(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】少なくとも1つの排気ガス再循環回路を備える燃焼エンジンのキャニスタをパージするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20241018BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20241018BHJP
F02M 26/47 20160101ALI20241018BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241018BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F02M25/08 F
F02M25/08 N
F02M26/06 321
F02M26/47 B
F02D45/00 364D
F02D43/00 301Z
F02D43/00 301N
F02D43/00 301T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526949
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080623
(87)【国際公開番号】W WO2023078969
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323014133
【氏名又は名称】ニュー エイチ パワートレイン ホールディングス エス エル ユー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゲルート, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーヴル, セドリック
【テーマコード(参考)】
3G062
3G144
3G384
【Fターム(参考)】
3G062FA05
3G062GA02
3G144BA28
3G144CA13
3G144DA02
3G144EA03
3G144EA06
3G144EA67
3G144FA05
3G144FA09
3G384BA02
3G384BA05
3G384BA26
3G384BA27
3G384BA38
3G384DA14
3G384FA08Z
3G384FA24Z
3G384FA85Z
(57)【要約】
本発明は、吸気口に少なくとも1つの排気ガス再循環システムを備える自動車両の内燃エンジンのキャニスタをパージするための方法に関する。前記方法は、
パージする必要を検出するステップと、
パージ流量設定値Qpと、パージすべき流量Qpを可能にする圧力設定値Ppとを計算するステップと、
エンジントルク設定値Cを保証するための、吸気マニホルド内の最低限の圧力Pcol_miniを計算するステップと、
エンジントルクCに達することを保証する最低限の圧力Pcol_miniの限度内で、マニホルド内の圧力を設定値Ppのレベルに下げるためにエンジンを調節するステップと
を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口に少なくとも1つの排気ガス再循環システムを備える自動車両の内燃エンジンのキャニスタをパージするための方法であって、
パージする必要を検出するステップと、
パージ流量設定値(Qp)と、パージすべき流量(Qp)を可能にする圧力設定値(Pp)とを計算するステップと、
エンジントルク設定値(C)を保証するための、吸気マニホルド内の最低限の圧力(Pcol_mini)を計算するステップと
前記エンジントルク(C)に達することを保証する前記最低限の圧力(Pcol_mini)の限度内で、前記マニホルド内の圧力を前記設定値(Pp)のレベルに下げるために前記エンジンを調節するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エンジンが、従来のサイクルに従って動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エンジンが、ミラー型またはアトキンソン型の非対称のサイクルに従って動作し、前記エンジンが、可変弁タイミングシステムを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パージする必要が、キャニスタ充填レベルの値が所定のしきい値に達したときに判定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記エンジンを調節するステップが、EGR流量設定値を下げることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジンを調節するステップが、ミラーサイクルエンジン動作またはアトキンソンサイクルエンジン動作から従来のサイクル動作に前記弁タイミングシステムを制御することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
吸気口に少なくとも1つの排気ガス再循環システムを備える自動車両の内燃エンジンのキャニスタのパージングを制御するためのシステムであって、
前記キャニスタをパージする必要を検出するための手段と、
パージ流量設定値(Qp)および圧力設定値(Pp)を計算するための手段と、
エンジントルク設定値(C)を保証するための、吸気マニホルド内の最低限の圧力(Pcol_mini)を計算するための手段と、
前記エンジントルク(C)に達することを保証する前記最低限の圧力(Pcol_mini)の限度内で、前記マニホルド内の圧力を前記設定値(Pp)のレベルに下げるためのエンジン調節手段と
を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料蒸気、特にガソリン用の吸引タンクを備える内燃エンジン用の燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジン、より具体的には火花点火(ガソリン)エンジンを備える自動車両上で、当業者には「キャニスタ」という英語名で知られている燃料蒸気吸引タンクは、カーボンフィルタを備え、車両が停止したとき、または厳しい条件下で動作しているときに、タンクから漏れる燃料蒸気を蓄積するように構成される。
【0003】
通常、キャニスタは、その開口が燃料を含む蒸気のエンジン吸気口への通過を制御する、弁を備えるパージパイプによって、エンジン吸気口に接続される。ある所定の充填レベルを超過したときに蒸気が大気中に漏れるのを防止するために、キャニスタは、パージソレノイド弁を開くことによってパージされる。
【0004】
キャニスタ充填率を低減する目的で、十分な量の燃料蒸気を排気するために、最低限のパージ流量が必要とされる。
【0005】
火花点火エンジンでは、エンジントルクを生成するために一定の空気質量流量を得るようにエンジンのスロットルボディによって一般に調節される、エンジン吸気マニホルド内の真空により、吸気マニホルドと排気マニホルドのプレナム間の圧力差によって誘発されるポンピング損失が引き起されることも知られている。
【0006】
図1は、圧力-容積図を示し、従来の4サイクルエンジンの動作を特徴付ける。ポンピング損失は斜線のエリア2に対応し、斜線のエリア2は、エンジンによって供給される仕事を表す斜線のエリア1とは対照的に、エンジンによって消費される仕事を表す。エンジンシリンダ内のガスが受けるステージを表す、
図1に示される従来のサイクルによれば、吸気ステージ(吸気時)がセグメントABに対応し、圧縮ステージがセグメントBCに対応し、燃焼ステージがセグメントCDに対応し、膨張ステージがセグメントDEに対応し、排気ステージがセグメントEAに対応する。
【0007】
ポンピング損失を低減し、したがってエンジンの燃料消費量を低下させるために、
図1に示される従来のサイクルに従って動作するエンジン内と同一の所与のトルクを生成するのに必要とされる質量流量で同一の量の空気をエンジン内に入れながら、吸気マニホルド内の圧力を増大させることが知られている。
【0008】
図2に概略的に示され、ミラーサイクルとして知られている、吸気マニホルド内の圧力を増大させることによってポンピング損失を低減する第1の方法は、下死点(BDC)の前に吸気弁を閉じるものである。したがって、シリンダ内の空気の量はBDCに到達することが許されず、
図2の点Bでマークされた、吸気弁が閉じる瞬間に対応するピストンの位置に到達することが許されるだけである。シリンダ内に入れられる空気の量の管理がスロットルボディの開口を変更することによって達成される従来のサイクルとは異なり、ミラーサイクルでは、スロットルボディが開いたままにされ、入れられる空気の量の管理が、主に吸気弁の閉鎖の瞬間を規定することによって達成される。したがって空気は、セグメントAB上でのみシリンダに入れられ、サイクルセグメントBB’およびB’B”は、それぞれ弁の閉鎖に伴うシリンダ容積の増大または減少に対応する。ミラーサイクルの他の部分は、
図1に示される従来のサイクルと同様である。
図2では、セグメントB”C、CD、DE、およびEAは、それぞれエンジンシリンダのガスの圧縮、燃焼、膨張、および排気ステージに対応する。
【0009】
したがってこの結果、低負荷であってもスロットルボディが主に開いたままとなるので、ミラーサイクルでは、従来のサイクルよりもマニホルド内の圧力が高くなる。吸気圧力を増大させることにより、エンジンによって消費される仕事の量が低下し、したがって
図2の斜線のゾーン2の面積は、
図1の斜線のゾーン2の面積よりも小さい。
【0010】
図3に概略的に示され、アトキンソンサイクルとして知られている、吸気マニホルド内の圧力を増大させることによってポンピング損失を低減する第2の方法は、BDCの後に吸気弁を閉じるものである。このケースでは、BDCの後のピストンの上昇の部分で、
図3の点B’まで、吸気弁が開いたままとなる。このようにして、
図3の点Bに対応するBDCまで、すなわち、ピストンストローク全体にわたって、空気が入れられ、次いで、ピストンが上死点(TDC)に向かって上昇するとき、吸気弁が開いたままとなる限り、この入れられた空気の一部が吸気マニホルド内に排出される。したがって、燃焼のために入れられる空気の量は、
図3の点B’でマークされた、吸気弁が閉じる瞬間によって決定される。
【0011】
アトキンソンサイクルでは、ミラーサイクルと同様に、スロットルボディが開いたままにされ、入れられる空気の量が、主に吸気弁の閉鎖の瞬間を指示することによって管理される。アトキンソンサイクルの他の部分は、
図1に示される従来のサイクルと同様である。
図3では、セグメントB’C、CD、DE、およびEAは、それぞれエンジンシリンダのガスの圧縮時、燃焼時、膨張時、および排気時に対応する。
【0012】
したがってこの結果、低負荷であってもスロットルボディが主に開いたままとなるので、アトキンソンサイクルでは、従来のサイクルよりも吸気マニホルド圧力が高くなる。吸気圧力を増大させることにより、エンジンによって消費される仕事の量が低下し、したがって
図3の斜線のゾーン2の面積は、
図1の斜線のゾーン2の対応する面積よりも小さい。
【0013】
吸気マニホルド内の圧力を増大させることによってポンピング損失を低減するために使用される第3の方法は、「排気ガス再循環」または「EGR」として知られる方法である、排気ガスを取り、吸気口に送ることからなる。シリンダ燃焼に関係しない中性ガスの導入により、負荷を増大させることなくマニホルド内の圧力を増大させることが可能となる。実際に、EGR流量がスロットルボディのエンジン上流側内に導入されるとき、その開口の度合により、エンジン内への空気流量だけではなく、空気流量とEGR流量の和に等しい全流量も制御される。したがって、第1の圧力値で空気のみを入れることによって、または第1の圧力値よりも高い第2の圧力値で空気とEGRの一部を入れることによって、同一の空気質量流量が得られ得る。さらに、吸気口でのそのような部分排気ガス再循環が、ミラーサイクルまたはアトキンソンサイクルと組み合わされる得ることに留意されたい。
【0014】
記載の3つの方法、すなわちミラーサイクル、アトキンソンサイクル、またはEGR再循環に伴う問題は、燃料を含む蒸気の再導入の地点がスロットルボディの下流側であるとき、エンジン吸気マニホルド内の圧力を増大させることにより、エンジンの吸気回路内にキャニスタをパージする能力が低下することである。大気圧に通気されているキャニスタと吸気マニホルドとの間の圧力差が大きく低下し、もはや十分な流量が循環することが可能とはならないからである。
【0015】
吸気口に蒸気を引き寄せるためにベンチュリまたはポンプを組み込む、能動的パージシステムを備えるエンジンが、従来技術から知られている。こうしたシステムは、むしろ燃料を含む蒸気の再導入の地点がスロットルボディの上流側である場合に使用され、ポンプについての制御と、追加の部品の設置とを必要するという欠点を有する。
【0016】
上記に鑑みて、本発明の目的は、能動的パージングシステムを使用することを必要とせずに、キャニスタパージング能力を改善することである。
【発明の概要】
【0017】
上記に鑑みて、本発明は、吸気口に少なくとも1つの排気ガス再循環システムを備える自動車両の内燃エンジンのキャニスタを受動的にパージするための方法に関する。
【0018】
方法は、
パージする必要を検出するステップと、
パージ流量設定値と、パージすべき流量を可能にする圧力設定値Ppとを計算するステップと、
エンジントルク設定値を保証するための、吸気マニホルド内の最低限の圧力を計算するステップと、
エンジントルクに達することを保証する最低限の圧力の限度内で、マニホルド内の圧力を設定値のレベルに下げるためにエンジンを調節するステップと
を含む。
【0019】
本発明の目的は、必要なときに、エンジン吸気マニホルド内の自然の真空を使用して、キャニスタから燃料蒸気を引き出す、いわゆる受動パージシステムを使用することである。本発明で説明されるような受動システムによるパージングは、エンジン吸気マニホルド内の圧力がキャニスタ内の圧力より低い場合にのみ可能となることに留意されたい。
【0020】
たとえば、エンジンは、従来のサイクルに従って動作する。
【0021】
有利には、エンジンは、可変弁タイミングシステムを備え、ミラー型またはアトキンソン型の非対称のサイクルに従って動作する。
【0022】
有利には、パージする必要は、キャニスタ充填レベルの値が所定のしきい値に達したときに判定される。
【0023】
有利には、エンジンを調節することは、EGR流量設定値を下げることを含む。
【0024】
たとえば、エンジン調節は、ミラーサイクルエンジン動作またはアトキンソンサイクルエンジン動作から従来のサイクル動作に弁タイミングシステムを制御することを含む。
【0025】
第2の態様によれば、本発明は、吸気口に少なくとも1つの排気ガス再循環システムを備える自動車両の内燃エンジンのキャニスタの受動パージングシステムに関する。
【0026】
受動パージングシステムは、キャニスタをパージする必要を検出するための手段と、パージ流量設定値および圧力設定値を計算するための手段と、エンジントルク設定値を保証するための、吸気マニホルド内の最低限の圧力を計算するための手段と、エンジントルクに達することを保証する最低限の圧力の限度内で、マニホルド内の圧力を設定値のレベルに下げるためのエンジン調節手段とを備える。
【0027】
単に非限定的な例として与えられる以下の説明を読み、添付の図面を参照するときに、本発明のさらなる目的、特徴、および利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】前述された、従来のサイクルによる4サイクル内燃エンジンのシリンダの圧力-容積図である。
【
図2】前述された、ミラーサイクルによる4サイクル内燃エンジンのシリンダの圧力-容積図である。
【
図3】前述された、アトキンソンサイクルによる4サイクル内燃エンジンのシリンダの圧力-容積図である。
【
図4】本発明によるキャニスタパージ制御システムを備える自動車両の内燃エンジンの構造の一例を非常に概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるキャニスタパージング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図4に示される例では、内燃エンジン10が、限定はしないが、3つのインラインシリンダ12と、外気吸気マニホルド14と、排気マニホルド16と、ターボ圧縮システム18と、吸気弁51および排気弁52用の可変弁タイミングシステム50とを備える。
【0030】
吸気マニホルド14すなわちディストリビュータを介して、シリンダ12に空気が供給され、ディストリビュータ自体には、エンジン10のエアフィルタ22およびターボ過給機18がはめ込まれたパイプ20によって供給される。
【0031】
ターボ過給機18は本質的に、エンジン10のシリンダ12内に入れられる空気の量(質量流量)を増大させる目的で、排気ガスによって駆動されるタービン18aと、タービン18aと同一の軸またはシャフト上に取り付けられ、エアフィルタ22によって分配された空気の圧縮を保証する圧縮器18bとを備える。
【0032】
内燃エンジン10は、吸気回路Caおよび排気回路Ceを備える。
【0033】
吸気回路Caは、気流の方向の上流側から下流側に、
エアフィルタ22すなわちエアボックスと、
エンジン10に入る空気流量の実際の値を測定するために、エアフィルタ22の下流側の吸気ダクト20内に配置された流量計26と、
吸気弁28と、
ターボ過給機18の圧縮器18bと、
エンジン内のスロットルボディ30すなわちガス吸気弁と、
外気と再循環されるガスの混合物に対応する吸気ガスの圧縮器18bでの圧縮後に吸気ガスを冷却するように構成された熱交換器32と、
吸気マニホルド14内の圧力および温度を測定するための圧力および温度センサ33と、
吸気マニホルド14と
を備える。
【0034】
圧縮器は、たとえば車両運転者が加速ペダルから足を急に持ち上げたときに、圧縮器18bとスロットルボディ30との間の圧縮空気が圧縮器18bを通じて流れて、圧縮器18bを損傷するのを防止するために、スロットルボディ30が急に閉鎖した場合に開く吸気リリーフ弁55を備えるバイパス回路に関連付けられる。
【0035】
排気回路Ceは、燃焼ガスの流れの方向の上流側から下流側に、
排気マニホルド16と、
ターボ過給機18のタービン18aと、
エンジン燃焼ガスをクリーニングするためのシステム40と
を備える。
【0036】
排気マニホルド16は、燃焼によって生成された排気ガスを収集し、ターボ過給機18のタービン18aに対して開いている排気ガスダクト34と、タービン18aの下流側に取り付けられた排気ライン36とを介して、こうした排気ガスを外部に排出する。
【0037】
エンジン10は、吸気口に部分排気ガス再循環(いわゆるEGR)回路38をさらに備える。
【0038】
前記回路38は、本明細書では低圧排気ガス再循環回路、いわゆる「LP EGR」である。LP EGRは、前記タービン18aの下流側、具体的にはガス汚染制御システム40の下流側で排気ライン36に接続され、ターボ過給機18の圧縮器18bの上流側、具体的に流量計26の下流側で外気供給線20に排気ガスを戻す。流量計26は外気流量を測定するだけである。
【0039】
図示されるように、再循環回路38は、再循環されるガスの流れの方向に、冷却器38aと、フィルタ38bと、低圧排気ガスの流量を調節するように構成された「LP EGR V」弁38cとを備える。「LP EGR V」弁38cは、冷却器38aの下流側、フィルタ38bの下流側、かつ圧縮器18bの上流側に配置される。
【0040】
排気回路と吸気回路との間の真空が不十分である場合に、強制的に低圧排気ガスの流量をLP EGR回路内に循環させるために、吸気弁28も使用され得ることに留意されたい。このケースでは、弁28を閉じることにより、LP EGR回路からガスを引き寄せることのできる真空が下流側で生み出される。
【0041】
エンジンは、たとえば燃料タンク(図示せず)から各シリンダ内に直接ガソリンを噴射する燃料噴射器(参照せず)を備える燃料回路に関連付けられる。
【0042】
さらに、エンジンは、様々なエンジン位置のセンサによって収集されたデータに基づいて内燃エンジンの様々な構成要素を制御するように構成された電子制御ユニット70を備える。
【0043】
電子制御ユニット70は、計算モジュール72、測定モジュール73、および制御モジュール74を備える。
【0044】
火花点火エンジンでは、エンジン速度/負荷動作点が、エンジンコンピュータ70によって、特に空気の量、LP EGR再循環ガスの量、および燃料の量を調節することによって設定される。「量」は、本明細書では質量流量を意味すると理解されたい。
【0045】
空気流量およびLP EGR再循環ガス流量が、エンジンコンピュータ70によって、一方では、スロットルボディ30の位置、およびエンジン内の全ガス流量を制御するターボ過給機18のターボ過給圧力、他方では再循環回路38の「LP EGR V」弁38cの位置を調節することによって、設定値に設定され得る。エンジンが排気ガス再循環のない動作点にある場合、スロットルボディを調節することによって、空気流量が直接的に得られる。
【0046】
エンジン10は、ソレノイド弁61と、スロットルボディ30の下流側に位置する吸気回路Ca内の地点の開口とを備える、キャニスタ60から燃料蒸気をパージするための受動回路62を備える。
【0047】
キャニスタ60をパージするためのソレノイド弁61が、パージング回路62上のキャニスタ60と出口地点との間に配置される。コンピュータ70によって制御されて、ソレノイド弁61は、キャニスタ60内に含まれる燃料蒸気を再循環させる。
【0048】
コンピュータ70は、キャニスタ60の充填レベルを求め、パージする必要がある場合にソレノイド弁61の開口を制御することができ、そのようにするように事前配置される。たとえば、キャニスタ60の充填レベルは、パージを開始する力によって閉ループ内の空気-燃料混合物のリッチネスをリッチネス1に調節するとき、燃料噴射器によって噴射すべき燃料流量を解析することによって求められ得る。
【0049】
次に、
図5を参照しながら、吸気口でEGR流量を再利用する、自動車両の内燃エンジンのキャニスタ60をパージするための方法80が説明される。
【0050】
そのような方法は特に、コンピュータ70によって、様々なエンジンセンサによって送達される測定値に基づいて、様々なエンジン構成要素を制御することによって実装される。
【0051】
方法80は、キャニスタ60をパージすることに関するいかなる制約もない、エンジン10の動作に対応する公称動作の予備ステップ81を含む。エンジン10は、所与のエンジン速度-負荷動作点で、ユーザによる加速ペダルの下降の関数として求められる車両加速度設定値に対応するトルク設定値の関数として動作する。このエンジン速度およびトルク設定値に基づいて、コンピュータ70は、この加速度を達成するために得るべきエンジントルク設定値Cを定義する。エンジントルク設定値Cから、コンピュータ70は、空気流量設定値、燃料流量設定値、EGR流量設定値、および可変弁タイミング設定値50を求める。
【0052】
コンピュータ70は、様々なエンジンアクチュエータ10を調節して、この設定を達成し、この設定は、車両燃料消費量を最小限に抑えるように設計され、キャニスタパージングの必要を考慮に入れない。たとえば、コンピュータ70は、エンジン内の全ガス流量Qmotを設定するために、スロットルボディ30の開口の度合および弁50の位置を調節し、EGRガス流量Qegrを設定するために、「LP EGR V」弁38cの開口の度合を調節し、空気流量Qairが以下の式を使用して得られる。
Qair=Qmot-Qegr (1)
次のステップ82の間に、コンピュータ70は、キャニスタをパージする必要を検出する。キャニスタをパージする必要があるとき、コンピュータ70は、キャニスタの飽和を防止し、外部の大気中への燃料漏れが生じるのを防止するために、排気すべき蒸気の流量Qpを求める(ステップ83)。
【0053】
次のステップ84の間に、コンピュータ70は、吸気マニホルド内で超過してはならず、ステップ83で求められたパージ流量Qpを得るのに十分である圧力設定値Ppを計算する。コンピュータ70は、そのメモリ内に含まれる、事前プログラムされたマップを使用し、事前プログラムされたマップは、吸気マニホルド内の圧力Pcol、大気圧Pext、およびパージ流量Qpをリンクする。このモデルを再利用することにより、コンピュータ70は、パージ流量設定値Qpおよび大気圧Pextの関数として圧力設定値Ppを求め得る。
【0054】
次のテストステップ85の間に、吸気マニホルド内で測定された圧力Pcolが、前のステップで求められた圧力設定値Pp以下であるかどうかがチェックされる。そうである場合、燃料蒸気がキャニスタから自然に引き寄せられ、追加の介入は不要であり、方法は公称動作のステップ81に戻る。吸気マニホルド内で測定された圧力Pcolが圧力設定値Ppを超える場合、キャニスタをパージすることを可能にするために、吸気マニホルド内の圧力が低下しなければならない。
【0055】
方法は、エンジントルク設定値Cに達することに常に優先順位を与え、キャニスタパージングの目的で、エンジントルクCを保証するのに必要とされる最低限の圧力未満の圧力までマニホルド内の圧力を下げるようにエンジンを調節することは決してしないことに留意されたい。この目的で、コンピュータ70は、エンジントルク設定値Cを保証するのに必要とされる吸気マニホルド内の最低限の圧力を求める(ステップ86)。コンピュータ70は、そのメモリ内に記憶された事前プログラムされたエンジン空気充填モデルを使用して、エンジントルク設定値Cを満たすのに必要とされる最低限の吸気マニホルド圧力の値を求める。エンジンに入る全ガス流量Qmotが、前記充填モデルを使用して、充填効率値と、圧力および温度センサ33によって測定され得る、吸気マニホルド内で支配的な圧力Pcolおよび温度Tcolの値とから求められ得る。「充填」という用語は、引き寄せられる空気の質量と、シリンダの全容積のみを考慮する際に引き寄せられた可能性のある空気の質量との間の比に等しいと定義される。充填式は以下の式によって表される。
上式で、
η
rdvlは、無次元の容積効率を表し、
Qmotは、kg/s単位の、実際に入る全質量流量を表し、
Nは、rpm単位のエンジン速度を表し、
シリンダ容積は、m
3単位のエンジンの立方容積を表し、
Pcolは、Pa単位の吸気マニホルド内の圧力を表し、
Tcolは、K単位の吸気マニホルド内の温度を表し、
Rは、約287.058J/kg×Kに等しい、空気についての質量当たりの理想気体定数を表す。
【0056】
すべての場合において、効率値ηrdvlは、エンジン速度Nおよび吸気マニホルド内の圧力Pcolに依存する。エンジンが、特に吸気口に、可変弁タイミングシステムを備える場合、効率ηrdvlは弁の位置にも依存する。
【0057】
式(2)は、特に弁タイミングに応じて、いくつかの可能な値を取り得る容積効率値を介して、吸気マニホルド内の可能な圧力値を全質量流量値にリンクする。コンピュータ70は、EGR流量が0であること、および弁タイミングシステム50の位置がシリンダ12の最大充填を補償することを条件として、複数の可能な値から、必要とされるエンジントルクCに対応する空気流量Qmotを保証する、吸気マニホルド内の最低限の圧力値Pcol_miniを識別する。
【0058】
ステップ87の間に、コンピュータ70は、Pcol_miniの値を圧力設定値Ppと比較する。
【0059】
エンジントルク設定値Cに達することを保証する、吸気マニホルド内の最低限の圧力値Pcol_miniが圧力設定値Ppよりも高い場合、これは、コンピュータ70がエンジントルク設定値Cを遵守しながらパージを実施できないことを意味する。このケースでは、エンジントルク設定値Cを保証することに優先順位が与えられ、この方法は、公称動作のステップ81に戻り、エンジントルク設定値が低下したときに、パージが後のステージで実施される。
【0060】
最低限の圧力値Pcol_miniが圧力設定値Pp以下である場合、コンピュータ70は、吸気マニホルド内の所望の圧力に達するまでEGR流量を低減することによって開始する調節ステップ88を開始する。これは、たとえば、空気流量設定値Qairを維持しながら、EGR流量設定値を徐々に下げることによって達成され得る。この結果、必要とされるより低いEGR流量を得るように、EGR弁38cが徐々に閉じられると同時に、より低いEGR流量設定値のためにより低くなる全エンジン流量設定値Qmotを得るようにスロットルボディ30が徐々に閉じられる。
【0061】
この段階の間、コンピュータは、弁タイミングシステム50の位置を修正しない。このスロットルボディ30の漸進的な閉鎖には、吸気マニホルド内の圧力Pcolの低下が伴う。コンピュータ70は、マニホルド内の圧力値Ppに達するまで、EGR流量設定値を引き続き徐々に低下させ、キャニスタ60の受動パージングを可能にする。
【0062】
EGR流量を低下させることは通常、キャニスタをパージするのに十分である。しかしながら、これが十分ではない場合、たとえばEGR流量が0であるとき、あるいはEGR流量が最低限のしきい値に達するときに、圧力Pcolが値Ppに達しないとき、コンピュータ70は、弁タイミングシステム50を制御して、ミラーサイクルエンジン動作またはアトキンソンサイクルエンジン動作から離れて、従来のサイクル動作に移る。たとえば、公称ミラーサイクル設定で動作するエンジンに関して、コンピュータ70は、エンジンに入るガス流量Qmotを修正しないように、下死点の前の終わりに吸気弁51を閉じ、同時にさらにスロットルボディ30を閉じ得る。たとえば、公称アトキンソンサイクル設定で動作するエンジンに関して、コンピュータ70は、エンジンに入るガス流量Qmotを修正しないように、下死点の後の始めに吸気弁51を閉じ、同時にさらにスロットルボディ30を閉じ得る。
【0063】
方法80は、キャニスタ60の受動パージングで終了する。
【国際調査報告】