IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オプトチューン アーゲーの特許一覧

<>
  • 特表-調整可能な光学要素 図1
  • 特表-調整可能な光学要素 図2
  • 特表-調整可能な光学要素 図3
  • 特表-調整可能な光学要素 図4
  • 特表-調整可能な光学要素 図5
  • 特表-調整可能な光学要素 図6
  • 特表-調整可能な光学要素 図7
  • 特表-調整可能な光学要素 図8
  • 特表-調整可能な光学要素 図9
  • 特表-調整可能な光学要素 図10
  • 特表-調整可能な光学要素 図11
  • 特表-調整可能な光学要素 図12
  • 特表-調整可能な光学要素 図13
  • 特表-調整可能な光学要素 図14
  • 特表-調整可能な光学要素 図15
  • 特表-調整可能な光学要素 図16
  • 特表-調整可能な光学要素 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】調整可能な光学要素
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20241018BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20241018BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
G02B26/08 H
G02B7/04 E
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530504
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022083023
(87)【国際公開番号】W WO2023094470
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/060835
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】102022101932.2
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515100639
【氏名又は名称】オプトチューン スウィツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ラニング,クリストファー
【テーマコード(参考)】
2H044
2H141
2K005
【Fターム(参考)】
2H044BE01
2H044BE07
2H044BE18
2H141MA12
2H141MB27
2H141MB43
2H141MB56
2H141MC01
2H141MC05
2H141MC08
2H141MZ02
2H141MZ12
2K005CA26
2K005CA40
2K005CA57
(57)【要約】
調整可能な光学要素(1)であって、前記調整可能な光学要素(1)は、第1のキャリア(10)が第2のキャリア(20)に対して移動可能である、第1のキャリア(10)及び第2のキャリア(20)と;容積部が光学要素(1)の光軸(100)に沿って第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との間に配置される、液体で満たされた容積部(30)と;作動力の手段によって第2のキャリア(20)に対して第1のキャリア(10)を移動させるように配置されるアクチュエータ(40)であり、第2のキャリア(20)に対する第1のキャリア(10)の移動は、容積部(30)の形状を変化させる、前記アクチュエータ(40)と;ロックユニット(50)が解放可能な接続の手段によって第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)とを互いに接続するように配置される、前記ロックユニット(50)とを備え、閉状態(51)では、ロックユニット(50)は、光軸(100)に沿った第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との相対運動を妨げるように配置され、かつロックユニットの開状態(52)では、第1のキャリア(10)は、調整可能な光学要素(1)の光軸(100)に沿って第2のキャリア(20)に対して移動可能である、前記調整可能な光学要素(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な光学要素(1)であって:
- 第1のキャリア(10)が第2のキャリア(20)に対して移動可能である、第1のキャリア(10)及び第2のキャリア(20)、
- 容積部が光学要素(1)の光軸(100)に沿って第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との間に配置される、液体で満たされる容積部(30)、
- 作動力の手段によって第2のキャリア(20)に対して第1のキャリア(10)を移動させるように配置されるアクチュエータ(40)であり、第2のキャリア(20)に対する第1のキャリア(10)の移動が容積部(30)の形状を変化させる、前記アクチュエータ(40)、及び
- ロックユニット(50)であり、ロックユニット(50)は解放可能な接続の手段によって第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)とを互いに接続するように配置され、ロックユニット(50)は、閉状態(51)では、光軸(100)に沿った第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との相対運動を妨げるように配置され、かつ
ロックユニットの開状態(52)では、第1のキャリア(10)は、調整可能な光学要素(1)の光軸(100)に沿って第2のキャリア(20)に対して移動可能である、前記ロックユニット(50)
を備える、前記調整可能な光学要素(1)。
【請求項2】
ロックユニット(50)に電力が供給されない場合、ロックユニット(50)は閉状態(51)にあり、かつロックユニット(50)に電力が供給される場合、ロックユニットは開状態(52)にある、請求項1に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項3】
閉状態(51)において、ロックユニット(50)は、フォームフィット接続の手段によって、及び/又は、フォースフィット接続の手段によって、第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)とを接続する、請求項1又は2に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項4】
ロックユニット(50)は、第1のキャリア(10)及び/又は第2のキャリア(20)に作用するロック力を提供するように配置され、かつロック力は、結果として生じる力がゼロとなるように力平衡状態にある、請求項3に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項5】
ロックユニット(50)の開状態(52)と閉状態(51)との間の切り替えは、第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との互いに対する相対位置を変化させない、請求項1~4のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項6】
ロックユニット(50)は複数のロック素子(500)を備え、
各ロック素子(500)は、光軸(100)に垂直な方向に第1のキャリア(10)又は第2のキャリア(20)にロック力を適用するように配置され、かつ
ロック素子(500)は容積部(30)の周囲に沿って分布する、請求項1~5のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項7】
ロックユニット(50)は、少なくとも3つのロック素子(500)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項8】
ロックユニットは、開状態(52)と閉状態(52)との間で切り替わるように配置されるロックアクチュエータ(510)を備え、ロックアクチュエータ(510)は、形状記憶合金、電気永久磁石、又はリラクタンスアクチュエータのうちの1つを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項9】
調整可能な光学要素(1)は、調整可能な光学要素(1)に作用する加速力を測定するための加速度計(60)と、ロックユニット(50)の開状態(52)と閉状態(51)との間の切り替えを制御する制御ユニット(61)とを備え、制御ユニット(61)は、加速度計(60)が加速力の値の閾値を超える加速力を検出する場合に、ロックユニット(50)を閉状態(51)に切り替えるように配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項10】
- 調整可能な光学要素(1)は可変レンズであり、
- 第1のキャリア(10)は変形可能であり、かつ
- アクチュエータ(40)は、作動力を適用することによって光軸(100)に沿って第1のキャリアの形状を変化させるように配置される
請求項1~9のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項11】
- 第1のキャリア(10)は、可撓性膜(11)及び成形素子(12)を備え、前記膜(11)は、調整可能な光学要素(1)の第1の光学面を備え、
- 成形素子(12)は、第1の光学面の周囲に円周方向に延び、
- 成形素子(12)は、光軸(100)に沿った方向に弾性変形可能であり、
- アクチュエータ(40)は、複数の作動点(400)にて成形素子(12)に取り付けられ、かつ
- アクチュエータ(40)は、各作動点(400)においてそれぞれ、光軸(100)に沿った方向における第2のキャリア(20)に対する作動点(400)における成形素子(12)の位置を調整することによって、第1の光学面の形状を制御するように配置される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項12】
ロック素子(500)の数は、少なくとも作動点(400)の数に等しく、かつ前記ロック素子(500)の各々はそれぞれ、光軸(100)に沿った方向における第2のキャリア(20)に対する作動点(400)のうちの1つの相対運動を妨げるように配置される、請求項10又は11に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項13】
ロックユニット(50)は、全ての作動点(400)の相対運動を同時に妨げるように配置される、請求項10又は11に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項14】
- 調整可能な光学要素は可変レンズであり、
- 第1のキャリア(10)は、可撓性膜(11)及び成形素子(12)を備え、膜(11)は、調整可能な光学要素の第1の光学面を備え、
- 成形素子(12)は、第1の光学面の周囲に円周方向に延び、
- 成形素子(12)は、光軸(100)に沿った方向に剛性であり、
- アクチュエータ(40)は、光軸(100)に沿った方向において、第2のキャリア(20)に対する成形素子(12)の位置を調整することによって、第1の光学面の形状を制御するように配置される
請求項1~13のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項15】
第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との相対位置の調整により、容積部(30)内の液体の圧力を変化させ、これにより膜(11)が湾曲するようにさせる、請求項1~14のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項16】
第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)とは、ヒンジ(70)によって接続され、ヒンジ(70)は、第2のキャリア(20)に対する第1のキャリア(10)の回転軸(71)を規定する、請求項12又は13に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項17】
- 調整可能な光学要素(1)は可変プリズムであり、
- 第1のキャリア(10)及び第2のキャリア(20)は、剛性の透明素子であり、かつ
- アクチュエータ(40)は、第1のキャリア(10)を第2のキャリア(20)に対して傾斜させるように配置される
請求項1~9のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項18】
第2のキャリア(10)に対する第1のキャリア(10)の相対位置を検出するように配置される位置感知ユニット(62)を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項19】
アクチュエータ(40)はSMAワイヤーを備え、
SMAワイヤーは、光軸(100)に沿って上面図で見られるとおり、容積部の周囲に沿ってガイドされ、かつ
SMAワイヤーの主延長方向に沿った長さは、第1のキャリア(10)と第2のキャリア(20)との間の距離よりも長い、請求項1~18のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【請求項20】
アクチュエータは複数のSMAワイヤーを備え、複数のSMAワイヤーの全ては、第1又は第2のキャリアを介して共通して電気的に接続される、請求項1~19のいずれか一項に記載の調整可能な光学要素(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、調整可能な光学要素(tunable optical component)が記載される。調整可能な光学要素は、電磁放射線、特に可視光と屈折によって相互作用する透過に基づく調整可能な光学要素であり得、光学要素の少なくとも1つの光学特性は制御可能である。あるいは、調整可能な光学要素は、反射によって電磁放射線と相互作用する、反射に基づく調整可能な光学要素であり得る。例えば、調整可能な光学要素は、可変プリズム(tunable prism)、可変レンズ(tunable lens)、又は変形可能若しくは偏向可能なミラーである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
調整可能な光学要素は、第1のキャリア及び第2のキャリアを備え、第1のキャリアは第2のキャリアに対して移動可能である。第1のキャリアと第2のキャリアとの少なくとも一方、特に第1のキャリアと第2のキャリアとの両方が、調整可能な光学要素の光学面を備える。ここで、及び以下において、光学面とは、意図される様式で電磁放射線と相互作用するように配置される表面である。
【0003】
調整可能な光学要素は、液体で満たされる容積部を備え、容積部は、光学要素の光軸に沿って第1のキャリアと第2のキャリアとの間に配置される。
【0004】
調整可能な光学要素は、作動力の手段によって第2のキャリアに対して第1のキャリアを移動させるように配置されるアクチュエータを備え、第2のキャリアに対する第1のキャリアの移動が容積部の形状を変化させる。特に、作動力の適用は、入射光に対する第1及び/又は第2のキャリアの光学面(複数可)のアライメントの調整をもたらし、又は作動力の適用は、第1及び/又は第2のキャリアの光学面(複数可)の形状の変化をもたらす。
【0005】
調整可能な光学要素は、ロックユニットを備え、ロックユニットは、解放可能な接続の手段によって第1のキャリアと第2のキャリアとを互いに接続するように配置され、ロックユニットは、閉状態では、第1のキャリアと第2のキャリアとの光軸に沿った相対運動を妨げるように配置され、かつロックユニットが開状態では第1のキャリアは、調整可能な光学要素の光軸に沿って第2のキャリアに対して移動可能である。
【0006】
調整可能な光学要素は、とりわけ以下の考察に基づいている。調整可能な光学要素の光学特性を低頻度で変化させることのみが必要である用途では、調整可能な光学要素の目的の調整状態を保持するための電力が低い又はゼロであるアクチュエータを利用することが好ましい。しかしながら、一定の調整状態を維持するための電力を必要とするアクチュエータが好ましい場合があり、これは応答までの時間が短い、線形性が高い、フォームファクター(form factor)が小さい、あるいはその他の特性のためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で記載される調整可能な光学要素は、専用の調整状態を維持するように配置される別個のロックユニットを備える。このように、調整可能な光学要素は、アクチュエータの特性が特定の調整状態を維持するための電力消費がゼロであること、又は調整状態を維持するための高い保持電力を有することとは無関係に、アクチュエータの種類を選択することが可能であることを利用する。
【0008】
一実施形態によれば、ロックユニットに電力が供給されない場合にロックユニットは閉状態にあり、ロックユニットに電力が供給される場合にロックユニットは開状態にある。言い換えれば、ロックユニットはいわゆる「アクティブオープン」形状を持つ。あるいは、ロックユニットに電力が供給されない場合にロックユニットが開状態になるように配置されてもよく、これはいわゆる「アクティブクローズ」形状に相当する。アクティブクローズ形状は、ロックユニットの電力消費が、調整可能な光学要素の調整状態を維持するためのアクチュエータの電力消費よりも小さいケースに特に関連がある。
【0009】
一実施形態によれば、閉状態において、ロックユニットは、第1のキャリアと第2のキャリアとを、フォームフィット接続(form fitting connection)及び/又はフォースフィット接続(force fitting connection)の手段によって接続する。特に、ロックユニットは、第1及び/又は第2のキャリアの表面に法線力を作用させて、第1のキャリアと第2のキャリアとの間にフォースフィット接続を提供する弾性素子を備えてもよい。さらに、ロックユニットは、ラチェット構造のようなインターレース構造(interlacing structure)を有する表面を備えてもよく、第1のキャリアと第2のキャリアとの相対運動は、第1のキャリアと第2のキャリアとの間のフォームフィット接続によって主に妨げられる。
【0010】
一実施形態によれば、ロックユニットは、第1及び/又は第2のキャリアに作用するロック力を提供するように配置され、ロック力は、結果として生じる力がゼロとなるように力平衡状態にある。特にロック力は、光軸に沿った第2のキャリアに対する第1のキャリアの動きをもたらさない。好ましくは、ロック力は、光軸に対して斜めの方向への第2のキャリアに対する第1のキャリアの相対運動をもたらさない。
【0011】
一実施形態によれば、ロックユニットの開状態と閉状態との間の切り替えは、第1のキャリアと第2のキャリアとの互いに対する相対位置を変化させない。特に閉状態と開状態との間の切り替えは、光軸に沿った第2のキャリアに対する第1のキャリアの位置を変化させない。
【0012】
一実施形態によれば、ロックユニットは複数のロック素子を備え、各ロック素子は、光軸に垂直な方向に第1のキャリア又は第2のキャリアにロック力を適用するように配置され、かつこれらのロック素子は、容積部の外周に沿って分布する。
【0013】
一実施形態によれば、ロックユニットは少なくとも3つのロック素子を備える。特に第1のキャリア及び第2のキャリアは少なくとも部分的に剛性である。この文脈において部分的に剛性とは、アクチュエータ及び/又はロックユニットの手段によって連結される第1/第2のキャリアの部分を指す。各ロック素子は、光軸に沿った第2のキャリアに対する第1のキャリアの1つの点の相対位置を規定するように配置される。
【0014】
一実施形態によれば、ロックユニットは、開状態と閉状態との間で切り替わるように配置されるロックアクチュエータを備え、ロックアクチュエータは、形状記憶合金、電気永久磁石、又はリラクタンスアクチュエータのうちの1つを備える。特に、ロックアクチュエータは形状記憶合金(shape memory alloy:SMA)を含み、この形状記憶合金は主延長方向を持つワイヤー形状を有する。SMAは転移温度を超えると主伸長方向に沿って収縮するように配置される。例えば、ワイヤーに電流を適用することによりワイヤーは転移温度超過に加熱される。
【0015】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は、調整可能な光学要素に作用する加速力を測定するための加速度計と、ロックユニットの開状態と閉状態との間の切り替えを制御する制御ユニットとを備え、制御ユニットは、加速度計が加速力の値の閾値を超える加速力を検出した場合に、ロックユニットを閉状態に切り替えるように配置される。加速力の値の閾値は1Gとすることができ、好ましくは1.5G又は3Gとすることができる。したがって、ロックユニットは、落下事象のように高い加速力にさらされる際に、第1のキャリアと第2のキャリアの相対運動を防止することができる。
【0016】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は可変レンズ(tunable lens)であり、第1のキャリアは変形可能であり、アクチュエータは作動力を適用することによって光軸に沿って第1のキャリアの形状を変化させるように配置される。
【0017】
一実施形態によれば、第1のキャリアは可撓性膜と成形素子とを備え、前記膜は調整可能な光学要素の第1の光学面を備える。成形素子は、第1の光学面の周囲に円周方向に延び、かつ成形素子は、光軸に沿った方向に弾性変形可能である。アクチュエータは、複数の作動点において成形素子に取り付けられており、かつアクチュエータは、各作動点においてそれぞれ、光軸に沿った方向における第2のキャリアに対する作動点における成形素子の位置を調整することにより、第1の光学面の形状を制御するように配置される。調整可能な光学要素は、球面、プリズム、及び/又は非点収差のうちの少なくとも1つの光学特性を制御するために、少なくとも6つの作動点を備える。
【0018】
特に、アクチュエータは複数の引張りロープを備え、各引張りロープは異なる作動点に取り付けられ、かつ各引張りロープは作動力を提供するように配置される異なるSMA素子を備える。この種類のアクチュエータは、ドイツ特許出願第102021105705.1号に関連して記載されており、その内容は参照として含まれる。
【0019】
一実施形態によれば、ロック素子の数は、少なくとも作動点の数に等しく、ロック素子の各々は、光軸に沿った方向における第2のキャリアに対する作動点の1つの相対運動をそれぞれ妨げるように配置される。
【0020】
一実施形態によれば、ロックユニットは、全ての作動点の相対運動を同時に妨げるように配置される。特にロックユニットは単一のロックアクチュエータを備え、このアクチュエータはスイッチを閉状態と開状態の間で同期的に制御するように配置される。
【0021】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は可変レンズであり、第1のキャリアは可撓性膜と成形素子とを備え、膜は調整可能な光学要素の第1の光学面を備える。成形素子は、第1の光学面の周囲に円周方向に延び、かつ成形素子は、光軸に沿った方向に剛性である。アクチュエータは、光軸に沿った方向における第2のキャリアに対する成形素子の位置を調整することにより、第1の光学面の形状を制御するように配置される。
【0022】
一実施形態によれば、第1のキャリアと第2のキャリアとの相対位置の調整により、容積部内の液体の圧力が変化し、これにより膜が湾曲するようにする。
【0023】
一実施形態によれば、第1のキャリアと第2のキャリアとはヒンジによって接続され、ヒンジは、第2のキャリアに対する第1のキャリアの回転軸を規定する。例えば、アクチュエータは第1のキャリアの1点と、第2のキャリアの多くとも2点に取り付けられる。
【0024】
一実施形態によれば、回転軸は、光軸に沿った上面図から見て、容積部に沿って接線方向に延びる。特に回転軸は、光軸に沿った上面図から見て、容積部の中心を通って延びていない。
【0025】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は可変プリズム(tunable prism)であり、第1のキャリア及び第2のキャリアは剛性の透明素子であり、かつアクチュエータは、第2のキャリアに対して第1のキャリアを傾斜させるように配置される。
【0026】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は位置感知ユニットを備え、この位置感知ユニットは、第2のキャリアに対する第1のキャリアの相対位置を検出するように配置される。位置感知ユニットは、ホールセンサを備えてもよく、このホールセンサは、第2のキャリアに対する第1のキャリアの相対位置を決定するように配置される。
【0027】
一実施形態によれば、位置感知ユニットは、第2のキャリアに対する各作動点の相対位置を検出するように配置される。
【0028】
一実施形態によれば、アクチュエータは、作動力を提供する形状記憶合金と、保持力を提供する保持素子とを備え、保持力は作動力に対向し、かつ保持素子は弾性膜を備え、膜の張力は、作動力の手段によって容積部内の圧力が上昇した際に増加し、膜の張力は保持力を提供する。あるいは保持素子は第1のキャリアと第2のキャリアとを押し離すばね素子を備え、ばね素子は容積部の周囲に円周方向に延びる板ばね(leaf spring)を備え得る。さらなる別の実施形態によれば、保持素子は保持力を提供する保持アクチュエータを備え、保持アクチュエータは、形状記憶合金、電気永久磁石、又はリラクタンスアクチュエータのうちの1つを備え得る。
【0029】
一実施形態によれば、アクチュエータはSMAワイヤーを備え、SMAワイヤーは液体容積部の外周に沿ってガイドされ、SMAワイヤーの主延長方向に沿った長さは、第1のキャリアと第2のキャリアとの間の距離よりも大きい(図11)。特にSMAワイヤーは、第1及び/又は第2のキャリアに接して配置されることで、少なくとも1回偏向する。
【0030】
一実施形態によれば、アクチュエータは複数のSMAワイヤーを備え、複数のSMAワイヤーの全てが第1又は第2のキャリアを介して共通して電気的に接続される(図13)。
【0031】
図に関連して示される以下の実施形態の例から、調整可能な光学要素のさらなる利点及び有利な実施形態及びさらなる実施形態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1図2、及び図3は、複数のロック素子を備えるロックユニットを有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図2図1図2、及び図3は、複数のロック素子を備えるロックユニットを有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図3図1図2、及び図3は、複数のロック素子を備えるロックユニットを有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図4図4、及び図5は、ロックユニットを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図5図4、及び図5は、ロックユニットを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図6図6は、調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図7図7A図7B図8図9、及び図10は、保持素子を有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図8図7A図7B図8図9、及び図10は、保持素子を有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図9図7A図7B図8図9、及び図10は、保持素子を有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図10図7A図7B図8図9、及び図10は、保持素子を有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図11図11図12、及び図14は、第1及び/又は第2のキャリアの円周に沿って延びるSMAワイヤーを備えるアクチュエータを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図12図11図12、及び図14は、第1及び/又は第2のキャリアの円周に沿って延びるSMAワイヤーを備えるアクチュエータを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図13図13は、第2のキャリアを介して共通の電気的接続を有するSMAワイヤーを備えるアクチュエータを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図14図11図12、及び図14は、第1及び/又は第2のキャリアの円周に沿って延びるSMAワイヤーを備えるアクチュエータを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図15図15は、複数の作動点を有する調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図16図16及び図17は、ヒンジを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
図17図16及び図17は、ヒンジを備えた調整可能な光学要素の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
同一素子、類似素子、又は同一効果を有する素子には、図において同じ参照符号を付す。図、及び図に示された素子の互いに対する比率は、縮尺通りとはみなされない。むしろ、個々の素子を誇張して大きく表示することで、表現性を高め、及び/又は理解しやすくすることができる。
【0034】
図1図3は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態を概略斜視図及び拡大断面図(破線で囲む)で示す。図1図3の実施形態に示すように、調整可能な光学要素1は、ロックユニット50を備え、ロックユニット50は、解放可能な接続の手段によって第1のキャリア10と第2のキャリア20とを互いに接続するように配置され、ロックユニット50は、閉状態51では、光軸100に沿った第1のキャリア10と第2のキャリア20との相対運動を妨げるように配置され、かつロックユニット50の開状態52では、調整可能な光学要素1の光軸100に沿って第2のキャリア20に対する第1のキャリア10が移動可能である。
【0035】
ロックユニット50は、容積部300の外周に沿って分布する複数のロック素子500を備える。ロック素子500は、ロック支柱501に押し付けられるロックばね502を備える。ロックばね502は成形素子12の一部であってもよく、かつロック支柱は第2のキャリア20の一部であってもよい。ロックアクチュエータ510は、開状態52と閉状態51とを切り替えるように配置される。図1から図3に示す実施形態では、ロックアクチュエータ510は、SMAワイヤーを備え、このSMAワイヤーが温度の閾値超過に加熱される場合にその主延長方向に沿って収縮する。特にSMAワイヤーは、ロックアクチュエータ510に電流を適用することによって加熱することができる。ロックアクチュエータは、ロックばね502を光軸100に向けて半径方向に引っ張り、ロックばね502とロック支柱501との間に作用する法線力を減少させる。したがって、ロック素子、特にロックユニット50は、ロックアクチュエータ510に電力が供給される際に開状態52に切り替えられる。ロック素子500は、別個に指定可能なロックアクチュエータ510、又は第1のキャリア10の全周に延びる単一のロックアクチュエータ510を備え得る。
【0036】
図1に示す実施形態では、ロックばね501は、1つのロック支柱501につき2つの板ばねを備える。板ばねは成形素子12に一体的に組み込まれる。
【0037】
図2に示す実施形態では、ロックばね502は、1つのロック支柱501ごとに1つの板ばねを備え、板ばねは1つの取り付け点を有する。板ばねは成形素子12に一体的に組み込まれる。特に、ロック素子500は光軸100に対して対称に配置される。例えば、ロックアクチュエータ510は、対向するロック素子の状態を同期的に制御するように配置される。したがって、対向するロック素子500(複数)は同じ状態にある。
【0038】
図3に示す実施形態では、ロックばね502は、1つのロック支柱501ごとに1つの板ばねを備え、板ばねは2つの取り付け点を有する。
【0039】
図1図3の例示的な実施形態に示すように、ロックユニットは、第1のキャリア10及び/又は第2のキャリア20に作用するロック力を提供するように配置され、これらのロック力は、結果として生じる力がゼロになるように力平衡状態にある。特に、これらのロック力は、光軸100に沿った第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の動きをもたらさない。好ましくは、ロック力は、光軸100に対して斜めの方向への第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の相対運動をもたらさない。
【0040】
特に、ロックユニット50の開状態と閉状態との間の切り替えは、第1のキャリア10と第2のキャリア20との互いに対する相対位置を変化させない。例えば、閉状態と開状態との間を切り替えても、光軸100に沿った第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の位置は変化しない。
【0041】
ロックユニットは、複数のロック素子500を備え、各ロック素子は、光軸100に垂直な方向に第1のキャリア10又は第2のキャリア20にロック力を適用するように配置され、これらのロック素子は、容積部30の周囲に沿って分布している。
【0042】
図4及び図5は、ロックユニット502がロックばね502を備える、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態を示す。ロックばね502は、第1のキャリア10の外周の周りに延びている。ロックばね502は、光軸100に沿った上面図から見て円形を有する。ロック状態では、ロックばね502は第1のキャリア10の表面に接して配置される(rest)。言い換えれば、ロック状態では、ロックばね502は、第1のキャリア10に対して半径方向にロック力を発揮する。
【0043】
ロックユニット50はロックアクチュエータ510を備え、ロックアクチュエータ510はロックばねの内径を増大して閉状態51から開状態52に切り替えるように配置される。ロックアクチュエータ510は、光軸に沿った上面図から見て、ロックばね502の接線方向に力を適用する。ロックばね502の直径が増大することにより、ロックばね502と第1のキャリア10との間の半径方向の力が減少する。ロックアクチュエータは、閾値温度超過に加熱される際に収縮するように配置されるSMAワイヤーを備える。
【0044】
図5に示す実施形態では、ロックばね502は円形の形状を有し、ロックばねは光軸から離れる半径方向に作用する。ロック状態では、ロックばねは第2の成形器(shaper)20に接して配置される。ロックアクチュエータ510は、ロックばね502の外周に沿って配置され、かつロックばね502に接して配置されるSMAワイヤーを備える。ロックアクチュエータ510に電流が適用される際、SMAワイヤーが収縮し、円形状のロックばね502の直径が縮小する。直径が縮小することにより、ロックばね502と第2の成形器との間の摩擦が減少し、第2のキャリア20に対するロックばね502の相対運動が可能になる。
【0045】
好ましくは、ロックユニット50に電力が供給されない際に、ロックユニット50は閉状態にあり、ロックユニット50に電力が供給される際にロックユニット50は開状態にある。言い換えれば、ロックユニットはいわゆる「アクティブオープン」形状を持つ。あるいは、ロックユニットに電力が供給されない際に、ロックユニット50が開状態になるように配置されてもよく、これはいわゆる「アクティブクローズ」形状に相当する。アクティブクローズ形状は、ロックユニットの電力消費が、調整可能な光学要素1の調整状態を維持するためのアクチュエータの電力消費よりも小さいケースに特に関連がある。
【0046】
閉状態では、ロックユニット50は、第1のキャリア10と第2のキャリア20とを、フォームフィット接続の手段によって、及び/又はフォースフィット接続の手段によって接続する。ロックユニット50は、弾性素子、特にロックばね502を備え、第1のキャリア10及び/又は第2のキャリア20の表面に法線方向の力を作用させ、第1のキャリア10と第2のキャリア20との間にフォースフィット接続を提供する。さらにロックユニット50は、第1のキャリア10と第2のキャリア20の相対運動が、第1のキャリア10と第2のキャリア20の間のフォームフィット接続の手段によって主に妨げられる、ラチェット構造のようなインターレース構造を有する表面を備えてもよい。ロックアクチュエータ510の手段により、フォームフィット接続が解除可能である。
【0047】
図6は、調整可能な光学要素1、特に可変レンズの例示的な実施形態の概略断面図を示す。調整可能な光学要素1は、屈折によって電磁放射線、特に可視光と相互作用する透過に基づく調整可能な光学要素であり、光学要素の少なくとも1つの光学特性が制御可能である。
【0048】
調整可能な光学要素1は、第1のキャリア10と第2のキャリア20とを備え、第1のキャリア10は第2のキャリア20に対して移動可能である。第1のキャリアと第2のキャリアとの少なくとも一方、特に第1のキャリアと第2のキャリアとの両方が、調整可能な光学要素の光学面を備える。ここで、及び以下において、光学面とは、意図された方法で電磁放射線と相互作用するように配置される表面のことである。
【0049】
調整可能な光学要素1は、液体で満たされる容積部30を備え、容積部は、光学要素1の光軸100に沿って、第1のキャリア10と第2のキャリア20との間に配置される。この実施形態では、ロックユニット50は図示していない。
【0050】
図7A及び7Bは、膜11の手段によってバイアスされる調整可能な光学要素1を示す。図7aでは、調整可能な光学要素は非調整状態にある。非調整状態では、アクチュエータ40は光学特性を変化させず、膜11は凸状に膨らんでいる。また、容積部30を横方向に区画する弾性膜81は凸状に膨らんでいる。非調整状態では、容積部30内の圧力は周囲圧力よりも大きい。アクチュエータ40は、作動力を与える形状記憶合金と、保持力を与える保持素子とを備え、ここで保持力は作動力に対向する。図7A及び図7Bの実施形態では、保持素子は弾性膜81を備える。図7Bに示すように、光学要素を調整すると、アクチュエータ40の手段によって第1のキャリア10と第2のキャリア20との間の距離が減少し、体積部30内の圧力が上昇する。圧力の増加は、膜11の形状を変化させ、これにより、調整可能な光学要素1の光学特性が変化し、ここで弾性膜81の張力は、作動力の手段によって容積部30内の圧力が増加する際に増加する。弾性膜81の張力は保持力を提供する。
【0051】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は可変レンズであり、第1のキャリアは光軸に沿った方向に変形可能であり、アクチュエータは、作動力を適用することによって光軸に沿って第1のキャリアの形状を変更するように配置される。
【0052】
一実施形態によれば、第1のキャリアは、可撓性膜と成形素子とを備え、前記膜は、調整可能な光学要素の第1の光学面を備える。成形素子は、第1の光学面の周囲に円周方向に延び、かつ成形素子は、光軸に沿った方向に弾性変形可能である。アクチュエータは、複数の作動点において成形素子に取り付けられており、かつアクチュエータは、各作動点においてそれぞれ、光軸に沿った方向における第2のキャリアに対する作動点における成形素子の位置を調整することにより、第1の光学面の形状を制御するように配置される。調整可能な光学要素は、球面、プリズム、及び/又は非点収差のうち少なくとも1つの光学特性を制御するために、少なくとも6つの作動点を備える。
【0053】
一実施形態によれば、ロック素子の数は、少なくとも作動点の数に等しく、ロック素子の各々はそれぞれ、光軸に沿った方向における第2のキャリアに対する作動点の1つの相対運動を妨げるように配置される。
【0054】
一実施形態によれば、ロックユニットは、全ての作動点の相対運動を同時に妨げるように配置される。特に、ロックユニットは単一のロックアクチュエータを備え、このアクチュエータはスイッチを閉状態と開状態との間で同期的に制御するように配置される(図5)。
【0055】
図8は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略側面図を示す。図8の実施形態に示すように、保持素子80は、第1のキャリアと第2のキャリアとを押し離すばね素子を備える。バネ素子は、容積部30の周囲を円周方向に延びる板バネ821を備える。
【0056】
図9は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略側面図を示す。図9に示す実施形態は、板ばね821の代わりに渦巻きばねを備える保持素子80において図8に示す実施形態と異なる。
【0057】
図10は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略側面図を示す。図10に示す実施形態は、保持力を提供する保持アクチュエータ83を備える。保持アクチュエータ83は形状記憶合金を備え、光軸100に沿って第1のキャリア10を第2のキャリア20から引き離すように配置される。あるいは、保持アクチュエータは、永久磁石又はリラクタンスアクチュエータを備えてもよい。
【0058】
図11は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略斜視図を示す。アクチュエータ40は、SMAワイヤー420を備え、SMAワイヤー420は、液体容積部30の外周に沿ってガイドされ、SMAワイヤー420の主延長方向に沿った長さは、第1のキャリア10と第2のキャリア20との間の距離よりも長い。第1のキャリア10と第2のキャリア20の間の距離は、光軸100に沿って測定される。特に、SMAワイヤーは、第1のキャリア10及び/又は第2のキャリア20に接して配置されることで、少なくとも一度偏向する。SMAワイヤー420は作動点400に取り付けられ、作動点400は第1のキャリア10又は第2のキャリア20とSMAワイヤー40との間の機械的接続を提供する。第1のキャリア10及び第2のキャリア20の外周に沿った作動点400の相対位置は、角度を決定する。有利なことに、SMAワイヤー420をレンズの外周に沿ってガイドすることは、アクチュエータ40の手段によって達成することができるストロークを増加させる。図11の実施形態では、簡略化のためロックユニットは図示されていない。
【0059】
図13は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略側面図を示す。アクチュエータ40は、複数のSMAワイヤー420を備える。複数のSMAワイヤー420は、第1のキャリア10を介して共通の電気的接続を持つ。特に、第1のキャリアは少なくとも部分的に導電性である。SMAワイヤーは、第1のキャリア10に対向するSMAワイヤーの端部に電流を適用することにより、個別に指定が可能である。
【0060】
図14は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略斜視図を示す。調整可能な光学要素1は、作動力の手段によって第2のキャリア20に対して第1のキャリア10を移動させるように配置されるアクチュエータ40を備え、第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の移動は、容積部30の形状を変化させる。特に、作動力の適用は、入射光に対する第1のキャリア10及び/又は第2のキャリア20の光学面(複数可)のアライメントの調整をもたらし、又は作動力の適用は、第1のキャリア及び/又は第2のキャリアの光学面(複数可)の形状の変化をもたらす。図11及び図12に示す実施形態と同様に、SMAワイヤー420は、第1のキャリア10及び第2のキャリア20に、作動点400を形成するピン410にて接して配置される。
【0061】
図15は、調整可能な光学要素1の例示的な実施形態の概略側面図を示す。アクチュエータ40は複数の引張りロープを備え、各引張りロープは異なる作動点400に取り付けられている。それぞれの引張りロープは、異なるSMAワイヤー420と受動ワイヤー430を備える。SMAワイヤー420は第2のキャリア20の周りに巻き付けられる。したがって、SMAワイヤーは第2のキャリア20に接して配置され、容積部30の外周に沿って延びる。ロックユニット50はワイヤーを備え、これは第2のキャリア20の周りに巻き付けられ、かつこれはこれらの引張りロープに渡って延在する。ロックユニット50は、第2のキャリア20とロックユニットとの間で引っ張りロープを締めるように配置され、調整可能な光学要素1を決定された調整状態にロックする。特に、全ての作動点の調整状態が同時にロックされる。この種類のアクチュエータは、ドイツ特許出願第102021105705.1号に関連して記載されており、その内容は参照として含まれる。
【0062】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は位置感知ユニットを備え、この位置感知ユニットは、第2のキャリアに対する第1のキャリアの相対位置を検出するように配置される。位置感知ユニットは、ホールセンサを備えてもよく、このホールセンサは、第2のキャリアに対する第1のキャリアの相対位置を決定するように配置される(図15)。
【0063】
一実施形態によれば、位置感知ユニット62は、第2のキャリアに対する各作動点の相対位置を検出するように配置される。
【0064】
図16及び図17は、ロックユニット50が少なくとも3つのロック素子500を備える、調整可能な光学要素の例示的な実施形態を示す。特に、第1のキャリア10及び第2のキャリア20は、少なくとも部分的に剛性である。この文脈において、部分的に剛性とは、アクチュエータ40及び/又はロックユニット50の手段によって連結されている第1/第2のキャリアの部分を指す。各ロック素子500は、光軸100に沿った第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の1点の相対位置を規定するように配置される。調整可能な光学要素はヒンジ70を備え、このヒンジ70が第2のキャリア20に対する第1のキャリア10の回転軸71を決定する。例えば、アクチュエータは、第1のキャリアの1点、及び第2のキャリアの多くとも2点に取り付けられる(図16及び17)。
【0065】
一実施形態によれば、回転軸は、光軸に沿った上面図から見て、容積部に沿って接線方向に延びる。特に、回転軸は、光軸に沿った上面図から見て、容積部の中心を通って延びていない。
【0066】
調整可能な光学要素1は可変レンズであり、第1のキャリアは可撓性膜11と成形素子12を備え、膜11は調整可能な光学要素1の第1の光学面を備える。成形素子は第1の光学面の周囲に円周方向に延び、成形素子は光軸100に沿った方向に剛性である。アクチュエータ40は、光軸に沿った方向における第2のキャリア20に対する成形素子の位置を調整することによって、第1の光学面の形状を制御するように配置される(図16及び図17)。
【0067】
ロックユニット50は、開状態と閉状態との間で切り替わるように配置されるロックアクチュエータ510を備え、ロックアクチュエータは、形状記憶合金、電気永久磁石、又はリラクタンスアクチュエータのうちの1つを備える。特に、ロックアクチュエータ510は、形状記憶合金(SMA)を備え、この形状記憶合金は、主延長方向を有するワイヤー形状を有する。SMAは、転移温度を超えると主伸長方向に沿って収縮するように配置される。例えば、ワイヤーに電流を適用することにより、ワイヤーは転移温度超過に加熱される。
【0068】
調整可能な光学要素1は、調整可能な光学要素に作用する加速力を測定するための加速度計60と、ロックユニット50の開状態と閉状態との間の切り替えを制御する制御ユニット61とを備え、制御ユニットは、加速度計が閾値超過の加速力を検出する場合にロックユニットを閉状態に切り替えるように配置される。加速力の値の閾値は1Gとすることができ、好ましくは1.5G又は3Gとすることができる。したがって、ロックユニットは、落下事象のように高い加速力にさらされる際に、第1のキャリアと第2のキャリアの相対運動を防止することができる。
【0069】
一実施形態によれば、第1のキャリアと第2のキャリアとの相対位置の調整により、容積部内の液体の圧力が変化し、これにより膜が湾曲するようになる。
【0070】
一実施形態によれば、調整可能な光学要素は可変プリズムであり、第1のキャリア及び第2のキャリアは剛性の透明素子であり、かつアクチュエータは、第2のキャリアに対して第1のキャリアを傾斜させるように配置される。
【0071】
本発明は、これらに基づく説明によってこれらの実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は、任意の新規の特徴及び特徴の任意の組み合わせを包含し、特に、その特徴又は組み合わせ自体が特許請求の範囲又は実施形態に明示的に記載されていなくても、特許請求の範囲の特徴の任意の組み合わせが含まれる。
【0072】
符号の一覧
1 調整可能な光学要素
10 第1のキャリア
11 膜
12 成形素子
20 第2のキャリア
21 ウィンドウ
30 容積部
40 アクチュエータ
50 ロックユニット
51 閉状態
52 開状態
60 加速度計
61 制御ユニット
62 位置関知ユニット
70 ヒンジ
71 回転軸
80 保持素子
81 弾性膜
82 ばね素子
821 板ばね
83 保持アクチュエータ
830 マウント
100 光軸
400 作動点
410 ピン
420 SMAワイヤー
430 受動ワイヤー
500 ロック素子
501 ロック支柱
502 ロックばね
503 ロックリング
504 スリット
510 ロックアクチュエータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】