(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ペプチドボロン酸系化合物の新規な結晶形およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20241018BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20241018BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07F5/02 D CSP
A61K31/69
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527103
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2022130193
(87)【国際公開番号】W WO2023078437
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111310759.6
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169227
【氏名又は名称】チャンスー チュアンテ ファーマシューティカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU CHUANGTE PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, North side of Zao Wei Road, Development Zone, Dafeng District, Yancheng, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー ヨンチアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チー
(72)【発明者】
【氏名】リウ チア
(72)【発明者】
【氏名】リー ツァンツァン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヤン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H048
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA43
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZB27
4H048AA01
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB20
4H048AD15
4H048BB14
4H048BB16
4H048BB20
4H048BB21
4H048BB48
4H048BC51
4H048VA20
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA32
4H048VA40
4H048VA77
4H048VB10
(57)【要約】
ペプチドボロン酸系化合物の新規な結晶形およびその製造方法であり、具体的には結晶形A、結晶形Bおよび結晶形Dの3種類の結晶形ならびにその調製方法を開示する。上記3種類の結晶形は、外観状態が安定で、貯蔵安定性があり、医薬品製剤の製造に適し、かつ製造方法が簡単で、濃縮操作の使用を避け、製品の清澄度が比較的高く、プロセスは簡単で効率的であり、規模化生産が可能であり、そして環境に優しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Aであって、前記結晶形AのX線粉末回折パターンは、9.09、11.30、14.27、17.00、17.61、20.28、23.75、24.85、25.25の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2である、
ことを特徴とする結晶形A。
【請求項2】
前記結晶形Aは主に、
有機塩基を有機溶媒Iに溶解し、70~75℃まで昇温するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた溶液に、70~75℃に制御された温度で、((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸/有機溶媒I溶液を滴下するステップ(2)と、
滴下終了後、60℃まで降温し、2時間撹拌し、20~25℃まで降温し、8時間撹拌し、ろ過し、乾燥して混晶固体を得るステップ(3)と、
前記混晶固体を、有機溶媒IIに溶解し、25~35℃で2時間撹拌し、55~65℃まで昇温して2時間撹拌し、15℃/時間の昇温速度を保持し、25~35℃で2時間撹拌し、15℃/時間の降温速度を保持し、晶析するステップ(4)と、
ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Aを得るステップ(5)、というステップによって調製され、
そのうち、前記有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、またはエチレンジアミンから選ばれ、
溶媒IまたはIIは、酢酸エチル、ジクロロメタン、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒またはそれらの混合物から選ばれ、
溶媒Iと有機塩基との体積質量比は、mL/g単位で15~45:1であり、
溶媒IIと混晶固体との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Bであって、前記結晶形BのX線粉末回折パターンは、8.44、14.39、15.08、16.98、19.76、22.17、22.41、22.53、25.62の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2である、
ことを特徴とする結晶形B。
【請求項4】
請求項3に記載の結晶形Bの調製方法であって、前記結晶形Bは主に、
請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒IIIに溶解し、60℃で清澄になるように撹拌するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた溶液に、適量の溶媒IVを滴下し、晶析し、ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Bを得るステップ(2)、というステップによって調製され、
そのうち、溶媒IIIおよび溶媒IVは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはそれらの混合物から独立的に選ばれ、
溶媒IIIと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で5~30:1であり、
溶媒IVと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で80~120:1である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Dであって、前記結晶形DのX線粉末回折パターンは、6.88、8.26、9.15、11.47、13.82、16.61、18.39、19.64、20.80の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2である、
ことを特徴とする結晶形D。
【請求項6】
前記結晶形Dは主に、
請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒Vに溶解し、60℃で5時間撹拌し、晶析するステップ(1)と、
ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Dを得るステップ(2)、というステップによって調製され、
そのうち、溶媒Vは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物から選ばれ、
溶媒Vと結晶形Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1である、
ことを特徴とする請求項5に記載の結晶形D。
【請求項7】
医薬組成物であって、前記医薬組成物は薬学的に許容されるベクターと、
(a)請求項1または2に記載の結晶形A、
(b)請求項3または4に記載の結晶形B、および
(c)請求項5または6に記載の結晶形D
からなる群より選ばれる1種または2種以上の結晶の組み合わせと
を含む、ことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の結晶形Aの調製方法であって、
有機塩基を有機溶媒Iに溶解し、70~75℃まで昇温するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた溶液に、70~75℃に制御された温度で、((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸/有機溶媒I溶液を滴下するステップ(2)と、
滴下終了後、60℃まで降温し、2時間撹拌し、20~25℃まで降温し、8時間撹拌し、ろ過し、乾燥して混晶固体を得るステップ(3)と、
前記混晶固体を、有機溶媒IIに溶解し、25~35℃で2時間撹拌し、55~65℃まで昇温して2時間撹拌し、15℃/時間の昇温速度を保持し、25~35℃で2時間撹拌し、15℃/時間の降温速度を保持し、晶析するステップ(4)と、
ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Aを得るステップ(5)と、を含み、
そのうち、前記有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、またはエチレンジアミンから選ばれ、
溶媒IまたはIIは、酢酸エチル、ジクロロメタン、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒またはそれらの混合物から選ばれ、
溶媒Iと有機塩基との体積質量比は、mL/g単位で15~45:1であり、
溶媒IIと混晶固体との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項9】
請求項3に記載の結晶形Bの調製方法であって、
請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒IIIに溶解し、60℃で清澄になるように撹拌するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた溶液に、適量の溶媒IVを滴下し、晶析し、ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Bを得るステップ(2)と、を含み、
そのうち、溶媒IIIおよび溶媒IVは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはそれらの混合物から独立的に選ばれ、
溶媒IIIと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で10~30:1であり、
溶媒IVと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で80~120:1である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項10】
請求項5に記載の結晶形Dの調製方法であって、
請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒Vに溶解し、60℃で5時間撹拌し、晶析するステップ(1)と、
ろ過し、乾燥し、それにより前記結晶形Dを得るステップ(2)と、を含み、
そのうち、溶媒Vは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物から選ばれ、
溶媒Vと結晶形Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1である、
ことを特徴とする調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物化合物の結晶形、より具体的には、N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの3種類の新規な結晶形A、BおよびD、ならびに新規な結晶形の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキチン-プロテアソーム経路(Ubiquitin-Proteasome Pathway、略称UPP)は、細胞内タンパク質系分解の主要な経路であり、かつシグナル伝達、免疫応答、非フォールディングタンパク質反応および細胞周期進行を含む多くの生理学的に重要な細胞プロセスに関与する。この経路は、心脳血管疾患、がんおよび神経変性疾患の発症と重要な関係を有する。プロテアソーム阻害剤はすでに病気の治療に使用されており、2003年に、最初のプロテアソーム阻害剤の販売が承認された。
【0003】
現在、臨床で使用されているプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブに代表される。そのうち、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブは静脈内注射投与であり、専門の医療従事者による実施が必要なため、患者のコンプライアンスや生活の質を低下させることが避けられず、かつこれら2つの薬物は臨床応用において、それぞれ末梢神経毒性、心毒性および薬物耐性などの安全性、有効性の問題を示し、一方、イキサゾミブは経口製剤であるが、臨床的有効性が比較的低く、他の薬物との併用が必要である。したがって、効率的で低毒性の新規な経口プロテアソーム阻害剤の開発が必要である。
【0004】
中国特許第112384519号は、以下の式Iに示す構造を有する、固形腫瘍および血液腫瘍の治療のためのプロテアソーム阻害剤としてのN-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドを開示する。
【0005】
【0006】
同種化合物の異なる結晶形態は、その物理化学的特性を変化させることができ、例えば、異なる溶解度、熱力学的安定性、異なる形態の密度または融点をもたらす。これらの性質は、創薬可能性を有する化合物に対して、原薬および製剤としての取り扱いまたは調製に直接影響を与え、かつ製剤の安定性、溶解度および生物学的利用能に影響を与える物理化学的性質は、活性成分の効果または生物学的利用能に重要な影響を与え、したがって、化合物の安定な結晶形を得ることが重要な意味を有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、主に、N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの新規な結晶形およびその調製方法を提供する。具体的には、N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Aを提供し、上記結晶形AのX線粉末回折パターンは、9.09、11.30、14.27、17.00、17.61、20.28、23.75、24.85、25.25の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2である。
【0008】
上記結晶形Aの調製方法は、以下の通りである。
ステップ(1)、有機塩基を有機溶媒Iに溶解し、70~75℃まで昇温し、
ステップ(2)、ステップ(1)で得られた溶液に、70~75℃に制御された温度で、((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸/有機溶媒I溶液を滴下し、
ステップ(3)、滴下終了後、60℃まで降温し、2時間撹拌し、20~25℃まで降温し、8時間撹拌し、ろ過し、乾燥して混晶固体を得、
ステップ(4)、上記混晶固体を、有機溶媒IIに溶解し、25~35℃で2時間撹拌し、55~65℃まで昇温して2時間撹拌し、15℃/時間の昇温速度を保持し、25~35℃で2時間撹拌し、15℃/時間の降温速度を保持し、晶析し、
ステップ(5)、ろ過し、乾燥し、それにより上記結晶形Aを得る。
【0009】
上記方法において、上記有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、またはエチレンジアミンから選ばれ、
溶媒IまたはIIは、酢酸エチル、ジクロロメタン、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒またはそれらの混合物から選ばれ、
溶媒Iと有機塩基との体積質量比は、mL/g単位で15~45:1であり、
溶媒IIと混晶固体との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1であり、
((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸/有機溶媒I溶液における有機溶媒I溶液と、((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸との体積質量比は、mL/g単位で1~5:1である。
【0010】
N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Bを提供し、上記結晶形BのX線粉末回折パターンは、8.44、14.39、15.08、16.98、19.76、22.17、22.41、22.53、25.62の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2である。
【0011】
上記結晶形Bの調製方法は、以下の通りである。
ステップ(1)、請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒IIIに溶解し、60℃で清澄になるように撹拌し、
ステップ(2)、ステップ(1)で得られた溶液に、適量の溶媒IVを滴下し、晶析し、ろ過し、乾燥し、それにより上記結晶形Bを得る。
【0012】
上記方法において、溶媒IIIおよび溶媒IVは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはそれらの混合物から独立的に選ばれ、
溶媒IIIと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で5~30:1であり、
溶媒IVと結晶性Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で80~120:1である。
【0013】
N-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Dを提供し、上記結晶形DのX線粉末回折パターンは、6.88、8.26、9.15、11.47、13.82、16.61、18.39、19.64、20.80の回折角2θに特徴的なピークを有し、2θの測定誤差は±0.2であることを特徴とする。
【0014】
上記結晶形Dの調製方法は、以下のステップの通りである。
ステップ(1)、請求項1に記載の結晶形Aを、有機溶媒Vに溶解し、60℃で5時間撹拌し、晶析し、
ステップ(2)、ろ過し、乾燥し、それにより結晶形Dを得る。
【0015】
上記溶媒Vは、ジメチルホルムアミド、石油エーテル、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物から選ばれ、さらに、溶媒Vと結晶形Aの原料との体積質量比は、mL/g単位で5~15:1である。
【0016】
本発明は、薬学的に許容されるベクター、および以下からなる群より選ばれる1種または2種以上の結晶の組み合わせを含む医薬組成物をさらに提供する。
(a)本発明に記載の結晶形A、
(b)本発明に記載の結晶形B、
(c)本発明に記載の結晶形D。
【0017】
本発明に開示された式Iの化合物であるN-((R)-1-(((R)-1-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)-3-メチルブチル)アミノ)-3-(メチルチオ)-1-オキソプロピル-2-イル)-2,5-ジクロロベンズアミドの結晶形Aまたは結晶形Bまたは結晶形Dは、固形腫瘍および血液腫瘍の予防または治療のための薬物の調製に用いられる。上記固形腫瘍は、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、肝臓がん、皮膚がん、上皮細胞がん、消化管間質腫瘍、または上咽頭がんを含む。上記血液腫瘍疾患は、白血病、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、または組織球性リンパ腫を含む。
【0018】
本発明に開示された式Iの化合物の結晶形Aまたは結晶形Bまたは結晶形Dは、固形腫瘍および血液腫瘍疾患の予防および治療のために、単独で、またはこのような疾患の治療に有効な他の薬物と組み合わせて投与することができる。
【0019】
本発明は、上記固形腫瘍および血液腫瘍疾患の予防または治療用医薬組成物をさらに提供し、そのうち、治療有効量の本発明に開示された式Iの化合物の結晶形Aまたは結晶形Bまたは結晶形Dと、薬学的に許容されるベクターとを含む。上記医薬組成物は、通常錠剤、徐放性錠剤、放出制御錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、経口液剤または注射剤であり得る。
【0020】
本発明により提供される3種類の結晶形は、溶解度が比較的高く、安定性が良好であり、薬品の長期貯蔵および保存に有利であり、医薬品製剤の調製に適し、かつ調製方法が簡単で、再現性がよく、収率が高く、濃縮操作の使用を避け、製品の清澄度が比較的高く、プロセスは簡単で効率的であり、規模化生産が可能であり、そして環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で得られた白色混晶固体試料のX線粉末回折パターンである。
【
図2】実施例1で得られた生成物結晶形AのX線粉末回折パターンである。
【
図3】実施例1で得られた生成物結晶形AのDSCパターンである。
【
図4】実施例1で得られた生成物結晶形Aの赤外線パターンである。
【
図5】実施例2で得られた生成物結晶形BのX線粉末回折パターンである。
【
図6】実施例2で得られた生成物結晶形BのDSCパターンである。
【
図7】実施例2で得られた生成物結晶形Bの赤外線パターンである。
【
図8】実施例3で得られた生成物結晶形DのX線粉末回折パターンである。
【
図9】実施例3で得られた生成物結晶形DのDSCパターンである。
【
図10】実施例3で得られた生成物結晶形Dの赤外線パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施例に参照して、当分野における一般的技術知識および通常の手段に基づき、本発明をさらに説明する。以下の実施例は、本発明の好適な実施形態の一部に過ぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、若干の改変を加えることができ、それらも本発明の保護範囲にあると解釈されるべきである。
【0023】
実施例1:
結晶形Aの調製
ジエタノールアミン40g、酢酸エチル1.20Lを反応釜に加え、70℃まで加熱して溶解させ、系の温度を70℃に制御しながら、((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸/酢酸エチル溶液(150gの((R)-1-((R)-2-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-3-(メチルチオ)プロピオンアミド)-3-メチルブチル)ボロン酸を0.3Lの酢酸エチル溶液に溶解したもの)を滴下した。滴下が完了したら、60℃まで降温し、60℃で2時間撹拌し、25℃まで降温し、温度を25℃に制御して8時間撹拌した。ろ過し、ろ過ケーキを乾燥し、白色の混晶固体147gを得た。そのX線粉末回折パターンを
図1に示した。
【0024】
上記で得られた混晶固体試料5g、アセトニトリル50mLを反応釜に加え、30℃で2時間撹拌し、60℃まで昇温し、15℃/時間の昇温速度を保持し、2時間スラリー化した。さらに、30℃まで降温してスラリー化し、15℃/時間の降温速度を保持し、2時間スラリー化し、ろ過し、35℃で乾燥して白色固体4.8g、即ち結晶形Aを得た。そのX線粉末回折パターンを
図2に示し、DSCパターンを
図3に示し、赤外線パターンを
図4に示した。
【0025】
実施例2:
結晶形Bの調製
結晶Aの試料1g、N,N-ジメチルホルムアミド20mLを反応釜に加え、65℃まで加熱して溶解した。石油エーテル100mLを滴下し、晶析し、35℃で乾燥し、白色固体0.72g、即ち結晶Bを得た。そのX線粉末回折パターンを
図5に示し、DSCパターンを
図6に示し、赤外線パターンを
図7に示した。
【0026】
実施例3:
結晶形Dの調製
結晶Aの試料1g、テトラヒドロフラン10mLを反応釜に加え、60℃まで加熱して5時間撹拌した。25℃でろ過して乾燥し、白色固体0.85g、即ち結晶Dを得た。そのX線粉末回折パターンを
図8に示し、DSCパターンを
図9に示し、赤外線パターンを
図10に示した。
【0027】
実施例4:
実施例1の混晶試料、結晶形Aの試料、実施例2の結晶形Bの試料、実施例3の結晶形Dの4種のバッチ生産した結晶形の試料を取り、超純水中での溶解度試験および動力学的溶解度試験を実施し、その溶解度試験結果を表1および表2に示した。これにより、化合物Iの混晶、結晶形A、B、およびDは、優れた溶解性を示すことがわかった。
【0028】
【0029】
【0030】
実施例5:
実施例1の混晶試料、結晶形Aの試料、実施例2の結晶形Bの試料、実施例3の結晶形Dの4種のバッチ生産した結晶形の試料を取り、25℃で相対湿度が0%~80%RHに変化するプロセスにおいて、吸湿性試験を行った。これにより、化合物Iの結晶形AおよびBは、結晶形Dに比べて吸湿性が比較的弱く、固形製剤の調製に一層適していることがわかった。
【0031】
【0032】
実施例6:化合物Iの異なる結晶形安定性試験
実施例1の混晶試料、結晶形Aの試料、実施例2の結晶形Bの試料、実施例3の結晶形Dの4種のバッチ生産した試料を取り、それぞれ高温(60℃、暗所)、高湿(相対湿度90%±5%、暗所)、光照明(4500lx±500lx)の条件で、0日、5日および10日の各時点でサンプリングしてHPLC測定と安定性影響因子試験を行った。結果を下記表4に示した。実施例1の混晶試料は10日間の試験期間中、高湿条件での含有量の変化が比較的大きく、不安定であった。結晶型A、BおよびDの試料は、10日間の試験期間中に、含有量の明らかな変化はなく、結晶型は変化せず、品質は安定していた。
【0033】
【国際調査報告】