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特表2024-539405自由ストロークを有するハイドロリック式の減衰装置を備えたガスインジェクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】自由ストロークを有するハイドロリック式の減衰装置を備えたガスインジェクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/04 20060101AFI20241018BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241018BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F02M61/04 G
F02M21/02 S
F02M61/16 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526924
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022071081
(87)【国際公開番号】W WO2023078592
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021214187.0
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021212419.4
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー シュミーダー
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト シュティーア
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AB05
3G066BA49
3G066CE12
3G066DA13
(57)【要約】
本発明は、ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタであって、シールシート(3)に設けられた貫通開口(4)を開閉する閉鎖エレメント(2)と、該閉鎖エレメント(2)を、閉鎖された初期位置へ戻す戻しエレメント(6)と、閉鎖エレメント(2)を操作するアクチュエータ(5)と、閉鎖エレメント(2)の運動を減衰するためのハイドロリック式の減衰装置(7)であって、該ハイドロリック式の減衰装置(7)は、閉じられたハイドロリック室(8)内の液体を用いた減衰を提供するように調整されているハイドロリック式の減衰装置(7)と、閉鎖エレメント(2)とハイドロリック式の減衰装置(7)との間に配置されていて、予め規定された自由ストローク(S1)を進んだ後でしか前記閉鎖エレメント(2)の運動の減衰を実施しないように調整されている自由ストロークアッセンブリ(20)と、を含む、ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタであって、
シールシート(3)に設けられた貫通開口(4)を開閉する閉鎖エレメント(2)と、
前記閉鎖エレメント(2)を、閉鎖された初期位置へ戻す戻しエレメント(6)と、
前記閉鎖エレメント(2)を操作するアクチュエータ(5)と、
前記閉鎖エレメント(2)の運動を減衰するためのハイドロリック式の減衰装置(7)であって、該ハイドロリック式の減衰装置(7)は、閉じられたハイドロリック室(8)内の液体を用いた減衰を提供するように調整されているハイドロリック式の減衰装置(7)と、
前記閉鎖エレメント(2)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)との間に配置されていて、予め規定された自由ストローク(S1)を進んだ後にのみ前記閉鎖エレメント(2)の運動の減衰を実施するように調整されている自由ストロークアッセンブリ(20)と、
を含む、ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタ。
【請求項2】
前記閉鎖エレメント(2)の完全な開放行程は、前記自由ストローク(S1)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)の減衰ストローク(S2)とを含む、請求項1記載のガスインジェクタ。
【請求項3】
前記減衰ストローク(S2)は、前記自由ストローク(S1)よりも小さい、請求項2記載のガスインジェクタ。
【請求項4】
前記自由ストローク(S1)に対する前記減衰ストローク(S2)の比が、0.06~0.12の範囲にあり、特に0.08~0.10の範囲にある、請求項3記載のガスインジェクタ。
【請求項5】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)は、自由ストロークハウジング(21)と、該自由ストロークハウジング(21)内に配置された制御エレメント(22)と、前記自由ストロークハウジング(21)に位置固定されたストッパエレメント(23)とを含み、前記自由ストローク(S1)は、前記制御エレメント(22)と前記ストッパエレメント(23)との間に形成されている、または
前記自由ストローク(S1)は、前記制御エレメント(22)と前記自由ストロークハウジング(21)との間に形成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項6】
前記自由ストロークハウジング(21)が前記ハイドロリック式の減衰装置(7)に結合されていて、前記制御エレメント(22)が前記閉鎖エレメント(2)に結合されている、または前記自由ストロークハウジング(21)が前記閉鎖エレメント(2)に結合されていて、前記制御エレメント(22)が前記ハイドロリック式の減衰装置(7)に結合されている、請求項5記載のガスインジェクタ。
【請求項7】
前記ハイドロリック式の減衰装置(7)は、ベースボディ(17)と、該ベースボディ(17)内に軸方向可動に配置されたセンタリングピン(18)とを含み、該センタリングピン(18)は、前記自由ストロークアッセンブリ(20)に作用結合されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項8】
前記ハイドロリック式の減衰装置(7)は、第1の制御室(80)と第2の制御室(88)とを有し、両制御室は、流体接続部を介して互いに接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項9】
前記流体接続部は、絞り(14)を含み、該絞り(14)は、前記第1の制御室(80)と前記第2の制御室(88)とを分離する制御シリンダ(13)に配置されており、前記絞り(14)を介して、開放過程および閉鎖過程の際に、前記第1の制御室と前記第2の制御室とにおける容積変化によって前記閉鎖エレメント(2)の減衰が行われる、請求項8記載のガスインジェクタ。
【請求項10】
前記減衰装置(7)は、ベースボディ(17)と、第1のフレキシブルなエレメント(11)と、第2のフレキシブルなエレメント(12)とを有し、前記閉鎖エレメント(2)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)に結合されており、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)および前記第2のフレキシブルなエレメント(12)は、閉じられた前記ハイドロリック室(8)のハウジング領域を形成している、請求項1から9までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項11】
前記第1のフレキシブルなエレメントおよび/または前記第2のフレキシブルなエレメントは、金属ダイヤフラムであり、かつ/または前記第1のフレキシブルなエレメントおよび前記第2のフレキシブルなエレメントは、ベローズである、請求項10記載のガスインジェクタ。
【請求項12】
前記第1のフレキシブルなエレメント(11)は、前記ベースボディ(17)に配置されていて、該ベースボディ(17)と前記第1のフレキシブルなエレメント(11)との間に前記ハイドロリック室(8)の第1の部分室(81)が形成されており、
前記第2のフレキシブルなエレメント(12)は、前記ベースボディ(17)に配置されていて、該ベースボディ(17)と前記第2のフレキシブルなエレメント(12)との間に前記ハイドロリック室(8)の第2の部分室(82)が形成されており、
前記第1の部分室(81)と前記第2の部分室(82)とは、接続領域(83)を介して互いに流体接続されている、請求項10または11記載のガスインジェクタ。
【請求項13】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)と前記減衰装置(7)とは、前記ガスインジェクタの軸方向(X-X)で、前記アクチュエータ(5)の、前記シールシート(3)とは反対の側に配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項14】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)とは、前組立てされたモジュール(100)として形成されている、請求項13記載のガスインジェクタ。
【請求項15】
前記センタリングピン(18)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)とシールディスク(19)とによって案内されており、該シールディスク(19)は、ばねディスク(101)によって予め付勢されている、請求項7から14までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項16】
前記ばねディスク(101)は、ポット状に形成されていて、保持縁部(102)と、軸方向(X-X)に突出した突起(103)と、軸方向の切欠部(104)とを備えている、請求項15記載のガスインジェクタ。
【請求項17】
前記センタリングピン(18)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)とシールディスク(19)とによって案内されており、該シールディスク(19)は、プレス結合によって前記ハイドロリック式の減衰装置の前記ベースボディ(17)に結合されている、圧入されたディスク(119)によって軸方向に予め付勢されている、請求項7から14までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項18】
前記シールディスク(19)の半径方向外側の周面に、液体で充てんされた補償室(120)が設けられている、請求項17記載のガスインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、弁ニードルの運動を、特に開放過程においても閉鎖過程においても減衰するために、自由ストロークを有するハイドロリック式の減衰装置を備えた、ガス状の媒体、特に水素または希ガスまたはこれに類するものを吹き込むためのガスインジェクタに関する。
【0002】
ガスインジェクタは、公知技術に基づき種々異なる構成が知られている。ガスインジェクタが吹き込むガス状の媒体に基づき、ガスインジェクタは、液状の媒体用のインジェクタ、たとえばフューエルインジェクタに比べて、極めて大きな行程を実施しなければならない。しかし、ガスインジェクタにおいて、このことは、構成部分、特にシールシートにおける大きな摩耗や行程制限を招くおそれがある。ガスインジェクタにおいて必要となる大きな切換力に基づき、作動中に構成部分に生じる摩耗は一層増幅される。
【0003】
発明の開示
請求項1に記載の特徴を有する、ガス状の媒体を吹き込むための、特に水素または希ガスを吹き込むための本発明によるガスインジェクタは、従来のものに比べて次のような利点を有する。すなわち、吹き込まれるべき大きなガス容量に基づいた大きな行程にもかかわらず、減衰装置が極めて小型に、かつ廉価に提供され得る。この減衰装置は、ガスインジェクタの構成部分の摩耗をも減少させる。さらに、本発明によるガスインジェクタは、特に開放過程における終端ストッパへの衝突時および閉鎖過程におけるシートシートの閉鎖時において、著しく改善されたノイズ特性を有する。これは、本発明によれば、以下の構成により達成される。すなわち、ガスインジェクタは、シールシートに設けられた貫通開口を開閉する閉鎖エレメントを有する。さらに、ガスインジェクタは、閉鎖エレメントを、開放された状態から閉鎖された初期状態へ戻す戻しエレメントを含む。さらに、閉鎖エレメントを操作するアクチュエータと、ハイドロリック式の減衰装置とが設けられている。ハイドロリック式の減衰装置は、閉鎖エレメントの運動を減衰するために調整されている。減衰はこの場合、液体を用いて行われ、この液体は、減衰装置の閉じられたハイドロリック室内で、閉鎖エレメントの開放時および/または閉鎖時に減衰過程を実施する。さらに、自由ストロークアッセンブリが設けられており、この自由ストロークアッセンブリは、機能的に閉鎖エレメントとハイドロリック式の減衰装置との間に配置されている。自由ストロークアッセンブリは、開放過程においても閉鎖過程においても、予め規定された自由ストロークを進んだ後でしか閉鎖エレメントの運動の減衰を実施しないように調整されている。このことは、減衰装置の極めて廉価で、かつ小型の構造を可能にする。したがって、自由ストロークアッセンブリの自由ストロークにより、開放過程および閉鎖過程は、まずは減衰なしに行われ、自由ストロークを進んだ後にはじめて減衰装置が作用する。したがって、ガスインジェクタの接触構成部分、特にシールシートおよび/またはガスインジェクタの開放行程を制限するストッパにおける過剰摩耗が回避され得る。さらに、減衰装置を用いたハイドロリック式の減衰に基づき、ガスインジェクタの開放過程および閉鎖過程における著しく改善されたノイズ特性が得られる。
【0004】
従属形式の請求項には、本発明の有利な改良形が記載されている。
【0005】
閉鎖エレメントの完全な開放行程が、自由ストロークアッセンブリの自由ストロークと、ハイドロリック式の減衰装置の減衰ストロークとを含むと、さらに有利である。ハイドロリック式の減衰装置の減衰ストロークはこの場合、自由ストロークよりも小さい。したがって、たとえば開放過程においては、極めて迅速な開放と同時に、相応して大きな吹込み量が達成され、その後、自由ストロークを進んだ後に減衰装置によって開放運動の減衰が行われ、これは開放過程を少しだけ減速させる。同様に、閉鎖エレメントの閉鎖運動時には、まず自由ストロークを進むことによって閉鎖エレメントの閉鎖ストロークの大部分が進められ、その後にハイドロリック式の減衰装置が作用して、シールシートへの閉鎖エレメントの衝突時における摩耗回避およびノイズ回避のための減衰を可能にする。
【0006】
自由ストロークに対する減衰ストロークの比が、好ましくは0.06~0.12の範囲にあり、特に0.08~0.10の範囲にあり、かつ特に有利には0.9である。
【0007】
自由ストロークアッセンブリが、自由ストロークハウジングと、この自由ストロークハウジング内に配置された制御エレメントと、自由ストロークハウジングに位置固定されたストッパエレメント、特にストッパリングとを含むと、さらに有利である。この場合、自由ストロークは、制御エレメントとストッパエレメントとの間に形成されている、または択一的な別の構成では、制御エレメントと自由ストロークハウジングとの間に形成されている。これにより、自由ストロークアッセンブリは極めてコンパクトに、かつ小型に形成され得る。
【0008】
自由ストロークハウジングがハイドロリック式の減衰装置に結合されていて、制御エレメントが閉鎖エレメントに結合されていると、さらに有利である。択一的な別の構成では、自由ストロークハウジングが閉鎖エレメントに結合されていて、制御エレメントがハイドロリック式の減衰装置に結合されている。したがって、自由ストロークアッセンブリは、閉鎖エレメントとハイドロリック式の減衰装置との間にガスインジェクタの軸方向で組み込まれている。
【0009】
ハイドロリック式の減衰装置が、ベースボディと、このベースボディ内に軸方向可動に配置されたセンタリングピンとを含み、このセンタリングピンが、自由ストロークアッセンブリに結合されていると、さらに有利である。これにより、ハイドロリック式の減衰装置と自由ストロークアッセンブリとの間の結合が、センタリングピンを介して簡単に達成され得る。センタリングピンは、好ましくはハイドロリック式の減衰装置の内部に突入している。
【0010】
できるだけ単純な構造のためには、ハイドロリック式の減衰装置が、第1の制御室と第2の制御室とを有し、両制御室が、流体接続部を介して互いに接続されている。これにより、2つの制御室が設けられており、この場合、一方の制御室は閉鎖エレメントの開放運動の減衰を受け持ち、他方の制御室は閉鎖エレメントの閉鎖運動の減衰を受け持つ。
【0011】
第1の制御室と第2の制御室との間の流体接続部は、好ましくは絞りを含む。この絞りは、好ましくは、第1の制御室と第2の制御室とを分離する制御シリンダに配置されている。この絞りを介して、開放過程および閉鎖過程の際に、第1の制御室と第2の制御室とにおける容積変化によって閉鎖エレメントの減衰が行われる。絞りは、たとえば制御シリンダに設けられた小さな孔として形成されていてもよく、または択一的または付加的に制御シリンダに設けられた半径方向ギャップを介して提供され得る。
【0012】
第1の制御室と第2の制御室とが、ベースボディ内に形成されていて、特にガスインジェクタの中心軸線に位置する、片側の開いた孔またはこれに類するものに形成されていると、さらに有利である。
【0013】
できるだけコンパクトな構造を達成するためには、減衰装置が、好ましくはベースボディと、第1のフレキシブルなエレメントと、第2のフレキシブルなエレメントとを有する。この場合、閉鎖エレメントは、第1のフレキシブルなエレメントに結合されており、第1のフレキシブルなエレメントと、第2のフレキシブルなエレメントとは、閉じられたハイドロリック室のハウジング領域を形成している。したがって、第1のフレキシブルなエレメントは、閉鎖エレメントの運動を可能にする。
【0014】
第1のフレキシブルなエレメントおよび第2のフレキシブルなエレメントは、好ましくは金属ダイヤフラムである。択一的な別の構成では、第1のフレキシブルなエレメントおよび第2のフレキシブルなエレメントが、金属製のベローズである。
【0015】
第1のフレキシブルなエレメントが、減衰装置のベースボディに配置されていて、ベースボディと第1のフレキシブルなエレメントとの間にハイドロリック室の第1の部分室が形成されていると、さらに有利である。さらに、第2のフレキシブルなエレメントが、ベースボディに配置されていて、ベースボディと第2のフレキシブルなエレメントとの間にハイドロリック室の第2の部分室が形成されている。第1の部分室と第2の部分室とは、この場合、接続領域、好ましくは溝または孔またはこれに類するものを介して互いに流体接続されている。
【0016】
第1の制御室と第2の制御室とが、横方向孔を介して接続領域に接続されていると、さらに有利である。
【0017】
作動中に減衰装置に対する温度影響をできるだけ小さくするためには、減衰装置と自由ストロークアッセンブリとが、好ましくはガスインジェクタの軸方向X-Xで、アクチュエータの、シールシートとは反対の側に配置されている。したがって、アクチュエータは、特にガスインジェクタが内燃機関の燃焼室内への直接吹込みのために調整されている場合に発生するおそれのある熱的な影響に対して、減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを保護している。
【0018】
ガスインジェクタは、さらに有利には、外方へ向かって開くガスインジェクタである。ガスインジェクタは、好ましくは、内燃機関の燃焼室内へガス状の燃料を直接吹き込むために形成されている。
【0019】
できるだけコンパクトな、前組立て可能なユニットを提供するために、ハイドロリック式の減衰装置は、好ましくは自由ストロークアッセンブリと共に、前組立て可能なモジュールとして形成されている。前組立て可能なモジュールは、好ましくは作動モジュールハウジング内に配置されており、この作動モジュールハウジングを貫いて閉鎖エレメントが貫通案内されている。
【0020】
第1の制御室および第2の制御室からハイドリック室内への大きな漏れを回避するために、センタリングピンは、好ましくは第1のフレキシブルなエレメント、特に金属ダイヤフラムと、シールディスクとによって案内されている。シールディスクはこの場合、ばねディスクによって軸方向に予め付勢されている。この手段により、減衰装置内の半径方向ギャップが極めて小さく形成され得るので、これらの半径方向ギャップを介して生じる漏れは最小限に抑えられ得る。
【0021】
ばねディスクは、好ましくはポット状に形成されていて、保持縁部と、軸方向に突出した突起と、軸方向の切欠部とを含む。ばねディスクは、好ましくはハイドロリック式の減衰装置の第2の制御室内に配置されている。好ましくは、ばねディスクがシールディスクに軸方向力を加えており、これによりシールディスクはハイドロリック式の減衰装置のベースボディにシールされる。
【0022】
択一的な別の有利な構成では、前で説明したシールディスクが、圧入されたディスクによってハイドロリック式の減衰装置のベースボディに押圧されている。これにより、特にシールディスクとベースボディとの間の接触領域において、極めて良好なシールが達成され得る。シールディスクはこの場合、第1のフレキシブルなエレメント、特に金属ダイヤフラムと共に、センタリングピンを案内する。好ましくは、シールディスクの内側の周面にR部が形成されている。これにより、半径方向ギャップが極めて小さく形成され得るので、これらの半径方向ギャップを介して生じるハイドリック室から第1の制御室および第2の制御室内への漏れが最小限に抑えられ得る。圧入されたディスクはこの場合、プレス結合によってベースボディに結合されている。
【0023】
好ましくは、シールディスクの半径方向外側の周面に、液体で充てんされた補償室が設けられている。
【0024】
さらに、本発明は、本発明によるガスインジェクタを備えた内燃機関に関する。ガスインジェクタはこの場合、好ましくは水素または希ガスまたは別の可燃性ガスを、特に内燃機関の燃焼室内へ直接に吹き込む。
【0025】
以下に、添付図面につき、本発明の有利な実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の有利な第1の実施例によるガスインジェクタの概略的な断面図である。
図2図1に示したガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、ガスインジェクタの閉鎖された状態で示す概略的な拡大部分断面図である。
図3図1に示したガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、自由ストロークを進んだ後の部分的に開放された状態で示す概略的な拡大部分断面図である。
図4図1に示したガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、自由ストロークを進んだ後の完全に開放された状態で示す概略的な拡大部分断面図である。
図5図1に示したガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、自由ストロークを進んだ後の部分的に閉鎖された状態で示す概略的な拡大部分断面図である。
図6】本発明の第2の実施例によるガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、閉鎖された状態で示す概略的な部分断面図である。
図7】本発明の第3の実施例によるガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、閉鎖された状態で示す概略的な部分断面図である。
図8】本発明の第4の実施例によるガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、閉鎖された状態で示す概略的な部分断面図である。
図9図8に示したばねディスクの概略的な断面図である。
図10図9に示したばねディスクの概略的な平面図である。
図11】本発明の第5の実施例によるガスインジェクタの減衰装置と自由ストロークアッセンブリとを、閉鎖された状態で示す概略的な部分断面図である。
【0027】
以下において、図1図5につき、本発明の第1の有利な実施例によるガスインジェクタ1について詳細に説明する。
【0028】
図1から判るように、内燃機関の燃焼室30内へガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタは、閉鎖エレメント2と、この閉鎖エレメント2を操作するためのアクチュエータ5とを含む。閉鎖エレメント2は弁ニードルである。アクチュエータ5は、内側磁極50と、閉鎖エレメント2に結合されたアーマチュア51とを備えた磁気的なアクチュエータである。内側磁極50には、閉鎖エレメントの開放行程を制限するためのストッパ52が形成されている。
【0029】
閉鎖エレメント2はこの場合、シールシート3に設けられた貫通開口4を開閉する。貫通開口4は、開放された状態では環状の通過部となり、この場合、ガスインジェクタ1は、外方に向かって開くインジェクタである。すなわち、閉鎖エレメント2は開放時に矢印Aの方向で外方へ向かって燃焼室30の方向に動かされる。
【0030】
シールシート3とは反対の側の端部には、ガス流入部31が設けられている。図1から判るように、ガス流入部31はこの場合、閉鎖エレメント2と一直線上で、ガスインジェクタの軸方向X-Xを規定する中心軸線に沿って配置されている。
【0031】
図1において、矢印Bは、ガス流入部31を起点としてシールシート3にまで達する、ガスインジェクタ1を通るガス流を示している。
【0032】
さらに図1から判るように、アクチュエータ5は金属ダイヤフラム9によってガス状の媒体に対してシールされている。金属ダイヤフラム9はこの場合、溶接結合によって閉鎖エレメント2に結合されている。金属ダイヤフラム9はこの場合、真ん中の開口を有し、この開口を貫いて閉鎖エレメント2が貫通案内されている。
【0033】
さらに、ガスインジェクタ1は戻しエレメント6を含む。戻しエレメント6は、この実施例では円筒状のコイルばねである。戻しエレメント6は閉鎖エレメント2を、開いた状態から再び、閉鎖された初期状態へ戻す。この場合、戻しエレメント6は、ばね受け60とハウジング構成部分10aとに支持されている。
【0034】
ガスインジェクタ1は、さらにハイドロリック式の減衰装置7を含む。この減衰装置7については、図2図5につき特に詳しく説明する。
【0035】
ハイドロリック式の減衰装置7は、閉鎖エレメント2の運動を減衰するために調整されている。この場合、開放過程の間の運動も、閉鎖過程の間の運動も減衰される。ハイドロリック式の減衰装置はこの場合、減衰装置7に設けられた、閉じられたハイドロリック室8内の液体を用いて減衰を実施するように調整されている。
【0036】
ハイドロリック式の減衰装置7はこの場合、第1の制御室80と第2の制御室88とを含む。両制御室80,88はこの場合、ハイドロリック式の減衰装置7のベースボディ17内に配置されている。第1の制御室80はこの場合、閉鎖エレメントの戻し運動を減衰するために働き、第2の制御室88は、閉鎖エレメントの開放運動を減衰するために働く。
【0037】
図2から判るように、センタリングピン18に制御シリンダ13が配置されている。制御シリンダ13は、複数の孔13aを有し、これらの孔13aは第1の制御室80と第2の制御室88とを接続している。これらの孔には、この場合、それぞれ1つの絞り14が配置されており、この場合、絞り14のための孔直径の設定によって開放過程および閉鎖過程の際の減衰の強さが調節可能となる。
【0038】
さらに、減衰装置7は、第1のフレキシブルなエレメント11と、第2のフレキシブルなエレメント12とを含む。第1のフレキシブルなエレメント11および第2のフレキシブルなエレメント12は、この実施例では金属ダイヤフラムである。図2から判るように、閉じられたハイドロリック室8は、ベースボディ17に設けられた中空室と、第1のフレキシブルなエレメント11と、第2のフレキシブルなエレメント12とによって形成される。この場合、第1のフレキシブルなエレメント11は、真ん中の開口を備えており、この開口を貫いて、センタリングピン18が貫通案内されている。第1のフレキシブルなエレメント11はこの場合、溶接結合によってセンタリングピン18に結合されている。
【0039】
閉じられたハイドロリック室8は、液体、たとえばオイルで充てんされている。図2から判るように、この場合、センタリングピン18は貫通孔18aを備えて形成されており、この貫通孔18aはボール86によって閉鎖されている。この場合、閉じられたハイドロリック室8の容易な充てんを可能にすることができる。
【0040】
第2のフレキシブルなエレメント12は、ベースボディ17の、ガス流入部31に向けられた端面において流体密にこのベースボディ17に配置されている。第1のフレキシブルなエレメント11および第2のフレキシブルなエレメント12は、好ましくは金属ダイヤフラムであるので、溶接結合によって簡単にベースボディ17との流体シール性が形成され得る。
【0041】
ベースボディ17と第1のフレキシブルなエレメント11との間には、ハイドロリック室の第1の部分室81が形成されている。ベースボディ17と第2のフレキシブルなエレメント12との間には、第2の部分室82が形成されている。第1の部分室と第2の部分室とは、接続孔である接続領域83を介して、互いに流体接続されている。
【0042】
さらに、ガスインジェクタ1は、自由ストロークアッセンブリ20を含む。自由ストロークアッセンブリ20は、軸方向X-Xでハイドロリック式の減衰装置7とアクチュエータ5との間に配置されている(図1参照)。
【0043】
自由ストロークアッセンブリ20は、自由ストロークハウジング21と、この実施例では制御ディスクである制御エレメント22と、ストッパエレメント23とを含む。図2から判るように、ストッパエレメント23は溶接結合によって自由ストロークハウジング21に固く結合されている。制御エレメント22は、閉鎖エレメント2の、燃焼室30とは反対の側に配置されている。この場合、制御エレメント22と閉鎖エレメント2の端部との間には、固い結合が形成されている。これは、たとえば溶接結合またはプレス結合または任意の別の固定的な機械的結合であってもよい。
【0044】
自由ストロークハウジング21はセンタリングピン18に結合されており、この場合、自由ストロークハウジング21とセンタリングピン18とは、たとえば唯一つの共通の構成部分として形成されている。しかし、自由ストロークハウジング21とセンタリングピンとの構造は、複数部分から形成されていてもよい。
【0045】
ガスインジェクタ1は、さらにポット状の作動モジュールハウジング100を含み、この作動モジュールハウジング100内に、自由ストロークアッセンブリ20と、部分的に減衰装置7とが配置されている。作動モジュールハウジングはこの場合、溶接結合によって減衰装置7のベースボディ17の外周に結合されている。
【0046】
ストロークに関して最適化された減衰機能を有する本発明によるガスインジェクタ1の機能は、次の通りである。図1および図2に示したガスインジェクタ1の閉鎖された位置を起点として、アクチュエータ5が作動させられる。これにより、アーマチュア51は内側磁極50の方向に引き付けられるので、閉鎖エレメント2はシールシート3から持ち上げられて、貫通開口4を開放する。このときに戻しエレメント6はプリロード(予荷重)をかけられる。
【0047】
図2には、矢印Cにより閉鎖エレメント2のための開放過程が示されている。ガスインジェクタの閉鎖された状態では、ストッパエレメント23と制御エレメント22との間で軸方向に自由ストロークS1が存在する。制御エレメント22は閉鎖エレメント2に結合されているので、開放過程の間、この自由ストロークS1が進められ、その結果、制御エレメント22はストッパエレメント23に当接する。この状態は図3に示されている。
【0048】
図3に示した状態に至るまで、ガスインジェクタの開放過程の間、減衰は行われない。しかし、ガスインジェクタはまだ完全には開放されていない。次いで、ガスインジェクタの残りの開放ストロークに対しては、ハイドロリック式の減衰装置7による減衰が行われる。
【0049】
図3に矢印Cにより示したように、閉鎖エレメント2は引き続き開放方向に動かされるので、制御エレメント22とストッパエレメント23との間の接触によって自由ストロークハウジング21も矢印Cの方向に動かされ、ひいてはセンタリングピン18も矢印Cの方向に動かされる。このことは、図4において、センタリングピン18に書き込まれた矢印Dにより示されている。制御シリンダ13はセンタリングピン18に固く結合されているので、この制御シリンダ13は、矢印Eにより示したように、同じく開放方向に動かされる。しかし、これにより第1の制御室80および第2の制御室88の容積が変化する。正確には、第1の制御室80の容積は増大し、第2の制御室88の容積は減少する。両制御室80,88は孔13と絞り14とを介して互いに流体接続されているので、これにより、最終的にアーマチュア51が内側磁極50に当接するまで、閉鎖エレメントの運動の減衰が生ぜしめられる。
【0050】
図4にはこの場合、制御シリンダ13によって進められる減衰ストロークS2が書き込まれている。したがって、閉鎖エレメント2の最大開放行程は、自由ストロークS1と減衰ストロークS2とを加算した量である。減衰強さはこの場合、絞り14のための孔直径の設定によって簡単に調節され得る。
【0051】
さらに図4から判るように、第1の部分室81および第2の部分室82の容積も変化する。なぜならば、第1のフレキシブルなエレメント11が、軸方向X-Xに動くセンタリングピン18に直接に結合されているからである。正確には、第1の部分室81の容積は増大し、第2の部分室82の容積は相応して減少する(図4参照)。
【0052】
ガスインジェクタの閉鎖過程のためには、アクチュエータ5に対する通電が終了させられるので、プリロードをかけられた戻しエレメント6によって閉鎖エレメント2に戻し力が加えられる。図5には、この場合、戻し過程のための第1の運動ストロークが示されており、この場合、閉鎖エレメント2に結合された制御エレメント22が、まず自由ストロークS1を進み、その後にこの制御エレメント22は、自由ストロークハウジング21に設けられた段部21aに接触する。この状態は図5に示されている。戻し過程の間のこの時点に至るまで、ハイドロリック式の減衰装置7は減衰作用なしのままとなる。
【0053】
制御エレメント22が自由ストロークハウジング21の段部21aに接触するやいなや、戻しエレメント6の、引き続き存在する戻し運動によって自由ストロークハウジング21も戻され、ひいては自由ストロークハウジング21に結合されたセンタリングピン18も戻される。これにより、制御シリンダ13も、図2に示した初期位置へ戻される。これらの構成部分の戻し運動は、図5に矢印Fにより示されている。
【0054】
したがって、制御エレメント22が自由ストロークハウジング21に接触するやいなや、センタリングピン18の運動によってハイドロリック式の減衰装置7を用いた減衰が行われる。なぜならば、第1の制御室80内の容積と、第2の制御室88内の容積とが、再び図2に示した初期位置の状態に移行するからである。図5には、この場合、閉鎖エレメント2がシールシート3に完全にシールされるまで進められなければならない最大減衰ストロークS2が破線により示されている。したがって、ガスインジェクタの戻し時における最後の運動だけが減衰される。
【0055】
したがって、本発明によれば、自由ストロークアッセンブリ20によって自由ストロークS1を適宜設定することにより、開放過程の間の減衰が、閉鎖エレメントの最後の開放ストロークにのみ限定され得る。同様に、閉鎖過程においては、ハイドロリック式の減衰装置7による減衰作用が、閉鎖エレメント2の、軸方向に進められた最後のストローク(減衰ストロークS2)に限定されている。これにより、ハイドロリック式の減衰装置7が、ベースボディの各端部に設けられたそれぞれ唯一つのフレキシブルなエレメント11,12を用いて極めて小型で、かつ特に廉価に形成されることが可能となる。さらに、第1の制御室80および第2の制御室88の内径および外径が等しい。これにより、特にベースボディ17は極めて単純に形成されていてもよい。センタリングピン18とベースボディ17との間もしくは制御エレメント22とベースボディ17との間の相応して形成された半径方向ギャップにより、この場合、センタリングピン18の可動性が確保され得る。この場合、センタリングピン18もしくは制御エレメント22に設けられた半径方向ギャップのギャップ高さの設定により、減衰作用に影響を与えるための別の手段も与えられている。
【0056】
したがって、本発明によれば、減衰が、ガスインジェクタの開放時および閉鎖時におけるそれぞれ最後のストローク区分に限定され得る。自由ストロークS1はこの場合、減衰ストロークS2よりも大きい。これにより、迅速な切換時間が達成され得るとともに、引き続き、開放時における閉鎖エレメントの、減衰されていない最初の運動により、大規模なガス吹込みが迅速に行われ得る。同じことは、相応して閉鎖過程にも云える。閉鎖過程は、減衰されていない最初の閉鎖ストロークによって大規模に可能となる。
【0057】
図6には、本発明の第2の実施例によるガスインジェクタの部分断面図が概略的に示されている。同一の部分もしくは機能の点で同一の部分は、第1の実施例と同じ符号で示されている。
【0058】
第1の実施例とは異なり、第2の実施例では、自由ストロークハウジング21が直接に閉鎖エレメント2に結合されている。さらに、自由ストロークアッセンブリ20は、制御ピン24を含み、この制御ピン24は、自由ストロークハウジング21内に配置されたヘッド24aと、センタリングピン18に結合された軸部24bとを有する。制御ピン24とセンタリングピン18との間の結合は、たとえば溶接結合によって実現され得る。したがって、第2の実施例では、開放過程の際に自由ストロークハウジング21は、閉鎖エレメント2と一緒に、まずは自由ストロークS1が進められるまで動かされる。次いで、制御ピン24のヘッドがストッパエレメント23に接触するので、引き続き閉鎖エレメント2の開放運動が行われると、制御ピン24は同じく軸方向に動かされる。制御ピン24はセンタリングピン18に固く結合されているので、次いで相応して、第1の実施例において説明したように、残りの開放ストロークの間、ハイドロリック式の減衰装置7によって減衰が行われる。閉鎖過程においては、制御ピン24が、第1の実施例の場合と同様に、まずは自由ストロークS1を進み、その後に、制御ピン24のヘッドが、自由ストロークハウジング21に設けられたストッパ面21bに接触し、次いで制御ピン24を介してセンタリングピン18の戻しが可能となる。その場合、閉鎖エレメント2の最後の閉鎖ストロークも減衰装置7によって減衰される。その他の点に関しては、この実施例は第1の実施例に相当するので、第1の実施例において記載した説明を参照することができる。
【0059】
図7には、本発明の第3の実施例によるガスインジェクタの部分断面図が示されている。同一の部分もしくは機能の点で同一の部分は、先行する実施例と同じ符号で示されている。
【0060】
第3の実施例は、実質的に第2の実施例に相当しており、この場合、自由ストロークアッセンブリ20は同じく制御ピン24を含む。しかし、センタリングピン18は第3の実施例では2つの部分から形成されており、この場合、センタリングピン18を制御ピン24に結合するためにスリーブ28が設けられている。さらに、第3の実施例では、最初の2つの実施例において存在していた制御シリンダが、センタリングピン18と一体に形成されている。このことは、図7において符号18bにより示されている。その他の点に関しては、この実施例は先行する実施例に相当するので、先行する実施例において記載した説明を参照することができる。
【0061】
図8図10には、本発明の第4の実施例によるガスインジェクタが示されている。同一の部分もしくは機能の点で同一の部分は、先行する実施例と同じ符号で示されている。
【0062】
第4の実施例は、先行する実施例に比べて、第1の制御室80および第2の制御室88からハイドロリック室8内への漏れを減少させることを可能にする。したがって、特に極めて長い作動時間にわたってハイドロリック式の減衰装置7の確実な機能が確保され得る。このためには、第4の実施例が、先行する実施例とは異なり、センタリングピン18の変えられた案内を有する。図8から判るように、センタリングピン18はシールディスク19に案内されている。このシールディスク19の内側の周面領域はR部R1を有するので、シールディスク19とセンタリングピン18との間には、案内のための接触線が得られる。これにより、シールディスク19とセンタリングピン18との間の領域におけるギャップは極めて小さく保持され得る。
【0063】
さらに、軸方向X-Xでシールディスク19にばね力Fを加えるばねディスク110が設けられている。これにより、シールディスク19とハイドロリック式の減衰装置7のベースボディ17との間の軸方向のシールが得られる。
【0064】
ばねディスク110を断面図(図9)および平面図(図10)で示す図9および図10から詳細に判るように、ばねディスク101は実質的にポット状の形状を有し、この場合、底部は中央の開口を有し、この開口を貫いてセンタリングピン18が貫通案内されている。ばねディスク101は保持領域102を含み、この保持領域102は、ばねディスク101の外周面に配置されていて、ベースボディ17に摩擦接続式に位置固定されている。さらに、3つの突起103が設けられており、これらの突起103は、120°の等間隔(図10参照)を置いて配置されていて、シールディスク19に接触している。これらの突起103を介してシールディスク19には、ばね力Fが加えられる。これらの突起の間には、切欠部104が設けられており、これにより軸方向X-Xにおけるセンタリングピン18の運動時にこのセンタリングピンの十分な運動が可能となる。
【0065】
この場合に、制御シリンダ13は少なくとも部分的に、ポット状のばねディスク101の内部に配置されている。特に図8から判るように、制御シリンダ13は、半径方向外側に向けられたフランジ113を有し、この場合、フランジ113とベースボディ17との間には絞りギャップ14が形成されている。この絞りギャップ14を介して、流体は第1の制御室80から第2の制御室88内へ流入することができ、かつ第2の制御室88から第1の制御室80内へ流入することができる。
【0066】
さらに、シールリング15が設けられており、このシールリング15の内周面には、第2のR部R2と円錐部15aとが形成されている。これにより、第1の制御室80は比較的良好にハイドロリック室8に対してシールされている。
【0067】
さらに図8から判るように、ベースボディ17では、このベースボディとセンタリングピン18との間に円錐部17aが形成されているので、流体はハイドロリック室8からシールディスク19にまで到達する。これにより、特にセンタリングピン18の良好な可動性が確保される。
【0068】
センタリングピン18に結合されている第1のフレキシブルなエレメント11は、半径方向の比較的高い剛性を有する。したがって、第1のフレキシブルなエレメント11は半径方向の誤差を補償することができない、または限定された量でしか補償することができない。そこで、第4の実施例では、センタリングピン18がシールディスク19に半径方向で案内される。この場合、極めて小さな半径方向ギャップが実現され得る。
【0069】
ベースボディ17に円錐部17aを設け、かつシールリング15に円錐部15aを設けることにより、場合によっては作動時に生じるセンタリングピン18の傾斜位置も極めて良好に補償され得る。円錐頂角はこの場合、好ましくはそれぞれ0.5°~30°の範囲、特に1°~10°の範囲にある。その他の点に関しては、この実施例は先行する実施例に相当するので、先行する実施例において記載した説明を参照することができる。
【0070】
次に、図11につき、本発明の第5の実施例によるガスインジェクタを詳しく説明する。同一の部分もしくは機能の点で同一の部分は、先行する実施例と同じ符号で示されている。
【0071】
第5の実施例は、実質的に第4の実施例に相当しており、この場合、第4の実施例において使用されたばねディスクの代わりに、第5の実施例では圧入されたディスク119が使用され、これによりシールディスク19はハイドロリック式の減衰装置7のベースボディ17に押圧される。圧入されたディスク119とベースボディ17との間には、この場合、プレス結合が形成されている。第4の実施例と同様に、シールディスク19は、R部R1を有する内側の周面領域でセンタリングピン18を案内する。半径方向で外側の周面では、シールディスク19に、流体で充てんされた室120が残るので、センタリングピンは、場合によっては半径方向に向けられた補償運動をも実施することができる。その他の点に関しては、この実施例は先行する実施例に相当するので、先行する実施例において記載した説明を参照することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタであって、
シールシート(3)に設けられた貫通開口(4)を開閉する閉鎖エレメント(2)と、
前記閉鎖エレメント(2)を、閉鎖された初期位置へ戻す戻しエレメント(6)と、
前記閉鎖エレメント(2)を操作するアクチュエータ(5)と、
前記閉鎖エレメント(2)の運動を減衰するためのハイドロリック式の減衰装置(7)であって、該ハイドロリック式の減衰装置(7)は、閉じられたハイドロリック室(8)内の液体を用いた減衰を提供するように調整されているハイドロリック式の減衰装置(7)と、
前記閉鎖エレメント(2)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)との間に配置されていて、予め規定された自由ストローク(S1)を進んだ後にのみ前記閉鎖エレメント(2)の運動の減衰を実施するように調整されている自由ストロークアッセンブリ(20)と、
を含む、ガス状の媒体を吹き込むためのガスインジェクタ。
【請求項2】
前記閉鎖エレメント(2)の完全な開放行程は、前記自由ストローク(S1)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)の減衰ストローク(S2)とを含む、請求項1記載のガスインジェクタ。
【請求項3】
前記減衰ストローク(S2)は、前記自由ストローク(S1)よりも小さい、請求項2記載のガスインジェクタ。
【請求項4】
前記自由ストローク(S1)に対する前記減衰ストローク(S2)の比が、0.06~0.12の範囲にあり、特に0.08~0.10の範囲にある、請求項3記載のガスインジェクタ。
【請求項5】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)は、自由ストロークハウジング(21)と、該自由ストロークハウジング(21)内に配置された制御エレメント(22)と、前記自由ストロークハウジング(21)に位置固定されたストッパエレメント(23)とを含み、前記自由ストローク(S1)は、前記制御エレメント(22)と前記ストッパエレメント(23)との間に形成されている、または
前記自由ストローク(S1)は、前記制御エレメント(22)と前記自由ストロークハウジング(21)との間に形成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のガスインジェクタ。
【請求項6】
前記自由ストロークハウジング(21)が前記ハイドロリック式の減衰装置(7)に結合されていて、前記制御エレメント(22)が前記閉鎖エレメント(2)に結合されている、または前記自由ストロークハウジング(21)が前記閉鎖エレメント(2)に結合されていて、前記制御エレメント(22)が前記ハイドロリック式の減衰装置(7)に結合されている、請求項5記載のガスインジェクタ。
【請求項7】
前記ハイドロリック式の減衰装置(7)は、ベースボディ(17)と、該ベースボディ(17)内に軸方向可動に配置されたセンタリングピン(18)とを含み、該センタリングピン(18)は、前記自由ストロークアッセンブリ(20)に作用結合されている、請求項1または2記載のガスインジェクタ。
【請求項8】
前記ハイドロリック式の減衰装置(7)は、第1の制御室(80)と第2の制御室(88)とを有し、両制御室は、流体接続部を介して互いに接続されている、請求項1または2記載のガスインジェクタ。
【請求項9】
前記流体接続部は、絞り(14)を含み、該絞り(14)は、前記第1の制御室(80)と前記第2の制御室(88)とを分離する制御シリンダ(13)に配置されており、前記絞り(14)を介して、開放過程および閉鎖過程の際に、前記第1の制御室と前記第2の制御室とにおける容積変化によって前記閉鎖エレメント(2)の減衰が行われる、請求項8記載のガスインジェクタ。
【請求項10】
前記減衰装置(7)は、ベースボディ(17)と、第1のフレキシブルなエレメント(11)と、第2のフレキシブルなエレメント(12)とを有し、前記閉鎖エレメント(2)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)に結合されており、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)および前記第2のフレキシブルなエレメント(12)は、閉じられた前記ハイドロリック室(8)のハウジング領域を形成している、請求項記載のガスインジェクタ。
【請求項11】
前記第1のフレキシブルなエレメントおよび/または前記第2のフレキシブルなエレメントは、金属ダイヤフラムであり、かつ/または前記第1のフレキシブルなエレメントおよび前記第2のフレキシブルなエレメントは、ベローズである、請求項10記載のガスインジェクタ。
【請求項12】
前記第1のフレキシブルなエレメント(11)は、前記ベースボディ(17)に配置されていて、該ベースボディ(17)と前記第1のフレキシブルなエレメント(11)との間に前記ハイドロリック室(8)の第1の部分室(81)が形成されており、
前記第2のフレキシブルなエレメント(12)は、前記ベースボディ(17)に配置されていて、該ベースボディ(17)と前記第2のフレキシブルなエレメント(12)との間に前記ハイドロリック室(8)の第2の部分室(82)が形成されており、
前記第1の部分室(81)と前記第2の部分室(82)とは、接続領域(83)を介して互いに流体接続されている、請求項10記載のガスインジェクタ。
【請求項13】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)と前記減衰装置(7)とは、前記ガスインジェクタの軸方向(X-X)で、前記アクチュエータ(5)の、前記シールシート(3)とは反対の側に配置されている、請求項1または2記載のガスインジェクタ。
【請求項14】
前記自由ストロークアッセンブリ(20)と前記ハイドロリック式の減衰装置(7)とは、前組立てされたモジュール(100)として形成されている、請求項13記載のガスインジェクタ。
【請求項15】
前記センタリングピン(18)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)とシールディスク(19)とによって案内されており、該シールディスク(19)は、ばねディスク(101)によって予め付勢されている、請求項10記載のガスインジェクタ。
【請求項16】
前記ばねディスク(101)は、ポット状に形成されていて、保持縁部(102)と、軸方向(X-X)に突出した突起(103)と、軸方向の切欠部(104)とを備えている、請求項15記載のガスインジェクタ。
【請求項17】
前記センタリングピン(18)は、前記第1のフレキシブルなエレメント(11)とシールディスク(19)とによって案内されており、該シールディスク(19)は、プレス結合によって前記ハイドロリック式の減衰装置の前記ベースボディ(17)に結合されている、圧入されたディスク(119)によって軸方向に予め付勢されている、請求項10記載のガスインジェクタ。
【請求項18】
前記シールディスク(19)の半径方向外側の周面に、液体で充てんされた補償室(120)が設けられている、請求項17記載のガスインジェクタ。
【国際調査報告】