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特表2024-539474多剤耐性に関連付けられるvanA及び/又はvanB遺伝子を検出するための組成物及び方法
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  • 特表-多剤耐性に関連付けられるvanA及び/又はvanB遺伝子を検出するための組成物及び方法 図1
  • 特表-多剤耐性に関連付けられるvanA及び/又はvanB遺伝子を検出するための組成物及び方法 図2
  • 特表-多剤耐性に関連付けられるvanA及び/又はvanB遺伝子を検出するための組成物及び方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】多剤耐性に関連付けられるvanA及び/又はvanB遺伝子を検出するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/689 20180101AFI20241018BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20241018BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241018BHJP
   A61K 38/14 20060101ALN20241018BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/20 A
A61K38/14
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530466
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022082684
(87)【国際公開番号】W WO2023089186
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/264,380
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】カイル シー.キャディー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン チャン
(72)【発明者】
【氏名】シャロン ホー-チェン チウ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック リン
(72)【発明者】
【氏名】アッラシュ モグハッダシ
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン スパイアー
(72)【発明者】
【氏名】チンタオ スン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR75
4B063QS25
4B063QS34
4B065AA53X
4B065AA53Y
4B065BA25
4B065CA46
4C084BA25
4C084BA34
4C084BA44
4C084DA44
4C084NA05
4C084ZB35
(57)【要約】
生物学的又は非生物学的試料中の、vanA及び/又はvanB耐性機構を有する細菌の存在又は非存在の迅速な検出のための方法が記載される。方法は、増幅工程、ハイブリダイズ工程、及び検出工程を実施することを含むことができる。さらに、vanA及びvanBの遺伝子を標的とするプライマー、プローブが、vanA及びvanBの検出のために設計されたキットと共に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のvanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子を有する細菌を検出するための方法であって、
- 前記vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子が試料中に存在する場合に、前記試料をvanAフォワードプライマーとリバースプライマーの組及びvanBフォワードプライマーとリバースプライマーの組と接触させて増幅産物を生成することを含む、増幅工程を実施すること;
- 前記増幅産物を1つ又は複数の検出可能なvanAプローブ及び1つ又は複数の検出可能なvanBプローブと接触させることを含む、ハイブリダイズ工程を実施すること;並びに、
- 前記増幅産物の存在又は非存在を検出することであって、前記増幅産物の存在が、前記試料中の前記vanA及び/又はvanB遺伝子の存在を示し、前記増幅産物の非存在が、前記試料中の前記vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子の非存在を示す、前記検出すること、
を含む、前記方法であって、
前記vanAプライマーの組が、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み;
前記vanBプライマーの組が、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み;及び
前記1つ又は複数の検出可能なvanAプローブが、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み、前記1つ又は複数の検出可能なvanBプローブが、配列番号10若しくは15のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記ハイブリダイズ工程が、前記増幅産物を、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分で標識された検出可能なプローブと接触させることを含み;及び、
前記検出工程が、前記プローブの前記ドナー蛍光部分と前記アクセプター蛍光部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在又は非存在を検出することを含み、蛍光FRETの存在又は非存在が、前記試料中の存在又は非存在を示す、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記増幅工程では、5’から3’へのヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素が用いられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドナー蛍光部分及び前記対応するアクセプター蛍光部分が、前記プローブ上で互いから8ヌクレオチド以内にある、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記アクセプター蛍光部分がクエンチャーである、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記vanAプライマーの組が、配列番号2のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー及び配列番号4のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;及び、
前記vanBプライマーの組が、配列番号7のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー及び配列番号9のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;並びに、
前記1つ又は複数の検出可能なvanAプローブが、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列を含み、及び前記1つ又は複数の検出可能なvanBプローブが、配列番号10のオリゴヌクレオチド配列を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
vanA遺伝子標的配列の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組であって、
- 配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む少なくとも1つのフォワードプライマー、
- 配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む少なくとも1つのリバースプライマー、及び
- 配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むvanA増幅産物の検出のための少なくとも1つの検出可能なプローブ
を含むプライマーとプローブの組。
【請求項8】
前記検出可能なプローブが、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分を含む、請求項7に記載のプライマーとプローブの組。
【請求項9】
前記アクセプター蛍光部分がクエンチャーである、請求項8に記載のプライマーとプローブの組。
【請求項10】
vanB遺伝子標的配列の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組であって、
- 配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む少なくとも1つのフォワードプライマー、
- 配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む少なくとも1つのリバースプライマー、並びに
- 配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むvanB増幅産物の検出のための少なくとも1つの検出可能なプローブ
を含むプライマーとプローブの組。
【請求項11】
前記検出可能なプローブが、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分を含む、請求項10に記載のプライマーとプローブの組。
【請求項12】
前記アクセプター蛍光部分がクエンチャーである、請求項11に記載のプライマーとプローブの組。
【請求項13】
請求項7から9のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組を含み、ヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び前記核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む、vanA含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキット。
【請求項14】
請求項10から12のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組を含み、ヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び前記核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む、vanB含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキット。
【請求項15】
請求項7から9のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組、及び請求項10から12のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組を含み、並びにヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び前記核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む、vanA含有及び/又はvanB含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキット。
【請求項16】
バンコマイシン耐性(VRSA)、メチシリン耐性(MRSA)、又はVRSAとMRSAの両方を有する黄色ブドウ球菌(S.aures)の検出のための方法であって、
- 増幅工程を実施することであって、
vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子が前記試料中に存在する場合に、前記試料を少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のvanAプライマー並びに少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のvanBプライマーと接触させて、増幅産物を生成すること;
黄色ブドウ球菌が前記試料中に存在する場合に、前記試料を少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のCPEプライマーと接触させて、黄色ブドウ球菌莢膜多糖類酵素(CPE)の増幅産物を生成すること;
ブドウ球菌染色体カセットmec(SCCmec)が前記試料中に存在する場合に、前記試料を少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のSCCmecプライマーと接触させて、SCCmec可動遺伝要素の右端接合点の増幅産物を生成すること;並びに、
mecA及び/又はmecC遺伝子が前記試料中に存在する場合に、前記試料を少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のmecAプライマー並びに/又は少なくともフォワード及びリバースプライマーを含む一組のmecCプライマーと接触させて、増幅産物を生成すること、
とを含む、前記増幅工程を実施すること;
- 前記増幅産物を、1つ又は複数の検出可能なvanAプローブ、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブ、1つ又は複数の検出可能なCPEプローブ、1つ又は複数の検出可能なSCCmecプローブ、並びに1つ又は複数の検出可能なmecAプローブ及び/又は1つ又は複数の検出可能なmecCプローブと接触させることを含む、ハイブリダイズ工程を実施すること;並びに
- 前記増幅産物の存在又は非存在を検出することであって、前記vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子及びCPE遺伝子の増幅産物の存在が、前記試料中のVRSAの存在を示し、前記SCCmec要素、mecA遺伝子及び/又はmecC遺伝子及びCPE遺伝子の増幅産物の存在が、前記試料中のMRSAの存在を示す、前記検出すること
を含む方法。
【請求項17】
前記vanAプライマーとプローブの組が、請求項7から9のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組を含み、及び/又は前記vanBプライマーとプローブの組が、請求項10から12のいずれか一項に記載のプライマーとプローブの組を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記vanAプライマーの組が、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なvanAプローブが、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み;
前記vanBプライマーの組が、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なvanBプローブが、配列番号10若しくは15のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み;
前記CPEプライマーの組が、配列番号16のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号17のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なCPEプローブが、配列番号18のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み;
前記SCCmecプライマーの組が、配列番号19及び20から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号21、22、23及び24から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なvanBプローブが、配列番号25のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み;
前記mecAプライマーの組が、配列番号26のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号27のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なmecAプローブが、配列番号28のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含み;並びに、
前記mecCプライマーの組が、配列番号29のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマーと、配列番号30のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーとを含み、及び、前記1つ又は複数の検出可能なmecCプローブが、配列番号31のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む、
請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細菌診断の分野に関し、さらに詳細には、バンコマイシン耐性菌、例えばvanA及び/又はvanB核酸配列を含有する黄色ブドウ球菌の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
バンコマイシンは、多くのグラム陽性生物体に対して強い活性を有する糖ペプチド抗生物質である。多くの治療レジメンでは、バンコマイシンは、他のすべての薬物の選択肢が失敗した後にのみ使用されることを意味する「最終治療薬」(DoLR)と考慮される。バンコマイシンはDoLRであるため、患者にバンコマイシンに耐性である細菌がコロニー形成しているかどうか又は患者が同細菌に感染しているかどうかを同定することが重要である。
【0003】
van遺伝子は、ペプチドグリカン合成を変更することによりバンコマイシンへの耐性を付与する耐性機構であり、その存在は、多くのグラム陽性種について記録されている。遺伝子の複数のバリアント/種類(vanA/B/C/D/E/G)が存在し、各々が耐性プロファイル、伝播性、及び保有率の点で固有の特性を保持している。特に、vanA及びvanB遺伝子は、トランスポゾン上に存在することができる(すなわち耐性遺伝子は移動することができる)ため、及びそれらが世界中で流行するため、興味深い。臨床的に関連のあるバンコマイシン耐性細菌の例には、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)及びバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)が含まれる。
【0004】
vanA遺伝子は、バンコマイシン及びテイコプラニンへの高度な耐性を付与するタンパク質をコードする(Arthur et al.,1993,1996)。vanA遺伝子の発現は、バンコマイシン又はテイコプラニンにより誘導される。VanA型糖ペプチド耐性は、複数の腸球菌種について記載されている(概要はMendez-Alvarez et al.,2000参照)。vanB遺伝子は、種々の濃度のバンコマイシンへの耐性を付与するが、テイコプラニンへの耐性は付与せず(Baptista et al.,1996;Evers & Courvalin,1996)、バンコマイシンのみによって誘導され、テイコプラニンによっては誘導されない。VanB型糖ペプチド耐性は、エンテロコッカス・フェカーリス及びエンテロコッカス・フェシウムについて記載されている。最近、いくつかのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)株のゲノムは、腸球菌からvanA遺伝子を獲得した結果、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)株を生成するように進化した。したがって、本技術分野には、vanA及びvanBの両方を含有する細菌を特異的かつ感受性の高い方式で特異的に検出する迅速で信頼性の高い方法に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一部の態様は、生物学的又は非生物学的試料中の、vanA及び/又はvanB耐性機構を有する細菌の存在又は非存在の迅速な検出、例えば、単一の試験管内でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によるvanA及びvanBの多重検出のための方法に関する。実施形態は、少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含む、vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子の存在を決定することによるvanA及びvanB耐性機構の検出の方法を含み、サイクリング工程は、増幅工程及びハイブリダイズ工程を含みうる。さらに、実施形態は、単管内でのvanA及びvanB耐性機構の検出のために設計されたプライマー、プローブ、及びキットを含む。検出方法は、vanA遺伝子及びvanB遺伝子を標的とするように設計され、これにより単一回の試験でバンコマイシン耐性菌株を検出することができる。一実施形態では、バンコマイシン耐性菌株は、黄色ブドウ球菌である。
【0006】
一態様では、試料中のvanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子を有する細菌を検出するための方法が提供され、この方法は、vanA及び/又はvanB遺伝子が試料中に存在する場合に、試料をvanAフォワードプライマーとリバースプライマーの組及びvanBフォワードプライマーとリバースプライマーの組と接触させて増幅産物を生成することを含む増幅工程を実施することと;増幅産物を1つ又は複数の検出可能なvanAプローブ及び1つ又は複数の検出可能なvanBプローブと接触させることを含むハイブリダイズ工程を実施することと;増幅産物の存在又は非存在を検出することであって、増幅産物の存在が、試料中のvanA及び/又はvanB遺伝子の存在を示し、増幅産物の非存在が、試料中のvanA及び/又はvanB遺伝子の非存在を示す、増幅産物の存在又は非存在を検出することとを含み;vanAプライマーの組が、配列番号1若しくは2のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるフォワードプライマー、及び配列番号3若しくは4のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるリバースプライマーを含むか又はそれらプライマーからなり;vanBプライマーの組が、配列番号6、7、11及び12からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるリバースプライマーとを含むか又はそれらプライマーからなり;1つ又は複数の検出可能なvanAプローブが、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなり、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブが、配列番号10若しくは15のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズ工程は、増幅産物を、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分で標識された検出可能なプローブと接触させることを含み;検出する工程は、プローブのドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在又は非存在を検出することを含み、蛍光性FRETの存在又は非存在が、試料中の存在又は非存在を示す。いくつかの実施形態では、増幅工程には、5’から3’へのヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を用いられる。いくつかの実施形態では、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分は、プローブ上で互いから8ヌクレオチド以内にある。一部の実施形態では、アクセプター蛍光部分はクエンチャーである。一実施形態では、vanAプライマーの組は、配列番号2のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー、及び配列番号4のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;vanBプライマーの組は、配列番号7のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー、及び配列番号9のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;1つ又は複数の検出可能なvanAプローブは、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列を含み、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブは、配列番号10のオリゴヌクレオチド配列を含む。
【0007】
別の態様では、本発明は、vanA遺伝子標的配列の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組に関し、この組は、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと;配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanA増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、検出可能なプローブは、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分を含む。一部の実施形態では、アクセプター蛍光部分はクエンチャーである。
【0008】
別の態様では、本発明は、vanB遺伝子標的配列の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組に関し、この組は、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanB増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなる。一実施形態では、検出可能なプローブは、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分を含む。一部の実施形態では、アクセプター蛍光部分はクエンチャーである。
【0009】
別の態様では、本発明は、配列番号1、2、3、及び4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーと、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanA増幅産物の検出のための検出可能なプローブとを含むvanA遺伝子標的の増幅のためのプライマーの組;及び/又は配列番号6、7、8、9、11、12、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーを含むvanB遺伝子標的の増幅のためのプライマーの組、及び配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanB増幅産物の検出のための検出可能なプローブに関する。一実施形態では、検出可能なプローブは、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分を含む。一部の実施形態では、アクセプター蛍光部分はクエンチャーである。
【0010】
また別の態様では、本発明は、配列番号1~15から選択されるヌクレオチドの配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるオリゴヌクレオチドを提供し、このオリゴヌクレオチドは100以下のヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本開示は、配列番号1~15のうちの1つ若しくはその補体と少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%又は95%等)を有する核酸を含むオリゴヌクレオチドを提供し、このオリゴヌクレオチドは100以下のヌクレオチドを有する。一般に、これらオリゴヌクレオチドは、これら実施形態では、プライマー核酸、又はプローブ核酸等でありうる。これら実施形態の一部では、オリゴヌクレオチドは、40以下のヌクレオチド(例えば35以下のヌクレオチド、30以下のヌクレオチド等)を有する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えば非修飾のヌクレオチドと比べて核酸ハイブリダイゼーション安定性を変更するための、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含む。任意選択的に、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つのクエンチャー部分を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの保存的に修飾された変異を含む。特定の核酸配列の「保存的に修飾された変異」若しくは単に「保存的変異」は、同一の若しくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は本質的に同一の配列を指す。当業者であれば、コードされた配列中の単一のアミノ酸又は低いパーセンテージのアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には4%、2%又は1%未満)を変更、付加又は欠失させる個々の置換、欠失又は付加が、変更によりアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、又は化学的に類似したアミノ酸でのアミノ酸の置換がもたらされる「保存的に修飾された変異」であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、このようなオリゴヌクレオチドは、本発明による方法、プライマーとプローブの組及びキットに使用するのに適している。
【0011】
一実施態様では、増幅は、5’から3’へのヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を用いることができる。したがって、第1及び第2の蛍光部分は、プローブの長さに沿って互いに8ヌクレオチド以内にありうる。別の態様では、vanA及びvanBプローブは、二次構造の形成を可能にする核酸配列を含む。そのような二次構造の形成は、一般に、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分との間の空間的近接をもたらす。この方法によれば、プローブ上の第2の蛍光部分はクエンチャーでありうる。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、vanA及び/又はvanB耐性機構の1つ又は複数の核酸を検出するためのキットを提供する。キットは、vanA遺伝子標的及び/又はvanB遺伝子標的の増幅に特異的なvanA及び/又はvanBプライマーの複数の組と;vanA及び/又はvanB増幅産物の検出に特異的な1つ又は複数の検出可能なvanA及び/又はvanBプローブとを含むことができる。
【0013】
一態様では、vanA含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキットが提供され、このキットは、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanA増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなるプライマーとプローブの組を含み、ヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0014】
一態様では、vanB含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキットが提供され、このキットは、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanB増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなるプライマーとプローブの組を含み、ヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0015】
別の態様では、vanA含有及び/又はvanB含有黄色ブドウ球菌の核酸を検出するためのキットが提供され、このキットは、vanA核酸の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組と、vanB核酸の増幅及び検出のためのプライマーとプローブの組とを含み、ヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーのうちの少なくとも1つをさらに含む。本明細書では、vanAプライマーとプローブの組は、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanA増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなることができ、及び/又はvanBプライマーとプローブの組は、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanB増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなることができる。
【0016】
一部の実施形態では、キットは、ドナー及び対応するアクセプター蛍光部分で既に標識されたプローブを含むことができるか、又はプローブを標識するための発蛍光部分を含むことができる。キットは、単管にパッケージングされるか又は1つの管内で合わせられたヌクレオシドトリホスフェート、核酸ポリメラーゼ、及び核酸ポリメラーゼの機能に必要なバッファーも含むことができる。キットは、プライマー、プローブ、及び発蛍光部分を使用して試料中のvanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子の存在又は非存在を検出するための添付文書及び説明書も含むことができる。
【0017】
本発明の別の態様は、バンコマイシン耐性(VRSA)、メチシリン耐性(MRSA)又はVRSAとMRSAの両方を有する黄色ブドウ球菌(S.aures)の迅速な検出のための方法に関する。方法は、試料を:vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子が試料中に存在する場合に、vanAフォワードプライマーとリバースプライマーの組及びvanBフォワードプライマーとリバースプライマーの組に接触させて増幅産物を生成すること;黄色ブドウ球菌が試料中に存在する場合に、フォワードプライマーとリバースプライマーの組に接触させて黄色ブドウ球菌莢膜多糖類酵素(CPE)の増幅産物を生成すること(参照により本明細書にその全体が援用される米国特許第9,034,581号に開示されるように);SCCmecが試料中に存在する場合に、フォワードプライマーとリバースプライマーの組に接触させてブドウ球菌染色体カセットmec(SCCmec)可動遺伝要素の右端接合点の増幅産物を生成すること;並びにmecA及び/又はmecC遺伝子が試料中に存在する場合に、mecAフォワードプライマーとリバースプライマーの組及びmecCフォワードプライマーとリバースプライマーの組に接触させて増幅産物を生成することを含む増幅工程を実施することと;増幅産物を、1つ又は複数の検出可能なvanAプローブ、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブ、1つ又は複数の検出可能なCPEプローブ、1つ又は複数の検出可能なSCCmecプローブ、1つ又は複数の検出可能なmecAプローブ、及び1つ又は複数の検出可能なmecCプローブと接触させることを含むハイブリダイズ工程を実施することと;増幅産物の存在又は非存在を検出することであって、vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子及びCPE遺伝子の増幅産物の存在が、試料のVRSAの存在を示し、SCCmec要素、mecA遺伝子及び/又はmecC遺伝子及びCPE遺伝子の増幅産物の存在が、試料中のMRSAの存在を示す、増幅産物の存在又は非存在を検出することとを含む。
【0018】
一実施形態では、vanA遺伝子の増幅のためのvanAフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号1、2、3、及び4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーを含み、vanA増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一実施形態では、vanB遺伝子の増幅のためのvanBフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号6、7、8、9、11、12、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーを含み、vanB増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一実施形態では、vanAプライマーとプローブの組は、配列番号1若しくは2から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号3若しくは4から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanA増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなることができ、及び/又はvanBプライマーとプローブの組は、配列番号6、7、11及び12から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのフォワードプライマーと、配列番号8、9、13及び14から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる(少なくとも)1つのリバースプライマーと、配列番号10及び15から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるvanB増幅産物の検出のための(少なくとも)1つの検出可能なプローブとを含むか又はそれらからなることができる。特定の実施形態では、vanAプライマーの組は、配列番号2のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー、及び配列番号4のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;vanBプライマーの組は、配列番号7のオリゴヌクレオチド配列を含むフォワードプライマー、及び配列番号9のオリゴヌクレオチド配列を含むリバースプライマーを含み;1つ又は複数の検出可能なvanAプローブは、配列番号5のオリゴヌクレオチド配列を含み、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブは、配列番号10のオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌CPE遺伝子の増幅のための黄色ブドウ球菌CPEフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号16及び17から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその配列からなる少なくとも1つのプライマーを含み、黄色ブドウ球菌CPE増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号18のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体を含む。一部の実施形態では、CPEプライマーの組は、配列番号16のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるフォワードプライマー及び配列番号17のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなるリバースプライマーを含むか又はそれらプライマーからなり、1つ又は複数の検出可能なCPEプローブは、配列番号18のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一実施形態では、SCCmec要素の増幅のためのSCCmecフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号19、20、21、22、23及び24から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーを含み、SCCmec増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号25のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一部の実施形態では、SCCmecプライマーの組は、配列番号19及び20から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマー及び配列番号21、22、23及び24から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーを含み、1つ又は複数の検出可能なvanBプローブは、配列番号25のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む。一実施形態では、mecA遺伝子の増幅のためのmecAフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号26及び27から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーを含み、mecA増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号28のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一部の実施形態では、mecAプライマーの組は、配列番号26のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマー及び配列番号27のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーを含み、1つ又は複数の検出可能なmecAプローブは、配列番号28のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む。一実施形態では、mecC遺伝子の増幅のためのmecAフォワードプライマーとリバースプライマーの組は、配列番号29及び30から選択されるオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる少なくとも1つのプライマーからなり、mecC増幅産物の検出のための1つ又は複数の検出可能なプローブは、配列番号31のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むか又は同配列又はその補体からなる。一部の実施形態では、mecCプライマーの組は、配列番号29のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むフォワードプライマー及び配列番号30のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含むリバースプライマーを含み、1つ又は複数の検出可能なmecCプローブは、配列番号31のオリゴヌクレオチド配列又はその補体を含む。
【0019】
別途定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を本主題の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料が以下に記載される。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合は、定義を含め、本明細書が優先する。
【0020】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、図面、発明を実施するための形態、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例3に記載される非ベンジル化vanA及びvanBプライマーを使用したPCRアッセイの結果を示している。
図2】実施例3に記載されるベンジル化vanA及びvanBプライマーを使用したPCRアッセイの結果を示している。
図3】種々の黄色ブドウ球菌株及び腸球菌株中における、vanA、vanB、CPE、SCCmec OrfX、mecA及びmecCを標的とするプライマーとプローブの組を使用した多重PCRアッセイの結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
核酸増幅によるvanA及び/又はvanB耐性機構を有する細菌の診断は、迅速かつ正確に細菌感染を検出するための方法を提供する。試料中のvanA遺伝子及びvanB遺伝子を検出するためのリアルタイムアッセイが、本明細書に記載される。vanA及び/又はvanBを検出するためのプライマー及びプローブが提供され、そのようなプライマー及びプローブを含有する製造品又はキットも提供される。vanA及び/又はvanBの検出のためのリアルタイムPCRの感受性が他の方法と比較して上昇し、かつ試料の封じ込め及び増幅産物のリアルタイム検出を含めてリアルタイムPCRの特徴が改善されることにより、臨床検査室でのvanA及び/又はvanB感染(限定しないがバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)及びバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)を含む)の常套的診断のためにこの技術を実装することが可能になる。
【0023】
腸球菌中の糖ペプチド耐性は、表現型及び遺伝子型において不均一である。高レベルのバンコマイシン及びテイコプラニン(VanA表現型)への誘導可能な耐性を担う遺伝子は、10,851-bpのTn1546トランスポゾンにより担持される。自己移動可能なプラスミドへのTn1546の転位とコンジュゲーションによるその後の移動は、この種の耐性の蔓延に関与していると思われる。9つのポリペプチドが、次の5つの官能基に属するTn1546によりコードされる:転位機能(ORF1及びORF2)、耐性遺伝子発現の制御(VanR及びVanS)、デプシペプチドd-Ala-d-ラクテートの合成(VanH及びVanA)、d-Ala-d-Ala-ペプチドグリカン前駆体含有の加水分解(VanX及びVanY)、及び低レベルのテイコプラニン耐性(VanZ)。VanB型耐性(種々のレベルのバンコマイシンへの耐性及びテイコプラニンに対する感受性)も、d-Ala-d-Lacの生成に起因する。VanB型株のVanBリガーゼは、構造的にかつ機能的にVanAに類似している。vanB遺伝子は複合トランスポゾンTn1547上に認められ、この複合トランスポゾンは、より大きな接合性の染色体上に位置する要素の一部であった(90から250kb)。獲得されたVanA型及びVanB型耐性とは対照的に、VanC型耐性(低レベルのバンコマイシンへの耐性及びテイコプラニンに対する感受性)は、運動性の腸球菌の内在特性である。これら種の耐性は、バンコマイシン親和性が低減された細胞壁前駆体の生成を導くVanCリガーゼによるジペプチドd-Ala-d-Serの合成に起因する。
【0024】
メチシリン耐性遺伝子mecAとそのホモログであるmecCはともに、感受性株中に存在せず、遠縁種から獲得されたと考えられる、変化したメチシリン耐性ペニシリン結合タンパク質(PBP2a又はPBP2’)である、β-ラクタム環に対する親和性が低減したペニシリン結合タンパク質(ペニシリン、セファロスポリン及びカルバペネム等のβ-ラクタム抗生物質の主な活性部位)をコードする(Guignard et al.,2005,Curr Opin Pharmacol 5(5):479-89)。mecA及びmecCの両方は、可動遺伝要素である、MRSA株のブドウ球菌染色体カセットmec(SCCmec)上に担持される。SCC要素も感受性黄色ブドウ球菌に発生するが、mecA遺伝子もmecC遺伝子も担持せず、非機能性のmecAもmecC遺伝子も担持しない。このような株は、同じ右端接合点を有しうるので、擬陽性結果の源でありうる。
【0025】
mecA遺伝子又はmecC遺伝子及び黄色ブドウ球菌特異性遺伝子を検出することによる鼻検体からのMRSA検出は、変動量の非耐性黄色ブドウ球菌及びメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCoNS)の両方の存在に起因して、時に低陽性的中率(PPV)につながるであろう。両方の標的が存在するために、それらの組み合わせをMRSAから区別することができない。MRSAの保有率に応じて、この状況は最大30%の擬陽性結果を招く。よりよいPPVのために、選択された標的は、MRSAについて固有である必要がある。現在知られている唯一の標的は、トランスポゾンの統合を増幅するブドウ球菌染色体カセット(SCCmec)である。
【0026】
mecA/mecC含有黄色ブドウ球菌(mecC-MRSA)の検出は、黄色ブドウ球菌orfX遺伝子とメチシリンへの耐性を付与するmecA遺伝子又はmecC遺伝子を担持するSCCmecとの間のRE接合点においてアンプリコンを生成する戦略を利用する。これを達成するために、1つのプライマーは、黄色ブドウ球菌のorfX遺伝子の高度に保存された領域に係留され(orfXプライマー)、2つ目のプライマーは、SCCmecの保存されていないRE接合点内部に位置する(REプライマー)。2つのプライマーから得られたアンプリコンは、orfX遺伝子の一部とSCCmecの一部に広がる。RE接合点におけるSCCmecの非相同の性質に起因して、固有のMRSA株の最大限のカバーを達成するために、複数の異なるREプライマーが必要である。mecA/mecC-MRSAのこの種の同定及び検出は、複数のグループにより、例えば、Huletsky et alによる米国特許第7,449,289号及び米国特許第7,838,221号;Aichinger et al.による米国特許第8,535,888号;並びにJohnson et al.による米国特許第9,920,381号及び米国特許第10,190,178号に記載されており、これら文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される。しかしながら、先述のように、この戦略は、mecA又はmecC遺伝子が欠失している(全部又は一部)か又は非機能性である場合、擬陽性結果の源となりうる。
【0027】
本明細書で使用される用語「増幅する」は、鋳型核酸分子(例えば、vanA及び/又はvanB)の一方又は両方の鎖に相補的な核酸分子を合成するプロセスを指す。核酸分子を増幅することは、典型的には、鋳型核酸を変性させること、プライマーの融解温度未満の温度でプライマーを鋳型核酸にアニーリングすること、及びプライマーから酵素的に伸長して増幅産物を生成することを含む。増幅には、典型的には、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ酵素(例えば、Platinum(登録商標)Taq)並びにポリメラーゼ酵素(例えば、MgCl及び/又はKCl)の最適な活性のための適切なバッファー及び/又は補因子の存在が必要である。
【0028】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、当業者に知られており、オリゴマー化合物、主にオリゴヌクレオチドだけでなく、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA合成を「プライミング」することができる修飾オリゴヌクレオチドを指し、すなわち、例えばオリゴヌクレオチドの3’末端が遊離3’-OH基を提供し、その基には、3’から5’ホスホジエステル結合を確立する鋳型依存性DNAポリメラーゼによって「ヌクレオチド」がさらに結合し、それにより、デオキシヌクレオシド三リン酸が使用され、かつピロリン酸が放出される。したがって、おそらく意図された機能を除いて、「プライマー」、「オリゴヌクレオチド」、又は「プローブ」の間に基本的な違いはない。
【0029】
「ハイブリダイズする」という用語は、増幅産物への1つ又は複数のプローブのアニーリングを指す。ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、プローブの融解温度より低いが、プローブの非特異的ハイブリダイゼーションを回避する温度を含む。
【0030】
「5’から3’へのヌクレアーゼ活性」という用語は、典型的には核酸鎖合成に関連し、それによってヌクレオチドが核酸鎖の5’末端から除去される、核酸ポリメラーゼの活性を指す。
【0031】
「熱安定性ポリメラーゼ」という用語は、熱安定性であるポリメラーゼ酵素を指し、すなわち、この酵素は、鋳型に相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖鋳型核酸の変性をもたらすのに必要な時間にわたって高温に曝された場合、不可逆的に変性しない。一般に、合成は、各プライマーの3’末端で開始され、鋳型鎖に沿って5’から3’方向へ進行する。熱安定性ポリメラーゼは、サーマス・フラブス(Thermus flavus)、T.ルーバー(T.ruber)、サーマス・サーモフィルス(T.thermophilus)、サーマス・アクアティカス(T.aquaticus)、T.ラクテウス(T.lacteus)、T.ルベンス(T.rubens)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、及びメタノサーマス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)から単離された。それにもかかわらず、酵素が補充されるならば、熱安定性でないポリメラーゼをPCRアッセイに用いることができる。
【0032】
「その補体」という用語は、所与の核酸と同じ長さであり、正確に相補的である核酸を指す。
【0033】
核酸に関して使用されるときの「伸長」又は「延長」という用語は、追加のヌクレオチド(又は他の類似の分子)が核酸に組み込まれるときを指す。例えば、核酸は、典型的には核酸の3’末端にヌクレオチドを付加するポリメラーゼ等の生体触媒を組み込むヌクレオチドによって任意選択的に伸長される。
【0034】
2つ以上の核酸配列の状況における「同一」又は「パーセント同一性」という用語は、例えば、当業者に利用可能な配列比較アルゴリズムの1つを使用して又は目視検査によって測定された最大の対応について、比較又は整列されたとき、同じであるか、又は同じヌクレオチド特定のパーセンテージを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するために適した例示的なアルゴリズムはBLASTプログラムであり、例えば、Altschul et al.(1990)“Basic local alignment search tool” J.Mol.Biol.215:403-410,Gish et al.(1993)“Identification of protein coding regions by database similarity search” Nature Genet.3:266-272、Madden et al.(1996)“Applications of network BLAST server” Meth.Enzymol.266:131-141,Altschul et al.(1997)“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs” Nucleic Acids Res.25:3389-3402、及びZhang et al.(1997)“PowerBLAST:A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation” Genome Res.7:649-656に記載されており、これらは各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
オリゴヌクレオチドの文脈における「修飾ヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つのヌクレオチドがオリゴヌクレオチドに所望の特性を提供する異なるヌクレオチドによって置き換えられる変化を指す。本明細書に記載されるオリゴヌクレオチドにおいて置換することのできる例示的な修飾ヌクレオチドには、例えば、C5-メチル-dC、C5-エチル-dC、C5-メチル-dU、C5-エチル-dU、2,6-ジアミノプリン、C5-プロピニル-dC、C5-プロピニル-dU、C7-プロピニル-dA、C7-プロピニル-dG、C5-プロパルギルアミノ-dC、C5-プロパルギルアミノ-dU、C7-プロパルギルアミノ-dA、C7-プロパルギルアミノ-dG、7-デアザ-2-デオキシキサントシン、ピラゾロ-ピリミジンアナログ、擬似dU、ニトロピロール、ニトロインドール、2’-0-メチルリボーU、2’-0-メチルリボーC、N4-エチル-dC、及びN6-メチル-dA等が含まれる。オリゴヌクレオチド中で置換されうる他の多くの修飾ヌクレオチドは、本明細書で言及されるか、又は当技術分野で知られている。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチド置換は、対応する修飾されていないオリゴヌクレオチドの融解温度と比べて、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)を修飾する。さらに説明すると、一部の修飾ヌクレオチド置換は、いくつかの実施形態では、非特異的核酸増幅(例えば、プライマーダイマー形成等を最小化する)を低減し、意図される標的アンプリコンの収率を増加させること等ができる。これら種類の核酸修飾の例は、例えば、米国特許第6,001,611号に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0036】
所与のオリゴヌクレオチドの「バリアント」は、1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失又は置換、例えばオリゴヌクレオチドのそれぞれの配列の5’末端及び/又は3’末端における1つ又は複数のヌクレオチドの付加、欠失又は置換を含有しうる。上に詳述したように、プライマー(及び/又はプローブ)は化学的に修飾されていてもよく、すなわち、プライマー及び/又はプローブは修飾ヌクレオチド又は非ヌクレオチド化合物を含んでいてもよい。その場合、プローブ(又はプライマー)は修飾オリゴヌクレオチドである。「修飾ヌクレオチド」(又は「ヌクレオチドアナログ」)は、いくつかの修飾によって天然の「ヌクレオチド」とは異なるが、依然として、塩基若しくは塩基様化合物、ペントフラノシル糖若しくはペントフラノシル糖様化合物、リン酸部分若しくはリン酸様部分、又はそれらの組み合わせからなる。例えば、「ヌクレオチド」の塩基部分に「標識」を付着させて、それにより「修飾ヌクレオチド」を得ることができる。「ヌクレオチド」中の天然塩基はまた、例えば、7-デスアザプリンによって置き換えられて、それにより同様に「修飾ヌクレオチド」を得ることができる。「修飾ヌクレオチド」又は「ヌクレオチドアナログ」という用語は、本出願において交換可能に使用される。「修飾ヌクレオシド」(又は「ヌクレオシドアナログ」)は、「修飾ヌクレオチド」(又は「ヌクレオチドアナログ」)について上に概説したような様式で、何らかの修飾により天然のヌクレオシドとは異なる。
【0037】
核酸分子、例えば、vanA遺伝子又はvanB遺伝子の核酸配列をコードする核酸分子を増幅する修飾オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドアナログを含むオリゴヌクレオチドは、例えば、OLIGO(Molecular Biology Insights Inc.,Cascade,Colo.)等のコンピュータープログラムを使用して設計することができる。増幅プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計するときの重要な特徴には、限定されないが、検出(例えば、電気泳動によって)を容易にするための適切なサイズの増幅産物、一対のプライマーのメンバーに対する同様の融解温度、及び各プライマーの長さ(すなわち、プライマーは、配列特異性でアニーリングし、合成を開始するために十分な長さである必要があるが、オリゴヌクレオチド合成中に忠実度が低減するほど長くはない)が含まれる。典型的には、オリゴヌクレオチドプライマーは8~50ヌクレオチド長(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48又は50ヌクレオチド長)である。
【0038】
プライマーの組に加えて、本方法は、vanA及び/又はvanB遺伝子の存在又は非存在を検出するために、1つ又は複数のプローブを使用することができる。「プローブ」という用語は、合成的又は生物学的に生成された核酸(DNA又はRNA)を指し、これは、設計又は選択により、定義された所定のストリンジェンシーの下で、「標的核酸」に、本例の場合はvanA(標的)核酸及び/又はvanB(標的)核酸に特異的に(すなわち、優先的に)、それらをハイブリダイズさせることを可能にする特定のヌクレオチド配列を含む。「プローブ」は、標的核酸を検出することを意味する「検出プローブ」と呼ぶこともできる。
【0039】
いくつかの実施形態では、記載されるプローブは、少なくとも1つの蛍光標識で標識することができる。一実施形態では、プローブは、ドナー蛍光部分、例えば、蛍光色素、及び対応するアクセプター蛍光部分、例えば、クエンチャーで標識することができる。
【0040】
プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドの設計は、プライマーの設計と同様の様式で実施することができる。実施形態は、増幅産物の検出のための単一のプローブ又は一対のプローブを使用することができる。実施形態に応じて、1つ以上のプローブの使用は、少なくとも1つの標識及び/又は少なくとも1つのクエンチャー部分を含みうる。プライマーと同様に、プローブは通常、同様の融解温度を有し、各プローブの長さは、配列特異的ハイブリダイゼーションが起こるために十分でなければならないが、合成中に正確性が低下するほど長くはない。オリゴヌクレオチドプローブは、一般に15から30(例えば、16、18、20、21、22、23、24、又は25)ヌクレオチド長である。
【0041】
コンストラクトは、vanA又はvanBプライマー及びプローブ核酸分子(例えば、配列番号1~15)のうちの1つを各々が含有するベクターを含むことができる。コンストラクトは、例えば、コントロール鋳型核酸分子として使用することができる。使用に適したベクターは、市販されている及び/又は当技術分野の組み換え核酸技法のルーチンによって生成される。vanA及びvanB核酸分子は、例えば、化学合成、vanA及びvanB遺伝子からの直接的クローニング、又はPCR増幅により得ることができる。
【0042】
本方法における使用に適したコンストラクトは、典型的には、vanA及びvanB核酸分子(例えば、配列番号1~15の1つ又は複数の配列を含有する核酸分子)に加えて、所望のコンストラクト及び/又は形質転換体を選択するための選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする配列、並びに複製開始点を含む。ベクター系の選択は、通常、宿主細胞の選択、複製効率、選択性、誘導性及び回収の容易さを含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。
【0043】
vanA及びvanB核酸分子を含有するコンストラクトは、宿主細胞内で増やすことができる。本明細書で使用される場合、宿主細胞という用語は、原核生物及び真核生物、例えば酵母、植物及び動物細胞を含むことを意味する。原核生物宿主には、大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)及びバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)が含まれうる。真核生物宿主には、出芽酵母、分裂酵母、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、COS細胞又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳動物細胞、昆虫細胞、並びにシロイヌナズナ及びタバコ等の植物細胞が含まれる。コンストラクトを、当業者に一般的に知られている技術のいずれかを使用して宿主細胞に導入することができる。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション及びウイルス媒介核酸移入が、核酸を宿主細胞に導入するための一般的な方法である。加えて、裸のDNAを細胞に直接送達することができる(例えば、米国特許第5,580,859号及び同第5,589,466号参照)。
【0044】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号、同第4,800,159号及び同第4,965,188号には、従来のPCR技術が開示されている。PCRは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えば、DNA又はRNA)に結合する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。いくつかの実施形態で有用なプライマーには、記載されるmecA/mecC-MRSA核酸配列(例えば、配列番号1、2、4、5及び6)内の核酸合成の開始点として作用することのできるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマーは、従来の方法によって制限消化物から精製することができるか、又は合成的に生成することができる。プライマーは、好ましくは、増幅における最大効率のためには一本鎖であるが、二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーは、最初に変性される、すなわち、鎖を分離するために処理される。二本鎖核酸を変性させる1つの方法は、加熱によるものである。
【0045】
鋳型核酸が二本鎖である場合、PCRで鋳型として使用されうる前に、二本の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、物理的、化学的、又は酵素的手段を含む任意の適切な変性方法によって達成することができる。核酸鎖を分離する1つの方法は、核酸が優位に変性する(例えば、50%、60%、70%、80%、90%又は95%を超えて変性する)まで加熱することを含む。鋳型核酸を変性させるために必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩濃度、並びに変性される核酸の長さ及びヌクレオチド組成に依存するであろうが、典型的には、温度及び核酸長等の反応の特徴に応じて、約90℃から約105℃の範囲である。変性は、典型的には、約30秒から4分間(例えば、1分から2分30秒、又は1.5分)実施される。
【0046】
二本鎖鋳型核酸が熱によって変性される場合、反応混合物を、記載される核酸分子上のその標的配列に対する各プライマーのアニーリングを促進する温度まで冷却することが可能である。アニーリングの温度は、通常、約35℃から約65℃、(例えば、約40℃から約60℃、約45℃から約50℃)である。アニーリング時間は、約10秒から約1分間(例えば、約20秒から約50秒、約30秒から約40秒)とすることができる。次いで、反応混合物は、ポリメラーゼの活性が促進又は最適化される温度、すなわち、アニーリングされたプライマーから伸長が起こって、鋳型核酸に相補的な生成物を生成するために十分な温度に調節される。温度は、核酸鋳型にアニーリングされた各プライマーから伸長生成物を合成するために十分でなくてはならないが、その相補的鋳型から伸長生成物を変性させるほど高くてはならない(例えば、伸長のための温度は、概して約40℃から約80℃(例えば、約50℃から約70℃、約60℃)の範囲である)。伸長時間は、約10秒から約5分(例えば、約30秒から約4分、約1分から約3分、約1分30秒から約2分)とすることができる。
【0047】
PCRアッセイは、RNA又はDNA(cDNA)等のvanA遺伝子及びvanB遺伝子核酸を用いることができる。鋳型核酸は精製される必要はなく;生物学的試料に含有されるvanA及び/又はvanB核酸等複合混合物のごく一部でありうる。VanA/vanB核酸分子は、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications(Persing et al.(eds),1993,American Society for Microbiology,Washington D.C.)に記載されているもの等の常套的な技術によって生物学的試料から抽出されうる。核酸は、任意の数の供給源、例えばプラスミド、又は細菌、酵母、ウイルス、細胞小器官、又は植物若しくは動物等の高等生物を含む天然源から得ることができる。
【0048】
オリゴヌクレオチドプライマーは、プライマー伸長を誘導する反応条件下でPCR試薬と組み合わせられる。例えば、鎖伸長反応物には、一般に、50mM KCl、10mM トリス-HCl(pH8.3)、15mM MgCl、0.001%(w/v)ゼラチン、0.5~1.0μgの変性された鋳型DNA、50pmolの各オリゴヌクレオチドプライマー、2.5UのTaqポリメラーゼ、及び10%DMSO)が含まれる。反応物は、通常、各々150から320μMのdATP、dCTP、dTTP、dGTP、又はそれらの1つ若しくは複数のアナログを含有する。
【0049】
新規に合成された鎖は、反応の後続工程で使用することのできる二本鎖分子を形成する。標的核酸分子に対応する所望の量の増幅産物を生成するために、鎖分離、アニーリング、及び伸長の工程を必要に応じて何度でも繰り返すことができる。反応の限定要因は、反応物中に存在するプライマー、熱安定性酵素、及びヌクレオシド三リン酸の量である。サイクリング工程(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長)は、好ましくは少なくとも1回繰り返される。検出における使用のために、サイクリング工程の数は、例えば、試料の性質によって決まるであろう。試料が核酸の複合混合物である場合、検出に十分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクリング工程が必要となるであろう。一般に、サイクリング工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40、60、又は場合によっては100回繰り返され得る。
【0050】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
FRET技術(例えば、米国特許第4,996,143号、同第5,565,322号、同第5,849,489号、及び同第6,162,603号)は、ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分が互いから一定の距離内に配置されると、それら2つの蛍光部分間で、可視化できるか又は他の方法で検出及び/又は定量することのできるエネルギー移動が起こるという概念に基づいている。ドナーは、典型的には、適切な波長の光照射によって励起されると、アクセプターにエネルギーを移動させる。アクセプターは、典型的には、移動されたエネルギーを異なる波長の光照射の形態で再放出する。一部の系では、非蛍光エネルギーは、実質的に非蛍光のドナー部分(例えば、米国特許第7,741,467号参照)を含む生体分子によって、ドナー部分とアクセプター部分との間で移動させることができる。
【0051】
一例では、オリゴヌクレオチドプローブは、ドナー蛍光部分と、蛍光性であってもなくてもよく、光以外の形態で移動されたエネルギーを散逸させる対応するクエンチャーとを含有することができる。プローブがインタクトであるとき、エネルギー移動は、典型的には、2つの蛍光部分の間で起こり、その結果、ドナー蛍光部分からの蛍光発光がクエンチされる。ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程中、増幅産物に結合したプローブは、ドナー蛍光部分の蛍光発光がもはやクエンチされないように、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって切断される。この目的のための例示的なプローブは、例えば、米国特許第5,210,015号、同第5,994,056号、及び同第6,171,785号に記載されている。一般的に使用されるドナー-アクセプター対は、FAM-TAMRA対を含む。一般的に使用されるクエンチャーは、DABCYL及びTAMRAである。一般的に使用されるダーククエンチャーには、BlackHole QuenchersTM(BHQ)(Biosearch Technologies,Inc.,Novato、Cal.),Iowa BlackTM,(Integrated DNA Tech.,Inc.,Coralville,Iowa)、BlackBerry(登録商標) Quencher 650(BBQ-650),(Berry & Assoc.,Dexter,Mich.)が含まれる。
【0052】
別の例では、各々が蛍光部分を含有する2つのオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドプローブの相補性によって決定される特定の位置で増幅産物にハイブリダイズすることができる。オリゴヌクレオチドプローブが適切な位置で増幅産物の核酸にハイブリダイズすると、FRETシグナルが精製される。ハイブリダイゼーション温度は、約10秒から約1分間、約35℃から約65℃の範囲でありうる。
【0053】
蛍光分析は、例えば、光子計数落射蛍光顕微鏡システム(適切なダイクロイックミラー及び特定の範囲での蛍光発光をモニタリングするためのフィルタを含む)、光子計数光電子増倍管システム、又は蛍光光度計を使用して行うことができる。エネルギー移動を開始するため、又はフルオロフォアの直接検出を可能にするための励起は、アルゴンイオンレーザー、高強度水銀(Hg)アークランプ、光ファイバー光源、又は所望の範囲の励起のために適切にフィルタリングされた他の高強度光源を用いて行うことができる。
【0054】
ドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分に関して本明細書で使用される場合、「対応する」は、ドナー蛍光部分の発光スペクトルと重複する吸光度スペクトルを有するアクセプター蛍光部分を指す。アクセプター蛍光部分の発光スペクトルの波長最大値は、ドナー蛍光部分の励起スペクトルの波長最大値よりも少なくとも100nm大きくなければならない。それにより、それらの間で効率的な非照射エネルギー移動を生じさせることができる。
【0055】
蛍光ドナー部分及び対応するアクセプター部分は、一般に、(a)高効率Forsterエネルギー移動;(b)大きな最終ストークスシフト(>100nm);(c)可能な限りの可視スペクトルの赤色部分(>600nm)への発光のシフト;及び(d)ドナー励起波長での励起によって生じるラマン水蛍光発光よりも高い波長への発光のシフトのために選択される。例えば、レーザー線付近のその最大励起(例えば、ヘリウム-カドミウム442nm又はアルゴン488nm)、高い吸光係数、高い量子収率、及び対応するアクセプター蛍光部分の励起スペクトルとその蛍光発光との良好な重複を有するドナー蛍光部分を選択することができる。高い吸光係数、高い量子収率、ドナー蛍光部分の発光とのその励起との良好な重複、及び可視スペクトルの赤色部分(>600nm)の発光を有する対応するアクセプター蛍光部分を選択することができる。
【0056】
FRET技術において種種のアクセプター蛍光部分と共に使用することのできる代表的なドナー蛍光部分には、フルオレセイン、ルシファーイエロー、B-フィコエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファーイエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアナトスチルベン-2、2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシンイムジル1-ピレンブチレート、及び4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体が含まれる。代表的なアクセプター蛍光部分には、使用されるドナー蛍光部分に応じて、LC Red 640、LC Red 705、Cy5、Cy5.5、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、ローダミンxイソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、フルオレセイン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、又はランタニドイオンの他のキレート(例えば、ユウロピウム、又はテルビウム)が含まれる。ドナー蛍光部分及びアクセプター蛍光部分は、例えば、Molecular ProbesMolecular Probes(Junction City,Oreg.)又はSigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)から得ることができる。
【0057】
ドナー蛍光部分及びアクセプター蛍光部分は、リンカーアームを介して適切なプローブオリゴヌクレオチドに結合させることができる。リンカーアームはドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分との間の距離に影響を及ぼすので、各リンカーアームの長さは重要である。リンカーアームの長さは、ヌクレオチド塩基から蛍光部分までのオングストローム(Å)の距離とすることができる。一般に、リンカーアームは、約10Åから約25Åである。リンカーアームは、国際公開第84/03285号に記載されている種類のものであってもよい。国際公開第84/03285号は、リンカーアームを特定のヌクレオチド塩基に結合させるための方法と、蛍光部分をリンカーアームに結合させるための方法も開示している。
【0058】
LC Red 640などのアクセプター蛍光部分を、アミノリンカー(例えば、ABI(Foster City,Calif.)又はGlen Research(Sterling,VA)から入手可能なC6-アミノホスホラミダイト)を含有するオリゴヌクレオチドと組み合わせて、例えば、LC Red 640標識オリゴヌクレオチドを生成することができる。フルオレセイン等のドナー蛍光部分をオリゴヌクレオチドにカップリングするために頻繁に使用されるリンカーには、チオ尿素リンカー(FITC由来、例えばGlen Research or ChemGene(Ashland,Mass.)からのフルオレセイン-CPG)、アミド-リンカー(フルオレセイン-NHS-エステル由来、例えば、BioGenex(San Ramon,Calif.)からのCX-フルオレセイン-CPG)、又はオリゴヌクレオチド合成後にフルオレセイン-NHS-エステルのカップリングを必要とする3’-アミノ-CPGが含まれる。
【0059】
vanA及びvanB耐性遺伝子の検出
本開示は、生物学的又は非生物学的試料中のvanA及び/又はvanB遺伝子の存在又は非存在を検出するための方法を提供する。提供される方法は、試料の汚染、偽陰性、及び偽陽性の問題を回避する。方法は、vanA及び/又はvanBプライマーの複数の対を使用して、試料からvanA及び/又はvanB標的核酸分子の一部分を増幅することを含む少なくとも1つのサイクリング工程と、FRET検出工程とを実施することを含む。複数のサイクリング工程が、好ましくはサーモサイクラーで実施される。vanA及びvanBプライマー及びプローブを使用して方法を実施し、vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子の存在を検出することができ、アッセイにおけるvanA及び/又はvanBの検出は、試料中のvanA及び/又はvanBの存在を示す。
【0060】
本明細書に記載されるように、増幅産物は、FRET技術を活用する標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用して検出することができる。1つのFRETフォーマットは、TaqMan(登録商標)技術を利用して、増幅産物の存在又は非存在、したがってmecA/mecC-MRSAの存在又は非存在を検出する。TaqMan(登録商標)技術は、例えば、蛍光性であっても蛍光性でなくともよい、1つの蛍光色素及び1つのクエンチャーで標識された1つの1本鎖ハイブリダイゼーションプローブを利用する。第1の蛍光部位が適切な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーはFRETの原理に従って第2の蛍光部位に移動される。第2の蛍光部位は、一般的にはクエンチャー分子である。PCR反応のアニーリング工程中、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的DNA(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の伸長フェーズ中に、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって分解される。結果的に、蛍光部分とクエンチャー部分とが互いから空間的に分離される。結果として、クエンチャーの非存在下で第1の蛍光部分を励起すると、第1の蛍光部分からの蛍光発光を検出することができる。例として、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)は、TaqMan(登録商標)技術を使用し、試料中のvanA及び/又はvanBの存在又は非存在を検出するための本明細書に記載の方法を実施するのに適している。
【0061】
FRETと組み合わせた分子ビーコンを使用して、リアルタイムPCR法を使用した増幅産物の存在を検出することもできる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部位及び第2の蛍光部位で標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する。第2の蛍光部位は一般的にはクエンチャーであり、蛍光標識は典型的にはプローブの各端部に位置する。分子ビーコン技術は、二次構造形成を可能にする配列(例えば、ヘアピン)を有するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。プローブ内で二次構造が形成された結果として、プローブが溶液中にあると、両方の蛍光部位が空間的に近接する。標的核酸(すなわち、増幅産物)へのハイブリダイゼーション後、プローブの二次構造が破壊され、蛍光部分が互いから分離され、それにより、適切な波長の光による励起後、第1の蛍光部分の発光を検出することができる。
【0062】
FRET技術の別の一般的な形式は、2つのハイブリダイゼーションプローブを利用する。各プローブは、異なる蛍光部分で標識することができ、一般的に、標的DNA分子(例えば、増幅産物)内で互いに近接してハイブリダイズするように設計される。ドナー蛍光部分、例えばフルオレセインは、LightCycler(登録商標)Instrumentの光源によって470nmで励起される。FRETの間、フルオレセインは、そのエネルギーをアクセプター蛍光部分、例えばLightCycler(登録商標)-Red 640(LC Red 640)又はLightCycler(登録商標)-Red 705(LC Red 705)に移動させる。次いで、アクセプター蛍光部分はより長い波長の光を放出し、これはLightCycler(登録商標)機器の光学検出システムによって検出される。効率的なFRETは、蛍光部分が直接局所的に近接しているとき、かつドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプター蛍光部分の吸収スペクトルと重複しているときにのみ起こりうる。放出されたシグナルの強度は、元の標的DNA分子の数と相関しうる。標的核酸の増幅が起こり、増幅産物が精製される場合、ハイブリダイズする工程は、プローブ対のメンバー間にFRETに基づく検出可能なシグナルをもたらす。
【0063】
一般的に、FRETの存在は試料中の標的配列の存在を示し、FRETの非存在は試料中の標的配列の非存在を示す。しかしながら、不十分な検体収集、輸送遅延、不適切な輸送条件、又は一部の収集スワブ(アルギン酸カルシウム又はアルミニウムシャフト)の使用は、いずれも、試験結果の成功及び/又は精度に影響を及ぼし得る条件である。本明細書に開示される方法を使用すると、例えば45のサイクリング工程内でのFRETの検出は、vanA及び/又はvanB感染を示す。
【0064】
本方法の実施に使用することのできる代表的な生物学的試料には、限定されないが、皮膚スワブ、鼻腔スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚及び軟部組織感染が含まれる。生物学的試料の収集及び保存方法は、当業者に知られている。生物学的試料を処理して(例えば、当技術分野で既知の核酸抽出方法及び/又はキットによって)標的遺伝子核酸を放出させることができるか、又はいくつかの事例では、生物学的試料をPCR反応成分及び適切なオリゴヌクレオチドと直接接触させることができる。
【0065】
融解曲線分析は、サイクリングプロファイルに含めることのできる追加の工程である。融解曲線分析は、DNA二重鎖の半分が一本鎖へと分離した温度と定義される、融解温度(Tm)と呼ばれる特徴的な温度でDNAが融解するという事実に基づいている。DNAの融解温度は、主にそのヌクレオチド組成に依存する。したがって、G及びCヌクレオチドが豊富なDNA分子は、A及びTヌクレオチドが豊富なDNA分子よりも高いTmを有する。シグナルが失われる温度を検出することにより、プローブの融解温度を決定することができる。同様に、シグナルが発生する温度を検出することによって、プローブのアニーリング温度を決定することができる。増幅産物からのプローブの1つ以上の融解温度により、試料中の標的配列の存在又は非存在を確認することができる。
【0066】
各サーモサイクラーを運転している間に、コントロール試料のサイクリングを同様に行うことができる。ポジティブコントロール試料は、例えば、制御プライマー及び制御プローブを使用して、(記載された標的遺伝子の増幅産物以外の)標的核酸コントロール鋳型を増幅することができる。ポジティブコントロール試料はまた、例えば標的核酸分子を含有するプラスミドコンストラクトを増幅することができる。そのようなプラスミドコントロールは、意図された標的の検出に使用されるのと同じプライマー及びプローブを使用して、内部で(例えば、試料内で)又は患者の試料と並んで実行される別々の試料中で増幅することができる。そのようなコントロールは、増幅、ハイブリダイゼーション及び/又はFRET反応の成功又は失敗の指標である。各サーモサイクラー実行はまた、例えば標的鋳型DNAを欠く、ネガティブコントロールを含むことができる。ネガティブコントロールは、汚染を測定することができる。これにより、システム及び試薬が偽陽性シグナルを生じさせないことが保証される。したがって、コントロール反応は、例えば、プライマーが配列特異的にアニーリングして伸長を開始させる能力、並びにプローブが配列特異的にハイブリダイズして、FRETが発生する能力を容易に決定することができる。
【0067】
一実施形態では、本方法は、汚染を回避する工程を含む。例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼを利用する酵素的方法が、1回のサーモサイクラー運転と次の運転との間の汚染を低減又は排除するために、米国特許第5,035,996号、同第5,683,896号及び同第5,945,313号に記載されている。
【0068】
FRET技術と組み合わせた従来のPCR法を使用して、方法を実践することができる。一実施態様では、LightCycler(登録商標)機器が使用される。以下の特許出願は、LightCycler(登録商標)技術で使用されるリアルタイムPCRを記載している:国際公開第97/46707号、国際公開第97/46714号及び国際公開第97/46712号。
【0069】
LightCycler(登録商標)は、PCワークステーションを使用して動作させることができ、Window NTオペレーティングシステムを利用することができる。試料からのシグナルは、機械が光学ユニットの上にキャピラリを順次配置するときに得られる。ソフトウェアは、各測定の直後にリアルタイムで蛍光シグナルを表示することができる。蛍光取得時間は、10~100ミリ秒(msec)である。各サイクリング工程の後、蛍光対サイクル数の定量的表示を、すべての試料について継続的に更新することができる。生成されたデータは、さらなる分析のために保存することができる。
【0070】
FRETの代替として、蛍光DNA結合色素(例えば、SYBR(登録商標)Green又はSYBR(登録商標)Gold(Molecular Probes))のような二本鎖DNA結合色素を使用して、増幅産物を検出することができる。二本鎖核酸と相互作用すると、このような蛍光DNA結合色素は、適当な波長の光で励起後に蛍光シグナルを発する。また、核酸インターカレーション色素等の二本鎖DNA結合色素を使用することもできる。二本鎖DNA結合色素が使用されるとき、増幅産物の存在を確認するために、通常融解曲線分析が実施される。
【0071】
本開示の実施形態は、1つ又は複数の市販の機器の構成によって限定されないことが理解される。
【0072】
製造品/キット
本開示の実施形態は、vanA遺伝子及びvan B遺伝子を検出する製造品又はキットをさらに提供する。製造品は、適切な包装材料と一緒に、vanA及び/又はvanBを検出するために使用されるプライマー及びプローブを含むことができる。vanA及び/又はvanBの検出のための代表的なプライマー及びプローブは、vanA及び/又はvanB標的核酸分子にハイブリダイズすることができる。さらに、キットは、固体支持体、バッファー、酵素、及びDNA標準といった、DNA固定化、ハイブリダイゼーション、及び検出に必要な適切に包装された試薬及び材料も含みうる。プライマー及びプローブを設計する方法が本明細書に開示され、増幅してmecA/mecC-MRSA標的核酸分子にハイブリダイズするプライマー及びプローブの代表的な例が提供される。
【0073】
製造品はプローブを標識するための1つ又は複数の蛍光部分を含むことができるか、あるいは、キットと共に供給されるプローブは標識することができる。例えば、製造品は、vanA及びvanBプローブを標識するためのドナー及び/又はアクセプター蛍光部分を含みうる。適切なFRETドナー蛍光部分及び対応するアクセプター蛍光部分の例は上に提供されている。
【0074】
製造品は、vanA及び/又はvanBプライマー及びプローブを使用して試料中のvanA及び/又はvanBを検出するための説明を有する添付文書又はパッケージラベルも含むことができる。製造品は、加えて、本明細書に開示される方法を実行するための試薬(例えば、バッファー、ポリメラーゼ酵素、補因子、又は汚染を防止するための薬剤)を含みうる。そのような試薬は、本明細書に記載される市販の機器のうちの1つに特異的でありうる。
【0075】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【実施例
【0076】
以下の実施例及び図面は、主題の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、特許請求の範囲に示される。本発明の思想から逸脱することなく、示される手順に変更を加えることができると理解される。
【0077】
実施例I
【表1-1】
【表1-2】
表I vanA/vanBプライマー及びプローブ
【0078】
vanA及びvanBプライマー及びプローブ配列
表Iは、vanA遺伝子及びvanB遺伝子の検出のためのPCRアッセイに使用されるプライマー及びプローブを示す。
【0079】
実施例2
PCR実験条件
vanA標的遺伝子又はvanB標的遺伝子のリアルタイムPCR検出が、cobas(登録商標)4800システム又はcobas(登録商標)6800/8800システムのプラットフォーム(Roche Molecular Systems,Inc.,Pleasanton,CA)を使用して実施された。増幅試薬の最終濃度を以下に示す:
【0080】
表II PCR増幅試薬
【表2】
【0081】
以下の表は、PCR増幅反応に使用される典型的な熱プロファイルを示す。
【0082】
表III PCR熱プロファイル
【表3】
【0083】
Pre-PCRプログラムは、初期変性及びRNA鋳型の逆転写のための55°C、60°C及び65°Cでのインキュベーションを含んでいた。3つの温度でのインキュベーションは、より低い温度ではわずかに不一致な標的配列(生物体の遺伝的バリアント等)も転写されるが、より高い温度ではRNA二次構造の形成が抑制され、したがって、より効率的な転写をもたらすという有利な効果を合成する。PCRサイクリングを2つの測定に分け、いずれの測定も1段階の設定を適用する(アニーリングと伸長を組み合わせる)。55℃での最初の5サイクルは、わずかに不一致な標的配列を予備増幅することによって包括的な増加を可能にするが、第2の測定の45サイクルは、58℃のアニーリング/伸長温度を使用することによって特異度を高める。
【0084】
実施例3
PCRアッセイにおけるvanA及びvanBプライマー及びプローブの性能
黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカーリス、及びエンテロコッカス・フェシウムの種々の株におけるvanA遺伝子及びvanB遺伝子の増幅のための非ベンジル化又はベンジル化プライマーを使用したPCR実験に続いて、vanA又はvanB遺伝子プローブを使用した検出が行われた。図1は、配列番号5のvanAプローブによる検出を行うvanA MMx-1カラム内の配列番号1及び3;配列番号10のvanBプローブによる検出を行うvanB MMx-1カラム内の配列番号6及び8;並びに配列番号15のvanBプローブによる検出を行うvanB MMx-2カラム内の配列番号11及び13である、非ベンジル化プライマーを使用した結果を示している。それぞれの増幅産物の存在及び検出は、Ct値として示されている。図2は、配列番号5のvanAプローブによる検出を行うvanA MMx-1カラム内の配列番号2及び4;配列番号10のvanBプローブによる検出を行うvanB MMx-1カラム内の配列番号7及び9;並びに配列番号15のvanBプローブによる検出を行うvanB MMx-2カラム内の配列番号12及び14である、ベンジル化プライマーを使用した結果を示している。それぞれの増幅産物の存在及び検出は、Ct値として示されている。
【0085】
ベンジル化プライマーと非ベンジル化プライマーとの間で性能に有意な差は観察されなかった。さらに重要なことに、一組のvanAプライマー及びプローブと二組のvanBプライマー及びプローブはすべて、特定の方式でそれらのそれぞれの標的核酸を増幅及び検出することができた。
【0086】
実施例4
VRSA及びMRSAの検出のための多重PCRアッセイ
vanA及びvanB遺伝子を標的化することによるバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)と、mecA及びmecC遺伝子を標的化することによるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)との両方、並びにSCCmec OrfX右端接合点(OrfX)の検出のための多重PCRアッセイが設定された。このアッセイのプライマー及びプローブは表IVに示される。種々の黄色ブドウ球菌株及び腸球菌株に対してこれらプライマーとプローブの組を使用したPCRアッセイの結果は、図3に示される。
【0087】
表IV VRSA及びMRSAを検出するためのプライマー及びプローブ
【表4】
【表5】
図1
図2
図3
【配列表】
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【国際調査報告】