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特表2024-539425少なくとも二峰性の粒子サイズ分布を有するアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)塩の乾燥分散体
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  • 特表-少なくとも二峰性の粒子サイズ分布を有するアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)塩の乾燥分散体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】少なくとも二峰性の粒子サイズ分布を有するアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)塩の乾燥分散体
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
C01B21/086
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528609
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022082382
(87)【国際公開番号】W WO2023089084
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21315245.7
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カン, ジュヒ
(57)【要約】
本開示は、式(I):[F-SO-N-SO-F],NH (I)のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体であって、少なくとも2つの粒子サイズ画分、すなわち小サイズ画分及び大サイズ画分を有することによって特徴付けられる乾燥分散体に関する。本開示は、リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選択されるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するためのそのような分散体の使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[F-SO-N-SO-F],NH (I)
のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体であって、前記NHFSI塩は、場合により、
- 50~99.9重量%の前記NHFSI塩と、
- 0.1~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から選択される溶媒S
を含む溶媒和物の形態であり、前記乾燥分散体は、少なくとも2つの粒子サイズ画分、小サイズ画分及び大サイズ画分を含む、乾燥分散体。
【請求項2】
n-ヘキサン中でレーザー回折によって決定される場合、
- 前記小サイズ画分は、120μm未満のd50値を有し、
- 前記大サイズ画分は、200μm超のd50値を有し、及び/又は
- 小粒子対大粒子の体積比は、5:95~95:5である、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
n-ヘキサン中でレーザー回折によって決定される場合、
- そのd10値が20μm以上、好ましくは30~100μmであり、
- そのd50値が140~190μm、好ましくは145~185μmであり、
- そのd90値が260~300μm、好ましくは265~290μmであり、及び/又は
- そのd99値が300~400μm、好ましくは310~380μmであるようなものである、請求項1又は2に記載の分散体。
【請求項4】
前記乾燥分散体の前記小サイズ画分は、n-ヘキサン中でレーザー回折によって決定される場合、
- そのd10値が20μm以上、好ましくは30~100μmであり、及び/又は
- そのd50値が80~115μmであるようなものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項5】
前記乾燥分散体の前記大画分は、n-ヘキサン中でレーザー回折によって決定される場合、
- そのd50値が200~250μmであり、
- そのd90値が260~300μmであり、及び/又は
- そのd99値が300~400μmであるようなものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項6】
四角形状の形状、単斜晶状の形状、球状の形状、棒状の形状、針状の形状及びこれらの混合からなる群から選択される少なくとも1つである形状を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項7】
四角形状の形状、単斜晶状の形状、球状の形状、棒状の形状、針状の形状及びこれらの混合からなる群から選択される少なくとも2つである形状を有する、請求項6に記載の分散体。
【請求項8】
- 小画分Fが棒状の形状及び/又は針状の形状であり、及び
- 大画分Fが四角形状の形状、単斜晶状の形状及び/又は球状の形状であるような形状を有し、前記小画分は、50重量%未満であり、及び前記大画分は、50重量%超であり、F+Fの合計は、100重量%に等しい、請求項6又は7に記載の分散体。
【請求項9】
前記NHFSI塩は、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン及び1,4-ジオキサン並びにこれらの混合物からなる群から、より好ましくはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びこれらの混合物からなるリストから選択される、更により好ましくは1,3-ジオキサン又は1,4-ジオキサンである溶媒Sを含む溶媒和物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の分散体を調製するプロセスであって、
i)NHFSIの粗製塩を提供する工程、
ii)前記NHFSIの粗製塩を少なくとも1種の溶媒S中に溶解する工程、
iii)少なくとも1種の溶媒Sにより、前記NHFSIの粗製塩を結晶化する工程、及び
iv)前記溶媒S及びSの少なくとも一部から、好ましくは濾過によって前記NHFSI塩を分離する工程
を含むプロセス。
【請求項11】
- Sは、アセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル及びこれらの混合物からなる群から選択され、
- Sは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン及び1,4-ジオキサン並びにこれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は
- S/Sの重量比は、1/10~10/1で変動する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩を調製するプロセスであって、請求項1~9のいずれか一項に記載の式(I)のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体を、リチウム化合物、ナトリウム化合物及びカリウム化合物からなる群から選択される化合物(C)と反応させることを含むプロセス。
【請求項13】
前記化合物(C)は、好ましくは、水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH.HO、炭酸リチウムLiCO、炭酸水素リチウムLiHCO、塩化リチウムLiCl、フッ化リチウムLiF、CHOLi及びEtOLiなどのアルコキシド化合物、EtLi、BuLi及びt-BuLiなどのアルキルリチウム化合物、酢酸リチウムCHCOOLi並びにシュウ酸リチウムLi、より好ましくはLiOH.HO又はLiCOからなる群から選択されるリチウム化合物である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩の乾燥分散体であって、少なくとも2つの粒子サイズ画分を含む乾燥分散体。
【請求項15】
- 請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセスから得ることができ、及び/又は
- 少なくとも1ppmの溶媒Sを含有する、請求項14に記載の分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2021年11月19日出願の欧州特許出願第21315245.7号における優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、式(I):
[F-SO-N-SO-F],NH (I)
のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体であって、少なくとも2つの粒子サイズ画分、すなわち小サイズ画分及び大サイズ画分を有することによって特徴付けられる乾燥分散体に関する。本開示は、リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選択されるビス(フルオロスルホニル)イミドの塩を調製するためのそのような分散体の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びその塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)は、様々な技術分野、特に電池電解質の分野で有用な化合物である。
【0004】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)及びその塩の製造は、文献に記載されている対象のFSI塩を生じ得る中間体の1つは、アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)である。例えば、国際公開第2017/090877A1号パンフレット(CLS)は、(1)溶媒中でビス(クロロスルホニル)イミドをフッ素化試薬と反応させ、続いてアルカリ試薬で処理することにより、NHFSIを生成する工程と、(2)NHFSIをリチウム塩基と反応させる工程とを含む、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する方法を記載している。
【0005】
NHFSI塩などの中間体は、後続の製造工程に関与し、場合により工場のある場所から別の場所に移動させる必要があるため、それらを乾燥分散体又は粉末の形態で得ることが便利である。
【0006】
国際公開第2018/147195A1号パンフレット(森田及び日本触媒株式会社)は、0.2mm以上の粒子径を有するビス(フルオロスルホニル)イミド金属塩の乾燥粉末に関する。これは、溶融状態で塩を成形することを含む、そのような粉末の調製する方法にも関する。粉末は、加熱溶融されて溶融状態になり、その後、乾式プロセス及び湿式プロセス(ドラムフレーク造粒法、キャスティング法、ロールドロップ式スチールベルト造粒法、プリリングタワー造粒法、溶融結晶化など)を含む任意の利用可能な方法を使用して成形される。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0289074A1号パンフレット(日本曹達株式会社)は、ジ(スルホニルアミド)塩、例えばジ(スルホニルアミド)アルカリ金属塩又はジ(スルホニルアミド)アンモニウム塩の顆粒又は粉末に関する。この文献における顆粒又は粉末は、式[I]:
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、1~6つの炭素原子を有するフルオロアルキル基又はフッ素原子を表し、Yは、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムカチオンを表す)
の化合物からなり、顆粒は、80μm未満のモード径及び45μm未満、例えば5~45μmのメジアン径を有する。
【0008】
米国特許出願公開第2019/0276311A1号明細書(日本触媒株式会社)は、有機溶媒を含む反応溶液中でのビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)とアルカリ金属ハロゲン化物との反応と、それから得られたFSI塩を濾過することによる精製工程とを含む、FSI金属塩を製造する方法に関する。濾過は、好ましくは、0.1~10μmの保持粒子径を有する濾材を使用することによって行われる。
【0009】
これらの文献のいずれも、少なくとも2つの粒子サイズ画分を有し、そのため、保管及び後続の製造プロセスでの使用に適した流動性及び様々な溶媒への溶解性を有する、本発明のNHFSI塩分散体について記載していない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(I):
[F-SO-N-SO-F],NH (I)
のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体であって、NHFSI塩は、場合により、
- 50~99.9重量%のNHFSI塩と、
- 0.1~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から選択される溶媒S
を含む溶媒和物の形態であり、乾燥分散体は、少なくとも2つの粒子サイズ画分、すなわち小サイズ画分及び大サイズ画分を含む、乾燥分散体に関する。
【0011】
本発明は、式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩を調製するプロセスであって、本明細書に記載の式(I)のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体を、リチウム化合物、ナトリウム化合物及びカリウム化合物からなる群から選択される化合物(C)と反応させることを含むプロセスにも関する。
【0012】
本発明の別の態様は、式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩の乾燥分散体であって、少なくとも2つの粒子サイズ画分を含む乾燥分散体である。そのような分散体は、本明細書に記載のプロセスから得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】乾燥分散体の二峰性の粒子サイズ分布(PSD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に想定される関連する実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分もこのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0015】
本発明のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体は、少なくとも2つの粒子サイズ画分、すなわち小サイズ画分及び大サイズ画分を含むことを特徴とする。本発明の分散体は、2つより多い画分を含み得る。好ましくは、本発明の分散体は、二峰性の粒子サイズ分布によって特徴付けられる。画分は、様々な粒子サイズ分布(PSD)パラメータ、例えばd50値によって特徴付けることができる。D50とも呼ばれるd50値は、PSDのメジアン径又はメジアン値としても知られている。これは、累積分布の50%における粒子径の値である。これは、サンプル中の粒子の50体積%がd50値よりも大きく、サンプル中の粒子の50体積%がd50値よりも小さいことを意味する。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、小サイズ画分は、n-ヘキサン中でのレーザー回折によって決定される場合、120μm未満、例えば115μm未満、110μm未満、105μm未満又は100μm未満のd50値を有する。
【0017】
小サイズ画分は、
- そのd10値が20μm以上、好ましくは30~100μm、より好ましくは40~95μm、更により好ましくは60~90μmであり、及び/又は
- そのd50値が80~115μm、好ましくは85~110μm、より好ましくは90~105μmであるようなものであり得る。
【0018】
いくつかの別の好ましい実施形態では、大サイズ画分は、n-ヘキサン中でのレーザー回折によって決定される場合、200μmを超える、210μmを超える、220μmを超える、更に230μmを超えるd50値を有する。
【0019】
大サイズ画分は、
- そのd50値が200~250μm、好ましくは205~245μm、より好ましくは210~240μmであり、
- そのd90値が260~300μm、好ましくは265~290μm、より好ましくは275~285μmであり、及び/又は
- そのd99値が300~400μm、好ましくは310~380μmであるようなものであり得る。
【0020】
小粒子対大粒子の体積比は、5:95~95:5、10:90~90:10又は20:80~80:20であり得る。体積比は、例えば、SYMPATEC(登録商標)を使用するソフトウェア計算によって決定することができる。
【0021】
本発明の乾燥分散体のPSDは、好ましくは、n-ヘキサン中でのレーザー回折によって決定される場合、
- そのd10値が20μm以上、好ましくは30~100μm、より好ましくは40~95μm、更により好ましくは60~90μmであり、
- そのd50値が140~190μm、好ましくは145~185μm、より好ましくは150~180μmであり、
- そのd90値が260~300μm、好ましくは265~290μm、より好ましくは275~285μmであり、及び/又は
- そのd99値が300~400μm、好ましくは310~380μmであるようなものであり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、走査型電子顕微鏡(SEM)画像からの約60個の粒子についてカウントした、最大フェレ長に対する最小フェレ長の平均比として定義される乾燥分散体のアスペクト比は、0.3~1.0、好ましくは0.5~0.95、更により好ましくは0.7~0.9の範囲である。
【0023】
本発明の小サイズ画分と大サイズ画分は、体積ベースの粒子サイズ分布のピークにおける粒子径Dpによって特徴付けることもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、小サイズ画分のピークにおける粒子径Dpは、80~115μm、好ましくは85~110μm、より好ましくは90~105μmである。
【0025】
いくつかの実施形態では、大サイズ画分のピークにおける粒子径Dpは、200~250μm、好ましくは205~245μm、より好ましくは210~240μmである。
【0026】
本発明の分散体は、四角形状の形状、単斜晶状の形状、球状の形状、棒状の形状、針状の形状及びこれらの混合からなる群から選択される少なくとも1つである形状を有するようなものであり得る。好ましくは、これは、四角形状の形状、単斜晶状の形状、球状の形状、棒状の形状、針状の形状及びこれらの混合からなる群から選択される少なくとも2つである形状を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、分散体は、
- 小画分Fが棒状の形状及び/又は針状の形状であり、及び
- 大画分Fが四角形状の形状、単斜晶状の形状及び/又は球状の形状であるような形状を有し、小画分は、50重量%未満であり、及び大画分は、50重量%超であり、F+Fの合計は、100重量%に等しい。
【0028】
いくつかの実施形態では、分散体中のNHFSI塩は、
- 50~99.9重量%のNHFSI塩と、
- 0.1~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から選択される溶媒S
を含む溶媒和物の形態、場合により結晶化形態である。
【0029】
いくつかの実施形態では、分散体中のNH4FSI塩は、50~99.5重量%、50~99重量%又は50~98重量%のNHFSI塩を含む溶媒和物であり得る。分散体中のNHFSI塩は、50.5~99.9重量%、51~99重量%又は52~98重量%のNHFSI塩を含む溶媒和物であり得る。分散体中のNHFSI塩は、更に、55~95重量%、60~90重量%又は63~83重量%のNHFSI塩を含む溶媒和物であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、分散体中のNHFSI塩は、0.1~49.5重量%、0.1~49重量%又は0.1~48重量%の溶媒Sを含む溶媒和物であり得る。分散体中のNHFSI塩は、0.5~50重量%、1~50重量%又は2~50重量%の溶媒Sを含む溶媒和物であり得る。分散体中のNHFSI塩は、更に、5~45重量%、10~40重量%又は17~37重量%の溶媒Sを含む溶媒和物であり得る。
【0031】
本発明の乾燥分散体は、
i)NHFSIの粗製塩を提供する工程、
ii)NHFSIの粗製塩を少なくとも1種の溶媒S中に溶解する工程、
iii)少なくとも1種の溶媒Sにより、NHFSIの粗製塩を結晶化する工程、及び
iv)溶媒S1及びSの少なくとも一部から、好ましくは濾過によってNHFSI塩を分離する工程
を含むプロセスによって得ることができる。NHFSIの粗製塩は、80~97重量%、好ましくは85~95重量%、より好ましくは90~95重量%のNHFSIの塩を含み得る。NHFSIの粗製塩は、FSO 、F、ClO、SO 2-、NHSO 、NH[N(SOH)(SOF)](OFSI)及び/又はNH[N(SOH)](OSI)などの不純物も含む。
【0032】
これら不純物の重量含有率は、3~20重量%、例えば5~15重量%又は10~5重量%で変化し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、溶媒Sは、アセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは2,2,2,-トリフルオロエタノール(TFE)である。
【0034】
いくつかの別の実施形態では、溶媒Sは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン及び1,4-ジオキサン並びにこれらの混合物からなる群から、より好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びこれらの混合物からなるリストから選択され、更により好ましくは1,3-ジオキサン又は1,4-ジオキサンである。
【0035】
好ましい一実施形態では、乾燥分散体は、0.1重量%~50重量%の溶媒S(好ましくはジオキサン)と、50~99.9重量%のNHFSI塩とを含む、少なくとも部分的に結晶化した溶媒和物の形態であり、そのような分散体は、
i)NHFSIの粗製塩を提供する工程、
ii)NHFSIの粗製塩を少なくとも1種の溶媒S(好ましくはTFE)中に溶解する工程、
iii)少なくとも1種の溶媒S(好ましくはジオキサン)により、前記NHFSIの粗製塩を結晶化する工程、及び
iv)溶媒S1及びSの少なくとも一部から、好ましくは濾過によってNHFSI塩を分離する工程
を含むプロセスによって得られる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の分散体を調製するプロセスにおけるS/Sの重量比は、1/10~10/1、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/2~2/1で変化する。
【0037】
本発明は、式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩を調製するプロセスであって、本開示に記載の式(I)のアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)塩の乾燥分散体を、リチウム化合物、ナトリウム化合物及びカリウム化合物からなる群から選択される化合物(C)と反応させることを含むプロセスにも関する。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物(C)は、好ましくは、水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH.HO、炭酸リチウムLiCO、炭酸水素リチウムLiHCO、塩化リチウムLiCl、フッ化リチウムLiF、CHOLi及びEtOLiなどのアルコキシド化合物、EtLi、BuLi及びt-BuLiなどのアルキルリチウム化合物、酢酸リチウムCHCOOLi並びにシュウ酸リチウムLi、より好ましくはLiOH.HO又はLiCOからなる群から選択されるリチウム化合物である。
【0039】
本発明は、式(II):
[F-SO-N-SO-F],M (II)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩の乾燥分散体であって、少なくとも2つの粒子サイズ画分を含む乾燥分散体にも関する。
【0040】
MFSI塩の乾燥分散体は、上述のプロセスから得ることができる。
【0041】
本明細書に記載のMFSI塩は、好ましくは、LiFSIである。
【0042】
いくつかの実施形態では、MFSI塩の乾燥分散体は、少なくとも1ppmの溶媒Sを含有する。MFSI塩の乾燥分散体は、例えば、1~100ppmの溶媒S、2~80ppm、3~60ppm、4~40ppm又は5~25ppmの溶媒Sを含有し得る。
【0043】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0044】
ここで、以下の実施例を参照して本開示をより詳細に記載するが、その目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0045】
FSI塩の2つの分散体のPSDを分析した。第1のものは、本発明によるNHFSI塩の分散体(粉末#1)である。第2のものは、日本触媒株式会社からIONEL(登録商標)として市販されているLiFSI塩の分散体(粉末#2)である。
【0046】
粉末#1 - 溶媒和物の形態のNHFSIの分散体
本発明の分散体は、以下のプロセスに従って調製した:撹拌手段、熱調節のためのダブルジャケット、コンデンサー、圧力調整手段及び液体又はガスの添加手段を備えた500mLの反応器を使用した。400gのエチルメチルカーボネート(EMC)を室温で反応器に導入した。81gの無水NHFを反応器内で懸濁させた。その後、77gの溶融HCSIを1時間中に徐々に添加し、混合物を15時間撹拌しながら80℃で加熱した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、25gのNHOH(aq)(アンモニア水)を添加した。NHFSI塩を含む反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、濾過した。
【0047】
332gのこの粗製NHFSIを48gまで濃縮した。300gの2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)を溶液に添加し、170gの溶液まで濃縮した。この操作を2回繰り返した。次いで、170gの溶液を三口フラスコに移した。NHFSIがTFEに確実に完全に溶解するように、適切な撹拌及び温度を設定した。次いで、139.5gの1,4-ジオキサンを反応器に3時間かけて滴下した。1,4-ジオキサンの添加が完了した後、溶液温度を更に2時間60℃に維持した。その後、混合物を撹拌しながら室温まで一晩放冷した。その後、0.22μmのPTFE膜を使用してフラスコの中身を濾過し、固体のNHFSIを回収した。回収した固体のケーキを60gの1,4-ジオキサンで洗浄した。回収した固体を、ロータリーエバポレーターを使用して、70℃、20mbarで溶媒がそれ以上蒸発しなくなるまで乾燥させて、28.8gの白色固体を得た。この白色固体は、80重量%のNHFSIと20重量%の1,4-ジオキサンとを含むNH4FSIの結晶化溶媒和物(NHFSI-S)である。
【0048】
以下の式により計算される再結晶収率は、48%である。
【数1】
【0049】
試験方法
PSD
PSDは、レーザー回折法(HELOS CUVETTE)により決定した。回折の情報(生データ)は、装置メーカーから提供されたSYMPATEC(登録商標)ソフトウェアによって累積分布及び正規化微分分布に変換した。一方で、サンプルは、グローブボックス内で調製した。0.1mgの固体サンプルを2.5mLのn-ヘキサンに分散させて、最終的な粒子の質量分率を約4%とした。
【0050】
形状
固体サンプルの粒子形態を光学顕微鏡(明視野)によって分析した。サンプルは、グローブボックス内で調製した。0.1mgの固体サンプルをスライドガラス上でパラフィンと混合し、カバーガラスで覆い、その後、UV硬化により密封した。
【0051】
結果
粉末♯1
図1は、乾燥分散体の二峰性の粒子サイズ分布(PSD)を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
小粒子対大粒子の体積比:1/1
【0054】
粒子の形態は、大部分の四角形状の形状、単斜晶状の形状及び球状の形状の粒子に少量の棒状の形状及び針状の形状が混在していた。
【0055】
粉末♯2
【0056】
【表2】
図1
【国際調査報告】