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特表2024-539459酸性媒体を用いた不溶性溶質付加物の形成方法
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  • 特表-酸性媒体を用いた不溶性溶質付加物の形成方法 図1
  • 特表-酸性媒体を用いた不溶性溶質付加物の形成方法 図2
  • 特表-酸性媒体を用いた不溶性溶質付加物の形成方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】酸性媒体を用いた不溶性溶質付加物の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
C01B25/45 D
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529836
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022050601
(87)【国際公開番号】W WO2023091760
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,523
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518232630
【氏名又は名称】クリスタフェーズ・プロダクツ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ウマカント・プラビンチャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】グラバー,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】グラバー,ジョン・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,クリシュナ・ケー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー,ジェフリー・スコット
(57)【要約】
【課題】可溶性金属の不溶性体への変換方法を改善する。
【解決手段】酸性媒体を使用して不溶性付加物を形成する方法が提供される。化学プロセスは、酸性媒体を使用して、金属溶質の溶解度挙動を変化させる。この方法は、1族の可溶性アルカリ金属を利用することができるが、溶解度の規則で議論されている任意の他の可溶性塩にも拡張することができる。不溶性塩は、2族アルカリ土類金属又は他の不溶性塩であり得る。不溶性付加物はXYZ(Xは、金属水酸化物又は金属酸化物からの可溶性金属であり、Yは、不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物からの不溶性金属であり、Zは、水性酸性媒体からの酸イオンである)という呼称を有することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性付加物を形成する方法であって:
可溶性金属水酸化物及び可溶性金属酸化物からなる群からの可溶性成分を、不溶性金属水酸化物及び不溶性金属酸化物からなる群からの不溶性成分と、水性酸性媒体の存在下で反応させて、不溶性付加物と副生成物である水とを形成するステップを含む方法。
【請求項2】
前記副生成物である水が水相の一部となり、前記水相を前記不溶性付加物から分離して、乾燥不溶性付加物を得るステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不溶性付加物が沈殿し、XYZの一般的呼称を有し、ここで、Xは、前記可溶性成分中の前記金属であり、Yは、前記不溶性成分中の前記金属であり、Zは、前記水性酸性媒体の酸性イオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可溶性金属水酸化物中の前記金属が、ナトリウム、カリウム、及びリチウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記可溶性金属酸化物中の前記金属が、ナトリウム、カリウム、及びリチウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不溶性金属水酸化物中の前記不溶性金属が、カルシウム、ジルコニウム、及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記不溶性金属酸化物中の前記不溶性金属が、カルシウム、ジルコニウム、及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性媒体が、リン酸、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、前記酸性媒体の溶液の凝固点から沸点までの範囲内のプロセス温度で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水性酸性媒体を使用して、不溶性のK:Ca:リン酸付加物を形成する方法であって:
水酸化カリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、水性リン酸の存在下で反応させ、前記不溶性のK:Ca:リン酸付加物と副生成物である水とを形成させるステップを含む方法。
【請求項11】
前記副生成物である水が水相の一部となり、前記水相を前記不溶性付加物から分離して、乾燥不溶性付加物を得るステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記不溶性のK:Ca:リン酸付加物が、一般的名称XYZを有し、ここで、Xは、前記可溶性成分の前記カリウムであり、Yは、前記不溶性成分の前記カルシウムであり、Zは、前記水性酸性媒体のリン酸イオンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記可溶性成分の前記不溶性成分との前記反応が、前記可溶性成分と前記不溶性成分とを前記水性酸性媒体の存在下で密接に混合するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
水性酸性媒体を使用して、不溶性のK:Ca:硫酸付加物を形成する方法であって:
水酸化カリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、水性硫酸
の存在下で反応させ、前記不溶性のK:Ca:硫酸塩付加物と副生成物である水とを形成させるステップを含む方法。
【請求項15】
前記副生成物である水が水相の一部となり、前記水相を前記不溶性付加物から分離して、乾燥不溶性付加物を得るステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記不溶性のK:Ca:硫酸付加物が、一般的名称XYZを有し、ここで、Xは、前記可溶性成分の前記カリウムであり、Yは、前記不溶性成分の前記カルシウムであり、Zは、前記水性酸性媒体の硫酸イオンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記可溶性成分の前記不溶性成分との前記反応が、前記可溶性成分と前記不溶性成分とを水性酸性媒体の存在下で密接に混合するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
酸性媒体を使用して不溶性のNa:Ca:リン酸付加物を形成する方法であって:
水酸化ナトリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、水性リン酸の存在下で反応させ、前記不溶性のNa:Ca:リン酸付加物と副生成物である水とを形成させるステップを含む方法。
【請求項19】
前記副生成物である水が水相の一部となり、前記水相を不溶性付加物から分離して、乾燥不溶性付加物を得るステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記不溶性のNa:Ca:リン酸付加物が沈殿し、一般的な呼称XYZを有し、ここで、Xは、前記可溶性成分の前記ナトリウムであり、Yは、前記不溶性成分の前記カルシウムであり、Zは、前記水性酸性媒体のリン酸イオンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記可溶性成分の前記不溶性成分との前記反応が、前記可溶性成分と前記不溶性成分とを水性酸性媒体の存在下で密接に混合するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連特許の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮特許出願第63/281,523号の利益及び優先権を主張するものであり、その開示及び内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
現在開示されている主題は、水性酸媒体の存在下で可溶性金属を不溶性金属に付加することによる、可溶性金属の不溶性体への変換に関する。
【背景技術】
【0003】
溶解度とは物質が溶解される能力のことである。溶解する物質は溶質と呼ばれる。溶質が溶解する物質は溶媒と呼ばれる。溶質は通常固体で、溶媒は通常液体である。しかし、溶質は気体、液体、固体である場合もある。例として、炭酸飲料では、溶質は気体であり、溶媒は液体である。溶媒は極性又は非極性である。
【0004】
溶質を溶媒と混合すると、3つの結果が得られる。
【0005】
第一に、溶質はある時点まで溶解してから沈殿し始めるか、又はまったく溶解しなくなる。
【0006】
第二に、溶解中の溶液は希薄溶液と呼ばれ、溶質が沈殿の証拠を示し始めると飽和溶液と呼ばれる。
【0007】
第三に、溶質が全く溶解しない場合、それは不溶性溶質と呼ばれる。溶解量は溶質-溶媒系の温度と圧力に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この分野の改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
現在開示されている主題に従って、酸性媒体を使用して不溶性付加物を形成する方法の様々な例示的実施形態が、本明細書に記載されている。
【0010】
ある例示的な実施形態では、XYZという一般名称を有する不溶性付加物を生成するための、酸媒体を使用する方法が提供され、ここでXは、1族アルカリ金属の水酸化カリウムからのカリウムであり、Yは、2族アルカリ土類金属の水酸化カルシウムからのカルシウムであり、Zは、水性リン酸からの酸イオンである。このプロセスは、リン酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含むことができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性の、K:Ca:リン酸付加物を得ることができる。
【0011】
特定の例示的な実施形態において、酸媒体を使用して、XYZという一般的な呼称を有する不溶性付加物を生成するための方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属の水酸化カリウムからの可溶性カリウムであり、Yは、2族アルカリ土類金属の水酸化カルシウムからの不溶性カルシウムであり、Zは、80%硫酸からの酸イオンである。このプロセスは、硫酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含
み得る。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性の、K:Ca:硫酸付加物を得ることができる。
【0012】
特定の例示的実施形態において、酸媒体を使用して、一般的名称XYZを有する不溶性付加物を生成するための方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属中の水酸化ナトリウムからの可溶性ナトリウムであり、Yは、2族アルカリ土類金属中の水酸化カルシウムからの不溶性カルシウムであり、Zは、80%リン酸からの酸イオンである。プロセスは、リン酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含み得る。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性Na:Ca:リン酸付加物を得ることができる。
【0013】
特定の例示的実施形態において、酸媒体を使用して、一般的名称XYZを有する不溶性付加物を生成する方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属の水酸化リチウムからの可溶性リチウムであり、Yは、2族アルカリ土類金属の水酸化カルシウムからの不溶性カルシウムであり、Zは、80%リン酸からの酸イオンである。プロセスは、リン酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含み得る。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性Li:Ca:リン酸付加物を得ることができる。
【0014】
特定の例示的な実施形態では、酸媒体を使用して、XYZという一般的な呼称を有する不溶性付加物を生成する方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属の水酸化カリウムからの可溶性カリウムであり、Yは、4族の水酸化ジルコニウムからの不溶性ジルコニウムであり、Zは、80%リン酸からの酸イオンである。プロセスは、リン酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含み得る。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性K:Zr:リン酸付加物を得ることができる。
【0015】
特定の例示的な実施形態では、酸媒体を使用して、XYZという一般的な呼称を有する不溶性付加物を生成する方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属の水酸化カリウムからの可溶性カリウムであり、Yは、12族の水酸化亜鉛からの不溶性亜鉛であり、Zは、80%リン酸からの酸イオンである。プロセスは、リン酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含み得る。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性K:Zn:リン酸付加物を得ることができる。
【0016】
特定の例示的実施形態において、酸媒体を使用して、一般的名称XYZを有する不溶性付加物を生成するための方法も提供され、ここで、Xは、1族アルカリ金属中の水酸化カリウムからの可溶性カリウムであり、Yは、15族酸化ビスマスからの不溶性ビスマスであり、Zは、80%硝酸からの酸イオンである。このプロセスは、硝酸媒体の存在下で、金属水酸化物又は金属酸化物を密接に混合することを含むことができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性K:(BiOH):硝酸付加物を得ることができる。
【0017】
特定の例示的な実施形態では、水性酸媒体を使用して、一般的な呼称XYZを有する不溶性付加物を生成する方法も提供される。可溶性成分の金属をXと定義する可溶性金属水酸化物又は可溶性金属酸化物と、不溶性成分の金属をYと定義する不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物から出発し、酸性イオンをZと定義する水性酸性媒体を使用して、可溶性成分、不溶性成分、水性酸性媒体を反応させることにより、不溶性付加物XYZが形成される。副生成物として、上記の反応において、付加物に加えて水も生成されるが、副生成物である水は水相の一部となる。その場合、水相は、副生成物である水、酸性媒体、及び付加されていない可溶性成分を含む。更に、水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性付加物が得られる。可溶性成分は、周期表の任意の族からのものでよい。不溶性成分は、周期表の任意の族からのものでよい。酸性媒体は、リン酸、硫酸、硝酸、塩酸
、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を含むがこれらに限定されない、任意の酸である。酸の濃度は、1~100%と幅がある。処理温度は、使用する酸の溶液の凍結温度から沸騰温度まで変化させることができる。したがって、温度は、使用する酸の種類や濃度によって異なる。このプロセスには、水性酸性媒体の存在下で、可溶性成分と不溶性成分を密接に混合すること、不溶性付加物から水を除去すること、沈殿した付加物を加熱して、乾燥した不溶性XYZ付加物を得ることが含まれ得る。
【0018】
特定の例示的な実施形態では、不溶性付加物を形成する方法も提供される。可溶性金属水酸化物及び可溶性金属酸化物からなる群からの可溶性成分を、不溶性金属水酸化物及び不溶性金属酸化物からなる群からの不溶性成分と、水性酸性媒体の存在下で反応させ、不溶性沈殿付加物及び副生成物である水を形成し、その副生成物である水が、水相の一部となる。水相には、副生成物である水、酸性媒体、及び付加されていない可溶性成分が含まれる。水相を不溶性沈殿付加物から分離して、乾燥した不溶性沈殿付加物を得ることができる。不溶性沈殿付加物は、一般にXYZと呼ばれ、Xは、可溶性成分中の金属、Yは、不溶性成分中の金属、Zは、水性酸性媒体の酸性イオンである。不溶性沈殿付加物と水相とを分離することは、不溶性付加物を乾燥させることを含む。可溶性金属水酸化物中の金属は、ナトリウム、カリウム、及びリチウムのうちの少なくとも1つを含む。可溶性金属水酸化物中の金属は、可溶性金属を含む。可溶性金属酸化物中の金属は、ナトリウム、カリウム、及びリチウムのうちの少なくとも1つを含む。不溶性金属水酸化物中の不溶性金属は、カルシウム、ジルコニウム、及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む。不溶性金属水酸化物中の金属は、不溶性金属を含む。不溶性金属酸化物中の不溶性金属は、カルシウム、ジルコニウム、及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む。酸性媒体は、リン酸、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸のうちの少なくとも1つを含む。反応は、酸性媒体の溶液の凝固点から沸点までの範囲内のプロセス温度で起こる。
【0019】
特定の例示的な実施形態では、水性酸性媒体を使用して、不溶性のK:Ca:リン酸付加物を形成する方法も提供される。水酸化カリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、水性リン酸の存在下で反応させ、不溶性付加物と副生成物である水とを形成する。副生成物である水は、水相の一部となることができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性付加物を得ることができる。不溶性のK:Ca:リン酸付加物は、一般的な呼称XYZを有し得るが、ここで、Xは、可溶性成分のカリウムであり、Yは、不溶性成分のカルシウムであり、Zは、水性酸性媒体のリン酸イオンである。可溶性成分と不溶性成分との反応は、可溶性成分と不溶性成分とを、水性酸性媒体の存在下で密接に混合することを含み得る。
【0020】
特定の例示的な実施形態では、水性酸性媒体を使用して、不溶性のK:Ca:硫酸付加物を形成する方法も提供される。水酸化カリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、80%硫酸からの硫酸イオンの存在下で反応させ、不溶性付加物及び副生成物である水を形成する。副生成物である水は、水相の一部となることができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性K:Ca:硫酸付加物を得ることができる。不溶性のK:Ca:硫酸付加物は、XYZの一般的呼称を有し得るが、ここで、Xは、可溶性成分のカリウムであり、Yは、不溶性成分中のカルシウムであり、Zは、酸性媒体の硫酸イオンである。不溶性の沈殿K:Ca:硫酸塩付加物と副生成物である水との分離は、不溶性の沈殿K:Ca:硫酸塩付加物を乾燥させて副生成物である水を除去することを含み得る。可溶性成分と不溶性成分との反応は、可溶性成分と不溶性成分とを、水性酸性媒体の存在下で密接に混合することを含み得る。
【0021】
特定の例示的な実施形態において、水性酸性媒体を使用して、不溶性のNa:Ca:リン酸付加物を形成する方法も提供される。水酸化ナトリウムを含む可溶性成分を、水酸化カルシウムを含む不溶性成分と、水性リン酸の存在下で反応させて、不溶性付加物及び副
生成物である水を形成する。副生成物である水は、水相の一部となることができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性付加物を得ることができる。不溶性Na:Ca:リン酸付加物は、一般的な呼称XYZを有し得るが、ここで、Xは、可溶性成分のナトリウムであり、Yは、不溶性成分のカルシウムであり、Zは、水性酸性媒体のリン酸イオンである。可溶性成分と不溶性成分との反応は、可溶性成分と不溶性成分とを、水性酸性媒体の存在下で密接に混合することを含み得る。
【0022】
特定の例示的な実施形態では、水性酸性媒体を使用して、水酸化カリウムを含む可溶性成分と酸化ビスマスを含む不溶性成分とを、水性硝酸の存在下で反応させて、不溶性沈殿付加物と副生成物である水とを形成する方法も提供される。副生成物である水は、水相の一部となることができる。水相を不溶性付加物から分離して、乾燥した不溶性付加物を得ることができる。不溶性沈殿K:BiOH:硝酸付加物は、一般的な呼称XYZを有し得るが、ここで、Xは、可溶性成分のカリウムであり、Yは、不溶性成分のビスマスヒドロキシであり、Zは、水性酸性媒体の硝酸イオンである。可溶性成分と不溶性成分との反応は、可溶性成分と不溶性成分とを、水性酸性媒体の存在下で密接に混合することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】現在開示されている主題の実施形態による、水性酸性媒体を使用して、不溶性付加物を形成するためのプロセスフロー図である。
図2】現在開示されている主題の実施形態による、不溶性リン酸カルシウムカリウム付加物の形態を特定する、エネルギー分散型分光法(Energy Dispersive Spectroscopy、EDS)の結果がオーバーレイされた、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)の画像である。
図3】現在開示されている主題の実施形態による、エネルギー分散型分光法(EDS)結果の画像である。
【0024】
現在開示されている主題を、好ましい実施形態に関連して説明するが、現在開示されている主題を、その実施形態に限定することを意図するものではないということが理解されよう。逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される、現在開示されている主題の精神及び範囲内に含まれ得る、すべての代替物、修正物、及び等価物を網羅することが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
酸性媒体を使用して不溶性付加物を形成する方法の様々な例示的実施形態が、本明細書に記載されている。
【0026】
付加物と塩の定義
付加物とは、2つの異なる分子が直接付加し、各成分のすべての原子を含む単一の反応生成物がもたらされたものである。通常、こうしたことは、二重結合や三重結合を含む有機分子に生じる。例えば、エチレンからブテンに、アセチレンからヘキセンに、ブテンからオクテンになどである。
【0027】
現在開示されている主題では、付加物の概念を、水性酸性媒体の存在下での無機分子に対する拡張することを議論しているが、それは、このような付加物は、単なる物理的混合やブレンドでは作れないためである。特定の例示的な実施形態では、通常の付加化学からのわずかな逸脱は、金属成分のすべての原子が、使用される水性酸性媒体の塩として保持されることである。金属水酸化物又は金属酸化物から出発し、リン酸を使用する場合、得られる付加物は、リン酸付加物である。硫酸を使用する場合、得られる付加物は、硫酸付
加物である。得られる生成物は、不溶性付加塩であり、その塩としては、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物塩、フッ化物塩などが挙げられる。不溶性付加塩中の金属は、周期表のどの族からでもよい。
【0028】
溶解度の規則
議論される沈殿反応のほとんどは、塩の水溶液を伴う。念のため言うと、塩類とは、水に溶解している、例えばCl-のような非金属アニオン(水酸化物-OH-、硫酸塩-SO4 2-、リン酸塩-PO4 3-、硝酸塩-NO3 -、炭酸塩-CO3 2-のような分子アニオンを含む)にイオン結合し、例えばNa+、Ca2+、Cu2+のような金属カチオン(又は本明細書で取り上げる非金属分子イオンであるアンモニウム-NH4+)からなる化合物である。塩類は、水に溶けるものと溶けないものとに分けることができる。どの塩が水に溶けるかを決定するために使用できる溶解度の規則がある。
【0029】
イオン性固体塩が水に溶ける能力の、溶解度挙動の様々な態様を論ずるために、11の溶解度規則が開発されてきた。これらのルールは、化学反応に関与する物質の最終状態を決定するために作業する際に役立つ。
【0030】
以下に、塩に関する11個の溶解度規則と、その使用方法について説明する。
【0031】
これらの規則は、リストに記載されている順に優先して従うべきものであるが、それは、ある規則が他の規則と矛盾するようであれば、リストにおいて前に来た規則に従うべきであるからである。このリストの物質は元素名で示されている。
【0032】
(1.)I族元素(Li+、Na+、K+、Cs+、Rb+)を含む塩は、可溶性である。この規則への例外はほとんど存在しない。アンモニウムイオン(NH4+)を含む塩もまた、可溶性である。
【0033】
(2.)硝酸イオン(NO3-)を含む塩は、一般に可溶性である。
【0034】
(3.)Cl、Br、Iを含む塩は、一般的に可溶性である。この規則の重要な例外は、Ag+、Pb2+、(Hg22+のハロゲン化物塩である。したがって、AgCl、PbBr2、Hg2Cl2は、不溶性である。
【0035】
(4.)ほとんどの銀塩は、不溶性である。AgNO3とAg(C232)は、一般的な銀の可溶性塩で、それ以外は、ほとんどが不溶性である。
【0036】
(5.)ほとんどの硫酸塩は、可溶性である。この規則の重要な例外としては、CaSO4、BaSO4、PbSO4、Ag2SO4、SrSO4が挙げられる。
【0037】
(6.)ほとんどの水酸化物塩は、わずかに可溶性である。I族元素の水酸化物塩は、可溶性である。II族元素(Ca、Sr、Ba)の水酸化物塩は、わずかに可溶性である。遷移金属とAl3+の水酸化物塩は、不溶性である。したがって、Fe(OH)3、Al(OH)3、Co(OH)2は、不溶性である。
【0038】
(7.)CdS、FeS、ZnS、Ag2Sなど、遷移金属の硫化物のほとんどは、高度に不溶性である。ヒ素、アンチモン、ビスマス、鉛の硫化物もまた、不溶性である。
【0039】
(8.)炭酸塩は、不溶性であることが多い。II族炭酸塩(CaCO3、SrCO3、BaCO3)は不溶性であり、FeCO3やPbCO3も同様である。
【0040】
(9.)クロム酸塩は、不溶性であることが多い。例としては、PbCrO4及びBaCrO4が挙げられる。
【0041】
(10.)Ca3(PO42やAg3PO4などのリン酸塩は、不溶性であることが多い。
【0042】
(11.)BaF2、MgF2、PbF2のようなフッ化物塩は、不溶性であることが多い。
【0043】
観察できるように、どの規則も溶質の挙動に変化をもたらす方法について論じておらず、イオン性金属塩の挙動についてのみ論じている。論じられている塩としては、塩化物塩、塩素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物塩、硫化物塩、炭酸塩、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物塩などが挙げられる。イオン性金属塩としては、1族、2族、遷移金属、貴金属、本質的には、周期表のガンマ金属が挙げられる。
【0044】
注目すべきは、上に示した118個の元素のうち、91個が金属であるということである。
【0045】
溶解度の規則に基づくと、アルカリ金属の塩が極性媒体に可溶性であるだけでなく、溶解度の態様は、他のいくつかの金属にも拡張される。
【0046】
特定の例示的な実施形態において、金属溶質の溶解度挙動を変化させるために水性酸性媒体を使用する化学的プロセスが、本明細書において提供される。このようなプロセスは、1族の可溶性アルカリ金属に限定されるものではなく、溶解度規則の下で議論された他のあらゆる可溶性塩に拡張することができる。同様に、不溶性塩は、2族アルカリ土類金属を超えて存在することができる。
【0047】
特定の例示的な実施形態において、形成される不溶性付加物は、一般的な呼称XYZに従って記載することができ、ここでXは、金属水酸化物又は金属酸化物からの可溶性成分であり、Yは、不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物からの不溶性成分であり、Zは、水性酸性媒体からの酸イオンである。不溶性付加物は、溶液が液体のままであれば、どのような温度及び圧力でも形成することができる。付加物形成プロセスは、可溶性塩を不溶性塩でロックインして、不溶性付加物を形成するものである。例示的な一実施形態では、大気圧下、32°Fから300°Fまでの範囲の温度で、不溶性付加物が形成され得る。更に別の例示的な一実施形態では、不溶性付加物は、室温で形成され得る。別の温度範囲としては、溶液の凝固点から溶液の沸点までが考えられる。例として、リン酸カルシウムカリウム、硫酸カルシウムリチウム、ヒドロキシ硝酸ビスマスカリウム、リン酸ジルコニウムカリウム、及びリン酸亜鉛カリウムについてここで説明するが、現在開示されている主題はこれらの付加塩に限定されるものではない。生成した不溶性付加塩は、分離及び乾燥工程を経て抽出することができる。液-固分離の方法は、濾過、蒸発、沈降、デカンテーション、遠心分離、又は他の同等の方法を含む。乾燥の程度と速度は、溶液から溶媒を蒸発させるために使用する温度に依存する。温度は、溶液の凝固点から沸点までの範囲であり得る。他の例示的な実施形態では、温度は、室温から300°Fまで変化し得る。他の例示的な実施形態では、乾燥温度は、室温から600°Fまで変化し得る。
【0048】
XYZの一般的呼称を有する、結果として得られる付加反応生成物を形成するために使用される反応物の同一性に応じて、化学式ABCを有する反応生成物が結果として生じ得るが、ここで、用語A、B及び/又はCは、例えばAefgのように、それに関連する添え字を有することがあり得る。この文脈において、「e」、「f」、及び「g」は、当業者には理解されるように、それぞれ有理整数であってよい。
【0049】
実験的テスト
可溶性水酸化物又は可溶性酸化物と、不溶性水酸化物又は不溶性酸化物とを、水と物理的に混合しても、付加物は生じない。
【0050】
現在開示されている主題を裏付けるために、実験が行われた。実験の詳細は、付加物がどのように生成するかを示している:
【0051】
(1.)水酸化カリウムと水酸化カルシウムとを、リン酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「K:Ca:リン酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:2A族:リン酸の不溶性付加物を生成する)。
【0052】
(2.)水酸化カリウムと水酸化カルシウムとを、硫酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「K:Ca:硫酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:2A族:硫酸不溶性付加物を生成する)。
【0053】
(3.)水酸化ナトリウムと水酸化カルシウムとを、リン酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「Na:Ca:リン酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:2A族:リン酸不溶性付加物を生成する)。
【0054】
(4.)水酸化リチウムと水酸化カルシウムとを、リン酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「Li:Ca:リン酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:2A族:リン酸不溶性付加物を生成する)。
【0055】
(5.)水酸化カリウムと水酸化ジルコニウムとを、リン酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「K:Zr:リン酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:4族:リン酸不溶性付加物を生成する)。
【0056】
(6.)酸化亜鉛と水酸化カリウムとを、リン酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「K:Zn:リン酸不溶性付加物」を生成する。(これは、1A族:12族:リン酸不溶性付加物を生成する)。
【0057】
(7.)水酸化カリウムと酸化ビスマスとを、硝酸水溶液の存在下で密接に混合することにより、「K:(BiOH):硝酸塩不溶性付加物」を生成する。(これは、グループ1A:グループ15:硝酸不溶性付加物を生成する)。
【0058】
実験:物理的混合による付加物の不形成が、確認される
1族の金属水酸化物又は金属酸化物の可溶成分を、周期表の各族の不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物の不溶成分と、緊密に激しく混合した。金属水酸化物の可溶成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが挙げられ、金属水酸化物の不溶成分には、水酸化カルシウム(2族)、水酸化ジルコニウム(4族)、水酸化亜鉛(12族)が挙げられた。
【0059】
各混合物の水溶性を試験したが、結果は、混合物の各々について可溶性成分はすべて完全に溶解し、付加物は生じなかったということを示した。使用した不溶性成分だけが、溶解しなかった。これは、可溶性金属成分と不溶性金属成分とを物理的に混合しただけでは、付加物を形成しないということを意味する。その代わり、使用した可溶性金属成分は溶解し、使用した不溶性金属成分は溶解しない。
【0060】
実験:化学的付加は、酸性媒体を使う
ステップ1:この手順には、可溶性成分を不溶性成分と、酸性媒体の存在下で密接に混合することを含み得る。
【0061】
本明細書で開示された主題の、上記付加に使用された酸は、リン酸と硫酸であったが、有機又は無機の他の酸、特に硝酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸を使用することができる。
【0062】
引用した実験では、使用した可溶性成分と不溶性成分を、引用した各酸と、非常に高い酸濃度で密接に混合した。その結果、ペーストが形成された。
【0063】
不溶性付加物XYZの製造には、2つのステップを用いた後処理が行われた。まず、副生成物としての水と余分な酸性媒体とを除去するために、ろ過を使った分離工程を行った。このセットアップではフィルターを使用したが、エバポレーター、沈殿槽、デカンター、遠心分離機、又は他の同等の装置を使用して、この操作を達成することができる。第二に、混合され、結果として得られた沈殿固形物を、乾燥温度まで乾燥した結果、不溶性の付加物XYZが生成した。
【0064】
上記の手順により、以下のXYZ付加物を製造した:
【0065】
(i)K:Ca:リン酸塩;(ii)K:Ca:硫酸塩;(iii)Na:Ca:リン酸塩;(iv)Li:Ca:リン酸塩;(v)K:Zr:リン酸塩;(vi)K:Zn:リン酸塩;及び(vii)K:(BiOH):硝酸塩
【0066】
ステップ2:不溶性付加物による可溶性付加物の量の計算
出発物質である、可溶性と不溶性の水酸化物又は酸化物は、それぞれ化学式に基づく分子量を持っている。実験に使用した化合物の質量を、以下の表1A~1Gの右欄に示す:
【0067】
付加物形成実験の概要を示す表
【0068】
【表1】
【0069】
表1-A:この実験では、リン酸カルシウム21.65グラムと当初予想されていた不溶性塩に対し、不溶性塩が、75.93グラム増加した。この実験では、97.58グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、リン酸カリウムがリン酸カルシウムと付加反応を起こしてリン酸カルシウムカリウム付加物を形成したため、不溶性になったリン酸カリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0070】
【表2】
【0071】
表1-B:この実験では、硫酸カルシウム14.99グラムと当初予想された不溶性塩に対し、不溶性塩が82.67グラム増加した。この実験では、97.66グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、硫酸カリウムが硫酸カルシウムと付加反応を起こして硫酸カリウムカルシウム付加物を形成したため、不溶性になった硫酸カリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0072】
【表3】
【0073】
表1-C:この実験では、リン酸カルシウム25.01グラムと当初予想されていた不溶性塩に対し、不溶性塩が、73.87グラム増加した。この実験では、98.88グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、リン酸ナトリウムがリン酸カルシウムと付加反応を起こしてリン酸カルシウムナトリウム付加物を形成したため、不溶性になったリン酸ナトリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0074】
【表4】
【0075】
表1-D:この実験では、リン酸カルシウム25.01グラムと当初予想されていた不溶性塩に対し、不溶性塩が70.66グラム増加した。この実験では、95.67グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、リン酸リチウムがリン酸カルシウムと付加反応を起こしてリン酸カルシウムリチウム付加物を形成したため、不溶性になったリン酸リチウ
ムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0076】
【表5】
【0077】
表1-E:この実験では、リン酸ジルコニウム20.13グラムと当初予想されていた不溶性塩に対し、不溶性塩が、72.25グラム増加した。この実験では、92.38グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、リン酸カリウムがリン酸ジルコニウムと付加反応を起こしてリン酸ジルコニウムカリウム付加物を形成したため、不溶性になったリン酸カリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0078】
【表6】
【0079】
表1-F:この実験では、リン酸亜鉛39.99グラムと当初予想されていた不溶性塩に対し、不溶性塩が、48.51グラム増加した。この実験では、88.50グラムの不
溶性塩付加物が得られた。従って、リン酸カリウムがリン酸亜鉛と付加反応を起こしてリン酸亜鉛カリウム付加物を形成したため、不溶性になったリン酸カリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0080】
【表7】
【0081】
表1-G:この実験では、ヒドロキシ硝酸ビスマス55.50グラムと当初予想された不溶性塩に対し、不溶性塩が、34.67グラム増加した。この実験では、90.17グラムの不溶性塩付加物が得られた。従って、硝酸カリウムが硝酸ビスマスと付加反応を起こして、硝酸ビスマスヒドロキシカリウム付加物を形成したため、不溶性になった硝酸カリウムから、追加の重量が発生したと結論づけられる。
【0082】
これらの可溶性金属水酸化物又は可溶性金属酸化物を、不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物と、例えば硝酸、リン酸、硫酸などの酸性水溶液中で反応させると、不溶性リン酸付加物又は不溶性硫酸付加物が生成する。不溶性付加物の形成に加えて、付加反応の工程で、水も生成した。生成した水は、水性酸性媒体と混合する。要約すると、付加反応の完了後、水相には生成した水、付加されていない可溶性塩、及び過剰の水性酸が含まれる。
【0083】
可溶性塩の理論上の分子量と不溶性塩の理論上の分子量とは、得られる不溶性付加物とは異なる。
【0084】
もし付加が起こらなければ、可溶性金属水酸化物又は可溶性金属酸化物は完全に溶解し、不溶性金属水酸化物又は不溶性金属酸化物は沈殿する。
【0085】
例えば、水酸化カリウムはリン酸カリウムに変換され、水酸化カルシウムはリン酸カルシウムに変換される。付加反応が起こらなければ、リン酸カリウムはすべて水に溶け、リン酸カルシウムだけが沈殿する。しかし、沈殿した量がリン酸カルシウムの量より多ければ、その過剰分は、カリウムにカルシウムが付加したことによるものである。その過剰量を付加物の総重量で割ったものが、付加された可溶性金属塩の割合である。
【0086】
表1A~1Gは、上述の各付加物の結果を要約したものである。
【0087】
これらの実験は、付加物の形成を検証するために行ったものであり、当業者であれば、処理条件を変えることによって形成される付加物の重量を変更することができる。
【0088】
ステップ3:付加物の溶解度
10グラムの不溶性付加物を、300mLの水と15分間よく混合した。析出した物質を濾過し、300°Fで乾燥させた後、再秤量した。その結果、材料の損失はなく、製造された付加物が、実際に100%不溶性であるということが示された。
【0089】
更に、融点、密度、SEM(走査型電子顕微鏡)とEDS(エネルギー分散型分光法)を組み合わせて行い、生成した付加物の元素組成を検証した。図2を参照すると、EDS層状SEM画像は、記載された実施形態によって形成された、結果として得られたリン酸カルシウムカリウム付加物を示す。図2は、カリウム、カルシウム、リン酸塩が非晶質マトリックスに組み込まれ、不溶性の付加物を形成していることを示している。同質性の程度に差がある様々なエリアが存在する。この画像は、カリウム、カルシウム、リン酸塩がほぼ均質に混在していることを示しており、このことは、これらの成分からなる不溶性付加物に期待されるものである。本明細書の図3を参照すると、EDSは、不溶性リン酸カルシウムカリウム付加物の元素組成である、カルシウム、カリウム、リン、酸素に関連するスペクトルを示している。本明細書の図3に示すこのSEM画像は、上述の水溶性試験で保留された10グラムのサンプルである。
【0090】
理論上の可溶性塩と理論上の不溶性塩の融点、密度、溶解度は、結果として得られる不溶性付加塩のそれらとは異なる。SEM-EDSの結果の非晶質の均質性、結果として得られる付加物の不溶性、付加物の異なる融点、付加物の異なる密度の組み合わせはすべて、結果としての付加物が、予想される2つの理論塩の単純な組み合わせとは異なる混合物であることを示している。
【0091】
付加物の融点:形成された付加物は、個々の対応する塩の融点とは異なる融点を示す。本明細書の表2がそれを示している。
【0092】
【表8】
【0093】
付加塩の密度:形成された付加塩は、2つの個々の対応する塩の密度とは異なる密度を示す。本明細書の表3がそれを示している。
【0094】
【表9】
【0095】
酸化ビスマスと硝酸の反応化学は、多くの硝酸塩のバリエーションが存在するため、非常に複雑である。密度測定に基づくと、この実験で形成された付加塩は、分子量1461.98のヒドロキシ硝酸ビスマスである。
【0096】
本明細書で使用される範囲において、一連の項目の後に「のうちの少なくとも1つ」という語句があり、項目のいずれかを「及び」又は「又は」という用語で区切っている場合は、リストの各メンバー(すなわち、各項目)ではなく、リスト全体を修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という表現は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、及び/又は項目のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む意味を許容する。一例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」という表現はそれぞれ、Aのみ、Bのみ、又はCのみ;A、B、及びCのうちの任意の組み合わせ;及び/又はA、B、及びCのそれぞれのうちの少なくとも1つを指す。本明細書で使用される場合、「A及び/又はB」という用語は、要素A単独、要素B単独、又は要素A及びBを一緒にしたものを有する実施形態を意味する。
【0097】
開示された主題は、多くの実施形態に関連して詳細に説明されてきたが、このような開示された実施形態に限定されるものではない。むしろ、開示された主題は、これまでに記載されていないが、開示された主題の範囲に相応する、任意の数の変形、変更、置換、または同等のアレンジを組み込むように変更することができる。
【0098】
更に、開示された主題の様々な実施形態が説明されてきたが、開示された主題の態様は、説明された実施形態の一部のみを含み得ることを理解されたい。従って、開示された主題は、前述の説明によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものと見なされる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】