(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】スペクトルを測定するプローブ、及びスペクトルを測定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20241018BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20241018BHJP
A61B 10/02 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
G01N21/65
A61B10/00 E
A61B10/02 300D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526786
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 SG2022050804
(87)【国際公開番号】W WO2023080846
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10202112278Q
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】ズィウェイ ファン
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA06
2G043BA16
2G043CA04
2G043EA01
2G043EA03
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA05
2G043JA01
2G043JA03
2G043KA01
2G043KA09
2G043LA01
2G043MA01
2G043NA01
(57)【要約】
本発明は、生体物質(2)内の標的(21)のスペクトルを測定するプローブ(1)であって、レンズ部(111)を有する光学構造体(11)と、光学構造体(11)に結合されている通信線(12)とを含むプローブ(1)を提供する。プローブ(1)の光学構造体(11)は、通信線(12)から入ってくる光を標的(21)の方へ集束させ、標的(21)から入ってくる散乱光を通信線(12)の方へ集束させるレンズ部(111)を形成するために先細りされている露出端部を有する。更に、プローブ(1)を組み込むシステム(3)、及びシステム(3)を使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質(2)内の標的(21)のスペクトルを測定するプローブ(1)であって、
レンズ部(111)を有する光学構造体(11)と、
前記光学構造体(11)に結合されている通信線(12)と
を含み、
前記光学構造体(11)は、前記通信線(12)から入ってくる光を前記標的(21)の方へ集束させ、前記標的(21)から入ってくる散乱光を前記通信線(12)の方へ集束させる前記レンズ部(111)を形成するために先細りされている露出端部を有する、
プローブ(1)。
【請求項2】
前記光学構造体(11)は、前記光学構造体(11)の前記レンズ部(111)と前記通信線(12)との間に配置されているスペーサー部(112)を更に含む、請求項1に記載のプローブ(1)。
【請求項3】
前記光学構造体(12)の前記スペーサー部(111)は、約40μm以下の長さを有する、請求項2に記載のプローブ(1)。
【請求項4】
前記レンズ部(111)は、部分球形、半球形又は半球形のうちいずれか1つを有する状態で更に丸められている、請求項1~3のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項5】
前記光学構造体(11)の前記レンズ部(111)は、約200μm以下の半径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項6】
前記光学構造体(11)は、前記レンズ部(111)を形成するように研磨されている前記露出端部と前記通信線(12)に結合されている反対端部とを有するコアレス終端ファイバーである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項7】
前記通信線(12)は、アルミニウムで被覆されているクラッディング(121)を有する多モード光ファイバーである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項8】
前記光学構造体(11)及び前記通信線(12)は共に、約500μm以下の直径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項9】
生体物質(2)内の標的(21)のスペクトルを測定するシステム(3)であって、
入力光を供給する光源(31)と、
前記生体物質に挿入され、前記生体物質(2)に挿入されている標的(21)に達する部分を有するプローブ(1)であって、前記光源(31)からの前記入力光を前記標的(21)の方へ向け、前記標的(21)からの散乱光を出力光として受信する、レンズ部(111)を有する光学構造体(11)と、前記光学構造体(11)に結合されている通信線(12)とを有するプローブ(1)と、
前記プローブ(1)から前記出力光を受信し、前記標的(21)の生スペクトルデータを生成するスペクトル検出器(33)と
を含み、
前記プローブ(1)は、前記通信線(12)から入ってくる前記入力光を前記標的(21)の方へ集束させ、前記標的(21)から入ってくる散乱光を前記通信線(12)の方へ集束させる前記レンズ部(111)を形成するために先細りされている露出端部を有する前記光学構造体(11)を有する、
システム(3)。
【請求項10】
前記プローブ(1)の前記光学構造体(11)は、前記光学構造体(11)の前記レンズ部(111)と前記通信線(12)との間に配置されているスペーサー部(112)を更に含む、請求項9に記載のシステム(3)。
【請求項11】
入力光を前記光源(31)と前記プローブ(1)との間に向け、出力光を前記プローブ(1)と前記スペクトル検出器(33)との間に向ける中間体として光モジュール(32)を更に含む、請求項9又は10に記載のシステム(3)。
【請求項12】
前記光モジュール(32)は、
前記入力光又は前記出力光のいずれか1つ又は両方の入口又は出口を可能にする複数の開口部(321a、321b、321c)と、
前記入力光又は前記出力光のいずれか1つ又は両方を視準する複数のレンズ(322a、322b、322c)と、
前記入力光をフィルター処理するバンドパスフィルター(323)と、
前記入力光を反射する二色性フィルター(324)と、
前記出力光をフィルター処理するロングパスフィルター(325)と
を更に含む、請求項11に記載のシステム(3)。
【請求項13】
前記生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するコンピュータ(34)を更に含む、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム(4)。
【請求項14】
前記コンピュータ(34)は、入力モジュール、最小化モジュール、最適化モジュール、バックグラウンドスペクトル推定モジュール、比較モジュール、及び出力モジュールを含む、前記生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理する1つ又は複数のモジュールを更に動作させる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
生体物質(2)内の標的(21)のスペクトルを測定する方法であって、
光源(31)によって、入力光を供給するステップと、
レンズ部(111)を有する光学構造体(11)と、
前記光学構造体(11)に結合されている通信線(12)と
を有するプローブ(1)によって、前記光源(31)からの前記入力光を標的(21)の方へ向けるステップと、
前記プローブ(1)によって、前記標的(21)からの散乱光を出力光として受信するステップと、
スペクトル検出器(33)によって、前記プローブ(1)から前記出力光を受信し、生スペクトルデータを生成するステップと
を含み、
前記プローブ(1)は、前記通信線(12)から入ってくる前記入力光を前記標的(21)の方へ集束させ、前記標的(21)から入ってくる前記散乱光を前記通信線(12)の方へ集束させる前記レンズ部(111)を形成するために先細りされている露出端部を有する前記光学構造体(11)を有する、
方法。
【請求項16】
光モジュール(32)によって、入力光を前記光源(31)と前記プローブ(1)との間に向けるステップと、
前記光モジュール(32)によって、出力光を前記プローブ(1)と前記スペクトル検出器(33)との間に向けるステップと
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ(34)によって、前記生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するステップを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータ(34)によって、前記生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理する前記ステップは、
コンピュータ(34)の入力モジュールによって、前記生スペクトルデータを入力スペクトルデータ及び独立測定データとして受信するステップと、
前記入力スペクトルデータ及び前記独立測定データを用いて前記コンピュータ(34)の最小化モジュールによって、推定干渉濃度データ及び推定自己蛍光バックグラウンドデータを探索するステップと
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記推定干渉濃度データ、前記推定自己蛍光バックグラウンドデータ及び前記独立測定データを用いて前記コンピュータ(34)のバックグラウンドスペクトル推定モジュールによって、全バックグラウンドスペクトルデータを構成するステップと、
前記生スペクトルデータ及び前記全バックグラウンドスペクトルデータを用いて前記コンピュータ(34)の最適化モジュールによって、更新入力スペクトルデータを構成するステップと
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コンピュータ(34)の比較モジュールによって、前記入力スペクトルデータ及び前記更新入力スペクトルデータを比較するステップと、
前記コンピュータ(34)の出力モジュールによって、前記生スペクトルデータ及び前記全バックグラウンドスペクトルデータから前記クリーンスペクトルデータを構成するステップと
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2021年11月5日に出願のシンガポール特許出願第10202112278Q号に対する優先権を主張し、その開示内容全体を引用するものとする。
【0002】
本発明は、生体物質のスペクトル測定に使用される機器に関する。より詳細には、本発明は、深部組織を探査するラマン分光法用のプローブ、このプローブを組み込むシステム、及びこのシステムを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近赤外(NIR)ラマン分光法は、特に、細胞及び組織の無標識特性化及び診断のために、プローブを用いて生体物質の生体分子情報を探査する振動分光法技術を意味する。
【0004】
ラマンプローブにおける最近の開発は、内視鏡的誘導の下で内部器官(例えば、食道、胃、結腸、及び肺など)の生体内組織ラマン分光法測定を可能にしている。針状ラマンプローブ設計は、生検針によって生体内組織ラマン測定を可能にしている。
【0005】
設計される現在の針状ラマンプローブは通常、大きく、0.7mmから2mmの外径を有する。針状ラマンプローブは通常、マルチファイバー及びオンチップ集束光学部品類の1つ又は両方を用いて形成されている。しかし、針状ラマンプローブの外径サイズは、深部組織ラマン測定に使用される殆どの細針吸引生検(FNAB)通路を針状ラマンプローブが通過するのを阻止し、典型的に、0.5mm以下の内径を有する。従って、最小侵襲性深部器官組織特性化のためのサブミリ波光ファイバー針状ラマンプローブを開発することが非常に望ましい。
【0006】
生体物質の生体内測定に使用される機器に関する先行技術を超える開示の技術の中で、医療指導情報を与えるプローブを説明するGB201401727D0号明細書は、平行レーザービームをサンプルに照明する針プローブ内に光路を規定する中空針プローブを含み、光路は、ラマン散乱光又は蛍光などの非弾性散乱のためにサンプルから散乱された光に戻り路を更に与える。
【0007】
しかし、GB201401727D0号明細書に開示の技術は、針状プローブがミリメートル範囲の直径を有するように記載されているので、深部組織ラマン測定に適していないことがある。更に、針状プローブは、悪い光集束性能を示す平坦端部を有するように示されており、更に、励起深部組織の散乱光/蛍光を効果的に収集することができないことがある。従って、本発明によって提供される、深部組織からラマン散乱光又は蛍光を収集する優れた光集束性能及び光収集性能を有する、最小侵襲性深部器官組織特性化のためのサブミリ波光ファイバー針状ラマンプローブを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、深部組織及び器官を探査するラマン分光法用のプローブ、プローブを組み込むシステム、及びシステムを使用する方法を提供することにある。深部組織及び器官は、生体物質内の標的細胞複合体であってもよい。この目的を達成するために、本発明のプローブは、光学構造体及び光学構造体を有する。より詳細には、光学構造体のサイズが小さく、光学構造体は、レンズ部及びスペーサー部を更に含む。プローブとプローブの周囲との間の光の伝搬を、光学構造体によって操作し、光を深部組織の方へ集束させ、又は、光をプローブの通信線の方へ集束させる。
【0009】
有利なことに、本発明は、生体物質(例えば、器官)の生検用の細針に挿入可能なサブミリ波光ファイバー針状ラマンプローブを提供する。更に、本発明のプローブは、生体物質への最小損傷のために、使い捨てできて生物適合するように形成されている。更に、プローブのサブミリ波サイズは、生体物質内の深い侵入を可能にし、これによって、深部組織及び器官(例えば、脳、脊髄、肝臓、肺、リンパ節、胸、心臓血管系、骨、筋肉、関節など)を探査することができる。更に、プローブは、高速無標識測定を可能にし、これによって、分子レベルで即時診断を行う。更に、プローブは、光学的生検及び細針吸引生検に二重適合し、これによって、標的組織サンプリング、液体生検、生体内診断、及び体外診断用の一般的方法に適合する。
【0010】
本発明は、生体物質内の標的のスペクトルを測定するプローブであって、レンズ部を有する光学構造体と、光学構造体に結合されている通信線とを含むプローブを提供することを目的とする。プローブの光学構造体は、通信線から入ってくる光を標的の方へ集束させ、標的から入ってくる散乱光を通信線の方へ集束させるレンズ部を形成するために先細りされている露出端部を有する。
【0011】
好ましくは、プローブの光学構造体は、光学構造体のレンズ部と通信線との間に配置されているスペーサー部を更に含む。
【0012】
好ましくは、光学構造体のスペーサー部は、約40μm以下の長さを有する。
【0013】
好ましくは、レンズ部は、部分球形、半球形又は半球形のうちいずれか1つを有する状態で更に丸められている。
【0014】
好ましくは、光学構造体のレンズ部は、約200μm以下の半径を有する。
【0015】
好ましくは、光学構造体は、レンズ部を形成するように研磨されている露出端部と通信線に結合されている反対端部とを有するコアレス終端ファイバーである。
【0016】
好ましくは、通信線は、アルミニウムで被覆されているクラッディングを有する多モード光ファイバーである。
【0017】
好ましくは、光学構造体及び通信線は共に、約500μm以下の直径を有する。
【0018】
更に、本発明は、生体物質内の標的のスペクトルを測定するシステムであって、入力光を供給する光源と、生体物質に挿入され、標的に達する部分を有するプローブであって、光源からの入力光を標的の方へ向け、標的からの散乱光を出力光として受信する、レンズ部を有する光学構造体と、光学構造体に結合されている通信線とを有するプローブと、プローブから出力光を受信し、標的の生スペクトルデータを生成するスペクトル検出器とを含むシステムを提供することを目的とする。プローブは、通信線から入ってくる入力光を標的の方へ集束させ、標的から入ってくる散乱光を通信線の方へ集束させるレンズ部を形成するために先細りされている露出端部を有する光学構造体を有する。
【0019】
好ましくは、システムのプローブの光学構造体は、光学構造体のレンズ部と通信線との間に配置されているスペーサー部を更に含む。
【0020】
好ましくは、システムは、入力光を光源とプローブとの間に向け、出力光をプローブとスペクトル検出器との間に向ける中間体として光モジュールを更に含む。
【0021】
好ましくは、システムの光モジュールは、入力光又は出力光のいずれか1つ又は両方の入口又は出口を可能にする複数の開口部と、入力光又は出力光のいずれか1つ又は両方を視準する複数のレンズと、入力光をフィルター処理するバンドパスフィルターと、出力光を反射する二色性フィルターと、出力光をフィルター処理するロングパスフィルターとを更に含む。
【0022】
好ましくは、システムは、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するコンピュータを含む。
【0023】
好ましくは、システムのコンピュータは、入力モジュール、最小化モジュール、最適化モジュール、バックグラウンドスペクトル推定モジュール、比較モジュール、及び出力モジュールを含む、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理する1つ又は複数のモジュールを更に動作させる。
【0024】
更に、本発明は、生体物質内の標的のスペクトルを測定する方法であって、光源によって、入力光を供給するステップと、レンズ部を有する光学構造体と、光学構造体に結合されている通信線とを有するプローブによって、光源からの入力光を標的の方へ向けるステップと、プローブによって、標的からの散乱光を出力光として受信するステップと、スペクトル検出器によって、プローブから出力光を受信し、生スペクトルデータを生成するステップとを含む方法を提供することを目的とする。プローブは、通信線から入ってくる入力光を標的の方へ集束させ、標的から入ってくる散乱光を通信線の方へ集束させるレンズ部を形成するために先細りされている露出端部を有する光学構造体を有する。
【0025】
好ましくは、方法は、光モジュールによって、入力光を光源とプローブとの間に向けるステップと、光モジュールによって、出力光をプローブとスペクトル検出器との間に向けるステップとを更に含む。
【0026】
好ましくは、方法は、コンピュータによって、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するステップを更に含む。
【0027】
好ましくは、コンピュータによって、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するステップは、コンピュータの入力モジュールによって、生スペクトルデータを入力スペクトルデータ及び独立測定データとして受信するステップと、入力スペクトルデータ及び独立測定データを用いてコンピュータの最小化モジュールによって、推定干渉濃度データ及び推定自己蛍光バックグラウンドデータを探索するステップとを更に含む。
【0028】
好ましくは、コンピュータによって、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するステップは、推定干渉濃度データ、推定自己蛍光バックグラウンドデータ及び独立測定データを用いてコンピュータのバックグラウンドスペクトル推定モジュールによって、全バックグラウンドスペクトルデータを構成するステップと、生スペクトルデータ及び全バックグラウンドスペクトルデータを用いてコンピュータの最適化モジュールによって、更新入力スペクトルデータを構成するステップとを更に含む。
【0029】
好ましくは、コンピュータによって、生スペクトルデータをクリーンスペクトルデータに処理するステップは、コンピュータの比較モジュールによって、入力スペクトルデータ及び更新入力スペクトルデータを比較するステップと、コンピュータの出力モジュールによって、生スペクトルデータ及び全バックグラウンドスペクトルデータからクリーンスペクトルデータを構成するステップとを更に含む。
【0030】
当業者は、本発明が、目的を実行し、記載の結果及び利点、及び本発明に固有の結果及び利点を取得するのにうまく適していることが容易に分かる。ここに記載の実施形態は、本発明の範囲の限定として意図されていない。
【0031】
本発明の理解を容易にするために、下記の説明に関連して考慮される場合に検討から好ましい実施形態を添付図面で例示し、発明、発明の構造及び作用、及び多くの発明の利点が、容易に分かる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ミクロンスケールにおける本発明のプローブを例示する写真である。
【
図2】標的細胞複合体が存在する特定の深さで生体物質を探査するプローブを例示する光線図である。
【
図3】本発明のプローブを使用するシステムのセットアップを例示する線図である。
【
図4】生体物質2の標的21からラマン散乱光を取得するために
図3のシステム3の使用を説明する第1の動作フローを例示するフローチャートである。
【
図5】コンピュータによって実行される構造化バックグラウンド減算によって生ラマンスペクトルデータから標的のクリーンラマンスペクトルデータを抽出することを説明する第2の動作フローを例示するフローチャートである。
【
図6】特に、平坦プローブと本発明のプローブ(先細りプローブとラベル表示されている)との間の線図比較を更に示す、プローブ深さに対するラマン収集効率のグラフである。
【
図7】プローブファイバー長及び積分時間の変動に応じた最大光子数を例示するグラフである。特に、
図7は、プローブファイバー長に対する最大光子数のグラフである。
【
図8】プローブファイバー長及び積分時間の変動に応じた最大光子数を例示するグラフである。特に、
図8は、プローブ積分時間に対する最大光子数のグラフである。
【
図9】特に、フィンガープリント領域における光子数と高波数領域における光子数との間の線図比較を更に示す、励起出力に対するラマンスペクトル領域における平均最大ファイバーバックグラウンド光子数のグラフを例示する。
【
図10】プローブ1によって収集された標的21の生ラマンスペクトルデータを
図5に例示のステップのようなクリーンラマンスペクトルデータに変換するグラフを例示する。特に、
図10は、生ラマンスペクトルデータとバックグラウンドスペクトルデータとの間の線図比較を更に示す。
【
図11】プローブ1によって収集された標的21の生ラマンスペクトルデータを
図5に例示のステップのようなクリーンラマンスペクトルデータに変換するグラフを例示する。特に、
図11は、
図10の線図の使用に起因するクリーンラマンスペクトルデータを例示する。
【
図12】1つ又は複数の組織サンプルにおけるラマンスペクトルを例示する。特に、
図12は、本発明のプローブによって収集されるような脂肪、皮膚、筋肉、軟骨、灰白質、及び白質の平均組織ラマンスペクトルのグラフを例示する。
【
図13】1つ又は複数の組織サンプルにおけるラマンスペクトルを例示する。
図13は、積分時間に対して1655cm
-1の波数での
図12の組織の信号対雑音(SNR)比のグラフを例示する。
【
図14】1つ又は複数の組織サンプルにおけるラマンスペクトルを例示する。
図14は、積分時間に対して2940cm
-1の波数での
図12の組織の信号対雑音比のグラフを例示する。
【
図15】本発明のプローブを用いて収集された1つ又は複数の生物流体に対するラマンスペクトルグラフを例示する。特に、
図15は、尿及び血液に対する平均ラマンスペクトルを例示する。
【
図16】本発明のプローブを用いて収集された1つ又は複数の生物流体に対するラマンスペクトルグラフを例示する。
図16は、尿及び血液に対するラマンスペクトルのSNRを例示する。
【
図17】マウスの脳モデルからラマンスペクトルを収集するセットアップ及び手順を例示する。
図17は、マウスの脳モデルの写真を例示する。
【
図18】マウスの脳モデルからラマンスペクトルを収集するセットアップ及び手順を例示する。
図18は、マウスの脳モデルを用いた本発明のプローブの写真を例示する。
【
図19】マウスの脳モデルからラマンスペクトルを収集するセットアップ及び手順を例示する。
図19は、マウスの脳モデルにわたる様々な深さにおけるマウスのモデルの平均組織ラマンスペクトルを例示する。
【
図20】マウスの脳モデルからラマンスペクトルを収集するセットアップ及び手順を例示する。
図20は、
図19からのデータに基づくマウスの脳モデルにわたる様々な深さ内のタンパク質対脂質比のグラフを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、生体物質を探査する新規なサブミリ波光ファイバーラマンプローブ、プローブを組み込むシステム、及びシステムを使用する方法に関する。更に、本発明を、共通の要素を有する多数の異なる実施形態で提示してもよい。本発明の概念によれば、プローブのレンズ部が存在するプローブの先端は、プローブが部分球形又は半球形を有するために先細りされるように構成されている。そのようなものとして、生体物質のラマン分光法を最適化する。
【0034】
本発明の文脈で、用語「生体物質」は、好ましくは、生きている又は生きていないことがある生体起源又は合成生体起源の物質に関することに留意すべきである。生体物質は、生物学的組織階層の多細胞レベル、細胞レベル、細胞下レベル、及び細胞前レベルのうちいずれか1つに含まれる物質に関してもよい。更に、生体物質は、有機分子又は有機化合物を含む物質に関してもよい。更に、生体物質は、生体起源の副生成物又は排出物である物質に関してもよい。更に、生体物質は、生体起源の物質と生物学的に適合するように構文的に形成された物質に関してもよい。従って、プローブ、及びプローブのシステム及び方法は、記載のような生体物質の任意の形態に適用できるものとする。
【0035】
さて、本発明について、図面を参照して一例としてより詳細に説明する。参照しやすいように、共通の参照符号又は一連の符号は、図面に共通している同一又は同様の特徴を参照する場合、図面全体にわたって使用される。
【0036】
図1は、より詳細には、10倍の対物レンズ倍率を有する顕微鏡の下にプローブ1を置いた状態で、ミクロンスケールにおける本発明のプローブ1の先端の写真である。これは、サブミリ波サイズのプローブ1を示す。
【0037】
図2は、標的細胞複合体21(例えば、筋肉組織、脂肪、血液、尿、人工軟骨など)が存在する特定の深さで生体物質2(例えば、人間、動物、植物など)を探査するプローブ1を例示する。特に、
図2は、プローブ1が光学構造体11及び通信線12を含むことを示す。光学構造体11は、光を放出し、標的21のラマン散乱を誘導し、その後、そのラマン散乱光(その蛍光と同義であることがある)を収集する一方、通信線12は、実行されるべきラマン分光法用の1つ又は複数のデバイス(例えば、光源及び/又はスペクトル検出器)とプローブ1との間の通信を可能にする。
【0038】
生体物質2及び標的21は、階層的細胞関係(例えば、生体物質2は脳器官であり、標的21は灰白質組織である)を有することができることに留意すべきである。しかし、この関係は、必ずしも必要であるとは限らず、生体物質2及び標的21は、同一であってもよい。この記述は、生体物質2及び標的21が階層的細胞関係を有すると仮定するものとするけれども、この記述は、生体物質2及び標的21が同一である場合に適用できると解釈されるべきである。
【0039】
プローブ1の光学構造体11に関して、光学構造体11は、レンズ部111及びスペーサー部112を更に含む。好ましくは、光学構造体11は、コアレス終端ファイバー又はコアレス端部キャップである。光学構造体11は、通信線12から入ってくる光を生体物質2の方へ少なくとも集束させ、生体物質2から入ってくるラマン散乱光を通信線12の方へ集束させることができる任意の他の構造体であってもよい。最も好ましくは、光学構造体11は、250μmの直径及び1.45の屈折率を有する、Thorlabs会社からのFG250LAである。
【0040】
特に、光学構造体11のレンズ部111は、光学構造体11の露出端部である。更に、レンズ部111は、好ましくは、部分球形、半球形又は半球形のうちいずれか1つである状態で、先細りされている及び/又は丸められている。これは、光の集束を支援するためである。典型的に、コアレス終端ファイバーは、光を発散させる光終端装置であるけれども、先細りされる及び/又は丸められるように研磨されるべきであり、集束機能を起因すると考えられる凸レンズと同様な光学的特性を後で得ることができる。好ましくは、レンズ部111は、実質的に200μm以下、最も好ましくは約125μm以下の半径rを有する。代わりに、レンズ部111は、台形が光集束機能を減少することがあるけれども、台形と同様な鋭角を有するように先細りされてもよい。
【0041】
特に、光学構造体11のスペーサー部112は、通信線12に結合又は融合された光学構造体11の本体である。スペーサー部112は、光学構造体11のレンズ部111と通信線12の対応する端部との間にあるように規定されたギャップを設けるためである。より詳細には、スペーサー部112は、実質的に40μm以下、最も好ましくは25μm以下の長さを有するギャップdを設ける。スペーサー部112は、光がレンズ部111と通信線12との間で進みながら、光を最小散乱で曲げるように、レンズ部111と通信線12との間の光の伝搬を最適化するためである。より詳細には、
図2に示すように、スペーサー部112は、通信線12から入ってくる光をレンズ部111の方へ発散させ、レンズ部2から入ってくるラマン散乱光を通信線12の方へ集束させるのを支援することができる。更に、必要に応じて、スペーサー部112を、製造中に光学構造体11から省いてもよい。
【0042】
プローブ1の通信線12に関して、通信線12は、好ましくは、光ベースの通信を行う。通信線12は、単一モードファイバー又は多モードファイバーのうちいずれか1つであってもよい。更に、これらのファイバーのうちいずれか1つの選択は、光源及び標的21のラマン散乱光の波長を考慮するためである。最も好ましくは、通信線12は、プローブ1と1つ又は複数のデバイス(例えば、光源及び/又はスペクトル検出器)との間の異なるモードの光の送信及び受信用の多モードファイバーである。更に、通信線12の構造に関して、通信線12は、ファイバーコア122と、金属材料(例えば、アルミニウムなど)で更に被覆されたクラッディング121とを有する。最も好ましくは、通信線12は、200μmのコア直径、300μmのコーティング直径、及び0.22の開口数(NA)を有するステップ型多モードファイバーである、Thorlabs会社からのAFM200Lである。
【0043】
これと一緒に、プローブ1の製造方法について簡単に説明する。第1のステップで、(光学構造体11用の)コアレス終端ファイバーの片及び(通信線12用の)アルミニウムで被覆された多モードファイバーの片を準備する。第2のステップで、コアレス終端ファイバー及び多モードファイバーの対応する端部を研磨する。第3のステップで、コアレス終端ファイバーが光学構造体11の所望の長さになるように、コアレス終端ファイバーの片を切断し、この長さは、レンズ部111の半径r及びスペーサー部112のギャップdの1つ又は両方を含むことが好ましい。第4のステップで、切断されたコアレス終端ファイバーは、好ましくは接合によって、多モードファイバーの端部片に融合された端部の1つを有する。レンズ部111を形成するように先細り形状を有するためにコアレス終端ファイバーの露出端部を更に研磨する第5のステップを実行してもよい。これと一緒に、光学構造体11及び通信線12を有するプローブ1を製造する。製造のこの容易さは、使用後の廃棄可能性を支援する。
【0044】
プローブ1を所望の用途のために適切にサイズ調整する場合、プローブ1は、好ましくは、光学構造体11及び通信線12の両方を含めて、500μm以下の全外径を有する。プローブ1の全外径は、好ましくは、100μm又は300μmであってもよいけれども、50μmまで更に減少されてもよい。このような直径により、プローブ1の光学構造体11が生体物質2の標的21に達することができるように、プローブ1を、超真皮針管(即ち、鋭い端部を有する超真皮管)、光学的生検用の細針、又は吸引生検用の細針内に覆うことができる。更に、プローブ1は、好ましくは、光学構造体11及び通信線12の両方を含めて、約10cmの全長を有する。代わりに、プローブ1の全長は、約6.5cmと約20cmとの間であってもよく、又は少なくとも、光学構造体11が標的21に達することができる長さであってもよい。針管の誘導の下で、プローブ1は、多細胞生物の深部器官、血管内系及び中枢神経系に近づくことができる。
【0045】
プローブ1のパラメータに関して、プローブ1の光学構造体11は、好ましくは、1.3の屈折率を有する標的21を探査するように約1.4536の屈折率を有する。光学構造体11は、それ自体ではパラメータを有することに限定されないことに留意せよ。光学構造体11は、光学構造体11の屈折率が標的21の屈折率よりも実質的に大きい限り、任意の他の屈折率を有してもよい。
【0046】
プローブ1のパラメータに関して、プローブ1の光学構造体11は、好ましくは、127μmの焦点半径を更に有する、約224μmの有効焦点距離(EFL)を有する。
【0047】
図3は、本発明のプローブ1を使用するシステム3のセットアップを例示する。図示のように、システム3は、プローブ1、光源31、光モジュール32、スペクトル検出器33、及びコンピュータ34を含む。
【0048】
システム3の光源31に関して、光源31は、好ましくは、光モジュール32の方へ光のビームを放出する。特に、光のビームは、700nmと900nmとの間、最も好ましくは785nmの波長を有するレーザー光である。なお特に、光源31は、光のビームの電力が、好ましくは、0mWと60mWとの間の範囲で調整可能である。しかし、光源によって放出される光のビームの波長及び電力は、標的21を損傷することなく、ラマン分光法を実行することができる任意の値であることができることに留意すべきである。
【0049】
システム3の光モジュール32に関して、光モジュール32は、複数の開口部321a、321b、321c、レンズ322a、322b、322cのセット、バンドパスフィルター323、二色性フィルター324、及びロングパスフィルター325を更に含むことが示されている。光モジュール32は、光源31とプローブ1とスペクトル検出器33との間の中間体としての機能を果たすためである。光モジュール32に上述の構成要素の全部を固定するように、光モジュール32の本体を形成してもよい。
【0050】
特に、光モジュール32の複数の開口部321a、321b、321cは、第1の開口部321a、第2の開口部321b、及び第3の開口部321cを含む。好ましくは、各開口部は、光モジュール32の任意の中心点Cの周りに互いに直交する。これらの開口部321a、321b、321cは、光モジュール32から出入りする光の入口又は出口を可能にする。第1の開口部321aを、光ファイバーによって光源31に実質的に接続してもよく、第2の開口部321bを、通信線12との同軸接続によってプローブ1に接続してもよく、第3の開口部321cを、光ファイバーによってスペクトル検出器33に実質的に接続してもよい。プローブ1を、針管内に更に覆ってもよい。
【0051】
特に、レンズ322a、322b、322cのセットは、第1のレンズ322a、第2のレンズ322b、及び第3のレンズ322cを含む。好ましくは、これらのレンズは、光源31の光の励起及びラマン結合を最適化する、非球面レンズ、又は任意のタイプの光視準レンズである。特に、各レンズを、光モジュール32の開口部の周りに配置してもよい。より詳細には、第1のレンズ322aは、第1の開口部321aの近傍にあるように位置決めされ、第2のレンズ322bは、第2の開口部321bの近傍にあるように位置決めされ、第3のレンズ322cは、第3の開口部321cの近傍にあるように位置決めされる。
【0052】
特に、バンドパスフィルター323は、特定の波長範囲内に入ることができない波長を有する光をフィルター処理する。より詳細には、バンドパスフィルター323は、好ましくは、光源31によって供給される光のビームの波長に似ていない波長を有する光をフィルター処理する。特に、バンドパスフィルター323は、第1の開口部321aに位置決めされ、第1のレンズ322aの前にある。バンドパスフィルター323は、光源31によって供給される光のビーム内に存在することがある雑音を更に軽減するためである。
【0053】
特に、二色性フィルター324は、波長に基づいて光を反射する二色性ミラーである。特に、二色性フィルター324は、中心点Cの周りに好ましくは45度の自己回転角で、光モジュール32内に位置決めされ、二色性フィルター324の一方の側は、第1の開口部321a及び第2の開口部321bに実質的に面し、二色性フィルター324の他方の側は、第3の開口部321cに実質的に面する。
【0054】
特に、ロングパスフィルター325は、特定の波長未満の光をフィルター処理する。より詳細には、ロングパスフィルター325は、好ましくは、光源31によって供給される光の波長と同様なラマン散乱光の範囲内の波長をフィルター処理する。特に、ロングパスフィルター325は、第3の開口部321cに位置決めされ、第3のレンズ322cの前にある。ロングパスフィルター325は、生体物質2の標的21から入ってくるラマン散乱光内に存在することがある高周波雑音を更に軽減するためである。
【0055】
スペクトル検出器33は、好ましくは、ラマン分光法を実行する分析機器(例えば、分光計又は分光写真機)である。特に、スペクトル検出器33は、波長、波数、信号対雑音比(SNR)などを含むことができる、標的21のラマン散乱光のパラメータを導出し、その後、それらのパラメータを記録するものとする。好ましくは、スペクトル検出器33に、電荷結合素子(CCD)技術又は能動的画素センサー(APS)技術に基づいている、ラマン散乱光を検出する光センサーのアレイを装備する。スペクトル検出器33のハードウェア及びソフトウェアに関して、好ましくは、スペクトル検出器33に、標的21のラマン散乱光を表す生ラマンスペクトルを導出して記録する信号処理を実行するアプリケーションソフトウェアを実行するプロセッサを装備する。
【0056】
更に、コンピュータ34は、好ましくは、構造化バックグラウンド減算によってスペクトル検出器33から受信された生ラマンスペクトルからクリーンラマンスペクトルを導出する分析機器である。このタスクを、この明細書で詳述する。コンピュータ34を、データケーブルを介してスペクトル検出器にインターフェース接続してもよい。コンピュータ34のハードウェア及びソフトウェアに関して、好ましくは、コンピュータ34に、このタスクを実行するアプリケーションソフトウェアを実行するプロセッサを装備する。
【0057】
光源31、光モジュール32、及びスペクトル検出器33の特定の仕様に関する更なる詳細は、次の通りである。
【0058】
785nmのレーザービームを生成する光源31は、最も好ましくは、B&W TEK会社からのCleanLaze(登録商標)レーザーデバイスシリーズなどのレーザーデバイスである。更に、光源31は、0mWと約600mWとの間の範囲の電力を有するレーザービームを出力することができる。光源31内に組み込まれる、又は別々の物品であることができる可変減光フィルターを用いて、光源31の電力を制御してもよい。減光フィルターは、最も好ましくは、Thorlabs会社からのNDC-50C-2M-Bである。
【0059】
スペクトル検出器33は、最も好ましくは、Princeton Instrument会社からのActon LS-785 f/2である。更に、スペクトル検出器33は、800gr/mmと850gr/mmとの間、最も好ましくは830gr/mmの格子密度を有するハイスループット反射イメージングを与えてもよい。好ましくは、スペクトル検出器33に、最も好ましくは、Princeton Instrument会社からのPIXIS 400BR-eXcelonであるカメラ又は画像センサーを更に装備する。カメラは、深部空乏電荷結合素子(DD-CCD)技術に基づいており、近赤外(NIR)イメージング用に更に向上され、ラマン分光法用に適合する。
【0060】
更に、スペクトル検出器33は、それぞれフィンガープリント(FP)領域及び高波数(HW)領域用の水銀-アルゴンランプ及び4-アセトアミドフェノールを用いて較正された波長及び波数軸を有してもよい。好ましくは、米国標準技術局からのNIST 2241である標準的な基準材料を用いて、システム強度応答を較正した。
【0061】
光モジュール32は、最も好ましくは、定格で785nmの波長となっているバンドパスフィルター323(最も好ましくは、Semrock会社からのLL01-785)を有する。光モジュール32の二色性フィルター324は、光源31の光と標的21のラマン散乱光の分離のために、定格で785nmとなっている。光モジュール32のロングパスフィルター325は、定格で785nmの波長となっている。
【0062】
図4は、生体物質2の標的21からラマン散乱光を取得するために
図3のシステムの使用を説明する第1の動作フローを例示するフローチャートである。このフローチャートに記載のステップは、限定されないと解釈されるべきであり、ステップの小さい修正(例えば、追加、削除、又は交換)は、記載のものから実質的に逸脱することなく当業者によって許容できることに留意せよ。
【0063】
図4は、ラマン分光法を実行する準備ができており、これによって、プローブ1が特定の深さで生体物質2に既に挿入され、光学構造体11が標的21に実質的に達する及び/又は面すると本質的に仮定することに留意せよ。
【0064】
まず、ステップSA1で、光源31は、光のレーザービームを光モジュール32の方へ供給する。更に、今後、光のビームが、進み、生体物質2の標的21に達することになっているので、光源31によって放出される光のビームを「入力光」と呼ぶことができることに留意せよ。
【0065】
次に、ステップSA2で、入力光を、光モジュール32の第1の開口部321aを介して光モジュール32によって受信する。
【0066】
次に、ステップSA3で、入力光は、第1のレンズ322aその後バンドパスフィルター323の方へ、第1のレンズ322aその後バンドパスフィルター323を通って逐次的に伝搬する。入力光を、第1のレンズ322aによって視準し、次に、バンドパスフィルター323によってフィルター処理する。
【0067】
次に、ステップSA4で、入力光は、二色性フィルター324の方へ伝搬し、二色性フィルター324によって反射される。より詳細には、二色性フィルター324は、入力光を第2のレンズ322bの方へ反射する。
【0068】
次に、ステップSA5で、入力光は、第2のレンズ322bの方へ、第2のレンズ322bを通って伝搬し、第2のレンズ322bを通過し、更に視準される。
【0069】
次に、ステップSA6で、入力光は、第2の開口部321bの方へ、第2の開口部321bを通って伝搬し、第2の開口部321bから光モジュール32を出る。これと一緒に、入力光は、現在、プローブ1の通信線12内にある。
【0070】
次に、ステップSA7で、入力光は、通信線12内で伝搬し、光学構造体11に達する。
【0071】
次に、ステップSA8で、入力光は、光学構造体11から出て、生体物質2の標的21に達して生体物質2の標的21を励起する。
【0072】
次に、ステップSA9で、入力光21によって刺激されている標的21は、入力光を散乱させ、これによって、ラマン散乱光を生成する。
【0073】
次に、ステップSA10で、ラマン散乱光は、光学構造体11によって収集され、プローブ1に入る。
【0074】
次に、ステップSA11で、ラマン散乱光は、プローブ1の通信線12を通って光モジュール21の方へ戻って伝搬し、第2の開口部321bを介して光モジュール32に達して光モジュール32によって受信される。更に、今後、ラマン散乱光が、進み、スペクトル検出器33に達することになっているので、ラマン散乱光を「出力光」と呼ぶことができることに留意せよ。
【0075】
次に、ステップSA12で、出力光は、第2のレンズ322bを通過し、第2のレンズ322bによって視準される。
【0076】
次に、ステップSA13で、出力光は、二色性フィルター324の方へ、二色性フィルター324を通って伝搬する。より詳細には、二色性フィルター324は、出力光に対して透明である。
【0077】
次に、ステップSA14で、出力光は、ロングパスフィルター325その後第3のレンズ322cの方へ、ロングパスフィルター325その後第3のレンズ322cを通って逐次的に伝搬する。出力光を、ロングパスフィルター325によってフィルター処理し、次に、第3のレンズ322cによって視準する。
【0078】
次に、ステップSA15で、出力光は、第3の開口部321cの方へ、第3の開口部321cを通って伝搬し、第3の開口部321cから光モジュール32を出る。これと一緒に、出力光は、スペクトル検出器33の方へ進む。
【0079】
次に、ステップSA16で、出力光を、スペクトル検出器33によって受信する。ここで、スペクトル検出器33は、出力光を生ラマンスペクトルデータに処理する。
【0080】
最後に、ステップSA17で、生ラマンスペクトルデータは、スペクトル検出器33からコンピュータ34によって受信され、標的21を正確に表すクリーンラマンスペクトルデータに処理される。このように、第1の動作フローの説明を終了する。
【0081】
図5は、コンピュータ34によって実行されるタスクであることが好ましい構造化バックグラウンド減算によって生ラマンスペクトルデータから標的21のクリーンラマンスペクトルデータを抽出することを説明する第2の動作フローを例示するフローチャートである。このフローチャートに記載のステップは、限定されないと解釈されるべきであり、ステップの小さい修正(例えば、追加、削除、又は交換)は、記載のものから実質的に逸脱することなく当業者によって許容できることに留意せよ。
【0082】
更に、
図5に記載のタスクを実行するコンピュータ34に、好ましくは、タスクを実行するモジュールを動作させるプロセッサを装備することを強調する。より詳細には、コンピュータ34は、タスクの少なくとも1つの態様に対応することができるソフトウェアモジュール又はハードディスクモジュールの集まりを動作させてもよい。これらのモジュールは、入力モジュール、最小化モジュール、全バックグラウンドスペクトル推定モジュール、最適化モジュール、比較モジュール、及び出力モジュールを含んでもよい。
【0083】
図5のフローチャートに記載の第2の動作フローは、
図4のフローチャートの延長であることができることにも留意せよ。より詳細には、
図5のフローチャートに記載のステップを、
図4のフローチャートにおけるステップSA17のサブステップと見なしてもよい。
【0084】
構造化バックグラウンド減算による標的21のクリーンラマンスペクトルデータの抽出用の
図5の第2の動作フローは、標的21の生ラマンスペクトルデータS
RAWが、(i)干渉濃度C
INTを有するファイバーラマン及び蛍光バックグラウンドデータS
FIBRE(即ち、通信線12のラマンバックグラウンド)、(ii)標的21の自己蛍光バックグラウンドデータS
AUTO、及び(iii)標的21のクリーンラマンスペクトルデータS
CLEANの3つの部分を有すると仮定することにも留意せよ。
【0085】
本発明の文脈における用語「データ」は、座標空間(例えば、デカルト座標空間など)内にプロット可能な順序対又はn組の形における複数の離散点を意味することにも留意せよ。
【0086】
まず、ステップSB1で、コンピュータ34の入力モジュールは、スペクトル検出器33から標的21の生ラマンスペクトルデータSRAWを受信する。
【0087】
次に、ステップSB2で、コンピュータ34の入力モジュールは、生ラマンスペクトルデータSRAWを入力ラマンスペクトルデータSIN(n)と考える。このステップに達した時に、nは、1であるように指定される。
【0088】
次に、ステップSB3で、測定ファイバーラマン及び蛍光バックグラウンドデータSFIBREを、コンピュータ34の入力モジュールによって受信する。特に、このパラメータは、生ラマンスペクトルデータSRAWの収集の前又は後に収集され、その後、コンピュータ34にアップロード又は入力された独立測定データからであってもよい。
【0089】
次に、ステップSB4で、S
IN(n)及びS
FIBREを、コンピュータ34の最小化モジュールに供給し、最小化モジュールは、現在のn番目の反復に対して、標的21の推定干渉濃度データC
INT(est._n)及び推定自己蛍光バックグラウンドデータS
AUTO(est._n)(但し、n=1、2、3…)を探索する。好ましくは、最小化モジュールは、アルゴリズム1の使用によってこの探索を実行する。
【数1】
【0090】
アルゴリズム1の目的関数(大括弧)を、制約としてSIN(n)及びSFIBREの既知のデータ値に基づいて求められるべき現在のn番目の反復のCINT(est._n)及びSAUTO(est._n)の最小データ値に対して反復的に計算する。好ましくは、特定の数の反復の時に、又は特定の事前設定値に達した時に、現在のn番目の反復のCINT(est._n)及びSAUTO(est._n)の最小データ値を求める。
【0091】
次に、ステップSB5で、C
INT(est._n)(ステップSB4で求められる)、S
AUTO(est._n)(ステップSB4で求められる)、及びS
FIBRE(ステップSB3から)を、コンピュータ34の全バックグラウンドスペクトル推定モジュールに供給する。全バックグラウンドスペクトル推定モジュールは、式1及び曲線適合によって推定全バックグラウンドスペクトルデータS
BG(est._n)を構成する。式1からの離散データを連続関数に適合させるために、曲線適合を実行した。
【数2】
【0092】
次に、ステップSB6で、コンピュータ34の最適化モジュールは、現在のn番目の反復の入力ラマンスペクトルデータSIN(n)及び推定全バックグラウンドスペクトルデータSBG(est._n)を比較し、更新入力ラマンスペクトルデータSIN(n_u)を構成する。好ましくは、更新入力ラマンスペクトルデータSIN(n_u)に沿ったデータ点は、SIN(n)及びSBG(est._n)が等しい又は略等しい横座標を有する状態で、下記の条件に従って構成される。
1.SBG(est._n)の縦座標データ点よりも大きいSIN(n)の縦座標データ点の場合、SBG(est._n)の縦座標データ点を、SIN(n_u)の構成で使用する。
2.SBG(est._n)の縦座標データ点以下のSIN(n)の縦座標データ点の場合、SIN(n)の縦座標データ点を、SIN(n_u)の構成で使用する。
【0093】
これと一緒に、ステップSB6で構成された更新入力ラマンスペクトルデータSIN(n_u)は、最小化バックグラウンド誤差を有する。
【0094】
次に、ステップSB7のように、コンピュータ34の比較モジュールは、現在のn番目の反復の入力ラマンスペクトルデータSIN(n)を更新入力ラマンスペクトルデータSIN(n_u)と比較する。明確にするために、SIN(n)は、前入力ラマンスペクトルデータSIN(n_p)と呼ばれることもある。より詳細には、コンピュータ34は、絶対百分率差を判定する。
【0095】
次のステップSB8は、SIN(n_p)とSIN(n_u)との間の絶対百分率差が1%未満であるか否かを判定する決定ステップである。この判定がイエスである場合、ステップSB8は、ステップSB9に進む。それ以外ならば、ステップSB8は、ステップSB11に進む。
【0096】
SIN(n_p)とSIN(n_u)とのデータの間の絶対百分率差が1%未満であると判定したので、ステップSB9で、コンピュータ34の出力モジュールは、データを指定する。特に、最新のn番目の反復の前入力ラマンスペクトルデータSIN(n_p_r)、及び最新のn番目の反復の推定全バックグラウンドスペクトルデータSBG(est._n_r)を、指定データと見なす。
【0097】
ステップSB9の後に、SB10が来る。ここで、コンピュータ34の出力モジュールは、式2及び曲線適合によって指定データ(S
IN(n_p_r)及びS
BG(est._n_r))を用いて、標的21のクリーンラマンスペクトルデータS
CLEANを構成する。式2からの離散データを連続関数に適合させるために、曲線適合を実行した。これにより、第2の動作フローを終了し、標的21のクリーンラマンスペクトルデータS
CLEANを取得する。
【数3】
【0098】
SIN(n_p)とSIN(n_u)との間の絶対百分率差が1%以上であると判定したので、ステップSB11で、最小化モジュールに供給されるSIN(n)として反復を継承する使用のために、SIN(n_u)を確保する。これと一緒に、ステップSB11は、ステップSB4に戻り、ステップSB4から相互作用的にループする。
【0099】
このように、第2の動作フローの説明を終了する。
【0100】
図6~
図20は、本発明のプローブ1を用いて収集された実験データに関する。より詳細には、
図4及び
図5のフローチャートに記載のステップの使用によってプローブ1を有するシステム3を用いて収集された実験データは、プローブ1、システム3,及びシステム3を使用する方法の性能を例示することを目的とする。
【0101】
図6は、生体物質2内の標的21の深さに対する正規化ラマン光子収集効率のグラフである。特に、
図6は、シミュレーションによって取得される、平坦プローブと本発明のプローブ1(先細りプローブとラベル表示されている)との間の線図比較を更に示す。図示のように、0μmから約800μmの深さで、本発明のプローブ1は、平坦プローブに比べて約3.03倍だけ改善されたラマン収集を行う。これは、サブミリ波サイズ及び光学構造体11の先細り形状のために、励起集束及びプローブ1のラマン信号収集性能の改善を意味する。
【0102】
図7及び
図8は、ファイバー長(即ち、プローブ1の通信線12の長さ)及びスペクトル検出器33の積分時間(より詳細には、スペクトル検出器33の光検出器の積分時間)の変動に応じた平均最大光子数を例示するグラフである。特に、
図7は、プローブ1のファイバー長に対する最大光子数のグラフである。特に、
図8は、スペクトル検出器33の積分時間に対するプローブ1の最大光子数のグラフである。
【0103】
図7は、約6.5cmから約16cmのファイバー長を有するプローブ1を用いた±1の標準偏差(SD)を有する平均最大光子数(例えば、800cm
-1)を例示する。プローブ1は、システム3の内部にあり、システム3の光源31は、約30mWの励起出力を有する入力光を供給し、システム3のスペクトル検出器33は、約0.5sの積分時間を有する。このグラフに基づいて、プローブ1は、システム3が飽和点(即ち、画素毎に65535個の光子数)に達する前に、システム3の上述の仕様の下で最長約20cmのファイバー長を有してもよい。
【0104】
図8は、システム3のスペクトル検出器33の積分時間が約0.1sから1sまで変わるシステム3にプローブ1を用いた±1のSDを有する平均最大光子数(例えば、800cm
-1)を例示する。システム3は、約30mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31も有する。
【0105】
図7及び
図8に示すように、本発明のプローブ1の性能は、プローブ1のファイバー長及びスペクトル検出器33の積分時間に対して平均最大光子数の直線関係(r
2≒1)を示す。これは、標的21のクリーンラマンスペクトル検索のために開発された構造化バックグラウンド減算アルゴリズムのロバスト性を実証する。
【0106】
図9は、光源31の励起出力に対するラマンスペクトル領域における平均最大光子数のグラフを例示する。特に、
図9は、フィンガープリント(FP)領域のスペクトルにおける光子数と高波数(HW)スペクトル領域のスペクトルにおける光子数との間の線図比較を更に示す。
【0107】
特に、異なる励起出力の入力光を用いてFP領域及びHW領域におけるスペクトルを測定することによって、
図9のグラフを描く。より詳細には、
図9は、800cm
-1及び2800cm
-1の波数でプローブ1を用いて取得される±1のSDを有する平均最大光子数を例示し、プローブ1は、約10cmのファイバー長を有し、システム3は、0mWから約50mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31を有し、スペクトル検出器33は、約1sの積分時間を有する。図示のように、入力光の出力が35mW未満である場合、線形応答を示し、これによって、入力光の励起出力を約35mW未満であるように制御することによって、スペクトル検出器33の飽和を防止可能であることを示し、これによって、FP領域及びHW領域の両方でラマン信号を回収する可能性を与える。
【0108】
図10及び
図11は、プローブ1によって収集された標的21の生ラマンスペクトルデータを
図5に例示のステップのようなクリーンラマンスペクトルデータに変換するグラフを例示する。特に、
図10は、生ラマンスペクトルデータとバックグラウンドスペクトルデータとの間の線図比較を更に示す。特に、
図11は、
図10に存在するデータの使用に起因するクリーンラマンスペクトルデータを例示する。
【0109】
特に、
図10及び
図11は、生ラマンスペクトルデータの使用からの蛍光バックグラウンド及びファイバーバックグラウンドの減算の例を示す。生ラマンスペクトルデータを、プローブ1を用いて豚の脂肪から収集し、システム3は、30mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31、及び0.7sの積分時間を有するスペクトル検出器33を有する。
【0110】
800cm
-1から3300cm
-1の生ラマンスペクトルデータを、豚の脂肪から収集し、
図5のフローチャートのようにコンピュータ34によって処理した。好ましくは、処理負荷を減らすために、FP領域(800cm
-1から1800cm
-1の範囲)及びHW領域(2800cm
-1から3300cm
-1の範囲)における生ラマンスペクトルだけを、コンピュータ34によって処理し、ラマン寄与を欠く無症状領域(1800cm
-1から2800cm
-1の範囲)を、選択的に無視する。これらの領域に対して得られるクリーンラマンスペクトルデータは、FP領域におけるスペクトルに使用される五次多項式適合とHW領域におけるスペクトルに使用される二次多項式適合とを有する多項式関数を用いて描かれる適合曲線である。HW領域におけるスペクトル強度は、より優れた可視化のために、約10倍で増幅されていることに留意せよ。
【0111】
図10に示すように蛍光バックグラウンド及びファイバーバックグラウンドを正確に推定することによって、豚の脂肪のクリーンラマンスペクトルデータを、
図11に示すようにFP領域及びHW領域の両方でうまく回収することができる。これは、平坦光ファイバーラマンプローブを使用する場合よりも約1.78倍改善されるので、プローブ1を用いてラマン測定値を取得する実現可能性を示す。これは、本発明のプローブ1が深さ選択性能を改善することを更に示す。
【0112】
図12~
図14は、プローブ1を用いて1つ又は複数の組織サンプルから収集されるラマンスペクトルを例示する。
【0113】
特に、
図12は、30mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31、及び0.1sから1sの積分時間を有するスペクトル検出器33を有するシステム3の下で、豚の皮膚、豚の筋肉、及び豚の脂肪、鶏の軟骨、マウスの灰白質、及びマウスの白質を含む様々な組織サンプルを標的21として用いて、プローブ1を検証したことを例示する。
【0114】
図12は、スペクトル検出器33が0.5sの積分時間を有するシステム3で、±1のSDを有する組織サンプルの平均正規化ラマンスペクトルを例示する。図示のように、明白なラマンピークが、FP領域及びHW領域の両方で観測される。
【0115】
より詳細には、
図12のFP領域で、853cm
-1(v(C-C)タンパク質を示す)、1004cm
-1(フェニルアラニンのv(C-C)環状呼吸を示す)、1078cm
-1(脂質のv(C-C)を示す)、1250cm
-1(アミドIIIを示す)、1296cm
-1(CH
2変形を示す)、1335cm
-1(タンパク質及び核酸のCH
3CH
2ねじれを示す)、1445cm
-1(タンパク質及び脂質のCH
2変形を示す)、及び1655cm
-1(アミドI及び脂質のC=Cを示す)などを含む波数で近似的に観測されるラマンピークがある。
【0116】
より詳細には、
図12のHP領域で、2850cm
-1(脂質のCH
2対称伸縮を示す)、2885cm
-1(脂質のCH
2非対称伸縮を示す)、2940cm
-1(脂質及びタンパク質のC-H振動を示す)、及び3250cm
-1(OH伸縮を示す)などを含む波数で近似的に観測されるラマンピークがある。
【0117】
これと一緒に、
図12は、プローブ1が、異なる組織サンプルに存在する独特の生体分子化合物(例えば、脂質、核酸、及びタンパク質など)の確認を可能にすることを示している。これは、異なるサンプルに対する独特のラマン特徴及びピーク(例えば、ラマンピーク強度及びピーク幅など)が、FP領域における1200cm
-1から1500cm
-1の波数、及びHW領域における2800cm
-1から3000cm
-1の波数で観測されるからである。
【0118】
図13及び
図14は、異なる組織サンプルに対する積分時間に対するSNRの変化を例示する。
図13は、積分時間に対して1655cm
-1の波数を有するFP領域におけるラマンピークの
図12の組織のSNRのグラフを例示する。
図14は、積分時間に対して2940cm
-1の波数を有するHW領域におけるラマンピークの
図12の組織のSNRのグラフを例示する。両方の図面に示すように、FP領域及びHW領域の両方におけるSNRは、積分時間の二乗根に対して増加傾向を示す。更に、0.5sの積分時間で、FP領域及びHW領域の両方における代表的なラマンピークのSNRは、5よりも少なくとも高く、これによって、多数の器官部位で設計プローブ1のラマンスペクトル収集の効果的なラマン信号収集性能を示す。
【0119】
図15及び
図16は、本発明のプローブ1を用いて収集された1つ又は複数の生物流体に対するラマンスペクトルグラフを例示する。特に、
図15は、尿及び血液に対する平均ラマンスペクトルを例示する。
図16は、尿及び血液に対するラマンスペクトルのSNRを例示する。
【0120】
図15及び
図16は、30mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31、及び0.1sから1sの積分時間を有するスペクトル検出器33を有するシステム3の下で、マウスの血液及びマウスの尿である生物流体からのラマンスペクトルデータの高速収集のためのプローブ1の能力を示す。
【0121】
図15は、±1のSDを有するマウスの血液及びマウスの尿の両方の平均ラマンスペクトルを例示し、システム3は、0.5sの積分時間を有するスペクトル検出器33を有する。ここで、FP領域内に位置する顕著な生物流体ラマンピークは、875cm
-1、991cm
-1(RBC、フェニルアラニン及びNADHを示す)、1002cm
-1(尿素のN-C-N伸縮を示す)、1120cm
-1(カロチンを示す)、1210cm
-1(RBCを示す)、1335cm
-1、1445cm
-1、1542cm
-1(RBC及びアミドIIを示す)、1608cm
-1(尿素を示す)などを含む波数で近似的に観測される。ここで、HW領域内に位置する顕著な生物流体ラマンピークは、2885cm
-1、2940cm
-1、3250cm
-1などを含む波数で近似的に観測される。
【0122】
図15に示すように、尿に起因する独特のラマン特徴(例えば、1002cm
-1、1608cm
-1などの波数におけるラマンピーク)、及びヘモグロビン及びRBCに由来する血液のラマン特徴(例えば、991cm
-1、1210cm
-1、及び1542cm
-1の波数におけるラマンピーク)が観測され、異なる生物流体の異なる生体分子構造を識別する際にプローブ1の優れた性能を確認する。
【0123】
図16は、0.1sから1sまで変わるスペクトル検出器33の積分時間に対するマウスの尿及びマウスの血液のラマンスペクトルのSNRを示す。より詳細には、マウスの尿のラマンピークのSNRを、1003cm
-1の波数から導出し、マウスの血液のラマンピークのSNRを、1542cm
-1の波数から導出する。ここで、両方の生物流体サンプルに対するラマンピークのSNRは、約0.5sの積分時間で10よりも高いことが更に観測される。更に、両方のラマンスペクトルのSNRは、積分時間の二乗根に対して増加する。これは、プローブ1が高いSNR応答を与えるので、生物流体の高速及び定量的ラマン測定に対するプローブ1のロバスト性を実証する。
【0124】
図17~
図20は、マウスの脳モデルを用いたプローブ1の性能評価を例示する。これらの図面は、マウスの脳モデルからラマンスペクトルを収集するセットアップ及び手順を例示する。
図17は、マウスの脳モデルの写真を例示する。
図18は、マウスの脳モデルを用いた本発明のプローブの写真を例示する。
図19は、マウスの脳モデルにわたる様々な深さにおけるマウスのモデルの平均ラマンスペクトルを例示する。
図20は、
図19からのデータに基づくマウスの脳モデルにわたる様々な深さ内のタンパク質対脂質比のグラフを例示する。
【0125】
図17及び
図18に示すように、プローブ1を、7つの異なる深さ(即ち、0mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、及び6mm)で、マウスの脳モデルに挿入する。挿入の方向は、モデルの左頭頂葉皮質からモデルの右頭頂葉皮質である。各深さで、FP領域及びHW領域の10個のラマンスペクトルを、30mWの励起出力を有する入力光を供給する光源31、及び0.5sの積分時間を有するスペクトル検出器33を有するシステム3の下で、プローブ1を用いて取得した。
【0126】
図19は、±1の標準偏差(SD)を有する異なる深さにおけるマウスの脳モデルの平均ラマンスペクトルを示す。上述の脳組織の特徴的なラマンピークを、全ての深さで(即ち、FP領域における853cm
-1、1004cm
-1、1078cm
-1、1250cm
-1、1335cm
-1、1445cm
-1、1655cm
-1の波数で近似的に、及びHW領域における2850cm
-1、2885cm
-1、2940cm
-1、及び3250cm
-1の波数で近似的に)観測した。
【0127】
更に、
図19から、ピーク強度及びピーク幅の変化を含むラマンスペクトル特徴変動を、マウスの脳モデルの異なる深さで観測することができた。より詳細には、ピーク強度変化を、853cm
-1、1004cm
-1、1078cm
-1、1445cm
-1、1655cm
-1、2885cm
-1、2940cm
-1、及び3250cm
-1の波数で近似的に観測した。ピーク幅変化を、1078cm
-1、1445cm
-1、及び1655cm
-1の波数で近似的に観測した。これらのラマンスペクトル特徴変動は、マウスの脳モデルの異なる脳解剖学的部位で生体分子差を反映する。ここから、異なる深さにおけるタンパク質対脂質ラマン比を調査した。
【0128】
図20は、FP領域及びHW領域の両方におけるタンパク質及び脂質に関する代表的なラマンピークを用いて描かれる、±1の標準偏差を有する平均タンパク質対脂質ラマン比の線図を示す。FP領域における代表的なラマンピークは、1078cm
-1(脂質のv(C-C)を示す)及び1335cm
-1(タンパク質及び核酸のCH
3CH
2ねじれを示す)の波数を含む。HW領域における代表的なラマンピークは、2850cm
-1(脂質のCH
2対称伸縮を示す)及び2940cm
-1(脂質及びタンパク質のC-H振動を示す)の波数を含む。FP領域に対するタンパク質対脂質ラマン比を、式I
1335/I
1078を用いて推定する。一方、HW領域に対するタンパク質対脂質ラマン比を、式((I
2940-I
2850))/I
2850を用いて推定する。
【0129】
図20に示すように、FP領域及びHW領域の両方に対する平均タンパク質対脂質ラマン比は、0mmから約1mmの深さで減少する。これは、様々な脂質に富むグリア支持細胞を有する約1mmの深さに位置する白質の中核に比べて多くのタンパク質及び核酸に富む神経細胞を有する大脳皮質の外層灰白質からプローブ1を挿入したからである。
【0130】
図20に示すように、FP領域及びHW領域の両方に対する平均タンパク質対脂質ラマン比は、約2mmから4mmの深さで増加し始める。これは、タンパク質及び機能性神経細胞に富む視床部位にプローブ1を挿入したからである。
【0131】
図20に示すように、FP領域及びHW領域の両方に対する平均タンパク質対脂質ラマン比は、約5mmの深さに達した場合に減少するけれども、約6mmの深さに達した場合に増加する。これは、大脳皮質の右側の白質部位(約5mmの深さに位置する)及び灰白質部位(約6mmの深さに位置する)をプローブ1が通過するからである。
【0132】
ラマン比で観測される生体分子情報は、
図20における異なる深さで取得され、プローブ1の深さ分解ラマン信号収集能力を確認した。2つの線図の間のタンパク質対脂質ラマン比の相関係数rは、約0.82であるように計算され、FP領域及びHW領域におけるラマンピークの間の高ラマン信号一貫性を立証した。
【0133】
これと一緒に、生体物質を探査する新規なサブミリ波光ファイバーラマンプローブ1、プローブを組み込むシステム3、及びシステム3を使用する方法に関する詳細は、十分解明されている。更に、ラマン分光法を含む生物医学的用途で広く使用される可能性は、解明されている。
【0134】
本開示は、特許請求の範囲に含まれるもの、及び上述の説明を含む。この発明は、ある程度詳細に好ましい形態で説明されているけれども、好ましい形態の本開示は、ほんの一例として行われ、本発明の範囲から逸脱することなく、部品の構成及び組み合わせ及び配置の詳細の多くの変更を採用することができるものとする。
【国際調査報告】