(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】シラン加水分解物、並びにその調製及び使用のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241018BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20241018BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07F7/18 L
A61Q5/04
A61K8/58
C07F7/18 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529422
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022077830
(87)【国際公開番号】W WO2023097133
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】デクリッペル、ローリー
(72)【発明者】
【氏名】デルヴァレ、シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
(72)【発明者】
【氏名】クレッチマー、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】マーチャンド、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】エルドレッド、ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ロゲンバック、シェリル
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャオユン
(72)【発明者】
【氏名】ノウエル、ジョー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ナー
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィナーロ、ジュゼッピーナ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H049
【Fターム(参考)】
4C083AC911
4C083AC912
4C083CC34
4C083EE25
4C083FF01
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ36
4H049VQ38
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU04
4H049VW01
(57)【要約】
カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、アルコキシシラン、塩基触媒、及び水を合わせて、シラン加水分解物を形成し、その後、シラン加水分解物を二酸化炭素と合わせることを含むプロセスによって調製される。得られるカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、毛髪ケア組成物における使用に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(1)最大85℃の温度で、出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)を合わせることであって、
出発材料(A)が、式R
1R
3
(3-a)Si(OR
2)
aのアミノ官能性アルコキシシラン化合物であり、式中、各R
1が、独立して選択されたアミノ-アルキル基であり、各R
2が、独立して選択されたアルキル基であり、各R
3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字aが、1~3の整数であり、
出発材料(B)が、式R
3
(4-b)Si(OR
2)
bのオルガノアルコキシシラン化合物であり、式中、各R
3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
2が、独立して選択されたアルキル基であり、下付き文字bが、1~3の整数であり、
(A)前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物が、1~3.5の重量比率(B)/(A)で使用され、
出発材料(C)が、塩基触媒であり、
出発材料(D)が、水であり、(D)前記水が、以下の等式に従って決定されたモル数に相当する量で使用され、
X=(n
アルコキシシラン,xnb
アルコキシ基)/n
H2O、式中、
n
H2O=水のモル数、
n
アルコキシシラン=アルコキシシラン化合物(A)及び(B)のモル数、
nb
アルコキシ基=1つのアルコキシシラン化合物当たりのアルコキシシラン基の数の加重平均、かつ
X≧2.5であり、
それによって、未反応の(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、及び/又は未反応の(B)オルガノアルコキシシラン化合物、シロキサンオリゴマー、並びにアルコールを含む、シラン加水分解物を形成する、合わせることと、
(2)最大85℃の温度で、前記シラン加水分解物と(E)二酸化炭素とを合わせ、それによって(C)前記塩基触媒を中和し、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を含む反応生成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物において、R
1が、式-(C
cH
2c)NH
2を有し、式中、下付き文字cが、1~20であり、R
2が、式-C
dH
(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10であり、下付き文字aが、2又は3である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(A)前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物が、アミノ-プロピルトリメトキシシラン、アミノ-プロピルトリエトキシシラン、アミノ-プロピル,メチル,ジメトキシシラン、アミノ-プロピル,メチル,ジエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物において、R
3が、1~20個の炭素原子のアルキル基であり、R
2が、式-C
dH
(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10であり、下付き文字bが、2又は3である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物が、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
(C)前記塩基触媒が、金属水酸化物及び水酸化アルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記金属水酸化物が、KOH、NaOH、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記水酸化アルキルアンモニウムが、水酸化トリメチルアンモニウム、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
Xが、2.5~500、あるいは2.5~2.5~50、あるいは2.5~4.11、あるいは3~4.11、あるいは3.5~4.11である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
方法が、前記塩基触媒を前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び前記オルガノアルコキシシラン化合物と合わせる前に、前記塩基触媒を水に溶解することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
工程1)における温度が、50℃~85℃であるか、又は、工程2)における温度が、50℃~85℃であるか、又はその両方である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物が、単位式:(R
3Z
2SiO
1/2)
e(R
5Z
2SiO
1/2)
f(R
3ZSiO
2/2)
g(R
5ZSiO
2/2)
h(R
3SiO
3/2)
i(R
5SiO
3/2)
j(R
3R
5ZSiO
1/2)
k(R
3R
5SiO
2/2)
m(R
3
2ZSiO
1/2)
n(R
3
2SiO
2/2)
o(R
3
3SiO
1/2)
p(R
3
2R
5SiO
1/2)
qを含み、
R
3が、上記で定義されたとおりであり、
各Zが、式OR
2のアルコキシ基であり、式中、R
2が、上記で定義されたとおりであり、
各R
5が、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR
5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR
5の少なくとも1つの実例が、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とし、
下付き文字e、f、g、h、i、j、k、m、n、及びoが、1つの分子当たりの各単位の平均数を表し、
e≧0、
f≧0、
g≧0、
h≧0、
i≧0、
j≧0、
k≧0、
m≧0、
n≧0、
o≧0、
p≧0、
q≧0、かつ
量(e+f+g+h+i+j+k+m+n+o+p+q)≧2であるような値を有するが、
ただし、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、式(SiO
4/2)のシロキサン単位を実質的に含まないことを条件とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
R
5について、前記アミノ-アルキル基が、アミノプロピルであり、前記カルバメート-アルキル基が、
【化1】
であり、前記プロトン化アミン基が、
【化2】
である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物。
【請求項14】
(I)請求項11に記載のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物と、
(II)環状ポリジオルガノシロキサンと、を含む、毛髪ケア組成物。
【請求項15】
縮れ制御及び/又はカール保持のための毛髪ケア組成物における、請求項11に記載のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年11月23日に出願された米国仮特許出願第63/282196号の利益を主張するものである。米国特許仮出願第63/282196号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
シラン加水分解物、並びにその調製及び使用のためのプロセスが提供される。より詳細には、シラン加水分解物は、カルバメートアニオン及びプロトン化アミン官能基の両方を有する。シラン加水分解物は、アルコキシシラン、触媒、及び水を合わせ、その後、二酸化炭素で中和することによって調製することができる。得られるシラン加水分解物は、毛髪ケア組成物における使用に好適である。
【背景技術】
【0003】
序論
米国特許第9,962,327号は、ケラチン材料を補う、及び/又はケアするためのゾル/ゲルタイプの化粧用又は皮膚科用組成物を開示している。この組成物は、混合物中のアルコキシ基のモル数に従って決定された、少なくとも1つのアルコキシシランと、少なくとも1つの特定量の水とを混合することによるゾル/ゲル反応によって得られる。アルコキシシランは、アミノ基を有してもよい。
【0004】
しかしながら、過剰量のアミノ基は、毛髪ケア用途に使用されるものなどの化粧用又は皮膚科用組成物に望ましくない臭気を与える可能性がある。更に、アミノ基は、皮膚刺激物質及び/又は感作物質として作用し得る。したがって、シリコーン産業において、皮膚に接触し得る化粧用又は他のパーソナルケア組成物、例えば、皮膚、例えば、これも頭皮にも接触し得る毛髪ケア組成物などにおける使用に好適な、低減されたアミノ含有量を有するシラン加水分解物が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、以下を含むプロセスによって調製され得る:
(1)最大85℃の温度で、出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)を合わせることであって、
出発材料(A)が、アミノ官能性アルコキシシラン化合物であり、
出発材料(B)が、オルガノアルコキシシラン化合物であり、
(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)オルガノアルコキシシラン化合物が、1~3.5の重量比率(B)/(A)で使用され、
出発材料(C)が、塩基触媒であり、
出発材料(D)が、水であり、(D)水が、以下の等式に従って決定されたモル数に相当する量で使用され、
X=(nアルコキシシラン,xnbアルコキシ基)/nH2O、式中、
nH2O=水のモル数、
nアルコキシシラン=アルコキシシラン化合物(A)及び(B)のモル数、
nbアルコキシ基=1つのアルコキシシラン化合物当たりのアルコキシシラン基の数の加重平均、かつ
X≧2.5であり、
それによって、未反応の(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、及び/又は未反応の(B)オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、並びにアルコールを含む、シラン加水分解物を形成する、合わせることと、
(2)最大85℃の温度で、シラン加水分解物と(E)二酸化炭素とを合わせ、それによって(C)塩基触媒を中和し、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を含む反応生成物を形成することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
上記で紹介したプロセスの工程(1)において、出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)は、任意選択的に加熱しながら混合するなどの任意の便利な手段によって合わせることができる。合わせることは、撹拌器、並びにジャケットなどの加熱及び冷却手段を備えたバッチ反応器などの任意の便利な装置で行うことができる。出発材料は、任意の順序で合わせることができる。
【0007】
出発材料は、RT、あるいは高温で合わせてもよい。温度は、出発材料(A)及び(B)として選択されるアルコキシシラン化合物の沸点、並びに所望の反応時間を含む様々な要因に依存する。しかしながら、出発材料は、少なくとも20℃、あるいは少なくとも25℃、あるいは少なくとも50℃の温度で合わせてもよいが、同時に、その温度は、最大85℃、あるいは最大80℃、あるいは最大75℃であってもよい。あるいは、工程(1)における温度は、20℃~85℃、あるいは50℃~85℃であってもよい。
【0008】
工程(1)において、出発材料は、不活性雰囲気、例えば、窒素下で合わせてもよい。理論に束縛されるものではないが、一価アルコール(例えば、メタノール又はエタノール)などの溶媒の添加及び/又は撹拌を用いて、工程(1)におけるゲル副生成物の形成を最小限に抑えるか、又は排除することができると考えられる。
【0009】
工程(1)は、(D)の水の全て又は実質的に全てが消費されるのに十分な時間にわたって行われ得る。時間は、出発材料(A)及び(B)として選択されるアルコキシシラン化合物の反応性、(C)塩基触媒の量、及び温度を含む様々な要因に依存するが、工程(1)の時間は、少なくとも1時間、あるいは少なくとも2時間、あるいは少なくとも4時間であってもよいが、反応時間は、最大48時間、あるいは最大36時間、あるいは最大24時間であってもよい。あるいは、工程(1)における反応時間は、1時間~48時間、あるいは1時間~36時間、あるいは1時間~24時間、あるいは2時間~22時間、あるいは4時間~24時間、あるいは4時間~22時間であってもよい。
【0010】
工程(1)において調製された、得られるシラン加水分解物は、未反応のアルコキシシラン化合物(A)及び/又は(B)と、オルガノシロキサンオリゴマーと、(D)水と、出発材料(A)及び(B)のアルコキシ基との反応の副生成物であるアルコールとの混合物を含む。
【0011】
本プロセスの工程(2)において、シラン加水分解物及び(E)二酸化炭素は、RT、あるいは高温で合わせてもよい。あるいは、(E)二酸化炭素は、RT未満であってもよく、例えば、工程(2)において、工程(1)で調製されたシラン加水分解物にドライアイスを添加してもよい。温度は、(E)二酸化炭素の形態及び所望の反応時間を含む様々な要因に依存する。しかしながら、工程(2)は、少なくとも20℃、あるいは少なくとも25℃、あるいは少なくとも50℃、あるいは少なくとも70℃の温度で行われてもよいが、同時に、その温度は、最大85℃、あるいは最大80℃、あるいは最大75℃であってもよい。あるいは、工程(2)における温度は、20℃~85℃、あるいは50℃~85℃、あるいは70℃~85℃であってもよい。
【0012】
工程(2)の間又は後に、圧力を低減させてもよく、及び/又は熱を少なくとも70℃に上昇させてもよい(工程(2)がより低い温度で開始された場合)。理論に束縛されるものではないが、これにより、溶解した二酸化炭素が除去され、工程(2)後の過剰加圧が最小限に抑えられるか、又は防止されると考えられる。
【0013】
本明細書に記載のプロセスは、任意選択的に、1つ以上の追加の工程を更に含み得る。例えば、(C)塩基触媒は、工程(1)において出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)を合わせる前に、任意選択的に水に溶解され得る。塩基触媒は、出発材料(D)として使用される水に溶解され得るか、又は塩基は、既知のモル濃度を有する水溶液として供給され得る。
【0014】
上記のプロセスは、工程(2)の後に溶媒交換工程を更に含んでもよい。例えば、アルコール以外の溶媒(例えば、メタノール又はエタノール)が望ましい場合、アルコール(工程(1)において副生成物として生成され、かつ/又はそうでなければ、プロセス中に添加される)の全て又は一部を除去し、ポリオルガノシロキサン又は有機皮膚軟化剤(organic emollient)などの異なる溶媒で置き換えてもよい。例示的なポリオルガノシロキサンとしては、商品名DOWSIL(商標)OS Fluidsを有するものなどの直鎖状ポリジメチルシロキサン、並びにオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、及び/又はドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)などの環状ポリジメチルシロキサンが挙げられる。DOWSIL(商標)OS Fluids、並びにD4、D5、及びD6は、当技術分野で公知であり、例えば、DSCから市販されている。
【0015】
あるいは、上記のプロセスの工程(2)において生成されたカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、アルコールの全部又は一部を除去することによって濃縮されてもよい。アルコール除去は、ストリッピング及び/又は蒸留などの任意の便利な手段によって行ってもよい。
【0016】
あるいは、プロセスは、上述のように生成されたカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を、望ましくない色などの不純物を除去することができる活性炭などの吸着剤で処理することを更に含んでもよい。あるいは、本プロセスは、上記のように生成されたカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を濾過して、ゲルなどの副生成物を除去すること、及び/又は活性炭が使用される場合、活性炭を除去することを更に含んでもよい。
【0017】
本プロセスにおいて使用される出発材料は、以下に詳述される。
【0018】
(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物
上記のプロセスの工程(1)において、出発材料(A)は、式(A1):R1R3
(3-a)Si(OR2)aのアミノ官能性アルコキシシラン化合物であってもよく、式中、各R1が、独立して選択されたアミノ-アルキル基であり、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり、各R3が、独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字aが、1~3の整数である。あるいは、下付き文字aは、2又は3であり得る。あるいは、下付き文字aは、3であり得る。R1に好適なアミノ-アルキル基は、式-(CcH2c)NH2を有してもよく、式中、下付き文字cが、1~20、あるいは2~12、あるいは3~8であり、あるいはc=3である。あるいは、R1は、アミノ-プロピルであってもよい。
【0019】
R2は、式-CdH(2d+1)を有し得るアルキル基であり、式中、下付き文字dが、1~10、あるいは1~6、あるいは1~4である。R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソ-プロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、及び5個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)、及びヘキシル(n-ヘキシル、及び6個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)によって例示される。あるいは、各R2は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各R2は、メチル及びエチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物中の各R2は、エチルであってもよい。
【0020】
R3の一価炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基であってもよい。アルキル基は、1~20個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子を有してもよい。R3のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソ-プロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、及び5個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)、及びヘキシル(n-ヘキシル、及び6個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)によって例示される。あるいは、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、及びイソブチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、R3のアルキル基は、メチル、エチル、及びイソプロピルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、R3のアルキル基は、メチル及びエチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物中の各R3は、メチルであってもよい。R3に好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。R3に好適なアリール基としては、フェニル、トリル、及びベンジル、あるいはフェニルである。R3に好適なハロゲン化炭化水素基としては、1つ以上の水素原子がCl又はFなどのハロゲン原子で置き換えられている、上述のアルキル、アルケニル、及びアリール基のうちのいずれかが挙げられる。例えば、R3は、クロロメチル又はトリフルオロメチルなどのハロアルキル基であってもよい。あるいは、各R3は、上記のようなアルキル基であってもよい。
【0021】
本明細書での使用に好適なアミノ官能性アルコキシシラン化合物は、当該技術分野において公知であり、市販されている。例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriethoxysilane、APTES)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(aminopropylmethyldiethoxysilane、APMDES)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(aminopropyltrimethoxysilane、APTMS)、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(aminopropylmethyldimethoxysilane、APMDMS)、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。アミノ官能性アルコキシシラン化合物は、様々な供給元から市販されており、例えば、APTESは、DSCからXIAMETER(商標)OFS-6011シランの名称で入手可能である。APMDESは、例えば、ドイツのEvonikからDYNASYLAN(商標)1505の名称で入手可能である。
【0022】
あるいは、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物は、式(A2):R1Si(OR2)3のアミノ官能性トリアルコキシシランであってもよく、式中、R1及びR2が、上記のとおりである。あるいは、アミノ官能性アルコキシシランは、APTES、APTMS、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、アミノ官能性トリアルコキシシランは、APTESであってもよい。
【0023】
(B)オルガノアルコキシシラン化合物
上記の方法において、出発材料(B)は、式(B1):R3
(4-b)Si(OR2)bのオルガノアルコキシシラン化合物であり、式中、各R3が、上記のような一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり、下付き文字bが、1~3の整数である。あるいは、下付き文字bは、2又は3、あるいは下付き文字b=3であってもよい。
【0024】
出発材料(B)におけるR3の一価炭化水素基は、出発材料(A)について上述したとおりである。あるいは、出発材料(B)中のR3の一価炭化水素基は、アルキル基、あるいはメチル、エチル、プロピル、又はブチルであってもよい。あるいは、出発材料(B)中のR3は、メチル、エチル、及びイソブチルからなる群から選択されてもよい。あるいは、出発材料(B)中のR3は、メチル及びイソブチルからなる群から選択されてもよい。
【0025】
式R3
(4-b)Si(OR2)bのオルガノアルコキシシラン化合物において、各R2は、独立して選択されたアルキル基である。R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソ-プロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、及び5個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)、及びヘキシル(n-ヘキシル、及び6個の炭素原子の分岐アルキル基を含む)によって例示される。あるいは、各R2は、メチル、エチル、プロピル、ブチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各R2は、メチル及びエチルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、(B)オルガノアルコキシシラン化合物中の各R2は、メチルであってもよい。
【0026】
本明細書で使用するのに好適な(B)オルガノアルコキシシラン化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane、MTMS)、メチルトリエトキシシラン(methyltriethoxysilane、MTES)、ジメチルジエトキシシラン(dimethyldiethoxysilane、DMDES)、エチルトリメトキシシラン(ethyltrimethoxysilane、ETMS)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane、ETES)、ジエチルジエトキシシラン(diethyldiethoxysilane、DEDES)、ジプロピルジエトキシシラン(dipropyldiethoxysilane、DPDES)、プロピルトリメトキシシラン(propyltrimethoxysilane、PTMS)、プロピルトリエトキシシラン(propyltriethoxysilane、PTES)、ブチルトリメトキシシラン、例えば、イソブチルトリメトキシシラン(isobutyltrimethoxysilane、IBTMS)、ブチルトリエトキシシラン、例えば、イソブチルトリエトキシシラン(isobutyltriethoxysilane、IBTES)、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0027】
オルガノアルコキシシラン化合物は、当該技術分野において公知であり、DSC、Evonik、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania USA)などの様々な供給元から市販されている。例えば、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、及びイソブチルトリエトキシシランは、DSCから商品名XIAMETER(商標)OFSで入手可能である。メチルトリエトキシシランは、商品名DYNASYLAN(商標)MTESで入手可能であり、メチルトリメトキシシランは、商品名DYNASYLAN(商標)MTMSで入手可能であり、両方ともEvonikから入手可能である。イソブチルトリメトキシシランは、Gelestから入手可能である。
【0028】
あるいは、(B)オルガノアルコキシシラン化合物は、オルガノトリアルコキシシランであってもよい。オルガノトリアルコキシシランは、式(B2):R3Si(OR2)3を有してもよく、式中、R3及びR2が、上記のとおりである。例えば、オルガノトリアルコキシシランは、MTMS、MTES、ETMS、ETES、PTMS、PTES、IBTMS、IBTES、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0029】
本明細書に記載のプロセスの工程(1)において、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)オルガノアルコキシシラン化合物は、少なくとも1、あるいは少なくとも1.15、あるいは少なくとも1.25の重量比率(B)/(A)で使用されるが、同時に、重量比率(B)/(A)は、最大3.5、あるいは最大3、あるいは最大2.5、あるいは最大2であってもよい。あるいは、重量比率(B)/(A)は、1~3.5、あるいは1.25~2であってもよい。
【0030】
(C)塩基触媒
本明細書に記載されるプロセスにおいて、出発材料(C)は、塩基触媒である。
例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)などの金属水酸化物、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムなどの金属酢酸塩、水酸化トリメチルアンモニウム及び水酸化セチルトリメチルアンモニウムなどの水酸化アルキルアンモニウムが挙げられる。塩基触媒は、当技術分野において既知であり、などの様々な供給元、例えば、Sigma-Aldrich,Inc.(St.Louis,Missouri,USA)から市販される。(C)塩基触媒の量は、工程(1)の全ての出発材料の合わせた重量に基づいて、少なくとも0.01%、あるいは少なくとも0.02%、あるいは少なくとも0.03%であってもよいが、同時に、量は、最大2%、あるいは最大1%、あるいは最大0.1%、あるいは最大0.075%であってもよい。塩基触媒は、水溶液で供給されてもよい。
【0031】
(D)水
本明細書に記載されるプロセスにおいて、出発材料(D)は、水である。水は、一般には限定されず、未希釈(すなわち、いずれの担体ビヒクル/溶媒もないもの)、及び/又は純粋(すなわち、ミネラル及び/又は他の不純物を含まないか又は実質的に含まない)なものを利用することができる。例えば、水は、工程(1)で使用されるとき、処理済みでも、未処理であってもよい。水を精製するために使用され得るプロセスの例としては、蒸留、濾過、脱イオン化、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、これによって、水が、脱イオン化、蒸留、及び/又は濾過され得る。あるいは、水は、未処理であり得る(例えば、水道水、すなわち、都市用水系によって提供されるか、又は更なる精製無しで使用される井戸水であり得る)。
【0032】
水の量は、以下の等式に従って決定されたモル数に相当する
X=(nアルコキシシラン,xnbアルコキシ基)/nH2O、式中、
nH2O=水のモル数、
nアルコキシシラン=アルコキシシラン化合物(A)及び(B)のモル数、
nbアルコキシ基=1つのアルコキシシラン化合物当たりのアルコキシシラン基の数の加重平均であり、式中、X≧2.5である。あるいは、Xは、少なくとも2.5、あるいは少なくとも3、あるいは少なくとも3.5であってもよいが、同時に、Xは、最大500、あるいは最大50、あるいは最大4.11であってもよい。あるいは、Xは、2.5~500、あるいは2.5~2.5~50、あるいは2.5~4.11、あるいは3~4.11、あるいは3.5~4.11であってもよい。Xは、米国特許第9,962,327号に記載されている方法に従って計算することができるが、ここで、Xは、本発明のプロセスに関して上に列挙した値を有する。
【0033】
(E)二酸化炭素
上記で紹介した方法において、出発材料(E)は、二酸化炭素である。二酸化炭素は、気体又は固体(ドライアイス)の形態にあり得る。二酸化炭素は、当技術分野で公知であり、Air Products(Allentown,Pennsylvania,USA)などの様々な供給元から市販されている。二酸化炭素は、(C)塩基触媒、及び(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物からのアミノ官能基に対してモル過剰で使用される。しかしながら、使用される二酸化炭素の量は、工程(1)で調製されたシラン加水分解物の重量に基づいて、少なくとも3.5%、あるいは少なくとも5%であってもよいが、同時に、量は、最大7.5%、あるいは最大5%であってもよい。あるいは、二酸化炭素の量は、同じ基準で3.5%~7.5%であってもよい。
【0034】
カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物
上記のプロセスによって調製することができるカルバメートアニオン/プロトン化アミン(carbamate anion/protonated amine、CAPA)官能性シラン加水分解物は、種の組み合わせを含む。(CAPA)官能性シラン加水分解物は、単位式(I-1):(R3Z2SiO1/2)e(R5Z2SiO1/2)f(R3ZSiO2/2)g(R5ZSiO2/2)h(R3SiO3/2)i(R5SiO3/2)j(R3R5ZSiO1/2)k(R3R5SiO2/2)m(R3
2ZSiO1/2)n(R3
2SiO2/2)o(R3
3SiO1/2)p(R3
2R5SiO1/2)qの種を含み、式中、
各R3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され(上に記載及び例示されているとおり)、
各Zが、式OR2のアルコキシ基であり、式中、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり(上に記載及び例示されているとおり)、
各R5が、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR5の少なくとも1つの実例が、CAPA官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とし、
下付き文字e、f、g、h、i、j、k、m、n、o、p、及びqが、1つの分子当たりの各単位の平均数を表し、e≧0、f≧0、g≧0、h≧0、i≧0、j≧0、k≧0、m≧0、n≧0、o≧0、p≧0、q≧0、量(e+f+g+h+i+j+k+m+n+o+p+q)≧2、量(e+g+i)>0、かつ量(f+h+j+k+m)>0であるような値を有する。量(e+f+g+h+i+j+k+m+n+o+p+q)は、種に最大2000g/molの分子量を与えるのに十分な値を有し得る。CAPA官能性シラン加水分解物は、式(SiO4/2)のシロキサン単位を含まないか、又は実質的に含まない。CAPA官能性シラン加水分解物は、異なる種の組み合わせを含む。
【0035】
あるいは、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物がアミノ官能性トリアルコキシシランであり、(B)オルガノアルコキシシラン化合物がオルガノトリアルコキシシランである場合、CAPA官能性シラン加水分解物は、単位式(I-2):(R3Z2SiO1/2)e(R5Z2SiO1/2)f(R3ZSiO2/2)g(R5ZSiO2/2)h(R3SiO3/2)i(R5SiO3/2)jをそれぞれ有する種を含んでもよく、式中、
各R3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され(上に記載及び例示されているとおり)、
各Zは、式OR2のアルコキシ基であり、式中、各R2は、独立して選択されたアルキル基であり(上に記載及び例示されているとおり)、
各R5が、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR5の少なくとも1つの実例が、CAPA官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とし、
下付き文字e、f、g、h、i、及びjが、1つの分子当たりの各単位の平均数を表し、e≧0、f≧0、g≧0、h≧0、i≧0、j≧0、量(e+f+g+h+i+j)≧2、量(e+g+i)>0、かつ量(f+h+j)>0であるような値を有する。量(e+f+g+h+i+j)は、種に最大2000g/molの分子量を与えるのに十分な値を有し得る。CAPA官能性シラン加水分解物は、式(SiO4/2)のシロキサン単位を含まないか、又は実質的に含まない。CAPA官能性シラン加水分解物は、以下を含む異なる種の組み合わせを含む:i)二量体であって、上記の単位式(I-2)において、下付き文字g=h=i=j=0であり、二量体が、単位式(I-3):(R3Z2SiO1/2)e(R5Z2SiO1/2)fを有し、式中、下付き文字eが、0又は1であり、下付き文字fが、1又は2であり、量(e+f)=2である、二量体と、ii)直鎖状三量体であって、上記の単位式(I-2)において、下付き文字i=j=0であり、直鎖状三量体が、単位式(I-4):(R3Z2SiO1/2)e(R5Z2SiO1/2)f(R3ZSiO2/2)g(R5ZSiO2/2)hを有し、式中、下付き文字eが、0、1、又は2であり、下付き文字fが0、1、又は2であり、量(e+f)=2、量(g+h)=1、かつ量(f+h)>0である、直鎖状三量体と、を含む。上記で例示した二量体及び三量体に加えて、CAPA官能性シラン加水分解物は、iii)1つ以上の追加の分岐及び直鎖状オルガノシロキサン種を更に含んでもよく、当該種は、最大2,000g/molの分子量を有する。
【0036】
上に示したCAPA官能性シラン加水分解物における種の式において、各R5は、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR5の少なくとも1つの実例が、CAPA官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とする。カルバメート-アルキルの実例及びプロトン化アミンアルキルの実例は、同じ分子中に存在する必要はなく、それらは、CAPA官能性シラン加水分解物を構成する異なる種内にあり得る。R5のカルバメート-アルキル基は、式-(CcH2c)NH-C(O)-O-を有してもよく、式中、下付き文字cが、上記のとおりである。あるいは、R5のカルバメート-アルキル基は、
【0037】
【化1】
であってもよい。R
5のプロトン化アミン基は、式-(C
cH
2c)NH
3
+を有してもよく、式中、下付き文字cが、上記のとおりである。あるいは、R
5のプロトン化アミン基は、
【0038】
【化2】
であってもよい。R
5のアミノ-アルキル基は、式-(C
cH
2c)NH
2を有してもよく、式中、下付き文字cが、上記のとおりである。あるいは、R
5のアミノ-アルキル基は、アミノプロピルであってもよい。
【0039】
CAPA官能性シラン加水分解物の使用
本明細書に記載のCAPA官能性シラン加水分解物は、様々なパーソナルケア用途、例えば、i)米国特許出願公開第2021/0290512号に記載されている有機シリコン化合物の代わりに、そこに開示されているケラチン系材料(特にヒトの毛髪)を染色するためのキット及びプロセス、ii)米国特許出願公開第2011/0104085号に記載されている化粧用組成物、並びに/又はiii)米国特許第9,962,327号に記載されているゾル/ゲル組成物の代わりに、そこに開示されている化粧用組成物、コーティングキット、及びコーティングプロセス、において使用され得る。
【0040】
あるいは、本明細書に記載のCAPA官能性シラン加水分解物は、毛髪ケア組成物において使用されてもよい。毛髪ケア組成物は、例えば、シャンプー、コンディショナ、スタイリング組成物、毛髪リンス、ボリュームスプレー、スタイリング助剤(例えば、カール保持及び/又は縮れ制御のため)、毛髪フォーム、毛髪ゲル、セッティング組成物、毛髪スプレー、ムース、毛髪オイル、又はエンド流体であってもよい。
【0041】
毛髪ケア組成物などのパーソナルケア組成物の調製において、本明細書に記載のCAPA官能性シラン加水分解物に、1つ以上の追加の出発材料を添加してもよい。1つ以上の追加の出発材料は、例えば、追加の水及び/又はシリコーンオイル、例えば、DSCから入手可能であるデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)などの環状ポリジオルガノシロキサンであってもよい。他の追加の出発材料は、当技術分野で公知であり、市販されており、例えば、追加の化合物は、例えば、米国特許出願公開第2021/0290521号、米国特許出願公開第2011/0104085号、及び/又は米国特許第9,962,327号に開示されている。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載された本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。本明細書で使用した出発材料を表1に記載する。
【0043】
【0044】
この合成例1では、メチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、及びNaOHの水溶液(0.1mol/L)を、マグネチックスターラーを含む4つ口フラスコ中で合わせた。フラスコを、ヒートオンブロックを有するホットプレートを含む加熱システム上に置いた。1つの口を窒素供給源に接続し、別の口に、垂直に配置され、バブリングシステムに接続された凝縮器(1℃に冷却)を取り付け、それによってフラスコ及び凝縮器を窒素ガスでフラッシュできるようにし、1つの口に温度プローブを取り付け、1つの口に栓をした。フラスコの内容物を撹拌し、70℃で24時間加熱した。
【0045】
フラスコの内容物の半分を取り出し、窒素ブランケットを備えた高密度ポリエチレンボトル中に保存した。これを比較試料Aとする。
【0046】
フラスコの内容物を30℃に冷却し、これに12.5gのドライアイス(CO2固体)を添加して、NaOHゾルを中和し、フラスコの内容物を13C NMR分光法によって分析した。分析は、37.1%のカルバメート及び0.7%のカルバメート含量、並びにカルバメート[3-(トリエトキシシリル)プロピル]及び1-プロパンアミン、3-(トリエトキシシリル)-、カルバメートで加水分解されたトリエトキシメチルシランを有するポリマーの存在を示した。これを作業試料Bとする。
【0047】
この合成例2では、154.2gのメチルトリエトキシシラン及び78.09gのアミノプロピルトリエトキシシランを、4つ口フラスコ中で、18.74gの0.25M NaOH水溶液と合わせた。フラスコをホットプレート上の加熱ブロックに入れた。反応混合物の温度を監視するために、温度計を1つの口に入れた。N2がヘッドスペースに入ることも可能にする垂直水冷凝縮カラムに中央ネックを接続して、反応混合物上に不活性ブランケットを提供した。他の2つの口に栓をした。一方の口は、中和プロセス中のサンプリング用であり、他方は、CO2中和用である。セットアップが完了したら、磁気撹拌棒を加え、ヘッドスペースを不活性化した。混合を600rpmに設定し、温度コントローラを80℃に設定した。加熱は、温度に達するのに1時間かかった。反応混合物は、濁っているように見え、80℃で22時間撹拌した。22時間後、反応混合物は、透明に見え、加熱を止めた。反応混合物が室温に達したら、一方の栓をゴム栓と交換した。ゴム栓を通して反応混合物に針を挿入した。針を圧縮CO2の小さなシリンダーに接続した。CO2ガス供給を開始する前に、最初の10gの試料を採取した。次いで、CO2流を開始し、流量計を使用して、流量を18mL/分に制御した。次に、10gの試料を15分毎に2時間採取した。2時間後、加熱及びCO2を止め、フラスコ中の材料を室温に冷却した。材料をガラス瓶に入れた。最初、材料は、透明で無色であった。4日後、色の変化があった。
【0048】
試料を近IRによって評価し、これは、CO2への曝露と、アミン部分の濃度の減少及びその後のプロトン化アミン濃度の増加との間の相関を示した。CO2バブリング時間が増加するにつれて、50~100分後に、NH2含量は最小に減少し、NH3
+含量は最大に増加した。FTIR分析は、カルボニルピークの存在を示さず、これは、カルバメートアニオンの形成と一致した。カルバメートアニオン官能性プロピルトリエトキシシランが示される。
【0049】
【0050】
この合成例3では、メチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、及びNaOH水溶液(0.1mol/L)を、磁気撹拌棒を備えた1,000mLフラスコに入れた。フラスコを加熱システム(ヒートオンブロックを有するホットプレート)上に置いた。フラスコの1つの口を窒素ガス供給源に接続し、別の口に、垂直に配置された凝縮器(1℃に冷却)を取り付け、フラスコ及び凝縮器を窒素ガスでフラッシュできるようにバブリングシステムに接続した。1つの口に温度プローブを取り付け、1つの口に栓をした。フラスコの内容物を撹拌しながら70℃に加熱した。70℃の温度に達したら、撹拌しながら70℃での加熱を24時間続けた。最後に、得られるシラン加水分解物を3つの部分に分けた。
【0051】
分けた1つ(194.67g)を1.38gのHCl溶液(EtOH中1.25MのHCl)で中和した。使用したHCl溶液の量は、NaOH溶液をちょうど中和する量であった。これを比較試料Cとする。
【0052】
この実施例4において、比較試料A及び作業試料Bを、以下に記載される手順に従って、Anton Paar MCR300レオメータを使用して硬化速度について試験した。作業試料Bは、試験した条件下で比較試料Aよりも速く硬化することが分かった。
【0053】
この実施例5では、比較試料A及びC並びに作業試料Bを使用して、以下に記載される試験方法に従って縮れ抑制を試験した。作業試料B及び比較試料Cは、比較試料Aに対して、及び以下に記載される長期持続縮れ指数及びアスペクト比率測定の両方によって未処理毛髪対照に対して、改善された縮れ制御を有した。
【0054】
この実施例6では、D5と、比較試料A及びCのうちの1つと、作業試料Bと、を含有する試料について、カール保持百分率を以下に記載されるように試験した。D5単独及び未処理試料も対照として試験した。作業試料B及び比較試料Cは、比較試料Aと比較して、また対照と比較して、毛髪に改善されたカール保持を付与することが分かった。結果を以下の表2に示す。
【0055】
【0056】
理論に束縛されるものではないが、カルバメートアニオン官能性を含有する作業試料Bは、HClで中和された比較試料Cよりも、存在するアミノプロピル部分が少ないであろうと考えられる。したがって、実施例Bはまた、毛髪ケア組成物を使用する人の頭皮に接触し得る毛髪ケア組成物中で使用される場合、望ましくない臭気がより少なく、皮膚刺激及び/又は感作の可能性がより少ないと予想されるであろう。
【0057】
追加の試料を、上記の合成例1の方法に従って調製したが、水比率及びカルバメートレベルを変化させた。試料を以下の表3にまとめる。表3において、「メチル」は、メチルトリエトキシシランを指し、「アミノ」は、アミノプロピルトリエトキシシランを指す。カール保持についての追加の実施例を、表3に要約した材料を用いて以下に記載されるように実施し、結果を表3aに示す。
【0058】
【0059】
【0060】
D5対照は、試験した条件下で全てのシランと統計的に異なっていた。
観察:水比率が高いほど、試験した条件下でのカール保持百分率は高かった。
【0061】
アルキルトリエトキシシラン対アミノプロピルトリエトキシシランの異なる比率を使用し、異なるアルキルトリエトキシシラン(例えば、表4においてそれぞれ「メチル」又は「イソブチル」によって示されるメチルトリエトキシシラン又はイソブチルトリエトキシシラン)を使用したことを除いて、上記の合成例1の方法に従って追加の試料を調製した。
【0062】
【0063】
【0064】
D5対照は、試験した条件下で全てのシランと統計的に異なっていた。表5の作業例の全ては、D5対照よりも良好なカール保持を示した。
メチルレベルが高いほど、試験した条件下でのカール保持百分率は高かった。
【0065】
試験方法
13C NMR分光法を以下のように行った。測定は、BRUKER社製の600MHz AVANCE NEO NMR分光計を用いて行った。1.5gの試料を、溶媒として3.5gのCDCl3中に可溶化させ、緩和を低減させるためにCr(acac)3を添加した。プローブは、10mm広帯域プローブであった。NMR技術として、逆ゲートパルスシーケンスを適用した。90°パルスを使用して、緩和遅延を15秒に設定した。走査数は、1300となるように選択した。13C NMRスペクトルは、162~164ppmでカルバメートピークを示した。
【0066】
近赤外線(Near IR、NIR)評価を以下のように行った。透明な液体試料をガラスバイアルに移し、次いで蓋をし(外径8mm)、次いでそれらのスペクトルを、ABB MB3600 FT-NIR機器を使用して透過モードで測定した。加熱ブロックを用いて試料温度を30℃に維持した。機器構成:8cm-1分解能、4,000~15,000cm-1スペクトル範囲、1つのスペクトル当たり平均32スキャン。
【0067】
ATR-FTIR評価を以下のように行った。単反射ダイヤモンド減衰全反射(attenuated total reflectance、ATR)結晶を備えたThermo-Nicolet 6700 FTIR装置を使用して、ATRモードで試料スペクトルを取得した。試料を、ATR結晶上に液滴を置き、続いて、任意の潜在的な大気CO2取り込みを最小化するために直ちにスペクトルを収集することによって受け取ったまま分析した。機器構成:4cm-1分解能、400~4,000cm-1スペクトル範囲、1つのスペクトル当たり平均32スキャン。
【0068】
硬化速度は、Spindle CP50を備えたレオメータ、Anton Parr MCR300を用いて試験した。使用した測定の詳細を以下に記載する。
振動測定
一定染色100%
一定周波数1Hz
5000測定点
スピンドルコーンプレート50mm
0.049mmのギャップ
0.7mLの材料を適用
温度38℃
時間100分
【0069】
A Basic Introduction to Rheology(2016 Malvern Instruments Limited)WP160620BasicIntroRheologyに従って以下のとおりに複素粘度を測定した。複素粘度η*は、角度周波数(ω)の関数としての流れに対する全抵抗の尺度であり、最大応力振幅と最大歪み速度振幅との商によって与えられる。
η*=G*/ω
G*と同様に、これは、動粘度(η’)及び貯蔵粘度(η’’)を含むその成分部分に分解することができ、これらは、
η*の実数部及び虚数部を表す。
【0070】
長期持続縮れ指数を以下のように評価した。
毛髪タイプ:「縮れた」タイプA毛束重量約4g
製品量:毛髪1g当たり約0.03gの製品を塗布
処理:D5で25%に希釈したシランブレンド
条件:相対湿度(Relative Humidity、RH)=80%、T°=25℃
試験プロトコル:
-SLS溶液(9%)で毛束を前洗浄する
-毛束1g当たり0.05、0.1、又は0.15gで毛束を処理する
-湿った毛髪に希釈液を塗布し、毛束をマッサージする
-毛髪ドライヤを使用してブラシでブラッシングする
-鉄板を12回適用する
-数回(T0-30-60-90分)写真を撮る
【0071】
アスペクト比率は、長期持続縮れ指数について上述したように得られた値から計算され、幅に対する毛髪束の長さを表す。
【0072】
カール保持百分率を以下のように評価した。
毛髪タイプ:暗褐色2g/20cmグロス1/2”幅
製品量:1つの毛束当たり100μLの製品を塗布した
処理:試料A、B、及びCをD5で25%に希釈した
条件:相対湿度(RH)=80%、T°=25℃
試験プロトコル:
-毛髪束を37℃の水道水で30秒間濡らす。
-毛髪束を30秒間泡立てる。1つの毛髪束当たり1gの30%SLS溶液を塗布し、毛束を下向きに撫でる。
-界面活性剤を30秒間作用させておく。
-毛髪束を37℃の水道水で1分間すすぐ。
-2本の指の間に毛束を3回通すことによって過剰な水を除去する。
-毛束をペーパータオル上で一晩乾燥させる(RT)。
-毛髪1グラム当たり100μLの処置剤を塗布する。それらを5分間吊るしておく。
-以下の手順に従って各毛束をカールさせる。
-カールする手順:
a.毛束を完全にほぐす。
b.毛束をカーラーに巻く。
c.毛髪見本を40℃のオーブン中で一晩乾燥させる。
d.試験開始の10分前に、カーラーをわずかにひねることによって毛髪から慎重に取り外す。
e.特定の温度及び湿度条件に供したときの異なる時間間隔での毛髪束の長さの変化を測定することによって、カール保持について試験する。
【0073】
産業上の利用可能性
本明細書に記載のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、毛髪ケア組成物において使用することができる。カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、毛髪ケア組成物中で使用される場合、縮れ制御及びカール保持を含む(がこれらに限定されない)スタイリング、フィルム形成、及び/又は毛髪の扱いやすさの利益を提供し得る。
【0074】
米国特許第9,962,327号は、ケラチン材料を補う、及び/又はケアするためのゾル/ゲルタイプの化粧用又は皮膚科用組成物を開示している。この組成物は、混合物中のアルコキシ基のモル数に従って決定された、少なくとも1つのアルコキシシランと、少なくとも1つの特定量の水とを混合することによるゾル/ゲル反応によって得られる。アルコキシシランは、アミノ基を有してもよい。
【0075】
しかしながら、加水分解物中のアミノ官能性アルコキシシラン化合物及び/又は過剰量のアミノ基の存在は、毛髪ケア用途に使用されるものなどの化粧用又は皮膚科用組成物に望ましくない臭気を与える可能性がある。加えて、アミノ基及びアミノ官能性アルコキシシラン化合物は、皮膚刺激物質及び/又は感作物質として作用し得る。したがって、本発明が解決しようとする課題は、シリコーン産業において、皮膚に接触し得る化粧用又は他のパーソナルケア組成物、例えば、皮膚、例えば、これも頭皮に接触し得る毛髪ケア組成物などにおける使用に好適な、低減されたアミノ含有量を有するシラン加水分解物が必要とされている。
【0076】
本明細書及び以下の請求項1に記載されるプロセスの工程(1)において調製されたシラン加水分解物は、上に示される単位式(I-2)の種上に比較的多量の残留アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び上に示されるアミノ官能基を含有し得る。例えば、上記の合成例1及び実施例Bは、工程(1)の後、シラン加水分解物が、単位式(I-1)の種上に2.5%のAPTES及び2.2%のアミノ-プロピル基を含有し得ることを示す。本プロセスの工程(2)は、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物のアミノ含量を劇的に低減させる。例えば、工程(2)の後、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、単位式(I-2)の種上に0.5%のAPTES及び0.44%のアミノ-プロピル基のみを含有していた。理論に束縛されるものではないが、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、米国特許第9,962,327号に従って生成されたシラン加水分解物よりも、望ましくない臭気、皮膚刺激、及び/又は皮膚感作を生じる可能性が低いと考えられる。
【0077】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、別途指定されない限り、重量に基づく。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、明細書の文脈によって別途指定されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途指定されない限り、複数形を含む。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。「を含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」という移行句は、Manual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション§2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。本発明の任意の特徴、実施形態、又は態様は、本明細書に列挙される任意の他の特徴、実施形態、又は態様と組み合わせて使用されてもよい。本明細書で使用される略語は、表3における定義を有する。
【0078】
【0079】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、CAPA官能性シラン加水分解物は、単位式:(R3Z2SiO1/2)e(R5Z2SiO1/2)f(R3ZSiO2/2)g(R5ZSiO2/2)h(R3SiO3/2)i(R5SiO3/2)jの種を含み、式中、
各R3は、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、
各Zが、式OR2のアルコキシ基であり、式中、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり、
各R5が、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR5の少なくとも1つの実例が、CAPA官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とし、
下付き文字e、f、g、h、i、及びjが、1つの分子当たりの各単位の平均数を表し、
e≧0、
f≧0、
g≧0、
h≧0、
i≧0、
j≧0、かつ
量(e+f+g+h+i+j)≧2、
量(e+g+i)>0、かつ
量(f+h+j)>0であるような値を有するが、
ただし、CAPA官能性シラン加水分解物は、式(SiO4/2)のシロキサン単位を実質的に含まないことを条件とする。
【0080】
第2の実施形態では、第1の実施形態のCAPA官能性シラン加水分解物において、R5について、アミノ-アルキル基は、アミノプロピルであり、カルバメートアルキル基は、
【0081】
【0082】
【0083】
第3の実施形態では、CAPA官能性シラン加水分解物を調製するためのプロセスは、
(1)最大85℃の温度で、出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)を合わせることであって、
出発材料(A)が、式R1Si(OR2)3のアミノ官能性アルコキシシラン化合物であり、式中、R1が、アミノ-アルキル基であり、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり、
出発材料(B)が、式R3Si(OR2)3のオルガノアルコキシシラン化合物であり、式中、各R3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R2が、独立して選択されたアルキル基であり、
(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)オルガノアルコキシシラン化合物が、1~3.5の重量比率(B)/(A)で使用され、
出発材料(C)が、塩基触媒であり、
出発材料(D)が、水であり、(D)水が、以下の等式に従って決定されたモル数に相当する量で使用され、
X=(nアルコキシシラン,xnbアルコキシ基)/nH2O、式中、
nH2O=水のモル数、
nアルコキシシラン=アルコキシシラン化合物(A)及び(B)のモル数、
nbアルコキシ基=1つのアルコキシシラン化合物当たりのアルコキシシラン基の数の加重平均、かつ
X≧2.5であり、
それによって、未反応の(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、及び/又は未反応の(B)オルガノアルコキシシラン化合物、シロキサンオリゴマー、並びにアルコールを含む、シラン加水分解物を形成する、合わせることと、
(2)最大85℃の温度で、シラン加水分解物と(E)二酸化炭素とを合わせ、それによって(C)塩基触媒を中和し、CAPAアミン官能性シラン加水分解物を含む反応生成物を形成することと、を含む。
【0084】
第4の実施形態では、第3の実施形態のプロセスにおいて、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物において、R1は、式-(CcH2c)NH2を有し、式中、下付き文字cが、1~20であり、R2が、式-CdH(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10である。
【0085】
第5の実施形態では、第3又は第4の実施形態のプロセスにおいて、(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ-プロピルトリエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0086】
第6の実施形態では、第3~第5の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、(B)オルガノアルコキシシラン化合物において、R3は、1~20個の炭素原子のアルキル基であり、R2は、式-CdH(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10である。
【0087】
第7の実施形態では、第6の実施形態のプロセスにおいて、(B)オルガノアルコキシシラン化合物は、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0088】
第8の実施形態では、第3~第7の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、(C)塩基触媒は、金属水酸化物及び水酸化アルキルアンモニウムからなる群から選択される。
【0089】
第9の実施形態では、第8の実施形態のプロセスにおいて、金属水酸化物は、KOH、NaOH、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
第10の実施形態では、第8の実施形態のプロセスにおいて、水酸化アルキルアンモニウムは、水酸化トリメチルアンモニウム、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0091】
第11の実施形態では、第3~10の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、Xは、2.5~500である。
【0092】
第12の実施形態では、第11の実施形態のプロセスにおいて、Xは、2.5~2.5~50である。
【0093】
第13の実施形態では、第11の実施形態のプロセスにおいて、Xは、2.5~4.11である。
【0094】
第14の実施形態では、第11の実施形態のプロセスにおいて、Xは、3~4.11である。
【0095】
第15の実施形態では、第11の実施形態のプロセスにおいて、Xは、3.5~4.11である。
【0096】
第16の実施形態では、第3~第15の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、本プロセスは、(C)塩基及び(D)水を(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)オルガノアルコキシシラン化合物と合わせる前に、(C)塩基触媒を(D)水に溶解することを更に含む。
【0097】
第17の実施形態では、実施形態3~16のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、工程1)における温度は、50℃~85℃である。
【0098】
第18の実施形態では、第3~第17の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、工程1)における温度は、少なくとも70℃である。
【0099】
第19の実施形態では、第3~18の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、工程2)における温度は、50℃~85℃である。
【0100】
第20の実施形態では、第3~第19の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスにおいて、工程2)における温度は、少なくとも70℃である。
【0101】
第21の実施形態では、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、第3~第20の実施形態のうちのいずれか1つのプロセスによって調製される。
【0102】
第22の実施形態では、毛髪ケア組成物は、(I)第21の実施形態のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物と、(II)環状ポリジオルガノシロキサンと、を含む。
【0103】
第23の実施形態では、第21の実施形態のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、縮れ制御及び/又はカール保持のための毛髪ケア組成物において使用される。
【0104】
第24の実施形態では、第21の実施形態のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、膜形成剤として使用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(1)最大85℃の温度で、出発材料(A)、(B)、(C)、及び(D)を合わせることであって、
出発材料(A)が、式R
1R
3
(3-a)Si(OR
2)
aのアミノ官能性アルコキシシラン化合物であり、式中、各R
1が、独立して選択されたアミノ-アルキル基であり、各R
2が、独立して選択されたアルキル基であり、各R
3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、下付き文字aが、1~3の整数であり、
出発材料(B)が、式R
3
(4-b)Si(OR
2)
bのオルガノアルコキシシラン化合物であり、式中、各R
3が、一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R
2が、独立して選択されたアルキル基であり、下付き文字bが、2~3の整数であり、
(A)前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物が、1~3.5の重量比率(B)/(A)で使用され、
出発材料(C)が、塩基触媒であり、
出発材料(D)が、水であり、(D)前記水が、以下の等式に従って決定されたモル数に相当する量で使用され、
X=(n
アルコキシシラン,xnb
アルコキシ基)/n
H2O、式中、
n
H2O=水のモル数、
n
アルコキシシラン=アルコキシシラン化合物(A)及び(B)のモル数、
nb
アルコキシ基=1つのアルコキシシラン化合物当たりのアルコキシシラン基の数の加重平均、かつ
X≧2.5であり、
それによって、未反応の(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物、及び/又は未反応の(B)オルガノアルコキシシラン化合物、シロキサンオリゴマー、並びにアルコールを含む、シラン加水分解物を形成する、合わせることと、
(2)最大85℃の温度で、前記シラン加水分解物と(E)二酸化炭素とを合わせ、それによって(C)前記塩基触媒を中和し、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物を含む反応生成物を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記(A)アミノ官能性アルコキシシラン化合物において、R
1が、式-(C
cH
2c)NH
2を有し、式中、下付き文字cが、1~20であり、R
2が、式-C
dH
(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10であり、下付き文字aが、2又は3である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(A)前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物が、アミノ-プロピルトリメトキシシラン、アミノ-プロピルトリエトキシシラン、アミノ-プロピル,メチル,ジメトキシシラン、アミノ-プロピル,メチル,ジエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物において、R
3が、1~20個の炭素原子のアルキル基であり、R
2が、式-C
dH
(2d+1)を有し、式中、下付き文字dが、1~10であり、下付き文字bが、2又は3である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物が、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
(C)前記塩基触媒が、金属水酸化物及び水酸化アルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
Xが、2.5~500、あるいは2.5~2.5~50、あるいは2.5~4.11、あるいは3~4.11、あるいは3.5~4.11である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
方法が、前記塩基触媒を前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物及び前記オルガノアルコキシシラン化合物と合わせる前に、前記塩基触媒を水に溶解することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程1)における温度が、50℃~85℃であるか、又は、工程2)における温度が、50℃~85℃であるか、又はその両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物が、単位式:(R
3Z
2SiO
1/2)
e(R
5Z
2SiO
1/2)
f(R
3ZSiO
2/2)
g(R
5ZSiO
2/2)
h(R
3SiO
3/2)
i(R
5SiO
3/2)
j(R
3R
5ZSiO
1/2)
k(R
3R
5SiO
2/2)
m(R
3
2ZSiO
1/2)
n(R
3
2SiO
2/2)
o(R
3
3SiO
1/2)
p(R
3
2R
5SiO
1/2)
qを含み、
R
3が、上記で定義されたとおりであり、
各Zが、式OR
2のアルコキシ基であり、式中、R
2が、上記で定義されたとおりであり、
各R
5が、アミノ-アルキル、カルバメート-アルキル、及びプロトン化アミンアルキルからなる群から独立して選択されるが、ただし、カルバメート-アルキルであるR
5の少なくとも1つの実例、及びプロトン化アミンアルキルであるR
5の少なくとも1つの実例が、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物中に存在することを条件とし、
下付き文字e、f、g、h、i、j、k、m、n、及びoが、1つの分子当たりの各単位の平均数を表し、
e≧0、
f≧0、
g≧0、
h≧0、
i≧0、
j≧0、
k≧0、
m≧0、
n≧0、
o≧0、
p≧0、
q≧0、かつ
量(e+f+g+h+i+j+k+m+n+o+p+q)≧2であるような値を有するが、
ただし、前記カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物は、式(SiO
4/2)のシロキサン単位を実質的に含まないことを条件とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
R
5について、前記アミノ-アルキル基が、アミノプロピルであり、前記カルバメート-アルキル基が、
【化1】
であり、前記プロトン化アミン基が、
【化2】
である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
(A)前記アミノ官能性アルコキシシラン化合物が、アミノ官能性トリアルコキシシランであり、(B)前記オルガノアルコキシシラン化合物が、オルガノトリアルコキシシランであるときの、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された、カルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物。
【請求項14】
(I)請求項10に記載のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物と、
(II)環状ポリジオルガノシロキサンと、を含む、毛髪ケア組成物。
【請求項15】
縮れ制御及び/又はカール保持のための毛髪ケア組成物における、請求項10に記載のカルバメートアニオン/プロトン化アミン官能性シラン加水分解物の、使用。
【国際調査報告】