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特表2024-539416特にSARS-COV-2感染を治療するための医薬組成物、薬物としてのその使用及び新規化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】特にSARS-COV-2感染を治療するための医薬組成物、薬物としてのその使用及び新規化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241018BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/4439
A61P11/00
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/48
A61K9/70
A61K9/70 401
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527201
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022080737
(87)【国際公開番号】W WO2023079033
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21306547.7
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22305727.4
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】523405465
【氏名又は名称】アンスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】524171806
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド オルレアン
(71)【出願人】
【識別番号】521328847
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール パリ-サクレー
(71)【出願人】
【識別番号】520018392
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ-サクレー
(71)【出願人】
【識別番号】524171817
【氏名又は名称】エフイムテ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パリッシ,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ソウサ,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ラパイユリ,デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デレリス,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】メールテンス,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ギャロワ-モンブリュン,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ルチエ,シルヴァン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA27
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA42
4C076AA49
4C076AA54
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC15
4C076CC35
4C076EE42H
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、感染の予防又は治療における使用のための、式(I)(式中、R、R及びRは定義されているとおりである)を有する化合物を含む化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。本発明はまた、感染の予防又は治療における使用のための、本化合物を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染の予防又は治療における使用のための、以下の式(I)を有する化合物を含む化合物:
【化1】

(式中、
-Rは、以下:
【化2】

を含む群から選択され
-Rは、以下:
【化3】
(mは、2~6の整数である)
を含む群から選択され
【化4】

-R3は、以下:
【化5】

を含む群から選択され
ここで、Rは、上記のとおり定義され、
は、以下:
【化6】

の中から選択される)
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
-Rが、以下:
【化7】

を含む群から選択され
-Rが、以下:
を含む群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化8】
【請求項3】
以下:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

の中から選択される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記化合物は、経腸形態、非経口形態又は局所形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物は、経口投与用形態、局所-経皮投与用形態、経鼻投与用形態、直腸投与用形態、皮下形態、筋肉内形態、気管内形態及び静脈内投与の中から選択される形態で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物は、溶液剤、シロップ剤、懸濁液剤、エマルション剤、経口ドロップ剤、錠剤、顆粒剤及び散剤を含む群から選択される経口発泡性剤形、ビーズ剤、顆粒剤、ミニ錠剤及びマイクロ顆粒剤を含む群から選択される経口散剤又は多粒子系、口内分散性錠剤、
凍結乾燥ウェハース、薄層剤、チュアブル錠剤、錠剤、軟質ゲルカプセル剤及び医療用チューイングガム剤を含む群から選択される口内分散性剤形、口腔錠剤又は舌下錠剤、粘膜付着性調製物、ロゼンジ剤、口腔用ドロップ剤及びスプレー剤を含む群から選択される口腔経路及び舌下経路用形態、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、パッチ剤、発泡体剤の中から選択される形態で投与され、代替的に、例えば点鼻剤、鼻内噴霧剤、鼻腔用散剤を含む群から選択される経鼻投与用形態、坐剤、硬質ゼラチンカプセル剤であり得る、請求項4に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記感染がSARS-CoV-2感染である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
SARS-CoV-2が起源株であるか、又はアルファ多様体、ベータ多様体、ガンマ多様体、デルタ多様体及びオミクロン多様体の中から選択される多様体である、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
スパイクタンパク質とACE2タンパク質との間の相互作用を阻害するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
感染の予防又は治療における使用のための、請求項1~3に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記感染がSARS-CoV-2感染である、請求項10に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
SARS-CoV-2が起源株であるか、又はアルファ多様体、ベータ多様体、ガンマ多様体、デルタ多様体及びオミクロン多様体の中から選択される多様体である、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染の予防又は治療における使用のための、特にSARS-CoV-2感染の予防又は治療における使用のための、化合物又はその薬学的に許容される塩を指す。
【0002】
したがって、本発明は、医療分野、特に感染疾患の治療の分野において有用である。
【0003】
以下の説明では、角括弧([])内の参照は、本文書の末尾の参照文献のリストを指す。
【背景技術】
【0004】
重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、ヒトにおける重症呼吸器症候群(COVID-19)のプラス鎖RNAウイルス原因因子である。
【0005】
細胞へのウイルスの侵入には、ウイルスのスパイクSタンパク質と細胞膜表面のアンジオテンシン変換酵素2であるACE2との間の相互作用が必要である。ACE2は、2003年の最初のSARS大流行の原因であるSARS-CoVについて以前に示されたように、肺におけるSARS-CoV-2の受容体として報告されている。ACE2は、ヒト気道上皮、肺実質、血管内皮、腎細胞及び小腸細胞において発現されるが、脳ではわずかにしか検出されない。したがって、文献からの収束データは、S/ACE2相互作用が依然としてSARS-CoV-2ウイルスの中心的な侵入経路であることを示している。S/ACE2複合体は、ウイルスと細胞との間の最初の接触点であるので、ウイルス感染の非常に初期の事象を阻止するための魅力的な標的を構成する。
【0006】
パンデミックの始まり以来、いくつかのワクチンが開発されてきたが、ウイルス複製プロセスの理解の欠如に部分的に起因して、臨床において使用可能なウイルス複製に対する強力な効果を有すると特定された効率的な薬物が存在しない。
【0007】
したがって、複製プロセスのより一層良好な理解及び新規の抗ウイル手法の探索が依然として重要である。
【0008】
したがって、SARS-CoV-2感染による症状を治療するか、又は少なくとも軽減することを可能にする薬物が必要とされている。本発明は、上記及び他の必要を満たす。
【発明の概要】
【0009】
本出願人は、インドールに由来する化合物が、SARS-CoV-2 Sタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター、並びに本来、感染し易い肺細胞を含むさまざまなヒト細胞系における野生型及び多様体SARS-CoV-2循環株の感染性を遮断する能力を有することを驚くべきことに見出した。
【0010】
AlphaLISA及びバイオレイヤー干渉法により、S/ACE2会合に対する化合物の直接的な阻害効果が確認された。
【0011】
したがって、広範にわたる研究の結果、本出願人は、本来感受性の高い細胞におけるウイルスSARS-CoV-2複製の阻害をもたらすACE2/S相互作用を損なうことによって、SARS-CoV-2の侵入工程を特異的に遮断することができる新規薬物を見出した。
【0012】
したがって、第1の態様では、本発明は、感染の予防又は治療における使用のための、以下の式(I)を有する化合物を含む化合物:
【0013】
【化1】

(式中、
-Rは、以下:
【0014】
【化2】

を含む群から選択され
-Rは、以下:
【0015】
【化3】

(mは、2~6の整数である)
【0016】
【化4】
を含む群から選択され
-Rは、以下:
【0017】
【化5】

を含む群から選択され
ここで、Rは、上記のとおり定義され、
は、以下:
【0018】
【化6】

の中から選択される)
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
用語「薬学的に許容される塩」は、医薬品分野において一般的に使用される任意の塩であって、かつ当業者の一般的な技術知識に従って本発明において使用されるインドール誘導体に適合された上記の任意の塩を含むことが意図される。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩又はメタンスルホン酸塩、フマル酸塩及びシュウ酸塩とすることができる。
【0020】
本化合物は、例えば、Jacquemardらの文献(Synthesis of 3,5-bis(2-indolyl)pyridine and 3-[(2-indolyl)-5-phenyl]pyridine derivatives as CDK inhibitors and cytotoxic agents.(2008)Bioorg.Med.Chem.,16,4932-4953([1]))、及びMahboobiらの文献(Bis(1H-2-indolyl)methanones as a novel class of inhibitors of the platelet-derived growth factor receptor kinase;J.Med.Chem 2002 45 1002-1018([13]))に
おける、当分野で公知の方法によって調製され得る。
【0021】
本発明によれば、本化合物によって予防又は治療される感染は、例えば、細胞へのウイルス侵入がウイルスのスパイクSタンパク質と細胞膜表面のアンジオテンシン変換酵素2であるACE2との間の相互作用を必要とする、ウイルスによって引き起こされる感染であり得る。有利なことに、本化合物は、スパイクタンパク質とACE2タンパク質との間の相互作用を阻害することができる。
【0022】
ウイルスは、例えば、コロナウイルス科から選択され得る。コロナウイルス科のウイルスは、例えば、コロナウイルスSARS-CoV-2、コロナウイルスSARS、コロナウイルス229E、コロナウイルスNL63、コロナウイルスOC43、コロナウイルスHKU1及びコロナウイルスMERS-CoVを含む群から選択され得る。本発明の好ましい実施形態では、ウイルス感染はSARS-CoV-2感染である。SARS-CoV-2は、2019年にWuhan(中国)で出現した起源株であってもよく、又は、後に出現した、アルファ多様体、ベータ多様体、ガンマ多様体、デルタ多様体及びオミクロン多様体を含めた多様体であってもよい。
【0023】
有利には、本発明の使用のための化合物において:
-Rは、以下:
【0024】
【化7】

を含む群から選択され得、
-Rは、以下:
【0025】
【化8】

を含む群から選択され得る。
【0026】
有利には、本発明による使用のための特定の化合物は、以下の中:
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
【化15】
【0034】
【化16】

又はその薬学的に許容される塩から選択され得る。
【0035】
本発明の使用によれば、本化合物は、経腸形態、非経口形態又は局所形態であり得る。本化合物は、例えば、経口投与用形態、例えば、経口溶液剤、シロップ剤、経口懸濁液剤、エマルション剤及び経口ドロップ剤を含む群から選択される形態であり得る。代替的に、本化合物は、錠剤、顆粒剤、散剤を含む群から選択される経口発泡性剤形であってもよい。代替的に、本化合物は、例えば、ビーズ剤、顆粒剤、ミニ錠剤及びマイクロ顆粒剤を含む群から選択される、経口散剤又は多粒子系の形態であってもよい。代替的に、本化合物は、口内分散性錠剤、凍結乾燥ウェハース、薄膜剤、チュアブル錠剤、錠剤及びカプセ
ル剤、医療用チューインガム剤を含む群から選択される口内分散性剤形の形態であり得る。代替的に、本化合物は、例えば、口腔錠剤又は舌下錠剤、粘膜付着性調製物、ロゼンジ剤、口腔用ドロップ剤及びスプレー剤を含む群から選択される、口腔経路及び舌下経路用の形態であり得る。代替的に、本化合物は、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、パッチ剤及び発泡体剤を含む群から選択される、局所-経皮投与用形態であり得る。代替的に、本化合物は、例えば、点鼻剤、鼻内噴霧剤、鼻腔用散剤を含む群から選択される鼻腔投与用形態であり得る。代替的に、本化合物は、直腸投与用形態、例えば、坐剤又は硬質ゼラチンカプセル剤であり得る。代替的に、本化合物は、非経口投与、例えば、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与用形態であってもよい。
【0036】
本発明の別の目的は、上記で定義した感染の予防又は治療における使用のための、上記で定義した化合物を含む医薬組成物に関する。
【0037】
用語「医薬組成物」は、本明細書において、少なくとも1種の活性薬及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物であって、上記の障害及び疾患の治療のために動物及びヒトに投与することができる組成物を指す。
【0038】
本発明によれば、1種の活性薬は、上記で定義した化合物である。有利には、本医薬組成物は、例えば、デキサメタゾン、レムデシビル、アジトロマイシンの中から選択される少なくとも1つの他の活性薬を含んでもよい。薬学的に許容される賦形剤は、本発明の医薬組成物の活性成分と一緒に製剤化されるように適合された任意の物質であってもよい。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、付着防止剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、風味剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味剤、界面活性剤、脂質及びビヒクルの中から選択され得る。
【0039】
本薬学的組成物は、任意の医薬品形態(すなわち、経腸、非経口又は局所)であってもよい。本薬学的組成物は、例えば、溶液剤、シロップ剤、懸濁液剤、エマルション剤及び経口ドロップ剤を含む群から選択される経口投与用医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、散剤を含む群から選択される経口発泡性剤形の形態の医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、ビーズ剤、顆粒剤、ミニ錠剤及びマイクロ顆粒剤を含む群から選択される形態の経口散剤又は多粒子系であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、口内分散性錠剤、凍結乾燥ウェハース、薄膜剤、チュアブル錠剤、錠剤及びカプセル剤、医療用チューインガム剤を含む群から選択される口内分散性剤形の形態の医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、例えば、口腔錠剤又は舌下錠剤、粘膜付着性調製物、ロゼンジ剤、口腔用ドロップ剤及びスプレー剤を含む群から選択される、口腔経路、気管内経路及び舌下経路用の医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、パッチ剤及び発泡体剤を含む群から選択される、局所-経皮投与又は局所投与用医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、例えば、点鼻剤、鼻内噴霧剤、鼻腔用散剤を含む群から選択される鼻腔投与用医薬であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、直腸投与用医薬、例えば、坐剤又は硬質ゼラチンカプセル剤であってもよい。代替的に、本医薬組成物は、非経口投与、例えば、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与用医薬であってもよい。
【0040】
本発明の医薬組成物は、当業者によって公知の従来の技法を使用して調製され得る。例えば、バルク原薬は、上記の賦形剤の1種以上の存在下で好適な溶媒に溶解されて、混合され得る。
【0041】
有利には、本医薬組成物は、上記で定義した感染の予防又は治療のために、薬学的に許容される有効用量の化合物の送達を可能にすることができる。例えば、本医薬組成物は、1日あたり体重1kgあたり1~50mgの化合物の用量、好ましくは1日あたり体重1
kgあたり1~20mgの用量を含んでもよい。投与は、1日あたり1つ又は複数の用量を用いて行うことができる。
【0042】
本発明は、限定として解釈されるべきではない添付の図面に関して以下の実施例によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】漸増濃度の薬物を使用した、AB-00011778化合物の特徴付けを表す図である。AB-00011778化合物又はDMSOの存在下でのCOV2又はVSVgの感染性(GFP陽性細胞の%)(A)。AB-00011778化合物の存在下でのCOV2又はVSVgの感染性(対照であるDMSOの%)(B)。データは、少なくとも3回の独立実験の平均値±標準偏差として示される。***p<0.001、**p<0.01。
図2】スパイク/ACE2複合体及びスパイクタンパク質単独へのAB-00011778化合物の分子ドッキングを表す図である。データは、S-RDB及びS-RDB/ACE2界面への化合物の予測結合ポーズから得た。相互作用アミノ酸残基が強調されている。(A)スパイク/ACE2複合体に結合したAB-00011778化合物;(B)スパイク単独に結合したAB-00011778。
図3】さまざまな細胞系(HEK293T-ACE2、A549-ACE2、VERO-E6、Caco2、Calu3)におけるAB-00011778化合物の細胞毒性を表す図である。細胞の生存率(MTTアッセイにおいて492nmの吸光度)を、漸増濃度の薬物に対してプロットした。データは、3回の独立実験の平均値として示されている。データは、少なくとも3回の独立実験の平均値±(照準偏差)として示されている。
図4】ACE2単独に結合したAB-00011778の分子ドッキングを表す図である。界面領域周辺のACE2に対する化合物の予測される結合ポーズからデータを得た。相互作用アミノ酸残基が強調されている。
図5】AlphaLISA及びバイオレイヤー干渉法(BLI)技術を使用した、インビトロでのS-RBD/ACE2相互作用に対するAB-00011778化合物の効果を表す。SARS-CoV-2 S-RBD(His)及びヒトACE2-Biot相互作用を、(A)3nMの各タンパク質を使用してAlphaLISAによって最初にモニタリングした。漸増濃度のAB-00011778薬を、S-RBD(His)と30分間、インキュベートした後に、ACE2-Biotと2時間、混合した。抗6X His受容体及びストレプトアビジン供与体ビーズと共に2時間、インキュベートした後にマイクロプレートの読取りを行った。化合物を用いて得られたデータを、DMSO対照と比較し、二連の2~3回の独立実験からの結合阻害率の平均値±標準偏差として報告する。**P<0.01。ストレプトアビジンバイオセンサー上に固定化されたビオチン化ACE2へのS-RBDの結合動態に対する薬物の効果もまた、BLI実験を使用して実施した(B)。反応緩衝液によるベースラインを60秒間測定した。会合工程(300秒)のために、ロードされたバイオセンサーの各々を、漸増濃度のAB-00011778化合物と共に15分間、事前インキュベートした50nMのS-RBD(His)に浸漬した。その後、解離工程を300秒間、測定した。(B)において示したセンサーグラム曲線は、Prism 5.0ソフトウェア(Graphpad Software、La Jolla,CA)を使用してプロットした。Blitz pro 1.1ソフトウェアを用いた1:1結合モデルを使用して、会合及び解離実験曲線の局所当てはめを行った。速度論的結合パラメータ(kon、koff)及び平衡解離定数(K)を、2~3回の独立実験の平均値として求め、(C)において報告した。データは、2~3回の独立実験の平均値±標準偏差として示す。***p<0.001、**p<0.01。
図6】細胞状況における、S-RBD/ACE2相互作用に対するAB-00011778化合物の効果を表す図である。SARS-CoV-2 S-RBD断片をHEK293T細胞又はHEK293-ACE2細胞の一方に0~60分間添加し、抗(His)抗体とAlexa-Fluo488に結合した二次抗体とを用いて免疫蛍光染色を行った。細胞をエピ蛍光顕微鏡によって観察した(A)。フローサイトメトリーも使用して細胞を分析し、時間中のFITCシグナルに対する陽性細胞の割合を検出した(B)。漸増濃度の可溶性ACE2(C)又は薬物(D)の一方をRBDに添加した。データは、少なくとも3~5回の独立実験からの陽性細胞の割合の平均値として報告する。**p<0.05(スチューデント検定)。
図7】ヒト肺細胞におけるSARS-CoV-2複製に対するAB-00011778化合物の効果を表す図である。A549-ACE2(A)又はCalu3(B)細胞を、SARS-CoV-2参照株(MOI=1)及び漸増濃度の薬物と共にインキュベートした。24時間後にウイルスゲノムコピーを定量することによって複製を評価した。データは、5回の独立実験からの平均値として報告し、対照w/o薬物の割合として表す(スチューデント検定)。
図8】ヒト肺細胞におけるSARS-CoV-2 Wuhan、アルファ、デルタ及びオミクロンの複製に対するAB-00011778の効果を表す図である。A549-ACE2-TMPRS2細胞を、SARS-CoV-2 Wuhan、アルファ株、オミクロン株又はデルタ株(MOI=1)及び漸増濃度の薬物と共にインキュベートした。複製は、24時間後にアクチンRNAに対して正規化したウイルス遺伝子E(A)及びS(B)ゲノムコピーを定量することによって評価した。代表的な実験を図に報告する。2~3回の独立実験からの平均値を(C)において報告し、分子を含まない対照の割合±標準偏差として表す。
図9-1】AB-0001178化合物からの化学誘導体を表す図である。最初に選択した薬物の構造を(A)に報告する。いくつかの類似体を設計し、図2で行ったドッキング計算に基づいて合成した。
図9-2】AB-0001178化合物からの化学誘導体を表す図である。最初に選択した薬物の構造を(A)に報告する。いくつかの類似体を設計し、図2で行ったドッキング計算に基づいて合成した。
図10】HEK-293T細胞におけるSARS-CoV-2偽型レンチウイルス(lenvirus)に対するAB-0001178及びその誘導体の効果を表す図である。10μM濃度のAB-0001178誘導体(A)並びに漸増濃度(0~10μl)のAB-0001178、AB-0001178_2及びAD-0001178_6(B)を、SARS-CoV-2偽型レンチウイルスベクター及びHEK293T-Ace2細胞を用いた感染性アッセイに添加した。データは、3回の実験の平均値±標準偏差として報告する。
図11】類似体の相互作用を表す図である。(A)S-RDB/ACE2を有するAB-00011778_2;(B)S-RDB/ACE2を有するAB-00011778_6;(C)S-RDBを有するAB-00011778_2;(D)S-RDBを有するAB-00011778_6。
図12】スパイク/ACE2複合体及びスパイクタンパク質単独に対するAB-00011778_2及びAB-00011778_6の相互作用の分析を表す図である。(A)S-RDB/ACE2相互作用の詳細;(B)スパイク/ACE2複合体に結合したAB-00011778_2;(C)スパイク/ACE2複合体に結合したAB-00011778_6;(D)ACE2の結晶学的位置対スパイクタンパク質単独に結合した場合のAB-00011778_2及びAB-00011778_6によって占有された位置の比較;(E)スパイク単独に結合したAB-00011778_2;(F)スパイク単独に結合したAB-00011778_6。
図13】類似体の相互作用を表す図である。(A)ACE2単独の場合のAB-00011778_2;(B)ACE2単独の場合のAB-00011778_6。
図14】S-RDBの結晶学的位置と(A)ACE2単独に結合した場合のAB-00011778_2及びAB-00011778_6;(B)ACE2単独に結合したAB-00011778_2;(C)ACE2単独に結合したAB-00011778_6によって占有された位置との比較を表す図である。
図15】ヒト肺A569-ACE2細胞における、2.5μMの濃度(白色カラム)又は5μMの濃度(黒色カラム)のAB-00011778の10種の類似体が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質により偽型化されたレンチウイルスベクターの感染性を阻害する能力を表す図である。
【実施例
【0044】
実施例1:複数のSARS-CoV S/ACE2界面を標的とする新規抗ウイルス薬としての、本発明において定義されるインドール誘導体の効果
特異的S/ACE2媒介性SARS-CoV-2侵入経路に関するインセルロでのスクリーニング。
以下の式のAB-00011778化合物:
【0045】
【化17】

を選択し、実験室において以前に設定された、レンチウイルスベクターに基づいた細胞手法に関して最初に試験した(Lapaillerieら(2021)In Silico、In Vitro and In Cellulo Models for Monitoring SARS-CoV-2 Spike/Human ACE2 Complex、Viral Entry and Cell Fusion.Viruses、13([2]))。手短に述べると、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(CoV-2 LV)で偽型化されたレンチウイルスベクターを3種のプラスミド:マーカータンパク質を発現するレンチウイルス骨格(LV44:pRRLSIN-PPT-hPGK-eGFP-WPRE)をコードするプラスミド、スパイクタンパク質を発現するHDM_
IDTSpike_fixKプラスミド(Bloom laboratoryからの寄贈(Crawfordら(2020)Protocol and Reagents for Pseudotyping Lentiviral Particles with
SARS-CoV-2 Spike Protein for Neutralization Assays.Viruses、12([4])))及びビリオン形成に必要な他のHIVタンパク質を発現するpsPAX2プラスミド(Tat、Gag-Pol及びRev)をトランスフェクトした、HEK293T細胞から産生した。ACE2遺伝子の9つのコピーを含有するHEK293T-ACE2細胞は、そのゲノム中のヒトACE2遺伝子のレンチウイルスベクターの挿入によって産生した([2])。CoV-2 LVは、LVによってコードされるeGFP遺伝子の統合及び発現をもたらす元の293T細胞とは対照的に、293T-ACE2細胞だけを効率的に形質導入することが示された。これにより、eGFP陽性細胞の割合によってモニタリングされた形質導入効率が初期S/ACE2相互作用に依存することが裏付けられる。対照的に、典型的なVSVg偽型LVは、293T細胞及び293T-ACE2細胞の両方を形質導入することができ、S/ACE2侵入に特異的な薬物の次の選択のための対照となる。可溶性ACE2タンパク質を使用する阻害競合実験により、LV CoV-2感染性のS/ACE2依存性が完全に検証されたが、LV VSVgはタンパク質によって影響を受けなかった(データは図示せず)([2])。
【0046】
したがって、AB-00011778化合物を、VSVg及びSARS-CoV-2 LV感染性の両方に対して試験し、S/ACE2媒介侵入経路に対するその効果の可能性を判定した。10μM濃度の薬物を使用した最初のスクリーニングにより、いくつかの分子がCoV-2LVに対して有意な阻害作用があり、VSVg LVに対する効果は何らないことが示された(図1Aを参照)。AB-00011778は、ウイルス感染性の40~80%の低下を誘導することによって有効であることが見出された。漸増濃度を使用した化合物の阻害効果の更なる正確な分析により、0~20μMの範囲内で、VSVg LVに対する有意な効果を伴わずにCoV-2 LV感染性を阻害するそれらの特異的能力が確認された(図1B)。MTTアッセイを使用して、HEK-293T、A549、Calu3及びCaco2細胞系を含むさまざまな細胞系において求められた分子の細胞毒性は、0~50μMの範囲内で細胞毒性を示さなかったか、又はわずかな細胞毒性しか示さなかった(図3を参照)。
【0047】
まとめると、本発明者らのデータにより、AB00011778化合物が初期のS/ACE2媒介SARS-CoV-2侵入過程を妨害したことが強く示唆された。これを確認するために、本発明者らは、次に、分子ドッキング及び生化学的手法を使用して、この阻害効果が、SとACE2との間の物理的相互作用に対する薬物の直接的な効果に起因し得るかどうかを調査した。
【0048】
SとACE2との薬物相互作用の分子ドッキング解析
標的タンパク質へのAB-00011778化合物の結合をよりよく理解するために、分子ドッキング研究を行った。図2は、S-RDB/ACE2界面及びS-RBDへの予測される結合ポーズからの結果を示しており、相互作用するアミノ酸残基を強調している。
【0049】
S-RDB/ACE2界面へのAB-00011778化合物のドッキング(図2A)は、92.05のスコアをもたらした。S-RDB残基であるArg403、Gln409及びLys417は、この分子と強力な水素結合を確立する。Arg403は、3.00Åの距離でスルホニル基の1つに由来する1個の酸素と相互作用する。Gln409及びLys417は、それぞれ3.78Å及び3.55Åの距離を有する中央のピリジンに由来する窒素と相互作用する。更に、ACE2 His34は、π-πスタッキング相互
作用を介してインドール基と相互作用する。ACE2残基であるLys26、Leu29及びAsp38、並びにS-RDB残基であるLys417及びGln493もまた、AB-00011778化合物との疎水性相互作用に関与している。AB-00011778化合物とアミノ酸残基ACE2のAsp38との相互作用、並びにS-RDB Lys417及びGln493との相互作用は、特に関連性がある。実際、S-RDB/ACE2界面の以前のMD研究([2])により、ACE2に由来するAsp38は、S-RDBのTyr449及びGln498と重要な水素結合を確立することが示された。S-RDBのLys417は、非常に安定な水素結合、及びACE2に由来するAsp30との荷電相互作用に関与することが示された一方、S-RDBのGln493は、ACE-2のGlu35と重要な水素結合を形成した。AB-00011778化合物の結合によって引き起こされるこれらの相互作用の破壊は、S/ACE2相互作用の遮断をもたらすはずであり、この分子がこの系の成功を収めた阻害剤である理由の1つであり得る。
【0050】
ACE2の非存在下でのS-RDBタンパク質へのAB-00011778化合物のドッキング(図2B)は、89.12のスコアをもたらした。得られたドッキングポーズは、1.90Åの長さを有する、Gly502とAB-0001778のエーテル基の1つとの間に強い水素結合を形成することを示している。Tyr505のインドール基とリガンドのフェニル基のうちの2つとの間に、π-πスタッキング相互作用も形成されている。最後に、Lys417、Leu455、Asn501及びTyr505は、AB-00011778との疎水性相互作用に関与している。Gly502及びTyr505は、S-RDB/ACE2界面のMD研究において、ACE2との間の非常に安定な水素結合に関わっており、シミュレーション時間のそれぞれ57%及び56%の間に、Gly502はLys353と相互作用しており、Tyr505はACE2’のGlu37と相互作用している([2])。したがって、AB-00011778化合物とこれらの2つの残基との相互作用は、S-RDB/ACE2会合を有意に妨害する可能性が高い。
【0051】
更に、スパイクタンパク質と競合的にACE2に結合するAB-00011778化合物の能力を評価した。両方の分子をACE2受容体に対してドッキングさせて、スパイクタンパク質と相互作用してこれを認識することが知られているACE2の表面を潜在的結合領域と定義した。結果が図4に示されており、AB-00011778化合物が、S-RDB/ACE2界面及びS-RDB単独にドッキングした場合に観察されるものに匹敵する強力な結合スコアでACE2に結合することができることを示している。
【0052】
ACE2単独へのAB-00011778化合物のドッキングは、81.41(GOLD/PLP)のスコアをもたらした。最も安定なポーズにより、ACE2とAB-00011778化合物との間に複数の水素結合:(1)Tyr41と中央のピリジン基に由来する窒素との間(1.66Åの長さを有する);(2)リガンドのエーテル基の1つに由来する酸素と相互作用するGln325とGly326との間(それぞれ2.04Å及び3.09Åの長さを有する);(3)Asn330とスルホニル基の1つに由来する1つの酸素との間(2.10Åの距離を有する)が形成されていることが明らかになった。Lys353とインドール基の1つに由来するフェニル環との間の1つのπ-カチオン相互作用の形成も観察することができる。Glu37、Tyr41、Thr324、Gln325及びLys353は、疎水性相互作用に関与している。Glu37、Tyr41及びLys335はまた、スパイクタンパク質への重要な水素結合に既に関連付けられており(Lapaillerieら([2]))、やはりまた、AB-00011778とこれらの残基との相互作用は、ACE2がスパイクタンパク質に結合する能力を妨害し得ることを示唆する。
【0053】
S-RBD/ACE2会合に対する作用
選択された薬物が、S/ACE2複合体の形成を物理的に阻止し得ることを確認するた
めに、本発明者らは、次に、6x-Hisタグに融合した組換えS最小結合ドメイン(RBD)(S-RBD(His))及びヒトACE2タンパク質(ACE2-Biot)を使用して、インビトロでのAlphaLISAアッセイを行った。
【0054】
このために、以前に設定されたAlphaLISAアッセイ([2])を使用し、結合条件を、20μlの最終反応体積で384ウェルマイクロプレートにおける使用のよう適合させた。各組換えタンパク質に関する3nMの最適濃度は、交差滴定実験を用いて以前に確立された。競合アッセイのために、漸増濃度(1~25μM)のAB-00011778薬をプレートでS-RBD(His)と共に事前インキュベートした後に、ACE2-Biotと2時間、混合した。複合体を捕捉するために、抗6xHis受容体及びストレプトアビジン供与体ビーズを、2つのパートナーの2時間のインキュベート後に使用した。図5Aに報告されるように、AlphaLISAデータにより、AB-00011778化合物が、RBD/ACE2複合体の形成を同様に妨害し、両方の場合において、25μMの薬物で50%阻害に達することが確認された。TruHltsカウンターアッセイ実験により、ASシグナルに対して化合物が有意な作用を何ら示さず、S-RBD/ACE2相互作用の特異的阻害が裏付けられた(データは図示せず)。S-RBD/ACE2相互作用の動態に対する薬物の効果に関する追加情報を得るために、本発明者らは、以前に設定されたバイオレイヤー干渉法(BLI)実験を行った([2])。これらの競合結合アッセイにおいて、ビオチン化ACE2をストレプトアビジンバイオセンサー上にロードし、結合速度を、物質及び方法の項目において記載した、漸増濃度のAB-00011778化合物と事前プレインキュベートした50nMのS-RBD(His)を用いて行った。BLIセンサーグラムにおける波長シフトによって示されるように、ACE2へのS-RBD(His)の強力な結合が観察された(図5B)。ForteBio
Blitz pro1.1ソフトウェアによる1:1結合モデルを使用して、会合曲線及び解離曲線の局所当てはめを行った後に、速度論的結合パラメータ(k、k)及び平衡解離定数(K)を求めた。Kは、3.42±0.49nMであることが分かり、以前のデータが裏付けられた(([2]);Lanら(2020)Structure of the SARS-CoV-2 spike receptor-binding
domain bound to the ACE2 receptor.Nature、581、215-220([3]))。AB-00011778化合物の添加は相互作用を阻害し、Kの、それぞれ、111±16nM及び68.8±5.1nMへの大きな低下をもたらした(図5Cを参照)。薬物の非存在下又は存在下での速度定数の決定は、本化合物がS-RBD/ACE2会合及び解離のステップの両方に対して妨害したことを示し、ドッキングモデルと一致して、それらの化合物が、S-RBD/ACE2複合体の形成を阻止するだけでなく、その安定性も低下させることができることを示している。
【0055】
細胞の状況では、ACE2及びSの両方が、膜環境、すなわちウイルスエンベロープ及び細胞膜に埋め込まれている。したがって、本発明者らは、次に、本化合物がより生理学的な状況においてS/ACE2相互作用も防止することができるかどうかを検討する。この目的のために、本発明者らは、以前に開発された細胞S-RBD/ACE2相互作用モデルを使用した([2])。このモデルによって、抗S免疫蛍光法によって、HEK293T-ACE2細胞表面における組換えS-RBDタンパク質と細胞膜ACE2タンパク質との間の会合のモニタリングが可能になる(図6A)。フローサイトメトリー解析は、ACE2タンパク質への総合的なS-RBD会合の定量を可能にし(図6B)、可溶性ACE2タンパク質との競合は、相互作用の特異性を確認し、潜在的なS/ACE2阻害剤を試験するためのアッセイを検証する(図6C)。AB-00014778化合物の添加は、細胞の表面におけるS-RBD/ACE2会合の効率を低下させた(図6D)。AB-00014778化合物は、図1に報告されている感染性アッセイにおいて得られたデータと一致して、有効であることが見出された。
【0056】
まとめると、得られたデータは、選択された薬物がSとACE2との間の初期相互作用を遮断することを実証し、偽ウイルスを用いて得られたデータと連携すると、この相互作用によって媒介される初期侵入経路に対して、選択された化合物が有効であることを支持している。
【0057】
本来、感受性の高いヒト細胞に対する野生型SARS-CoV-2感染性に対する効果。
本発明者らは、次に、このS/ACE2阻害効果が、本来、感染し易いさまざまな細胞系における野生型循環SARS-CoV-2株の複製を遮断するのに十分であり得るかどうかを検討する。
【0058】
薬物を、ヒトACE2ウイルス受容体を過剰発現する、又は過剰発現しないさまざまな肺細胞系であって、SARS-CoV-2参照株に感染させた、異なる肺細胞株において試験した。図7Aに報告されるように、どちらの分子も、A549-ACE2細胞におけるウイルス複製の阻害を誘導し、AB-00011778化合物に対するEC50は、それぞれ、2.5μM及び0.25μMであった。次に、薬物を、ACE2受容体を天然に発現するCalu3ヒト肺がん細胞系を使用する感染アッセイにおいて更に試験した。図7Bに報告されるように、ウイルス複製の阻害作用が両方の薬物に関して確認され、約1μMの濃度でウイルス複製の50%阻害という有意性をもたらした。
【0059】
表1に報告されるように、さまざまな細胞系において報告された見かけのIC50及びCC50に基づくと、2種の化合物が30より高い選択性指数(SI)に到達し、それらの化合物が、良好な候補及び抗SARS-CoV-2選択薬物になった。AB-00011778は、A549-ACE2細胞において、SI>120に達する有望な分子であることが見出された。こうして、本発明者らは、選択された薬物によるウイルス阻害の根底にある分子機構を更に検討した。
【0060】
【表1】
【0061】
SARS-CoV-2循環多様体形態に対する選択薬物の効果。
選択された薬物が、現在の主要なSARS-CoV-2多様体に対して有効であり得るかどうかを判定するため、本発明者らは、最初に、SARS-CoV-2 S/ACE2複合体多様体であるアルファ、ベータ、ガンマ及びデルタのインシリコでのモデリング及び分子動力学シミュレーションを実施した。
【0062】
さまざまなSARS-CoV-2突然変異体で形成されたS-RDB/ACE2複合体のモデルを、ACE2と複合体を形成した元のSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメインを表す、X線構造6M0J(分解能2.45Å)([3])から出発して調製した。利用可能なDunbrack回転異性体ライブラリーを使用し、Pymol1.7.2.1ソフトウェアにおける突然変異誘発特徴を使用する、界面変異をモデル化することによって、突然変異多様体を調製した(Shapovalov and Dunbrack(2011)A smoothed backbone-dependen
t rotamer library for proteins derived from adaptive kernel density estimates and regressions.Struct.Lond.Engl.1993、19、844-858([5]))。各突然変異体の最初のアミノ酸の立体配座の選別は、他の残基との衝突を除外して、予測される優性な配座異性体に基づいた。このコンピュータによる突然変異誘発プロトコルは、他の酵素の研究において以前に首尾よく使用されたものである(Serranoら(2021)Compensatory epistasis explored bymolecular dynamics simulations.Hum.Genet.、140、1329-1342([6]);Improving the Catalytic Power of the DszD Enzyme
for the Biodesulfurization of Crude Oil
and Derivatives-Ferreira-2017-Chemistry-A European Journal-Wiley Online Library([7]))。モデル化した突然変異を表2に記載する。
【0063】
【表2】
【0064】
4つの系のすべてに、AMBER及びff14sb力場を使用して、先に記載した同じ分子力学最小化及び分子動力学手順を施した。分子動力学シミュレーションを、各変異体について400ns、実行した。骨格の二乗平均平方根偏差(RMSD)、形成された水素結合及びクラスター分析に関して、最終的な軌道を解析した。各突然変異体に対して行ったクラスター分析から、各突然変異体について得られた立体配座の優勢なクラスターからの代表的な構造を、AmberToolsからのcpptrajを用いて選択して、分子ドッキング段階のために用意した。
【0065】
AB-00011778化合物を、500回の独立した遺伝的アルゴリズム実行によるGOLDからのPLPスコアリング関数を使用して、各変異体の構造にドッキングさせた。分子を(1)S-RDB/ACE2界面;(2)S-RDB単独にドッキングさせた。表3は、最初の非変異S-RDB/ACE2界面に対して得られた値と比べた、2つの分子を異なる多様体にドッキングさせた場合に得られた最良のスコアを示す。オミクロン多様体の場合、クラスター分析は、Lupalaらによって行われた500nsのMDシミュレーション軌道に対して行った(Mutations on RBD of SARS-CoV-2 Omicron variant result in stronger binding to human ACE2 receptor.Biochem.Biophys.Res.Commun.(2022)590、34-41([14]))。
【0066】
【表3】
【0067】
表3に示される結果は、分子が高いドッキングスコアで、異なる変異体に一貫して結合することができることを示しており、これらの分子がさまざまな変異体においてS/ACE2会合を損なうのに有効となり得るという考えを補強している。
【0068】
これを確認するために、本発明者らは、肺A549-ACE2において、SARS-CoV2の4つの主要な循環型、すなわち、元のWuhan株、アルファ、デルタ及びオミクロンウイルスに対してAB-00011778薬を試験した。分子はまた、Wuhan株と比べ、非常に類似した有効性ですべての多様体のウイルス複製を遮断することができることが判明し、IC50=0.5~1μMをもたらした(図8を参照)。注目すべきことに、図8に示されるように、同様の効果が、ACE2及びTMPRS2膜プロテアーゼの両方を発現するA549細胞において観察され、このことは、この薬物が、初期のS/ACE2会合に対するその効果から予想されるように、天然のSARS-CoV-2侵入経路を阻害するのに有効であることを示唆する。
【0069】
まとめると、これらのデータにより、AB-00011778が主要な現在のSARS-CoV-2株に対して有効であり、可能性として、個別のS/ACE2界面に同時に作用することによって、元の侵入阻害機構を示すことが示される。したがって、この化合物は、新しいSARS-CoV-2侵入阻害剤として、ACE2ヒト化動物モデル及び将来の臨床試験における更なる評価のための強力な候補を構成する。
【0070】
効率的なAB00011778類似体の選択
この分子の化学構造に基づいて、本発明者らは、最初のAB-00011778化合物からいくつかの誘導体を設計する(図9-1と図9-2における、それらの名称及び構造を参照)。
【0071】
選択化合物を、最初に、10μM濃度を使用して図10のように、又は2.5μM及び5μM濃度を使用して図15のように、SARS-CoV-2 LV感染性アッセイにおいてスクリーニングした。試験したすべての薬物のうち、3つが細胞毒性であることが判明し、更に検討することができなかった。3つの誘導体、すなわちAB-0001178_4、AB-0001178_2及びAB-0001178_6は、HEK-293T-ACE2又はA569-ACE2細胞モデルにおけるLV感染性の阻害において、主要化合物よりも効率的であった(図10A及び15)。一層幅広い濃度範囲で行った感染性アッセイにより、どちらの類似体も最初の分子よりも4~6倍、有効であることが認められた(図10B)。
【0072】
類似体とS-RDB/ACE2、S-RDB単独との相互作用、及びACE2単独への比較ドッキングの分析。
実験的研究から浮上する仮説の1つは、界面の異なる構成成分、すなわち(1)S-RDB/ACE2界面;(2)S-RDB単独;(3)ACE2単独選択分子に同時に結合して標的する能力であった。これらの3つの会合様式の複合効果が、観察された阻害作用に寄与し得ることが示唆された。その仮説を評価するために、AB-00011778化合物を:(1)S-RDB/ACE2界面;(2)S-RDB単独;(3)ACE2単独にドッキングした。(2)及び(3)に関すると、ドッキングのための空洞は、形成された複合体における他のパートナーの既知の結合領域(すなわち、S-RDBモデル(2)の場合、ACE2、及びACE2モデル(3)の場合、S-RDB、プラス10Åの半径)に基づいて画定した。GOLDからのPLPスコアリング関数を、500回の独立した遺伝的アルゴリズム実行と共に使用した。後に、同じ手順をAB-00011778_2及びAB-00011778_6に拡張した。結果が、表4に示されている。
【0073】
【表4】
【0074】
表4に示されている結果は、最良のドッキングスコアが、S-RDB/ACE2界面に対するすべての分子について観察されるが、これらの分子はすべて、S-RDB単独に対して、興味深いことにACE2単独に対して高い親和性を示すことを示している。AB-00011778_2及びAB-00011778_6に関すると、S-RDB及びACE2単独に対して得られたスコア値は非常に類似する。総合的に、これらの結果は、これらの分子がS-RDB/ACE2会合に関与する異なる成分を標的することができるという提案された仮説と一致し、観察された効果が、界面及び個々の構成成分に対する異なる結合様式の組合せ作用から生じ得ることを示唆する。
【0075】
相互作用解析に関して(図11~12を参照)、S-RDB/ACE2間の界面におけるAB-00011778_2の最良ドッキングポーズは、GOLD/PLPスコアリング関数を使用すると、72.15のスコアをもたらした。複数の水素結合が確立される。残基ACE2のLys353、並びにS-RDBのSer494及びGly496は、フェノール基の1つと、1.84Å、3.28Å及び2.67Åの相互作用距離で相互作用する。ACE2のAsn33は、2.38Åの距離で第三級アミンの1つと相互作用する。最後に、S-RDBのArg403は、3.60Åの距離で他の第三級アミンと相互作用する。残基ACEのAsp30及びS-RDBのGlu406もまた、第三級アミンと相互作用する。ACE2のHis34は、インドール基とのπ-πスタッキング相互作用を確立し、S-RDBのLys417は、π-カチオン相互作用を介して他のインドール基と相互作用する。最後に、ACE2のGlu37及びS-RDBのLys417は、疎水性相互作用する。
【0076】
S-RDB単独へのAB-00011778_2のドッキングは、63.90のスコアをもたらした。水素結合が、Gly496とフェノール基の1つとの間に形成され、1.82Åの長さを有する。他方のフェノール基は、Gln409及びLys417と水素結
合を確立し、2.55Å及び2.20Åの長さを有する。Tyr505は、π-πスタッキング相互作用を介してインドール基と相互作用する。AB-00011778_2とLys417との間に疎水性相互作用が生じる。
【0077】
S-RDB/ACE2界面へのAB-00011778_6の最良のドッキングポーズは、69.56のスコアを生じた。複数の水素結合が、AB-00011778_6と2つのタンパク質との間に形成されていることを観察することができる。ACE2のAsp38及びS-RDBのGly496は、フェノール基の1つと、それぞれ4.02Å及び2.09Åの相互作用距離で水素結合を確立している。ACE2のAsn33は、2.57Åの距離で第三級アミン基と相互作用する。最後に、S-RDBのArg403は、インドール基からの窒素と2.52Å長の水素結合を形成する。ACE2のAsp30と第三級アミンとの間に1つの塩橋が形成され、Lys417とインドール基の1つとの間にπ-カチオン相互作用が生じる。ACE2のGlu37及びTyr78もまた、疎水性相互作用を介してA03-6と相互作用する。
【0078】
S-RDBとドッキングしたAB-00011778_6は、60.34のスコアを有した。AB-00011778_6とS-RDBとの相互作用は、AB-00011778_2で観察されたものと非常に類似している。Gly496は、1.84Åの長さでフェノール基の1つと相互作用し、Gln409及びLys417は2.58Å及び2.14Åの相互作用の長さで、他のフェノール基と相互作用する。Tyr505もまた、π-πスタッキング相互作用を介してインドール基の1つと相互作用する。Lys417は、疎水性相互作用を介して、A03-6と相互作用する。
【0079】
次に、2つの類似体とACEタンパク質単独との相互作用を調べた(図13~14を参照)。ACE2タンパク質単独へのAB-00011778_2のドッキングの最良の立体配座は、61.50のスコアをもたらした。Lys31とフェノール基の1つとの間に、2.69Åの長さで水素結合が形成され、Tyr83と中央のピリジン基に由来する窒素との間に、2.84Åの距離で水素結合が形成される。Asp30は、第三級アミンの1つと塩橋を形成し、Lys31は、インドール基の1つとπ-カチオン相互作用を確立する。AB-00011778_2とACE2のGln24及びLys31との間に疎水性相互作用が生じる。
【0080】
ACE2へのAB-00011778_6のドッキングは、59.74という最良スコアをもたらした。Asp30とフェノール基の1つとの間に、1.64Åの距離で水素結合が形成される。Lys31と中央のピリジン基との間に、1.96Åの長さの他の水素結合を確立した。Glu35は、インドール基の1つに由来する窒素と3.08Åの距離で相互作用する。1.84Åの長さを有する最後の水素結合の1つは、Lys353と他のフェノール基との間に形成される。最後に、疎水性相互作用が、AB-00011778_6とThr27、Lys31、His34及びAsp38との間で起こる。3つの残基が、ACE2とS-RDBとの間の相互作用に関与することが報告されているので、これらは非常に重要である。これらは、Glu35、Asp38及びLys353である。
【0081】
まとめると、これらのすべてのデータにより、本選択薬物が現在のSARS-CoV-2株のすべてに対して有効であり、可能性として、個別のS/ACE2界面に同時に作用することによって、元の侵入阻害機構を示すことが示される。
【0082】
考察
SARS-CoV-2 S/ACE2媒介性侵入は、依然として、治療においてまだ利用されていない主要な抗ウイルス標的である。本発明者らは、レンチウイルスベースの偽ウイルス感染性アッセイにおいて強力な侵入阻害を示す薬物を特定した。VSVg LV
と比較した場合のSARS-CoV-2 LV感染性の特異的阻害は、選択薬物が、このモデルにおいて繰り返された初期S/ACE2依存性侵入過程を標的とすることを示唆した。阻害機構に対する最も簡単な説明は、S/ACE2界面への薬物の結合によるS/ACE2会合が遮断されることである。生化学的手法により、S-RBD/ACE2相互作用の遮断に薬物の直接的な効果があることが確認された。2つの化合物はまた、可溶性S-RBDとHEK-293T-ACE2細胞の表面で発現されるACE2受容体との間の相互作用を阻害することが示され、生理学的条件においてS/ACE2複合体の形成を妨害するそれらの能力が裏付けられた。S/ACE2複合体形成の速度論的パラメータに対する薬物の効果の詳細な分析により、それらの薬物が2つのパートナー間の会合を阻止するだけでなく、複合体の安定性も低下させることができることが示された。これらのデータは、S/ACE2複合体構造に対して、並びにS-RDB及びACE2タンパク質単独に対して行われた分子ドッキング計算と完全に一致しており、どちらの薬物もウイルスタンパク質及び細胞タンパク質と接触し得ることを示している。
【0083】
選択薬物が潜在的な抗ウイルスリード化合物になり得るかどうかを判定するため、本発明者らは、元来、感受性の高い細胞を含むさまざまな細胞系を使用して野生型ウイルス複製に対して上記の選択薬物を試験した。データは、どちらの薬物も肺のA549-ACE2及びCalu3細胞におけるウイルスの複製を遮断又は低減することができたことを裏付けている。AB-00011778化合物は、1μMにおいて、60~40%阻害に達する効率的な遮断効果を維持した。全体として、本薬物は、有意な細胞毒性を示すことなく、すべての細胞株の間で0.25~5μMのIC50を示し、これらの薬物が選択性指数>10に達することが可能であった。特に、AB-00011778化合物は、すべての細胞系において、SI>30~120で阻害効果があることを示した。AB-00011778化合物の阻害効果を更に分析した結果、この化合物はまた、ウイルス侵入を指示することが示されたACE2及びTMPRS2の両方を発現するものを含む、肺細胞におけるSARS-CoV-2の主要な循環形態であるWuhan、アルファ、デルタ及びオミクロンの複製を遮断することができることが分かった(Kochら(2021)TMPRSS2 expression dictates the entry route
used by SARS-CoV-2 to infect host cells.EMBO J.、40([8]))。これらのデータは、薬物がウイルスの異なる侵入経路を遮断することができることを示す。これらのデータをまとめた結果、AB-00011778化合物が更なる開発のための良好なリード化合物候補であることが判明した。
【0084】
より深い分子ドッキング分析により、本発明者らは新規な潜在的に有効な分子を設計することが可能となった。特に、AB-00011778のインドール構造は、以前に報告された合成手法([1])を使用する新規化合物の設計のための興味深い骨格を提供する。これらの新しい設計に基づくと、本発明者らは、HEK293T-ACE2細胞におけるSARS-coV-2 LV感染性の遮断において最初の化合物よりも4~6倍、有効な2つの更なる誘導体、すなわちAB-00011778_2及びAB-00011778_6を選択した。これにより、構造活性相関研究の間に、AB-00011778のリード化合物の位置、及び一層高い阻害能力を有する新規分子を特定することができることが完全に裏付けられた。注目すべきことに、野生型ウイルス複製に対して活性な分子の選択はまた、この研究において使用される総合的な戦略及びスクリーニングパイプラインを検証する。これは、選択化合物のリストが、まだ検証されていないSARS-CoV-2侵入阻害剤としての更なる潜在的な候補を提供し得ることを示唆している。
【0085】
興味深いことに、この研究において報告された分子モデル化研究は、選択された薬物がS及びACE2タンパク質のどちらとも相互作用し得ることを示唆している。これは、分子がS/ACE2複合体の形成を妨害し、形成された複合体の安定性を低下させるおそれがあることを示すBLIデータと完全に一致する。これは、耐性緊急性を低下させること
に加えて、阻害効力を向上させるさまざまなS/ACE2界面の同時遮断の独自の阻害機構を構成し得る。
【0086】
最近、認可されたレムデシビル及びPaxlovid(登録商標)とは別に、潜在的なCOVID治療剤として有効な薬物は検証されていない。本明細書において報告される化合物は、S/ACE2界面を特異的に標的化することによってSARS-CoV-2侵入ステップに作用する最初の分子を構成し、これらの化合物は非常に有望な薬剤となる。AB-00011778とレムデシビルとリトナビル(Paxlovid(登録商標)に含まれる2種の抗プロテアーゼの1種)との間の比較は、レムデシビルが、依然として、本発明者らのアッセイにおいて最も有効な分子であるが、AB-00011778は、ヒト肺A549-ACE2細胞におけるSARS-CoV-2複製の阻害において、リトナビル分子よりも有効であったことを示した。注目すべきことに、異なる複製工程に作用する別目的のレメデシビル(Remedesivir)薬及びリトナビル薬とは対照的に、AB-000
11778は、SARS-CoV-2の侵入を遮断するために特に選択され、まだ最適化されていない元の分子である。さまざまな細胞系においてこれらの分子に観察された細胞毒性の欠如又は低さはまた、それらの抗ウイルス特性及び治療効力を完全に評価するため、将来の動物モデル研究及び臨床試験への道を開く。選択薬物によるS/ACE2相互作用の阻害の根底にある分子機構の更なる特徴付けにより、この元の抗ウイルスプロセスの最適化が確実に可能になり、新規な有望薬剤につながる。
【0087】
物質及び方法
リード化合物の分子ドッキング
AB-00011778化合物の分子ドッキングを行うため、GOLDからのPLPスコアリング関数を500回の独立した遺伝的アルゴリズム実行と共に使用した。分子を以下:(1)S-RDB/ACE2界面;(2)S-RDB単独;(3)ACE-2単独にドッキングさせた。(2)及び(3)に関すると、ドッキングのための空洞は、形成された複合体における他のパートナーの既知の結合領域(すなわち、S-RDBモデル(2)の場合、ACE2、及びACE2モデル(3)の場合、S-RDB、プラス10Åの半径)に基づいて画定した。後に、同じ手順をAB-00011778_2及びAB-00011778_6に拡張した。相互作用の分析は、Protein-Ligand Interaction Profilerを活用して行った(Adasmeら(2021)PLIP 2021:expanding the scope of the protein-ligand interaction profiler to DNA and RNA.Nucleic Acids Res.、49、W530-W534([9]))。
【0088】
化学物質
ビス-インドリルピリジン及びその誘導体は、Jacquemardら([1])及びMahboobiら([13])によって以前に報告されたとおりに合成した。すべての薬物を100%DMSOであらかじめ希釈し、同じDMSO濃度を維持し、かつ薬物の沈殿を回避するために、同じ体積の各連続予備希釈物をアッセイに加えた。
【0089】
タンパク質及び抗体
既に記載した最小受容体結合モチーフを含むSARS-CoV-2(438-516)S-RBD(HiS)(([3]);Wrappら(2020)Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike in the prefusion conformation.Science、367、1260-1263([10]))、及びビオチン化(biotynilated)ヒトACE2は、Fisher Scientificから購入した(各参照番号16534204及び16545164)。モノクローナル抗6×Hisタグ抗体は、ABCAMから購入した(参照番号ab1
8184、希釈1/200)。抗α-チューブリン抗体は、Sigmaから購入した(参照番号T6199、希釈1/500)。AlexaFluor488に結合した二次ヤギ抗マウス抗体は、Fisher Scientificから購入した(参照番号Allo2g、希釈1/400)。
【0090】
AlphaLISA結合アッセイ
AlphaLISAアッセイ開発を、6x-Hisタグに融合した組換えS最小結合ドメイン(RBD)(S-RBD(His))及びビオチン化ヒトACE2タンパク質(ACE2-Biot)を使用して、以前([2])に記載されたとおりに行った。結合条件は、20μlの最終反応体積で384ウェルプレート(white OptiPlate、参照番号6007290、PerkinElmer、Waltham、MA)における使用するよう適合させた。各組換えタンパク質について、交差滴定実験を用いて、3nMの最適最終濃度をあらかじめ確立した。タンパク質を結合緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン)に希釈した。AlphaLISA競合アッセイを行うため、漸増濃度のAB-00011778薬(1~25μM、1%DMSO最終濃度)をS-RBD(His)と共に30分間、事前インキュベートした後、ACE2-Biotと室温で回転させながら、2時間、混合した。次に、5μLの抗6×His受容体タービーズ(Perkin Elmer、参照番号AL178)を添加し、回転させながら室温で1時間インキュベートした後、5μLのストレプトアビジン供与体受容体ビーズ(Perkin Elmer、参照番号6760002)もウェルに混合した。これにより、各ビーズについて20μg/mLの最終濃度が確立された。次いで、プレートを暗所中、室温で1時間、インキュベートした後、EnSpireマルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して、AlphaLISAシグナルを検出した。結合緩衝液を含むネガティブ対照を使用して、アッセイ品質を制御した。データをGraphPad Prism 5.01ソフトウェアで分析した。化合物を用いて得られたAlphaLISA結合データを、1%DMSO対照条件と比較した。
【0091】
ヒット検証のため、TruHitカウンターアッセイキット(参照番号AL900D、PerkinElmer)を、AlphaLISA結合アッセイと同じ作業希釈でビオチン-BSA受容体及びストレプトアビジン供与体ビーズと共にAB-00011778薬をインキュベートすることによって実施した。この検証アッセイでは、本化合物がシグナルの低下を引き起こす場合、これは、この化合物が、AlphaLISA読み出しを妨害し、したがって、この化合物が目的の特定の標的に関連しないことを意味する。
【0092】
バイオレイヤー干渉法結合アッセイ
バイオレイヤー干渉法(BLI)実験は、BLItz機器(Sartorius、Gottingen、ドイツ)で行い、S-RBD(His)のACE2-Biotへの結合を測定した。BLIアッセイは、薬物を用いた競合結合分析用に、一部の改変を伴う以前に記載されたように([2])設定した。すべての試料希釈及びベースライン工程は、同じ反応緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水pH7.4、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン、1%(v/v)DMSO)を用いて行った。ストレプトアビジンバイオセンサー(Sartorius、参照番号18-5019)を最初に反応緩衝液で10分間、あらかじめ湿潤し、次いで、約3nmの結合値に達するよう、1μMのACE2-Biotをコーティングされたバイオセンサー上に、500秒間、ロードした。競合動態分析のために、本発明者らの以前のBLI結合研究に準拠して、タンパク質試料を50nMのS-RBD(His)の濃度で調製し、漸増濃度(0~25μM)のAB-00011778薬と共に室温で15分間、プレインキュベートした。結合速度を3段階に分けた。最初に、反応緩衝液によるベースラインを60秒間、測定した。会合工程のために、それぞれロードしたバイオセンサーを、薬物又は対照としてのDMSOを含むS-RBD試料中に、2
200rpmの振とう速度で300秒間、浸漬した。最後に、バイオセンサーを反応緩衝液中に戻して300秒間、浸漬することによって、結合したS-RBD(His)の解離工程をモニタリングした。系統的ベースラインドリフト補正は、ACE2をロードしたが反応緩衝液とインキュベートしたバイオセンサーに対して記録されたシフトを減算することによって行った。会合及び解離実験曲線を、Blitz pro 1.1ソフトウェアを用いる1:1の結合モデルを使用して局所当てはめを行い、速度論的結合パラメータ(kon、koff)を2~3回の独立実験の平均値として求めた。K=koff/konとして計算される、平衡解離定数(K)。センサーグラム曲線は、Prism 5.0ソフトウェア(Graphpad Software、La Jolla、CA)を使用してプロットした。
【0093】
細胞及びレンチウイルスベクターの産生
レンチウイルスベクターの産生は、サービスプラットフォームVect’UB(INSERM US 005-CNRS UMS 3427-TBM-Core、Universite de Bordeaux、フランス)によって行った。レンチウイルス粒子を、標準的なプロトコルに従って、HEK293T(ヒト胎児由来腎臓細胞)の一過性トランスフェクションによって産生した。簡潔に述べると、サブコンフルエントHEK293T細胞を、レンチウイルスゲノム(psPAX2)(Didier Tronoからの贈与(Addgeneプラスミド#12260))、エンベロープコードプラスミド(pMD2G-VSVG又は野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質(HDM_IDTスパイク_fixK(Bloom’s laboratoryからの贈与)([4])))及びベクター構築物(44:pRRLSIN-PPT-hPGK-eGFP-WPRE又はpHAGE_EF1alnt_ACE2_WT)を用いてリン酸カルシウム沈殿によって同時トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後にLVを回収し、超遠心分離によって濃縮した。VSV-g偽型pLVレンチベクターのウイルス力価を、ウイルス上清の段階希釈によりHEK293T細胞を形質導入することによって求め、eGFP発現をフローサイトメトリー分析によって5日後に定量した。SARS-CoV-2スパイク偽型に関しては、酵素結合免疫吸着検査法(Innotest HIV Ag nAb;Fugibio、フランス)によって、p24抗原レベルを濃縮後のウイルス上清中で測定し、各レンチウイルス上清のp24抗原レベルを、同時に産生された同様のVSV-g偽型レンチウイルス上清と比較することによってウイルス力価を推定した。
【0094】
HEK293T-ACE2細胞系は、pHage_EF1alnt_ACE2_WTプラスミド(Bloom s laboratoryからの寄贈([4]))を用いたレンチウイルス形質導入によって産生した。次いで、6ウェルプレートにおいて、HEK293T細胞(200000個の細胞)に最適化濃度のACE2レンチウイルス粒子を形質導入した。形質導入の有効性を、感染させて10日後にリアルタイムPCRを用いて評価した。1コピー細胞系と比較するΔCt法を用いるq-PCRによって、この細胞系由来のACE2プロウイルスDNAを定量した。プロウイルスの単一統合コピーを含む、2種の異なる細胞クローン(ヒト293T及びK562細胞)由来のDNAを標準化細胞系として使用した。HEK293Tを、1%ペニシリン-ストレプトマイシン及びFBS(ウシ胎児血清)10%を補給したDMEM培地中で培養した。
【0095】
10%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)及び1%GlutaMAX(Life Technologies)を補給したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Invitrogen Life Technologies)において、A549細胞(ヒト肺胞基底上皮癌)、Calu3(ヒト気管支上皮癌)及びVero E6細胞(アフリカミドリザル腎臓細胞)を維持した。
【0096】
SARS-CoV-2 S-RBD/ACE2相互作用のインセルロでのイメージング

10000個のHEK293T及びHEK293T-ACE2を、ポリ-L-リジン溶液0.01%(Sigma、参照P4832)により、5分間、室温で事前処理したカバーガラス上にプレーティングした。24時間後、RBD組換えタンパク質(4~40 pmole)を100μIのPBS中の細胞に加えた。次に、細胞を洗浄し、さまざまな時間点において固定した(PFA4%)。細胞イメージングを上記のとおり実施した。
【0097】
細胞状況におけるS-RBD/ACE2相互作用を定量するために、45000個のHEK293T及びHEK293T-ACE2細胞を、100μlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及び漸増濃度のRBD組換えタンパク質中、37℃で45分間、インキュベートした。1mlのPBSを添加し、細胞を2,500rpmで5分間、遠心分離した。DEME中の50μlの抗His抗体(1/200)を添加し、細胞を37℃で45分間更にインキュベートした。PBS洗浄後、二次抗体の1/400DMEM溶液50μlを添加し、細胞を37℃で30分間、インキュベートした。PBS洗浄後、細胞を200μlのPBS、FBS2%、EDTA2mMに再懸濁し、FITC陽性細胞の割合をフローサイトメトリーによって定量した。
【0098】
細胞毒性アッセイ
MTT細胞生存率アッセイを、提供者のプロトコルにしたがって行った。10%FBS(Gibco、米国)及び1%Penstrep(Gibco、米国)を補給した100μLの完全DMEM(Gibco、米国)を含有する96ウェルプレートに、20,000個の細胞/ウェルの密度で細胞を播種した。細胞を、接着のため、加湿5%COインキュベータ中、37℃で12時間インキュベートした。12時間のインキュベーション後、培地を新しい培地と交換し、細胞を化合物で処理した。未処理細胞をネガティブ対照とみなし、DMSO処理細胞をビヒクルとみなした。処理後、細胞を加湿5%COインキュベータ中、37℃でインキュベートした。処理48時間後、20μLのMTT基質(5mg/mL)を各ウェルに添加し、暗所中、37℃で更に4時間、インキュベートした。次に、培地を注意深く除去し、492nmの吸光度を測定した。
【0099】
SARS-CoV2産生
SARS-CoV-2株である220_95(EPI_ISL_469284)は、Service de Virologie(Hospital Saint Louis、Paris)で採集された鼻咽頭スワブ検体から単離され、既に記載されたように増殖させた(Onodiら、(2021)SARS-CoV-2 induces human plasmacytoid predendritic cell diversification via UNC93B and IRAK4.J.Exp.Med.、218([11]))。手短に述べると、ウイルスを、DMEM-2%(2%FBS、1%P/S、1%GlutaMAX及び25mM Hepesを補給したDMEM)中、Vero E6上で増殖させた。80,000×g、4℃で2時間の超遠心分離によって、20%スクロースクッションに通してウイルスを精製した。ペレットを、一定分量に分けたHNE 1X(HEPES25mM、NaCI100mM EDTA0.5mM)に再懸濁し、-80℃で保存した。
【0100】
SARS-CoV-2感染アッセイ
12ウェルプレートにおいて、増殖させたA549-Ace2及びCalu3細胞を、表示した薬物の存在下、0.05のMOIでSARS-CoV-2により、又は対照としてDMSOにより試した。3時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、新しい培地でインキュベートした。感染の過程全体を通して化合物を維持した。
【0101】
生産的ウイルス複製を評価するために、本発明者らは、RT-qPCRによって、感染
して24時間後、感染している間の感染性ウイルス粒子の放出量を定量した。ウイルスは、最初に、上清v/vをPBS中の1%Triton X-100(Sigma)と共に室温で撹拌しながら30分間インキュベートすることによって不活化した。LightCycler480サーモサイクラー(Roche)において、Luna(登録商標)Universal one-Step RT-qPCRキット(New England Biolabs)を用いて、製造業者のプロトコルに従って、E遺伝子を標的とするSARS-CoV-2特異的プライマーを使用することによって、ウイルスRNAの収量をリアルタイムqPCRによって定量した。ウイルスゲノムの数はPFU当量/mlとして表し、Gordonらによって記載されている既知の力価を有するウイルス保存液から同様に処理した上清を用いて標準曲線を行うことによって計算した(Gordonら(2020)Comparative host-coronavirus protein interaction networks reveal pan-viral diseasemechanisms.Science、10.1126/science.abe9403([12]))。
【0102】
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【国際調査報告】