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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】細胞内送達組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20241018BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20241018BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K47/64
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
C07K19/00 ZNA
C07K16/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527063
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 IL2022051164
(87)【国際公開番号】W WO2023079553
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,049
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/348,114
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524167887
【氏名又は名称】ビオンド バイオロジクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シロヴィツキー,オリット
(72)【発明者】
【氏名】チェン ゼルツバーグ,ライラック
(72)【発明者】
【氏名】ウザン グエタ,ロジ ラビト
(72)【発明者】
【氏名】ルーコウィッツ,アヤラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴットフリード,ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】ファイゲンボイム‐オルナイ,ロテム
(72)【発明者】
【氏名】エイロン,バット-ヘン
(72)【発明者】
【氏名】フレイリッヒ,シャイ
(72)【発明者】
【氏名】ハキム,モッティ
(72)【発明者】
【氏名】サピル,ヤイール
(72)【発明者】
【氏名】マンデル,イラナ
(72)【発明者】
【氏名】ベン‐モシェ,テヒラ
(72)【発明者】
【氏名】シュルマン,アビドール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA50
(57)【要約】
複数のアミン基、細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードおよびこれらを連結するリンカーを含むタンパク質担体を含み、アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合される、タンパク質コンジュゲートが提供される。タンパク質コンジュゲートを含む医薬組成物、ならびにタンパク質コンジュゲートを使用するおよび産生する方法も提供される。
【選択図】図32B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードを含むタンパク質コンジュゲートであって、前記生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合され、前記アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合されかつ前記保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ;かつ負のゼータ電位により特徴づけられる、タンパク質コンジュゲート。
【請求項2】
a.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されるタンパク質担体;
b.細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;および
c.前記タンパク質担体と前記生物学的ペイロードの間のリンカー、
を含む、タンパク質コンジュゲートであって、
前記アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され;
前記保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ;
および負のゼータ電位により特徴づけられる、タンパク質コンジュゲート。
【請求項3】
前記保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて高められた血液中安定性により特徴づけられる、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項4】
前記保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて、7未満のpH値を有する生体組織内での増大した蓄積により特徴づけられ、任意に前記生体組織は、腫瘍である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項5】
前記複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、または両方を含み;かつ複数のアミン基の少なくとも50%は、前記保護基に結合される、請求項1~4のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項6】
前記リンカーは、共有結合により前記担体、前記ペイロードまたは両方に連結される、請求項2~5のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項7】
前記保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項8】
前記部分は、カルボキシ基を含む、請求項7に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
前記保護基は、式1:
【化1】
、により表され、式中、nは、0~5の範囲の整数であり;
【化2】
は、前記アミン基への付着点を表し、および
【化3】
は、単結合または二重結合を表し;RおよびRはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるアリールまたはヘテロアリール、およびカルボキシアルキル、またはこれらの組み合わせから選択される置換基を表し;またはRおよびRは、環を形成するように一緒に結合される、請求項7または8に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項10】
RおよびRの1個は、HでありかつRおよびRの別の1個は、アルキルまたはカルボキシアルキルを含む、請求項9に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項11】
前記保護基は、
【化4】
であって、その任意の塩を含み、RおよびRは、Hおよびメチルから選択され、かつRまたはRは、メチルであり、任意に前記保護基は、無水シトラコン酸由来である、請求項7~10のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項12】
前記細胞浸透性部分は、ポリアミンおよびポリエチレンイミン(PEI)から選択される陽イオンポリマーを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項13】
前記PEIは、2000ダルトン未満の分子量を有する直鎖PEIまたは分岐PEIである、請求項12に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項14】
前記PEIは、100~1000ダルトンの分子量を含む、請求項12または13に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項15】
前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的を結合する抗原結合分子である、請求項1~14のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項16】
前記生物学的ペイロードは、切断されると前記細胞内標的との相互作用を減らすジスルフィド結合を欠く、請求項1~15のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項17】
前記抗原結合分子は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、請求項15または16に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項18】
前記抗原結合分子は、VHHおよびDARPinから選択される、請求項15~17のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項19】
前記タンパク質担体または生物学的ペイロードは、複数のPEI分子を含み、任意に前記タンパク質担体は、2~30個のPEI分子を含む、請求項2~18のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項20】
前記タンパク質担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項2~19のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項21】
前記HSAは、3~10個のPEI分子を含む、請求項20に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項22】
前記リンカーは、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマーまたは両方を含む、請求項2~21のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項23】
前記生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、任意に前記生分解性ポリマーは、ポリアミノ酸を含み、前記リンカーは、(i)前記生体適合性ポリマーまたは前記生分解性ポリマーにおよび(ii)前記タンパク質担体に共有結合されるスペーサーを更に含み、かつ共有結合は、クリック反応生成物を介する、請求項22に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項24】
前記リンカーは、生体切断可能な結合を含み、任意に前記生体切断可能な結合は、ジスルフィド結合を含む、請求項2~23のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項25】
前記リンカーは、少なくとも24時間にわたり血液中で実質的に安定であり、かつ前記リンカーは、ペプチドリンカーである、請求項2~24のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項26】
安定は、24時間後に血液中で25%未満の切断を含む、請求項25に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項27】
前記生体切断可能な結合は、立体的に障害される、請求項24~26のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項28】
前記HSAは、配列番号1のアミノ酸配列、またはシステイン34(C34)を含むそのフラグメントまたは相同体を含む、請求項21~27のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項29】
前記リンカーは、ジスルフィド結合を介して前記HSAに結合される、請求項28に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項30】
前記リンカーは、HSAの前記C34に結合される、請求項29に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項31】
前記ジスルフィド結合は、前記C34の近位にある、請求項9に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項32】
前記近位は、5~15オングストロームの範囲の前記C34からの距離である、請求項31に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項33】
前記タンパク質担体は、DNAを欠く、請求項1~32のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項34】
前記生物学的ペイロードは、細胞表面タンパク質を結合しない、請求項1~33のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項35】
前記タンパク質コンジュゲートは、-1mV未満の負のゼータ電位により特徴づけられる、請求項1~34のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項36】
検出可能なタグを更に含み、任意に前記タグは、前記生物学的ペイロードにコンジュゲートされる、請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項37】
前記タンパク質コンジュゲートは、細胞浸透性コンジュゲートである、請求項1~36のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項38】
前記保護基は、無水シトラコン酸由来であり、任意にクリック反応生成物は、スクシンイミドチオエーテルである、請求項1~37のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項39】
標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を更に含む、請求項1~38のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項40】
前記ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、請求項39に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項41】
前記ターゲティング部分は、リンカーを介して前記タンパク質担体にコンジュゲートされる、請求項39または40に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項42】
前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれ、任意に前記ターゲッティング部分および前記生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される、請求項39または40に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項43】
前記ターゲティング部分は、前記生物学的ペイロードに対しN末端でありまたは前記生物学的ペイロードは、前記ターゲティング部分に対しN末端である、請求項42に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項44】
細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法であって、
a.前記細胞内標的を結合する生物学的ペイロードを提供することであって、前記生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合される、提供すること;および
b.保護アミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得るために、7未満のpH値で切断を受けることができる保護基により前記アミン基の少なくとも一部を保護するのに十分な条件下で生物学的ペイロードを提供すること、
を含み、それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する、方法。
【請求項45】
細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法であって、
a.前記細胞内標的に結合する生物学的ペイロードを提供すること;
b.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供すること;
c.タンパク質コンジュゲートを産生するためにリンカーを介して前記タンパク質担体に前記生物学的ペイロードを共有結合させるのに十分な条件下で前記生物学的ペイロードおよび前記タンパク質担体を提供すること;および
d.保護アミン基を含む前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得るために、7未満のpH値で切断を受けることができる保護基により前記アミン基の少なくとも一部を保護するのに十分な条件下で前記タンパク質担体を提供すること、
を含み、
それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する、方法。
【請求項46】
ヒト血液、血漿または血清中でおよび細胞質条件中で前記リンカーの安定性を決定すること;およびヒト血液、血漿または血清中で安定でありかつ前記細胞質条件中で不安定であるリンカーを含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
中性または塩基性pHでおよび酸性pHで前記保護アミン基の安定性を決定することおよび中性または塩基性pHで安定でありかつ酸性pHで不安定である保護されたアミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
保護するために十分な条件下で前記タンパク質担体を前記提供することは、前記タンパク質担体へ前記生物学的ペイロードを前記結合することの前にまたは前記タンパク質担体へ前記生物学的ペイロードを前記結合することの後に起こる、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記決定することは、前記タンパク質コンジュゲートの形成の前にまたは前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートの形成の後で実施される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記タンパク質担体は、HSAを含む、請求項45~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞浸透性部分は、少なくとも1個のPEIを含む、請求項44~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる、請求項44~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、または両方を含み;かつ前記複数のアミン基の少なくとも80%は、保護されたアミン基である、請求項44~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含む、請求項44~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記部分は、カルボキシ基を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記タンパク質担体または生物学的ペイロードは、少なくとも2分子のPEIに共有結合され、任意に前記タンパク質担体は、少なくとも8分子のPEIに共有結合される、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記生物学的ペイロードは、切断されると前記細胞内標的への結合を減らすジスルフィド結合を欠く、請求項44~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを細胞と接触させることおよび前記生物学的ペイロードが前記細胞の細胞質に侵入することを確認することを更に含む、請求項44~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
安定は、24時間後に血液中での25%未満の切断を含みかつ不安定は、24時間後に細胞質条件での少なくとも50%の切断を含む、請求項46~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記リンカーは、生体適合性ポリマーを含む、請求項45~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記共有的に連結することは、クリック反応を介する、請求項45~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記生物学的ペイロードは、第1の反応基を含むリンカーに共有結合され;かつ前記タンパク質担体は、前記第1の反応基に対し反応性を有する第2の反応基を含むリンカーに共有結合され;かつタンパク質担体に前記生物学的ペイロードを共有結合させるために十分な前記条件は、前記第1の反応基を前記第2の反応基と反応させることを含み、それにより前記生物学的製剤および前記タンパク質担体を共有的に連結する、請求項45~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記リンカーは、生体切断可能な結合を含む、請求項45~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記共有的に連結することは、ジスルフィド結合形成を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
(i)前記生物学的ペイロードは、前記タンパク質担体のシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合される;または(ii)前記タンパク質担体は、前記生物学的ペイロードのシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合され、かつ結合されるは任意に、ジスルフィド結合を介する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を選択することおよび前記生物学的ペイロード、前記タンパク質担体または前記タンパク質コンジュゲートに前記ターゲティング部分をコンジュゲートすることを更に含む、請求項44~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、請求項66に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項68】
前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれ、任意に前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される、請求項66または67に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項69】
前記ターゲティング部分は、前記生物学的ペイロードに対しN末端でありまたは前記生物学的ペイロードは、前記ターゲティング部分に対しN末端である、請求項68に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項70】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、請求項1~43のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲートである、請求項44~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
請求項44~70のいずれか1項に記載の方法により産生されたタンパク質コンジュゲート。
【請求項72】
請求項1~43および71のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲートおよび薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む、医薬組成物。
【請求項73】
全身投与用に処方される、請求項72に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記組成物は、徐放性組成物でありかつ投与後少なくとも2~3日間にわたり標的細胞の細胞質中に前記生物学的ペイロードを放出する、請求項72または73に記載の医薬組成物。
【請求項75】
細胞内標的を結合する方法であって、前記細胞内標的を発現する細胞を請求項1~43および71のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲートまたは請求項72~74のいずれか1項に記載の医薬組成物と接触させることを含み、前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的を結合し、それにより前記細胞内標的を結合する、方法。
【請求項76】
細胞内標的を検出する方法でありかつ前記タンパク質コンジュゲートは、検出可能なタグを含み、かつ前記検出可能なタグを検出することを更に含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞内標的を調節する方法でありかつ前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的の作動薬または拮抗薬である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞は、対象中にありかつ前記接触させることは、前記対象に請求項1~43および70のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲートまたは請求項71~73のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、請求項75~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞は、標的表面タンパク質を発現しかつ前記タンパク質コンジュゲートは、前記標的表面タンパク質に結合するターゲティング部分を含む、請求項75~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
それを必要としている対象における状態を治療する方法であり、前記状態は、前記細胞内標的の調節により治療可能である、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記状態は、癌または炎症を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記状態は、癌であり、前記細胞内標的は、発癌性でありかつ前記生物学的ペイロードは、拮抗薬であり、任意で前記癌は、癌特異的抗原である標的表面タンパク質を含む、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
前記接触させることは、前記細胞への前記タンパク質コンジュゲートの浸透を誘導するように設計された前記担体タンパク質以外の薬剤の存在下ではない、請求項75~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記対象内の特異的組織に生物学的ペイロードを送達するためであり、前記特異的組織は、7未満のpH値により特徴づけられ、任意で前記特異的組織は、腫瘍である、請求項75~83のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月3日に出願された米国特許仮出願第63/275,049号および2022年6月2に出願された米国特許仮出願第63/348,114号の優先権の利益を主張する。これら仮出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、タンパク質の細胞内送達の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
新規で強力な治療標的の検索において、特に腫瘍学の分野では、細胞内標的、特に「新薬の開発に繋がらない」と思われる標的を対象にすることは極めて困難である。このような標的は、小分子薬物により標的化され得ず、なぜなら主に必要とされる治療的介入はタンパク質-タンパク質相互作用の妨害を伴い、小分子薬物は、有効性および/または十分な選択性を発揮できないからである。このような標的および生物学的過程は、生物学的製剤、例えば、モノクローナル抗体、受容体、インターロイキン、ならびにこれらの誘導体および組み合わせにより伝統的な方法で、効率的に対処されるが、このような薬剤は、生細胞中に、特に、細胞質、核、小胞体(ER)などの臨床的に意味のある細胞内コンパートメント中に、容易には侵入できない。これは、外側細胞膜がタンパク質ベースの分子に対して不浸透性であるためである。
【0003】
タンパク質ベースの分子が天然エンドサイトーシスベースの機序により生細胞中に内部移行する場合には、このタンパク質ベースの分子は、エンドソーム経路に侵入し、これは、リソソーム分解につながる。従って、この経路は天然では、リソソーム障害の治療、または抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のみに適切である。前者では、治療タンパク質ベースの薬剤は通常、エンドソームまたはリソソーム中でその活性を発揮することを目的とし、かつエンドソーム/リソソームの条件に耐えるように設計される、または天然に適合される。後者では、抗体は、特定細胞への小分子薬物の標的化/送達のために単に使用され、抗体担体のリソソーム分解は、小分子薬物、通常は細胞毒を放出する。
【0004】
しかし、タンパク質がそれ自身治療薬であり単なるターゲティング部分でない場合、本発明の技術は、いわゆる「エンドソーム脱出」を更に可能にしなければならない。この重要なステップは、この細胞機構による治療薬の異化作用を回避するために、エンドソーム経路の異なる段階の小胞、即ち、初期または後期エンドソームおよびリソソームから治療薬生物製剤を遊離する。
【0005】
エンドソームからの良好な脱出の後、治療薬は、細胞の細胞質に放出される。しかし、細胞質は、密集した環境であり、現在採用されている、例えば、モノクローナル抗体ならびにこれらの誘導体である、ほとんどの生物学的治療薬を受け入れることができない。治療生物製剤は、その治療標的を見つけ結合するために、あるいは、核、ER、ミトコンドリアなどの標的細胞内オルガネラに到達するために、細胞質中に効率的に分散されなければならない。
【0006】
伝統的で、最も研究された細胞内送達技術の1つは、高められた正電荷の使用を含む。ほとんどの古典的な手法は、ウィルスにより採用される細胞内取り込み機序の理解から進化した。後者は、有名なHIV由来TATペプチド(RKKRRQRRR(配列番号16))などの、アルギニンおよびリジンアミノ酸に富む、正に荷電されたペプチドを用いる。この手法は、種々のペイロードに縮合されたまたは化学的にコンジュゲートされた、または種々のナノ粒子を装飾するために使用される、異なる電荷、アミノ酸配列、追加の修飾および構造(直鎖の、環状の、など)を有する多数の細胞浸透性ペプチド(CPP)をもたらした。CPPは、細胞中に内部移行する能力を示すが、これらのエンドソーム脱出の効率は、未だ論争中であり、これらの全体的な効率は、実際の医薬品用途での使用には不十分であると思われる。電荷ベースの細胞浸透を利用する代替法は、高度に正に荷電されたポリマーを用いて生物製剤または担体を修飾することである。1つのこのようなポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)である。
【0007】
適切なPKおよび体内分布プロファイルは、いずれかの薬物、特に生物製剤についての有効性を確保するために重要である。しかし、強力な正電荷を特徴とするPEIまたは類似の分子による化学修飾は、PKおよび体内分布に対し劇的な干渉効果を有する場合がある。大部分の循環タンパク質ならびに血管の内側は、負に荷電されるので、血流中に導入される全ての正に荷電されたタンパク質は、これらの血液成分に付着し、そのPKおよび体内分布を妨害するであろう。さらに、このような付着はまた、注入部位での投与された正に荷電されたタンパク質の「トラップ」にもつながり得る。最小レベルの修飾の利用は、PKおよび注入部位での「トラップ」に対する正電荷の影響を最小化し得るが、さらなる解決策がまだ必要である。従って、血液中または健康な組織中で充分に安定でありかつ標的組織中で迅速で選択的な脱マスキング/脱保護を受け、生物学的治療薬の細胞浸透および細胞内の送達を可能にする、好適な電荷マスキング基の開発に対する未充足のニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、複数のアミン基、細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードおよびこれらを連結するリンカーを含むタンパク質担体を含むタンパク質コンジュゲートを提供し、アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合される。タンパク質コンジュゲートを含む医薬組成物、ならびにタンパク質コンジュゲートを使用するおよび産生する方法も提供される。
【0009】
第1の態様では、細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードを含むタンパク質コンジュゲートが提供され、生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合され、アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され、保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ;タンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる。
【0010】
別の態様では:
a.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;
b.細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;および
c.タンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカー、
を含む、タンパク質コンジュゲートが提供され、
アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され;
保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ、および
タンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる。
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて、高められた血液中安定性を特徴とする。
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて、7未満のpH値を有する生体組織内での増大した蓄積を特徴とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、またはこれらの両方を含み、複数のアミン基の少なくとも50%は、保護基に結合される。
いくつかの実施形態では、リンカーは、共有結合により担体、ペイロードまたはこれらの両方に連結される。
【0012】
いくつかの実施形態では、保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、部分は、カルボキシ基を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、保護基は、式1:
【化1】
、により表され、式中、nは、0~5の範囲の整数であり;
【化2】
は、アミン基に対する付着点を表し、および
【化3】
は、単結合または二重結合を表し;RおよびRはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるアリールまたはヘテロアリール、およびカルボキシアルキル、またはこれらの組み合わせから選択される置換基を表し;またはRおよびRは環を形成するように一緒に結合される。
【0015】
いくつかの実施形態では、RおよびRの1個は、Hであり、RおよびRの別の1個は、アルキルまたはカルボキシアルキルを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、保護基は、
【化4】
であり、これらの任意の塩を含み、RおよびRは、Hおよびメチルから選択され、RまたはRは、メチルである。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、アルキルアミン、陽イオンポリマー、またはこれらの組み合わせを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、ポリアミンおよびポリエチレンイミン(PEI)から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、PEIは、2000ダルトン未満の分子量を有する直鎖PEIまたは分岐PEIである。
【0020】
いくつかの実施形態では、PEIは、100~1000ダルトンの分子量を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、細胞内標的を結合する抗原結合分子である。
【0022】
いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、切断されると細胞内標的との相互作用を減らすジスルフィド結合を欠く。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、VHHおよびDARPinから選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体または生物学的ペイロードは、複数のPEI分子を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、2~30個のPEI分子を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、HSAは、3~10個のPEI分子を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、リンカーは、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマーまたはこれらの両方を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリアミノ酸を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、リンカーは、(i)生体適合性ポリマーまたは生分解性ポリマーに、および(ii)タンパク質担体に共有結合されるスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、共有結合は、クリック反応生成物を経由する。
【0031】
いくつかの実施形態では、リンカーは、生体切断可能な(bio cleavable)結合を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、ジスルフィド結合を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも24時間血液中で実質的に安定である。
【0034】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。
【0035】
いくつかの実施形態では、安定は、24時間後に血液中で25%未満の切断を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、立体的に障害される。
【0037】
いくつかの実施形態では、HSAは、配列番号1のアミノ酸配列、またはシステイン34(C34)を含むそのフラグメントもしくは相同体を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ジスルフィド結合を介してHSAに結合される。
【0039】
いくつかの実施形態では、リンカーは、HSAのC34に結合される。
【0040】
いくつかの実施形態では、ジスルフィド結合は、C34の近位にある。
【0041】
いくつかの実施形態では、近位は、5~15オングストロームの範囲のC34からの距離である。
【0042】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、DNAを欠く。
【0043】
いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、細胞表面タンパク質を結合しない。
【0044】
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、-1mV未満の負のゼータ電位を特徴とする。
【0045】
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、検出可能なタグを更に含む。いくつかの実施形態では、タグは、生物学的ペイロードにコンジュゲートされる。
【0046】
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、細胞浸透性コンジュゲートである。
【0047】
いくつかの実施形態では、保護基は、無水シトラコン酸である。いくつかの実施形態では、保護基は、無水シトラコン酸由来である。
【0048】
いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、スクシンイミド-チオエーテルである。
【0049】
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を更に含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される。
【0051】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、リンカーを介してタンパク質担体にコンジュゲートされる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれる。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される。
【0053】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、生物学的ペイロードに対しN末端であるか、または生物学的ペイロードは、ターゲティング部分に対しN末端である。
【0054】
別の態様では、細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、
a.細胞内標的に結合する生物学的ペイロードを提供することであって、生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合される、提供すること;および
b.7未満のpH値で切断を受けることができる保護基によりアミン基の少なくとも一部を保護するために十分な条件下で生物学的ペイロードを提供して、保護アミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得ること、
を含み、
それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する。
【0055】
別の態様では、細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、
a.細胞内標的を結合する生物学的ペイロードを提供すること;
b.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供すること;
c.生物学的ペイロードをリンカーを介してタンパク質担体に共有結合させるのに十分な条件下で生物学的ペイロードおよびタンパク質担体を提供して、タンパク質コンジュゲートを産生すること;および
d.7未満のpH値で切断を受けることができる保護基によりアミン基の少なくとも一部を保護するのに十分な条件下でタンパク質コンジュゲートを提供して、保護アミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得ること、
を含み、
それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する。
【0056】
いくつかの実施形態では、方法は、ヒト血液、血漿または血清中で、および細胞質条件中でリンカーの安定性を決定すること;およびヒト血液、血漿または血清中で安定でありかつ細胞質条件中で不安定であるリンカーを含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、方法は、中性または塩基性pHで、および酸性pHで保護アミン基の安定性を決定すること、および中性または塩基性pHで安定でありかつ酸性pHで不安定である保護アミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、保護するために十分な条件下でタンパク質担体を提供することは、タンパク質担体に生物学的ペイロードを結合する前に起こる。
【0059】
いくつかの実施形態では、保護するために十分な条件下でタンパク質担体を提供することは、タンパク質担体に生物学的ペイロードを結合した後で起こる。
【0060】
いくつかの実施形態では、決定することは、タンパク質コンジュゲートの形成の前で、または電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートの形成の後で実施される。
【0061】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、HSAを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、少なくとも1個のPEIを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位を特徴とする。
【0064】
いくつかの実施形態では、複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、またはこれらの両方を含み、複数のアミン基の少なくとも80%は、保護されたアミン基である。
【0065】
いくつかの実施形態では、保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、部分は、カルボキシ基を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体または生物学的ペイロードは、少なくとも2分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、少なくとも8分子のPEIに共有結合される。
【0068】
いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、切断されると細胞内標的への結合を減らすジスルフィド結合を欠く。
【0069】
いくつかの実施形態では、方法は、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを細胞と接触させること、および生物学的ペイロードが細胞の細胞質に侵入することを確認することを更に含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、安定は、24時間後に血液中で25%未満の切断を含み、不安定は、24時間後に細胞質条件中で少なくとも50%の切断を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、リンカーは、生体適合性ポリマーを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、共有結合的に連結することは、クリック反応を経由する。
【0073】
いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、第1の反応基を含むリンカーに共有結合され、タンパク質担体は、第1の反応基に対し反応性を有する第2の反応基を含むリンカーに共有結合され;生物学的ペイロードをタンパク質担体に共有結合させるために十分な条件は、第1の反応基を第2の反応基と反応させること、それにより生物学的製剤およびタンパク質担体を共有結合的に連結することを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、リンカーは、生体切断性結合を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、共有結合的に連結することは、ジスルフィド結合形成を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、(i)生物学的ペイロードは、タンパク質担体のシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合される;または(ii)タンパク質担体は、生物学的ペイロードのシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合される。いくつかの実施形態では、結合されるは、ジスルフィド結合を経由する。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を選択することおよびターゲティング部分を生物学的ペイロード、タンパク質担体またはタンパク質コンジュゲートにコンジュゲートすることを更に含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれる。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される。
【0080】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、生物学的ペイロードに対しN末端である、または生物学的ペイロードは、ターゲティング部分に対しN末端である。
いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、本発明のタンパク質コンジュゲートである。
【0081】
別の態様では、本発明の方法により産生されるタンパク質コンジュゲートが提供される。
【0082】
別の態様では、本発明のタンパク質コンジュゲート、および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0083】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、全身投与用に処方される。
【0084】
別の態様では、細胞内標的を結合する方法が提供され、方法は、細胞内標的を発現している細胞を本発明のタンパク質コンジュゲートまたは本発明の医薬組成物と接触させることを含み、生物学的ペイロードは、細胞内標的を結合し、それにより細胞内標的を結合する。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内標的を検出する方法であり、タンパク質コンジュゲートは、検出可能なタグを含み、方法は、検出可能なタグを検出することを更に含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内標的を調節する方法であり、生物学的ペイロードは、細胞内標的の作動薬または拮抗薬である。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象中にあり、接触させることは、対象に本発明のタンパク質コンジュゲートまたは本発明の医薬組成物を投与することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、細胞は、標的表面タンパク質を発現し、タンパク質コンジュゲートは、標的表面タンパク質に結合するターゲティング部分を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、それを必要としている対象において状態を治療する方法であり、状態は、細胞内標的の調節により治療可能である。
【0090】
いくつかの実施形態では、状態は、癌または炎症を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、状態は、癌であり、細胞内標的は、発癌性であり、生物学的ペイロードは、拮抗薬である。
【0092】
いくつかの実施形態では、癌は、癌特異的抗原である標的表面タンパク質を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、接触させることは、細胞へのタンパク質コンジュゲートの浸透を誘導するように設計された担体タンパク質以外の薬剤の存在下ではない。
【0094】
いくつかの実施形態では、方法は、生物学的ペイロードを対象内の特異的組織に送達するためであり、特異的組織は、7未満のpH値を特徴とする。いくつかの実施形態では、特異的組織は、腫瘍である。
【0095】
本発明のさらなる実施形態および適用可能な全ての範囲は、以降で示される詳細な説明から明らかになろう。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内で様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および具体的例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示としてのみ与えられると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】修飾されないおよび種々の修飾レベルでPEI修飾されたマウスIgGのMALDI-ToFスペクトル。
図2】A375細胞中へのPEI修飾されたまたは修飾されないマウスIgGの内部移行の顕微鏡写真(青-核、緑-染色マウスIgG)。天然IgGは、修飾されておらず、全ての他のパネルは、次第に上昇するPEIによる修飾のレベルを示す。各パネルのコーナーの数字は、IgG分子当りのPEI分子の平均数を表す。
図3A-3B】(3A)HEK細胞(60μg/mL)および(3B)A375細胞(5μg/mL)中へのPEI修飾されたGFP(GFP分子当たり平均6.5PEI)の内部移行の顕微鏡写真。
図4】培地中のIgGレベルの特異的ELISAにより測定した、種々の修飾レベルでのPEI修飾されたIgG(初期培地濃度2μg/mL)の細胞取り込み効率の棒グラフ。
図5】PEI修飾されたIgG(4.5PEI)のカベオリン媒介エンドサイトーシス内部移行の阻害を示すヒストグラム。NC-修飾されないIgG。
図6】エンドソームマーカー(上段パネル)またはリソソームマーカー(下段パネル)を発現しているHEK293細胞の、5μg/mLのPEI修飾IgG(3xPEI、左パネル;4.5xPEI、中央パネルおよび7xPEI、右パネル)とのこれらのインキュベーション(5時間)後の染色の顕微鏡写真。エンドソームおよびリソソームマーカーは、緑色で、PEI修飾されたIgGは、赤色であり、核は、青色に染色される。
図7】2x10HeLa細胞との10μg/mLでのPEI修飾IgGの一晩のインキュベーション後のpH感受性色素(5(6)-カルボキシナフトフルオレセイン、赤)で標識したPEI修飾されたIgG(4.5xPEI)のライブイメージング共焦点顕微鏡を用いたエンドソーム脱出モニタリングの顕微鏡写真。緑-チューブリン染色、青-核染色。
図8】PEI修飾されたmAb(4.5xPEI)である抗CD247の内部移行後のIFNγ分泌の用量依存性増大により反映されるCD3細胞活性化の棒グラフ。IFNγレベルの変化は、評価した濃度範囲での内部移行PEI修飾マウスIgGについて観察されなかった。
図9】PEIでカチオン化された担体タンパク質が治療薬(この例では抗体)に化学的に連結される、担体およびペイロード法の概略図。この例では、リンカーは、そのCDRから離れた、抗体のFc領域にコンジュゲートされ、リンカーは、細胞質中で還元されかつ切断され得るジスルフィド結合を含み、カチオン化担体から治療薬ペイロードを放出し、自由な細胞質ゾル輸送を可能にする。
図10】PEI修飾されたHSA(7xPEI)にPEGベースのジスルフィドを含むリンカーによりコンジュゲートされたGFPとのA375細胞のインキュベーション後のGFPの細胞内プロファイルを示す顕微鏡写真。細胞は、共焦点顕微鏡により観察されるように、インキュベーション後の24時間(左)および48時間(右)で分散されたGFPプロファイルを示す(緑-GFP;青-核)。
図11】蛍光標識された(AlexaFluor 647)抗ヒトIgG抗体を用いて共焦点顕微鏡により検出した、A375との一晩のインキュベーション後にジスルフィド結合を含むPEGリンカーを介してPEI修飾HSA(11xPEI)にコンジュゲートされた抗TNFα抗体の顕微鏡写真。
図12】10mMのGSH含有PBS中で4時間後(レーン5~7)および4時間後一晩(レーン1~4)の、PBS7.4(レーン8、9)中の完全マウスIgGのSDS-PAGEウェスタンブロット分析。ゲルを、抗マウス軽鎖抗体で処理した。
図13】HSAをPEIで修飾すること、それに続くNHS-PEG-SPDPによるHSAの修飾により生成したVHH-PEI修飾HSA構築物の産生、精製およびキャラクタリゼーションの例示的結果。SPDP修飾されたHSA-PEIは、C末端遊離システインを有するVHHと更に反応させられる。後者は、任意に還元剤(例えば、TCEP)で前処理され、全てのシステインが遊離であることを確実にできる。レーン1-HSA-8xPEI、レーン2-HSA-8xPEI-S-S-VHH(矢印は異なる反応生成物を指す)、レーン3-DTTで還元後の反応生成物(HSAとVHHの間の結合は不安定なジスルフィド結合であることを示唆する)、レーン7-9-プロテインAレジンで精製後の(過剰なHSA-8xPEIの除去)VHH-HSAコンジュゲートの画分である。MSスペクトルは、VHH-HSA-0xPEI(上段)、VHH-HSA-4xPEI(中段)およびVHH-HSA-8xPEI(下段)の生成物のプロファイルを示し、全ては、大部分の生成物が単一VHHに付着されたHSAを含むことを示す。
図14】A375細胞の存在下(暗い陰影)またはこれらの不在下(明るい陰影)での、HSA当り平均3.5個(青)または8個(赤)のPEIを有するPEI修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗ビメンチンVHHの培地レベルの棒グラフ。
図15A-15C】PEI修飾されたHSAに可逆的にコンジュゲートした抗ビメンチンとのインキュベーションの24時間後のVHH(15A)、ビメンチン(15B)および両方のマージ(15C)について染色したA375細胞の共焦点顕微鏡画像化の顕微鏡写真。核は、青で染色される。
図16A-16B】PEI修飾されたHSA可逆的にコンジュゲートした抗ビメンチンVHH(16A)またはコンジュゲートされない抗ビメンチンVHH(16B)との24時間のインキュベーション後のVHHについて染色した(緑)A375細胞の共焦点顕微鏡画像化の顕微鏡写真。核は、青で染色される。
図17】HeLa増殖指数の棒グラフ。HeLa(HPV+)細胞を、培地(黒色バー)または抗E7 VHHを補充した培地(灰色バー)または種々の濃度でPEI修飾されたHSA(平均3.5PEI/HSA)にコンジュゲートした抗E7 VHHを補充した培地(緑バー)中で48時間インキュベートした。インキュベーション後のHeLa細胞増殖を、標準的MTTアッセイにより測定した。
図18】チミジン細胞周期同期後のS、G2およびM細胞期でのHPV陽性HeLa FUCCI細胞のパーセントを示す折れ線グラフ。細胞を、平均3.5PEIで修飾されたHSA細胞にコンジュゲートした抗E7 VHH、および種々の対照処理で処理した。対照は:処理なし(wo)、修飾されないVHH抗E7、修飾されないHSAにコンジュゲートした抗E7 VHH、無関係のVHH(抗ビメンチン)にコンジュゲートした修飾されたHSA、修飾されたHSA担体単独、および細胞周期阻害剤(DP、CDK4/6阻害剤)であった。
図19】HPV陽性HeLa FUCCI細胞に対する異なる処理の効果の顕微鏡写真。平均3.5のPEIで修飾されたHSAにコンジュゲートされた無関係のVHH(抗ビメンチン)で処理した細胞は、未処理細胞(左の画像)と同じプロファイルを示すが、同じHSA担体にコンジュゲートされた抗E7 VHHは、CDK4/6阻害剤の処理後に観察されるもの(右画像)に類似の、劇的な細胞死をもたらした。
図20】肺腺癌細胞中に内部移行されたPEI修飾HSA担体にコンジュゲートされた抗K-Ras Hisタグ付きDARPin K27タンパク質の代表的顕微鏡写真。DARPinは、抗Hisタグ抗体で染色後、K-Ras部位(細胞膜の内側)に局在する。
図21】アポトーシスの折れ線グラフ。PEI修飾HSA担体にコンジュゲートされた、KRAS DARPin K27は、SU8686細胞に内部移行され、これらのアポトーシス状態を、アネキシンVを使って、連続的なIncucyteシステムを用いて評価した。8個のPEI分子で修飾された担体(担体I)にコンジュゲートされたDARPinに曝露された細胞は、高レベルのアポトーシスを示し、一方で3.5個のPEI分子を有する担体(担体II)にコンジュゲートされたDARPinに曝露された細胞もまた、明確なアポトーシスを示すが、より低い程度である。未処理細胞、修飾されないDARPinに曝露された細胞および8個のPEIで修飾されたHSAに曝露された細胞は全て、ベースラインのアポトーシスを示す。
図22A-22B】それらの核中でGFPを構成的に発現しているHeLa細胞の増殖(22A)およびアポトーシス(22B)に対するPEI修飾HSA担体にコンジュゲートされた抗KRAS DARPin K27の効果を示す折れ線グラフ。汎RAS阻害剤を陽性対照として使用し、非処理を陰性対照として使用した。細胞をまた、修飾されないDARPin K27、PEI修飾されたHSA担体単独、修飾されないHSA担体にコンジュゲートされたDARPin K27およびPEI修飾されたHSA担体にコンジュゲートされた抗ビメンチンVHHで処理した。
図23】それらの核中でGFPを構成的に発現しているHeLa細胞のアポトーシスに対するPEI修飾HSA担体にコンジュゲートされたKRAS DARPin K27の影響を示す顕微鏡写真。
図24】反応において一定のモル過剰のPEIを用いかつ、カルボジイミドカップリング剤、EDCのレベルを調節することにより、修飾のレベルを制御して、種々のレベルのPEI(600Da)で修飾されたHSAの質量分析(MALDI-ToF)スペクトル。HSAに対するPEI分子の平均レベルを、黒色で示す。
図25】種々のレベルのPEI修飾を有するHSA担体にコンジュゲートされたVHHの48時間のインキュベーション後のA375細胞の内側の抗ビメンチンVHHの共焦点顕微鏡像。HSA担体に対するPEI分子の平均数が、各ボックス枠中に示される。細胞内のVHHは、抗VHH抗体を用いて可視化される。
図26】コンジュゲートとインキュベートしたA375細胞の培地中の特異的ELISAにより測定した、培地中に残っているHSA当り、8個(オレンジ)または3.5個(青)のPEI分子を有するVHH担体コンジュゲートの残留レベルの棒グラフ。
図27A-27B】マスクされない担体またはマスクされた担体の2種の投与の1つを受けた全体マウス(27A)およびマウスから採取した臓器(27B)のIVIS像。相対的シグナル強度を、目的の領域(27A-全ての動物のライブイメージング;27B-それぞれの臓器のエクスビボイメージング)のピクセル当りの放射効率(放射光[光子/秒/cm/str]/励起光[μW/cm]x10)として計算した。相対的シグナル強度を、カラースケールとして提示する。色は、注入されたものの局在と濃度を表し、黄色は増大した蛍光強度を示し、暗赤色は低減した蛍光強度を示す。
図28A-28F】下記との24時間のインキュベーション後のHeLa GFP細胞の共焦点顕微鏡像:(28A~28C)抗E7-HSA-PEIx3.5、または(28D~28E)α-E7-マスクされた-HSA-PEIx3.5。抗VHH抗体を用いた免疫蛍光染色-赤;核染色-(GFP)-緑。(28A、D)-核染色;(28B、E)-VHH染色;(28C、F)-マージ。細胞内VHH染色は、マスクされないコンジュゲートでのみ観察される。細胞内VHH染色は、主に細胞質中で観察される。
図29A-29F】下記との24時間のインキュベーション後のB16細胞の共焦点顕微鏡像:B16細胞とのインキュベーションの前に、マスキングの除去のために、酸性条件で前処理した、(2A)HSA-PEIx8;(2B)HSA-PEIx8-CAまたは(2C)HSA-PEIx8-MSA、または(2D)HSA-PEIx8;(2E)HSA-PEIx8-CAまたは(2F)HSA-PEIx8-MSA。担体染色-赤;核染色(DAPI)-青。
図30A-30B】(30A)8時間のマスキング除去の前後での、1C5-マスクされないHSA-PEIx3.5または1C5-マスクされたHSA-PEIx3.5のいずれかで処理後の生存MEL-526細胞のパーセンテージ。計算を、処理のない細胞と比較して実施した。細胞を、6日間6μMでそれぞれの薬剤に曝露した。(30B)1C5-マスクされたHSA-PEIx3.5、除去後(1時間の除去工程)の1C5-マスクされたHSA-PEIx3.5、1C5-HSA-PEIx3.5のいずれかで処理後の、または処理なしの、生存SK-MEL-28細胞のパーセンテージ。細胞を、6日間10μMでそれぞれの薬剤に曝露した。
図31A-31B】(31A)マスキングの有無での修飾されたHSA(8/3.5PEI単位)の薬物動態学を示す折れ線グラフ。折れ線は、log HSA血漿中濃度[μg/mL]の平均±SEMを表す(n=3)。両側スチューデントのt検定は、マスクされたHSA-PEIx8対HSA-PEIx8およびHSA-PEIx3.5の間で有意差を生じる。*p<0.01**(31B)HSA-PEI誘導体のインビボでの血漿曝露を表す棒グラフ。
図32A-32B】(32A)インビボでのHSA-PEI誘導体の種々の臓器での曝露レベルの棒グラフ。(32B)IV注入の1440分後でのマスクされたHSA-PEIx8の体内分布の棒グラフ。バーは、HSA濃度[μg/mL]の平均±SEMを表す(n=3)。1元配置分散分析は、臓器間の体内分布の有意差を生ずる。事後的ダネット検定は、それぞれの臓器検定に比較して、腫瘍HSA濃度の間のp<0.0001(****)の有意性を示した。類似の結果を、他の時点でも得た。
図33】尿中で検出されたHSA-PEI誘導体のプロット。
図34】マスキングの有無での修飾されたIgG(4PEI単位)の薬物動態学を示す折れ線グラフ。
図35】マスキングの有無での直接修飾されたVHH(PEI 1800)の薬物動態学を示す折れ線グラフ。
図36A-36D】(36A)HeLa細胞を播種し、かつ15日間毎日、350nmol/kgのαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5コンジュゲートまたはαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAまたはビークル(PBS)のみで治療したマウス中の平均腫瘍体積の折れ線グラフ。(36B~36C)HeLa細胞を播種し、かつ(36B)1日置きに5日間250nmol/kgのαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5無水シトラコン酸マスクコンジュゲート、マスクされた担体単独またはPBSで、それに続く毎日5回注入で治療した、または(36C)15日間毎日350nmol/kgのαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5マスクコンジュゲート、マスクされた担体単独、またはPBS、で治療したマウス中の腫瘍体積の折れ線グラフ。(36D)実験全体にわたりマスクされた担体対照と比較した、マスクされたコンジュゲートによるパーセント腫瘍阻害の棒グラフ。
図37A-37B】PBS(左)、無水シトラコン酸マスクされたPEI修飾担体(中央)、および本発明のマスクされたコンジュゲート(右)で治療したマウス由来の腫瘍切片における(37A)VHHペイロードおよび(37B)HSA修飾されたPEI担体の免疫組織化学的検出の顕微鏡写真。
図38A-38B】(38A)B16細胞または(38B)MEL-526細胞を接種し、かつ350nmol/kgの無水シトラコン酸でマスクされた1C5-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSA-PEIx3.5コンジュゲート(αBRAF(1C5)-マスク担体3.5)またはマスクされた担体単独で15日間の毎日のIV注入により治療したマウスの腫瘍体積の折れ線グラフ。*p値<0.05。
図39】PEIのレベルおよびペイロード-担体結合の可逆性またはマスクの可逆性が異なる、マスクされた担体にコンジュゲートされた抗E7 VHHの種々のコンジュゲートの薬物動態プロファイルの折れ線グラフ。
図40】臓器曝露レベル(AUC)として提示される、腫瘍を含む種々の臓器の異なるマスクされたコンジュゲートの体内分布の棒グラフ。
図41A-41B】(41A~41B)(41A)Atto542-HSAPEIx8CAおよび(41B)Atto542-HSAPEIx8MSAの注入の6時間後の頸部腫瘍(HeLa-GFP)担持無胸腺ヌードFoxn1nuマウス由来の腫瘍組織の共焦点顕微鏡像(X63)。担体シグナル(赤);核染色(青)。(41C~41E)(41C)Atto542-HSAPEIx8CA、(41D)Atto542-HSAPEIx8MSAおよび(41E)Atto542-非マスクHSAPEIx8の注入の6時間後のB16腫瘍担持C57BLマウス由来の腫瘍組織の共焦点顕微鏡像(X63)。担体シグナル(赤);核染色(青)。
図42A-42D】(42A~42B)Atto542-HSA-PEIx8 MSA注入の6時間後の頸部腫瘍(HeLa-GFP)担持無胸腺ヌードFoxn1nuマウス由来の腫瘍組織の共焦点顕微鏡像(X40)。担体染色(赤);核染色(青);核染色(青);腫瘍中の緑色蛍光タンパク質からの核染色(緑)。(42A)担体の染色(赤)および腫瘍細胞核(緑)。(42B)担体の染色(赤)および一般細胞核染色(青)。(42C~42D)(42C)Atto542-HSAPEIx8CAおよび(42D)Atto542-HSAPEIx8 MSAの注入の6時間後のB16腫瘍担持C57BLマウス由来の肝臓組織の共焦点顕微鏡像(X63)。担体シグナル(赤);核染色(青)。
図43A-43B】(43A)マスク除去前後でのマスクされた抗BRAF VHH、1C5によるBRAF結合の棒グラフ。(43B)8時間のマスク除去の前後での、1C5-Hel-非マスクHSA-PEIx8または完全マスクされた1C5-Hel-HSA-PEIx8で処理後の生存MEL-526細胞のパーセンテージの棒グラフ。計算を、処理なしの細胞と比較して実施した。細胞を、6日間6μMでそれぞれの薬剤に曝露した。
図44】マスキングなしのHSA-PEIx3.5の内部移行のレベルと比較した、異なるマスキングレベルでのHSA-PEIx3.5の内部移行パーセントを表す棒グラフ。
図45A-45B】マスク担体を含まない(45A)、およびこれを含む(45B)抗PSMAターゲティング部分を含むタンタンデム型薬剤のPSMA陽性および陰性細胞に対する結合のFACSデータをまとめた棒グラフ。
図46】BRAFに対する抗PSMAターゲティング部分を含む薬剤の結合の折れ線グラフ。
図47】細胞力価Glo生存率アッセイにより測定した、担体(3.5PEI)へのコンジュゲート後の細胞に対する、抗BRAF VHH単独または抗PSMA VHHと直列に発現された抗BRAF VHHの細胞毒性効果の棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本発明は、いくつかの実施形態で、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供し、細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含み;アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され;保護基は、7を超えるpH値で安定であり、かつ7未満のpH値でアミン基の部分から解離させることができる。いくつかの実施形態では、保護されたタンパク質担体は、負のゼータ電位により特徴づけられる。
【0098】
本発明は、標的化される細胞内送達に好適な一過的マスキング技術の発見に基づく。この技術は、「注入部位脱出」ならびに担体およびそのペイロードが血液中を循環し、かつ標的部位に到達するのに十分な時間を許容する、注入後数分間、好ましくは、数時間の治療薬または担体の正電荷のマスキングを可能にする。電荷マスキングは、共有結合マスキングに基づく。この手法は、プロドラッグに類似し、その場合、薬物分子上の「問題がある」基は、共有結合で置換され、それにより元の基の性質、即ち、その極性、溶解度または電荷が変更される。置換は、一般生理的状態下で、または特異的pHもしくは特異的酵素の存在下などの特定の条件下で、不安定であるように設計される。不安定な置換は従って、標的条件中で除去され、内部移行される正に荷電された分子および細胞質に送達されるペイロードを残す。
【0099】
第1の態様では、細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードに共有結合されたタンパク質担体を含むタンパク質コンジュゲートが、提供される。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、電荷マスクされたコンジュゲートである。
【0100】
別の態様では、細胞浸透性部分および保護基に結合された細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードが、提供される。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロード、細胞浸透性部分および保護基は、タンパク質コンジュゲートである。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロード、細胞浸透性部分および保護基は、組成物に含まれる。
【0101】
別の態様では、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され、生物学的ペイロードは、切断されると細胞内標的との相互作用を減らすジスルフィド結合を欠き;リンカーは、生体切断可能な結合を含み;細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含み、アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され;保護基は、7を超えるpH値で安定であり、かつ7未満のpH値でアミン基の部分から解離させることができる。いくつかの実施形態では、アミン基の少なくとも一部は、保護されたアミンを生ずるように保護基に結合され、保護されないアミンに対する保護されたアミンのモル比は、本発明のタンパク質コンジュゲートが、少なくとも-0.1mV、少なくとも-0.5mV、少なくとも-1mV、少なくとも-2mV、少なくとも-3mV、少なくとも-5mV、-0.1~-50mV、-0.5~-50mVまたは-0.5~-30mV(これらの間の任意の範囲を含む)の負のゼータ電位により特徴づけられるようなモル比である。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートにおける保護されないアミンに対する保護されたアミンのモル比は、少なくとも約7:10、少なくとも約8:10、少なくとも約9:10、少なくとも約1:1、または約1:1~100:1(これらの間の任意の範囲を含む)である。
【0102】
別の態様では、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され;細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含み;(i)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、約40~約95%、約40~約100%、約40~約70%、約40~約80%、約40~約90%、約40~約95%、または約40~約99%(これらの間の任意の範囲を含む)のアミン基は、保護基に結合され、(ii)生物学的ペイロードは、1種または複数の保護基に結合され、または(i)と(ii)の両方であり;保護基は、7を超えるpH値(例えば、7.0~10、または7.2~10)で安定であり、かつ7未満のpH値(例えば、約5~約6.8、約3~約6.8、約5~約7.0、約3~約7.0(これらの間の任意の範囲を含む))で切断でき、タンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる。
【0103】
別の態様では、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され;細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含み;(i)少なくとも約40%、または少なくとも約50%のアミン基は、保護基に結合され、(ii)生物学的ペイロードは、1種または複数の保護基に結合され、または(i)と(ii)の両方であり;各保護基は、独立に式2により表され;タンパク質コンジュゲートは、少なくとも-0.1mV、少なくとも-0.5mV、少なくとも-1mV、少なくとも-2mV、少なくとも-3mV、少なくとも-5mV、-0.1~-50mV、-0.5~-50mV、-0.5~-30mV(これらの間の任意の範囲を含む)の負のゼータ電位により特徴づけられる。
【0104】
別の態様では、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され;細胞浸透性部分は、1個または複数のPEI分子(例えば、単一タンパク質担体当り3~10個のPEI分子)であるか、またはそれを含み;(i)1個または複数のPEI分子は、1種または複数の保護基に結合され、それによりタンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられ、(ii)生物学的ペイロードは、1種または複数の保護基に結合され、または(i)と(ii)の両方であり;保護基は、無水シトラコン酸由来である。
【0105】
別の態様では、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され;細胞浸透性部分は、1個または複数のPEI分子(例えば、単一タンパク質担体当り3~10個、または4~10個のPEI分子)であるか、またはそれを含み;(i)1個または複数のPEI分子の少なくとも約40%、少なくとも約50%、約40~約95%、約40~約100%、約40~約70%、約40~約80%、約40~約90%、約40~約95%、または約40~約99%のアミン基は、保護基に共有結合され、それによりタンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられ、(ii)生物学的ペイロードは、1種または複数の保護基に結合され、または(i)と(ii)の両方であり;保護基は、無水シトラコン酸由来である。
【0106】
別の態様により、細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体;細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;およびタンパク質担体と生物学的ペイロードとの間のリンカーを含むタンパク質コンジュゲートが提供され;保護基は、7未満のpHで切断を受け;タンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、リンカーは、タンパク質担体および生物学的ペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、共有結合により担体に結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、共有結合により担体に結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、共有結合によりペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、共有結合によりペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、結合を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、結合である。いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルなリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、剛性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペイロードと担体の間で立体障害を起こさないように、充分な長さである。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合へのアクセスを可能にするために充分な長さである。いくつかの実施形態では、アクセスは、バイオ切断可能な結合を切断する薬剤によるアクセスである。いくつかの実施形態では、薬剤は、酵素である。いくつかの実施形態では、薬剤は、反応種である。いくつかの実施形態では、薬剤は、還元剤である。
【0108】
いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100原子結合の長さを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。本明細書で使用される場合、「原子結合」という用語は、炭素-炭素(C-C)結合の長さ、例えば、単一C-C結合の長さを指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも2、4、5、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100オングストローム(Å)の長さを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0109】
いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合を含む。いくつかの実施形態では、共有結合は、バイオ切断可能な結合である。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合である。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合によりペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合によりペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位を特徴とする。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、細胞内で生物学的ペイロードを放出するように構成される。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、細胞質ゾル中で生物学的ペイロードを放出するように構成される。
【0110】
いくつかの実施形態では、リンカーは、担体がペイロードの機能を妨害しないように、充分に長い。いくつかの実施形態では、リンカーは、担体がペイロード結合と干渉しないように、充分に長い。いくつかの実施形態では、結合は、細胞内標的への結合である。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞浸透性部分が干渉しないように、充分に長い。いくつかの実施形態では、リンカーは、担体がペイロード結合に対し立体障害を形成しないように、充分に長い。
【0111】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、長い血清半減期を有するタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、血液中で見出されるタンパク質である。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、少なくとも60kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、少なくとも65kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、少なくとも70kDaの分子量を含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、または70kDa未満の分子量を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、最大で7の等電点を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、ヒトタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、アルブミンである。いくつかの実施形態では、アルブミンは、血清アルブミンである。いくつかの実施形態では、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)である。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)である。
【0112】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、1個または複数の細胞浸透性部分に共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、単一の細胞浸透性部分に共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、複数の細胞浸透性部分に共有結合される。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、1個または複数の細胞浸透性部分に共有結合される。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、単一の細胞浸透性部分に共有結合される。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、複数の細胞浸透性部分に共有結合される。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、細胞内移行分子を含む。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、本発明のタンパク質コンジュゲートを細胞中に内部移行させるように構成される。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、本発明のタンパク質コンジュゲートの細胞内部移行を誘導するまたは高めるように構成される。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、対照(例えば、細胞浸透性部分のないタンパク質コンジュゲート)に比べて、本発明のタンパク質コンジュゲートの細胞浸透または細胞内部移行を高めるように構成される。いくつかの実施形態では、細胞内部移行は、細胞膜横断を含む。いくつかの実施形態では、細胞内部移行は、細胞質ゾルへの送達を含む。いくつかの実施形態では、細胞内部移行は、細胞質への送達を含む。いくつかの実施形態では、細胞内部移行は、エンドソーム脱出を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、高めるは、対照に比べて、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、少なくとも100000%(これらの間の任意の範囲を含む)高めることである。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0115】
いくつかの実施形態では、解離は、結合解除である。いくつかの実施形態では、解離は、PGの切断である。いくつかの実施形態では、保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができる。いくつかの実施形態では、保護基は、約7未満のpH値(例えば、0~約7、3~約7、約5~約7、約5~約6.8、約3~約7(これらの間の任意の範囲を含む))で切断される。いくつかの実施形態では、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の保護基は、約7未満のpH値(例えば、0~約7、約3~約7、約5~約7、約5~約7(これらの間の任意の範囲を含む))で、最大0.1時間、最大0.5時間、最大1時間(これらの間の任意の範囲を含む)以内に切断を受ける。当業者は、保護基のいくらかの切断はまた、より高いpH値で(低い反応速度で、従って、効率的切断を達成するために長い時間を必要とする)起こり得ることを理解するであろう。さらに、pHの低下(7未満)は、保護基の切断を加速することは明らかなはずである。
【0116】
いくつかの実施形態では、切断は、7未満のpH値で加速される。いくつかの実施形態では、保護基は、7を超えるpH値では十分に切断されない。いくつかの実施形態では、解離は、複数のアミン基を脱保護することである。保護基は、中性および塩基性pHで複数のアミン基を保護するが、7未満のpHで複数のアミン基は脱保護されるようになることが、当業者には理解されよう。脱保護は、アミンからのPGの解離に起因する。いくつかの実施形態では、解離は、PGの切断により誘導される。いくつかの実施形態では、解離は、マスクされないコンジュゲートを産生する。いくつかの実施形態では、マスクされないコンジュゲートは、陽性のゼータ電位を特徴とする。いくつかの実施形態では、マスクされないコンジュゲートは、陽性のゼータ電位を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、電荷マスクされた部分である。いくつかの実施形態では、保護基は、マスキングである。いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、アルキルアミン、陽イオンポリマー、およびこれらの誘導体または任意の組み合わせを含む電荷マスクされた部分であり、誘導体は、アミン保護基に結合されたアルキルアミンおよび/または陽イオンポリマーを含む。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、本発明の保護基(PG)に結合された陽イオンポリマーを含み、PGは、7未満のpH値で切断を受けることができるアミン保護基である。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、PGによりによって保護されたアルキルアミンを含み、保護されたアミンは、7.0未満、6.9未満、6.8未満、6.7未満、6.5未満、6.3未満、6.0未満、5.5未満、5未満、3未満(これらの間の任意の範囲を含む)のpH値で脱保護を受けることができる。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、PGに共有結合されたアミン塩(例えば、脱プロトン化アミン)を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、陽イオンポリマー(例えば、保護されない陽イオンポリマー)は、複数のアミン基を含む。いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、一級アミン基、二級アミン基、三級アミン基、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、陽イオンポリマーのアミン基のpKa値未満のpH値を有する溶液内でイオン化(正イオン化)を受けることができる。いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、陽イオンポリマーのアミン基のpKa値未満のpH値を有する溶液内(例えば、9未満、または8未満のpHで)でプロトン化を受けることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%の陽イオンポリマー(例えば、保護されない陽イオンポリマー)は、陽イオンポリマーのアミン基のpKa値未満のpH値、例えば、9未満、8未満、7.5未満、7未満、6未満、5未満(これらの間の任意の範囲を含む)のpHを有する溶液内で正に帯電(またはプロトン化)する。いくつかの実施形態では、陽イオンポリマー(例えば、保護されない陽イオンポリマー)は、溶液内で複数のプロトン化を受け、複数の陽性表面電荷を生じ、溶液は、本明細書で記載の通りである。
【0120】
いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、ポリアミンを含む。いくつかの実施形態では、陽イオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)を含む。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、一級アミンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、二級アミンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、三級アミンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、一級、二級および三級アミンを含む。ポリアミンは、当該技術分野において周知であり、例えば、いくつか例を挙げると、ポリエチレンイミンおよびポリプロピレンイミンを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、陽イオンポリマー(例えば、保護されない陽イオンポリマー)は、ポリエチレンイミン(PEI)であるか、またはそれを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、PEIは、直鎖PEIを含む。いくつかの実施形態では、PEIは、分岐PEIを含む。いくつかの実施形態では、PEI(例えば、分岐または直鎖のPEI)は、5000Da未満、4000Da未満、3000Da未満、2000Da未満、1500Da未満、1000Da未満、800Da未満(これらの間の任意の範囲を含む)の数平均モル質量(Mn)により特徴づけられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、100~2000Da、200~5000Da、200~3000Da、500~5000Da、500~2000Da、500~3000Da、100~300Da、300~400Da、400~500Da、500~600Da、600~700Da、700~1000Da(これらの間の任意の範囲を含む)のMW(例えば、平均分子量)により特徴づけられる。
【0124】
いくつかの実施形態では、PEIは、100~2000Da、200~5000Da、200~3000Da、500~5000Da、500~2000Da、500~3000Da、100~300Da、300~400Da、400~500Da、500~600Da、600~700Da、700~1000Da(これらの間の任意の範囲を含む)のMnにより特徴づけられる。いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、500~700Da、または500~2000DaのMnにより特徴づけられる分岐PEIを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、複数のPEIを含み、複数のPEIは、本発明の単一タンパク質担体(例えば、HSA)に共有結合された3~10個、4~10個、2~10個、4~20個、4~50個、4~100個、2~100個、2~50個、2~20個、4~8個、6~10個、6~9個、6~8個(これらの間の任意の範囲を含む)のPEI分子を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、少なくとも1種の保護アミンを含む電荷マスクされた部分である。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分(例えば、PEI)のアミン基(例えば、一級および/または二級アミン)は、実質的に保護され(例えば、少なくとも約40%、少なくとも約50%、約40~約95%、約40~約100%、約40~約70%、約40~約80%、約40~約90%、約40~約95%、または約40~約99%のアミン基は、保護基に共有結合される)、保護基は、式2により表される(場合により、保護基は、無水シトラコン酸に由来する)。いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、複数のPGに共有結合され、複数のPGのそれぞれは、同じ化学構造を有する。いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、複数のPGに共有結合され、複数のPGは、化学的に別個のPG種であるか、またはこれらを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、本発明のペイロードを含む電荷マスクされた部分は、PGに結合される。いくつかの実施形態では、ペイロードは、1個または複数のPGに結合される。いくつかの実施形態では、ペイロードは、複数のPGに結合され、PGは、化学的に同一の種であるか、または化学的に別個の種である。いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲート内の各ペイロード分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、2~10、2~5、1~10、1~5、1~8、2~8個(これらの間の任意の範囲を含む)のPGなどの1個または複数のPGに共有結合される。
【0128】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、7~10のpH範囲で、プロトン化および/または正電荷(例えば、水溶液中で)を実質的に欠いている。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分および/または保護された複数のアミン基は、7~10のpH範囲で、実質的に荷電されないまたは負に荷電され(例えば、水溶液中で)、かつ7未満、6.8未満、6.5未満、6未満(これらの間の任意の範囲を含む)のpH範囲で正に荷電される。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分の複数のアミン基は、7~10のpH範囲で、実質的に荷電されないまたは負に荷電され(例えば、水溶液中で)、かつ7未満、6.8未満、6.5未満、6未満(これらの間の任意の範囲を含む)のpH範囲で正に荷電される。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、7~10のpH範囲で、プロトン化できるアミン(例えば、一次および/または二次アミン)を実質的に欠いている。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、マスクされない細胞浸透性部分(PGを欠く)に比べて、7~10のpH範囲で、プロトン化を受ける能力を実質的に低減させた。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の電荷マスクされた部分は、1個または複数の保護されたPEI(PEIのアミンの少なくとも一部はPGに結合される)を含む。いくつかの実施形態では、保護されたPEIは、本発明の保護基に結合されたPEIの1個または複数のアミン(例えば、脱プロトン化されたアミン)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の細胞浸透性部分は、少なくとも1%、少なくとも5%の直鎖または分岐のPEIを含み、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または50~99%、50~97%、50~95%、50~90%、50~85%、50~80%(これらの間の任意の範囲を含む)のアミン基(例えば、一級アミンおよび/または二級アミン)は、本発明の保護基に共有結合される。
【0130】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分、本発明のタンパク質コンジュゲート、および本発明のタンパク質担体のいずれかは、7~10、7.2~10、または7.5~10のpH(これらの間の任意の範囲を含む)、または7を超えるpHで、負に荷電される。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分、本発明のタンパク質コンジュゲート、および本発明のタンパク質担体のいずれかは、約7.4のpHで、負に荷電される。
【0131】
いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分、本発明のタンパク質コンジュゲート、ペイロード、および本発明のタンパク質担体のいずれかは、-0.1mV未満、-0.5mV未満、-1mV未満、-5mV未満、-10mV未満、-12未満、-14mV未満、-20mV未満(これらの間の任意の範囲を含む)のゼータ電位を特徴とする。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、0未満のゼータ電位である。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、-1mV以下のゼータ電位である。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、-2mV以下のゼータ電位である。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、-3mV以下のゼータ電位である。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、-4mV以下のゼータ電位である。いくつかの実施形態では、負のゼータ電位は、-5mV以下のゼータ電位である。
【0132】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分内のPGと陽イオンポリマー(例えば、PEI)の間のモル比は、100,000:1~0.8:1、50,000:1~1:1、25,000:1~1:1、10,000:1~1:1、8,000:1~1:1、5,000:1~1:1、3,000:1~1:1、2,000:1~1:1、1,000:1~1:1、900:1~1:1、800:1、~1:1、700:1~1:1、600:1~1:1、500:1~1:1、400:1~1:1、300:1~0.8:1、250:1~1:1、200:1~0.8:1、150:1~1:1、125:1~1:1、100:1~0.8:1、100:1~80:1、80:1~50:1、50:1~30:1、30:1~10:1、10:1~5:1、10:1~0.8:1、5:1~1:1、1:1~0.8:1(これらの間の任意の範囲を含む)である。
【0133】
いくつかの実施形態では、PGと担体(例えば、HSA)の間のモル比は、100,000:1、~1:1、50,000:1~1:1、25,000:1~1:1、10,000:1~1:1、8,000:1~1:1、5,000:1~1:1、3,000:1~1:1、2,000:1~1:1、1,000:1~1:1、900:1~1:1、800:1、~1:1、700:1~1:1、600:1~1:1、500:1~1:1、400:1~1:1、300:1~1:1、250:1~1:1、200:1~1:1、150:1~1:1、125:1~1:1、100:1~1:1、100:1~80:1、80:1~50:1、50:1~30:1、30:1~10:1、10:1~5:1、5:1~1:1(これらの間の任意の範囲を含む)である。
【0134】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分の保護されたアミンは、中性および/または塩基性pHで実質的に安定である(脱保護がない)。いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%(これらの間の任意の範囲を含む)の保護されたアミンは、中性および/または塩基性pHで、後述する時間にわたり安定なままである。
【0135】
いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、7.0~14、7.0~7.2、7.2~7.5、7.5~8、8~9、9~12、12~14の範囲(これらの間の任意の範囲を含む)のpHで実質的に安定である。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、約7.4のpHで実質的に安定である。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、7.0~14の範囲(これらの間の任意の範囲を含む)のpH値で、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間(これらの間の任意の範囲を含む)にわたり、実質的に安定である。
【0136】
いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、脱保護(またはそれからのPGの切断を介する分解)を受けて、脱保護されたアミン(例えば、荷電されないまたは正に荷電されたプロトン化アミン)を生じる。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、0~6.9、0~6.8、6~6.8、5~6、0~3、3~5、5~6.8の範囲(これらの間の任意の範囲を含む)のpHで実質的に脱保護される。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、約6.8のpHで実質的に脱保護される。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、癌微小環境中で実質的に脱保護される。いくつかの実施形態では、癌微小環境は、腫瘍微小環境(TME)である。いくつかの実施形態では、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも30モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%(これらの間の任意の範囲を含む)の保護されたアミンは、7未満(例えば、0~6.9)のpHで脱保護される。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、7未満(例えば、0~6.9、0~6.8、6~6.8、5~6、0~3、3~5、5~6.8(これらの間の任意の範囲を含む))のpHで、1秒~1時間、1~30秒、30~60秒、60秒~2分、2~10分、1分~1時間、1分~24時間、1分~12時間、1分~8時間、1分~6時間、1分~4時間、1分~3時間、1分~2時間、1秒~24時間、1秒~12時間、1秒~8時間、1秒~6時間、1秒~4時間、1秒~3時間、1秒~2時間の範囲(これらの間の任意の範囲を含む)の時間にわたり実質的に脱保護される。いくつかの実施形態では、7未満のpHは、約6.8である。
【0137】
保護基
いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、アミンに共有結合された本発明のPGを含む。いくつかの実施形態では、保護されたアミンは、PG前駆物質をアミンと反応させることにより得られる。いくつかの実施形態では、PG前駆物質は、アミン(例えば、一級アミン、二級アミンまたはこれらの両方)に対する反応性を有する。いくつかの実施形態では、PG前駆物質は、任意に置換されてよい(例えば、後述するRおよびRで)、環状無水物(例えば、不飽和であってもよい5~6員環状無水物)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、PG前駆物質は、安定な保護されたアミンを形成するように、アミンと反応できる。いくつかの実施形態では、保護されたアミン(例えば、電荷マスクされた部分内の)は、中性および/または塩基性pH条件下で安定である。いくつかの実施形態では、PG前駆物質は、アミン基(一級および/または二級アミン)と反応でき、それにより、アミン基を保護されたアミン(アミドなど)へと変換できる。いくつかの実施形態では、PG前駆物質は、式:
【化5】
の環状無水物であり、式中、n、R、RおよびRは、本明細書で前述の通りである。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明のPGは、アミンに共有結合され、アミンは、(i)ペイロードのアミン基、(ii)細胞浸透性部分のアミン基、または(i)または(ii)の両方から選択される。
【0139】
いくつかの実施形態では、PG(アミンまたは脱プロトン化アミンに結合された保護基)は、5を超えるpHで負電荷を有する1個または複数の部分(例えば、1、2、3、または4個の部分)を含む。いくつかの実施形態では、PGは、4~8、4~5、5~6、6~7、7~8以上(これらの間の任意の範囲を含む)のpHで負電荷を有する。いくつかの実施形態では、PGは、対象の組織内、または生体液内で実質的に負に荷電され、組織および/または生体液は、4~8、または5~9(これらの間の任意の範囲を含む)のpHにより特徴づけられる。
【0140】
いくつかの実施形態では、PGの少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%は、その部分のpKa値を越えるpHで、負に荷電される。いくつかの実施形態では、部分は、カルボキシまたはその塩であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、PGは、カルボキシおよび/またはその塩を含み、PGは、4~8もしくは5~8のpH、または8を超えるpHで、負に荷電される。
【0141】
いくつかの実施形態では、PGは、式1:
【化6】
、により表され、式中、nは0~5の範囲の整数であり;
【化7】
は、アミン基への付着点(例えば、保護されたアミンの窒素原子)を表し、および
【化8】
は、単結合または二重結合を表し;RおよびRはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル(例えば、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)、ハロ、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるアリールまたはヘテロアリール、およびカルボキシアルキル(例えば、C-C10カルボキシアルキル、またはC-Cカルボキシアルキル)、またはこれらの組み合わせから選択される1個または複数の置換基を表し;またはRおよびRは、環を形成するように一緒に結合される。
【0142】
いくつかの実施形態では、RおよびRはそれぞれ独立に、H、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、-NO、-CN、-OH、-NH、カルボニル、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH,-CONH-NH、-NHCOR’、-NHCSR’、-NHCNR’、-NC(=O)OR’、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C10アルキル)、C-C10アルコキシ、C-C10ハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-C10アルキル)、ヒドロキシ(C-C10アルコキシ)、アルコキシ(C-C10アルキル)、アルコキシ(C-C10アルコキシ)、アミノ(C-C10アルキル)、-CONH(C-C10アルキル)、-CON(C-C10アルキル)、-COH、-COR’、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、ヘテロ原子、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるヘテロシクリル、またはこれらの任意の組み合わせから選択される1個または複数の置換基を表し;各R’は独立に、水素、任意に置換されるC-Cアルキル、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるヘテロシクリル、任意に置換されるフェニル、任意に置換されるベンジルまたはこれらの組み合わせを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、nは、0~5、0~1、1~5、1~3、3~5(これらの間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、各Rおよび/またはRは、1個または複数の置換基を表す。いくつかの実施形態において、RおよびRは、同じまたは異なる置換基である。いくつかの実施形態では、カルボキシアルキルは、-アルキル-COOHを含む。いくつかの実施形態では、カルボキシアルキルは、-(C-C10)アルキル-COOH、または-(C-C)アルキル-COOH(これらの間の任意の範囲を含む)を含み、アルキルは、任意に置換される。
【0144】
いくつかの実施形態では、PGは、式2:
【化9】
、により表され、式中、n、RおよびRは、本明細書で記載の通りであり、各Rは独立に、H、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、-NO、-CN、-OH、-NH、カルボニル、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH,-CONH-NH、-NHCOR’、-NHCSR’、-NHCNR’、-NC(=O)OR’、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C10アルキル)、C-C10アルコキシ、C-C10ハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-C10アルキル)、ヒドロキシ(C-C10アルコキシ)、アルコキシ(C-C10アルキル)、アルコキシ(C-C10アルコキシ)、アミノ(C-C10アルキル)、-CONH(C-C10アルキル)、-CON(C-C10アルキル)、-COH、-COR’、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、ヘテロ原子、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるヘテロシクリル、またはこれらの任意の組み合わせから選択される1個または複数の置換基(例えば、1個または2個の置換基)を含み;各R’は独立に、水素、任意に置換されるC-Cアルキル、任意に置換されてもよいシクロアルキル、任意に置換されるヘテロシクリル、任意に置換されるフェニル、任意に置換されるベンジルまたはこれらの組み合わせを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、RおよびRの1個は、Hであり、RおよびRの別の1個は、アルキルまたはカルボキシアルキルを含む。いくつかの実施形態では、各RおよびRは独立に、C-C10アルキル(分岐または直鎖)、またはカルボキシアルキルを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、PGは、式2により表され、式中、nは、0であり;Rは、CHCOOH、メチル、およびエチルから選択され;Rは、H、およびCHCHCOOHから選択される。
【0147】
いくつかの実施形態では、PGは、式2A:
【化10】
、により表され、RおよびRは、Hおよびメチルから選択され、RまたはRは、メチルである。
【0148】
いくつかの実施形態では、PGは、本明細書で開示の式のいずれかにより表され、その任意の塩(例えば、カルボン酸塩)、任意の誘導体、任意の互変異性体、任意の同位体、または任意の構造異性体を含む。いくつかの実施形態では、PGは、本明細書の以降で開示される保護基である。いくつかの実施形態では、PGは、無水マレイン酸誘導体である。いくつかの実施形態では、PGは、無水シトラコン酸由来である。いくつかの実施形態では、PGは、無水マレイン酸である。いくつかの実施形態では、PGは、アコニット酸無水物由来である。いくつかの実施形態では、PGは、ジメチルマレイン酸無水物由来である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「由来(derived from)」という用語は、アミン基によるPG前駆物質(例えば、環状無水物)の求核置換を介して得られる分子を包含する。いくつかの実施形態では、PGは、無水シトラコン酸由来であり、保護基は、式2Aにより表され、RまたはRは、メチルである。いくつかの実施形態では、PGは、無水シトラコン酸であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、PGは、無水シトラコン酸由来であり、式2Aの形状を有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、それに共有結合された複数のPEI分子を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、それに共有結合された、3~10個、または4~10個、2~100個、3~100個、3~90個、4~100個、4~90個、4~10個、4~40個、4~20個、20~100個、20~40個、40~60個、60~100個、6~100個、6~20個、6~40個、6~50個、4~15個、3~15個、3~10個、3~8個、4~8個、6~10個(これらの間の任意の範囲を含む)のPEI分子を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、それに共有結合された3~10個のPEI分子、3~5個のPEI分子、5~8個のPEI分子、8~10個のPEI分子、10~15個のPEI分子、15~20個(これらの間の任意の範囲を含む)のPEI分子を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80KDaのサイズを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、50KDaのサイズを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、60KDaのサイズを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、65KDaのサイズを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、血中内因性タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、血液中で天然に見出される。いくつかの実施形態では、血液は、血漿である。いくつかの実施形態では、血液は、哺乳類血液である。いくつかの実施形態では、哺乳類は、ヒトである。いくつかの実施形態では、血中内因性タンパク質は、アルブミンである。いくつかの実施形態では、血中内因性タンパク質は、グロブリンである。いくつかの実施形態では、血中内因性タンパク質は、フィブリノーゲンである。いくつかの実施形態では、グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)である。いくつかの実施形態では、Igは、IgGである。いくつかの実施形態では、Igは、IgAである。いくつかの実施形態では、Igは、IgMである。いくつかの実施形態では、血中内因性タンパク質は、HSA、フィブリノーゲン、およびIgGから選択される。いくつかの実施形態では、血中内因性タンパク質は、凝血タンパク質ではない。血中内因性タンパク質は当該技術分野において周知であり、少し例を挙げれば、例えば、プレアルブミン(トランスサイレチン)、α1抗トリプシン、α-1-糖タンパク質、α-1-フェトプロテイン、α2-マクログロブリン、γグロブリン、β-2ミクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミン、補体成分3、補体成分4、C反応性タンパク質(CRP)、リポタンパク質、(カイロミクロン、VLDL、LDL、HDL)、トランスフェリン、プロトロンビン、およびマルトース結合タンパク質(MBP)である。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)、フィブリノーゲン、IgG、蛍光タンパク質(GFP)および設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)から選択される。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質は、緑(GFP)、赤(RFP)、青(BFP)および黄(YFP)から選択される。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質は、GFPである。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、HSAである。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、フィブリノーゲンである。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、IgGである。
【0154】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、HSAであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、PEI修飾されたHSAを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、リンカーを介してタンパク質担体に結合されたペイロードを含み、リンカーは、本明細書で記載の通りであり、タンパク質担体は、3~20個、3.5~20個、3~10個、3.5~10個、3~8個、3.5~8個、3~5個、5~8個、8~10個、10~15個、3~10個、3~15個、4~20個、4~10個、3.5~6個、3.5~15個、3.5~8個、3.5~12個、3~12個、3~17個、3.5~17個、3.5~15個、4~8個、6~10個のPEI分子に共有結合された(またはPEI分子により修飾された)HSAであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で記載のPEI分子の数は、平均値である。いくつかの実施形態では、PEI分子は、100~2000Da、200~5000Da、200~3000Da、500~5000Da、500~2000Da、500~3000Da、100~300Da、300~400Da、400~500Da、500~600Da、600~700Da、700~1000Da(これらの間の任意の範囲を含む)の平均MWを特徴とする。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、PEIを含み、15~50、15~45、15~35、15~30、15~25、20~50、20~45、20~40、20~35、20~25、25~50、25~45、25~40、25~35、25~30、30~50、30~45、30~40、30~35、35~50、35~45、35~40、40~50、40~45、または45~50分子(これらの間の任意の範囲を含む)のPGによりマスクされる。
【0155】
いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、少なくとも2分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質担体は、少なくとも8分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、1分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、少なくとも3分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、少なくとも8分子のPEIに共有結合される。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、少なくとも98分子のPEIに共有結合される。
【0156】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ペイロードを含む。本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、標的細胞の細胞質中に送達される任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞内標的を結合する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞内標的と相互作用する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞内標的を調節する。いくつかの実施形態では、細胞内は、細胞質である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、切断されると細胞内標的との相互作用を減らすジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、ペイロードは、ジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、ペイロードは、分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、生物学的ペイロードである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、生体分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、有機物である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、治療分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、検出可能分な子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、標的に結合できる分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、生物製剤である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、薬物である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはタンパク質は、単離されたタンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはタンパク質は、ペプチドまたはタンパク質部分である。タンパク質は、完全なタンパク質である必要はなく、タンパク質の部分またはフラグメントであってよい。いくつかの実施形態では、ペイロードは、アミノ酸を含む、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、単一アミノ酸鎖である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、複数のアミノ酸鎖である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、生理活性分子である。いくつかの実施形態では、生理活性は、生物活性剤である。
【0157】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、核酸分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、DNAである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、RNAである。いくつかの実施形態では、核酸分子は、オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、アプタマーである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、プライマーである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、調節RNAである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、プラスミドである。いくつかの実施形態では、ペイロードは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、標的細胞中で発現するように構成される。いくつかの実施形態では、ペイロードは、遺伝子療法剤である。いくつかの実施形態では、核酸分子は、オープンリーディングフレームを含む。いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、治療タンパク質をコードする。核酸分子核酸分子を化学的およびアミノ酸リンカーにコンジュゲートする方法は、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような方法を、採用し得る。いくつかの実施形態では、核酸分子は、核移行シグナル(NLS)を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、タンパク質および核酸分子から選択される。
【0158】
用語「核酸」は、当該技術分野においてよく知られている。本明細書で使用される場合、「核酸」は一般的に、核酸塩基を含む、DNA、RNAの分子、またはその誘導体もしくは類似体を指す。核酸塩基は、例えば、DNA中で認められる天然起源のプリンまたはピリミジン塩基(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」)またはRNA中で認められる天然起源のプリンまたはピリミジン塩基(例えば、A、G、ウラシル「U」またはC)を含む。
【0159】
用語「核酸分子」としては、限定されないが、一本鎖RNA(ssRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、miRNA、siRNAおよび他の短干渉核酸などの小型RNA、snoRNA、snRNA、tRNA、piRNA、tnRNA、小型rRNA、hnRNA、lncRNA、循環核酸、ゲノムDNAまたはRNAのフラグメント、分解核酸、リボザイム、ウィルスRNAまたはDNA、感染源の核酸、増幅産物、修飾核酸、プラスミドまたはオルガネラ核酸およびオリゴヌクレオチドなどの人工核酸が挙げられる。
【0160】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い(例えば、100塩基以下の)化学的に合成された一本鎖DNAまたはRNA分子を指す。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、ライゲーション反応によるなど、核酸分子の5’または3’末端に付着される。
【0161】
用語の「発現」は、遺伝子産物の生合成を指し、上記遺伝子産物の転写および/または翻訳を含む。従って、核酸分子の発現は、核酸フラグメントの転写(例えば、転写はmRNAまたは他の機能性RNAを生ずる)および/または前駆物質または成熟タンパク質(ポリペプチド)へのRNAの翻訳を指し得る。
【0162】
細胞内での遺伝子の発現は、当業者に周知であり、本明細書では、その送達は、本発明の方法により、または本発明の組成物を使って実施され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子は、プラスミドまたはウィルスベクターなどの発現ベクター中にある。ベクターは、ウィルスベクターであり得る。ウィルスベクターは、レトロウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクターまたはポックスウィルスベクターであってよい。プロモーターは、哺乳類細胞において活性であり得る。プロモーターは、ウィルスプロモーターであってよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、遺伝子またはオープンリーディングフレームは、プロモーターまたは他の調節エレメントに動作可能に連結される。「作動可能に連結される」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、または本発明の方法によりベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞において)を可能にするように調節エレメントに連結されることを意味すると意図される。いくつかの実施形態では、調節エレメントまたはプロモーターは、標的細胞中で活性である。
【0164】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼ、即ち、RNAポリメラーゼIIのための開始部位の周りに集まっている一群の転写制御モジュールを意味する。プロモーターは、別々の機能的モジュールから構成され、それぞれは、約7~20bpのDNAからなり、転写活性化因子またはリプレッサータンパク質に対する1種または複数の認識部位を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、RNAポリメラーゼII(RNAP IIおよびPol II)により転写される。RNAP IIは、真核細胞で見出される酵素である。それは、DNAの転写を触媒して、mRNAおよびほとんどのsnRNAおよびマイクロRNAの前駆物質を合成する。
【0166】
いくつかの実施形態では、哺乳類発現ベクターは、pcDNA3、pcDNA3.1(±)、pGL3、pZeoSV2(±)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手可能である)、pMbac、pPbac、pBK-RSVおよびpBK-CMV(これらはStrategeneから入手可能である)、pTRES(これはClontechから入手可能である)、ならびに、これらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0167】
いくつかの実施形態では、レトロウィルスなどの真核生物ウィルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターが、本発明で用いられる。SV40ベクターは、pSVT7およびpMT2を含む。いくつかの実施形態では、ウシパピローマウィルス由来のベクターは、pBV-1MTHAを含み、エプスタイン・バーウィルス由来のベクターは、pHEBOおよびp2O5を含む。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウィルスpDSVE、およびSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウィルスプロモーター、ラウス肉腫ウィルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞での発現に有効性を示す他のプロモーターの指示により、タンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態では、水平感染および標的特異性などの利点を提供する組み換えウィルスベクターが、インビボ発現に有用である。一実施形態では、水平感染は、例えば、レトロウィルスのライフサイクルに固有であり、それにより単一の感染細胞が多くの子孫ビリオンを生成し、これらが母体から分離して隣接細胞に感染するプロセスである。一実施形態では、結果は、広い領域が急速に感染されるようになることであり、そのほとんどは元のウィルス粒子により初期に感染されたものではなかった。一実施形態では、水平に伝染できないウィルスベクターが生成される。一実施形態では、この特徴は、望ましい目的が限局数の標的細胞にのみ特定の遺伝子を導入することである場合有用であり得る。
【0169】
用語「生理活性」は、細胞または組織に対し効果を発揮する分子または薬剤を指す。生物活性剤のタイプの代表的な例は、限定されないが、治療薬、ビタミン、電解質、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、炭水化物、脂質、ポリサッカライド、核酸、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、成長因子、分化因子、ホルモン、神経伝達物質、プロスタグランジン、免疫グロブリン、サイトカイン、および抗原を含む。これらの分子の各種組み合わせを使用できる。サイトカインの例は、マクロファージ由来ケモカイン、マクロファージ炎症性タンパク質、インターロイキン、腫瘍壊死因子を含む。タンパク質の例は、繊維状タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン)および接着タンパク質(例えば、アクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、セレクチン、細胞内接着分子、およびインテグリン)を含む。種々の事例では、生物活性剤は、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンジン、テネイシンC、レプチン、白血病抑制因子、RGDペプチド、抗TNF、エンドスタチン、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、骨形成タンパク質-1、骨形成タンパク質、オステオネクチン、ソマトメジン様ペプチド、オステオカルシン、インターフェロン、およびインターロイキンから選択され得る。いくつかの実施形態では、生物活性剤は、成長因子、分化因子、またはこれらの組み合わせを含む。
【0170】
本明細書で使用される場合、「単離されたペプチド」という用語は、炭水化物、脂質、または天然のペプチドに関連する他のタンパク質性不純物などの汚染細胞成分を基本的に含まないペプチドを指す。典型的には、単離されたペプチドの配合物は、高度に精製された形態の、即ち、少なくとも約80%純度の、少なくとも約90%純度の、少なくとも約95%純度の、95%を超える純度の、または99%を超える純度のペプチドを含む。
【0171】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、同じ意味で用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。別の実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然ペプチド、ペプチド模倣体(典型的には、非ペプチド結合または他の合成修飾を含む)およびペプチド類似体ペプトイドおよびセミペプトイドまたはこれらの任意の組み合わせを包含する。別の実施形態では、記載されたペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、これらをより安定にするが身体中で細胞中へより浸透可能にする修飾を有する。一実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然起源のアミノ酸ポリマーに適用される。別の実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然起源のアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーに適用される。
【0172】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞質標的を結合する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞質標的に特異的である。いくつかの実施形態では、特異的は、任意の他の標的へのそれほど多くない結合を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、結合分子である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、その標的にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、ペイロードは、その標的に相補的である。いくつかの実施形態では、ペイロードは、標的を結合する相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。抗体の構造は、よく知られており、当業者は、抗体がそのCDR配列のみによりどの標的に対し結合するかを知らない可能性があるが、抗体の一般的構造およびその抗原結合領域は、当業者により認識され得る。
【0173】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、内部表面形状および抗原の抗原決定基の特徴に相補的な電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチドまたはポリペプチド群を指す。抗体は典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含む四量体形態を有し、各対は、1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖を有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗体は、オリゴクローナル、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ラクダ化、CDRグラフト化、多重特異性、二重特異性、触媒性、ヒト化、完全ヒト型、抗イディオタイプであってよく、および可溶または結合型で標識できる抗体、ならびに、単独でまたは他のアミノ酸配列と組み合わせた、そのエピトープ結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含むフラグメントであってよい。抗体は、いずれの種由来であってよもい。抗体という用語はまた、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディ)、およびジスルフィド結合可変領域(dsFv)を含むがこれらに限定されない、結合フラグメントも含む。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント、すなわち抗原結合部位を含む分子を含む。抗体フラグメントは、Fc領域またはそのフラグメントを含むがこれらに限定されない別の免疫グロブリンドメインに融合されてよく、または融合されなくてもよい。当業者は、scFv-Fc融合体、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合体およびscFv-scFv-Fc融合体を含むがこれらに限定されない他の融合産物が生成され得ることを更に理解する。
【0174】
免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであってよい。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体は、単鎖抗体(scFv)である。いくつかの実施形態では、抗体は、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ラクダ科動物抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、サメ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、VHHである。いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖のみの抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体ミメティックである。いくつかの実施形態では、結合分子または抗体ミメティックは、DARPinである。CDRに関係なく、本抗体、抗体フラグメント、ScFv、ナノボディ、VHH、単一ドメイン抗体、DARPinなどは、これらの非可変領域により構造的に認識され得る。従って、特定の標的に限定されることなく、本発明の組成物は、これらの分子をペイロードとして含むことが理解され得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、C末端システインアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、ペイロードのC末端の近位にあるシステインアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、近位は、末端の10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸以内である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0177】
いくつかの実施形態では、ペイロードは、2個以上の分子を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、2個以上の生理活性分子を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、二重特異性である。本明細書で使用される場合、「二重特異性」という用語は、2個の異なる標的に対し機能を有することを指す。いくつかの実施形態では、ペイロードは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の分子を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ペイロードは、2つの細胞内標的に対し少なくとも2個の分子を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つは、2つである。いくつかの実施形態では、2つの標的は、同じ標的である。いくつかの実施形態では、2つの標的は、異なる標的である。いつかの実施形態では、ペイロードは、少なくとも2つのVHHを含む。いつかの実施形態では、少なくとも2つのVHHは、異なる細胞内タンパク質に対して特異的である。
【0178】
いつかの実施形態では、少なくとも2個の分子は、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞質中で切断可能である。いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルである。いくつかの実施形態では、リンカーの切断は、各分子がその標的に到達することを可能にする。いくつかの実施形態では、リンカーは、切断可能でない。いくつかの実施形態では、2個の分子は、2つの標的細胞内タンパク質を一緒に運ぶ。
【0179】
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、リンカーを介してタンパク質担体に結合されたペイロードを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、融合タンパク質ではない。ペイロードおよび担体が別のリンカーで相互にコンジュゲートされることは、当業者なら理解するであろう。リンカーは、担体の一部ではなく、かつペイロードの一部でもないが、むしろそれぞれに付着され(コンジュゲートされ)、それによりこれらを連結する。
【0180】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、少なくとも2、少なくとも10、少なくとも24、少なくとも48時間(これらの間の任意の範囲を含む)にわたり生体液(例えば、ヒト血液、血漿または血清)中で実質的に安定である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、血液中で実質的に安定である。いくつかの実施形態では、血液は、ヒト血液である。いくつかの実施形態では、血液は、マウス血液である。いくつかの実施形態では、血液は、げっ歯類血液である。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、ラットである。いくつかの実施形態では、げっ歯類は、マウスである。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48または72時間にわたり、ヒト血液中で実質的に安定である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーおよび/または電荷マスクされた部分は、細胞質条件への曝露下で不安定である。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、細胞質ゾルに生物学的ペイロードを放出するように、細胞質条件への曝露下で切断可能である。
【0182】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされた部分は、脱保護された細胞浸透性部分(例えば、脱保護されたPEI分子)を含むタンパク質担体(例えば、HSA)を生じるように、6~7のpHを含む条件への暴露下で切断または脱保護を受ける。いくつかの実施形態では、6~7のpHは、約6.8である。
【0183】
いくつかの実施形態では、脱保護された細胞浸透性部分(例えば、脱保護されたPEI分子)を含むタンパク質担体は、少なくとも5mV、少なくとも6mV、少なくとも7mV、少なくとも8mV、少なくとも8.5mV、少なくとも9mV、少なくとも9.5mV、少なくとも10mV、少なくとも12mV、または8~40mV、8.5~40mV、8~20mV、8.5~20mV、10~40mV、10~20mV、10~30mV、5~50mV、6~50mV、7~50mV、8~50mV、8~40mV、8~30mV、8~20mV、10~50mV、10~40mV、10~30mV、10~20mV、20~50mV、30~50mV(これらの間の任意の範囲を含む)の正のゼータ電位値により特徴づけられる。当業者は、コンジュゲートの正確なゼータ電位値は、タンパク質担体、ペイロード、または両方のMWおよび/またはサイズに応じて、変化し得ることを理解するであろう。
【0184】
いくつかの実施形態では、脱保護された細胞浸透性部分(例えば、脱保護されたPEI分子)を含むタンパク質コンジュゲートは、少なくとも6mV、少なくとも7mV、少なくとも8mV、少なくとも8.5mV、少なくとも9mV、少なくとも9.5mV、少なくとも10mV、少なくとも12mV、または8~40mV、8.5~40mV、8~20mV、8.5~20mV、10~40mV、10~20mV、10~30mV(これらの間の任意の範囲を含む)の正のゼータ電位値により特徴づけられる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0185】
ゼータ電位は、当該技術分野において既知の任意の方法により測定され得る。本明細書では、次のプロトコルを使用し、これは、分子が本明細書で詳述の範囲でゼータ電位を含むかどうかを決定するための標準法と考えることができる。ゼータ電位測定を、Zeta Sizer Ultra(Malvern Instruments)を用いて実施した。試料の緩衝液を、1mg/mLのタンパク質濃度で、1mMのNaClに交換した。各試料からの20μLを、ゼータセル(DTS1070)にロードし、各試料について5回反復して測定し、mVでの平均ゼータ電位を、各反復について得た。5回の測定の平均を、標準偏差と共に報告する。測定を、次の条件下で実施した:温度25℃;各反復に対する実験数10~40;平衡時間:60秒、下位実験後の休止無し;反復間に60秒の休止;電圧を自動的に選択し、単峰性分析法をデータ処理で使用。いくつかの実施形態では、ゼータ電位を、約1mMの塩中で測定する。いくつかの実施形態では、塩は、NaClである。いくつかの実施形態では、ゼータ電位を、約1mg/mLのタンパク質濃度で測定する。
【0186】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、リンカーを介してペイロードに共有結合されたタンパク質担体を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、リンカーに共有結合される。いくつかの実施形態では、担体は、リンカーに共有結合される。いくつかの実施形態では、共有結合は、ペプチド結合ではない。いくつかの実施形態では、リンカーとペイロード間の少なくとも1つの結合、およびリンカーと担体の間の結合は、ペプチド結合ではない。いくつかの実施形態では、担体、リンカーおよびペイロードは、単一アミノ酸鎖中に含まれない。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、リンカーを介してペイロードに共有結合されたタンパク質担体を含み、リンカーは、少なくとも1つの切断可能な結合を含む合成リンカーである。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、リンカーを介してペイロードに共有結合されたタンパク質担体を含み、リンカーは、切断可能な結合を欠く合成リンカーである。いくつかの実施形態では、担体およびペイロードは、同じタンパク質由来ではない。いくつかの実施形態では、リンカーおよび担体は、同じタンパク質由来ではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーであり、かつ担体が基づくタンパク質のアミノ酸配列中に存在しない配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーであり、かつペイロードが基づくタンパク質のアミノ酸配列中に存在しない配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーおよびペイロードは、同じタンパク質由来ではない。いくつかの実施形態では、ペイロードは、天然起源の分子ではない。いくつかの実施形態では、ペイロードは、人工である。いくつかの実施形態では、リンカーは、天然起源ではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、人工である。いくつかの実施形態では、担体は、天然起源タンパク質またはそのフラグメントである。
【0187】
いくつかの実施形態では、リンカーは、タンパク質リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、剛性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルなリンカーである。いくつかの実施形態では、剛性リンカーは、アルファヘリックスペプチドである。いくつかの実施形態では、リンカーは、フレキシブルなリンカーである。いくつかの実施形態では、フレキシブルなリンカーは、GGGGSリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、C末端システインアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、リンカーのC末端の近位にあるシステインアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、近位は、末端の10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸以内である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、N末端システインアミノ酸を含み、ペイロードは、C末端システインを含む。システインの側鎖は、切断可能なジスルフィド結合を生成するために使用できる硫黄原子を含むことは、当業者により理解されよう。例えば、システインは、HSAのシステイン34とジスルフィド結合を形成できる。
【0188】
いくつかの実施形態では、アルファヘリックスペプチドは、AAASAEAAAKEAAAKEAAAKAAAGSG(配列番号6)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、アルファヘリックスペプチドは、AAASAEAAAKEAAAKEAAAKAAAGSGLC(配列番号10)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、アルファヘリックスペプチドは、AAASAEAAAKEAAAKEAAAKAAAGSGL(配列番号14)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、フレキシブルなリンカーは、GGGGSリンカーである。いくつかの実施形態では、フレキシブルなリンカーは、1~5個のGGGGS反復を含む。いくつかの実施形態では、1~5個は、1~3個である。いくつかの実施形態では、1~5個は、1個である。いくつかの実施形態では、1~5個は、2個である。いくつかの実施形態では、1~5個は、3個である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGLC(配列番号4)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGLGC(配列番号5)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGLG(配列番号7)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSC(配列番号8)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号12)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSC(配列番号9)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号13)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGLGC(配列番号11)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGLG(配列番号15)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号4~15から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる。
【0189】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、バイオ切断可能な結合(例えば、細胞質条件へのンパク質コンジュゲートの暴露下で切断可能な結合)を実質的に欠く。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能な結合を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、リンカーは、バイオ切断可能でない結合(例えば、アミド結合、クリック反応生成物、チオエーテル結合、など)を介して、タンパク質担体および/またはペイロードに付着される。
【0190】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、生体切断可能な結合を含む。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、少なくとも2時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間(これらの間の任意の範囲を含む)にわたり生体液(例えば、ヒト血液、血漿または血清)内で実質的に安定である。いくつかの実施形態では、切断可能なは、細胞質中で切断可能なことである。いくつかの実施形態では、切断可能なは、血清または血液中で切断可能ではない。いくつかの実施形態では、切断可能でないは、実質的に切断可能ではない。いくつかの実施形態では、細胞質中で生体切断可能なは、血液中でよりも、細胞質中で顕著により多く切断される。
【0191】
いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、細胞質条件への暴露下で、切断可能である。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、細胞質条件(例えば、特に酸性pH条件および/またはグルタチオンなどの還元剤を含む、細胞内コンパートメント)への暴露下で、還元可能である。
【0192】
生体切断可能な結合は、当該技術分野において周知であり、細胞に侵入後に選択的に切断(細胞内切断)される結合を指す。細胞内での薬物放出にとって好ましい結合は、リソソーム中に認められるもののような、酸性条件中で切断可能な結合である。一例は、ジスルフィド結合である。ジスルフィド結合は、細胞に侵入時にグルタチオンにより切断されると想定される。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、細胞内で切断される結合である。いくつかの実施形態では、細胞内で切断されるは、細胞の内部で切断されることである。いくつかの実施形態では、細胞の内部は、細胞の細胞質である。いくつかの実施形態では、細胞の内部は、細胞の小胞中である。いくつかの実施形態では、小胞は、エンドソームである。いくつかの実施形態では、小胞は、リソソームである。いくつかの実施形態では、小胞は、ゴルジの小胞である。いくつかの実施形態では、切断は、選択的切断である。いくつかの実施形態では、選択的は、細胞外切断に比較してのことである。いくつかの実施形態では、細胞外は、細胞の外側である。いくつかの実施形態では、細胞の外側は、生体液中である。
【0193】
いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、ジスルフィド結合であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、複数のジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、立体的に障害される。いくつかの実施形態では、生体切断可能な結合は、立体的に障害されるジスルフィド結合であるか、またはそれを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、生体液は、体液である。いくつかの実施形態では、生体液は、血清、血漿、胃液、腸液、唾液、胆汁、腫瘍液、母乳、尿、間質液、脳脊髄液および便の少なくとも1種より選択される。いくつかの実施形態では、生体液は、血液である。いくつかの実施形態では、生体液は、血清である。いくつかの実施形態では、生体液は、血漿である。
【0195】
いくつかの実施形態では、立体的に障害されるジスルフィド結合は、側鎖またはそれに隣接する嵩高い部分を含む。いくつかの実施形態では、側鎖または嵩高い部分は、ジスルフィド結合の少なくとも1つの硫黄原子に近接して位置する。いくつかの実施形態では、隣接してまたは近接しては、0~10個、0~2個、2~5個、5~10個の原子結合の範囲(これらの間の任意の範囲を含む)の距離を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「原子結合」は、炭素-炭素(C-C)結合の長さ、例えば、単一C-C結合の長さを指す。
【0196】
いくつかの実施形態では、立体的に障害されるジスルフィド結合は、側鎖またはそれに隣接する嵩高い部分(例えば、ジスルフィド結合の硫黄原子から1~15Å、1~3Å、3~5Å、5~10Å、10~15Åの範囲の距離に配置される)を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、側鎖または嵩高い部分は、アルキル(例えば、一級、二級または三級C-C10アルキルで、任意に不飽和結合および/または置換基を含む)、芳香環、または立体障害型側鎖を含むアミノ酸(例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、およびトリプトファン)、またはタンパク質、これらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、側鎖または嵩高い部分は、ジスルフィド結合に隣接するメチレン基に共有結合される。
【0198】
いくつかの実施形態では、ジスルフィド結合は、本発明の生物学的ペイロードおよび/またはタンパク質担体に隣接して配置され、隣接しては、本明細書で記載の通りである。いくつかの実施形態では、本発明の生物学的ペイロードおよび/またはタンパク質担体は、ジスルフィド結合を介して、リンカーに結合される。いくつかの実施形態では、ジスルフィド結合は、タンパク質担体の近位にある、または隣接している。
【0199】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質担体(例えば、HSA)は、ジスルフィド結合を介して、リンカーに結合される。いくつかの実施形態では、HSAは、DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号1)のアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは相同体を含む。配列番号1は、シグナルペプチドのないHSAの配列を提供する。いくつかの実施形態では、HSAは、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、HSAは、HSAのフラグメントである。いくつかの実施形態では、フラグメントは、HSAの少なくとも50、60、70、80、90、95、99または100%を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、フラグメントは、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550または600個のHSA由来のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、連続アミノ酸である。いくつかの実施形態では、HSAは、HSAの相同体である。いくつかの実施形態では、HSAの相同体は、配列番号1と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、HSAは、配列番号1と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、HSAは、配列番号1またはそのフラグメントまたは相同体からなる。いくつかの実施形態では、HSAは、配列番号1と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、HSAは、配列番号1からなる。いくつかの実施形態では、HSAは、遊離システインを含む。いくつかの実施形態では、遊離システインは、システインC34である。特定の実施形態では、遊離システインは、単一の遊離システインのみである。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィド結合を介して、HSAのC34に結合される。
【0200】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、フィブリノーゲンアルファ鎖(FGA)である。いくつかの実施形態では、FGAは、ADSGEGDFLAEGGGVRGPRVVERHQSACKDSDWPFCSDEDWNYKCPSGCRMKGLIDEVNQDFTNRINKLKNSLFEYQKNNKDSHSLTTNIMEILRGDFSSANNRDNTYNRVSEDLRSRIEVLKRKVIEKVQHIQLLQKNVRAQLVDMKRLEVDIDIKIRSCRGSCSRALAREVDLKDYEDQQKQLEQVIAKDLLPSRDRQHLPLIKMKPVPDLVPGNFKSQLQKVPPEWKALTDMPQMRMELERPGGNEITRGGSTSYGTGSETESPRNPSSAGSWNSGSSGPGSTGNRNPGSSGTGGTATWKPGSSGPGSTGSWNSGSSGTGSTGNQNPGSPRPGSTGTWNPGSSERGSAGHWTSESSVSGSTGQWHSESGSFRPDSPGSGNARPNNPDWGTFEEVSGNVSPGTRREYHTEKLVTSKGDKELRTGKEKVTSGSTTTTRRSCSKTVTKTVIGPDGHKEVTKEVVTSEDGSDCPEAMDLGTLSGIGTLDGFRHRHPDEAAFFDTASTGKTFPGFFSPMLGEFVSETESRGSESGIFTNTKESSSHHPGIAEFPSRGKSSSYSKQFTSSTSYNRGDSTFESKSYKMADEAGSEADHEGTHSTKRGHAKSRPVRDCDDVLQTHPSGTQSGIFNIKLPGSSKIFSVYCDQETSLGGWLLIQQRMDGSLNFNRTWQDYKRGFGSLNDEGEGEFWLGNDYLHLLTQRGSVLRVELEDWAGNEAYAEYHFRVGSEAEGYALQVSSYEGTAGDALIEGSVEEGAEYTSHNNMQFSTFDRDADQWEENCAEVYGGGWWYNNCQAANLNGIYYPGGSYDPRNNSPYEIENGVVWVSFRGADYSLRAVRMKIRPLVTQ(配列番号2)のアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは相同体を含む。配列番号2は、シグナルペプチドのないフィブリノーゲンの配列を提供する。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、MFSMRIVCLVLSVVGTAWT(配列番号3)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、FGAは、FGAのフラグメントである。いくつかの実施形態では、フラグメントは、FGAの少なくとも50、60、70、80、90、95、99または100%を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、フラグメントは、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800または850個のFGA由来のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、連続アミノ酸である。いくつかの実施形態では、FGAは、FGAの相同体である。いくつかの実施形態では、相同性は、配列同一性である。いくつかの実施形態では、FGAの相同体は、配列番号2と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、FGAは、配列番号2またはそのフラグメントまたは相同体からなる。いくつかの実施形態では、FGAは、配列番号2と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、FGAは、配列番号2からなる。
【0201】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、フィブリノーゲンβ鎖(FGB)である。いくつかの実施形態では、FGBは、QGVNDNEEGFFSARGHRPLDKKREEAPSLRPAPPPISGGGYRARPAKAAATQKKVERKAPDAGGCLHADPDLGVLCPTGCQLQEALLQQERPIRNSVDELNNNVEAVSQTSSSSFQYMYLLKDLWQKRQKQVKDNENVVNEYSSELEKHQLYIDETVNSNIPTNLRVLRSILENLRSKIQKLESDVSAQMEYCRTPCTVSCNIPVVSGKECEEIIRKGGETSEMYLIQPDSSVKPYRVYCDMNTENGGWTVIQNRQDGSVDFGRKWDPYKQGFGNVATNTDGKNYCGLPGEYWLGNDKISQLTRMGPTELLIEMEDWKGDKVKAHYGGFTVQNEANKYQISVNKYRGTAGNALMDGASQLMGENRTMTIHNGMFFSTYDRDNDGWLTSDPRKQCSKEDGGGWWYNRCHAANPNGRYYWGGQYTWDMAKHGTDDGVVWMNWKGSWYSMRKMSMKIRPFFPQQ(配列番号19)のアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは相同体を含む。配列番号19は、シグナルペプチドのないフィブリノーゲンの配列を提供する。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、MKRMVSWSFHKLKTMKHLLLLLLCVFLVKS(配列番号18)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、FGBは、FGBのフラグメントである。いくつかの実施形態では、フラグメントは、FGBの少なくとも50、60、70、80、90、95、99または100%を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、フラグメントは、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、または480個のFGB由来のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、連続アミノ酸である。いくつかの実施形態では、FGBは、FGBの相同体である。いくつかの実施形態では、相同性は、配列同一性である。いくつかの実施形態では、FGBの相同体は、配列番号19と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、FGBは、配列番号19またはそのフラグメントもしくは相同体からなる。いくつかの実施形態では、FGBは、配列番号19と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、FGBは、配列番号19からなる。
【0202】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、フィブリノーゲンγ鎖(FGG)である。いくつかの実施形態では、FGGは、YVATRDNCCILDERFGSYCPTTCGIADFLSTYQTKVDKDLQSLEDILHQVENKTSEVKQLIKAIQLTYNPDESSKPNMIDAATLKSRKMLEEIMKYEASILTHDSSIRYLQEIYNSNNQKIVNLKEKVAQLEAQCQEPCKDTVQIHDITGKDCQDIANKGAKQSGLYFIKPLKANQQFLVYCEIDGSGNGWTVFQKRLDGSVDFKKNWIQYKEGFGHLSPTGTTEFWLGNEKIHLISTQSAIPYALRVELEDWNGRTSTADYAMFKVGPEADKYRLTYAYFAGGDAGDAFDGFDFGDDPSDKFFTSHNGMQFSTWDNDNDKFEGNCAEQDGSGWWMNKCHAGHLNGVYYQGGTYSKASTPNGYDNGIIWATWKTRWYSMKKTTMKIIPFNRLTIGEGQQHHLGGAKQVRPEHPAETEYDSLYPEDDL(配列番号21)のアミノ酸配列、またはそのフラグメントもしくは相同体を含む。配列番号21は、シグナルペプチドのないフィブリノーゲンの配列を提供する。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、シグナルペプチドを含む。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、MSWSLHPRNLILYFYALLFLSSTCVA(配列番号20)を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、FGGは、FGGのフラグメントである。いくつかの実施形態では、フラグメントは、FGGの少なくとも50、60、70、80、90、95、99または100%を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、フラグメントは、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、または480個のFGG由来のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、連続アミノ酸である。いくつかの実施形態では、FGGは、FGGの相同体である。いくつかの実施形態では、相同性は、配列同一性である。いくつかの実施形態では、FGGの相同体は、配列番号21と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、FGGは、配列番号21またはそのフラグメントもしくは相同体からなる。いくつかの実施形態では、FGGは、配列番号21と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、FGGは、配列番号21からなる。
【0203】
いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、フィブリノーゲンの混合物である。いくつかの実施形態では、混合物は、FGA、FGBおよびFGGの少なくとも2種の混合物である。いくつかの実施形態では、混合物は、FGA、FGBおよびFGGの3種全ての混合物である。いくつかの実施形態では、FGA、FGBおよびFGGは、ヒト血液中で認められるような比率である。いくつかの実施形態では、血液は、血漿である。ヒト血漿由来のフィブリノーゲンは、Sigma-Aldrichカタログ番号341578などから商業的に入手できる。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、遊離システインを含む。いくつかの実施形態では、フィブリノーゲンは、遊離リジンを含む。フィブリノーゲンへのコンジュゲーションは、本明細書で記載のように、または当該技術分野において既知の任意の手段により実施できる。コンジュゲーションは、本明細書で記載のようにランダムであっても、または部位特異的であってもよい。
【0204】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、直鎖または分枝の鎖を含む。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、1種または複数の上記鎖を任意に含む主鎖であるか、またはそれを含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、スペーサー(例えば、天然のおよび/または非天然のアミノ酸、アルキル、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、およびこれらの任意の誘導体または組み合わせを含む)である。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、生体適合性ポリマーまたは生体適合性部分を含む。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、少なくとも部分的に生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリグリコールエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミノ酸、ペプチドおよび/またはこれらの誘導体またはこれらの任意の組み合わせであるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、ポリグリコールエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、PEGを含む。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、100~5000Da(これらの間の任意の範囲を含む)のMnにより特徴づけられるPEGを含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、生体適合性部分は、アミド、エステル、グリコール、アミノ酸、またはこれらの任意の組み合わせであるか、またはこれらを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸またはその誘導体は、2~50個、4~50個、5~50個、5~50個、4~20個、4~30個、4~40個、5~20個、5~30個、5~40個、6~50個、6~30個、6~40個、6~20個、8~50個、8~30個、8~20個、8~40個(これらの間の任意の範囲を含む)のアミノ酸を含む。
【0208】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然ペプチド、βペプチドなどのペプチド誘導体、ペプチド模倣体(典型的には、非ペプチド結合または他の合成修飾を含む)ならびにペプチド類似体ペプトイドおよびセミペプトイドまたはこれらの任意の組み合わせを包含する。別の実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、少なくとも1個のアミノ酸残基が対応する天然起源のアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーに適用される。
【0209】
用語「誘導体」または「化学誘導体」は、ペプチド内の側鎖または任意の官能基上の1個または複数の化学的に誘導された残基を有するポリペプチドの任意の化学誘導体を含む。そのような誘導体化分子は、例えば、1個または複数の保護基(例えば、側鎖保護基および/またはN末端保護基)を有するペプチド、および/または遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブトキシカルボニル基、アセチル基、またはホルミル基を形成するペプチドを含む。遊離カルボキシル基は、誘導体化されて、そのアミド、塩、メチルおよびエチルエステル、または他の種類のエステルまたはヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されてO-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、誘導体化されてN-イン-ベンジルヒスチジンを形成し得る。また、化学的な誘導体として包含されるのは、20個の標準アミノ酸残基の1個または複数の天然起源のアミノ酸の誘導体を含有するペプチドである。例えば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換されてよく;5-ヒドロキシリシンは、リジンと置換されてよく;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換されてよく;ホモセリンは、セリンと置換されてよく;およびDab、Daa、および/またはオルニチン(O)は、リジンと置換されてよい。
【0210】
加えて、ペプチド誘導体は、限定されないが、末端-NHアシル化、アセチル化、またはチオグリコール酸アミド化を含む化学修飾により、および末端および/または側鎖カルボキシ基の、例えば、アンモニア、メチルアミン、などを用いたアミド化により、本発明のペプチドの天然配列とは異なり得る。ペプチドは、当該技術分野において既知の方法を使用して実現できる任意の立体配座を有する、直鎖の、環状の、または分岐したなどのいずれかであり得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、スペーサー(例えば、天然のおよび/または非天然のアミノ酸、アルキル、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、尿素結合、およびこれらの任意の誘導体または組み合わせを含む)を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィド結合を更に含む。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、クリック反応生成物(例えば、クリック反応を介して形成された環化反応生成物、および/またはスクシンイミド-チオエーテル部分)を含む。
【0212】
クリック反応は、当該技術分野において周知であり、特に、マレイミドおよびチオールのマイケル付加(スクシンイミド-チオエーテルの形成を生じる);アジドアルキン環化付加;ディールスアルダー反応(例えば、直接および/または逆電子要求ディールスアルダー);ジベンジルシクロオクチン 1,3-ニトロン(またはアジド)環化付加;アルケンテトラゾール光クリック反応、などを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式1:
【化11】
により表され、PCは、本発明のタンパク質担体(即ち、マスクされたタンパク質担体)を表し;BPは、本発明の生物学的ペイロードを表し;各rおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;lは、1~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;およびpは、2~100(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各Rは独立に、嵩高い部分またはHを表し;各Aは独立に、1個または複数のリンカーを表し、各リンカーは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、NR、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NR)NR-、-C(NR)O-,-C(NR)S-)、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはこれらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物、のいずれかを含む、またはAは、存在しない。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式1:
【化12】
により表され、PCは、本発明のタンパク質担体(または、電荷マスクされた部分)を表し;BPは、本発明の生物学的ペイロードを表し;各j、k、r、o、nおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;lは、1~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;およびpは、2~100(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各Rは独立に、嵩高い部分またはHを表し;各Xは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-,-C(NH)S-)、スペーサー(例えば、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはクリック反応生成物)またはこれらの組み合わせを表し、またはXは、存在しない。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のRは、メチルである。
【0215】
いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、クリック反応を介して形成された部分を含み、クリック反応は、本明細書で前述の通りである。いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、マレイミドおよびチオールのマイケル付加(スクシンイミド-チオエーテルの形成を生じる);アジドアルキン環化付加;ディールスアルダー反応(例えば、直接および/または逆電子要求ディールスアルダー反応);ジベンジルシクロオクチン 1,3-ニトロン(またはアジド)環化付加;アルケンテトラゾール光クリック反応、またはこれらの任意の組み合わせのいずれかにより形成された生成物を含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式1A:
【化13】
により表され、R、n、k、l、p、m、およびrは、本明細書で記載の通りであり、各Xは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、スペーサー(例えば、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはクリック反応生成物)またはこれらの組み合わせを表し、またはXは、存在しない。
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式A:
【化14】
により表され、PCは、本発明のタンパク質担体(または電荷マスクされた部分)を表し;BPは、本発明の生物学的ペイロード(即ち、ペイロード)を表し;各rおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各Rは独立に、置換基またはHを表し、Hetは、ヘテロ原子を表し、O、N、NH、およびSからそれぞれ独立に選択され;各Aは独立に、(i)生体適合性部分または生体適合性ポリマー;および/または(ii)1個または複数のリンカーを表し、各リンカーは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-,-C(NH)S-)、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはこれらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物、のいずれかを含む、またはAは、存在しない。いくつかの実施形態では、rまたはmの少なくとも1つは、1~10、1~3、1~5、または1、2、3、4、5、6、または10である(これらの間の任意の範囲を含む)。
【0218】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式B:
【化15】
、または式C:
【化16】
により表され、PCは、本発明のタンパク質担体を表し;BPは、本発明の生物学的ペイロードを表し;各rおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;pは、0~100(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;Polは、生体適合性部分または生体適合性ポリマーを表し;各Rは独立に、置換基またはHを表し、Hetは、ヘテロ原子を表し、O、N、NH、およびSからそれぞれ独立に選択され;各Aは独立に、1個または複数のリンカーを表し、各リンカーは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-,-C(NH)S-)、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはこれらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物、のいずれかを含む、またはAは、存在しない。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式A~Cのいずれか1つにより表され、リンカーは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも5、少なくとも100、少なくとも300、少なくとも500、5~500、5~100、10~100、5~50、50~100、100~500個の(これらの間の任意の範囲を含む)原子結合の長さを有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのpは、1~100、1~20、10~100、2~20、3~20、3~15、10~20、20~50、50~100、または1、2、3、4、5、6、10、11、12、15、または20である(これらの間の任意の範囲を含む)。
【0219】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式1:
【化17】
により表され、PC、BPおよびPolは、本明細書で記載の通りであり;各rおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;lは、1~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;およびpは、2~100(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各Rは独立に、嵩高い部分またはHを表し;各Aは独立に、1個または複数のリンカーを表し、各リンカーは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NR、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NR)NR-、-C(NR)O-,-C(NR)S-)、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはこれらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物、のいずれかを含む、またはAは、存在しない。
【0220】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式:
【化18】
により表され、PC、BP、Het、A、Pol、およびpは、本明細書で記載の通りであり;各r、r’、mおよびm’は独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各RおよびR’は独立に、1つまたは複数の嵩高い部分、1個または複数の置換基またはHを表し;各Xは、ヘテロ原子(例えば、O、N、NR、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NR)NR-、-C(NR)O-,-C(NR)S-)、これらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物を表し、HetがSである場合、少なくとも1個のXは、Sである。いくつかの実施形態では、HetおよびXが両方ともSの場合、少なくとも1つのRは、1つまたは複数の嵩高い部分であり;少なくとも1つのm’およびr’は、0ではない。
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式:
【化19】
により表され、PC、BP、Het、A、Pol、R、r、m、およびpは、結合価により許容される限り、本明細書で記載の通りである。いくつかの実施形態では、HetおよびXが両方ともSの場合、少なくとも1つのRは、1つまたは複数の嵩高い部分であり;少なくとも1つのm’およびr’は、0ではない。
【0222】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式:
【化20】
により表され、Hetは、SまたはNHを含み、Xは、カルボニル誘導体、クリック反応生成物、または結合を表し、Pepは、ペプチドを表す。いくつかの実施形態では、ペプチドは、BPのC末端に結合される。いくつかの実施形態では、Hetは、Sであり、ペプチドは、システイン(例えば、C末端システイン)を介してPCに結合される。
【0223】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式:
【化21】

【化22】
のいずれか1つにより表され、PC、BP、Polは、本明細書記載の通りであり;各j、k、r、o、nおよびmは独立に、0~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;lは、1~10(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;およびpは、2~100(これらの間の任意の範囲を含む)の範囲の整数を表し;各Rは独立に、嵩高い部分またはHを表し;各Xは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-,-C(NH)S-)、スペーサー(例えば、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはクリック反応生成物)またはこれらの組み合わせを表し、またはXは、存在しない。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のRは、メチルである。いくつかの実施形態では、Polは、ペプチド、アミノ酸またはこれらの脱水誘導体、PEG、または、-CH-CH-O-を表す。いくつかの実施形態では、アミノ酸の脱水誘導体は:
【化23】
を包含し、波形結合は、リンカーまたはその後に続くモノマーへの結合点を表し、Rは、アミノ酸側鎖(任意にRおよびNHは、プロリンにおけるようなNHの脱プロトン化を生じる環を形成するように相互結合される)を表す。
【0224】
いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、クリック反応を介して形成された部分を含み、クリック反応は、本明細書で前述の通りである。いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、マレイミドおよびチオールのマイケル付加(スクシンイミド-チオエーテルの形成を生じる);アジドアルキン環化付加;ディールスアルダー反応(例えば、直接および/または逆電子要求ディールスアルダー反応);ジベンジルシクロオクチン1,3-ニトロン(またはアジド)環化付加;アルケンテトラゾール光クリック反応、またはこれらの任意の組み合わせのいずれかにより形成された生成物を含む。いくつかの実施形態では、クリック反応生成物は、スクシンイミド-チオエーテルである。
【0225】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、上述した式のいずれかにより表され、XまたはXは、クリック反応生成物であり、任意にクリック反応生成物は、スクシンイミド-チオエーテルである。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲートは、下式2:
【化24】
により表され、Polは、生体適合性部分または生体適合性ポリマー(例えば、C末端システインを含むペプチド)を表し;Aは、スペーサー、または、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、カルボニル誘導体(例えば、-C(O)NH-、-C(O)O-、-C(O)-、-C(O)S-、-C(NH)NH-、-C(NH)O-,-C(NH)S-)、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、PEG、アルキル-PEG、アルキル-PEG-アルキル、アルキルアミド-PEG-アルキルアミド、またはこれらの任意の組み合わせを含むクリック反応生成物のいずれかを表し、またはAは、存在せず;アルキルは、任意に(i)1個または複数のヘテロ原子、(ii)1種または複数のカルボニル誘導体、(iii)1つまたは複数のジスルフィド結合、(iv)1種または複数のクリック反応生成物、の1種または複数を含むC-C10アルキルである。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、式1A:
【化25】
により表され、R、n、k、l、p、m、Pol、およびrは、本明細書で記載の通りであり、各Xは独立に、ヘテロ原子(例えば、O、N、NH、またはS)、スペーサー(例えば、C-C10アルキル、C-C10アミノアルキル、C-C10アルコキシ、C-C10メルカプトアルキル、またはクリック反応生成物)またはこれらの組み合わせを表し、またはXは、存在しない。
いくつかの実施形態では、Polは、アミノ酸またはこれらの脱水誘導体、または、-CH-CH-O-を表す。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィド結合を介してHSAに結合される。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、アミノ基、または本発明の生物学的ペイロードのチオール基に共有結合される。いくつかの実施形態では、各HSAは、単一の生物学的ペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、各HSAは、複数の生物学的ペイロードに結合される。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィド結合を介してHSAに結合される。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、アミノ基、または本発明の生物学的ペイロードのチオール基に共有結合される。いくつかの実施形態では、各HSAは、単一の生物学的ペイロードに結合される。いくつかの実施形態では、各HSAは、複数の生物学的ペイロードに結合される。本発明の例示的タンパク質コンジュゲートは、図9により、および実施例セクションで示される。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートは、少なくとも2時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間(これらの間の任意の範囲を含む)にわたり生体液中で実質的に安定である。
【0231】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートの、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%(これらの間の任意の範囲を含む)は、実質的に安定である。
【0232】
本明細書で使用される場合、「安定な」という用語は、(i)その化学的一貫性(例えば、切断および/または脱保護を実質的に欠く)、および(ii)対象の組織および/または生体液内でその初期濃度および/または生物活性、を維持する本発明のタンパク質コンジュゲートまたはリンカーの能力を指す。
【0233】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートおよび/または本発明のタンパク質担体は、対照(例えば、保護アミンを欠く類似のタンパク質コンジュゲートまたはタンパク質担体)に比べて、増大された安定性により特徴づけられる。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートおよび/または本発明のタンパク質担体は、対照に比較して、生体液内でおよび/または組織(例えば、7を超えるpHを有する健康な組織)内での増大された安定性により特徴づけられ、増大されるは、対象に比較して、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10,000%、またはそれを超えて(これらの間の任意の範囲を含む)、増大されることである。
【0234】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質コンジュゲートおよび/または本発明のタンパク質担体は、7未満、6.8未満、6.5未満のpH値を有する標的組織内での増大された蓄積を特徴とし;増大されるは、対照(例えば、保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートまたはタンパク質担体)に比較して、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも500%、少なくとも1,000%、少なくとも10,000%、またはそれを超えて(これらの間の任意の範囲を含む)、増大されることである。
【0235】
いくつかの実施形態では、標的組織は、癌組織、炎症性組織、またはそれらの両方を含む。いくつかの実施形態では、標的組織は、癌を含む。いくつかの実施形態では、標的組織は、炎症を含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。いくつかの実施形態では、標的組織は、炎症性組織である。
【0236】
ターゲティング部分
いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、ターゲティング部分を更に含む。本明細書で使用される場合、「ターゲティング部分」という用語は、標的抗原に特異的に結合できる任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、受容体である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、癌特異的抗原である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、標的細胞のための表面マーカーである。いくつかの実施形態では、標的細胞は、標的細胞型である。いくつかの実施形態では、細胞型は、疾患細胞型である。いくつかの実施形態では、結合は、特異的結合である。いくつかの実施形態では、標的への特異的結合は、別の標的への結合を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、実質的には、有意にである。いくつかの実施形態では、実質的に結合しないは、別の標的タンパク質への最大で0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、5、7、または10%の結合である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0237】
本明細書で使用される場合、用語の「部分」は、部分構造として全官能基または官能基の一部を含み得る分子の部分に関する。用語「部分」は、対応する分子に類似の、特定のセットの化学的および/または薬理的特性を示す分子の一部も更に意味する。この場合、特性は、標的タンパク質への結合である。
【0238】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、抗原結合分子である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、表面標的を結合する抗原結合分子である。いくつかの実施形態では、標的は、タンパク質である。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、VHHである。
【0239】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、標的タンパク質を調節する。いくつかの実施形態では、調節することは、標的タンパク質を活性化することを含む。いくつかの実施形態では、調節することは、標的タンパク質を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、標的タンパク質の作動薬である。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、標的タンパク質の拮抗薬である。
【0240】
いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、タンパク質担体にコンジュゲートされる。いつかの実施形態では、コンジュゲートされるは、リンカーによりコンジュゲートされるある。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、生物学的ペイロードにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、リンカーは、ターゲティング部分、生物学的ペイロードおよびタンパク質担体をコンジュゲートする分岐リンカーである。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれる。いくつかの実施形態では、単一ポリペプチドは、単鎖である。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分および生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、生物学的ペイロードに対しN末端である。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、生物学的ペイロードに対しC末端である。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、ポリペプチドのN末端にある。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、ポリペプチドのC末端にある。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、C末端システイン残基によりC末端から分離される。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分は、C末端リンカーによりC末端から分離される。
【0241】
キット
別の態様では、第1の部分および生物学的ペイロードに共有結合されたタンパク質担体を含むキットが提供され、第1の部分は、生物学的ペイロードへの反応性により特徴づけられ、タンパク質担体は、本発明の電荷マスクされた部分を含む。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、第2の部分に共有結合され、第1の部分および第2の部分は、相互に反応性を有する(例えば、クリック反応を介して)。いくつかの実施形態では、キットは、PGを更に含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、第1の部分に結合されたタンパク質担体は、式2:
【化26】
、または式2A:
【化27】
により表され、R、n、j、l、p、m、およびrは、本明細書で記載の通りであり、Aは、O、NR、およびSから選択されるヘテロ原子であるか、それを含み、Rは、第1の部分を表す。
【0243】
いくつかの実施形態では、第2の部分に共有結合された生物学的ペイロードは、式3:
【化28】
、または式4:
【化29】
により表され、R、X、j、l、n、m、およびpは、本明細書で記載の通りであり、Aは、O、NR、およびSから選択されるヘテロ原子であるか、それを含み、Rは、第2の部分を表す。
【0244】
いくつかの実施形態では、第1の部分または第2の部分は、1,3-ニトロン、アジド、ジエン、テトラジン、活性エステル(例えば、エステル、ペンタフルオロフェニル(pentafluorophenyl)エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、アシルハロゲン化物、クロロホルメート、無水物、アルデヒド、エポキシド、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、カーボネート、スルホニルクロリド、ヨードアセトアミド、アシルアジド、イミドエステル、ビニルスルホン、オルトピリジルジスルフィド、またはこれらの任意の組み合わせであるか、これらを含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、第1の部分または第2の部分は、求核基(例えば、アミン、チオール、ホスフィン、ヒドロキシル)、求ジエン体、アルケン、およびアルキン(例えば、アセチレン、ジベンジルシクロオクチン、など)、またはこれらの任意の組み合わせであるか、またはこれらを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、本発明のキットは、HSAに対する(例えば、そのシステインまたはリジンに対する)反応性を有する官能基を含むリンカーに共有結合された生物学的ペイロード;およびHSAを含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、生物学的ペイロードに対する(例えば、そのシステインまたはリジンに対する)反応性を有する官能基を含むリンカーに共有結合されたHSA;および生物学的ペイロードを含む。いくつかの実施形態では、官能基は、ヨードアセトアミド、活性エステル、オルトピリジルジスルフィド、マレイミド、またはこれらの組み合わせのいずれかであるか、またはそれを含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、血液中で安定なコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞に浸透するコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、マスクされたコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、マスクできるコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞膜を横断するコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞に侵入できる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、エンドソーム脱出可能である。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ペイロードの細胞内送達が可能である。いくつかの実施形態では、細胞内送達は、細胞質送達である。いくつかの実施形態では、細胞内送達は、ペイロードからの担体の解離を含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞質中で分離するように構成される。いくつかの実施形態では、解離は、ペイロードからの担体の解離である。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞内標的を調節することにおける使用のためである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、細胞内標的に変化をもたらすことにおける使用のためである。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは細胞内標的と相互作用することにおける使用のためである。
【0248】
方法
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、保護されたアミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得るために、細胞内標的を結合する生物学的薬剤を提供すること;細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供することであって、細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含む、提供すること;タンパク質コンジュゲートを産生するためにリンカーを介してタンパク質担体に上記生物学的ペイロードを共有結合させるために十分な条件下で、生物学的ペイロードおよびタンパク質担体を提供すること;7未満のpH値で切断(脱保護)を受けることができる保護基により、アミン基の少なくとも一部を保護するために十分な条件下でタンパク質担体を提供すること、を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、方法は、生体液中および細胞質条件下でリンカーの安定性を決定すること;および生体液中で安定であり細胞質条件下で不安定なリンカーを含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含み、それにより細胞内標的に結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する。いくつかの実施形態では、アミン基の少なくとも一部を保護するステップは、(i)タンパク質コンジュゲートの産生のステップを実施する前に;または(ii)タンパク質コンジュゲートの産生のステップの後に、実施される。いくつかの実施形態では、保護するために十分な条件下でタンパク質担体を提供することは、タンパク質担体に生物学的ペイロードを結合する前に起こる。いくつかの実施形態では、保護するために十分な条件下でタンパク質担体を提供することは、タンパク質担体に生物学的ペイロードを結合した後に起こる。いくつかの実施形態では、提供することは、連結されないタンパク質担体を提供することである。いくつかの実施形態では、提供することは、タンパク質コンジュゲートを提供することである。当業者には、タンパク質コンジュゲートは、タンパク質コンジュゲートが保護される場合、ペイロードおよびリンカー上の塩基性残基もまた保護され、従って、全コンジュゲートが保護されることが理解されよう。いくつかの実施形態では、方法は、本発明の電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生するためである。いくつかの実施形態では、用語「電荷マスクされたタンパク質コンジュゲート」および「タンパク質コンジュゲート」は、本明細書で同義に使用される。いくつかの実施形態では、選択することは、細胞質条件中でよりも生体液中で安定な電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することである。いくつかの実施形態では、より安定なは、少なくとも、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、125、130、140、150、160、170、175、180、190、200、250、300、350、400、450、または500%のより高い安定性である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0250】
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、細胞内標的を結合する生物学的薬剤を提供すること;細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供することであって、細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含む、提供すること、かつその後、7未満のpH値で切断(脱保護)を受けることができる保護基によりアミン基の少なくとも一部を保護するために十分な条件下でタンパク質コンジュゲートを提供して、保護されたアミン基を含むマスクされたタンパク質担体を得ること;リンカーを介してタンパク質担体に生物学的ペイロードを共有結合させるために十分な条件下で上記生物学的ペイロードおよびマスクタンパク質担体を提供すること、を含む。
【0251】
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、細胞内標的を結合する生物学的薬剤を提供すること;細胞浸透性部分に共有結合されたマスクされたタンパク質担体を提供することであって、細胞浸透性部分は、複数の保護されたアミン基を含む、提供すること;タンパク質コンジュゲートを産生するために少なくとも1つのバイオ切断可能な結合を含むリンカーを介して生物学的ペイロードをタンパク質担体に共有結合させるために十分な条件下で生物学的ペイロードおよびタンパク質担体を提供すること、を含む。
【0252】
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質を産生する方法が提供され、方法は、細胞内標的を結合する生物学的薬剤を提供すること、細胞浸透性部分に生物学的製剤を結合させること、および細胞浸透性部分の少なくとも一部を保護するために十分な条件下で細胞浸透性部分に結合された生物学的製剤を提供すること、を含む。いくつかの実施形態では、細胞浸透性部分は、複数のアミン基を含む。いくつかの実施形態では、アミン基の少なくとも一部は、保護される。いくつかの実施形態では、保護基は、7未満のpH値で切断(脱保護)を受けることができる。
【0253】
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質を産生する方法が提供され、方法は、細胞内標的を結合する生物学的薬剤を提供すること、細胞浸透性部分に生物学的製剤を結合させることであって、細胞浸透性部分は、複数の保護されたアミン基を含む、結合させること、を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、細胞内標的に結合できる。いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、細胞の細胞質に侵入できる。いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、生物学的製剤の細胞内送達ができる。いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、生物学的製剤の細胞内送達を可能にする。いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、細胞内標的を調節できる。いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、細胞内標的を調節するように構成される。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、ジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、生物学的製剤の構造に必要とされるジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、生物学的製剤の機能に必要とされるジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、生物学的製剤の結合に必要とされるジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、生物学的製剤は、切断されると結合を減らすジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態では、結合は、細胞内標的への結合である。
【0255】
いくつかの実施形態では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、治療薬である。いくつかの実施形態では、治療薬は、生物学的治療薬である。いくつかの実施形態では、治療薬は、生物製剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は、細胞内標的に対する薬剤である。いくつかの実施形態では、治療薬は、細胞内標的を標的にする。いくつかの実施形態では、治療薬は、細胞内標的を調節する。
【0256】
いくつかの実施形態では、本発明の電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを合成する方法がある。いくつかの実施形態では、方法は、本発明のキットを提供することおよび第1の部分と第2の部分を反応させること(例えば、任意に金属系触媒および/またはUV照射、熱照射を含む、好適な条件下で)を含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、本発明の電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを合成する方法は、(i)第1の部分に共有結合されたタンパク質担体、および第2の部分に共有結合された生物学的ペイロードを提供することであって、第1の部分および第2の部分は、相互に反応性を有する(例えば、クリック反応を介して、チオール-マレイミド結合形成を介して、アミンの活性エステルとのカップリング(amine to active ester coupling)を介して、SPDPまたはニトロ-SPDPとチオールとの反応などのS-S結合形成を介して)、提供すること;(ii)第1の部分および第2の部分の間の反応に好適な条件下でタンパク質担体および生物学的ペイロードを提供すること、それによりタンパク質コンジュゲートを合成すること;および(iii)その後に続くPGによる少なくとも一部のアミンの保護に好適な条件下でタンパク質コンジュゲートをPG前駆物質と反応させること、それにより本発明の電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得ること、を含む。
【0258】
別の態様では、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法が提供され、方法は、(i)第1の部分に共有結合されたタンパク質担体、および第2の部分に共有結合された生物学的ペイロードを提供すること、および(ii)反応に好適な条件下でマスクされたタンパク質担体および生物学的ペイロードを提供すること、それによりタンパク質コンジュゲートを合成すること、を含み、マスクされたタンパク質担体は、少なくとも一部のアミンをPGで保護するのに好適な条件下でタンパク質コンジュゲートをPG前駆物質と反応させることにより合成される。
【0259】
いくつかの実施形態では、保護するために好適な条件は、アミンをPG前駆物質と反応させるために好適な反応条件を含み、それにより、保護されたアミンを得る。いくつかの実施形態では、保護するために好適な条件は、中性または塩基性のpH;少なくとも-10℃、少なくとも0℃、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも50℃(これらの間の任意の範囲を含む)の温度;ならびに、タンパク質コンジュゲートに対して、90および少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100モル当量、少なくとも300モル当量、少なくとも500モル当量(これらの間の任意の範囲を含む)のPG前駆物質を含む。
【0260】
いくつかの実施形態では、方法のステップ(i)~(iii)は、溶液(例えば、有機溶媒、水性溶媒またはこれらの組み合わせ)中で実施される。
いくつかの実施形態では、第1の部分および第2の部分は、本明細書で記載の通りである。いくつかの実施形態では、反応は、クリック反応を含む。
【0261】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)生物学的ペイロードに対する(例えば、そのシステインまたはリジンに対する)反応性を有する官能基を含むリンカーに共有結合されたタンパク質担体および生物学的ペイロードを提供すること;(ii)官能基を生物学的ペイロードと反応させること、それによりタンパク質コンジュゲートを合成すること;(iii)タンパク質コンジュゲートをPG前駆物質と反応させて、電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得ること、を含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、方法は、(i)タンパク質担体に対する(例えば、そのシステインまたはリジンに対する)反応性を有する官能基を含むリンカーに共有結合された生物学的ペイロードおよびタンパク質担体を提供すること;(ii)官能基をタンパク質担体と反応させること、それによりタンパク質コンジュゲートを合成すること;(iii)本明細書で記載の条件下で細胞浸透性部分のアミンをPGで保護して、本発明の電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得ること、を含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、方法は、マスクされたコンジュゲートの細胞浸透を試験することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞への送達時の生物学的ペイロードの機能を試験することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、マスクされたコンジュゲートの体内分布を試験することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞中の生物学的ペイロードのインビボ機能を試験することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生体液中および細胞質条件でのリンカーの安定性を決定するステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生体液中で安定であり細胞質条件中で不安定であるリンカーを含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生物学的pHおよび酸性のpHでの保護されたアミン基の安定性を測定することを含む。いくつかの実施形態では、生物学的pHは、中性pHである。いくつかの実施形態では、生物学的pHは、中性または塩基性のpHである。いくつかの実施形態では、生物学的pHは、約7.4のpHである。いくつかの実施形態では、酸性のpHは、約6.8のpHである。いくつかの実施形態では、酸性のpHは、7未満のpHである。いくつかの実施形態では、酸性のpHは、6.8のpHであるか、それ未満のpHである。いくつかの実施形態では、方法は、生物学的pHで安定であり酸性pHで不安定である保護されたアミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、7未満のpHで切断(脱保護)される保護基を選択することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内標的に結合する生物学的製剤を選択することを含む。いくつかの実施形態では、選択することは、細胞内標的に結合する生物学的製剤を決定するまたは測定することを含む。このような試験を実施する方法は、本明細書の以降で提供され、いずれかのこのような試験が実施され得る。
【0264】
いくつかの実施形態では、方法は、ターゲティング部分を選択することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面上の目的のタンパク質に結合する部分を選択することを更に含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は、目的の細胞である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、疾患細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、生物学的ペイロードに選択されたターゲティング部分をコンジュゲートすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、タンパク質担体に選択されたターゲティング部分をコンジュゲートすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、マスクされたタンパク質担体に選択されたターゲティング部分をコンジュゲートすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、タンパク質コンジュゲートに選択されたターゲティング部分をコンジュゲートすることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、マスクされたタンパク質コンジュゲートに選択されたターゲティング部分をコンジュゲートすることを含む。いくつかの実施形態では、コンジュゲートすることは、リンカーを介する。いくつかの実施形態では、コンジュゲートすることは、ターゲティング部分および生物学的ペイロードを含む単一ポリペプチドを構築することである。いくつかの実施形態では、構築することは、生物学的ペイロード中にターゲティング部分を挿入することを含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、方法は、標的タンパク質へのターゲティング部分の結合を試験することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的タンパク質へのマスクされたタンパク質コンジュゲートの結合を試験することを含む。いくつかの実施形態では、標的タンパク質へは、その表面で標的タンパク質を発現する細胞へである。いくつかの実施形態では、試験することは、特異的結合を試験することである。いくつかの実施形態では、試験することは、その表面に標的タンパク質を含まない細胞への結合の欠如を試験することを含む。このような試験を実施する方法は、本明細書の以降で提供され、いずれかのこのような試験が、実施され得る。
【0266】
別の態様では、本発明の方法により産生されるタンパク質コンジュゲートが提供される。
別の態様では、本発明の方法により産生されるタンパク質が提供される。
【0267】
組成物
別の態様では、本発明のタンパク質コンジュゲートを含む医薬組成物が提供される。
別の態様では、本発明のタンパク質を含む医薬組成物が提供される。
【0268】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む。本明細書で使用される場合、「担体」、「賦形剤」、または「補助剤」という用語は、活性薬剤ではない医薬組成物のいずれかの成分を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、非毒性の不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、封入材料、任意の種類の製剤補助剤、または単に生理食塩水などの無菌水性媒体を指す。薬学的に許容可能な担体として役立ち得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;発熱物質を含まない水;等張食塩水、リンガー溶液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬製剤で使用される他の非毒性適合性物質である。本明細書において担体として機能し得る物質のいくつかの非限定例は、糖、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリオール、発熱物質を含まない水、等張生理食塩水、リン酸緩衝液、および他の医薬製剤で使用される他の非毒性の医薬適合性物質を含む。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および滑剤、ならびに賦形剤、安定剤、抗酸化剤、および保存剤も存在し得る。任意の非毒性、不活性および有効な担体が、本明細書で意図される組成物を製剤化するために使用され得る。
担体は、全体で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%~約99.99999重量%を構成し得る。
【0269】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療的有効量の本発明のタンパク質コンジュゲートを含む。用語「治療的有効量」は、哺乳動物の疾患または障害を治療するために効果的な薬物の量を指す。用語「治療的有効量」は、所望の治療または予防薬結果を達成するために、必要な投与量でかつ必要な期間に、有効な量を指す。正確な剤形および投与計画は、患者の状態に応じて、医師により決定されるであろう。
【0270】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、全身投与用に処方される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与用に処方される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に処方される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象への投与用に処方される。
【0271】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、徐放性組成物である。いくつかの実施形態では、リンカーは、生体切断可能な結合を欠き、組成物は、徐放性組成物である。いくつかの実施形態では、徐放は、投与後少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日のペイロード送達を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、徐放は、投与後少なくとも1日のペイロード送達を含む。いくつかの実施形態では、徐放は、投与後少なくとも3日のペイロード送達を含む。いくつかの実施形態では、徐放は、投与後少なくとも5日のペイロード送達を含む。
【0272】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の化合物は、治療のための遊離型で、または薬学的に許容可能な塩として存在し得る。
【0273】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、任意の非毒性の本発明の化合物の塩を指し、これは、対象、例えば、ヒトへの投与時に、直接にまたは間接的に、本発明の化合物または阻害活性のあるその代謝物または残留物を提供できる。例えば、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦政府または州政府の規制当局により承認されたまたは米国薬局方または動物および更に限定すればヒトでの使用について他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味し得る。
【0274】
薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19、中で薬学的に許容可能な塩について詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩は、好適な無機および有機酸ならびに塩基から誘導されるものを含む。これらの塩は、本発明の化合物の最終単離および精製中にin situで調製可能である。酸付加塩は、1)遊離塩基型の精製化合物を好適な有機または無機酸と反応させること、および2)これにより形成された塩を単離すること、により調製できる。
【0275】
薬学的に許容可能な塩の非限定例は、限定されないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物(臭化物、塩化物、ヨウ化物、フッ化物など)、酒石酸水素塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、デカン酸塩、エデト酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、および乳酸塩またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0276】
薬学的に許容可能な無毒性酸付加塩の追加の例は、アミノ基と、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸との塩、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸との塩、またはイオン交換などの当該技術分野において使用される他の方法の使用による塩である。
【0277】
その他の薬学的に許容可能な塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸、グリセロ燐酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。
【0278】
塩基付加塩は、1)その酸型での精製化合物を好適な有機または無機の無機塩基と反応させること、および2)これにより形成された塩を単離すること、により調製できる。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、リチウム、およびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウムおよびカルシウム)、アンモニウムおよびN(C1-4アルキル)の塩を含む。本発明はまた、本明細書で開示の化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。水または油に可溶なまたは分散性の生成物を、このような四級化により得てもよい。
【0279】
さらなる薬学的に許容可能な塩は、適切な場合には、無毒性アンモニウム、四級アンモニウム、ならびにハライド、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンの使用により形成される、アミンカチオンを含む。他の酸および塩基が、其れ自体は薬学的に許容可能ではないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容可能な酸または塩基付加塩を得るために中間体として有用である塩の調製において採用され得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、用語「1または複数」は、1、2、3、4、5、または6から選択される任意の数値を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、N、O、NH、またはSのいずれかを含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載の化合物は、キラル化合物(即ち、不斉炭素原子を有する)である。いくつかの実施形態では、ジアステレオマー、幾何異性体および個別の異性体は、本発明の範囲内に包含される。いくつかの実施形態では、本明細書で記載のキラル化合物は、ラセミ混合物の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、R配置を有する不斉炭素を含む単一鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、本明細書で前述のS配置を有する不斉炭素を含む単一鏡像異性体の形態である。
【0282】
いくつかの実施形態では、キラル化合物は、70%を越える鏡像異性体純度を有する単一鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、80%を越える鏡像異性体純度を有する単一鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、90%を越える鏡像異性体純度を有する単一鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、95%を越える鏡像異性体純度を有する単一鏡像異性体の形態である。
【0283】
いくつかの実施形態では、不飽和結合を含む本発明の化合物は、トランスまたはシス異性体の形態である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書で前述される、シスおよびトランス異性体の混合物を含む。
【0284】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載の化合物は、非溶媒和型ならびに水和型を含む溶媒和型で存在できる。一般に、溶媒和型は、非溶媒和型と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶型または非晶質型で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明で意図される使用に関し等価であり、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0285】
用語「溶媒和物」は、可変化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、等)の複合体を指し、それは、溶質(本明細書で記載のコンジュゲート)と溶媒により形成され、それにより溶媒は、溶質の生物活性を妨害しない。好適な溶媒は、例えば、エタノール、酢酸などを含む。
用語「水和物」は、溶媒が水の場合の、本明細書の上で定義されるような溶媒和物を指す。
【0286】
別に定める場合を除き、本明細書で示す構造は、構造の全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、幾何学的異性体、および回転異性体)型を含むことが意図される。例えば、各不斉中心に対するRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)配座異性体が、本発明に含まれる。当業者には理解されるように、置換基は、任意の回転可能結合の周りで自由に回転できる。したがって、本化合物の単一立体化学的異性体ならびに鏡像異性体、ジアステレオ異性体、および幾何学的異性体、立体構造異性体、および回転異性体混合物は、本発明の範囲内にある。
【0287】
特に指示がない限り、本発明の化合物の全ての互変異性型は、本発明の範囲内にある。
【0288】
さらに、別段の指示がない限り、本明細書で示す構造はまた、1個または複数の同位体的に濃縮された原子の存在のみにおいて異なる化合物を含むことも意図される。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換、または18Fによる水素の置換、または13Cもしくは14C濃縮炭素による炭素の置換を除き本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。このような化合物は、例えば、イメージングプローブとして有用である。
【0289】
使用方法
別の態様では、細胞内標的を結合する方法が提供され、方法は、細胞内標的を発現している細胞を本発明のタンパク質コンジュゲート、本発明のタンパク質または本発明の医薬組成物と接触させること、それにより細胞内標的を結合するることを含む。
【0290】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内標的を調節する方法である。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、細胞内標的を結合する。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、細胞内標的を調節する。いくつかの実施形態では、修正すること(modifying)は、作動させることである。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、細胞内標的の作動薬である。いくつかの実施形態では、修正することは、拮抗することである。いくつかの実施形態では、生物学的ペイロードは、拮抗薬である。調節する(即ち、拮抗するまたは作動させる)分子は、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような分子を採用し得る。いくつかの実施形態では、生物学的標的は、細胞内標的に特異的である。
【0291】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内標的を検出する方法である。いくつかの実施形態では、タンパク質コンジュゲートは、検出可能なタグを含む。いくつかの実施形態では、タグは、検出可能な部分である。いくつかの実施形態では、方法は、タンパク質コンジュゲートを検出することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、検出可能なタグを検出することを更に含む。いくつかの実施形態では、検出可能なタグは、蛍光タグである。検出可能なタグおよび部分は、当該技術分野において周知であり、非限定例としては、フルオロフォア(例えば、GFP、RFP、YFP、ルシフェラーゼ、など)、放射性タグ、および着色タグが挙げられる。いずれかのこのような既知のタグを、採用し得る。
【0292】
いくつかの実施形態では、細胞は、対象内にある。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、疾患または状態に罹患している。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、細胞内標的に接触させることにより治療可能である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、細胞内標的を調節することにより治療可能である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、細胞内標的を作動させることにより治療可能である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、細胞内標的に拮抗することにより治療可能である。いくつかの実施形態では、対象は、細胞内標的を調節することを必要としている。いくつかの実施形態では、対象は、治療を必要としている。いくつかの実施形態では、対象は、それを必要としている対象である。
【0293】
いくつかの実施形態では、方法は、本発明のタンパク質コンジュゲートを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0294】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与」などの用語は、健全な医療行為において、治療効果を提供するように対象に活性剤を含む組成物を送達する、任意の方法を指す。本発明の主題の一態様は、それを必要としている患者への本発明の主題の組成物の治療的有効量の静脈内投与を提供する。他の好適な投与経路は、非経口、皮下、経口、筋肉内、腫瘍内または腹腔内を含み得る。
【0295】
投与量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、同時治療の種類、もしあれば、治療の頻度、および所望の効果の性質に依存する。
【0296】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、癌である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、炎症である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、虚血である。いくつかの実施形態では、細胞内標的は、癌遺伝子であり、生物学的ペイロードは、拮抗薬である。いくつかの実施形態では、細胞内標的は、腫瘍抑制因子であり、生物学的ペイロードは、作動薬である。
【0297】
いくつかの実施形態では、接触させることは、細胞中へのタンパク質コンジュゲートの浸透を誘導するように設計された薬剤の存在下ではない。いくつかの実施形態では、浸透を誘導するように設計された薬剤は、担体タンパク質以外の薬剤である。いくつかの実施形態では、本発明の方法以外の細胞浸透を誘導する別の方法は、採用されない。いくつかの実施形態では、接触させることは、投与後、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間持続する。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、接触させることは、投与後、少なくとも1日持続する。いくつかの実施形態では、接触させることは、投与後、少なくとも3日持続する。いくつかの実施形態では、接触させることは、投与後、少なくとも5日持続する。いくつかの実施形態では、投与後の持続的な接触は、ペイロード/治療薬の徐放である。
【0298】
いくつかの実施形態では、疾患または状態の細胞は、標的タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、ターゲティング部分を含むタンパク質コンジュゲートは、疾患または状態の細胞上の標的タンパク質の発現により特徴づけられる疾患または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、疾患または状態のマーカーである。いくつかの実施形態では、疾患は、癌であり、標的タンパク質は、癌特異的抗原である。癌特異的抗原およびそれらを結合する抗原結合分子は、当該技術分野において周知であり、いずれかのこのような分子を、本発明の方法で使用できる。いくつかの実施形態では、癌特異的抗原は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。
【0299】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖および分枝鎖基を含み通常1~30個、または1~10個の炭素原子を含む、脂肪族炭化水素を表す。本明細書で使用される場合、用語「アルキル」はまた、飽和または不飽和の炭化水素を包含し、従って、この用語はさらに、アルケニルおよびアルキニルを包含する。
【0300】
用語「アルケニル」は、本明細書で定義の、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和アルキルを表す。アルケニルは、本明細書で前述されるように、1個または複数の置換基により置換されても、置換されなくてもよい。
【0301】
本明細書で定義の用語「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキルを表す。アルキニルは、本明細書で前述されるように、1個または複数の置換基により置換されても、置換されなくてもよい。
【0302】
用語「シクロアルキル」は、全炭素単環式のまたは、1個または複数の環が完全に共役したπ電子系を有しない縮合環(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。シクロアルキル基は、本明細書で示されるように、置換されても、置換されなくてもよい。
【0303】
用語「アリール」は、全炭素単環式のまたは、完全に共役したπ電子系を有する縮合多環式(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を表す。アリール基は、本明細書で示されるように、置換されても、置換されなくてもよい。
【0304】
用語「アルコキシ」は、本明細書で定義のように、O-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を表す。用語「アリールオキシ」は、本明細書で定義のように、-O-アリールを表す。
【0305】
本明細書では、一般式中のアルキル、シクロアルキルおよびアリール基は、1個または複数の置換基により置換されてもよく、それにより各置換基は独立に、例えば、置換基およびその分子内の位置に応じて、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、カルボキシ、アミド、アリール、およびアリールオキシであってよい。追加の置換基もまた、意図される。
【0306】
用語「ハロゲン化物」、「ハロゲン」またな「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を表す。用語「ハロアルキル」は、本明細書で使用される場合、1個または複数のハロゲン化物で更に置換された、本明細書で定義のアルキル基を表す。用語「ハロアルコキシ」は、本明細書で使用される場合、1個または複数のハロゲン化物で更に置換された、本明細書で定義のアルコキシ基を表す。用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」は、本明細書で使用される場合、-OH基を表す。用語「メルカプト」または「チオール」は、-SH基を表す。用語「チオアルコキシ」は、本明細書で定義のように、-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を表す。用語「チオアリールオキシ」は、本明細書で定義のように、-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を表す。用語「アミノ」は、-NR’R”基またはその塩を表し、R’およびR”は、本明細書で記載の通りである。
【0307】
用語「ヘテロシクリル」は、1個または複数の窒素、酸素および硫黄などの原子を環中に有する単環式のまたは縮合環の基を表す。環はまた、1個または複数個の二重結合を有してもよい。しかし、環は、完全に共役したπ電子系を有しない。代表例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、などである。
【0308】
用語「カルボキシ」は、-C(O)OR’基、またはそのカルボン酸塩を表し、R’は、本明細書で定義のように、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合される)またはヘテロシクリル(環炭素を介して結合される)または「カルボキシレート」である。
【0309】
用語「カルボニル」は、-C(O)R’基を表し、R’は、本明細書の上で定義の通りである。上記の用語はまた、それらのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)を包含する。
【0310】
用語「チオカルボニル」は、-C(S)R’基を表し、R’は、本明細書の上で定義の通りである。用語「チオカルボキシ」基は、-C(S)OR’基を表し、R’は、本明細書で定義の通りである。用語「スルフィニル」基は、-S(S)R’基を表し、R’は、本明細書で定義の通りである。用語「スルホニル」または「スルホン酸」基は、-S(O)R’基を表し、R’は、本明細書で定義の通りである。
【0311】
用語「カルバミル」または「カルバミン酸」基は、-OC(O)NR’R”基を表し、R’は、本明細書で定義の通りであり、R”は、R’について定義される通りである。「ニトロ」基は、-NO基を指す。本明細書で使われる用語「アミド」は、C-アミドおよびN-アミドを包含する。用語「C-アミド」は、-C(O)NR’R”末端基または-C(O)NR’連結基を表し、これらの語句は、本明細書の上で定義の通りであり、R’およびR”は、本明細書で定義の通りである。用語「N-アミド」は、-NR”C(O)R’末端基または-NR’C(O)-連結基を表し、これらの語句は、本明細書の上で定義の通りであり、R’およびR”は、本明細書で定義の通りである。
【0312】
「シアノ」または「ニトリル」基は、-CN基を指す。用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基を表し、これらの語句は、本明細書の上で定義の通りであり、R’は、本明細書の上で定義の通りである。用語「グアニジン」は、-R’NC(N)NR”R”’末端基または-R’NC(N)NR”- 連結基を表し、これらの語句は、本明細書の上で定義の通りであり、R’、R”およびR”’は、本明細書で定義の通りである。本明細書で使用される場合、用語「アジド」は、-N基を指す。用語「スルホンアミド」は、-S(O)NR’R”基を指し、R’およびR”は、本明細書で定義の通りである。
【0313】
用語「ホスホニル」または「ホスホン酸」基は、-OP(O)-(OR’)基を表し、R’は、本明細書の上で定義の通りである。用語「ホスフィニル」は、-PR’R”基を表し、R’およびR”は、本明細書の上で定義の通りである。用語「アルキルアリール」は、本明細書で定義のアルキルを表し、それは、本明細書で記載のアリールで置換される。例示的アルキルアリールは、ベンジルである。
【0314】
用語「ヘテロアリール」は、環中に例えば、窒素、酸素および硫黄などの1個または複数の原子を有し、加えて、完全に共役されたπ電子系を有する、単環式のまたは縮合環(即ち、隣接する原子対を共有する環)の基を表す。本明細書で使用するとき、用語「ヘテロアリール」は、芳香環を形成する少なくとも1個の原子がヘテロ原子である芳香環を指す。ヘテロアリール環は、3、4、5、6、7、8、9および9個を越える原子により形成できる。ヘテロアリール基は、任意に置換されてもよい。ヘテロアリール基の例は、限定されないが、1個の酸素または硫黄原子、または2個の酸素原子、または2個の硫黄原子、または最大4個の窒素原子、または1個の酸素または硫黄原子および最大2個の窒素原子の組み合わせ、およびそれらの置換ならびに、例えば、1個の環形成炭素原子を介して連結されたベンゾおよびピリド縮合誘導体を含む、芳香族C3-8ヘテロ環基を含む。特定の実施形態では、ヘテロアリールは、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジナール、ピラジニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルから選択される。
【0315】
いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、ピロリル、フラニル(フリル)、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3-オキサゾリル(オキサゾリル)、1,2-オキサゾリル(イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル、1,3-チアゾリル(チアゾリル)、1,2-チアゾリル(イソチアゾリル)、テトラゾリル、ピリジニル(ピリジル)、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1,2,4,5-テトラジニル、インダゾリル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキソリル、アクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、チエノチオフェニル、1,8-ナフチリジニル、オテル ナフチリジニルス、プテリジニルまたはフェノチアジニルから選択される。ヘテロアリール基が2個以上の環を含む場合、各追加の環は、飽和型(ペルヒドロ型)または部分的に不飽和型(例えば、ジヒドロ型またはテトラヒドロ型)または最大限に不飽和(非芳香族)型である。用語ヘテロアリールは従って、2つの環が芳香族である二環式ラジカル、および1個のみの環が芳香族である二環式ラジカルを含む。ヘテロアリールのこのような例は、3H-インドリニル、2(1H)キノリノニル、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリニル、2H-1-オキソイソキノリル、1,2-ジヒドロキノリニル、(2H)キノリニル N-オキシド、3,4-ジヒドロキノリニル、1,2-ジヒドロイソキノリニル、3,4-ジヒドロイソキノリニル、クロモニル、3,4-ジヒドロイソ-キノキサリニル、4-(3H)キナゾリノニル、4H-クロメニル、4-クロマノニル、オキシンドリル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリニル、1H-2,3-ジヒドロイソインドリル、2,3-ジヒドロベンゾ[f]イソインドリル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[g]イソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-ベンゾ[g]イソキノリニル、クロマニル、イソクロマノニル、2,3-ジヒドロクロモニル、1,4-ベンゾジオキサニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリニル、5,6-ジヒドロキノリル、5,6-ジヒドロイソキノリル、5,6-ジヒドロキノキサリニル、5,6-ジヒドロキナゾリニル、4,5-ジヒドロ-1H-ベンゾイミダゾリル、4,5-ジヒドロベンゾオキサゾリル、1,4-ナフトキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾオキサゾリル、1H-4-オキサ-1,5-ジアザナフタレン-2-オニル、1,3-ジヒドロイミジゾロ[4,5]ピリジン-2-オニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジナフトキノニル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロール[3,4-b]キノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[b][1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラ-ヒドロベンゾ[b][1,6]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[3,4-b]インドリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[4,3-b]インドリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロアゼピノ[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロアゼピノ[4,3-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロ-アゼピノ[4,5-b]インドリル、5,6,7,8-テトラヒドロ[1,7]ナプチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[2,7]ナフチリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]-ジオキシノ[2,3-b]プリイジル、3,4-ジヒドロ-2H-1-オキサ[4,6]ジアザナフタレニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イミダゾ-[4,5-c]ピリジル、6,7-ジヒドロ[5,8]ジアザナフタレニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,5]ナプチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,6]ナプチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,7]ナプチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,8]ナプチリジニルまたは1,2,3,4-テトラヒドロ[2,6]ナプチリジニルを含む。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は任意に置換される。一実施形態では、1個または複数の置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アミノアルキル、C1-6アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、またはトリフルオロメチル、からそれぞれ独立に選択される。
【0316】
ヘテロアリール基の例は、限定されないが、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリンおよびピラジン、フラザン、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、フェノキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリンおよびキノキサリンの非置換およびモノまたはジ置換置換誘導体を含む。いくつかの実施形態では、置換基は、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、O-C1-6-アルキル、C1-6-アルキル、ヒドロキシ-C1-6-アルキルおよびアミノ-C1-6-アルキルである。
【0317】
本明細書で使用される場合、「ハロ」および「ハロゲン化物」という用語は、本明細書では、同義を指し、本明細書においてフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物とも呼ばれる、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である、ハロゲンの原子を表す。
【0318】
いくつかの実施形態では、用語「置換された」は、官能基および/または分子に共有結合された1個または複数の置換基を包含する。いくつかの実施形態では、置換基は、C-Cアルキル、ハロ、-NO、CN、-OH、-NH、カルボニル、-CONH、-CONR’、-CNNR、-CSNR、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR’、-NHCSR’、-NHCNR’、-NC(=O)OR’、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、アミノ(C-Cアルキル)、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR’、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’からなる群よりそれぞれ独立に選択される、1個または複数の置換基を含み、それぞれのR’は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ原子、任意に置換されるシクロアルキル任意に置換されてもよいシクロアルキル、任意に置換されるヘテロシクリル、またはこれらの任意の組み合わせから独立に選択される。
【0319】
本明細書で使用される場合、値と組み合わせたときの「約」という用語は、参照値のプラスおよびマイナス10%を指す。例えば、約1000ナノメートル(nm)の長さは、1000nm±100nmの長さを指す。
【0320】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別の意味が明示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、複数のこのようなポリヌクレオチドを含み、「ポリペプチド(the polypeptide)」への言及は、1つまたは複数のポリペプチドおよび当業者に既知のその同等物などへの言及を含む。特許請求の範囲は、いずれか任意の要素を除外するように記載されてもよいことに、さらに留意されたい。したがって、この記述は、請求要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独(solely)」、「唯一(only)」などの排他的な用語を使用するための先行基準として機能することが意図される。
【0321】
「A、B、およびC等の少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される事例では、概して、このような構造は、当業者が慣例を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、ならびにCの少なくとも1つを有する系」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に等を有する系を含むがこれらに限定されないであろう)。明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する実質的にどのような離接的な単語および/または句が、用語の1つ、用語のいずれか、またはいずれの用語も含む可能性を企図すると理解されるべきであることは、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」もしくは「B」または「AおよびB」の可能性を含むことが理解されるであろう。
【0322】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態として説明される本発明の種々の特徴は、別々にまたは任意の好適な副組み合わせで提供され得る。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、全ての組み合わせが個別に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書において開示される。さらに、様々な実施形態およびその要素のすべての部分的組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、すべてのそのような部分的組み合わせが本明細書で個別に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書において開示される。
【0323】
本発明の追加の目的、利点、および新規の特徴は、限定することを意図しない、以下の実施例を考察することにより、当業者には明らかになるであろう。さらに、上記で説明されおよび以下の特許請求の範囲のセクションで請求される、本発明の様々な実施形態および態様の各々は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【0324】
上で説明され、以下の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【0325】
実施例
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験手順は、分子の、生化学の、微生物学のおよび組換えDNAの技術を含む。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、”Molecular Cloning:A laboratory Manual” Sambrook et al.,(1989);”Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,”Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,”A Practical Guide to Molecular Cloning”,John Wiley & Sons,New York(1988);Watson et al.,”Recombinant DNA”,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)”Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に記載されている方法論;”Cell Biology:A Laboratory Handbook”,Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994);”Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique” by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition;”Current Protocols in Immunology” Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),”Basic and Clinical Immunology”(8th Edition),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),”Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual” CSHL Press(1996)、を参照されたい。これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。その他の一般的な参考文献は、本明細書全体を通して提供される。
【0326】
実施例1:直接化学修飾
正電荷はエンドサイトーシス経路を介して細胞内送達を促進するので、いくつかの低分子ポリアミン誘導体を、試験した。GFP/IgGを、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、トリエチレンテトラミン(TETA)またはポリエチレンイミン(PEI)のいずれかと直接コンジュゲートし、細胞中へのタンパク質の取込みを、モニターした。PEIが遙かに優れていることが明らかになったので(データは示さず)、全てのさらなる実験をPEIを用いて実施した。
【0327】
PEIは、直鎖または分岐状の通常10KDaを越える分子量を有し、既存のポリマー中で最高のカチオン電荷密度を有するとして特徴付けられる。このことは、遺伝子導入剤としてのそれらの使用につながり、それらの高い正電荷は、負に荷電されたDNAまたはRNAの複合体形成のために、および更に細胞中へのこれらの核酸の内部移行のために使用される。これらの高分子量遺伝子導入剤は、インビトロ用途では効率的である一方で、それらは、インビボ用途ではそれほど有用でない。従って、極低分子量PEI部分、即ち、600~1800Da(質量分析により測定)の範囲の分子量の分岐PEI分子、を採用した。これらの極低分子量PEIは、内部移行されるタンパク質ペイロードに化学的におよび共有結合的にコンジュゲートできる。
【0328】
主に600Daの、極低分子量PEIを、IgGおよびGFPにコンジュゲートした。PEIは多くの一級アミンを含むので、グルタミン酸およびアスパラギン酸のタンパク質のカルボン酸残基への、ならびにC末端カルボキシ基へのコンジュゲーションを、カルボジイミドコンジュゲーション化学を用いて実施した。反応を、過剰のPEI、即ち、3500モル過剰のPEIで実施し、修飾のレベルの制御を、反応系中のカルボジイミド薬剤(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDC))のレベルを調節することにより達成した。修飾のレベルを、MALDI-ToF質量分析により測定した(図1)。IgGベースのタンパク質の場合、修飾の平均レベルは、IgG分子当り1~約10分子のPEI(600Da)の範囲であり、これは、それぞれ、25~400モル当量の範囲の過剰レベルのEDCで達成された。PEI修飾は位置選択的ではないので、それは、MALDI-ToFスペクトルで観察されるように、MALDI-ToF分子量部分の広い分布を生じる(図1)。平均修飾レベルを、(測定されたピーク頂点での分子量値)マイナス(非修飾タンパク質の測定されたピーク頂点での分子量値)(これは、加えたPEIの重量を与える)に基づいて計算した。この値を、修飾に使用された単一PEI分子の分子量で除算することにより、加えられた分子の平均数を与える。
【0329】
次に、PEI修飾されたおよび修飾されないマウスIgGを、A375細胞と2時間インキュベートした。遺伝子導入/内部移行のための追加の誘導剤は、添加しなかった。(エラー、参照源が見つからない(Error! Reference source not found.))で見られるように、修飾されないマウスIgGは、A375細胞に侵入しなかった。対照的に、低レベルのPEI修飾(IgG分子当り、平均3PEI分子、X3)であっても、内部移行を可能にし、一方で修飾の平均レベルを増大させることは、細胞の内側で観察されるIgGのレベルを比例的に増大させた。類似の結果を、フローサイトメトリーを用いて内部移行を測定した場合に観察した(データは示さず)。
類似の内部移行効率および修飾レベルに対する依存性を、他のIgG(データは示さず)および緑色蛍光タンパク質(GFP)(図3A~3B)を含む他のペイロードについても観察した。
【0330】
実施例2:膜横断効率
細胞浸透性ペプチド(CPP)を用いた多数の研究は、ある程度の細胞内部移行を示したが、ほとんどの事例で細胞への初期取込みの効率は、かなり低かった。なぜなら培地中の高レベルのペイロードが、細胞中へ実際に内部移行されたわずかな低い比率の分子を生じるために必要とされたからである。初期内部移行ステップの効率を評価するために、特異的ELISAを用いて、時間の関数として培地中のペイロード、PEI修飾マウスIgGのレベルを測定した。図4で見られるように、高レベルのPEI修飾(約7)で、ほとんど全ての修飾されたIgGが、内部移行され(95%)、およびほとんどの内部移行は、インキュベーションの最初の24時間中に起こる(灰色バー)。より低レベルの修飾(約4.5および3)であっても、内部移行ステップは、極めて効率的であり、インキュベーションの5日後に総ペイロードの約75%の全体取込みを示し(図4、青およびオレンジバー)、かつ高度修飾されたIgGと類似の動力学に従う。不完全で、より遅い取込みは、平均修飾レベルより遙かに少なく修飾されるIgGにおそらく関連する。PEI修飾は、修飾された部分の幾分広い分布を生じ(図1参照)、修飾されないまたは低く修飾された(3未満)これらの分子はおそらく、5日後であっても、培地中にまだ存在する。この細胞膜横断効率は、0.2~40μg/mLの範囲の初期培地濃度で観察された。
【0331】
実施例3:PEI修飾されたタンパク質により利用されるエンドサイトーシス経路
カチオン化された部分は、天然のエンドサイトーシス機序を用いて内部移行すると考えられる。2つの関連エンドサイトーシス機序は、カベオリン媒介およびクラスリン媒介のエンドサイトーシスである。内部移行の正確な機序は、既知の特異的エンドサイトーシス阻害剤の存在下で、PEI修飾されたIgGの内部移行を実施することにより解明された。A375細胞を、クラスリン阻害剤(アマンタジンまたはクロルプロマジン)またはカベオリン阻害剤(ゲニステイン)の存在下で、PEI修飾されたマウスIgG(4.5PEI)と一晩インキュベートした。既知のカベオリン阻害剤であるゲニステインは実際に、PEI修飾されたIgGの内部移行を阻害した(エラー、参照源が見つからない)。極めて興味深いことに、既知のクラスリン阻害剤であるクロルプロマジンの添加は、増大した内部移行を生じた。このことは、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害が細胞においてカベオリン媒介エンドサイトーシスの代償性増大を引き起こしたので、カベオリン媒介エンドサイトーシスが、内部移行のためにPEI修飾されたペイロードにより利用されることを実証する。
【0332】
実施例4:エンドソーム脱出
上述のように、おそらく、生物製剤の細胞内送達における最も難度が高いハードルは、治療薬の異化作用を回避するためのそれらのエンドソーム脱出である。PEI修飾されたタンパク質がエンドソームから脱出できるか否かを評価するために、それらの内部移行を、共焦点顕微鏡およびエンドソームおよびリソソームマーカーの対比染色を用いて追跡した。PEI修飾されたIgGを、蛍光エンドソーム/リソソームマーカーを発現しているHEK293細胞と5時間インキュベートした。細胞を、蛍光顕微鏡により分析した。エンドソームおよびリソソームに、緑色蛍光マーカー(Cell light Endosome,Molecular Probes,カタログ番号C10586またはCell light Lysosome,Molecular Probes,カタログ番号C10596)を遺伝子導入し、一方でIgGを、赤色蛍光の抗マウス抗体で染色した。(エラー、参照源が見つからない)で見られるように、内部移行されたIgGと初期エンドソームまたはリソソーム小胞の間で大きな共局在は、観察されなかった。これは、実際にPEI修飾されたPEI修飾ペイロードが、エンドソームをうまく脱出したことを実証する。これらの実験を、エンドソーム/リソソームマーカーEEA1、トランスフェリンおよびカルセインを用いて繰り返し、同じ結果を観察した(データは示さず)。共局在化は、初期エンドソームでも観察されず、PEI修飾タンパク質のエンドソーム脱出は、エンドソーム経路の極めて初期に急速に起こることを示唆することに留意されたい。
【0333】
共局在は、PEI修飾されたIgGと種々のエンドソームおよびリソソームマーカーの間で観察されないが、これらのIgGの染色は、天然で点状に現れる。点状プロファイルは、ある種の小胞中の内部移行されたIgGの含有を示唆し得る。PEI修飾されたタンパク質のエンドソーム脱出を更に実証するために、タンパク質を、pH感受性蛍光染料、5(6)-カルボキシナフトフルオレセインで標識した。この色素は、7を超えるpH値でのみ蛍光を発する。初期エンドソームのpHは既に7未満であり、かつエンドソームがリソソームへと成熟するに伴い低下するのみであるので、エンドソーム経路の全ての小胞は、酸性である。PEI修飾された、pH感受性標識されたIgGを、HeLa細胞とインキュベートし、細胞を、共焦点顕微鏡により分析した。細胞は、pH感受性色素のユニークな赤色蛍光を明確に示し、PEI修飾されたタンパク質が細胞質中などの非酸性コンパートメント中に存在することを示す(図7)。これは、PEI修飾されたタンパク質がエンドソーム経路を効率的に脱出するという更なる証拠である。
【0334】
最後に、機能的アッセイを用いて、PEI修飾されたタンパク質がそれらの内部移行後にエンドソームを効率的に脱出することを検証した。この目的のために、CD3ゼータ鎖としても知られる、CD247に対する機能的モノクローナル抗体を、PEIで修飾し、CD3+一次細胞中に内部移行させた。CD3受容体の細胞内ドメインは、その免疫受容体チロシン活性化モチーフ免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を介して、T細胞活性化に関与する。選択したモノクローナル抗CD3ゼータ鎖抗体(Sigma,Clone ZT-10、カタログ番号SAB4200446)は、CD3ゼータ鎖中のITAMの1つを結合する。
【0335】
PEI修飾された抗CD247および陰性対照としてPEI修飾されたマウスIgGの内部移行を、抗CD3/CD28抗体でコートしたビーズで事前刺激したCD3+細胞中へ実施した。培地を、細胞の活性化レベルの変化に対するマーカーとしてインターフェロンガンマ(IFNγ)分泌についてモニターした。完全抗体は、構造上不可欠なジスルフィド結合の存在に起因して細胞質中で安定であると予測できないであろうが、この抗体の結合は、結果的にIFNγ分泌をもたらすであろうシグナル伝達カスケードを活性化するはずである。従って、少量の初期活性化でも、定量化できるサイトカインレベルの増大をもたらすであろう。従って、その予測される細胞質不安定性を有しても、抗体の内部移行は、観察可能なIFNγ応答を生成することが予測され得る。
【0336】
修飾された抗体のCD3+細胞中への内部移行を、細胞内FACS分析により実証した(データは示さず)。抗CD247 PEI修飾mAb(4.5xPEI)の内部移行は、IFNγ分泌(図8)の増加により測定されるように、CD3細胞の用量依存的活性化もたらした。PEI修飾されたマウスIgGは、この実験で使用した抗体濃度範囲で、いかなるCD3細胞活性化も起こさなかった。この結果は、PEI修飾されたタンパク質のエンドソーム脱出および標的細胞中で生物学的および臨床的効果を発揮するそれらの能力を更に実証する。
【0337】
実施例5:細胞質ゾルでの分散性およびペイロード担体溶液
PEI修飾されたタンパク質のエンドソーム脱出は明確に起こるが、種々の内部移行タンパク質の顕微鏡画像は、点状プロファイルを示す(図2、3、6および7)。PEI修飾は、細胞膜横断およびエンドソーム脱出において極めて効率的である一方で、同じ修飾は、PEI修飾されたタンパク質が細胞質中で効率的に分散することを妨害することが想定された。この分散性の問題は、強くカチオン化された内部移行タンパク質と、種々の細胞質タンパク質、主に細胞骨格のタンパク質(これらのほとんどは、負に帯電される)の間の強力な静電相互作用の結果である可能性がある。低い細胞質分散性は、細胞質中または他の細胞内コンパートメントまたはオルガネラ中に関係なく、薬剤がその細胞内標的に到達できない可能性があるので、いずれかの細胞内の生物学的製剤の有効性に負に影響するであろう。
【0338】
この細胞内分散性のハードルを克服するために、ジスルフィド結合を、治療薬とPEIで事前修飾した汎用担体の間のリンカー中に組み込んだ。選択した結合は、ジスルフィド結合を組み込んだ、化学リンカーであった。この不安定なジスルフィド結合は、主にその高い濃度のグルタチオンに起因して、細胞質の高い還元電位のためエンドソーム脱出時に切断され、従ってそのカチオン化担体から治療薬を放出し、細胞の細胞質中での治療薬の自由運動を可能にする。担体の使用はまた、PEIが機能性部位にコンジュゲートされ得るおよび/またはそれが治療薬の機能を阻害するというリスクを取り除く利点を有する。特定の部位またはドメインでの治療薬へのリンカーに対する選択的コンジュゲーション化学を用いることにより、リンカーコンジュゲーションの正確な位置を制御でき、それを治療薬の活性ドメインからそらすことができる。
【0339】
この担体およびペイロード方法の略図を、図9に示す。図で見られるように、担体タンパク質は、PEI基を有し、膜横断およびエンドソーム脱出に関与する。これらの基は、ランダムにまたは部位選択的にのいずれかで担体タンパク質にコンジュゲートできる。ランダムコンジュゲーションの場合、コンジュゲーションのレベルは、本明細書で前述のように、特定の反応条件を選択することにより制御できる。
【0340】
担体タンパク質それ自体は好ましくは、免疫原性問題を回避するために、ヒト内因性タンパク質のリストから選択される。さらに、血液中に共通に見出され、かつ天然で長い循環半減期を有するタンパク質が、好ましい。最後に、そのペイロードを身体中の治療薬が望まれる領域に送達できるタンパク質が、好都合であろう。身体中のこのような領域の例は、腫瘍およびそれらの微小環境、ならびに自己免疫疾患および多くの他の病的状態のために重要な炎症部位を含み得る。ヒト血清アルブミン(HSA)を従って、選択した。HSAは、長い半減期を有する循環タンパク質であり、腫瘍および炎症部位への出入りが示され、更には、細胞外環境のみにではあるが、ペイロードをこれらの部位に送達することが示されている(Liu et al.BMC Biotechnology 2012,12:68;Kratz,F.,Journal of Controlled Release 132(2008)171-183;Um et al.,Bioconjugate Chem.,2019,10.1021/acs.bioconjchem.9b00760,Wunder A.et al.,J Immunol 2003;170:4793-4801;Yazaki P.J.et al.,Nuclear Medicine and Biology,35(2008)151-158)。
【0341】
治療薬は、生物学的製剤のポリペプチド鎖に沿った単一のコンジュゲーション部位で単一リンカーにコンジュゲートされる。このコンジュゲーション部位は、それが薬剤の活性を妨害しない位置に配置される。リンカーは、ペプチドリンカー、化学リンカーまたはこれらの組み合わせから選択できる。ポリマーベースのリンカーである、PEGが、選択された。上で考察したように、細胞の細胞質中の特定の条件に感受性である、不安定な結合もまた、組み込まれる。
【0342】
担体-ペイロード方法の効率を評価するために、GFPを、ジスルフィド結合を組み込むPEGベースのリンカーを介してPEIカチオン化HSAにコンジュゲートした。eGFP(Biorbyt,カタログ番号orb84840)を、NHS-PEG-SPDPで修飾した。PEI修飾されたHSA(11xPEI)もまた、DTTを用いる遊離チオールへのこのSPDPの還元後に、NHS-PEG-SPDPと更に反応させた。SPDP活性化eGFPを、HSA-PEI-遊離チオールと反応させて、リンカー中に組み込まれた不安定なジスルフィド結合を有するGFP-HSAコンジュゲートを生成した。
【0343】
内部移行されたPEI修飾GFPの点状プロファイル(図3)とは反対に、PEIカチオン化HSAにジスルフィド連結したGFPを細胞に内部移行させた場合、それは、斑点のない完全に分散されたプロファイルを生じた(図10)。内部移行された治療薬ペイロードの効率的な分散を検証するために、完全治療薬抗TNFαモノクローナル抗体(ヒュミラ(登録商標))を、ジスルフィド結合を組み込むPEGベースのリンカーを介してPEI修飾HSAに連結した。GFPと同様に、抗体は、NHS-PEG-SPDPで修飾された。PEI修飾されたHSA(11xPEI)もまた、DTTを用いる遊離チオールへのSPDPの還元後に、NHS-PEG-SPDPと更に反応させた。SPDP活性化抗体を、HSA-PEI-遊離チオールと反応させて、リンカー中に組み込まれた不安定なジスルフィド結合を有する抗体-HSAコンジュゲートを生成した。図11で見られるように、内部移行されたモノクローナル抗体は、細胞質全体に分散し、再度、直接のカチオン化は、細胞質中の自由分散を妨害したという仮説を確証し、ペイロードをそのカチオン化された担体から分離する溶液の有効性を実証する。
【0344】
実施例6:細胞質ゾルでの安定性
治療薬は、標的細胞の細胞質に侵入するのみでなく、それらの生物活性を発揮する必要がある。他の細胞内の場所(核、ER、ミトコンドリア、など)に輸送される分子であっても、依然として細胞質を通過するはずである。多くの生物学的治療薬は、抗体の骨格またはその誘導体に基づいている。多くの場合、これらの治療薬は、特異的標的を結合し、その標的と拮抗するまたはそれを作動させる。これらの薬剤の結合活性は、それらの三次および四次構造に完全に依存する。抗体ベースの分子、完全なIgGまたはそれらの短縮された誘導体(Fab、scFv、など)のいずれかでは、これらの構造は、鎖内または鎖間のいずれかのジスルフィド結合に基づき、かつそれにより安定化される。しかし、前述のように、細胞質、ならびに他の細胞内オルガネラおよびコンパートメントは、高度に還元的な環境により特徴づけられる。主要な還元剤である、グルタチオンは、1~11mMの範囲の細胞質ゾル濃度を有する。対照的に、その血漿中濃度は、低いミクロモルの値である。細胞質のこの特性は、抗体ベースの薬剤、ならびに治療の細胞内の効率的な経路としてそれらの構造中のジスルフィド結合を利用する他の生物学的製剤の使用を妨害している。
【0345】
インビトロ実験は、細胞質ゾルのレベルのグルタチオン(GSH)への抗体の曝露が、抗軽鎖抗体により検出されるSDS-PAGEウェスタンブロット上の複数バンドの出現により解るように、ほんの数時間後にジスルフィド結合の還元をもたらすことを示した(レーン5~7、図12)。一晩の曝露は、おそらく3D構造の喪失あるいは凝集および沈降による、ウェスタンブロットでの抗体検出の欠如をもたらす(レーン1~4、図12)。後者は、細胞内で発現される抗体ならびにこれらの誘導体の既知の現象である(Kabayama,H.et al.,Nature Communications 2020,(11),336)。細胞内生物学的製剤に対するいずれかのこのような影響は、生物学的標的を結合する、および治療効果を発揮するその能力にとって有害であるはずである。
【0346】
これらの細胞内安定性の問題の観点から、単一ドメイン抗体を、治療薬ペイロードとして選択した。単一ドメイン抗体は、他のタンパク質に結合する能力を有する単鎖タンパク質ベースの分子である。それらの構造は、すべての不可欠なジスルフィド結合を欠き、それらを細胞質ゾルの還元性環境に対し耐性にしている。このような単一ドメイン結合タンパク質は、重鎖抗体の切断型(HcAb)、ナノボディとしても知られるラクダ科動物ベースの可変重鎖ホモダイマー(VHH)、またはサメベースの免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)を含む。このような単一ドメイン結合タンパク質の他の例は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、および遺伝子操作された抗体ミメティックタンパク質を含む。
【0347】
単一ドメイン結合タンパク質、および特にVHHは、ペイロードとして充分好適である。それらの構造上不可欠なジスルフィド結合の欠如は、それらを細胞質条件に対し耐性にする。それらは、極端に小さく、VHHは約15KDaまたはDARPinは20KDaであり、それらの細胞質ゾルでの分散性を支援する事実である。それらの単一ドメイン特性は、それらがなんらかの偶発的な細胞内架橋効果を引き起こさないであろうことを決定づける。それらは、異なる構成で2個以上の部分を含むように容易に操作されて、より複雑な結合プロファイルを可能にする。それらは、免疫原性とは見なされず、良好な安全性プロファイルを有する。主要な特徴は、担体への部位選択的コンジュゲーションとのそれらの適合性である。例えば、VHHおよびDARPinの両方で、それらのC末端は、それらの抗原結合領域(CDR)から離れて配置され、抗原結合に影響することなくコンジュゲーションのためのこの部位の利用を可能にする。さらに、C末端は、コンジュゲーションのための遊離スルフヒドリル基を有する単一システインアミノ酸を含むように容易に操作できる。この基は、チオール反応性基を備えた担体にコンジュゲートできる。C末端の遊離スルフヒドリルは、担体に直接、あるいはリンカーを介して、コンジュゲートできる。
【0348】
そのC末端に単一システインアミノ酸を含む市販の抗ビメンチンVHH(QVQ、Q60c)を、チオール反応性基で更に修飾されたPEI修飾HSA担体にコンジュゲートした。PEI修飾されたHSAを、2-ピリジルジチオ基(NHS-PEG-SPDP、n=4)を有するNHS活性化PEGリンカーに結合させた。SPDPは、VHHの遊離チオールと容易に反応し、VHH-HSA部分を生成し、VHHペイロードとHSA担体の間の結合はジスルフィド結合を含む。図13は、精製の前後の反応混合物のプロファイル、ならびに還元条件下で切断される担体とペイロードの間の結合の能力を示す。VHHへのコンジュゲートは、PEIのレベルに関係なく類似であった。さらに、全ての反応で、ペイロードは、細胞質ゾルの還元条件を模倣する、5mMのGSHによる処理後に、効率的に切断された。
【0349】
抗ビメンチン-PEI修飾HSAコンジュゲートの細胞内部移行効率を、コンジュゲートとのA375細胞のインキュベーション時の、培地からのコンジュゲーションの消失により評価した。VHHを、2種のレベルでPEIにより修飾された(平均でHSA当り、3.5個のPEI分子および8個のPEI分子)HSAにコンジュゲートした。PEI修飾されたIgG(図4)について既に認められたように、VHH-担体コンジュゲートは、細胞により効率的に内部移行され(図14)、最初の24時間のインキュベーション中にほぼ80%のコンジュゲートが内部移行した。コンジュゲートのレベルを、HSAにコンジュゲートされたVHHのみを測定する自社開発の両側ELISAを用いて、捕捉抗体として抗VHH抗体および検出のために抗HSA抗体を利用して、測定した。驚くべきことに、両方のPEI修飾レベルは、非常に類似した内部移行効率および動力学を示し、8-PEI修飾が極めてわずかな優位性を有した。細胞のない細胞培地中のこれらのVHH-HSAコンジュゲートのレベルを、観察されたそれらのレベルの低下が分解に起因しないことを確かめるために、評価した。ほんのわずかな低下が、細胞が存在しない場合に観察され(図14)、実際に細胞の存在下でのVHHレベルの劇的な低下は、VHH内部移行が原因であったことを示唆する。
【0350】
エンドソーム脱出の効率、ならびに細胞質中のペイロードVHHの分散性を更に評価するために、PEI修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗ビメンチン-VHH(HSA分子当り平均11-PEI)を、24時間A375細胞とインキュベートし、細胞を、共焦点顕微鏡により分析した(図15A~15C)。AlexaFluor647にコンジュゲートした抗VHH抗体を使用して、分散プロファイルで細胞の内側のVHHの存在を示した(図15A)。細胞を、標準の蛍光標識された抗ビメンチン抗体を用いてビメンチンについて共染色した(図15B)。2つの画像の注意深い検査は、抗VHH染色により得られたプロファイルがビメンチン染色と実質的に同一であることを明確に示し、抗ビメンチンVHHが細胞の細胞質にうまく送達され、そこで、それはその担体から放出され、その標的を見つけ、結合できることを示唆する(図15C)。この結合に対するさらなる証拠は、図16Aで見ることができ、PEI修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗ビメンチンVHHに曝露された細胞の1つのクローズアップは、抗VHH抗体染色により可視化されたビメンチン細胞骨格パターンを明確に示す。図16Bは、担体コンジュゲーションなしに、ただ抗ビメンチンVHHに曝露された細胞は細胞内VHH染色を示さないことを示す。
【0351】
内部移行された抗ビメンチンVHHのそのビメンチン標的への結合(図15A図16A)はまた、VHH薬剤が、細胞質の内側でその構造的安定性を維持したことを実証する。標的に結合する能力は、全ての結合性生物学的製剤の場合と同様に、その構造およびこの構造の安定性に強くに依存する。このデータは従って、本発明のペイロード薬剤としての単一ドメイン結合タンパク質の選択を支持する。
【0352】
本発明の送達系の別の重要な特性は、培地中の全ての細胞が内部移行を示すという点で、内部移行の効率および均一性である。これは、特に図15A~15Cを含む、異なる顕微鏡像全体を通して認めることができる。文献で既知のタンパク質の細胞内の送達の多くの試みは、細胞の一部のみがタンパク質に内部移行する結果を示し、非常に低い効率を示唆する。
【0353】
実施例7:インビトロの機能的概念実証
細胞内送達生物製剤の機能性の更なる評価を、ヒトパピローマウィルス(HPV)のE7タンパク質に対するVHHを用いて実施した。ほぼ全ての子宮頸癌は、症例の70%を占める2種のタイプ:HPV16およびHPV18を有するヒトパピローマ(HPV)感染と関連する。HPVの原発性腫瘍性タンパク質の1つは、E7タンパク質である。E7は、網膜芽細胞腫タンパク質(RB1)とのその相互作用を通して、悪性の表現型を誘導しおよび維持する。E7は、宿主RB1タンパク質の機能を破壊し制御されない細胞増殖の刺激をもたらす。E7はまた、HDAC1およびHDAC2により媒介される宿主ヒストン脱アセチル化を妨害し、転写活性化をもたらす。以前の研究は、E7機能の阻害は、HPV陽性子宮頸癌細胞の増殖を抑制することを示唆した。Liら(Molecular Immunology,2019,109,12-19)は、HPV陽性細胞中のE7タンパク質に対するVHHをコードするプラスミドの遺伝子導入(タンパク質其れ自体のための効率的細胞内の送達系の欠如のために使用された)が、E7活性を妨害し得(E7-RB1相互作用を破壊する)、HPV陽性細胞の増殖の低下をもたらしたことを示した。発明者らは、C末端システインの添加を有する同じ抗E7 VHHを発現しおよび精製し、それを本発明の細胞内の担体にコンジュゲートした。HPV陽性HeLa細胞を、修飾されない抗E7 VHHまたは切断可能なリンカーによりHSA分子当り平均3.5PEI分子を有するPEI修飾されたHSAにコンジュゲートされたVHHとインキュベートした。インキュベーション後、細胞の生存率を、標準MTT生存率アッセイを用いて測定した。修飾されないVHHは、増殖に対し効果を有しなかったが、PEI修飾された担体にコンジュゲートされたVHHとインキュベートした細胞は、細胞生存率における用量依存性低下を示し、抗E7 VHHがうまく内部移行され、かつHeLa細胞中でE7の効果を阻害できたことを示す(図17)。
【0354】
HPV陽性細胞株中のE7阻害の細胞内効果の大きさを確認するために、IncuCyte(登録商標)などの生細胞分析システムを、採用した。E7は細胞周期調節に影響を与えるので、蛍光ユビキチン化ベースのCell Cycle Indicator(FUCCI)と呼ばれる、特異的HPV陽性ヒーラ細胞株を、使用した。FUCCIレポーターシステムは、細胞の異なる細胞周期ステージの追跡を可能にする。G1の細胞は、赤色蛍光を発し、SまたはG2またはMの細胞は、緑色蛍光を発する。細胞を、細胞の培地中への異なる治療の導入の前に、24時間にわたりチミジンと同期させた。細胞を、切断可能なリンカーによりPEI修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗E7 VHHにより、および次の対照:治療なし、修飾されたHSA、無関係のVHH(抗ビメンチン)にコンジュゲートされた修飾されたHSA、修飾されない抗E7 VHH、修飾されないHSAにコンジュゲートされた抗E7 VHHおよび細胞周期阻害剤(DP、CDK4/6阻害剤)により治療した。図18で見られるように、全ての対照は、治療されない細胞と類似のままである細胞周期に対し影響を有しないが、PEI修飾されたHSA(3.5PEI)にコンジュゲートされた抗E7 VHHは、劇的な効果を有し、直接細胞周期阻害剤の使用に類似の細胞周期停止をもたらした。市販のE7阻害剤は存在しないので、細胞周期停止を起こすことが知られている、CDK4/6阻害剤、パルボシクリブイセチオン酸塩(PD0332991、Sigma、カタログ番号PZ0199)を、陽性対照として使用した。修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗E7 VHHは、唯一異なる動力学で、阻害剤と類似の効果をもたらした。さらに、図19で見られるように、この停止は、HPV陽性細胞の死滅につながった。
【0355】
抗ビメンチンおよび抗E7 VHHの両方は、細胞質の還元性環境中でそれらの耐久性を示した。それらの構造を安定化しおよび維持するためにジスルフィド結合に依存しない、単一ドメイン結合タンパク質の適合性を更に例示するために、発明者らは、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)を結合物質として使用した。DARPinは、遺伝子操作された抗体ミメティックタンパク質であり、通常、高特異性および高親和性標的タンパク質結合を示す。それらは、天然で最も一般的なクラスの結合タンパク質の1種である、天然アンキリンタンパク質由来であり、細胞のシグナル伝達、細胞の調節および構造的完全性などの多様な機能に関与する。DARPinは、いくつかの反復モチーフからなり、それらの分子量は、約14~18KDa(キロダルトン)である。それらはまた、VHHと同様に、それらの構造的完全性についてジスルフィド結合に依存しないことを特徴とする。
【0356】
この目的のために、K-RASに対するDARPinを、選択した。RASタンパク質は、分子スイッチとしてシグナル伝達で重要な役割を果たす。RASは、細胞形質転換における最も重要な標的であり、RAF-MEK-ERKカスケードを通して細胞増殖および分化、およびPI3Kの活性化を通して細胞生存に関与する。RASタンパク質(K-、H-、またはN-RAS)の変異は、シグナル非依存性様式で細胞形質転換を促進する構成的に活性化されるGTP結合型を作成する。活性化RAS遺伝子変異は、ヒトの癌の30%もの多くに見出され、膵臓、結腸および肺腺癌で最も頻度が高い。発癌性RASは、早期発症型の腫瘍にとって不可欠でありかつ腫瘍生存率の維持に必要であることが示されている。RAS変異の最も中心の位置は、G12DおよびG12Vなどの、グリシン12にある。
【0357】
Guillardら(Guillard,S.et al.Nat.Commun.2017,8,16111)は、抗体ミメティックであるDARPin K27を生成した。これは、RASのヌクレオチド交換を阻害する。K27は、4nMのKdを有して不活性Ras GDP型に選択的に結合し、構造的試験は、不活性Rasに対するその選択性を裏付ける。DARPinコードベクターの遺伝子導入によるK27の細胞内発現は、活性Rasの量を大きく減らし、下流シグナル伝達、特にリン酸化ERKのレベルを抑制し、およびHCT116細胞の軟寒天中の成長を遅らせることが示された。このグループは、「バリアーは、Rasが細胞内であるという事実から生ずる」と述べている。DARPin K27は、細胞に侵入する固有の能力を有さず、従って、DARPinが細胞外で加えられる場合、Rasにアクセスできない。細胞の細胞質へのDARPinの送達の報告が存在するが、効率の大幅な増大が、この手法を治療用途に実行可能にするために必要とされるであろう。DARPin K27と同じ部位で結合する低分子阻害剤の開発は、難度が高い可能性がある。理由は、足場が、ポケットを画定するのではなく、広い表面にわたり結合するためである。
【0358】
DARPin K27は、報告された配列に基づき発現され、平均3.5PEI分子で修飾されたHSA担体にコンジュゲートされた。内部移行およびKRAS結合は、共焦点顕微鏡で評価された(図20)。K27 DARPinは、細胞質中に分散されず、むしろ、KRASの主要な位置である細胞膜の内側に局在した。興味深いことに、いくらかの細胞は、内部移行されたDARPinに関して、点状プロファイルおよび内膜局在の両方を示した。点在は、エンドソームをまだ脱出していないか、または自由にその標的を見つけるように担体からまだ分離されなかったDARPinの結果であり得る。
【0359】
更なる試験では、膵管癌細胞(SU8686)を、HSA担体にコンジュゲートされた抗KRAS DARPin K27とインキュベートした。担体は、8または3.5PEI分子で修飾された。細胞のアポトーシス状態を、伝統的Annexin V assayを用いてモニターし、IncuCyte(登録商標)連続細胞モニタリングシステムを用いて可視化した。切断可能なリンカーを介してPEI修飾されたHSAにコンジュゲートされたDARPinに曝露された細胞は、特に、高レベルのPEI修飾を有する担体にコンジュゲートされたDARPinに対し、アポトーシスの劇的な上昇を示した(図21)。これは、高められた内部移行およびより迅速な動力学に起因すると思われる。対照的に、治療されない、修飾されないDARPinで治療された、またはPEI修飾されたHSA(8分子)単独で治療された細胞は、ベースラインレベルのアポトーシスを示し、DARPinの細胞内効果を強調する。
【0360】
Guillardらは、KRAS DARPin K27が、主にG12位置で、天然の非変異体不活性KRAS、および異なる変異を有するKRASに結合することを示した。従って、抗KRAS DARPin K27を、ヒーラ細胞株の増殖およびアポトーシスに対するその細胞内効果について評価した。この細胞株は、その核中でのGFPの構成的発現により特徴づけられ、IncuCyte(登録商標)などの連続画像モニタリング法を用いる、これらの細胞の容易な追跡を可能にする。抗KRAS DARPinの2種の異なる調製物を、8PEI分子を有するHSAにコンジュゲートし、HeLa-GFP細胞に対するその効果を、次の対照治療:陰性対照として治療なし、陽性対照として汎Ras阻害剤での治療、修飾されないDARPinでの治療、修飾されないHSAにコンジュゲートされたDARPinでの治療、8PEI分子で修飾されたHSA担体での治療、および8PEI分子で修飾されたHSAにコンジュゲートされた抗ビメンチンVHHでの治療、と比較した。図22A~22Bで見られるように、8PEI分子を有するHSAにコンジュゲートされた抗KRAS DARPinの両調製物は、HeLa-GFP細胞の増殖(図22A)およびアポトーシス(図22B)の両方に劇的に影響を与えた。対照治療のいずれも、これらのパラメーターに対し何らの影響もなかった。アポトーシスに対する効果はまた、図23でも認めることができ、PEI修飾HSAにコンジュゲートされた抗DARPinで治療した細胞の赤色染色(アポトーシス細胞)および細胞の死滅に伴うGFPの喪失が、明確に観察される。
【0361】
実施例8:薬物動態学および体内分布(PKおよびBD)
PEI修飾は、担体タンパク質に濃縮されたおよび強力な正電荷を付与する。対照的に、血漿成分および細胞膜は通常、負に帯電される。正に荷電されたタンパク質は、これらの負に荷電された成分との静電結合に起因して、「粘着性」であることが知られている。この「粘着性」は、短い半減期および体内分布に関する問題につながり得る。この現象は、天然で正に荷電され、かつ若干の塩基性等電点(pI)により特徴づけられるタンパク質において既知である。PEI修飾されたタンパク質の薬物動態学的および体内分布プロファイルは、その強力な正電荷により影響を受け得る。さらに、このような粘着性はまた、注入部位での投与された正に荷電されたタンパク質の「トラップ」にもつながり得る。これらの影響を回避する、または少なくとも最小化するために、PEI修飾のレベルの影響を検査した。
【0362】
細胞膜を横断することにおいて、およびエンドソーム脱出を可能にすることにおいて依然として効果的である最低レベルのPEI修飾を特定することおよび利用することにより、本発明のタンパク質のPKおよび体内分布を改善できる。この修飾レベルを特定するために、HSA担体を、次の平均レベルのPEI修飾:2.0、3.6、5.2、6.2、8.0および9.4で産生した。これらのレベルを、MALDI-ToF質量分析を用いる得られた修飾HSAの分析により確認した(図24)。これらの担体を、抗ビメンチンVHHに更にコンジュゲートし、これらのコンジュゲートの内部移行を、共焦点顕微鏡を用いて評価した(図25)。共焦点顕微鏡共焦点顕微鏡結果で認められるように、2.0および3.6個のPEI分子を有するHSAにコンジュゲートされたVHHでさえ、細胞内の明確な存在を示す。より高レベルのPEIで修飾された担体の使用は、明らかなより高レベルの細胞内VHHにつながるように思われるが、それらの場合内部移行されたVHHのプロファイルは、より点状で、それほど分散されず、おそらく、より高い正電荷によるVHHの担体からのより遅い脱離に起因するのであろう。3.6PEI/HSAを超えて修飾されたHSAの場合の細胞内のVHHのより強い染色は、濃縮点状プロファイルに起因するより強い画像化の結果であり得、必ずしも、絶対的により高レベルを示していない可能性がある。
【0363】
共焦点顕微鏡の結果をまた、特異的ELISAを用いて細胞の培地中のコンジュゲートの残留レベルを測定することにより、これらのコンジュゲートの内部移行レベルと相互に関連付けた(図26)。PEIで直接修飾されたIgGで観察された結果(図4)と異なり、HSA担体(コンジュゲートされたVHHを有する)のレベルおよび動力学は、修飾のレベルによりそれほど影響されない。3.5および8分子のPEIで、内部移行は、効率的であり、その大きさおよび速度は、非常に類似している。これらの結果は、実際に、担体として使用されるHSAが、丁度3.5個の、あるいはさらに少ない、PEI分子で修飾できることを示唆し、循環中でのHSA担体の粘着性を低減すると思われる事実である。
【0364】
実施例9:電荷マスキング(非共有結合)
非共有結合電荷マスキングは、PEIへの負に荷電された分子の静電結合などによりPEIの陽性表面電荷を中和することにより達成できる。具体的には、発明者らは、フィチン酸などの複数の負電荷を有する分子が、PEIの複数の正電荷と静電気的に相互作用してインビボで効率的な電荷マスキングを樹立し得ることを想定した。
【0365】
PEI修飾されたHSAの薬物動態学および体内分布に対する電荷マスキングの効果を評価するために、HSA-PEIx8を、20mMのフィチン酸で処理し、透析して過剰フィチン酸を除去し、マウスの静脈内に注入した。非処理のHSA-PEIx8を、対照として投与した。HSAの濃度を、自社製ELISAを用いてBalb-cマウスの血漿中で測定し、結果を、注入された投与量からのパーセントとして示す。発明者らは、HSA-PEIx8が、投与後5分でも注入された投与量の35%のみが定量できるという事実により明らかなように、循環から素早く消えることを観察した。30分で、HSA-PEIx8の95%は、治療マウスの血漿中で見出されない。マスキングは循環からの更に高速なクリアランスをもたらしたが、フィチン酸マスクされたHSA-PEIx8は、しかし、マスクされないHSA-PEIx8とは全く異なった挙動をする。
【0366】
これらの効果をより良く理解するために、近赤外蛍光標識(VivoTag 750-S,PerkinElmer)バージョンの上記試験粒子を、調製し、IVISイメージングシステム(PerkinElmer)を利用するPK実験で使用した。無胸腺ヌードマウスに、2種のレベルのHSA-PEIx8(125および250nmol/Kg)および125nmol/Kgで投与したフィチン酸(5mM)でマスクされたHSA-PEIx8を、投与した。動物を、IVISシステムにより異なる時点で投与の48時間後まで撮像した(図27A)。
【0367】
蛍光標識は標識タンパク質のPKおよび体内分布に影響したように見える(データは示さず)が、マスクされないタンパク質に対するフィチン酸マスクされたHSA-PEIx8の比較は、マスキングの劇的な効果を示す。HSA-PEIx8は、動物の腎臓および肝臓中で急速に濃縮されるが、フィチン酸マスクされたHSA-PEIx8は、この結果を回避する。これらの効果はまた、注入の48時間後に採取した動物の異なる臓器の撮像の場合にも明らかである(図27B)。
【0368】
これらの結果ならびに他の結果に基づき、インビトロ設定での非共有結合フィチン酸マスキングの一時的効果は極めて満足できるものであった(結果は示さず)が、インビボ設定ではフィチン酸のマスキング効果は極めて急速に失われることが、発明者らの理解である。フィチン酸がインビボで効率的電荷マスキングを確立できないことはおそらく、フィチン酸に対し高親和性を有するカルシウムおよびマグネシウムなどの種々の二価の金属イオンによる激しい競争に起因するということが想定される。さらに、ゼータ電位測定は、フィチン酸がPEI修飾されたHSAの電荷を劇的に低下させることを示したが、正電荷は基本的に、マスクされたHSA-PEIの表面電荷がほぼゼロになるように中和されることに留意されたい。約ゼロの表面電荷を有するタンパク質は、溶液中で不安定であることが知られており、更に、ゼロ電荷のタンパク質は、効率的な薬物動態プロファイルを有することは知られていない。
非共有結合マスキングのこれらの洞察および欠点は、発明者らに共有結合マスキングをベースにしたマスキングの解決策を探させることになった。
【0369】
実施例10:電荷マスキング(共有結合保護基を介する)
無水マレイン酸およびその誘導体が、PEI(および場合によっては、担体のリジン残基)のアミノ保護基として、発明者らにより実現された。下記スキームは、一級アミンの無水マレイン酸誘導体との一般反応を示す。スキームから解るように、生理学的pHで正電荷を有する、アミン基は、それがアミド基に変換されると、中性になる。同時に、反応は、生理学的pHでの負電荷により特徴づけられる遊離カルボキシル基を生じる。
【化30】
【0370】
このような無水物誘導体は、本発明のHSA担体上のPEI修飾の一級アミン、ならびにそのリジン側鎖のアミンおよびN末端遊離アミンと反応できる。
【0371】
これらの保護基の安定性は、二重結合上の置換基により制御でき、より多くの置換基およびより大きな置換基は、より低い安定性をもたらす。このより低い安定性を本発明で利用して、電荷マスキングの所望の一過的効果を生成できる。これらの潜在的な共有結合のマスキング剤はより低いpH値でそれほど安定でないので、この特性を使用して、腫瘍微小環境(TME)中のマスクされたPEI修飾担体のより高い蓄積をもたらすことができる。理由は、このようなTMEは通常、正常で健康な細胞外または血漿環境よりもより低いpHにより特徴づけられるためである。後者は、約7.3~7.4のpHを有するが、TMEは、約6.8~7.0および更に低いpH値を有し得る。より低いpHに起因するTME中のこれらのマスキング剤の高められた除去は、PEIのカチオンを曝露させ、細胞接着および内部移行をもたらすであろう。
【0372】
発明者らは、種々の無水物誘導体(マレイン酸-R=H、R=H;シトラコン酸-R=Me、R=Hおよびジメチルマレイン酸-R=Me、R=Me、シス-アコニット酸(R=CHCOOH、R=H)、3-(4-メチル-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)プロパン酸(R=Me、R=CHCHCOOH)、および3-エチルフラン-2,5-ジオン(R=CHCH、R=H))による電荷マスキングの効果を、タンパク質のpIを示す等電点電気泳動(IEF)ゲルを用いて評価した。天然のHSAは、約4.8のpIを特徴とし、PEI修飾は、極端に高い8を超えるpIをもたらし、このゲルを用いて測定できない。無水マレイン酸および無水シトラコン酸の両方は、PEI修飾HSAのpIを劇的に低下させ、さらに天然のものより幾分低いpIを示した。約7のpHでもその既知の不安定性を有するジメチルマレイン酸無水物は、スミアーを与え、おそらく、この分析の前のおよび分析中のこのマスキングの除去を示唆している。この不安定性のため、更なる実験を、ジメチルマレイン酸無水物で実施しなかった。IEFの結果は、ゼータ電位測定(Zeta Sizer Ultra(Malvern Instruments)を裏付けた。これらの分析は、天然のHSAに対する-14.4のゼータ電位値を示した。PEI修飾(x8)は、ゼータ電位をほぼ+13に増大させたが、無水シトラコン酸によるマスキングは、85当量のモル過剰を用いた場合、PEI修飾HSAのゼータ電位を-12に低下させた。
【0373】
マスキング手順は以下の通り:
1mg/mL超の濃度でマスクされるタンパク質の溶液に、無水物を50~500当量の範囲のモル過剰で加える。反応は、自然発生的であり、追加の触媒または試薬を必要としない。反応を、数分~数時間維持できる。
【0374】
種々の無水物誘導体(マレイン酸、シトラコン酸、シス-アコニット酸(R=CHCOOH、R=H)、3-(4-メチル-2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)プロパン酸(R=Me、R=CHCHCOOH)、および3-エチルフラン-2,5-ジオン(R=CHCH、R=H))によるHSA-PEIx8のマスキングを、異なるモル過剰の無水物誘導体を用いて較正した。その後、発明者らは、IEFゲル電気泳動法を用いて上述した無水物誘導体のマスキング効率を試験した。75~200当量の範囲の異なるモル過剰の無水シトラコン酸でマスクされたHSA-PEIx8の得られたIEFプロファイル(データは示さず)を、天然の、修飾されないHSAと比較した。発明者らは、マスクされたタンパク質のpIのさらなる変化は、100当量のモル過剰を越える場合では観察できないと結論付けた。同様の結果が、他の無水物でも得られた(データは示さず)。
【0375】
85モル過剰の無水シトラコン酸でマスクされたHSA-PEIx8は、天然のHSAと類似のIEFプロファイルを示した。このマスクされたHSA-PEIx8を、異なるpH環境でのマスクの安定性の評価で更に使用した。無水シトラコン酸マスクされたHSA-PEIx8を、異なるpHでインキュベートし、試料を、IEF分析のために0、24および72時間で回収した。発明者らは、pH4でマスキングは、HSA-PEIx8に比べて、極めて不安定であり、かつ実際に24時間で除去されることを見出した。発明者らは、このマスキング剤が、pH6でも不安定性を示すことに気付いた。興味深い観察は、この薬剤が、TMEに特徴的であるpH6.8で徐々に除去され、除去のレベルは、72時間で微量のみの除去が示されるpH7.4で観察されるよりもはるかに大きいことである。これは、無水シトラコン酸が、本発明のPEI修飾された担体の共有結合マスキング剤として潜在能力を有することを示唆している。無水マレイン酸は対照的に、完全除去が96時間で観察されたがわずかな除去のみがこのpHへの初期の暴露時間で観察されるpH4以外の全てのpHで、高い安定性を示す。
【0376】
無水シトラコン酸は、それが1つのメチル置換を有するので、非対称無水物である。この非対称を考慮すると、無水シトラコン酸とアミンの反応は、動力学的生成物および熱力学的生成物として知られる、2種の構造的生成物を有することができ、前者は、得られる立体障害のために、幾分低い安定性であることが予測されている。HSA-PEIx8を、熱力学的条件(20℃、2時間)および動力学的条件(5℃、10分)で、無水シトラコン酸でマスクした。動力学的条件の生成物は、おそらく全てが動力学的生成物ではないが、むしろ動力学的生成物が濃縮されている。両生成物を、2~8℃で更に保持し、インビボ設定に関連するレベルのpH7.4および6.8でIEFによりそれらの安定性について更に評価した。
【0377】
熱力学的生成物および動力学的生成物(対応するpHでの48時間のインキュベーション)を、IEFゲルにて各時間で並行して分析した(データは示さず)。両方の生成物のIEFプロファイルは、実験の開始時には極めて類似しているように見えるが、動力学的生成物が濃縮されたマスクされた調製物は、全ての時点でかなり安定性が低い。
【0378】
HSA-PEIx8を、それらの薬物動態プロファイルおよび体内分布の評価について、インビボ設定で無水シトラコン酸マスクされたHSA-PEIx8比較した。マスクされたHSA-PEIx8を、150当量のモル過剰で用いて、上述の動力学的条件下で産生した。MALDI-ToF MS分析を用いて、HSA-PEIx8に共有結合したマスキング剤の数を定量化した。MALDI-ToF MSに基づいて、発明者らは、マスキングが約44モルの無水シトラコン酸の付加に相当すると計算される顕著な質量シフトをもたらしたと結論付けた(表2参照)。
【0379】
HSA-PEIx3.5およびHSA-PEIx8を、いくつかの無水マレイン酸誘導体で修飾した。マスキングのレベルを、反応系中の等価量のマスキング剤により制御した。マスキングのレベルおよび分子の電荷に与える効果を、質量分析およびゼータ電位によりそれぞれ評価した(表1のゼータ電位結果および表2のMS結果を参照)。腫瘍微小環境(報告されたpHは約6.8)内で切断されるマスキング剤の潜在力を調査するために、マスクされた担体(HSA-PEIx3.5またはHSA-PEIx8)の安定性を、37℃で異なるpHでのインキュベーションにより、インビトロで試験した。IEFゲルを用いて、マスキング除去を評価した。マスキングの除去は、タンパク質のpIの増大を生じた。
【0380】
実験結果に基づいて、無水シトラコン酸由来のマスキング基が、そのpH7.4での安定性、およびpH6.8での経時的な段階的脱保護のために、意外にも好都合であると見出された。他の保護基は、pH7.4(より大きな脱保護)またはpH6.8(低い脱保護)で劣った安定性を示した。
【表1】
【表2】
【0381】
表1に示すように、ジメチルマレイン酸無水物マスクされたHSA-PEIは、マスクされないHSA-PEIのゼータ電位とほぼ同一の、強い正のゼータ電位を有する。発明者らは、これは、ジメチルマレイン酸無水物の不安定性(急速脱保護)に起因すると想定している。類似の現象は、アコニット酸無水物マスクされたHSA-PEIでも観察され、これは、表1に示されるゼータ電位値により確認されるように、部分的脱保護を示した。従って、発明者らは、無水マレイン酸と共に無水シトラコン酸は、十分な化学的安定性により特徴づけられると想定している。さらに、上で開示されるように、無水シトラコン酸は、中性以上のpH(約7超、または7.4超)でのその安定性および約6.8以下のわずかに酸性のpHでの実質的脱保護が理由で、優先されるべきように見えた。
【0382】
酸性pHで起こるこの脱保護は、細胞内送達に不可欠であることが判明した。抗E7 VHH(本明細書で前述の)を、無水シトラコン酸でマスクされたおよびマスクされないHSA-PEIx3.5の両方にコンジュゲートした。両方のコンジュゲートを、細胞中へ内部移行するそれらの能力について評価した。マスクされないコンジュゲートは、明確な細胞内部移行を示す(図28A~28C)が、マスクされたコンジュゲートは、全く内部移行されなかった(図28E~28F)。これは、PEI修飾の正電荷のない場合、コンジュゲートは、細胞膜に付着するおよび内部移行のためにエンドサイトーシス機序を利用するその能力を完全に失うことを示す。
【0383】
内部移行に対する非マスキングの不可欠性を更に試験するために、無水シトラコン酸(CA、一過的酸感受性マスキング剤)またはメチル無水コハク酸(MSA、安定なマスキング剤)でマスクされた蛍光標識担体(HSAPEIx8)を、使用した。蛍光標識を、HSAの位置34の遊離システイン上の修飾に向けられたマレイミド部分を有する2.5モル過剰のAtto-542(ATTO-TEC、カタログ番号AD542)を用いて、HSAPEIx8に対し実施した。質量スペクトル測定は、わずか1つの修飾のみが観察されることを示した(データは示さず)。マスキング除去を、37℃、pH4で8時間のインキュベーションにより、3種全ての担体(HSAPEIx8;HSAPEIx8CA;HSAPEIx8MSA)に対し実施した。マスキング除去の前後の標識されたタンパク質を、24時間のインキュベーション中に、B16メラノーマ細胞中へ内部移行するそれらの能力について試験した。内部移行の検出を、以前のように共焦点顕微鏡により行った。図29A~29Fで見られるように、細胞内の蛍光は、マスクされない担体(図29A、2D)、またはマスク除去後のCAマスクされた担体(図29E)とのインキュベーションからのみ観察される。実際に、一過性でない安定なマスキングでマスクされた担体は、酸性処理後であっても、細胞中に侵入できなかった(図29C、29F)。
【0384】
次に、インビトロマスク除去(pH4、37℃で8時間のインキュベーション)後にペイロード-マスクされた担体コンジュゲートが、細胞中に内部移行するのみでなく、機能を発揮できるかどうかも調べた。このインビトロ処理を使って、腫瘍環境中、ならびに種々の健康状態で起こる他の酸性環境で見い出される酸性条件の効果を模倣した。機能性を試験するために、平均3.5PEI修飾を有する無水シトラコン酸マスクされた担体にリンカーを介してコンジュゲートされた、抗BRAF VHH、1C5(1C5-Hel-マスクされたHSAPEIx3.5)を、使用した。異なる癌細胞株を、インビトロマスキング除去(pH4、37℃、1または8時間)の前後で、この薬剤で治療した。そのマスクされない対応物を、対照として使用した。図30Aで見られるように、マスクされないコンジュゲートは、BRAF薬剤の細胞内送達が予測されるので、治療MEL-526メラノーマ細胞に対し細胞毒性効果を有した。マスキング除去はこの場合、除去するマスクがないので、効果がなかった。マスクされたコンジュゲートはしかし、マスキングが内部移行を効率的に妨げたので、処理された細胞に対して効果がなかった(図30A)。インビトロ酸性処理は、マスキングを除去でき、PEI修飾を曝露させ、細胞へのコンジュゲートの内部移行を再度可能にした。これは、細胞死滅により見ることができ、これは、マスクされないコンジュゲートで達成された死滅に極めて近い(図30A)。図30Bで見られるように、類似の結果が、SK-MEL-28メラノーマ細胞でも観察された。この場合もまた、マスクされた担体(3.5PEI)に非可逆的にコンジュゲートされた抗BRAF 1C5は、これらの細胞に対し効果を有しなかったが、インビトロ酸性処理後の同じ薬剤は、これらの細胞に対し劇的な細胞毒性効果(マスクされないコンジュゲートにより産生されたものにその大きさが類似の効果)を有した。
【0385】
マウスでのインビボ実験を実施して、マスキングの効果を確認した。HSA-PEIx3.5、HSA-PEIx8および無水シトラコン酸でマスクされたHSA-PEIx8を、B-16マウスメラノーマ癌細胞を皮下に移植したC57マウスにIV注入(58nmol/kg)した。生着を、異なるHSA-PEI誘導体の投与前の2週間、実施した。各誘導体を、15匹のマウスに注入し、各時点で3匹の動物を、採血した。いくつかの時点で、動物をまた、屠殺し、異なる臓器を、体内分布分析のために取得した。HSA-PEIのレベルを、自社製ELISAを用いて血漿および臓器溶解物中で測定した。無水シトラコン酸マスキングはまたELISAによる検出を妨害するので、マスクされたHSA-PEIを注入した動物の試料を、マスキング剤の完全除去のためにそれらのELISA分析前に約1時間pH4で処理した。
【0386】
得られたHSA-PEI誘導体の薬物動態プロファイを、図31Aで見ることができる。HSA-PEIx8は、血漿からの極めて急速なクリアランスにより特徴づけられる。いくらかの残留量は、更にゆっくり排出され、約15時間の見かけ上の半減期をもたらす。対照的に、無水シトラコン酸でマスクされた同じHSA-PEIx8は、遙かに遅く排出され、ほぼ27時間の半減期を与える。マスキング効果は、曲線下面積(AUC)として計算される血漿曝露を試験すると、なおさらに劇的である。マスクされたHSA-PEIx8の血漿曝露は、マスクされないHSA-PEIx8の曝露レベルよりも、50倍高い。HSA-PEIx3.5は、13時間の半減期を与え、そのPKプロファイルは、HSA-PEIx8よりも好ましいように見える。しかしそれでも、その血漿曝露は、マスクされたHSA-PEIx8より5倍低い(図31B)。
【0387】
動物の臓器での異なるHSA-PEI誘導体のレベルの試験は、PEI修飾されたHSAの低い血漿曝露への更なる洞察を提供する。図32Aで見られるように、臓器曝露レベル(AUC)では、HSA-PEIx3.5およびHSA-PEIx8の両方は、クリアランス臓器、即ち、肝臓、腎臓および脾臓中である種の捕捉を受けるように見える。PEI修飾されたHSAの注入量のほとんどは、これらの臓器中で見出すことができる。対照的に、無水シトラコン酸マスキングは、この捕捉を除去し、マスクされたHSA-PEIx8が動物の血流中でより長く循環することおよび異なる臓器および組織中でより均質に分布することを可能にする。この知見は、極めて意外であり、かつ重要である。組成物を望ましくない臓器から離すよう誘導する能力は、治療効力にとって不可欠である。それはまた、遥かに低い投与量の送達を可能にする。かつ、これらの態様の両方は、望ましくない副作用およびオフターゲット効果を減らすであろう。さらに、マスクされた剤の分布は、臓器中でむしろ均質に見えるが、1つの組織は、マスクされた剤により多く曝露されるように見え、これは、腫瘍である(図32A)。腫瘍は、他の臓器より2~7倍多くマスクされたHSA-PEIに曝露された(図32B)。これは、腫瘍の酸性環境に対するマスキング剤の感受性に起因し、これは、その反転をもたらし、正に荷電されたPEI修飾を曝露し、それが次に細胞接着および細胞質ゾル送達の開始をもたらす。発明者らは、血漿の中性pHでも、マスキングは遅い反転を受けることを上で示したが、この効果は、より酸性の腫瘍環境中でより急速であり、これは、この特定の環境中で、本発明の担体の濃縮をもたらす。
【0388】
腎臓中の低い量のマスクされたHSA-PEIx8が尿を介したクリアランスの結果ではないことを確実にするために、このインビボ試験での動物を、代謝ケージ中で治療し、それらの尿を、実験の最初の14時間にわたり収集した。図33に示すように、初期投与量の0.1%未満の、注入された担体の極端に少ない量のみが、投与された動物の尿中で検出された。このデータの全てをまとめて、PEIの保護は、十分な血清半減期および適切な体内分布を確保するために必要であるが、PEIの脱保護は、細胞内送達を促進するために標的細胞(例えば、腫瘍)において必要であることを強調する。
【0389】
実施例11:追加のタンパク質担体を含むタンパク質コンジュゲートのインビボ結果
代替担体(HSAでない担体)のインビボ適合性を評価するために、IgGタンパク質(ヒュミラ(登録商標)、Abbvie)を、EDCの存在下にてPEI(600Da)で修飾して、4PEI修飾を得て、IgG-PEIx4と名付けた。修飾されたIgGタンパク質を、無水シトラコン酸と更に反応させてPEIの正電荷のマスキングを生じ、マスクされたIgG-PEIx4と名付けた。
【0390】
2種のIgG担体、IgG-PEIx4およびマスクされたIgG-PEIx4のPK、ゼータ電位および質量を、評価した。表3で見られるように、PEI修飾は、IgGのゼータ電位値を劇的に増大させたが、マスキングは、修飾されない元のIgGのゼータ電位値より遥かに低い負の値にこの値を変えた。
【表3】
【0391】
Balb-Cマウスに、120nmol/Kgの投与量で試験試料IgG-PEIx4またはマスクされたIgG-PEIx4をIV注入した。試験した時点で、マウスを採血し、血液中の試料濃度を、サンドイッチELISA(コーティング:ヤギ抗ヒトFab2(Jackson、カタログ番号109-005-097);検出:ロバ抗ヒトFC HRP(Jackson、カタログ番号709-035-098))により評価した。図34(および表3)で見られるように、PEIで修飾されたIgG担体は、HSA-PEIx3.5と類似のPKパラメーター(AUCおよびCL)を提示し、特徴的な急速な除去、低いAUCおよび高いクリアランスを示した。HSA担体と同様に、マスクされたIgG担体は、その長い半減期、極めて高いAUCおよび低いクリアランスを回復し、再度、無水マレイン酸誘導体、および特に無水シトラコン酸によるマスキングは、IgGなどの本発明のPEI修飾担体に、臨床的に好ましい薬物動態プロファイルを与える。
【0392】
実施例12:タンパク質担体なしにPEI修飾された抗体のインビボ結果
高いクリアランスおよび短い血漿半減期をなくすため一過性マスキングの能力を更に試験するために、PEIで直接的に修飾された単一ドメイン抗体を、無水シトラコン酸で更にマスクした。具体的には、上述の活性抗E7 VHHを、担体なしで生成し、非可逆的方式で、ペイロードのC末端(C末端にGGGGSCリンカーを加えた)でPEI(1800Da)により修飾し、これは、ここでは、VHH αE7-PEI1800と呼ばれる。PEI修飾されたVHHを、無水シトラコン酸で更にマスクして、マスクされたPEI修飾タンパク質を得、マスクされたVHH αE7-PEI1800と命名した。
【0393】
2種の化合物:VHH αE7-PEI1800およびマスクされたVHH αE7-PEI1800、のゼータ電位を比較し、天然の修飾されないVHHと比較した。さらに、PEI修飾されたVHHおよびそのマスクされた対応物のPKを、マウスで評価した。Balb-Cマウスに、120nmol/Kgの投与量で試験試料(VHH αE7-PEI1800またはマスクされたVHH αE7-PEI1800)をIV注入した。試験時点で、マウスを採血し、血液中の試料濃度を、サンドイッチELISA(コーティング:ストレプトアビジン(Prospec、カタログ番号Pro-791-b)、続いてウサギ抗VHH+ビオチン(A2S、カタログ番号A01995-200)、検出:ウサギ抗VHHカクテル-HRP(A2S、カタログ番号A02016-200))により評価した。
【0394】
下表表4および図35で見られるように、PEI修飾されたVHHは、マウス血漿からの極めて高いクリアランスおよび極めて低いAUCを有した。本発明の担体中のPEI修飾の有害なPK効果を回復すると示された、正電荷のマスキングは、PEI修飾されたVHHのPKパラメーターを改善した。より大きな担体、例えば、HSAおよびIgG、に対するマスキングの効果は、極めて顕著であったが、低分子PEI修飾タンパク質に対する効果は、それほどではなかった。マスキングそれ自体は、強力な正電荷の効果、即ち、肝臓、脾臓および腎臓中での捕捉、を抑止したが、その小サイズは依然として、単純なサイズに関連する理由のために、高いクリアランスをもたらした。
【0395】
この目的のために、発明者らは、マスキング剤の使用に加えて、本発明のタンパク質コンジュゲートは、ペイロードの対象内の標的部位への送達を促進するために担体を含まなければならないと想定した。
【表4】
【0396】
実施例13:抗HPV-E7 VHHのインビボ結果
以前に記載された抗HPV-E7 VHHを、PEG11鎖を含み、両方がチオール基に対し反応性である2つの末端マレイミド基を有する、切断不能なリンカー経由でHSA-PEIx3.5にコンジュゲートした。C末端システイン(C末端にGGGGSCリンカー)を有するVHHを、還元剤(TCEP)で処理して、末端システインを遊離させ、その後、ビス-Mal薬剤と反応させた。クロマトグラフ精製後、今や末端マレイミド基を有するVHHを、予めPEIで修飾されたHSA(HSA当り平均3.5)、およびマスキングのためにシトラコン酸と反応させて、以下に概略図で示す、本発明の例示的タンパク質コンジュゲート(αE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5)を得た:
【化31】
【0397】
得られたマスクされたαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5を使って、皮下にHeLa-GFP細胞を移植した無胸腺ヌードマウスを治療した。PEI修飾のない同じ分子を、陰性対照として使用した。PEI修飾のない本発明のコンジュゲートは、腫瘍増殖に対し予測通り効果を示さなかった(図36A)。PEI修飾されたコンジュゲートは、腫瘍増殖に対し最小限の効果を有し、マスキングなしでは、腫瘍細胞に対する薬剤の利用能は最小限であることを示唆する。これはおそらく、マスクされない担体(図31A~31Bおよび32A)について例示された不十分な薬物動態学的および体内分布プロファイルにおいて上で例示したように、正に荷電されたコンジュゲートの粘着性に起因するのであろう。
【0398】
次に、マスクされたαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5を、腫瘍生着後に腫瘍が約100mmの平均体積に達したときにマウスの静脈内に注入した(250nmol/Kg)。治療は、薬剤および対照の定期的投与を含んだ。無水シトラコン酸マスクされたHSAx3.5、およびビークル(PBS)を、対照として投与した。マスクされたαE7-VHH-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSAx3.5で治療したマウスは、対照と比較して有意な腫瘍成長抑制を示した(図36B、両側t検定 p<0.05 マスクされた担体vsマスクされたαE7-担体)。さらに、治療は、なんらかの有害事象の欠如および動物の正常な重量(データは示さず)から明らかなように、全ての動物により良好に許容された。
【0399】
幾分限定された腫瘍増殖抑制は、抗E7 VHHが1μMを越える推定Kを有してE7タンパク質に対する限られた親和性を有する、という事実に帰することができる。
【0400】
実験を、以下の変更を含む同じプロトコルに従って繰り返した:1)薬剤の投与量を350nmol/Kgに増やし、2)注入を毎日、15連続日にわたり実施した。動物を、追加の24時間にわたり腫瘍体積についてモニターし続けた。図36Cで見られるように、第1の試験と類似の腫瘍増殖抑制が、治療開始の初期腫瘍体積が97mm未満であった治療動物の腫瘍体積の試験をした場合に観察された。投与のより高い量およびより高い頻度から予測されるように、腫瘍増殖抑制は最初に、より早期の時点で観察され、効果の大きさはまた、より大きかった。
【0401】
驚くべきことに、抑制効果は、薬剤の投与が停止された後でも持続した(図36D)。実際に、最大の効果は、更に5日間維持され、治療の休止の24日後にも存在した。ここで使用した抗E7薬剤は、担体に永続的に連結された。我々は過去に、担体が、エンドソームから脱出時に、クラスターまたは凝集体を生成することを観察した(図28B)。これは、抑制効果の持続性を説明し得る。なぜなら凝集体は、追加の薬剤を細胞質中へ経時的にゆっくり放出する、ある種のデポーとして作用し得るからである。
【0402】
初期試験の治療動物由来の腫瘍を取得し、免疫組織化学的検査を用いて、VHH薬剤およびHSA担体の存在について分析した。断面を、H&EによりおよびVHHまたはHSAPEIに対する抗体(HSA其れ自体ではなく、PEI修飾HSAに対し産生した抗体)により染色した。PBSで治療した動物由来の腫瘍(図37A~37B)は、VHHまたは担体に対して染色を示さなかった。マスクされた担体で治療した動物由来の腫瘍は、担体に対して明確で強力な染色を示すが、VHHペイロード(図37A~37B、中央)に対しては染色を示さない。マスクされた担体にコンジュゲートされた抗E7 VHHで治療した動物由来の腫瘍は、担体およびVHHペイロードの両方に対し明確に染色を示す(図37A~37B、右)。最も興味深いことに、染色は、腫瘍壊死領域でより顕著である。さらに、担体および完全なコンジュゲート両方の存在は、腫瘍全体を通して観察され、特定の領域、例えば、主要血管近く、に限定されない。この後者の観察は、腫瘍組織全体にわたるペイロード-担体コンジュゲートの効率的な分布を示唆する。
【0403】
腫瘍組織中で観察された染色が実際に、特異的染色であり、かつ壊死領域のバックグラウンド染色ではないことを確認するために、同位体対照染色を、試験した全ての組織に対し実施し、全ての治療間で比較した。全ての試料でネガティブ染色が、アイソタイプ対照(抗ウサギICウサギ(DA1E)mAb IgG XPアイソタイプ対照#3900、正常ヤギIgG、sigma NI02-100UG)を使用した場合に観察された(データは示さず)。これは、特異的壊死領域染色を確証する。
【0404】
これらの切片での担体の検出が、修飾されないHSAと交差反応しないPEI修飾されたHSAに対して産生されたポリクローナル抗体を用いて実現されたことは、強調されるべきである。さらに、無水シトラコン酸によるPEI修飾されたHSAのマスキングは実際に、マスク担体をこのポリクローナル抗体により検出できないようにする。従って、担体、PEI修飾されたHSAが、これらの腫瘍切片中で明確に検出されるという事実は、実際にマスキングが腫瘍微小環境で除去され、その暴露されたPEI修飾を用いて本発明の薬剤が細胞に侵入するのを可能にすることを示す。
【0405】
実施例14:抗BRAF VHHのインビボ結果
マスクされた薬剤を使った細胞内送達のインビボ有効性をまた、第2のVHHを用いて試験した。抗BRAF VHH(1C5)を、マスクされたHSA(3.5xPEI)に非可逆的にコンジュゲートした。マウスに対する1C5-Mal-PEG11-Mal-マスク-HSA-PEIx3.5の毒性を、評価し、担体のみ(マスクされたHSA-PEIx3.5)の効果と比較した。2種の系統のマウス(C57BLおよびNOD-Scid)は、用量漸増ルーチンを受けた。試験薬剤を、注入当り200μLの薬剤投与で、静脈内注入した。用量漸増を、50、100、250、および350nmol/Kgの1日おき投与で開始し、続いて3回の350nmol/Kgの1日おきVI注入、および最後に、毎日の5日間の350nmol/KgのIV注入を実施した。マウスを、皮膚、毛皮、眼、粘膜、歩調、分泌排泄の発生、体重減少および全体的健康の変化などの病的状態または死亡の臨床徴候についてモニターした。臨床的徴候は、試験したマウスのいずれでも観察されなかった。加えて、用量漸増および反復投与の終わりに、全てのマウスは、ケタミン-キシラジンカクテル(IP)により終末麻酔を受けた。動物を、PBS、続いて4%PFAを用いて、心臓経由灌流固定した。臓器(肝臓、心臓、腎臓、肺、脳、脾臓)を、採集し、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色した。病理学的変化は、2つの群の間で認められなかった。
【0406】
この評価で使用したペイロードは、非選択的抗BRAF剤であり、これは、ヒトおよびマウス両起源の野生型および変異されたBRAFの両方を阻害することが示された。発明者らは、本発明のペイロード-マスクされた担体コンジュゲートが、投与後に実質的に全ての臓器および組織にバイオ分布されたことを既に示した。従って、重要な細胞の酵素のこのような非選択的阻害剤が治療される動物に対して明らかな毒性効果を有しないことは、少々意外である。しかし、マスキングは、正電荷の効果を相殺し、従って、マスキング剤が除去されない限り細胞内送達を妨げることに留意されたい。マスキングはpH感受性であるので、体内分布結果は、より多くのコンジュゲートが、正常で健康な臓器および組織より低いpH環境により特徴づけられる腫瘍組織に到達したことを示した。コンジュゲートは全ての臓器および組織に到着するが、それはそこで、中性または中性よりわずかに高いpH条件(生理学的pH)に遭遇し、従ってマスキングは比較的安定であり、コンジュゲートの内部移行およびその毒性のペイロードは抑制される、ということが従って、発明者らの仮説である。これらの動物は、接種された腫瘍を有しないので、コンジュゲートは、酸性の腫瘍微小環境に遭遇せず、細胞内部移行を示さなかった。たとえ、いくらかのマスキング除去が、健康な臓器および組織中で、小さい程度に生じたとしても、このような細胞に侵入する量は、極めて少なく、かつ無効であるように思われる。
【0407】
この点を更に調べるために、担体(マスクされたHSAPEIx3.5)と比較して、腫瘍増殖を抑制する1C5-Mal-PEG11-Mal-マスクされたHSAPEIx3.5の能力を、両系統のマウスで評価した。C57BLマウスに、B16腫瘍細胞(マウスメラノーマ)を皮下で注入し、NOD-Scidマウスに、MEL-526(ヒトBRAF過剰発現メラノーマ細胞)を皮下で注入した。C57BLマウスでの試験を、腫瘍が十分に確立(115mm)されると実施し、一方でNOD-Scidマウスでの試験を、腫瘍が初期増殖段階(約6mm)にある間に実施した。これらのモデルは従って、癌を治療するならびに予防する能力を示す。両方の事例で、試験された薬剤、1C5-Mal-PEG11-Mal-マスクされたHSAPEIx3.5は、単なるペイロードのないマスクされたHSAPEIx3.5に比較して、腫瘍増殖の抑制を示した(図38A~38B)。1C5-Mal-PEG11-Mal-マスクされたHSAPEIx3.5(αBRAF-M-担体)は、B16の増殖に対しわずかな抑制効果を有した(図38A)。B16腫瘍は極めて高悪性度であり、かつそれらの増殖速度は急速であったことに留意されたい。従って、このわずかな増殖抑制であっても依然として、腫瘍増殖に対するマスクされたコンジュゲートの大幅な機能的効果を示す。NOD-Scidマウスに接種されたMEL-526腫瘍の場合、マスクされたコンジュゲートは、腫瘍に対するより有意な抑制効果を有し、測定の最後で47%の腫瘍体積の減少を示した(図38B)。
【0408】
このデータは更に、腫瘍中などの酸性環境下でのマスキングの選択的除去を示した。非特異的抗BRAF VHHは、健康なマウスに対して測定可能な効果を有しなかったが、酸性TMEに対する曝露により、抗腫瘍効果をもたらした。これは、作用部位特異性および非選択的ペイロードの使用を可能にし、これらの低pH環境で見出される細胞に対してのみ、細胞傷害性または生物学的効果を付与する。さらに、これは、本発明のコンジュゲートは全ての臓器および組織に到達するが、それらは実際に、これらの臓器および組織の細胞中に侵入しないことを示唆する。ペイロードは細胞内標的に向けられるので、健康な組織中のこれらのコンジュゲートによる作用は示されず、オフターゲット効果のリスクを大きく低減する。
【0409】
実施例15:αE7 VHHペイロードを有する異なる構築物のPKおよび体内分布
異なるマスクされた構築物の薬物動態プロファイルおよび体内分布を、B16腫瘍を接種したマウスで評価した。全ての構築物は、ペイロードとして抗E7 VHH(MAL構築物におけるような1回反復またはPEP構築物におけるような3回反復のGSCリンカーを有する)を保有した。このVHHを、3.5または8個のPEIで修飾された担体にコンジュゲートし、一過性マスキング剤である、無水シトラコン酸(CA)でマスクした。VHHを、可逆的なジスルフィド結合、またはマレイミド化学を利用する非可逆的結合を介して、これらの担体にコンジュゲートした。抗E7 VHHをまた、非可逆的なマスキング剤である、メチル無水コハク酸(MSA)(これは、その構造において無水シトラコン酸に類似しているが、二重結合を欠く)で事前にマスクした8PEIで修飾した担体に非可逆的にコンジュゲートした。
【0410】
B16腫瘍担持C57BLマウスを用いて、上記薬剤の体内分布および薬物動態プロファイルを評価した。腫瘍が105mmの平均体積に発達すると、マウスは、250nmol/Kgで種々の薬剤の単回IV注入を受けた。血漿および臓器試料を、投与後の5および30分、ならびに2、6、24、48、および72時間に採取した。血漿および臓器の両方での構築物の分析を、VHHのための自社製のELISAを用いて、ペイロード単独に対して実施した。図39は、接種された動物中の異なる構築物の薬物動態プロファイルを示す。表5は、各構築物の薬物動態学的パラメーターを要約する。
【表5】
【0411】
薬物動態プロファイルおよびパラメーターは、異なる構築物間で極めて類似している。これはおそらく、最終構築物の類似のpIおよびそれらの実質的に同一のサイズの結果であろう。重要なことに、マスキングの効果は、PEI修飾のレベルに関わらず、実質的に同じであるである。同様に、異なるリンカーは、何らの効果もないように見える。MSAでマスクされた構築物は実際に、幾分より長い血漿中滞留時間およびより低いクリアランスを示し、これはおそらく、そのマスキングが除去されず、従って細胞中へのその取り込みが最小であるか、ないしは存在しないという事実によるということに留意されたい。それは、従って、血漿中により高いレベルで残存する。
【0412】
腫瘍を含む異なる臓器を、採取し、VHHのレベルを、適切な自社製VHH ELISAにより分析した。図40は、異なるコンジュゲートの臓器曝露を要約する。これらの体内分布データは、コンジュゲート間で劇的な差異を示さない。可逆的リンカーコンジュゲートについての腎臓曝露データは、材料が遊離VHHの混入を含んだので、過剰推定であることに留意されたい。この遊離VHHは腎臓を通して速やかに循環から排出されるが、この臓器での初期測定は、この遊離VHHを測定し、全体AUC分析に影響する。いずれの場合でも、他の臓器に比べて、腫瘍中のペイロードの濃縮があることを認めることができる。これは、担体単独で観察された濃縮と一致する。
【0413】
薬物動態学および体内分布データは、PEIレベルおよびリンカーの可逆性の異なる、異なるマスクされたコンジュゲート間で劇的な差異を示さない一方で、ELISAは、組織/腫瘍中に存在する薬剤の総量のみを示すが、外部のペイロードと細胞内部移行したペイロードを区別できない。この目的のために、上記の蛍光標識された担体分子を、インビボで試験した。HSAPEIx8CAおよびHSAPEIx8MSAを、HeLa-GPF腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスFoxn1nuマウスに注入した。異なる担体を、200μL中の180nmol/Kgの投与量で注入し、6時間後、腫瘍を採取し、異なる担体の分布を、共焦点顕微鏡で評価した。図41Aで見られるように、蛍光標識されたCAマスクされた担体(HSAPEIx8CA)は、腫瘍細胞の内側で明確に検出された(腫瘍細胞は、GFP蛍光により特定された)。実際に、担体は、細胞の核を覆っているように見え、それが、これらの細胞の細胞質中に分散されていることを示している。対照的に、蛍光標識されたMSAマスクされた担体(HSAPEIx8MSA)は、細胞の外側および細胞間でのみ検出され、それらの細胞質中では検出されなかった(図41B、矢印は、赤く染色されない、腫瘍細胞周辺の細胞質を示す)。担体は永久的マスキングを有して腫瘍細胞中に効率的に侵入できないので、一過性マスキングの有効性が、明確に示される。類似の結果が、CAマスクされたコンジュゲート(図41C)、MSAマスクされたコンジュゲート(図41D)およびマスクされないコンジュゲート(図42E)で治療されたマウスのB16腫瘍でも観察された。腫瘍細胞は、この腫瘍中で蛍光を発しなかったが、コンジュゲートは、一過性マスキングを用いた場合のみ細胞に有意に侵入し、永久的マスキングでは、侵入しなかったことは明らかである。さらに、マスキングは、腫瘍に到達したコンジュゲートの量を明確に濃縮した。
【0414】
さらに図42A~42Bで見られるように、MSAマスクされた担体は、腫瘍細胞中で実質的に検出されない。腫瘍細胞は、それらの核の二重染色(緑と青)により特徴づけられる。しかし、担体は、非腫瘍マウス細胞(単一青色核染色を特徴とする)を含む領域でのみ容易に検出できる。それらの形状および形態に基づき、これらの細胞は、血管の内皮細胞である。このことは、このマスキングの非一過的な特性のため、負に荷電されたマスクされた担体は、内皮バリアーを効率的に横断し腫瘍組織中および腫瘍細胞中に分布できないことを示唆している。非腫瘍組織、すなわち酸性の微小環境のない組織(例えば、肝臓)を検査した場合、コンジュゲートの局在化は、それが細胞に侵入できず主に細胞間に局在化されるという点で、2種のマスキング剤間で類似していた(図42C~42D)。まとめると、このデータは、一過的にマスクされた担体およびコンジュゲートの薬物動態学および体内分布プロファイルは、対応する非一過的マスクコンジュゲートのプロファイルに極めて類似しているが、健康な細胞への曝露を回避している間の、腫瘍組織中のそれらの分布およびそれらの腫瘍標的細胞中への内部移行能力において劇的な差異が存在することを明確に示す。これらの差異は、細胞の内部または外部にある部分を識別できない、ELISAなどの検出ツールを用いることにより確認できない。
【0415】
実施例16:完全マスキング
今まで、担体それ自体に対するマスキングのみを試験してきた。活性の選択性をさらに増強するために、ペイロードを含む全コンジュゲートのマスキングを、試験した。このようなマスキングは、このマスキングが作用部位近傍で除去されるまで、またはエンドソーム中でのさらなるマスキング除去後に細胞其れ自体への内部移行のちょうど後まで、ペイロードの活性を低下または完全に阻害する可能性があり、したがってオフターゲット効果を回避する。全コンジュゲートのマスキングはまた、種々のプロセスに関連した利点も有し得る。このために、1C5-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSA-PEIx3.5および1C5-S-Mal-PEG11-Mal-S-HSA-PEIx8を、マスキングステップで用いられる過剰の無水シトラコン酸(CA)により制御される、異なるマスキングレベルでマスクした。得られたマスキングレベルを、IEFおよびゼータ電位測定により評価した。さらに、薬剤にコンジュゲートされたマスキング部分の数もまた、MALDI-ToF質量分析により分析しおよび定量化した。対応するIEFゲル(データは示さず)で裏付けられた、下表6で見られるように、全コンジュゲートのマスキングはまた、PEI修飾を相殺でき、かつ負電荷を生じることができ、従ってこれらのコンジュゲートのゼータ電位を低下させる。
【表6】
【0416】
担体だけのマスキングでのように、完コンジュゲートのマスキングは、37℃でクエン酸緩衝液とpH4にてインキュベーションすることにより、インビトロで除去できる。8時間後、完全なマスキング除去が、担体上のPEIレベルに関係なく達成された(IEF結果は示されない)。
【0417】
マスクされたペイロードの活性を、マスキング除去後に更に試験した。このために、BRAFへの結合ELISAを、マスキング除去後に抗BRAFペイロード(1C5)に対し実施した。このアッセイでは、担体(HSA-PEI)の存在は、おそらくELISAプレートへの高度に正に荷電されたタンパク質の粘着性のため、高い無関係シグナルを与えることが観察された。従って、この場合のみに、ペイロード、1C5-Hel-LCを、使用し、無水シトラコン酸でマスクした(ペイロード中の陽性リジン残基を介するマスキング)。マスクされたペイロードを、マスキング除去の前後で、BRAFを結合するその能力について試験し、抗BRAF VHHの結合能力は、マスキング後に実質的に消失された(図43A)。しかし、マスキング除去は、結合を完全に回復した。加えて、マスキングおよびマスキング除去の後のペイロード電荷の変化を、IEFにより(データは示さず)およびゼータ電位により(表6)により評価し、そのマスキング後のペイロードのゼータ電位の低下を明確に見ることができ、これは、使用した過剰のマスキング剤と関連する。さらに、酸性条件は、ペイロードのゼータ電位がその元の値に回復するので、マスキングを完全に除去したことを、明確に見ることができる。
【0418】
担体のみがマスクされたコンジュゲート(図30A~30B)と同様に、完全にマスクされたコンジュゲートもまた、マスキング除去後に、それらのインビトロ細胞傷害活性を回復すると示された。図43Bで見られるように、剛性のヘリカルリンカーと共に発現され3.5PEIを有する担体に更にコンジュゲートされた1C5ペイロードは、マスキング除去後に、その活性を回復した。さらに、完全マスクされた1C5-HSA-PEIx3.5および完全マスクされた1C5-HSA-PEIx8は、MEL-526細胞に対し影響を有しない。これらのコンジュゲートは、インビトロマスキング除去後に、それらの活性(全くマスクされなかった1C5のコンジュゲートと同等の活性)を回復した(図43B、PEIx3.5のデータは示していない)。
【0419】
実施例17:部分的マスキング
内部移行を妨げるマスキングのレベル、または、言い換えれば、内部移行に必要とされる正電荷のレベルを特定するために、HSA-PEIx3.5を、適切な蛍光染料(ATTO542またはATTO647N)で標識し、標識されたタンパク質をその後、異なるモル当量で非可逆的なマスキング剤、メチル無水コハク酸(MSA)でマスクして、様々な異なるレベルのマスキングを有する担体を得た。各タンパク質についてのマスキングのレベルを、IEFおよびゼータ電位により評価した。細胞中に内部移行する異なるマスキングレベルで標識された担体の能力を、A375細胞との16時間インキュベーションにより、続いてフローサイトメトリーによる蛍光シグナルを有する細胞の検出により評価した。蛍光標識を、HSAの位置34の遊離システイン上の修飾に向けられたマレイミド部分を有する2.5モル過剰のATTO-542(ATTO-TEC、カタログ番号AD542)を用いてHSAPEIx3.5に対し、またはマレイミド部分を有する5モル過剰のATTO-647N(ATTO-TEC、カタログ番号AD647-41)を用いてHSAPEIx3.5に対して実施した。このアッセイのために、可逆的マスキング(無水シトラコン酸による)ではなく、非可逆的マスキングを使用して、内部移行アッセイ中のマスキング除去の可能性を回避した。IEF分析は、pIと、マスキング反応に使用したMSA試薬のレベルの間の強い相関を示した(データは示さず)。ATTO542の結果を、表7に要約する。
【表7】
【0420】
ゼータ電位測定を、ATTO647N標識構築物(マスクされないおよび種々のモル過剰のMSAでマスクされた)に対し実施し、類似の結果を生じ、最大で60モル過剰のMSAは正のゼータ電位を示し、および80モル以上(最大で200モル当量)の過剰のMSAは負のゼータ電位を示した。
【0421】
A375細胞(ウェル当り0.5x10)を、12時間播種し、その後20(または50)ngの標識された担体(HSAPEIx3.5ATTO647N)を、ウェルに加えた。試料を、16時間インキュベートした。取込み期間の終わりに、上部培地を、洗い流し、細胞を、プレートから剥離させ、冷却したPBSで洗浄した。細胞中に内部移行された担体の量を、同位体対照試料と比較して、フローサイトメトリーでのATTO647N検出により評価した。内部移行は、マスキングレベルの増大に応じて減少した(図44)。さらに、マスキングなしのHSA-PEIx3.5で達成された少なくとも20%の内部移行と同等の内部移行レベルが、60モル過剰以下のMSAが反応で使用された場合に達成された。全てのこれらの試料は、ゼータ電位分析で正の値を与え、一方で負の値を有する試料は、10%の内部移行でさえも示さなかった。従って、ゼロ未満のゼータ電位が、機能的なマスキングのために必要とされる。無水シトラコン酸マスキングはコンジュゲートに負電荷を導入するという事実に基づき、アミン基(例えば、PEIのアミン基)の約50%以上がマスクされる必要があることが推定される。従って、発明者らは、本発明のタンパク質コンジュゲート中(例えば、細胞浸透性部分内)の保護されないアミンに対する保護されたアミンのモル比は、少なくとも約7:10、少なくとも約1:1であり、または約1:1~100:1(これらの間の任意の範囲を含む)などの、過剰の保護アミンを含むと推定した。
【0422】
実施例18:腫瘍標的化-抗PSMA
マスキングは、酸性の標的領域でコンジュゲートの濃縮をもたらすが、追加の標的化が有益な場合がある。この目的のために、発明者らは、追加のターゲティング部分の使用を調査した。これは、標的細胞上の細胞外マーカーを結合するその能力で選択される任意のタンパク質ドメイン、または抗体様構造であり得る。第2のVHHを、ターゲティング部分として選択し、細胞内標的を標的にするペイロードVHHと直列に発現させた。マスキングは、それが強力な静電気的結合を除去するのでターゲティング部分の使用を可能にし、かつマスクされたコンジュゲートが血漿および臓器を動き回ってターゲティング部分の標的を見つけることを可能にする。
【0423】
JVZ-007として知られる前立腺特異的膜抗原(PSMA)を、ターゲティング部分として選択した。PSMAは、前立腺癌細胞上に提示されることが知られており、かつ前立腺腫瘍へと種々の造影剤を向けるために広範に使用されてきた。直列型薬剤を、JVZ-007および抗BRAF、1C5、VHHを含んで生成した。2種の直列に発現された薬剤を、生成し、1種はN末端でおよび1種はC末端で発現される抗PSMA VHHを有し、、それぞれ、αPSMA(JVZ-007)-Hel-αBRAF(1C5)-Hel-L-CysおよびαBRAF(1C5)-Hel-αPSMA(JVZ-007)-Hel-L-Cysを作成する。C末端システインを有する両方の末端は、担体へのコンジュゲーションを可能にする。
【0424】
PSMA陽性細胞(LNCaPクローンFGC、前立腺癌、ATCC番号CRL-1740)への2種の構築物の結合(担体へのコンジュゲーションの前)を、FACSにより評価し、PSMA陰性細胞(PC-3、前立腺癌、ATCC番号CRL-1435)へのこれらの構築物の結合と比較した。これらの細胞への活性なVHH、1C5、単独の結合もまた、評価した。
【0425】
予想通り、抗PSMA VHHは、PSMA陽性細胞を強力に結合し、PSMA陰性細胞の結合を示さない。興味深いことに、抗BRAF VHHと直列で発現された抗PSMA VHHを含む両方の薬剤はまた、PSMA陽性細胞に対する極めて強力な結合を示し、PSMA陰性細胞に対する結合を示さない(図45A)。両方の構築物は、PSMA陽性細胞に対し同じレベルの結合を示した。また予測される通り、抗BRAF 1C5 VHHは、PSMA陰性または陽性細胞への結合を示さない。これらの結果は、ターゲティング部分の別の活性部分との直列型発現は、その標的を認識し結合するターゲティング部分の能力に悪影響を与えないことを示す。
【0426】
記載された薬剤を、本発明のマスク担体に更にコンジュゲートし、PSMA陽性細胞へのそれらの結合を、以前と同様にFACSにより評価した。コンジュゲート(JVZ-1C5-HSA-PEIx3.5-CA)を含む抗PSMAは、PSMA陽性細胞(LNCaP前立腺癌細胞)の結合を示し、陰性細胞(MEL-526メラノーマ癌細胞)の結合を示さなかった(図45B)。これは、マスクされた担体へのコンジュゲーションは、標的への結合を阻害しないことを示す。コンジュゲートされたペイロードと同等にPSMA陽性細胞に結合された、コンジュゲートされないペイロード、JVZ-1C5は、担体がターゲティング部分の結合に影響しなかったことを示す。コンジュゲート(1C5-JVZ-HSA-PEIx3.5-CA)を含む他の抗PSMAもまた、LNCaP細胞の結合を示し、PSMA陰性細胞の結合を示さなかった(データは示さず)。試験した薬剤のいずれも、PSMA陰性であるPC3前立腺癌細胞への結合を示さなかった(データは示さず)。
【0427】
抗BRAF部分と直列で抗PSMA部分を発現することは、PSMAを結合するその能力を妨害しないことを示したので、抗BRAF部分を介してBRAFを依然として認識し結合する直列型構造の能力を試験した。これを、組換え型BRAF結合ELISAにより実施した。図46で見られるように、結合は親抗BRAF VHH単独と比較して若干弱められるが、抗BRAFおよび抗PSMA部分を直列に発現する両方の構築物は、BRAFを結合するそれらの能力を維持した。
【0428】
次に、細胞内のBRAFを阻害し細胞死滅を引き起こすマスクされない担体を有する直列型構築物の能力を、評価した。ターゲティング部分を有して発現された抗BRAF薬剤の細胞傷害活性を、2種の異なる細胞株、MEL-526(PSMA陰性)およびLNCaP(PSMA陽性)で評価した。両方の細胞株で、直列型薬剤は、細胞傷害性を示し、表面部分への結合に関係なく構築物が内部移行され、エンドソームを脱出し、BRAFを調節できることを示した(図47)。この細胞傷害性は、同じ担体にコンジュゲートされた抗BRAF VHH単独で示されたものと類似の大きさであった。これらの結果は、送達薬剤として機能するターゲティング部分および活性部分の両方を組み込むこれらの薬剤の潜在力を示す。
【0429】
直列で発現された抗PSMA-抗BRAF(JVZ-1C5)を、マスクされた担体に更にコンジュゲートし、そのインビボ体内分布を、評価する。無胸腺ヌードFoxn1nuマウスに、PSMA陽性癌細胞(例えば、LNCaP腫瘍細胞)を注入する。細胞を、10細胞/100μLで、または腫瘍開始をもたらす適切な量で皮下に注入する。マウスに、200μL中の250nmol/Kgの投与量で1C5-マスクHSA-PEIx3.5またはJVZ-1C5-マスクHSA-PEIx3.5を注入する。臓器および腫瘍を、注入からの異なる時点(例えば、2、24、および48時間後)で採取し、腫瘍中および他の臓器中のコンジュゲートの量を、評価する。ELISA(例えば、抗VHH ELISA)を用いて、存在する本発明の総ペイロードを評価する。画像化をまた、上述のように実施し、腫瘍内および腫瘍細胞内の分布を、評価する。2セットの治療されたマウスの総腫瘍重量腿もまた、モニターする。腫瘍へのおよび腫瘍細胞中への増大した送達が、送達部分が腫瘍への標的化を増大させるに伴い、直列型JVZ-1C5-マスクHSA-PEIx3.5薬剤で観察される。腫瘍での増大はまた、他の健康な組織での付随する減少につながる。腫瘍量の減少により測定される、腫瘍細胞死滅の増大もまた、ターゲティング部分を含む直列型分子で観察される。
【0430】
本発明はその特定の実施形態と共に説明されてきたが、多くの代替物、修正物および変形物があることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の請求項の範囲の趣旨と広い範囲に入るこのような代替物、修正物および変形物のすべてを包含することが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
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図18
図19
図20
図21
図22
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図24
図25
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図27A
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図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図28F
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
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図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
図36C
図36D
図37
図38
図39
図40
図41A
図41B
図41C
図41D
図41E
図42A
図42B
図42C
図42D
図43
図44
図45
図46
図47
【配列表】
2024539411000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロードを含むタンパク質コンジュゲートであって、前記生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合され、前記アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合されかつ前記保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ;かつ負のゼータ電位により特徴づけられる、タンパク質コンジュゲート。
【請求項2】
a.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されるタンパク質担体;
b.細胞内標的と相互作用する生物学的ペイロード;および
c.前記タンパク質担体と前記生物学的ペイロードの間のリンカー、
を含む、タンパク質コンジュゲートであって、
前記アミン基の少なくとも一部は、保護基に結合され;
前記保護基は、7未満のpH値で切断を受けることができ;
および負のゼータ電位により特徴づけられる、タンパク質コンジュゲート。
【請求項3】
前記保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて高められた血液中安定性、または前記保護基を欠く類似のタンパク質コンジュゲートに比べて、7未満のpH値を有する生体組織内での増大した蓄積により特徴づけられ、任意に前記生体組織は、腫瘍である、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項4】
前記複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、または両方を含み;かつ複数のアミン基の少なくとも50%は、前記保護基に結合される、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項5】
前記リンカーは、共有結合により前記担体、前記ペイロードまたは両方に連結される、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項6】
前記保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含む、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項7】
前記部分は、カルボキシ基を含む、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項8】
前記保護基は、式1:
【化1】
、により表され、式中、nは、0~5の範囲の整数であり;
【化2】
は、前記アミン基への付着点を表し、および
【化3】
は、単結合または二重結合を表し;RおよびRはそれぞれ独立に、H、任意に置換されるアルキル、任意に置換されるシクロアルキル、任意に置換されるアリールまたはヘテロアリール、およびカルボキシアルキル、またはこれらの組み合わせから選択される置換基を表し;またはRおよびRは、環を形成するように一緒に結合される、請求項またはに記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
RおよびRの1個は、HでありかつRおよびRの別の1個は、アルキルまたはカルボキシアルキルを含む、請求項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項10】
前記保護基は、
【化4】
であって、その任意の塩を含み、RおよびRは、Hおよびメチルから選択され、かつRまたはRは、メチルであり、任意に前記保護基は、無水シトラコン酸由来である、請求項6または7に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項11】
前記細胞浸透性部分は、ポリアミンおよびポリエチレンイミン(PEI)から選択される陽イオンポリマーを含む、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項12】
前記PEIは、直鎖PEI、2000ダルトン未満の分子量を有する分岐PEI、または100~1000ダルトンの分子量を含むPEIである、請求項11に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項13】
a.前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的を結合する抗原結合分子である、
b.前記生物学的ペイロードは、切断されると前記細胞内標的との相互作用を減らすジスルフィド結合を欠く、ならびに
c.前記抗原結合分子は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、
の少なくとも1つである、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項14】
前記タンパク質担体または生物学的ペイロードは、複数のPEI分子を含み、任意に前記タンパク質担体は、2~30個のPEI分子を含む、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項15】
前記タンパク質担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)である、任意に前記HSAは、3~10個のPEI分子を含む、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項16】
前記リンカーは、生体適合性ポリマー、生分解性ポリマーまたは両方を含む、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項17】
前記生体適合性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、任意に前記生分解性ポリマーは、ポリアミノ酸を含み、前記リンカーは、(i)前記生体適合性ポリマーまたは前記生分解性ポリマーにおよび(ii)前記タンパク質担体に共有結合されるスペーサーを更に含み、かつ共有結合は、クリック反応生成物を介する、請求項16に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項18】
前記リンカーは、生体切断可能な結合を含み、任意に前記生体切断可能な結合は、ジスルフィド結合を含む、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項19】
前記リンカーは、少なくとも24時間にわたり血液中で実質的に安定であり、かつ前記リンカーは、ペプチドリンカーであ任意に安定は、24時間後に血液中で25%未満の切断を含む、請求項2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項20】
前記生体切断可能な結合は、立体的に障害される、請求項18または19に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項21】
前記HSAは、配列番号1のアミノ酸配列、またはシステイン34(C34)を含むそのフラグメントまたは相同体を含む、請求項1519のいずれか1項に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項22】
前記リンカーは、ジスルフィド結合を介して前記HSAに結合され、任意に前記リンカーは、HSAの前記C34に結合される、請求項21に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項23】
前記ジスルフィド結合は、前記C34の近位にあり、近位は、5~15オングストロームの範囲の前記C34からの距離である、請求項22に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項24】
前記タンパク質担体は、DNAを欠く、または前記生物学的ペイロードは、細胞表面タンパク質を結合しない、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項25】
前記タンパク質コンジュゲートは、-1mV未満の負のゼータ電位により特徴づけられる、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項26】
検出可能なタグを更に含み、任意に前記タグは、前記生物学的ペイロードにコンジュゲートされる、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項27】
前記タンパク質コンジュゲートは、細胞浸透性コンジュゲートである、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項28】
前記保護基は、無水シトラコン酸由来であり、任意にクリック反応生成物は、スクシンイミドチオエーテルである、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項29】
標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を更に含む、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項30】
a.前記ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、
b.前記ターゲティング部分は、リンカーを介して前記タンパク質担体にコンジュゲートされる、ならびに
c.前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれ、任意に前記ターゲッティング部分および前記生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される、
の少なくとも1つである、請求項29に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項31】
細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法であって、
a.前記細胞内標的を結合する生物学的ペイロードを提供することであって、前記生物学的ペイロードは、複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合される、提供すること;および
b.保護アミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得るために、7未満のpH値で切断を受けることができる保護基により前記アミン基の少なくとも一部を保護するのに十分な条件下で生物学的ペイロードを提供すること、
を含み、それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する、方法。
【請求項32】
細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する方法であって、
a.前記細胞内標的に結合する生物学的ペイロードを提供すること;
b.複数のアミン基を含む細胞浸透性部分に共有結合されたタンパク質担体を提供すること;
c.タンパク質コンジュゲートを産生するためにリンカーを介して前記タンパク質担体に前記生物学的ペイロードを共有結合させるのに十分な条件下で前記生物学的ペイロードおよび前記タンパク質担体を提供すること;および
d.保護アミン基を含む前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを得るために、7未満のpH値で切断を受けることができる保護基により前記アミン基の少なくとも一部を保護するのに十分な条件下で前記タンパク質担体を提供すること、
を含み、
それにより細胞内標的を結合できる電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを産生する、方法。
【請求項33】
ヒト血液、血漿または血清中でおよび細胞質条件中で前記リンカーの安定性を決定すること;およびヒト血液、血漿または血清中で安定でありかつ前記細胞質条件中で不安定であるリンカーを含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含任意に安定は、24時間後に血液中で25%未満の切断を含み、不安定は、24時間後に前記細胞質条件中で少なくとも50%の切断を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
中性または塩基性pHでおよび酸性pHで前記保護アミン基の安定性を決定することおよび中性または塩基性pHで安定でありかつ酸性pHで不安定である保護されたアミン基を含む電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを選択することを更に含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
保護するために十分な条件下で前記タンパク質担体を前記提供することは、前記タンパク質担体へ前記生物学的ペイロードを前記結合することの前にまたは前記タンパク質担体へ前記生物学的ペイロードを前記結合することの後に起こる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
前記決定することは、前記タンパク質コンジュゲートの形成の前にまたは前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートの形成の後で実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記タンパク質担体は、HSAを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞浸透性部分は、少なくとも1個のPEIを含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項39】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、負のゼータ電位により特徴づけられる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項40】
前記複数のアミン基は、一級アミン、二級アミン、または両方を含み;かつ前記複数のアミン基の少なくとも80%は、保護されたアミン基である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項41】
前記保護基は、6~8の間のpHで負に荷電される部分を含任意に前記部分は、カルボキシ基を含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項42】
前記タンパク質担体または生物学的ペイロードは、少なくとも2分子のPEIに共有結合され、任意に前記タンパク質担体は、少なくとも8分子のPEIに共有結合される、または前記生物学的ペイロードは、切断されると前記細胞内標的への結合を減らすジスルフィド結合を欠く、請求項31または32に記載の方法。
【請求項43】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートを細胞と接触させることおよび前記生物学的ペイロードが前記細胞の細胞質に侵入することを確認することを更に含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項44】
前記リンカーは、生体適合性ポリマーまたは生体切断可能な結合を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記共有的に連結することは、クリック反応を介する、またはジスルフィド結合形成を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的ペイロードは、第1の反応基を含むリンカーに共有結合され;かつ前記タンパク質担体は、前記第1の反応基に対し反応性を有する第2の反応基を含むリンカーに共有結合され;かつタンパク質担体に前記生物学的ペイロードを共有結合させるために十分な前記条件は、前記第1の反応基を前記第2の反応基と反応させることを含み、それにより前記生物学的製剤および前記タンパク質担体を共有的に連結する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項47】
(i)前記生物学的ペイロードは、前記タンパク質担体のシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合される;または(ii)前記タンパク質担体は、前記生物学的ペイロードのシステインとジスルフィド結合を生成できるリンカーに共有結合され、かつ結合されるは任意に、ジスルフィド結合を介する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
標的細胞の表面上で発現されるタンパク質に結合するターゲティング部分を選択することおよび前記生物学的ペイロード、前記タンパク質担体または前記タンパク質コンジュゲートに前記ターゲティング部分をコンジュゲートすることを更に含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項49】
a.前記ターゲティング部分は、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ホモダイマー(VHH)、ナノボディ、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)および抗体ミメティックタンパク質から選択される、ならびに
b.前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、単一ポリペプチドに含まれ、任意に前記ターゲティング部分および前記生物学的ペイロードは、リンカーにより分離される、
の少なくとも1つである、請求項48に記載のタンパク質コンジュゲート。
【請求項50】
前記電荷マスクされたタンパク質コンジュゲートは、請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲートである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項51】
請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲートおよび薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む、医薬組成物。
【請求項52】
全身投与用に処方される、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記組成物は、徐放性組成物でありかつ投与後少なくとも2~3日間にわたり標的細胞の細胞質中に前記生物学的ペイロードを放出する、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項54】
細胞内標的を結合するインビトロの方法であって、前記細胞内標的を発現する細胞を請求項1または2に記載のタンパク質コンジュゲートまたは請求項51に記載の医薬組成物と接触させることを含み、前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的を結合し、それにより前記細胞内標的を結合する、方法。
【請求項55】
a.細胞内標的を検出する方法でありかつ前記タンパク質コンジュゲートは、検出可能なタグを含み、かつ前記検出可能なタグを検出することを更に含む、
b.前記細胞内標的を調節する方法でありかつ前記生物学的ペイロードは、前記細胞内標的の作動薬または拮抗薬である、ならびに
c.前記細胞は、標的表面タンパク質を発現しかつ前記タンパク質コンジュゲートは、前記標的表面タンパク質に結合するターゲティング部分を含む、
の少なくとも1つである、請求項54に記載の方法。


【国際調査報告】