減分子との混合物、又は廃棄電解質であり得る。
【0060】
システムのいくつかの実施態様では、カソードの区画は、カソードの流れ場と、触媒を含むガス拡散電極に接触し、かつ互いに流体連通して、流路を画定する、多孔質メッシュ支持下部構造と、を更に含むことができる。
【0061】
システムのいくつかの実施態様では、カソードの区画は、本明細書において説明されるような膜電極接合体の一部であり得るか、又は本明細書において説明されるような反応器(スタック又は非スタック)の一部であり得る。
【0062】
別の態様では、CO2、CO又はそれらの混合物を炭素生成物に還元するための電解槽スタック反応器が提供される。電解槽スタック反応器は、
一対のエンドプレートであって、近位エンドプレート及び遠位エンドプレートを含む、一対のエンドプレートと、
近位エンドプレートと遠位エンドプレートとの間に位置決めされた複数の繰り返しセルユニットであって、各繰り返しセルユニットが、
カソードの入口及びカソードの出口を有するカソードの流れ場と、
アノードの入口及びアノードの出口を有するアノードの流れ場と、
カソードの流れ場とアノードの流れ場との間に位置決めされた膜電極接合体と、を含む、複数の繰り返しセルユニットと、
CO2、CO又はそれらの混合物、及び炭素生成物を各繰り返しセルユニットに、又は各繰り返しセルユニットから、並列に分配するためのマニホールドアセンブリであって、
CO2、CO又はそれらの混合物をカソードの流れ場を介して膜電極接合体に分配するために、各繰り返しセルユニットのカソードの入口に分岐したカソードの入口マニホールドと、
アノード液をアノードの流れ場を介して膜電極接合体に分配するために、各繰り返しセルユニットのアノードの入口に分岐したアノードの入口マニホールドと、
カソードの流れ場を介して膜電極接合体から炭素生成物を放出するために、各繰り返しセルユニットのカソードの出口に分岐したカソードの出口マニホールドと、
アノードの流れ場を介して膜電極接合体から使用済みアノード液を放出するために、各繰り返しセルユニットのアノードの出口に分岐したアノードの出口マニホールドと、を含む、マニホールドアセンブリと、
複数の繰り返しセルユニットにわたって延在する一対のバスバーであって、
複数の繰り返しセルユニットのうちの各1つのアノードの流れ場を並列に電気的に接続するアノードのバスバーと、
複数の繰り返しセルユニットのうちの各1つのカソードの流れ場を並列に電気的に接続するカソードのバスバーと、を備える、一対のバスバーと、を含む。
【0063】
いくつかの実施態様では、カソードの入口は、少なくとも1つの繰り返しセルユニットの上部に位置付けることができ、アノードの入口は、少なくとも1つの繰り返しセルユニットの底部に位置付けることができる。
【0064】
いくつかの実施態様では、アノード液及びCO2、CO又はそれらの混合物は、それぞれアノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールド内を並流で流れることができる。代替的に、アノード液は、カソード入口マニホールド内を流れるCO2、CO又はそれらの混合物に対して向流的にアノード入口マニホールド内を流れることができる。
【0065】
いくつかの実施態様では、アノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールドの各々は、近位エンドプレート及び遠位エンドプレートの両方において画定された入口ポートを含むことができる。
【0066】
いくつかの実施態様では、アノード出口マニホールド及びカソード出口マニホールドの各々は、近位エンドプレート及び遠位エンドプレートの両方において画定された出口ポートを含むことができる。
【0067】
いくつかの実施態様では、カソード入口及び出口マニホールド並びにアノード入口及び出口マニホールドは、複数の繰り返しセルユニットから外部に延在する管類又はヘッダを介して、それぞれのカソードの入口及び出口並びにアノードの入口及び出口に分岐している。代替的に、カソード入口及び出口マニホールド並びにアノード入口及び出口マニホールドは、複数の繰り返しセルユニットの各アノードの流れ場及びカソードの流れ場の筐体内で内部に画定される内側入口及び出口ポートを介して、それぞれのカソードの入口及び出口並びにアノードの入口及び出口に分岐することができる。更に代替的に、カソード入口マニホールド及びカソード出口マニホールドは、内部でそれぞれのカソードの入口及び出口に分岐することができ、一方、アノード入口マニホールド及びアノード出口マニホールドは、外部でそれぞれのアノードの入口及び出口に分岐することができ、逆もまた同様である。
【0068】
いくつかの実施態様では、複数の繰り返しセルユニットは、2~10000の繰り返しセルユニットを備えることができる。
【0069】
いくつかの実施態様では、電解槽スタック反応器は、複数のヒューズを備えることができ、各ヒューズは、アノードのバスバー及びカソードのバスバーのうちの少なくとも1つを対応する繰り返しセルユニットに直列に接続する。
【0070】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの繰り返しセルユニットは、膜電極接合体と接触している一方の側面、及びアノードの流れ場又はカソードの流れ場と接触している他方の側面を有する、少なくとも1つの多孔質支持下部構造を含むことができる。例えば、少なくとも1つの多孔質支持下部構造は、少なくとも1つの金属メッシュ層から作製することができる。
【0071】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの繰り返しユニットは、100cm2~1000cm2のセル面積を有することができる。
【0072】
いくつかの実施態様では、各繰り返しセルユニットの膜電極接合体は、本明細書において説明されるような少なくとも1つの特徴を更に含む。
【0073】
いくつかの実施態様では、各繰り返しセルユニットのカソードは、本明細書において説明されるようなガス拡散電極である。
【0074】
いくつかの実施態様では、各繰り返しセルユニットは、本明細書において説明されるような電解槽反応器である。
【0075】
別の態様では、近位エンドプレート及び遠位エンドプレート、並びに近位エンドプレートと遠位エンドプレートとの間に位置決めされた複数の繰り返しセルユニットを備える電解槽スタック反応器内の少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを診断及び隔離するための方法であって、
複数の繰り返しセルユニットの各カソードをカソードのバスバーに並列に電気的に接続することと、
複数の繰り返しセルユニットの各アノードをアノードのバスバーに並列に電気的に接続することと、
CO2、CO又はそれらの混合物を分配し、炭素生成物を回収するために、複数の繰り返しセルユニットの各カソードをカソードマニホールドアセンブリに並列に流体接続することと、
アノード液を分配し、使用済みアノード液を回収するために、複数の繰り返しセルユニットの各アノードをアノードマニホールドアセンブリに並列に流体接続することと、
少なくとも1つの繰り返しセルユニットの潜在的な不良稼働を検出するために、各繰り返しセルユニットの電流を監視することと、
少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットが検出されるとき、少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを隣接する繰り返しセルユニットから流体的及び/又は電気的に切断することによって、不良繰り返しセルユニットをバイパスすることと、を含む、方法が提供される。
【0076】
いくつかの実施態様では、方法は、電解槽スタック反応器の電圧を監視して、監視された電圧が減少するときに短絡を検出することを含むことができる。
【0077】
いくつかの実施態様では、方法は、本明細書において説明される少なくとも1つの特徴を更に含む電解槽スタック反応器を提供することを含むことができる。
【0078】
例えば、少なくとも1つの不良繰り返しセルユニットを電気的に切断することは、不良繰り返しセルユニットと直列に接続されているヒューズの切断することを介して実施することができる。
【0079】
本技術及び構成要素は、例示的な実施態様とともに説明されるが、その範囲をかかる実施態様に制限することを意図していないことが理解されよう。それどころか、本説明によって定義されるように含まれ得る全ての代替形態、修正形態、及び均等物が包含され得ることが意図されている。本技術及び構成要素の目的、利点、及び他の特徴は、添付の図面を参照して与えられる本発明の以下の非限定的な説明を読むと、より明らかになり、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】カソードの流れ場及びアノードの流れ場、カソードの流れ場とアノードの流れ場との間に位置決めされた膜電極接合体、並びに2つの支持板を含み、各支持板がMEAと流れ場との間に挟持されている、本明細書において包含される電解還元反応器の概略断面図である。
【
図3】ガス拡散層のためのブレードコーティング方法の概略図である。
【
図4】4つの市販のガス拡散層(GDL240は、CeTech GDL240(商標)を指し、H23C8は、Freudenberg H23C8(商標)を指し、GDS2230は、AvCarb GDS2230(商標)を指し、及び25BCはSigracet 25BC(商標)を指す)を含む、5cm
2カソード、及び200mA/cm
2の電流密度で本明細書に包含されるカスタムカソードのH
2に対する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図5】200mA/cm
2の電流密度で本明細書において提案されるようなガス拡散層を含む、5-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図6】200mA/cm
2で異なるガス拡散層(GDL)を含む5-cm
2カソードのH2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフであり、エチレンに対する最良の結果は、支持層と、炭素ナノ粒子及びPTFEを含む疎水性/微多孔質層と、を含む、本明細書において提案されるようなGDLを用いて得られている。
【
図7】200mA/cm
2(
図7)、300mA/cm
2(
図8)、及び400mA/cm
2(
図9)の印加電流密度における、3つの異なる厚さを有する微多孔質層を含む5-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図8】200mA/cm
2(
図7)、300mA/cm
2(
図8)、及び400mA/cm
2(
図9)の印加電流密度における、3つの異なる厚さを有する微多孔質層を含む5-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図9】200mA/cm
2(
図7)、300mA/cm
2(
図8)、及び400mA/cm
2(
図9)の印加電流密度における、3つの異なる厚さを有する微多孔質層を含む5-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図10】膜電極接合体内のスペーサの疎水性、多孔質かつ非伝導性層として選択された材料に対する、膜電極接合体がいずれのスペーサを含まない場合の、H
2、CO及びC
2H
4に関するファラデー効率(%単位)、及びセル電圧(V単位)を示すグラフである。
【
図11A】スペーサを含まない膜電極接合体に対する、H
2、CO及びC
2H
4に関するファラデー効率(%単位)、及びセル電圧(V単位)対時間(時間単位)を示すグラフである。
【
図11B】スペーサを含む膜電極接合体に対する、H
2、CO及びC
2H
4に関するファラデー効率(%単位)、及びセル電圧(V単位)対時間(時間単位)を示すグラフである。
【
図12】H
2、CO及びC
2H
4に関するファラデー効率(%単位)及びセル電圧(V)対膜電極接合体中のスペーサの疎水性、多孔質かつ非伝導性層として選択された材料、スペーサが存在しない場合又はアイオノマーコーティングされたスペーサが存在する場合を示すグラフである。
【
図13】カソードの流れ場及びアノードの流れ場、カソードの流れ場とアノードの流れ場との間に位置決めされた膜電極接合体、並びに2つの層状金属メッシュの支持下部構造を含み、各支持下部構造がMEAと流れ場との間に挟持されている、本明細書において包含されるような電解還元反応器の一部分の概略断面図である。
【
図14】メッシュ支持下部構造がない場合のカソード流れ場における電圧分布を示すグラフである。
【
図15】1層メッシュ支持下部構造の存在下でのカソード流れ場における電圧分布を示すグラフである。
【
図16】メッシュ支持下部構造の非存在下でのカソード流れ場におけるCO
2/CO質量移動を示す2つのグラフを含む:左のグラフは、2つの隣接する流れ場チャネル及びそれらの周囲のランド領域におけるCO
2濃度(mol/m3単位)を示す。右側のグラフは、カソードの断面図を見たときの正規化されたCO濃度(流れの総濃度、41.6mol/m
3によって正規化された)を示す。(イオン交換膜は、カソードの底面にあり、流れ場チャネルはカソードの上面にある)。
【
図17】カソードの断面図を見たときの正規化されたCO濃度を示すグラフである(4層メッシュ支持下部構造の存在下で、イオン交換膜がカソードの底面上にあり、流れ場チャネルがカソードの上面にある)。
【
図18】カソードとカソード流れ場との間にメッシュ支持下部構造が存在する場合及び存在しない場合の、100mA/cm
2の印加電流密度における、800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである。
【
図19】800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))対mA/cm
2単位の印加電流密度を示すグラフであり、メッシュ支持下部構造が存在しない。
【
図20】800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))対mA/cm
2単位の印加電流密度を示すグラフであり、1層チタンメッシュ支持下部構造が存在する。
【
図21】800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))対時間(日単位)を示すグラフであり、カソードは、0.050~0.150インチの範囲内の細孔サイズを有するダイヤモンド形状チタンメッシュの3つの層によって支持されている。
【
図22】800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))対時間(日単位)を示すグラフであり、カソードは、0.100~0.300インチの範囲内の細孔サイズを有する大きいダイヤモンド形状チタンメッシュの1つの層によって支持されている。
【
図23】800-cm
2カソードのH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))対時間(日単位)を示すグラフであり、カソードは、銅メッシュの1つの層によって支持されている。
【
図24】本明細書において包含されるような電解槽スタック反応器の上面斜視図である。
【
図25】内部アノード入口マニホールド及び出口マニホールド並びにアノードの流れ場(及び集電体)インサートを有する筐体を含む、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリの構成要素の上面斜視分解図である。
【
図26】単一部品として組み合わされている、外部マニホールドアセンブリ及びアノードの流れ場(及び集電体)インサートへの接続のためのポートを含む、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリの上面斜視図である。
【
図27】カソードの流れ場アセンブリの正面図である。
【
図28】アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリの正面図である。
【
図30】
図1に図式化された電解還元反応器として設計することができる複数の繰り返しセルユニットを含む、本明細書において包含されるような電解槽スタック反応器の構成要素の上面斜視分解図である。
【
図31】CO、CO
2又はそれらの混合物の電解還元を持続する少なくとも1つの膜電極接合体を含む、電解槽反応器のリンス稼働の簡略化されたプロセスフロー図である。
【
図32】CO、CO
2又はそれらの混合物の電解還元を持続する少なくとも1つの膜電極接合体を含む電解槽反応器への入口流及び電解槽反応器からの出口流の概略図である。
【
図33】リンスシステムの弁が閉鎖位置から開放位置に切り替えられる間の電流(A単位)、電圧(V単位)、及びCO
2流量(kg/時単位)対時間を示す2つのグラフを含む。
【
図34】リンス前後のH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))を示すグラフである(ストライプ)。
【
図35】電解槽反応器上でリンス稼働が実施されない場合のH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))VS時間(時間単位)を示すグラフである。
【
図36】電解槽反応器上でリンス稼働が実施される場合のH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))VS時間(時間単位)を示すグラフである。
【
図37】リンス稼働が118分のリンス頻度の状態で電解槽反応器上で実施される場合の、H
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))、及びセル電圧(V単位)対時間(時間単位)を示すグラフである。
【
図38】リンス稼働が、68分のリンス頻度の状態で電解槽反応器上で実施される場合のH
2、CO及びC
2H
4に関する選択性(ファラデー効率(%))、及びセル電圧(V単位)対時間(時間単位)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本技術は、ガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせの炭素生成物への電気化学的変換を促進する電解還元システムの構成要素の設計に関する。ガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせの炭素生成物への電気化学的還元を維持するためのカソードとして使用することができる多層ガス拡散電極が提供される。多層ガス拡散電極の各層は、以下で更に詳細に説明されるように、疎水性かつ導電性であるように設計することができる。より具体的には、多層ガス拡散電極は、アノードと、カソードをアノードから分離するイオン交換膜(ion exchange membrane、IEM)と、を更に含む、膜電極接合体(MEA)の一部であり得る。例えば、イオン交換膜は、アニオン性交換膜(anionic exchange membrane、AEM)、カチオン性交換膜(cationic exchange membrane、CEM)、又は双極性膜(bipolar membrane、BPM)であり得る。以下で更に詳細に説明されるように、MEAの一部とすることができ、IEMとアノードとの間に位置決めすることができる親水性スペーサが更に提供される。加えて、MEAは、ガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせをMEAのカソード側に供給するためのカソードの流れ場と、アノード液をMEAのアノード側に供給するためのアノードの流れ場と、を更に含む電解還元反応器(また電気化学流セル反応器、MEA電解槽、又は電解槽反応器とも称される)の一部であり得る。一対の対向する多孔質かつ導電性の支持プレートを含む支持構造を更に含む電解還元反応器が更に提供され、各支持プレートは、以下で更に詳細に説明されるように、一対の対向する支持板の中間にMEAを均一に維持するために、MEAと流れ場(アノード又はカソード)との間に提供されている。以下で更に詳細に説明されるように、電解還元反応器と、供給配管を含む分配アセンブリなどの追加の構成要素と、必要とする流体(ガス状CO2/CO、アノード液、又はリンス流体)を電解還元反応器に分配するための少なくとも1つの弁と、を含む電解還元システムが更に提供される。電解還元反応器は、以下で更に詳細に説明されるように、電解槽スタック反応器を形成するために近位エンドプレートと遠位エンドプレートとの間に積層された複数の繰り返しセルユニットからの少なくとも1つの繰り返しセルユニットとして更に使用することができる。
【0082】
本システム、方法、及びプロセスの実装を介して生成することができる炭素生成物は、単一炭素生成物、多炭素生成物、又はそれらの組み合わせを含む。より具体的には、炭素生成物は、例えば、一酸化炭素、ホルマート(ギ酸)、メタン、エチレン、アセタート(酢酸)、エタノール、n-プロパノール、アセトアルデヒド、及びプロピオンアルデヒドを含むことができる。
【0083】
いくつかの方法が本明細書において更に包含され、電解還元システム全体の構成要素、ユニット及びアセンブリの製造、使用又は保守に関する。例えば、電解還元反応器の稼働は、MEAのカソードの区画を定期的にリンスして、カソードの区画内のガス状CO2、CO、又はそれらの組み合わせの電解還元中に形成され得る炭酸塩の少なくとも一部分を溶解及び除去することによって促進され得る。
【0084】
電気化学的CO2及び/又はCO還元のための疎水性伝導性多孔質支持体及び疎水性微多孔質層の複合体を有するガス拡散電極
ガス拡散層(GDL)は、近年、効率及び電流密度を大幅に増加させるために、CO2/CO還元のための電気化学流セル反応器にカソード材料として組み込まれている。ガス状CO2/COを触媒に近接して提供することによって、CO2/COは、完全に水性の反応器(Hセル)よりもはるかに容易に活性触媒部位に拡散することができ、高電流密度(数百mA/cm2)で反応することができる。CO2RR中のカソードの疎水性は、液体電解質及び生成物によるフラッディングを回避するために必要である。
【0085】
実験室規模では、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタは、その疎水性特性のために有効なカソード基板であることが既知である。しかしながら、PTFEフィルタは、導電性ではなく、それらがガス拡散層として使用される場合、全ての電流は、触媒層の平面を横切って伝導される。この戦略は、1A未満の電流で可能であるが、より大きい電流セル(>80A/セル)で到達する電流に対しては十分に導電性ではない可能性がある。
【0086】
他の既知の市販のGDLは、通常、多孔質炭素繊維紙(0~5%の防湿性)又は微多孔質層(炭素ナノ粒子と5~30%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合物から構成される)で覆われたフェルトから構成される。ナノ粒子触媒は、典型的には、ガス拡散電極(GDE)を形成するためにGDLの表面上に更に堆積する。しかしながら、
図4を参照すると、これらの既知のGDLの疎水性は、典型的には、炭素材料が電解還元プロセスを通してより親水性になるにつれて経時的に減少することが示された。疎水性の減少は、エレクトロウェッティング、塩結晶の形成、又はGDLの表面上への不純物の堆積に起因し得る。この疎水性の喪失は、GDLが水、電解質、又は液体生成物で溢れることにつながり、触媒層へのCO/CO
2の拡散を制限し、最終的に反応の不安定性を引き起こす。このため、これらの電極は、数百時間の期間にわたって高電流密度で炭素生成物を生成するCO
2MEA電解槽における使用に好適ではないことが見出される。
【0087】
本明細書において、導電性でありながら、長期間にわたって疎水性のままであり、電解質及び生成物からのフラッディングを防止するガス拡散層を含む電極、例えば、カソードが提案される。より具体的には、本明細書において提案されるようなカソードの使用は、例えば、
図4に見られるように、最大でも10時間の稼働から数百時間まで持続時間を増加させ、形成された塩結晶で充填されるか、又は電解質若しくは生成物で溢れることによる閉塞に起因して、ガス拡散層が、CO
2/COを触媒に提供することができなくなる前に、CO
2/CO電解槽を稼働させることができる。
【0088】
図1を参照すると、本明細書において提案されるようなカソード32は、GDL42、触媒層44、及び任意選択的に、安定化層46を含むGDEである。
図1及び
図2を参照すると、GDL42は、支持層48、及び支持層48上に堆積した微多孔質層(MPL)50を含む。いくつかの実施態様では、支持層は、炭素紙、炭素フェルト、又は炭素クロスを含むことができる。代替的に、支持層は、金属、例えば、金属メッシュを含むことができる。支持層は、ミリメートル未満の細孔サイズを有する多孔質である。MPLは、疎水性かつ伝導性であるように設計される。MPLは、炭素ナノ粒子などの伝導性ナノ粒子を含むことができる。任意選択的に、炭素ナノ粒子は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ブラック、炭素ナノチューブ、グラファイト、グラフェン、又はそれらの任意の組み合わせであり得るか、又はそれらを含むことができる。MPLは、疎水性ポリマーを更に含むことができる。例えば、疎水性ポリマーは、PTFE、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene、FEP)、ペルフルオロアルコキシ(perfluoroalcoxy、PFA)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)、及びポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)であり得る。
【0089】
より具体的には、異なる基板材料を試験した後、生成されたGDL及び結果として得られるGDEは、疎水性であり、面貫通導電性を提供する。面貫通伝導性は、GDL又はカソード(GDE)の1つの層から別の隣接する層への電気の伝導として理解されるべきである。
【0090】
いくつかの実施態様では、カソードの支持層は、カスタムPTFE含有層、例えば、5重量%~60重量%、任意選択的に、少なくとも30重量%、更に任意選択的に、30重量%~50重量%のPTFEで処理された薄い市販の炭素紙であり得る。結果として得られる処理済み炭素紙(支持層)は、50μm~1000μm、任意選択的に、100μm~300μmの厚さを有する。加えて、カソードは、高濃度のPTFE、例えば、60重量%~99重量%のPTFE、任意選択的に、80重量%~95重量%のPTFEと混合されたアセチレンブラックナノ粒子などの伝導性ナノ粒子を含むことができるMPLを更に含んで、カソード触媒を堆積させるための伝導性かつ疎水性の表面界面を作り出す。MPLの乾燥厚さは、0.5μm~500μm、任意選択的に、10μm~80μmであり得る。このため、GDEは、薄いPTFE-炭素紙層及び薄いMPLを含んで、触媒におけるCO2利用可能性を最大にし、反応中に形成される任意の炭酸カリウム塩がDI水で定期的にリンスすることによって溶解されることを可能にする。
【0091】
図4~
図9は、稼働持続時間(
図4及び
図5)、支持層の性質及びMPLの存在(
図6)、MPLの厚さ(
図7~
図9)などの様々なパラメータによる、本明細書において提案されるようなGDLを含むカソードの性能を例解する。
【0092】
疎水性MPLとマイクロスケール細孔を含む疎水性多孔質支持層との組み合わせは、(i)液体生成物、液体電解質、又は凝縮水による電極のフラッディングを防止することによって反応部位へのガス輸送、及び(ii)集電体からカソードへの電子輸送を確実にすることができる。形成されたガス拡散電極は、高電流密度、選択性(単一炭素又は多炭素ガス又は液体生成物のいずれか)、及び気相膜電極接合体におけるCO2又はCOの安定した変換を促進する。
【0093】
カソードは、触媒層を更に含む。いくつかの実施態様では、カソードは、安定化層を更に含むことができる。両方の層は、結合剤(アイオノマー又はPTFEなど)で結合されたナノ粒子からなるが、それらの機能は異なる。触媒層のナノ粒子は、CO2/CO電解還元に対して触媒的に活性であるように選択され、1nm~10000nm、任意選択的に、10nm~100nmのサイズにすることができる。例えば、触媒層は、Cuナノ粒子を含むことができる。安定化層のナノ粒子は、チタニア、セリア、炭素ナノ粒子(炭素ナノチューブを含む)、グラファイト、グラフェン、及びシリカなど、安定化し、かつ導電性であるように選択される。触媒層及び安定化層のうちの各1つにおいてナノ粒子を結合するために使用することができるアイオノマーは、Nation(登録商標)、Fumion(登録商標)、又はそれらの類似体であり得る。触媒層に含まれるアイオノマーは、安定化層に含まれるアイオノマーと同じであるか、又は異なる可能性がある。
【0094】
より具体的には、安定化層の粒子は、多層ガス拡散電極の稼働中に触媒層が再構築することを防止するために、官能基で修飾されている表面を有することができる。官能基は、上で言及したNation(登録商標)、Fumion(登録商標)などの、イオン化ユニット、イミダゾリウム、スルホン酸、イオン伝導性アイオノマーのポリ(アリールピペリジニウム)であり得る。
【0095】
触媒層及び安定化層を堆積させるために、様々な堆積技術を使用することができる。堆積技術としては、ドロップキャスト、ブレードコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ドライプレス、電着、ローリング、スパッタリング、熱蒸発、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。例えば、触媒層及び安定化層は、MPL上に直接噴霧することができる。例えば、触媒ナノ粒子は、アイオノマーと混合することができ、アイオノマーは、結合剤として作用し、並びに全ての触媒ナノ粒子に対するイオン伝導性を増加させ、触媒ナノ粒子に対するCO/CO2利用可能性を増加させる。いくつかの実施態様では、多孔質触媒層は、CO/CO2還元反応のための活性面積及び電流密度を増加させるために、薄い連続フィルムを形成するのではなく、MPLの表面内にナノ粒子-アイオノマー混合物を分散させることによって形成される。触媒層の厚さは、100nm~10μmであり得る。安定化層は、ナノ粒子をアイオノマーと混合し、混合物を触媒層上に噴霧することによって形成することができる。安定化層は、稼働中に触媒層が再構築する(すなわち、触媒ナノ粒子を凝集させ、露出した電位若しくはpHにおける変化に起因して酸化状態、露出した結晶配向、又は粒子サイズを変化させる)ことを防止し、均一な電圧分布を維持する。触媒環境は、アイオノマーの選択又は安定化層の炭素ナノ粒子の他の官能基化を通して更に調整することができる。
【0096】
提案されたGDLを含むカソードは、液体流セル反応器又は膜電極接合体反応器において使用することができる。
【0097】
多層ガス拡散電極は、当業者に利用可能な様々な方法で製造することができる。しかしながら、本明細書及び特許請求の範囲に記載された多層ガス拡散電極を製造するために開発された方法は、以下の通りである。
【0098】
カソードを生成するための方法が更に提供され、この方法は、ガス拡散層を形成することと、任意選択的に、ガス拡散層上に触媒層を形成することと、更に任意選択的に、触媒層上に安定化層を形成することと、を含む。ガス拡散層を形成することは、支持層及びMPLを形成することを含む。例えば、支持層の形成は、炭素紙をPTFE溶液内に浸漬することと、次いで炭素紙の炭素繊維上のPTFEを溶融させるために熱処理して、PTFE処理炭素紙である支持層を生成することと、を含むことができる。次いで、MPLの形成は、炭素ナノ粒子インクとPTFE溶液とを混合して、MPLインクを形成することと、
図3に見られるように、PTFE処理された炭素紙である支持層48の上部にMPLインク51をブレードコーティングして、MPL50を形成することと、を含む。任意選択的に、ブレードコーティングは、400μm~1000μmの湿潤厚さを有するMPLを形成するために実施され得、これは、乾燥時に、0.5μm~500μmの厚さの最終厚さに相当する。最終的に、ガス拡散層を形成することは、MPLを熱処理(焼結)して、内部のPTFEを溶融させることを含む。任意選択的に、熱処理は、ガス拡散層を炉内で300℃~400℃の温度に曝露することを含み得、そのためPTFE粒子は、ともに焼結し、炭素ナノ粒子とともに支持層の上部に凝集性で均一な層を形成する。PTFEの焼結はまた、ガス拡散層の疎水性を提供する。
【0099】
いくつかの実施態様では、方法は、触媒インク(例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどの溶媒中のCuナノ粒子と結合剤として働くアイオノマーとの混合物)をMPLの上部に噴霧することによって触媒層を形成することを更に含むことができる。インク中の触媒材料は、金属、金属酸化物、又は混合金属であり得る。いくつかの実施態様では、方法は、触媒層の上部に安定化インク(例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなどの溶媒中の炭素ナノ粒子とアイオノマーとの混合物)を噴霧することによって安定化層を形成することを更に含むことができる。
【0100】
図5に見られるように、形成された多層GDEは、ガス状CO
2、CO、又はそれらの組み合わせの炭素生成物への電気化学的還元を持続するためのカソードとして使用することができる。カソードとして使用した場合、多層ガス拡散電極は、非常に優れた安定性を明示した。例えば、本明細書において説明されるような塩緩和(定期的なリンス)及び銅メッシュ戦略と組み合わせた場合、安定性は更に改善され、少なくとも25%のエチレン生成物に対する選択性を維持しながら、数百時間(例えば、少なくとも500時間)の稼働に達した。独特の電極構成は、全ての重要な輸送機能(反応物、電子、イオン、生成物)を促進した。
【0101】
CO2の電気化学的変換のための親水性スペーサ
イオン交換膜は、CO2、CO、又は他の電解槽のための膜電極接合体の重要な構成要素である。それらは、アノードの区画と、カソードの区画とを分離し、イオンが選択的に通過することを可能にすることによって、2つの間のイオン回路を完成させる。膜の安定性は、MEA電解槽の安定性にとって重要である。膜は、機械的穿孔、乾燥、化学分解などによって引き起こされる機械的不安定性に起因して機能しなくなる可能性がある。この分野における現在の最新の解決策は、強化膜を使用することである、しかしながら、これらの強化膜は、セル電圧の増加、膜-電極接触の低下、及び経時的な劣化をもたらす。
【0102】
機械的安定性の問題は、良好な膜-電極接触を維持し、経時的に劣化しないようにしながら、現在提案されているMEA設計によって克服することができる。膜の孔及び短絡を回避するために、MEA内でイオン交換膜をアノードから分離する少なくとも1つの層として使用することができる親水性スペーサが提供される。例えば、
図1を参照すると、親水性スペーサ38は、アノード34とアニオン性交換膜36(AEM)との間にそれらと接触して提供され得る。
【0103】
図1を参照すると、親水性スペーサは、0.001mm~3mmの厚さ、10%~90%の多孔率、0.0001mm~1mmの細孔サイズを有する非伝導性多孔質親水性層からなり得る。非伝導性多孔質親水性層は、MEAのアノード及び/又はイオン交換膜に接着されるか、固定されるか、ホットプレス(電極)されるか、それに接して配置されるか、又はそれに接してプレスされることによって、アノードとMEAのイオン交換膜との間に配置されて、親水性スペーサとして機能する。アノード液は、スペーサに沿って流れ、その表面を湿潤させる。スペーサは、MEAシステム内のイオン交換膜を安定化させ、膜に機械的支持を提供し、連続的な膜水和性及びイオン接続を提供し、膜不良の事象において電気的短絡を防止する。
【0104】
図10を参照すると、様々な材料が、親水性スペーサの層として使用され得るが、材料の選択は、電解還元反応の選択性及び電圧に影響を及ぼす。材料は、反応のpH及び電解質との適合性に基づいて、選択することもできる。いくつかの実施態様では、非伝導性多孔質親水性材料は、ポリエステル、レーヨン、絹、綿、チーズクロス、PES、ナイロン、親水性PTFE、セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0105】
いくつかの実施態様では、スペーサの親水性、多孔質かつ非伝導性層は、MEAのイオン伝導率及び化学反応選択性を増加させるために、アイオノマー又は別の化学物質で官能化され得る。より具体的には、スペーサは、アイオノマーのコーティングを含むことができる。
図12を参照すると、アイオノマーコーティングは、当該コーティングを含まない親水性スペーサに対して、セル電圧を低減させ、C2H4選択性を増加させることが示されている。
【0106】
図10、
図11A及び
図11Bを参照すると、親水性スペーサの存在は、エチレンのファラデー効率(Faradaic efficiency、FE)に対する影響を低下させ、セル電圧に対する影響を増加させ、親水性スペーサがMEAのアノード側にあっても、
図10において試験された全ての材料に対する影響を増加させることが分かる。しかしながら、親水性スペーサを含む又は含まないMEAの性能の寿命を比較する
図11A及び
図11Bを参照すると、親水性スペーサを含むMEAは、親水性スペーサを含まないMEAと比較して、長期間にわたって少なくとも20%、25%又は30%のエチレンに関する選択性で実施することができることが分かる。
【0107】
非伝導性親水性スペーサは、膜電極接合体内のイオン交換膜を安定化させ、イオン交換膜に機械的支持を提供し、膜を水和させてイオン的に接続された状態に保ち、膜不良の事象において電気的短絡を防止する。親水性スペーサを含むMEAの寿命は、親水性スペーサが耐穿孔性であるという事実によって、更に説明することができ、及びイオン交換膜から鋭いアノード繊維を分離することによって、これにより穿孔を最小限に抑え、MEAの寿命を延ばすことができる。
【0108】
強化されたCO2送達、支持、熱管理のための支持構造
膜電極接合体(MEA)は、二酸化炭素(CO2)又は一酸化炭素(CO)を電気化学的に変換するために用いることができる。この技術を用いる反応器は、サイズが大きくなる(>5cm2)ので、それらは、MEAの表面に沿って反応物及び生成物の流れをより良好に制御するために、(例えば、蛇行構成の)チャネルを用いる。この手法では、支持されていないチャネル領域は、流れ場/集電体との低減された電気的接触、及びMEA中の機械的不安定に悩まされる。加えて、流れ場のランド面積の真上のカソード/アノード面積は、種がこれらの面積に到達するためにチャネルから遠くに拡散しなければならず、逆もまた同様であるので、質量輸送の減少を経験する。この質量輸送の低減は、CO2/CO反応ガスへのアクセス制限をもたらし、反応効率を損なう。更に、反応から放出される熱に起因して、これらの領域は、MEA及び/又は電解槽構成要素を損傷し得る、より高い温度に達する可能性が高い。
【0109】
提案される電解還元反応器は、本明細書において説明されたMEAなどのMEA、カソードの流れ場及びアノードの流れ場と組み合わせて使用される伝導性多孔質支持構造を含むことができる。支持構造は、一対の対向する支持下部構造を含むことができ、各支持下部構造が、膜電極接合体の一方の側面おいて提供されて、膜電極接合体を一対の対向する支持下部構造の中間に均一に維持する。例えば、各支持下部構造は、流れ場とMEAとの間で、MEAのカソード及び/又はアノードのいずれかの側面上に配置することができる。この支持構造は、MEAに機械的支持及び圧縮を提供し、電解還元反応器の集電体/流れ場からカソード及び/又はアノードにわたって均一に電流を分配する。本発明の支持構造と組み合わせて使用される場合、流れ場は、(支持構造が存在しない場合よりも)より大きいチャネルを有するように設計することができ、流れ場チャネル内の圧力降下の増加を回避しながら、塩及び他の障害物を回避するための水によるリンスを促進する。このため、支持構造は、流れ場チャネルに沿った及び流れ場チャネル間の反応器デッドスポットにおける混合を向上させ、それによって、カソードの触媒へのCO
2/COの送達、カソードから離れる反応生成物の輸送、及び反応から発生した過剰な熱を除去するための熱移動を促進する。各支持下部構造は、多孔質導電性材料の少なくとも1つの層を含むことができる。多孔質導電性材料は、MEAを支持して、いくつかの重要な機能を実施する金属メッシュであり得る。例えば、少なくとも1つのメッシュ支持層は、MEAのカソード側及びアノード側の両方に追加されて、触媒への反応物の流れ及び圧縮を促進することができる。
図1に見られるように、カソード側の支持下部構造の厚さは、アノード側の支持下部構造の厚さと異なる可能性がある。
図13に示される実施態様を参照すると、各支持下部構造は、例えば、3層の金属メッシュを含むことができる。
【0110】
支持構造の存在は、大きいセル面積の一部分を示す
図13で見られるように、層状金属メッシュである支持構造(40a、40b)が、既存のより小さいセル面積と比較して増加した数のチャネル面積58及び60に起因して、カソード32、イオン交換膜36、及びアノード34を含む膜電極接合体30を支持するため、大きいセル面積(例えば、少なくとも100cm
2又は少なくとも800cm
2)を有するシステムに特に有益である。
【0111】
各支持下部構造の少なくとも1つの層の多孔率は、少なくとも50%であり得、細孔サイズは、0.1mm~10mmであり得る。支持下部構造の細孔の形状は、様々であり得、ダイヤモンド形状、円形、正方形、三角形、六角形、及び楕円形を含む。少なくとも1つの層は、穿孔メッシュ、拡張メッシュ、平坦メッシュ、多層メッシュ、溶接ワイヤメッシュ、及び織りワイヤメッシュであり得る。各層は、100μm~5mmで変化する厚さを有することができる。各層の材料は、金属又は合金であり得る導電性材料である。材料は、チタン、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、青銅、黄銅、亜鉛めっき鋼、白金、ニッケル合金、炭素、炭素鋼、鉄、鉛、又は他の電気めっき/無電解めっき金属メッシュを含むことができる。支持下部構造の導電率及び流体流動力学は、その細孔サイズ、細孔形状、細孔分布、各層のストランド配向、及び下部構造の層の数を選択することによって調整することができる。任意選択的に、例えば、流れを乱すためのリブ状又は螺旋状の構成要素である、乱流エンハンサが、支持下部構造の一部として少なくとも1つの層上に追加することができる。
【0112】
COMSOLモデリングは、メッシュサイズ及び構成の選択を支援するために使用することができる。より具体的には、コンピュータシミュレーションが、電解還元中のCO
2及びCOの濃度を予測するために使用され得、電解槽反応器に大気条件で、50mol%のCO
2及び50mol%のCOが供給される。例えば、チタン又は銅メッシュが、カソード側に対して選択されて、流れ場チャネル面積にわたるMEAへの均一な圧縮を促進し、カソードの触媒表面全体へのCO
2アクセスを提供することができる。大きい細孔(2~3mm)を有するチタン又は銅メッシュの1~4層が、カソード側に対して選択され得、これは、それがH2触媒として不十分であり、細孔が稼働中に水で満たされないほど十分に大きいためである。
図14及び
図15を比較すると、カソード側のメッシュ下部構造は、カソードとカソードの流れ場との間の均一な電気接続(例えば、活性面積にわたり240Aで最大160mVの電圧差を有する)を提供し、メッシュは、電解槽反応器を稼働させるために必要な電圧を低減させることを示した。
図16及び
図17を比較すると、カソードのメッシュ支持下部構造は、触媒部位への、及び触媒部位からの反応物CO
2及び生成物COの質量輸送をそれぞれ改善することが示されている。
図18を参照すると、質量輸送の改善は、例えば、エチレン生成に対するFEの更なる改善をもたらす(カソードメッシュを伴わない約19%のFEと比較して、カソードメッシュを伴う約27%のFE)。
図19及び
図20を比較すると、メッシュ支持下部構造を有しないカソードを含む電解セルは、100mA.cm
2(H2において高いFE及び生成物において低いFE)で質量輸送限界に達し、一方、1層のTiメッシュを有するカソードを含むセルは、100mA.cm
2で依然として良好な生成物選択性を有する。
図21及び
図22を比較すると、支持下部構造の構成(層の数及び細孔サイズ)は、CO/CO
2の流体力学及び質量輸送を変化させることが示されており、これは、反応の選択性及び安定性の両方に影響を及ぼす。
図23は、銅メッシュである下部構造の一例であり、異なる金属が下部構造を形成するために使用され得ることを示す。
【0113】
アノード側では、アノード触媒へのアノード液の輸送を支援するために、少なくとも1つのメッシュ層がまた追加され得、このため、セルに均一な冷却を提供する。アノード側の酸化セル電位は、その耐食性に起因して、例えば、メッシュ材料としてのチタンの使用に有利であり得る。アノード側のメッシュ支持下部構造は、典型的には、2~5層の微細メッシュを含み、各セルの深さに調整することができる。
【0114】
カソード流れ場とカソードとの間に挟持されているカソードの支持下部構造と、アノード流れ場とアノードとの間に挟持されているアノードの支持下部構造と、を含む、本明細書において定義されるような支持構造を含む電解槽反応器が提供される。各支持下部構造は、流れ場及び/又は電極に溶接、接着、固定、ホットプレスすることができる金属メッシュの少なくとも1つの層を含む。代替的に、金属メッシュの少なくとも1つの層は、流れ場及び電極に接して単に物理的に配置されるか、又はプレスされ得る。各支持下部構造は、伝導性流れ場と電極とを適切に接触させて、流れ場と電極との間に最小抵抗を有する電気経路を提供するように構成される。
【0115】
支持構造の実施態様は、2つの支持サブ構造を含むものとして上で説明されているが、支持構造は、CO2電解槽内のMEAの一方の側のみ(例えば、カソード側又はアノード側)に配置される単一の支持サブ構造を含むことができることに留意されたい。
【0116】
CO2、CO、及び他の化学原料の電気化学的変換のための電解槽スタック反応器
市販のCO2電解反応器は、典型的には、小面積(<5cm2)及び単一セル設計に制限されている。そのような反応器は、実験室規模で触媒及び反応条件を試験するのに有用であり得るが、工業的規模の変換率を実現しようとする場合、セルサイズ及びセル数の両方を増加させる必要がある。セルが組み合わされると、単一セル内の任意の欠陥は、全体の性能に影響を及ぼすであろう。既知のCO2及び水電解槽は、セルが電気的に直列に接続される双極性スタック配置を使用することができる。単一の電気化学セルに欠陥がある場合、スタック全体が、正しく機能しなくなる。例えば、1つのセルが非常に大きい抵抗を有する場合、それはスタックに供給される電圧の大部分を占め、他のセルにははるかに少ない電圧しか残らない。この大きい抵抗は、組み立て中又はある時間の稼働後に発生する可能性がある。純粋な双極性配設では、欠陥セルを隔離するには、スタックを分解する必要がある。
【0117】
本明細書では、不良電気化学セルを診断し、かかるセルを電子的及び/又は流体力学的に隔離して、スタック全体において効率的な性能を達成するように設計及び稼働される単極性CO2電解槽スタック反応器が提供される。
【0118】
図30を参照すると、電解槽スタック反応器4は、2つのエンドプレート6と、複数の繰り返しセルユニット2と、を含み、エンドプレート6は、ねじ山付きアセンブリでともに固定されている。本明細書において説明される電解還元反応器は、複数の繰り返しセルユニット2を含む電解槽スタック反応器4を形成するように積層される繰り返しセルユニット2として使用することができ、それによって、モジュール式かつ拡張可能な方法で電気化学的CO
2還元反応を実施するように設計されている。例えば、電解槽スタック反応器は、積層された2~100の電気化学繰り返しセルユニットを含むことができる。各繰り返しユニットのセル面積(活性表面)は、5cm
2~2m
2、任意選択的に、100cm
2~10000cm
2で調整することができる。
【0119】
更に、
図30を参照すると、各繰り返しセルユニット2は、2つの流れ場アセンブリ(例えば、金属又はプラスチックベースのいずれかのアノードの流れ場アセンブリ8及びカソードの流れ場アセンブリ10)と、(例えば、
図1に詳述されるような)膜電極接合体30と、任意選択的に、(例えば、
図30では明確ではないが、
図1に詳述されるように)膜電極接合体の側面上のカソードのサブ構造40a及びアノードのサブ構造40bを含む、本明細書において説明されるような支持構造40と、を備えることができる。流れ場アセンブリ(8、10)は、各繰り返しセルユニット2の膜電極接合体において、気相及び液相反応物をそれぞれカソード及びアノードに分配する。
【0120】
このため、繰り返しセルユニットは、並列に接続され、そのため、大電流が電解槽スタック反応器の端部に印加され、各繰り返しセルユニットは、電流の一部分及び同様の電圧を受容する。各繰り返しセルユニットに向かう電流は、測定することができ、繰り返しセルユニットが損傷した場合、繰り返しセルユニットへの電気的接続が切断される。繰り返しセルユニットへの電気的接続を切断することは、活性面積の量を低減させるが、積層された繰り返しセルユニットの残りが稼働し続けることを可能にする。いくつかの実施態様では、各繰り返しセルユニットへのカソード流体流及びアノード流体流は、マニホールドアセンブリを介して個々に調節され得る。その結果、繰り返しセルユニットにおいて膜破断が生じた場合、その欠陥繰り返しセルユニットへのカソード及び/又はアノード流体流を、停止することができ、繰り返しセルユニットを、電気的に切断することができる。
【0121】
より具体的には、スタック内の繰り返しセルユニットが短絡する場合、測定されるセル電圧は、この繰り返しセルユニットに対して、通常稼働時よりも低くなって、同じ電流を達成することになる。例えば、少なくとも約80Aの電流を達成するために、セル電圧は、通常稼働中に少なくとも約3.0Vとすることができ、約2V未満、典型的には、約1V未満のセル電圧を測定すると、短絡が検出され得る。例えば、各繰り返しセルユニットに流れる電流は、手持ち式クランプメータを使用してタブで測定することができる。
【0122】
このため、電解槽スタック反応器は、反応物流体(すなわち、CO2、CO又はそれらの混合物、及び電解質)を各膜電極接合体のアノード及びカソードに分配するために、各繰り返しセルユニットの流れ場と流体連通するマニホールドアセンブリを更に含む。例えば、マニホールドアセンブリは、複数のカソード及びアノードにそれぞれ反応物流体を供給するための2つの別個の入口マニホールド、すなわち、アノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールドを含むことができる。マニホールドアセンブリは、複数のカソード及びアノードから生成物流体及び使用済み電解質を回収するための2つの別個の出口マニホールド、すなわち、アノード出口マニホールド及びカソード出口マニホールドを更に含むことができる。各マニホールドは、繰り返しセルユニットの内部又は外部にあり得る。加えて、アノードマニホールドは、カソードマニホールドと異なり得る。例えば、カソード入口及び出口は、内部でマニホールド化することができ、一方アノード入口及び出口は、外部でマニホールド化することができる。
【0123】
図25、
図27及び
図28に例解される実施態様では、マニホールドは、内部にあり、これは、流体が各繰り返しセルユニットの内部にある分配チャネルのみを通って流れることを意味する。
図24を参照すると、内部入口マニホールド及び内部出口マニホールドのうちの各1つは、エンドプレート6の各々における孔14によって画定された入口端部ポート又は出口端部ポートを備え、各孔14は、対応するマニホールドのチャネルと流体連通している。例えば、
図29に例示されるように、反応物流体は、2つのエンドプレート6の各々において画定された入口端部ポート14aを介してカソード入口マニホールドに供給することができ、カソード出口マニホールドは、2つのエンドプレートの各々において画定された出口端部ポート14bを介して生成物流体を放出することができる。
【0124】
内部マニホールドの分配チャネルは、積層された繰り返しセルユニットのうちの各1つのカソードの流れ場及びアノードの流れ場内に提供された追加のポートを介して更に画定される。
図25を参照すると、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリ8は、ハウジング80と、ハウジング80内に収容されるように構成されたアノードの流れ場(及び集電体)インサート81と、を含むことができる。
図25及び
図28に例解される実施態様では、アノード入口マニホールドは、繰り返しセルユニットの各アノードの流れ場アセンブリ8のハウジング80内に画定された一連の入口ポート16aを備え、アノード出口マニホールドは、繰り返しセルユニットの各アノードの流れ場アセンブリ8のハウジング80内に画定された一連の出口ポート16bを備える。アノード入口マニホールド及びアノード出口マニホールドは、アノードの流れ場インサート81の流れチャネルと流体連通している二次ポート20を更に含む。
図28でより良く分かるように、二次ポート20は、アノード入口マニホールドの入口ポート16aからアノードの流れ場インサート81の流れチャネルに電解質を伝導させる入口二次ポート20aと、アノードの流れ場インサート81の流れチャネルから出口ポート16bを介してアノード出口マニホールドに使用済み電解質を伝導させる出口二次ポート20bと、を備える。カソード入口マニホールド及びカソード出口マニホールドについても同じ原理に従う。
図27を参照すると、カソード入口マニホールドは、繰り返しセルユニット2の各カソードの流れ場アセンブリ10のハウジング100内に画定された一連の入口ポート18aを備え、カソード出口マニホールドは、繰り返しセルユニット2の各カソードの流れ場アセンブリ10のハウジング100内に画定された一連の出口ポート18bを備える。カソード入口マニホールド及びカソード出口マニホールドは、カソードの流れ場インサート101の流路と流体連通する二次ポート22を更に含む。更に
図27を参照すると、二次ポート22は、カソード入口マニホールドの入口ポート18aからカソードの流れ場インサート101の流れチャネルに反応物流体を伝導させる入口二次ポート22aと、カソードの流れ場インサート101の流れチャネルから出口ポート18bを介してカソードの出口マニホールドに生成物流体を伝導させる出口二次ポート22bと、を備える。
【0125】
図26において例解された実施態様では、マニホールドは、外部にあり、これは、流体が、各繰り返しセルユニットの外部にあり得、別個のチューブ又はヘッダによって画定することができる分配チャネルのみを通って流れることを意味する。
図26は、アノード入口マニホールド及びアノード出口マニホールドの外部分配チャネル(図示せず)と流体連通している入口ポート16a及び出口ポート16bを例解する。入口ポート16a及び出口ポート16bはそれぞれ、二次入口ポート20a及び二次出口ポート20bに流体接続して、アノードの流れ場インサート81の流れチャネルに流体を供給し、流れチャネルから流体を排出する。
【0126】
電解槽反応器スタックのマニホールドアセンブリは、アノードの流れ場及びカソードの流れ場への反応物の供給及びアノードの流れ場及びカソードの流れ場からの生成物の回収を並行して確実にする。マニホールドアセンブリの分配チャネル(外部又は内部)は、カソード流体が繰り返しセルユニットのアノードプレートを通って流れ、アノード流体が繰り返しセルユニットのカソードプレートを通って流れるように構成されることを更に理解されたい。マニホールドアセンブリは、各々の個別の繰り返しセルユニットに調整することができる。図に例解されるようなアノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールドを介した反応物の流れの方向は、一例として提供され、反応物のかかる方向は、アノード入口マニホールド及びカソード入口マニホールドを介して互いに並行流又は対向流に変更することができる。
【0127】
マニホールドの配向は、全体的な反応器性能に影響を及ぼし得ることに留意されたい。反応物供給物は、カソード入口マニホールドを介して各繰り返しセルユニットの上部に入り、カソード出口マニホールドを介して各繰り返しセルユニットの底部付近から出ることができ、そのため重力を使用して任意の液体生成物及び凝縮物を容易に除去することができる。電解質供給物は、アノード入口マニホールドを介して各繰り返しセルユニットの底部に入り、アノード出口マニホールドを介して各繰り返しセルユニットの上部付近から出ることができ、そのため流れ及び分配チャネルを遮断することなく、任意の気泡が上に流れて出る。入口マニホールドは、1つの場所においてスタックの前部又は後部から(一方向)、又はスタックの前部及び後部の両方から(
図29に見られるような、双方向)、セルに供給することができる。電解槽反応器スタックへのCO
2の双方向供給は、特に電解槽反応器スタックが繰り返しセルユニット数において成長する際、繰り返しセルユニット間のCO
2分布の均一性を改善することができることが観察された。
【0128】
電気的接続に関して、
図30のスタック反応器70を参照すると、電流は、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリ8の集電体及びカソードの集電体28に接続された共通バスバー24及び26を通して並列に各繰り返しセルユニット2に印加される。この並列接続は、低電圧、高電流稼働を可能にする。稼働は、短絡を検出するためにスタック電圧を監視することと、特に不良繰り返しセルユニットを検出するために各繰り返しセルユニットタブにおける電流を更に監視することと、を含むことができる。
図24を参照すると、並列配置は、セルヒューズ52の切断を可能にして、故障した繰り返しセルユニット2をスタックの残りから隔離する。例えば、ヒューズ52は、アノードのバスバー24と直列に、アノード側に提供することができる。
【0129】
電解槽スタック反応器のために選択されるマニホールドのタイプに応じて、アノードの流れ場アセンブリの材料は、分流を回避するように調整することができる。内部マニホールドが使用される場合、流体は、かかる分流を回避するためにプラスチック部品を通って進行しなければならない。例えば、アノードの流れ場アセンブリは、内部でマニホールド化された電解質、このためセルに曝露されない電解質と組み合わせて使用される場合、プラスチックハウジングを含むことができる。
図25を参照すると、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリ8のアノードハウジング80は、内部アノード入口マニホールド及び内部アノード出口マニホールドを有するプラスチックから作製することができ、一方集電体/流れ場インサート81は、金属から作製することができる。別の例では、
図26を参照すると、アノードの流れ場(及び集電体)アセンブリ8は、完全に金属で設計され、外部でマニホールド化されている電解質と組み合わせて使用することができる。これらの2つの設計は、分流の問題を克服し、セルに印加される電流は、電気化学的反応に関与するのではなく伝導性電解質を通って進行し、潜在的に反応器を短絡させる。
【0130】
電解槽のためのカソードリンス方法及びシステム
CO2電解還元中にイオン交換膜を通って移動するカチオンは、CO2電気化学反応器のカソード側で重炭酸又は炭酸アニオンと固体塩を形成することができる。カソードのガス拡散層、流れ場、又はメッシュ支持下部構造が固体塩で満たされると、CO2は触媒に到達することができず、CO2の還元反応は停止し、新しいCO2還元生成物は生成されない。大きい反応器の分解、塩の除去、及び再組み立てには、1~2時間かかる可能性があり、1日当たり数回必要とされる可能性があるため、反応器は、連続的に運転することができない。CO2還元触媒として使用される典型的な金属は、電解槽反応器をオフにして、塩形成を浄化するときに、電解槽反応器の放電から見られる瞬間的な正電位によって不可逆的に変化する可能性がある。本発明の目的は、反応器がその最大能力で稼働し続けることができるように、これらの閉塞を取り除くことである。
【0131】
本明細書において説明されるような電解槽反応器のガス拡散電極(カソード)、支持構造(メッシュ)、及び/又は流れ場における任意の塩形成又は他の障害物をリンスするためのシステムが提供される。少なくともリンス稼働は、手動又は自動で実施され得る。
【0132】
図31を参照すると、電解還元システムは、電解還元が特定の電解還元期間にわたって稼働すると、リンス流体64、例えば、水を、反応器70のカソードの区画(例えば、カソードの流れ場アセンブリ(ハウジング+インサート)10を含む
図30のCO
2電解槽である)に周期的に提供するように構成された水分配アセンブリ62を備える。分配アセンブリ62は、リンス水リザーバ66及び配管68を含むことができ、配管は、反応器70のカソードの区画と流体連通して、リザーバ66から電解槽反応器70のカソードの区画にリンス水64を提供する。分配アセンブリ62は、配管内の流れを開放し、カソードの区画への配管68内のリンス水64の流量を制御するために配管68上に取り付けられたポンプ72及び弁74を更に含む。
【0133】
例えば、システムは、自動弁及びポンプを使用して定期的に、又は手動弁及びポンプを用いて手動で、水でリンスするように自動化することができる。本システムは、障害物があるたびに電解槽反応器を分解及び再組み立てする必要を回避し、かかる障害物がカソードの区画内の利用可能なチャネルを完全に遮断する前に、障害物の生成を軽減するための予防保守として作用する。
【0134】
このため、リンス稼働と呼ばれるリンスシステムの稼働は、カソードの区画(カソード、メッシュ支持下部構造、及び/又は流れ場)内の任意の障害物をリンス流体で除去することによって、電解槽反応器の安定性を増加させることができ、電解槽反応器のイオン交換膜の水和を増加させる。例えば、電解槽反応器は、少なくとも100時間にわたって安定した性能で稼働することができる。
【0135】
図32を参照すると、リンス稼働は、リンス流体64及びCO、CO
2又はそれらの混合物76を電解槽反応器70のカソードの区画に同時供給することを含む。このため、リンスシステムは、電解還元反応がまだ存続している間にカソードの区画をリンスする。これは、必要とされる反応器の分解がなく、生産性向上時間の喪失を最小限に押さえることを意味する。リンス中、リンス流体は、ガス状反応物とともにカソード入口に押圧され、更に、電解還元生成物及び残りのCO
2とともに塩富化水として(ガス液体混合物78として)カソード出口から押出される。カソードを定期的にリンスすることにより、塩が、効果的に除去され得、数百時間にわたって安定した稼働を維持することができた。このため、システムは、塩富化水を貯蔵及び/又は再循環するための収集タンク又は廃棄物容器を更に含むことができる。
【0136】
いくつかの実施態様では、
図31を参照すると、リンス稼働は、特に、弁を開くことと、ポンプを更に作動させて、水をリザーバから電解槽反応器のカソード入口に移動させて、CO
2、CO又はそれらの混合物とともにカソードの流れ場全体を通して搬送させることと、を含むことができる。リンス期間と称される特定の期間の後、ポンプが停止され得、弁が閉鎖され得る。例えば、リンス期間は、20秒~30分、任意選択的に、1~3分の持続時間を有することができる。
【0137】
リンス期間中、リンス水とともに供給されるCO/CO
2流量は、低減させることができ、水流量に従って選択され得ることに留意すべきである。例えば、リンス水の体積流量対CO
2、CO又はそれらの混合物の体積流量(CO/CO
2流量)の比は、0.001から無限大(CO/CO
2流量)の間で選択することができ、更なる典型的な範囲は0.05~0.5である。
図33は、CO
2流量に対するリンス稼働をトリガするために弁を開放することの影響を例示し、電流及びCO
2供給は、リンス稼働が進行している間、維持される。いくつかの実施態様では、CO
2流は、(スタックを通る圧力降下の増加に起因して)リンス時に減少する可能性があり、セル電圧もまた、(水素発生活性の大幅な増加に起因して)同じ電流を維持しながら減少する可能性がある。リンス期間中に電解還元を維持することができるとしても、リンス水がCO/CO
2輸送を一時的に遮断している可能性があるので、電解槽反応器の稼働は、増加した量のH2を生成することができることに更に留意すべきである。
【0138】
他の実施態様では、CO/CO2ガス供給ラインは、リンス水のみがカソードの区画に供給されるように、リンス期間中に電解槽反応器から切り離すことができる。このため、ポンプは、リンスのためにカソード入口又は出口に直接接続することができる。リンス稼働が完了すると、CO/CO2供給ラインは、再び接続されて、通常稼働を再開することができる。
【0139】
システムは、弁(例えば、制御されたソレノイド弁)及び分配アセンブリのポンプをトリガするためのコントローラを更に含むことができ、そのためリンス水は、カソード入口を通して自動的にポンプ圧送され、カソード出口から出て、次いで、収集タンク又は廃棄物容器に方向付けることができる。
【0140】
いくつかの実施態様では、リンス流体の注入は、毎分20~200、任意選択的に、毎分50~80の流量対カソードの区画の体積の比で実施することができる。ここで対象となる体積は、カソードの区画(すなわち、流れ場)のチャネルの体積である。
【0141】
電解還元システムは、リンス稼働を促進させるように適合することができる。例えば、カソードの区画は、多孔質支持プレートを含むことができ、カソードのガス拡散層は、細孔を有することができ、細孔サイズは、細孔へのリンス流体又は塩富化流体の蓄積を回避するように選択される。カソードの区画は、本明細書において説明される膜電極接合体、本明細書において説明される電解槽反応器、又は本明細書において説明される電解槽反応器スタックに関連して説明されるようなものであり得る。
【0142】
いくつかの実施態様では、方法は、リンス稼働の有効性を測定するために、塩富化水のpH及び伝導率を監視することを含むことができる。
【0143】
図34を参照すると、リンス操作は、塩がリンスされると、CO
2質量輸送における増加に起因して、水素生成の減少及びCO生成の増加に首尾よく寄与することが示された。
【0144】
図35と
図36とを比較すると、いかなるリンス稼働もない場合、水素生成は、急速に増加させることができ、一方で、電解槽反応器のカソードの区画の定期的なリンスを実施する場合、電解槽反応器の安定性が改善されることが示された。リンス頻度の影響に関して、
図37と
図38とを比較すると、リンス稼働が十分な頻度でなかった場合、水素生成が増加し、電解還元生成物が減少することが示された。
【0145】
リンスシステムは、本明細書において説明されるような電解槽反応器及び本明細書において説明されるような電解槽反応器スタックを含む、任意の電解槽反応器に適合され得ることに留意されたい。
【0146】
同じ参照番号は、同様の要素を指すことに留意されたい。更に、簡潔さ及び明瞭さのために、すなわち、図面にいくつかの参照番号を過度に置かないように、全ての図面が、全ての構成要素及び特徴への参照番号を含むわけではなく、いくつかの構成要素及び特徴への参照は、1つの図面のみにおいて見出され得、他の図面に例解される本開示の構成要素及び特徴は、そこから容易に推測され得る。図に示される実施形態、幾何学的構成、言及される材料、及び/又は寸法は、任意選択的であり、例示目的のみのために与えられる。したがって、特許請求の範囲及び明細書において提示される説明、例、方法及び材料は、制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ例解としてのみ解釈されるべきである。
【0147】
明細書において、構成要素、特徴、構造、特性又は工程が、含まれ「得る(can)」又は含まれ「得た(could)」ことを述べる場合、その特定の構成要素、特徴、構造、特性又は工程は、含まれる必要がないことを理解されたい。
【0148】
電解槽スタック反応器、膜電極接合体、及びガス拡散電極の実施態様、並びにそれらの対応する部品は、本明細書で説明及び例解される際、ある幾何学的構成からなるが、これらの構成要素及び幾何学形状の全てが必須であるわけではなく、そのため、それらの制限的意味で解釈されるべきではない。当業者には明らかであるように、他の好適な構成要素及びそれらの間の協働、並びに他の好適な幾何学的構成が、当業者によって本明細書から容易に推測され得るように、使用され得ることが理解されるべきである。更に、「上」、「下」、「上部」、「底部、「左」、「右」などの位置に関する説明は、別段の指示がない限り、図の文脈において解釈されるべきであり、制限するものとみなされるべきではないことが理解されよう。
【0149】
本説明において、「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、値がどのように測定されるか、又は決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。10%の精度の尺度が許容可能であり、「約」という用語を包含することが一般的に認められている。
【0150】
本説明において、実施態様は、一例である。「いくつかの実施態様」の様々な出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。本技術及び構成要素の様々な特徴が、単一の実施態様の文脈において説明され得るが、これらの特徴はまた、別々に、又は任意の好適な組み合わせで提供され得る。逆に、本技術及び構成要素は、明確にするために別個の実施態様の文脈で本明細書において説明され得るが、それらはまた単一の実施態様で実装されてもよい。
【国際調査報告】