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特表2024-539393基質に結合可能なタンパク質配列の、フィブリンの集合を阻害する製品の製造における応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】基質に結合可能なタンパク質配列の、フィブリンの集合を阻害する製品の製造における応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/75 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07K14/75 ZNA
A61K38/36
A61P7/02
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526724
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 CN2021128944
(87)【国際公開番号】W WO2023077413
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111290823.9
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(71)【出願人】
【識別番号】520304664
【氏名又は名称】中国科学院分子細胞科学卓越創新中心
【氏名又は名称原語表記】CENTER FOR EXCELLENCE IN MOLECULAR CELL SCIENCE, CHINESE ACADEMY OF SCIENCE
【住所又は居所原語表記】Building 35, 320 Yue Yang Road, Xuhui District Shanghai 200031 China
(71)【出願人】
【識別番号】516071929
【氏名又は名称】華中農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】董咸池
(72)【発明者】
【氏名】劉▲ぶん▼
(72)【発明者】
【氏名】丁建平
(72)【発明者】
【氏名】石雨
(72)【発明者】
【氏名】徐曙▲とう▼
(72)【発明者】
【氏名】徐建波
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE07
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZA541
4C084ZA542
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA65
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、基質GPRPペプチドに結合可能なアミノ酸配列を含むタンパク質、このアミノ酸配列を含むフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びそのフィブリノーゲンタンパク質ドメイン(FD)を提供し、且つ単独のFDドメインタンパク質も、FGL1と同じまたは類似の機能を有する。FGL1とFDは、従来の薬物とは異なる作用機序を有し、フィブリン基質結合ポケットを競合することにより、血栓形成中のフィブリンの集合を阻害することができ、突然変異により基質親和性を強くすることができ、血栓治療用薬物の使用効果を効果的に高めることができる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質であって、基質GPRPペプチドに結合可能なアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列の構造は、トリプトファン-AAn1-チロシン-AAn2-システイン-AAn3-グルタミン酸-アスパラギン酸-AAn4-システイン-ヒスチジン-AAn5-アスパラギン酸-AAn6-チロシン-AAn7-トリプトファンであり、ここで、AAはアミノ酸であり、n1~n7はアミノ酸数であり、n1=16~18個、n2=2~4個、n3=1~3個、n4=7~9個、n5=16~18個、n6=4~6個であり、n7=3~5個であり、好ましくは、前記アミノ酸数はn1=17個、n2=3個、n3=2個、n4=8個、n5=17個、n6=5個、n7=4個であることを特徴とするタンパク質。
【請求項2】
フィブリノーゲン関連タンパク質1であって、
(a1)SEQ ID No.1またはSEQ ID No.1のようなアミノ酸配列の48~290位で示されるタンパク質、
(a2)SEQ ID No.1またはSEQ ID No.1の48~290位で示されるアミノ酸配列を、1個又は数個のアミノ酸残基の置換及び/又は欠失及び/又は付加による、同じ機能を有するタンパク質、
(a3)(a1)~(a2)のいずれか一つで限定されるアミノ酸配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ同じ機能を有するタンパク質、
(a4)(a1)~(a3)のいずれか一つで限定されるタンパク質のN末端及び/またはC末端にタグを付着させた後に得られる融合タンパク質のいずれか1項に示すタンパク質であり、かつ請求項1に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とするフィブリノーゲン関連タンパク質1。
【請求項3】
請求項2に記載のフィブリノーゲン関連タンパク質1をコードする核酸分子であって、前記核酸分子は遺伝子であり、前記遺伝子は、
(b1)SEQ ID No.2またはSEQ ID No.2の142~870位で示されるDNA分子、
(b2)ストリンジェントな条件下で(b1)で限定されるDNA分子とハイブリダイズし、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子、
(b3)(b1)~(b2)で限定されるDNA配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子、
(b4)(a3)に記載のタンパク質をコードするDNA分子のいずれか1項に記載のDNA分子であることを特徴とする核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸分子を含む発現カセット、組換え体、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株。
【請求項5】
請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載のフィブリノーゲン関連タンパク質1又は請求項3に記載の核酸分子、又は請求項4に記載の組換え体、組換え細菌又はトランスジェニック細胞株の応用であって、
(c1)血栓の発生を阻害するための製品の製造
(c2)血栓程度を阻害するための製品の製造
(c3)血漿中のフィブリン活性を阻害するための製品の製造
(c4)血漿中のフィブリノーゲン集合を阻害するための製品の製造
(c5)線溶能力を高めるための製品の製造
(c6)血漿の活性化部分のトロンビン時間及び/またはプロトロンビン時間及び/またはトロンビン時間を延長するための製品の製造の少なくとも一つであることを特徴とする応用。
【請求項6】
前記タンパク質の製造方法は、前記タンパク質のコード遺伝子を真核発現ベクターにクローニングし、真核細胞を無血清培地で培養して前記タンパク質を発現させ、Ni-NTA親和力カラムを用いて精製し、続いてSuperdex 200 10/300 GLカラムを用いてゲル濾過により更にタンパク質を精製し、高純度精製タンパク質を得ることであることを特徴とする請求項5に記載の応用。
【請求項7】
前記製品は、ワクチン製品を含む薬物製品であり、好ましくは、前記薬物製品の種類は、mRNA薬物、DNA薬物、タンパク質薬物またはアデノウイルス薬物を含む、ことを特徴とする請求項5または6に記載の応用。
【請求項8】
前記製品には、血液脳関門を通過するための構造がさらに修飾されており、好ましくは、前記修飾された、血液脳関門を通過する構造は、脳標的化リガンドであり、好ましくは、前記脳標的化リガンドは、RVGペプチド、ステアリン酸-トランスフェリン、キャリアプロテインEを含むが、それらに限定されない、ことを特徴とする請求項5または6に記載の応用。
【請求項9】
前記薬物には、併用可能な治療用薬物がさらに含まれ、好ましくは、前記併用可能な治療用薬物は、それぞれウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アテプラーゼ、レチプラーゼまたは組織性フィブリノーゲン活性化因子である、ことを特徴とする請求項8に記載の応用。
【請求項10】
生物材料であって、前記生物材料は、請求項1に記載のタンパク質の核酸分子又は請求項2に記載のフィブリノーゲン関連タンパク質1を発現可能な核酸分子又は前記核酸分子を含む発現カセット、組換え体、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株である、ことを特徴とする生物材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質に結合可能なタンパク質配列、このタンパク質配列を含むフィブリノーゲン関連タンパク質1及びその活性ドメインのフィブリンの集合を阻害する製品の製造における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓は、心臓血管系の血管内面の剥離または修復箇所の表面において血流で形成される小さな塊である。可変な流動依存型(variable flow dependent patterns)では、血栓は不溶性のフィブリン、沈着した血小板、蓄積した白血球と陥没した赤血球で構成されている。血栓形成は1セットの遺伝と環境因子の相互作用、相互影響の多因子変化過程である。臨床でよく見られる血栓患者は、最も主な特徴が家族遺伝性、反復発作性、症状の重症性、血栓形成部位の異常性及び発症時期の若者化である。抗血栓療法は血栓溶解薬、抗血小板薬、抗凝固剤を用いて血栓の形成を阻害したり、形成された血栓を分解したりすることである。
【0003】
抗血栓薬は抗凝血薬、抗血小板凝集薬と血栓溶解薬の三つの種類に分けられる。
A、抗凝血薬(anticoagulants)は、凝血因子を妨害し、血液凝固を阻止する薬物であり、主に血栓塞栓性疾患の予防と治療に用いられる。
B、抗血小板凝集薬は、3世代に分けられ、アスピリンが第一世代、チクロピジンが第二世代、血小板糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニストが第三世代である。ここで、血小板糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニストの登場は抗血小板治療における重要なマイルストーンである。
C、凝血中に形成されたフィブリンは、プラスミン作用によってアルギニン-リジン結合から可溶性産物に分解され、血栓を溶解させることができる。線溶薬(fibrinolytic drugs)は、プラスミンを活性化して線溶を促進し、血栓溶解薬(thrombolytic drugs)とも呼ばれ、急性血栓塞栓性疾患の治療に用いられる。第一世代の血栓溶解薬であるストレプトキナーゼ(SK)とウロキナーゼ(UK)は、現在も国内外で最も広く使用されている品種であり、プロウロキナーゼ(Pro-UK)などの新世代の血栓溶解薬の登場により、このような薬は臨床で普及しつつある。
【0004】
フィブリノーゲン(Fibrinogen、繊維素原とも呼ばれる)は、肝細胞によって合成され、分泌される糖タンパク質(α2β2γ2)であり、血液凝固と止血過程に参与する重要な蛋白フィブリンである。血凝固過程において、トロンビンがフィブリノーゲン内のフィブリノペプチドA及びBを切除して生成する単量体タンパク質である。高フィブリノーゲンは、各種の血栓性疾患の重要な危険因子であり、臨床では疾患状態のマーカーと認識されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基質GPRPペプチドセグメントに結合可能なアミノ酸配列を含むタンパク質、このアミノ酸配列を含むフィブリノーゲン関連タンパク質1(fibrinogen like protein 1、FGL1と略称する)及びそのフィブリノーゲンドメイン(fibrinogen domain of FGL1、FDと略称する)を提供し、それは従来の薬物と異なる作用機序を有し、フィブリンγサブユニットを競合することによってフィブリノペプチドAと結合することにより、血栓形成中のフィブリン集合を阻害することができる。
【0006】
本発明の上記目的は、以下の技術的解決手段により達成されることができる。
【0007】
本発明の第1の発明は、タンパク質を提供するものであり、前記タンパク質は、基質GPRPペプチドに結合可能なアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列の構造は、トリプトファン-AAn1-チロシン-AAn2-システイン-AAn3-グルタミン酸-アスパラギン酸-AAn4-システイン-ヒスチジン-AAn5-アスパラギン酸-AAn6-チロシン-AAn7-トリプトファンであり、ここで、AAはアミノ酸であり、n1-n7はアミノ酸数であり、n1=16~18個、n2=2~4個、n3=1~3個、n4=7~9個、n5=16~18個、n6=4~6個であり、n7=3~5個であり。
【0008】
上記タンパク質は、前記アミノ酸数n1=17個、n2=3個、n3=2個、n4=8個、n5=17個、n6=5個、n7=4個である。
【0009】
すなわち、アミノ酸配列の構造は、トリプトファン-17個のアミノ酸-チロシン-3個のアミノ酸-システイン-2個のアミノ酸-グルタミン酸-アスパラギン酸-8個のアミノ酸-システイン-ヒスチジン-17個のアミノ酸-アスパラギン酸-5個のアミノ酸-チロシン-4個のアミノ酸-トリプトファンである。
【0010】
トリプトファンとチロシンの間に任意の17個のアミノ酸が連結され、チロシンとシステインの間に任意の3個のアミノ酸が連結され、システインとグルタミン酸の間に任意の2個のアミノ酸が連結され、グルタミン酸とアスパラギン酸が直接連結され、アスパラギン酸と他のシステインとの間に任意の8個のアミノ酸が連結され、他のシステインとヒスチジンが直接連結され、ヒスチジンと別のアスパラギン酸との間に任意の17個のアミノ酸が連結され、他のアスパラギン酸と他のチロシンとの間に任意の5個のアミノ酸が連結され、他のチロシンと他のトリプトファンとの間には、任意の4個のアミノ酸が連結されることが示されている。
【0011】
このタンパク質に含まれる基質GPRPペプチドに結合可能なアミノ酸配列は、このアミノ酸配列の肝心な位置の存在及び構造が同じ、または80%同じであることを保証する場合、アミノ酸配列中のAAは、任意の機能性アミノ酸であってもよく、異なる機能のAAを採用し、前記タンパク質に異なる複合効果をもたらすことができる。同時に、このタンパク質のアミノ酸配列におけるいくつかの重要な部位を突然変異させると、血栓形成機能の阻害効果の向上を実現することができ、例えば、204位及び/又は269位のトリプトファンがアラニンに突然変異した場合、突然変異体による凝集したフィブリンの開裂は、非突然変異形態と比較して、明らかに強化された(図27参照)。
【0012】
具体的には、本発明によるフィブリノーゲン関連タンパク質1において、アミノ酸配列は204位トリプトファン、222位チロシン、226位システイン、229位グルタミン酸、230位アスパラギン酸、239位システイン、240位ヒスチジン、258位アスパラギン酸、264位チロシン、269位トリプトファンである。
上記のアミノ酸配列に列挙したアミノ酸部位は、基質GPRP(Gly-Pro-Arg-Pro)ペプチドセグメントに結合可能な重要なアミノ酸部位であり、アミノ酸配列は、これらの重要なアミノ酸部位を介して基質GPRPと疎水結合、水素結合または塩結合特異性で競合的に結合することができ、図26に示すように、フィブリノペプチドAに結合可能な結合部位を競合的に占有することにより、フィブリンの集合を阻害することで、フィブリンの活性を阻害し、血栓形成の阻害または血栓形成の進行を遅らせる効果を実現した。
【0013】
本発明の第2の発明は、フィブリノーゲン関連タンパク質1を提供するものであり、下記のいずれか一つで表されるタンパク質であり、かつ前記アミノ酸配列を含む:
(a1)SEQ ID No.1(すなわち、SEQ ID No.1)またはSEQ ID No.1のようなアミノ酸配列48~290位(すなわち、SEQ ID No.3)で示されるタンパク質。
(a2)SEQ ID No.1またはSEQ ID No.1の48~290位で示されるアミノ酸配列を、1個又は数個のアミノ酸残基の置換及び/又は欠失及び/又は付加による同じ機能を有するタンパク質、
(a3)(a1)~(a2)のいずれか一つで限定されるアミノ酸配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ同じ機能を有するタンパク質、
(a4)(a1)~(a3)のいずれか一つで限定されるタンパク質のN末端及び/またはC末端にタグを付着させた後に得られる融合タンパク質。
【0014】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)は、フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を含み、単独のFDドメインタンパク質は、FGL1と同じまたは類似の機能を有する。ここで、FGL1のアミノ酸配列は、配列表のSEQ ID No.1に示すとおりであり、単独のFDドメインタンパク質のアミノ酸配列は、配列表のSEQ ID No.1の48~290位で示すとおりである。
【0015】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のアミノ酸配列は以下のとおりであり、SEQ ID No.1:
LEDCAQEQMRLRAQVRLLETRVKQQQVKIKQLLQENEVQFLDKGDENTVIDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGWWYSLKSVVMKIRPNDFIPNVI。
【0016】
フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)のアミノ酸配列は以下のとおりであり、SEQ ID No.3:
TVIDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGWWYSLKSVVMKIRPNDFIPNVI。
【0017】
本発明の第3の発明は、上記フィブリノーゲン関連タンパク質1をコードする核酸分子を提供するものである。
【0018】
さらに、前記核酸分子は遺伝子であり、前記遺伝子は、以下のいずれか1項に記載のDNA分子である:
(b1)SEQ ID No.2(すなわち、SEQ ID No.2)またはSEQ ID No.2の142~870位(すなわち、SEQ ID No.4)で示されるDNA分子
(b2)ストリンジェントな条件下で(b1)で限定されるDNA分子とハイブリダイズし、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子、
(b3)(b1)~(b2)で限定されるDNA配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子、
(b4)(a3)に記載のタンパク質をコードするDNA分子。
【0019】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の核酸配列は以下のとおりであり、SEQ ID No.2:
ctcgaggactgtgcccaggagcagatgcggctcagagcccaggtgcgcctgcttgagacccgggtcaaacagcaacaggtcaagatcaagcagcttttgcaggagaatgaagtccagttccttgataaaggagatgagaatactgtcattgatcttggaagcaagaggcagtatgcagattgttcagagattttcaatgatgggtataagctcagtggattttacaaaatcaaacctctccagagcccagcagaattttctgtttattgtgacatgtccgatggaggaggatggactgtaattcagagacgatctgatggcagtgaaaactttaacagaggatggaaagactatgaaaatggctttggaaattttgtccaaaaacatggtgaatattggctgggcaataaaaatcttcacttcttgaccactcaagaagactacactttaaaaatcgaccttgcagattttgaaaaaaatagccgttatgcacaatataagaatttcaaagttggagatgaaaagaatttctacgagttgaatattggggaatattctggaacagctggagattcccttgcggggaattttcatcctgaggtgcagtggtgggctagtcaccaaagaatgaaattcagcacgtgggacagagatcatgacaactatgaagggaactgcgcagaagaagatcagtctggctggtggtttaacaggtgtcactctgcaaacctgaatggtgtatactacagcggcccctacacggctaaaacagacaatgggattgtctggtacacctggcatgggtggtggtattctctgaaatctgtggttatgaaaattaggccaaatgattttattccaaatgtaatt。
【0020】
フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の核酸配列は、以下のとおりであり、SEQ ID No.4:
actgtgagagaggcagtattggaaaggtatgcagattgttccaaaaaacatgtggaaaaatcttggaccaaaaatcttgccagaagacttctttaaaaatcgaccttgaaaaatcgaccttgaaaaaattgccagggaaaattttgaaagcttgcaaagcttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagcttttggaaagctttggaaagcttttggaaagcttttggaaagctttggaaagcttttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagcttt
【0021】
本発明の第4の発明は、上記核酸分子の発現カセット、組換え菌、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株を提供するものである。
【0022】
本発明の第5の発明は、上記フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)又は上記核酸分子又は前記組換え菌、組換え菌又はトランスジェニック細胞株の応用を提供するものであり、前記応用は、少なくとも以下のいずれか一つである:
(c1)血栓の発生を阻害するための製品の製造、
(c2)血栓程度を阻害するための製品の製造、
(c3)血漿中のフィブリン活性を阻害するための製品の製造、
(c4)血漿中のフィブリノーゲン集合を阻害するための製品の製造、
(c5)線溶能力を高めるための製品の製造、
(c6)血漿の活性化部分のトロンビン時間及び/またはプロトロンビン時間及び/またはトロンビン時間を延長するための製品の製造。
【0023】
本発明の研究により、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)が血栓形成中のフィブリンの集合を阻害し、血栓関連疾患を治療する薬物の製造に用いることができることが示される。
【0024】
ここで、前記の、血栓関連疾患を治療する薬物は、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を活性成分とする薬物である。前記の、血栓関連症を治療する薬物は多種の原因による血栓症を治療するために用いられてもよく、血栓症の発生を予防するために用いられてもよく、同時に、フィブリンとの活性上昇、線溶能力の低下及び血漿の活性化部分トロンビン時間及び/またはプロトロンビン時間及び/またはトロンビン時間の短縮に関する多種の疾患の予防と治療に用いられてもよい。
【0025】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)は、フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を含み、その作用機序は、フィブリンγサブユニットと競合することによりフィブリノペプチドAと結合することで、血栓形成中のフィブリン集合を阻害することができることである。
【0026】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)に対して突然変異を行うことによって、フィブリノペプチドAとの親和力を高めることにより、薬効を向上させる目的を達成することができる。
【0027】
さらに、上記の応用において、前記タンパク質の製造方法は、以下のとおりである:前記タンパク質のコーディング遺伝子を真核発現ベクターにクローンし、無血清培養基で真核細胞を培養して前記タンパク質を発現させ、Ni-NTA親和力カラムを採用して精製し、続いてSuperdex 200 10/300 GLカラムでゲル濾過によってタンパク質をさらに精製し、高純度精製タンパク質を得る。
【0028】
さらに、上記応用において、前記製品は、ワクチン製品を含む薬物製品である。
【0029】
さらに、上記応用において、前記薬物製品のタイプは、DNA薬物、mRNA薬物、タンパク質薬物またはアデノウイルス薬物を含む。前記の、血栓系疾患の予防または治療のための薬物製品は、上記のタイプの製品を含むが、それらに限定されるものではなく、プラスミド被覆、微小球被覆、外分泌体携帯などの様々なキャリア形態で投与することができ、また、タンパク質と化合物の結合投与、タンパク質とペプチドの結合投与、タンパク質と小分子の結合投与などの様々な形態のキャリア形態で投与することができ、その最終的な目的は、本発明のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の生物活性を保証するために、異なる投与方式で活性成分を取り込んで、フィブリノーゲンの組み立てを阻害することである。
【0030】
さらに、上記の応用において、前記製品には、血液脳関門を通過するための構造がさらに修飾される。
【0031】
さらに、上記の応用において、前記修飾された、血液脳関門を通過する構造は、脳標的化リガンドである。
【0032】
さらに、上記の応用において、前記脳標的化リガンドは、RVGペプチド、ステアリン酸-トランスフェリン、キャリアプロテインEを含むが、それらに限定されない。
【0033】
上記記載に基づいて、本発明に記載の、血栓系疾患の予防または治療のための薬物製品は、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の生物活性を保証する前提で、さらにそれを多種の標的リガンドと結合することができ、比較的突出した標的リガンド修飾は、タンパク質またはドメインタンパク質を大脳標的化リガンドと結合して、血液脳関門(BBB)を突破することに有利であり、それによって脳血栓の生体薬剤供給治療を実現するが、本発明の作用は、これに限定されず、同様に他の構造または形式の標的リガンドと結合することにより、異なる病巣に対する標的治療を実現することができる。
【0034】
さらに、上記の応用において、前記薬物には、併用可能な治療用薬物がさらに含まれる。
【0035】
さらに、上記の応用において、前記併用可能な治療用薬は、それぞれウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ、レチプラーゼまたは組織性フィブリノーゲン活性化因子である。
【0036】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びその突然変異体は、従来の抗血栓薬物(ウロキナーゼと組織型フィブリノーゲン活性化因子など)と効果的に協力し、かつ従来の抗血栓薬物の使用量を低減し、その毒性副作用を緩和することができる。
【0037】
本発明の第6の発明は、前記フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を発現可能な核酸分子又はそれを含む発現カセット、組換え菌、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株である生物材料を提供する。
【0038】
現在従来の抗血栓薬は、作用機序によって3種類に分けられ、それぞれ以下のとおりである。
1)抗凝固薬:機序は、凝血過程を阻害することであり、副作用は組織出血を引き起こしやすいことである。
2)抗血小板薬物:機序は血小板凝集を阻害することであり、副作用は組織出血を引き起こすことである。
3)線溶性薬物:機序はフィブリン分解を誘導することにより、すでに形成された血栓を溶解させることであり、副作用は同様に出血合併症である。
【0039】
本発明の特徴及び利点は以下のとおりである:本発明は、基質GPRPペプチドセグメントに結合可能なアミノ酸配列を含むタンパク質、このアミノ酸配列を含むフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びその活性ドメイン(FD)、及びフィブリンの集合を阻害する製品の製造における上記タンパク質の応用を提供し、前記の、基質GPRPペプチドセグメントに結合可能なアミノ酸配列を含むタンパク質、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)、そのフィブリノーゲンドメイン(FD)及びその突然変異体は、従来の薬物と異なる作用メカニズムを有し、フィブリン基質結合ポケットを競合することによって、血栓形成中のフィブリンの集合を阻害することができ、突然変異によって、それにより強い基質親和性を持たせることができ、血栓治療用薬物の使用効果を効果的に高めることができる。FGL1とFDの作用機序は、フィブリンの集合過程を破壊するため、従来の血栓溶解薬に比べて血栓溶解効果に優れるが、血栓溶解過程はより緩やかであり、出血などの副作用はほとんどない。すなわち、本発明は、フィブリノーゲンではなくフィブリノーゲンに作用し、従来の血栓治療用薬物が使用中にフィブリノーゲンに作用するため、薬物副作用の大出血を引き起こしやすいという技術的難題を回避し、このような作用機序のため、本発明によるFGL1とFDを複数の従来の血栓治療用薬物(例えばアジュプシーゼなど)と併用すると、血栓系疾患を相乗的に治療することができると同時に、従来の抗血栓薬の普遍的出血副作用の発生確率を大幅に低下させることができ、血栓系疾患の治療に新たな道を開拓した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の記述において使用する必要のある図面を簡単に説明するが、以下の記述における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて他の図も得ることができることが明らかである。
図1】フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のNi-NTA親和性カラム精製後のSDS-PAGE図である。
図2】Superdex 200 10/300 GLカラムによるフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の精製を示す図であり、ここで、グラフの縦軸はA280タンパク質吸収値であり、横軸は体積数である。
図3】Superdex 200 10/300 GLカラムによる精製後のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のSDS-PAGE図であり、ここで、レーン1-12はそれぞれ、1-タンパク質標準品、2-収集管1、3-収集管2、4-収集管3、5-収集管4、6-収集管5、7-収集管6、8-収集管7、9-収集管8、10-収集管9、11-収集管10、12-タンパク質標準品を示す。
図4】フィブリノーゲンドメイン(FD)Ni-NTA親和性カラム精製後のSDS-PAGE図である。
図5】Superdex 200 10/300 GLカラムによるフィブリノーゲンドメイン(FD)の精製を示し、縦軸はA280タンパク質吸収値であり、横軸は体積数である。
図6】Superdex 200 10/300 GLカラムによる精製後のフィブリノーゲンドメイン(FD)のSDS-PAGE図であり、ここで、レーン19-29はそれぞれ、19-収集管19、20-収集管20、21-収集管21、22-収集管22、23-収集管23、24-収集管24、25-収集管25、26-収集管26、27-収集管27、28-収集管28、29-タンパク質標準品である。
図7】塩化カルシウムの非存在下でのフィブリン凝集に対するフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の効果を示す。
図8】塩化カルシウムの存在下でのフィブリン凝集に対するフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の効果を示す。
図9】塩化カルシウムの非存在下でのフィブリノーゲン凝集に対するフィブリノーゲンドメイン(FD)の効果を示す。
図10】塩化カルシウムの存在下でのフィブリノーゲンドメイン(FD)のフィブリン凝集に対する効果を示す。
図11】走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のフィブリン凝集に対する効果の比較図を示す。
図12】走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲンドメイン(FD)のフィブリン凝集に対する効果の比較図であり、ここで、フィブリノーゲンドメイン(FD)の処理によりフィブリン凝集による栓が細くなり、構造が緩くなることが明らかとなる。
図13】走査型電子顕微鏡から見たマウス血栓形態に対するフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の影響の比較図である。
図14】走査型電子顕微鏡から見たマウスの血栓形態に対するフィブリノーゲンドメイン(FD)の影響の比較図であり、ここで、フィブリノーゲンドメイン(FD)の処理により血栓が細くなり、構造が緩くなることが明らかとなる。
図15】フィブリノーゲンドメイン(FD)による凝集フィブリン分解作用の比較図を示す。
図16】フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)による凝集フィブリン分解作用の比較図を示す。
図17】フィブリン凝集をフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)と組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAとが相乗的溶解する比較図である。
図18】フィブリン凝集をフィブリノーゲンドメイン(FD)と組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAとが相乗的溶解する比較図である。
図19】フィブリン凝集をフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウロキナーゼuPAとが相乗的溶解する比較図である。
図20】フィブリン凝集をフィブリノーゲンドメイン(FD)とウロキナーゼuPAとが相乗的溶解する比較図である。
図21】フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘発性血栓症の改善を示すデータ統計図であり、ここで、(A)は、ELISAによるフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)プラスミド注射過剰発現の比較図であり、(B)は、マウス生存率を有意に高めるフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の過剰発現の比較図である。
図22】フィブリノーゲンドメイン(FD)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘発性血栓症の改善を示すデータ統計図であり、ここで、(A)は、ELISAによるフィブリノーゲンドメイン(FD)プラスミド注射過剰発現の比較図であり、(B)は、マウス生存率を有意に高めるフィブリノーゲンドメイン(FD)の過剰発現の比較図である。
図23】RVGペプチド及びCy5.5蛍光を用いてフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を修飾する操作フローを示す。
図24】RVGペプチド修飾が、マウス脳組織におけるフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の分布を促進する結果を示す図である。
図25】フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びウィチノゲンドメイン(FD)が、フィブリノーゲンの欠失(A)及び出血時間(B)に有意な効果(毒性副作用なし)を有さないことを示す。
図26】フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)(緑色)及び基質GPRPペプチドセグメント結合(オレンジ色)を示す構造図であり、ここで、標識が示すアミノ酸は、基質結合の重要な部位であり、それぞれ204位トリプトファン、222位チロシン、226位システイン、229位グルタミン酸、230位アスパラギン酸、239位システイン、240位ヒスチジン、258位アスパラギン酸、264位チロシン、269位トリプトファンであり、図26Bは、図26AのY軸に沿って70°回転して得られたものである。
図27】フィブリノーゲンドメイン(FD)突然変異体による凝集フィブリンの分解効果の比較図であり、ここで、突然変異部位は204位と269位のトリプトファンであり、アラニンに突然変異し、突然変異後のフィブリノーゲンドメイン(FD)突然変異体の分解効果は明らかに高まる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施例における図面を結び付けて本発明の実施例における技術的解決手段について、明確かつ完全に説明するが、説明する実施例が本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことが明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力をすることなく得る他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0042】
実施例1:
タンパク質であって、基質GPRPペプチドに結合可能なアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列の構造は、トリプトファン-AAn1-チロシン-AAn2-システイン-AAn3-グルタミン酸-アスパラギン酸-AAn4-システイン-ヒスチジン-AAn5-アスパラギン酸-AAn6-チロシン-AAn7-トリプトファンであり、ここで、AAはアミノ酸であり、n1-n7はアミノ酸数であり、n1=16~18個、n2=2~4個、n3=1~3個、n4=7~9個、n5=16~18個、n6=4~6個であり、n7=3~5個である。
【0043】
好ましくは、前記アミノ酸数n1=17個、n2=3個、n3=2個、n4=8個、n5=17個、n6=5個、n7=4個である。
【0044】
すなわち、アミノ酸配列の構造は、トリプトファン-17個のアミノ酸-チロシン-3個のアミノ酸-システイン-2個のアミノ酸-グルタミン酸-アスパラギン酸-8個のアミノ酸-システイン-ヒスチジン-17個のアミノ酸-アスパラギン酸-5個のアミノ酸-チロシン-4個のアミノ酸-トリプトファンである。
【0045】
トリプトファンとチロシンの間に任意の17個のアミノ酸が連結され、チロシンとシステインの間に任意の3個のアミノ酸が連結され、システインとグルタミン酸の間に任意の2個のアミノ酸が連結され、グルタミン酸とアスパラギン酸が直接連結され、アスパラギン酸と他のシステインとの間に任意の8個のアミノ酸が連結され、他のシステインとヒスチジンが直接連結され、ヒスチジンと別のアスパラギン酸との間に任意の17個のアミノ酸が連結され、他のアスパラギン酸と他のチロシンとの間に任意の5個のアミノ酸が連結され、他のチロシンと他のトリプトファンとの間には、任意の4個のアミノ酸が連結されることが示される。
【0046】
実施例2:
フィブリノーゲン関連タンパク質1であって、以下のいずれか1項に示す実施例1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質である。
(a1)例えばSEQ ID No.1またはSEQ ID No.1のアミノ酸配列の48~290位で示されるタンパク質、
(a2)SEQ ID No.1またはSEQ ID No.1の48~290位で示されるアミノ酸配列を、1個又は数個のアミノ酸残基の置換及び/又は欠失及び/又は付加による同じ機能を有するタンパク質、
(a3)(a1)~(a2)のいずれか一つで限定されるアミノ酸配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ同じ機能を有するタンパク質、
(a4)(a1)~(a3)のいずれか一つで限定されるタンパク質のN末端及び/またはC末端にタグを付着させた後に得られる融合タンパク質。
【0047】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)はフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を含み、単独のFDドメインタンパク質は、フィブリノーゲンFGL1と同じまたは類似の機能を有する。ここで、フィブリノーゲンFGL1のアミノ酸配列は、配列表のSEQ ID No.1に示すとおりであり、単独のFDドメインタンパク質のアミノ酸配列は、配列表のSEQ ID No.1の40~272位で示すとおりである。
【0048】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のアミノ酸配列は以下のとおりである:
LEDCAQEQMRLRAQVRLLETRVKQQQVKIKQLLQENEVQFLDKGDENTVIDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGWWYSLKSVVMKIRPNDFIPNVI。
【0049】
フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)のアミノ酸配列は以下のとおりである:
TVIDLGSKRQYADCSEIFNDGYKLSGFYKIKPLQSPAEFSVYCDMSDGGGWTVIQRRSDGSENFNRGWKDYENGFGNFVQKHGEYWLGNKNLHFLTTQEDYTLKIDLADFEKNSRYAQYKNFKVGDEKNFYELNIGEYSGTAGDSLAGNFHPEVQWWASHQRMKFSTWDRDHDNYEGNCAEEDQSGWWFNRCHSANLNGVYYSGPYTAKTDNGIVWYTWHGWWYSLKSVVMKIRPNDFIPNVI。
【0050】
具体的には、本発明によるフィブリノーゲン関連タンパク質1において、アミノ酸配列は204位トリプトファン、222位チロシン、226位システイン、229位グルタミン酸、230位アスパラギン酸、239位システイン、240位ヒスチジン、258位アスパラギン酸、264位チロシン、269位トリプトファンである。
上記のアミノ酸配列に列挙したアミノ酸位置は、基質GPRP(Gly-Pro-Arg-Pro)ペプチドセグメントに結合可能な重要なアミノ酸部位であり、アミノ酸配列は、これらの重要なアミノ酸部位を介して基質GPRPと特異性で競合的に結合することができ、図26に示すように、フィブリノペプチドAに結合可能な結合部位を競合的に占有することにより、フィブリンの集合を阻害することで、フィブリンの活性を阻害し、血栓形成の阻害または血栓形成の進行を遅らせる効果を実現した。
【0051】
実施例3:
本発明は、上記フィブリノーゲン関連タンパク質1をコードする核酸分子をさらに提供し、核酸分子は遺伝子であり、前記遺伝子は、以下のいずれか1項に記載のDNA分子である:
(b1)SEQ ID No.2またはSEQ ID No.2の142~870位で示されるDNA分子、
(b2)ストリンジェントな条件下で(b1)で限定されるDNA分子とハイブリダイズし、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子、
(b3)(b1)~(b2)で限定されるDNA配列と99%以上、95%以上、90%以上、85%以上または80%以上の相同性を有し、かつ前記タンパク質をコードするDNA分子。
【0052】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の核酸配列は以下のとおりであり:
ctcgaggactgtgcccaggagcagatgcggctcagagcccaggtgcgcctgcttgagacccgggtcaaacagcaacaggtcaagatcaagcagcttttgcaggagaatgaagtccagttccttgataaaggagatgagaatactgtcattgatcttggaagcaagaggcagtatgcagattgttcagagattttcaatgatgggtataagctcagtggattttacaaaatcaaacctctccagagcccagcagaattttctgtttattgtgacatgtccgatggaggaggatggactgtaattcagagacgatctgatggcagtgaaaactttaacagaggatggaaagactatgaaaatggctttggaaattttgtccaaaaacatggtgaatattggctgggcaataaaaatcttcacttcttgaccactcaagaagactacactttaaaaatcgaccttgcagattttgaaaaaaatagccgttatgcacaatataagaatttcaaagttggagatgaaaagaatttctacgagttgaatattggggaatattctggaacagctggagattcccttgcggggaattttcatcctgaggtgcagtggtgggctagtcaccaaagaatgaaattcagcacgtgggacagagatcatgacaactatgaagggaactgcgcagaagaagatcagtctggctggtggtttaacaggtgtcactctgcaaacctgaatggtgtatactacagcggcccctacacggctaaaacagacaatgggattgtctggtacacctggcatgggtggtggtattctctgaaatctgtggttatgaaaattaggccaaatgattttattccaaatgtaatt。
【0053】
フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の核酸配列は、以下のとおりであり:
actgtgagagaggcagtattggaaaggtatgcagattgttccaaaaaacatgtggaaaaatcttggaccaaaaatcttgccagaagacttctttaaaaatcgaccttgaaaaatcgaccttgaaaaaattgccagggaaaattttgaaagcttgcaaagcttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagcttttggaaagctttggaaagcttttggaaagcttttggaaagctttggaaagcttttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagctttggaaagcttt
【0054】
本発明、上記核酸分子の発現カセット、組換え菌、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株を同時に提供した。
【0055】
実施例4:
上記フィブリノーゲン関連タンパク質1又は上記核酸分子又は前記組換え菌、組換え菌又はトランスジェニック細胞株の応用を提供するものであり、前記応用は、少なくとも以下のいずれか一つである:
(c1)血栓の発生を阻害するための製品の製造、
(c2)血栓程度を阻害するための製品の製造、
(c3)血漿中のフィブリン活性を阻害するための製品の製造、
(c4)血漿中のフィブリノーゲン集合を阻害するための製品の製造、
(c5)線溶能力を高めるための製品の製造、
(c6)血漿の活性化部分のトロンビン時間及び/またはプロトロンビン時間及び/またはトロンビン時間を延長するための製品の製造。
【0056】
研究により、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)が血栓形成中のフィブリンの集合を阻害し、血栓関連疾患を治療する薬物の製造に用いることができることが示される。
【0057】
ここで、前記の、血栓関連疾患を治療する薬物は、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を活性成分とする薬物である。前記の、血栓関連症を治療する薬物は多種の原因による血栓症を治療ために用いられてもよく、また血栓症の発生を予防するために用いられてもよく、同時に、フィブリンとの活性上昇、線溶能力の低下及び血漿の活性化部分トロンビン時間及び/またはプロトロンビン時間及び/またはトロンビン時間の短縮に関する多種の疾患の予防と治療に用いられてもよい。
【0058】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)は、フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)を含み、その作用機序は、フィブリンγサブユニットと競合することによりフィブリノペプチドAと結合することで、血栓形成中のフィブリン集合を阻害することができることである。
【0059】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)に対して突然変異を行って、フィブリノペプチドAとの親和力を高め、薬効を向上させる目的を達成することができる。
【0060】
前記タンパク質の製造方法は以下のとおりである:前記タンパク質のコーディング遺伝子を真核発現ベクターにクローンして、無血清培養基で真核細胞を培養して前記タンパク質を発現させ、Ni-NTA親和力カラムを採用して精製し、続いてSuperdex 200 10/300GLカラムでゲル濾過によってタンパク質をさらに精製し、高純度精製タンパク質を得る。
【0061】
前記製品は、ワクチン製品を含む薬物製品である。
【0062】
前記薬物製品タイプは、DNA薬物、mRNA薬物、タンパク質薬物またはアデノウイルス薬物を含む。前記の、血栓系疾患の予防または治療のための薬物製品は、上記のタイプの製品を含むが、それらに限定されるものではなく、プラスミド被覆、微小球被覆、外分泌体携帯などの様々なキャリア形態で投与することができ、また、タンパク質と化合物の結合投与、タンパク質とペプチドの結合投与、タンパク質と小分子の結合投与などの様々な形態のキャリア形態で投与することができ、その最終的な目的は、本発明のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の生物活性を保証するために、異なる投与方式で活性成分を取り込んで、フィブリノーゲンの組み立てを阻害することである。
【0063】
前記製品には、血液脳関門を通過するための構造がさらに修飾される。
【0064】
前記修飾された、血液脳関門を通過する構造は脳標的化リガンドである。
【0065】
前記脳標的化リガンドは、RVGペプチド、ステアリン酸-トランスフェリン、キャリアプロテインEを含むが、それらに限定されない。
【0066】
上記記載に基づいて、本発明に記載の、血栓系疾患の予防または治療のための薬物製品は、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)またはフィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の生物活性を保証する前提で、さらにそれを多種の標的リガンドと結合することができ、比較的突出した標的リガンド修飾は、タンパク質またはドメインタンパク質を大脳標的化リガンドと結合し、血液脳関門(BBB)を突破することに有利であり、それによって脳血栓の生体薬剤供給治療を実現するが、本発明の作用はこれに限定されず、同様に他の構造または形式の標的リガンドと結合することにより、異なる病巣に対する標的治療を実現することができる。
【0067】
前記薬物には、併用可能な治療用薬物がさらに含まれる。
【0068】
前記併用可能な治療用薬は、それぞれウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ、レチプラーゼまたは組織性フィブリノーゲン活性化因子である。
【0069】
フィブリノーゲン関連タンパク質1及びその突然変異体は、従来の抗血栓薬物(ウロキナーゼと組織型フィブリノーゲン活性化因子など)と効果的に協力し、かつ従来の抗血栓薬物の使用量を低減し、その毒副作用を緩和することができる。
【0070】
本発明は、前記タンパク質を発現可能な核酸分子又はそれを含む発現カセット、組換え菌、組換え細菌またはトランスジェニック細胞株を同時に提供した。
【0071】
実施例5:
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とフィブリノーゲンドメイン(FD)は、フィブリン凝集を阻害する:
a.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の製造:
フィブリノーゲン関連蛋白質1(FGL1)タンパク質のコード遺伝子を真核発現ベクターにクローニングして、無血清培地で真核細胞を培養して前記蛋白質を発現させ、Ni-NTA親和性カラムを用いて精製し、続いてSuperdex 200 10/300 GLカラムを用いてゲル濾過により蛋白質を精製し、高純度精製された蛋白質を得て、SDS-PAGEはその純度を検証する。
【0072】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)Ni-NTA親和力カラム精製後のSDS-PAGEを図1に示す。
【0073】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)分子篩を図2に示す。
【0074】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)に分子篩をかけた後のSDS-PAGEを図3に示す。
b.フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)は以下の方法で得られる:
フィブリノーゲンドメインタンパク質(FD)の発現と精製:フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)タンパク質のコード遺伝子をテンプレートとして、PCR及び相同組換え法を用いて発現ベクターを得る。無血清培養基で真核細胞を培養して前記タンパク質を発現させ、Ni-NTA親和力カラムを採用して精製し、続いてSuperdex 200 10/300 GLカラムでゲル濾過によってタンパク質をさらに精製し、高純度精製タンパク質を得て、SDS-PAGEでその純度を検証する。
【0075】
フィブリノーゲンドメイン(FD)Ni-NTA親和性カラム精製後のSDS-PAGEを図4に示す。
【0076】
図5は、図5に示すフィブリノーゲンドメイン(FD)分子篩を示す図である。
【0077】
図6は、図6に示すフィブリノーゲンドメイン(FD)に分子篩をかけた後のSDS-PAGEを示す。
【0078】
c.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)はフィブリン凝集を阻害する:
【0079】
フィブリノプロテインは凝固因子Iとも呼ばれ、α2β2γ2の3つのサブユニットからなる六量体複合体は、血栓の重要な構成部分である。フィブリン凝集は、主にトロンビンThrombin及び凝固因子13によって媒介される。凝固因子13は、αまたはγサブユニットのC末端ドメインのアミノ酸の共有結合を触媒する。トロンビンThrombinは、フィブリノプロテインのαとβサブユニット切断により、フィブリノペプチドA(Knob A)及びフィブリノペプチドB(Knob B)を露出させる。露出したフィブリノペプチドA(Knob A)とフィブリンB(Knob B)は、それぞれ別のフィブリン分子のγとβサブユニットのC末端ドメインに挿入されることにより、フィブリン凝集を促進する。組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAは、直接にフィブリンを標的分解することができるが、一部の阻害因子の作用により、臨床上、その使用量は極めて大きく、それによる副作用は、主に神経毒性と出血である。研究によると、緩く構造化されたフィブリンが組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAの分解効果の増強に寄与することが示される。フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)は、フィブリンの標的化によってフィブリン凝集を阻害することができる。
【0080】
実験方法は以下のとおりである.
【0081】
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombin、投与群は3.3μMのフィブリノーゲンタンパク質+2.5U/mlのトロンビンThrombin+各用量のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)である。以上の系はすべて20mM Tris-HCl、pH7.4、150mM NaCl±5mM CaCl溶液にあり、体積は100マイクロリットル/ウェル(96ウェルプレート)である。25℃で1分ごとに1回試験し、動力学曲線を測定する。
【0082】
塩化カルシウムの非存在下でのフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のフィブリン凝集への影響を図7に示す。
【0083】
塩化カルシウムの存在下でのフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のフィブリン凝集への影響を図8に示す。
【0084】
走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)によるフィブリン凝集に対する比較を図11に示す。
【0085】
d.フィブリノーゲンドメイン(FD)はフィブリン凝集を阻害する:
【0086】
同様に、フィブリノーゲンドメイン(FD)は、フィブリンの標的化によってフィブリン凝集を阻害することができる。
【0087】
実験方法は以下のとおりである。
【0088】
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombin、投与群は3.3μMのフィブリノーゲンタンパク質+2.5U/mlのトロンビンThrombin+各用量のフィブリノーゲンドメイン(FD)である。以上の系はすべて20mM Tris-HCl、pH7.4、150mM NaCl±5mM CaCl溶液にある。25℃で1分ごとに1回A350吸光値を検出し、動力学曲線を測定する。
【0089】
塩化カルシウムの非存在下でのフィブリノーゲンドメイン(FD)のフィブリン凝集への影響を図9に示す。
【0090】
塩化カルシウムの存在下でのフィブリノーゲンドメイン(FD)のフィブリン凝集への影響を図10に示す。
【0091】
走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲンドメイン(FD)のフィブリノーゲン凝集への影響の比較を図12に示し、ここで、フィブリノーゲンドメイン(FD)の処理下でフィブリノーゲンが凝集して形成された栓が細くなり、構造が緩くなることが明らかになる。
【0092】
実施例6:
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びフィブリノーゲンドメイン(FD)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘発性血栓症に対する保護作用:
1、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘発性血栓症に対する保護作用:
【0093】
a.マウスの群分け:
雌性8週齢のBALB/cマウス(18-22 g)をランダムに3群に分け、正常対照群、モデル群、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)プラスミド注射群である。
【0094】
b.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)プラスミド注射及び過剰発現系の検証:
pcDNA3.1キャリアのFGL1発現プラスミドを構築し、プラスミドをマウスの尾に静脈注射し、100μg/2 ml PBS/匹マウス、18時間後にマウスの血漿を採取し、ELISAにより血漿中の過剰発現FGL1含有量を測定する。
【0095】
c.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のトロンビン誘発性血栓モデルに対する保護作用:
トロンビンThrombin 15 U/200μl PBS/匹マウスの尾にモデルを静脈注射し、注射後1時間以内に各群のマウスの死亡数を記録し、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の過剰発現に対する保護率を計算する。
【0096】
走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のマウス血栓形態への影響比較を図13に示す。
【0097】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の凝集フィブリンに対する分解作用の対照を図16に示す。
【0098】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘導性血栓モデルの改善データの統計を図21に示す。
【0099】
2、フィブリノーゲンドメイン(FD)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘導性血栓モデルに対する保護作用
【0100】
具体的な操作方法は前記FGL1と同じである。
【0101】
走査型電子顕微鏡から見たフィブリノーゲンドメイン(FD)のマウス血栓形態への影響の比較を図14に示すが、ここで、フィブリノーゲンドメイン(FD)の処理により血栓が細く、構造が緩くなることが明らかである。
【0102】
フィブリノーゲンドメイン(FD)による凝集フィブリンに対する分解作用の対照を図15に示す。
【0103】
フィブリノーゲンドメイン(FD)のマウスへのプラスミド注射過剰発現によるトロンビン誘導性血栓モデルの改善データの統計を図22に示す。
【0104】
実施例7:
RVGペプチド修飾は、マウス血液脳関門へのフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の進入を促進する:
【0105】
a.試験材料:
RVG29-Cys (YTWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNGGGGGGC)ポリペプチドは南京金斯瑞によって合成され、a-maleimide-u-N-hydroxy-succinimide ester polyethylene glycol (MAL-PEG-NHS、分子量2.1 kDa)はアメリカのCreative PEGWorks社から購入され、NHS-cy5.5染料はサイマー社が購入された。
【0106】
b.MAL-PEG修飾フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)(MAL-PEG-FGL1)の製造:
MAL-PEG-NHSとフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を、PBS(pH 8.0、0.3 mL)中においてモル比1:2で室温で3時間反応させ、10kDaの濃縮管で濃縮して未反応のMAL-PEG-NHSを置換する。
【0107】
c.RVG29-Cys-PEG修飾フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)(RVG29-Cys-PEG-FGL1)の製造:
RVG29-CysペプチドとMAL-PEG-FGL1をPBS(pH7.0、0.3mL)中においてモル比5:1で室温で24時間反応させ、10kDaの濃縮管で濃縮して未反応のRVG29-Cysペプチドを置換する。
【0108】
d.NHS-cy5.5で標識したRVG29-Cys-PEG-FGL1タンパク質の製造:
【0109】
10μgのNHS-cy5.5と10mgのRVG29-Cys-PEG-FGL1をPBS(pH8.0、0.3mL)中において室温で1時間反応させ、10kDaの濃縮管で濃縮して未反応のNHS-cy5.5を置換する。
【0110】
e.NHS-cy5.5で標識したRVG29-Cys-PEG-FGL1タンパク質の脳組織中の蛍光含有量を観察する。
【0111】
雌性8週齢BALB/cマウス(18-22g)匹は、ランダムに3群、すなわち正常対照群、NHS-cy5.5で標識したFGL1群とNHS-cy5.5で標識したRVG29-Cys-PEG-FGL1群に分けられ、マウスの尾に10mg/kgのタンパク質を静脈注射し、1時間、2時間、6時間後に小動物イメージャ(IVIS Lumina XR)を用いてマウス器官中のタンパク質の分布を観察する。
【0112】
RVGペプチドとCy5.5蛍光を用いたフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を修飾する操作フローを図23に示す。
【0113】
マウス脳組織におけるRVGペプチド修飾促進フィブリノーゲン相関タンパク質1(FGL1)の分布検出結果を図24に示す。
【0114】
実施例8:
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)と組織型フィブリノーゲン活性化因子tPAの相乗的使用:
【0115】
a.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)と組織型フィブリノーゲン活性化因子tPAの相乗的使用によりフィブリンの凝集を促進する:
【0116】
実験方法は以下のとおりである:
【0117】
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombinである。上記系はすべて20 mM Tris-HCl、pH 7.4、150 mM NaCl±10mM CaCl溶液にあり、体積は100マイクロリットル/ウェル(96ウェルプレート)である。ゲル状のフィブリン形成1時間後、2 nM 組織型プラスミノーゲン活性化因子tPA + 各用量のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を添加する。25℃で、1分間ごとに1回、A350吸光値を測定し、動力学曲線を測定する。
【0118】
b.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)と組織型フィブリノーゲン活性化因子tPAの相乗的使用による血栓溶解促進:
【0119】
方法は次のとおりである。
【0120】
1)血栓の製造:
【0121】
最初に96ウェルプレートに5マイクロリットルの血栓促進滴液(Innovin+CaCl)をウェル壁底部に沿って添加し、次に25マイクロリットルの新鮮なマウス血液をウェル壁底部に添加する。37℃で30分間インキュベートすると、新たに製造した血栓サンプルが得られる。
【0122】
2)血栓の溶解:
【0123】
対照群は試薬対照であり、投与群は、2nM組織型フィブリノーゲン活性化因子tPA、各用量のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の単独用及び併用群である。37℃で、多機能マイクロプレートリーダーM200PROを用いて、510nmの励起光の吸光度を1分に1回測定し、動力学曲線を測定する。
【0124】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)と組織型フィブリノーゲン活性化因子tPAとの相乗的使用によるフィブリン凝集の溶解の比較を図17に示す。
【0125】
実施例9:
フィブリノーゲンドメイン(FD)と組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAとの相乗的使用:
a.フィブリノーゲンドメイン(FD)と組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAとの相乗的使用によってフィブリン凝集を促進する
【0126】
実験方法は以下のとおりである:
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombinである。上記系はすべて20mM Tris-HCl、pH 7.4、150mM NaCl±10mM CaCl溶液にあり、体積は100マイクロリットル/ウェル(96ウェルプレート)である。ゲル状のフィブリン形成1時間後、100マイクロリットル、2nM組織型フィブリノーゲン活性化因子tPA+各用量のフィブリノーゲンドメイン(FD)を添加する。25℃で、1分間ごとに1回、A350吸光値を測定し、動力学曲線を測定する。
【0127】
b.フィブリノーゲンドメイン(FD)と組織型プラスミノーゲン活性化因子tPAとの相乗的使用によって血栓の溶解を促進する:
【0128】
方法は次のとおりである。
【0129】
1)血栓の製造:
【0130】
最初に96ウェルプレートに5マイクロリットルの血栓促進滴液(Innovin+CaCl)をウェル壁の底部に沿って添加し、次に25マイクロリットルの新鮮なマウス血液をウェル壁底部に添加する。37℃で30分間インキュベートすると、新たに製造した血栓サンプルが得られる。
【0131】
2)血栓の溶解:
【0132】
対照群は試薬対照であり、投与群は、2nM組織型フィブリノーゲン活性化因子tPA、各用量のフィブリノーゲンドメイン(FD)の単独用及び併用群である。37℃で、多機能マイクロプレートリーダーM200PROを用いて、510nmの励起光の吸光度を1分に1回測定し、動力学曲線を測定する。
【0133】
フィブリノーゲンドメイン(FD)と組織型フィブリノーゲン活性化因子tPAとの相乗的使用によるフィブリン凝集の溶解の比較を図18に示す。
【0134】
実施例10:
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウレキナーゼuPAの相乗的使用:
【0135】
a.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウレキナーゼuPAの相乗的使用によりフィブリンの凝集を促進する:
【0136】
実験方法は以下のとおりである:
【0137】
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombinである。上記系はすべて20mM Tris-HCl、pH 7.4、150mM NaCl±10mM CaCl溶液にあり、体積は100マイクロリットル/ウェル(96ウェルプレート)である。ゲル状のフィブリン形成1時間後、100マイクロリットル、800U/mlウレキナーゼuPA+各用量のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)を添加した。25℃で、1分間ごとに1回、A350吸光値を測定し、動力学曲線を測定する。
【0138】
b.フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウレキナーゼuPAの相乗的使用により血栓の溶解を促進する:
【0139】
方法は次のとおりである。
【0140】
1)血栓の製造:
最初に96ウェルプレートに5マイクロリットルの血栓促進滴液(Innovin+CaCl)をウェル壁底部に沿って添加し、次に25マイクロリットルの新鮮なマウス血液をウェル壁底部に添加する。37℃で30分間インキュベートすると、新たに製造した血栓サンプルが得られる。
【0141】
2)血栓の溶解:
【0142】
対照群は試薬対照であり、投与群は800U/mlウレキナーゼuPA、各用量のフィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)の単独用及び併用群である。37℃で、多機能マイクロプレートリーダーM200PROを用いて、510nmの励起光の吸光度を1分に1回測定し、動力学曲線を測定する。
【0143】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウレキナーゼuPAとの相乗的使用によるフィブリン凝集の溶解の比較を図19に示す。
【0144】
実施例11:
【0145】
フィブリノーゲンドメイン(FD)とウロキナーゼuPAの相乗的使用:
a.フィブリノーゲンドメイン(FD)とウレキナーゼuPAの相乗的使用によりフィブリンの凝集を促進する:
【0146】
実験方法は以下のとおりである:
多機能マイクロプレートリーダーM200PROは光散乱過程を測定し、計器の励起光を350nmで、放射光を350nmに調整する。対照群は3.3μMのフィブリン、モデル群は3.3μMのフィブリン+2.5U/mlトロンビンThrombinである。上記系はすべて20mM Tris-HCl、pH 7.4、150mM NaCl±10mM CaCl溶液にあり、体積は100マイクロリットル/ウェル(96ウェルプレート)である。ゲル状のフィブリン形成1時間後、100マイクロリットル、2800U/mlウレキナーゼuPA+各用量のフィブリノーゲンドメイン(FD)を添加する。25℃で、1分間ごとに1回、A350吸光値を測定し、動力学曲線を測定する。
【0147】
b.フィブリノーゲンドメイン(FD)とウロキナーゼuPAの相乗的使用によって血栓溶解を促進する
【0148】
方法は次のとおりである。
【0149】
1)血栓の製造:
最初に96ウェルプレートに5マイクロリットルの血栓促進滴液(Innovin+CaCl)をウェル壁底部に沿って添加し、次に25マイクロリットルの新鮮なマウス血液をウェル壁底部に添加する。37℃で30分間インキュベートすると、新たに製造した血栓サンプルが得られる。
【0150】
2)血栓の溶解:
対照群は試薬対照であり、投与群は800U/mlウレキナーゼuPA、各用量のフィブリノーゲンドメイン(FD)の単独用及び併用群である。37℃で、多機能マイクロプレートリーダーM200PROを用いて、510nmの励起光の吸光度を1分に1回測定し、動力学曲線を測定する。
【0151】
フィブリノーゲンドメイン(FD)とウレキナーゼuPAとの相乗的使用によるフィブリン凝集の溶解の比較を図20に示す。
【0152】
実施例12:
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)及びフィブリノーゲンドメイン(FD)は、比較的に低い毒性副作用がある:
雌性8週齢BALB/cマウス(18-22g)60匹、ランダムに5群に分け、すなわち正常対照群、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)100mg/kg、フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)30mg/kg、フィブリノーゲン構造ドメイン(FD)100mg/kg、フィブリノーゲン構造ドメイン(FD)30mg/kg、アジプラーゼ10mg/kg、尾静脈投与1時間、ペントバルビタールナトリウムでマウスを麻酔し、出血時間測定を行う。マウスの尾の先端から5 mmで切断し、同時にストップウォッチで計時を開始する。血痕が濾紙シートに印刷されなくなるまで、10秒おきに清潔な濾紙片で断端を拭き取り、計時を停止し、所要時間を記録する。これがマウス尾出血時間である。2時間後、マウス血漿を採取し、血漿中のフィブリノーゲン含有量を測定する。
【0153】
フィブリノーゲン関連タンパク質1(FGL1)とウィチノゲンドメイン(FD)はフィブリノーゲンの損失(A)と流血時間(B)に対して明らかな影響がなく(毒性副作用無し)、結果を図25に示す。
【0154】
実施例13:
このタンパク質アミノ酸配列におけるいくつかの重要な部位を突然変異させ、血栓形成阻害機能を強化する効果も実現することができ、本実施例において、204位と269位の重要な部位のセリン突起を突然変異処理し、アラニンに突然変異し、さらに実施例6の方法を用いて突然変異後のフィブリノーゲン構造ドメイン(FD)を処理し、得られたフィブリノーゲン構造ドメイン(FD)突然変異体の凝集フィブリノーゲンに対する分解作用の対照を図27に示す。図27の比較結果から、突然変異体による凝集フィブリンの分解は、非突然変異形態に比べて明らかに高まることが明らかになる。
【0155】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためにのみ使用され、それを制限するのではなく、前記各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、前記各実施例に記載された技術的解決手段を修正したり、その一部またはすべての技術的特徴を同等に置換することができ、これらの修正または置換は、それぞれの技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2024539393000001.app
【国際調査報告】