(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】がんの免疫療法的治療のためのcGAS-STING及びSTAT3経路変調のための球状核酸
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241018BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241018BHJP
A61K 47/50 20170101ALI20241018BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61K47/50
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529322
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2022080086
(87)【国際公開番号】W WO2023092040
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エイチ.ステフ
(72)【発明者】
【氏名】チャド エー.マーキン
(72)【発明者】
【氏名】アカンクシャ サンジェイ マハジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ホープ テプレンスキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンス パク
(72)【発明者】
【氏名】マシュー クオ バッシャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジョーゼフ シネグラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC50
4C076DD21
4C076EE24
4C076EE49
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA59
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC19
(57)【要約】
本開示は、概して、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)が挙げられるが、これらに限定されない、細胞質DNAセンサーを活性化することができるオリゴヌクレオチドの放射状提示によって囲まれたコアを有するナノ構造である球状核酸(SNA)を対象とする。いくつかの実施形態では、SNAはまた、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)が挙げられるが、これに限定されない、転写因子を不活性化する。SNAを作製及び使用する方法もまた本明細書で提供される。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状核酸(SNA)であって、
(a)ナノ粒子コアと、
(b)前記ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、請求項1に記載のSNA。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、請求項1に記載のSNA。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含み、前記複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドからなり、前記複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項6】
前記二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドが、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する、請求項1~5のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、請求項1~6のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、請求項1~6のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項9】
前記ナノ粒子コアが、金属コア、半導体コア、絶縁体コア、アップコンバーティングコア、ミセルコア、デンドリマーコア、リポソームコア、ポリマーコア、金属-有機構造体コア、脂質ナノ粒子コア、タンパク質コア、又はそれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項10】
前記ポリマーが、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、アルギネート、アルブミン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、又はキトサンである、請求項9に記載のSNA。
【請求項11】
前記ナノ粒子コアが、金、銀、白金、アルミニウム、パラジウム、銅、コバルト、インジウム、セレン化カドミウム、酸化鉄、フラーレン、金属-有機構造体、シリカ、硫化亜鉛、又はニッケルを含む、請求項9に記載のSNA。
【請求項12】
前記脂質ナノ粒子コアが、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及び脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートを含む、請求項9に記載のSNA。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドが、前記脂質-PEGコンジュゲートを通して前記脂質ナノ粒子コアの外部に共有結合している、請求項12に記載のSNA。
【請求項14】
前記リポソームコアが、複数の脂質基を含む、請求項9に記載のSNA。
【請求項15】
前記複数の脂質基が、脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンのファミリーからなる群から選択される脂質を含む、請求項14に記載のSNA。
【請求項16】
前記脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DSPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)からなる群から選択される、請求項15に記載のSNA。
【請求項17】
前記オリゴヌクレオチドのシェル内の少なくとも1個のオリゴヌクレオチドが、脂質アンカー基を通して前記リポソームコア又は脂質ナノ粒子コアの外部に結合している、請求項9~16のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項18】
前記脂質アンカー基が、前記少なくとも1個のオリゴヌクレオチドの5’終端又は3’終端に結合している、請求項17に記載のSNA。
【請求項19】
前記脂質アンカー基が、トコフェロール、DOPE脂質、又はコレステロールである、請求項17又は18に記載のSNA。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項21】
前記1個以上の追加のオリゴヌクレオチドが、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載のSNA。
【請求項22】
前記1個以上の追加のオリゴヌクレオチドが、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、又はそれらの組み合わせを含む、請求項20又は21に記載のSNA。
【請求項23】
前記1個以上の追加のオリゴヌクレオチドが、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、阻害性オリゴヌクレオチド、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化するオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである、請求項20~22のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項24】
前記阻害性オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである、請求項23に記載のSNA。
【請求項25】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、又は一本鎖RNAオリゴヌクレオチドである、請求項23又は24に記載のSNA。
【請求項26】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、toll様受容体(TLR)アゴニストである、請求項23~25のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項27】
前記TLRが、toll様受容体1(TLR1)、toll様受容体2(TLR2)、toll様受容体3(TLR3)、toll様受容体4(TLR4)、toll様受容体5(TLR5)、toll様受容体6(TLR6)、toll様受容体7(TLR7)、toll様受容体8(TLR8)、toll様受容体9(TLR9)、toll様受容体10(TLR10)、toll様受容体11(TLR11)、toll様受容体12(TLR12)、及びtoll様受容体13(TLR13)からなる群から選ばれる、請求項26に記載のSNA。
【請求項28】
前記阻害性オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである、請求項23~27のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項29】
抗原を更に含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項30】
前記抗原が、前記オリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドに結合している、請求項29に記載のSNA。
【請求項31】
前記抗原が、前記SNAの表面に結合している、請求項29又は30に記載のSNA。
【請求項32】
前記抗原が、前記ナノ粒子コアに封入されている、請求項29~31のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項33】
前記抗原が、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、ネオ抗原、又はそれらの組み合わせである、請求項29~32のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項34】
前記抗原が、OVA1、MSLN、P53、Ras、変異型IDH1(IDH1R132H)、黒色腫関連抗原、HPV関連抗原、前立腺がん関連抗原、膠芽腫抗原、グレードIV星細胞腫抗原、卵巣がん関連抗原、乳がん関連抗原、肝細胞がん腫関連抗原、大腸がん関連抗原、又はヒトパピローマウイルス(HPV)E7核タンパク質である、請求項33に記載のSNA。
【請求項35】
前記SNAが、直径が約1~約150ナノメートル(nm)である、請求項1~34のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項36】
前記オリゴヌクレオチドのシェルが、約4~約250個のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1~35のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項37】
前記オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドが、約15~約100塩基対長である、請求項1~36のいずれか一項に記載のSNA。
【請求項38】
請求項1~37のいずれか一項に記載の複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物。
【請求項39】
対象においてがんに対する免疫応答を産生する方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~37のいずれか一項に記載の球状核酸(SNA)、請求項38に記載の組成物、又はそれらの組み合わせを投与し、それによって、前記対象においてがんに対する免疫応答を産生することを含む、方法。
【請求項40】
対象においてがんを治療及び/又は改善する方法であって、前記対象に、有効量の請求項1~37のいずれか一項に記載のSNA、請求項38に記載の組成物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、方法。
【請求項41】
前記がんが、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、眼がん、肝臓がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、脳がん、又はそれらの組み合わせである、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、膠芽腫である、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記投与することが、経口投与、局所投与、静脈内投与、動脈内投与、粘膜投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、非経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、皮下投与、又はそれらの組み合わせによるものである、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記投与することが、直接的な頭蓋内/腫瘍内投与によるものである、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、女性である、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記投与することが、鼻腔内投与によるものである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記投与することが、集束超音波(FUS)と組み合わされる、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月17日に出願された米国仮特許出願第63/280,499号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府関心対象に関する記述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号1R01CA208783-01A1及び5U54CA199091-05の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表を、明細書と同時にテキストファイルとして提出する。配列表を含むテキストファイルの名称は、「2021-221_sequence_listing.xml」であり、これは2022年11月17日に作成され、サイズが9,693バイトである。配列表の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本開示は、概して、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化することができるオリゴヌクレオチドの放射状提示によって囲まれたコアを有するナノ構造である球状核酸(SNA)に関する。いくつかの実施形態では、SNAはまた、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する。SNAを作製及び使用する方法もまた本明細書で提供される。
【背景技術】
【0005】
インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化は、腫瘍に対する先天性及び適応性免疫応答を促進する主要な免疫感知メカニズムのうちの1つを表す1。腫瘍由来DNAは、抗原提示細胞において、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)によって認識される。核酸認識時に、cGASは、環状ジヌクレオチドGMP-AMP(cGAMP)を生成する。cGAMPは、次に、アダプタータンパク質STINGに結合し、それを活性化し、インターフェロン制御因子3(IRF3)及び核因子-κB(NF-κB)依存性転写を誘起して、ナチュラルキラー(NK)細胞、炎症誘発性マクロファージ、及びT細胞の活性化を促進する1。
【発明の概要】
【0006】
STING拮抗性環状ジヌクレオチド(CDN)の腫瘍内投与は、同所性膠芽腫(GBM)モデルを含む複数個のがんモデルにおける腫瘍進行に拮抗し2、現在、進行性非CNSがんを有する患者における第I相臨床試験で試験されている。しかしながら、不十分な親油性と合わせて、限定された安定性及びバイオアベイラビリティは、特に、非侵襲的治療手法を考慮すると、臨床的CDN開発を限定する。
【0007】
球状核酸(SNA)は、放射状に配向されたオリゴヌクレオチドのシェルで高密度に機能化されたナノ粒子コアを含むモジュール構造である3。独自の3次元アーキテクチャは、ヌクレアーゼ媒介分解に対して強化された耐性を付与し、補助送達ビヒクルを必要とすることなく、確実な細胞侵入及びバイオアベイラビリティを可能にする。膠芽腫(GBM)におけるsiRNAベースのSNA(SNAsiRNA)4、及び固形がんにおけるCpGリッチDNAオリゴヌクレオチド(SNACpG)を担持するtoll様受容体(TLR)9拮抗性SNA5、6の早期臨床試験により、SNAがGBM及び他の固形腫瘍における遺伝子調節及び免疫刺激のための安全な脳透過性療法を表すという最初の臨床的証拠が提供された。
【0008】
本明細書で提供される技術の利点には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・cGASを直接的に活性化するためにインターフェロン刺激性(ISD)オリゴヌクレオチド(SNAISD)とコンジュゲートされたSNAは、特に、非侵襲的送達手法を考慮する場合、現在臨床開発下にあるSTINGを標的とするCDNよりも優れている。
・cGAS及びSTAT3タンパク質(SNAISD/STAT3i)の両方に関与するように設計された二峰性SNAは、付随的に、より効果的な抗腫瘍免疫を達成するために直交シグナル伝達経路を標的とする。
【0009】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含み、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドからなり、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む。いくつかの実施形態では、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドは、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する。いくつかの実施形態では、二本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する。いくつかの実施形態では、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドは、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化しシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。様々な実施形態では、ナノ粒子コアは、金属コア、半導体コア、絶縁体コア、アップコンバーティングコア、ミセルコア、デンドリマーコア、リポソームコア、ポリマーコア、金属-有機構造体コア、脂質ナノ粒子コア、タンパク質コア、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、アルギネート、アルブミン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、又はキトサンである。様々な実施形態では、ナノ粒子コアは、金、銀、白金、アルミニウム、パラジウム、銅、コバルト、インジウム、セレン化カドミウム、酸化鉄、フラーレン、金属-有機構造体、シリカ、硫化亜鉛、又はニッケルを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子コアは、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及び脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートを含む。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドは、脂質-PEGコンジュゲートを通して脂質ナノ粒子コアの外部に共有結合している。いくつかの実施形態では、リポソームコアは、複数の脂質基を含む。更なる実施形態では、複数の脂質基は、脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンのファミリーからなる群から選択される脂質を含む。様々な実施形態では、脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DSPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の少なくとも1個のオリゴヌクレオチドは、脂質アンカー基を通してリポソームコア又は脂質ナノ粒子コアの外部に結合している。いくつかの実施形態では、脂質アンカー基は、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドの5’終端又は3’終端に結合している。更なる実施形態では、脂質アンカー基は、トコフェロール、DOPE脂質、又はコレステロールである。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせを含む。更なる実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、又はそれらの組み合わせを含む。なお更なる実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、阻害性オリゴヌクレオチド、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化するオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである。いくつかの実施形態では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、又は一本鎖RNAオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、toll様受容体(TLR)アゴニストである。様々な実施形態では、TLRは、toll様受容体1(TLR1)、toll様受容体2(TLR2)、toll様受容体3(TLR3)、toll様受容体4(TLR4)、toll様受容体5(TLR5)、toll様受容体6(TLR6)、toll様受容体7(TLR7)、toll様受容体8(TLR8)、toll様受容体9(TLR9)、toll様受容体10(TLR10)、toll様受容体11(TLR11)、toll様受容体12(TLR12)、及びtoll様受容体13(TLR13)からなる群から選ばれる。更なる実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、抗原を更に含む。いくつかの実施形態では、抗原は、オリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドに結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、SNAの表面に結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、ナノ粒子コアに封入されている。様々な実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、ネオ抗原、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、抗原は、OVA1、MSLN、P53、Ras、変異型IDH1(IDH1R132H)、黒色腫関連抗原、HPV関連抗原、前立腺がん関連抗原、膠芽腫抗原、グレードIV星細胞腫抗原、卵巣がん関連抗原、乳がん関連抗原、肝細胞がん腫関連抗原、大腸がん関連抗原、又はヒトパピローマウイルス(HPV)E7核タンパク質である。様々な実施形態では、SNAは、直径が約1~約150ナノメートル(nm)である。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、約4~約250個のオリゴヌクレオチドを含む。なお更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドは、約15~約100塩基対長である。
【0010】
いくつかの態様では、本開示は、本開示の複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物を提供する。
【0011】
更なる態様では、本開示は、対象においてがんに対する免疫応答を産生する方法であって、対象に、有効量の本開示の球状核酸(SNA)、本開示の組成物、又はそれらの組み合わせを投与し、それによって、対象においてがんに対する免疫応答を産生することを含む、方法を提供する。なお更なる態様では、本開示は、対象においてがんを治療及び/又は改善する方法であって、対象に、有効量の本開示のSNA、本開示の組成物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、方法を提供する。様々な実施形態では、がんは、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、眼がん、肝臓がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、脳がん、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がんは、膠芽腫である。様々な実施形態では、投与することは、経口投与、局所投与、静脈内投与、動脈内投与、粘膜投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、非経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、皮下投与、又はそれらの組み合わせによるものである。いくつかの実施形態では、投与することは、直接的な頭蓋内/腫瘍内投与によるものである。いくつかの実施形態では、投与することは、集束超音波(FUS)、血液脳関門を一時的に開放するためのマイクロバブルの同時投与、又はそれらの組み合わせと組み合わされる。いくつかの実施形態では、対象は、女性である。いくつかの実施形態では、対象は、男性である。いくつかの実施形態では、投与することは、鼻腔内投与によるものである。
【0012】
更なる態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。更なる実施形態では、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドは、転写因子を不活性化する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、転写因子を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、1個以上のG-カルテットオリゴヌクレオチドを含むか、又はそれからなる。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、転写因子を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。様々な実施形態では、細胞質DNAセンサーは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)、AIM2(黒色腫-2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN-調節因子のDNA依存性活性化因子)、IFI16(インターフェロン-γ-誘導性タンパク質16)、又はそれらの組み合わせである。本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、転写因子は、がんの進行を促進する。様々な実施形態では、転写因子は、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、cMyc、NANOG、SOX2、OCT4、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含み、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドからなり、複数の二本鎖DNAオリゴヌクレオチドの各々が、配列番号3を含む1つの鎖及び配列番号4を含む別の鎖を含む。様々な実施形態では、ナノ粒子コアは、金属コア、半導体コア、絶縁体コア、アップコンバーティングコア、ミセルコア、デンドリマーコア、リポソームコア、ポリマーコア、金属-有機構造体コア、脂質ナノ粒子コア、タンパク質コア、又はそれらの組み合わせである。様々な実施形態では、ポリマーは、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、アルギネート、アルブミン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、又はキトサンである。様々な実施形態では、ナノ粒子コアは、金、銀、白金、アルミニウム、パラジウム、銅、コバルト、インジウム、セレン化カドミウム、酸化鉄、フラーレン、金属-有機構造体、シリカ、硫化亜鉛、又はニッケルを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子コアは、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及び脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドは、脂質-PEGコンジュゲートを通して脂質ナノ粒子コアの外部に共有結合している。いくつかの実施形態では、リポソームコアは、複数の脂質基を含む。更なる実施形態では、複数の脂質基は、脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンのファミリーからなる群から選択される脂質を含む。なお更なる実施形態では、脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DSPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)からなる群から選択される。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の少なくとも1個のオリゴヌクレオチドは、脂質アンカー基を通してリポソームコア又は脂質ナノ粒子コアの外部に結合している。いくつかの実施形態では、脂質アンカー基は、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドの5’終端又は3’終端に結合している。いくつかの実施形態では、脂質アンカー基は、トコフェロール、DOPE脂質、又はコレステロールである。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせを含む。更なる実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、阻害性オリゴヌクレオチド、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化するオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである。更なる実施形態では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、又は一本鎖RNAオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、toll様受容体(TLR)アゴニストである。様々な実施形態では、TLRは、toll様受容体1(TLR1)、toll様受容体2(TLR2)、toll様受容体3(TLR3)、toll様受容体4(TLR4)、toll様受容体5(TLR5)、toll様受容体6(TLR6)、toll様受容体7(TLR7)、toll様受容体8(TLR8)、toll様受容体9(TLR9)、toll様受容体10(TLR10)、toll様受容体11(TLR11)、toll様受容体12(TLR12)、及びtoll様受容体13(TLR13)からなる群から選ばれる。様々な実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、アプタマー、短いヘアピンRNA(shRNA)、DNAザイム、又はアプタザイムである。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、抗原を更に含む。様々な実施形態では、抗原は、オリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドに結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、SNAの表面に結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、ナノ粒子コアに封入されている。様々な実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、ネオ抗原、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、抗原は、OVA1、MSLN、P53、Ras、変異型IDH1(IDH1R132H)、変異型テロメラーゼ逆転写酵素、黒色腫関連抗原、HPV関連抗原、前立腺がん関連抗原、膠芽腫抗原、グレードIV星細胞腫抗原、卵巣がん関連抗原、乳がん関連抗原、肝細胞がん腫関連抗原、大腸がん関連抗原、又はヒトパピローマウイルス(HPV)E7核タンパク質である。様々な実施形態では、変異型テロメラーゼ逆転写酵素は、TERT;C228T、C250T、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、SNAは、直径が約1~約150ナノメートル(nm)である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、約4~約250個のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドは、約15~約100塩基対長である。いくつかの態様では、本開示は、本開示の複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、対象においてがんに対する免疫応答を産生する方法であって、対象に、有効量の本開示の球状核酸(SNA)、本開示の組成物、又はそれらの組み合わせを投与し、それによって、対象においてがんに対する免疫応答を産生することを含む、方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、対象においてがんを治療及び/又は改善する方法であって、対象に、有効量の本開示のSNA、本開示の組成物、又はそれらの組み合わせを投与することを含む、方法を提供する。様々な実施形態では、がんは、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、眼がん、肝臓がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、脳がん、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、がんは、膠芽腫である。様々な実施形態では、投与することは、直接的な頭蓋内/腫瘍内投与、経口投与、局所投与、静脈内投与、動脈内投与、粘膜投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、非経口投与、皮内投与、鼻腔内投与、皮下投与、又はそれらの組み合わせによるものである。いくつかの実施形態では、対象は、女性である。いくつかの実施形態では、対象は、男性である。いくつかの実施形態では、投与することは、鼻腔内投与によるものである。更なる実施形態では、投与することは、集束超音波(FUS)、血液脳関門を一時的に開放するためのマイクロバブルの同時投与、又はそれらの組み合わせと組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ISD45-SNAがcGASに直接的に関与することを示す。(A)SNAアーキテクチャの概略図。(B)無細胞cGAS活性化アッセイ。(C)IRF誘導中央値+/-標準偏差を定量化するレポーターアッセイが示されている。*p<0.05。
【
図2】ISD45 SNAがIRF及び炎症誘発性サイトカインを誘導することを示す。(A)ISD45-SNAで治療した細胞における金の細胞レベルを定量化するためのICP-MS。(B~D)RAW-Lucia(商標)マクロファージ(B)、THP細胞(C)、並びにWT、cGAS-、STING-、及びIRF-欠損RAW-Lucia(商標)マクロファージにおけるIRF誘導を定量化するためのルシフェラーゼレポーターアッセイ。TFX、トランスフェクション剤。中央値+/-標準偏差が示されている。*p<0.05。(E)RAW-Lucia(商標)マクロファージにおけるMultiplex ELISAベース及び(F)抗体アレイベースのサイトカインプロファイリング。
【
図3】cGASアゴニズムが、コア材料及びサイズとは独立してオリゴヌクレオチドシェルによって媒介されることを示す(A)PLGA-SNAの概略図。(B)サイトカラシンD又はフコイダンで事前治療したRAW Lucia(商標)マクロファージにおけるPLGA
Cy5ベースのISD45-SNAの取り込み。(C)RAW Lucia(商標)マクロファージにおけるルシフェラーゼレポーターアッセイ。(D)PLGAベースのISD45-SNA及びAduroS100に応答する用量依存性IRF3活性化。
【
図4】ISD45-SNAがGBM保有マウスのM1マクロファージ分極化、腫瘍細胞死、及び生存を促進することを示す。(A)示されるcGAS-STING-経路成分の豊富さを示すマクロファージ溶解物の免疫ブロット。(B)細胞上清中で決定した亜硝酸塩レベルは、下部に示される。(C)マクロファージと共培養するか、又は未治療のまま放置するか、又はssDNA
45-SNA若しくはISD45-SNAで治療したマクロファージからの上清に曝露された、CT2A腫瘍細胞の成長曲線。(D)マクロファージ上清とともにインキュベートしたCT2A腫瘍細胞のMTT生存率アッセイ。中央値+/-標準偏差が示されている。(E)Gd(III)で標識されたSNAで(直接的な腫瘍内投与を介して)注射した腫瘍保有マウスの脳のH&E染色及びMRIスキャン。(F)CT2A神経膠腫腫瘍細胞を接種し、直接的な腫瘍内投与を介してssDNA45-又はISD45-SNAで治療した、雌BL6/C57マウスのカプラン-マイヤー生存曲線。*p<0.05。
【
図5】ISD45-SNAの鼻から脳への送達を示す。(A)CNSへの薬物送達のための鼻腔及び嗅神経/三叉神経経路の概略図。(B)肺、肝臓、腎臓、脾臓、及び鼻腔/口腔を含む異なる臓器における金のICP-MS分析によれば、金ISD45-SNAは、脳/脳腫瘍実質内に蓄積する。(C)Cy5で標識された金ベースのISD45-SNA。(D~E)腫瘍細胞又は三叉神経の断面の蛍光マイクロコピー(fluorescence microcopy)は、Cy5で標識されたISD45-SNAの腫瘍内での蓄積、及び三叉神経の神経上膜内で局在化したものを示している。(F)Cy5で標識されたPLGA-SNAの概略図。注記、Cy5は、コアに結合している。(G)頭部(鼻腔を含む)及び脳のIVIS画像。(H)断面の蛍光顕微鏡検査は、嗅球及び異なる腫瘍切片内でのPLGA-SNACy5蓄積を示す。(I)単離された三叉神経のIVIS及び蛍光画像。横断面及び縦断面が示されている。(A)Balyasnikova and colleagues,Expert Opinion Drug Delivery,2018から取られたもの。
【
図6】鼻腔内送達されたISD45-SNAの抗腫瘍効果がSTINGに依存し、チェックポイント阻害によって増強され得ることを示す。(A~B)CT2A保有C57BL/6wtマウス(A)及びSTING
gt/gtマウス(B)における生物発光の定量化。(C)未治療のまま放置されるか、又はssDNA45-SNA、ISD45-SNA、若しくはCDN AduroS100のいずれかで治療されたCT2A保有C57BL/6-wtマウスの生物発光の定量化。平均+/-標準偏差が示されている。(D~G)CT2A保有C57BL/6-wtマウス(F)、STING
gt/gtマウス(E)、及びSNA及びチェックポイント阻害剤で共治療されたCT2A保有C57BL/6-wtマウス(G)におけるカプランマイヤー生存時間分析。パネルDでは、全生存時間、及び雌及び雄の動物対象における生存時間が示されている。パネルEでは、生存時間中央値が日数で示されている。
【
図7】ISD45-SNA抗腫瘍効果がチェックポイント阻害剤(CPI)との共治療によって増強され得ることを示す。(A)CT2A腫瘍保有マウスのカプラン-マイヤー生存曲線(全体、雌及び雄の動物対象)。(B)長期生存者(女性、パネルAでの実験において識別した)を、対側半球に移植したCT2A腫瘍細胞で再試験を行った。生存時間を、カプラン-マイヤー法を使用して分析した。
【
図8】ISD45-SNAの鼻から脳への送達時の免疫プロファイルを示す。(A~B)未治療のまま放置するか、又はssDNA45-及びISD45-SNAで鼻腔内治療したマウスから単離した腫瘍におけるエフェクターT細胞(A)及びTAM含有量(B)を比較するヒートマップ。(C~F)ISD45-SNAで治療したマウスからの深頸部流入領域リンパ節におけるNK細胞集団の濃縮を示す最小重量スパニングツリー(C)及びヒストグラム(D~F)。平均+/-標準偏差が示されている。*p<0.05。
【
図9】二峰性SNA
ISD/STAT3iを示す。(A)単官能性dsISD
45-SNAと比較して、二峰性cGAS及びSTAT3変調のために設計されたSNAアーキテクチャの概略図。(B)STAT3トランス活性化活性を監視するためのSTAT3レポーターアッセイ。(C)RAW-LuciaマクロファージにおけるIRFレポーターアッセイ。(D)リン酸化STAT3の細胞内分布を示す免疫蛍光顕微鏡。DAPI、核対比染色。(E)異なるSNAアーキテクチャでの治療時の神経膠腫幹細胞球サイズの評価。(F)示されるSNAのi.c.投与を介して治療されたCT2A保有BL/6マウスのカプランマイヤー生存曲線。平均+/-標準偏差が示されている。*p<0.05。
【
図10】付随するcGAS活性化及びSTAT3阻害のための二峰性SNAの開発を示す。(A)cGAS活性化及びSTAT3阻害のために金ナノ粒子コアにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドの配列。ssDNA45オリゴヌクレオチドを陰性対照として使用した。配列:ssDNA
T45=5’-TACAGATCTACTAGTGATCTATGACTGATCTGTACATGATCTACA-3’(配列番号5);ISD
45センス=5’-TACAGATCTACTAGTGATCTATGACTGATCTGTACATGATCTACA-3’(配列番号10);ISD
45アンチセンス=5’-ACATCTAGTACATGTCTAGTCAGTATCTAGTGATCATCAGACA-3’(配列番号6);STAT3iセンス=5’-CTAAATGCCCTTTAC-3’(配列番号7);STAT3iアンチセンス=5’-GTAAAGGGCATTTAG-3’(配列番号8);ISD
G5STAT3i=5’-TACAACATTTCCCGTAAATCGGGGGGATTTA CGGGAAATGTTGTA-3’(配列番号9)(B~E)ヒト組換えcGAS(B~C)及びSTAT3(D~E)へのSNA結合を評価するために改変されたゲルシフトアッセイ及びヒル-ラングミュアコンピューティング。(F~G)全てのSNA、すなわち、ISD45-SNA、ISD
G5STAT3i、及びSTAT3i
15SNAアーキテクチャがIRF3活性化を誘導したことを示す、無細胞及び細胞ベースのIRF3レポーターアッセイ。(H)ISD
15STAT3i及びISD
G5STAT3i-SNAはSTAT3 駆動型IL-6トランス活性化を抑制するが、ISD45-SNAはそれを抑制しないことを示す、HEK-Blue IL6レポーター細胞におけるIL6レポーターアッセイ。
【
図11】単峰性又は二峰性SNAの抗腫瘍効果の根底にある性的二形を示す。(A)CT2A保有、(B)QPP7保有、又は(C)QPP4保有のC57BL/6雄及び雌のマウスを、頭蓋内投与(15μモルのAu)を介して、腫瘍細胞移植の8日後に投薬されるPBS、ssDNA45-SNA、ISD45-SNA、ISD
15STAT3i、又はISD
G5STAT3i-SNAで治療した。ケプラン-マイヤー生存曲線を示す。P値を、ログランク(マンテル-コックス)検定を使用して計算した。*p<0.05。
【
図12】SNA治療後のQPP4腫瘍を保有する、雄ではなく雌の動物対象における免疫細胞活性化を明らかにするナノストリング発現プロファイリングを示す。Nanostring nCounter PanCancer Immune Profiling Panelを使用して、発現プロファイリングを実行した。総RNAを、腫瘍細胞移植の30日後に腫瘍浸潤免疫細胞から単離した。(A、B)雌及び雄の宿主における治療群PBS、ssDNA45-SNA、ISD45-SNA、STAT3i
15-SNA、ISD
G5STAT3i-SNAの730個の遺伝子全てについてのzスコアデータの教師なしクラスタリングを示すヒートマップ。ヒートマップに列挙される選択された遺伝子は、免疫活性化又は免疫抑制を担う明確なクラスターを表す。(C、D)雄及び雌の免疫細胞集団のためのNanostring遺伝子セット経路分析。(E)ISD
G5STAT3i-SNAで治療した雄マウス対雌マウス(n=3の生物学的複製)についてのzスコアでランク付けされた遺伝子発現のヒートマップ。(F)ISD
G5STAT3i-SNA治療群についての、雌対雄における発現変動遺伝子のボルケーノプロット(Log2 FC>1.5及びp値<0.05)。ISD
G5STAT3i-SNA治療について雄と比較した、雌における上方制御された鍵遺伝子が示されている。(G)遺伝子オントロジー分析は、ISD
G5STAT3i-SNA治療群について雄と比較した、雌における生物学的経路の富化を明らかにした。ShinyGOツール(Ge SX,Jung D & Yao R,Bioinformatics 2020)を使用して、データを分析した。
【
図13】cGASタンパク質が、雄マウスに対して雌マウスにおいてより高いレベルで発現することを示す。(A)脾臓のウェスタンブロット分析、及び(B)雄又は雌マウスに由来するBMDM溶解物。β-アクチンをロードコントロールとして示す。(C)雄又は雌のPBS-、ssDNA45-SNA-、又はISD45-SNAで治療したCT2A保有マウスから単離した腫瘍関連骨髄細胞(TAMC)中のcGASタンパク質レベルのフローサイトメトリーに基づく定量化。
【発明を実施するための形態】
【0014】
腫瘍に対する免疫系を活性化するワクチン、薬物、及び改変されたヒト細胞は、ある種のがんと診断された患者の転帰を向上させ、寿命を延ばすことができるが、膠芽腫(GBM)を有する患者に生存利益を提供することができない。インターフェロン遺伝子刺激因子(STING)経路の活性化は、腫瘍に対するナチュラルキラー(NK)及びT細胞プライミングを可能にする、主な先天性免疫感知経路のうちの1つを表す。
【0015】
本開示は、SNA構造へのオリゴヌクレオチドの配合(例えば、ナノ粒子の表面上の高密度でのオリゴヌクレオチドの提示)が、線状(「遊離」)オリゴヌクレオチドのものとは根本的に異なる生化学的及び生物学的特性につながることを示す。これらの特性としては、多種多様な細胞によるSNAの細胞取り込み、siRNA又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドで機能化されたSNAの遺伝子調節活性、及び免疫刺激性オリゴヌクレオチドとコンジュゲートされたSNAのTLRアゴニスト活性が挙げられる。第一世代のsiRNAベースのSNA(NCT03020017;GBM)、及びtoll様受容体9(TLR9)アゴニストSNA(NCT03086278;固形がん)を用いた臨床試験が最近完了した。
【0016】
したがって、様々な態様では、本開示は、高い表面密度でインターフェロン刺激DNA(ISD)オリゴヌクレオチドを提示するSNAを用いて、STINGの上流の細胞質性dsDNAのセンサーであるcGASを標的とすることによってcGASアゴニスト免疫療法を提供し、臨床神経腫瘍学で使用するための免疫刺激療法の新規の分類としてのSNAISDの潜在性を判定するために提供する。この手法は、小分子(CDNを含む)を有するSTING経路を標的とする他の現在の手法とは区別される。理論に束縛されることを望むものではないが、cGASを標的とすることにより、SNAISDを使用する戦略は、dsDNAを送達し、内因性CDNの触媒産生を誘導することによってSTING応答を引き起こすcGASの能力を活用する。本明細書で提供されるようなSNAの使用は、SNAとして配合された核酸の強化された取り込みを通して治療用核酸の送達の課題に対処し、更に、ナノ粒子テンプレート上で高密度でのオリゴヌクレオチドの多価提示を活用する。したがって、本明細書に示されるように、SNAの表面上の密接に配置された隣接するdsDNA分子の結合は、強力なcGAS活性化につながる。いくつかの態様では、本開示は、強力な型のIFN応答を誘発することと、細胞の細胞質ゾル中のSTAT3を隔離/不活性化して、効果的な抗腫瘍免疫を達成することと、の両方を可能にする、二峰性cGAS活性化及びSTAT3阻害性SNAを提供する。様々な実施形態では、そのような二峰性SNAは、1個以上のcGAS活性化オリゴヌクレオチド、STAT3を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、cGASを活性化してSTAT3を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。更なる態様では、本開示は、有効な型のIFN応答を誘発することと、細胞の細胞質ゾル中の転写因子(例えば、STAT3)を隔離/不活性化して、効果的な抗腫瘍免疫を達成することと、の両方を可能にする、二峰性細胞質DNAセンサー活性化及び転写因子阻害性SNAを提供する。様々な実施形態では、そのような二峰性SNAは、1個以上の細胞質DNAセンサー活性化オリゴヌクレオチド、転写因子(例えば、STAT3)を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、細胞質DNAセンサーを活性化して転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
専門用語
「~から」、「~まで」、「最大」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」などの全ての言語は、列挙された数を含み、その後部分的な範囲に分解することができる範囲を指す。
【0018】
範囲には、各個々のメンバーが含まれる。したがって、例えば、1~3つのメンバーを有する群は、1つ、2つ、又は3つのメンバーを有する群を指す。同様に、6つのメンバーを有する群は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は6つのメンバーを有する群を指す。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的対象のうちの1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。
【0020】
「約」及び「およそ」とは、一般に、測定の性質又は精度を考慮して測定された量について許容される誤差の程度を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、20~25パーセント(%)以内、例えば、記載された値又は値の範囲の20パーセント以内、10パーセント以内、5パーセント以内、4パーセント以内、3パーセント以内、2パーセント以内、又は1パーセント以内である。
【0021】
「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合には交換可能である。
【0022】
「対象」は、脊椎動物生物である。対象は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、又は非ヒト霊長類)であり得るか、又は対象は、ヒト対象であり得る。
【0023】
本明細書で使用される「投与すること」、「投与する」、「投与」などの用語は、SNAを、そのような薬剤による治療を必要とする対象に移送、送達、導入、又は輸送する任意のモードを指す。そのようなモードとしては、経口、局所、静脈内、動脈内、粘膜、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、非経口、皮内、鼻腔内、及び皮下投与が挙げられるが、これらに限定されない。集束超音波(FUS)と組み合わされた異なる投与ルートの組み合わせと同様に、別個に又は同時に、異なる投与ルートの組み合わせも本開示によって企図される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「治療すること」及び「治療」は、障害に関連する症状の重症度及び/又は発症の任意の低減を指す。したがって、「治療すること」及び「治療」には、治療的及び予防的手段が含まれる。当業者は、障害からの任意の程度の保護又は改善が、ヒト患者などの対象に有益であることを理解するであろう。患者の生活の質は、対象における症状の重症度を任意の程度まで低減し、かつ/又は症状の出現を遅らせるか、若しくは阻止することによって向上させる。
【0025】
物質の「有効量」又は「十分量」は、臨床結果を含む、有益な又は所望の結果をもたらすために必要な量であり、したがって、「有効量」は、それが適用される文脈に依存する。例えば、限定するものではないが、本開示のSNAの有効量は、免疫応答を誘発し、遺伝子発現を阻害し、かつ/又はがんを治療するのに十分である量である。有効量は、1つ以上の用量で投与され得る。有効性は、実験的又は臨床的な試験において、例えば、実験対照と比較して、目的の物質を用いて達成された結果を比較することによって、示され得る。
【0026】
本開示のSNAに関して本明細書で使用される「用量」という用語は、任意の一度に対象によって取られる(対象に投与されるか、又は対象によって摂取される)SNA(例えば、薬学的製剤として)の測定された部分を指す。
【0027】
「抗原性組成物」は、特異的な免疫応答を誘発することができる、ヒト又は動物対象への投与(例えば、実験的又は臨床的な設定での)に好適な物質の組成物である。いくつかの実施形態では、免疫応答は、がん関連抗原などの抗原に対して誘発される。したがって、いくつかの実施形態では、抗原性組成物は、1つ以上の抗原又は抗原エピトープを含む。抗原性組成物はまた、いくつかの実施形態では、賦形剤、担体、及び/又はアジュバントなどの、免疫応答を誘発又は強化することができる1つ以上の追加の成分を含み得る。
【0028】
「免疫応答」は、抗原(例えば、抗原性組成物として配合された)などの刺激に対する、B細胞、T細胞、又は単球などの免疫系の応答(例えば、インターフェロン応答)又は免疫系の細胞の応答である。本開示のSNAでの治療からもたらされる免疫応答は、(1)神経膠腫腫瘍微小環境内のCD8+T細胞の浸潤及び活性化、(2)マクロファージのM2/M0~M1再教育、並びに(3)NK及びNKT細胞の活性化のうちの1つ以上を誘起し得る。免疫応答は、B細胞応答であり得、これは、抗原特異的中和抗体などの特異的抗体の産生をもたらす。免疫応答はまた、CD4+応答又はCD8+応答などのT細胞応答であり得る。B細胞及びT細胞応答は、「細胞性」免疫応答の態様である。免疫応答はまた、抗体によって媒介される「体液性」免疫応答であり得る。いくつかの場合では、応答は、特定の抗原に特異的である(すなわち、「抗原特異的応答」)。
【0029】
本明細書で使用される場合、「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」は、免疫応答(例えば、インターフェロン応答)を刺激(例えば、誘導又は強化)することができるオリゴヌクレオチドである。本明細書に記載されるように、本開示は、cGASを活性化する免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含むSNAを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞質DNAセンサーを活性化する免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含むSNAを提供する。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、cGASを活性化するオリゴヌクレオチド、及び追加のDNAセンサー又はパターン認識受容体を標的とする1個以上の追加の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含む。免疫刺激性オリゴヌクレオチドの典型的な例は、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、一本鎖RNAオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド、toll様受容体(TLR)アゴニスト、及びAIM2(黒色腫-2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN-調節因子のDNA依存性活性化因子)、IFI16(インターフェロン-γ誘導性タンパク質16)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、追加のDNAセンサーを標的とする二本鎖若しくは一本鎖のDNA又はRNAオリゴヌクレオチドである。様々な実施形態では、TLRは、toll様受容体1(TLR1)、toll様受容体2(TLR2)、toll様受容体3(TLR3)、toll様受容体4(TLR4)、toll様受容体5(TLR5)、toll様受容体6(TLR6)、toll様受容体7(TLR7)、toll様受容体8(TLR8)、toll様受容体9(TLR9)、toll様受容体10(TLR10)、toll様受容体11(TLR11)、toll様受容体12(TLR12)、及びtoll様受容体13(TLR13)からなる群から選ばれる。「CpGモチーフ」は、シトシン-グアニンジヌクレオチド配列である。様々な実施形態では、1個以上の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、SNAのナノ粒子コアに封入されるか、ナノ粒子コアの外部表面に結合するか、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、1個以上の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子コアに封入され、及び/又はナノ粒子コアの外部表面に結合する。いくつかの実施形態では、1個以上の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、SNAに会合しておらず、SNAと同じ組成物又は別個の組成物のいずれかで別個に投与される。
【0030】
「阻害性オリゴヌクレオチド」という用語は、例えば、mRNAをリボソーム内のタンパク質に翻訳することを妨げることによって、又は1つ以上の標的遺伝子若しくはmRNAに特異的に結合(ハイブリダイズ)し、それによって標的タンパク質の発現又は生物学的活性を低減する、1つ以上の標的タンパク質をコードする遺伝子又はmRNAのいずれかに十分に相補的である、タンパク質の産生又は発現を低減するオリゴヌクレオチドを指す。阻害性オリゴヌクレオチドとしては、限定するものではないが、単離又は合成の短いヘアピンRNA(shRNA又はDNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA又はDNA、キメラアンチセンスDNA又はRNA)、miRNA及びmiRNA模倣物、低分子干渉RNA(siRNA)、シングルガイドRNA(Cas9送達と組み合わせたsgRNA)、先天性免疫受容体のDNA又はRNA阻害剤、アプタマー、DNAザイム、又はアプタザイムが挙げられる。いくつかの実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、受容体に結合するが受容体を活性化せず、それによって受容体がリガンドに更に結合して活性化されるのを阻害するオリゴヌクレオチドである。
【0031】
本明細書に開示される全ての参考文献、特許、及び特許出願は、各々が引用される主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては、本明細書の全体を包含し得る。
【0032】
球状核酸(SNA)
本明細書で使用される「球状核酸」(SNA)は、高度に配向されたオリゴヌクレオチドシェルで機能化された球状又は実質的に球状のナノ粒子コアを含む。本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、本開示のSNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、本開示のSNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、(ii)転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、(ii)転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。いくつかの態様では、SNAは、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)又は他のDNAセンサーを活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)又は他の転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、cGASを活性化することと、STAT3を不活性化することと、の両方を可能にする、二峰性cGAS活性化及びSTAT3阻害性SNAを提供する。様々な実施形態では、そのような二峰性SNAは、1個以上のcGAS活性化オリゴヌクレオチド、STAT3を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、cGASを活性化してSTAT3を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、本開示は、細胞質DNAセンサーを活性化することと、転写因子を不活性化することと、の両方を可能にする、二峰性細胞質DNAセンサー活性化及び転写因子阻害性SNAを提供する。様々な実施形態では、そのような二峰性SNAは、1個以上の細胞質DNAセンサー活性化オリゴヌクレオチド、転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、細胞質DNAセンサーを活性化して転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、タンパク質コアである。様々な実施形態では、タンパク質コアは、CRISPR関連タンパク質(例えば、Cas9)を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、CRISPR関連タンパク質(例えば、Cas9)を含むか、又はそれからなるタンパク質コアは、それに結合した1個以上のシングルガイドRNA(sgRNA)を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、リポソームコアである。本開示のリポソームコアは、少なくとも実質的に球状の形状、内側及び外側を有し、脂質二重層を含む。脂質二重層は、様々な実施形態では、複数の脂質基を含む。複数の脂質基は、様々な実施形態では、脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及び/又はホスファチジルエタノールアミンのファミリーからの脂質を含む。限定することを意味するものではないが、様々な実施形態では、脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DSPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、モノホスホリル脂質A(MPLA)、又はそれらの組み合わせである。
【0036】
SNAのナノ粒子コアは、約1ナノメートル(nm)~約500nm、約1nm~約400nm、約1nm~約300nm、約1nm~約200nm、約1nm~約100nm、約1nm~約50nm、約10nm~約500nm、約10nm~約400nm、約10nm~約300nm、約10nm~約200nm、約10nm~約100nm、約10nm~約50nm、約10nm~約40nm、約20nm~約50nm、約20nm~約40nm、約20nm~約30nm、直径約10nm~約150nm、直径約10nm~約140nm、直径約10nm~約130nm、直径約10nm~約120nm、直径約10nm~約110nm、直径約10nm~約100nm、直径約10nm~約90nm、直径約10nm~約80nm、直径約10nm~約70nm、直径約10nm~約60nm、直径約10nm~約50nm、直径約10nm~約40nm、直径約10nm~約30nm、又は直径約10nm~約20nmのサイズの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、金属コア(例えば、金)であり、直径が約14nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、ポリマーコア(例えば、PLGA)であり、直径が約70nmである。他の態様では、本開示は、各々がナノ粒子コアを含む複数のSNAを提供する。これらの態様では、複数のナノ粒子コアのサイズは、約10nm~約150nm(平均直径)、平均直径約10nm~約140nm、平均直径約10nm~約130nm、平均直径約10nm~約120nm、平均直径約10nm~約110nm、平均直径約10nm~約100nm、平均直径約10nm~約90nm、平均直径約10nm~約80nm、平均直径約10nm~約70nm、平均直径約10nm~約60nm、平均直径約10nm~約50nm、平均直径約10nm~約40nm、平均直径約10nm~約30nm、平均直径約10nm~約20nm、又は平均直径約20nm~約100nm、平均直径約20nm~約90nm、平均直径約20nm~約80nm、平均直径約20nm~約70nm、平均直径約20nm~約60nm、平均直径約20nm~約50nm、平均直径約20nm~約40nm、若しくは平均直径約20nm~約30nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアの直径(又は複数のナノ粒子コアについては平均直径)は、約10nm~約150nm、約30~約100nm、又は約40~約80nmである。いくつかの実施形態では、方法で使用されるナノ粒子コアのサイズは、それらの特定の使用又は用途によって必要に応じて変動する。サイズの変動は、有利には、例えば、ナノ粒子の特定の物理的特徴、例えば、本明細書に記載されるように機能化され得る光学特性又は表面積の量を最適化するために使用される。更なる実施形態では、複数のSNAが産生され、複数の中のSNAは、約150ナノメートル以下(例えば、約10ナノメートル~約150ナノメートル)、又は約100ナノメートル以下(例えば、約10ナノメートル~約100ナノメートル)、又は約80ナノメートル以下(例えば、約10ナノメートル~約80ナノメートル)の平均直径を有する。更なる実施形態では、本開示の方法によって作成される複数の中のナノ粒子コアは、約20ナノメートル以下、又は約25ナノメートル以下、又は約30ナノメートル以下、又は約35ナノメートル以下、又は約40ナノメートル以下、又は約45ナノメートル以下、又は約50ナノメートル以下、又は約55ナノメートル以下、又は約60ナノメートル以下、又は約65ナノメートル以下、又は約70ナノメートル以下、又は約75ナノメートル以下、又は約80ナノメートル以下、又は約85ナノメートル以下、又は約90ナノメートル以下、又は約95ナノメートル以下、又は約100ナノメートル以下、又は約100ナノメートル以下、又は約120ナノメートル以下、又は約130ナノメートル以下、又は約140ナノメートル以下、又は約150ナノメートル以下の直径又は平均直径を有する。ナノ粒子コアの前述の直径のうちのいずれも、ナノ粒子コア自体の直径、又はSNA(すなわち、ナノ粒子コア、及びナノ粒子コアの外部表面に結合するオリゴヌクレオチドのシェル)の直径に適用することができることが理解されるであろう。
【0037】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、SNAのナノ粒子コアは、リポソームコアである。したがって、例えば、国際特許出願第PCT/US2014/068429号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるようなリポソーム粒子もまた、本開示によって提供される。本開示のリポソーム粒子は、少なくとも実質的に球状の形状、内側及び外側を有し、複数の脂質基を含む。様々な実施形態では、複数の脂質基は、脂質のホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンのファミリーからなる群から選択される脂質を含む。本開示によって企図される脂質としては、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジミリストイル-sn-ホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DSPG)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(DOPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、カルジオリピン、脂質A、モノホスホリル脂質A(MPLA)、それらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の少なくとも1個のオリゴヌクレオチドは、脂質アンカー基を通してリポソームコアの外部表面に結合している。更なる実施形態では、脂質アンカー基は、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドの5’終端又は3’終端に結合している。なお更なる実施形態では、脂質アンカー基は、トコフェロール又はコレステロールである。したがって、様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1個は、脂質アンカー基を含有するオリゴヌクレオチド-脂質コンジュゲートであり、該脂質アンカー基は、脂質二重層に吸着される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの全てが、脂質アンカー基を含有するオリゴヌクレオチド-脂質コンジュゲートであり、該脂質アンカー基は、脂質二重層に吸着される。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、脂質アンカー基を通してリポソームコアの外部表面に結合(例えば、吸着)している。脂質アンカー基は、様々な実施形態では、トコフェロール、パルミトイル、ジパルミトイル、ステアリル、ジステアリル、又はコレステロールを含む。限定することを意味するものではないが、アミド結合又はクリックケミストリーを含む、当業者に既知の任意の化学を使用して、脂質アンカーをオリゴヌクレオチドに結合させることができる。リポソームSNAを作製する方法は、一般に、知られている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWang,S.;Qin,L.;Yamankurt,G.;Skakuj,K.;Huang,Z.;Chen,P.-C.;Dominguez,D.;Lee,A.;Zhang,B.;Mirkin,C.A.Rational Vaccinology with Spherical Nucleic Acids.Proc.Natl.Acad.Sci.2019,116(21),10473-10481を参照されたい)。
【0038】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、脂質ナノ粒子コアである。脂質ナノ粒子(LNP)球状核酸は、オリゴヌクレオチドのシェルで装飾された脂質ナノ粒子コア(例えば、固体脂質ナノ粒子コア)を含む。脂質ナノ粒子コアは、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及び脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートを含む。オリゴヌクレオチドのシェルは、脂質ナノ粒子コアの外部表面に結合し、本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、1個以上のcGAS活性化オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルは、cGASを活性化してSTAT3を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドシェルの球状アーキテクチャは、トランスフェクション剤とは独立したほぼ全ての細胞への侵入、ヌクレアーゼ分解に対する耐性、配列に基づく機能、標的化、及び診断を含む、従来の核酸送達方法よりも独自の利点を与える。
【0039】
様々な実施形態では、イオン化可能な脂質は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、C12-200、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、同様の脂質/リピドイド構造、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジヘキサデカノイルホスファチジルコリン(DPPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、モノホスホリル脂質A(MPLA)、又はそれらの組み合わせである。更なる実施形態では、ステロールは、3β-ヒドロキシコレスト-5-エン(コレステロール)、9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3β-オール(ビタミンD3)、9,10-セコエルゴスタ-5,7,10(19),22-テトラエン-3β-オール(ビタミンD2)、カルシポトリオール、24-エチル-5,22-コレスタジエン-3β-オール(スチグマステロール)、22,23-ジヒドロスチグマステロール(β-シトステロール)、3,28-ジヒドロキシ-ルペオール(ベツリン)、ルペオール、ウルゾール酸、オレアノール酸、24α-メチルコレステロール(カンペステロール)、24-エチルコレスタ-5,24(28)E-ジエン-3β-オール(フコステロール)、24-メチルコレスタ-5,22-ジエン-3β-オール(ブラシカステロール)、24-メチルコレスタ-5,7,22-トリエン-3β-オール(エルゴステロール)、9,11-デヒドロエルゴステロール、ダウコステロール、又は1つ以上のアミノ酸で修飾された前述のステロールのうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートは、2000ダルトン(Da)のポリエチレングリコールを含む。更なる実施形態では、脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートは、脂質-PEG-マレイミドである。なお更なる実施形態では、脂質-PEG-マレイミドは、2000Daのポリエチレングリコールマレイミドにコンジュゲートされた1,2-ジパルミトリル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、2000Daのポリエチレングリコールマレイミドにコンジュゲートされた1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、又はそれらの組み合わせである。
【0040】
本開示の態様又は実施形態のいずれかでは、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの脂質-ポリエチレングリコール(脂質-PEG)コンジュゲートへの共有結合を介して、脂質ナノ粒子コアの外部に結合している。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、脂質-PEGコンジュゲートを通して脂質ナノ粒子コアの外部に共有結合している。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載される脂質アンカー基を通して脂質ナノ粒子コアの外部に結合(又は吸着)している。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%は、本明細書に記載される脂質基を通して脂質ナノ粒子コアの外部に結合(又は吸着)している。脂質アンカー基は、様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドの5’又は3’終端に結合している。様々な実施形態では、脂質アンカー基は、トコフェロール、パルミトイル、ジパルミトイル、ステアリル、ジステアリル、又はコレステロールである。
【0041】
オリゴヌクレオチド
いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。様々な実施形態では、細胞質DNAセンサーは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)、AIM2(黒色腫-2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN-調節因子のDNA依存性活性化因子)、IFI16(インターフェロン-γ-誘導性タンパク質16)、又はそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、(ii)転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、転写因子は、がんの進行を促進する。様々な実施形態では、転写因子は、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、cMyc、NANOG、SOX2、OCT4、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、STAT3を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。なお更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、STAT3を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、転写因子を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。なお更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、転写因子を不活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、ナノ粒子コアに封入された1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドを含み、1つ個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子コアに封入されている。いくつかの実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、各々、同じヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、1個以上の追加のオリゴヌクレオチドは、異なるヌクレオチド配列を有する少なくとも2個のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、追加のオリゴヌクレオチドは、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、阻害性オリゴヌクレオチド、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化するオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである。オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドは、任意の手段(例えば、共有結合又は非共有結合)を通してナノ粒子コアに結合し得る。オリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドは、その5’終端又は3’終端を介してナノ粒子コアに結合し得る。
【0042】
「環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化する」オリゴヌクレオチド又は「cGAS活性化オリゴヌクレオチド」などは、cGASを活性化し、かつインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)、下流IRF3、及びNF-KBシグナル伝達の活性化、並びに炎症誘発性メディエーター及びI型インターフェロン(IFN)の放出につながり得るオリゴヌクレオチドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、一般に、少なくとも約15塩基対(bp)長であり、任意選択でCpGリッチモチーフを含有しない、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む。したがって、本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、SNAの表面上のオリゴヌクレオチドのシェルは、cGASを活性化する1個以上のオリゴヌクレオチドを含み、1個以上のオリゴヌクレオチドは、G-カルテットオリゴヌクレオチドを含む二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、SNAの表面上のオリゴヌクレオチドのシェルは、cGASを活性化する複数のオリゴヌクレオチドを含み、複数のオリゴヌクレオチドは、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド、一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、SNAの外部表面上の1個以上の又は全てのオリゴヌクレオチドは、cGASを活性化してSTAT3を不活性化する。cGAS活性化オリゴヌクレオチドを識別するためのアッセイは、当技術分野で知られており(例えば、Transcreener(登録商標)アッセイ(BellBrook Labs,Madison,WI;Herzner AM.et al.,2015.Sequence-specific activation of the DNA sensor cGAS by Y-form DNA structures as found in primary HIV-1 cDNA.Nat Immunol.16(10):1025-33も参照されたい)、本明細書に記載される。
【0043】
「シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する」オリゴヌクレオチドは、転写因子STAT3を不活性化又は阻害することができるものである。様々な実施形態では、STAT3を不活性化するオリゴヌクレオチドは、転写因子デコイ、G-カルテットオリゴヌクレオチド、アプタマー、阻害性オリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである。転写因子デコイは、問題になっている転写因子(すなわち、STAT3)によって認識及び結合される保存されたゲノム調節エレメントに由来するヌクレオチド配列を含む。デコイは、ゲノムDNA内の対応するシスエレメントへの転写因子の結合を競合的に阻害することによって作用し、標的遺伝子の発現を阻止する。STAT3を不活性化することができるオリゴヌクレオチドを識別するためのアッセイは、一般に、当技術分野で知られている(例えば、Leong PL,Andrews GA,Johnson DE,et al.Targeted inhibition of Stat3 with a decoy oligonucleotide abrogates head and neck cancer cell growth.Proc Natl Acad Sci U S A.2003;100(7):4138-4143.doi:10.1073/pnas.0534764100;K.Lau Y-T,Ramaiyer M,E.Johnson D,R.Grandis J.Targeting STAT3 in Cancer with Nucleotide Therapeutics.Cancers.2019;11(11):1681)。本開示に従って使用することができるSTAT3デコイの非限定的な例は、以下の通りである。
【表1】
【0044】
様々な実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドには、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、それらの修飾形態、又はそれらの組み合わせが含まれる。本明細書に記載の任意の態様又は実施形態では、オリゴヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は部分的に二本鎖である。
【0045】
本明細書に記載されるように、少なくとも1つの修飾ヌクレオチド間結合を有するものを含む、オリゴヌクレオチドの修飾形態もまた、本開示によって企図される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、全て又は部分的にペプチド核酸である。他の修飾ヌクレオシド間結合は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含む。更に他の修飾オリゴヌクレオチドとしては、1つ以上のユニバーサル塩基を含むものが挙げられる。「ユニバーサル塩基」とは、著しい構造不安定化を伴わずに水素結合を形成することによって、核酸中のA、C、G、T及びUのうちのいずれか1つへの結合を置き換えることができる分子を指す。ユニバーサル塩基類似体と組み込まれたオリゴヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションにおけるプローブとして機能することができる。ユニバーサル塩基の例としては、5’-ニトロインドール-2’-デオキシリボシド、3-ニトロピロール、イノシン、及びヒポキサンチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語又はその複数形は、本明細書で論じられ、それ以外は当技術分野で知られている変形形態と交換可能である。本明細書で使用される「核酸塩基」という用語又はその複数形は、本明細書で論じられ、それ以外は当技術分野で知られている変形形態と交換可能である。ヌクレオチド又は核酸塩基は、天然に存在する核酸塩基A、G、C、T、及びUを含む。天然に存在しない核酸塩基としては、例えば、限定するものではないが、キサンチン、ジアミノプリン、8-オキソ-N6-メチルアデニン、7-デアザキサンチン、7-デアザグアニン、N4,N4-エタノシトシン、N’、N’-エタノ-2,6-ジアミノプリン、5-メチルシトシン(mC)、5-(C3~C6)-アルキニル-シトシン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、プソイドイソシトシン、2-ヒドロキシ-5-メチル-4-トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシン、並びにBennerら、米国特許第5,432,272号及びにSusan M.Freier and Karl-Heinz Altmann,1997,Nucleic Acids Research,vol.25:pp 4429-4443に記載の「天然に存在しない」核酸塩基が挙げられる。「核酸塩基」という用語には、既知のプリン及びピリミジン複素環だけでなく、その複素環類似体及び互変異性体も含まれる。更に、天然に存在する及び天然に存在しない核酸塩基には、米国特許第3,687,808号(Merigan,et al.)、Antisense Research and Application,Ed.S.T.Crooke and B.Lebleu,CRC Press,1993の15章、Englisch et al.,1991,Angewandte Chemie,International Edition,30:613-722(特に、622及び623頁を参照されたい)、並びにthe Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,J.I.Kroschwitz Ed.,John Wiley&Sons,1990,pages 858-859、Cook,Anti-Cancer Drug Design 1991,6,585-607において参照されたく、これらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。様々な態様では、オリゴヌクレオチドは、最も古典的な意味でのヌクレオシド塩基ではないが、ヌクレオシド塩基として機能する、特定の「ユニバーサル塩基」を含む核酸塩基のように機能し得る複素環式化合物などの化合物を含む天然に存在しないヌクレオチドのカテゴリーである1つ以上の「ヌクレオシド塩基」又は「塩基単位」も含む。ユニバーサル塩基には、3-ニトロピロール、任意選択で置換されたインドール(例えば、5-ニトロインドール)、及び任意選択で置換されたヒポキサンチンが含まれる。他の望ましいユニバーサル塩基には、当技術分野において既知のユニバーサル塩基を含む、ピロール、ジアゾール、又はトリアゾール誘導体が挙げられる。
【0047】
オリゴヌクレオチドの例には、修飾された骨格又は非天然ヌクレオシド間結合を含有するものが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格にリン原子を有するもの及び骨格にリン原子を有さないものが含まれる。ヌクレオシド間骨格にリン原子を有していない修飾オリゴヌクレオチドは、「オリゴヌクレオチド」の意味の範囲内であるとみなされる。
【0048】
リン原子を含む修飾オリゴヌクレオチド骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート、及び正常な3’-5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’結合類似体、並びに1つ以上のヌクレオチド間結合が3’から3’、5’から5’、又は2’から2’結合である逆向きの極性を有するものが挙げられる。最も3’のヌクレオチド間結合において単一の3’から3’結合を含む逆極性を有するオリゴヌクレオチド、すなわち、脱塩基性であり得る(ヌクレオチドが欠落しているか、又はその代わりにヒドロキシル基を有する)単一の逆ヌクレオシド残基も企図される。塩、混合塩、及び遊離酸形態も企図される。上記のリン含有結合の調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第3,687,808号、同第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、同第5,194,599号、同第5,565,555号、同第5,527,899号、同第5,721,218号、同第5,672,697号及び同第5,625,050号が挙げられ、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
その中にリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキル若しくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキル若しくはシクロアルキルとが混合されたヌクレオシド間結合、又は1つ以上の短鎖のヘテロ原子若しくは複素環のヌクレオシド間結合により形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合を有する骨格;シロキサン骨格;スルフィド、スルフォキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びメチレンチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファミン酸骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホン酸及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;並びにN、O、S及びCH2構成要素部分が混在するその他の骨格がある。例えば、米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号、同第5,792,608号、同第5,646,269号及び同第5,677,439号を参照されたく、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
なお更なる実施形態では、1つ以上の糖及び/又はヌクレオチド単位の1つ以上のヌクレオチド間結合の両方が「天然に存在しない」基で置き換えられている、オリゴヌクレオチド模倣物がある。オリゴヌクレオチドの塩基は、ハイブリダイゼーションのために維持される。いくつかの態様では、この実施形態は、ペプチド核酸(PNA)を企図する。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格で置き換えられる。例えば、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、及び同第5,719,262号、並びにNielsen et al.,Science,1991,254,1497-1500を参照されたく、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
なお更なる実施形態では、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド及びヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシドが提供され、米国特許第5,489,677号及び同第5,602,240号に記載の-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、及び-O-N(CH3)-CH2-CH2-を含む。米国特許第5,034,506号に記載のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも企図される。
【0052】
様々な形態では、オリゴヌクレオチド中の2つの連続するモノマー間の結合は、-CH2-、-O-、-S-、-NRH-、>C=O、>C=NRH、>C=S、-Si(R”)2-、-SO-、-S(O)2-、-P(O)2-、-PO(BH3)-、-P(O,S)-、-P(S)2-、-PO(R”)-、-PO(OCH3)-、及び-PO(NHRH)から選択される2~4個の、望ましくは3個の基/原子からなり、式中、RHは、水素及びC1-4-アルキルから選択され、R”は、C1-6-アルキル及びフェニルから選択される。そのような結合の例示的な例は、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CO-CH2-、-CH2-CHOH-CH2-、-O-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH=(後続のモノマーへの結合として使用されるときR5を含む)、-CH2-CH2-O-、-NRH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-NRH-、-CH2-NRH-CH2- -、-O-CH2-CH2-NRH-、-NRH-CO-O-、-NRH-CO-NRH-、-NRH-CS-NRH-、-NRH-C(=NRH)-NRH-、-NRH-CO-CH2-NRH-O-CO-O-、-O-CO-CH2-O-、-O-CH2-CO-O-、-CH2-CO-NRH-、-O-CO-NRH-、-NRH-CO-CH2-、-O-CH2-CO-NRH-、-O-CH2-CH2-NRH-、-CH=N-O-、-CH2-NRH-O-、-CH2-O-N=(後続のモノマーへの結合として使用される場合R5を含む)、-CH2-O-NRH-、-CO-NRH-CH2-、-CH2-NRH-O-、-CH2-NRH-CO-、-O-NRH-CH2-、-O-NRH、-O-CH2-S-、-S-CH2-O-、-CH2-CH2-S-、-O-CH2-CH2-S-、-S-CH2-CH=(後続のモノマーへの結合として使用される場合R5を含む)、-S-CH2-CH2-、-S-CH2-CH2--O-、-S-CH2-CH2-S-、-CH2-S-CH2-、-CH2-SO-CH2-、-CH2-SO2-CH2-、-O-SO-O-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-CH2-、-O-S(O)2-NRH-、-NRH-S(O)2-CH2-;-O-S(O)2-CH2-、-O-P(O)2-O-、-O-P(O,S)-O-、-O-P(S)2-O-、-S-P(O)2-O-、-S-P(O,S)-O-、-S-P(S)2-O-、-O-P(O)2-S-、-O-P(O,S)-S-、-O-P(S)2-S-、-S-P(O)2-S-、-S-P(O,S)-S-、-S-P(S)2-S-、-O-PO(R”)-O-、-O-PO(OCH3)-O-、-O-PO(O CH2CH3)-O-、-O-PO(O CH2CH2S-R)-O-、-O-PO(BH3)-O-、-O-PO(NHRN)-O-、-O-P(O)2-NRHH-,-NRH-P(O)2-O-、-O-P(O,NRH)-O-、-CH2-P(O)2-O-、-O-P(O)2-CH2-、及び-O-Si(R”)2-O-であり、これらの中でとりわけ、-CH2-CO-NRH-、-CH2-NRH-O-、-S-CH2-O-、-O-P(O)2-O-O-P(-O,S)-O-、-O-P(S)2-O-、-NRHP(O)2-O-、-O-P(O,NRH)-O-、-O-PO(R”)-O-、-O-PO(CH3)-O-、及び-O-PO(NHRN)-O-(式中、RHは、水素及びC1-4-アルキルから選択され、R”は、C1-6-アルキル及びフェニルから選択される)が企図される。更なる例示は、Mesmaeker et.al.,Current Opinion in Structural Biology 1995,5,343-355及びSusan M.Freier and Karl-Heinz Altmann,Nucleic Acids Research,1997,vol 25,pp 4429-4443に提供されている。
【0053】
オリゴヌクレオチドのなお他の修飾形態は、米国特許出願第2004/0219565号に詳細に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
修飾オリゴヌクレオチドはまた、1つ以上の置換糖部分を含有してもよい。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、以下のうちの1つを2’位に含み:OH;F;O-、S-、若しくはN-アルキル;O-、S-、若しくはN-アルケニル;O-、S-、若しくはN-アルキニル;又はO-アルキル-O-アルキル、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換のC1~C10アルキル又はC2~C10アルケニル及びアルキニルであり得る。他の実施形態には、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、及びO(CH2)nON[(CH2)nCH3]2が含まれ、式中、n及びmは、1~約10である。他のオリゴヌクレオチドは、以下のうちの1つを2’位に含む:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル又はO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、又はRNA切断基。一態様では、修飾としては、2’-メトキシエトキシ(2’-O-(2-メトキシエチル)又は2’-MOEとしても知られる、2’-O-CH2CH2OCH3)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486-504)、すなわち、アルコキシアルコキシ基が挙げられる。他の修飾としては、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、及び2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において、2’-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチル又は2’-DMAEOEとしても知られる)、すなわち、2’-O-CH2-O-CH2-N(CH3)2が挙げられる。
【0055】
更に他の修飾としては、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)、2’-アリル(2’-CH2-CH=CH2)、2’-O-アリル(2’-O-CH2-CH=CH2)、及び2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。2’修飾は、アラビノ(上)位又はリボ(下)位にあってもよい。一態様では、2’-アラビノ修飾は、2’-Fである。同様の修飾はまた、オリゴヌクレオチドの他の位置、例えば、3’終端ヌクレオチド上の糖の3’位、又は2’-5’結合オリゴヌクレオチド中、及び5’終端ヌクレオチドの5’位で行ってもよい。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣物を有していてもよい。例えば、米国特許第4,981,957号、同第5,118,800号、同第5,319,080号、同第5,359,044号、同第5,393,878号、同第5,446,137号、同第5,466,786号、同第5,514,785号、同第5,519,134号、同第5,567,811号、同第5,576,427号、同第5,591,722号、同第5,597,909号、同第5,610,300号、同第5,627,053号、同第5,639,873号、同第5,646,265号、同第5,658,873号、同第5,670,633号、同第5,792,747号、及び同第5,700,920号を参照されたく、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
いくつかの態様では、糖の修飾には、2’-ヒドロキシル基が糖環の3’又は4’炭素原子に結合し、それにより、二環式糖部分を形成する、ロックド核酸(LNA)が含まれる。特定の態様では、結合は、2’酸素原子と4’炭素原子とを架橋するメチレン(-CH2-)nであり、式中、nは1又は2である。LNA及びその調製は、WO98/39352及びWO99/14226に記載されている。
【0057】
修飾ヌクレオチドは、EP1072679及びWO97/12896に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。修飾核酸塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル並びにアデニン及びグアニンの他のアルキル誘導体、2-プロピル並びにアデニン及びグアニンの他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル並びに他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル並びに他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン、並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられるが、これらに限定されない。更なる修飾塩基としては、三環系のピリミジン、例えばフェノキサジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)のようなG-クランプ(G-clamp)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)が挙げられる。修飾塩基には、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、及び2-ピリドンで置き換えられたものも含まれ得る。追加の核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858-859、Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley&Sons,1990に開示されるもの、Englisch et al.,1991,Angewandte Chemie,International Edition,30:613に開示されているもの、及びSanghvi,Y.S.,Chapter 15,Antisense Research and Applications,pages 289-302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,ed.,CRC Press,1993に開示されているものが挙げられる。これらの塩基のいくつかは、結合親和性を高めるのに有用であり、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、並びにN-2、N-6、及びO-6置換プリンを含み、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃上昇させることが示されており、特定の態様では、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされる。米国特許第3,687,808号、米国特許第4,845,205号、同第5,130,302号、同第5,134,066号、同第5,175,273号、同第5,367,066号、同第5,432,272号、同第5,457,187号、同第5,459,255号、同第5,484,908号、同第5,502,177号、同第5,525,711号、同第5,552,540号、同第5,587,469号、同第5,594,121号、同第5,596,091号、同第5,614,617号、同第5,645,985号、同第5,830,653号、同第5,763,588号、同第6,005,096号、同第5,750,692号及び同第5,681,941号を参照されたく、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
所定の配列のポリヌクレオチドを作製する方法は周知である。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd ed.1989)及びF.Eckstein(ed.)Oligonucleotides and Analogues,1st Ed.(Oxford University Press,New York,1991)を参照されたい。固相合成法は、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドの両方に適している(DNA合成の周知の方法は、RNA合成にも有用である)。ポリリボヌクレオチドは酵素的に調製することもできる。天然に存在しない核酸塩基もポリヌクレオチドに組み込むことができる。例えば、米国特許第7,223,833号、Katz,J.Am.Chem.Soc.,74:2238(1951)、Yamane,et al.,J.Am.Chem.Soc.,83:2599(1961)、Kosturko,et al.,Biochemistry,13:3949(1974)、Thomas,J.Am.Chem.Soc.,76:6032(1954)、Zhang,et al.,J.Am.Chem.Soc.,127:74-75(2005)、及びZimmermann,et al.,J.Am.Chem.Soc.,124:13684-13685(2002)を参照されたい。
【0059】
様々な態様では、本開示のオリゴヌクレオチド(例えば、cGAS-活性化オリゴヌクレオチド)又はその修飾形態は、一般に、約5ヌクレオチド長~約5000ヌクレオチド長である。様々な実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、約5~約4000ヌクレオチド長、約5~約3000ヌクレオチド長、約5~約2000ヌクレオチド長、約5~約1000ヌクレオチド長、約5~約900ヌクレオチド長、約5~約800ヌクレオチド長、約5~約700ヌクレオチド長、約5~約600ヌクレオチド長、約5~約500ヌクレオチド長、約5~約450ヌクレオチド長、約5~約400ヌクレオチド長、約5~約350ヌクレオチド長、約5~約300ヌクレオチド長、約5~約250ヌクレオチド長、約5~約200ヌクレオチド長、約5~約150ヌクレオチド長、約5~約100、約5~約90ヌクレオチド長、約5~約80ヌクレオチド長、約5~約70ヌクレオチド長、約5~約60ヌクレオチド長、約5~約50ヌクレオチド長、約5~約45ヌクレオチド長、約5~約40ヌクレオチド長、約5~約35ヌクレオチド長、約5~約30ヌクレオチド長、約5~約25ヌクレオチド長、約5~約20ヌクレオチド長、約5~約15ヌクレオチド長、約5~約10ヌクレオチド長、約10~約4000ヌクレオチド長、約10~約3000ヌクレオチド長、約10~約2000ヌクレオチド長、約10~約1000ヌクレオチド長、約10~約900ヌクレオチド長、約10~約800ヌクレオチド長、約10~約700ヌクレオチド長、約10~約600ヌクレオチド長、約10~約500ヌクレオチド長、約10~約450ヌクレオチド長、約10~約400ヌクレオチド長、約10~約350ヌクレオチド長、約10~約300ヌクレオチド長、約10~約250ヌクレオチド長、約10~約200ヌクレオチド長、約10~約150ヌクレオチド長、約10~約100ヌクレオチド長、約10~約90ヌクレオチド長、約10~約80ヌクレオチド長、約10~約70ヌクレオチド長、約10~約60ヌクレオチド長、約10~約50ヌクレオチド長、約10~約45ヌクレオチド長、約10~約40ヌクレオチド長、約10~約35ヌクレオチド長、約10~約30ヌクレオチド長、約10~約25ヌクレオチド長、約10~約20ヌクレオチド長、約10~約15ヌクレオチド長、約18~約28ヌクレオチド長、約15~約26ヌクレオチド長、及びオリゴヌクレオチドが所望の結果を達成できる程度に具体的に開示されたサイズの中間にある全てのオリゴヌクレオチド長である。したがって、様々な実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、又はそれ以上のヌクレオチド長であるか、又は少なくともそれらである。更なる実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又はそれ以上のヌクレオチド長である。更なる実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、約5~約250ヌクレオチド長、約5~約200ヌクレオチド長、約5~約150ヌクレオチド長、約5~約100ヌクレオチド長、約5~約90ヌクレオチド長、約5~約80ヌクレオチド長、約5~約70ヌクレオチド長、約5~約60ヌクレオチド長、約5~約50ヌクレオチド長、約5~約45ヌクレオチド長、約5~約40ヌクレオチド長、約5~約35ヌクレオチド長、約5~約30ヌクレオチド長、約5~約25ヌクレオチド長、約5~約20ヌクレオチド長、約5~約15ヌクレオチド長、約5~約10ヌクレオチド長、約10~約250ヌクレオチド長、約10~約200ヌクレオチド長、約10~約150ヌクレオチド長、約10~約100ヌクレオチド長、約10~約90ヌクレオチド長、約10~約80ヌクレオチド長、約10~約60ヌクレオチド長、約10~約50ヌクレオチド長、約10~約45ヌクレオチド長、約10~約40ヌクレオチド長、約10~約35ヌクレオチド長、約10~約30ヌクレオチド長、約10~約25ヌクレオチド長、約10~約20ヌクレオチド長、約10~約15ヌクレオチド長、約15~約250ヌクレオチド長、約15~約200ヌクレオチド長、約15~約150ヌクレオチド長、約15~約100ヌクレオチド長、約15~約90ヌクレオチド長、約15~約80ヌクレオチド長、約15~約70ヌクレオチド長、約15~約60ヌクレオチド長、約15~約50ヌクレオチド長、約15~約45ヌクレオチド長、約15~約40ヌクレオチド長、約15~約35ヌクレオチド長、約15~約30ヌクレオチド長、約15~約25ヌクレオチド長、約15~約20ヌクレオチド長、及びオリゴヌクレオチドが所望の結果を達成できる程度に具体的に開示されたサイズの中間にある全てのオリゴヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、15ヌクレオチド長であるか、又は少なくともそれである。前述の長さの各々は、ヌクレオチドの長さ(例えば、一本鎖核酸を指すとき)又は塩基対の長さ(例えば、cGAS活性化オリゴヌクレオチドなどの二本鎖核酸を指すとき)を指し得ることが理解されるであろう。様々な実施形態では、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルは、全てが同じ長さ/配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、いくつかの実施形態では、複数のオリゴヌクレオチドは、複数の中の少なくとも1個の他のオリゴヌクレオチドに対して異なる長さ及び/又は配列を有する1個以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGAS、又はAIM2(黒色腫-2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN-調節因子のDNA依存性活性化因子)、又はIFI16(インターフェロン-γ誘導性タンパク質16)が挙げられるが、これらに限定されない、他の細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長であり、1個の以上の追加のオリゴヌクレオチドを更に含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドからなり、これらの各々が、cGASを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドは、cGASを活性化し、また、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する二重機能性オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドは、細胞質DNAセンサー(例えば、限定するものではないが、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)、AIM2(黒色腫2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN調節因子のDNA依存性活性化因子)、IFI16(インターフェロンγ誘導性タンパク質16)、又はそれらの組み合わせ)を活性化し、また、転写因子(例えば、限定するものではないが、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、cMyc、NANOG、SOX2、OCT4、又はそれらの組み合わせ)を不活性化する二重機能性オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、(i)各々が環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、並びに(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、本開示のSNAは、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、(iii)各々がcGASを活性化し、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又は(iv)それらの組み合わせを含む、オリゴヌクレオチドのシェルを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドのシェルは、(i)各々が細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、並びに(ii)転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチドを含む。様々な実施形態では、本開示のSNAは、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチド、(ii)転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、(iii)各々が細胞質DNAセンサーを活性化し、転写因子を不活性化する1個以上のオリゴヌクレオチド、又は(iv)それらの組み合わせを含む、オリゴヌクレオチドのシェルを含む。
【0060】
スペーサー。いくつかの態様及び実施形態では、SNAのナノ粒子コアに結合するオリゴヌクレオチドのシェル内の1個以上のオリゴヌクレオチドは、スペーサーを含む。いくつかの態様及び実施形態では、SNAのナノ粒子コアに結合するオリゴヌクレオチドのシェル内の各オリゴヌクレオチドは、スペーサーを含む。本明細書で使用される場合、「スペーサー」は、ナノ粒子コアとオリゴヌクレオチドとの間の距離を増加させる、又は複数のコピーでナノ粒子コアに結合したときに個々のオリゴヌクレオチド間の距離を増加させる、又はSNAの合成を向上させる役割を果たす部分を意味する。したがって、スペーサーは、オリゴヌクレオチドとナノ粒子コアとの間に位置することが企図される。いくつかの実施形態では、SNAのナノ粒子コアに封入されたオリゴヌクレオチドは、スペーサーを含む。
【0061】
いくつかの態様では、スペーサーは、存在する場合、有機部分である。いくつかの態様では、スペーサーは、水溶性ポリマー、核酸、ポリペプチド、オリゴ糖、炭水化物、脂質、エチルグリコール、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないポリマーである。本開示の態様又は実施形態のいずれかでは、スペーサーは、オリゴ(エチレングリコール)ベースのスペーサーである。様々な実施形態では、オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、又はそれ以上のスペーサー(例えば、スペーサー-18(ヘキサエチレングリコール))部分を含む。更なる実施形態では、スペーサーはアルカン系スペーサー(例えば、C12)である。いくつかの実施形態では、スペーサーはオリゴヌクレオチドスペーサー(例えば、T5)である。オリゴヌクレオチドスペーサーは、ナノ粒子コア又は標的に結合するようになるオリゴヌクレオチドの能力を妨害しない任意の配列を有し得る。特定の態様では、オリゴヌクレオチドスペーサーの塩基は、全てのアデニル酸、全てのチミジル酸、全てのシチジル酸、全てのグアニル酸、全てのウリジル酸、又は全ての他のいくつかの修飾塩基である。
【0062】
様々な実施形態では、スペーサーの長さは、少なくとも約2ヌクレオチド、少なくとも約3ヌクレオチド、少なくとも約4ヌクレオチド、少なくとも約5ヌクレオチド、5~10ヌクレオチド、10ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、又は更には30ヌクレオチド超であるか、又はそれらに等しい。
【0063】
密度。SNAの外部表面上のオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの数は変動し得る。一般に、ナノ粒子を安定させるのに適当な表面密度、及びナノ粒子とオリゴヌクレオチドとの所望の組み合わせに対してそれを得るのに必要な条件は、実験的に決定することができる。いくつかの実施形態では、1個以上のオリゴヌクレオチドはまた、ナノ粒子コアに封入されている。ナノ粒子コアに封入されたオリゴヌクレオチドの数及び長さは、ナノ粒子コアの直径によってある程度決定され得る。同様に、SNAの外部表面上のオリゴヌクレオチドの数は、ナノ粒子コアの直径及び/又はオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列によってある程度決定され得る。一般に、少なくとも約2pモル/cm2の表面密度が、安定なナノ粒子-オリゴヌクレオチド組成物を提供するのに適当である。いくつかの態様では、表面密度は、15pモル/cm2であるか、又は少なくともそれである。また、オリゴヌクレオチドが、少なくとも2pmol/cm2、少なくとも3pmol/cm2、少なくとも4pmol/cm2、少なくとも5pmol/cm2、少なくとも6pmol/cm2、少なくとも7pmol/cm2、少なくとも8pmol/cm2、少なくとも9pmol/cm2、少なくとも10pmol/cm2、少なくとも約15pmol/cm2、少なくとも約19pmol/cm2、少なくとも約20pmol/cm2、少なくとも約25pmol/cm2、少なくとも約30pmol/cm2、少なくとも約35pmol/cm2、少なくとも約40pmol/cm2、少なくとも約45pmol/cm2、少なくとも約50pmol/cm2、少なくとも約55pmol/cm2、少なくとも約60pmol/cm2、少なくとも約65pmol/cm2、少なくとも約70pmol/cm2、少なくとも約75pmol/cm2、少なくとも約80pmol/cm2、少なくとも約85pmol/cm2、少なくとも約90pmol/cm2、少なくとも約95pmol/cm2、少なくとも約100pmol/cm2、少なくとも約125pmol/cm2、少なくとも約150pmol/cm2、少なくとも約175pmol/cm2、少なくとも約200pmol/cm2、少なくとも約250pmol/cm2、少なくとも約300pmol/cm2、少なくとも約350pmol/cm2、少なくとも約400pmol/cm2、少なくとも約450pmol/cm2、少なくとも約500pmol/cm2、少なくとも約550pmol/cm2、少なくとも約600pmol/cm2、少なくとも約650pmol/cm2、少なくとも約700pmol/cm2、少なくとも約750pmol/cm2、少なくとも約800pmol/cm2、少なくとも約850pmol/cm2、少なくとも約900pmol/cm2、少なくとも約950pmol/cm2、少なくとも約1000pmol/cm2、又はそれ以上の表面密度でナノ粒子コアの外部表面に結合している方法も提供される。
【0064】
あるいは、SNAの外部表面上のオリゴヌクレオチドの密度は、SNAの外部表面上のオリゴヌクレオチドの数によって測定される。本開示のSNAの外部表面上のオリゴヌクレオチドの表面密度に関して、本明細書に記載されるSNAが、その外部表面上に約1~約250個のオリゴヌクレオチドを含むことが企図される。様々な実施形態では、SNAは、その表面上に、約10~約200個、又は約10~約190個、又は約10~約180個、又は約10~約170個、又は約10~約160個、又は約10~約150個、又は約10~約140個、又は約10~約130個、又は約10~約120個、又は約10~約110個、又は約10~約100個、又は約10~約90個、又は約10~約80個、又は約10~約70個、又は10~約60個、又は約10~約50個、又は約10~約40個、又は約10~約30個、又は約10~約20個、又は約50~約200個、又は約50~約150個、又は約50~約100個、又は約50~約80個のオリゴヌクレオチドを含む。更なる実施形態では、SNAは、その表面上に、約4~約250個、又は約4~約200個、又は約4~約190個、又は約4~約180個、又は約4~約170個、又は約4~約160個、又は約4~約150個、又は約4~約140個、又は約4~約130個、又は約4~約120個、又は約4~約110個、又は4~約100個、又は約4~約90個、又は約4~約80個、又は約4~約70個、又は4~約60個、又は約4~約50個、又は約4~約40個、又は約4~約30個、又は約4~約20個、又は約4~約10個、又は約50~約200個、又は約50~約150個、又は約50~約100個、又は約50~約80個のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、SNAは、その表面上に約80~約140個のオリゴヌクレオチドを含む。更なる実施形態では、SNAは、その表面上に、少なくとも約5、10、20、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、又は250個のポリヌクレオチドを含む。更なる実施形態では、SNAは、その表面上の、5、10、20、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、又は250個のポリヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、リポソームコア又は脂質ナノ粒子コアを含むSNA(これは、様々な実施形態では、直径約150ナノメートル若しくは約150ナノメートル未満、又は直径約100ナノメートル若しくは約100ナノメートル未満、又は直径約80ナノメートル若しくは約80ナノメートル未満、又は直径約70ナノメートル若しくは約70ナノメートル未満であり得る)は、その表面上に約10~約2,000個のオリゴヌクレオチド、又は約10~約1,000個のオリゴヌクレオチド、又は約10~約80個のオリゴヌクレオチド、又は約10~約40個のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、金属(例えば、金)コアを含むSNAは、その表面上に約70~約120個のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、PLGA)コアを含むSNAは、その表面上に約70個のオリゴヌクレオチドを含む。
【0065】
組成物
いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖DNAオリゴヌクレオチド又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、(ii)転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、(i)環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、(ii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ又は複数の球状核酸(SNA)を含む、組成物であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、複数の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、これらの各々が、(i)細胞質DNAセンサーを活性化し、(ii)転写因子を不活性化し、かつ(iii)少なくとも15塩基対長である、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、組成物を提供する。様々な実施形態では、細胞質DNAセンサーは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)、AIM2(黒色腫-2には存在しない)、RNAポリメラーゼIII、DAI(IFN-調節因子のDNA依存性活性化因子)、IFI16(インターフェロン-γ-誘導性タンパク質16)、又はそれらの組み合わせである。本開示の態様又は実施形態のうちのいずれかでは、転写因子は、がんの進行を促進する。様々な実施形態では、転写因子は、シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)、cMyc、NANOG、SOX2、OCT4、又はそれらの組み合わせである。
【0066】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗原性組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体を更に含む。「担体」という用語は、本明細書に記載されるSNAが哺乳類対象に投与されるビヒクルを指す。担体という用語は、希釈剤、賦形剤、アジュバント、及びそれらの組み合わせを包含する。薬学的に許容される担体は、当技術分野でよく知られている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences by Martin,1975を参照されたい)。
【0067】
例示的な「希釈剤」としては、滅菌水、生理食塩溶液、及び緩衝液(例えば、ホスフェート、トリス、ボレート、スクシネート、又はヒスチジン)などの滅菌液体が挙げられる。例示的な「賦形剤」は、ワクチン安定性を強化し得る不活性物質であり、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、炭水化物(例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、又はセルロース)、及びアルコール(例えば、グリセロール、ソルビトール、又はキシリトール)が挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントとしては、抗原提示細胞(APC)に関連抗原を標的化するワクチン送達系(例えば、エマルジョン、マイクロ粒子、免疫刺激複合体(ISCOMS)、又はリポソーム)、及び免疫刺激性アジュバントが挙げられる。
【0068】
抗原
様々な態様では、本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。本開示は、球状核酸(SNA)であって、(a)ナノ粒子コアと、(b)ナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェルであって、本明細書に記載される細胞質DNAセンサーを活性化し、かつ少なくとも15塩基対長である、二本鎖又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのシェルと、を含む、球状核酸(SNA)を提供する。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、抗原を含む。様々な実施形態では、抗原は、ペプチド、タンパク質、抗原をコードするDNA若しくはRNA分子、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗原は、がん関連抗原である。更なる実施形態では、抗原は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、ネオ抗原、又はそれらの組み合わせである。様々な実施形態では、がんは、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、眼がん、肝臓がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、脳がん、又はそれらの組み合わせである。様々な実施形態では、抗原は、OVA1、MSLN、P53、Ras、変異型IDH1(IDH1R132H)、変異型テロメラーゼ逆転写酵素(TERT;C228T又はC250T)、黒色腫関連抗原、HPV関連抗原、前立腺がん関連抗原、膠芽腫抗原、グレードIV星細胞腫抗原、卵巣がん関連抗原、乳がん関連抗原、肝細胞がん腫関連抗原、大腸がん関連抗原、又はヒトパピローマウイルス(HPV)E7核タンパク質である。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗原は、ナノ粒子コアに封入されている。いくつかの実施形態では、抗原は、ナノ粒子コアに封入されている抗原をコードするDNA又はRNA分子である。いくつかの実施形態では、抗原がナノ粒子コアの表面に結合しているか、抗原がオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに結合しているか、又はその両方である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2020/0384104号を参照されたい)。更なる実施形態では、抗原は、(i)ナノ粒子コア内に封入されており、(ii)ナノ粒子コアの表面に結合しており、及び/又はオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに結合している。いくつかの実施形態では、抗原は、リンカーを介してナノ粒子コアの表面に結合している。
【0070】
障害を治療するためのSNAの使用
いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、障害を治療、軽減、改善するために使用される。したがって、いくつかの態様では、本開示は、障害(例えば、がん)を治療又は改善する方法であって、有効量の本開示のSNA又は組成物を、それを必要とする対象(例えば、ヒト対象)に投与することを含み、投与することが、障害を治療又は改善する、方法を提供する。様々な実施形態では、がんは、乳がん、腹膜がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、眼がん、肝臓がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、脳がん、又はそれらの組み合わせである。
【0071】
本開示のSNA及び組成物の投与は、単回用量又は複数回用量スケジュールを伴い得る。複数回用量スケジュールでは、様々な用量が、同じか又は異なるルートによって与えられ得る。
【0072】
遺伝子調節の方法
本開示のいくつかの態様では、本開示のSNAに会合するオリゴヌクレオチドは、遺伝子の発現を阻害する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、cGASを活性化し、任意選択でSTAT3を不活性化し、また、遺伝子阻害機能を有する。したがって、いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアの外部表面に結合しているオリゴヌクレオチドのシェルは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)を活性化し、各々が少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、標的遺伝子発現を阻害するように設計された1個以上の阻害性オリゴヌクレオチドを更に含む。いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、細胞質DNAセンサーを活性化し、任意選択で転写因子を不活性化し、また、遺伝子阻害機能を有する。更なる実施形態では、ナノ粒子コアの外部表面に結合しているオリゴヌクレオチドのシェルは、本明細書に記載される細胞質DNAセンサーを活性化し、各々が少なくとも15塩基対長である1個以上の二本鎖及び/又は一本鎖ステムループDNAオリゴヌクレオチドを含み、標的遺伝子発現を阻害するように設計された1個以上の阻害性オリゴヌクレオチドを更に含む。いくつかの実施形態では、標的遺伝子発現を阻害するように設計された1個以上の阻害性オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子コアに封入されている。いくつかの実施形態では、標的遺伝子発現を阻害するように設計された1個以上の阻害性オリゴヌクレオチドは、両方とも、ナノ粒子コアの外部表面に結合しており、ナノ粒子コアに封入されている。
【0073】
遺伝子産物の発現を阻害する方法には、標的遺伝子産物の発現が、SNAの不在下での遺伝子産物の発現と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%阻害されるものが含まれる。言い換えれば、提供される方法は、本質的に標的遺伝子産物の発現のあらゆる程度の阻害をもたらすものを包含する。
【0074】
阻害の程度は、体液試料若しくは生検試料から、又は当技術分野において周知の画像化技術により、インビボで決定される。あるいは、阻害の程度は、一般に、特定の種類のSNA及び特定のオリゴヌクレオチドの使用から生じるインビボで予想され得る阻害の程度の予測可能な尺度として、細胞培養アッセイにおいて決定される。
【0075】
様々な態様では、方法は、標的オリゴヌクレオチドに100%相補的である、すなわち完全に一致するが、他の態様では、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さにわたってポリヌクレオチドに少なくとも(以上を意味する)約95%相補的、オリゴヌクレオチドが標的遺伝子産物の所望の程度の阻害を達成することができる程度にオリゴヌクレオチドの長さにわたってポリヌクレオチドに少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%相補的である、オリゴヌクレオチドの使用を含む。
【0076】
相補性パーセントは、オリゴヌクレオチドの長さにわたって決定される。例えば、阻害性オリゴヌクレオチドの20ヌクレオチドのうちの18ヌクレオチドが全長100ヌクレオチドの標的ポリヌクレオチドの20ヌクレオチド領域に相補的であるアンチセンス化合物を考えると、オリゴヌクレオチドは90パーセント相補的であろう。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスター化されるか又は相補的ヌクレオチドが散在していてもよく、互いに又は相補的核酸塩基に隣接する必要はない。阻害性オリゴヌクレオチドの標的核酸の領域との相補性パーセントは、当技術分野で知られているBLASTプログラム(基本的なローカルアライメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を使用して日常的に決定することができる。
【0077】
そのような方法で利用されるオリゴヌクレオチドは、RNA又はDNAのいずれかである。RNAは、調節機能を果たす阻害性RNA(RNAi)などの阻害性オリゴヌクレオチドであってもよく、様々な実施形態では、小阻害性RNA(siRNA)、シングルガイドRNA(sgRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、及びリボザイムからなる群から選択される。あるいは、RNAは、調節機能を果たすマイクロRNAである。DNAは、いくつかの実施形態では、アンチセンス-DNAである。いくつかの実施形態では、RNAはpiwi相互作用RNA(piRNA)である。
【0078】
治療剤
本明細書で提供される技術は、広範な適用可能性を有する。本開示のSNA(例えば、SNAISD及びSNAISD/STAT3i)は、広範囲の腫瘍型に対して一般化可能な抗腫瘍剤として使用することができるオリゴヌクレオチドベースの薬物の分類である。
【0079】
本開示によって企図される治療剤としては、限定するものではないが、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、抗体又は抗体断片、小分子、ペプチド、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、化学療法剤、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
本明細書で使用される「小分子」という用語は、化学化合物若しくは薬物、又は天然若しくは合成のいずれかの任意の他の低分子量有機化合物を指す。「低分子量」とは、1500ダルトン未満、典型的には100~700ダルトンの分子量を有する化合物を意味する。
【0081】
いくつかの実施形態では、SNAは、放射線などの1つ以上の標準治療の治療剤と、抗PD1などのチェックポイント阻害剤、並びに抗CD73(Ty/23)及びA2aR阻害剤SCH58261などの免疫抑制アデノシンシグナル伝達の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない、現存する免疫療法とを組み合わせて使用される。
【0082】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のSNAは、治療剤、又はその複数を更に含む。治療剤は、様々な実施形態では、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合したオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに単純に会合しており、かつ/又は治療剤はSNAのナノ粒子コアに会合しており、かつ/又は治療剤はSNAに封入されている。いくつかの実施形態では、治療剤は、ナノ粒子コアに結合していないオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの終端に会合している(例えば、オリゴヌクレオチドがその3’終端を通してナノ粒子コアに結合している場合、治療剤はオリゴヌクレオチドの5’終端に会合している)。あるいは、いくつかの実施形態では、治療剤は、ナノ粒子コアに結合しているオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドの終端に会合している(例えば、オリゴヌクレオチドがその3’終端を通してナノ粒子コアに結合している場合、治療剤はオリゴヌクレオチドの3’終端に会合している)。いくつかの実施形態では、治療剤は、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合しているオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに共有結合的に会合している。いくつかの実施形態では、治療剤は、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合しているリンカー又はスペーサーに共有結合的に会合している。いくつかの実施形態では、治療剤は、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合しているオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに非共有結合的に会合している。しかしながら、本開示は、1つ以上の治療剤が、SNAのナノ粒子コアの外部表面に結合しているオリゴヌクレオチドのシェル内のオリゴヌクレオチドに共有結合的及び非共有結合的の両方で会合しているSNAを提供することを理解されたい。また、非共有結合的な会合には、ハイブリダイゼーション、タンパク質結合、及び/又は疎水性相互作用が含まれることも理解されるであろう。いくつかの実施形態では、治療剤は、本開示のSNAとは別個に投与される。したがって、いくつかの実施形態では、治療剤は、障害を治療するために、本開示のSNAの前、後、又は同時に投与される。
【0083】
以下の実施例は、本開示によって企図される様々な実施形態を例解している。実施例は、本来、例示的なものであり、決して限定的であることを意図するものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1
この実施例では、金ナノ粒子コア(SNAISD)上に高い表面密度でインターフェロン刺激性二本鎖(ds)DNA(ISD)を提示するcGAS活性化SNAを合成し、特性評価した。本明細書で提供されるデータは、SNAISDが、CDNよりもcGAS-STING経路をより強力に活性化し、IRF及びNF-κB依存性転写の下流誘導で頂点に達することを示した。免疫能力のあるGBM保有マウスに腫瘍内又は鼻腔内投与するとき、SNAISDは、遊離ISD45オリゴヌクレオチド又はCDNよりも確実に腫瘍進行に拮抗し、cGAS-STINGシグナル伝達経路の特異的活性化を通して動物対象の長期生存を促進した。
【0085】
単機能性cGAS活性化SNAに加えて、cGASを活性化し、STAT3マスター転写因子のトランス活性化活性を付随的に阻害することができる二峰性SNAを生成した。cGASによるDNA認識がオリゴヌクレオチド配列とは独立して起こるため、この目的のために、標準的なISD DNAオリゴヌクレオチドを、マスター転写因子STAT3に結合し、それを隔離し、不活性化することが示されるオリゴヌクレオチドに置き換えた。二峰性SNAISD/STAT3iSNAは、インビトロでcGASを活性化し、核転座及びSTAT3の転写活性をブロックし、インビボで神経膠腫の進行に拮抗することを示した。
【0086】
ISD45-SNAの開発及び特性評価
45bpのISDオリゴヌクレオチドは、最も使用され、広く特性評価されたcGAS活性化剤を表すため、cGAS活性化のためのSNAアーキテクチャを活用するために、13nmの金ナノ粒子を45塩基対(bp)のdsISDオリゴヌクレオチド(ISD45-SNA、
図1A)とコンジュゲートすることによってISD45-SNAを合成した
7。「dsISD
45」及び「ISD45」という用語は、本明細書で使用される場合には交換可能である。シトレート安定化金ナノ粒子を、Frens法を使用して調製した
4、8、9。チオール化されたdsDNAオリゴヌクレオチドを合成し、逆相高性能液体クロマトグラフィーを使用して精製し、塩化ナトリウムを塩エージングによって金ナノ粒子表面に共有結合的に結合した
10、11。電子顕微鏡及び動的光散乱により、SNA
ISD-45形状及びサイズを確認した(13nmの金コア、DNAコロナを含んで直径72nm)。加えて、OliGreen蛍光アッセイを使用して融解曲線を生成し、ゼータ電位を決定することによって、オリゴヌクレオチドの組み込みを定量化した
4、8、9。SNA
ISDによるcGAS DNA感知酵素の直接的な関与を評価するために、ヒト組換えcGAS酵素を使用して、無細胞cGAS活性化アッセイを開発した(
図1B)。組換えヒトcGAS酵素、MgCl
2、ATP、及びGTPの混合物を、ssDNA
45、ISD45、cGAMP、ssDNA
45-SNAs、又はISD45-SNAのいずれかとともにインキュベートした。cGAS酵素の不活性化時に、混合物をcGAS欠損RAW-Lucia(商標)マクロファージに添加し、IRF誘導性Luciaルシフェラーゼレポーターの安定した統合を担持して、IRF誘導を発光測定的に定量化した。このマクロファージ株は、cGAS欠損のためにcGAMPを合成することができない。
図1Cに示されるように、ISD45-SNAは、遊離ISD45オリゴヌクレオチド又はcGAMPトランスフェクト培養物と比較して、同様のレベルまでIRFを活性化したが、ssDNA
45-SNA治療マクロファージは同様のレベルまでIRFを活性化しなかった。RAW-Lucia(商標)マクロファージ及びヒト単球細胞株であるTHP-1細胞の両方において、遊離オリゴヌクレオチドと比較したとき、かつリポプレックス(Lipofectamine 3000)トランスフェクション(TFX)を介して送達された遊離オリゴヌクレオチドで達成された同様のレベルと比較したとき、特にマクロファージにおける確実な細胞取り込み(
図2A)を反映して、ISD45-SNAは、IRFを強力に活性化した。(
図2B~C)。その後、機能性cGAS-STING経路成分に対するIRF誘導の依存性を、同質遺伝子cGAS-、STING-、及びIRF欠損マクロファージにおいて評価し(
図2D)、STING、cGAS、又はIRFの非存在下で、SNA
ISD-45又はISD-45治療に応答するIRF誘導が鈍化したことを示した。加えて、ELISA及び抗体アレイを使用した多重サイトカインプロファイリングは、SNA
ISD治療に応答して、IL-6、TNF-α、及びCCL2を含む、NF-κB-及びSTAT6誘導性炎症誘発性サイトカインの確実な活性化を明らかにした(
図2E~F)。重要なことに、遺伝子調節及びTLR9活性化SNAについて報告されているように、ISD45-SNAのcGAS活性化特性は、ナノ粒子コアからではなく、高密度に機能化され、高度に配向された核酸シェルから生じる
12~14。13nmの金ベースのアーキテクチャ(
図1及び2)と同様に、80nmのPLGAベースのコアを有するISD45-SNA(
図3A)は、貪食及びスカベンジャー受容体依存性エンドサイトーシス(
図3B)を介してマクロファージに入り、ssDNA45-SNAとは異なり、IRF活性化を促進し(
図3C)、現在非CNS固形がんについての臨床試験中のCDNであるAduroS100よりも高いEC
50値を示す(
図3D)。
【0087】
ISD45-SNAは、腫瘍細胞生存率を低減するM1マクロファージ分極化を誘導し、インビボで腫瘍進行に拮抗した。
腫瘍に対する適応性T細胞応答を誘発することに加えて、いくつかの研究は、cGAS-STING経路の活性化が、炎症誘発性M1分極化マクロファージの活性化を促進することによって、腫瘍成長に拮抗することを示した。GBMは、ほとんど、抗炎症性M0/2様表現型を有する腫瘍関連マクロファージで構成されているため、ISD45-SNAは、M0マクロファージをM1表現型に再教育することができるかどうかを調べた。RAW-Blue(商標)マクロファージでは、ISD45-SNAの治療が、確実なTBK1リン酸化、その上、炎症誘発性マクロファージ状態の古典的なマーカーであるサイトカイン誘導性酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導を引き起こしたが、ssDNA
45-SNAではその誘導を引き起こさなかった(
図4A)。それに対応して、SNA
ISD-45は、マクロファージ上清(
図4B)の亜硝酸塩レベルを増加させ、SNA
ISD-45に曝露されたマクロファージからの条件培地で治療されるか、又はSNA
ISD-45に曝露されたマクロファージと共培養された腫瘍細胞は、腫瘍細胞の増殖及び生存率を低減した(
図4C~D)。Gd(III)で標識されたDNAオリゴヌクレオチドで機能化されたSNAのMR撮像によって示されるように、腫瘍内に注射すると、SNAが広範囲に頭蓋内腫瘍に浸潤した(
図4E)。cGASアゴニストSNAがインビボでGBM腫瘍進行を低減するかどうかを調査するために、同系ルシフェラーゼ修飾CT2A同所性生着モデルは、腫瘍細胞接種の7日後に、ssDNA
45-又はISD45-SNA(0.15mg/kgのdsDNAに対応する)のいずれかの単回腫瘍内投与を受けた。カプラン-マイヤー法を使用した動物対象生存の分析は、ISD45-SNAが、治療された雌動物対象の50%超において、GBM腫瘍進行を著しく遅らせ、長期生存を促進したが、ssDNA
45対照SNAではそうならなかったことを明らかにした(
図4F)。
【0088】
ISD45-SNAの非侵襲的な鼻から脳への送達
腫瘍床への局所化されたISD45-SNA送達は、血液脳関門を避け、全身曝露に起因する毒性を回避し、したがって、GBM治療のための魅力的で転換可能な選択肢のままである。したがって、以下に記載されるように、cGASアゴニストSNAの腫瘍内投与を探索し、最適化する。cGASアゴニストSNAの直接的な腫瘍内投与に加えて、SNA配合オリゴヌクレオチドの増加した安定性及びバイオアベイラビリティ、並びに腫瘍実質に浸潤するそれらの傾向を活かして、非侵襲的SNAの鼻から脳への送達を探索する。腫瘍内送達と同様に、鼻腔内送達は、血液脳関門を迂回し、全身曝露を最小限に抑える。更に、最近の前臨床及び臨床研究と合わせて、新しい鼻腔内送達技術の登場により、再発性GBMの治療のためのペリリルアルコール(NEO100)[現在、第I/II相臨床試験で判定されている]を含む治療剤の広域スペクトルの送達のための鼻から脳への送達の安全性及び有効性、GBM治療のための有望で非侵襲的な送達方法として信頼性が高い鼻腔内送達が実証されており、SNAの鼻から脳への送達を包括的に判定して最適化するための、助成金申請書に概説されている研究の動機付けとなっている。
【0089】
鼻腔内に投与された薬物は、鼻道をCNSに接続する嗅神経及び三叉神経を伴う経路を通してCNSに達する(
図5A)。Au含有量のICP-MS分析は、鼻腔内に投与されたときに、投与された総ISD45-SNA投与量の約10%が腫瘍保有脳に蓄積されることを示した(
図5B)。同様に、Cy5で標識された金ベースのISD45-SNAを使用すると(
図5C)、蛍光顕微鏡撮像は、腫瘍要素内(
図5D)及び三叉神経の神経上膜内のSNA蓄積(
図5E)を明らかにした。同様に、Cy5で標識されたPLGAベースのSNA(
図5F)は、脳蓄積を示し、Cy5で標識された構造は、嗅球及び頭蓋内腫瘍内の両方で検出可能であった(
図5G~H)。ISD45-SNAはまた、三叉神経の神経上膜、神経周膜、及び比較的程度は低いが、神経内膜内に見出された(
図5I)。これらのデータは、ISD45-SNAの鼻から脳への送達が少なくとも部分的に三叉神経の細胞外成分に沿って起こることを示唆していた。
【0090】
ISD45-SNAの鼻腔内投与は、STING依存性様式でGBM進行を低減し、免疫介在性チェックポイント阻害と組み合わせて長期生存を促進する。
ルシフェラーゼで標識されたCT2A腫瘍細胞を、C57BL/6-wt又はC57BL/6-STINGゴールデンチケット(gt/gt)同系宿主のいずれかに移植した。単回鼻腔内投与を介して送達されたISD45-SNAは、CT2A保有C57BL/6野生型マウスにおいて、腫瘍進行を低減し、動物生存率を増加させ(
図6A)、STING欠損gt/gtマウスにおいて、腫瘍進行に影響を与えなかった(
図6B)。治療用SNAの利益は、現在臨床試験中の環状ジヌクレオチドであるADU-S100と比較して著しく高かった(
図6C)。カプラン-マイヤー生存時間分析は、ISD45-SNAが、C57BL/6野生型、特に、雄ではなく雌の動物対象における動物対象生存を延長し(
図6D)、未治療又はssDNA45-SNA治療マウスと比較したときに、腫瘍微小環境中の機能性STINGを欠くC57BL/6宿主における生存を延長しなかったことを明らかにした(
図6E~F)。ISD45-SNA及び免疫介在性チェックポイント阻害(抗PD1+抗CTLA4)と併用治療したとき、1回の鼻腔内送達は、ほぼ全ての雌動物におけるGBM腫瘍発生を消失させた(
図6G)が、雄マウスには影響を及ぼさなかった(
図7A)。対側半球に腫瘍細胞を注射した長期生存雌マウスの再試験は、長期抗腫瘍記憶を示す全てのマウスにおいて長期生存をもたらした(
図7B)。
【0091】
直接的な腫瘍内投与を通してSNAを注射したマウスにおける腫瘍関連及び末梢免疫系組成物の分析は、未治療、ssDNA
45-SNA治療動物対象(
図8C~F)と比較して、ISD45-SNA治療マウスにおけるエフェクターT細胞(
図8A)、M1分極化マクロファージ(
図8B)、及び活性化NK細胞集団の富化を明らかにした。これらのデータは、ISD45-SNAの抗腫瘍活性が、非侵襲的な鼻から脳への送達を考慮すると、CDNの抗腫瘍効果よりも大きく、腫瘍微小環境における機能的STINGを必要とし、雌の動物対象において選択的に免疫チェックポイント阻害と組み合わせることによって高めることができるが、雄では高めることができなかったことを示した。
【0092】
実施例2
二峰性ISD45/STAT3i-SNAの開発
シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)は、先天性及び適応性免疫の重要な転写調節因子、並びに作用可能な免疫標的としてのものである15。最近の研究は、STING経路の活性化に応答して抗腫瘍免疫を強化することができる免疫療法剤の新規分類としてのSTAT3阻害剤を識別した15。dsDNAのcGASとの関与を導く厳密な配列及び構造パラメータがないため、cGAS活性化に加えて、細胞質中にSTAT3を隔離し、それが細胞核に転座して細胞核における転写を活性化するのを阻止するSTAT3デコイオリゴヌクレオチドとして機能し得るオリゴヌクレオチドを配合されたSNA構造を調べた。ISDオリゴヌクレオチドのcGASとの相互作用を定義する最近の研究は、cGAMP1の合成を促進するために最低15bpの長さが必要であることを示唆し、cGAS-STING依存性様式で、別様に不活性な鈍化した配列の免疫刺激効果を強化する不対のグアノシン三量体(G3)に隣接する回文配列を特定した。
【0093】
プロトタイプISD45-SNAの抗腫瘍免疫応答を増加させるために、STAT3デコイ配列(ISD15STAT3i-SNA)と、STAT3デコイ回文配列(ISDG5STAT3i-SNA、
図9A)に隣接するG5反復エレメントを含有するヘアピン構造と、に由来する15bpのISDオリゴヌクレオチドとコンジュゲートされたSNAを設計した。改変されたゲルシフトアッセイ及びヒル-ラングミュアコンピューティングは、全てのSNAが、0.17~0.24nMの範囲のKDを有するcGASと複合体を形成し(
図9B、C)、ISD15STAT3i及びISDG5STAT3i-SNAの両方が、0.045及び0.07nMのKDを有するSTAT3に直接結合するが、ISD45-SNAはそれに直接結合しないことを示した(
図9D、E)。無細胞結合プロファイルと一致して、全てのSNAアーキテクチャは、無細胞及び細胞ベースのIRF3レポーターアッセイ(
図9F、G)の両方で評価されるように、IRF3活性化を誘導したが、ISD15STAT3i及びISDG5STAT3i-SNAのみが、HEK-Blue IL6レポーター細胞で評価されるように、IL-6レベルを抑制したが、ISD45-SNAはそれを抑制しなかった(
図9H)。
【0094】
遺伝子学的に操作された膠芽腫マウスモデルに由来する腫瘍細胞球を使用したCT2A-及び進行性同系性同所性膠芽腫モデルにおける単機能性ISD45-SNAと比較した、二峰性ISD
15STAT3i及びISD
G5STAT3i-SNAの治療効果を判定した。このモデルでは、神経膠腫の形成は、神経幹細胞及び神経膠腫幹細胞における多分化能と自己複製を調節するSTARファミリーRNA結合タンパク質であるQuaking、並びにp53及びPTEN腫瘍抑制因子(遺伝子型:Nestin-CreER
T2;Qki
L/L;Pten
L/L;Trp53
L/L、QPPモデルと称される)のタモキシフェン誘導性CNS特異的欠失によって駆動される。QPP腫瘍から単離され、同系宿主に同所的に移植された腫瘍神経球は、40~70日の潜時で膠芽腫腫瘍形成をもたらした。異なるQPP腫瘍に由来する腫瘍神経球培養物は、チェックポイント阻害に対する感受性のスペクトルを示した。QPP4腫瘍は、チェックポイント阻害剤治療に耐性があったが、QPP7細胞に由来する外植腫瘍モデルは、抗CTLA4に感受性があり、抗PD1遮断に対する感受性に向かう傾向を示した。チェックポイント阻害剤感受性CT2A及びQPP7モデルでは、ISD45-SNA及びISD
15STAT3i-SNAsが、雌の動物対象において強力に腫瘍進行に拮抗して生存を延長し、マウスの60~80%が長期生存を示した(雄はそれを示さず)が、ISD
G5STAT3i-SNAではそれを示さなかった(
図10A、B)。チェックポイント遮断耐性QPP4モデルでは、雌マウスのみを使用して、ISD
G5STAT3iでの治療が、マウスの30%が長期生存を示す有意ではあるがより低い利益をもたらしたが、ISD45-SNA及びISD
15STAT3i-SNAではそれを示さなかった(
図10C)。
【0095】
SNA治療に応答する免疫介在性変化は、性別特異的である。
SNA-対対照治療された雄及び雌の動物対象における免疫介在性変化を定義するために、TMEの遺伝子発現分析を、Nanostring PanCancer Immuneプロファイリングパネルを使用して実行した。QPP4腫瘍保有C57BL/6マウスを、腫瘍細胞接種の8日後に、頭蓋内投与を介して、PBS、ssDNA45-SNA、ISD45-SNA、ISD
15STAT3i-SNA、又はISD
G5STAT3i-SNAで治療し、腫瘍移植の30日後に、RNAを腫瘍浸潤免疫細胞から単離した。雌では、zスコアでランク付けされた遺伝子発現の教師なしクラスタリングは、SNA治療が免疫活性化及び下方調節免疫抑制遺伝子を誘導することにより、治療群と対照群との間の明確な分離を明らかにした(
図11A)。上方制御された遺伝子は、インターフェロン(Tbk1、Irf3、Ifnb1、Ifna1)、M1分極化(Mst1r、Mx1)、T細胞共刺激(Icam、Ncam、Icosl、CD28)、T細胞活性化(CD69)、及び免疫細胞移動(Ccl3、Ccl4、Cxcl12、Csf1)の誘導因子を含む。加えて、活性化M2マクロファージ及び骨髄細胞(Arg1、Arg2、Msr1、IL-10、CCl17、CCl22)によって発現された免疫抑制遺伝子、並びにCD4+及びCD8+エフェクターT細胞機能の抑制を担う遺伝子(Pdcd1、FoxP3、Vegfa、Hif1a)を、PBS及びssDNA45-SNA対照と比較して、SNA治療で大幅に下方調節した。全く対照的に、雄マウスにおけるSNA治療は、免疫チェックポイント受容体(Ctla4、Havcr2、Icos)、及び先天性免疫の活性化に必要な遺伝子(Isg20、Isg15、Cxcl10)、及びT細胞(CD28、CD3、Grmb、CD8)を含む、幅広い遺伝子のアレイを下方調節した(
図11B)。Nanostring遺伝子セット経路分析は、雌のQPP4神経膠腫モデルでは、ISD
G5-STAT3i-SNAが、マクロファージ、小膠細胞、樹状細胞、T細胞、及び白血球の機能、炎症、並びにケモカイン及びサイトカイン並びに病原体に対する応答に関係する25/30免疫細胞経路を上方制御し、ISD45-SNA及びISD
15STAT3i SNAと比較したとき、ISD
G5STAT3i-SNAのより強力な炎症誘発性及び抗腫瘍活性を示すことを明らかにした(
図11C)。雄QPP4では、ISD
G5-STAT3i-SNA及びISD45-SNAは、任意の免疫応答を誘発せず、全ての先天性及び適応性免疫メカニズムを下方制御した(30/30)(
図11D)。
【0096】
特にISD
G5-STAT3i-SNAに応答して誘導された性的二形遺伝子シグネチャーを特性評価するために、全ての雌(n=3)及び雄(n=4)試料について教師なしクラスタリングを実行し(
図11E~G)、続いて遺伝子オントロジー経路分析を実行した。
図11Fに示されるように、ISD
G5STAT3i-SNA治療により、適応性免疫応答の15倍の富化がもたらされた。
【0097】
SNA
ISD/STAT3i治療に対する性的二型応答についての分子基礎を分析し始めるために、PBS、ssDNA45-SNA、又はISD45-SNA(
図12C)のいずれかで治療した腫瘍保有マウスから単離した全脾臓(
図12A)、BMDM(
図12B)、及びTAMCのcGASタンパク質発現を、ウェスタンブロット分析及びフローサイトメトリー分析を使用して分析した。結果は、雄の免疫細胞に対して、雌の免疫細胞においてより高いcGAS発現を示した。したがって、これらのデータは、cGASアゴニストSNA応答についての推定的な予測バイオマーカーとしてのcGAS発現レベルを示唆している。
【0098】
考察
cGAS-STING経路の刺激は、T細胞の活性化及び腫瘍内への追跡を増加させ、骨髄細胞の免疫抑制表現型を逆転させる。合成環状ジヌクレオチド(CDN)リガンドを使用したSTING受容体の直接的な標的化は、膠芽腫(GBM)などのリンパ球減少型及び骨髄細胞豊富型腫瘍の治療のための魅力的な免疫療法戦略を表す。しかしながら、この手法は、特に、炎症及び免疫のマスター転写調節因子STAT3(シグナル伝達兼転写活性化因子3)によって指揮されるものを含む、CDNの代謝不安定性、並びに腫瘍微小環境(TME)における免疫回避性及びSTING阻害性メカニズムの存在によって限定される。cGAS抗腫瘍応答を活性化し、GBM TMEにおけるSTAT3駆動免疫抑制を同時に阻害するために、STAT3デコイ配列を含有する放射状に配向されたDNAオリゴヌクレオチドのシェルで高密度に機能化されたナノ粒子コアからなる球状核酸(SNA)を生成した。cGAS及びSTAT3タンパク質の多価及び高親和性結合を介した二峰性SNAアーキテクチャは、I型インターフェロン(IFN)を誘導し、STAT3核の転座及びトランス活性化を阻止し、腫瘍細胞生存率を低減し、GBM腫瘍微小環境における免疫活性化を促進し、強い抗腫瘍活性を誘発した。SNA治療に応答する顕著な性的二型応答が観察され、雌の動物対象は二峰性SNAの治療効果を有していたが、雄はそれを有していなかった。これらの研究は、GBMにおける複数個の免疫経路を標的化するためのファーストインクラスのシングルエンティティ核酸治療剤としての多機能性SNAを確立した。
【0099】
cGASによるDNA認識は配列非依存性であるため、標準的なcGASアゴニストオリゴヌクレオチド配列を、STAT3に結合し、それを隔離することが知られている回文配列と置き換えることが、cGAS-STING経路活性化を促進し、STAT3機能を同時に阻害することができるSNAアーキテクチャをもたらすかどうかを試験した(
図9A)。実際、ISD
G5及びISD
G5/STAT3i-SNAは、STAT3レポーターアッセイによって評価されるように、STAT3トランス活性化をブロックし(
図9B)、IRF活性化を促進した(
図9C)。SNA治療に応答して低減したSTAT3トランス活性化活性と一致して、二峰性SNAは、細胞質中にpSTAT3を隔離し(
図9D)、神経膠腫幹細胞培養物の球体サイズを低減し(
図9E)、頭蓋内投与を介して投与されたときに、動物対象の生存を延長した(
図9F)。
【0100】
材料及び方法
細胞株。Raw-Lucia(商標)ISG、Raw-Lucia(商標)ISG cGAS KO、及びHEK-blue STAT3レポーター細胞株をInvivoGen(San Diego,CA,USA)から購入し、製造業者のプロトコルに従って培養した。QPP4、QPP7細胞株は、Amy Heimberger博士の研究室によって生成され、寄贈された。QPP腫瘍神経球を、遺伝子学的に操作されたマウスモデル(遺伝子型:Nestin-Cre-ERT2;QuakingL/L;p53L/L;PTENL/L)において発生したGBM腫瘍から単離した。細胞を、EGF(20μL/10mLの培地)及びFGF(10μL/10mLの培地)を補充したNeuroCult Proliferationキット(培地及びサプリメント、幹細胞)内に維持した。GL261-luc、GL261、及びCT2A細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS,Hyclone)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Fisher Scientific)に維持した。全ての培地に1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を補充し、細胞株を37℃で5%CO2を有する加湿された環境で培養した。全ての細胞株を、MycoAlert Plus Mycoplasma検出キット(Lonza)を使用して社内で、又はCharles River Research Animal Diagnostic Services(CR RADS,MA USA)によってのいずれかで、マイコプラズマについて陰性であるかを試験した。
【0101】
インビボSNA試験のためのマウス腫瘍モデル。全ての動物を、承認された動物研究プロトコルの下で使用し、Northwestern Universityの動物施設で維持し、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の規則及びガイドラインに従って治療した。6~8週齢の雌又は雄のC57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory)に、CT2A(8×104細胞/マウス)、QPP7、又はQPP4細胞(100×104細胞/マウス)を頭蓋内に移植した。各マウスを、ケタミン/キシラジンの腹腔内(i.p.)注射を使用して麻酔し、手術領域をアルコール及びベタジンで清浄化した。頭皮に切開を行った後、矢状縫合の横右側に2mm及び冠状縫合の後ろに4mmの超微細手術用ドリルを使用して、0.7mmの穿頭孔を作成した。25μLのハミルトンシリンジに投入した細胞株を、定位フレーム(Stoelting)を使用して移植した。手術後、縫合糸で皮膚を閉じた。腫瘍移植後、マウスを対照群又は治療群(n=6~10/群)にランダムに割り当てた。約100mm3の平均サイズに達すると、腫瘍を、PBS、ssDNAT45-SNA、ISD45-SNAs、STAT3i15-SNA、ISDG5STAT3i-SNAナノ粒子製剤のいずれかの腫瘍内又は鼻腔内注射を介して治療した。マウスを、死亡の48時間前に典型的に起こった神経学的機能障害(嗜眠、歩行不全、摂食不足、又は>20%の体重減少)の観察時に犠死させた。生存時間分析をカプラン-マイヤー法を使用して実行し、統計的有意性をログランク(Mantel-Cox)検定を用いて評価した。
【0102】
鼻腔内送達。ISD45-SNAの治療有効性も、CT2A(8×104細胞/マウス)マウスモデルにおいて鼻腔内(i.n.)投与時に判定した。頭蓋内腫瘍細胞移植の7日後に、滅菌生理食塩水又はSNA(マウスのkg重量当たりのAuが15μmol)の1回用量を与えた。生理食塩水又はSNAの2μL画分を、5分ごとに各鼻孔に与えた。
【0103】
カニューレ移植及び頭蓋内SNA注射。マウスを、上述のようにケタミン/キシラジンで麻酔した。26ゲージの滅菌プラスチックガイドカニューレを、穿頭孔を通る2mmの深さで頭蓋骨に挿入した。移植したカニューレを固定し、外科用接着剤を塗布することによって皮膚を閉じた。標準的な術後ケアを、IACUC承認プロトコルに従って与えた。注射中、ガイドカニューレの先端を1mm越えて延在するように設計されたスリーブを備えた33ゲージの滅菌ハミルトンシリンジを使用して、細胞を移植するか、又は滅菌0.9%生理食塩水で希釈した治療剤を注射した。注射後、カニューレを33ゲージのダミーカニューレ又はキャップで覆った。
【0104】
NanoString nCounter分析。1×106のQPP4細胞を、6~8週齢の雄及び雌のC57BL/6マウスに、上記のようにカニューレを介して頭蓋内に移植した。マウスを、腫瘍細胞注射の7日後に、滅菌PBS、ssDNAT45-SNAs、ISD45-SNA、又はISDG5STAT3i-SNA(群当たりn=4)で頭蓋内治療した。AuNPの用量は、kg当たりAuが15μmolであった。SNA治療の30日後に、マウスを安楽死させ、15mLのDPBSを心臓内で灌流させた。灌流させた脳組織を「マウス脳腫瘍解離キット」(Miltenyi Biotec、#130-096-730)で更に処理して、単離された単一細胞腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞懸濁液を得た。免疫細胞を、30/70Percoll勾配分離(GE Healthcare)によって脳組織の残部から分離した。
【0105】
Nanostring分析のために、キット(Invitrogen(商標)PureLink(商標)RNAミニキット)を使用して、総RNAを製造業者のプロトコルに従って抽出した。単離されたRNAの品質管理を、Agilentバイオアナライザー及びNanoDrop 8000(Thermo Scientific)を使用して実行した。免疫細胞から単離されたRNAを、PanCancer Immune Profiling Panelを使用してNanoString nCounterによって分析した。簡潔に述べると、キャプチャプローブ及びレポータープローブを使用して、150ngのRNAを16時間ハイブリダイゼーションした。次いで、nConter(商標)prep-stationを使用して、試料をカートリッジ内に固定化した。デジタル画像を、nCounter(商標)Digital Analyzer機器内で処理し、各試料について555個の視野(fov)を収集した。レポータープローブカウント(すなわち、その遺伝子についての色分けされたバーコードが検出される回数)を、nSolver(商標)パッケージ(バージョン3.0)、Advanced nSolver Analysisモジュール(バージョン1.0.36)、及びROSALINDソフトウェアを使用して分析した。QC、正規化、差次的発現、及び経路分析を、nSolver高度分析モジュール及びROSALINDソフトウェアを使用して、製造業者によって与えられたガイダンスに従って実行した。倍率変化を、PBS治療した腫瘍の平均正規化遺伝子発現値に対して比較することによって計算した。
【0106】
cGAS及びSTAT3の関与を評価するためのインビトロ実験
電気泳動移動度シフトアッセイ。組換えヒトcGASタンパク質(Cayman)又は組換えヒトSTAT3タンパク質を、緩衝液(20mMのトリス緩衝液pH7.2、試料体積50uL)中で1時間、室温でSNAとともにインキュベートした。反応物は、15uモルのAu及びcGAS/STAT3タンパク質(0.1ug~2ug)を含有していた。反応物を、1×TAE緩衝液中の1%アガロースゲルに対する電気泳動によって分析した。ゲルの画像を、FASTブラスト選択を使用するBioradゲルドックシステムを使用してスキャンし、FIJIを使用してAuバンド強度について分析した。
【0107】
IRF3ルシフェラーゼレポーターアッセイ。IRF3の活性化を測定するために、Raw-Lucia(商標)ISG(InvivoGen)細胞を、3.0×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。翌日、細胞を、15uモルのAuの濃度のSNA又はPBSで治療した。24時間のインキュベート後、上清を新しい白色透明ボトム96ウェルプレートに移した。次いで、ルシフェラーゼ発光を、製造業者の推奨プロトコルに従って、QUANTI-Lucルシフェラーゼ試薬(Invivogen)を使用して、Synergy H2 Microplate Reader(BioTek)で記録した。
【0108】
IL-6レポーターアッセイ。STAT3の活性化を測定するために、HEK-Blue(商標)IL-6細胞を3.0×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩培養した。翌日、細胞を、15uモルのAuの濃度でSNA又はPBSとともに4時間インキュベートし、続いて12時間のIL-6(1.5ng/mL)治療した。IL-6刺激時に、HEK-Blue(商標)IL-6細胞は、STAT3の活性化及びその後のSEAPの分泌を誘起する。STAT3誘導SEAPのレベルを、QUANTI-Blue(商標)溶液を使用して監視した。
【0109】
cGAS無細胞活性アッセイ。無細胞アッセイにおけるcGAS活性の評価のために、60nMの組換えヒトcGASタンパク質(Cayman)を、反応緩衝液(20mMのトリス-HCl、pH7.5、1.5mMのMgCl2)中のATP(5mM)、GTP(300μM)、及びSNA(15uモルのAu)と混合した。37℃で2時間インキュベートした後、反応混合物を95℃で5分間加熱してタンパク質を変性させることによって反応を終了し、タンパク質を20,000×gで5分間遠心分離することによって除去した。上清を、Raw-Lucia(商標)ISG cGAS KO Raw Lucia Blueマクロファージ(InvivoGen)にトランスフェクトした。細胞を37℃で24時間培養し、次いで発光を、製造業者の推奨プロトコルに従って、QUANTI-Lucルシフェラーゼ試薬(Invivogen)を使用して、Synergy H2 Microplate Reader(BioTek)で記録した。
【0110】
統計分析。全ての統計解析を、GraphPad Prismソフトウェア、バージョン9.0を使用して実行した。ノンパラメトリックな対応のないスチューデントt検定及びマン-ホイットニーU検定を使用して、2つの群間の差の有意性を評価した。全てのデータを平均±SEMとして報告した。複数個の群を、テューキーの多重比較事後検定とともに一元配置ANOVAで分析した。カプラン-マイヤープロットを生成して、異なる治療経過下での神経膠腫保有マウスの相対的な生存を決定した。ログランク法を使用して、曲線比較のためのp値を計算し、続いてボンフェローニ補正を行った。
【0111】
cGAS発現分析。PBS、ssDNA45-SNA、又はISD45-SNAで治療したCT-2A保有マウスを15日目にCO2によって安楽死させ、5mLのDPBSを心臓内で灌流させた。組織ホモジナイザー(Potter-Elvehjem PTFE乳棒)を使用して、脳/腫瘍単細胞懸濁液をHankの平衡塩溶液(HBSS,Gibco)中で得て、続いて30/70Percoll勾配分離(GE Healthcare)によってミエリン及び破片を除去した。神経膠腫浸潤免疫細胞を、表現型決定又はエクスビボ研究のために完全なRPMI中に収集し、cGAS発現のために染色した。この細胞内染色のために、染色する前に、細胞をSTIMカクテル(BD Biosciences)で4時間治療した。細胞を洗浄し、PBS中のZombie NIR live/dead生存性染料(ThermoFisher Scientific)で染色し、更に2回洗浄し、PBS中で1:200(最終濃度)に希釈したCD11b及びCD45のための表面抗体のカクテルを用いて4℃で30分間染色した。cGASの細胞内染色のために、細胞を固定し、透過化緩衝液(eBioscience)中で一晩透過化し、cGAS抗ウサギ一次抗体を用いて室温で1時間インキュベートし、次いでヤギ抗ウサギAF488(Thermofisher A-11008)を用いて1:2000濃度で30分間染色した。試料を洗浄し、Cytek Aurora(Northern Lights)で取得し、Cytobank V7.3.0を使用して分析した。
【0112】
cGASウェスタンブロット分析のために、均質化された全脾臓又はマウスBMDMをRIPA緩衝液中で溶解して、全細胞溶解物を生成し、cGAS及びβ-アクチン(ローティングコントロール)についてのウェスタンブロット分析に供した。
本明細書に開示される配列:
【表2】
参考文献
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