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特表2024-539457操作されたPD-1抗体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】操作されたPD-1抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241018BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 U
A61K39/395 Y
A61P29/00
A61P37/08
A61P17/14
A61P25/28
A61P9/00
A61P25/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P37/06
A61P7/06
A61P1/16
A61P1/00
A61P3/10
A61P35/02
A61P13/12
A61P19/02
A61P35/00
A61P21/04
A61P21/00
A61P17/06
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P27/02
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529781
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2022000705
(87)【国際公開番号】W WO2023089377
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,404
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521263087
【氏名又は名称】ミロバイオ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パラッチ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マリー, リン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
いくつかの態様では、PD-1に結合する抗体が本明細書で提供される。本明細書に提供される抗体は、いくつかの場合では、PD-1シグナル伝達をアゴナイズする。本明細書で提供される抗体は、いくつかの場合では、修飾されたFc領域を有する。他の態様では、PD-1に結合する抗体に関する、組成物、使用方法、作製方法及びキットが本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達をアゴナイズする、抗体と接触させることを含み、前記抗体が、アミノ酸置換を含むFc領域を含み、前記アミノ酸置換が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、前記抗体が、前記親分子と比較して、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する、方法。
【請求項2】
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、前記免疫細胞の表面上の前記PD-1とPD-L1との相互作用を増強する、抗体と接触させることを含む、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法。
【請求項3】
前記抗体がFc領域を含み、前記Fc領域がアミノ酸置換を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミノ酸置換が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、前記抗体が、前記親分子と比較して、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PD-1発現制御性T細胞に対するADCCが、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、前記PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、重鎖可変領域を含む重鎖と、軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含む抗体と接触させることを含み、
(i)前記重鎖が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む重鎖可変領域を含み、
(ii)前記軽鎖が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域を含み、
(iii)前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法。
【請求項12】
前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記重鎖可変領域が、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記軽鎖可変領域が、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記重鎖可変領域が、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記軽鎖可変領域が、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記重鎖が、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記軽鎖が、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項8~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記Fc領域がヒトIgG1に由来する、請求項3~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記Fc領域が、配列番号17に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項3~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する、請求項8~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、前記Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体がモノクローナルである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、前記免疫細胞の活性化を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少させる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、前記免疫細胞の活性化を約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%減少させる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫細胞が、T細胞、B細胞、又はマクロファージを含む、請求項2~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫細胞が抗原特異的T細胞を含む、請求項2~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記Fc領域がFcγR2Bに選択的に結合する、請求項3~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のKでヒトFcγR2Bに結合する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるKでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのKでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのKでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのKでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも6:1である、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約6:1である、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも40:1である、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約40:1である、請求項31~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合し、PD-1シグナル伝達をアゴナイズする、単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
前記Fc領域が、置換を欠く親分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少をもたらすアミノ酸置換を含み、
前記抗体が、前記親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する、単離された抗体。
【請求項45】
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
前記抗体は、免疫細胞の表面に発現するPD-1とPD-L1との相互作用を増強する、
単離された抗体。
【請求項46】
前記Fc領域が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少をもたらすアミノ酸置換を含み、前記抗体が、前記親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じか又はより高い不可知論的効果を有する、請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、請求項44~46のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、請求項44~47のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項49】
前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、請求項44~48のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項50】
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含み、
(iii)前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体。
【請求項51】
前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されたPD-1とPD-L1との相互作用を増強する、請求項50に記載の抗体。
【請求項52】
PD-1とPD-L1との間における前記相互作用が、実施例10に記載されるようなアッセイによって決定される場合に増強される、請求項45、46又は51に記載の抗体。
【請求項53】
前記抗体が、前記IgG1のFc領域を含む他の点では同じ分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少を誘導し、前記抗体が、他の点では同じ分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する、請求項50~52のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項54】
前記PD-1発現制御性T細胞に対する前記ADCCが、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される、請求項44、46又は53に記載の抗体。
【請求項55】
前記抗体が、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、前記PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない、請求項44、46、53、又は54に記載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない、請求項44、46又は53~55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項57】
前記重鎖可変領域が、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む、請求項44~55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
前記軽鎖可変領域が、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む、請求項44~57のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項59】
前記重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む、請求項44~58のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項60】
前記軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む、請求項44~59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
前記重鎖可変領域が、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項44~60のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
前記軽鎖可変領域が、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項44~61のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項63】
前記重鎖が、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項44~62のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項64】
前記軽鎖が、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項44~63のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項65】
前記Fc領域がヒトIgG1に由来する、請求項44~64のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項66】
前記Fc領域が、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項44~62のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項67】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する、請求項44~66のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項68】
前記抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が、前記Fc領域に作動可能に連結された前記重鎖可変領域を含み、前記軽鎖が、前記軽鎖可変領域を含む、請求項44~66のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項69】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、前記Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する、請求項44~66のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項70】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項44~69のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項71】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項44~69のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項72】
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される、請求項44~69のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項73】
前記抗体が、モノクローナルである、請求項44~72のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項74】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、200nM未満、100nM未満、80nM未満、60nM未満又は40nM未満のKでヒトPD-1に結合する、請求項44~73のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項75】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、60nM未満のKでヒトPD-1に結合する、請求項44~73のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項76】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、40nM未満のKでヒトPD-1に結合する、請求項44~73のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項77】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5000nM、4000nM、2000nM、1000nM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM又は200nM未満のKでカニクイザルPD-1に結合する、請求項44~76のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項78】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、600nM未満のKでカニクイザルPD-1に結合する、請求項44~76のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項79】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、300nM未満のKでカニクイザルPD-1に結合する、請求項44~76のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項80】
前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されるヒトPD-1をアゴナイズする、請求項44~79のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項81】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項80に記載の抗体。
【請求項82】
免疫細胞の表面上に発現されたヒトPD-1への前記抗体の結合が、前記抗体によって結合されていない同等の免疫細胞と比較して、前記細胞の増殖を減少させる、請求項44~81のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項83】
前記細胞がT細胞である、請求項82に記載の抗体。
【請求項84】
細胞活性化の前記減少が、実施例4に記載されるNFATレポーターアッセイによって測定される、請求項82又は83に記載の抗体。
【請求項85】
細胞活性化の前記減少が、実施例5に記載の破傷風トキソイド活性化アッセイ又はウイルスペプチド活性化アッセイによって測定される、請求項82又は83に記載の抗体。
【請求項86】
細胞増殖の前記減少が、実施例6に記載される抗CD3/28活性化アッセイによって測定される、請求項82又は83に記載の抗体。
【請求項87】
細胞増殖の前記減少が、前記免疫細胞がPD-L1発現細胞に近接しているときに測定される、請求項82又は83に記載の抗体。
【請求項88】
細胞増殖の前記減少が、実施例8に記載されるアッセイによって測定される、請求項87に記載の抗体。
【請求項89】
細胞増殖の前記減少がインビトロ又はインビボで測定される、請求項82又は83に記載の抗体。
【請求項90】
細胞増殖の前記減少が、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%である、請求項82~89のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項91】
細胞増殖の前記減少が、約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%である、請求項82~89のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項92】
前記Fc領域がFcγR2Bに選択的に結合する、請求項44~91のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項93】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のKでヒトFcγR2Bに結合する、請求項92に記載の抗体。
【請求項94】
前記抗体が、少なくとも2μM、1μM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、又は5nMのKでヒトFcγR2Bに結合する、請求項92又は93に記載の抗体。
【請求項95】
前記抗体が、ヒトFcγR2Bに、200nM~5μM、400nM~4μM、500nM~3.5μM、800nM~3μM、1μM~5μM、1μM~4.5μM、1μM~4μM、1μM~3.5μM、1μM~3μM、1μM~2.5μM、又は1μM~2μMのKで結合する、請求項92に記載の抗体。
【請求項96】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるKでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、請求項92~95のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項97】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのKでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、請求項92~95のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項98】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのKでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、請求項92~97のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項99】
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのKでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、請求項92~97のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項100】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である、請求項92~99のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項101】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも6:1である、請求項92~99のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項102】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約6:1である、請求項92~99のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項103】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である、請求項92~102のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項104】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも40:1である、請求項92~102のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項105】
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約40:1である、請求項92~102のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項106】
前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される、請求項100~105のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項107】
請求項44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項108】
請求項44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項109】
発現された場合、請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項110】
請求項109に記載される宿主細胞を、前記抗体を産生するための条件下で培養することを含む方法。
【請求項111】
方法であって、
(a)発現された場合、請求項44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を提供することと、
(b)前記コードされたアミノ酸配列を発現する前記宿主細胞を培養することと、
(c)前記抗体を単離することと、
を含む、方法。
【請求項112】
薬剤とコンジュゲートした請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体を含む免疫コンジュゲート。
【請求項113】
治療有効量の請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体又は請求項112に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項114】
疾患又は状態を治療するのに使用するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体又は請求項112に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項115】
容器内に請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体又は請求項112に記載の免疫コンジュゲートを含むキット。
【請求項116】
請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体又は請求項112に記載の免疫コンジュゲートの使用説明書を含有する情報材料を更に含む、請求項115に記載のキット。
【請求項117】
疾患又は状態の治療を必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法であって、治療有効量の請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体若しくは請求項112に記載の免疫コンジュゲートを前記対象に投与すること、又は請求項113に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、疾患又は状態の治療を必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法。
【請求項118】
前記疾患又は状態が、PD-1に関連する疾患又は状態を含む、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記疾患又は状態が、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、脳マラリア、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、胆嚢疾患、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、IgG4関連疾患、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性線維症、過敏性腸症候群、若年性関節炎、川崎病、白血病、ループス腎炎、ライム関節炎、リンパ腫、リンパ増殖性障害、髄膜脳炎、多発性硬化症、重症筋無力症、骨髄腫、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、視神経脊髄炎、変形性関節症、骨盤内炎症性疾患、天疱瘡、腹膜炎、毛巣嚢胞疾患、多発性筋炎、原発性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、移植拒絶反応、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑及びフォークト・小柳・原田病を含む、請求項117又は118に記載の方法。
【請求項120】
前記対象が、ヒト対象である、請求項117~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
対象における免疫応答を下方制御する方法であって、前記対象に請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体を投与すること、前記対象に請求項112に記載の免疫コンジュゲートを投与すること、又は前記対象に請求項113に記載の医薬組成物を投与すること、を含む方法。
【請求項122】
PD-1を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を請求項44~106のいずれか一項に記載の抗体又は請求項112に記載の免疫コンジュゲートと接触させることを含む方法。
【請求項123】
前記免疫細胞が、T細胞、B細胞又はマクロファージを含む、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記免疫細胞が抗原特異的T細胞を含む、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記対象が、ヒト対象である、請求項122~124のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮特許出願第63/281,404号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、XMLフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年11月7日に作成された当該XMLコピーは、56270_718601_SL.xmlという名前であり、サイズが19,479バイトである。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達をアゴナイズする抗体と接触させることを含み、抗体が、アミノ酸置換を含むFc領域を含み、アミノ酸置換が、アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、抗体が、親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する、方法が本明細書で開示される。
【0004】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、免疫細胞の表面上のPD-1とPD-L1との相互作用を増強する抗体と接触させることを含む、方法が本明細書で開示される。いくつかの場合では、抗体がFc領域を含み、Fc領域がアミノ酸置換を含む。いくつかの場合では、アミノ酸置換が、アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、抗体が、親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する。
【0005】
方法のいくつかの実施形態では、PD-1発現制御性T細胞に対するADCCは、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される。
【0006】
方法のいくつかの実施形態では、抗体は、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない。
【0007】
方法のいくつかの実施形態では、抗体はナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない。
【0008】
方法のいくつかの実施形態では、抗体は、重鎖可変領域を含む重鎖と、軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む。方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む。
【0009】
方法のいくつかの実施形態では、Fc領域は、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む。
【0010】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、免疫細胞を、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含む抗体と接触させることを含み、(i)重鎖が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3の1つ以上に示される配列を含むCDRを含む重鎖可変領域を含み、(ii)軽鎖は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域を含み、(iii)Fc領域がIgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた位置238にアスパラギン酸(D)を含む、方法が本明細書で開示される。
【0011】
方法のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。
【0012】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3は、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む。
【0013】
方法のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む。
【0014】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む。
【0015】
方法のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む。
【0016】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0017】
方法のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0018】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0019】
方法のいくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0020】
方法のいくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1に由来する。方法のいくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号17に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0021】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する。
【0022】
方法のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する。
【0023】
方法のいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナルである。
【0024】
方法のいくつかの実施形態では、抗体は、免疫細胞の活性化を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少させる。
【0025】
方法のいくつかの実施形態では、抗体は、免疫細胞の活性化を約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%低下させる。
【0026】
方法のいくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞又はマクロファージを含む。方法のいくつかの実施形態では、免疫細胞は抗原特異的T細胞を含む。
【0027】
方法のいくつかの実施形態では、Fc領域はFcγR2Bに選択的に結合する。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のKDでヒトFcγR2Bに結合する。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるKDでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのKDでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのKDでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのKDでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも6:1である。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、約6:1である。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも40:1である。方法のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、約40:1である。方法のいくつかの実施形態では、比は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される。
【0028】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合し、PD-1シグナル伝達をアゴナイズする単離された抗体が本明細書で開示され、ここで、抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、重鎖は、重鎖可変領域を含み、軽鎖は、軽鎖可変領域を含み、Fc領域は、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を、その置換を欠く親分子と比較して低下させるアミノ酸置換を含み、抗体は、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して、その親分子と比較して同じ又はより高い不可知論的効果を有する。
【0029】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体が本明細書に開示され、ここで、抗体は、重鎖、軽鎖及びFc領域を含み、重鎖は重鎖可変領域を含み、軽鎖は軽鎖可変領域を含み、抗体は、免疫細胞の表面上に発現されるPD-1とPD-L1との相互作用を増強する。抗体のいくつかの場合では、Fc領域は、アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少をもたらすアミノ酸置換を含み、抗体は、親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じか又はより高い不可知論的効果を有する。
【0030】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。抗体のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。抗体のいくつかの実施形態では、Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む。
【0031】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、重鎖、軽鎖及びFc領域を含み、重鎖が重鎖可変領域を含み、軽鎖が軽鎖可変領域を含み、かつ、(i)重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示されるような配列を含むCDRを含み、(ii)軽鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含み、(iii)Fc領域がIgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた位置238にアスパラギン酸(D)を含む、単離された抗体が本明細書に開示される。
【0032】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、免疫細胞の表面に発現するPD-1とPD-L1との相互作用を増強する。
【0033】
抗体のいくつかの実施形態では、PD-1とPD-L1との間における相互作用は、実施例10に記載されるようなアッセイによって求められる場合に増強される。
【0034】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、IgG1のFc領域を含む他の点では同じ分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少を誘導し、抗体は、他の点では同じ分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する。抗体のいくつかの実施形態では、PD-1発現制御性T細胞に対するADCCは、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない。
【0035】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体はナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない。
【0036】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3は、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む。
【0037】
抗体のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3は、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む。
【0038】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む。
【0039】
抗体のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む。
【0040】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0041】
抗体のいくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0042】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖は、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0043】
抗体のいくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0044】
抗体のいくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1に由来する。抗体のいくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号17に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0045】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する。
【0046】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、Fc領域に作動可能に連結された重鎖可変領域を含み、軽鎖は、軽鎖可変領域を含む。
【0047】
抗体のいくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する。
【0048】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。
【0049】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。
【0050】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される。
【0051】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルである。
【0052】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、200nM、100nM、80nM、60nM又は40nM未満のKDでヒトPD-1に結合する。
【0053】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して60nM未満のKDでヒトPD-1に結合する。
【0054】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して40nM未満のKDでヒトPD-1に結合する。
【0055】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5000nM、4000nM、2000nM、1000nM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM又は200nM未満のKDでカニクイザルPD-1に結合する。
【0056】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して600nM未満のKDでカニクイザルPD-1に結合する。
【0057】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して300nM未満のKDでカニクイザルPD-1に結合する。
【0058】
抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、免疫細胞の表面上に発現されるヒトPD-1をアゴナイズする。
【0059】
抗体のいくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。
【0060】
抗体のいくつかの実施形態では、免疫細胞の表面上に発現されたヒトPD-1への抗体の結合が、抗体によって結合されていない同等の免疫細胞と比較して、細胞の増殖を減少させる。抗体のいくつかの実施形態では、細胞はT細胞である。抗体のいくつかの実施形態では、細胞活性化の減少を、実施例4に記載のNFATレポーターアッセイによって測定する。抗体のいくつかの実施形態では、細胞活性化の減少は、破傷風トキソイド活性化アッセイ又は実施例5に記載のウイルスペプチド活性化アッセイによって測定される。抗体のいくつかの実施形態では、細胞増殖の減少は、実施例6に記載される抗CD3/28活性化アッセイによって測定される。抗体のいくつかの実施形態では、細胞増殖の減少は、免疫細胞がPD-L1発現細胞に近接しているときに測定される。抗体のいくつかの実施形態では、細胞増殖の減少は、実施例8に記載されるアッセイによって測定される。抗体のいくつかの実施形態では、細胞増殖の減少がインビトロ又はインビボで測定される。抗体のいくつかの実施形態では、当該細胞増殖の減少は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%である。抗体のいくつかの実施形態では、当該細胞増殖の減少は、約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%である。
【0061】
抗体のいくつかの実施形態では、Fc領域はFcγR2Bに選択的に結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のKDでヒトFcγR2Bに結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、少なくとも2μM、1μM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM又は5nMのKDでヒトFcγR2Bに結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、200nM~5μM、400nM~4μM、500nM~3.5μM、800nM~3μM、1μM~5μM、1μM~4.5μM、1μM~4μM、1μM~3.5μM、1μM~3μM、1μM~2.5μM、又は1μM~2μMのKDでヒトFcγR2Bに結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるKDでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのKDでヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのKDでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。抗体のいくつかの実施形態では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのKDでヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも6:1である。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、約6:1である。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、少なくとも40:1である。抗体のいくつかの実施形態では、ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比は、約40:1である。抗体のいくつかの実施形態では、上記比は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される。
【0062】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む単離された核酸が本明細書に開示される。
【0063】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むベクターが本明細書に開示される。
【0064】
本明細書では、いくつかの態様では、発現されると本明細書に開示される抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞が開示される。
【0065】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される宿主細胞を抗体の産生のための条件下で培養することを含む方法である。
【0066】
いくつかの態様では、(a)発現されたときに本明細書に開示される抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を提供することと、(b)コードされたアミノ酸配列を発現する宿主細胞を培養することと、(c)抗体を単離することと、を含む方法が、本明細書に開示される。
【0067】
いくつかの態様では、薬剤とコンジュゲートされた本明細書に開示される抗体を含む免疫コンジュゲートが本明細書に開示される。
【0068】
いくつかの態様では、治療有効量の本明細書に開示される抗体又は本明細書に開示される免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0069】
いくつかの態様では、治療有効量の本明細書に開示される抗体又は本明細書に開示される免疫コンジュゲート、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、疾患又は状態を治療する際に使用するための医薬組成物が本明細書に開示される。
【0070】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体又は本明細書に開示される免疫コンジュゲートを容器に含むキットが本明細書に開示される。
【0071】
キットのいくつかの場合では、キットは、本明細書に開示される抗体又は本明細書に開示される免疫コンジュゲートの使用説明書を含有する情報材料を更に含む。
【0072】
いくつかの態様では、治療有効量の本明細書に開示される抗体若しくは本明細書に開示される免疫コンジュゲートを対象に投与すること、又は本明細書に開示される医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法が本明細書に開示される。方法のいくつかの場合では、疾患又は状態は、PD-1に関連する疾患又は状態を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態が、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、脳マラリア、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、胆嚢疾患、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、IgG4関連疾患、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性線維症、過敏性腸症候群、若年性関節炎、川崎病、白血病、ループス腎炎、ライム関節炎、リンパ腫、リンパ増殖性障害、髄膜脳炎、多発性硬化症、重症筋無力症、骨髄腫、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、視神経脊髄炎、変形性関節症、骨盤内炎症性疾患、天疱瘡、腹膜炎、毛巣嚢胞疾患、多発性筋炎、原発性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、移植拒絶反応、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑及びフォークト・小柳・原田病を含む。いくつかの場合では、対象はヒト対象である。
【0073】
いくつかの態様では、対象に本明細書に開示される抗体を投与すること、本明細書に開示される免疫コンジュゲートを対象に投与すること、又は本明細書に開示される医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を下方制御する方法が本明細書に開示される。
【0074】
いくつかの態様では、PD-1を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、免疫細胞を本明細書に開示される抗体又は本明細書に開示される免疫コンジュゲートと接触させることを含む方法が本明細書に開示される。いくつかの場合では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、又はマクロファージを含む。いくつかの場合では、免疫細胞は、抗原特異的T細胞を含む。いくつかの場合では、対象はヒト対象である。
【0075】
参照による組み込み
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示した場合と同程度に、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0076】
本開示の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示の特徴及び利点のより良い理解は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1A】FcRを発現するaAPC(人工抗原提示細胞)、並びにPD-1及びTCR(T細胞受容体)を提示する対向する細胞膜を示す概略図(左)、並びにFcRを発現するaAPCの存在下で、例示的抗体クローン19 mIgG1による治療が、ルシフェラーゼシグナルの減少によって示されるように、T細胞の阻害をもたらしたが、mIgG1アイソタイプ対照の治療は、T細胞活性化に有意に影響しなかったことを実証するグラフ(右)を含む。この実験では、NFAT-ルシフェラーゼレポーターJurkat細胞を、漸増濃度の抗PD-1クローン19 mIgG1又はアイソタイプ対照と共にマウスFcγR2Bを発現する刺激因子細胞と共培養し、T細胞活性化の読み出しとして発光を測定した。
【0078】
図1B】FcRを発現しないaAPC(人工抗原提示細胞)、並びにPD-1及びTCR(T細胞受容体;左)を提示する対向する細胞膜の概略図、並びにFcRを発現しないaAPCの存在下で、例示的抗体クローン19 mIgG1による治療が、mIgG1アイソタイプ対照による治療後の効果と同様に、ルシフェラーゼシグナルにおける定常量によって示されるように、T細胞活性化に影響を及ぼさなかったことを示すグラフ(右)を含む。この実験では、Fc受容体を全く発現しない刺激因子細胞を用いて、図1Aに示す実験と同じアッセイを行った。
【0079】
図2A】JurkatレポーターアッセイにおいてNFATシグナルによって決定される、T細胞活性化に対する例示的抗体の効果を実証するグラフを示す。この図は、アイソタイプ対照ではなく、全てのPD-1抗体及びP238D変異バージョンのhumCL19v1(表2参照)による細胞の治療が、T細胞活性化を有意に抑制したことを示し、humCL19v1抗体の野生型IgG1バージョンとhumCL19v抗体のP238D変異バージョンとの間に有意差は検出されなかった。この実験では、PD-1発現NFAT-ルシフェラーゼJurkatレポーター細胞を、ヒトFcγR2B発現刺激因子細胞と、10μg/mlの単一濃度の種々の抗PD-1抗体の存在下で6時間共培養し、次いで、NFAT活性を発光定量によって測定した。
【0080】
図2B】抗CD3「T細胞刺激因子」を発現するヒトHEK293T刺激因子細胞を使用してJurkat T細胞の活性化を刺激した別のT細胞レポーターアッセイにおけるNFATシグナルによって決定される、T細胞活性化に対する例示的抗体の効果を実証するグラフを示す。グラフは、P238D変異バージョンのhumCL19v1による細胞の治療がT細胞活性化を有意に抑制したが、そのP238Dアイソタイプ対照は抑制しなかったことを示す。
【0081】
図3A】破傷風トキソイド(TT)活性化アッセイにおけるIFNγ放出によって決定される、T細胞活性化に対する例示的抗体の効果を実証するグラフを示す。PD-L1/2遮断抗体の存在下での破傷風トキソイド活性化アッセイ後の末梢血単核細胞によるIFNγ放出は、IgG1アイソタイプ対照治療と比較して、PD-1抗体及びP238D変異バージョンによる治療後に有意により抑制された。この実験では、6人の健康ドナー由来のヒトPBMCを、1μg/mlの単回用量で様々なPD-1抗体の存在下で破傷風トキソイドで刺激した。IFNg産生を上清のELISAによって96時間後に評価し、各ドナーについて、試験抗体の非存在下で刺激された細胞におけるIFNgレベルに対して正規化した。一元配置ANOVAを使用したアイソタイプ対照に対してp<0.05。
【0082】
図3B】ウイルスペプチド活性化アッセイにおけるIFNγ産生によって決定される、T細胞活性化に対する例示的抗体の効果を実証するグラフを示す。ブレフェルジンAの存在下でのCEF HLAクラスIペプチドによる刺激後の末梢血単核細胞によるIFNγ産生は、IgG1アイソタイプ対照治療と比較して、P238D変異型humCL19v1による治療後に有意に抑制された。
【0083】
図4】末梢血単核細胞の抗CD3及び抗CD28刺激によるCD25の誘導後の、CD25発現に対する例示的抗体の効果を実証するグラフを示す。アイソタイプ対照とは異なり、P238D変異humCL19v1抗体は、IgG1抗体と同様に、初代T細胞活性化(CD25)発現を効果的に抑制した。この実験では、3人の健康ドナー由来のヒトPBMCを、1μg/mlの単回用量で様々なPD-1抗体の存在下で可溶性抗CD3及び抗CD28抗体で刺激した。CD4 T細胞上のCD25発現をフローサイトメトリによって72時間後に評価し、各ドナーデータについて、試験抗体の非存在下で刺激された細胞におけるCD25発現レベルに対して正規化した。一元配置ANOVAを使用したアイソタイプ対照に対してp<0.05。
【0084】
図5】PD-1抗体の存在下で、精製NK細胞と制御性T細胞との1:5の比での制御性T細胞との共培養によって誘導されたナチュラルキラー細胞(抗体依存性細胞傷害性、又はADCC)によるインビトロ脱顆粒を示す。IgG1アイソタイプ対照とは異なり、全てのIgG1アイソタイプ抗PD-1抗体が、制御性T細胞の有意なADCC殺傷、したがって細胞の脱顆粒をもたらしたが、P238D変異PD-1抗体(humCL19v1 P238D)はもたらさなかった。この実験では、20,000個の健康なドナーNK細胞を、1ug/mlの示された抗体と共に、制御性T細胞と共にインキュベートした。1つの研究当たり1つのTregドナー及び3つの異なるNK細胞ドナーを用いた2つの別々の研究からデータを示す。各異なるアイコンは異なるNK細胞ドナーを表し、NK細胞脱顆粒はそのドナーの抗体なし設定に対して正規化されている。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
【0085】
図6】JurkatレポーターアッセイにおいてNFATシグナルによって測定した場合、humCLV19v1 P238D PD-1抗体のみが高PD-L1の存在下でT細胞活性化を阻害することができたが、他の全ての抗PD-1アゴニスト抗体は阻害しなかったことを示す。T細胞刺激因子構築物を含有するPD-L1発現細胞をPD-1発現Jurkatレポーター細胞とインキュベートして、他のPD-1抗体と比較してP238D変異humCL19v1の影響を試験した場合、変異P238D PD-1抗体のみがT細胞活性化を有意に抑制した。この実験では、PD-1発現Jurkatレポーター細胞を、様々なPD-1抗体の存在下でPD-L1発現刺激因子細胞と共培養し、T細胞活性化をルシフェラーゼ産生によって評価した。
【0086】
図7A】それぞれ、CD25発現(図7A)、ICOS発現(図7B)、IFNγ(図7C、図中の「IFNg」)、IL-17F(図7D)、及びTNFα(図7E、図中の「TNFa」)によって測定される、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を実証するグラフである。この実験では、RA患者由来のPBMCを線維芽細胞様滑膜細胞と共培養し、異なるPD-1抗体又はアイソタイプ対照の存在下で抗CD3及び抗CD28で刺激した。細胞及び上清を72時間で評価した。CD4 T細胞上のCD25及びICOS発現をフローサイトメトリによって評価した。培養上清中のIFNg、IL-17F及びTNFαのレベルをサイトメトリービーズアレイによって評価した。各記号は、そのドナーの抗体なし設定に対して正規化された異なるPBMCドナーを表す。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
図7B】それぞれ、CD25発現(図7A)、ICOS発現(図7B)、IFNγ(図7C、図中の「IFNg」)、IL-17F(図7D)、及びTNFα(図7E、図中の「TNFa」)によって測定される、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を実証するグラフである。この実験では、RA患者由来のPBMCを線維芽細胞様滑膜細胞と共培養し、異なるPD-1抗体又はアイソタイプ対照の存在下で抗CD3及び抗CD28で刺激した。細胞及び上清を72時間で評価した。CD4 T細胞上のCD25及びICOS発現をフローサイトメトリによって評価した。培養上清中のIFNg、IL-17F及びTNFαのレベルをサイトメトリービーズアレイによって評価した。各記号は、そのドナーの抗体なし設定に対して正規化された異なるPBMCドナーを表す。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
図7C】それぞれ、CD25発現(図7A)、ICOS発現(図7B)、IFNγ(図7C、図中の「IFNg」)、IL-17F(図7D)、及びTNFα(図7E、図中の「TNFa」)によって測定される、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を実証するグラフである。この実験では、RA患者由来のPBMCを線維芽細胞様滑膜細胞と共培養し、異なるPD-1抗体又はアイソタイプ対照の存在下で抗CD3及び抗CD28で刺激した。細胞及び上清を72時間で評価した。CD4 T細胞上のCD25及びICOS発現をフローサイトメトリによって評価した。培養上清中のIFNg、IL-17F及びTNFαのレベルをサイトメトリービーズアレイによって評価した。各記号は、そのドナーの抗体なし設定に対して正規化された異なるPBMCドナーを表す。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
図7D】それぞれ、CD25発現(図7A)、ICOS発現(図7B)、IFNγ(図7C、図中の「IFNg」)、IL-17F(図7D)、及びTNFα(図7E、図中の「TNFa」)によって測定される、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を実証するグラフである。この実験では、RA患者由来のPBMCを線維芽細胞様滑膜細胞と共培養し、異なるPD-1抗体又はアイソタイプ対照の存在下で抗CD3及び抗CD28で刺激した。細胞及び上清を72時間で評価した。CD4 T細胞上のCD25及びICOS発現をフローサイトメトリによって評価した。培養上清中のIFNg、IL-17F及びTNFαのレベルをサイトメトリービーズアレイによって評価した。各記号は、そのドナーの抗体なし設定に対して正規化された異なるPBMCドナーを表す。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
図7E】それぞれ、CD25発現(図7A)、ICOS発現(図7B)、IFNγ(図7C、図中の「IFNg」)、IL-17F(図7D)、及びTNFα(図7E、図中の「TNFa」)によって測定される、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を実証するグラフである。この実験では、RA患者由来のPBMCを線維芽細胞様滑膜細胞と共培養し、異なるPD-1抗体又はアイソタイプ対照の存在下で抗CD3及び抗CD28で刺激した。細胞及び上清を72時間で評価した。CD4 T細胞上のCD25及びICOS発現をフローサイトメトリによって評価した。培養上清中のIFNg、IL-17F及びTNFαのレベルをサイトメトリービーズアレイによって評価した。各記号は、そのドナーの抗体なし設定に対して正規化された異なるPBMCドナーを表す。一元配置ANOVAを使用するアイソタイプ対照に対するp<0.05。
【0087】
図8】様々なPD-1抗体とプレインキュベートしたPD-1発現Jurkat細胞へのPDL1-Fcの結合に対する例示的なPD-1アゴニスト抗体の効果を示すグラフである。humCL19v1 P238Dのみが、PD-1発現Jurkat細胞へのPDL1-Fcの結合を増加させることが示された。この実験では、PD-1発現Jurkat細胞を氷上で10μg/mlで1時間プレインキュベートし、次いで漸増濃度のAF647コンジュゲートPDL1-Fcで染色した。
【0088】
図9A】PD-1アゴニストによって下方制御される遺伝子が自己免疫に関連することを実証する。図9Aは、ルシフェラーゼ活性によって測定される、PD-L1の非存在下であるが、例示的なPD-1アゴニスト抗体(クローン19 mIgG1)又はアイソタイプ対照の存在下での、Jurkat T細胞の活性化を示すグラフである。PD-1発現Jurkatレポーター細胞を、5μg/mlクローン19 mIgG1又はアイソタイプ対照の存在下でFcR発現刺激因子細胞と共培養し、各ウェル由来の細胞の一部を採取して、T細胞活性化の読み出しとしてルシフェラーゼ産生を評価した。図9Bは、磁気選別前後の活性化Jurkat細胞の代表的なフローサイトメトリプロットを示す。磁気ビーズを用いたネガティブ選択によってJurkat細胞を刺激因子細胞から分離し、精製Jurkatの純度をフローサイトメトリによって評価した。図9Cは、GeneWizを用いた精製Jurkat細胞のバルクRNA配列決定によって、PD-1アゴニストの存在下で活性化されたJurkatについて示差的に発現した遺伝子をアイソタイプ対照に対して示すボルケーノプロットである。図9Dは、PD-1アゴニズムによって有意に下方制御される遺伝子の兆候を示す。異なる形質に関連する遺伝子の濃縮を同定するために、遺伝子をEBI GWASカタログにマッピングした。
図9B】PD-1アゴニストによって下方制御される遺伝子が自己免疫に関連することを実証する。図9Aは、ルシフェラーゼ活性によって測定される、PD-L1の非存在下であるが、例示的なPD-1アゴニスト抗体(クローン19 mIgG1)又はアイソタイプ対照の存在下での、Jurkat T細胞の活性化を示すグラフである。PD-1発現Jurkatレポーター細胞を、5μg/mlクローン19 mIgG1又はアイソタイプ対照の存在下でFcR発現刺激因子細胞と共培養し、各ウェル由来の細胞の一部を採取して、T細胞活性化の読み出しとしてルシフェラーゼ産生を評価した。図9Bは、磁気選別前後の活性化Jurkat細胞の代表的なフローサイトメトリプロットを示す。磁気ビーズを用いたネガティブ選択によってJurkat細胞を刺激因子細胞から分離し、精製Jurkatの純度をフローサイトメトリによって評価した。図9Cは、GeneWizを用いた精製Jurkat細胞のバルクRNA配列決定によって、PD-1アゴニストの存在下で活性化されたJurkatについて示差的に発現した遺伝子をアイソタイプ対照に対して示すボルケーノプロットである。図9Dは、PD-1アゴニズムによって有意に下方制御される遺伝子の兆候を示す。異なる形質に関連する遺伝子の濃縮を同定するために、遺伝子をEBI GWASカタログにマッピングした。
図9C】PD-1アゴニストによって下方制御される遺伝子が自己免疫に関連することを実証する。図9Aは、ルシフェラーゼ活性によって測定される、PD-L1の非存在下であるが、例示的なPD-1アゴニスト抗体(クローン19 mIgG1)又はアイソタイプ対照の存在下での、Jurkat T細胞の活性化を示すグラフである。PD-1発現Jurkatレポーター細胞を、5μg/mlクローン19 mIgG1又はアイソタイプ対照の存在下でFcR発現刺激因子細胞と共培養し、各ウェル由来の細胞の一部を採取して、T細胞活性化の読み出しとしてルシフェラーゼ産生を評価した。図9Bは、磁気選別前後の活性化Jurkat細胞の代表的なフローサイトメトリプロットを示す。磁気ビーズを用いたネガティブ選択によってJurkat細胞を刺激因子細胞から分離し、精製Jurkatの純度をフローサイトメトリによって評価した。図9Cは、GeneWizを用いた精製Jurkat細胞のバルクRNA配列決定によって、PD-1アゴニストの存在下で活性化されたJurkatについて示差的に発現した遺伝子をアイソタイプ対照に対して示すボルケーノプロットである。図9Dは、PD-1アゴニズムによって有意に下方制御される遺伝子の兆候を示す。異なる形質に関連する遺伝子の濃縮を同定するために、遺伝子をEBI GWASカタログにマッピングした。
図9D】PD-1アゴニストによって下方制御される遺伝子が自己免疫に関連することを実証する。図9Aは、ルシフェラーゼ活性によって測定される、PD-L1の非存在下であるが、例示的なPD-1アゴニスト抗体(クローン19 mIgG1)又はアイソタイプ対照の存在下での、Jurkat T細胞の活性化を示すグラフである。PD-1発現Jurkatレポーター細胞を、5μg/mlクローン19 mIgG1又はアイソタイプ対照の存在下でFcR発現刺激因子細胞と共培養し、各ウェル由来の細胞の一部を採取して、T細胞活性化の読み出しとしてルシフェラーゼ産生を評価した。図9Bは、磁気選別前後の活性化Jurkat細胞の代表的なフローサイトメトリプロットを示す。磁気ビーズを用いたネガティブ選択によってJurkat細胞を刺激因子細胞から分離し、精製Jurkatの純度をフローサイトメトリによって評価した。図9Cは、GeneWizを用いた精製Jurkat細胞のバルクRNA配列決定によって、PD-1アゴニストの存在下で活性化されたJurkatについて示差的に発現した遺伝子をアイソタイプ対照に対して示すボルケーノプロットである。図9Dは、PD-1アゴニズムによって有意に下方制御される遺伝子の兆候を示す。異なる形質に関連する遺伝子の濃縮を同定するために、遺伝子をEBI GWASカタログにマッピングした。
【0089】
図10A】総抗ヒストンIgGレベル(図10A)、細胞移入後35日目の血清中の抗dsDNA IgGのレベル(図10B)、35日目の脾臓におけるTfh細胞頻度(総CD4のパーセントとしてのCXCR5+ICOS+)(図10C)、及び35日目の試験終了時の脾臓重量(図10D)によって測定される、SLEのマウスモデルにおける例示的なPD-1アゴニスト抗体、クローン19の効果を示すグラフである。抗dsDNA IgGのレベルをELISAによって評価し、プール血清の標準曲線を使用して任意単位として定量した。
図10B】総抗ヒストンIgGレベル(図10A)、細胞移入後35日目の血清中の抗dsDNA IgGのレベル(図10B)、35日目の脾臓におけるTfh細胞頻度(総CD4のパーセントとしてのCXCR5+ICOS+)(図10C)、及び35日目の試験終了時の脾臓重量(図10D)によって測定される、SLEのマウスモデルにおける例示的なPD-1アゴニスト抗体、クローン19の効果を示すグラフである。抗dsDNA IgGのレベルをELISAによって評価し、プール血清の標準曲線を使用して任意単位として定量した。
図10C】総抗ヒストンIgGレベル(図10A)、細胞移入後35日目の血清中の抗dsDNA IgGのレベル(図10B)、35日目の脾臓におけるTfh細胞頻度(総CD4のパーセントとしてのCXCR5+ICOS+)(図10C)、及び35日目の試験終了時の脾臓重量(図10D)によって測定される、SLEのマウスモデルにおける例示的なPD-1アゴニスト抗体、クローン19の効果を示すグラフである。抗dsDNA IgGのレベルをELISAによって評価し、プール血清の標準曲線を使用して任意単位として定量した。
図10D】総抗ヒストンIgGレベル(図10A)、細胞移入後35日目の血清中の抗dsDNA IgGのレベル(図10B)、35日目の脾臓におけるTfh細胞頻度(総CD4のパーセントとしてのCXCR5+ICOS+)(図10C)、及び35日目の試験終了時の脾臓重量(図10D)によって測定される、SLEのマウスモデルにおける例示的なPD-1アゴニスト抗体、クローン19の効果を示すグラフである。抗dsDNA IgGのレベルをELISAによって評価し、プール血清の標準曲線を使用して任意単位として定量した。
【0090】
図11A】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるクローン19が、SLEのマウスモデルにおいてTfh細胞を枯渇させるのではなく、Tfh細胞の拡大を防止することを示す。図11Aは、30日目の脾臓におけるTfh細胞頻度を示す。図11Bは、免疫細胞移入後0日目、14日目又は28日目にクローン19を投与した後の30日目の脾臓重量を示す。
図11B】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるクローン19が、SLEのマウスモデルにおいてTfh細胞を枯渇させるのではなく、Tfh細胞の拡大を防止することを示す。図11Aは、30日目の脾臓におけるTfh細胞頻度を示す。図11Bは、免疫細胞移入後0日目、14日目又は28日目にクローン19を投与した後の30日目の脾臓重量を示す。
【0091】
図12A】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるクローン19が、マウスにおいて遅延型過敏反応を阻害することを示す。図12Aは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)誘発性遅延型過敏症(DTH)に対するクローン19の効果を示す。マウスを、10mg/kgのクローン19又はアイソタイプ対照抗体による治療の1時間後の0日目にKLH抗原で免疫化し、次いで、5日目に片耳で皮内チャレンジした。6日目に測定した、異なる治療群におけるチャレンジされた、及びチャレンジされていない耳の生検重量の差を図に示す。図12Bは、マウスを同様に治療したが、様々な用量のクローン19で治療した別の実験の結果を示す。各ドットは個々のマウスを表す。上記の群は、クラスカル・ウォリス、ダンの多重比較検定を用いてアイソタイプ対照に対してp<0.05を表す。
図12B】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるクローン19が、マウスにおいて遅延型過敏反応を阻害することを示す。図12Aは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)誘発性遅延型過敏症(DTH)に対するクローン19の効果を示す。マウスを、10mg/kgのクローン19又はアイソタイプ対照抗体による治療の1時間後の0日目にKLH抗原で免疫化し、次いで、5日目に片耳で皮内チャレンジした。6日目に測定した、異なる治療群におけるチャレンジされた、及びチャレンジされていない耳の生検重量の差を図に示す。図12Bは、マウスを同様に治療したが、様々な用量のクローン19で治療した別の実験の結果を示す。各ドットは個々のマウスを表す。上記の群は、クラスカル・ウォリス、ダンの多重比較検定を用いてアイソタイプ対照に対してp<0.05を表す。
【0092】
図13A】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるhumCL19v1 P238Dが、マウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善することを示す。照射されたマウスにヒト抹消血単核細胞(PBMC)を注射し、次いで、PBMC注射後0日目、並びに7、14及び21日目に、10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプによる治療を受けた。humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、牌臓重量(図13A)、牌臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13B)及び肝臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13C)、並びに血清中炎症サイトカインレベル(図13D)を有意に低下させることが示された。図13Eは、humCL19v1 P238Dがまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を低下させたことを示す。
図13B】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるhumCL19v1 P238Dが、マウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善することを示す。照射されたマウスにヒト抹消血単核細胞(PBMC)を注射し、次いで、PBMC注射後0日目、並びに7、14及び21日目に、10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプによる治療を受けた。humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、牌臓重量(図13A)、牌臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13B)及び肝臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13C)、並びに血清中炎症サイトカインレベル(図13D)を有意に低下させることが示された。図13Eは、humCL19v1 P238Dがまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を低下させたことを示す。
図13C】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるhumCL19v1 P238Dが、マウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善することを示す。照射されたマウスにヒト抹消血単核細胞(PBMC)を注射し、次いで、PBMC注射後0日目、並びに7、14及び21日目に、10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプによる治療を受けた。humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、牌臓重量(図13A)、牌臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13B)及び肝臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13C)、並びに血清中炎症サイトカインレベル(図13D)を有意に低下させることが示された。図13Eは、humCL19v1 P238Dがまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を低下させたことを示す。
図13D】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるhumCL19v1 P238Dが、マウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善することを示す。照射されたマウスにヒト抹消血単核細胞(PBMC)を注射し、次いで、PBMC注射後0日目、並びに7、14及び21日目に、10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプによる治療を受けた。humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、牌臓重量(図13A)、牌臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13B)及び肝臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13C)、並びに血清中炎症サイトカインレベル(図13D)を有意に低下させることが示された。図13Eは、humCL19v1 P238Dがまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を低下させたことを示す。
図13E】例示的なPD-1アゴニスト抗体であるhumCL19v1 P238Dが、マウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善することを示す。照射されたマウスにヒト抹消血単核細胞(PBMC)を注射し、次いで、PBMC注射後0日目、並びに7、14及び21日目に、10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプによる治療を受けた。humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、牌臓重量(図13A)、牌臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13B)及び肝臓におけるヒト免疫細胞増殖(図13C)、並びに血清中炎症サイトカインレベル(図13D)を有意に低下させることが示された。図13Eは、humCL19v1 P238Dがまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を低下させたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
いくつかの態様では、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合し、PD-1シグナル伝達をアゴナイズする抗体が本明細書に開示される。いくつかの場合では、本明細書に開示されるPD-1抗体は、PD-1のアゴニストとして作用し、それによってPD-1によって調節される免疫応答を調節することができる。
【0094】
いくつかの場合では、本明細書に開示されるアゴニスト抗PD-1抗体は、Fc領域アミノ酸置換を有するFc領域を含み、その結果、Fc領域アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)が減少するが、親分子と比較して、PD-1シグナル伝達に対する抗体のアゴニスト効果を維持又は増強する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗PD-1抗体のFc領域アミノ酸置換は、FcγR2Bに対する結合選択性の向上をもたらし、例えば、FcγR2Bに対する結合親和性が他のタイプのFc受容体と比較して相対的に高く、結合親和性の差がアミノ酸置換を欠く親分子よりも高い。「FcγR2B」、「FcgR2B」、「FcγR2B」及び「FcγRIIB」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Fc受容体の同じサブタイプを指す。
【0095】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に開示される抗PD-1抗体のFc領域アミノ酸置換は、FcγR2Bに対する抗体の結合選択性を高めることができる。ヒトでは、1つの阻害性Fcガンマ受容体(FcγR2B)が存在するが、他のFcガンマ受容体は全て免疫活性化シグナルを送達し得る(例えば、FcγR1、FcγR2A、FcγR3A及びFcγR3B)。これらの活性化FcRは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)に寄与することができ、標的発現細胞の枯渇をもたらし得る。FcγR2BへのFc結合の選択性を増加させることにより、炎症性FcRシグナル伝達を誘発することなく、またPD-1発現制御性T細胞を枯渇させることなく、免疫応答を抑制する際の本明細書に開示されるPD-1アゴニスト抗体の有効性を高めることができると考えられる。更に、いくつかの場合では、FcγR2Bへの選択的結合は、PD-1発現細胞上のPD-1及びFcγR2B発現細胞上のFcγR2Bを介して双方向阻害シグナル伝達を促進することができ、これは抗体の免疫抑制効果を強化することができる。逆に、いくつかの場合では、FcγR2Bに対する非常に高い親和性は、7.74nMのKでFcγR2Bに結合するFcγR2B増強IgG1抗体XmAb7195によって実証されたように、肝臓類洞上皮細胞における受容体の代謝回転に起因して抗体半減期に悪影響を及ぼし得(Ganesan et al.J Immunol.2012 Nov 15;189(10):4981-8.doi:10.4049/jimmunol.1202017)(Chu et al.J Allergy Clin Immunol.2012 Apr;129(4):1102-15.doi:10.1016/j.jaci.2011.11.029.)、Xencorによって、野生型IgG1の平均半減期が約21日であるのと比較して、第1a相試験(American Thoracic Society(ATS)2016 International Conference in San Francisco,CA-A6476:Poster Board Number 407)では平均インビボ半減期が3.9日であると報告された(Morell et al.J Clin Invest.1970;49(4):673-680.doi:10.1172/JCI106279)。したがって、FcγR2Bに対する選択性及びアゴニズムを支持するのに十分な結合がPD-1アゴニスト抗体にとって望ましいかもしれないが、FcγR2Bに対する過度に高い親和性は、潜在的な結果としての短縮された半減期がより頻繁な投与を必要とする可能性があるので、治療状況において望ましくないかもしれない。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に開示される抗PD-1抗体のFc領域アミノ酸置換は、FcγR2Bに対する過度に高い親和性を回避し、抗体の望ましい半減期を維持しながら、FcγR2Bに対する抗体の結合選択性を高めることができる。
【0096】
いくつかの場合では、開示されるアゴニスト抗PD-1抗体は、免疫細胞及び/又は免疫系に対する阻害性シグナル伝達を促進し、免疫細胞応答を下方制御する点で、現在の抗体よりも有効である。いくつかの場合では、本明細書に開示されるPD-1抗体は、PD-L1に対するPD-1の結合を増強する。いくつかの場合では、本明細書に開示されるPD-1抗体は、PD-L1の近傍においてさえ、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達を促進する。本明細書に開示されるPD-1抗体は、免疫系媒介障害及び/又はPD-1関連障害、あるいは異常な免疫病態によって生じる疾患又は癌性起源を有する疾患の治療において特に有用であり得る。PD-1関連障害には、症状の1つとして1つ以上の種類の免疫細胞における調節不全のPD-1発現及び/若しくは活性を示す障害、又は1つ以上の種類の免疫細胞におけるPD-1発現及び/若しくは活性の調節不全によって引き起こされる障害が含まれ得る。
【0097】
いくつかの態様では、PD-1抗体に関連する方法、システム、医薬組成物、組成物、治療方法、キット及び製造方法が本明細書に開示される。
【0098】
本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全ては、内容が明確に別様に指示しない限り、任意の態様に適用され得ることを理解されたい。更に、様々な実施形態を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができる。本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者に明らかになるであろう。本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によって更に説明される。
【0099】
定義
本明細書で使用される「アゴニスト」、「アゴニスト」、「アゴナイズする」及び他の文法上の等価物という用語は、受容体又は任意の他のタンパク質標的に結合し、受容体又はタンパク質標的の活性を活性化又は増強するか、又はその活性化の開始を助けることができる薬剤を指すか、又はそれに関する。いくつかの場合では、アゴニストは、それが結合する受容体又は他のタンパク質標的を促進して、生物学的応答、例えばシグナル伝達又は細胞活性の他の変化を誘導することができる。本明細書で使用される場合、PD-1アゴニスト抗体(又は抗体断片)は、免疫細胞の表面に発現されるPD-1に結合し、限定されないが、T細胞、マクロファージ及び/又はB細胞を含む免疫細胞に対するその阻害シグナルを増強する抗体(又は抗体断片)を指す。
【0100】
本開示では、態様が「含む(comprising)」という文言で本明細書に記載されている場合は常に、「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の態様もまた提供される。本明細書に記載の全ての定義は、具体的に言及されているか否かにかかわらず、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用される定義を指すと解釈されるべきである。
【0101】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0102】
本開示では、本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全ては、内容が明確に別様に指示しない限り、任意の態様に適用され得る。更に、様々な実施形態を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができる。本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者に明らかになるであろう。本発明のこれら及び他の実施形態は、本明細書の詳細な説明によって更に説明される。
【0103】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を、当業者に提供する。
【0104】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission生化学命名委員会によって推奨されるそれらの一般的に知られている3文字記号又は1文字記号のいずれかによって言及され得る。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般的に受け入れられている1文字コードによって言及され得る。
【0105】
抗体の可変ドメイン、CDR及びフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸の番号付けは、別段示されない限り、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載されているKabatの定義に従う。
【0106】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣例に従って、1標準偏差以内又は1標準偏差を超えることを意味することができる。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、又は最大1%の範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、一桁以内、例えば、値の5倍以内、又は2倍以内を意味し得る。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味すると仮定されるべきである。
【0107】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、天然に又は介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作若しくは修飾が挙げられる。例えば、アミノ酸の1つ又はそれを超える類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む。)、並びに当技術分野で公知の他の修飾を含有するポリペプチドも定義に含まれる。本明細書に記載のポリペプチドは抗体に基づくので、ポリペプチドは単鎖又は関連鎖として存在し得ることが理解される。
【0108】
「アミノ酸」という用語は、D又はL光学異性体、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体の両方を含むがこれらに限定されない、天然、非天然及び合成アミノ酸を指す。標準的な1文字又は3文字コードを使用してアミノ酸を指定する。
【0109】
タンパク質に適用される場合の「バリアント」は、生物学的に活性なタンパク質の治療活性及び/又は生物学的活性の少なくとも一部を保持する天然の生物学的に活性なタンパク質と配列相同性を有するタンパク質である。例えば、バリアントタンパク質は、参照生物学的に活性なタンパク質又は少なくとも70%~75%の間の任意の範囲と比較して、少なくとも70%、99%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を共有し得る。本明細書で使用される場合、「生物学的に活性なタンパク質部分」という用語は、例えば部位特異的変異誘発、コード遺伝子の合成、挿入、又は変異によって偶発的に修飾されたタンパク質を含む。
【0110】
ポリペプチドの文脈では、「直鎖状配列」又は「配列」は、配列中で互いに隣接する残基がポリペプチドの一次構造中で連続しているアミノからカルボキシル末端方向のポリペプチド中のアミノ酸の順序である。「部分配列」は、一方向又は両方向に更なる残基を含むことが知られているポリペプチドの一部の直鎖配列である。
【0111】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの構築前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどによって、重合後に更に修飾され得る。他のタイプの修飾としては、例えば、「キャップ」、類似体による1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合を有する修飾(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)及び荷電結合を有する修飾(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、ペンダント部分を含む修飾、例えば、タンパク質を含む修飾(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジンリジンなど)、インターカレーターを含むもの(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤を含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)、アルキル化剤を含むもの、修飾結合を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、並びにポリヌクレオチドの非修飾形態が挙げられる。更に、糖中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換されていてもよく、標準的な保護基によって保護されていてもよく、又は活性化されて更なるヌクレオチドへの更なる結合を調製してもよく、又は固体支持体にコンジュゲートされていてもよい。5’及び3’末端OHは、リン酸化されていてもよく、又は1から20個の炭素原子のアミン又は有機キャッピング基部分で置換されていてもよい。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-又は2’-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、アラビノースなどのエピマー糖、キシロース又はリキソ糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体及びメチルリボシドなどの非塩基性ヌクレオシド類似体を含む、当技術分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖の類似形態を含むことができる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替の連結基によって置換され得る。これらの代替の連結基としては、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH(「ホルムアセタール」)によって置換される実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、各R又はR’は、独立して、H又は置換若しくは非置換のアルキル(1~20C)(必要に応じてエーテル(-O-)結合を含む)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジルである。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。上記の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0112】
抗体の「可変領域」とは、単独で又は組み合わせて、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって連結された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRによって近接して一緒に保持され、他方の鎖のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術がある:(1)種間配列可変性(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD))に基づくアプローチ;及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948))。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかのアプローチ又は両方のアプローチの組合せによって定義されるCDRを指し得る。
【0113】
抗体の「定常領域」とは、単独で又は組み合わせて、抗体軽鎖の定常領域又は抗体重鎖の定常領域を指す。
【0114】
「宿主細胞」は、外因性ポリヌクレオチドを含むベクターのレシピエントであり得るか又はレシピエントであった個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然、偶発的、又は意図的な変異により、元の親細胞とは(形態学又はゲノムDNA補体において)必ずしも完全に同一ではない場合がある。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0115】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然配列Fc領域又はバリアントFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基又はPro230のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸びるように定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatにおけるようなEUインデックスの番号付けである。(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991.免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメイン、CH2及びCH3を含む。
【0116】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含み、また、天然配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクタ機能を保持する。いくつかの場合では、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域における約1~約10個のアミノ酸置換、例えば約1~約5個のアミノ酸置換を有する。いくつかの場合では、本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性を有する。いくつかの場合では、本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約90%の配列同一性を有する。いくつかの場合では、本明細書におけるバリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域との当該範囲の間に、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性及び配列同一性を有する。
【0117】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物には、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットも含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞中の1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達及び発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸のDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な薬剤の量を指す。治療有効量は、治療される対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与様式などのうちの1つ以上に応じて変動し得、これらは当業者によって容易に決定され得る。用語「有効量」はまた、適切な撮像方法による検出のための画像を提供する線量にも適用される。具体的な用量は、選択される特定の薬剤、従うべき投薬レジメン、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、画像化される組織、及びそれが担持される物理的送達系のうちの1つ以上に応じて変化し得る。有効量の活性剤は、単回用量又は複数回用量で投与され得る。抗体の治療有効量は、約0.001~約25mg/kg体重、例えば、約0.01~約25mg/kg体重、約0.1~約20mg/kg体重、又は約1~約10mg/kg体重の範囲である。投与量は、必要に応じて、治療の観察された効果に適合するように、及び/又は当業者によって決定されるように、治癒、予防、症状の制御などを提供するのに最も効果的であるように調整され得る。適切な用量は、治療する医師又は当業者による臨床適応症に基づいて選択される。構成要素は、本明細書に記載される任意のものなど、特定の目標又は目的に関連するものなどの所望の結果を生成するために少なくとも有効な量、又は少なくとも有効な量を有するものとして本明細書に記載され得る。本明細書における所望の治療結果は、限定されないが、本明細書及び/又は添付の特許請求の範囲に記載の障害、癌、免疫関連疾患、PD-1関連障害、及び/又は免疫関連病変などからの任意の症状を治療、緩和、又は治癒することを含み得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容可能な賦形剤」は、有効成分と組み合わせた場合に、その成分が生物学的活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例としては、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル又は非経口投与のための例示的な希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水又は通常の(0.9%)生理食塩水である。いくつかの場合では、そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990;及びRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing,2000を参照されたい)。
【0121】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、本明細書に記載される本開示の方法及びシステムは、別段の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、マイクロアレイ及び配列決定技術の従来の技術及び説明を使用し得る。そのような従来の技術には、ポリマーアレイ合成、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及びライゲーション、オリゴヌクレオチドの配列決定、並びに標識を使用したハイブリダイゼーションの検出が含まれる。適切な技術の具体的な例示は、本明細書の実施例を参照することによって得ることができる。しかしながら、同等の従来の手順ももちろん使用することができる。そのような従来の技術及び説明は、Green,et al.,Eds.,Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV)(1999);Weiner,et al.,Eds.,Genetic Variation:A Laboratory Manual(2007);Dieffenbach,Dveksler,Eds.,PCR Primer:A Laboratory Manual(2003);Bowtell and Sambrook,DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual(2003);Mount,Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis (2004);Sambrook and Russell,Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2006);及びSambrook and Green,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition(2012)(全てCold Spring Harbor Laboratory Pressから);Stryer,L.,Biochemistry(4th Ed.)W.H.Freeman,N.Y.(1995);Gait,「Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach」IRL Press,London(1984);Nelson and Cox,Lehninger,Principles of Biochemistry,6th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York(2012);R.I.Freshney,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications,6th Ed.,Wiley-Blackwell(2010);及びBerg et al.,Biochemistry,5th Ed.,W.H.Freeman Pub.,New York(2002)等の標準的な実験的マニュアルにおいて見出され得、これらの全ては、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の組成物、研究ツール及びシステム及び方法が記載される前に、本開示は、記載される特定のシステム及び方法、組成物、標的及び使用に限定されず、したがって当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0122】
本明細書で使用される「抗PD-1抗体」又は分子という用語は、特に明記しない限り、PD-1への特異的結合が可能な抗体又はその結合断片のいずれかを指す。
【0123】
本開示では、「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用される場合、この用語は、抗原に特異的に結合し、機能的であってもなくてもよいFcR結合部位を含む免疫グロブリン分子を含む。本開示で使用される場合、この用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体だけでなく、その断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、ダイアボディ)Fv断片、及び抗原認識部位又は抗原結合部位を含み、抗原に結合する能力を有する一本鎖(ScFv)変異体も包含する。抗原結合抗体又は免疫グロブリン断片は当技術分野で周知であり、このような断片は、機能的又は非機能的Fcレセプター結合部位を有し得る。更に、本明細書で使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体、二重特異性などの多重特異性抗体、又は少なくとも2つのインタクトな抗体から生成された多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、移植抗体、ヒト抗体、及び抗体が所望の生物学的活性を示す限り、抗原結合部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子に限定されない。
【0124】
免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知である。文脈上の制約による別段の指示がない限り、本発明の抗体は、抗体のこれらのクラス又はサブクラスのうちの1つに由来し得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、典型的には、それぞれ対応する小文字のギリシャ文字α、δ、ε、γ、及びμによって示される。任意の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なる型のうちの1つに割り当てることができる。
【0125】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、「Fc受容体」及び「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。FcRは、Ravetch and Kinet,1991,Ann.Rev.Immunol.,9:457-92;Capel et al.,1994,Immunomethods,4:25-34;及びde Haas et al.,1995,J.Lab.Clin.Med.,126:330-41に概説される。「FcR」には、母体IgGの胎児への移行を担う新生児型受容体FcRnも含まれる(Guyer et al.,1976,J.Immunol.,117:587;及びKim et al.,1994,J.Immunol.,24:249)。
【0126】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。一般に、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向されている。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向されている。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は米国特許第第4,816,567号に記載されるように組換えDNAにより作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al.,1990,Nature 348:552-554に記載されている技術を使用して生成されたファージライブラリから単離され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「抗体依存性細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号若しくは第5,821,337号に記載されているもの、又は本開示の実施例7に記載されているものなどのインビトロADCCアッセイを使用して評価することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクタ細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びNK細胞が挙げられる。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,1998,PNAS(USA),95:652-656に開示されているような動物モデルで評価され得る。
【0128】
「補体依存性細胞傷害」及び「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が同族抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)において記載されるCDCアッセイが実施され得る。
【0129】
エピトープに「特異的に結合する」という用語は、当該技術分野で十分に理解されており、かかる特異的結合を決定する方法もまた、当該技術分野で周知である。分子が、代替的な細胞、タンパク質、又は物質よりも、特定の細胞、タンパク質、又は物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間、かつ/又はより大きな親和性で、反応又は会合する場合、その分子は「特異的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」か、又は「優先的に結合する」。例えば、PD-1に特異的又は優先的に結合する抗体は、他のエピトープに結合するよりも高い親和性、結合活性で、より容易に、及び/又はより長い期間でこのエピトープに結合する抗体である。更なる例として、第1の標的に特異的又は優先的に結合する抗体(又は他の部分)は、第2の標的に特異的又は優先的に結合してもしなくてもよい。したがって、「特異的結合」又は「優先的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(しかし、それを含むことができる)。必ずしもそうではないが、概して、結合への言及は、優先的結合を意味する。
【0130】
「断片」は、タンパク質に適用される場合、治療活性及び/又は生物学的活性の少なくとも一部を保持してもしなくてもよい天然の生物学的に活性なタンパク質の切断型である。本明細書では、「抗体断片」、「その抗原結合断片」、及び「断片」という用語は、抗体に関して使用される場合、互換的に使用される。
【0131】
配列同一性
抗PD-1抗体配列又は本明細書中で同定される任意の他のアミノ酸配列に関する配列同一性は、最大パーセント配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、第2の参照ポリペプチド配列又はその一部のアミノ酸残基と同一であるクエリ配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である様々な方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大のラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。同一性パーセントは、定義されたポリペプチド配列全体の長さにわたって測定され得るか、又はより短い長さにわたって、例えば、より大きな定義されたポリペプチド配列から得られる断片、例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70又は少なくとも150個の連続残基の断片の長さにわたって測定され得る。そのような長さは例示にすぎず、表、図又は配列表において本明細書に示される配列によって支持される任意の断片長を使用して、同一性パーセントが測定され得る長さを記載し得ることが理解される。いくつかの実施形態では、同一性パーセントは、本明細書に提供される配列などの言及された参照配列の全長に関して決定される。例えば、本開示の2つのアミノ酸配列(又はそのより短い長さ)間の配列比較は、NationCenter for Biotechnology Information(NCBI)によってオンラインで提供されるコンピュータプログラムBlastp(タンパク質-タンパク質BLAST)によって行われ得る。所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのパーセンテージアミノ酸配列同一性(これは、代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対して一定の%アミノ酸配列同一性を有する所与のアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、以下の式によって計算される。
【数1】

ここで、Xは、AとBのプログラムのアラインメントにおいて配列アラインメントプログラムBLASTによって同一のマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、A又はBのいずれか短い方のアミノ酸残基の総数である。
【0132】
2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の配列が、最大の対応のためにアラインメントされたときに同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を特定及び比較するために、比較ウインドウにわたって比較することによって行われる。
【0133】
プログラム細胞死1(PD-1)
いくつかの態様では、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞及び単球を含む活性化リンパ球の表面及び骨髄細胞の表面に存在し得る受容体であるPD-1に結合し、これをアゴナイズする抗体又はその抗原結合断片に関する組成物及び方法が本明細書で提供される。PD-1経路は、PD-1発現免疫細胞の応答を調節するための重要な免疫チェックポイントであり得る。
【0134】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、PD-1経路の活性化は、免疫細胞活性化の阻害をもたらし得る。PD-1シグナル伝達を遮断する抗体は、抗腫瘍免疫応答を促進するために癌患者において使用される。
【0135】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279)は、免疫グロブリンスーパーファミリ(IgSF)タンパク質であり、B7-CD28ファミリのメンバーである。それは、単一の細胞外IgV様ドメイン、シングルパス膜貫通領域、並びにITIM及びITSMを含有する細胞質尾部からなり得る。いくつかの場合では、CD28、CTLA4及びICOSに見られるこれらの分子が共有結合ホモ二量体を形成することを可能にする細胞外システインを欠くため、細胞表面上で単量体である。いくつかの場合では、PD-1は、CD4 T細胞、CD8 T細胞、B細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ及び樹状細胞を含む免疫系全体の細胞上にも発現される。これは、急性的に活性化されたT細胞では短時間上方制御され、疲弊したT細胞では持続的に上方制御され得る。PD-1は、PD-L1(PD-L1、CD279又はB7-H1)及びPDL-2(CD273又はB7-DC)と呼ばれる2つのリガンドに結合することができ、それぞれがそれらの細胞外領域に2つのIgSFドメインを含む。PD-L1は、DC、マクロファージ及びB細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)上に構成的に発現させることができ、炎症中に非造血細胞上で誘導して組織損傷を制限することができるが、しばしば癌細胞上でアップレギュレートされ、癌細胞が抗腫瘍免疫応答を減衰させることを可能にする。
【0136】
そのリガンドに結合すると、PD-1の細胞内チロシンモチーフはリン酸化され、リン酸化ITSMはタンパク質ホスファターゼSHP2(及びおそらくSHP1)を動員することができる。細胞表面に動員されると、SHP2は、活性化受容体(特にCD28)のITAM及び活性化シグナル伝達の他の下流メディエーターを脱リン酸化することによって細胞シグナル伝達を負に調節する。PD-1シグナル伝達は、T細胞の活性化を抑制するだけでなく、制御性T細胞(Treg)の生成においても役割を果たすことができる。本明細書で使用される「PD-1シグナル伝達」という用語は、PD-1の細胞内チロシンモチーフのリン酸化、プロテインホスファターゼSHP2及び/又はSHP1の動員、又は活性化受容体のITAM若しくは活性化シグナル伝達の他の下流メディエーターの脱リン酸化の1つ以上を指し得る。本明細書に開示される抗体は、いくつかの場合では、PD-1シグナル伝達を促進し、例えば、抗体が結合するPD-1分子、又は抗体が結合しないが、同じ細胞表面上に発現される別のPD-1分子に結合するPD-1分子の細胞内チロシンモチーフのリン酸化、SHP2及び/又はSHP1の動員、又は活性化受容体のITAM若しくは活性化シグナル伝達の他の下流メディエーターの脱リン酸化の1つ以上を促進する。
【0137】
いくつかの態様では、既存の抗PD-1抗体に関連する当技術分野で公知の前述及び他の問題のいくつかを回避することができる抗体、組成物、その使用、及びその作製方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、PD-1発現制御性T細胞を枯渇させることなく、又はPD-1発現制御性T細胞に対する最小限の枯渇効果で、エフェクタT細胞上のPD-L1に結合するようにPD-1シグナル伝達をトリガーすることができるPD-1アゴニスト抗体が本明細書で提供される。
【0138】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、自己免疫疾患では、PD-L1発現は炎症性環境(Keirら、2008)によって上方制御され得(Garcia-Diaz他2017)、これは、PD-1がこれらの病理学的条件下で既に完全に関与している可能性を高め、したがって、アゴニスト抗体の更なる利益のための限定された範囲を提供する。しかし、いくつかの態様では、その天然リガンドPD-L1による受容体結合の存在下でさえ更なる阻害シグナルを提供することができるPD-1アゴニスト抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPD-1アゴニスト抗体は、PD-L1発現細胞又はPD-L1自体の近傍にある、PD-L1と接触している、又はPD-L1と係合しているPD-1受容体を有するPD-1発現免疫細胞に対する阻害効果を有する。
【0139】
抗体配列
本開示では、Fc領域(FcR)に変異を有するPD-1アゴニスト抗体又はその抗原結合断片若しくは機能的断片を産生するための組成物、治療剤、キット、ベクター、核酸配列、製造、培養及び/又は方法であって、阻害性Fc受容体FcγR2B(CD23B)に対する選択性を増強し、それによりPD-1活性化の生物学的効果を増強する、例えば抗体が結合するPD-1分子を発現する免疫細胞の活性若しくは増殖を阻害する、又はPD-1発現免疫細胞応答の下方制御を促進する、組成物、治療剤、キット、ベクター、核酸配列、製造、製造、培養及び/又は方法が本明細書で提供される。いくつかの場合では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を増強する。いくつかの場合では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-L1結合によって引き起こされるPD-1の下流シグナル伝達を促進する。いくつかの場合では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-1とPD-L1との間の相互作用を増加又は増強することなく、PD-1の下流シグナル伝達を促進する。いくつかの場合では、PD-1アゴニスト抗体は、PD-1へのPD-L1結合の非存在下でPD-1シグナル伝達を活性化又は増強する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体又は抗原結合断片(例えば、単離された抗体)は、PD-1に特異的に結合し、免疫細胞の表面に発現されたPD-1とPD-L1との相互作用を増強する。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗体又は抗原結合断片(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域及びFc領域を含むPD-1抗体であり、PD-1抗体のFc領域は、阻害性Fc受容体FcγR2Bに対する選択性を高めるアミノ酸置換を含み、それによってPD-L1媒介性のPD-1のトリガーを増強し、PD-1/PD-L1相互作用を増大させて、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を、その置換を欠く親分子と比較して減少させる。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗体又は抗体断片(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域及びFc領域を含むPD-1抗体である。いくつかの実施形態では、PD-1抗体の重鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に記載の配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むCDRを含む。いくつかの実施形態では、PD-1抗体の重鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。いくつかの実施形態では、PD-1抗体の軽鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に記載の配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むCDRを含む。いくつかの実施形態では、PD-1抗体の軽鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。いくつかの実施形態では、PD-1抗体のFc領域は、IgG1分子(例えば、ヒトIgG1分子)に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた位置238におけるプロリン(P)からアスパラギン酸(D)へのアミノ酸置換を含む。
【0143】
いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域のCDR(又は抗原結合断片(以下、「抗体」と呼ぶ)は、完全長抗体又は抗体の抗原結合断片を表す。)は、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域のCDRは、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体のCDRは、1つのアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域のCDRは、2つのアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域のCDRは、3つのアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む。
【0144】
いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、3つの重鎖相補性決定領域(CDRH)を含む重鎖可変領域を含み、CDRH1は、配列番号1に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、CDRH2は、配列番号2に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、CDRH3は、0から3個のアミノ酸修飾を伴って、配列番号3に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体は、3つの重鎖相補性決定領域(CDRH)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、0~3個のアミノ酸修飾を伴って、CDRH1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域では、CDRH1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域では、1個のアミノ酸修飾を伴って、CDRH1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域では、2個のアミノ酸修飾を伴って、CDRH1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の重鎖可変領域では、3個のアミノ酸修飾を伴って、CDRH1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。
【0145】
いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示されるようなアミノ酸配列を有するCDRを含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域のCDRは、配列番号4~6の1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域のCDRは、1つのアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6の1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域のCDRは、2つのアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6の1つ以上に示される配列を含む。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域のCDRは、3つのアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6の1つ以上に示される配列を含む。
【0146】
いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、3つの軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域を含み、CDRL1は、配列番号4に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、CDRL2は、配列番号5に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、CDRL3は、0~3個のアミノ酸修飾を伴って、配列番号6に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体は、3つの軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、CDRL1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有し、0~3個のアミノ酸修飾を有する。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域では、CDRL1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域では、1個のアミノ酸修飾を伴って、CDRL1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域では、2個のアミノ酸修飾を伴って、CDRL1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、抗体の軽鎖可変領域では、3個のアミノ酸修飾を伴って、CDRL1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。
【0147】
いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、3つの重鎖相補性決定領域(CDRH)を含み、CDRH1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は、3つの軽鎖相補性決定領域を含み、CDRL1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。いくつかの場合では、CDRH1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、CDRH3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は、3つの軽鎖相補性決定領域を含み、CDRL1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL2は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、CDRL3は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。
【0148】
いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%又は100%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0149】
いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、以下では単離された抗体又は「抗体」)は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%又は100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも85%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも100%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%及び最大100%の同一性の間の任意の範囲を有する配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0150】
いくつかの場合では、本明細書において提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%又は100%の同一性を有する配列を含み、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%又は100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列と少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%又は100%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも85%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VLは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列と少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。
【0151】
いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体(例えば、単離された抗体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11のいずれか1つに示される配列を含み、VLは配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のいずれか1つに示される配列を含む。
【0152】
特定の実施形態では、本明細書及び添付の特許請求の範囲に開示される重鎖又は軽鎖はまた、定常領域を含み得る。分子が完全長IgG型抗体分子である場合、重鎖は、3つの定常ドメインを含み得る。
【0153】
一態様では、本明細書に提供される抗体はFc領域を含み、当該Fc領域はヒトIgG1に由来する。いくつかの場合では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンが、EUインデックスに従って番号付けされる位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられるアミノ酸置換を含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、若しくは99%、又は100%の同一性を有する配列を更に含む。他の態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも80%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも85%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも90%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも95%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、本明細書に提供される抗体のFc領域は、プロリンがEUインデックスに従って番号付けされた位置238においてアスパラギン酸(D)で置き換えられたアミノ酸置換を含み、配列番号17に示される配列と少なくとも99%の同一性を有する配列を更に含む。一態様では、Fc領域は、配列番号17に示される配列と少なくとも100%の同一性を有する配列を含む。
【0154】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、重鎖可変領域と、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、重鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3のうちの1つ以上に示されるような配列を含むCDRを含む。いくつかの場合では、抗体は、重鎖可変領域(VH)と、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、VHは、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。いくつかの場合では、アゴニスト抗体は、VH及びアミノ酸置換を含むFc領域を含み、VHは、1つのアミノ酸修飾を有する配列番号1~3のうちの1つ以上に記載の配列を含むCDRを含む。いくつかの場合では、抗体は、VH及びアミノ酸置換を含むFc領域を含み、VHは、2つのアミノ酸修飾を有する配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。いくつかの場合では、抗体は、VH及びアミノ酸置換を含むFc領域を含み、VHは、3つのアミノ酸修飾を有する配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。
【0155】
いくつかの場合では、アゴニスト抗体は、軽鎖可変領域(VL)と、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、軽鎖可変領域は、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に記載の配列を含むCDRを含む。本実施形態の一態様では、アゴニスト抗体は、VLと、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、VL領域は、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む。実施形態の一態様では、アゴニスト抗体は、VLと、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、VL領域は、1個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に記載の配列を含むCDRを含む。実施形態の一態様では、アゴニスト抗体は、VLと、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、VL領域は、2個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に記載の配列を含むCDRを含む。実施形態の一態様では、アゴニスト抗体は、VLと、アミノ酸置換を含むFc領域とを含み、VL領域は、3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に記載の配列を含むCDRを含む。
【0156】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0157】
エフェクタ機能
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、PD-1、例えば、T細胞、B細胞又はマクロファージなどの免疫細胞の表面上に発現されるヒトPD-1をアゴナイズする。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、エフェクタ免疫細胞の表面上に発現されるPD-1に結合し、当該抗体に結合していない同等の免疫細胞と比較してエフェクター免疫細胞の活性化及び/又は増殖を減少させる。
【0158】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞上に発現されるPD-1に結合し、細胞の活性化及び/又は増殖を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞上に発現されるPD-1に結合し、免疫細胞がPD-L1発現細胞に近接している場合、免疫細胞の活性化及び/又は増殖を減少させる。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、周囲環境における大量のPD-L1の存在下での免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対するアゴニスト作用を有する。ある特定の理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの場合では、自己免疫疾患では、PD-L1発現は炎症性環境によって上方制御され(Keir et al.Annu Rev Immunol.2008;26:677-704.doi:10.1146/ annurev.immunol.26.021607.090331;Garcia-Diaz et al.Cell Rep.2017 May 9;19(6):1189-1201.doi:10.1016/j.celrep.2017.04.031)、したがって、そのような炎症性環境では、PD-1は既に周囲のPD-L1と完全に係合しており、PD-1を標的とする既知のアゴニスト抗体の更なる利益のための範囲は限られている可能性がある。本開示のいくつかの実施形態による抗体は、PD-L1発現細胞の近傍であっても免疫細胞においてPD-1シグナル伝達を更に促進することができ、本明細書に開示される抗体は、例えば自己免疫疾患との関連では、免疫応答を下方制御するために特に有用であり得、したがって過剰な免疫応答に関連する障害、例えば自己免疫疾患の治療に有用であり得ることを示唆している。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞上に発現されるPD-1に結合し、抗体が結合するPD-1分子へのPD-L1結合の非存在下で免疫細胞の活性化及び/又は増殖を減少させる。
【0160】
いくつかの場合では、免疫細胞の活性化及び/又は増殖に対する本明細書に開示される抗体の阻害効果は、実施例4に記載されるものなどのNFATレポーターアッセイによって測定することができる。例えば、NFATレポーターアッセイは、NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを発現するように操作されたJurkat T細胞を用いて行うことができる。いくつかの場合では、NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを発現するJurkat T細胞を、Jrukat T細胞を刺激するように構成された刺激因子細胞、例えば、以前に記載されたような抗CD3「T細胞刺激因子」(TCS)構築物を発現し(Leitnerら、2010)、ヒトFcγR2Bを発現するマウスBW5147細胞、又は以前に記載されたような抗CD3「T細胞刺激因子」(TCS)構築物を発現し(Leitnerら、2010)、ヒトFcγR2Bを発現するHEK293T細胞と共に培養する。Jurkat T細胞を刺激因子細胞、加えて、試験抗体(例えば、本開示のいくつかの実施形態による例示的なPD-1抗体)、又はアイソタイプ対照、又はいくつかの他のコントロールPD-1抗体のいずれかと一定期間共培養する。試験抗体又は対照と一定期間(例えば、3時間、6時間、9時間、又は12時間)インキュベートした後、ルシフェラーゼアッセイのために細胞を収集することができる。Jurkat T細胞の活性化の指標として発光シグナルを定量することができる。
【0161】
いくつかの場合では、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化及び/又は増殖に対する本明細書に開示される抗体の阻害効果は、実施例5に記載されるものなどの免疫細胞活性化アッセイ(例えば、破傷風トキソイド活性化アッセイ又はウイルスペプチド活性化アッセイ)によって測定することができる。例えば、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)などの免疫細胞を収集し、PD-L1/2遮断抗体(例えば、それぞれ5μg/mL)及び一定濃度の試験PD-1抗体(例えば、本明細書中のいくつかの実施形態による例示的抗体)、又はアイソタイプ対照、又はいくつかの他のコントロール抗体の存在下で破傷風トキソイド(例えば、0.5μg/mL)又はウイルスペプチド(例えば、CEF HLAクラスIペプチド-サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びインフルエンザ由来のペプチドの市販のプールされた混合物)で刺激することができる。細胞(例えば、上清又は細胞培養培地中で)からのインターフェロン(例えば、IFNγ)放出は、一定期間(例えば、24時間、48時間、72時間、96時間、又は1週間)試験抗体とのインキュベーション後にELISA又は任意の他の適切な方法によって評価することができる。インターフェロン放出は、免疫細胞の活性化の指標として測定することができる。いくつかの場合では、刺激治療を伴わないインターフェロン産生(例えば、破傷風トキソイド治療又はウイルスペプチド治療)もまた、治療を伴うインターフェロン産生から刺激されていないバックグラウンドとして差し引くことができる。
【0162】
いくつかの場合では、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化及び/又は増殖に対する本明細書に開示される抗体の阻害効果は、実施例6に記載されるような抗CD3/28活性化アッセイによって測定することができる。例えば、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)などの免疫細胞を収集し、試験PD-1抗体(例えば、本明細書中のいくつかの実施形態による例示的抗体)、又はアイソタイプ対照、又は特定の濃度の他のいくつかのコントロール抗体の存在下で可溶性抗CD3及び抗CD28抗体(例えば、それぞれの最終濃度0.5ng/mL)で刺激することができる。CD4 T細胞上のCD25発現は、抗体と一定期間(例えば、24時間、48時間、72時間、又は96時間)インキュベートした後、フローサイトメトリ又はT細胞活性化のマーカーとしての任意の他の方法によって評価することができる。
【0163】
いくつかの場合では、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化及び/又は増殖に対する本明細書に開示される抗体の阻害効果は、免疫細胞の細胞増殖、サイトカイン産生、ケモカイン産生、又は任意の他の活性化マーカーによって測定することができる。本明細書に記載される阻害率は、他の点では同じ細胞に対して対象抗体で治療されたがアイソタイプ対照で治療されたか又は対象抗体で治療されなかった細胞における免疫細胞活性化マーカーの読み出しを正常化することによって測定される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞上に発現されるPD-1に結合し、免疫細胞の活性化及び/又は増殖を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%低下させる。
【0164】
いくつかの場合では、免疫細胞活性化(例えば、T細胞活性化)の阻害に関して、本明細書に開示される抗体は、最大で約0.5nM、最大で約0.2nM、最大で約0.15nM、最大で約0.1nM、最大で約0.09nM、最大で約0.08nM、最大で約0.07nM、最大で約0.06nM、最大で約0.05nM、最大で約0.04nM、最大で約0.03nM、最大で約0.02M、又は最大で約0.01nMのIC50を有する。いくつかの場合では、免疫細胞活性化(例えば、T細胞活性化)の阻害に関して、本明細書に開示される抗体は、約0.5nM、約0.2nM、約0.15nM、約0.1nM、約0.09nM、約0.08nM、約0.07nM、約0.06nM、約0.05nM、約0.04nM、約0.03nM、約0.02M、又は約0.01nMのIC50を有する。免疫細胞活性化(例えば、T細胞活性化)の阻害に関して本明細書に開示される抗体のIC50は、上記及び実施例に記載されるものなどの免疫細胞アッセイで測定することができる。
【0165】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体を使用してPD-1を発現する免疫細胞を抑制する方法が本明細書に提供される。この方法は、PD-1を発現する免疫細胞を抗体と接触させること、及び免疫細胞の活性化及び/又は増殖を約10%~50%低下させることを含み得る。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約10%~40%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約10%~30%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約10%~20%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約10%~15%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約20%~50%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約20%~40%の減少をもたらす。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞の活性化及び/又は増殖の約又は20%~30%の減少をもたらす。
【0166】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞の表面に発現されるPD-1とPD-L1との相互作用を増強する。例えば、いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、抗体が結合するPD-1分子に対するPD-L1の結合を増強する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、抗体によって結合されない免疫細胞の表面上の1つ以上のPD-1分子に対するPD-L1の結合を増強し、一方、抗体は免疫細胞の表面上の他のPD-1分子に結合する。一実施形態では、本明細書に開示される抗体は、実施例10に記載されるアッセイなどのアッセイによって決定されるように、免疫細胞の表面に発現されるPD-1とPD-L1との相互作用を増強する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、免疫細胞の表面上に発現されるPD-1とPD-L1との相互作用を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、200%、300%、400%、500%、又はそれ以上増強する。
【0167】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、IgG1の非修飾Fc領域を含む他の点では同一の分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の誘導が低減しており、一方で、IgG1の非修飾Fc領域を含む他の点では同一の分子と比較して、PD-1シグナル伝達に対する同じ又は増強されたアゴニスト効果を有する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、ナチュラルキラー細胞活性化アッセイ(例えば、実施例7に記載されるアッセイなど)によって測定される場合、PD-1発現制御性T細胞に対する低下したADCCを有する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、実施例7に記載されるようなインビトロアッセイ、又は抗体が対象に投与されるときのインビボのいずれかによって測定される場合、PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、ナチュラルキラー細胞の脱顆粒を引き起こさないか、又はIgG1の非修飾Fc領域を含む他の点では同一の分子と比較して、低下したレベルの脱顆粒を引き起こす。いくつかの例では、本明細書に開示される抗体は、IgG1の非修飾Fc領域を含む他の点では同一の分子と比較して、制御性T細胞の死をもたらさないか、又は制御性T細胞の死のレベルの低下をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、IgG1の未修飾Fc領域を含む他の点では同一の分子と比較して、ナチュラルキラー細胞の脱顆粒若しくは制御性T細胞の死を引き起こさないか、又はナチュラルキラー細胞の脱顆粒若しくは制御性T細胞の死の減少を引き起こす。ナチュラルキラー細胞の脱顆粒及び/又は制御性T細胞の死に対する効果は、インビボ又はインビトロで、例えば、実施例7に記載のアッセイによって測定することができる。
【0168】
結合親和性
ヒト又はカニクイザルPD-1受容体又は別の動物のPD-1に対するヒト化抗PD-1抗体バリアントの結合親和性は、k、k又はKによって特徴付けられ得る。本明細書で使用される「k」という用語は、抗体と抗原との会合の速度定数を指すことを意図している。本明細書で使用される「k」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指すことを意図している。本明細書で互換的に使用される「K」又は「KD」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図している。本開示の目的のために、Kは、2つの速度定数k/kの比として定義される。平衡解離定数が小さいほど、対象の抗体とPD-1とがより緊密に結合する。
【0169】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される場合、200nM未満、100nM未満、80nM未満、60nM未満又は40nM未満のKでヒトPD-1に結合する。一態様では、本明細書に開示される抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5000nM、4000nM、2000nM、1000nM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM又は200nM未満のKでカニクイザルPD-1に結合する。
【0170】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、Fc領域置換を欠く親分子と比較して、FcγR2Bへの結合の増加及びFcγR2A(例えば、131Rアロタイプ又は131Hアロタイプ)又はFcγR1Aなどの1つ以上の活性化Fcγ受容体への結合の減少を有する。
【0171】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、Fc領域アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、FcγR2B/FcγR2A(例えば、131Rアロタイプ又は131Hアロタイプ)への増加した結合比を有する。いくつかの場合では、結合FcγR2B/FcγR2A(例えば、131Rアロタイプ又は131Hアロタイプ)の増加した比は、Fc領域置換を欠く親分子と比較して、少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.8、2、2.2、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150倍である。
【0172】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片のFc領域は、上記のアミノ酸置換を欠くFc領域を含む同等の対照抗体と比較して、より高い親和性でFcγR2Bに結合する。いくつかの場合では、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、最大で約5μM、例えば約5μM~0.1μMの解離定数(K)でFcγR2Bに結合する。
【0173】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のFc領域(FcR)は、FcγR2Bに選択的に結合する。いくつかの場合では、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、最大で5μMのKでFcγR2Bに結合する。
【0174】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM又は2μM未満のKでヒトFcγR2Bに結合する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、少なくとも2μM、1μM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM又は5nMのKでヒトFcγR2Bに結合する。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片は、200nM~5μM、400nM~4μM、500nM~3.5μM、800nM~3μM、1μM~5μM、1μM~4.5μM、1μM~4μM、1μM~3.5μM、1μM~3μM、1μM~2.5μM、又は1μM~2μMのKでヒトFcγR2Bに結合する。
【0175】
いくつかの場合では、抗体は、親分子と比較してより低い又は等しい親和性でFcγR2A(例えば、131Rアロタイプ又は131Hアロタイプ)に結合し、親分子は、FcγR2Bに対する結合の増加、したがってFcγR2Bのシグナル伝達の増強を抗体分子に付与するFc置換を欠く等価な抗体である。
【0176】
いくつかの場合では、抗体がP238D置換を含む場合、抗体は、位置238にプロリンを含むFc領域を含む同等の対照抗体(EUインデックス)と比較して低い又は等しい親和性でFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。
【0177】
いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5μMを超えるKでFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、10μMを超えるKでFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも15μMのKでFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも20μMのKでFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、約15μM~25μMのKでFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する。
【0178】
いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも50μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも75μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも80μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、少なくとも90μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、約50μM~約100μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。いくつかの場合では、抗体は、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、約75μM~約125μMのKでFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する。
【0179】
いくつかの場合では、抗体は、3以上、例えば少なくとも4、5、6、7、8、9又は10の[FcγR2A(131R)に対する抗体のK値/FcγR2Bに対する抗体のK値]を有する。好適には、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0180】
いくつかの場合では、抗体は、10以上、例えば少なくとも15、20、25、30、35、40、45又は50の[FcγR2A(131H)に対する抗体のK値]/[FcγR2Bに対する抗体のK値]を有する。好適には、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0181】
いくつかの場合では、抗体は、3以上、例えば少なくとも4、5、6、7、8、9又は10の[FcγR2A(131R)に対する抗体のK値/FcγR2Bに対する抗体のK値]、及び/又は10以上、例えば少なくとも15、20、25、30、35、40、45又は50の[FcγR2A(131H)に対する抗体のK値]/[FcγR2Bに対する抗体のK値]を有する。好適には、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0182】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、野生型配列よりもFc領域置換を欠く親分子と比較して、FcγR2B/FcγR1Aに対する結合比が増加している。いくつかの場合では、結合FcγR2B/FcγR1Aの増加した比は、Fc領域置換を欠く親分子と比較して、少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、10、50、100、150、200、250倍である。
【0183】
Fc領域置換を欠く親分子と比較してとは、野生型Fcに対するFc置換を表す、特許請求の範囲に列挙されたアミノ酸以外の同じアミノ酸配列を有する抗体分子と比較することを意味する。したがって、FcγR2Bへの列挙されたFc置換の有無にかかわらず、抗体分子の結合を測定することができ、場合により、FcγR2A(例えば、131Rアロタイプ又は131Hアロタイプ)又はFcγR1Aなどの活性化Fcγ受容体への列挙されたFc置換の有無にかかわらず、抗体分子の結合を、例えばSPRによって測定することができる。
【0184】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、野生型配列よりもFc領域置換を欠く親分子と比較して、[FcγR1Aの結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比が増加している。いくつかの場合では、バリアント分子についての[FcγR1Aの結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比は、Fc領域置換を欠く親分子についての[FcγR1Aの結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比の少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、6、7、8、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、1000、1500、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、又は10000倍である。
【0185】
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、野生型配列よりもFc領域置換を欠く親分子と比較して、[FcγR2A(131R)の結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比が増加している。いくつかの場合では、バリアント分子についての[FcγR2A(131R)の結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比は、Fc領域置換を欠く親分子についての[FcγR1Aの結合についてのK値]/[FcγR2Bの結合についてのK値]の比の少なくとも1.1、1.2、1.5、2、5、10、50、又は100倍である。
【0186】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、別の動物のヒトPD-1、カニクイザルPD-1又はPD-1に対する抗PD-1抗体のヒト化バリアントのそれぞれに対する結合親和性は、表面プラズモン共鳴によって測定される。Biacore(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム(GE Healthcare,Chicago IL)を使用して、対象抗体の結合親和性を測定することができる。例示的なSPR分析システムには、Biacore X100、Biacore T200、Biacore 3000又はBiacore 4000機器、及び市販のセンサチップシリーズが含まれるが、これらに限定されない。Biacoreシステムの典型的な用途では、ある範囲の分析物濃度にわたって時間の関数として相互作用を監視し、次いでデータセット全体を相互作用を記述する数学モデルに当てはめることによって、相互作用動態が分析される。会合相(試料注入中)は、会合プロセスと解離プロセスの両方に関する情報を含み、解離相(試料注入後、バッファフローが解離した分析物分子を除去する場合)中には解離のみが起こる。当業者は、製造業者のマニュアルに従って結合親和性アッセイを実施するための適切なパラメータ及び/又は条件を選択又は決定することができる。いくつかの実施形態では、対象抗体の結合親和性は、37℃における表面プラズモン共鳴によって決定される。いくつかの場合では、ヒト又はカニクイザルPD-1に対するヒト化抗体バリアントの結合親和性及び動態は、実施例2に開示されているように、Biacore 8K(Cytiva)を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される。
【0187】
抗体操作
いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、ヒト抗体を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、モノクローナルヒト化抗体、キメラ抗体、又は多重特異性抗体を含む。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体を含む。
【0188】
本明細書で実施される抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト又はヒト化抗体であり得る。本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図している。更に、抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかし、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を指すことを意図する。ヒトフレームワーク配列内で更なるフレームワーク領域修飾を行うことができる。「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指すことを意図する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0189】
主題抗体は、ハイブリドーマプロセス又は組換えDNAプロセスによって調製することができる。ハイブリドーマを作製する細胞融合工程で用いられる抗体産生細胞は、Kohler & Milstein(Nature,256:495(1975))の方法に記載されているように、抗原(PD-1、その部分ペプチド、又はそれらを発現する細胞)で免疫した動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球等である。また、非免疫動物から予め単離された上記細胞又はリンパ球に、培地中で抗原を作用させて得られる抗体産生細胞を用いることもできる。骨髄腫細胞としては、公知の種々の細胞株を用いることができる。抗体産生細胞及び骨髄腫細胞は、互いに融合可能であれば、異なる動物種に由来し得る。いくつかの場合では、それらは同じ動物種起源のものである。ハイブリドーマは、例えば、抗原免疫したマウスから得られた脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞との細胞融合によって産生され、その後のスクリーニングにより、PD-1に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることができる。PD-1に対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマの培養によって、又はハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から産生され得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト化抗体を含む。ヒト化抗体の作製では、フレームワーク残基の選択は、高い結合親和性を保持する上で重要であり得る。原則として、任意のHuAb由来のフレームワーク配列は、CDRグラフト化のための鋳型として役立ち得、しかしながら、そのようなフレームワークへの直接的なCDR置換は、抗原に対する結合親和性の有意な喪失をもたらし得ることが実証されている。Glaser et al.(1992)J.Immunol.149:2606;Tempest et al.(1992)Biotechnology 9:266;及びShalaby et al.(1992)J.Exp.Med.17:217.HuAbが元のmuAbとより相同であるほど、ヒトフレームワークが親和性を低下させ得るマウスCDRに歪みを導入する可能性は低くなる。抗体配列データベースに対する配列相同性検索に基づいて、HuAb IC4は、muM4TS.22に対して良好なフレームワーク相同性を提供するが、他の高度に相同なHuAb、特にヒトサブグループI由来のカッパーL鎖又はヒトサブグループIII由来のH鎖も同様に適している。Kabat et al.(1987).V領域の理想的な配列を予測するために、ENCAD(Levittら(1983)J.Mol.生物168:595)などの様々なコンピュータプログラムが利用可能である。したがって、本発明は、異なるV領域を有するHuAbを包含する。適切なV領域配列を決定し、これらの配列を最適化することは、当業者の技能の範囲内である。免疫原性が低下した抗体を得るための方法は、米国特許第5,270,202号及び欧州特許第699,755号にも記載されている。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は重鎖可変領域を含み、当該軽鎖可変領域は、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する。
【0192】
一態様では、本明細書に開示される抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は当該Fc領域に作動可能に連結された当該重鎖可変領域を含み、軽鎖は当該軽鎖可変領域を含む。1つの特徴では、本明細書に開示される抗体は、ヒト化抗体を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体は、ヒト抗体を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される。いくつかの場合では、本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0193】
ヒト化
いくつかの実施形態では、ヒト化VH及びVLドメインの任意の潜在的な組合せを含む抗体バリアントが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒトフレームワーク配列を含むPD-1アゴニスト抗体のVHのヒト化バリアントを含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒトフレームワーク配列を含むPD-1アゴニスト抗体のVLのヒト化バリアントを含む。
【0194】
ヒト化された抗体は、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持することができる。この目的を達成するために、1つの例では、PD-1ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用して、親配列及び種々の概念的ヒト化産物を分析するプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能性のある三次元立体配座構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割、及び候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基をコンセンサス配列及びインポート配列から選択し、組み合わせて、標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特性を達成することができる。
【0195】
いくつかの場合では、可変重(VH)鎖は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ヒト化VH鎖は、ヒトフレームワークIGHV1-2401を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VH鎖は、配列番号8に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VH鎖は、配列番号9に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態では、ヒト化VH鎖はヒトフレームワークIGHV7-4-102を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VH鎖は、配列番号10に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VH鎖は、配列番号11に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0196】
いくつかの場合では、可変軽(VL)鎖は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ヒト化VL鎖は、ヒトフレームワークIGKV1-3901を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VL鎖は、配列番号13に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ヒト化VL鎖は、ヒトフレームワークIGKV3-1101を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VL鎖は、配列番号14に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VL鎖は、配列番号15に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化VL鎖は、配列番号16に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0197】
変異
本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、本明細書に記載されるPD-1抗体は、参照配列に関して1つ以上の変異又は修飾を有し得る。変異又は修飾は、欠失、挿入若しくは付加、又はアミノ酸残基の置換若しくは置換であり得る。「欠失」は、1つ以上のアミノ酸残基の非存在に起因するアミノ酸配列の変化を指す。「挿入」又は「付加」は、参照配列と比較して1つ以上のアミノ酸残基の付加をもたらすアミノ酸配列の変化を指す。「置換」又は「置換」は、異なるアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を指す。本開示の文脈では、参照配列に対する対象抗体又はその画分の変異は、対象抗体又はその画分を参照配列と比較することによって決定され得る。比較のための配列の最適なアラインメントは、当技術分野における公知の方法のいずれかに従って行われ得る。
【0198】
変異は、変異部位によって特定され得る。変異部位は、欠失、付加、置換などの修飾が起こる参照配列上の位置である。参照配列上のアミノ酸残基は、N末端からC末端に向かって番号付けされ、変異部位は、欠失、付加又は置換が起こるアミノ酸残基の番号付けである。例えば、参照配列上の位置26は、N末端から数えて26番目のアミノ酸残基が存在する位置である。
【0199】
抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体又はその断片は、血清アルブミンに融合される。血清アルブミンへの融合は、本明細書に記載されるような対象抗体の薬物動態を改善することができる。例えば、主題抗体又はその断片は、血清アルブミンと融合され得る。血清アルブミンは、哺乳動物において最も豊富な血液タンパク質である球状タンパク質である。血清アルブミンは肝臓で産生され、血清タンパク質の約半分を構成する。それは単量体であり、血液に可溶性である。いくつかの実施形態では、主題抗体又はその断片は、血清アルブミンに融合され得る。更なる実施形態では、血清アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)である。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体又はその断片は、血清アルブミンに対する結合活性を示して対象抗体又はその断片の半減期を延長するアルブミン結合ペプチドに融合される。本明細書で使用することができるアルブミン結合ペプチドには、例えば、Dennis et al.,J.Biol.Chem.277:35035-35043,2002及びMiyakawa et al.,J.Pharm.Sci.102:3110-3118,2013が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、本明細書に記載される主題抗体又はその断片に遺伝的に融合される。更なる実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、化学的手段、例えば化学的コンジュゲーションによって、本明細書に記載の主題抗体又はその断片に結合する。いくつかの実施形態では、アルブミン結合ペプチドは、本明細書に記載される主題抗体又はその断片のN末端又はC末端に融合される場合がある。アルブミン結合ペプチドのC末端は、ペプチド結合を介して対象抗体のN末端に直接融合され得る。あるいは、アルブミン結合ペプチドのN末端は、ペプチド結合を介して対象抗体又はその断片のC末端に直接融合され得る。更なる実施形態では、アルブミン結合ペプチドのC末端のカルボン酸は、従来の化学的コンジュゲーション技術を使用して、主題抗体又はその断片の内部アミノ酸残基に融合され得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPD-1抗体又はその断片は、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)に融合される。抗体又はその断片は、例えば、抗体又はその断片の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体又はその断片は、典型的には、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体断片に結合するようになる条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応する。いくつかの場合では、ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して行われる。本明細書で使用される場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-若しくはアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれかを包含することを意図している。タンパク質をペグ化するための方法、例えば、Nishimura et al.による欧州特許第0 154 316号明細書及びIshikawa et alによる欧州特許第0 401 384号明細書に開示されているものなどを使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー、例えばPEGは、従来の化学的方法、例えば化学的コンジュゲーションを使用して、N末端若しくはC末端又は内部位置のいずれかで、本明細書に記載の対象抗体又はその断片に共有結合し得る。理論に束縛されるものではないが、PEG部分は、本明細書に記載の抗体に結合すると、水溶性、溶液中での高い移動度、毒性の欠如及び低い免疫原性、循環寿命の延長、安定性の増加、体からのクリアランスの準備、及び体内分布の変化に寄与し得る。
【0202】
対象抗体又はその断片の血清半減期を延長するために使用され得る他の半減期延長技術としては、限定されないが、XTEN(Schellenberger et al.,Nat.Biotechnol.27:1186-1192,2009)及びAlbu tag(Trussel et al.,Bioconjug Chem.20:2286-2292,2009)が挙げられる。
【0203】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるaPD-1抗体又はその断片は、化学的に官能性の部分にコンジュゲートされる。典型的には、部分は、検出可能なシグナルを生成することができる標識である。これらのコンジュゲート抗体又はその断片は、例えば、腫瘍負荷量の定量、転移巣のイメージング及び腫瘍イメージングなどの検出システムにおいて有用である。そのような標識は当技術分野で公知であり、放射性同位体、酵素、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物基質補因子及び阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような標識の使用を記載している特許の例については、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号、及び同第4,366,241号を参照されたい。部分は、本明細書に記載の抗体又はその断片に共有結合されてもよく、組換え結合されてもよく、又は二次試薬、例えば第2の抗体、プロテインA、又はビオチン-アビジン複合体を介して抗体又はその断片にコンジュゲートされてもよい。
【0204】
他の官能性部分としては、シグナルペプチド、免疫学的反応性を増強又は低下させる薬剤、固体支持体とのカップリングを促進する薬剤、ワクチン担体、生体応答調節剤、常磁性標識及び薬物が挙げられる。シグナルペプチドは、細胞膜、通常は真核細胞の小胞体、並びに細菌の内膜又は内膜と外膜の両方のいずれかを通して新たに合成されたタンパク質を導く短いアミノ酸配列である。シグナルペプチドは、典型的には、ポリペプチドのN末端部分にあり、典型的には、生合成と細胞からのポリペプチドの分泌との間で酵素的に除去される。そのようなペプチドは、合成された分子の分泌を可能にするために、対象抗体又はその断片に組み込むことができる。
【0205】
免疫学的反応性を増強する薬剤としては、細菌スーパー抗原が挙げられるが、これに限定されない。固体支持体へのカップリングを促進する薬剤としては、ビオチン又はアビジンが挙げられるが、これらに限定されない。免疫原担体としては、限定されないが、任意の生理学的に許容される緩衝液が挙げられる。生体応答調節剤には、サイトカイン、特に腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子及びガンマ-インターフェロンが含まれる。
【0206】
免疫学的反応性を低下させる薬剤には、抗炎症剤及び免疫抑制剤が含まれるが、これらに限定されない。抗炎症剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)及びコルチコステロイドが含まれる。NSAIDには、サリチル酸、例えばアセチルサリチル酸;ジフルニサル、サリチル酸、及びサルサレート;プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン;ナプロキセン;デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、フェノプロフェン、ロキソプロフェン、及びケトプロフェン;酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、トルメチン、アセクロフェナク、スリンダク、ナブメトン、エトドラク、及びケトロラック;ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、及びドロキシカム等のエノール酸誘導体;メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、及びトルフェナム酸等のアントラニル酸誘導体;セレコキシブ、ルミラコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、フィロコキシブ及びパレコキシブなどの選択的COX-2阻害剤;スルホンアニリド、例えばニメスリド;及びその他、クロニキシン、リコフェロン等が含まれるが、これらに限定されない。コルチコステロイドには、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン及びプレドニゾロンが含まれるが、これらに限定されない。免疫抑制剤としては、限定されないが、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、D-ペニシラミン、経口金化合物、注射可能な金化合物(筋肉内注射)、ミノサイクリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、D-ペニシラミン、ロベンザリット、ブシラミン、アクタリット、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミゾリビン、シクロスポリン及びタクロリムスが挙げられる。
【0207】
適切な薬物部分には、抗新生物剤が含まれる。非限定的な例は、放射性同位体、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビンデシン硫酸塩などのビンカアルカロイド、アドリアマイシン、硫酸ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸デュアノルビシン、塩酸ドキソルビシン、エトポシド、フルオロウラシル、ロムスチン、塩酸メクロロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ペントスタチン、ピポブロマン、プロカルベイズ塩酸塩、ストレプトゾトシン、タキソール、チオグアニン、及びウラシルマスタードである。
【0208】
一本鎖分子を含む免疫毒素は、組換え手段によって産生することができる。様々な免疫毒素が利用可能であり、方法は、例えば、Monoclonal Antibody-toxin Conjugates:Aiming the Magic Bullet,Thorpe et al.(1982)Monoclonal Antibodies in Clinical Medicine,Academic Press,pp.168-190;Vitatta(1987)Science 238:1098-1104;及びWinter and Milstein(1991)Nature 349:293-299に見出され得る。適切な毒素としては、限定されないが、リシン、放射性核種、アカザ抗ウイルスタンパク質、シュードモナス外毒素A、ジフテリア毒素、リシンA鎖、リストリクトシンなどの真菌毒素及びホスホリパーゼ酵素が挙げられる。一般に、「Chimeric Toxins,」Olsnes and Pihl,Pharmac.Ther.15:355-381(1981);and「Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,」eds.Baldwin and Byers,pp.159-179,224-266,Academic Press(1985)を参照されたい。
【0209】
化学官能性部分は、例えば抗体及び官能性部分をコードする融合遺伝子を作製することによって組換え的に作製することができる。あるいは、抗体又はその断片は、様々な十分に確立された化学的手順のいずれかによって部分に化学的に結合することができる。例えば、部分がタンパク質である場合、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHClなど)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの様々なカップリング剤を使用することができる。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬物の放出を促進する「開裂可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.Cancer Research,52:127-131(1992))が使用され得る。部分は、第2の抗体、プロテインA、又はビオチン-アビジン複合体などの二次試薬を介して共有結合又はコンジュゲートされ得る。常磁性部分及びその抗体へのコンジュゲーションの例については、例えば、Miltenyi et al.(1990)Cytometry 11:231-238を参照されたい。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるPD-1抗体又はその断片は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。本明細書に記載の二重特異性抗体は、PD-1上の異なるエピトープを認識する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がPD-1を認識し、他方の抗原結合部位がPD-1以外の抗原を認識する二重特異性抗体であってもよい。
【0211】
核酸分子
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体は、1つ以上の核酸分子によってコードされる。1つの場合では、抗体は単一の核酸分子によってコードされる。他の場合では、抗体は、2つ以上の核酸分子によってコードされる。例えば、抗原結合部位が重鎖可変ポリペプチド領域と軽鎖可変ポリペプチド領域とが一緒になることによって形成されるので、2つの可変(重及び軽)ポリペプチド領域は別々の核酸分子によってコードされる。あるいは、例えばScFvの場合、それらは同じ核酸分子によってコードされる。
【0212】
本開示のいくつかの態様によれば、本開示のいくつかの実施形態による抗体又はその抗原結合断片をコードする1つ以上の核酸分子が提供される。
【0213】
本明細書で提供される抗体をコードするポリペプチドの一次アミノ酸配列から、当業者は、ポリペプチドをコードする適切なヌクレオチド配列、及び所望であればコドン最適化されたものを決定することができる(例えば、Mauro and Chappell.Trends Mol Med.20(11):604-613,2014を参照されたい)。
【0214】
本開示のいくつかの態様によれば、本開示の重鎖可変領域ポリペプチド又は軽鎖可変領域ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸が提供される。本開示の重鎖可変ポリペプチド又は軽鎖可変ポリペプチドは、抗原結合部位の一部を構成するアミノ酸を含む個々のポリペプチド鎖を指す。いくつかの場合では、ポリペプチドは、定常ドメイン、ヒンジ領域、及びFc領域、例えば1つ以上のFc受容体結合部位を含むものなどの他のドメインも含む。
【0215】
本開示のいくつかの態様によれば、本開示の抗体又は抗原結合断片を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む単離された核酸が提供される。特定の実施形態では、ポリペプチドは、定常ドメイン、ヒンジ領域、及びFc領域(1つ以上のFc受容体結合部位を含むものなど)の他のドメインを含んでもよい。
【0216】
1つの場合では、核酸分子は、抗体又はその断片のVLドメインを含むポリペプチド配列のみをコードする。いくつかの場合では、核酸分子は、抗体又はその断片のVHドメインを含むポリペプチド配列のみをコードする。他の場合では、核酸分子は、本開示の抗体又はその抗体断片を形成することができるVHドメイン含有ポリペプチド配列及びVLドメイン含有ポリペプチド配列の両方をコードする。
【0217】
本開示の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸分子は、1つ以上のプロモータ、1つ以上の起点又は複製、1つ以上の選択マーカー、及び発現ベクターに典型的に見られる1つ以上の他の要素などの他の機能領域(要素)を含み得るベクター(例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター若しくはウイルスベクター、又は人工染色体)であり得るか、又はその一部であり得る。抗体を含むタンパク質をコードする核酸のクローニング及び発現は十分に確立されており、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0218】
ベクター
本開示のいくつかの態様によれば、本開示のいくつかの実施形態による核酸を含むベクターが提供される。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター、又は人工染色体である。
【0219】
本開示の抗体又はその抗原結合断片を形成することができるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター核酸を含む本開示の核酸は、精製/単離された形態であり得る。
【0220】
本開示の抗体又はその抗原結合断片をコードする単離/精製核酸は、そのような調製がインビトロ又はインビボで実施される組換えDNA技術によるものである場合、それらが天然に関連する材料、例えば、それらがそれらの天然環境又はそれらが調製される環境(例えば、細胞培養)で見出される他のタンパク質又は核酸を含まないか、又は実質的に含まない。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸は、90%超、95%超、97%超及び99%超など、80%超純粋である。
【0222】
したがって、本開示のいくつかの態様によれば、本開示の重鎖可変ポリペプチド又は軽鎖可変ポリペプチドをコードする核酸又はヌクレオチド配列を含むベクターが提供される。特定の実施形態、ベクターは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、定常ドメイン、ヒンジ領域、及びFc領域などの他のドメイン、例えば1つ以上のFc受容体結合部位を含むものを含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸及び/又はベクターは、宿主細胞に導入される。真核細胞の場合、例えば、適切な技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性トランスフェクション及びレトロウイルス若しくは他のウイルス、例えばワクシニアを用いた形質導入、又は昆虫細胞の場合、バキュロウイルスが挙げられる。一態様では、宿主細胞、特に真核細胞に核酸を導入することは、ウイルス又はプラスミドベースの系を使用する。いくつかの場合では、プラスミド系はエピソームとして維持される。他の場合には、プラスミド系を宿主細胞又は人工染色体に組み込む。特定の実施形態では、組み込みは、単一又は複数の遺伝子座における1つ以上のコピーのランダムな組み込みによるものである。いくつかの実施形態では、組み込みは、単一又は複数の遺伝子座における1つ以上のコピーの標的化された組み込みによるものである。細菌細胞の場合、適切な技術としては、例えば、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション及びバクテリオファージを用いたトランスフェクションが挙げられる。
【0224】
一実施形態では、本開示の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。特定の実施形態では、組み込みは、標準的な技術に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって促進される。
【0225】
宿主細胞
本開示の更なる態様は、本明細書に開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、そのような宿主細胞はインビトロである。いくつかの実施形態では、そのような宿主細胞は培養中である。
【0226】
いくつかの場合では、宿主細胞は、細菌又は酵母などの任意の種に由来する。他の場合では、宿主細胞は、ヒト細胞又はげっ歯類細胞などの哺乳動物細胞、例えばHEK293T細胞又はCHO-K1細胞である。
【0227】
したがって、本開示のいくつかの態様によれば、本開示のいくつかの実施形態による核酸配列又はベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0228】
いくつかの場合では、宿主細胞は、例えば、コード核酸の発現のための条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸から本開示のタンパク質の発現を引き起こす又は可能にするように処理される。いくつかの実施形態では、発現産物の精製は、当業者に公知の方法によって達成される。
【0229】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合断片のためのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクター核酸を含む本開示の核酸は、単離された宿主細胞中に存在する。いくつかの場合では、宿主細胞は、宿主細胞のクローン集団の一部である。本明細書で使用される場合、宿主細胞への言及は、細胞のクローン集団も包含する。クローン集団は、単一の親宿主細胞から増殖されたものである。いくつかの場合では、宿主細胞は、任意の適切な生物に由来する。いくつかの場合では、宿主細胞は、例えば、細菌、真菌又は哺乳動物細胞である。
【0230】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ベクター核酸を(例えばプラスミドを用いて)増幅するのを助ける。特定の実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載されるPD-1抗体又はその断片を形成する本開示のポリペプチドを発現するための生物学的工場として働く。一例では、ベクター核酸を増幅するための適切な宿主は、細菌又は真菌細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)細胞又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。他の場合では、本開示のタンパク質(すなわち、本開示のPD-1抗体又はその断片を構成するポリペプチド)を発現するための適切な宿主は、HEK293T又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞は、HEK293T又はCHO-K1細胞などの哺乳動物細胞である。
【0231】
種々の宿主発現ベクター系が、本明細書に記載のPD-1抗体又はその断片を発現させるのに適している。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び改変のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系は、本開示のタンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするように選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子産物の一次転写物、グリコシル化及びリン酸化の適切なプロセシングのための細胞機構を有する真核宿主細胞が使用される。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、HEK、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0、CRL7O3O、及びHsS78Bst細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
抗体の製造
本明細書に開示されるPD-1抗体又はその断片は、ハイブリドーマ若しくはB細胞又は任意の形態の抗体及び/又は抗体断片ライブラリから対象抗体又はペプチドをコードするDNAをクローニングし、クローンを適切なベクターに組み込み、ベクターを宿主細胞に形質導入することによって、組換え抗体として産生することができる(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY,P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS,Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775(1990))。したがって、一態様では、本開示の抗体又はその断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが本明細書で提供される。
【0233】
既存の抗体のL鎖又はH鎖の様々な領域に対応するヌクレオチド配列は、ハイブリダイゼーション、PCR、及びDNA配列決定を含むがこれらに限定されない従来の技術を使用して容易に得られ、配列決定することができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、抗体ヌクレオチド配列の1つの供給源として働く。一連のモノクローナル抗体を産生する膨大な数のハイブリドーマ細胞は、公的又は私的なリポジトリから入手することができる。最大の寄託機関は、十分に特徴付けられたハイブリドーマ細胞株の多様なコレクションを提供するAmerican Type Culture Collectionである。あるいは、抗体ヌクレオチドは、免疫化又は非免疫化げっ歯類又はヒトから、並びに脾臓及び末梢血リンパ球などの臓器から得ることができる。抗体ヌクレオチドを抽出及び合成するために適用可能な特定の技術は、Orlandi et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86:3833-3837,Larrick et al.1989)biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250-1255;Sastry et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.86:5728-5732;及び米国特許第5,969,108号に記載される。
【0234】
PD-1抗体ヌクレオチド配列はまた、例えば、相同な非ヒト配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常領域のコード配列を置換することによって修飾され得る。そのようにして、元の抗体の結合特異性を保持するキメラ抗体が調製される。
【0235】
更に、PD-1抗体又はその機能的断片の重鎖及び/又は軽鎖をコードするポリヌクレオチドをコドン最適化に供して、所望の宿主細胞における主題抗体又はその機能的断片の最適化された発現を達成することができる。例えば、コドン最適化の1つの方法では、天然のコドンが遺伝子の参照セットからの最も高頻度のコドンで置換され、各アミノ酸に対するコドン翻訳の速度が高くなるように設計される。PD-1抗体又はその機能的断片の重鎖及び/又は軽鎖に適用することができる所望のタンパク質を発現させるためのコドン最適化ポリヌクレオチドを作製するための更なる例示的な方法は、Kanaya et al.,Gene,238:143-155(1999),Wang et al.,Mol.Biol.Evol.,18(5):792-800(2001)、米国特許第5,795,737号、米国特許公開第2008/0076161号及び国際公開第2008/000632号に記載される。
【0236】
本開示のPD-1抗体のポリヌクレオチドには、例示されたポリペプチドの機能的等価物及びその断片をコードするものが含まれる。機能的等価物は、保存的アミノ酸置換を有するポリペプチド、融合物を含む類似体、及び変異体であり得る。
【0237】
遺伝暗号の縮重のために、L配列及びH配列のヌクレオチド、並びに本開示のポリヌクレオチド及びベクターの構築に適したヘテロ二量体化配列にはかなりのばらつきがあり得る。これらの変形は、本開示によって包含される。
【0238】
所望であれば、組換えポリヌクレオチドは、遺伝子産物の発現及び精製の検出を容易にする異種配列を含むことができる。そのような配列の例としては、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びそれらの誘導体などのレポータータンパク質をコードするものが挙げられる。精製を促進する他の異種配列は、Myc、HA(インフルエンザウイルス赤血球凝集素に由来する)、His-6、FLAG、又は免疫グロブリンのFc部分、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、及びマルトース結合タンパク質(MBP)などのエピトープをコードし得る。
【0239】
ポリヌクレオチドは、上記のように様々な化学官能性部分にコンジュゲートさせることができる。一般的に使用される部分には、検出可能なシグナルを生成することができる標識、シグナルペプチド、免疫学的反応性を増強又は低下させる薬剤、固体支持体とのカップリングを促進する薬剤、ワクチン担体、生体応答調節剤、常磁性標識及び薬物が含まれる。部分は、組換え的に又は当技術分野で公知の他の手段によってポリヌクレオチドに共有結合され得る。
【0240】
ポリヌクレオチドは、更なる配列、例えば、同じ転写単位内の更なるコード配列、制御エレメント、例えば、プロモータ、リボソーム結合部位及びポリアデニル化部位、同じプロモータ又は異なるプロモータの制御下の更なる転写単位、宿主細胞のクローニング、発現及び形質転換を可能にする配列、並びに本明細書に記載される種々の実施形態のいずれかに従って望ましい場合があるような任意のそのような構築物を含むことができる。
【0241】
ポリヌクレオチドは、化学合成、組換えクローニング法、PCR、又はそれらの任意の組合せを使用して得ることができる。当業者は、本明細書で提供される配列データを使用して、DNA合成機を使用することによって、又は商業サービスから注文することによって所望のポリヌクレオチドを得ることができる。
【0242】
所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入することができ、次いで、これを複製、増幅及び発現のために適切な宿主細胞に導入することができる。したがって、1つの態様では、本開示のポリヌクレオチドの1つ以上を含む様々なベクターが本明細書に提供される。対象抗体をコードする少なくとも1つのベクターを含む発現ベクターの選択可能なライブラリも提供される。
【0243】
いくつかの態様では、本明細書に開示される抗体又はその断片の重鎖又は軽鎖の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列が本明細書で提供される。いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列を含むベクターが本明細書で提供される。
【0244】
本開示のベクターは、一般に、クローニングベクター及び発現ベクターに分類される。クローニングベクターは、それらが含有するポリヌクレオチドの複製コピーを得るために、又は将来の回復のためにポリヌクレオチドを寄託機関に保存する手段として有用である。発現ベクター(及びこれらの発現ベクターを含有する宿主細胞)を使用して、それらが含有するポリヌクレオチドから産生されるポリペプチドを得ることができる。適切なクローニングベクター及び発現ベクターには、当技術分野で公知の任意のもの、例えば、細菌、哺乳動物、酵母、昆虫及びファージディスプレイ発現系で使用するためのものが含まれる。
【0245】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築することができ、又は当技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択することができる。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有するか、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有するか、又はマーカー遺伝子を保有し得る。適切な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、pUC18、mp18、mp19、ファージDNA(糸状及び非糸状ファージDNAを含む)、並びにシャトルベクター、例えばpSA3及びpAT28が挙げられる。これら及び他のクローニングベクターは、Clontech、BiORad、Stratagene及びInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0246】
これらの核酸を含む発現ベクターは、タンパク質及びポリペプチドを産生するための宿主ベクター系を得るのに有用である。典型的には、これらの発現ベクターは、エピソームとして、又は染色体DNAの不可欠な部分としてのいずれかで、宿主生物において複製可能である。適切な発現ベクターには、プラスミド、ファージミドを含むウイルスベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、コスミドなどが含まれる。酵母、鳥類、及び哺乳動物細胞を含む真核細胞での発現に適した多数の発現ベクターが利用可能である。発現ベクターの一例はpcDNA3(Invitrogen(カリフォルニア州サンディエゴ)。)であり、ここで、転写はサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモータ/エンハンサーによって駆動される。本明細書に記載の主題抗体を発現させるための特に有用な2種類の発現ベクターは、ファージディスプレイベクター及び細菌ディスプレイベクターである。
【0247】
本開示のベクターは、コードされた抗体を発現させるために必要な転写又は翻訳制御配列を含むことができる。適切な転写又は翻訳制御配列には、複製起点、プロモータ、エンハンサー、リプレッサー結合領域、転写開始部位、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、並びに転写及び翻訳のための終結部位が含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
発現ベクターを宿主細胞に移入することができ、次いで、トランスフェクトされた細胞を培養して、対象抗体又はその機能的断片を産生する。したがって、一態様では、異種プロモータに作動可能に連結された対象抗体又はその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞が本明細書で提供される。宿主細胞は、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクター及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターの2つの発現ベクターで同時トランスフェクトすることができる。2つのベクターは、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含むことができる。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、発現することができる単一のベクターを使用することができる。そのような状況では、過剰な毒性のない重鎖を避けるために、軽鎖を重鎖の前に配置することができる(Proudfoot,1986,Nature 322:52;及びKohler,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197-2199)。
【0249】
対象抗体又はその機能的断片(例えば、第5,807,715号)を発現させるために、様々な宿主発現ベクター系を利用することができる。そのような宿主発現系は、目的のコード配列を産生し、続いて精製することができるビヒクルを表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトした場合に対象抗体分子をin situで発現することができる細胞も表す。これらには、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス・ピキア(Saccharomyces Pichia));抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)、又は抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換されたもの;哺乳動物細胞(例えば、メタロチオネインプロモータ)又は哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモータ)のゲノムに由来するプロモータを含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、NSO及び3T3細胞);(ワクシニアウイルス7.5Kプロモータ)などの微生物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモータ要素などのベクターと組み合わせて、抗体の有効な発現系である(Foecking et al.,1986,Gene 45:101;及びCockett et al.,1990,Bio/Technology 8:2)。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、CHO細胞において産生される。
【0250】
細菌系の場合、発現される抗体分子に意図される用途に応じて、多数の発現ベクターが有利に選択され得る。例えば、抗体分子の医薬組成物の生成のために、大量のそのような抗体又はその断片を産生する場合、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターとしては、限定されないが、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列をlac Zコード領域とインフレームでベクターに個別に連結することができる大腸菌発現ベクターpUR278(uther et al.,1983,EMBO 12:1791);pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101-3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503-5509);などが挙げられる。pGEXベクターを使用して、外来ポリペプチドをグルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、クローン化された標的遺伝子産物がGST部分から放出され得るように、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0251】
昆虫系では、外来遺伝子を発現させるためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcNPV)を使用することができる。このウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。抗体又は機能的断片コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングし、AcNPVプロモータ(例えば、ポリヘドリンプロモータ)の制御下に置くことができる。
【0252】
哺乳動物宿主細胞では、多数のウイルスベースの発現系を利用することができる。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的の抗体コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモータ及び三者リーダー配列に連結され得る。次いで、このキメラ遺伝子を、インビトロ又はインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)への挿入は、生存可能であり、感染宿主において抗体分子を発現することができる組換えウイルスをもたらすであろう(例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 1:355-359を参照されたい)。特異的開始シグナルは、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳にも使用することができる。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。更に、開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実にするために所望のコード配列のリーディングフレームと同相でなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源のものであり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネータなどを含めることによって高めることができる(例えば、Bittner et al.,1987,Methods in Enzymol.153:51-544を参照されたい)。
【0253】
植物細胞については、種々のベクター送達技術が当該分野で利用可能である。宿主細胞は、植物全体、単離された細胞又はプロトプラストの形態であり得る。ベクターを植物細胞に導入するための例示的な手順には、アグロバクテリウム媒介植物形質転換、プロトプラスト形質転換、花粉への遺伝子導入、生殖器官への注入及び未成熟胚への注入が含まれる。当業者に明らかなように、これらの方法の各々は、明確な利点及び欠点を有する。したがって、特定の植物種にベクターを導入する1つの特定の方法は、必ずしも別の植物種にとって最も効果的であるとは限らない。
【0254】
更に、挿入された配列の発現を調節するか、又は所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及び処理する宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、抗体又は機能性断片の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び改変のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系を選択して、発現された外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にすることができる。この目的のために、遺伝子産物の一次転写産物の適切なプロセシング、グリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NSO(免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
組換えタンパク質の長期間の高収率生産のためには、安定な発現が好ましい。例えば、抗体又はその機能的断片を安定に発現する細胞株を操作することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモータ、エンハンサー、配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位など)及び選択マーカーによって制御されるDNAで形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作された細胞を富化培地中で1~2日間増殖させ、次いで選択培地に切り替えることができる。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定に組み込み、増殖してフォーカスを形成することを可能にし、次いでこれをクローン化し、細胞株に増殖させることができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を操作するために有利に使用することができる。
【0256】
単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(owy et al.,1980,Cell 22:8-17)遺伝子をそれぞれtk-、hgprt-又はaprt-細胞において使用するシステムが挙げられるが、これらに限定されない。また、代謝拮抗薬耐性は、以下の遺伝子に対する選択の基礎として使用することができる:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhf(Wigler et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.77(6):3567-70;O’Hare et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);グルタメート及びアンモニアを用いたグルタミンの生合成に関与するグルタミンシンセターゼ(GS)(Bebbington et al.,1992,Biuotechnology 10:169);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596;Mulligan,1993,Science 260:926-932;及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217;May,1993,TIB TECH 11(5):155-215);並びにハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al.,1984,Gene 30:147)。組換えDNA技術方法は、所望の組換えクローンを選択するために適用することができ、そのような方法は、例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);Chapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds.),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colberre-Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅(総説については、Bebbington and Hentschel,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning,Vol.3(Academic Press,New York,1987)を参照されたい)によって増加させることができる。抗体又はその機能的断片を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養中に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の産生も増加する(Crouse et al.,1983,Mol.Cell.Biol.3:257)。
【0257】
抗体分子が組換え発現によって産生されると、それは、免疫グロブリン分子の精製のための任意の好適な方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特定の抗原に対する親和性による親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度によって、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって精製され得る。更に、主題抗体又はその機能的断片は、精製を容易にするために、本明細書に提供されるか、そうでなければ当該分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合され得る。例えば、対象抗体又はその機能的断片は、市販されているポリ-ヒスチジンタグ(Hisタグ)、FLAGタグ、ヘマグルチニンタグ(HAタグ)又はmycタグなどを組換え的に付加することによって、適切な精製方法を利用して精製することができる。
【0258】
治療方法
別の態様では、本明細書に提供されるのは、免疫細胞をインビトロ、エクスビボ、又はインビボで抑制するために、本明細書に開示される抗体又はその機能的断片を使用する方法である。いくつかの場合では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、マクロファージ、又は任意の他の免疫細胞である。いくつかの場合では、免疫細胞はエフェクタT細胞である。いくつかの場合では、免疫細胞は、抗原特異的T細胞である。いくつかの場合では、本明細書に開示される方法は、それを必要とする対象を治療するために適用可能である。いくつかの場合では、方法は、本明細書に開示される抗体又はその断片を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの場合では、方法は、免疫細胞をインビトロで抑制すること、及び免疫細胞をそれを必要とする対象に移入すること、を含む。
【0259】
別の態様では、本発明の抗体は、PD-1を発現する細胞への別の治療剤又は細胞毒性剤(例えば、毒素)の送達のための標的剤として使用することができる。方法は、治療剤若しくは細胞毒性剤にカップリングされた抗PD-1抗体を、又は細胞表面上に発現されたPD-1への抗体の結合を可能にする条件下で投与することを含む。
【0260】
別の態様では、本明細書に開示される抗体又はその機能的断片を使用して、それを必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法が本明細書で提供される。いくつかの場合では、主題の方法が適用可能な疾患又は状態は、PD-1又はPD-L1シグナル伝達に関連する。いくつかの場合では、疾患又は状態は、炎症性障害、自己免疫障害であり、及び/又は過剰な若しくは望ましくない免疫応答に関連する。
いくつかの実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の抗体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物、例えばそれを必要とするヒトにおける炎症性障害を治療する方法を提供する。いくつかの場合では、炎症性障害は、多発性硬化症である。他の場合では、炎症性障害は自己免疫疾患である。いくつかの場合では、疾患又は状態は成人発症スチル病;アルコール性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性肝疾患、アレルゲン誘発性喘息を含む喘息、水疱性類天疱瘡(BP)喘息、非アレルゲン誘発性喘息、アレルギー及びアレルギー性状態、例えばアレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性脳脊髄炎及びアレルギー性神経炎、食物アレルギー、同種移植片拒絶、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、ANCA血管炎、抗糸球体基底膜疾患(抗-GBM)、抗リン脂質症候群、アフタ性口内炎、虫垂炎、関節炎、自己免疫疾患、萎縮性甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間ヘモグロビン尿症)、自己免疫性多腺性内分泌不全症、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫介在性血小板減少症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血(アジソン病)及び自己免疫性甲状腺障害、自己炎症性疾患、自己染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、強直性脊椎炎(AS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、ベーチェット病又は症候群、ハチ刺傷誘発性炎症、ブラウ症候群、滑液包炎、バレット食道、ブレオマイシン誘発性肺線維症、閉塞性細気管支炎;心肥大、グルテン過敏性腸症(セリアック病)、化学刺激薬誘発性炎症、網脈絡膜炎、リポジストロフィー及び高温を伴う慢性非定型好中球性皮膚症(CANDLE)症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性膵炎、慢性前立腺炎、慢性再発性多巣性骨髄炎、瘢痕性脱毛症、大腸炎、複合局所疼痛症候群、慢性肝内又は肝外胆汁うっ滞性疾患、結膜炎、結合組織病、結合組織病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)、角膜潰瘍、クリオピリン関連周期性症候群、皮膚エリテマトーデス(CLE)、嚢胞性線維症、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(DIRA)の欠損、IL36Rアンタゴニスト(DITRA)の欠損、皮膚炎、糖尿病性腎疾患(DKD)(糖尿病性腎症)、憩室炎、円板状エリテマトーデス、薬物誘発性遅延型アレルギー性皮膚炎、脳炎、好酸球性胃腸障害(EGID)、例えば好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性胃腸炎、好酸球性大腸炎;家族性寒冷蕁麻疹、家族性地中海熱、瘻性クローン病、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、痛風、痛風性関節炎、移植片対宿主病(GVHD)、肉芽腫性肝炎、ギラン・バレー症候群(GBS)、グレーブス病、橋本甲状腺炎;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、化膿性汗腺炎(HS)、ヒアリン膜疾患、炎症反応亢進、好酸球増加症候群(HES)、再発性発熱を伴う高免疫グロブリン血症D(HIDS)、過敏性肺炎(HP)、免疫グロブリン(IgA)腎症、IgG4関連疾患、免疫複合腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症、CNSの炎症、炎症性腸疾患(IBD)、気道の炎症性疾患(上又は下)、例えば炎症性肺疾患、気管支炎、副鼻腔炎、脳卒中又は心停止などの炎症性虚血事象、炎症性肝疾患、炎症性筋障害、炎症性ニューロパシー、炎症性疼痛、虫刺痛誘発性炎症、間質性膀胱炎、虹彩炎、刺激性炎症、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、角膜炎、腎移植拒絶反応、腎臓疾患、腎線維症、腎不全、白血球接着不全、レフラー症候群、狼瘡、ループス腎炎(LN)、肝線維症、脂肪肝;肝臓虚血;脂質及びリポタンパク質障害;肥満細胞活性化症候群、肥満細胞症、髄膜炎、顕微鏡的大腸炎、混合性結合組織病、モルフェア又はモルフェアバリアント、マックル・ウェルズ症候群(蕁麻疹難聴アミロイドーシス)、粘膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、壊死性腸炎、新生児発症多系統炎症性疾患(NOMID)、鼻ポリープ、血管新生緑内障、神経炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(非CFB)、肝臓の閉塞性又は慢性炎症性障害;眼性アレルギー、視神経炎、臓器移植拒絶反応、変形性関節症(OA)、耳炎、膵炎、汎結腸炎、骨盤炎症性疾患、尋常性天疱瘡(PV)、水疱性類天疱瘡(BP)、心膜炎、歯周炎、PFAPA(周期性発熱、アフタ性口内炎、咽頭炎、腺炎)、植物刺激薬誘発性炎症、ニューモシスチス感染、肺炎、肺臓炎、ツタウルシ/ウルシオール油誘発性炎症、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多発性嚢胞腎疾患(PCKD)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、嚢炎、直腸炎、直腸強膜炎、乾癬性関節炎(PsA)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、肺線維症、化膿性無菌性関節炎、掻痒症、再灌流傷害及び移植拒絶反応、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、レイノー病、ライター病、反応性関節炎、腎移植拒絶反応、再灌流傷害、リウマチ性心炎、リウマチ性疾患、リウマチ熱、関節リウマチ(RA)、鼻炎、乾癬性鼻炎、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、強膜炎、硬化症、例えば全身性硬化症(SSc)、脂漏、敗血症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、炎症性皮膚疾患又は状態、例えばざ瘡、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、酒さ、湿疹、皮膚炎、皮膚炎エンドトキシン血症、皮膚筋炎、うっ滞性皮膚炎、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、皮膚刺激性、皮膚発疹、皮膚感作(接触皮膚炎又はアレルギー性接触皮膚炎)、強皮症、乾癬、尋常性乾癬、乾癬性関節炎;脊柱管狭窄症、脊椎関節症、滑膜炎症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性肥満細胞疾患(SMCD)、全身性血管炎、全身発症若年性特発性関節炎、側頭動脈炎、腱炎、腱滑膜炎、甲状腺炎、移植拒絶反応、尿細管間質性腎炎、尿細管機能障害、高安動脈炎、中毒性表皮壊死症、蕁麻疹、子宮類線維腫、ブドウ膜炎、網膜ブドウ膜炎、血管炎、血管炎(NHLBI)、白斑、又はウェゲナー肉芽腫症である。いくつかの場合では、疾患又は状態は、ざ瘡、酸誘発性肺損傷、アジソン病、副腎過形成、副腎皮質機能低下、加齢性黄斑変性症、老化、アルコール性肝疾患、アルツハイマー症、狭心症、血管線維腫、汗腺外胚葉性異形成症、腹水、アスペルギルス症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化プラーク、アミロイドーシス、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、血管性浮腫、急性心筋梗塞;抗原抗体複合体媒介疾患、α1-抗トリプシン欠損症;背部痛、炭疽菌感染症、ベル麻痺、ベリリウム症、骨痛、火傷、水疱性類天疱瘡、癌、手根管症候群、キャッスルマン病、異化障害、白内障、脳動脈瘤、臓器移植の合併症、角膜移植片血管新生、クリプトコックス症、非悪性過剰増殖性障害;悪性過剰増殖性障害;肝細胞癌;結腸腺腫;ポリポーシス;結腸腺癌;乳癌;膵臓腺癌、慢性心不全、未熟児慢性肺疾患、心血管代謝症候群、心血管疾患、皮膚T細胞リンパ腫、糖尿病性黄斑浮腫、脂質異常症;子宮内膜症、内毒素血症、好酸球性GI疾患(EGID)、好酸球性食道炎(EoE)、好酸球性肺炎、上顆炎、表皮水疱症、多形性紅斑、赤芽球減少症、家族性アミロイドーシス性多発神経障害、胎児成長遅延、線維筋痛症、緑内障、神経膠芽腫、糸球体疾患、腸疾患、成長板損傷、脱毛、帯状疱疹及び単純、低形成性及び他の貧血、頭部損傷、A型、B型、C型、D型及びE型肝炎、ヘルペス;頭痛、難聴、心疾患、血管腫、血友病性関節、遺伝性周期熱症候群、結合組織の遺伝性障害、ホジキン病、ハンチントン病、高アンモニア血症、高カルシウム血症、高コレステロール血症、溶血性貧血、肝炎、股関節置換術、高張性骨形成、過敏性肺炎、遺伝性フルクトース不耐性、高血圧、高尿酸血症、特発性脱髄性多発ニューロパチー、AIDS(HIV感染症)などのウイルス性疾患を含む感染性疾患、魚鱗癬、色素失調症(IP、Bloch-Siemens症候群)、特発性血小板減少性紫斑病、感染性単核症、虚血/再灌流、インスリン抵抗性、関節置換術、寄生虫感染によって引き起こされる腎損傷、レプトスピラ症、硬化性苔癬(LS)、扁平苔癬、ランバート-イートン筋無力症候群、ライム病、急性肝不全を含む肝不全、筋萎縮、筋ジストロフィー、マルファン症候群(MFS)、髄膜腫、中皮腫、多臓器損傷症候群、重症筋無力症(MG)、骨髄異形成症候群、メタボリックシンドローム、多発性硬化症、腎症候群、神経病理学的疾患、核因子カッパBエッセンシャルモジュレーター(NEMO)欠損症症候群、肥満、オスラー・ウェーバー症候群、骨形成不全症、骨壊死、骨粗鬆症、先天性厚膜症、パジェット病、骨パジェット病、パーキンソン病、周期熱、百日咳、原発性肺高血圧症、壊疽性膿皮症、化膿性肉芽腫、後水晶体線維形成症、腹膜子宮内膜症、結節性掻痒症、精神病性ストレス疾患、肺疾患、肺高血圧症、呼吸窮迫症候群、腎疾患、網膜疾患、後線維形成症、腎移植拒絶反応、ファンコーニ症候群を誘発する薬物に対する腎保護、呼吸器合胞体ウイルスによって引き起こされる気道疾患、鼻副鼻腔炎;放射線誘発線維症、サルコイドーシス、重度の疼痛、睡眠時無呼吸、脊柱側弯症、鎌状赤血球貧血、スポーツ傷害、捻挫及び挫傷、日焼け、脊髄損傷、セザリー症候群、シリカ誘発性疾患(ケイコーシス)、くも膜下出血、結核、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、血栓症;外傷性脳損傷、組織移植、1型又は2型糖尿病からの合併症、トキソプラズマ症、血小板減少症、トラコーマ、血管再狭窄、人工呼吸器誘発性肺損傷;ウィップル病又は2,8-ジヒドロキシアデニン腎症である。
【0261】
対象抗体が治療することのできる疾患又は状態の例としては、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、喘息(アレルギー性喘息を含む)、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、脳マラリア、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、皮膚筋炎、1型糖尿病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、IgG4関連疾患、炎症性線維症(例えば、強皮症、肺線維症及び肝硬変)、若年性関節炎、川崎病、白血病、ループス腎炎、リンパ腫、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、骨髄腫、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、視神経脊髄炎、変形性関節症、天疱瘡、多発性筋炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、移植拒絶反応、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑及びフォークト・小柳・原田病が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、疾患又は状態は、関節リウマチを含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、多発性硬化症を含む。
【0262】
いくつかの場合では、疾患又は状態の治療を必要とする対象において疾患又は状態を治療する方法は、治療有効量の本明細書に開示されるアゴニスト抗体を対象に投与すること、治療有効量の本明細書に開示される抗体又は免疫コンジュゲート及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象に投与すること、を含み、ここで、疾患又は状態は、感染、感染に関連する内毒素性ショック、関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身発症若年性特発性関節炎(JIA)、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、喘息、アトピー性皮膚炎、骨盤炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、皮膚筋炎、ブドウ膜炎、ペロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣嚢胞疾患、乾癬、血管炎、外科的癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム関節炎、髄膜脳炎、中枢神経系及び末梢神経系の免疫媒介性炎症性障害、自己免疫障害、膵炎、外科手術による外傷、移植片対宿主病、移植拒絶、心疾患、骨吸収、火傷患者、心筋梗塞、パジェット病、骨粗鬆症、敗血症、肝/肺線維症、歯周炎、低塩酸症、固形腫瘍(腎細胞癌)、肝癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、神経癌、及びB細胞悪性腫瘍(例えば、キャッスルマン病、特定のリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び多発性骨髄腫)、ループス腎炎、及び変形性関節症を更に含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、シェーグレン症候群を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、炎症性腸疾患(IBD)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、全身性エリテマトーデス(SLE)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、ループス腎炎(LN)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連(ANCA)血管炎などの血管炎を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、移植片対宿主病(GvHD)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、1型糖尿病を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態はベーチェット症候群を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、敗血症を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、変形性関節症(OA)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、全身性硬化症(SSc)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、皮膚筋炎を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、乾癬性関節炎(PsA)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、IgG4関連疾患を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は、多発性筋炎を含む。いくつかの場合では、疾患又は状態は高安動脈炎を含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、本開示は、癌の治療を必要とする哺乳動物において癌を治療する方法であって、治療有効量の本開示の抗体を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。いくつかの場合では、癌は肝細胞癌である。他の場合、癌は、急性骨髄性白血病、胸腺、脳、肺、扁平上皮、皮膚、眼、網膜芽細胞腫、眼内黒色腫、口腔及び中咽頭、膀胱、胃、胃、胃、膵臓、膀胱、乳房、子宮頸部、頭頸部、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、甲状腺、CNS、PNS、AIDS関連(例えば、リンパ腫及びカポジ肉腫)又はウイルス誘発癌である。
【0264】
いくつかの実施形態では、治療される対象は、ヒトなどの哺乳動物である。いくつかの実施形態では、治療される対象はヒトである。他の場合では、哺乳動物は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ、スナネズミ、ハムスター、モルモット、サル又は任意の他の哺乳動物である。多くのそのような哺乳動物は、炎症性疾患、固形腫瘍及び/又は他の癌を含む特定の疾患又は障害の前臨床モデルとして当技術分野で公知の対象であり得る(例えば、Talmadge et al.,2007 Am.J.Pathol.170:793;Kerbel,2003 Canc.Biol.Therap.2(4 Suppl 1):S134;Man et al.,2007 Canc.Met.Rev.26:737;Cespedes et al.,2006 Clin.TransL Oncol.8:318)。
【0265】
別の態様では、本開示は、哺乳動物における疾患又は状態を第2の薬剤と併せて治療するために本開示のPD-1抗体を使用する方法を提供する。第2の薬剤は、抗体と一緒に、その前に、又はその後に投与することができる。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、本明細書に記載の炎症状態の症状を軽減するように作用する薬剤である。抗炎症剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)及びコルチコステロイドが含まれる。NSAIDには、サリチル酸、例えばアセチルサリチル酸;ジフルニサル、サリチル酸、及びサルサレート;プロピオン酸誘導体、例えばイブプロフェン;ナプロキセン;デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、フェノプロフェン、ロキソプロフェン、及びケトプロフェン;酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、ジクロフェナク、トルメチン、アセクロフェナク、スリンダク、ナブメトン、エトドラク、及びケトロラック;ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、及びドロキシカム等のエノール酸誘導体;メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、及びトルフェナム酸等のアントラニル酸誘導体;セレコキシブ、ルミラコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、フィロコキシブ及びパレコキシブなどの選択的COX-2阻害剤;スルホンアニリド、例えばニメスリド;及びその他、クロニキシン、リコフェロン等が含まれるが、これらに限定されない。コルチコステロイドには、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン及びプレドニゾロンが含まれるが、これらに限定されない。
【0266】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は免疫抑制剤である。対象抗体と組み合わせて使用することができる免疫抑制剤には、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、D-ペニシラミン、経口金化合物、注射可能な金化合物(筋肉内注射)、ミノサイクリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、D-ペニシラミン、ロベンザリット、ブシラミン、アクタリット、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ミゾリビン、シクロスポリン及びタクロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、関節リウマチの治療及び/又は予防に有用である。そのような薬剤の非限定的な例としては、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート及びレフルノミドなどの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDS);TNF阻害剤(例えば、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴール)、T細胞共刺激阻害剤、(例えば、アバタセプト)、IL-6受容体阻害剤(例えば、トシリズマブ、サリルマブ)、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ);及びJAK阻害剤(例えば、トファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ);NSAID、例えばイブプロフェン、ナプロキセン及びジクロフェナク;COX-2阻害剤、例えばセレコキシブ及びエトリコキシブ;ステロイド及びコルチコステロイド、例えばプレドニゾロン及びコルチゾン;及びそのような症状の治療及び/又は予防に公知の生物学的薬剤、例えばエタネルセプト(例えば、ENBREL)、インフリキシマブ(例えば、REMICADE)、アダリムマブ(例えば、HUMIRA)、アナキンラ(例えば、KINARET)、アバタセプト(ORENCIA)、リツキシマブ(例えば、RITUXAN)、セルトリズマブ(例えば、CIMZIA)、ゴリムマブ(例えば、SIMPONI)及びトシリズマブ(例えば、アクテムラ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、リウマチ学的状態の治療及び/又は予防に有用な2つの更なる治療薬と共に投与される。いくつかの実施形態では、リウマチ学的状態の治療及び/又は予防に有用な薬剤には、本開示の化合物並びに2つの更なる治療剤、例えば、メトトレキサート+レフルノミド、メトトレキサート+スルファサラジン、メトトレキサート+シクロスポリン、メトトレキサート+ヒドロキシクロロキン及び三剤併用療法治療ヒドロキシクロロキン+スルファサラジン+メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン+スルファサラジン+レフルノミドが含まれる。
【0268】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎(LN)の治療及び/又は予防に有用である。そのような薬剤の非限定的な例としては、免疫系の活性を阻害する免疫抑制薬及びSLEの治療のために承認された薬剤、例えばヒドロキシクロロキン、ステロイド及びコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)、ベリムマブ、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミコフェノレート及びミコフェノレートモフェチル、シクロスポリン、レフルノミド、ボクロスポリン、アバタセプト、アニフロルマブ、リツキシマブ、NSAID、例えばナプロキセンナトリウム及びイブプロフェン、抗マラリア薬、例えばヒドロキシクロロキン、カルシニューリン阻害剤及びタクロリムスが挙げられる。
【0269】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、プレドニゾン+ミコフェノール酸類似体、プレドニゾン+ミコフェノール酸ナトリウムプレドニゾン+シクロホスファミド、プレドニゾン+タクロリムス、プレドニゾン+ボクロスポリン、プレドニゾン+ベリムマブ+ミコフェノール酸類似体、プレドニゾン+ベリムマブ+シクロホスファミド、プレドニゾン+リツキシマブなどのLNの治療に有用である。
【0270】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、プレドニゾン+ミコフェノール酸類似体、プレドニゾン+ミコフェノール酸ナトリウム、プレドニゾン+アザチオプリン、プレドニゾン+タクロリムス、プレドニゾン+シクロスポリン、プレドニゾン+ミゾリビンなどのLNの治療に有用である。
【0271】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、変形性関節症(OA)の治療及び/又は予防に有用である。このような薬剤の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、局所カプサイチン、関節中グルココルチコイド注射、アセトアミノフェン、ジュロキセチン、トラマドール、並びに注射可能なコルチコステロイド、例えば、酢酸メチルプレドニゾロン、酢酸トリアムシノロン、酢酸ベタメタゾン及び酢酸ベタメタゾンリンナトリウム、トリアムシノロンヘキサセトニド、並びにデキサメタゾンが挙げられる。
【0272】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、潰瘍性大腸炎(UC)又はクローン病(CD)などの胃腸病の状態の治療及び/又は予防に有用である。そのような薬剤の非限定的な例としては、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ、トファシチニブ、ウステキヌマブ、ナタリズマブ、メサラミン、ジアゾ結合5-ASA、スルファサラジン、バルサラジド、オルサラジン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾンなどのコルチコステロイド;アザチオプリン及び6-メルカプトプリン、シクロスポリン、並びにメトトレキサートなどの免疫抑制剤又は免疫調節剤が挙げられる。
【0273】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、特発性肺線維症(IPF)又は間質性肺疾患(ILD)などの肺症状の治療及び/又は予防に有用である。そのような薬剤の非限定的な例としては、ニテンダニブ、ピルフェニドン、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、ミコフェノレート(例えば、CellCept(登録商標))、アザチオプリン(例えば、Imuran(登録商標))、レフルノミド(例えば、ARAVA(登録商標))、リツキシマブ(例えば、RITUXAN(登録商標))、シクロホスファミド(例えば、CYTOXAN(登録商標))、タクロリムス(例えば、PROGRAF(登録商標))を含む他のリウマチ薬、ランソプラゾール(例えば、PREVACID(登録商標)24HR)、オメプラゾール(例えば、Prilosec OTC)及びパントプラゾール(例えば、PROTONIX(登録商標))などのH-2受容体アンタゴニスト又はプロトンポンプ阻害剤などの胃酸を減少させる医薬品が挙げられる。
【0274】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、NAFLD、NASH、DKD、又はCKDなどのヘプタトロジック又は腎症状の治療及び/又は予防に有用である。そのような薬剤の非限定的な例としては、メトホルミン、ナトリウムグルコース共輸送体-2阻害剤(sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor、SGLT2i)、血糖コントロールのための薬物治療、DPP-4阻害剤、インスリン、スルホニル尿素、TZD(thiazolidinedione、チアゾリジンジオン)、α-グルコシダーゼ阻害剤、SGLT2阻害剤(例えば、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、dapaglifloz)、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト(glucagon-like peptide-1 receptor agonist、GLP-1 RA)(例えば、リキシセナチド、リラグルチド、セマグルチド、エクセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド)、DPP-4阻害剤(例えば、サクサグリプチン、アログリプチン、シタグリプチン、リナグリプチン)、アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme、ACE)阻害剤及びアンジオテンシン2受容体遮断薬(angiotensin 2 receptor blocker、ARB)などの高血圧を治療するために使用される1つ以上の薬剤、体重減少を支援する薬剤又は血糖の制御のための薬剤、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)、ファインレノン、及びα-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース)などの真性糖尿病の治療のための薬剤が挙げられる。
【0275】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、アトピー性皮膚炎(AD)などの皮膚状態の治療及び/又は予防に有用である。このような薬剤の非限定的な例としては、局所コルチコステロイド(TCS)(例えば、デソニド、ハイドロコルチゾン、フルオシノロン、トリアムシノロン、ジプロピオン酸ベタメタゾン)、局所カルシニューリン阻害剤(TCI)(例えば、タクロリマス、ピメクロリムス)、局所抗菌剤及び防腐剤、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノレートモフェチル、インターフェロンγ、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤、例えばクリサボロール、JAK阻害剤(例えば、ルクソリチニブ、ウパダチニブ、abrocitinib)、全身グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン)、デュピルマブ、及び抗IL-13抗体(例えば、トラロキヌマブ)が挙げられる。
【0276】
本発明の更に他の態様は、生体試料中のPD-1の存在を検出するための開示された抗体の使用を提供する。検出されたPD-1の量は、PD-1の発現レベルと相関し得、これは、対象における免疫細胞(例えば、活性化T細胞、B細胞及び単球)の活性化状態と相関する。
【0277】
治療のために対象に投与される本明細書に開示される抗体の具体的な用量は、選択される特定の抗体、従うべき投薬レジメン、それが他の薬剤と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織、及びそれが担持される物理的送達系に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、治療サイクルの過程にわたって平均して週当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100mgの範囲内で対象に投与される。
【0278】
いくつかの実施形態では、抗体は、治療サイクルの過程にわたって平均して1日当たり1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10mgを超える量で対象に投与される。例えば、抗体は、治療サイクルの過程にわたって平均して1日当たり約6~10mg、約6.5~9.5mg、約6.5~8.5mg、約6.5~8mg、又は約7~9mgの量で対象に投与される。
【0279】
いくつかの実施形態では、対象に投与される抗体の単回用量は、約0.01mg/kg~50mg/kgの範囲内、例えば、約0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、又は50mg/kg、又は約それら未満で対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体の単回用量は、約0.01mg/kg~10mg/kgの範囲内、例えば、0.01mg/kg~0.1mg/kg、0.01mg/kg~1mg/kg、0.01mg/kg~0.5mg/kg、0.05mg/kg~0.1mg/kg、0.05mg/kg~0.5mg/kg、0.05mg/kg~1mg/kg、0.05mg/kg~5mg/kg、0.1mg/kg~0.5mg/kg、0.1mg/kg~1mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.5mg/kg~1mg/kg、0.5mg/kg~5mg/kg、0.5mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~10mg、又は5mg/kg~10mg/kgで対象に投与される。抗体の用量は、約、少なくとも約、又は多くとも約、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000mg若しくはmg/kg、又はこれらから導き出せる任意の範囲であり得る。mg/kgの投与量は、対象の総体重1kg当たりの抗体のmg量を指すと考えられる。複数の用量が患者に投与される場合、用量は量が異なっていてもよく、又はそれらは同じであってもよいことが企図される。
【0280】
いくつかの実施形態では、抗体は、1日当たり約0.01mg/kg~50mg/kgの範囲内で、例えば、1日当たり約0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、又は50mg/kg、それら未満で対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、週当たり約0.1mg/kg~400mg/kgの範囲内で、例えば、週当たり、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、又は400mg/kg、それら未満、又はそれらを超えて対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、月当たり、約0.4mg/kg~1500mg/kgの範囲内、例えば、月当たり約0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、又は1000mg/kg、又はそれ未満、又はそれを超えて対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、週当たり約0.1mg/m~200mg/m、例えば、週当たり、約1mg/m、5mg/m、10mg/m,15mg/m、20mg/m、25mg/m、30mg/m、35mg/m、40mg/m、45mg/m、50mg/m、55mg/m、60mg/m、65mg/m、70mg/m、75mg/m、100mg/m、125mg/m、150mg/m、175mg/m、又は200mg/m、又はそれ未満、又はそれを超えて対象に投与される。目標用量は、単回用量で投与され得る。あるいは、標的用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の用量で投与され得る。例えば、約1mg/kg/週の用量は、毎週約1mg/kg、2週間ごとに投与される約2mg/kg、又は4週間ごとに投与される約4mg/kgの用量で週の経過にわたって毎週送達され得る。投与スケジュールは、本明細書に記載の任意の投与スケジュールを含む、本明細書に記載の任意のレジメンに従って繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、抗体は、約0.1mg/m~500mg/m、例えば、約1mg/m、5mg/m、10mg/m、15mg/m、20mg/m、25mg/m、30mg/m、35mg/m、40mg/m、45mg/m、50mg/m、55mg/m、60mg/m、65mg/m、70mg/m、75mg/m、100mg/m、130mg/m、135mg/m、155mg/m、175mg/m、200mg/m、225mg/m、250mg/m、300mg/m、350mg/m、400mg/m、420mg/m、450mg/m、又は500mg/m、又はそれ未満、又はそれを超えて対象に投与される。
【0281】
医薬組成物
別の態様では、本明細書に開示される抗PD-1抗体又はその機能性断片と、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含む医薬組成物が本明細書で提供される。薬学的に許容される担体又は賦形剤には、不活性固体希釈剤及び充填剤、希釈剤、滅菌水溶液及び様々な有機溶媒、透過増強剤、可溶化剤及びアジュバントが含まれ得るが、これらに限定されない。これらの組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。製剤は、周知であり、当業者に容易に入手可能ないくつかの供給源に記載されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(Martin E.W.,Easton Pennsylvania,Mack Publishing Company,19th ed.,1995)には、本発明に関連して使用することができる製剤が記載されている。
【0282】
本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液としての経口投与、滅菌溶液、懸濁液若しくはエマルジョンとしての非経口注射、軟膏若しくはクリームとしての局所投与、又は坐剤としての直腸投与に適した形態であり得る。持続放出調製物の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。いくつかの持続放出製剤は、数週間から数ヶ月、又は数年までにわたって分子の放出を可能にする。いくつかの実施形態では、主題の医薬組成物は、本明細書に記載の主題の抗体を少なくとも数週間、例えば少なくとも1週間、2週間、3週間又は4週間放出する。更なる実施形態では、主題の医薬組成物は、数ヶ月にわたって、例えば少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月又は6ヶ月にわたって、本明細書に記載の主題の抗体を放出する。
【0283】
本明細書に開示される医薬組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位剤形であり得る。医薬組成物は、活性成分として抗体又はその機能性断片を更に含むことができ、従来の医薬担体又は賦形剤を含むことができる。更に、それは、他の医薬品又は医薬品、担体、アジュバントなどを含み得る。
【0284】
例示的な非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えばプロピレングリコール水溶液又はデキストロース水溶液中の活性ポリペプチド及び/又はPEG修飾ポリペプチドの溶液又は懸濁液が含まれる。そのような剤形は、必要に応じて、ヒスチジン及び/又はリン酸塩などの塩で適切に緩衝することができる。
【0285】
投与に適した製剤には、例えば、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る滅菌注射水溶液、及び懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。
【0286】
製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用前に滅菌液体担体、例えば注射用水の状態のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤などから調製され得る。
【0287】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象抗体又はその機能的断片及び注射に適した医薬賦形剤を含有する注射用医薬組成物を提供する。そのような組成物中の薬剤の例示的な成分及び量は、本明細書に記載の通りである。
【0288】
本開示の組成物を注射による投与のために組み込むことができる形態としては、水性懸濁液又は油性懸濁液又はエマルジョン(ゴマ油、コーン油、綿実油又はピーナッツ油を有する)、並びにエリキシル、マンニトール、デキストロース、又は滅菌水溶液、及び類似の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0289】
注射には生理食塩水の水溶液を使用することができる。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等(及びこれらの好適な混合物)、シクロデキストリン誘導体、及び植物油も使用され得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。
【0290】
滅菌注射用溶液は、上に列挙した種々の他の成分を含む適切な溶媒中に所望の量の本開示の抗体又はその機能的断片を組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、塩基性分散媒及び他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、特定の望ましい調製方法は、活性成分+任意の更なる所望の成分の粉末をその以前に滅菌濾過された溶液から得る真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0291】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の抗体又はその機能的断片、及び経口投与に適した医薬賦形剤を含有する、経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0292】
いくつかの実施形態では、(i)有効量の本開示の抗体又はその機能的断片;場合により(ii)有効量の第2の薬剤;及び(iii)経口投与に適した医薬賦形剤を含有する、経口投与用の固体医薬組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、(iv)有効量の第3の薬剤を更に含む。
【0293】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口摂取に適した液体医薬組成物である。経口投与に適した医薬組成物は、それぞれが所定量の活性成分を粉末として又は顆粒、溶液若しくは懸濁液として水性若しくは非水性液体、水中油型エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョン中に含有するカプセル、カシェ剤若しくは錠剤、又は液体若しくはエアロゾルスプレーなどの個別の剤形として提供することができる。そのような剤形は、薬学の方法のいずれかによって調製することができ、典型的には、1つ以上の必要な成分を構成する担体と活性成分を会合させる工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体又は細かく分割された固体担体又はその両方と均一かつ完全に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を所望の形態に成形することによって調製される。
【0294】
水はいくつかのポリペプチドの分解を促進することができるので、本開示は、活性成分を含む無水医薬組成物及び剤形を更に包含する。例えば、貯蔵寿命又は経時的な製剤の安定性などの特性を決定するために、長期貯蔵をシミュレートする手段として製薬技術において水を添加することができる(例えば、5%)。無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿度条件を使用して調製することができる。ラクトースを含有する医薬組成物及び剤形は、製造、包装及び/又は貯蔵中の水分及び/又は湿度との実質的な接触が予想される場合、無水にすることができる。無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製及び保存され得る。したがって、無水組成物は、好適な処方キットに含まれ得るように、水への曝露を防止することが知られている材料を使用してパッケージングされ得る。適切な包装の例としては、これらに限定されないが、密封ホイル、プラスチックなど、単位用量容器、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
【0295】
本開示の抗体は、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と密接に混合して組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を調製する際に、通常の医薬媒体のいずれか、例えば、経口液体製剤(懸濁液、溶液、及びエリキシル剤など)又はエアロゾルの場合、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを担体として使用することができる。又は担体、例えばデンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤及び崩壊剤は、経口固形製剤の場合に、いくつかの実施形態ではラクトースの使用を用いずに使用することができる。例えば、適切な担体としては、固体経口製剤を含む散剤、カプセル剤及び錠剤が挙げられる。所望される場合、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術によってコーティングされ得る。
【0296】
医薬組成物及び剤形に使用するのに適した結合剤には、コーンスターチ、ジャガイモデンプン又は他のデンプン、ゼラチン、アカシアなどの天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギネート、粉末トラガカント、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0297】
医薬組成物及び剤形に使用するのに適した充填剤の例には、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0298】
崩壊剤を組成物中で使用して、水性環境に曝露されたときに崩壊する錠剤を提供することができる。崩壊剤が多すぎると、ボトル内で崩壊する可能性のある錠剤が生成される可能性がある。少なすぎると、崩壊が起こるには不十分であり得、したがって、剤形からの活性成分の放出速度及び放出範囲を変化させ得る。したがって、活性成分の放出を有害に変化させるには少なすぎず、多すぎない十分な量の崩壊剤を使用して剤形を形成することができる。使用される崩壊剤の量は、製剤の種類及び投与様式に基づいて変化し得、当業者には容易に認識され得る。約0.5~約15重量%の崩壊剤、又は約1~約5重量%の崩壊剤を医薬組成物に使用してもよい。医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0299】
医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる潤滑剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽質鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。追加の潤滑剤としては、例えば、シロイドシリカゲル、合成シリカの凝固エアロゾル、又はそれらの混合物が挙げられる。潤滑剤は、場合により、医薬組成物の約1重量%未満の量で添加することができる。
【0300】
水性懸濁液及び/又はエリキシル剤が経口投与に望ましい場合、その中の活性成分は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン及びそれらの様々な組合せなどの希釈剤と共に、様々な甘味剤又は香味剤、色素又は染料、及び必要に応じて乳化剤及び/又は懸濁化剤と組み合わせてもよい。
【0301】
錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は胃腸管内での崩壊及び吸収を遅延させ、それによってより長期間にわたって持続的な作用を提供するための公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料が、用いられ得る。経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水若しくは油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0302】
医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる界面活性剤には、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物を使用してもよく、親油性界面活性剤の混合物を使用してもよく、又は少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤との混合物を使用してもよい。
【0303】
HLB値が低い界面活性剤は、より親油性又は疎水性であり、油中でより高い溶解度を有し、HLB値が高い界面活性剤は、より親水性であり、水溶液中でより高い溶解度を有する。親水性界面活性剤は、一般に、約10を超えるHLB値を有する化合物、及びHLB尺度が一般に適用可能ではないアニオン性、カチオン性、又は双性イオン性化合物であると考えられる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、約10以下のHLB値を有する化合物である。しかしながら、界面活性剤のHLB値は、工業用、医用、及び化粧品用乳液の製剤化を可能にするために一般に使用されるおおよその指針にすぎない。
【0304】
親水性界面活性剤は、イオン性又は非イオン性のいずれかであり得る。好適なイオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩、フシジン酸塩、アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドの脂肪酸誘導体、アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドのグリセリド誘導体、レシチン及び水添レシチン、リゾレシチン及び水添リゾレシチン、リン脂質及びその誘導体、リゾホスホリン脂質及びその誘導体、カルニチン脂肪酸エステル塩、アルキルサルフェートの塩、脂肪酸塩、ドクサートナトリウム、アシルラクチレート、モノ及びジグリセリドのモノ及びジアセチル化酒石酸エステル、スクシニル化モノ及びジグリセリド、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0305】
前述の群内で、イオン性界面活性剤としては、例えば、レシチン、リゾレシチン、リン脂質、リゾホスホリン脂質、及びそれらの誘導体、カルニチン脂肪酸エステル塩、アルキルサルフェートの塩、脂肪酸塩、ドクサートナトリウム、アシルラクチレート;モノ及びジグリセリドのモノ及びジアセチル化酒石酸エステル、スクシニル化モノ及びジグリセリド、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0306】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸の乳酸エステル、ステアロイル-2-ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン、カプロエート、カプリレ-ト、カプレ-ト、ラウレ-ト、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノレート、リノレート、リノレネート、ステアレート、ラウリルサルフェート、テトラセシルサルフェート、ドクサート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチンのイオン化形態、並びにそれらの塩及び混合物であり得る。
【0307】
親水性非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、アルキルグルコシド、アルキルマルトシド、アルキルチオグルコシド、ラウリルマクロゴルグリセリド、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェノールなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル及びポリエチレングリコール脂肪酸ジエステルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオールとグリセリド、植物油、水添植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物、ポリオキシエチレンステロール、誘導体、及びそれらの類似体、ポリオキシエチル化ビタミン及びその誘導体、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー及びそれらの混合物、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、並びにポリオールとトリグリセリド、植物油、及び水添植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーとの親水性エステル交換生成物を挙げることができるが、これらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、又はサッカライドであり得る。
【0308】
他の親水性非イオン性界面活性剤としては、PEG-10ラウレート、PEG-12ラウレート、PEG-20ラウレート、PEG-32ラウレート、PEG-32ジラウレート、PEG-12オレエート、PEG-15オレエート、PEG-20オレエート、PEG-20ジオレエート、PEG-32オレエート、PEG-200オレエート、PEG-400オレエート、PEG-15ステアレート、PEG-32ジステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート、PEG-20ジラウレート、PEG-25グリセリルトリオレエート、PEG-32ジオレエート、PEG-20グリセリルラウレート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-20グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-40グリセリルラウレート、PEG-40パーム核油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-60コーン油、PEG-6カプレート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプレート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル-10ラウレート、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30大豆ステロール、PEG-20トリオレエート、PEG-40ソルビタンオレエート、PEG-80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100スクシネート、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル-10オレエート、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60、スクロースモノステアレート、スクロースモノラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG 10-100ノニルフェノールシリーズ、PEG 15-100オクチルフェノールシリーズ、及びポロキサマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0309】
好適な親油性界面活性剤としては、例としてのみ、脂肪アルコール、グリセロール脂肪酸エステル、アセチル化グリセロール脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ステロール及びステロール誘導体、ポリオキシエチル化ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖エステル、糖エーテル、モノ及びジグリセリドの乳酸誘導体、ポリオールとグリセリド、植物油、水添植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーとの疎水性エステル交換生成物、油溶性ビタミン/ビタミン誘導体、並びにそれらの混合物が挙げられる。この群内では、例示的な親油性界面活性剤は、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びそれらの混合物を含むか、又は植物油、水添植物油、及びトリグリセリドからなる基の少なくとも1つのメンバーを有するポリオールの疎水性エステル交換生成物である。
【0310】
いくつかの場合では、組成物は、化合物の良好な可溶化及び/又は溶解を確実にし、化合物の沈殿を最小限に抑えるための可溶化剤を含む。これは、非経口使用のための組成物、例えば注射用組成物に特に有利であり得る。親水性薬物及び/又は界面活性剤などの他の成分の溶解度を高めるために、又は組成物を安定な又は均一な溶液又は分散液として維持するために、可溶化剤を添加することもできる。
【0311】
適切な可溶化剤の例としては、以下のもの、アルコール及びポリオール、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール及びその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び他のセルロース誘導体、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体;約200~約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル、例えばテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール)又はメトキシPEG;アミド及び他の窒素含有化合物、例えば2-ピロリドン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド及びポリビニルピロリドン;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ε-カプロラクトン及びその異性体、δ-バレロラクトン及びその異性体、β-ブチロラクトン及びその異性体等のエステル類;及びジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、N-メチルピロリドン、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及び水などの当技術分野で公知の他の可溶化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0312】
可溶化剤の混合物も使用され得る。例としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200~100、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、及びジメチルイソソルビドが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な可溶化剤としては、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG-400、グリコフロール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0313】
含まれ得る可溶化剤の量は、特に限定されない。所与の可溶化剤の量は、当業者によって容易に決定され得る生物学的に許容され得る量に制限され得る。いくつかの状況では、生物学的に許容可能な量をはるかに超える量の可溶化剤を含むこと、例えば薬物の濃度を最大にすることが有利であり得、過剰な可溶化剤は、蒸留又は蒸発などの従来の技術を使用して組成物を対象に提供する前に除去される。したがって、存在する場合、可溶化剤は、薬物及び他の賦形剤の合計重量を基準として、重量で10%、25%、50%、100%、又は約200%までであり得る。必要に応じて、5%、2%、1%又はそれ以下などの非常に少量の可溶化剤を使用することもできる。典型的には、可溶化剤は、重量で、約1%~約100%、より典型的には約5%~約25%の量で存在してもよい。
【0314】
組成物は、1つ以上の薬学的に許容される添加剤及び賦形剤を更に含むことができる。そのような添加剤及び賦形剤には、粘着防止剤、消泡剤、緩衝剤、ポリマー、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、粘調節剤、等張化剤、香味剤、着色剤、臭気剤、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0315】
更に、加工を容易にするため、安定性を高めるため、又は他の理由で、酸又は塩基を組成物に組み込むことができる。薬学的に許容される塩基の例としては、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロカルサイト、水酸化マグネシウムアルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などが挙げられる。酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸などの薬学的に許容される酸の塩である塩基も適している。リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウムなどの多塩基酸の塩も使用することができる。塩基が塩である場合、カチオンは、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの任意の便利で薬学的に許容されるカチオンであり得る。例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム及びアンモニウムが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0316】
適切な酸は、薬学的に許容可能な有機酸又は無機酸である。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などが挙げられる。好適な有機酸の例としては、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0317】
本開示の別の態様では、本開示の抗体組成物を含有する単位用量及び使用説明書を含むキットが提供される。キットは、1つ又はそれを超える更なる試薬、例えば上記の免疫抑制試薬、又は本明細書に記載の1つ又はそれを超える更なる抗体(例えば、第1のヒト抗体とは異なる抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)を含有する1つ又はそれを超える単位用量を更に含むことができる。キットは、典型的には、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キットに添付される、又はキットと共に供給される、又は別の方法でキットに付随する任意の書き込み、又は記録された材料が含まれる。
【0318】
本開示のキットはまた、診断薬及び/又は他の治療剤を含み得る。いくつかの場合では、キットは、本開示の抗体と、本明細書に記載されるような対象における疾患、状態又は障害の状態又は存在を診断するための診断方法において使用され得る診断剤とを含む。
医療用途
【0319】
別の態様では、治療に使用するための本開示の抗体又は抗原結合断片又は免疫コンジュゲート、本開示の抗体又は抗原結合断片又は免疫コンジュゲートを含む医薬組成物が本明細書で提供される。適切には、本明細書に開示される治療方法で使用するための、本開示の抗体若しくは抗原結合断片若しくは免疫コンジュゲート、又は本開示の抗体若しくは抗原結合断片若しくは免疫コンジュゲートを含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0320】
別の態様では、治療に使用するための医薬品、例えば本明細書に開示される治療方法に使用するための医薬品の製造における、本開示の抗体若しくは抗原結合断片若しくは免疫コンジュゲート、又は本開示の抗体若しくは抗原結合断片若しくは免疫コンジュゲートを含む医薬組成物の使用が本明細書で提供される。
配列表
配列番号1、CDRH1、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
TYPIE
配列番号2、CDRH2、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
NFHPYNDDTKYNEKFQG
配列番号3、CDRH3、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
ENYGSHGGFVY
配列番号4、CDRL1、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
RASSSVISSYLH
配列番号5、CDRL2、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
STSNLAS
配列番号6、CDRL3、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
QQYNSYPLT
配列番号17、P238D変異を有するヒトIgG1のFc、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
THTCPPCPAPELLGGDSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号18、重鎖、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAFGYTFTTYPIEWMRQAPGKGLEWIGNFHPYNDDTKYNEKFQGRVTLTVDKSSTTVYMELSSLRSEDTAVYYCARENYGSHGGFVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGDSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号19、軽鎖、分子タイプ:タンパク質、生物:合成構築物
ENQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASSSVISSYLHWYQQKPGKAPKLLIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPLTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【実施例
【0321】
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態を更に例示するために提供されるが、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。それらの例示的な性質によって、当業者に知られている他の手順、方法論、又は技法が代替的に使用され得ることが理解されるであろう。
【0322】
実施例1:例示的な抗PD-1抗体のアゴニスト機能に対するFc受容体相互作用の効果
例示的な抗ヒトPD-1アゴニスト抗体(2015年11月10日発行の米国特許第9,181,342号に記載されるクローン19マウスIgG1)のシグナル伝達効果を、NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを産生するPD-1発現Jurkat T細胞を、以前に記載されたように(Leitner et al.2010)、抗CD3「T細胞刺激因子」(TCS)構築物を発現するBW5147細胞と共に培養するレポーターアッセイにおいて調査した。抗体アゴニズムにおけるFc受容体相互作用の役割を調べるために、TCS構築物のみを発現するBW5147細胞、又はマウスFcγR2Bを発現するようにもトランスフェクトされたBW5147細胞のいずれかでアッセイを行った。
【0323】
96ウェルU底プレート中、ウェル当たり5×10個のJurkatレポーター細胞(Promegaカタログ番号J1250b)を添加し、総体積80μLのアッセイ緩衝液(RPMI 1640+1%FCS)中、5×10個のBW5147細胞、並びにPD-1抗体又はアイソタイプ対照のいずれかと共培養した。抗体の9点希釈系列を、200nMから3分の1希釈で行った。37℃の加湿COインキュベータ内で6時間インキュベートした後、プレートをインキュベータから取り出し、10分間室温に平衡化した。産生されたルシフェラーゼの量を、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を使用して(T細胞活性化の尺度として)定量し、80μlのBio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。CLARIOstar Plus(BMG Labtech)を使用して発光を定量化した。
【0324】
マウスFcγR2Bを発現した刺激因子細胞を使用した場合、PD-1抗体クローン19は、0.13nMのIC50でT細胞活性化の有意な低下を引き起こした(図1A)。Fc受容体を発現しなかった刺激因子細胞を使用した場合、クローン19はT細胞活性化に影響を及ぼさなかった(図1B)。
【0325】
実施例2:例示的な抗PD-1抗体のヒト化
クローン19のVH及びVL配列をヒト生殖系列配列のデータベースにアラインメントし、相同配列をヒト化のためのフレームワークとして選択した。IGHV1-2401又はIGHV7-4-102をVHドメインのフレームワークとして使用し、IGKV1-3901又はIGKV3-1101をVLドメインのフレームワークとして使用した。
【0326】
VH及びVL配列をCDRグラフトアルゴリズムに通して、マウス抗体クローン19から選択されたヒト生殖系列配列にCDRを移入した。構造誘導ヒト化を可能にするために、クローン19マウスVH及びVLのモデルを構築し、構造誘導アプローチを使用して、結合完全性を保持するために、どのフレームワークアミノ酸をヒト化抗体フレームに保持するかを決定した。表1は、生成されたVH及びVL配列を要約する。
【0327】
ヒト化VH及びVLドメインの全ての可能性のある組合せからなる抗体バリアントを作製した。バリアントをヒトIgG1カッパアイソタイプで産生した。ヒト又はカニクイザルPD-1に対するヒト化抗体バリアントの結合親和性及び動態を、Biacore 8K(Cytiva)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定した。ヒト抗体捕捉キット(Cytiva)を使用して、シリーズS CM5センサーチップ(Cytiva)をポリクローナル抗ヒトIgGで被覆した。次いで、抗PD-1抗体をバイオセンサ表面に捕捉し、アイソタイプ対照抗体を参照チャネルに捕捉した。次いで、様々な濃度の単量体可溶性ヒトPD-1細胞外ドメイン又は可溶性カニクイザルPD-1細胞外ドメインを、単一サイクル速度論分析では、緩衝液10mMのHepes、150mMのNaCl、0.005%v/v界面活性剤P20、pH7.4(HBS-P)中の固定化抗体上に37℃で注入した。参照及びブランク減算後に、BiaEvaluation Software(Cytiva)を使用して会合速度及び解離速度を適合させ、解離定数を計算した。表2は、ヒト及びカニクイザルPD-1に対する各ヒト化バリアントの結合Kを示す。
【表1】

【表2】
【0328】
実施例3:FcγR2Bへの結合の選択性に対するFc変異の影響
ヒト化バリアントhumCL19v1をhIgG1、hIgG4又はある範囲の異なるFc変異hIgG1定常領域上で組換え生産し、ヒトFcγR2B又は2つの高度に相同なFcγR2Aアロタイプへのそれらの結合を表面プラズモン共鳴(緩衝液HBS-EP+、pH7.4中37℃で)によって評価した。
【0329】
相互作用は、分析物として組換え発現FcR(細胞外ドメインのみ)を有するBiacore 8Kを使用した表面プラズモン共鳴によって評価した。簡潔には、組換えヒトPD-1細胞外ドメインを、GE Healthcareアミンカップリングキットを使用してCM5 Series Sセンサーチップの全てのチャネルの両方のフローセルに共有結合的に固定化した。次いで、評価すべきhumCL19v1 Fcバリアントを各チャネルのフローセル2に捕捉した(約500~1000個の応答ユニット)。次いで、様々な濃度のFcRを注入し、平衡結合を測定することによって、定常状態の親和性分析を行った。二重参照を使用した(参照Fc1におけるシグナルを差し引き、ブランクの濃度0の注入からのシグナルも差し引く)。K値をラングミュア曲線から計算した(平衡結合を分析物濃度に対してプロットして、最大結合の半分に必要な濃度を決定した)。各バリアントの異なるFc受容体への結合K値を表3に示す。試験したFcバリアントのうち、P238D変異のみが、両方のFcγR2Aアロタイプに対してFcγR2Bへの結合の選択性を高めた。この変異は、FcγR2Bへの結合の中程度の増加及びFcγR2Aアロタイプの両方への結合の有意な減少をもたらした。
【表3】
【0330】
実施例4:P238D変異PD-1抗体は、NFAレポーターアッセイにおけるT細胞活性化の抑制においてIgG1抗体と同様に有効である
P238D変異がhumCL19v1のアゴニスト機能に影響を及ぼすかどうかを評価するために、Jurkatレポーターアッセイを使用した。humCL19v1の非変異IgG1バージョンと、PD1AB6(国際公開第2017/058859号)、PD1B1094(国際公開第2018/226580号)、抗体1(国際公開第2019/168745号)及びANB030(国際公開第2020/247628号)を含む以前に記載されたIgG1アイソタイプアゴニスト抗体の両方とを比較した。これらの抗体は、それぞれの特許出願で提供された配列から組換え生産された。NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを産生するJurkat T細胞を、以前に記載されたような抗CD3「T細胞刺激因子」(TCS)構築物を発現し(Leitner et al.2010)、ヒトFcγR2Bを発現するBW5147細胞と共に培養した。
【0331】
96ウェルU底プレート中、ウェル当たり5x10^4個のJurkatレポーター細胞(Promegaカタログ番号J1250b)を添加し、総容量80μLのアッセイ緩衝液(RPMI 1640+1%FCS)中、5×104個のBW5147細胞、並びにPD-1抗体又はアイソタイプ対照のいずれかと共培養した。単回高用量の各PD-1抗体(10μg/ml)を試験した。
【0332】
37℃の加湿CO2インキュベータ内で6時間インキュベートした後、プレートをインキュベータから取り出し、10分間室温に平衡化した。産生されたルシフェラーゼの量を、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を使用して(T細胞活性化の尺度として)定量し、80μlのBio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。CLARIOstar Plus(BMG Labtech)を使用して発光を定量化した。
【0333】
試験した全てのPD-1抗体は、アイソタイプ対照と比較してT細胞活性化を有意に減少させた。humCL19v1の野生型IgG1又はP238D変異バージョンの間に有意差はなかった(図2A)。
【0334】
別の一連の実験では、最適化されたT細胞レポーターアッセイを使用して、humaCL19v1のP238D変異バージョンの効力を評価した。T細胞レポーターアッセイは、この実施例において上記のアッセイと同様であったが、マウスBW5147刺激因子細胞をヒトHEK293T刺激因子細胞で置き換えた。NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを産生するJurkat T細胞を、以前に記載されたような抗CD3「T細胞刺激因子」(TCS)構築物を発現し(Leitner et al.2010)、ヒトFcγR2Bを発現するHEK293T細胞と共に培養した。
【0335】
4x10^4個のHEK293T刺激因子細胞を、平底96ウェルプレートのウェル当たりに播種した。16時間後、培地を除去し、1ウェル当たり5x10^4個のJurkatレポーター細胞(Promega cat#J1250b)に加えて、PD-1抗体又はアイソタイプ対照のいずれかを、総容量80μLのアッセイ緩衝液(RPMI 1640+1%FCS)中で加えた。抗体の5倍連続希釈を5μg/mlから開始して試験した。
【0336】
37℃の加湿COインキュベータ内で6時間インキュベートした後、プレートをインキュベータから取り出し、10分間室温に平衡化した。産生されたルシフェラーゼの量を、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)を使用して(T細胞活性化の尺度として)定量し、80μlのBio-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を各ウェルに添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。CLARIOstar Plus(BMG Labtech)を使用して発光を定量化した。図2Bに示すように、humCL19v1 P238Dは、NFAT誘導性発光シグナルによって評価した場合、T細胞活性化を最大84%阻害し、IC50は0.0278nMであった。
【0337】
実施例5:P238D変異PD-1抗体は、T細胞活性化アッセイにおける初代T細胞活性化の抑制においてIgG1抗体と同様に有効である
1組の実験では、破傷風トキソイド活性化アッセイを使用して、T細胞活性化に対する例示的抗体の阻害効果を評価した。健康ドナー由来の全ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(96 U底プレートのウェル当たり400,000細胞)を、PD-L1/2遮断抗体(それぞれ5μg/mL)及び1μg/mlのPD-1アゴニスト抗体又はアイソタイプ対照の存在下で破傷風トキソイド(0.5μg/mL)で刺激した。IFNγ放出を、37℃、5%CO2で96時間インキュベートした後の上清のELISAによって評価した。6人のドナーを評価し、試験抗体の非存在下で破傷風トキソイドで活性化した細胞において各ドナーをIFNgレベルに正規化することによってデータを照合した。
【0338】
試験した抗体には、P238D変異したhumCL19v1、humCL19v1の非変異IgG1バージョン、及びPD1AB6(国際公開第2017/058859号)及び抗体1(国際公開第2019/168745号)を含む以前に記載されたIgG1アイソタイプアゴニスト抗体が含まれた。これらの抗体は、それぞれの特許に提供された配列から組換え生産された。
【0339】
試験したドナー全体で平均すると、破傷風トキソイド(TT)は、TTを含まないPBMC培養物と比較してIFNg産生の約2倍の増加を誘導した。IgG1アイソタイプ対照は、IFNg産生をわずかに減少させた。humCL19v1 P238D、humCL19v1 IgG1及びPD1AB6は全て、アイソタイプ対照と比較してIFNg産生を有意に減少させた。humCL19v1の野生型IgG1又はP238D変異バージョンの間に有意差はなかった(図3A)。
【0340】
別の一連の実験では、ウイルスペプチド活性化アッセイを使用して、免疫細胞活性化に対する例示的抗体の阻害効果を評価した。健康ドナー由来の全ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(96 U底プレートのウェル当たり500,000細胞)を、5μg/mLのブレフェルジンA(Biolegendカタログ番号420601)及び1μg/mLのPD-1抗体又はP238D変異hIgG1アイソタイプ対照の存在下、又は抗体なしで、2μg/mLのCEF HLAクラスIペプチド(サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス及びインフルエンザ由来のペプチドのプールされた混合物、Mabtech cat#3618-1)で刺激した。CD8 T細胞集団内のIFNγ産生細胞のパーセンテージを、37℃、5%CO2での16時間のインキュベーション後に細胞内フローサイトメトリを用いて評価した。18人のドナーを評価した。以下の式を使用して各ドナーを正規化することによってデータを照合した:
(抗体の存在下でのサイトカイン産生-非刺激バックグラウンド)/(抗体なしの刺激細胞でのサイトカイン産生-非刺激バックグラウンド)。
【0341】
試験したドナー全体で平均すると、CEFペプチドは、CEFペプチドを含まないPBMC培養物と比較して、CD8 IFNg産生T細胞の4倍の増加を誘導した。humCL19v1 P238Dは、抗体なし対照と比較してIFNgを平均で63%有意に減少させた。(図3B)。
【0342】
実施例6:P238D変異PD-1抗体は抗CD3/28活性化アッセイにおいて初代T細胞活性化を抑制する際にIgG1抗体と同様に有効である
健康ドナー由来の全ヒト末梢血単核細胞(PBMC)(96 U底プレートのウェル当たり100,000細胞)を、1μg/ml PD-1アゴニスト抗体又はアイソタイプ対照の存在下で可溶性抗CD3及び抗CD28抗体(それぞれの最終濃度0.5ng/mL)で刺激した。CD4 T細胞上のCD25発現を、37℃、5%COで72時間インキュベートした後のT細胞活性化のマーカーとしてフローサイトメトリによって評価した。試験抗体の非存在下で抗CD3及び抗CD28で活性化された細胞では、各ドナーをCD25ジオメアンに正規化することによって、複数のドナーからデータを照合した。
【0343】
試験した抗体には、PD1AB6(国際公開第2017/058859号)及び抗体1(国際公開第2019/168745号)を含む以前に記載されているP238D変異humCL19v1及びIgG1アゴニスト抗体が含まれた。これらの抗体は、それぞれの特許に提供された配列から組換え生産された。
【0344】
抗CD3及び抗CD28は、試験した全てのPD-1抗体によって有意に阻害されたCD25発現の有意な増加をもたらした(図4)。
【0345】
実施例7:IgG1アイソタイプ抗PD-1抗体はインビトロで制御性T細胞のADCC殺傷をもたらすが、P238D変異PD-1抗体はそれをもたらさない
インビトロNK細胞脱顆粒アッセイを使用して、ADCCによって制御性T細胞を枯渇させる抗PD-1抗体の可能性を研究した。Miltenyi製のヒトCD4+CD25+CD127dim/-制御性T細胞単離キットII(カタログ番号130-094-775)を使用して、健康ドナーのPBMCからの磁気単離によってTregを精製した。Miltenyi製のヒトNK単離キット(カタログ番号130-092-657)を使用してNK細胞を同様に精製した。
【0346】
20,000個の単離されたNK細胞を、1ug/mlの異なる抗PD-1抗体又はIgG1アイソタイプ対照を含む96ウェルU底プレートにウェル当たりプレーティングした。試験した抗体には、P238D変異したhumCL19v1、humCL19v1の非変異IgG1バージョン、並びにPD1B1094(国際公開第2018/226580号)及び抗体1(国際公開第2019/168745号)を含む以前に記載されたIgG1アイソタイプアゴニスト抗体が含まれた。これらの抗体は、それぞれの特許出願で提供された配列から組換え生産された。
【0347】
ウェル当たり100,000個のTreg細胞を添加して、1:5のエフェクタ:標的比を得た。最後に、抗CD107a抗体(Biolegend#328638)を、モネンシン(Biolegend#420701)及びブレフェルジン(Biolegend#420601)と共に、100分の1の最終希釈のために各ウェルに添加して、それぞれの最終1x濃度を得た。最終ウェル体積は200μlであった。アッセイを5%CO2中37℃で6時間インキュベートした。次いで、アッセイを、CD3、死細胞マーカー、及びCD56を含む抗体パネルで染色し、1%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリによって評価した。生成されたデータをFlowJo V10で分析した。脱顆粒化NK細胞をCD107+CD56+細胞として同定した。死滅Treg細胞を、死滅細胞マーカーに対して陽性のCD3+細胞として同定した。
【0348】
IgG1アイソタイプ抗PD-1抗体は、NK細胞脱顆粒の有意な活性化をもたらした(図5)。P238D変異humCL19v1は、NK細胞の脱顆粒又はTreg死を引き起こさなかった。
【0349】
実施例8:humCL19v1 P238Dは高レベルのPD-L1の存在下でT細胞活性化を更に阻害することができるが、他のPD-1アゴニスト抗体は阻害しない
PD-1レポーター細胞株を使用して、PD-L1が高度に発現される状況では、以前に記載されたPD-1アゴニスト抗体と比較して、P238D変異humCL19v1の影響を評価した。
【0350】
T細胞刺激因子構築物(Promegaカタログ番号J1250a)を発現するPD-L1発現CHOK1細胞を40,000細胞/ウェルで96ウェル平底プレートに播種し、一晩インキュベートしてプレートに接着させた。翌日、上清を除去し、NFAT応答エレメントの制御下でルシフェラーゼを発現する50,000個のPD-1発現Jurkatレポーター細胞をPD-1抗体又はアイソタイプ対照と一緒に添加した。PD-1抗体の用量滴定を、10ug/mlから80μlの総容量まで4倍希釈を用いて評価した。37℃で6時間インキュベートした後、80μlのBio-Gloをウェル当たり添加し、15分間インキュベートし、次いでホタルルシフェラーゼ設定を使用してClariostarプレートリーダーで読み取ってルシフェラーゼ産生を定量した。
【0351】
試験した抗体には、PD1AB6(国際公開第2017/058859号)、PD1B1094(国際公開第2018/226580号)、抗体1(国際公開第2019/168745号)及びANB030(国際公開第2020/247628号)を含む、以前に記載されたP238D変異humCL19v1及びIgG1アイソタイプアゴニスト抗体が含まれた。これらの抗体は、それぞれの特許に提供された配列から組換え生産された。対照として、PD-1遮断抗体ニボルマブのバイオシミラーも評価した。
【0352】
予想通り、ニボルマブは、PD-L1とPD-1との相互作用を遮断することによって、T細胞活性化の有意な用量応答性増加をもたらした。予想外にも、P238D変異型humCL19v1抗体のみが、(PD-1とのPD-L1相互作用によって既に提供された阻害を超えて)T細胞活性化を更に抑制する能力を示した。試験した他のPD-1抗体はいずれもT細胞活性化に影響を及ぼさなかった(図6)。
【0353】
実施例9:humCL19v1 P238Dは、RA PBMC、線維芽細胞共培養物におけるT細胞活性化を阻害することができる
関節リウマチ(RA)患者由来のT細胞に対するPD-1アゴニストの影響を試験するために、RAを有する4名のドナー由来のPBMCを、RA線維芽細胞様滑膜細胞(Tebu-bio#408RAK-05aからのFLS)との共培養環境において活性化した。線維芽細胞などの間質細胞はPD-L1及びPDL-2を発現するので、このアッセイはPD-1のリガンドが存在する生理学的状況を表す(Dezutter-Dambuyant et al.2016)。
【0354】
平らな96ウェルプレートでは、10,000個のFLS細胞を50μlの培地に蒔き、2時間接着させたままにした。次いで、100,000個のPBMCを50μlの培地に添加した。抗PD-1抗体(humCL19v1 P238D又はWO 2019/168745 A1からの抗体1)又はアイソタイプ対照を50μlの培地に1μg/mlの最終濃度で加えた。最後に、抗CD3(クローンOKT3)及び抗CD28(クローンCD28.2)をそれぞれ0.5ng/mlの最終濃度で50μlの培地に添加した。37℃で3日間インキュベートした後、5%CO上清を回収し、サイトメトリービーズアレイ(Biolegend Th17パネル番号741032)によって評価し、細胞をマーカーCD3、CD4、CD25及びICOSを用いてフローサイトメトリによって評価した。アゴニストhumCL19v1 P238Dは、CD25(図7A)及びICOS(図7B)を含むCD4 T細胞上のT細胞活性化マーカーの有意な減少、並びにIFNg(図7C)、IL17F(図7D)及びTNFα(図7E)を含む炎症性サイトカイン産生の有意な減少をもたらした。参照アゴニスト抗体1は、これらの読み出しのいずれにも有意な影響を及ぼさなかった。これらのデータは、humCL19v1 P238Dが、PD-1のリガンドが発現される状況では活性であり得るが、他の記載されたPD-1アゴニストは、これらの状況では無効であり得ることを示唆している。
【0355】
実施例10.humCL19v1 P238Dは、PD-L1のPD-1との相互作用を増強する
PD-1発現細胞へのPD-L1の結合を、種々のPD-1抗体の存在下で評価した。PD-1発現Jurkat T細胞を、PD-1抗体又はアイソタイプ対照と共に、氷上で10μg/mlの濃度で1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、コンジュゲーションキット(Thermofisher番号A20186)を使用してAF647にコンジュゲートさせた漸増濃度のPDL1-Fc(Biolegend番号762506)と共に30分間インキュベートした。次いで、細胞を再度洗浄し、フローサイトメトリによって評価した。humCL19v1 P238Dとプレインキュベートした細胞は、抗体なし、アイソタイプ対照又は他の記載されたPD-1抗体でプレインキュベートした細胞よりもPDL1-Fcでより明るい染色を示した(図8)。ニボルマブとプレインキュベートした細胞は、そのリガンドブロッキングエピトープのために予想されるようにPDL1-Fcへの結合を示さなかった。これらのデータは、PD-1へのhumCL19v1の結合がPD-L1とのその相互作用を増強することを示唆している。
【0356】
実施例11PD-1アゴニストによって下方制御される遺伝子は自己免疫に関連する
実施例1に記載されるものと同様の方法を使用して、クローン19によるPD-1アゴニズムの転写シグネチャーを定義した。10μg/mlの試験抗体を含有する1mlのアッセイ緩衝液(RPMI 1%FCS)中の6ウェル平底プレートの1ウェル当たり1.5百万個のPD-1発現レポーターJurkatを添加し、次いで、1mlのアッセイ緩衝液中で150万個のFcR発現刺激因子細胞を添加した(5μg/mlの最終抗体濃度を生成するため)。静止試料については、150万個のJurkatを2mlのアッセイバッファー中で空のウェルに添加した。全ての条件を6回の技術的反復で実施した。全ての試料を37℃で18時間インキュベートした。次いで、各試料からの80μlの細胞をルシフェラーゼ評価(実施例1に記載)のために白色96ウェルプレートに移し(図9A)、80μlをフローサイトメトリ評価のために96ウェルプレートに移し、次いで、残りの試料刺激因子細胞から、MojosortマウスCD45ナノビーズ(Biolegend#480028)を使用したネガティブ選択によって細胞を枯渇させた。残りの細胞から、80μlをフローサイトメトリ評価のために96ウェルプレートに移してJurkat細胞純度を確認した(図9B)。残りを遠心分離によってペレット化し、上清を吸引し、次いで-80で細胞を凍結した。試料当たり少なくとも20Mリードの配列決定深度目標を有する鎖状ライブラリ調製プロトコルを使用して、GeneWizで試料をRNA抽出及び配列決定した。
【0357】
GeneWizからのRNA配列決定ファイルを、nfコア内のrnaseq(v3.1)Nextflowパイプラインを用いて処理した。FastQCを使用して配列決定の質を確認し、Salmonを使用してヒトゲノムに対する転写物を列挙した(GRCh38 v96)。推定された転写物存在量から遺伝子カウントを生成するためにtximportを使用し、群間で差次的発現を実施するためにDESeq2を使用し(追加の共変量を調整せずに)、群間で発現が有意に高い又は低い遺伝子セットについて遺伝子セット濃縮分析を実施するためにEnrichRパッケージを使用して、その後の全ての分析を実施するために社内の差次的発現パイプラインを使用した。Enrichrを介して様々な異なる遺伝子セットデータベースを使用する。有意に高い又は低い遺伝子セットは、遺伝子FDR正しいp値が0.05未満であったDESeq2分析におけるそれらのlog倍数変化に基づいて定義された群である。アイソタイプ対照の存在下での活性化と比較して、PD-1アゴニストの存在下で活性化された細胞では、1227個の遺伝子が有意に下方制御された(図9C)。この下方制御された遺伝子の集合をEBI GWASカタログにマッピングすることにより、自己免疫疾患、特に血清陽性関節リウマチに関連する遺伝子の濃縮が明らかになった(図9D)。これらのデータは、PD-1経路の抗体アゴニズムが、自己免疫に関連する炎症遺伝子経路を下方制御し得ることを示唆する。
【0358】
実施例12.全身性エリテマトーデスのマウスモデルの治療
SLE疾患モデルの治療における例示的抗体クローン19の有効性を、H2-Ab1bm12レシピエントマウスにおいてヒト化PD-1マウスからの部分的MHC-IIミスマッチ脾細胞の移入によって疾患が誘導される移入モデルにおいて試験した。全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己寛容の破壊並びにクロマチン及びDNAなどの核抗原に対する自己抗体の産生を特徴とする慢性自己免疫疾患である。腎臓及び皮膚を含む様々な器官における免疫複合体の沈着は、多様な臨床症状をもたらす。妊娠可能年齢の女性、及びアフリカ系アメリカ人、アジア人、スペイン人、及びネイティブアメリカ人を含む特定の民族において頻度が増加した人口の約0.1%に発症する可能性がある(Izmirly et al.,2021)。既存の治療法には、抗炎症剤及びコルチコステロイドなどの免疫抑制剤が含まれ、これらは症状の管理に役立ち得るが、疾患の治療法はなく、より効果的な治療法が依然として必要とされている。
【0359】
疾患の改善におけるクローン19の有効性を、SLEのマウスモデルにおいて試験した。疾患が、ドナーbm12マウスからC57BL/6レシピエントマウスへの、又はその逆の未分画脾細胞の移入によって誘導されるSLEの移入モデルが以前に記載されている(Klarquist & Janssen,2015)。Bm12マウスは、MHCクラスII抗原H-2Aにおいて3アミノ酸がC57BL/6マウスと異なる。このMHCミスマッチは、ドナーCD4 T細胞が活性化され、濾胞性ヘルパー細胞(Tfh)に分化し、自己抗体の産生を伴う胚中心形成を推進する同種異系応答をもたらす。抗ヒトPD-1アゴニスト抗体Clone 19の評価を可能にするために、PD-1遺伝子座でヒト化されたC57BL/6マウスにドナー脾細胞を誘導する適合プロトコルを使用した。これらのマウスは、Billur Akkayaの博士論文(Akkaya、2012年)に以前に記載され、特徴付けられている。これは、いくつかの疾患を伝播する免疫細胞(レシピエントのB細胞など)はヒトPD-1を発現しないが、疾患開始T細胞が抗ヒト抗体で標的化可能であるモデルを提供する。
【0360】
PD-1遺伝子座でヒト化したドナーC57BL/6マウスを屠殺し、脾臓をRPMI培地+2%FCS+P/S/Nに採取した。bm12マウスも屠殺して、疾患のない対照用のドナー脾細胞を提供した。5mlシリンジのプランジャーを用いて70μMナイロン細胞ストレーナーでプレスすることによって、脾臓を単一細胞懸濁液に加工した。次いで、細胞をペレット化し、2億細胞/mlの濃度でPBSに再懸濁した。次いで、200μlのこの細胞懸濁液をレシピエントマウス当たり腹腔内注射した(マウス当たり4000万細胞)。成体bm12マウス(Jaxストック番号:00116)をレシピエントとして使用した。雌レシピエントは雌ドナーから細胞を受け、雄レシピエントは雄ドナーから細胞を受けた。試験抗体及び対照抗体を滅菌PBSで1mg/mlに希釈し、IP注射した。ケージ効果の混乱を避けるために、群をケージ間に分配した。デキサメタゾンを飲料水で対照群に投与した(したがって、これらのマウスを同じケージに群分けしなければならなかった)。約0.5mg/kg/日を提供するために、0.2ml/gの平均1日摂取量が想定された。デキサメタゾンを最初に100%エタノール中10mg/mlで再構成し、次いで飲料水で2.5μg/ml(4000分の1)に希釈した。
【0361】
第1の研究では、細胞移入後1及び22日目に、マウスに200μgの試験抗体又はmIgG1アイソタイプ対照を腹腔内投与した。対照群には、1日目から35日目の終了まで飲料水中デキサメタゾンを投与した。血清自己抗体ELISAについては22日目及び研究を終了した35日目に、尾静脈静脈静脈採血前投与によってマウスから採血した。脾臓も収集し、フローサイトメトリによって評価して、ドナーTfh細胞(CD4+CXCR5+ICOS+細胞としてゲートされる)の増殖を含む免疫細胞増殖を定量化した。クローン19は、自己抗体レベル(図10A図10B)、Tfh頻度(図10C)又は脾腫(図10D)によって評価されるように、疾患のほぼ完全な予防をもたらした。効果の大きさは、研究を通して投与されたデキサメタゾンと同等であった。未治療マウス間には高度の変動性があり、いくつかはドナー細胞を生着させることができなかった。効果の大きさは、研究を通して投与されたデキサメタゾンと同等であった。
【0362】
別の実験では、クローン19を異なる時点で投与し、0日目の投与は、ドナーTfHの拡大を再び完全に防止し、疾患発症の他のマーカーを有意に減少させた(図11A~11B)。14日目の投与は、疾患マーカーの部分的な減少をもたらした。28日目(30日目の研究終了前)の投与は、Tfh細胞頻度を含むいかなるマーカーの有意な減少ももたらさなかった。Tfh細胞は高レベルのヒトPD-1を発現するので、クローン19がADCC又はCDCを介して枯渇抗体として作用していた場合、この48時間の時間枠内で有意に枯渇すると予想される。
【0363】
実施例13.PD-1アゴニストはヒト化マウスにおける遅延型過敏反応を阻害する
PD-1遺伝子座でヒト化されたC57BL/6マウスを使用して、自己免疫性皮膚疾患に関連する皮膚チャレンジモデルにおける遅延型過敏反応に対するPD-1アゴニストであるクローン19の影響を評価した。0日目に、マウスを完全フロイントアジュバント(CFA)中のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)で免疫した。エマルジョンは、PBS中のKLH(Sigma)の混合物であり、CFA(BD Biosciences)に1:1の比で添加した。KLHの最終濃度は4mg/mLであった。動物を、1~2つの部位に皮下注射された100μLの免疫化エマルジョンで免疫化した。抗原刺激されていない対照群にはPBSのみを投与した。0日目にも、マウスを、免疫化の1時間前に、10mg/kgの単回用量で、mIgG1アイソタイプ対照(クローンMopc21)又は抗PD-1クローン19 mIgG1のいずれかで腹腔内治療した。抗原刺激されていない対照群にはPBSのみを投与した。陽性治療対照群の動物を、0~5日目から1日1回、3mg/kgの用量のCsAで経口胃管栄養法によって治療した。CsAを調製するために、Sandimmune Neoral溶液(Novartis)を0.5%メチルセルロース400cp(Sigma)で0.3mg/mlに希釈した。免疫化の5日後、マウスを20μLの4mg/mL抗原溶液で(麻酔下で)左耳の耳介にチャレンジした。非チャレンジ対照群には、左耳の耳介に20μLのPBSを投与した。耳チャレンジの1日後、耳の厚さをデジタルキャリパーを使用して測定した。耳の厚さを測定した後、動物を人道的に屠殺し、死後、全群の各動物の左右の耳から生検パンチを使用して直径8mmの円を切断した。正確な分析天秤で耳を秤量した。耳浮腫を、左(抗原刺激)耳重量と右(対照)耳重量との差として評価した。PD-1アゴニストのクローン19は、耳腫大を有意に阻害した(図12A)。
【0364】
別の実験では、マウスを免疫化の0、1時間前に、10、1、0.1、又は0.01mg/kgのクローン19のいずれかで腹腔内治療した。この試験では、CTLA-Ig融合タンパク質(Biolegend、カタログ番号591908)を陽性対照として使用し、0日目の免疫化の1時間前に10mg/kg IPの用量で投与した。10mg/kg又は1mg/kgの用量のクローン19は、CTLA4-Igの効果に匹敵する、耳腫大の有意な阻害をもたらした(図12B)。
【0365】
実施例14.PD-1アゴニストはマウスモデルにおいて移植片対宿主病の症状を改善する
1組の実験では、ヒトPBMC主導移植片対宿主病(GvHD)に対するhumCL19v1 P238Dの影響をインビボで決定した。簡潔には、およそ8~10週齢の雌NSGマウス(JAX Labs、ストック番号05557)に2.4Gyの全身照射を行った(-1日目)。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、ロイコパック(leukopak)(Tissue Solutionsから注文したHemaCare製品)から単離し、1mlのPBS当たり25×10細胞で再懸濁した。マウスに、200μlの細胞懸濁液(5×10個のPBMC)を、照射1日後(0日目)に尾部注射によって静脈内(IV)注射した。0日目、並びに7、14及び21日目にも、マウスを腹腔内注射によって10mg/kgのhumCL19v1 P238D又はP238D変異hIgG1アイソタイプ対照で治療した。マウスを定期的に体重測定し、15%体重減少したとき又は28日後に安楽死させた。研究終了時に、サイトメトリービーズアレイによる炎症性サイトカインの評価のために末梢血を採取した。脾臓を秤量し、ヒトPBMCの肝臓及び脾臓への浸潤を、hCD45、hCD4、hCD8、hCD20、hCD25及びFOXP3に対するマーカーを使用してフローサイトメトリによって定量化した。脾臓及び肝臓におけるCD8及びCD4 T細胞によるIFNgの産生も、細胞内フローサイトメトリによって評価した。
【0366】
上記の手順に従って、humCL19v1 P238Dは、アイソタイプ対照と比較して、脾臓重量(図13A)、脾臓(図13B)及び肝臓(図13C)におけるヒト免疫細胞増殖、並びに血清炎症性サイトカインレベル(図13D)を有意に減少させた。更に、全体的なサイトカインレベルを減少させることに加えて、humCL19v1 P238Dはまた、肝臓及び脾臓におけるヒト免疫細胞の細胞内フローサイトメトリによって評価されるように、細胞当たりのベースでCD4及びCD8サイトカイン産生を減少させた(図13E)。
【0367】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本開示から逸脱することなく、当業者には多数の変形、変更、及び置換が思い浮かぶであろう。本開示を実施する際に、本開示の実施形態に対する様々な代替形態を使用することができることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
【配列表】
2024539457000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、及び鎖を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域が、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3が、それぞれ配列番号1~3に示される配列を含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が、それぞれ配列番号4~6に示される配列を含み、
前記重鎖が、必要に応じてFc領域を含む、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体。
【請求項2】
前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(i)前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されたPD-1とPD-L1との相互作用を増強する
(ii)PD-1とPD-L1との間における前記相互作用が、実施例10に記載されるようなアッセイによって決定される場合に増強される;
(iii)前記抗体が、前記IgG1のFc領域を含む他の点では同じ分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少を誘導し、前記抗体が、他の点では同じ分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する;
(iv)前記PD-1発現制御性T細胞に対する前記ADCCが、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される;
(v)前記抗体が、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、前記PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない;及び/又は
(vi)前記抗体が、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
(a)前記重鎖可変領域が、配列番号のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号13のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む;
(b)前記重鎖が、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含み、前記軽鎖が、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む;及び/又は
(c)前記Fc領域がヒトIgG1に由来する;あるいは
前記Fc領域が、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
(i)前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する
(ii)前記抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が、前記Fc領域に作動可能に連結された前記重鎖可変領域を含み、前記軽鎖が、前記軽鎖可変領域を含む;又は
(iii)前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、前記Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成し、
前記抗体が、ヒト化抗体、ヒト抗体であるか、又はヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される;及び/又は前記抗体が、モノクローナルである、請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、
(i)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、200nM未満、100nM未満、80nM未満、60nM未満又は40nM未満
(ii)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、60nM未満;又は
(iii)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、40nM未満
のKでヒトPD-1に結合し、必要に応じて
前記抗体が、
(iv)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5000nM未満、4000nM未満、2000nM未満、1000nM未満、800nM未満、600nM未満、500nM未満、400nM未満、300nM未満又は200nM未満;
(v)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、600nM未満;又は
(vi)37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、300nM未満
のK でカニクイザルPD-1に結合し、
必要に応じて前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されるヒトPD-1をアゴナイズし、必要に応じて前記免疫細胞が、T細胞である、請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
免疫細胞の表面上に発現されたヒトPD-1への前記抗体の結合が、前記抗体によって結合されていない同等の免疫細胞と比較して、前記細胞の増殖を減少させ
前記細胞がT細胞であり、細胞活性化の前記減少が、
(i)実施例4に記載されるNFATレポーターアッセイによって;
(ii)実施例5に記載の破傷風トキソイド活性化アッセイ又はウイルスペプチド活性化アッセイによって;
(iii)実施例6に記載される抗CD3/28活性化アッセイによって;
(iv)前記免疫細胞がPD-L1発現細胞に近接している(必要に応じて細胞増殖の前記減少が、実施例8に記載されるアッセイによって測定される)ときに;又は
(v)インビトロ又はインビボで
測定される、;及び/又は
細胞増殖の前記減少が、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%若しくは50%であるか、又は細胞増殖の前記減少が、約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、若しくは20%~30%である、請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
前記Fc領域がFcγR2Bに選択的に結合し;
(i)前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM未満、4μM未満、3μM未満、又は2μM未満のK でヒトFcγR2Bに結合し、必要に応じて前記抗体が、少なくとも2μM、1μM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、又は5nMのK でヒトFcγR2Bに結合する;
(ii)前記抗体が、ヒトFcγR2Bに、200nM~5μM、400nM~4μM、500nM~3.5μM、800nM~3μM、1μM~5μM、1μM~4.5μM、1μM~4μM、1μM~3.5μM、1μM~3μM、1μM~2.5μM、又は1μM~2μMのK で結合する;
(iii)前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM若しくは10μMを超える、又は少なくとも15μM、少なくとも50μM、若しくは少なくとも80μMのK でヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する;
(iv)ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、若しくは6:1、少なくとも6:1、又は約6:1であり、必要に応じて前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される;及び/又は
(v)ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、若しくは50:1、少なくとも40:1、又は約40:1であり、必要に応じて前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される、請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
【請求項10】
請求項のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項11】
発現された場合、請求項のいずれか一項に記載の抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項12】
方法であって、
(a発現された場合、請求項1~8のいずれか一項に記載される抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を培養することであって、前記宿主細胞は、前記コードされたアミノ酸配列を発現する、培養することと、
)前記抗体を単離することと、
を含む、方法。
【請求項13】
薬剤とコンジュゲートした請求項のいずれか一項に記載の抗体を含む免疫コンジュゲート。
【請求項14】
治療有効量の請求項のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
疾患又は状態を治療するのに使用するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
容器内に請求項のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートを含むキット。
【請求項17】
請求項のいずれか一項に記載の抗体又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートの使用説明書を含有する情報材料を更に含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
疾患又は状態の治療を必要とする対象の疾患又は状態を治療するための、請求項のいずれか一項に記載の抗体若しくは請求項13に記載の免疫コンジュゲートを含む組成物、又は請求項14に記載の医薬組成物であって、
(i)前記疾患又は状態が、PD-1に関連する疾患又は状態を含む;及び/又は
(ii)前記対象が、ヒト対象である、組成物又は医薬組成物
【請求項19】
前記疾患又は状態が、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、脳マラリア、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、胆嚢疾患、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、IgG4関連疾患、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性線維症、過敏性腸症候群、若年性関節炎、川崎病、白血病、ループス腎炎、ライム関節炎、リンパ腫、リンパ増殖性障害、髄膜脳炎、多発性硬化症、重症筋無力症、骨髄腫、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、視神経脊髄炎、変形性関節症、骨盤内炎症性疾患、天疱瘡、腹膜炎、毛巣嚢胞疾患、多発性筋炎、原発性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、移植拒絶反応、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑及びフォークト・小柳・原田病を含む、請求項18に記載の組成物又は医薬組成物
【請求項20】
対象における免疫応答を下方制御するための、請求項のいずれか一項に記載の抗体若しくは請求項13に記載の免疫コンジュゲートを含む組成物、又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
PD-1を発現する免疫細胞を抑制する方法における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体若しくは請求項13に記載の免疫コンジュゲートを含む組成物、又は請求項14に記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記免疫細胞を前記抗体、前記免疫コンジュゲート、又は前記医薬組成物と接触させることを含む、組成物又は医薬組成物
【請求項22】
前記免疫細胞が、T細胞、B細胞マクロファージ、又は抗原特異的T細胞を含み、必要に応じて前記対象が、ヒト対象である、請求項21に記載の組成物又は医薬組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0367
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0367】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本開示から逸脱することなく、当業者には多数の変形、変更、及び置換が思い浮かぶであろう。本開示を実施する際に、本開示の実施形態に対する様々な代替形態を使用することができることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達をアゴナイズする、抗体と接触させることを含み、前記抗体が、アミノ酸置換を含むFc領域を含み、前記アミノ酸置換が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、前記抗体が、前記親分子と比較して、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する、方法。
(項目2)
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、PD-1に特異的に結合し、前記免疫細胞の表面上の前記PD-1とPD-L1との相互作用を増強する、抗体と接触させることを含む、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法。
(項目3)
前記抗体がFc領域を含み、前記Fc領域がアミノ酸置換を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記アミノ酸置換が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低減をもたらし、前記抗体が、前記親分子と比較して、前記免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高いアゴニスト効果を有する、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記PD-1発現制御性T細胞に対するADCCが、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される、項目1又は4に記載の方法。
(項目6)
前記抗体が、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、前記PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記抗体がナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記抗体が、重鎖可変領域を含む重鎖と、軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、項目3~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含む抗体と接触させることを含み、
(i)前記重鎖が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む重鎖可変領域を含み、
(ii)前記軽鎖が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域を含み、
(iii)前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、プログラム細胞死1(PD-1)を発現する免疫細胞を抑制する方法。
(項目12)
前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、項目8~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記重鎖可変領域が、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む、項目8~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記軽鎖可変領域が、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む、項目8~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む、項目8~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む、項目8~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記重鎖可変領域が、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目8~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記軽鎖可変領域が、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目8~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記重鎖が、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目8~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記軽鎖が、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目8~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記Fc領域がヒトIgG1に由来する、項目3~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記Fc領域が、配列番号17に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目3~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する、項目8~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、前記Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される、項目1~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記抗体がモノクローナルである、項目1~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記抗体が、前記免疫細胞の活性化を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少させる、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗体が、前記免疫細胞の活性化を約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%減少させる、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記免疫細胞が、T細胞、B細胞、又はマクロファージを含む、項目2~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記免疫細胞が抗原特異的T細胞を含む、項目2~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記Fc領域がFcγR2Bに選択的に結合する、項目3~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のK でヒトFcγR2Bに結合する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるK でヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、項目31又は32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのK でヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、項目31又は32に記載の方法。
(項目35)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのK でヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、項目31~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのK でヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、項目31~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である、項目31~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも6:1である、項目31~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約6:1である、項目31~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である、項目31~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも40:1である、項目31~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約40:1である、項目31~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される、項目37~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合し、PD-1シグナル伝達をアゴナイズする、単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
前記Fc領域が、置換を欠く親分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少をもたらすアミノ酸置換を含み、
前記抗体が、前記親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する、単離された抗体。
(項目45)
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
前記抗体は、免疫細胞の表面に発現するPD-1とPD-L1との相互作用を増強する、
単離された抗体。
(項目46)
前記Fc領域が、前記アミノ酸置換を欠く親分子と比較して、前記対象におけるPD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少をもたらすアミノ酸置換を含み、前記抗体が、前記親分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じか又はより高い不可知論的効果を有する、項目45に記載の抗体。
(項目47)
前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、項目44~46のいずれか一項に記載の抗体。
(項目48)
前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含む、項目44~47のいずれか一項に記載の抗体。
(項目49)
前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、項目44~48のいずれか一項に記載の抗体。
(項目50)
プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体であって、前記抗体は、重鎖、軽鎖、及びFc領域を含み、
前記重鎖が重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖が軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号1~3のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が、0~3個のアミノ酸修飾を有する、配列番号4~6のうちの1つ以上に示される配列を含むCDRを含み、
(iii)前記Fc領域が、IgG1に由来し、EUインデックスに従って番号付けされた238位にアスパラギン酸(D)を含む、プログラム細胞死1(PD-1)に特異的に結合する単離された抗体。
(項目51)
前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されたPD-1とPD-L1との相互作用を増強する、項目50に記載の抗体。
(項目52)
PD-1とPD-L1との間における前記相互作用が、実施例10に記載されるようなアッセイによって決定される場合に増強される、項目45、46又は51に記載の抗体。
(項目53)
前記抗体が、前記IgG1のFc領域を含む他の点では同じ分子と比較して、PD-1発現制御性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の減少を誘導し、前記抗体が、他の点では同じ分子と比較して、免疫細胞におけるPD-1シグナル伝達に対して同じ又はより高い不可知論的効果を有する、項目50~52のいずれか一項に記載の抗体。
(項目54)
前記PD-1発現制御性T細胞に対する前記ADCCが、実施例7に記載されるナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように低減される、項目44、46又は53に記載の抗体。
(項目55)
前記抗体が、実施例7に記載のナチュラルキラー細胞活性化アッセイによって決定されるように、前記PD-1発現制御性T細胞に対する有意なADCCをもたらさない、項目44、46、53、又は54に記載の抗体。
(項目56)
前記抗体が、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化しない、項目44、46又は53~55のいずれか一項に記載の抗体。
(項目57)
前記重鎖可変領域が、重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号1~3に示される配列を含む、項目44~55のいずれか一項に記載の抗体。
(項目58)
前記軽鎖可変領域が、軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3が、それぞれ、0~3個のアミノ酸修飾を有する配列番号4~6に示される配列を含む、項目44~57のいずれか一項に記載の抗体。
(項目59)
前記重鎖可変領域がCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を含み、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3がそれぞれ配列番号1~3に示される配列を含む、項目44~58のいずれか一項に記載の抗体。
(項目60)
前記軽鎖可変領域がCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を含み、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3がそれぞれ配列番号4~6に記載の配列を含む、項目44~59のいずれか一項に記載の抗体。
(項目61)
前記重鎖可変領域が、配列番号7~11のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目44~60のいずれか一項に記載の抗体。
(項目62)
前記軽鎖可変領域が、配列番号12~16のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目44~61のいずれか一項に記載の抗体。
(項目63)
前記重鎖が、配列番号18に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目44~62のいずれか一項に記載の抗体。
(項目64)
前記軽鎖が、配列番号19に示される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目44~63のいずれか一項に記載の抗体。
(項目65)
前記Fc領域がヒトIgG1に由来する、項目44~64のいずれか一項に記載の抗体。
(項目66)
前記Fc領域が、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%、又は100%の同一性を有する配列を含む、項目44~62のいずれか一項に記載の抗体。
(項目67)
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、scFv、sc(Fv)2、dsFv、Fab、Fab’、(Fab’)2及びダイアボディからなる群から選択される構造を形成する、項目44~66のいずれか一項に記載の抗体。
(項目68)
前記抗体が、重鎖及び軽鎖を含み、前記重鎖が、前記Fc領域に作動可能に連結された前記重鎖可変領域を含み、前記軽鎖が、前記軽鎖可変領域を含む、項目44~66のいずれか一項に記載の抗体。
(項目69)
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、前記Fc領域に作動可能に連結された単鎖可変断片(ScFv)を形成する、項目44~66のいずれか一項に記載の抗体。
(項目70)
前記抗体が、ヒト化抗体である、項目44~69のいずれか一項に記載の抗体。
(項目71)
前記抗体が、ヒト抗体である、項目44~69のいずれか一項に記載の抗体。
(項目72)
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び多重特異性抗体からなる群から選択される、項目44~69のいずれか一項に記載の抗体。
(項目73)
前記抗体が、モノクローナルである、項目44~72のいずれか一項に記載の抗体。
(項目74)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、200nM未満、100nM未満、80nM未満、60nM未満又は40nM未満のK でヒトPD-1に結合する、項目44~73のいずれか一項に記載の抗体。
(項目75)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、60nM未満のK でヒトPD-1に結合する、項目44~73のいずれか一項に記載の抗体。
(項目76)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、40nM未満のK でヒトPD-1に結合する、項目44~73のいずれか一項に記載の抗体。
(項目77)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、5000nM、4000nM、2000nM、1000nM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM又は200nM未満のK でカニクイザルPD-1に結合する、項目44~76のいずれか一項に記載の抗体。
(項目78)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、600nM未満のK でカニクイザルPD-1に結合する、項目44~76のいずれか一項に記載の抗体。
(項目79)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、300nM未満のK でカニクイザルPD-1に結合する、項目44~76のいずれか一項に記載の抗体。
(項目80)
前記抗体が、免疫細胞の表面上に発現されるヒトPD-1をアゴナイズする、項目44~79のいずれか一項に記載の抗体。
(項目81)
前記免疫細胞が、T細胞である、項目80に記載の抗体。
(項目82)
免疫細胞の表面上に発現されたヒトPD-1への前記抗体の結合が、前記抗体によって結合されていない同等の免疫細胞と比較して、前記細胞の増殖を減少させる、項目44~81のいずれか一項に記載の抗体。
(項目83)
前記細胞がT細胞である、項目82に記載の抗体。
(項目84)
細胞活性化の前記減少が、実施例4に記載されるNFATレポーターアッセイによって測定される、項目82又は83に記載の抗体。
(項目85)
細胞活性化の前記減少が、実施例5に記載の破傷風トキソイド活性化アッセイ又はウイルスペプチド活性化アッセイによって測定される、項目82又は83に記載の抗体。
(項目86)
細胞増殖の前記減少が、実施例6に記載される抗CD3/28活性化アッセイによって測定される、項目82又は83に記載の抗体。
(項目87)
細胞増殖の前記減少が、前記免疫細胞がPD-L1発現細胞に近接しているときに測定される、項目82又は83に記載の抗体。
(項目88)
細胞増殖の前記減少が、実施例8に記載されるアッセイによって測定される、項目87に記載の抗体。
(項目89)
細胞増殖の前記減少がインビトロ又はインビボで測定される、項目82又は83に記載の抗体。
(項目90)
細胞増殖の前記減少が、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%又は50%である、項目82~89のいずれか一項に記載の抗体。
(項目91)
細胞増殖の前記減少が、約10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、10%~15%、20%~50%、20%~40%、又は20%~30%である、項目82~89のいずれか一項に記載の抗体。
(項目92)
前記Fc領域がFcγR2Bに選択的に結合する、項目44~91のいずれか一項に記載の抗体。
(項目93)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM、4μM、3μM、又は2μM未満のK でヒトFcγR2Bに結合する、項目92に記載の抗体。
(項目94)
前記抗体が、少なくとも2μM、1μM、800nM、600nM、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、又は5nMのK でヒトFcγR2Bに結合する、項目92又は93に記載の抗体。
(項目95)
前記抗体が、ヒトFcγR2Bに、200nM~5μM、400nM~4μM、500nM~3.5μM、800nM~3μM、1μM~5μM、1μM~4.5μM、1μM~4μM、1μM~3.5μM、1μM~3μM、1μM~2.5μM、又は1μM~2μMのK で結合する、項目92に記載の抗体。
(項目96)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、5μM又は10μMを超えるK でヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、項目92~95のいずれか一項に記載の抗体。
(項目97)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも15μMのK でヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に結合する、項目92~95のいずれか一項に記載の抗体。
(項目98)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも50μMのK でヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、項目92~97のいずれか一項に記載の抗体。
(項目99)
前記抗体が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される場合、少なくとも80μMのK でヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に結合する、項目92~97のいずれか一項に記載の抗体。
(項目100)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、又は6:1である、項目92~99のいずれか一項に記載の抗体。
(項目101)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも6:1である、項目92~99のいずれか一項に記載の抗体。
(項目102)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Rアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約6:1である、項目92~99のいずれか一項に記載の抗体。
(項目103)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも10:1、15:1、20:1、40:1、又は50:1である、項目92~102のいずれか一項に記載の抗体。
(項目104)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、少なくとも40:1である、項目92~102のいずれか一項に記載の抗体。
(項目105)
ヒトFcγR2Bに対する抗体の結合親和性とヒトFcγR2A(131Hアロタイプ)に対する抗体の結合親和性との比が、約40:1である、項目92~102のいずれか一項に記載の抗体。
(項目106)
前記比が、37℃での表面プラズモン共鳴によって決定される、項目100~105のいずれか一項に記載の抗体。
(項目107)
項目44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
(項目108)
項目44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができるポリペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むベクター。
(項目109)
発現された場合、項目44~106のいずれか一項に記載の抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞。
(項目110)
項目109に記載される宿主細胞を、前記抗体を産生するための条件下で培養することを含む方法。
(項目111)
方法であって、
(a)発現された場合、項目44~106のいずれか一項に記載される抗体を形成することができる重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列をコードする1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を提供することと、
(b)前記コードされたアミノ酸配列を発現する前記宿主細胞を培養することと、
(c)前記抗体を単離することと、
を含む、方法。
(項目112)
薬剤とコンジュゲートした項目44~106のいずれか一項に記載の抗体を含む免疫コンジュゲート。
(項目113)
治療有効量の項目44~106のいずれか一項に記載の抗体又は項目112に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
(項目114)
疾患又は状態を治療するのに使用するための医薬組成物であって、治療有効量の項目44~106のいずれか一項に記載の抗体又は項目112に記載の免疫コンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
(項目115)
容器内に項目44~106のいずれか一項に記載の抗体又は項目112に記載の免疫コンジュゲートを含むキット。
(項目116)
項目44~106のいずれか一項に記載の抗体又は項目112に記載の免疫コンジュゲートの使用説明書を含有する情報材料を更に含む、項目115に記載のキット。
(項目117)
疾患又は状態の治療を必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法であって、治療有効量の項目44~106のいずれか一項に記載の抗体若しくは項目112に記載の免疫コンジュゲートを前記対象に投与すること、又は項目113に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、疾患又は状態の治療を必要とする対象の疾患又は状態を治療する方法。
(項目118)
前記疾患又は状態が、PD-1に関連する疾患又は状態を含む、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記疾患又は状態が、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、アレルギー、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、ANCA血管炎、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、脳マラリア、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、胆嚢疾患、移植片対宿主病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、化膿性汗腺炎、IgG4関連疾患、炎症性腸疾患(IBD)、炎症性線維症、過敏性腸症候群、若年性関節炎、川崎病、白血病、ループス腎炎、ライム関節炎、リンパ腫、リンパ増殖性障害、髄膜脳炎、多発性硬化症、重症筋無力症、骨髄腫、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-AxSpA)、視神経脊髄炎、変形性関節症、骨盤内炎症性疾患、天疱瘡、腹膜炎、毛巣嚢胞疾患、多発性筋炎、原発性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、移植拒絶反応、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑及びフォークト・小柳・原田病を含む、項目117又は118に記載の方法。
(項目120)
前記対象が、ヒト対象である、項目117~119のいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
対象における免疫応答を下方制御する方法であって、前記対象に項目44~106のいずれか一項に記載の抗体を投与すること、前記対象に項目112に記載の免疫コンジュゲートを投与すること、又は前記対象に項目113に記載の医薬組成物を投与すること、を含む方法。
(項目122)
PD-1を発現する免疫細胞を抑制する方法であって、前記免疫細胞を項目44~106のいずれか一項に記載の抗体又は項目112に記載の免疫コンジュゲートと接触させることを含む方法。
(項目123)
前記免疫細胞が、T細胞、B細胞又はマクロファージを含む、項目122に記載の方法。
(項目124)
前記免疫細胞が抗原特異的T細胞を含む、項目122に記載の方法。
(項目125)
前記対象が、ヒト対象である、項目122~124のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】