(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】局所骨密度測定値に関連する可変表面エリア椎体間ケージを用いてヒト椎体の沈み込みを低減する方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529617
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022049515
(87)【国際公開番号】W WO2023091346
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524186604
【氏名又は名称】アキュイティ・サージカル・デバイシーズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ACUITY SURGICAL DEVICES LLC
【住所又は居所原語表記】8710 N. ROYAL LANE, IRVING, TEXAS 75063, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッドソン,ジョン・アール
(72)【発明者】
【氏名】コーワン,ブライアン・エム
(72)【発明者】
【氏名】フォートン,チャールズ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデヴィット,アントニオ・ディー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC06
4C097DD10
(57)【要約】
個別の患者変数を考慮する改良された椎体間脊椎インプラント。術前段階の間、予め選択されたインプラントに対するテンプレートが、ハンスフィールド単位のスコアと、該選択されたインプラントの接触面エリアに対するスキャンによって生成された、対応する計算されたハンスフィールドパラメータ値とに基づいて、沈み込みを最小限にするか否かを判断するために、椎骨の局所部分の対話式CT放射線濃度スキャンが用いられる。そうでない場合、異なる内側寸法および外側寸法を有する別の選択されたインプラントの場合のテンプレートが選択されて、対話式のCTスキャンに重ねて配置される。許容可能なハンスフィールドパラメータが生成された場合、これは、許容可能な最小限の沈み込みが発生するであろうことを意味する。その結果、外科医は、骨移植片ウィンドウまたはインプラント開口部のサイズを評価して、該インプラントの、上椎骨および下椎骨との該表面接触エリアが、適切な固定を確実にして沈み込みを最小限にするのに許容可能であるか否かを判断することを可能にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎インプラントであって、
内部中空部分を画定する包囲壁部材であって、
上開口部を画定する上面と、
下開口部を画定する下面と、
を備える包囲壁部材と、
前記壁部材から内部に延在し、および前記上面に向かって上方に延在して、前記上開口部のサイズを縮小している第一のアーチ状部分と、
前記壁部材から内部に延在し、および前記下面に向かって下方に延在して、前記下開口部のサイズを縮小している第二のアーチ状部分と、
を備える、脊椎インプラント。
【請求項2】
前記上開口部および下開口部を画定する前記第一のアーチ状部分および前記第二のアーチ状部分によって内部でアーチ状になる量は、前記上面および前記下面に接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンによる、約-5.0~8.0の許容可能なハンスフィールドパラメータ値によって決まる、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項3】
前記ハンスフィールドパラメータ値は、約-5.0~0.5である、請求項2に記載の脊椎インプラント。
【請求項4】
前記壁部材は多孔質構造を含む、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項5】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎インプラントであって、
内部中空部分を画定する包囲壁部材であって、
上開口部を画定する上面と、
下開口部を画定する下面と、
を備える包囲壁部材と、
前記壁部材から内部に延在し、および前記上面に向かって上方に延在して、前記上開口部のサイズを縮小している第一のアーチ状部分と、
を備え、
前記上開口部を画定する前記第一のアーチ状部分によって内部でアーチ状になる量は、前記上面に接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンによって決定された許容可能なハンスフィールドパラメータ値によって決まる、脊椎インプラント。
【請求項6】
前記壁部材から内部に延在し、および前記下面に向かって下方に延在して、前記下開口部のサイズを縮小している第二のアーチ状部分をさらに備え、前記下開口部を画定する前記第二のアーチ状部分によって内部でアーチ状になる量は、前記下面に接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンによって決定された、約-5.0~8.0の許容可能なハンスフィールドパラメータ値によって決まる、請求項5に記載の脊椎インプラント。
【請求項7】
前記ハンスフィールドパラメータ値は、約-5.0~0.5である、請求項6に記載の脊椎インプラント。
【請求項8】
前記壁部材は多孔質構造を含む、請求項5に記載の脊椎インプラント。
【請求項9】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎インプラントであって、
内部中空部分を画定する包囲壁部材であって、
前記壁部材が、多孔質構造を含み、かつ
上開口部を画定する上面と、
下開口部を画定する下面と、
をさらに備える包囲壁部材と、
前記壁部材から内部に延在し、および前記上面に向かって上方に延在して、前記上開口部のサイズを縮小している第一のアーチ状部分であって、前記上開口部を画定する前記第一のアーチ状部分によって内部でアーチ状になる量は、前記上面に接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンによって決定された許容可能なハンスフィールドパラメータ値によって決まる、第一のアーチ状部分と、
前記壁部材から内部に延在し、および前記下面に向かって下方に延在して、前記下開口部のサイズを縮小している第二のアーチ状部分であって、前記下開口部を画定する前記第二のアーチ状部分によって内部でアーチ状になる量は、前記下面に接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンによって決定された許容可能なハンスフィールドパラメータ値によって決まる、第二のアーチ状部分と、
を備える、脊椎インプラント。
【請求項10】
前記ハンスフィールドパラメータ値は、約-5.0~8.0である、請求項9に記載の脊椎インプラント。
【請求項11】
前記ハンスフィールドパラメータ値は、約-5.0~0.5である、請求項10に記載の脊椎インプラント。
【請求項12】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎固定インプラントを選択する方法であって、
前記インプラントに接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンを取得するステップと、
上中央開口部および下中央開口部を有する提案されたインプラントを選択するステップと、
前記インプラントの接触面エリアの画像を、前記終板の前記放射線濃度スキャン上に配置するステップと、
ハンスフィールド単位のスコアを決定した前記椎骨の位置の所定のエリアに基づいて、ハンスフィールドパラメータ値に関連する前記椎骨の前記終板の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定するステップと、
前記ハンスフィールドパラメータ値が約-5.0~8.0である場合に、前記インプラントを用いることを選択するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記上中央開口部および前記下中央開口部が、固定を可能にするのに適切であることを確認する前記ステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎固定インプラントを選択する方法であって、
前記インプラントに接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンを取得するステップと、
第一の内側寸法および外側寸法と、第一の接触面エリアを画定する上中央開口部および下中央開口部とを有する第一のインプラントを選択するステップと、
前記第一の接触面エリアの画像を、前記終板の前記放射線濃度スキャン上に配置するステップと、
ハンスフィールド単位のスコアを決定した前記椎骨の位置の所定のエリアに基づいて、ハンスフィールドパラメータ値に関連する前記椎骨の前記終板の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記第一の選択されたインプラントの前記第一の内側寸法および外側寸法とは異なる第二の内側寸法および外側寸法と、第二の接触面エリアを画定する第二の上中央開口部および第二の下中央開口部とを有する第二のインプラントを選択するステップと、
前記第二の接触面エリアの画像を、前記終板の前記放射線濃度スキャン上に配置するステップと、
前記ハンスフィールド単位のスコアを決定した前記椎骨の位置の所定のエリアに基づいて、ハンスフィールドパラメータ値に関連する前記椎骨の前記終板の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定するステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
-5.0~8.0の前記ハンスフィールドパラメータ値に基づいて、前記第一または第二のいずれかのインプラントを選択するステップと、
前記選択されたインプラントの前記上中央開口部および前記下中央開口部が、固定を可能にするのに適切であることを確認するステップと、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第二のインプラントは、該第二のインプラントの前記第二の接触エリアが、前記第一のインプラントの前記第一の接触エリアと実質的に同じであるように選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎固定インプラントを選択する方法であって、
前記インプラントに接触する前記椎骨の前記終板の放射線濃度スキャンを取得するステップと、
第一の内側寸法および外側寸法と、第一の接触面エリアを画定する上中央開口部および下中央開口部とを有する第一のインプラントを選択するステップと、
前記第一の接触面エリアの画像を、前記終板の前記放射線濃度スキャン上に配置するステップと、
前記第一のインプラントの場合のハンスフィールド単位のスコアを決定した前記椎骨の位置の所定のエリアに基づいて、ハンスフィールドパラメータ値に関連する前記椎骨の前記終板の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定するステップと、
前記第一の選択されたインプラントの前記第一の内側寸法および外側寸法とは異なる第二の内側寸法および外側寸法と、第二の接触面エリアを画定する第二の上中央開口部および第二の下中央開口部とを有する第二のインプラントを選択するステップと、
前記第二の接触面エリアの画像を、前記終板の前記放射線濃度スキャン上に配置するステップと、
前記第二のインプラントの場合の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定した前記椎骨の位置の所定のエリアに基づいて、ハンスフィールドパラメータ値に関連する前記椎骨の前記終板の前記ハンスフィールド単位のスコアを決定するステップと、
-5.0~8.0の前記ハンスフィールドパラメータ値に基づいて、前記第一または第二のいずれかのインプラントを選択するステップと、
前記選択されたインプラントの前記上中央開口部および下中央開口部が、固定を可能にするのに適切であることを確認するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
-5.0~5.0の前記ハンスフィールドパラメータ値に基づいて、前記第一または第二のいずれかのインプラントを選択するステップと、
前記選択されたインプラントの前記上中央開口部および下中央開口部が、固定を可能にするのに適切であることを確認するステップと、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第二のインプラントは、該第二のインプラントの前記第二の接触エリアが、前記第一のインプラントの前記第一の接触エリアと実質的に同じであるように選択される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、参照によりその全体が本願明細書に組み込まれ、およびこの出願の一部を構成する、2021年11月17日に出願された米国特許仮出願第63/280,246号の優先権を主張するものである。
【0002】
この発明は、脊椎整形外科用インプラントを選択するための方法および装置に関する。より具体的には、この発明は、局所骨密度測定値に関連する表面エリアを有する最適な脊椎整形外科用インプラントを選択して配置するための患者固有のCTスキャンによるハンスフィールド単位の利用に関する。
【背景技術】
【0003】
脊椎骨C1~S1に関連する腰痛に悩む患者においては、病変または損傷した椎間板と置換するために、椎体間固定ケージの外科的移植を要する可能性がある。典型的には、このような椎体間固定ケージは、ケージの上の椎骨を、ケージの下の椎骨に固定するために、インプラント内で同種移植骨または自家移植骨を用いる。「ケージ」と「インプラント」は、本願明細書において用いる場合、同義である。一つのこのようなインプラントは、典型的には、椎体間空間毎に用いられるが、状況により、同じ空間内に一つ以上が必要である可能性がある。また、一つ以上の病変または損傷した椎間板と置換するために必要である可能性もある。
【0004】
脊椎固定手術の後には、上椎の骨と、下椎の骨の完全な固定の前に、二つの隣接する椎骨間の椎体空間の垂直の高さの減少が生じる可能性がある。これは、沈み込みとして知られている。その結果として、外科医が固定手術を行う場合、外科医は、選択された椎体間ケージを用いて、必要な垂直の高さを復元しようと努める。しかし、力が、完全な高さが復元されるのを妨げる可能性がある。骨の固定を容易にするために、(別のヒトのドナーから採取された皮質骨組織または海綿様骨組織から成る)同種移植骨または自家移植骨(治療される患者から採取された皮質骨組織または海綿様骨組織)が椎間板空間内に用いられる場合、重力または、二つの隣接する椎骨を骨移植片に当てて圧縮するための固定ケージ、および後方椎弓根スクリュー等の補助的固定術の利用のいずれかにより、骨移植片に圧縮力がかかる。ヒトの骨は、圧縮力を用いて再構築し、これはウォルフの法則として知られる概念である。そのため、ほとんどの外科医は、手術の完了後に骨移植片にわずかな負荷がかることを望み、これは、この負荷が二つの隣接する椎骨間の使用可能なレベルの有効な垂直の高さを低減できることを認識しているからである。さらに、ケージと二つの椎骨の境界における皮質骨中への椎体間ケージ自体の沈み込みは、ケージと二つの隣接する椎骨の接触点における骨の整合性が、ケージの材料特性の硬度に取って代わられるため、椎体空間の有効な高さを低減する。この結果として、外科医は、沈み込みにより、ある程度の沈降が生じるが、高さの減少は、患者が治癒する際に、椎骨構造の残りの部分によって補償できることを容認する。残念ながら、過度の沈み込みまたは高さの減少は、骨移植片の、隣接する椎骨の一方または両方との非固定、ケージの破損、さらには隣接するレベルの椎体の悪化または疾患につながる可能性がある。
【0005】
いくつかの従来のシステムは、ケージまたはインプラント内の材料特性によって沈み込みを制御しようと努めていた。椎体間ケージの初期のバージョンは炭素繊維で、その後はチタンやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)でも形成されていた。PEEKは、製造会社が、骨移植片の弾性係数に適合するように試みることを可能にした。この思考は、より多くの圧縮が骨移植片によって受け止められ、ケージによっては保護されていないであろうということであった。この場合、沈み込みは、骨移植片と、各椎骨の終板との間に存在していたであろう。椎骨の終板は、椎骨と椎間板が界接する移行領域である。椎体終板は、一般に、二つの層、すなわち、(1)(天然の椎間板に結合する軟骨性終板とも呼ばれる)軟骨層と、(2)椎骨に付着している皮質骨(終板とも呼ばれる)から成る薄層とで構成されている。終板の下、および椎骨の内容積全体には海綿骨があり、これは概して柔らかく、無作為化された骨梁パターンで配列されている。終板に接触しているケージ内の骨移植片の表面エリアは、一般的に、終板に接触しているケージの接触面よりも大きい。したがって、ケージ内の骨移植片ウィンドウの接触エリアを可能な限り大きく形成して、垂直方向の負荷を吸収するように椎骨の終板に接触する骨移植片の量を最大化する努力がなされていた。
【0006】
チタン合金を用いる製造技術の到来により、同じ効果を実現するために有効空隙率を変化させることによってケージの密度を操作するように構造が形成された。Nexxt Spine社(インディアナ州、ノーブルズビル)は、PEEKデバイスに適合するように設計された弾性係数を備えるための完全多孔質構造を有するケージのMatrixxファミリーを2017年に発売した。
【0007】
さらに最近では、米国特許第10779954号明細書が、好適な脊椎インプラントを選択するための二重エネルギーX線吸収測定法(dual energy x-ray absorptiometry:DEXA)スキャンの利用を教示している。DEXAスキャンは、異なるエネルギーレベルを有する二つのX線ビームを患者の患部または損傷部位の対象の骨に向けることによって、骨密度を測定する手段である。軟部組織吸収を減算した場合、各ビームに対して、骨によるビームの吸収から骨密度(bone mineral density:BMD)を判断することができる。米国特許第10779954号明細書は、対象部位に対するDEXA番号のみを用いて外科医が、キット内に備えられた三つのインプラントのうちの一つを選択することを教示している。この技術に伴う問題は、DEXA値のみを用いてインプラントを選択し、適切な固定の可能性を最大化するための、インプラントまたはケージと、椎骨の終板の接触面間の適正な表面エリアの重要性を無視しているということである。
【0008】
したがって、当産業界においては、(1)沈み込みを最小限にし、および(2)ケージ、骨移植片および接触する椎骨の終板の許容可能な固定の可能性を最大限にするために、対象の骨の終板の密度と、ケージと対象の骨の終板との間の接触面エリアの適切性を考慮する好適なインプラントまたはケージを選択する方法に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明の装置は、隣接する椎骨の終板間への挿入のための脊椎インプラントである。インプラントは、通常、ヘルニア状態のまたは損傷した椎間板と置換するであろう。インプラントは、内部中空部を画定する包囲壁を備えている。該壁は、上開口部を画定する上面と、下開口部を画定する下面を備えている。該インプラントは、該壁から内部に延在し、および該上面に向かって上方に延在し、その結果として、減少したサイズの該上開口部を生じる第一のアーチ状部分をさらに備えている。さらに、該インプラントは、該壁から内部に延在し、および該下面に向かって下方に延在して、該下開口部の該サイズが減少している第二のアーチ状部分を含んでいてもよい。それにより、第一および第二のアーチ状部分による内部へのアーチの量は、終板に接触する上側および下側の表面エリアを画定する。
【0011】
本発明の方法において、脊椎固定インプラントは、隣接する椎骨の終板間への挿入のために選択される。置換されるヘルニア状態の椎間板に隣接する椎骨の終板の放射線濃度スキャン(例えば、コンピュータ断層撮影法(computed tomography:CT))が取得される。放射線濃度スキャンを用いると、選択されたインプラントの接触面の画像が、放射線濃度スキャンの終板の画像上に配置される。次に、ハンスフィールド単位のスコアが、放射線濃度スキャンを用いて終板の画像の接触面に対して決定される。ハンスフィールド単位は、当技術分野において周知されており、放射線濃度の定量的測定値である。これは、本願明細書において以後、「HU」と呼ぶ可能性がある。次いで、ハンスフィールド単位のスコアは、ハンスフィールド単位がそこから得られた対応するエリア(area)と比較され、ハンスフィールドパラメータ(Hounsfield Parameter:HP)値を生成する。許容可能なHPが得られた場合、その時点で、インプラントの上開口部および下開口部と表面エリアが、隣接する椎骨とインプラントの内部に配置された骨移植片の固定を最小限の沈み込みで可能にするのに適切であることが確認される。
【0012】
本発明の一つの目的は、接触椎骨の終板との十分な接触面を有するインプラントと、椎体間の沈み込みを最小限にし、および適切な垂直の高さを維持するための、インプラントの選択の方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、椎骨の接触終板と骨移植片の固定を可能にするための十分に大きい上開口部および下開口部を有するインプラントと、インプラントの選択のための方法を提供することである。
【0014】
したがって、本発明は、従来、外科医が対処しようと努力した複雑なトレードオフを満たす。すなわち、沈み込みを最小限にするのに十分な表面エリアを生成すると同時に、上で、インプラント内の上開口部および下開口部は、終板がインプラントの内部容積内に配置された骨移植片と固定するために十分に広い空間提供し、それにより、適切な固定のための機会を最大限にし、患者に適した解剖学的に適したインプラントを提供する。このような結果は、ハンスフィールド単位のスコアを測定することが可能な所定の放射線濃度スキャンを含む術前のプランによって実現される。
【0015】
本発明のその他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、開示のために提示され、および添付図面とともに解釈される本発明の以下の説明から明白になるであろう。以下の詳細な説明および添付図面は、限定的に解釈すべきではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4A】二つの椎骨間の病変したまたはヘルニア状態の椎間板を示す。
【
図4B】二つの椎骨間に外科的に挿入された、本発明の一つのインプラントを示す。
【
図4C】隣接する椎骨間の単一の椎体間の間隔内の本発明の二つのインプラントを示す。
【
図5】患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャンである。
【
図6】五人のヒトの解剖用死体の骨でテストした四つの境界領域の概略図である。
【
図8】
図6の四つの境界領域における五つの圧子試験箇所の概略図である。
【
図9】本発明の検査の結果に対するフォーマットのグラフである。
【
図10A】腰椎レベルL2の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図10B】腰椎レベルL2の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図10C】腰椎レベルL2の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図10D】腰椎レベルL2の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図11A】腰椎レベルL3の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図11B】腰椎レベルL3の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図11C】腰椎レベルL3の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図11D】腰椎レベルL3の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図12A】腰椎レベルL4の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図12B】腰椎レベルL4の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図12C】腰椎レベルL4の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図12D】腰椎レベルL4の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図13A】腰椎レベルL5の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図13B】腰椎レベルL5の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図13C】腰椎レベルL5の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図13D】腰椎レベルL5の場合の四つの境界領域の試験結果のグラフである。
【
図14】四つの境界領域の各々のパラメータ「スパン」の場合の試験結果の略棒グラフである。
【
図15A】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリア(area)に基づく対象の内側境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図15B】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の内側境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図16A】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の中間境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図16B】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の中間境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図17A】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の外側境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図17B】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の外側境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図18A】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の周辺境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図18B】CTスキャンからのハンスフィールド単位のスコアおよびエリアに基づく対象の周辺境界関心領域の場合のハンスフィールドパラメータの計算の典型的な画像である。
【
図19A】本発明における死体試験からの対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャン上の全ての関心領域と圧子試験箇所に対する、ハンスフィールドパラメータ値の結果のマッピングである。
【
図19B】本発明を用いた患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャン上の対象の全ての関心領域および圧子試験箇所に対するハンスフィールドパラメータ値の結果の修正されたマッピングである。
【
図20】
図19Bの患者固有のハンスフィールドパラメータ値のマッピングと重ね合わせられ、および小さな前部インプラントの典型的な画像と重ね合わせられた患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャンである。
【
図21】
図19Bの患者固有のハンスフィールドパラメータ値のマッピングと重ね合わせられ、および
図20の同じサイズの小さな前部インプラントの典型的な画像と重ね合わせられた患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャンである。
【
図22】
図19Bの患者固有のハンスフィールドパラメータ値のマッピングと重ね合わせられ、および大きな前部インプラントの典型的な画像と重ね合わせられた患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャンである。
【
図23】
図19Bの患者固有のハンスフィールドパラメータ値のマッピングと重ね合わせられ、および側方インプラントの典型的な画像と重ね合わせられた患者の対象の椎骨の終板のCT放射線濃度スキャンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願明細書においては以後、本発明を、本発明の少なくともいくつかの好適な実施形態が図示されている添付図面を参照して、より完全に説明する。しかし、この発明は、多くの異なる形態で具体化されている可能性があり、および本願明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろそれらの実施形態は、この開示が完璧で完全なものとなるように、および本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために記載されている。全体を通して、同様の数字は同様の要素を指している。
【0018】
本開示の特徴および利点と、追加的な特徴および恩恵は、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を考慮し、および添付図面を参照すれば、当業者には容易に明らかであろう。本願明細書における説明および実施形態例である添付図面は、この特許出願または出願に対して優先権を主張するどの特許または特許出願のクレームを限定することを意図されていないことを理解すべきである。それどころか、この開示またはいずれかの添付クレームの趣旨および範囲に入るすべての変更例、等価物および代替例をカバーすることが意図されている。特定の実施形態、および本願明細書に開示されている詳細に対しては、このような趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更を行える。
【0019】
添付図面における好適な実施形態を示しおよび説明する際、共通する要素または類似の要素は、同様または同一の参照数字を用いて言及され、または、図面および/または本願明細書中の説明から明らかである。図面は、必ずしも縮尺通りである必要はなく、また、図面のいくつかの形状構成およびいくつかの表示は、明確かつ簡潔にするために、縮尺が誇張されてまたは概略的に示されている可能性がある。
【0020】
本願明細書において、およびこの特許出願の様々な部分(および見出し)全体を通して、「発明」、「本発明」という用語およびこれらの変形は、この開示または特定のクレームに包含された可能性のあるすべての実施形態を意味することは意図されていない。したがって、このような言及の各々の目的は、単にこのような言及のために、すべての実施形態または特定のクレームのすべてに対してまたはそれらの一部に対して必要であると考えるべきではない。「結合された」、「接続された」、「係合された」、「付着された」等の用語およびこれらの変形は、本願明細書において用いられる場合、および添付クレームにおいては、間接的または直接的な接続または係合のいずれかを意味することが意図されている。したがって、第一のデバイスが第二のデバイスに結合している場合、この接続は、直接的接続を介しているか、または、他のデバイスおよび接続を介した間接的な接続を介している可能性がある。
【0021】
本願明細書においては、および添付クレームにおいては、特定の構成要素に言及するために特定の用語が用いられている。当業者が理解する場合、異なる人は、異なる名称によってある構成要素に言及する可能性がある。本願明細書におけるある構成要素の名称としての特定のまたは既知の専門用語の使用は、構成要素を、このような用語(例えば、棒、部材、コネクタ、ロッド、カバー、パネル、ボルト、ねじおよびピン)の既知のまたは定義された意味のみに限定することは意図されていない。さらに、この文書は、名称は異なるが、機能は異ならない構成要素を区別することは意図していない。また、「含んでいる」、「備えている」および「有している」という用語は、本願明細書においておよび添付クレームにおいて無制限的に用いられ、したがって、「限定するものではないが、~を含む」を意味するように解釈すべきである。さらに、本願明細書におけるおよび添付クレームにおける単数形での構成要素および態様に関する言及は、必ずしも本開示または添付クレームを、一つのみのこのような構成要素または態様に限定しないが、各具体的な例において適切でありかつ望ましい可能性があるように、一般的に一つ以上を意味するように解釈すべきである。
【0022】
「細長い」という用語およびその変形は、本願明細書で用いられる場合、その平均幅よりも大きい平均の長さを有することを意味する。「実質的に」、「一般的に」という用語およびその変形は、本願明細書で用いられる場合、(i)完全に、または、言及されたパラメータ、変数または値の100%、および(ii)特定の実施形態またはその適用における言及されたパラメータ、変数または値に対する典型的な、通常のまたは予想される程度の変形またはエラーに基づく100%未満のある範囲の値、例えば、90~100%、95~100%または98~100%を意味しおよび含む。
【0023】
次に、
図1~
図4を参照すると、病変したまたはヘルニア状態の椎間板150(
図4A)と置換する、二つの椎間板100/200間への挿入のための三つの椎間インプラントまたはケージ10/20/30が図示されている。さまざまなインプラントは、患者集団のかなりの範囲に適合するように、さまざまな幅、奥行き、高さおよび脊柱前弯角で構成されているが、そのような寸法は、この開示の目的には重要ではない。
【0024】
さらに
図1~
図4を参照すると、各インプラントの接触面エリア10A、20Aおよび30Aを画定する包囲壁10W/20W/30Wを含む。接触面10A/20A/30Aは、上接触椎骨100の終板100Eに係合している。同様に、各インプラントの包囲壁10/20/30の反対側は、下接触椎骨200の終板200Eに係合するための同様の接触面10B/20B/30Bを含む。その結果として、各インプラント10/20/30は、インプラントの接触面10A/10B/20A/20B/30A/30B内に画定された開口部10P/20P/30Pを含む。
【0025】
次に、
図3Bおよび
図3Cを参照すると、壁20Wおよび30Wは、内部20V/30Vで内側に及んで、対応する開口部20Pおよび30Pを減少させる漸進的アーチ状部分20R/30Rを含む。手術中、外科医は、選択したインプラント10/20/30の内部容積10V/20V/30V内に同種移植骨または自家移植骨10G/20G/30Gを配置する。外科医は、内部10V/20V/30V内で骨移植片10G/20G/30Gを詰めて、好ましくは、終板100E/200Eが、インプラントの面10A/10B/20A/20B/30A/30Bに接触する前に骨移植片に接触するように、骨移植片10G/20G/30Gの上面10GT/20GT/30GTおよび下面10GB/20GB/30GBをわずかに持ち上げておく。
【0026】
選択されたインプラントが、例えば、適切な固定が生じることを可能にするのに小さすぎる骨移植片ウィンドウまたは開口部30Pを有している場合、外科医は、
図4Cに示すように、二つ以上のインプラント40を配置することを選ぶことができる。このような場合、二つの(または、使用するインプラント40の数によりそれ以上の)開口部40Pと、そこを介して固定が生じることが可能なより多くの多孔性ホールを設けることになるであろう。沈み込みを最小限にするために、適切なサポートが備えられたかを確認するために、二つのテンプレートがCT放射線濃度スキャン上に配置され、およびCTスキャンは、二つのテンプレートに対してHU範囲を生成するであろう。このようなテンプレートが、沈み込みを最小限にするための適切なサポートを提供する状態で、外科医は、固定の完全性のための複数の開口部40Pに満足する。
【0027】
正常な骨を有する患者においては、好ましくは、壁10Wの厚みによって画定された接触面10Aを備えた、より薄い壁10Wを有するインプラント10が選択され、それによって、椎骨100/200の終板100E/200Eに接触することができる開口部10Pを通る骨移植片ウィンドウを画定する。したがって、これは、終板100E/200Eに接触することになる骨移植片のウィンドウであるため、骨移植片ウィンドウと開口部10Pは同じものである。上述したように、外科医が骨移植片10Gを準備する場合、彼は、終板100Eと骨移植片10Gと終板200Eとの間で固定治癒が生じる際、椎骨100/200間でインプラント10を最小限の沈み込みを伴って圧縮できるように、内部容積10V内の骨移植片10Gを圧縮するが、開口部10Pを越えて延在するために骨移植片10Gのわずかな持ち上げを残す。一旦、固定されると、この骨移植片は、終板100E内から、固定された骨移植片10Gを通って終板200E内へ延在する、一体化した骨の柱を形成する。
【0028】
より低い骨質および完全性を有する低密度の骨型においては、ケージまたはインプラントの接触面エリアを増加させるべきであり、これによって、インプラント10を用いたより健康な患者内の骨移植片に通常通るよりもより多くの負荷を、固定中にインプラントが受け、それによって、適切な固定のための機会を提供しさらには沈み込みを最小限にする。次に、これを実現するために、上述した
図1~
図3のインプラント20および30について言及する。インプラント20および30の接触面エリア20A/30Aを増加させ、および少なくとも固定中にインプラント中により多くの負荷を向けるために、インプラント20/30は、
図3Bおよび
図3Cに示すように、内部容積20V/30V内に内側に延在するアーチ状部分20R/30Rを含む。このようなことは、骨移植片ウィンドウまたは開口部20P/30Pのサイズを必然的に減らし、かつインプラントの接触面エリア20A/30Aのサイズを増加させる。インプラントの接触面20A/30Aのサイズを増加させることにより、より多くの圧縮負荷が、より硬質の材料によりインプラントに向けられる。換言すると、終板100E/200Eと相互作用するインプラント20/30の接触面エリア20A/30Aは、より多くの接触エリアにわたって同じ圧縮力を効果的に展開することができる。したがって、インプラント10が使用されている場合に生じるであろう沈み込みよりも、より少ない沈み込みが、より低密度の骨を有するこの患者で生じるであろう。同様に、より多くの負荷をインプラントが受けているため、少なくとも当初は、患者の治療中、終板100E/200Eと骨移植片20G/30Gとの間の固定はそれほど厳しくはないかまたはストレスが多くない条件下で生じるようになっており、これは有益である。
【0029】
インプラント10/20/30は、椎体の終板100E/200Eと骨移植片10G/20G/30Gの適切な相互作用を可能にするために、接触面エリア10A/10B/20A/20B/30A/30Bの全体にわたって、特に、アーチ状部分20R/30Rの適用によって生じる追加的な接触面エリア20A/20B/30A/30Bの全体にわたって孔または開口部10H/20H/30Hをさらに含む。さらに、インプラント10/20/30は、追加的な骨の保持のための隆条部10R(
図1Aの詳細を参照)を含んでいてもよい。
【0030】
術前段階中に本発明を実施する際は、
図5に示すような対象の椎骨の終板100EのCT放射線濃度スキャンの画像401が取得される。使用されるCT放射線濃度スキャンは、HUを生成することが可能である。このようなCT放射線濃度スキャンは、当技術分野においては周知されている。HUは、所定のエリアの放射線濃度の定量的測定値である。それは、放射線技師によりCT画像の解釈において用いられる。
図5に示すような濃淡画像を生成するために、CT再構成中に、組織内の放射の吸収/減衰係数が用いられる。CT単位ともいうHUは、X線ビームのベースライン線形減衰係数の線形変換に基づいてCTスキャンによって決定され、この場合、(標準温度および圧力における)蒸留水がゼロHUになるように任意に定義され、および空気が、-1000HUとして定義される。上限は、骨の場合、最大で1000HUに達する可能性があり、高密度の骨の場合には2000HUに、および鋼鉄または銀のような金属の場合は、3000以上に達する可能性がある。線形変換は、灰色の色調として表示するハンスフィールドスケールを生成する。より多くのX線ビーム吸収を伴う、より高密度の組織は、正の値を有し、および明るく見え、より少ないX線ビーム吸収を伴う、より低密度の組織は、負の値を有し、および暗く見える。Hounsfield Unit,NCBI Bookshelf,www.ncbi.nlm.nih.gov>books>NBK547721を参照。
【0031】
図5の画像は、画像の周辺における薄い皮質骨層、および椎骨の内部容積全体の海綿骨を実例説明する椎体の典型的な断面画像を示す。画像401は、画像のCT放射線濃度スキャン(上述したようにハンスフィールド単位を生成する)から対象の椎骨の終板間の略中間に生成されるが、最適な画像は、一般的に、終板内で少なくとも10mmになるであろう。皮質骨層は、1000に近いHU値を表し、椎骨の内部容積は、海綿骨の多孔性により骨と空気から成る。
【0032】
HUを指標として用いることの精度を確認するために、以下の研究を実行して、HUを人の死体の椎骨のいくつかの機械的特性と関連付けるように努めた。試験は、HUに関連する結果として生じた機械的データを用いて椎体の終板マップを確立するために、動的条件下で実施した。周期的インデンション(indention)試験は一次試験である。この目的は、局所的繰り返し荷重に対する動的機械応答を確立すること、および結果として生じる機械的パラメータをHUの局部的な値に関連付けることである。使用した圧痕装置の概略を
図7に示す。この装置は、椎骨試験位置の方向性を、(装置の試験面に平行な)負荷軸と略垂直アライメントで配置できるようになっている。
【0033】
40才から80才のL2~L5の五人の死体の腰部を使用した。各腰部の椎骨は、軟組織がない。各椎骨は、
図6において、内側(I)、中間(M)、外側(O)および周辺(P)として識別され、かつ上終板から測定した椎骨の高さの50%レベルで測定した四つの関心領域(region of interest:ROI)から結果として得られたHU値、並びにボクセルで測定した前記領域によって取り囲まれたエリア(area)(A)、を有するCT放射線濃度スキャンを受けた。ボクセルという用語は、当技術分野においては周知されており、2Dビットマッピングにおけるピクセルのような3Dコンピュータマッピングにおける規則的な格子上の値を表す。
【0034】
HUデータは、大気環境の場合の-1000という値に対する較正に基づいている。局部のHU値は、このベースライン値を、報告されたHU値に加えることによって調節した。このことは、腰椎レベルL2、L3、L4およびL5の五人の脊椎に対して実行した。そして、全エリアを説明するために、単位エリア当たりの結果として生じる局所HU値を二乗した。HUおよびエリア(area)の両方を包含する結果として生じるパラメータは、ハンスフィールドパラメータ(HP)と称される。HPは、以下の方程式
に従って、関心領域内のHUと機械的評価の相関関係を確立するのに用いた。
【0035】
図8を参照すると、ROIの機械的評価が図示されている。各圧痕試験箇所の位置が、0°、30°、45°、60°および90°のベクトルに沿って、各境界(内側、中間、外側および周辺)と径方向座標の交点に示されている。したがって、全部で20の結果の試験箇所が、各椎骨L2~L5上に位置している。
【0036】
試験される各椎骨に対して、20の試験箇所が、繰り返し疲労荷重を受ける。さらに
図8を参照すると、後部中心位置300を、椎体間の結果として生じる機械的パラメータデータを正規化するのに用いた。この箇所は、脊柱管に隣接しているため、本質的により保護的であるため、増加したおよび均一な機械的特性を伴って既に識別されている。
【0037】
各椎骨の20の試験位置の各々に対して解剖用死体の椎体サンプルを準備した。圧痕試験の場合、各箇所は、1Hzのレートで、-2.5N(ニュートン)~-25Nの250サイクルの圧縮負荷を受けた。印加した負荷サイクルにわたる変形変化を、各椎骨の押し付け箇所の各々において、各サイクル間隔に対して計算した。変形データの正規化を、各椎骨に対して基準点300で見られた変形の割合として実行した。各試験点に対する変形データ対サイクル番号をプロットし、および非線形回帰を受けさせた。各試験箇所に対して、Yo(初期変形)、プラトー(漸近変形極限(Asymptotic Deformation Limit))、スパン(全体の沈み込み)、半減期(Yoから50%の沈み込みを実現するためのサイクルの数)およびK(単位サイクル当たりの変形)という臨床的に関連するパラメータを生成する非線形指数回帰を実行した。数学的応答の視覚的表現は
図9を見て分かる。
【0038】
図10A~
図10Dは、腰椎レベルL2の場合の四つの境界領域(周辺、外側、中間、内側)に対するROI箇所の典型的な応答曲線を示す。
図11A~
図11Dは、腰椎レベルL3の場合の四つの境界領域(周辺、外側、中間、内側)に対するROI箇所の典型的な応答曲線を示す。
図12A~
図12Dは、腰椎レベルL4の場合の四つの境界領域(周辺、外側、中間、内側)に対するROI箇所の典型的な応答曲線を示す。
図13A~
図13Dは、腰椎レベルL5の場合の四つの境界領域(周辺、外側、中間、内側)に対するROI箇所の典型的な応答曲線を示す。
【0039】
図14を参照すると、沈み込みと、測定したスパン変数の相関関係を示す、四つの境界領域の各々の場合の(
図9で定義したような)パラメータ「スパン」の試験結果の概略棒グラフが図示されている。
【0040】
次に、上記の方程式1を用いてHPが計算される。死体試験結果からHPを決定する一つの方法が、
図15~
図18によって言及されている。
図15Aおよび
図15Bを参照すると、内側境界の場合のHPの計算の典型的な画像は、所与のHUスコアに対応するCTスキャンからのROIのエリア(area)であるエリア(area)101上の点1001~1009を包含する内側ROI境界のHUスコアに基づいている。HPは、CTスキャンの結果のマッピングに基づいて、上記の方程式1を用いて計算した。
【0041】
図16Aおよび
図16Bを参照すると、中間境界の場合のHPの計算の典型的な画像は、所与のHUスコアに対応するCTスキャンからのROIのエリアであるエリア201上の点2001~2009を包含する中間ROI境界のHUスコアに基づいている。HPは、内側領域のHUおよびエリア101の結果を引いた、HUおよびエリア201のCTスキャンの結果のマッピングに基づいて、上記の方程式1を用いて計算した。
【0042】
図17Aおよび
図17Bを参照すると、外側境界の場合のHPの計算の典型的な画像は、所与のHUスコアに対応するCTスキャンからのROIのエリアであるエリア301上の点3001~3009を包含する外側ROI境界のHUスコアに基づいている。HPは、中間領域のHUおよびエリア201の結果を引いた、HUおよびエリア301のCTスキャンの結果のマッピングに基づいて、上記の方程式1を用いて計算した。
【0043】
図18Aおよび
図18Bを参照すると、周辺境界の場合のHPの計算の典型的な画像は、所与のHUスコアに対応するCTスキャンからのROIのエリアであるエリア401上の点4001~4009を包含する周辺ROI境界のHUスコアに基づいている。HPは、外側領域のHUおよびエリア301の結果を引いた、HUおよびエリア401のCTスキャンの結果のマッピングに基づいて、上記の方程式1を用いて計算した。
【0044】
図19Aを参照すると、相関分析の結果は、ROIを分離して計算したHUパラメータと、動的負荷下で抽出したいくつかのパラメータに基づいた前記ROI内の機械的応答と、の間に有意な関連性が関連付けることができるということを示している。さらに
図19Aを参照すると、死体試験の最終結果は、所与の境界に対する沈み込みのリスクの増大に相当するグラデーションシェーディングスケールを報告している。-5.0~0.5の低リスク領域から、0.5~8.0の中間リスク領域、および8.0~250の高リスク領域のHP値が図示されている。そして、各境界内の点は、左側および右側が同じ特性を有するという仮定の下で、正中線に関して鏡映された90°、60°、45°、30°および0°のベクトル位置において死体の終板マップ上にプロットされる。次に、
図19Bを参照すると、ここでも上述したような測定したHPに基づいて修正されたベクトルラジアルラインに沿ったグラデーションシェーディングスケールを用いて、個別の患者の場合の実際の術前CTスキャンが図示されている。各ROIおよび椎骨レベルに対して、試験によるHP値と比較した個別の患者の場合のHP値の変化は、各領域のグラデーションを、より高いかまたはより低い沈み込みのリスクを有するように修正する。グラデーションに対する修正は、ある領域内の個別の点を異なるリスクレベルに変化させることもできる。
【0045】
図19Bに示すようなCTスキャンの患者固有の終板マップを適用すると、外科医には、
図20~
図23に示すようなこの患者の場合のマッピングされた対話式のCT終板に関するいくつかのテンプレートが提供される。例えば、
図20は、公称的な表面エリアを有する初期設定の小さな前方インプラント5001を示す。
図21は、
図20と同じ小さな前方インプラント6001であるが、より多くの低リスクの沈み込み箇所をカバーするために内部移植片ウィンドウ開口部6002のサイズを低減することによるより大きな表面エリアを有するインプラントを示す。
図22は、
図20のインプラントと同じ表面エリアを有するが、異なる低リスクの沈み込み箇所をカバーする拡大した前方インプラント7001示す。そして
図23は、
図20と同じ表面エリアを有するが、異なる低リスク沈み込み箇所もカバーする側方インプラント8001である。これらの選択肢を用いて、外科医は、適切な固定のための最良の機会を提供するための、患者のためのHPの解釈および内部開口のエリアを考慮した最適なインプラントを選択するであろう。
【0046】
より大きな外側寸法およびより大きな開口部10Pを備えたインプラントは、より小さな外側寸法およびより小さな開口部を備えたより小さなインプランと同じ表面接触エリアを有することができることを正しく認識すべきである。したがって、不適当な骨密度を有する患者においては、外科医は、さまざまな外側寸法および開口サイズを有するが、類似している表面接触面を有する種々のテンプレートをCTスキャン上に配置することを望むことが可能である。このことは、
図20~
図23に示すさまざまなテンプレートを比較することによって図示されている。これらの結果は、HU値によって評価された骨強度と、本願明細書に記載されているような算出されたHPの間の明確な関係を示している。
【国際調査報告】