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特表2024-539446新規なラクトバチルス・プランタルム菌株およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】新規なラクトバチルス・プランタルム菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20241018BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20241018BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P15/08
A61P37/02
A61P43/00 105
A61K31/57
A23L33/135
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529532
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2022007256
(87)【国際公開番号】W WO2023090552
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0160740
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒェリム
(72)【発明者】
【氏名】イ,スロ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒェヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンフン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B065AA30X
4B065AC20
4B065CA41
4B065CA44
4C086AA01
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA81
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA08
4C087CA09
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA02
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA28
4C087MA31
4C087MA35
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA60
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB07
4C087ZB21
(57)【要約】
本発明は、新規なラクトバチルス・プランタルム菌株に関する。また、本発明は、ラクトバチルス・プランタルム菌株を含む不妊または難妊の予防、改善または治療用組成物に関する。本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、胚芽の着床を助けるために胎盤を構成する細胞で特定遺伝子の発現を減少させるか、子宮内免疫細胞の数を増加させ、また免疫不均衡によって減少した胚芽の着床率を増加させる効果を奏する。よって、不妊または難妊の予防、改善または治療用組成物として有用に活用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株。
【請求項2】
前記菌株は、不妊または難妊の予防または治療に使用されるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記菌株は、TIM3(T cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 3)の発現または活性を減少させるか、または子宮内免疫細胞の数を増加させるか、あるいは胚芽の着床率を増加させるものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項4】
受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、不妊または難妊の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記不妊または難妊は、女性の不妊または難妊である、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記不妊または難妊は、免疫学的異常(immunologic aberration)、卵巣機能低下(decreased ovarian reserve)、排卵障害(ovulatory disorder)、着床失敗(implantation failure)、卵管損傷(tubal injury)、卵管閉塞(tubal blockage)、卵管周囲癒着(paratubal adhesions)、感染(infection)、全身的疾患(immunologic illness)および子宮内膜症(endometriosis)からなる群より選択された一つ以上の原因によるものである、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、膣内経路によって投与されるものである、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、精製、液剤、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、粉末スプレー、座薬または丸薬に剤形化されるものである、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記薬学組成物は、プロゲステロンと併用投与されるものである、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項10】
受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、不妊または難妊の予防または改善用食品組成物。
【請求項11】
前記不妊または難妊は、女性の不妊または難妊である、請求項10に記載の食品組成物。
【請求項12】
前記不妊または難妊は、免疫学的異常(immunologic aberration)、卵巣機能低下(decreased ovarian reserve)、排卵障害(ovulatory disorder)、着床失敗(implantation failure)、卵管損傷(tubal injury)、卵管閉塞(tubal blockage)、卵管周囲癒着(paratubal adhesions)、感染(infection)、全身的疾患(immunologic illness)および子宮内膜症(endometriosis)からなる群より選択された一つ以上の原因によるものである、請求項10に記載の食品組成物。
【請求項13】
前記食品組成物は、プロゲステロン投与と併用して摂取されるものである、請求項10に記載の食品組成物。
【請求項14】
受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上の不妊または難妊の予防または治療用途。
【請求項15】
不妊または難妊の予防または治療を要する対象体に受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を投与するステップを含む、不妊または難妊の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラクトバチルス・プランタルム菌株に関する。また、本発明は、ラクトバチルス・プランタルム菌株を含む不妊または難妊の予防、改善または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不妊または難妊は、子どもを産むことができる年齢になった健康な男女が結婚して避妊を全くしない状態で、正常な性生活をしているにもかかわらず、1年が経過しても妊娠できない状態を言う。現在、原因不明の不妊または難妊患者は次第に増えている傾向にあり、最近10年間に韓国だけで患者の数が約3.7倍以上増加した。しかし、代表的な不妊または難妊治療である試験管施術後にも約5%ほどは繰り返した着床失敗で依然として妊娠に困難を経験している。
【0003】
よって、不妊または難妊原因を突き止める研究と、これを治療するための薬物の開発が活発に行われている。これと関連して、繰り返した着床失敗は、免疫学的原因によって発生するという研究結果が発表されたことがあり(Jason M Franasiak et al.、Fertil Steril.2017 Jun、107(6):1279-1283)、子宮および膣内マイクロバイオームは妊娠に重要な環境的要因であって、ラクトバチルスspp.(Lactobacillus spp.)が優点である場合、妊娠と維持に役立つという研究結果が注目されている(Alex Farr et al.、PLoS One.2015 Dec 11、10(12):e0144181)。また、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)基盤のLactin-V医薬品は、現在臨床が進行中であるが、繰り返したバクテリア性膣炎の予防、試験管ベビーの成功率向上などに効果があると知られている(Craig R Cohen et al.、N Engl J Med.2020 May 14、382(20):1906-1915)。
【0004】
しかし、不妊または難妊を免疫学的観点で治療する療法、またはマイクロバイオームを免疫学的に適用してこれを治療する医薬品は、まだ開発されない状態であり、これに対する必要性は、本発明の属する技術分野において非常に大きく残っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jason M Franasiak et al.、Fertil Steril.2017 Jun、107(6):1279-1283
【非特許文献2】Alex Farr et al.、PLoS One.2015 Dec 11、10(12):e0144181
【非特許文献3】Craig R Cohen et al.、N Engl J Med.2020 May 14、382(20):1906-1915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、免疫学的原因および菌叢不均衡による不妊または難妊を治療することができる菌株に対して多様な研究を進行した結果、新規ラクトバチルス・プランタルム菌株を見出し、これを寄託した。また、前記菌株は、着床を助ける遺伝子の発現を調節し、子宮内免疫細胞の数を増加させ、胚芽の着床率を増加させるということを実験的に立証することにより、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新規なラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株を提供する。
【0008】
本明細書において使用される用語「ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)」は、本出願人が韓国生命工学研究院に2021年8月24日付で受託番号KCTC 14678BPとして寄託した菌株を意味する。本明細書においては、「ラクトバチルス・プランタルム」、「ラクトバチルス・プランタルム菌株」、または「菌株」と互換的に使用されることができ、前記菌株は、菌株そのもの、菌株の培養物、菌株の破砕物、菌株の抽出物、菌株を破砕して得た細胞質分画物(cytoplasmic fraction)を含むものと解析される。
【0009】
前記用語「培養物」は、栄養分を供給した培地に前記菌株を一定期間培養して得る菌株そのもの、菌株の抽出物、菌株の代謝物、または余分の栄養分などを含む全体培地を意味し、菌株培養後に菌株を除去した培養液も含む。また、前記培養物は、前記全体培地または培養液の濃縮物、および前記濃縮物の乾燥物を含むことができる。具体的に、本発明の培養物は、微生物培養に使用される培地中で通常の技術者が目的に応じて容易に選択した培地を使用することができる。
【0010】
本発明において、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株は、不妊または難妊の予防または治療に使用されるものであってよい。また、前記菌株は、TIM3(T cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 3)の発現または活性を減少させるか、または子宮内免疫細胞の数を増加させるか、あるいは胚芽の着床率を増加させるものであってよい。
【0011】
具体的に、前記「TIM3」は、「T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-包含プロテイン3(T cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 3)」遺伝子を意味する。胚芽を構成する細胞中で着床に直接的に関与する細胞は栄養膜細胞(trophoblast)である。栄養膜細胞は、胚芽で胚盤胞(blastocyst)を取り囲み、子宮内膜細胞(endometrial cell)と直接的にinteractionするが、栄養膜細胞でTIMP3の発現が減少すれば、子宮内膜層への浸潤(invasion)が増加して着床が成功的に行われる。よって、栄養膜細胞で前記TIM3の発現を減少させることができる本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、着床に役立つことができる。
【0012】
また、前記子宮内免疫細胞は、リンパ球(lymphocyte)および/またはNK細胞であってよい。子宮内に存在するリンパ球(lymphocyte)、NK細胞などの免疫細胞は、十分な数で存在する場合、胚芽の着床に役立つと知られている。よって、前記免疫細胞の数を増加させることができる本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、着床に役立つことができる。
【0013】
また、本発明の菌株は、免疫不均衡によって減少した着床率を正常なレベルに増加させることができる。
【0014】
本発明の他の一様態は、受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、不妊または難妊の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
本発明による薬学組成物において、各用語は、特に言及しない限り、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株で説明したとおりである。
【0016】
本発明の薬学組成物は、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株を有効性分として含む。また、前述のように、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株は、ラクトバチルス・プランタルム菌株そのもの、菌株の培養物、菌株の発酵物、菌株の破砕物、菌株の抽出物、菌株を破砕して得た細胞質分画物を含むものと解析されるので、本発明の薬学組成物は、ラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、または前記菌株を破砕して得た細胞質分画物を含む。
【0017】
本明細書において使用される用語「不妊」および「難妊」は、避妊を行わない正常な性関係にもかかわらず、1年以内に妊娠に到達できないか、難しい場合を意味する。前記不妊または難妊は、女性の不妊または難妊であってよい。
【0018】
また、前記不妊または難妊は、免疫学的異常(immunologic aberration)、卵巣機能低下(decreased ovarian reserve)、排卵障害(ovulatory disorder)、着床失敗(implantation failure)、卵管損傷(tubal injury)、卵管閉塞(tubal blockage)、卵管周囲癒着(paratubal adhesions)、感染(infection)、全身的疾患(immunologic illness)および子宮内膜症(endometriosis)からなる群より選択された一つ以上の原因によるものであってよい。
【0019】
本発明の薬学組成物は、前記菌株を有効量として含み、不妊または難妊の予防または治療を要する対象体に投与されることができる。
【0020】
本明細書において使用される用語「投与」は、関連技術分野における通常の技術者に公知になっている多様な方法および伝達システムのうち任意のものを使用して組成物を対象体に物理的に取り入れることを意味する。前記投与は、例えば、経口投与、または膣内、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与、例えば、注射または注入による投与などで行われることができるが、これに制限されない。前記投与の回数は、例えば、単回、複数回、および一つ以上の延長された期間にわたって行われることができる。
【0021】
また、本発明の薬学組成物は、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株単独を含むか、または薬学組成物の製造に通常的に使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。具体的に、前記薬学組成物に含まれることができる担体、賦形剤および希釈剤は、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油であってよいが、これに制限されない。これらは、単独で使用されるか、または2種以上が混合されて使用されることができる。また、前記薬学組成物は、必要な場合、抗酸化剤、緩衝液および/または静菌剤など、他の通常の添加剤をさらに含むことができ、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などを付加的に含み、酸剤、顆粒剤、錠剤、液剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、エアロゾル、粉末スプレー、クリーム、座薬、丸薬などに剤形化されることができる。
【0022】
前記剤形の一実現例として、本発明の薬学組成物は、膣内投与剤形であってよく、膣内投与剤形の具体的な例としては、精製、液剤、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、粉末スプレー、座薬および丸薬からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されない。
【0023】
本明細書において使用される用語「対象体」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物を含み、前記非ヒト動物は、脊椎動物、例えば霊長類、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモットなどであってよい。本明細書において、前記「対象体」は、「個体」および「患者」と相互交換的に使用される。
【0024】
また、前記有効量は、「治療有効量」または「予防有効量」であってよい。用語「治療有効量」は、薬物または治療剤が単独でまたは他の治療剤と組み合わせて使用される場合に、疾患症状の重症度減少、疾患症状がない期間の頻度および持続期間の増加、または疾患苦痛による損傷または障害の防止を示すことができる任意の量を意味する。用語「予防有効量」は、対象体で不妊または難妊の発生または再発を抑制する任意の量を意味する。前記有効量のレベルは、対象体の重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医薬分野によく知られている要素などによって決定されることができる。
【0025】
また、前記薬学組成物は、対象体の年齢、性別、体重によって変わることができ、具体的に、対象体の症状によって本発明の組成物0.1~100mg/kgを一日単回~数回投与するか、または数日~数ヶ月間隔で投与することができる。また、その投与量は、投与経路、疾病の重症度、性別、体重、年齢などによって増減されることができる。
【0026】
また、前記薬学組成物は、他の治療剤と併用して投与されることができる。この場合、本発明の薬学組成物と他の治療剤は、同時に、順次に、または個別的に投与されることができる。前記他の治療剤は、不妊または難妊の予防、治療および改善効果を持つ化合物、タンパク質、ホルモン製剤などの薬物であってよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記ホルモン製剤は、プロゲステロンであってよい。
【0027】
また、前記薬学組成物は、他の治療剤と同時に、順次に、または個別的に投与されるように剤形化されることができる。例えば、前記菌株と他の治療剤は、一つの製剤で同時に投与されることもでき、あるいは別個の製剤で同時に、順次に、または個別的に投与されることができる。同時に、順次に、または個別的に投与するために、本発明の薬学組成物に含まれる前記菌株と他の治療剤は、それぞれ別途の容器に分離させて剤形化されるか、同じ容器で一緒に剤形化されることができる。また、本発明の薬学組成物に含まれる前記菌株と他の治療剤は、薬学的有効量、投与時間、投与間隔、投与経路、治療期間などが互いに同一または異なってよい。
【0028】
本発明の他の一様態は、受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上の不妊または難妊の予防または治療用途を提供する。
【0029】
本発明による予防または治療用途において、各用語は、特に言及しない限り、前記菌株または薬学組成物で説明したところと同じ意味を持つ。
【0030】
本発明の他の一様態は、不妊または難妊の予防または治療を要する対象体に受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を投与するステップを含む、不妊または難妊の予防または治療方法を提供する。
【0031】
本発明による予防または治療方法において、各用語は、特に言及しない限り、前記菌株または薬学組成物で説明したところと同じ意味を持つ。
【0032】
また、本発明による不妊または難妊の予防または治療方法において、前記受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株は、他の治療剤と同時に、順次に、または個別的に対象体に投与されることができる。
【0033】
前記「同時」投与は、本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株および他の治療剤を一つの製剤で一度に投与することを意味するか、または前記ラクトバチルス・プランタルム菌株および他の治療剤を別途の製剤で一度に投与することを意味し、この場合、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株の投与経路と他の治療剤の投与経路は互いに異なってよい。前記「順次的」投与は、前記ラクトバチルス・プランタルム菌株および他の治療剤を比較的連続的に投与することを意味し、投与間隔に消耗する時間で可能な最小限の時間を承諾する。前記「個別的」投与は、一定時間間隔を置いて前記ラクトバチルス・プランタルム菌株および他の治療剤を投与することを意味する。前記ラクトバチルス・プランタルム菌株および他の治療剤の投与方法は、対象体の治療効能、副作用などを考慮して、当業界の医師または専門家が適切に選択することができる。
【0034】
本発明のまた他の一様態は、受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、および前記菌株を破砕して得た細胞質分画物からなる群より選択された一つ以上を含む、不妊または難妊の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0035】
本発明による食品組成物において、各用語は、特に言及しない限り、前記菌株または薬学組成物で説明したところと同じ意味を持つ。
【0036】
前記食品は、健康機能性食品であってよい。用語「健康機能性食品」は、人体に有用な機能性を持つ原料や成分を使用して、精製、カプセル、粉末、顆粒、液状およびペレットなどの形態で製造および加工した食品を意味する。ここで、「機能性」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、または生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0037】
前記食品の種類は、特に制限されない。具体的な例として、ヨーグルト、乳製品、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲物、ビタミン複合剤などがあり、通常の意味での食品をすべて含む。
【0038】
本発明による食品組成物は、当業界で通常的に使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常的に添加する原料および成分を添加して製造することができる。また、一般薬品とは異なり、食品を原料にする場合には、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがない長所があり、携帯性に優れるので、本発明の食品組成物は、不妊または難妊の予防または改善効果を増進または改善させるための補助剤として使用されることができる。
【0039】
本発明の食品組成物に含まれるラクトバチルス・プランタルム菌株の有効量は、使用目的(予防、改善または治療的処置)によって適して決定されることができる。一般的に、食品製造時に前記ラクトバチルス・プランタルム菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の発酵物、前記菌株の破砕物、前記菌株の抽出物、または前記菌株を破砕して得た細胞質分画物が食品組成物のうち0.001~20重量%、0.001~15重量%、または0.001~10重量%の量で含まれることができる。健康飲料の場合、100mLを基準に0.01~2g、具体的に0.02~2g、より具体的に0.3~1gの量で含まれることができる。しかし、健康および衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記範囲以下の量でも使用されることができる。本発明の食品組成物を製造する過程で食品組成物に添加される前記ラクトバチルス・プランタルム菌株は、必要に応じてその含量を適切に加減することができる。
【0040】
前記食品組成物は、丸剤、精製、顆粒、粉末、カプセル、液状の溶液からなる群より選択されたいずれか一つの剤形であってよい。
【0041】
また、前記食品組成物は、通常の食品のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物としては、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、およびデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールなどを使用することができる。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などのような天然甘味剤、またはサッカリン、アスパルテームなどのような合成甘味剤などを使用することができる。
【0042】
また、前記食品組成物が飲料組成物である場合、必須成分として本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株を指示された割合で含むこと以外には、液体成分に特別な制限点はなく、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、胚芽の着床を助けるために、胎盤を構成する細胞で特定遺伝子の発現を減少させるか、子宮内免疫細胞の数を増加させ、また免疫不均衡によって減少した胚芽の着床率を増加させる効果を奏する。よって、不妊または難妊の予防、改善または治療用組成物として有用に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明によるラクトバチルス・プランタルム菌株のTIM3遺伝子発現量減少効果を示すグラフである。このとき、*はP<0.05、**はP<0.01および***はP<0.001を意味する。
図2】本発明によるラクトバチルス・プランタルム菌株の胚芽着床成功率増加効果を確認するために行った実験の概略図である。
図3】本発明によるラクトバチルス・プランタルム菌株の子宮免疫細胞増加効果を示すグラフであって、Aは総リンパ球(lymphocyte)の数、およびBは子宮内NK細胞(uterine NK)の数に関する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明しようとする。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されない。
【0046】
実施例1.TIM3発現抑制効果
子宮内膜が厚く形成されており、胚芽の着床が行われる状態では、栄養膜細胞(trophoblast)でTIMP3(tissue inhibitors of metalloproteinase)の発現が減少するほど着床に有利である(Jia-Yu Zhu et al.、Rev Obstet Gynecol.2012;5(3-4):e137-43)。よって、本出願人が韓国生命工学研究院に2021年8月24日付で受託番号KCTC 14678BPとして寄託したラクトバチルス・プランタルム菌株が栄養膜細胞であるHTR-8/SVneo細胞株でTIMP3遺伝子の発現を減少させると、着床率および妊娠率を増加させることができる菌株であることを立証することである。
【0047】
具体的に、HTR-8細胞を実験の前日12ウェルプレートに4×10細胞/mLでシディングした。翌日、コンフルエンシ(confluency)が70~80%であり、層(layer)が均等に形成されたことを顕微鏡で確認した後、PBSでウォシングし、0.8mLの血清を含まない培地で交換した。以降、前記菌株懸濁液を細胞数対比50または100MOI(多重感染度:multiplicity of infection)になるように処理した。陽性対照群としては、妊娠と着床に重要な因子として、子宮内膜細胞(Endometrial cell)で発現されるLIF(白血病阻止因子:leukemia inhibitory factor)を使用し(Pankaj Suman et al.、Fertil Steril.2013 Feb;99(2):533-42)、これを最終濃度が50ng/mLになるように処理した。LIF処理4時間後、RNAを抽出して、cDNA合成過程を通じて18S遺伝子とTIMP3遺伝子をそれぞれ増幅させ、各遺伝子の発現量を18SrRNA発現量と対比して相対的に計算した。
【0048】
その結果、図1から見られるように、陽性対照群であるLIFを処理する場合、これを処理しない対照群に比べて、TIMP3遺伝子の発現量が有意的に減少することを確認した。また、前記菌株を細胞数対比50または100MOIで処理する場合、濃度依存的にTIMP3遺伝子の発現量が減少することを確認し、これは、陽性対照群であるLIFを処理することより約2倍以上の顕著な効果を奏することを確認した。
【0049】
前記結果を通じて、本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、TIM3遺伝子の発現量を減少させることができるので、胚芽の着床過程に役立ち、不妊または難妊を予防または治療する効果を奏することが分かる。
【0050】
実施例2.着床成功率増加効果
本発明の受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株が免疫学的原因および菌叢不均衡による繰り返した着床失敗を予防することができるのかを確認するために、着床失敗が誘導された(LPS-induced implantation failure)マウスモデルに前記ラクトバチルス・プランタルム菌株を投与した後、着床率が増加するのかを確認した。着床失敗は、免疫不均衡を誘発すると知られているLPSを投与して誘導した(Sarah Moustafa et al.、Am J Reprod Immunol.2019 Feb;81(2):e13082)。
【0051】
具体的に、対照群および実験群は、下記のように設定した。
-対照群:菌株またはLPSを処理していない正常マウス
-陰性対照群(LPS処理群):LPSを処理して着床失敗を誘導したマウス
-実験群(LPSおよび菌株処理群):前記ラクトバチルス・プランタルム菌株処理途中にLPSを処理して着床失敗を誘導したマウス
【0052】
各群当たり雌balb/cマウスを無作為に8匹ずつ分離した後、対照群の場合にはPBS、陰性対照群の場合にはPBS、実験群の場合にはPBSで溶かした1×10 CFUの前記菌株を10日間(-10d~0d)午前に膣内投与した。着床失敗を誘導するためのLPSは、菌株処理を始めた日(-10d)を基準にして、5日目になる日(-5d)の午後にPBSで溶かしたLPS 10μgを陰性対照群および実験群に膣内投与した。以降、10日目になる日(0d)の午後に雌と雄の割合を2:1にして、3日間交配(mating)を進行した。交配を始めた日(0d)を基準にして、10日目になる日(10d)に解剖を進行して着床程度を確認した。このような実験の概略図は、図2に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
その結果、前記表1から見られるように、対照群の着床成功率は87.5%であったが、LPSを処理した陰性対照群の着床成功率は25%であって、対照群に比べて約62.5%減少することを確認した。一方、前記菌株を投与した実験群の場合には、LPS処理にもかかわらず、対照群と同一の程度の着床成功率である87.5%を示すことを確認した。前記結果を通じて、本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は、免疫不均衡によって減少した胚芽の着床率を増加させる効果があるので、不妊または難妊を予防または治療するのに有用に活用可能であることが分かる。
【0055】
実施例3.子宮免疫細胞数増加効果
子宮内に存在する十分な数の免疫細胞は、胚芽の着床に役立つと知られている。特に、子宮内リンパ球(lymphocyte)およびNK細胞(uterine NK;uNK)は、着床過程に必須の脱落膜NK細胞(decidual NK cell)の成熟に重要な役割を行い、uNKがない場合には胚芽が着床されてもその以降に脱落する可能性もある(Dorothy K Sojka et al.、Front Immunol.2019 May 1;10:960;Nabila Jabrane-Ferrat et al.、Immunology.2014 Apr;141(4):490-497)。よって、本発明の受託番号KCTC 14678BPとして寄託されたラクトバチルス・プランタルム菌株が子宮内uNKおよびこれと関連した免疫に如何なる影響を及ぼすのかを確認した。
【0056】
具体的に、前記実施例2による方法で着床失敗が誘導されたマウスモデルに前記菌株を投与した。対照群および実験群は、下記のように設定した。
-対照群:菌株またはLPSを処理していない正常マウス
-陰性対照群(LPS処理群):LPSを処理して着床失敗を誘導したマウス
-実験群(LPSおよび菌株処理群):前記ラクトバチルス・プランタルム菌株処理途中にLPSを処理して着床失敗を誘導したマウス
【0057】
各物質の投与完了後、マウスの子宮組織を摘出して細切(chopping)し、分離バッファーを利用して組織を分離し、FBSを利用して免疫細胞を分離した。分離した免疫細胞(1×10細胞/mL)を1.5mLチューブに移した後、Fc blockを適用し、前記免疫細胞にNK細胞抗体(CD45、CD3、CD335、CD49b)を適用し、フローサイトメーターで総リンパ球(total lymphocyte)およびuNK細胞の数を分析した。
【0058】
その結果、図3のAから見られるように、LPSを処理した陰性対照群の場合、対照群に比べて総リンパ球の数が顕著に減少することを確認した。一方、LPSおよび前記菌株を処理した実験群の場合、LPSによって減少した総リンパ球の数が増加して、対照群と類似したレベルに回復することを確認した。
【0059】
また、図3のBから見られるように、LPSを処理した陰性対照群の場合、対照群に比べてuNKの数が顕著に減少することを確認した。一方、LPSおよび前記菌株を処理した実験群の場合、LPSによって減少したuNKの数が増加して、対照群と類似したレベルに回復することを確認した。
【0060】
前記結果を通じて、本発明のラクトバチルス・プランタルム菌株は着床に役立つ子宮内免疫細胞の数を増加させることができるので、不妊または難妊を予防または治療するのに有用に活用可能であることが分かる。
【0061】
[受託番号]
寄託記官名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC14678BP
受託日:2021年08月24日
図1
図2
図3
【国際調査報告】