(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】酸化物半導体、その製造方法およびそれを含む半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/368 20060101AFI20241018BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241018BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241018BHJP
H01L 21/363 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/368 Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L21/363
H01L29/78 618D
H01L29/78 612Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529920
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2022018899
(87)【国際公開番号】W WO2023096425
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0166178
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517434736
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ セラミック エンジニアリング アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】515276668
【氏名又は名称】アイユーシーエフ-エイチワイユー(インダストリー-ユニバーシティ コーオペレーション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティ)
【氏名又は名称原語表記】IUCF-HYU (INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY)
【住所又は居所原語表記】222, Wangsimni-ro, Seongdong-gu, Seoul 04763, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】ホ,スウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソンボム
(72)【発明者】
【氏名】パク,インピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘミ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヒョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ブキョン
【テーマコード(参考)】
5F053
5F103
5F110
【Fターム(参考)】
5F053AA03
5F053AA06
5F053DD20
5F053FF01
5F053PP03
5F103AA08
5F103BB22
5F103DD30
5F103LL13
5F103NN06
5F103PP03
5F110BB01
5F110CC07
5F110EE03
5F110EE04
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF27
5F110FF29
5F110FF30
5F110GG01
5F110GG06
5F110GG13
5F110GG15
5F110GG25
5F110GG42
5F110GG43
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK07
(57)【要約】
アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有するAl-Sb-O系酸化物半導体は、優れた導電性およびバンドギャップを有し、かかる半導体は薄膜トランジスタなどに適用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物を含む、酸化物半導体。
【請求項2】
酸化物におけるアルミニウム(Al)とアンチモン(Sb)のモル比が、10:1~1:10である、請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項3】
酸化物が、以下の式1で表される
[式1]
Al
xSb
yO
z
(式中、1≦x≦8、1≦y≦8、および1≦z≦15)、請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項4】
酸化物が、AlSbO
4、AlSbO
3、Al
4Sb
2O
9、Al
2Sb
4O
13、Al
4Sb
2O
11、およびAl
2Sb
4O
9からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項5】
酸化物半導体が、80 1/fΩ/m/s以上のn型導電性および1.5eV以上のバンドギャップを有する、請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項6】
請求項1に記載の酸化物半導体の製造方法であって、
アルミニウム前駆体を含有する第1前駆体溶液およびアンチモン前駆体を含有する第2前駆体溶液を混合して、ゾル-ゲル溶液を調製すること、および
ゾル-ゲル溶液を基材上にコーティングして、酸化物半導体薄膜を形成すること
を含む、方法。
【請求項7】
アルミニウム前駆体が、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、二酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、硫酸アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム水和物、およびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選択される少なくとも1つであり、
アンチモン前駆体が、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、酢酸アンチモン(III)、硫化アンチモン(III)、硫化アンチモン(V)、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、およびアンチモンエトキシドからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項8】
ゾル-ゲル溶液が、アセトニトリル、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、および脱イオン水からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項9】
ゾル-ゲル溶液の濃度が、0.05M~3Mの範囲にある、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項10】
ゾル-ゲル溶液が、脱イオン水、過酸化水素、モノエタノールアミン、およびアセチルアセトンからなる群より選択される1つ以上の添加剤を更に含む、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項11】
ゾル-ゲル溶液の調製が、25℃~140℃にて1時間~72時間で実施される、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項12】
コーティング後の熱処理を更に含み、熱処理が、150℃~1000℃の温度にて30分~5時間で空気または窒素雰囲気中にて実施される、請求項6に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の酸化物半導体の製造方法であって、
アルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体を基材上にスパッタリング堆積させて、アルミニウムおよびアンチモンを含有する酸化物半導体薄膜を形成することを含む、方法。
【請求項14】
アルミニウム前駆体が、酸化アルミニウムを含み、およびアンチモン前駆体が、酸化アンチモンを含む、請求項13に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項15】
スパッタリング堆積が、アルゴンガスおよび酸素ガスを注入することによって実施され、アルゴンガスおよび酸素ガスの分圧比が、20:0.1~20:2の範囲にある、請求項13に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項16】
スパッタリング堆積の後の熱処理を更に含み、熱処理が、150℃~1000℃の温度にて30分~5時間で空気または窒素雰囲気中にて実施される、請求項13に記載の酸化物半導体の製造方法。
【請求項17】
基材と、基材上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成され、請求項1の酸化物半導体を含む半導体層と、半導体層上に形成された電極と、を含む半導体デバイス。
【請求項18】
半導体層の厚さが5nm~50nmである、請求項17に記載の半導体デバイス。
【請求項19】
請求項17に記載の半導体デバイスを含む、薄膜トランジスタ。
【請求項20】
請求項19に記載の薄膜トランジスタを含む、ディスプレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体、その製造方法およびそれを含む半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体は、酸化亜鉛、酸化カドミウム、および酸化インジウムなどの酸化物質をドーピングすることによって、その導電性が制御され、かつそのバンドギャップが調節された半導体材料である。これは、一般的に、広いバンドギャップを有する透明な半導体材料である。
【0003】
酸化物半導体は、広いバンドギャップを有し、低エネルギーの可視光または赤外光を吸収できないので、可視光域(360~800nm)で光を透過させる特性を有する。酸化物半導体は、近年、その優れた光学的および電気的特性により、透明な半導体の分野において極めて重要な材料になっている。それらは、透明ディスプレイ、透明センサおよび透明ソーラーセルなどの様々な工業的分野における高い潜在的用途を有する半導体材料である。
【0004】
例えば、酸化亜鉛などの酸化物半導体は、ドーピングにより導電性を制御でき、または合金化によりバンドギャップを制御できる半導体材料である。かかる酸化物半導体の鍵となる特徴は、広いバンドギャップにあり、それらは可視光域での極めて高い光透過性を有、そのため透明となる。
【0005】
東京工業大学(日本)の細野秀雄教授は、韓国特許第0939998号にて、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、高電荷移動性の透明半導体、およびそれを用いた薄膜トランジスタを開示した。IGZOは、インジウム、ガリウム、亜鉛および酸素から成る酸化物質である。これは、3eV以上の広いバンドギャップを有する半導体材料である。酸化物半導体としてのIGZOは、薄膜トランジスタの製造に使用でき、よって、ディスプレイ分野においてバックプレーンパネルデバイスとして既に使用されている。IGZOを用いて薄膜トランジスタを製造する場合、アモルファスシリコン薄膜トランジスタより電荷移動性が優れており、よって、それらはディスプレイ分野においてバックプレーン回路およびスイッチングデバイスとして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許第0939998号公報(2010年1月26日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、酸化物半導体として使用されているIGZOに置き換わる新たな材料を見出すため、本発明者らは、酸化物のビッグデータからデータマイニングによってリサーチ可能なエリアを確保し、薄膜トランジスタ(TFT)に関連する導電性およびバンドギャップなどの物理特性を分析し、そしてデータスクリーニングにより候補をフィルタリングし、それによって、可能性のある元素の組み合わせを得た。
【0008】
また、本発明者らは、その構造のデータベースを構成し、相平衡ダイアグラム(
図1参照)から結晶化の可能性が高い材料のリストを確保した。導電性およびバンドギャップなどの物理特性を機械学習技術により分析した結果、アルミニウム(Al)とアンチモン(Sb)を含有する酸化物が、IGZOに置き換わる材料として最終的に決定された。
【0009】
従って、本発明の目的は、薄膜トランジスタに適用できる優れた導電性およびバンドギャップを有する新しい酸化物半導体、およびその製造方法を提供することにある。加えて、本発明のもう1つの目的は、かかる酸化物半導体を使用した、半導体デバイス、薄膜トランジスタ、およびディスプレイデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物を含む酸化物半導体を提供する。
【0011】
加えて、本発明は、アルミニウム前駆体を含有する第1前駆体溶液およびアンチモン前駆体を含有する第2前駆体溶液を混合して、ゾル-ゲル溶液を調製すること、およびゾル-ゲル溶液を基材上にコーティングして、酸化物半導体薄膜を形成することを含む、酸化物半導体の製造方法を提供する。
【0012】
加えて、本発明は、アルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体を基材上にスパッタリング-堆積させて、アルミニウムおよびアンチモンを含有する酸化物半導体薄膜を形成することを含む、酸化物半導体の製造方法を提供する。
【0013】
加えて、本発明は、基材と、基材上に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化物半導体を含む半導体層と、半導体層上に形成された電極と、を含む半導体デバイスを提供する。
【0014】
加えて、本発明は、半導体デバイスを含む、薄膜トランジスタを提供する。
【0015】
加えて、本発明は、薄膜トランジスタを含む、ディスプレイデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるAl-Sb-O系酸化物半導体は、優れた導電性およびバンドギャップを有し、よって、薄膜トランジスタなどの半導体デバイスに適用できる。かかるAl-Sb-O系酸化物半導体デバイスは、性能を向上させるためにディスプレイデバイスに設けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、1つの実施形態によるAl-Sb-O系酸化物半導体の相平衡ダイアグラムである。
【
図2】
図2は、1つの実施形態による酸化物半導体を含むデバイスの断面図である(100:基材、200:誘電体層、300:半導体層、400:電極)。
【
図3】
図3は、酸化物半導体薄膜の表面のAFM像の例である。
【
図4】
図4a~4cは、さまざまなAl:Sbモル比で溶液法により製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図5】
図5a~5cは、さまざまなAl:Sbモル比で溶液法により製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図6】
図6a~6dは、溶液法の後、さまざまな条件で熱処理した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図7】
図7a~7dは、溶液法の後、さまざまな条件で熱処理した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図8】
図8a~8dは、溶液法によりさまざまな薄膜厚さで製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図9】
図9aおよび9bは、さまざまな添加剤を用いた溶液法により製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図10】
図10は、1つの実施形態による酸化物半導体のTG-DTA分析結果を示す。
【
図11】
図11は、1つの実施形態による酸化物半導体のXRD分析結果を示す。
【
図12】
図12は、1つの実施形態による酸化物半導体のXPS分析結果を示す。
【
図13】
図13a~13eは、さまざまなAl:Sbモル比で堆積法により製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図14】
図14a~14cは、Ar:O
2のさまざまな分圧比で堆積法により製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図15】
図15a~15dは、堆積法の後、さまざまな温度で熱処理した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【
図16】
図16a~16cは、堆積法によりさまざまな薄膜厚さで製造した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のさまざまな実施形態および実施例を、図面を参照しながら詳述する。
【0019】
本発明の説明において、関連する既知の構成または機能についての詳細な説明が本発明の本質をあいまいにすると認められる得るならば、かかる詳細な説明は除外される。加えて、説明の目的で、添付の図面における個々の要素の寸法は誇張して示され、または省略され得、それらは実際の寸法と異なり得る。
【0020】
本明細書において、ある要素が他の要素に形成され、接続され、または組み合わせられると説明される場合、これは、1つの要素が他の要素に対して、直接的に、または他の要素を介して間接的に、形成され、接続され、または組み合わせられることの全ての場合を意味する。加えて、各構成部材の上および下との用語の基準は、物体を観察する方向によって異なり得ることについて理解されるべきである。
【0021】
本明細書において、各構成部材(または構成成分)について言う用語は、それらを互いに区別するために使用されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでない。加えて、本明細書において、単数表現は、文脈において他に特定されていない限り、複数をカバーするものとして解釈される。
【0022】
本明細書において、用語「含む」は、特定の特徴、領域、工程、方法、要素、および/または構成部材(または構成成分)を特定するよう意図したものである。これは、反対の説明が特になされていない限り、任意の他の特徴、領域、工程、方法、要素、および/または構成部材の存在または追加を排除するものでない。
【0023】
本明細書において、用語「第1」、「第2」などは、さまざまな構成部材を説明するために使用される。しかし、構成部材はこれらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、1つの要素を他のものから区別する目的で使用される。
【0024】
酸化物半導体
本発明による酸化物半導体は、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物を含む。
【0025】
ある実施形態として、本発明による酸化物半導体は、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物から成り得る。すなわち、本発明による酸化物半導体は、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)および酸素(O)のみから成り得る。
【0026】
アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物の含有量は、本発明の酸化物半導体の総重量に基づいて、50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100重量%であり得る。
【0027】
本発明による酸化物半導体において、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)の間のモル比は、所定の範囲に調節されることが望ましい。
【0028】
ある実施形態として、酸化物におけるアルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)のモル比は、10:1~1:10であり得る。
【0029】
例えば、酸化物におけるアルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)のモル比は、10:1~1:10、10:1~1:8、10:1~1:6、10:1~1:4、10:1~1:2、10:1~1:1、8:1~1:10、6:1~1:10、4:1~1:10、2:1~1:10、1:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、4:1~1:4、3:1~1:3、2:1~1:2、1.5:1~1:1.5、または約1:1であり得る。
【0030】
加えて、酸化物におけるアルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)および酸素(O)のモル比は、所定の範囲に調節され得る。
【0031】
ある実施形態において、酸化物は以下の式1によって表される。
[式1]
AlxSbyOz
(式中、1≦x≦8、1≦y≦8、および1≦z≦15)
【0032】
式1において、xは、例えば、1以上、2以上、3以上、または4以上であり得、および8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下であり得、特に、1~8、1~6、1~4、1~3、1~2、2~8、3~8、4~8、または2~6であり得る。
【0033】
式1において、yは、例えば、1以上、2以上、3以上、または4以上であり得、および8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下であり得、特に、1~8、1~6、1~4、1~3、1~2、2~8、3~8、4~8、または2~6であり得る。
【0034】
式1において、zは、例えば、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、または8以上であり得、および15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下、または8以下であり得、特に、1~15、1~13、1~11、1~10、1~9、1~8、1~6、1~5、3~15、5~15、7~15、8~15、10~15、または12~15であり得る。
【0035】
加えて、x、y、およびzは、上記で例示した範囲以内の整数であり得る。
【0036】
特に、式1において、xは1または2であり得、yは1または2であり得、zは3~5の整数であり得る。より詳細には、式1において、xは1であり得、yは1であり得、zは4であり得る。
【0037】
加えて、式1において、x、y、およびzは、金属元素(Al、Sb)および酸素元素(O)の酸化数または価数の観点からバランスを充たす範囲内で決定され得る。特に、Alは+3価、Sbは+3または+5価、および酸素は-2価であるので、x、y、およびzの値は、これらの元素が組み合わされた化学式の価数バランスを充たすように限定され得る。例えば、式1において、Sbが+5価のとき、価数バランスを充たす化学式は、AlSbO4を含み得、Sbが+3価のとき、価数バランスを充たす化学式は、AlSbO3を含み得る。しかしながら、これに加えて、価数バランスを充たす限り、構成元素(Al、SbおよびO)のモル比に応じて、さまざまな化学式が可能である。
【0038】
特に、式1の酸化物は、AlSbO4、AlSbO3、Al4Sb2O9、Al2Sb4O13、Al4Sb2O11、およびAl2Sb4O9からなる群より選択される少なくとも1つであり得るが、これらに限定されない。
【0039】
加えて、本発明による酸化物半導体は、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物以外に、追加の構成成分を更に含み得る。追加の構成成分は、例えば、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、または他の酸化物であり得る。
【0040】
ある実施形態において、酸化物半導体は、結晶性を有し得る。特に、これは、X線回折(XRD)スペクトラムにおいて1つ以上の結晶性ピークを有し得る。別の実施形態において、酸化物半導体は、アモルファス性を有し得る。特に、これは、X線回折(XRD)スペクトラムにおいて結晶性ピークを有さないものであり得る。
【0041】
酸化物半導体は、薄膜として製造されたときに所定の範囲内の表面粗さを有し得る(
図3参照)。例えば、RMS粗さ(Rq)は、0.5nm以上、0.7nm以上、1nm以上、1.2nm以上、または1.4nm以上であり得、および3nm以下、2.5nm以下、2nm以下、1.7nm以下、または1.5nm以下であり得、特定の例として、1nm~2nmであり得る。
【0042】
本発明による酸化物半導体は、薄膜トランジスタなどに適用可能な導電性およびバンドギャップを有する。
【0043】
例えば、本発明による酸化物半導体は、n型特性を有し得る。
【0044】
酸化物半導体のn型導電性は、50 1/fΩ/m/s以上、70 1/fΩ/m/s以上、80 1/fΩ/m/s以上、90 1/fΩ/m/s以上、95 1/fΩ/m/s以上、97 1/fΩ/m/s以上、98 1/fΩ/m/s以上、または99 1/fΩ/m/s以上であり得る。加えて、酸化物半導体のn型導電性は、300 1/fΩ/m/s以下、200 1/fΩ/m/s以下、または120 1/fΩ/m/s以下であり得る。特定の例として、酸化物半導体のn型導電性は、80 1/fΩ/m/s~120 1/fΩ/m/sであり得る。
【0045】
加えて、本発明による酸化物半導体は、組成に応じてp型特性を有し得る。
【0046】
酸化物半導体のp型導電性は、5 1/fΩ/m/s以上、10 1/fΩ/m/s以上、15 1/fΩ/m/s以上、または20 1/fΩ/m/s以上であり得る。加えて、酸化物半導体のp型導電性は、100 1/fΩ/m/s以下、70 1/fΩ/m/s以下、50 1/fΩ/m/s以下、または30 1/fΩ/m/s以下であり得る。特定の例として、酸化物半導体のp型導電性は、10 1/fΩ/m/s~50 1/fΩ/m/sであり得る。
【0047】
導電性は、第一原理計算およびボルツマン輸送方程式ならびにホール効果測定を用いて計算され得る。
【0048】
酸化物半導体のバンドギャップは、1eV以上、1.2eV以上、1.3eV以上、1.4eV以上、1.5eV以上、または1.6eV以上であり得る。加えて、酸化物半導体のバンドギャップは、3eV以下、2.5eV以下、2eV以下、または1.8eV以下であり得る。特定の例として、酸化物半導体のバンドギャップは、1.5eV~2eVであり得る。バンドギャップは、例えば、UV可視光分光計でサンプルの吸光度を測定し、光学バンドギャップを計算するためのTaucプロットを描くことによって測定され得る。
【0049】
ある実施形態において、酸化物半導体は、80 1/fΩ/m/s以上のn型導電性および1.5eV以上の測定バンドギャップを有し得る。
【0050】
従って、本発明による酸化物半導体を含む半導体デバイス、例えば薄膜トランジスタ(TFT)は、優れた性能を有し得る。
【0051】
Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスの電界効果移動度(μFE)は、例えば、0.001cm2/Vs以上、0.01cm2/Vs以上、0.1cm2/Vs以上、0.2cm2/Vs以上、0.3cm2/Vs以上、0.4cm2/Vs以上、または0.5cm2/Vs以上、および10cm2/Vs以下、7cm2/Vs以下、5cm2/Vs以下、3cm2/Vs以下、2cm2/Vs以下、1cm2/Vs以下、0.9cm2/Vs以下、0.8cm2/Vs以下、0.7cm2/Vs以下、または0.6cm2/Vs以下であり得る。特定の例として、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスの電界効果移動度(μFE)は、0.01cm2/Vs~10cm2/Vs、0.1cm2/Vs~10cm2/Vs、0.01cm2/Vs~1cm2/Vs、または0.1cm2/Vs~5cm2/Vsであり得る。
【0052】
Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのオン/オフ比は、例えば、1.0×102以上、1.0×103以上、1.0×104以上、3.0×104以上、5.0×104以上、7.0×104以上、または9.0×104以上、および1.0×107以下、5.0×106以下、3.0×106以下、1.0×106以下、5.0×105以下、3.0×105以下、または1.0×105以下であり得る。特定の例として、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのオン/オフ比は、1.0×102~1.0×107、1.0×102~1.0×105、1.0×103~1.0×107、または1.0×103~1.0×105であり得る。
【0053】
Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのスレッショルド電圧(Vth)は、例えば、-40V以上、-30V以上、-20V以上、-10V以上、0V以上、+3V以上、+5V以上、または+7V以上、および+40V以下、+30V以下、+20V以下、または+10V以下であり得る。特定の例として、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのスレッショルド電圧(Vth)は、-40V~+40V、-10V~+30V、または0V~20Vであり得る。
【0054】
Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのサブスレッショルドスイング(SS)は、例えば、0.1V/decade以上、0.5V/decade以上、1V/decade以上、1.5V/decade以上、または2V/decade以上、および30V/decade以下、10V/decade以下、5V/decade以下、または3V/decade以下であり得る。特定の例として、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスのサブスレッショルドスイング(SS)は、0.1V/decade~30V/decade、0.1V/decade~10V/decade、0.1V/decade~3V/decade、または1V/decade~30V/decadeであり得る。
【0055】
ある実施形態において、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスは、n型特性、0.1cm2/Vs~10cm2/Vsの電界効果移動度(μFE)、1.0×103~1.0×107のオン/オフ比、-40V~+40Vのスレッショルド電圧(Vth)、0.1V/decade~10V/decadeのサブスレッショルドスイング(SS)を有し得る。
【0056】
もう1つの実施形態において、Al-Sb-O系酸化物半導体デバイスは、p型特性、0.01cm2/Vs~1cm2/Vsの電界効果移動度(μFE)、1.0×102~1.0×105のオン/オフ比、-40V~+40Vのスレッショルド電圧(Vth)、0.1V/decade~3V/decadeのサブスレッショルドスイング(SS)を有し得る。
【0057】
酸化物半導体の製造方法(溶液法)
本発明によれば、酸化物半導体は、溶液法または堆積法により製造され得る。
【0058】
ある実施形態によれば、酸化物半導体は、溶液法、例えばゾル-ゲル法により製造され得る。
【0059】
例えば、酸化物半導体の製造方法は、アルミニウム前駆体を含有する第1前駆体溶液およびアンチモン前駆体を含有する第2前駆体溶液を混合して、ゾル-ゲル溶液を調製すること、およびゾル-ゲル溶液を基材上にコーティングして、酸化物半導体薄膜を形成することを含む。
【0060】
酸化物半導体を製造するために使用されるアルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体のタイプは特に限定されない。
【0061】
例えば、アルミニウム前駆体は、塩化アルミニウム、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、二酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、硫酸アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム水和物、およびアルミニウムイソプロポキシドからなる群より選択される少なくとも1つであり得る。
【0062】
加えて、アンチモン前駆体は、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、酢酸アンチモン(III)、硫化アンチモン(III)、硫化アンチモン(V)、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、およびアンチモンエトキシドからなる群より選択される少なくとも1つであり得る。
【0063】
第1前駆体溶液は、第1溶媒を含み得、および第2前駆体溶液は、第2溶媒を含み得る。
【0064】
第1溶媒および第2溶媒は、アルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体を溶解または分散させ得る溶媒である限り、特に限定されない。
【0065】
特に、第1溶媒および第2溶媒は、各々、アセトニトリル、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、および脱イオン水からなる群より選択される少なくとも1つであってよい。
【0066】
従って、ゾル-ゲル溶液は、アセトニトリル、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、および脱イオン水からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒を含み得る。ゾル-ゲル溶液は、1種または2種の溶媒の混合溶媒を含み得る。例として、これは、アセトニトリルおよびエチレングリコールの混合溶媒を含み得る。
【0067】
ある例において、アルミニウム前駆体は、酢酸アルミニウム、二酢酸アルミニウムまたはその他を含み、アンチモン前駆体は、酢酸アンチモンまたはその他を含み、およびゾル-ゲル溶液は、2-メトキシエタノール、メタノール、エタノールまたはその他のアルコール系溶媒を含む。
【0068】
もう1つの例において、アルミニウム前駆体は、酢酸アルミニウムなどを含み、アンチモン前駆体は、塩化アンチモンなどを含み、およびゾル-ゲル溶液は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはその他の非プロトン性極性溶媒を含む。
【0069】
もう1つの例において、アルミニウム前駆体は、塩化アルミニウムなどを含み、アンチモン前駆体は、塩化アンチモンなどを含み、およびゾル-ゲル溶液は、アセトニトリルとエチレングリコールとの混合溶媒を含む。混合溶媒におけるアセトニトリルとエチレングリコールとの重量比は、10:1~1:10であり得る。
【0070】
ゾル-ゲル溶液の濃度(すなわち、前駆体の濃度)は0.01M以上、0.05M以上、0.1M以上、または0.5M以上であり得、および10M以下、5M以下、3M以下、2M以下、1.5M以下、または1M以下であり得る。特定の例として、ゾル-ゲル溶液の濃度は、0.05M~3Mの範囲にあり得る。
【0071】
第1前駆体溶液および第2前駆体溶液は、1つ以上の添加剤を更に含み得る。添加剤は、例えば、脱イオン水、過酸化水素、モノエタノールアミン(MEA)、およびアセチルアセトンからなる群より選択され得る。従って、ゾル-ゲル溶液は、脱イオン水、過酸化水素、モノエタノールアミン、およびアセチルアセトンからなる群より選択される1つ以上の添加剤を更に含み得る。添加剤の含有量は、ゾル-ゲル溶液の総重量に基づいて、0.01重量%以上、0.1重量%以上、または0.5重量%以上、および20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下であり得る。特定の例において、ゾル-ゲル溶液は、ゾル-ゲル溶液の総重量に基づいて、1重量%~20重量%の脱イオン水を更に含み得る。もう1つの特定の例において、ゾル-ゲル溶液は、ゾル-ゲル溶液の総重量に基づいて、0.1重量%~5重量%のモノエタノールアミンを更に含み得る。
【0072】
第1前駆体溶液および第2前駆体溶液は、ホットプレートなどの加熱デバイスを用いて、一定温度条件下にて撹拌されて、ゾル-ゲル溶液が調製される。ゾル-ゲル溶液の調製の間の温度(ゾル-ゲル反応温度)は、20℃以上、40℃以上、60℃以上、または80℃以上であり得、および200℃以下、150℃以下、または120℃以下であり得る。ゾル-ゲル溶液を調製するのに必要な時間は、1時間以上、2時間以上、または3時間以上であり得、および10時間以下、8時間以下、または6時間以下であり得る。特定の例として、ゾル-ゲル溶液の調製は、25℃~140℃にて1時間~72時間で実施され得る。
【0073】
コーティングは、スピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティングまたはドクターブレードを用いて実施され得る。スピンコーティングの速度は、例えば500rpm以上、1000rpm以上、または1500rpm以上であり得、および6000rpm以下、4000rpm以下、または3000rpm以下であり得る。
【0074】
コーティング後に得られるコーティング層は、熱処理に付してよい。
【0075】
熱処理は、空気または窒素雰囲気にて実施され得る。
【0076】
熱処理温度は、60℃以上、90℃以上、100℃以上、120℃以上、または150℃以上であり得、および1000℃以下、900℃以下、700℃以下、500℃以下、300℃以下、または200℃以下であり得る。熱処理時間は、10秒以上、30秒以上、1分以上、5分以上、10分以上、または30分以上であり得、および7時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、または1時間以下であり得る。特定の例として、熱処理は、150℃~1000℃の温度で30分~5時間で実施され得る。より詳細には、熱処理は、1時間、3時間、または5時間で実施され得る。
【0077】
熱処理は、1回、または2回以上実施され得る。例えば、90℃~200℃の温度で30秒~1時間の熱処理、90℃~200℃の温度で1分~1時間の熱処理、150℃~900℃の温度で30分~5時間の熱処理、および80℃~300℃の温度で10分~3時間の熱処理から選択される少なくとも1つが実施され得る。あるいは、それらの2つ以上が連続的に実施され得る。
【0078】
熱処理は、オーブンまたは電気炉などの加熱デバイスを通って実施され得る。
【0079】
加えて、熱処理の前に先立って、コーティング層を乾燥およびゲル化させるための熱処理工程が実施され得る。乾燥およびゲル化のための熱処理は、ホットプレートなどを用いる一般的な熱処理であり得る。例えば、乾燥およびゲル化のための熱処理温度は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、または130℃以上であり得、および200℃以下、180℃℃以下、160℃以下、150℃以下、または140℃以下であり得る。加えて、乾燥およびゲル化のための熱処理時間は、30秒以上、1分以上、3分以上、5分以上、または10分以上であり得、および2時間以下、1時間以下、30分以下、または20分以下であり得る。
【0080】
酸化物半導体の製造方法(堆積法)
もう1つの実施形態によれば、酸化物半導体は、堆積(deposition)法によって製造され得る。特に、酸化物半導体は、真空堆積(蒸着)、より詳細には、スパッタリング堆積(sputtering deposition)によって製造され得る。
【0081】
例えば、酸化物半導体の製造方法は、アルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体を基材上にスパッタリング堆積(sputtering-depositing)させて、アルミニウムおよびアンチモンを含有する酸化物半導体薄膜を形成することを含む。
【0082】
アルミニウム前駆体は、酸化アルミニウムを含み得、およびアンチモン前駆体は、酸化アンチモンを含み得る。
【0083】
酸化アルミニウムは、例えば、Al2O3を含み得、およびアンチモン前駆体は、例えば、Sb2O3を含み得る。
【0084】
従って、スパッタリング堆積によって製造される酸化物半導体は、例えば、以下の式2に示されるような組成を有し得る。
[式2]
(Al2O3)1-a(Sb2O3)a
(式中、0<a<1)
【0085】
スパッタリング堆積は、例えば、DCスパッタリング、RFスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、バイアススパッタリング、反応性スパッタリングなどを使用して実施され得る。
【0086】
スパッタリング堆積は、放電ガス、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、キセノンガスなどの不活性ガスを使用し得る。加えて、スパッタリング堆積は、反応ガス、例えば酸素ガスなどを使用し得る。
【0087】
詳細には、スパッタリング堆積は、アルゴンガスおよび酸素ガスを注入することによって実施され得る。例えば、酸素ガスの分圧は、アルゴンガスの分圧に基づいて、0%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、または5%以上であり得、および20%以下、15%以下、または10%以下であり得る。
【0088】
詳細には、アルゴンガスおよび酸素ガスの分圧比は、20:0.1~20:2の範囲にあり得る。より詳細には、アルゴンガスおよび酸素ガスの分圧比は、20:0.1~20:1.5、20:0.1~20:0.7、20:0.1~20:0.3、20:0.3~20:2、20:0.7~20:2、20:0.3~20:0.7であり得る。
【0089】
スパッタリング堆積の間に印加されるRF電力は、20W以上、25W以上、30W以上、または50W以上であり得、および500W以下、300W以下、200W以下、150W以下、または100W以下であり得、特定の例として、25W~200Wであり得る。
【0090】
スパッタリング堆積の間の操作圧力は、0.1mTorr以上、0.2mTorr以上、0.5mTorr以上、または1mTorr以上であり得、および10mTorr以下、5mTorr以下、3mTorr以下、または2mTorr以下であり得、特定の例として、0.2mTorr~3mTorrであり得る。
【0091】
上記実施形態による酸化物半導体の製造方法は、スパッタリング堆積後の熱処理を更に含み得る。
【0092】
熱処理は、空気または窒素雰囲気にて実施され得る。
【0093】
熱処理温度は、60℃以上、90℃以上、100℃以上、120℃以上、または150℃以上であり得、および1000℃以下、900℃以下、700℃以下、500℃以下、300℃以下、または200℃以下であり得る。熱処理時間は、10秒以上、30秒以上、1分以上、5分以上、10分以上、または30分以上であり得、および7時間以下、5時間以下、3時間以下、2時間以下、または1時間以下であり得る。特定の例として、熱処理は、150℃~1000℃の温度にて30分~5時間で実施され得る。より詳細には、熱処理は、1時間、3時間、または5時間で実施され得る。
【0094】
熱処理は、オーブンまたは電気炉などの加熱デバイスを通って実施され得る。
【0095】
あるいは、熱処理は、電子ビーム処理を通じて実施され得る。
【0096】
例えば、加熱されるべきターゲットを電子ビーム加速器のチャンバーの内部に配置し、放電ガスで充たし、その後、RF電力を印加して、放電ガスを電子とイオンに分離するようにプラズマ状態を形成する。DC電圧が印加されると、電子は、加速チューブを通過するときに電子ビームの形態で加速され、ターゲットの表面に速やかに到達して衝突する。かかる電子ビーム処理は、熱処理と同様の効果を有しつつ、これは、電子ビーム処理後の組成、結晶性および電気特性を向上させるという利点を有する。
【0097】
アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、キセノンガスが、電子ビーム処理の間の放電ガスとして使用され得る。放電ガスの流量は、例えば、1sccm以上、5sccm以上、または10sccm以上であり得、および50sccm以下、30sccm以下、または15sccm以下であり得る。
【0098】
加えて、電子ビーム処理の間、プラズマの密度は、ラジオ周波数(RF)電力を調節することによって制御され得、および電子ビームの加速の程度は、直流(DC)電圧を調節することによって制御され得、これにより、さまざまな特性を有する金属酸化物層の製造が可能になる。
【0099】
例えば、電子ビーム処理の間のプラズマ密度を制御するためのRF電力は、100W以上、150W以上、200W以上、250W以上、または300W以上に調節され得、および700W以下、500W以下、450W以下、400W以下、または350W以下に調節され得る。加えて、電子ビーム処理の間の電子ビーム加速のためのDC電圧は、100V以上、200V以上、300V以上、400V以上、または500V以上に調節され得、および1500V以下、1300V以下、1100V以下、900V以下、800V以下、700V以下、または600V以下に調節され得る。加えて、電子ビーム処理時間は、10秒以上、30秒以上、1分以上、2分以上、または3分以上であり得、および30分以下、20分以下、10分以下、7分以下、または5分以下であり得る。特定の例として、電子ビーム処理は、150W~500WのRF電力および200V~1000VのDC電圧にて、30秒~10分間で実施され得る。
【0100】
このようにして調製される酸化物半導体薄膜は、1nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の厚さを有し得、および500nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、または50nm以下であり得る。例として、酸化物半導体薄膜の厚さは、5nm~50nmであり得る。特定の例として、酸化物半導体薄膜の厚さは、10nm~100nmであり得る。より詳細には、酸化物半導体薄膜の厚さは、10nm~50nm、10nm~40nm、10nm~25nm、20nm~100nm、20nm~50nm、20nm~40nm、40nm~100nm、または20nm~40nmであり得る。
【0101】
半導体デバイス
本発明による酸化物半導体は、優れた導電性およびバンドギャップを有し、よって、これは半導体デバイスに適用され得る。従って、本発明は、上述の酸化物半導体を含む半導体デバイスを提供する。
【0102】
本発明による半導体デバイスは、基材と、基材上に形成された半導体層とを含み、半導体層は、上述の酸化物半導体を含む。加えて、半導体デバイスは、基材と半導体層との間に誘電体層を更に含み得る。加えて、半導体デバイスは、半導体層上に電極を更に含み得る。
【0103】
図2は、ある実施形態による酸化物半導体を含む半導体デバイスの断面図である。
図2を参照して、ある実施形態による半導体デバイスは、基材(100)と、基材(100)上に形成された誘電体層(200)と、酸化物半導体を含み、誘電体層(200)上に形成された半導体層(300)と、半導体層(300)上に形成された電極(400)とを含む。ここで、酸化物半導体は、上述したようなアルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物を含む。
【0104】
基材は、半導体デバイスを形成するための土台であり、材料の観点から特に限定されないが、例えば、シリコン、ガラス、プラスチック、金属箔などであってよい。基材は、板状であってよく、または基材上にモリブデン(Mo)またはアルミニウム(Al)などの金属材料を堆積およびパターニングすることよって所定のパターンを有するように形成されたものであってよい。あるいは、基材は、ゲート電極として使用される導電性材料としての金属または金属酸化物を含み得る。詳細には、これは、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、金(Au)、チタン(Ti)および銀(Ag)の少なくとも1つを含み得る。基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上、0.1mm以上、0.5mm以上、または1mm以上であり得、および10mm以下、5mm以下、3mm以下、または2mm以下であり得る。
【0105】
誘電体層は、基材上に形成され、基材、半導体層および電極を絶縁するように機能する。誘電体層は、一般的な半導体プロセスにおいて使用される絶縁材料を含み得る。例えば、誘電体層は、酸化シリコン(SiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、および窒化シリコン(Si3N4)からなる群より選択される誘電体の少なくとも1つを含み得る。誘電体層は、真空堆積(または真空蒸着)、化学的気相堆積(または化学的気相成長)、物理的気相堆積(または物理蒸着)、原子層堆積、有機金属化学的気相堆積、プラズマ化学的気相堆積、分子線エピタキシー、ハイドライド気相エピタキシー、スパッタリング、スピンコーティング、およびディップコーティングなどの方法を使用して形成され得る。誘電体層は、10nm以上、20nm以上、30nm以上、または50nm以上の厚さを有し得、および500nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下であり得る。例として、誘電体層の厚さは、50nm~200nmであり得る。
【0106】
半導体層は、上述した酸化物半導体から成り、すなわち、これは、アルミニウム(Al)およびアンチモン(Sb)を含有する酸化物を含む。半導体層は、上述した溶液法または堆積法により形成され得る。半導体層は、本発明の酸化物半導体以外の追加の酸化物半導体を更に含み得る。追加の酸化物半導体は、例えば、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム酸化物(InO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)、シリコンインジウム亜鉛酸化物(SIZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、ハフニウムインジウム亜鉛酸化物(HIZO)、およびアルミニウム亜鉛スズ酸化物(AZTO)から選択される少なくとも1つであり得る。半導体層は、1nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の厚さを有し得、および500nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下、または50nm以下であり得る。例として、半導体層の厚さは、5nm~50nmであり得る。特定の例として、半導体層の厚さは、10nm~100nmであり得る。より詳細には、半導体層の厚さは、10nm~50nm、10nm~40nm、10nm~25nm、20nm~100nm、20nm~50nm、20nm~40nm、40nm~100nm、または20nm~40nmであり得る。
【0107】
電極は、ソース電極およびドレイン電極を含み得、これらは、互いに離間して配置され、半導体層に電気的に接続され得る。電極は、金属材料から形成され得る。例えば、これは、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジウム(Nd)、銅(Cu)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、およびインジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO)からなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに限定されない。電極は、半導体層上に導電性フィルムを堆積し、その上にフォトレジストパターンを形成し、およびこれをマスクとして用いて導電性フィルムをパターニングすることによって、得られ得る。導電性フィルムは、真空堆積(または真空蒸着)、化学的気相堆積(または化学的気相成長)、物理的気相堆積(または物理蒸着)、原子層堆積、有機金属化学的気相堆積、プラズマ化学的気相堆積、分子線エピタキシー、ハイドライド気相エピタキシー、スパッタリング、スピンコーティング、およびディップコーティングなどの方法を使用して形成され得る。
【0108】
電極は、5nm以上、10nm以上、30nm以上、または50nm以上の厚さを有し得、500nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下であり得る。例として、電極の厚さは、10nm~200nmであり得る。
【0109】
本発明の半導体デバイスは、ディスプレイデバイスに適用される電界効果トランジスタ(FET)として使用され得、および特に薄膜トランジスタ(TFT)として使用され得る。
【0110】
従って、本発明は、上記の半導体デバイスを含む電界効果トランジスタおよび薄膜トランジスタを提供する。
【0111】
詳細には、本発明の半導体デバイスは、液晶ディスプレイ(LCD)または有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスに使用されるピクセル駆動デバイスなどのトランジスタとして使用され得る。
【0112】
本発明による半導体デバイスは、電界効果移動度(μFE)、オン/オフ比、スレッショルド電圧(Vth)、サブスレッショルドスイング(SS)の点で優れており、よって、従来使用されている酸化物半導体(例えばIGZO)を置き換えることによって、ディスプレイデバイスなどに利用され得る。
【0113】
従って、本発明は、薄膜トランジスタを含むディスプレイデバイスも提供する。
【0114】
1つの例として、ディスプレイデバイスは液晶ディスプレイ(LCD)デバイスであり、液晶ディスプレイデバイスは、偏光子(または偏光板)、液晶ディスプレイパネル、バックライトユニット、および他の光学シートを含み得る。詳細には、液晶ディスプレイパネルは、カラーフィルタ、液晶セル、および駆動基板を含み得、および駆動基板は薄膜トランジスタを備え得る。
【0115】
もう1つの例として、ディスプレイデバイスは、有機発光ディスプレイ(OLED)デバイスであり、有機発光ディスプレイデバイスは、偏光子および有機発光ディスプレイパネルを含み得る。詳細には、有機発光ディスプレイパネルは、有機発光基板および駆動基板を含み得、および駆動基板は薄膜トランジスタを備え得る。
【0116】
本発明の上述したようなAl-Sb-O系酸化物半導体を含有する薄膜トランジスタを用いるディスプレイデバイスは、優れた性能を示すことができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明の理解の助けとするために実施例が記載される。しかしながら、本発明はこれら実施例の範囲に限定されない。
【0118】
実施例A:溶液法によるAl-Sb-O系酸化物半導体の調製
工程1:ゾル-ゲル溶液の調製
0.1Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.1Mの酢酸アンチモンを、溶媒としての5mLの2-メトキシエタノールに添加し、および触媒としての120μLのモノエタノールアミンをこれに添加した。その後、撹拌機内で80℃にて700RPMで2時間撹拌して、Al-Sb-O系ゾル-ゲル溶液を調製した。
【0119】
工程2:ゾル-ゲルコーティング層の調製
上記で調製したゾル-ゲル溶液を1μmのシリンジフィルターでろ過した。100nmのSiO2誘電体層を堆積したSi基材の表面特性を増強(または改質)させるため、UV/オゾン(UVO)処理を10分間実施した。その後、150μLのろ過したAl-Sb-O系ゾル-ゲル溶液を、基材上に適用(または塗布)し、スピンコーターを用いて、3000rpmで20秒間スピンコーティングを実施した。コーティング後、ホットプレート上にて150℃で10分間の熱処理を実施して、コーティング層(薄膜)を形成した。
【0120】
工程3:熱処理
形成された薄膜を酸化して、薄膜の物理特性を増強させるため、電気炉を用いて熱処理を実施した。このとき、熱処理を1~5時間にて200~800℃の範囲のさまざまな温度条件にて実施した。
【0121】
その後、厚さ100nmのITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、その特性をテストした。
【0122】
以下の表1および2に示す溶媒、前駆体およびプロセス条件を用いて、実施例Aの方法に従って溶液法を実施することによって、さまざまな酸化物半導体を作製した。
【0123】
【0124】
【0125】
以下の表3は、実施例によるAl-Sb-O系酸化物半導体のバンドギャップおよび導電性を示し、これは、薄膜トランジスタに適用可能なレベルにあることが確認される。ここで、バンドギャップは、UV可視光分光計でサンプルの吸光度を測定し、Taucプロットを描くことによって計算し、および導電性は、第一原理計算およびボルツマン輸送方程式を用いて計算した。
【0126】
【0127】
実施例A1:AlおよびSbの組成比における変更
2-メトキシエタノールまたはアセトニトリル/エチレングリコールを溶媒として使用し、アルミニウム前駆体およびアンチモン前駆体を含有するゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして厚さ27nmの酸化物半導体薄膜を得、400℃で熱処理したこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。このとき、Al-Sb-O系酸化物半導体におけるAl:Sbの元素モル比が5:1、3:1、1:1、1:3、または1:5となるように調節するよう、前駆体モル比を変更した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0128】
図4a~5cは、さまざまなAl:Sbのモル比および溶媒を用いて溶液法により作製された酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、Al:Sbのモル比および溶媒に依存して変化した。Al:Sbのモル比が約1:1であったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0129】
実施例A2:熱処理条件における変更
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして厚さ27nmの酸化物半導体薄膜を得たこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。これにより得られた酸化物半導体薄膜を空気または窒素雰囲気中にて200℃、400℃、600℃または800℃の温度で熱処理した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0130】
図6a~7dは、溶液法の後、さまざまな条件で熱処理した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、熱処理の間の雰囲気(酸素または窒素)および熱処理温度に依存して変化した。熱処理温度が約400~600℃であったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0131】
実施例A3:薄膜厚さにおける変更
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして酸化物半導体薄膜を得、これを400℃で熱処理したこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。このとき、酸化物半導体薄膜の厚さが45nm、35nm、27nm、または15nmになるように調節するよう、スピンコーティングのrpmを変更した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0132】
図8a~8dは、溶液法の後、さまざまな薄膜厚さで作製した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、酸化物半導体薄膜の厚さに依存して変化した。酸化物半導体薄膜の厚さが約20~30nmであったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0133】
実施例A4:添加剤の使用
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして酸化物半導体薄膜を得、これを400℃で熱処理したこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。このとき、0.2mLの脱イオン水または0.120mLのモノエタノールアミンを更にゾル-ゲル溶液に添加し、前記手順を実施した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0134】
図9aおよび9bは、さまざまな添加剤を用いて溶液法により作製した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、添加剤に依存して変化した。添加剤を使用しなかったときに比較して、高いμ
FEを示した。
【0135】
テスト実施例1:酸化物半導体デバイスの電気特性
実施例で作製した薄膜トランジスタ(TFT)の電気特性をテストした。TFTの電気特性を伝達曲線および出力曲線の双方を測定することによって規定した。伝達曲線において、VGを-40V~40Vの範囲で0.5Vきざみで合計161点に適用して、およびVDを、0.1V~20.1Vの間でさまざまな値を適用することによって測定した。出力曲線において、VDを、0~40Vの範囲で0.5Vきざみで合計81点にて測定し、およびVGを、0~25Vの範囲で5Vきざみで測定した。測定は、Hewlett Packard 4145B半導体パラメータ分析器を用いて実施した。
【0136】
テスト実施例2:TG-DTA
Al-Sb-O系酸化物半導体についての合成状態を、熱重量-示差熱分析器(TG-DTA)を用いて確認した。
【0137】
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして酸化物半導体を得たこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。このようにして得られた酸化物半導体を、TG-DTAによって、0℃~1200℃の変化する温度での熱処理に付しながら分析した。
【0138】
図10は、Al-Sb-O系酸化物半導体のTG-DTA分析結果を示す。これは、500℃付近で最も安定な状態であり、十分な合成が達成されたことを示す。
【0139】
テスト実施例3:XRD
Al-Sb-O系酸化物半導体の結晶性および結晶化温度を、X線回折(XRD)分析により測定した。
【0140】
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして厚さ100nmの酸化物半導体薄膜を得たこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。これにより得られた酸化物半導体を空気中にて200℃、400℃、600℃、800℃、および1000℃の温度でそれぞれ熱処理し、XRD分析を実施した。
【0141】
図11は、Al-Sb-O系酸化物半導体のXRD分析結果を示す。200℃、400℃および600℃では特性ピークは現れず、これらはアモルファスであったことを示し、800℃および100℃では特性ピークが現れ、これらは結晶性であったことを示す。
【0142】
テスト実施例4:XPS
Al-Sb-O系酸化物半導体の組成比を、X線光電子分光法(XPS)により分析した。
【0143】
5mLの2-メトキシエタノールを溶媒として使用し、0.4Mのアルミニウムアセチルアセトネートおよび0.4Mの塩化アンチモンを前駆体として含有する0.8Mのゾル-ゲル溶液を調製し、その後、スピンコーティングして厚さ27nmの酸化物半導体薄膜を得、400℃で熱処理したこと以外は、実施例Aと同じ手順を繰り返した。
【0144】
図12は、Al-Sb-O系酸化物半導体のXPS分析結果を示す。この結果から酸化物に含有される各元素の含有量を計算し、以下の表に示す。
図12で分析された酸化物半導体は、約1:1のAlおよびSbの元素モル比を有することが確認された。
【0145】
【0146】
実施例B:スパッタリング堆積によるAl-Sb-O系酸化物半導体の調製
工程1:前駆体の準備
純度99.99%のAl2O3のターゲットおよび純度99.99%のSb2O3のターゲットを、厚さ4mmおよび長さ2インチでそれぞれ準備した。ターゲットに電流をスムースに伝達し、結合表面の温度を維持するために、バックプレートとして厚さ2mmの銅(Cu)を組み合わせた。
【0147】
工程2:スパッタリング堆積
Si/SiO2基材上にAl-Sb-O系薄膜を堆積した。これは、Al2O3およびSb2O3のターゲットにRF電力をそれぞれ適用することによる同時スパッタリング法を用いて実施した。RF電力は、Al2O3に対して25~150Wの範囲およびSb2O3に対して15~70Wの範囲におけるさまざまな組み合わせで供給した。
【0148】
工程3:熱処理
形成した薄膜を合成し、および薄膜の物理特性を増強するために、電気炉を用いて熱処理を実施した。このとき、熱処理を200~800℃の範囲内のさまざまな温度条件で1~5時間実施した。
【0149】
このようにして得られた酸化物半導体薄膜上に厚さ100nmのITO電極を堆積して、薄膜トランジススタ(TFT)を作製し、その特性をテストした。
【0150】
実施例B1:Al:Sbのモル比における変更
実施例Bと同じ手順を繰り返して、Al-Sb-O系酸化物半導体薄膜を得、これは40℃で熱処理した。このとき、Al-Sb-O系酸化物半導体におけるAl:Sbのモル比が5:1、3:1、1:1、1:3、または1:5となるように調節するよう、Al前駆体およびSb前駆体に適用されるRF電力を変更した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0151】
図13a~13eは、さまざまなAl:Sbのモル比での堆積法により作製された酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、Al:Sbのモル比に依存して変化した。Al:Sbのモル比が約1:1であったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0152】
実施例B2:アルゴン:酸素の分圧比における変更
実施例Bと同じ手順を繰り返して、Al-Sb-O系酸化物半導体薄膜を得、これは40℃で熱処理した。このとき、Ar:O2の分圧比が20:0.1、20:0.5、および20:1.0となるようにそれぞれ調節しながら、スパッタリングを実施した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0153】
図14a~14cは、Ar:O
2のさまざまな分圧比にて堆積法により作製された酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、Al:O
2の分圧比に依存して変化した。Al:O
2の分圧比が約20:1であったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0154】
実施例B3:熱処理温度における変更
Ar:O2の分圧比を20:0.1に設定し、RF電力をAlに対して150WおよびSbに対して30Wに設定しながら、スパッタリング堆積を1000秒間実施したこと以外は、実施例Bと同じ手順を繰り返して、厚さ30nmのAl-Sb-O系酸化物半導体薄膜を得た。これにより得られた酸化物半導体薄膜を空気雰囲気中にて200℃、400℃、600℃または800℃の温度で熱処理した。その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0155】
図15a~15dは、堆積法の後、さまざまな温度で熱処理した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、熱処理温度に依存して変化した。熱処理温度が約400℃であったときに、最も高いμ
FEを示した。
【0156】
実施例B4:薄膜厚さにおける変更
Ar:O2の分圧比を20:0.1に設定し、RF電力をAlに対して150WおよびSbに対して30Wに設定しながら、スパッタリング堆積を実施したこと以外は、実施例Bと同じ手順を繰り返して、Al-Sb-O系酸化物半導体薄膜を得た。
【0157】
このとき、スパッタリング堆積した酸化物半導体薄膜の厚さを15nm、30nm、または45nmに調節した。
【0158】
その後、ITO電極を酸化物半導体薄膜上に堆積し、薄膜トランジスタ(TFT)を作製して、その電気特性をテストした。
【0159】
図16a~16cは、堆積法を通じてさまざまな薄膜厚さで作製した酸化物半導体デバイスのテスト結果を示す。テストの結果、電界効果移動度(μ
FE)、オン/オフ比、V
th、およびSSが、酸化物半導体薄膜の厚さに依存して変化した。酸化物半導体薄膜の厚さが約30nmであったときに、最も高いμ
FEを示した。
【国際調査報告】