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  • 特表-ポリウレタンの新規の再生方法 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ポリウレタンの新規の再生方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/10 20060101AFI20241018BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08J11/10
B29B17/04 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526755
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022080259
(87)【国際公開番号】W WO2023078802
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21206262.4
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ボアヒャース
(72)【発明者】
【氏名】フーベアト ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】イェアク レーダー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア ヒンリヒス-トントゥルプ
(72)【発明者】
【氏名】ブリギッテ メス
(72)【発明者】
【氏名】マルテ フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】マリナ ラザール
(72)【発明者】
【氏名】アンドレー ブレスゲン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ヒルデブラント
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401BA06
4F401CA13
4F401CA14
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA72
4F401CA74
4F401CA75
4F401CB01
4F401CB14
4F401DA12
4F401EA04
4F401EA07
4F401EA08
4F401EA32
4F401EA33
4F401EA34
4F401EA66
4F401EA69
4F401EA71
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
4F401FA08Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、加溶媒分解によるポリウレタン、特にポリウレタンフォームの新規の再生方法を提供する。この新規の方法には、ポリウレタンをポリウレタン分散液に変換する、ポリウレタンの非常に効率的な前処理方法が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン、好ましくは、活性水素含有ポリエーテルと有機ポリイソシアネートとを反応させることにより製造されるポリウレタンの加溶媒分解方法であって、
a.ポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームを提供する工程と、
b.前記ポリウレタンから分散液を調製する工程と、
c.前記ポリウレタン分散液の加溶媒分解を行い、好ましくは、加溶媒分解を、アルコール分解、アミノ分解、加安分解、加水分解または酸分解として行う工程と
を含む方法であって、
分散させる前記ポリウレタンが、本明細書に記載のレーザー回折分析装置によって測定された0.1~12mmの平均粒径を有し、
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中の前記ポリウレタン含有量が、4~20重量%の範囲であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程b.が、
b1.工程a.で提供された前記ポリウレタンを、好ましくはカッティングミルまたは粉砕装置であって、ローラーミル、クラッシャー、シュレッダーおよび押出機からなる群から選択されるものを用いて細断、粉末化、グラインディング、ミリング、切断または他の方法で粉砕して、ポリウレタン粉末、好ましくは雪のようなふわふわした粉末を得る工程と、
b2.工程b1.で得られた前記ポリウレタン粉末、好ましくは工程b1.で得られた前記雪のようなふわふわした粉末から、好ましくは、コロイドミル、より好ましくはコーンミル、様々な幾何学的形状を有する単段もしくは多段のロータ・ステータシステム、または撹拌容器内の高速運転式ディゾルバディスクもしくは鋸歯状インペラからなる群から選択される装置を使用して分散液を製造する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
分散させる前記ポリウレタン粉末が、本明細書に記載のレーザー回折分析装置によって測定された0.2~4mm、より好ましくは0.5~2mmの平均粒径を有し、かつ/または30kg/mより高い、より好ましくは60kg/mより高い、さらにより好ましくは90kg/m~200kg/mの嵩密度を有することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b1.を、周囲温度~120℃、好ましくは周囲温度~100℃、より好ましくは周囲温度~80℃、最も好ましくは周囲温度~60℃の温度範囲で実施し、
かつ/または
工程b2.を、10~90℃、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~60℃の温度で実施する
ことを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記加溶媒分解工程c.で反応物および/もしくは溶媒として使用される液体もしくは液体と他の成分との混合物、または工程c.の加溶媒分解反応生成物、例えば再生ポリオールを、工程b.あるいはb2.で分散媒として使用し、より好ましくは、前記液体または液体と他の成分との混合物が、以下:
- 水、
- 有機溶媒であって、好ましくは、ポリオール、再生ポリオール、グリコール、グリセリン、トルエンジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるもの、
- 塩基と水および/または塩基と先に定義した有機溶媒とを含む混合物、好ましくは塩基の水溶液、より好ましくは以下にさらに定義する塩基と水とを含む水溶液
からなる群から選択され、
かつ/または
前記ポリウレタン粉末、好ましくは雪のようなふわふわした粉末を、1:5~1:40、より好ましくは1:8~1:30、さらにより好ましくは1:10~1:25の重量比で前記分散媒と混合し、
かつ/または
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中のポリウレタン含有量が、5~18重量%、より好ましくは8~15重量%の範囲であり、
かつ/または
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中の、本明細書に記載のレーザー回折分析装置によって測定されたポリウレタン粒子の粒径が、10~2000μm、好ましくは50~1500μm、より好ましくは100~1000μmの範囲である
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程bまたは工程b2.を、加溶媒分解反応器内で実施し、前記加溶媒分解反応を開始する前に前記ポリウレタンの全量を分散させることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程c.を加水分解として実施し、好ましくは、ポリウレタン分散液を、塩基および触媒としての第四級アンモニウム塩の存在下で水と接触させて、活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオールおよび有機ポリアミンを得ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程c.における前記加水分解を、工程b.で得られた前記ポリウレタン分散液を、塩基と触媒との組み合わせ(I)、(II)または(III)の存在下で水と接触させることによって実施し、ここで、
前記塩基と触媒との組み合わせ(I)は、アルカリ金属カチオンおよび/またはアンモニウムカチオンを含み、かつ25℃における1~10のpKb値を有する塩基と、6~30個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩および少なくとも7個の炭素原子を有する有機スルホネートからなる群から選択される触媒とを含み、
または
前記塩基と触媒との組み合わせ(II)は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基と、触媒としての、6~14個の炭素原子、好ましくはアンモニウムカチオンがベンジル基を含む場合には6~12個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩とを含み、
または
前記塩基と触媒との組み合わせ(III)は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基と、触媒としての、15~30個、好ましくは15~28個、より好ましくは15~24個、さらにより好ましくは16~22個、最も好ましくは16~20個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩とを含む
ことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
塩基と触媒との組み合わせ(I)における塩基を構成する前記アルカリ金属カチオンが、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属が、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物、最も好ましくは、NaおよびKならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記塩基と触媒との組み合わせ(II)または(III)における前記強塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ金属が、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物、最も好ましくは、NaおよびKならびにそれらの混合物からなる群から選択され、かつ/または前記アルカリ土類金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Baおよびそれらの混合物、好ましくは、MgおよびCaならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なり、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから選択されるヒドロカルビル基であり、Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、好ましくは酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
塩基と触媒との組み合わせ(I)および(III)に関して、前記触媒は、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、
- RおよびRは、同一であるかまたは異なり、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Rは、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状であり、
- Rは、3~12個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~7個、最も好ましくは4~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状でかつ飽和であり、
- Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択され、
かつ/または
塩基と触媒との組み合わせ(II)に関して、前記触媒は、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、
- R~Rは、同一であるかまたは異なり、1~6個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、さらにより好ましくは1~3個、特に好ましくは1または2個、最も好ましくは1個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Rは、3~11個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、最も好ましくは4~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~11個、好ましくは6~10個、最も好ましくは6~8個の炭素原子を有するアリール基、および7~11個、好ましくは7~10個、最も好ましくは7~9個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましいのは、直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
塩基と触媒との組み合わせ(I)に関して、
~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~14個、好ましくは7~14個、より好ましくは8~13個となるように選択されるか、
または
~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が15~30個、好ましくは15~28個、より好ましくは15~24個、さらにより好ましくは16~22個、最も好ましくは16~20個となるように選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
塩基と触媒との組み合わせ(II)に関して、
がベンジル基ではなく、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~14個、好ましくは7~14個、より好ましくは8~13個となるように選択されるか、
または
がベンジル基であり、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~12個、好ましくは7~12個、より好ましくは8~11個となるように選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項17】
前記第四級アンモニウム塩を、相間移動触媒として、前記ポリウレタンの重量に対して少なくとも0.5重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらにより好ましくは1~10重量%、特により好ましくは1~8重量%、殊に好ましくは1~7重量%、最も好ましくは2~6重量%使用する、請求項7から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
加溶媒分解の反応生成物、好ましくは有機ポリアミンおよび/または活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオールを分離および回収する追加の工程を含む、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程c.における前記加溶媒分解を、
80℃~200℃、好ましくは90℃~180℃、より好ましくは95℃~170℃、最も好ましくは100℃~160℃の温度で、
かつ/または
1分間~14時間、好ましくは1分間~12時間、より好ましくは10分間~10時間、さらにより好ましくは10分間~15時間、特に好ましくは20分間~2時間、殊に好ましくは20分間~1時間、最も好ましくは20分間~50分間
実施する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記工程c.における加溶媒分解を、大気圧または昇圧下で、特に1~15bara、好ましくは1~10bara、より好ましくは1~5baraの圧力下で実施する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加溶媒分解によるポリウレタン、特にポリウレタンフォームの新規の再生方法を提供する。この新規の方法には、ポリウレタンをポリウレタン分散液に変換する、ポリウレタンの非常に効率的な前処理方法が含まれる。
【0002】
ポリウレタンは、硬質および軟質フォーム、固形およびマイクロセルラーエラストマー、シーラント、コーティング剤、および接着剤の製造に非常に有用な材料である。ポリウレタンの汎用性、比較的低いコスト、および優れた特性により、ポリウレタン産業は過去50年間で急成長を遂げた。現在、世界中で毎年何千トンものポリウレタンが生産されている。残念ながら、ほとんどのポリウレタンは熱硬化性材料であり、ある程度の架橋が施されている。したがって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂とは異なり、ポリウレタンのスクラップや廃棄物は、有用な物品へと容易に再溶融または再加工することができない。毎年大量に発生するスクラップまたは廃ポリウレタンを、焼却したり埋め立て処分したりするのではなく、再利用または回収することが経済的および環境的な理由から非常に望ましいため、スクラップポリウレタン材料から有用な化学成分を回収するプロセスを考案するために、創意に富む多大な努力が払われてきた。
【0003】
硬質および軟質の両タイプの製品を含むPU(ポリウレタン)廃棄物の再生、すなわち解重合に、解糖が用いられている。
【0004】
ポリウレタンフォームのスクラップは、アンモニア、アミンまたはアルカノールアミンを使用した加安分解やアミノ分解によって再生することもでき、これにより、PUの合成に再利用可能なモノマーポリオールが回収される。例えば、独国特許出願公開第102006036007号明細書には、アミノ分解によるポリウレタンおよびポリウレアの再生方法が記載されている。
【0005】
また、ポリウレタンをポリオールへ再生するために、酸分解も提案されている。中国特許出願公開第107286369号明細書には、ポリオールを製造するための軟質ポリウレタンフォーム廃棄物の酸分解が記載されている。この方法は、i)ポリウレタンの断片を製造する工程と、ii)断片をスクリュー供給または真空吸引によって反応器に供給する工程とを含む。中国特許出願公開第107286369号明細書のフォーム断片は、1~20mmの粒径を有し、破砕によって製造される。中国特許出願公開第107286369号明細書の方法は、230~250℃の非常に高い反応温度および6~12時間の長い反応時間を必要とする。
【0006】
米国特許出願公開第2021/0017354号明細書には、酸分解から始まり、次いで解糖を行うPUの再生方法が開示されている。ポリエーテルトリオール、フタル酸、マレイン酸、アクリル酸およびラジカル開始剤を含む酸分解混合物に、40重量%のPUを含む反応混合物が得られるまで、2×2×2cmのサイズの細断PUが添加された。米国特許出願公開第2021/0017354号明細書の方法は、必要なプロセス工程数および反応物の数ゆえに非効率的である。PU含有量が高いため、湿潤PUを液体や分散液のようにポンプで搬送することができず(後述の比較例2を参照)、また混合物に含まれる熱媒の量が少ない。結果として、長い反応時間、例えば米国特許出願公開第2021/0017354号明細書の実施例では3時間を超える時間が必要となる。もう1つの結果は、PUの不完全な転化であり、これはプロセスの生産性不足を招く。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0347927号明細書には、PUを再生するための化学分解反応が記載されている。第1の工程では、硬質PUを湿式粉砕して湿潤PU粉末を得る。前記PU粉末はその後、化学分解反応に供される。米国特許出願公開第2021/0017354号明細書と同様に、米国特許出願公開第2016/0347927号明細書の方法では、湿潤PU粉末をポンプで搬送することができない。湿潤PU粉末を、スクリューコンベアや他の粒子搬送装置で搬送しなければならない。したがって、化学分解反応器への粉末の計量供給は困難であり、正確に行うことができない。米国特許出願公開第2021/0017354号明細書と同様に、熱媒の量が少ないため、反応時間および収率が不十分である。
【0008】
先行技術においてポリウレタンの解重合のために、加水分解も試験がなされた。しかし、ポリエーテルポリオールを回収するために塩基触媒を使用する先行技術の方法は、いくつかの欠点を抱えている。比較的低温では、加水分解速度は低く、加水分解は不完全であると報告されている。高温では、加水分解速度は高いが、ある種の望ましくない副反応が起こる可能性がある。例えば米国特許第5,208,379号明細書では、活性水素含有ポリエーテルと有機ポリイソシアネートとを反応させることによって製造されたポリウレタンを加水分解する方法が提案されており、この方法は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される有効量の強塩基と、少なくとも15個の炭素原子を有する第四級アンモニウム塩および少なくとも7個の炭素原子を有する有機スルホネートからなる群から選択される有効量の活性化剤との存在下で、前記ポリウレタンと水とを、活性水素含有ポリエーテルおよび有機ポリアミンを得るのに有効な時間および温度で接触させることを含む。米国特許第5,208,379号明細書には、発明の概要において、反応温度を80~225℃の範囲で選択することができると開示されているが、実施例19では、120℃では部分的な加水分解しか起こらないことが示されており、実施例18では、140℃での収率がわずか70%であることが示されている。
【0009】
これらの方法はいずれも、まだ大規模な工業規模では使用されていない。これらの方法は、反応温度が高く、反応時間が長いため、過度に複雑で高コストである。再生ポリオールや再生アミンは低品質であるため、新たなポリウレタンフォームを製造するために、大量のバージンポリオールとともに使用することのできる再生原料は、少量のみである。
【0010】
加溶媒分解自体に加え、加溶媒分解反応器へのポリウレタン廃棄物の供給に関する問題が先行技術で報告されている。
【0011】
中国特許出願公開第109320764号明細書には、アルコール分解によるポリウレタンフォームの回収方法および特定の回収用供給装置が開示されている。中国特許出願公開第109320764号明細書では、ポリウレタンフォームの嵩密度が低く、破砕されたポリウレタンフォームの凝集体は、一般的なスクリュー機械で反応器に搬送することが困難であるという問題への対処がなされている。これは、アルコール分解に使用されるアルコールが揮発し、スクリュー内のポリウレタンと接触するためである。そのため、ポリウレタンは粘着性を帯び、供給パイプラインに付着する。解決策として、中国特許出願公開第109320764号明細書では、ポリウレタンフォーム凝集体が供給ホッパーからスクリューコンベヤに押し出されて二重らせん供給コンベヤに搬送される供給システムが提案されている。最後に、ポリウレタンは空気圧ゲートバルブにより反応器に供給される。中国特許出願公開第109320764号明細書で提供される供給システムは非常に複雑であり、プロセスには依然として数時間の反応時間が必要である。
【0012】
独国特許出願公開第4309288号明細書は、架橋ポリウレタンプラスチックから顆粒およびペレットを製造する方法に関する。中国特許出願公開第109320764号明細書と同様に、ポリウレタンフォームの嵩密度が低いために熱可塑性樹脂加工機の供給システムが閉塞し、処理能力が非常に低くなるという問題の解決が試みられている。解決策として、独国特許出願公開第4309288号明細書では、ポリウレタンフォームをカッティングミルで約6mmのサイズの粒子に切断する方法が提案されている。その後、これらの粒子を平坦なマトリックスを通じてプレスすることで、160℃の温度でストランドが得られる。これらのストランドを、さらにペレットや顆粒に加工することができる。これらのペレットや顆粒を、解糖、アミノ分解または加水分解のようなPU再生法の出発材料として使用することができる。この独国特許出願公開第4309288号明細書の方法も複雑である。
【0013】
したがって、ポリウレタン、特にポリウレタンの廃棄物およびスクラップのより効率的な再生方法が依然として必要とされている。
【0014】
本発明の目的は、先行技術の方法の欠点を有しないか、またはそのような欠点を低減された程度にしか有しない、ポリウレタンの再生方法を提供することであった。
【0015】
本発明の特定の目的は、加溶媒分解反応器へのポリウレタンの効率的な供給を含む、効果的なポリウレタンの再生方法を提供することであった。
【0016】
本発明が解決しようとするさらなる特定の課題は、反応器、特に昇圧または高圧条件下で運転する反応器へのポリウレタンの正確な計量供給を可能にするポリウレタンの再生方法を提供することであった。
【0017】
本発明が解決しようとする次の特定の課題は、反応時間および/または反応温度および/またはポリオール収率の観点から先行技術の方法と比較して有益なポリウレタンの再生方法を提供することであった。
【0018】
本発明が解決しようとする別の特定の課題は、反応器に高負荷のポリウレタンを装入することを可能にするポリウレタンの再生方法を提供することであった。
【0019】
本発明が解決しようとするさらに別の課題は、ポリウレタンからポリオールを製造することを可能にする方法であって、該ポリオールは非常に良好な品質を有し、新たなポリウレタンを製造するために大量に使用することができる、方法を提供することであった。
【0020】
先に明示されなかったさらなる課題は、以降の説明、実施例、特許請求の範囲および図面の全体的な内容から導き出すことができる。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の課題が、
a.ポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームを提供する工程と、
b.ポリウレタンから分散液を調製する工程と、
c.ポリウレタン分散液の加溶媒分解を、好ましくは分散液のアルコール分解、アミノ分解、加安分解、加水分解または酸分解として行う工程と
を含む方法であるが、ただしこれは、
分散させるポリウレタンが0.1~12mmの平均粒径を有し、工程b.の後の分散液および/または工程c.に使用される分散液中のポリウレタン含有量が4~20重量%の範囲にある場合に該当するものとする、方法によって解決できることを見出した。
【0022】
本出願人らは、ポリウレタンフォームを粉末化して乾燥粉末を得て、この乾燥粉末を加溶媒分解反応器に供給すると、ポリウレタン粉末は密度が非常に低いため、反応液の表面に浮遊し、反応器のガス室に蓄積することを見出した。そのため、粉末の湿潤、および粉末と反応溶液との混合が非常に困難である。このため、供給が遅れ、計量供給が正確でなく、計量供給の制御が困難となり、反応時間が長くなる。
【0023】
先行技術では、粉末の密度を高めるために、粉砕前にポリウレタン廃棄物を熱間圧縮することが提案されている。このような方法は、米国特許第5208379号明細書で適用されているが、この方法では、圧縮され、その後に粉砕された材料の加溶媒分解の反応時間が8時間必要である。米国特許第5208379号明細書では、反応時間が5分~12時間であることが記載されているが、実施例20~22では、反応時間を8時間から2時間に短縮すると、ポリオール収率が95%から70%に低下することが示されている。したがって、米国特許第5208379号明細書の方法は、短い反応時間では商業的に適用できない。
【0024】
本発明の発明者らは、熱間圧縮によりポリウレタン粉末の外表面積が減少し、これにより、反応時間が著しく長くなり、反応温度が高くなることを見出した。
【0025】
これとは対照的に、本発明の方法により、わずか30分のポリウレタンフォームの加水分解の反応時間で非常に高い収率が達成された。いかなる理論にも束縛されるものではないが、この顕著な改善が達成されたのは、本発明の方法ではポリウレタンの細孔が開放され、得られる粉末の外表面積が、米国特許第5208379号明細書に開示されている熱間圧縮時に起こるように減少するのではなく、むしろ増加するためである。
【0026】
本発明の高表面積ポリウレタン粉末は、加溶媒分解に供される前に分散液に変換される。分散液の調製は、温和な条件下、例えば常圧および常温で行うことができ、したがって、ポリウレタン粉末の外表面積に非常にわずかにしか悪影響を及ぼさない。得られた本発明のポリウレタン分散液は、反応器に正確に計量供給することができ、反応溶液に浮遊する乾燥ポリウレタン粉末の上述した問題を回避することができる。正確な計量供給の他に、ポリウレタン分散液と反応混合物との非常に効率的で速い混合が可能である。要するに、本発明の方法は、短い反応時間、およびポリオールの高い収率をもたらし、反応器へのポリウレタンの非常に効率的で正確な供給を可能にする。
【0027】
本発明の方法のもう1つの利点は、工程b.で得られたポリウレタン分散液を、導管を通じて反応器に容易にポンプで搬送できることである。したがって、かなり小さな断面を有する導管および充填物を使用することができる。このことは、昇圧または高圧下で運転する反応器にとって重要であり、そのような反応器への本発明の分散液の効率的な供給および計量供給を可能にする。反応器を昇圧下で運転し、ポリウレタンの計量供給においてより大きな圧力レベルを克服しなければならない場合には、堅く閉じるフラップのような必要な継手を、ポリウレタンの計量供給が流れの問題なく可能となるような大きな寸法を有するように設計する必要がある。本発明とは対照的に、乾燥ポリウレタン粉末をこのような反応器に直接供給する場合には、その密度が低く流動性が低いため、出口断面積をはるかに大きくする必要があり、その結果、継手の寸法が非常に大きくなり、コストが高くなる。
【0028】
工程b.で得られたポリウレタン分散液は、導管を通じて容易にポンプで搬送することができる。その結果、管式反応器を加溶媒分解反応に使用することができ、本方法の連続運転が可能になる。連続運転の他に、管式反応器は熱管理、すなわち反応混合物への熱伝達および反応混合物からの熱伝達の観点からも有益である。
【0029】
本発明の方法により、反応器内でのポリウレタンの高装填が可能となる。先行技術では、粉砕ポリウレタンフォームの嵩密度が低く、前述の浮遊の問題があるため、このような反応器内でのポリウレタンの高装填は達成できなかった。
【0030】
本発明の方法は、非常にフレキシブルである。すなわち、工程b.で得られた本発明のポリウレタン分散液は、異なる加溶媒分解法、好ましくはアミノ分解法、加安分解法、加水分解法、酸分解法、またはアルコール分解法、例えば解糖法、ハイドログリコリシス法、加メタノール分解法などのフィードとして使用することができる。工程c.で、最も好ましくは加水分解が行われる。
【0031】
本発明の方法のもう1つの利点は、再生ポリオールの品質が優れていることである。再生ポリオールは、新たなポリウレタンフォーム、好ましくは柔軟なPUフォームを製造する際に、ポリウレタンフォームの品質に悪影響を及ぼすことなく大量のバージンポリオールと置き換えることができる。本発明の再生ポリオールを最大で100%使用して、高品質のポリウレタンフォームを得ることができる。本発明により得られる再生ポリオールを、柔軟なPUフォームの製造にさらに使用することができる。先行技術の再生ポリオールは、得られるポリウレタンフォームの物理的および機械的特性に悪影響を及ぼすため、再生ポリオールからこうした柔軟なPUフォームを得ることはできなかった。
【0032】
先行技術のポリウレタン再生方法の欠点ゆえに、広範な商業的実施はまだ達成できなかった。本発明は、前記欠点を克服し、その結果、有益なライフサイクル分析やPUフォーム製造工程の循環性の改善など、環境や持続可能性に好影響を与える。
【0033】
さらなる利点は、以降の説明、実施例、図面および特許請求の範囲から導き出すことができる。
【0034】
本発明をより詳細に説明する前に、いくつかの重要な用語を以下のように定義する:
本明細書、実施例および特許請求の範囲で使用される動詞「含む(to comprise)」およびその活用形は、その語に続く項目は含まれるが、特に言及されていない項目は除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。「含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」を含み、これは、「含む(comprising)」という用語に続く項目は含まれるが、特に言及されていない好ましい実施形態としての追加の項目は含まれないことを意味する。
【0035】
不定冠詞「a」または「an」によるある要素への言及は、文脈上明らかに要素が1つだけであることが要求されない限り、複数の要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常は「1つ以上」を意味する。
【0036】
「触媒」および「活性化剤」という用語は、本発明では同義で用いられる。
【0037】
本発明の文脈におけるポリウレタン(PU)は、特に、ポリイソシアネートとポリオール、またはイソシアネート反応性基を有する化合物との反応により得られる生成物を意味すると理解される。本発明の方法に供することのできるポリウレタンは、活性水素含有ポリエーテルとポリイソシアネートから調製されるものである。このタイプのポリウレタンは周知であり、例えば、Ulrich, “Urethane Polymers”, Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 23, pp. 576-608(1983)およびBackus et al., “Polyurethanes”, Encyclopedia of Polymer Science and Technology, Vol. 13, pp. 243-303(1988)に記載されている。任意の公知のポリウレタンを本発明の方法において使用することができ、好ましくはポリウレタンは、ポリウレタン廃棄物である。
【0038】
活性水素含有ポリエーテルは、好ましくはポリエーテルポリオール(すなわち、第一級および/または第二級末端基、好ましくはヒドロキシル基を有するポリエーテル)であるが、アミン官能化ポリエーテル(例えば、Texaco Chemical Co.から販売されている「Jeffamine」ポリオキシプロピルアミン)であってもよい。このような材料は一般に、エポキシド、オキセタン、オキソランなどの1つ以上の環状エーテルの、触媒による開環重合によって製造される。ポリエーテルの官能価(活性水素の数)を変化させるために、多価アルコール、アミン、酸などの2つ以上の活性水素を有する開始剤を使用することができる。複数のタイプの環状エーテルを使用する場合、これらを同時に反応させて(ランダム型コポリマーを得ること)も、順次反応させて(ブロック型コポリマーを得ること)も可能である。例示的な環状エーテルとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、およびオキセタンが挙げられる。適切な活性水素含有ポリエーテルの例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、エチレンオキシドキャップドポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムコポリマーが挙げられる。
【0039】
本発明は、ポリウレタン、好ましくは、活性水素含有ポリエーテルと有機ポリイソシアネートとを反応させることにより製造されるポリウレタンの加溶媒分解方法であって、
a.ポリウレタン、好ましくはポリウレタンフォームを提供する工程と、
b.ポリウレタンから分散液を調製する工程と、
c.工程b.で得られたポリウレタン分散液の加溶媒分解を実施する工程と
を含む方法を提供する。
【0040】
本方法は、分散させるポリウレタンが0.1~12mmの平均粒径を有し、工程b.の後の分散液および/または工程c.に使用される分散液中のポリウレタン含有量が4~20重量%の範囲であることを特徴とする。
【0041】
本発明の方法の工程a.で提供されたポリウレタンは、任意のポリイソシアネート反応物(すなわち、2つ以上のイソシアネート基を含む有機化合物)から誘導可能である。適切なポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、アリールアルキルジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネートおよびジイソシアナトジフェニルメタン)、芳香族トリイソシアネート、および一般に「PMDI」と呼ばれるイソシアネートなどのイソシアネート混合物が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、変性ポリイソシアネート、マスクドポリイソシアネート、ブロックトポリイソシアネートも使用できる。
【0042】
本発明の方法で使用されるポリウレタンはまた、当該技術分野で知られている従来の追加の反応物または添加剤のいずれかを含むことができ、これらは例えば、鎖延長剤または硬化剤(グリコールおよびジ-またはポリアミンなどの比較的低分子量の活性水素含有化合物)、物理的または化学的発泡剤、難燃剤、界面活性剤、充填剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、ポリウレタンポリマー以外のポリマー(例えば、ポリマーポリオールに見られるようなスチレン-アクリロニトリルコポリマー)、触媒、例えばゲル化反応を促進する触媒(イソシアネート-ポリオール)、発泡反応を促進する触媒(イソシアネート-水)および/またはイソシアネートの二量化もしくは三量化を促進する触媒である。ポリウレタンは、固形、マイクロセルラーまたはフォームの形態であってよく、ゴム状、エラストマー状、可撓性物質から硬質、剛性物質までの範囲であってよい。
【0043】
好ましくは、工程a.で提供されたポリウレタンは、工程b.で使用される前に、周囲温度以上での圧縮に供されない。好ましくは、工程a.で提供されたポリウレタンの他の前処理であって、滅菌のためのPUフォームの熱処理のように、その細孔構造に影響を与えないかまたはわずかな影響しか与えない処理を実施することができる。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態において、ポリウレタンフォームが工程a.で提供される。
【0045】
本発明の方法の工程b.では、ポリウレタンから分散液が調製される。本発明の好ましい実施形態において、工程b.は、
b1.工程a.で提供されたポリウレタンを細断、粉末化、グラインディング、ミリング、切断または他の方法で粉砕して、ポリウレタン粉末を得る工程と、
b2.工程b1.で得られたポリウレタン粉末から分散液を製造する工程と
を含む。
【0046】
本発明の方法は、特に工程b.が工程b1.およびb2.を含む「二段法」として実施される場合、フォーム構造を開き、ポリウレタンフォームのセル壁を破壊する。その結果、加溶媒分解液および/または分散液(分散媒)の浸透が大幅に促進され、ポリウレタン粉末の集中的な湿潤が達成される。したがって、工程b.を二段法として実施することが好ましい。
【0047】
工程b1.では、好ましくは、カッティングミルまたは他の適切な粉砕装置であって、好ましくはローラーミル、クラッシャー、シュレッダーおよび押出機からなる群から選択されるものが使用される。押出機を使用する粉砕装置の好ましい例は、米国特許第5769335号明細書および特願平06-185764号に見出すことができる。カッティングミルの使用により、(図1bに見られるように)フォーム構造の完全な開放およびセル壁の破壊に関して特に良好な結果が達成された。
【0048】
ポリウレタン原料がすでに分散液を調製するのに十分に小さい粒径を有している場合には、工程b1.を実施する必要はない。この場合、工程b.は、好ましくは、工程b2.を工程b.とする「一段法」に短縮される。しかし、ほとんどの場合、また細孔構造を開放するためには、工程b1.も実施するのが好ましい。
【0049】
工程b1.を実施する場合、工程a.でポリウレタン原料を予備破砕または粗切断して断片を得る必要があり得る。その断片を工程b1.で使用することができる。予備破砕が必要か否かは、特にカッティングミルを使用する場合には粉砕装置の設計、および供給原料に依存する。予備破砕または粗切断は、手動で行うことも、粗目シュレッダーを用いて行うこともできる。
【0050】
前述したように、工程b1.ではカッティングミルを使用するのが特に好ましい。特に、得られるポリウレタン粉末のサイズを調整するために好ましく使用されるカッティングナイフおよびふるいインサートの配置に関して、様々なタイプのカッティングミルを使用することができる。カッティングナイフの好ましい例は、ストレートカットナイフ、ダイアゴナルカットナイフまたはクロスカットナイフである。円形、正方形または縦長の穿孔を有するふるい層を使用することができ、好ましい孔径は0.5~20mmである。適切なカッティングミルの製造業者は、例えばHosokawa-Alpine、Netzsch-Condux、Pallmann、またはHerbold-Meckesheimである。このようなカッティングミルを使用することにより、「雪のような」ふわふわしたポリウレタン粉末が得られ、ここでポリウレタンは、図1aに示すように、乾燥したふわふわした雪の外観を有する。
【0051】
粒子の偏析および/または湿潤の観点から特に安定したポリウレタン分散液を得るためには、分散させるポリウレタン粉末、すなわち上述の二段法での工程b2.または上述の一段法での工程b.で分散させるポリウレタン粉末は、好ましくは0.2~4mm、より好ましくは0.5~2mmの平均粒径を有することが好ましい。このようなポリウレタン粒子から得られる分散液は、長期間にわたって貯蔵安定であることが判明している。長期間の後、特に工程b1.の後に得られたポリウレタン粒子、すなわち完全に開放した構造を有するポリウレタン粒子から製造された分散液において偏析が起こったとしても、粒子は依然として非常によく湿潤していることがわかった。
【0052】
分散工程、すなわち上述の二段法での工程b2.または上述の一段法での工程b.に供されるポリウレタン粉末の嵩密度を、20~26kg/mの嵩密度を有するポリウレタン原料の嵩密度よりも高くなるように調整することがさらに好ましい。好ましくは、ポリウレタン粉末の嵩密度は、30kg/mより高く、より好ましくは60kg/mより高く、さらにより好ましくは90kg/m~200kg/mの範囲である。嵩密度を高くすることにより、加溶媒分解反応器におけるポリウレタンの装填量を高くすることができる。嵩密度を調整するための好ましい方法の1つは、ミル、より好ましくはカッターミルを使用し、ふるいサイズを適切に選択することである。選択されたふるいサイズに応じて、得られる粒径だけでなく、ポリウレタンスノーの嵩密度も調整することができる。
【0053】
工程b1.を実施する場合、生成物の塊状化、および工程b1.でポリウレタン粉末を製造するために使用される装置の閉塞を防止するために、工程b1.を周囲温度~120℃の温度範囲、好ましくは周囲温度~100℃の温度範囲、より好ましくは周囲温度~80℃の温度範囲、最も好ましくは周囲温度~60℃の温度範囲で実施することが特に好ましい。
【0054】
工程b1.で加える圧力は、選択された装置に依存し、押出機の場合には高くすることができる。他の装置のほとんどは、粉末の輸送を支援するために、装置に応じて周囲圧力またはわずかな減圧で運転される。
【0055】
分散工程b.(b.一段法)のb2.(b.二段法)は、好ましくは、高速運転式分散装置で実施される。好ましくは、コロイドミル、より好ましくはコーンミル、および様々な幾何学的形状を有する単段または多段のロータ・ステータシステムからなる群から選択される装置が使用される。撹拌容器では、高速運転式ディゾルバディスクまたは鋸歯状インペラの使用によっても分散を得ることができる。使用される分散装置は、好ましくは、液体への固体の計量供給に向けて特別に開発された工具を備えており、例えば、機械的な供給のための(垂直)フィードスクリューや、粉末を吸引するための真空の発生が設計されている。分散装置は、シングルパス、ポンプ再循環、またはマルチパスのいずれかの運転モードで運転することができる。適切な分散装置の製造業者の例は、例えばIKA Prozesstechnik、Cavitron、BWS Technologie, YtronまたはYstralである。
【0056】
分散工程は、好ましくは、10~90℃、好ましくは15~80℃、より好ましくは20~60℃の温度で実施される。
【0057】
好ましくは、加溶媒分解工程c.で反応物および/もしくは溶媒として使用される液体もしくは液体と他の成分との混合物、または工程c.の加溶媒分解反応生成物、例えば再生ポリオールが、工程b.あるいはb2.で分散媒として使用される。より好ましくは、液体または液体と他の成分との混合物は、以下:
- 水、
- 有機溶媒であって、好ましくは、ポリオール、再生ポリオール、グリコール、グリセリン、トルエンジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるもの、
- 塩基と水および/または塩基と先に定義した有機溶媒とを含む混合物、好ましくは塩基の水溶液、より好ましくは以下にさらに定義する塩基と水とを含む水溶液
からなる群から選択される。
【0058】
分散媒は、1つ以上の添加剤であって、好ましくは、湿潤剤、シリコーン界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤、例えばEvonik Industries AGからTomadol(登録商標)の商品名で入手可能であるような界面活性剤からなる群から選択されるものを含むことができる。
【0059】
好ましくは、ポリウレタン粉末、より好ましくは雪のようなふわふわした粉末は、1:5~1:40、より好ましくは1:8~1:30、さらにより好ましくは1:10~1:25の重量比で分散媒と一緒にされる。好ましい方法では、分散媒が最初にシステムに装入され、循環される。その後、所望の重量比になるまでポリウレタンスノーが徐々に添加される。その後、分散工程を要求に応じて運転することができ、例えば、複数パスの運転や、定められたプロセス時間にわたるポンプ再循環の運転を行うことができる。さらに好ましい方法では、液体と固体の両成分を同時に分散装置に添加し、シングルパスで混合する。
【0060】
好ましい実施形態において、余剰分の分散媒が、完成した分散液から、好ましくは単に機械的に、例えばふるい分けにより分離される。分離された余剰分の分散液は、その後、新たな分散液を製造するために再循環させることができる。
【0061】
工程b.の後の分散液および/または工程c.に使用される分散液のポリウレタン含有量は、好ましくは、5~18重量%、より好ましくは8~15重量%の範囲である。固形分濃度が低すぎる場合には、工程c.の反応に入る液体の量が多すぎて、反応条件に悪影響を及ぼす可能性がある。固形分濃度が高すぎる場合には、分散工程、分散液の取扱いおよびポンプでの搬送が妨げられ、固形分の分布が不均一になる可能性がある。比較例2および図3に示すように、固形分含有量が高すぎると、分散液ではなく湿潤したPU粉末が得られる。
【0062】
さらにより好ましくは、工程b.の後の分散液および/または工程c.に使用される分散液中のポリウレタン粒子の粒径は、10~2000μm、好ましくは50~1500μm、より好ましくは100~1000μmの範囲である。
【0063】
好ましくは、工程b.で得られた分散液は、工程c.の反応器に供給される。起こり得る分離効果を避けるために、分散液を連続的かつ集中的に、例えばポンプでの強制搬送、高流量などによってかき混ぜることが有利であることが実証された。工程b.で得られた分散液は、工程c.の反応器に直接供給することができる。また、分散液の中間バッファリングを、好ましくは撹拌容器、または外部循環ラインおよびポンプを備えた容器で行うこともできる。原則的にこの段階は、分散液の追加処理、例えば規定温度への調温、採用したポリウレタンの精製および/または除菌に使用することができる。精製は、追加の洗浄工程を含むことができ、除菌は、過酸化水素、オゾン、熱などによる処理を含むことができる。
【0064】
代替的な実施形態において、分散液を、加溶媒分解反応器内で調製することができる。本実施形態において、加溶媒分解反応を開始する前にポリウレタン原料の全量を分散させることが好ましい。本実施形態において、バッファータンクのコストを回避することができる。内部または外部の分散装置を使用することができる。外部装置は、反応器からポンプで搬出された反応混合物を分散液に変換し、この分散液をポンプで反応器に戻す装置である。内部分散装置は、加溶媒分解反応器内で分散液を調製するために使用され、好ましくは、様々な幾何学的形状を有する単段もしくは多段のロータ・ステータシステム、または高速運転式ディゾルバディスク、または鋸歯状インペラが使用される。本発明の本実施形態の方法では、撹拌反応溶液の入った加溶媒分解反応器に乾燥ポリウレタン粉末を供給する方法とは異なり、均質な分散液を生成するために、従来の撹拌機に加えて、またはその代わりに分散装置が使用される。したがって、ポリウレタンは単に反応媒体中で撹拌されるだけではない。加溶媒分解反応器内で分散液を調製するために使用される分散媒が、すでに加溶媒分解のためのすべての反応物を含んでいる場合、加溶媒分解は通常、分散工程を終了した後に分散液の温度を上昇させることから開始される。加溶媒分解反応器内の分散液が加溶媒分解に必要なすべての反応物を含んでいない場合、分散液の温度を加溶媒分解の反応温度まで上昇させ、不足する反応物を反応器に添加するか、または反応器内の分散液に不足する反応物を添加し、その後、分散液の温度を加溶媒分解の反応温度まで上昇させるか、または分散液の昇温中に反応器内の分散液に不足する反応物を添加することができる。
【0065】
好ましくは加溶媒分解反応器への供給中に、反応器内の圧力上昇に抗して搬送することが必要な場合、これは、例えばポンプまたは加圧計量供給容器によって実施することができ、これにより、乾燥ポリウレタンフォームの計量供給とは対照的に、著しくより小さい導管断面積およびよりコンパクトな設計が可能になる。
【0066】
工程b.が、特に二段法b1.およびb2.として実施される場合、これにより、工程c.における加溶媒分解反応に関する2つの問題が同時に解決される。一方では、ポリウレタンは、良好に計量供給可能で搬送しやすく緻密な形状に変換され、これにより、反応器への良好でかつ高度の装填が可能となる。他方では、ポリウレタン粒子は、小さな粒径および大きな外表面積を有しており、これにより、緻密な形状にもかかわらず、反応器内での迅速な転化が可能となる。
【0067】
工程c.では、任意の公知の加溶媒分解法、特にアルコール分解法、好ましくは解糖法および加メタノール分解法、アミノ分解法、加安分解法、加水分解法または酸分解法を用いることができる。
【0068】
好ましくは、工程c.は、80℃~200℃、好ましくは90℃~180℃、より好ましくは95℃~170℃、最も好ましくは100℃~160℃の温度で行われる。反応温度が過度に低いと、転化速度および収率が過度に低くなる。反応温度が過度に高いと、望ましくない副反応が起こり、エネルギー消費量が非常に多くなる。
【0069】
前述したように、工程c.の反応時間が非常に短くてすむことは、本発明の方法の特別な利点である。したがって、加溶媒分解を1分間~14時間、好ましくは1分間~12時間、より好ましくは5分間~10時間、さらにより好ましくは10分間~5時間、特に好ましくは20分間~2時間、殊に好ましくは20分間~1時間、最も好ましくは20分間~50分間実施するのが好ましい。反応時間は、反応混合物が目標反応温度に達した瞬間から始まり、反応温度が目標反応温度から永続的に逸脱した瞬間に終わる時間と定義される。「永続的に」とは、温度制御プロセスによって引き起こされる目標反応温度付近のわずかな変動が、反応時間の終わりを定めないことを意味する。好ましくは、反応時間の終了時に、反応混合物は目標温度未満に永続的に冷却される。
【0070】
反応が異なる目標温度で実施される場合、すなわち異なる温度で異なる相で実施される場合、上記で定義された温度範囲におけるすべての反応時間がまとめられる。
【0071】
加溶媒分解は、好ましくは大気圧下で行われる。加溶媒分解法および原料によっては、工程c.を昇圧下で、特に1~15bara、好ましくは1~10bara、より好ましくは1~5baraの圧力下で実施すると、反応速度をさらに向上させるのに有益な場合がある。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程c.は、加水分解として実施される。より好ましくは、工程b.で得られたポリウレタン分散液を、塩基および触媒としての第四級アンモニウム塩の存在下で水と接触させて、活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオール、および有機ポリアミンを得る。塩基は、好ましくは水溶液として、特に好ましくは飽和塩基水溶液として使用される。
【0073】
本発明の本実施形態の方法は、ポリウレタン中に存在するウレタン結合およびウレア結合の効果的な加水分解開裂をもたらし、ポリウレタンは、活性水素含有ポリエーテル、特にポリエーテルポリオール、ポリアミン、そしてポリウレタンが鎖延長剤または硬化剤を使用して調製された場合には低分子量グリコール、ジオール、ジアミンが生成されるように処理される。
【0074】
本発明の方法で回収される活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオールの構造は、本発明の方法で処理されるポリウレタンの調製に使用されたポリエーテルポリオールの構造と相関関係がある。
【0075】
本発明の方法の本実施形態で回収されるポリアミンの構造は、本発明の方法で処理されるポリウレタンの調製に使用されたポリイソシアネートの構造と相関関係がある。「ポリアミン」は、ジアミンを含み、好ましくは、分子中に2つ以上の第一級アミノ基を有するアミンを含む。
【0076】
第1の特定の好ましい実施形態において、工程c.における加水分解は、工程b.で得られたポリウレタン分散液を、塩基と触媒との組み合わせ(I)の存在下で水と接触させることによって実施され、ここで、塩基は、アルカリ金属カチオンおよび/またはアンモニウムカチオンを含み、25℃における1~10のpKb値を有し、触媒は、6~30個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩および少なくとも7個の炭素原子を有する有機スルホネートからなる群から選択される。
【0077】
この第1の特定の好ましい実施形態で使用される塩基は、アルカリ金属カチオンおよび/またはアンモニウムカチオンを含み、25℃における1~10、好ましくは1~8、より好ましくは1~7、最も好ましくは1.5~6のpK値を有する。有機塩基、すなわち1つ以上のCH結合を含む塩基も、無機塩基、すなわちCH結合を含まない塩基も使用することができる。好ましくは、低腐食性または非腐食性の塩基が使用される。特に好ましくは、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される塩基が本発明の方法で使用される。本発明の塩基中のアンモニウムカチオンとしては、NH 、NHR 、NH 、NHが挙げられ、例えば水酸化アンモニウムとしては、NHOH、NHROH、NHOH、NHROHが挙げられ、ここで、Rは、有機基を表し、アンモニウムカチオン中の基Rは、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、塩基のアンモニウムカチオンは、NH4を表す。特に好ましい本発明の塩基は、アルカリ土類金属カチオンを含まない。
【0078】
さらにより好ましくは、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される塩基が使用される。
【0079】
最も好ましくは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基が使用される。
【0080】
好ましいアルカリ金属は、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物、最も好ましくは、NaおよびKならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0081】
前記の塩基を使用することにより、特別な腐食保護なしに標準的な装置、好ましくは鋼鉄製反応器において本発明の方法を運転することができ、したがって、前記の塩基の使用は、プラントの投資コストの削減に大きく寄与する。また、非常に安価な塩基を使用することも可能であり、これは運転コストの削減に貢献する。
【0082】
反応混合物中の塩基の量は、ポリウレタンの所望の加水分解を実用的な速度で触媒するのに十分でなければならない。好ましくは、ポリウレタンに対する塩基の重量比は、0.01~50、より好ましくは0.1~25、最も好ましくは0.5~20の範囲である。好ましくは、塩基は、塩基および水を含む塩基溶液の形態で使用され、さらにより好ましくは飽和塩基溶液として使用される。飽和塩基溶液が使用される場合、25℃で計算したポリウレタンに対する飽和塩基溶液の重量比が、0.5~25、より好ましくは0.5~15、さらにより好ましくは1~10、最も好ましくは2~7の範囲であることが好ましい。
【0083】
第2の特定の好ましい実施形態において、工程c.における加水分解は、工程b.で得られたポリウレタン分散液を、塩基と触媒との組み合わせ(II)の存在下で水と接触させることによって実施され、ここで、塩基は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基であり、触媒は、6~14個の炭素原子、好ましくはアンモニウムカチオンがベンジル基を含む場合には6~12個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩である。
【0084】
この第2の特定の好ましい実施形態で好ましく使用される塩基は、25℃における1未満、好ましくは0.5~-2、より好ましくは0.25~-1.5、最も好ましくは0~-1のpK値を有する強無機塩基である。無機塩基は、CH結合を含まない塩基である。
【0085】
特に好ましい強塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいアルカリ金属は、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物、最も好ましくは、NaおよびKならびにそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいアルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Baおよびそれらの混合物、最も好ましくは、MgおよびCaならびにそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、カリウムまたはナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属が使用される。
【0086】
前記の塩基を使用することにより、先行技術の方法と比較して、より低温でより高い収率で本発明の方法を運転することができ、したがって、前記の塩基の使用は、運転コストの低減に著しく寄与する。
【0087】
反応混合物中の塩基の量は、ポリウレタンの所望の加水分解を実用的な速度で触媒するのに十分でなければならない。好ましくは、ポリウレタンに対する塩基の重量比は0.01~25、より好ましくは0.1~15、さらにより好ましくは0.2~10、最も好ましくは0.5~5である。塩基は、好ましくは塩基および水を含む塩基溶液の形態で使用される。効率的な転化率のためには、塩基溶液中の塩基の濃度が、塩基溶液の重量に対して5重量%以上、好ましくは5~70重量%、より好ましくは5~60重量%、さらにより好ましくは10~50重量%、特に好ましくは15~40重量%、最も好ましくは20~40重量%であれば特に好ましい。
【0088】
第3の特定の好ましい実施形態において、工程c.における加水分解は、工程b.で得られたポリウレタン分散液を、塩基と触媒との組み合わせ(III)の存在下で水と接触させることによって実施され、ここで、塩基は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基であり、触媒は、15~30個、好ましくは15~28個、より好ましくは15~24個、さらにより好ましくは16~22個、最も好ましくは16~20個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩である。
【0089】
塩基と触媒との組み合わせ(III)における強塩基は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、塩基のアルカリ金属は、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物、最も好ましくは、NaおよびKならびにそれらの混合物からなる群から選択され、かつ/またはアルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Baおよびそれらの混合物、好ましくは、MgおよびCaならびにそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、カリウムまたはナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属が使用される。
【0090】
好ましい実施形態および3つの特定の好ましい実施形態において触媒として使用される第四級アンモニウム塩は、好ましくは、一般構造RNXを有し、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なり、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから選択されるヒドロカルビル基であり、Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、好ましくは酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される。
【0091】
塩基と触媒との組み合わせ(I)を用いる第1の特定の好ましい実施形態において、R、R、RおよびRならびにXは、以下のように定義される:
- RおよびRは、同一であるかまたは異なり、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Rは、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状であり、
- Rは、3~12個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~7個、最も好ましくは4~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状でかつ飽和であり、
- Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される。
【0092】
さらにより好ましくは、R~Rは、上記の定義であって、
第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が、6~14個、好ましくは7~14個、より好ましくは8~13個であるか、
または
第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が、15~30個、好ましくは15~28個、より好ましくは15~24個、さらにより好ましくは16~22個、最も好ましくは16~20個である
ものから選択される。
【0093】
塩基と触媒との組み合わせ(II)を用いる第2の特定の好ましい実施形態において、R、R、RおよびRならびにXは、以下のように定義される:
- R~Rは、同一であるかまたは異なり、1~6個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、さらにより好ましくは1~3個、特に好ましくは1または2個、最も好ましくは1個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Rは、3~11個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~8個、最も好ましくは4~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~11個、好ましくは6~10個、最も好ましくは6~8個の炭素原子を有するアリール基、および7~11個、好ましくは7~10個、最も好ましくは7~9個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましいのは、直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される。
【0094】
さらにより好ましくは、R~Rは、上記の定義であって、
がベンジル基ではない場合、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~14個、好ましくは7~14個、より好ましくは8~13個となるように選択されるか、
または
がベンジル基である場合、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~12個、好ましくは7~12個、より好ましくは8~11個となるように選択される
ものから選択される。
【0095】
塩基と触媒との組み合わせ(III)を用いる第3の特定の好ましい実施形態において、R、R、RおよびRならびにXは、以下のように定義される:
- RおよびRは、同一であるかまたは異なり、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状の飽和アルキル基であり、
- Rは、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~7個、さらにより好ましくは1~6個、特に好ましくは1~5個、最も好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状であり、
- Rは、3~12個、好ましくは3~10個、より好ましくは3~7個、最も好ましくは4~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個、好ましくは6~12個、最も好ましくは6~10個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個、好ましくは7~12個、最も好ましくは7~10個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、最も好ましくは直鎖状でかつ飽和であり、
- Xは、ハロゲン化物、好ましくは塩化物および/または臭化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、好ましくはメチル硫酸塩およびエチル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される。
【0096】
さらにより好ましくは、R~Rは、上記の定義であって、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が、15~30個、好ましくは15~28個、より好ましくは15~24個、さらにより好ましくは16~22個、最も好ましくは16~20個であるものから選択される。
【0097】
工程c.に関する好ましい実施形態および3つの特定の好ましい実施形態において、第四級アンモニウム塩が相間移動触媒として使用される。これらの相間移動触媒を微量でも添加すると、加水分解速度が加速されるが、ポリウレタンの重量に対して少なくとも0.5重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらにより好ましくは1~10重量%、特により好ましくは1~8重量%、殊に好ましくは1~7重量%、最も好ましくは1~6重量%の触媒を使用することが好ましい。
【0098】
工程c.に関する好ましい実施形態および3つの特定の好ましい実施形態において、水は、所望のポリウレタン加水分解反応において反応物として機能し、したがって、加水分解するポリマー中のウレタン官能基に対して化学量論的に過剰に存在する必要はないが、総じて、反応媒体ならびに溶媒または強塩基および活性化剤の担体として都合よく機能し得るように、相当量の水を利用することが望ましいであろう。これらの理由から、水は、好ましくは凝縮(液体)形態で存在する。典型的には、ポリウレタンと水の重量比は、3:1~1:15である。
【0099】
加水分解は、好ましくは大気圧で行われるが、所望であれば超大気圧を用いることもできる。任意に、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、スルホキシド、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素のような水混和性または水非混和性溶媒を反応混合物中に存在させることができ、これにより、加水分解プロセスが促進されるか、または反応生成物の回収が支援される。
【0100】
加水分解反応は、任意の適切な容器または他の装置(例えば、撹拌槽反応器またはスクリュー押出機)において、バッチ式、連続式または半連続式で実施することができ、それによって、ポリウレタンを塩基および活性化剤の存在下で水と接触させることができる。総じて、緊密な接触、迅速な加水分解速度および適切な温度制御が保証されるように、反応成分のかき混ぜまたは撹拌を行うことが好ましいであろう。
【0101】
以下の実施例で実証されるように、前述の好ましい実施形態および3つの特定の好ましい実施形態の加水分解プロセスを選択することは有益であり、なぜならば、再生ポリオールの品質が優れており、再生ポリオールが、ポリウレタン原料の製造の元となるポリオールと非常に類似しているかまたはさらには同一であるためである。再生ポリオールは、ポリウレタンフォームのこれまで知られている製品品質を維持しながら、新たなポリウレタンフォーム、好ましくは柔軟なポリウレタンフォームの製造に多量に使用することができる。再生ポリオールは、特に、得られるポリウレタンフォームの物理的および機械的特性を考慮してこれまで再生ポリオールを使用せずに製造されていた柔軟なポリウレタンフォームの製造に使用することができる。
【0102】
さらに、好ましい実施形態および3つの特定の好ましい実施形態において、優れた収率で30分という非常に短い加水分解の反応時間が達成されている。
【0103】
塩基と触媒との組み合わせ(I)を用いる第1の特定の好ましい実施形態は、ポリウレタンを効果的に解重合するために、多種多様な安価な塩基および/または低腐食性もしくは非腐食性塩基を使用できるという付加的な利点を有する。本実施形態の方法は、使用する触媒に関して非常にフレキシブルである。本発明者らは、炭素原子数の少ないアンモニウムカチオンも、炭素原子数の多いものと同様に効果的に使用できることを見出した。これにより、運転温度に関してよりフレキシブルとなる。
【0104】
本発明の方法は、好ましくは、加溶媒分解の反応生成物、好ましくは有機ポリアミンおよび/または活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオールを分離および回収する追加の工程d.を含む。
【0105】
加溶媒分解で生成した活性水素含有ポリエーテル、好ましくはポリエーテルポリオール、有機ポリアミン、鎖延長剤および硬化剤は、例えば抽出(例えば抽出剤として水非混和性有機溶媒を使用)、蒸留、沈殿、濾過などの当該技術分野で公知の任意の適切な方法または方法の組み合わせを使用して、粗反応混合物から分離および回収することができる。
【0106】
分析方法
ポリウレタン粉末の粒径
工程b1(乾式ミリング)および工程b2(湿式分散)後のポリウレタンの粒径分布の測定に、レーザー回折分析装置(型番:Horiba LA-950)を使用した。測定中に粒子をより良好に分散させるため、試料を超音波で最大120秒間処理した。
【0107】
これ以上の詳細な説明がなくとも、当業者であれば、前述の説明を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の実施例は、単に例示であって、特許請求の範囲または本開示の残りの部分を何ら限定するものではないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1a】工程b1後のPUフォームを示す図である。
図1b】工程b1後のPUフォームの詳細を示す図である。
図2a】工程b1および工程b2の1回目のパスの後のPUフォーム粒子(実施例1)を示す図である。
図2b】工程b1および工程b2の10回目のパスの後のPUフォーム粒子(実施例1)を示す図である。
図3】100mlのポリオール中の30gの粉砕PUの混合物を示す図である。
【0109】
実施例
実施例1:水性分散液の調製
原料として、100%ポリオールをベースとする、辺長約16×24×24cmのポリウレタンフォームキューブを使用した。このキューブを手で切断して粗い断片にし、Condux社製カッティングミル(CS 230/220/N1型)に計量供給した。このミルは、2mm角の穿孔を有するふるい層を備えていた。カッティングミルから雪のようなふわふわの粉末が得られ、これを水に分散させた。これを、コーンインサート(MKO型)を備えたIKA社製コロイドミル(MK 2000/5型)で行った。ポリウレタンスノーを水と1:20の重量比でコロイドミルに計量供給し、パス運転モードで10パスにわたって分散させた。プロセスの最後に粒径を測定した結果、平均粒径d50=592μmであった。達成された発泡セル構造の開放を、図2a、図2bに示す。こうして得られた分散液を、その後の加水分解反応に使用した。
【0110】
実施例2:炭酸カリウム水溶液中の分散液の調製
原料として、100%ポリオールをベースとする、辺長約16×24×24cmのポリウレタンフォームキューブを入手した。このキューブを手で切断して粗い断片にし、Condux社製カッティングミル(CS 230/220/N1型)に計量供給した。このミルは、4mm角の穿孔を有するふるい層を備えていた。カッティングミルから雪のようなふわふわの粉末が得られ、これを、コーンインサート(MKO型)を備えたIKA社製コロイドミル(MK 2000/5型)で分散させた。分散媒として、40重量%のKCO水溶液を使用した。このKCO溶液を添加剤Tomadol 1-5と混合し、その際、その割合は、ポリウレタンの乾燥量に対して1%の添加剤が使用されるように計算した。分散液の調製には、50gのポリウレタンスノー(乾燥)および1.5kgのKCO溶液を使用し、これには0.5gのTomadol 1-5が含まれていた。これらの成分を同時にコロイドミルに計量し、次いで10パスにわたるパスで分散させた。プロセスの最後に粒径を測定した結果、平均粒径d50=525ミクロンであった。この分散液をその後の加水分解反応に使用した。
【0111】
実施例3:炭酸カリウム水溶液中の分散液の調製
実施例2に記載した実験の改良で、分散液を加水分解に使用する前に、余剰分の分散流体を分離するために最終的に300μmのふるいで分散液を濾過した。その結果、分散流体の量は約50%減少した。
【0112】
実施例4:再循環による炭酸カリウム水溶液中の分散液の調製
実施例2を繰り返したが、ただし以下の変更を加えた:
カッティングミルから得られたポリウレタンスノーを、パスモードではなく再循環モードでコロイドミル中に分散させた。コロイドミルの液体排出口にポンプを設置し、このポンプで分散媒をミルの上部にある供給タンクに送り返した。供給タンクを分散媒で満たし、今回はこれにTomadol 1-5が含まれており、ミルを始動させた。分散媒をポンプでミルに送って供給タンクに戻す間、必要な量のポリウレタンスノーを液体循環部に連続的に計量した。ポリウレタンの目標濃度に達した後、分散液を液体循環部内で短時間循環させ、その後、さらに使用するために取り出した。プロセスの最後に粒径を測定した結果、平均粒径d50=694μmであった。
【0113】
実施例5:ポリウレタンスノー分散液の加水分解
実施例1の50gのポリウレタンスノー分散液から、余剰分の水相を濾過によって分離し、水中40重量%のKCO溶液490gを分散液に添加した。得られた分散液をさらに、2.5gの第四級アンモニウム塩である硫酸水素テトラブチルアンモニウム(C=16)と混合した。この懸濁液を耐圧反応器に加える。この反応器では十分な混合が保証される。
【0114】
反応器のジャケットに接続されたサーモスタットにより、撹拌された混合物を所望の反応温度まで加熱し、反応終了後に冷却する。反応を、内温150℃で、昇圧(反応混合物の沸騰圧力と同じかそれ以上)で行った。30分後に反応器から反応溶液を排出することにより、反応を中断した。
【0115】
反応混合物の有機フラクションの乾燥残渣を秤量することにより転化率を測定し、表1に示した。このために、有機相およびDMSO可溶性固体をDMSOに溶解させた。未溶解の固体、すなわち残存するPUおよびKCOを濾過し、HClで洗浄した。HClで洗浄することにより、炭酸カリウムを溶解させ、未反応のPUのみがフィルター上に残る。
【0116】
比較例1:
実施例5に記載した手順を比較例1で繰り返した。本発明のポリウレタンスノー分散液の代わりに、ポリウレタンフォームキューブを加水分解に使用した。これは、同じ原料ポリウレタンフォームを160℃、保持時間10分で熱間圧縮し、熱間圧縮ポリウレタンを平均サイズ約1×1×2cmのキューブに切断することによって得られたものである。各時点で転化率を調べ、表1に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
表1から明らかであるように、工程b1.(カッティングミル)およびb2.(分散工程)を用いて得られた実施例5の本発明の分散液は、30分以内に完全に転化可能である。これとは対照的に、先行技術で提案されているような熱間圧縮および切断によって処理された同一のポリウレタンフォームは、90分の反応時間後でさえ97%までしか転化できなかった。
【0119】
比較例2:
米国特許出願公開第2016/00347927号明細書の実施例1において、500gの硬質PUを粉砕した。粉砕中に合計500gの再生ポリオールを添加し、ポリオール中50重量%の粉砕PU粉末を含む混合物を得た。米国特許出願公開第2016/0347927号明細書には、使用した粉砕機の詳細は記載されていない。したがって、本例を直接再現することは不可能である。
【0120】
しかし、米国特許出願公開第2016/0347927号明細書の粉砕物を本発明と比較するために、予め粉砕したポリオールを100ml(97g)のポリオールに、撹拌下で、得られた混合物が分散液ではなく湿潤粉末を形成するまで、すなわち反応混合物が導管を通じてポンプで搬送できなくなるまで添加した。30gの粉砕PUを添加すると、図3に示すような湿潤粉末が得られることが判明した。加圧下でも、湿潤粉末から液体を押し出すことはできなかった。
【0121】
このことは、米国特許出願公開第2016/0347927号明細書の実施例1で得られた粉砕粉末のように、PU含有量が30重量%以上の粉砕PUとポリオールとの混合物は、分散液、特に本発明のようなポンプでの搬送が可能な分散液とはみなせないことを示している。このような高い固形分含有量を有するポリオール中の粉砕PUの混合物は、スクリューコンベアやコンベアベルトのような固形物用の搬送手段で処理および搬送しなければならず、小口径の導管を通じてポンプで搬送することはできない。
【0122】
溶媒含有率30重量%のポリオール中の粉砕PUの混合物を粉砕機で製造しようとした結果、またもや湿潤粉末が発生した。湿潤粉末はミルの壁部に付着し、これにより、実験後のミルの清浄化に多大な労力を要した。このような材料を用いた場合、ミルの連続運転は不可能である。
【0123】
比較例2で得られた湿潤粉末を用い、比較例1に記載したような条件で加水分解実験を行ったところ、本発明による分散液を用いた場合に比べて反応時間を50%長くしても、転化が不完全であった。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの加溶媒分解方法であって、
a.ポリウレタンを提供する工程と、
b.前記ポリウレタンから分散液を調製する工程と、
c.前記ポリウレタン分散液の加溶媒分解を行う工程と
を含む方法であって、
分散させる前記ポリウレタンが、レーザー回折分析装置によって測定された0.1~12mmの平均粒径を有し、
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中の前記ポリウレタン含有量が、4~20重量%の範囲であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程b.が、
b1.工程a.で提供された前記ポリウレタンを、細断、粉末化、グラインディング、ミリング、切断または他の方法で粉砕して、ポリウレタン粉末を得る工程と、
b2.工程b1.で得られた前記ポリウレタン粉末か、コロイドミル、様々な幾何学的形状を有する単段もしくは多段のロータ・ステータシステム、または撹拌容器内の高速運転式ディゾルバディスクもしくは鋸歯状インペラからなる群から選択される装置を使用して分散液を製造する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
分散させる前記ポリウレタン粉末が、レーザー回折分析装置によって測定された0.2~4mmの平均粒径を有し、かつ/または30kg/mより高い嵩密度を有することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程b1.を、周囲温度~120℃の温度範囲で実施し、
かつ/または
工程b2.を、10~90℃の温度で実施する
ことを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記加溶媒分解工程c.で反応物および/もしくは溶媒として使用される液体もしくは液体と他の成分との混合物、または工程c.の加溶媒分解反応生成物を、工程b.あるいはb2.で分散媒として使用し、
かつ/または
前記ポリウレタン粉末を、1:5~1:40の重量比で前記分散媒と混合し、
かつ/または
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中のポリウレタン含有量が、5~18重量%の範囲であり、
かつ/または
工程b.の後の前記分散液および/または工程c.に使用される前記分散液中のレーザー回折分析装置によって測定されたポリウレタン粒子の粒径が、10~2000μmの範囲である
ことを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項6】
工程bまたは工程b2.を、加溶媒分解反応器内で実施し、前記加溶媒分解反応を開始する前に前記ポリウレタンの全量を分散させることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
工程c.を加水分解として実施し、活性水素含有ポリエーテルおよび有機ポリアミンを得ることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項8】
工程c.における前記加水分解を、工程b.で得られた前記ポリウレタン分散液を、塩基と触媒との組み合わせ(I)、(II)または(III)の存在下で水と接触させることによって実施し、ここで、
前記塩基と触媒との組み合わせ(I)は、アルカリ金属カチオンおよび/またはアンモニウムカチオンを含み、かつ25℃における1~10のpKb値を有する塩基と、6~30個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩および少なくとも7個の炭素原子を有する有機スルホネートからなる群から選択される触媒とを含み、
または
前記塩基と触媒との組み合わせ(II)は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基と、触媒としての、6~14個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩とを含み、
または
前記塩基と触媒との組み合わせ(III)は、25℃における<1のpKb値を有する強無機塩基と、触媒としての、15~30個の炭素原子を有するアンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩とを含む
ことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
塩基と触媒との組み合わせ(I)における塩基を構成する前記アルカリ金属カチオンが、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属リン酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、水酸化アンモニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属が、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記塩基と触媒との組み合わせ(II)または(III)における前記強塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ金属が、Na、KおよびLiならびにそれらの混合物からなる群から選択され、かつ/または前記アルカリ土類金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Baおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、R、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なり、アルキル、アリールおよびアリールアルキルから選択されるヒドロカルビル基であり、Xは、ハロゲン化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩、または水酸化物からなる群から選択される、請求項記載の方法。
【請求項14】
塩基と触媒との組み合わせ(I)および(III)に関して、前記触媒は、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、
- RおよびRは、同一であるかまたは異なり、1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、
- Rは、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、
- Rは、3~12個の炭素原子を有するアルキル基、6~14個の炭素原子を有するアリール基、および7~14個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、
- Xは、ハロゲン化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択され、
かつ/または
塩基と触媒との組み合わせ(II)に関して、前記触媒は、一般構造RNXを有する第四級アンモニウム塩であり、ここで、
- R~Rは、同一であるかまたは異なり、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、
- Rは、3~11個の炭素原子を有するアルキル基、6~11個の炭素原子を有するアリール基、および7~11個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、飽和または不飽和であってよく、
- Xは、ハロゲン化物、硫酸水素、アルキル硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
塩基と触媒との組み合わせ(I)に関して、
~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~14個となるように選択されるか、
または
~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が15~30個となるように選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
塩基と触媒との組み合わせ(II)に関して、
がベンジル基ではなく、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~14個となるように選択されるか、
または
がベンジル基であり、R~Rが、第四級アンモニウムカチオン中の炭素原子の合計が6~12個となるように選択される、請求項13または14記載の方法。
【請求項17】
前記第四級アンモニウム塩を、相間移動触媒として、前記ポリウレタンの重量に対して少なくとも0.5重量%使用する、請求項記載の方法。
【請求項18】
加溶媒分解の反応生成物を分離および回収する追加の工程を含む、請求項記載の方法。
【請求項19】
工程c.における前記加溶媒分解を、
80℃~200℃の温度で、
かつ/または
1分間~14時間実施する、請求項記載の方法。
【請求項20】
前記工程c.における加溶媒分解を、大気圧または昇圧下で実施する、請求項記載の方法。
【国際調査報告】