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特表2024-539460拡張後方散乱光ファイバネットワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】拡張後方散乱光ファイバネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20241018BHJP
【FI】
H04B10/2507
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529839
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022046353
(87)【国際公開番号】W WO2023091250
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,643
(32)【優先日】2021-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/352,823
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】フェダー,ケネス,エス.
(72)【発明者】
【氏名】クレンプ,トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック,ポール,エス.
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AH02
5K102AH26
5K102AH27
5K102KA01
5K102KA42
5K102PA01
5K102PH01
5K102PH13
5K102PH43
(57)【要約】
限定された拡張散乱帯域幅(例えば、C帯域(従来の帯域)における約15ナノメートル(15nm)の波長範囲にわたる約10デシベル(10dB)散乱帯域幅)に限定される拡張後方散乱領域を含むシステムである。信号伝送波長(またはテレコム信号は超)は、拡張散乱帯域幅の外側の少なくとも1ナノメートル(1nm)である波長で光信号を搬送する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送システムであって、
光テレコム信号を送信する送信機であって、前記光テレコム信号は、テレコム信号波長を有する、送信機と、
前記送信機に光学的に結合された光増幅器であって、前記光増幅器は、前記光テレコム信号を増幅する、光増幅器と、
電気通信用途に適したテレコム光ファイバであって、前記テレコム光ファイバは40キロメートル(40km)より長い、テレコム光ファイバと、
前記テレコム光ファイバに光学的に結合された拡張散乱光ファイバであって、前記拡張散乱光ファイバは、前記光伝送システムの到達距離を拡張する、拡張散乱光ファイバと、
前記拡張散乱光ファイバにおける帯域内拡張散乱領域であって、前記帯域内拡張散乱領域は、拡張散乱帯域幅を有し、前記帯域内拡張散乱領域は、減衰(αe,dB)を含み、前記帯域内拡張散乱領域は、単位長さ当たりの後方散乱(ρ)をさらに含み、前記ρは、レイリー散乱ρより大きく、前記帯域内拡張散乱領域は後方散乱拡張(Re,dB)をさらに含み、前記Re,dBは、10・log10(ρ/ρ)に等しい、帯域内拡張散乱領域と、
前記拡張散乱光ファイバにおける帯域外領域であって、前記帯域外領域は、前記拡張散乱帯域幅の外側にある波長を備え、前記テレコム信号波長は、前記帯域外領域内にあり、前記帯域外領域は、帯域外散乱を示し、前記帯域外散乱は、前記帯域内拡張散乱領域内の前記ρ未満であり、前記帯域外領域は、前記光テレコム信号を伝搬する、帯域外領域と、
前記拡張散乱光ファイバに光学的に結合された受信機であって、前記受信機は、前記光テレコム信号を受信する、受信機とを備える、光伝送システム。
【請求項2】
前記拡張散乱帯域幅は、15ナノメートル(15nm)未満の波長範囲に及ぶ、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記テレコム信号波長は、約1550ナノメートル(nm)を中心とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記拡張散乱帯域幅は、約1535nm以上約1549nm以下である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記拡張散乱光ファイバはさらに、Re,dBに比例し、αe,dBに反比例して前記光伝送システムの前記到達距離を拡張する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記Re,dBは、約15デシベル(15dB)以上約24dB以下である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記帯域外散乱はレイリー散乱と実質的に同じである、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記拡張散乱光ファイバは、長さが約1kmより大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
光伝送システムであって、
長さが40キロメートル(40km)を超えるテレコム光ファイバと、
前記テレコム光ファイバに光学的に結合された拡張散乱ファイバであって、前記拡張散乱ファイバは、前記光伝送システムの到達距離を延長する、拡張散乱光ファイバと、
前記拡張散乱ファイバにおける帯域内拡張散乱領域であって、前記帯域内拡張散乱領域は、帯域内拡張散乱を示し、前記帯域内拡張散乱領域は、拡張散乱帯域幅を有し、前記帯域内拡張散乱は、レイリー散乱よりも大きい、帯域内拡張散乱領域と、
前記拡張散乱ファイバにおける帯域外領域であって、前記帯域外領域は、前記拡張散乱帯域幅の外側にあり、前記帯域外領域は、テレコム信号波長でテレコム信号を伝搬し、前記帯域外領域は、前記帯域内拡張散乱よりも小さい帯域外散乱を示し、前記帯域外領域は、前記光テレコム信号を伝搬する、帯域外領域とを備える光伝送システム。
【請求項10】
前記帯域内拡張散乱領域は、第1の帯域内拡張散乱領域であり、前記帯域内拡張散乱は、第1の帯域内拡張散乱であり、前記拡張散乱帯域幅は、第1の拡張散乱帯域幅であり、
前記拡張散乱ファイバにおける第2の帯域内拡張散乱領域であって、前記第2の帯域内拡張散乱領域は、前記第1の帯域内拡張散乱領域と異なり、前記第2の帯域内拡張散乱領域は、第2の帯域内拡張散乱を示し、前記第2の帯域内拡張散乱領域は第2の拡張散乱帯域幅を有し、前記第2の帯域内拡張散乱は、レイリー散乱よりも大きい、第2の帯域拡張散乱領域をさらに備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記拡張散乱帯域幅は、15ナノメートル(15nm)未満の波長範囲に及ぶ、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記テレコム信号波長は、約1550ナノメートル(nm)を中心とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記拡張散乱帯域幅は、約1535nm以上約1549nm以下である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記帯域内拡張散乱領域は、減衰(αe,dB)を含み、前記帯域内拡張散乱領域は、単位長さ当たりの後方散乱(ρ)をさらに含み、前記ρは、レイリー散乱ρRよりも大きく、前記帯域内拡張散乱領域は、後方散乱拡張(Re,dB)をさらに含み、前記Re,dBは10・log10(ρ/ρ)に等しい、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記拡張散乱光ファイバは、さらに、Re,dBに比例し、αe,dBに反比例して前記光伝送システムの前記到達距離を拡張する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記Re,dBは、約15デシベル(15dB)以上約24dB以下である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記帯域外散乱は、レイリー散乱と実質的に同じである、請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
前記帯域外散乱は、未処理のファイバにおける散乱と実質的に同じである、請求項9に記載のシステム。
【請求項19】
前記拡張散乱光ファイバは、長さが約1kmより大きい、請求項9に記載のシステム。
【請求項20】
前記テレコム信号波長は、前記拡張散乱帯域幅の外側の少なくとも1ナノメートル(1nm)である、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許仮出願63/281,643(“Systems, Methods, and Assemblies for Enhanced Back-scattering Fiber in Telecom Networks,”、2021年11月20日、発明者:Westbrook)および米国特許仮出願63/352,823(“Enhanced Back-scatter Fibers for Sensing in Telecom Network,”、2022年6月16日、発明者:Westbrook)に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して光ファイバに関し、より詳細には、光ファイバネットワークに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の知識は、光ファイバ内の散乱(レイリー散乱など)が電気通信信号を劣化させ、それによって信号品質に損失を課すことを教示している。したがって、光ファイバにおける信号品質および到達距離(すなわち、特定の光チャネルの有効伝送長)を改善するために、当技術分野は、通常、増加した散乱から離れることを教示する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、電気通信ネットワークにおける拡張後方散乱ファイバに関連するシステムおよび方法を提供する。
【0005】
簡潔に述べると、アーキテクチャにおいて、システムの一実施形態は、限られた拡張散乱帯域幅に限定される拡張後方散乱領域を備える。信号伝送帯域幅(またはテレコム信号帯域幅)は、拡張散乱帯域幅の外側の少なくとも1ナノメートル(1nm)である1つまたは複数の波長で光信号を搬送する。
【0006】
他のシステム、デバイス、方法、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明の検討によって、当業者に明白となるであろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴および利点は、本説明内に含まれ、本開示の範囲内であり、添付の請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照してより良く理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。さらに、図面において、同様の参照番号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0008】
図1A】拡張後方散乱ファイバの一実施形態におけるマルチパス干渉(MPI)および減衰の効果を示すグラフである。
図1B】拡張後方散乱ファイバの一実施形態のファイバ到達距離の延長を示すグラフである。
図2】分散センシングシステムにおけるMPIを示すブロック図である。
図3】裸ファイバの一実施形態の反射信号電力(Psignal,dB(z))を示すグラフである。
図4】拡張後方散乱ファイバの一実施形態のPsignal,dB(z)を示すグラフである。
図5A】拡張後方散乱ファイバを有する電気通信システムの一実施形態を示すブロック図である。
図5B】拡張後方散乱ファイバの一実施形態について、ファイバ長の関数としてプロットされた光時間領域反射率測定(ОTDR)電力を示すグラフである。
図5C】拡張後方散乱ファイバの一実施形態の様々な波長における反射および光信号対雑音比(ОSNR)損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
分散型音響センシング(DAS)は、石油およびガス施設、セキュリティシステム、レールライン、パイプラインなどの大きな線形資産を監視するための重要な新しいツールとして現れている。DASはまた、電気通信システム(またはテレコムシステム)を、伝送線路付近の外乱(例えば、トラフィック、建設、地震)を検出することができる分散センサに変換するためにも使用されている。したがって、DASは、電気通信ネットワークならびにそれらが使用されるインフラストラクチャの健全性に関する情報を提供する可能性を有する。
【0010】
DASは、新世代のコヒーレント光時間領域反射率測定(ОTDR)インタロゲータによって可能になった。コヒーレントОTDRインタロゲータは、光ファイバを通って伝搬する光パルスの分散後方散乱を測定する。テレコムネットワークを評価するために一般に使用される従来のОTDR技術とは異なり、コヒーレントОTDRは、狭い線幅の低位相雑音レーザをОTDRへの入力として使用する。追加の位相変調器および振幅変調器は、様々なフェージングアーチファクトを低減して、よりロバストな信号出力を可能にする。
【0011】
音響信号は、音響波からのシリカマトリックスの圧縮によりファイバに沿った光路を変化させ、これによりファイバに沿った光学長がОTDRパルス毎に変化する。連続トレースを比較することにより、ファイバの長さに沿った音響波伝搬の記録が可能になり、典型的な空間分解能は数メートル(m)であり、音響周波数範囲は典型的にはミリヘルツ(mHz)~キロヘルツ(kHz)の範囲である。
【0012】
そのようなシステムの1つの例示的な制限は、コヒーレントОTDRトレースを生成するためにレイリー後方散乱に依存することである。典型的な低損失ファイバでは、レイリー後方散乱は、5×10-8/mまたは5×10-11/mmのオーダーであり、10・log10(5×10-8)は-73、10・log10(5×10-11)は-103であるから、しばしば、ファイバの-73デシベル/メートル(dB/m)または-103デシベル/ミリメートル(dB/mm)と呼ばれる。後方散乱信号の弱さは、空間分解能、音響信号対雑音比(SNR)、システム到達距離および周波数応答等の種々のDASパラメータを制限する。
【0013】
このタイプの制限に対処し、かつ光学SNR(ОSNR)と音響SNRの両方を(時々、桁違いに)増加させるために、所定の帯域幅にわたって空間的に連続した準レイリー後方散乱を示し、0.5dB/キロメートル(km)未満であるバックグラウンド減衰を有する、所定の長さの拡張後方散乱ファイバが使用される。いくつかの例では、これらの所定の長さの拡張散乱ファイバ(例えば、長さ数km)は、40kmを超えるテレコムファイバの減衰後でさえも、DAS信号を完全に回復している。当業者は、例えば、Westbrook et al.,“Enhanced Optical Fiber for Distributed Acoustic Sensing Beyond the Limits of Rayleigh Back-Scattering”、iScience、23(6),p101137(2020);Lalam et al.,“Phase-Sensitive Optical Time Domain Reflectometry with Rayleigh Enhanced Optical Fiber”、IEEE Access, 9, PP. 114428-114434(2021);Wellbrook et al.,“Perimeter Intrusion Detection with Backscattering Enhanced Fiber Using Telecom Cables as Sensing Backhaul,”In Optical Fiber Communication Conference(pp. M2F-5), Optica Publishing Group(2022)の参照によって、「拡張後方散乱ファイバ」が意味するものを完全に理解する。したがって、拡張後方散乱ファイバの短縮された記述のみが文脈のために提供される。また、本開示全体を通して、別段に明示的に示されない限り、または文脈によって、拡張後方散乱ファイバはまた、簡潔にするために「拡張散乱ファイバ」または「拡張ファイバ」として指定される。
【0014】
引き続き、これらの限られた長さ(例えば、数キロメートル(km))の拡張散乱ファイバは、DAS信号を(少なくとも部分的に)復元するのに効果的であることが示されているが、直感的でも明らかでもないのは、テレコム用途に適した長さ(例えば、数十キロメートル)の連続的な拡張散乱ファイバが許容可能なテレコム信号を搬送できるかどうかである。これは、テレコム用途が油田監視用途(またはDASが採用された他の状況)と著しく異なるためである。例えば、ファイバテレコムでは、光ファイバの長さははるかに長く、それによって、他の監視用途と完全に重複しない問題を導入する。地震監視のための典型的なセンサは、わずか数キロメートルであり、ファイバの敏感な部分にわたる非常に大きな信号拡張から利益を得る。しかしながら、テレコムでは、伝送長はしばしば40kmを超え、それによって、減衰、潜在的なマルチパス干渉(MPI)、クロストーク、または電気通信にとって重要な他の問題の考慮を必要とする。
【0015】
テレコム用途では、スパン全体が拡張散乱を必要とするかどうか、または拡張散乱がDAS信号が低いスパン内の特定の領域に制限されるべきかどうかを考慮することも重要である。例えば、パッシブ光ネットワーク(PОN)では、光スプリッタにおいて大きな減衰が生じるが、センシング用途における関心構造は、光スプリッタの後の伝送経路に位置することが多い。さらに、分散センサシステムにおける到達距離の概念は、光ファイバ通信システムにおける到達距離の概念と同じではない。テレコムでは、到達距離は、信号がスパンの初めにのみ発せられる場合、スパンの終わり(経路の終端受信端)における信号の完全性によって決定される。比較すると、分散センシングでは、信号はファイバの全長から取得され、したがって、たとえテレコムシステムにおける受信機のようなインタロゲータがただ1つの離散的な位置に配置されているとしても、ファイバの全長にわたる信号拡張を考慮することが重要である。
【0016】
わかりやすさのために、従来のセンシング用途(より高い減衰を犠牲にしてさえも分散センシングが起こり得る長さを増加させることが望ましい)とは異なり、本開示は、テレコム用途に適した長いファイバスパンにわたってSNRを増加させることを試みる。これを行うために、テレコム信号に対する拡張後方散乱の影響を理解する必要がある。例えば、MPIノイズは、(望ましくない)テレコム信号に対するダブルレイリー後方散乱の影響から生じ得ることがよく知られている。したがって、連続的に拡張後方散乱を有するファイバにおいて、そのような望ましくない効果は、レイリー様後方散乱拡張の増加と共に増加すると予想される。
【0017】
望ましくない影響を軽減するために、開示されるシステムのいくつかの実施形態は、拡張後方散乱をある範囲の波長(または限られた帯域幅)に限定し、テレコム信号は、散乱帯域幅の外側で搬送および伝搬される。好ましい実施形態では、電気通信信号搬送波波長は、10dB散乱帯域幅の外側の少なくとも1ナノメートル(1nm)であり、これは、テレコム信号に対する無視できるОSNR損失をもたらす。所望の信号を伝送し、拡張後方散乱を明確に所定の帯域幅に限定するための好ましい範囲を見出す際に、本開示はまた、散乱帯域幅内で伝搬する信号と関連付けられるОSNR損失を測定し、さらに、実際のテレコム信号に対する散乱帯域幅の影響を特徴付ける。わかりやすさのために、いくつかの実施形態は、光ファイバの複数の異なるまたは重複部分において、複数の拡張散乱帯域幅を含む。本開示から理解され得るように、単一の拡張散乱帯域幅を有する光ファイバであっても、その帯域幅は、異なる波長を中心とし、ならびに異なる波長範囲(または異なる帯域幅)を有することができる。さらに、当業者は、本開示がまた、スプリッタの後に拡張散乱ファイバを伴うスプリッタを伴うPОNを意図することを理解するであろう。他の同様の変形または構成も、本開示の範囲内で意図される。
【0018】
技術的問題に対する広範な技術的解決策(すなわち、後方散乱帯域幅を制限し、テレコム信号を10dB散乱帯域幅の外側の少なくとも1nmに位置決めすること)を提供したので、ここで、図面に示される実施形態の説明を詳細に参照する。いくつかの実施形態がこれらの図面に関連して説明されるが、本開示を本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態に限定する意図はない。それよりむしろ、すべての代替形態、修正形態、および均等物を網羅することが意図される。
【0019】
拡張散乱ファイバにおける透過軸がz軸として指定される場合、位置zにおける後方散乱信号電力は、
【数1】
である。
ここで、Pinは入力電力であり、ρは単位長さ当たりの反射率(拡張後方散乱を考慮する)であり、Δzは後方散乱を生じさせるファイバの長さであり、αは単位長さ当たりのファイバ減衰である。後方散乱拡張の効果を理解するために、信号はz=0における後方反射電力に正規化される。レイリー散乱のみが存在し、ρがレイリー散乱の単位長さ当たりの後方反射を表す場合、z=0における後方散乱信号電力は、
【数2】
である。
【0020】
レイリー散乱を超える追加の散乱損失を有する裸ファイバの場合、ρはまた、後方散乱を増加させるために任意の処理が適用される前の単位長さ当たりの後方散乱を表すことができる。理解できるように、典型的にはρ≧ρである。レイリー散乱が散乱体のインコヒーレント(incоherent)和からのものである限り、レイリー後方散乱の電力は後方散乱ファイバの長さに比例する。z=0におけるレイリー散乱に対する信号電力をデシベル(dB)形式で表すと、
【数3】
である。
ここで、αe,dB=10・log10(e)αは、単位長さ当たりのdB単位のファイバ減衰であり、Re,dB=10・log10(ρ/ρ)は、裸ファイバ散乱に対する単位長さ当たりのdB単位の後方散乱拡張(通常、テレコムシステムに通常見られる低損失ファイバにおけるレイリー散乱によって支配される)である。分かるように、レイリー散乱のみが存在する場合、ρ=ρおよびRe,dB=0dBである。
【0021】
拡張後方散乱ファイバに基づくセンサの最大到達距離は、以下によって表される。
【数4】
ここで、Pmin,dBは有効なDAS測定のための最小信号電力レベルであり、Pmin,dBはΔzに依存する。図1Aの下部は、Pmin,dBのΔz依存性を示す1つの例示的な実施形態を示す。図1Aはまた、拡張後方散乱ファイバの一実施形態におけるMPIおよび減衰の効果を示す。
【0022】
具体的には、図1Aは、拡張後方散乱ファイバ120、150と比較して裸ファイバ110、140を有するRe,dB=11dBを示す。SNRMPI,dB=10・log10(|E|/|EMPI|)は、dB単位のSNRを表し、EMPIは、反射電場へのMPI寄与を表し、Eは、MPIの非存在下での反射電場を表す。図1Aの実施形態100では、裸ファイバ減衰はαdB=0.24dB/kmとして示され、拡張後方散乱ファイバ減衰はαe,dB=0.35dB/kmとして示される。
【0023】
図1Aの特定の実施形態100の場合、最小必要電力レベル130は、入力電力に対して-20dBと定義され、SNRMPI,dBの最小必要値は15dBに設定される。最小SNRおよび電力レベルは、減衰およびMPIに基づくセンサ到達距離の計算を可能にする。図1Aに示すように、後方散乱拡張が増加すると、MPIおよび減衰曲線は反対方向に移動する。注目すべきは、拡張後方散乱ファイバにおいて観察される反射率(ρ)が、ファイバ全体の長さにわたって裸ファイバにおいて観察される反射率(ρ)よりも大きいという事実である。
【0024】
図1B(拡張後方散乱ファイバの一実施形態のためのファイバ到達距離155の延長を示すグラフ105である)に示すように、到達距離は、Re,dB=0dBを有する標準ファイバの既存の長さに、zreach,attenuationで拡張散乱ファイバを加えることによって延長することができる。ここでも、裸ファイバ145及び拡張ファイバ155の効果の両方が示され、Pmin,dB135は-20dBに設定される。また、伝送経路の長さに沿ったSNR125が示され、SNRmin,MPI115は15dBに設定される。到達距離の延長(zreach,extension)は、以下のように表される。
【数5】
【0025】
テレコムシステムの主な目標の1つは、到達距離を最大にすることである。したがって、式4および式5の組合せから示されるように、Pmin,dBおよびSNRmin,MPIの所望の値または許容可能な値が提供される場合(図1Aおよび図1B(まとめて図1))に示すように)、Re,dBおよびαe,dBの適切な値を使用して最大到達距離を計算する。Re,dBおよびαe,dBがファイバの長さに沿って直線的に変化する場合、最大到達距離は、4つのパラメータ、すなわちRe,dB、Re,dBの傾き、αe,dB、およびαe,dBの傾きから計算可能である。最大化および最小化方法は当業者に公知であるので、最大値および最小値を計算する方法の議論は本明細書では省略される。具体的には、既存の光ファイバ内の信号がPmin,dBに低下した場合、(式5からの)長さzreach,extensionの既存の光ファイバに拡張散乱ファイバを追加すると、図1Bに示すように、追加された拡張散乱ファイバにおいて、Re,dBに比例し、αe,dBに反比例する到達距離の拡張がもたらされる。
【0026】
いくつかの実施形態では、15nm波長範囲にわたる10dB拡張散乱帯域幅を伴う拡張後方散乱ファイバについて、拡張散乱帯域幅外の1nmである信号が、OSNRにおける1dB未満の損失を伴って伝送されることができる。
【0027】
減衰に加えて、到達距離の他の制限は、MPIまたはzの前の複数の反射からのクロストークに由来する。拡張散乱(または拡張)が増加するにつれて、MPIは対応して増加し、それによってDAS信号品質を低下させる。MPIの効果は、反射スプライス、ファイバループミラーおよび離散ファイバブラッググレーティング(FBG)を含む離散反射器を有するファイバアレイについて以前に検討されている。近似として、連続的拡張散乱ファイバは、離散反射体のセットとしてモデル化される。図2は、分散センシングシステム200(連続的な拡張を複数の離散的な反射器としてモデル化する)におけるMPIを示すブロック図である。具体的には、分散センシングシステム200は、インタロゲータ220に光学的に結合された光ファイバ210を備える。
【0028】
図2のモデルによれば、単一の反射点230は、zの距離に位置し、N個の反射点(点として示される)は、ファイバに沿って均等に分布し、それぞれ、Δzだけその最近傍から離される。3つの反射点z240、z250およびz260は、MPIの効果を示すように選択され、EおよびEは、インタロゲータ220に戻される信号の強度を表す例示的な電場である。
【0029】
MPIは、ファイバ210の全反射率に依存し、全体平均単反射反射率(各反射点において減衰がなく、単位長さ当たりの反射率が一定であると仮定する)は、
【数6】
である。
ここで、ρは単位長さ当たりの反射率を表し、zはファイバに沿った位置を表し、Nはファイバに沿った反射点の総数を表す。より一般的には、平均反射率Rtotal(z)は、
【数7】
によって表される。
ここで、ρ(z)は単位長さ当たりの反射率を表し、α(z)は減衰を表し、両方ともファイバの長さに沿って変化し得る。ρ(z)とα(z)が共に定数である場合、式7は、
【数8】
と簡略化される。
【0030】
特定のDASインタロゲーションスキームとは無関係にMPIを測定するために、MPIは、MPIが存在しない場合の反射電界E図2)と複数のバウンス(bounce)からのEMPI(例えば、図2のE)との比を使用して計算される。他のEMPIに対するEの比を使用することによって、ファイバ長と、散乱拡張と、MPIノイズに対する信号の平均比との間の関係が提供される。連続的または準連続的な拡張後方散乱を有するファイバ長におけるMPIの効果は、減衰の効果と比較される。また、MPIの最低次近似は、MPIの完全解と比較され、これは、MPIの最低次近似が完全MPI解の適切な推定を提供することを示す。
【0031】
MPIへの最低次寄与は、3つの反射から生じる。位置zにおける単一反射(またはバウンス)からの相対電場振幅は、
【数9】
である。
ここで、ε(z)=E(z)/Einであり、Ein=√Pinは入力電場の大きさであり、φ(z)は位置zで散乱された光の相対光位相であり、複素値反射係数は、
【数10】
で表される。
【0032】
全てのMPI経路が(定義上)同時に到達するので、減衰が位置zから独立し、分散が無視できる場合(すなわち、群速度が位相速度に等しい)、単一の散乱と3つの散乱の比は影響を受けないままである。言い換えれば、MPIの効果は、一定の減衰による影響を受けないままである。
【0033】
ファイバにおける位置zからの散乱は、N=z/Δz離散散乱にわたる離散和としてモデル化される。3つのバウンス散乱の3つの位置は、i≦Nおよびj∈{1,2,3}の整数に対してz=Δz・iにである。位置zにおける単一のバウンスの場合、全経路長(前方および後方)は2zである。したがって、z、zおよびzにおける3つのバウンスについて、全経路長は、z+(z-z)+(z-z)+z=2(z-z+z)である。z=z-z+zの場合、N=i-i+iおよびε(z)は、
【数11】
のように書くことができる。
ここで、反射強度はすべて同じであると仮定され、式9中の2つの和は、すべての可能な3つのバウンス経路を記述するンN/2フェーザ(phasor)の単一の和として書き直すことができる。また、全ての位相が無相関である場合、式9の係数の|ε(z)|の期待値は、それらの数の平方根、すなわち(N/2)1/2=N/√2としてのスケールであり、これは、円形均一分布の合計の係数が数学的な意味でレイリー分布を有するためである。
【0034】
/2の位相のうちのいくつかが相関する場合(図2のz1およびz3を交換することは、同じフェーザ積を有する2つの異なる3つのバウンス経路に対応するため)、1/√2の係数は1オーダーの係数ηとなり、式6および式9は、
【数12】
となる。
これは、(減衰がない場合)2zの経路長を有する信号からのMPIが、zまで反射される総電力でスケーリングされることを示す。式6および式10に基づき、1つのバウンス対3つのバウンス電場の比として定義されるSNRは、
【数13】
として表される。
図1Aに示すように、拡張は、この電界比SNRMPI,dBを、後方散乱強度が増加するのと同じ量Re,dBだけ減少させる。
【0035】
MPIによるセンサ到達距離は、次いで、MPIの最小許容レベル(SNRmin,MPIによって表される)に関連してもよく、到達距離は、
【数14】
として表される。
【0036】
当業者であれば理解できるように、Pmin,dBおよびSNRmin,MPIの所与の値に対して、Re,dBおよびαe,dBの値は、式4および式12が同じ値を表し、到達距離が最大となるように存在する。言い換えれば、(減衰の関数として)式4の到達距離が(MPIの関数として)式12の到達距離と実質的に同じになるようにファイバ特性が選択される場合、最大到達距離が得られる。この例は、図1Aを参照して示され、式4および式12の計算値は、互いの20パーセント(20%)以内である。さらに、Re,dBおよびαe,dBについて複数の許容可能な値がある場合、これらの2つの値は(それらの対応する長さとともに)到達距離を最大化するように調整することができる。
【0037】
戻り信号をローカル発振器と干渉するものなどの電場に敏感なインタロゲーション方法に対して、(上記の)MPI SNR定義が適切であり得る。しかしながら、戻り信号の強度に依存する他のインタロゲーション方法の場合、上記で挙げたSNRメトリックは、単一および複数のバウンス電場の(電場振幅ではなく)電力を関連付けるために、2の係数で乗算される必要があり得る。
【0038】
3つのバウンス効果がMPIを支配するが、高次(例えば、5つのバウンス、7つのバウンスなど)は無視できるという仮定は、光ファイバに沿った連続反射について結合モード方程式(CME)を解くことによって実証することができる。具体的には、式8からの反射係数q(z)および群速度vとともに、前方伝搬電場Eおよび後方伝搬電場Eのための時間領域CMEは、
【数15】
として表される(アスタリスク記号*は複素共役を表す)。
これは、|q|<<2π/λ(λはシステムの動作波長を表す)という仮定の下でのマクスウェルの方程式の結果であり、これは拡張レベルRe,dBおよび離散化グリッドサイズΔzを合理的に近似する。t=2z/vとし、上記の表記を維持すると、E(z)はE(0,2z/v)となり、ε(z)=E(z)/Ein=E(0,2z/v)/Einとなる。
【0039】
式13の非対角成分(反射)および対角成分(伝搬)が分離される場合、時間伝達行列を使用する近似解は、
【数16】
であり、
【数17】
であり、
【数18】
である。
偶数回のバウンス(例えば、0、2、4、6など)が前方散乱を表し、奇数回のバウンス(例えば、1、3、5、7など)が後方散乱を表す限り、式14は、全ての双方向散乱次数(任意の数のバウンスを意味する)を含む。より高い反射次数(3、5、7など)は、センサMPIに対応し、一方、一次(すなわち、単一のバウンス)は、順方向に消滅する非対角成分を有する単一のバウンスCME解(または第1のボルン近似)を受ける非摂動信号を表すことに留意されたい。
【数19】
式15は、より高い反射次数を意図的に無視し、したがって、α=0における減衰を消滅させるための電力を保存しない。対照的に、CMEの左下の要素が等しい場合、式13は0に設定され、行列が指数関数的に適用され、次いで、結果として生じる伝達行列は、ユニタリ(またはエネルギー保存)により近く、これは、高次反射における電力が正しく無視されないことを意味する。
【0040】
ファイバの近位端z=0における反射信号E (1)(0,t)は、光ファイバの長さに沿って生じる単一のバウンスの重ね合わせである。発射ディラックインパルス(Dirac impulse)の場合、E (1)(0,t)-δ(t)、すなわち近位端における後方反射信号は、ファイバに沿った後方散乱係数の減衰コピーであり、E (1)(0,2z/v)-q(z)e-αzとなる。一般的に、MPI信号は、式13からの全バウンス解E(0,t)および式14からの単一のバウンス信号E (1)(0,t)との差である。したがって、
【数20】
である。
【0041】
相対反射電力Psignal,dB(z)は、
【数21】
である。
また、裸ファイバの一実施形態の反射信号電力(Psignal,dB(z))を図3に示し、拡張後方散乱ファイバの一実施形態のPsignal,dB(z)を図4に示す。具体的には、図3は、αdB=0.2dB/kmの裸ファイバの長さL=50kmについて、0<z<L(330とラベルされる)、L<z<2L(340とラベルされる)および2L<z<3L(350とラベルされる)についての単一のバウンス反射310、MPI320およびベストフィット曲線のプロットを示す。比較のために、図4は、Re,dB=11dB、ρ=5・10-5/kmおよびαdB=0.3dB/kmを有する拡張ファイバの長さL=50kmについて、0<z<L(430)、L<z<2L(440)および2L<z<3L(450)についての単一のバウンス410、MPI420およびベストフィット曲線のプロットを示す。図3および図4のMPIは、図1Aにも示されている。単純な3つのバウンスの式10と比較して、予測値|ε(z)|/ρ=Δze-2αzρ/ρとの一致は優れており、例えば、η=0.9868は裸ファイバであり、η=0.936は拡張ファイバである。
【0042】
図3および図4はまた、MPIに起因するゴースト(ghost)反射を示す。t>2NΔz/v=2L/v(z>Lを意味する)の場合、MPIレベルは、いくつかのMPI反射位置がファイバ長Lを越えるために減少する。したがって、MPIレベルは端部、すなわちz=Lで最も高くなり、ファイバの端部のすぐ先にある(ゴースト)反射のレベルから求めることができる。したがって、MPI効果は、光ファイバのOTDRトレースから推定することができる。例えば、OTDRトレースの端部をちょうど越えるゴースト反射の電力がファイバの端部におけるOTDR反射よりも20dB小さい場合、MPI電力比は20dBであると推定されてもよく、電場比SNRMPI,dBは10dBである。図3および図4に示すように、高次ゴースト反射は多項式で近似することができる。定量的に、図3および図4に示すように、Psignal(z)は、0<z<Lについては3つのバウンスMPI~(zρe-2αzと競合し、L<z<2Lについては~([2L-z]ρe-2αzと競合し、2L<z<3Lについては5つのバウンスMPI~([3L-z]ρe-2αz)と競合し、ここで比例定数は1に非常に近い。
【0043】
これらのセンシング特性を念頭において、本開示は、拡張後方散乱ファイバが、テレコム用途に適した長さスケールにわたってテレコム信号を搬送する実施形態をさらに教示する。テレコム環境における拡張後方散乱ファイバの適用性を実証するために、実験用ファイバリンクを図5Aに示すように構成した。具体的には、図5Aは、OFS Fitel,LLCから入手可能なAllWave(登録商標)ULL光ファイバ等の超低損失(ULL)ファイバ545に光学的に結合される拡張後方散乱ファイバ555を備える電気通信システム500の一実施形態を示すブロック図である。具体的には、10kmの長さの拡張後方散乱ファイバ555は、100kmのULLファイバに光学的に結合され、それによって、電気通信ファイバリンクについて110kmの現実的な伝送長を表す。他の実施形態では、拡張後方散乱ファイバ555は、およそ1kmの長さから電気通信ファイバリンク全体の長さの間のどこかとすることができることを理解されたい。
【0044】
また、拡張後方散乱ファイバ555は、テレコム光ファイバ545の受信端に光学的に結合されるように示されるが、他の実施形態では、拡張後方散乱ファイバ555は、テレコム光ファイバ545の送信端に光学的に結合され、さらに他の実施形態では、拡張後方散乱ファイバ555は、テレコム光ファイバ545のスパンのどこにでも光学的に結合されることを理解されたい。言い換えれば、拡張後方散乱ファイバ555とテレコム光ファイバ545との光結合は、テレコム光ファイバ545の一端または他端に限定されず、光結合は、(一端にあるか、中間にあるか、またはテレコム光ファイバ545に沿った任意の他の位置にあるかにかかわらず)テレコムリンク内の任意の位置に位置決めすることができる。
【0045】
引き続き図5Aを参照すると、システム500は、この特定の実施形態の目的のために、200ギガビット毎秒(200Gb/s)16直交振幅変調(QAM)光送信機であることが示されている送信機505を備える。送信機505は、有限長の送信ファイバ515によってファイバ増幅器525(エルビウム(Er)ドープファイバ増幅器(EDFA)または他のタイプの利得ドープまたは希土類ドープ増幅器として示される)に光学的に結合される。増幅器525の出力は、光アイソレータ535を介して伝送ファイバ545に光学的に結合される。ファイバリンクの他端において、拡張散乱ファイバ555の出力において、システム500は、拡張散乱ファイバ555からの信号をデマルチプレクサ(DeMux)585に伝達する他の光アイソレータ565および光増幅器575を備える。DeMux585から、信号は、200Gbの16QAM受信機として示される受信機595に提供される。
【0046】
図5Bは、図5Aの拡張後方散乱ファイバ555の実施形態のファイバ長510の関数としてプロットされたOTDR電力530を示し、図5Cは、図5Aの拡張後方散乱ファイバの実施形態の様々な波長における反射およびOSNR損失を示す。
【0047】
図5Bに示すように、裸ファイバ545ピグテール(pigtail)のレイリー散乱レベルは、0kmの長さ(拡張後方散乱ファイバ555の開始540を表す)で明らかである。散乱拡張540は、y軸値がOTDRに対して2で割られているので、実際の値の半分である。したがって、拡張のレベルは、図5Bに示される9dBの増加から2倍にされるべきである。
【0048】
図5Cは、長さ10kmの連続的な拡張散乱ファイバ555のスペクトル512を示す。散乱帯域幅は、約15nmの波長(λ)範囲502(または帯域幅)に及ぶ。いくつかの実施形態では、波長範囲は、約1535nm~約1549nmにわたり、Re,dBは、約10nmの波長範囲にわたって約15dB~約24dBの間で変動する。拡張散乱帯域幅の外側では、約1550nmの中心波長において、拡張散乱ファイバ555は、未処理の裸ファイバ(散乱拡張が適用されていない裸ファイバを意味する)の後方散乱に近い後方散乱を示す。その結果、帯域外領域(拡張散乱帯域幅の外側を意味する)の通信容量は、標準的な伝送ファイバ(UULファイバ545など)と同様であることが示される。他のOTDR測定において、1550nmでの減衰は0.53dB/kmであると測定された。図5BのOTDRパルスは、図5Cに示す拡張帯域幅に近い大きな帯域幅を有することに留意されたい。したがって、図5Bに示される拡張のレベルは、図5Cにおいて測定されたものに対する平均である。
【0049】
図5Aに示すように、ファイバリンクを介して送信される200Gb/sの16QAMチャネルのビット誤り率(BER)を、異なる波長チャネル522、532、542、552、562、572に対するOSNR損失と併せて測定した。図5Cに示されるように、帯域内散乱(拡張散乱帯域幅内を意味する)は、レイリー散乱よりも24dBと大きかったが、帯域外散乱(拡張散乱帯域幅外を意味する)は、未処理のファイバ(散乱を拡張するように改変されていないファイバを意味する)におけるレイリー散乱または散乱に近い。波長チャネルの関数としての信号損失も図5Cに示され、最大反射率における損失は6.7dBであり、損失は帯域外領域において無視できるレベルに低下する。その結果として、拡張散乱は、拡張散乱の存在下であっても、信号伝搬に対する悪影響をほとんどまたは全く伴わずに、狭い帯域幅に限定することができる。
【0050】
本開示に示されるように、テレコムシステムの到達距離は、拡張散乱ファイバ(固定帯域幅を有する)と拡張散乱帯域幅外の信号伝送との組み合わせを使用することによって拡張することができる。Pmin,dBおよびSNRmin,MPIの所望の値または許容可能な値が提供される場合、Re,dBおよびαe,dBの適切な値は、到達距離を改善するための拡張散乱ファイバの構成を可能にする。Re,dBおよびαe,dBがファイバの長さに沿って直線的に変化する場合、最大到達距離は、4つのパラメータ、すなわちRe,dB、Re,dBの傾き、αe,dBおよびαe,dBの傾きから計算可能である。
具体的には、既存の光ファイバ内の信号がPmin,dBに低下した場合、長さzreach,extensionの既存の光ファイバに拡張散乱ファイバを追加すると、追加された拡張散乱ファイバにおいてRe,dBに比例し、αe,dBに反比例する到達距離の延長がもたらされる。15nmの波長範囲にわたる10dBの拡張散乱帯域幅を有する拡張後方散乱ファイバの場合、拡張散乱帯域幅の外側の約1nmの信号は、OSNRにおいて1dB未満の損失で伝送することができる。
【0051】
例示的な実施形態を示し、説明してきたが、当業者には、説明したような本開示に対して多くの変更、修正または改変を行うことができることが明らかであろう。したがって、全てのそのような変更、修正および改変は、本開示の範囲内であると見なされるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】