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特表2024-539398SN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】SN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/145 20060101AFI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K31/145
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K9/20
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526816
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022125824
(87)【国際公開番号】W WO2023071859
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111284606.9
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524165551
【氏名又は名称】上海居知園生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤリ チャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC26
4C076CC27
4C076DD28C
4C076DD29C
4C076DD37Q
4C076DD41C
4C076DD60Q
4C076EE23Q
4C076EE31
4C076EE38
4C076FF09
4C076FF63
4C206AA01
4C206JA76
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA10
4C206ZB21
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、薬物の技術分野に関し、特に、SN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物に関する。前記医薬組成物は、SN三重結合構造化合物、安定保護剤及び医薬品添加物を含む。本発明における医薬組成物は、SN三重結合化合物の存在環境におけるプロトン欠乏、水欠乏、並びに、組成物の疎水性、標的性、酸の回避及びその他の反応しやすい物質の反応喪失の問題を非常に巧妙に解決することで、その後、この種の医薬組成物を良好且つ有効に抗腫瘍等の薬物に応用するための基礎を構築する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、
SN三重結合構造化合物: 2~98%、
安定保護剤: 0.5~97%、
医薬品添加物: 0.1~55%、
を含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物の原料は、更に、滑沢剤を含み、
前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、
SN三重結合構造化合物: 40~85%、
安定保護剤: 0.5~8%、
医薬品添加物: 5~55%、
滑沢剤: 2~18%、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
使用時には、前記医薬組成物を溶媒に溶解させ、
好ましくは、前記溶媒は無水エタノールから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記SN三重結合構造化合物は、APSNRI及び/又はFPSNRIから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記安定保護剤は、ナトリウムアルコキシド、アルコール類、アルコール系ポリマー、ピリジン類、プロトン欠乏疎水性グリース等のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、
好ましくは、前記安定保護剤は、ナトリウムエトキシド、4-ジメチルアミノピリジン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、無水エタノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬品添加物は、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、カプセルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記滑沢剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、微粉末シリカゲルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、
好ましくは、前記滑沢剤は微粉末シリカゲルから選択されることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物の調製方法であって、
SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物を混合したあと調製して取得することを含む医薬組成物の調製方法。
【請求項9】
更に、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物に滑沢剤を添加し、混合したあと調製して取得することを含むことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物の、細胞増殖を抑制する薬物及び抗腫瘍薬における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の技術分野に関し、特に、SN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
SN三重結合構造化合物は、硫黄-窒素三重結合を含む人工的に合成された化合物である。また、SN三重結合構造化合物は、硫黄-窒素三重結合の官能基(S≡N)を有する非常に珍しい化合物であって、親油性を持つ低分子化合物である。当該化合物の硫黄-窒素三重結合は非常に活性が高く、容易にプロトン化し、ピペリジン類似化合物中のプロトンに対し非常に強いプロトン捕捉活性を有する。よって、細胞内の染色体における基本成分がピペリジン構造に類似したプロトン含有部位のDNA、RNA及びタンパク質の合成過程をプロトン捕捉により阻害することで急速に成長する癌細胞等の分裂・増殖を困難にするとの応用局面において、SN三重結合構造化合物は非常に高い応用価値及び将来性を有している。また、硫黄上に更にアルコキシ基を有する化合物の場合、硫黄-窒素のプロトン化によって、この種の薬物は、高活性のアルキル化基を有し、且つ、体細胞の核酸と結合することで癌細胞等を抑制・破壊可能として、自己免疫効果を向上させるとの応用可能性を有する薬物になる。この種の化合物の最大の特性は、一定の条件で、硫黄-窒素三重結合がピペリジン類似体のプロトンを捕捉しやすくなって複製作用を喪失させ、更に、アルキル基を塩基鎖に挿入することで塩基の複製やタンパク質合成等の阻害を加速させることにある。また、硫黄-窒素三重結合は、酸性媒体において特にプロトン化しやすい。且つ、アルキル化活性も非常に高くなり、塩基鎖を大変アルキル化しやすくなって細胞増殖の阻害を実現する。一方、この種の化合物の最大の弱点としては、以下が挙げられる。即ち、酸性環境において、硫黄-窒素三重結合の官能基は破壊されやすく、プロトン化作用を喪失することで、DNA、RNA等の塩基のプロトンを捕捉することによる複製・増殖の阻害が不可能となる。また、プロトン化後の硫黄-窒素三重結合化合物は、塩基鎖に対する阻害作用を急速に喪失する。且つ、溶媒中のSN三重結合化合物もピペリジンと反応して分子上のプロトンを捕捉することが困難となり、抗癌、静菌、癌細胞死滅等の実際の効用が大きく低減する。以上が、上記の化合物を未だ医薬分野に応用できていないことの主な原因である。従って、如何にして標的物に到達するまでこの種の化合物の活性を有効に保護可能とし、且つ、標的物に到達したあとも非常に高い活性を持たせてピペリジン類似体に対するプロトン捕捉反応を有効に発生可能とし、更に、滞留時間を長くし、標的性を強化するかが、本発明において解決を要するポイントとなる。
【0003】
これまでに、出願人は、硫黄-窒素三重結合化合物によるピペリジン様化合物の脱プロトン化、アルキル化について大量の研究を行ってきた。その結果、硫黄-窒素三重結合化合物は、40度以下で極めて高い活性を有する一方、最大の欠点として、酸性媒体に対し分解・不活化しやすく、且つ、加水分解や分解によりプロトン化及びアルキル化活性を喪失しやすいことが分かった。
【0004】
周知のように、多くの薬物は、加水分解又は潮解により薬効の大幅な低減ひいては喪失が生じやすい。よって、加水分解を回避するためには、薬物の特性の違いに応じて、凍結乾燥製剤、注射剤、注射用粉末製剤、タブレット、カプセル剤、顆粒剤として製造するとともに、投与経路を静脈投与、経口投与及び灌流等としてもよい。しかし、薬効の損失を最小とするためには、科学的な方法で活性薬物の安定性を確実に保証することも必要である。この点は、具体的な臨床応用において更に解決を要する重要な課題となる。
【0005】
今のところ、SN三重結合構造化合物については、加水分解の生じやすさや不活化、安定性等の要因から、細胞増殖の抑制や抗腫瘍薬に適用したとの報告は見られない。そのため、潮解・加水分解・分解が生じにくく、標的物に対し高活性であるSN三重結合構造化合物の組成を提供することで、工業生産加工過程におけるSN三重結合構造薬物の加水分解や分解の問題を解決するとともに、活性薬物について、標的細胞への到達前及び標的物に対する高活性の安定の問題を解決して、SN三重結合構造化合物の分解を低下させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、SN三重結合化合物の存在環境におけるプロトン欠乏、水欠乏、並びに、組成物の疎水性、標的性、酸の回避及びその他の反応しやすい物質の反応喪失等の問題を非常に巧妙に解決することで、その後、この種の医薬組成物を良好且つ有効に抗腫瘍等の薬物に応用するための基礎を構築するSN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的及び関連するその他の目的を達成するために、本発明は以下の技術方案により実現される。
【0008】
本発明は、一局面において、医薬組成物を提供する。前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:2~98%、安定保護剤:0.5~97%、医薬品添加物:0.1~55%、を含有する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物の原料は、更に、滑沢剤を含む。前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:40~85%、安定保護剤:0.5~8%、医薬品添加物:5~55%、滑沢剤:2~18%、を含有する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、使用時には、前記医薬組成物を溶媒に溶解させる。好ましくは、前記溶媒は無水エタノールから選択される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、前記SN三重結合構造化合物は、APSNRI及び/又はFPSNRIから選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、前記安定保護剤は、ナトリウムアルコキシド、アルコール類、アルコール系ポリマー、ピリジン類、プロトン欠乏疎水性グリース等のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。これは、主体であるSN三重結合構造化合物に対し、活性プロトン欠乏環境と、溶解しやすく標的活性を向上させる組成物を提供することを目的としている。好ましくは、前記安定保護剤は、ナトリウムエトキシド、4-ジメチルアミノピリジン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、無水エタノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬品添加物は、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、カプセルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、前記滑沢剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、微粉末シリカゲルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。好ましくは、前記滑沢剤は微粉末シリカゲルから選択される。
【0015】
本発明は、その他の局面において、医薬組成物の調製方法を提供する。当該方法は、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物を混合したあと調製して取得することを含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、更に、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物に滑沢剤を添加し、混合したあと調製して取得することを含む。
【0017】
本発明は、その他の局面において、本発明の上記医薬組成物の、細胞増殖を抑制する薬物及び抗腫瘍薬における使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願におけるSN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止して標的活性を向上可能とする医薬組成物を具体的に開示する実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本願で開示する「範囲」は、下限及び上限の形式で限定する。規定する範囲は、1つの下限と1つの上限を選択して限定し、選択した下限及び上限により特定の範囲の境界を限定する。このような方式で限定する範囲は、端点値を含んでもよいし、端点値を含まなくてもよく、且つ、任意に組み合わせてもよい。即ち、いずれかの下限をいずれかの上限と組み合わせて1つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて、60~120及び80~110の範囲が提示されている場合には、60~110及び80~120の範囲も想定されると解釈する。また、最小の範囲の値として1及び2が提示されており、最大の範囲の値として3、4及び5が提示されている場合には、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲を全て想定可能である。本願では、別途説明している場合を除き、数値範囲「a~b」とは、a~bの間の任意の実数の組み合わせを省略して示したものであり、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」とは、「0~5」の間の全ての実数を本文中に全て提示したことを意味し、「0~5」はこれらの数値の組み合わせを省略して示したものにすぎない。そのほか、いずれかのパラメータが≧2の整数であるとの記載は、当該パラメータが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることを開示したことに相当する。
【0020】
特に説明していなければ、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術方案を形成可能である。
【0021】
特に説明していなければ、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術方案を形成可能である。
【0022】
特に説明していなければ、本願の全てのステップは、順に実施してもよいし、ランダムに実施してもよいが、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップ(1)及び(2)を含むとは、前記方法が、順に実施されるステップ(1)及び(2)を含んでもよいし、順に実施されるステップ(2)及び(1)を含んでもよいことを示す。また、例えば、上記で提示した前記方法が更にステップ(3)を含んでもよいとは、ステップ(3)を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを示す。例えば、前記方法は、ステップ(1)、(2)及び(3)を含んでもよいし、ステップ(1)、(3)及び(2)を含んでもよいし、ステップ(3)、(2)及び(1)を含んでもよい等となる。
【0023】
特に説明していなければ、本願で言及する「含む」及び「含有する」とは、オープンエンド形式であってもよいし、クローズドエンド形式であってもよい。例えば、前記「含む」及び「含有する」とは、列挙していないその他の成分を含んだり含有したりしてもよいし、列挙した成分のみを含んだり含有したりしてもよい。
【0024】
特に説明していなければ、本願において、「又は」とは包括的な用語である。例えば、「A又はB」とのフレーズは、「A、B、又は、A及びBの双方」を意味する。より具体的には、Aが真であり(或いは存在し)且つBが偽である(或いは存在しない)との条件、Aが偽であり(或いは存在せず)且つBが真である(或いは存在する)との条件、又は、A及びBがいずれも真である(又は存在する)との条件、のいずれの条件も「A又はB」の条件を満たす。
【0025】
本発明の発明者は、大量の探求及び実験の結果、SN三重結合構造化合物の加水分解及び分解を有効に防止して標的物に対する活性である脱プロトン化活性及びアルキル化を向上可能とする医薬組成物及びその製剤を提供する。これは、SN三重結合化合物の存在環境におけるプロトン欠乏、水欠乏、並びに、組成物の疎水性、標的性、酸の回避及びその他の反応しやすい物質の反応喪失等の問題を非常に巧妙に解決することで、その後、この種の医薬組成物を良好且つ有効に抗腫瘍等の薬物に応用するための基礎を構築するものである。
【0026】
本発明は、第1の局面において、医薬組成物を提供する。これは、加水分解及び分解を生じやすいSN三重結合化合物に対し、活性プロトン欠乏・水欠乏・疎水性環境と、ピペリジン類似体のプロトンを容易に除去でき、且つ、溶解しやすく標的活性を向上させる組成物を提供することを目的としている。当該医薬組成物の原料は、活性成分であるSN三重結合構造化合物、安定保護剤及び医薬品添加物を含む。これらのうち、安定保護剤は、医薬組成物のプロトン欠乏、疎水性、水欠乏を維持可能とし、且つ、主体化合物の脱プロトン化活性及び疎水性状態を向上可能とすることで、SN三重結合構造化合物の不活化を有効に防止し、標的活性を向上可能とする。
【0027】
本発明で提供する医薬組成物には、通常、一定比率のSN三重結合構造化合物が含まれている必要がある。前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、2~98%のSN三重結合構造化合物を含む。いくつかの実施例において、前記SN三重結合構造化合物の質量パーセントは、2~40%、40~85%、85~98%、40~50%、50~80%、80~85%、40~60%、60~80%、5~90%、10~80%、20~70%、30~60%或いは40~70%等としてもよい。
【0028】
SN三重結合化合物の分子式は、下記の一般式で表すことができる。
【0029】
【化1】
【0030】
、Rは、アリール基であり、好ましくはフェニル基であり、R=OCH、OC、OC、F等の一般的なものを主とする。
【0031】
いくつかの実施例において、前記SN三重結合構造化合物は、例えば、APSNRI及び/又はFPSNRIから選択可能である。使用の便宜上、通常は、R=OCH、OC、OC等であり、R、Rがアリール基であるものをAPSNRI(Alkoxy(aryl)(phenyl)-λ-sulfanenitriles)と称する。また、R、Rがアリール基であり、R=FであるものをFPSNRI(Aryl(fluoro)(phenyl)-λ-sulfanenitriles)と称する。アリール基は、フェニル基、及び、フェニル基に置換基が存在する様々な状況を含む。置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基等としてもよい。APSNRIの分子量は231以上である。具体的実施例において、R=OCHであり、R、Rが同じフェニル基の場合、APSNRIの分子量は231となる。また、FPSNRIの分子量は219以上である。具体的実施例において、R=Fであり、R、Rが同じフェニル基の場合、FPSNRIの分子量は219となる。
【0032】
本発明で提供する医薬組成物には、通常、一定比率の安定保護剤が更に含まれている必要がある。ここで言う安定保護剤とは、安定保護剤にもなり得るし、保護剤にもなり得るとの意味である。前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、0.5~97%の安定保護剤を含む。具体的に、いくつかの実施例において、前記安定保護剤の質量パーセントは、0.5~8%、8~20%、20~40%、40~60%、60~80%、80~97%、0.5~1%、1~6%、6~8%、1~5%、5~8%、1~95%、5~90%、10~85%、20~75%、30~65%或いは40~55%等としてもよい。
【0033】
本発明で提供する医薬組成物では、SN三重結合構造化合物の安定保護剤として、SN三重結合構造化合物にプロトン欠乏を付与可能であり、且つ、プロトンを受け取り、溶解しやすく、標的活性を向上させる能力を備える化合物を選択可能である。いくつかの実施例において、前記安定保護剤は、例えば、ナトリウムアルコキシド、アルコール類、アルコール系ポリマー、ピリジン類、プロトン欠乏疎水性グリースのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択可能である。好ましくは、前記安定保護剤は、ナトリウムエトキシド、4-ジメチルアミノピリジン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、無水エタノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの分子式はHO(CHCHO)1225であり、分子量は、例えば、1100~1300、1100~1200、1200~1300等とすることができる。より好ましくは、前記安定保護剤は、ナトリウムアルコキシド及び/又はポリエチレングリコールモノアルキルエーテルから選択される。また、いくつかの実施例において、プロトン欠乏アルコール基のほかに、安定保護剤には、更に、塩化ナトリウムといったその他の物質も含まれる。
【0034】
本発明において、プロトンが欠乏しており、且つプロトンを受け取るナトリウムアルコキシド又はDMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等をSN三重結合構造化合物の安定保護剤として用いるのは、以下の理由からである。即ち、pH-速度分布より、SN三重結合構造化合物の加水分解は一次反応であり、且つ、酸加水分解が比較的速い。例えば、25度の温度において、CO基を持つSN三重結合構造化合物(0.035moldm-3)は、DO/CDCN溶媒(リン酸塩緩衝液8:1)、pD6.1、総緩衝液濃度0.065mol.dm-3の条件で、45min以内に99%のSN三重結合構造化合物が加水分解される。
【0035】
【化2】
【0036】
一方、医薬組成物に、プロトンが欠乏しているか、プロトン水素イオンを受け取る脱プロトン化された化合物である適量のナトリウムアルコキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等を加えた場合には、一部環境の弱アルカリ性を維持可能となるため、SN三重結合構造化合物の加水分解を防止するのに有利となる。また、環境中のプロトン数が大幅に低減し、SN三重結合構造のプロトン化が低下するため、分解・不活化作用が減少する。従って、本発明の場合、安定保護剤は、第一に、環境中の水素イオン濃度を減少させるもの、第二に、環境中の含水量を減少させるものであって、環境中の少量の水に遭遇したときに吸水するもの、第三に、その医薬組成物を疎水性とし、ピペリジン類に溶解しやすくするものとする。
【0037】
本発明で提供する医薬組成物には、通常、一定比率の医薬品添加物が含まれている必要がある。前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、0.1~55%の医薬品添加物を含む。いくつかの実施例において、前記医薬品添加物の質量パーセントは、0.1~5%、5~55%、5~10%、10~45%、45~55%、10~35%、35~55%、1~50%、5~45%、10~40%或いは20~35%等としてもよい。
【0038】
本発明で提供する医薬組成物では、薬物の保管及び使用期間の安定性を更に保証するために、吸湿性の小さな医薬品添加物を選択すべきである。ラクトースは薬物に常用される添加物であるが、吸湿性が大きいため、直接打錠の場合にはSN三重結合構造化合物の安定性にとって不利なほか、製造後のタブレットの保管にも不利となる。一方、アルファ化澱粉は、一定の吸湿性を有するため、単体で打錠した場合にはSN三重結合構造化合物の安定にとって不利となる。しかし、アルファ化澱粉は圧縮成形性及び流動性の双方に優れており、微結晶セルロースと合わせて使用すれば、より理想的な効果を達成し得る。よって、本発明の医薬組成物において、前記医薬品添加物は、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、カプセルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。好ましくは、使用する医薬品添加物は、微結晶セルロース及び/又はアルファ化澱粉とする。このうち、微結晶セルロースの分子式は(C10n/2であり、重合度はn≦350である。実験には、微結晶セルロースph103を使用した。また、アルファ化澱粉の分子式は(C10であり、重合度はn=300~1000である。
【0039】
より好ましくは、医薬品添加物は、微結晶セルロースとアルファ化澱粉の組み合わせとする。また、微結晶セルロースとアルファ化澱粉の質量比は、1~2:1~4、1~2:1~2、1~2:2~3又は1~2:3~4等とする。
【0040】
具体的実施例において、前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:2~98%、安定保護剤:0.5~97%、医薬品添加物:0.1~55%、を含有する。
【0041】
本発明で提供する医薬組成物では、一般的に、標的部位の違いによって異なる医薬品添加物を選択してもよい。仮に、胃、腸、食道等の部位であれば、滑沢剤等の補助が必要となる。従って、医薬組成物は更に滑沢剤を含んでもよい。
【0042】
本発明で提供する医薬組成物では、医薬組成物の質量パーセントで、2~18%の滑沢剤を含む。前記滑沢剤の質量パーセントは、2~3%、3~15%、15~18%、2~5%、5~10%、10~18%、或いは、3~15%、5~12%、或いは8~10%等としてもよい。
【0043】
本発明で提供する医薬組成物において、前記滑沢剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、微粉末シリカゲルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。微粉末シリカゲルは高い吸水容量を有することから、通常は、雰囲気中の湿気を防止するために、化学品及び医療用品の乾燥剤として用いられる。また、微粉末シリカゲルは、タブレットの一部水分の浄化剤として、タブレットのマイクロ孔内の遊離水を吸収することで水分と薬物分子との相互作用を減少させて、SN三重結合構造化合物に対し一定の安定化作用を奏することも可能である。一方、ステアリン酸マグネシウムはやや劣り、遊離金属イオンを含むことから、SN三重結合構造化合物の加水分解に対し促進作用を奏する可能性がある。よって、本発明では、滑沢剤として作用し得るだけでなく、安定保護剤としても作用し得る微粉末シリカゲルを用いることが好ましい。
【0044】
具体的実施例において、前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:40~85%、安定保護剤:0.5~8%、医薬品添加物:5~55%、滑沢剤:2~18%、を含有する。
【0045】
好ましい具体的実施例において、前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:50~80%、安定保護剤:1~6%、医薬品添加物:10~45%、滑沢剤:3~15%、を含有する。
【0046】
より好ましい具体的実施例において、前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、SN三重結合構造化合物:60~80%、安定保護剤:1~5%、医薬品添加物:10~35%、滑沢剤:5~10%、を含有する。
【0047】
本発明で提供する医薬組成物では、医薬組成物を溶媒に溶解させることが可能である。好ましくは、前記溶媒は無水エタノールから選択される。無水エタノールの使用量は、医薬組成物を溶解させられればよく、例えば、1~8:5~30の質量比としてもよい。いくつかの実施例において、質量比は、1~3:5~30、3~5:5~30、5~8:5~30、1~8:5~10、1~8:10~20或いは1~8:20~30等としてもよい。
【0048】
無水エタノールは、医薬組成物中のSN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物等を直接溶解したあと、ピペリジン含有溶液(生体環境を模倣)への直接注入を可能とする。これにより、標的物に到達するまでこの種の化合物の活性を有効に保護し得るとともに、標的物付近に到達すると、存在環境に、活性プロトン又は水素イオン欠乏、疎水性及び水欠乏という環境状態の形成を維持して、疎水性の物質状態とする。こうすることで、ピペリジン類似体に接近及び溶解しやすくなるとともに、非常に高い活性を有して、ピペリジン類似体に対するプロトン捕捉反応を効率的に発生可能となる。且つ、滞留時間が長くなり、標的性が強化される。
【0049】
本発明は、第2の局面において、本発明の第1の局面で記載した医薬組成物の調製方法を提供する。当該方法は、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物を混合したあと調製して医薬組成物を取得することを含む。
【0050】
仮に、胃、腸、食道等の部位に使用する場合には、更に、医薬組成物に滑沢剤等の補助が必要となる。よって、具体的実施例では、更に、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物に滑沢剤を添加し、混合したあと調製して医薬組成物を取得することを含む。
【0051】
本発明で提供する医薬組成物の調製方法において、医薬組成物は、タブレット、カプセル剤等の製剤形式に製造してもよい。全粉末直接打錠法を用いる場合には、湿式造粒における乾燥過程を省略できるため、生産過程でSN三重結合構造化合物が加水分解される可能性が減少する。
【0052】
そのほか、製剤の包装について言うと、包装材料もまた薬品の安定性を向上させる重要な部分となる。外側をアルミ箔で包み、個別に密封して、空気からより良好に隔離すれば、加水分解を防止する作用を発揮可能となる。実験の結果、アルミ箔を使用すると、SN三重結合構造化合物の安定性が大幅に向上することが見出だされた。
【0053】
本発明は、その他の局面において、医薬組成物の、細胞増殖を抑制する薬物及び抗腫瘍薬における使用を提供する。細胞増殖を抑制する薬物及び抗腫瘍薬に医薬組成物を適用することで、活性薬物について、標的細胞への到達前及び標的物に対する高活性の安定の問題を解決して、SN三重結合構造化合物の分解を低下させることが可能となる。
【0054】
従来技術と比較して、本発明における医薬組成物及び製剤は、SN三重結合構造化合物の加水分解を有効に防止可能である。安定保護剤は、医薬組成物に環境中の活性プロトン欠乏、疎水性、水欠乏を維持させ得るとともに、主体化合物の標的活性を向上可能とすることで、標的物に対する脱プロトン化、アルキル化等の活性を有効に向上及び維持させる。類似物同士の溶解(Like dissolves like)の時間差を巧みに利用することで、時間の経過とともに脱プロトン化活性が大幅に向上し得るとの興味深い効果が示されるため、薬物の活性時間が延長されるだけでなく、脱プロトン化及びアルキル化活性の効果も向上する。これにより、その後の臨床試験のために堅固な基礎が構築される。
【0055】
以下に、特定の具体的実施例を通じて、本発明の実施形態につき説明する。なお、当業者であれば、本明細書で開示する内容から本発明のその他の利点及び効果を容易に理解可能である。更に、本発明は、その他の異なる具体的実施形態によっても実施又は応用可能である。また、本明細書の各詳細は、異なる視点及び応用に基づき、本発明の精神を逸脱しないことを前提に各種の補足又は変更が可能である。
【0056】
後述の実施例で使用する試薬、材料及び計器は、特に説明していない場合、いずれも購入により取得してもよい。
【0057】
以下の実験で使用した実験用原料には、APSNRI、FPSNRI、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微粉末シリカゲル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、無水エタノール等が含まれていた。また、使用した機器には、主に、同一の打錠機(19錠打錠機)、電熱恒温培養器等が含まれていた。
【0058】
タブレット及び溶媒:タブレットは、使用時に無水エタノールに溶解させて、ピペリジンに注入することで効果を発揮した。
【0059】
溶媒:無水エタノールとした。使用時には、ピペリジンに直接注入されることで効果を発揮した。
【0060】
本発明のSN三重結合構造化合物を含有する医薬組成物の安定性、脱プロトン化活性等の効果の状況は、本発明のSN三重結合構造化合物を含有する医薬組成物の核磁気共鳴スペクトルにおけるH NMR面積比の変化から分析及び測定した。これは、常用される方法であった。また、ピペリジンの反応生成物は、既知のその他の方法で合成されるか、市販されている対応する反応生成物(例えば、Scheme2の反応生成物)と照合及び分析可能であった。
【0061】
【化3】
【0062】
APSNRIは、FPSNRIの反応により合成して取得した。なお、原材料は、国薬集団化学試剤有限公司から購入した。また、合成・調製については、以下の文献を参照した。
【0063】
1)Bull.Chem.Soc.Jpn.71,1629-1637(1998),Yoshimura,T;Ohkubo,M.;Fujii,T.;Kita,H.;Wakai,Y.;Ono,S.;etc.
【0064】
FPSNRIは、フェニルスルフィド、クロラミンT等の多段階反応により合成して取得した。なお、原材料は、国薬集団化学試剤有限公司から購入した。また、合成・調製については、以下の文献を参照した。
【0065】
1)Tetrahedron Lett,30,6339-6340(1989),Yoshimura,T;Tsukurimichi,E.;Kita,H.;Fujii,H.;Shimasaki,C.
2)a.Chem.Lett.1433-1436(1992),Yoshimura,T.etc.
b.Chem.Lett.2213-2216(1992),Yoshimura,T.etc.
c.J.Org.Chem.62.3802-3803(1997),Yoshimura,T.etc.
【0066】
微粉末シリカゲルは、聯碩生物科技有限公司から購入した。また、規格は200~300メッシュとした。
【0067】
微結晶セルロースは、雪季食品配料公司から購入し、湖州市菱新望化学有限公司によりGB1886.103に基づき生産した。
【0068】
アルファ化澱粉は、上海千味食品添加剤公司から購入した。
【0069】
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルは、科学研究用試薬・消耗品店から購入した(Brij-35)。
【0070】
比較例1
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
【0071】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物について、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0072】
比較例2
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 5mg
DMAP 20mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 10mg
【0073】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0074】
比較例3
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
DMAP 20mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 10mg
【0075】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0076】
比較例4
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 10mg
【0077】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0078】
比較例5
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
DMAP 20mg
【0079】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物、DMAPを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0080】
比較例6
活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 5mg
【0081】
具体的な製造方法
上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシドを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0082】
実施例1
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 8mg
DMAP 10mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
微結晶セルロース 20mg
アルファ化澱粉 40mg
【0083】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉を均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0084】
実施例2
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 5mg
DMAP 5mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
微結晶セルロース 20mg
【0085】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロースを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0086】
実施例3
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 5mg
DMAP 5mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
アルファ化澱粉 40mg
【0087】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉を均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0088】
実施例4
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるAPSNRIを1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
APSNRI 100mg
ナトリウムエトキシド 5mg
DMAP 5mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
アルファ化澱粉 40mg
微粉末シリカゲル 10mg
【0089】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ナトリウムエトキシド、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、アルファ化澱粉、微粉末シリカゲルを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0090】
比較例7
活性成分であるFPSNRI SN三重結合構造化合物を1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
FPSNRI 200mg
【0091】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物について、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0092】
実施例5
活性成分であるFPSNRI SN三重結合構造化合物を1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
FPSNRI 100mg
DMAP 10mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
微結晶セルロース 20mg
アルファ化澱粉 40mg
【0093】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、DMAP、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉を均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0094】
実施例6
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるFPSNRI SN三重結合構造化合物を1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
FPSNRI 100mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
微結晶セルロース 10mg
アルファ化澱粉 10mg
【0095】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉を均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0096】
実施例7
比較例1に従って、同様の方法で、活性成分であるFPSNRI SN三重結合構造化合物を1錠あたり100mg含有する製剤を製造した。当該製剤に使用した医薬組成物の組成は以下の通りであった。
FPSNRI 100mg
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル 20mg
微結晶セルロース 10mg
アルファ化澱粉 10mg
微粉末シリカゲル 10mg
【0097】
具体的な製造方法
打錠・製造:上述したSN三重結合構造化合物、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、微粉末シリカゲルを均一に混合した。また、直接打錠法を用い、均一に混合して、1錠あたり100mgのSN三重結合構造化合物を含有するものを製造した。
【0098】
上記の実施例及び比較例の組成について試験を行った。
1)安定性については、活性化合物の残量を測定することで特定した。
2)活性物の脱プロトン化活性については、異なる環境に存在するピペリジンとの反応度合いから特定可能であった。即ち、a)直接反応、b)中性環境、c)酸性環境における時間経過に伴う反応の度合いから特定可能であった。
【0099】
事例の関連実験データについては、表1及び表2を参照する。
【0100】
表1:各実施例及び比較例の打錠は、100mlの密閉容器内で行った。また、水溶液中の活性物とは、水と活性物の重量比が1:1であったことを意味する。また、酢酸・弱酸水溶液中の活性物とは、液体と活性物の重量比1:1に対し酢酸溶液を1滴加えてPH4.8にしたことを意味する。また、タンパク質・アミノ酸水溶液中の活性物とは、液体と活性物の重量比1:1に対し、2eqでアラニンを加えたことを意味する。活性物とは、各実施例及び比較例に対応するSN三重結合化合物のことである。
【0101】
【表1】
【0102】
表1での安定性が良好であったことを元に、表2の試験を重点的に行った。
【0103】
表2のa.ピペリジン中の反応とは、活性物であるCO基を持つSN三重結合構造化合物5mgに0.5mlのピペリジンを加え、40度のウォーターバスで24h反応させたことを意味する。また、b.無水エタノールにおけるピペリジンの反応とは、活性物であるCO基を持つSN三重結合構造化合物5mgを少量の無水エタノール約0.2mlに溶解させてから、0.5mlのピペリジンを加え、40度のウォーターバスで24h反応させたことを意味する。また、c.中性のタンパク質・アミノ酸水溶液(医薬組成物を無水エタノールに溶解させたもの)におけるピペリジンの反応とは、活性物であるCO基を持つSN三重結合構造化合物5mgを少量の無水エタノール約0.2mlに溶解させてから、0.5mlのピペリジンを加え、更に、3.5mgのアラニンを加えたあと、0.5mlの蒸留水を加えて、40度のウォーターバスで24h反応させたことを意味する。また、d.弱酸性のタンパク質・アミノ酸水溶液(医薬組成物を無水エタノールに溶解させたもの)におけるピペリジンの反応とは、活性物であるCO基を持つSN三重結合構造化合物5mgを少量の無水エタノール約0.2mlに溶解させてから、0.5mlのピペリジンを加え、更に、活性物の2eqである3.5mgのアラニンを加えたあと、0.5mlの蒸留水を加え、更に、2滴の酢酸溶液を加えてから、40度のウォーターバスで24h反応させたことを意味する。
【0104】
【表2】
【0105】
これら試験の事例より、SN三重結合化合物は、有効な医薬的組み合わせによって、異なる環境における安定性、脱プロトン化活性、アルキル化活性、標的活性等の効果が著しく向上することが明らかとなった。これは、その後、この種の医薬組成物を有効に抗腫瘍等の薬物に応用するための基礎となる。
【0106】
実施例で数値範囲を提示している場合には、本発明において別途説明している場合を除き、各数値範囲の2つの端点及び2つの端点間の任意の数値をいずれも選択可能と解釈すべきである。また、別途定義している場合を除き、本発明で使用するあらゆる技術用語及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同義である。更に、実施例で使用している具体的方法、機器、材料のほかに、当業者による従来技術の理解及び本発明の記載に基づいて、本発明の実施例で述べる方法、機器、材料と類似又は同等の従来技術における任意の方法、機器及び材料を用いて本発明を実現してもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、
SN三重結合構造化合物: 2~98%、
安定保護剤: 0.5~97%、
医薬品添加物: 0.1~55%、
を含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物の原料は、更に、滑沢剤を含み、
前記医薬組成物の原料は、質量パーセントで、
SN三重結合構造化合物: 40~85%、
安定保護剤: 0.5~8%、
医薬品添加物: 5~55%、
滑沢剤: 2~18%、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
使用時には、前記医薬組成物を溶媒に溶解させ、
好ましくは、前記溶媒は無水エタノールから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記SN三重結合構造化合物は、APSNRI及び/又はFPSNRIから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記安定保護剤は、ナトリウムアルコキシド、アルコール類、アルコール系ポリマー、ピリジン類、プロトン欠乏疎水性グリース等のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、
好ましくは、前記安定保護剤は、ナトリウムエトキシド、4-ジメチルアミノピリジン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、無水エタノールのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬品添加物は、微結晶セルロース、アルファ化澱粉、カプセルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記滑沢剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、微粉末シリカゲルのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、
好ましくは、前記滑沢剤は微粉末シリカゲルから選択されることを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物の調製方法であって、
SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物を混合したあと調製して取得することを含む医薬組成物の調製方法。
【請求項9】
更に、SN三重結合構造化合物、安定保護剤、医薬品添加物に滑沢剤を添加し、混合したあと調製して取得することを含むことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物の、細胞増殖を抑制する薬物及び抗腫瘍薬における使用。
【国際調査報告】